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1952-03-28 第13回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十八日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 足立 篤郎君 理事 近藤 鶴代君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君       上原悦二郎君    大村 清一君       北澤 直吉君    飛嶋  繁君       中山 マサ君    守島 伍郎君       小川 半次君    山本 利壽君       戸叶 里子君    林  百郎君       成田 知巳君    黒田 寿男君  出席政府委員         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (大臣官房審議         室勤務)    三宅喜二郎君         入国管理庁長官 鈴木  一君         外務事務官         (入国管理庁審         判調査部長)  鈴木 政勝君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 三月二十七日  川崎秀二君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員川島金次君辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する  件に基く外務省関係命令措置に関する法律  案(内閣提出第八八号)  外国人登録法案内閣提出第八九号)     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案並びに外国人登録法案を議題といたします。両案についての質疑を許します。林百郎君。
  3. 林百郎

    ○林(百)委員 少しこまかい点を聞いておきたいと思います。管理庁長官にお聞きしたいのですが、きのうの岡崎国務大臣の言う便法をいうのは、大分委員長も今便法があるからからといつて、野党の議員の切りくずしにかかつているようでありますが、この便法というのは、具体的にはどういうことなのか、もう少し具体的にどうするということをお聞きしておきたいと思います。そうでないと、ただ岡崎国務大臣便法といつただけでは、われわれ納得できませんので、長官はこれはどういうように解釈するかということをお聞きしておきたいと思います。
  4. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 昨日国務大臣からお話がございました便法の具体的の内容につきましては、非常にはつきりしたことはないのでありますが、いずれ日韓会談等によりまして、おのずからきまると存じます。詳しい内容はただいま申し上げるところに行つておりません。
  5. 林百郎

    ○林(百)委員 詳しい内容のわからない便法というのは、判断に困るのです。たとえば、もう少し具体的にお聞きしますが、朝鮮の人で朝鮮人民共和国を支持するということで、こちらの国籍証明書をとることが非常に困難な場合は、この人たちはどうするでしようか。外国人登録令によりますと、外国人登録をする場合には、国籍証明書が必要だ、ところが国籍証明書がとれなければ、外国人登録証明書がとれない、外国人登録証明書がとれなければ、外国人登録証明書を持つておらないということで、登録令違反になる。違反になれば強制送還ということにずつとなつて来るのですが、こういう場合、すなわち朝鮮人民共和国を支持するということは、結局強制送還になるというように解釈していいのですか。
  6. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 従来から、終戦前から日本におられた朝鮮人たちが、登録を切りかえますときには、今まで持つておりました登録を単に切りかえるだけでございまして、その際には別に国籍証明書というようなものはいらないのでございます。従つて従来からいた方には何ら不安はないと存じます。なお登録ができなければ、すぐ送還であるというふうにおつしやいますけれども、これは必ずしもそういうわけでないのでありまして、一々の場合場合によりまして、その方が送還に値するかどうかということは、また別個の見地から検討いたすわけであります。ただ登録をしなかつたからというだけで、ただちに送還ということにはならない、送還一つ調査の要素にはなるわけでありますが、送還を決定しますには、機械的に登録を持つておらないから、ただちに送還というところには行かないのであります。
  7. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今持つておる朝鮮諸君が、今度外国人登録を切りかえる場合には、朝鮮ということだけで、大韓民国ということでなくて切りかえできますか、朝鮮の人は朝鮮ということで、別に大韓民国国籍証明書がなくても、現在登録しているものは、登録を切りかえるということだけで、新たなる証明書をいろいろ添付する必要はありませんか。
  8. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 終戦前からずつとおられた朝鮮の人は、必ず登録証明書を持つておられるはずであります。その持つておられる方が、平和条約発効と同時に六箇月の期間の間に登録切りかえをされるわけでありますが、そのときの登録の切りかえには、別に国籍証明書とか、そういうものはいらないのでありまして、前の登録証明書を提示されれば、それで切りかえを行うことができるわけであります。
  9. 林百郎

    ○林(百)委員 その外国人登録を切りかえる場合に、前の登録朝鮮というように記載してあるものはそのままやはり朝鮮ということで記載されるわけですか。
  10. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点につきまして、おそらく岡崎国務大臣は、便法というようなことを仰せられたのだろうと思いますが、そういうことが便法一つ内容になると思います。その際に不安の起らないように、従来おられた人はおられるような措置がとられるものと思います。
  11. 林百郎

    ○林(百)委員 それは便法を講ずるというのですか。必ず朝鮮というのは朝鮮でいいのか、あるいはこれをどうしても韓国と切りかえなければならないということになると、大韓民国在日代表部との交渉というような、いろいろ問題になつて来ると思いますが、こういう手続は全部いらないでしようか。  それからもう一つ外国人登録を切りかえる場合に、在日中国あるいは朝鮮代表部との交渉と、いうものは、全然なくしてできますかどうか。
  12. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それはただいま日韓会談をいたしております関係もございまして、向う側との話合いも必要であろうと存じます。
  13. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、どうも岡崎国務大臣便法というのは、だんだん怪しくなつて来るのですが、すると中国の場合はどうでしようが。台湾の人でなくて、終戦前から来ている中国人たち——大陸系の人ですね、これが外国人登録を切りかえる場合、やはり国籍証明書とかなんとかいうものはいりませんか。
  14. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 中国の人で終戦前からずつと引続いておられる人は、台湾以外の方でしたらば、終戦日本に来られる際に、何か証明書を持つておられる。たとえばパスポートなり何なり持つておられますから、それに基きまして登録を切りかえるのでありまして、別に事あらためて国籍を論ずる問題は起らないと思います。
  15. 林百郎

    ○林(百)委員 もしそのパスポートをなくしたとか、ずつと二十年もいる人もあるわけですから、そういうものは今必ずしも持つているかどうかわからない場合があるのですが、そういう場合には、現在の登録令だけで処理できますか。それから外国人登録令によりますと、いろいろの証明が必要となつているのでありますが、こういうものは別にとらなくてもできますのですか。二十年も三十年もおる人は、必ずしも来たときの証明書を持つているとは限りませんからね。
  16. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点は、そういうものを失われた場合には、その他の資料によりまして推定を行うことができますので、必ずしも国籍証明書をとつて来いということは申さないで更新できると思います。
  17. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、中国側政府のいろいろの協力をまたなくて、日本政府推定だけで、大陸系中国の人については外国人登録の切りかえができるというのですか、それでいいわけですか。
  18. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  19. 林百郎

    ○林(百)委員 それからポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案の第二条の第六項、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦在留することができる。」この「在留資格を有することなく本邦在留することができる。」ということは、正確に言つて、どういう意味ですか、それが一つ。  もう一つは、第二十四条の強制退出のところで、これは第二十四条の適用も免れるということなのですか、それとも第二十四条は適用があるというとなのですか、この点はどうなんですか。
  20. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 第二条第六項の「在留資格を有することなく」という意味でございますが、外国人日本におりますときには、必ず在留資格在留期間というものを持たなければならないということが、出入国管理令の方に書いてあるわけであります。在留資格と申しますのは十六の種類にわかれておりまして、その中には外交官であるとか、永住であるとかあるいは観光客、そういう在留をする意味が十六の項目にわかれておるわけであります。外国人日本にいるという場合には、その十六のうちのどれかに必ず当てはまる。ところが九月二日以前からおられた人は、従来日本人でもあつた関係もありまして、にわかにその在留資格をきめるということは、しばらく待とうという意味でございます。  それから第二十四条の適用が、この人たちにあるかどうかというお尋ねでございますが、これは別に除外しておりませんから、法律的にはあるわけであります。しかしこれを延ばしました特別の措置をここに講じておる趣旨を遵奉いたしまして、第二十四条はおそらく運用としまして発動しないということになろうかと思います。
  21. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとポ宣言受諾法律の第二条第六項の、別に法律で定めるまでの間「引き続き在留資格を有することなく本邦在留することができる。」とあるが、これは在留資格だけのことで、強制送還の問題についての第二十四条は、法律的には適用があるが、運用の面では差控えるというように解釈していいですか。
  22. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りでございます。
  23. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に強制送還の問題ですが、この第二十四条の、たとえば一年以上の有期懲役を受けた者とか、麻薬取締法違反判決を受けた者とかありますが、これはこの法律効力を発生した後に判決を受けた者、あるいは現在すでに起訴されて公判が進行中の者で、この法律施行判決のあつた者については、どういう効力を生ずるのか、何を基準にするのか。今公判を受けておる者で、まだ判決のない者が、この法律効力発生判決を受けて、それが強制送還対象になるならば、急いでみな判決を受けてしまわねばならぬと思うのですが、その点はどういうぐあいに適用されるのでありますか。
  24. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 第二十四条の今のお尋ねに関しましては、この法律施行されました後における犯罪について行うのでありまして、現在すでに刑の執行中であるとか、あるいは裁判の係属中であるとかいうものは、全然これは問題にならないのでございます。
  25. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、犯罪行為行つた時期を対象にするのであつて、起訴だとか判決基準にするのではないといように解釈していいのですね。
  26. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  27. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に少しこまかい問題に入りたいと思います。第二十二条の在留資格の変更、永住許可を受ける場合ですが、この「素行が善良であること。」と、「独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」、これは非常に抽象的で、一体「素行が善良であること」とはどういうことなのか、一度でもカフエー行つて酒を飲んだりしたら、いけないということなのか、どういうことなんですか。(「君みたいのを言うのだ」と呼ぶ者あり)私なんかも入るか、入らないかわからぬと思いますが、これは実際どういうように適用されるのか、もう少し具体的に何とかしないと朝鮮中国の人は、酒も飲みに行けないということになる。あるいは下手に自動車を運転していて、運転中事故でも起せば、もうこれは素行が善良でないということになるのか。また「独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」という「独立生計」というものはどの程度の生計なのか、これは実に驚くべき悪法だと思うのですが、これはどういう基準になるのでしようか。できるだけ具体的な説明をお聞きしておかないと、不安でしようがないと思うのですが……。
  28. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、この字句の問題をお聞きになりましたのですが、その前に、終戦前から日本にいた朝鮮人台湾人は、この適用なしに永住許可が与えられること代なるわけでございまして、さしあたりこの条文適用がないわけなのであります。それから今のお尋ねは、たとえば日本に入つて来ましたバイヤーが、日本永住許可を申請して、日本にとどまりたいというような際に起きる問題でありまして、終戦前から日本にいた、かつて日本人であつた人たちには、この条文適用がないということを御承知願いたいと思います。  なお素行が善良であるということが非常に漠然と書いてございますけれども、主たる問題としましては、かつて犯罪を犯したことがないというようなことも、この善良であるということを証明する問題でありまして、カフエーに行かれたというようなことはもちろん問題にならないと思います。
  29. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、第二十二条は、従来日本終戦前から住んでおつた台湾朝鮮の人には適用がないというのですが、それも絶対適用がないというのではなく、とりあえず適用がないという、なかなか意味深な言葉が実は入つているのですが、それはもう少し言うと、どういうことなのでしようか。「別に法律で定める」とあるから、それまで第二十二条は適用がないということなのか、その点をはつきりしていただきたい。
  30. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それは今回提案しております法案の第二条六項の方に出ております「別に法律で定めるところにより」という、その法律内容永住許可を与える。しかもその永住許可については、この適用のない永住許可を与えるというような書き方を法律の中でいたしてあります。その内容をただいま日韓会談できめておるということでありまして、大体の日韓会談の骨組みを申しますれば、今まで終戦前から日本におつた朝鮮台湾人は、そのままで大体永住許可が与えられる。たとえば外国人登録証明書一つつておる、あるいはもう一つ国籍証明書がある、その二つ条件があれば永住許可が与えられるという内容におそらくなると思います。
  31. 林百郎

    ○林(百)委員 その点非常に重要な点で、しかもはつきりしないのですが、そうすると、「別に法律で定める」という第二条の六項の中では、終戦日本に居住しておつた朝鮮中国諸君については、永住許可条件として、第二十二条の適用はないのだというふうにして、大体どういう条件にするということですか、もう少しはつきり聞かせていただきたい。これは適用ないということをはつきり条文にうたうのですか。新しい条件をそこへ出すのですか。
  32. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 第二十二条の適用がないということをはつきりうたいます。
  33. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、そういう人たちに対する永住許可条件は、どういう条件になるのですか。
  34. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 永住許可条件ということは、要するにどういう人たち永住許可が与えられるどういう人たちはという意味は、終戦前からずつと引続いていたこと、それから外国人登録証明書を持つていること、それから国籍証明書があること、それだけでよろしいのでございまして、従来通りおられるということになるわけであります。
  35. 成田知巳

    成田委員 関連して。従来長く日本にいた人には、第二十二条の適用を除外する、こういうことを明文化されるといいますが、第二十二条の条件を除外しましても、第二十四条の適用というものはやはりお考えになるのですか。
  36. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 外国人である以上は、第二十四条の適用は全般的に受けるわけであります。
  37. 成田知巳

    成田委員 それから「引き続き在留資格を有することなく」というのですが、今林君の質問に対して、第二十四条は運用の面では当分の間差控えると言われたのですが、「在留資格を有することなく本邦在留することができる。」そうすると、第二十四条の運用の面は差控えるというのは、適用しないという意味に解釈するのですか、それとも考慮するという意味に解釈するのですか。
  38. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 先ほどお答え申し上げた通りでありまして、なお一例を申し上げますれば、たとえば第二十四条におきましては、貧困者等で国の負担になつている者については、強制退去ができるという規定がありますが、こういう条項を動かす場合には、ただいま日韓会談でこの点について話合いをしておるわけでございますので、この条項を動かして、特別の法律のできるまでに強制退去をするというようなことは、運用上しない、そういう意味であります。
  39. 成田知巳

    成田委員 それから長く日本にいた人は、第二十二条の適用をしないで、国籍証明書と、もう一つ登録証明書があればいいというお話ですが、国籍証明書というのが、昨日から問題になつております。朝鮮の場合は、今までの朝鮮人であるという証明書でいいのか、あるいは日韓会談の結果、大韓民国証明書が必要になるのか、どちらをお考えになつておりますか。
  40. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 要件といたしまして、外国人登録証明書があるということと、もう一つ国籍証明書ということでございますが、その国籍証明書をどういう内容のものにするかという点については、これは日韓会談で今話中でございますので、具体的にこうであるということは、今申し上げるところまで行つていないのであります。
  41. 林百郎

    ○林(百)委員 その点は非常に重要だと思います。たとえば今私もちよつと外国人登録証をお借りしてみましたが、これによりますと、有効期間昭和二十五年一月三十日、それから昭和二十八年一月三十日とありますが、これを今度切りかえる場合は、外国人登録法の何条ですか、ちよつと参考のために、条文をお聞きしておきたい。
  42. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 外国人登録法案の附則の第五項であります。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 「旧外国人登録令規定による登録証明書及び外国人登録簿は、それぞれこの法律規定による外国人登録証明書及び外国人登録原票とみなす。この場合において、旧外国人登録令規定による登録証明書有効期間は、この法律施行の日から六月とす。」そうすると、これは二十八年一月三十日とありますが、二十八年一月三十日まで有効ですか。それとも、この法律施行の日から六箇月内に切りかえるわけですか。
  44. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 一月というのを、六箇月まで有効期間を切るわけです。でございますから、今お持ちのものの処理を六箇月の間にする。それが第八項の方に、第五項後段に規定する当該登録証明書有効期間満了前三十日以内に手続をして、新たに登録証明書の交付を申請しなければならないという規定が書いてあります。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、二十八年一月三十日とありますが、この二十八年一月三十日の満了前三十日以内に手続をしろということですか、この登録法効力発生後六箇月内というのですかどちらですか。
  46. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それはこの法律施行の日から六箇月でありますから、平和条約が発効しまして六箇月間でその登録証明書は無効になります。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、無効になつて書きかえる場合に、この国籍朝鮮とある人は、そのまま朝鮮と書きかえてもらえるのか、あるいは大韓民国と切りかえるのかという問題が一つと、それから国籍朝鮮というのをどうしても大韓民国とするとすれば、その大韓民国とするについては、大韓民国の駐日代表部と何らかの交渉を持つことが必要になるのかどうか、そういうことはどうなんですか。
  48. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、先ほどお答えいたしました通りでありまして、会談内容にも触れて参りますので、はつきりしたお答えを申し上げるわけには行かないのでございます。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 日韓会談々々々々といつて、みな会談へ持つて行かれては、この法案審議はできないのです。それなら、やはり会談が済むまでこの法律の結論は出て来ません。何なら、日本政府としてはどういう方針かという、方針でも聞かなければ、在日朝鮮人諸君は全然安心できないと思うのですり。あるいは別に法律で定める中に、終戦前から日本に住んでいる朝鮮人諸君には、出入国管理令あるいは外国人登録令の新しい適用はないという除外例を設けるならば別として、国籍の問題から、手続の問題から、日本にいる大韓民国代表部の権限の問題から、そういうことが一切わからない。それで今外国人登録令出入国管理令で、日本にいる朝鮮の六十万の諸君台湾の四万の諸君のことが問題になるのは、それが全然日韓会談日台会談にまかされているということです。そうしておいてこの法案審議しろということは、無理なことだと思うのですが、一体日本政府はどういう方針で臨むのか。
  50. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点は昨日も岡崎国務大臣からるる含蓄のある御答弁がありまして、よく御了承になつたと思いますが、原則ははつきりしております。それは昭和三十年九月二日以前から日本にいた朝鮮台湾人は、善良な人たちであれば、問題なしに日本永住できるということでありまして、何かからくりでもつて強制送還をする、それにひつかけて返すという考えを、政府としては全然持つていないということは、るる申された通りであります。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 昨日の岡崎国務大臣の話は、その点は便法によるというだけで、たとえば従来日本にいた諸君はこはから除外するとかいうことをはつきり答弁をしておらない。またこの外国登録令証明書朝鮮とある人は、その朝鮮というままで、この外国人登録令だけで切りかえるのであつて大韓民国というようことに切りかえることはさせない、従つて大韓民国の駐日代表部との交渉という問題も起きないだろうというようなことについても、何ら具体的答弁はしてないわけで、ただ便法便法だという。あなたは今度は日韓会談日台会談だということを言つているが、両方同じことだと思う。どつちにしても、重要な点をお互いに逃げてしまつていると思う。ですから長官考えとしては、かつて日本人であり、長い間日本政府のために苦しいことも忍んで協力して来た諸君については、出入国管理令適用しないのだ、これは講和後新しく日本に出入りする外国人適用するのであつて日本の国土に住み、日本人の籍を持ち、日本人たちと血のつながつている人たちには適用がない——便法がこういう意味ならば、私たちは納得できる。そういうふうにはつきり別に定める法律の中で定められるかどうか。そうでないと、今朝鮮には二つ政府もありますし、中国にも二つ政府があつて、いろいろめんどうな問題が起きますから、少くとも明治何年以来ずつと日本人であつた人にはこれは適用がないのだとする。現に今日の朝日新聞を見ますと、中国の方からは中共地区にいる日本人が初めて日本へ金を送つて来た、初送金というようなことが出ておるわけです。生活が非常にゆたかで、とにかく三百万円も届けて来ているのですから、アジア人ならお互いに助け合うのはアジア人の当然の義務だと思うのです。ことに朝鮮中国諸君は、戦争中向うからまつたく人間外の形で奴隷狩りのようにかり立てられて来ている。それで日本の工場や鉱山や土建の現場でまるで犬ねこ同然に扱われて……。(「宣伝するな、逆効果だよ」と呼ぶ者あり)宣伝じやない事実だ。
  52. 仲内憲治

    仲内委員長 簡単に願います。時間はすでに経過しております。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 簡単じやない、人道上の重大な問題だ。それで今度帰ろうと思つても、金がなくて帰れない人には、いやでもおうでも向うへ強制送還しなければいけないような条件をつけるということは、人道上の問題だと思う。
  54. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、質問を簡潔に。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 それから貧困者については強制送還する。貧困者といつても、政府は全然保護しないでおいて、資金の道だとか、就職の道だとか、それからお互いに仲間で力を合せて生活をしようとして、朝鮮人連盟をつくればこれを弾圧する、学校をつくれば学校も弾圧する。何でも徹底的に弾圧する。母国に統一した政権ができるまで日本にいたいということすら守つてやらないということは、これは人道上からいつてもゆゆしい問題だと思う。だから政府は、別に定める法律というものの中で、現在登録している人たち登録証明書はこのまま切りかえるのであつて、これ以上の手続は別に必要がないということ、それから強制送還の問題も、今まで住んでいる人たちには適用しないということ、少くとも既存の権利は十分保障するということを立法化し、明文化する意思があるかどうかということを、最後に聞いておきたい。そうでなかつたら、日本にいる六十万というたくさんの人たちを、そういう残虐な目にあわせるということは、やがてはあなた方が四億五千万の中国人や二千万の朝鮮人から同様な目にあうことなんだ。あなた方はのんきな顔をしているが、日本の国会の中で自由党が大きな顔をしていても、中国四億五千万、朝鮮二千万の人たちが見守つているのですよ。だからその点をはつきり聞かせてもらいたいと思う。要するに、長く明治以来日本にいて、日本人と結婚し、日本人として取扱い、日本の米を食つていた人たちを、急に外国人として取扱つて、めんどうな手続をして、その手続違反するものは送り返すという残虐なことができますか。しかも今母国では戦争しているじやないですか。
  56. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、簡潔に願います。それでは討論みたいですから。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 この人たちの生活をどうして保障するか、私はいくら言つても足りないのです。そんないいかげんなものではないだからどういうように保障するかということをここで聞かせてもらいたい。(「法律を尊重するならと言つているじやないか」と呼ぶ者あり)だからどういうように既存の権利を保障するか、それを明文化するかということを聞いておきたい。
  58. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今まで終戦前からおられた朝鮮台湾の人は、かつて日本人であつたというので、この人たちには特別の考慮を払わなければいけないということは、当然のことであります。但し外国人であるという点については、これまたはつきりしておりますので、外国人になれば外国人としての待遇をする。しかしながら実際問題としまして、外国人と内国人との実際の待遇上の差というものはそうないのであります。いろいろ研究もいたしましたが、実際はございません。ただ今まで日本人であつて急に外国人なつたというために、若干不便があるということは、あろうと思います。そういうことにつきましても、できるだけ既得権を尊重しようという考え方で、日韓交渉をやつているわけでございまして、いずれ日韓会談内容は、この国会に間に合えばこの国会に提案いたしますから、その際に法律上の内容はつきりいたすことと思います。少くとも人道に反した扱いは絶対しないというのが政府方針でございます。
  59. 仲内憲治

  60. 戸叶里子

    戸叶委員 先日来国籍の問題が大分問題になつておりますが、大体政府のお答えを聞いておりますと、それは朝鮮の国内法によるとか、あるいはまた日韓会談内容によるというようなお答えでございました。そして先ごろの新聞発表で見たところによりますと、この日韓会談内容は、大分韓国政府に籍のある人の方が有利に扱われるように私は読んだのでございますが、その点をお聞きいたしましても、まだ会談交渉中だからわからないというお答えでございました。それで私が伺いたいと思いますのは、日韓会談の過程におきまして、もしも韓国側から今の提案すなわち韓国籍にある人の方が有利であるというような条件が出されましたときに、日本政府としてはどういう態度をもつてお臨みになるかを伺いたいと思います。これは非常に基本的な問題になると思うのでございまして、もしも日本が、韓国と朝鮮というふうにわかれないで、統一した朝鮮というものを望むとするならば、韓国の籍だけを持つ者を優遇するというような態度には出られないと思うのです。この会談に臨む態度といたしまして、もし韓国からそういう提案があつたときには、はたして政府としてはそれを拒否なさるかどうかを承りたいと思います。
  61. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 ただいまの御質問の要点でございますが、出入国管理令登録令あるいはそれを緩和するための特別の立法に定めまする所定の手続を経られますならば、現在韓国となつて登録されておるとか、朝鮮となつて登録されておるとかいうことによつては区別いたしません。そういう差別待遇をしろという申出は、韓国側からもないと了解いたしております。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、そういうふうな申出がありましても、日本としてはそれをお受けにならないと了承してよろしゆうございましようか。
  63. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 それは差別待遇になりますから、そういうことには日本府は賛成しないと思います。しかしここにきめております所定の手続は、平等にとつていただかなければならないと思います。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 所定の手続はとつてもらいたい、そしてまた差別待遇はしないということになりますと、結局この会談によりましても、韓国の籍の者も朝鮮の籍の者も一応認められる、韓国の籍の者だけ優遇されるということは、六項の法律ができます場合にもないと認めてよろしゆうございましようか。
  65. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 昨日も岡崎国務大臣がお答えになりましたように、平和条約発効と同時に日本国籍をすべて喪失されまして、そして独立されたのでありますから、従来の国籍をすべて回復される、その国籍というのはすべて韓国の国籍である、こういうことに相なりますので、北鮮の国籍であるとか南鮮の国籍であるとかいうような、二つ国籍があるわけではございません。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは今までに登録をしている方で、朝鮮国籍のある方はどうなるのでしようか。
  67. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 従来の登録におきまして朝鮮国籍というものはないのでありまして、従来はみんな朝鮮だつた。ところが朝鮮という文字はいやだから韓国に直してくれという希望が韓国代表団から司令部を通じましてございまして、司令部もその通りやれといわれましたので、その後は韓国と書いてあるだけでございまして、実質におきましては、すべて平和条約発効と同時に独立日本が承認いたしまする韓国一つだけでございます。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、韓国と希望したから韓国と直すというお話でございましたが、韓国と必ずしも直したくなくて、朝鮮と書いておきたい人があつた場合には、一体どうなるのでしようか。そういう人も同じにお扱いになるかどうかを伺いたい。
  69. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 わが方限りにおいて行いまする登録の切りかえにつきましては、従来朝鮮と書いてあろうが、韓国と書いてあろうが、わが方は何らの差別をせずにこれはそのまま登録してしまう、こういうことができるのでありますが、永住許可の申請につきましては、韓国ミツシヨンを経て申請を出すことになりますから、そこは日本側だけではきめられないので、韓国との間に協議をしなければならない、こういうことに相なります。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと関連して。その永住許可をとるとき、韓国、ミツシヨンと交渉するというのですが、どういう交渉をするのですか。
  71. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 韓国ミツシヨンの方で国籍証明書を出すということでございます。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あんた先ほどは従来から日本に住んでおつた人に対しては、特別な取扱いをすると言われたけれども、韓国の国籍をとらないと永住許可がとれないということになると、朝鮮人民共和国を支持する人はどうなるのですか。実際問題としては、むしろ朝鮮人民共和国を支持する人が多いのですが、そうすると韓国の国籍をとらなければ、強制送還されてしまうのですか。
  73. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 特別の措置をとると申しますのは、本来なれば一般に適用される永住許可のようなむずかしい条件とか手続によらずに、もつと緩和した便法でやるということでありまして、韓国の国籍をとり得るとか、北鮮の国籍をとり得るとか、そういう自由があるわけではないので、これは韓国政府がすべて韓国の国籍を有するということを国内法で規定しておるのでありますから、日本としてはその通りにやるよりほかはないのであります。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると実際は韓国のほかに政府があつて、しかも日本の国内で朝鮮の金日成の政権を支持する人があつて、この人が韓国のミツシヨンから朝鮮人民共和国国籍がとれなかつたらどうなるのですか。
  75. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 国際連合の一九四八年十二月十二日の決議におきましても、朝鮮において人民の自由な選挙によつて成立した唯一の政府は、大韓民国政府であるということを決議いたしておりますから、日本としてもその趣旨に沿うような措置をとるほかないのであります。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは日本におります代表部証明書を持つて行く場合に、もしその証明書朝鮮と書いてありました場合には、その人が必ずしも朝鮮人民共和国を支持する人でないかもしれませんが、代表部ではその人に新しい居住権を与えないということもあり得るわけでございましようか。その人が韓国とかえない限り与えられないことになるのですか。
  77. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 それは韓国の政府のきめるところでございます。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうなことは、日韓会談では別に何らきめられないわけですか。日韓会談によつてこの六項がきめられると思いますので、この点も承つておきたいと思います。
  79. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 日韓会談はまだ妥結もしておりませんし、発表されておりませんから、ここで詳しく申し上げられませんが、しかし、昨日岡崎国務大臣の言われましたように、韓国の国籍を回復するということにつきましては、この原則は動かないと思いますから、韓国政府としては、韓国の国籍以外はその人民に対して認めないと思います。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、私どもから考えますと、非常に他国の内政干渉ということになりはしついかと憂うるものがございますが、その点に対してはどういうふうにお考えですか。たとえば朝鮮と書いております人の中にも、必ずしも朝鮮民主主義共和国を支持する人ばかりではなくて、統一した朝鮮というものを望んでおるが、前からの関係朝鮮言つている、そうした民族的な感情というものも私どもは認めてやらなければならないと思いますが、そういうふうな点を政府は御考慮にならないかどうか、伺いたいと思います。
  81. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 今おつしやいましたような点も考慮に入れて、昨日岡崎国務大臣は、今後どうなるかはわからない、今後なつたときは、またそのときに考えればいいので、現在としては、正統政府として国際間に認められておるものは大韓民国政府であるから、それを交渉相手にし、それが認めるところをわれわれも認めて行くという以外に、現在としては道がない、こう申されましたが、その通りであると存じております。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 この点は非常にいろいろ問題が残ると思いますが、私はあとにいたします。  次に伺いたいことは、第六十七条の手数料の問題でございます。一昨日でしたか、私このことについて鈴木長官に、その手数料を一人千円ずつとつたにしても、最低六億円は集まるが、その手数料の六億円に対して、外務省に予算の使い道なり何なりがあるかと聞きましたところが、それはとらないとおつしやつたように了解しておりますが、とらないというのはどの法律によつてとらないかを、はつきり教えていただきたいと思います。
  83. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 管理令第六十七条の前文の方に、第何条、第何条、第何条の、たとえば永住許可は一件につき二千円とるというふうに書いてございまして、従来の戦争前から日本にいた朝鮮台湾人たちが新たに永住許可をとりますときには、ここにあげてあります条文には入つていないのであります。従つてこの条文適用がない、こういうことであります。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは昭和二十年九月二日以前にいた人は、この法律適用を受けないわけでありますね。——そうしますと、次に第五十三条に強制送還を受ける者の送還先のことが規定してございますが、第二十二条の二の「出生その他の事由に因り」というところで、この前私が伺いましたけれども、なお伺つておきたいことは、日本で生れまして、そしてある程度成長して、日本に生活しておりまして、何らかの形で強制送還を受けなければならない場合に、その送還先はどこになるのでしようか。ここに書いてありますところによると、「本邦に入国する直前に居住していた国」とか、あるいはまた「本邦に入国する前に居住していたことのある国」というふうに六項目ありますが、このどれに相当することになるのでしようか。
  85. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 この六項目は例外を書いたのでございまして、原則は、その人の持つておる国籍の国に送還される、これが原則でございます。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、またさつきの六項目のことに関係して来まして、結局国籍の問題の質疑のやりとりということになるのですけれども、これはあとにいたしまして、もう一つ伺いたいことは、第五条の二に、「北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令」とございまして、これは廃止するとありますが、具体的にいいましてどういうことになるかを伺いたい。
  87. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 法案の第五条の第二号にございます渡航制限に関する臨時措置令、これは主としまして沖繩、大島におる人たちは、総司令官の許可がなければ日本の国には入れない、それを侵した場合には強制送還ができるという規定であつたのでありまして、今回総司令官というものは、もうなくなるわけでございますので、この法案は当然適用はないと解釈すべきであると考えます。     〔委員長退席、佐々木(盛)委員長代理着席〕 従いまして、昨日もこの点につきまして、非常に御熱心な御質疑があつたのでありますが、沖繩、大島の人たち日本人であるという建前から、そういう人たち日本に入つて来ます場合には、何ら制限がない、かように考えております。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると沖繩の人たちは、沖繩から出入する場合には、アメリカの入の許可がなければ出て来られたり、また入つたりすることができないわけだと思います。そうすると今度は日本に参りましたときに、日本での取扱い方はどうなるのでしようか。
  89. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 沖繩にあります軍政部がどういう手続をしますかは、われわれの方としては詳しく存じておりませんが、日本に入ります際には自由でございます。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、そういう方方がパスポートを持つておられましても、別に日本ではどうということはないのですか。
  91. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 どこまでも日本人として扱いますので、外国人登録法及び出入国管理令適用はございません。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、もし万一そういう人たちが何か悪いことでもした場合には、日本で裁判を受けることになるのでしようか。
  93. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 当然その通りでございます。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつとそれに関連して。沖繩はこの法律適用からは除外されておるわけでしよう。それから、沖繩は日本の領土であると政府は御解釈になつておるけれども、日本法律がそこでは行われない場所であるということもお認めになつておりますね、そうですね。
  95. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 関連して、三宅政府委員にお伺いしますが、これは重大な問題だと思うのです。韓国が朝鮮の唯一の正統代表政府だというのですね。これは御承知の通り第一に、三十八度線による分割の占領は、ヤルタ会議によつて、単に軍事的な便宜のためにやるということ、また一九四五年の十二月モスクワの四箇国外相会議で、最高五箇年間、米英ソ華の四国による信託統治に基く臨時統一政府をつくるという決定を四箇国でやつた。ところが李承晩はこのモスクワ会議の決定に反対していたために、ソビエト側においては、このモスクワ会議の決定に反対する李承晩を臨時統一政府の方に入れることには反対だということで、李承晩を入れる入れないということで分裂した。ところが御承知の通りに、国際憲章の百七条によれば、この大国一致の原則というものは、国連によつても、第二次世界戦争中にこの憲章の署名国の敵であつた国に関する行動であつて、この行動について責任を有する政府が、右の戦争の結果としてとり、許可したものは無効にならない、要するにモスクワの四箇国会議で、朝鮮の問題については、四箇国一致で、ここにとりあえず最高五箇年間は信託統治にして、その後統一政府をつくるという、この大国一致の原則というものはきまつておるわけです。ところがアメリカがこの四箇国一致の原則を破つて選挙を行つた。しかし実際は、これは南鮮だけで選挙が行われたことはあなたも知つておる通りである。北鮮は全然これに参画してはおらないのである。従つてその後さらに朝鮮人民の意思に基いて、朝鮮人民共和国ができて、これは秘密のうちではあるけれども、南鮮の選挙まで入れて、具体的に言いますと、南鮮の人口千五百万のうち六百七十三万の有権者がこれに参画しておる。そういう経過はいずれにしても、現実に今ジヨイ中将が交渉しておる相手は、朝鮮人民共和国主席金日成、中国人民共和国義勇軍司令官彭徳懐、こういうことになつており、これは国際的に認められておるわけです。明らかに国連軍側は朝鮮人民共和国主席金日成将軍として交渉しておるではないか。日本政府の都合によつては李承晩のような政権を相手に交渉をするかもしれないが、客観的には朝鮮人民共和国というものを認めておられる。そうすれば、日本にいる朝鮮人諸君が、この国籍を選ぶのは自由じやないか。しかも世界人権宣言によれば、「何人も、国籍を有する権利を有する。」「何人も、ほしいままに、その国籍を奪われ、又はその国籍を変更する構利を否認されることはない。」と書いてあるではないか。そうしたら在日朝鮮人諸君朝鮮人民共和国国籍を選ぶということは自由じやないか。それを日本にいる朝鮮人全部を大韓民国国籍にして、そうでない者を強制送還するという、こんな権限がどこから出て来るのか、そんな無責任なことはないじやないか。
  97. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 ただいまの御質問の第一点でありますが、休戦交渉の相手方として選ぶということは、それが政府の代表者として選んだこととは別でございます。政府であろうとなかろうと、戦闘の行われたその相手方にすぎないのでありまして、それを相手に交渉しているにすぎない、それ以外に休戦の道はないわけでございます。  それから第二の点でございますが、世界人権宣言におきましても、「ほしいままに、」ということは書いてあるのでありまして、平常の場合に、ほしいままに国籍を奪つたりすることはできないということでありまして、一国のある部分の地域の独立を回復する、そういう場合に、その独立を回復した地域の国の国籍をとることは当然で、そういう場合は、ほしいままに国籍を奪つたとか、変更する権利を奪つたとか、そういうふうには解釈できないと思うのでございます。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 あたたのは実に詭弁だと思う。今朝鮮諸君日本にいたい、朝鮮へ帰るわけには行かない、少くとも北鮮側には帰るわけには行かない、ここにいたい。ところが、ここにいるためには大韓民国国籍を持たなければここに置かせないということは、国籍を制限していることになるじやないか。日本側の都合で、あるいは李承晩政権の都合で、日本にいる朝鮮人諸君の意思を無視して、大韓民国国籍を持たせるということになるのじやないか。あなたはジヨイ中将が交渉している朝鮮人民共和国の主席金日成というのは叛乱軍の代表者だと言う。それではなぜジヨイ中将は、正式に朝鮮人民共和国主席という言葉を使うのです。あまりでたらめを言うものじやない。それでは金日成というものは何だとあなたは考える。しかも一方中華人民共和国つてそうです。国連に加入させる、させないという問題があつても、厳然たる政府だということは認められておる。イギリスではこれを認めているじやないか。そうすれば、一体ジヨイ中将が交渉しておる朝鮮人民共和国主席ということはどういうことなんです。それをはつきり解明してください。あまりいいかげんなことを言いなさんな。
  99. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 そういう交渉の場合に、肩書がどうこうということは、その肩書を有する人が書いて来るので、それまでも拒否すれば、交渉はできないと思うのでありますが、そのことは何もアメリカが北鮮共和国を承認しているとか、そういうことにはならないと思います。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 肩書を認めて、実質を認めないというのですか。
  101. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 それはアメリカのことでありますから、私がここでアメリカの解釈を申し上げることはできないと思います。
  102. 北澤直吉

    ○北澤委員 関連して一点だけお尋ねいたします。今度の平和条約効力を発生すれば、日本におる韓国の人は、韓国の籍を当然回復するということはわかるのですが、私のお聞きしたいのは、中国人の場合であります。平和条約によりますと、日本台湾と澎湖島の領土権を放棄する、従つて日本が放棄した台湾及び澎湖島の領土権がどこに属するかということは、まだきまつていないのであります。従いまして、台湾もしくは澎湖島に籍を持つておる中国人は、日本の建前から申しますと、国籍がないというふうに私は見るのであります。そうしますと、外国人登録法案第三条によつて登録する場合には、旅券をつけて請求しなければいかぬ、こう書いてありますが、そうすると、そういう無国籍の者に対しては旅券を出す政府がないわけであります。一体そういう場合にはどうお考えでございますか伺いたい。
  103. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今のお尋ねは、台湾あるいは澎湖島の人たちが、登録法でどういう扱いになるかというお尋ねと思います。これは日本国籍を離れますので、外国人になるわけでありますが、日本におります台湾籍の人たちは、すでに現在でも中国ミツシヨンの許可証を持つておる方が大部分でありまして、それによりまして登録が行われることになるのだと思います。     〔佐々木(盛)委員長代理退席、委   員長着席〕
  104. 北澤直吉

    ○北澤委員 私がお聞きしたのは、外国人登録法案の第三条によると、登録証明書交付申請書それから旅券、こういうものを出さなければいかぬ、こういうわけですが、いよいよ講和条約の効力が発生して、台湾籍の中国人が日本国籍を離脱するというふうになりますと、先ほど申し上げましたように、私は、そういう人たち国籍を持たぬ無国籍だ、また領土権が中国に属するということは、連合国間にまだきまつていないわけであります。そうすると旅券を出す政府がないからして、そういう人たち登録ができない、登録証明書の交付が受けられないことになりはせぬかというふうに思うのですが、その点もう一ぺん伺いたいと思います。
  105. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今台湾におる人で、今後この法律施行になりました後に日本に入ります場合には、その人は台湾にあります中国政府の旅券を持つて来られるわけでありまして、その旅券によつて登録をいたすことになります。また現在日本におります台湾の人につきましては、先ほど申し上げましたような次第で、手続上不便はないと思います。
  106. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一ぺん確かめますが、そういたしますと、われわれの解釈では、台湾の領土権というものは将来連合国の間できめる。日本は放棄しただけであつて台湾、澎湖島の帰属はきまつておらない。にもかかわらず、台湾にいる人はすべて中国人として扱う、無国籍ではなくて中国籍を持つておるものとして扱うわけですか、その点を念のためお伺いしておきます。
  107. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 現在日本にいる台湾の人々は、朝鮮人たちの扱いと違いまして、特に現在の外国人登録令適用を受けます際に、中国代表部許可証を持つて来るということになつておりますので、すでに日本におられる方の大部分はその手続でおられます。従つてその外人登録証明書があれば切りかえは行われるわけであります。
  108. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一ぺん念のためにはつきりしておきたいと思うのですが、そういう中国人は一体中国国籍を持つておると認めるのか、あるいは国籍を持つていない、無国籍として認めるのか、その点をはつきりしていただきたいのであります。中国ミツシヨンの許可証を持つて来ればその人に登録を認める、その点はわかりますが、しからばそういう人たち中国国籍を持つておるのか持つていないのか、その点をはつきりしていただきたいと思います。
  109. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 そういう点につきましても、現在の台湾政府との交渉においてはつきりすることになつております。
  110. 北澤直吉

    ○北澤委員 しかし、台湾政府との交渉によつてきまると申しますが、この台湾の領土権の帰属は、これは日本台湾だけできめられるものではなくて、日本平和条約によつて台湾、澎湖島の領土権を放棄したのでありますが、それを将来どこに帰属するか、アメリカを含めた連合国相互の間できめられる、日本台湾だけではきめられない問題だと考えますが、この点を明らかにしておきたい。
  111. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 そういう正式の決定が連合国間においてなされるまでの間、できるだけ無国籍人を少くするという国際間の大体の原則といいますか、そういうものがございますから、そういう趣旨にのつとつてどういうふうに事実上やつて行くかということが、国民政府との間の交渉においてはつきりするのであります。
  112. 仲内憲治

  113. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこの際在日華僑に対する取扱いの問題について、一点だけ政府の見解をただしてみたいと思います。  ただいま審議中の出入国管理令並びに外国人登録法案によりますと、戦前から日本に居住しておる中国人も一般の外国人と同様に、日本政府に対して在留資格の取得を申請しなければならないことになつております。しかしながら戦前から日本に居住しております。中国人は、終戦前に日本政府の厳重な法令の制限のもとにおきまして厳密な審査の結果、永住許可を与えられ、その後、長きは五十年、六十年、短かくも数十年にわたつて日本に滞在しておりまして、ほとんど日本人と少しもかわらないような生活を続けておるわけであります。従つてこれらの善良なる在日華僑に対しまして、われわれといたしましては従来の特殊関係にかんがみ、あるいは今後の日本の善隣友好を希望する立場から、政府といたしましても十分理解ある好意的な対策を講じなければならぬのじやなかろうかと考えるわけでありますが、これらにつきまして政府は一体どのように取扱いになるお考えをお持ちになつておられるかという点につきまして、所見をただしておく次第であります。
  114. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、以前から日本に長く居住しておられた在日華僑の今後の管理上の取扱いはどうかというお尋ねと存じますが、われわれがこの永住許可の扱いをいたしますのは、ただいまお話のありましたような善良な方であり、長いこと日本関係があつたというようなことを非常に尊重いたしまして決定いたすのでありまして、もちろん将来の国際関係、日華関係、善隣友好のいろいろの関係を考慮いたしまして、十分そういう人たち永住につきましては、好意を持つた扱いをいたしたいと存じます。
  115. 成田知巳

    成田委員 ただいまの佐々木君の質問に対しまして、佐々木君の触れられたのは在日華僑と言われたのですが、問題は在日華僑の問題ももちろんあるでありましようが、数からいいまして、朝鮮人の問題はさらに重要な問題だと思うのであります。今の鈴木政府委員の御答弁在日朝鮮人、長い間平穏無事に過して来た朝鮮人についても同様の取扱いをする、こういう意味と解釈してよろしゆうございますか。
  116. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 在日華僑と在日朝鮮人とは根本的に違うのでございます。というのは在日朝鮮人は現在日本人である、この人たちが今後外国人になるわけでありますので、なお一層従来の関係を見て好意ある取扱いをしてやらなければならぬということになります。
  117. 成田知巳

    成田委員 この特別の保護の問題に関連しまして、先ほど第二十二条の「素行が善良であること。」「独立生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」こういう条件は今後別に定むる方針で削除するという御答弁があつたのでありますが、その通りでございますか。
  118. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 適用しないということをはつきりいたさせます。
  119. 成田知巳

    成田委員 ということは、第二十二条の二項全部を適用から除外する、こういう御方針だと理解してよろしゆうございますか。
  120. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  121. 成田知巳

    成田委員 二項全部を適用除外ということになりますと、今申しました「素行が善良であること。」「独立生計を営むに定りる資産又は技能を有すること。」これ以外の二項の前段に「且つ、その者の永住日本国の利益に合すると認めたとぎに限り、」云々、この条項も、長くいた方は当然日本永住して、日本の国に利益のあるもの、こういうように御適用にならないのでありますか。
  122. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 何回も申し上げますが、昭和二十年九月二日以前からおられた朝鮮台湾人たちには、この第二十二条の一項の本文ももちろん適用はない、適用いたしません。
  123. 成田知巳

    成田委員 先ほどの御質問で、台湾人の場合現在許可証を持つておればただちに切りかえる、居住許可の場合切りかえる、こういう御答弁がありましたのですが、朝鮮の場合は何か代表部、ミツシヨンに連絡するという先ほどの御答弁があつたのでありますが、台湾の場合は日本にいるところの代表部に連絡をするということはなさらない御方針ですか。
  124. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 先ほど申しましたのは、登録切りかえの際に、従来の在日華僑は外国人登録令によつて国籍証明書を持つておられますから、それの切りかえについては別段何ら登録を要しない。特別のものを別に添付する必要がないということを申し上げたのであります。
  125. 成田知巳

    成田委員 そうすると永住許可申請がありました場合に、その国籍は、たとえば中国人という国籍証明書が出ておれば、お出しになる御趣旨ですか。
  126. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 台湾人日本におる人が永住許可をもらうという点につきましては、これは過去と同じように、外国人登録証明書があり、そのほかに国籍証明書というものがありますれば、そのままで永住許可が与えられるということになるわけであります。
  127. 成田知巳

    成田委員 そのときの国籍証明書というものは、たとえば朝鮮の場合、政府大韓民国国籍証明書、こう言つておられますが、台湾の場合はどういう国籍証明書を予想していらつしやるのですか。
  128. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今おります在日台湾人と申しますか、そういう人たちは、ほとんど大部分がすでに中国ミツシヨンの国籍証明書を現に持つておられます。それで問題は起らないと思います。
  129. 成田知巳

    成田委員 現在は問題は起きないかもしれませんが、やはり登録が切りかえになる場合に、今後の情勢いかんによつては問題が起きると思うのです。その場合の国籍証明書というのは、中国人であるという証明書なのですか、それとも台湾政権の支配するところにいる住民であるというような国籍証明台湾政権に帰属するところの国籍を持つているのだ、こういう意味証明書なのでしようか。
  130. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 現在中国ミツシヨンから証明書を出しておるわけでありますから、ここしばらくの間に非常な変動が予想いたされませんので、現在としてはスムーズに、順調に手続が進むもの、こう思つております。
  131. 成田知巳

    成田委員 それから先ほど第二十二条の特例措置を講ぜられる、こういう御答弁で、第二十四条の適用はもちろん除外するものでない、こういうお話がありましたのですがこの第二十四条の適用の場合も、やはり法律遡及の原則で、昨年の十一月以降に第二十四条の該当事項が発生したものに限る、こう解釈すべきだと思うのですが、それでよろしゆうございますか。
  132. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今のお尋ねは、従来から日本にいた朝鮮台湾人に対して、第二十四条がどういうふうに適用されるかということと思いますが、平和条約発効と同時にこの規則が動き出すわけでありますから、それ以後に起きた事例についてこれを適用するわけであります。ですから十一月にさかのぼらないのであります。
  133. 成田知巳

    成田委員 それから、これはこの前から問題になつたのでありますが、政府は大切な問題になりますと日韓条約に譲つてしまうし、それからり数字的な問題については、先日私が質問いたしましたところ、非常に大きな食い違いがあつたのですが、それがまだはつきりされていない。それは送還者の一万三千人の内訳でありますが、大江さんと鈴木さんの答弁は根本的な違いがあるわけであります。これをこの際明確にしていただきたい。
  134. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 実は昨日大江政府委員が参つておりましたが、時間がございませんで答口弁をいたさなかつたと思います。あの分科会におきましては出入国管理庁関係の責任者がおりません関係で、従つて十分な資料を提出することができなかつたのであります。あのときに出ました資料は、いろいろ想像いたしますのに、役所の方で係の君たちがいろいろ研究しておりました研究資料の一つが不幸にして出たのであろうと思います。
  135. 成田知巳

    成田委員 これはひとつ明確にしてもらいたい。大江さんに来ていただきたいと思いますが、委員長から……。
  136. 仲内憲治

    仲内委員長 午後呼びます。
  137. 成田知巳

    成田委員 それまで留保しておきます。
  138. 仲内憲治

    仲内委員長 守島委員
  139. 守島伍郎

    ○守島委員 私がこれから質問し、意見を述べようとすることは、数日来の問題で、私から見ますとほとんど尽きておると思うのであります。いろいろ詳しく、またくどくど述べられまして、趣旨は十分にわかつておると思いますが、どうも専門的な話が出たりなんかするので、朝鮮の方々が誤解をされたり、あるいは危惧の念を抱いておられるような点が大分多いようでございますから、ごく簡単にもう一ぺんむし返して御質問申し上げます。  実は、どなたかほかの委員からもたびたびお話がございましたように、朝鮮の方は共産主義に反対である、朝鮮の共産党にも反対である、むしろわれわれと同じ穏健な思想の持主である。ですから日本国籍を離れて向うの国籍をとるには、やつぱり向うが統一した国になつてからとりたい。これは感情として認めなければならぬ、相当是認しなければならぬ考えだと思います。その人たちは今度日本国籍をなくなされて、向うの国籍をとるときに、大韓民国国籍をとるということはどうもやつぱり何だかいやだ、朝鮮全体が一緒になつたときにとりたい。そこでしばらくの間は無国籍でも行きたい、こう言われる。これはもつともでございます。ところがわが方は、朝鮮において大韓民国を唯一の国家として認めている。北鮮の政府と称するものなんかわれわれは全然認めておらぬ。ですから今度の交渉でこつちの国籍がなくなる。そうするとこれは当然大韓民国国籍をとらなければならぬ。皆さんの感情はわれわれは非常に察するけれども、しかしながら筋違いのことはわれわれはできぬ。ですからあの人たちは全部大韓民国国籍をとられる——これはやむを得ないことでございますが——と仮定をいたしますと、その人たちの間にはどうしてもとるのはいやだという方がある。そこでその感情にとらわれて、新たな国籍をとられない人が非常にたくさん出る場合があるかもしれぬ。私はないことを希望いたします。希望いたしますが、あるかもしれぬ。それからこういう説があります。私はそれはほんとうではないだろうと思いますけれども、今の大韓民国代表部は、今まで大韓民国側からの登録を得ていない人は、これは新たに行つても受付けない。お前たちはこれは北の方の共産党に協力しておるのだから、受付けないというような態度である。私は絶対にそういうことはないだろうと思いますが、今度の交渉でもそういうことがないように十分その点は交渉していただきたいと思います。もしまた大韓民国代表部、追つて韓国大使館になる大使館が、そういう理由で証明書を出さぬ、旅券を出さぬということになれば、これはとんでもないことであつて、非常にたくさんのことができるわけだ。私が了解するところでは——了解しないところでもいい、これは常識でございますが、日本政府がたくさんの韓国の方を無理やりにめちやくちやに韓国に返そうというようなことは全然ない。好意を持つて優遇して、そうしてごく少数の人はやむを得ませんが、ほんとうに穏健な方はなるべく日本にとどまつて、そうして日本人と協力していただくことを政府は希望しておられるだろうと思います。ですが、今のそういう誤解があるのと、また今申します大韓民国代表部、また大使館になつたときの大使館が、今までとつていないものはもう旅券を出さぬというようなことをしきりに危惧の念を抱いておりますから、万一結果といたしまして、この韓国との条約ができましたあと、多数のそういう韓国籍をおとりにならない方が出ますときには、これは何とか政府が特例をお考えにならなければ私はならないものだと思います。その点もきのうあたり、おとといあたり政府から御答弁がございましたけれども、もう一度そういう点について、政府の明確なる御返事をいただきたいと思います。
  140. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまお尋ねと申しますか、再度の御質問があつたのでございますが、昨日岡崎国務大臣から非常に熱意を持つて日本政府としては終戦前から日本におられた朝鮮台湾人たちに対して善意を持つて、安心の行くような措置をとるというようなことを御答弁があつたわけでありまして、さらにそれを繰返すにすぎないのでございますが、ただ国籍の点につきましては、今守島委員の方からもお話がありましたように、これは国籍選択ということでなしに、元の韓国に復帰するのであるという観念に立つて平和条約その他が進行しております関係上、全部が韓国籍をとられるということはやむを得ないことであります。従つて国籍というようなこともあり得ないのであります。ただわれわれといたしましては、実際上の問題として、韓国政府が今いる在日朝鮮人を全部平等に扱うかどうかというような点について御心配があるようでありますが、これは韓国政府とされましても、もちろん平等に考えられるのが当然でありまして、われわれとしては特に心配をいたしておらないのでありますが、ただここで注意を申し上げておきたいことは、ただいまわれわれの方でやつております外国人登録令によつて国籍欄に朝鮮あるいは韓国という字を書かしておりますが、これは数字から申しますと、朝鮮と書かれておる人が五に対して、韓国と書いておる人は一でございます。五対一の割合でございます。朝鮮と書きましたのが現在の韓国政府の方からは、全部差別待遇を受けやしないかというような御心配があるようでありますが、これはこの登録の大字がたまたま二つになつておりますが、これをもつて国籍を云々する意味にできておるのではないのでありまして、この沿革は先般来るる申し上げております通り日本政府としましては一律に朝鮮として出発したのであります。その登録を始めた後に、韓国代表部ができまして、韓国として登録してほしいという希望がありまして、司令部の方の話もあつて、それでは希望する者だけ韓国ということになつております関係で、手続がちぐはぐになつて、あとから韓国として国籍欄に記入した人たちがあるわけでありまして、これをもつてただちに韓国あるいは北鮮という意味を現わすものじやない。従つて韓国政府とされましても、おそらくこの朝鮮、韓国の区別なしに一律に韓国の国民であるという取扱いをされるのは当然であると思います。くれぐれも申し上げますが、管理令の立法の精神にもよりまして、外国人として扱う際には人道に反するようなことはしないという趣旨で、日本に特に長くおられたかつて日本人に対しては、十分御心配のない措置をとるということでございますので、御了承願いたい。
  141. 守島伍郎

    ○守島委員 詳しく御説明がございましたがどうも要点をはずれている。今の説明は大体今まで聞いております。それ以上の御答弁がきのうあつたはずだと思います。といいますのは、今度の韓国大使館で差別待遇はせぬだろうと思うけれども、もし万一したとき、さつきから申します通りに、感情上どうしても韓国の国籍をとりたくない。共産主義でも何でもない、普通のわれわれと同じ堅実なる今の日本人、将来の朝鮮人、しかしながら感情上どうしても全体に帰つたときにとりたい、今国籍はとらぬという人が案外少くないのじやないか。またなるべくとつていただきたいと思いますけれども、万一そういう人がたくさん出たとき、十万も二十万も三十万もそういう人が出たとき、それを強制して向うに返すということは、政府の意思でも何でもない。ですから、何かそういう場合に特例をおとりになるというようなお考えがあるのじやないだろうかと思  いますが、その点の答弁がございませんですから、もう一ぺんその点を明確に御返答願いたいと思います。
  142. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 今のお尋ねの要点は、国籍の問題と、それに伴う便法と申しますか、こういうことに関すると思うのでありますが、国籍の問題は、これは先方の政府がきめることでございまして、日本政府としてはいかんともすることができないのでありますが、その便法につきましては、国会におきましてそういう御希望と申しますか、御意見がございましたことを日韓交渉の当事者に話しまして、何か便法を講ずることについて、向う側に異議がないかどうかということを十分相談いたすように、私から上局に話をしようと思います。
  143. 守島伍郎

    ○守島委員 しつこいようですが、どうも要点がはずれている。向うと御交渉になりまして、大体話合いがつくかもしれぬけれども、なかなか向う聞かない。大韓民国が万一差別待遇をする、私はないだろうと思いますが、万一する。もう一つは私の想像では、日本国籍を離れた瞬間に、これは向うの内政上の問題でございますが、全部韓国籍をおとりになるだろうと思いますけれども、日本に居住するために大韓民国の大使館の証明書ですか、旅券をもらわなければならぬ。それをさつき申します通りに、感情上全部一緒になつたときに旅券をもらいに行く。そうすると全部一緒になるときはまだ大分先である。今旅券をもらいに行くのにどうしても感情上もらいに行けない。そうすると永住許可を得ることができぬ。そうすると強制送還される。それは私どもの立場から見ますと、そういうことをおやりにならないで、大使館においでになつてその感情を押えて、便宜上国籍をおとりなさいと言いたいけれども、そういう感情の人が非常にたくさん出たときに、何か日本政府が、日本政府だけで——向うとの交渉じやございません、日本政府だけで無国籍の人にそういう特例をおとりになるお考えがあるかどうか、そういうことをお尋ねしているのです。これがごく少数の人であつたならば大した問題でありませんけれども、日本におられるのは、きのうかおととい聞きますと約六十万近い。かりにその一割でもそういう感情を制し切れない人があるとすれば、これは同情すべき人です。それも善良なる朝鮮人の方々でありますから、おとりになる方が大部分だと思いますけれども、かりに一割、六万の人が感情上どうしてもいやだという人があれば、それなら帰れというのは人情じやない。またそれは日本政府の本意でもない。そのときに——今すぐじやありませんが、そういう事態ができたときに、何か特例をお考えになつているかどうか、それをお尋ねしているのです。
  144. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 今お尋ねのうちに、どうしても国籍をとるのがいやな人があるとおつしやるのですが、昨日来もるる御説明申しておりますように、日本国籍は喪失する。そのあとどの国籍を持つかということは、これは韓国政府がきめることでありまして、韓国政府のきめるところは全部韓国人であるという決定のようでありますから、その点は日本としてはいかんともできないと思います。
  145. 守島伍郎

    ○守島委員 どうしても要点に触れてない。三宅君非常に頭のいい人なんですけれども、要するに国籍は私がさつきから言う通り、もう当然向うに行く。ただ大使館に旅券をとりに行かない人の場合はどうなさるか。そのときにこれが非常にたくさんであつたときは特例を——これは将来の問題です。これは一年、二年後の問題と思います。あるいは半年後の問題かもしれぬが、とにかく将来の問題とし、そのときに日本政府はそういう人を無理やりに追い返そうというような御趣旨じやないだろう。御趣旨でなければ、そのときに何か立法措置とか何とか措置をおとりになるだろうと私は想像しております。私は外務大臣ならそれをやります。しかし外務大臣じやございません。ですから政府はお考えになつているはずだと私は考えております。そうでなければ、あなた方が好意を持つておる、好意を持つておるとおつしやられても、いざという場合には、そういう四十万の人を無理やりに返さなければならない。ですから何か将来の特例をお考えになつているかどうかということをお尋ねしておるのです。
  146. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまいろいろお答え申し上げましたが、いずれも要点をはずれているということでございましたが、要点はこういうことである意いま。われわれの方の今御審議を願つております法律案二つございますが、最初にぶつかります問題は、登録の切りかえでございます。それは講和条約が発効と同時に半年以内に切りかえという問題が一つ出て来る。それからもう一つは、これは日韓会談内容になるわけですが、永住許可をもらう時期がある。これは会談内容によりましてどのくらい先になるかわかりませんが、これは一、二年より先に実際問題として現われて来る問題だろうと思うのです。最初の登録の問題につきましては、先ほど御答弁申しましたように、現在外国人登録証明書を持つておられる、それの単なる切りかえでありますから、別に国籍という問題は問題にならないで進行するものと思います。永住許可を受けます際に——数年と申しますか、一、二年後、それ以上あとで永住許可手続をいよいよいたします際に、大韓民国証明書外国人登録証明書のほかに必要であるということになるわけであります。そこでただいまお尋ねの問題が起きて来ると思うのでありますが、そういう際にはどうするか。今われわれの見通しにおきましては、きのう岡崎国務大臣も仰せられましたように、おそらく韓国側におきましても、外国人登録証明書を持つておる朝鮮人たちには、機械的に韓国の証明書を出す、そういうような方法も十分考えられるということを岡崎国務大臣言つておられた。そういう趣旨で交渉の方も御交渉になるということも言つておられるのでありまして、それが一つ便法内容かとも思いますので、万々そう大したトラブルなしに進行するのではないか、かように考えます。
  147. 守島伍郎

    ○守島委員 大体軌道に乗つて参りました。そこでもう一ぺんしつこいようですが、韓国の方は非常に心配されておりますから……。日本の立場としてできないことはしかたがございませんけれども、できることは十分丁寧にはつきり知らしておく必要があると思いますから、もう一ぺん繰返して申しますが、そうすると半年以内に登録をする、これは韓国政府の韓国大使館の証明書その他手続をとらないですぐできるわけですか。
  148. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 さようでございます。
  149. 守島伍郎

    ○守島委員 それから永住許可の問題は二、三年後の問題で、それから先ほどから申します通りに、できるだけ大使館の旅券をとつていただきたいが、そういう場合にも非常にたくさんとらぬ人があるときには、私は韓国政府考えるだろうと思います。また日本の外務省も、そういう問題で日本で騒動が起つたりなんかする。非常な不平やなんか起つたりすることは困るから、これは御交渉になるだろうと思います。それからまた韓国の方でどうしても言うことを聞かぬときには、日本政府がそのとき初めてそういう人たちの救済の特例をとるだろうと思います。私の想像ですけれども、当然そうならなければなりません。二、三年後のことを今政府委員たるあなた方にお聞きしましてもわかりませんから、これで打切りますが、政府としては二、三年後に万一そういう事態が起るようなことがございましたならば、ひとつ慎重にお考えになつて、そういう人たちがほんとうに困らないように——悪い人はしかたがありませんが、ほんとうの善意の人は困らないように、数年後に十分御措置をとられるように今から考慮され、そのときになつてその措置をとられることをお願いいたしたい、これを希望いたしまして、私の質問を打切ります。
  150. 成田知巳

    成田委員 関連して。今守島さんから非常に情理を尽した、自由党には珍しい御質問があつたのですが、それに対しまして永住許可は、今守島さんは二、三年後と言われましたが、政府答弁は多分一、二年後と言われました。一、二年と二、三年とでは相当な開きがあるのです。大体確実な見通しとしては、何年後に永住許可申請の問題が起きるか、ひとつ御答弁願いたい。
  151. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点は日韓会談でやつておりますので、大体今お話の出ておりますようなつ数字と大した開きはないだろうと思います。
  152. 成田知巳

    成田委員 守島さんは二、三年と言うので、二、三年後にそういう問題が起きたときに善処するような法律政府はつくれ、それは信頼している、こう言われているのですが、もしこれが二、三年でなくして、半年ということになりましたら、やはり半年後その問題が起きたときに、ただちに守島さんのお考えになつているような法案をおつくりになる意思があるかどうか、承りたいと思います。
  153. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 少くとも一年以内には起きないだろうと思います。
  154. 仲内憲治

    仲内委員長 官房長が見えておりますから、成田君、質疑を願います。
  155. 成田知巳

    成田委員 大江さんに二月二十一日の予算委員会第二分科会で私強制送還の予定人員を、予算書には一万三千人と載つておりますが、その内容お尋ねいたしましたところ、現行犯が三千六百三十、登録令違反が二千三百、臨時措置違反が八十、それから結核による退去者が三百、貧困者の退去が五千三百五十、麻薬によつて逮捕された者が四十、暴力団体として指定された者が千三百、これを合計いたしますと、ちようど一万三千人になるのです。内容の善悪は別といたしましまことに確実な資料をお出しになつた、こう考えております。ところが、一昨日でございましたか、鈴木さんにこの問題をお尋ねしますと、これは守島さんの御意見で、政府調査して、さらに正確な回答をしろということで、きのう鈴木政府委員から御答弁なつたところを聞きますと、全然内容が違う。少しの出入りは同じ政府でもあり得ると思うのですが、全然内容が違つているので、どちらが正しいか私たちはわからない。ただ私の印象としましては、大江さんはまことに自信を持つて詳細な数字をあげられた。しかも一万三千という数字がちやんと出て来ている。鈴木さんは私の質問に対して最初数字の発表をしなかつたが、急遽数字を整えられて御答弁なつたのではないかと思うのでありまして、大江さんの数字が私は正しいと考えている。現に二十一日の予算委員会第二分科会で、大江さんからこういう答弁があつた。私がこれじや予算書に上つている不正入国者の強制送還費というものは問題にならぬじやないか、不正入国はほとんどないじやないかと言つたら、鈴木さん自身はその点を認められて、「不法入国という範疇では、お話通りすでに正当に入つておる者についてこれを不法入国者とつ断定しますことは、言葉の上から誤りであると思います」と言つて鈴木さん自身認められておるのです。そういう点からいいましても、大江さんの言われた数字が正しいと思う。きようの鈴木さんの御意見では、大江さんのは何か仮の資料を報告したのだというような答弁だつたのですが、その間の経緯を承りたいと思います。
  156. 大江晃

    ○大江政府委員 ただいま成田委員から御質問の点につきましてお答えいたしますが、当時非常に取急ぎまして、まだ研究中の、しかも古い資料を私下用意に発表いたしましたので、これは私の手落ちでございまして、昨日鈴木政府委員から申し上げた数字によつて御了承願いたいと思います。私は非常に自信を持つて申し上げたわけじやなくて、むしろ非常に自信がなかつた。と申しますのは、弁解するわけではございませんが、あのとき入国管理庁の政府委員の方がおられなくて、私は係の者の資料によりまして、それを十分検討いたさないで申し上げたので、これは私の手落ちでございますから、さよう御了承願いたいと思います。
  157. 成田知巳

    成田委員 大江さんは忠ならんと欲してわざわざみずから責任をかぶつていらつしやるのですが、これが犯罪だつたらたいへんです。国会の答弁だから、そう問題にならないと軽くお考えになつているかもしれませんが、問題は、大江さんとしては自分が誤りだと言つて、責任をかぶられても大した問題じやないと思いますが、私たちの受けた印象では、大江さんの言われるのはほんとうだと思うのです。現に先ほど申しましたように、鈴木さん自身その数字を根拠として不法入国云々と言つたのは誤りであるということをお認めになつている。しかも不用意に言われたというのですが、これだけの正確な数字が不用意に出るはずはないと思うのです。少しばかりの数字の出入りは、これは私たちは資料だからあろうと思いますが、鈴木さんの示された数字とは根本的に違つている。もし大江さんの言われたことが事実だとすれば、全然でたらめの数字を御発表になつたとしか解釈できない。それじやまつたくでたらめの数字を委員会で御発表になつたのですか。
  158. 大江晃

    ○大江政府委員 決してでたらめの数字ではないのであります。これはまだ結論を得ない古い研究中の資料だつたのでございまして、昨日鈴木政府委員から申し上げた数字によつて今後の御検討を願いたいと思います。
  159. 成田知巳

    成田委員 大江さんが政府に忠ならんとするあなたの気持はわかりますから、私はこれ以上申し上げません。
  160. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  161. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はいろいろとお尋ねしたいことがありますけれども、便宜しただいま問題になりました永住許可の問題につきまして、今までになされた質問応答を多少整理しながら、残された問題点につき、御質問申し上げてみたいと思う。  現在中国の人々、朝鮮の人々がこの法案を非常に重大視されておりますが、この出入国管理令法律化は、今後日本に出入国する外国人を管理することを目的とした法律の制定であるという説明にはなつておりますけれども、実際には、終戦前から長く日本にん在留しておりますこれらの国の人々を対象といたしまして、強制退去の方法で追放することを目的としておるのではなかろうか、こういう心配なり不安なりが今非常に濃くただよつているのであります。委員会の審議も自然そういう点に集中されて来たのであります。そこで私もこの問題につきましてお尋ねいたしますが、最初は永住許可の問題について若干御質問いたします。それから強制退去の問題につきましては、まだあまり質問が出ておりませんので、それに触れてみたいと思います。  大体今までの質疑を総合してみて、まず永住許可の問題でありますが、これを法文の上から研究いたしますと、要するに、管理令第二十二条の問題であると思うのであります。そこでこの管理令第二十二条に含まれております問題は、第一項の問題は国籍証明書の問題を中心とする問題であり、それから第二項は、先ほど申しましたように、管理庁長官によつて申請者が永住許可条件に適合するものであるかどうかということを判断されるその条件の問題である。こういうふうに二つにわけて考えられると思います。  そこで永住許可の問題を取上げてみますと、永住許可につきましては、今回の改正法律案によりますと、二つの場合が示されているのであります。一つは、中国大陸出身者に関するものと、それからいま一つは、従来日本人でありましたが、平和条約発効によりまして外国人となる人、すなわち法案朝鮮人及び台湾人という名前で呼ばれておる人々、この新たに外国人となる人人に関するもの、この二つの種類の外国人対象となつて、別々の取扱いがなされておるということ、このことがまず第一に指摘できます。それは何であるかと申しますと、第一に、在留資格なくして在留する期間について、同じように外国人であるとは申しましても、この二つの種類の外国人について差異が設けられておるのであります。中国大陸出身者については、この法律施行の日から六箇月間は在留資格なくして日本在留し得る、こうなつております。ところが、法案朝鮮人及び台湾人という名称を用いております新たな外国人に対しましては、別に法律の定めるところによりまして、在留期間並びに在留資格が定められる、こういうふうになつているのでありまして、ここに在留資格なくして日本に滞留し得る期間という問題について、この二つの種類の外国人について別個の規定が設けられておるのであります。そこでまず朝鮮人並びに台湾人についてでありますが、これは今申しましたように、別に法律在留期間並びに在留資格を定めるということが、改正法律案条文の中に現われております。永住許可を得ようとするときの条件在留期間、資格等につきまして、朝鮮人及び台湾人の場合は、新たに立法するということが書いてあります。中国人の場合には六箇月という期間がきめられてしまつておるのでありまして、その六箇月の間に永住許可の問題が解決しなければ、非常にむずかしい問題が起ることになる。ことに許可の申請の期間は、中国人の場合にはわずか三箇月でありまして、三箇月の間に永住許可の申請をしなければならぬ。もし許可の問題が決定しないままで六箇月たてば、存留資格なくして日本在留する期間は経過してしまう。朝鮮人台湾人の場合には、別に定める法律によつてこのことがきまるのでありますから、それほど急迫した問題は、ないと思います。両者にはこの差があるのです。在留資格なくして日本在留し得る期間についてこのような差があるだけでなくて、さらに第二十二条の適用にあたりまして、別の問題がさらにある。先ほども問題になりましたが、この第二十二条の第二項は朝鮮人及び台湾人には適用しない、こう言われたのでありますが、これは立法によつて適用しないことにする、言いかえれば、適用しないという法律をつくるという御趣旨でありますか、それとも単なる行政上の手心として、行政官の単なる技術上の取扱いとして、第二十二条二項の適用をしないというだけのことでありますか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  162. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それは立法上の手続によつて適用しないという措置をとるのであります。
  163. 黒田寿男

    ○黒田委員 先ほどそうお聞きしたのでありますが、念のためにあらためて御質問申し上げてみたのです。そうしますと、中国人の場合はどうなるかという問題が起ります。別に定める法律によつて在留期間及び資格をきめるというのは、朝鮮人及び台湾人に対する場合でありまして、中国人の場合はこういう規定が法文の上に現われていないので、そこで中国人に対する場合はどうなるか、法律によつて約束されておりませんから、中国人の場合はどうであるかということをお聞きしてみたいと思います。
  164. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 中国の方は、先ほど御質問の中にありましたように、朝鮮台湾とは別個でございまして、第二十二条の永住許可手続によつてやるわけであります。
  165. 黒田寿男

    ○黒田委員 はつきり聞えなかつたのですが、中国人の場合は、やはり第二十二条が全部適用される、こうおつしやるのですか。
  166. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 中国人で台湾人以外の者は第二十二条の手続によりまして——永住許可を申請する者については第二十二条の適用をするわけであります。
  167. 黒田寿男

    ○黒田委員 これで大分問題が明らかになりました。しかしこれは相当に重要な問題だろうと思います。先ほど第二十二条第二項の適用をしないとおつしやいましたが、他の委員諸君の中には、今日まで永年わが国に在住しておる人で初めから外国人であつた者と、それから新たに外国人になる者と、そのいずれもが将来永住の希望を持つておりますときに、第二十二条の第二項は両方に適用されないというふうに、あるいはお聞きになつた方があるかもしれないが、私はそこに問題があると思いましたので、特にあらためてお尋ねしてみたのであります。念のためにいま一度お聞きしますが、第二十二条第二項の適用は、この出入国管理令の一部改正に伴う経過規定の第二に規定してあります「昭和二十年九月二日以前から引き続き外国人として本邦在留する者、」これは主として中国人の場合がこれに当るものと思いますが、この者には適用する、こうおつしやるのですか。これは相当重大な問題であると思いますので、お聞きしておきます。
  168. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 お尋ねの要点は、まず終戦前からおります中国人、その他中国人に限らず一般の外国人、たとえば白系ロシア人とかいろいろな外国人がおりますが、こういつた人たちは、この法律施行になりますと、つまり平和条約発効と同時に、この第二条第一項の第二号といたしまして、新しく在留資格を申請しなければいけないという規定でございます。従いまして、まずこの第二条の規定従つて終戦前からおる中国人で、永住許可を得たい者は永住許可を申請するし、それから私は期限付でいいという者は期限付の申請をする。従いまして、永住許可を申請する場合は、この管理令第二十二条に従つて永住許可の申請をする。そしてまた期限付の資格を取得しようとする者は、その前の第二十条の資格変更の規定従つて新しい資格を申請していただく、かようなことであります。その意味は、御承知の通り終戦前からおりますこういつた外国人の方々は、元の内務省が所管しておりました時代に、内務省令による出入国管理と申しますかの規定従つてつて来た方々でございまして、管理令によるいわゆる在留資格とか永住権とかいうようなものが実はなかつたわけであります。その当時の扱いといたしましては、滞邦許可といいますか、期限付で切りかえて行くというような制度になつておつたようでございます。それが終戦後になりまして、総司令部の外国人管理ということになりまして、日本側のそういつた措置が今日まで実はとられていなかつたわけであります。従いまして、現在こういつた方々は、何ら管理令による在留資格とか、在留期間という定めがないままで今日まで来ておる。平和回復と同時に、日本の管理制度というものが総司令部の権限からはずれまして、日本側が自主権を持つ。そういう意味合いから、終戦前からおる方々に対しても管理令を適用する。そこでまず問題になるのは、在留資格在留期間というものがこういう人たちにはないから、この第二十二条の二項によりまして管理令による在留資格在留期間を申請してください、こういうことになつておるわけであります。従つて在留資格を申請する人は、永住を希望するものは永住許可の申請をすればいい。私は永住許可の必要はない、期限付でいいという人は、第二十条の期限付の資格を申請されればいい、かような趣旨であります。
  169. 黒田寿男

    ○黒田委員 私が心配しておりましたように、政府の御趣旨は、はつきり区別されておるということであります。これは中国の人に対しては、非常に不安を与える問題を提起するものではなかろうかと考えますし、先ほど申しました通り、今日まで不安を感じて来たのはこの点ですが、その不安は解消されないことになると思います。そこで法文の解釈はそうであるといたしまして、それではお尋ねいたしますが、かようにいたしまして、中国人を含む外国人に対するもの、これには白系ロシヤ人その他若干の外国人がありましようが、これらの外国人のことは問題になつておりません。今日主として問題になつておりますのは、大陸出身の中国人であります。その人々に対するものと、それから今申しましたように朝鮮人及び台湾人という、新たに外国人になるこの外国人に対するものとの間に、今はつきりいたしましたような区別が存在するということになります。そうなつて参りますと、次に起りますことは、先ほどから問題になつております国籍証明書の問題と、それから第二十二条第二項の問題であります。朝鮮人及び台湾人につきましては、第二十二条第二項の問題は大体解決したと私は了承いたしましよう。必ず第二十二条第二項の適用を除外する立法がなされるのだという政府の御言明を信ずることにいたします。が、中国大陸出身の人々につきましては、第二十二条第二項の適用の問題がありますから、相当これは大きな問題になるのではないかと思います。そこでお尋ねいたしますが、第二十二条第二項、本文の方はあとにいたしまして、そのあとに一、二と示されておりますその一の方の、素行が善良であるという認定、この認定を受けなければ、従来長い間日本に住んでいた中国大陸出身の人は、今後永住許可を受けることができないということになるのであります。そこで素行が善良であるというのは何のことであるか。先ほど林君からカフエーに通つてもどうこう言われるのではないかというようなお話がありましたけれども、これはきわめて卑近な比喩でありまして、私どもはカフエーにちよつと行つたからただちに善良であるとかないとかいう問題が起るというふうには考えません。もつと明確な標準がなければならぬと私どもは考えるのであります。この点を政府はどういうふうにお考えになつておりますか。素行が善良であるといなとの決定の基準、これをもう少し明確にお聞かせ願つておきませんと、これは大陸出身の中国の方には非常に不安であると考えます。たとえばこのいわゆる素行の問題の中に、思想の問題というものも含めるのか。彼は資本主義を肯定しない思想を持つておるから、これは素行が善良でないというように認定するのか。法律の問題としてこんなふうに考えたら、これは切りがないのであります。これは法律の問題ではないと思うのであります。法律の問題として善良であるかいなかということをきめる場合は、そのようなぼんやりした基準であつてはならないと思います。法律上善良であるかいなかの基準を、ぜひここでお示し願いたいと思います。
  170. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 素行が善良であるということの基準につきましてのお尋ねは、先ほど一応お答えをいたしたのでありますが、一つ基準といたしましては、少くともこういうことが基準になると思います。それはかつて犯罪を犯したことがなかつた、刑罰を受けなかつたというようなことの証明があれば、それは素行が善良であつたということの証明になると思います。
  171. 黒田寿男

    ○黒田委員 いわゆる前科者でないという証明ができれば、素行が善良であるというこの法文の規定をパスできる条件になる、こういうように解釈してよろしいでしようか。これは非常に重要な問題ですから、念のためにお聞きしておきます。それでよろしいでしようか。しかしこれにも問題がある。たとい前科者であるといたしましても、現在その前非を悔いておれば、かえつて前科者でない人よりも、もつとりつぱな人間になつておるかもしれません。前科者であるとか、前科者でないとかということ——政府は簡單にお考えになつておるようでありますけれども、私どもこの標準でその人物が善良であるかどうかをきめるのは、形式的には決定の標準として非常に便利な標準のように考えられますけれども、しかしもつと深く考えますと、人間が善良であるかどうかという問題を、前科者かいなかという標準できめてはならぬと私は思います。しかしこれは議論になりますから、政府の御見解を承る程度にしておきます。  さらに私が質問したいと思いますことは、そういう標準だけかということであります。何かほかにいろいろと政府基準を持つておいでになるのではないかということであります。
  172. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今のお尋ねは、特に朝鮮台湾人たちに対しまして、中国人については取扱い上非常な差ができて来るという前提でのお尋ねと思います。その点につきまして、中国の人で従来から長いこと日本におつた人たちに対する永住許可の問題につきましては、従来その人たちが平穏に日本に生活しておられたという事実を基礎にしまして、好意をもつて扱うという趣旨でこの素行の善良というようなことも考えて参りたいと思います。
  173. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、大体それ以上には第三十二条第二項の一の素行善良の条件というものに関するものはない、こういうふうに解釈してよろしいのですね。非常にくどいようでありますけれども、よくお伺いしておきませんと、こういう漠然たる規定が、それを適用される者には一番恐ろしい。こういう規定適用で人権の蹂躪、基本的人権の無視というようなことがよく起るのです。漠然たる規定が一番あぶない。それで私はこのようにしつつこくお尋ねしておるのであります。長い間日本に住んでおつて、前科を犯したことのないような者は、大体この条件に当てはまる、素行善良であると認定するとおつしやいます、その通り政府の御解釈として承つておきます。ところがいろいろとうわさに聞くのでありますが、たとえばこの管理令の第五条に当るようなものを、善良でないというように御解釈になるのではなかろうかという心配をしておる者もなきにしもあらずでありますが、そういうことはございませんでしようか。念のためにお聞きしておきます。
  174. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 第五条の例をお引きになりましたが、これは大体第二十四条と同じような条文になつておりまして、第二十四条は、これに当れば強制退去はさせられてもしかたがないという条項一つになるわけであります。これに当るという場合には善良であるということは言えないのではないかと思われます。
  175. 黒田寿男

    ○黒田委員 しかし初めからそういうものを予想しておるというのではないのでございましようね、それだけお聞きしておきたい。
  176. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 われわれの立法のときには、あるいは今後におきましても、そういうような、返すことを主にしてこの立法をしておるのではないのでありまして、特に従来から日本におられたというような人に対しては、最も好意をもつて考えるという前提で、その精神でこの法を運営して参りたいと思います。
  177. 黒田寿男

    ○黒田委員 要するに今までのお話は、とにかく今まで在留しておつたのであるから、前科者でなければ——前科者を標準にするのもどうかと思いますけれども、前科というものがなければ、一応その他のことは考えないという御趣旨である。今後のことはあるいは第二十四条で、——今後入国して来る者には第五条の問題もあるかもしれないけれども、ともかく今まで長い間在留しておつた者については第五条とか第二十四条という問題は全然考えない。一応前科者でなければその人の人物考査とかなんとかそんなことは全然しない。思想がどうこうというようなことも考えない。前科者でなければ一応第二十二条の第二項に該当するものとして、永住許可条件に該当するというふうに見る。これが長官のおつしやるきわめて善意な解釈ということだと思います。そういうように聞かしておいていただけばけつこうである。この前科者の問題もあとで聞くかもわかりませんけれども、とにかくあらためて第五条あるいは第二十四条を問題にしない。素行が善良であるかどうかということを条件として、在来の永年居住者について、将来永住許可を与える場合に、新たに素行問題を考え直すというようなことのないようにすべきだと私は考えましたので、この質問をしてみたのであります。それでは私はこの点についてはこれで終ります。
  178. 成田知巳

    成田委員 関連して伺います。今の黒田さんの御質問に対しまして、第二十二条関係で、二十年九月二日前に長く日本にいた者は永住許可を与える方針であるということを明確にされたのでありますが、強制送還の一万三千人の中に、従来日本に長くいた人を何人くらい強制送還対象として政府はおあげになつているか、その数字を承りたい。それから先ほど大江さんが、自分の説明はまつたく誤りであつた、結局鈴木さんの数字が正しいと言つてあやまられたのでありますが、この数字をもう一度はつきりいたしておきたいと思います。強制送還一万三千人の内訳として、そのうち従来長くいた人がどれだけ入つておるかということをお示し願いたい。
  179. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 一万三千人のうちに従来おつた人が何人くらいかというお尋ねでございますが、実はそれははつきりわかりませんので、全体としまして、従来の実績で、密入国をして来た人たちの確実に検挙されました人数、それからその検挙をします当時に、目撃したり何かしまして、あれは密航者であるという確認を得ました数字、それから過去において登録令違反であげられました数字、それから脱船をするというような、いわゆる密出国で逃げた者、それを扱いました数字、そういうような過去の実績による数字をきめたのが約一万二千になるわけであります。そのほかに新しい管理令によつて幾分か返すことになるであろうというようなことで、その内訳について何が幾つというふうにあげるわけに参りませんので、その一割を足しまして一万三千という数字が出ておるのであります。
  180. 成田知巳

    成田委員 一万三千の登録令違反と、密入国、脱船、その他この数字をはつきりさしていただきたいのです。何度もかわりますと非常に迷惑でありますから。それから、二十年九月二日前に永住していた人たちがどれくらい対象になるかということはおわかりになりませんか。大体の割合でもおわかりにならないかどうか、お尋ねいたします。
  181. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 密入国者の検挙人員は、昭和二十一年から二十五年までの五箇年間の集計が四万二千三百六十五でございまして、それを年平均いたしまして八千六百七十三名となります。それから密入国者で、いわゆる逃亡してそれを確認した数字でありますが、これは二十一年から二十五年の総計が一万一千八十二名になります。平均しまして年二千二百十六名。それから登録令違反人員でありますが、これは昭和二十五年の十月、十一月、十二月の三箇月の実績でありますが、三箇月で百二名で、これを年に推計しますと四百八名になるわけであります。それから船から逃げた者——主として船員でありますが、それが昭和二十五年におきましては六百六十名でございます。今申し上げました年平均の数字を足しますと、それが一万一千九百五十七名となるのであります。これにその一割をかけました数字が一千百九十五名になりますが、全部集計いたしますと一万三千百五十二名になります。これを端数を捨てまして一万三千名という予算上の計数といたしたのでございます。
  182. 成田知巳

    成田委員 そういたしますと、この基礎は、密入国者で、逃亡、登録令違反、脱船の数を、昭和二十一年以後のもので計算の基礎をお立てになつたもので、二十年九月二日前のものはこの数字の基礎になつていないわけですね。数字的に見ますと、長くいた人は強制送還対象には一応なつていないと解釈できますね。
  183. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  184. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は今まで、永住許可の問題に関連して第二十二条第二項の問題を中心に質問いたしましたが、次に同じく第二十二条の関連問題といたしまして、国籍証明書の問題について多少お尋ねしてみたいと思います。これは今までの他の委員諸君政府との質疑によつて大分明らかになつたとは思いますけれども、念のためにいま少しお伺いしてみたいと思います。これは元来国籍証明書の問題だけでなくて、管理令一般の問題でありますが、先ほどもちよつとこの問題に触れましたように、政府はこの管理令を、一般に認められた国際慣行を十分に尊重して、これに一致せしめるように制定した、こういうような御趣旨の説明であつたように拝聴いたしましたがどうも私にはそう思われないのであります。一般に認められた国際慣行に一致せしめるということでありますならば、同時に、私は昨日も問題にしましたが、世界人権宣言の内容にも一致せしめたものでなければならぬ。外国人に対する差別待遇を、人権及び自由に関する限りはしてはならぬ——財産関係などの問題では、日本人外国人との間にいろいろと違つた条件で処置しなければならぬ場合が起きる。それは私は問題にするのではありません。自由、人権というようなものにつきましては、世界人権宣言は、外国人であるからといつて差別待遇をしてはならぬ、そういう根本的な思想を表示しております。私はこういう角度から見まして、政府の今までの御答弁や、それからこの法律案それ自身の内容から見まして、ちよつと納得のできないものがあるのであります。そして、私は、国籍証明の問題につきましても問題がある、こう思うのであります。国籍証明につきましては、先ほどから問題になりましたように、中国人の場合は従来から外国人であつた、従つて日本在留するにつきまして、最近は外国人登録証明書というものを持つております。それ以前にもまたそれぞれの手続がなされておつたに違いないと思います。中国人の場合は二通り考えられるのであります。これはまだ決定したことではありませんが、政府は蒋介石政権の中華民国というものに、台湾が帰属するようになるだろうという前提のもとに、外交を進めておいでになるようであります。私どもはそんなことは少しも決定された問題とも何とも思いませんけれども、かりにそういうふうになるといたしまして、台湾人で蒋介石政権に忠誠を誓つて、蒋介石政権のいうところのいわゆる中国政府国籍証明を持つて永住許可を申請する者もありましよう。私はこの場合は問題はないと思います。それ以外の中国人は、外国人登録証明書を今は持つていると思うのでありますが、これの切りかえだけで国籍証明書にかわるものとして取扱いができるでありましようかどうでありまりしようか。
  185. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 登録の方におきましては、現在持つております外国人登録証明書を提出されれば、切りかえができるわけでありますが、永住許可を新たに得られます際には、またその手続を経なければなりません。
  186. 黒田寿男

    ○黒田委員 先ほど、今まで持つているものの切りかえでよろしいというようなお話と承りましたが、実はなおその点を確かめてみたのであります。そういたしますと、もとより外国人でありますから、日本在留しようと思えば、登録証明書がいりますから、期限が切れれば、その切りかえをしなければならぬということは明らかであります。私が今問題にしておりますのは、長い間わが国に住んでいて、前科もなく、かりにまた前科があつたとしましても、前非を悔い、善良な市民として生活しておるような人々、しかして蒋介石の中国政府の支配下にあるという意味での中国国籍を持つことを欲しない人々の問題であります。これらの人々が国籍証明書を得なければならないといいましても、これはこの委員会で最初から問題になつておりますように、北京政府国籍証明書をもらうということは、事実上できないのでありますから、そこで便法々々と言つておられるのは、中国代表部による国籍証明書以外のものでも、国籍証明書にかわるものとして取扱うということにしなければ、第二十二条で永住許可の申請をすることができないと思う。先ほどからどうもわかつたようでわからないので、もう一度お尋ねしてみたのですが、どうも結局わかつていないことになつたようです。これは非常に問題であると思います。そうすると、どうされるのでありますか。新たな立法をするか、しないかという問題もありましたけれども、それはきわめてたよりないことでありまして、朝鮮人及び台湾人の場合は新たに立法をする、はつきりこの法律案でそうなつておりますから、この法律で定める期間の間は朝鮮人及び台湾人は安心できると思いますけれども、同じこの法律案の中の規定によれば、中国大陸出身者は六箇月しか、在留資格なくしては、在留できないから、永住資格を得ようとする場合に問題が起る。どうしても国籍証明書の問題は、この委員会で何らか見通しを立てておかねばならない。いずれかはつきりさせておかなければならぬ問題だと考えます。私が先ほどから世界人権宣言の問題を問題としておりますのも、世界人権宣言には、第二条によつて——これは申すまでもなく御承知であろうと思いますけれども、人種、あるいは政治上の意見などによつて国籍に関する権利については差別待遇を受けないのだ、そういう差別をすべきではないということがはつきりと書いてあるのです。世界人権宣言にしるされておりますような諸種の権利を享有するということについては、その人々の属しております国がどのような民族の構成している国でありましようとも、またどのような政治的体制を持つております国でありましようとも、そういうことによつて、この人権宣言において表示せられておりますような諸種の権利の享有について差別すべきではない、これが人権宣言の精神であると考えます。そうしてこの権利の中には、国籍に関する権利というものもはつきりと第十五条において示されておりますから、現在の国際情勢の特別な事情によりまして、国籍証明書をとることができない多数の中国出身の人々に対しましては、何か国籍証明書にかわるものをもつて国籍証明書同様の効果を認めるという便法をとらなければ、問題の解決になりません。もう一度この点について御意見をお聞かせ願いたいと思います。私は先ほどは、今まで持つておりました登録証明書の切りかえで簡単にやれるのだというふうにもとれないこともないように思いましたけれども、それなら非常に簡単な話であるが、念のためにお尋ねしたいのであります。
  187. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今のお尋ねまことにごもつともで、われわれもその通り考えているのであります。中国の人で国籍証明書を提出されることのできる人は提出されたらよろしい。国籍証明書をどうとても提出することのできない人で、やはり永住許可を欲する方は、その他の書類によりまして、要するに素行であるとか、独立生計であるとか、そういうような条件において永住許可の資格があるという方でありますれば、国籍証明書いかんはさておいて手続を進めることができると思います。
  188. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいまおつしやつたので大分わかつて来ましたが、なお確かめておきたいことは、国籍証明書がなくても、第二十二条の他の条件に該当すればパスするということは、国籍証明書はなくてもよろしいという意味ですか、それとも国籍証明書がなければ、何かそれにかわるような他の書類が必要であると言われるのでありますか。
  189. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 かわるべきものはお持ちであろうと思うのであります。たとえば今までに日本に入られました際に何か持つて来ておられます。その当り時のパスポートなり、あるいは何かの書類を持つておられますから、そういうものでけつこうであります。
  190. 黒田寿男

    ○黒田委員 ごく最近に来た人は別としまして、中国の人にもおじいさんの時分から来ておる。そのおじいさんはまだ生きておる。こういう非常に古くから住んでいる人もある。そんな人がはたして日本に初めて渡航しましたときの何らかの証明書を持つておりますかどうか。また長いこと時間が経過しておるので紛失した、あるいは地震や火事や、ことに戦災もありましたので焼いてしまつたというようなことも考えられる。だからこの国籍証明書にかわる書類の内容をもう少ししろうとにも安心できるように、こういうものならばいいのだというふうにお示し願いたい。たとえば最近の登録証明書ならこれはきわめて簡単明瞭でよくわかるのでありますが、それで足りないとするならば、私はしろうとでありますからよくわかりませんが、およそこういうものならばよかろうというふうにお示し願えば、中国の方が非常に安心ができると思いますので、それをお聞きしてみたいと思います。
  191. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 どういうものということをここではつきり申し上げるわけにも参りませんが、何かそういう資料があればよろしいと思います。
  192. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、常識上中国大陸出身の者である、朝鮮人でもなく、白系ロシヤ人でもなく、日本人でもない、中国人だということが一応文書の上で推定できるものであれば、あえて政府関係証明書的なものでなくてもよろしいということになるのでありましようか、そういうものでありますれば、これは容易に証明できると思います。何か政府なり政府の他の諸機関なりの証明したものでなければ、いわゆる公文書のようなものでなければだめだということであれば、私が先ほど申し上げましたような心配が起る。中国大陸出身の者であるということが、常識上証明できるものであればよろしいというのならば、私はそれで一応安心して政府の御答弁に満足するわけでありますが、そう解釈してよろしいですか。
  193. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 公文書がありますことは望ましいのでありますが、それがやむを得ず手に入らないというような場合には、もちろん黒田委員お話通りでさしつかえないと思います。
  194. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと関連して。今の条文をずつと調べてみますと、第二十二条、「在留資格を変更しようとする外国人で第四条第一項第十四号に該当する者としての在留資格への変更を希望するものは、外務省令で定める手続により、」この外務省令で定めるというのは出入国管理令施行規則だと思うのですが、施行規則の第二十一条によりますと、「第三条第三項に掲げる書類」とありまして、その第一に国籍証明書とありまして、これはどうしても国籍証明書が必要だと思いますが、今あなたの言われるような台湾以外の中国の人で日本にいて、それで国籍証明書がなくても永住資格の申請ができるというのは、これは取扱い上そうするというのですか。何か法律的な根拠がありますか、あつたらはつきり示していただきたい。
  195. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 いずれこの法案通りますれば、省令以下改正するつもりでございます。
  196. 林百郎

    ○林(百)委員 施行規則も……。
  197. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 はあ。
  198. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、そのとき国籍証明書にかわるものというような条項一つ入れるということをここではつきりあなたの口から保証できますか。
  199. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りにいたしたいと思つております。
  200. 黒田寿男

    ○黒田委員 それで一応中国の人の場合はわかりました。それから次に朝鮮人に対しましては、これは法律で定めます場合に、私が先ほど申しましたように、韓国政府による国籍証明書以外のものでも同様に取扱える、こういうように解釈してさしつかえないでしようか。朝鮮人の場合は、法律をつくると書いてありますから、その法律できめられるのでありますか。この点ちよつとお伺いしたいと思います。
  201. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 朝鮮の場合は、別に法律で定めるということになつております。
  202. 黒田寿男

    ○黒田委員 その法律で、私がただいま申しましたような便法をお定めになる、こう期待してよろしいですか。中国人の場合は大体わかりましたが、朝鮮人の場合もそう期待してよろしいのですか。
  203. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 朝鮮の問題につきましては、中国とは扱いが違いますので、別途法律で設けるという機会はございますが、ただいまお尋ねのような点につきましては、中国とは取扱いを異にするのはやむを得ないと思います。
  204. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、少ししつつこいようでありますけれども、はつきりしませんのでお伺いいたしますが、この法律に表示してあります朝鮮人で、いわゆる大韓民国国籍証明書を提出することのできぬ人は、結局どうなるかわからないということになつてしまう。これは非常に不安なのであります。将来朝鮮人については在留資格並びに在留期間について法律できめる、こういうことが書いてありますが、この法律内容の中に、私が今申しましたように国籍証明書にかわるものでよいということを入れる。李承晩政府証明書を持たぬ人については、何かそういう便法を設けなければ、先ほど申しました世界人権宣言第二条で、すべての国は、世界人類の人権及び自由を守るべきだとする表現に反することになる。右のように表現してありまして、政治上の意見の差というようなことによりまして、国籍に対する権利についての差別待遇をするということは間違つている。大韓民国政府国籍を持たなくても、事実問題としまして三十八度以北には、南鮮に劣らぬ広さの面積もありますし、人口もありますし、それらの地域の政治制度を支持する朝鮮人も多数あるということは、十分私どもに考えられる。政治的意見が違うから、日本政府は共産主義を欲しないから、共産主義者は差別待遇をしてもいいとか、人権を蹂躙してもいいというようなことは断じて私ども考えてはならぬと思うのです。その人々らが何か刑事上の問題を起すというようなことがあれば、これはアメリカ人であろうが朝鮮人であろうが、どこの国の人であろうが、日本法律で処分しなければならないけれども、しかし政治的意見が違う、政治的立場が違うからというようなことで、国籍について持ち得る権利までに差別待遇を与えるということは、これは世界人権宣言の精神に対する大きな違反であると考えます。また私はこれは人道問題だと考えます。これは政府はのんきにお考えになつているかもわかりませんけれども、非常に私は大きな人道問題だと思う。それからなお昨日も申しましたように、人権宣言それ自身にも直接こういう問題に触れたところもある。第十四条がそれであります。昨日も申しました通り、戦争犯罪人でない限りは、政治上の意見が違うとか、宗教上の意見が違うとかいうことによつて差別してはならぬ、それどころではない、そういうことのために逃げて来た者があれば、むしろそれを保護してやる、そういう気持で国と国、国民と国民とは対処しなければならぬ、それが人権宣言の精神である、ブラジルの代表さえこれほどの積極的な議論を述べているのであります。私は吉田総理の共産党ぎらい、共産主義ぎらいはよく知つておりますが、そういうことに私ども日本人が追随して現在の日本政府のそういう政府的見解に追随して、北鮮に国籍を持とうとする人には、国籍証明書にかわる何らかの便法を設けるということを拒否する、そのために今回の法律改正によりまして、それが強制退去の理由にされる、そういうことになりますと、これは日本人としても私は実に大なる恥辱であると考えます。日本人は決してそういう世界人権宣言に違反するようなことをしてはなりません。一箇の吉田政府の見解によりまして、私ども日本人は動かされるものではない。外国人とはよきつき合いをしなければならない。
  205. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君、簡単に願います。
  206. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうも政府の見解がはつきりしないものですから、つい私は演説めいた言い方になつてしまつたのですが、決して私は演説なんかやるようなつもりで申し上げているのではありません。これは日本人の人間性の問題である。日本人というものはそんな冷酷な人間か、そんな非人間的な人間か、他人の生命に対して何らの考慮を払わない人間か、こういうふうに私どもは思われたくありません。私どもが他の国に対し、政治的な問題や宗教上の問題、人種上の問題等で差別を設けない正しい態度を示しておくことは、日本人自身が他日世界に伸びて行く場合に、他の国がらそういう待遇を受ける条件になるのであります。私はそう考えます。この出入国管理会は外国人に関する法律として、インターナシヨナルの性格を持つている法律であります。単なる日本人のみに関する法律ではないのであります。これは条約とか協定とかいうものではありませんから、日本が権利義務を負うものではない。そのようにも思われますけれども、広い目で見れば、私はこの出入国管理令によつて日本人外国人に対してどういう態度をとるかということは、やがて、それらの国から日本人がどういう態度をとられることになるかという交互関係のある問題だと思うのであります。そういう意味におきまして、私はこの管理令は、非常に重大な内容を持つていると考えますので、長長と私の意見を申し述べたのであります。ことに次の点だけはもう一ぺんはつきりさしておいていただきたいと思います。立法化する場合に問題になるだろうというだけでは安心できません。立法化されるときに、北鮮の国籍を持とうとする人々についても、国籍証明書にかわる何らかり便法を設けるのだということ、これは中国人の場合には、外務省令を改正してそういう条項を入れると政府は仰せられました、その同じ態度を法律化の場合にとつていただかなければ安心できません。どうしてもこの点を明らかにしておきたい。またそれをしなければ、先ほどから繰返して申しますように、世界人権宣言に違反するような非常にけちな日本人ということになります。日本人はこれからの世界に堂々と手を振つて歩かなければならぬというその出発点にあるのでありますから、この点についてみすぼらしいけちな考えは、私はやめていただかなければならぬと思う。もう一ぺんこの点についての政府の御意見を拝聴いたしたいと思います。
  207. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 重ねてのお尋ねでございますが、この点は昨日も岡崎国務大臣から非常に含蓄のあるお答えがありまして、十分おわかりのことと思うのでございますが、いずれ日韓会談もきまりまして特別の法律も出るわけでありまして、その際には十分御審議をいただきます期間もございますし、またわれわれとしましても、今お話のような点を十分考慮した考え方で進み得ると思いますので、その際に十分御討議をお願いしたいと思います。
  208. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はこの問題に関連しましてはこれ以上議論いたしません。私は決して長たらしく質問したとは思いません。この程度に質問しなければらちが明かない。そこで私はこの点は誤解ないようにお願いいたします。その問題につきましてはこれ以上政府委員お尋ねしても無理だろうと思いますが、私どもは、先ほどから繰返して申しますように、どうか世界人権宣言の趣旨に反しないようなお取扱いを、日本のために、日本政府としては必ずしてみせるというだけの気魄をもつて当られんことを希望しておきます。私はこの点についてはこれだけにしておきます。  まだあとに質問事項がありますが、ちよつとその間にお尋ねしますが、朝鮮の人からこの法律案に関連いたしまして請願書が出ております。私はこの法律案についての審議の始まります劈頭に、請願書の取扱いについて従来の例にならわずに、特にこの法律案審議中に取扱われるよう願いたい、このことを理事会にお諮り願いたいということを委員長にお願いしておきましたが、いかがなりましたでしようか。
  209. 仲内憲治

    仲内委員長 これは理事会で懇談的な会合で十分陳情を聞くということで否決されております。請願は当然入らないことになります。
  210. 黒田寿男

    ○黒田委員 いや、請願書であれば……。
  211. 仲内憲治

    仲内委員長 理事会では申合せた……。
  212. 黒田寿男

    ○黒田委員 請願書を委員会にかけないということになつたのですか。
  213. 仲内憲治

    仲内委員長 いやこの際は……。
  214. 黒田寿男

    ○黒田委員 時期を遅らせる……。
  215. 仲内憲治

    仲内委員長 そうです。
  216. 黒田寿男

    ○黒田委員 最後にかける、こういうのですか。
  217. 仲内憲治

    仲内委員長 繰上げて請願を審議するということはやらない。
  218. 黒田寿男

    ○黒田委員 それにかわることを何か委員長で……。そう理事会できまつたのなら、私は理事でありませんので、あえてどうこう申しませんが、それならばせめて懇談会でもひとつ委員長つが御主催になつて……。
  219. 仲内憲治

    仲内委員長 それはもう再三やつております。懇談ですから正式に委員長がどうこうということはやつておりませんが、私も出席して有志の主催で再三やつております。
  220. 黒田寿男

    ○黒田委員 私どもはそういう懇談会が行われたということを少しも聞いていない……。
  221. 仲内憲治

    仲内委員長 別に委員長の公式の懇談会ではありません。
  222. 黒田寿男

    ○黒田委員 公式の懇談会でなくても、請願書を審議するにかわるような懇談会であるというのならば、あなたが自分の任意選択になつたような委員だけを集めて懇談されるというのは……。
  223. 仲内憲治

    仲内委員長 私はむしろひつぱり出されたのです。私が任意に選んだのではない。
  224. 黒田寿男

    ○黒田委員 大至急にみんなが参加して、そうやつてあげなければ、私は外国人に対する思いやりが……。
  225. 仲内憲治

    仲内委員長 おそらく黒田委員も懇談されたと思うんですが……。
  226. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は自由党の委員諸君の態度に憤慨する。こういう重大なときに出席しないで、ときどき採決でもするときにやつて来る。来てもいいかげんなことを言つて引揚げてしまう。この法案に対する重大性の認識が欠けておる。数をたのんで……。
  227. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君に御注意申し上げます。時間も過ぎておりますから、簡明に質問だけしてください。
  228. 黒田寿男

    ○黒田委員 委員長に懇談会のことをお願いしておきます。  その次の問題に進みます。この法律案には外国人に対する差別待遇がある、と私には考えられてしかたがないのであります。第二十四条の四のオ、ワ、カ、ヨこの中には、日本法律がこのような場合を規定しているものもあると思います。けれども私どもにはそうでないと思えるようなものもありますし、よくわからないものもある。そこで参考のために、オは日本法律でいえばどういう法律になるのか、ワの(1)、(2)、(3)はどういうものであるか、カはどうか、ヨはどういうものかということをちよつとお聞かせ願いたい。
  229. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 この規定はいろいろとほかの法律にも出ておる規定でございますが、大体この基礎になつております法律を申し上げますれば、団体等規正令とか国籍法、公務員法、こういつた法律の中にこういつた条文が出て来ておるのでございます。
  230. 黒田寿男

    ○黒田委員 たとえばワの(3)は労働関係調整法にこういう文句があるように思うのですが、本日でなくてもよろしゆうございますから、わかりましたら、どういう法律にこういう字句があるということを、参考のためにお伺いできればけつこうだと思います。  なお一つだけ今私が申しました範囲の中から取上げて問題にしてみたいと思いますが、それはヨの場合であります。「イからカまでに掲げる者を除く外、外務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する」ということになつておりまして、私は今のオからカまではこの字句の出ました根拠になる法律の名前は、今日でなくても後日お聞きすればよろしい、こういう根拠があるのだとおつしやられれば、それを承ればいいと思います。しかし、ヨの場合は、私どもから見れば、これは非常に危険な条文だと考えます。「外務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者」、なるほどその認定については、「あらかじめ法務総裁と協議しなければならない。」ということにはなつておりますけれども、実際にはこれは私はどんな認定でもできると思う。これに似た法律がないことはありません。それは旅券法であります。旅券法の第十三条には「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」となつております。この旅券法の第十三条の条文それ自身につきましても、私どもはこれを問題としまして、この法案が実議せられますときに、政府にいろいろと質問したのでありますけれども、それと比べてヨに当りますものには「著しく且つ直接」というような限定がないのであります。従つて非常に広く解釈できるのであります。この条文は、あいつは気に食わないと思えば、すぐ日本国の利益または公安を害する行為を行つたと認定ができないこともないような条文で、私は非常に悪条文であると考えるのであります。私どもこういう条文は削つていただかなければ承服できないのですが、一体政府はこれはどういうところを標準にしてそう言うのであるか私にはわからないのですが、ちよつとお尋ねしたい。
  231. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 この条文はどこの外国の立法例にも同様なことがございますので、この運用につきましては、もちろん例外的にこれが使われるわけでございまして、これによつて気に食わない者をどんどん退去させる、これに隠れて何かするのではないかというような御疑問があるようでありますけれども、そういう運用はいたさない考えであります。
  232. 黒田寿男

    ○黒田委員 実はこの問題については、もう少し議論をしてみたいと思いますけれども、時間も大分長くなりましたし、鈴木長官とこれ以上質問応答をやつても一向話が進まないと思います。あなたはいいかげんには適用しないとここではおつしやつても、しかし政治的にいくらでも悪用できるような条文です。これは過去の経験によりまして、こういう条文法律として現われて来たときは、私ども民間におります者は、たいへん苦労させられた経験を持つております。議論はきようはいたしませんが、これは非常に悪条文だと思います。  次に質問いたしたいと思う問題は、強制退去の事由があると認定をされまして、その審理を受ける、あるいは強制的に捜査をされる、あるいは身体の拘束を受ける、というような事態の発生いたしました場合における取扱いが、日本の刑事訴訟法あるいはその他の単行法律によりまして、憲法上基本的人権を擁護しなければならないとする立場から定められておりますような手続に比べまして、非常に簡単であり、かつ基本的人権の蹂躙の面が著しく現われておる点があると考えます。他の法律条文とは、時間がありませんから、一々対照はいたしませんが、家宅捜索をいたしますような場合に、あるいは勾留するような場合に、ことに勾留期間等につきましても、六十日は結局勾留できるようになつておつたりいたしまして、人身の保護というような面からいたしましても、日本の刑事訴訟法で日本人が取扱われる場合と、著しく差別待遇がされておると思います。それだけ外国人に対して人権の擁護、人権の尊重が足りない、こういうふうに私どもは考える。なぜこのような差別待遇をしたかということが、私には理解できない、その点をお尋ねしてみたいと思うのです。
  233. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、各条文につきましてどの点がどの程度違うかということを御指摘いただきませんと、はつきりいたさないのでございますが、われわれとしましては、ただいま仰せられたような人権蹂躙を惹起することのないようにという趣旨で、この規定をつくつておるのでありまして、お話のほどにひどい差はないと思つておるわけであります。
  234. 黒田寿男

    ○黒田委員 一々条文を対照しますれば時間がかかりますが、たとえば第二十七条以下に、裁判所の許可を得て簡単に臨検捜索、押収することができるとなつておる。そういう場合に刑事訴訟法によりますれば、いわゆる令状というものが必要でありますけれども、管理令の場合は、非常に簡単にきめられておるようであります。それから身柄を収容する、身体を拘束するというような場合も事情によれば収容令書を示さないでもやれるというように書いてある条文もあります。それから非常に大きな問題と思いますのは、強制退去の決定までの進め方である。この点は、行政官の認定によりまして、裁判の手続を経ることなくして、強制退去の決定が最終的に一応できる、と定められておる。但しこれを裁判の問題にすることもできる。行政事件訴訟特例法によりまして、なるほど、行政官の最後的強制退去の決定に対しまして、異議を申し立てることができる、裁判所の問題にすることができる、弁護人を付することもできるということにはなつておりますけれども、しかしその行政事件訴訟特例法それ自身の条文によると、裁判を提起しまして、強制執行をかりに停止してもらつても、総理大臣が異議を申し述べれば、その執行停止の処分をすることができないということになつておりまして、これでは行政官が認定しさえすれば、すなわち簡単な手続で、強制退去の理由ありとする認定をしさえすれば、結局それが最終の認定となつて強制退去しなければならぬということになる。これは非常な基本的人権の蹂躙であると私どもは考えます。日本人に対する場合と非常に取扱いが、すなわち差別がなされておると考えるのであります。いろいろとこまかく条文一つ一つ取上げますれば、まだありますけれども、時間がありませんから、おもな問題だけを取上げても、そういうような一たびにらまれたら、もうどうすることもできないというような、そういうことになるおそれがあります。そういう取扱いで外国人に対する人権を蹂躙することがあつては、これは私ども世界人権宣言の趣旨に反すると思います。私はそういう点がまず第一に差別待遇として現われておると思う。なぜこういうことをするか、これを改めないか、こうお尋ねしてみたいと思います。
  235. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 だんだんのお尋ねでございますが、承つておりますと、何かにらまれるとたちどころに返されてしまうというようなふうにも聞えるのでございますが、実はそういうことのないように、昔の外事警察というような、いわゆる警察国家の再現ということを起さないようにというので、外国人に対しましては特別な取扱いにしたい、特に司法処分ということで臨むのではなしに、行政措置として外国人強制退去の扱いについては考えて行きたい。強制退去は必ずしも罰ではないのでありまして、外国人が本来の自分の国へ帰るということが原則でありまして、決して罰というふうにわれわれは考えてないのであります。従いまして強制退去については司法処分、判決をもつて強制退去をするというようなことはどこにもないのでありまして、これは行政措置として行われる。しかしその手続は慎重にしなければならないので、いわゆる三審制度をとつておりまして、一々弁護人もつけ得ますし、証人も喚問ができるという制度になつておりますので、お話のような非常に非人道的であり、差別待遇をしておるというようなことは、私としましては最も警戒をして、そういうことのないようにという趣旨で行つておる次第であります。
  236. 黒田寿男

    ○黒田委員 私には日本の刑事裁判の手続をとらないという趣旨はよくわかります。しかしながらだからといつて強制退去の場合の手続を簡略にしてもいいということにはならない、私はそこにやはり問題があると思います。先ほども申しましたように結局裁判の問題にまで行かなければならないようなことになるとして、その道も開かれてはおる。裁判になり得るということは裁判になる前の過程は、裁判よりも簡略な、何と申しますか、裁判というほどのものではないというふうなそまつな手続になつておる。裁判に持つて行きましても、先ほど申しましたように、強制執行の停止さえ、総理大臣が異議を言えば、できないというように、非常に政治的な手心が加えられるというようなことになつております。そこで、私は、一度にらまれたら、これはもうのがれる道がないようになつておる。こういう言葉を使いますと、非常に俗に聞えますけれども、結局そういうことにならざるを得ないような規定になつておると思います。これももう少し論じたいと思いますけれども、時間がございませんから、この程度で、この問題に関しましては質問を終ります。しかし、私は政府の御所見に承服したものではございません。やはり非常な悪条文を含んでおるということだけははつきり申し上げておきます。  それから、強制退去送還先についてでありますが、第五十三条に「退去強制を受ける者は、その者の国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。」ということになつておりまして、第二項には本人の希望によりまして、六通り送還先が自由に選択できるようになつております。これによりますと、第一項では、送還先が一定せられてしまつておるように思います。第一項は強制的だというように解釈できますが、この点は非常に問題がある。世界情勢が今のような状態でありますだけに問題があると思います。私どもはその国籍、または市民権の属する国であろうと、第二項に列挙されております六つの場合であろうと、すべてこれを一箇条にまとめて、このような七つの場所に本人の希望によつて送還できるというように規定しておかなければ、ここにもまた自由権に対する侵害、下手に行けば生命に対する危険さえ発生するような結果を生ずる。このような条文に第一項はなるおそれがあると思います。この点は何とかできないものであるか、私どもはそう考えておりますが、第一項はあくまで強制的なものでありますかどうか、念のためにお聞きしてみたい。
  237. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 第一項は原則を示しておるのでありまして、国籍が非常にはつきりしておりますれば、その国籍の国の本国でその人を受入れるのが当然と思います。
  238. 黒田寿男

    ○黒田委員 これも先ほどの国籍問題、永住許可問題のところで質問いたしました問題に関連するのでありますが、かりに北鮮出身の人が北鮮に帰りたい、返すなら北鮮に返してほしい、こう思つても、その者の国籍または市民権の属する国が、かりに政府が今までおつしやるように、北鮮についてはまだどうなるかわからない、大韓民国証明のある国籍証明書を持つておる者は、その者がどの国籍であるかということがわかるけれども、北鮮の場合にそういう証明書はない。北鮮の者であるという国籍証明書もない。そういう場合には送還される者を、大韓民国国籍があるとして南鮮に送るということはできないのではなかろうか。そうすると、そういう場合には、本人の希望によつて、北の方へ送つてくれといえば北鮮に送ることになるか、この問題をちよつとお聞かせ願いたい。
  239. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 朝鮮の問題に関しましては、前回以来数次にわたつて申し上げておりますような次第で、平和条約の発効と同時に日本国籍を離れ、また日本政府としては韓国政府を唯一の相手国としておるという関係で、韓国側の国内法というものを尊重しなければなりませんので、一律に韓国政府にやるということはどうもやむを得ないというふうに思うのであります。従いまして日本にいる朝鮮人は、一応韓国が全面的にめんどうを見るということになりまして、われわれの方といたしましては、強制退去をする場合には、韓国政府を相手にして送還をするということになるわけであります。
  240. 黒田寿男

    ○黒田委員 それは非常に重大な問題であります。私が先ほどこの第五十三条は、単に自由権の侵害の問題ではなくて、場合によれば生命権に関する問題になるおそれがあると申しましたのも、ただいまのような答弁政府がされるようなそのような考えを持つておいでになるから、私はそういうようなことを申したのであります。先ほどから繰返して問題になつておりますように、大韓民国国籍を持つことを欲しない朝鮮の人があるという事実は、認めないわけに行かないのですから、世界人権宣告の精神によつて何らか便法を講じて、大韓民国国籍でなくても、それ以外の何らかの処置によりまして、大韓民国国籍以外の国籍を持つ朝鮮人の存在を認めるべきだ、これは私は世界人権宣言の精神によつて国籍問題を、現在のような特別な状態のもとにおいて扱う場合の便法であるというふうに申し上げたのであります。日本に在住する朝鮮人が、全部大韓民国国籍を強制せられる義務はない、そういうことはたれもこれを強制する権利はない、このことは世界人権宣言にもはつきり書いております。何人も国籍を強要することはできない、これは昨日も申しましたから、きようは繰返して申しませんが、現実に三十八度線以北の出身の人もある。思想上三十八度線以北の思想でなくとも、出身地プロパーとして三十八度線以北の人もあるに違いない。私は送還問題の発生を好まないのでありますけれども、かりにそういう問題が起つたとしてのことでありますが、今日本在留している朝鮮の人々の強制送還の場合に、その国籍がどうあろうと、すなわち大韓民国国籍を正式に届け出ておろうとおるまいと、その者を大韓民国国籍を持つておる者として、その国籍のある国に送還するという意味で南鮮へ送還するというのでは、これは国籍を強制することになります。そういうことが一体許されることでありましようか。それは私は明らかに世界人権宣言に反しておると思います。国籍を奪われ、またその国籍を変更する権利を否認されないというのが、国籍に関する世界人としての権利でありますから、北鮮の人までも南鮮の国籍と認定して、南鮮に返すというようなことは、私は実に重大な問題であると思います。そんなことを日本政府は、簡単に考えてよろしいものでしようか。一体政府は人間の生命というものをどういうふうに考えておるのか。政府委員の持つているような冷たい、冷酷な気持が私にはわからぬ。人間の生命がどうなるかということを、いかに真剣に朝鮮の人々が、この際考えておるかということを、政府はお察しになつておるのでありましようか。思想がいやだということは、私にはよくわかります。けれども思想が違うからといつて、現実に死刑に処せられるような、刑場に送るような結果になるような、そういう冷酷なことを、日本人が世界の人々の前でしてよろしいのでありましようか。私は断じてそういうことを、政府はやつてはいけないと思います。だからどうしてもこの第五十三条の第一項は、私には、朝鮮の人の場合としては理解できない。「その者の国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。」といつても、大韓民国国籍を持たぬ朝鮮の人があるのですから、これを大韓民国国籍を持つものとして、大韓民国に送るということ——北鮮に送るということを政府が保証されますならば、これはまた別問題でありますが、政府は南鮮に送るに違いありません。そうなると、それは、私は国籍権に対する重大なる侵害であると同時に、生命権に対する重大な侵害になると考えざるを得ません。こういうことを軽々しく規定してはならぬと私は思います。一体北鮮の人が万一退去に値すると考えられます場合に、何でもかんでも南鮮に送るのでありましようか、もう一度あらためてはつきりお聞きしたいと思います。
  241. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまの非常に御熱意ある御質問に対しましては、先ほど三宅政府委員がお答えを申し上げた通りでありまして、韓国というものが、今の情勢におきましては唯一の政権であり、そしてまた国籍というものも、それに従つて扱われる。これはどうもそうするよりしかたがない問題であります。ただいわゆる、三十八度線の向うに昔本籍があつたというような人たちが、どうなるだろうかというお尋ねでございますれば、政府方針としては、善良な在日朝鮮人は、本籍が三十八度線の向うにあろうがこちらにあろうが、差別なしに扱うという趣旨においては、何ら違いはないのでありまして、おそらく韓国政府におかれましても、そういう差別待遇はあり得ないと思うのであります。ただ本籍が三十八度線の向うにあるとかこちらにあるとかいうようなことで、差別をつけるということは、考えられないのであります。なおもう一つは、登録違反ではなしに、国籍関係で、国籍証明書が適当なものがもらえないというような場合には、すぐ強制送還というふうな話が出るのでありますが、強制送還をいたしますと申しましても、ただ国籍証明書がないから全部返してしまうということを規定しておるのではないのでありまして、強制送還ということには、一々各事案々々によりまして、慎重に、先ほども申しましたように、場合によりましては、三つの段階にわたつて慎重に審査した上で、強制退去ということを決定するのでありまして、ただ国籍証明書がないから、すぐ全部送還されるのであるというふうに飛躍されまことは、われわれとしましては、はなはだ困るのであります。
  242. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうも鈴木長官は、顧みて他を言われるような御答弁をなさいますので、私の質問に対する御答弁にならぬと考えます。朝鮮において日本が正式に認めておる政府は、大韓民国だけだということ——日本政府としてはそうだろうと思います。けれども私が申しますのは、朝鮮における日本の認める政府としては大韓民国だけであると、日本政府がそういうふうに認めておることはわかりますけれども、だからといつて、それでは三十八度線以北に、大韓民国の支配権の及ばない別個の政権が存在しており、それが多数の人口をも持つておるし、またその出身の人で日本在留しておる人もあるし、また日本在留しておる朝鮮人の中には、出身地の南北いかんにかかわらず、三十八度線以北を支持するという人もある。こういう現実の事実を無視しないでこの問題を論じなければ、私はかゆいところに手が届くような議論にはならないと思います。そこで私が先ほどから申しておりますのは——私もこれ以上質問したくないのでありますが、どうも政府はつきりお答えにならぬのでやむを得ないのでありますが、朝鮮の人で日本在留している人に二通りある。これはおわかりになると思います。一つ大韓民国国籍証明書を持つている人である。他はそれを持たぬ人である。この事実をお認めになりますかどうですか。一つ一つ聞いて行つてみます。これは事実の問題で、りくつの問題ではないのです。
  243. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 現在のお話だと思いますが、われわれとしましては、現在は全部日本人であり、外国人登録証明書を持つておられるという意味で、その上に朝鮮あるいは韓国という国籍欄に二つの記載があるということは認めますが、それは別に現在の韓国政府とは、実質的に関係がない、同様に考えておるわけであります。
  244. 黒田寿男

    ○黒田委員 大韓民国国籍を持たぬ朝鮮人があるということは、これは事実の問題として政府もお認めになつていることと考えます。その場合に、われわれの好まないことでありますけれども、万一その人を強制退去させなければならなくなつたときに、一体その者の国籍または市民権の属する国とはどこであるか。南鮮であるか。これを私どもは南鮮と理解して、南鮮に送るということになれば、今申しますような生命に関する問題までも起つて来るのであります。そこを私はお尋ねしているのであります。ですからその点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  245. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点はたびたびお答えいたしておる点でございますが、国籍としましては、韓国政府以外にないというふうに解釈いたしております。
  246. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういう解釈は私は間違つているというのです。たとえば朝鮮二つにわかれておるということは事実ですから、北の半分に属する人は、韓国籍でないということを認めないわけには行かない。向うからいえば、北鮮に国籍があるというでしよう。それを日本政府は認めないというておるが、しかし事実においては、そういう国籍があるのです。日本が認めないというだけです。向うの人からいえば、むしろ大韓民国がにせ政府といつておるでしよう。私はその判決をしようというのではありませんが、とにかく大韓民国国籍以外の朝鮮人がある。日本がその国籍を認める認めないは別として、とにかく国籍が事実上二つあるという事実を認めれば、朝鮮人はすべて大韓民国国籍を持つもので、李承晩政府のもとにつくのだという取扱いはできぬのではないか。強制送還をする場合には、北鮮の人は南鮮に返すのではなくて、北鮮に返すというならば私はわかるのです。朝鮮には韓国しかないと政府は認めておいでになるから、従つて国籍としても、大韓民国国籍というものしか認めないという議論はわかる。その議論はそれでよろしいけれども、もう一つ起る問題は、事実上、韓国政府の支配する以外の地域が、朝鮮にはあつて、そしてそこに別個の人民共和国というものが建てられておつて、その所属、その出身の人もある。この事実を無視して、そういうところから来ておる人、それに好意を持つ人も、日本政府の認あているのは朝鮮では大韓民国だから、すべてその国籍を持つておるのだというように解釈することはできぬということである。それは事実を明らかに認定して、その上で対策を講じなければ、私が先ほどから申しますように、国籍に関する権利の蹂躙になるということを言つておるのです。日本政府が何を認めておるかということを、私は尋ねているのではない。日本政府で認めているもの以外にも、なお他の地域と、人民と、政府がある。これを認めないで、朝鮮の問題を解決しようとするから、無理なところができるのです。だから朝鮮人には、韓国籍以外の国籍はないという議論はしてはなりません。日本政府が正式に認める国籍は韓国だけであるけれども、韓国以外の国籍を持つている朝鮮人も現にある。これをなぜ認めないのか。それを認める以上は、韓国籍でない人の取扱いをどうするかということを考えなければならぬ、それを私はお尋ねしているのである。それを、そういう人々までも韓国籍を持つているものとして、みな韓国、南鮮に送るということになると、先ほども申しますように、非常に重大な人道上の問題が起る、こう申しておるのです。私の言い方が不徹底でありますか、私はおわかりくださると思うのですがどうも政府のおつしやることは私にはわからない。
  247. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 われわれの申しております論理というものについて、非常におわかりになつておりますので、その点は申し上げませんが、昨日同様な御質問に対しまして、岡崎国務大臣から懇切な御答弁があり、いわゆる国籍問題について、現実の問題に、議論以外のものについて考える、いわゆる便法という言葉を仰せられたのでありますが、そういうようなことにつきまして、含蓄ある御答弁があつたわけでありまして、その趣旨をひとつおくみとり願いまして、日本政府が何でもかんでも送り返すのである、そういうむちやな方針をとつておるのであるということのないように、御解釈を願いたいと思います。
  248. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうおつしやるならば私もわかるのです。その便法を認める、含蓄を持つておるのだ、こうおつしやればわかります。けれども先ほどあなたがおつしやることは、朝鮮人は、みんな韓国人以外には考えられないというようにお聞きしましたから、それでは困る。どうしてもここで含蓄ある解釈をして、便法をもつて朝鮮の人には韓国籍を持つ者と、韓国籍を持たぬ者とがあるという解釈をする、それが私は便法だと思う。そうでなくて、みな韓国籍にしてしまうなら、便法でも何でもありません。便法とは、韓国籍を持つ以外の朝鮮人を認める、こういう意味だと思います。そうおつしやるなら私にはわかります。だからそういうようにお認めになる以上は、かりにその便法適用せられる人々が送還をせられる場合は、大韓民国すなわち南鮮だけではないということが言えるのではありませんか。そうすると、その便法を認めた人々らの国に送り返すべきである。北の方に送り返すべきである。この手続をとらなければ、便法を認めたということにならない。それを私は尋ねておるのです。
  249. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいま仰せられました便法という意味が、韓国において北鮮側の国籍を認める、認めるについての便法考えておるのだというふうに御解釈になりましたならば、その点は誤解のないようにしていただきたいと思うのであります。これは何回も同じことを繰返すわけでありますが、日本政府が相手としておりますのは韓国政府である。韓国政府が国内法をもちまして国籍をきめておる。それに従いますれば、三十八度線の向うにおります人も、やはり韓国籍をとることになるということは、いたし方のないことでありまして、朝鮮に関する限りは、二つ国籍はないということでございます。それで問題は、昨日申されました議論が、何回も繰返されたわけでございますが、われわれのいわゆる便法というようなものにつきましては、日本に長くおられた、九月二日以前からおられた朝鮮人台湾人という人たちが、今まで善良に日本国民として生活をしておられるというその事実は、あくまでも尊重して、日本永住許可のできるような措置を講ずる、それが根本でありまして、何でもかでも理由をつけて返してしまうという考え方では断じてないということを、ひとつ御了承願いたいと思います。
  250. 黒田寿男

    ○黒田委員 どうもまた話が逆もどりになつてしまつたわけですが、そこで私はこれはもう鈴木長官とは、この問題につきましての質問はやらぬことにします。しかし私の質問をこれでやめるという意味ではありません。もう一度岡崎国務大臣か、あるいは吉田総理かどちらかに出席していただきまして——これは決して鈴木長官をどうこう思うものではございませんから、誤解のないようにお願いいたしますが、ただ私は、責任ある政府答弁を得るためには、職責上あなたの上にある方の御答弁の方を、私どもとして欲するというだけのことでありますから、誤解のないようにお願いしたいと思います。私は鈴木長官とはこの問題につきましては、ただいま申しましたように、これでやめます。きよう岡崎国務大臣がお見えくださればけつこうでありますし、きようお見えくださいませんければ、明日でもけつこうでありますが、これは他の諸君もおそらくそうだろうと思いますが、もう一度ぜひ岡崎国務大臣なり、吉田総理にお尋ねしてみたいと思いますから、この点につきましては、鈴木長官に対する質問はもういたしません。私だけがたいへん時間をとりまして恐縮ですから、私は明日岡崎国務大臣に対する質問を留保いたしまして、この問題はこれで終ります。  そこでちよつと最後に一つだけ、沖繩の問題につきましてお尋ねしてみたいと思います。沖繩——琉球と申した方がよろしいのですが、もつと正確に言えば、北緯三十度以南の南西諸島、沖繩もそれに含まれておると思いますが、それらの地域には、出入国管理令適用されないということは明らかになつておる。政府の御意見によりますと、沖繩は日本の領土である。領土であるというのは、現在はもとよりそうであります。まだ国際連合の信託統治には正式にはなつておりませんから、現在日本の領土であるということは明らかなことであります。私が昨日、沖繩は日本の領土から分離されるであろうと言つたのは、信託統治になつてからの問題であります。現在はまだ信託統治になつておりませんから、日本の領土であるということが言える、その日本の領土である沖繩に、日本法律適用されないのはどういう根拠からであるか。しかし今は、まだ占領下であるから特別の取扱いをする、こうおつしやるであろうと思いますけれども、問題はそれではない。この出入国管理令は占領下だる状態を脱して平和条約効力を発生し、日本が、政府考えられておりますいわゆる独立の状態になつてから適用される法律であります。そのように日本独立した後に、日本法律として適用せらるべき出入国管理令が沖繩に適用されないというのはどういう根拠であるか。完全独立という面からは私にはそれがよくわからないのであります。これをひとつ御説明願いたい。
  251. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 沖繩、大島等に対しましては、日本の行政権が及ばないということがはつきり条約にあるわけであります。
  252. 黒田寿男

    ○黒田委員 私がお尋ねしておるのはそれです。日本の行政権はなぜ及ばないのか。日本独立した後に、沖繩は日本の領土として残されると言つておる。日本の国でありながら、そうして日本独立しながら、日本の行政権の及ばない日本の領土があるというのはどういう理由であるか、それをお尋ねしておるのです。今のお答えは答えにならぬ。
  253. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 その点につきましては、平和条約に沖繩等について信託統治が行われる前でも、アメリカが立法、司法、行政の全権を有するということが書いてございます。それで日本政府は承認したわけでございます。ただ行政権につきましては、向うとの話合いで、向うが承認するとか、あるいは同意する限りにおいては、あるいはそれは多少日本の行政権が許されるかもしれませんですが、これは今後の情勢にかかる次第であります。
  254. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はそれをお尋ねしておきたいと思つたのです。私も平和条約にそう書いてあることを知つております。そこでどうも、きのうから問題になつておりますが、日本の領土でありながら日本の行政権、立法権も及ばないような地域があるということは、これは一体、平和条約にそうきめてあるのですが、いわゆる治外法権というものであるかどうか。日本の行政権も立法権も及ばない、しかもそれは日本の領土だ。そういう状態が発生する。それは平和条約にはそうなるように書いてありますが、日本からいえば、これは治外法権が設定されたというように解釈すべきであるかどうか。かりにそうであるとすれば、政府日本独立したしたとおつしやつておりますが、日本の領土に日本人の立法権も司法権も及ばないような地域がある。それで一体完全独立であるかどうかと私は問いたい。政府はそれでも日本は完全に独立した国であると言うのですか。政府の御所見を聞いてみたい。
  255. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 沖繩等に関する限りは、本土とはつまり違う取扱いになるわけでありまして、ダレスさん、それからヤンガー国務相もこれらの地域については日本はレジデユアル・ソヴレンテイ、残存する主権を持つのだ、とりあえずはそうであると言つておるわけでありまして、これは非常な特殊な状態だと思うのであります。
  256. 黒田寿男

    ○黒田委員 要するに特殊な状態とおつしやいましたが、私ども、これをどういう名称で呼ぶとしても、いわゆる治外法権的なものが設定されたような結果になつておると思うのですが、私が繰返して問題とするのは、その説明ではなくて、そういう説明をしなければならないような状態に落されたのでは、日本の完全独立とは言えない、そうわれわれは解釈しておるのですが、政府はそれでも日本は完全に独立したと思つておるか、これを、念のためにちよつと聞いておきたい。こんなことでは、日本は完全に独立したとは言えないのではありませんか。私はそう思う。これはどうですか。政府の御意見を承りたい。
  257. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 その点につきましては、そもそもポツダム宣言等で四つの大きい島以外の小さい島については、連合国の決定するところに従うということをあそこでもう承諾いたしておるのでありまして、日本の意思にかかわらず、アメリカがそういう措置を講ずるわけではないのでございます。ポツダム宣言、さらには平和条約におきまして日本が承認したのであります。日本の自由意思によつて承認したのでありますから、主権は制限されていないと思うのであります。
  258. 黒田寿男

    ○黒田委員 主権がどうですか……。
  259. 三宅喜二郎

    ○三宅政府委員 その点におきまして、日本独立が——そういうある特殊の地域が一部にある。それは日本の承認のもとになされたのであるという意味において、独立は妨げられて、おるというふうには言えないと思います。
  260. 黒田寿男

    ○黒田委員 三宅さんはそうおつしやるのですが、それは三宅さんの御議論として聞いておきますけれども、私どもはそういう状態を完全独立になつていない状態であると思うのです。日本の領土でありながら、そこに主権の及ばないようなことを日本がみずから承諾するところに、治外法権的なものの設定があるのではありませんか。それを暴力的にやられたのならなおさらでありますが、承認という形でそういう地域を設定したことも、私は、やはり日本が領土の中にそういうものを持つことになるのであるから、これで日本が完全に独立したとは思いません。過去において治外法権が日本で設定せらていたときに、日本独立ということが強く言われたのであります。しかし、三宅さんと私との議論はこの程度にとどめておきます。  このほかに、信託統治になつたらどうなるかという議論は、これはまた根本的に政府と意見が違いますが、現在の沖繩の問題も参考のために聞いてみたのであります。しかし意見は一致しません。私はきようはこれで質問を終了いたします。但し明日の岡崎国務大臣に対する質問は留保させていただきます。
  261. 戸叶里子

    戸叶委員 簡単に一点だけ伺いたいと思います。先ほど強制送還の質問を聞いておりまして、ちよつと気になりましたので伺つておきたいと思います。中国人並びに朝鮮の人で、日本の婦人と結婚した人が非常に多いと思うのです。その場合に、今度の講和条約発効後、日本の人も外国人と正式に結婚した場合には、外国人になる。そうしてもし万一その夫婦のどちらかが強制送還なつたような場合には、家族を含めて夫あるいは妻も子供も同時に望むならば強制送還をするかどうか。  それと、もう一つは、もしも日本の婦人と結婚した場合で、その婦人は全然朝鮮へもどこへも行つたことがない、しかも子供も日本で生れた子供だから全然朝鮮を知らない。そういうような場合にもし日本婦人が、つまり妻が強制送還されたような場合には、これは非常に変なものになると思います。日本人朝鮮のどこか何も知らないところに送られる。そういうようなことに対して、政府はそれはしかたがないことですというふうなことだけでお片づけになるかどうか。
  262. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 第一点の、主として韓国人でありますが、韓国人と結婚しました日本の婦人という問題でございますが、国籍関係から申しますと、どこで日本人あるいは韓国人をきめるかと申しますと、いわゆる平和条約発効と同時に、日本国籍を離れる人たちは現在日本の戸籍を持つていない人たちでございます。従いまして日本に来られまして、長いこと日本に生活をし、朝鮮の人で日本の婦人と結婚した。そうしてそのときに、たとえば養子縁組をいたしまして日本の戸籍に載られた人は、これは日本の戸籍がありますので日本人でありまして、平和条約発効と同時に日本国籍から離れる人ではないのであります。残るわけであります。日本の戸籍に名前が載つておるかどうかということで、はつきりその点がわかれるのであります。  それから強制送還に関するお尋ねでありますが、日本の婦人が在日朝鮮人と結婚しまして、日本の戸籍を抹消して朝鮮の戸籍になつた。そういう人は今度も韓国人になるわけでございますので、韓国側においてその人たちを国民として処遇するということは当然の筋道だと思います。そこで強制送還をいたします具体的の場合に、夫婦の一人が強制送還対象なつたときにどうするかというお尋ねでありますが、これは国籍はつきりしておりますものについては、一緒に帰つてもらうということが人道上当然と存じます。
  263. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると一緒に帰つてもらうといたしますと、一緒に帰るその費用は、当然日本政府が持つわけでしようか。  それからもう一つは、第一点のお答えがちよつと違つていたように思いますが、私が伺いましたのは、養子縁組等で日本国籍なつた場合でなくて、講和の発効と同時に韓国の人なり朝鮮の人が外国人の籍を持つて、その人と前から日本の婦人が結婚しているわけですが、その婦人も当然外国人登録をしなければならないわけですね。その点をもう少しはつきりさせていただきたいと思います。
  264. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 強制送還の点につきまして費用の点をお話がございましたが、強制送還対象となる個人については、現在のところ日本の費用で返すのでありますが、強制送還の処分を受けた人でなくして、しかも一緒に帰らなければならぬというような人は、当然自身の費用で帰られるということになろうかと存じます。
  265. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、たいへんな問題になるのじやないかと思うのです。その場合に御主人が何か強制送還対象になつて、そしてその奥さんが一緒について行きたい、ところが費用がない。そうすると奥さんも何か悪いことをしなければ一緒に行かれない。(笑声)何かとつても変なことになると思うのですが、その点をどういうふうに処理なさるのでしようか。
  266. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それは非常に費用がかかるようにお話がございましたが、いろいろな便法もございますので、たとえば特別に送還船に一緒に乗せてやるとか、そういうような扱いはできると思います。また国籍はつきりしておりますので、帰る人は当然自由意思によつて帰られるということでございますし、いよいよの場合には本国政府がそれはバツクするということになろうかと思います。
  267. 戸叶里子

    戸叶委員 もうちよつとはつきりしておいていただきたいのですけれども、そうすると船に一緒に乗せてやれば、その費用はかからないのでしようか。それからもう一つは、いざとなると、向うの政府がバツクするということになりますと、やはり向うへついて行く人に対しては、向うから一応費用なり何なり送つて来て、そうして連れて行かれるということになるのでありますか。その辺をもう少しはつきりしておいていただいた方がいいのじやないかと思うのですけれども……。
  268. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 自分で資産を持つている人については問題はございませんが、そうでない人については、たいてい本国に親類その他もございますし、そういう人たちが所要の費用を出して、それによつて帰るということは十分考えられるかと思います。
  269. 戸叶里子

    戸叶委員 私はどうしても納得ができない。非常に心配性かもしれませんけれども、元は日本の婦人だつたのです。ところが結婚して韓国なり朝鮮の人の国籍に入つたわけです。そうするとこの婦人の親戚というものはあまりないのではないか。それからまたもしその御主人の方の親戚もなくなつていたり、あるいは貧乏だつたりしてお金が出せない、そうすると結局御王人だけ連れて帰る。奥さんは行きたくても行けない。そこに非常な悲劇が起つて来るのじやないかと思う。こういう点はやはりお考えにならなければいけないと思うのです。もう少しはつきりした点を伺わせていただきたいと思います。
  270. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それは一般的に自分で生活できない人たちが、生活をするのにはどうしたらいいかという問題と関連しておるわけでございますが、いずれ社会事業とか厚生事業とかいうような、そういう人たちに対する救済団体もあるわけでございまして、最終的には本国の領事館というようなものも、こちらにできるわけでありまして、そういうようなところの取扱いによりまして、ぜひ帰りたい人については帰る方法があろうかと思います。
  271. 戸叶里子

    戸叶委員 その点、たいへんしつこいようですけれども、社会事業団体なり何なりあつて、何かの方法が考えられようと言いますが、もしも考えられないときのことも心配しなければならないと思うのです。そういうような点もお考えになつて、何らかの弁法を講ずるようなお考えはないかどうか。これはちよつとした問題のようにお考えになるかもしれませんが、そういうふうなことで非常に心配していらつしやる方がたくさんございますから、一応やはり考えておかなければならないと思います。
  272. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいままでにわれわれの方で扱いました強制送還の事例も数々ございますが、大部分は問題なしに行つておるように存じます。いよいよの場合にどうするかというお尋ねでございますが、たとえば、先ほど申しましたように、こちらの船に便乗して行くということもございますし、また韓国なら韓国の船に韓国代表部の方から乗せるという方法もございまして、それは今ここでは思い出せないいろいろな方法がある思います。
  273. 戸叶里子

    戸叶委員 ちよつとたよりないのですけれども、これを繰返していてもしかたがないと思います。ただ、今ここで思い出せないいろいろの方法があるかもしれないというのじや、たよりになりませんが、もしそういうふうなときになるまで、しかたがないからほつておくというようなお考えでございましようか。  それからもう一つは、その場になるまでそのままにしておくという一つのお考え。今までそういうようなことがありました場合、今度は今までと当然かわつて来ると思いますが、そういうふうな場合にはどういうふうな形をおとりになつたのですか。やはり日本政府でお払いになつたのですか。
  274. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今までには特に便乗を願い出るようなケースはございませんでした。ことに強制送還をされます場合には、日本の船に乗つて帰るわけであります。また場合によりましては、自費出国と申しまして、自分の費用でいわゆる日本政府でやつておる強制送還の船に乗らないで、たとえば飛行機に乗つて帰るという例がありまして、そういう際に夫婦帯同で帰るというふうな例はありますが、具体的のお尋ねのような例はあまりございません。
  275. 戸叶里子

    戸叶委員 今まではなかつたからそういうこともお考えにならなかつたでしようが、これからもしかすると起ると思います。起きた場合に、そういうことをお考えになつておかないと、非常に人道上の問題からいいましても、不備な点があると思うのですけれども、そういうような問題が起きてから、あちこち交渉してお考えになると—いう程度で、今のところは別に今後お考えにならないかどうか、一応伺つておきたい。
  276. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 いずれ韓国側にも関係もする問題でございますので、必要の起ります際には十分韓国側とも協議しまして善処したいと思います。
  277. 林百郎

    ○林(百)委員 第五十三条で、先ほど黒田さんの質問で強制退去の問題がはつきりしないのですが、今度は中国の場合はどうなりますか。中国本土から来た人が強制退去を受ける場合はどこへ送り返すのでありますか。
  278. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 台湾に籍のある人につきましては台湾に返す、これははつきりいたしておりますが、中国の人で今こちらにおる人につきましては、たとえばこういう例はあるのであります。香港から日本に渡つて来た人、そういう人は香港に返す、これは従来でもその通りつておるわけでございまして、今考えられます道はその程度ではないかと思います。
  279. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると香港以外のところに住所を有し、中国本土に居住地を持ち市民権を持つた人をどうするか、全部香港へ送り返すのですか。
  280. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 非常にむずかしい例をおとりになつたのでありますが、むずかしい場合には結局返すところはないということになろうと思います。
  281. 林百郎

    ○林(百)委員 返すところがなければ日本にずつと永住できることになるのですか。
  282. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 これは第五十二条をごらんになりますと、退去強制を受けた者で強制送還することができない場合には、住居とか行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務、そういうものを課しまして一時放免する、こういう制度がありますので、そういう場合はきわめて例外と思いますが、おそらくかような措置になると存じます。
  283. 林百郎

    ○林(百)委員 これは要するにどこか収容所へ収容したりいろいろすると思いますが、当然この第五十三条によつて国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。」ということがある。ただ日本政府が蒋介石政権を中国の相手方と選んでいるということから出て来ているのじやないかと思うのでありますが、そこで一体政府としては、中華人民共和国という政府のあることはお認めになるのですが、ならないのでしようか。認めるとすれば、ここに国籍を持つということは当然の権利である。ただ日本がそこと外交関係を持たないからといつても、そこに国籍を持つている人を収容所に入れて捕虜と同じ取扱いをするということは、国際法上の違反になる。そういう中華人民共和国政府をお認めになるかならぬか。
  284. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 お尋ね中国人たちの中で、たとえばかつて今の蒋介石政権以外の政権のパスポートを持つて日本に入つて来られた人たちが、一体帰れるかどうか、返されるかどうかというようなことにも関連すると思いますが、そういう人たちは前にも申し上げましたように、特別に国籍証明書というようなもの、何らか別の証明書というようなものがあれば、日本に居住ができるということを申しているわけであります。
  285. 林百郎

    ○林(百)委員 この点はいくら質疑を繰返してもわからぬ。結局政府が実質的には中国だとか朝鮮の人民が支持するような政権が存在しているのを、りくつの上からそれを否定しようとするから、そんな無理が私は出て来ると思うわけですが、これは中国あるいは朝鮮の人民が実質的には支持している政府と外交関係を結ぶか、あるいは日本におるこうした人たちに特別な除外例を設けて、この出入国管理令強制退去その他の条項適用しないということにしなければ、先ほど黒田委員の言われるように、世界人権宣言にも私は違反して来ることになると思う。あなたの言うことを聞いていると、結局無理に無理を重ねてどうにもつじつまが合わないようになつて来るじやないかという感じがします。もう一つお聞きしますが、たとえば先ほど守島委員からも質問があつたのでありますが、朝鮮人たちの気持としては、朝鮮に統一した政権を欲しているか、統一した政権ができるまでは、韓国籍というようなものをとることによつて、母国の統一を阻害してはならないから、朝鮮に統一した政権ができるまでは韓国を支持するとか、あるいは一方を支持するというようなことは慎みたいということを言つている人たちにも政府大韓民国国籍を押しつけてこれを大韓民国へ送るという考えなのでしようか。現に六十万人のうち大韓民国国籍を拒否したものが四十七万あるそうでありますが、母国の政権が統一するまではいずれの政権を支持することも拒否して、国籍を明らかにしたくないという人たちをも、どうしても韓国へ送るということなのですか、それをもう一度はつきり聞いておきたい。
  286. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その点は何回も触れました問題であり、特に昨日の岡崎国務大臣の御答弁で、十分政府の意のあるところもおわかりになつていると思うのでありますが、日本政府としましては対象となるのは大韓民国政府一つである。だからして朝鮮においては韓国の国内法によつて国籍の問題は一色にきめられるであろう。わが方としてはその事態を前提として取扱いをきめて行くよりほかにないということであります。
  287. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題は私はあまり時間かけても何ですから、明日また岡崎国務大臣に最終的な責任ある質問をしたいと思いますが、ただ事実問題として、日本にいる朝鮮諸君が、母国に統一政府ができるまで韓国籍というような表明をしたくないということで、四十七万の人がこれを拒否しておる。従つてそれが原因して強制退去を命ぜられるようなことになりますと、四十七万という人を、武装した入国警備官によつて強制的に逮捕し、これを戦乱の南鮮に送るということになれば、国際的な重大な問題になると思う。そういうゆゆしいことをほんとうに政府はやるつもりかどうか。これは、ナチスのヒトラーがユダヤ人の追放をして、国際的の大きな問題になつたが、これ以上のことを実際問題としては日本政府がやることになると思う。日本は韓国政府しか認めない。ところが、韓国政府国籍を拒否したいといえば、それは第二十四条の四に該当するとかいうことになつて強制送還するということになれば、これは非常にゆゆしい問題だと思う。このことについては、あなた方に責任ある答弁を求めても無理かと思いますので、明日岡崎国務大臣に聞くこととします。次に、第二十四条の問題で、先ほど黒田委員もお聞きになりましたが、「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入している者」といいますと、これと密接な関係を有するということだけで強制送還になるのでありますが、一体この団体というのは、今あるのですか、ないのですか。どういうものをさすのですか。
  288. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 これは法制上書いてあることだけでありまして、具体的にはございません。
  289. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、現在いかなる政党に、たとえば共産党に加入し、あるいはこれと密接な関係を有するということも、強制退去の理由にはならぬのですね。あなたの今言われたことからいいまして、それは間違いないですね。
  290. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 現在においては適用はないと思います。
  291. 林百郎

    ○林(百)委員 現在のところはいいが、いつから悪くなるのですか、ならないのですか。それとも、目下の情勢からいえば、そういうことは想像できないわけですか。もう一度はつきりしてもらいたい。
  292. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 将来のことは答弁いたしかねます。
  293. 林百郎

    ○林(百)委員 ただこの場合、朝鮮にしましても、中国にしても、共産党が政治権力の一部に加わつて政府ができているのですから、それを母国とする人たちが、共産党あるいは共産主義に関心を持つのは当然なんで、これは自由だ。ことに母国がそういう政権を持つているのですから。ところがそういう思想を包懐しているからといつて日本から追放するということは、人権宣言からいつてもできないことだと思う。そういう意味であなたにお聞きしたのですが、あなたは、共産党をさすのじやない、また現在は共産党に加盟し、あるいはこれと関係を有する者も、強制退去にならないという答弁をしておりますから、この点はこれで一応打切つておきたいと思います。  次にお聞きすることは、第六十五条の司法警察員が、第七十条、要するに出入国管理令に該当する犯罪を犯した者を逮捕した場合には、刑事訴訟法第三百三条ですから、弁護人をつけるという規定だと思うが、こういう規定にかかわらず、書類及び証拠物とともに当該被疑者を入国警備官に引渡すということは、どういうわけですか。憲法では何人も弁護人をつけずして不法に抑留または拘禁されることはないとなつているのですが、刑事訴訟法第二百三条の例外規定を何ゆえここに設けられたのですか。
  294. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 これは立件送致をしないで入国管理庁の職員に引渡して行政措置をするという規定であります。
  295. 林百郎

    ○林(百)委員 たとえば刑事訴訟法第二百三条を見ますと、「司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。」となつております。ところが第二百三条にかかわらないということになりますと、これは該当犯罪事実の要旨も告げなければ、弁護人を選任するということも告げなければ、弁解の機会も与えなくてもやれるということになるわけですか。
  296. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 これはつまり管理令による罰則の適用を受けるような場合には、ここにいう立件送致を行わないで、この管理令による行政措置にまかせるという規定なのでございまして、第二百三条の規定適用を受けないで入国警備官に引渡されるというわけであります。
  297. 林百郎

    ○林(百)委員 だからその第二百三条の規定にかかわらなくてどう送るのですか。そうすると結局、弁解の機会を与えるとか、弁護人の必要があれば、だれか弁護人を選ばせるとか、該当事実を告げるとか、そういうことをさせないというのですか。
  298. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 その通りでありまして、司法手続によらないで行政手続にまかせるという意味であります。
  299. 林百郎

    ○林(百)委員 行政手続にまかせて、第七十条に該当する犯罪があるとすればどうなるのですか。
  300. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 この第六十五条は第七十条の容疑にかかる被疑者を逮捕し引渡すというわけで、これは不法入国の場合だけの規定でございます。
  301. 林百郎

    ○林(百)委員 不法入国の場合も、懲役、禁錮、十万円以下の罰金ですから、実質的には司法処分と同じだろうと思うのです。こういう実質的には司法処分と同じ犯罪事実に対する取扱いが、出入国管理に関するものだからといつて、弁護人もつけさせなければ、弁解の機会も与えなければ、事実の要旨も告げずに、すぐに司法警察官が入国警備官に渡すというのは不当だと思うのです。
  302. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 この規定は、不当とかいうようなことでなくて、そういつた第七十条の罪にかかる不法入国者に対して、司法手続で罰金を科したり何かしないで、むしろ行政措置の方にまかせるという規定でございます。
  303. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると第七十条の処罰はしないというのですか。これは第七十条の罪にかかわる被疑者を逮捕したときでしよう。だからこれは明らかに第七十条の被疑事実があるとして司法警察官がとらえるわけですから、その司法警察官が第七十条の嫌疑ありとして逮捕するときは、刑事訴訟法の手続によらなければならないのではないですか。そうしてこれがはつきりした場合に入国警備官に渡すならいいのですが、入国警備官だけで事は終らぬで、第七十条の司法罰を受けることがあるわけですからね。
  304. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 お話の点も実は第六十五条で排除しているわけで、これは全然罰則の適用をしないという場合に行政措置にまかせる。従つて行政措置にまかされたものは、一切刑事訴訟の手続によらない、従つて罰則の適用はもう受けないという規定でございます。
  305. 林百郎

    ○林(百)委員 しかしこれは条文の上からいうと、第七条にかかわる被疑者ですよ。そうすると第七十条にかかわる被疑者を逮捕しても、第七十条の適用はなくて行政処分にするというのですか。
  306. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 さような趣旨でございます。
  307. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、第七十条の被疑者で第七十条で処罰するのはどういう場合です。
  308. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 この規定は、第七十条の罪にかかわるものを逮捕した場合に、こういう措置もできる。従つて司法警察官が刑事訴訟手続によつて罰金を科して、その罰金を科したあとで行政措置にまかせる、わが方の行政管理庁に引渡して来る、こういう方法もあるし、警察官が刑事訴訟の手続によらないで、罰金を科さないで行政措置にまかして来る、こういうこともできる、こういうことを規定したわけであります。
  309. 林百郎

    ○林(百)委員 私はどうしてもそうとれないので、第七十条の罪にかかわる被疑者を逮捕もしくは受取り、またはこれらの罪にかかわる現行犯人を受取つた場合ですから、これをすぐ入国警備官に引渡すということはないと思うのです。少くとも第七十条の犯罪を犯したに該当し、司法警察官が現行犯、あるいは被疑者を逮捕する以上は、それに弁護人をつけ、弁解する機会を与え、事実を伝え、十分に自分の身分を保護する方法を講じて後に一定の期間内に入国警備官に渡すなら渡す、こういうことが考えられます。そうすると、第六十五条で現行犯を受取つても、これは第七十条の処罰をしないで入国警備官に渡してしまうのですか。
  310. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 今お話のように、刑事訴訟手続によつて弁護士をつけたりしたそのあとで入国警備官に引渡して、そしてこの者を退去せしめるかどうかという方法ももちろんございます。ただ第六十五条は、そういう方法によらないで、現行犯をつかまえたら、その者がほかの罪を犯していないという場合には、すぐに刑事訴訟手続によらないで入国警備官に引渡して行政措置一本で措置する、こういうことを規定したものでございます。
  311. 林百郎

    ○林(百)委員 どうして第二百三条の弁護の機会を与えるとか、弁解の機会を与えるとか、あるいは弁護人を選任する機会を与えてから入国警備官に渡す措置ができないのですか。これは場合によつては第七十条に該当することもあるわけですから。
  312. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 第六十五条の規定は、不法入国者で、いわゆる現行犯的なものを、司法手続によらないですぐこれは返した方がいいという場合に、この規定適用があるのでございまして、そういつたものに一々刑事訴訟手続によつて罰金を科したり、あるいは懲役を科したりするよりも、むしろすぐに入国警備官に引渡してそのまま早く返した方がいい、こう認める場合に第六十五条が適用になるわけであります。
  313. 林百郎

    ○林(百)委員 それはおかしいので、ただ嫌疑があるとか、それから現行犯人だという場合には、むしろ弁護人をつけ、司法裁判をしてこそ十分権利を促護することになるので、ただ嫌疑がある、現行犯だから罪になるかならないかわからぬが、すぐに警備官に渡して強制退去さしてしまうということは、明らかに権利を侵害することにどうしてもなると思うのです。あなたの言うように、すぐ入国警備官に渡して強制退去さしてしまうということよりは、有罪か無罪か裁判にかけた方が、むしろ権利を守ることになるじやないですか。疑いを受けただけですぐ退去されてしまうのですか。
  314. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 この場合は、先ほど申しましたように第七十条の罪にかかる、つまり不法入国の現行犯的なものを処理する規定のように私ども考えております。お話のように一般の退去強制事由に該当し、なおほかの犯罪もいろいろ犯している、こういつたようなものについては、お話のように刑事訴訟手続によつて一応刑罰なり何なりが科せられ、そのあとで行政措置が行われる、こういうのが私は原則だと存じます。その場合には、お話のように弁護士をつけたりして、できるだけ刑事訴訟の手続によることができるわけで、この場合は今申し上げたように、現行犯的なものをそういつた手続までしなくても、すぐ入国警備官に引渡して返せる道もあるという規定でございますので、その点は御了承願いたいと存じます。
  315. 林百郎

    ○林(百)委員 その点はこれ以上申しませんが、これは明らかに「第七十条の罪に係る被疑者を逮捕し、若しくは受け取り、又はこれらの罪に係る現行犯人を受け取つた場合」というわけで、現行犯人ばかりでなくして、被疑者を捕えただけですよ。だから、本来ならば第七十条で裁判をした結果処分をするなりしないなり、あるいは裁判の結果無罪になれば強制送還しなくてもよいわけですから、こういう点もあなたの言うことは大分事実と違つて、明らかに嫌疑を受けただけで、一方的に強制送還さしてしまうことができるという道が開かれていると思うわけです。この点はこの程度で、また詳しくは、いずれ明日でも聞きたいと思います。  最後に入国管理庁設置令第十一条、入国管理庁の入国警備官の人員と「武器を携帯する」というこの武器とは何をさすか、人員と武器をぜひ明らかにしていただきたい。
  316. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 今の御質問は設置令の問題だと思いますが、警備官の数は現在三百九十八名ございます。現在持つております武器はピストルと申しますか、拳銃でございます。
  317. 林百郎

    ○林(百)委員 今度これは人員をふやしたりあるいは武器をもつと——バズーカ砲や機関銃でも持たせる計画があるのですかないのですか、その点念のために聞いておきたいと思います。人員はこれでとまるのですか。
  318. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 武器は、現在以上のものを目下のところは考えておりません。人員の点につきましては、来年度、四月以降三十名程度増員する予定になつております。
  319. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一問だけ聞いておきます。外国人登録令の第十三条と第十条の関係ですが、この登録証明書というのは、たまたま家に置いてあつて、たとえばふろへ行くとか散歩に行くとか、そういうような場合に持つていなくても登録令違反になるわけですか。そういう特殊な事情があつて携帯していないことに対しても、それは運用上の酌量ができるわけですが、たとえばあれを何とかして強制送還をしてやろうとねらつていて、たまたまふろへでも行くとき見せろと言つて、持つていないから処罰してすぐ強制送還するということになると、これは人権蹂躪になりますが、そういう場合の実際の運用上の弾力性というものはどう考えておりますか。
  320. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それは法の運用の常識問題でありまして、もちろん裸であるときに登録証明書を出せと言つてつかまえて行くというようなことは、これはいたしたくないと思います。
  321. 林百郎

    ○林(百)委員 裸でなくてゆかたがけでふろへ行くとか、散歩に行くという場合があるでしよう。事情を聞いてみて持つておらないことが当然だ、そういう場合には登録令違反に問わないのですか。
  322. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  323. 林百郎

    ○林(百)委員 ふろへ行くとか、散歩に行くとか、そのほかこれはだれが見ても、もつともだという場合には登録令違反にはならないわけですか。もう一度よく聞いておかないと重大な問題になるのです。
  324. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 その通りであります。
  325. 仲内憲治

    仲内委員長 次会は明二十九日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十九分散会