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1951-11-13 第12回国会 両院 両院法規委員会 第4号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十六年十一月十三日(火曜日) 午後一時四十分
開議
――
―――――――――――
〔
参議院両院法規委員長九鬼紋十郎
君が
会長
となる〕
出席委員
衆議院法規委員長
高橋 英吉君
理事
角田 幸吉君
理事
松澤 兼人君 尾関 義一君 佐瀬 昌三君
田中不破
三君 藤枝
泉介
君
眞鍋
勝君
参議院両院法規委員長
九鬼紋十郎
君
理事
大野 幸一君
理事
岡部 常君 溝淵 春次君 竹下 豐次君 堀木 鎌三君
委員外
の
出席者
衆議院議員
鍛冶 良作君
衆議院議員
中野 武雄君
衆議院議員
古島 義英君
衆議院議員
尾崎
行雄
君
参議院議員
尾崎
行輝
君
衆議院法制局長
入江 俊郎君
参議院法制局長
奧野 健一君 参 考 人 (
横浜市立大学
学長
) 關口 泰君 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
事件
衆議院
の
解散
に関する問題 ――
―――――――――――
九鬼紋十郎
1
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) それではただいまより
両院法規委員会
を開きます。 本日は
参議院側
が
会長
を勤めることにな
つて
おりますので、私が
会長
の席を汚します。 本日の議題は、
衆議院
の
解散権
の問題について
参考人
より
意見
を徴する件でありますが、
参考人
として、
衆議院議員
の
尾崎行雄
君、
横浜市立大学学長關口泰
君がお見えにな
つて
おります。 最初に、御多忙中のところを本
委員会
のためにわざわざ御
出席
いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。 それではただいまから
尾崎
さんの御
意見
を承りたいと存じます。
尾崎行雄
君。
尾崎行雄
2
○
委員外衆議院議員
(
尾崎行雄
君)
せつ
かく
お呼び
を受けましたが、目と耳と両方役に立たないものですから、この資料を読むことができない。少し
ばか
り読んでみましたが、みな読むことができませんから、ただ私の
解散
について
考え
ていることを述べてみたいと思います。
せつ
かく
お呼び
を受けたのに、十分お
答え
することができないかと思います。 元来、
解散
ということは、
ほんとう
の
民主国
においてはあるべきことではないと思うのが私の
考え
の
根本
であります。
民主国
というのは
人民
全体を
主人
とした国である。その
主人
が選んだのが
衆議院
であり、続いて
参議院
である。そうすると、
衆議院
というものは
政治
上の
機関
としては、
ほんとう
の
民主国
においては最上の
機関
である。その上に立つものはないのである。昔
フランスあたり
で三権分立などという、いろんなことを
言つて
、
アメリカあたり
も多少その
まね
をしておるようでありますが、
ほんとう
の
民主国
においては
人民
の選んだ
代表者
、
人民
にかわるものが
衆議院
である。続いて
参議院
である。この
人民
にかわ
つた
一番尊い
機関
を
解散
する。
解散
ということは免職する、もしくは放逐するということであるが、そういうことがあるべきはずがない。
人間
以上のものがこの国を支配しておるならば、
人民総体
が選んだ
最高機関
を
解散
することもできましようけれども、要は
人間
の支配しておる国であるから、
解散
などということがあるべきはずのものではない。ただ昔、
奴隷的根性
で支配せられた
時分
にできた
憲法
に
解散
という
言葉
があるものですから、それを今
民主国
にな
つて
も使わないと済まないと
思つて
、
憲法制定者
がこんな
言葉
を使
つた
ので、しようがない
言葉
である。その点、今
民主国
としてやや近いのは、
ほんとう
の
民主国
ではないが、
相当
の
民主国
は
アメリカ
である。その
アメリカ
には
解散
ということはおそらくないと思う。いわんや、もつと
ほんとう
の
民主国
になれば、
解散
などということがあるわけがない。ただ
憲法学者
の
意見
を聞くと、
イギリス
の頭に支配せられておる
人間
が多いようである。あるいは
憲法
をつく
つた人たち
も、
イギリス
の
立憲政治
に頭を支配せられて
憲法
をつく
つた
ものと思う。それ
ゆえ
に新
憲法
においては、
天皇
の
政治
上の
権力
を一切取上げたにもかかわらず、やはり
政治
上の
権力
が
大分
残
つて
おる。
イギリス国王
と
日本
の
天皇
と一緒に見て
憲法
をつく
つて
おる。これが
根本
の
間違
いである。
イギリス
は
民主国
であるが、
君主国
であり、
国王
の
権力
は依然として存している。それをあまりお使いにはなりませんが、
ヴイクトリア女王
などけときどき
使つたよう
である。たとえば
議員
の多数を制する政党があ
つて
も、
国王
がその中の
相当
の力のある、気に入
つた人
があれば、
自分
の気に入
つた者
をお召しにな
つた
ことがあると思う。今でもある場合においてはそういうことがあるかもしれない。
イギリス
は
君主国
である。
日本
では
新冠法
においては、
天皇
というものは
政治
上の
権力
は全然取上げられておるから、
解散
という
仕事
をする
人間
はどこにもあろうはずがない。 それを
憲法
は
間違つて
、―全体申しますと、
根本
を言うと、この
文字
というものが悪いのです。
ほんとう
のことは絶対に書けない。
漢字
というものがみな
うそ
につくられておる。何千年か
うそ
に使う癖がついておるから、
ほんとう
のことは
漢字
では書けません。これが私の
主張
の
根本
です。その悪い
漢字
で、
間違つた頭
で書いておるので、
憲法
というものを
ほんとう
に正しい頭で読むとわからぬところが非常に多い。そうして
ばか
げたことが並べてある。たとえば
天皇
のお
仕事
の上に、いろいろ
衆議院
を
解散
したり、
政令
を
公布
したり、―
政令
の
公布
ということさえ
大臣
では行うことができない。その
公布
を
天皇
がやるというようなことが並べてある。
大小軽重
の
根本
を誤
つた
並べ方をしている。何條だ
つた
か、六十八條か九條かに、
衆議院
を
解散
するという
言葉
がある。不信任の決議をしたときに、
辞職
するか
解散
するかしたければならぬという、そんな
ばか
なことを書くべきものではない。
りく
つのわからぬ者が
みな間違つた言葉
を使いつけておる。いたずらに
官尊民卑
、
政府
の
役人
というものを尊び、
人民
を
奴隷
とした何千年かの習慣ができているので、
日本人
が使うと、
政府
というものを尊び、
人民
というものは卑しいものだという頭が支配しておりますから、いつでもその頭に支配せられて
間違つた言葉
の
使い方
をしておる。 それで総
辞職
と
解散
ということを同等にして、いつまでに
解散
しなければならぬとか、
辞職
しなければならぬとか、まるで
間違つて
おる。
解散
などということは、これは
人民
の選んだ者を、いらなくた
つた
からやめろということである。
解散
ということは、
人民
が選んだ何百人というものをみな免職して選び直すということである。そんなことを言うべき者はいない。
憲法
を読んでも、
解散
という
言葉
はあるが、だれがその
権力
を握
つて
おるかということは、どこにも書いてない。以前はむろん
天皇陛下
であるが、事実は
天皇陛下
ではなく、
内閣大臣
あるいは
元老
が
寄つて
初めてできたものである。今はそんな
元老
もない。
大臣
はあるが、
大臣
というもののかしらは
人民
全体が選んだものである。
人民
がこしらえたものであるから、
人民
を罰するなどということができるわけがない。だれが国の
主人
であるかということが
ほんとう
にわからぬ頭で、今の
憲法
はできておる。あなた方が
ほんとう
に頭を清めて読んだならば、
憲法
というものはまるでわからぬ、
間違つた書き方
をしておる。字の
使い方
が
間違つて
おる。けれども現在の
日本
においては、この字を使うよりほかに
憲法
の
書き方
がない。
憲法
をつく
つた人
はよほどすぐれた人で、私の
尊敬
しておる
人たち
がおもに関係したようであるがこれらがみな
間違つて
おる。字がないのですから、
ほんとう
のことが書けない。それと、もう一つ
間違つて
おるのは、
憲法
をつくる人の頭を一番支配したのが
イギリス
の
憲法
であ
つた
ということである。その次は
官尊民卑
、
役人
というものを尊び、
人民
というものは卑しい、この頭で
憲法
をつく
つた
ものであるから、その思想がずつと流れて来ておる。これが
憲法
のたいへん
間違つた根本
である。
イギリス
を、ごらんなさい。実際はあまり使いませんけれども、
イギリス
の
国王
は
大権
を持
つて
おるが、
日本
においては
大権
というものは取上げて、
政治
に関係すること相ならぬという
憲法
である。
根本
から違うけれども、
学者あたり
はたいていそれがわかりません。
言葉
の上で
まね
をするのですから、
日本
の
言葉
で
イギリス
の
まね
をしてもできません。現に
政治
の上において
イギリス
を一番よく学んでおるのは
アメリカ
であり、続いて
フランス
くらいだと思いますが、
アメリカ
には
解散
ということはございません。 もし
国民
の
主張
を開きたい、今までの
選挙
のときとは
大分社会
も
違つて
、民心も
違つた
だろうから、その
主張
を聞きたいということなら、
議員
が
辞職
すればよいのである。
ほんとう
に
国論
を確かめるというならば、
議員
が
辞職
すればよい。それも全部
辞職
しなくてもよい。全部
辞職
するくらいのわけのわか
つた人
間がいなければ、
ほんとう
の
民主国
はできませんけれども、そんな
人間
が急にできようとは思いませんから、
半数
以上
辞職
する。半分くらいはいかなるかたわの国でも、国のために
辞職
するくらいの
人間
は
日本
でもあるだろう。そうすれば総
選挙
をして
国論
を問うことができる。
解散
などということは、
奴隷的国民
を
役人
が支配するときに使う
言葉
である。
解散
ということは
懲罰
です。
懲罰
はそれ以上の人でなければ與えることができない。
人民総体
から選ばれた
総理大臣
、そのつく
つた内閣
、
自分
を選んでくれた
衆議院
を
解散
する、
懲罰
するなどということは
気違い
でなければ
考え
られぬことであるが、今、
日本中みな気違い
にな
つて
おるのである。何千年か悪い
文字
を
使つて
、悪い
言葉
で
教育
を受けておるから、
教育
など受ければ受けるほど、ある
意味
においては、
ばか
になる。私もずいぶん早くから
教育
を受けました。一番先に
漢字
を学んだ。文学というものを大層尊いものだと教えられた。それで
日本
の
学問
はこれでよいということを信じてお
つて
、欧米のことはわからなか
つた
。ところが今度の二度目の戦争のときに、無
條件降伏
という、建国以来夢にも見たことのない
事件
に
出会つて
、初めて迷いがさめて、今まで学んだことは、ことごとく
間違
いであるということが初めてわか
つた
。まだ
ほんとう
にはわかりませんが夢がさめかか
つて
おる。第一にさめたのは、
解散
という
文字
の
使い方
の
間違
いであるということである。
民主国
においては
解散
などという
文字
を使うべきではない。もしやりたければ、
議員
を
辞職
すればよいのである。
解散
ということは総
選挙
をし直すということである。
議員
が
半数
以上
辞職
すれば、だれにも迷惑をかけないで
総体
の
意見
を聞くことができる。そういうことがわからぬはずはないが、
日本人
には全部わからぬと見えて、何でも
解散
しなければ輿論を聞くことができないと
思つて
おる。これが
根本
である。それ
ゆえ
に、この
せつ
かく
お呼び
くださ
つた
委員会
の人などのお求めにな
つた
ことが、目の見えない、耳が聞えないのを無理に読んでもら
つた
が、読んでもら
つて
もあまりわかりません。
間違つた文字
で書いてある。 私が
憲法
上のことで近来一番信頼しておるのは、今度の
憲法制定
にあずか
つた
、今
国会図書館長
をしておる金森さんである。あの人は私はよく知らないが、
議会
における
言葉
などを見て、
憲法
上の
意見
はあの人に私は一番感心しておる。だから新
憲法
を実施するにあた
つて
、
解散論
などという問題のときに、私は直接お目にかか
つて
も耳が悪いからいかぬと
思つて
、子供をや
つて
解散
の
意見
を聞かせた。ところが、私の最も
尊敬
しておるこの人から変な
意見
を聞いた。それではほかの
学者
と同じように、
解散
などということがわからぬ
人間
であると思
つた
が、どうもそうではない、わか
つて
おる人であると思
つた
ものですから、わざわざ
衆議院
に出て来て私がお目にかか
つて
話した。ところがどうも説が違いますから、私が
道理
を述べますと、
道理
では負けると思
つた
か、
先生
の
はりくつ
だと
言つて
逃げる。
りく
つがいかぬということでは問題にならぬ。
衆議院はりくつ
を闘わすところである。
りく
つは
根本
の、一番わかりやすい
数字
である。正しいことを
言つた率
はどつちが多いかということがわかる
数字
である。その
数字
が
日本人
にはまだ
ほんとう
にわからぬ。大体
日本人
は
数字
を先祖代代何千年か
うそ
に教えられて来ておる。
漢学
で一番尊ばれた唐の李白は
白髪
三千丈とうた
つた
。大体三尺くらいのものが三千丈など伸びるはずがない。それを
白髪
三千丈とうた
つて
おる。
日本
でも
漢学
などをや
つた人
は、みなそれで頭の
数字
が狂
つて
おる。百年も生きることができない
人間
に、少しめでたいことがあると万歳と言う。万歳などということがあろうわけがない。
数字
をみな
うそ
に
使つて
おる。それが頭にこびりついておる。 私がびつくりしたのは今の
吉田総理大臣
の
選挙
のときの
数字
である。今しつかり覚えておりませんが、あのとき
出席
した
衆議院議員
は四百人と覚えておるが、この四百人のうち
吉田
君に
投票
したのが百八十五票、
あと
の二百十五票は
白票
が多い。これがわからぬ。あなた方もおわかりにならなか
つた
と思う。私はあのとき
病気
で寝ておりましたが、
新聞
で見てびつくりした。どうも四百人全部
出席
して、百八十五人しか
投票
がないものを当選したなどという、これはあり得べからざることである。いわんや
白票
が二百何十ある。
白票
は確かに
吉田
に
反対
であるから
白票
を入れたので、
吉田賛成
で
白票
を入れた者は一人もないと思う。ところが
吉田反対
二百十五票、
賛成
が百八十五票、これがわからぬ。あなた方にもおわかりにならなか
つた
と思う。それを平気で認めておる。私はそのとき、
自分
は発狂したと思
つた
。どう
考え
てみても、四百人
出席
して百八十五人しか
投票
がないものを当選したものときめるなどということは、
人間世界
にあり得べからざることであるが、
新聞
にはそう書いてある。私が老衰して発狂したのでなければ、こんなことが起るはずはないと思
つた
ものですから、残念でたまらたい。
気違い
にな
つて
死んだと言われても恥ずるほどの
値打
もないとあきらめればよいが、これまで生きてお
つて
、頭が狂
つて
死んだというのはで、祖先に対してはなはだ申訳がないという
ばか
げた
考え
にな
つて
、三日三晩寝ずに
考え
た。どう
考え
ても、四百人の
出席
のうち百八十五票の
投票
では落選である。
病気
が少しよくなりましたから、さつ
そく衆議院
に来てまず
議長
に会
つた
。このときの
議長
は松岡さんであ
つた
が、あの
議長
には前から感心しております。無学のようであるが、おそろしく頭がいい。今まで
議長
にな
つた人
で、あのくらい頭のいい人は少いと思う。私は歴代の
議長
はみな知
つて
おるが、
幣原
君も頭のいい人である。
幣原
君がやはりあの
議長
と似て頭がよか
つた
が、今まであれほど頭のいい人はない。ところが私が、これでは
当選者
ではないじやないかと言うと、返事をしないで
事務総長
を呼んで来た。そこで
事務総長
に会
つた
。
事務総長
もかなり
学問
もあり、頭もいいはずであるが、何と
説明
したか。
出席数
が三分の一以上だからそれで有効でおる。三分の一以上
出席
しておればそれで成り立つのである。そんなことでけ
説明
にならぬ。
三文
の
値打
もない議論である。
事務総長
の言うのはわけがわからぬ。ただ
欠席者
が多いものですから、三分の一以上でも有効になるという
法律
がつく
つて
あるので、無効な
集会
ではない、有効な
集会
であるということはわか
つた
。しかしながらそこで
出席
した者が
半数
以上
白票
を入れたというのでは何にもならぬ。すなわち
事務総長
は、
白票
を入れた者を
欠席
と見ろと言うが、
出席
しておる、
欠席
ではない。
欠席
して棄権した者と、
出席
して棄権した者とは
根本
が違う。それがわからぬ
人間
の
説明
など聞く必要はないから、私は
事務総長
の
説明
はいらないとい
つて
聞かない。そんなものは聞いても
三文
の
値打
もない。
吉田
第一の子分でも、
病気
で
欠席
しておれば、棄権ということになる。ところが
出席
して棄権した者は、一人残らず
吉田
がいやだから棄権したのだが、それがわからない。こんな当然な
数字
ですら、わからない
議員
なんです。これは
議員
ばか
りではない。
日本全国
みなわからぬのです。それで、私はその
説明
にかか
つた
のです。しかし私の
説明
が悪いのか、どこでもわからぬようなことを
日本人
は言う。それで
新聞記者
に
説明
するのが一番いいかと
思つて
、詳しく書いて邊
つた
が、
一言
も出しません。みな頭が狂
つて
いる。 こんな本
会議
の際における
数字
のことがわからぬのだから、もつとむずかしい字で書いた
憲法
などが、
ほんとう
にわかるはずがないのです。これはどうしても
世界
の態勢を見、純粋に、過程を通
つて
みて、解釈するほかはない。そうでないと、今の
法律
なども、
みな狂つた頭
で解釈しておる。
民主国日本
に、
解散
という
言葉
を使われておる。六十何條かに
行つて
、
議会
の
解散
ということが書いてあるということは、こんな間
違つた
ことはない。進駐軍の中には、さすが
アメリカ
に育
つた者
がいるから、彼らにはわか
つた者
が多か
つた
と見えて、
解散論
が問題にな
つた
ときに、
アメリカ
の
大学
で学んだ人で、植原君と同年輩の人、名前は忘れてしまいました、この間死んだ人ですが、その人が、やはり
解散
のことを世間の人と同じような頭にな
つて
解釈してお
つて
、それで
司令部
に
行つて
、尋ねてみた。そうすると
司令部
の者が、お前の言うように
解散
を解釈すれば、元の
日本
の
憲法
よりも悪くなるのじやないかと
言つた
そうだ。元は
天皇陛下
が
解散
をした。もちろん
天皇陛下
は、
自分
一人ではなさらぬ。
内閣
、
大臣
、
元老院
、すべての承諾を得なければ、
解散
ができない。今お前の言うように解釈すれば、
総理大臣
がか
つて
に
解散
できることになる。それすれば、元よりか悪くなるだろうという
説明
を聞いて、その人はびつくりして帰
つて
来て、私に
意見
を求めた。
アメリカ
に学んだ人ですらも、それくらいの頭でしかない。これは大層頭のいい人だ
つた
が、こういう人でもそうだから、
日本人
にはよくわからない。
アメリカ人
にはわか
つて
おります。ただそんなことについて、しいて言う必要もないと
思つて
、
ばか
は
ばか
なりに
扱つた方
がいいというところから、放
つて
おいただけです。少し学んだ
アメリカ人
には、
解散
などということは、
日本
の国にはあり得ないと
思つて
いる。
内閣
が
解散
か
つて
にやるというようなことは、
日本
が
民主国
でないことになる。これはだれでもわかる。そんな問題を
アメリカ人
に話すと、
ばか
にされるから、あまり言いませんが、ある
アメリカ
の
大学教授
に会
つた
ときに、私が
言つた
ら、それは
日本人
が
間違つて
おるが、言うと
日本人
が怒るから、遠慮しておると言う。
日本
は
占領下
ですから、いば
つて
おると
日本人
に思われるのもなんだから、
向う
の少し頭のいいやつは、たいてい
日本人
が怒るだろうと
考え
て、言わないだけです。
日本人
の感情を害するということは、おもしろくないということから、
向う
は言わない。それが
日本人
にはわからない。
アメリカ人
としては、
天皇
を
尊敬
すべき理由を知らないが、ただ
日本人
を扱うために、その方がいいということで
言つて
おる。
日本人
が非常に
尊敬
をしている、ありがたいと
思つて
いる
天皇
だから、
アメリカ人
が
天皇
に非常に
尊敬
を払
つて
おるので、これもあなた方は心得なければならぬ。降伏した
人間
をあまり怒らせぬために、いろいろなことを
言つて
おるのです。昔の、
ばか
は
ばか
なりに扱えということで、
日本人
を
尊敬
しておると
思つて
や
つて
いると思
つた
ら、たいへんなことであります。これからも
アメリカ
にたくさん
日本人
が行くでしようが、こういうことは、ちよつと行
つた
つて
わかるものじやない。私は
アメリカ
に四、五度行きましたが、九十になるまでは、
ほんとう
にわからなか
つた
。このごろ初めてわかり出した。今まで
大分
行つて
おりますが、たいていの人はわか
つて
おりません。これは
間違つた学問
をしておるものですから、わからない。
根本
は、新
憲法
においては
解散
などという
言葉
を使うべきではない。総
選挙
をしたければ、
辞職
さえすればいい。
半数
以上
辞職
すれば、すぐ総
選挙
になる。
解散
などという権利を
総理大臣
が持つことはあり得ない。
国王
ですら持たない
権力
を、
総理大臣
が持つことになるのは、
民主国
ではない。私はこのことについて詳しく
吉田
に
質問
しておる。それは
速記録
がありますから、ごらんを願いたい。
憲法
ではそういうことが書いてあ
つて
も、
吉田
のようなおとなしい
総理大臣
が続いておる以上はいいが、法上そうな
つて
おるから、
総理大臣
が
解散
できるのだということになるのは実に危険である。
日本歴史
の中でも、ことに悪いことである。私は天下の基幹となるべき
憲法
の
根本義
というものを説いて、
総理
に
質問
をした。
吉田
という人は、前に
イタリア公使
をしておる
時分
から知
つて
おるが、かれは頭のいい人である。あのおやじさんはよく知
つて
おります。今の
吉田
はあまり知らないが、一瞥するところ、頭のいい人である。これが何と
答え
るかと
思つて
質問
した。おそらく
答え
ができないだろうと
思つて
、その
質問
をした。さすがに
吉田
、
一言
にして
答え
た、よく
考え
て
答え
ますと
言つた
。これは
速記録
にそう書いてある。そのかわり三年た
つた
今日、まだ
答え
ません。
答え
ができないのです。(笑声)こんな事実もお
考え
願いたい。私の言い方が悪くて、私の言う
意味
がよくおわかりになるまいと思いますが、今まで話したところでは、たいていの人がわかりません。
ほんとう
を言うと、
芦田
という人は頭の大層いい人である。これはわかるに違いないと思
つた
が、この人が
白票
を入れた。驚くべきことである。
日本人
はみなこのぐらいのもので、
総理大臣
の指名に
白票
を入れるということは、
総理大臣
はいらないという
投票
なんです。ところが今の
日本
の
憲法
では、
役人
は
総理大臣
が選任することにな
つて
おる。
従つて総理大臣
がいらないという
投票
をすることは、
政府
がいらないという
投票
である。
政府
がいらないという
投票
は、
国会
がいらないという
意味
で、
非国民
の
投票
である。
芦田
もそれがわからぬで、
白票
を入れた。何百人というものが、
政府
はいらないということは――
非国民
という
言葉
を使うと怒るでしようが、あの
投票
は
非国民
の
投票
である。
政府
はいらぬ、
国会
もいらぬという
投票
になる。それを
議員
の中の二百何人が入れても、
点検人
もとがめる人がない。
国会
の
解散
というような不都合なことをして、
自由党
は大層ふえた。現在の
国民
がどのくらい
間違つて
おるかということが、これでもわかると思います。どんな
ばか
でも、あのときに
解散
をすれば、
自由党
が減らなければならぬということがわかる。それがふえたことは、全
国民
が
間違つて
おるということの証拠で、全
国民
が
間違つて
おるということがわかれば、私の言うことは
気違い
の言うようにお聞きになるかもしれないが、これが正しいということはわかるはずです。そのときの
議長
にこの問題について
言つた
が、
議長
は言わない。
あと
の人はたいていわからぬのです。
アメリカ
で育
つた
相当
な
議員
ですらも、わからぬ。
アメリカ
に行けば、それでは旧
憲法
より悪くなると言われる。英文で書いたものを読みながら、心配して私に相談するぐらいのものです。
日本
におる人はみなこのくらい狂
つて
しま
つて
おる。朝から晩まで、
うそ
のものを扱
つて
おるから、狂
つて
おる。そこをどうぞ御
承知
を願いたい。 なお
ほんとう
にお聞きになりたいことがあれば、何どきでもお伺いいたします。ただ私は耳が聞えませんから、書いておいてくださるならば、お
答え
できると思います。日によ
つて耳
が聞えることもございましようから、そのときには、よくお目にかか
つて説明
をいたします。(拍手)
九鬼紋十郎
3
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) どうもありがとうございました。 続いて(君の御
意見
を聞きたいと思います。
關口泰
君。
關口泰
4
○
参考人
(
關口泰
君) 私
關口泰
と申します。
尾崎先生
の高遠なる
理想論
、
立法論
の
あと
で、卑近な
解釈論
を申し上げるのは、非常におもはゆいわけでございますけれども、しばらく第六十九條を
中心
として、
意見
を述べさしていただきます。 私は、申し上げるまでもなく
憲法学者
でもなんでもありません。ただ一番
中心
は、この
憲法
を読んでみると、どういうふうに読めるかということについて、申し上げたいと思います。
憲法
第六十九條には、御
承知
の
通り内閣
総
辞職
の規定があるのであります。不信任案が可決されるならば、
内閣
は総
辞職
しなければならぬという規定で、それが書たり目標でありますから、これによ
つて
、
解散
の場合を限定するかどうかというような結論を導き出すのには無理だと思うのであります。すなわち第六十七條の
国会
の
総理大臣
の指名、第六十八條の国務
大臣
の任免に関する規定を受けて、第六十九條で、
衆議院
の不信任がなされたならば、
内閣
は総
辞職
をしなければならないとしたのであります。ただいまお話がありましたように、主権在
国民
の代表であるところの
衆議院
が不信任をしたにかかわらず、
衆議院
の
解散
をあえてするというのは、不都合であるという議論も十分成り立ち得ると思うのであります。ただこの場合に、たとえば第三党が
総理大臣
の指名について、第一党とともに第一党の党首を指名した。それなのに、その後の
政治
情勢の変化によ
つて
、今度は第二党の不信任案に
賛成
したというときに、この
衆議院
の多数というものは、すなわち
国民
の多数と認むべきかどうかということを
国民
に問うために
解散
して、総
選挙
を行う。総
選挙
によ
つて
、新しい
衆議院
が成り立
つた
上で総
辞職
して、新たな
国会
によ
つて
総理大臣
の指名が行われる。その不信任案が、
国民
の意思であるかどうかを明らかにするということは、決して不当ではないと思うのであります。
尾崎先生
のお話のように、
解散
ということが
懲罰
的な
意味
には解釈されていないということは、今日では認められておるのではないかと思います。こういう場合に、不信任ですぐ総
辞職
をしないで、十日以内に
解散
を
行つて
、七十日後に総
辞職
を延ばす。新しい
国会
ができますと、総
辞職
をしなければいけないという規定があります。ですから、七十日後には必ず総
辞職
をするのであります。そうしてこれによ
つて
、
内閣
の不信任が、
国民
の意思であるかないかということを明らかにすることができるのであります。それが第六十九條の
意味
だと思うのであります。 しからばこの
解散
は、第六十九條の場合に限られるかどうか、
衆議院
が
内閣
を仁任しておる以上は、
解散
ができないかどうか、それが問題と思うのであります。これは
内閣
の総
辞職
が、第六十九條の場合だけに限られていないように、第六十九條の規定から、
解散
の場合を限定するわけには行きません。つまり
内閣
総
辞職
はどういう場合にするのか、
衆議院
の不信任があ
つた
ときだけしかできないかというと、決してそうでないように、
解散
の場合にもそうではないかと思うのであります。
内閣
の不信任がなされたときだけでなければ、
解散
ができないことになりますと、先ほどのお話にもあり、また実際近年行われたように、多数党が
解散
しようとする場合には、わざわざ少数党をつく
つて
、不信任決議を成立さした上でなければ、
解散
ができないというような、非常に不自然なことができるのであります。しかしながら、実際
衆議院
の多数を制しておる
内閣
が、
衆議院
を
解散
しなければならないような
政治
情勢に置かれることは、
イギリス
労働党の場合と同様であると思われるのであります。たとえば、
衆議院
は現
内閣
を支持するけれども、
参議院
は現
内閣
の
反対
が多数であ
つて
、條約案の承諾を與えないというようなことがあるといたします。その場合に、
政府
は
参議院
には手を触れられませんが、
衆議院
を
解散
して、総
選挙
によ
つて
、民意に問うことができるのであります。すなわち
衆議院
の三分の二を制すれば、第五十九條二項によりまして、
参議院
の
反対
にかかわらず、
国会
の條約承認が成り立つのでありますし、そうでなくて、三分の二を制し得ないとしても、その
選挙
の結果を見て、たとえば五年前の選出
議員
を含む
参議院
は、今日の民意とは隔たりがあるというようなことを感じて、反省することもあり得るのであります。特に
憲法
改正の場合を
考え
てみますると、改正の発議は、各議院の総
議員
の三分の二以上の
賛成
がなければなりません。そういたしますと、
衆議院
の三分の二を確保するということは、絶対に必要であります。ただいまといたしましても、
憲法
を改正する必要が起
つて
来るという場合に、現在の多数では不足であります。過
半数
を制して、信任案が可決され、不信任案が否決されたといたしましても、これに満足することはできない。
解散
して、総
選挙
によ
つて
、
憲法
改正を可能にするだけの新
国会
の情勢をつくり出す必要があるのであります。このためには、第六十九條の場合のほかに、
解散
ができるように解釈しなければならないのであります。そうして第六十九條には、この場合のほかは
解散
ができないというふうに、逆に規定はされていないのでありますから、こういうような実際の必要情勢の上から、
解散
ということは、第六十九條の不信任案の成立という條件を持たないでできると解釈するのが至当かと思うのであります。 しからば
憲法
第七條によ
つて
解散
ができるか。これに條件もついていないから、前の明治
憲法
の
天皇
の
大権
のように、
解散
が無條件、無制限に行われ得るのだというふうに、
憲法
第七條をその根拠にすることは誤りではないかと思います。
解散
は、
憲法
の規定で、たとえば
国会
の章の中にちやんときめてあればいいかもしれませんが、そこに明文がないといたしましても、
憲法
の全体の規定、あるいは何といいましようか、一々その定義をあげないでも、
解散
がどういうものであるかということはわか
つて
おりますので、全体から解釈してよいと思うのであります。第七條は、
解散
する場合、
天皇
の名をも
つて
するけれども、それは
内閣
の助言と承認によ
つて
、
国民
のためにする国事であるということを規定しているので、つまりこれによ
つて
、実質的に
解散権
が
天皇
にあるとか、どこにあるということは、これを根拠としては言えないのではないかと思います。
天皇
の
解散権
は名目的、形式的で、実質的には
内閣
に浸る。それを、行政権は
憲法
第六十五條によ
つて
内閣
にある、
解散
は立法でも司法でもないから、行政だというようなことを
言つて
、これを
説明
する
学者
もあるようであります。その辺は、私わざわざそう言わなければならないかどうかという点に疑問を持
つて
おるのでおりまするが、それはまた
学者
の解釈にまかせてよいのではないかと思います。
内閣
がその判断により、その
政治
的責任において
解散
するので、この場合條理に従
つて
する。どういう場合にするかということは、将来おのずから
憲法
的慣行ができるではありましようけれども、今
憲法
の上においてどこにも明記してはおりません。
憲法
六十九條も、この場合に限定するとは善いてありませんから、これは先ほども申し上げました通り、
憲法
全体の精神から解すべきものだと思うのであります。先ほどお話もありましたように、これを
アメリカ
憲法
的に解すると、
解散
はなるべくできないようにしようというために、この六十九條に限られるというように解釈をしますが、
イギリス
流の議院
内閣
制をと
つて
いる
日本
の場合には、やはり
イギリス
風に解釈するという方が多数説ではないかと思うのであります。 非常に不完全なお話でありましたが、以上をも
つて
一通り私の
意見
を申し上げました。
高橋英吉
5
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) ちよつとお伺いいたしますが今
先生
のお話では、無制限、無條件で
解散
もできないというふうにと
つて
もいいわけですね。六十九條に限定はしないけれども、無制限、無條件で第七條で
解散
ができるとも解釈できないという御
意見
だ
つた
のですか。
關口泰
6
○
参考人
(
關口泰
君) それはそうでございますね。條理に従
つて
、責任を持
つて
やる。それは自由に言えますが、か
つて
気ままにできるわけじやない。條理に従わなければならないということを申し上げた程度でございます。
高橋英吉
7
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) そうすると。條理に従うというのは、具体的に言うとどういうことになりましようか。
關口泰
8
○
参考人
(
關口泰
君) たとえば、今言うように、多数を制していても、三分の二でなければ施策を実行することができない。そのために
解散
するというのは、不條理ではないと思います。つまり
懲罰
的な
意味
の
解散
とか、そういうふうな
意味
ではいかぬ。
高橋英吉
9
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) そうすると、そういう目的だと、一つの政略的な目的ということにな
つて
、
内閣
が
自分
の施策を実行して行く上において、多数を獲得しなければならないから、それで
解散
をして、多数獲得の手段にする。明治時代で言えば、非常に
政治
干渉とか、その他のことがあ
つて
、実際上においては、歴史的な現実から言いますれば、不純な多数が獲得できるわけです。そういう場合には必ず
政府
党が勝つというような
日本
の慣習だ
つた
んですが、今のところはそこまで干渉はできますまいから、現在のところではよいけれども、将来はやはりそういうふうな目的、すなわち政略的な目的で、多数を獲得するために
解散
するということしなると、
政府
の
権力
で、ありとあらゆる方法を講じて多数を獲得するという弊害が起りやすいというふうにも思われますし、もう一つ、こういうことを
大分
学者
が言われておるようですが、
国会
が
国民
の意思を代表していないというふうに思われる場合に、
国民
の意思を聞くために、
解散
する必要があるとかいうふうな場合ですね。重要な事項とか、重大な情勢の変化が起
つた
とかなんとかいう場合に
解散
ができるというふうなのは、
先生
の言われる條理上
解散
の必要が生じたときという中に入ると思うのですが、そういうふうな判断をだれがするかということは、結局
政府
がしなければいかぬことになる。そうすると、やはり無制限、無條件でやれると同じようなことにはなるわけなんですね。
政府
が條理上必要だと信じたということになれば、それでやれるわけで、最高裁判所に訴えればよいわけだけれども……。
關口泰
10
○
参考人
(
關口泰
君) 最高裁判所に訴えるということじやないんじやございませんでしようか。これは
国民
が
選挙
干渉とか買収とかいうことで左右されないということを前提としないと、総
選挙
によ
つて
民意を
向う
というようなことは、全体が無
意味
になるし、民主
政治
そのものの
根本
が信用できないということになるので、それは前提としてよいのではないでしようか。
高橋英吉
11
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) それから、先ほど一例をあげられた重大な條約なんかの場合に、
国会
が承認しないというふうな場合に困るというお話ですが、これは
アメリカ
式で言えば、国際連盟なんかの問題でも、ウィルソンは御
承知
のように
国会
の承認を得ることができずに、国際連盟に加入できなか
つた
わけです。しかしあれでも、
アメリカ
には
解散
の制度がないから、
解散
せずに、両院の
国会
の意思と大統領の意思とが調節ができて、
アメリカ
の国政が運営されて行
つた
ということになりますが……。
關口泰
12
○
参考人
(
關口泰
君) ああいう場合に、たとえば
解散
ができまして、の意思、か国際連盟を支持するというような結果が出ることがあり得るわけではないでしようか。
高橋英吉
13
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) それはあり得るでありましようけれども、一応
アメリカ
の建前としては、
尾崎先生
が言われたように、の総代として選ばれた者に対して、最高の権威を認めるというふうなことで、それは円民の意思を代表しておるというふうに一応
考え
る。それからまた、それがよほどずれがあるということになれば、民主
政治
は輿論の
政治
ですから、その輿論がおのずから
国会
の意思をかえて行くというふうなことにもな
つた
りして、
アメリカ
の
政治
がうまく
行つて
おるのではないかと思います。私どももこの
憲法
の制定のときに関係したのですが、大体私どものあのときの
考え
としては、今
先生
が言われたような
イギリス
式の純然たる議院
内閣
制というよりも、
アメリカ
と
イギリス
との中間をと
つた
憲法
忠だというふうに
考え
て私は審議したわけだ
つた
のですが……。
關口泰
14
○
参考人
(
關口泰
君) そこで問題になるわけですね。中間だから、
解散
の場合どつちに解釈しようかということでございましようが、任期一ぱい、つまり国権の
最高機関
であるところの皆様の任期というものは、大統領と同じに、もう動かさない。その方が
政治
的安定があるという
考え
方と、
イギリス
流の、そのときどきと言いますか、四年前の民意と今の民意とは違う、あるいは三年前と違うかどうかを
選挙
によ
つて
国民
に聞いてみる。
日本
としてはどつちをとるべきか、私たちはその場合に
イギリス
風のやり方の方が、
日本
のほかの選手制度と照し合せても、いいんじやないかというふうな解釈をしているわけでございます。
高橋英吉
15
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) それで、たとえば
イギリス
と
アメリカ
との違いは、
イギリス
は
民主国
であるけれども、君主制ということにな
つて
お
つて
、歴史的に君主的な
権力
があるというようなことにな
つて
おるので、歴史から
考え
てみると、
解散
の中に、
尾崎先生
が言われたような
懲罰
的な
意味
が含まれている場合があるわけだと思うのですが、そこに君主制の歴史的なものがあるので、はないかと思うのです。
關口泰
16
○
参考人
(
關口泰
君)
イギリス
の今度の労働党の
解散
なんかを
考え
ても、何ら
懲罰
的というようなことは感ぜられないのでございますが……。
高橋英吉
17
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) むろん、そういうふうな
意味
でなしに、
国民
の総意を聞くというふうな正しい
意味
の
解散
もありましようけれども、歴史的に考察すると、
解散
というものが、
国会
に対する一つの
懲罰
的な
意味
も君主制のもとには
考え
られる場合があ
つた
。それで
日本
においても、明治時代はことに
懲罰
解散
があ
つた
。政党
内閣
制がほぼ確立して後には御
承知
のように政略的
解散
、多数を獲得するための
解散
があ
つて
、
選挙
干渉なんかで必ず
政府
党が勝つというとうなことで、そういう
意味
でや
つた
のですが、
アメリカ
式だと、いわゆる民主制度の国であ
つて
、
国民
から選ばれた
国会
が最高の
機関
であるから、
解散
すべきものではない。
国民
の意思と代表との間に実質上のずれがあ
つた
としても、それは一応公式的な
国民
の意思の
代表者
だというふうにと
つて
、
解散
すべきではないというふうにとるのが民主的な制度じやないかと思われるのですが、その中間をと
つて
、今の六十九條の不信任案が通過した場合、信任案を否決した場合に
解散
を認めるのだ、
イギリス
式でもない、
アメリカ
式でもない、その中間をと
つた
のだというふうには解釈できませんでしようか。
關口泰
18
○
参考人
(
關口泰
君) 先ほどもちよつと申し上げましたように、そういう場合に、不信任案が可決されなければ
解散
ができないというふうなことで、今まで
吉田
内閣
のときも
白票
の問題なんかがあ
つた
し、少数党が一ぺん
内閣
をと
つて
、不信任があ
つて
解散
というようなかつこうをとるのは、今でもおかしくはないでしようか。たとえば今
吉田
内閣
がやめて、
選挙
管理
内閣
というものをこしらえて、それによ
つて
解剖さして、それで
自由党
が多数になりますか何ですか、そういうふうなことを期待して、一ぺんやめなくては
解散
ができないということになると、何かそこに―わざわざれそう解釈しないでもよさそうに思うのでございますね。
高橋英吉
19
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) たとえば、昔政友会が少数党で
内閣
を組織した場合でも、必ずしも
解散
しなくてもよいのであ
つて
、
政府
の一つの政策々々で是非を問い、しかも重大な政策の遂行ができない場合に初めて
解散
する。通例は一月二十二日に不信任案が提出されてから
解散
するというふうなことにな
つて
お
つた
ようですけれども、
アメリカ
式で行けば、大統領は民主党で、あるいはウィルソンが大統領であり、上院なり下院なりは共和党が多数だというふうなことであ
つて
も、政策の一つ一つで、
国民
の輿論を背景にして、それぞれ正しい
政治
の運営ができるということも
考え
られはするのですが、しかし
日本
はまだそこまで行かないから、おつしやるようないろいろな弊害が起るとすれば、一応この
憲法
の解釈は解釈として、そういう弊害については、
両院法規委員会
か何かにおいて、
憲法
の改正案なり、勧告はできるわけです。それでお話を伺
つて
いるわけです。だから、これは二つ別の観点から
考え
てもよいと思うのです。
關口泰
20
○
参考人
(
關口泰
君) ただいまお話の、
憲法
を改正して、
解散
の場合なんかを限定しようか、あるいは第六十九條のほかでも
解散
ができるというようなことを明文につくるように、
憲法
改正をなさるような御意向があるのでございますか。
高橋英吉
21
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) それは御意向を聞いて、ここでまたみんなが協議して、そういう結論にでもなれば、そういうふうにでもしなければならないと思いますし、そのほか何か一般
投票
的なもので、重大なことについては
国民
の総意を聞く方法を
考え
られれば
考え
てもよいかと、いろんな場合が
考え
られるのです。
關口泰
22
○
参考人
(
關口泰
君) その
憲法
を改正なさる場合に、すでに
国会
の発議が必要ですね。その
国会
の発議には、両院
議員
の三分の二を必要とするというようなことで、それを改正するのに、今では三分の二は得られないというような場合、やはり
解散
をしてもいいんじやないかと思うのです。
高橋英吉
23
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) 理論上から行くと、三分の二の
賛成
を得ないようなものは、
国民
の三分の二が
賛成
していないのだという理論づけはできるのですけれども、現実の
政治
の運営の面としては、いろいろ不都合なことがあるから、いろいろ研究さしてもらいたいと
思つて
おります。私の
質問
はこれで終ります。
佐瀬昌三
24
○委員(佐瀬昌三君) ただいまの現行
憲法
の改正についての御
意見
、よくわか
つた
のですが、今ちよつと話が出た、将来の改正論、
立法論
はそれとしても、現在はそういう
解散論
がやはり妥当であるというふうにお
考え
にな
つて
いらつしやいますか。
關口泰
25
○
参考人
(
關口泰
君)
理想論
をいろいろ
考え
てみたらあるかもしれませんが、私は今の程度の解釈で不都合ないと思いますがね。
佐瀬昌三
26
○委員(佐瀬昌三君) 基本的には
イギリス
流の
憲法
としてですね。
關口泰
27
○
参考人
(
關口泰
君) ただいまのような、
議員
が
半数
辞職
すればいいじやないかというふうなこと、あるいは
国会
の決議によ
つて
解散
するというふうなことも
考え
られないじやないでございましようけれども、そういうようなことは、私系統的に、組織的に
考え
たことはありませんから、何も申し上げられませんが……。
九鬼紋十郎
28
○
会長
(
九鬼紋十郎
君)
委員外
の方に御発言を許可してさしつかえありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
九鬼紋十郎
29
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) さよう決します。鍛冶さん、どうぞ御発言を願います。
鍛冶良作
30
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) ただいまのお説を承
つて
おりますると、前提として、
内閣
に
解散権
ありということが認められなければ出ぬ議論じやないかと思われるのです。これは申し上げるまでもなく、第七條によ
つて
、
内閣
の助言と承認によ
つて
というので、助言と承認をする以上は、
内閣
自身がや
つた
と同一の行為になりますから、そういうことができるということで
内閣
に
解散権
がある、こういうことだと思われるのですが、その
考え
方と、今お述べになりました第六十五條との関係です。行政権は
内閣
にある。そのほか、
内閣
でやれるものはこれこれとい
つて
、七十三條に規定してあります。この関係から、
内閣
にあるところの立法
機関
に対する行為というものは、よほど狭められなければいかぬものじやないかと思われるのですが、この点はいかがでしようか。
關口泰
31
○
参考人
(
關口泰
君) 先ほどもちよつと申し上げましたが、
解散権
が実質的には
内閣
にある。それの根拠は、六十五條の行政権は
内閣
に属するという、これに求めるのだという金森さんや入江さんの御説、それについては私判断する能力がないのでございますが、ここべ持
つて
来るほか方法がないのかもしれないと思うのです。
鍛冶良作
32
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) そうすると、
解散
自体が行政行為だということになりますか。
關口泰
33
○
参考人
(
關口泰
君) 司法行為でもない、立法行為でもないから、これは行政権だということを
言つて
おられるようですね。その辺のことは、私は
学者
でないから、どういう
説明
をしたのが正しいのわからぬが、そう
言つて
おられる。どこへその根拠を持
つて
行かれるかわからぬが、
天皇
が国事を行うという中に
解散
もあるけれども、明治
憲法
の
天皇
の
大権
というようなものじやないだろう。この点は、私
学者
でないから、はつきりしたことは申し上げられないということを、先ほど申し上げたのでございます。
鍛冶良作
34
○
委員外
衆議醸
議員
(鍛冶良作君)
先生
と議論をした
つて
、しようがございませんが、私は
解散
は行政行為とは思わないのです。これが第一です。それともう一つ、従
つて
行政行為でもないのに、特に
内閣
にそういうことができるというからには、どこかに
法律
に明定せられたるものがなか
つた
ら、できないものじやないか、こう
考え
られるのですが、この点はいかがでしよう。
關口泰
35
○
参考人
(
關口泰
君) 私も、
国会
の章に
解散
についての何か規定がある方かしいんじやないかと思いますけれども、なくても、できないとも解釈できないんじやないか……。
鍛冶良作
36
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) その
根本
は、
解散
をやるという行為を、行政行為と見るかどうかということではまるのじやございませんかしら。
關口泰
37
○
参考人
(
關口泰
君) そうでございますかしら。
鍛冶良作
38
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) 行政行為でないというのなら―特別の権利を第七條によ
つて
與えたと、こう言われる。しからば、そういうものをどこでやれるかというと、
法律
に明文のないものはやれない、われわれはこう解釈するのです。
關口泰
39
○
参考人
(
關口泰
君) そうでございましようね。それでやはり行政権だということを、金森さんや入江さんが言われるのではないかと察するのです。
鍛冶良作
40
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) 行政ではないが、特に
法律
で定めた場合に
内閣
でやれるのだ、こう解釈すべきではないかと思うのです。行政だということになれば、これはずつどや
つて
行けるのでありますから……。
關口泰
41
○
参考人
(
關口泰
君) その辺わかりません。どつちの
意見
も立つように思うのですが、ただ
解散
が行政権というのは、ちよつとおかしいなと思いながら読んでいたのですけれども……。
鍛冶良作
42
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) もう一つは、あなたの今おつしや
つた
ような、そういう場合を予想すれば、なるほど
解散
すればよいではないかという
考え
は持ちまするが、
法律
に明定しなくとも
内閣
に
解散権
があるんだということになりますと、あなたの言う偏理ということも、これが條理にかな
つて
いるかいなかということは、
内閣
の独断にまかすことになる。それは
憲法
を守る上において非常に危険じやありませんか。
關口泰
43
○
参考人
(
關口泰
君) しかし、そのほかやりようがない。そのうちにだんだんと
憲法
慣行ができて行く。それが、ある場合にはいけないのではないかという
反対
党の
考え
もありましようし、世論の批判もありましようから、やるうちに慣行というものが育
つて
行くのではないでしようか。危険だとい
つて
も、方法がないでしよう。
鍛冶良作
44
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) いい慣行が行われて来ればよいが、悪い慣行が行われて来ると、先ほど
尾崎
さんが言われたように、北條、足利みたいなことになる。
關口泰
45
○
参考人
(
關口泰
君) それは
国民
なり
政治
家なりの責任で、
憲法
でどうということはできないんじやないですか。
鍛冶良作
46
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) そういうことがあ
つて
はたいへんだから、
憲法
の條文というものを非常に厳格に解釈しなければならぬ、われわれはこう思うのです。そこにあなたとわれわれと、今のところ
考え
が違うと思います。しかしこれ以上は議論になりますから、やめます。
溝淵春次
47
○委員(溝淵春次君) 今の最後の
質問
と表裏をするようなことになると思いますが、結局
先生
のお話の、
解散権
というものに対する今いろいろお話願
つた
ことを
考え
てみますと―この
委員会
で
先生
方においでを願
つて
、今までお聞きして教えていただいておる
ゆえ
んは、現実の
政治
に
先生
方の御
意見
をいかに適用するかということで、今の
日本
の政情にこれを入れてみまして、結局
衆議院
において
政府
党である
自由党
が、二百八十四名持
つて
おれば過
半数
でありますから、不信任案が出ても否決になる、信任案が出れば可決ということで、六十九條に該当する
解散
の條件が出て来ることはないわけです。結局六十九條の條件にあてはまるべき
解散
事由が出て来ないとすれば、
解散
の場合が想像されるのは、
憲法
九條の軍備をするかどうかという
憲法
改正の問題が起る以外に―
先生
のお話を要約すれば、第九條の軍備をするかどうかということについて
憲法
改正をする、そのための
解散
を行うような場合でない限り、現実の問題として
解散
はできない。今の
日本
の国情なり状態から推して、九條等の特別な事由があ
つて
、それに基く
解散
をやる場合でなければ、
解散
という現実の問題にはぶつつからぬ、こういうことになるようにも思われますが、いかがですか。
關口泰
48
○
参考人
(
關口泰
君) 私は例として、
憲法
改正の場合などは特にそうじやないかと申し上げたので、そのほか
参議院
の政党と
反対
の場合、そういう場合も
考え
られる。しかしそれで全部を盡したつもりではないので、ほかにもあるかもしれません、今頭に浮かんで来ないのですが、それをただ不信任の場合だけに限るという解釈をとると、先ほども申し上げたように、わざわざ多数党
内閣
が
辞職
をして少数党
内閣
をつく
つて
、それの不信任をして
解散
してもらうというような手数をとらなくちやならぬ。それは非常におかしいじやないか、そんな不自然なことをしなくても、格別六十九條に、これ以外にはできないとは書いてないのだから、そう解釈しておいたらいいじやないかというように申し上げたわけです。
溝淵春次
49
○委員(溝淵春次君) もう一つ、私は
自由党
所属
議員
で、こういうことを言うと
自由党
の先輩からしかられるかもしれませんが、こういう議論がまた一部にあると思われますから、お教えを願いたいと思います。現行
憲法
というものは、
日本
が独立国家になるまでの
憲法
であ
つて
、講和條約が締結され、批准が行われて独立国家ということにな
つて
、国の性格がかわ
つて
来れば、それを
解散
理由にできるというような
意見
が成り立つのじやないかという
意見
もあるのです。そういうことに対する
先生
の御
意見
はどうですか。
關口泰
50
○
参考人
(
關口泰
君) 六十九條についてGHQの方にでも
意見
を聞けば、
アメリカ
流にこれを解釈して、これだけに限るというように言われておるから、
占領下
にあ
つて
はこれに従う、しかし占領が過ぎたら独自の解釈でや
つて
行くという
意味
で、ございましようが、しかしやはり
憲法
は、独立するまでの
占領下
の
憲法
だというようなことは言えないのじやないでしようか。
溝淵春次
51
○委員(溝淵春次君) そういう制限をつける必要はありませんね。そういう一部の説がありますから、
先生
にお伺いしたわけです。
鍛冶良作
52
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) もう一つ
先生
に伺います。これは私の説からお聞きするわけですが、六十九條に限定しなくても
解散
できるというお説でありますけれども、その裏を言いますと、ほかに
解散
の事由を載せなくてもいいのだという御議論でしようか。それとも
憲法
に載
つて
おれば言うことはないのだというのでしようか。どちらでしようか。
關口泰
53
○
参考人
(
關口泰
君)
憲法
というのは、実際の
政治
と非常に関係があるものですから、一々の場合をことごとくあらかじめ書いておくということは無理なんで、それがなくてもいいのだという
考え
でございます。そうして六十九條に限定したという
意味
が一つも現われていない。だからそのほかの場合でもできるのだ。そのほかの場合でもできるからとい
つて
、自由か
つて
にや
つて
いいという
意味
ではないが、そのほかでもできる場合があるじやないか、こういう場合にはしなくちや都合が悪いじやないかということを申し上げたのです。それが全部だ、たとえば私が
言つた
場合だけをここに書き上げなくちやならないかというと、そういう必要はないと思うのです。
鍛冶良作
54
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) 理論上はそうは
考え
られますが、
内閣
の専権にその判断をまかせるということになると危険のおそれがある。われわれ
法律
を学んでおる者としては、そういうことがないようにきめるのが
憲法
だ。そこがあなたと違うところです。
關口泰
55
○
参考人
(
關口泰
君) それができましようか。こういう場合とか、何か危険を防ぐような原案がおありになれば、あるいはそれに
賛成
するかもしれませんが……。
鍛冶良作
56
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) 問題は
憲法
を改正して、そういう場合をあげればいいということになるわけですね。
關口泰
57
○
参考人
(
關口泰
君) その例をあげていただけば、そういうことならそれを入れたらいいだろうということも申し上げられますが、私は今ここで、どういう場合というものを加えたら、その危険が防げるかということまで
考え
ておりません。
鍛冶良作
58
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) たとえば今お話のように、
憲法
を改正したい、ところが今の
議会
では
憲法
改正に
賛成
してくれない、そこで
国民
に改正するのがよいか悪いかを問う、そういう場合。それからもう一つ私が
考え
ておるのは、六十九條に限ると申しますと、この前のときは
反対
党が不信任案を出してくれたからよか
つた
が、出さないで
法律
案を否決するだけだと、
政府
がそのままということでもいけないし、やはり
解散
しなければ困る。確かにそういうことは認められます。そういう場合、はたして
国民
がこの
内閣
を信任するかどうかを問うために、こういう場合を明定する。それは
憲法
の精神からだと言われると、なるほどそうだと思いますが、そういうとき
反対
党がや
つて
くれればいいけれども、そうでない場合……。
關口泰
59
○
参考人
(
關口泰
君) そういう場合、
国民
としては文句が言えるわけでしよう。結局向
選挙
によ
つて
事がきまるのだから、もつと
選挙
民を信用していいのじやないですか。
高橋英吉
60
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) 今の
解散権
を行政権というように回るかどうか、また第七條で万事解決できるということになれば、今鍛冶君が
言つた
ように、いろんな場合を書くということは、かえ
つて
制限的なことになりますね。無制限な
解散権
もしくは本来的な行政権に基く
解散権
がある場合、六十九條のごとき、あるいは今
言つた
ようないろいろな場合に限定するということになると、一つの権利の制限のようになる。けれども、ぼくらは逆に、行政権ではないのだから、しかも第七條では完全に
解散権
の問題は解決していないのだから、従
つて
ここに
内閣
が
解散権
を持つ、
解散
ができるということになれば、明定が必要なんだ、明低が必要なんだという議論になる。従
つて
非常に大きな範囲で
解散
ができるというふうにやることになれば、たとえば、必要と認めたときは
内閣
が
解散
することができる、というような大ざつぱな規定もできも。だから問題は、本来的な行政権であれば、何も書かなくてもいいと思う。そうでなければ、第七條で万事完全に明示されば、明示する必要があるのじやないか。今開口
先生
が言われるように、不都合な場合があれば明示する必要があるのじやないか、明示していなければ、六十九條以外にないのじやないかということも
考え
られるのです。そこはひとつ将来お
考え
を願いたいということと、もう一つ最後に、くどいようですが、
解散
のない制度である
アメリカ
の国政の運営、これに
解散
がないために非常に不都合だ、この
アメリカ
の制度を改革しなければならぬというようなことを、お感じにな
つた
ことはありますか。
關口泰
61
○
参考人
(
關口泰
君) 私は
アメリカ
、
イギリス
の
政治
事情をよく知りませんから、どういう場合不都合だ
つた
、だから
解散
はあ
つた
方がいいというような
考え
を持ち合わせていません。
大野幸一
62
○委員(大野幸一君) 先ほど開口
先生
が、
アメリカ人
に聞けば六十九條以外にはないと
答え
るだろうとおつしや
つた
のは、現実にこの前そういうことが、片山
内閣
のときか何かありましたので、その通りだだと思いますが、これは米国占領治下につくられたのであるけれども、英国の制度をとりいれたものです。占領治下で、GHQの許可を得てやるということになればやむを得なか
つた
が、今後は
日本
の
国会
独自の解釈、
日本
国民
自身の解釈で運営すればいいというふうに、私は先ほど
尾崎先生
の御証言中に感じたのですがけれども、その点について
先生
はどういうお
考え
でしようか。
尾崎先生
自身も、今の
総理大臣
というか、
内閣
というものを、昔の
天皇陛下
の任命による
総理大臣
のごときに陥
つて
おられるのじやないか。それで
総理大臣
が
国会
を
解散
するということは非常に越権である、民主主義ではないと言われますが、その
総理大臣
自身は、今では
国会
議員
でなければならない。それから
国会
において選任されたものである。選任するときすでにその権限を與えたとも言えるのである。一つは
政治
をまかせる。また一つには、
意見
が合わなか
つた
ときには
総理大臣
は
解散
することができるということを含めて、
総理大臣
を選任したのじやないか。
総理大臣
もやはり
国民
及び
国会
から選任されたものであるから、昔の
官尊民卑
の思想とは
考え
が違う。
尾崎
さん自身も、今の
内閣
制度に対して昔のような気持で
考え
られておるのじやないかと思
つた
のですが、
尾崎先生
の御証言中、あなたはどうお
考え
になりましたでしようか。
關口泰
63
○
参考人
(
關口泰
君)
尾崎先生
が錯覚を持たれたかどうかということは、私は判断できませんが、ああいうふうに高遠な理想を持つお話でございますから、お話の中には、あるいは強い
言葉
で
言つて
、われわれが、
言つて
おることよりも、すぐ受取り得ないようなこともあ
つた
でしようが、全体のお気持はわか
つた
ような気がしたのです。今お話の、
総理大臣
は
天皇
によ
つて
任命されるのではない、
国会
の指名でなる。そうすると、先ほどもちよつと申し上げましたのはその点で、
国会
の指名によ
つて
、しかも
衆議院
の優先的な立場で指名が行われる。それで
内閣
ができる。だから今度は
衆議院
が不信任をすれば、
内閣
がしりぞくのはあたりまえである。そういうふうにできた
内閣
の寿命が切れるのが、この場合が唯一でなくても、一つの場合であるということをあそこで示しておるのじやないでしようか。ですから、そのときにすでに
解散権
を與えていたのだということを
言つた
方が
説明
がいいかどうか、にわかにわかりませんけれども、そういう点はあると思いますね。
九鬼紋十郎
64
○
会長
(
九鬼紋十郎
君)
内閣
が
解散権
をある程度持つというか、
解散
ということをやるのは、これは時と場合によ
つて
必要だ。しかしながらその
解散
する一つの手続として、どの條文によるかというようなことについて
考え
ますと、
先生
の今のお話は、あながち第七條によることが適当である、あるいは七條によればできるのだという御
意見
でもないように伺うのですが……。
關口泰
65
○
参考人
(
關口泰
君) 私は七條をそういう根拠にとることは、何か
間違
いではないかというような気がするのです。あれはただ
解散
をする場合には、
天皇
が
内閣
の助言と承認によ
つて
国民
のために行うのだということを示しておるので、それによ
つて
授権的な
意味
はないのじやないかという気がするのです。
九鬼紋十郎
66
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) それではどういう條文によ
つて
やるかということです。今も非常に問題にな
つた
と思うのですが、それに非常に苦慮しておるわけです。
關口泰
67
○
参考人
(
關口泰
君) 條文はないわけでございますね。これ全体が、総
辞職
の場合どうこう、何の場合どうこうということが、みな書いてあるわけでもないのじやないかと思います。大体
解散
といえば、その
言葉
にも、ある手続を含んでおる程度のものじやないでございましようか。
田中不破三
68
○委員(
田中不破
三君) もう一ぺん念を入れておきたいのですが、開口
先生
のお
考え
では、第七條は単なる手続規定のようなものだということになりますね。これが
解散
の根拠規定ではないということですね。そうして六十九條には一応あるという……。
關口泰
69
○
参考人
(
關口泰
君) これも場合を限定したものではなく、一つの場合ということですね。
田中不破三
70
○委員(
田中不破
三君) そうすると、
憲法
を通じて六十九條が一つの例としてあげてあるということですか。
關口泰
71
○
参考人
(
關口泰
君) こういう場合総
辞職
しなければならぬという例が、一つあげてあるということですね。
田中不破三
72
○委員(
田中不破
三君) そうして、それ以外に
解散
というものについては何ら規定がないということでございますね。
關口泰
73
○
参考人
(
關口泰
君) そうです。先ほど申し上げましたのは、総
辞職
の場合でも六十九條と七十條だけに限定されていない、ほかに総
辞職
の場合もあるじやないか、
解散
でもやはりそう解釈していいじやないか、こういうことでございます。
田中不破三
74
○委員(
田中不破
三君) それで、今の行政権の小にも含まれていないようたお
考え
でございますね。
關口泰
75
○
参考人
(
關口泰
君) わざわざそう言わなくちや解釈がつかないかどうか、私にはちよつとわからないのです。
竹下豐次
76
○委員(竹下豐次君) 第七條に
解散
という
言葉
が
使つて
あるが、
解散
の手続は
憲法
にはどこにも書いてない。六十九條では、
解散
するにあらざればということであ
つて
、別にこれに限定したというふうにはどうも
考え
られないように思われますし、これは立法にも所属しない。司法にも所属しない。そうすると、やはり運営して行くためには、
あと
に残るのは行政というところだから、どうしてもそこに帰属せざるを得ない。だからやはり
解散権
は
政府
が持
つて
おるのだ。それを助言と承認によ
つて
陛下が行われるというだけのことであ
つて
、さつきいろいろお話がありましたが、私としては広く解釈して行くべきであると思う。一方、
政府
に権限を持たした場合の弊害についていろいろ議論が出ましたが、そうでない逆の場合の弊害もあるわけで、持たなか
つた
場合の弊害についても
考え
なくちやならぬ。やはり三権分立の趣旨というものは
相当
尊重して運営して行くのが、少くとも今の
日本
の現状から
考え
れば適当のような気がするのです。
高橋英吉
77
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) それに関連するのですが、そうすると
解散権
すら行政権的なもので、本来
政府
の権限に属するということになれば、いわんやそれ以下の
議会
の停会のごときは問題ではない。むろん
政府
にあるといわなければならぬ。認証規定が七條にあるのは、本来
内閣
に行政権がある、それを、手続を愼重にするために認証規定を置いたので、かえ
つて
行政権の制限規定というようにとられるのであ
つて
、そういうふうにとる以上、停会のごときは認証規定がないから、自由自在に
政府
が停会してもいいというようなことになるのですが、大体明治
憲法
から、
解散
とか停会とかいうようなものは、われわれ常識的に、
国会
のある以上、
衆議院
のある以上、そこに
解散
とか停会というようなものは、必然的に随伴しておるというように
思つて
おるわけです。しかし明治
憲法
には停会規定があ
つた
が、今度は停会規定がないから、停会というものはできないことにな
つて
おる。ですから、結局停会すら行い得ない
政府
の権限だから、
解散
も本来的な権限ではないので、
憲法
が付與して初めて生ずるものではないかと思われる。繰返して言うようですが、
アメリカ
には
解散
がない。
日本
でも府県会にも市町村会にも明治以来ずつと―最近できたが、
解散
はない。だから団体の会合に必ず
解散
というものが付随しておるとも言えない。任期が限定してあるのは、やはり三年なり四年なりで
国民
の信頼に変化があるかないかということをおもんぱか
つて
、任期がきめられてあるわけです。だから任期がある以上、その団体に対する
解散
というものは必然的なものではないというように思う。これは慣習的なものであり、歴史的なものであるということになると、
アメリカ
は
民主国
だから
国会
に重きを置いて、
解散
などということは予想せられないというようなことで、ああいう制度にな
つて
来る。
イギリス
は
君主国
で、君主の言うことを聞かなければ、
懲罰
的な
解散
をして、多数を
政府
が占めるというような行き方、これは先ほど
言つた
歴史的な一つの行き方です。歴史の裏づけによるそういうことが、ああいう制度にな
つて
おるのだというように解釈することになれば、
解散権
というものは団体に必然的に随伴しておるものでもなければ、行政権的に、本質的に
政府
に付與されておるものでもないというように解釈されていいのじやないかと思うのです。
鍛冶良作
78
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) 結局今あなたが言われるように、行政権と認めるか認めないかできまると私は思うのです。行政権というなら
内閣
にあるのが当然です。われわれは
議会
を
解散
するというのは、いわゆる行政とは認めない。そうしてみると、
憲法
で特に明示した場合でなか
つた
らやれないのだ。もつと理想的にいえば、
尾崎
さんのように、そんなことは明示できないのだというところまで行くわけですが、明示したとすればやれると言わざるを得ないでしよう。そこで話がきまると思うのです。だから、どうしても
解散
があ
つた
方がいいというなら、
憲法
を改正して、そういう特別な場合を明足しなければならぬのじやないかという議論が出るわけです。
關口泰
79
○
参考人
(
關口泰
君)
憲法
に
解散
を認めておることだけは確かなんで、
解散
があることを前提にしておることは確かですね。
竹下豐次
80
○委員(竹下豐次君) 明定した場合でなくては
解散
ができないということに一応解釈しておくと、第六十九條にも明定はしてないのです。
鍛冶良作
81
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) そういうことになりますね。
竹下豐次
82
○委員(竹下豐次君) この場合には、
解散
しろとか、
解散
していいという規定はたいのです。
解散
しない場合には、というだけしか書いてないから、その前に、もう一つ段が落ちているということにたるのですね。あなたの議論ですと、そういうことになる。何も
解散
できない。第六十九條でも
解散
できないということにな
つて
参ります。
田中不破三
83
○委員(
田中不破
三君) 第六十九條はこういうものを予想しているだけで……。
竹下豐次
84
○委員(竹下豐次君) だから、やはり關口さんのお話のように非常に常識的に見まして―今のは
法律
家的か御解釈ですけれども、私はやはりそういう御
意見
の方が正しいと思いますが、なお勉強さしていただきたいと思います。
鍛冶良作
85
○
委員外衆議院議員
(鍛冶良作君) 私も第六十九條だけ見れば
解散
ができると思うが、何によ
つて
解散
できるかということになると、確かに議論はありますね。
竹下豐次
86
○委員(竹下豐次君) 厳重な文理解釈から、狭く
考え
なければならないという議論を根底にすれば、あなたのおつしやるのは少しルーズな解釈になる。そこに矛盾が出て来ると思うのです。これはまたお互いに
あと
で研究いたしましよう。―それから、きようはお二人おいでくださ
つた
のですが、私はこの前
欠席
しましたのでわかりませんが、きよう、ほかにおいでくださるのですか。
九鬼紋十郎
87
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) きようはお二人だけです。ほかにまだお願いすることにな
つて
おります。全部で六人でしたか……。
高橋英吉
88
○
衆議院
両院法規委員長(高橋英吉君) もう關口さんはよろしいでしよう。
九鬼紋十郎
89
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) どうも長時間ありがとうございました。ちよつと速記をやめて下さい。 〔速記中止〕
九鬼紋十郎
90
○
会長
(
九鬼紋十郎
君) 速記を始めてください。 本日はこれをも
つて
、
委員会
を散会することといたします。 午後三時二十九分散会