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1952-02-06 第13回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月六日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 小川原政信君 理事 佐々木盛雄君    理事 並木 芳雄君 理事 戸叶 里子君       大村 清一君    菊池 義郎君       近藤 鶴代君    飛嶋  繁君       守島 伍郎君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         警察予備隊次長 江口見登留君         賠償政務次官  入交 太藏君         外務政務次官  石原幹市郎君         外 務 次 官         (大臣官房長) 大江  晃君         通商産業政務次         官       本間 俊一君  委員外出席者         專  門  員 佐藤 敏人君         專  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 一月三十一日委員林百郎君辞任につき、その補欠 として立花敏男君が議長指名委員に選任され た。 二月四日委員近藤鶴代君及び立花敏男辞任につ き、その補欠として古島義英君及び山口武秀君が 議長指名委員に選任された。 同月五日委員古島義英君及び山口武秀辞任につ き、その補欠として近藤鶴代君及び立花敏男君が 議長指名委員に選任された。 同月六日委員立花敏男辞任につき、その補欠と して林百郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する  件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律  案(内閣提出第一〇号)  千九百十二年一月二十三日にへーグで、千九百  二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九  日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴ  で、千九百三十一年十一月二十七日にバンコツ  クで並びに千九百三十六年六月二十六日にジユ  ネーヴで締結された麻薬に関する協定、條約及  び議定書を改正する議定書並び附属書への加  入について承認を求めるの件(條約第一号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。まずポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係命令措置に関する法律案、及び千九百十二年一月二十三日にヘーグで、千九百二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴで、千九百三十一年十一月二十七日にバンコツクで並びに千九百三十六年六月二十六日にジユネーヴで締結された麻薬に関する協定、條約及び議定書を改正する議定書並び附属書への加入について承認を求めるの件、條約第一号を一括議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。入交賠償政務次官
  3. 入交太藏

    入交政府委員 ただいま議題になりました、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係諾命令措置に関する法律案について、その提案理由を御説明いたします。  本案提出にあたりまして、政府が考慮いたしました点は、次の通りであります。  平和條約の締結に伴いまして、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く賠償庁関係命令中、朝鮮総督交通局共済組合の本邦内にある財産整理に関する政令につきましては、当該整理がなお半年余を要し、当該條約発効後にわたると思われますので、これを引続き法律としての効力を有するごとく、措置いたしたいと存ずる次第であります。  また特定財産管理令につきましては、戦犯未決中の財産管理は、條約発効後は條約においてその必要も明記されておらず、総司令部意向としましても、廃止してさしつかえない趣でありますので、今般政府としましても、これを廃止したい所存であります。  何とぞ愼重御審議の上、すみやかに可決されますよう希望いたします。
  4. 仲内憲治

  5. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま議題となりました千九百十二年一月二十三日にへーグで、千九百二十五年二月十一日、千九百二十五年二月十九日及び千九百三十一年七月十三日にジユネーヴで、千九百三十一年十一月二十七日にバンコックで並びに千九百三十六年六月二十六日にジユネーヴで締結された麻薬に関する協定、條約及び議定書を改正する議定書並び附属書につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定及び附属書は、一九四六年十二月十一日にニユーヨーク州レークサクセスで署名されたものでありまして、その加盟国は、一九五一年六月末日現在五十三国に上つております。  この議定書及び附属書目的は、国際連盟が解消した結果、前述の諸條約が連盟に與えていた一定の任務を履行する機関がなくなつたことにかんがみまして、これらの任務国際連合及び世界保健機関に引継がしめることであります。  わが国は、前述の諸條約中、一九三六年のジユネーヴ條約を除いたほかの五條約の加盟国でありますから、これらの諸條約に規定する国際協力を再び開始するためには、この議定書及び附属書加入することが必要であります。また、わが国は昨年九月八日サンフランシスコにおいて、この議定書及び附属書加入することを宣言しておりますから、これに一日も早く加入することは、わが国国際信用を高めるゆえんであると考えられます。  よつてこの議定書及び附属書への加入について、御承認を求める次第であります。  右の事情を了察せられ、愼重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを、切に希望いたす次第であります。
  6. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまの案件に関する質疑次会に讓ることといたします。     —————————————
  7. 仲内憲治

    仲内委員長 次に国際情勢等に関する件を議題といたします。質疑通告順にこれを許します。菊池義郎君。
  8. 菊池義郎

    菊池委員 政府日本独立と同時に、国連加入と同様の効果を生ずるような方法手段について、研究しておられるはずでありますが、さしあたりどういう構想を持つておられますか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  9. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまのところでは、正式加入が一日も早くできまするように、いろいろの方途を構じておるわけでありまするが、現在では国連もとにありまするいろいろの機関に対しまして、オブザーヴアーを派遣いたしますとか、そういういろいろの手段を通じまして、できるだけ国連の諸機関目的に合いまするような方法を、構じておる次第であります。
  10. 菊池義郎

    菊池委員 今のところまだ御研究がないようですから、これ以上追究いたしません。  日本政府平和條約の発効後も、米国援助を懇請することが賢明であると思うのでありまして、米国政治家中にも、日本独立後も、必要があるならば援助することはできるということを、言つている人もあるのです。たとえば向うの副大統領のバークレーのごときは、そういうことを言つておるのでありますが、これについての政府意向はどうでありますか。
  11. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 大きな構想につきましては、いずれ上局よりお漏らしを願いたいと思うのでありますが、ただいまといたしましても、日本はもちろん自立経済確立に邁進しなければならぬと思うのであります。しかし今後といえども、もちろんアメリカ援助、あるいは自由国家群との協力等によりまして、日本経済再建に邁進しなければならぬということは、もちろんであろうと思います。
  12. 菊池義郎

    菊池委員 国民政府との平和條約を地域的に限定するとの了解が、米国を通じてすでになされておると伝えられておりまするが、この点は事実であるかどうか。
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは御案内通り国民政府と今回結びまする條約につきましては、吉田ダレス書簡によりまして、すべてが律せられる。これが基準になるのであります。この吉田書簡によりまして、すべてを御了承願いたいと思います。
  14. 菊池義郎

    菊池委員 それはわかつておりますが、平和條約の効果地域的に限定するという、そのことについての了解ができておりますか。
  15. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この吉田書簡には、ここにありますように、国民政府現実に施政の権能を行使しておりまする現実もとといたしまして、條約関係に入ろうということが、これにうたつてあるのであります。ダレス氏あてにこの書簡が出ておるのでありまして、これをもとといたしまして、アメリカの方でもいろいろの構想を練つておられることと思います。
  16. 菊池義郎

    菊池委員 それから国民政府を永続性あるものと認めて、條約を結ぶのであるか。蒋介石の余命も、もう幾ばくもないわけでありまするが、蒋介石一代という見通しでもつて條約を結ばれるのでありますか。その点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  17. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはどうもここでお答えする限りでもないと思うのでありますが、もちろん今回の交渉は、個人を相手交渉ではないのでありまして、政府政府交渉でありますから、ただいま申されたようなことではないと思つております。
  18. 菊池義郎

    菊池委員 蒋介石の歿後において、おそらく蒋政権を継ぐ者はなかろう、他にかわる人はあるまいというような、一般見解が流布されております。これについてお答えをなさることは苦しいでありましようから……。それでは平和交渉全権河田烈氏が選ばれましたが、この前代議士をも同行させるということが伝えられておりましたのを、それがとりやめになつたというわけでありますが、それはどういうわけでありましようか。サンフランシスコには大勢の代議士が行きまして、台湾に行かぬということは、彼らの面子をつぶすようなことがありはせぬか。われわれはそれを心配するのであります。
  19. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 全権団はできるだけ簡素な構成で参りたい、こういうような考え方から、全権団をきわめて簡素なものにしておるようでありまして、そういうことと関連いたしまして、考えられたことと思つております。
  20. 菊池義郎

    菊池委員 つまりアメリカの方へはサンフランシスコにやりながら、台湾へ行かねというと、面子を重んずる彼らですからひがみはせぬか、変に思いはせぬか。そういう点はもつと外交を上手にやる意味において、代議士を加えたらどうか。
  21. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 政府もそこらの点はいろいろ考慮したようでありまするが、その最後の結論といたしまして、先ほど申し上げましたように、簡素な仕組みの方がよいであろう、こういうわけで決定されたと思います。
  22. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君から関連質問がありますから……。黒田寿男君。
  23. 黒田寿男

    黒田委員 ちよつと外務当局に承りたいと思います。国民党政府相手講和條約が、地理的な意味での限定條約であることは大体わかつております。そしてサンフランシスコ平和條約の批准が、必要な数だけ各国においてなされて、それが効力を発生する時期もそう遠くはないというように予想されております。そこで、この台湾政府との講和條約は、サンフランシスコ條約の効力が発生する前に、効力を生ずるような方法でなされる御方針でありますか。それともサンフランシスコ條約が必要な批准を経て効力を発生しました後に、日本台湾政府との間に條約を締結するという御意思でありますか。この点を承つておきたいと思います。
  24. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 吉田書簡の中にも「わが政府法律的に可能となり次第」とあるのでありまして、法律的に可能となり次第というのは、大体サンフランシスコ條発効後ということを考えておるのでありまして、ただいまの御質問に対しましては、平和條発効後というふうにお答え申し上げておきます。
  25. 黒田寿男

    黒田委員 ちよつと関連して……。そうしますと、一つ疑問が起ると思うのであります。政府は、蒋介石政府が、すなわち中華民国国民政府が現在台湾支配しておる、こういうように理解しておられるようです。しかし今蒋介石台湾支配しておるというのは、もとより国際法上の基礎があつて支配しておるのではなく、單に現実蒋介石の実力をもつて自分の領土でない地域支配しておる。現実にそういう支配力をこの地域に及ぼしておるというにすぎないと考えるのであります。むろん政府はそういうふうにお考えになつておると思いますし、私どももそう解釈するよりほかに考え方がないのであります。そういたしますと、一体台湾という地域国際法上の基礎をもつて領有するに至る方法は、どういう道筋を通つてなされるものであるかという疑問が起る。なぜであるかと申しますと、ただいま政府は、台湾政府日本政府との講和は、サンフランシスコ講和條発効後であると言われたのでありますが、そうなつて参りますと、サンフランシスコ條約が効力を発生すれば、平和條約第二條規定によりまして、わが国台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄することになるのでありますから、そうなつた上は日本台湾について何らの権利はない。これを他人に讓るとか讓らぬとかいうようなことに対して、日本国としては、全然関與できぬことになると解釈しなければなりません。台湾という地域に対して、日本は全然権利を持たぬ国となる。そういう国になつてしまつた後の日本に、国民党政府との間に台湾をどうこうするというような契約を結び得る権限があるのでしようか。私はそれを疑問に思つておる。そこでこの点についてお尋ねしてみたのでありますが、どうも私にはそう思える。一体台湾領有権をきめるのはどういう方法によるべきであると、政府考えておいでになるのですか。私はサンフランシスコ講和條発効後では、日本台湾政府とだけでは、台湾領有権決定することはできないと思う。こういう疑問を持つておりますので、ちよつと関連質問としてこれをお聞きしたいと思います。
  26. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 前段はただいまお話になりましたように、サンフランシスコ條約第二條によりまして、日本領土主権を放棄するということで、その先の帰属の問題につきましては、何ら言及されていないのでありまして、これ連合国側のいろいろな会議でたびたび申されおりますように、連合国側決定すべき問題であろうと思うのであります。しかしながら、御案内のごとく台湾国民政府実効的支配を受けておる、現実支配を受けておるということも事実でありまして、連合国の多くもその事実の上に立つて国民政府といろいろの外交関係を維持しておるのでありまして、このような事態にありまして、こういう事実をもととして、わが国国民政府平和條約を結んで行こう、こういうことであるのでありまして、これは一応可能でもあるし、またでき得る措置でもないか、かように考えております。
  27. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田君、岡崎国務大臣関係がありますから、その辺で……。
  28. 黒田寿男

    黒田委員 いろいろとお尋ねしたいことがありますけれども、ただいまは関連でありますから簡單にいたします。ただちよつと今の締めくくりだけいたしたいと思います。私の疑問に対しまして政府は答えていただかなかつたと思います。台湾領有問題については、連合国決定するというような御見解でありますならば、日本決定に参加するのではなく、日本のかつて領土であつたものを連合国が処分を決定する、こういうことになるのであります。私が今質問いたしますのは、何か日本台湾政府との講和條約において、台湾領有問題が講和條約の條文の中に入るようなことを言うておるものがありますから、私はそういうことを日本国がやる権限があるかどうかということを、今お尋ねしておるのであります。今の政府お答えでも連合国がきめるというのでありますから、従つて日本はこれに関與しない。そうすると、日本台湾政府との講話條約において、台湾という地域領有決定する條文は挿入せられないということになる。そうなるのではありませんか。このことに私は疑問を持つたものでありますから、お尋ねしておる。これはどうでありますか。念のためにもの一度ちよつとお答えだけを得ておいて……。
  29. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 最後に言われた点をもう一回……。
  30. 仲内憲治

    仲内委員長 時間の関係がありますからどうですか、黒田さん、あなたも岡崎国務大臣質問されるでしよう。岡崎国務大臣の時間が非常に短かいので……。
  31. 黒田寿男

    黒田委員 それでは関連質問ですからこの程度で……。
  32. 仲内憲治

    仲内委員長 今菊池君の質問中でありますが、岡崎国務大臣が御出席になりまして、時間の都合もありますので、先に岡崎国務大臣に対する質疑を許すことといたします。同大臣に対しては四人通告が出ておるのであります。ます佐々木盛雄君。
  33. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はただいま東京において進行中の日米行政協定について承りたいと考えるわけであります。ラスク氏の声明におきましても、この行政協定というものは決して秘密的なものではなくて、全部を日米国民の前に公開するのだということを、言明されておるようなわけでありますが、ただいまのところどの程度段階に進んでおるかという点について、概括的なお話を承りたいと思います。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいままでのところは、毎回会議を開いたあとで簡単なコミュニケを出しております。その通りでありまして、それ以上には何もないのであります。大体の感じから言いますれば、話合いは順調に進んでおりまして、原則的な問題について、意見の相違というようなことはあまりないと考えております。しかしながらいろいろこまかい規定があるわけでありまして、その條文をどういうふうにするかということについては、お互いにいろいろ意見を交換しております。これについては、ほかの国との間にも同様の趣旨協定がすでにあるのもあり、またこれからできようとしておるのもありますので、これらも参考にして、今話合いを進めております。われわれの希望としては、そう長くかからないで、全部の話合いがつくであろうという予想を持つております。
  35. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 行政協定の目下進捗しつつある交渉の各條項について承るわけではありませんが、この行政協定の中に盛られておる趣旨に立つて、二、三の質問をいたしてみたいと思うのでありますが、簡單項目だけを申し上げて、御返答を要求する次第でございます。  現在占領軍が接収しておりまする接収中の建物であるとか施設というものは、相当大幅な解除を見ることが可能なものであるかどうかという点について、承つておきたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大幅なというのは見方でありますから、どうとられるか、結果をごらんになつて御判断願うよりしかたがないと思いますが、先方も日本経済一般あるいは国民生活という点を考えて、これにじやまにならないようなかつこうでとりきめをいたしたい、こういうことにしております。われわれの方もむろんそう考えております。従つてたとえば大きな都市の中央に、今占領軍が接收しておるところがありとすれば、それを郊外のあまりじやまにならないところに移す。しかし規模はそうかわらないかもしれぬ。これはアメリカ軍隊の大きさにもよることでありまするが、この大きさなるものも、また向うの方でいろいろ考えてきめることでありましようし、まだそこまではつきりした話合いを進めておるわけではありませんが、この施設もしくは区域等につきましては、できるだけ早く予備的な協議をいたしたい、こう考えております。正式の協議といいますか、正式の決定占領が終つたときにはつきりなるわけであります。その前に予備的の話合いを進めて、占領が終つたときにはすぐに新しい協定が実施に移せるようにと考えております。
  37. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 この日米行政協定の中に、日米合同委員会というものが、これは当然含まれておるものと考えるわけでありますが、そうかどうか。もし行政協定の中に日米合同委員会に関する條項が含まれておるとするならば、その構成はどういうふうなことを予想されておるかというような点について、伺つてみたいと思います。
  38. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 合同委員会のことはまだそこまで進行しておりません。これから話すことになりますが、題目としてはそういうものが考えられております。その構想等についても、この一週間くらいのうちに話合いが進められると予想しておりますので、今のところまだ申し上げる段階にはなつておりません。但しわれわれの方の考えでは、これは主として施設とか区域等に関するものであつて、いらなくなつたものは日本に返還する、新しくいるようなものがあれば、またそこで相談する、こういうような趣旨がおもなる仕事であると考えております。
  39. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 今度の日米行政協定の中に、日本自衛力増強確立というようなことに関する項目が含まれておるのかどうか。
  40. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは安全保障條約第三條の規定に基いて、とりきめられる行政協定であります。第三條には、アメリカ軍隊デイスポジシヨン、つまり駐留するところの各種の條件といいますか、そのデイスポジシヨンを定めるということになつておりますので、日本自衛力には直接の関連がありません。従つてそういう問題は行政協定の中には入らないはずであります。
  41. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 今度の日米行政協定の中には、日本自衛力に関する問題は含まれない。アメリカ軍日本に駐屯する諸條項に関するとりきめであるという御説明でありますが、すると国連軍との関係というものは、この日米行政協定の中においては規定されないのかどうか。私は平和條約の趣旨から見、また日米安全保障條約の精神から考えまして、日本国際連合と積極的な協力をしなければならぬことは当然なことであれ、従つてそのためには、この行政協定の中にも、国連に対する日本協力という問題が、取入れられるのではなかろうかと考えるわけでありまするが、その点についてはいかがなものでございましようか。
  42. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国連との協力問題については御説の通りであります。ただ行政協定は、安全保障條約に基くアメリカ駐留軍デイスポジシヨンをきめる規定でありますから、行政協定の中には、国連協力というような趣旨の問題は入つて参らないのが普通と考えております。ただサンフランシスコ会議のときに、アチソン国務長官吉田首席全権との間に、交換公文国連協力のことをうたつておりまするし、それから講和條約が発効しますれば、條約の條文によりまして、当然国連協力ということはいたすわけであります。従つてそれは行政協定とは別に、さらに国連協力についての話合いなり、必要があれば、それについての打合せなりをいたすのは当然と考えております。その際に、アメリカのここにおる軍隊が、日本の防衛のための軍隊であり、同時に国連協力する軍隊であるという性格を持ちますれば、そのアメリカ軍隊についても、国連協力の部分は、行政協定のほかに、別に話合いが行われるべきものである、こう考えております。
  43. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは、行政協定の中に含まれた事項であつて日本国家予算国民権利義務に関する事項というものは、日本国の憲法やその他の国内法に従い、また国会承認を要するものであるかどうか。
  44. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政協定そのものは、国会そのものは、国会承認を要するものとは考えておりません。それは安全保障條約を承認されたときに、政府は当然行政協定をとりきめる権能を認められておると認めております。しかしながらその協定の結果として、国民権利義務に関するようなものが出て来る場合、あるいは予算の必要が出て来る場合には、当然法律案なり予算案なりをつくつて国会承認を求めるし、また協定の中では、そういう法律案なり予算案なりが承認された場合に、その特殊の問題は発効する。こういうことになろうと思つております。
  45. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それから駐屯軍軍事基地におけるところの治外法権というものは、設定されるものかどうか。またたとえば課税の免除、裁判権等日本主権が、かなり制限を受けるのではなかろうかと考えるわけでありますが、一体どの程度主権制限というものが予想されるかという点について、承つておきたいと思います。
  46. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 治外法権というものは設定されることはないと考えております。但し裁判管轄権とか、あるいは課税の問題とかにつきましては、ある国の軍隊が他の国に駐留する場合に、国際法もしくは国際慣習で原則的にはきまつておるものであります。従つて、その国際法なり国際慣習なりに基いた裁判の管轄権とか、あるいは課税の免除とかいうことが行われるのは、当然と考えております。但し、国際慣習等も非常に明確でありませんので、ただいまそういう点について行政とりきめの中に、はつきりと規定を置くのが至当であろうと思つて協議をいたしておるのであります。
  47. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そういう慣例等から考えますると、駐屯軍に対する裁判権の問題でありまするが、もとより駐屯軍に対するアメリカの裁判権は、当然それは認められるものと考えるのであります。そうすると、駐屯軍に使用されておりますところの日本人の軍属であるとか、使用人とかいうもの等に対する裁判権というものは、大体どういうふうな構想でお進めになつておるかという点をも、あわせて承つておきたいと思います。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際慣習としては、これは説が多少違う点もありましようが、たとえばアメリカ軍隊に雇われておる、アメリカ人以外の国籍の人、ことにその国の人、つまり日本人等については、原則としては国際慣習では、その駐屯される国、つまり日本法律が適用される、日本の裁判権が適用されるというのが常識であろうと考えております。
  49. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは駐屯軍が公務中に、あるいは事故等によつて日本側に損害等を與えた場合の補償というようなものは、どういうふうな形式でするかという点について承りたいと思います。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも大体こういう種類の駐屯軍の公務中に與えた損害については、国際的の慣習があると考えております。ただその慣習の中には、両国政府が半分ずつ負担するという場合もありまするし、あるいは駐屯軍の方が七割五分を拂つて、その国で二割五分を拂うというようなことになつておるところもあるようであります。その歩合は別としまして、双方の国で適当な配分で損害の補償をやるというのが、国際慣例と考えております。
  51. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 アメリカ側の新聞報道によりますると、今度の行政協定の中に、規定される米軍の軍事基地の中に、原爆の基地を日本が提供するというようなとりきめがあるという意味の報道も、伝えられておるわけでありますが、そのようなことがあるのかどうか。またこの行政協定には、別に行政協定趣旨に基いて、何らかの隠された秘密事項というようなものが、あるのかどうかという点を承りたい。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 原爆の基地などというものは私どもは聞いたことがありませんが、ラスク特使もこの点については否定した新聞発表をいたしておると了解しております。秘密な協定が別にあるかというお話ですが、これは私もそう言い、ラスク特使もそう言つておりますように、全然秘密の協定はないのであります。
  53. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 最後にもう一点、それは日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約の第一條におまして、日本に駐屯する軍隊は、「極東における国際の平和と安全の維持に寄與し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧する」それからさらに「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄與するために使用することができる。」こう規定されております。これを三段にわけまして、第一段の、極東における国際の平和と安全に寄與するという立場から考えますと、この軍隊というものは、日本以外に出動するということが当然考えられるわけでありますが、その点についてはどうかという点が第一点。また第二の、日本国内の内乱、騒擾鎮圧のために使用する、あるいはまた外部からの侵略に対する武力攻撃に対して日本を防衛するという点、そういう場合においては、日本国政府の要請に基いた場合においてのみ、出動するということになるのかどうか。また海外へ派遣されるとするならば、当然両国政府の合意によつて行われるものと考えるわけだが、その間の事情についてはどういうものであるかという点を、承つておきたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今の国際情勢、また今の各種の動乱等を見ますると、日本に直接の侵略があるときだけが日本の危険なときではなくて、東洋なり極東なりの平和が脅かされることは、間接に、またそれが直接に、だんだん日本の平和を脅かす状況になるのでありまするから、当然日本の国外の状況にも、注意を拂わなければならぬわけであります。そこでそういう各種の規定があるのでありますが、むろん日本政府は、アメリカ政府とこういう場合については、十分協議をいたすことは予想されております。
  55. 仲内憲治

    仲内委員長 並木芳雄君。
  56. 並木芳雄

    ○並木委員 私の岡崎大臣行政協定についてお伺いしたい点は、今度の行政協定には別表というものがつくやに聞いておるのですけれども、この別表というものはどういうものですか、まずそれをお伺いします。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだその別表というものがつくとかつかぬとかいうところの話はいたしておりませんが、予想されるところは、日本中にある各種の施設なり区域なり、そのうちのどれを使うか、どれは返還するかということになりますと、非常に厖大なる表といいますか、書きものになると思います。そこで施設もしくは区域に関しては、協定自身の中に入れるとすると、そればかりが非常に長くなりますから、別に離して別表というようなかつこうになることと思つております。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 日本にとどまる兵力の種類とか数、これは別表には入りませんか。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは別表には入らないと思います。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 別表にはどこに駐留するかという場所、それからこれは空軍、海軍の場合両方あろうし、それが主になりましようが、大体どういうような内容がこの中に盛られて来るか、わかつておるだけお知らせ願いたい。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まだ、今申したようにその話が進んでおりませんからわかりませんが、常識からいいまして、また各国とアメリカとのとりきめ等を見ましても、アメリカ軍隊をどこにどのくらい置くかということは、発表しておらないのがあたりまえのことと思います。従つてこれは仮定の問題ですが、別表というものがありとすれば、どういう区域をアメリカ軍が使用する、どういう施設を使用する、そういう区域と施設が出て来るのじやないかと思います。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 私どもとして一番関心を持たれるのは、どのくらいの兵力か、またどういう種類の兵力が駐留するのぐあろうかということであります。それと相並んで、駐留軍が出動する場合には、どこでどういうふうにきめてやるのかということなんですが、こういうものをとりきめる機関というものが、やはり必要になつて来るのではないかと思うのです。そういうものは日米合同委員会できめられるのですかどうですか。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど言いましたように、まだ合同委員会のところまで話が進んでおりませんから、ここでお答えするわけには参りません。私どもよくわかりませんけれども、どういう兵力という昔の観念は大分変化して来ていると思います。たとえば何個師団というような勘定をしましても、その数が少くても空軍なり海軍なりが非常に多ければ、合計した戦力としてはかなり強いものがあるし、そういうものがなければ、ただ師団数が多いからといつて、戦力が強いというわけにも行かぬ。そこでアメリカの方では四囲の情勢を考えて、合計した戦力でもつて日本の安全を保障するに足ると見るものを持つて来るでありましようから、どのくらいということはちよつと言えますまいし、また始終変化するものじやないかと思います。要するに日本の防衛に必要かつ十分なる戦力を、日本及び日本の周辺に維持する、従つて日本の国内ばかりのものではこれは勘定になりませんで、沖繩がある、グアムがある、硫黄島がある、いろいろあるのでありまして、合計した戦力というものが考えられるのだろうと思います。
  64. 仲内憲治

    仲内委員長 並木さん及び皆さんに申し上げますが、岡崎国務大臣は参議院の本会議にすぐ出席しなければなりません。午後のほかの質問者も多いのですから、また御質疑願うことにして一応……。
  65. 並木芳雄

    ○並木委員 この問題だけにして午後から続けます。今の問題と引離せませんから……。そうすると日本に駐留する兵力などを決定するのは、もちろんアメリカの当局であろうと思いますが、アメリカの当局だけできめてしまうのかどうか。私どもは当然日本政府の方としても、これこれの兵力が必要である、また今は出動してもらう時期ではないかとか、つまり同等の発言力を持たなければならないと思うのです。そういう意味におきましては、当然日本側として国際情勢の推移などを検討して、どのくらいの防衛力が必要であるかという検討をし、かつ駐留軍に対して申入れをする機関というものが、必要になつて来ると思うのです。これは政府としてお考えになつていなければならつないことでございますが、その点どうなつておりますか。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そのどのくらいの兵力を必要とするかという議論につきましては、私はデリカシーの問題として御想像にまかせるよりしかたがありません。こつちが肩を張つて、おれの方がこれだけ必要だということを、ここで言うべきものじやないと思う。  日本政府機関として、何か相談する機関がいるかというお話ですが、これは政府として当然やるのであつて、特に機関を設ける必要はないと考えております。
  67. 並木芳雄

    ○並木委員 国防省とか防衛省とか……。
  68. 仲内憲治

    仲内委員長 まだ発言を許しておりません。午後にしてください。——林百郎君。
  69. 林百郎

    ○林(百)委員 ちようど菊池委員から台湾問題の質疑があつたので、ちよつとお聞きしたいのですが、私たちも講和條約との関係がどうなるのか、ちよつとも政府説明ではわからないのです。この講和條約二十六條に基く條約ではないわけですか。「同一の又は実質的に同一の條件で二国間の平和條約を締結する用意を有すべきものとする。」これに基く條約ではないとおつしやるのですか。ないというなら一体どういう点が違うか。どういう性格の條約か。それをお聞きしたいと思います。
  70. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはこの前の当委員会におきまして、数回にわたつて私申し上げたのでありますが、重ねての御質問でありますから、お答え申し上げておきます。  今回のこの條約はどういう内容になりますか、向うとの折衝の結果によつてでき上るわけでありますが、ただいまにおきましては、二十六條に予想する二国間の全面的な平和條約とは違つて来るのであります。しかし国府が現実に施政の権能を行使する地域におきまして、善隣友好の立場より、平和條約に示されました諸原則に従つて戦争状態を終結し、未解決の諸問題を解決しようとするものでありますから、さような意味ではやはり二十六條による限定的な平和條約と解し得るものと思う、かように私はこの前御答弁申し上げておるのでありまし、ただいまもその通り見解を持つております。
  71. 林百郎

    ○林(百)委員 非常に抽象的でよくわからないので、私の質問ももう少し具体的にしますが、そうすると講和條約の二十一條に基くこの中国は、第十條——第十條というのは、ずつと日本と北支事変以来の中国とのいろいろのとりきめですが、この利益を受けるという点が書いてある。それから第十四條の(a)の2によつて、賠償を受ける権利が中国にある。われわれは台湾政府と言わなくて、国民党残党グループと言つておるわけですが、今度の国民党残党グループとのとりきめによつて国民党残党グループは十條、十四條のこの利益は受け得るかどうか。ことにカイロ宣言によりますと、満州、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにあるとあつてポツダム宣言によつてカイロ宣言は遵守せらるべしということがあるわけですつが、そうすると賠償の特約だとか、あるいは中国領土の返還の問題とか、澎湖島、台湾、満州あるいは従来日本と中国との間にとりきめられたいろいろの不平等條約の廃棄に基く利益、こういうようなものは今度の日台條約によつて蒋介石の方に與えるというとりきめをするのですか、しないのですか。
  72. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 條約の内容につきましては、これは今後相手国との折衝によりましてきまる問題であろうと思いますので、一切は今後の折衝の結果をまたなければならぬと思うのであります。ただきわめて抽象的に申し上げますれば、先ほど申しましたような、いわゆる地域が限定されておりまする限定的な平和條約ということになりまする関係上、その内容につきましても、このサンフランシスコ條約の全部がそれに当るということはないのでありまして、従つて内容等も相当かわつたものができるのじやないか、かように考えております。
  73. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつとそこの点ですが、内容が相当かわるということは、要するに政府考え方としては、中国全土に対する賠償の問題だとか、あるいは澎湖島あるいは満州国の帰属というようなものは、地域的に限られた政権だから、こういう全面的なとりきめは今のところする用意はないというのですか。もうあなたの方は準備をして、河田さんが出発することになつているのですが、もう少し国会に親切に説明してもらいたいと思うのですが、それはどうでしよう。
  74. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 内容等につきましては、これから相手国との折衝に入りまするので、ここで申し上げることはできないと思います。ただ領土の帰属とかいう問題は、先ほど黒田委員からもいろいろ御質問がありましたので、お答えがあつたのでありまするが、日本平和條約によつて台湾その他の主権を放棄しておるということをうたつただけでありまして、帰属がどうなるかというようなことは連合国においてとりきめられる問題であろうと思います。
  75. 林百郎

    ○林(百)委員 関連ですからあまり長い答弁はいりませんが、どうしても私はわからないのです。二十一條に「中国は、第十條及び第十四條(a)2の利益を受ける権利を有し、」とあるが、この中国は、蒋介石政権というものを、今度の交渉相手方としての対象にしているのかしていないのか、この点は制限されるのかしないのか、この点が一つ。もう一つは、台湾政権とこういう交渉をしても、これはやはり本来の中華人民共和国との貿易、通商、こういうものは政府の方針としては自由に許すつもりなのかどうか。吉田さんの手紙によると、何か毛沢東を相手にせずというような、かつての近衛声明のようなものを出してしまつているのですが、あれは貿易だとか通商だとか、そういう関係までを否認されたような、そういう書簡なり声明であるかどうか、それが一つ。それから第三は、台湾日本が修好関係を結ぶことになりますと、将来当然中華人民共和国としては、中国は自分の支配下にあるのだ、蒋介石国民党の残存勢力なんだということで、台湾の解放という問題が起きて来ると思うのです。そうするとそういう場合に、台湾と現毛沢東というか中華人民共和国政権ですが、これとの間に紛争が起きた場合には、日本台湾側に立つて、将来中華人民共和国政権の台湾解放に対して妨害をし、これと戦うような危険を、われわれはどうしても感ずるのですが、これに対して将来の安全のとりきめだとか、地域的集団安全保障のとりきめだとか、そういうようなことを考えているのですかどうですか。そうなると日本台湾の問題で、また戦争しなければいけないことになるのですが、そういう危険についてはどういうことを考えておるか、はつきりさせておきたい。
  76. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 御質問の第一点は、第二十一條の中国というのは、これは中国全土を支配しておる場合の中国というものを考えておるものと思うのでありまして、今回の條約は台湾、澎湖島を事実上支配しておるという現実もととして、折衝される條約でありますので、違つて来ると一応解釈してもよいと思います。  それから第二点の問題は、これは事実上の通商関係、貿易関係という問題はもちろんあると思うのでありますが、ただ中共に対しまして国連の決議によりまして、金融措置もとられておりますし、あるいはまた最近バトル法等の関係もございますので、そういう大きな制約はございますけれども、事実上の貿易とか通商という問題はあり得ると思います。  それから第三番目の問題は、これは憲法の国内問題でありまして、日本としてこの問題に直接しかも積極的に、何ら関與接触し得る問題ではないと考えております。
  77. 林百郎

    ○林(百)委員 日本台湾との間に、将来何か地域的集団安全保障のとりきめをする。要するに先ほど佐々木委員でしたかに説明がありましたが、日本に駐屯しておるアメリカ軍隊は、極東の平和の維持のために行動するというのでしよう。そうしてこの極東の平和の維持という中に、台湾まで入るということになりますと、必ず中華人民共和国による台湾の解放という問題が起きて来ると思う。もし安全保障條約によつてアメリカ軍隊が行動するということになると、アメリカの行動に対しては日本はあらゆる援助をしなければならないというとりきめがありますから、ここであまり台湾と深入りすることによつて台湾の問題から日本が戦争に介入する危険が非常にあると思うのです。それでは私質問をかえますが、安全保障條約の中に、アメリカが責任をもつて極東の平和を維持するというその極東という中には、台湾は入らないと解釈してよいのですか。これは私は重要な問題だと思うのです。もし入れば大した問題になつてしまう。ですから中華人民共和国から言わせれば、新しい戦争の挑発だということを、中国の責任ある機関紙が発表しておるわけです。これは中国側から言つたら問題ないと思うのです。この安全保障條約の中の日本に駐留しておるアメリカ軍が、平和と安全の維持の責任を持つという範囲内に台湾が入るのかどうか。台湾が入るとすれば、将来中華人民共和国が台湾の解放をするというようなことで、そこに紛争が起つた場合に、日本が立つ立場はどうなるのか。アメリカ側に立つて、反共側に立つて、この中華人民共和国との紛争に、あらゆる援助をしなければならないという義務が発生するかどうか。私は共産党だからということでなく、実際心配になると思うのです。安全保障條約の中に、日本に駐屯しているアメリカ軍隊が、平和と安全の責任を負わなければならない区域というのは極東とありますが、極東というと台湾が入ることになる。ところが台湾は中華人民共和国から言つたら当然自分の領土で、これは解放しなければならぬ。国府残存グループがまだあそこに巣食つているから解放しなければならぬ。そしてあそこを一つの独立した政権としてあなた方が見れば、その独立した政権を侵したぞと反共のアメリカ側が言うことになる。一つの政権として認めればですね。そうすると朝鮮の南と北の問題と同じ問題が起きて来ると思うのです。南朝鮮という独立した政権があつてそれを北が侵した。台湾という独立した政権があつて、それを中華人民共和国が侵した。そうすると極東の平和維持のためにアメリカ軍隊が出動する。日本はこれに全的に協力しなければならぬということになると、台湾のために日本が戦争に入る。だから台湾独立した政権として、日本が国際的な諸とりきめをすることは、将来日本台湾問題についての紛争に介入されることになるし、むしろ考えようによると、われわれはやはり将来日本と韓国と台湾なんかと地域的集団安全保障を結び、要するに太平洋統一軍というようなものをつくつて日本軍隊台湾や韓国に出動しなければならないこのとりきめの前提として、日本とあなた方の言う台湾政権との修好條約を結ぶというようなことまで考えられるわけです。
  78. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、簡単にお願いします。
  79. 林百郎

    ○林(百)委員 台湾独立した政権があるというのでしよう。この独立した政権が中華人民共和国をどうしても解放するという問題が起きて来る。そうすとこれは極東の平和を乱すということになる。そうすると日本に駐屯しているアメリカ軍隊が、出動することになるのじやないか。たいへんな問題だよ。
  80. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまいろいろの御意見がございましたが、いずれも将来どうなるかとか、いろいろ仮定の立場に立つて言われたことでありまして、ここで私から御答弁申し上げる限りではないと思うのであります。しかも今度の條約とは直接関係がないように思います。また今のお話によりまして、極東の平和が脅かされるというようことになりましたならば、米国軍は国連の原則に従いまして行動をとるでありましようが、日本には直接関係した問題ではないと私は考えます。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。そうすると極東における国際の平和と安全の維持という中には、台湾も入ると解釈していいのですね。それだけ聞いておきまししよう。
  82. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 抽象的に答えますれば、もちろん極東の一部でありますから入ります。
  83. 菊池義郎

    菊池委員 国民政府日本から賠償をとらぬ、本土回復後に云々ということが伝えられておりますが、それは事実でございましようかどうでしようか。
  84. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 正式にはまだ何らの意思表示を受けているわけではございません。やはり今後の折衝の過程においていろいろ問題が出て来ると思いますが、何ら交渉を受けておりません。
  85. 菊池義郎

    菊池委員 米国行政協定の成立までは、講和條約を批准しないという宣伝が行われておりますが、こういう宣伝の行われている裏には、米国日本との協定には、有利な條件をもつてしようという腹があるように思われるのであります。政府はこの宣伝につきまして、宣伝の意味をどういうふうに解釈しておられますか。
  86. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 行政協定の締結と平和條約の発効は、大体同じころになるのじやないかと思うのであります。先方がいろいろなことを宣伝しているというお話でございましたが、これは別にこれによつて威圧的立場に立とうとかどうとか、そういうことは全然ないと思います。これはラスク特使が日本に見えました声明によりましても、あるいは演説等によりましても、平等の立場に立つて、しかも人民の一般の利益を害しないような立場において、十分検討しているということを表明されているのであります。全然そういうあれはないと思います。  賠償の問題につきましては、御承知のごとく日本とインドネシアとの間に、賠償の原則に関する中間協定のようなものができているのでありますが、これは平和條約第十四條に基きます最大限度と申しますか、最高度の日本の意思を表示しているものでありまして、日本政府はあの線に沿いまして、今後のすべての折衝を行うものと考えております。
  87. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私ちよつと関連して……。先ほど来台湾の問題について、共産党の立場とはまつたく逆の立場から私は承つているわけであります。共産党の話を聞いておりますと、どうも国籍が中国人か何かわからぬようなお話ですが、私は賠償問題について承りたいのですが、林君の話によりますと、日本は賠償を支拂う義務があるというような観点に立つておられるようであります。私はサンフランシスコにおける平和條約の趣旨から考えますと、賠償を支拂う義務はないことが條約によつて明らかであると思います。賠償を支拂う義務のあるのは、日本国軍隊占領し、かつ損害を與えておつた連合国に対してのみ、損害賠償支拂いの義務があるわけであります。ところが今度の台湾政府との二箇国間平和條約が、台湾、澎湖島との間の限定的な講和條約であるといたしますると、この賠償問題というものは起つて来ないはずだと私は思うのであります。国民政府側においては、賠償問題は正式会談が終つた後に、別個の会議で解決したいということを、すでに発表いたしておるわけでありまするが、これに対する政府の根本の考え方はどういう考えか。
  88. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 台湾に関する限りにおきましては、ただいまお述べになつ通りであります。
  89. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 その通りであると私は考えます。  次に承つておきまするが、申すまでもなくサンフランシスコ平和條約においては、日本台湾、澎湖島に対する主権を放棄しておる。その帰属はまだ未決定であるということが、先ほど来問題になつております。この台湾主権というもの、領土の帰属というもの、これは将来の連合国決定にまつというお話でございましたが、一体主権のないものと講和條約を結ぶとういことは、論理的に言つて成り立たないと私は思うのであります。台湾というものの主権を認めて、その主権者と日本との間に、今度の平和條約を結ぶのが当然の筋道だと考えます。従つて今度の台湾との間に平和條約を締結するということは、台湾領土というものは国民政府もとにあるとして、領土権というものは当然承認したものであると私は考えるのであります。先ほど来の御説明によりますれば、それがなくして、まことに筋の通らない、正体のわからないものと講和條約を結ぶということは、論理上成り立ちません。従つて私は日本講和條約で領土権を放棄したところの台湾、澎湖島は、今度日本台湾政府との間に講和條約を結ぶことによつて台湾政府に帰属を認めたことになる、こう考えますが、いかがですか。
  90. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほども申し上げましたように、領土の帰属の問題をきめまするのは、やはり連合国決定するところにまかされると思うのでありまして、台湾の中国への帰属を積極的に承認するということは、サンフランシスコ條約の原則からは許されないところであろうと思います。しかしながら今回條約を結ぼうということは、台湾を国府が現実支配しておる。統治の施政を行つておるという現実もととしてやるのでありまして、連合国の多くもこの事実の上に立つて国民政府といろいろ外交関係等を維持しておるのであります。こういう現実もとといたしまして、條約を結ぶということは可能でもあるし、適当な措置じやないか、かように考えております。
  91. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 領土権というものを認めない上に立つた主権者というものはあり得るのですか。
  92. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 国民政府というのは、日本が調印いたしました降伏文書の調印国でありまするし、それからまた列国多数の国が承認しておる国でありまして、その国民政府相手とするわけでありまするが、今回結びまする條約は、ただその政府現実支配しておりまする施政の範囲が、台湾及び澎湖島ということになつておりまするので、その現実に基きまして、今回の限定的な條約を結ぼうというのでありまするから、私は一応理論的にも可能な、あり得ることじやないかと思います。
  93. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そうすると台湾政府というものは、これはもとより承認しておるから、これとは平和條約を結ぶ。しかし台湾領土の帰属ということは別個の問題であるというが、台湾領土というものはその国民政府支配下にあるというただいまの御説明であるならば、台湾領土の帰属を日本政府が明らかに認めておることになると私は思うのであります。あなたの御説明はまつたく理不盡な、筋の通らない話でありましてその点につきましては、もう少し論理の一貫したところの御説明を願いたいと思うのであります。
  94. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先ほども申し上げましたように、サンフランシスコ條約の精神から考えまして、日本台湾主権を放棄しているというだけのことでありまして、どこに帰属するかということは、たびたび申し上げますように連合国決定するところであります。今回の二国間の條約によりましても、台湾の中国への帰属を積極的に承認するというようなことは、サンフランシスコ條約の原則からは、法律的には許されないところと考えるのでありまして、先ほど申し上げましたように、今回のものは現実の事実をもとといたしまして條約を結ぼう、こういうことであります。
  95. 黒田寿男

    黒田委員 私は先ほどの質問を途中で打切られておりますので、簡單に結論だけ伺いたいと思います。  私はただいまの佐々木盛雄君の御発言と、外務次官のお話を承つておりまして、私は佐々木君の御主張は不合理だと思う。むしろ外務次官のお話の方が正しいのである。そこでそのお話の方が正しい解釈であるから、その前提のもとでその次に問題にすべきものがあるので、先ほど御質問申し上げたのであります。佐々木君は、台湾蒋介石政府講和相手方になるならば、主権を持つものでなければならぬ。主権を持つならば、領土を持つていなければならぬというようなことを言われたのでありますけれども、しかし事実上支配する領土を持たないで、外国に亡命している政権というようなものもあり得るのであります。私は台湾政府は亡命政権であると考えます。事実上、現に台湾政府が自分の領土権に基いて支配しておる部分は何もない。しいて中国本土に領土権があるといえば、そうだという見方がないことはないけれども、事実上の支配はしていない。台湾は現在国際法上は日本領土であります。この台湾がどこの国の領土になるか、それを決定する筋道を私はただいまお尋ねしているのであります。先ほど私が問題にしましたのはこれであります。佐々木君の議論は俗な言葉でいえばむちやだ。むしろ外務次官のお話の方が正しい。そこで私は外務次官にお尋ねするのであります。佐々木君の言われるようなことを言う人がありますから、先ほどお尋ねしてみたのです。日本台湾政府との間の單独講和の中で、台湾の帰属の問題が決定されるかということを聞いてみたのであります。佐佐木君のような間違つたことを言う人があるから、質問してみたのであります。ところが政府はそうでないとおつしやる。なるほどその方が正しい。現に本日の毎日新聞紙上に報ぜられている国府との講和條約草案の中にも、領土の帰属問題について、「日本台湾、澎湖島等の主権を放棄しているので、今回の條約でもこれを確認するにとどまり、台湾、澎湖島の帰属について何等触れてはいない。」こう報ぜられているのであります。ただいま政務次官のおつしやつたことはそれだと思います。そこで私がここで質問したいのは、それでは一体台湾の帰属はどういう方法できめるのかということであります。たとえばもう一度サンフランシスコ会議のような連合国会議を開いてきめるのかどうか、それをお聞きしたいと思う。私はそれを問題にしたのであります。もし大体のお見通しでもついておれば、日本人としては関心を持つている問題と思いますので、政府の御見解を承りたいと思います。これで私の関連質問を終ります。
  96. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この領土の帰属につきましては、連合国側決定するところでありまして、いかなる方式をとつて帰属を決定するかというようなことにつきましては、まだ日本政府といたしましては関知しておらないのであります。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 ちようど本間通産次官が見えましたので、行政協定の内容の一つとして、われわれがどうしても考えなければならない日本の産業行政の問題が、行政協定の中でどういうふうにとりきめられているかということについて、お尋ねしたいと思います。大体この接収工場いわゆるPD工場あるいは特需工場いわゆるLR工場、こういうような占領アメリカ軍によつて接収されておりました工場、あるいは占領軍が監督官を派遣して監督しておつた工場、こういうようなものは今度の行政協定の中ではどういうようにとりきめられるようになりますか。また通産省の方針としては、どういう方針で行きたいかというようなことを、お聞きしておきたいと思うのです。それが第一点です。
  98. 本間俊一

    ○本間政府委員 お答えをいたします。接収工場につきましては、政府といたしましてはできるだけ早い機会に解除をしてほしいという線で、ただいま話合いを進めておるような次第でございます。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、解除しますと、あらためて日本に駐留しておるアメリカ軍隊、いろいろの軍需品やその他を発注する場合には、日本の経営者と米軍が直接契約するようになるのですか。
  100. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいま接収工場につきまして、できるだけ早い機会に解除を希望しておるという段階でございますので、その結末がどういうふうになりますか、また行政協定が御承知のように話が進行中でございまするので、お答えできないのでございますが、こちらの希望通りに解除されるということに相なりますれば、自主的な立場で向うの要望なりお話合いなりに応じてきめる、こういうことになるであろうと思います。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 それではまつたく常識的な答弁ですが、従来は兵站司令部から直接間接に注文が来まして、これが特調その他であつせんして日本のPD、LR工場に注文が来たのでありますが、今度はアメリカ駐留軍日本の工場との間に、たとえば日米合同委員会の中の一部門として、経済協力部門というようなものができて、それが仲介してやるのか、直接日本の民間工場とアメリカ駐留軍との間の契約になるのか、機構的にはどうなるのでしようか、その辺をお聞きしたいと思うのです。
  102. 本間俊一

    ○本間政府委員 まだその点は実ははつきりいたしておらないのでございまして、行政協定がきまりますれば、おのずからその機構の問題もきまるのであると思います。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたもだんだん吉田さんに似て、答弁がどうも不親切だと思うのですが、もう行政協定はほとんどとりきめられておるという発表もあります。それから岡崎私案はもうできているのだということまで、新聞に発表になつているのです。ですから私は政府の方針だけでも聞きたいと思うのです。これは日本の産業が完全に復活して、この日本の産業を日本人の手にとりもどしたいということは、これは日本人であるならばだれでも希望していることなんですから、この際日本の方針として完全に接収を解除してもらつて、将来の受注関係はこういう方法で行きたいというくらいの方針を、政府が持つていなかつたなら、かりにあなたの言葉通りであつたならば、無責任もはなはだしいと思います。その点をお聞きしたいと思います。一例を申しますと、すでに新聞の方がむしろ親切にいろいろ書いてくれているので、議会の方があとを追うような形になつているのです。経済協力会議——経済協力最高会議というような言葉を使つておりますが、各省次官あるいは各金融界の理事者、こういう者が集まつて官民で構成して、経済協力最高会議というような名前が使つてあるようでありますが、こういうものが将来日米合同委員会の一部門へ入つて、それからこれがアメリカ駐留軍との間の受注関係を、調整するような形になるというような構想はあるのですか、ないのですか。
  104. 本間俊一

    ○本間政府委員 私が故意に実はぼやかした御答弁を申し上げているわけではないのでございまして、現に交渉を担当いたしておりまする岡崎大臣の方から、まだはつきりした話合いが実際ないのでございます。そこでただいま御指摘のような最高経済会議が、ただいま御指摘のような問題に直接触れるようになることは、おそらくないのではないかというふうに私どもは思うのでございます。従つて解除ができまして、具体的などの工場にどういうものをつくらせるというような場合には、やはり何と申しますか、直接やるということではなく、そこに何らかこちら側に調整いたしまする機関ができるようになるのじやないか、こういうふうに考える次第でございます。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると日本側で調整機関ができるわけなんですか。それは大体どういうような構想であるか。それは政府の一機関となるのか、あるいは将来できる日米の間の合同委員会の一セクシヨンとなるのか、あるいは民間的な自主的な組織になるのか、その点はどうなんです。
  106. 本間俊一

    ○本間政府委員 その点はまだきまつておりません。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは次へ移りたいと思いますが、タングステン、モリブデン、あるいは軍需的に非常に必要な物資、こういうものは戦略物資として規制して行く方針かどうか。また規制して行くとすれば、こういう戦略物資に対する規制というのは、将来アメリカ軍との間のどういう機構を通じてどういうように規制して行くのか、この辺を聞いておきたいと思うのです。
  108. 本間俊一

    ○本間政府委員 ただいま御指摘のような稀少物資につきましては、御承知のように国際的にも非常に不足をいたしまして、国際的に割当てられてこちらへ来ておるわけであります。そういう関係で稀少物資につきましては、何らかの規制を法的にしなければならぬのではないか、そういうふうにただいま考えておりますが、しからば具体的にどういうふうに規制をするかということは、まだきまつておりません。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 何にもきまつてないんでは、どうもちつともわけがわからないのです。そうすると、もう二問ほどお聞きしたいと思いますが、たとえば輸入輸出の規制、特需物資あるいは価格の調整、それから特需の受注調整、要するにアメリカ軍から発注されて来るいろいろな受注関係、それに基く輸入輸出の関係、こういうものは従来は司令部の経済科学局にいろいろあつて、こういうところの指示のもとに、日本の国が動いていたのでありますが、今度の行政協定によりますと、こういう軍需物資の輸出入あるいは価格、あるいは量、こういうものの調整規制は、これは日本政府が自主的に日本政府の判断だけでできるのですか。それとも駐留するアメリカ軍との間に、何らかの機関を設けて調整して行くのですか。その点はどういう構想をお持ちですか。
  110. 本間俊一

    ○本間政府委員 輸出入の全般の問題につきましては、日本政府が自主的に決定をして行くことになるであろうと思います。ただ国際的に少いものでございますから、その入手の方法その他においては、アメリカその他の国といろいろな折衝をしなければならぬと思うのでありまするけれども、輸出入全般につきましては自主的に処置をして行く、こういうことになるであろうと思います。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 それから今までPD工場、LR工場の労働條件あるいは労働者の整理というようなものが、直接軍の命令で行われて、あたかも捕虜と同じような立場に立つて、銃剣を持つたガードに守られているというような労働條件もとにやつて来たのでありますが、そうするとPD、LR工場の接収が解除されるということになると、この中における従業員の労働條件は、何らアメリカ駐留軍によつて制限あるいはコントロールを受けない。向うの軍需物資をつくつておろうとも何をしようとも、かつてPD工場であつたとしても、その中における従業員の労働條件あるいは経営の方針等は、一切自主的にこちらが持つことができるのだというように考えていいかどうか。またあなたは今そういう希望だと言いますが、その希望は一体実現する可能性が十分あるのかないのか。その辺の大体の見通しはどうなんですか。
  112. 本間俊一

    ○本間政府委員 解除に相なりますれば、御指摘のようになるであろうと思います。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 だから解除になる希望は——大体あなたは解除したいと言つていたのですが、今の情勢だとどうなんですか。日本の工場が非常に接収されて使われておりますが、大体解除される見込みはあるのですか。それから解除してもらいたいという希望は、行政協定の中で相手側に意思表示されているのですか。
  114. 本間俊一

    ○本間政府委員 解除してほしいという希望は先方に通じて、ただいま話合いを進めておるところでございます。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、私はもうこれで打切りますが、通産次官の答弁を聞きますと、この重大な占領状態から一歩でも——自由党の諸君に言わせれば、独立する條約に基く行政協定だ、解放されるということを言われるのですが、今の通産次官のお話を聞きますと、行政協定によつて一体どのような明るい見通しが持てるのか、全然われわれは判断に苦しむのですが、非常に重要なとりきめだと思うのです。各言論界でもこれはもう国際的な條約と実質的には同じだと言つている。日本占領下において制限された権利が、少しでも回復できるかどうかという重大な段階に、この国政の任にあずかつている政府側の責任者が、全然岡崎さんから話がないから、よくわからない、また政府側のはつきりした方針も伝えることができないということは、この占領状態をまたそのまま合法的に続けることになると、私は考えるわけなんですが、この点、接収工場をとりもどし、あるいは貿易金融関係の自主性を完全にとりもどして、対等の立場でアメリカ交渉するという確固たる方針があるのかないのか。またそれに基いてあくまで邁進するのかどうか。もう一度あなたの責任ある答弁を私は聞きたいと思います。どうもあなたの答弁からいうと、大体今の占領状態がそのままなしくずしで続いて行つてしまう。ただ直接司令部があつたのが、日米合同委員会とか、行政協定とかに今度衣がえをしたにすぎないというような印象を非常に受けるのですが、その点最後に通産行政の最高責任者としての……(「最高じやない」と呼ぶ者あり)次の責任者としてのあなたの意見を聞きたい。
  116. 本間俊一

    ○本間政府委員 講和條約が発効いたしまして、その後に今の占領下の状態が、そのまま継続するのではないかというような御質疑でございますが、私どもはさようには考えていないのでございます。従つてただいま政府が、行政協定を締結いたしますために折衝しておりまするけれども、卑屈な考えは毛頭ないのでございまして、條約の発効に沿うて、あくまでも日本の自主的立場というものを、実際において確立して行くというかたい決心をもつて、問題に当つておるけでございます。ただ行政協定がまだはつきりきまらないものでございますから、明確なお答えができなかつたのでございまするけれども、その熱意と決心におきましては、いささかもかわつておらないつもりであります。
  117. 仲内憲治

    仲内委員長 これにて暫時休憩いたします。午後一時より再開することにいたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時二十一分開議
  118. 仲内憲治

    仲内委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。  国際情勢等に関する件について、質疑を継続することといたします。山本利壽君。
  119. 山本利壽

    ○山本(利)委員 前回の外務委員会におきまして、来る四月にモスクワで開かれる国際経済会議に対して、日本からも出席するようにという招請状が来ておる。このことについての質問に対して、石原政務次官からは、これも平和攻勢の一つではないかというふうに考えられるから、あまり好ましいものではない。そういう人たちが渡航することを許すかどうかという点については、どうせ旅券の申請もあるだろうから、そのときに考えてみたいというような御答弁がありました。そのときに私から、このモスクワの経済会議というものは、世界における経済問題、特に政治とか軍備とかいうものは一切抜きにして、世界全体の経済的状態を話合つてみよう。しかもどの国にも責任のかかるような決議をするような問題ではないから、そういう会議を開こうということになつた。但し自由国家群の方で開催地を求めると、共産主義国家群の方からの出席がどうなるかわからないので、ソ連に開催地を求めた。このことに対してソ連は同意してモスクワで開くことにしたが、この会議に対する招請状というものもパリから発せられており、開催地はモスクワであるというふうにわれわれは聞いておるのであるが、もしそうであるなら、こういう際に日本からも代表を送るということが好ましいのではないか。石原次官の御説明のように、平和攻勢の一つとして、これはわが国にとつて好ましからざるものとして判断すべきか、そうでないのかという点をお調べの上、御答弁を願いたいというふうにしておいたのでありますが、その答弁をいただいて、さらに岡崎国務相からも、日本外交という立場から、この問題についてお考えを承りたいと思います。
  120. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 お答え申し上げます。大体この前申し上げた通りでございますが、さらにただいまいろいろお話がありましたが、われわれといたしましては、この会議発生の経過、並びに会議招集発起人会の動き等より考えてみまして、やはりこの前申し上げましたように、しいて意見を求められましたならば、あまり好ましいことではないと考えております。それから御承知かとも思いますが、英国下院におきまして、イーデン外相も、やはり今回のこの会議は、同じような趣旨のものではないかという意味のことを言つておられるようでありまして、この前申し上げた通り考え方を持つております。
  121. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまの御答弁では、この前申し上げた通りということでありますが、この前あなたに私の方から御注文申し上げておいたのは、今回の招請状は個人に対して来た。そしてその名前は新聞紙等にも載つておるのでありますが、そういう人たちについても、そのいきさつやいろいろな点を聞き合わされての御答弁をいただきたいと言うたのでありますが、御研究になりましたでしようか。
  122. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 個人々々と全部話し合つたというわけでもございませんが、いろいろの筋からいろいろの調査をいたしました結果を申し上げたわけであります。
  123. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではこの問題について岡崎国務相の御意見を承りたいのでありますが、われわれが終戦以来アメリカに非常に世話になつたということも事実であり、世界全体を考えた場合に、あらゆる点で自由国家群の一翼として、われわれはすでに発足しておるというような点も、十分認めるのでありますが、今の経済的な問題から考えても、その他の点から考えても、とかく現状においては一方的なニュースしか国民は聞かないように思うのである。ソ連に対しては鉄のカーテンの中にあつて、その方面からの実情というものはわれわれは聞くことが実に乏しい。こういうような政治は抜きにしての話といつたようなときこそ、最もよい機会であるから、ソ連圏内に向つて日本の相当な人々を送つて、大体の実情を見て来させるということは、現在の政府の立場からも有利なことであり、また一般国民の中の、單なるアメリカ側のニュースのみでなしに広く世界を知りたいという人にも、その点に対する政府の考慮というものは、非常に好感をもつて迎えられると考えるのであります。大きい意味の政治的に考えて、こういう際にはむしろ進んでそういう会議には出席を奨励する、あるいは喜んで許すといつたような態度が、国家として必要ではないかと考えるのでありますが、この点に対して大臣の答弁を承りたい。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ソ連のやり方につきましては、戦争前にはわれわれの代表もおりましたし、またかなりの程度に実業家の人々その他もソ連に行き、またソ連を通過してほかの国に行つて状況をつまびらかにしようという努力をしたことは、しばしばありますけれども、当時一向真の状況はわからなかつたのであります。今回の問題につきましても、これは一つの問題でありますから、いいこともあり得るし、またそれに欠点もある。長所欠点いずれもあるのだろうと思いますが、それを総合して考えますと、やはり石原政務次官も言われたように、どうもこの際はあまりおもしろくないのではないかという考え方に傾いておるのは事実であります。アメリカ側、イギリス側その他各国の状況も、ただいまできる限り調べておりまして、その方面で一体どういうふうにこれを見ておるかということも、考えるべき問題だと思つております。元来これは政府に直接関係がないものでありまして、政府としては正式には何ら情報を得ておらない。むしろ積極的にあちこち手をまわして、知り得る限りのことを知ろうと努めておるような次第でありますから、まだはつきりしたお答えはできませんけれども、大体のところはそういうふうに考えております。
  125. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではただいまの答弁から推測いたしまして、もしこの会議アメリカとか英国も出席するという場合には、日本側においても出席を許すということになるものでありましようか。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは別にいばるわけではありませんけれども、必ずしも外国の状況のみによつてきめようと考えておりません。日本には日本の特殊の事情がありまするから……。しかしながら十分よその国の態度を参考にはいたそう、こう思つております。
  127. 山本利壽

    ○山本(利)委員 参考に承りたいのでありますが、こういう会議に招かれる人、ことに新聞紙上に現われている方方の名前等から判断いたしましても、北村さんとか村田省蔵氏とか石橋湛山氏とか、いろいろ各方面の方がいるのであります。十五や二十の人が行つたならば、ソ連においてすぐ赤化して帰るというようなこともありましようが、これらの練達した人々の場合にはさようなこともない。かえつてこういうことには利益が多いと思うのでありますが、いろいろな点を勘案して、これは不利益な点が多いように思われるという、その不利益な点が多い場合はどういう点であるのか、ひとつ御説明を承りたい。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私どもまさかそういう有名な方が、ソ連に一ぺん行つたから赤化して帰る、そう思つているわけじやないのです。ただいろいろの、平和攻勢という言葉は変な言葉でありますが、そういう意味のこともあるでありましようし、また何らかの意図のもとに、ある特定国を孤立させようという意味で、そのまわりの国をなるべくソ連の方に引きつけたいという考えもあるでありましよう。要するに冷たい戰争の間のやりとりでありまするから、いろいろの意味で宣伝価値とかなんとかいうことも、考えなければならぬと思います。すべてそういう点を今研究中であります。
  129. 山本利壽

    ○山本(利)委員 国務大臣に対してはそれだけです。
  130. 仲内憲治

    仲内委員長 戸叶里子君。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 私は吉田首相がダレス氏にあてた吉田書簡について少し伺いたいと思います。  吉田首相の言明によりますと、吉田書簡というものは、アメリカ議会における対日講和條約の批准を早めるためのものであると言われておりますが、平和條約の批准を早めるための條件といたしまして、中国における中華人民共和国政府よりも、国民政府を選択する態度の表明、及び中華人民共和国政府日本政府は排撃するというような意思表示が、必要な條件であつたかどうかを伺いたいと思います。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 吉田書簡に出ておりますることは、日本政府の前々からの方針であつて、これを書面にしたためたばかりであります。そこで上院の批准を早めるとかなんとかいうことは、その書面を上院に見せるということの手段、つまりその方法だけでありまして、方針について、上院の批准を早めるために、今までの方針をかえてこういう方針にしたのではなくて、今までの方針を書面にしたためて、その書面を見せることが批准を早めるゆえんである、そういう意味であります。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこの書簡は、あくまでも日本政府の自主性においてなされたということになるのでございますが、そういたしますと、この中に、「千九百五十年モスクワにおいて締結された」云々という文章を見ておりますと、「中国の共産政権は日本の憲法制度及び現在の政府を、強力をもつて転覆せんとの日本共産党の企図を支援しつつあると信ずべき理由が多分にあります。これらの考慮からわたくしは、日本政府が中国の共産政権と二国間條約を締結する意図を有しないことを確信することができます。」ということが書かれておりますけれども、どういう必要がありまして、人民共和政権との対立を激化するような言明をされたかということが一つ。もう一つは、それではこの中共政権が日本の国家及び政府を転覆するために、日本共産党を援助しているというような具体的事実を握つた上での発言でありましようか。それともあるいは日ころの共産党の行動から推察して、仮定の上に立つてこういうことをしようと思われるという、そういう想像の上に立つて、こういう言葉をお書きになつたのであるかどうかを伺わせてただきたい。
  134. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共政府との間の関係を激化すると言われますが、われわれはただ事実を事実として述べただけであつて、別に激化するとは考えておりません。書簡にもありますが、要するに中共に対する国連の態度等から考えて、今條約を結ぶべきような気持は政府にはないのであります。それから中共政府日本共産党云々という点については、信ずべき理由があるという意味には書いてあると思います。つまりはつきりした証拠というものがある場合もあり、ない場合もありましようが、われわれとしては十分信ずべき理由がある、こういう意味であります。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 それではその信ずべき理由というものがありましたら、教えていただきたい。
  136. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいずれ資料によつて説明いたします。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは次に移りますが、先ごろの本会議で、吉田首相は日本と中国との経済関係を、どういうわけか知りませんが、非常に軽視なさいまして、中国との貿易は戰前五%であつたと言われておりますが、この数字は何を根拠としたものであるかを、伺わせていただきたいと思います。日本と中国との貿易関係は、戰前において何人といえども、その重要な地位を占めていたことを認めない者はないと思います。日本と中国との国家性格は違つておりますし、イデオロギーは違つておりましても、日本と中国との共存共栄の経済提携は、必ずしも不可能ではないと信ずるものでございます。政府はよし困難でありましても、日本と中国間における調整のために努力すべき義務があると思いますが、これに対する考え方を伺いたいのであります。
  138. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中国の政府が純然たる計画経済をとつているときと、それから自由主義といいますか、共産政権の前の国民政府がとつてつたような経済政策をとつている場合と、そのそれぞれによりまして、経済貿易等の分量もおのずから違つて来ると思います。戰前にこれだけの貿易量があつたから、今後もそれだけの貿易量があるのだという断定は、ちよつと適当ではないと思います。われわれの考えでは、かつて戰前にはソ連との間にも平常関係を維持し、貿易をやつてつたのであります。計画経済を極度に遂行する国においては、自己の必要とする資材等を相手国に求め、その範囲で自国の輸出を行うという趣旨で来ているようでありまして、いわゆる三角貿易といいますか、ただ外貨をとるためにどんどんある国へ輸出する、その外資をもつてよその国からどんどん買つて来るというような、いわゆる自由経済的な貿易を行い得なかつたために、ソ連との間の貿易量もだんだん減つて来た事実が、過去においてあるのであります。今中共治下にある地域との貿易を考えてみますと、第一にわれわれは国連協力という大筋から、国連決定して中共治下の地域に対してある種の措置をとつております。それに協力いたす意味で、日本でもある種の品目は輸出を禁止しております。それ以外のものにつきましても、貿易が十分できればけつこうでありますが、今のところそう十分にできる見込みはついておらないのであります。従つて、戰前のことを考えて中共貿易の将来を予測するということについては、総理もしばしば言つておられるように、中共貿易をあまりにエグザジヤレートしない方が適当であろう、こういうふうに考えておりまして、われわれはその他の方面でこれを補うべく、今努力中であります。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 今中共との貿易のより以上の交渉は、非常に困難な形で、できないということは了承いたしましたが、そういたしますと、日本貿易の不振を補うためには、東南アジアその他によつて埋め合せなければならぬと思います。これまた東南アジア方面では英国との深刻な対立があり、ポンドが過剰で行き悩んでおりますが、このような日本貿易の行き悩みを、日米経済協力会議などを通しまして、何らかの手段によつて、具体的に解決するような試みがなされておるかどうかを、お伺いしたいと思います。
  140. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米経済協力等につきましては、もちろん具体的にいろいろ相談をいたしております。しかしイギリスとの間の競争ということも、フエヤーな基礎に立つての正当なコンペテイシヨンであれば、別段心配することはないと思つております。そのほか世界の各地、たとえば南米方面であるとか、アフリカ方面であるとか、いろいろな方面に対してももちろん考慮をしておりまして、その結果というかどうか、これは別ですが、日本の貿易量が逐年増大しておるのは御承知の通りであります。さしあたりのところ特にこれ以上、もつと大きな希望を持つております。ですから満足と言えるかどうかはわかりませんが、とにかく貿易の収支その他から見まして、国民の需要を満たすに足る程度の貿易は行われつつあり、またこれが増大しつつあることは御承知の通りであります。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 イギリスとの貿易関係については、フエヤーなコンペテイシヨンの上に立てば、問題はないということをおつしやいますが、先ごろイギリスへ参りまして、いろいろな人に会つて聞きますと、日本に自由貿易を許すと、結局日本の製品が安くてどんどん輸出されるから、自分たちにとつて非常な脅威だ。たとえば白木綿などの例を引いて話されましたが、日本から出ざるものが一ヤード三十セントであるのに、イギリスの製品は七十五セントである。そういうことから、とても日本に自由貿易を許すわけには行かないというような声が、非常に強かつたのでございます。そういうような点から見まして、またそういう人たちの話から勘案いたしまして、何か市場協定とかあるいは価格協定ということが、提出されて来るのではないかと思いますが、その点についてはどうでございましようか。
  142. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 個々の品目につきましてはおつしやるような点もあると思いますが、逆に日本の製品の方がコストが高いので、売れない品物もたくさんあります。むしろわれわれはその方が多いような気がしております。この点は何といいますか、産業の合理化等でコストを引下げなければならぬ、そう強く考えているわけであります。そこで価格協定とかなんとかいうような種類のことも、これは独占禁止法その他いろいろな法規もありまして、どうなりますか、今のところ別段そういう具体的な話が行われているというわけではないのであります。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 一点日米行政協定のことを伺います。私どもは平和憲法擁護の立場に立つております。政府は憲法の改正並びに再軍備は行わないという意向を披瀝しておりますけれども、憲法改正を行わないで、また再軍備をしないと言いながらも、現実には再軍備的既成事実をつくり上げているかのような印象を、国民に與えているような気がいたしておりますが、その間の事情を、政府のしようとしております、今現に行われております日米行政協定によつて、何らか具体的に表示されるかどうかを承りたいと思います。その具体的條項いかんによつて、憲法に抵触し、また再軍備的性格を帶びて来たときに、政府はどういうふうな処置をもつて議会の承認を得ようとされるか。あらかじめ政府意向を承つておきたいと思います。
  144. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 けさほども申しました通り行政協定安全保障條約の第三條に基くものでありまして、同條においてはアメリカ軍隊のデイスポジシヨンをきめる行政協定ということになつております。従つて政府が行い得る範囲は、アメリカ軍デイスポジシヨンをきめることにあるのでありますから、日本自衛力の漸増とか、あるいはおつしやるような再軍備というような問題が、行政協定の中に入つて来る心配は全然ありません。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 それではもう一点だけ伺いたいと思います。それは外資の問題です。サンフランシスコ講和会議におきまする平和條約及び安保條約は、国民を納得せしめがたいものがあるように思いますが、その代償として、外資の導入により日本経済再建を有利ならしむるような、成果をあげるような印象を一般に與えておりましたけれども、池田大蔵大臣を派遣したのに、何ら見るべきものがなかつたように思われます。日本の今問題になつております基礎産業の復興のためには、電源開発というようなことが大事であり、その電源開発には、まとまつた外資の導入というようなことが、必要だと思うのでございますけれども、その外資の導入に対して、政府はどういう態度をおとりになろうとしているか。あるいはまたこの見通し等につきまして、お伺いしたいと思います。
  146. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 講和條約や安全保障條約は、国民の納得できないものであるから、外資を導入することによつてごまかすというようなことはごうもありません。現に両條約とも、少くとも国会において多数をもつて承認されたものでありますから、外資の導入とこの條約の問題は全然関係がないことであります。外資の方は條約等の関係とは別にして、日本としても正当な條件で、しかも日本の産業に有利な形で外資が入つて来るならば、歓迎することはもちろんであります。従つて、最近においても法律を改正して、外資の入りよいようにはいたしておりますが、今までは個々の外資が入つて来ただけでありまして、まとまつた政府政府というようなものは入つて来ておりません。将来国際通貨基金その他に加入したりいたしまして、だんだんにできるだけ正当な道で、正当な條件で外資を入れたいと考えておりますが、まだ具体的にお話する段階に至つておりません。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは政府政府の外資というものは、今何も考えられておらないのですか。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや考えないというのではなくして、具体的にまだ話ができておらないのであります。
  149. 仲内憲治

    仲内委員長 並木芳雄君。
  150. 並木芳雄

    ○並木委員 午前中に引続いて、岡崎国務大臣に主として行政協定関連しての質問をいたしたいと思います。岡崎大臣お話では、今度の行政協定は私どもが予想しておつたより、はるかに範囲の狹いものである、こういう感じがいたします。従つて政府がこれをあとから公表すると言つておる理由もわかつて参りました。  それで私どもは今後の行政協定できまることのほかに、もつと大事なことがあると思うのであります。その一つは、先ほどもちよつと申し上げたのですけれども、大臣は急いでおられましたから、あとに継続することにしておいた問題ですが、日本として独立した以上は、やはり独自の防衛に関する機関を持つべきであるという点であります。国際情勢というものをよく研究し、日本としてはこれくらいの防衛力が必要であるというようなことを——適当な言葉かどうか知りませんけれども、つまりかつての参謀本部というようなところで、いろいろ検討もし、研究もしたようなことをする機関が、当然必要になつて来ると思うのであります。私自身もそれを必要であるという立場から、これをお聞きするのです。そして日本としての見解から、現在の駐留兵力はこれこれでは不足であるから、もつと増してもらいたいとか、これでは多過ぎるから減らしていただきたいとか、あるいは他の地区へまわしてもらいたいとか、そういう問題をやはり日本として対等の立場で、向うと話合えることが望ましいのでありますけれども、この点大臣はどういうふうにお考えになつておられるか、まずお伺いいたします。
  151. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうような機関があつてもなくても、日本としては安全保障條約及び行政協定については、対等の立場でものが言えるのであります。参謀本部とかなんとか、むずかしいお話がありましたが、それは御意見として承つておきます。
  152. 並木芳雄

    ○並木委員 すると今後そういう機関日本につくる計画はないのですか。かりに名前をつけますと、国防省あるいは防衛省といつたようなもの……。
  153. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう問題については、行政管理庁長官である木村国務大臣もとで、ほかのあらゆる問題と同様に、機構の問題として考えられてはおると思います。しかし何らまだ結論は出て来ておりません。
  154. 並木芳雄

    ○並木委員 私は当然それが考えられて、実現に移されるべきだと思います。そうしませんと、せつかく安全保障條約が効力を発しましても、日本人としては全部アメリカさんまかせ、こういう形が出て来るだろうと思う。これは条約の審議のときにもずいぶん問題になりました通り日本の意思が全然そこに表明されないおそれがある。今大臣はそういう機関がなくても、対等の立場で話ができると言われましたけれども、そういうおそれが出て来ると思います。そこでもう少し具体的に申し上げますと、どれくらいの兵力を置く、どういう種類の兵隊を置く、減らすかふやすか、どこへ配置するか、また出動するかというときに、アメリカから日本政府の方へ当然協議すべきものであると思いますけれども、そういうふうになりますでしようか。それをお尋ねいたします。
  155. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはアメリカのおそらく軍事上の機密に属する問題と思いますから、私どもから御答弁は差控えます。
  156. 並木芳雄

    ○並木委員 そうすると、これは非常に重要な問題なんで、私もぜひお伺いしたいのですけれども、結局アメリカだけの判断で決定し、行動し、われわれ日本政府及び日本側というものは、軍隊の動靜に関する限りは、今後独立後といえども何ら関知することがないのでありますかどうか。
  157. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう点はアメリカ側の立場もありまするから、御想像にまかせるとして、御答弁は差控えたいと思います。
  158. 並木芳雄

    ○並木委員 少くともこれは当然日本政府には、通告があるべきであると思いますけれども、その点いかがですか。
  159. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その点も御答弁を差控えることにいたします。
  160. 並木芳雄

    ○並木委員 私はそういう問題をいろいろ協議するのが、日米合同委員会の役目ではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  161. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しましたように、合同委員会の問題について、まだ協議を進めるところまで行つておりません。従つてここでは何ら申し上げる立場にないのでありますが、私は自分の私見としては、そういうような問題でなくして、もつぱら技術的な問題が多く合同委員会の題目になるであろう、こういう予想はいたしております。
  162. 並木芳雄

    ○並木委員 そうだといたしますと、私はやはりここに日米の間で、安全保障委員会あるいは防衛協議会、かりに名前をつけてみたのですが、そういう協議機関というものを設ける必要が生れて来ると思います。そうして先ほど来お尋ねしておるような重要項目について、両方が鳩首協議をして、完全なる了解もと決定し、行動するようにいたしませんと、これは容易ならぬ状態をかもすのではないかとおそれるのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  163. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御意見は大いに参考にして研究いたします。
  164. 並木芳雄

    ○並木委員 私の意見を参考にして、大臣としてもそういうふうに持つて行きたいという意思があると、了解してよろしゆうございますか。
  165. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えはまつたく白紙であります。
  166. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどお尋ねいたしました別表は、これはもちろん公表になると思いますが、いかがですか。
  167. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 別に別表という名前がついておるわけでも何でもありませんが、もし施設区域等の問題をおさしになるのでありましたならば、これは当然公表されると思います。
  168. 仲内憲治

    仲内委員長 並木君に申し上げますが、あともう二人岡崎国務大臣質問があるのです。それで予算委員会の方からも要求がありますし、追つてほかに木村、大橋両大臣も見えますから、簡單に……。
  169. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一点だけお尋ねしておきます。今度の防衛分担費で、アメリカ側が分担する費用が一億四、五千万ドルあつたと思います。これは日本の物資などの調達、そういうものに使われると思いますが、これの理解について、これは一種の貿易外收入というふうに見られるかどうかという点を、確かめておきたいのです。そう了解してよろしゆうございますか。
  170. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはどうも責任ある答弁は、大蔵大臣にしていただきたいと思います。しかしこれは必ずしもドルで全部来るかどうかは別問題でありまして、たとえばアメリカ政府が国内において円を保有しておる場合には、その円も使用されるだろうと想像します。
  171. 仲内憲治

    仲内委員長 林君。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 私は安全保障條約と行政協定関係について、ちよつとお聞きしたいと思うのであります。安全保障條約の中にあるアメリカ軍の行動を起す場合についてでありますが、これは極東における国際の平和と安全の維持のために、必ずしも日本国内の内乱、騒擾の場合ばかりでなく行動が起し得ると思いますが、この点は国務大臣はどうお考えになりますか。第一條の問題です。
  173. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もそう考えております。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、日本の国内の内乱、騒擾以外の場合にアメリカ軍隊が行動する場合は、日本政府との間の関係はどうなるのですか。先ほどあなたは日本政府と相談するだろうというのですが、これは行政協定の中にはつきりそういうとりきめがありますか。
  175. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政協定はまだ話中でありますから、その問題には別に入つておりません。将来の問題でありましよう。入るかもしれないし、入らないかもしれません。要するに、主たる行政協定目的は、アメリカ軍デイスポジシヨンをきめるのでありまして、それに関係のある点は多少ずつ入つて来ると思いますが、その点はどうなりますか、まだ将来の問題であります。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 極東という解釈ですが、この極東の中には当然朝鮮、台湾、それからフイリピン、マレー、ヴエトナムまで入るのですが、その辺の解釈を岡崎国務大臣はどうお考えになつておりますか。
  177. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 極東というのは、正確に地図で筋を書いて、ここが極東だというふうにはなつておりません。多少の出入りはあると思います。しかしながら今おつしやつた程度のものは、大体極東であるという通念になつておると思います。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 そこでもう一度この際岡崎さんに聞いておきたいのは、要するに朝鮮、台湾、フイリピン、ヴエトナム、マレーでアメリカが極東の国際の平和と安全が脅かされたと考えている場合には、日本に駐留しているアメリカ軍隊が軍事行動を起すということになりますと、これは直接間接にやはり日本が戰争に巻き込まれることになると思います。そうすると、やはりアメリカ駐留軍が行動を起す場合、日本政府との了解もとに行動を起すということを、ちやんとこの際とつておかなかつたら、日本が戰争に巻き込まれるかどうかということは、日本に駐留しているアメリカ軍隊が、アメリカの判断で軍事行動を起すことによつて決定されると思います。その点はわれわれはもともとこの両條約には反対で、これは国民の意思を代表してないから無効だといつておりますけれども、現実の問題として、この既成事実がつくられている場合に、われわれはその点に重大な関心を拂わざるを得ないのでありますが、そういう点をちやんと行政協定でとりきめたいという意思か希望は持つておらないのですか。
  179. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は林君の考えとは全然逆に考えております。つまり極東の平和が脅かされたときに、あなたはアメリカ軍隊が出て行けば日本が戰争に巻き込まれそうだ、こういうお話でありますが、私の考えでは、極東、つまり日本のまわりの諸国において平和が脅かされたときに、何もしないでほつておけば、その平和が脅かされた状態が、日本にも波及する危險の方が非常に多い。そこで平和維持のために、むしろアメリカ軍なりその他国連軍なりがこれを鎭圧し、これを平常状態に回復するために努力してもらうべきが、日本の安全を確保するゆえんであろうと考えております。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、二つの問題をお聞きしますが、そういう場合、それはアメリカの判断で、日本の承諾のもとに行うという保障はとつてなくても、アメリカ側におまかせしてそれでいいというようにお考えになるかどうか、それが一つ。それからあなたが言われるように、極東の平和維持が侵されるとアメリカが判断した場合、アメリカに鎭圧してもらうことは、日本の平和を同時に守ることになるのだと、非常にアメリカに御信頼をなさつておりますが、そうすると、そういう場合には、やはり日本の平和にも重大な関連があるということで、日本の中に持つておる戰力というか、兵力というか、あるいはその言葉が御心配なら、警察予備隊でもけつこうですが、こういうものはどういう形で協力することになりますか。吉田・アチソン交換文書によりますと、日本は将来そういう場合は、ことにアメリカ国連軍の名のもとに行動する場合は、あらゆる役務あるいは施設を提供しなければならないというのでありますが、やはり日本に駐留するアメリカ軍隊が極東の平和のために、私が申し上げたような地域で軍事行動を起す場合には、日本の警察予備隊もこれに協力の態勢をとるわけですか。それではどうなるのですか。
  181. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本政府協議をするかしないかというようなことが、非常にむずかしい問題になつているようでありますが、アメリカ軍隊の移動については、アメリカの国内にもいろいろ法律がありますから、それで先ほども並木君の御質問に対して、答弁を差控えておいたようなわけでありますが、日本のまわりにおいて平和が脅かされるような状況のときに、日本政府がどこの国とも相談しないなどということは、あり得ないことと思いますから、その点は常識で御判断を願えればけつこうだと思います。警察予備隊についていろいろ御心配のようでありますが、われわれは国際連合決定等については十分協力することを、サンフランシスコ会議でも交換公文をいたしておりますし、平和條約の中にもその点が書いてあります。従つて国連の行動については、でき得る限りの協力をいたすのが当然でありまして、それは国民全体としてもやはり協力をいたすべき立場にあると考えます。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 実はヨーロツパにおける三国外相会議の際に、フランスから日本軍をヴエトナムに使用したらどうかというような提案がされている。それから何応欽・マツカーサー会談のときに、日本軍が五十万をつくるというようなことが話され、アジア大陸に第二戰線がつくられる場合には、これを行使したらどうかという問題があり、それからこれはたしか昨日の読売の夕刊だと思いますが、これにはアメリカ国防省側の見解として、防衛隊は二十五万目標というようなことが書いてあります。米国防省筋は四日、日本は今年末ごろ警察予備隊や防衛隊に再編成するよう計画中で、二十五万を目標とする、こういういろいろな発表を見ますと、日本の警察予備隊を外国では一種の軍事力あるいは戰力と見て、これをやはり韓国、台湾、フイリピンあるいはヴエトナム、こういうような民族の独立の運動が起きている。言葉をかえますと、反共的な作戰行動を起すような場合——こういう民族独立運動を彈圧して、反共的な作戦を起す場合には、これを行使するというようなことを目標に入れているように、私は考えざるを得ないのであります。そこで先ほど国民全体がこれに協力するという中には、やはり警察予備隊もこれに協力するという態勢が出て来るのですか。
  183. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 共産党はそういう宣伝を非常になされたいと思いますが、遺憾ながらわれわれはそう言うわけには参らないのでありまして、総理がしばしば申しておる通りに、警察予備隊はあくまでも国内の治安維持に当るものであり、海外に派遣するものでないということは、しばしば言つております。三国外相会議あるいはマツカーサー何応欽会談ですか、いろいろ知識がおありのようでありますが、私はそういうことは聞いておりません。その中に日本軍というふうに言われておりましたが、御承知の通り日本軍はないのであります。
  184. 林百郎

    ○林(百)委員 別に共産党が宣伝をしたいのではなくてそういうことが客観的にまじめに考えてみて考えられますから、たとえば吉田・アチソン交換公文によつても、先ほどあなたの引用されておるように、極東におけるアメリカ軍隊、あるいは国連軍の名において軍事行動を起す場合に、日本はあらゆる役務、施設を提供しなければいかぬとあるでしよう。あらゆる役務という中には、もちろん警察予備隊もこれに協力するという義務が、負わされているのではないですか。これは講和條約の第五條の中にも、あらゆる援助をするということが書いてあるわけですからね。これは共産党の宣伝とかなんとかいうことではなくて、やはり対外的には、日本の戰力を万一の場合には国連軍協力者として用いるということを、そろばんに入れてなされているのではないですか。もう一度あなたの見解を聞きたいのです。
  185. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように、国連というものは戰争ということを考えておらないのであります。国連の行う行動は警察行動であります。従つてこの平和の維持のためにする警察行動については、われわれはあとう範囲内で協力するのは当然のことと考えております。従つてできることは何でもいたしますが、できないことはこれはできない。その国の事情によりまして、軍隊がないものを軍隊を出すわけには行かない。従つて警察予備隊は国内の治安の維持に当るものであるから、国内の治安維持以外の任務は負わされるわけに行かない。従つてできる範囲での協力をいたすことになるのであります。
  186. 仲内憲治

    仲内委員長 岡崎国務大臣予算委員会に行かなければなりませんし、まだ菊池委員も……。もう時間も来ておりますから、もう二、三点くらいにしていただきたい。
  187. 林百郎

    ○林(百)委員 そうですか。今言つた問題についてはわれわれは非常に疑義があります。警察行動という名のもとに実質的な戰争が行われている。国連という名前ですが、実際はアメリカの行動が国連の名において行われておるわけですから、われわれはアメリカの戰争政策に、日本が介入させられるように解釈しております。その次に問題になりますのは、行政協定の内容の中で、将来日本政府が駐日アメリカ大使を通じて、日本に駐留しているアメリカ軍隊に対して、いろいろの好ましからざる圧力を加えることを防ぐために、米軍司令官に対して、直接に日本側の適当な当局者と接触し得る権限を、與えておくというように言われておるのでありますが、これは行政協定の中にも、駐留軍の最高司令官と日本政府側との直接的な軍事優先的な命令権というようなものを持つ、あるいは直接的な接触を保たせるような、何らかのとりきめ機構をつくるような交渉がされておるのかどうか。これはワシントンのAP電報にもそんなようなことが出ておるようでありますが、この点は何らかとりきめの中にあるかどうか。それをまずお聞きしたい。
  188. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政とりきめはまだ決定しておりませんし、話し中でありますから、これについての内容をお話することは差控えます。しかしながらすべて平等の関係に立つて結んでおる協定でありますから、林君の言われるような不平等的なものがあるということは、とうてい想像されません。
  189. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると軍事優先権は、別に與えるようなとりきめはない。この行政協定においてはあくまで対等な形で、将来はアメリカ駐留軍の圧力が、日本政府に直接的に及ぼすようなとりきめはしないつもりだ、というようにとつていいかどうか。その点と、それから最後質問ですが、もう一つここでお聞きしたいことは、アメリカ側では、講和條約を批准する前に安保條約を日本批准させ、さらに安保條約の内容であるところの行政協定を全部日本側ととりきめて、それから批准をしておるのでありますが、日本はそれと逆で、むしろ独立した後において、対等な立場でとりきめるべき行政協定あるいは安全保障條約というようなものを、條約の批准前にすでにとりきめて、要するに占領下という、まつた日本が戰勝国と敗戰国というようなこういう現状のもとに、依然としてアメリカ軍隊日本に駐屯しておる状態で、対等の立場でとりきめようということは、私は不可能だと思いますが、なぜ今こんなに急いで行政協定をとりきめなければならないのか。われわれは、講和條約が発効して、日本が少くともあなた方の言う対等な立場にあるとは、われわれは絶対に思いません。行政協定によつて依然として占領政策はそのまま継続されるようにわれわれは考えますが、少くともあなた方の言う和解と信頼の講和條約が効力を発生して、あなた方のいわゆる対等な立場に立つてから、行政協定をとりきめたつて何らさしつかえないと思いますが、なぜこんなにとり急がれるのか。われわれは今ここでアメリカ軍隊が駐屯しておる状態のもとで、行政協定をとりきめるということは、占領状態をそのまま合法的に恒久化するということ以外に考えられないのであります。この点はどういうわけですか。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは世の中に無責任なる軍国主義が跳梁しておるから、講和條発効後にゆるゆるやつたのでは間に合いませんから、講和條発効と同時に安全保障條約が効力を発生するように、とりきめを急いでおるのであります。
  191. 仲内憲治

    仲内委員長 菊池義郎君。時間がありませんから簡單にお願いします。
  192. 菊池義郎

    菊池委員 岡崎さんにお尋ねいたしますが、朝鮮事変中の今日と事変の終結後とは、行政協定の内容について——今日必要があつても、終結した後においては必要がなくなるということがある、また、なければならぬと思うのでありまするが、政府といたしましては、この行政協定のとりきめにあたりまして、今日現在の事態を基準としてとりきめられるのでありますかどうですか。また今日の事態が終了した後におきましては、これを変更できるものでございましようか、どうでしようか。その点をお伺いします。
  193. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 元来行政協定安全保障條約に基いておりまして、安全保障條約は日本の安全を保障する目的をもつてつくられておるのでありますから、朝鮮事変等には直接関係がないのであります。朝鮮事変等において、国連軍隊が行動しておりますことは、別に国連協力という面から考究さるべき問題と考えております。しかしお話の第二点の、将来事態がいろいろ変化した場合に、とりきめの内容を変更することがあるかないかということについては、これはたとえば施設がいらなくなればこれを日本側に返すとか、また別な新たな施設がいればこれを提供する、そういう変化は当然今後もずつと起ると考えております。
  194. 菊池義郎

    菊池委員 それから防衛協定には秘密がない、ないということを向うでも言つておるし、こつちでも言つておるのですが、われわれは防衛協定なるものは秘密があることが望ましい。秘密のないような防衛協定ないしは行政協定なんというものは、さつぱり価値のないものであると私は考えております。もつとも秘密があるといつては、秘密も何もなくなることになりますが、われわれはむしろ行政協定の中においても秘密を設けてもらいたいということを、私は国民の一人としてこれを熱望する次第であります。これは注文であります。  それから第三に伺いますが、ソ連や中共のごとき、直接には日本に対して侵略の手を延ばさぬでありましようが、国際義勇軍というものがある。この国際義勇軍の名において、何どき日本に対してどういうことをやつて来ないとも限らない。われわれの最も恐るべきは国際義勇軍であると思うのでありますが、これに対しまして政府はこの国際義勇軍なるものを度外視しておられるか、あるいは頭の中に入れて、そして行政協定もとりきめられるつもりでありまするかどうですか。
  195. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際義勇軍といつても、はつきりどれがどうということもなかなかむずかしいと思いますが、要するに無責任な軍国主義を内包しておるものはすべて考慮に入れて、それに対処すべく安全保障條約を結んでおるのであります。
  196. 菊池義郎

    菊池委員 それから先ほど政務次官に質問しましたけれども、お答えがなかつたのでありますが、日本独立と同時に、国連加入と同様の効果を生ずるような方法手段について、当然政府は研究しておられなければならぬ。さしあたりどういう構想を持つておられますか。これを岡崎大臣からお伺いしたいと思います。
  197. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 でき得る限り正々堂堂と所定の手続によつて加入をいたしたいと考えております。
  198. 菊池義郎

    菊池委員 ちよつとその具体的の構想をお伺いしたい。
  199. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国連憲章の中に、加入の手続等はすべて書いてありますので、その方式に基いてやることになろうと思います。
  200. 菊池義郎

    菊池委員 加入はできませんので、今のところそれにかわる何か手段方法が伺いたいのです。
  201. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは加入できないと必ずしも考えておるのじやありませんで、万一できない場合にはそのときまた考えます。今のところは加入できるであろうという見込みのもとにやつております。
  202. 仲内憲治

    仲内委員長 山本利壽君。
  203. 山本利壽

    ○山本(利)委員 岡崎国務大臣に、お忙しいようでありますから一口だけお尋ねいたします。移民問題についてこの前の委員会でお尋ねをして、きようそのお返事をいただくことになつておるのでありますが、一月二十八日にアメリカの上院の小委員会において、日本の移民も許すことが決定されたということになつておりますが、岡崎国務大臣の方にその点に関する公報といいますか、入電がございましたでしようか。
  204. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 情報といいますかニユースといいますか、そういう点ではいろいろありまするが、いまなお各種の資料を集めることをやつておりまして、研究中であります。
  205. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではよろしゆうございます。  ちようどこの移民問題、人口問題について関連がありますので、まず木村法務総裁にお尋ねいたしたいのでありますが、御承知のように日本領土と人口とのアンバランスで困つておるわけであります。最近日韓友好條約を締結しようといつたような方針が、発表されておるのでありますが、日本におります朝鮮人は、日本独立完成後においては送還されるべきものであるか、あるいは朝鮮人をこのまま日本にとめ置く交換條件として、日本から相当数の移民と申しますか、朝鮮に移住が許されるものであるか、及びこれに関しての政府見解及び希望について承りたいと思います。
  206. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 日本在住の朝鮮人の問題につきましては、御承知の通り講和発効後において相当の処置をとらなくてはならぬ。現在は研究中であります。
  207. 山本利壽

    ○山本(利)委員 ただいまのお言葉では、今研究中とありますが、私のお伺いしたいところは、政府としての希望と申しますか、かくある方が望ましいという点に対する大臣の御見解を承りたい。
  208. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま考えておりまする点は、平和條約の発効によりまして、朝鮮人は一応すべての日本国籍を喪失するものといたしまして、右期日以降はすべての点において外国人として、他の外国人と平等無差別に取扱う、こういう一応の方針になつております。但し終戰前から引続き本邦に在留する善良な朝鮮人が、突如外国人扱いをされることによりまして、過度に不利益をこうむることのないようにする方針のもとに、目下過渡的な緩和措置につきまして、具体的に研究しておる次第であります。
  209. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは石原政務次官にお尋ねいたしたいのでありますが、講和発効後においては一応朝鮮人は特別な者を除いて外国人扱いになる、そういう場合にそれと交換に日本人が朝鮮に渡るべきものであると、われわれは考えるのでありますが、その点についてのお考えを承りたい。
  210. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまの問題は、今後の日韓交渉によりまして、すべての点がきめられて行くと思います。
  211. 山本利壽

    ○山本(利)委員 日韓交渉によつていかなる結果が出るのかということを聞くのでなしに、われわれは今日本国の立場として、これほどたくさんの外国人を、この領土の狹い日本に收容する限りにおいては、これくらいの日本人は当然かの地へも渡ることを許さるべきであるという、強い主張を打出すことが国家のために有益であり、しかも国民の希望に沿うところである。その方針について承りたいのであります。その結果が希望通りに行くかどうかということは、また第二段の問題であります。
  212. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはできるだけ両方の交通を自由にするということが、国交修復といいますか、開始の原則でありますから、御意見のところはよく承つておきまして、そういう線に沿うて交渉されることと思います。
  213. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは現在の世界において、ただ一方の国民のみが片方の国に在留して、他方においては許されないというような例が、今日までにあつたかどうかを承つておきたいと思います。
  214. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 戰争の場合とかあるいは占領下にある場合には、そういう例があるかもしれませんが、対等の主権国としての立場にある国の国交においては、そういう例はないであろうと思います。
  215. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それでは先般お尋ねしておきました米国移民法の改正について、その後次官の御研究になつたこと、従つてこれが成立した場合に、日本移民がいかに許されるかという問題についての御答弁を願いたい。
  216. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これはこの間お話がありましたように、先般上院の司法委員会を通過したのでありまするが、今後また上院の本会議もございまするし、さらにまた下院の委員会に諮り、下院の本会議を経なければならぬのでありまして、まだ先に相当の段階があるようでございます。この法律の骨子は、移民に関しまして人種的差別が撤廃されるということと、在留邦人の帰化権が認められる、これが二つの大きな眼目ではないかと思うのであります。もつともなおこの法律が通過しましたあかつきにおきましても、ただいまの原則によりますると、年間の割当が百八十五名でありまして、しかもこれは特殊の技能を持つアメリカの利益の立場にあるものであるとか、あるいは在留邦人の両親、近親等を優先的に考えるような内容になつているのでありまして、現実の問題といたしましてそう多くの人間が、この法律の通過によつて一ぺんに渡れるということはないと思いまするが、先ほど申し上げました人種的差別の制限が撤廃されるということと、在留邦人の帰化権が認められる、これは非常に大きな結果になると思います。
  217. 山本利壽

    ○山本(利)委員 最近に米国の上院を通過し、さらに本会議を経て下院にまわされるというようなお話がありましたが、下院においては昭和二十四年に、ジヤツド法案として移民法の改正というものがすでに通過している。このものと今回のものとは別個なものであるか。これは国家的に非常に重大な法案であり、しかもこのジヤツド法案については、私自身も本会議において御質問申し上げたことがある。それの行方が上院にまわつてからどうなつたのか。全然別個のものが出たのか。そのジヤツド法案が今川上院において審議されつつあるのか。こういうような大きな、国民が首を長くして待つているような問題については、外務当局においてはもう毎日御研究になつているはずだと思うのであります。ただいまの御答弁ではまことにおかしいと思います。
  218. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今川上院の司法委員会を通りましたものは、マツカラン法案という名前で出ているものでありまして、移民国籍法案というものでありまするが、先ほど山本さんがおつしやいました前の法案とは、違うもののようであります。
  219. 山本利壽

    ○山本(利)委員 次にブラジルに対する日本移民の入植の問題に対して、先般五千家族を入れるというような情報は、これは上塚氏等の盡力によるものであつて政府としてはまだあずかり知らぬところだというような御答弁がありましたが、すでに今日では在外事務所等も開かれているのでありますから、まずブラジルに関してこの五千家族の入植ということ、及びその他にもいろいろな入植に関して、公または私的に交渉中であるかどうか。その点について承りたいと思います。
  220. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 アマゾンの入植につきましては、先般も申し上げたのでありまするが、五千家族の入植を許すということは、ブラジル政府として正式に決定したようであります。それから在外事務所等を通じてというお話がございましたが、リオやサンパウロにあります在外事務所は、それぞれ許された権限の範囲内におきまして、こういう問題についてはそれぞれ協力をしている次第であります。この前申し上げましたように、渡航費等の関係につきまして、一人約十万円ないしそれ以上の金がいりますので、この問題について政府並びに関係者が、いろいろ協議研究しているわけであります。
  221. 山本利壽

    ○山本(利)委員 渡航費その他の費用の問題について難関があつて、この移民問題については政府も相当の予算を組んで、大蔵省に折衝したけれども、本年度は遺憾ながら削られたといつたような発言がありましたが、どの程度外務省としては今年度要求されたかということを、今日承るはずになつていたと思うのであります。
  222. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 外務省としまして予算要求をいたしましたのは、募集あつせん団体の助成であるとか、その他移民関係のいろいろの問題でありまして、渡航費の援助とかあるいは渡航者に対する融資とか、そういう点につきましては、まだそれほど具体化しておらなかつたのでありまして、その点についてはまだ大蔵省と今回の予算を編成する当時には、折衝はしていなかつたのであります。これから研究される問題であります。
  223. 山本利壽

    ○山本(利)委員 それではアメリカ合衆国及びブラジルを除いて、今後日本移民の入植を許される可能性のある地方について、政府の御研究の結果を承りたいと思います。
  224. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 まだ具体的なブラジルのような話はないのでありますが、やはり中南米の諸国は、従来から日本と移民関係の問題について折衝があつたようでありまして、アルゼンチンとかあるいはウルグアイ、パラグアイ、ああいう方面とは、いろいろの折衝が行われるのではないかと思います。
  225. 山本利壽

    ○山本(利)委員 普通の移民とは別個に技術者の派遣ということが行われているようでありますが、現在までに日本の技術者は、東南アジアその他の方面に向つて、どのくらいな程度出ているものでありましようか、承りたい。
  226. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今数字はちよつとわかりません。わかり次第またお答え申し上げますが、お話のように印度あるいはその他の東南アジア地区には、相当出つつあるようでありまして、今後賠償問題の進展とともに、技術援助という今度は一つの大きな項目でありますので、それらの国に対しましては今後相当の技術者が進出することと思います。
  227. 山本利壽

    ○山本(利)委員 この技術者の派遣ということについても、相当の希望者があるのでありますが、現在及び将来この東南アジア開発計画というようなものが実施される場合には、ますます多数の人が渡航すると思いますが、希望者がその手続をする場合には、外務省またはその他の役所において、どういう関係において取扱われているのでありますか。
  228. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 技術者は東南アジア諸国方面に、現在のところ百六十四名ばかり出ているようであります。それから今後の技術者の進出につきましては、相手国との外交折衝であるとかあるいは渡航の手続等の問題については、もちろん外務省が中心になつてやると思います。東南アジアの総合開発計画であるとか、いろいろな問題については、安本、通産その他の省と研究し、また技術者を送り出す輸送問題については、運輸省の御協力を得なければならぬと思います。大体そういうことであります。
  229. 山本利壽

    ○山本(利)委員 前会及び今回にわたつて移民問題について承りましたところを総合いたしまして、まだ日本政府の移民問題に関する御努力といいますか、活動はすこぶる鈍いように感じたのでありますが、今後これは重要なる国策の一つでなければならぬのでありますから、外務省あるいはその外局として、移民問題を総合的に扱う機関を設けられる意思があるかないか、承つておきたいと思います。
  230. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 今まではこういう移民の問題は、御提案内のごとくすべて制約されておつたから、あるいはそういう感じを受けられたかもわかりませんが、今後正常の国交が回復いたしまして、直接いろいろの折衝が始まります際には、四つの島に日本が局限されておりますから、当然なことといたしまして、移民政策等については政府をあげて非常な研究をするということは、私から申し上げるまでもないことだろうと思います。
  231. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は木村法務総裁に承つておきたいと思います。先般来国会におきましては、警察予備隊の増強をめぐつて、再軍備であるとかないとかいうような論争が、しきりに行われておるわけでありまするが、私は率直に申しますると、そういう論争はいささか現実の事実に目をおおつた観念論の遊戲、ナンセンスであると私自身は考えておるわけであります。日本自衛力を増強しなければならぬということは、昨年の九月八日に吉田全権サンフランシスコにおきまして、平和條約並びに安全保障條約に調印をいたした瞬間において、すでに日本の進むべき路線は決定しておつたと私は思うのであります。また同時に、集団安全保障態勢というものが、二十世紀後半の時代の特徴であるとも考えるわけであります。従いまして、その一員となる日本が個別的な、集団的な自衛力確立しなければならぬということは、歴史がわれわれに課した時代の命題であるとも考えております。この自衛力を分担するものが、日米安全保障であつたり、また警察予備隊の増強であるということはもとよりでありまするけれども、かくのごとくに、万一外敵が日本を侵略したり、あるいは国内において内乱や騒擾が勃発した場合において、これを防衛し、これを鎭圧するための実力を用意しておくことが、必要であることはもちろんでありまするが、私はさらにこれらの実力による対策のほかに、文字通り内外から来る直接間接の脅威に対してとるべき対策の一環として、共産党の存在そのものに対して、私はこの際画期的な措置をとるべきときじやなかろうかと考えるわけであります。終戰以来日本の国内の各地において発生いたしました種々なる不祥事件の中の相当多くのものが、共産党の煽動や使嗾によつたものであることは、今日国民のひとしく認めておるところであります。ことに最近の札幌におきまする警察官の射殺事件といい、長野県における集団的暴行事件のごときも、この種の範疇に属する事件として報道されておるわけであります。特に吉田首相が先般ダレス特使に與えた書簡におきましても、日本の共産党が日本の憲法制度及び現存の政府を、強力をもつて転覆せんとしておるということを、明確にいたしておるわけであります。今日われわれは日本共産党をも含めた世界の共産党の性格が、きわめて暴力的なものであるということは、何人も疑う者はないと考えておるのであります。政府におかれましては、この共産党の暴力的な性格に対して、これを認めておられるのかどうか伺いたい。
  232. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 日本共産党が暴力破壞的な行動を現実にやるということであれば、これは国民とひとしく何らかの処置をしなければならないと考えております。ただいまの限度において、はたして共産党が暴力的、破壞的行動に移つておるかどうかということは、まだ未定でありますから、愼重にその点は考慮いたしたいと考えております。
  233. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 先ほど申しましたように、吉田首相はこの国際的文献であるところの書簡におきまして、日本の共産党の性格は、明らかに日本の憲法制度及び現存の政府を、強力をもつて転覆せんとしておるということを、世界に公表いたしておるわけでありますが、この吉田さんの考えと法務総裁との考えには、食い違いがあるわけでしようか。
  234. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 決して食い違うとこはありません。
  235. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 食い違いがないというなれば、日本の共産党の性格は暴力的なものであるということを認めるという結論になると思いますが、いかがですか。
  236. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 実際の行動をよく調査した上で、その処置をとりたいと考えております。
  237. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 今日までの行動に徴しまして、多分に暴力的な性格のものである、そういうふうにお考えにならないのですか。
  238. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 その点については十分調査して、とるべき処置はとりたいと考えております。
  239. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は彼らが何と言おうと、今日日本国民は、ひとしく共産党の性格を暴力的な性格なものであるというふうに、一般に認めておるのであります。従いまして、われわれ日本国は法治国といたしまして、このような——吉田首相みずからが世界に声明したところの書簡においてすら、共産党の暴力的性格を認めておる段階にまで、共産党の実体が国民の前に明らかになつてつたわけであります。従いまして、こういう各種の幾多の不祥事件を通じてながめた共産党の……。     〔林(百)君「不祥事件と言うが、どういう事実があるのか言つて見   ろ……暴力行為とは何だ……三鷹   事件でも松川事件でもみんな無罪   ではないか」と呼ぶ〕
  240. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、着席してください。
  241. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そこでこういう不祥事件を通じて見た共産党の性格はもとよりでありまするが、日本共産党をも含めた世界共産党というものが持つておるところのマルクス、レーニン、スターリンの鉄則の上に立つた共産党というものの本質的な観点から考えましても、それが暴力的なものであるということは、国民が全部知つたところであります。従いまして、私は本日も承つたわけでありますが、法務府におかれましては、団体等規正令の改正について、かくのごとき場合に対処する措置をも含めたところの、新しい、団体等規正令にかわるべきものを用意され、近くこれを国会に提出されるということを承つておるわけでありますが、政府はいかようなお考えをお持ちになつておるか、どういう対策をお持ちになつておるかということを、承たりいと思います。
  242. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 民主国家においては、暴力は絶対的にこれを否定しなければならぬ。そこでわれわれの考えるところによりまして、この法案を起草するのは、その中心は暴力行為に基く不法活動団体を規正せんとするものであります。その暴力的破壞行為をなすものは、思想の左であると右であるとを問わず、一齊にこれを規正して行きたいと考えております。その意味において、われわれは今草案を起草中であります。
  243. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 最後に一点承つておきますが、これはいつごろ国会に上程されるような御予定になつておりますか。
  244. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 至急に草案起草中でありますが、いつまでというはつきりした御回答はできかねます。早急にやりたいと思つております。
  245. 仲内憲治

  246. 黒田寿男

    黒田委員 私は木村法務総裁と大橋国務大臣とに、あわせて御質問申し上げたいと思います。私の質問いたしますことは、別に新しい問題ではないのであります。警察予備隊は戰力ではないかという問題につきまして、どうしても、私どもは、政府の今日までの御説明では納得が行きません。軍及び戰力とはどういうものかということに関しましての政府の御説明についても、どうしても私どもは納得ができない。従つてまた警察予備隊と憲法との関係につきましても、政府の御解釈には納得が行きません。そこで多少の時間をいただきまして、私からこの点につきまして質問いたしたいと思います。政治的問題としてみれば、政府は結局は再軍備をしようとお考えになつておるのでありましようから、そのような政治的立場に立つ者からは、このような問題を今日法律問題として取上げて質問することは、大して意義はないとお考えになるものと思います。しかし私どものように、あくまでも平和憲法を守ろう、こういう立場に立つ者、こういう政治的立場に立つ者には、この問題は法律論としても非常に重大な問題になるのであります。そういう見地で、私はこれからお尋ね申します。  そこで前提的な質問といたしまして、これはわかりきつたことのように思われますけれども、法務総裁はこのたび新たに国会へおいでになりましたので、一応お伺いしたいと思います。憲法第九條は戰争を放棄する、一切の戰力を持たぬと規定しておりますが、それは單に国際紛争を解決する手段としての戰争を放棄し、またそのための軍備ないし戰力を持たぬということだけでなく、自衛戰争をも放棄する、自衛のためにする戰力をも保持しない、こういう意味に私どもは解釈すべきであると考えます。この問題につきましては、美濃部博士のごときは、私どもと同じ御見解であるように思いますが、佐々木惣一博士は、自衛のための戰争、自衛のためにする戰力を持つことは憲法違反にはならぬ、こういうような解釈をされておりまして、このように二つの説があるということは、先般法務総裁もおつしやつてつたと思います。そして従来、政府は、私どもと同じような見解を持つてつたと思いますが、念のためにもう一度、政府のこの見解に変化はないか、法務総裁はどうお考えになつておられますか、簡用でよろしゆうございますから、御答弁を願いたいと思います。
  247. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。憲法第九條の基本的精神は、日本は将来再び太平洋戰争のようなことを繰返したくない、これから出発しておるのでありまして、いかなる場合でも戰力というものは放棄するというのでありますから、たとい自衛の目的といえども、戰力という程度に至れば、これは持たないという意味であると解釈しております。
  248. 黒田寿男

    黒田委員 それでけつこうであります。そこで次にお尋ねしてみたいと思いますことは、警察予備隊の増強問題であります。警察予備隊がここで増強されることは、予算の上にも示されております。そこでこれもわかりきつたことであるとは思いますが、念のためにお尋ねいたします。それは日米安全保障條約の前文に、直接及び間接の侵略に対する防衛のために、わが国は、漸増的にみずから責任を負うとある、こういう約案を吉田内閣は、われわれの反対にもかかわらず、米国との間になしたのであります。現在の警察予備隊の増強という政策は、この安全保障條約の、私が今読み上げました約束に基いて、日本政府がなしつつあるものである、こういうふうに解釈してよろしいと思いますが、念のためにそうであるかどうか、お尋ねいたします。
  249. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 今回の予備隊並びに海上保安庁の増強ということは、これは国内治安確保のための施設を増強いたすことでございますから、これがすなわち安全保障條約にいう、間接の侵略に対する日本の防衛のための措置の一環をなすものと考えるわけでございます。しかしながらこの防衛措置といいうものは、もとより安全保障條約において、日本の義務として定められたものではなくして、米国側が、日本が自主的にかような実力を整備することを期待する、その期待が條約において表明せられておるのであります。もとよりわが方といたしましては、この期待に対して無関心であり得るはずはないのでございまして、その期待を前提として、この條約を結んだことはもとよりでございます。しかしこれはあくまでも、今後米国に対する義務としてではなく、日本の自主的な判断によりまして、整備をいたして行くべきものであると考えております。
  250. 仲内憲治

    仲内委員長 黒田さんにちよつと申し上げますが、木村法務総裁は渉外関係で三時に退席しなければならぬ。それで並木さんからも質問が出ているので、木村法務総裁関係を先にお願いいたします。
  251. 黒田寿男

    黒田委員 もしきようお急ぎでありますなら、この次でもけつこうであります。少し詳しく聞いてみたいと思いますので……。
  252. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは黒田さんには、あとでゆつくり次会にやつていただきます。
  253. 黒田寿男

    黒田委員 この次に総務総裁がお見えになりますときには、十分に時間を割当てていただいて質問したいと思います。
  254. 仲内憲治

    仲内委員長 並木君。
  255. 並木芳雄

    ○並木委員 この間から政府の本会議委員会における答弁を聞いておりますと、憲法を改正したくないために、いろいろ戰力の定義などについても、苦労をしているのではないかというふうに感じたのです。私どもは防衛隊であろうと、保安隊であろうと、つくつて、つくるからには、憲法九條というものを堂々と改正して、つくつたらいいだろうという意見を持つているのです。何か憲法をどうしても改正できないというような対外的な関係でもあるのですか。その点をお伺いいたします。
  256. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 さような対外関係は毛頭ございません。一たびつくられた憲法は、そうやすやすと改正すべきものではないと私は考えております。
  257. 並木芳雄

    ○並木委員 それは私でもわかつております。しかし先ほども法務総裁が言われた通り、二度と戰争など起すものではない。われわれとしても二度と軍隊などというものは、言葉にも出すべきものではないとさえ思つていたそのことが、今度の平和條約では禁止されていないのですから、やすやすと憲法を改正することは、もとより反対ではありますけれども、事態が憲法を改正してもさしつかえないところに来ているのだと私は思う。そこでこの間のように、戰力の定義などでだんだんとこんがらがつて来ますと、どうしてもはつきりしておかなければならないのは、それではどおいうことを戰力と言われるのか。それから憲法第九條には武力という言葉も使つております。武力とは何ぞや、武力と戰力との相違はどうかということをこの際はつきりしておかないと、先般来の軍備問題というものは、もつぱらこの定義いかんということにかかつておりましたので、この際これを明らかにしていただきたいと思います。
  258. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 憲法第九條第一項における武力を行使してはならない、これは動的方面から観察したのであります。第二項の戰力というのは、これは靜的方面からこれを言つたのであります。そこで戰力とは戰争を有効に遂行し得るに足るべき実力なのであります。これをわれわれは言うのであります。そこで繰返して申しまするが、近代戰は昔のような戰争と違うのであります。相当な裝備、編成を持たなければいかぬのであります。そこで警察予備隊は、近代戰に有効適切な手段として用いるに足るべき兵力であるかどうかということが、根本の問題であるのでありますが、現在の警察予備隊は、決して近代戰に有効適切なる効果を果し得る裝備編成を持つていないのであるから、かようなものは憲法第九條第二項の戰力に該当しない、こう申し上げます。
  259. 並木芳雄

    ○並木委員 きようは総裁はお急ぎですから、それを承つておくだけにいたします。あとからいずれ研究して必要な質問はいたしますが、そこでこの前大橋前法務総裁にお尋ねしたときに、憲法改正に必要な手続としての特別の国民投票に関する法律を、準備しておるという御答弁をいただいております。もうこれは準備が進んでおると思うのですが、いつごろ提案になりますか、この点お尋ねしたい。
  260. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まだ提案の時期は判明しておりません。せつかく今研究中であります。
  261. 並木芳雄

    ○並木委員 次に警察予備隊に任意退職の道を、何とかしてとざそうというようなことを計画されておると思うのですけれども、今度の保安隊に切りかわつたときから、任意に自由に退職ができないようになるといたしますと、それは憲法第二十二條の職業選択の自由に反することになるのではないか、という疑いを持つておるのでありますが、この点を解明していただきたいと思います。
  262. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。憲法第二十二條には、公共の福祉に反しない限りにおいて、住居、移転、職業の選択が許されておるのであります。これは公共の福祉に反しない限りと、こう書いてあります。公共の福祉の目的をもつてすれば、住居、移転の自由も、職業選択の自由もある程度制限を受けることは、これはやむを得ないと考えます。  そこで警察予備隊の問題に移りますが、今後の警察予備隊の募集にあたつて、任意に退職できないというような規定を設けるか設けないかは、今のところは判明いたしておりません。しかしこれを設けるにしても、おそらく自由意思に基いて、そういう規定は設けられることと私は考えております。
  263. 並木芳雄

    ○並木委員 それではその点も承るだけにしておきます。  それでは最後にもう一点だけお尋ねしておきますが、先ほど岡崎国務大臣にお尋ねしたときに、国務大臣としては、いろいろ治安関係に関する機関というものを、今行政管理庁の方で立案されておる。この点木村さんからもこの前お答えを得たのです。きよう私が岡崎さんにお尋ねしたのは、国内治安だけでなく、これと関連して世界情勢というものを十分検討して、そうして直接、間接の侵略に備えるために、日本としては当然アメリカ駐留軍の兵力、種類、配備その他についてかくあるべしである、こういう結論が出る機関がなければならないという見地からお尋ねしたのです。そういたしませんと、結局日本に駐留するアメリカ軍隊というものは、アメリカさんだけにおまかせするという結果になつてしまう。これは日本としては非常に危險も伴うし、国民感情に與える影響も大きいと思いますので、私どもはどうしても国防省あるいは自衛省というような機関を設けまして、そこで專門的に世界の情勢、それから先ほど来問題になつでおります戦戰とは何ぞや、どのくらいの兵力が必要であるかというようなことも研究して、そうして必要があらば、アメリカの方へもこれを申し入れて、両方で協議し、決定して行きませんと、その運用の妙を得ないと思うのですが、そういう準備をなされておるかどうか。今度できると聞いております治安省というものは、当然これと関連性を持つておると思いますが、そう了解してよろしいかどうか、こういう点であります。
  264. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 並木君の御意見として承つておきます。私の今担任している警察機構の改革は、内地治安確保のためのものでありまして、外国軍との関係については、私はまだ何らの承知もいたしておりません。
  265. 仲内憲治

    仲内委員長 林百郎君。
  266. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほどの法務総裁の戰力の定義ですが、そうしますと、きよう配付になりました資料によりますと、今の日本の警察予備隊の裝備として米軍からカービン銃、ライフル銃、機関銃、追撃砲、ロケツト砲、無線機の貸與を受けておるといいますが、これではまだあなたの言う戦争遂行の実力を持つていないと、解釈なさるわけなんですか。
  267. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は現代戰において、さような程度のものは戰争遂行の能力なし、従つて憲法第九條第二項の戰力に該当しない、こう解釈しております。
  268. 林百郎

    ○林(百)委員 あらためてお聞きしますが、あなたの考えている戰力というのは、どの程度のものを持つて来れば戰力になるのですか。それをはつきり聞かしてもらいたい。原爆とジエツト機を持つまでは戰力でないのですか。
  269. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 林君は私の言をはなはだ誤解しておるようであります。私はジエツト機、原爆を持たなければ軍隊ではないとは言わないのであります。現に原爆、ジエツト機を持つている国さえ隣国にあるじやないか、こういうようなものと太刀切ちできるような、そんな軍隊では警察予備隊は絶対ないのです。鎧袖一触なんだ。言うに足らないのだ。かかるがゆえに現代戰において戦争を有効的に途行し得るような能力を持たなければ、私はこの戰力に該当しない、こう言うのであります。
  270. 林百郎

    ○林(百)委員 だから具体的にどうなると軍隊になるわけですか。あなたの構想を聞かしていただきたい。日本の国において、どの程度の兵力でどういうものを持つて来れば、日本の国では軍隊になるわけですか。あなたは今の警察予備隊などは鎧袖一触だと言いますが、国民の財政的負担からいつて、これは千億以上の負担をしているわけなんですから、並々ならぬ国民の負担だと思う。それでもあなたはまだ鎧袖一触で、軍隊でも何でもないというようなことを平気で言つておれれますが、そうすると、どこに行くと軍隊になるわけですか。日本国民の感情からいつたら、これは並々ならぬ負担である。人的の負担にもなると思うのです。その点はどうですか。
  271. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 現代の戰争におきましては、国に即応せる軍力を裝備するにおいては、おそらく何十兆もかかるであろうと私は考えております。簡單な戰争にもそうわずかな金で行くものではない。一つの裝備にしても、戰車一台つくるにしても、何百億とかかるのであります。今度の予算に盛られた二千億、こういうもので、はたして近代戰に即応し得る戰力を裝備できるか、これは林君少し軍の方面のことを御研究になれば、すぐわかることであります。
  272. 林百郎

    ○林(百)委員 何十兆億の負担にならなければ軍隊にならないということは、これは無責任な発言もはなはだしいと思う。現に一千億以上というと、日本予算の二割です。ここでまた徴兵制がしかれる、あるいはそのほかの予備役制がしかれる、あるいは士官学校ができる、こうなれば、戰争で負けた国力の弱い日本としては、これはほかの国と比べて、やはり軍事的な負担と同じ負担になると思う。このために教育費は減らされ、あるいは医療施設は減らされ、平衡交付金は減らされて、ほかの国の軍事的な負担が、その国の経済力や国民の生活に及ぼしている質的な影響と同じ影響を受けているのですから、これは明らかに軍隊として考え、こういう軍隊をわれわれが今国際情勢、国内情勢からいつて持つ必要があるかどうかということを、敗戰国の日本の政治の責任者としてはまじめに考えるべきだ。あなたの言うように、何十兆億も金をかけるまでは軍隊といえないという、せせら笑つた態度に対しては、私はもう一度あなたに反省願いたいと思う。  そこでもう一つお聞きしたいことは、そうすると、外国の軍隊の原爆、ジエツト機、軍艦と、日本の陸上部隊とが総合的に結合して、渾然一体となつて日本に駐屯している場合には戰力とならないのですか。
  273. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は外国の軍隊と共同してやるとか、やらぬとかいうことは聞き及んでおりませんが、私の論ずるのは日本内地の問題でありまして、日本の憲法に許された戰力は何なりやという解釈をやつているのであります。
  274. 林百郎

    ○林(百)委員 具体的に日本の内地にいるのは、アメリカの爆撃機とアメリカの軍艦である。これに日本の地上部隊が一つになつて、しかも場合によつては、日本に駐留するアメリカ軍隊が極東に派遣されて、それに協力しなければならないということになれば、これは渾然一体として軍隊じやないのですか。それをもう一度あなたに念のために聞きたい。先ほどの午前の答弁では、日本に駐留しておるアメリカ軍隊が極東に派遣される。その場合われわれは国をあげてこれに協力しなければならない。そうすれば警察予備隊も当然適当な形で協力の態勢をとつて行く。そうすれば外国の爆撃機、軍艦と、日本の警察予備隊とが協力して来れば、渾然一体としてこれは戰力になるのではないのですか。
  275. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 外国の軍隊日本の警察予備隊とは全然違うのであります。
  276. 林百郎

    ○林(百)委員 それではその問題はいずれまた時間があるときにゆつくりお聞きすることにして、法務総裁の所管事項でありますが、旅券の交付の問題について、旅券法の第十三條の中に、著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、旅券を交付しないという條項がありまして、外務大臣は、これに該当する場合、旅券を交付するか、しないかは、法務総裁とあらかじめ協議しなければならないと書いてあるのであります。そこで私は石原次官と両方にお聞きしておきたいと思います。この四月から開かれるモスクワの国際経済会議に、日本の有力な実業家、政治家が招待を受けているわけです。たとえば村田省藏さん、北村徳太郎さん、帆足計さん、あるいは蜷川さん、その他招待を受けているのでありますが、あなたの考えから言うと、旅券法の第十三條に一号から五号までありますが、北村さんや村田さんが、著しくかつ直接に日本国の利益または公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りると考えますか、どうですか、まず御意見を承りたい。
  277. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 村田君や北村君が招聘を受けているかどうかということは、私は関知しておりません。村田君や北村君から政府に対して旅券の交付を求めるようなことが万一あつたならば、われわれは法律的にこれを解決いたしたいと思つております。
  278. 林百郎

    ○林(百)委員 現実に招待を受けておりまして、旅券の交付の申請をしようとしているわけです。ですから具体的に村田さんだとか、あるいは石橋さんだとか、帆足さんだとか、こういう人が旅券の交付の申請をした場合に、法務総裁としては、この五号に該当すると考えるかどうか、ここではつきり言つておいてもらいたい。
  279. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まだ考えておりません。申出があれば考えましよう。今の程度においては、私は何も考えておりません。
  280. 仲内憲治

  281. 黒田寿男

    黒田委員 私は先ほど申しました通り、法務総裁として大橋国務大臣とにあわせてお聞きしたいと思いましたが、時間の関係上法務総裁は退場されましたので、やむを得ず大橋国務大臣だけに多少質問してみたいと思います。  先ほどの私の質問に対しまして、警察予備隊は、安全保障條約前文の、間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負う目的をもつて設置せられているものである、こうおつしやいましたが、そうしますと、日本は直接の侵略に対する自国の防衛のために、漸増的にみずから責任を負うという、この期待に対してはこたえないつもりですか。
  282. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この期待に対してこたえたことになるか、ならないかは知りませんが、私は警察予備隊がいかなる目的で設けられておるかということを考えますと、これは国内治安のためでありまして、国内治安のためということは、この安全保障條約に期待されております、間接の侵略に対して自国の防衛について責任を負うということは、まさにこれに該当するわけでありますから、この目的のために設けられている、こう述べたのであります。
  283. 黒田寿男

    黒田委員 そのことは先ほど承つたのでありますが、その御説明に対して私はただいまの質問をいたしたのであります。私の質問に対する答えにはなつておらぬと思います。私が申しますのは、繰返して言いますけれども、安全保障條約には、直接、間接の侵略に対する日本の防衛のために、漸増的にみずから責任を負う、このことを日本に対して期待しておる、こういつておるのであります。法務総裁のお話だと、そのうちの一部である間接侵略に対する漸増的な防衛責任のみを今果しつつあるのだ、そういう御説明でありますが、それではこういう安全保障條約が結ばれましたのに、日本は直接に自国の防衛のために、漸増的にみずから責任を負うという方策には出ないのでありますか、こういう質問をしたのであります。日本政府アメリカ政府の言うことはよく開くのであります。こういう重要な問題について——もとよりこれは義務ではないかもしれませんけれども、アメリカの期待しておることであります。日本がその期待に沿わないということは、私は吉田内閣のやり方としては、ちよつと理解できないことであると思いますので、それで特にお尋ねしたのであります。警察予備隊が何であるかということは別問題といたしまして、それでは直接の侵略に対する日本の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うという政策は、政府はおとりにならないのであるか。アメリカの期待にそむかれるのであるか。これを質問しておるのであります。
  284. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、自国の防衛をアメリカに依頼いたしております以上、アメリカ日本の防衛について日米自身に期待しているところは、できるだけ自主的にこれに即応する態勢を漸次に整えて行くということは、当然考えなければならぬところでありますが、総理からもたびたび申し上げました通り、まだ今日は、日本では再軍備の時期にあらず、また政府といたしましては、現在再軍備をいたさない、こういう考えでございますので、もつぱら直接侵略に対応する軍備の拡充ということは、まだその時期にあらずと考えております。
  285. 黒田寿男

    黒田委員 大分はつきりして参りました。そうなると、直接の侵略に対する自国の防衛のための漸増的責任措置というものは、いわゆる再軍備である。それは今はやらない。こうおつしやつたのであります。それで大分はつきりいたしました。そこでお尋ねしてみたいと思いますが、一体軍備とは何であるかという問題であります。これがどうも今までの御説明でははつきりしない。私はただいまの大橋国務大臣の御答弁の趣旨からしますと、間接侵略に対する防衛のための措置であるならば、それは軍備ではない、こういうような御見解のように承つたのであります。しかし一体軍備というものは対内的な利用はできないものでありましようか。私どもはそういうきゆうくつな考え方を持つていないのであります。軍備という問題につきましては、従来きわめて常識的な考えしか、国会におきましても、質問応答の中に現われていないようでありますが、私は軍備とは一体何であるかという問題に関して、多少過去の事例等につきまして研究してみたのであります。たとえば、この軍備とは、何ぞやという問題を最も精密に取上げましたのは、国際連盟における軍備縮小委員会の場合だつたと思います。そのときに初めて軍備とは何かという問題が、国際法上の問題として論議せられたと思うのでありますが、この場合における軍備というものの内容を研究してみますと、決して大橋国務大臣がお考えになつておりますようなものではありません。軍隊には内乱に備える軍隊と、外国に備える軍隊との別はない。軍隊といえば対外的な問題のみを取扱うだけのものでは決してない。国内の安全、すなわちその委員会はドメステイツク・セキユリテイという言葉を使つておりますが、それとともに国家の安全、すなわちナシヨナル・セキユリテイ、このいずれもの安全を目的として、軍隊というものはつくられるのでありまして、対内的に用いるものであるから軍隊ではない、対外的に用いるものであるから軍隊であるというような説明は、私はこれは正しい説明にはならぬと思う。いわんや政府軍隊でないと主張しさえすれば、ただそれだけで軍隊でないものになるというようなことは、これは子供でもそういうふうには考えないのでありまして、どうも私はそういう意味で、間接侵略に対するもの、言いかえれば国内治安を維持するためのものであるから、軍隊ではないというような説明の仕方は、正しい説明にはならぬと思う。ただいま申しましたように、対内的に用いられる軍隊というものもあるのでありますから、従つて私には政府説明は納得が行きません。私が申しますことは、私が考え出したことではなくて、国際連盟の軍縮委員会においていろいろと議論がかわされた中に、前述のようなものの考え方がある。これは、私は、きわめて專門的な考え方であると思います。一体政府は対内的に用いられる力であるから軍隊でないというような、簡單説明でよろしいとお考えになつておりますかどうか。私はもう少しその施策、設備の内容等から考えなければならぬ。單に対内的に用いるから軍隊でないというような説明では、説明にならぬと思います。これについて大橋国務大臣はどのようにお考えになりますか、お聞きしたいと思います。
  286. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいまの黒田君の御質問は、まことにごもつともな御質問だと存じます。政府といたしましては、この警察予備隊が間接侵略を目的としているから軍隊でないとか、あるいは直接侵略に使われるものはすべて軍隊であるとか、そういう点でどうこうということではございません。申し上げている問題は、元来憲法第九條の、先ほど問題となりました戰力というものは、現行憲法において、国が保持することを禁止するものでございます。そこで警察予備隊がその禁止してある戰力になるかならないかということが、憲法上の問題として一昨年以来論議せられておるのでございますが、その解釈といたしましては、戰力というものは、先ほども法務総裁から述べられましたごとく、近代戰を遂行するに足るところの十分なる手段としての実力を戰力という、これに対しまして警察予備隊の持つておる裝備の程度では、とうてい憲法上の戰力という域には達しておらない、こういうことを申しているわけでございます。それで次にしからば警察予備隊は、いかなる目的のために組織されたものであるかということに対しましては、直接これは国内治安を目的として組織されたものである。従つて直接侵略、間接侵略という、最近の区別をいたしておりまする用語例に従えば、直接には間接侵略に対するものである、こういうことを申しておるわけであります。もちろん直接侵略の場合に、それでは間接侵略のために組織された一切の実力組織は、使用されてはならないかということになりますと、直接侵略といえども、やはり国内の治安を妨害する原因でございますから、国内治安の確保という使命を達成いたしまするためには、国内治安を乱るところの一切の原因に対して、実力をもつて対処して行くということは当然のことでありまして、その場合には、及ばずといえどもやはり国内治安の目的のために、そのなし得る働きをすることは、これは当然であろうと思います。しかしながらこのことは、警察予備隊というものが本来戰争に用いられるとか、あるいは外国の侵略を予防することを直接目的として設けられたものであるということになるのではなくして、たまたま間接侵略のために組織せられましたこの予備隊が、非常の場合においては非常の例外的な役割を演じなければならぬ場合も、これは当然否定することができない、こういうことを申し上げておるのでございます。そこで御質問国際連盟における軍隊の定義をただいま承りましたが、対内的な軍隊と対外的な軍隊というように区別できはしない、こういうお話でございます。なるほどお説の通りそういうことは言い得るかもしれません。しいて言えば、警察予備隊が今日国内において担当いたしておりまする使命のごときは、戰前におきましては陸軍が国内において担当しておつたように、警察力の足りない場合においては、戒嚴等の措置が国内的に講ぜられまして、その際に陸軍あるいは海軍が国内の治安に当る、こういうことはあるわけであります。警察予備隊が警察力を補充して国内治安を担当するという、その役割から言いますれば、その戒嚴の際において陸海軍が国内で担当しておつたような仕事は、当然今後は警察予備隊が担当すべきものと思います。しかしこのことは、警察予備隊が昔の陸海軍のごとく、対外的な戰争を目的としているものであるということになるわけではなく、あくまでも対内的においてのみ、そうした治安維持のために必要な働きをする、こういうわけでございます。対内的の軍隊というものがはたしてあるかないかそれは別論といたしまして、しいて言えば、国内においてはかつての陸海軍が治安維持のために担当していたような任務は、当然今日警察予備隊が担当すべきものである。この点は私否定することはできないと考えるのであります。しかしながらそのことは、警察予備隊が憲法第九條のいわゆる戰力の組織であるということとは、無関係だと考えております。
  287. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまの法務総裁のお話で、対内的に用いるものであるから軍隊でないというような説明をしているのではない、こうおつしやいました。私はその点はまあそれでけつこうだと思います。  そこで次の問題に進みたいと思います。ただいまいろいろと重要な問題にお触れになりました。私もそれらの点に触れながらお尋ねしてみたいと思います。ちよつとその前に予備的な質問としてお伺いしておきたいと思いますことは、直接にしろ間接にしろ、日本の防衛のために漸増的にみずから責任を負うというようにアメリカから期待され、これに応ずるようなやり方をするというのでありますが、まだ現在の程度に裝備せられている警察予備隊では、この期待を十分に満たし得たものであるという限度に来ているとは、お考えにならぬと思います。漸増的にみずから責任を負うというので、まだまだこれから警察予備隊は拡充強化されるものである、こういうふうに考えてさしつかえないわけでありますか。
  288. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、内外の情勢並びに国の財政力、その他国力の許す範囲にあきまして、将来も増強をやりたいという考えは持つております。しかしながらそれについての具体的な計画はまだ持つておりません。
  289. 黒田寿男

    黒田委員 それからこれも予備的な質問としてひとつお尋ねしておきますが、私は先日、予備隊の裝備の状況を知りたいと思いまして、それを書類にして御提出くださるように願いました。ただいまそれを拜見しましたが、これを私どもこれ以上に御説明願うことは無理だと思いまから、これについては私はこれ以上に質問はいたしません。御提出になつた書類を拜見しておきます。ただ補足的にここでお尋ねしたいと思いますことは、人的関係におきまして、昨年陸軍あるいは海軍の旧軍人が、警察予備隊の学校で、一定の訓練と申しますか教育と申しますか、それを受けて、それが警察予備隊に配置せられた、こういうように承つているのでありますが、一体軍人としてどの程度のクラスの者であつたか。何人ぐらいか。陸軍であるか海軍であるか。それともその両方か。それから警察予備隊の中で、そういう人々がどういう指導的地位についているか。こういうことをお話願えれば、それを私の次の質問の前提として知つておきたいと思いますので、これをお伺いしておきます。
  290. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 昨年八月以来今日まで約一千名の旧陸海軍の職業軍人、いずれも将校であつた軍籍を持つていた人を採用いたしました。これは昨年まず第一回といたしまして八、九の二箇月間訓練をいたしたのであります。この第一回に採用いたしました人々は、昭和二十年に陸軍士官学校並びに海軍兵学校を卒業いたしました者のうちより約二百名であります。すなわちいずれも少尉です。それでその第二回といたしましては、昨年の十、十一の二箇月間に約四百名を訓練いたしております。これは陸海軍の昭和二十年九月に中佐または少佐であつた人々のうちから四百名でございます。それから最後には昨年の十二月から今年の一月まで、同じく二箇月間訓練いたしておりますが、これは陸海軍の大尉、中尉、少尉の前歴を持つている——前歴と申しますか、終戰当時にそういう階級にあつた人々であります。いずれも陸海軍の士官学校または兵学校を卒業いたした者であります。これらの諸君は警察予備隊におきまして、最高は一等警察正に任命いたしました。一番下の方は二等警察士、この五階級にわかちまして採用いたし、それぞれ階級相当の職務を與えているわけでございます。すなわち連隊長になつている者もございます。また副連隊長になつている者もございますし、その他階級相当の幹部といたしまして、ただいま配属いたしているような次第でございます。
  291. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまのお話のように、特に軍人としての経験のある人々を、昨年に至つて警察予備隊に入れたということは、やはり警察予備隊が軍的性質のものかわりつつあるということの証拠ではないかと、私どもは考える。どうもそういう疑問が起きてならぬ。政府がどうおつしやつても、私どもはそういう疑問が起るのであります。いかがでしようか。
  292. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 警察予備隊は、創設当初から国内治安のための必要上、組織としてつくり上げたものでありまして、ことにその編成は部隊編成を採用いたしております。従いましてこの機構を運営いたし、ことに実際活動にあたりまして、指揮官として働く者が部隊指揮官たる経験を持つているということは、予備隊の能率を高める上から言つて必要でありまするので、さような部隊の性格から見まして、一昨年の創立の当時から、すでに軍隊におきまして指揮者としての経歴を持つている者につきましては、その経歴を勘案いたしまして階級を決定し、任務を與えておつたわけでございます。しかるに昨年に至りまして旧職業軍人の追放の解除が行われましたので、従来の予備隊の目的から見まして、適材であると認められる人々を、この予備隊において採用いたすことは、これはきわめて適切なる措置であると考えましたので、かように約千各の募集をいたした次第であります。
  293. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまの大橋国務大臣の御説明では、私の疑問が氷解したとは言えませんけれども、これはこの程度にしておきまして、少し質問を進めて行きたいと思います。  政府が警察予備隊は軍隊ではないということの説明をいたされます場合の他のいま一つの説明方法は、ただいま法務総裁の申されましたように、現在の警察予備隊の装備の程度では、近代戰に耐え得るだけのものではないから、かくのごときものをもつて戰力ということはできない、こういう説明であります。しかし私どもはこの説明にも承服することができません。一体軍備の量というものにつきましては、私どもは、いろいろな観点からこれを考察することができると思います。たとえば絶対的な所要量というような見地から、量を考えることもできますし、それから他国の軍備との関係的な所要量という観点から考えることもできます。それからさらに自国の国力に相応した所要量、必要量、こういう点からも考えられると思う。たとえば、先ほど申しましたような絶対的所要量、日本ではこれだけのものがほしい。他国の軍備がどんなに多かろうと少かろうと、そのことには関係なく、このような比較を超越しまして、とにかく日本の状態ではこの程度の軍備がいるだろう、こういう方面から見た軍備の量というものも考えられます。けれどもこれは今日日本においては問題になり得ないと思う。従つてこの場合に当らないから軍隊でないというようなことは、私は言えないと考えます。  それから他国の軍備との関係的な面における所要量でありますが、たとえばアメリカは非常に厖大なる軍備を持つておる。ソ連も厖大な軍備をもつておる。そういうものとの比較におきまして一体日本はどの程度の量を持つておるかというような意味での量も考えられます。こういう点から比較的に考えまして、アメリカのような軍備の厖大な国に比べて、日本国の軍備の量があまりに少いからといつて、この関係において、すなわち日本の持つておる一定の裝備が他国に比較して問題にならぬから、だからそれは軍備とは言えぬ、こういうことも私は言うことができないと思います。どうも政府は、私どもが今申しましたような意味において、すなわち予備隊の裝備は他国の軍備に比較して問題にならぬという面をとらえて、現在の警察予備隊の裝備の点から、それを戰力とは言えない、こういうふうに御説明になつているように思われます。しかしながら自国の国力に相応した軍備の量というものも考えられる。今日本でジエツト機まで持とうなどと考えましたところが、わが国の財政がこれを許すものではありません。従つてそういうことを考えるのはナンセンスであります。また日本の国力でこれこれの量がほしいと考えましても、独力で外国の侵略を防ぎ得るだけの量の軍備を持つということは、これも不可能なことでありまして、これは日本だけでなく、おそらくソ連あるいはアメリカを除けば、どこの国でもそういう状態であろうと思います。そこで私はそこまでのものになつていなくても、自国の国力に大体において相応した程度のものであれば、それが外国の侵略に対抗するというような意図のもとで設けられておる限り、やはりそれは軍備である、こういうふうに解釈すべきであると考えます。そこで私は單に予備隊の裝備は非常に貧弱であるから軍隊でない、こういう説明は私どもの納得できぬところであると思います。  そこで次に、ただいま法務総裁のお話になりました程度の具体性を持つ警察予備隊が、われわれの観念から見て軍隊の域に達しておるかどうかという点を、研究してみる段階に来ました。この点についても私は多少研究してみたのであります。先ほど申しました国際連盟の軍縮委員会で、非常に興味のある問題が取扱われたと思いますのでこれを御紹介申し上げてみたいと思います。国際連盟の軍縮会議準備委員会のA小委員会という委員会で、こういう問題が出されております。それは国の国土を防衛するためにのみ使用する軍備があるかという問題として提出せられておるものでありまして、それに対しまして、かくのごとき軍備あり、という結論に到達しております。なおこれをもう少しこまかく分析しますと、「一定の軍隊が純粹に防禦的精神をもつて組織せられておるか、はたまた攻撃的精神をもつて組織せられておるかを確認する方法があるか」という問題でありまして、そこでは、「あり」という答えが出た。そして、そこで、一体そういうものはどういう軍隊であるか、ということを具体的に示しておるのであります。これを見ると、日本の警察予備隊というものと非常によく似ておる。それは第一は新式材料及び改良型材料の取得数量の僅少なること、平たくいえば、新しい軍備をすることができないような貧弱なものであること。第二にはただちに使用し得る兵力がきわめて僅少であるか、または減少する傾向にあること、要するに軍隊の兵力が非常に少いということ。第三は現役年限が短期間か、または短縮する傾向にあること。それから第四は、訓練の程度が比較的低いこと。第五は、国防費が比較的僅少であるか、または減額の傾向を示すこと。こういう條件もとで維持せられておる軍隊は、攻撃的精神を持つておる軍隊ではなくて、防禦的精神をもつて組織されておるものである。しかしとにかくそれは軍隊だ、こういうことになつておるのである。なお、非常に興味があると思いますのは、やはりその委員会に関連することでありますが、一九二六年の八月の軍縮会議の準備委員会において、ドイツの委員がどういうことを言うたか。それは非常に興味があるのであります。ドイツの委員はこういうことを申しました。これは、ドイツが第一次世界戰争で猛烈に攻撃的精神を発揮して、諸外国からその罪責を指摘せられたそのあとのことであります。そのときの委員会で、ドイツの委員は、決してドイツは侵略的な軍隊を持つのではない、ドイツの持つ軍隊は單に防衛のためのものにすぎないということを説明して、次のように申しております。第一は、国民の一小部分のみ兵役に服し、隣国に比し戰鬪力が非常に劣つておること、ドイツは外国に比べて戰鬪力が比較にならぬほど弱いものだ、そういう軍隊である。第二に、重砲、タンク、飛行機のごとき攻撃用兵器を、ごうもドイツの軍隊は持つていないということ、第三には、何ら動員措置をなさぬこと、ただ今あるだけのものであつて、その他に動員措置を持つてはいないのだ、第四は、軍需材料の貯蔵量がきわめて不足しておる、こういう事実をあげまして、だからドイツの軍隊は決して攻撃的軍隊ではなくて、防禦的精神を持つ軍隊にすぎない、こういう説明をしておる、私どもはこういう、いわゆる防衛的軍隊と称せられるものの内容を見ると、どうも日本の警察予備隊がそういう條件に当てはまるようなものであつて、名称上は警察予備隊と言つておりますけれども、結局一種の軍隊ではないか、こう感ぜられるのであります。繰返していえば、こういう過去の例を見まして、どうも警察予備隊が、前述の、小委員会において説明されましたような内容に近い一種の、実質上の軍備である、こう私どもは解釈をしたいのであります。  この点についてはしかし私はこれだけ申し上げておくことにしまして、最後に、大橋国務大臣にお尋ねしてみたいと思うことがあります。それは、以上のように予備隊をその軍隊化という観点から考えて参りまして、さてその後で、日本の警察予備隊のことをあらためて別の角度から考え直してみるとき、結局、それは戰力ではないかといういま一つの重要な問題が起る。それについてであります。そこで、戰力とは何かということが問題になると思います。これについては私自身がかれこれと申し上げますよりも、学者の意見を聞いてみた方が適当であると考えます。たとえば佐々木惣一博士にいたしましても、あるいは東京大学の公法学関係の教授諸君にいたしましても、戰力とはどういうものであるかという問題に対しまして、政府も十分に御承知のこととは思いますが、こういうふうに考えております。佐々木博士は、「陸海空軍その他の戰力」という場合の戰力は、陸海空軍のごとく戰争をなすの力を供給する任務を有するものではない。陸海空軍は戰争をなすの力を供給する任務を有するものであるが、その他の戰力というものは、必ずしもそういうものではないが、戰争をなす力を供給する可能性を有するものを言うのである。それは人たると物たるとはこれを問わない。たとえば何らかの体制を有する人の集団をつくり、必要に応じて軍事行動をなさしめるよう、計画的に訓練しておくというようなものは、これは憲法第九條第二項に言う戰力であつて、これを保持することは許されないのである、こういうふうに説明をしておられるのであります。私もこの説明に賛成をするものであります。また東大の教授諸君も大体同じような解釈をしておると思うのであります。すなわちはつきりと軍隊という形で現われておるようなものでなくても、一たび戰争が起つた場合に、ただちに戰争に用いることのできるような潜在的な戰力も、憲法で禁止されておる戰力の中に入るものだという解釈で、たとえばその例の一つとして、警察力というようなものも、それ自身では戰力ではないけれども、一定の程度を越えれば、戰力に該当するものとして、これを保持することを禁止せられるのである、こういうふうに説明をしております。そこで私どもはこういうふうに考えて参りますと、どうも現在の警察予備隊は、固有の意味軍隊というものでは、かりにないといたしましても、少くともその他の戰力という、その戰力に該当するのではないかと思います。時間がございませんが、私はもう少し話を進めて、私の意見の結論を出しておきたいと思います。  そこで次に問題になりますのは、ある施設が戰力であるかどうかということの限界をどこできめるかということで、これは非常に微妙な問題であります。この点については、私は木村総務総裁や大橋国務大臣が今まで仰せられたような條件をもつて、戰力であるかいなかの境界線とされるその考え方には賛成できない。では、前進の学者や教授諸君は、どういうところに基準を置くべきであると言つておるかと申しますと、結局、一般的に限界をどこに引くかということを機械的にきめることはむずかしい、それは不可能である、個々の場合に具体的にこれを決定するほかはない、こう申しておりまして、なおその決定の基準は、客観的に見て戰力と言えるかどうかにあり、政村が戰力であるとかないとか、どういう説明をしているとかいないとかは問題ではない、客観的に見て戰力と言えるかどうかということで判断するよりほかはなかろう、こう言つております。これは私は妥当な説だと思います。そこでこういう妥当な説に従つて、警察予備隊というものの現実を見ると、どうであるか。この警察予備隊が、安全保障條約というようなものと結びつかないで設けられておりますもりであるならば、私は疑問を起さない。けれども安全保障條約というものとの関連において設けられておる制度である。このことは、私は客観的に見て、これが軍隊的なものであるという解釈をなし得る一つの根拠になると思います。  それからいま一つは、先ほど法務総裁の申されましたように、旧軍人を多数に幹部に入れておる。そうして今具体的な方策を説明することはできないけれども、とにかく将来これを拡大強化する方針である。こう言われておる。こういうふうに安全保障條約に結びつき、そうして警察予備隊の裝備並びに人的性質並びに配置の現状、さらにこれが将来拡大強化される傾向、そういう諸点をとらえて客観的に判断するとき、政府がどう仰せられようとも、それは少くとも戰力だ、固有の意味軍隊にまではなつていないとしても戰力だ、いざという場合にはいつでも戰争に用いられる意図をもつてつくられておるものである、こう私は思う。これは現に大橋国務大臣もただいまそう言われました。こうおつしやつた。本来は間接侵略に対するものであるけれども、万一侵略が起つた場合にこれを使わないということはないのだ、そう言われた。これを直接侵略に対して使うということを、本来の使命としてこしらえたものではないけれども、侵略が起つた場合には、この警察予備隊は手をこまねいて見ておるものではない、それに対して戰うのだ、そういう面もあるのだと仰せられた。こういうものは私は戰力だと思う。今固有の軍隊になつていないとしても、戰力だと思う。私どもはこういう意味で、これは政府は私の質問に対しましてどうお答えになるかわかりませんが、こういう意味で、私どもは、警察予備隊は戰力の域に達しており、すでに政府は憲法違反をやつておる、こう思う。これだけ申し上げまして、大橋国務大臣の御意見を承りたいと思います。
  294. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま黒田委員から敬聽すべき御意見を承りました。まず第一に、黒田君は、この警察予備隊というものは、いろいろ研究をしてみますと、国際連盟において研究をいたした当時の防衛的軍隊に、当らずといえども遠からず、こういうふうに言つておられるのであります。しかしながら、なるほど国際連盟においては、軍隊に防衛的軍隊と攻撃的軍隊があるかどうかという問題を御研究になつたでありましようが、われわれはそういつた問題を現在問題にしておるのではないのであつて、問題は日本国憲法第九條における戰力になるかならないかということが、問題だろうと思うのであります。従つて防衛的軍隊と似ておるか、攻撃的軍隊と似ておるか、あるいはそもそも軍隊なるものには全然似ておらないかということの論争は、直接にわれわれのとりあげておる問題とは無関係の問題であると、私は考えるのであります。そこで直接にとりあげられる問題でありまするところの、憲法第九條のいわゆる戰力に該当するかどうかという問題に入つてみますると、これにつきまして黒田君は、いろいろな尊敬すべき学者の名をあげられまして、これらの人々がこの種のものは戰力であるという解釈をしておるようである、こういうことを言われておるわけであります。むろん憲法第九條は憲法上重要なる規定であり、またいろいろの角度から見て問題の多い規定でございますから、この解釈について学者間にいろいろな意見があるということは、当然考え得るところでございます。そこで政府はこれらのいろいろな憲法の解釈論のうち、いかなる解釈をとるべきであるかということになるわけでございますが、幸いに政府国会が立法せられました法務府設置法によりまして、行政府であります内閣の法律顧問というものは、これは法務総裁にお願いをするということになつておるのでございますから、政府といたしましては、一応権威ある国会によつて権威を認められております法務総裁の意見を聞いたわけであります。それによりますと、先ほど来述べられましたごとく、戰力ではないということでございますから、戰力でないということを、私もまた安心して皆様に御答弁を申し上げておる次第であります。しかして黒田君はこれに関連いたしまして、警察予備隊の拡充というものは安全保障條約と関係があるから、いよいよもつて戰力ではないか、こう言つておられますが、われわれは警察予備隊というものは、安全保障條約があろうが、なかろうが、また安全保障條約にいかなる表現が與えられようとも、それ以前に予備隊令によつて設置せられたものでございまして、その後予備隊令も改正いたしておりませんし、また政府といたしましても、今後もその根本的な性格をかえようとは考えておらないのでございますから、後に出て来た安全保障條約によつて、今まで戰力でなかつた予備隊が急に戰力になるというようなりくつは、私は通らないのではないかと思うのでございます。  それからその次に警察予備隊に昨年以来旧軍人が入つて来ておるから、いよいよ戰力ではないか、こう言われた点でございますが、旧軍人はひとり警察予備隊に入つておるばかりではございません。社会のいろいろな方面において、こらの人々もそれぞれの職務を果しておられるのでございまして、黒田君の言われるところによりますと、いろいろな商事会社にも入つておる、そうすると、商事会社もまた戰力だ、こういうりくつになるのでございますが、われわれはそういう説はとり得ないのであります。  それからその次に、警察予備隊が国内治安のためにつくられたものではあるが、しかし直接の侵略があつた場合には、これは使わずにおくということはあり得ない、及ばずといえども、やはり防衛に当るであろう、こう私は申し上げたのであります。これは直接の侵略が不幸にしてありました場合に、これに対して防衛の役目を果すということは、何もひとり警察予備隊ばかりではないのでありまして、今日のすべての警察官といえども、またそのときには命によつてさような働きをするのでございましようし、また真の愛国者でございますれば、不正なる侵略者に対しては石をとつて投げても戰うでありましよう。その場合になりますと、石もまた戰力なる、こう言わなければならぬ道理でございますが、私はさような説に賛成することはできないのでございまして、いかなる点から見ましても、この警察予備隊というものは戰力にはあらずといわなければならぬのでございます。これ以上は見解の相違と存じますので、まず一応のお答えを申し上げた次第でございます。
  295. 黒田寿男

    黒田委員 ただいま大橋国務大臣が申されましたように、これ以上は議論になると思います。だから、私は大橋国務大臣が言われましたことを、ここできよう駁論はいたしません。ただ一つの問題だけに触れておきます。それは警察予備隊は安全保障條約に無関係だとおつしやつた安全保障條約があろうと、なかろうと、警察予備隊というものはあるのだとおつしやいましたけれども、これは私は形式論だと思います。一体警察予備隊というものがつくられたのはどういう経過によつてであるか。はつきりと事態を知つております者から見れば、日本政府の創意によるものであるか、それとも最高司令官からつくれと言われてつくつたものであるか、この問題は、明瞭である。私どもは吉田政府が、自分のイニシアチーヴにおいて警察予備隊をつくつたものとは解しておりません。これはマツカーサー元帥からの指令によつてつくられたものである。その命令の精神が日米安全保障條約の精神に織り込まれておるのである。だから、警察予備隊が安全保障條約より前にできたのであるから、安全保障條約と関係がないというようなことをおつしやるのは、これは一片の形式論であつてとるに足りない。私どもは精神論からして警察予備隊の創設ということが、安全保障條約と、私が今日問題といたしましたような諸種の観点からして有機的関係がある、決して無関係だというように私は解釈いたしておりません。しかしこれ以上今日は議論はいたしません。
  296. 仲内憲治

    仲内委員長 次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時六分散会