○
大庭政府委員 航空法案の概要につきまして御
説明申し上げます。
昨日提案理由につきましては
大臣から御
説明申し上げたようでありますが、
日本国との平和條約第十三條におきまして、わが国が国際
民間航空條約の規定を実施すべきことを定めておりますので、この
法律案は、国際
民間航空條約の規定を全面的に取入れますとともに、平和條約発効後のわが国の自主的
航空活動に対処し得るために、必要な規定を定めたものでありまして、
航空行政の基本となるものであります。以下章を追
つて御
説明を申し上げたいと存じます。
第一章、総則におきましては、この法律の目的とこの法律一般に通ずるおもな用語の定義とを規定してあります。
第一條のこの法律の目的は、国際
民間航空條約に準拠いたしまして、
航空機の
航行の安全をはかるための方法を定め、及び
航空機を
運航して営む事業の秩序を確立することによ
つて、
航空の発達をはかることにあるのでありまして、以下の
法律案の各條項に規定しておりますことは、すべてこの目的の具体化されたものであります。
第二章、登録の章におきましては、
航空機の登録について規定してあります。国際
民間航空條約第二十條によりますと、国際
航空に従事するすべての
航空機は、その適正な国籍及び登録の記号を掲げなければならないことにな
つておりまして、
外国の
航空機と識別し、かつその実体把握のためにも、何らかの登録制度が必要とな
つて参るのであります。このような見地から、第三條の規定は、
航空機は、
航空庁長官の行う登録を受けたときは、
日本の国籍を取得することを定めたものであります。なおこの登録の法的効果といたしましては、第十條の耐空証明を受けられないことといたしております。
次に登録の要件としましては、第四條で
外国、
外国人、
外国法人及び
外国資本または
外国人役員がその三分の一を占める法人が所有する
航空機は登録することができないことと規定してありますが、この三分の一という限度は、
航空自主権確保の見地から、米英両国の法制にも存在しているところでございます。その他、第五條から第九條までは、登録事項、登録の
変更及び抹消等を規定したものであります。
次に第三章、
航空機の
安全性の章におきましては、
航空機の
安全性を確保するために必要な証明及び検査について規定してあります。およそ
航空機の
安全性を確保し、も
つて貴重なる人命及び財産についての
損害を未然に防止いたしますことは、運輸行政の行わざるべからざる最小限であり、また最大の眼目でありますことは、論をまたないところでございます。特に最近の
もく星号の遭難はきわめて遺憾な事例でありまして、今後再びかかることのないよう、運輸省といたしましては
航空機の
安全性の確保には万全を期する所存でございます。
耐空証明につきましては、この
法案の第十一條は、耐空証明をつけた
航空機でなければ、
航空機の用に供してはならないことを規定しております。この耐空証明を行う場合には、
航空機の強度、構造及び性能が一定の技術上の基準に適合するかどうかを検査することにな
つております。
次に、検査を簡略化し、も
つて検査の能率化をはかる便宜方法といたしまして、第十二條の型式証明制度を定めたのでございまして、ちなみに
アメリカ航空法においても、これと同様の趣旨が規定されているのであります。すなわち型式証明は、
航空機の型式の設計について行い、この型式証明を受けた設計に基いてつくられた
航空機の耐空証明にあた
つては、設計について検査を省略することといたしてあります。
その他、第十六條の修理改造検査、第十七條の予備品証明、第十八條の
発動機の
整備及び第十九條の
整備または改造の場合の確認、第二十條の指定
無線通信機器の規定は、いずれも
航空機の
航行の
安全性のための検査について定めたものであります。
次に第四章、
航空従事者の章におきましては、
航空従事者に関する規定を定めております。ここで
航空従事者申しますのは、第二十二條の
航空従事者技能証明に合格した者を申すのでございまして、この
航空従事者になろうとする者に対しましては、一定の申請資格を必要といたしますとともに、
航空従事者がこの法律に違反した場合等には、
航空庁長官は免許の取消しあるいは
業務の停止を命ずることができることといたしております。
次に
航空従事者の中で、
航空機に乗り込んで
航空業務を行う者は、この
法案では
航空機乗組員と申しておりますが、この
航空機乗組員は、前に申し上げました技能証明のほか、その身体條件につきまして、第三十一條の
航空灘
乗組員免許を受けなければならないとともに、この資格に相応ずる能力を保持させるために、免許に一定の有効期間を設けてあるのでございます。なお
航空従事者の資格につきましては、
操縦士、
航空士、
航空機関士、
航空整備士、
航空通信士に大別いたしまして、これらをさらに細分して規定しているのでございます。
次に第五章、
飛行場及び
航空保安
施設の章におきましては、
飛行場及び
航空保安
施設の
設置及び管理の適正をはかるため必要な事項につきまして規定してございます。
飛行場及び政令で定めます
航空保安
施設の
設置につきましては、第三十八條では、
航空庁長官の許可を要することといたしておりますが、特に
飛行場のごとく広
範囲の土地を必要といたしますものにつきましては、これらの土地の所有者その他、他人の利益を著しく害することとならないように、
設置の許可の際には公聴会を開くことといたしておるのであります。
次に第四十九條の物件の除去の規定は、公共の用に供する
飛行場の周辺には、一定の物件の
設置等を制限し、またはその除去を命じ得ることといたしておるのでありますが、この場合土地または物件の所有者に対しまして損失を與えたときには、
飛行場の
設置者はその損失を補償し、他方、土地または物件の所有者は、用益の制限による損失が生じましたときには、土地等の買収を求めることができることといたしております。この規定は、
飛行場の
設置者に
飛行場の機能を発揮させると同時に、土地等の所有者に対しましては、その利益を十分保護せんとする規定でございます。
その他、第四十八條の許可の取消し、第五十一條の
航空障害燈の
設置、第五十二條の類似燈火の制限、第五十三條の
飛行場の使用料金の届出等の規定がございます。
次に第六章の
航空機の
運航の章におきましては、国際
民間航空條約の規定並びに同條約の付属書として採択された標準方式及び手続に準拠いたしまして、
航空機の
航行の安全を保持するための必要な事項を規定しております。
第五十七條から第六十四條までの規定は、国籍の表示、
航空機に備えつける書類、救急用具、燃料等、
航行する
航空機に具備すべき要件を定めたものでございます。
次に第六十五條から第七十六條までは、
航空機に乗り組むべき者、携帯すべき書類、一定の
飛行経験及び
機長の資格並びに義務等、
航空従事者が
航空機の
運航に従事するために必要な事項を規定したものであります。
次に第七十九條から第九十八條までの規定は、
飛行の禁止区域、最低安全高度、
航空機の
衝突予防、物件の投下の禁止及び爆発物の輸送禁止等、陸上におきます交通規則と同じように、空中における
航空機の
航行規則を規定してございます。
第七章、
航空運送事業等の章におきましては、
航空運送事業及び
航空機使用事業に関する規定を定めております。
航空運送事業並びに
航空機使用事業につきましては、このような初期
航空事業の健全な発達をはかり、も
つて当該事業の秩序を確立する必要がございますので、免許事業といたしております。
航空運送事業につきましては、定期
航空運送事業と不定期
航空運送事業とにわけて規定してございます。
定期
航空運送事業は、その高度の公共性にかんがみまして、路線ごとに、第百條の
運輸大臣の免許を要することといたしてありまして、この免許を受けた定期
航空運送事業者は、第百二條に規定する
航空機その他の
施設について、
航空庁長官の検査を受けることにな
つております。
また定期
航空運送事業者の定める運賃及び運送約款につきましては、利用者の
立場を保護する趣旨によりまして、第百五條及び第百六條の規定する
運輸大臣の認可を受けなければならないことといたしております。
次に、当該事業の公共性を確保するために
運輸大臣は、定期
航空運送事業者に対しまして、公共の福祉を阻害している事実があると認めるときは、当該事業の停止を命じ、または免許を取消すことができることといたしております。しかしただいま申し上げましたような行政処分を行う場合には、
運輸大臣はすべて運輸審議会に諮
つて、その決定を尊重してこれを行わなければならないのであります。その他、免許事業の本旨から申しまして、当該事業の貸渡し、譲渡、合併及び相続等につきましては、
運輸大臣の免許を受けなければならないことと規定いたしております。
次に第百二十一條の不定期
航空運送事業は、主として軽
航空機による遊覧
飛行等が考えられるのでありまして、定期
航空運送事業とは若干その性格を異にいたしておりますので、その
安全性及び公益性を確保するために必要な限度におきまして、定期
航空運送事業に関する規定を準用いたしております。
次に
航空機使用事業とは、
航空機を使用して有償で、
旅客または
貨物の運送以外の行為の請負を行う事業をさすのでありまして、空中広告宣伝、写真測量、魚群探見等の事業形態が予想されるのであります。当該事業につきましても、その
安全性と公益性を確保するために必要な限度におきまして、定期
航空運送事業に関する規定を準用している次第でございます。
第八章、
外国航空機の章におきましては、
外国航空機の本邦への
飛行、
外国航空機の国内使用、
外国航空機による国内運送及び軍需品輸送の禁止並びに
外国人の国際
航空運送事業の許可等につきまして規定しておりまして、いずれも国際
民間航空條約の規定を尊重いたして定めたものでございます。
なお
行政協定に伴う駐留軍の
航空機につきましては、別に定めるこの法律の特例
法案で規定いたしております。
第九章、雑則におきましては、
事故原因の
調査、
航空運送代理店業等の届出、この法律の施行を確保するために必要な
報告徴収並びに立入検査、行政手数料、運輸審議会への諮問事項及び訴願について規定しております。そのうち
事故調査につきましては、
航空事故があ
つたときは、
航空庁長官は遅滞なくその
原因について
調査し、その職員に
航空機その他の物件を検査させなければならないことにな
つておりますが、救助能力の十分でない現在におきましては、
海上保安庁、国家
地方警察、
地方自治団体等の御
協力を得まして、その安全を期する所存でございます。
次に第十章の罰則の章におきましては、この法律の履行を担保するため必要な限度の罰則について規定しております。罰則は必要
最小限度にとどめ、かつ罪となる行為を明らかにして、不当に個人の自由を侵害することのないように留意して規定したのでございます。
最後に附則におきましては、国内
航空運送事業会の廃止に伴う経過
措置といたしまして、同令に基く
日本航空株式会社及び
ノースウエスト航空会社の地位は、この法律施行後政令で定める日まで、現在の地位をそのまま認めることにいたしております。また
外国人の国際
航空運送事業に関する政令の廃止に伴う経過
措置といたしましては、同令の許可を受けて
日本に乗り入れている
外国航空会社のうち、
日本国との平和條約第二十五條の連合国に属する者については、
日本国との平和條約第十三條b項の規定に基きまして、この法律施行後、四年間、その他の者については一年間は認めることといたしている次第でございます。その他、運輸省
設置法及び
関係法律の改正につきまして規定しております。
以上で
航空法案の概要につきましての御
説明を終ります。
何とぞよろしくお願いいたします。