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1952-03-27 第13回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十七日(木曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君       大村 清一君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       飛嶋  繁君    山本 利壽君       川島 金次君    林  百郎君       成田 知巳君    黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         入国管理庁長官 鈴木  一君         外務事務官         (入国管理庁審         判調査部長)  鈴木 政勝君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 三月二十七日  委員戸叶里子君及び武藤運十郎君辞任につき、  その補欠として川島金次君及び成田知巳君が議  長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十五日  自主外交確立に関する決議案川崎秀二君外八  十二名提出決議第六号)  行政協定廃棄に関する決議案井之口政雄君外  二十二名提出決議第一五号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十六日  出入国管理令反対に関する陳情書外一件  (  第九九一号)  同外一件  (第九九二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する  件に基く外務省関係命令措置に関する法律  案(内閣提出第八八号)  外国人登録法案内閣提出第八九号)     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案並びに外国人登録法案一括議題といたします。両案に対しての質疑を許します。成田知巳君。
  3. 成田知巳

    成田委員 昨日強制送還をする予定の人数、その内訳を承りましたところ、予算委員会における答弁と食い違つておるし、またはつきりした御答弁がなかつたのですが、政府委員の方で調査の上で御答弁がある、こういうことになつたわけでありますが、もし調査が進んでおりましたら、数字を明示願いたいと思います。
  4. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 予算委員会においてお尋ねがありました点について、昨日さらにお尋ねがございましたが、その点につきましてあらためて御説明を申し上げます。一万三千人の送還ということを予算上計上いたしておりますが、新しい役所で新しい業務であるという関係で、強制退去対象を拾いますれば、密入国と思われる数は、御承知のように、確たる数字はわかりませんが、五万以上はあるわけでありまして、それを全部本年度にやれるかどうかということは、いろいろの関係で、とてもむずかしいわけでございますが、一応われわれの方として計数的に目安をつけてみたのを御説明いたしたいと思います。それは過去の実績によりまして、密入国者として検挙されました人数が、過去五箇年間にわたりまして四万三千ほどございますが、これを年に平均しますと、八千六百人ほどになります。これは検挙されました人数でありますが、そのほかに、確かに密入国をして来たことを目撃し、確認をした、しかし検挙はできなかつたという数字が、やはり五年間にわたりまして一万一千ほどございます。これを年間平均をいたしますれば、二千二百ほどになるわけであります。  それから登録令違反ということで、たとえば登録証明書を偽造いたしまして、それを悪質に活用しておつたという、特に悪質の人たち登録令違反として強制退去対象にいたしますが、そういう数字を拾つてみますと、これまた年間しましては四百人ほどになるかと思います。これは昭和二十五年の実績から割出した数字でございます。それからもう一つは、船に乗つて参りまして、いわゆる脱船と申しますか、ミス・シップとわれわれは言つておりますが、船からおりてそのまま船に帰らないという人たち、これもやはり収容所に入れまして、次の船が来るまで収容しておるというようなことで、やはり対象になるわけでありまして、これらの数字は、さきの二十五年の実績によりますと、六百名ほどでございます。これらの今まで申し上げました数字を集めますと、一万二千人にちよつと足りないのでありますが、これを基礎にいたしまして、今後新しい法律によつて、どの程度送還対象となるべき人が現われますか全然わかりませんので、これに一割を加えまして、大体一万三千という数字が出て参ります。以上でございます。
  5. 成田知巳

    成田委員 ただいまの御説明によりますと、密入国者登録令違反、それから脱船でございますか、その三件だけで大体一万二千と踏んで、これに一割を加えますと一万三千、こういうのでありますが、この前大江官房長の御答弁によりますと、きのう申し上げましたように、現行犯三千六百三十、登録令違反二千三百、臨時措置令違反八十、結核患者三百、貧困者五千三百五十、麻薬関係四十、暴力団関係千三百、これで一万三千あるのでありますが、内容は全然食い違つている。こういう食い違つて来ました理由を御説明願いたいと思います。
  6. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 実はあの分科会には、私午後から出まして、午前中の分科会出席しておりませんので、そういう数字が誤つて出たかと思いますが、実はわれわれといたしまては、たとえば結核患者強制送還するというようなことは、法令上はできないことになつておりますので、そういうことは全然われわれとして承知していない数字であります。
  7. 成田知巳

    成田委員 誤つたといいましても、あまりにその手が込んでいるのです。一万三千の内訳は、実に一目瞭然として出ているわけです。どちらが正しいか、それでは私らは心証を得られないのです。そういたしますと、もしあなたの言われるのが正しいといたしましたら、貧困者関係の五千三百五十というものが全然ないのは、貧困なるがゆえに強制送還されるということはない、こう考えてよろしゆうございますね。
  8. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 新しい第二十四條の適用を受けて退去させられる人数の中に、貧困者が全然ないかということは、申し上げかねるのでありますが、そういう数を積算いたしますのに、どの程度であるかわかりませんので、先ほど申しましたように、一割というものを見まして、その中に多少考えておるということでございます。
  9. 成田知巳

    成田委員 そういたしますと、貧困者の五千二百五十という大量の強制送還は、ないと考えてよろしゆうございますか。登録令違反密入国者脱船関係、これで一万二千、あと千は、たとえば臨時措置令違反関係、それから貧困者関係麻薬関係暴力関係、こういう強制送還該当事由はたくさんあるわけでありますが、千をそれでわけるといたしましたら、貧困者関係というのは、そのうち五十か六十、こう考えて大体間違いないわけですね。
  10. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 そういう内訳がはつきりいたしませんので、大ざつぱに一割という、約千二百足らずのものを考えておる程度でございまして、これは予算上の説明でございますので、決して多い数字を、貧困者等について現在は考えておりません。
  11. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行について。大江政府委員予算委員会で、貧困者、それから結核患者退去者をちやんと説明しているのです。特に貧困者退去五千三百五十名というのは、全然数字が違うでしよう。こういうふうに政府責任者同士が無責任な答弁をして、これをこのまま国会として見のがすわけに行かない。従つてただちに大江政府委員出席を求めまして一体大江政府委員は何を根拠にこれを出したのか聞きたいと思うのです。おそらく大江政府委員の言うことがほんとうで、今出入国管理令を審議するのに、貧困者結核者などという数字を出すとぐあいが悪いから、まずここでごまかしているのではないかとも解釈されますが、そうなると、われわれの審議権を無視することになりまして、責任重大だと思いますから、ただちに大江政府委員出席を求めて、この食い違いを明らかにさせていただきたいと思います。
  12. 仲内憲治

    仲内委員長 お答えいたします。大江政府委員出席は要求いたしております。今参議院の方に出ておりますので、そのうち見えると思います。それまで他の御質問がありましたら……。
  13. 成田知巳

    成田委員 もう一点。昨日現行犯三千六百三十ということを聞きましたところ、與党席からそれが密入国者だという援助が出まして、鈴木さんから三千六百三十、こういう御答弁があつたのですが、きようの御答弁ではそれが約三倍になつて八千六百になつております。どちらが正しいのでしようか。
  14. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 昨日申し上げました三千というのは、昭和二十六年度の実績を申し上げたのでありまして、先ほど申し上げましたのは、二十一年から五年の過去五箇年間平均をとつた数字でございます。
  15. 仲内憲治

  16. 並木芳雄

    並木委員 私も、この間委員会申合せをした通り岡崎担当大臣出席を求めてそれに質問をいたしますが、出て来るまでの間、事務的のことで質問をしておきたいと思います。  今度の法案の一番の不安になる点は、要するにこれから先どうなるか、これに目安がついておらないところにあるようでございます。従つてどもは、この際政府から、いろいろの点からいつて不安はないのだということを、はつきりつかみたい。それが私ども質問のねらいであります。そこでお伺いしたいのは、強制送還行政措置がとられたときに、異議申立てはどういうふうになされるのか、これは今まで実績もありましようし、これからどういうふうになつて行くのか、異議申立てについて十分本人を保護する建前になつているかどうか、それを御説明願いたい。
  17. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 出入国管理令にその点が明記されてございますが、概略を申し上げますと、まずたとえば密入国の例を一つとつてみますと、密入国者であるかどうかということを一応審査いたすわけであります。これは審査官審査をいたしますが、その際にはたして密入国であつたということが、その取調ベ内容によりまして確証を得ますれば、本人密入国であつたということを確認させるわけであります。その際に、本人が確認しません場合には、さらに口頭審理の要求をすることができることになつておるので、口頭審理を要求するかどうかということを容疑者に聞くわけであります。容疑者口頭審理を要求するということでございますれば、特別審理官に移しまして、特別審理官がさらに調査をいたすわけであります。それでさらに密入国者でないということをあくまで言われ、特別審理官もどうも密入国者であるという判定を下しましても、どうしても不服であるという際には、さらに異議申立てということを入国管理庁長官あてに出すことになつております。それでその三つの段階によりまして、最終の決定が行われまして、長官異議の裁定によりまして、密入国である異議申立てが成り立たないということがはつきりいたしますれば、強制送還ということになるわけであります。その間代理人の弁護あるいは証人の調査というようなことも認められておりまして、われわれといたしましては、最も民主的な扱いが行われておるというふうに考えております。
  18. 並木芳雄

    並木委員 今までの実績は。
  19. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいままでの異議申立て実績を申しますと、これは管理令が十一月から施行いたされましたので、その後の数字になりますが、十二月には異議申立ての受理が三十五件、裁決が三十一件ございます。それから一月には申立てが五十八件、裁決いたしましたのが五十四件であります。二月は五十一件受理いたしまして四十件裁決いたしております。その裁決の結果を申し上げます。十二月におきましては、三十一件裁決のうち、二十一件が在留許可でございます。十件が在留許可従つて送還をされるわけであります。一月は五十四件の裁決のうち、三十一件は在留許可、二十三件が不許可でございます。二月におきましては、四十件の裁決のうち、在留許可が二十六件、不許可が十四件になつております。
  20. 並木芳雄

    並木委員 それは不法入国者だけですか、一般在留されておる人々の間で、送還をさせられたものに対する異議申立てについての実績を含んでおるかどうか。
  21. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 ただいまも長官から御説明になりました数字の中に、若干、きわめてわずかでございますが、いわゆる密入国以外ですでに本邦に居住しているもので、登録令違反、つまり手続を怠つた者とか、そういうことで退去強制事由にかかつた者が、きわめてわずかでございますがございます。大部分は、ほとんど九九%、あるいはそれ以上と存じますが、これは密入国者でございます。
  22. 並木芳雄

    並木委員 これは行政措置に対する異議申立てにすぎないのですが、一般裁判所に対する訴訟、こういう関係はどうなつておりますか。結局行政措置をする当該官憲に対して異議を申し立てるのですから、本人を保護するという建前からは手簿になるわけです。いわゆる人権を保護するという意味における司法権に対する訴えの手続ということはどういうようになつておりますか。その点を明らかにしていただきたい。
  23. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 入国管理庁におきまして、退去強制決定をいたしましたものにつきましては、一般行政訴訟が許されております。これは行政事件訴訟特例法によりまして、そういつた訴訟が認められておるわけであります。今までの実績といたしましては、訴訟提起いたしまして、訴訟が係属しておるものは一件ございます。
  24. 並木芳雄

    並木委員 その場合には、当然内地在留しつつ訴訟されるものである。つまり訴訟が係属中というものは、当然内地におられると思いますけれども、その点間違いありませんか。つまり執行の方を先にしてしまうということはないでしような。
  25. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 これは法制的には行政事件訴訟特例法によつて訴訟提起しても、行政処分はなし得るという規定が実はあるわけです。特別な場合には裁判官が執行処分を停止するという條文がございますけれども原則的には行政事件訴訟特例法では、行政処分効力はなくならない、つまり退去強制は、行政訴訟提起されてもなし得る、こういう規定が実はあるのです。しかし私どもとしては、でき得る限り行政訴訟提起されたものについては、特別な場合を除きまして、退去強制をしないで、できるだけ訴訟の完了するまで内地に置いておくような方針をもつて処理いたしております。
  26. 並木芳雄

    並木委員 それは当然そうなければならぬと思うのです。強制退去をさせてしまつてから訴訟を進行させるのでは、本人としても非常に不利な立場に置かれるわけですが、実際その強制退去させたあと訴訟を進行させるとなると、だれがやることになるのですか。本人送還されてしまつていない、それで訴訟は天びんになつている。そのときに実際はどういうふうに行われますか。
  27. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 これはまだ具体的な事例が実は出ていないのでありまして、先ほど訴訟提起されたものが一件あると申しましたが、それも実はこれはこまかい行政事件訴訟特例法規定を申し上げないと御了解しがたいと思いますので、少し詳細にわたりますが御説明申し上げます。行政事件訴訟特例法の第十條を、ごらんになりますと、つまり「訴の提起は、処分執行を停止しない。」こういう條項があるわけです。しかし先ほど申しましたように、私どもとしてはできるだけ特別の事情のない限り、訴訟が終結するまで退去強制をしないで置いておくというふうに考えているのです。今のところまだそういう事例がないのでありますが、もしかりに出たとすれば、どういうことになるかというふうなお尋ねのようでございますが、これは訴訟代理人とかそういうものに対して訴訟が係属される、かように考えておりますが、私どもとしてはそういうことのないように処理いたしたい、こういう考えであります。
  28. 並木芳雄

    並木委員 私はやつぱり法不備であろうと思うのです。処分を停止しないということは、国内におけるものについては処分を停止しないで済む場合があるわけですけれども本人向うに返されてしまうのですから、そうするとこれはやはり法の不備になると思うのですが、どうお考えになりますか。
  29. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 先ほど御説明しました行政事件訴訟特例法の第十條の第二項には「訴訟提起があつた場合において、処分執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があると認めるときは、裁判所は、申立に因り又は職権で、決定を以て、処分執行を停止すべきことを命ずることができる。」こういう規定がありますので、そういう場合には裁判所によつてそういうことができることになりまして、その点は一応行政事件訴訟特例法でもそういう措置ができるということになつておりますので、そう大した御懸念の点はなかろうと存ずるのであります。
  30. 並木芳雄

    並木委員 それはやつぱり一歩つつ込んで裁判所はしなければならない、こういうふうに法が行けば尊重することができるのじやないかと思うのです。つまりそうして裁判というものを急いでやる。今のでは認定によつてできるというふうで、ですからしなかつた場合に本人としてはどうにもしようがない。それではやつぱり十分守られないと思うのです。ですから私はその点は法律を改めて強制送還の場合には裁判所としては当然処分を停止しなければならない、そうして裁判を急ぐべきだというふうに改正すべきであると感じたわけです。この点いかがですか。
  31. 鈴木政勝

    鈴木(政)政府委員 これはむしろ行政事件訴訟特例法の方の問題であろうと存じます。御意見のように私どもも御趣旨は十分その意味で、退去強制をしないで訴訟の終結まで待つて上げるという方針で臨んでいるわけですが、将来御意見のようにむしろ訴訟特例法の改正とかいうような問題になると思いますので、これはひとつまた別個にわれわれの方としても研究すべき点もあるように思いますし、今後の特例法の、訴訟法上のむしろ問題だとかように考える次第であります。
  32. 並木芳雄

    並木委員 昨日も連合審査会で問題になつたのですけれども、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦在留することができる。」という例の第二條第六項でございますが、この「別に法律で定めるところにより」というその「法律」というものは、日韓会談あるいは日華條約というものの結果を待つてつくるというような答弁を聞いておつたのですけれども日本独自の立場からどうしてこの法律ができないのか。どういうわけで相手国とのそういう話合いの結果を待たなければできないのか、その事情を伺いたい。
  33. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはこここに書いてありますように、一応「在留資格を有することなく本邦在留することができる。」ということによりまして、一応の在留ができるのであります。そうしてさらにこの規定によりまして、将来この規定通りにやつてもよいわけでありますが、昨日来からもいろいろ申し上げておりますように、長くおられます、しかも善良である人々に対しまして、急激な不利、不便、不都合のないように、この間にできるだけの緩和規定といいますか、措置を講じたい、こういうことでただいま日韓会談でいろいろなことが折衝されているわけであります。そこで会談において在留資格在留期間等についているいろいろな話合いが行われると思うのでありますが、その決定を待つて新たに法律を出そう、こういう建前になつているわけであります。
  34. 並木芳雄

    並木委員 そこにちよつと不安があると思うのです。どういうような法律が出て来るか。これは政府としては全然今見当がついていないのかどうか、それをお伺いしたい。
  35. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいま会談中でございますので、会談の間にいろいろなことをここで申し上げることは差控えたいと思うのでありますが、大きな筋から申し上げましたならば、長く在留されている善良なる人々に対して、いろいろな不都合のないようにやりたい、そういう趣旨から進んでいることだけを申し上げておきます。
  36. 並木芳雄

    並木委員 そうしますと、外国人登録法によつて登録をすべき者も、この法律ができるまではその登録をしないで済むような措置がとられておらなければならないと思います。そういうふうに措置されておりますかどうか。
  37. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 それは登録法の方に規定が、ございまして、登録法附則の方をごらんいただきますと、そこに書いてございますが、附則の第五項に「旧外国人登録令規定による登録証明書有効期間は、この法律施行の日から六月とす。」というので、六箇月の間にはこちらの方の法律も出るであろう、こちらの登録の方もそれだけ余裕があればよろしかろう、こういうことになつております。
  38. 並木芳雄

    並木委員 登録とこの法律とは非常に関係が深いと思うのです。つまりこの法律が出ないうちに登録期間が過ぎてしまうと、どうしても登録しなければなりませんから、その間に昨日もいろいろ問題になりました通り、同じ朝鮮のうちのどの証明をもらつて来るとか、同じ台湾のうちのどの証明をもらつて来るとか、証明をもらえない場合も起るのじやないか。要するにざつくばらんに言うと、二つの当局があるというような前提のもとに、いろいろの不安が出て来るのじやないかと思うのです。そういう身分関係をきめるものがいろいろの会談であり、それから出て来る今後きまる法律であるならば、その法律というものができ上つてから初めて登録をさせるようにして行けば、一番それが段取りがいいのだろうと私は思うのですけれども身分関係というもの、あるいは国際関係というもの、その他の非常に微妙な点があればこそ、日韓会談なりあるいは日華会談なりが行われておるのでありますから、それではつきりしてから登録効力を発生させたらいかがですか。今みたいに六箇月で限つてしまいますと、はつきりしないうちに登録だけはしろという——日本国籍を離れた外国人に、あるいはその意思に反したことを強制するようなやり方というものは、これは必ずしもとるべきものではないと思うのです。
  39. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは昨日もお答え申し上げたのでありますが、この朝鮮人々講和発効と同時に日本国籍を失うということは一つ原則になつております。それから向うでどうなるかということは、先方の国内法国籍法の律するところによつて措置される、向うで律せられました国籍のいかんによりまして、今後こちらの法律をそれぞれ運用して行かなければらぬということは、昨日も申し上げた通りでございます。国籍の問題につきましては、一応国際法上の原則に従いまして決せられて行くことと思うのでありまして、日韓條約はそれを確認して行く、こういうことになつて行くのではないかと思つております。
  40. 並木芳雄

    並木委員 ですからそういうことがはつきりきまつてから登録を実施されたらいかがです、こう聞いているのです。
  41. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま申し上げましたように、国籍に関する限りの問題におきましては、これは一つの国が独立する場合はそれをどうするかという国際法上の原則といいますか、慣例によりまして、きまるのでありますから、その問題に従いまして、国内の諸般の法律を実施運営して行かなければならぬ、こういうのがわれわれの建前になつております。
  42. 並木芳雄

    並木委員 私には建前はよくわかるのですけれども、やはり日本国籍を離れて祖国に帰られる人々の気持というものは考えなければならぬ。そこに人間の微妙な感情をそんたくし、尊重しなければならぬ点が出て来るのじやないか、少し私は無理があると思う。つまり日本政府としては、大韓民国正統政府として認めておると言つております。だからその政府意思をそのままだれでも彼でも納得して、そうして大韓民国人として登録するという段階に至るまでの時間と経過が必要ではないかというふうに思う。それにはどうしたらいいかということを私はいろいろ考えたのですが、登録法というものを六箇月という期間で限らずに、こういう法律がいろいろでき上つてから、すつかり身分関係がはつきりしてからやつたら無理がないのじやないかと思うのです。この点重ねてお伺いいたします。
  43. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 並木委員のお気持はよくわかるのであります。そういうような意味からいたしまして、法案の方におきましても在留期間在留資格等については、いろいろの経過的規定措置が講ぜられることになるのでありますが、国籍の問題はこれは何回繰返しても同じと思いますが、一応国際法なり国際慣例の原則に従いまして、両国の間でこれが確認されて行くことになると思うのでありまして、それに基いて今後の管理令なりあるいは外国人登録法の諸規定が運営されて行くことと思うのであります。並木委員のお気持は私も十分わかつております。拝承いたしておきます。
  44. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、やはりきのう大矢委員質問したところへ来るので、大韓民国の代表部の証明が得られなかつた場合に、政府はそれは証明のない者としてすぐ出入国管理令によつて送還するのかどうかということを聞かなければならなくなるのです。どうしても証明が得られずに登録ができなくても、それは大目に見るというのかどうか、そこのところをひとつ、きようははつきりしていただきたいと思います。
  45. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは昨日も申し上げましたように、今回の一連の諸法令におきましては、本人意思によりましてはこれはいろいろの道が開けておるのでありまして、せつかく開けておる道をとらないという人にとりましては、法の厳格なる運営から行きますれば、まことに遺憾でありますが、不都合な結果を来すことに相なる場合もあるかと思うのであります。しかしこれは交替分の意思でいろいろの保護を受けるといいますか、在留できるような措置本人みずからがとらないのでありますから、その場合は一応いたし方がないのじやないかというふうにここで申し上げておきます。
  46. 並木芳雄

    並木委員 政府はどうしてもそういう態度を改めなければ、かなり深刻な場面が出て来るのじやないかと私は心配するのです。それは本人にいろいろの道が開かれておるといいますけれども、中には北鮮の人もおられるわけなんです。北鮮の人は南鮮を支配しているという前提のもとに李承晩政権の証明はもらえない場合があるのじやないか。そういう場合にただそれだけの理由でもつて返されるとなると、相当そこに問題が起ると思うのです。大体何人ぐらいそういう人がいると政府は推定していますか。
  47. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 何人とかなんとかという推定は、ここでは申し上げることはできないと思うのでありますが、先ほどからも申し上げておりますように、並木委員のお気持は十分われわれもわかるのであります。十分気持を拝承いたしまして、さらにまた日韓会談もいろいろ行われておるのであります。会議の継続中でございますから、ただいまのところでは一応私は先ほどから重ねてお答え申し上げておる以外には出られないと思いますけれども並木委員の御意見は十分拝承いたしておきたいと思います。なおおそらく多数の人がわれわれとしては全部の人が登録されることを希望するわけでございますが、多数の人が登録されることと私は思います。
  48. 並木芳雄

    並木委員 多数の人が登録されればこれは問題ないわけです。その見通しというものは重要な問題なのですが、多数というのは大体何割ぐらいです。それから今まで送還された人々朝鮮のどこへ送還されていますか。
  49. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 現在までに送還されました人たちは、日本の舶によりまして釜山に向けて送つております。釜山に着きましてからは、韓国政府の手に移るわけでありまして、韓国政府の方で丁重に扱つておるようでございます。
  50. 山本利壽

    ○山本(利)委員 関連して……。ただいまの日本から送還された人たちが釜山に送り返されるということでありますが、その釜山に上陸してからの韓国側の処置というものは、どういうことになつておりますか。     〔委員長退席、佐々木(盛)委員長代理着席〕 私が昨年九州の大村湾の収容所を視察しましたときの話、あるいは対馬の方へ行つて関係官庁で聞きましたところでは、何回となく同じ人間が密入国して来る、係官がまたお前は来たのかというように、何回も何回も同じ人間が出て来るということでありますが、これはせつかくこちらの方で多額の費用を費して捕え、そうして送還しているのだから、向うの方での責任のある処置が実際にとられておるのかどうかということを疑うのでありますが、その点に関しての御説明を承りたいと思います。
  51. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、そういう事例がありますことをわれわれも承知いたしおります。韓国側の方でどういう扱いをしておりますか、詳しいことはわかりませんが、韓国側の社会部——こちらの厚生省のような役所があるようでありますが、そちらの方でこちらから参りました人たちを全部引取りまして、あといろいろ生活に困る人はめんどうを見るというようなことを聞いておるだけでありまして、それ以上詳しいことは存じません。たびたび密航して来られるということは、これはわれわれ日本側においても、いわゆる海岸の警備と申しますか、そういう密入国船が相当往来できるという現状につきましては、日本政府といたしましても、相当考えなければならぬ点があるのではないかと思いますが、現在におきましては、十分な警戒上の手配もできていないのではないかという点を、われわれとしては遺憾に思つている次第であります。
  52. 山本利壽

    ○山本(利)委員 対馬と釜山との間が、発動機船で三時間半ないし四時間くらいで渡航することができる、従つて相当数の朝鮮人が日本へ入りたがつておるという事実があるのでありますが、同じ人間が何回も来るということに対して、向うでどういうような処置をとつておるのかということに対して、あまり詳しいお調べがないようでありますけれども、それでは万一向うにおいても処置がない場合に、同一の人間がたびたび来て、日本の手数と、従つて相当の費用を費す場合に、これに対しての責任と、その費用の賠償といつたようなことについて、韓国政府に向つて交渉されたことがあるかどうか、今後それについて交渉される意思があるかどうか、それらの点について、御説明を承りたい。
  53. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 たびたび往復するということのために、特別な措置をとつておるかというお尋ねでございますが、われわれ日本側といたしましては、数次の密航者、つまり再犯というようなことになりますれば、刑罰関係におきましては、そういう点を考慮して、相当罰則の適用がきつくなつておるわけでありますが、費用の点につきましては、ただいまのところ特にこういうものに対して、どうするという考えは持つておりません。
  54. 山本利壽

    ○山本(利)委員 費用について何らのお考えもないということでありますが、それでは今後何回おやりになつても、やはり今までのことが繰返されると、日本としては非常に迷惑すると思うのでありますが、ただやむを得ないという意味で、このまま放つておかれるつもりですか、もう一度その点について責任のある答弁をいただきたい。これについては相当日本は各国から賠償なんかを要求されておるような次第であり、日本の国民も税金で困つておる、それを幾たびも同じことを繰返しておつて、ざるの中に水を入れるというようなことでは、私はまことに切りのないことだと考えます。さらに先ほど処罰はだんだんきびしくするかというお話でありましたけれども、これは結局においては、向う送還するということが一番おもな刑罰であつてそれ以外に、何回来た者は、内地においてはどういう刑罰にするといつたような事例があるか、その点についての御説明を承りたい。
  55. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 密入国について、韓国と日本とが非常に地理的に関係が近いという意味で、この問題は将来も相当頻繁に起る問題であると思います。韓国側におきましても、日本に行く、あるいは韓国からこの動乱中に外へ出るという者につきましても、嚴罰をもつて望んでおるようでございますし、両国のためにこの密入国というようなことは、ぜひなくするような方法を考えて行かなければならぬと思いますので、今のお話の点はごもつともの点でございまして、韓国側ともこの密入国の対策につきましては、十分意見の合う問題でございますので、両国におきまして、今後機会ある、ごとにそういう解決に向つて措置を進めて行きたいと考えております。  それから再犯というような点で、刑罰が重くなつておるという事例は、具体的に今ここに資料はございませんが、最初罰金くらいであつたものが懲役になり、懲役の年限もふえて行くというような……。
  56. 山本利壽

    ○山本(利)委員 現在において密入国者を捕えてそれを送還する場合には、三百名ないし四百名以上がたまるまでは、大村において収容して、それを全部日本の費用でまかなつておると私は考えるのでありますが、平均一人について、一体国家は送還までにどのくらいの費用をかけておられるか、その点を伺いたい。   「一億六千万円を一万三千で割ればいいんだ」「予算書に載つている」「はつきりはつきり」「どうしたどうした」と呼ぶ者あり〕
  57. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 今の予算におきましては、先ほどお話もございましたように、一万三千の人を送り返すということになつておりまして、それの費用といたしましてわが方の予算は、大体一億円程度と思います。従いまして五千円程度と存じます。     〔「だんだん減つて来たじやない   か。」と呼ぶ者あり〕
  58. 山本利壽

    ○山本(利)委員 密入国の問題で私の承知しておるところでは、第三国人としての証明書といいますか、それを紛失したような場合に、役場へ申し出て手数料を納めると何回でもそれがいただける。これが一つの、密入国の非常な楽になる手段であるということを、現地において私は聞いたのでありますが、それは写真が張つてあるけれども、その写真を薄くはがして、そして密入国した者の写真をとつて、それをまた薄くはがして、その前のところへ張りつけると、これはただちに証明書ができる。そういうものをブローカー式の者がたくさんとつては次々に逃げ込んだ者にそれを渡して連れ込んで来るということでありますが、現在においてもそのようにたやすく証明書というものは渡されておるのかどうか。その点現地の係官から、根本的に改めなければわれわれがつかまえてみてもわからぬというような声を聞いたのでありますが、その点について改善の処置をとられたかどうか、お尋ねいたします。
  59. 鈴木一

    鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねのような事件が遺憾ながらございますただいまの外国人登録証明書には写真がはがれないように浮出しプレスをしてございますが、お話のように薄くはがしてそれを偽造しましたり、それをまわしたり、あるいは売つたりというようなこともあるようでございますので、非常に苦心をいたしております。今回新しい外国人登録法を御審議願つておりますが、そちらの方には、そういう事柄の点につきましての改善の方法といたしましては、指紋を押しますれば写真と指紋でその人がはつきりわかるという方法をぜひとりたいというので、御審議を願つておるわけでございます。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 関連政府答弁は非常に無責任なことがあるので、よくお聞きしておきたい。送還された朝鮮の諸君、台湾の諸君の取扱いについて、先ほど鈴木長官のお話によると、送り返されますと、それぞれ貧しい人には保護の方法を講じ、非常に優遇するかのごとき印象を與える答弁をしておるのでありますが、これは常識がないのもはなはだしいと思うのであります。ということは、先ほど石原政務次官の答弁にありました通りに、石原政務次官は、大体大韓民国朝鮮の代表的な政府日本は認める。従つてこれ以外の政権を支持しようとするものについては、どういうことになるかというと、おそらく大韓民国の駐日代表部の方では、朝鮮民主主義人民共和国を支持するという人に対しては、国籍証明書を発行しないとか、あるいは直接間接妨害をして来ることは考えられるのであります。また台湾の諸君にとつても、台湾の諸君が中国人民共和国を支持するといえば、駐日国府代表部が、あらゆる妨害をするということは考えられると思うのであります。従つて国籍証明書あるいはその他の証明書が出されないということは明瞭だと思うのであります。そういう場合には、いやでもおうでも出入国管理令違反で強制送還をされるのでおります。     〔佐々木(盛)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが強制送還される先を聞いてみると、この出入国管理令によりますと、第一には、その者の国籍または市民権の属する国に送還されるというのでありますが、たとえば北鮮の人民民主主義共和国を支持するという人が釜山へ送られるということになるならば、これは実際は出入国管理令による、本人の支持する国へ送られるということにはならないのでありますから、その政権に反対しておる人を、その反対しておる政権の所在地へ送るということになるのは常識上考えられないのであります。従つて朝鮮人民民主主義共和国を支持してそのために韓国代表部から国籍証明書がもらえない人が釜山へ送られて、しかもそこで十分な保護を受けるということはわれわれは考えられないのであります。ことに李承晩だとか蒋介石政権というのは、もう余命幾ばくもないために、今非常に人民を弾圧してやたらに人を銃殺し、投獄しておることは世界周知の事実であります。こういうところにその政権に反対する人たちを送るということは、これは要するに日本と李承晩、蒋介石が共謀の上で在日朝鮮人、在日中国人を殺す。これは殺人の共同正犯になると私は思うのであります。もし、それがそうでないというならば、李承晩、政権あるいは蒋介石政権に反対のために国籍がもらえなかつた人が釜山やあるいは台北に送られて十分保護を受けるという事実を私は示してもらいたいと思うのです。ところが石原政務次官は、それじや一体在日朝鮮の諸君で朝鮮人民民主主義共和国と李承晩政権を支持する人の数はどういう比率かという並木委員質問に対して、数は言えないと言いますが、政府の出しておる「六大都市外国人登録国籍別人員調査表」というのを見ますと、「朝鮮」と書いてある。「朝鮮」と書いてあるのは、韓国国籍を拒否しておる人と見るのが至当だと思うのであります。この人が六大都市だけで十四万、韓国という国籍を甘んじておる人は三万だけであります。そうする将来われわれが予想されることは、在日朝鮮の諸君でおそらく圧倒的な多数が大韓民国の政権を支持しない。少くとも朝鮮の統一政権ができるまでは、今いずれの国籍にもつかないということが、在日朝鮮人の諸君のほんとうの考えだと思うのであります。そうすると、こういう在日朝鮮の大多数の人たちを、国籍証明がとれないということで釜山に送り、釜山であらゆる圧迫を受けさせるということは、人道上からいいましても、それから世界人権宣言からいいましても、世界人権宣言の第十四條には「何人も、迫害からの保護を他国においては求め且つ享有する権利を有する。」とあるのであります。今、朝鮮や台湾に帰れば、自分が抱懐している考え立場から迫害を受けようとする人たちは、日本にいたいということを考えるのは当然である。このことはまた、日本は保護する義務があるのであります。これが世界人権宣言にはつきりうたつてあるのであります。こういう明瞭な事実があるにもかかわらず、白々しく李承晩や蒋介石のような人と手を結んで、在日の朝鮮人や台湾の諸君を送り返すということは——これはあと岡崎氏にも聞きますが、こういう非人道的なこと、これは明らかに在日朝鮮人や台湾の人たちを殺してしまうことだと思うのです。そうでないというなら、李承晩政権あるいは蒋介石政権を支持しないということで国籍がとれなかつたり、あるいはそのほかの理由で強制退去をかりに受けたとしても、十分の保護を受けるということを十分ここで証明してもらいたいと思う。どういう事実からそういうことが言えるか。  それから石原次官にお聞きしますが、朝鮮に統一政府ができるまでは一方の国籍、たとえば大韓民国国籍というようなものをとりたくないというのが、朝鮮の諸君の大多数の圧倒的な希望だと私は思うのです。しかもあなたの政府から出しておる表にも、こういうことははつきり出ておるわけです。だから大体どのくらいの人が大韓民国国籍を求め、どのくらいの人がこれを拒否するかということは、政府の配付した資料でおわかりだと思う。これをあなたからよく聞いておきたい。これは関連質問ですから、あとでまた岡崎国務大臣にそのほかの詳しいことは聞きたいと思いますが、これは人道上の問題からいつても、ナチスがユダヤ民族を追放したと同じ愚を防ぐ——岡崎国務大臣は、いずれはヒトラーの二の舞を受けるのじやないかと心ひそかに心配しておるくらいです。もう少し真剣にこの問題はよく考えていただきたいと思う。
  61. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま林委員は、今回の法律が在日朝鮮人を非常に圧迫したり、殺傷したりするような目的でできているのじやないかというような、非常に過激なことを言われたのでありますが、これはまつたく相反しておると思うのであります。これは昨日来よく御説明いたしましたように、長く在留される善良な人々のために十分な保護もしたいという意味で、いろいろの経過規定も現在もあり、将来日韓会談のでき上りました際には、さらにその上に新しい法律も出して、十分な保護をして行こうという目的のもとに、今回のいろいろな法律措置が講ぜられておるのでありますから、ただいま林委員が言われましたことは、まつたくわれわれの考えておることと逆なことであろうと思います。それから朝鮮人の国籍の表についてのお話でありましたが、それは昨日入国管理庁の方から、それは北鮮とか南鮮とかいう意味でないということは十分御説明してあるはずであります。重ねて御質問であれば、またあとでお答え願いたいと思います。  それからこの法令が施行されましたならば、おそらく大多数の人が登録されるのではないかと考えておるのでありまして、先方の国内法向う国籍がきまるのであります。韓国ミツシヨンその他へいろいろ登録その他の申請が出た場合に、それを拒否したり断つたりする、登録を受付けないとかいうようなことはない。韓国政府としては申請されれば受付けないことはないと私は思つております。
  62. 並木芳雄

    並木委員 岡崎国務大臣に質問いたします。この出入国管理令の延長によりまして、各方面に非常な不安が出ております。それは今後どうなるだろう。日本に引続いておられないのじやないかというような不安が多いのですが、それと一審関係のあるのは、やはり日韓会談でございます。日韓会談では特に在留朝鮮人の地位、身分に関するようなことはどのように話が進められておりますか、この点を報告していただきたいと思うのであります。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日韓会談はまだ話中でありますので、その内容をお話することは差控えたいと思いますが、原則的に申し上げますれば、何と申しますか、戦争の結果、割譲地というような、たとえば昔でいえば樺太の南部をソ連が日本へ割譲した、こういうような場合には、そこにいる国民に国籍の選択権を與えるというのが、普通の例だと思います。ところが、かつて独立した国が、何らかの理由で独立を失い、またそれが独立を回復した、こういうような場合には、そのかつて独立国であつた国の国民もしくはそれの子孫は、当然その国の国籍を持つべきものだというのが普通の原則だと思います。従つてわかりやすく言えば、日本におる韓国の人々、もしくはその前に韓国におつて日本に来ている子孫というような人々は、当然日本国籍はやはり一応失つて、韓国籍を取得するという建前になると思います。そこで普通だつたら、それで問題がないわけですが、現実の事態は、韓国必ずしも統一されていないというような、普通の事態では考えなかつたような状況になつておりますから、日韓会談でも、その間をどういうふうに調整するか。また急にそういうことにしますと、日本国内におきましても、外国人には許されない権益があるわけであります。ところが今まで日本人として扱われておりましたから、外国人には許されない権益も許されているのは当然であります。今度日本国籍をいずれにしても失うということになりますと、それでは今まで日本内国人として持つてつた権利を外国民として失つてしまう、から、どうしても外国民には持たせ得ないようなものもありましよう、たとえば選挙権とかいろいろなものがありましようけれども、そうでないものは、経過的にはある程度本人の利益のために認めてやらなければならぬものもあるだろうと思います。そこでそういうものをどの程度に認めるか。また長く日本におつて帰化したい——韓国の国籍を一応とるにしても、すぐ日本に帰化したい、こういう希望の人もあり得ると思いますので、そういうものをどういうふうな手続で帰化さすべきか原則は、韓国民は韓国民、日本国民は日本国民になるのであります。それをどういうふうに過渡的に調整するかというのが、話の主題であろうと思います。
  64. 並木芳雄

    並木委員 その点よくわかりました。結局国籍については選択権ではなくて、国籍の回復である、ここに要点があるのだけれども、予期しなかつた南北不統一のために問題が残つておる。そういう点もその通りだと思うのです。ですから、そこに日本としてもやはり苦悩の状態が出て来なければならないと思うのです。大韓民国を承認するのはけつこうですけれども、その大韓民国の李承晩政権が全体を統治しているのだ、というところへ今持つてつてしまつていいのかどうか。この問題はかなり微妙だろうと思うのですけれども、国務大臣としてはそこまで含めて、つまり大韓民国の李承晩政権が全朝鮮を統治し、支配しておるものということを今前提としておられるのかどうか、はつきりそう言つていいのかどうか。それについては台湾の国民政府の場合に、吉田さんは、ダレスさんに手紙を書いてはつきり意思表示をしたのですけれども、今度の場合に何かそういう意思表示がだれかに出されたかどうか、平和條約では朝鮮の独立を認めるということだけたつたようでございます。朝鮮の独立を認めることが李承晩政権の大韓民国政府を統一政府として認めるということに、どのような文書あるいは約束をもつてされておるか、その点をお伺いいたしたい。
  65. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この大韓民国政府といいますものが、事実上どういうところを支配しておるかということはしばらくおきまして、国際連合の取扱い等においては、朝鮮における政府として大韓民国政府を認めておるのでありましてその結果でもありますし、また考え方も一脈相通ずるところもあるのでございますから、日本でも大韓民国政府朝鮮政府として話合いをいたしておるわけであります。法律的にいえば、朝鮮の唯一の政府大韓民国政府であるということになるのであります。(「そんなばかな話どこにある、だれがそんなごときめた」と呼ぶ者あり)そしてまたかりにそうでないとしても、日本におる代表者としては、大韓民国政府の代表者しかいないのであります。いずれにしてもわれわれは大韓民国政府話合いをして行く以外に、今のところ方法がないわけです。将来また朝鮮の休職会談ができ上り、あるいは国連の何かの措置によつて大韓民国政府があらためて全朝鮮政府であるということになるか、あるいは何かはかの形が出て来るか、そういう場合が将来ありとすれば、朝鮮のしかるべき政府と交渉するのはあたりまえの話でありまして、現在のところは、われわれとしては大韓民国政府を相手にして交渉する以外に方法はないのであります。そこでおそらく他の委員からそういうお話があつたと思いますが、今のところはどうしてもほかに方法がない、そうして形式的には少くとも大韓民国政府朝鮮政府であるというふうに、国連等の取扱いはなつておりますので、事実上の問題はまたこれは考慮に入れるべき点もありましようけれども、これは事実上の問題として何か過渡的な方法があるか、あるいはもうしばらくしたら何かの形でもつと朝鮮自体がはつきりするかどちらになるか知りませんが、実はこれは朝鮮内部の問題であつて、われわれの方は不幸にして今その大韓民国政府の権力が全朝鮮に及んでいないということがありとしても、どうもこれは内部の問題でやむを得ない形なのであります。そこでとにかく大韓民国政府話合いを進める、こうやつておるわけであります。
  66. 並木芳雄

    並木委員 きようの岡崎大臣の御答弁ならば私どもはわかるのです。今は非常にわかると思うのですけれども、昨日の政府答弁では、朝鮮というものは大韓民国によつて統一されるにきまつているんだというふうに聞えるような前提のもとにやられたものですから、それですと三十八度線の休戦交渉というようなものに目をおおつているのかどうか、あるいは日本はアメリカその他との間で密約でも結んで、どんなにこの休戦交渉というものが発展して行こうと、あくまで北鮮をやつつけるんだ、あくまでやつつけて統一するんだというような條約でもあるのかどうか、約束でもあるのかどうかという疑問を持つて来るわけです。しかし今の岡崎国務大臣の答弁ですと、ちようど台湾におけるように、現在支配しておる地域と、その次にあるいは将来支配する地域、それを統治しておる李承晩大韓民国政権というふうにとるわけです。それは私はほんとうだろうと思うのです。そこで三十八度線をめぐつての休職交渉に対して、政府の担当大臣としての岡崎国務大臣はどんなふうに今見通しをつけておられますか。この出入国管理令はそういう実際の問題と切り離せない重要な問題でございますので、この機会にどういうふうにこれが進展して行くものであるか、独立も間近でございますので、担当大臣としてこの見解と見通しをこの際お聞きしておきたいと思います。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の答弁をほめられて恐縮でありますが、あるいは事務当局からそんな答弁をしてはいかぬとしかられるかもしれないのであります。そこで今度ははなはだ不満足な答弁になると思います。私ども朝鮮の前途がどうなるかということはむろんいろいろ気になりますから、自分たちの手で入る報道等は入手して考えております。がそれだけでも十分でないので、国連軍当局といいますか、司令部の関係当局等にも機会があれば聞いております。実はこれは私ほんとうのことを言うか言わないか別ですが、その関係当事者の間でもどうもはつきりした見通しはつけがたいというのが結論じやないかと思います。最近の動き方はかなりいい方に向いておるようにも見えますけれども、根本的に一体ほんとうに先方に休戦を行う意思ありやいなやということについては、この前一度国連側の関係者を非常に失望させたことがあつたのであります。というのは双方からの委員と中立の委員が出て、休職條項を監視するということであつたときに、中立の委員としてソ連の代表を北鮮側が指名して来た、そこでこれは中立の委員としてはとうてい考えられないのだが、こういう態度をとるのでは真底から休戦を成立させようという意思が、北鮮側にないのではないかと非常に失望を與えたようでありました。そういうような事情もあるので、まだはつきりとできるということも言えないし、できないとも言えない、見通しは立たぬということじやないかと思います。(「何もわからぬじやないか」と呼ぶ者あり)が現実の事態は、たとえば出入口を明けるというような問題は北鮮側でかなり譲歩しておりますから、少しずつ解決の糸口が出て来て、一つ一つこまかい問題は解決されそうに見えておりますから、今日の現象だけをとらえてみれば有望だということが言えるかもしれません。しかしそのバツク・グラウンドにほんとうに休職をやる意思があるやなしやということは、どうもまだわからないということで自信なしということじやないかと思います。
  68. 並木芳雄

    並木委員 私ばかり時間をとるといけませんから、もう一問だけにしておきます。国際連合へ加盟を申し込むということの問題に関係が出て来るのじやないかと思うのです。私ども政府が国際連合に加盟を申し込むについて国会の承認を求めたいということを聞いて、政府は急に民主的にかわつて来たというふうに感じたのです。今までいつでもたいてい事後承認であります。今度の国際連合加盟についてはいち早く国会の承認を求めようとするそのことが、何か今までの呼吸と合つてないようなのでございますけれども、あの話はどうなつたのでしようか、ここ数日ちよつと立消えのようであります。私どもはあしたにも国会の承認を求める文書が出て来るかと思つてつてつたのですけれども、今日まで出ておりません。特に国際連合に加入することが、この三十八度線をめぐる朝鮮の動乱と何らか関係があるのかどうか。それから先般来問題になつている行政協定との関係で、国際連合とも協定を結ぶ、その協定の方の話は岡崎さんが発表になつてからこれもまた立消えのようなんです。従つて協定を結ぶかわりに、日本が国際連合に加盟の申込みをしてしまえば、それは協定にかわるべきものとして、国際連合軍が日本に駐留するような道が開かれて来る、そのためであるのかどうか。それからああは政府はおつしやつても、実際現状において国際連合に加盟の道が開かれるのかどうか。吉田首相も岡崎さんも、何らか便法が講ぜられるのであろうということは、今まで言つておられたと私記憶しております。ですから今回も何かそういう確信があるだろうと思いますけれども、以上国際連合加盟問題に対する三つの点をめぐつての御答弁をお願いして私の質問を終ります。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際連合加入の文書はもう出るじやないかと思います。私も何で遅れているかよくわかりませんが、何か手続で遅れているのじやないかと思います。この加盟と国連軍協力一ということとは直接には関係がありません。従つて加盟の申込みをしても——むろん加盟ができるかどうか、それは別問題ですが、加盟してもしなくても国連協力ということはいたすのであります。これはまた別の問題として取扱います。それから国際連合に加盟できるかどうか。私どもは少くとも加盟を申請する資格は十分ある、こう考えておりますが、たとえば軍隊を持たないからだめであるとかだめでないとかという議論は、これは枝葉の問題であつて、どうでも考え得ることと思います。ただ安全保障理事会の拒否権等の話がありまして、現に加盟を申し込んでも加盟をまだ認められておらない国が御承知のようにたくさんあります。それでありますから、こちらに資格があつても拒否権の関係上、実際上加盟がいつできるかということは、これは私どもにもわかりません。便法が講ぜられるとか講ぜられないとかいうのも、要するに拒否権という問題を別にすれば、加盟の資格は認められるであろう、こういうことであります。それに加えて、ヴィートウの話は別問題であります。御承知のようにイタリアと條約調印の全部の国が、イタリアの国際連合加入を支持するという條文があつて署名したにかかわらず、その署名国の一つであるソ連は今まで拒否権を発動して、イタリアの加盟を許さないというようなこともありますから、どうもこの拒否権の問題だけはわれわれにもわからない。ただ加盟の資格があるということだけは私は言えると考えております。そうして今申したように国連協力という問題、あるいは国連の兵隊が日本におるという問題と加盟の問題とは、これは一応われわれは切り離して考えております。加盟しなくても国連協力はできます。そこで国連協力の方はどういう協力をいたすべきかということ、たくさんの軍隊が朝鮮には行つておりますが、日本に駐屯しておるのはアメリカを除けば英濠軍だけであります。ほかの方の軍人は、ただ軍人として日本に来て病院に入つたり、あるいは数日の休暇を、アメリカ軍隊なり濠州の軍隊が今まで持つてつた設備を利用しておるというだけでありますから、ほかの軍人については軍隊としてここへ入つて来るわけでも何でもありませんで、問題はないわけであります。英濠軍だけは、どういうふうにするかということはまだ先方の希望がよくわかりませんので、話は進んでおりません。先方でいろいろ考えおるようでありますから、そうおそからざるうちに話がまとまるものと考えております。
  70. 仲内憲治

  71. 川島金次

    川島委員 時間がないようですから、この際簡単に二、三、出入国管理令の問題に関する限りにおいての点についてお尋ねしておきたいと思うのであります。  日本朝鮮との関係というものは、歴史的にも、政治、経済、社会生活の上においても、非常に密接な関係を持つて今日になつておる。従つて朝鮮人がわが国に来て多数在住されておりますことも当然のことと思われるのであります。しかるに政府が発表しました先般の出入国管理令及びその一部を改正いたしまする今回の法案の全体を通じて感じまする点は、名は出入国管理令ではございますが、その実体は、何か在住しております朝鮮人を根こそぎ送還をしよう、こういう一つ政府の大原則といいますか、そういつた根本的な考え方がこの法令の底には大きく流れている、こういう感じがわれわれはいたすので二ざいます。政府としてこの管理令を発表し及び今回の修正をいたそうといたします、その根底に持ちまする考え方は一体どこにあるのかという事柄について、今申し上げましたように捕捉に苦しむだけでなく、非常な疑念をわれわれは持つものであります。そこでこの法案に直接関連しての政府のそういつた方針といいますか、大原則といいますか、そういつた事柄についての政府自体の見解を明らかにされてほしい、こういうふうにまず思います。
  72. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先般の……(「国務大臣に聞いているのだから……」と呼ぶ者あり)先般の提案理由のところで御説明した次第でありますが、大臣から……。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 石原次官の方がよく知つているのですが、それでは私の方はこの管理令にこだわらずに、考え方だけを申し上げると、今並木君にお考えしましたように、領土の拡張とは事情が違うのだから、元独立国であつた朝鮮の国民が、今度独立を回復すると同時に当然朝鮮の国民にもどるということは、国際的にどこにも認められておることだと思います。従つて日本におる元の朝鮮国民、もしくはその子孫というものは、自動的に朝鮮国籍を持つべきものである。ただその国籍を持つには、どういう手続、どういう規則によるということは別ですが、とにかく持つべきである。従つて日本においては外国人として待遇される。これが考え方の根本であります。しかし外国人だからといつて、みんな根こそぎ追い出してしまうわけではなくて、帰化を希望する者は、一定の手続をとれば帰化もできるし、在留を希望する者は在留もできるし、さらに今まで内国人として特別の待遇をされた者が、急に外国人になつて、内国人としての特権をみな奪われるのは気の寿だ、一部は内国人たちの特権を過渡的には認めてもいいというくらいに考えておりますから、みんな追い出してしまうということはむろんないわけです。同時にただ朝鮮という独立国の国民でありまして、それが日本におるのでありますから、朝鮮日本との間の話合いによつて、ある犯罪を犯したとか、あるいはある不法な行為によつて入国したというような種類の人に対しては、日本におらないで朝鮮に帰つてもらうというのは、これはひとり朝鮮のみでなくて、どこの国に対しても同様のことは当然行われるわけでありますから、その程度のことは話合いの上で協定もいたそうと考えておりますけれども趣旨として、朝鮮人を日本から追い出すなんという考え方では全然ないのであります。
  74. 川島金次

    川島委員 国務相の説明だけを承つておれば、そのままでしよう。がしかしこの管理令をつぶさに見て参りますと、実際問題としては、今国務相が言明されたようなわけになかなか行きかねる事情があるように見受けられます。当然独立後に国籍を離脱して行く。しかし日本に永住したい者は、まんべんなくできるだけ、向うへ送り返すばかりではなくて、永住を認める。言葉の上ではそういうことになりますが、実際問題は、たとえば管理令の第二十四條に広汎な規定がある。この第二十四條を見ると、今日本におります朝鮮人々は、ほとんどこれに該当せざるなしというように、実際問題はそうなつている。そうすると、いやおうなしに、日本政府考え方いかんによりましては、根こそぎこれを追い出すというようなこともしかねまじきような根拠がつくつてあるのです。それができないというものでなくてできるようなことになつておる。そういうことであればこそ、今院外においてもいろいろ心配をいたし、この問題ついて日夜奔命に疲れるほどの動きを見せておる向きも、政府の知つておる通りにあるのです。そこで私は大原則として、ひとつ政府の腹を割つた話だけをこの際聞いておきたいのですが、たとえば今度の法案の中にも、第二條の六項にこういう規定がある。「昭和二十年九月二日以前からこの法律施行の日まで引き続き本邦在留するものは、出入国管理令第二十二條の二第一項の規定にかかわらず、別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦在留することができる。」私はこの改正條文は非常に意味を含んでおるものではないかということに、好意に解釈している。しかしこれは私の解釈だけで、私なりの含みのある條文ではないかと考えておるのですけれども、これはまだ政府に聞いてみないのでわかつておりませんが、ここで「別に法律で定めるところにより」という別に法律で定めるというのは、結局すると、月下日韓会談もただいま国務相の説明通り進行はしておるけれども、まだ具体的な内容がそれぞれ決定の運びに至つておらない、そういう事情のときに、日韓会談の細部のいろいろな問題が円満のうちに決定を見てから後において、初めて別の法律を定めるということについての順序をとることの方が、まず望ましいことではないかと思うことと、もう一つは、この「別に法律で定める」という別の法律によつて昭和二十年九月二日以前から国内に住んでおる者、もしくはその当時から本邦で生れました子供等に対しては、この管理令のいかんにかかわらず、その朝鮮人の、あるいは外国人の希望によつては、原則としてできるだけ国内におられるような形をとらしめる、こういう一つの大方針があるのではないかというふうに、私は実に好意に解釈している。そういうことにとりはからわれるような気持が政府に一体あるのかどうか。この点は非常に大事な事柄であり、その点がまた多くの人人から心配されている焦点ではないかと思いますので、この際率直に腹を割つた話をわれわれに聞かしておいてもらいたいと思います。
  75. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の第六項ですか、これは趣旨としては、あなたのおつしる通りです。別に法律を定めるということは、日韓の会談の結果も入れまして法律を定めよう、こう思つております。もつともまた補足することがあるかもしれませんから、それは石原政務次官から……。
  76. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま大臣がお答えになつ通りであります。別にございません。
  77. 川島金次

    川島委員 そういうだけの質問を私はしておるわけじやない。もつとはつきり言えば、二十年九月二日以前から日本国内におられる外国人、これは原則として、ひとつその本人の希望があれば、この国内に永住を許可する、こういう大方針を持たれているかどうか、その事柄についての腹を割つた話を聞かしてもらいたい、こういう意味質問でありますから、それに対する御答弁を願いたい。
  78. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 もちろん考え方といたしましては、大体そういう線でございますが、先日来からも申し上げております通り、今回の出入国管理令並びに外国人登録法の、この二つの法律はやはり存するのでありますから、この法律の運営の範囲内におきまして、適法なる手続なり措置によりまして、あと手続はとらなければなりませんが、考え方といたしましては、ただいま申されましたような大前提の考え方のもとに立つておることは、御意見通りであります。
  79. 川島金次

    川島委員 私は単なる形式的な政府の言葉を伺おうというのではないのです。原則はそうだが、法律があるから、この法律でという伝家の宝刀をちらつかせながら、説明をしておる。そこに問題が案はあるのです。国際的な一種の慣例、あるいは実際問題として、こういう法律はどこの国にも大体似通つたものがある。がしかし、現実の問題として、日本と今日の朝鮮の実情、それから国内におる外国人のうちに最も多数を占めておりまするところの朝鮮人、こういつた現実問題をわれわれは目の前にいたしまして、これは国際的にも人道的にも、また実際の問題に当てはめる上からいつても、妥当な、適切な方法を、われわれは政治的にも考える必要があるのではないかとい考え方を、われわれは持つておるわけです。そこでくどいようですが、ただいま政府の言われておる岡崎さんの言葉、あるいはただいまの次官のお話のような、原則は認めるのだが、法律は厳存するという形式論でなしに、現実の問題を高い立場から処理をするという、この観点に立つて政府の明確な見解を一言示されれば、この問題はある程度非常に円満な形にもどるのではないかというふうに感ずるのです。ところがたまたま法律法律なんだ、原則はこうなんだが、法律があるから、この法律に照して動き出すのだという、一つの大だんびらをちらつかせながらの原則論であるから、問題になる。またわれわれもちよつと心配になる。そういうことでない形におけるところの、政府の、私の言う腹を割つた話というものを、国民の前に聞かせれば、この問題の大部分というものは円満な形にもどつて、そして処理ができるのではないか、こういうふうな感じを私は持ちますので、くどいようですが、その点をもう一ぺん打割つた話をひとつ聞かせてもらいたい。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはここにも特に昭和二十年九月と書いてあります。それ以前に日本在留した人は、平穏に在留した者であるか、あるいは日本の国民としてここにおつた者か、どちらかなんですから、まず一応善良なる居留民と考えますからして、ここに特例を設けて資格がなくてもある期間はおられる、こう書いておるわけであります。ただおそらく石原次官なんかもそう考えてお話したのじやないかと思いますが、率直に申しますと、終戰以来むろん全部じやありませんが、一部の朝鮮人々は、その地位が外国人であるか、日本人であるか、あいまいでもあつたし、また日本政府朝鮮人等に対する取扱いが非常にはつきりしなかつたものでありますから、いろいろの法律をくぐつたような行為をいたした事実もたくさんあるのであります。ことに密造部落なんというものは非常にたくさんありました。また国内の治安を乱すような北鮮系、南鮮系の間の争いなども、ずいぶん殺傷事件などを起しておつたわけであります。これは大分緩和して直つて来ましたが、今まではそういうことがあつたことは事実であります。今後外国居留民として日本におる限りは、日本の法はどうしても守らなければならない。外国人であるがゆえに、かつて気ままなことをすることは、これは許されないことであります。この点を私は明らかにいたしておきたいと存じます。そういう特にはなはだしい不法な行為をする者は、これは送還するのもやむを得ない。が、善良にただ日本にずつと無事に暮しておつて、ここに家族もおり、商売の足がかりもある。こういうものが急に朝鮮に送り返されたりしたところで、向うでも困るのであります。従つて善良なる居留民に対しては、できるだけの保護を與えたい、それが一つ趣旨であります。その点は法を乱すようなことさえなければ、何も心配することはない、こう私は申し上げられると思います。
  81. 成田知巳

    成田委員 関連して。今岡崎さんは、善良な朝鮮人で、長らく日本にいたような人には、居住の問題、在留の問題について特別な考慮を沸いたい、これが趣旨だ、しかし法律に違反する者という例外を考えておると言われましたが、法律で問題になるのは、国籍の問題だと思うのです。登録法関係であります。先ほど岡崎さんは、もと独立国であつたものが独立を回復した場合は、自動的にその国の国籍を取得する、こう言つておられます。今の朝鮮政府というものは、一応大韓民国政府と認めておられるらしいのです。そうしますと、自動的に国籍を取得するというのは、大韓民国国籍を取得する、こういうふうに岡崎さんは御解釈になるのかどうか。もしそういうことになりますと、現在李承晩政権に反対している人は、この国籍を取得したくない、こういう立場で、登録令に違反するという問題が起きて来ると思います。そうしますと、岡崎さんの言われる法律違反ということで、せつかく政府は善良な人は長く置きたいというような趣旨を持つておりましても、登録令違反関係で、大挙朝鮮強制送還される、こういう事態が起きると思うのです。この点をはつきりしていただきたい。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実際朝鮮の事態がアブノーマルな状況ですから、率直に言いますと、どうしても不便、不合理は免れない点があると思いますが、御承知のように一九四五年にモスクワでもつて英米ソ三国の会議をやつて朝鮮の統一を話しましたが、話がつかない。そこでアメリカが四七年に国際連合に提起しまして、その結果朝鮮委員会ができまして、そうして朝鮮の選挙を行つた結果、できたのが大韓民国であります。そこで大韓民国というものは、国連が朝鮮の独立のためにつくつた機関であるということになつておりますから、われわれとしてはこの際は大韓民国朝鮮政府として話をせざるを得ないのであります。そこでこの中におります者が、たとえば大韓民国の機関を通じまして登録しても、これは大韓民国というのと朝鮮というのとは、観念的には違うのでありまして、つまり朝鮮にある政府朝鮮の国と、何といいますか、韓国人というのと、その中の政府とは、観念が多少違いますから、もし特に大韓民国の保護を要しないで、ただ登録令の関係上、大韓民国の機関を通じて登録をするということを、大韓民国の方で朝鮮人を租先として持つてつた人をみな自動的に、機械的に受入れて登録するということを、やつてくれれば、多少それはそこにはつきりしない点があつても、特に支障はないのじやないかと思います。要するに朝鮮の人間であるということを証明してもらえばいいのですから、それが来たときに、お前は北鮮系だからだめだとおつぱらわれば、これは別でありますけれども、そういうことさえなければ、私は行くのじやないかと思います。またその点は今後話してみなければわかりませんけれども、おそらく実際上の措置としては、何とかそういう点に便法が講ぜられるものと考えております。われわれの方から言えば、国内におる朝鮮人々に、形式的には、今こちらで認めておる政府大韓民国政府ですから、そこを通じなければいけませんけれども、それだからといつて、いやがるのを無理にこの政府の国民になれ、あの政府の国民になれ、そういうことをやる意思は全然ないのであります。ただ形式的にはそこを通じて登録をしてもらう、こういう趣旨だから、おそらく私はできるんじやないかと思いますが、これはやつてみなければわかりません。
  83. 成田知巳

    成田委員 今の点で、おれの言うことを聞かないなら手続はとれない、こういう場合が想像できると思うのですが、そういう場合に登録令違反という形で出入国管理令にひつかけて強制送還をすることはおやりにならない。こう解釈してよろしゆうございますね。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや、そういうことには行かないので、政府としては法律を忠実に守る義務があります。外国人として登録してない者をこの法律に違反して認めるというのはなかなか困難であります。しかしながら私は話合いの方法はあると思つておるのです。つまりこちら側もできるだけそういう点で便宜をはかるかわりに、在留の韓国人も毛ぎらいをしないで、登録だけの機械的な措置だから、今ある大韓民国政府機関に登録だけをするということをしてくれればそれでいいのであります。何も無理に従わなくてもいいということです。それは私は先方の規則をまだよく知りませんけれども、それは何か便法があるのではないかと考えております。
  85. 成田知巳

    成田委員 そういう心配は、法律違反ということになりましたら政府としても考えなければいかぬと思いますが、岡崎さんもお認めのように、朝鮮の事態は特殊な事態なんですね。そういう点から考えましたら、そういう事態が起きた場合に強制送還をするようなことはない、そういう処置がとれるという自信を持つていらつしやるわけですね。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや、私は、法律登録しないものは強制送還するということになつていますからして、登録しないものをいつまでもほつてここに置くというわけには法律上行かぬと思います。しかしそういうことを避ける意味で、何か便法が講ぜられるのではないかというつもりです。
  87. 成田知巳

    成田委員 それで今岡崎さんが便法をお考えになると言われたのですが、ちようど香港なんかも、たとえば中国人は台湾人であろうと、中国本土人であろうと、みなチャイナ人という形で旅券、国籍証明書を出しております。そういつた前例から行きましても、やはり朝鮮人という形で登録する手続をぜひとも日韓会談でお進め願いたいと思います。そういう点についての御意見を承りたい。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私もまだそれをやるとかやらぬとかという自信は、ここで申し上げるだけ持つておりませんが、お話の筋は十分考慮をいたします。
  89. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 私は根本的な問題もお聞きしたいと思うのですが、岡崎国務大臣は大韓民国という政治的な統治権は一体どこに及ぶと考えているのですか、朝鮮全土と考えていられるのですか。まずそこからお聞きしたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私は朝鮮に行つたことがありませんから、どこまで及ぶということは言えないのであります。しかしながら国連なりが、これが朝鮮政府であるということを認めますれば、かりに実際上その統治が及ばなくても、やはりこれはその政府として取扱うことは自然でありましてたとえば林君などもなかなか政府の手に負えませんけれども、やはり日本政府が統治しているのでありますから……。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、岡崎国務大臣は金日成を首席とする朝鮮人民共和国というものは認められるのですか。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは国際連合がつくりました朝鮮独立の機関としての大韓民国政府をただいまは朝鮮政府として取扱つて、これと話をいたしております。ほかの政府とはまだ話をいたしておりません。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 話をするしないは別として、たとえば今国連が休職交渉をしているときに、あなたのよきパトロンであるアメリカのリッジウエイの部下であるジヨイ中将は、朝鮮人民共和国首席の金日成将軍、中華人民共和国義勇軍司令彭徳懐将軍と交渉しているわけです。ところがあなたの非常に敬意を表している大韓民国の代表というのは、ただ随員で、アメリカのジヨイ中将のあとをついて行かれるだけではなはだお気の毒な立場にあるわけです。現に休職会談の第五議題の関係各国に対する勧告という政治会議には、韓国代表を認めてもらいたいというふうに頼みまして、随員として行くという程度です。あなたの親分であるアメリカ側は正式に朝鮮人民共和国、それから中華人民共和国というものを認めて休職会談をしているのではありませんか。親分が認めているのに、子分のあなたがそんなことを言つている。だから交渉するしないは別として、事実上そういう政権があり、これを朝鮮の人民が支持するという事実を認めるかどうか。そこから入つて行かなければ話はちつとも進まない。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは話は何の話か知りませんが、そんな問題は何も私は関係ないと思います。しかし御質問ですから答えますが、北鮮の政府というものが事実上存在しており、少数の人はこれを支持しておるということは知つております。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 少数の人はこれを支持しているということは驚き入つた話でありまして、実は政府から配付された資料にも、正式に韓国側の国籍受諾しておる外国人登録令の場合に、それを受諾するということを認めておる人は、むしろパーセントは少いのであります。これは政府側の資料によつてもそうのようであります。そこでむしろ在日朝鮮人の諸君としては、少くとも朝鮮に統一政権のできるまでは、どちら側の政権を認めろとか、認めないとかいうことを日本側から強制される理由はないのだ、これは朝鮮人自身がきめるのだということで、少くとも朝鮮が統一されるまでは、どちら側の国籍というような問題は、これはとりたくないという考えだと思うわけです。そこであなたの言われるように、事実上朝鮮人民共和国があるとすれば、あるいは統一政権ができるまでという希望を持つて、そこで大韓民国国籍登録をするのを待つてもらいたいという朝鮮の諸君があつたとすれば、これはどうなるのですか。強制送還するのですか、しないのですか。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはそのときに実際の事情考えまして私ども朝鮮の国民を不当に退去させるという考えはないのであります。しかしながらそういうことでもつて何か北鮮の方の宣伝をしたり、登録令の実施を妨げたりするようなことになると、またこれはその実情によりまして考えなければなりません。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 実情によると言いますが、むしろ朝鮮に統一の政府をつくるということは、これは国際的にも希望するところであり、それからまた日本にいる朝鮮の諸君はこれを希望することは私は当然だと思う。従つて朝鮮に統一の政府ができるまでは、自分が韓国籍を持つとか持たないとかいうことについては、態度を保留したいというのはこれは当然だと思う。そういう場合に、韓国の代表が証明を出さないとか、あるいは朝鮮人としての一般的な証明を出さないというような場合には、事実上朝鮮の統一を望んでいる大多数の在日朝鮮人の諸君は、国籍証明書が持てないという形から強制退去を命ぜられることになると思うのです。だから何も大韓民国国籍証明書というものがなくても、これは朝鮮の統一ができるまでは、一般的な朝鮮人として登録をすれば、それでここへ滞在することができるということを政府は保障できるかどうか、その点をお聞きしたい。もともと出入国管理令というのは、これは日本の国を出たり入つたりする人の取締りのものであつてつて本人であつて、何十年も日本に住んでおつて、妻子が日本人と血族的にもつながつている人たちを、一時的に出入りする法律で取締るということ自体が、私は非常に不届きだと思うのです。少くともこの出入国管理令にによつて、かつて日本国籍を持つでいた人たちは、朝鮮に統一した政権ができるまでは、出入国管理令の適用についてはこれは除外するというような保護規定をとつてしかるべきだと思うのです。そうでなかつたら、事実上は韓国国籍を無理にとらせ、韓国国籍証明書を無理にとらせるということによつて、これは国難選択の自由を制限し、強制送還させることになると私は思うのです。そういう保護規定政府はとる考えはないのですか。
  99. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほども繰返して申すように、日本が独立しまして韓国も日本から離れてしまう、そうすると韓国人は当然日本人ではなくなるのであります。それを日本人でなくすることを待つということは、これはとうていできません。だからしてそれについては韓国の事態にもかんがみ、何か便法を考えるということ以外に方法はないのであつて日本では平和條約で韓国を放棄しておるのですから、この人々が依然として日本人として残るというわけにはとうてい参りません。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 韓国々々と言いますが、あなたも認めるように、事実上朝鮮には二つの政権があつて、しかも朝鮮の諸君が統一を望んでいるという事実と、本来なら出入国管理令というようなものの対象にならない日本の国民であり、日本の国土に長い間住み、日本人とつながりを持つて、あらゆる従来の政府に強制的に協力を命ぜられた人たちが、こういう朝鮮にまだ統一の政権ができないときに、しかも現に戦争が始まつているときに、日本政府が望むような政権を支持しないような者は、直接間接強制送還するということは、これは人道上の問題だと思うのです。だからそれについては特別な保護規定、またはあなたの言う便法というのはどういう方法か知りませんが、そういう方法を講じなかつたら、これはわれわれ国際的な義務、たとえば世界人権宣言にも、政治的な信條が異なつて保護を求めて来た者に対しては、十分な保護をしなければならないということすらあるわけなのであります。これは日本の国際的な義務にも反すると思うのであります。こういう保護規定をするか、あるいはどういう便法をとられるかということをひとつ聞いておきたい。  それからもう一つは中国の問題になるともつと複雑になると思うのです。この点も岡崎国務大臣に聞きたいのですが、大体日華條約によりますと、言葉はあいまいですが、台湾の国民政府が統治する範囲は大体台湾、澎湖島、それから海南島の山の上というような一部に限られておると思うのです。そうして台湾の人でなくて、中国本土から日本へ来ている人たち、これはサンフランシスコ條約によつて国籍を失うものでない、この人たちは別な取扱いをするわけです。だからこういう人が日本にたくさん来ているわけですが、一体こういう人たちの利益はどういう機関がその利益を代表するのか、どういう機関を通じて国籍証明だとかあるいはそのほかの手続をさせるつもりなのですか。この二つをお聞きしたいと思います。
  101. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは繰返して申すように、強制送還をするつもりでこんな規則をつくつておるのではないのであつて、ただ国内に平穏におられる居留民というものはどういうふうな手続でおるかということをつくりそうして法を破るような人に対しては、これはもう当然強制的にでも退去を命ずる、こういうことだけであります。長い間平穏無事におられる人については何らかの便法でここにおられるようにする。それで今林君は朝鮮の事態から見て、大韓民国政府登録すれば、大韓民国に政治的に服従するのだと言われますが、そこが便法でありまして、北も南も朝鮮でありますから、そこに何らかの便法があり得ると私は考えておるのであります。中国人についても同じでありまして、便法は考えられる。しかしその便法も気に入らないでいやだというならば、それは強制送還じやなくて自発的に帰ればよろしいと思います。またこういう戦争中といえども、居留民の交換というようなことが行われておつたので、かりに国交が開かれておらなくても、居留民の交換というのはおかしいのですが、送還するのは、これは道はないことはないと思います。いろいろ方法はあるのであつて、われわれは一つの政権に無理やりにくつづけようという考えは持つていない、そこに便法という問題が起つて来るのであります。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 行政協定にまいりますと、岡崎さんはアメリカ人には自由に出入りするようにしてアメリカの軍人軍属、家族から日本へ来る土建業者まで、非常にあなたはアメリカには開放している。ところが朝鮮や台湾の諸君、かつて日本政府にもう自分の生命を犠牲にしても協力していた人たち、この人たちの祖国が民主的な政権を取出したということで、あたかもヒトラーがユダヤ人を追い出すがごとき残酷な追出し方をしておる。これはもちろん朝鮮人や、中国の人たちの捕虜を日本の東條時代の軍閥政権が非常に残虐な取扱いをしたことと、言葉は非常にやさしい言葉を使い、方法は真綿で首を締めるような方法ですが、結論は同じになると思うのです。たとえば言うことを聞かないとかなんとかいつて、ここでまた貧乏な者は送り返す。貧乏な者を無理に戦争中朝鮮からひつぱつて来て、何らの生活の保護をしない。たとえば官吏に就職したい、銀行や一流会社に就職したい朝鮮や台湾の人は、どうして就職できますか。それから銀行の投資額も制限されている。それから生活組合をつくろうと思つても、これは禁止されておる。せめて朝鮮語で語る朝鮮の学校を建てよう、これも禁止だ。生活を保護するための朝鮮人連盟、これも解散だ。いやでもおうでも貧乏せざるを得ないようなことをしておる。そうして貧乏人は強制送還するということになれば、これは実際強制送還をするということを、政府が積極的にやつているという非難を受けてもしかたがないと思うのです。そういう意味で、岡崎国務大臣に一片の人情がおありになるなら、この問題をもう少し真剣に考えていただきたい。現にこれは中国の問題でありますが、ただいま議題となつているポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案を見ますと、政府の方でも中国の大陸の人と、台湾から来ている人とを区別しております。ところが日華会談によりますと、台湾の国府政権というのはその統治する権限が大陸まで及んでおらないのでありますから、そこで大陸から日本へ来ておる中国人は、一体国籍証明だとかあるいはそのほかの手続を何を通じてやるのか、こういうことをもう一ぺん聞いておきたい。あなたはそういう場合には駐日国府代表を通じやればいいだろうと言うけれども、もともと中国から来ている人たちの本国は台湾の国府政権とは別個な組織を持つているところなんですよ。この人たちを駐日の国民政府の代表が十分保護するということは、われわれとしては考えられないわけです。あなたは先ほどから便法々々と言いますが、一体どういう便法を講じられるのか。たとえば朝鮮の人ならば朝鮮入り一般という登録、中国の人なら中国人一般という登録、あるいは朝鮮の人ならば、昭和二十年の九月幾日以前に日本に居住していた人については、朝鮮に統一した政府ができるまでは出入国管理令の適用についてはこれを除外するとか、そういう具体的な便法というものを大臣から聞かなかつたならば、何らかの便法があるだろうということで、われわれ納得できないのであります。この点もう少し具体的にどういう便法を考えられたのか伺いたい。現実の問題として二つの政権があり、これの利害が反しているときに、一方の政権の代表部で、他の政権を支持しようというような人たちに対する十分な保護がなし得られるかどうか。現実の問題としてその点についてあなたの言われるその便法というものを、もう少し具体的にお聞きしておきたいと思います。
  103. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はきようは大いに誠意をもつてお答えしているつもりなのでありますが、林君は私の誠意をどうもはつきりくみとつてくれぬようで、はなはだ残念です。便法、相手のあることでありますから、今ここでこうやるのだということは言えないのであります。しかしたとえば中国の人々については、おそらく従来の資料がありますから、これはつまり日本人ではないのですから、従来から中国人——台湾の人は別としまして。そこで今林君の問題にしておる中国人というのは、大陸の方の中国人と思いますが、これについては従来の資料もありますから、中国人として登録することができるであろうと私は考えております。台湾政府の国民とかなんとか言わずに、中国人として登録できるだろうと考えております。原則的に言えばそれが便法になるわけであります。朝鮮の方はちよつと事態が違いまして、従来日本人であつたということで関係が違います。それが自動的に日本人でなくなるわけですからつまり台湾人と同じような関係になるわけです。そこで台湾の人も——朝鮮の人もですが、今度は台湾の人も中国人として登録すれば中国人になりますけれども朝鮮の人も朝鮮人として登録できる何か便法があると私は考えておるのです。これはまだ相手方もあることですから、ここではつきりこうするということは申し上げられないのでありますけれども、できるだけ便法を考える、こういうつもりでおります。  なおこれは別のことですが、委員長のお許しを得ましてちよつと林君に伺いたいのですが、この前の外務委員会で相模原方面へそのときの四、五日前に林君が行かれましたら、上に英文で下に日本文で六月末の間までに退去しろ、三十町歩ぐらいのところに札が出ておつた、こういうお話でありますが、その後相模原町長及び警察署長その他相模原地区の町会議長等に照会いたしましたが、どうもそういうものは見当らないという話であります。そこで相模原というのは、たとえば渕野辺であるとか上溝であるとか当麻であるとか橋本であるとかいろいろ部落がありますが、どこで林君が見られたかそれをちよつと教えていただくとさらによく調べつてみます。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 では問題が出ましたから詳しく申し上げます。神奈川県高座郡相模原町でYEDの基地のあるところであります。これは現に私が行つて見て参りました。大きさは大体六十一センチ四方のもので十六本立つております。白いぺンキで塗つてあるのでありまして、六月三十日までに立ちのかなければならない農作物の作付は増加してはならないということが、士は英語で書いてあつて、下に日本語でその翻訳したものが書いてあるのであります。そこの町民は町長を通じ、そこの県会議員を通じて岡崎さんに陳情したところ、岡崎さんは一月の初めごろ参りまして善処するという確約を與えた。ところがいつまでたつても善処されないどころか、かえつてその英語と日本語の札が立つておるというのが実情でありますから、何でしたら本日私とあなたと一緒に車に乗つてつて、現地へ私が御案内いたしますから、もしそれに疑いがあるなら、あなたも国務大臣として地方の農民に食言してはたいへんなことでありますにここはあなたの選挙区でありますから非常に重大な問題だと思います。ですからもし疑いを持たれるなら私が御案内申し上げますから、ひとつぜひ車で一緒に行つていただきたい。私はこの問題はこのままにしておきます。これはもう車で行つたら、あなたがうそを言うか、私がうそを言うかはつきりわかるのですからこれ以上は申し上げません。それからもう一つ沖縄の問題でありますが、朝鮮と台湾の問題だけだと思いましたら、われわれの領土である沖縄にも外国人登録令出入国管理令が適用になる。沖縄にも最近政府ができたそうであります。そうして憲法が発布になつて、それで立法院できめたこともアメリカの司令長官が拒否し、変更することができる。また行政の責任者はアメリカの長官が任命下る。また裁判所の判決についても、どういう判決があつても、アメリカの司令官がこれを変更し留保することができるというような憲法が四月一日から発布されることになつております。それから日本政府の本年度の文部省の予算を見ますと、琉球人が日本へ来るのに、留日学生ということになつて、これは留学することになつておるのであります。岡崎外交担当大臣は最近沖縄にそういう新しい政府ができたという事実を知つておられるかどうか。そして日本の領土の一部である沖縄の人が日本へ来るのに、何で出入国管理令外国人登録令の適用を受けなければならないのが。いつ一体われわれは沖縄をアメリカに渡してもいいという権限をあなたに與えたか、非常に疑問でありますから、その辺をはつきり聞かしてもらいたい。
  105. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案の提案理由の説明というのでここで説明したはずでありますが、それによりますと、北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令及び朝鮮人、中華民国人、本島人及び本籍を北緯三十度以南の鹿兒島県または沖縄県に有する者の登録令は廃止することとして、これにかわるべき外国人登録法ができるのでありますが、沖縄等三十度以南の人々については登録令は廃止したままでありますから、登録令の適用を受けないということになります。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると出入国管理令あるいは外国登録令は、沖縄あるいは琉球の人には準用にならないのですか。
  107. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは適用されないはずであります。
  108. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとどういう手続で渡航については調査そのほかの管理をするのですか。自由に出入りしていいのですか。
  109. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 内国民と同様に自由であります。
  110. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと沖繩の問題に関連して政府にお聞きしておきたいと思います。これは私もかねがねお伺いしたいと思つておりましたのですが、一体沖繩は日本の領土主権から離れるのかどうか、この問題です。アメリカの方針によりまして、国際連合の信託統治になるということになれば、国際連合の規約上、それは第二次世界戦争において敵国の領土より分離せられる地域に設けられる信託統治領ということになるのでありますから、残念ながら信託統治領になるということは、その地域が、一応は日本の領土主権より分離せられてしまうものである、こう解釈せざるを得ない。私はこういう考え方を持つてつたのであります。ところがダレス氏が、信託統治領にするのであるけれども日本に潜在的主権がある、眠れる主権があるというようなことを言い出した。そうして日本政府はまたそれと同じことを言い出した。なるほど国際法上、信託統治についてそういう学説ないしそういう議論を立てることはできるかもしれませんが、信託統治領になつた場合に、日本国に潜在的主権があるかどうかということは、決してこれは国際的に認められた定説ではない。むしろ実定法としての国際連合の規約からいたしますと、日本の領土権から、とにかく一応分離されるのだ、そう解釈するのが、私どもは正当な、まつ正面からの解釈である、私はこう考えておりましたから、沖繩を信託統治領とするということは、それは日本の領土より分離せられることである。国民はこれを欲しないのでありますけれども、そう解釈せざるを得ないというのが私ども考え方であつた。それを政府は依然として、何か潜在的主権があるかのごとく言いふらして国民に幻想を抱かしておるのであります。私はここでひとつ岡崎国務大臣にお願いしたいと思います。この解釈をはつきりしていただきたい。私は日本の領土主権より離れると見るよりしかたがないと思う。なおそのことは政府自身も認めておると思う。議員に対する質問応答のときには、いいかげんのことを御説明になつておりましても、たとえば政府の法令のうちで、現に問題になつております出入国管理令の第二條に本邦とは何であるかという定義がしてある。本邦とは「本州、北海道、四国及び九州並びにこれらに附属する島で外務省令で定めるものをいう。」ということになつておりまして、それではその外務省令にはどうきめてあるかといいますと、外務省令第十八号、出入国管理令施行規則第一條には「出入国管理令第二條第一号に規定する附属する島とは、本州、北海道、四国及び九州に附属する島のうち、左に掲げる島以外の島をいう。」と書いてありまして、北緯三十度以南の南西諸島は本州、北海道、四国及び九州、これらに附属する島ではない、こう規定されておるのであります。すなわち沖繩は本邦ではない、日本国ではないと外務省令でかつてにきめられている。政府だけでかつてにきめたところのポ政令としての出入国管理令の中にちやんとそう書いてある。そうしてそれに基いて、外務省が出された外務省令の中に、沖繩に本邦ではないと書いてある。私はかねがね疑問に思つておりましたが、ちようど林君のお話が出ましたので、沖繩が日本の主権のもとにあるかどうかということを、はつきりここでお答え願いたいと思います。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の御指摘のことは、この政令において、左の各号に掲げる用語の意義はそれぞれこうである、こういつておるわけでありまして、この政令において本邦というのはこういうものであるというのは、これは政令の適用ですからどの法律にもあります。たとえば行政協定の中には、この協定において、アメリカ合衆国の軍隊の所属員というのは何であるか。軍人、軍属、家族である。こう書いてあります。そうでない場合もありましようけれども、行政協定ではそうである。それと同じように、この政令においては、実際上出入国を取扱うのでありますから、そこで潜在的主権があるなしは関係なく、この政令においてはこれだけを本邦とし、これだけを本邦としないで取扱いをきめる、こういう意味であります。
  112. 黒田寿男

    ○黒田委員 岡崎国務大臣の御答弁はすこぶる苦しい御答弁であるだけでなく、私は間違つた答弁であると思う。体政府のこしらえた日本法律では、本邦とは沖繩を含まぬのだという定義を與えておる。それでは一体日本の他の法律で沖繩を本邦の中に含めたのがありますか、おそらくない、そんなことはできるものではありません。政府自身がそんな矛盾したことを、できるものではない。同じ字句の定義として、政府自身が違つた内容を含めるということは、論理の法則上、できるものではない。ですから私どもは——本邦すなわち日本の国といえば沖繩は含まれていないということを、政府自身が国会の議を経ないでこしらえられた政令において認めておる。実際にはそう認めておる。だから国民をごまかしておると申していい。これはほんとうにごまかしだと思います。潜在的主権というのは、国際法上定説とはなつていない。ある学者あるいはある政治家が述べるにすぎない。ただそういう学説を用いまして、都合のいいときには沖繩に潜在的主権があるかのごとく国民に説明し、しかも政府自身が法令をつくる場合には、沖繩は本邦の外であるとする、こういう矛盾がなされておるのであります。私はもういいかげんにごまかしをやめて、沖繩は日本の領土主権から離されることになるのだ、観念しろ、となぜ正直に言われないかと思う。これは繰返しても議論になるかもしれませんけれども、私は岡崎国務大臣の御答弁は、苦しい御答弁であるだけでなく、間違つた答弁であると思います。私は残念ながら、アメリカが表面どんなにうまいことを言つておりましても、実際は、沖繩は日本の領土主権から離される。ダレス氏が言つただけで、それを吉田氏がそう思つておるだけでありまして、決して世界の国際法学者も、一致して、そんな潜在的主権があるとは認めておりません。どうかこういうごまかしをやらないようにお願いいたします。これ以上岡崎国務大臣と議論いたしましても、議論倒れになると思いますが、私は私の意見が正しいと思いますので、政府はこの点をはつきりなさるがよろしい、これだけ申し上げておきます。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは私はとうてい承服できません。それで記録のためにもこれだけは申し上げておかなければならぬ。われわれはいろいろ努力をいたしまして、沖繩の主権が日本にあるということを関係国に認めさしたのであります。かりに国際法の先例はないといたしましても、卓説はありますけれども、かりに新しい学説であり、新しい先例であるとしましても、ここに各国が公然と沖繩には日本の主権が潜在的ではあるがあるのだ。従つて将来沖繩が何らかの形で信託統治がなくなる場合には、自然に日本にその主権はもどるのである。こういうところまで公にいたしておりますことを、これをいいかげんだと言つて沖繩の主権を放棄してしまうということは、承服できません。今あなたは矛盾だと言われましたけれども、主権があつても、実際にその主権を行使する手段が今なくて、アメリカの軍隊なり軍政部なりが主権を行使しておれば、実際上の取扱いは現在のところは他国民と同じようなことになる場合もありますけれども、われわれとしてはできるだけそれを日本の国民と同様に扱つて、将来は一緒になるという方針で来ておりますから、あとう限り内国民と同様の待遇を與えたい、こういうつもりでいろいろの措置を講じておるのであつて、これは新しい先例になるかもしれませんけれども、そんなことでもう沖繩の主権はいらないのだというような考え方は、私は非常に間違つておると思う。この点だけを明らかにいたしておきます。
  114. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうおつしやれば私も一言簡単につけ加えさしていただきます。なるほど現在は沖繩は信託統治領になつておりません。けれども講和條約では、やがて信託統治領にする、信託統治領にすることは、アメリカが国際連合に提案する、その場合は日本もそれに従わなければならぬ、こう書いてある。現在はまだなるほど日本の主権から離脱しておるものではありません。しかしながら国際連合の信託統治になるとすれば、国際連合憲章の一体どの條項で、そういう信託統治領にされるのか。信託統治地域にするには一定の法的基礎がなければなりません。その法的基礎は、私どもは国際連合憲章の第七十七條に求める以外はないのであります。第七十七條の(口)の項に当つてはめられて日本の領土でありました琉球が信託統治領になるのであります。それ以外には琉球を信託統治領にする根拠は国際法上ありません。国際連合の憲章を変更しないでおいてかつてに、これと異なる内容の協定を結ぶということは許されないことであります。従つて国際信託統治領になる以上は、日本から分離されるということになる、それは主権をなくせられることである。これは残念ながらこう解釈せざるを得ないと私は思います。  ついでに私は政府の矛盾をついておきます。何だか日本は今度の講和條約において独立を回復すかのごとく政府は言つておるのですが、それならば、もし岡崎国務大臣の議論から行けば、日本がある一定の領土に対して主権を持つていながら、潜在主権とか眠れる主権とかいつて、自分の領土でありながら自分ですきなことのできないような地域を持たされるような條約を締結しておいて、これで一体日本が完全に独立したと言えますか。沖繩は依然として日本の領土権のもとにあるけれども日本の領土主権は及ばないのだ。こんな国になつて、一体完全独立した国と言えますか。ここに私は矛盾があると思う。沖縄に潜在主権があるといわれる。潜在主権を日本が認めさせられるような講和会議のやり方は、日本の領土主権の一部が他の国の権力のもとに置かれて、日本の領土に対して日本の主権を行使することができないという状態になるようなやり方でありますから、日本の国は完全に独立した国になるとは言えない。私はそう思う。私などから考えると、政府の言うことはまつたく支離滅裂である。国民に対して負けたなら負けた、不利益なら不利益と、はつきり言えばよろしい。そうして国民の覚悟を促すという態度をとるべきだと私は思います。アメリカとしては日本の領土から沖繩を分離するということは世界各国に対して体裁が悪いから、潜在主権などと言つているのです。日本の国がどこの国からも戦争によつて奪取したものでない琉球を、何ゆえに信託統治領なんかにする必要があるのですか。日本の主権のもとに残しておいて、利用しようと思えば他の方法をとればよいのです。それを信託統治領にして、堅固な要塞を築いて、実際上は自分の領土のように使いたい。しかし自分の領土だといつては世間に対して、連合国は領土的野心を持たないという大西洋憲章の宣言に反するようなことをすることになつて、かつこうがつかないから、潜在的主権は日本に残しておくのだというのである。潜在的主権だけ残しておいて日本が完全に独立したと言えますか。よその国に自分の国の権力が及ぶようなことをしておいて、すなわち相手の国はその国の領土でありながらそれを利用できぬというようなことにしておいて、その相手の国にお前の国は完全に独立したのだから喜べ、こんなばかなことは言えるものではない。それは私どもあたりまえだと思います。世の中のいいかげんな政治家どもがそんなばかなことを言つて国民をごまかすことは別としていやしくも政府は断じてそういうことを言つてはならない。冷静に御判断願いたい。これだけ申しておきます。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと簡単に申し上げておきますが、黒田君とは元来思想の根本が違いますから、私がいくら申し上げてもおわかりにならない。あなたのおつしやるように、沖繩は初めは分離される予定だつた。それをでき得る限りのわれわれの努力によりまして、また沖縄島民の希望によりまして、せめて潜在主権だけを獲得したのである。あなたは初めから主権があるのが潜在主権にされたと言うのです。われわれの方は、ほとんどなくなりかけたのをともかく潜在主権だけ獲得した、こういう違いであります。
  116. 黒田寿男

    ○黒田委員 きようはこの程度にしておきます。しかしこれは思想の違いの問題ではありません。
  117. 成田知巳

    成田委員 二点だけ簡単にお伺いします。先ほど国籍取得の問題で便宜の措置考えたいと述べられました。朝鮮の場合は北鮮、南鮮にわけないで朝鮮一般としている。林君の質問に対しまして中国本土はこれはもうほとんど中国人は独立国なんだから中国人として取扱つていい、こういう御答弁であつたのですが、台湾の場合、台湾系中国人、これはまあ昔日本の領土であつた関係で、中国本土とは同じように取扱いはできないと思いますが、これに対する便宜の措置はどうお考えになりますか。やはり中国人としておやりになる意思でありますか。
  118. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと訂正しておきますが、朝鮮の場合は、南北をわけずに朝鮮人としてやるということが、便法という意味ではないのでありまして、それはそういうふうになるかもしれませんけれども、まだ相手のあることであつて、これから話をするのですから、私はそういうふうにするということはここでは申し上げられません。何らかの便法を講ずる。中国の場合は今言われた通りであります。台湾の場合は、やはり中国民として台湾に今いる人あるいは前に台湾の在留民で中国人であつた人、それは登録しまして中国籍を持つ、こういうことになります。
  119. 成田知巳

    成田委員 その便法の問題で、昨日石原政務次官は、朝鮮の場合は便法を考慮するような余地はないような、朝鮮の場合は当然韓国の籍を持つ。それから中国の場合は、中共の国籍を取得しようが台湾政権の国籍を取得しようが選択にまかす。こういう御答弁であつた。きようの岡崎国務大臣の答弁と大分食い違いがありますが、その点を明確にしたい。
  120. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は別に食い違いはないように思います。朝鮮の場合は、今申したように北鮮も南鮮も朝鮮だといつて登録できるかどうか、これはわからない。しかしながら登録のできるように便法を講ずる。こういう意味で、これは相手方とも話してみなければわからない。しかし便法は講ずるつもりであります。それから中国の場合は、これは従来中国本土のほんとうの中国人は資料があるのですから、資料に基いて中国人として登録する。これが中国人であつて、それが台湾につこうが、どちらにつこうが、中国人として登録する。台湾の人々もやはり中国人として登録する。こういうことになります。
  121. 成田知巳

    成田委員 朝鮮の場合は交渉してみなければわからないという立場なんですが、やはり交渉されるとしましたならば、一つの腹案があるだろうと思う。現在岡崎国務大臣のお考えになつている便法の腹案ですね。向うは受けるかどうか知りませんが、腹案をひとつお示し願いたい。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは話合いをする前にここでいろいろ言いますと、かえつて事が悪いと思うのです。たとえば先ほど並木君の御質問に答えましたように、たとえばほんとうの機械的な登録ということで行い得るならば、ここにある韓国の機関にほんの何も感情を交えない機械的な登録をして、それを受付けてくれるということがかりにできますれば、それもやはり一つの方法だと思う。それまでしても相手の方があの機関は気に食わぬとかなんとか言つて毛ぎらいされるならば、これはまた別の便法を考慮しなければならぬでしようけれども、その場合に必ずしも何とかして登録してくれと言うのじやないのですから、それほどいやならば適当な方法で帰つてもらうという手もあるかもしれません。けれどもそういうことを荒立てたくないために、感情を交えないで登録できれば、これも一つの便法だと考えております。また今お話のようなどこと区別せずに、朝鮮の人として登録できるような方法があれば、これも一つの便法だと思いますけれども、これはいろいろ相手のあることでありますから、今ここでこういう方法がいいのだということを言つても始まらない話であります。よく相談して話合いを行わなければならぬが、何とかそういうふうにして登録のできるような便法を講じたい、こういう考えでございます。
  123. 成田知巳

    成田委員 機械的に申請して感情を交えないでそのまま通れるような便法も考えておる、こう言われるのですが、ところが日本政府でも、モスクワの経済会議に出る旅券申請はまつたく機械的なものですが、これでも拒否するような状態である現在、李承晩政権なり台湾政府の代表部は、相当めちやをやつておるということは、岡崎さんも御承知の通りである。従つて便法もよほど念を入れた便法でないと事実上拒否される、こういうことになると思いますので、その点よく御配慮いただきたいと思います。  それから最後に一つお尋ねしたいのは、強制送還の問題でありますが、第二十四條でいろいろ強制送還の該当事項をあげております。この該当事項は、この政令は昨年の十一月一日に施行されておるのですから、昨年の十一月一日以降にこういう該当事項が発生したものについて、強制送還の処置がとり得るというので、いわゆる法律不遡及の原則で、昨年の十一月一日前の事項については第二十四條の関知するところではない、こう考えるのですが、いかがですか。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は非常にこまかくは、前の関係をはつきりできませんけれども原則としてはそうだろうと思います。但し、その前におきましても、この管理令は別としまして、その前にもやはり入国に関する一応の規定はあつたのでありましてその部分はやはり適用されると思いますけれども、こういうこまかいものはないのでありますから、これ自体はむろん遡及しないで行くわけであります。
  125. 成田知巳

    成田委員 前の規定と申しますか、この規定は昨年の十一月一日から実施されて、今度これは法律になるわけです。特別に配慮しない限りこの規定は生きるわけです。従つてこの政令の前の規定は、これは完全に消滅しておるわけでありますから、当然十一月一日以降の第二十四條該当事項についてのみ強制送還の適用が問題になるのだと解釈すべきだと思いますが、もう一度御回答を願いたいと思います。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは私もはつきりここで御答弁するほど資料を持つておりませんが、たとえばこの政令と同じような規定法律でもつて今度はきまる。そうすると政令のときからずつと続くわけです。しかしその前に、たとえば——これは仮定ですが、不法に密入国したものは送り返すという規定がその前にもあつたとする、すると今度の法律にもある、こういうことになれば、その前からさかのぼるということもあり得ると思います。
  127. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  128. 黒田寿男

    ○黒田委員 大分他の諸君によつて質問されましたので、なるべく簡単に質問します。実は私は日華條約あるいは日韓條約のことにつきましていろいろとお尋ねしたいことがありますけれども、時間がございませんのでそれはやめまして、ただ国籍問題等に関する範囲に限りまして若干質問してみたいと思います。  今進行しております日華條約は、大体吉田書簡の内容によつて行われておる。その線で准行しておる。言いかえれば、この條約の適用範囲を国府の支配しております地域に限定するという、一種の限定せられた條約として話合いが進んでおるというように承つておりますが、このような日華條約における地域的適用範囲の限定という方針は、そのまま維持せられて話合いが行われておるのでありましようか、まだ最後の決定にはなりませんでしようが、今までの進行状態からいえば、吉田書簡のように適用範囲が限定せられたものとしての條約が締結される見込みであるか、ちよつと承りたい。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ今言われたように話合い中でありますから、はつきりしたことは申し上げられません。しかし原則的には吉田書簡の趣旨によつて話合いは進んでおるわけであります。
  130. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、大体国府が支配しております地域は、台湾、澎湖島その他若干の例があるかもしれませんが、そのくらいのところに適用せられる條約にすぎない、こういうものとして締結されるという見通しでよろしゆうございましようか。
  131. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 さようお考えになつていいと思います。
  132. 黒田寿男

    ○黒田委員 そこでなお関連してちよつとお伺いしておきますが、これは新聞に出ました條約案と申しますものでありますから、政府はそれには責任を持たぬと仰せられるかもしれませんけれども、三月二十六日の読売新聞に目華條約案の全文なるものが載つておりまして、その第十一條によれば、「本條約の適用上中華民国国民とは台湾、澎湖島の住民であつて」云々ということになつております。従つて日華條約に基いて将来中華民国国民といわれる人々は台湾及び澎湖島の住民だ、中国本土に居住しておる人々のことは、この條約で中華民国国民とは言わないのだ、こういうことになると思うのです。これは新聞に載つたものからの判断ですが、はたしてこういうことになるものでしようか、どうでありましようか、ちよつとお伺いしておきたい。
  133. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中国本土の人々は自然に——自然にといいますか、当然中国民でありまして、ただ台湾に住んでいた人は従来日本国民だつた。それをかえる必要が出て来ます。そこで特殊の規定がいるわけであります。
  134. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういうような意味にも解釈できますけれども、私はそうではなくて、むしろこの條約の地域的限定の意味を国民という面から取扱つたものだ、私はむしろそういうものとしてこれを見たのであります。日本の国から台湾が分離される以上、台湾人が台湾の帰属する国の国民となることはこれはあたりまえのことでありまして、そういうことを言い表わしておるのではない。「この條約の適用において中華民国国民というのは、要するに台湾、澎湖島の人民である」という意味は、他の地方の中国人は、この條約上では中華民国国民とは言わないのだという、そういうことを言い表わしておるところに私は意味があると思つて質問してみたのでありますが、そういう意味になるのだと思いますが、どうでありましようか。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはこの第十一條というのを読売新聞の記事で御議論になるのは、少し私は迷惑なのです。というのは、これは正確でありませんし、また今おつしやつたところも私は違つておると思います。ほんものとは違つておると思いますが、これを離れましてそういう点について意見を申し上げなければ、ここにも書いてありますが、読売の第十一條というところには、本條約の適用上。中華民国国民とは何々で「規則によつて中国国籍を有する者を含む」、こういうふうになつております。つまり中華民国国民と中国籍を持つ若というのは範囲が違うようにここでも出ております。ですからあなたのおつしやるような意味も含まれておることになるかもしれませんが、それは先方の解釈でありましてわれわれの方から言えば、たまたま台湾、澎湖島の住民は日本国籍の人であつた、それが今度中国国籍になる、そこでその点を規定いたすわけなのでありますが、そうするとたまたまその地域が国民政府の支配下にある地域であることから、今度は向う側から言えば、そういう国民政府の支配下にある国民というのは、ちようどこういう国籍をとつた人だということに一致するわけであります。
  136. 黒田寿男

    ○黒田委員 私がお尋ねしてみましたのは、この条約が近い将来に成立するといたしまして、蒋介石政府と、いわゆる中国という、今の中国本土とが、どういう関係になるかという問題が次に起つて参りますので、先ほどの質問を、前提的な質問としてこれをしてみたのであります。しかしただいま国務大臣も申されますように、新聞に出たことによつて新聞に対してははなはだ失礼ではありますが、政府が新聞に出たことに基いて質問してくれるのは迷惑だとおつしやいますから、その点は私もこの程度にいたします。そこでこれは議論になると思うのですが、ちよつと私は申し述べておきたいと思うことがあるのであります。一体日本は台湾並びに澎湖島をどこかの国に返さなければならぬということになつた。台湾及び澎湖島が日本から離れて他国に帰属することになるのであるが、その相手の国が、蒋介石政権の支配している——何といいますか、私は国というものはないと思つている。蒋介石政権はいかなる国を代表するものでもないと私は考えるのですが、その蒋介石政権の支配下に台湾や澎湖島が置かれるようになるということに、私は根本的に疑問を持つものであります。一体カイロ宣言において台湾及び澎湖島は中華民国に帰属すると規定されております。その中華民国というのは、名前だけの中華民国というようなものを意味するものではなくて、現実に中国というあの広大な領土の上に、その領土に居住しております多数の人民によつて現実に支持されて成立した政府がある。こういう中国本土という領土と、その上に住んでおります何億という——四億に余る人民と、その支持を受けております政権と、この三つを合してこれが私は中国の国家だと考えますが、これに日本は台湾並びに澎湖島を返還するというのが、カイロ宣言の本来の意味であると考えるのであります。蒋介石政府というものは、何であるかということをよく考えてみたのでありますが、いつか外務委員会で申しました通り、台湾は平和條約発効まではまだ中国のものではありません。日本のものだ。だから日本の領土である台湾に蒋介石が中国本土から逃げて行つておるのである。台湾に蒋介石は現在おりますけれども、一体台湾人——従来台湾に住んでおりました台湾人と蒋介石政府という一群の軍閥的勢力との間にどんな関係があるのだろうか。たとえば台湾の人民が選挙して蒋介石を大統領にしたとかなんとかというのでありますれば別問題でありますけれども、そうではない。蒋介石は一定の軍隊を持つておりますから、その力で事実上台湾を支配することができる。そういう事実関係を、まだ自分の領土ではない地域に発生させておるところの一群の軍閥政権に蒋介石政府はすぎない、私はこう解釈するよりほかにはないと思う。それは正式な領土を持つておるというのでもなければ、人民が君に支配をまかせるといつて支配者と認めたような、そういう人民を持つておる支配者というわけでもない。事実上軍隊の力をもつてある一定の地域を押えておるというのにすぎない。そういう一箇の勢力である。こういう勢力に日本が台湾や澎湖島を、その自由にさせるというような意味においてこれを返すということは、私にはどうも合点が行かないのであります。吉田内閣はこれをしようとしておる。私はそういう意味で、大体日華條約の成立それ自身が、はなはだ常識に反しておると思いますし、真理にももとつておると思いますし、また将来の日本の歩みを非常に誤るようなことになるというように解しておるのであります。けれども、これは結局議論になるだろうと思いますし、きようは時間もありませんから、私はこれに対しましては岡崎国務大臣の御意見は承らないでもいいことにしまして、さて、しかし、かりに、一歩譲歩して、蒋介石政権のもとに台湾及び澎湖島が置かれる、その支配下に置かれる領域になるといたしましても、政府自身が国民党政府の支配する領域をこの地域に限定せられておるところから見ましても、私は中国本土に蒋介石政権とは別個の事実上の政権が存在しておるということは——国際法上これを認めようとするかいなかは別といたしましても、事実の問題といたしましては、私は之を認めざるを得ないのではないかと思うのです。すでにイギリスのごときは、單に事実の問題としてのみではございません、條約をもつて、現在中国本土を支配しております政権を正式に独立した国家として認めておるのであります。そこで私は今吉田政府に対しまして、これを承認せよなどというようなやぼなことは申しません。そんなことを言うとむしろ笑われる。絶対に政府はそんなことは考えていないのでありましようから。これはわれわれの民主的政権でもできてからそうするよりしかたがありますまい。今のところ吉田政府ではその望みはありません。けれども国際法上のことは別といたしましても、事実の問題として私は岡崎国務大臣にも訴えたい。あの中国という大きな領域の上に蒋介石政権の支配の及ばない別の政権があつて、この地域に支配を及ぼしておる、こういうものが存在しておる。そうしてそういう地域から日本に来ておる中国人もたくさんあるのだ、こういう事実だけはどうしても認めていただかなければならぬと思うのであります。これはいかがでありましようか。
  137. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはその通りです。
  138. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、現在中国を支配しております政権とわが国は将来どういう関係になるかということまで尋ねたいのでありますけれども、そこまで尋ねますと時間もかかりますし、また大臣も迷惑にお考えになるかもわかりません。そこで私はその点はお尋ねしないことにいたします。しかし現在提出されております法律案との関連を生じます範囲でもう少し質問を申し上げてみたいと思います。そこで私ども朝鮮についても同様だと思いますけれども、今日本が條約の相手方として正式に認めようといたしておりますその政権の支配しております地域以外に、中国にも朝鮮にも別個の——日本としては好まない政権であるかもしれませんが、そういう政権が存在していて、そうして、中国人あるいは朝鮮人の中には、そういう政権を支持したいと考えておる人も現実にたくさんある。これは思想上の相違ということになるかもしれませんが、しかしそういう思想の自由は認めなければならぬ。これに対して日本人が干渉したり、かれこれ自分の考えでどうこうするということはできるものではないのであります。そこで私はそういう領域があるということと、そういう領域に好意を有しておる、——好意と申しますか、現実には現在のような状態でありますから、何らの連絡もないと思いますが、そういう領域の政権に思想上の共鳴を感じておる人々があるということ、この事実は、私はこれをお認めぐださらなければならぬと思う。そうして、それらの人々が、やはり他の国の人々と同じように外国人としての取扱いを受くべき人々である、こういうように私はお考えになつていただかなければならぬと思いますが、これはいかがでありましようか。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それもその通りであります。
  140. 黒田寿男

    ○黒田委員 それからもう少しお尋ねいたしますが、昨日鈴木長官でありましたか、ポツダム政令としての管理令をつくるについては、十分国際的慣例を尊重したのである、こう言われたのであります。私ももとよりそうでなければならぬと考えます。そこで国際慣行を尊重して、その慣行と抵触しないような管理令をつくつたのだという御精神からいたしますならば、この管理令は、世界人権宣言の精神とも抵触しないようなものでなければならぬということも、当然言い得られるであろうと考えます。世界人権宣言は各国に対して法的拘束力を持つかどうか、日本はまだ国際連合に加盟しておりません。かりに加盟しておるとしても、はたしてこの宣言が、加盟国に対して法的拘束力を持つかどうかということにつきましては、両論がありますから、私は、今日は法的拘束力を持つと断定しての議論はいたしませんが、少くともこの人権宣言の内容は、世界の人類の構成員の一人としてこの地上に生活しておりまずすべての人に対しまして、国際連合加盟の各国が、相ひとしくその人々の人権及び基本的自由を尊重し尊重する、そういう方向に進んで行くように、世界各国が国際連合と協力する。このような趣旨でこの宣言は出されたのである。そういうような事情からいたしましても、当然私はこの世界人権宣言の條項につきましては、管理令はこれを十分に尊重し、これを取入れた内容を持つものであるべきであると思いますが、これはいかがであ  りましようか。
  141. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも非常にお話が長くてよくわかりませんが、大体そういう趣旨だろうと思います。
  142. 黒田寿男

    ○黒田委員 そこで、私はなるべく早く質問を終りたいと思いますが、この人権宣言の第二條には、何人も、人種、それから途中を略しますが、政治上の意見その他のいかなる種類の差別も受けることなしに、この宣言に掲げられているすべての権利を享有する権利を有する、こうなつておりますが、このすべての権利という中には、国籍を有する権利、また何人も自分の意思によらないで国籍を奪われたり、またはその国籍を変更する権利を奪われるということはない。そういう内容を含んだものであると考えます。そこで私どもは、今わが国に、永年居住して今日に至つております朝鮮の人、あるいは中国あるいは台湾、こういう地域の出身の人々に対しても、この管理令の適用におきましては、世界人権宣言の中に示されておりますような権利を持つておる人々としてその権利を十分に尊重した処置をとらなければならぬと考えます。なおここでちよつと重要な問題に触れておきたいと思います。世界人権宣言第二條の第二項に「個人の属する国又は地域が独立地域であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、その他の何らかの主権の制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基くいかなる差別も設けてはならない。」こうなつておる。現在の朝鮮や中国の状態は、一時的な状態でありまして、永続的な、常時的な状態ではありませんが、現状に従つてこれを見ても「独立地域」であるとしても、「信託地域、非自治地域」というようなものの中に入れるべきものではありませんし、また「何らかの主権制限の下にある国ないし地域」というようなものの中に入れるべきものでもありません。朝鮮あるいは中国の本土、こういう地域は当然この「国又は地域」という中に含まるべきものであると考える。そうしますと、日本政府はまだそれらの地域またはその一部を独立国と認めていないからとおつしやるならば、私は「地域」でよろしいと思う。必ずしも「国」と見なくてもよいとしよう。そういう地域が、政治上、管轄上、あるいは国際上いかなる地位にあるとしても、そういう地域に属する個人に対しまして、私は先ほど申しましたような国籍上の権利を十分に認めなければならない、そうすべきものであると考えるのであります。そこで、そうすべきだと考えますから、——時間がございませんから、私はついでに次の問題についても申し述べますが、私どもはそういうふうに解釈いたしますから、私は先ほど岡崎国務大臣が十分便宜をとりはからうようにしたいとこうおつしやいましたことは、非常にけつこうなことであると考えます。今この問題について心配されておりますことは、永年居住しておる朝鮮並びに中国の人々が、将来はたして定住を認められるであろうかどうかという問題である。それが最大の不安の種になつておるのでありますから、この永住許可の問題につきましては、私どもはどうしても、従来永年住んでいたこれらの人々に対しましては、既得の権利と申しますか、そういう権利を認めなければならぬと考えます。そこで、法規の上では、永住許可を将来得ようとする場合には、国籍証明書が必要だということになつております。これにつきましても、いろいろと、先ほどから他の委員諸君とも問答がありましたが、中国本土出身の人、それから台湾や澎湖島出身の人でも、代表部の気に入らないような人物であると代表部が国籍証明書を出さないかもしれません。そういうことも必ずしも起らないとは限らないが、それは代表部の意思に基くものでありまして、日本政府はそれに影響せられてはならぬと思います。そこでかりに台湾人の場合に、中華民国人としてこちらで証明書を得ようと思つても、代表部が出さない場合があるかもしれません。いわんや大陸出身の中国の人々は、蒋介石政権の国籍を持つのはいやだというわけで、国籍証明書を、代表部を通じて入手することを好まないかもわからないと思います。さりとてその場合に、それでは中国本土の政府から国籍証明書をとれるかということになつて参りますと、おそらく日本政府はまだその地域を独立国として認めていないから、とれたとしても、はたしてそれを正式の国籍証明書であるとして認めるかどうかということについて疑いがあるというふうに、議論をすればそういうことも疑えないこともないと思うのでありますが、しかし、とにかく、そういう一切のことを考慮の外に置いて、ここでひとつ安心が行きますように、この国籍証明書にかわる便法を、先ほどもたびたび岡崎国務大臣が言われましたがぜひこの際とつていただきたいと思います。将来の問題として残されるというのでは、非常に不安が残つて来るのでありますので、ひとつここで政府の御所信をはつきりと承りたいと思います。朝鮮の李承晩政府国籍証明書のとれないような入でも、とにかく朝鮮の人だということが、何らかの方法で証明せられれば、南北を問わずこれをもつて国籍証明書にかわるものとして取扱うことができる。また中国の場合も、蒋介石政府の代表部の国籍証明書が得られなくても、権威ある華僑の団体もあるのですから、そういう団体の作成する書類等をもつて国籍証明書にかえることができる、こういうことにいたしまして、とにかく無理なことをしないようにされたいと思います。これを私は心から政府に要請いたします。私は政府が共産主義を憎んでおいでになること、政府立場はわかりますけれども、そこはお互いに思想の自由であります。世界人権宣言にも先ほども他の方が言われましたように、庇護権というものもあるのでありまして、現にブラジル政府のごとき、この人権宣言のできます場合に、戦争犯罪人は別として、政治上、社会上、宗教上、人道上の理由に基き避難しておる者に対しましては、相互に避難権を行使すべきであるというような議論までしておるのであります。私は理想的にそのような避難権が各国の間に今現実に認められるかどうかそこまで行つておるものかどうかということにつきましては、いろいろと疑いもあるし、各国にも事情があることと思いますが、しかし自分の好まない思想を持つておる、あるいは自分の好まない政権のもとにおる、その政権を支持するものである、というような理由で、差別待遇を與えるというような偏狭な態度だけは、人権宣言の庇護権の趣旨からいたしましても、断じておとりにならないようにしていただきたいと思います。  そこで私は結論といたしまして、従来永年居住しておりました人には、私から言えば單に国籍証明書に対し、便宜をはかるというようなことでなく、一応そういう人には既得権として居住権を認めて、今まで永年住んでおつたというだけの事実があれば、一応ここでは永住の許可をする、既得権によつて永住の許可をする。証明書によるよりも、もう一歩進みまして、過去において永年日本に居住したという事実をもつてそれで証明にかわるものというようにしていただきたいとも私は考えますが、それにつきましても、御意見を承つておきたいと思います。なぜ私がこういうことを申すかといいますと、最近新たに法律ができまして、いろいろと在留資格を定めるようになつたのでありますが、こういう法律が制定せられます前には、こういう法律なくしてけつこう日本に住み得ておつた一のであります。従つて永年住んでおります者は、何も問題はないと考えておりましたのが、新たな法律ができて、従来の既得権がそれによつて侵害せられるということになつて来る、そうなると、それは非常に大きな国際問題にもなるというような重大な性質を持つて来ると思いますので、永年居住しておつたという事実が証明できさえすれば、永年居住しておりました人には、ここではとにかく永年居住の権利を與えるというところまで行つていただきたいと思います。証明書にかわる便法、先ほど私は何らかの書類と申しましたけれども国籍証明する何らかの書類でなくて、長年居住しておる事実の証明だけで足りるというようにしていただけたら、この問題は非常に円満に片づくのではあるまいかと思います。時間がありませんから、岡崎国務大臣に対しましてはこれだけ質問しておきます。あとはまた他の政府委員に対しまして別の機会に質問いたしたいと思います。
  143. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国籍の問題につきましては、あなたは人権宣言までお引きになりましたが、これはそんなむずかしいことでなくして、きわめて常識的なかつ国際間の慣行でけつこうなのであります。永住した事実だけでどうしろとおつしやることは、これはまだちよつと研究の余地がありますが、われわれは長く平穏無事にいたちやんとした人を追い出すという気持は全然ないのでありますから、これは事実が証明すると思います。決してそういう御心配はいらない。ただこれはわれわれだけでそう考えても相手の政府もあることでありますから、その政府の法令等も尊重しなければならぬことは当然であります。それをうまく調整して適当の措置を講ずる、これが政府考えておるところであります。
  144. 仲内憲治

    仲内委員長 山本利壽君。
  145. 山本利壽

    ○山本(利)委員 時間がございませんから、一点だけ簡潔に大臣にお尋ねいたします。それは今度の法令によつて日本に在住する外国人をはつきりさせようということは、まことに同感であります。それでなお日本法律にそむく者は、これを強制送還しようということも了承いたします。しかし本日の委員会においては、多数の委員の方より人道上の立場から、この強制送還ということについて、いろいろの御議論がありましたが、私は今度は日本人の多数の国民感情という点からも、この際考えていただかなければならぬということをつけ加えて申し上げて御答弁をいただきたいと思うのであります。日本人の大部分は今度の敗戦によつて、多年台湾あるいは朝鮮において努力して生活しておつたのを全部送還された。そして内地においては人口問題で非常に苦しんでおる。それを内地におる朝鮮人であるとか、あるいは台湾人というものはこのまま置かれてよいのであろうか、できればその人たちは全部帰つてもらう方がいいのではあるまいかというような議論や感情も国民の中にはあるのであります。もちろん実際問題としては先ほど岡崎国務大臣のおつしやいましたように、なかなか全部の人、多数の方々を強制送還するというような運びには実際問題としてはなり得ない。日本法律従つて平穏無事に暮しておる人たちは、多分私は残るようになるのではあるまいか。そこでそうなるとすれば、外国人ときまつた者が、この人口過剰の日本内地にとどまるのでありますから、大体それは相当した日永人は将来朝鮮あるいは台湾に必ず移住することができるということの原則を、私はこの機会にとつておいていただきたいと考えるのであります。その点はなるほど朝鮮においては北鮮の政府もありましよう。あるいは中国の人民政府もありましようけれども岡崎国務大臣の言われるように、現在日本の相手にし得る政府というものは李承晩政権であり、蒋介石政権である。だからこの相手にし得る政権に対してでもけつこうでありますから、とにかく日本が現在及び将来において日本領土内に居住を許すだけの数は、その国に対して、日本人もまた行くことができるという原則を、日韓交渉においてあるいは日華交渉において、必ずそのことは言つていただきたい、今が絶好のチャンスであると私は考えるのであります。ただ、いたずらに日本におる外国人となるべき人々の保護とか、人権蹂躪とかいうような問題について論議をするばかりでなしに、日本人の将来生きて行く立場もよくく考えなければならぬ。そのことは、かつて委員会において私発言いたしまして、政府委員から同感の御回答を得たのでありますけれども岡崎国務大臣としてこの問題についていかように考えられるか、それはすでに着手されておられるのか、あるいは今後の交渉において話合いを進める御意向であるか、今が非常に重大な時期と考えます。将来日本民族が民主主義的に、文化主義の国民として平和にやつて行くためには、どうしても移民ということが必要でありますから、この際第一声としてこの問題について解決をしていただきたい、あるいは着手していただきたい、かように考えますので、岡崎国務大臣の御意見と御抱負を承りたいと考えます。
  146. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の山本君の御趣旨は、一点については非常に同感であります。つまり相互主義に基いて、向うの者もこつちに来るかわりに、こつちの者も向うに行く、これはまつたく同感でありまして今交渉いたしておる際には、その相互主義を原則として話合いをいたそうと考えております。しかしながら他の一点、つまり今かりに朝鮮の人がここに六十万おる、そこでこの事実をもつて、将来日本の人を六十万入れるのだ、こういうことは各地の実情によつてきまることでありまして、今後條約の面で、平等の原則に立つて、相互主義でもつて、両方で自由に、行きたい者は行かせる、これはけつこうだと思いますが、今いる人間と同数の者をこつちに持つて来るのだとか、あつちにやるのだということになりますと、たとえばブラジルと協定をすれば、日本の移民が三十万おれば、日本は三十万ブラジル移民を受入れるかという問題になりますと、現実の事態は、そこに行く希望者もありましようし、また行つて商業その他を営んで、ちやんとうまく行くか行かないか、こういう点で、現実の事態を基礎にしての話は、なかなかむずかしいと私は思います。しかし條約の面においては相互主義で行く、この点はまつたく同感でありまして、その趣旨で話を進めるつもりでおります。岳
  147. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまの大臣のお言葉にもありましたが、現在六十万おるから、ただちに日本人が六十万入るということは、私も主張をいたさないのであります。行けといつても、現在のような事実上の戦争が行われているところへ、日本人で行く人は少いかもわからない。けれども原則として、将来漸次向うが平和になり、産業が開発された場合に、日本人も大体その数は入り得るという権利と申しましようか、言質と申しましようか、そういうことは、政府においてはいささかの遠慮もなく、主張すべきところは主張しておいていただきたい。ブラジルの話もございましたけれども、それでは日本の移民がブラジルへ向つて何万行く、だからブラジルの人間が日本に何万入るという問題と、今の朝鮮並びに台湾の問題とは非常に差があると思う。すでに朝鮮並びに台湾に対しては、日本人が多数行つて、あるいは現在われわれが主張いたします数よりも、はるかに多数の人が行つて、そこで生活しておつたのでありますから、元数百万おつたから、それだけを入れようということを、私は今主張するのではありませんけれども、少くとも日本外国人が滞在する場合においては、そういつた過去の歴史もある場合においては、必ずそれだけの数は、日本人も将来いつかの機会においては行き得るものであるということを確立しておいていただくことが、現在の日本の国民が感情的にもあるいは理論的にも、現在の政府の外交方針に向つて納得するのではないか、かように考えるのであります。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はやはり條約の上でもつて相互主義を認めておきますれば、日本人がここにおる人の数よりもよけい行つてもさしつかえないわけでありまして、一に生業を営めるかどうかという見込みの問題になります。こちらが非常に人口過剰で、こつちにやつて来ても、あまり暮しがよくない、どこかへ行けば非常に楽だということなれば、相互主義さえ原則としてつくつておけば、数には拘泥しなくとも、自然にはけ口は出て来るのじやないか、こう私は思つておるのであります。なるべくそういう方面に活躍できるように、日本人の将来は考えなければならぬと思いますが、できるだけ相互主義で條約の面は行きたいと考えております。
  149. 山本利壽

    ○山本(利)委員 大体私は岡崎国務大臣の御答弁に満足するものでありますが、ただ私の憂えるところは、今の岡崎国務大臣のお言葉が万が一楽観に過ぎてはいけないということを懸念するから、一言さらに加えるわけでありますけれども、商業上互恵條約を結んでおる国でありましても、アメリカ合衆国等におきましては、現に移民問題というものは、別個に法案をつくつて、制限しておる次第でありますから、大体他の外交問題が互恵的に結ばれたから、ただちにこの人口の移動というものも、もう文句なしにそれは行わるべきであると考えることは、国際関係において私は多少の懸念があると考えますから、この人口問題においてわれわれが最も苦痛を感じておるこういう国柄においては、この日華條約あるいは日韓交渉等の行われる際に、やはり日本の人口のはけ口ということを、理論に基いて、無理のないところは必ずくぎを打つていただきたい、かように希望いたしまして、私の質問を終ります。
  150. 仲内憲治

    仲内委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は明二十八日午前十時より開会いたします。     午後二時十八分散会