○三橋
政府委員 戰歿軍人、傷病軍人、その他軍人の恩給及び
遺族の扶助料という問題に関連した御
質問だと思うのでございますが、これにつきまして私からお答えいたしたいと思います。御承知の
通りに、軍人及び
遺族の恩給及び扶助料につきましては、
昭和二十年十一月二十四日の連合国最高司令官から
日本政府に発せられました恩給及び給与と題する覚書に基きましてとめられまして、この覚書に基いて、御承知の
通り昭和二十一年勅令第六十八号を制定いたしまして、これで従来からの軍人及びその
遺族の恩給及び扶助料は、爾来支給を禁止または制限されて来ているのであります。ところで講和條約が効力を発生するということになりますれば、連合国からのこの命令は、その効力がなくなるわけであります。
従つて従来法律によ
つて与えられておりましたところの軍人及びその
遺族に対する恩給及び扶助料をどうするかということが、当然問題にな
つて来るわけであります。私
どもはこれについて検討を加えて来てお
つたのでありますが、何と申しましてもこれは非常に大きな問題であります。そのことはもう皆様も御承知のことと思いまするが、
日本政府といたしましては、連合国の命令がその効力がなくなりますならば、
理由なくしてこれを従来
通りにしておくことはできないことではないかと私は思
つておるのであります。ことに戰争の
犠牲者といわれるところの戰歿軍人の
遺族また傷病軍人の
方々は、多くの恩給受給者の中におきましても最も悲惨な境遇にある
方々だと私は思うのであります。一般公務員に対しましては、恩給法というものを設けて現実に恩給を支給しておきながら、そういう
ようなお気の毒な
方々がしいたげられる
ようなことを今後続けて行くということは、私は
国民の感情からもおそらく許されないことではなかろうか、こう忖度しております。これはいろいろな議論があるかと思います。従来の軍人に対しまする
国民の感情いろいろあります。ですから人によ
つてはとかくの議論もあるかもわかりません。しかし多くの純情な心から一身を国に捧げてしま
つた戰歿軍人の
遺家族の
方々に対しましては、また傷病軍人に対しましても、今申し上げました
ような感情が多くの
国民の感情ではなかろうかとも想像いたしておるのであります。それならば、講和條約の効力発生と同時に恩給を元
通りに返すかどうかということが、その次の問題となるわけであります。ところでこれを返すということになりますと、まず考えなければなりませんことは、御承知の
通りにこの
関係者の数が非常に多いということであります。昔の
通りのままにしますと、老齢軍人、その他の一般軍人もありまし
ようし、それから傷病軍人、
遺族もありまし
よう。そういうことを考えてみますと、かなり大きな数になる。そうするとその金額もかなり大きい金額になる。また現行恩給法のままによ
つて恩給を支給してよいかどうかということも考えなければならない。それはどういうことかと申しますと、恩給法は、終戰後におきましてもたびたび改正されて今日に至
つておりますが、しかしその改正は、軍人及びその
遺族の恩給が全然支給されず、または制限をされているということが前提とな
つて今日まで来ているのであります。
従つて軍人、
遺族の恩給、扶助料を元に返すということにな
つた場合におきましては、新たなる見地に立
つてまた検討を加えなければならない点も少くないのであります。それからまた元に返すといたしました場合におきまして、これをどういう範囲で、どういう方法によ
つて、
国民全般が納得行く
ような方法を講じて行くかということも、またよく検討を加えて行かなければならない問題だと思います。そういうことをかれこれ考えてみますと、これは広く官民の有識の
方々の公正妥当なる意見を十分に取入れて、そうしてこれに対する善後
措置を講ずることが当然なことでないかと思
つているのであります。しかし講和條約の効力の発生と同時にこの
措置ができるかということになりますと、遺憾ながらできない
ような
——私
ども事務的な検討その他いろいろや
つておりますが、しかしながらそのままやるにつきましてはいろいろの議論もあることでありますので、
政府といたしましては、いやが上にも慎重を期しまして、そうして講和條約の効力発生がいつになるか、近いうちだと思いますが、効力の発生しました後におきまして、
昭和二十八年の三月三十一日までは現在の
状態を続けて行
つて、その間に今申し上げました
ような
審議会をつく
つて、
国民の納得の行く
ような公正妥当な結論を出した。今逢澤
委員の仰せられました
ように、一般文官との
関係につきましても十分考慮してもら
つてそうして公正妥当な結論を出していただきまして、その結論を基礎といたしましてこの問題に対する善後
措置を講じて行きたいというのが今の
政府の方針でございます。しかしながらその善後
措置を講ずるまで、それなら傷病軍人なり軍人
遺族の
方々をそのままにしておくかということが問題でございます。それはとうていそのままにしておけない現在の事情でございます。そこで
政府といたしましては、
遺族の方や傷病軍人の方に対してはたいへんお気の毒ではございますけれ
ども、つなぎという言葉を使うことを許していただきたいと思いますが、そのつなぎとして、今厚生省の方から言われました
ような、いわゆる
援護的な
措置を講じて行く、こういう
ようなことにな
つておる次第でございます。