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1952-04-23 第13回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十三日(水曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 池見 茂隆君 理事 高橋  等君    理事 若林 義孝君 理事 受田 新吉君       飯塚 定輔君    川端 佳夫君       庄司 一郎君    玉置 信一君       玉置  實君    福田 喜東君       丸山 直友君    亘  四郎君       金子與重郎君    堤 ツルヨ君       苅田アサノ君  出席政府委員         外務政務次官  石原幹市郎君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第五         課長)     上田 常光君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局引揚課長) 山本淺太郎君         参  考  人         (在外同胞帰還         促進全国協議会         副委員長)   浦野 正孝君     ————————————— 四月二十三日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  海外胞引揚に関する件     —————————————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  本日は海外胞引揚に関する件について議事を進めます。平和條発効後の引揚げ対策につき、政府当局より説明を求めることといたしたいと思いますが、その前に、在外同胞帰還促進全国協議会委員長浦野正孝君より、留守家族平和條発効後における引揚げ問題についての御意見を聴取することといたします。参考人浦野正孝君。
  3. 浦野正孝

    浦野参考人 それでは留守家族団体代表いたしまして、講和後の引揚げ問題につきましての希望という御注文でございますので、そういうようなものをとりまとめて申し上げたいと思います。実は非常に倉皇の間でありまして、まとまつておりませんので申訳ございませんが、要点的に申し上げたいと思います。  この引揚げ問題は、講和後ということが別に本質的な意味を持つものとは私ども思つておりませんので、むしろ今日までこれがまだ解決がつかないということを、非常に残念に思つておるわけであります。つまり降伏後早急に解決せられる、べきものだつたとわれわれは考えておるのであります。非常に遺憾でございますが、とにかく在来すべての点におきまして、日本政府占領下状態にありますために、独立外交がとれなかつた。それがこの際、曲りなりにもという言葉で申しては少し言葉が過ぎるかもしれませんが、とにかく講和ができる、いわゆる独立態勢がとれるということに対しましては、私どもは非常に期待をしておるわけであります、講和後には、この問題を政府がどういう方針でやられるか、また国会ではどう対処をされかとうことに非常に関心を特つております。でありますが、実は講和を前にいたしまして、それらの情勢を私ども留守家族団体は見ておりまして、非常に心もとない感じを同時に持つておるのでおります。きようは外務省当局がお見えになつておりますが、外務省におかれましても、この問題を処理して行くのだということは再三われわれは聞いておるのでありますけれども外務省機構にいたしましても、この引揚げ問題を扱つておるのは、アジア局の中の第五課の一部にしかすぎないというわけでありまして、講和を間近に控えました重大時期にもかかわらず、所管の局長である倭島民は、御承知の台湾問題で飛びまわつておられ、事実上ほとんどこの問題とは縁がないという状況でありまして、私ども希望を率直に申しますならば、少くとも外務省の中に引揚局というくらいのものを置いていただきたい、当然置くべきだと考えるわけであります。  さらに、話が非常にこまかくなりますが、来るべき講和発効の日には、総理がメッセージでありますか、ステートメントでありますか、当然出されると思いますが、この問題はどの程度に処理されるか。もちろん総理の手元に行つていないと思いますが、実は担当方面に対しましても、外務省から出ていないのであります。私どもは、非常にやかましく言つて出してもらうような手配を現在進めているような実情でありまして、こういう点にまで一々われわれ留守家族団体がついて行つて、どういう内容でやるかというようなことを言わなければできないような形にある状況であります。それに御承知の向きもあるかと思いますが、参議院においては引揚げに関する特別委員会がなくなりまして、最近の情勢では、厚生委員会の中の小委員会をもつてこれに充てるというような形が出て来たように聞き及んでおるのであります。これなども残留数が少くなり、しかも情勢は非常に困難な情勢になつて来ている状況下におきまして、はたしてどの程度にこの問題を考えておられるか、私どもとしてははなはだ納得しがたく、非常に不満に思つている次第であります。この独立の日にもかかわらず、まだ家庭に帰ることもできない、非常に不幸な海外抑留されている方たに対しまして、在来占領下と違い、独立後の新しい日本の大きな課題として、この問題を最高政治的方針のもとに解決されるべく、政府なり国会におかれては、慎重に検討の上、最高方針を樹立していただきたい。遺憾ながら具体方針をこうやつていただきたいとわれわれが申し上る前に、それを最高方針として取上げるだけの基盤そのものと申しますか、あるいは関心と申しますか、そういうものが、現在の段階において私どもの見るところ、その方面におきましては、はなはだ不徹底ではないか、率直に申せばそういうふうに考えるのであります。さしあたつてはこの問題に対する慨念の問題でございますが、これは皆様方、あるいは第三者はどうお考えになるか存じませんが、私ども留守家族からしますれば、もはやすでに完全な民族の侵略であると考えるのであります。この点につきましても、私ども考えをごひろうするだけでありまして、ひとつ真劍に御考慮いただつきたいと思うのであります。  次に、その基本方針としてそのことがよいか悪いかという政治問題については、私ども範囲外なので触れませんが、日本のこのたびの講和ができるということは、今の世界におけるところの日本あり方をきめたものであると思います。たとえば非公式ではあつたと思いますが、外務省は、将来の対ソ外交方針の第一には、引揚げ問題を持ち出すということを新聞紙上で言われておるのでありまして、在ソ同胞留守家族といたしましては、非常にそれを喜んでいるわけであります。しかしながらこのことは一面からすれば、はたして引揚げさせるためにその問題がそういうような形で取上げられておるのかというと、もつと違つた意味のものの見方が先行しておるのではないかという感じを持つている留守家族が相当あるのであります。私どもはもちろんこの講和後の日本あり方からいたしまして、世界的な大きな線、これは日本の好むと好まざるとにかかわらずと、私はあえて言つていいと思いますが、その大きな線の一環として、日本の国がこれからそういう立場に置かれるということは一応理解いたしております。その線とともに、常にこの引揚げ問題を第一線に押し出していただきたい。現在の一応のあり方と申しますか、そのことと並行いたしまして、また別途な方法といいますか、引揚げ問題のみを有効に解決し得る基礎といいますか、方針といいますか、そういうものを真劍に考えていただきたい、かように思います。  それから引揚げ問題がようやく今盲点から重点になろうとしております中国の問題でありますが、この中国の問題につきましても同様でありまして、たとえば、非常に具体的に申し上げますならば、アメリカの上院の空気がどうであるとかいうこと、またそのために日本がある方向へ向けられざるを得ない、またそういう素因があるということをわれわれ留守家族は一応理解しておりますが、同時に、やはりソビエトの場合と同じような根本的建前をとりつつも、何とかしてこの中共にいる人間を取返す方策をまた同時に別途に進めていただきたい。問題は非常に複雑になつて来ると思います。今後のあり方につきましては、これが早急に簡單に解決ができるとは、私どもはまことに遺憾ながら考えられないのであります。そこでこれは当然日本民族が今までなかつた一つの事態といたしまして、恒久的なと申しますか、恒久的という言葉は使いたくないのでありますが、ある程度長期にわたることを見越した根本的な解決方策を原則としての大きな意味を持つ輿論喚起といいますか、これは日本の全国民輿論がなくしてはとうてい帰れないと思いますが、輿論喚起長期にわたる方策と同時に、そのときどきの時宜を得た効果的な方法をもつてこの問題に当つていただきたい、私どもはかように考えております。それでまずさしあたりましては、講和独立慶祝さえ行われようとしておる今日、いまだに帰ることのできない抑留同胞家族があるということは、この問題を講和独立後に、日本の国家としては第一に解決すべき問題であるという建前からいたしましての根本と、講和独立を期してのソビエト、並びにこの場合私はあえて中共という言葉を申し上げたいのでありますが、これは在来方針と関係いたしますが、在来方針いかんにかかわらず、ソビエト並び中共に対して、抑留同胞を帰してもらいたいという全日本国民国民的意思表示を発表するという意味をも含ませましての国民大会、これは抑留同胞救出国民運動において計画され、両院の諸先生方にはこの企画に参画しておられるやに伺つておりますが、それをぜひ実行していただきたい。これは單に在来の形でなしに、政府及び国会の責任において、国会としては、私ども立ち入つたことでございますが、希望だけをかつてに述べさせていただきますならば、いわゆる両院の本会議における決議として、独立後における本問題の自主的解決の、全国民代表としての国会意思表示をはつきりしていただきたい。それに基いての国民大会による呼びかけ、意思表示世界に示していただきたい。  以上、まだまだこまかい点はいろいろありますが、概略の線だけを申し上げまして、一応終ることにいたします。はなはだ抽象的な申し上げ方でありますが、御賢察を願い、あと何か御質問の際でも、具体的な例について申し上げたいと思います。
  4. 小平久雄

    小平委員長 参考人に対する質疑は、政府当局より説明を求めた後に、政府当局に対する質疑とともに一括して許すことといたし、ただちに政府当局より、平和條発効後に対する引揚げ対策について説明を聽取することにいたします。外務政務次官石原幹市郎君。
  5. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまも参考人の方からお話があつたのでありますが、講和発効を控えまして、国民あげて慶祝の気分にありまする際に、その半面、終戦以来七年にわたりまして、まだ内地に帰り得ざる多数の同胞があり、その留守家族があるということは、まことにお気の毒に存じ、遺憾千万に思つておるところでございます。ややともすれば、講和発効後の引揚げ問題につきましては、政府を初め、外務当局もすこぶる冷淡なような感じを持つておられる方が多いように思うのでありますが、政府といたしましては、この問題を決してないがしろにし、冷淡であるというようなことは断じてないのでございまして、御承知のごとく、ソ連あるいは中共に関します旅行者等に対しまして、政府といたしまして旅券の発給をも拒んでおります一つの事由といたしましては、いまだ帰らざる多数の抑留者向うに残しまして、そうしてそれらの人に対する何らの情報をも提供しないこれらの国々に対しましては、たといいかなる催しがあり、その招きを受けましても、そういう国々に行くべきではない。まず引揚げ問題、抑留者の問題を解決してから、これらの国々との交渉を始めねばならぬとい意気込みをもつてつておりますことは、御案内の通りであろうと思います。ただ、ソ連及び中共とは講和條約が結ばれてないのでありますから、講和発効後においても、両国と直接打衝を行いますということは、今後といえどもできないのでございまして、両国国交関係を持つております第三国を通じまして、わが在外公館並びにその第三国を通じまして、この問題のあつせん進展をはかつて行く、これをまず強力に進めたい、こういうことを考えておるのでございます。それらの国々に対しましても、わが方の在外公館、近く大公使等も派遣されることになりますので、その大公使を通じまして、さらにいろいろな資料なり、実情を訴えることができますので、従来よりは、これらの問題の折衝がよほど自由になつて参るかと思うのでございます。実は昨日の委員会でも、庄司委員からインドネール女史に関する問題もございました。昨日さつそく幹部会にはかりまして、実はインド在外事務所河崎参事官が本日出発いたしますので、ただちに河崎参事官にいろいろの資料を託し、こちらの模様をネール女史の方にも伝えてもらうように手配をいたしたような次第でございまして、今後こういう問題につきまして、第三国を通じての活発なるあつせんの依頼を続けて行きたいと思つておるのでございます。インドであるとか、ビルマ、英国等が、こういう問題を委託するのに最も適当なる国々でないかと思つております。その次は、これはたびたびここで申し上げておるのでありますが、国際連合の諸機関を通じまして、密接な連繋をとり、この問題の推進方依頼したいと考えているところでございます。これは御案内のごとく国連俘虜特別委員会ども設けられまして、すでにその会議などにもわが国から正式の代表が参加いたしております。今後は国連に駐在の大使、あるいは公使というようなものの加入が認められない間におきましても、オブザーヴアーの形においてそういう人が常駐するようなことに相なるのではないかと思つておるのでございまして、国連にさらに一層の働きかけをすることができるように相なるかと思います。また国際赤十字等機関を通じまして、この問題の推進を一層はかりたいと考えているところでございます。  第三の問題といたしましては、国内的に、また国際的にこの問題に対しまして、さらに一層広く協力を得て行かなければならないと思うのであります。引揚げ問題の実情説明いたしましたような資料パンフレット等をさらに内外に散布いたしまして、その認識を一層高めて行きたい。こういう問題につきましても、ただいまのところ、予算措置その他につきましてまだきわめて不十分と思うのでありますが、今後御協力、御鞭撻を得まして、これらの問題が力強く推進されるようにいたして参りたいと思つております。  それからあとは特殊な問題になりますが、フイリピン及びマヌス島に残つております受刑者内地送還等の問題につきましても、両国政府に対しまして、公文をもつて内地送還方依頼を続けているところでございます。これは最近承つた話でありますが、濠州におきまして、日本兵のために非常に残虐を受けましたある看護婦を記念して、向う記念病院設置をされるというようなことでございました。そういうような問題からいたしまして、なかなか日本に対する感情が解けていないようでございます。こういう記念病院に対しまして、日本からも何らかの醵金をすることが非常によろしいのではないかど申し出ている人もあるのでござまいまして、いろいろの方法を講じまして先方感情をやわらげ、こういう人々送還についても、さらに一段の努力をしなければならぬと思つております。  それから先般この委員会でいろいろ問題になりました南方に若干の残留者が残つているという問題がございます。これも先方政府に対しましていろいろお願いもしておりますし、今後在外公館設置等によりましてさらに実情を把握いたしまして、この問題の解決促進をはかつて行きたいと考えている次第でございます。  ついででありまので、先ほど外務当局機構等が非常に縮小されたようなお話があつたのでありますが、これはやはりアジア局に第五課がありまして、第五課はほとんどこの引揚げ問題を専管すると申してもいいような課でございます。その陣容等も何ら縮小いたしておりません。外務省といたしましても、今後決してこの問題をないがしろにすることなく——ないがしろどころではなくて、講和発効を機会にさらに一層活発に何とかいたしまして、この問題の解決をはからなければならぬという意気込みをもつて進めたいと思つている次第でございます。
  6. 小平久雄

    小平委員長 これより本件に関する質疑を許します。池見茂隆君。
  7. 池見茂隆

    池見委員 浦野参考人にお尋ね申し上げたいと思います。まず第一に、留守家族団体として、この引揚げ促進に対しては講和発効後において、こういうふうな方法をとつたらばよかろう、こういうふうな処置をしたらよかろうという点をお伺いしたい。
  8. 浦野正孝

    浦野参考人 お答えいたします。非常に広汎な御質問でございますので、ちよつとお伺いいたしますが、留守家族団体の私どもの方で、何をやろうと考えているかという御質問でございますか。
  9. 池見茂隆

    池見委員 そうです。
  10. 浦野正孝

    浦野参考人 私どもといたしましては、先ほど御説明の際に申し上げました国民運動大会が近く計画されるということに非常に期待いたしまして、これと協力して、先ほど申しましたように、講和発効後全国民をあげて抑留国に対する引揚げ問題の促進方の懇請をお願いしたい。それが当面考えている第一であります。その他細部はいろいろありますが、こまかいことはあとで申し上げます。  なおその点につきまして、お答え範囲を出るかもしれませんが、ただいま外務省当局の方から政府のいわゆる外交としての方針お話がありまして、これは非常にそのこと自体けつこうであると思いますが、外務省という狭い範囲でなくて、政府答弁というか、政府考え方として、私は大きく落ちているものがあるのではないかと思う。それはこういう問題の性質からいたしまして、いわゆる国民輿論と申しますか、全国民が問題の実相を認識してこれに対処しなければならない。帰してやりたいという意欲と申しますか、これの盛り上りがなければ、この問題の解決はできないと思うのであります。これはいかなる場合におきましても——いわゆる皮肉を言いますと、国連へたな上げしたということを言われる場合があるのでありますが、そういう感じが伴うようなことでは、今後のこういう人道的な問題の解決はできないと、私どもの体験から思う。従いまして、政府外交方針として第三国頼むというのはけつこうでございましようが、これにはやはり強力な国民輿論の裏づけと申しますか、そういうものがなければ、頼まれた方としても、十分の成果があがらぬだろうと私は確信しております。その点におきまして、これはどこの所管になるかしれませんが、あえて外務省といわず、政府として独立後の予算を見ましても、引揚げ促進に関する予算というものがない。そういう面に対する考慮が拂われていないように見受けられるのを、われわれは非常に遺憾に存じております。これは在来は、貧弱な遺家族団体で身銭を切つてつて来たのが実相であります。しかもこれは、後ほどこまかい問題にたくさん触れますが、今日の問題は單に引揚げ促進というような容易な形ではなくして、遺憾ながら、むしろ私どもから見れば逆行性といいますか、抑留正当化という線が出て来ておるのであります。そういう状態が出ましては、政府といたしましても單に第三国に頼むとか、国連へ持つて行くとか、それで事足れりということでなく、問題をひとつ真劍にこの際考えていただきたい、そういう意味を含めてお答えといたします。
  11. 池見茂隆

    池見委員 今の参考人お話はよくわかりますが、政府当局に向つて私はお聞きしたいと思います。引揚げ促進に関しましては、講和発効を直前に控えまし一応戰争犠牲者という、いわゆる遺家族、あるいは遺骨の収容、ないしは恩赦の問題、これに関するところの戰犯関係者、こういうふうな問題については、たとえ十分ではなくとも日本政府としては一応の手を今日まで打ち、かつまたそういつた関係者に対して、その状況をよく察知せしめたけれども、少くとも現在抑留されておる人々引揚げ促進に対しては、今の状況としては五里霧中の状況を呈しておるのでありまして、この留守家族方々のお気持ちは、政府当局も十分にわかると考えるのであります。しかるにこの抑留者留守家族に対して、現在引揚げ不可能の状態にある中共抑留者より最近送金があつた。それは中日友好協会という団体のもとに送金があつたのであるが、その事実、ないしは中日友好協会というものがどういう性格を持つ団体であるかということを、政府当局においては御了承になつておるかどうか、詳細に御説明願いたい。
  12. 上田常光

    上田説明員 中共からの送金の問題につきましては、そのうわさも今年の春ごろから聞いておりましたし、最近におきまし留守家族方々が現実に金を受取つておられることも聞いております。従つてこの事実を当局において知つておるかという先ほどの御質問に対しては、存じておると申し上げます。
  13. 池見茂隆

    池見委員 その事実は知つておるとのことであります。さらにお話すれば、それは香港ナショナル・シテイ・バンクを通じて日本のその支店に来ておるということですが、その送金先である中日友好協会性格を御承知であるかどうかということをお聞きしたい。
  14. 上田常光

    上田説明員 団体のことも多少は存じておりますけれども、まだ詳しく調査まではいたしておりません。いろいろな話は聞いておりますが、しかしまだ外務省として正式にここではつきり申し上げたくないので、その点御了承を願いたいと思うのであります。
  15. 池見茂隆

    池見委員 まことに遺憾なるところの答弁だと思う。引揚げ促進に関連してこういつた送金が行われるということは、抑留者から留守家族に対する切切たるところの気持だと思う。そういつた送金が可能であり、しかしてその送り先が個人でなく、中日友好協会という一つ団体あてに送るという場合、今日の国際情勢よりしても、こういつた団体については、当局としてもつと慎重に考えられなければならない問題であると私は思う。それに対して單に知つておるとか、春ごろから聞きましたとか、いつたようなことは、私はもつてのほかの答弁だと思う。これは少くとも個人的な送金の問題でなく、今日の国際関係より考えても最も重大な問題だと思う。特に昨日庄司委員より毛主席澤東閣下に対してこういつた手紙を送ろうじやないかという御意見もあつた場合において、中共日本とが、他の政治問題は別問題でありますが、少くともポツダム宣言に明記してある捕虜の送還という問題に一連の関連性を持つ場合には、外務当局としては最も慎重に研究すべき問題であると私は考える。きようは石原外務政務次官もここにおいでになつておるが、もしお二人とも明確なる答弁ができないということであつたならば、中日友好協会並びにそういつた関係送金の詳細を調べて、次会委員会において答弁をしていただきたい。それが一点。  その次に、先ほど河野君のお話に対しての外務次官お話は一応わかりますが、中共引揚げについて政府として確信あるところの一つ考えを持つておられるかどうかということ。それと先般本委員会で、北京より引揚げられた燕京大学の教授だつた鳥居博士お話を聞いた場合、現段階におけるところの国際情勢から、今この引揚げ問題を中共折衝しなかつたならば、その後においてはとうてい不可能にあるということをわれわれは聞いた。そういつたことを政府が聞き、もつてこれに対する方策考えたかどうか、その所見をお伺いしたい。
  16. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 中共に対する引揚げの問題でございますが、先ほど総括的に申し上げましたように、ソ連及び中共とは講和條約が結ばれていないのでありまして、ことに中国に対しましては、わが国が今一応折衝の相手としております国は国民政府でございます。そういう関係等から、まことに遺憾でありますが、直接に中共と交渉することはただいまの段階ではできないと思うのであります。そこでやはり中共を承認し、中共国交関係を持つております第三国を通じまして、その問題のあつせん方を依頼するよりほかにただいまのところ方法がない。そこで今回講和條発効とともに、大公使等の派遣交換によりまして、これらの問題の説明並びにあつせん依頼等についても、従来よりはよほど自由に活発にお願いができる段階に至るのではないかと思つておるのでございまして、これらの機関を通じましてやる以外に、ただいまのところないということを申し上げたいと思います。  それから先ほどの御質問でございますが、これは一応正式の送金でございますので、あるいはおしかりを受けることかもしれないと思うのでありますが、ただいまただちにこれをどうこうすることができないものでありまするので、傍観をしておる、こういう形であつたのでございます。御要求のその事実並びに性格等につきましては、さらによく調査をいたしまして、間違いのないところを御答弁することにいたしたいと思います。
  17. 池見茂隆

    池見委員 次官のお話は一応了承いたしますが、浦野留守家族団体代表からもお話がありましたように、先ほど私からもお話申し上げましたように、戰争犠牲者に対する残されたる問題は、今日の場合においては、この抑留者引揚げ促進ということが最後の問題であると私は考える。特にこの問題については、最近いくらか——いくらかではない、この引揚げ問題については、私は少くとも国民全体の気持が薄らいでおるという感じを持つのであります。この問題を解決しない限り、日本の再建というか、そういつた大きな日本として自立する一つの道を欠いておるということについて非常なる不安を抱くものである。そういつた面から、講和発効と同時に、さらにこういつた問題についてより以上に、より数倍強力なる運動を展開することについて、さつき浦野参考人から話があつたような方法でもつて政府も、これに予算措置云々もありましようが、特に十分なる考慮を拂つてやるべきであるということをつけ加えて申し上げておきます。
  18. 庄司一郎

    庄司委員 戰犯によつて囹圄鉄窓の中におるわれわれ同胞の一部の諸君も、今回の講和発効に伴う国家的慶祝を記念しての恩赦法の発動により、日本政府が連合国等に対して樽俎折衝の結果、戦犯以外の普通刑法犯あるいは特別犯罪のための特別法規を受けて在監しておる者等、あるいはすでに釈放され、あるいは公判の前にある者、公判の過程にある者等々と同様に、今回の恩赦の恩典を受け得るものであるかどうか。戰犯者といえども、すでに過去の自分の罪科に対しては相当反省もされ、あるいは懺悔もされておるものと思うのであります。願わくば、今回の恩赦によつて大赦、特赦、減刑あるいは復権等々、いわゆる恩赦の恩惠が獄裡に呻吟するところの戦犯の同胞の一部にも均霑することを私は念願してやまないのであります。そういう意味において、このことは法務府関係の所管ではありましようけれども、事戰犯に関係する、あるいは関連を持つておらるる外務省としては、どういう処置をとられ、あるいはとられんとするものであるか。これを一応伺つておきたいと思うのであります。
  19. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げました、南方に残留しておる戰犯者の帰還のような問題につきましては、われわれ極力努力をいたしておるところでございまするが、ただいまの御質問の点につきましては、われわれもさようあつてほしいとはもちろん思い、そういう希望の表明等はいたしておるのでありまするが、その後の処置は法務府の方で一切やることになつております。法務府の方からお答えを願つた方が適切かと思います。
  20. 庄司一郎

    庄司委員 外務省としては、直接の主管事項ではないがゆえに、ただいまの御答弁程度でございしよう。これ以上追究してもむだであると思いますのでこれ以上追究いたしませんが、外務省としては、よく法務府と折衝をせられ、戰犯諸君が今回の恩典に浴することができ得るかどうか、また浴させることが公正妥当であると考えておりますので、さような折衝をされるよう私は外務省に対しても懇請いたしたいと思うのであります。  次に、浦野参考人が述べられた一節にもあつたように、今後在外同胞をすみやかに引揚げさせるための一つの手段方法としては、やはり国民的の大運動が必要である。世界列国の正しい理解と同情の中にこれがすみやかに行われて、抑留同胞の帰国が実現するようにわれわれは運動して行かなければならぬ。そういう国民運動等に対しては、外務省としては、ただ單にそれは国民運動であるというような見地から、従来の官僚的な超然内閣的な態度をとつて、ひそかに精神的だけの御同情を寄せられるものであるかどうか、また何らかの方法において財政的な多少の援助、応援をするか、あるいは外務省のお役人もまた国民の一人でありますゆえに、ともに国民運動の中に入つて来て、その立場は顧問でも参與でもよいでありましようが、ともどもに声を大にし、正論を吐露して世界列国のヒユーマニテイに訴えるというようなお考えであるかどうか。單なる精神的の応援だけではいけない。やはり国民大会をやるという以上は、多少の経費もかかるのでありますから、單に厚生省関係の引揚援護庁のみにまかせず、外務省も一役買つてやる。あるいは何らかの名目のもとに、どういう美名でもよろしいが金を出し得るような措置を講じて、浦野氏が述べられるような国民運動に対して助成するというようなことが願わしいと考えておりますが、そういう御同情はございませんでしようか。
  21. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 気持におきましては、ただいま庄司委員からお話になりましたような感じを非常に強く私は持つておるのでありますが、先ほどもちよつと申し上げましたように、ただいまのところこの予算措置がきわめて貧弱というか、不十分でございます。外務省予算全一体が、こういう外郭的活動団体の補助というようなことにつきまして、ほとんど予算が計上されてないというような状況でございまして、これはまことに遺憾千万に思つているところでございます。ただこういう問題につきまして、団体方々方々に出かけられるというようなときに、その場合、出張旅費というような形でこれを御援助申し上げたい、あるいはまたその団体のつくられましたパンフレツト等を買上げるというような形で何らかの援助をしよう、こういうきわめて微力な財政的協力しかでき得ない状況でございますが、気持においては庄司さんの言われましたような感じを持つておるのでありまして、今後皆様方の一層の御協力を得まして、こういう予算の獲得がさらに積極的にできまするように、われわれも努力を続けて行きたいと思います。
  22. 庄司一郎

    庄司委員 ただいまのお答えのような御精神で、どうか抑留同胞救出のための国民大会とか、そういう会はほんとうに純な心でやる運動でありますので、委託調査とか、あるいはただいまお述べのような名目で、また名目の何たるを問わず、でき得るだけ助成の方針をとつていただきたいと思います。まさか外務省主催の大会というふうなものは行えないと思いますので、民間のほとばしる大会等に対して何らかの方法で、ポスターの宣伝費とかいろいろ名目はあると思いますから、御盡力願いたいと思います。  私は後刻適当な時間に中華民国よりの救出の問題について、簡單な御発言をお許しいただきたいことを保留いたしまして、私はこれでやめます。
  23. 池見茂隆

    池見委員 関連して伺いますが、先ほど外務当局にお尋ねし、さらに調査をお願いしておきましたが、留守家族団体として浦野参考人にお尋ねいたします。中共よりの送金に対して、その事実はあるということが外務当局より話がありましたが、留守家族団体として、あなた方がそういつたことにいろいろお世話をされる上において、中日友好協会というものの性格がもしわかつておりましたならば、御説明を願つておきたい。またそれに対する浦野参考人の所見があれば、つけ加えて御説明が願いたい。
  24. 浦野正孝

    浦野参考人 ただいまの御質問でございますが、ただ單に私は中日友好協会に対する私の考え、あるいは送金問題のデーターのみを御説明申し上げたのでは、たいへん失礼ですが、おわかりになるまい。これは中共抑留問題全般にわたるからくりと申しますか、計画的なものだと私ども留守家族考えておりますので、最初にさかのぼりますが、概略御説明申し上げたいと思います。  中共日本人を帰さなくなりました初期の第一期の段階は、御承知のように、中共地区の人間は帰れないのではないかということで、留守家族は非常に心配いたしました。ソ連が撤退いたしまして中共が入りましたときに、中共地区の人間はすでに一部引揚者として内地に帰つております。これは御承知のように、当時中国行つておりましたトルーマン大統領の特使マーシヤル氏が、いわゆる国共の停戰のあつせんをいたしました。そのときに中共地区の日本人を帰すという話が進められまして、中共側と国民政府側とアメリカ側と、現地でこれを三人組と言つたそうでありますが、その三人組のあつせんによつて中共地区の人が一部帰つて来たわけであります。そのとき、これは一九四六年の秋のことでありますが、その年の十一月に至りまして、ちようど一昨年のソビエトの四月二十二日のタス発表と同様に、中共側は還送を継続しようとせず、もう日本人はいないんだと報告しました。それが内地にもそういうふうにそのまま伝えられているのでありますが、当時の混乱した情勢下では、われわれ留守家族はその辺の消息は一、二年の後になつてやつと知つたような状態でありまして、詳しい事情は知らなかつたのであります。従いましてそれを正直にとりますならば、今日中共地区に日本人はいないはずであります。今日いるということが非常に驚くべきことなんであります。従つて大部分の家族は、満州におりました日本人はことごとくソヴエトに連れて行かれて、満州にはいないんだというふうに考えておつたのであります。中共抑留いたしましてから今日に至る経過というものは、私ども家族から見ますときには、並々ならぬものでありまして、ただ單に帰りたくない、いわんや本人が進んで残つておるということは絶対ありません。もちろん、非常に多くの人間でありますから、中には少数の例外はあるかもしれませんが、全般としてはそういうことは考えられないと思います。  これが第一期におきましては——ども第一期と名づけておりますが、非常に恐怖的な、あるいは機械的な彈圧政策——帰りたいと言う者に対する徹底的な彈圧政策をとつた時代でありまして、これははつきり区別はつきませんが、大体全満から中共国民政府を追い出しておりましたころが境であります。  その次は、われわれは抑留忘郷工作時代と名づけております。向うに残つて内地の家族を忘れるような工作であります。これにつきましては内地に関する非常なデマ、これはまつたく一方的なデマでありますが、たとえば内地では、女はことごとくアメリカの兵隊に強姦されるであろうとか、男子はことごとく去勢されるだろうとか、お前が帰つたつて、お前の戸籍はすでに抹消されておつて、お前の奥さんは新しい夫を迎えておるとかいうようなデマを朝から晩まで聞かせる。それから思想教育はもちろんその間非常に熱心にやつております。これと並行して非常に巧妙なのは、いわゆる結婚政策でありまして、残留同胞同士を結婚させる。内地に家族があり、ことに奧さんがあり、あるいは主人があつても、向うで結婚しますと、感情的にも非常に帰りたくなくなる、あるいはいまさら帰れもしないので、やむを得ず残留する。こういう結婚政策は遺憾ながら奏功しております。この結婚政策の犠牲になつて泣いている家族、泣いている夫人は非常に多いのであります。つまり主人が向う抑留日本婦人と結婚したということであります。そういう時代が第二期であります。  第三期は、昭和二十五年からだと考えております。それはいわゆる中共抑留同胞に対する抑留政策のみならず、さらに積極的に、家族に対する通信を許して来た。思想教育の段階に至りましたために、今度は通信によつて内地の家族の思想を教育しようといいますか、その陣営に飛び込ますといいますか、その線に出て来たのであります。その手紙はいろいろありますが、俗にこれを赤い手紙などといつております。その赤い手紙なるものは、いわれておるほど多くないのでありまして、赤くない手紙の方が実際多いのであります。その赤い手紙といわれておりますものの要点を申し上げますと、大体三つございます。その第一は、中国の革命が非常に成功している。第二は、自分たちは中国にいて非常に楽をしている。第三の点は、サンフランシスコの講和会議ころまではいわゆる全面講和と帰国ということを必ず結びつけておる。全面講和をしなければ、私たちは帰れないんだ、従つて家族は全面講和をやるように努力してくれ。さらに具体的につつ込んだものは、吉田反動内閣を倒せというようなことが書いてある。それからサンフランシスコ会議が終りました後は、私たちは中国との外交交渉ができなければ帰れないから、中共を承認してくれ、そういうふうに書いてある。この第三の点は非常に政治的な問題に結びつけて来ておるわけであります。通信を許して、手紙を効果的に利用して来たということと並行して、個別引揚げの問題がございます。  これらの事象は、表面的に見ますならば、一応私どもは喜びたいのでありますが、私ども留守家族特有のひがみがあるかもしれませんけれど、私どもが見ます場合には、遺憾ながら、これらの事象をうのみにして喜んではおれないと思うのであります。個別引揚げの問題にいたしましても、その他の問題にいたしましても、また先ほどの外務政務次官の今後の引揚げ方針につきましても、参考人として範囲を逸脱するかもしれませんけれども、実は私は非常に失望いたしております。失望を少し通り越しまして、はなはだ失礼な言い分かもしれませんが、政府のお役人の方たちも多少中共の謀略にかかつておられるのではないかと思われる点が少くないのであります。個別引揚げの問題につきましても、実はそれが内地に伝えられまして、御承知のように、この四月分初旬から日本政府がお金を出すことになりました。実はこれは昨年から出ておつたことは御承知の通りであります。これを公表いたしましたのは、今年の三月でありまして、つい最近のことであります。この個別引揚げにつきましても、実は私ども考えますのには、決して喜んでおれないことだと思うのであります。少くとも全国の留守家族はみなそういうふうに考えて来ております。というのは、この個別引揚げということを新聞にデカデカと出しまて、三人帰つた、五人帰つたということになりますと、いかにも帰りたいという希望の人は帰してやり、帰りたくない人だけが残つているという印象を第三者に與えるのであります。しかし実情ははなはだしく違うのであります。それから個別引揚げの特徴は、御承知のように、百八十名ばかりこの年間に帰つて来ておりますが、この百八十名は全部中国本土であります。いわゆる満洲地区、関東州地区から帰つて来た人はいないという事実であります。いま一つは、個別引揚げというものは、比較的問題に関心の薄い人たちには、それは待つておればそのうち帰つて来るだろうという安易な印象を與えるのですが、この個別引揚げで帰つたのは、私が申し上げるまでもなく二年間にわずかに百八十名であります。そういたしますと、中共地区の残留の数の問題もありますが、一応十万といたします。十万といたしまして、あと十万の人間が個別引揚げで帰つて来るのに何年かかるかというと、実に千年かかります。これは千年といえば、現在残つている残留同胞はことごとく死んでしまうことは間違いないと思います。ところがこれを表面だけ見ておりますと、いかにもそういう感じがするのであります。実に非常に巧妙なやり方だと、私どもは喜ぶ以上に、そういうふうに考えざるを得ない気持に留守家族の心境はなつているのであります。  その個別引揚げと通信とを私が並べて申し上げましたのは、第三期の段階でありまして、今年に入りますと、第四期の段階に入つて来たと考えております。第四期の段階と申しますと、第一が先ほど申し上げました通信を——通信は御承知のように向う抑留者から家族に参りますので、家族が仏壇なり、神だなに上げて大事にしておけば、だれも内容を見る人はないわけであります。そこでこの通信を——というと少し違うのでありますが、通信はごく一部であつて、大部分は現地の新聞、民主新聞に出ました日本人のいろいろ書いたものをまとめまして、先ほど来問題になりました中日友好協会から書物にして出して参りました。これはごらんになつた方もあろうかと思います。はるかなる祖国へという題でありまして、いわゆる中共同胞の真相だということで出している。これは先ほどの赤い手紙の中の、さらに優秀なものを集めてあるのであります。私どもから申しますと、全然これを信ずることはできない。なおかつこれらの手紙の中でも、私どもから見ますれば、火のつくように帰りたいという気持はわかるのであります。この手紙の中ですらわかりますが、これを一般の方が見られた場合には——たいへん失礼だが、特別委員会の諸先生方は別といたしまして、それ以外の国会議員の方がこれを見られましたならば、それぞれのお立場において、あるいはこんなに赤くなつているならば帰らない方がいいとお思いになる方がたくさんおいでになるかと思います。また一方で、こんなに赤くて中共協力しているのならば、帰す必要はないじやないかという方も、お立場においてあるかもしれないと思います。どうしても帰したいという留守家族希望と、一般国民の呉論との間に大きなくさびを打つものだと思います。これは恐るべき攻勢だと思います。私どももかねて予期しておりましたが、かように考えております。但し情報によりますと、本の売れ行きが非常に悪そういうでありまして、非常に困つているそうでありますから、私どもも多少安心しております。  これと並行いたしまして送金問題が起つて来た。全国の家族はこの送金問題に対して、非常に憤激しております。ところが一般の知らない方、あるいは官庁の方たは、非常な朗報ですねと、とんでもないことを言われる方が非常に多いのであります。この送金につきまして家族は——中日友好協会並びにその他のことについて詳しく申し上げますと、向う団体がありますが、一体金を送らせることが事実上できるということと、それだけの厚意を持つているならば、なぜ人間を帰さないのだという点で非常に憤激しております。それからまた一部には、事情をよく知らない家族の方たがあるのであります。そして非常に困つておられる方も中にありますから、困つておられる方でよくわからない方は、喜んでいる方がある。これは私が先ほど来申し上げますように全般に関係いたしますが、特に外務省あたりにおかれては真剣に考えていただきたい。外務省だけではない、政府全体であります。しかも私どもが非常におそれておりますことは、ちよつと事例をもつてたいへん失礼でありますが申し上げます。かりに私が現地で日本人を百名なら百名牛耳つている向うの幹部であるといたします。このうち三十名だけはどうしても残しておきたい。あとの七十名はしかたがない、時期が来れば帰してやろうと考えているといたしますれば、その三十名だけを呼びまして、諸君の家族は非常に困つているから、しかも諸君は働いておるのだから金を送つてやろうと私が申しますと、その三十名は、何分よろしく頼むと一応言うだろうと思います。これは日本内地状況につきまして、私どもの知つている終戦当時の内地状況以下に考えさせられております。みんなそういう印象を持つているので、間違いないと思います。その場合に、三十名の名前で送つてやります。かりに一年なり二年して、日本人をある程度帰さなければならぬとぎが来ましても、その三十名は帰しません。その場合に、なぜわれわれだけを帰さないかと言うでしよう。じようだんじやない、お前たちは月々三千円ずつ日本に送つておるのだ、それが十万円になつておる、すでに二十万になつておる、この金をどうして拂つてくれるか、向うに五年残つて働かなければならぬではないか、十年残つて働かなければならぬではないか、それ以外にないではないかというふうなからくりさえ考えられるのであります。そういうことを家族は非常に心配しております。この金をすなおに受取つていいかどうかということにつきましては、非常に半信半疑でおりますし、またこの金を送るということを客観的に見ますならば——たとえば非常に無批判な、不勉強だと申していいと思いますが、新聞社の諸君などが、金が来たというその事実だけをつかんででかでかと書いている。しかもその新聞社が、妙な言い方をいたしますと、いわゆる—方の人たちからは反動と札つきにされている新聞である。そういうを気がつかずに、何と申しますか、私どもに言わせると、送金攻勢のお先棒をかついでいるという珍現象さえあるとしかわれわれには考えられないのであります。従いまして以上のような見地から、私どものそういう見方がはたして客観的に正しいかどうかは別といたしまして、少くとも今までの留守家族団体では、こういう問題はそう考えておると御理解いただきまして、送金問題を御了解いただきたいと思うのであります。これを非常に意識の高い留守家族のごときは、まさに留守家族を侮辱するものだといつてつております。  それから中日友好協会の性質なるものでございますが、これは私ども、別に直接関係がございませんので詳しいことは存じませんが、形から申しますならば、やはり日本に来ております中国の一部の人と、それから日本での中共系の方たちがおもになつてつておられるようであります。これはちようど前にありました民主擁護同盟と非常によく似た形でありまして、ほんとうの中心になつておられる方たちはあまり表面に出ておらないようで、表面には割合八方にさしさわりのない方が出ておられるようであります。以上であります。
  25. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの浦野参考人の御発言はきわめて重要なる事項を含んでおつたと思うのでありますが、中共抑留者対策とでも申しますか、そういう点を当局は一体どんなふうに今判断なさつておりますか、この機会に御説明を承りたいと思うのですが、いかがですか。
  26. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は、先ほどからたびたび申し上げておりますように、日本の立場が非常に微妙な立場でございまして、中共というものと直接ただいま政府として折衝をしたり、話し合うということがどうも遺憾ながらでき得ない状況でございます。それをやれば中共というものを暗黙のうちに承認したというような形にもなるのでございます。従いまして外務省で得まする情報その他も、どうも今までのところ、あまり十分なものがないのでございます。この点はなはだ残念に思つておるのでございますが、たびたび申し上げまするように、講和発効後は、中共国交関係を持つている第三国を通じまして、相当自由に活発にいろいろな資料を得、日本実情もその第三国に対して訴たえまして、これらの問題に一層の積極性を持たせて行きたい、こういうふうに思つておるわけであります。大体ただいま申し上げたようなわけであります。
  27. 亘四郎

    ○亘委員 先ほど来外務政務次官から政府としての本問題解決に対する将来の考え方について説明がありまして、大体了承いたしたのでありますが、なお一層の積極性を強く要望したいのであります。今までは外交権の行使を許されておらない日本の立場といたしまして、やむを得ず司令部を通じて本問題に対する種々なる外交折衝を続けて参つたのでありますが、今度平和條約の効力発生と同時に、日本外交権の行使ができる立場になるのでありますから、ここで一大国民運動を起して、世界輿論を喚起いたしまして国民希望を達しなければならないという状態になつてつたのであります。こうした重大な転換期にあたりまとて、ややもすれば、日にちの経過とともに太問題が忘れられがちになるおそれがあるのでありますから、この際政府といたしましての、こうした世界輿論の喚起の具体的な考え方というものに対して、二、三お伺いしたいのであります。  それは第一に、まず来る八月にジユネーヴにおきまして国際連合総会の特別委員会が開かれるのであります。この機会に委員会に向つて運動するにあたつて政府としてどれだけの用意をなされておるか。またどういう用意をする意思であるか、そうした点についてもし用意がありましたならば承わりたい。これがまず第一点であります。
  28. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 八月に行われます次の特別委員会がどういう形で、どういう性格のものであるかということが、正確にはただいまのところちよつとわかりませんので、具体的にその対策を立てることがやや困難なのでありますが、この前田の委員会におきましてさらに資料の整備等が要求されておりますので、これを大体六月までに完備いたしますように、ただいまその準備をやつておる次第であります。
  29. 亘四郎

    ○亘委員 特別委員会の各委員に対して、少くとも詳細な情報を提供する用意がなければならぬと思うのでありますが、その用意がおありでありましようか。
  30. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは先般の委員会におきましても、各位に対しては十二分に資料を提供し、説明もいたしておるわけでありまするが、ただいまさらにその資料の整備をやつておりますので、それらが整い次第、さらにまた詳しく報告または説明もする考えでおります。
  31. 亘四郎

    ○亘委員 政府として、ぜひ怠りなく特別委員会委員の方に十分なる情報が提供のできるように用意をしていただきたい。なおまたパンフレツトの配付その他の点につきましても、日本国民の熱望としまして、ぜひこの際本問題が一気に解決できるだけの世界輿論の喚起に十分役立つ手段を講じていただきたい。そうして当事国であるソ連中共の各国々が、この世界の正しい論に屈服するという程度まで運動を展開する必要があると考えますから、そうした点に万手落ちなく用意をしていただきたい、こういうことをお願い申し上げます。  次に、この講和條発効記念日にあたりまして、当然総理大臣から国民に対してメツセージが出されるものであろうと予期するのでありますが、その際に、その声明の中にこの未解決になつておる引揚げ問題に対して、ぜひ私どもといたしましては総理の意思、あるいは政府の意思のあるところを織り込んでいただきたいのでありますが、その用意がありましようか、ちよつとお伺いしたい。
  32. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは外務当局といたしましては、講和條発効記念のメッセージの中には、当然引揚げ問題を織り込んでもらいたいということを強く内閣の方へ要望はしておるのでございます。まだどういうメツセージが出るか最終決定を見ていないようでありますが、外務当局としては、当然のこととして要望いたしております。
  33. 亘四郎

    ○亘委員 大体この問題解決について、いろいろな方法が旧来から考えられておるのでありますが、いずれもが外交権を持たない日本の立場といたしまして、やむを得ずとられた最善の対策なのであります。今日外交権の回復を得ましたあかつきにおきましては、たといソ連あるいは中共と今なお外交権が回復を見ないといたしましても、それらの国々外交折衝を持つておる中立国もあるのでありますから、そうした国々に呼びかけまして、ぜひ同情ある解決をしてもらうように努力してもらうことも考えられるのであります。そうした世界輿論の喚起をいたしますスタートといたしまして、ここに国内輿論を今日より以上に積極的に起して行くということでなければ、世界輿論を強く喚起することがとうてい不可能であります。従いまして、国内輿論国民運動を起す具体的な方法というようなことも当然考えておかなければならないのでありまして、私は政府に、今ただちにその方法についてあえて答弁は求めないのでありますが、この一大運動を起すのに最も時宜を得たときがこの講和発動の機会である、この日にちを抜かして他に延ばすということは、まつたく鉄の灼熱したときにこれを打たなければ用をなさないと同じように考えられるのでありますから、どうぞ政府といたしましては、この国民運動を起す具体的な方途について十分考慮をお拂いくださいまして、そうしてその用意をされんことを強く希望いたしまして、私の質問を終ります。
  34. 川端佳夫

    ○川端委員 関連して。ただいまの亘委員質疑の中にございました五月三日の講和会議発効の記念日をトしまして、何か国民運動をしたらいいじやないかというようなお話に関連いたす問題でありますが、ドイツにおきましては、タス通信が四月の二十二日に引揚げを完了いたしたという宣言をした、あの四月二十二日を捕虜の日として、国民が黙祷を捧げ、そうして引揚げ促進希望し、異国にある同胞の健在を斬り、あおせて戰争犠牲者に感謝の意を捧げるというようなことをいたしておるのであります。わが国においては、五月三日が戰争の問題のけりをつける記念日だというふうに一応政府の方で予定されておるのでありまするが、この五月三日をこういう意味においても——先ほど亘委員から、何か声明をお出しになるのかというようなお話もございましたが、この国民運動の具体的な方法として、これを戰争犠牲者に黙祷を捧げる日として、捕虜の日といいますか、あるいは何かそういう意味での記念日として将来に残すようなお考えを持つておられますか。そうしてこの日を国民運動の大きな記念日にいたしてはどうかと思いまするが、政府はどういうお考えを持つておりますか。
  35. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 この問題は、ひとり外務省だけの問題でもありませんので、私から申し上げることもどうかと思いまするが、御趣旨には同感の気持を持つております。先ほど来から国民運動国民運動というお話がありましたが、これはやはり文字通り国民運動であるように、あまり官製運動にならないように、ひとつ議会方面皆様方と十分協力をいたしまして、ほんとうに盛り上る国民運動の形がとれましたならば、それは私は一番けつこうなことではないかと思つております。
  36. 川端佳夫

    ○川端委員 ドィッにおきましては、一定の時刻を限りまして、交通機関までも全部一時停車いたしまして、黙祷を捧げておるようでありますが、こういうふうな方法をとつてもらいたい。そうしてせめてまだ異国にいる人の健康を祈り、われわれは心機を一層倍加いたしまして、引揚げの問題に国民的な情熱をささげて行くのだということ、それにあわせて、遺家族その他の方々の健在や、死んだ方々の冥福を祈る、こういうような記念日を、この講和発効の機会にお設けになる必要があると私は思います。従つてただいま外務省外務政務次官の一存のお考えをわれわれは伺おうとは思つておりませんが、こういうわれわれの切実なる国民運動を起したいというような趣旨に沿つて、こういう記念日を設けられるように、政府部内で御用意を願いたいと思うのであります。希望を付しまして質問を終ります。
  37. 苅田アサノ

    ○苅田委員 まず参考人在外同胞帰還促進全国協議会委員長浦野さんにお伺いいたしたいのであります。先ほど中共からの送金のことに関してお話になりました中の、日本に送られた中共在留同胞の金が借金であるか、あるいは自分が働いて得た純粋の自分の金であるかということにつきましては、どういうふうにしてそれを御調査になつておりますか。
  38. 浦野正孝

    浦野参考人 先ほど申し上げましたことは、調査した事実を申し上げたのではありません。日本中の方は、そういうふうなことになつておるのではあるまいかということを非常に心配している、そういう意味を申し上げたのであります。
  39. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私もそういうふうに聞きましたので、実は重ねてその点を御質問申し上げたわけであります。一未帰還者の留守家族としての立場からではなく、やはりこうした大きな協議会の幹部としての御発言である以上、これは少し軽率ではないかと私は思います。しかもこの金がどういう性質の金であるかということは、送つて来た団体を通じて調査の道もあることでありますので、少くともそういう調査を重ねられた上で、そうしたことについての何らかのおさしずがあつてしかるべきであつて、ただそういうふうに未帰還者の家族が心配しているというだけでこれを御発言になるというのは、少し軽率であるように思います。あなたの御発言を聞いておりますと、中共の方の——中共というのは正しくないと思います。現在は中国共産党だけの政府ではないのでありますから。中国政府の方の意図が、あくまで日本人の未帰還者を自分たちに引きつけて日本に対する報復をやつているというような、そういう少し先入感を持つた見方ら、そういうふうな結論を得ているのではないかと思います。少くともあなたの方は政党団体でもないし、ただ未帰還者を早く帰してもらいたいというような関係の団体である以上、そういうところは、もつと率直にあらゆる機会を利用し、あらゆる方法をとつて未帰還者の促進をなされるということでなければおもしろくないのではないか、かように考える次第であります。なおあなたの方は、未帰還者の帰還促進をすると同時に、反共の意味を持つた団体かどうかということも、この際お聞きしておきたいと思いますが、いかがでございましようか。
  40. 浦野正孝

    浦野参考人 お答えいたします。非常にお尋ねの意見が多うございましたので、落した点があつたら御指摘いただきたいと思います。初めの、それを調べた上でしたならばどうかという点でありますが、これは実は中日友好協会をおたずねしまして、その都度々々と申しますか、数回にわたりおたずねしまして、中日友好協会当局の方の御説明を伺つております。その話をこまかく申しますと、もちろん私一人行つたわけではない、その都度送金を受ける家族の方の御相談を受けたりして、一緒に伺つたわけですが、一通り聞いたわけであります。金をもらいました家族の人が、中日友好協会の方の御説明では満足しないと申しますか、あるいはそれをすなおに受入れないとい状況にあつたのだということを、私は申し上げたのであります。
  41. 苅田アサノ

    ○苅田委員 そのときに御返答はどうでしたか。
  42. 浦野正孝

    浦野参考人 つまりそれは場合でいろいろ違いますが、簡單に申しますと、あくまでも本人に送つて来たものだと言われるわけであります。これはわれわれは聞いておりますけれども、家族はうのみにして信用できないという心境になつております。  それから偏見があるのではないかというお言葉でございましたが、私は偏見を持つていないつもりでおります。これは主観でございますから、お前は持つていないつもりでも、そうだと言われればしかたがありませんけれども、持つていないつもりでおります。偏見ではなくして、七年間今日まで帰れないという事実なんです。その事実が家族をそうしてしまつたということを私は申し上げたい。  それから最後に、反共云々という言葉がございました。失礼でございますが、私ども留守家族といたしましては、およそ政治は━━━━━ことだと思つております。肉親を家庭に帰したいということがあらゆるものに先行するのでありまして、従いまして共産党がいいか悪いか、あるいは反共か容共か、そういうようなことは、私どもは肉親が帰つて来ましたら、その上でゆつくりどちらにするかをそろそろ考えてみたい。現在の段階ではみなそれだけの余裕は持つておりません。従いまして、お尋ねに対しましてどう申してよろしいか、私ども全然違う面の話だと思います。
  43. 池見茂隆

    池見委員 関連して……。今の浦野君の答弁は、私は大体において了承しますが、その言葉の中の、政治は━━━━━ことだということに対しては、いささか受取れないので、ひとつお取消しを願いたい。
  44. 浦野正孝

    浦野参考人 お取消し申し上げます。但しそれは家族のほんとうの気持から出たのでありますから、その点はひとつ御了承をいただきたい。
  45. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの浦野君の御発言は、取消しを願いましたが、委員長においてさらに速記録を調べまして、削除することにいたします。
  46. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ただいま池見委員も仰せになりましたが、確かに浦野さんに対しては、私も同じ感じを持つております。  それからひとつ共産党の苅田さんに、あなたは今……。
  47. 庄司一郎

    庄司委員 議事進行について……。委員委員質問する場合は、委員長を通してのみできる。国会法の精神、また慣行においてもさようであります。堤委員に対しては委員長は戒告を與え、国会法の精神に準拠し、かつこれは慣例によつて、直接他の委員に面と向つて質問をすることなく、委員長を通じて合法的に質問をされんことを、またそれを委員長は許されんことを希望いたします。
  48. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは委員長を通します。委員長からぜひ苅田委員に聞いていただきたい。  それは先ほどから浦野参考人に対して御質問のありました苅田さんの言葉を通じて、私たちが逆に思うことはたとえば今の與党であられるところの自由党が、この引揚げ問題に対して中共に直接間接——今までは間接でありますが、積極的な手を打とうとする場合に、ひざをまじえて語る立場にない人の話でありまするから、これは不可能といたしましても、もしその間を日本共産党が買つて出られたならば、それは必ずしもある程度不可能ではなかつたかもしれない。しかるに日本共産党は、まだかつてこの引揚げの問題に対して、友達の中共に対して、またソ連地区に対して、日本共産党が一番近いのだから、ひとつこうこうやつてみましようという積極的な手を打たれたことがないということは、引揚げ留守家族から見れば、非常に不満だろうと思う。そういうことをしないで、あなた方の団体は反共的な要素を持つておる団体ではないかということを苅田委員がおつしやることは、お出ましになつた参考人に対してやはり筋が立たないと思いますので、この点委員長から、日本共産党は、積極的に自由党や他の政党ではできないことを買つて出られる腹があるのか、また買つて出られたことがあるかこれをただしていただきたい。
  49. 小平久雄

    小平委員長 苅田委員に申し上げます。ただいま堤委員からの御質問の要旨はお聞き取りの通りであります。もし御回答が得られますならば、御回答を願いたいと思います。
  50. 苅田アサノ

    ○苅田委員 共産党の引揚げに対する従来の努力につきまして、もし委員会で何か述べてほしいとおつしやるのでありますれば、私は記録をもちまして、あらためて時間をさいていだだきまして、申し上げたいと思います。  これは徳田書記長の引揚げ問題のときにも問題になりましたように、共産党といたしましては、ソ連引揚げ以来、まず最初に対米関係の引揚げが終りますと同時に、芝の協調会館で、引揚げに対する全国の促進委員会を、共産党が首唱いたしすして開きました。その席上で、この前の引揚げ委員で、落選されました何とかいう方にも、あなたも来賓として来られてあいさつされたのではないかと言つたら、そうだと言われておるくらいでありまして、共産党としまして、この問題に決して無関心であつたということは事実と違うわけなんです。しかし私は今日逐一党がどういうふうにしたかということは、詳細に申し上げるだけの用意をしておりませんから、もしもそれをやつていただけば、非常にいい機会でありますから、この引揚げ委員会でそういう時間をさいていだだきまして、党が努力しましたことにつきましてお話を申し上げたいと思います。しかしながら、きようはただわが党がこれに対して無関心でないということの一例を申し上げまして、あと質問を続行させていただきたいと思います。
  51. 小平久雄

    小平委員長 続いて質問を許します。
  52. 苅田アサノ

    ○苅田委員 ただいま私が副委員長に対して申し上げましたことは、決して失礼な質問だとは思つていないのであります。と申しますのは、これは六年間も家族をとられておりました団体の方といたしまして、やはり肉親でありますから、やむを得ずそういうような片寄つた御発言があつたのだと私は思うのであります。しかしながら私は、この引揚げ問題は、そうした偏見があれば障害が起るということを申し上げたいために、以上の発言をしたのでありまして、たとえば中日友好協会の問題につきましては、あなたがおつしやいましたことの中にも出ておると思うのでありますが、中日友好協会は、私は自分が積極的に参加しておらないのでよく知りません。しかしながら社会党右派の幹部である淺沼稻次郎氏とか原彪氏とかいう人が、この方面の積極的な指導者であるということも聞いておりますので、これはあなたのおつしやるような、決して中共と相いれる関係の人たちがやつておる運動ではないということは事実だと思うのです。これは国会議員の中でも、今申しましたような方々がやつておられることであります。ところがやはりこういう問題を、あなたによりますと、これは中共と相いれる関係に立つた人がやつておるというような目で見られることは、一つはこれに対する政府なんかの平素の指導がそういう方面に向つておるからだと思う。私はむしろこういうことは、政府に対して抗議をした方がいいかもしれませんが、もう少しこういう点は率直に事実に基いて見られまして、そうしてあらゆる機会を利用して、少しでも早く家族が帰つて来られるような方法を、主義思想を問わず、つまり早く帰つてもらうということはだれしも望んでおることでありますから……。
  53. 小平久雄

    小平委員長 苅田委員に申し上げますが、御意見でなく、御質問を願います。
  54. 苅田アサノ

    ○苅田委員 ただいまの堤委員質問に添えまして、御答弁を申し上げておきたいと思うのです。  次に、私は外務政務次官にお尋ねしたいのでありますが、せんだつての新聞紙を読みますと、講和日本に新任されますアメリカの大使は、ソ連代表部の駐留を好まないということをおつしやつているように新聞に発表せられたのでありますが、こういう問題は、單なる新聞記事でありまして何ら根拠はないことでありますか、どうですか。あるいはこれに対しまして、日本外務当局としてはどういう独自な態度をとつてお臨みになりますか。またソ連代表部が駐留しないということは、引揚げ問題にとつてどういう関係が生ずるか、この点につきまして外務当局としての御見解を承りたいと思います。
  55. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 ただいまの御質問の、今度新たに来られます駐日米大使マーフイー氏がどういうことを語られたかということにつきましては、これは日本政府といたしまして、責任を持つてお答えすることはできないと思います。ただ講和発効とともにソ連代表部がどうなるかということにつきましては、外務委員会等において今日までいろいろ議論され、また学者の間でもいろいろ意見のあるところでございまするが、ソ連代表部というものは、御承知のように最高司令官に対しまする対日理事会の代表として日本に駐留されておつたのであります。ところが講和発効とともに最高司令部も解消し、同時に対日理事会も消滅するものであるというふうに日本政府としては考えておるのでございまして、従いまして対日理事会に派遣されておりました代表部の地位というものは、純法理論からいたしましては一応そこで消滅するのではないかと考えておるのでございます。しかし実際問題といたしましては、今後現実のいろいろの問題が控えておりますし、また連合国等の意向というようなものも大いに参考として考えねばなりません。これらの問題につきまして、今後ソ連代表部の人々に対してどういう取扱いをすべきかということにつきましては、ただいま慎重に考究をしておるところでございます。  引揚げ問題に対する関係につきましては、先ほどから申し上げておりますように、ソ連とはまだ講和條約の締結に至つておりませんので、ソ連と直接に交渉、折衝するということは、遺憾ながら今のところではできないのでございます。従いましてたびたび申し上げましたように第三国を通じまして、あるいは国連を通じて、これらの問題の推進に当りたいと考えておりますので、ソ連代表部が日本に駐留しているか駐留してないかということは、引揚げ問題につきましては、直接の関連というものはそれほどないように思つております。
  56. 苅田アサノ

    ○苅田委員 同じような問題ですが、もう一ぺん確かめたいと思うのです。それでは二十八日に講和が成立するということを前に控えまして、外務省としては、日本にあるソ連代表部をどうするかということについては、まだ確固たる方針がないという御答弁なのでございますか。この点をもう一ぺん確認しておきたいと思うのであります。
  57. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 これは純粹法理論と申しますか、法律上の建前から申しますならば、先ほど申しましたように、ソ連代表部は一応消滅するものであるというふうに考えております。但し事実上の取扱い方としてこれをどうするか、講和発効とともにただちに單なる外人としての扱いになるか、あるいはソ連としては、戰争関係がまだ休戰状態であるというような感じでありましようから、戰勝国、戰敗国の関係で行くのか、こういう事実上の取扱いの問題については、いろいろの問題がまだあると思いますので、これらの問題についてはただいまきわめて慎重に考究をしておるところでございます。
  58. 苅田アサノ

    ○苅田委員 それではこの点もまだお伺いしたいのですが、今日はこのくらいにいたします。  次に、日本が台湾政府を選んで、中国本土を治めております中華人民共和国を敵にまわしたあの吉田書簡というものが出ましたときに際して、外務省といたしましてはこういう問題に対して、何らこれにかかわるところがなかつたかどうか、これをお聞きしたいのです。なお外務省は、こういう状態が起れば自分の所管の仕事において、直接こうした俘虜問題について大きな支障を来すということがわかつてつたはずでありますが、こういう問題についても、何らこうしたことが外務省の責任において国策の上に反映される機会を持たなかつたかどうか、この点をちよつとお伺いしたいと思います。
  59. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 俘虜送還あるいは抑留者送還というような問題は国際法上の最たる問題であり、またさらに人道上の大きな問題でありまして、抑留者なり俘虜を送還すべしということは、当然なことであろうと思うのであります。そこで日華の交渉等に当りましては、御案内のごとく連合国の一部の態度——日本は、中国につきましては国民政府を、承認している政府として扱つておるのであります。これと善隣友好の立場から国交の回復、平和の形に持つて行くという上におきまして、国民政府と一応の折衝をするということは、これまた当然の結果かと思いまして、さような線に沿つてこの問題は進められたわけであります。
  60. 苅田アサノ

    ○苅田委員 次官のお答えが非常に漠然としておりますので、この点だけもう一へんお伺いしたいのです。それでは吉田書簡というものは、外務省当局の本来の意向に沿つてああした台湾政府の承認が行われた、こういうふうな御返答であつたと解釈いたしますが、それでさしつかえございませんか。
  61. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 現段階国際情勢の上に処しまして、これは日本政府外務省がとつた方針でございます。
  62. 苅田アサノ

    ○苅田委員 それでは次の問題についてお伺いいたします。それは亘委員も御指摘になりましたように、この八月には国連総会でまた俘虜問題についての特別委員会が開かれるのでありますが、この際外務省は、日本国民、少くともこの衆議院の引揚委員会に対しまして一昨年の五月、日本政府としての外務省と連合国軍総司令部の共同調査というので発表になりました非常に不正確な残留者の数字、これはどのように不正確だということを私が申し上げるまでもなく、その後フイリピンその他南方諸島のゼロになつているところから続々と帰つて来る状態から、そういうふうなものを今度は二度目に国際的な会議にお出しになるのでありますから、さだめし正確な調査ができておると思いますから、この際ぜひそういうものをこの委員会に出していただきたい。これを要求いたしますが、これは出していただけるかどうか。それからいま一つ、一昨年の五月のあの調査によりましても、ソビエト残留者中、生存の確認されておる者は一万人余り、今日は私は記録を持つておりませんので、正確な数字は申し上げられませんが、生存確認が一万人余りで、その他向うに滞在しておられる者が六万人ぐらい、大体七万人余りがソ連における抑留者の数字になつてつたと思います。それが今日までほとんど二箇年を経ましても、世上では、やはりソ連に三十万の残留者といわれておるのに対しまして、外務省の側からも、あるいはまた国会議員の中でも、やはりそういうふうに言つておれらる方があるのでありますが、今度の資料では、もういちぺんそういう点をはつきりして、この引揚げ問題について一番根拠のあるものをひとつ出していただきたいと思います。これにつきまして、外務省当局としてはどういうふうなお考えでありますか。
  63. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 政府外務省としては、一昨年五月の数字が不正確なものだとは思つておりません。その後の若干の異動等はあるのでありますが、決して不正確なものとは思つておりません。  それから外務省情報部より発表いたしております白書と申しますか、資料にも、生存者の数、死亡者の数、生死不明者の数は、ここにはつきりと表示してあるのであります。ただわれわれが言えますることは、ソ連よりは、死亡者についても生存者についても何らの情報がない。これらの数字は、すべてこちらにおきましていろいろの資料から集め得た集計でございます。先方からは何らの資料も情報の提供もない、こういうことを申し上げておるのであります。先方から何らの情報がないのでありますから、一応未帰還者は三十数万であるということを申しておるのでございまして、わが方の得ました材料によつて、そのうち生存者、死亡者、生死不明者は明記いたしまして、すべての印刷物にも出ております。俘虜特別委員会に出した資料にもそうなつておるのでありまして、これは十分御承知のところであろうと思います。
  64. 苅田アサノ

    ○苅田委員 そういたしますと、外務当局は八月に開かれます国際的な会議にも、やはり一昨年五月私どもに配られました資料、これが正確だとおつしやるのでありますが、あの資料に基いたものをお出しになるおつもりでありますか。このとにつきましては、フイリピンから帰られました、私名前を覚えておりませんが、軍の中将でしたか、少将か大佐の方が、この委員会参考人として呼ばれて来られたときにも、明瞭にフィリピンの残留者のことをお話になり、しかもその残留者は、ソ連に対する関係上フィリピンの政府でも最小限度のものを発表しておるのだということを言われた。これはこの引揚委員会の記録にも残つておるのであります。そういうふうに、明瞭に不確かなことがわかつておりますのに、それをあなたの方では正しいとして、そのまま国際会議にお出しになるつもりですかどうですか。その点をもう一ぺん私はお聞きしたいと思います。
  65. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど申し上げた数字を基礎といたしまして、もちろんこれによつて報告するわけでございますが、ただその後帰還された人その他から得ました情報によりまして、若干の訂正はあるかと思いますが、基本においてこれを中心といたしますことは、申し上げるまでもないところでございます。それから南方の問題をいろいろお話になりましたが、この前も申し上げたと思いますが、当局においては、一応海外に残留する日本人で引揚げの対象となり得る者の数を、あの当時算定したわけであります。これを引揚げ対象基本数と呼んだのでございまして、軍人については部隊名簿であるとか、動員名簿、その他各種の軍の有する資料によりましてつくつたわけであります。また一般邦人については、終戰時に最も近い信頼し得べき統計表等によりまして、引揚げの対象となり得る在外邦人の数を推定算出したのであります。その後引揚げがあつた場合にはう随時引揚者から聽取いたしました現地の状況等によりまして、これを修正をして行く。また関係国からの情報によつてこれを修正して行く、こういうことによりまして、南方の方の引揚者は完了した。こういうことになつたのでございますが、その後現実の事実としては、アナタハンであるとか、ルバングであるとか、残留者がございまして、現実に引揚げて来た者がすでに数十名あつたことは、これも御承知の通りであります。これらの人々は、引揚げの対象基本数をつくります前後に離隊逃亡いたして、山の中に隠れたり、変名して現地人となつてつたりいたしまして、現地当局においても、実態を把握することのできなかつたものがその後現われて来たというような状況でございまして、今日といえども、はたして幾らのものが残つておるかというようなことは、正確にはつかめないのでございます。これは先ほども申し上げましたように、わかつておりますところについては、在外機関を通じましていろいろお願いをしております。フィリピン等については、外務当局の者はもちろん、われわれもメレンシオ大使等にもこういうことを申し上げまして、御調査を願い、これらの人たちが早く帰れるように骨折つておるところでございます。こういうものが若干あるということは、この前申し上げておいた通りであります。
  66. 小平久雄

    小平委員長 苅田さんに申し上げますが、時間もなく、あと通告者もありますから、簡單にお願いします。
  67. 苅田アサノ

    ○苅田委員 それでは私は政府当局に要求しておきたいのでありますが、この前の国連会議においても、報道関係からの話によりますと、日本から提出した数字につきまして、相当の問題があつたというふうなことも漏れ聞いておるのであります。ですから、この次そういう国際会議にお出しになります資料につきまして、特にそうした残留者の数字等につきましては、あらかじめこの委員会に御提出願いたい。この委員会は、やはり日本国民の名でもつて、こういう問題についても責任のある仕事をして行かねばならぬのでありますから、これは單に政府当局にというだけでなくて、引揚げ委員長の名前でもつて電報を打たれたような積極的な強い関心をお示しになりました委員長におきましても、政府からそういうような資料を、前もつてこちらに提出することを御要求になつていただきたいと思う。そういうふうな要求をぜひ委員長の方でお取上げ願いたいと思います。  さらに最後に、せんだつて政府としまして、中国地区にある残留者に対しまして、資金を用意し、あるいは船を用意して迎えるような計画を立てたことを御発表になつたのでありますが、この問題がその後どういうように進捗しておるかということにつきまして、きよう御答弁が願えればひとつ具体的な御答弁をいただきたいと思います。
  68. 山本淺太郎

    ○山本説明員 簡單にお答え申し上げます。政府としましては、いつ何時還送がございましても受入れられるように、日本の商船としては最も大きい船であろうと思いますが、高砂丸を舞鶴港に繋船いたしまして、いつでも船が出られるような態勢をとつております。  それからそのような計画引揚げでない、個々にばらばら引揚げて参りますものがございますし、また中国におきましても、何とか帰りたいというような事情で、特別に向うの留用機関等に申請いたしまして、幸い許されるものがございますが、帰国について相当多額の旅費がいるということで、現実には帰れないということがあつたのでございますが、この問題につきましては、本年の四月一日から、政府におきまして所要の海上船運賃を負担する処置をとりまして、詳細その取扱い要領を都道府県と留守家族団体にお知らせをしております。しかしながら現実には、中国本土の港と日本との間を往復いたします船は外国船でありますので、手続等は非常にやつかいをきわめるのでありますけれども、万難を排しまして、政府としては一人でも多く帰つていただきたいという趣旨から、外国の船舶商社と話合いを進めまして、四月一日から発足し、都道府県に通牒を出したのでありますが、現在都道府県からこちらの方に参つております資料をきよう持つておりませんけれども、大体三、四十件はもうすでに来ておるような状況でございまして、これはさらに政府で負担するという通知を都道府県を通じまして留守家族にお知らせし、留守家族から中国の現地におられる未帰還者に御連絡をし、それからいつ乘れるのだというような具体的な日取りが知らされますと、私の方から商社に連絡をいたしまして、その時期にマッチするところのなるべく早い機会の便船に乘せてもらうように、帰る——あるいは帰らない以前においても、船を予約することだけでもけつこうでありますが、所要の船賃を支拂うような手続を現在すでにとつておるような状況でございます。
  69. 苅田アサノ

    ○苅田委員 そういたしますと、船から先の経費は保証されておるわけですが、鳥居博士等の話によりますと、帰るまでには新聞広告だとか、あるいは国内汽車賃だとかいるのでありまするそういうふうなものがもしない場合に、それに対して日本政府の方から、何とかこれを立てかえるとか、何か方法をとるとか、そういう措置を講ずるということがなければ、やはり帰りたくても帰れない人が出て来るのではないかと思いますが、そういう点につきましては、政府としてはまだ何らの処置もとられておらないのですか。この点をお聞きしたいと思います。  私は質問の時間を限られておりますから、この際私がこの前に申しました資料の提出に対する外務政務次官の御返答もここであわせて伺いたいと思います。
  70. 上田常光

    上田説明員 今のお金の問題で、港に行くまでの費用をどうするかという御質問でございますが、この問題は目下私の方で研究中でございます。と申しますのは、個々の場合でお渡ししたい点はあるのでありますが、港に来るまでの陸上の費用を全部持つということになればどこかで線を引かないといろいろな問題が起る。在外日本人の引揚げの際の費用をどこで打切るかという問題もありますし、それから大体捕虜送還の場合には、捕虜の條約で、港までは相手国が出すのがあたりまえだからであります。特にロシヤの問題もありますが、港までは相手国が連れて来るのが建前でありまして、日本政府としては、港から船でこちらまで連れて来るのが建前であります。そういう原則もありますし、いろいろな問題がありまして、具体的の場合にどうするかということは、大体個々の問題について研究したいと思つております。
  71. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 資料の点につきましては、先ほど申し上げたように、若干の修正というか、整備をやつておりますが、これができ上りましたならば、いずれ発表の時期に提出いたしたいと思います。
  72. 堤ツルヨ

    ○堤委員 先ほど委員長を通しての苅田委員に対する質問に対して、今の質問はどうじやということを、もう一言聞いてもらうのが委員長としてとるべき処置ではなかつたかと思いますが、委員長は先をお急ぎになつたと見えて、そのままお片づけになつたことは残念に思います。苅田さんのごりつばな御意見をお聞きいたしましたが、そのごりつぱなお口のほどには、共産党のごりつばな具体的な引揚げ対策というものをここ四、五年見せてもらえなかつたことを、私は非常に残念に思います。従つてあるとおつしやるのでありますから、時間をさいてお聞きして、その内容いかんによつてはさらに私は共産党にお尋ねさせてもらいたいことがありますので、決してあれで了承したのではありませんから、それ点をはつきりいたしておきます。  私は何も共産党の苅田委員自体をどうのこうのと申し上げるのではございません。苅田さんは非常に人格のりつぱな委員でございますけれども日本共産党となると、さして引揚げ促進のために、留守家族が満足するほどの協力をしておいでにならなかつたと私は思うのでございますから、かような点を申し上げておく次第でございます。  そこで中日友好協会からの日本に向けての送金については、留守家族が揣摩臆測している、また多分こうではないであろうかという浦野さんからの御意見があつたのでありますが、この重大な問題に対して政府はどうお考えになつておるか、この点は何だかはつきりしなかつたようでございますが、もう一度政務次官の御所見を承りたいと思います。
  73. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 先ほど池見さんに対してお答えしたのでありますが、送金の事実は知つておりますが、この中日友好協会との関係等につきましては、いずれよく調べまして次の機会に間違いのないところをお答えしたい、こういうふうに先ほど答弁したところであります。御了承願えると思います。
  74. 堤ツルヨ

    ○堤委員 それでは、この事実に対してはどうしておられるか、どう見ておられるか、何か見解があるはずです。
  75. 小平久雄

    小平委員長 どうでしよう。それは調べた上で次の機会に詳しく説明するというのですから……。
  76. 堤ツルヨ

    ○堤委員 自主的な意見はないわけですね。
  77. 小平久雄

    小平委員長 よくわからないから、調べた上でということですからどうですか。
  78. 堤ツルヨ

    ○堤委員 いかに吉田内閣といえども行き過きておりますから、この点御注意申し上げておきます。  それから先ほど川端委員の御発言、亘委員の御発言、それから中山委員からも昨日切実な御発言がありまして、遺家族に対しては慰霊祭などをおやりになつて、積極的な追悼の意を表されるが、留守家族に対しては何ら具体的な政府の誠意が見られないということは、皆さん御不満を持つておられる方が多いのであります。これに対して先ほど政府の御答弁がありましたが、これに対する浦野参考人の御所見がございましたならば、この機会に聞かしていただいて、もし具体的な御要求などがございましたら、参考のために伺いたいのであります。
  79. 浦野正孝

    浦野参考人 先ほどその点については申し上げたのでありますが、われわれ留守家族団体のみで、情勢によりましてはやらざるを得ませんけれども、この機会でもありますので、ぜひ政府国会一緒になつてのほんとうに全国民一致の意思表示をもつて、特に抑留問題に対する大会を持つてもらいたい。これを政府国会の全責任においてやつていただきたいということを私は切望いたしておきます。  なおその点につきまして、先ほど来政府当局の御答弁なり、苅田先生の御質問なりを聞いて、私非常に驚きましたことは、第三国を通じて云々ということであります。もつともであります。これは非常に事務的なと言つては失礼かもわかりませんが、考え方であつて、こういう至難な大問題は非常に大きな見地からやつていただきたい。たとえば、第三国を通ずるということはもちろんでありますが、そういう手をまわす前に、なぜ直接相手方に動いていただけないかということであります。もしそれに対して支障があれば、その支障に対しては、少くとも人道的問題の解決は直接やるという了解を得るだけの努力は政府はしてもらいたいと考えます。  それから旅費の問題に関係いたしまして、外交関係ができなければ話合いができないという線で、ほとんど皆さん方はお考えになつておられるようにわれわれ留守家族にとつては思われますが、これはまことに意外であります。これは本来の建前から申しまして、私が冒頭に申しましたように、講和ができなければ、あるいは外交関係ができなければできない問題ではないのでありまして、それ以前に当然解決さるべきものができないで、今日に及んでおるのであります。  また中共の問題にいたしましても、これに技術的困難があるかというと、ないのであります。現に九州方面におきましては、抑留された漁夫を帰した来ております。またかつて昭和二十四年秋の引揚げでは、米ソ協定によるソビエトからの引揚げ船の中に、完全に中国共産党地区の人々——ソビエトの発表によれば、現地において解放したといわれておる部類の中に入るとだれもが見られる人たちが、入つて来ておる。従いましてこの問題は、今中共政府におかれてわれわれの気持ちをほんとうに理解され、人道的立場から帰そうと思われて、その措置をとられれば極端に言えば、舞鶴の引揚船をまわさずして帰つて来られる。問題は外交交渉ができなければということでは全然ないと私は思う。留守家族は全部そう信じております。  従いまして第三国を通じてとか、非常にノマルな状態外交交渉的な考え方の面だけで満足せず、非常に飛躍的に、これは論理的な飛躍でないと思いますが、中共に対する何らかの意思表示、呼びかけは当然あつて、しかるべきである。まだ留守家族の心情ときようの政府お話を聞くと、そごに非常に隔たりがあるということを感じて、非常に驚いておるのであります。私はあえてそういう質問をしようとは思いませんが、もし第三国を通じてできなければどうするんだと、ここに留守家族の人たちがおれば、おそらく聞くと思います。そういう点は国際法上の慣例からどういう例をとるかわかりませんが、この際直接の呼びかけは最も大事じやないかということと、冒頭申し上げました大会政府並びに国会におかれて真剣に考慮していただきたい。留守家族としてはそういうふうに考えております。
  80. 堤ツルヨ

    ○堤委員 ただいま政府国会あげて全責任をもつて国民的行事として積極的にやられたいという御希望でございますが、政府意見とはほど遠いものであります。従つてこの問題に関しましては、先ほど亘委員から御発言がありましたが、講和発効に際しまして單なるメッセージを出すとか、そういう問題でなしに、私たちはやはり遺家族の合同追悼会に匹敵すべき行事を国会のわれわれも政府に忠告いたしまして、実現するように何とかとりはからいたいと思いますので、委員長委員諸公に諮られまして、この委員会としてひとつお考えを願いたいと思います。  次に、外務政務次官のお言葉のあげ足をとるようでございますが、先般来から今日に至るまで次官の御返事を承つておりますと、非常に切実なこの委員会委員質問に対しまして、独立後の政策は、今浦野参考人の御指摘になりましたように、第三国を通じてやるとか、今までは何分にもどうすることもできませんでしたので、これからはやりますというような言葉を何十回か繰返されておるということに終始いたしまして、これはわれわれといたしましてはまことに不満きわまる言葉でありまして、浦野参考人たらずとも了承しがたい言葉でございます。もはや二十八日に独立を名実ともに控えておるとすれば、かくのごとき机上のプランをもつて積極的に乗り出すのであるという発表がこの委員会になされ、そうであるか、それじやひとつ国会協力しようという建前において、きようあたりは結論が出ておらなければならぬ。しかるにどの委員も穏健な方ばかりでございますから、政府委員のお言葉了承なさつたのでございますが、(「了承しておらぬぞ」と呼ぶ者あり)断じて了承できませんから、この点当然私は具体的な結論が出て、プランがあると思うのでありますが、これは示していただくわけに行かぬものでございましようか。それとも秘密でおやりになるのでございましようか。
  81. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの堤委員の御発言中、前段の分について申し上げます。実は先般遺家族に対する追悼式を政府でやるということにつきまして、非公式でありましたが、厚生大臣を中心に政府の各関係機関、それから私、厚生委員長とへ御相談があつたのでございます。その際はもつばら遺家族に対して講和発効を期してどういうことを国でやるかということが相談の中心であつた。結論を申し上げますと、五月二日に追悼式をやるということになつております。その翌々日でありましたか、実は私は私的に援護庁長官をたずねまして、遺家族に対するのと同様の処置を、留守家族に対しましても講和発効を期して何らかの行事をしてほしい、特に三日にやるという記念式典には留守家族代表をも参加させるような方途を何とか善処してほしいということを申し入れまして、援護庁長官もこれに対しまして、考慮してみようということであつたのでございます。ただ最近聞くところによりますと、五月三日の式典は、何か両院が主催でやるやに聞いておるんですが多少最初の政府としてやる独立の記念式典とはちよつと形がかわつて来たのではないかと思います。しかしいずれにいたしましても御趣旨はよくわかりますから、なお理事諸君と相談いたしまして、善処いたしたいと思います。
  82. 石原幹市郎

    石原(幹)政府委員 何か私が先ほどから申し上げておりますことに対しまして御批判があつたのでありますが、これはわれわれ率直にただいま当局の気持を申し上げたところでございまして、まことに遺憾なことではありますが、今までは日本が直接外交の前面に出ることができなかつたのでございまして、その点は若干隔靴掻痒の感じがあつたのであります。しかしながら御承知のごとく、平和條約にもいろいろ問題がありましたが、引揚げの條項等もこれは嚴として挿入いたしてあるところでございます。  それからただいままでソ連のモスクワの国際経済会議の問題であるとか、いろいろな呼びかけ等もあつたのでありますが、しかし日本政府といたしましては、この引揚げの問題、抑留者の帰還の問題、これをまず解決してもらわなければいかなる呼びかけがあつても応ずることができないというくらいの確固たる気持をもちまして、何をおいても抑留者の帰還をまず解決してもらわなければという気魄でこの問題に対処しておるのでございまして、その気持は十分くんでいただきたいと思うのであります。  それから先ほど来直接交渉というような意味お話もいろいろあつたのでございますが、これは外交上の問題といたしまして、名実ともに国交の回復しない国といろいろ直接折衝をするということは、実際上の問題としてできない。政府政府に対してやるということはできない事情であるのであります。そこでそれらの国と友好関係にある第三国を通じて、この問題を強力に推進したいということを言つておるのであります。強力にやりたいという言葉を使いますことは、平和発効とともに引揚げ問題等がうやむやになつてしまうのではないかというような御意見がちらほらありますので、決して外務当局としてそういう気持でいるのではない、発効後はさらにより自由に、積極的にやりたい気持であるということを申し上げたのでございます。具体的にどうこういうようないろいろお話がございましたが、これはすでに国連特別委員会等を通じましていろいろな働きかけをやり、ただいま資料の整備等もやり、あるいはすでにある国々を通じまして、中共に対する引揚げ問題に対していろいろの申入れなり協力を願つておるということは、それぞれ大体御了承のところであろうと思います。  それから今後、きつかけをつかめるたびごとにこの問題を推進して行きたいと思うのでありますが、具体的にここに紙に書いたこれこれということをごひろうするところまでには至つておりません今後発効の後のわれわれの対処する気持としては、先ほど申し上げたところで御了承を願いたいと思います。
  83. 若林義孝

    ○若林委員 ただいまの委員長の御発言の中にもございましたように、五月三日は国会が中心になるような行き方であるというようなことであつたのであります。もしそうなつたならば、一大国民運動の話が浦野参考人からの御意見にもあつたわけであります。そういう五月三日の式典を国会が中心となつてやるように、この引揚げ問題に対する一大国民運動の行事としても、ひとつ国会中心にやれるように本委員会にお諮りくださいまして、まずやれることは、気分を新たにしたときに決議案を出すということも一つ方法だと思います。それから外部において、五月三日に行われると同じ規模において抑留者引揚げ促進、それから留守家族援護に対しての気持を表明する、また世界協力を求めるという意味の一大国民行事を行うようにいたしたらいかがかと考えるのであります。幸いに先ほどの委員長の御発言中の、国会が主導的に五月三日の行事をやるということでありますから、それとあわせてというわけではありませんが、効果的なねらいを見て、それ以外の日にひとつとり行われるように希望するものであります。なおいろいろ発言したいのでありますが、今のに関連事項でございましたので、ちよつと発言させていただいたわけであります。
  84. 小平久雄

    小平委員長 若林君に申し上げます。誤解があるといけないと思いますが、実は先ほど申しました厚生大臣主催の相談会の席では、五月三日の式典はつまり独立の式典というものを中心にやつて、そこに遺家族代表も参加できるようにしたらどうかというお話であつたのです。ところが先般、これは党の代議士会の報告ですが、倉石君のその際の御報告によると、憲法発布の式典を何か従来と同じ形式でやるというような御趣旨の説明でありましたので、私は先ほどのようなことを申し上げたのです。しかし留守家族に対して国で何らか講和発効を記念してやつたらよろしくはないかという点、また国会ができ得るならば中心になつてつたらどうかという御趣旨につきましては、これはまたよく皆さんと御相談の上に後ほど善処いたしたいと思いますから、さよう御了承を願います。
  85. 堤ツルヨ

    ○堤委員 くどいようですけれども、私きのう援護庁長官にこの合同追悼会のことについて質問いたしました。そうすると政府がやるのだ、そして経費は、東京でやる大会は千五百万だそうです。各郡市区から一人ずつの代表が出て来るわけであります。ですから委員長は少し解釈を間違つていらつしやるのではないかと思いますが、そこをひとつよくお調べを願つて国会の主催になるというのとそれは違つて来ると思うのです。ですからひとつよく調べていただいて、留守家族に対してやつていただきたいと思います。  それから政務次官のただいまの御答弁でございますが、気持だけというのは、みんな気持だけはあるのでありまして、政局を担当なさる政府みずからの気持は何でございますけれども、具体的にはないか、きつかけをつかまえてやつて行くのだというような結論しか出ないということでは、実際心もとないことです。ですから私はただいまのかわりない外務次官の御答弁に対しては、不満の意を表しておきたいと思います。今日いまだ具体的な積極策もないということ、これは留守家族にとつてまことにお気の毒だと思います。われわれ委員会としてもまた別途の方法において、委員長理事会などに諮つて、ひとつ何かの結論を出していただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  86. 小平久雄

    小平委員長 堤委員にちよつと申し上げますが、政府がやるのは五月二日に遺家族の追悼式をやるのです。これは政府がやるのです。先ほど話したのは五月三日の式典の話なのでありまして、この点は堤さんの方が少し混乱されておるのではないでしようか。庄司一郎君。
  87. 庄司一郎

    庄司委員 先ほど保留させていただいた問題について、二つほど委員長希望し、委員長にお願いすること、及び浦野参考人一つほど伺つてみたいことがあります。  最初委員長に要望したいことは、先ほどの石原政務次官の御答弁のごとく、不肖本員が昨日パンデイツト・ネール女史の御好意に甘えて、積極的に中共治下におけるところの抑留同胞の即時帰還問題に関し、政府にその善処を求めましたところ、本日は幸いにもインドに出発されるところの外務省の、どういうお役の方かわかりませんが、適当な人があられたために、ネール女史に親しく伝言、あるいは懇請を頼まれたやの御答弁がありました。まことにおそまきながら欣快の至りにたえません。だがこれは政府の当然やるべきことでありまして、もし政府以外、われわれ八千万同胞代表する最高機関であるこの国会が、衆議院の議長の名において、あるいはまたそこに困難があるならば、われわれのこの委員会委員長として、ネール女史に対し感謝と同時に懇請を申し上げるというような国会の意思の伝達を、何らかの方法において、電報なりあるいは文書なり、あるいはまた国際ラジオ放送を通して、委員長みずからマイクの前に立たれ、何らかの方法インド外交官として大使の地位にある有力なるネール女史に懇請することがまことに時宜を得た、またこの委員会としての積極的な建設的なあり方であると思いますので、委員長におかれては、適当な時間に理事会にお諮りの上御善処願いたいと思います。  はなはだ僣越でございますが、本委員会の引揚小委員長として、先ほどプリントをして同僚各位にお配りをいただいたこの毛澤東閣下に対する懇請書は、もとより私案の私案、浅学短才な私の劣悪ななる文章でございまするが、もしそれ幸いに理事会等において御採用に相なり、あるいは多少あるいは大部分御修正あられましても、これらの草案を活用されることに相なりましたならばまことにありがたい仕合せであると思うのであります。英文での書き方も知つてはおりますが、私は丁寧なる荘重なる漢文体をもつて書いてみたのでありますが、この際一、二分でありますので、これを朗読することのお許しを得たいと思います。   速かに同胞の帰還を乞ふの疏毛主席、澤東閣下   閣下は曩に中華人民共和国の政権を樹立せられ、その綱領として、「中華人民共和国の人民は、思想言論人身居住等の自由を有し、又真実を報道する新聞の自由を守り、新聞を利用し国家人民の利益を汚し、破壊し、世界戦争を扇動する事を禁止する云々」、との発表をなされしことは、世界文化史上、稀に見る大憲章であり、縦令如何なる主義思潮に基く国家と雖も、この卓抜なる人権の尊重せる憲章を見る時、古今東西決して悖らざる大道であると吾等は確信ずるものである。  顧みるに今次戦争の禍根は、皮相なる両国の利害関係の衝突と、第三国の圧迫等よりして、遂史上空前の最大不幸を惹起せしめ、茲に貴国に対しても、言語に絶する惨害を與へしことは、我々同胞斉しく陳謝措く能はざる所、然してこの挙たるや、国民の総意に非ずして一部指導者の盲目的行動たるに起因し、その結果、内にしては、都市の廃墟、田園の荒蕪、鰥寡孤独野に満ち、まだ見ぬ父を慕ふ幼兒の巷に在り、老の将に冥目せんとして尚子を叫び続ける老寡の陋屋に在る悲惨を見、外にしては貴国並にソ聯邦に抑留せられ、夢寝の間にも眼瞼に彷彿たる血族の姿を見る、多数の同胞あるを聞く、噫、これ、この責孰れに在るか、天にあるか、しからず、他国にあるか、否、於是か、吾等も民主平和の思想に背反せる結果なるを猛省し、誤りたる帝国主義的軍国主義の徹底的排除に努め、只管平和国家の再建に心身を傾倒し、一は平和の礎石たらんとし、一は在外同胞の一日も速かに祖国の地に於て母子対面の速かならんことを、八千万同胞悉く冀求し、念願しつつあるのである。  毛澤東閣下、吾々は閣下のスローガンを信じ閣下の政策は、側近者は勿論、貴国の如何なる偏隅にも浸透しつつあるを想ひ、以上縷々述べたる如き可憐なる我が同胞の現状を諒とせられ、閣下の御高徳に信憑し、一日も早く帰還の許可を與へられんことを、伏して懇願するものである。  勿論吾々は或る一部の報道の如く、賠償の一部としての抑留、又は使用、或は又第三次世界大戦に備へての抑留等々の言には、決して信を措かぬものである、如何となれば、若し之が信なりとせば、閣下の言たるや全く宣言に反し、又政策上敢へての抑留なりとせば、ポツダム宣言の不履行となり、国際情勢の紛糾も亦量り知れざるものあるは、閣下の夙に御了承のことと信ずるを以ての故である。  冀くは賢明なる閣下の英断により、速に我等同胞の帰還を断行せられ、閣下の行迹、人類史上赫々たる範を示され、併せて世界平和に貢献せられんことを懇請するものである。  閣下其れ亦之を憐察せられよ。  かような意味でございます。もしこの草案の中、前申し上げたような不要な点、あるいは不備な点、あるいは修辞等のありました場合は、いかようにも理事会等において御修定をいただいた上において、小委員長の草案を、骨子だけでも活用され、あるいはネール女史に送られ、あるいはその他の適当なる方法をもつて毛沢東主席に送られ、もつて国会の意思のあるところを、この委員会の希求するところを御伝達せられんことを要望してやまないのであります。これが一点。  もう一点は、浦野参考人にお伺い申し上げたいことは、講和発効と同時にいわゆる遺家族、身体障害者の元軍人の御諸君、これらの方々は大体援護法によつてある程度の生活の基本を得ることと相なりまするが、いまだ抑留されて帰られざるところの留守家族等々に対しての政府の措置、すなわち未復員者給與法あるいは特別未帰還者給與法等々によつて留守家族はどういう待遇になるか。どういう感想を持たれておるか。全国留守家族代表的協議会の最高幹部としてのあなたの御意見をお伺いして参考にしたいと思います。
  88. 小平久雄

    小平委員長 庄司委員委員長に対しまする御提案につきましては、理事会に諮りまして処置いたしたいと思います。
  89. 浦野正孝

    浦野参考人 お答えいたします。御承知のように留守家族の一部に対しまして、現在未復員者給與法、特別未帰還者給與法なるものが出ておりますが、これは名前の示します通り給與であります。援護では全然ないのであります。従いまして現在全留守家族中の多少の異同——前渡しを受けられる、受けられないの差はありますが、一応渡つておりますのはわずかに四割でありまして、全抑留同胞の大部分の六割近いものはこの恩恵に浴していないのです。しかも抑留ということは、日本の今までの歴史にないことでありまして、抑留同胞に対する私ども希望といたしましては、これは誤れる戦争の当然の結果とはいえ、国家的に全国民が当然広汎な政治的、道義的な責任をもつて抑留同胞並びにその一家の支柱を抑留されておりますがゆえに、今日困窮しておる留守家族に対しましては、しかるべく国家が処遇をして参るべきだということは、私どもの基本線でありますけれども、御存じのように占領下状態でありまして、これができない。そのためにやむを得ず今日に至つておる。これを見ますと、いわゆる変則的な形であると申してもあえて過言でないと思いますがいわゆる給與という形で一部の者に支給されて来たというのが今までの現実であります。従いまして今日におきましては、講和独立の日の近く、占領下のいろいろな制約がなくなるのでありますから、当然本来の姿に返りまして、しかも当時の情勢から見ますならば、終戦後すでに七年を経過した今日、なお国家及び民族の犠牲となつて抑留されておる同胞家族に対しましては、当然国家として措置があつてしかるべきだと考えております。従いまして私どもは昨年の暮れ、あるいは本年の二月以降特に国会両院にお願いして参りましたことは、第一は、いわゆる国家との民族的つながりがあるから給與をやるという在来建前からは全然意味合いを異にしまして、いわゆる抑留されておるという事実から、その抑留者並びにその一家の支柱を抑留されておることによつて非常に困窮しておる留守家族に対しまして、国家として補償的な処遇をもつてされたい。すなわち具体的に申しますならば、現在四割にしかすぎないが、これを全家族に対して適用していただきたい。その適用の限度につきましては、現行の本人本俸の千円というものをすべての点から割出しまして、せめて四千円の線にまで上げていただきたい。以下すべてそれに準じてやつていただきたい。これが私どもの一番の希望であります。この問題が抑留問題の一番本質に関する問題でありまして、抑留という事態に対する認識がなければ、二の結論は出て来ない。遺憾ながら過般来の法案におきましても、この問題が取上げられなかつた、しかもその原因が、私どもの見ますところでは、ささたる末の問題でなくして、実に抑留ということの本質がわからない方々が遺憾ながら——先生方は別としまして、特別委員会委員以外の方々には非常に多い。簡単に申しまして、遺家族留守家族の区別がつかないような方が多い、これを一緒にしておる方が多い現状だと私ども見ておりますが、抑留問題に対する認識が足らぬところから発しておることは、私どものさらに遺憾とするところでありまして、従いまして早急の間に合わないにいたしましても、ことにこの特別委員会におかれましては、この問題につきましては早急に実現していただきたい。しかも先ほど来私がここで申し上げましたが、これは単に留守家族に対する手当のみならず、先ほど来数字の問題も出ましたけれども、もしそれほんとうに政府が全抑留家族に支給するというデータができましたならば、将来の国際間における数字として最も有力な、あえて多言を要せずして、これだけの抑留者がいるのだという重要なデータになると考えられるのであります。たとえば外務省におきましては、あらゆる点で努力されておるようでありますが、管轄の範囲内だけでなく、さらに本来こういうことは外務省所管ではないかもしれませんが、外務省あたりからもこういうことを主張していただくということが、こういうことを推進するのに非常に役に立つのではないかと思います。外務省で非常に大きくやつていただきたい。それには一つの大きな局をつくらなければだめだということを極力私どもはお願いしたり、言葉を荒らげたりいたしましたのも、そういう広い角度からこの抑留問題を考えていただきたいということにほかならないのであります。従いまして簡単に結論だけを申し上げましたが、いろいろこまかいデータを申し上げますならば、従来両院のこの委員会におきまして、中にはすき好んで残つた者がおるからという御意見がときどき出ることを伺つております。が、これは多少私の言い過ぎかもしれませんが、そこまで申しますと、たいへんなお考え違いでありまして、中にはすき好んで残つた者は多少はあるのでありますが、これも政府並びに全国民がどの程度抑留問題を考えているかという問題に由来するのでありまして、もしもすき好んで残つている人間があるといたしましても、私自身申し上げたいのは、全抑留同胞に対して手当を支給していただきたい。しかしてすき好んで残つた者はだれであるかということを政府当局で調べられたい。そうして政府当局ではつきり調べられ、また向うの本人も了承した者に限つて、その中から除外するということにしていただきたい。それが当然だと私ども考えます。すき好んで残つた者が数名まじつておるがゆえに、全部の人間に支給することができないということは、非常にノーマルな状態でない。前例のない状態に処する措置といたしましては、非常に誤つたやり方であると思います。  なおすき好んで残つた者ということについてもう一つ申し上げておきたいことは、案外御存じない方が多いかもしれませんが、昭和二十年九月の当時の次官会議の通牒をもちまして、残留同胞に対して残れという趣旨ではございませんが、非常に今日の禍根を招くような通牒が出ております。これなどもどもは善意に解釈いたしまして、一応残留している方は政府が相手国と適当な交渉をして、その生命、財産、自由の保障をしてやるのだということが言外に含まれていると思うのでありますが、これを信じて残つた人がある、しかも今日の状態になつて日本に帰ることができない、家庭から切り離されているということにつきましては、もちろん当時の政府と今の政府の責任者が違うでしようが、これは政府及び国民として重大な責任を感ずべきではないかと思いますので、一言つけ加えて申し上げておきます。  さらに結論として一言申し上げますならば、従来の未帰還者給與法というものと別個に、全然立法理念をかえました、抑留ということに対する国家及び全国民の政治的、道義的責任よりするその補填というか、補償的処遇を講じていただきたい。並びにその処遇の金額につきましては、ここに詳しく申し上げますと長くなりますが、現在の未帰還者給與法的な建前から考えて行きますならば、本人の本俸に該当するものをせめて四千円程度まで上げて  いただきたい。この二点でございます。
  90. 池見茂隆

    池見委員 本日の委員会を通じまして、引揚げ促進の強力なる運動を講和発効を機会に展開するということは、各委員から御発言があつたと思うのでありますが、この場合、遺家族に対する戦没者の慰霊祭を五月二日に国家行事として行われるということでありまして、これに対して遺族を御招待申し上げるということについては、昨日中山委員から御発言がありましたが、その点は援護庁長官からの答弁によつて一応解消いたしました。われわれといたしましては、こういつたいわゆる一つの大きな国家行事が行われるという場合において、今浦野参考人から話がありましたように、留守家族は遺族であるか、あるいはやがて遺族になるべき人であるという性格を持つておることは、これはよく了承できるのであります。そうしたならば私は今申し上げたように、戦争犠牲者としてその部門部門において国家から一応の処遇は受けられましたけれども留守家族に対してはまだそういつた点は、単に一部に行われる未帰還者給與、あるいは特別未帰還者給與といつたような問題だけであります。こういつた留守家族に対する一つの国家的行事として何か催していただきたい。委員長理事会等においてよく検討された上で、政府当局にも要望すべきであるということを御相談申し上げたい。
  91. 小平久雄

    小平委員長 承知いたしました。さようとりはからいます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 今の池見さんの質問に関連して、一言政府当局の用意をお尋ねしたいのでありますが、特別未帰還者給與法、特還法と略しておりますが、この特別未帰還者給與法による給與問題で、今度できる戰傷病者戦没者遺族等援護法案の内容と関連して、すぐ手を打つてもらいたい問題は、参議院で修正されるといなとを問わず、とにかく衆議院を通過した案には、六十歳以上の親であろうと、それより若い親であろうと、とにかく親に対しては遺族年金を差上げておるのであります。この点留守家族の方は、六十歳以上、つまり生活の根拠となつた子供の親で、六十歳以上になつた者に対してのみ扶養としての取扱いをされておるのであります。この差別の撤廃を同時にやつておかないと、非常な片手落ちになるのでありまして、外務省としましてさしあたりそれを同時にされる用意があるかどうか、それをお尋ねしたいのであります。
  93. 山本淺太郎

    ○山本説明員 私戦没者、戦傷病者の援護法の最近の案をよく承知していないのでありますが、これは先ほど浦野参考人からお話のありましたように、法律の建前と申しますか、御承知のように未復員者給與法、特別未帰還者給與法は扶養手当という形をとつております。従いまして援護法との関係における権衡もありますが、同時に公務員の一般的な扶養手当という点からいいますと、やはり大十歳以上という制限がついております関係もありまして、やはり根本的な法律の体系建前根本に及ぶ問題であろうと存ずるのであります。また六十歳以上の親の問題につきましては、そのような差別があるのでありますが、実体的には現在の特別未帰還者給與法なり、未復員者給與法一が有利な面も部分的にはあるのであります。すなわちある種の兄弟姉妹といつたものにつきましては、両法においては適用が及ぶのでありますが、私の承知しております遺家族援護法には入つておらないといつたような、逆にこの方が不利な面もあるのでありまして、体系が違う関係上、支給対象、あるいはその対象の條件というものを完全に一致せしめることは相当至難ではないかと存ずるのであります。私どもとしては、先ほどるる御意見のありましたように、現在の二つの法律には、根本的な建前におきまして、今日の段階においては不適当な点があることを認めまして、現在進行いたしております遺族の援護法の帰趨とにらみ合せまして、将来適当な時期にでき得るならば改善したいと心組みを持つておるような状況であります。
  94. 小平久雄

    小平委員長 それではこの程度参考人及び政府当局に対する質疑を終了いたします。  参考人におかれましては、長時間にわたり留守家族代表して貴重なる御意見お話くださいまして、本委員会の調査上非常に参考となりました。委員長として厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十五分散会