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1952-02-20 第13回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 佐々木盛雄君 理事 並木 芳雄君    理事 戸叶 里子君       大村 清一君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    飛嶋  繁君       中山 マサ君    宮原幸三郎君       守島 伍郎君    小川 半次君       松本 瀧藏君    山本 利壽君       林  百郎君    武藤運十郎君       黒田 寿男君  出席政府委員         総理府事務官         (賠償庁次長心         得)      河崎 一郎君         法務府事務官         (法制意見第一         局長)     高辻 正巳君         外務政務次官  石原幹市郎君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         大蔵事務官         (主税局税制課         長)      泉 美之松君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 二月十三日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として風早  八十二君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員樋貝詮三君及び風早八十二君辞任につき、  その補欠として宮原幸三郎君及び林百郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  樋貝詮三君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月九日  安全保障條約締結に伴う駐留地域決定に関す  る請願宮原幸三郎君外七名紹介)第六一五  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する  件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律  案(内閣提出第一〇号)  千九百十二年一月二十三日にヘーグで、千九百  二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九  日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴ  で、千九百三十一年十一月二十七日にバンコツ  ク並びに千九百三十六年六月二十六日にジユネ  ーヴで締結された麻薬に関する協定、條約及び  議定書を改正する議定書並び附属書への加入  について承認を求めるの件(條約第一号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まずポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律案議題といたします。本案に関する質疑を許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 昭和二十六年政令第四十号の第八條の中に、「前條第一項第四号に掲げる年金債務は、総理府令で定めるところにより一時金に換算して支拂うものとする。」と書いてありますが、この総理府令できめると書いてありますのを、どうして法律できめられなかつたかということを伺いたいと思います。それは終戦後いろいろな事情ポツダム政令というものが出されまして、その政令によらなければならなかつたという事情もわかりますけれども、これからだんだん民主主義の政治が行われて行かなければならないときに、総理府令という一方的なものでそうした換算率をきめられるということはどうかと思うのですが、総理府令できめるというふうにここで規定された何か根拠があつたら、お示し願いたいと思います。
  4. 河崎一郎

    河崎政府委員 今お話の御趣旨はごもつともでありますが、当時何分にも総司令部命令で、急いでこの仕事にとりかからなければならなかつた事情もございまして、総理府令でやつたのでございますが、御趣旨のようにむしろこれは法律でやるべきものであると思います。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それは法律できめるというふうにかえることはできないのですか。
  6. 河崎一郎

    河崎政府委員 これだけを法律できめるというふうにかえるのも考えられるのでございますが、何分にもこの仕事はごく暫定的で、もうほとんど終了しておるのでございます。財産の分配は大体ことしの六月ころで終る見込みでございまして、法律をつくつているうちにもう終了してしまうような、ごく短かい期間の残務整理でございますから、いまさら法律にする必要はほとんどないのじやないかと思います。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、この政令はもうどのくらい続くものと見てよろしいでしようか。
  8. 河崎一郎

    河崎政府委員 大体この六月で終了するものと思つております。
  9. 仲内憲治

    仲内委員長 ほかに御質疑がなければ次に移ります。     —————————————
  10. 仲内憲治

    仲内委員長 次に麻薬に関する協定、條約及び議定書を改正する議定書並び附属書への加入について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を許します。——質疑がなければ次に移ります。     —————————————
  11. 仲内憲治

    仲内委員長 次に国際情勢に関する件を議題といたします。質疑を許します。宮原幸三郎君。
  12. 宮原幸三郎

    宮原委員 外務当局に主としてお伺いしたいと思います。関連しては特別調達庁にもお尋ねすることになろうかと思います。なるべく要点だけを簡潔に申し上げたいと思います。  行政協定はすでに議定段階に達しつつある今日、全国的に国民重大関心を集めておることは申すまでもないのであります。ことに旧軍港の四市がありますが、四市はこの行政協定駐留地域の対象になるという想定のもとに、市民があげて不安動揺非常事態にただいま陷つておるのが実情であります。この駐留地域を決して排撃するものでもなく、これに協力し、援助し、また納得ずくでは歓迎もいたそう、そういう全国民的の立場を理解しないわけではないのでありますが、一昨年以来旧軍港市転換法という特別立法によりまして、平和産業港湾都市の立市の方針を立て、着々事業を遂行して参りました今日の段階において、この平和産業港湾都市と矛盾撞着し、またその立市の基盤を失いますという事態をまことにおそれているのが実情であります。ことに最近横須賀の追浜に起きました再接収の問題、また佐世保隣接地区の江上村に起りました再接収に伴う補償の行き違いの問題、こういうような問題が、隣接地区に、またはその市内に起つておる関係上、今日の行政協定段階でも、なおかつ再接収という占領下措置でも行われるのではないかという疑念さえも起つておるのが、この軍港市民心理状態の実相であります。そこで特に佐世保市は、当外務委員会に対しまして請願を提出いたしておるようであります。その佐世保市の場合におきましては、駐留地域のこの上の拡大がなくても、臨港地域の約二〇%だけが、平和産業港湾都市として残されておる現状のもとに、国際貿易港または漁港という計画を立てて、二箇年間粒々苦心経営して参つたのであります。それさえもなおかつ駐留地域拡大指定がありますと、名実ともに立市の根底、基盤を失いまして、産業港湾都市としては、佐世保市の崩壊を来すという結果になるわけであります。それでむしろあるいは軍事基地を一本化した方がいいのではないかという声が、一部市民に起つたりしておりますけれども、しかしそれは日本海軍の時代と違いまして、米軍駐留地域という場合においては、日本海軍のごとく海軍工廠そのほかの軍需産業を伴わない純粋の軍事基地となるのでありますから、経済的の恩恵を受けることはまことに乏しい次第であつて軍事基地一本化ということは、とうてい二十万市民を養うには足りない。総失業都市であるという現在の状態が、依然として総破産、総失業という状態を続けなければならぬという、まことに同情すべき立場に置かれる次第でありますので、この駐留地域決定については、佐世保市にとつてはまことに重大問題になるのであります。私がここに佐世保市の例をあげた次第は、これが佐世保市だけでなく、旧軍港市全体の問題であり、またひいてはこれが今日の段階においてわが日本防衛の問題、全国的の問題であり、国際的の問題であるという重要さがあるから、ここにこれを取上げたわけであります。  そこでお尋ねしたい点は、この問題の重要性をお考え願えるよう佐世保市の例をとりましたが、要望事項としてここにあげられましたことを一応お伝えいたしまして、その要望事項の処理についての政府所見を伺いたいと思いますので、ここに要望事項を簡単にかいつまんで申し上でみたいと思うのであります。  一、立神地区岸壁倉庫臨港線の全部が、朝鮮動乱前と同様国際貿易埠頭としての機能を生かす開放せらるること。  二、赤崎の旧海軍燃料置場はほとんど未利用のまま放置されておるので、これを石炭積出し及び貯炭揚地区として開放されること。  三、旧海軍水道施設は市にまかせられ、駐留区域への給水に支障なく実施しておるので、これら施設全部を市に開放せられること。  四、港内海面に対する連合軍発令の諸制限を、駐留目的を阻害せぬ範囲内において最大限に解除し、少くとも港口の夜間出入の許可、港内夜間航行漁獲制限の緩和を行われたいこと。  五、旧海軍工廠利用して操業中の佐世保船舶工業株式会社に対する諸制限を撤廃されること。  六、現在市の重要産業利用中の地区基地としては避けられること。  七、基地に供與すべき施設については、政府事前十分市長意見を徴せられたきこと。  八、民有地利用して産業計画を樹立し、まさに着手せんとしている地域隣接地駐留目的に使用せらるる場合、そのため従来の道路の通行を禁止または制限せらるるおそれあるものと認めらるる箇所あるにより、これに対してはあらかじめ措置対策を講ぜらるること。  この八つの要望が出ているのでありますが、これに対して、また旧軍港市全般に対しまして、外務当局の御所見を伺いたいと思うのであります。
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま宮原委員からいろいろお述べになりました旧軍港都市の問題につきましては、それぞれの都市からも陳情が直接出ておるのでありまして、ただいま行政協定折衝に当つておりまする委員連中もよくそれらの実情は承知しておりまして、向うにも十分伝えつつあるところであります。駐留施設並びに区域の問題は、原則といたしまして、これから合同委員会で詳細に決定されて行くことと思うのでありまして、その際にもこれらの問題を十分念頭に置いて折衝に当ることと思うのであります。申すまでもないことでありますが、外務当局といたしましても、わが国の経済や国民生活をできるだけ阻害しないように、そしてまた駐留軍の必要の限度を満たすようにという目標でこれらの決定がなされることと思うのでありまして、ただいまお述べになりました御趣旨は十分留意いたしまして、今後とも折衝に当るということを申し上げておきます。
  14. 宮原幸三郎

    宮原委員 御答弁で大よそ満足はいたすのでありますが、なお一点確認いたしておきたいことがあるのであります。それはただいま八項目要望をお伝えいたしましたが、その第七に当つております「基地に供與すべき施設については、政府事前十分市長意見を徴せられたきこと。」という項目があるのであります。今後土地、建物、施設等を個々具体的に合同委員会なりまたはその先駆をなす予備会談準備委員会等で御審議に相なることと思うのでありますが、いわゆる納得ずく施設提供ということが、日米間の今後の外交上においても、またひいては日本防衛上においても、最も考慮せられなければならぬ点であると思うのでありますから、この点については将来外務当局においては、行政協定及びその後の折衝において、米国側に対して特にこの点を十分了解せられるように御努力が願いたい、これに対する御所見を伺いたいのと、もう一つ、第五項の造船会社に対する諸制限の撤廃の問題でありますが、これは一昨年の六月二十三日にスキヤピンが出ておりまして、旧軍港市造船業者に対しては、まことに嚴重なる造船制限を加えられているのであります。このスキヤピンなるものは、おそらくこのたびの條約発効と同時に自然消滅をするものなりという解釈をわれわれはとつているのでありますが、これに対して外務当局の御見解を伺つておきたいのであります。
  15. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまお述べになりました第七の点は御希望といたしまして、十分われわれ留意いたし、直接折衝に当つております人々に対しましてもよくお伝えしておきたいと思います。それから第二の点は大体お考え通りであろうと思います。
  16. 仲内憲治

  17. 菊池義郎

    菊池委員 私ども理解のできぬことが一つあるのであります。フイリピン日本に対して賠償を要求し得るところの法的根拠は一体どこにあるか、これをお伺いしたいと思います。
  18. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 平和條約第十四條のa項の一番初めにありまする「日本国は、戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国賠償支拂うべきことが承認される。」やはりこの條項からいたしまして、賠償の問題が起きておるものだと解釈しております。十四條のa項からと、さらに平和條約二十五條に「この條約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第二十三條に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。」こういう條項があるのでありまして、十四條並びに二十五條、これらの関係解釈からいたしまして、先ほど述べましたような解釈が成り立つと思つておるのです。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 ですから、われわれが戰つたのフイリピン国ではなかつたのです。領域の一部をなしておつた国、そうするとその米国領域の一部をなしておつたということになりますか、フィリピンが。どうなのです。
  20. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先方といたしましては、領域の一部をなしており、それがその後独立したのでありますから、当然求償権を生じたものと、こういうふうに解釈しておるかと思つております。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 それではその問題は了承いたします。  それからフイリピン賠償に対しまして、日本政府として大いに考えなければならぬことは、各国の要求額が出そろつた後において、その賠償にあんばい勘案して振り当てなければならぬと思うのでありますが、日本政府としてもそういう考えであるということは、新聞に出ておりますが、これは事実で、ございましようか、どうでしようか。
  22. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 賠償の問題は、御案内のごとくやはり日本の安拂い能力というようなものも十分勘案して行かなければならない問題であります。賠償を要求するであろうと思われます国が、まだ現在申し出ておりまする以外にも若干あるのでありまして、そういう国の要求関係が、どういうふうになるかということが全貌が一応わかりませんと、具体的の内容決定して行くことは困難ではないかと思つております。一応概貌がわかりましてから、具体的のことが決定されて行く、かようにわれわれは考えております。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 そうするとフイリピンに対する賠償交渉も、結局これは今はつきりときめることはできぬというわけでございますか。
  24. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体その通りでございます。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 この分担金の問題でありますが、日本が六百五十億防衛分担金を負担する、米国はその足らないところを補うということになつております。が、大体の見通しが、この米国の負担はどのくらいになる見通しでございましよう、もうたいていおわかりでございましようから……。最初向うがほとんど六、七割方負担して日本には二、三割方しか負担させないというような最初の宣伝であつたのですが、これが今ではまつたくぶつ違つて来ておるのです。
  26. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 分担金の問題は、まだほんとにこれこそ折衝中でございまして、ここでどうなつたということを申し上げる段階に来ていないと、かように思います。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 西ヨーロッパ諸国におけるところの米国駐留地域分担金割合は、大体どういうふうになつておりましようか。
  28. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは外務省としては、詳しいことはよくわからないのであります。先般予算委員会におきまして、大蔵大臣がお答えになつておつたところでは、大体運賃であるとか——軍隊輸送賃でありますが、そういうようなものは駐留地が負担しておるのが原則である、それから給與とかその他のものは向うの軍が持つのが通常である、そういうようなことを答弁されておりました。なお西ヨーロッパとの関係とは、軍隊軍隊関係でありまするし、日本は御案内のごとく軍隊のないところへ駐留するということになるのでありますから、北大西洋関係の例が、ただちにそのままこれに取入れられるかどうかということも、若干検討を要する点があるのではないか、かように思つております。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 参考にお伺いするのでありますが、向う分担金割合が何かわかつておりますか。アメリカ、フランスその他……。
  30. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 われわれの持つております材料ではよくわかりません。
  31. 菊池義郎

    菊池委員 日本台湾との平和條約に関しまして、英国の方ではこれを非難攻撃いたしまして、日本はまだ独立が回復していない今日において、その交渉をする資格はない云々ということを言つておりますが、これに対して日本政府法的根拠がありますか。これは無理かもしれませんが……。
  32. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいままでのところ、英国政府から日本に対しまして、公に直接抗議があつたということは何らございません。これは今後の折衝の進行に伴いまして、日本立場を十分理解してくれるものと当局では考えておる次第であります。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 別の問題でありますが、アメリカダレス顧問が、台湾との講和が成立した後においては、つまり台湾が独立しました後においては、アメリカの第七艦隊を引揚げなければならぬというようなことを言つておるのですが、これはダレス氏みずからが言つているだけでありますか、向う政府意向なのでございましようか。外務省へ入つております情報をひとつお漏らし願いたいと思うのであります。
  34. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 詳細なる点は、まだ何ら確認できないのでありますが、今までわかつておりまするところでは、同氏は個人資格において十日NBCテレビジヨン放送を通じましてやつたものであるとINS電が報じておるのでありまして、これ以上の情報はただいまのところ当局は持つていないのであります。
  35. 菊池義郎

    菊池委員 外務省の推察というか観測はどうなんです。アメリカ政府意向であるか、ダレス氏みずからの放言であるか、これは非常に心配なんです。
  36. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいままで入つた情報では、一応ダレス個人意見を述べられたものではないか、かように解しております。
  37. 仲内憲治

  38. 並木芳雄

    並木委員 行政協定もだんだん全貌があからさまになつて来ましたけれども、結局行政協定に関する限りは、われわれが考えておつたよりもはるかに範囲が狭いし、政府がしばしば答弁する通り、やや事務的のものであるというふうに考えられるのです。そうすると日米合同委員会というものも、やはりそれに応じて、行政協定の実施に伴うことを取扱うだけの委員会ではないか、そういうふうに思われますけれども、その通りであるかどうか。
  39. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 その通りであります。
  40. 並木芳雄

    並木委員 なぜ私がこれをお尋ねするかというと、行政協定できめられないもので重要な点を日米合同委員会協議をして、だんだんときめて行くのではないかと思いましたけれども、どうもそうではないようである。そのほかに、きのうの吉田総理答弁などから総合しても、別途に日米両国政府の間で、その都度ほんとうの重要事項についてはきめられて行くようでありますが、その通りであるかどうかお伺いします。
  41. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 前申し上げた通りであります。
  42. 並木芳雄

    並木委員 合同委員会構成人員は二名と聞いておりますけれども、その通りですか。
  43. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはまだ正式には決定していないようでありますから、もうしばらくお待ち願いたいと思います。
  44. 並木芳雄

    並木委員 その委員日本ではだれが任命いたしますか。
  45. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま申し上げましたように、まだその合同委員会の機構というものが、最後的の決定を見ておりませんので、だれが任命するか、どうなるかということも、組織がきまりましてから決定するものと思います。
  46. 並木芳雄

    並木委員 行政協定そのものにも相当重要な内容を含んでおりますが、さらにそれ以外に協議事項があるということがわかつて来て、われわれはだんだん現内閣秘密外交性を痛感して来ておる。そういう点は次官に質問しても無理だろうと思いますから、これは吉田総理あるいは岡崎大臣にあらためて質問いたします。  そこでこの間いただいた資料の中に、軍隊地位に関する北大西洋條当事国間の協定というものがございます。これをちよつと読んでみたのですけれども、大体日本駐留するアメリカ軍構成員地位に関しては、これが当てはまるように了解していいかどうか。
  47. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大体今お述べになりました條約を参考としておるようでありますが、しかし先ほども申し述べましたように、それぞれの国情の相違もございますし、また軍隊軍隊関係軍隊軍隊のない立場との関係等もありますので、参考にはいたしておりますが、その通りのものになるかどうかということはお答えできないのであります。
  48. 並木芳雄

    並木委員 これで見ると、駐留米軍施設の外においても武器携帶が許されるようにとれるのですけれども、今度の行政協定では、駐留米軍基地の外においても武器携帶を許されるかどうか。
  49. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 お述べになりましたような問題は、結局駐留軍といいますか、先方規律によつてそれぞれ支配されるものである、かようにわれわれは見ております。
  50. 並木芳雄

    並木委員 公用の場合は別ですけれども私用外出する場合にも武器を持つて出られると、やはり感情の上で相当摩擦が起るのではないか。私どもとしてはなるべく占領が継続しているという感じを拂拭することが必要であろうと思うのであります。日本政府としては、これに対して別にアイデアを持つていないのですか。まだほかにもこういうことがあります。たとえば制服を着て外出するかどうか。私どもとしては、制服でなく平服を着て外出をする、私用外出をするという場合には、その方がかえつて占領が終結して、われわれが占領されているという感じを抱かないで済むのではないかと思うのですけれども、その点どうなつておりますか。
  51. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほどもお答えいたしましたように、先方の軍の規律によつてきまる問題と思うのでありますが、慣行といたしまして、現在においても、公務以外の場合はたしか武器は持つていないのではないかと思います。あるいはまた平服といいますか、公務以外の場合はそういう場合も多いのではないかと思つております。いずれにいたしましても、これは駐留軍向う規律によつて決定されることと思います。
  52. 並木芳雄

    並木委員 その点はちよつと疑問があるのです。施設内それから公務に服している間は軍規が適用されるでしようけれども、一たび施設の外へ出る、私用外出をする場合は、やはりその軍規の外にあるのではないかと推測されるのですが、この点日本法律を尊重するということですけれども、尊重ということは、日本法律に従うという義務が出るのですか。
  53. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 日本法律に従うということは、その文字通りでありまして、日本法律に従い、また従う一応の義務があるわけでありますが、それを犯した場合にどうなるかということは、あとの裁判管轄権の問題でありまして、法律に従うということは、一応法律に従う義務があるものと、こういうふうに解釈すべきものと思つております。
  54. 並木芳雄

    並木委員 それを犯した場合にはどうなるのですか。
  55. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいま申し上げましたように、犯した場合の裁判管轄権がどうなるかとか、その場合の警察権といいますか、そういうものがどうなるかということは、これはいわゆる行政協定といいますか、こういう問題で決せられると思うのでありますが、この問題はまだ、ただいま最後的決定を見ていないようでありまして、決定されましたならばここでひろうされることと思つております。
  56. 並木芳雄

    並木委員 その場合には当然日本が裁判権を持つのじやないですか。日本駐留軍に対して裁判権を持つ場合はどういう場合ですか。
  57. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは今申し上げましたように、いろいろまだ日本側が主張しておる点もございますし、折衝の過程でございますから、もうしばらくお待ち願いまして、その節に御報告申し上げたいと思います。いろいろこういう委員会等を通じてお話になつておりまする点は、折衝に当る人にもそれぞれよく伝えまして、御意見としてよく連絡はとつているわけでございます。
  58. 並木芳雄

    並木委員 その点は治外法権の問題と関係して来ると思うのです。岡崎さんはきのう治外法権はない、こういうふうに答弁しておりましたけれども、これは施設内における治外法権がないことはもとより、駐留軍の構成員、軍人個人々々に対しても、治外法権がないという意味で岡崎さんが答弁されたのかどうか、政府の見解を伺いたい。
  59. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは岡崎大臣が昨日の委員会でお答えになつたのでありまして、岡崎大臣が答えられた通りであります。大臣がどういうふうに答えたかどうかということは、岡崎大臣よりまた別の機会にお聞き取りを願いたいと思います。
  60. 並木芳雄

    並木委員 これは政府の見解ですから、岡崎さんから聞かなくとも、次官はわかつているはずです。(「まだ聞いておりません」と呼ぶ者あり。笑声)笑わないでまじめに聞いてください。軍人個人々々に対する治外法権はないと了解していいかどうか。
  61. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私も国際法なり法律的な詳しいことはよくわからないのでありますが、この治外法権という問題のいわゆる日本の領土外であるというような意味の治外法権というものはないのであります。それであとはいわゆる裁判管轄権の問題でありまして、施設外でどうした場合にどうするかというようなことは、裁判管轄権の問題といたしまして、これはもうかけひきなしにただいまいろいろ折衝しております。少しでも日本側の主張が通るように努力をしておられるわけでありまして、それらの問題が決定いたしました際に、ここでまたいろいろ説明もあることと思うのであります。また皆様方がいろいろの機会を通じて言つておられますることは、それぞれただいま折衝に当つておりまする人々を通じまして、できるだけその希望を実現するように努力をしておる、こういう段階であるのでありまして、いましばらく御猶予を願いたいと存じます。
  62. 並木芳雄

    並木委員 治外法権はないといつている以上、施設の外における裁判権というものは、日本にあるのは当然なんです。それにもかかわらず、それはまだきまつておらないとかいう答弁は非常にあいまいである。ですから結局治外法権とは何ぞやということでその解釈政府は曲げて行くのじやないかと思うのですけれども、この際政府はどういうふうに治外法権を解しておるのですか。治外法権に関する政府所見をここではつきりしておいていただきたいと思う。
  63. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げましたように、日本の国内にありながら、いわゆる日本の領土外であるというような観念で扱つて行く問題がいわゆる治外法権であると思うのでありますが、そういう意味の治外法権は今回の駐留軍に関してはない、こういう建前でございまして、その他での行為についてのあとは裁判管轄を向うがやるか、こちらがやるか、人によつてどうするか、こういう問題でございまして、繰返すようでありますが、これらの問題はただいま少しでも有利になりまするように折衝をしておるわけであります。しばらくお待ちを願いたいと思います。
  64. 並木芳雄

    並木委員 ちようど法務府から高辻法制意見第一局長が来ておりますから、この際もう少し——次官のは構想が少し大き過ぎる。政府としては治外法権ということをどういうふうに定義づけておるか、政府の見解をお聞きしておきます。
  65. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 昨日でしたか、一昨日でしたか、そういうお話がありましたことを私は新聞紙上で見ただけでございまして、どのような御議論であつたか、実ははつきり承知しておらないのであります。従つて的確に、御注文のようにお答えするような内容として申し上げられるかどうか、はなはだあいまいでございますので、もしその要点をちよつとおつしやつていただければ幸いだと思います。
  66. 並木芳雄

    並木委員 治外法権ということの意味を政府はどういうふうにとつておるか。またたとえば、この前にも戦力とはというようなことでもめてしまつて政府はだんだん拡大解釈をして行つて、われわれの考える通念と政府所見とが食い違つて来ております。そのようにはつきりここで治外法権とは何ぞやということを承つておかないと、また水かけ論になりますので、それをお伺いしておる。
  67. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 国際法上の概念でございますが、私どもは一応治外法権と申しますのは、一定の国の一定の地域について、その地域に関する法権の問題として、一括的に他国の法権に服するかどうかというところが治外法権の主要な点だろうと私は存じます。
  68. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、軍人個人個人の人に対する治外法権という概念はないというふうに理解できますか。
  69. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律的な概念として申し上げますならば、ただいま申し上げましたように、治外法権というのは、一定の地域を対象としたる法権の問題であつて、そのほかの場合、たとえば個人についての法権の問題は、通俗的には治外法権と言われる場合があるかもしれませんけれども法律的に申し上げますならば、それは違うのでございまして、治外法権と申しますのは、今申し上げたように一定の地域にかかわる法権の問題である、こう解しております。
  70. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと関連質問として高辻政府委員にお尋ねいたします。このたびの安全保障條約によつてアメリカ軍隊日本駐留することになり、その場合に、軍事上の基地に対しましては、これを貸與しておる日本の国として、日本警察権、司法権が直接には及ばないことになるのではありませんでしようか。そのようなことはないと政府は言われるのかどうかという問題です。アメリカ人が軍用地として用いておるその地域内において、日本警察権や司法権が及ばない、こういう事態が起り得るのではないでしようか。
  71. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 行政協定内容につきましては、私、存じもいたしませんし、また申し上げる資格もないわけでございますが、治外法権がないと言われた意味合いを考えてみますと、それは先ほど申し上げましたように、おそらく日本国内の一定の地域について治外法権を認めるということにはなつておらないということだろうと私は存じております。
  72. 黒田寿男

    ○黒田委員 しかし、アメリカの軍用地になる一定の地域に、日本警察権や司法権が及ばないという事態が起るのではないのでしようか。治外法権がないというなら、私はこういう問題も起らないと思うのですが、これはどうでしようか。
  73. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど私から申し上げましたのは、その地域から日本の主権が全面的に排除されるかどうかという意味で、今回のは全面的に排除されるのではないのでありますから、治外法権ではないのであるということを申し上げたのでありまして、たとえてみますれば、その中にかりに日本の売店等がありました際には、そこへ税金を課するということになるような問題もあるいはあるかもしれないのでありまして、その一定の地域から全面的に日本の主権といいますか、法権を排除しておるものではないという意味で、治外法権ではないということを申し上げたのであります。
  74. 並木芳雄

    並木委員 外務当局に国府の問題でちよつと聞いておきたいと思います。国府との條約の会議がきようから始まると報ぜられておりますけれども、その名称について実におかしいのです。ラジオで聞いたのですけれども、シノ・ジヤパニーズ・ピース・コンフアランスというのを、一方では中日平和條約会議、こつちでは日華條約会議、われわれはピースという字を、平和あるいは講和とそこへ入れるのを外務省が忘れているのではないかと思うのです。英語の達者な人ばかりそろつていると聞いております外務省で、どうしてそのピースという翻訳を落したのか、何ゆえに平和條約会議と言わずに、それを除かなければならなかつたか、その点の説明を求めます。
  75. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 台湾国民政府との間の今回の條約につきましては、これからいろいろ折衝が始まりまして、その内容がきまつて行くわけであります。そういう意味で、名前にこだわるというわけではございませんが、内容によりまして結局全体の大きな名前が出て来るのではないか、こういうわけで、今後の両国の折衝によりまして最後的の決定が出るものである、かように思つております。
  76. 並木芳雄

    並木委員 名前にこだわらないなら、すなおにその通り平和條約と訳したらよさそうなものですけれども、それが訳せないところに、日本政府として何かねらいがあるのではないか、それを説明してもらわないと、われわれは納得が行かない。
  77. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどお答え申し上げた通りでありまして、どうもそれ以上ここで申し上げられません。
  78. 並木芳雄

    並木委員 それではこちらからちよつとヒントを與えます。(笑声)平和條約とすると、條約第二十六條にいわゆる二国間の平和條約になりますから、そうすると、一つの例をとると、賠償の問題が起つて来るのではないか。つまり限定承認の場合であるならば、これは賠償の問題ということは起らないけれども平和條約として二十六條にいわゆる二国間の條約とすると、賠償を請求されるという問題が起る。この点はいかがですか。
  79. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 平和條約という名前と、ただいまおつしやいました賠償とがすぐ響くかどうかということは、そういうことはないと思うのでありまして、賠償條項のない平和條約もあるのでありまして、ただいまお話のようなことはないと思います。
  80. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、賠償の問題は、先般来政府答弁を重ねているように、国府との関係では起りませんか。
  81. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 そういう問題はこれからいろいろ交渉されるわけでありまして、交渉の結果をまたねば、これは何とも申し上げられないと思います。
  82. 並木芳雄

    並木委員 私はそれが一番大きな問題じやなかつたかと思うのです。まだ台湾及び澎湖諸島の領土権という問題もきまつておりませんし、ほんとうの地域的の、吉田首相のいわゆる台湾政府との限定條約であるから、従つてこういう重要な問題は起つて来ないのだろうというので、私は特に今度の名称を政府が避けたのではないかと思うのですが、その点、くどいようですがもう一度念を押してお尋ねしたいと思います。
  83. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますように、賠償と名前と直接の関係はないようでございます。
  84. 並木芳雄

    並木委員 もう一点だけお聞きしておきます。それは漁船その他のことについてでありますけれども、先般リッジウエイ総司令官から北海道方面における漁船拿捕のことについて、抗議の手紙が提出されておるということを報道で知りましたが、これについて政府はどういう通告を受けておられるか、また政府の見解としてはどうか、実際にあれに示されている数字などについての調査の結果も知らせていただきたいと思います。
  85. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先方から通知は受けております。それからそれは新聞で発表されておる通りでございます。数字その他は、いろいろ調べたものがあるようでありますが、今ここに資料がございませんので、あとで別の機会に申し上げます。
  86. 並木芳雄

    並木委員 あのリッジウエイ大将の抗議文というものは、総司令官として出されたものだろうと思うのですが、そうすると條約が効力を発しますとどうなるのですか。そこでこの抗議の効力は解消してしまうのでしようか、その点いかがですか。
  87. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 純粋の法理論から申しましたならば、一応解消するものだと思うのでありますが、しかしああいう趣旨の通告が出ておるという事実は、これはいつまでも残るわけだと思うのでありまして、今後といたしましては、條約が発効いたしましたならば、日本は第三国を通じてなり、その他いろいろな方法によりまして、ああいうことが行われて行くようになると思います。
  88. 並木芳雄

    並木委員 この点に関して、終戦直後から、相当南洋方面で日本の船舶が接収されておる事例がございます。外務省も御存じだと思うのですけれども、一つの例をあげると、ある船がパレンバンからバタヴイアの間を航行中接収をされております。この点は公海上を航行している船舶については、日本の憲法で保護されるという政府答弁もあつたのですけれども、結局これは例の十九條で請求権がなくなつてしまつたようです。ことに船舶については、その十九條二項で非常に苛酷な條項が加えられているのですけれども、どうもこういうものは十九條で包括的に請求権を放棄したその中におけるものとしてはまことに遺憾の点がある、これらも何とかしてそういう船舶を日本にもどしてもらうことができないものかどうか。
  89. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは平和條約第十九條によりまして、御指摘の通り放棄したことになつているのでありまして、これはいろいろ遺憾の点は多々あると思うのでありますが、御指摘のあつたような場合の問題につきましては、相当困難な問題ではないかと思つております。
  90. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまの漁船拿捕等の問題に重大な関連があると思うのでありますが、現在のマッカーサー・ラインというものが講和條約発効後において全然消えるものであるか、あるいはマッカーサー・ラインというものがあつたことによつて、それがわが国の漁業あるいは領土的な関係に何らかの影響を及ぼすものであるか、その点についての政府の見解を承りたい。
  91. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 いわゆるマッカーサー・ラインなるものは、これは占領軍の指令として出たものでありまして、講和條約発効とともに——これは普通ならば発効とともにでありますが、当然消滅すべきものである、かように考えております。
  92. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまの御答弁で私どもは非常に意を強くするものでありますが、韓国の李承晩氏の朝鮮領域におけるところの漁業権の確保といつたような意味で、やはりマッカーサー・ラインにこだわつているように私どもは思う。それは日本海の中の竹島がマッカーサー・ラインからはずれているという意味において、これは韓国の領土であるというような意味のことを発表しておつたと思うのでありますが、今の御答弁によりますと、韓国側の主張というものは全然意味ないものであつて、講和條約及び安保両條約についてわれわれが審議したときから詳しく討議しておりますように、竹島というものは完全に日本の領土であるということを承認してよろしいかどうか。
  93. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 李承晩声明については、この委員会におきましてもたびたび申し上げましたように、これは先方の一方的声明でありまして、わが方としてはこんなものには承服されないということは申し上げている通りであります。(「こんなものなんて言つていいのか」と呼ぶ者あり)このようなものであります。竹島はわが国の領土であるということは、これは確固たる事実であるわけです。
  94. 山本利壽

    ○山本(利)委員 まことに失礼でありますが、今の御答弁から非常に懸念の点がありますから関連して……。李承晩大統領の声明というものは、こんなものと言つて一笑に付すべきだということをきようは言われたけれども、この前のときには、これは平和條約によりて処理されるべき問題だということを石原政務次官は言われたのであります。だからきよう私が今のマッカーサー・ラインについて関連して御質問いたしたのは、このマッカーサー・ラインというものの効力の解釈について、先方にもまた正しさがあるならばこれは一笑に付することはできない。それで双方の主張が水かけ論に終つて、最後にこれが国際関係あるいは国連関係に持ち込まれて、訴訟の形で判決を受けるべき結果になると思う。ただ今石原政務次官の言われたように一笑に付すべきものだと言つて取合わないならばこれは問題でないけれども、すでに取合つていろいろな声明を交換し、さらに最後には、政府はこれは平和條約に基いて解決すべきものであるということを今日まで申しておられる。だから今日私は、関連質問ではあるけれども、マッカーサー・ラインというものの平和條約後における効力ということが非常に重大であるからしてお尋ねした次第であります。
  95. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほどお答えいたしましたようにマッカーサー・ラインはなくなるわけであります。それから李承晩声明に実はこちらからも承服できないということを、政府としてもこれはもう声明を発しているのでありまして、詳細な問題につきましては、ただいま始まつておりまする日韓交渉においてこれから漁業の交渉をする際に、いろいろこれらの問題について折衝討議が行われることと思うのであります。それから先般申し上げましたのは、竹島の領土の問題についてどうしても議が合わない、先方もこちらも十分反省を求め了解も求めるわけでありますが、議が合わないその場合はどうなるのかという御質問がありましたので、その場合はいわゆる平和條約の條項の規定するところによりまして、裁断を仰ぐいろいろの方法があるのではないかということを申したのでありまして、こちらの説明によりまして当然理解されるものと考えているところであります。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 マ・ラインが講和後効力がなくなるというお話ですが、しかし中国、ソビエトとの関係においては講和條約がまだ締結されておりませんし、それからマ・ライン問題につきましても、一方的に日本側がアメリカとの間の話合いだけで、マッカーサー・ラインがないというような一方的な判断をして、ここに漁業を進めて行くということになると、これは明らかに中国、ソビエト側との話合いがない限り、漁業の問題を通じて中国、ソビエトをかえつてこちらこそ侵略するというような形になると私は思う。たとえばアメリカとの間の話合いで太平洋方面には航海の自由すら制限して漁業協定を結んでいるのでありますが、中国、ソビエトにはこういう話合いもなく、また中国、ソビエトが自分の領海をどういう限度まで置くかという話合いもなくして、日本が一方的にマ・ラインがないからといつてここで漁業を行うということになれば、これは日本側が中国、ソビエト側を侵すということになると思う。今度の海上保安隊の問題につきましても、二千ドン級のアメリカ側の駆逐艦を十隻貸與を受けてこれを海上保安庁の防衛隊として日本の北洋漁業をやるということになれば、明らかにここで中国、ソビエト側と日本との間に漁業の問題の大きな争いが起きて来ると思うのであります。そうしてこちらはただ一方的にマ・ラインを撤廃した、撤廃したということになりますと、非常に重大な事態が発生し、ここからむしろ戦争挑発の危険が多分に出て来ると思うのであります。そういう問題について中国、ソビエトとの漁業問題についてどういうような一体解決をして行くのか。この問題について一体政府はどういうふうに処置して行く考えであるか、その点をひとつはつきり聞かしてもらいたいと思う。
  97. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまの林委員の見解とわれわれの見解は相当違うものがあるのでありますが、マツカーサー・ラインは先ほど申し上げましたように占領軍の指令として出ておるものでありますから、占領軍がなくなればそれに基く指令というものは、当然なくなるものであるという解釈をわれわれはとつておるのであります。それから中国あるいはソ連との関係におきましては、これはやはり日本とある意味での休戦状態が続いておることになると思うのであります。これは降伏文書によりましても、日本の漁船その他を拿捕しないということになつておりますので、あそこの線を越えたからただちにというような、むやみなことはもちろんないと思つております。領海の限界というものは国際法、国際慣例で一応きまつておりますから、その線に沿いまして一応の限界がある、こういうふうになるものであるとわれわれは解釈しております。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 占領軍の行動を規律するためにマ・ラインがあるといいますが、御承知の通りにソビエトの間には、講和條約がない限り戦争状態は依然として継続している。まあ休戦という形になるかどうかは別として。従つてソビエトに関する限りは、占領はまだ継続されているというようにわれわれは解釈せざるを得ないのであります。従つてソビエトに関する限りは、極東委員会決定したマ・ラインというものはまだ存続せざるを得ない。もしこのマ・ラインの問題をソビエトと話合いで解決したいというならば、ソビエト・中国と講和條約を交渉するよりほか道はないと思うのであります。それが一つと、もう一つは、領海は各国それぞれの解釈によつてなつておるのでありますから、今後中国、ソビエト方面の漁業についての領海の限度というのは一体どうするか。ソビエト、中国の領海というのと、われわれ日本で言う領海というのと、あるいはアメリカ側が言う領海ということは、それぞれの国の都合によつていろいろきまるのでありますから、具体的にどの限界までをあなた方は守る限界として一線を画するつもりか、それをはつきり言つていただきたい。そうでないと今後ますます紛争が起きて来ます。むしろあそこの問題を中心にして反ソ、反共の宣伝の具に供せられる危険が再び起きて来ると思いますから、政府側の見解をはつきり聞かしてもらいたい。結局私たちの見解としては中国、ソビエトと講和の交渉を進め、漁業の交渉を進め、両方の了解と納得の上で漁業問題を解決するというのがとるべき方針でありまして、とりあえずは政府はどういうことを考えているのかということをまず聞いておきたい。
  99. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 第一段に申されました点につきましては、林委員とわれわれとは全然前提の見解が異なつておるのでありまして、私が先ほど申し上げました通り解釈でわれわれはおるのであります。  それから第二の領海の区域の問題でありますが、先ほど申し上げましたように、一応国際法、国際慣例等で決せられる問題だと思うのであります。ただいま一般的にとられておりまする説は、いわゆる三海里説でありまして、それ以上のいろいろの意見がある場合にはこれは一方的の意見でありまして、問題が起りました際には、そこで具体的に決して行かねばならぬ問題ではないかと思つております。
  100. 並木芳雄

    並木委員 先ほどの、公海上を航行している船舶とともにもう一つの場合があるのです。それは日本の商船で、たまたま外国の港に碇泊しておるときに接収されたものがある。これは明らかに国内資産であつて、在外資産ではないのです。そういうものをも含めて、今度はこの平和條約十九條で請求権を放棄したということは、形の上ではしかたがありませんけれども、個々の場合には忍びがたい点があると思うのです。こういう点に対しては政府としてもまだ折衝の余地があるのじやないか。それが接収されている国に対して実情を述べて、これをもとしてもらうという余地があるかどうか。もしどうしても余地がない場合には、こういう無事の接収された財産に対して、政府としてはやはり損害賠償をしなければならぬと思う。そうしないと憲法、に保障されている私有財産権を侵害することになるのですから、その点をあわせてお伺いしておきたいと思います。
  101. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはただいま並木委員からもお話になりましたように、條約の成文の上から申しましたならば、非常に遺憾でありますが、一応いかんともする方法がないのではないかと思うのであります。あとはそれらのものを国内的にいかに処理するかという問題が残れば、残るわけであると考えるのであります。
  102. 仲内憲治

  103. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は質疑を行いまする冒頭に外務当局に要求をいたします。同時に、幸いにしてわれわれの要望にこたえていただけまするならばけつこうでありますが、場合によりましては当委員会の総意に基いて御採択を願いたいと思うのであります。それは先ほど並木委員も申しておりましたが、軍隊地位に関する北大西洋條当事国間の協定外務省條約局で出しております條約集第二十九集第八十巻、これは昭和二十六年の十一月に編集されたものであります。條約局に聞き合してみますと、英文の出版は出ておりますが、今もつて日本語の翻訳文は出ていないようであります。先ほど当局意見を承つておりますと、この北大西洋條当事国間の協定は、あたかも今日行われておりまする日本アメリカとの行政協定に匹敵すべきものである。しかもそれを手本とし参考として、今日まで交渉を進めておるというような当局の言明でございます。従いましてこれはわれわれが国政を審議する上におきまして、きわめて重大な文献でございます。しかして日本の国会は日本語をもつて国政を審議することになつておりますので、仮訳でけつこうでございますから、どうかひとつ日本語でもつて委員会に御提出を願いたいと思うのでございます。考え方によりましては、これがあまり一般に知れわたると、今日行政協定に支障を来すというような政治的な配慮等もあつて、わざと翻訳しないでおるのだというようなことも考えられるわけでありますが、外務当局の見解を承りまして、次の委員会には必ず仮訳でけつこうでありますから御提出をお願いしたい。政府のこれに対する御見解を求めておきます。
  104. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまいろいろ取込んでおりますので、次の委員会までにということを確約できるかどうかちよつとわかりませんが、でき次第翻訳してお配りすることにいたしたいと思います。
  105. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 さらに関連して申し上げておきますが、先ほど申し上げましたように、これは二十六年の十一月の編集でございますから、その間に相当長い月日もたつておるわけであります。来週に間に合わなければ、おそらくは日本アメリカとの行政協定ができ上つた後に、これがわれわれの前に配付されることになるのではなかろうかと思われるわけであります。従いましてわれわれが真に国政に忠実であらんとする立場から考えましても、今日の外務省の機構からしまして、これくらいのものが一週間のうちに仮訳ができないということはないと思う。あんなに有能な外交官吏をたくさん持つておりまする霞ケ関に、こんなことができないということは私は想像もできないわけであります。従つて次の委員会に出されるかどうかお伺いいたします。
  106. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 次の委員会までに努力いたします。出します。
  107. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次の委員会に出していただくことに了承いただくことに了承いたしておきます。  それから次に私は幸い引揚援護庁の長官がお見えになつておるようでありますから、承つておきたいと思うのでありますが、いまなお南方に残つておりまする日本人の敗残兵の問題について一、二承つておきます。  最近の新聞の情報によりますと、フイリピンの近くのある小さな島に上陸しようといたしました敗残の日本兵十六名が、土人のやり先にかかつて殺されたというニュースが伝えられました。終戦六年を経過した今日、このニユースはまことに国民の胸を打つものがあるわけであります。もしこれが事実とするならば、これほど悲惨なことはないわけであります。またルソン島の対岸のルバング島にがんばつております日本兵の投降勧告のために、きのうかおとといの新聞にも出ておりましたが、元の神保中佐ですかが出て行かれるという新聞の報道を見たわけであります。それでこういうふうに南方圏の諸島に今もつてさまよつております敗残日本兵の一部は、米軍の投降勧告によつて幸い救い出された者もありますが、さらにまた先般こちらへ帰つて参りました黒田中将の話等によりますと、フイリピンのルソンの山の中に今もつてとてもたくさんの日本兵が立てこもつておる者が認められるということでございますから、こういうことから想像いたしますと、南方のジャングルや奥地帶には、かなりのまだ生命を保つた日本兵がさまよつておるのではなかろうかということが想像されるわけであります。アメリカ軍はすでにこれに対する救出の積極的な好意を示しておつてくれますし、またフイリピンやオーストラリア等も今日におきましては、われわれと同じ自由主義国家陣営の一員といたしまして、国際的な協力をいたしておるわけでありますから、ソ連の抑留の場合とはまた異なつた観点から、これらの救出調査に日本政府としても何らかの対策を講ずる余地があるのではなかろうかと私は痛感するわけであります。従いまして今日までにこういつた悲惨な敗残兵を救出するにあたつて、どのような対策をおとりになつて来たか、またこれからどういうふうなことをなさるか、またどのような今日まで情報をお持ちになつておるかというような点につきまして、今日これは、国民は重大な関心を持つておるところでありますから、ひとつ詳細に御報告を願いたいと思うわけであります。
  108. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 ただいま御指摘がございましたことにつきましては、フイリピンのルバング島に残留いたしております者に対しましては、現在の家族からの手紙でありますとか、あるいは日本政府の勧告等が残留者の手に届きますようにとりはからつてもらつておるわけであります。なお先般神保さんがおいでになりましたときにおきましても、これはまだ政府といたしまして、直接にフイリピンに行くわけに参りませんので、引揚援護庁といたしまして、個人的にその点をお願いいたすように、特に努力いたしておるような次第であります。なお一般にそういうような残留いたしております者の状況等につきましても、現在いろいろと調査いたすようにお願いをいたしております。関係各国等に、ただいま在外事務所、あるいは関係国の駐日代表部、あるいは総司令部を通じまして、それぞれの状況の調査をお願いしておる次第であります。それがわかりましたものにつきまして、できるだけすみやかに帰還できますように努力いたしたいというふうに考えておるわけであります。これらの点につきましては、すべて私どもの方から直接交渉はできません。全部外務省にこの点をお願いいたしております。
  109. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ただいま外務省を通じての調査あるいは交渉等が行われるということでありますから、外務省当局に承つておきますが、外務当局では今までどのような交渉をなさつてつたか、また今日それでは一体どれだけの敗残兵が今もつてつておるというような御推定であるかというような点につきまして、承りたいと思います。
  110. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 外務省といたしましても、ああいう問題がわかりました直後、外務当局から比島代表部に参りまして、メレンシオ大使を通じまして、攻撃の中止であるとか、あるいは未投降者の救出方を懇請したのでありますが、大使も最善を盡すというように確約されたのであります。なおフイリピンのヴエラノという代議士が見えたのでありますが、この代議士を通じまして、家族より届けられました投降勧告書を約三百通ばかりを託しまして、救出方を依頼したのでありますが、できる限りの努力を惜しまないということであつたのであります。ヴエラノ氏は、一月二十五日賠償使節津島全権とともに本国に帰られたのでありますが、たまたま二月五日の情報によりますと、掃蕩作戦が一時中止されたというようなことが報ぜられたのでありまして、政府がとりましたかような処置が、若干の功を奏したのではないかと思うのであります。今後もできる限り救出に努力をしたいと思つておるのであります。  それから南方の地域にまだどのくらいおるかということは、これは一応当局といたしましても、引揚げが終了したように思つてつたのでありますが、その後山の中に隠れたりしておつた者が町に出て来たり、あるいは留守宅等の連絡によつて、いろいろわかりまして、数十名の者が引揚げて来たのであります。今後まだどのくらいおるかというようなことにつきましては、ただいまのところ、そういう者が現われて来ませんと、どうもいかんとも正確なる数字を握ることができないのでありまして、当局としては総司令部を通じ、あるいはまた当該国の駐日代表部を通じまして、できるだけ送還できますように、努力をいたしたいと思うということを申し上げておきます。
  111. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 このたび伝えられましたルバング島の問題のような、かかる南方圏の各地域に今もつて日本兵が残つておるというような情報は、この場合のみならず、相当たくさんの場合があると思うわけでありますが、他にもいろいろな類似の情報等があつたことと思うのでありますが、その点につきましては、いかがなものでございましようか。
  112. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのところ別に何もないと思います。
  113. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 政府は南方の全域へ英霊の遺骨の調査団を近く派遣する準備を進められておるということが伝えられておりますが、たまたま援護庁の方もおられますので、これにつきましては、どのような御計画をお持ちになつておるか、関連いたしまして承つておきたいと思います。
  114. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 先般御承知の通りに、硫黄島に遺骨の調査の人員を派遣いたしまして、調査をいたして、近くこれが帰つて参るはずになつております。なお沖繩島につきましては、先般司令部から、これが調査につきまして許可を得ましたので、これも近日中に沖縄島全般につきまして、遺骨の状態を調査するように、調査のための人員を派遣したいと考えております。なおその他の南方地域につきましては、大体南方地域の中で遺骨を戦争の間におきまして一応納めまして、そしてこれに適当なる墓地をつくりましたり、あるいは一時的な仮埋葬をいたしましたりしたもの以外に、きわめて激戦のありました、特に玉砕いたしましたような地域につきましては、その状況が全然不明でございますので、これらにつきましては、できるだけ早い機会に、これに対する全般的な計画を立てまして、司令部の方に、これが許可を得まするようにお願いいたしたいと思つております。
  115. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 幸いにして硫黄島が終り、近く沖繩への調査団派遣が、司令部から許可を得たということでありまして、まことにわれわれといたしましても喜ぶわけであります。同時にただいま御計画の南方全域に対する調査団の派遣、遺骨調査のために調査団を派遣するということは、まことに私はけつこうな御計画だと思うわけであります。これと関連いたしまして、先ほど来申しておりまする、まだ南方の諸地域に残存いたしておりまする日本人の救出につきましても、あわせて調査を行うべきであると私は考えますが、これらにつきまして、当局はどのようにお考えなつておるか、また何らか御計画でもお持ちかどうかという点につきまして、承りたいと思います。
  116. 木村忠二郎

    ○木村(忠)政府委員 お説の通りに、遺骨よりも、むしろ生きている人の問題が最も重要であるというふうにわれわれは考えております。従いまして、現在南方関係に残留いたしておりまする者の中には、部隊が復員いたしました際に、復員を欲しないで自分で辞退いたしまして、帰つて来なかつた者もございますし、また戰闘中に行方不明になつて一応部隊からはずれてしまつたというような者もございますし、また戦犯関係の残留者もあるわけでございますが、これらの人たちに対しましても、御本人が希望されるならば、できるだけ早く帰つて来ることができるようにいたしたいと思つております。その他現地に残留いたしております人で山の中に入つておりまするような人々につきましても、先ほど政務次官からもお話がありましたように、現地のいろいろな機関あるいはこちらにありまする各種の機関を通しまして、これが実情につきまして調査をお願いいたしておるわけであります。また現在それに対する調査の計画というようなものにつきましては、今はつきりおる所がわかつておる者につきましては、早急に引揚げができるように手配しておりますが、その他の者につきましては、現在関係方面に調査をお願いいたしております。
  117. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは南方の敗残兵問題につきましては、その程度にして打切りますが、これらの不幸な人々のことをお考えになりまして、一刻も早く最も有効適切な措置が講ぜられるように、特に生きている人々の調査のために、單に依頼するというような立場でなくして、日本自体がすみやかに何らかの対策を立て、できまするならば、調査団の派遣等につきまして、積極的な考慮を拂つてもらいたいと思うのであります。今日これらの問題につきましては、国民は非常な関心を持つておるところでありますから、その点を特にお願いをいたしておく次第であります。外務省当局におきましては、何らかこれに対するお考えがあるかどうかという点をもあわせ承つて、この点に関する限り、私は質問を打切りたいと思います。
  118. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまでも、先ほど申し上げました以外に、在外事務所等を通じましても、できるだけの努力をしておるのでありますが、将来国交が正常に回復しました際には、さらに一層活溌にそういうことを行つて参りたいと思います。ただいま調査隊を派遣するというような計画があるかというお尋ねでありましたが、これは相手国等のいろいろな関係もありまして、現在はまだそれまでの計画を持つておりません。将来の研究題目として参りたいと思つております。
  119. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは次に直接には行政協定とは関係はないわけでありますが、駐留軍基地内あるいはPX内の日本人の業者に対する物品税の問題につきまして、簡単に一点だけ承つておきたいと思います。すでにことしの一月の終りからPX内におきます日本人の業者に対して物品税が課せられております。これは司令部からの覚書が出まして、暫定的な措置として、とにかく一応物品税を課するということになつておるようにわれわれは記憶をしておるわけであります。ところがこの物品税を課するようになりましてからというものは、売上高というものは非常に減少いたしまして、われわれの知る限りにおきましては、約五割方減少したということであります。まず私は最初に承つておきたいことは、これはこの物品税を課しておりまするただいま行つております措置は、行政協定の成立までの暫定的のものであるかどうかという点を、まず一点承つておきたいと思います。
  120. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 現在PX内でやつております問題につきましては、これは暫定的な問題でありまして、今後どうするかということにつきましては、行政協定できめられることになると思います。
  121. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 大蔵省当局のこれに対する御見解はいかがでございますか。
  122. 泉美之松

    ○泉政府委員 ただいま外務省石原政務次官からお答えになりました通りでございます。  なおつけ加えて申し上げておきますが、一月一日以後課税しておりますのは、ほんとうの意味のPXの販売ではないのでございます。従来PXの構内に日本の業者がいわゆるコンセツシヨネヤーといたしまして、そこに店を出してたまたま売つてつたというのでございますが、それが本年の一月一日以後司令部のメモランダムによりまして、物品税を課するという取扱いになつたのでございます。本来のPXというものとは違うのでございます。この点御了承願いたいと思います。
  123. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最近の報道によりますと、駐留軍基地内で営業を営んでおる業者には、日本人をも含めて課税をしないというような方針であるというふうに承つておるわけでありますが、行政協定内容がどうこうというわけではありませんが、大蔵省当局といたしましては、やはり課税をすべきであるという立場か、あるいは課税をしない方がいいという立場か、どういうふうな御方針をお持ちになつておるかということを承りたいと思います。
  124. 泉美之松

    ○泉政府委員 この点につきましては、行政協定でとりきめられることになつておりますので、ただいま私から申し上げかねるのでございますが、大蔵省の態度といたしましては、問題が国産品と輸入品の問題があるのでございます。国産品につきましてはPX内で販売いたします場合に、PXが日本の製造業者から買う場合には、物品税を課税すべきであるという建前を貫いて行きたいと思つております。ただ御存じのようにPX内で販売いたしますと、それが外貨の獲得になります。その意味におきまして、従来の取扱いにおきましてはインヴィジブル・エクスポート、いわゆる見えざる輸出といたしまして、免税をしておつたのであります。そこで問題は、日本が国産品に対しまして物品税を課税するという建前を貫きました場合に、輸入品に対して関税なり、あるいは国内消費税を課税することができない場合につきましては、輸入品と国産品との競争上、国産品がかえつて税を課せられるために売れないというおそれが生ずるわけでございます。そういつた特に国際競争のはげしい商品につきまして、そこで売れないために外貨獲得ができないというようなことがありますと、また問題でございますので、そういつた点をにらみ合せて行政協定に織り込むつもりで、今せつかく交渉を続けておる次第でございます。
  125. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私の申し上げておりますのは、今の場合、国産品について申し上げておるわけでありますが、大蔵省当局の御見解によりますと、やはり物品税を課すべきであるというような一応の御方針のようであります。今その半面、あなたがおつしやられましたように、PX内におりまする日本人の業者を調べてみましても、一千二百とかに達しておるそうでありまして、その一箇月の平均売上高は二百万ドルに上つておるということであります。二百万ドルという金は、今日の日本にとりまして、外貨獲得の上から申しまして、まことに私は重要な、見のがすことのできない点であろうと思います。これが去る一月一日からの暫定的な指令によつて、物品税を課するようになりましてからというもの、約五〇%ばかり減少をいたしておるというようなことを聞いておるわけであります。こういう点から考えますと、外国品を輸入する場合と国内品を入れる場合との微妙な点もあるでありましようが、外貨の獲得という見地に立つて考えますと、ただいま御指摘になつた通り、まつたく目に見えないところの大きな輸出が行われておるわけでございますから、いながらにして国内の製品を国内において輸出をいたしており、毎月二百万ドルの外貨を獲得いたしておるということにもなるわけでございます。従つてこれらの対策から申しますと、私はやはりこれだけ大きな外貨というものを見のがすことはできないとも考えるわけでありますが、これらにつきましては、一応大蔵省当局におきましては課税をする方針であるというふうにおつしやいましたけれども、なおその半面の外貨獲得の点等をも十分お考えを願いたいと思うわけであります。そこでただいま交渉中の行政協定交渉にあたりましては、外貨獲得の面を十分考慮された上で、交渉が進められておるかどうかという点を重ねて伺いまして、私の質問を打切ります。
  126. 泉美之松

    ○泉政府委員 この問題は、先ほども申し上げましたように、かなりデリケートな点がございますので、われわれといたしましては、もちろん外貨獲得という点も考えなければなりません。ただそれが国産品が免税で購入されて日本国内に放出されまして、日本国内の免税品と課税品とのアンバランスの問題を生じ、それが取引市場を撹乱するということも考えなければなりませんので、協定におきまして、かりに課税をするということが起りました場合におきましては、駐留軍自体のみならず、一体に外貨が獲得し得る場合におきまして、国産品に対する物品税の課税について、現在の輸出免税と大体同様な措置を、行政協定とは別個にとりきめることによつて、外貨の獲得ができなくなるという不便を取除きたいという考えを持つておるのであります。
  127. 仲内憲治

    仲内委員長 この機会に、政府側から中山マサ委員の前会の質問に対してお答えがあるそうでございます。
  128. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 一月三十日にこの委員会において中山委員からお尋ねになりました、宮崎県出身の一日本人が、中共義勇軍として朝鮮戦線に参加して、国連軍に捕虜になつたとのことであるが、これが日本帰還につき外務省はいかなる措置をとつたか、というお尋ねであります。朝鮮において連合国の捕虜になりました日本兵、これは松下一珍という名前のようでありますが、内地帰還に関しては、復員局とも連絡をいたしまして、所要の調査を済ませました上、総司令部に帰還のあつせん方を要請した次第でありますが、連合軍側としては、目下共産軍側と捕虜交換問題について交渉中ではあるが、本件は日本人のことでもあり、できるだけ努力する旨を約しまして、多分この日本側の希望に沿い得ることとなるであろうという回答を得ておるのでありまして、本人もしごく元気でおるということであります。この機会に申し上げておきます。
  129. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 その前に議事進行ですが、当委員会はいつも時間が制限されて、発言する人が特定されてしまいます。野党側の諸君で大分発言の希望者があるのですから、あらかじめ最初に時間を割当てて、公平にやるように——今までも努力しておると思いますが、御配慮を願いたいと思います。実はここに共産党、社会党、労農党の諸君がいて、これはいつも終りぎわにほんとに忙しく発言せざるを得ないので、せつかく来ていてもできなくなるわけであります。だからそういうような配慮があればいいのですが、最近発言者が特定されてしまつているようですから、その点十分御配慮願いたい。  もう一つは岡崎国務大臣のことですが、これから参議院でも予算委員会が始まりますが、いつも予算委員会だとかなんとかへ行つてしまいまして、外務委員会はまつたく有名無実の委員会になる危険がありますので、なるべく優先的にやはり岡崎氏を当委員会にひとつ出席させるように努力して、当委員会の充実をはかるように御盡力を願いたいと思うのです。
  131. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつとついでに私からもお願いをしておきたいと思いますが、私、委員長は公平にお取扱いになつておると思いますけれども委員会の開催それ自身に私は問題があると思います。今一週間に一回しか開かれておりません。しかも午前中しか開かれないというようなときが多いのです。これでは委員長がいくら公平におやりになろうとしても、このように制限されては、どうしてもそこに、不公平のような結果が自然に起つて来る。そこで問題は、委員会の回数並びに時間、それからいま一つ政府側の出席の不足、こういうものに根本の原因があると私は思います。そこで特にこれは、私は委員長を通じて理事会にお諮り願いたいと思いますけれども行政協定の問題で、私どもも実に質問が山積しておるわけでありますから、きようのことは別といたしまして、来週は少くとも二回ぐらいこの委員会をお聞き願いたい。そうしてその日は午前、午後を通じてお開き願うようにしたい。来月になりますと参議院の予算委員会が始まりますので、何かとそちらに大臣が出席されて……。
  132. 仲内憲治

    仲内委員長 今お二人がおつしやるようなことは十分考えておりまして、きようにも理事会を開き、それから今週中にも次の会を持とうとしているのです。
  133. 黒田寿男

    ○黒田委員 それから来週の外務委員会には、総理大臣兼外務大臣にぜひ御出席を願いたい。これをひとつお願いしておきます。  それからいま一つは、当委員会として警察予備隊の視察をすべきだという提案を私はいたしておきましたので、これもいつまでもほつておかないで、ひとつ理事会で、やるならやる、やらぬならやらぬ、やるとすればいつやるということを至急御決定願いたい。
  134. 仲内憲治

    仲内委員長 承知いたしました。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 本日の新聞に出ておるのでありますが、大山氏の平和賞受理のためにモスクワへ旅券の下付をされたいということと、モスクワ経済会議に招集を受けておる人たちの旅券を下付してもらいたいということが、何か外務省の首脳部の会合では、これを拒否するように話が進んでおると出ておりますが、私はその真意を解するに苦しむのであります。外務省というのは、できるだけ国際的に親善関係を、いかなるきつかけがあつても、それをつかんで深めて行つて日本が国際的に安定の地位にあるように努力して行くのが、外務省の務めだと私は思うのであります。ことに最近かまびすしい日本の国の再軍備問題、あるいは日本における米軍駐留問題等も、中国、ソビエトを明らかに仮想敵として、その侵略の危険があるということで、われわれから見ると、国民を欺瞞し、瞞着しながら工作を進めておるように思われる。そうするならば、問題はそういう危険を除くことに努力すべきであつて、それとどう戦うかということは考えるべきでない。たまたま絶好な機会に大山氏の平和賞の問題があり、それからたまたまモスクワに経済会議が開かれて、各国とも代表が行くことになつておるのであります。たとえばイギリスあるいはフランス、あるいはインド、イラン、イタリア、こういうようなところから、相当の大学教授あるいは実業家、銀行家というような人たちが行つて、二つの体制の中でどうしてお互いに国民の生活を向上するかというようなことを虚心坦懐に話し合おうということで、ただ場所がモスクワということであつて、参集する人たちは、こうした各国の経済学者、あるいは実業家の代表が行くことになつておるのでありますから、従来鉄のカーテンがソビエトにあるとかなんとかいうことがいわれておりましたけれども、たまたまこうして絶好の機会があるのでありますから、日本人を十分派遣して実情を見て来らせ、そうしてそれを一つのきつかけとして国際的な親善を深めるということが、日本の国政に任じておる為政者の当然考えるべきことであり、ことに外交関係について最高の責任を持つておる外務省考えるべき当然の義務だと思います。しかるにもかかわらず、これ対していろいろの妨害的な行動に出ておるということは、われわれ納得できないのであります。一体この旅券を発行しないという法的な根拠があるのかどうか。本日の朝日新聞を見ますと、旅券法第十九條の四、これは一旦旅券を発行したものに対して、日本政府がもし責任を持てない場合には、旅券を返還させることができる、これは一旦旅券を発行した後の事態の問題であつて、旅券を発行するか、しないかの基準というのは、当然この十三條によつて決定されるのでありまして、まさか大山さん、あるいは改進党の北村徳太郎さん、その他の皆さんが、この旅券法十三條の、著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為を行うおそれのある人というふうに認めることは、私は絶対に不可能だと思うのであります。従つて「旅券法のいかなる見地からいつても、旅券をおろさないという根拠は全然ないと思うのでありますが、これに対して外務省の責任ある御答弁を聞かしてもらいたいと思うのであります。
  136. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 モスクワ経済会議のことにつきましては、先般のこの委員会においても、いろいろ当局の気持はすでに申し上げておるところであります。今回これらの会議なり、その他でソ連地区に旅行される方の旅券発給の問題でございますが、これはただいまのところ一、二の人から申請は出かかつているようでございまして、この問題につきましては、ただいま旅券法、並びに旅券法の全体を通じます趣旨、それから諸般の情勢等から総合判断いたしまして、出すベきものか、出さざるべきものかを研究しておるのであります。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、新聞紙にあるように、外務省の首脳部が検討した結果、旅券の発給を行わないという方針を確定したということは、これは事実に反するというように解釈してよいのですか。
  138. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 新聞に確定したというような二とが、かりに出ておりますれば、それは新聞の報道でありまして、外務当局としては、ただいま愼重にあらゆる観点からこれを検討しておるのであることを申し上げておきます。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 旅券法からいつて、旅券を発行すること自体を拒否するという根拠にこの第十九條第四号が使えるかどうか、その点をまず次官にお聞きしたいと思います。
  140. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 率直に申し上げまして、旅券法の該当する條項としては、十三條と、それから十九條の解釈いかんによると思うのでありますが、私は先ほど申し上げましたように、この法律解釈というものは、ただ字句の解釈ばかりでなく——こんなことを申し上げてたいへん失礼でありますけれども、法全体を流れております一つの精神解釈というものもやはりあり得ると思うのでありまして、そういう意味から、十三條並びに十九條の両條について、あわせてまた旅券法全体の制定の趣旨というようなものから考えまして、愼重に研究しているのであるということを申し上げたのであります。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 外務省では対ソ基本政策というのを、最近ソ連課長が中心で決定して、その対ソ基本政策の起草ができると同時に、ソ連行きの旅券は申請を受理しないという大臣の訓令を出そうとしておるということを、われわれは相当根拠のあるところから聞いておるのでありますが、一体ソ連行きの旅券は全体下付しないというような大臣の訓令を出すというようなことを考えているのかどうか。こうなれば、むしろ中国、ソビエトに鉄のカーテンをおろしているのは日本であり、中国、ソビエトのこういう友好的な関係、たとえばスターリンのメッセージだとか、あるいは五大国の平和條約の提唱だとか、あるいは日ソ貿易の申出とか、こういうのを拒否しているのはむしろ日本側であつて、侵略の意図を持つて再軍備しているのは日本側であつて、ソ連や中国の方では非常に友好的な手を差延べて来ているにもかかわらず、これを拒否しているのはむしろ日本側であり、さらにはアメリカの反共政策の一環として日本がそれにあやつられている。むしろ責任はこちら側にあるとわれわれは解釈せざるを得ないのでありますが、一体対ソ基本政策というようなものをきめてソ連行きの旅券はおろさないという大臣訓令を出す準備をされているのかどうか、その点をはつきり聞かしてもらいたいと思う。
  142. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 さようなことはございません。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると絶対にこういうことはしないという確約をしてもらえますか。
  144. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは国際情勢も、刻々といえば語弊がありますが、かわる場合もあるのでありまして、絶対にしないということをここで一政務次官に確約しろということを言われたつて、それは無理でありまして、そういうようなことは申し上げられませんが、ただいまお話になつたようなことは現在のところないということは申し上げます。
  145. 林百郎

    ○林(百)委員 今次官の答弁を聞いておりますと、実際は発行しない腹で、それをただ林委員に質問されておるから、何とかごまかしてここのところは逃げよう、そこで盛んに予防線に精神解釈だとかなんとかいつて、暗々裏に万一発行しない場合に備えて布石を打つておるように私は感じておる。それならそれで正直にお言いになつたらどうですか。それを言えば言つたで私はこちらにいろいろの立場があると思います。そこであなたは外務政務次官であるからよくおわかりだと思いますが、たとえばイギリスでは、国家の方針としては、必ずしもイギリスの実業代表がソ連に行つて会議に参加することは好ましくない場合もあるけれども、しかし個人のそういうところに行きたいという希望に対しては、何ら政府は干渉することはないということをイギリスの方針として言つております。それからアメリカにおきましては、むしろアメリカ人がモスクワ経済会議に出席するのを利益と考え、渡航を希望すれば旅券を発給するという方針をとつている。しかし目下希望者は少い、こういうことでなるべく旅券を発行させないようないろいろ政治的な手を打つておいて、旅券を下付しないというようなところまで追い込まれない手を打つていると思いますが、しかし少くとも表面は旅券を発行しないとは言つておらないのであります。そうすると実は三月の五、六日ごろ向うの船が来るということになつているのでありますが、いつまでも研究されていたんじや、これは準備もありますし、こちらで非常に迷惑なのですが、いつごろはつきりした結論を出すのか、大体心組みをして渡航をする準備をしていいのか、それはちよつと待つてくれ、洋服をつくつたり、トランクを買つたりするのは待つてくれというのか、その辺をもう少し責任ある答弁をあなたからしてもらいたいと思う。ただ研究中々々々では、少くとも二箇月後外国に行つて来るのでありますから、行く人の身になつてみれば準備もしなければならぬ。だからその準備を進めていいのかどうか、大体なるべくならば政治的に旅券の発行申請までさせたくない、しかしとしても旅券の申請をしたならば、これは何とかけちをつけて旅券の発行をしないようにしよう、しかし今後は大臣訓令で旅券を受理しないということにしておけば、旅券法では引受けないわけには行かないのでありますけれども、受理しなければまんまと外務省は逃げることができるというような手を打つているとわれわれは思うのです。あなたがいくら逃げようと思つても、あなたの言外にそういうことを十分感知し得るのですが、もう少しはつきりした答弁、大体準備を進めていいのかどうか、結論ははつきりいつごろ出るのか、これは三月初めには向うに行かなければいけないわけですから、その点もう少し責任ある答弁をしていただきたい。ただ研究中、考究中じや話にならない。
  146. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私は、先ほど現在外務当局でやつております段階をきわめて正直に申し上げたのでありまして、現在のところは、先ほど申し上げましたように、いろいろの旅券法の精神とか関係條文の解釈ということを愼重に今研究しておるところでございます。ただいま英国とか米国のいろいろのお話がありましたが、これはどういう筋から米国情報を得られたかわかりませんが、われわれの考えておるところとは若干違つておるように思うのであります。また英国の情勢も、これは情報でわれわれ得ておるだけでありまして、引例されましたのでちよつと申し上げたいと思うのでありますが、英国がこうだから日本もこうだというふうにも一概に言えないのでありまして、英国はソ連と正常なる国交関係を結んでおりまして、日本とは非常に立場が違う。一方日本は、先ほどあなたは友好の手をいろいろ差延べられておると言われますが、一面には多数の抑留者がまだ帰つて来ない。しかも帰つて来ないばかりでなく、それらの情報等についても何ら提供を受けない、また漁船等の拿捕、その他の問題についても、先ほどもこの委員会で議論されたのでありますが、まだいろいろの問題がひんぴんとしてある、平和條約にも加盟されないで、正常なる国交関係が何らない、こういう立場にあるのでありまして、引例されました英国日本とは、立場においてもまた異なるのでありまして、しかも英国がどういう態度をとつているかということも、はつきりしたことはわからないのでありまして、私は現在の段階をきわめて正直に申し上げたのでありまして、いついつまでにどうというように、ここで日にちを区切ることはできませんし、諸般の情勢で、遺漏のないように愼重にただいま検討しておるということを正直に申し上げます。
  147. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると問題は政治的な問題になつて、これは旅券法の問題でないというようにわれわれは解釈せざるを得ないのであります。抑留者があるないということは、今論争の途中でありまして、ソビエトではいないと言つておる。それからあるというならば、あるという——一体どこの村にだれが幾らおるという資料も全然政府から出していない。むしろこの問題をとらえて反共の宣伝の具に供して再軍備の資料にまで使つておると思う。もしそういうことであるならば、むしろソ連に行つて、実際抑留者があるのかないのか、ソ連から資料をもらつて来ればいい。また帰りに見て来ればいい。抑留者がかりにあるとあなたが言うならば絶好の機会であると思う。最近中共から引揚げた人たちも、今は北京政権に手を打つてもらう一番いいときなんだ、抑留者が帰りたがつておれば帰りたがつておるほど、北京と急いで交渉を持つべきだと引揚者がちやんと言つておるじやないですか。抑留者の家族の身になつてみれば、あちらへ行く人に、自分のうちのこれとこれがここにおるそうだから、ぜひこれを聞いて来てもらいたい、ここえもまわつて来てもらいたいというのが切実な希望だと思う。そんなことは全然理由にならないと思う。身体財産の保護の保障がとれないと言いますけれども、これはむしろソ連側が十分身体財産の保護をしますと言つておる。そうなれば、一体あなたの言う旅券法の精神とは何かと質問したい。最も反共の政策をとつておるアメリカですら、むしろ実業家が行くことは利益であろう、出してもいいというように表面は言つておるじやないか。反共の大元のアメリカが利益だと言つておるのに、日本が何でそんなにソ連に対して、モスクワに人をやるのが好ましくないのか、あるいはそんなに危険を感ずるのか、あなたの言う旅券法の精神あるいは拡張解釈というものを私はよく聞かしてもらいたいと思う。ということは、おそらくモスクワ経済会議は、これは改進党の人たちや、社会党の方々や、あるいは緑風会の方々や、国会議員の方々が陸続として旅券の下付を申請して来ると思うのです。日は三月五日にきまつておる。政府がそんな無責任なことを言つておれば、一体この人たちはどういう処置をとつたらいいのですか。あなたがもし旅券法の精神解釈で、どうも旅券を下付することについて再考慮しなければならないというようなことであるならば、私はその旅券法の精神なるものを聞かしてもらいたいと思う。
  148. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 前段るる申し述べられました点は、われわれと相当見解を異にしておりますので、ここで論争してもしかたがないと思います。それから旅券法の精神はどういうところにあるかというお尋ねでありますから、私はこの旅券法の精神なるものは、その人の旅行が日本の公共の福祉に反するか反しないかということが一つの大きな問題であろうと思う。それからもう一つは旅行ずる人個人の身体、生命、財産の保護が十分されるか。また相手国に対しても必要な保護を要請することができるかどうか、これもこの法を流れる一つの大きな精神であろうと思います。旅券法の精神はそこにある。同時にこれは海外へ旅行することでありますから、そのときの海外の諸情勢等も合せて、それらを総合して解釈判断を決定して行くのが、旅券法運用の最も適切なる措置ではないか、私はかように考えております。
  149. 林百郎

    ○林(百)委員 この旅券法の解釈で、公共の福祉といいますが、たとえば北村さんだとかあるいは帆足さんだとか大山さんだとか、こういう人たちが行くのがどうして日本の公共の福祉に反するのでしようか。かりに共産党員が行つて宣伝をするなら、これは吉田内閣とは根本的に政策が違つているから別として、改進党の諸君だとかあるいは社会党の諸君だとか緑風会の諸君だとか、あるいは帆足さんとか、石橋湛山さんとか、村田省蔵さんとか、こういう人たちが行くことがどうして公共の福祉に反するのですか。むしろあなたの言うことはこの人たちに対する侮辱だと思うのです。それから身体や財産の保護という点ですが、ソビエト側ではこの点について十分保障すると声明を出しているわけなんです。(笑声)あなた方は笑つておられますが、実際はどんな細いひもでも細い糸でもこれをつかまえて、中共、ソビエトと友好関係をだんだん広げて行くのが、極東の日本の位置からいつて最も好ましいことじやないでしよつうか。それに対して、あなた方ができることを努力して行かないで、ただ抑留者がいるわ、中共が侵略する危険があるわ、ソビエトが侵略する危険があるわと言つて大きな軍隊をつくり、事を構えて、むしろアメリカやそのほかの反共政策の一環に乗つて日本が侵略の手先になり、日本が戦争の危険に陥る方向へあなた方自身が進めているのではないでしようか。少くともこうい機会には友好的な関係を結ぶように努力すべきだと私は思う。そこで私はあなたにもう一度お伺いしたいのですが、今申請を出し、あるいはモスクワ経済会議へ招請を受けている人たちが、十三條の公共の福祉に反するものとすれば、その根拠を私は聞かしてもらいたいと思うのです。これはこの人たちの名誉のためにも聞いておきたい。それから財産や身体の保障が十分できないという点はどういうところにあるのか。モスクワから船が芝浦まで来て、そこで乗せて、途中はソビエトが国家の責任において保護すると言つている場合に、どこに一体危険がある。しかもモスクワ会議にはイタリア、フランス、インド、あるいはイギリスという、何も社会主義的な体制をとつていない国のたくさんの有力者が行つている。日本だけがどうしてそんなに危険を感ずるのか、何かやましい点があるならあるで、はつきり聞かしてもらいたい。つ
  150. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私は先ほど、ただ十三條の適用だけでどうこう、そういうことを申し上げたのではないのでありまして、くどいようでありますが、旅券法には十三條があり十九條があり、また旅券法全体の立法趣旨というものがあり、国際関係というものがあつて、そういうものを総合して判断すべきであるということを申し上げたのであります。今回の会議の問題については、いろいろの観点、いろいろの立場から、いろいろの批判、批評、意見があるということはわれわれもよく承知しておりますが、われわれはそういう点を総合判断いたしまして、先ほどから申し上げておりますように、この会議への出席はあまり好ましくないということを申しておるのであります。いろいろ申されました点は相当われわれと見解を異にしている点があるので、この程度にしておきます。
  151. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたの御存じの通り外務省へ旅券の下付を申請するというのは急を要するのです。都道府県を経由して下付の申請ができないのです。今旅券の下付を申請する人たちは急を要する人たちですから、この急を要する人たちに対して、あなた方のようにいつまでも目下研究中で延ばすことは、この人たちの基本的な人権を傷つけることになる。研究なら研究で、いつ回答を與えるか、責任を持つてつていただきたい。そうすればそれをもつてこちら側ではいろいろな準備もしなければならないし、いろいろな国際的な対策も講じなければならないのですが、いつ回答されますか。
  152. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 もう何回もお答えしておりますところで御理解を願いたいと思います。
  153. 林百郎

    ○林(百)委員 だから大体いつごろあなたの方から確定的な返事がもらえるのか。これ以上あなたをいじめてもしかたがありませんから、それさえ聞かしてもらえばいいのです。あなたは外務政務次官だからあなたでなければ返事が出るはずがない。
  154. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは役所の中の組織を申し上げるのも変でありますが、それぞれ該当局もありますし、旅券法をごらんになつてもわかますように、法務府とも協議をしなければなりませんし、中ではいろいろ判この段階が相当ありますし、いつということをここではつきり申し上げることはできないのであります。
  155. 林百郎

    ○林(百)委員 法務府と相談するということは十二條の問題になるが、法務府と相談したかしないか。相談したとすればどういう返事が来たか。これはこの人たちの名誉に関する問題です。日本の利益を著しくかつ直接害するものとして法務府へ一応諮問するというのですから、北村さん、石橋さん、村田さんという方々に対しては重大な名誉の毀損です。外務省は法務府へ相談したかしないか。相談したとすればどういう回答が来たか。まだ相談していないとすればあなた方の職務懈怠です。また一体幾つ判こがいるのか、それも聞かしてもらいたい。
  156. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま御引例になりましたような人からはまだ申請は出ておりませんので、協議をいたしておりません。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは大山さんの場合を聞かしていただきたい。大山さんのは法務府と相談したかしないか。したとすれば法務府から返事があつたかないか。
  158. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大山さんの問題につきましてはただいま研究しておるわけでありまして、ここでいつとかどうとかいうことを、実際問題としてはつきり申し上げることはできません。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 法務府へ相談しなければならないというが、法務府へ相談したのかどうか。することをしないで研究中では、故意にいつまでも延ばしているのじやないか。発行したくないならしたくないではつきり言つたらどうですか。
  160. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 法務府との協議ということを、ただちに十三條と関連してお考えなつておるようでありますが、われわれは十三條を適用するから法務府と相談するということを先ほど申し上げたのではないのでありまして、法全体の解釈決定する最高顧問といいますか、その立場にあるのが法務総裁でありまして、そういう意味で法務府とも十分協議をしなければならないということを申し上げたのであります。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 これは重大な問題だと思うのです。私たちは旅券法を昨年の暮れに審議した際に、旅券法に対する権限は当然外務省が握つているのだ、ただ当該人物が著しく日本の国の公安を害するような行為を行うおそれのある場合には、外務大臣は法務総裁と協議をしなければならないということだけであつて、その他は外務省で当然決定し得る問題であります。ところが十三條五号以外に、旅券を下付する場合に一々法務総裁に、検事の親玉に相談しなければならないという、そんな不見識な話が出るはずがないと思います。十三條五号以外に法務府と相談しなければならない根拠法があるならそれを示していただきたい。人を見ればみんな強盗かどろぼうと思うのと同じことです。少くとも大山さんとかその他の皆さんが旅券を申請する場合、一々法務総裁に相談し、特審局と相談しなければ下付できないという、そんな不見識な話がどこにありますか。
  162. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私が法務府と相談研究しなければならぬということを申し上げましたのは、旅券下付の個々の問題について、一々法務総裁と打合せなければならぬということを言つた意味ではないのでありまして、いかなる法律でも、法律上の解釈につきまして疑義があるとか、いろいろ意見があるとかいうことについては、これは法制意見局といいますか、いわゆる法務府と共同研究しなければならぬことは、いかなる法律解釈についても当然のことでありまして、さような意味で申し上げておるのであります。
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 これは私は外務省の自殺行為だと思うのです。あなたの方の省から旅券法の責任の行政官庁として旅券法を国会にかけ、あなたの方が答弁をして、それでこの国会を通した。その旅券法の解釈を法務府へ相談しなければきまらないなんといつて、あなたそれでも外務政務次官ですか。まるで法務府の役人かなんかと同じじやないですか。ですから、あなたがそういう不見識のことを言われるなら、私は外務省の自殺行為だと思うのです。そこでその問題は別として、この法律の問題について法務府と相談しなければならない問題があるというなら、一体それはこの法律のどこにあるのですか。私はそれを念のために聞いてみたいと思う。われわれはこの旅券法は外務省が出され、外務省が当該の責任者である、この決定権は外務省にあると考えて国会で審議したはずである。ところがこの問題の解釈について、いまさら法務府に相談しなければならないという問題があるなら、どういう問題について法務府へ相談したのか、しないのか、したとすれば、どういう回答が法務府から来ておるのか、それをはつきりしてもらいたい。
  164. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 最初申し上げましたように、旅券法の直接の該当者かいなかの條項は、つまりこの十三條あるいはこの十九條の問題であろうと思うのであります。こういう問題について、これらの見地からどういうふうに解釈決定して行かなければならぬものであるかどうかということについて、ただいま協議、研究の過程にあるのであります。過程であるということを申し上げておきます。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは私はこれで結論をつけますが、あれやこれや、言いのがれをしていますが、結局発行したくないんだ。けれども発行しないについては、根拠が全然ないために非常に困つておるというのが、あなたの苦悩の姿だと思うのです。ですから、これは政治的な問題になつておると思うのです。政治的な問題に立ちもどつて考えてみれば、あなた方は口をきわめて共産主義勢力を攻撃しておる。侵略的だ、あるいは直接侵略、あるいは間接侵略すると言つていながら、向うからせつかく延ばして来た友好的な手を、あなた方が拒否しておることになるのであつて、むしろ侵略的な意図があるのはこちら側ではないのか。向う側が友好的な手を差延べて来ておる。それを何だかんだとりくつをつけて拒否して、こちらがあくまでアメリカの反共政策の一環として、日本を巻き込もうとしておる。であるから、白書銀行でギャングをして、日本人民に対してピストルを打つておるのに、日本の警察が手も足も出ないではないか。アメリカに対してはこれほど戦々きようきようとしておるのに、ソビエトに対しては俄然挑発的な行動をとつておる。これがあなた方の実際の姿だ。私は日本の国をアメリカに売り渡す売国奴と言われてもしかたがないと思うのです。外務省が少し反省されて、少くともインドだとか、イギリスだとか、同じ社会主義的な体制をとつていない国でも、非常に微妙な国際関係について、いずれの側にも刺激を與えないような非常に愼重な態度をとつておる国があるわけだから、私は十分あなたがこれを参酌して、日本の国の将来を誤らないように、もう一度反省してもらうことを希望して、私の質問に関する限りは終ります。
  166. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと関連してお尋ねしたいのですが、ただいま林君と外務次官とのお話を承つておりますと、私は相当根本的な問題が伏在しておると思います。それについて少しお尋ねしてみたいと思いますが、元来ただいま問題となつている旅券法の問題は、旅券法第十三條の問題であると考えます。ところが近ごろになりまして第十九條の四号が非常に問題視されるようになつて来た。そこでこういう二つの條文が問題になつておるそのうちで、第十三條の問題は旅券の下付の問題でありますから、当然申請者個人についての考究がなされるということが問題点であると考えておりますが、第十九條の問題は全然別個の問題でありまして、これは個人の問題ではないと思います。個人に対する考慮の問題は十三條であつて、第十九條第四号の場合は旅行しようとする国に対する日本の信用問題だと考えます。だれかが行こうとする場合——甲乙が行こうとする場合、甲は適格であるか、もしくは乙は適当でないかというような問題ではなくて、旅行国の日本人に対する取扱いに関し、日本がどう考えておるか、こういう根本の問題に触れて来る非常に重要な問題であると考えます。だから十三條は個人の名誉の問題でありましようが、十九條の問題を外務省が問題にされますならば、それは單に外務省だけでなくて、日本国自体の、ソ連に対する信用の問題である、こういう重要な問題になると私は思いますので、非常に重要な根本問題に関することでありますから、そういうものとして少しお尋ねしてみたいと思います。  なおその前に一言したいのですが、これはわざわざ取上げるには小さな問題であると思いますけれども、旅券法の精神についての外務次官のお考えは違うと思う。旅券法の精神は、憲法第二十二條の日本人の移転、旅行の自由、それが旅券法の根本精神であつて、公共の福祉によつてこれを制限するというのは、これは例外精神であります。だから旅券法の根本精神が公共の福祉による制限にあるというような解釈をされるのは、これはややもすれば人民を取締ろうとする官僚的解釈でありまして、私は旅券法を根本精神は外務次官の言われるようなものではなくて、旅行の自由を日本人は根本的に享有すべきものである、これが私は旅券法の根本精神であると思いますから、ひとつこの点は外務次官はお考えをお改め願いたいと思います。外務次官のようなお考えで旅券法の解釈に当られては、国民の自由は十分に保障せられないと思います。これだけ申し上げておきまして、次に私は少し根本的な問題をお尋ねしてみたいと思います。一体ソ連に対する第十九條の問題は、ソ連——この場合はソ連に旅行するのでありますから、ソ連の問題になるのでありますが、ソ連に日本国民が旅行する過程において、その生命、身体または財産の保護を期しがたい、それは一体どういう根拠に立つかという問題であります。そこで私はもう少しつつ込んで根本的に聞いてみたいと思いますが、一体ポツダム宣言とか降伏文書とかいうものは、今まで私どもは基本的にこれを尊重して来たのでありますけれども、一体これが今後どうなるか。米英との関係においては、平和條約が成立いたしますれば、平和條約が降伏文書なりポツダム宣言にかわるものとしまして、わが国との間に権利義務関係が発生して来るということになると思うのでありますが、ポツダム宣言に署名しております他の二国、今の場合はそのうちのソ連でありますが、ソ連に対する関係においては一体どうなるのか、サンフランシスコ平和條約が有効に成立いたしましたときに、ソ連に対する関係はどうなるのか、無條約の状態になり、戦争状態にでもなるのではないかという見解を持つものもありますし、あるいはそうでなくてポ宣言あるいは降伏文書は一応は残るのだというように解釈する人もあつて、どうも私どもには政府の見解もはつきりしない。こういうふうに根本の、ソ連に対する態度があいまい——見解がはつきりしないのであるからあいまいである。そういうことからすなわちあいまいなままにしておくから、独断的な一方的な解釈をするというような問題が起つて来る。そこで、私ははつきりとこの根本の問題を政府にお聞きしておきたいと思います。なお先ほど休戦状態というようなお言葉がありましたので、それに関連して申しますが、今私が根本的問題としてお尋ねしたいと思う他の一つの問題は、一体連合国占領管理はどうなるかという問題であります。占領管理がどうなるか、これは米英の関係におきましては、條約関係に入つて行くのでありますけれども、たとえばソ連との関係において占領管理はどうなるのであるか、こういう問題が起る、こういう場合に関する一つの見方といたしまして、休戦状態というものとして関係が続いて行くのだというような見解が述べられるのです。私はそういう意味でおつしやつたのではないかと思うのでありますが、そうしますと日本はそういうように考えておる。休戦状態でありますならば、日本に来ておるソ連の代表部の人々に対しまして、日本人が危害を加えるというようなことはあり得ない。戦争状態のもとに返つて、そこにソ連の代表部の人が日本に来ておるということになれば、その生命あるいは身体または財産の保護について危険の問題が起るかもしれませんけれども、休職状態であるというのであれば、ことさらそういう問題をソ連人に対しまして日本人が起する心配はない、安心して日本にソ連の人々に来てもらつておられる。それと同じように休職状態であるならば、ソ連の国内におけるわれわれ日本人の立場もそうでなければならぬ、私はこう考えなければ意味をなさぬと思うのであります。休戦状態として続くとして、日本におけるソ連人に対してはわれわれは生命、身体、財産の問題は起さないというように取扱いをしておるのに、日本についてだけはソ連に日本人を送るについて生命、身体、財産の問題が起るというように解釈するのは、一体、私は、論理の矛盾があると思う。ソ連に行く場合は何だか戦争状態にあるように考え日本の場合だけは休戦状態考える、そういうように二つにわけては考えられない——相手のある相互の関係でありますから、二つにわけては考えられないのであります。そこでかりに休戦状態にあるというような御解釈をなさるのならば、十九條の四号というようなものを日本側から問題にすべきものではありません。十三條は個人に対する信用の問題でありますから、不信の問題が起り得るかもわかりませんが、ソ連に対しましては、そういう問題は起り得ないのであります。これは私は根本的な問題であると考えますので、外務次官にお尋ねするのであります。関連質問といたしましてとりあえずこれを伺つておきたいと思います。
  167. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 いろいろと御意見があつたのでありますが、御意見のところはわれわれといたしましてもよく拝聴いたしておく次第であります。ただいろいろお話があつたのでありますが、ソ連には先ほども申し上げましたように、現に多数の抑留者が残つており、しかもその情報ももらえない。それからまた漁船拿捕等の問題がひんぴんとしてあるということも、これは黒田委員御承知の通りであろうと思うのでありますが、こういう現実の実情から考えてみまして、ソ連地区に旅行するということについては、それらのことも一つの判断の資料にしなければならぬということを私は先ほど申し上げたのでありまして、これは現実がさようなことを示しておるのでありますから、この点は黒田委員の方におかれてもひとつよく御研究、御考慮を願いたいと思います。
  168. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは論争の問題となり、見解の相違の問題になると思いますけれども、そうしますと政府は、現在の状態では、ソ連に対して日本人の取扱いは信用できないといつた見解に立つておるのだ、まあこういう結論に政府としてはなるのだというふうに思うのであります。これは私は非常に重要な問題であると思います。漁船の拿捕の問題等につきましては、おそらく私はある一定の地域を越えたから拿捕するとかというような問題が生じたのではなかろうかと思います。ただいたずらに日本人の乗つておる漁船を拿捕するというようなことは私はあり得ないと思う。ソ連から言えば、もとより、一定の国際法に基いて、立ち入るべからざるところに立ち入つたから拿捕する、ここに、拿捕問題が起る原因があるのではないかと思うのでありまして、漁船の拿捕の問題までもソ連に対する不信の問題の材料とされるということには、私どもとしましては、政府考え方にはなはだ愼重さを欠くところがあるのではないかと思います。引揚げの問題につきましては、私ども政府の主張を信用することができないのであります。私は共産党の諸君の意見にも実は賛成しておりません。一人もいないと言つてみたり、何十万人いると言つてみたりする、そのことが、まだはつきりしないのに、そう主張することそれ自身が私は愼重さを欠いておると思うのです。一体三十六万九千人おるとか言う場合には、その主張の基礎がわからなければそういう主張はするものではないのです。それを何十万おるというようなことを、はつきりわかつておるかのごとく言うこと、私どもにはそういう不謹愼な態度はとり得ない、私は共産党の諸君のように一人もいない、こういうことも言い得ない、そういう断定は、神様でない私ども人間としてはしてはならない。確実なことでなければ国会議員は言つてはならぬ。政府も言つてはならぬ。だから私はソ連に何人おる、いないということについての結論は出していない。だからこそ早く真相を知らなければならぬというのが私どもの気持です。早く知るためには平和條約を締結するよりほかに方法はない。これが私ども考え方です。私は抑留者の問題を解決するには、すみやかにソ連との間に平和関係を回復する、そうして日本の正式な代表を堂々と向うへ送り、向うからも正式な代表が来て、そういう関係を樹立させれば、ソ連国内においてわが同胞がほんとうにいるかいないか、いるとすればどういう状態にあるかということがわかる、初めてそれが科学的にわかる、そういう根本的な解決方法をとろうとしないで、いたずらにソ連を敵国視して、そしてわけもわからない根拠によつて何十万おるから返してくれ、それを返さないソ連は不信だというような主張をすることは、これは一種の政治的偏見にとらわれた考え方でありまして、日本人にとつては非常に迷惑な考え方であります。日本の大衆にとつては非常に悲しむべき考え方であります。私は留守宅の家族の方々がこんな迷惑な政府をいただいておる限り、一つも問題の解決はしてくれないと思う。政府の態度は大体独断的である、そういう独断に基いてソ連の不信を述べるということは、私は合理的根拠にならぬと思う。けれどもこれは今申しましたように、意見の相違になると思いますので、私はこれ以上いろいろ申しません。ただしかし、今政府がおあげになりましたような二つの点をもつてソ連に対する不信の態度とされるのは、これはまさに本末を顛倒しておる態度である、こういう態度では根本的に問題の解決はできません。ますます日本人自身に不利益になるような状態に、政府のこういう政策によつて事態が進んで行くという結果になるよりほかはないので、私は非常に遺憾であると考えます。けれどもこれは私の意見になりますし、また、大体政府の御結論は私どもにわかつたので質問はやめますが、要するに、政府がソ連を信用していないという態度、それが今申しますように、十三條の問題ではなくて十九條の問題の起るゆえんだ、こういうことになるのであります。しかし、私は、今回の問題は、元来、十三條の問題であると思う。十九條の問題であると言われるのはおかしな話で、いきなり十九條を出すというようなことは、本末を顛倒している。こういう考え方は、やはり根本において旅券法の精神を曲解しておることから起る。しかし大体政府の御意見はわかりましたから、私はこれ以上質問いたしません。  最後に、ちよつと私委員長にお願いしておきたい。これは旅券法の問題ではありませんが、きようはすでに一時になつてしまいましたが、岡崎国務大臣は出席されない。私は前々回から木村法務総裁に対しても、少し詳しく御質問したいと思つて出席を要求しておるのでありますが、きようもまた木村法務総裁もおいでにならない。実はこの前私は多少時間をいただいて、大橋国務大臣にお尋ねすることができたのでありますが、あれも、あのときは午後まで会議を続行してくださいましたからできたのです。もしあのときに午前中で打切られてしまつてつたら、いくら公平な委員長でも、私にあれだけ発言を與えていただく機会はなかつた。こういう外務委員会における審議を盡さざる状態であつては、私ども外務委員といたしまして、国民に対する義務を果すことができないと思いますから、この次には法務総裁と、それから岡崎国務大臣、大橋国務大臣にはぜひおいで願いたいということと、来週は少くとも二回ぜひお開き願いたいということを委員長にお願い申し上げておきます。
  169. 仲内憲治

    仲内委員長 承知いたしました。
  170. 戸叶里子

    ○戸叶委員 簡單に一点だけ伺いたいと思います。今旅券の問題をめぐりまして、ソ連地区の抑留者の問題、あるなしというようなことが、政務次官と林さんとの間でいろいろ論議されておりましたが、私それで思い出しますのは、ちようど昨年スイスヘ参りましたときに、万国赤十字社の倉庫には、六千万人のカードが各国別にありまして、そこに捕虜の人たちの名前が書いてある。一九四八年までには二千五百五十万通の手紙の問合せがあつて、その人たちに対しての仲介の労をとられておりました。非常に親切によく調査してありますので、私感激したのですが、そのときに聞いた話によりますと、ソ連が国際捕虜條約に入つておらない。そこでいろいろな点で協力を求めても、協力を得られないので困るというようなお話を聞いたのです。そこで問題になつて参りますのは、この国際捕虜條約というものに入つておらないために、たとえば今回の日本の問題のような、この未帰還同胞を、入つていないからそれに協力して返さないでもいいというようなことが何かあるかどうか、その條約と、今回の日本の未帰還同胞との関係があるかないかというようなことを伺いたいと思います。それともう一点は、この国際捕虜條約に参加しておらない国が、どことどこにあるか、この二点を伺いたいと思います。
  171. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 入つていない国がどこどこであるかということは、これはちよつとただいま資料が手元にありませんので、あとでお答えしたいと思います。日本といたしましては、平和條約の署名とともに行つた宣言の中で、効力発生後一年内にこれに加入するという意思を有しておるということを宣言しておるのでありまして、目下そのための準備を進めておる次第でございます。
  172. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本の問題ではなくて、私の質問の仕方か悪かつたかと思うのですが、ソ連がこれに入つておらない。ソ連がもしも日本の未帰還者に対して、日本へ返そうと協力しないとするならば、何か條約との関係があるかどうかということを御答弁願いたいと思います。
  173. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 お尋ねのような、向うが入つていないからどうという、そのために非常に不利ということは、直接にはないのじやないかと思うのでありますが、この戦争犠牲者の保護に関する條約の前提になるものといたしまして、陸戦の法規慣例に関する條約及び規則というものがありまして、この條約、規則の中にも、捕虜に関する規定が設けられておるのであります。これはいずれの国もみな当事国でありますから、特にこのために、日本が非常な不利を受けておるということはないのじやないかと思います。
  174. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それがないのではないかでなくて、ないと判定されてもいいわけですか。もしきようそれがおわかりにならなかつたら、この次までにお調べいただいてもけつこうだと思います。
  175. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 一応お答えしておきます。たとえば先方がその條約に入つていないからどうだこうだというようなことを、かりに言うとすれば、それは非常に不利であろうと思いますが、そういう意味ではあるかもしれませんが、今申し上げましたように、前段の條約、規則というものは、いずれもみな当事国であるのでありますから、御質問のような懸念は少いのじやないか、かように思います。
  176. 仲内憲治

    仲内委員長 本日はこれにて散会いたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時十八分散会