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1951-11-27 第12回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十七日(火曜 日)    午前十時十三分開会   —————————————   委員の異動 十一月二十六日委員九鬼紋十郎君及び 平井太郎君辞任につき、その補欠とし て、北村一男君及び島津忠彦君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            小林 政夫君            藤野 繁雄君            佐多 忠隆君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            岩沢 忠恭君            加納 金助吾            北村 一男君            古池 信三君            白波瀬米吉君            島津 忠彦君            一松 政二君            深水 六郎君            高良 とみ君            結城 安次君            荒木正三郎君            内村 清次君            小林 孝平君            小酒井義男君            波多野 鼎君            松浦 清一君            山下 義信君            山田 節男君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君    農 林 大 臣 根本龍太郎君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    行政管理庁管理    部長      中川  融君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    文部大臣官房会    計課長     寺中 作雄君    食糧庁長官   安孫子藤吉君    水産庁長官   藤田  巖君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開会いたします。  本日は総理大臣に対しまする総括質問でございます。昨日の委員長理事打合会によりましてきめました順序によりまして発言を許します。総理質問者の御時間は二十分でございます。時間を嚴守して頂きたいと思います。結城安次君。
  3. 結城安次

    結城安次君 私は極めて簡單に総理にお伺いいたしたいのでありまするが私のお伺いする点は、予算編成内容とその使途であります。予算に盛られました各種の費目はどれも無駄とは申しません。それぞれその必要はありまするが、その程度並びに軽重及びその資金源には限りがあります。終戰後国民懐ろ窮乏の極と申して差支えありません。目下我が国財政は、なけなしの金を集めて、どうやらやつておるというような有様でありますのにかかわらず、その用途については頗る関心が薄いように存ぜられるのであります。いわばなけなしの金を最も有効に活かして使うということについてどうかと思われる点がありまするので、一、二お伺いしたいと思います。  その第一は、目下我が国仕事はいろいろありまするが、どれもこれも不必要とは申しませんが、最も必要というのは治山治水費用でないかと存ずるのであります。治山治水と申しますると国民生活に最も必要な木材、又生活必需品供給源であります。その治山治水費用が軽視されておるとは申しませんが、災害程度に比べては、事実物足らんように思われるのであります。而もその割当てられた費用が各方面に万遍なしに振向けられるので、頗る効果が薄いように感ぜられるのであります。私の希望は、予算治山治水に重点的に増大しまして、又その用途については、少数山岳、河川に重点的に使用いたしまして、片つ端から効果ある、例えば河について申しますならば、一度改修しますれば、今後手を付ける必要のないというぐらいに完全に改修いたしまして、一河々々と片付けて行うべきものであると存ずるのであります。然るに現在の予算は、改修はおろか、復旧さえもできかねる有様であります。我が国における風水害は年々数千億と申しますが、風はとにかくといたしまして、水くらいやり方によつては、穏かな又しやすいものはない。水は方円の器に從うというぐらいに言わたるのでありますが、これを下手に扱うと、又これくらい乱暴な厄介なものはないのであります。その穏かに使う方法といたしましては、山岳地帯に大きなダムを作り、低地帯においては河底を下げ、遊水池を作るという、この二つの原則を離れることはできないと存ずるのであります。現在のやうな予算を以ていたしましては、災害のほうが多く、復旧どころじやなく、災害のために年々費用が多くなつておるということで、このままでは永久に治水の実は挙らんと思うのでありまするが、來年度は予算において治山治水費を非常に増額いたしまして、更にこの用途を、十分重要の度を調査いたしまして、重点的に少数のものに振向けられて、片つ端からこれを完全にして行く。一度直したところは、もはや今後手を付ける必要がないというようなところまで行つて頂きたいと思うのでありますが、総理のお考えのほどを伺いたいと思います。  更に時間がありませんので、もう一つ続けてやつておきますが、今回の行政整理の問題でありますが、私は政府の金、即ち国民の税金によつて賄われておるものには冗員があつては相成らん、冗費があるべきはずがないのであります。普段から余計な人を抱えておることはないはずであります。それが原則であると思います。併し事実は、種々の事情から行政整理ということに今回なりましたが、それは行政整理国民の声でもありますし、又事実私も必要ありと信ずるものであります。ただ整理方法天引というようなことになつておりますが、私は仕事内容、その実際に即した方法整理すべきものであつて、決して天引というようなことですべきものではないというふうに存ずるのであります。又各方面から反対の声もたくさん聞きます。反対せんがための反対の声も多くありまするが、中には、事実整理すると、仕事に無理を來すというようなことの避けられないところもあるかのように存ぜられるのでありますが、行政整理は非常に国民の、つまり官公吏に対し非常な不安を與えておるのでありまするから、この点は十分御考慮になり、慎重にお考え願いたいと思うのであります。殊にもうすでに案も出ておるのでありますから、今更私はとやかく申しませんが、今後の問題といたしまして、行政事務社会変転と共に常に変つて行くものでありまするから、今度は常に仕事繁閑に応じて増減いたしまして、社会変転と共に、人員を常時、不断に整理をして行く、こういうふうな行政整理ということでやつて、非常に社会不安を來たす、又或るものに乘ぜられるということのないように切に今後の行政事務についてお考えを願いたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。予算を重点的に使えというお話は誠に御尤もな話であります。例えばこの間ルース台風のあとを建設大臣が見て廻つて、念を入れて、そしていたした工事については、損害がなくて、そしていい加減ではないでしようけれども、不十分な予算で以て、年度割というようなところで以つてつたところは、非常に損害が多いと、こういうような点からお話のような考えで参りたいと考えております。委細は建設大臣からお聞きを願いたいと思いますが、今後は重点的にまあうまくいたしたいと思いますが、なかなかいろいろな困難がありまして、資金の点、その他があつて重点的にという気持がなかなか行われないのが実際であります。併しながらなお注意いたすようにいたします。  それから第二の行政整理についてのお尋ねでありますが、これは決つして天引主義でやつておりません。事務繁閑その他によつて按配をいたしておるので、御懸念のようなことはないのでありますが、併しこれは主務大臣からお答えいたしたほうが正確であろうと思いますから……。
  5. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) お答え申します。今回の行政整理につきましては、昨年の夏に政令改正諮問に関する委員会で、二カ月ばかり基礎的の検討をされまして、それで飽くまでも事務整理を基本として、事務繁閑に応じて立てたものでありますが、これを基本的な参考にいたしまして数千に亘りまする項目ごとに、事務繁閑に応じて決定をいたしたものでございます。内容は当つて頂ければよくわかることでございますが、講和会議ができまして、いろいろその関係から來まするいろいろな変化もありまするし、或いは又、一昨年の行政整理の際に取入れられておりませんでした統制撤廃に関しまするものでありまするとか、いろいろそういう面からしまして非常に大巾な整理もいたしておりまするところもあります。全然手をつけてないところもございまするが、一つ一つ事務繁閑に応じてやつたものでございます。  なおこの行政整理というふうなことをやらないで、ときどきに応じて事務繁閑変化が、事細かく定員に反映をして、常時増減のあるようにというお話でありますが、これは誠に同感でありまして、今後そういう形で冗員のでき次第、乃至は当面冗員でなくともいろいろ工夫することによつて、節約のできるように時々やつて参るようにいたしたいと思います。
  6. 結城安次

    結城安次君 次にお尋ね申上げたいのは、政府資金使途でありまするが、これは目下やかましく非難されておりまする官公吏綱紀粛清と関連する問題でありまするが、終戰後、特に近來は一段と甚しいように思われるのであります。これはすでに定説になつておりまするので、私からは詳しくは申しませんが、現在の官公吏の、金並びに物の使い方が非常にルーズである、注意が払われておらんということは、否定のできない事実であると信じます。国家資金は、国民一人一人の血税の塊りであります。そのために国民のあらゆる人が苦労をしております。中には一家心中というような非惨な事実すらある。その結晶であるということを知つたならば、無駄には使えない、つまみ食いはできないはずだと思うにかかわらず、依然として無駄使いや、汚職事件が続出するのは、これは一つは私は監督上司監督が不十分ではないか。どうももう少し上司が責任を以て細かく監督指導して下さるならば、こういうことは漸減するのじやないかと思うのであります。吉田総理は、常々官公吏綱紀粛正を絶えず主張せられましてあるにかかわらず、その跡を断ちませんのは、親の心子知らず、誠に遺憾に堪えないところであります。而もその親の心子知らずは、下に行くほどひどい。これが東京或いはいろいろ地方を歩いて見まして、末端のほうがもつと綱紀の紊乱が激しいように思われるので、これはこのまま放置して置くことはできない問題と存ずるのであります。私たち予算審議いたしました以上は、国民に対してその予算が正当に且つ適正に誠意を以て目的通り使われたかどうかということを監視する義務があるのじやないかと思うのであります。会計検査院がありまするが、これは一年や二年も経つて報告されたのでは、すでに遅し。私は行政内容に入つて、そして監督するというのではなくて、監視するその義務があるのではないか。会計検査院と離れて国会中心となつて、この予算並びに法律の事項が適正に行われておるかどうかということを監視する、或る一極の機関を作る必要があるのじやないかと思うのでありまするが、総理は如何お考えでございましようか。
  7. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お尋ねの、近時汚職事件が起るということは誠に残念なことでありますが、又政府としては予算がどう使われておるか、法律がどう実行されておるか、よく監視するために、各省別で相当な機関をつくつたらどうかということですが、これはその金の使い道の監督、或いは検査の結果、汚職事件が出て來るとも考えられるのであります。出て参りましたときには、これは仮借なく処置をする。他方においては、監視はますます十分にいたしたいと思います。  今申しましたように、或いはその検査の結果、或いは監視の結果、発見せられた汚職事件は、遠慮会釈なく新聞に公表する、一方においては厳罰に処しますが、併し他方においては、他の県その他において事件……、官庁その他において同じような事件が繰返えされないように、注意を惹くために、新聞で暴露もするというような手段をとつておりますが、いずれにしても、これはお話通りかくのごとき事件が続出するということは、誠に遺憾千万なことでございますから、今後も十分取締ますが、さてどういう機関をこしらえたならば、いいか。国会でそういう機関は、現在行政監察委員会というものもありますが、一応政府としては、各省々々で以て、予算が十分な監視の下に使われるようにいたしたいと思つて、それぞれ今申したように各省でそれぞれ委員会を作つておりますが、なお併しこの点は注意いたします。
  8. 結城安次

    結城安次君 只今総理から行政監察委員会お話だろうと思いますが、どうも行政監察委員会だけでは、何だかもの足りんような気がいたしますので、殊に法律案審議の場合には、ここでいろいろ質疑応答のときに、そういうことをすると、條文ではこうなつているから迷惑するものがあるんじやないか、面倒な手続になりはせんかということを質問すると、そういうことはしませんと言うにかかわらず、やはりそういうことがありますので、私はこの点のためにも国会中心になつてやる必要があるのではないだろうかということをお尋ねしたのであります。  更に私は地方税のことについてお伺いしますが、固定資産税、これは私固定資産税そのものには反対いたすものではありません。ただどうも今地方財政は非常に窮乏を來しております。それで各地を歩いて見ますと、町村においては五割くらいしか徴税に対して納税ができないところがある。又ところによると非常にいいところがありますので、聞くと、そこには工場があるかなんかで、或る僻地でありましたが、その村の殆んどすべてが一会社で出す固定資産で賄える。而もその川を隔てた向うは非常に困つているというような実例もあります。これは私の県にもあります。これはつまり非常に不公平なんです。私は固定資産税そのものはむしろ府県がまとめて、これは或る方法によつてその県内に分配するほうがいいんじやないか、こういうようなことをこの頃田舎を歩いて、徴税の模様を聞きまして感ずるのでありますが、そういうことに対するお考えは如何でございましようか。
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今の予算使い方等監視機関については、政府としては研究いたします。研究した上でお答えいたします。  それから固定資産税のほうは、大蔵大臣からお答えいたします。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 固定資産税につきましては、お話のような点も我我感じておりますので、只今検討を加えております。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ず私がお聞きしたい第一点は、総理が繰返しお述べになつておりますように、今度の平和條約は日本の、日本国民の完全な主権を承認されたので、完全に独立したのだというお話であつたと思うのでありますが、そうだとすると、独立後の日本経済政策或いは政治政策、そういうものすべては日本国民の独自の判断、独自の決定によつてなされるべきものであると思うのでありますが、それを総理はどういうふうにお考えになつておるか。もつと具体的にお尋ね申しますと、現在申上げるまでもなく、経済政策その他を決定する場合に、経済科学局その他のいろいろな制約を受けておるわけでありますが、講和條約の発効後には、これらから來る制約は殆んど全部なくなつてしまつて、完全に我々が独自にそういうものを判定し、決定するということが可能であるかどうか。そうなれば経済科学局その他は全部解体をしてしまつて、完全に撤去される、こういうふうに考えておいていいかどうか。その点を先ずお伺いしたいと思います。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。講和條発効後は、即ち現在の総司令部はなくなるわけであります。從つてお尋ねのような点については、日本政府日本側独自の見解なり或いは又政府立場からいたしまして決定いたすので、從來のような監督といいますか、相談をするというようなことは自然なくなるわけであります。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 将來政治政策或いは経済政策が完全に日本独自の判断によつて決定されて、駐留軍その他のいろいろな制約はなくなるということになりますると、もう一つの具体的にお尋ねしたい点は、予算編成権予算審議というような問題に対しても、我我は完全に我々独自の判定によつてなすことができるようになるかどうか。特にこれを私がお尋ねいたしますゆえんは、これまでの折衝の、これまでのいろいろのやり方、或いは今後の二十七年度の予算編成等々における折衝やり方などを考え見ておりますと、例えば防衛分担金の問題、或いは講和関係の諸費用の経費の見積りその他に関していろいろと駐留軍側から註文が出、それによつて予算編成なり審議に対して非常に大きな制約を受ける結果となるのではないか、これは講和條約が発効した後にもこれが続くんじやないか。その点について国民は非常な憂慮を持つておると思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 原則として只今申した通り予算編成その他は日本政府及び日本側立場決定することであります。この点は原則はその通りでありますが、併し同時に條約上の義務に対する費用は別であります。又進駐軍費といいますか、分担金といいますか、これらは相談の結果決定するはずでありますが、こういう條約上の義務に属するものは別として、予算編成権は、それは日本政府にあるものと御承知を願います。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 條約上の義務を我々が負わなければならないことは、條約が一応きまつた以上は、そうであると思うのでありますが、問題は、その負担すべき防衛分担金或いはその他の講和関係費用を、これは予算の問題でありますから、我々が独自の主権国家国民として独自にきめてこれに対応すればいいのであつて、先方から無理に強制されて呑まされるというようなことは毛頭必要ないし、從つてその意味においては我々の主張、我々の要求を強く折衝しながら、我々独自でそれを決定をして行くということこそ、主権国家国民としてのあり方であると思うのですが、その点をどういうふうにお考えでございますか。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申しました通り予算編成その他のことは日本政府、及び日本側決定によることでありますが、但し只今申しました分担金その他は條約において、或いは協定において自然きまるでありましよう。そのきまつた後は、予算編成の場合に分担金として計上せられますから、そのときに御審議を願います。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私がお尋ねしたいのは、一応そういう分担金その他が向うとの折衝できまるだろう、それを我々は呑むべきであるというふうな印象を受けるのですが、そうでなくて向うからのいろいろな要求がございましようが、そういうものは一つ要求として決定をするのは、我々国民であり、国会であるというふうに正確に考えておいていいのかどうかという点でございます。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今分担金のごときは、一応相互の間において協定をして、額はどのくらいと、その額の中においてのその費用はこういうふうということで自然きるのでありましよう。それが予算項目と申しますか、予算の問題として議会に提出せられる、こういうことになりましよう。それで両方の間の話はまだできておりませんが、併し日本政府としては、議会において承認せられるような費目であり、承認せられるような額でなければ、議会は通過しないことは考えられますから、自然協定の場合に議会との関係考え協定することになります。でありますからして、向う言いなり放題に強制せられてという御心配はないと思います。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは、予算の金額その他については、我々国民が独自に判定をし得るのであるというふうに了解をいたして、次の問題に移りたいと思います。  講和條発効後には、今申上げているように、完全な主権を回復するということになるわけでありますから、そうして占領軍駐留軍に変るのでありましようが、そうだとすると、現在占領軍が接収或いは使用しているところのいろいろな事務所、ビルディング、建物、ホテルその他のいろいろな施設、こういうものは当然に講和條発効直後において日本側返還さるべきものであるというふうに考えるし、国民もこれを非常に強く要望をいたしておるのでありますが、この点に対して、これらの問題がどうなるとお考えになるか。或いはどういうふうに主張すべきだ、どういうふうにこれに対処すべきだというふうに総理はお考えになつているか伺いたい。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 軍隊駐留することになりますと、その駐留軍隊のために、家屋であるとか、或いは土地であるとかというようなものの提供の要求があります、併しそれは必要の範囲でありまして、今よりも、例えば総司令部がなくなりますから、家屋その他は無論減ります。又返還要求いたします。又返還いたすはずであります。ただ、例えば病院であるとか何とかいうようなものについては、現に朝鮮事変などもありますから、病院等についてはなおそのまま残してもらいたいという要求はあると思います。これは理由のある限度においてその要求に応ずるつもりであります。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、原則としては一応全部返還をされて、その後においてそういう特殊な施設については改めて提供なされるというふうに考えておいてよろしうございますか。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 原則としては一応すべて返すといううちにも、必要なものだけは浅して置くと、こういうことになりましよう。これは話合いの過程においていろいろきまりましようが、成るべく余計返してもらいたいと、又いろいろ苦情もありますから、そういう苦情の存在することは、日米関係においてよろしくありませんから、向うもそのつもりでおりますようであります。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 次にお尋ねしたいのでありますが、米軍将兵その他家族が駐留をするということになりましようが、それらの人たちが使うところのいろいろな生活物資軍需品以外のいろいろな生活物資を相当使用すると思いますが、そういう物資を入れる場合には、それらの物資に対する関税課税権は完全に日本側に留保されておる、從つてそれらはすべて関税をかけて入れて、それを使つてもらうというようなことになるのが、自主権を完全に回復した姿であると思うし、それを国民は強く要望しておると思うのでありますが、そうでなければ、今までにおいてすら、いろいろな外国品アメリカ品が入つて來て、これが中小企業その他に非常な影響を及ぼしておるというような状況もございますので、これらに関連して、そういう意味での将兵生活物資輸入に対しては、完全な課税権日本国に保持するということが主張されなければならないと思いますが、これに対して総理はどういうふうに考えておられるか。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今の進駐軍に対してどういう特典を與えるか、或いはどういう法制上の計らいをするかということはまだ話がきまりませんが、併し原則は今お話しになつ通りであろうと思います。又現に進駐軍としては、税の免除とかその他についての特典は放棄しつつあるようでありますから、條約発効後においては、あなたのお話のようなところに参ると思います。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 次に日本駐留する軍隊米軍将兵、それらの人たちといえども、軍の役務に勤務しておる時間はまあ特別になるかも知れませんが、それ以外は全部アメリカの将兵といえども日本にある限り日本の司法権に服するということが、日本の完全な主権を確保するゆえんであると思うのでありますが、この点に対しても、それを確守される決意があるかどうか、それが可能なのかどうか、お答えを願いたい。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題は、日本の裁判権と、それからしてアメリカの軍事法と言いますか、軍に関する法令等との間の関係がありましようから、その間の関係はそう御心配になるような衝突を起すようなことはないであろうと思います。これらの点も協定をいたしてその結果を御報告いたしますか、御心配のようなことは先ずないと思います。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 平和條約或いは日米安全保障条約の審議の際に非常にあいまいであつたのですが、最後には、日本は今度の安保條約その他で軍事基地を提供したものではないと、軍事基地は絶対に提供してないし、今後もする約束をしないということを明言されて、この点は非常にはつきりしたと私たち考えております。ところが、アメリカのラスク国務次官補が十八日にワシントンを出発するに際して国務省当局が発表したとろこによると、ラスク次官補の訪日は、対日講話條約及び日米安全保障條約の枠内で日本に基地を設ける問題を検討するためである、こう発表していたと思うのであります。又行政協定内容の問題の一つとして、空軍基地の建設費及び現在米軍の使用中の他の基地の維持費を日米両国のどちらがどの程度の割合で負担するか、そういうことが問題になると言われておりますが、ここにもはつきりと空軍基地に関する云々という文句が使われていて、至る所で軍事基地という言葉が使われ、アメリカではそういうことが当然なことに考えられておるように我々は印象ずけられておるのでありますが、それにもかかわらず総理大臣は、日本は軍事基地は絶対に提供しないのだというふうに言明され続けてお行きになる覚悟があるかどうか。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、私の覚悟は別として、現在両国政府の間に基地という問題は起つておりません。又ラスク氏が來た趣きは、日本政府に交渉するという、交渉のために見えたとは承知いたしておりません。現に交渉いたしておりません。公式の交渉は今後に始まることであつて、ラスク氏と日本政府との間には現に何らの交渉も始めておりません。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 じや依然として軍事基地に関する交渉は今後行政協定が進むにつれても、絶対に基地というような問題は問題にならないということと了解をして次の問題に移りますが、平和條約の前文には私から申上げるまでもなく、国連憲章第五十五條に定めたところの安定と福祉の條件を日本国内に創造するということを誓い合い、そうしてその第五十五條には御承知の通りこの安定と福祉の條件を国内に作り出すためにはより高い生活水準、完全な雇用、経済的、社会的進歩と発展の條件を促進しなければならないという非常に重大なことを規定していると思うのでありますが、從つて日本講和條発効後はこれを我々がやらなければならない責任として、更には国際的な義務としてこれを負わされていると思うのですが、こういう諸條件を充たすためにどういう心がまえでどういう態度で今後進もうとしておられるのか、その点を特に総理にお聞きしたいのです。更にこれを特にお聞きしたいと言いますゆえんは、この間の総理に対する当委員会における質問に対しまして、総理は生活水準は、生活その他は今後相当苦しくなるし、耐乏生活をしなければならぬというような御発言があつたと思うのでありますが、成るほど日本国民の、特殊の二、三の部面には総理の言われるような行き過ぎた、見かねた浪費なり奢侈なり、贅沢が行われていることを否定するものではございませんが、併し日本国民全体としては御承知の通り非常に低い生活水準であり、戰前水準に比べて非常に低いと、更に今度の、たびたび指摘され数字的に論証されている点でございますが、昨年の朝鮮動乱勃発後は、むしろ日本国民の生活水準は絶対的にもう下つていると、こういう実情にあるのであります。而も今後先ほどから問題になつているところの防衛分担金の問題或いは講和関係諸経費等々が編まれて行くとすれば、それが非常に国民生活水準を圧迫する危険性がある。こういうことを国民は非常に心配をいたしているのでありますが、それらの問題と関連して今ここで平和條約前文で誓い合つたこれらのことに対してどういうふうに対処して行こうとしておられるか、この点を総理に詳しくお話し願いたい。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国民生活の水準は、国連憲章にあるとないとにかかわらずこれは向上させなければならぬことは当然なことであります。併しながら同時に将來のことを考えてみると、或いは今後の財政状態を考えてみますと、相当苦しみがあることはこれ又認めなければならぬことであります。例えば賠償の問題とか或いは在外債務の支払とかいうような財政上の負担は相当あるものと考えなければならぬと思います。そこで今お話国民生活の水準とこの負担をどうするかと言われますが、併し今後の財政上の問題は、一方においては国民の生活水準を高めなければならぬのでありますが、又必要な経費を払つて行かなければならぬ。その間の調節は即ち財政家の考えるべきところであろうと思います。例えばイギリスのごときは非常な負担をいたしておる。或いは税の関係においても又在外支払の関係においても非常に困難な立場にあると思います。併し労働党内閣としては国民の生活水準を高めることに努めて來たことは御承知の通りであります。今後も現在の保守党内閣としても生活水準を下げようとするはずはないでありましようが、一方においては、この何と言いますか、ウエル・フエアー・ステーツの地位を保ちつつ同時に為替その他の関係においてその地位を改善しよう。どこの国も同じような状態に今後なると思いますが、併し日本としては一層苦しい、イギリスよりももつと苦しい事態に、敗戰の結果として或いは講和後の立場として、日本の独立安全を守るためにはイギリス以上の苦難を考えなければならんと考えて見れば、安易な考えではいけないということを私は考えております。
  31. 松浦清一

    ○松浦清一君 今度の補正予算審議が始りましてから約四十日ばかり、或るときに総理の出席を求め、或るときには関係各大臣の出席を求めまして、我々はできるだけの検討を続けて來たのでありますが、なお今日に至りまして若干その予算の組み方、内容につきまして、得心の行きかねる点がございますので、その主な二、三点について総理の御答弁を願いたいと存じます。  その第一点は、地方財政平衡交付金の問題でございますが、今年度の当初予算編成するに際しまして、地方のほうからは交付金として千二百九億円、地方債五百七十五億円、これだけの金がなければ本年度の地方財政はやつて行けない、こういうことをきめて政府折衝いたしましたが、本年度の当初予算におきましては平衡交付金が千百億円、地方債が四百億円、合計千七百八十四億円に対しそのときすでに二百八十四億円の地方財政には大きな不足が起つてつたのであります。そのために本年度の各府県の予算編成するに当りまして、或いは給料を数カ月分しか組入れないとか、或いは給與ベースの全然改訂をその中に組入れないとか、業務費或いは必要経費を一部分しか予算化しないとか、そういうやり繰り算段をして今年度の地方庁の予算編成をして來ておつたので、当然今回の補正予算編成に当りましては、交付金と地方債と合せまして五百七十億円の金がなければやつて行けない、こういうことの意思表示があつたわけであります。ところがこれに対して政府は平衡交付金百億、地方債百億円の増額の決定をいたしましたので、なお三百七十七億円の下足が起つて來たわけであります。これらの点について今まで大蔵大臣の御説明を伺つておりますと、国家公務員の給與ベースが千五百円アツプされるということの是非は別問題として、若し国家公務員の給與ベースが千五百円アツプされる場合、百億円の平衡交付金で地方公務員が同じように給與のベース・アツプができるかどうかというところに問題点があるようでございまして、そこで大蔵大臣は今まで大蔵当局の調べて來た結果によると、百億円の平衡交付金で国家公務員並みにべース・アツプができる予定であるという御答弁を伺つたわけであります。昨日平衡交付金に関する小委員会を開きまして、地方財政委員会方面の意見を聞いてみまするというと、百億円の平衡交付金では千五百円のベース・アツプを地方公務員に対してできる自信がない、こういう答弁をいたしておるわけであります。大蔵省ではこの程度地方公務員も国家公務員並みの給與になると考えており、地方財政委員会ではそれでは自信がない、こういうふうに答えておるのでありますが、これは結果から見なければ実際はわかりません、わからんと思いますが、若しこれだけの平衡交付金で更に増額をしないとすれば、地方公務員の給與が国家公務員並みにならない、こういう事実が起つて來た場合に、この問題については大蔵大臣の答弁は聞いておりますから、総理はどのように調整をされようというお考えであるか、この点伺いたい。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 一応申せば、大蔵大臣の答弁即ち私の答弁と御承知を願わざるを得ないのでありますが、何分国家財政只今申したように将來を考えてみますると一層支出は多くなる。從つて財政の窮迫は感ぜざるを得ないときでありますから、平衡交付金を増額することができれば、無論政府としては喜んで増額はいたしますが、併し全般から考えてみて増額のできない場合には、財政上どうもいたし方ないと言わざるを得ないのであります。同時に地方としても一に平衡交付金を余計取るということばかり考えずに、十分国家全体の跡財政考えて、そして極く内輪に見積ると言いますか、倹約して使つてもろうように希望せざるを得ないのであります。仔細は大蔵大臣からお聞き願いたいと思います。
  33. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 大蔵大臣の答弁求めますか、よろしうございますか。大蔵大臣來ておりますが……。
  34. 松浦清一

    ○松浦清一君 大体大蔵大臣の答弁は聞いておりますから結構です。それではその点議論をする時間がないのでこの辺でやめておきますが、結局平衡交付金を増額するよりほかに地方財政窮乏を救う道はないということをはつきり申上げておきます。この点も先般もこの委員会で運輸大臣の答弁を煩わしたのですが、第七次の造船融資の問題なんです。造船問題というのは部分的な問題のようでありますけれども、将來の日本の経済を自立して行くという根幹をなす極めて重要な問題であろうと思いますので、この点についての将來の日本の経済自立への方向についての総理の所信を伺いたいと思うのですが、結局この前の委員会で運輸大臣並びに大蔵大臣の答弁を煩わしましたときに、いろいろ金融方面について努力をして見たけれども、やはり十万トンぐらい建造する融資しかどうもできない、こういう御答弁であつたわけなんです。本日の新聞の伝えているところによりますというと、先般の運輸大臣並びに大蔵大臣の答弁にありましたように見返資金は三十五億円、それから市中銀行、市中金融機関から三十五億円というような建前で、結局十万トンを造るのに必要な百四十億円しか融資できない、こういうことなんです。百四十億円ということになりますと、本年の七月頃の船舶建造の鋼材トン当り五万三千円という建前で勘定して行つて、そうしてトン当り十四万一千円でありますから、百四十億円でやるならば結局十万トンということになるわけです。それは本年七月の鋼材トン当り五万三千円という建前で勘定して行つてトン当り十四万円でありますから、今の状態から見ますとどうしても十五、六万円ぐらいが建造費にかかるであろうと、こう推定されているわけです。そうするというと十万トン船を造るという建前で百四十億円の融資をして、結局でき上るのは八万トン乃至九万トンくらいかでき上らないのじやないかと、こう思う。日本の海運は将來やはり今から五年先には外航に堪え得る船舶を四百万トン持つて、そうして日本中心として輸送される貨物の半分は鋼船によつてこれを輸送するのでなかつたらいけない。そうしてやはり貿易外収入を増大して行つてそうして外貨を獲得するという方法をとらなければ日本の経済は自立ができない。こういう建前で考えられて來ているわけですが、これも恐らくやはり金融関係の逼迫しておる日本の今の財政の事情で、今総理のおつしやつたようにやはり辛抱しなければならんとこうおつしやるかも知れませんが、それでは日本の自立経済の立て方について大きな誤りを犯すのではないかという心配が残るわけです。言うまでもなく日本の将來というものは、やはり外国から原料を仕入れて來て、日本でこれを生産をして、そうして外国にこれを売出して行つて、そうしてつまり貿易外の収入を増大するということが日本の経済自立の根幹をなすものであると考えておりますが、それに対する総理のお考えを伺いたいと思います。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 造船計画及び貿易外収入というような点については全く御同感であります。ただ金がないのが如何せんやと言わざるを得ないのでありますが、同時にお考えを願いたいことは、これは造船々々ということを余り強く申しますと、実はいろいろの差障りが対外的に生じて來るのであります。現に日本の造船を講和條約において制限しようというような話などもあつたくらいでありますから、それで余り声を高くせずして、実効を挙げるというふうに努力して頂きたいものと私は考えるのであります。なお造船については政府として相当当局者も金融その他について苦慮しており又現に苦慮しつつありますが、併し今申す通り金融上措置がつかないとすれば、或る点で満足せざるを得ないのであります。あとは国民の協力と言いますか、融資その他の方法で以て便宜な方法考える以外に方法はないと思います。ただそれを実効に副わないような、声だけ大きくなつて、そうして徒らに外に影響を及ぼす、一種の威嚇というとおかしいけれども、威しになつて、そうして傭船その他のこともできないようなこともありますので、この取扱い方については十分御注意を願いたいと思います。
  36. 松浦清一

    ○松浦清一君 時間の関係で皆中途半端になりますが、もう一点だけ。今行なつております漁業協定の問題、これはやはり平和條約調印後初めて平等の立場と権限においてなされる協定であるといういたし方でやつておりますから伺いたいのですが、漁業協定の問題、この問題もこの間農林大臣の御答弁を煩わしておりますが、いろいろ御答弁を伺いましてから考えて見まして、なお日本立場からもう少し強く主張しなければならん点があるのではないかという気がいたしますので、事外交に関する問題でございますから、外務大臣としての吉田さんに伺いたいと存じます。それは今問題点になつておりますのは、或る漁場が満限に達しました際に、そこに過去実績を持つておらなかつた国、沿岸国でない国は、その満限に達した漁場で操業をすることを遠慮する、こういう協定が結ばれようとしておるわけなんです。その話を私どもが最初に聞きました時から、それはいけない、やはり世界の水産資源というものを温存保護するということは、各国が平等の責任と義務においてこれを温存するのでなければいけない。今までそこに実績がある、或いは、沿岸国であるという理由によつて、満限に達しておる海域においてその国々は操業をすることが自由に許されて、実績のない、沿岸国でないという建前で特定の国がそこで操業をすることは許されないということは、一方的である、片手落ちである。こういう考え方で農林大臣の答弁を煩わしたわけなんです。その際、農林大臣は、日本がカナダやアメリカの沿岸にそういう場合に行かない代りに、アメリカやカナダは日本の沿岸に來ないのであるから同様ではないか、こういう御答弁があつたのですが、過去の実績から考えて見まして、アメリカやカナダが日本の沿岸に來て操業したことはないのであります。日本の漁師はアメリカやカナダの沿岸にまで出漁して行つて操業したことがあるのであります。そういう過去の実績から考えて見まして、今までの日本の実績を縮小する、それに対して制限を加えるという意図がアメリカ、カナダの代表によつて述べられているような気がして、どうしても私の頭の中では解消ができないわけです。而もこの問題は平和條約調印後最初の外交交渉による協力でありますから、又平等の権限においてなされるというその最初の條約である。又公海の操業は自由であるといういたし方から始められている協定でありますから、将來の外交交渉の上にいろいろ影響をもたらす点が多い。こういうふうに考える。無論曾つて吉田さん、ダレス氏の交換をされた書簡に基いて世界の水産資源は保護されなければなりません。温存されなければなりません。併しながらそれはやはり世界の国々が平等の責任と義務においてなされるものであつて、一方の国が利益し、一方の国が損をするという建前で協定を結ばれるということは、これは平等でない。こういうふうに私は考えます。将來の外交交渉に対しても影響のある問題でありますから、この漁業協定に関して、例えばそのような結論になりましても、引け目を感じた日本が損をした協定になるというふうに私は考えます。総理はどのようにお考えになりますか。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 漁業協定の問題の詳しいいきさつについてはまだ承知いたしておりません。從つて今のような実績による云々ということはまだ私は承知いたしておりませんが、無論この話の出発点は漁族の保護、濫獲を防ぐというところにあるので、この点から考えて見て、この魚族の保護ということを各国共に協同してその任に当るという趣意から出発いたしたので、單に日本だけの犠牲において云々ということはないはずと思いますが、併しこれは現在どういうふうなところに進んでおりますか、調べた上でお答えをいたしたいと思います。
  38. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 第一問は独立日本と性道徳の頽廃の問題でございます。長い間の保障占領下の国民としての気安さと敗戰による虚脱状態が違い原因をなしておるかとも思いますが、戰後の日本は曾つてその先例を見ないほど滔々として天下を覆う頽廃的風潮を釀し出しておると存じます。その一つの代表的なものである賭博の風潮につきましては過日私がこの席で御質問申上げまして、政府からも善処して下さるという御答弁を頂いておりますので、今日はこの問題には触れません。又頽廃的風潮の第二の代表的なものであると存じます官吏の汚職事件につきましても昨日本会議場で決議案として取上げられましたので、今日はこの問題にも触ません。ただ残る第三の頽廃的風潮の代表的なものであると存じます性道徳の頽廃につきまして今日はお尋ね申上げまして政府の決意を伺いたいと存ずる次第であります。最近の日本では一年に平均約三万の婦女子が人身売買をされまして、昔の公娼によく似た制度の下で働かされております。又全国の都市という都市は夜ともなれば吉原が街頭に進出したように所嫌わず人肉市場を展開いたしてれります。こういう問題につきまして過日大蔵大臣お尋ねいたしました時は、何分大勢の国民のことであるのでというお言葉もございました。(笑声)成るほど八千五百万でございます。併し一年に三万人の婦女子が人身売買され、毎夜全国の都市で何十万という婦女子が街頭に立つて売淫を目的として人を勧誘しておるという事実は、何分多くの国民でという簡單な言葉では済まされない問題であろうと存じます。又、昨日労働大臣に対しましてこの問題についてお尋ねいたしました時には、闇の女は彼女たちの自由意思である。大部分の原因は彼女たちが徳義心が低いからであると言われました。成るほど彼女たちは自由意思でしておるのでございましよう。併し今日日本全国で完全失業者は七十三万と言われております。三カ月間職業安定所に日参いたしましても職業にありつけないというのが実情でございます。その間には生活問題もあるでございましよう。又電車賃にも事欠くことも多いでございますしよう。大勢の家族を抱え、中には三人も五人もの家族を抱えた戰争未亡人が万策盡きまして、何とかして子供たちの命さえ取りとめておいたならば又花の咲く日もあるだろうというので、泣く泣く自分の体を犠牲にいたしまして闇の女になつておるというのが、大体全国の闇の女の半数であるとさえ言われております。こういう事実を見ましてなお且つ彼女たちの自由意思と言い切ることができるでございましようか。又彼女たちの徳義心が低いところに大部分の原因があると言い放てるでございましようか。又昨日法務総裁に伺いました時には、社会施設社会政策も十分実施されておらないのに性の問題を法で取締ることはいたしたくないという御答弁でございましたが、成るほどその通りでございます。今日の政府ではこの問題に対しましては職業の優先的斡旋その他の保護の手は何も施されていないと存じます。同時にこの問題はやはり私は急いで保護してもらわなければならないと同時に、やはり法で取締つてもらわなければならないと思います。なぜならば法務総裁が言われましたように、性の問題は法で取締らないというのは恐らく自由恋愛のことを言うのだろうと思いますけれども、街頭に立つて売淫を目的として勧誘するのでありますので、そういう女性がそこここに立つていなかつたならば、何ごともなく無事に暮らせるはずの前途ある青少年が思いがけない深みに陥つたり、男子の人が惡い病気をもらつて家庭を破壊したり、誠に悲惨事が多うございますので、一般の公序良俗、福祉に反する行為でございますので、やはり法で取締つてもらわなければならないと思います。長い間私たち婦人議員が国会におりますのに、議会の門を出ますとこういう風潮がございますので、誠に恥ずかしい思いをいたしておりますが、一国の総理大臣は、私たちよりももつと責任を感じておいでだろうと思うのであります。併し、私たち考えましてもどうにもいたし方ございませんけれども、絶対過半数を占めている政党の総裁であり、一国の総理大臣が一大決意をして下さいまして、関係各省大臣を督促して下さいますならば、この問題は短日月に立派に解決して下さることができると信ずるのでございますけれども、これに対しまして初めて総理大臣の御意見を伺うのでありますが、期待をいたして待つておりますが、どうぞいい御答弁を頂きとうございます。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この社会問題は、私の決意だけでは解決のできない問題であり、又、深き社会の欠陥と言いますか、深い根柢を持つている問題でありますから、なお我々も研究いたしますが、政府も研究いたしますけれども、なおあなたがたにおいても解決方法については始終深い注意を持つて御研究願いたいと思います。
  40. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 次は徳育の基準の問題であります。最近天野文相が実践要領を御発表になりました。各方面の批評がなかなか激しいようであります。殊に国家に対する道徳の中で、天皇を中心といたしておる問題などにつきましては大分論議が激しいようであります。併し残念なことにはその批判を見てみますと殆んど全部が破壊的な議論であります。天野文相の御所見が間違つておるというならばそれに代るべきどういうものがいいかという建設的な意見のないことであります。又一方におきましては思想は自由だと言われております。成るほど思想は自由であり、或いは考えようによりますと、弁証法的に発展するかも知れないといたしますと、時がたつにつれまして相反した意見、或いは相違いたした意見が出ることは想像ができますけれども、やはり今日の日本といたしまして誰がどう考えても国民の道徳としてはこう考えなければならないという一致点が必ずあつて然るべきものだと思います。又それがなくては青少年を指導する地位にある人たちが思い思いでは誠に不便があるだろうと思うのであります。丁度この問題が世上に上りました機会を選びまして全国のその途の権威者をお集めになりまして、日本の今日の国民道徳として、或いは国民道徳の基準につきまして明確な基準を立てる必要があると存じますけれども、総理大臣はこれに対して如何がお考えでございましようか。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今お話の文部大臣の実践要領というものを発表されたと言われますが、私は実はまだ新聞に出る以外に承知いたしておりません。が、私の今お話を伺つて考えでありますが、文部大臣がこういう実践要領というものを発表されて、それで国民の間に自然この問題が研究せられ、或いは専門家がこの問題について更に研究を進められるというような風潮を生ずることは、やがて結論に到達するゆえんであるであろうと思いますから、もう暫らく様子を見て、輿論の傾向その他を見た上でないと私としては結論が出にくいように思います。
  42. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 文部大臣何かおつしやいますか、如何でございますか。
  43. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 只今私が実践要領を発表したとおつしやいましたが、私は発表いたしたことはございません。私の原稿がどういうわけでありますか、どういう手でありますか、世間に出たのですが、私はあれを以て自分の結論としておるわけではなく、あれにはまだ足らないところも非常に多いと考えております。ただ世間でおつしやいますことは、私はやはり虚心担懐にこれを伺いたいと思つております。こういうものを文部大臣として出すことはどうだというお考えとか、又内容についても、あれは私の出したものではございませんけれども、そういうことについてもすべて虚心担懐にいろいろのかたのお考えを伺いたいのです。そうして考慮いたしたいと思つております。
  44. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 第三問は朝鮮人の送還の問題でございます。過日、朝鮮人に嫁ついでおります婦人団体に呼出されまして、大分陳情を聞かされまして私もほろつとさせられて帰つて來ておりますが、何でも予定されておるという朝鮮人の送還は、生活保護法の恩典に浴しておるとか、或いは定職がないとか、その他七項目らしうございますので、今日の日本におります朝鮮人といたしましては、大体その項目に該当するというのでございます。さなきだに国を離れて久しくなつておりますので、本国に帰りましても定職もなかなか見付からないし、更に今日の朝鮮は動乱下にございます。動乱下の朝鮮に受入れ態勢もなく、何らの構想もなく追い返すというのは余りに残酷だと彼女たちは言つております。なお朝鮮人に嫁ついでおる婦人の十二万人が未亡人になるのだと言うのですけれども、どんな日本政府でも、籍が入つていなくても夫婦を引離して、一方を帰すということはしないだろうと思いますが、このあたりの事情もよくわかりませんし、彼女たちはやはり国際問題だとか人道問題だとか言つています。アメリカのほうにもその例がございまして、戰争中に日本人が西海岸におりましたときに全部東海岸に移して、最近、アメリカの国籍になつて、何というのですか、帰化することを肯じなかつた者は、日本に送還されるやに聞いておりますし、又今日日本におります朝鮮人のかたがたにも相当反省してもらわなければならないという点が少くないのじやないか。終戰後日本におきまして未だ自治能力も十分でございませんし、防衛力が十分でございませんときに、余り心配させられるのは困りものだと思うのでありますけれども、それにいたしましても、この後日本が世界の檜舞台に立つて仕事をいたします場合には、ただ單に日本の便宜であるというだけでなく、又世界の多くの国民から考えられましても、納得してもらえる方法考えてもらわなければならんと思いますので、動乱下の朝鮮に無條件に追い返すということは、相当吟味しなければならない問題だと考えるのでありますけれども、この問題は影響するところが多いと存じまするので、特に総理大臣に何か御希望でもございませんでしたら、この席で特に御答弁を頂こうとは思いません。私はこの陳情を御紹介いたし、私の所見を附加えて申すことにとどめたいと存じますが、如何でございましよう。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。朝鮮人の問題はこれはいろいろな方面に亘つて関係がある問題で、政府としても愼重に処置をいたしますが、ただ朝鮮側の苦情ばかりでなく日本国としても相当苦情があるのであります。日本におる朝鮮人が治安を乱すとかいろいろな問題があるので、これは十分朝鮮政府側にも取締なり或いは又適当な処置を講ずることを協議しようと思つておりますが、まだ朝鮮側との間に正式の交渉を始めておりません。やがて、いつになりますか知りませんが、朝鮮政府から代表者が來ての話合いとなります。現在においてもまだ交渉も開始いたしておりませんが、お話のような人道に反するようなことは無論政府はいたさないつもりでおります。同時に日本側の治安の維持というような問題についても、朝鮮政府注意を促したいというような気持で、これから交渉に臨むつもりであります。
  46. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 最後の質問はバトル法であります。去る十月二十五日にアメリカの国会を通過いたしましたバトル法によりまして、今後日本政府はアメリカ側とよく交渉して下さいまして、來年の一月二十五日からいよいよ中共との貿易が公然と許されるようになるということを新聞で拝見いたしております。どうやらアメリカ側といたしましても今後の日本の経済自立にとつて中共というものは無視することはできないということを考えて下さつたことだろうと思うのであります。これが成功いたしました曉におきましては、遠いインドとかアメリカのほうから高い船賃を外国の船会社に払つて高い原料を輸入いたしまして加工いたしまして、輸出いたしましても誠に日本の生産業者も日本の貿易業者も條件が惡うございますけれども、近くの中国から安いいい原料を輸入して、将來中共の四億五千万の人民にこの製品を買つてもらうことができますならば、日本の経済発展にも誠によいと思うのですが、聞くところによりますと、最近イギリスのチヤーチル内閣の経済政策は輸出に力瘤を入れるそうでありますので、少々時期が遅れますと、中国の貿易市場はイギリスのために独占されやしないかと心配いたします。先んずる者は人を制するということがございますので、これが遅れましたら二十世紀初期のドイツが、世界市場に出て來たときにはすでに有力な所は他の国によつて占領されてしまつているということで、ここに摩擦ができまして第一次世界大戰の原因となつたことがございますので、今のうちに、絶好のチヤンスだと存じますので、この交渉によつて中共との貿易に乘出すべき決意を政府はお持ちであるかどうかについて最後のお尋ねをいたします。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今お話では、中共貿易はアメリカが許すというお話のようでありますが、別に政府にそういう権限は第一ないのみならず、問題は中共がどういうふうに日本との貿易を聞くかということにあると思います。今日は中共政府としては、いわゆる管理貿易をいたしているものでありますから、日本との間に、若し仮に日本が貿易いたしたいと考え、又貿易の利益から申しまして、今お話のような利益がありましようけれども、それで日本が希望しても中共政府講和條約を作らない日本との間に、正式と申しますか、規則立つた貿易が開かれるはずもありませんし、これは今後の両国の間に講和條約ができて、そうして正常な関係に入つた後の問題であると思います。アメリカ側において云々ということは何かお聞き違いではないかと思います。一応お答え申上げます。
  48. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 吉田内閣は成立以來苦難な荊の道ながらも、掲げられましたところの減税並びに統制撤廃という公約にジグザグ・コースを辿りながらも、ときに行きつ戻りつするようでありますが、努力されている点には敬意を表するものでございますが、私ここに総理にお伺いいたしたい点は、このたびの補正予算案に盛られておりますところの、自由党内閣が国民諸君に公約したところの生活水準向上の減税をなしている、公約を履行しているということを大いに宣伝されているわけでございますが、この言葉を撤回されるおつもりはないか、又は修正されるお考えはないかというのが質問の要点でございます。理由を簡單に申上げますが、この四百五億の減税をした一方では、企業の自己資金蓄積に支障がある。而もこれは非常に重要な支障があるという批判を受けながらも、法人税の税率を三五%から七%引上げる。そしてこの減税という声はドツジさんも評されているように、非常に経済力の強い国家でさえ増税をやつているのに、日本が減税をするということは思わしくない。或いは我々の将來最も重要な経済交流地域となるところの東南アジア諸国、そこは多額の賠償を要求しているわけでありますが、そういう所に対しても影響が思わしくない。こういうようにドツジさん自身も言つておりますし、国民の中にもそういう声があるわけでございます。減税々々と言つておりますが、対外的にはそういうマイナスの面がある。国内的にこれを考えたならば政府は生活水準向上の減税になつている。こういうことを言われますけれども、今、法人の場合についても申上げましたように、更には法人の中でも公益法人のごときは三五%からまだ下げて欲しい下げて欲しいと常々陳情しておきながら、その実がまだ上つていない。殊に勤労大衆にとつては、よく言われるところでございますが、八月から主食が上つた、電気料金も上り、十一月からは郵便、電信電話、こういうあらゆる生活に直接繋がつておるところの価格というものがはね上りまして、それと結局減税というものはパーパー或いはそれ以下である。殊に減税に関係ないところの三千万勤労大衆というものは、そういう価格の騰貴しただけ生活水準が低下しておるのだということを、これは何人も認めるところで、はつきりとデータにも出ておるところでございます。そういう角度から吉田内閣が減税に努力しておるという点には敬意を表しますが、それを大いに宣伝されておりますが、その結果は、極めて簡單に今理由を申上げましたように、対外的に考えた場合にもまずいし、又国内的にやや欺瞞性を持つておるように考えますので、ここに将來の対外的なことを考え立場からいつても、あつさりと決して從前公約したところの減税にはならないのだと、こういうことを私は認められたほうがいいのじやないかと、予算審議の結果感ずるのでございますが、総理の御見解は如何でございましようか。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現在の税制といいますか、国民の負担から考えて見て、何にしても国民の負担は苦しいということは、これは事実であると考えます。政府として成るべくその負担を軽減したいということは、これは如何なる政府においてもそう考えるでありましようが、特に現在の日本においては減税の方針に持つてつて負担は成るべく軽くしたい。軽くして戰後の経営なり再建なりに役立ちたい、これは当然な希望であります。これに対して海外においてどういう影響があろうがあるまいが、日本の国情から考えて見て、減税方針には更に一層の努力を払いたいと思うのであります。ただ先ほど申した通り日本財政に対する負担というものは今後ますます殖えても減りはしないような状況なんでありますから、方針はそこにあつても、これの実現は非常にむずかしいと思います。併しながらむずかしいにもかかわらず減税に盡さなければならんという考えについては少しも変つておりませんから、今日においてその方針を改めるということはいたしたくない。機会あるごとにできるだけ減税の方向に持つてつて国民の負担は軽減したい、こう私は考えております。
  50. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は総理お尋ねいたしたい点は、減税の方針を変えて欲しいと申しておるのではございません。現在の国民の税負担能力というものはぎりぎり一ぱいですから、今後増税ということはできない。いよいよ減税をしなくちやならないと私は考えておるわけでございますが、政府の言われるところの減税というものは、私は外国から見たならば、日本国民は減税をして生活水準を上げておると、こういうふうに外国人はとるし、そういうように響きますが、事実国内的に考えた場合には、決してそういう意味の減税になつていない。こういう実情をはつきりと私は国内に発表することも、国外人にそういうように認識されるように努力されることも大切じやないか、そういう意味においていわゆる從來の生活水準を向上させるための減税をやる、吉田内閣のこの公約を履行したのだ、こういう主張をこれは修正されたほうがよろしいのじやございませんか、こういうように私は申上げたのです。と申しますのは、これは來年度の本予算編成もぼつぼつ交渉しつつあるようでございますが、私は大蔵大臣は直接ではございませんが、新聞で承わるところによりますというと、講和関係費よりも内政費のほうを優先的に組みたい、こういうように考えられておるということを発表されておりますが、これは果して実現できるかどうか、是非これは実現させなければならんと思いますが、その場合にその内政費をどの程度に確保するかということが問題になると思います。そういう点と併せ考える場合に、伝えられるところの減税の本旨というものを、はつきりと外国人に認識させるということは私は最も大事なことだと、こう考えるわけです。それであえてお伺いするわけですが、先ほどから或いは賭博行為とか、或いは実践要領とか、いろいろのことが出て來ておりますが、これは生活水準を向上するんではなく、我々が平和国民、文化国民として生きて行くだけに必要な内政費というものを優先的にがつちりと確保するということが、私は最も大事なことと思いますし、それが來年度の予算編成に当つて重要なことでありますし、そういうことが実際に可能かどうかですね、それで可能であるためには、私はこういう減税の問題は決して敗戰国である日本が生活水準を上げるためにこの減税をやつたのではない。実際にその生活水準はこの減税によつては上つていないのでございますから、そういう点は私は明確にする必要があるのではないか、そういう御用意はないかということを総理にお伺いいたしておる次第でございます。重ねて答弁を求めます。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 党若しくは政府お話のように宣伝をいたしておると言いますが、発表いたしておるかどうか知りませんが、併し私として考えておることは、今申したように減税の方針は続けて行きたい。そうして公約云々のほうはとにかくとして、減税は必要である、こういう考えでおることをお答えいたしておきます。
  52. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これと関連いたしますが、次にお伺いいたしたい点は、今度の予算でも、講和條発効後における來年度の予算の支出の膨脹することを予想されて、相当心を配つた予算編成がなされておると思うのでございますが、それは或る程度公共事業費とか、或いは文教費、産業費の方面に圧縮されるという、來年度予想されるところの予算の形態というものが、この補正予算にも現われていると私は考えるのでございます。そこで來年度の予算編成については、現在交渉中のようでございますが、若しも一般予算というものが、圧縮されて、大蔵大臣の言われるところの内政費を最も優先的にというようなことが実現しない場合、たとえそれが実現しても生ぬるい場合には、私は先ずこの社会保障費とか、或いは文教費方面に最も大きくしわ寄せされて來るであろう。で、その場合に私考えるのでございますが、現在でも総理はよく文教と経済自立を我が国再建の二本柱とすると申されて、文教を非常に尊重されておるわけでございますが、御承知のように文教予算というものは非常に不足しておりまして、苦難な道を歩いております。地方財政平衡交付金の増額の問題がよく出て参りますが、これが非常に多数の国民から強く要望されるゆえんのものは、やはり義務教育費と密接不可分の関係にあるからでございます。で、私ここに非常に文教に熱心な総理にお伺いいたしたい点は、総理は六三制を堅持するということを答弁されております。そこで私は六三制堅持の裏打としまして、教育規模の水準の維持と教育財政の確保、これを期する意味から、現在平衡交付金制度から義務教育費を切り離して、最低義務教育費というものを算定して、そうして地方の負担率というものを法律で定め、地方財政の能力に応じて一部を地方公共団体で負担し、その残りを国庫で負担するという、いわゆる仮称を申上げますと義務教育費国庫負担法、こういうものを制定して、そうして教育の水準を維持向上させ、教育財政を確立して、そうして平和国家、文化国家の道を歩きたい、こういうことが多年に亘つて考究されて参つておるわけでございますが、この問題について非常に文教に御熱心なる総理としてはどういう御見解を持つていらつしやるか、承わりたいと思います。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 教育費の国庫負担については、現文部大臣が非常に熱心に研究をしておられます。又その研究の結果、結論についてはまだ出ておりませんが、その結論のつき次第御報告をいたしたいと思います。
  54. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は研究は勿論お願いするわけでございますが、総理としてはそういう構想についてどういうお考えを持つていらつしやるか。非常に総理は文教に御熱心で小学校長、或いは中学校長まで首相官邸に招致されていろいろ意見を交換されたということを承わつておりますので、何らか総理としては、日本が新たに独立した後における、そういう方面の構想を必ず持たれているであろう、こういう考えの下に総理の個人的見解を伺つているわけでございます。重ねて御答弁をお願いいたします。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私としては申すまでもなく、教育に対する十分なる予算が出し得るようにいたしたいと思いますが、これは一般財政関係もありますから、單に希望だけではお答えができないので、現在その方法について研究中であると御承知を願いたい。
  56. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 我が国の、今後生きて行く途というものは、やはり生産増強を図らなければならないということがよく言われております。それには我が国は生産施設はあるし、又人的資源というものもあるわけでございますが、残る問題は適当なる原料というものを安く適時、的確にこれを確保するということが残つた問題と思いますけれども、更に私は本質的には、この生産増強に携わるところの人の量の面もさることながら、質ということが私は非常に重大であろうと、こういうふうに考えておるわけでございますが、そこで総理にお伺いいたしたいのでございます。それは最近の、今度の補正予算の中にもその内容が現われておりますが、例えば通産省における技術庁、こういう方面予算、或いは文部省所管その他各省所管におけるところの研究所方面予算というようなものを考えるというと、私は吉田内閣の政策というものはそこに大きく私は重点が向けられていないように考えるのでございます。最近は、これは各方面もそうでありますが、電気が上り、電話、電報、あらゆるものが上つて参りまするというと、そういう研究機関というものは、研究不如意の状態にあるわけでございますが、こういう方面について総理はどういう御見解と対策というものを持つておられるかということを承わりたいと思います。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 各種の研究機関或いは研究機関予算については、相当政府としては考慮を払つている考えでおります。ただ財政の余裕がつかないために希望するだけの金額を廻すことができないのでありますが、研究の必要なることは政府も十分認めております。
  58. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後にお伺いいたしたい点は、まあ私地方国民立場に立つてお伺いするのでございますが、地方の首長都道府県知事、市町村長、それから決議機関である県会議員、市町村会議員或いは各種団体、そういうかたがたがともかく政府に陳情にわんさわんさと押しかけて來る。そして近頃は公用族という昔なかつた新術語ができたようでございますが、ともかくそういう実情である。地方税というものは逐次増徴されておるが、なかなか自分らの思う政治は行われない。そこで平衡交付金の増額というものを知事会議も要望し、各種決議機関もそれぞれ決議して政府に要望されるが、よく大蔵大臣から答弁がございましたけれども、それは達成されない。更に西九州にあつては最近、最も戰後大きかつたルース台風、ああいう異常災害というものが起つた。これに対しても政府としては、建設大臣国会中にもかかわらず派遣して一応慰問もし、調査もして下さつたが、さて最も肝腎な金というものは、適当なる時に適当なる金額というものは流れて來ない。こうなりますというと、国民の国に対する、政治に対する信頼も薄らぐのではないかと考えるわけであります。そして私は国民に代つてお伺いしたい点は、こういういわゆる公用族というようなものの從來がなくては政治ができないものか。これに対する政策というものを何か吉田内閣として持たないかということと、平衡交付金についてはさつき御発言がありましたが、この平衡交付金或いはルース台風の災害復旧という、こういうものを合わした地方財政の当面の救済策というものに対して総理はどういうお考えを持ち、又対策を持たれておるかということを承わりたい。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 第一の地方からの陳情者が非常に多いということは私も認めます。故に政府としては先ず書面陳情と言いますか、事情は書面にして、書面処理を第一に努めて、そして直接関係者の事情を聞くということが必要な場合には、必要な程度にとめたい、こう私は考えておるのであります。併しながらこれはなかなか実行が伴わないのであつて、こちらがそう申しても、どしどし陳情に出て出張するという現在状態であります。地方、中央を通じて経費の節減、節約という意味合いから互いに金のかからないようにと言いますか、陳情に余りたくさんな人が上京するというような弊風は是非ともとめたいと思います。又一方においては実情に即するために関係大臣その他が、例えば災害があれば災害地に飛んで行つて事情を調べる、見て來る、見聞するということは必要と思うので、その都度罹災関係地方に直接行つてそして事情を視察するようにいたしております。これは、それにしましても地方と中央とが十分協力して行くのではないと実際に適した施策は立ちにくいと思いますから、これは地方の人民諸君においても、互いに協力する気持になつて頂きたいものだと思います。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちよつと委員長災害については答弁ないのですが、平衡交付金と災害は当面緊急な問題……。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ルース台風につきましては、まだ正確な災害の報告が集つておりませんので、取りあえず五十億程度を出すことに本閣議で決定いたしました。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第一にお尋ねしたいのは、講和後における日本のいわゆる独立の範囲の問題ですが、これは先ほど佐多委員も御質問申上げたのですが、この講和の批准前におきましては、講和後においては日本は完全に独立するのだ、又講和後においても国民生活はそんなに水準が下らないし、心配する必要はないという非常な楽観論が行われて來たのです。ところが批准が済んでから今度はそれと反対の傾向が現われて來たように看取されるのであります。批准後においてドツジさんが参りました。又ラスク氏が参りました。或いは又バークレー氏が参る。又いずれダレス氏が参るでありましよう。批准後においてアメリカの高官が続々と日本に参るにつれて、何かだんだんと講和後における日本の独立の範囲が狹くなつて來るような感じも與えられますし、又政府が講和後において国民生活が苦しくなるようなことはないないと楽観的にこれまで放送して参りましたけれども、批准が済んでから、先ほど総理大臣の御答弁では、イギリス以上に日本国民は耐乏しなければならなくなるだろう、恐らく講和関係費も相当出て來るだろうという御意見なんです。この点我々国民はどうも割切れないのです。批准前には、何か日本の独立は完全に達成されるようなふうに宣伝され、批准前においては、国民生活は決して苦しくならないのだという楽観的放送をしておいて、批准後においてそれを反対の傾向が出て來ているように看取されます。特に先ほど佐多委員の質問された点に関連して、これは二十日の朝日新聞でありますが、二ユーヨーク・タイムズのレストン記者が打つて來ておる電報によれば、今度ラスク次官補が日本を訪ねられたのは「目的はリツジウエイ総司令官と会見することである。一般的にいうと、国務省は日本にできる限り広範な独立を與えようとしているが、国防総省は米軍が占領という権限のもとに現在享受している多くの軍事的利点を放棄することに対してそれほど乘気ではなく、その理由として特に日本が朝鮮戰乱遂行上、米軍にとつて重要な基地となつている点、また日米安全保障條約により日本防衛の責任は主として米国に課せられている点とを指摘している。」こういうふうに報告されている。何か批准が済んでから日本の独立の範囲について検討する、これでは少し……若しこれが事実であれば話が違うと思うのです。批准後において日本の独立の範囲をきめるというのでは、国民は條約が結ばれれば日本は完全に独立するものとして恐らく考えているでしよう、政府のこれまでの説明によると。この点我々非常に心細くなつて來たわけです。我々が反対した。これまで反対して來たことが正しかつたのではないか。又正しかつたのであるというふうにだんだんに我々が確信を強めるような状態になつて來ておるんですが、この点講和後における日本の独立の範囲、どういうふうに総理は御解釈なさつているか、最近の傾向について。
  63. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は楽観も悲観もせず、ただ事実を事実として述べただけでありまして、又この頃外国人がたくさん参りますが、これは交通が便利になつたのでありますから、(笑声)ますます参るだろうと思いますから、そのたびごとに御心配なさらんように希望いたします。又今お尋ねになるような講和後に至つて日本の独立の範囲がきまる、これは、そういうことは自然具体的にきまるでありましようが、何も特に調和後においてこれだけのものがきまるというのではなくて、日本が独立するという事実があるので、これからの独立からして自然いろいろな問題が起りましようが、併しこれだけの範囲のものがきまるとかきまらんとか、そういうような話合いはラスク氏とはいたしておりません。ラスク氏は日本側との交渉のために参られたのではないのであります。或いは又総司令部との間にどういう話合いがあつたか知りませんが、我々との交渉のために來られたのではないと御承知を願いたい。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 政府はドツジさんと会見されておるはずであります。池田大蔵大臣、周東安本長官が会見になつておるのであります。ドツジさんは二十九日に帰られるということであります。恐らくもうすでに大体二十七年度予算につきまして、何らかの重大な点については話合いがあり、何らか示されているのではないかと思うのであります。先ほど佐多委員も指摘されましたが、特に重大な問題は防衛分担金の問題だと思うのであります。これは私の推察するところ、これまで想像された以上の防衛分担金、想定された以上の防衛分担金及びその他を含めた講和関係費が示されたのではないか、若しもそうなると、内政費は成るべく本年度と同じくらいに組む組むと大蔵大臣は言われておりましたが、内政費が相当圧迫されるのではないか。内政費が圧迫される、国民生活水準が下つて來る。そこで総理大臣は、国民に最近批准後において耐乏生活を……私は突如のように聞えるのですが、前には総理大臣そう言われなかつたのですが、とにかく防衛分担金をめぐつて、最初政府が大体推定していたよりも相当大きな金額がサゼツシヨンされたのではないか。防衛分担金講和関係費を含めて大体二千億と言われておる、それより更に大きな額がサゼツシヨンされて、大蔵大臣苦労されておるのではないかと思うのです。この点、大体ドツジさんと会われまして何か示されたのではないか。総理大臣如何でございますか、この点は……。
  65. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はドツジ氏からしてそういう莫大なものを話を受けたことはございません。今後ダレス氏でも見えたら、行政協定内容がわかるでありましようが、今日までのところはまだ交渉を開始いたしておりません。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど予算と関連しまして、まあ防衛分担金として、その他講和関係費は、大体これから折衝される場合、国会で否決されたり、反対されたりするようなことがあつて日本国家、日本国として非常に好ましくないことでありますから、大体まあ国会の承認を得られるであろう程度において折衝される、こういう総理大臣の先ほどのお話でございます。これはもう勿論民主国家として当然のことであると思うのでありますけれども、そうしますと、今後大体行政協定、特に予算を伴うような問題については、その内容というようなものですね、経過というものは国会にこれはお示しになり、御報告になるのでございますかどうか。そうしなければ、国会に大体示されなければ、協定を結ばれちやつてから、あとで国会で否決されたということになれば、これは非常に国民……国際的にも好ましくないと思う。從つて今後そういう問題については逐次お示し下さる、お示しになるのか、その点について……。
  67. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは御心配なく、予算関係することであり、或いは国民の権利に関する制限というようなものは、当然法律案若しくは予算案によつて議会に提出されるものでありますから、その都度御協議いたすことは当然のことであります。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今は大体事前に、若しかこれまでの予算折衝みたいに、司令部のほうと政府との間できまつちやつて、それから国会にかけられる、国会反対すると、国会司令部折衝するというような経過を辿つて來ておる。講和後においてはそういうことはないでありましようが、事前に国会に大体そういうものをお示しになるかということです、予算として……。
  69. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 事前とか事後という区別は甚だむつかしい話でありますが、併し政府として或いは国会が承認のできないようなものを承諾して参るはずもなし、又仮に承諾して來たところが実行が伴わないものでありますから、実行の伴わないようなことを約束いたすことはないと、御安心願いたい。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次にお伺いしたいのでございますが、それはいわゆる防衛力漸増計画と言われるものについてなんでございますが、新聞の報ずるところによりますと、朝日新聞、二十六日の新聞でありますが、総理大臣は二十二日に、外相官邸に池田大蔵大臣、岡崎官房長官を招いて、軍事専門家も交えて重要会談を行なつたが、この会談で首相が想を練つて來た防衛力漸増計画が公式に議題になり、その予算措置に関する打合せがなされた模様である。こういう観測記事が出ておる。そこで総理大臣の御構想になつておられる防衛力漸増計画というものはどういうものでありますか、この際伺つておきたいと思います。
  71. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新聞の報道については、例によつて責任は持ちませんが、お話のような漸増計画ですか、というようなものを立ててやつておることはございません。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは防衛力の問題について、総理大臣が何ら考えられておらないというのですか、何も……。新聞のことについては責任がないとおつしやいますけれども、我々は新聞を通じて大体のそういう問題の所在を一応知るよりほかないのでございますが、漸増計画というかどうかは知りませんが、いわゆる防衛力についてお考えになつていることがございましたら、お示し願いたい。この新聞記事にとらわれることなく御答弁願いたいと思います。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は軍事専門家でもないものでありますから、私は漸増計画を持つはずもなし、併しながらいずれダレス氏も参られましたら、向うの計画もありましよう。その計画は我々は共に研究することになるであろうと思います。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣にちよつとお伺いしたいのですが、日本の防衛力について予算的な措置について何か研究され、或いは構想されておる点がございましようか。
  75. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 予算問題につきましては、防衛力のみならば、全般について研究をいたしております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この防衛力について特に伺つておるわけであります。それから二十二日に外相官邸でそういう研究会か何か知りませんが、そういう研究をされたことがあるのですか。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 防衛力という言葉に疑問がございますが、警察予備隊等につきましては御審議を願つておりますし、來年度の予算にも影響のあることでありますから、研究はいたしております。二十二日の外相官邸の研究会というお話でございますが、これは別のことを話したのであります。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではこの点に政府は触れられることを避けられておるようでありますが、我々は新聞で見ますと、相当将來の日本の再軍備に対する前提として、今の警察予備隊みたいな訓練というものを、将來再軍備を予想して相当強化して來るように報ぜられておる。若しこういう新聞などがこれが間違つておるなら、我々は相当考え直さなければならんのですけれども、御答弁がありませんから、時間がありませんので、最後に二つの点をお伺いしたいのです。  その一つは、朝鮮の今の休戰会談でありますが、大体このクリスマス頃までにこれが成立するであろうと言われております。これは世界も注視しておりますし、我々も日本の安全の問題と又経済的な関係から非常に注目しているわけですが、総理大臣はどういうふうにこの成行きを観測しておられるか。  それから第二は、今国連の総会の政治委員会で軍縮の案が出ております。あれは将來若しかあれが成立すれば、非加盟国も招請されるようなことになるように言われておりますが、この軍縮の案ですね、この問題について。朝鮮の休戰の問題と、国連総会政治委員会の軍縮の問題について総理の御見解を承わりたいのであります。
  79. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 朝鮮の休戰の問題については、私も新聞以外に知らないのであります。新聞以外に知るということはいろいろな誤解も生ずるであろうと思いますからして、特に正確なる情報を欲しいというようなことは申したことはないのでありますが、併し大体の空気から見ると、どうにかして互いにまとめたいという考えではないかというふうに感ぜられます。感ぜられるのであります。又そうありたいものだと思います。  それから軍縮の問題については、これは御承知の通り決して容易な話ではないと思います。何かに書いてありましたが、鷲は自分の爪は取りたくないと言い、獅子は自分の爪を取りたくない、ひとの爪ははがしたい、こういう関係で、いい譬えだと思いますが、そこで軍縮の問題は始終もう長年しばしば国際会議が開かれても容易に結論に到着いたしませんから、この問題が仮に多少形を成して進むとしましても、それこそ漸進計画であろうと思います。
  80. 岩間正男

    ○岩間正男君 私も二、三点質問いたしたいと思うのであります。  質問の第一点は、やはりなんと言いましても、先ほども佐多、木村両委員から質問がありました日本の今後の防衛態勢、並びにこれと関連した再軍備の問題、こういうことが今話題に上りつつあると思うのでありますから、これが先ほどからしばしば繰返されましたように、国民の今後の生活水準の問題と深い関係を持つのでありますので、この点についてお伺いしたいと思うのであります。最近の情勢は、先ほど述べられましたように、ラスク氏がやつて來る、更にダレス氏が來月十日前後にやつて來る、そういうふうな形の中で再軍備はどうも必至の情勢じやないか、こういうふうに見られている観測が非常に行われておるのでありますが、総理はこれに対してどういうふうに見ておられるか。又この問題について今まで関係筋のほうから、この日本の再軍備という新たな課題について、もう検討する段階である、日本政府は急速にこれを検討すべきであるというような要請をされた事実はないかどうか。先ほど問題になりましたところの防衛力漸進計画なるもの、そういうものも何かこれと関連があるやに考えられる節があるのでありますから、この点を先ず総理に伺いたいと思うのであります。
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 再軍備についてこうしろああしろという指示を受けたことは全然ありません。又現在私は再軍備を考えておりません。仮に再軍備が必至の勢いであるとしても、日本は今日再軍備をすべき時ではないと考えますからして、私は考えておりません。
  82. 岩間正男

    ○岩間正男君 仮に再軍備が必至な情勢となつても、これは日本はできないから飽くまで避けるという総理の御答弁でございましたが、この点は私も確認したいと思うのであります。これは第十国会以來しばしば繰返されたところであり、又この前の第十一国会におきましては、このことにつきまして、私自身も本会議総理に再質問までいたしましてこの点を所見を質した。これについては絶対今日本の経済情勢から考えてできない、やらない、こういうことを言明されたのであります。ここに速記録もございますが、今我々は改めてこういう過去の総理の言責なるものについても考えておるのでありますが、こういう点からこういう事態が仮に起つて、どうしてもそれが避けられないという場合に、やらない、やりたくないだけでは通らない。こういう段階に若し追い詰められたとしましたならば、これについて総理は一体これをどのように処置されるのでありますか、この決意を伺つておかないと安心がならないようないろいろの海外の空気も我々は関知しておるのでありまして、この点ここでくどいという話がありますけれども、くどいようでありますけれども、これは日本国民にとつては実に由々しい問題でございますので、與党側諸君の反撃にもかかわらずあえてお聞きしたいと思います。(笑声)
  83. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仮定の問題にはお答えいたしませんが、再軍備はいたしませんことだけは確かにはつきり申します。
  84. 岩間正男

    ○岩間正男君 その場合には責任をはつきりおとりになりますか。私は責任というのは、少くとも一内閣の運命を賭けて、そうしてはつきりそういう場合に今までの公約を守られるのが政治の常道である、こういうふうに我々は了解するのでありますが、そういうものを含めて考えてようございますか。
  85. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仮定の問題に対してはお答えいたしません。
  86. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理はずるいと思うのです。仮定の問題には答えられないとしよつちゆう言うのです。それならあらゆる場合に仮定の問題については我我が論議してはいかんことになる。然るに行政協定はなんです。なんですか。行政協定というものはこれは仮定の問題だ。全部白紙委任状で、これからきめるのだ、まだ構想もできていない、こういう段階において国会審議の中で而も重大な民族の運命を決定するようなこういう重大問題をかけておいて、そうして我々国会議員を聾桟敷に追い込むような白紙委任状をとる。こういうときにはやすやすと仮定のことを総理は我々に押し付けたじやありませんか。そうしておいて今仮定のことには答えられないということは、私は前後矛盾も甚だしいと思うのでありますが、この点なかなかこれは国民も了承いたしかねる点もあると思いますから、重ねてもう一度、仮定のことかは知りませんけれども、少くとも総理のこれは肚にある問題、決意の問題、その決意の問題についてはきつと賢明なる総理はこれに対してその所懐をお洩し頂けると私は確信しますので、もう一度くどいようではございますが、(笑声)お聞きいたしたい。
  87. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) くどいようでありますが、前言を繰返します。(笑声)
  88. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常にそういう答弁については国民は満足しないと思うのですよ。これは少し御反省なすつたほうがいいと思う。行政協定の事実がありますからね。私はこういうことがなければくどくやりたいとは思わない。併し行政協定はわからないわからないと何百遍も繰返して両院を抜けて來たのじやありませんか。而もこれは仮定のことに属する。ダレス氏が來たら行政協定内容について検討すると言いますけれども、そういうような事態を我々に押し付けておいて、自分の内閣の責任問題については何らこれを答弁することはできない、それほど私は元気のない度胸のない総理だとは思わないのでありますが、(笑声)まあ併し総理はそれは今の段階では答えられない、こういうことで非常に残念でありますが、我我はまあ少くとも、少くともです、一国の総理がしばしば議政壇上を通じまして何十回となくこれを繰返し、而も又今日この委員会におきましてその言を確認されておるのでありますから、我々としましては、総理の答えがあるなしにかかわらずこの事実は確認し、国民と共にこの言責を信じたい、こういうふうに思うのであります。  そこで再軍備の問題でありますが、再軍備をやるかやらないかというような問題につきまして、実は先ほど木村君から質問ありました防衛力について、再検討をする、こういうことで我我も朝日新聞のこういう記事を見たのであります。併し、こういうことは先ほどのお答えによつては、こういうことをやつていない、こういう答えなのでありますが、これは池田蔵相の又それに対する答弁を見ますというと、防衛力についてはいつでもこれは検討しておる、こういうことなんでありますが、問題は総理もたびたび繰り返されておるところの経済的な問題、それならば來年度の警察予備隊費はどれぐらいにする見通しを持つておられますか、この問題はこれは防衛分担金というようなやかましい問題とも関連して、同時的にこれは大きな問題に今なりつつある、日本の少くも予算編成上の最大の問題になりつつあることはこれは誰でも知つている問題、從いまして、その警察予備隊の費用をどういうふうにこれは來年は考えておるのでありますか、この点伺いたい。これは総理から先ず伺いましよう。それから又蔵相に答えてもらいましよう、あつたら……。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先般來申上げておりますように、只今検討中でございます。
  90. 岩間正男

    ○岩間正男君 額についてはどうですか、來年は六百五十億というような要求が予備隊から出ておると思うのですが、これはどうですか。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今六百億の要求はございまするが、全般的に検討を加えておるので、数字は申上げられません。
  92. 岩間正男

    ○岩間正男君 本年度より殖えますか、殖えませんか、本年度の三百十億よりどうですか。
  93. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 殖えると考えております。
  94. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今殖えるというようなお答えでございましたが、こういうことがやはり私は問題だと思う。再軍備という看板はこれは吉田内閣の一応公約ということになつておりますから、これは憲法なんかの関連もありまして、いろいろ問題があると思うのですが、実質的にどうなるかという問題、つまり総理が再軍備に反対されている最大の理由として挙げられているものは、これは日本の経済が許さないからだ、こういうことなんです。ところが、今問題になりましたところの警察予備隊、これは今日軍隊であるかどうかということは論議する余地のないほど明瞭なことであります。ただこれは知らぬは政府ばかりなりという恰好だと思うのでありますが、その議論は一応置くとしまして、今申しました警察予備隊であろうが何であろうが、名称はなんでも、そういうような我々の生活にすぐ響いて來るところの経済の負担が増大する、こういう点が非常に重要だと思うのでありますが、こういうことについてはこれは避けられない態勢になつておるのであります。この点非常に重要なんで、内容的に再軍備だのどうだのというような名前の問題でなくて、実質的に経済の面からこれはそうするということは避けられない、そういう態勢になつておるのでありますか、その点伺いたい。
  95. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 治安確保の費用の嵩むことはやむを得ません。
  96. 岩間正男

    ○岩間正男君 治安確保というような名前で言われたのでありますが、併し、すでにこの装備が非常に強化され、そうしてロケツト砲、迫撃砲を持ち、更に警察予備隊の最近の訓練というものは実に部隊訓練、戰闘的な訓練にこれはなつておる。こういうことで、これは治安確保というような形だけでこれは行けるものであるかどうか、無論これは、この前の一月でありますか、ダレス氏との話合いによつて日本の警察予備隊はまあ何か内部の一つの侵略に対して責任を持つ、それからアメリカの駐留軍は外部の侵略に対して責任を持つ、こういうことを話合いされておつたというようなことが伝わつてつたのでありまするがこういう関連から考えまして、とにもかくにもこういうような一つの防衛力という名前で以て実質的には軍備が強化されておる。これによつて国民負担が非常に多くなつておる。そうしてそれが国民生活に脅威を與えておる。こういう事態に対しまして吉田総理はどういうような考えを持たれるのでありますか。これは再軍備論というような形式論よりも、その内容、いわゆる経済の非常な圧迫が出て來るという問題に対してどのようにこれは処置されようと考えるのでありますか。この点は、現在これは向うさんとの折衝なんかとの関係が深く関連しておると思うので、軽々に見逃せないと思うのでありますので、総理のこれに対する心構えをお聞きしたい。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 財政の許す限りにおいて治安の確保を図ります。
  98. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは数字的に挙げておる暇はないのでありますけれども、恐らく政府は來年度予算編成の大体の大枠として、これは講和関係費というものを二千億というように数えておると思う。併し外債、それから賠償その他の経費を掲げて七百億、更にまあ昨日ですか、大蔵委員会池田蔵相の大体の答弁を聞きますというと、防衛分担金は千億、千億にはなるまいというが千億、そこで警察予備隊に六百五十億、そういうことになりますと、二千億の枠というものは当然これは突破されて來る。これは非常に大きな問題だと思うのであります。そうしますと、八千五百億の枠を突破するか、そうして予算規模を変えるか、或いはそうでないとすれば、当然これは国内の生活安定費のほうに食い込むか、或いは増税を断行するか、こういうことをやらざるを得ない当然のところに、追い込まれると思うのでありますが、これに対して吉田総理はどういう決意を持つてこの国民生活の安定のために国内のそういう費用を優先的にするという精神をここで堅持されるのでありますか。これは総理に答えて頂きたい。これは蔵相の何だけではまずい。これは総理の答弁を求める。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣をして代つて答弁をしてもらいます。
  100. 岩間正男

    ○岩間正男君 情けないな。
  101. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は講和関係費が二千億円ということを言つたことはございません。來年度の予算が八千五百億円と言つたこともございません。あなたがたの想像だけでございます。而うして昨日防衛分担金がどのくらいになるかといつたら、千億円になるようなことはないだろう。こういう希望を持つておる、こう言つただけであります。今講和関係経費、或いは内政費、その他につきましては検討を加えておりまして、結論は出ていないのであります。
  102. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は言つた覚えがあるとかないとかいうような小さい言責問題なんかをこの際問題にしたくない。日本民族の運命を先に考えたい。そういう意味におきましてですよ、今追い込まれておる情勢は、あなたはそういうふうに答えられますけれども、どうなつておるかということは日本国民は全部知つております。なお又北大西洋防衛、こういう諸国においては少くとも国民所得の一〇%は軍備に割かなければならない、こういうような要請が來ておるのであります。そういう点から考えますと、日本の将來においては、これは四兆五千億というような国民所得を考えますと、こういうものが同じような形で押し付けられて來る可能性が出て來る。そうしますと四千五百億。千億などとは考えられんのでありまして、二千億というようなことでも済まない段階が当然來る。これは明らかなんです。二カ月もたてばわかる。そういう事態になつておるときに、一時逃れのそういう答弁では満足できない。こういう点については十分に政府は今後肚をきめて、そうして單にこれは私の今まで申上げましたように再軍備の問題ではない、内容が再軍備であろうが、警察予備隊の増強であろうが、実質的に国民の生活を圧迫して、そうして日本を戰争に駆り立てる方向に持つて行く、こういう問題についてはこれはしつかりした決意をして進まれる必要がある。こういう問題なんであります。  それと関連して、もう一つお伺いしたいのでありますが、朝鮮休戰の問題であります。朝鮮事変はまさにこれは休戰の段階に到達しておるようであります。これは非常に望ましい情勢が今できつつあるのでありますが、当然これとの関係におきまして、來年度の予算編成というものは私は影響して來るだろうと思う。日本の国防というものを大体どういう形においてこれはなされたかと言いますと、朝鮮事変で、外部からの侵略があるから、そこで日本は防衛しなければならないというので、国連協力というような政策を掲げてこれは進んで行つた。すべてがそこにあつたのであります。從いまして、若しもこのような対立がここで緩和されて、こういう形になりますというと、これは來年度の予算編成の面におきましても、私は非常にこういうふうな点に影響を持つて來ると思うのでありますが、政府はこういうような見通しにつきまして、どういうふうに考えておられるのでありますか。総理大臣は、尤も先ほどこれは新聞以外には私は知らない、新聞に責任を持たないということを絶えず言つておられる総理が、今度は新聞以外は知らないと言つて新聞を頼りにただ一本の杖にされておる。随分妙な話でありますが、まあそれは別として、そういう形で答えられて、そうして早くまとまるだろうというような感じを持つておる、希望する、こういうことを述べられておられるのでありますが、こういう情勢が今後の日本防衛分担金、こういうような態勢に非常に大きく影響するであろうし、又させなければならない。こういうふうに思うのでありますが、総理はこれをどうお考えになりますか。この点一応伺つておきます。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 休戰ができたら誠に結構なことと思います。
  104. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君もう時間がありませんから最後に簡單に。
  105. 岩間正男

    ○岩間正男君 できたら結構なことというのは、どうも遠い対岸の火災視しておるように思うのですが、そういう問題では私はないと思うのですが、これほど日本関係の深い問題はないのでありまして、この問題についてむしろ総理はみずから進んで、こういうような無論今の置かれておる情勢ではなかなかできない、こういうことをお答えになるでありましようけれども、併しながら少くともこの朝鮮の事変について一番関係を持つ、そうしてこれのいろいろな諸影響を持つ日本としましては、これについて努力をする。殊に批准も間近であつて、そうして独立国というような情勢も出て來るのでありますから、日本の今後の発言というものは非常に大きなウエイトを持つ、こういうふうに考えるのであります。從いまして現在これに対して総理は全然関知せられておられないのであるか。却つてどうもこれは推量するわけではありませんが、これによつていろいろな特需がなくなつて非常に困るなどとお考えになるとしたら大変な話でありまして、すでに日本の経済はこれで非常な打撃をまあ受けておる。殊に東南アジア開発というような問題は今日においては幻想に近い。こういう段階におきましてはむしろこの休戰のために十全の努力をする、そうしてそういうようなできるだけの希望を伝え又努力をもして、こういうような休戰を一日も早くそこに導く。そうして最も近い所の隣国との交通を回復する、国交を回復する、こういうようなことが非常に重要である。中共貿易の問題なんかも先ほどからも又話題になつたのでありますけれども、当然こういうような情勢を今やもう本当に受けて立たなければ何ともならない所にこれは追込まれておると思うのでありますが、これに対するところの熱意ある総理の答弁を私は期待したいのであります。
  106. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 講和條約が発効して独立を回復して外交上の自由を得ましたならば、大いに熱意ある善隣外交をいたす考えであります。
  107. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これを以ちまして総理に対する総括質問を終りたいと思います。あと自由党のかたがお一人残つておりましたが、棄権せられましたのでこれで終りたいと思います。暫時休憩いたします。午後からの再開の時間はいずれあとからお知らせいたします。ではこれにて休憩いたします。    午後零時三十五分休憩    〔休憩後開会に至らず〕