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1952-03-12 第13回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十二日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 近藤 鶴代君 理事 佐々木盛雄君    理事 戸叶 里子君       菊池 義郎君    北澤 直吉君       栗山長次郎君    飛嶋  繁君       守島 伍郎君    小川 半次君       並木 芳雄君    山本 利壽君       林  百郎君    武藤運十郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君 三月六日  委員並木芳雄辞任につき、その補欠として床  次徳二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員床次徳二辞任につき、その補欠として並  木芳雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月五日  外務公務員法案内閣提出第四五号) 同月七日  行政協定に伴う旧軍港施設利用に関する請願  (宮原幸三郎君外三名紹介)(第一二一七号) 同月十日  安全保障條約締結に伴う駐留地域の決定に関す  る請願大石ヨシエ紹介)(第一三一七号)  行政協定に伴う旧軍港施設利用に関する請願  (大石ヨシエ紹介)(第一三一八号)  同(宮原幸三郎君外三名紹介)(第一三四七  号)  同(大石ヨシエ紹介)(第一三四八号)  同(大石ヨシエ紹介)(第一三九四号)  同(宮原幸三郎君外三名紹介)(第一三九五  号) の審査を本委員会に付託された。 同月十一日  在外同胞引揚促進並びに留守家族援護に関する  陳情書(第八  三二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  外務公務員法案内閣提出第四五号)  千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセ  スで署名された議定書によつて改正された麻薬  の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一  年七月十三日の條約の範囲外薬品国際統制  の下におく議定書への加入について承認を求め  るの件(條約第二号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会開会いたします。  まず連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。ただいま当外務委員会に付託せられております外務公務員法案につきまして、人事委員会より連合審査会開会申入れがありますので、この申入れを受諾いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  この際暫時休憩いたします。     午前十時三十三分休憩      ————◇—————     午前十一時三十五分開議
  4. 仲内憲治

    仲内委員長 これより外務委員会を再開いたします。  千九百四十六年十二月十一日にレークサクセスで署名され議定書によつて改正された麻薬製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外薬品国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件を議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。石原外務政務次官
  5. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま議題となりました千九百四十六年十二月十一日にレークサクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の条約範囲外薬品国際統制の下におく議定書につきまして、提案理由を御説明いたします。  この議定書は、一九四八年十月八日に国連総会で採択され、同年十一月十九日にパリで署名されたものでありまして、その加盟国は、一九五一年六月末日現在三十三箇国に上つております。元来、麻薬については、主として一九三一年の麻薬製造制限及び分配取締に関する条約、これは、一九四六年の議定書により一部改正されましたが、この条約により強力な国際的統制及び取締りが行われており、わが国も一九三一年の条約などの当事国として、麻薬統制及び取締りに関する国際協力を担当しております。しかし最近の薬理学及び化学の進歩の結果、一九三一年の条約では取締ることができない種類麻薬、特にアミドン、デイメロールなどのように中毒癖を生じさせることができる合成薬品が製造されるに至りまして、その害毒が特にアメリカで問題として取上げられるに至りました。この議定書は、この種の麻薬国際的統制及び取締りのもとに置くことを目的とするものであります。  わが国はこの議定書加入することにより、これらの麻薬が輸入されまたは国内で製造されて、国内害毒を流すことから強力に防衛されることとなり、また麻薬統制及び取締りの分野における国際協力を一段と促進することができることとなるわけであります。なおわが国は、昨年九月八日サンフランシスコにおいて、この議定書加入することを宣言しておりますから、これに一日も早く加入することは、わが国国際信用を高めるゆえんであると考えられます。よつてこの議定書への加入について御承認を求める次第であります。右の事情を了察せられ、慎重御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを切に希望いたす次第であります。     —————————————
  6. 仲内憲治

    仲内委員長 ちよつとお断り申し上げますが、外務公務員法案につきましては、先ほどの連合審査会において提案理由説明を聴取しておりますので、当委員会ではこれを省略することにいたしますから、さよう御了承を願います。     —————————————
  7. 仲内憲治

    仲内委員長 次に国際情勢等に関する件について質疑を行うことといたします。質疑通告順にこれを許します。並木芳雄君。
  8. 並木芳雄

    並木委員 まず政府にお伺いいたします。国際通貨基金への加入が否決をされたという報道がありますけれども、政府にその公報が入つておるかどうか。これが否決されますと、各方面に非常な悪影響を及ぼすものであつてマーカット将軍帰朝報告の中にも、国際通貨基金に加盟することによつて、外国からの借款などの道が開けるというようなことが触れられております。その他いろいろの方面で非常な影響を及ぼすと思うのでありますけれども、政府としての対策はどういうふうになつておるか、その点お尋ねします。
  9. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 否決されたとかどうとかいう公報には何もまだ接しておりません。政府といたしましては、やはり従来通りぜひともこれに入りたいという方針のもとにいろいろやつておるわけでありますが、私の仄聞するところでは、たしか加入金の問題その他について、若干検討されておるのじやないかと思うのであります。まだ御質問のような公報には何ら接しておりません。
  10. 並木芳雄

    並木委員 国府との条約交渉はどのように進展しているかをお伺いしたいと思います。現在問題になつておる点はどういう点か、それからこれはいつころ調印されるか。非常に早く調印されるという報道もありますが、政府としてはどうこれを見ておるか。これはもちろん批准条項が入つておると思いますから、調印直後に国会承認を求めるものと思いますけれども、その点もあわせてお伺いします。
  11. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは大体皆様方も新聞その他でも御案内と思うのでありますが、吉田書簡の線に沿いまして、ただいま交渉を進めておるところでございます。ただいままでの会談によりまして、先方見解といいますか、要望等も大体明らかになりましたので、ただいまわが方の見解も示しまして、極力折衝をしておるところでございます。折衝経過中でありますので、ここでいろいろ詳しいことを申し上げることはできないのでありますが、大きく問題になつておりますのは、賠償条項の問題であるとか、あるいは財産及びその請求権等の問題、あるいは適用範囲といいますか、そういうようなことが主として論点になつておるのではないかと思いますが、しかしわが方といたしましても誠意をもちまして、一日も早くこれができ上るように、ただいま交渉を続けておるところであります。  次のお尋ね調印等の時期でありますが、これは今後の折衝状況にかかるわけでありまして、大体今月中には調印になるのではないかと思つております。もちろん批准条項を含むものと思うのでありまして、調印が終りましたならば、国会承認を求めるような手はずに相なることと思つております。
  12. 並木芳雄

    並木委員 次に行政協定のことでお尋ねをしておきたいと思います。それは行政協定の第二十四条です。この第二十四条は、全体の調和から考えましても、ほかとつり合いがとれておらない。内容を検討すればするほど、これは行政協定の中に含まるべきものではなくて、安全保障条約の中に第一条の第二項として挿入するのが適当であると思われるのであります。それは、この行政協定第二十四条の中における共同措置ということ一つとつてみても、言うことができると思うのであります。一体共同措置とは何であるか。これは安全保障条約にもどこにも全然出て来ておりません。共同措置というものがとられるならば、根本的な方針として当然これは安全保障条約の中に含まれておるべきものであると思います。そこから初めて駐留軍配備に関する規律というものが行政協定調印されて来るべきものと思うのです。ですから私は、共同措置というものはどういうものであるかというと、明らかにこれは行政協定条文でなく、安全保障条約の中に挿入さるべきものであると思う。それからこの条文それ自体も、「共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とありまして、協議の方があとなつて来ているのです。共同措置をまずとり、その上に「安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とあるのですから、この共同措置というものはよくよく重大な措置でなければならないと思う。こういう見地からひとつ政府の所見をただしてみたいと思うのです。
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題はいろいろの委員会でもたびたび問題になつたようでありまして、岡崎国務大臣もその節ただいまの御意見のように、これは書いても書かなくてもよいようなことではあるのでありますが、しかし一応形を整えるために入れたと申されております。考えようによりましては、若干配備にも関係するところもありますので、ここに入つたようなわけであります。御承知のように日本には軍がないのであります。日本に軍があれば、こういう条項もあるいは安全保障条約に、行政協定規定するならば、行政協定にもいろいろ規定ができたかと思うのでありますが、軍もありませんので、結局こういう形になつたと思うのであります。共同措置というのは、やはりこういう場合には日本側治安もしつかり固めておかねばならないという意味で、共同措置という言葉が入つたのだろうと思います。
  14. 並木芳雄

    並木委員 佐藤法制意見長官が見えておりますから、お尋ねいたしますが、法制上の見地からただいまの私の質問はどうお考えになりますか。私はどうしても、この第二十四条というものは行政協定の中に含まるべきものではなくて、本来の根本方針を定めた安全保障条約の第一条の第二項として挿入さるべきものであると思うのですが、見解お尋ねいたします。
  15. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私が先にお答えするとすれば、かように答えたいと思つておりましたところを、石原政務次官が至れり尽せりの説明をされまして、私としては申し添えるところがございませんけれども、今の石原さんの要点をサム・アツプいたしますと、かりに日本にも軍隊があつて、これが軍事協定であるということであるならば、まさに安全保障条約そのものの問題になりましようけれども、そうでないことでもあり、かつ日本側のとる共同措置というものは、治安維持云々というような面であることも、今石原さんの言われた通りであります。従いましてさようなことから言うと、実は第二一十四条という条文は、法律的に言えば、なくても同じ結果になるのではないかと私は思うのであります。でありますから、結局安全保障条約実施のための念のための規定として入つたというようなことではないかと思います。
  16. 並木芳雄

    並木委員 かりに佐藤さんが野党の議員であつたら、さようなことを言うかどうかということは、私ははなはだ疑問に思うのですが、それならば今度はラスク特別代表岡崎国務大臣書簡の問題について、先に佐藤長官お尋ねいたします。石原さんに先に聞くと、おおむ返し答弁しかしそうもありませんから、佐藤長官に先にお尋ねいたします。  ラスク特別代表岡崎国務大臣書簡内容を見ますと、これまた明らかに条約の一種であつて、両政府間の単なるとりきめではないと思うのです。特にその中で、九十日たつても区域とか施設などについて話合いがきまらなかつた場合には、現状通り継続するものという了解事項がございます。これなどは非常に重要な事項ではないかと私は思う。ラスク特別代表岡崎国務大臣書簡というものは、当然安全保障条約の第三条の第二項として挿入さるべきものであると思うのです。これは単なる書簡ではなくて、書簡内容は明らかに双方権利義務を定めた条約であると私は考える。ですから国会承認を得る必要があると思うのですけれども、見解お尋ねいたします。
  17. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この実体によつてわかりますように、この書簡の中に書いてあることは、この安保条約実施の当初に起る事柄を結局書いているわけであります。従いまして普通の立法技術、すなわち国内法でありますならば、御承知通りそういう規定法律であれば附則経過規定を、この法律施行の際これこれ、政令においても同じような形をとります。しかしこれは条約といいますか、行政協定の方の国際関係の問題は、これは何も国内法と同じ形にしなければならぬという鉄則はどこにもございませんから、便宜書簡の形でこれが追加されたというので、実質的にこれを申しますならば、今の例で申しましたように行政協定の中に附則と書いて、その中にはまつているものと法律的には同じものだというふうに考えております。
  18. 並木芳雄

    並木委員 この内容の中に、単なる駐留軍配備を規律する以上の権利義務双方で持つていると私は思うのですけれども、その点どう考えますか。
  19. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは並木委員なりあるいは石原さんの方が一体にはお詳しいかもしれませんが、私はこの協定の中にいろいろ施設などの提供について協力をすることが書いてあつたように記憶いたしております。そのことについての協定発効当初のことを書いただけのことで、先ほど申しましたように、国内法で言えば附則として経過的につけ加えられる事項に該当するものというふうに、きわめて単純に了承いたしております。
  20. 並木芳雄

    並木委員 石原次官答弁ございませんか。
  21. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいま意見長官が言われたことと大体同じでありまして、われわれは行政協定の一部といいますか、付属のものと解釈いたしているのでありまして、別に新たな権利義務を定めたというわけではなく、この平和条約第六条にすでに規定されております使用期間その他のことをあらためて確認し合つたと、こういうふうに解釈しているものであります。
  22. 並木芳雄

    並木委員 では次に行政協定議事録の第二十五条に関する点でお伺いしておきたいと思います。それは岡崎氏の陳述として、「日本国が漸増的に自国の防衛のため自ら責任を負う」とあつて経費が増加するということが明らかに触れられてあるのです。この経費の増加というのは、具体的に何に要する費用をさしているのか、その点をお伺いしたい。
  23. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいまのところでは、まず警察予備隊とか海上保安隊、こういうものに関連するものではないかと考えます。
  24. 並木芳雄

    並木委員 それで問題が展開されて来るわけですから、それだけ承つておきます。  次に行政協定の第十二条、これは合衆国が直接物資調達し、直接請負契約をするという項目でありますけれども、これで見ますと、日本政府機関を通じないで直接物資調達をやり、直接請負契約をやるのであるかどうか、これをお聞きしたい。もしそうだとすると特別調達庁というものはどういうふうになつて行くのか、この点まずお伺いします。
  25. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題はただいま予備作業班でいろいろ検討されているのでありまして、今後もまだされることと思うのであります。ただいまお尋ね日本政府機関を通ずるか、あるいはどうかということについては、まだ決定していないようであります。
  26. 並木芳雄

    並木委員 しかし第十二条は明らかに直接物資調達する、直接契約をするというふうに読めるのですが、この点いかがですか。
  27. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは十二条第二項にも「日本国経済に不利な影響を及ぼす虞があるものは、」云々というようなこともありまして、役務提供物資調達の両方の問題につきましては、ただいま予備作業班で具体的な方法をいろいろ検討中でありまして、こちらからも要望もし、向うの様子も聞いている。こういうふうに今やつているわけであります。
  28. 並木芳雄

    並木委員 それは日本経済に不利な影響を及ぼす場合のことであつて原則は第十二条の第一項ではないのですか。これが原則で、第二項はその例外になる。
  29. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはこの通り向う権利は有しているのでありますが、わが方からもまたいろいろの今までの体験から割出したことであるとか、いろいろの希望を申し入れて、予備作業班で検討している段階であります。
  30. 並木芳雄

    並木委員 すると第一項は原則であるけれども、必ずしもこの通りには実際にはならないかもしれない、こういうふうに聞いていいわけですか。日本機関を通じてやるということになるかもしれないし、役務なり、第二項のように日本国の権限のある当局との調整のもとに、また当局を通じてやるというふうな段取りに今なりつつある、こういうふうに聞いていいわけですか。
  31. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 そういうふうになりつつあるということでもありませんが、先ほど申し上げましたように、予備作業班でいろいろやつているのでありまして、向う権利を有しておりますけれども、その権利を放棄して、こういうやり方がいいということであれば、またその方法もとれるのでありまして、そういうことをただいま予備作業班でいろいろ考究しておる。こういうことであります。
  32. 並木芳雄

    並木委員 特別調達庁の点はどうですか。
  33. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 かりに物資調達の問題でいかような結論が出ましても、役務関係の方などで、当然そういう若干の仕事あるいは相当の仕事が残るのではないかと思うのでありまして、特別調達庁という名前になるかどうかわかりませんが、こういう種類機関が存置されるのではないかと思つております。
  34. 並木芳雄

    並木委員 私の質問あと大橋国務大臣木村法務総裁でありますから、見え次第やることにして、一応これで打切つておきます。
  35. 仲内憲治

  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本国内における終戦後の占領軍に属する人たちの犯罪がどのくらいあつたかを、もしおわかりになつたら教えていただきたいと思います。それは大体不問に付され、あるいはまた公表されなかつたのが多いのじやないかと思いますが、もしおわかりになつたら教えていただきたい。
  37. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまここにその資料を持つておりませんので、これは後刻調べまして次の機会か別の機会お答えしたいと思います。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最近黒人兵自動車強盗が非常に多くなつておりますので、その恐怖感からタクシー運転手夜間黒人の乗車を拒むようなことが非常に多いと思います。ことに今度の行政協定によりまして裁判管轄権属人主義をとられるようになりますと、問題が起きたときに自分が不利に導かれることを未然に防衛するために、タクシー運転手人たちが、タクシーに乗りたいと言われましてもこれを拒否するような場合が非常に多いと思います。一事が万事で、さわらぬ神にたたりなしというような卑屈感のもとに、日本人とアメリカ人との間は感情悪化ということを免れないというような場合が多くなつて来るんじやないかと思います。そういう意味から政府は、こういう人たちの間の日米感情悪化というようなものを、どういうふうにお考えになるおつもりであるかを伺いたいのであります。これは当然行政協定属人主義というような、日本裁判権がないというようなところから起きて来る不安だと思うのですが、それに対してのお考えを伺いたいのであります。
  39. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは御案内のごとく行政協定第十六条にも、日本国法律を尊重するということになつておりまして、そうして法令の違反がありました際には、たとい裁判管轄権向うにありましても、先方統一軍法によりまして、すべて日本法令に違反したときは軍法によつて処断される、こういうことになつておりますので、これらの人のそういう事犯が看過されるとかどうとかいうことは、これは絶対にないことと思います。なおこの行政協定を両者の間で協議いたしました際にも、そういう問題はいろいろと話し合われたことと思うのでありまして、今後ただいまのお話のような点は、関係者にも適当な機会を通じまして、そういう心配のできるだけ少いようにわれわれとしても努力をしなければならぬと思つております。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな点がよく一般に伝わつていればいいのですが、私が二、三日前に乗つた運転手さんが、とても恐しくて外人なんか乗せられません。私たちの仲間はみなこういうふうに思つていますということを言われました。ことに長いこと外人に対しての卑屈感を持つている人たちが割合に多かつたと思いますから、こういう点も気をつけていただきたいと思います。  それから非常事態が生じましたときに、その出動にあたりましては、合同委員会において意見をまとめるということが書いてございますが、その場合に、もしも日米の間に意見の一致を見なかつたような場合にはどうなるのでしようか。日本アメリカにどうしても従わなければならないか、それとも日本独自の形をとることが許されるでしようか、その点を伺いたい。
  41. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまの御質問、まことにむずかしいお尋ねでございまして、ここで私から間違つたことをお答えをしてもどうかと思いますので、詳しいことは差控えたいと思いますが、そういうようなことは、安保条約なり行政協定なりを結びました全体の精神から考えまして、大体あり得ないのじやないかと、われわれは考えておるのであります。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今お答えになることは非常に困難なことだとおつしやいますから、その点をしんしやくいたしまして、何かの機会にどなたかから承りたいと思いますが、そういうことはあり得ないというような、外務を担当していらつしやる外務省の方としてのお言葉は、私はどうしても了承できないと思うのです。そういうようないろいろな場合を考えての協定というものが結ばれて行かなくちやならないと思いますから、この点は十分に御考慮になつておいていただきませんと、私どもはとても不安で、やりきれないということだけ申し上げておきたいと思います。  次に講和条約が発効いたしましてから、ソ連代表部一体どういうふうな形になるのかをお伺いしたいと思います。まだ解決されておりません引揚げ問題などは、どういう形で解決されるような見通しをお持ちになつていらつしやるか、その点もあわせてお伺いしたいと思うのです。
  43. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは時節柄まことに微妙な問題でありまして、今後の連合国間の話合いにもなることと思いますので、ソ連代表部の地位が実際にどうなるかというようなことにつきましては、政府としては現在のところ答弁は差控えたいと思うのであります。ただ純粋な法律論といいますか、純粋な法理論といたしましては、ソ連代表部は対日理事会に対して代表として派遣されておる機関でありますので、平和条約の発効に伴いまして連合国最高司令官の地位が消滅して、その諮問機関であります対日理事会が解消いたしますとともに、代表部としての地位は法的には消滅するという解釈もできるのであります。従いましてソ連代表部が対日理事会解消後も引続き日本に残留するという場合は、その地位は法的には、休戦後敗戦国に戦勝国の軍人といいますか、戦勝国の関係者がこちらに滞在しておるものと、こういうことに考えます。しかしこれはただいまお断りいたしましたように、純粋な法理論だけで申し上げたのでありまして、実際の問題については連合国間の話合いとか、いろいろなことがあると思います。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一つ伺いました点、一応ソ連代表部がありましても、引揚げ問題はそれほど日本の望むように親切に解決されませんでしたけれども、一応精神的な圧迫になつたと思いますが、今後引揚げの問題を解決なさいますのにどういうような形でなさるか、その見通し等について承りたいと思います。
  45. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今後の引揚げ問題につきましては、これはまず国連の絶対的な協力を求める。ことに国連は俘虜引揚特別委員会等も設けられまして、本年も委員会がすでに開かれ、また八月には開かれますが、この国連の機関を通じましてお願いをする。それから同時に、これはまだ公にはどうかと思うのでありますが、将来できれば正常の外交機関を持つております第三国等をも通じていろいろ依頼をしたい。ことに発効後はわが方といたしましても在外公館が各地に置かれることになつていますので、そういう在外公館等から第三国等にもいろいろお願いいたしまして、強力にこの問題を進めたい。それからその他国際赤十字を通ずるとか、従来やつておりますいろいろの方法をあわせ用いまして、この問題を引続き強力に続けて行かねばならぬと思つております。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまのお話で、ソ連代表部の問題は一応連合国間の話合いで大体きまるというようなお話でございましたが、昨晩の夕刊だつたと思いますが、欧州の諸国ではソ連外交官の旅行制限を実施しようとしております。もちろん日本では正式のソ連外交官はいないかもしれませんが、もしソ連の人が残られたような場合に、日本政府といたしましてこの人たちの旅行制限なり、あるいはまた行動を監視するというようなことを独立後においてなさるかどうかを伺いたいと思います。
  47. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私の承知しておるところでは、ヨーロッパその他の諸国でいろいろやつておりますのは、報復措置といいますか、相互主義によりまして、一方がやるから一方がやるということではないかと思うのであります。ただいまのところでは、日本にはもつと非常に大きな問題がございます。そういう旅行制限のようなことで相互主義でやらなければならぬということはないように思いますので、この問題は何ともここで私からはただいまのところは申し上げられません。
  48. 仲内憲治

    仲内委員長 次に林君。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 私は第二十四条の問題について、石原さんにお聞きいたします。先ほど並木君からの質問があつたのですが、またもう少し掘り下げてお聞きしたいと思うのです。第一に、第二十四条の「日本区域」というのはどこをさすのか、まずそれをお聞きしたい。
  50. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは地図でどういう線を引くかということははつきりしていないようでありますが、日本及びその周辺というふうに解釈できるのじやないかと思います。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 この行政協定を見ますと、いろいろな言葉が使つてあるので、これは正確にしておかなければならぬと思いますが、第三条の「日本国の領域」というのとはまた違うのですか。「日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信、又は陸上交通」というような言葉がありますが、これとどう違うのですか。
  52. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは領域とはまた違うのでありまして、領域、領海ともこれは違うと思います。そこで先ほども申し上げましたように、地理的に線を引きまして、ここここと限定することは、これはちよつとむずかしいのではないかと思うのでありまして、場合に応じまして、そのときの情勢によつて判定をする、こういうことより申し上げようがないと思います。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮、台湾、沖繩、仏印なんかはどうなりますか。
  54. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはそのときどきに応じまして、協議してきめることになると思うのでありますが、昨日の参議院の予算委員会でありましたか、岡崎国務大臣答弁では、朝鮮は日本区域には入らないのではないかというような答弁があつたやに私は思うのであります。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、この安全保障条約の第一条の「日本国内及びその附近」とありますが、これとは合致するのですか。「日本区域」、これとはまた別な概念ですか。
  56. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体似ているといいますか、大体同じような考え方でいいのじやないかと思います。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 日本国内及びその付近に配備するアメリカの軍隊が行動する場合は、極東における国際の平和と安全の維持のためだとありますが、そうすると、この極東における国際の平和と安全の維持ということは、朝鮮、台湾、ヴエトナムは入るわけなんですか。
  58. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 極東といえば、これはまたその範囲は相当広くなるのでありまして、今言われたような事例は入るものと思います。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮戦線がもう少し逼迫して、対馬あたりまで来るとどうなりますか。どこらまで来ると「日本区域」になるのですか。あるいは沖繩、台湾の問題が将来問題になりまして、沖繩辺まで来るとどうなるのですか。
  60. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 対馬は日本領土でありますから、もちろん対馬については問題ないと思います。沖繩は残存主権が日本にあるのでありまして、これもやはり問題はないかと思いますが、要するに先ほど申しましたように、この安保条約並びに行政協定全体の精神から、その事態々々に応じまして「日本区域」というような範囲の解釈が判定されて行くことと思います。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、沖縄だとか対馬の領土へ直接相手方の戦力が及ぼす場合ですか、その近海に危険を及ぼした場合も「日本区域」になるのですか。
  62. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 それは場合にもよりますが、近海で危険を及ぼしたと判定されるような場合ももちろんあるかと思います。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮の戦線や台湾の問題が、対馬とか沖繩の近辺に危険が感じられるような情勢になると、もう「日本区域」に敵対行為があつたということになるわけですか。
  64. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 急迫した脅威が感ぜられるような場合には、もちろん入ると思います。
  65. 林百郎

    ○林(百)委員 これは一方は直接的な「敵対行為」で、一方は「敵対行為の急迫した脅威」ですから、わけて考えなければならないと思いますが、私は最初の「敵対行為」ということをまず聞いているわけなんです。ですから対馬とか沖縄の領土へ直接危険を感じている場合は「敵対行為」になるのか、あるいは「敵対行為の急迫した脅威」となるのか、その辺はどうなんです。
  66. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 どうもこういう仮定の質問で重大な問題をいろいろここで、こういう場合はどうか、こういう場合はどうかというのはなかなかむずかしいと思いますが、直接敵対行為で現実にそういうふうに感ぜられる場合は、これは「敵対行為」と解釈しなければならぬと思います。
  67. 林百郎

    ○林(百)委員 この「敵対行為」と「敵対行為の急迫した脅威」とはどう違うんですか。
  68. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは大体読んで字のごとしだと思うのであります。(笑声)現実は敵対行為があれば「敵対行為」だし、敵対行為の急迫した脅威が感ぜられれば後段の方であろうと思うのであります。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると朝鮮戦線だとか、あるいは台湾だとか仏印——仏印なら少し速くなりますが、朝鮮に今ことにアメリカの軍隊が国連軍の名において出動しておりますが、こういう場合は、これは行政協定第二十四条による「敵対行為の急迫した脅威」というのにはならないわけですか。
  70. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ちよつとただいまの質問よくはつきりしなかつたのでありますが、先ほど言いましたように直接敵対行為が行われておるような情勢であれば、これは「敵対行為」であり、兵を集めておるとか、そういう準備をしておるというような情勢がわかりました際には「急迫した脅威」、こういうふうになるのではないかと思います。そのときの情勢、状況によつて前段になるか、後段になるか、これは重ねて申しますように、こういう場合はどうか、こういう場合はどうかというふうに一々言われましても、そのときの情勢でこれは判断しなければならぬ問題であろうかと思います。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 岡崎国務大臣が見えたようですからいいですか。
  72. 仲内憲治

    仲内委員長 あと二人ばかり通告がありますから、簡単に……。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 岡崎国務大臣に——今第二十四条のことで石原次官に聞いておるのですが、まず私は言葉の定義からお聞きしたいのです。この「日本区域」というのはどういうことをさしているのですか。たとえばこの行政協定の中には日本の領域とか、それから日本並びにその付近というような言葉安全保障条約の中にはあります。それからさらにもう少し極東の平和並びに安全、小さく言えば区域、施設、その隣接地、その近傍というように、非常にいろいろ言葉があるわけで、厳格に言葉の概念をわれわれ聞いておきたいと思うのですが、この「日本区域」というものはどこら辺をさすのか、あなたに聞いておきたい。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは賢明なる林君の御質問とも考えないのです。というのは、この協定の親になりまする安全保障条約の第四条には、「日本区域」という字が出ておりまして、その当時盛んに日本区域とは何ぞやという質問があつたのであります。それで安全保障条約の「日本区域」という字をこの際はとつたのであります。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 それをまたあらためて聞いておくわけなんです。そうするとたとえば今度の行政協定の第三条には、「日本国の領域」という言葉もあります。おそらく領域よりは広くて、それから安全保障条約の「極東」というよりはやや狭い概念ではないかと思います。ですからこの行政協定をあなたが結ばれた以上、大体どの辺を「日本区域」と考えられておるかということを、いろいろの言葉が出て来ておる今日でありますから、もう一度最後にあなたからお聞きしておきたいと思います。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは念のための規定でありますが、「敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威」こう書いてあるので、たとえばこれは非常に悪い例かもしれませんが、例をとつてみますと、日本の沿海は三海里の範囲内は日本の領域です。しかも日本の四海里か五海里向うの方に、非常に武装した軍隊を満載した船が日本の方へ向いて来た、こういう場合に、日本の領域に入つて来なければそれを防ぐことはできないというのでは実は意味をなさないのであつて、まつすぐ日本に向いて来るのならば、日本の領域の外でもこれを防ぐべき性質のものである。あるいは飛行機なら空から飛んで参りますが、日本の上空に達するまでは日本領土でないからほうつておくというのでは、日本の上空に達してすぐ爆撃されてしまう場合もあるので、そういう「日本区域」というのは漠然たる概念ではあるけれども、はつきりこつちへ向いて来ればこれは防がなければならぬ、こういう意味があるのであります。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 具体的にお聞きしますが、たとえば今マ・ラインの問題が撤廃された、されないというような問題で、東支那海あるいは北洋方面の漁業の問題が非常に起きておりますが、こういうようなマ・ラインの近辺の問題、それから対馬だとか沖繩、こういう所で、領域以外の範囲がやはり日本区域というように考えていいわけですか。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本の安全保障をいたすための規定でありますから、日本の安全に非常な危険の起るような敵対行為なり、それの急迫した懸念等がある場合を言うのであつて、かりに日本のすぐそばにいたしましても、日本の安全に何ら心配のないようなことならば、これはまた別問題でありますから、先ほど石原次官の言われたように、事実そのときの情勢、そのときの国際関係、いろいろのものを見なければ、どこまでが「日本区域」だという判断は、「日本区域」という定義はないのでありますから、大体日本に向いて来るもの、こういう意味であります。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 それからその次にお聞きしたいのは、「敵対行為」と「敵対行為の急迫した脅威」とあります。これはやはり概念が違うと思うのですが、これはどういうように岡崎国務大臣は解釈していますか。これはわれわれももちろん一応の概念は持つておりますが、要するに「敵対行為の急迫した脅威」ということが相当広範囲に解釈され得ると思いますが、この前段の「敵対行為」と、「敵対行為の急迫した脅威」というのはどういうように区別されて考えられているか、大臣の考えを聞いておきたいと思います。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 「敵対行為」という初めの方は、敵対行為が生じた場合ということになりますから、現実に敵対行為が起つた場合、つまりホステイリテイが現実に発生した場合、それから「敵対行為の急迫した脅威」が生じた場合、これは「急迫した」という字がなくても一種の意味をなすわけで、敵対行為の脅威が生じた場合、しかしそう言うと非常に範囲が漠然としますので、どうしても日本にやつて来る、緊急事態か起りそうな場合という意味で、特に急迫した、だから遠くの方で起りそうだという漠然たる考えでなくて、ほんとうに急迫して、出て来るのだという場合を考えておるのです。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするともう少し具体的にお聞きしますが、直接的な「敵対行為」でなくても、「敵対行為の急迫した脅威」という意味に、たとえば朝鮮戦線がまだ休戦会談が成立しておりませんが、朝鮮戦線の問題、あるいは将来台湾の解放というような問題が起きた場合、あるいは仏印でアメリカ側の好ましくないような状態が発生した場合、こういう場合は「急迫した脅威」の中に入るのかどうか、それをお聞きしておきたい。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは現実の事態が起つてみないとわからないのでありまして、朝鮮の問題については、初め国連軍がずつと釜山の方まで押し詰められた場合には、九州方面には「敵対行為の急迫した」事態が起つて、人心が非常に不安になつたと思いますが、その後国連軍の力が増して、三十八度線に押し返してしまつたので、今は現実に戦闘行為があすこで行われても、日本国民としては「敵対行為の急迫した」事態が起つておるとは考えていないと思います。同じような問題でもその事態によつて違うのであつて、いずれも相対的なものでありますから、今仏印の事態がこうなればどうだ、ああなればどうだという、そういうことをあらかじめ想定して言うわけには参らないのであります。事実日本の安全が保障されないような事態が、起りそうだと認められる場合のみが急迫した事態であります。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、そういう今あなたの言われたような判断は、一体どちら側がやるわけですか。日本国政府がやれるし、合衆国政府もやられるわけですか。それとも双方意見が一致しなければそうした判断にならないものですか。どちらの政府側も自己の判断でできるのかどうか。現実の問題としてはやはり日本アメリカの軍隊が駐留し、これが強力な陸海空軍を持つておる以上、その判断はアメリカ側の判断でされるのであつて岡崎さんは今もつともらしい答弁をしておりますが、実際はアメリカ側の判断で支配されるのではないか、かように考えられますが、その点はいかがですか。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは両方の政府がどちらも自分の考えで申し出得るわけでありまして、そうすると他方の政府はそれに協議して、はたしてどうであるかということがきまるわけであります。林君はしきりに日本政府意見は通るまいという印象をつけようとされておるようでありますが、事実はそうでなくして、われわれの折衝した範囲では、日本側こそ極東の事態については最も認識深い国であるから、日本意見をなるべくひとつ知らしてもらいたいというので、われわれの意見が大いに通るものと考えております。いずれにしても両国政府が緊密に協議する問題であつて、また両国政府はいずれも極東の安全、すなわち日本の安全を確保しようという同じ目的に立つておるのでありますから、その間に意見の不一致などということは、とうてい想像し得ないのであります。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 しかしこの条文を見ますと、先ほど並木君からも御質問がありましたが、敵対行為または急迫した脅威が生じた後に初めて共同措置をとり、ただちに協議するというふうにわれわれはこの第二十四条の解釈ができるのでありますが、そうすると「敵対行為」とか、あるいは「敵対行為の急迫した脅威」が生じたかどうか、こういう判断もこの協議の中に入るわけですか。第二十四条を正面から解釈して行けば、「敵対行為」が発生し、「敵対行為の急迫した脅威」が生じた場合に必要な共同措置をとつて、それから安全保障条約第一条の目的を遂行するために協議しなければならないというようにわれわれは解釈できるのでありますが、そうすると「敵対行為」あるいは「敵対行為の急迫した脅威」ということは、実際そうなのかどうかということを、日米政府の間で相談をすることが、この条文によつて義務づけられているかどうか、その点を一応お聞きしておきます。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは全般的に私が国会で報告したときに申しました通り、これだけの条文なら実は言わずもがなのくらい、言う必要がないほどのものであるというわけであります。「敵対行為」なりあるいは「急迫した脅威」なりが起つているかどうかということは、これは義務づけられる問題でも何でもないので、両方で始終日本の安全を守るためには、そういう事態があるかないかは注意して見ていなければならぬ。気がつけば、やはり相手が気がつかない場合があるかもしれないから、すぐ話をする。これは当然のことであります。  それからなおあとの方の条文の解釈がちよつと私どもと違うのは、そういう場合に「日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、」というのと、「安全保障条約第一条の目的を遂行するため」両方で協議するのであります。とつてしまうのではなくて協議する。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、今朝鮮事変が始まつており、それから吉田・アチソン交換文書によれば、朝鮮の武力侵略が日本にもまた関係のないものでもない。だから朝鮮の武力侵略に対して、国連軍が軍事行動を起している場合には、日本はこれに役務施設提供して協力しなければならないということが、はつきり書いてあるのでありますが、そうなりますと、しかもアメリカ側では、実は非常事態宣言をすでにしておるのであります。従つてアメリカ側で非常事態宣言をし、朝鮮事変が日本の安全にも関係があるものとして、吉田・アチソン交換文書によつて日本が国連軍にあらゆる協力をしているということになりますと、アメリカ側の判断によりますと、すでに「敵対行為の急迫した脅威」というものは現在あるのだ、そのために必要な共同措置日本はとるべきだということを、当然考えておると私は思うのでありますが、これについてアメリカ側はそう考えても、われわれはまだ第二十四条の日本区域の防衛のための必要な共同措置はとる必要はないのだ、われわれは日本の国に対しては何らの脅威も何も感じておらないのだということが言い得るかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。すでに吉田・アチソン交換文書では、実質的にはこの第二十四条の日米の間の必要な共同措置というものを保障している。要するに現在がすでに第二十四条の具体的な適用の状態になつているというように考えられるのであります。もしそうでないならば、われわれは朝鮮事変に対して何も協力をする必要はないと思いますが、その点はどうなんですか。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政協定アメリカの駐屯軍に対する配備を規律する条件を定めておる。吉田・アチソン交換公文は、国際連合に対する協力の問題であります。従つて行政協定と交換公文とは趣旨が違うのであります。なおつけ加えれば、国際連合は国際警察軍として世界の平和維持のために今大いに努力をいたしておる。世界の平和維持ということは、日本にとつても非常に大きな利害関係を持つものでありますから、われわれはそれに対して当然できるだけの協力をする、こういう趣旨で交換公文をつくつておるのであります。
  89. 林百郎

    ○林(百)委員 一応ごもつともらしい答弁ですが、しかし行政協定の第一条を見ますと、行政協定の対象になるアメリカの軍隊というのは、アメリカ合衆国の軍隊で日本の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍、空軍とありまして、日本に駐留するだけでなくて、朝鮮、台湾で作戦するために日本の領域にある間のアメリカの軍隊もまたこの行政協定のいろいろの特権の対象になると、われわれは考えざるを得ないのであります。そうすると一体岡崎国務大臣は、吉田・アチソン交換文書によつて国連軍の名におけるアメリカ軍にあらゆる施設役務提供するというこの義務と、行政協定に基き日本に駐留するアメリカ軍への行政協定役務施設、その他の便益の供与と、同じアメリカ軍でありながら、この国連軍の資格を持つておるものと、アメリカ駐留軍とどう区別なさるのでありましようか、現実の問題としては、日本を足場にしてアメリカの軍隊が朝鮮へ出かけ、台湾へ出かけ、また台湾、朝鮮から帰つて来て日本を足場にしてどこへ行くということになつておるのであります。一体同じアメリカ軍で国連軍として行動しているアメリカ軍と、純粋の行政協定に基き日本に駐留しておるアメリカ軍と区別するためのマークか何かおつけになるのでしようか、一体どういう区別をなさるのですか、要するに施設役務提供で吉田・アチソン交換文書に基く国連軍としてのアメリカ軍に提供する場合と、行政協定によるアメリカ軍に提供する場合と、どう区別なさるおつもりですか、あるいは将来これについてどういう処置をなさるおつもりか、それについて私はお聞きしておきたい。
  90. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ政府日本政府もごまかしたり、ごまかされたりする気はごうもありませんで、お互いに誠意をもつて話合いをいたしている現在、占領軍として日本におるアメリカ軍はすなわち国連軍でありまして、国連軍としての行動もとつているのであります。それでその間はわからないじやないかとおつしやいますが、整然たる区別があるようでありまして、占領軍としての費用はたとえば終戦処理費で出している、ところが国連軍としての行動については向うも一々明細なる規定を設けまして、これを全部ドルで費用を払つておるというので、そこに截然たる区別があります。今度の吉田・アチソン交換公文によりましても、合衆国に関する限りは、日本国と合衆国との間の安全保障条約実施細目を定める行政協定に従つて、合衆国に供与されるところを越える施設及び役務の使用は、現在通りに合衆国の負担においてなされるものであります。こういうふうに書いてありまして、その間は截然と実際上は区別があるのであります。
  91. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田寿男君。
  92. 黒田寿男

    ○黒田委員 岡崎国務大臣に少しばかり先日の私の質問の続きをお尋ねしてみたいと思います。ちよつとその前に私は委員長にお願いがあるのであります。それは議事進行に関する問題でありますが、現在国民が異常な関心を持つてながめておりますこの行政協定について、その内容を十分国民の納得の行きますように明らかにする必要があると私は思います。そしてまたそれをなす役目はわが外務委員会に課せられておると考えますので、今日までのごとく、ただ漫然とめいめいかつてに、岡崎国務大臣を中心とする政府当局の方にこの問題について質問をするというやり方でなく、系統的に、組織的に質問応答をなすような議事の進行をしていただきたい。このことを、特に委員長にお願いを申し上げたいと思うのであります。すでに行政協定議事録も発表されましたので、一応材料は整いましたから、組織的質問ができると思いますし、一方そのことは、いつまでもうつちやつておくわけには行きません。国民は一日も早く知りたいと思つておりますので、ある一定の期間内に一応内容を明らかにしておく必要があると私どもは考えますから、ぜひひとつ今後の委員会におきましては組織的に、たとえばきようはおよそ第何条から第何条くらいまでをやる、その次はどこまでやるというようにきめて、そして条文ごとに問題点を各党で超党派的に拾い上げて、政府の御所信を承る、こういうふうにしていただきたいということを特にお願い申し上げておきます。これを理事会に御相談を願いまして、ぜひそういうふうにおとりはからい願いたい。これだけのお願いを申し上げておきます。  そこで岡崎国務大臣に多小御質問申し上げたいと思いますが、順序をちよつと変更いたしまして、ただいま林君から国連軍と駐留軍との関連問題が提出されましたので、私もこの問題について、先にお尋ねしておきたいと思います。  安全保障条約によりますと、この条約によつて駐留いたします米国軍は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために使用することができるということになつておりますが、朝鮮事変は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために使用することができるという場合に該当するのでありましようか。これについては国民は非常な関心を持つております。朝鮮事変にすぐ出動しなければならないようなことになるのかどうか。将来安全保障条約にいうところの極東における国際の平和と安全に寄与するために出動するという場合が起り得るかもしらないか、現在起つておるあの朝鮮事変もその場合の中に含まれるものであるかどうか。これは国民が非常に関心を持つておりますので、これはわかつたことのように思いますけれども、一応念のためにこの際岡崎国務大臣お尋ね申し上げたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 朝鮮の問題が、もし行政協定ないし安全保障条約の効力発生後に起りましたならば、新たなる観点から見なければならないであろうと思いますが、もう過去においてずつと行われておりまして、国連軍としてこれに各国の軍隊が参加して、ただいま朝鮮で平和維持の努力をいたしておるのでありますから、これをまた新しく安全保障条約の問題として取上げるよりも、今の国連の行動としてこれを見るのが至当であろうと考えております。
  94. 黒田寿男

    ○黒田委員 私が先ほどお尋ねいたしましたのも、もとより安全保障条約が発効しての後のことでございます。安全保障条約が発効した後に、なおかつ不幸にして朝鮮事変が現在のまま、ないしその状態に多少の変化がありましようとも、現在のように一種の戦争状態としてなおかつ続けられておるというような場合に、私がただいま申し上げました問題が、現実の問題となり、それがどうなるかは国民が深い関心を寄せ、疑問としているところであります。岡崎国務大臣のただいまのお話では、かりに条約が発効いたしました後に朝鮮事変が続いておりましても、朝鮮に出動するのは、国際連合軍であつて日本に駐留する軍隊が、安全保障条約に定められております極東の平和と安全を保障するために使用するという意味において出動するというようなことはないというふうに考えてもよろしゆうございましようか、もう一度念のためにお尋ねしておきます。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうもあなたのおつしやることがよくわかりませんが、国際連合が特別の決議によりまして、朝鮮の安全、つまり東亜の安全、広く言えば世界の安全保障のために各国の軍隊を集めてただいま行動しておるのでありますから、アメリカの軍も当然これに参加しております。むしろ主力となつて戦つておるわけであります。そこで安全保障条約とか行政協定の問題としてこれを見るよりは、それよりも上の、国際連合の行動としてこれは当然見るべきものでありまして、その国際連合軍の一部として、いかなるアメリカ軍がこれに参加するかは、これはまたアメリカの方で考える別な問題であります。われわれはこれが日本の脅威になるかならないかという問題は別にしまして、すでにとにかく国際連合が発動してこれの平和維持をやつてつて、しかもこれが大いに成功しており、ただいま休戦の話合いも進んでおるという状況でありますから、これは別個の問題として考えてよろしい、こう思うわけであります。
  96. 黒田寿男

    ○黒田委員 くどいようでありますが、そうすると、要するに国際連合軍が朝鮮事変については出動しておるのであるから、日本への駐留軍安全保障条約に定められております極東の他の地域に出動する場合としての出動ということはあえてこれをなす必要はないと思う、こういうふうにおつしやつたと思います。それならそれでよろしいのであります。ただしかし法文の解釈からすれば、朝鮮に対し二重の出動、すなわち国際連合軍も行つておるが、駐留軍もまた行けないことはないというように、条文の上からはそう解釈ができるのであります。ただ実際問題として、政治的な見方として、そのようなことはなかろう、こうおつしやられるにすぎないと思います。政府がそういうような見解を持つておいでになりますならばけつこうであります。私どももそのようなことが起らないことを心から希望しておるのでありますが、ただ法文上から言えば問題がありますので、特にお尋ねしてみたのであります。私は岡崎国務大臣のただいまの御答弁は、法文上の御解釈の問題ではなくして、政治的御意見であるというように受取ります。しかしとにかくそういうような政治的御意見岡崎国務大臣日本政府当局として持つておいでになり、アメリカ政府もそういうように考えてくれておりますれば、私どもも安心するのであります。それを確かめてみたいのでお伺いしてみた次第であります。私はこの点については、この程度で終ることといたします。  それからこれは先日お尋ねしたことでありますが、時間の関係上十分に大臣の御所信を承ることができないで、中途で質疑が打切りになりました問題でありますので、きようこれを繰返させていただきたいと思うのであります。それは合同委員会の問題であります。この合同委員会の問題につきまして、くどいようでありますが、さらにお尋ねして、私ども安心を得ておきたいと思うことがあるのであります。合同委員会につきましては、第二十六条に規定があります。そこでお尋ねしたいと思いますことは、これは協議機関であり、そして構成メンバーは一対一……。
  97. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君、ひとり言のようですから、もう少し高声に願います。
  98. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは私は非常に妙味があると思いますが、メンバーが同数であり、しかも協議機関ということになつております。そこで私どもが疑問といたしますところは、もしこの協議会において協議がととのわなかつたときにはどうなるのであるかという問題であります。その協議の内容には非常に重要な問題が含まれるのでありまして、これが単に事務的の問題についての協議でありますならば、それがよし決裂いたしましても、その後どうなるかということにつきまして——私どもは大して心配なり、不安なりを持つ必要はないと思いますが、この合同委員会における協議内容というものは非常に重要な事項を含んでおります。いわゆる非常緊急事態の発生いたしましたような場合における協議というものも含まれておると思いますので、そこで協議がととのわなかつたときはどうなるのであるか、私どもの心配するのは、そのときは実力を持つておる側の意思が、事実上強制せられるというようなことになるのでなかろうか、それとも全然白紙になつてしまうのであるか、この点について私どもは疑問を持つておるのであります。条文の上ではその点ははつきりいたしません。これをちよつとお聞きしてみたいのであります。
  99. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまず第二十四条の点で、御心配をなくするために申しますが、敵対行為またはその脅威を生じた場合には、これは合同委員会の問題でなくして、日本国政府及び合衆国政府が協議をするということになつておりまして、第二十四条に関する限りは、合同委員会の問題でないのであります。従つて合同委員会では、この第一項に書いてありますように、この協定実施に必要な事項を協議するのでありますが、そのうちで一番おもなるものは、何であるかというと、特にここにあげてある日本国内の施設または区域を決定する協議機関ということになつております。そうしてその第三項に「合同委員会は、問題を解決することができないときは、適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府に更に考慮されるように移すものとする。」両政府間の話合いになるのであります。
  100. 黒田寿男

    ○黒田委員 その解釈の問題も、私の疑問の中にありました問題の一つでありますが、私はどうも行政協定の法文の解釈上からいたしますならば、合同委員会で協議することになつております協議の当事者は、すなわち第二十六条によりますと、日本国と合衆国ということになるのであります。その日本国と合衆国との間に協議するということと、ただいま岡崎国務大臣は第二十四条の日本国政府及び合衆国政府が協議するということは違う、こうおつしやつたのでありますけれども、それではもし日本国政府アメリカ政府が協議する場合には、一体だれが協議に当るのか、要するに私は、日本国政府アメリカ政府とが協議する以外には、協議の道は普通はないと考えてよろしいと思います。ことに非常事態の問題になりますれば、どうしても政府同士の間の協議になるというように私どもは解釈しないわけには行かないと思うのでありまして、特に第二十四条における日本国政府及び合衆国政府の協議ということと、第二十六条の日本国と合衆国との間の協議ということを区別する理由は、私にはよくわかりません。これは岡崎国務大臣の御説明が、十分に理由があるのかもしれませんがこれを聞かせていただければけつこうだと思います。私はこれは従来は同じことであると考えておりました。そうして合同委員会日本国と合衆国との間のすべての、この協定実施に関して相互の協議を必要とするすべての事項に関し、合同委員会が協議をなすべきものである。特に日本国と合衆国との間の協議機関としては合同委員会があるけれども、日本国政府及び合衆国政府との関係は、合同委員会ではやらないというように、私は解釈していなかつたのであります。この点もう少し明らかにしていただければけつこうだと思います。
  101. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは第一項と第三項を読み合せてごらんになればわかるのでありまして、合同委員会では協議をする、しかし問題を解決できないときは、政府に移すのだ、こういうことで、おのずから合同委員会というものは、日本政府として、あるいはアメリカ政府としての権能よりは低いものであつて、上の政府に移すのだということに、第三項でなつております。それからなお合同委員会が、この協定実施に関するすべての事項について、協議機関として働くのだということは、一般規定でありまして、片方の第二十四条は特別規定であります。すべてのことをやるんだが、第二十四条ではこれだけは両政府間でやるのだ、こう書いてある、それはつまり第二十六条の第一項と第三項の読合せでもおわかりになると思います。従つて特別規定は一般規定に優先しますから、第二十四条に関する限りは、この第二十六条第三項と同じように、それぞれの政府の間で話をする、合同委員会という下部機構でやるのではない、こういうことを明らかにしております。
  102. 黒田寿男

    ○黒田委員 大分明らかになりました。そうすると第二十六条における「この協定実施に関して相互の協議を必要とするすべての事項」というものの中には、第二十四条のいわゆる緊急事態が生じました場合における協議事項というものは含まないのである、この場合は特に日本政府アメリカ政府がやるのであつて合同委員会がやるのではない、こういうような御解釈であると思います。そういうふうに承つてよろしゆうございますか。
  103. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りであります。
  104. 黒田寿男

    ○黒田委員 よくわかりました。そこでなお私に疑問が起りますことは、この第二十四条の場合、すなわち日本国政府と合衆国政府とが、重大な緊急事態が発生いたしました場合に、この条文に書いてあります「共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議」した結果、その協議において合意が成立しなかつたときには、どうなるか、この疑問が依然として残るのであります。私がさきほど申しましたように、協議がととのわないと、実力を持つ強者が、自己の意思を遂行するというようなことになるのではなかろうかという疑問が、私どもに非常な不安として抱かれるのであります。きわめて漠然たる規定に第二十四条はなつておりまして、私は公式議事録が配付されましたので、実はこれに何かこの問題について書いてあるかと思つて読んでみたのでありますが、全然第二十四条の問題は触れられておりません。そこで私がただいま申しました不安——疑問というよりも、もつと私どもの突き詰めた感情からいえば、むしろ不安でありますが、そういう不安な気持が非常に私には濃く抱かれるのであります。これをひとつ解いていただきたい。
  105. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは二国間の話合いで、政府は行政の最高の地位にあるものでありまして、ここで話合いがつかなければ話合いのつきつこはないのであります。特別の問題なら国際司法裁判所に申し出て、その裁決を仰ぐということはあるかもしれませんけれども、両国政府間では、これ以上の方法はないのであります。従つてこの両国政府間で相談をする、話がまとまらなければ、まとまらないだけの話であります。どうもいたし方ないのであります。それをどうもすなおにお受取りなさらないで、武力があるものとか、力があるものが押えつけるのだという、そういう意味ではこの協定は動かないのであります。日本の国民の心からの協力があり、アメリカの軍隊が心から日本の国を守ろうという、両方に好意と誠意があつてこそ、初めてこれは動くのでありまして、アメリカの軍隊が、日本の国民が全部反対しておるのに、自分はかつてな行動をするのだといつてつたところで、日本国内に駐屯する限りは、これはとても能率を上げて働くことはできないのであります。これは両国政府もあらかじめよく承知しておりまして、好意と信頼に基く条約であり、協定である、こういうことになつておりまして、初めから意見が合わないときには、力をもつて屈服させられるのだというような想定のもとに、こういうものをつくつておるのではないのであります。
  106. 黒田寿男

    ○黒田委員 それではもう一問お伺いいたしておきます。これで今日の質問は最後にいたしますが、そこで岡崎国務大臣がただいまのようにお答えくださいましたけれども、そうなりますと、私ども心配しておりましたのは、強者の意思が事実上強行せられるのではないかということでありますが、岡崎国務大臣は、そういう場合には、いわば白紙状態に返る、どうともしようがないのだ、こうおつしやる。けれどもそれはそういうふうに考えまうとすれば考えられないこともないというだけで、それで済ませるものではありません。このようないわゆる緊急事態が起つたときに、日本をどうするか、アメリカはどうするかということは、安全保障条約の中にある一定の角度からする一定の方針が現われておるのでありまして、単に話合いができなかつたら白紙状態になるんだ、これはどうにもしようがないんだというように言つて済ませる問題ではないのであります。アメリカ日本をそういう場合に援助するか、それとも援助しないで、アメリカ日本に対してそういう場合に傍観的態度をとるか、ここが実際問題としては非常に重要な問題である。私どもは元来この安全保障条約には反対したのでありますが、安全保障条約に安全を託そうとしておる人々の立場から言えば、ただいま岡崎国務大臣のおつしやつたような説明では、何のために安全保障条約を締結したかということになる。何かそこに保障をしてくれるものがなければ安心できないというのが、安全保障条約に賛成した人々の気持であると思いますから、ただいま岡崎国務大臣のおつしやつたような御説明では、私は納得をしないだろうと考えます。なぜ私はこのことをしつこくお尋ねをするかといいますと、実はこの問題の中に安全保障条約の本質が正体を現わしておると思います。私どもの立場から考えますならば、安全保障条約は決していわゆる安全保障体制ではないのだ。これは私どもは前国会の当時からも繰返して申し上げて来たところです。決して本来の安全保障体制ではないのだ。日本には、ヴアンデンバーグ決議の内容、すなわち持続的にして効果的な自助及び相互援助を満し得るだけの条件がない、軍備がありません。そこで本来の意味安全保障条約は結べない。私はこの安全保障条約と称するもののねらいは、アメリカ日本における軍事基地獲得というところにあると思います。本来の安全保障条約たる条件を満すことができない。日本は軍事的に無力である。そしてアメリカには日本アメリカの防衛周辺の一環として、アメリカの防衛のために維持しておこうという方針がある、このことは、日本人で多少とも世界情勢に関する知識を持つておる者ならば、否定する者はありません。そのことがいい悪いという価値判断は別といたしまして、アメリカ日本の地理的位置をそのような戦略的見地から見ておる。この位置をアメリカは保持しておかなければならぬ、こういう方針を持つておるということは、万人のひとしく認めなければならぬことであると考えます。このような意図をアメリカが持つて、本質上の安全保障体制ではないところのこの条約に、安全保障条約というような名前をつけておる。従つてその内容は、相互援助の権利義務規定しておるのではなく、アメリカ日本から軍事基地に関する重要なる権利を獲得しておりますけれども、日本の側からは、いざという場合に、アメリカに援助を求め得る権利はない。日本の安全に寄与することができる——必ず寄与することは書いてない。寄与することができるというだけのことでいつでも引揚げようと思えば引揚げられる、両政府間に話合いができなければ、それならお前かつてにしろと言つて引揚げることもできる条約であるのであります。そこが問題である。だから岡崎国務大臣も申されましたよう に、アメリカが何でもかでもそういう事態が発生したときに、日本を守らなければならぬ義務はない、白紙に返るということはこれを言うのです。アメリカは帰つてもよい、援助しなくてもよいような条約です。ここが私は問題であると思うのです。岡崎国務大臣がそのように仰せられましたことは、一方においてこの条約日本の安全を守る条約であると政府は宣伝されながら、実はそのようなものでないということを政府自身が白状と申しますか、とにかく白状なさつたものだと私には解釈できる。こういう重要な問題でありますから、特に私はこの点をお聞きしてみたのであります。要するに、結局協議ができなかつた場合は、日本アメリカにたよることができないのだ、どうすることもできないのだ、アメリカには日本を守る義務はないのだ、これが実はほんとうである。安全保障条約というものの内容は元来そういうものだ、だからこんなものをたよりにしているとたいへんなことになるかもしれないということを私どもが申しておりますのは、決して私ども事をしいるものではないのであります。ほんとうに日本のことを考えなければならない、ごまかしてはいけない、国民に真相を知らせなければならない国家国民を憂える至情から、私は安全保障条約内容を正しく解釈し、政府はこれを知らしめなければならぬと思う。たまたま私がただいま質問申し上げましたことによりまして、安全保障条約というものの内容本質は、大体私どもの考えていたようなものであるということを、政府御自身が問わず語りに御説明なつたものだと私は思います。きようは私はもはや時間が予定以上になりましたから、この程度で質問を終えておきます。  なお先ほどお願いいたしましたように、この次からぜひともひとつ系統的に組織的に質問応答ができますように、委員長におとりはからい願いたいと思います。これで私の質問を終ります。
  107. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 黒田君は何か最後に自分の意見を述べられて、政府にとどめを刺されたような口ぶりでおつしやいます。非常にやさしい声で言われながら、非常な悪宣伝を国民の中に広げようと努力されております。私は黒田君とは根本的に思想は異なるのだからして、いくら申し上げてもおわかりにならぬかもしれぬけれども、まつたくあなたの意見とは正反対のことが、安全保障条約なり、行政協定なりで行われておるのであります。われわれもアメリカ政府も、極東の平和、日本の安全保障ということが一番の眼目で話合いをしておるのであつて、軍事基地を獲得するために安全保障条約の仮面をかぶつてアメリカ協定を結んだなんということは、これはアメリカをしいるもはなはだしい言動だと思うのであります。これは直していただきたいと思います。安全保障条約のどこに一体軍事基地を獲得するカムフラージユするごときことをやつておるのか、ということを私は質問したいと思うのです。しかしながらそれは別としまして、非常に極端なことを、無理やりに押しつけて、政府政府との意見が合わない場合には、アメリカ軍は日本を去るのだというそういうお考えは、これはまつた間違いであります。日本政府アメリカ政府も、根本的には意見が一致してこの協定を結び、この条約をつくつておるのでありまして、日本の安全を保障する点において、意見の不一致などということはあり得るわけがないのであります。それでアメリカにその義務がないとかあるとかおつしやいましたけれども、一体日本の安全のために、わざわざこういう国際協定を結んでおいて、そうしてそれは義務がないから引揚げるのだということは、私は黒田君の考えておられるような国はどうかしりませんが、そういう国ならともかくも、アメリカ合衆国に関する限りは、そういうことは絶対にないのであります。これだけは特に申し上げておきます。  それから先ほどこれも私の意見に対して黒田君が一方的にお話になりまして、私は発言の機会がなかつたから追加して申しますが、アメリカ日本に駐屯する軍隊が、朝鮮に出動することはないと了解しますというお話でありますが、私はその際に、アメリカの国外に駐屯する軍隊が、国連軍としての性格を帯びるかどうかは、これはアメリカの国できめる問題であつて、この安全保障条約なり行政協定できめる問題ではない、こう申しておるのでありまして、今のような状況でなら、アメリカの軍隊が即国連軍という場合もあることは当然予想されるのであります。あるかないか、それは別問題といたしまして、あり得る場合もあるということであります。
  108. 黒田寿男

    ○黒田委員 ただいま岡崎さんがおつしやつたことに対して、私も一言結論をつけたい……。
  109. 仲内憲治

    仲内委員長 もう十分ですから発言を許しません。並木君。
  110. 並木芳雄

    並木委員 私の方は安全保障条約には賛成した立場にありますので、第二十四条について観点を別として岡崎国務大臣お尋ねしたい。それはどう考えましても第二十四条というものは、安全保障条約の第一条の第二項としてあげることが適当であると私は考えるのです。つまり「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」そこで切つてしまつて、これに対しては安全保障条約に賛成した私どもの方でも、それからの保障が足りないのじやないかという声が当時あの審議のときにずいぶん出た。それに対してこの行政協定の第二十四条は、ややそれを裏づける性質を持つておるわけなんです。ですから私はいやがらせのために言つているわけではなくて、第二十四条を第二項としてやれば、その説明として体をなす裏づけになる、こういう見地から率直に大臣としてやはりこれは行政協定から切り離して安全保障条約に入れべきものだ、こうお考えにならないかどうか、これをお尋ねいたします。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは安全保障条約の中にも特に入れる必要は、私は元来ないと考えておるのであります。しかし同時に、この行政協定の中にも特に入れなければならないという必要はない。というのは、この第二十四条というのは内容は何もないのであります。協議をするということだけでもつて、いかなる協議になるのやら内容は一つもない。それで安全保障条約の中にはそういう規定を入れれば入れるでよろしいのでありましようが、両国政府が相談するということは、これは常識からいつてもわかり切つたことでありまして、両国政府が相談しないで何ができるか、何もできないのであります。従つて両国政府が相談するということは、当然これはさまつておるのでありまして、ただ第二条のように、特にアメリカ側の事前の了解がなければできないということであれば、特にこういうふうに規定を設ける。これはあたりまえのことでありますが、それでないものは、これは常識的に両国政府で相談する問題であります。でありますから並木君のおつしやるように、特にここに入れた方がいいとか、入れない方がいいとかという点について、私も専門家でありませんから、条約のかつこう等についての判断はできませんけれども、私の考えでは入れてもよし、入れなくてもよしという程度じやないか、こう考えております。
  112. 並木芳雄

    並木委員 行政協定議事録の第二十五条ですが、この中に岡崎さんは、自国の防衛のため経費がだんだん増加して来るということを陳述しておられます。これは先ほど石原次官にお尋ねしたのですが、具体的に警察予備隊あるいは海上保安隊などに要する経費をさすものであるという答弁であつたのです。そのほかに大臣としては将来どういうものを予定されて、この経費の増加ということをここに触れられたのであるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはこの安全保障条約の前文にありますように、自衛力をだんだん増して行くということは当然予期されるのでありまして、自衛力を増すについてはいずれは費用がいる、これだけでありまして、それ以上のことは、たとえば今の予備隊なり、海上保安庁なり、これはありますから、これを増強するには費用だけで済むわけです。そのほかのことを考えるということになりますと、ただいま研究しております行政機構の改革とか、そういう点で新しい観点から、たとえば保安の部隊をつくるとかなんとかいうことになればまたこれは別でありますが、特にそういうことを予想してでなくて、いずれにしても最善の方法、これがどういう最善の方法かはいずれ政府なり国会なりの決定によるものでありますけれども、最善の方法によつて自衛力を国費の許す限り増強して行く、そのためには当然費用がいる、こういうことが書いてありまして、反面には六百五十億という金額が、もう国民負担では最大限であつて、こつちを減らさなければ自衛力のほうもなかなかできない。六百五十億はもうふえそうもないという意味も、しいていえば入つていないこともない、こういうわけであります。
  114. 並木芳雄

    並木委員 それに関連してお尋ねしておきたいのですけれども、戦力の問題が先般来ずいぶん論議されております。憲法第九条について、自衛戦力は持てないけれども、自衛武力は持てるのかという疑問が出て来ておるのです。武力と戦力という言葉はあそこにあげられておつて、自衛のための戦力はいけないけれども、自衛のための武力ならば持てるのじやないかという疑問が出て来ておるのですけれども、その点に対して岡崎国務大臣はどうお考えになりますか、聞いておきたいと思います。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはうつかり私が言いますと、また失言になりまして取消さなければなりませんが、元来戦力と武力は憲法で禁じておりますから、これはしばらくおきまして、武力と申しますものは、私の考えでは非常に相対的のものだと思います。いつか原子爆弾をやじつておる漫画を見ましたら、石器時代に弓を持つておる人間が来て、この弓さえあれば戦争はおしまいだ、この弓に対抗するものはないのだから、一切世界には戦争はなくなるという漫画が書いてありましたが、石器時代には弓でも最上の武力でありましようが、今となつてはピストルはもう兵器という中に入るかどうか疑わしいというように、だんだん変化して来るものでありますからわかりませんが、法律的に申せば、戦力にあらざるものは日本は持てるということになります。しかし政治的といいますか、事実的の精神解釈からいえば、戦力に非常に近づくものはよくないじやないかという意見もあるかと思います。これは一に国民の良識にまつて常識的な判断をいたすよりしかたがないと考えております。
  116. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、自衛武力でもやはりいけないのだというふうに了解していいわけですか。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もし警察予備隊が現に持つておりますものをあなたは武力とお考えになりますならば——当然私は憲法に許されておる範囲内の装備を持つておるものと信じております。従つて武力とは何ぞやという解釈になるのでありまして、これも非常にむずかしい、はつきりした定義はないと思います。しかし警察予備隊はさておき、警察官がピストルを持つてつても武力ではないかとおつしやれば広義の武力であるかもしれません。従つてこれは前に申したようにやはり常識的に判断する以外に方法はないと思います。
  118. 並木芳雄

    並木委員 もう一つだけにしておきます。それはラスク特別代表岡崎さんの書簡です。この書簡内容は、たとえばこういうことが書かれておつて、結論として私は条約の一種ではないかと思うのですが、その例は、「予備作業班が作成する取極は、合意ができるに応じて直ちに効力を生じ」云々ということがあります。ただちに効力が生ずるということは、安全保障条約も効力を生じていないし、従つて行政協定も発効していないのに、予備作業班が作成するとりきめだけが、合意ができるに応じてただちに効力を発するということは、これは新しい権利義務が出て来るのじやないか、それが一つの例でございます。それからもう一つの例は、施設及び区域などに関する協定及びとりきめが、日本国との平和条約の効力発生の日の後九十日以内に成立しない場合には、現状通り使用を継続することができるという申合せなんです。これもやはり新しい別の権利義務というものをここでうたつてあるわけでありまして、そのことは当然安全保障条約及び行政協定からは出て来ないのです。ですからこの二つの例をとつてみましても、ラスク・岡崎書簡というものは、単なる書簡ではなくて、両国間の権利義務を設定したところの条約の一種である、国会承認を得る必要があるのではないかと私は思うのでありますが、この点をお伺いして質問を終りたいと思います。
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でありますが、講和条約の効力発生までは、これは占領軍としての施設その他の接収の権限も持つておるわけであります。しかし半面にこの協定と申しますのは、先ほどから繰返しますように、お互いの好意と信頼によつてつくつておるものでありまして、この合意によつて発生するものが、もし新しい施設を取上げるというような合意でありますれば問題でありましようけれども、事実は、すでに新聞にも一部出ておりますように、ホテルを返還するとかあるいは運動場を返還するとか、その他司令部を都心から向うへ移すんだとか、移す先も今占領軍として接収しておる建物なり区域なりに移るのでありまして、そういう意味でこれは実際に実行されてもはずす方ばかりを考えておるのであります。従つて私は何らさしつかえないと思います。もし新しい施設を取上げるという問題が出て来ましたならば、それはおそらく問題になるだろうと思います。事実をごらんくだされば全部はずすものばかりでございますから、こういうものは何も講和条約の効力発生の日まで待たずして、今からでもはずしてもらつてもいいのではないか。形式はともかく、実体は予備作業班ではずすものははずして行く、こういうことになるのであります。  それから九十日以後という問題でありますが、これは過渡的規定としてはこういうものはどうもやむを得ないと思います。現に建物が三箇月ででき上るとは必ずしも限らないのでありまして、ここにもたしかそういう意味の字句が入つておるのであります。「決定及び準備」となつておりまして、つまり主として私どもは建物のことを考えているのですが、たとえば東京の都心から地方に移る、そのときにあるいは横浜から地方に移る場合に、今使つておる建物を明けますが、そのかわりの建物が必要になつて来る。現に一部はつくつているところもあるのであります。そういうものが九十日以内にできない場合がありますので、その場合には、協定は必ず移るということになつておりますけれども、できるまでは今いるところにおらざるを得ない、こういう事情がありますので、過渡的にこういう規定をつくつたのでありまして、かかる措置は当然のことと考えます。  なお一般的に何と申しますか、書簡は一種の条約じやないかとおつしやいますが、私の方はこの協定というものはこれは変更もありますけれども、行政協定というのは独立した日から発効する協定でありまして、こちらの方はそれに関する過渡的規定、独立の前にはどうするか、独立後も九十日という期間もあるが、そこのところはどうするか、一定の期間なりたてはなくなつてしまうような過渡的な条約協定の中に入れるのはむしろおかしいから、別紙の書簡でもつて申合いをしよう、こういう意味書簡にいたしたものでありまして、それ以外の意味は全然ないのであります。
  120. 仲内憲治

    仲内委員長 本日はこれにて散会いたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時二十五分散会