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1952-04-02 第13回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二日(水曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 戸叶 里子君       植原悦二郎君    小川原政信君       大村 清一君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    飛嶋  繁君       福田 篤泰君    山本 利壽君       林  百郎君    黒田 寿男君  出席国務大臣        国 務 大 臣  大橋 武夫君  出席政府委員        検     事        (特別審査局次        長)       吉橋 敏雄君        外務事務官        (大臣官房長)  大江  晃君        外務事務官        (条約局長)   西村 熊雄君  委員外出席者        專  門  員  佐藤 敏人君        專  門  員  村瀬 忠夫君     ————————————— 四月一日  委員田中元辞任につき、その補欠として守島  伍郎君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員中山マサ辞任につき、その補欠として池  見茂隆君が議長指名委員に選任された。 同日  戸叶里子君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  国際連合への加盟について承認を求めるの件(  條約第四号)  国際計数センター設立に関する條約の締結に  ついて承認を求めるの件(條約第五号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  国際連合への加盟について承認を求めるの件及び国際計数センター設立に関する條約の締結について承認を求めるの件を一括議題といたします。政府側より逐次提案理由説明を求めます。大江政府委員。     —————————————
  3. 大江晃

    大江政府委員 ただいま議題となりました国際連合憲章及び同憲章と不可分の一体をなします国際司法裁判所規程につきまして提案理由を御説明いたします。  国際連合は、第二次世界戦争昭和二十年六月二十六日サンフランシスコ会議におきまして締結されました国際連合憲章により設立されました一般的安全保障機構であります。一般的安全保障機構としては、第一次世界戦争を終結した平和條約により設立された国際連盟最初のものでありました。国際連盟は、戦争を防止することができず、第二次世界戦争となりましたので、別個の新しい構想による一層強力な国際安全保障機構設立が要望され、その実現を見たのが、国際連合であります。従つて国際連合は、国際連盟の経験を多く取入れてはおりますが、一般的安全保障機構としても、経済社会的国際協力機関としても進歩したものと認められます。  国際連合設立の経緯を振り返つて見ますと、第二次世界戦争に関連して一般的安全保障機構について言及した最初の文書は、昭和十六年八月の大西洋憲章と呼ばれる米英共同宣言であります。太平洋戦争の勃発後間もなく、昭和十七年一月一日に米英ソ華四国を含む二十六国がワシントンで署名した連合国共同宣言は、この大西洋憲章の原則を確認いたしております。その後イタリアの降伏後、昭和十八年十月三十日に、米英ソ華四国がモスクワで署名した全般的安全保障に関する四国宣言は、その第四條で一般的安全保障機構を樹立する積極的な意向を公式に表明しております。さらに同年ルーズヴェルト大統領チャーチル首相及びスターリン首相は、テヘランに会合して、全般的国際機構について意見の交換を行い、十二月一日に共同宣言を発表いたしております。このような宣言の趣旨に従つて米国政府は、具体的な世界機構草案の作成を急ぎ、昭和十九年七月十八日に予備草案英ソ華三国に送付し、三国からも対案が提出されました。これらの提案審議するため、同年八月二十一日から十月七日まで、ワシントン郊外ダンバートン・オークスで会談が行はれ、国際連合憲章を作成するように提案するダンバートンオークス提案が発表されました。さらに翌昭和二十年二月三日から十一日には、米英ソ国首脳がクリミヤのヤルタに会合して、ダンバートン・オークスで合意に達することのできなかつた安全保障理事会表決手続の問題及び非自治地域に関する一般方針を決定し、あわせて同年四月二十五日に国際連合憲章を作成するため、サンフランシスコ連合国会議を開くことを決定いたしました。この決定に従つて昭和二十年四月二十五日に、サンフランシスコに諸連合国が会合して、国際連合憲章を起草し、同憲章は、六月二十六日に署名されました。その効力は、同年十月二十四日に発生し、翌昭和二十一年一月十日にロンドンで第一回の総会を開いて、国際連合は、原加盟国五十一箇国をもつて正式に発足いたした次第であります。  国際連合は、その後九箇国の加盟承認し、現在六十箇国で構成されております。もつとも有効的な一般的全保障機構であるために、普遍性ということを一つ理想としている国際連合は、この理想を実現するまでには至つておりません。現在までに加盟申請をした諸国のうちで、旧敵国であるイタリア、オーストリア、フィンランド、ブルガリア、ハンガリー及びルーマニアの加盟が実現しておらないばかりでなく、アイルランド、ポルトガル、トランスジヨルダン、アルバニア、外蒙古、セイロン、ネパール及びリビアのような国の加盟も実現しておりません。さりながら、加盟申請国加盟問題を解決するために、国際連合では従来種々努力が行われておるのでありまして、われわれとしては一国際連合自体におけるこの種の努力が結実する日の一日も早からんことを希望いたすものであります。  日本国との平和条約前文で、わが国は、国際連合への加盟を申請する意思宣言し、連合国は、このわが国意思を歓迎いたしております。政府といたしましては、独立後すみやかに加盟申請手続をすることといたしたい所存であります政府といたしては、平和愛好国として国際社会に再出発したわが国が、前述いたしましたように、国際連合における加盟問題が関係連合国政府の真摯なる努力によつて解決されまして、一日も早く国際連合加盟国一員となる日の来らんことを希望いたす次第であります。  国際連合憲章及び国際司法裁判所規程の内容及びその事業につきましては、お手元に配布いたしました国際連合憲章説明書をごらんになつていただきたいと存じます。  何とぞ、愼重御審議の上、すみやかに御承認を與えられんことを切に希望いたします。  次に第二の議題となりました国際計数センター設立に関する條約につきまして提案理由を御説明いたします。この條約は、昨年十二月六日、パリにおいて署名されたものでありまして、十箇国がこの条約当事国なつたときに効力を生ずることになつております。本年月十五日現在、この條約に受諾を留保して署名した国は、わが国を含めて十箇国でありますから、この條約は、これらの諸国のすべてがこの條約を受諾したときに効力を生ずることとなりますが、おそくとも本年末までには効力を生ずる見込みであります。  この条約によつて設立される国際計数センターは、九四六年十月以来、国際連合経済社会理事会において審議中の国際研究所設立計画のうち、最初に具体化されたものでありまして、その本部をローマに置き、その下に電子計数機等近代的計数装置を備えた個以上の計数研究所世界各地設立して、計数に関する科学上の研究及び教育並びに計数分野における諮問的業務及び計数的業務を行うことを任務とする国際機関であります。  わが国は、本センター設立会議におきまして、計数研究所一つわが国設立することが、アジア地域全体における科学の進歩に資するところの大なることを力説し、公平な地理的配分に基いて計数研究所の所在地を決定すべき旨を条約本文の中に規定せしめることに成功いたしました。  わが国は、この條約に加入することにより、過去に、おいて解決することを得なかつた複雑な計数問題の解決を本センター計数研究所に依頼することにより、各種科学及び技術分野の障害身除去することができるのみならず、研究者の養成及び各種資料の入手によつて計数装置研究を段と進歩せしめることにより、将来わが国において優秀なる計数装置を製作することも有望となるわけであります。如上の事情を了察せられ、慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  4. 仲内憲治

    仲内委員長 それではこれより質疑を許します。植原悦二郎君。
  5. 植原悦二郎

    植原委員 これに関連していろいろお尋ねしたいのですが、お尋ねする趣意は、当然今政府の御提案のものを承認することはもちろん、これに同意するし、さらに政府はこれの同意を得て、日本国との平和條約が日本としてはすでに批准されておるし、また遠からずアメリカの批准も了し、必要なる六箇国以上の批准終つて講和條約、安全保障條約の発効の日も近きにあると思います。その場合に平和條約の前文その他を考慮いたしましても、日本はすみやかに国際連合加盟手続をとるだろうと思いますが、これはいかがであろうか、これを伺つておきたいのです。
  6. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ただいま植原委員御発言の通り、対日平和條約が発効いたしますればただちに加入申請正式手続をとりたいと考えまして、事務的に準備を進めております。
  7. 植原悦二郎

    植原委員 ただいま條約局長の御答弁通り、そういう前提のもとでこれらの承認案を御提出になつたことと推測いたします。そこで国際連合加盟手続をとるといたしますれば、実は再軍備の問題が起るのであります。この問題については議会を通じて明らかにされておらないことがあるので、国民は非常に不安にかられておる。実はけさも八木一郎君から私のところに電話がかかつて来て、何か治安委員会がある、そこでいろいろ警察予備隊の問題を明らかにしておきたい、どうも明らかにならないで困る、それで私に来てその問題を明らかにしてもらいたい、そうでなければ議会終つて国民の間に立つて他党との関係がある場合にちつとも明瞭でなくて困るからということでした。その委員会は明日であるために私は出られない。そこでけさいろいろのものを見ましたところが、ここで国連の問題が問題とされておる、ここでできることならばものを明らかにして、国民が帰趨に迷わないようにしておくことが、議員としての責任ではなかろうかと思うて私が質問いたすのでありますから、その点を御了承願つて答弁を願いたいのであります。  講和條約を発効して日本がその平和条約を忠実に守るとすれば、すみやかに国連加盟手続をいたさなければならない。手続をしても現在の国連状態においては、イタリアが再三拒否されておるがごとく日本は拒否されるかもしれない。しかし拒否されなければ仕合せです。どつちでも加盟するという意思はつきりしなければならない。もし加盟するものとすれば、加盟を許されるものとしての覚悟をしておかなければならない。加盟を申し込む以上は、加盟した後のことまですべて考慮に入れてでなければならない。そうすると国連加盟手続をする場合には、どうしても国連オブリゲーシヨンを果さなければならない。オブリゲーシヨンを果すといえば、ただいま政府が御説明なすつた通り、コレクテイヴ・フォースによつて世界の安全を保障しようということがある。共同の力によつて世界の安全を保障することが国連目的である以上は、日本国連加盟した場合その任務を果さなければならない。その任務を果すとすると、当然日本は小さいにせよ大きいにせよ、国連に対して国連一員として果すべき軍備を持たなければならないと思いますが、その点はいかがでありますか、率直なお答えを願いたいと思います。
  8. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点は、たいへん大きな問題だと存じます。私から答弁するよりも責任国務大臣から御答弁つてしかるべき問題かと存じます。しかし今日ただいま国務大臣がお見えになつておりませんので、事務当局として応御答弁申し上げておきたいと思います。  私どもは再軍備の問題は、国連加盟の問題とは直接関係のない、まつた別個の問題であると考えております。国際連合理想とするところは、要するに無軍備国家といえども安穏に生存できるような世界を招来することが目的でございまして、国連加入のためには軍隊を持つていなければならぬということになることは、国連自体からいえば、むしろ自殺行為に近いものであると考えておる次第であります。加盟條件につきましては、憲章の第四條に定められておるものだけであります。第四條によりますと、第に国家であること、第二に平和愛好国であること、第三に憲章に掲げる義務を受諾すること、第四にこの義務を履行する能力があること、第五にこの義務履行ずる意思があること、この五つであります。憲章に掲げまする義務の中には、軍備を有する義務は規定されておりません。憲章に掲げる義務のうち問題となるのは、第二條五の、加盟国は、国際連合憲章従つてとる行動について、国際連合にあらゆる援助を與えるという点であります。この援助のうちには、軍備を有する国の場合には実力による援助を含むこと当然であります。この第二條五の規定は、永世中立国地位とは両立1ないものと公式に認められてあります。この点はサンフランシスコ会議議事録に記載してございます。永世中立国はこのような援助、今植原委員がおつしやいましたような国際連合がとる集団安全保障のために武力を提供することをいかなる場合にもしないという性格の国であるから、永世中立国従つて国際連合憲章の期待しておる義務に応じ得ない性格国家であるから、こういう結果になつておるわけであります。しかしその他の国はこのような援助を與えることができます地位にあるので憲章義務を履行する能力があるということができます。その国が軍備を有していない場合にでも、その国としましては可能なあらゆる援助、たとえば国連加盟国軍隊領域の通過または領域における滞在または基地の提供または物資調達援助などを與えることによつて憲章義務を履行することができます。従つて憲章にいう義務を履行する能力ということは、当該国家が事実上またその国法上可能なる援助をいたせば十分であると考える次第であります。軍備を有しないことは。加盟妨げとはならない、こう結論いたします。事案問題といたしましても、まつた軍備を持たないアイスランド、この国は加盟をいたすときに自国が軍備を持つていないということを明言いたしましたが加盟承認いたされましたまた同じく軍備を持つておりませんパナマ及びコスタリカ、この両国は国連原加盟国となつております。こういう実例から見ましても、軍備がないということは、国連加盟国になる資格の妨げとはならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  9. 植原悦二郎

    植原委員 条約局長の御丁寧な御説明を聞きましたが、日本アイスランドパナマ同列日本の安全が守れる、また同列日本国際的義務を果せるというような前提のもとでお考えですけれども、これは私追究いたしませんが、それはたいへん御無理な御答弁で、日本がいやしくも国連に入るという以上は、なるほど軍備を持つか持たないかということは条件ではありますまい。けれども、国連はコレクテイヴフォースによつて世界の安全を守り、世界の平和を維持する現状において、中立という状態において国家の安全は期し得られない。そういう建前から日本安全保障条約を結んだのであります。アイスランド安全保障條約を結んで、外国軍隊で守つてもらうような状態でもありますまいし、パナマ特殊地域であることを御存じでありましよう。ただ条約局長説明に困つて、苦しい例をとつてお話なつたというだけで、私はとがめはいたしません。けれども、日本としては、どうしても国連加盟するという以上は、その準備をいたさなければならない。これは常識をもつてだれも疑わないところで、日本中立日本の安全を守れるわけもなし、また中立でおつて日本平和條約の精神にも反するし、従つて日本もこれに加盟するという以上は、日本もやがて軍備を持たなければならないのだということは、条約局長御承知の上で今のような御答弁をなすつておると思いますから、私はそれ以上のおとがめもしないし、答弁を求めようともいたしません。ただそういう状態で、パナマアイスランドの例をもつて日本国連加盟を望むこともできない、また日本中立で存在することもできない、といつて平和條約を忠実に守り、日本国際的義務を果そうとすれば、やがて国連加盟手続をとらなければならない、その場合には日本は再軍備をいたさなければならぬ、再軍備の問題を条約局長がこわがつておいでになるが、再軍備をするとすれば、憲法を改正しなければならぬ、こういう問題にひつかかるのをおそれて、今のような御答弁をやむを得ずなすつたと思います。  私は再軍備をする場合に、憲法の問題はしばらくおきまして、そこで今の警察予備隊——これは私の考えを先に申し上げて御答弁願つた方がいいでしよう私は警察予備隊警察予備隊で、軍でないと思う。これを軍備のごとくに解釈するのは間違つておる。警察予備隊がどんな武備を整えようとも、どんな兵器弾楽を持とうとも、警察予備隊は軍でない。なぜそうかといえば、今の保安警察だけでは今の日本国内情勢から見て、治安が守れないのだ。毎日日常のできごとを見ても、日本外国軍隊が、かりに今の進駐軍がおらなくなつて平和條約が発効して日本独立国となつて日本自体日本国内治安を維持しようとする場合に、今の保安警察だけでは足りない。そういう場合に、日本国内のどこでいつ何時騒擾が起らないとも限らないし、そういうことは希望しないけれども、そういうことがあり得るがごとき今日の社会情勢だ。それに備えるためには、十分に訓練して、いかなる危険にも処し得るところの警察隊を持たなければならぬそれが警察予備隊だ。これは軍じやないのだ。今日軍であるか軍でないかを判断するのは——今日の軍隊というのは、国内で用いるのは軍隊とは言わない。国外に備える場合だ。国外に備える場合で、かりに仮想敵国でもつくつて、それに備えるならば、どんな小さなものをつくつても、それは軍と言わなければならない。しかし今日の警察予備隊はどういう訓練をしても、どういう武器を備えても、これは保安警察の延長であつて国内治安国内非常事態に処する準備だから、警察予備隊は軍じやない。私はこういう立場をとつていただきたい。またそれがほんとうの政府考え方じやないか。それを、ただどういう武器を備えればとか、その武器の持ち方によつて、それが軍隊であるとか、軍隊でないとか、あるいは警察予備隊戦争するポテンシャリティーがないから軍でないとかいうような解釈は、国民を惑わすものだと私は思う。ポテンシヤリテイーの問題を言うならば、どんな軍隊つて、その背後におる飛行像なら、一体ガソリンがどれだけあるか。飛行機がどんなにあつても、ガソリンがなければ航空隊にはならない。そういうポテンシヤリテイーによつて、軍であるとか、軍でないとか、あるいは持つ武器によつて軍であるとか、軍でないとかいう解釈をいたすのは今日の軍隊というものに対する正しい解釈を持たないためだ。こう私は解しておりますが、政府はそれに対して私の解釈に御異存があるかどうか、伺いたい。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、警察予備際予備隊令の示すがごとくに、国内の平和と秩序を維持するためのものであつて、あくまでも国内治安維持目的でできているものと考えているのでございますしかしてこれに種々なる武器を装備いたしておりますが、これらの武器は、この国内治安確保という予備隊本来の目的のために、必要なる限度において備えているものでございましてかくのごときものは、いかなる意味においても軍隊ではないのである。現在の装備が、たといある程度将来強化されることがございましても、それが予備隊本来の目的限度内において必要なものでありまする限り、これは備えるのは当然でございまして、それによつて、これが軍隊なるようなことはない、こういうふうに考えているのでございまして、ただいま植原先生の仰せられたことにつきましては、全然同感に存じている次第でございます。
  11. 植原悦二郎

    植原委員 私はどうか警察予備隊をそういうふうに解釈はつきりしていただきたい。国内治安を維持するために、国内治安を保つために、講和條発効後の状態において人心にも相違があり、社会情勢にも相違がある。そういうために、そういうことがなければさしつかえないけれども現在の保安警察だけじやその用が足りないのだから、これから武器を増すこともあり、あるいは訓練をすることもあるが、それは国内に用いる、国内の平和と治安秩序維持のために備えるもので、これはいかなる状態であろうとも軍隊でないのだという解釈はつきり示していただきたい。ポテンシャリテイーとかなんとかいうことではなかなか世間はわからないから、そういうふうにはつきりしていただきたい。それからもう一つはつきりしてもらいたいことは、ややもすると、それにひつからんで、自衛上の軍備は持つてもよろしいとか、よろしくないとか言うこれは憲法解釈になりますけれども、そういう議論をなして、国民が惑うておる者がたくさんある。私は憲法に規定してあつてもなくても、すべての生物はその生命を守るために、自衛の権力はあるものだと思う。みみずだつてつねればはね返すじやないか。それと同じく生物であつて自己生命を保存するところの権利を持たないものは、いかなるものでもないと思う。その立場からして、日本自衛のために、かりに必要なる軍隊を持つことがあるかもしれないけれども、しかしこういう敵が来るだろう、こういうことが起るだろうと予想すれば、それは自衛じやないかりに公法だつて私法つて、これは国内でよく御存じのことだけれども、自分に災害がかかつて来た、だれか自分を攻撃して来た場合には、向うの者をたたき殺したつて自己防禦犯罪行為にはならない。しかし向うにおるやつは武器を持つているから、ぼくをなぐりやしないかといつて、こつちが手を出せば、こいつは自衛にならない。そこに限度つて、どこかの国が日本を侵しやしないかというような考え、そういう想定的のことで、日本軍隊を持つとか、あるいは兵器を整えるということになれば、これは自衛じやない。自衛ということは、事がそこに起つて日本が攻撃されたときには、日本の現在の警察予備隊はそれと戰つても当然のことで、また戰わなければならない。もし海外から侵略があつたならば、今の警察予備隊国内治安秩序平和維持のためのむので、軍隊ではないけれども、その場合には軍隊立場をもつてこれを防衛したつてちつともさしつかえない。そういうことならば、それはあり得ることだけれども、ただ外敵が日本を襲うだろうといういうようなことで、日本軍隊を持つとするならば、それは自衛軍隊とは言えないのだ。その場合には当然憲法の問題に抵触する。そういう場合憲法を改正しなければならないというふうに解釈すべきだと思うが、それに対して国務大臣のお考えはどうですか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま仰せられました警察予備隊は、国内の平和と秩序を維持するためのものでございますが、しかし実際不幸にいたしまして、外国の不法な侵略がありました場合においては、一面におきましては、お話通りわが国といたしまして、その不法な侵略に対しまして、正当防衛を行うところの固有の権利は国として持つておると思います。と同時に、警察予備隊立場から申しましても、この外国の不法な侵略というものは、明らかにその限りにおきまして、国内の平和と秩序を破壊するものでございますから、この平和と秩序破壊者に対しまして、実力をもつて措置することは、本来警察予備際の使命のうちには、当然一部分として含まれるべきものと考えるわけでございますから、そういう場合において、当然国としての自衛上の措置、また警察予備隊といたしましては、その使命であります国内治安を確保するという立場から行動に出ることは、当然あり得ることと考えておるのでございます。  しかしながらそれでは自衛のために軍備をすることがいいか悪いか。これは明らかに外国との交戰を予想し、これを目的とした軍事的組織を国内準備することは、これは現行の憲法において許されざるところと考えるわけでございます。どの点につきましても、まつたく同感に存ずる次第でございます。
  13. 植原悦二郎

    植原委員 今二つの点が明らかになつて、私はたいへんけつこうだと思いますが、正当防禦とか自衛とかいうことは、事が起つて来なければ道理が立たないことで、ただ仮定で、これは海外から来る危険がある、それに備えて、自衛のために備えるのだといつても、それは自衛じやないのだ。それは軍備で、そうすれば、憲法を改正しなければならぬのだ。この点が明らかになつて、私はたいへんけつこうだと思います。  もう一つこの場合に私明らかにしておきたいことは、現在朝鮮の問題を見ても、日本のすべての周囲の問題を見るときに、平和條約が効力を発生した場合、進駐軍が全部撤退すれば、日本国民は枕を高うして眠ることができないだろう、この事実がはつきりしておりますがゆえに、安全保障條約を結んで、アメリカの軍隊にしばらくの間おつてもらう。日本国民が安心して国家再建に当るようにしてもらうために、安全保障條約ができたのだ。この安全保障條約は、アメリカでもやむを得ずやつておることで、決して喜んでやつておることじやない。日本もまたこの安全保障條約を喜んで、歓迎してやつていることじやない。日本の今日の国際関係上の四囲の環境が、日本をしてやむを得ざる処置としてそういう手段をとらしめていることだ。これだけははつきりしている。それならば、こういう安全保障條約のようなものは、なるべく短かい期限に終了することを、これは両国民とも希望するところである。日本日本みずから独立国として守れるような体裁を早くつくらなければならぬ。またそういうふうな状態を早く日本が構成して、そしてアメリカの軍隊に撤退してもらうこと、アメリカは何も好んで——たとい多かれ少かれ、アメリカの国民の負担によつて日本を守るというようなことは、アメリカの国民が希望することじやない。太平洋あるいは講和後の日本の健全なる発展をはかり、平和を期するがために、事情やむを得ず一つのできごととしていることだ。そうすれば、これが早く解消することは、両国民の歓迎することである。両国民とも早くこれを解消せしめなければならない。それを解消せしめるには、財政的に経済的に日本がその準備ができなければならないということは、そんなことを言わなんでもきまつていることである。日本独立して、自由な国家となれば、日本国民——どうもそこへ行くと、條約局長に少しほこ先を向けたくなるけれども、アイスランドパナマ日本を一緒にして、独立した日本を思うような腰抜け国民じやこれは困ると思う。そこで日本は、日本の財政経済や日本国民の生活を脅かさなんで、日本の健全なる発展が遂げられて行ける状態の見通しがつき次第、なるべく早く安全保障條約を解消するようにしなければならぬ。そうすれば、その場合には、日本は多かれ少かれ軍備を整えなければならぬ。そのときには憲法を改正するのだ。それまではできないのだ。こういうことをはつきり国民に示したら、私は何も疑問はないと思う。その点がどうもはつきりしておらないところにいろいろの疑義や疑問が生ずる。現在の警察予備隊は、どんなに武器を整えても、どんなに訓練しても、それは警察予備隊であつて軍隊ではないのだ。これのために何も憲法の問題をかれこれ言うことはないだろう。しかし安全保障條約は日本が一日も早く解消した方がいいのだから、解消する準備のために軍備を整えるときには、当然憲法を改正してやるのだ、こういうふうにものをはつきりすれば、警察予備隊、再軍備憲法改正の問題はきわあて明瞭になると思うがいかがでしようか。ひとつ政府の御所見を伺いたい。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 お話の筋道といたしましては、まことにその通りと存じます。ただ政府といたしましては、この再軍備というような問題は、総理からもたびたび申上げております通りわが国の財政上の問題もございますし、またことには軍隊を構成するものはすべて国民でございますし、また再軍備を可能ならしめるために憲法の改正ということを決定するものも国民でございまして、今日の状態におきまして、まだ国民全体の気持というものが、そこまで行つておるかどうか。おそらくはまだそういう点については早過ぎるのではないかということを考えておる次第第でございます。しかしながら、将来のことの筋道といたしましては、ただいま仰せられたところにまつたく同感でございます。
  15. 植原悦二郎

    植原委員 ただ心配しないでもいい。よけいな国際情勢のことを心配したりいろいろしたり、国内のことで憲法の問題が起ることをいやだという建前で今のような御答弁であろうと思いますが、国民に引きずられることが民主国の政治ではありません。民主国の政治は国家の行くべき道をはつきりいたしてそうして国民を指導して行くところに政治家の責任を持たなければなりません。私はそれゆえに、現在の安全保障條約が一日も早く解消することは、日米両国関係にも、世界情勢にもよろしいことだ。もちろん日本の今日の国力をもつてしては、財政上において、経済上において、日本国家再建において、軍備をするといつたら支障を招くから、それはできないでしよう。それがために、国内治安維持のために警察予備隊という変則的のものをもつてこれに当らなければならないという状態だ。だからして安全保障條約に期限のないのも、そこに深い考慮のあることであるということを私は政治家として考えておる。期限があればそこまで持つて行かなければならないし、期限前には何でもかんでも両方無理でもそこまで押しつけなければならない。そこで無理をせずに日本国民独立国として、自由の国家としてこの安全保障條約を締結した精神に基いそうして一日も早く日本がアメリカの国民の負担を重くならしめないように、日本国民が自然これによつてつて行けるように——いつまでも外国軍隊日本に駐屯するということは、どういう名義であつても、日米両国の国交を親善ならしあるゆえんならずと考えておる。この点について私は一点の疑問を抱かないものである。しからば、日本の現状、世界の情勢を国民に納得せしめ、またもし濠洲とかニュージーランドとかあるいはフイリツピンが日本の再軍備によつて日本の軍閥の復活を恐れるというならば、これは説明したらよろしい。日本の軍閥がああいうことをしたのは、明治三十一年に山縣公がつくつた、その当時は陸海軍の附則、後に勅令とした陸海軍大中将にあらざれば陸海軍大臣になることができない、この規定が日本憲法を破り、この規定が日本を軍国主義に導き、この規定が日本国民を誤つたので、この規定がなければ、どんな人でも内閣をつくることはできる。この規定があつたために、少数の軍人が内閣をつくることも内閣をこわすことも自由自在にやつた。この一つの間違つた勅令。この日本の立憲政治の変則的な状態が、日本を軍国主義にかり立てたのだということを説明すれば、おそらく世界憲法学者でわからない憲法学者は一人もありません。この点をよく説明されれば、濠洲やニュージーランドやフィリピンの誤解を一切一掃することができると思う。たとい軍隊を持つても、軍人をして日本の政治に携わらないように、軍は政治によつて動かす。日本にあれだけの力を持つてつたマツカーが、アメリカの一つ政府の政治に反するといつてすぐこれを解職せしめられる。これよりりつぱな民主主義の実例はないのだ、こういう実例が日本に打立てられておつたら、どんな軍隊を持つても、軍閥によつて日本国家が誤られるようなことはない。この点は外務省においても、日本政府においても、説明が足りないのである。こういう点をはつきり説明するならば、何も再軍備したから、日本が昔の軍閥によつて左右される、日本が軍国主義に復帰するなどということはない日本の政治は民主主義のもとにおいて、議会が中心となり、総理大臣がこれを代行するのだという日本の民主政治の建前をはつきり世界に示せば、何の御心配も御無用である。そういうふうにして国民を導く。現在の経済、財政状態日本の今日の状態においては、軍備を持ちたくも持てない。また少し軍備を持つても役に立たない。それゆえに安全保障條約を結んで、両国ともまことに不本意なことだけれども、太平洋の平和、世界の平和日本の将来の再建のために、またアジアの平和のために、これをしておるのだから、そういうものが一日も早く解消されるのがよろしい。その準備ができたらばその準備のできたときに憲法を改正して、そうして日本がほんとうの自由独立国として出発するのだ、こういう点をはつきりすることほど日本の非常時の今日の国家国民に知らしめなければならないことはないと思いまして、私はあえてここの質問の席をかりてこれだけのことを明瞭にしておくわけでありますその点はよく御了承願いたい。
  16. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。——大橋国務大臣は時間がごく限られておりますから、簡単にお願いします。
  17. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は実は警察予備隊が戦力であるかどうか、違憲になるかどうかという点につきまして、この前、大橋国務大臣と相当長い時間をいただきまして質問応答をしたのでありますが、なお多少残されておる問題につきまして御質問申し上げる機会を得たいと思つておりましたきようその機会を得たわけであります。なお、ただいま植原委員から国務大臣に対する御質問がありまして、ちようど私が問題にしてみようと思つていた点を問題にされたのであります。そうして私の考えからいたしますと、植原委員のお考えは、長老に対してはなはだ失礼でありますけれども、私は間違つていると思います。大きな二つの間違いがあると思います。ちようど植原委員の御質問になつたあとでありますので、一層私の質問の趣旨もはつきりすると思います。これから質問いたします。  第一に警察予備隊国内治安対策のための施設であるから、すなわち対外的に用いられるものでないから、これは軍隊ではない、こういうようなお考え植原委員にあるようであります。そういうお考えの中に、私は二つの大きな誤りがあると思います。第一に、警察予備隊は決して国内治安対策のものというだけのものではない、必然的に対外的対策の性質々持つておる、私はそう考えます。その点は植原委員のお考えと違う。それから第二は、対内的なものであるから軍隊ではないというその御議論も、私はあまりに簡単に過ぎると思う。  そこで第一の問題についてお尋ねしてみたいと思いますが、その前に念のためにお聞きいたしますが、警察予備隊は対内的——もつと詳細に言いかえるならば、国内治安対策のための施設であるから軍隊ではない、こうおつしやるのでありますか、それを念のためにお聞きしておきたいと思います
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊は、警察予備隊令の規定の示すごとく、国内の平和と秩序を維持することを唯一の目的といたしておりますから、これは軍隊ではない、こういうわけでございます。
  19. 黒田寿男

    ○黒田委員 政府のお考えはそれでよくわかりました。そこでその次にお尋ねしてみたいと思いますことは、警察予備隊は間接侵略に対する対策としての施設ではないか、そうであるかどうか。これをお伺いいたします。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 間接侵略もまた国内における平和と秩序に対する重大な障害でありますから、当然警察予備隊の行動の対象となるものであります。
  21. 黒田寿男

    ○黒田委員 政府の御意見はよくわかりました。そこでその次にお尋ねしてみたいと思いますことは、間接侵略対策というものと、国内治安対策というものは同じであるか、それとも違うかという問題であります。政府は従来間接侵略対策と国内治安対策とは同じものである、こういうふうな御説明を繰返して来ておられます。そうであつたとして、警察予備隊は対内的施設であるという論拠に基いて警察予備隊の非軍事的性格説明し得たとされていたと思いますけれども、私は間接侵略対策と国内治安対策とには大きな相違があると思います。そこが政府と私どもの考え方の違いでありますし、植原委員のお考えと違う点であろうと考えます。私は違うと思う。念のためにお聞きしますが、大橋国務大臣は間接侵略対策と国内治安対策とは同じであるというようにお考えになつておりますか、どうでありましようか。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 対策というものにはいろいろあるわけでございまして、間接侵略の対策となりますと、国内においてとられるところの対策と、国外に対してとられる対策とが考えられるわけでございます。この国内においてとられるところの対策というようなものは治安対策である、こう考えております。
  23. 黒田寿男

    ○黒田委員 少しはつきりしない点があると思いますが、私の質問を続けて行けば、その点ははつきりすると思います。  そこで念のためにお尋ねしますが、私は間接侵略という言葉が、国際関係の文書の中に正式に現われた例をまだ無学にして知りません。私どもは、この言葉が国際的文書の中に初めて用いられましたのは、日米安全保障條約の中においてであると考えます。そこで政府にお尋ねしたいと思いますことは日米安全保障條約第一條の「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう」というものが、私どもは間接侵略というものの観念の内容である、こういうように理解するよりほかには、実定法上他に解釈の資料はないと思いますが、そういうように考えてよろしゆうございますか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来私のお答え申し上げておりますのも、大体黒田君の考えのような観念によつて申し上げたつもりでございます。
  25. 黒田寿男

    ○黒田委員 それもよくわかりました。そこで私はお尋ねしたいと思います。国内治安対策の中には、侵略者ないし侵略者に対する対策という観念は全然ないのであります。ところが間接侵略対策の場合には、侵略者に対する対策という観念が必然的に含まれて来ると思います。同じ対策と申しましても、侵略者というものが現われて来る場合の対策と、侵略者というものが現われて来ない場合の対策というところに、私は国内治安対策というものと、間接侵略対策というものとの間に、大きな本質的な相違があるというように考えますが、これはいかがでございましようか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点は先ほどのあなたの御質問に対しましても間接侵略の対策と国内治安の対策とは同じであるかどうかという御質問に対しまして私は違うとお答え申し上げた通りであります。
  27. 黒田寿男

    ○黒田委員 私も違うと思います。そこで次にお尋ねしたいと思いますことは、間接侵略における侵略者は日本国の外に見出すことができる。もう少し詳細に、これを安全保障條約の條文に即して申し上げますならば、日本国における大規模の内乱及び騒擾を外国から教唆または干渉するその一または二以上の外国、これが侵略者である、こういうことになるのではありませんでしようか。そうしますと、侵略者というものを日本の国の外に見出すということになるのではありませんでしようか。これをお聞きいたします。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御質問の通りの御趣旨でけつこうだと思います。
  29. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと私はどうしても間接侵略に対する対策として警察予備隊が設置せられるという場合には、対外面に対する防禦ということを問題にしないわけには行かないと思うのであります。そこで私はこの点が単なる国内治安対策と違う、そういうふうに私は考えます。そこで、警察予備隊、間接侵略対策、こういうふうにこの二つを連ねてその関係研究いたしてみますと、国外にある間接侵略者に対する、対策ということが、警察予備隊設置の目的の中に含まれておることを看取せざるを得ない、これが国内治安対策と間接侵略対策との相違であり、従つて警察予備隊は単なる国内治安対策のための施設であるとのみは言い切れない、それよりはみ出す施設ではないか、こういうように私どもは考える。この点はいかがでありますか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、黒田委員は非常に論理的なお方だと思つて、かねて尊敬いたしておつたのでございますが、ただいまの最後に仰せられました点は、大分論理的でないように伺いまして、実に意外に存ずるのであります。先ほど来申し上げました通り、間接侵略に対するわが国の対策といたしましては、間接侵略の性質上、国内において必要とされる措置と、国外に対して必要とされる措置とが考えられる、こういうことを申し上げたわけでありまして、この警察予備隊は、国内において間接侵略の効果が現われましたる場合においては、当然国内の平和と秩序が乱されるのでございますから、その乱された平和と秩序を回復するための実力の発動、これが警察予備隊の本来の使命の一つであります。そういう場合に警察予備隊はそういう面において行動をするものなのでございます。縫いまして当初から私は警察予備隊の使命というものは海外に対して行われるものではない、こういうことを申しており、ただ国内においてのみ行動するものである、こういうことを申しているわけでございますから、最後に仰せられました結論は大分論理の飛躍があるのではないかと存じます。
  31. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは私は飛躍的でないということ、間接侵略対策の場合の対内的と対外的との結びつきを少し具体的にお話してみたいと思います。「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された」内乱及び騒擾という場合の、その外部の国の行為と、国内のそういう内乱ないし騒擾というものとの結びつきの関係の程度でありますが、これが單に——たとえば、今、政府はよく共産党のことを問題にされますので、かりに共産党の内乱——こんなことを申しましては共産党にはなは荘失敬でありますけれども、仮定でありますから御了承いただきたい。共産党でなくともほかの党でもよろしい。要するに外国に、ある一定の経済組織、待つてそれに基く政治組織に基いた政権が樹立せられておりまして、その外国の勢力から現実に武器、その他内乱というようなものを起す場合に必要な物資を供給されるというような関係が具体的にあつて——これは共産党の場合のことではありません。一般的に申すのであります。そういう関係によつて国内に内乱が発生したというような場合に、初めてそこにいわゆる間接侵略という事態が発生するのでありまして、單に思想上のつながりがあるという程度で、国内外国の政治思想ないし経済思想と同一な思想を持つている團体なり組織勢力なりがあつて内乱でも起した、しかしそれは單に思想上の共通性、関連性があるだけで、それ以上の何らの具体的なつながりがないという場合には、これは私は間接侵略というようには言わないと思う。從つてそういう場合における内乱に対処する策は、単なる国内治安対策である、こういうふうに私は考えまするそのように間接侵略という場合には相当具体的な援助行為と申しますか、干渉行為と申しますか、それとも教唆行為と申しますか、とにかく武器の供給その他の面において相当具体的に援助行為が現われている。間接侵略はこういう場合に当ることである。こういうふうに私は区別して考えなければならぬと思います。單に外国におけるある勢力と同じ思想を持つている者が国内で内乱を起したから、従つて国外におけるその勢力が間接侵略者であるというようには私は解釈すべきではないと思いますが、この点について大橋国務大臣のお考えを承つておきたいと思います。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点は同感でございます。
  33. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、国内にそういう間接侵略が起ります場合には、私が今申しました程度の具体的な武器の供給その他の援助が行われる場合でありますから、当然わが国といたしましては、これらの国が不正なる侵略を行つているというように私は理解しなければならぬと思います。たとえばこれは普通の刑法において個人の間の場合についてでありますがたとえば殺人の場合でも殺人を教唆した者はみずから殺人行為を実行した者と同一に取扱われるのであります。これと同様に、間接侵略の場合に私が今申しました程度の具体性が国外の勢力と国内の内乱勢力とにあるということになりますれば、そこに国外における不正侵略者というものが現われて来ている。従つてこれに対してどうしてもわが国としましては対処しなければならぬという問題が当然に起ると思います。すでに国外において不正侵略者が現われている。ただみずから手を下すのを人をして下さしめているというのとの違いがあるだけでありまして、不正なる侵略というものが、そこに行われているということになるのではありませんでしようか。そうしますと、そういう場合に警察予備隊が対処するということになれば、この対処策を対外的と対内的に機械的にわけることはできません。そういう事態に対する対策として警察予備隊が施設せられておるのでありますから、そしてこのような場合には、一触即発の状態が発生しているのでありますから、どうしても対外面に対する考慮というものなくして、警察予備隊の施設の内容を私どもは考えることはできないと思います。これを機械的に警察予備隊は対内的なものである、対外的な対策は他の勢力によつてやるのだというように機械的に解釈するのは、私はあまりに形式論であると考えます。むしろ私どものように考えるのが生きた論理である、私はそういうように考えます。警察予備隊が間接侵略対策のものである限り、どうしても対外的に不正侵略に対して当る用意をしました覚悟をし、またその用意並びに覚悟に相当するだけの設備も持たなければならぬ、そのようなものに発展せざるを得ない。そこがいわゆる間接侵略対策の場合と国内治安対策の場合とが違うところであります。この間接侵略の対策の性質を警察予備隊は持つているのでありますから、私は植原委員のような単なる国内治安対策の設備ではない、こう結論せざるを得ないと考えます。こういう私の考えに対して政府はどのようにお考えになるか。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まつたく間違つていると考えます。詳しくは先ほど来お答え申し上げたところを速記録によつてごらんを願います。
  35. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうも間違つていると言われるその理由が私にはよくわからない。大橋国務大臣のお考えこそあまりに機械的であつて、生きた世の中に生起する事象に対する論理というものは、大橋国務大臣のお考えのような機械的なものはありません。警察予備隊は生きた制度でありますから、それについてそういう機械的な考え方や説明をなさらないように願いたいと思います。最後に私はこの点に関連いたしまして申し上げておきたいのであります。それは自衛という問題でありますが、自衛という問題につきまして植原委員も先ほどお触れになりましたが、私は憲法で認めておる自衛というものは、当然にあると思います。私ども個人はもちろんドスも持つておりませんければ、ピストルも持つていない。何も持つていなくても刑法上正当防衛権はあるのであります。国際法上でいえば自衛権であります。私は憲法自衛権それ自身の存在を否定しているように解釈するものはいないと思います。けれども憲法に許されておる自衛とはどういうものであるかということには問題がある。外国から不意に不正な侵略を受けましたような場合は、私ども日本人は手をこまねいてじつと見ておるわけではない。それが不正な侵略である限りは、必ず私どもは何かあり合せの武器様のものを取上げて立ち上るでしよう。おそらく民衆は自発的に抵抗自衛の組織をつくるでありましよう。そういう民衆の自発的に組織されました勢力で、あり合せの武器様のものをとつて不正な侵略勢力に対し、レジスタンスを行うというような場合の自衛まで憲法が禁止しているのではありません。そういう際にまで私ども手をこまねいて、ただ不正侵略者のなすがままにされていなければならぬ、こういう不自然なことを憲法が命じておるのではありません。だからそういう場合の自衛憲法において認めておる自衛だと思います。けれども平素から外国侵略を予想して、そういう予想のもとで、すなわち不時の侵略に対して私どもが自発的に何らかの抵抗組織をつくつて抵抗するというのではなくて、それに対する用意というような考えが前もつて動いていて、その考えのもとで平素から一定の警察予備隊ないし軍隊的なものをこしらえておく、そしてそれが一定の系統組織のもとに置かれて、いざという場合にはそれを利用しよう——これを利用するということは、大橋国務大臣もしばしば申されておる。そういう場合に決して警察予備隊が手をこまねいておるものではないということをしばしば申されました。私はそれは当然であると思います。だが、そういうことを予想しておつて、そしてそういうときに使われるということになつて参りますと、憲法において許されておる單なる自衛組織ではなくて、自衛のためにする軍備を持つ、戰力を持つ、そういうものに私はなつて行くと考えざるを得ないのであります。植原委員は先ほど武器なんか何ぼ持つてもかまわないじやないか、問題が対内的なものであれば決して軍隊ではないと言われました。私はこれはきわめて簡單な御議論であると考えますが、どんな武器を持つていてもいいと言われる。しかし、それは実は間接侵略に対するものである、間接侵略に対するものは外国侵略を予想したものである、そういうことを予想してどんな武器でもいい、ちやんと用意しておくということになつて来れば、これがいわゆる戰力というものになつて来ると私は思うのであります。そういう武器を持つて自衛の戰いをやることは交戰権を否認している日本国憲法のもとでは私は許されぬことと思います。警察予備隊にはそういう性格があると思います。私は国内治安対策と間接侵略対策とははつきり違うと思いますしまた警察予備隊の使命は、国内治安対策のみでなくて、どうしても対外的防衛対策が必然的に含まれざるを得ない性格予備隊は持つた制度である、こういうふうに私は考えます。これが植原委員考えと私の考えとの違うところでありますしまた政府のお考えとも違うところであります。しかし大橋国務大臣は結論だけを申されて、私の論理が間違つておるというだけのお話でございました。それは非常に遺憾に用います。單に黒田君の考えは違うということだけでなく、ひとつ反駁をしていただきたい。そうすれば私もそれに対して反駁することがあるかもしれない。こういうようにして行かないと、これこそ論理の飛躍になつてしまいます。結論だけ先に出して君の言うのは間違つておるというように打切つてしまつたのでは十分に議論を発展させることができない。もし私の意見が間違つておれば改めます。そういうことに私は少しもこだわつておるものではありません。ただ一国会議員としまして、まじめにこの問題々究明してみたい、こういう考えから質問しておるのでありますから、私の意見に間違つておる点がありますならばひとつお示し頂、いたいと思います。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 重ねての御質問でございますので、それでは間違つておる点を御指摘いたしましよう。黒田委員は間接侵略に用いられるから、従つて警察予備隊は單なる治安対策以上のものだ、こういうこと言つておられるわけでありますが、その点が間違つておると申すのであります。間接侵略に対する対策といたしましては、先ほど来たびたび申し上げましたごとく、国内治安の面から国内において措置すべき対策と、対外的に外国に対して措置すべき対策と、この両方合したものが間接侵略の対策の全体を構成すると思うのでございますしかしてこの対内対外二つの部分のうちで、警察予備隊が担当いたします部分は、国内治安確保という面から、国内において行動するという面だけなので、これは間接侵略であろうと、純然たる国内的な事態の際でありましようとも、ごうもかわるものではないのであります。従いまして国内治安の面から間接侵略の際に警察予備隊が行動することは、決して警察予備隊が対外的に外国に対して行動をしたということになるのではないのであつて、あくまでも地理的に国内においてのみ行動いたしておるのでありますから、それは警察予備隊本来の使命を逸脱するものでない。従つてそれはあくまで国内治安の機構であるというのが私の考えであります。これが私があなたのお考えが違つておりはしないかと感じました点でございまして、特に御希望がありましたので申し上げた次第であります。
  37. 仲内憲治

    仲内委員長 もう時間がずいぶん過ぎておりますから……。
  38. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまの大橋国務大臣の御説明に対しましては、私は納得が行かない点が多々あるのであります。もう少し私の意見を展開してみたいと思いますけれども大橋国務大臣が御退席になつておしまいになりましたので、残念ながら私は大橋国務大臣に対するこの問題の質疑を今日は終了せざるを得ません。これで私の質疑は打切つておきます。
  39. 仲内憲治

    仲内委員長 林君。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 私はこの前岡崎国務大臣に質問いたしました、今朝鮮の戰線で問題になつております細菌戰の問題につきまして、日本人がこれに關與しているということが国際的に報道されておりますので、この点について政府から明確な答弁を求めたいと思うのであります。大体細菌戰につきましては旧日本の関東軍が元祖であつて、これが昭和十年、十一年に天皇の秘密軍令のもとにハルビン付近で第七三一部隊、部隊長は石井四郎中将、それから第一〇〇部隊、これは新京附近でありますが、部隊長は若松、後に少将になつた人であります。そして第七三一部隊の方では人間に、第一〇〇部隊の方では家畜に対する攻撃を準備しておつて、しかもこの実験のために毎年六百人が犠牲にされた、五年間に大体三千人の生体実験が行われたということは、これはソ連の細菌戦に対する公判の過程並びに日本の雑誌においてすら、すでに公知の事実として発表されているところであります。しかもこの日本の関東軍のつくりました細菌戦の細菌は、昭和十五年には上海の南方にこれが散布されまして、井戸や野菜、家畜、植物を細菌で汚染させて、病気が流行した。さらに昭和十七年にソ満国境のデルブル川に細菌を流して、それが本流のソ連領のアルグン川に流れ込んだということが、やはり同公判で明確にされておるのであります。そうしてこのペスト菌、コレラ菌は陶器でつくつた爆弾に入れて、この陶器の爆弾が発射されということが明らかになつているのであります。これは旧関東軍の当時の実験でありますが、最近朝鮮で行われました細菌戦によりますと、これが、はえ、蚊、のみ、だに、あるいはくもなどに、ペスト、コレラ菌がつけられたまま砲弾の中に入れられて発射されている。二月二十七日の朝鮮の新聞並びに中国人民日報の特派員の現地報告によりますと、筒が二つに割れて、中からはえや、のみや、くもや、ちようちようなどの昆虫が出て来た、これらの中に明らかにペスト菌、コレラ菌があるために、至急火焔放射器でこれを燒き払う処置をとつたという記事が出て、目下国際連合でも問題になつているのであります。そこでわれわれはこれを他国のこととして傍観できないことは、今年の二月二十一日の朝鮮民主主義人民共和国の外相の朴憲永氏の声明によりますと、このアメリカ軍が目下使つている細菌に対して、日本のかつての旧関東軍の細菌戦の指導者である戦犯の石井四郎、若松有次郎、北野マサゾウ、この三名が関係しておるということが声明されておるのでありまして、この三名につきましては、すでに一九五〇年の二月一日にソ連から引渡しを要求されたのでありますが、日本政府はこれの引渡しを放置しておるのであります。これは明らかに戦争犯罪人であり、日本の降伏文書によりましても、これは要求されておる当事国に引渡さなければならない義務日本側が負つている戰犯人でありましてこの名前が朝鮮民主主義人民共和国外相の朴憲永氏からすでに指摘されている際、われわれはこの三名に対してあくまで責任を追究する必要があるし、また日本政府がこれに対していかなる処置をとつているかということを究明したいと思うのであります。そこでまずその方面の、この三名の処置に対する責任のある政府責任者から、この三名が終戦後どのような行動をとり、その後いかなる行動をとつているかということを詳細に報告してもらいたいと思うのであります。
  41. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 ただいまの三名の終戦後の動向について申し上げます。石井四郎元陸軍中将は昭和十七年七月以降旧関東軍防疫部長として勤務しておりましたが、終戦後昭和二十年十二月一日復員いたしまして、爾来東京都新宿区若松町七十七番地に居住いたしておりまして、同地において同人は博愛医院という医院を開業しており、また同人の妻は同じく同所で旅館若松荘というのを経営いたしておりましたが、その後いずれも業務不振のため、昨年両者ともこの営業を廃業いたしまして現在石井本人は医学に関する執筆をいたしておりまして、特異の動向はありません。なお本人は本年三月二十四日付で公職追放を解除せられておりますし、また戦犯の指定を受けたことはありません。  次の北野正次元陸軍中将は、昭和十六年十月以降関東軍防疫給水部に所属しておりましたが、終戰後昭和二十一年三月三十一日に復員いたしまして、爾来東京都世田谷区代田一の六五二の五に居住いたしておりまして、今日に至つております。その間豊島区駒込六丁目八百二十二番地所在の中村滝という製楽株式会社の公衆衛生研究所に勤務いたしておりまして、現在も引続き研究に従事しております。なお同人は本年二月二十五日付で公職追放解除になつておりまして、また戦犯の指定は受けておりません。  最後の若松有次郎元陸軍獣医少将は、昭和十七年七月以降関東軍軍馬防疫廠長として勤務しておりましたが、終戦後の昭和二十五年十二月三十日復員いたしまして、静岡県庵原郡袖師町横須那二千二百十八番地に居住いたしておりまして、爾来居住地袖師町にあります東亜燃料工場というものの中で日本医楽会社工場長として製楽に従事しております。なお本人は本年三月十九日付で公職追放解除になりました。なお本人も戦犯の指定は受けていないのであります。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると政府は一九五〇年二月一日、細菌の戰犯人としてソ連からこの三名の引渡しの要求を受けた事実は知つているのですか。
  43. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 一応新聞報道等では関知しております。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 それを司令部の方へ確かめる義務を果したのですか。
  45. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 先ほども申しましたように、連合国最高司令官の戦犯指定は受けておりませんので、今お尋ねの件についての詳細な調査は、われわれではいたしておりません。
  46. 林百郎

    ○林百委員 共産党には辣腕を振うあなたが、ポツダム宣言によつて最も厳格な追放と、そうした勢力の一掃を国際的に義務づけられている旧軍閥の勢力に対する取締りが、実に寛大きわまるものであるという点について、私は驚き、かつ怒りを感ずるのであります。ということは一九四七年六月十九日の極東委員会の降伏後の対日基本政策によりますと、戦争犯罪人についてはこういう規定があるのであります。「連合国の捕虜又は他の国民を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰が加えられなければならない。最高司令官又は連合国の適当な機関によつて戰争犯罪人として告発された者は、逮捕され、裁判され、且つ有罪の判決があつた場合には処罰されなければならない。他の連合国によつてその国の国民に対する犯罪を理由として要求された者は、最高司令官が裁判のためか、証人としてか又は他の理由で要求することのない場合には、右他の連合国に引き渡され、且つ、拘禁されなけれならない。」従つて連合国の一国によつて戦争犯罪人の指名された者は、連合国最高司令官の名において要求されなくとも、連合国に引渡され、かつ拘禁されなければならないということは、極東委員会の決定によつて明確なのであります。ところが一九五〇年二月一日に、ソ連からこの三省の引渡しの要求があつたということを新聞で承知しておりながら、これに対して何らの処置をとらないというその職務怠慢、その無責任に対しては、どういう責任をあなたはとるおつもりでありますか。
  47. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 戦犯の要求あるいは戦犯の指定、あるいはそれに関連する調査につきましては、われわれの当局においては、所管事務になつておりません。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 その所管事務は、それではだれがやるのです。
  49. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 その点はよく了解しておりません。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 了解もしないでおいて自分の所管でないということは、答弁にならない。それからもう一つ、そうするとあなたの特審局の方は共産党を弾圧するためにだけあつて、戦犯やいろいろな方の取締りは全然抜きですか。私はちよつと極東委員会の決定を見てみますと、秘密警察はもうこれは復活してはならないということが、警察一般関係の指令として出ているのであります。治安維持法を廃止しろ、思想犯保護規定は廃止しろ、それから秘密警察は一切廃止しなければならないということが厳重に規定されているのであります。しかも一方ポツダム宣言については、戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加えらるべしということが書いてあります。ところが特審局の吉橋次長の答弁によりますと、このポツダム宣言によつて厳重に命令されている方の戦犯の方のことについては知らぬ存ぜぬ、共産党に対しては言語に絶する弾圧をするということは、あなた自身が大きなポツダム宣言違反であり、あなた自身が国際的な大きな犯罪を犯していることになるのではないか、そうでないならば、ソ連側から犯罪人として要求されたことを新聞で見ているあなたが、これを何ら司令部と交渉を持たない、またソ連側の代表部と交渉を持たないということは、これは明らかに極東委員会の諸決定あるいはポツダム宣言に命ぜられているところの敗戦国としての日本義務を私は果さないことになると思います。その点についてもう一度あなたの責任のある答弁をお聞きしたいと思うのであります。
  51. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 特審局の所管事務の内容は、林委員も十分熟知しておられる通りでありまして、団体等規正令と現在は追放令であります。われわれがこれら五名を含む軍人の動向を調査するというのは、従来これらの五名が追放指定になつておりましたので、追放者の動向監察という面において、これはわれわれとしては十分に調査し監査を続けているわけであります。先ほどから特に共産党に弾圧を加えるとか、いろいろ言つておられますが、われわれといたしましては、いわゆる左右のいかんを問わず、公正に法規の運営をいたしておるのであります。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、石井四郎が今著述に従事しておるといいますが、どういう著述ですか、その内容についてひとつ説明を願いたい。
  53. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 先ほど申し上げましたように、医学に関する研究であります。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 医学についてのどういう研究です。どういうテーマでどういうことが書いてあるのか。あなたは「平和のこえ」だとか何だとか、反戦の出版物については実に詳しいはずですが、こういうものもお読みになつておると思いますが……。
  55. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 内容を一々私は詳しく読んでおりません。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう無責任で、どうして戦犯あるいは少くとも右翼方面の取締りに任じておる特審局が、監視、監督の任務を果したことになるのでありますか。少くともソ連から戦争犯罪人として指名されている者そのものが、著述業に従事しておれば、その著述にはこれこれこういうことが書いあてる、その後の動向についてはやはりソ連側に引渡さなければならぬような動向があるのかないのか、あるいは依然として細菌の問題について関心を持つているかいないかということが、どうしてあなた国会で報告できないのです。
  57. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 内容につきましては、先ほど申し上げておりますように、医学に関するものでありまして、なおそれが特に追放令の違反になるような内容はないというふうに部下から報告を受けております。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 ですからその医学といつたつて、細菌だつて医学なんですからね。最も重要な関係があるわけなんですよ。しかも朝鮮民主主義人民共和国の朴憲永民に言わせれば、これが依然として細菌戦に協力しておるといわれ、しかもその者がその後医学に関する著述をしておるというならば、その著述がどういう名前の本で、どういう内容かということをここで明らかにしなかつたならば、あるいはあなたは間接にこれらの連中が細菌戦に協力しておることを保護することになるのじやないですか。それからもう一つ、団体等規正令によりますと、軍国主義的、極端な国家主義的、暴力主義的、反民主主義的な団体の結成、指導あるいは個人の行為を禁止するとある。ところがこの関東軍にいて、細菌戦のために三千人もの人間を犠牲にした、こういうような人こそが最も軍国主義的で、最も極端な国家主義的な犯罪人だと思うのですよ。これが戦犯に正式に指名されたかどうかもわからない、新聞で見ただけで、その後の動向については本を書いているらしいけれども、どんな本だか、医学ということだけでよくわからない。これでどうして団体等規正令の実行を監視するということができるか。そういう面からいつても特審局次長としてのあなたの職務を果していないことになるじやないか。もしそうでないと言うならば、もう一度聞きますが、一体石井四郎の書いておる本は、何年にどういうことを書いて、どういう内容であるか。また北野正次にしましても、これも株式会社において衛生のことを研究していると言いますが、一体株式会社でどういう衛生のことを研究しているのか、衛生の研究ということは——だれも細菌の研究をしているとは言いません。細菌を防ぐという名目のもとで、あるいは防疫ということの名のもとに、細菌戦を研究している。さつきあなたの言つたのでもそうでしよう。これらの諸君が関東軍で持つてつた職務は、防疫、要するに疫病を防ぐという名目のもとに、実際は細菌戦を研究していた。細菌を陶器製の筒の中へ入れて発射する研究をしていたのでしよう。そうすれば北野正次にしても、公衆衛生を研究していると言いながら、実際は細菌と関係ある研究をしているのか、いないのか。それから若松にしてもそうです。日本医楽会社の工場長をしているというが、この医楽会社というものは、一体何をつくつている会社ですか、それをもう少し詳しく報告してください。
  59. 吉橋敏雄

    ○吉橋政府委員 それらの点につきましては、詳しい資料を持つて來ておりませんから、調査の上、御必要であれば御報告いたします。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 特審局次長はあなたの本來の職務である軍国主義、あるいはかつて戦争犯罪人に対しては、まつたく寛容きわまるものである。もうほとんど関心がない。あなたの関心があるのは、ただ共産主義者と、それから平和主義者の弾圧だけが、あなたの頭にあるということがきようではつきりした。あなたがほんとうに日本の民主主義のことを考えているならば、少くとも戦争犯罪人として、連合国の一国から引渡しの要求を受けている者が、今どういう仕事をしているかということを、国会で堂々と説明できなかつたら、口でどんなことをあなたが言おうとしたつて、あなたの本性はまつたくかつての特高警察の親玉になりかわつていることは否定できないと思う。こういうことだから、国際的には日本がこの戦争犯罪人どもを直接、間接に保護してやつて、これが直接、間接に朝鮮の細菌戦に関連を持つていると言われても、一言の弁明の余地がないと私は言わざるを得ないと思うのであります。もうこれ以上いくら聞いても、次長は答えることができないというそうですから、私は次会までに資料として、石井四郎、北野正次、若松有次郎が現在どういう仕事をしておつて、どういう著述を書いているかという資料一切を、当委員会に提出してもらうことを、委員長を通じてお願いして、私の質問を終りたいと思います。
  61. 仲内憲治

  62. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は講和條約の効力発生後における日本とソ連との外交上の問題について、簡単に二、三点だけ承つておきたいと思います。主として條約局長から御答弁を願いたいと思いますが、本日は主として事務的なこと、あるいは国際法上のことに関連して承りたいのでありますから、そのおつもりで御答弁願いたいと思います。  そこでまず講和條約の効力発生と同時に、必然的に極東委員会というものは解消するものであると考えるわけでありますが、これは一体どうなるのか。同時にまたいわゆる総司令部の解消に伴つて、対日理事会というものもこれは当然解消になると考えますが、そういう場合における——先日も一部の新聞にも報道されておつたのでありますが、日本にあるソ連の代表部というものの法的な根拠というものは、どういうふうになつているかという点について、ひとつ明確に政府の所見を伺いたいと思います。
  63. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点につきまして、簡単に御答弁申し上げます対日平和條約の峰力の発生と同時に、連合国による日本の占領管理というものは終止いたすものと考えております。従いましてそれに伴つて、当然極東委員会、対日理事会など連合国による日本の占領管理のための機関も、同時にその存在を終了する、こう考えておる次第であります。この点は先日来同僚官房長から御説明申し上げた通りであります。しからばその時期以後における東京にあるソ連代表部は、これは対日理事会に派遣されたものでございます。従つてその派遣の目的である対日理事会が終了いたしますので、同代表部の存在理由も消滅いたすわけでございます。爾後におきましてその代表部をいかなる取扱いをいたすか、またいたすべきかという問題につきましては、目下考究中でございまして、こういたしますというふうに明確に御答弁申し上げられない次第でございます。
  64. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 講和條約の効力発生に伴つて、対日理事会というものが解消する、従つて対日理事会に派遣されているところの、東京にあるソ連代表部というものも、当然その存在の法理論上の根拠を失うのだ、当然これは解消するのだという御答弁であつたと思います。そういたしますと、解消したということを、これは外交上の事務上の問題でありますが、対日理事会の方からでも日本政府の方へ通達があるというような手続をとるものか。博え聞くところによりますと、ソ連の本国政府におきましては、依然としてこれは存続し得るのだ、残しておくのだというような、主張をなしているやに聞くのであります。それらの点についてはいかがなものでありますか。
  65. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御答弁申し上げました通り、対日理事会にいたましても対日理事会に派遣されております各連合国の代表部でしかございませんので、この代表部というものは連合国間の機関でございますので、対日講和條約の発効と同時に、連合国間においていかなる措置がとられるかということにつきましては、日本政府としてははつきり承知いたしておりません。問題は連合国間の問題であるわけでございます。また御質問のソ連邦の方でこの問題についての考え方をいかに持つているかという点につきましても、私どもの承知しておる範囲内におきましては、今日まで何ら公的な意思表示があつたように存じておりません。新聞にもそういう趣旨の報導が載つたことを記憶いたしておりません。御質問の二点は、私どもとしては何ら承知いたしていない次第であります。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、日本にあるソ連邦の駐日代表部が解消するという法律上の根拠はわかつたわけでありますが、それの取扱いについては連合国間の問題である、対日理事会において決定する問題である、こういうふうな御趣旨のようであります。それでは対日理事会において、ソ連のみのらず、日本にある三国の代表というものを解消するという意味の通達というものが、日本政府に対して手続される、こういうふうに了解すべきものでありましようか。
  67. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その点は関係連合国間の問題と考えます。今日までのところ、私どもは何らはつきり存じておりません。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もし対日理事会からわれわれの期待するような、日本にある代表部の解消というようなことを正式に通達して來るというような手続がとられなかつた場合、日本政府といたしましては、少くとも法律上は、対日理事会に対し、代表部の解消というものを、主張する根拠があると私は考えるわけであります。その点についてはどういうふうにお考えになつておりますか、またどういうふうに措置されるというお考えでありますか。
  69. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 問題は、今日からいろいろな場合を想定いたしまして、その対策というようなものをきめておくというような性質のものではないと考えております対日平和條約の発効を待つて、それと同時に連合国間の方でこの問題がいかように処理されるかということを見まして、しかる上に、日本政府としては愼重に諸般の事情を考慮に入れて、最善の措置をとるように、いたすべきものである、こう考えておる次第であります。
  70. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 事務当局としての立場はよく了解をするわけでありまして、このゆえに私は冒頭にあえて申し上げたわけでありますが、主として法理論上の根拠について明らかにしてくれということを申し上げたわけでありまして、今後とるべき最高の政策については、本日承ろうとしているわけではないのであります。ただこれらの点の法律上の根拠というものを、私はあくまでも明白に把握しておかなければならないということで、お伺いをいたしたような次第であります。それぞれの法律上の根拠につきましては、ただいまの御説明によつて大体了解できました。  次に今日、ソ連の日本にある通商代表部というようなものを、ソ連側においてはこれを日本に設置しておくというようなことが伝えられておるわけでありますが、通商代表部というようなものを持つ外交上の特権というような点については、どういうふうなものがあるかという点について承つて参おきたいと思います。
  71. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現在東京にありますソ連代表部は、先刻申しましたように、対日理事会に対するソ連の代表部でございます。別に通商代表部というようなものがこの中に包含されておるということを承知いたしておりません。通商代表部的なものとして残るとか残らぬとかいうような問題については、新聞紙上敷週間前にちよつと報道があつたことを記憶しておるだけでございまして何ら今日まで研究いたしたことはございません。問題を離れまして、戦争前にソ連邦が各国に持つておりました通商代表部の地位につきましては、国によりましては、ソ連とその国との間の通商航海條約または通商協定の中に、明文をもつて規定いたしておる場合がございます。日本も、調印には至りませんでしたけれども、戦争前に日ソ間の通商協定交渉をいたしました当時、通商代表部の特権をいかにするかということが、非常な問題になりまして、ほとんど案もでき上りましたが、結局署名に至らずして終りました。御質問の地位、特権の点は、一言にして申せば、当事国間の交渉によつてきめられる、こうお考えなつたらよかろうと存じます。
  72. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先ほど来の御説明によりまして、ソ連の政府を代表する何らかの機関が日本から解消するということになりますと、講和條約の発効に伴つて日本とソ連との外交関係というものは、いかなる形式によつて行われることになるのか。もとより占領下の状態におきましては特殊な状態であつたわけであります。これが正常な状態になりますと、当然日ソの直接の外交関係が生じて来るわけであります。その場合においては、一体いかなる形式をとつて、日ソ間の問題を取扱うことになるかという点を承つておきたい。
  73. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもの考えでは、対日平和條約が効力を発生いたしましても、ソ連等は平和條約に参加いたしておりませんので、日ソ間においては正常の関係は回復されないと考えておるわけであります。戦争状態が続いて行く。もつともその戦争駅態も、戦闘状態でなくて、休職状態に当るわけでありますが、そういう状態が続くわけでございまして、佐々木委員のいわれるような正常関係は即座には回復しない、こう考えておる次第であります。従いまして、御質問のような外交上の話合いをどうするかというような問題は起り得ない次第でございます。ただそう申しましても、日ソの間にいろいろな問題が起ります。たとえば漁船拿捕などいろいろな問題が起りましよう。そういうふうな問題は従来は占領軍の当局を通じて折衝する道がございました。今後はそういう道がとざされますので、直接話合いをする必要が生じた場合に、いかようにしてこれを処理理するかという問題は起り得ると思います。今後の研究問題として、私どもは考えておる問題であります。第三者を仲介するという道は、今後もとります。直接話し合うという道は、これは、なかなかむずかしかろうかと思うわけでございますが、何にしろ事実上何らか話合いを必要とするような事柄がないとは言えませんので、そういうことがありました場合には、日本政府といたしましては知恵をしぼつて、お互いに意思の交流をはかり得る筋道を考え出さなければなるまい。こう考えておる次第でございます。
  74. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 法理論上は依然として日ソ間に戦争状態が継続することはもとよりでありますが、今西村君も認めておりますように、現実の問題として日ソ間に横たわつておるただいま御指摘の漁船の拿捕の事件であるとか、あるいはその他の通商上のことであるとか、日本人捕虜の問題であるとかいうような問題がかなりたくさんあるわけでありまして、これらはいずれも何らかの形によつて、解決を見なければならぬ焦眉の問題であるわけであります。この問題を従来は総司令部を通じて交渉しておつたのでありますが、総司令部がなくなつた。従つて何らかの形でソ連政府との間にこれらの問題の解決を見なければならぬのでありますから、ただいまのお話では何かまだ縁の遠い、将来これから研究すべき問題であるかのようなお話でございますが、申すまでもなく講和條約の発効は目前に迫つておるわけであります。講和條約の効力発生と同時に、日ソ間に山積している問題というものは、何らかの形によつて外交上の処理を見なければならぬ問題です。悠長な考えでもつてこれから研究するというような問題ではございません。おそらくは察すところ、愼重な対策が練られておるものと私は想像いたしております。そこでただいまのお話によりますと、直接の交渉というものはほとんど不可能に近いほど困難である。結局は第三者を通じて行くというようなことも考えられるというお話でありましたが、一体それは第三国というような日本の利益を代表する国々選んで、その国との間に交渉しようというようなことなのかどうか。これらの点につきましてもひとつはつきりと承つておきたいと思います。
  75. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私の答弁はいかにも悠長なようにお感じになつたかもしれぬと存じますが、そう悠長に考えておるわけではございません。私の答弁の趣旨は問題が起ればただちに必要な処置がとれるようにあらゆる方途を考えます。こういう、答弁でございます。いかなる方途かということは、話をする必要が生じた問題によつて異なつて来る、こう存じますので、一概にこの方法によるという答弁は避けなければいけない、こう思うのであります。  また御質問の第三者を通じての話合いというのは、利益代表国みたような国を選定して話合いをするのか、こういう御質問でありますが、そういう趣旨では決してございません。対日平和條約が発効いたしますれば、日本は多数の国と外交関係が回復いたします。この多数の国の間にはこれまた多数の国がソ連と外交関係を持つております。従いまして友好である。三国を通じて、ソ連に、日本政府の意図を通ずる道というものはかなり広いと、こう思うわけでありますが、必ずしもその方途による必要もない次第でありまして国際機関を通ずるという道もございましよう。ですから御心配には及ばない、こう考えております。
  76. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先ほどのお話を承つておりますと、講和條約の効力発生と同時に、ソ連と外交関係がある国に依頼して、その国と間接的な交渉をしてもらうというようなこともその一つであるというようなお考えでありますが、一体それでは現実の政府がどうしようという政策というものは別といたしまして、今あなたの事務的な面からお考えになつて、ただいまの日本のような正常外交関係が回復しないというような場合において、どういうような方式とどういうような方式とどういうような方式がある。あらゆる方策を考えておるというお話でありますが、一体そういう具体的な方法というものは、どんなものを考えられ得るかという点をひとつ伺つておきたいと思います。
  77. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 そう一々方式方式というふうに区別されない性質の問題だと思うのです。要するに話合いを必要とするような事件の性質によつてその場合最も妥当だと思われる道は、いずれにあるかということはそのときに考えるべき事柄である。こう考えておる次第であります。
  78. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは、たとえば今現に問題になつております漁船の拿捕の事件であるとかいうような問題は、一体どういうふうな方式によつて交渉するというようなお考でありますか。
  79. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 その問題は特に私取上げて考えたことはございませんので、御答弁を差整えます。
  80. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 政府におかれては、何らかそういつた具体的な方策はお考えになつてあらゆる場合を想定して対策をやつておられると思いますが、私はこの際特に承つておきたいことは、この領土権の問題で歯舞や色丹というものが北海道の一部である、日本領土であるということは、これはアメリカ等においてもこれを確認いたしているようであります。これらの国際的にも認められた日本領土に、現にソ連の軍隊が進出をしているということは、これはまさに不法占拠であろうと思うわけです。そうすると、これらの歯舞や色丹の領土権に関する問題たとえばソ連の軍隊のこれらの島々からの撤退の要求というような問題であるとか、あるいは日本人の捕虜の送還の問題であるとか、こういうような問題は、本日提案になつております。国際連合日本加盟することが実現いたしましたあかつきにおきましては、国際連合憲章の第六章の紛争の平和的解決の條項によりますと、「いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについてはその当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。」という規定があるわけでありますし、さらに第十四章におきましては、国際司法裁判所に提起する問題もあるわけでありますが、かりに日本国際連合に参加することが実現をいたしまして、なおかつ歯舞や色丹の問題や、日本人の捕虜の問題等の現在日ソ間に残つております重大問題が、未解決のまま依然として残つておるという場合におきましては、これらの中のいかなる方法によつて問題の解決をはかることになるのかという点を承りたいと思います。
  81. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問のような事柄につきまして、将来日本政府は、この方法によりてこの問題を解決いたします所存でございます、というような答弁はできない事柄でございます。歯舞、色丹の領土の帰属の問題につきましても、未帰還者の帰還の問題につきましても、日本としては多大の関心を持つておる問題でございます。これらの問題が日本考え通り日本の希望通り実現いたしましますように、最善の努力を盡す、最善の方法を盡すというのが、日本の外交の責任でありまして、今日からそれらの問題はこの方法によつて解決いたす所存でございますという御答弁は、政府当局といたしましても、いわんや事務当局におきましても、できない事柄であるということを御了承願いたいと思います。外交としては最善を盡しますという御答弁をもつてごかんべん願いたいと思います。
  82. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先ほどのお話によりますと、第三国を通じて解決をはかるのも一つの方法であるというような御説明ございましたが、国際連合日本が参加するということになると、当然それらの問題は主として国際連合を通じて、外交上の折衝や解決をはかるのではなかろうかと私は考えるわけでありますが、それらの点についてはいかがお考えでしようか。
  83. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国際連合を通じて問題の解決をはかるということは、たくさんある方法のうちの一つにすぎないのでございます。
  84. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 重ねて承つておきますが、たくさん方法がある、その中の一つ国際連合を通じての交渉である、その前には第三国を通じての方法が一つある、こういう御答弁でありましたが、そのほかのたくさんの方法とは、一体どういうものが考えられるでありましようか。
  85. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 外交問題の解決という問題は、外交問題の性質、そのときの国際情勢その他において、千変万化いたすものであります。五つ、六つ方式があつて、この方式とこの方式とこの方式であります、相手方がこう出ましたらこう出ますというような方式のものではありません。融通無礙のものであるということを、どうか御了承願いたいと思います。
  86. 仲内憲治

    仲内委員長 佐々木君、まだ二人質問者がありますから、簡単に願います。
  87. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はもとより西村條約局長のすばらしい外交的手腕に対して、かねがね敬服しておるわけでありますが、ただいまはあたかも吉田総理大臣のお答えになりますような答弁を承つたのであります。先ほどたくさんあると言われるのに対して、私は個個の問題をこの問題をどう、この問題をどうということを聞いておるのではなくて、いまでもあなたは国際法の大家をもつて任じられておる西村さんでありますから、こういつた方法もあるのだということを現実の政策とは離れてわれわれがお聞きするということは、非常に役に立つと思つてつておるわけです。禅問答のようなことを私はあなた方から承ろうとはこうも考えておりません。たくさんの方式が考えられるというのは、一体どういうふうな方式があるか、その方式について、どれを今とろうとしているかということをお聞きしているのではない、どんなものが一体考えられるかという点について、もつとはつきりと承つておきたいと思います。
  88. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 佐々木委員には非常に誤解がある、こう思うのです。私は国際法については幾分の知識はございます。しかし外交はすべて国際法により支配されるものではないのです。国際性という面容、外交は非常に広いものでございます。従つて外交問題を取扱うときに、その方式というようなものを限定して考えるということは、外交の本質に私は反しておる、こう思うのです。第三国を通じて話をするのもその一つでございましようし、また外交問題の解決に、国際連合のような国際機関を通じて解決することも一つの方法でございましよう。しかし、それ以外にたくさんの方式がおる、要するに問題の性質、問題の起つたときの国際情勢その他によつて千変万化する、今までない方式も考え出すというくらいの知恵を出さなければならないのが外交であると私は考えておるわけであります。
  89. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は西村君からそういうことのお説教を承ろうと思つて来たわけではないのです。たくさんの方式があるとおつしやるから、一体どういう方式があるかということを聞いておるのですよ。あなたからそういう禅問答のようなお説教を私は聞きたくない。それくらいの常識は、少くとも外交委員である者は持ち合せている。ただあなたが、そういういろいろな方式があるとおつしやるが、あなた方のお考え自身が非常に外交独美的なお考えを持つている、そういう考え方から直して行かなければならぬと私は思う。従つて今私はここで事務的に聞いている。いろいろな方式があるとおつしやるから、どんな方式があるかということを聞いている。それに対して禅問答のような答弁をされても私は承知できない、いかなる方式があるか承りたい。
  90. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私は先刻申し上げた答弁を繰返すだけでございます。
  91. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 しかしあなたは今たくさんの方式があるということを言明されたじやないですか。その前言をくつがえされるのですか。今あなたは第三国を通ずる方法も一つの方法である、国際連合のような国際機関を通すのも一つの方法である、その他にもたくさんの方式があると言つたから、どんな方法があるか承つた。日ソ間のこういう問題は、こういう方式で解決するという具体的なことを承つているのではない。原則的にいつていかなる方式が考えられるかということを承つている。あなたがこのことをおつしやつたところで、別に吉田さんの忌諱に触れるわけでもない。それに対してあなた方の答弁のまことに不誠意きわまるところの、まつたく外交官の独善的な考え方をもつて、全部おれにまかしておけ、そのときに、よいようにおれが考えるのだからというような答弁は、答弁としてはいささかとんちんかんです。どんな方式があるかということを承つておる、かくかくかような方式がありますということを言つたらいい。それ以外のことをきめるのは、国会がきめる。あなたは事務当局としてこういつた方式があるということをおつしやればいいのです。あなた方自体の考えの中に、外交はおれたち自体がやるのだというのは、とんでもない考えである外交というのは国会がやる、あなた方は外交の事務をやればいい。勘違いをしておつて、われわれに説教するとは、とんでもない。新憲法の主権在民の精神をわきまえざるもはなはだしいと思う。たくさんのその他の方式があるなら、その方式を承ればいいのです。
  92. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 佐々木委員から御叱嘖をちようだいいたしましたが、もし私の答弁で不穏当なところがございましたらあやまります。私は決してそういうふうな意味で申し上げたのではございません。外交上独善というような気持は微塵も持つておりません。私がおそれておりますのは、外交の方式というものについて、あまりにきまつた方式というものを考えられることは、外交の実際と違つているようなところがあると感じましたから、外交というものはそういうふうに方式というものについては、そうかた苦しいものではございませんということを申し上げたかつたのです。そうして問題が起つたときに、その問題の解決に到達するために、いかなる方法によれば一番いいかということは、問題が起つて来たときに、考え出すべきである、こう申し上げた次第でございまして、決して佐々木委員に対して失礼なことを申す意思は毛頭ございません。もしそういつた失礼な御感じを受けましたならば、私あやまりますから御了承願いたいと思います。  むろん外交交渉と申しますのは、一番普通使われますのは、当事者間で話合いをするということでございます。その次は第三者の介在を許す方法です。第三者の介在を許す方法にも幾多の方式がございます。それは講義めいたことになりますから、省略さしていただきます。第三者は第三者の介在を許すのではなくて、第三者の判断にまかして紛争を解決する場合であります。これは仲裁裁判とか司法裁判とかいう部類に入ります。第三者の介在を許す第二の方法にしましても、少くとも五、六種の本にも書いてありますが、一々御説明いたしません。第一の、直接話合いをするというのが一番普通使われる方法です。日ソの間で普通の外交交渉をする関係には、対日平和條約ができましても、すぐなりませんから、そうしますと、どうしても問題が起るとするならば、第三者の介在、第三者を通じて意思の疏通をはかるというのがすぐ私どもの頭に浮ぶ方式であります。しかし必ずしもそうしなくても、何とかして直接意思の疏通をはかり得る道があれば、それが一番よろしい、こう思うのです。ですからそういうふうな広い考慮を加えまして、私御答弁申し上げました。  外交の運営につきまして、国会の御意思が一番であるということはむろん異論はございません。新憲法のもとでは、政府は国会によつて構成される政府でございますので、外交の根本方針は国会にあるし、行政府がそれの執行の責に当つておるものであるということはよく承知いたして照ります。どうか気を悪くしないようにお願いいたします。
  93. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は決して気を悪くするわけではありません。むしろただいまの西村政府委員のきわめて謙虚な態度に対しては、私は敬意を表する次第でございます。近く在外使臣として日本を代表して行かれるわけでありますから、せつかく御研讃なられますと同時に、決して一ワンマンさんの個人的なお使いではない、その背後にあつて政策をきめておるのはわれわれ国会であるのだという新憲法の精神に十分徹せられまして、決して外交の独善に及ばざるよう、特にその点をも御注意申し上げまして、私の質問を終ることにいたします。
  94. 仲内憲治

  95. 戸叶里子

    戸叶委員 私は日本集団安全保障を受けるという意味で、国連加入には別に反対するものではございませんが、ただ二、三点はつきりさしておかなければならないと思います。先ほど植原委員がお尋ねになりましたが、国連加入に対しては、何も義務規定として軍事的なものは必要じやない。すなわち再軍備をしなくても国連加入はできる、ということをはつきり條約局長お話になりました。またこの国連憲章の中の第三十三條から第三十八條、あるいは第四十一條、第四十二條、第四十三條等を見ましても、別に加盟国が武力を使わなければならないというような義務規定は何も書かれてありません。そこで條約局長はつきり再軍備をしなくてもいいということをお話なつたのだろうと思いますが、こういう條約局長のお考えはずつと前、すなわち二十四年のころからお持ちになつていらつしやつたかどうかを伺つてみたいと思います。二十四年と私が言いましたのは、ちようど二十四年だつたと思いますが、十月四日に国連憲章発布四周年記念というのがありましたときに、吉田さんがラジオで放送をしてそして日本もなるべく早く国連に加入をしたいというような希望を述べられました。その前後国会ではいろいろと国連加入の問題について議論せらておりました。その会議録などを見ましたときに、吉田さんの答弁と今日の條約局長答弁とが食い違つていると思いますので、條約局長はそのころから今日御説明なつたようなお考えを持つていらつしやつたかどうかを伺わしていただきたいと思います。
  96. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問まことに痛み入ります。その当時から私ども事務当局といたしまして、国連憲章だけしか持ちませんので、軍備、交戰権を放棄した日本といたして、国際連合加盟を申請いたしますときに、この日本国家性格と、国際連合加盟国として憲章から受ける義務その間に問題がありはしないかということを非常に懸念いたしておりました。その後漸次サンフランシスコ会議議事録または国際連合憲章に関しますりつぱな註解書などが入手できろようになりまして初めて永世中立国に関する限りは、サンフランシスコ会議において国際連合加盟国になり得ない、国際連合加盟国たるの資格がないという結論が出ておることを理解いたしました。その次にまた研究を進めて行くうちに、原加盟国のうち二国は日本と同様無軍備国家であるということもわかつて参りましたし、また安全保障理事会及び総会の決議によりまして加入いたしました国のうちに、アイスランドのごときは、みずから明白に自分の国は軍備がないということを説明した上で加盟承認されておるという実例もあるということを発見いたしまして、国際連合憲章解釈上、一国に軍備がないということ、または交戦者にならないという憲法上の性格を持つておる国といえども、憲章解釈加盟国となる資格の故障になるものではないという確信を深めていた次第であります。現在におきましては、もちろん先刻植原先生の御質問に対して御答弁いたしましたように、国連加盟條件は第四條に規定しておる通りでございまして、一国に軍備がないということは欠格にならないという確信を持つております。ことに第二十六條を見ましても、国際連合一つの到達する目標は、軍備の縮小であり、軍備の制限でございます。国際連合が、もし加盟国たるためには、軍備を持たなければならないというような原則をとるとするならば、それは一般安全保障機関としての国際連合理想それ自体を、みずから否定するものであると極言してもよろしかろうという氣持になつております。戸叶委員の御指摘になりました総理のラジオ放送、または国会における答弁におきまして、その点についてやや今日不安を感ずるような御発言があつたということをよく存じております。その当時はわれわれ以上に国際連合憲章に不安を感じておりました総理が、一応のお考えとしてああいうふうな御答弁をなすつたものである、こう考えておる次第でございます。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 條約局長お話でよくわかりましたが、結局外務省でも、今日のような考えになるまでには、いろいろなものを参考にして今日のような考えになられたということがわかりました。吉田総理大臣が当時御発言になりましたことによりまして、今日国民の大多数は、軍備がなければ国連加入ができない。だから、憲法を改正しなければ国連加入はできないじやないか。それを簡単に政府国連加入の申請をするから了解してくれというようなことを国会に出されましたので、非常に国民は戸惑つておると思います。そういう意味におきまして、私はぜひ吉田総理大臣みずからこの委員会へいらつしやいまして、自分があのときには研究が足りなかつたけれども、今日はこういうふうに思うということを、近い機会においてぜひここで発表していただきたい、こう考えますが、その点を委員長から、また條約局長からもどうぞお話おきいただきたいと思います。  それから二番目にお伺いいたしたいことは、この安全保障理事会でもしも日本の加入を認めないといたしますと、つまり五大国が日本の加入を認めないということになりますと、日本は加入できないと思うのです。そうしますと、講和條約の第三章第五條第三項に、「国際連合憲章従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を與え、且つ、国際連合が防止行動又は強制行動をとるいかなる国に対しても援助の供與を愼むこと。」ということが書いてありまして、これは国際連合憲章の第二條第五項だと思うのですが、それをちやんと日本承認しているわけなんですそうすると、この講和條約で日本はすでに国連憲章義務規定というものを受諾しておりますが、もしも国連加入ということが許可されなかつた場合には、一体日本義務規定だけを受諾して、そして総会に出て発言権もないし、投票権もないという、そういつた矛盾した地位になると思いますが、その点のお考えはどうか、承りたいと思います。
  98. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 現実の見通しといたしましては、おそらく戸叶委員の御説明通り安全保障理事会で所要の賛成投票を得ることはむずかしい国際情勢のもとにあると考えております。従いまして、日本加盟申請が実を結びまして加盟が実現するまでには、相当の時間的余裕を持たなければならない、こう考えておるわけでございます。そういたしますと、日本加盟は実現しないけれども、対日平和條発効と同時に、平和條約の規定によつて憲章二條義務を受諾しておるので、日本が一方的に義務を負う結果になりはしないかという御懸念でございます。平和條約の規定は、厳格に申しますと、日本はその国際行動にあたつて国連憲章二條の原則を行動の準則とするという趣旨でございます。それに対応いたしまして、連合国の方でも、また日本に対する関係においては同様の原則に従つて行動するという條項がすぐそのあとについております。従いまして、対日平和條約に参加いたしております四十八箇国との関係におきましては、この対日平和條約の條項が作用いたしますので、日本国連憲章二條の原則に従つて行動すると同様、四十八箇国もまた対日関係におきましては、同様に憲章二條の原則に従つて行動する、こういう結果になります。従つてその間に義務の軽重というものはない、こう思うわけであります。平和條約の規定は、いわゆる日本を含めて四十九箇国間の相互の間を規律いたしますので、その間におきましては、相互に国連憲章二條の原則に従つて行動する、こういう意味を持つて来ると思います。その結果といたしましては、国連の方である行動をとる場合に、日本といたしましては、四十八箇国に対しまして約束をいたしました結果、国際連合のとる措置に協力をいたし、その措置の目標となる国に対しては援助を與えないということになります。しかしこれは必ずしも日本の一方的の義務だけとは考えられないのでございまして、今度は日本がまた日本のために国連の行動を要請するような立場に立ちました場合には、四十八箇国はこれまた日本との関係におきまして、日本の要請に沿うよう行動をする條約関係平和條約から生れて参りますので、この面からいいましても、利益の面もまた日本に生れて来る、こう考えます。平和條約の規定に関する限り、必ずしも日本の方的の義務ばかりではない、そういうふうに考えております。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 今の條約局長の御説明で、この四十八箇国は、日本がもしも何か行動を要請した場合にこれと同調をするというお話でございました。そうすると、事務的な問題として、日本国連に参加できないと、国連の総会なり何なりに代表者を送つて発言をしたり、あるいは投票したりする権利は認められないわけでございますね。
  100. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御懸念の通りでございます。その面はやむを得ない結果になる次第でございます。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 ではそういう問題に関係しまして、角度をかえて伺いたいと思いますが、国連加盟していない国でも、たしか第三十五條で「安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。」とございますから、国連加盟していない国でも、国連にこうこうこういうことがあるという申入れをしまして、そして安全保障理事会なり、あるいは総会の注意を促すことができるのだと思います。そうして参りますと、その次の三項に「本條に基いて注意を促された事項に関する総会の手続は、第十一條及び第十二條の規定に従うものとする。」とありまして、第十一條には「国際連合加盟国でない国によつて総会に付託される国際の平和及び安全の維持に関するいかなる問題も討議」することができる、「討議の前又は後に、総会によつて安全保障理事会に付託されなければならない。」というふうに書いてございます。そうしますと、私ちよつとはつきりしないのですが、国連加盟した国とそれから加盟していない国との、国連から受ける行動とか援助とか、そういうものの関係はどういうのでしようか。たとえば国連に加入している場合ですと、分担金を負うとか、あるいはまた第四十一條の経済関係義務を負うとか、あるいはまた電信関係義務を負うとか。いうようなことは、生じて来ると思いますけれども、加盟していない国は、そういう義務は負わないし、それからまた分担金も負わないけれども、国連に対して行動を要請することができるということになるのじやないかと思います。その点のことがどうも私にはふに落ちないのですが、はつきり説明していただけましたらしていただきたいと思います。
  102. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 国連加盟していない国は、むろん国連憲章による義務に縛られませんので、この分担金その他の義務を負うところは一つもなくて済むわけであります。ただ国際連合といたしましては、その主要な目的が、国際の平和と安全の維持にあります。そうしてまた、国際の平和と安全は加盟国間だけの問題ではなくて、非加盟国同士の間、または加盟国と非加盟国との間の問題によつて生み出される場合がしばしばあり得るわけでございます。それで憲章は今戸叶委員が御指摘になりましたように第三十五條を置いて、非加盟国といえども、問題を総会または安全保障理事会に提訴する権限を認めております。そういうふうなわけでございますので、国際平和と安全の維持に関する限りは、ほぼ加盟国も非加盟国も同じ地位に立つて、この機関を活用できる立場をとつておるわけでございます。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると加盟国も非加盟国も、同じ地位に立つて同じ機関が活用できる。先ほどのお話では、日本講和條約を四十八箇国と結んだ、そうするとその国が日本に対して日本と同じような線で動いてくれる。そうしますと、普通の非加盟国日本が同じ扱いを受けるのじやなくて、特別にこれらの国が、日本だけは非加盟国ではあるけれども、ほかの非加盟国と違つた特殊扱いをするというようなことが、出て来るのでしようかどうでしようか。
  104. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ちよつと御質問の趣旨を解しかねますけれども、事国際平和と安全の維持に関する限りは、国際連合立場としましては、加盟国と非加盟国とを問わず、ひとしく国際連合の関心事である次第でございますから、非加盟国からの提訴によりまして問題を処理いたすわけでございましよう。対日平和條約には、この第三十五條の規定のほか、さらに相互間において、国連憲章二條の原則に従つて行動するという約束がございますので日本政府といたしましては、第三十五條の保障に加うるに、平和條約の規定による保障があつて、二重の安全保障上の利益を受ける立場にあると考え得ると思います。しかしそれがために特に日本が他の非加盟国に比べて、特殊の利益を受けると解釈することは、国際連合立場自体からいつて、必ずしもそう考えないでもいい問題ではなかろうか、こう考える次第であります。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題は、いろいろ私伺いたいことかございますが、もう時間も迫りましたので、私は最後に一点だけ、小さなことですけれどもお伺いしたいのは、先ほど植原委員からのお話で、軍備はなくても国連加盟している国が、国連ができたときに二国加盟していて、あとからアイスランドですか、軍備はないけれども、入りたいということをいわれた。それでそういう国もあるという例をお引きになりましたときに、植原委員が、そんな小さな国と日本を比較するようじや困るというようなお話でございました。これは私どもも精神的にはそういうことはよくわかろのですけれども、しかし国連憲章二條の中にはつきりこの機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。」ということが書いてある。そうしますと、大きい国小さい国ということは問わないのじやないかと思いますが、こういうお答えを條約局長がなさるかと思つていましたら、それをなさらなかつたのですが、どういうわけでなさらなかつたか、この憲章をお認めになつたのですかどうか、伺いたいと思います。
  106. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 全然その御意見に同感でございます。国際連合加盟するがためには、軍備を持たなければならぬというような結果になるということは、国際連合理想、それ自体に反する考え方でございまして、再軍備国連加盟問題とはまつた別個の問題と、こう考えております。日本はなるほど軍備なくして国連加盟国になつております数箇国と比べては、非常に大国だと思います。大国であるがゆえに、われわれの考えから言いますれば、軍備はなくても、軍備以外の方法によつて国連が国際の平和と安全の維持のためにとる措置に提供し得る協力は、はるかに大きい、日本の国力に比して相応の協力ができますと思いますから、日本といたしましては、大手を振つて国連加盟の申請ができるものであるし、またそうしなければならない、こう考えておる次第であります。
  107. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。簡單に願います。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど佐々木委員からの質問がありました、講和後の日ソ関係の問題についてでありますが、われわれは日本とソビエトが友好的な関係を深め、外交関係を一日も早く復帰することを希望しておるのでありますが、吉田内閣の政策が、その後その逆の方向へのみますます深入りして行くということに対して、非常にわれわれは遺憾に思つておるのであります。しかも最近はその傾向が特に顯著になりまして、すでにソビエト同盟のごときは、講和後は日本に対して何らの発言の権限もないような暴論すら、公然とこの国会の中で吐かれておるということは、むしろ将來の日ソあるいは中日の友好親善のために、はなはだ遺憾だと思うのであります。日本の国会の中ではそういう理論が通りましても、国際的な批判の前には、まつたく笑うべきこととして、むしろ日本の国の権威を傷つけることになるのではないかと思はれるのであります。われわれは、やはり国際的な関係、国際的な諸協約というものは誠意をもつてこれを守り、将来大きな親善関係を結ぶためには、事実は事実として率直に認めて行かなければいけない。そういうことを通じて、日本の権威を高めるべきだというように私は考えるのであります。そこで條約局長にお聞きしたいのでありますが、遺憾ながらソ同盟、中国が唱道している全面的な講和が締結されなくて、日本とアメリカ並びにアメリカのグループとの講和が締結された。中国、ソビエト、東ヨーロツパの諸国とは、日本との間の外交関係がまだ回復しておらない。こういう状態にある限り、やはり日本とソビエトの間には戦争状態がある。戦闘状態はないけれども、戦争状態があるという法律的な関係は認めざるを得ないと思います。そうなりますと、戦争状態が続く限り、われわれはソビエトとの関係については、やはりポツダム宣言を忠実に履行するという義務は、連合国の一国たるソ同盟に対して、日本の国は負つておるというように考えるのでありますけれども、この点については、局長はどういうお考えでありますか。
  109. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもは、日本が終戦以来約七箇年にわたりまして、ポツダム宣言を受諾した国といたしまして、同宣言の條項を忠実に履行いたしましたればこそ、連合国におきましては、日本平和愛好国と認め、日本との間に正常関係を回復する時期が来たとして、対日平和條約を締結したものと考えております。従つて日平和條約が有効になりますれば、ポツダム宣言がその性質上、またその目的から申しましても、いわゆる恒常的な平和関係に入るまでの、連合国間の対日政策を具現化したものでありまして、平和降納の効力が発生すると同時に、平和條約によつてつてかわられる、こう考えておる次第でございます。
  110. 林百郎

    ○林(百)委員 日本とアメリカとの間は、講和條約で規律されるでしようが、講和條約を締結していない日本とソビエトの間の規律というものは、何でこれを規律されるのですか。
  111. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 ソ連政府がいかなる立場をとるかは、私どもまだ不幸にして存じておりません。対日平和條約に参加いたしました四十八の連合国政府立場は、平和條約に明確に出ております。この見解は、しかし同條約に参加していないソ連邦政府に、強制し得る性質のものではないということはよくわかつております。
  112. 林百郎

    ○林(百)委員 私は国際的な関係からいえば、日本がソ連に対してやはり降伏国の状態にあるということは、否定できないと思うのであります。吉田内閣の政策がいかに反共的な政策をとろうと、われわれはソビエトをも含めて四つの連合国、並びにそのほかの太平洋戦争に参加した国に対して降伏したという事実は、いかに吉田内閣が希望しようと、否定することはできないと思うのであります。従つて日本とソビエトの間は、これは講和が締結されるまでは、やはり日本は降伏国という状態が、私は継続するように考えざるを得ないのでありますが、その点はどう考えますか。
  113. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 日本がソ連邦に対する降伏国であるというこの事実は、むろん日ソ間に正常関係が回復されるまでは解消できないし、また否定できない事実であることは異存ございません。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで日本がソ同盟に対して降伏国である限り、この降伏国とソビエトとの間の関係を規制するものは、無條件降伏の條件であつたポツダム宣言、並びにこの降伏文書によつて規制して行くというよりほか道はないと思うのでありますが、局長は降伏国だという関係は認めるが、その間を規制する、レギユレートする関係について御説明がないのでありますが、私は日本とソ同盟に関する限りは、やはりポツダム宣言と降伏文書によつて規制されている。しかしこのことは、何もソビエトが日本に射して軍事的な圧力を加えるということではなくして、むしろ一日も早くソビエトと日本が親善関係を結びたいという、あらゆる努力をしておることを私は認めざるを得ないと思うのであります。スターリンのメッセージ、あるいは国際経済会議の招請、そのほかの通商関係を通じて、事実上外交関係、政治的な関係までは高めたいという努力は、私は率直にこれを認めざるを得ないと思うのでありますが、しかし講和條約が締結されない限り、その二国の間をレギユレートする関係というものは原則としてやはりポツダム宣言と降伏文書によらざるを得ないものだというようにわれわれは考えますが、この点はどうですか。
  115. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもとしては、先刻来御説明申し上げますように、日本といたしまして完全にポツダム宣言の條項を履行いたし、平和愛好国なつたがゆえに、連合国はこの事実を認め、この事実の上に立つて日本と正常関係に入ることになつたわけでございます。従つてポツダム宣言といたしましては、その所要の目的を達しまして、平和條約によつてつてかわられた、こういう考えに立つております。先刻もつけ加えましたように、しかしこの考えをソ連邦に対して強制する道はございません。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると私はも一う度あなたにお聞きしたいのですけれども、もちろんソビエト同盟が連合国の一国であることは、あなたは否定しないと思います。それから日本とソビエトの間の関係が、降伏国の関係であるということもあなたは認められていると思うのであります。そうするとポツダム宣言の諸條件は、すでに履行されたと日本側としては考えるといいますが、しかしソビエト側では、まだ軍国主義的な勢力というものは一掃されておらない。あるいは国民の自由に表明された意思による平和を愛好し、かつ国際的に責任を持つ政府は、まだ樹立しおらないという判断をソビエト側がする自由は、私はあると思いますが、この点はどうでしよう。連合国の一国としてのソ同盟側としては、そういう判断をなし得ると思います。またそれによつて降伏文書に基いて必要な措置をとることを、日本国政府に対して指示する権限は、私はあると思いますが、この点はどうなんですか。
  117. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 御質問の点は、私の答弁ですでに盡しておると思います。私は、対日平和條約の成立によつて、ポツダム宣言はその目的を果し、平和条約によつてつてかわられるものであります。しかしこの見解はソ連邦に対してこれを強制することはできないと考えます。こう言つております。その点についてソ連邦がいかなる見解を持たれるかということは、私まだ不幸にして正確に存じておりません。第二のソ連邦として、戰勝国として日本に対して、何か指示その他ができるのではなかろうかという御質問でございますが、その点につきましては、一九四五年十二月のモスクワ四国協定によりまして、日本における連合国の唯一の執行機関は、スキヤツプであるという条項がございます。従いましてもし対日平和条約発効と同時に、すでに関係連合国政府によつて明らかにされておりますように、スキヤツプが解消いたすということになりますれば、ソ連邦はいかなる見解に立たれるにしましても、日本国内において実施を必要とするような措置をとられようといたしましても、連合国の唯一の執行機の存在がなくなりますので、その道がないということになります。もしそれを押して、なお かつ実際的に措置をとられようとするならば、私の感ずるところでは、ソ連邦は、その自己の主張する権限の根拠としておられます四国間の協定それ自身をみずから破らなければ実施できないという、矛盾した結果になると私は考えておる次第でございます。
  118. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に重要な問題に入つて来ましたが、もしそういう国際的な諸協約四箇国の協議を誠実に履行するというならば——あなたも国際関係には非常に詳しいと思います。が、ヤルタの協定、カイロの協定、ポツダムの諸協定、また国連憲章を見ても、四大国一致の原則というものは、否定し得ない原則として貫かれておると思うのであります。しかもこのたびの日米単独講和のごとく、また安全保障条約のごとく、当然四大国一致の原則で貫かれなければならない国際連合安全保障理事会の常任理事国の一国であるアメリカと、日本が、ソ同盟、中国を実質的には仮想敵とするような日米単独講和、日米安全保障條約を結ぶということは、これはむしろアメリカ側が四大国一致の精神を無視し、それから国連憲章の常任理事国の根本精神である、旧敵国に対する一致の原則というものを私は破つていると思う。しかも国連憲章によれば、旧敵国に対して連合国がとつた処置に対しては、国連としてはその権利を行使について何らの妨げをしないということをはつきりうたわれている。また降状文章の中にも。こういうことが書いてあります。これは重光と梅津の降伏文書の署名でありますが、「下名ハ茲ニ「ポツダム」宣言ノ條項ヲ誠実二履行スルコト並ニ右宣言ヲ実施スル為聯合国最高司令官又ハ其ノ他特定ノ聯合国代表者が要求スルコトアルベキ一切ノ命令ヲ発シ且斯ル切ノ措置ヲ執ルコトヲ天皇、日本国政府及其ノ後継者ノ為ニ約ス」とあるのであります。從つてわれわれはこの降伏文書からいいましても、ソビエト側が、日本に平和的な政府、民主主義的な政府をつくり、日本の国を誤らしたわがままな軍国主義的な勢力をもつと徹底的に一掃しろ、そうして中国、ソビエトを含めて平和関係を確立するような政府をつくつてもらいたい、そのためにわれわれもあらゆる協力をするという申出が出て来たわけでありますが、こういう権限は当然私はソビエト側にあるように考えます。もしあなたの言うように、スキヤツプがなくなつたのであるから、日本とソビエトの間には、降伏関係はあるけれども、実際はどうするかわからないというのでしたら、それは降伏関係をレギユレートする関係というものは、先ほど佐々木委員があなたに聞いたように、一体どういう方法があるとお考えになるわけですか。
  119. 西村熊雄

    西村(熊)政府委員 私どもの立場としては、そういう方法がないことが望ましいと考えるわけでございまして、日本側の問題でなくて、私はソ連邦側の問題であろうかと存じます。その点は林委員の方が私より詳しいかと存じます。
  120. 仲内憲治

    仲内委員長 本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  121. 仲内憲治

    仲内委員長 この際お諮りいたします理事戸叶里子君が去る三月二十七日に一度委員辞任されましたので、理事が一名欠員となつております。それゆえ理事補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例に従いまして、委員長より指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければさように決定いたしまして、戸叶里子君を理事指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後二時三十六分散会