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岩間正男君 私は日本共産党を代表して本
補正予算三案に反対するものであります。
反対の第一の理由は本
補正予算が国連協力の名の下に、実際は全く自主性を喪失した奴隷
予算だからであります。(笑声)
池田蔵相は初め四百五十億の枠をきめて渡米したのでありますが、サンフランシスコから帰るや否やこれが忽ち三倍以上にはね上
つたのであります。その原因は何であるか。そのことは本会議での代表
質問以来しばしば我が党の追及して来たところであります。然るに
政府はこれに対しまして何ら筋の通つた
答弁をすることもなく今日に及んでいるのであります。これは一体何を
意味するか、言うまでもなく
予算編成権が未だアメリカに握られているということの何よりの証拠であります。本年四月あのリツジウエイ声明以来、我が国の自主性は大幅に
政府に讓渡せられることに
なつたはずであります。然るにそれは表面上のお体裁のどうでもいいことだけに限られまして、一国の死命を制する
予算編成権のごときは完全にこれを握
つて離そうとしないのであります。このことは單にこの
補正予算に限らず、来年度
予算においても何ら変りがないのであります。果せるかなドツジ氏の来朝によ
つて講和関係費、特に国防分担金の枠がまだきまらず、ために二十七年度
予算の大綱さえ国会に示し得ない現状ではなかつたでしようか。講和條約の発効は来年二月頃と伝えられており、従
つて三月以後の
財政経済を律する二十七年度
予算につきましては、大幅に日本
政府の主張が通らなければならんはずであるにもかかわらず、全くその主導権がアメリカに握られているのであります。一体ドツジ氏の資格は何か。吉田首相は
委員会で、ドツジは命令しない、
政府は専門家の
意見を聞いているだけであるということを答えているのでありますが、これは全く
実情をごまかした
答弁であります。事実ドツジ氏は我が国のさる銀行家に対しまして、私の
勧告は、現在日本が占領下にあるので拘束力を持
つていると語つたと伝えられ、又講和発効後も、或る期間は日本の
財政経済について
発言権を持
つていると述べたと言われているのであります。而も事実はどうか。これは米の統制撤廃の
経過が何よりも雄弁にそれを物語
つているのであります。即ち
政府があれほど力んで見せましたところの米穀統制撤廃の一大公約がドツジ氏との折衝によ
つて、あたかも春先きの霜のように崩れ去つた。このことを見ますれば明らかであります。このように全く自主性を失いました
政府の態度に対しましては勤労大衆はもとより財界の各層からも種々不満の意が表明されているのであります。現に経済同友会の某幹部のごときは、ドツジ氏が
予算編成の紐を握
つて離さぬのは━━━━━我々は何のために調印したのかわからないという憤りの声を揚げているのであります。ところでアメリカがこのように我が国の
財政経済の紐を握
つて離さない原因は何であるかと言いますと、それは言うまでもなく両條約によ
つてアジアにおける反共━━の第一線基地として再編成した日本のすべてを挙げてアメリカ戰略のために奉仕させんがためにほかならぬのであります。これは本
補正予算の三倍膨脹の殆んどが国内治安に名を籍りた軍事的支出、並びに
政府の出資投資に名を藉りた軍事的
予備費であることを見れば、明らかだと言わなければなりません。又来年二十七年度の
予算が、防衛分担金並びに警察予備隊の枠の飛躍的増大によりまして、再軍備必至の情勢に追込まれていることを見れば明瞭であります。これが和解と信頼の両條約締結後における日本の
財政経済の誠に有難い
実情であると言わなければなりません。
政府は一体かかる奴隷的態度をどこで切替え、いつ改めんとするのであるか。かかる態度をこれ以上持続することは、和解と信頼を盲信して、折角両條約に賛成した国民層といえども、絶対に我慢することのできない條件であろうと思うのであります。反対理由の第二の点は、本
補正予算が再軍備への橋渡し的
予算であることであります。日本の再軍備につきましては、安保條約の條項、又精神から見て、早晩これが現実化するであろうことは想像に難くないのであります。あたかもこれと符節を合せましたように、最近は、バークレー副大統領、ラスク次官補等アメリカ要人が相次いで渡日しておる。それに加えて来月初旬はダレス氏が四度目の訪日を伝えております。ダレス来朝の目的が何であるかについては、今日もはやこれを知らない者はあるまいと思うのであります。又伝えられるところでは、
政府はすでに再軍備の構想をワシントン筋から求められ、目下検討中とのことであります。あたかもこれに応えるかのように、二十五日附の朝日新聞を見ますというと、防衛力漸増計画なるものが発表されておる。これによりまするというと吉田首相は去る二十二日、外相官邸に軍事専門家を交えて重要会談を行
なつた、その席上で防衛力漸増計画と、その
予算措置に関する打合せがなされたと言われておるのであります。その構想としましては、先ず第一に、警察予備隊を質的に強化し、第二次大戰以来飛躍的に発展したところの戰略戰術に対応する技術的能力を持たせるために、本格的訓練を開始する。第二には、海上保安庁を海上警察の役割から、沿岸における軍事的防衛をも担当させるように再編成する。第三は、これらの
措置は成るべく早く実現したい
考えで、できれば来年早々にも発足する。これらのことを骨組としまして、すでに総司令部及び米国
政府にも通達されていると信じられると同紙は報じておるのであります。本
補正予算における警察予備隊費百五十億の支出のごときも、かかる態勢強化への過渡的支出にほかならないのであります。而も予備隊はすでに迫撃砲、ロケツト砲を持ち、最近の訓練におきまして渡河作戰、バリケード、トーチカ構築、敵陣の探索、爆破まで行な
つていることは、何を
意味するか。表看板に再軍備を謳うかどうかは別としまして、警察予備隊の強化が、実質的に国民負担を著しく増加せしめることは、既定の事実であり、すでに
池田蔵相もこれを認めているのであります。即ち警察予備隊の
費用は、本年度の三百十億から、来年度は数倍にはね上ろうとしているのであります。第十国会以来吉田総理は、再軍備はしないし、又できないとしばしば
言明しておるのであります。而してその理由とするところは、
国家の経済がこれを許さないからだということであ
つたのであります。ところでこのように経済的理由を楯としまして、再軍備を否認し続けて来たところの
政府が、一方実質的には、警察予備隊の名によ
つて著しく国民負担を増大せしめて憚らんものがあるのであります。その結果、これらの軍事費に対するアメリカ側の要求は、防衛分担金と合せて約二千億であり、それは
政府の千二、三百億の線を遥かに突破しておると言わなければならないのであります。これに賠償、外債支拂、その他のいわゆる
講和関係費等を加えますときには、来年度の
講和関係費は約三千億近くになる。その結果は、
池田蔵相の八千億内外の枠を拡大して、増税を断行するか、或いは国内費にしわ寄せして、超均衡
予算を組むほかに
方法がないところに追込まれておるのであります。こうして二十七年度
予算の編成に当り、国内経費を優先するという建前を声明した
池田財政は、再軍備第一主義にその方針を変更せねばならん土壇場に追込まれておるのであります。このことはアメリカの対外軍事政策、例えば西欧諸国に対する軍事援助の條件が、当該国の国民負担の一〇%を軍事費として計上することを要求しておることと併せ
考えますときには、一層深刻であると言わなければなりません。即ちこれを日本の場合に当てはめて
考えるとき、
昭和二十六年度の国民所得が四兆六千億でありますから、従いまして一〇%、四千六百億
程度までが軍事費として要求される可能性を持
つておるということになるのであります。一方アジアにおきましては、朝鮮戰争もまさに休職に入ろうとしております。こうした現
段階におきまして、なぜこのような軍事費が必要なのであるか、日本の防衛といい、安全保障というのも、すべてがウオール街の戰争屋どもによりまして昨年夏仕組まれた朝鮮干渉戰争を理由として、国内の不安を煽り立て、輿論を形成してのことではなかつたか。然るに今、休戰が実現せんとするのに、軍備はいよいよ強化され、国民負担はますます重くなろうとしておるのであります。この矛盾の真の原因は一体何であるか。言うまでもなく帝国主義者どもが、休職によ
つてもその元来の━━━━━をいささかも放棄するものではない、彼らはむしろこれを
機会に、中東アジア司令部設置の裏付として、━━━━━━━━に廻す必要を生じ、その後釜として━━━━━━━当て込んでおることは、過日の吉田、アチソン交換文書を待つまでもなく明らかであろうと思うのであります。あたかもこれと符節を合したように、二十五日のINS電は、韓国外務長官ピヨンヨンテの記者会見談を報じておるのであります。即ちこれによりますと、日本は共産軍との戰争を援助するため、朝鮮に日本人部隊を派遣しようと
提案したと述べておるのであります。
政府はこれを否認していますが、傀儡国とは言え、いやしくも一国の外交
責任者が、公開の席上で虚言を吐くということは信じられないのであります。吉田総理は事ごとに再軍備をしないし、又できないと言い、又朝鮮休戰は望ましいと言いながら、事実は全く逆のコースを歩んでおるのであります。これはもとより
政府の土台骨が腐り抜いて、解散必至の情勢を見越し、余りぼろの出ないうちに、今日までの国連協力の政策と再軍備の事実を国民の前に隠蔽せんとする見えすいた手段と言わなければなりません。若しそうでないとするなら、飽くまで苛酷極まる軍事費の要求を蹴り、アジアの平和を推し進める努力を集中し、国民の生活を断乎守り抜かねばならんはずだと思うのであります。果して
政府の所見はどうか。(笑声)
第三に、本
補正予算は、日本経済協力の名の下において、国際収奪の強化を図らんとするものであります。本
補正予算の枠の膨脹の原因が軍事的支出と
政府の出資、投資にあることは、すでに指摘した
通りであります。即ち外為特別会計、食管特別会計への繰入四百億、国際通貨基金、国際
開発銀行への出資分担金二百億を計上しておるのでありますが、これこそは国際独占資本に日本経済の全部を挙げて奉仕せんとすることにほかならないのであります。言うまでもなく国際独占資本は過去六年間、日本の占領状態を利用して、見返
資金には紐を付け、金融
機関を初め、電力、石炭、鉄鋼、造船、肥料等の重要産業のみならず、鉄道、通信の隅々に至るまで、その支配的実権を握
つて来たのであります。又外貨割当の操作を通じまして、日本の対外貿易を全く左右し、日本が売りたい国に売れず、買いたい国から買えず、安いときに買えないで、高いときに押付けられるという、からくりが行われているのであります。こうして貧慾極まりない狼どもは国際物価の大きな変動を利用しまして、日本の貿易業者並びにメーカーの犠牲におきまして大規模の収奪を繰返して来たのであります。而もこうした背後の操作の間に、日本全体がいつの間にか戰争謀略の網にがんじがらめに縛りつけられて来た
実情であります。国際
開発銀行、国際通貨基金の制度こそは、弱小資本主義諸国からなけなしの金を捲き上げて、戰争商売人の祭壇に供せんとする機構であります。吉田内閣は日米経済協力の名の下に、この血に飢えた狼どもの前に脆いてその分け前にあずかろうとしているのであります。にもかかわらず本年度内に国際通貨基金への加盟が許されるかどうかということは、先ほどからの論議によ
つても未定であります。恐らく問題にはなるまいと予想されるのであります。更に外為特別会計への繰入金も、輸出入のバランスの予想からしますならば、恐らく年度内に使うことはないものと
考えられるのであります。そうだとしますと、この数百億に上る厖大な経費が、いわゆるリザーヴ・フアンドとして備蓄されることになるのであります。これだけの大金を遊ばせておきながら、
給與ベースの改訂は人事院の
勧告を遥かに下廻
つており、六・三制の校舎建築は御破算の状態であります。又失業対策も、戰争犠牲者遺家族の援護費も殆んど問題外であります。特に
平衡交付金の
増額につきましては満場
一致の
決議案が
両院を通過しており、我々はその実現を目指して連日
委員会で折衝を続けたにもかかわらず、
政府は遂に財布の口を締めて開けようとはしなか
つたのであります。
池田大蔵大臣はこの小
委員会の席上におきまして、
平衡交付金の
増額は国民の血税だから十分に検討を要するということを漏らしているのでありますが、それなら一体数百億に上る
政府の出資、投資、この
政府の出資、投資は一体国民の血税ではないのかということを私は聞きたいのです。又最近の汚職
事件で不正に浪費されました数十億は、一体日本国民の血税ではないかということを伺いたいのであります。アメリカ側の要求さえあれば、日本の台所には到底合わないところの厖大な支出をやろうとして承諾する
政府も、一方国民の血の出るような要求に基く僅か百億余りの支出を出し澁
つておるのであります。これでは全国の知事会議、市町村会議を初め、
関係者全部が憤激するのも無理のないことであります。これをなだめるために、
政府は一方におきまして
繋ぎ資金のような糊塗的手段をとろうとしているのであります。これはすでに政治ということはできないのであります。自由党の選挙対策以外の何ものでもないのであります。若し
池田蔵相の言う
通り、それが真に国民の血税であると
考えるなら、絶対多数の
要望に応えましてこれを国民に返すべきであると思うがどうでしよう。とにかく
両院満場
一致の
決議がこのように
政府並びにその背後の力によ
つて拒否されることは、国会の機能の喪失であり、まさに奴隷国会への転落への分岐点と
考えられます。これでは今後が思いやられる。我々は両條約発効後の国会運営のためにも、ここで民族的決意を結集して、かかる暴圧と最後まで戰わんとするものであります。
第四に本
補正予算は国際収奪の一切のしわ寄せを国民の血税に求めんとするものであります。本
補正予算に計上した経費は、いわゆる国内費たると
講和関係費たるとを問わず、本質においては国際収奪者への奉仕を第一とし、これに従属する国内の特定買弁資本に若干の従属的超過利潤を保証するものであります。この厖大な経費のしわ寄せは言うまでもなく国民の血税であります。そのからくりは
簡單である。
政府は国民所得を昨年度よりも一兆一千億円も水増しし、これによ
つてさしずめ千五百六十億の水増し増税を当て込んでいるのであります。この手品を国民の目から隠すために、
政府は四百五億の
減税なるおとりを用いているのであります。併しそれが真の
減税でないことは、
減税がドツジ氏の来朝によりまして非難されますというと、同じ穴の自由党の吉武政調会長は、
減税でなくて税の調整であるということを言い出したわけであります。これは
政府並びに與党自由党が、国内的には
減税による公約実施なりと宣伝これ努めながらも、国際的にはその正体を暴露せざるを得なかつた何よりの証拠であります。国内的には
減税、国際的には増税という自由党の発明したことの二枚舌こそは、このたびの税制改革の正体を誠に遺憾なく物語
つているのであります。これを
数字について見ますと、差引千百六十億の増税であり、更に
地方税の増徴分四百二十三億を加えますと、実に千六百億近い大収奪になるのであります。
池田蔵相がみずからも、先ほど述べましたように、国民の血税ということを認めておる。又その後ドツジ氏が
政府の
減税政策を、来年度の
減税政策をば
了承したのは、かかる事実を認めたからにほかならないと思うのであります。第五に今度の
予算審議を通じて最も遺憾に堪えないことは、米穀統制撤廃中止のあの
責任が何ら明らかにされなかつたことであります。吉田内閣の最も重要な政策であり、現にこの参議院の壇上を通じまして総理によ
つて明らかにされた米の統制撤廃は、その後労農階級を中心とする国民大多数の猛烈な反撃に会い、最初から動揺せざるを得なかつたことは周知の事実であります。而も最後の頼りの綱であるところのドツジ氏の了解が別の
意味から得られず、
政府は来年四月からの実施を見合わせねばならぬところに追込まれたのであります。而もこの
責任を痛感し、国民の前にその不明を謝まるべきであるにかかわらず、
政府は一片の声明書を発表して事態を全く糊塗せんとしているのであります。
池田蔵相のごときはその
責任を感ずるどころか、却
つて威丈高にな
つて基本方針には何ら変更がないと力み返
つているのであります。併し我々の聞かんとするところは、実現の見込のない抽象的な、今後の仮定的な方針などという架空のものではないのでありまして、現実に一体四月一日から政策が実現されない、そのことについての
責任でありまして、更にこれによ
つて現に惹き起されているところの国内の混乱であります。一体
政府はこれからの供出をどうさばくのであるか。一度緩められた農民の供出意欲というものは、不作を前にしまして、二千五百五十万石の供出に一体自信があるのか。又その奨励金を一体どうするのか。更に
地方では四月からの統制撤廃を見越して、業者なども暗躍し、思惑買の態勢が準備された事実もあり、而もこれは決して自由党とは無
関係ではないと思うのであります。これらの後始末を一体どうするのであるか。これらいろいろの條件が重な
つて、今後吉田内閣の土台骨を足下から揺り動かす大きな要因になることは必至であろうと思うのであります。併し飽くまでも
政府は頬被りでこの事態を切り抜ける気であるかどうか。公党の政策がこういう形で何らその
責任を明らかにせず、運営されるところに、日本政治の植民地的現象が
はつきり現われているのであります。これは国会の威信をも傷つけ、内外の信用を損うことは明らかであります。よろしく
政府はこれらの
責任を負
つて内閣を投げ出して、罪を天下に謝すべきであると私は思うのであります。更に見逃すことのできない問題がありますが、それは
横田基地の爆発
被害事件であります。十一月十八日の午後六時二十分頃、両條約が
衆参両院を通過して、
政府並びに自由党の諸君が乾杯を挙げていた真最中のことであります。
横田航空基地ではB二九爆破によるあの惨事が起つた。十二名の全搭乘員は無事であ
つたのに引きかえまして、これが救助に駈けつけた日本人が爆彈の炸裂によ
つて、或いは、惨死し、或いは重傷を負い、又附近の多数の家屋が非常な損害を受けたのであります。私はこの
事件の
補償につきまして、
被害の
補償につきまして、
予算委員会で
関係大臣の
意見を質したのでありますが、
池田大蔵大臣はこういう
被害に対しては声明か何か出ており、占領軍はその
責任を負わないようにな
つているということを答えられたのであります。私はこれに対しまして、それならその声明か何かこれについての
資料の
提出を求めたのでありますが、先ほど
委員会で
委員長からこれをお諮り願いたのでありますけれども、未だにこの
資料が
提出されないで今日に及んでいる。なぜ一体こういうことが行われるのであるか。今仮にそういう声明書が事実あるかないかということは明らかでありませんが、仮にあつたとしましても、それは占領政策に属する上のことであります。言うまでもなく……。