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1952-05-27 第13回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十七日(火曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 池見 茂隆君 理事 若林 義孝君    理事 坂口 主税君 理事 受田 新吉君       飯塚 定輔君    川端 佳夫君       庄司 一郎君    玉置 信一君       中山 マサ君    福田 喜東君       松永 佛骨君    丸山 直友君       清藤 唯七君    堤 ツルヨ君       高田 富之君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         厚生政務次官  松野 頼三君     ————————————— 本日の会議に付した事件  海外胞引揚に関する件  引揚援護に関する行政機構改革について説明  聽取の件     —————————————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  本日は海外胞引揚に関する件並びに引揚援護に関する行政機構改革について、関係当局より説明聽取いたしたいと存じます。  まず海外胞引揚に関する件について、岡崎外務大臣より今後の方針、対策等につき説明聽取いたしたいと思います。岡崎外務大臣
  3. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この問題については、政府としてはずつと前からいろいろ研究をいたしておりまして、何とか早く目鼻をつけたいという考えで来ておつたのでありますが、御承知のような事情で、今日まではかばかしい解決方法もないわけであります。しかし決して望みを捨てておるわけではないし、また現にソ連地区中共地区に未帰還者が生存しておることも一部は確認されておりますし、また確認されていない分についても、確かにその地方に連れて行かれたことは、ほとんど間違いないと思うのでありますが、その後の模様がわからないという実情であります。今までも、国連特別委員会はもちろんのこと、国内の輿論が各国に反映もいたしておりますし、またたとえばローマ法王庁、あるいは国際赤十字というような中立的な機関を通じましてそれぞれ各関係方面に働きかけてもらつてもおるわけであります。またインドのごときは、場合によつたら、中共地区の一部の人についてだけでも、何とか日本帰還できるような話合いをしてみたいという考えの人もあるようでありまして、いろいろの方法、いろいろの径路を通じて努力をいたそうと考えて来ておるわけであります。これについては、当委員会の諸君に何か名案がありますれば、その御意見も聞きまして、できるだけ効果のある手を打ちたいと考えておる次第であります。政府も、はなはだこういう事態は残念に思つておるのでありますが、しかしながら現実の状況は、どうしてもはかばかしく行かないというので、困つておるような次第でありまして、今後とも御意見を拝聽しつつ、できるだけ善処をいたしたい、こういうつもりでおります。
  4. 小平久雄

    小平委員長 これより本件に関する質疑を許します。玉置信一君。
  5. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいま岡崎外務大臣から、在外抑留同胞引揚げについて、政府の今日までとつて来た経過、あるいは考え方等について一応御報告を拝聽したわけでありますが、現段階においては、大臣お話になつた程度を飛躍して強力な手を打つということについては、はなはだむずかしいだろうと私どもは了承しております。ただここで大臣に特に御考慮を願いたいのは、講和発効後、すなわち独立後の日本として、国民考え方、特に留守家族の多くの方々気持というものは、日本講和ができて、独立国家として発足したならば、こうした海外に抑留されておるわれわれの身内は、何とか国際的に対等の地位に立つて対外的に交渉して、早く引揚げ促進をしてもらえるだろうという多大な期待をかけておるのであります。こういう際にあたりまして、従来と同じような政府としての手の打ちようであつては相ならぬと、私ども心配をいたしておるわけであります。今日まで過去数年間にわたりまして、国会並びに政府が一致して、この引揚げ問題に全知全能をしぼつて努力して来たことは、先刻皆様の御承知通りでありますが、今日こそ何とか強力な手を打つべきだろうと私ども考えるわけであります。  そこで、これからごく簡單に数項についてお伺い申しますが、岡崎大臣お話になりましたように、国際連合国連捕虜特別委員会が設けられまして、本年の二月でありましたか、ジユネーヴ会議に、政府より齋藤、上島両氏が派遣されまして、特にソ連中共地区に抑留されております同胞引揚げ促進を懇請するとともに、あわせて私の聞くところによりますと、ソ連中共現地における実情調査等も懇請いたしたということでありますが、その後国連捕虜特別委員会が、抑留者引揚げに対してどういうような手を打つてくださつておるか。聞くところによりますと、来る八月ごろには、またこの第二回会合が開かれるということでありますが、これら国連捕虜特別委員会との情報交換等を、外務省においてなされておるのでありましようか、まずこれを先にお伺いしたい。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれの方としましては、できるだけこの特別委員会と密接な連絡をとつて情報交換もいたします。主としてこちらから資料の提供、あるいは今お話現地調査促進といいますか、そういうものも考えておりますけれども、これもなかなか相手国のある問題であるのでありますから、特別委員会の方でも、実現を懸念しておるような次第であります。ただいまのところ、八月下旬にジユネーヴでもつてまた会合を開く予定であるという報道を得ております。そのときにどういうふうになりますか、われわれの方としては、できるだけこれと密接な連絡をとりまして、従来やつておりますよりもさらに強力に、この委員会に働きかけて行きたい、こう考え準備を進めつつあります。
  7. 玉置信一

    玉置(信)委員 私は、ただいまの大臣の御答弁によりまして、この国連捕虜特別委員会と緊密な連絡をとつて、何とか手を打ちたいというお話を聞いて意を強うするのでありますが、この際何か案でもありましたらというお話もありましたので、次の質問に移る前に、ただいまの御答弁に関連して申し上げてみたいことは、せつかく外交機関もできたことでありますし、この際政府はこの外交機関を通しまして、国連に働きかけまして、そうして国連捕虜特別委員会のほかに、先ほどお話のありましたローマ法王庁であるとか、あるいは国際赤十字社であるとか、あるいは世界人道協会というような、中立的な人道愛をもつて立つこれらの機関に対して強力に呼びかけまして、相千国に対して直接交渉を持てないとするならば、これらの機関を通じて、この際急速に交渉の手を打つ必要がある、私はかように考えておるわけであります。同時にまた、われわれこうした国際機関立場において、日本の要請ばかりにこたえて現地調査というようなことは、なかなか至難であろうことは想像されますが、しかし事いやしくも国境を越えての人道問題でありまするがゆえに、私は強くこの点を強調いたしまして、ぜひとも現地の、すなわちソ連中共地区の実態を調査してもらうことが一番いいじやないか、こういうことに動き始めて、初めてソ連地区あるいは中共地区の抑留されておる同胞消息がわかつて来るのじやないか、かように考えるので、まずこの手を強力に打つていただくことを要請する次第でありまするが、これに対しては、大臣はいかようにお考えになりますか。  次にまた、講和が発効し独立国家になりましたとは申すものの、相手国ソ連は今日なお代表部を置いて、向うから申すと占領治下であるというような解釈のもとに、なかなか代表部を閉鎖しそうにもないのでありますが、ここに代表部があるのでありますから、日本に駐在する各連合国側機関を通して、このソ連代表部に申入れをして、強力に働きかけることも手段一つでないか、かように考えますが、これに対してどういうお考えを持つておられますか、この点をまずお伺いいたします。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまお話になりました第一の点は、私としてもまつたく同感でありまして、今までもやつてはおりましたけれども、今後はこちらの在外公館等もできましたので、これらを通じましてさらに強力に働きかけてみたい、こう思つております。同時に国内の未帰還者家族気持等も、常に在外公館を通じて各国代表者に伝えてその同情といいますか、その理解を深めて、この問題に努力をしてもらうように努めたい、こう考えております。  第二の点につきましては、私は多少意見が違うのであります。それは、日本政府としましても、また連合国側も私はそうであろうと思いますが、ソ連代表部は、最高司令官の諮問に答えるための対日理事会の一員として派遣されておるので、最高司令官がなくなり、対日理事会が消滅した今日は、代表部のここにおる資格はなくなつておる、こういう建前であります。従つて日本政府としても、資格のない代表部に直接話をするという理由もありませんし、またほかの国々も同じ立場であろうと考えております。ただもしそういう必要が起る場合には、連合国の中にはモスクワなり、あるいは中共地区なりに代表者を置いておる国も多々あるのでありまして、そういう方面を通じてなら私はできると思いますが、ここの代表部を通じてということは、ちよつと筋道が合わないのじやないかと思います。むしろモスクワにおる関係国の大使館を通じて、これは先方承知してくれなければだめでありますけれどもソ連政府に話しかける、あるいは北京に大使なり公使なりがおる連合国を通じて北京政府側に話してみるということが、筋道としては正当なのではないか、こう考えております。
  9. 玉置信一

    玉置(信)委員 ソ連中共地区における在留同胞消息でありますが、先ほど大臣は、ソ連地区における未帰還者の生存しておることの一部確認ができたと申しておられますが、ソ連において生存しておる方々について、どういう範囲情報を得られておりましようか、なかなかむずかしい問題でありますので、これは政府もずいぶん苦心をせられておるところでありますが、戰犯として発表されておる三千数百名でありましたか、これ以外の一般の邦人、あるいは戰犯以外抑留者で、もし生存確認された数がどれだけでも情報が得られているということになりますと、留守家族の人は非常な安心をいたすわけでございますので、この点をまず御発表願いたい。  次は、中共における抑留同胞でありますが、大臣も御承知のごとく、最近中共地区から日本留守家族に対する郵便通信等が行われているわけでございます。そこで今日までいろいろ質疑をかわした中に、向う旅費さえあれば内地に帰れるのだ、旅費がないために実は帰りたくとも帰れないでいる、こうしたたよりも相当にあるのであります。今日は幸いに大臣がおいでになつておりますので、この点は大臣としてどういうふうにお考えになりますか。すでに局長政務次官等には、われわれ委員会において数回にわたつて詳細にこの問題を質疑いたしておりますので、おそらくその報告を御聽取になり、御存じのことであろうと思いますので繰返して申し上げませんが、これに対して、大臣はいかなる施策をもつて抑留同胞帰還の目的を達する手段方法をおとりになる御意見でありますか。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまわれわれの方で、いろいろの手段で調べて、もう確かにいると考えておりますのは、要するに抑留者の方から通信が来たり、あるいは帰つて来た人の報告で、あそこにいたということのわかつている人人、これを集計したものでありまして、御承知通り七万人余り、これは確かに——つまり現在はあるいは病気でなくなつている人もあるかもしれませんが、ある一定の時期には、確かに生きておつたということの確認された人々であります。これにつきましても、さらにいろいろの確認方法を講じているわけであります。  第二の点につきましては、これも具体的にどうやつて旅費等を払うかという方法は、まだきまつておりませんし、また先方とのお話合いもむろん必要でありますけれども、もし政府旅費を出すならば帰してもよろしいということになれば、旅費くらいのものは喜んで提供しよう、また必要があれば船も出してもよろしい、このくらいに考えている次第であります。そういう費用なりの点で、政府は何ら躊躇することはしない、こういう強い考えを持つておりますから、これだけの理由であるならば、いつでもこれだけの船なり旅費なりを提供する考えはつきり持つているのであります。
  11. 玉置信一

    玉置(信)委員 抑留されている中共地区同胞は、朝鮮動乱にかり立てられて、北鮮軍の欲せざる戰闘に参加をいたしているという情報があります。また一方ソ連地区に抑留されているかつて軍人等は、樺太千島第一線——これも、あまり大きなことを申し上げてもどうかと思いますが、将来ソ連が外地に攻勢に出るときの第一線部隊として訓練をされているというような情報があり、これは新聞等でしばしば報道されているところでありますが、この事実に対して、大臣はどこかから正確な情報でも得られておりますかどうか。ことに北鮮に従軍しているということは、もう争うべからざる事実でございまして、こうしたことにかり立てられている同胞に対して、私ども国民全体はもちろん、留守家族人たちは、まことに私は寝ても寝られないほど心配していることであろうと思いますので、これに対して、何とか政府としては手を打つて行かなければならぬと思うのでありますが、何か適当な策を講ずるだけの外務省においての御相談等が今日まであつたかどうか。  次はフイリピンにおける抑留戰犯の問題でありまするが、一昨年私は、ちようど前の委員長若林委員中山委員その他の方々と、フイリピンから当時参りました下院議員ヴエラノ氏に会いまして、フイリピン抑留戰犯として抑留され、しかも死刑の宣告を受けた人たち助命運動をいたしたことがございまするが、当時ヴエラノ氏は、帰りましてこのことをキリ大統領に伝えた。そして今年の一月でありましたか、さらに上院議員に当選されまして、再び私ども会見いたした際も、特にこの点をキリ大統領に伝えた旨のお話があり、われわれ国会としても善処しているというお話がありましたが、その後フイリピンにおける戰犯死刑囚がどういう状態に置かれているか。こういう点について、私は大臣の御所見をお伺いしたい。これに関連いたしまして、日本国内に移されている戰犯BC級人たち釈放の問題でありまするが、この釈放に対する国民運動が起きた場合、対外的にどういうふうな影響等があるのでありましようか。私は、国会においても講和発効後の今日においては、戰争当時のいろいろな事情——私はここに相当なデータをもつて、理論的に質疑をするだけのものを持つておりますが、時間がありませんので、それは一切を省略いたしまして、ただ結論的にこうしたBC級戰犯実情を聞きますと、私は昨日も行つて参りましたが、まことにぬれぎぬと申しますか、何ら犯罪行為がなくて、当時の軍事裁判としてお気の毒な裁判の結果、巣鴨に拘留されている人たち気持を思うとき、せめて講和発効後の今日、独立国家としてこうした人たちを一日も早く釈放すべきであり、釈放さすところの国民運動と申しますか、あるいは国会等においてもそこまでの考慮を払うべきであると思うのでありますが、これに対して外務大臣はいかようにお考えになりますか。この点をお伺いしておきたいと思います。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 北鮮の方にかり立てて働かされているという風評は、しばしば耳にしているのであります。また国連軍に捕えられた捕虜の中にも、一、二名はそういう日本人がいるという風評も聞いておりますが、ただいままのところ、われわれの確認しようとした努力に対してはまだ効果を収めておりません。従つてわれわれとしては、まだ捕虜の中にはそういう人は見えない、風評はよく聞いておりますが、こういう程度にしか申し上げられない。まあかりにありましても、ごく少数があるらしいというような風評であります。  ソ連地区樺太等日本人々がおつて、これが軍事訓練等を受けているという。これまたまことにただ風評でありまして、そういう場合もあり得るであろうという想像もつかぬことはありませんが、この方は確認方法もないような次第で、ただいまのところは、そういう風評として受取つておくよりしかたがないと考えております。  それからフイリピンにおりまする戰犯者の待遇は、われわれの調べたところではかなりいいようでありますし、虐待されているというようなことはないようであります。しかしながら、長く外国にとめ置かれましていつ帰れるやら、あるいは聞違つた処刑をされるのではないかという気持もありますれば、それらの人々心情は、まことに同情すべきものがあるわけでございます。われわれの方も、平和條約の規定に基きまして、でき得る限りこれらの人々に対しても手を差延べて、何とか可能な範囲での救済をはかりたいと思いまして、ただいませつかくいろいろ資料を集めて準備中でございます。それから国内におりまする今御指摘のBC級戰犯者等につきましても、いろいろ気の毒な事情はあると思いますが、これにつきましては関係者が、自分はまつたく無実である、こういう気持を今なお持つている人もありましようけれども裁判を下した方から言えば、これは相当の証拠があつて裁判を下したという確信を持つておることと私は考えておりまして、この裁判が無根の事実によつて判決されたんだというようなことにつきましては、政府としては一切言明をいたしたくないのであります。しかしながら、平和條約にももうすでにはつきり規定がありまして、またかなり長い間服役しておる人々でありますから、その服役の状況とか、本人心情とか、また刑の量定とかにつきましては、今法務府と連絡をいたしまして、平和條約の規定に基きまして、減刑とか釈放とかの資格のある人につきましては、できるだけ救護の手を差延べたい、こう考えて、これは具体的にただいまもうすでにかなり調査を進めておりまして、不日調査が完了いたしますると、連合国側にこの事実を伝えまして、できるだけ善処をいたしたい、こう考えます。
  13. 池見茂隆

    池見委員 講和発効後の専任外相として、岡崎国務大臣が日夜奮鬪されておりますことは、私も非常に敬意を払う次第であります。そこで今までの間に、専任外相として本委員会に出席されたのは岡崎大臣が初めてであります。そこでわれわれとしまして、日本この引揚げ促進の問題についてお伺いすることは、当初外務大臣より一言お話がありましたように、この委員会において新たなる一つの手があり、あるいは考えられたことがあるならば、それらのものもよく考慮の中に入れて善処するであろうということをお話されたのであります。そこで私としては第一点、引揚げ促進について、第二点、戰犯の問題について、こういつたことをお尋ねしたいのですが、今まで行われました政府引揚げ促進は、国際連合その他第三国を通じての促進運動のみであるのでありますが、しかしその運動も、具体的にどれだけの人が帰つて来た、どれだけの人の生死が判明した、どれだけの生存者が抑留されておるといつた具体的なものは、われわれとしては了承しないのであります。そこでそういつた第三国を通じて、いろいろなるところの促進運動を起すということになれば、この場合、参議院の高良議員ソ連に入国された報道を聞きますときにおいては、向うの土地において戰死者の墓に参つたとか、あるいは戰犯者会つたとか、ないしはハバロスクにおいて某将軍に面会したところが、近く戰犯者との通信も許されるであろう、あるいはまた慰問品の送付も許されるであろう、こういつたことを耳にするのでありますから、少くとも現在の抑留されている三十数万の者の生死不明といつたことは、前から問題になつているのでありまして、ここにおいてそういつた墓、そういつた戰犯というものが確認されている以上、その墓にはどういつた人が埋葬されている、あるいは戰犯者はだれだれであるといつた程度氏名住所等はわかるのではないか、こういうことを私は考えるのであります。それで、そういつた一つのきわめて調査のしやすい範囲内における限度というものをつくつて、もつて第三国を通じ、最も調査のしやすい機関を通じて、こういつた方向に進行することも一つ引揚げ促進の一部分ではないかと考える。こういつた面については、おそらく私は外務大臣としてもよく研究いたしますという御返答があるかと思いますけれども、この辺についてもお伺いを申し上げたいと思うのであります。  さらに第二点の戰犯者の問題につきましては、今玉置委員より御発言があり、これに対して外務大臣としては、講和條約の條項に基いて現在折衝を続けておるから、不日そういつたことはだんだんと明確になるでありましようというお話でありますから、一応わかりましたが、不日という言葉がありましたが、大体最もB、C級のたやすい戰犯人々釈放、あるいは減刑等の見通しについてここでお話ができるかどうか。私ども考えます場合に、講和後において戰争犠牲者としては、抑留者と未帰還者留守家族戰犯の三者が取残されておるということは御承知通りである。そこでこれらの人の救済、あるいは引揚げ促進、ないしは減刑釈放、その他の方法をとつてやることは最も必要なことである、こういつた点についての大臣のお考えをお聞きしたいと思うのであります。  第三点は、いささか話は旧聞とはいいますけれども、本年の二月十三日に、本委員会でもつて北京燕京大学の教授だつた鳥居龍藏博士から参考人としてお話を聞いたのであります。そのときに博士は、中共ないしは海外抑留者引揚げ促進については、今が最も重大なる時期である、こういつた時期をとらえて、本委員会等においては政府と最も協力して活発なる運動を展開すべきだ、こういつた時期をとりはずしたならば、海外抑留者引揚げ促進ということは、おそらく不可能な段階に立ち至るのではないか、こういつたお話があつたのであります。私ども静かにこれを考えてみますときに、ますます悪化と申しますか、ますますおもしろくないところの世界国際情勢の判断のもとに、そういつたお話があつたと思いますが、現在の段階において、きわめて要点的でもいいと思いますから、国際情勢の推移、そういつた危機がどの点まで胚胎しておるか、大臣お話のできる範囲内においてお聞かせを願いたい。以上三点をお尋ね申し上げます。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一の、今のような限られた範囲でもいいから、わかつたものからはつきりさせて行くというお考えは、私もけつこうだとは思つておるのであります。ただ欲を言えば、やはりなるべく広く知りたいと思うものでありますから、ついいろいろの方面に手を出しておるのでありますが、なお生存者——これは戰犯者もありましようし、そうでない人もありまするけれども、この氏名等につきましては、ある程度情報はわれわれも持つておるのでありまして、ただこれを発表することが、現に抑留されているそれらの人々に対して、はたしてどうであろうか。ソ連地区などでは、いずれそういう人々が、自分はここでこういうふうにして生きているのだということの通信方法が、必ずしも合法的な方法でしておらないのでありまして、その径路を追究されたり何かしますと、本人に迷惑がかかるという心配もありますので、これは愼んでおりまするが、ある程度はわかつておるのであります。墓などについても一部わかつておりまして、高良女史が行かれたというのは、おそらくその一部じやないかと思いまするが、この辺、この辺にはこう  いうような墓があるという程度のこともわかつておるのであります。そこで、こういうものでも、主として早く一部ずつでもはつきりさせることは、全部の解決促進することでありまするから、そういう方法けつこうだと私は思つております。ただそれだけわかればいいのだというような印象は与えたくないと思つておりまして。これにつきましても、具体的にどうするかということは、委員諸君の御意見も聞きまして、外務省としてもでき得る限りの手を盡してみたい、こう考えております。  それから第二の戰犯等の問題につきましては、私は先ほども申しましたが、判決が正しくない、間違つてつたということは、これは政府としては決して言うべきことでないし、また私は言わないのでありますが、判決は正しい判決であつたにしろ、すでに長い間服役をしておるのであります。また外地において服役をさせられておる人たちにとつては、本人も困るでありましようが、これらの政府も多額の費用を出して抑留しておるのでありますから、それらの人々日本の内地に持つて来て服役させる、これが外地にある人々については、まず第一の手であろうと考えております。それでその上で、ただいま池見委員お話は、もうすでにその交渉をしておるがというように私にはとれましたが、まだ交渉はいたしておらないのでありまして、われわれは正確な資料を法務府等とともに集めまして、たとえばいつ判決があつていつから服役しておる。その服役の状況はどうであるか、本人考え方はどうであるか。こういうようなことで、これは減刑に値するものもあれば、もう刑期のかなり長い部分を服役しているから、釈放してもよかろう、また釈放ができないにしても、老齢であるから、うちにおいて監禁してもよかろう、いろいろ段階があるだろうと思いますが、そういうような資料を正確に集めて、これはことに独立後われわれが巣鴨を管理しましてからの状況のみならず、今までの連合軍のもとにありましたときの状況もずつと調べまして、的確な資料に基いて関係国話合いを進めようと思つておりまして、これはなかなか時間がかかる問題でありまして、私も早急に調査等もできるものと考えましたけれども、実はまだ時間がとれているような次第であります。しかしながら、できるだけ早く調査を完了しまして、連合国に申し入れたい、こう考えております。その時期については、遺憾ながらまだはつきりここで言明するところまで来ておりません。  それから鳥居博士お話に関連して、国際情勢はどうかという御質問でありますが、私は、国際情勢はそう悪化する方には向いておらないと確信しております。たとえば第三次世界大戰などということをよく言われますけれども、そういうものはないであろう、起りそうもない、こう私自身は考えております。また日米安全保障條約とか、そういう種類のものは、こういう第三次戰争などということがないことをまず建前としてわれわれはつつておりまするし、またこれにつきましては、各方面にいろいろの意見が違つて出ておることは御承知通りでありまするけれども政府はどう考えておるかということを聞かれますれば、私はそういうような心配はまずないであろう、こう申すことができるのであります。従いまして、鳥居博士お話はそうでありましたかもしれませんが、これからだんだん国際情勢が悪化して行つて、もう今やらなければますます困難になると、必ずしも私は考えておらないのであります。朝鮮の休戰問題というものもなかなかむずかしいのでありまして、また冷たい戰争という形はいつまでも残りますから、大戰争にならなくても、各方面で非常に国際的に不安な状況は、今後もしばしば起るであろうと考えておりますが、かりに朝鮮の話等が円満につきますれば、これも一つの糸口にもなろうかと考えておるくらいでありまして、今後とも努力をいたしまするし、また国際情勢によつて、もうますます見込みがなくなるとは、私はとうてい考えられないのでありますから、その意味で、今後ともひとつ御協力を願いまして、これをどんどん促進して行きたい、こう考えております。
  15. 池見茂隆

    池見委員 今の外務大臣お話の最初の問題でありますが、大体政府としても、戰犯者氏名、あるいは先方に埋葬されているところの死者の氏名等も、ある程度まではわかつておるけれども、それを公表することがどうかということは、そのお気持はよくわかるのであります。従つてそういうふうな、わかつておるものをここに発表するものでなくして戰犯者の千何名、あるいはそういつたわかつていることを、第三国を通じて、私は正式にひとつ調査を始めていただきたい、こういつた希望を持つものであります。  最後に、これは援護関係に属しますが、未帰還者留守家族ということを考えました場合においては、先にも申し上げましたように、すでに戰争遺族に対しては援護法の適用が近く発動されることになり、さらに戰没者に対しては、去る五月二日盛大なると申しますか、一応の追悼式が挙行されまして、そのときに総理大臣よりも、いまだ海外に抑留されておるところの三十数万の人々に対しては、まことに気の毒な感じを持つということを弔詞の中で言われておるのであります。従つてどもとしては、こういつた留守家族の慰問と申しますか、あるいはそれらの人々の慰めと申しますか、こういつた大きな戰争犠牲者として残されたるところの人々に対して、国民的な一つの行事をもつてさびしさをねぎらい、一方には海外引揚げ促進の大きな国内的な動向を対外的にも示す、これはいろいろと目下私どもも研究はいたしておりますが、政府主催ということになれば非常に困難という点もありますけれども、こういつた行事を近き将来において挙行するという点について、岡崎国務大臣はどういうお考えをお持ちになつておるか、お伺いをしたいと思います。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私どもも、戰死者の遺家族等に比べまして、未帰還者留守家族人々が決していい條件に立つておらない、むしろ場合によつてはよつぽど気の毒な状況の方もたくさんある、こう考えておりまして、何とかこれについては援助といいますか、何とかしなければならぬという気持は持つております。この点につきましては、私自身も厚生大臣等と話合いをしたこともしばしばあるのであります。何とかそのうちに考えて、具体的にも——実際政府が気の毒に思つておるということを口で言うだけではなくして、事実にこれを現わすようなことをしてみたいと実は考えておるのでありますが、まだ何も決定していないものを、むやみに報告するのもいかがかと思いまして、今日まで何もまだ言つておらないのであります。そこで今お話の、何か留守家族を慰めるための国民的行事、これは考えようによつてけつこうだと思いますが、私ども立場からいいますと、国民の間に起りました輿論をできるだけ国際的に反映したいという気持が強いのでありまして、これを最近の悪い傾向ではありまするが、政府がこの中に入りまして何かしますと、いかにも官製の輿論というふうにとられまして、せつかくのものが、ちよつと政府が入つたばかりに、効果がなくなるということもしばしばあるのであります。これはドイツのナチ時代にも盛んに行われました。そのあとで、ソ連でもそういう傾向が見える、方々でそういう傾向が見えるのでありますから、自由主義国家群の間では、そういう気持を非常に反駁するような傾向があるのであります。そこで政府としては、そういうことに先立ちになつてやることはできるだけ愼みたい。こう考えております。またこれにつきましての費用等も、これはある程度かかることは当然と思いますが、政府としては、実はもし多少でも金に余裕があれば、何とか具体的に留守家族の援助になるような方法にもこれを使いたいとも考えておるのでありまして、でき得れば、そういうものは反対ではありませんけれども国民の間でやつてもらつて、われわれはその状況をよく世界各国に伝えるというふうにしたいと考えているような次第でありまして、この留守家族をどういうふうに取扱うかということは、なかなか困難な問題で、政府としても、実は前々から考えておることでありますので、これにつきましても、この委員会等の御意見は非常に参考になるわけでありまして、腹蔵なく御意見を聞きたい。こういう問題は、政府だけできめてやつたからといつて、必ずしも正鵠を得るかどうか疑わしいのでありまして、引揚げ問題について多年心配しておられる委員諸君の御意向等は、最も重要なる資料になるわけでありますから、腹蔵なく御意見は伺いたい、こう考えております。但し政府でできないことはできない、またすべからざることはすべからざることとはつきり申しまして、そうして協力して、国民の方でやつてもらうものはこう、政府の方はこうと、だんだん具体的にして行きたい、こう考えております。
  17. 庄司一郎

    ○庄司委員 きわめて簡單に外務大臣にお伺いしたい。  最初の一点は、約一月ほど前でありますが、本委員会において、本員はあなたの補佐者である石原政務次官に対して——当時ちようど読売新聞にたいへん大きく、五段抜きくらいの表題で、インドのネール首相のお妹さんが、中共、毛澤東のところに大使として近日派遣される。その際、これはインドの現地において読売新聞の特派員が、相当中共政府地域内に抑留されておる同胞が多いのであるが、これを早く日本帰還せしめたい、こういう話合いから、だんだん話が進んで、ネール女史におかれては、非常な御同情の言葉があつた。すなわちできるだけそういう問題については毛澤東氏と懇談をして、日本人が抑留を解放されて帰ることができるように語つてあげましよう、こういう意味の新聞記事でありました。そこで私は石原さんに、かような問題をすぐ利用して、できるだけの手を打つてほしいということを申し上げましたけれども、それを了承された。その後約二、三日後の当委員会において、政務次官より私に、自発的に御答弁があつたのであります。それは、今朝偶然にインドに出発する外務省の者があつたので、関係書類等を携行させ、ネール女史に懇請をする、そういう段取りをとりましたと、かような御答弁でありましたので、本委員会の一員としての私の発言並びに献策が、ただちに外務省において取上げられて、抑留者救出のために、ネール女史の手を通して何らかの手が進められるならば、たいへんうれしいことである、かように考えたのでありますが、その後これらの問題について、外務省に入つて来た何らかの経過、あるいは結果的の情報がございませんでしようか。またなければないで余儀ないことでありますが、何らかの情報がありまするならばお伝えを願いたいと思います。これが第一点。  第二点は、ただいま池見委員の述べられました最後の要請的、希望的な問題、なすわち抑留同胞救出国民大会というような民間団体の輿論喚発のために、また反面においては、留守家族の精神的な慰安並びに将来に対して希望と光を与え得る、さような大会を持ちたいというような御発言に対する外務大臣のただいまのお答えを、私は了承いたしました。けれども、この大会行事の主催者は同胞救出議員連盟、この会長は歴代の厚生大臣であります。もう一つの共催者団体である海外抑留同胞救出国民運動総本部の会長は歴代の衆議院の議長である、しかして、ある特定政党を除く以外の各党各派の者がこの会員となつており、あるいは役員が出ておりまして、この二つの団体とも、ただいま政府に協力しながら、強く抑留同胞即時帰還運動第一線に立つておる団体なのであります。従つてこの二つの団体が国民の輿論を喚起し、あるいは世界万国の社会正義、ヒユーマニテイに訴えるために催したいというこれらに対しては、政府としても相当の御援助があつてしかるべきものであると考えておるのであります。過般の当委員会において、石原政務次官から、この問題に関する限り、次官会議においても満場一致、でき得るだけの援助を惜しみなく与えるようにと、かような了解に相なつたからという朗報を、われわれお伝えをいただいたのであります。しかるにただいま外務大臣は、あなたのお考えの御趣旨はよくわかるのでありますが、政府が経費の一部なんかを援助すると、官製的な国民大会のような誤解をおそれると言う。それはごもつともであり、その通りであります。けれどもこれは政府が当面出し得べき範囲内においての宣伝であるとか、あるいは留守家族を慰安するとかいうことであつて、何も私は歌舞伎を見せてやれとか、あるいは帝国劇場に招待せよとか言うのではありませんが、ともかくも何らかの形で、政府留守家族を慰安し、激励するという義務を持つておると考えるのであります。でありますから、御答弁の御趣旨はよくわかるのであるが、木で鼻をくくつたようなあいさつではなく、すでに次官会議において多少なりとも物心両面より応援するということが決定済みでありますから、上官であるあなたにも、石原政務次官よりお伝えがあつたと私は考えるのであります。どうかひとつ次官会議においてきめられたことを、大臣もやはり尊重していただいて、いささかもじやまなどをしていただいては迷惑千万でありますので、どうかそれはそれとして、むしろ大臣は知らぬ顔で、でき得るだけの物心両面の御援助があつてしかるべきものではないか、かように私は考えるのであります。これはかえつてあなたの御答弁ちようだいしておかない方がいいかもわかりません。しかるべく万事オーケーにお願い申し上げたい、こういうのであります。  第三の問題は、ただいま池見委員よりも懇請的な要望的な御発言があり、それはすでに御答弁があつたので、蛇足を加えるようでありますが、戰犯者の問題であります。講和発効を記念として、刑余者、その他まだ刑の未確定な者に至るまで百二十八万人の、過去において誤まつた、あるいは罪とがのあつた多くの諸君を、恩赦法によつて許されたのであります。戰犯者はある意味においては、明治時代の用語でいえば国事犯である、国事犯は一番に恩赦を受ける資格が昔はあつたのでございますが、これは国際的な関係であり、外国の裁判の関係であるから、もとより国内法によつてつてなことはできますまいけれども世界各国とも恩赦法があり、監獄法あるいは刑事訴訟法その他の法律が具備されて、処刑の三分の一を越えた者は仮釈放、あるいは減刑されるような法律がありますがゆえに、ただいま国内の巣鴨あたりに移管されております約三千名近い受刑者も、またわれわれの同胞でありますので、過去において外地でどういう罪とががあつたかわかりませんけれども、すみやかに講和発効の喜ばしい記念として、その罪の刑期の一部を許していただかなければならぬ。その意味において、事務的のことがなかなかはかばかしくいかぬという大臣のお言葉であるが、全力をあげて、フル・スピードで調査していただいて、そうして連合国側によくあなたから御懇請を賜わりまして、平和條約を記念して、終戰後初めての恩赦法の施行に際し、やはりこの受刑者も遅ればせながら減刑あるいは仮釈放等の恩典に浴し得るよう、御奮闘を願いたいと思うのであります。実は私は、恩赦法制定の場合の特別委員長でありました。そういう意味において特にこの恩赦法の施行に万遺憾なきを期したいと念願しておる一人でありますので、事務的の調査関係は法務府などとよく御協力なさつて、全力をあげてすみやかに戰犯受刑者諸君を、やはり今回の恩赦法のわく内において、世界列国の国際連合関係の御了解を得られることに、あなたの勇敢な御奮闘をお願いしたいと思うのであります。これらの点について、再び御所見が承れれば、まことに幸甚だと思います。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 初めの読売新聞の記事等の問題につきましては、どうも私の想像では、新聞の伝えるところが、必ずしもきちんと御本人の意向をそのまま伝えたのではなかつたのじやないかという気がいたすのであります。これは事が対外関係でありますし、相手の御婦人の立場もありましようから、ここでどういうふうということは、申し上げるのを差控えたいと思いますが、われわれの方もあの記事等を信用しまして、いろいろ材料も整えて、ぜひこれはお願いしたいと思つてつたのでありまするが、先方はまだそういうことを考えておられたのじやないような印象を受けておりますので、まだ時期が早いのじやないかと思われるのであります。そのままに話合いはいたしてみたのでありますが、実際の状況は、あまり進展せずに今日に来ておるのであります。しかし今後とも、こういう方面で何かまたつてがありますれば努力したいと思いまして各方面——方面というのは、日本在外公館のあるところでありますが、各方面資料を送りまして、何かいいきつかけがあつたならば、これをこういうふうに促進するようにということでやつております。遺憾ながらインドの問題につきましては、まだ進展をいたしておらないのであります。しかし話合いはいたしてみたのであります。  それから抑留同胞の関係の国民大会のことでありますが、私も決してそんなやぼなことを言つておるわけではないのでありますが、官製の輿論であるという印象を受けることは、ぜひとも愼しまなければならない。その方を強調しただけでありまして、決して政府がこれに冷淡であるわけでも何でもないのであります。その点はもう十分御了解を願つて、またそうお考えになつていただいてちつともさしつかえないと思います。ただ私の立場からいいますると、事実は別として、あらゆる方法で、これは官製のものじやないのだということを外国に強く印象づけなければならぬ、こういう立場に立つておりますから、かりに次官会議意見のような事実がありましても、これはただ事実であつて、外国にはもう国民の自発的な意思で出て来ておるのだということを強く印象づける必要がある、こういうことを申し上げているだけであります。決してやぼは申しませんから、御安心を願います。  戰犯者に対する調査等につきましては、もちろんこれはできるだけ急いでやりまして、できるだけ御期待に沿うように努力したいと考えております。
  19. 高田富之

    ○高田(富)委員 簡單にお伺いしたいのでありますが、いよいよ政府独立したという建前に立つて、外交権を回復したいということでありますので、この際引揚げ問題につきましては、今までのようにややこしい、わけのわからないような手続等をとらないで、單刀直入に、政府みずからが直接ソ同盟政府並びに中華人民共和国政府に対しまして、この抑留者状況等について、あらためてあなたの方で持つておる正確な資料を提示し、またあちら側の言うところをよく聞いて、送還計画につきまして、特にソビエトの方では、戰犯者以外は全部帰したということを正式に言つておるわけでありますが、これについての疑義をただすために、責任をもつてソ同盟政府交渉されることが私はいいと思います。中華人民共和国におきましては、向うにおるということは、はつきり鳥居博士も言われておるのでありますから、この際中華人民共和国政府と直接交渉されまして、どういうふうな手続で、どういう費用の分担で、どういうような径路で計画的に送還するならする、また残留希望者については、その希望が確実であるということを確認した者について残留させる措置を、至急に日本政府独自の立場においてとられるべきであると思う。日本独立したのでありますから、そういうことをしても、アメリカ政府が文句を言うべき筋合いのものではありませんし、また文句を言うどころか、むしろ積極的にそういうことを推進する立場にあるだろうと思います。従つてどこへも遠慮もいらないし、どこでも賛成してくれる正当な行為でありますから、何の遠慮もなく、堂々とソ同盟並びに中華人民共和国政府に対しましても、直接このために政府が責任をもつて交渉されるのが一番いいと思いますが、これについてどうお考えになりますか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 しきりに独立とか遠慮とかいうことを言われましたが、遠慮なんかは一向いたしておりません。独立したのはあたりまえのことでありまして、われわれは自分考えで今後の処置はいたすのであります。ただ最近のいろいろの状況を見ますと、中共にしてもソ連政府にしても、何か経済問題とか、あるいは会議であるとかいうことを理由として、日本政府が直接中共政府なりソ連政府なりに交渉することを、いかにも慫慂するような傾向が強いのでありまして、私はこれは一種の落し穴であるという心配もあると思いまして、愼重に考えております。しかしながら今高田君の言われましたように、なるほどソ連政府はもう帰すべきものはみな帰してあると言つておりますが、中共側はそうも言つておりません。しかも現にたくさんおる。これをそのまま抑留しておくということは、国際法なり国際観念からいいましても、まつたく間違つた行為であることは申すまでもないのであります。中共側としては、現にそこにはつきりおることはわかつておるのでありますから、これを至急帰すべき方法を講ずるのは当然であります。その上で金が足りないから日本政府でその費用を持つとか、あるいは船を出してくれということなら、われわれも喜んで船を提供し、費用も持とうと考えております。その方法はいくらでもあるのでありまして、北京代表者を置いておる国もありますし、国連に申し入れてもよろしい。いやしくも中共政府の方で抑留者を帰そうという気さえあれば、いかようにでも方法はあると私は確信しております。しかしながらわれわれの方も、本来ならば鼓を鳴らしてこれらの政府の態度を非難すべき立場にあるわけでありまして、堂々とそういう点で強く出るのも当然だと考えておりますけれども、現にそこにおる人がたくさんありまして、これらの人々が不当に虐待をこうむる等のことがないようにと思いまして、実はがまんして、といつては語弊があるかもしれませんが、強く出るべきところもまだ躊躇して、強く出ておらないのでありまして、交渉というよりは要求すべきものである、こうも考えております。ただ直接これらの政府交渉するかどうかということにつきましては、いろいろ考慮すべきことがある、というのは、いろいろの政治的の意図から、何とかそういう直接交渉の方に持つて行こうという考えがこれらの政府にあるようにも考えられまして、またその理由もあるように思いますので、この点につきましては、方法はいろいろ考えなければならぬが、建前からいえば、われわれは交渉でなくして、要求すべき十分なる権利があると考えておる次第であります。
  21. 高田富之

    ○高田(富)委員 要求する十分の権利があるのでありましたら、独立国になつたのでありますから、この問題は人道上の問題であるということで、今まで国連等にも持ち出しておるのでありますから、そういう建前からすれば、何らいろいろ付随的なことにまで気をまわして心配される必要はないと私は思う。堂々と要求すべきであると思います。要求といいましても、必ずしも要求はけんかではないのでありますから、正当な権利であるとお考えならば、そのことを今後の友好関係という見地から、礼を盡して要求すべきものを要求する、即刻当然日本外務大臣として独立国の外務大臣としてやるべきであると思います。それに対しまして、何か落し穴があるような気がするという今のお言葉でありましたが、これは私どもには理解できません。かりに、それが何らか他のものに利用されやしないかという懸念があるといたしましても、それは毅然たる日本政府引揚げ問題に対する人道的な立場からの折衝であるということならば、何も恐れる必要はないと私は思う。落し穴であるというようなことを心配されて、そのために、当然の要求であるといいながら、今もつてそれをやらないのでは、国民を納得せしめることはできまいと思う。その落し穴云々ということにひつかかつて、今のあなたの御答弁もなお釈然としないものがありますので、そういうことを実際やれなかつたとすれば、やれない理由はどこにあるかということを、重ねて明らかにしていただきたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 共産党の高田君からの御意見は、はなはだ有益な参考として考えておりますが、中共政府などとは、表面的に何ら交渉がないのでありまして、従来の外交的の観念からいいますれば、交渉のない政府交渉することはあり得ないのであります。そういうときは第三国を通じてやるのでありますが、われわれ日本政府として今の高田君のお話ももつともでありますから、声を大にし、鼓を鳴らして、こういう問題に対する政府の態度を明らかにするということは、一つ方法だと思います。それらの点も十分考慮して、今後とも善処したいと考えております。
  23. 高田富之

    ○高田(富)委員 そうしますと、向う政府政府として認めないのだから、政府政府として交渉するということはちよつとぐあいが悪い、今度はこういう御答弁になつたのでありますが、この問題は、またいろいろ外務委員会等の問題になると思うので、私はこれ以上言いません。しかしこういうことはどうですか、かりに、政府政府ではどうもぐあいが悪いということを一応是認すると仮定いたしますと、その場合に向う側としましては、現在中共あたりでは、非常に日本との国交を回復するために努力しておることは、いろいろなことからうかがわれるわけであります。ことに今度は平和会議をやるとか、いろいろなことで招請状もどんどん出して乘る。メーデーをやるからといつては招請状を出して来る。こういう関係にあるのでありますから、幸いこの機会に日本における引揚げ関係の団体、民間代表者を全部中共政府の方に派遣いたしまして、そうして民間外交という形でこの問題についての折衝をやらしたらどうですか、そのためにあなたはひとつ骨を折つてみるというお考えはございませんか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もし中共ソ連調査団派遣に同意するならば、国際連合特別委員会調査団は必ず行つてくれると思います。これが最も公平なる委員会でありまして、また世界各国代表者を含めておるのでありますから、これを受入れられることが最も近道であろうと考えております。その方面努力をするということはやぶさかでないのであります。
  25. 中山マサ

    中山委員 私は先ほど池見委員から御質問の出ましたことに関連してお尋ねしたいと思うのでありますが、池見委員がおつしやいました通りに、高良とみ子女史がソ連に参られまして、そうして墓場へ行つてお花をたむけたという記事を見まして、これが事実であるとすれば、またその墓場にはずつと番号が付してあつたという記事もあつたと私は記憶いたしておりますが、もしこれが事実といたしますれば、タス通信によりまして発表されましたわれわれの同胞に関するあの報告なるものが、根底からくつがえされたと私は考えるのであります。私がいつもタス通信を信用することができない最大の原因は、わが同胞の死亡した者の数が一人もなかつたということであると、私はずつと叫び続けて来ておりますが、このいわゆるお墓訪問によりまして、確かにソ連にはわが同胞で死んだ人があつてソ連の手によりまして埋められて、番号まで付してあるということになりますれば、私はソ連の中のこの死亡者がだれだれである、何人であるということがなぜ発表されないかということが、私の頭に浮ぶのでございます。外務大臣にお伺いしたいことは、この高良女史ソ連入りを契機といたしまして、ソ連から死亡者の数が外務省報告されたかどうかということが一点でございます。もし報告がなければ、これに対して国連を通じてでもよし、三人委員会を通じてでもよし、このはつきりしました事実に基いてこれを御要求になりましたかどうか、また御要求になつておりませんならば、最も早い機会に、この事実に照して御要求になる御意思があるかどうかということを伺いたいと思います。  またその次は戰犯の問題でございます。同僚議員の方からいろいろお話が出ておりますが、講和條約の発効を機会にいたしまして、国内のいろいろな犯罪者に対しましては減刑があり、大赦があり、恩赦がありました、さつきも庄司議員からお話がありましたように、いわゆる国事犯というか、戰争があつたればこそこういう犯人も出たのでございます。国は講和によつて過去のああいうことを許されたのに、末端の戰犯者がまだ許されないということは、理論上どうもおかしい、そこで今の時代になりまして、連合国が過去の時代においてやつて来たことを批判してもいい時代になつて参りましたから、これはまたそういう時代でないときから私は申しておつたことでございますが、戰争をして、いわゆる勝つた国が負けた国を裁くということが第一間違いである。これは私はいつも主張しております。第三国のスイスとか、戰争に関係がない国が最も公平なる気持において裁判をしてくれたのならば、私は納得ができますけれども、やはりいくら公明正大な考えを持つてやりましても、相手国であつた国の人は、どうしても私は憎しみがかかるだろうと思いますので、その点について、最も公平なる裁判とは私はいわれないと理念的に考えておるのでございます。そういうわけでございますので、いわゆる平和條約によりますところの日本政府の勧告というあれの中には、関係各国に対しまして大赦をしてもらうだけの権限があるのかないのか、伺いたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一の御質問でありますが、これは墓があるとかないとかいう問題には関係ないのでありまして、人間が世の中に出て来てから何年になりましたか知りませんが、死亡率というものはあるのであります。日本人であるならば、千人のうちで少くとも十人余り、多い場合には十六、七人というものが普通の状況であつて、毎年死んでおるのであります。従つてソ連に連れて行かれました捕虜が三十何方とおりますれば、いくら極楽のような生活をしましても、千人に対して十人や十二、三人は死んでおるわけであります。これは死なないでずつと永久に生きているなんということは、生理的に不可能なことであります。従つて六年なり七年なりたちますれば、かりに千人に十人とすれば、三十七万おりますればそれの三百七十倍、つまり三千七百人、六年たてばそれの六倍、このくらいのものは死んでなければならぬわけであります。それなのに一人も死なないということは、これはいくらソ連でも、現にソ連の人もどんどん死んでおるのですから、これはもうあり得ないことであります。従つて今さら墓を見て驚くことではないのであります。墓をつくつてつてくれたということの事実はけつこうなことだと思います。ただそこらへほうりつぱなしでないということであるならば、けつこうでありますが、これも私どもは前から情報を受けて、墓のあることも知つておりますけれども、なくなつた人が全部そういう墓に収容されておるか、あるいは人に見せる場合の墓だけができておるのか、この点はどうもはつきりいたしません。しかしながら、この墓があるという報道等を見て、あわててソ連に要求するとか何とかいうことでなくして、理論的に、また生理的に当然死んでいる人がなければならぬという建前で、従来からこれの氏名等を要求しておるのであります。今後ともこれはやるつもりでおりますけれども、今までのところは、連合軍最高司令官を通じてやりましたことにも、またその他の機関を通じての要求に対しても、ソ連側からは何とも返事が来ておらないというのが実情であります。  それから戰犯者の問題でありますが、これは大赦というようなことはできておりません。今国事犯というようなお話がありましたが、これはもし国事犯とすれば、いわゆるA級の戰争犯罪人と称せられる者でありまして、BとかCとかのクラスに属する者は、たとえば捕虜の虐待であるとかいうような、いろいろな種類がありますが、これはむしろ国事犯と称すべきものではないと私ども考えております。しかしいずれにしましても、中山さんのお話のように、戰争裁判というものが正しいとか、正しくないとかいう御議論は、これはあると思いますけれども、現実に戰争裁判は行われたのでありまして、またこの戰争裁判の結果につきましては、サンフランシスコの平和條約で、連合国が行つた裁判の犯人についてはこういうふうにする、また各国が個々に行つた裁判の者についてはこういうふうにするという規定がありますので、政府としては、この規定に基いて減刑とか赦免とかいう方法をすみやかに講ずる、これを大赦と称するかどうかは別問題でありますが、條約にも規定がありますから、この規定に基いて、さしあたりは仕事を進めて行く、こういうつもりでおるわけであります。
  27. 中山マサ

    中山委員 ただいま外務大臣お話で、いわゆる人間が自然死をする率が毎年これこれであるのだから、死んだ者がおることは当然のことだ、私も舞鶴で出会いました人たちから墓の写真を見せてもらいましたから、当然死んだ人があるということは承知をいたしておりますけれども、これをいくら向うに申しましても、そんなものはないと言われれば、これは水かけ論に終つてしまうというので、今日まで叫び続けては来ましたけれども、しかしソ連で、いわゆる向うが承認した人間が見たのですから、いわゆる脱法行為でもつて——市井の人であるならば別といたしまして、立法の府であるところの国会議員ともいわれるような人が、国策を無視して入ソしたという、こういう人を向うが入れた、その人を認めて見せたのですから、向うも私は水かけ論でなしに、これは承認することである、ですからその承認したお墓だけでも知らせてくれという、私はこれは裁判でいえば、いわゆる物的証拠が出たわけですから、少くもこれをソ連側が無視して、いつまでもタス通信が発表する通りであるということは、もし常識があり、頭脳のある国民なら言われないと思います。また私たちもそう言わせられない立場に立つて来たと思いますので、この物的証拠をつきつけて、今までのように水かけ論的な、一年に何人か死亡率があることはわかつているのだからというような抽象的のことでなしに、この現実をとらえて交渉していただきたいという気持で、私は大臣に申し上げたのであります。どうぞ、こういう証拠があるからぜひ死亡者の数を発表してもらいたいということを強く御要求願いたいと思います。  そしてもう一つは、いわゆる戰死した人たちは、近く発効いたします援護法によつて何とかしてもらえます。私どもよく遺家族の人に言われることでございますが、死んだとなつたら、その事実の前にはもうどうすることもできないから、あきらめます。しかし死んでいるのか、どうしているのか、絶えず不安な気持で過して行くその気持がたまりません。これは確かに人間性の一場面であろうと私は思います。死んだ者を幾ら追つてもしようがありませんから、新しい生活を追うて行けますけれども、今にも帰つて来るかと思つて——大臣も御存じの通りに、死んだものと思つて結婚したところにひよつこりと帰つて来た例はいくらでもあるのでございますから、こういう不安な状態に置くということは、まことに私は不親切なことであると思いますから、死んだ人に対する援護もございましたが、生きている犠牲者に対して何とか——国民大会をやつてちよつと慰めるというようなことでなしに、もつと実質的に何とかしていただくことができないものか、私は伺いたいと思います。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 死者の問題につきましては、さらによく研究しまして、適切な方法をとりたいと考えます。それから遺族等の援護と申しますか、この点については、われわれも厚生大臣と協議しまして、いろいろ具体的に計画、考え等をまとめつつあるのであります。予算の関係もあり、いろいろのこともありますので、あらかじめ大きなことを言つて、あとでできないような場合もかえつて効果になりますので、今後ともよく研究をいたしまして、各方面の賛成が得られるような案ができますまで、ひとつお待ちを願いたいと思います。
  29. 中山マサ

    中山委員 いわゆる援護費ということがありましたが、せめて慰藉料程度のものはぜひ——大蔵大臣は補正予算などはしないというような御言明もあつたようでございますけれども、いろいろな状況から見ておりますと、それもしなければならないような立場に立ち至るかもしれないという懸念もございますので、それまでに何とかお考えをおまとめくださいまして、こういう気の毒な人たちに、慰藉料の意味ででも何とかしていただきたいと私は思います。どうぞよろしく……。
  30. 小平久雄

    小平委員長 堤委員——委員に申し上げますが、大臣との約束の時間が大分経過しておりますので、簡明に一問だけお願いします。     〔「おそかつた」と呼ぶ者あり〕
  31. 堤ツルヨ

    ○堤委員 おそかつたといわれますが、私は実は厚生委員会と二つを兼ねているので、従つておそくなつたのでございますから、最後にわずかな時間をいただきまして、初めての外務大臣に対する御質疑でございますから、ひとつお願いをしておきたいのであります。  吉田内閣の外交政策と未復員の引揚げ促進、この問題につきましては、再三この委員会で論議されております。アメリカ一辺倒の吉田内閣が、このままで中共ソ連というものをさらに二重、三重の鉄のカーテンの向うに押しやつて引揚げ促進をお考えになるならば、とうてい永久にこの人たちは帰つて来られないのではないかという懸念を私は持つております。今までは首相が御兼任でありましたところの外務大臣に、非常に腕達者といわれる岡崎大臣が御就任になつて心強く思つておりますので、お手並を拝見いたしたいと思つているのでありますが、外交政策は、引揚げ未復員の方々のためにも非常に大切な問題でありますから、どうぞ愼重に願いたいのであります。  それからこの委員会にあなたの代理で出ておいでになつた政務次官は、しばしば、今後の引揚げ促進第三国の手を借りて促進するということをお答えになつております。しかし第三国の力を借りて促進するということは、今ソ連代表部日本におりますが、ところがこの問題に対してスエーデンの力をお借りになられようとしたときに、われわれは日本の利益代表者でないというのであつさり断わられて、何か黒星のようでありまして、こういう式に引揚げの問題も行かれはしないか、こういう懸念を私は非常に持ちますので、第三国の力を借りて引揚げ促進をするという政府の今までのお考えはさらに御検討を願いたい。これが第三番目でございます。  もう一つ戰犯の問題でございます。大臣も、日曜日のラジオ東京の放送をお聞きになつたと思いますが、二時から、まだ帰らぬ人々のためにというところの放送をいたしました。そうして死刑囚の方々の最後の声などもあの中に放送されましたが、実際残つておられる家族方々立場に私自身がなつてみますれば、まつたく気も狂わんばかりの立場であろうと私は思うのであります。あの中に注目すべきは、対日感情が非常に悪い、従つて戰犯の問題も、いろいろな手を盡してみても非常に好転しないのだ、その話の中に、日本人個人、一将兵個人を罰するのでなくして、あの侵略をやつたところの日本民族というものを裁判するのだという気持で、その個人に事実的な根拠があろうとなかろうと、とにかく日本民族というものに対してフイリピン人は非常な憤慨を覚えて、それがどの人であろうと、個人を裁判するのでなしに、日本民族を裁判する、従つてちようどそれにひつかかつた人たちは、これは日本民族の犠牲になつた人たちであるという見方を皆しておつて、ラジオ放送にもこれを論じておりました。従つて日本民族の犠牲において戰犯になり死刑囚になつた人たちに対しては、日本の国がこの人たちに対して何とかしなければならない、しかし日本政府がこの考えをもつてつてくれないならば、民間運動ででも日本民族の力でこれを何とかしなければならないということを言つておりました。これは理路整然としたりくつであろうと思います。私どもあの人々の犠牲によつて講和発効の喜びを迎えております今日、なお戰犯として呻吟されます方々の問題は、私たち愼重にお互いに反省をいたしまして、なお今後減刑であるとか、内地服役とかいう、この人たちに対する具体的な手が打たれるように考えて行かなければならないと存じます。どうぞこの人たちにこうした犠牲を背負わせております日本の国の責任において、政府が今後愼重に、この問題を比国の政府と御交渉になりまして、一日も早くこの人たちが救われますように、外務大臣の力で何とかしていただきたいということを、私は第三番目にお願いしておきたいと思います。  なお幾多の問題を質問申し上げたり希望したりしたいことがございますけれども委員長は非常にお急ぎのようでございますから、私は非常に残念でございますけれども、今日はこれで私の意見をとどめておきます。従つてまた外務大臣は、この委員会には今後ともお出ましになりまして、この委員会の声を聞き、そして外務大臣としての職責を果されんことを切にお願いしておきたいと思います。委員長は、次会からも外務大臣が御出席になりますように、今までのように政務次官ばかりでないようにおとりはからいを願うことを希望しておきます。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一に、あなたは吉田内閣の外交政策をアメリカ一辺倒という非常に簡單な言葉でお片づけになりましたが、外交政策というものは、そんなものではないのであります。これは私から御説明するまでもないと思います。あまりものを非常に單純にお考えになると、間違いが起る。それから第三国に頼むとか頼まぬとかいう問題も、実は堤さんが来られる前に盛んにいろいろ議論がありまして、私から詳細にお答えをいたしておるのであります。ただ第三番目のフイリピンお話でありますが、私はフイリピン裁判所が、本人に罪があるなしにかかわらず、日本民族を罰するのだといつて理由なしに罰したとは私は考えておりません。フイリピン裁判所は、フイリピンの法規に基きまして、証人も喚問し弁護士もつけまして、フイリピンとしてはでき得る限りの正当なる裁判を行つた結果だと思います。他国の裁判に対しまして、その容疑者が全然理由がないのに、日本民族を罰する意味で、とばつちりでもつて死刑を受けたり重罰を受けたりしておるなどと政府考えるべきものでもありませんし、また事実私はそうは考えておりま  せん。しかしながら、フイリピンにおります戰争犯罪者として刑を受けている人たちをいかにして日本内地に送還して来るか、あるいはまたこれらの人人の減刑をどういうふうにはかろうかということは、先ほどより各委員からお話がありまして、これまた詳細にお答えしておりますので、この点は速記録等をごらんになれば、私の考えはつきりわかると思います。ただ重ねて申しまするが、今あなたのおつしやつたような、フイリピン戰犯者は、日本民族の犠牲となつてやられておるという点だけは、私は遺憾ながらお認めするわけに行かないのであります。これは他国の政府裁判所に対する非常な侮辱であります。そういう意見政府としてはとうてい持てないことだけは御了承願いたいと思います。
  33. 小平久雄

    小平委員長 これにて海外胞引揚に関する件について政府当局に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  34. 小平久雄

    小平委員長 次に引揚援護に関する行政機構改革について、政府より説明聽取いたします。松野厚生政務次官
  35. 松野頼三

    ○松野(頼)政府委員 引揚援護庁の行政機構改革につきましては、先日内閣委員会に提案いたしましたごとく、厚生省の全般的な行政機構改革の一部として引揚援護庁を廃止して引揚援護局にすることになつております。引揚援護庁は、御承知のごとく相当多数な引揚者を対象として現在まで業務をやつて参りましたが、未復員者も非常に数が減りまして、予算的にも縮小されております。と申しましても、引揚援護庁自身の業務において、それではどれほど復員者の数に応じて業務が縮小したかと申しますと、そう簡單に参りませんので、かえつて未復員者の調査とか、あるいは復員者に説明を求めまして現地状況を聞くとかいう、新しい困難な仕事がございまするので、未復員者が減つたから引揚げ業務は減つたという数字的な業務の性質ではありません。しかし今度外局をすべて内局として、行政機構の簡素化をはかるという閣議決定に応じて、厚生省としては唯一の外局である引揚援護庁を引揚援護局にするという構想になつたのであります。
  36. 小平久雄

    小平委員長 本件に関して御質疑はありますか。
  37. 川端佳夫

    ○川端委員 今回の行政機構改革の問題にあたりまして、援護庁が局になつて、省の枢要部に入るというこの機会に、はつきりと政府当局に伺つておきたいと思うのは、先ほど政務次官のお話では、調査の事項がだんだんふえるかもわからぬ趨勢であるということでございましたが、それらもございましようが、むしろ援護の関係、あるいは強力な善後措置の問題がこれから大きくなつて行かなければならぬと思う。従来援護庁というのは、一つ独立官庁のような形をとつて、強力な態勢を整えておるかのように見えておりました。今まで幾多の庁がございますが、これは形の上では、次官を通じないで、長官が直接大臣につながるというようなかつこうをいたしておるので、見かけは非常に強い体裁を持つておりましたけれども、その間に意思の疎通が欠ける場合が往々実際面においてあつたと思うのであります。今度の機構改革で局になつて、次官を通じて大臣に及ぶというような形に世間ではとられておりますが、これによつて引揚げの問題についても、省内で各局が十分に相談の上、予算的な問題についてもここに重点を注がなければならぬというようなことが、省をあげて理解できるであろう、こういうような意味から私は、経費の節減ということも財政的には大きなねらいでもございましようが、この善後措置の問題を、省内の有機的な連絡において強力に推進をしてもらえると期待いたしておりますが、この点についての所信を政務次官から伺つておきたいと思います。
  38. 松野頼三

    ○松野(頼)政府委員 川端さんも御承知のごとく、吉田内閣は引揚げ問題については多年努力いたしまして今度の遺家族援護法におきましても、多年の懸案のものが初めてこの内閣においてできたのでありまして、実に非常に画期的業務をなしております。引揚援護庁も相当な業績を上げておりまして、ただいま千七百七十九人の定員で現在の引揚げ業務を苦しいながらやつて参りました。今後引揚援護庁の機構改革の問題で一番大きな問題は、新しく遺家族援護法が四月末に通過いたしまして——実施は四月一日ですが、一年間に、来年の三月三十一日までの間にやれという期限付の法律が通過いたしました。この法案の審議の過程において、政府原案から考えますと、相当大幅な修正がございまして、事務的な面におきまして一番大きな問題は、遺家族の認定という問題が新しく加わつたことであります。これは戸籍上あるいは実情に沿つて調査いたすのでありますが、ただいま調査資料が印刷されて、やつと配付になるかならないかという現状であります。これが地方に配付されまして、市町村を通じ、あるいは地方の世話課を通じて、一応本人からの申告によつて調査するのでありますが、申告はもちろん個人の申告ですから、これを調査することは容易じやない。現在も実は臨時の作業員を五百人雇い入れまして、カードの整理やら事務的な調査を、法案の議会通過後やつております。これほど大きな業務が実は引揚援護庁にかかつてつております。それではなぜ内局にしたか、内局、外局が仕事の実質上においてはたしてどう違うかということは、これはいろいろな観点がございましようが、内局案として提案しまして、それでやれるかやれないかといわれますと、これは厚生省としても、また現在の各省の関係におきましても、おそらく最大な重荷を背負つた援護庁が内局でやれるかやれないかということは、これはもちろん非常に苦しいことなんです。その苦しい中において、内閣の使命による行政機構改革に応じて、この際涙をのんで、苦労の上に苦労を重ねてやつて行こうという悲壯な改正案を実は出しておるのであります。やれるかやれないかは今後の結論において見ていただきませんと——私たちは一生懸命やろうと思つております。各課員ももちろん同じ気持だろう。またこれは厚生省としてももちろん問題になつた点であります。大臣が閣議においていかなる発言をされたか存じませんが、もちろんこの法案を勘案された上の御決定だと思いますので、私どもは内閣の決定の線に沿つて、援護庁を内局にするという案にただ乘つたというだけであります。
  39. 小平久雄

    小平委員長 本件に関する質疑はこれにて打切ります。     —————————————
  40. 小平久雄

    小平委員長 この際お諮りいたします。引揚げ援護に関する行政機構改革案は、ただいま説明聽取した通りでありますが、当委員会としては、引揚げ援護の問題の重要性にかんがみまして、少くともここ一年間は、従来通り引揚げ援護庁を厚生省の外局として存置するよう、厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する修正意見を内閣委員会に対して申入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 小平久雄

    小平委員長 御異議ないようでありますから、さよう決定いたします。なお右申入れの方法等に関しましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時四分散会