○黒田
委員 ちよつと関連してお尋ねしたいのですが、ただいま林君と
外務次官とのお話を承
つておりますと、私は相当根本的な問題が伏在しておると思います。それについて少しお尋ねしてみたいと思いますが、元来ただいま問題と
なつている旅券法の問題は、旅券法第十三條の問題であると
考えます。ところが近ごろになりまして第十九條の四号が非常に問題視されるように
なつて来た。そこでこういう二つの條文が問題に
なつておるそのうちで、第十三條の問題は旅券の下付の問題でありますから、当然申請者
個人についての考究がなされるということが問題点であると
考えておりますが、第十九條の問題は全然別個の問題でありまして、これは
個人の問題ではないと思います。
個人に対する考慮の問題は十三條であ
つて、第十九條第四号の場合は旅行しようとする国に対する
日本の信用問題だと
考えます。だれかが行こうとする場合
——甲乙が行こうとする場合、甲は適格であるか、もしくは乙は適当でないかというような問題ではなくて、旅行国の
日本人に対する取扱いに関し、
日本がどう
考えておるか、こういう根本の問題に触れて来る非常に重要な問題であると
考えます。だから十三條は
個人の名誉の問題でありましようが、十九條の問題を
外務省が問題にされますならば、それは單に
外務省だけでなくて、
日本国自体の、ソ連に対する信用の問題である、こういう重要な問題になると私は思いますので、非常に重要な根本問題に関することでありますから、そういうものとして少しお尋ねしてみたいと思います。
なおその前に一言したいのですが、これはわざわざ取上げるには小さな問題であると思いますけれ
ども、旅券法の精神についての
外務次官のお
考えは違うと思う。旅券法の精神は、憲法第二十二條の
日本人の移転、旅行の自由、それが旅券法の根本精神であ
つて、公共の福祉によ
つてこれを
制限するというのは、これは例外精神であります。だから旅券法の根本精神が公共の福祉による
制限にあるというような
解釈をされるのは、これはややもすれば人民を取締ろうとする官僚的
解釈でありまして、私は旅券法を根本精神は
外務次官の言われるようなものではなくて、旅行の自由を
日本人は根本的に享有すべきものである、これが私は旅券法の根本精神であると思いますから、ひとつこの点は
外務次官はお
考えをお改め願いたいと思います。
外務次官のようなお
考えで旅券法の
解釈に当られては、
国民の自由は十分に保障せられないと思います。これだけ申し上げておきまして、次に私は少し根本的な問題をお尋ねしてみたいと思います。一体ソ連に対する第十九條の問題は、ソ連
——この場合はソ連に旅行するのでありますから、ソ連の問題になるのでありますが、ソ連に
日本国民が旅行する過程において、その生命、身体または財産の保護を期しがたい、それは一体どういう
根拠に立つかという問題であります。そこで私はもう少しつつ込んで根本的に聞いてみたいと思いますが、一体
ポツダム宣言とか降伏文書とかいうものは、今まで私
どもは基本的にこれを尊重して来たのでありますけれ
ども、一体これが今後どうなるか。米英との
関係においては、
平和條約が成立いたしますれば、
平和條約が降伏文書なり
ポツダム宣言にかわるものとしまして、わが国との間に権利
義務の
関係が発生して来るということになると思うのでありますが、
ポツダム宣言に署名しております他の二国、今の場合はそのうちのソ連でありますが、ソ連に対する
関係においては一体どうなるのか、サンフランシスコ
平和條約が有効に成立いたしましたときに、ソ連に対する
関係はどうなるのか、無條約の
状態になり、戦争
状態にでもなるのではないかという見解を持つものもありますし、あるいはそうでなくてポ宣言あるいは降伏文書は一応は残るのだというように
解釈する人もあ
つて、どうも私
どもには
政府の見解もはつきりしない。こういうふうに根本の、ソ連に対する態度があいまい
——見解がはつきりしないのであるからあいまいである。そういうことからすなわちあいまいなままにしておくから、独断的な一方的な
解釈をするというような問題が起
つて来る。そこで、私ははつきりとこの根本の問題を
政府にお聞きしておきたいと思います。なお
先ほど休戦
状態というようなお言葉がありましたので、それに関連して申しますが、今私が根本的問題としてお尋ねしたいと思う他の一つの問題は、一体
連合国の
占領管理はどうなるかという問題であります。
占領管理がどうなるか、これは米英の
関係におきましては、條約
関係に入
つて行くのでありますけれ
ども、たとえばソ連との
関係において
占領管理はどうなるのであるか、こういう問題が起る、こういう場合に関する一つの見方といたしまして、休戦
状態というものとして
関係が続いて行くのだというような見解が述べられるのです。私はそういう意味でおつしや
つたのではないかと思うのでありますが、そうしますと
日本はそういうように
考えておる。休戦
状態でありますならば、
日本に来ておるソ連の代表部の人々に対しまして、
日本人が危害を加えるというようなことはあり得ない。戦争
状態のもとに返
つて、そこにソ連の代表部の人が
日本に来ておるということになれば、その生命あるいは身体または財産の保護について危険の問題が起るかもしれませんけれ
ども、休職
状態であるというのであれば、ことさらそういう問題をソ連人に対しまして
日本人が起する心配はない、安心して
日本にソ連の人々に来てもら
つておられる。それと同じように休職
状態であるならば、ソ連の国内におけるわれわれ
日本人の
立場もそうでなければならぬ、私はこう
考えなければ意味をなさぬと思うのであります。休戦
状態として続くとして、
日本におけるソ連人に対してはわれわれは生命、身体、財産の問題は起さないというように取扱いをしておるのに、
日本についてだけはソ連に
日本人を送るについて生命、身体、財産の問題が起るというように
解釈するのは、一体、私は、論理の矛盾があると思う。ソ連に行く場合は何だか戦争
状態にあるように
考え、
日本の場合だけは休戦
状態と
考える、そういうように二つにわけては
考えられない
——相手のある相互の
関係でありますから、二つにわけては
考えられないのであります。そこでかりに休戦
状態にあるというような御
解釈をなさるのならば、十九條の四号というようなものを
日本側から問題にすべきものではありません。十三條は
個人に対する信用の問題でありますから、不信の問題が起り得るかもわかりませんが、ソ連に対しましては、そういう問題は起り得ないのであります。これは私は根本的な問題であると
考えますので、
外務次官にお尋ねするのであります。関連質問といたしましてとりあえずこれを伺
つておきたいと思います。