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1951-12-15 第13回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十二月十五日(土曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 仲内 憲治君    理事 並木 芳雄君       植原悦二郎君    大村 清一君       小川原政信君    菊池 義郎君       近藤 鶴代君    佐々木盛雄君       中山 マサ君    守島 伍郎君       小川 半次君    松本 瀧藏君       山本 利壽君    林  百郎君       高倉 定助君  出席政府委員         内閣官房長官  岡崎 勝男君         賠償庁次長心得 河崎 一郎君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十一月二十七日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として米原  昶君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員近藤鶴代辞任につき、その補欠として越  智茂君が議長指名委員に選任された。 同日  委員越智茂辞任につき、その補欠として近藤  鶴代君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員加藤鐐造君辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 十二月十一日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として今  澄勇君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員竹尾弌君及び米原湘君辞任につき、その補  欠として飛嶋繁君及び林百郎君が議長指名で  委員に選任された。 同日  守島伍郎委員長辞任につき、仲内憲治君が議  長の指名委員長補欠選任された。     ————————————— 十一月二十七日  沖縄奄美大島小笠原等北緯二十九度以南諸島  の主権日本完全復帰に関する決議案(井之口  政雄君外二十一名提出、第十二回国会決議第一  六号) 十二月十四日  平和憲法擁護、再軍備反対に関する決議案(成  田知巳君外七名提出決議第一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国政調査承認要求の件  国際情勢等に関する説明聴取の件     —————————————
  2. 仲内憲治

    仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず私から簡単にこあいさつを申し上げたいと存じます。このたび私はからずも当外務委員長重責をになうこととなりました。講和後の日本の再建につきまして、はたまた現在の国際情勢から見まして、当外務委員会の職責は、きわめて重大なる意義を持つものと考えるのであります。私は微力非才ではありまするが、委員各位の御援助、御協力によりまして、この重責を全ういたしたいと存じます。何とぞ各位の絶大なる御支援をお願いいたす次第でございます。(拍手)  以上簡単でありますが、ごあいさつにかえる次第であります。  それではまず国政調査承認要求の件についてお諮りいたします。  本委員会といたしましては、前会と同様、衆議院規則第九十四條によりまして、国政調査承認要求書議長提出いたしたいと存じます。  まず調査する事項は、一、国際政治及び経済に関する事項、二、国際情勢に関する事項調査目的は一、国際政治及び経済の現状並びに動向を調査し、国民外交と国策の樹立に資する。二、国際情勢の推移を注視し、わが国の政治及び経済に及ぼす影響等を検討する。調査の方法は関係各方面より意見聴取及び資料の要求調査期間は本会期中といたしまして、ただいまの国政調査承認要求書議長提出いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 仲内憲治

    仲内委員長 御異議がなければ、さようとりはからいます。     —————————————
  4. 仲内憲治

    仲内委員長 次に、国際情勢等に関する、説明聴取の件を議題といたします。  本件に関しては、外務当局より別に説明もございませんようですから、ただちに質疑に入ることといたします。質疑通告順にこれを許します。並木芳雄君。
  5. 並木芳雄

    並木委員 私は賠償の問題と中国二つ政府の問題との二点について質問をいたしたいと思います。  最初賠償についてお尋ねしておきたいと思いますが一賠償施設に関して、先般総司令部の方から覚書が来たとのことでありますけれども、事実来たのかどうか、いつそれが来たのか、その内容はどういうものであるかということ、それをまずお聞きいたします。
  6. 河崎一郎

    河崎政府委員 ただいまの御質問に対してお答えいたします。本年の十一月二十三日付で、総司令部民間財産監理局CPCと申しておりますが、民間財産監理局から賠償庁あて三つ覚書が発出されております。その三つ覚書のそれぞれについて、簡単に御説明申し上げます。  最初覚書は、進駐軍職員の公用のための賠償工場入門の件という題でございまして、その内容を簡単に申し上げますと、その覚書で一番重要な点は、本年七月十日付で同じくCPCの方から日本政府あてに、今後賠償機械進駐軍では八月以降はこれ以上とらないからという一項があるのでございますが、今度のただいま申し上げました覚書によつて、その一項を全部無効としておるわけでございます。従いましてこの覚書によりますと、今後は進駐軍の方で賠償機械はさらに自由にとれるというふうに解釈されるのであります。それから進駐軍要員賠償工場入門の件につきましては、従来進駐軍要員賠償工場に入つて来るには、相当厳重な許可を必要としたのでありますが、今後はその許可を非常に緩和しまして、大体一方的に査察、インスペクシヨンのためならば自由に工場施設を見に来れる。それから賠償工場にありまする機械設備も、進駐軍側要求があれば、これを引渡さなければならないということでございます。  それから第二の覚書賠償工場土地建物解除に関する件という題目でございます。この覚書の要点は、従来は賠償機械保管に必要でない民間賠償工場内の土地建物は、日本側で自由に民間で使用ができたのでありますが、今後こういう民間賠償工場の中で、賠償機械保管に必要でないところの土地建物までも、これはやはり進駐軍管轄下に置く、それ以外にも賠償工場内にあるすべての土地建物は、進駐軍解除するまではこれをその管理下に置くという点でございます。従いまして従来相当この面で緩和されておつたのでありますが、今後は賠償機械保管に必要でないところの国有はもちろん、民間賠償工場土地建物でも、やはり進駐軍がこれを再び管理するという趣旨でございます。  それから第三の覚書は、民間工場所在日本政府所有賠償工作機械について、という題目でございまして、これによりまして、軍工廠以外の各施設にありまする全工作機械について、報告書を本月の十五日までに提出しろという命令でございます。従来は軍工廠内にある工作機械は総司令部の方にもわかつておるのでありますが、民間工場保管中の軍工廠所属機械並びに戰時中国費で購入して民間工場に貸与した機械については、現在のところ進駐軍で完全な記録を持つておりませんから、その民間工場保管中の工作機械を調べ上げて、これを全部総司令部報告しろという命令でございます。十一月二十三日付の日本政府あて覚書というのは、以上の三つでございます。
  7. 並木芳雄

    並木委員 どういう理由でこういう覚書が出たのですか。
  8. 河崎一郎

    河崎政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。この覚書が出ました直後、総司令部民間財産監理局局長でありますジレツト大佐から私は呼ばれまして、今回の覚書発出に対するバツク・グラウンドの説明を受けたのでありますが、その民間財産監理局長の私に対する説明によりますと、今度の三つ覚書は、賠償施設をなるべく日本経済のために使わそうという大方針には従来とかわりはない。ただ今回ラスク国務次官補が参りまして、今後駐屯軍の必要のために、あるいは賠償関係施設から進駐軍施設利用せしめなければならないものがあるかもしれないので、それで今回この三つ覚書を発出しまして、賠償関係施設を一応進駐軍管轄下に置いて、そのうちで今後行政協定による駐屯軍のために必要な施設があるかどうかを、全部リストについて当つてみて、あれば使う、なければこれはすべて日本側利用さすつもりであるから、ここしばらく賠償施設日本側における利用は一時留保するのだという説明でございます。そして来年早々にもなれば、駐屯軍の必要の範囲が大体はつきりするから、そのときには、さらに従来の方針従つて賠償施設はなるべく日本側利用せしめるようにとりはからう。その点誤解のないようにという説明でございました。その後新聞等でこの問題が大きく取上げられましたのですが、数日前にもCPC司令官からやはり同様な説明がございまして、行政協定の細目のとりきめが少し遅れるかもしれないが、大体一月ころには賠償関係施設を再び日本側に全部管理を移すようにしたいと思つて、目下せつかく努力中であるという言明がございました。
  9. 並木芳雄

    並木委員 大体どんなような品物をつくるために検討するのか、その品物の概要はわかりませんか。
  10. 河崎一郎

    河崎政府委員 今回十一月の覚書で再管理されました賠償施設は、賠償機械はもちろん、賠償工場土地建物も含むわけであります。土地建物につきましては、CPC司令官説明によりますと、必要によつてはこれは駐屯軍の兵舎なんかにも使うかもしれないという説明でございます。それから賠償機械につきましては、非公式に現在総司令部の方から、工作機械を——これは民間のものは大体手をつけない方針でありますが、国有官有のものについては、その一部分極東空軍の方で使いたいという希望を、私のところへ非公式に申し出ております。ただその範囲、時期等についてはまだ先方でも具体化しておりません。
  11. 並木芳雄

    並木委員 こういう機械類とかなんとか、それ自体を賠償に引当てるという目的は全然ないわけですね。たとえばフィリピンとか、インドネシアとか、そういうところに対して新たにこれを引当てるという計画はないわけですね。
  12. 河崎一郎

    河崎政府委員 それは全然ございません。
  13. 並木芳雄

    並木委員 この覚書が出てから、今までの方針相当の急変を与えたわけですから、民間工場などでは相当困つたところもあるのじやないかと思うのです。それで七月十日付の覚書から今度の覚書の出る間に相当処分されたものがあるのではないかと思うのです。今度の覚書の前の覚書のときに、自由に処分をしていいという覚書があつたわけでございますね。それでそれに基いて相当処分をされておるのではないかと思うのです。その処分は実際どのくらいされておるか、すでにされたものは、今度の覚書によつてどういうふうになるのか、原状に回復するのか、処分されたものはそのままでいいのか。
  14. 河崎一郎

    河崎政府委員 先般七月十日の覚書でございますが、それによりまして大幅に日本側賠償施設についての権限委譲があつたわけですが、その後今日までの間に期間が短こうございまして、その間には従来懸案であつたものが一部分解除になつたのでございますが、数量にしてはそんなにございません。それからこの十一月二十三日の覚書発出前にも、すでに先方では申請に対して許可を出し渋つてつたのでございまして、実際問題としては七月以降一部分解除されましたが、数量はそんなにございません。  それから民間の方で今回の覚書に対して非常に憂慮しているというお話でございますが、先方は非公式に、なるべく民間のものは手をつけない、一応原則としては、民間賠償工場関係も今回の再管理のもとに置かれるが、実際問題としては、国有官有のものを主として管理するのであるという説明でございます。従つて民間賠償工場に対して、新たにこれを再接収するというようなことはないと考えられます。
  15. 並木芳雄

    並木委員 もう一つだけ賠償についてお聞きしておきます。横須賀とか、四日市でしたか、方々で例の軍工廠処分という話があつたと聞いておりますけれども、どの程度まで話が進んでおつたのですか。それからその話は今度の覚書でどういうふうになつて行きますか、その点をお伺いしたい。
  16. 河崎一郎

    河崎政府委員 ただいま四日市並びに横須賀と申されましたが、今問題になつておりますのは、四日市の元海軍燃料廠でございますけれども、この種の軍工廠土地建物利用につきましても、今度の覚書によりまして総司令部管轄下に置かれているわけでありまして、これが利用につきましては、やはり総司令部に対して正式の申請を出してその許可を求める必要があろうと思います。それに対して総司令部の方で許可を出すかどうか、これは申請を出してみなければわからないと思います。
  17. 並木芳雄

    並木委員 それでは賠償の問題はそれだけにしておきます。  次に中国二つ政府の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。実は平和條約第二十六條の適用についてちよつと疑問を持つておるのであります。それは、條約が成立した後三年間は日本が二国條約を受ける義務があるという趣旨の二十六條でございますけれども、これの中に中国政府が入つて来るかどうか、そういうことに対してちよつと疑問があるのでございます。と申しますのは、中国の場合には、インドが参加しなかつたなどとは違つて、参加させられなかつたのではないかというわけです。もし連合国の方できめることができたとしたら、中国のいずれかの政府が條約に参加したであろうと思います。ですから、他の国の場合と違つて中国の場合には、この第二十六峰は適用されないのではないか。従つて中国の方から平和條締結申込みをする筋合いにならないで、こちちの方で決定するのを待つておるというのが本筋ではないかと思うのであります。言いかえれば、中国は條約参加が停止されておるのではないかというふうに考えるのですけれども政府はどういうお考えですか。
  18. 島津久大

    島津政府委員 この二十六條が中国適用がないのではないかというような御質問でございますが、その辺の御趣旨が実ははつきりのみ込めないような気がするのであります。御承知のように、この二十六條には「千九百四十二年一月一日の連合国宣言に署名し若しくは加入しており且つ日本国に対して戰争状態にある国」ということになつておりますので、当然中国が入るということになつております。御疑問の点は、中国を代表する政府連合国間に合意がない、そういうことで御承知のような経緯でサンフランシスコ会議中国招請状が出なかつた、インヴアイトされなかつた、まあそういう関係にあるわけです。それが依然として解決されないで今日に及んでおる。その点が何と申しますか、客観情勢にもよりましようし、また連合国間で合意ができるというようなことになれば、解決される問題だと思います。中国というものを二十六條で排除しておるということはない筋合いだと思います。
  19. 並木芳雄

    並木委員 條約の條文の上からは明らかに排除はされておりません。ただ実質的な点についてお尋ねしておるわけなのです。つまり中国としては、あの場合に参加したくても、中国を代表する政府というものは参加できなかつたということになるわけです。ですから先般来中国両方政府中共政府国府、双方から條約締結申込みがあつた場合には、日本政府としては、この平和條約と同じ條件であるならば、それを受ける義務があるのではないかという説に対しての答えを出してみたいと思うのです。つまり中国二つ政府両方から日本に対して二国條約を結ぶという申込みができるものかどうか。この條文からはむろんできるように見えるのですけれども、実質的のことを考えてみますと、こちら側でどれかをきめるということが先決問題ではないか、どちらかにきめてからでなければ、條約締結申込みをすることができる地位にならないのではないか、こう思うのです。中共政府国府、どちらから申込があつても、日本政府としては受けなければならない義務があるのではないかという説に対して、私はちよつと疑問を持つておるのでお尋ねしておるのです。
  20. 島津久大

    島津政府委員 必ずしも條約論でないというお話でございますので、そういうつもりでお答え申し上げますが、これはどちらかの政府日本側に條約の締結を提案して来るということは私は自由だろうと思います。お説のように、それではどつちの政府日本は條約を結ぶかということは、これは自然日本選択せざるを得ない立場に立つものだろうと思います。従いまして両方から言つて来たら、両方に応じなければならぬというりくつはもちろんないと同時に、片方から言つて来た場合も、片方から言つて来たからただちに義務を生じて條約を結ばなければならないということもまたないわけであります。やはりおつしやいますように、選択と申しますか、どの政府というのが先決の問題であつて、それから義務が生じて来るということは言えると思います。
  21. 並木芳雄

    並木委員 この際私は特にはつきりしておきたいのですけれども選択日本にまかされておりますか。どうも連合国できめるのか、全然日本にまかされておるのかということが、ちよつとはつきりしておらなかつたものですから、今の島津さんのお答えの中にも、日本選択するというお言葉がありましたので、そうなればはつきりしたわけなんですけれども、これはこの間の條約締結をめぐつて二つ中国政府のいずれを選ぶかは、日本にその選択がまかされたということがはつきりしておるのですか。
  22. 島津久大

    島津政府委員 その点は、いきさつから見ましても、また條文から見ましてもはつきりしておると思います。この平和條約が効力を発生しますと、日本は当然主権を回復するわけです。その主権を回復した日本平和條約を締結するにあたつて、当然これは日本の独自の立場で決定できるわけであります。
  23. 並木芳雄

    並木委員 これはむずかしい質問になるかもしれませんが、今のところ政府としてはこれに対してどういう考えをお持ちですか。きのうのダレス氏の演説でも触れておらなかつたようですけれども、どういうような方針を持つておられるか、ちよつとお開きしておきたい。
  24. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御質問の点は、前国会で條約の特別委員会ないしは本会議でしばしば御質問がありまして、総理からお答え申し上げてあるところであります。それ以上に私からつけ加えることはできません。
  25. 並木芳雄

    並木委員 このたびダレス氏から何にも話はありませんでしたか。
  26. 島津久大

    島津政府委員 ダレス顧問が今回東京に来られました趣旨は、ダレス氏自身が発表しておられる通り、交渉ではないということだそうであります。従いましてそういうような問題は何にも承知をいたしておりません。
  27. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点お尋ねしておきます。條約二十六條の三年間の義務というのは、三年たつたあとどうなるかということについて触れていないと思います。そこで三年間は日本は受諾する義務がありますけれども、三年たつたあと日本は自由な権利が留保される、こういうふうな解釈になるものであるかどうかという点であります。つまり三年間たつてしまうと、どこから申し込んで来ても、いかなる二国條約というものももうあり得ないのだというのか、それとも三年たつたあと日本義務はないけれども日本が結びたければ結んでもいいのか、こういうことです。
  28. 島津久大

    島津政府委員 あとの方の御解釈通りと思います。
  29. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、中国二つ政府の場合に、たとい三年間に解決がつかなくても、なお三年後においても、行く行くは條約締結ができ得る余地があるわけですね。
  30. 島津久大

    島津政府委員 もちろんその通りでありまして、二十六條に書いてありますような義務がなくなるわけで、二国條約をつくることはこれはまつたく自由であります。
  31. 仲内憲治

    仲内委員長 官房長官大橋総裁が出席する予定ですが、ちよつと時間がありますので、この機会大村清一君、佐々木盛雄君、武藤運十郎君の三委員米国政府招請に応じて渡米せられ、今般帰朝せられましたが、この際この報告を承ることとします。ごく簡単に願います。
  32. 大村清一

    大村委員 私ども一行五名の者、ただいま委員長よりお述べになりました者のほかに参議院の團外務委員がわれわれの一行に、参加せられたのであります。これら五名の者がアメリカ政府の招きによりまして、期間九十日の予定をもつて米国を訪問いたし、国際情勢一般を初めといたしまして、同国における外交関係の立法及び行政機関の運営並びに国際連合研究等をいたして参つたのであります。  まず九月一日に空路東京を出発いたしまして桑港に到着いたし、同地における対日平和会議に出席いたしました後、一路ワシントンに向い、同地に約一箇月半滞在いたしました。またその間ニユーヨーク、ボストン等をも訪問いたし、帰路にはシカゴ、デンヴアー、ロスアンゼルス、桑港を経由いたしまして、再び空路で十二四日に帰朝いたした次第であります。ワシントンにおきましては陸軍及び国務省の懇切なあつせんを受けまして特に国務省におきましては一行のために専用の一室を設備してくれまして専任係官も指定いたし、日本関係を持つ諸官こぞつてわれわれに便宜を与えてくれたのであります。アチソン長官を初め、国務省関係官はもちろん、国会有力議員並びに民間識者多数と面会をいたし、意見の交換を行うことができ、まことに貴重な知識と体験をかち得て参りましたことは、一行衷心欣快とするところであります。特に平和條約調印後米国官民日本及び日本人に対する感情は、予想以上に好転いたしておりまして、今後両国の提携協力に資するところ多きことを感得いたした次第でございます。これはまことに御同慶の至りに存ずるのでございます。  御承知通り米国は一九五三年、すなわち明後年までに国防力の充実を完成し、あわせて自由諸国共同防衛に遺憾なきを期し、もつて共産勢力の進出を阻止することに官民とも、また政党政派の区別なく、まつたく一致した確信を持つて一路邁進いたしておるのであります。このことは日本考えておりました以上に、向うに参りまして私どもの特に深く感銘いたしたところであります。本年のごときはこの平時状態のときにおきまして、未曽有の厖大な軍事予算を成立させ、従つて国民相当重い税金も何ら不平不満を唱えていないというような状況であります。また一面におきましては相当多数の兵も徴募されておる。これも喜んでそれに応じておるというような状況であります。この点は日本独立国家として発足するに際しまして、常に念頭に置かなければならぬ事実であると痛感いたしておる次第であります。日本が防共の一翼として、米国及び自由世界諸国協力するにおきましては、米国日本相当援助を与えることを惜しまないという態度を持しておるように看取いたしたのであります。但し日本経済自立のための物質的援助のごときは、すでに米国納税者のとうていたえられないところであるというように考えておるようであります。耐乏生活に苦しむ諸国は、世界先進国、戰勝国にも数多くあることを日本考えてもらいたいというような気持があると見たのであります。  帰途太平洋沿岸ロスアンゼルスサンフランシスコを初め、同地方の邦人状態を見る機会を得たのでありますが、これらの在留邦人戰時中立ちのきを命ぜられまして生業を失つたのでありますが、終戰後それらの邦人の多くは現住地に復帰いたしまして、ほとんど戰前状態にまですでに回復をいたし、ますます発展の途上にあるのを目撃いたしたのであります。また邦人に対する先方感情、取扱いはとみに改善せられておりまして、戰前に見るがごとき差別待遇は逐次撤廃せられつつあるのを見まして、まことに欣快にたえなかつた次第で奉ります。  以上まことに簡単でありますが、渡米の報告をいたしまして、私どもに寄せられました米国官民の好意に対しまして深く謝意を表しますとともに、三箇月間も当委員会を欠席いたしましたことを委員各位に対して深くおわび申し上げる次第であります。(拍手
  33. 林百郎

    ○林(百)委員 並木君から中国の問題についてお尋ねがありましたが、これについてわからない点がありますので関連して聞きたいと思います。二十六條の「同一の又は実質的に同一の條件で二国間の平和條約を締結する用意を有すべきものとする。」これはどういう意味なのですか。ということは中国二つの政権があつて、いずれかの一つを選択する余地があるといいますが、御存じの通りに、北京政府の方ではこの條約は中国、ソ同盟に対する宣戰布告にもひとしいということを言つておる限り、この條約と同一の又は実質的に同一の條件で、北京政府を選ぶなんということは、問題にならないと思いますが、その点についてどうお考えでありますか。
  34. 島津久大

    島津政府委員 これはお説のように同一または実質的ということは、ごく常識的に申しまして、現在の平和條約と大体同じになつておることだろうと思います。その点が北京政府考えが違うかどうかということは、これは常識的に明らかであると思います。
  35. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたとしては今の北京政府と同一の條件で講和條約を締結する可能性があるとお考えになるのですか。
  36. 島津久大

    島津政府委員 現在までの報道を総合いたしますと、なかなか余地はないように思われます。将来のことは存じません。
  37. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今のところ北京政権の方とは、講和條約についての何らの交渉をする可能性がないと見てよいですね。
  38. 島津久大

    島津政府委員 大体そういうことだろうと思いますが、これはまた情勢いかんによつては必ずしもそうでないかもしれない、その点は私どもの方で何とも申しかねます。
  39. 林百郎

    ○林(百)委員 條約の第二十一條に「中国は、第十條及び第十四條(a)2の利益を受ける権利を有し、」とありますね。この「中国」とはどつちをさすわけですか。
  40. 島津久大

    島津政府委員 これは国でありまして、政府ではありません。
  41. 林百郎

    ○林(百)委員 国であつて政府のない国というのはあり得ないのです。そうすると、この中国というのはどこの国ですか、受ける権利の主体はどこですか、どつちの政権なのですか。
  42. 島津久大

    島津政府委員 政権の問題は、この條文から出て参りません。
  43. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし財産の問題、たとえば十四條というのは財産の請求権、賠償の請求権ですし、それから十條は、日本中国に関する一切の利益を放棄するというのですが、結局利益の主体がなければいけないわけです。たとえば請求権を具体的に行使する場合には、政府を通じてやるわけですから、やはりこの中国というのはどちらの政権かはつきりしなければ、今後賠償の問題、あるいは従来の日本中国との間の諸條約の廃棄、そのほかの交渉というものは成り立たないのですから、どちらの政権と交渉なさるおつもりですか。
  44. 島津久大

    島津政府委員 その問題は先ほど並木委員の御質問に対しましてお答えしたところで御承知を願いたいと思います。当然これは国を代表する政府と交渉するということになりますが、どちらの政府を相手にするやという点は、先ほどお答え申し上げたところで御了承願いたいと思います。
  45. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、国であつて政府じやないというような名答弁をお聞きしましたが、もう少し具体的な問題で、島津さんにお聞きしたいと思います。今台北の蒋介石政権とは何らかの交渉はしておるわけですか、講和の問題であるとか、あるいは取引の問題で……。
  46. 島津久大

    島津政府委員 交渉のようなことは何もございません。
  47. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、今の日本政府としては、蒋介石政権ともあるいは北京政権とも、講和後の問題、賠償の問題、そのほかは全然交渉されておらないというように聞いていいかどうか。そうすると台北へ設けました在外事務所は何をやつておるのですか。
  48. 島津久大

    島津政府委員 在外事務所は、御承知通り通商貿易の促進という仕事をやつております。御質問のような賠償その他そういうような平和條約に関連したような問題は、何も取扱つておりません。
  49. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、通商関係で在外事務所を将来は台湾のほかに、中国へも設ける意思があるのですか、ないのですか。そうした政権を離れて取引するという場合には、たとえば上海だとかその他大連とかこういうようなところに在外事務所を設ける意思があるのですか。
  50. 島津久大

    島津政府委員 これは前回の国会でも大臣からお答えした経緯がありますので、この点はよく御承知と思います。在外事務所の性格から申しまして、これはまつたく通商関係だけということで、もし相手国が希望するなら、そうしてまたこちらもその必要を認めた場合には、どこにでも置ける性質のものだろうと思います。これはもちろん相手方の考え次第であります。
  51. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本が希望し、相手側が希望する場合は、将来は在外事務所を中国の本土、上海あるいはその他のところへ置く可能性があるというように受取つていいですか。
  52. 島津久大

    島津政府委員 現在そのような状態になつておらないように思いますし、近い将来にそういうことになりますかどうか、ちよつと私も予測がつきかねておる次第であります。
  53. 林百郎

    ○林(百)委員 大分答弁が上手で、ぬらりくらりして捕捉しがたいのですが、在日の中華人に対する問題であります。在日中華人の国籍の問題は、どういうふうになるわけですか。
  54. 島津久大

    島津政府委員 ちよつと御質問趣旨がよくわかりませんが、国籍の問題は、日本側でどうこうという関連はないと思うのであります。中国人として外国人の地位を持つていると思います。
  55. 林百郎

    ○林(百)委員 外国人とすれば、外国のその利益を代表する政府があつて、その政府と交渉する必要があると思う。たとえば出入国管理の問題にしても、いろいろ今後渡航の問題等、交渉しなければいかぬと思う。もう少し率直に言つていただきたい。言えなかつたら言えないでけつこうです。たとえば出入国管理令が出て来れば、いろいろ交渉しなければいかぬでしよう。将来ここへ置くのか置かないのか、返すとすればそれはどこへ返すのかという問題があるでしよう。こういう問題はどの政府と交渉するのですか。
  56. 島津久大

    島津政府委員 御質問のような在留外国人の問題、それはその国との間に正常な外交関係と申しますか、国交が回復しまして通商航海條約というものができました際に、初めてはつきりときまるわけであります。その前の段階では、それらの点について関係国と正式の関連はないのであります。
  57. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、一つずつお聞きして行きたいのですが、たとえば外国人登録令で、中国の人たちを登録する場合には、中華国民としてどこの政権とか何とかいうことは書かないわけですか。
  58. 島津久大

    島津政府委員 大体そうだと思いますが、登録令の関係は詳しく存じませんので、調べましてお答え申し上げます。
  59. 林百郎

    ○林(百)委員 それは調べていただきたい。それから中華の人たちが今後、御承知通り中国には二つの政権があるので、どちらかによつて自分の利益を守つてもらわなければならぬことになるのですが、そうすると日本にいる中国の人たちが、いずれの国籍——国籍という言葉がもしあなた方に異様に響くならば、どちらの政府によつて自分の保護を求めようとしても、日本にいる中国の人たちの自由にまかせられる問題ですか。たとえば自分のからだの問題あるいは自分の日本に在留している問題あるいはその他の交渉について、北京なら北京の政府と交渉してもらいたいというような希望をする場合には、その希望をいれるわけですか。それとも北京政府の保護を受けるような中国の人は、日本はまだ北京政府と交渉を持たないから、そういう人は帰つてもらいたいと言つて返すのですか。
  60. 島津久大

    島津政府委員 ちよつと私頭がまわりませんで、よく御質問趣旨がわからないのでありますが、日本政府がそういうような案件を交渉する相手を当然きめることになると思います。御質問日本政府関係政府との問題とすれば、日本政府がきめるという筋合いになろうと思います。
  61. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、将来日本にいる中国の人の問題についての交渉は、もつばら台北の蒋介石政権とやる可能性が強いと見ていいわけですか。
  62. 島津久大

    島津政府委員 これはやはり問題がまた前の問題にもどつて来ることになります。
  63. 林百郎

    ○林(百)委員 もう少し率直に答えてもらいたいと思うのですが、そうすると、日本にいる中国の人は、今のところ中国人というだけで、どちらの政権の保護を受ける人かわからないというわけですかつ、そう解釈していいですか。
  64. 島津久大

    島津政府委員 先ほどから私は率直に申し上げておるのでありまして、日本政府中国を代表する政府との間の正式の関係は今ないわけであります。従いまして、そういうような関係の交渉事項は何もないわけであります。
  65. 仲内憲治

    仲内委員長 林君、官房長官が来ましたので、最初の順位に返つて質問を続けます。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 それではこれだけにして、結論を申し上げて打切ります。そうすると、結局日本にいる中国の人たちのいろいろな身分上の処理の問題は、日本中国のいずれの政権と交渉するかということが決定し、交渉が開始されるまでは、中国の人たちを、たとえば送還するのだとか、あるいは日本に在留させるのだとか、そういう問題もまだ未決定の状態でいるというように解釈していいわけですね。
  67. 島津久大

    島津政府委員 私先ほど来政府間の話合いという点が重点かと思いましてお話をしておつたのでありますが、外国人の取扱いということが主眼であれば、これは日本政府が当然きめるべき問題でありまして、日本政府として在留の外国人を取扱うことは——これはもちろん発効後の話でありますが、当然権限を持つておると思います。
  68. 仲内憲治

  69. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は本年の夏のサンラランシスコにおける講和会議を幸いにしてオペラ・ハウスの一角から終始傍聴することができまして、またその後ただいま大村団長から報告いたしましたように、ワシントン等へ参りましてアメリカの国会の要人や、国務省や国防省の要人とも幾たびか会談する機会を得まして、そしてその間におきまして、米国並びに米国を初めとするところの自由主義国家陣営のソ連陣営に対するかたい決意のほどは、大村団長の報告通りわれわれは如実に痛感をいたしたわけであります。従いまして、そういう私たちの印象から考えましたときに、ただいまダレス大使や、スパークマン、スミス両上院外交委員日本に来訪されております使命につきましても、私には少くとも手にとるように読みとることもできるような気がするわけであります。そして私はこういう今日の米ソ関係の認識の上に立もますときにおいて、二つ中国選択に迷うはずはないと思うのであります。また日本の自衛力の確立を躊躇する道理もないと私は考えるわけであります。すなわち二つ中国選択の問題も、自衛力の確立の問題も、サンフランシスコの平和会議におきまして、平和條約並びに日米安全協定に調印をいたしましたその瞬間において、われわれはすでに四十八箇国の国旗の前で、われわれの進むべき道をかたく世界に宣明をしたものと考えるわけであります。先刻平他の同僚委員からも指摘をされておりますように平和條約第二十六條によりまして、日本は今度の講和條約に調印しなかつた国との間に、具体的に申しますならば、中国というような国との間に、すみやかに講和條約を締結する用意をしなければならぬという義務項目があるわけであります。こういうときにおきまして、私は中国の問題に関しましては、日本といたしましてはすみやかに国民政府との間に講和條約を締結する準備を整え、それによつて一刻も早く中国との法律上の戰争関係を解消し、もつてアジアの安定にわれわれが努力しなければならぬことはきわめて当然のことであり、また既定の方針であろうと私は考えておるわけでありますが、最近の新聞等を見ますと、二つ中国のいずれを選ぶかという問題が、今あらためて日本の外交政策のプログラムの上に載つかろうとしようとしているかのような印象を与え、これが日本の国民あるいは外国に対しても、好ましからざる影響を与えておるのではなかろうかと私は考えるわけであります。従いまして、国民政府との間にすみやかに講和條約を締結するのだという方針を、むしろこの際政府当局が率直に宣明することこそ、日本の外交政策の上に寄与するゆえんではなかろうかと私は考えるわけであります。この際この問題に関して、政府はどういうふうな考えを持つておるのか、これに関しまして官房長官からお話を承りたいと考えるわけであります。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 ただいまの佐々木君の御意見は傾聴いたしました。しかしこれは主管省である外務省がまず第一義的に研究し、そして政府報告して、政府の決定を見るわけだと考えます。外務省の方ではただいまいろいろのことを研究中と了解しております。政府としてにその研究の結果を待つて態度をきめるということになろうかと思います。
  71. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより外交政策は外務省によつて担当されることは当然のことでありますが、岡崎官房長官政府の諸政策に対して、文字通り女房役の立場におられるわけでもありまするし、先般来ダレス氏との交渉の衝にも当つておられる方であります。従いまして、ダレス大使との間にどういう内容の会談があつたかということについて私はお聞きするのではありませんが、日本政府方針としては、私はこれは既定の方針であろうと考えるわけであります。そのゆえにおきまして、政府といたしましても当然根本方針というものがあろうかと考えるわけであります。もとより外務省の所管するところではあるといたしましても、政府方針というものにつきましては、少くとも官房長官たる立場におられる方は、十分御承知であろうと考えます。不幸にして本日は外務大臣の御出席もございませんので、全然関係のない立場でないところの岡崎官房長官に承りたいと思つたわけでございます。重ねて御一考の上、御答弁願いたいと思います。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 政府として方針をきめるのは、やはり主管省である外務大臣から報告を受けて、その上でなければ順序としてはきまらない。初めから外務大臣はそこのけにして、政府方針はこうだからこれで行け、こういうことではただいまの政府はやつておりません。関係閣僚からの慎重なる研究の結果を検討しまして、それで政府方針をきめるわけであります。さようひとつ御了承願います。
  73. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はまことに重大なことを聞くのでありますが、それでは日本政府というものは、この問題についていまだ態度を決定していないということに了解してよろしゆうございますか。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 これは外務大臣からもいろいろの場合に発言があつた通りでありまして、外務大臣の過去における発言はまだそのままかわつておりません。
  75. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではその点はあらためて吉田外務大臣に承ることにいたしましよう。  次に先ほど申したようなこういう今日の国際関係の観点から考えますると、日本の自衛力の確立の問題につきましても、おのずから日本の進むべき道は明らかであろうと考えるわけであります。日本が個別的、集団的自衛の権利、従つて集団安全保障体制の一員たるべき義務を持つておりますことは、平和條約や安全條約によつて明らかな通りであります。すなわちダレス大使の昨日の重大な発表におきましても、日本を他国に占領されたり、あるいは搾取されたり、または隣邦を攻撃する武器として利用されるような事態を招くような無防備の状態に置いておくことはできないと言つております。さらにまた、そのゆえにこそ、国連の憲章は中立の原則を否定しておる。集団安全保障の原則を打立てておる。国連の憲章はまた国連加盟国が共同利益のために武装兵力と援助と便宜をいつでも与えなければならぬ原則を規定いたしておる。このような国連の原則は、対日平和條約の中にすでに織り込まれ、日米安全保障條約の中にも反映しておると指摘いたしております。そしてまた日本は自由世界の集団安全保障計画に参加する義務があるということをも指摘しております。そしてさらに集団安全保障條約に参加するその義務とは、当分の間は実際的にはアメリカと協力することであると、はつきり日本の進むべき道を示しておるわけであります。こういう観点から考えます、ると、先ほど来申されておりまする官房長官二つ中国選択に対するお考え方にも、私はまつたく了解しがたいものを持つわけでありますが、中国の問題は別といたしまして、このダレス氏の言葉を要約いたしまするならば、要するに日本がすみやかに自衛力、国防力というものを確立して、アメリカと共同して集団保障の一翼を担当しなければならぬ。だがしかしながら、ただいまのところは日本にその力がないので、当分の間アメリカとの間に暫定的な措置として日米の安全協定を結んで、この過渡期の段階をそれによつて埋め合せるのだという考えであることは明らかであります。そういたしますると、このダレス大使の演説によつて明らかにされておりまするような、アメリカを初めとするところの自由主義国家陣営の日本に対する要求にこたえるためにも、また日本自体の自衛力を確立する上からも、われわれは自衛力をこの際確立する必要があるわけでありますが、一体政府におきましては、この日本の自衛力の確立について、どういうふうな構想を持つておられるのか、どういうふうにお考えになつておるのかという点につきまして承りたいと考えます。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 わが国が自衛力を漸増すべきであるということは、これは條約にも書いてありますから当然のことであります。従つていつ、いかにするか、つまり時期と方法について、政府としていろいろ研究はいたしております。しかしながらこれについては、国民全般の考え方を十分にくみ入れる必要があると思いますが、遺憾ながらただいまの状況では、必ずしも国民が自由なる意思を表明し得るかどうかわからないのであります。独立後におきまして国民の意向をよく体してその時期と方法をきめたい、こう考えておるわけであります。要するに條約上はつきり書いてあるのでありますから、むろん日本政府としてはそのつもりでおりますけれども、飛行機が飛び立つにも滑走して飛び立つのでありまして、一ぺんに空に上るのはなかなか困難であります。でいろいろ時期方法等はあろうと思います。ただいまそういう点についてはいろいろ考慮はいたしておりますが、まだ具体的にどうということはきめてはいないのであります。
  77. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 平和條約は、日本主権国として集団安全保障とりきめを締結する権利を有することを承認し、さらに国連憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認しておる。でこれらの権利の行使として、日本国はその防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するために、アメリカ合衆国が日本において軍隊を保持することができるという規定をいたしております。ただいま仰せのように、これによつて直接及び間接の侵略に対する防衛を、漸増的に日本みずからが責任をとることを期待するということを規定をいたしておるわけであります。このことに関しまして、さらにこれを敷衍するかのごとくにダレス特使は昨日の演説で申しております。すなわち、しかし私はまたこの安全保障條約が国連自体または国連憲章によつて認められた地域的その他のとりきめによつて、日米安全保障條約にかわる、さらに広汎な性格の安全保障協定がつくられた場合は、日米安全保障條約を廃棄することを規定しておる事実を想起すると申しております。これらのこどから考えますと、当分の間の日本の自衛というものは、日米安全保障協定によつて保障しようと考えておるわけでありますが、行く行くは、日本がもつと大きな、たとえば太平洋軍事同盟であるとか、あるいはまた自由主義国家防衛同盟であるとかいうふうな、さらに広汎な、地域的な集団安全保障体制の中に、日本が入るべきことを明らかに期待いたしておると考えるわけであります。そうだといたしますと、日本は当然その集団安全保障体制の中において、共同の軍事行動をとらなければならぬという義務が生じて参ります。そのときにおいて、日本の自衛力というものが、共同の軍事動作をとり得る一つの単位とならなければならぬと考えます。今まで法務総裁等を通じて承つておりますと、今日の警察予備隊や海上保安隊というものは、これは国内的な治安に対するものであつて、外敵に対するものではないというふうな御説署しばしば承つたわけでありますが、今日の段階は、もはやそういう単なる国内の擾乱に対するところの、間接的な侵略に対して防衛をするというだけではなくして、外敵の脅威対し、すなわち直接の攻撃に対して、日本がみずからを防ぎ、同時に他の国々と共同してこれに対処しなければらぬという段階に立ち至つておることを痛感するわけであります。そうだとすると、行く行くは日本というものも、ここにそのしつかりした単位となり得る、十分な力を持つたところの力——軍隊と申すことがいけないかもわかりませんが、いわばそのフオースを持つことが必要だと考えられるわけであります。これらの点につきまして、は一体いかようなお考えでおられるかとうことを承つておきたいと思います。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 いろいろ今御意見を伺いましたが、私は佐々木君と考え方が少し違うのは、ただいまの段階において、もうそういうことをすべきところへ来たと佐々木君は言われましたが、われわれはまだそこまでは来ていないというか、行かれないという関係上、ダイレクトアグレッシヨンに対しては、アメリカ軍隊の援護を希望しまして、日米安全保障條約をとりきめたのであります。もとよりこれは暫定的ということになつておりまして、将来また平和條約の第五條のおしまいにあるように、個別的または集団的自衛の固有の権利を有するのであり、集団的安全保障とりきめに参加することができることも承認されておるわけでありますから、将来はそういうことも当然あるかと思いますが、ただいまのところは、日本の力はインダイレクト・アグレッシヨンを防ぎとめるに足るものであつて、まだ外からの侵略に対抗はできない状況に、遺憾ながらあると認めざるを得ないのであります。
  79. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは、きわめて幼稚な質問でありますが、ただいま日本がかりに外敵の侵略を受けたという場合においては、何がこれに対抗して、この日本の自衛力を発動し得るかという点を承りたいと思います。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 これは国民の決心が一番大きな問題で、自分の国は自分で守るという決心だけは皆持つておると思いますが、武力的には米軍に依頼する、こう思つております。
  81. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 この委員会におけるところの政府側と議員との間の単なる質疑応答の技術や、その場のがれの答弁等におきましては、いろいろなことが言い得るわけでありますが、つらつら今日の国際情勢考え、そしてその中に浮び上つて来る日本立場日本の運命を決する重大な問題を考えますときに、一概にそういうふうに言いのがれ的な言葉だけでは、済まないものがあるではなかろうかと痛感をいたします。それで今日のこの段階におきましても、あらゆる場合を想定し、国内の治安維持を想定し、また万一の外敵の侵略の場合をも想定し——外敵の侵略がないと、政府とても断言はできなかろうと考えます、もう日本の周辺には外敵の侵略の脅威が迫つておることは御承知通りであります。そしてまた将来ともに手を握つて友好親善の関係を続けて行かなければならないアメリカ、並びにアメリカを初めとする自由主義国家の日本に対する要請を考えました場合に、私は自衛力につながるところの国内の体制というものも、止みやかに整備する必要があろうと考えるわけであります。そういうふうな観点から、たとえば予備隊、海上保安隊等の日本の自衛力に関係のあるようなものを一まとめにして、国防省であるとか、治安省というような、そういう行政庁を設けたらどうかというような意向もあるようでありますし、聞くところによりますと、政府はすでに橋本君でありますかに対しまして、その調査命令しておるというようなことも聞いたのでありますが、これらの、たとえば治安省、国防省といつたような、そういつた行政官庁を設け、その自衛関係のことを統合して管理するというようなことに関しまして、何かお考えがあるかどうかということを承りたいと思います。
  82. 岡崎勝男

    ○岡崎政府委員 この前に政令に関する諮問の委員会からも、一部そういう意見が出て来たのでありますが、政府としてはいろいろの情勢を考えて検討中であります。何しろこれはいろいろの点から慎重に考えなければならぬ問題でありますので、そう急に結論も出て来ないのでありますが、検討中であることは間違いありません。
  83. 仲内憲治

    仲内委員長 佐々木君、官房長官は参議院の本会議関係で、時間が迫つておりますから……。
  84. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは本日はその程度にして、またいずれゆつくりお伺いします。
  85. 仲内憲治

    仲内委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。     午前十一時五十一分散会