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1952-01-31 第13回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十二月十五日  小平久雄君が委員長に、逢澤寛君、池見茂隆君、小西英雄君、高橋等君、若林義孝君、坂口主税  君及び受田新吉君が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十七年一月三十一日(木曜日)     午後二時十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 逢澤  寛君 理事 小西 英雄君    理事 高橋  等君 理事 坂口 主税君    理事 受田 新吉君       飯塚 定輔君    川端 佳夫君       庄司 一郎君    玉置 信一君       玉置  實君    中山 マサ君       丸山 直友君    亘  四郎君       柳原 三郎君    堤 ツルヨ君       苅田アサノ君    高田 富之君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  三橋 則雄君         外務政務次官  石原幹市郎君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局付) 三宅喜二郎君         外務事務官         (アジア局第五         課長)     上田 常光君     ————————————— 一月二十八日  委員河口陽一君辞任につき、その補欠として羽  田野次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  海外胞引揚に関する件  遺家族援護に関する件     —————————————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  本日は海外胞引揚に関する件及び遺家族援護に関する件につき議事を進めることにいたします。小西君。
  3. 小西英雄

    小西(英)委員 ただいまゼネヴアに開かれております国際連合捕虜特別委員会委員に対しまして、当委員会として感謝を含めた激励の文を送つていただきたいと考えております。その点をひとつお諮り願うと同時に、またわが日本代表にも激励文を送つていただきたい。もう一つは本会議を通して適当な時期に決議文を送つてもらいたいということを希望いたします。
  4. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの小西君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたします。なおその案文及び送達方委員長に御一任を願つておきます。
  6. 小平久雄

    小平委員長 次いで海外胞引揚げの問題及び遺家族援護に関する問題につきまして、その最近の経緯につき当局より説明を聴取いたしたいと存じます。まず引揚げに関する問題につき当局説明を聴取いたします。三宅事務官
  7. 三宅喜二郎

    三宅説明員 まず第一にその後における引揚げ状況について御説明申し上げます。  米、英、濠等からの引揚げは、昭和二十二年末をもつて戰犯者以外の引揚げが全部完了してしまつた。それからソ連及び中共地区においては、なお約三十七万に上る未引揚者がある。そのうち三十四万については政府の方で姓名その他が判明しておるのである、こういうことはもうすでに御承知だと思うのでありますが、そうしてソ連地区からの引揚げ昭和二十五年四月の信濃丸による集団引揚げ、それ以後は行われていないのであります。ただ昭和二十五年四月にタス通信によりましてソ連の権威ある情報として報道せられました約二千五百名、向う側が残つておるとして発表いたしました二千五百名のうちで、当時病気として抑留されておつたと称せられておる九名のうちの八名が昨年の九月に帰つて来られました。それからその二千五百名の中の戰犯者と称せられておつた人たちの中で、一名が戰犯の刑を終えて昨年の十二月に帰つて来られました。それ以外にソ連領からの引揚げはないのであります。  次に中共地区からの集団引揚げは、昭和二十四年十月の高砂丸、山澄丸による引揚げ以後集団引揚げは行われておらないのでありますが、個別的なる引揚げというか、帰還者が二十五年及び二十六年に、少数ではありますが、あつたのであります。二十五年中には九十九名、二十六年中には六十五名、合計百六十四名がみずからいろいろの困難を切り抜けまして、船舶その他についての手配もし、個別的に引揚げて来られたのであります。引揚げについての状況はそういうことでございます。  次は現在の国際連合引揚げのための特別委員会のことについて、その後のことを御報告申し上げます。わが政府から昨年五月十四日及び六月十九日に国際連合に対して出しました書簡に対しまして、八月十五日付で国際連合の方から回答があつたのでありますが、それはわが国情報に対して感謝の意を表する、また特別委員会日本に来られて親しく遺家族状況を見、わが国がこの問題についてどういうふうに調査しておるか、どういう資料を持つておるかを親しく見てもらいたいということに対する招請を出したことに対するお礼を述べ、しかもこの委員会昭和二十六年の十二月に会議を開いて、そうして各国政府のいろいろな回答情報その他を持ち寄つて今後の委員会活動を相談することになつておるから、現在では日本政府招請を考慮することは適当ではない、こういう回答があつたのであります。その後十二月一日付で、本年の一月から特別委員会を開くから代表を出してもらいたいという招請が参りまして、それに対し斎藤、上島代表が向うに行かれました。目下会議に出席しておられるのであります。  会議は一月二十二月から開会せられまして米国、ルクセンブルグ、ドイツ、イタリア、英国、フランス、濠州、日本、ベルギー、オランダという十箇国が代表を送つたのであります。これはもちろん委員を出している三箇国のほかの出席国のことでありますが、十箇国が参加したのであります。ソ連代表を送らなかつたのでありまして、ゲレロ委員長開会にあたつてソ連代表がもし出席しておれば、本委員会の仕事は非常に容易になつたであろうのに、ソ連代表を送らなかつたことは、われわれの大いに失望し遺憾とするところであるということを述べております。二十二日に各国代表がそれぞれ演説をいたしております。わが代表も用意して参りました引揚げ問題に関するパンフレツトを各代表及び新聞方面に配りまして、それを補足するようなステートメントを開会当日になしたのであります。その配りましたパンフレツトは、すでにわが政府白書等で発表しておる内容のものでありまするが、第一には、今までに各地から引揚げて来た人数、まだ引揚げて来ておらない人数数字で表わしたものであります。第二は、ソ連領及びソ連の支配しておつた地区からの引揚げの今までの経過を述べたものであります。第三番目は、ソ連領及びソ連の支配しておる地域からの未帰還者数出子についての説明が書いてあります。それから第四番目には、ソ連抑留されておるところのわが同胞に対するソ連取扱い、ことに戰犯嫌疑者、戰犯受刑者等に対する実際の取扱いぶりを具体的に記述してあるのであります。それから第五番目には、中共地区抑留されておる日本人の状況、その種類と申しますか、そういつた問題、ことに中共地区における一万八千に上る婦女子の悲惨なる状況を書きまして、戰犯の未引揚者はもちろんであるけれども、こういう婦女子引揚げを早くやつてもらいたいという関係国に対する要請と、委員会活動を要請したパンフレツトであります。  その補足的の説明として齋藤代表のなした要点を申し上げますと、日本国政府及び日本国民は、引揚げ問題に非常に大きな関心を持つておる。そうして今回の特別委員会会議の成果について多大の期待をかけておる。自分たち留守家族の涙の見送りを受けて故国を出発して来たのであるが、このことは、留守家族がいかにこの会議に絶大な期待をかけておるかを物語つておるということをまず第一に強調いたしまして、それから先ほど申しましたように、第二点はソ連及びソ連が支配しておつた地域の未帰還者で、名前がわかつておる者は三十四万人あるということを述べまして、第三点において、これらの者の生死を明らかにし、生存者はすみやかに送還し、もし何らかの理由でどうしても抑留を必要とする者については、その抑留者国際條約、国際慣習従つて人道的に待遇することを関係国に強く要請する、及びその実現のために本委員会があつせんせられんことを心からお願いする次第であるということを訴えまして、ついで第四番目に、これらのうちでことに悲惨なのは、先ほど申しましたよう中共地区における難民、ことに婦女子であるから、一日も早くこの気の毒な人々を帰してもらいたいということを特に訴えました。それから第五番目に、日本委員会日本に来訪されることを重ねてお願いするということを述べました。それから第六番目に、日本は昨年の夏に平和條約を結んで、現在この條約が各国によつて批准される日の早からんことを待つておるのだが、この喜びに浴し得ない人々がある。それは言うまでもなく留守家族である。でありますから、これらの人々喜びを与えない限り、日本にはほんとうの平和は訪れないのだということをもつて結んでおるのであります。そうして一月の二十三日から、各国代表別にその委員会委員と個別的に懇談したのでありますが、わが代表は二十四日から委員と懇談したのであります。そうして席上で日本代表は、このパンフレツト補足的説明をさらに行い、またいろいろな資料を提出いたしまして、そうして重ねてその調査団日本派遣を要請したのであります。その際になお上島代表は、留守家族強き要望を伝えましたところ、いろいろと質疑応答があつたのでありますが、特に委員長から、日本調査団派遣を要求する理由について質問があつたのであります。これに対しまして代表は、調査団が親しく日本を訪れて、日本資料が真実である、確実なものであるということを現場の日本において確認せられたいということ、それから調査団遺家族状況を親しく見られ、また調査団が来られれば遺家族激励することにもなる、こういう二つの理由をあげまして、調査団の来日を特に要請した、こういうことであります。  現在までにわかつておりまする特別委員会状況は、以上の通りでございます。私の説明はこれをもつて一応終ります。     —————————————
  8. 小平久雄

    小平委員長 次に遺家族援護の問題に関しまして、援護庁長官説明を求めます。木村政府委員
  9. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私このたび援護庁長官を拝命いたしました木村であります。戰傷病者並びに戰歿者遺族等援護に関しましては、従来から種々のいきさつがございまして、これに対して特別なる何らの措置もとられて参らなかつたのでございますが、各般の情勢からいたしましてこの援護がある程度実施できるという段階に達しましたので、政府といたしましては、この問題につきまして慎重に審議研究を続けて参つたのであります。なお現在の段階といたしましては、財政的の理由その他によりまして十分なる措置ができないという状態にございますので、今回の議会に予算案は提出になつたのでありますが、なおこれに伴う法律案を提出いたします準備をただいま進めているような次第であります。ただ、その内容は先ほど申しましたような、きわめて不十分なものでございます。しかしながら現段階としましては、これで行く以外にはしかたがないという状況でございますので、とりあえず応急的な措置といたしまして前述のような決定がいたされまして、ただいま事務的にわれわれの方としてはいろいろ準備を進めておる次第であります。
  10. 小平久雄

    小平委員長 これより質疑に入ります。まず引揚げ問題に関する質疑を許します。堤ツルヨ君。
  11. 堤ツルヨ

    堤委員 私は復員局に対しまして、遺骨の問題で少々緊急的に質問をいたしたいと思いまして、他の方々質問とは別にこれを許していただいたわけであります。他の質問はあとに譲つて遺骨の問題だけをただいまいたしたいと思います。  けさ新聞はどの新聞を見ましても、皆さん御存じ通り、大新聞が全部硫黄島の遺骨の問題を取上げておるわけでございます。ことに今遺家族援護の問題が大きく政治問題化され、なお大きな社会問題として取上げられておりまして、孤島の中にある遺骨の問題に対しましては、非常に日本民族といたしまして注目の的になつておるのでございますが、けさの毎日新聞社会面を見て実は暗涙にむせぶとともに、実に政府当局に対して忿懣を禁じ得ない記事が出ておるのでございます。都下の町田地区の一警察問題に端を発しまして、石川という男が自分の家の縁の下に一ぱい遺骨箱を並べておりまして、これがいろいろ調べて行きますと、第一復員局から沖繩出身軍人軍属遺家族に渡すべき遺骨六百余体、それから千葉の第二復員局留守業務部——これを沖繩班と称しておりますが——でも同様に五百余体、遺骨引取給与金を二百余万円詐取している疑いがあるということが紙上に取上げられております。  終戰六箇年講和発効前といたしまして、単独立法でもつて何とか国家公務によるところの死亡者犠牲者に対して国民は衷心より精神的な面からと財政的な面からと大いに感謝と陳謝の意を表さなければならない時が来ております。この第十三国会もあるいは政府がいうところのお燈明料程度ではこの予算案も与野党を別にいたしまして、そう簡単には通りかねまじき空気にある今の予算案審議の最中であります。国民の貴重な税金によるところのこの金が、かくのごとき英霊を冒涜した一つの形においてこうした遺憾な問題が現われて来ましたことは、いかに今日まで復員局業務を遂行して来られたか、はなはだ疑義を持つものでございます。ここにこの問題に関しまして一応説明を承り、御答弁いかんによりまして、またあらためてこの問題について質問を展開して行きたいと思います。
  12. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいま堤委員から御質問がありました沖繩関係戰歿者遺骨につきましての問題でございますが、戰歿者遺骨遺族渡しますることに相なつておるのでありますが、この場合に、これに対しましては引取経費並びに埋葬経費を支払つておるのであります。沖繩出身の方の遺骨につきましては、内地におきまして正当の留守担当者でない、他の方に交付いたします場合におきましては、沖繩に在住いたしておりまする正当の留守担当者から遺骨引取りにつきまして正規委任状を受けましてさらにそれが戰歿者であるということの市町村長証明書を添えまして復員官公署にこれを提出させるようにいたしておるのであります。その書類を審査いたしまして、さらに現地に照会した上でその受取人に委任されましたものを渡しまして、その遺骨埋葬経費及びその引取りの経費を添えて手渡しすることにいたしております。これは特に沖繩に在住いたしておりまする遺骨引取りの遺族方々からなるべく早く遺骨を受取りたいという熱烈な希望がありますために、そういうよう処置をいたすことにしたのであります。こういうことにいたしまして引渡しましたのでございまするが、本日新聞紙に載つておりまする石川氏との関係でございまするが、石川氏が復員官公署との間におきましてどういうよう関係になつておりまするかと申しますと、東京都の世話課におきまして、石川氏が正規委任状を持つて参りましたものにつきまして遺骨三十三柱を渡しておる、そういうことに相なつておるのでありますが、ただそれだけでございまして、それ以外にただいまおあげになりましたような多数の遺骨石川氏にお渡しはいたしておらないのであります。従いましてなおその詳細等につきましては、今後新聞等記事もございますので、十分調査しなければならぬと思いますが、世話課におきましていたしましたのはそういうことに相なります。
  13. 堤ツルヨ

    堤委員 ただいまの援護庁長官の御答弁就任早々でございますし御無理ないと思うのですが、はなはだ遺憾な御答弁であると私は思うのであります。東京都の世話課においては三柱の英霊渡したことだけがはつきりしておるとおつしやいますけれども、事実こうして新聞記事を見ますと、遺骨を縁の下に並べておる写真が出ているのであります。しかも内妻の女の人が言つておりますのには、千二百基の位牌がいまだに遺家族の手に届けられないで同家にあるということを言つている。この受取りを始めてから、石川さんは小田急の沿線に大きな家を建てて、猛犬でまわりに用心をさせまして、ちよつとやそつとで寄りつけいようにしているというようなことなども明細にしるされておるのであります。少くも大毎日がいいかげんな記事をつくつたのではあるまい。こういうよう記事が出ておりますのに、援護庁長官はこうしたことを朝新聞で見ておきながら、今のよう答弁しかできないような御勉強しかしておられないということを私非常に残念に思うのでございますが、朝これをごらんになつたときは、長官はどういうふうにお考えになりましたか。ちよつとその辺を伺いたいと思います。
  14. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまの数字が少し違つております。私は三十三柱と申しました。三柱ではございません。三十三柱につきましては、正当の留守担当者からの正規委任状市町村長証明書がついておりましてこれを渡したのであります。それ以外につきまして復員官署からお渡したことは全然ない。これはさつそく調べたのでありまして、私ども承知いたした結果はお渡ししていないのであります。ただ内地におきまして、そういう正当の留守担当者からの遺骨引取りにつきましての委任状市町村長証明書を添えて、いろいろたくさんの人からその引渡しの願出はございました。その引渡しはいたしておるのであります。そのほかに石川氏のほかにも三十数名の方々にお渡しをいたしておるのであります。従いまして復員局といたしましては、復員官署を通じまして石川氏に渡しましたのは今申しました数字でございます。それ以外のものをどういうふうな手続石川氏が持つておられましたか——はたして持つておられるかどうかということにつきましても、私の方ではわからないのであります。復員官署といたしましてお渡しいたしました数字は今申しました数字でございまして、それに贈呈いたしますところの埋葬経費並びに引取経費をお渡ししてある。従つてこれは当然遺族の方にさしあげなければならぬと考えておりますが、正式にそういう委任状を持つておられるのでありますから、遺族との間に正式の連絡があつたというふうに考えております。ただその委任状が本物かうそかということにつきましては、私どもの方ではわかりません。一応正当のものと認定せられたのでございます。
  15. 堤ツルヨ

    堤委員 現在では、日本政府沖繩に対するところの行政、司法、立法的措置というものは、一切禁止されておるのですが、こうした状態にある、しかも非常に沖繩出身英霊の多いという問題に対して、復員局委任状一枚でこういう遺骨引渡しをやられたということに対しては、私は復員局英霊に対する誠意ありやいなやを疑わざるを得ない。もつとわかりやすく言うならば、英霊は一々その人の手に引渡すのが至当でございまして、まつたくこれは復員局扱い方法にあやまりがあつたということを、援護庁長官としては認められてもあたりまえだと思うのでありますが、それに対する御認識はいかがでございますか。
  16. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいま私の方で申しましたのは、そういう特別な請求が現地からもあり、またそういう委任状が正式に出ましたものにつきまして、そういう取扱いをいたしたというのでありまして、沖繩関係のことにつきましては直接お渡しする建前をとつておるのでございます。すでに沖繩関係戰歿軍人軍属のうちで、大多数のものにつきましては沖繩に送付して引渡しをいたすことができるよう処置いたしておるのでございます。これにつきましては、毎年一回の割当で総司令部許可が得られますので、すでに六回にわたりましてこの送付をいたしてあるわけでございます。来る二月十七日に出帆いたします予定の船でも約四百体ほど送付いたすようにいたしておるのであります。ただ遺族方々が特に急いでぜひともということで、便宜処置をとられた方々にそういう措置をとつたのでありますから、復員局といたしましては、特にその点遺憾の点があつたというふうには考えられないのであります。ただ新聞に出ました点につきましては、十分に調査いたしまして、もしその間に適当でないものがありましたならば、また必要な処置をとらなければならぬと思いますが、ただいままで復員局自身がとりましたものにつきましては、ただいま申しますようなことに相なつておるわけであります。従つて今申しましたように、わずか一部のものにつきまして、こちらで特別な処置が必要であるというふうに遺族からの申出がありましたものについて、そういうふうにいたしたのであります。なお今おつしやるように、審査をいたしました上におきましては、必ず現地に照会をいたしました上で確認をするというふうな措置とつておるわけでございます。従つてただいまお話のございましたものにつきましては、一応正当の担当者からの要求が確かにあつたというふうに私どもの方では考えておるわけでございます。
  17. 堤ツルヨ

    堤委員 ただいまの援護庁説明によりますれば、司令部から一年に一回の許可があつて正規手続を経て、非合法的でなしに沖繩遺族に引渡す機会を与えられておつたのでございまして、復員局正規手続とつて、そうして渡すべき人に一年に一回渡しておつたのだから、石川さんのよう事件はないはずだという認識を持つていらつしやるというふうに解釈して間違いございませんか。
  18. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 石川氏に渡しましたものにつきましては、そういう便宜措置をとることにいたしてございました。特に遺族から依頼がありまして、一時そういう扱いをいたしたわけでありますが、そういうような手渡ししましたものは、ただいま申しましたように三十何人かの代理の引取人が見えまして、これにお渡しするという措置をとつたことはあります。その三十何人かの方にお渡ししました数字は、ただいま私は記憶いたしておりませんが、これは全体の中の一部であります。
  19. 堤ツルヨ

    堤委員 法規上送金ができないので、この人たちは非合法の手段をとつて物にかえて、沖繩給与金を送つてつたということを本人が実際に話しておるわけです。あなたのおつしやいますように、一年に一回遺骨に添えて給与金を送るという機会が当然与えられておりますならば、こうした問題は私はやはりおかしいのではないかと思いますが、何かそこに復員局職員石川氏との間に、もやもやしたものがあつたのではないかという感がいたしますが、そういう疑義援護庁長官はお持ちになりませんか。そういう復員局職員の方に疑いをかけるのはいけませんか、どうですか。
  20. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまのところ復員局職員に変な関係があつたということは、今まで私が聞いております事実の範囲からは認められないわけであります。私はそういうように一応信じております。
  21. 堤ツルヨ

    堤委員 長官として、私が今言つたように御答弁なさるのはいかがかと思いますし、また十分信じておらなければ復員業務をおやりになれないわけでございまして、御答弁もつともと存じますけれども、どうしても私たちには割切れないものがございますから、こうした問題が起りました以上は、援護庁長官はただ漫然としていらつしやらないで、この委員会で積極的にこの一つの問題に対しても究明するというところの態度を、議員諸公にもお諮りしてやつていただきたいと思います。今日の朝起つた問題で無理でございますならば、今日今すぐということを申しませんので、ひとつ援護庁の方でも資料をととのえられまして、次の委員会ででも取扱うようにいたしたいと思いますから、援護庁の方でもそのつもりをしていただきたい。それから委員長におかれましては、この問題をやはり徹底的に究明しないと、大衆としても納得し切れないものがあるのではないかと思いますので、その点おとりはからいを願います。それから今後の遺骨引渡しにつきましては、この問題に省みて援護庁長官はどういうふうに考えておられるか、その問題をひとつ伺いたい。
  22. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 昨年の六月以降そういう取扱いはいたしておりません。
  23. 小平久雄

    小平委員長 それでは本問題につきましては、さらに実情を調査の上、次会においてなお詳細に御報告願いたいと思います。
  24. 受田新吉

    ○受田委員 関連して。遺骨引取りの問題で堤委員より意見の開陳があり、当局の御答弁があつたのでありますが、私はこの機会遺骨を御遺族にお渡しするということが、当面のわれわれ国会議員としての重要な任務であり、また政府の責任でもあると思いますから、日本の周辺でただちに引揚げの可能性のある沈んだ船や軍艦に乘つておられる英霊を、終戰後七年もたつている今日、どういう態度をもつて引揚げられているのか。私の郷里山口県の近海にも、軍艦陸奥が沈んで数千名の英霊が海底に眠つておられる。しかもそれは海の深さわずかに海面より四十メートルの下におられるのである。そのほか日本海沿岸及び太平洋の海域に、多数の英霊を載せた軍艦が沈んでおられるが、政府は何らこれに手をつけようとしておられないのではないか。しかもこれはサルベージその他の利権屋が虎視眈々として鉄くずをあさつて、何かはからざる意図をもつてその鉄くずを使おうとしているのではないかというようなことにおいては、英霊を冒潰するもはなはだしいものがあると思う。この点について政府はその問題の対策をいかにしておられるか。  もう一つは、現に堤さんも言われたように、本日の新聞などで硫黄島の英霊が盛んに新聞に書き立てられているが、この硫黄島やサイパンで、ほんとうに断腸の思いでなくなつたこれらの同胞引揚方々の霊を一日も早くお慰めする道がわれわれの重大な責務でありまするが、これに対して遺族代表を差向けて、その英霊と対面の日を一日も早く迎えさしてあげるとか、あるいは国会議員の代表が行くとか、あらゆる角度から英霊引取りのための措置がすみやかに講ぜられる用意があるかないか。こういう問題は非常に切実な問題と思いまするので、政府が荏苒月日を費して、まさに終戰後七年になつている今日、これらに対してなお打つ手がないとすれば、怠れるもはなはだしきものといわなければならぬのでありますが、これに対して援護庁長官の責任はいかなるものであるか、これに対する長官の御決心はいかなるものであるかをお伺いしたいのであります。
  25. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 本邦近海にありまする艦船内の遺体につきましては、できるだけすみやかにこれを収めまして、そうして遺族に引渡す措置をとらなければならぬというふうに考えております。従来いたしておりまする措置は、艦船の引揚げあるいは解体等をいたしまする際には、まず遺体を全部引揚げました上で初めてその作業を許すということになつておりまして、この引揚げ作業あるいは解体作業等が行われまする場合には、当局におきましてはまず第一に人を派しまして、今言つたような遺体の収容を終りまして、しかる後に作業を始めるという措置をいたしておるのであります。今後におきましても、できるだけすみやかに遺体ぶ全部収容できまするようにいたしたいというふうに考えております。  なお硫黄島その他南方諸島にございまする遺骨でございまするが、これにつきましては、ただいままでは何ら手をつけるだけの措置ができなかつたのでございまするが、先般硫黄島の調査をいたしますることを許されまして、そして現在復員局から硫黄島にその調査のために人を派遣いたしております。これは新聞でごらんになりまする通りでございまするが、その帰りました報告によりまして、これに対しまする引取りの対策を早急に立てたい。なおその他の諸島におきます戰歿者の遺体等につきましても、早急に関係方面と折衝いたしまして、これが引取りの対策を樹立するようにいたしたいというふうに考えております。
  26. 受田新吉

    ○受田委員 関連してもう一つお尋ねしたいのですが、今のように非常に緩慢にこの問題を考えておられると、これは英霊に相済まぬことだし、遺族に相済まぬ問題であつて、すみやかに何らかの措置をとられたい。日本の近海に沈んでおる艦船の英霊のごときは、すぐ手をつければ引揚げができる問題なのです。引揚げるときにはまず英霊引揚げてという、そういうふうなことはこれは当然の話なので、むしろ一刻も早くその英霊を引上げる問題を私はお尋ねしておるので、それに対する対策はどうしておられるか。そうしてその英霊引揚げに対して経費がいるならば、その経費を国家が補償してやるようにしなければいけないが、これに対してどういうような補償の措置とつておられるのか。  それからここでお尋ねしたいのは、近海に沈んだ艦船に、一体英霊はどのくらい眠つておられるのか。その数字ちよつと述べていただいて、すみやかにこの問題の解決に進んで行きたいと思うのであります。  あとに時間もつかえておるので、特に私はこの機会に申し上げておきまするがこの引揚げの問題と関連して留守家族援護の問題——次に遺家族援護の問題がありまするので、引揚げの方の留守家族援護を申し上げまするが、その予算書を見ましても、未復員者給与法による給与とか生活保護費というものを差引いて、そして留守家族援護費という特別の項目を設けておりますが、これはどういう内容を持つておるのか。未復員者給与法によるところの給与はそれでとりやめるということになると、家族の手当のごときはどうなるのかという問題が残されて来るのであるが、この留守家族援護内容どもつまびらかにして、そうしてそういう重点をついた委員会たらしめる必要があると思います。援護庁長官は、橋本厚生大臣が遺家族援護留守家族援護の問題で、遂に職をけつて野に下られるという、悲壮な決意を持つた歴史ある厚生省のこの問題についての最高責任者でいらつしやるのだから、橋本厚生大臣を失つた今日、その大きな犠牲を払つてまで厚生省ががんばろうとしたこの問題に対して、長官としての御決意をいま一度申していただきたいのであります。本村(忠)政府委員 遺骨につきましては、御説の通りできるだけ早くこれを以容しなければならぬということは、申すまでもないところであります。従来におきましても、遺骨の収容だけをできる場合におきましては、それだけをいたしました事例もあるわけであります。これにつきましては今後早急に十分に施策が立つようにいたしたいと思います。  それから遺族援護の問題、留守家族援護の問題、未復員者給与法の問題でありますが、未復員者給与法、特別未帰還者給与法の関係につきましては、従来より変更いたしますつもりは全然ございません。従いまして大体今度の予算によりまして、従来通り援護は続けて行くことができる、従来通りの給与を支給いたすことはできるように考えております。
  27. 受田新吉

    ○受田委員 法律の必要がありますか、いかがですか。
  28. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在では現在の法律をもつて一応やるつもりであります。従いまして従来の法律を改正する意図は全然持つておりません。遺族につきましては、私どもといたしましていろいろと力を尽しました結果、閣議できめられましたものにつきましては、事務当局といたしましてはこれに従つてやる以外には方法がないのであります。なおわれわれといたしましては、今後できるだけこれが内容を充実いたしますように、またあるいは筋の通りますように努力いたしたいと思います。
  29. 小西英雄

    小西(英)委員 遺骨の問題でありますが、私たち新聞できよう見たのでありますが、遺骨をこちらから調査に行つた一行よりすでに先に、組の名前は忘れたのですが、何々組がスクラツプ収集のために行つておるという日本人の名前が出ておつたのでありますが、あれはスクラツプの収集のために行つたものか、あるいは連合軍の飛行場の設置のために行つたか、そういう点について外務省の御意見を承りたいのであります。それはわれわれ遺族遺骨を最も待つているにかかわりませず、くず鉄の方を重大現して、先にくず鉄を収集に行つているものにつれられてそこへ行つておるというようなことを新聞紙上で見たのですが、そういうふうな手続は外務省なりあるいはその筋にどういうようにとられたか。また新聞社が行け、あるいは政府の役人が行ける場所に、国民代表としての使命をになつておるところの特別委員会委員が一緒に参加していない。こういう点について、今後もあることでありますので、現在硫黄島のようなきわめて重大なる基地のように承つておる場所さえ行けるようになつた今日、アツツ島あるいはサイパン、ウェーキ島等における現状も、まさに本日の新聞で見たよう状態になつておるとわれわれ想像するのでありまして、その点について外務省あるいは引揚援護庁の現在における見通しをひとつ述べていただきたいと思います。
  30. 三宅喜二郎

    三宅説明員 ただいま御質問の点につきましては、私どもここに参つております局以外のところで関係いたしておりますので、役所に帰りました際よく調べまして、追つてお答えいたしたいと存じます
  31. 小西英雄

    小西(英)委員 非常に重大な問題で、ここに来ておられる役所の方々においては、ぞの点がまだ明らかでないので、すみやかに、その機会をつくつていただいて御答弁願いたいと思います。  もう一つは、同僚議員の受田君が言われましたことく、たとえば批准が済んだ場合には、日本の近海における英霊は、すぐ引揚げられるよう状態になるのかどうか、これはまさになるとつ思いますが、なる場合には、それを引揚げるだけの準備の予算措置が講ぜられておるかどうかという点についてひとつ……。
  32. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 日本の近海に、死体がどこにどうなつておるかということについての調べは、一応援護庁の方でやつておるのですが、引揚げ措置につきましては、技術的に非常に困難な問題もございまして、ただちに今どういたしますということについてお答えいたすことができませんのはまことに残念であります。これにつきましては、早急に考慮しなければならぬものと考えております。
  33. 小西英雄

    小西(英)委員 むずかしいといつても、いろいろそろばんずくで行く場合には何でも行くのであつて、相当な用意をしてかかろうという心構えを持つておるかどうかということが、非常にわれわれ遺憾とするところであります。そういう問題は委員長において、この次には詳しく答弁のできる人に来ていただいて明らかにしてもらいたいと思います。  もう一つは、新聞社の人が硫黄島に参つた報道が世間に発表されておりますが、さらに本委員会としては、それらの詳しく見て来た各新聞社の人をさつそくこの委員会に招聘いたされまして、その実情を聞き、さらにこれを機会に、何とか戰死者の遺骨引取りについて当委員会としても努力したい、早急にその生きた意見を聞きたいので、よろしく委員長のおとりはからいを願いたいと思います。
  34. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの小西君の発言はごもつともでありますから、理事会にはかつた処置いたしたいと思います。
  35. 堤ツルヨ

    堤委員 ただいま自由党の小西先生からも動議がありまして、私どもの方から動議を出したいと思つてつた問題と一緒でございますから、理事会で十分諮りていただきたいと思います。  それから、先ほど私が質問いたしました石川さんの給与金五百万円のきようの毎日新聞遺骨の問題でざいますが、援護庁の方において調査されたもりのをこの委員会で報告になるというだけではいかがかと思いますので、ひとつ理事会に諮られまして、参考人をここに呼んで、この委員会としてはこの五百体にわたる遺骨の問題を徹底的に究明しなければならない義務があると存じますので、証人喚問の形においてこの委員会が取上げられるようにひとつお願いいたします。
  36. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの堤委員の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 小平久雄

    小平委員長 それでは理事会に諮つた上適当に処置いたしたいと思います。
  38. 川端佳夫

    ○川端委員 先ほどからいろいろ引揚げの問題が断片的に論議されて参つておりますので、私は少しくこまかい点についてもお伺いいたそうと思つたのでありますが、大要おおまかな点二、三点を伺いまして私の質問を終りたいと思います。  第一点は、ソ連中共地区に三十七万の未引揚者がおる。この三十七万の数字であります。巷間非常に関心を持たれておる。特に留守家族方々には非常に重大事になつておりますが、この三十七万という数字の根拠について、しばしば論議があるにかかわらず、なお姓名の判明した人が三十四万であるという。そうすると三十七万と対比いたしまして、三万の宙に浮いた方々がおられることになるのでありまして、この三十七万の根拠をもう少し私どもは再確認いたしたいのでありますが、御調査の結果をまず伺いたいと思うのであります。
  39. 三宅喜二郎

    三宅説明員 ただいまお尋ねの未帰還者の推定数約三十七万、もう少し正確に申しますと三十六万九千人でありますが、それは樺太、千島、朝鮮、関東州、満州の各地とも昭和二十年八月の終戰時に最も近い時期の公表されました統計、それから現実に引揚げて来られた人々の総数を差引いた数字でございます。三十四万の方はそうではなくて個別的に各留守宅なり、帰還者なり、また未帰還者からの通信によりまして調べた数であります。それは三十四万と申しましても、生存者としてわかつている者もあります。死亡者としてわかつている者もあります。生死不明となつている数字もあるのでありまして、三十四万全部が生存者というわけではないのであります。
  40. 川端佳夫

    ○川端委員 今お話を伺つたのでありますが、私たちも一応お話はそのように承りましたが、三十七万の実態が私どもはつかめない。だからあなた方のほんとうに確信のある計数のつくり方をはつきりと伺いたいと思つたのであります。なお三十四万の数も相当長い期間同じよう数字でありまするが、その後この実態調査はできないのでありましようか。その後の変化がございましたら伺いたいと思うのでありますが、特に二十七万と三十四万の間の三万という方、これは外地に出たのだ、出征したのだというような数がはつきりいたし、そして三十四万の人のありかは終戰時にわかつたのだということでありましたら、その差額の三万という人はやはり戰争に大きな犠牲を払い、戰争の犠牲者としてまだ外地で宙に迷つておるというような存在になつておると考えなければならぬと思うのであります。この調査はその後どういうふうに進められているのかを伺いたいのであります。
  41. 三宅喜二郎

    三宅説明員 三十七万の数字中三十四万以外のものにつきましても、引続き確実な方法によりまして調査を進めておりますが、これは帰つて来ていない方のうちでも留守宅のない方もございますし、帰つて来てない方につきましては、もちろん現地からの通信等があるもの、あるいは聞込みによつて調査するほかはないのでありまして、三十四万以上につきましてはなかなか困難でありますが、引続きやつておりまして、数字はその後もある程度はございますが、これは整理中でございまして、まだ発表するところまで至つておりません。あしからず御了承願いたいと思います。
  42. 川端佳夫

    ○川端委員 すみやかにその御調査を公表されたいと思うのであります。しからばこの三十四万につきまして国際引揚特別委員会ですか、ここにおいてはどういうふうな見方をされておりましようか。
  43. 三宅喜二郎

    三宅説明員 これにつきましては、政府から国連あての手紙で申しておりまするし、また今回の齋藤代表の配りました。パンフレツトにも書いてあるのでありますが、それに対する委員会の見解というものはまだ参つておりません。
  44. 川端佳夫

    ○川端委員 以前に伺つた程度のお話しか伺われないことは残念でありますが、私はここで一言要望いたしたいのは、特にソ連、中共、要するに共産義諸国においてはこういう理不尽なことをかつて気ままにやつておる。しかもこのことを隠蔽せんとする一味もいる。こういうような中にあつて、われわれは留守家族に対する同情を禁じあたわず、この実態をはつきり根拠をもつて進められるように願いたい、これが私の要望であります。  次に第二点でありまするが、お答えをしていただくのに適当であるかどうか、ちよつと考えておるのでありまするけれども戰犯者の問題であります。私はここで戰犯者の問題について伺つておきたいと思うのであります。それは旧臘三十日に総司令部で発表されたのでありますが、戰犯者千三百名の国内受刑者の管理は、講和発効時あるいは三月二十一日までにその管理が日本政府の手に移されるのだ、こういうふうに発表されておるわけでありまするが、先ほどもお話が出ておりましたように、発表されました戰犯者ソ連地区にただわずかに二千有余名おる、こういうふうな戰犯者はその後こういう国内の受刑者と同じよう扱いといいますか、今後どういうふうに扱われるのでありましようか、もしおおかりであつたら伺つてみたいと思うのであります。
  45. 三宅喜二郎

    三宅説明員 ここにおります者はアジア局の者ばかりでありまして、戰犯関係のことを直接やつておりませんので、御答弁しない方が適当かと存じます。
  46. 川端佳夫

    ○川端委員 それでは戰犯者というわくの中の問題でありますから、そういう事情であろうかと思います。先ほどの引揚げの問題で、中共地区に一万八千の婦女子がおる、こういうことが非常に問題になつているようでありますが、これは特別に婦女子だけ早く引揚げさしてもらうという見通しがございましようか、どうでしようか。
  47. 三宅喜二郎

    三宅説明員 こういう婦女子は、中国人の家庭にただで雇われたり、あるいは中国人の妻妾等になつておる。また子供につきましては、孤児であるとか、あるいは売られた者とか、非常に気の毒な方が多いので、政府といたしましては、特にこれらの方々に同情を持つて早く帰還していただくように努力するつもりでおりますが、現在ただこういう人たちが旅費がございませんので、その点で引揚げがなかなか困難でございます。しかしこういう方々引揚げが早くできるように十分努力はいたすつもりでおります。
  48. 庄司一郎

    ○庄司委員 ただいま同僚の質問に対する三宅事務官のお答えを聞いておりますと、三十七万あるいは三十四万と外務省が白書をもつて発表され、特に前の外務省の政務次官であられた草葉君が本委員会等において力説をされましたところの調査方法等を三宅さんはお述べにならないために、何か三十七万あるいは三十四万という調査の集計において、はなはだ調査の基礎が正確さを欠くおそれありという印象をただいま与えられたのであります。しかしながら前の草葉政務次官が本委員会において述べられた際は、終戰後過去満五箇年にわたり全国一万一千の町村長、また各都道府県の世話課並びに在外同胞帰還促進の国民運動、各都道府県の連合会並びに留守家族の都道府県単位の家族同盟、これらの民間団体も相当熱意を持つて、あるいは外務省、あるいは厚生省の委任事務を受けられて調査をされ、その結果、政府の調査も、全国町村長の集計の調査も、都道府県の世話課の調査も、ただいま申し上げた二つの民間団体の調査もやや一致した。その一致点が三十七万であり、また氏名その他が判明しておつて、確信を持てる数が三十四万である。かように本員は聞いておつたのであります。しかるに三宅さんのお答えは、都道府県の世話課とか、あるいは町村長であるとか、二つの民間の直接の熱意を持つておる団体の実態調査であるとか、さような総合的結果においてかような集計が正確性を持つておるのであるというようにお述べにならないために、あなたの御回答は相当悪印象を与えたようであります。特にただいまジユネーヴにわが国政府代表三名が行つておられて、かけ合いをされておるのである。かような際において日本政府の外務省の、どういうお役かあなたのお役目はわかりませんけれども、ただいまの御回答というものはまことわれわれはふに落ちない。どうか責任ある御調査の上、近く本委員会のちの小委員会である引揚げの專門の小委員会も開催する方針でございますので、あなたはどうか十分御勉強をくださつて国民の納得の行き得るような御答弁を、小委員会等においては述べてもらいたい。そうでありませんと、何か三十四万、三十七万というようなものには、いかさまがあるような悪印象を与えるおそれがないではございません。どうか十分ひとつ御勉強の上、責任のある御回答をお願いしたいと思うのであります。
  49. 三宅喜二郎

    三宅説明員 御意見は十分よく拝聴いたしまして、御要求に沿うようにいたしたいと思います。
  50. 中山マサ

    ○中山委員 今言われたのは、一万八千でございますか、その婦女子が中共におる。私は、この間帰つて来ました鳥居博士と同行して帰つて参りました静岡県の婦人、これは中共人の奥さんとなつて、九年間向うにおつた人でございますが、この人の話を聞きましたところが、一万八千どころか、まだ多数の邦人が向うにおる。しかし国へ帰りたいというような意思表示をすると、中共政府は逃亡罪という名義でもつて処罰するので、帰りたいという意思表示すらできない。こういうなまの現実を私はこのお正月に帰つております間に、大阪で聞かされたのでございますが、そういうふうな問題に対して、どういうふうに努力してこれを呼びもどそうと当局者はなすつていらつしやるか、私は一度聞かしていただきたいと思うのでございます。そういう声すらあげられない。これを呼びもどす手段というようなものはどういうふうになさろお考えであるか、まことに哀れなるわが同胞の状態を聞かされまして、私もうただ同情にたえないでおつたものでございますが、ひとつ当局のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  51. 三宅喜二郎

    三宅説明員 この問題につきましては、やはり国際赤十字でありますとか、あるいは国際連合の引揚特別委員会を通ずるとか、あるいは日本が外交係関を持つようになります国々の政府、ことは中共と外交関係を開いておる外国政府、これらを動かしまして、十分日本の希望を伝えるようにいたしたいと存ずるのであります。それは現在もやつておりますし、今後もそのように続けたいと思つております。  なお先ほど私の説明が足らなかつたように思うのでありますが、旅費がないから帰れない、そういうことも一つの原因なんですが、帰る際には、今申されましたように、中共政府許可を得なければ出国ができないのであります。中共側におきましては、できるだけとめておきたい。そういう婦女子でも帰り出すというと、他の中共の必要としている熟練者、技術者等も動揺するから、なるべく帰さないようにしている、こういう事実があるのでありまして、これも引揚げが遅れている大きい原因であります。旅費等につきましては、それは日本政府が何とか方法は講ぜられないことはないのでありますが、中共の側における事情がありまして、中共からの引揚げが遅延しておるのであります。
  52. 高田富之

    ○高田(富)委員 関連して……。先ほど来の政府の基本数の問題は、非常に重大な問題になつておりますので、私がぜひひとつ申し上げておきたいことは、この委員会が始まりましてから、この問題についてはもう数回、あるいはそれ以上審議されておりますし、また私自身外務委員会におりました当時もすでに一年前外務省当局の発表されました未帰還者数に関連いたしましていろいろと質問いたしました。当時これはもう一年も前の話でありますけれども、自由党の外務委員である佐々木盛雄君、並びに私が同じ趣旨で同じ質問をいたしておるのであります。それはどういうことかと申しますと、とにかく三十何万という多数の未帰還者ソ連地区におられるということでありますならば、この問題は私ども代議士といたしまして当然まずお互いの地元にどれだけの未帰還者がおられるか、この未帰還者の現在の状態等をよく実際に当つて知りまして、そしてその援護対策等がうまく行つておるか、引揚げについての政府の施策が十分であるかないかということを、われわれは直接個々訪問をしてでもやらなければならない当然の義務があるわけであります。政府が調査をしてようやく三十四万幾らというところまで詳細に数字がわかりました。しかもそれは個々人についてわかつたというふうに発表されておりますので、そのように個々人の姓名もわかり、留守宅のある者ない者、現住所、手紙というようなことまでわかつておるならば、私どもはぜひひとつその府県別の内訳——そこまで調査ができたのでありますから、都道府県別の未帰還者の内訳が発表されないということはあり得ないことであつて、府県別の内訳を知り、なおでき得れば郡、市町村別も知りたい。こまかいところまですぐ出せといつても出せないならば、県段階がわかれば、私どもは県庁へ行きまして当該県下の郡、市町村別を知り、その市町村別について個々の名前を知る。そしてそこをお尋ねすることもできるから、ぜひ早急にその詳細を御発表願いたいということをお願いいたしたわけであります。これにつきましては、もちろん日本人であります以上は、党派を越えまして自由党の諸君も私どもも、何党たるとを問わず全部これを熱望したわけであります。しかるにその後なかなか政府の発表がありません。続いて私どもはたびたび、この委員会が開かれますたびに、当時の草葉外務次官に対しましてこれをお願いいたしました。当時、昨年の三月ごろだと思いましたが、その最後の機会におきましては、草葉次官としましても、それはぜひ発表する、近いうちに発表する、もう一月か二月くらいで発表できるようになるというようなこと嵐でも言つておられたのであります。これは速記録をお調べになればわかります。それを過ぎますことすでに一年、今に至りましてもなお本委員会引揚げ問題についていろいろと審議し、促進しようというわれわれの対象となる数字が、この委員会の今までの答弁を聞きましても漠然としておつてつかみどころがないというのでは、何のために私ども委員会をやつておるのかさえわからなくなつてしまう。これが大前提です。この問題については政府がただいまだれであろうとも、その後係がかわろうとも何であろうとも、即刻その場において明快な答弁ができないはずはありません。ことに、すでに国際連合にはパンフレツトを持つて行き、いろいろの資料を持つてつて、世界各国に対してその資料を提出し、全世界の人々に対して三十七万という未帰還者のあることを立証し、しかもそれを立証するために日本へまで外国から調査に来てもらつて、つぶさに調べてもらつて、その資料がいかに正しいものであるかという信憑性を確めてもらいたいというほど自信のある資料ができているならば、世界に向つて、外国に向つてそういうことを言う前に、なぜわれわれ責任のある国会議員に対してこれを発表しないか。しかもこの国会において責任のあるわれわれの委員会に対してそうした信憑性のある資料を示し、その資料のあるところへわれわれも行きまして、その資料を現実に手にとつて見て確信を持つならば、私どもは本日ただいまからでも、この三十七万の引揚げ問題に対しては全力をあげてやるでありましよう。それなくして何でやれますか。いまだにそういう資料がないとはもう言わせない。さつきの御説明をもつてしても、来て見てもらおうと言つているのですから。  そこで私は最後に言いたい。その外国の人に国連から来てもらつて見せたいという信憑性のある資料を、この委員会委員に本日ただいま見せていただきたい。これができるかどうか、このことについて私は責任ある御答弁を求めるものであります。
  53. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 私途中から参りましたので、あるいは御質問に沿う答えになるかどうかわかりませんが、大体の総数、それから生存見込み、死亡見込みその他のことは白書その他を通じまして発表されている数字通りであります。御希望の要点は、都道府県別の数字を詳細に出せないかというお話であつたように思うのでありまするが、この詳細なる数字の発表につきましては、その筋との折衝も要するようでありまするので、一応その筋ともよく折衝いたしまして、なお詳細なる数字資料といたしますことについては、相当の時間もかかると思うのでありますが、できるだけ御希望に沿いますように、あらためて督励いたしまして努力をしてみたいと思つております。
  54. 小西英雄

    小西(英)委員 ただいま数字の問題について非常にいろいろな意見が出ておりますが、われわれもこの委員会を通じて数字の点については非常に前より問いただし、三十七万あるいは三十四万、あるいはその中における死亡者とみなす者が幾らというような確たるものは外務省の方から一応聞いたのでありますので、それについての資料をこの次までにひとつ準備して納得行く数字を発表していただきたいということをお願いしておきます。  もう一つ、特にわれわれこの委員会において最近心配いたしておる問題は、御承知のごとく中共におりますところのわれわれの同胞でありまして、中共は国際連合に参加していない建前上、講和の批准が済みましても中共との間の問題は未解決になる。われわれはこの委員会で数回にわたつて外務省に対して、中共政府は英国政府とお互いに認め合うた仲であるので、日本政府といたしまして何とか中共におられるわれわれの同胞をいちにちも早く帰されるようにひとつ努力してほしいということをたびたびお願いいたしたのでありますが、その点について日本政府は、英国政府に対してあるいは中国の大使を通して、今までそういう懇請をせられたかどうか、また日本として懇請をしても受入れられなかつたかどうかという点について、一言政務次官の明快なる答弁をお願いしたいのであります。
  55. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 ごく最近におきましては、ただいまお話のような中国を通じてとか、そういうことはやつていないようでありますが、先ほど来からいろいろお話があつたようでありますが、国連の特別委員会を通じましたり、あるいは赤十字の国際機関を通じまして、できるだけ各地域から一日も早く帰還できますように、あらゆる努力を傾倒いたしておるのであります。
  56. 小西英雄

    小西(英)委員 外務省のわれわれ今まで受けた感じは、きわめて引揚げ問題に冷淡なような感じを受けるので、私はいつもこの席上で外務省に対して相当いやと思われるようなことを申し上げておるのでありますが、答弁がきわめてあいまい模糊といたしまして、われわれ納得できない。また委員として非常に遺憾に思つております。今の中国の問題でありますが、日本の全権が派遣され、近く台湾と修好関係を結びたいというようなことが新聞紙上に出て参りますと同時に、留守家族の多くの者が相当心配いたしております。こういう点について、ますます中共におるわれわれの同胞の引揚げが困難になるのじやないかという疑念を抱いておるので、外務政務次官は、これらの点について納得の行く、留守家族に対して心配のないような御答弁をひとつお願いいたしたいのであります。
  57. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、これは国会の引揚特別委員会とか、皆様方の非常な御努力の結果とも思うのでありますが、国連総会のジユネーヴにおける特別委員会等におきましても、日本代表も出て、いろいろ資料を提出して努力されておるようであります。赤十字の国際機関を通じましても、これはやつておるのでありまするが、なおただいまお話のありましたように、いろいろの資料に基きまして、各機関を通じ今後もできるだけの努力を外務当局といたしましても続けて行くし、現在も続けておるということを申し上げておきたいと思います。
  58. 小西英雄

    小西(英)委員 具体的に時に応じていろいろ手を打つていただかなければ、外務省としての機能がわれわれ認められないので、特にもう一つ、こういうことが新聞紙上に出たので、お尋ねしてみたいのでありますが、フイリピンの関係に対しましては、現在昔の友好関係に返すべく、賠償使節が津島全権を中心にいろいろ話を進めておる際、われわれの同胞であるところの日本の兵隊が、今なおはたして日本が降伏したのであるかどうかということについても疑念を持ち、それについていろいろ戰闘が開始され、討伐的な行為をフイリピン政府がやつておるよう新聞紙上で承つた際、外務当局がやつたのかどうかわかりませんが、なるべく殺さないで日本の国に帰れるようにしてもらいたいという嘆願が、あるいは民間から出たかわかりませんが、外務省としてそういうふうなお願い事項をフイリピン政府に申し入れたかどうか、ひとつ答弁願いたいと思います。
  59. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 これは外務事務当局の方からも、フイリピンに対していろいろそういうお願いを申し入れておるようであります。それから総司令部の方を通じましても、人命に関することのないように、できるだけの善処を講じてもらいたいということを申し入れておるようであります。それから今回フイリピンに参りました津島団長以下あの一行にも、こちらの日本におりまする留守家族等の手紙その他等も託しまして、本人が一日も早く無事にこちらに帰れまするように、これまた使節団を通じましていろいろお願いをしておる、こういう状況であります。
  60. 小西英雄

    小西(英)委員 今後ともいろいろな島に、あるいは大陸に、われわれの同胞がおるように考えております。そういう際に外務当局は、そのときに応じて、これが日本の国のためであるという場合には、進んで手を打つていただきたい。われわれが言うまでもなく、やつていただいておると思うようなことが案外できていないことをわれわれは非常に遺憾に思うのです。  また先ほどの遺骨の問題に返りますが、新聞記者あるいは政府職員が行ける場所には、なるべくこういう委員会の中からも選んでいただいて参加して、現状を見て、そして全遺族またその英霊に対する弔いをしたいので、そういう点についてもこの特別委員会に御相談されて、適宜な処置とつていただきたいということをお願いして私の質問を終ります。
  61. 石原幹市郎

    ○石原(幹)政府委員 ただいま遺骨の問題が出たのでありますが、実は今回和智元大佐が硫黄島へ行かれまするについても、私は参議院の方の引揚げ問題に熱心な義兄からいろいろな話がありまして、できれば一名でも二名でも国会議員の方に同行してもらいたいと思いまして、外務当局を通じましてその筋にもいろいろ折衝いたしまして、大体行けそうな状態にもあつたのでありますが、最後の結論としましては、今回は行けなかつたのであります。その際にも、今後広く南方地域について遺骨引取り、あるいは調査等を計画される場合には、先方といたしましても極力善処して協力、努力をするというようなことも向うも言つておるのでありまして、この問題は今後皆様方とともどもに研究いたしまして善処、努力したいと思つております。
  62. 高田富之

    ○高田(富)委員 この昭和二十七年度予算の説明という大蔵省で出しました参考資料を見ますと、同胞引揚費が昨年度よりもたいへん減少しておるわけであります。これについてちよつとお伺いしたいのでありますが、この説明によりますと「前年度に比べて減少しているのは、積算の対象とした引揚人員を、過去の実績を考えて一万人とし」云々、政府職員等も減らすというようなことになつておりまして、前年度対象とした引揚げ人員は十五万二千九百七十六人であるが、今年度は一万人というふうに説明が書いてありますが、これは数字の間違いではありませんでしようか、どうでしようか、ちよつと確かめておきます。
  63. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 予算のこの項目に上つておりまする数字は、一万人に対する数字として出ております。
  64. 高田富之

    ○高田(富)委員 これが数字の間違いでないといたしますると、私はおかしいと思うのですが、前年に十五万二千九百七十六人も予定しておつたのを、一ぺんに一万人に減らしてしまうということは、これは理解できないと思います。と申しますのは、ただいま数字の問題が大分ありましたけれども政府としてはこのたびも三十数万ということで国際連合にも訴え、今度の講和会議においても首相がその演説をされ、いまや講和と同時に、この引揚者問題についてはさらに一段の熱意を示すことが、未帰還者遺家族の皆さんに対する何よりも第一にやらなければならない当然の義務であるにもかかわらず、講和最初の年においてこの引揚げの対象を一万人に一ぺんに減らしてしまうということは、政府は弘揚げについて今後努力を一体するつもりがあるのかないのかということを、当然疑わざるを得なくなる。これはどういう理由で今回十五分の一に一ぺんに減らしたのか、これを御説明願いたいと思います。
  65. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 引揚げの最近の実績を見ますと、きわめて少い実績になつております。従いまして予算の面におきましては、一万人ということで一応の準備をいたしておりますけれども、その決定をいたしました際には、集団的に引揚げが急速に再開される場合には、ただちにその必要な経費を予備費その他より支出するということについての了解をもつて一万人という数にいたしました。ただ残念ながら、最近は一年間に二千人ぐらいずつしか帰つておりませんので、そういう実績に基きまして、そういう数字を組み上げたのであります。すなわち予算が妙なふうに使われるということを防止することが、一つそこに含まれておるのではないかというふうに考えております。なるべく実際に必要な経費は組む、しかしむだなく使うためには、必要な経費だけを組んでおくということが必要であるというので、そういうことにいたしたのであります。もしも引揚げが再開されるということになれば、ただちにこれに対する措置はで、きるようにいたしてございます。
  66. 高田富之

    ○高田(富)委員 もう一ぺんお伺いいたします。私は議論なんか言いませんが、政府予算を見ますと、どういうことをやつてもわからないような防衛費的な経費を六百五十億も組んでおるというようなときに、今年度も力を入れてやらなければならぬ対象の三十数万というものを持つておる政府が予算を削つておるということは、まつたく問題になりませんが、これは予算委員会等において議論するといたしまして、もう一点お伺いいたしたいことは、今度遺家族援護関係という費目ができましたので、同胞引揚げの今までの未復員者給与、生活保護費等の関係も若干かわるのではないかと思いますが、そこで今まで未復員者給与費及び生活保護費等、この両方を合せて給与を受けておる者は何人でありますか。
  67. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 未復員者給与法によりまして給与を受けております者、それからそれによつて手当を受けておる件数は三万七千二百四十七件ということに相なつております。それから生活保護法におきまして生活保護費を受けております者の数は、世帯にいたしまして、遺族につきましてはたしか八万世帯ということに相なつておるかと思います。
  68. 高田富之

    ○高田(富)委員 そうしますと、未帰還者の給与を受けておる者が三万七千ということになりますと、この未帰還者のうち全然留守宅がないとか、あるいは給与を受けるあれがないとかいうふうな関係で、三十万からの者が全然そういう関係がわからぬというのでありますか。これはこの前私もそんなにわからないはずはないと思いまして、外務次官にも伺つたことがありますが、詳細な調査をされておる間にだんだん未帰還者の方が個々によくわかつて来る。その際厚生省と絶えず連絡をして、そうして未帰還者給与法の適用を受けられる者はどんどん漏れなく適用を受けるように当然これはやつておるのであつて、そう大きな開きというものはないはずなんだから、もつとたくさん未帰還者の給与を受ける者が出て来るのじやなかろうかという質問をしたことがあります。そのときに外務省の方としましては、今まであまりその点では、厚生省は厚生省でやつてつたので、連絡がなかつたけれども、大いに連絡をしてやつて行くようにいたしますというような御返答であつたわけです。しかし私どもとしましては、これは当然の話であつて、むしろそういう御答弁は意外に思つたわけであります。今後これが当然もつとずつと増大しなければならぬと思うのでありますが、この点はどういう関係になつておるのでありますか。
  69. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 未帰還者給与法、あるいは特別未帰還者給与法によりまして給与を受けます留守家族の範囲というものは限定がございますので、留守家族全部にこれは行き渡つているわけではないのであります。従いまして現在の未帰還者給与法並びに特別未帰還者給与法によりまして給与を受けております者が留守家族の全部と申しますか、向うに残留をいたしておられます者のこちらの関係者の全部ということになるわけでないわけであります。従つてその数に差異がありますことは当然のことではないかというふうに考えております。なお三十数万という数字の中には相当数の死亡者があるはずであります。実際に残留して生きておるだろうというふうに考えられております者が約十一万、たしかそのくらいの数字つたと思いますが、そういうことにななつております。従いまして、現地におつてそのまま全然こちらに家族のないといつたようなものもございまするし、今申しましたような未復員者給与法、あるいは特別未帰還者給与法がその範囲を限定いたしておりますので、その限定した範囲に漏れておるという者もあるわけでございます。
  70. 高田富之

    ○高田(富)委員 大体それによりますと、個人的に全部わかつておるという数字が、死亡者を除いて十一万何ぼがソ連地区だけにあるということになつておりますので、その範囲に適用されない者が相当ある。半分以上、七割も八割もあるということになりますと、これは常識的に考えてもおかしいと思うのでありますが、この問題はさらに詳細に府県別等をお調べ願つた上で、こまかに資料を御提出願つてから、私ども未復員者の実情をよく知つてこの援護に万全を期したいと思つておるのでありますから、先ほど御約束の通りすみやかに府県別の数をお示しを願いたい。でき得るならばは市町村別あたりまでほしいのですが、とりあえず府県別の数をお願いしておきます。このことをひとつ重ねて念を押しておきたいと思うのであります。私の質問はこれで終ります。     —————————————
  71. 小平久雄

    小平委員長 海外胞引揚げに関する質問は、今日はこの程度にいたしまして、引続き遺家族援護に関する件についての質問を許します。逢澤寛君。
  72. 逢澤寛

    ○逢澤委員 全国百七十万の殉国の英霊、これに関連しておる八百万に及ぶその遺家族は、きようこの国会においてこの問題が審議されることについて非常な期待をもつておる。しかるにただいま援護庁長官のお話を聞きますると、きわめて簡単な説明であつたことは私は心から残念に思います。従いましてこの説明を基礎にしましての質問は私はあたらぬと思います。しかしながら政府当局がこの問題を真剣に今後研究討議なさる上におきましては、いろいろ腹案もでき、参考になると思いますので、以下数点について質問を試みたいと思います。  第一点は、ただいまの話によりますると、公債の発行の点と未復員者給与法を延長して適用するので、法律はつくるんではないように私聞いたのですが、これは聞きそこないかもしれませんが、しかしこれはいずれにいたしましても、一体この取扱い官庁としましてはどこがこれを取扱いをするかということについて、まず第一番にお尋ねしておきたいと思います。
  73. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいま閣議決定に相なつておりまする線によりますると、傷痍軍人並びに軍人遺家族援護に関しまする各般の措置の中で、年金及び一時金の交付につきまして、年金の交付については厚生省においてこれを所管することになつております。従いましてこの年金の交付に関しまする法律は厚生省でもつて起案しなければならぬということになつて、ただいま引揚援護庁でその準備をいたしております。  先ほど申し上げましたのは、留守家族援護につきまして、統一した立法をするかどうかというお話に対しまして、従来通り、現在の予算の内容でございますれば、未復員者給与法及び特別未帰還者給与法そのままで行く方がよかろうというふうに考えておりまして、ただいまではその方面については立法いたす意思はないということを申し上げたのであります。  なお公債の交付につきましては、その交付そのものの仕事は大蔵省当局が当然当ることではなかろうか、但しそれをどういう人に交付するかというようなことについての事務的な運びは、厚生省の手でやらなければならぬと考えております。  それから傷痍軍人に対する各種の援護措置、つまり現金、年金等の給付でないところの援護措置につきましては、厚生省において社会局でこれに対する実際の措置をいたすということでもつてできるかと思います。育英資金につきましては、文部省がこれを所管いたしてやる、大体こういうことに所管はわかれておるわけであります。
  74. 逢澤寛

    ○逢澤委員 援護庁長官はしばしば援護という言葉を使つておられる。一体今回お考えになつておる考え方は、国家補償をするつもりでおるのか、生活援護を基調とした考え方でこの措置をとろうという考え方なんであるか、その点をひとつつておきたい。
  75. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この点につきましてはいろいろな御意見があるかと思いますが、私といたしましては、私からお答えするのは適当ではないし、ただいま当局としましては、閣議決定の線に沿つて事務的な準備を進めておるというだけであります。     〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕
  76. 小平久雄

    小平委員長 内容によりまして、後ほど適当なときにはからいますから、ちよつと待つてください。
  77. 逢澤寛

    ○逢澤委員 われわれ国会が要望しておるところは、一体国家のために殉職しておるその人に対して援護をするというようなことは、これは事務的では答弁がしにくいというお話がありましたので、閣議決定の線に沿つてやるというお言葉だから、これはあえて追究はしませんが、あなた方が今後本法案を研究なさる上につきましては、援護をするというような考え方でおやりになるということは、これはさらに研究をしていただきたいと思う。それは私から申し上げるまでもなく、国家のために殉職し、そして生活が困窮しておる者、こういう者に対して援護をするというようなことは当らぬと思う。従つてこれは閣議決定かどうかしりませんが、閣僚が世間に伝えておるところによりますと、二十七年度における措置はいわゆる臨時措置であつて、将来財政の許す範囲において他の法律をこしらえてやるということは、すでに総理の方からも声明して来ておる。そこでこれを仮想すると、できれば恩給法を復活して、そういうようなことによつてでも生活の保障をして行かねばいかぬ、こういうことが前提になつておるよう国民、特に遺家族関係の者は考えておる。このときに当つて援護をするというような考え方は私はどうしても納得が行かぬ。しかしながらこれはどうしても閣議できまつていることだから、長官としては答弁に困るというお話だから、これはあえて追究はいたしませんが、そういうような考え方があるということは考えていただきたい。そこで私は今申し述べましたように、臨時措置、今回行おうとするところの公債の交付、これは一ぺんすればそれで済むと思う。それから生活保障のことは、もしそれ今申し上げたように二十七年度に臨時的な措置として、将来恩給法によつてこれをやろうとするということになると、これは国家補償である。国家補償ということになると、そこに当然私は考えなければならぬことがあると思う。その考え方を持つて出発せぬと、これは非常なあやまちができると思うのであります。私どもが多数のこれらの関係者の方々から聞き及んでおるところによると、そういうことを期待しておる。従来においてもそういうことで出発しておるのだから、今度法律をこしらえるについても、今年はいろいろ大蔵大臣も声明しておるように、予算の関係であるいはいろいろの現下の諸情勢上確定することができにくいから、本年度は特にこらえてくれ、こういうような意味合いで了承しておるように思う。そうなると、恩給法ないし恩給法に近いようなものが将来期待されるというので一応の話がつくと思う。そうすると、この際考えなければならぬことは、私は特にこれはお考えがあれば答えていただきたいと思うがお考えがなければ注文しておくのだが、他の公務員の死傷の場合と遜色ないだけのことにせねばならないということを、私は国会として強くあなた方に注意しておきたい。こういうような考え方があるかないかということをひとつお答えできればお答えを願いたい。
  78. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 戰歿軍人、傷病軍人、その他軍人の恩給及び遺族の扶助料という問題に関連した御質問だと思うのでございますが、これにつきまして私からお答えいたしたいと思います。御承知の通りに、軍人及び遺族の恩給及び扶助料につきましては、昭和二十年十一月二十四日の連合国最高司令官から日本政府に発せられました恩給及び給与と題する覚書に基きましてとめられまして、この覚書に基いて、御承知の通り昭和二十一年勅令第六十八号を制定いたしまして、これで従来からの軍人及びその遺族の恩給及び扶助料は、爾来支給を禁止または制限されて来ているのであります。ところで講和條約が効力を発生するということになりますれば、連合国からのこの命令は、その効力がなくなるわけであります。従つて従来法律によつて与えられておりましたところの軍人及びその遺族に対する恩給及び扶助料をどうするかということが、当然問題になつて来るわけであります。私どもはこれについて検討を加えて来ておつたのでありますが、何と申しましてもこれは非常に大きな問題であります。そのことはもう皆様も御承知のことと思いまするが、日本政府といたしましては、連合国の命令がその効力がなくなりますならば、理由なくしてこれを従来通りにしておくことはできないことではないかと私は思つておるのであります。ことに戰争の犠牲者といわれるところの戰歿軍人の遺族また傷病軍人の方々は、多くの恩給受給者の中におきましても最も悲惨な境遇にある方々だと私は思うのであります。一般公務員に対しましては、恩給法というものを設けて現実に恩給を支給しておきながら、そういうようなお気の毒な方々がしいたげられるようなことを今後続けて行くということは、私は国民の感情からもおそらく許されないことではなかろうか、こう忖度しております。これはいろいろな議論があるかと思います。従来の軍人に対しまする国民の感情いろいろあります。ですから人によつてはとかくの議論もあるかもわかりません。しかし多くの純情な心から一身を国に捧げてしまつた戰歿軍人の遺家族方々に対しましては、また傷病軍人に対しましても、今申し上げましたような感情が多くの国民の感情ではなかろうかとも想像いたしておるのであります。それならば、講和條約の効力発生と同時に恩給を元通りに返すかどうかということが、その次の問題となるわけであります。ところでこれを返すということになりますと、まず考えなければなりませんことは、御承知の通りにこの関係者の数が非常に多いということであります。昔の通りのままにしますと、老齢軍人、その他の一般軍人もありましようし、それから傷病軍人、遺族もありましよう。そういうことを考えてみますと、かなり大きな数になる。そうするとその金額もかなり大きい金額になる。また現行恩給法のままによつて恩給を支給してよいかどうかということも考えなければならない。それはどういうことかと申しますと、恩給法は、終戰後におきましてもたびたび改正されて今日に至つておりますが、しかしその改正は、軍人及びその遺族の恩給が全然支給されず、または制限をされているということが前提となつて今日まで来ているのであります。従つて軍人、遺族の恩給、扶助料を元に返すということになつた場合におきましては、新たなる見地に立つてまた検討を加えなければならない点も少くないのであります。それからまた元に返すといたしました場合におきまして、これをどういう範囲で、どういう方法によつて国民全般が納得行くような方法を講じて行くかということも、またよく検討を加えて行かなければならない問題だと思います。そういうことをかれこれ考えてみますと、これは広く官民の有識の方々の公正妥当なる意見を十分に取入れて、そうしてこれに対する善後措置を講ずることが当然なことでないかと思つているのであります。しかし講和條約の効力の発生と同時にこの措置ができるかということになりますと、遺憾ながらできないよう——ども事務的な検討その他いろいろやつておりますが、しかしながらそのままやるにつきましてはいろいろの議論もあることでありますので、政府といたしましては、いやが上にも慎重を期しまして、そうして講和條約の効力発生がいつになるか、近いうちだと思いますが、効力の発生しました後におきまして、昭和二十八年の三月三十一日までは現在の状態を続けて行つて、その間に今申し上げましたよう審議会をつくつて国民の納得の行くような公正妥当な結論を出した。今逢澤委員の仰せられましたように、一般文官との関係につきましても十分考慮してもらつてそうして公正妥当な結論を出していただきまして、その結論を基礎といたしましてこの問題に対する善後措置を講じて行きたいというのが今の政府の方針でございます。しかしながらその善後措置を講ずるまで、それなら傷病軍人なり軍人遺族方々をそのままにしておくかということが問題でございます。それはとうていそのままにしておけない現在の事情でございます。そこで政府といたしましては、遺族の方や傷病軍人の方に対してはたいへんお気の毒ではございますけれども、つなぎという言葉を使うことを許していただきたいと思いますが、そのつなぎとして、今厚生省の方から言われましたような、いわゆる援護的な措置を講じて行く、こういうようなことになつておる次第でございます。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 議事進行。——私は今逢澤さんの御質問政府の御答弁をお聞きしておりますと、政府当局では、これは閣議決定の線であるからという御発言があり、逢澤さんまたこれに対して、閣議の決定とあればしかたがないと仰せられた。これは委員会の権威を失墜するものだと私は思う。閣議の決定であつても、委員会はそれをくつがえさなければならぬ。当局もまた閣議決定をくつがえすくらいの勇気がなければならぬ。従つて、橋本前大臣が職を賭してやると言つた勇気に対しては、われわれは非常に敬意を払うのであるが、この際閣議の線をわれわれに押しつけようとする吉武さんであるか、あるいは閣議において職を賭しても、おれが二代目になつてもやるという熱意を持つ吉武大臣であるか、とにかくその最高の責任者である新大臣にここに出てもらつて——予算委員会関係もあろうが、とにかく大臣がやめたという当面の問題を処理するこの委員会において、この議題を進行する途中において大臣が出席せぬということは非常に不愉快です。従つて委員長はすみやかに大臣の出席を求めて政府の所信を確かめ、また吉武大臣の熱意のほどを伺つて、われわれ国会議員が十分これを鞭撻して、所期の目的を達成せねばいかぬと思いますので、その点についてすみやかな処置をとられたいということを発議します。     〔「その通り」と呼ぶ者あり〕
  80. 小平久雄

    小平委員長 ただいま受田君の御発議がございましたが、先ほど来厚生大臣に連絡してあります。連絡がつき次第出席をとりはからいます。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 きよう来ますね。
  82. 小平久雄

    小平委員長 ただいま連絡中なんであります。
  83. 逢澤寛

    ○逢澤委員 今受田君が私の前発言中に閣議の決定ならしかたがないと言つたというお話があつたが、私はしかたがないとは言つておりません。私は自由党員として閣議が決定した以上は、これは考慮せねばならぬ、考慮せねばならぬけれども、それに屈服するものではない、これをはつきり申し上げておく。  そこで私は申し上げたいのでありますが、先ほどの答弁の中に戰歿者は多数な方であるから、恩給法をそのまま存続するということには難色があるやのごときお言葉と拝承したのであります。こういうような一句があつたように拝承したのであります。巷間そういうようなことも官僚の間では伝えておるのもあるのであります。そこで私は一言申し上げておきたいんだが、私が他の公務員諸君の給与のそれとあまり遜色のないと言うことは、必ずしも多くを望まぬ、しかしながら公平な処置とつていただきたい。もしそれ戰歿者が多数にして国家財政がこれを許さぬのであるならば、他の公務員諸君の給与も下げたらいい。そうして恩給を下げたらいいと思う。そうして均斉のとれるところにやらねばならぬということを私は考えていたんであります。そこであなた方のようなその職におる人は、あなた方も現内閣のもとにおる人なんだから、そうしたことは考えてはならぬでしようが、立案するにあたつては公平な処置がとれるようにひとつ考えてもらわなければならぬと思い手。私の質問はまだまだあります。ありますけれども、今受田君のお話のごとく関係閣僚も来ておりませんことでありますから、残余の質疑はそれらの方が見えるか、あるいは後日に譲りまして、きようはこれで打切つておきます。
  84. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 今逢澤委員の御質問の中に、私が申し上げたことにつきましていささか誤解がおありであつたと思うのであります。私は、逢澤委員の御質問は軍人及びその遺族全般をひつくるめました恩給扶助料に関連するからという前提でありましたので、そのお答えをして参りました。そうして劈頭に、現在におきまして、軍人の恩給及びその遺族の扶助料がどういうよう状況になつておるのかということを第一に申し上げ、そうしてそれが今度講和條約の効力の発生と同時に法律的にどういうようなことになつて来るかということを申し上げ、そうして軍人及びその遺族の恩給及び扶助料をどうするかということを考えますとき、元に返すということを考えます場合においてはその関係者、そこが逢澤委員の誤解を招いたと思うのでありますが、これはもちろん遺族の方だけを言つているのではない。全部の問題をひとつ考えなければならぬと思う。そこで全部のことを考えますと、年金関係者だけで数百万になると思う。最後に私はつけ加えて申したと思いますが、それをどういうふうにして、どういう方法をもつて恩給あるいは扶助料を具現して行くかということは、とくと慎重に考えて行かなければならぬ、こういうように申し上げたのであります。誤解がありましたらあしからず願います。
  85. 川端佳夫

    ○川端委員 それでは時間もおそうございますから一点、といつても相当の量でありますが、お伺いいたしたいと思うのであります。  まず前の国会におきまして、戰歿者遺家族及び戰傷病者援護対策のために準備調査に必要な経費というのが一応組まれまして、実態調査を計画いたしたわけでございますが、その結果今回の二十七年度の予算に問題となりました二百三十一億中心の費用、これと大きな関連を持つわけでありまするから、この実態調査の結果がもし出ておられましたらこれを伺いたい。  それは戰歿者の数が百七十余方柱、こういうふうに大体われわれは了解をいたしておるのでありますが、この数字をはつきりとお示しを願い、そうして遺家族関係の内訳、また傷病者の数、これは年金の対象となる数等についての調査の数をまず伺いたい。先ほどの約三十七万の引揚げの数についても、委員会はこういう数字から出発をいたしている、この引揚げ関係委員会で年がら年中同じような議論を私たちは伺つておるのであります。(「政府が怠慢だから」と呼ぶ者あり)全然発展しない。また政府当局も、事実野党のやじのような、非常に私たちも与党でありながら怠慢の面があるのじやないかと思う。それは先ほどから伺つておりましても、引揚げの新しい方策としてそれではどういうことを計画しているか。あるいは今までこういう手を打つて来たが、この結果はこうだというふうな、留守家族あるいは遺家族に対してある程度納得の行くよう政府当局の動き方というものを示してもらわなければ、遺家族等も、何ぼ金をもらつたからといつてありがたがれるものじやない。この遺家族の方に、あるいは留守家族方々に、政府並びに国会が誠意をもつてこの問題に当つておるのだという点を示さなければならぬと思う。こういう意味から行きまして、私はまず実態調査がどの辺まで行つたか、これが将来必ず委員会でも問題になつてようと思う。今度の二十七年度の予算と大きな関連のある基礎数字でありますから、この調査を伺いたいと思うのであります。引揚げの問題あたりも、せつかく共産党さえも今まで非常に反対の方向へ行つて、われわれ与党の議員は、共産党は日本人のわれわれのほんとうの気持をわかつてくれておるのかどうかというような感じさえも持つてつたのでありますが、ただいま伺つていると、非常に方向転換して来られたように思う感じを受けた。国家のため、あるいは遺族引揚者のために喜ばしいことだと私は考えるのであります。こういう観点から伺いたと思つておるのであります。
  86. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまここにこまかい数字等は持つて来ておりません。私が出席を要求されたときのお話はそういうことでなかつたものでありますから。ただ戰歿者の数が百七十六万、なお詳細なこまかい調査を現在いたしておりまして、これは一月末までにいろいろな調査資料が集まります。従いまして二月のどのくらいになりますか、できるだけ早い期間にこれをとりまとめたいと考えております。いろいろな内容の問題につきましても調査をいたしております。この調査は一月末日までにでき上ると思います。
  87. 小平久雄

    小平委員長 この際申し上げておきますが、ただいま厚生大臣が見えるそうでございます。
  88. 川端佳夫

    ○川端委員 それでは本日が一月末日でありますから、数日中に結果は報告され、あるいはわれわれが知り得ることと思います。さきに一億の調査費を組んだのでありますが、これは実態調査のためにどういうふうに使われたのでありましようか、ちよつと伺います。
  89. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この調査費によりまして、戰歿者の家庭の状況その他詳細なる調査をいたしております。それからなお傷痍者につきましても調査をいたしております。その他戰歿者、傷痍者等の中で軍人軍属以外のものにつきましても、関連事項につきまして調査をいたしておりますが、これらの諸調査を今地方におきまして、各市町村、府県等で調査いたしております。全体の数につきましての調査と、それからさらに詳細なる調査は、全部にわたつていたしますと非常に期間がかかりますので、これが十分の一の数を拔き調査をいたしております。従いましてこれによりまして、大体統計といたしましたならば、全体の状況は非常にはつきりわかるようになると考えております。
  90. 堤ツルヨ

    堤委員 先ほど私の方の党でも提案したいと思つておりましたら、自由党の小西先生から提案がございましたが、まだ生き残つて抵抗をしておるフイリツピンの辺鄙な島の残留者の問題でありますけれども、この人たちは未復員者に入つておるか、あるいは英霊の中に入つておるか、どちらかではないかと私は実は思うのです。しかしこれを知つて、もし自分の家族の一人が中におるということになつたら、人道的な見地から検討しなければならない、私はかように思うのです。すなわち先ほどの小西先生の要求はもつとはつきりしてほしかつたので、私も重ねてちよつとここで頼んでおきますが、このまだ生き残つておる人のために、外務省の当局の方からいろいろな手を通じて手続をなさつておるということもけつこうでありますが、人命は一名たりともおろそかにできません。長官にも委員長にも私は強く動議を提出するのですが、国会としてこれを何もしないで見ておる手はないのですから、あなたの方はあなたの方としてなさつたとしても、国会の方がさらにこれに協力するということになるならば、なお行き届いた処置がとれるのではないか。ですから小西先生のさいぜんの線をさらに延長しまして、そうしてこの委員会で積極的なフイリピン政府に対するところの申入れであるとか、正当の決議が突きつけられなければ、陳情するとか何とかいう形において、国会の意思を表明するような方法を国会の方でとつた方が、外務省当局もなお助けられるのではないか、かように思いますので、この問題をひとつ委員長お考えになりまして、引揚委員会の方で決議をするとか、陳情をするとか、院議をもつて陳情をするとか、何とかの方向にまとめていただきたいと思います。これも理事会にはかつていただきたいと思います。
  91. 小平久雄

    小平委員長 ただいまの堤委員の御発言に対しましては、理事会にはかつた上、適当に処理いたします。
  92. 堤ツルヨ

    堤委員 それでは大臣がお見えになりましたからさつそく質問いたしたいのでありますが、厚生委員会でもそうでありますが、今度の遺族援護に関しましては、政府は厚生省所管として遺族援護のための費用を、一応合計を出されておりまして、大体二百三十一億と新聞に発表になりました通りのものがここに出ておるわけでございますが、これを出されるについての根拠法が当然これと同時に、またあるいは優先して出されなければ実はわれわれは審議することもできない、架空的なものに相なるわけでございますが、(発言する者あり)これに対して、橋本厚生大臣が職を辞されてからあとを引継がれました吉武新厚生大臣の御所感をまず承りたいと思います。
  93. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 遺家族援護につきましては、先般の閣議決定によりまして、すでに新聞で御承知のところと思いますが、年金として、その他を含めて二百三十一億、そうして一時金として八百八十億の公債を交付するということになつておりまして、この根拠法につきましては近く本国会に提案をいたしまして御審議を煩わすつもりでございます。
  94. 堤ツルヨ

    堤委員 近く国会に提出いたしましてということでございますけれども、もうすでに二十三日にこの予算は衆議院にかけられておるのでありまして、その近くというのはいつであるか、はつきりとここでお答えをいただきたい。
  95. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 一応予算は決定いたしておりますが、法案の立案につきましては、できるだけ各方面の意見を聞いてと思いまして、実は立案に慎重を期しておるわけであります。しかしそう申しましても、もうすでに予算もかかつておることでございますから、そう長く放置するを許さないと思いますので、できるだけ早い機会に提案をいたしたい、かように考えております。
  96. 堤ツルヨ

    堤委員 厚生大臣のお立場はよくわかりますので、これ以上追究いたしませんが、私が質問いたしましたら、与党議員から何だか非難がましいお声が出ましたけれども、われわれ国会議員としては、どうしても今度これをものにしなければならない立場にあるのですから、こういうあと先になつた法案を出されると非常に困るのであります。でありますから、できるだけ早くという抽象的なお言葉をお使いになりましたけれども、もう二、三日のうちにでも出していただきたい、こういう気持を持つております。それでないと、私たちもすいぶん超党派的な立場で遺家族国家保障の線に沿つてつて行きたいと思いましたけれども政府が根拠になる法律をお出しにならないならば、また野党各派といたしましてもおのおの天下の公党としての立場がありますので、国会対策委員会でその方針をきめなければなりませんので、早急にお願いいたしたいと思います。  それから次にさてこの法律を実施する問題になつて参りますと、こういう不公平な問題が生れて参ります。と申しますのは、これは地方に参りますれば、遺族方々の中でも非常に問題になつておる点でございます。たとえばごの法律が実施されて、実際お金がもこのらえるようになるのは今年の四月一日からであるとまあ仮定いたします。そのときに、ことにこれは年寄りの世帯であるとか、年寄りが孫をかかえておるとか、戰争未亡人が子供をかかえて今まで一生懸命にやつて来たという人の立場になるのでありますが、こうなつて参りますと、数年前であつたならば、当然国家保障によつて生活保障的なものを受けられたものを、この法案ができなかつたがゆえに、かんじんの苦しんでおるときにかばつてもらえなかつた。それで当時主人が死んだときには八つと五つと一つの子供をかかえて苦しんだが、満州事変のころと比べて、今日になつてみると長男は未成年の域を脱した。そうしてこれは実際救つてもらえるところのわくに入らないという者を勘定して参りますと、ここに非常に大きな不公平が生れて参るのであります。これは小委員会などでも相当問題になつてつたのでありますが、まだ妥当な結論が出てなかつたし、もしこういう不公平が生れて参りましたときには、これとの人々に対して厚生大臣はどういうお考えをお持ちになつておるか、ひとつ承りたい。
  97. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この遺家族の問題につきましては、一応根本的にいろいろ考えなければならない問題があると思います。従つて遺家族の御希望としては、国家保障的な考え方でという御希望もあつてもつともだと思うのですが、これを根本的に考えて行きますると、恩給法の根本に触れて考え直さなければなりませんし、そうこうしておりますと日にちがたつばかりでございます。しかもすでに七年間、英霊に対するお祭りの問題にいたしましても、遺家族援護の問題にいたしましても、実は延び延びになつて、私どもとしてはまことに申訳ないと思つておりますので、ざしあたり今度の予算措置としては御不満かと思いますけれども、やむを得ず二百三十億に八百八十億の公債交付ということで暫定的に出発をしよう、こういうことでございますので、今御指摘になりましたような点を一々拾い上げられますと、なるほどという点もございますけれども、それを一々根本的にやつておりますると、実は根本の問題が延びまするから、今回はひとつ暫定的な処置として御了承いただかなければならぬかと、かように存じております。
  98. 堤ツルヨ

    堤委員 大臣の御答弁了承いたしますが、しかしほんとうに救つてもらいたかつたときに救つてもらえなかつた、こうした母子世帯並びに老人世帯に対しましては、私たち同情の涙を禁じ得ないところでありますから、でき得るならば社会保障制度というものをこしらえて、こうした人たちに対して政府の生活保障というものが当然同時になざれるのが理想ではないかと私考えておるものでございまして、これはひとつまじめに取上げていただいて、この政治の貧困、欠陥を、大臣はむずかしい問題だとお考えでございまして、私たちもむずかしい問題だとは考えますけれども、ひとつさつきゆうに、この人たちを慈悲であるとか憐憫であるとかいうところの気持でなしに、人道的な見地から援護策、保障策というものを政府の手においてなされたいと特に要望いたしまして、私大臣にこの意見を申し上げておきます。
  99. 高田富之

    ○高田(富)委員 この機会に大臣に対しまして、今回新たに設けられました遺家族、傷病者等の援護に関する根本的な考え方だけをお伺いしておきたいと思うのであります。と申しますのは、今回この予算の編成を中心といたしまするいろいろな問題で、遂にこの当面の遺家族援護対策に関する経費の折合いがつかないがために、橋本大臣がやめられた。これは非常に大きな問題でありますし、特に全国の遺家族、傷病者諸君がこの問題につきましては、先般来非常に大きな政府に対する要望、熱意の溢れる叫びをあげておるわけでありまして、私どもここに出されました本年度の予算をながめますときに、いかにしてもこの関係費があまりにも少いということにつきましては、もはや一点の論議の余地はないと思うのであります。先般来新聞紙上等にも伝えられておりますので、日本国民のすべてがこれを知つておると思いますが、同じ敗戰国でありながら、また同じような立場にある西ドイツとわが日本とにおきまして、この戰争犠牲者に対する同じ援護対策があまりにも大きく隔たりがあり過ぎる、何としてもこれは納得が行かぬというのが国民全般の持つておる気持であろうと思うのであります。西ドイツにおきましてもまた日本におきましても、総予算の範囲はほぼ同じ程度の予算であります。わが国におきましては、今回組まれた二百三十一億では非常にわずかなものであります。これに対しまして西ドイツでは大体二割、金額にしまして二千二百九十九億円が組まれておる。しかも全部現金支給である。四十歳以上の未収入の妻一人世帯の場合を比較しても、日本が千六百円に対して西ドイツでは七千七百四十円というように、まつたく問題にならない開きがあるわけであります。しかも西ドイツはすでに一年前から実施しておるというよろな関係である。まつたく事情が同じでありながら、なぜわが国においてはこの方面に出す経費がこれほど圧縮されなければならないか。こういうことで今回、橋本大臣がやめられるような問題にもなつたと思うのでありますが、あまりにも問題が大きい。常識ではちよつと判断のつかないほど、戰争犠牲者に対する対策が著しく貧困であるということであります。これにつきまして政府はどうしてもそれが出せないという合理的な理由があるか。全国民の納得できるようなこれに対する説明ができるか。西ドイツにおいては、戰争犠牲者等が非常によく団結して、その団結した力で政府の政策を動かすというところまで輿論の力が強いために、こういうふうなことができたというふうにもいわれておる。日本においては、戰争犠牲者の諸君がおとなしかつたため、政治的な力がなかつたために、こういうまつたく問題にならない数分の一のところで泣かなければならぬというようなことになつてしまつたのであろうか、あるいは日本においては急速な再軍備の必要上、国の予算の二割も三割もが再軍備のためにまわされてしまうためにこういうことになつたのか。そういうことがあつても、再軍備ということよりも先に戰争犠牲者に対する援護をしなければならぬというのがだれにも考えられる常識的な判断である。どうかこの点が明確にわかるように御説明願いたい。同時に今度の大臣は予算案を出してしまつたのですから、これを動かす意思はあるいはないかもしれないけれども、ほんとうにこの問題についてこの国会における議論を聞き、また遺家族諸君、傷病者の輿論を聞いた上で、これのも額もつと増大せしむるゆとりがあるのか、また根拠法が出ていないのですから、そのくらいのゆとりがあると考えて国会に臨まれておるのかどうか、これらについてひとつ明確な御答弁を願いたいと思うのであります。
  100. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今回政府がとりました遺家族対策の予算が不満である、不十分であるということは私どもも了承しております。しかしながら日本の今日置かれました財政事情からいたしますれば、やむを得なかつたところでございまして、将来日本の国力の充実と相まつて、これは根本的に改善せらるべきものと私は存じております。西ドイツの例を引かれましたけれども日本日本の国情もございますし、一方国民の負担も、税負担としては相当高い負担をしておるから、従つて減税の処置も講じなければならぬし、また一般の内政費の充実もして、相応のことをやつて行かなきやならぬ。自衛費の問題も、今御指摘になりましたけれども日本の国内の治安の点から見ましても放置を許さない状況でございますので、いろいろ勘案をいたしました結果この処置に出たわけでございまして、将来の問題は充実をまつて改善をするつもりでおります。
  101. 高田富之

    ○高田(富)委員 この問題につきましては、なお苅田委員からあとで質問がありますので、私は一つ要望だけして質疑を打切りたいと思います。日本には日本の事情がある、防衛が必要であると言いますけれども、これは今予算委員会等においても審議中であつて、防衛関係費とか、ほとんど内容の未確定な、今進行中の日米行政協定等をまたなければわかるはずのない経費を数百億円も計上するほど、そういう思い切つた経費の濫費ができる。しかもこれは厳密に言えば、明らかに憲法違反の軍事的なものであることは天下周知の事実であろ。そういうふうなことをやりながら、これでやりたいということでは国民は納得いたしません。ぜひともこの問題については、本国会において野党の言うことに対し、また国民の輿論に冷静に耳を傾けられて、すみやかにこういうふうな予算を撤回されんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 吉武さんは橋本さんのあとを受継がれて厚生行政の最高司令官になられたわけでありますが、労務行政の司令官とあわせて二つの大役を持つておられる。この点において非常に大役であると思うのでありますが、一方吉武さんが過去において労務行政とあわせて厚生行政に非常な体験を持つておられるという点においては、その人を得たと、内心ひそかに相手の政党でありながら喜んでおつたのであります。ところが今回厚生大臣に就任されたについては、そのいきさつが非常に微妙であつた。私たちもあの橋本さんが最後までがんばつてくださるであろうと期待しておつたのが、突如として辞職となり、しかもあの辞職後における声明発表が党の幹部の逆鱗に触れて、除名騒ぎまで起るというような事態が発生したことは、われわれ政治家としてまことに遺憾にたえないところであります。ところが橋本さんの基本観念は、特に遺族援護の問題は、これは国民が納得する線までがんばらなければならぬという基本線を引いておりました。従つて閣議においても、国民が納得しないで、ただ単にお燈明料とか慰め料とかいう簡単な問題ではいけないのだという線をはつきりとひつぱつて、最後までその旗幟を鮮明にされたのであります。この点についてあとを引継がれた吉武さんは、閣議の決定であるからやむを得ないのだ、皆さん納得してもらいたい、がまんをしてもらいたいという線に変更されたのではないか。ずなわち橋本さんのとなえたところの、遺家族援護は国策の中でぜひこれを強く取上げなければならぬ、あくまでも国民の納得の線でがんばるという基本線を、閣議了承の線で国民を納得せしめるという線に転換をされたのではないかと憂えておるのであります。従つて厚生大臣としてその任にあられる以上は、少くとも厚生行政の対象となる国民のために、閣内において全力を振い、都合によつては再び職を賭してでもがんばつて行くという強い決心の必要があると思うのであります。この点について、種々の情勢上やむを得ずこの予算でがまんをしてもらいたいという線で遺家族を納得させる挙に出られるか、国会を納得させる線に出られるか、あるいはできれば、この点については最後まで自分遺家族とともに、諸君の援護の道は国家保障の線までがんばつて行きたいのだ、国会においてもできるだけわれわれを鞭撻してもらつて、閣議においてこの要望が通るように大いに努力してもらいたいという熱意を持つておられるか。この二つの線をいかようにお持ちであるか。私はこれが厚生大臣に就任された吉武さんの私たちに対する大事な意思表示でありますので、御意見を伺いたいのであります。
  103. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は遺家族方々に対する熱意の点につきましては、微力ではございまするが、一身を尽してやるつもりでございます。しかしながら今回とりました予算措置は、閣議が決定したからというわけではございませんで、閣議決定に至りまする間には、数度におたり、また数時間にわたつて、閣内で相当慎重に審議をいたしました結果到達したのでございます。その事情は先ほど申しましたことく、今日の日本の財政上から考えまするならば、予算としての二百三十一億と、それに一時金ではございまするが、八百八十億の公債を交付する。これで十分とは申されませんけれども、今の日本の姿としてはやむを得ないと考えておるわけであります。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は、あくまでも遺家族援護に重点を置くのだという御答弁に対しては、私も敬意を払うものでありまするが、特にこの国会において、戰死者遺家族、戰傷者等の援護の問題、調査の問題を取扱う特別委員会が設置されて、もつぱらこの問題のために国会の権能を発揮しようという、まことに終戰後いまだかつてない特別委員会が生れたことは、吉武さんも御承知の通りであります。これほど重大な特別委員会が生れたという点において、いかに国会側がこの問題を重視しているかということは、大臣も十分おわかりだろうと思います。従つてこの委員会は、大臣所管の委員会の中では最も重要な委員会であるから、ほかにも御用がありましようが、委員会開会と同時に御出席いただいて、先ほどから大臣が御出席せられないばつかりに種々むだな議論が繰返されておりますが、こういう点についても、御熱心な官僚としてのあなたが、ひとつ今後は国会においても熱心に出席していただいてわれらとともに政府側の最高責任者として御討議いただきたい、こういうことをまずお願い申し上げ、国会側のこの特別委員会の性格をとくと御了承いただいて、ひとつ大いに職務に骨を折つてもらいたい、鞭撻してもらいたいというお気持を持つていただきたいのであります。この点についてなおもう一つ、予算が提出されてはおるが今後修正の道はないか、あるいは早急に補正予算が出されるような道まで考えて行くという用意を持つておられるかどうか、これらについて、遺族援護資金にいたしましても、単に遺族年金月額千円というような形でなくしてこれをざらに高めて、生活保護費のようなああいうお情のようなものではなくして、国家保障としての線を押出す用意をされつつあるかどうか。あるいは戰傷者の場合であるならば、同時にこの障害年金の増額をはかるとともに、一方で鉄道の無賃乘車とか、あるいは特殊の便宜をはかるような、現在予算と関係はないが、こういう点で道が開けるようにする。たとえば就職をする場合に、完全雇用ができるような道を開いてあげるとか、あるいは遺族の子弟において高等学校、大学に学ぶ者は、すべて現在の一万七千人が漏れなく育英資金のもらえるような道をとるとか、いろいろな措置が予算のわく内においても操作できるでしよろうし、あるいは修正、もしくは補正の措置においてその道が開けると思うのでありますが、こういう点について大臣がその所管の最高責任者としてお考えになつておられることを伺いたいのであります。
  105. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 遺家族援護の問題につきましては本特別委員会ができておりまするので、私もできる限り出席をいたしまして、皆さん方の貴重なる御意見を参考にいたすつもりでございます。なお予算を修正し、もしくは近く補正をする意思はあるかということでございますが、私どもとしては、先ほど申しましたことく相当慎重に審議をいたしまして決定したのでございまして、修正また近く補正をするというつもりはございません。予算の中においてでき得る限りの努力を尽すつもりでございます。なお戰傷者についてのお尋ねもございましたが、これも相当今度の予算措置については慎重に考慮をしたつもりでございます。なお完全雇用の問題につきましては、でき得る限りあつぜん、努力によりまして、就職のお世話をしなければならぬと思つております。これが予算措置として現在数箇所ございますが、そのほかに二千万円の予算を計上して、さらにこれらの人々のために補導所を設置する考えを持つておるわけでございます。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 この遺家族援助の対策のために未復員者給与法及び特別未帰還者給与法並びに生活保護費等の方面の費用がこれへ一括含められることになつておりますが、この問題で特に私が憂えるのは、未復員者給与法の給与対象になる人に対する給与、あるいは特還法の該当者に対する給与などが、この遺家族援護費の中へ一括して含められることになることによつて、この法律の無用論が叫ばれるおそれはないかそうしてもう一つは、そういう法律無用が叫ばれることになりましたならば、もつと進んだ国家保障の線で特別の法規を留守家族のためにもつくるべきであると思うのでありますが、その点についても、遺家族援護とともに、留守家族援護のための特別立法も考慮しておられるかどうか、お伺いしたいのであります。
  107. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 未復員者の給与の問題につきましては、予算の組み方として一括して一まとめにいたしましたけれども、法律は変更する意思はございません、従前通り施行するつもりでございます。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 この問題について大臣の御構想を伺つて、さしあたり修正もしない、また近く適当な機会に補正もしないという御意思で、二百三十一億は一文も上げることばしないのだというお気持がはつきりここで表示されたのであります。従つてこのわく内において遺家族に対してできるだけの給与の増額をはかるようにしたいという、おく内操作の問題が残されて来たわけでありまするが、私はここでこの委員会が、ただいまの大臣の御答弁に基いてこの修正もしくは補正に対しての望みを捨てず、同時に特別立法について熱心に討議を重ねて、政府側の意図に対してもさらに考え直してもらうように、さらに留守家族の皆さんの立場にも立ち返つて、これが援護の完璧を期するような行動に出たいと思いますが、願おくばこの問題について、先ほどしばしば申されたように、何とかして早く援護の道をとりたいのだというそのことに対して、早急に、とにかく現在政府が考えて、これ以上は手が打てないというぎりぎりのところまでの問題については、すみやかな手が打てるよう措置とつてもらつて特に一刻も猶予を許さないという現状においてひとつがんばつてもらいたい。  もう一つは、先ほどから大臣が御出席になる前に議論された問題でありますが、遺骨引揚げの問題とか、あるいは特に日本の周囲に沈んでいる船の中に眠つている英霊を、鉄くず屋が船を引揚げることに本気になつて英霊引揚げるのが副になつているという実情からいつても、少くとも英霊引揚げるのが第一であつて英霊引揚げるという国策を決定してもらい、この際国策として大いに御努力をいただいて、愛国政治の実現のために重大な難局を担当した大臣としてがんばつてもらいたい、こう熱願するのであります。詳細はまた後ほど本日の御答弁に基いて質疑応答を繰返したいと思います。
  109. 苅田アサノ

    ○苅田委員 先ほど大臣は閣議決定のことについて、新聞紙上等でごらんになつたであろうというようなことをお話になつたのですけれども、私はこの点をまず第一番に非常にふしぎに思うわけです。私どもこの遺族援護の問題につきましては、厚生委員会もあり当委員会もあり、すでに厚生委員会では三回も委員会を開きまして、当初からこの問題について政府からのはつきりした方針を示してもらいたいと要求してあるにもかかわりませず、今日に至るまで何ら具体的な現在の状況についての方針が聞かれず、しかもただいま聞けば、新聞紙でごらんになつたであろうというふうな言葉、これは非常に私どもはふしぎな気がするのです。御存じのように吉田首相はもうしばしば、それは新聞記事であつて政府は責任を負おないということを言つていらつしやるので、私どもやつぱりはつきりした政府の方針というものは、正式に私どもに伝えていただきたいと思うので、私はこの機にひとつ閣議決定と、いうことがどの程度まではつきりしているかということを、具体的にお話願いたいと思います。
  110. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私はあまりここで長くしやべることを省略しようといろ意味で引用しただけでございます。閣議の決定いたしました線は、妻子について未復員者と同じような年金を支給し、父母、祖父母等につきましては一時金として五万円の公債、これが八百八十億、そのほかには英霊の慰霊祭を行うために一億、育英資金として六千八百万円、その他こまかい点を申し上げれば、予算害に載つているのでありますが、そのほかに障害年金といたしまして十七億九千万円、更生援護費として七億二千六百万円、それから留守家族援護は、先ほどお話がありましたように今までの未復員者の予算がこちらにかわつたのでございまして十八億三千九百万円、そうしてそのほかに身体障害者の雇用のために三百万円と、職業補導のために先ほど申しました二千万円、そのはか若干の事務費を組みまして、予算としては二百三十一億と、このようになつているわけであります。これの具体的な問題は、近く法律案といたしまして皆さんの御審議を仰ぐつもりでございます。
  111. 苅田アサノ

    ○苅田委員 大体ただいまの御答弁によりますと、新聞等で発表されている点や、あるいは一部原生委員会に出されました資料と同じように考えるのでありますけれども、私はこの程度の遺族に対する援護によつて、はたして政府日本遺族大衆の要望に対してこれを納得せしめることができるというふうに考えておいでになるかどうかということについて、さらに私はお聞きしたいと思うのです。大臣はみずから去る二十日の遺族大会にも御出席になつており、また自由党の幹部の議員諸公も大勢出ておいでになつて遺族の前では政府の案と議会とはまた別個なんだから、議会では十分に遺族の意思を反映して闘うということを与党みずからの多くの人が言つておられるのであります。しかも出されました案は、結局当時示されましたのと総額においても異ならない、詳細を見ましてもほとんど大差ないというふうなものが出されたと思うのですが、これでは私はほんとうに遺族に対しまして、政府や与党がどれだけの誠意をお示しになつているか非常に疑問に思うのです。この点からひとつ私はお考えを聞きたいと思うのです。
  112. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今回政府がとりました遺家族対策についての予算が十分でないということは、先ほど申しましたように私どももさように考えておりますが、日本の今日の財政事情からすればやむを得なかつたところであり、また遺族方々も今日の日本の事情を御了承いただけるものと私どもは考えております。
  113. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私はそういうふうな日本政府としての考えであり、かつ与党がこれを支持するのであれば、もつと率直にそういうことをああいう全国の遺族代表が集まつた場合になぜはつきり言われなかつたのか。あのときには国会と政府とは違うのだから、与党も加わつてあくまで国会では皆さん方の意向が達せられるように闘うということを、何人も何人も言つておいでになるのです。できないことならば、あのときに率直に政府はできないということを言うべきであり、私は皆さんの前にお詫びすべきだと思うのです。それを今日までこのよう状態に置いて、今ではただその中を何とかして遺族をごまかして、何とか頭をなでてそれをまるめようということだけで、もう予算の審議が始まつていて、十一日には公聴会までするというのに、まだその具体的な方針ができないというような醜態はただその一点に尽きると思うのです。どうかしてその醜態を隠したいというだけなんだから、そういうことをもつと私ははつきりして、できないものならできないということを政府並びに与党が、天下の遺族に向つて私はわびなければいけないと思う。
  114. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は遺族大会に臨んで申し上げた通りをただいま申し上げたつもりでございます。もし間違つておれば、その日の私の言葉は録音にとつてございますから、お調べになつていただけば、間違いないと思うのでございます。
  115. 小西英雄

    小西(英)委員 関連して……。苅田委員が言われておりますが、これはまつたくその当時の実情を知らなくて言うているのでありまして、先ほどの受田委員の言葉にもありましたが、橋本厚生大臣が犠牲的にやめられたというようなことが、一部新聞に伝えられておりますが、遺族のほんとうの心情が映つていない。遺族はむしろ橋本案の中の年金等については非常に多い方に賛成であるが、橋本案なるものは、遺族の国家保障の線で来たのでなくして、社会明障の観念から来ておるのであるから、われわれもそういう点について考慮を促し、その範囲において厚生大臣も、これは遺族の暫定処置であるので、その点について今後十分考慮する。われわれといたしましても、遺族と長い間——ここにおります高橋委員も同じでありますが、いずれの方よりつき合いが深い関係上、遺族の心情を察して、遺族にはまず平等的な一時的処置とつてもらいたい。そうして年金等については、これは審議会をつくつて、あるいは恩給法の切れた際に、それを慎重審議してもらいたいという心情でありまして、われわれはその意思をくんで、吉武厚生大臣もその意思をくんで、善処いたしたのでありまして、ただ大きな金の額の面等について、受田委員も述べておつたようでありますが、実際におきまして遺族の心は、国家保障の線で一応われわれを納得さしてもらいたい。また年金については予算の許す限り多いことはけつこうであるが、今年は暫定的措置であるから、それらについても遺族の実情から推した案をつくつてもらいたいという心情であつたので、何ら大臣の答弁もその日と間違つてなく、われわれ、与党の議員といたしまして発言する心情も、これは今年度の年金は十分とは考えてないが、とにかく少い中からでも、精神的にみなを納得せしめるように努力をいたすということを申し上げたのでありまして、そういう点について多少私たちの考えと異にするので、ここに関連して申し上げておく次第であります。
  116. 苅田アサノ

    ○苅田委員 私はただいまの発言で、明らかに政府並びに与党の発言として申しましたので、これは録音があればなおけつこうなんで、星島総務ですか、以下ここに列席しておられる議員もまじえてはつきりと、国会とそれから政府とは違うのだからということを何回も言つておられることを耳にしておることは、これは私一人が聞いたことでないことは、おそらくここに列席しておられる人であるならば御存じだと思うのです。やはりそういう点では問題をこんがらかせないためには、率直に発言をしてもらいたい。何もあなた方の政府でできないことはやむを得ないのだから、そうであれば、できないということについての率直な発言は当然なされなければならないと思う。またそれをするようにするにはどういう方法があるかということに対しても、国会でもやろうと言つたあなた方与党の責任としても、私は率直に聞かなければいけないと思う。少くとも国会で増額できる方法を討議するということだけは、やはりしてもらいたい。それが私は当日そういうふうな発言をされた責任であると思う。
  117. 高橋等

    高橋(等)委員 私はただいまの苅田委員の発言中、われわれ当時大会に出席しておりました自由党の代議士に向けまして発言がございましたから、当時のことを一応お話をして、もし苅田委員が十分に御反省願えればけつこうでありますが、もし御反省願えねば、お取消し願いたいということを申し上げます。(「そつちこそ取消せ」と呼びその他発言する者あり)当時、先ほど小西さんからもお話がありましたように、予算のこの遺族保障に関しまする行き方について、少くとも筋道のはつきりとした解決をしてもらいたいという要求が遺族会からは出ておつたのであります。私たちはその当時政府案というものが発表せられた直後でありまして、非常に全国の遺族の動揺があつたことを了承いたしまして、われわれ自由党の人間といたしましては、党の立場においてこの問題を十分に審議をして、なおこの問題について遺族さん方の得心の行く筋の通つた解決をやることをあの席上でお話をしておいた。ただいま苅田さんが言われるのは、われわれ自由党の代議士が、この国会を通じてこれを訂正すると言つたということを言われた。もちろんそれをおつしやつた方もあります。しかし国会が現在こうやつてまだ開かれてきよう初めて審議をしておるだけであります。国会の審議というのはこれからだ。しかるにその初日において、あなたは遺族会に対してわれわれにあやまれというようなことをおつしやるのは、お互い議員が国会の議事というものがどうやつて運ばれるかということを御存じでおつしやるのか、もう少し責任を持つてとつ良識のある御発言をお願いしたい。その点について苅田さんの御意見を伺いたい。苅田委員の取消しを要求いたします。
  118. 小平久雄

    小平委員長 苅田君及び高橋君の御発言は、党の立場における御発言のようでありますから、その程度にいたしたいと思います。  遺家族援護に関する質問は、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  119. 小平久雄

    小平委員長 この際お諮りいたします。去る二十八日委員河口陽一君が委員を辞任され、その補欠として羽田野次郎君が委員に選任ざれたのでありますが、河口陽一君は海外胞引揚に関する調査小委員でありましたので、現在小委員が一名欠員になつておるのであります。この際海外胞引揚に関する調査小委員に河口陽一君の補欠として、羽田野次郎君を選任いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 小平久雄

    小平委員長 御異議なきものと認め、羽田野次郎君を海外胞引揚に関する調査小委員に選任いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。次回は公報をもつて御通知いたします。     午後五時八分散会