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庄司委員 ぼくはフイリツピンの
戰犯死刑囚の問題に関して関連意見を述べたか
つたのであります。また現在もその心境にありますが、堤さんの方に
委員長が私よりも早く指名をされました。私が最初より挙手をしてお
つたことは、
委員長はよくおわかりだと思います。けれ
ども、
委員長の独自の権限でただいまは堤君の方を優先にされたのであります。そのことを別に遺憾千万とも
考えておりません。ただ話が非常に飛んだということであります。前にさかのぼ
つて、
フィリピンあるいは濠州の死刑囚の問題に関してもう一度
政務次官の心境を確めておきたいと思うのであります。私も前回か前々回かの
委員会において
政務次官の
お話を承りましたが、その際のお言葉は、私の記憶によりまするならば、
フィリピンの死刑囚は死刑の
執行というものは絶対にないのであるというような
意味のことを申されたのではないように私は聞いております。この後死刑囚に関しては非常に緩和されるであろう、あるいは刑一等を減ぜられるというような具体的のお言葉はなか
つたけれ
ども、見通しとしてはだんだん好転している、おそらく死刑の
執行がないだろうと思うというような
意味において、
石原政務次官のお答えは多分にあなたの主観的な
信念がある。また
日本国民の一員としての
石原君は、
同胞愛に出発されての希望的な御意見もあなたの心理状態の中には動いたのじやなか
つたかというようなことを、その際私は直観をいたしました。なぜというに、
フィリピンの下
院議員であるヴエラノ氏が昨年来朝をされ、われわれ
引揚委員、また民間の
引揚げ促進の総同盟あるいは議員連盟等々の役員にな
つておられる代表者諸君より、るる死刑囚に対するところの減刑をキリノ大統領に懇請してほしいというところの熱烈なる要望がなされました。ヴエラノ氏はこれを了とせられ、あの方の気高い人格と、またヒユーマニテイツクな
信念より快諾をされまして、御帰郷の後においては、かなり熱心に、キリノ大統領以下各
関係方面に、わが
日本国民の少くとも言論を代表する
国会の構成分子の人より懇請されたことを、熱烈に伝達なされたはずであります。これが一つ。第二は、抑留
同胞即時
帰還の総本部並びに議員連盟においては、当時の会長であるところの厚生大臣——今厚生大臣を辞されましたが、この方、並びに衆
院議長である林会長等々が、ローマ法皇ピオ第十二世陛下に対し、ローマ法皇庁の麹町七番町にあるところの公館を通し、るる文書において口頭において懇請をいたしました。
フィリピンにおけるわが
同胞の死刑囚を、こいねが
わくは死刑を許されて刑一等を減じてもらいたいという懇願は遂にローマ法皇の
意思を動かされ、法皇みずから筆をとられて、麹町の公館を通して、願いの趣旨は了承した、
フィリピン政府及び
フィリピンの
国会等にでき得るだけ提唱する旨の御回答があられたのであります、その後
フィリピンにおけるところの対日感情というものもやや緩和の傾向に好転して参
つておるただいまの事実等にかんがみまして、五十二名でございますか、死刑の宣告を受けたわが
同胞諸君の死刑の
執行というものが意想外に延期されているということは、最終裁判あるいは特赦申請によ
つてなお一層慎重なる上に慎重なる
調査をしようとするところのキリノ大統領以下の御同情あるお
考えの結果であるやに、われわれは拝察しておるのであります。あれやこれやを想像するときに、一おそらく
石原さんは、目下の情勢において急速に死刑の
執行等はあり得ない情勢にあるという自己判断の上に立
つているのだと思うが、またこれはあなた一箇の單なる主観ではなく、情勢の総合的な認識はだんだん好転されているやにわれわれも見ているのであります。前回か前々回かにおける
政務次官の御
答弁は、さような
意味において、おそらく死刑の
執行というものはあり得ないであろうという
意味のお言葉であ
つたように私は記憶しております。なお、
速記録等も必要があればあなたもごらんになり、
委員長も公職の
立場においてごらんを願いたいと思うのであるが、死刑の
執行は絶対にないというようなことを、
日本の
政府の一
政務次官として断言するというようなことは、常識上あり得ないことであ
つて、死刑を許すも許さないも、死一等を減じて無期懲役にするもしないも、
講和條約の第十一條の條章にのつと
つて、当該裁判を下したるところの外国——あるいは国連の裁判であれば、国連に懇請して特別のオーケーをとらずんば減刑というものは不可能であります。外務大臣といえ
ども、あるいは
外務政務次官といえ
ども、独断なるところの断言や放言というものはなさるべきものじやない。ただいま申し上げたように、おそらく、最近の諸般の情勢を総合せられた上におけるところの一つの判断の上より、また日
本人として、死刑
執行というものをぜひ免れしめなければならぬという——国内においては百二十八万人の
方々が大赦、特赦あるいは減刑、仮釈放の恩典に浴したのであり、また
フィリピンとも、
講和條約がすでに批准オーケーとな
つている今日において、願
わくは死刑囚を一人だに出したくないというあなたの主観的な
信念、あるいは希望的
信念の上よりああいう御回答があ
つたのではないかと私は察知しておるのでございますが、講和発効の今日においては、裁判を下したるところの諸外国の要人諸君の御了解を得られて、一人だに死刑の
執行がこの後はないように、またひとり死刑囚に限りませず、
戰犯等も全部大赦、思赦に浴して長期刑の者が短期刑に減刑されますように、
在外公館等を動員いたしまして、この上とも
外務省は全力をあげて救済の措置を講じてもらいたいということを私は念願してやまないものであります。来るべき七月十日には
国民大会を決行するというこの場合において、特に
外務省は真剣に御奮闘を願いたい。私は、決して
石原さんの助け舟のためにこのことを言うのではありません。あなたの心境をもう一度はつきりさして、あなたの
政府機関としての
立場の言明を得ておきたいと思うのであります。