○林(百)
委員 政務次官にお聞きしますが、私が実は先ほど大橋国務
大臣に声を大きくしてお聞きしたのは、
日本と国府亡命政権との間のこのとりきめについて、国際的に非常に問題がいろいろ出て来ておる。御承知の
通りに、北京にある中華人民共和国政権としては、どうしても台湾を解放しなければならないということは、これはもう中国の人民にかたく誓
つているところであります。ですからいずれ台湾の解放戰というものは起きて来ると思う。ところがあすこにいるショウ石政権としては、逆に機会あらば大陸へ反攻しなければならない、要するに反撃して大陸へ上陸しなければならないということを、常に主張しておるのであります。
従つて台湾で問題が起きると、将来どうしてもあすこで、台湾の解放の問題にからんで、重大な紛争が起きて来ることは、これは当然だと思う。たとえばダレス氏が一月二十一日、アメリカの上院の外事
委員会で、「われわれは中国で自然に変化の起るのを待
つていることはできない。このような変化を起させるためには、自由世界、特に米国がアジアでと
つている消極的な、ま
つたく防衛的な政策を乗り越えた政策をとる必要がある。そのためにはかたい決意が必要であり、チャンスがあり次第このかたい決意を実行に移す。」要するに軍に台湾を守るということばかりではなくして、台湾から一歩積極的に共産主義勢力あるいは人民勢力を押えるために、反攻に出なければならないというようなことを、一月二十一日の上院外交
委員会で、ダレスが主張しております。それから同じくトルーマン・チャーチルの会談において、チャーチルが十七日、アメリカの下院の議場で開かれた上下両院合同会議に臨んでまた「西欧諸国は台湾が占領されることは許さぬだろう。」要するに台湾が中華人民共和国
政府によ
つて解放されることは許さぬだろうということをはつきり、これは本年一月十七日のアメリカ下院の議場で演説しておるのであります。それから同じくデユーイが「しかしフィリピンは一九四一年のように台湾が敵の手中に陷れば非常な危険にさらされ、おそらく完全に防衛不能にはなるだろう、真珠湾奇襲の翌日クラークフーイルドを空襲し、地上にあ
つた米軍機を破壊した
日本の爆撃機は、当時
日本の手中にあ
つた台湾からや
つて来た。コレヒドールを爆撃した飛行機も台湾から来た。台湾はフィリピンから約二百二十マイルである。以上のように広い観点から
考えれば、われわれが太平洋地域を部分的に保持することは不可能である。」要するにどうしてもフィリピンを守るためには、台湾が中華人民共和国
政府によ
つて解放されることは許しがたいということをデューイも言
つておるのであります。また台湾の陳誠行政院長は昨年十二月二十一日の演説で「吾人の台湾における努力と進歩は、大陸人民の勇気と信念を強化した。大陸反攻が実行されれば、大陸では反共の大潮流が起り、迅速に共匪政権を打倒し去るであろう。」
「吾人は決して外国軍隊の中国における作戦を希望するわけではない。吾人は必要な軍備と経済援助さえ得るならば、ただちに大陸に反攻できるのだ。中国大陸の收復によ
つて、アジアの安全は保護せられ、西方の危機は緩和されるであろう。」こういうことを陳行政院長は言
つているのであります。同じく本年一月の演説では「大陸反攻を望んでいない者は一人もないのである。われわれの任務は重大であり、団結と奮闘こそわれらが勝利を得る基本的要素である。」こういうことを主張しているのであります。ここで明らかに中国、ソビエトあるいはこうした人民民主主義諸国と、いわゆる資本主義、帝国主義諸国との間に台湾の問題をはさんで、将来非常な大きな紛争が起きるということは、想像し得るのであります。ところが最近台湾と
日本は條約を結びたい、しかもその條約の内容を見ますと、これは
昭和二十七年二月十日の
日本経済でありますが、この中日双務
平和條約の内容の中には、「国府は
日本が自衛のためにとる
措置に反対しておらず、
日本がアジアの集団的安全保障に貢献することを希望する」要するに台湾政権としては
日本をも含めて、台湾の集団的安全保障を取結びたい。要するに台湾を防衛するために
日本の戦力も使いたいということを、中日双務
平和條約の中で、台湾の国府亡命政権が言
つております。また二月六日の毎日新聞によりましても、国府亡命政権との
講和條約の中に「安全保障
措置としては、将来
日本が防衛力を増大して太平洋安全保障機構に参加し
協力する。」という條項を一つ入れてあるのであります。こうなりますと、台湾で紛争が起きることは火を見るよりも明らかだ、その紛争の起きる台湾と
日本が地域的集団安全保障のとりきめをするということになれば、これはどうしても
日本の警察予備隊、あるいは保安隊がこの紛争に巻き込まれるということは、これは火を見るよりも明らかだと思うのであります。しかも大橋国務
大臣はわれわれには口を緘して何も言いませんが、新聞記者諸君に対しては、
日本の防衛隊の海外派遣ということは
考えられる、しかも昨日の各新聞は「保安隊の海外出動、自衛上ならば可能」という見出しで、こういう、これは何号活字か知りませんが、おそらく新聞社としては最大の活字で報道しているのであります。これを單に、新聞記事に対しては責任が持てないということだけでは、無視することはできないと思うのであります。しかもわれわれの持
つている情報によりますと、警察予備隊は帝国製麻に対して三億円の南方向けのキャンプを注文しておるのであります。こうなるとわれわれは、
政府がいかに強弁しようと、
日本の保安隊、あるいは防衛隊が将来太平洋における地域的集団安全保障の一環として、台湾、朝鮮、遠くはヴエトナムまで派遣する可能性が、どうしてもわれわれには
考えられるのであります。そういう意味でわれわれは
日本のとうとい青年諸君の人命を、
日本と直接
関係のないアメリカのアジアにおける政策の一環として、台湾やヴエトナムでむなしく白骨をさらしたくないということを私は
考えるから、真剣に大橋国務
大臣に
質問したのでありまする
石原次官は大橋国務
大臣みたいに人も悪くないから、ああいうふうに不誠意な答弁はしないと思いますから、お互いに胸襟を開いて、立場は違うけれ
ども、やはり
日本の国の将来のことを
考え、
日本の国の青年諸君のことを
考え、われわれの子孫がむなしく台湾やヴエトナムでまた白骨をさらすことのないようにということを
考えますれば、この問題はどうしても私は見のがすことができないのであります。そういう意味で私は
石原次官にこの問題についての誠意ある回答を求めたい。そこで具体的に回答のしいいようにこういうことをお聞きしたいのです。
今度の台湾との
講和條約といいますか、あるいは限定された
講和條約の中に、安全保障の問題もあるのかどうか、また台湾側の国民
政府の亡命政権の中に、
政府側の意向としてそういう希望が伝えられているかどうか、まずその点をお聞きしたいと思います。