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1952-06-05 第13回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月五日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 逢澤  寛君 理事 池見 茂隆君    理事 小西 英雄君 理事 高橋  等君    理事 若林 義孝君    青柳 一郎君       飯塚 定輔君    庄司 一郎君       玉置 信一君    中山 マサ君       福田 喜東君    丸山 直友君       亘  四郎君    堤 ツルヨ君       上林與市郎君  出席政府委員         法務事務官         (矯正保護局         長)      古橋浦四郎君         中央更生保護委         員会事務局長  齋藤 三郎君         外務政務次官  石原幹市郎君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局第一課         長)      八木 正男君         外務事務官         (欧米局第三課         長)      中川  進君     ————————————— 本日の会議に付した事件  戰犯抑留者の問題に関する件     —————————————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  本日は戰犯抑留者等の問題について議事を進めます。独立後の今日、戰争犯罪人として海外に服役している者は、フイリピンに百十一名、マヌス島に二百六名であり、われわれといたしましても、これら受刑者内地服役を要望するものであります。本件につきましては、先般の当委員会におきましても、外務大臣より説明を聽取したのでありますが、本日ここにあらためて関係当局よりこの問題に関する説明を聽取し、続いて委員各位の御質疑を受けたいと思います。まず援護庁長官より説明を聽取します。援護庁長官
  3. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在国外にあります戰犯で、服役いたしておりまする者は、マヌス島に濠洲関係二百六名、そのうち台湾の人が六十六名、それからフイリピンモンテンルパ等に百十一名なお服役いたしておるのであります。このうち死刑宣告を受けておりまする者がフイリピンにおきまして五十九名、こういうことに相なつております。マヌス島の方には死刑の人はおらない。いずれにいたいましても、現在まだ死刑執行されることになつてはおらないのでありまして、われわれといたしましては、これがそういうふうにならないように、減刑される、あるいは釈放されまするように、できるだけ努力いたしたいと考えまして、先般もこれに対しましては、公の資格ではございません、個人資格ということになりますが、先方書面も出したような次第であります。なお今後におきましても、外務省当局の盡力によりまして、そういうふうになることをできるだけ努力いたしたいと考えておる次第であります。これらの方々内地服役につきましても、われわれとしましては、できるだけ早い機会にいたしたいと考えております。これにつきましては、いろいろと現在まで努力いたしておりまするが、まだどちらともはつきりいたしておりません。実は昨日も、フイリピンの刑を受けて現在服役しておりまする方々から、こちらに対しまして、できるだけ日本政府におきまして努力してほしいという嘆願書と申しまするか、書面が参つておるのでありまして、われわれとしましても、講和発効いたしました今日、できるだけ早くこれが内地服役ができまするようにいたし、なおできますれば、これらの人々ができるだけすみやかに仮釈放ができるようなふうにいたさなければならぬというふうに考えておるのでございます。
  4. 小平久雄

    小平委員長 次に本件に関しまして、法務当局より説明を聽取いたします。矯正保護局長橋浦四郎君。
  5. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 外地において服役中の戰争犯罪者につきまして、ただいま長官からもお話がございましたが、法務府といたしましても、一刻もすみやかにこの人たち内地に帰還されることを希望いたしまして、先般国会のお世話になりました戰争犯罪者の刑の執行並びに赦免等に関する法案につきましても、内地に帰還される方々に対する取扱いも規定して待つておる次第であります。内地服役につきましての直接の所管は、法務府ではないのでございますけれども戰犯につきましては、特に法務府として関係が深いので、それにつきましては関係当局と常に緊密な連絡をとつて、その点についてお願いしておるのでございます。なお最近一部の引揚げの話が進められておるように外務省から話を聞いておるのでございます。
  6. 若林義孝

    若林委員 ちよつと関連して……。戰犯引揚げと申しますか、釈放というようなことについて、これは法的に、国全体の大きな戰争というものに対してのいろいろな功罪が講和條約が大体停止せられておるのでありますが、個人々々としての犯罪も、戰争に関連してのものならば帳消しになつていいようにも思うのでありますけれども、これは掘り下げて考えたときに、まだその罪というものは残るものか、残らないものか、講和條約で戰犯のことはきめられてはありますけれども、それを離れて考えたときに、一昨々日の夜だつたと思いますが、まだ帰らぬ人々のためにという座談会を十一時ころから十二時ごろまで放送をしておりまして、やはりその中にも、国の大きな戰争に対するものがなくなつたときに、個への罪がいまだに残つておるということは不合理だという声が座談会の中にもあつたわけでありますが、これは法的にどういうふうに考えるべきか、ひとつつておきたいと思います。
  7. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 たいへんむずかしい問題であると考えておるのでございます。従来の戰争犯罪に対する刑罰は、ただいまお話がございましたように、講和のときにすべてそれが赦免せられる、アムネステイ原則というので、それで赦免せられる、消えるというような考え方を長く国際法の立場では守られて来たと聞いておるのでございます。その後第一次世界大戰から今度の戰争にかけまして、それが個人的な犯罪として考えられて参りました。今度の第二次大戰に際しましては、戰争犯罪範囲を非常に広められまして、平和に対する罪と人道に対する罪というような犯罪、今まで罪とせられたものの範囲も広められたのでありますが、同時に平和が克復したあとにもその罪が依然として残るということが、原則的に一応認められた結果になつたと思うのであります。この問題に対する法理的な解明は私よくするところでございませんが、一応そういうような原則が立てられて来たと思うのでございます。きわめて常識的な答えで失礼でございますが、私個人として考えれば、そういう原則が立てられたけれども、かつて時代においては、一旦平和が克復した場合には、すべて恩赦されるというような考え方、少くとも戰争犯罪赦免とか減刑ということについては、同じ原則がさらに考えられるべきだと思うのでございまして、占領当時、あるいは降伏当時に、十年とか無期とかいう裁判が当然とせられましたが、講和が成立しましていつまでも同じ終身とか、あるいは十年、二十年というような刑がそのままに存在するということは、これはさきに申しましたアムネステイ原則があつた歴史から考えましても考慮ざれることでありますから、自然にこれらの刑も赦免減刑等規定が強く動いて行くべき性質のものだと考えているのであります。
  8. 玉置信一

    玉置(信)委員 関連して……。ただいまの法務当局の御答弁でありますが、これは平和條約第十一條によつて講和がとりきめられた相手国との間には、独立国家としての現在の日本からの交渉によつては、こうした戰犯は一応解除されるんじやないか、同時にまた交戰状態にある国といえども、その過半数が同意をすれば、これまた減刑恩赦釈放恩典を得せしめるような措置が講ぜられ得るやに私は聞いておるのでありますが、この二つの問題について、法務府並びに外務政務次官の御答弁お願いいたしたい。
  9. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいまお話通りに、平和條約の十一條によりまして、日本国内におる戰争犯罪者に対して、日本国勧告関係国決定があれば、赦免減刑、仮出獄ができる、しかしその決定がなければできない、こうなつております。ただいま古橋局長から申し上げましたのは、戰争犯罪の刑の本質といいますか、そういう問題でございますが、私どもは、この刑は日本裁判所の言い渡した刑ではない、こういう見解をとつておりまして、従いましてこの戰争犯罪として処罰を受けたということが、国内的に累犯とか再犯とか、そういう原因にはならない、国内法上の問題ではない、かように考えておるような次第でございます。
  10. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はこの前岡崎国務大臣にも申し上げたのですが、一応そうした戰争犯罪者を取調べる規定が、これは勝者であるアメリカを中心とした連合国がとりきめた裁判立法でありまして、負けた国は何も承諾しておる筋合いのものではないので、従つて嚴密に申しますと、これはアメリカ国内でも今日非常な輿論となつて論議をされておるのでありますが、勝つた国が負けた国を裁くということは、非常な不公平である。中立国において裁判するならば、これは納得できるがというようなことで、アメリカ国内においてもそうした議論が立つておる際でありますので、私は、平和がここにはつきり成り立ち、独立国家として日本が再発足いたしました以上、この平和條約の規定にいかに基本的なとりきめがありましようとも、これは言本政府の強力なる交渉といいますか、推進によつて簡單に片づく問題ではないか、こう思うのであります。いまだ講和が成立していない交戰状態にある国といえども、前段申し上げましたような経緯等から考えまして、日本政府が強力にこの手を打つならば、私はこれらに対しても同様な措置が講ぜられると思うのでありますが、ただいまの御答弁によりますと、ただ法律建前のみを御答弁になつて、今後いかようにすれば減刑恩赦釈放が行われるかという根本的な問題に触れておりませんので、重ねて外務政務次官、その他関係当局にお伺いいたします。
  11. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 それではこの機会に、ただいま外務当局におきましてとりつつある措置を大体申し上げまして、さらに足らざるところを質問によつてお答えしたいと思います。戰犯関係の諸国は、御承知のごとく、アメリカ中国関係フランス英濠関係オランダフィリピン、こういう国々になつておるわけでありますが、これらの国との関係を逐次申し上げて行きたいと思います。  第一、アメリカに対しましては、昭和二十七年法律第百三号、平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律、これに対し米国政府包括的同意といいますか、ことにあの九條の未決日数算入であるとか、第十一條善行特典こういうものにつきまして、包括的同意を得るように申入れをしておるわけであります。その他ただいまいろいろお話になつております戰犯者減刑釈放、こういう問題につきましては、今法務府を通じましていろいろ個人心々の全部の調査お願いして、その調査が行われておるわけでありますが、これのでき次第、関係各国に対しまして、これらの問題について申入れをする、こういう考えであります。それからこれは各個々の問題になりますが、中央更生保護委員会から日下敏夫氏の件について申出があるのであります。これはちようど講和発効前に仮出所になりかけておつた人でありますが、これが法律関係講和発効等関係で延びておるのであります。これは特別のケースとして、特に同人の件については早く出所できますように申入れをしております。  次は中国との関係でありますが、これは御承知のごとく、今回の日華條約によりまして、戰争犯罪人の処理は日本側の裁量にまかされることになつたのであります。中華民国側とは完全に了解がついたのであります。従いまして、條約実施後は、これらの戰犯はすべて釈放することができる建前になつております。  フランス関係でありますが、これも先ほど申しました百三号の申の未決日数算入、あるいは善行特典、これらの問題につきましては、在京フランス大使館を通じまして、フランス政府同意要請中であります。  それから巣鴨服役中のフランス関係戰犯四十二名のうち、終身刑の者は一九五一年七月、大統領の特別減刑令によつて、二名を除き、ことごとく十五年以下の有期刑減刑されております。その結果、かえつて有期刑の者より短かくなつたような結果も一部生じておりますが、この点の不合理に関しましては、文書をもつて注意を促し、さらに二名の終身刑者減刑方を申請しております。  それから英濠関係でありまするが、これはまず第一にマヌス島の戰犯内地服役について、本年三月二十八日、外務省から在京オーストラリア使節団に対しまして、このことを要請いたしております。この要請本国政府にも伝達されております。それからこの正式の要請のほかに、オーストラリア使節団長といいますか、前の大使等に対しまして、これ個人的にいろいろの面からお願いを申し上げておるわけであります。  それから法律百三号の関係につきましては、在京英大使館を通じまして、ただいま申入れをしております。  それからオランダ関係でありまするが、これはオランダ国平和條約の批准書寄託がまだ完了いたしておりませんので、完了次第交渉を開始する用意をしております。これはもう数日中に批准書寄託が行われると思いまするので、批准書寄託次第交渉する用意ができております。  それからフィリピンとの関係につきましては、内地服役に関しましては、二月五日、正式にフイリピン政府に対しわが方の要望を伝達をしております。赦免減刑等の処置に関しましては、正常な外交関係の回復次第その実現方努力をいたしたい。  ただいま外務省でとりつつありますることは以上申し上げたようなことであります。
  12. 玉置信一

    玉置(信)委員 この戰犯釈放の問題は、当の戰犯者並びに留守家族方々の問題ばかりでなく、これは将来独立日本として発展をして行く上において、すなわち文化国家として立つて行く上におきまして、そこには治安の確立等いろいろな関係が出て来るわけであります。従つて国民感情の上に重大な影響を及ぼすと思いますので、特に私は重ねて——実は法務総裁がおればいいのですが、法務総裁がおりませんのでやむを得ませんが、との軍事裁判によつて処罰され、目下服役をいたしておる方々は、せんだつて岡崎国務大臣に申し上げたように、A級でなく、B、C級方々ばかりであります。これらの方々上長命令によつてつた上長命令を忠実に守つて遂行したことがたまたま戰犯に問われておるということによつて、今後日本国内治安の面に当る予備隊員その他の方面、それから将来はいろいろ再軍備等もできるでありましようが、国内において上長の命によつてつたことが、たまたま違反行為であつたというようなことによつて罰せられるという。こうした感情国民の頭に浮びますと、私は予備隊員等が、上長の命によつて国内治安に当たつて、たまたま犯したことが法に問われるというようなことになつて、そんなばからしい危険な仕事に携わりたくないというようなことで、士気の上にも非常に影響し、やがては国内治安に欠くるところができて、非常に重大な問題が派生して来はしないかという心配を持つものであります。こういうような点から、この戰犯釈放の問題については、政府当局が横の連絡を緊密にとりまして、ただいま政務次官お話にありますような、各国に対して部分的なそうした段階を踏んだような手続というようなことでなくして、もつと強力に政府が手を打つ必要がありはせぬかと思うのでありますが、これに対して重ねて政務次官並びに法務当局の御答弁お願いいたします。
  13. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまもちよつと申し上げたのでありまするが、A、B、C各級に通じましてただいま個人調書といいまするか、いろいろの調書をつくりまして、それを元として関係各国、つまり極東軍事裁判所で刑の宣告を受けた者については、関係国の多数の同意がなければならぬわけでありますので、それらの国々に出し、それから個々国々の問題につきましては、その国に出すわけでありますが、この調査をできるだけ急いでもらいまして、その調書に基いてそれぞれ交渉を始めまして、一刻も早く赦免なり減刑なり、あるいはまた仮出獄なりできまするように努力をしたい、こういう気持でおるのであります。
  14. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 中央更生保護委員会におきましては、平和條約の発効後、この調査に極力力をいたしております。現在までに刑務所長までに仮出所申請書を出した人が二百三十二人ございます。これについては一応全部係の者が会いまして、所要の事項を聞きただし、そうして一応の予備調査を完了いたしております。なお委員会が直接巣鴨に参りまして御本人に会いましていろいろ事情を聞いて、調査の完了した者が百八十五名昨日までにございまして、これらについては、所要調査は完了いたしております。なおさらに今後の赦免減刑等のことについても、十分とりはからつて参りたいというふうな観点で、その残りの人について全部調査をやりたい、かように存ずる次第であります。 なお外務省と緊密に連絡をとりまして、先ほど政務次官からお話がございましたように、われわれといたしまは、善行特典、これは十年以上の刑の人であれば、一箇月三十日反則なしに勤めておれば四十日に計算する、こういうアメリカ計算方法がございますが、それと、戰争犯罪者として拘禁されてから裁判までの期間を刑期に算入する、こういうような方式でやりたい、それを認めてほしいということで、外務省を通じてそれぞれの国に申入れをやつていただいておりまして、それらの回答があり次第、調査の完了した者については勧告を進めて参りたい、かように存じて、極力この事務を急いでおるような次第でございます。
  15. 玉置信一

    玉置(信)委員 これらの抑留されておる戰犯者のうち、まず国内に拘留されておる人たちは、政府手続によつて、一体いつごろ恩赦釈放される見通しであるか。次はフィリピンにおりまする死刑宣告を受けておる気の毒な戰犯者助命懇請に対しては、政府はどういうようにこれらに手を打つておられますか、これをまず伺いたい。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは御案内のごとく、日本国勧告と、それから事件について刑を科した国の決定、こういうことになつておりまするので、ただいまのところ、いつごろという見通しをはつきり持つことは困難なのでありますが、日本政府といたしましても、できるだけ早く調査を終えて、勧告をしたい、また相手国に対しましてもよく事情を訴えまして、その決定を得るようにいたしたいと努力いたす所存でございまして、一日も早くそういう時代が来ることを熱望しておる、また熱望に対して努力をしておる、こう申し上げるよりほかないと思います。  それからフィリピン戰犯関係者については、先ほど申し上げましたように、内地服役については正式に申入れをしておりまするし、またこれは私なども個人的に先方大使等にもお会いいたしまして、お願いいたし、あるいはフィリピン協会等の会合でもいろいろお願いする等、いろいろの手を通じてやつております。  それから死刑囚のことにつきましては、とにかくそういう執行のないようにということで、これまたあらゆる機会を通じてお願いをしておるのでありますが、これは先般もここでお話が一、二出たかと思いまするが、ただいまの見通しでは、大体そういうことはないのではないだろうかという観測を持つておるわけでございます。
  17. 玉置信一

    玉置(信)委員 きようの朝日新聞に報道されておるところによりますと一フィリピン戰犯代表から、切々として援護長官に訴えて来た手紙の内容が載つております。ごく短かいですから申し上げますが、「天皇、皇后両陛下が国民に「過去の過ちを繰り返さぬよう要望する」と御言葉されたことを聞き、深く反省して一同は暗い廊下で戰後初めて君が代を合唱しました。独立と同時に内地では数十万人が恩赦に浴した由ですが、当地の戰争犠牲者は今なお抑留され、なんの恩典もなく暗い生活を続けています。しかし、いつか来るべき喜びの日を確信しています。」こういうことが報道されておるのでありますが、まことに胸をえぐられるような気持に打たれるわけでございます。こういう書面に対しまして、外務政務次官並びに木村援護庁長官はどういうような態度をとられておりますか、この点をこの機会にお伺いしておきたいと思います。
  18. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 私も玉置委員が持つておられますと同様、あるいはより以上気の毒に思い、深い関心を持つております。先ほど申し上げましたように、公式にもお願いしておりまするし、私的にも、あるいはいろいろ協会等を通じましても、あらゆる機会をとらまえまして、お願いを申し上げているわけでございます。これは本委員会等皆様方とともぞれに力を合せまして、一日も早く内地に送還され、またそういう刑の執行等のないように、互いに協力努力して参りたいと思います。
  19. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 どういう径路で新聞に出ましたものか、私はよくわからないのでありますが、確かに私は昨日そういう手紙を見たことは見たのであります。こういう手紙があるとないとにかかわらず、われわれとい書ましては、戰犯で向うで服役いたしておりまする方、あるいは死刑宣告を受けておりまする方々に対しましては、講和條約の発効した今日、一日も早くこちらへ件帰つていただきたい、しかも死刑減刑されるようにしていただきたいというふうに、私は考えております。これにつきましては、この手紙の趣旨にもございまするように、われわれとしましては、できるだけの努力をしなければならぬものと考えておる次第であります。
  20. 玉置信一

    玉置(信)委員 私はこの死刑宣告をされた方々を初め、国内国外に抑留されております同胞の釈放につきましては、政府のみにこの対策を要求いたして、責めを負わせるというような考えは持つておりません。申すまでもなく、これは国の犠牲なつたことてございまして、思わざる敗戰の結果がこうした犠牲を出しておるのであります。この前岡崎国務大臣にも申し上げた通り政府並びに国会、あるいは国民全体がこの運動を展開すべきであるという考えを持つておるのでありますが、しかし何と申しましても、相手国との間に法律上のとりきめがあります以上、その法律に基いての打つ手は、政府に強力に打つていただかなければ相ならぬことは、申すまでもないのであります。それ以外のことにつきましては、輿論の喚起により、関係国に実情を認識していただくということについては、われわれ国会、ある注国民一あげてこの手を打たなければならぬということも、これまた当然のことであります。何と申しましても、戰犯にとらわれておる方々家族気持等考えますと1私は先だつて巣鴨刑務所行つて、二十数名の方と約三時間にわたつて懇談をいたして参りましたが、この方々の訴えられるところによりますと、われわれ実際に覚えのない事実無根の罪に問われておるにもかかわらず、今日こうして戰犯といううき目を見ておるために、家族の者が病気になつて、はなはだしいのは家族が死んで、その葬式を出す際に、隣近所の者は、あれは戰犯であるというような眼で見て、白眼視をいたして、葬式に心から手伝つてくれる人すらない、われわれは実にあわれな存在であるということを訴えられて、私は涙したわけです。かような状況を私どもは目のあたりに見、聞かされる場合においては、これはもう一刻も猶予してはならず、また放置しておけない現状にありますので、お互いに心の中では政府当局もわれわれもかつておりますが、しかしどうしたならば一日も早く抑留者の安心の行くような釈放の手が打たれるかということが、当面のお互いの研究しなければならぬことであろうと思います。  そこで私は皆さんのお許しを得て、もう一、二点でありますから、幸い援護庁長官もおられますので、戰犯者援護の問題について触れます。ただいま申しましたような実情でありまして、葬式さえも近所の人が白眼視してか、遠慮してか、立ち会つてくれない、世話もしてくれないという状況でありますし、また法律上の見地から見ましても、未復員者給与法がこれに適用されていない。こうした気の毒な方方に対しては——繰返して申しますが、国の犠牲であります。ひとしく国の犠牲である以上は、未復員者給与法を改正いたしまして、これらの方々に給与といいますか、保護の手を差延べるべきではないか。御承知のように給与を受けております者は、本人一千円、妻六百円、あるいは子供四百円でありますか、こうした給与を受けておるのでありますが、同じような立場にあつて、しかもより気の毒なと申していいこれらの方々には、何らこうした恩恵がないのであります。近き将来に未復員者給与法を改正して、これらの方々をささいな金でも給与をいたして、救済をすべきであると思いますが、そういうような御意思があるかないか、これをまずお伺いしておきたい。
  21. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 戰犯家族の処遇の問題でありますが、非常に気の毒な御事情にあるということは、われわれ十分に承知いたしております。現在までのところにおきましては、各般の情勢もございましたので、これに対しまして特別な措置を講ずることができなかつたのであります。講和條約も発効いたしました今日におきまして、これに対しまする各般の措置と相並びまして、この問題につきましては十分にすみやかなる検討をいたしまして、適切な措置を講ずるようにいたしたいと思います。
  22. 小平久雄

    小平委員長 玉置君に申し上げますが、大分質問者がありますから、あと一問ぐらいにしていただきたいと思います。
  23. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまの御答弁で、各般の措置を講じたいということでありますが、その措置を講ずる博期等の見通しは一体いつであるか。私はいろいろ申し上げたいのでありますが、——ここへ巣鴨からの六通の手紙が参つておりますが、他の委員諸君も御質問することがあると思いますので、私はこれをもつて一応質問を打切つておきます。
  24. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 時期をいつというふうに、ただいま私がここで申し上げるだけの準備ができておりませんが、これにつきましては、できるだけすみやかにというふうにお答え申し上げるだけで、お許しを願いたいと思います。
  25. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 関連して……。さつき法務府の当局の方から御説明がありましたが、この戰争犯罪に対しましては、国際法範囲が拡大せられて、戰争犯罪と申しますか、人道に関する罪というものが、アムネステイの今までわれわれが教わちたような国際法原則を破つて、確立されたように伺いました。平和確立後においても、国際法の罪は残るというふうなお考えのようでありますが、これは国際法としてはたして確立されたものかどうか、国際慣行として世界的の承認を得たものかどうか、この点につきましてお伺いいたしたいと思います。  第二点といたしましては、これは先ほど法務府の方の御答弁においても、日本においてもこの罪というものが残るというような扱いになつておるけれども、しかしながらわが国の刑法の適用上におきましては、累犯とか再犯とかいうものも、この戰犯に関する罪はいわゆる勘定の中に入れない、こういうふうな御答弁でございました。この点につきまして、平和條約第十一條におきまして、赦免でございますとか、減刑でございますとか、あるいは仮出所規定がありまするが、この十一條規定は、ある意味におきましては、戰犯に関する罪というものを、国内法的においても認めたことになるのでございましようかどうか。もしこれを認めたことになるということになりますと、恩赦とか大赦の規定の適用が考えられるであろうかどうか。それからもし認めないということになれば、これは日本刑法の適用上、刑余者としての適用の取扱いは今やつておられないようにわれわれは承つておりますが、この点に関するお考えはどうであるか、この点について御意見を承りたい。
  26. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 戰争犯罪に対する罪の範囲と、それから平和條約後にその効果が残るものという原則が、国際法として一応確立したかどうかという、私に対する御質問だと思うのでありますが、この問題につきましては、今度の国際裁判に関与いたしました各国の数とか、さらにその問題に対する国際連合の態度等によりまして、私は一応確立せられたものというぐあいに考えておるのでございます。なおその余の点は事務局長からお答えいたします。
  27. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 先ほど私が戰争犯罪法廷の科した刑は、国内的には日本裁判所の言い渡した刑ではないと申しましたが、しかるに法律では、刑の執行とか赦免とか仮出所という文字を使つておるのはおかしいではないか、こういう御質問であつたと存じますが、私どもはこの戰争犯罪法廷の科した刑は、国内法の刑ではない、従つて累犯にもならないし、すべて国内的にはもうブランクである、かように存じております。ただ條約、法律を書く際に書きようがでざいませんので、特に注意をいたしまして、特に刑という定義をいたしまして、この刑というのは、戰争犯罪法廷の科した刑なのである。こういうことを特に断つておりまして、日本の刑法にいう刑ではないということを、反面において明らかにいたしておるような次第でございます。なお仮出所という言葉も、これは日本国内法で言いますと、仮釈放ということになるのでございますが、これも言葉を違えまして、仮出所という国内的にはない用語を使つております。従いまして国内法の刑ではございませんから、日本にある恩赦法の適用には無関係のものである、かように存じております。
  28. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 御答弁によります。と、ブランクであるということでございますが、ブランクということはどういう意味でございましようか。つまりこれはわが国の刑法における刑余者としての扱いはしないということはもちろんでございましようが、その他の点につきまして、青天白日と言つたらおかしいですけれども、刑の言い渡しというようなものは、わが国においては、少くとも何らそういうことがなかりしものと見ていいということでよろしゆうございましようか。
  29. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 仰せの通りに、国内で刑を受けた者とは全然区別して、そういう者ではない。従いまして、たとえば一番的確なものは、いろいろな法律におきまして、刑の言い渡しを受けた者はなることができないというような資格上の制限がございますが、それには該当しないもの、かように解釈しております。
  30. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうしますと、引揚者とかその他に関するいろいろな法律恩典というものは、これはその範囲を拡大して、こういう戰犯の言い渡しを受けて、服役をして、日本に帰つて来た者、ないしは日本服役した者には、これを適用していただくような考えを、法務府はもちろん、厚生省当局においてお持ちしていただいておるのでございましようか、どうでしようか。
  31. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 未復員者給与法の現在の建前では、戰犯云々ということは区別しておりません。従いまして、ただ一応の復員をいたしましたことになつておりますので、未復員者給与法の適用がないということになつております。従いまして現在のところ、法律を改正いたしませんと、未復員者給与法の適用は受けない、そういうことになつております。しかし、これは戰犯であるかどうかということでなしに、未復員者であるかどうかという点が、法律上問題になるわけでございます。
  32. 中山マサ

    ○中山委員 関連して……。ちよつと伺いますけれども国内に帰つて来たものとしてある以上は、未復員者給与法の適用ができないというお話でしたが、それは巣鴨におる人たちに限つてお話ですか。それとも海外におります戰犯も、やはりそれに連れ立つてそういう扱いになつておるのでございますか。
  33. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一応戰犯で逮捕されました場合には、復員が済んだことに相なることになつておるのであります。従いまして、現在のところは未復員者給与法の適用にはなつておりません。
  34. 中山マサ

    ○中山委員 その問題はまことに私は無法だと思うのです。こういう立法の府において、そういう無法な暴言が吐かれるということは、私は聞き捨てならないと思います。なぜならば、たとい巣鴨におるとはいえ、これはまだ日本の方に渡されていない人たちですから、私はこれはやはり帰らないものと認めたいし、ことにまた海外に抑留されておる者も、戰犯なつたら、これは一応復員したものと認めるということは、どうも私の頭ではピンと来ない問題でございますが、そういう法の使いわけは、いつ始まつたのでございましようか。
  35. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは別に私が始めたわけじやないのでありまして、ただいま新説を吐いたわけじやないのであります。戰犯でもつて逮捕されました場合には、一応現地復員をいたしまして、そして向うでもつてやるというような手続をとるようなことに、当初から相なつてつたのであります。従いまして、戰犯関係につきましては、従来からこれは未復員者とじては扱つておらない。つまり戰犯でつかまつておる者は、未復員者給与法の適用をしないのじやなくて、未復員の状態ではないから適用しないということで、今まで来ておるのであります。従いまして、今後におきましてこれをどうするかということについては、新たなる立法措置が、先ほど申し上げましたように必要であり、これについては研究しなければならぬと考えております。
  36. 中山マサ

    ○中山委員 その法律はだれがいつきめましたか。
  37. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 復員というものがどういうものかということをきめる法できまつたわけであります。未復員者給与法によつてきまつたというのじやないのであります。いつ復員するかという復員の事務手続、この問題によつてきまつておるのでありまして、これは今日の未復員者給与法できめたというものじやないのであります。
  38. 池見茂隆

    ○池見委員 関連して……。援護庁長官の話の中に、未復員者給与法の中には、戰争犯罪人関係のものはないという話を今聞いたのでありますが、これは近くわれわれがこういつた方向に仕向けんとするその問題が、たまたまここに現われましたから尋ねるのですが、未復員者給与法の第七條の中には、「連合国軍の命令により戰争犯罪人として処刑された者には、これを支給しない。」という條文がはつきりとうたわれておる。これをこの給与法の中から抹消をして、いわゆる戰争犯罪人にも未復員者給与法が適用されるというようになすべき処置を、われわれは講じたいと考えておる。たまたまそれに関連して、今中山委員から御質問があつたのでは、未復員者給与法というものは、結局いまだ海外に抑留された者以外は適用されないというようなふうに解釈されると考えるが、少くとも日本に帰還した戰犯者ないしは海外にいる戰犯者というような方々も、私はまだこれは未復員者ということに解釈するわけで、そういつた観点からして、われわれはこういうふうな者に、近き将来において給与することが妥当だと考えるが、この点においては、戰争犯罪人に限つては、この條文はないとあなたは今言つたが、この辺はどういうふうに解釈されておりますか。
  39. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私ただいま間違つて答弁をしまして、まことにたびたび間違いまして相済まないのでございますが、確かに未復員者給与法の中に、戰犯者には給与しないという規定があるようでございます。従いまして、この規定を削除いたすことによりましてまた次は、未復員者に従来の解釈を改めるという、二つの手続が必要だということになるわけであります。
  40. 池見茂隆

    ○池見委員 間違つたということであれば、その間違い方ははなはだ大きな失態であるけれども、これ以上は追究はいたしません。しかしそういつたわれわれの気持のあるということを十分に考えてもらつて、ひとつ研究していただきたい。
  41. 小平久雄

    小平委員長 庄司君。
  42. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいま問題になつておる戰犯者の未復員者給与法関係、これは御承知のごとく、昭和二十一年片山内閣時代に制定されて、ただいま問題になつておるその点においては、われわれは大いに問題として、反対の意思を当時表明しておつたのであります。しかしながら、これは片山内閣が悪いのでも何でもない。軍人関係の恩給であるとか、あるいは戰犯者関係であるとか、そういうものには、特別の取扱いや何かをやつてはならぬという、当時のおほりばたのきびしい指令もあつたために、涙をのんでただいま問題になつておる第七條が、国会で承認を得たわけであります。私はごく公正な見地から言つておるのです。そこでただいま池見委員が申されたように、すでに独立日本なつた今日、外国のいかなる国の干渉もいらぬのでありますから、すみやかに政府の方において、一部改正を御提案を願いたい。もし政府の都合が悪ければ、本委員会で御相談の上、議員提出として一部改正を、今国会に間に合いませんならば、来るべき臨時国会等で善処したい、こう考えますので、政府当局においても、今より御研究をなさつて、善処してもらいたい、かような考えでおります。  ちようど時計が十二時ジャストに近いのでありますから、私の質問は後日に讓りまして、この際委員長のお許しをいただきまして、議事進行に関して発言いたします。ごく簡單であります。ただいままで、また前会あるいは前々会の本委員会等における多くの同僚委員諸君の御要望、これらを圧縮して考えてみますと、第一は抑留同胞の即時引揚げ促進対策、第二は、戰犯受刑者内地送還の要望、第三は、戰犯、特に死刑囚あるいは無期刑者に対して、あとう限りの恩赦減刑、あるいは特赦、あるいは仮釈放等々に善処してほしい。またそれから戰犯受刑者家族に対しても、あたたかい愛情の手を差延べてもらいたいというような、まことに社会正義に訴える、ヒユーマニテイの血の流れておるところの要請であられたと思います。よつてこの際委員長は、本委員会理事諸君におはかりの上、すみやかに今国会の閉会にならぬ前に、大体三、四日くらいの期間において、抑留同胞の即時引揚げ並びに戰犯受刑者内地送還及び戰犯者恩赦減刑等に関する決議案を超党派的に国会に提出され、これを国民輿論として海外にも示されたいと思います。ただいま各都道府県より集まつて来ておるこれらの問題に対する請願並びに陳情の数は二百余件に達しておるのであります。愛の運動においては、戰犯者の即時釈放、あるいは受刑者を救えというような署名捺印の運動が、全国津々浦々、山村僻陬においても行われておる。国会がこれらの輿論を反映し、特にわれわれの同胞を抑留しておるある特定の国々の良心に訴え、社会正義に訴えられたい。戰犯受刑者といえども、これは決して單なる個人的な欲望による犯罪じやない。戰争のために脱線した、いわゆる偶発的な犯罪が多かつたと私は考えるのであります。B、C級戰犯者諸君は、相当の酌量、減刑の余地があると思いますので、どうか理事会にお諮りの上、すみやかに決議案として国会において一大峰火を上げられ、もつて全世界の御同情に訴えたい、かように考えておるのであります。これは議事進行の形式において、委員長よりしかるべく理事会にお諮りの上、御善処をお願い申し上げたい。時間の関係上、政府委員方々に対する質問は後日に譲ります。
  43. 小平久雄

    小平委員長 承知いたしました。ただいまの御提案はまことにごもつともでありますから、理事会に諮りました上、早急に御要望に沿うようにとりはからいたいと思います。堤ツルヨ君。
  44. 堤ツルヨ

    ○堤委員 石原外務政務次官に少しお尋ねいたしたいのでございます。政府側の戰犯に対する解釈は、先ほどからの御答弁で大体わかつたのでございますが、サンフランシスコの平和條約におけるところの戰犯管理規定というものによりまして、その外交政策と相まつて法務府並びに外務省のやり方によつては、私は即時釈放減刑の手はすぐにでも打てるのじやないか、かように思つておるのであります。先ほどから申入れの御説明がありましたから、ある程度了承いたしましたが、この前のこの委員会においても、岡崎外務大臣は、やつておるということを簡單にお答えになつておるのでありますが、最後にその見通しをお尋ねいたしましたところ、その御答弁では見通しが立たぬというふうに私は解釈していいと思います。しかし先ほどから留守家族の問題が、これにからまつて委員から御発言がありましたが、この戰犯方々は、講和発効とともに、われわれ個人も国と同様に釈放されるものであるという解釈をしておりました。今日の留守家族の生活はまことに窮乏しております。私は巣鴨の拘置所におられる九百二十五人の方々留守家族の生計というものを大体調べてみたのでありますが、どうなりこうなり生活できておるというのは二百世帶くらい、あとの四〇%はどうにもこうにもならぬ、わずか百二十八家族が生活保護法の適用を受けておるだけであります。いわゆるボーダト・ラインの生死の境をさまよつておるところの妻、子、老人が大部分であるということを考えましたときに、遺家族援護はまことに不十分でありますけれども、一応形の上においてこの援護ができたといたしますならば、当然日本民族の犠牲になつておるところの戰犯留守家族に対して生活保障がされなければならない。生活保障の手が今国会において打てないのならば、本人を即時釈放するか、どちらかでなければ、私は戰犯各位におかれましては了承が行かないと思うのであります。見通しが立たないというような答弁を、私たちこの委員会で聞いておいて、いくら決議案を政府に出しましたところで——今まで決議案というものは、吉田内閣においては決して尊重されておりません。議会の意に反して、また議会の意を重んじないで、政策がわれわれの希望通り行われないことはたくさんあるのでございまして、この決議案がどこまで功を奏するかということは、私ははなはだ疑問だと思う。従つて外務省当局のもつと積極的な、自信のある御答弁を得なければ、当委員会としてはその責務を果し得ないと思う。(発言する者あり)今まで何回も決議案を出しても、四回、五回見て見ぬふりをして来たことは、これは遺家族援護の問題にしても、いくらでも例がある。引揚げ促進の問題にしてもそうである。そうであるからいくら本会議で決議いたしましても、政府見通しの立たないようなことでは、私は承知できないのでありますが、外務政務次官どうでございますか。
  45. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは平和條発効と同時に、全戰犯関係者がただちに釈放されるものでないということは、平和條約十一條を受諾しましたときからよくわかつておるわけでございます。日本政府としては、平和発効後一刻も早く勧告をし、それで関係国同意を得て早く決定したい、こういうわけでございます。しかし勧告をするにしましても、ただ戰犯者釈放してくれとかどうとかいうことでは、はなはだ合理的ではないということになりますので、各戰犯者調書等をも整えまして、こういう事態であるからということで申し入れたい。こういう見地で、法務府の方に今調書の作成を急いでもらつておるわけでありまして、外務省の内輪においても、一刻も早く関係国に申し入れたいということで、折々催促もあるような状況でございまして決しておざなりな答弁を申し上げておるのではございません。ただこの見通しにつきましては、相手国同意というか、決定がいります。極東国際軍事裁判関係の者につきましては、過半数の決定がいりますので、大体いつごろその見通しがつくとかどうとかいう結論を、政府の立場においてここに申し上げることができないというだけのことでございまして、われわれは極力善処し、一刻も早くそういう事態にこぎ着けたいという気持で一ぱいであるということを、重ねて申し上げておきたいと思います。
  46. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、その個人々々のケースについての調書は、いつごろ全部お整えになるような御予定ですか。
  47. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 巣鴨在所者のそれぞれの調査につきましては、四月二十八日以前は先方の管理にございまして、こちらの方の係が参つて調べるということはできませんでした。四月二十九日から調査を開始いたしておりまして、これも私どもの方の普通の仕事を半ば放擲いたしまして、極力その調査を進めております。現在予備調査と、それから委員の面接の済んだ人の仮出所については、九割までできております。その他赦面、減刑等についても考慮いたしたい。かような考え方から、これからその余の者についても調査を進めるということでございまして、いつという日はわかりませんが、一日も早くこれを調査し、そうして外務省連絡をとりまして、勧告をいたしたい。かように存じておる次第でございます。
  48. 堤ツルヨ

    ○堤委員 私がなぜこういうことを申し上げるかと申しますと、政府方々がそこに並ばれての御答弁は、いつも可及的すみやかに調査をいたしまして、御希望に沿います。目下研究中でございます。対処いたしておりますという抽象的の言葉で、前の国会でも、その前歯会でも、ずるずるひつぱられた例はいくらでもある。従つて私はある程度具体的に伺つておかないと信用できないというのが、今までの例でございます。  そこでお伺いいたしたいのは、巣鴨の拘置所へ行つて聞いてみますと、四月二十八日講和発効までは、月に二人とか三人の釈放があつて、どんどん出られた。しかるに二十九日以後はいまだ一人も出ていない。従つて日本政府が主管するようになつてからの方が、むしろ釈放とか減刑とかいう問題は停滞しておるといわれておるのであります。この問題に関しましては、ただいまの調査云々と関係があるのでございましようが、事務引継ぎに際して、少しブランクが出ておるというふうに解釈してよろしゆうございますか、非常にそれが問題になつておるようであります。
  49. 齋藤三郎

    齋藤(三)政府委員 ただいまお話の中で、減刑につきましては、日本側に移りまして後、減刑によつて三人フランス関係の人が出所されております。巣鴨でお聞きになりましたことの多分大きな息は、仮出所であろうと存じます。仮出所につきましては、日本側法律、すなわち巣鴨の在所者を仮出所させる手続に関する法律がありまして、本案は本国会で成立しまして、四月二十八日に公布施行になつております。この法律は、占領下でありましたので、総司令部に連絡をとつて、この法律で、この内容ならばアメリカその他関係国も認めてくれるだろうし、また自分たちもそういうふうに盡力をする。従つてこの方式でやつて行けるだろう、こういう見通しのもとにこの法律を提案いたしまして、そうして国会で成立されまして、四月二十八日発効、公布、施行になつたのであります。この内容は先ほどもちよつと申し上げましたが、善時制といいまして、服役状態において遺憾の点がなければ、有利に解釈する、あるいは戰犯者として抑留された期間、未決でない期間でも、戰犯者として抑留された期間は同じように刑期に算入する、この刑期に算入する点は、長い人は二年、三年ということになりますので、こういうような條件で先方交渉してよろしい、こういう法律を今つくつていただいたわけなんです。それを発効関係国に、外務省を通じまして、かようないきさつでできた法律であるから、この方式で日本側勧告しているので、受付けてくれろ、こういうことを折衝いたしておるのでございまして、この返事のあり次第、現在調査の完了しておるものについては先方勧告する、また見通しがあまり長くなるようならば、その際は何らかのもつと別の方法でこれを勧告することも、外務省と御相談をいたしておるような状況でございます。
  50. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは外務省法務府の方にお願いしておきますが、おのおのその相手国交渉されました書類の写しであるとか、それから具体的に個人のケースをいろいろ御調査になつておる調書というようなもののデーターがございましたらここまでいつなんだ、どこまで調査が進んで、しかも終局的にこういう手を打つておるという書類の写しを私たち委員の手元にいただいて、それを見せていただく、それで初めて納得が行くのであります。抽象的なお言葉だけでは信用できないということを申し上げまして、ひとつ材料もいただきたい。  それから援護庁長官にお尋ねしたいのでありますが、留守家族の生活の問題であります。未復員者給与法を戰犯にも適用する、それから復員の基準ですね、それに対して定義をかえることによつて、この人たちをせめて未復員者給与法の適用を受けるところまで持つて行くということには、決して異議はございません。私は今国会にできなかつたら次の国会にというような言葉でなしに、これは即時しなければならぬ社会問題だと思います。未復員者給与法なるものの基準給与額、これについて、私たちこの際同時に検討を要するのではないかと考えるのでありますが、せつかく未復員者給与法を適用するのでありましたならば、ちよつとでも現実の生活費に即したものが支給されるのが妥当だと考えますので、こういう点にかんがみまして、援護庁長官はその点どのようにお考えになつておりますか。
  51. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 未復員者給与法の給与額がきわめて適当なものではないという御意見、私もしごく同感でございます。これは御承知通り、遺族の援護につきましても、これもはなはだ不満なものであるというのと同様でございまして、実際において未復員者給与法なり、あるいは特別未帰還者給与法においては、給与といつているが、実質は援護でございます。そういう目的が非常に多分に含まれていると言つていいじやないか。従いまして、その内容につきましては相当考えなければならぬ問題であると考えております。われわれといたしましては、遺族の援護を立案いたしまする際に、これとあわせて、留守家族援護というような形でもつて、これを統一して行くようにいたしたいという考えを持つてつたのであります。不幸にいたしまして、遺族援護がきわめて貧弱のものになりまして、現在未復員者給与法、あるいは特別未帰還者給与法の額よりきわめて低い給与になりました関係から、何らこれに対して手を触れることが現在でもできなかつたということであります。従いましてこれにつきましては、財政的措置を十分講じました上で、われわれといたしましては適当の措置を講じなければならないと考えまして、今後努力いたしたいと思つております。何と申しまするか、政府事務部内から申しますれば、やはり財政措置を講ぜずして法律を出すわけには行かぬものでありますから、一応その方の措置が十分講ぜられていないために、われわれとしましては法律の立案ができないという状況に現在あるわけであります。今後できるだけすみやかに財政的措置につきまして適切な手を打ちまして、この法案が立案できまするように努力いたしたいと思つております。
  52. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは外務当局並びに法務当局におかれましては、どんどん具体的に、積極的に、今後も戰犯の気の毒な方々のために、即時釈放なり減刑の実現しますように努力していただきますことを、痛切に望んでおきたいと思います。  それからただいま庄司委員から御提案になりました決議案の問題についてでありますが、決議案を出しまして、本会議で決議いたしましても、やはり委員会では別の手を講ずる必要があるのでありまして、もちろん決議案には反対ではございません。私はその点は、決議案に反対してこういう意見を申し上げているのではないのでありますから、誤解をなさつていらつしやる方が一部あるようでありますから、その点を申し上げておきます。但しこの決議案につきましては、本委員会を通じてというよりは、ぶつつけに各派共同提案の形において、本会議に緊急上程されるやの趣に私聞いておりましたのでありますが、その辺委員長は、各党の首脳と御連絡をおとりになつているか、当委員会との関係はどうなつているか、その辺も理事とよく御相談願いまして、有効適切な、最も大きな効果を上げる方向の決議案となるように持つて行かれることを、特に希望いたします。
  53. 小平久雄

    小平委員長 戰犯抑留者等の問題につきましては、この程度にいたしたいと思います。  なおその他の問題につきましては、通告がありますからこれを許します。中山マサ君。
  54. 中山マサ

    ○中山委員 法務府の方にお尋ねいたしますが、先ほどアムネスティの原則において、戰争があつたら、それは個人には及ばないというお話がありましたが、今度はいわゆる勝てば官軍、負ければ賊軍というようなかつこうで、そういう原則があるにかかわらず、このたびのようなことになりましたのは、何かよりどころがその後出て来たものでございましようか。もしないといたしますれば、このたびの戰争によりまして日本が負けたがゆえに、いろいろ戰犯というような名前が出て参りましたが、それは非常に一方的の処置ではないか、これは重大なる世界的な社会問題になるのではなかろうかと思うのあります。それはいろいろと帰つて来た引揚者に聞きますと、この間も京都で一燈園にいる人に聞いたのでありますが、あの北満の開拓団、あの人たちか戰い敗れた後にずつと南の方に下つて参りましたところが、支那の人たちがそれを取巻きまして、一つの道をあけておいて、そうしてもう一糸もまとわせないまでにその衣服をとつてしまつた。そうしてたとい一番下に着ておりますものでも、それをとつておこうといたします者は、屈強の男がそこにおりまして、それをなぐり殺したというような事実を目撃して、そうして裸にされた日本人に対する衣料の給付に自分は当つてつたのだという人が、今現に一燈園におられるのであります。こういうことになつて参りますると、負けた者に対するこういう残虐行為に対しては何の報いもないのに、しかもそれが戰争の終つてしまつたあとでも、このアムネステイ原則があるのに、そうして負けたものだけがひどい目にあつて講和の後までもそうするということは、どうもいわゆる人道ということを叫んでいる国連の主義にも反するという考え方から、どうしても承服できないのでございますが、こういうことはやはり一つの流れとして認められて、これが法律のようになつて来るものであるかどうか。これは余分な質問かもしれませんけれども、私は参考のために聞かせていただきたいと思います。
  55. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 私自身もこの問題につきまして深い研究をしておりませんので、あるいは当らないことかあろうと思うのでございまするが、御質問でございますから、一応知つている程度のことを申し上げます。  今度の裁判で、従来犯罪とせられなかつた戰争に関する行為の罪の範囲が広められたのでございまするが、そのうちの平和に対する罪とか、あるいは人道に対する罪等は、実は戰争の最中その罪とせらるべき行為の行われでおつた当時には、国際的にそういうもので処罰するという規則がなかつたのではないか。ところがその後において、それを犯罪として処罰せられることになつたというような点について、この裁判の際にもいろいろ問題が起つたのを私は承知しているのでございます。しかし、結局国際裁判は、それを事後法として有効に処罰し得るという見解のもとに、裁判が行われたのでございます。また平和條約がなつてからその犯罪が残るかどうかということについて、アムネステイ原則で全部釈放せられるというのが、従来の考え方であつたのでございます。ところが今度の平和條約十一條で特別に残ることになりましたので、その見解としまして、原則的にはどうしてもこういうものはアムネステイで残らぬべきものであるが、これは例外の場合として今度十一條で残つたという見解と、本来残るべきものであつて、それを十一條で認め先だという見解と、いろいろあると思うのでございます。いずれにしても、日本の場合は不幸にしてそれが残つた、われわれにとつて不幸にして残つたのでございます。それが国際法として、一つの法規範として世界を支配して行くかどうかということは、これからなおいろいろ問題があろうと思うのです。いずれにしましても、戰争というものの悲惨を防止するために、またそれによつて起るいろいろな不徳義なことを防止するためになされた戰争裁判と思うのでありまするが、実際の個々裁判のやり方なり内容については、いろいろ問題があつたのだろうと思つているのであります。従つて処罰せられた方々につきましては、非常にお気の毒な事情もあるのでございまするが、そういう裁判の立て方と、個個の裁判を受けられた人のケースとは別に考えて、私ども個々のケースについて十分考えまして、一刻も早く事実上釈放せられるような努力をすることが大切だと思つているのでございます。
  56. 中山マサ

    ○中山委員 私は法務府の方に要望申し上げたいのでございますが、いわゆる正義という立場から、国連の中には、第三委員会に人道委員会もあることでございますから、この際こういうことが一方的である、そうしてまたわが同胞の中をお調べになりますれば、帰つて来た人をお調べになりますれば判然とすることで、証人はたくさんあることでございますから、勝つた方もやはり反省をして、残虐行為をした人たちにも、私はもしわれわれの方が裁判を受けるものならば、裁判があつてしかるべきものではなかろうかという見解を始終持つているのです。そしてそういうふうなことについて、やはり正義という観点から、国連にでもこういうことを思つている人間もあるということを、一通お出しいただくようなわけには行かないものかどうか。私はあまりに正義がゆがめられているという感覚を持つている者の一人でございます。御答弁を願います。そういうことはできるものかできないものか。もう今日ですから言つてもさしつかえない事態が展開して来たのだと思うのです。
  57. 古橋浦四郎

    古橋政府委員 事案によりましては、できないこともないだろうと思うのでございます。ただ全般的に、国のこの犯罪に対する一応の態度としましては、平和條約で認めましたので、国際信義の上で、あれを一応できたものとして、それに対するまあ個人的なケースを考えるという建前で参るべきだと思うのでございます。
  58. 中山マサ

    ○中山委員 援護長官に私は堤委員のお言葉を借りるようなかつこうで押して行きたいと思いますが、こうして国のために苦しんでいるいわゆる戰犯者が、外国ではこうしていじめられる、国内的にはもう帰つたものとして受取つたというようなことで、戰犯者に対しては何の家族手当も来ないというのでは、ほんとうに踏んだりけつたりだと私は思うのであります。この際私ども決意をいたしまして、何とかこういういわゆる未復員給与法の改正に向つて邁進したいと思いますが、どうぞその点お含み願いまして、これは御答弁はいりません、ぜひそういう動きがございましたならば、御援助が願いたいと思うのであります。  外務政務次官にお尋ねをいたしますが、戰犯者の状況を拝見いたしますと、この中には、中共及びソ連ブロックにございますところの戰犯者のことは、一つもあげてないように私は拝見いたすのでございます。ソ連の方からは、もういわゆる中共関係戰犯者は中共に逆送したということを、私はいつかタス通信で読んだように記憶いたしておりますが、そういう方面の戰犯者の模様は、いささかでもお手元に参つているのでございましようか。政務次官にお尋ねしたいのであります。
  59. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 未帰還者の様子が全然わからないと同様、そういう様子がこちらとしては全然わかつていないのでございます。  それから中共といいますか、ソ連の関係の方の戰犯といいまするか、これはわが方では、ただいまのところは戰犯者というより一括未帰還者として、未復員者として考えているのでございます。戰犯者というように考えていないのでございます。
  60. 中山マサ

    ○中山委員 そういたしますと、ますますそこに異常な片手落ちが出て来ると思うのでございます。いわゆるソ連ブロックにおりますところの戰犯者、ソ連のタス通信によりますと、中共に関する戰犯者は、もうこちらから中共の方に送り帰したということをはつきり申しておりますにもかかわらず、その人たちは未復員者のグループに入れられていて、その家族は給与法をもらつている。はつきりと戰犯者と称する者はもらえない。実におかしなことが出て参りますので、このことは、私はどうしても是正していただかなければならぬ問題として、私どもは深くこの人たちに対してお気の毒に存じておるような次第であります。ぜひこの点、私ども気持のあることを御了承くださいまして、御協力願いたい。
  61. 池見茂隆

    ○池見委員 これは石原政務次官も御存じと思いますが、中共より日本に対して、中日友好協会を通じての送金——これは外務省の方から私は直接資料をもらつて、内容は了承しておるわけであります。またその後におけるそういつた系統のものの送金であると心得ておりますが、留守家族に対して、きわめて左翼的な尖鋭分子が一々その送金を配分して領収書を受取り、かつそれに対しては、その送金を受取つた者から、中共政府といいますか、そういつた方面に対する感謝状という意味合いの書類までとつて、その送金を配付しておるという事実を聞くのであります。これは單に抑留者自身からの送金を一括して友好協会に送つておるというような形式だろうと思うのですが、そういつた送金が留守家族に配分される、こういうふうな事実を政府の方では御存じになつておるかどうか。またそういつた事実が明確にわかつておれは、その話の範囲内において御発心表願いたいと思います。
  62. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいま申されました点は、まだ当局の方でよくわかつていないようでございまして、お話の筋をさらに調べさしてみたいと思います。
  63. 池見茂隆

    ○池見委員 この問題は、單に留守家族に対する送金ということ以外に、そういつた方面から国内に外貨が流れて来るということは重大関心事であるというふうに考えますから、どうかその辺は十分御調査を願つて、適当の時期に御発表願いたい。
  64. 若林義孝

    若林委員 これは今の主題の問題ではございませんが、過般来から本委員会において取上げられました引揚げに関する促進国民大会に対して、政務次官の非常な御努力によりまして、政府部内におきましてもその空気が有力に醸成されて参りましたことを多とするのであります。しかし一点、われわれが企画いたしており、心に思つておりましたものは、中央においてと同様に、地方においてこの大会が各府県ごとに行われることを希望いたしておるのでありますが、これに対する政府の補助は、中央のような懸念なしに堂々とできることだと思うのであります。中央の方は政府が指導的にはできないと思いますが、地方は自治体として行うのでありますから、それを助成するくらいのことは、懸念なしにやれると思いますので、中央で行いますのに政府が非常に協力せられると同様に、各府県の地方団体に対する補助をなさることにもひとつ努力願いたいと思うのであります。その点ひとつつておきたいと思うのであります。
  65. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは自由党の総務会、あるいは皆さんの引揚委員会等を中心として、ただいまいろいろ御検討願つておるようでありますが、若林委員の御趣旨もごもつともと思いますので、さらに協力いたしまして、幾分なりとも補助ができるような形で進みたい、かように思つております。
  66. 若林義孝

    若林委員 関連して、このことに対する援護庁長官のお考えを承りたい。
  67. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、前々から申し上げております通りに、こういう大会をやることにつきましては、私どもはできるだけの協力をいたしたい。現在予算的な措置ができておりませんので、これにつきましてどうするということはお答えできかねますが、予算的な措置さえできますれば、できるだけのことをいたしたいと思います。
  68. 中山マサ

    ○中山委員 開拓団の戰死した人たちの問題でございますが、しきりに私どもに陳情が参るのでございます。学生の人たち家族に対しましては、いろいろと御考慮をいただいておるのでございますが、この人たちはちつともそのわくの中に入れられていないので、やはり学徒と同じように扱つてもらいたいという陳情がしきりに参つております。この開拓団の問題をいかにお取扱い願つておるのでありますか。
  69. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 たしか参議院の修正によりまして、全部はどうかと思いますが、軍の命令によつて戰闘に従事いたしましたものについては、援護措置が一部とられることに相なつたはずだと思います。
  70. 池見茂隆

    ○池見委員 きようは戰犯者の問題と留守家族援護について重点を置いてお話がありましたが、まずこういつた問題を処理、解決すれば、一応講和発効後におけるところの戰争犠牲者関係は、不十分ながら済むことになりますが、遺骨の収容ということについては、過般硫黄島における収容終了後において、非常に国民的に関心を持つた。同時に沖縄からは、沖繩政府その他の援助によつて、一回、二回と相当数の遺骨が内地に収容されたことは、非常に喜ばしきことである。私は国民感情として考えて、遺族の人はそれぞれ遺族援護法によつて待遇を受けましようが、この遺骨については、骨箱だけもらつて、中は何もなかつたというのが相当あるのではないか。そういつた人々は、こういうふうに遺骨が収容されるならば、たといお骨の一片でもという、遺骨に対する愛着とその収容に期待をかけていると思うのであります。ここにおいて、長官が記憶があるかどうか、あるいは事実そういうことを話されたかどうか、知らぬけれども、五月十六日の読売新聞に、遺骨収容は広範囲にわたつてこれから続行するということで、長官談としては、相当に確固たる考えがあるように発表されておりましたが、こういつたことをなお続行して、可能なる範囲内における遺骨は収容しなければならぬという強い意思と、それに対する計画を聞きたいことと、つけ加えて申し上げておきたいことは、こういつたことの発表がありましたならば、でき得る限りすみやかに、この程度は可能である、この程度は不可能であるといつたようなことは、これは非常に人間の気持の上に重大な影響を招来すると思うが、もし不可能な場合においても、それが包含されておれば、やはり待つものは待つといつたようなことですから、こういつた点については愼重なる発表、あるいは愼重なる一つの考えのもとに進んでいただきたい。前段の御計画、御決心のほどを承りたいと思います。
  71. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 遺骨の引取り還送につきましては、現在硫黄島と沖繩等につきましては、すでに御承知通りの状況に相なつております。その他のアメリカの統治下にあります太平洋諸島につきましては、アメリカの軍当局におきまして十分なる協力をするという申出もございまするので、現在これが具体化につきまして、内折衝中という実情であります。はつきりいたしましたならば、これによりまして正式に向うに申入れをするつもりでおります。従いまして、この方面につきましては、非常に可能性があるのではないかと私は考えております。その他の英濠軍の地域、つまり英連邦地域、それからビルマその他の地域につきましては、現在のところまだ見通しは立つておりません。ただ現在英連邦地域につきまして交渉を進めておるという段階でございます。これにつきましては、物理的に非常に困難な面が多分にあることも考えられまするし、どの程度のことができるかということはわかりませんけれども、われわれとしましては、できる限りのことはしなければならぬと考えております。ビルマ、フイリピン等につきましては、現在のところ見通しがきわめて困難な状況でございます。しかしこれにつきましても、今後平和條約が両国間に発効いたしますれば、その際におきまして、できるだけすみやかに必要な措置をとりたいと考えております。従いまして、さしあたりの問題としましては、アメリカの下にあるところの地域におきまして、できるだけ急速に事を運びたいと考えまして、準備を進めております。
  72. 小西英雄

    ○小西(英)委員 関連して……。ただいま援護庁長官より、アメリカ地域の方が相当調査も済んだようなお話を承つたのでありますが、アメリカの方からの最近の連絡として、いつごろ厚生省なり外務省へ来たか、日取りがわかつたらお伺いしたいと思います。
  73. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 先方からのこちらに対しまする協力の申入れは、三月でございます。その後こちらとしましては、硫黄島及び沖繩の状況にかんがみまして、一応の計画を現在立てまして、その計画を基礎にしまして、先方に照会をいたしております。なおそのほかに、向うでこちらに協力してくれる程度につきまして、内々折衝いたしておるというのが現状でございます。
  74. 小西英雄

    ○小西(英)委員 私がちようどアメリカに参りました際に、これは私個人といたしまして、国務省を訪れまして太平洋諸地域の遺骨の引揚げについて、在外事務所を通して向うに申し入れたのであります。当時のシーボルド外交局長の話もあるし、リツジウエイのあれによつて日本政府へそういうふうな調査事項を差出せということを、向うの担当局の次長さんが国防省と連絡をしていただきまして、ちようど四月の六日でありましたが、地図を示して、いろいろ向うは懇切にこの範囲はできると思う、日本政府からの希望條件はまだ届いてないかということでした。そして、まずサイパン島とかタラワ、マキン島、あるいはアツツ島等について、飛行機の便利をお借りできれば、まず一番先にその国の代表なり遺族の代表と僧侶とを派遣さしていただいて、一応合同葬か何かの形で骨を収集するように、できればさらに一歩進んでもし船等で行ける便がありますならば、三十名内外の人によつて逐次骨のある位置とか、あるいは衣服によつて判明するものは区別したいというようなこと等を二時間ばかりいろいろ話をしたのであります。非常に好意的でありまして、日本政府が少し積極的に出て来れば、案外早くこれは実現の可能性があるのではないかと、向うの担当局の次長さんから言われたのであります。もう三月から四月、五月、六月となつておるので、全般的に行くと、日本政府が費用を持つならば、相当厖大な費用がかりますが、向うはそこいらに行つておる軍用機、あるいは船舶の便も一部あるところもあると承つたのであります。これは日本政府が船を仕立てて行く考えですか。それとも向うの飛行機等を利用さしてもらう考えですか、あるいはそれについて相当具体的なものができておりますかどうか。
  75. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 それは場所によりましていろいろ状況が違うわけであります。サイパンであるとか、テニアン、グアムであるとか、アンガウルであるとかいうところは、船の便を使つた方がいいのではないか。またこれらの島につきましては、日本側におきまして作業をいたします各種の者が行く機会があると思いますので、できるだけこれを利用いたしますことは、外貨等の関係からいたしましても適当かと考えております。それからたとえばクエゼリンというようなところになりますと定期船がございませんので、飛行機を利用するとか、向うの船を利用しなければならない。これにつきましては、向うに照会をいたしております。  なおもう一つ問題になりますのは、それぞれの島におきまして遺骨の収集をやるにつきましては、相当の人手を要します。その人手をどうやつて運ぶか、しかも向うでの宿営をどうするか、その人たちの食事をどうするか、これらの問題があわせて解決できなければ、人をやることはできないのであります。硫黄島におきましては、たまたま日本の作業隊がおつて日本の宿舎があつたからできたのですが、他の島におきまして、これらの便宜を与えてくれるかどうかという問題であります。相当多数の遺骨を扱いますには、やはり相当なこれに要します人を使つて、相当日数滞在しなければできないわけであります。これらにつきまして、どのくらいの滞在日数、どのくらいの人員がいるかということを、各島別に現在わかつて状況によりまして一応考えまして、これに対する設営がどうであるかということにつきましての照会を今いたしております。これがきまりませんと、われわれといたしましては、予算を立てるわけに行かないのであります。返事が来ましたら予算を立てたいと思つておりますが、向うに内交渉中というのは、そういうことであります。
  76. 小西英雄

    ○小西(英)委員 話が非常に具体化しておるようなんで、われわれもそういうことならば何も申し上げる点はないのですが、もう少し具体的に——全体を通じて一ぺんに計画してやるということは非常に困難ではないかと思います。たとえばグアム島のごときは、毎日飛行機が着陸しております。私たち飛行機に乘つて行きましたとき、三時間半ばかりの休憩時間を利用して、遺骨等がどうなつておるか調べてみたのですが、グアム島ですら、立入り禁止の地帶でない、海岸伝いから三十分も行けば、遺骨があつたり服があつたりする状態でありますので、まず手取り早く、グアム島なり飛行機の便のあるところ一箇所からでもいいから、積極的に援護庁の方でやつてもらいたい。グアム島なんか、毎日何台か旅客機が着陸しておりますし、軍事基地としても飛行場から見える程度で、まつたく秘密の場所も、今日としては日本の場合少いと思うので、もう少し援護庁なり外務省が積極的にやれば、一箇所からでも片づいて行くように私たちは考えられるので、ひとつそういう点についてもつと具体化して——全体をやるということは、これは正直、地図でいろいろ作戰関係説明を承つたのでありますが、とてもじやない、全然行つてない。戰争が終つたまま、ほとんど一、二回この跡を飛行機で偵察した程度という島もあるので、まず旅客機がとまるところ——毎日われわれの同胞がアメリカへ何千人か渡つて行く際に、飛行機の上からでも、上陸用舟艇とか、残骸とともにあの付近に相当散在しておるということは、一緒に行きました小杉勇とか、あるいは藤田進等と一緒に、海岸を伝わつて日本人の遺骸の状況等を見たのでありますが、すぐ目につくのでありますから、これは何とか一箇所からでもいいから、硫黄島と相呼応して行くように、これはいろいろアメリカ側からいうと、報道的にあまり宣伝されると、アメリカの世界に対する信頼が落ちるかのような口吻もあつたのでありますが、これは別に宣伝の必要も何もないのでありますから、どんどん、ひとつ一箇所からでも片づけるように特にお願いしておきます。
  77. 小平久雄

    小平委員長 本日はこの程度にて散会いたします。     午後零時五十二分散会