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1951-11-21 第12回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十一日(水曜 日)    午後一時三十九分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            小林 政夫君            藤野 繁雄君            佐多 忠隆君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            九鬼紋十郎君            一松 政二君            深水 六郎君            高良 とみ君            西郷吉之助君            前田  穰君            荒木正三郎君            内村 清次君            小林 孝平君            小酒井義男君            松浦 清一君            山下 義信君            山田 節男君            岩木 哲夫君            西田 隆男君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   委員外議員    人事委員長   吉田 法晴君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君    農 林 大 臣 根本龍太郎君   政府委員    大蔵省主計局長 河野 一之君    農林政務次官  島村 軍次君    農林大臣官房長 鹽見友之助君    農林大臣官房会    計課長     増田  盛君    食糧庁長官   安孫子藤吉君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   説明員    引揚援護庁復員    局       田島 俊康君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出・衆議院送  付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第二号)(内閣提出・衆議院送  付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣提出・衆議院  送付) ○人事委員長の申入れに関する件   ―――――――――――――
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開会いたします。  前日に引続きまして補正予算についての質疑を続行いたします。大蔵大臣に対する、代表質問がまだ残つておりますので、それから始めます。堀木鎌三君。
  3. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大蔵大臣はこの間私の質問中途中御用があつてお帰りになりましたので、継続してお伺いしたいと思いますが、大蔵大臣は今後の物価統制して参る、物価騰貴を防ぐ主要なる項目として、大蔵大臣として財政収支均衡を図り、為替管理をし、金融適正化を図ることが、この三つが必要だと、こうおつしやつたわけです。先ずこれらについてただこの三つだけを並べるのでは内容がないのでありまするから、財政収支均衡為替管理金融適正化をこれから來年度予算にかけて実際的にどうなさるおつもりかという具体的な方策をお伺いしたいと思います。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物価対策とし或いはインフレーシヨン防止考え方といたしまして、先ほどお話になりましたこの三つ原則は、物の統制の問題と加えましてまあ四大原則として言われておるのでありまするが、私は他の機会で申上げましたように、物の直接統制は極力避けて行きたい、こういう考えで今の三点を言つておるのであります。  第一の均衡財政ということと緊縮財政と、二つの意味を持つた財政方針であります。今回の補正予算で見ましても、物価上つたからといつてすぐ予算補正することなしに、できるだけ政府事業縮小しようと、こういう考えで今後も進んで参ります。  それから為替管理の問題にいたしましても、外国市場その他を十分検討いたしまして、有効にドル、ポンドを使い、又信用状発行その他貿手の処置に対しましても適正な方策をとつて行こう。  それから三番目の金融適正化でございまするが、これはここでも問題になりましたように、不要不急への融資を極力抑える、こういうふうな考えで進んで行きたいと思つております。
  5. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 おつしやることはわかつたんですが、このおつしやることをもう少し数字に明るい大蔵大臣ですから、数字をお挙げになつて、どの程度になさるつもりか、それから具体的な方策をもう少し細かいことを実体的に、観念的でなしに、補正予算及び今後の財政としてどういうお考えをお持ちになるかということを伺いたいと思います。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 数字的に御説明するだけのまだ数字を持つておりませんが、個々の問題につきまして、そういう考え方についてお尋ねになればお答えいたしたいと思います。
  7. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 先ず第一にお聞きいたしたいことは、來年度にかけての話しでございますが、今後物価はどの程度に抑制して参るか、つまり二十六年度の予算におきましては、私どもとしては二十六年度当初予算がかかりましたときに、政府予算の上においてはこの物価騰貴及び朝鮮動乱その他の影響というものの織込み方が足りない、どうしてもこれは補正を要するもんだということを申上げたわけであります。その点で今回の補正予算においても不十分ながら、一部は物価騰貴にかかわらず事業を、財政規模縮小して行く、政府事業縮小で行く、成るほど公共事業費には僅か三十億しか殖えておりませんが、併し如何に大蔵大臣がおやりになつても、大蔵大臣として緊縮財政をおやりになつても、やはり人件費の増、それは人事院の勧告に応ずる程度までも行きませんが、人件費の増ということはお認めにならなければならんはずですというふうに考えますので、やはり物価騰貴をどの程度にお考えになるかということは一つ前提となると思うのでありますが、その点についてどういうふうにお考えでありますか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 物価をどの程度にしたいということは、これは政治家として考えにやなりませんが、こういう問題は日本の国内だけの問題できまることではないので、先般も申しておりますように外国のそれにどうしても或る程度追從しなければならんという状況でありますので、外国物価が上るほど今後は上らないように、先ほど申上げたような施策を時々やつて行きたいと考えております。
  9. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 物価騰貴の増を上らないようにして参ろうというふうなことがお考えの基底でありますとすると、この物価を上らないようにするには、先ほどおつしやつた財政収支為替管理金融適正化だけでは私はとめられないのじやなかろうか。無論物価をどの程度に抑えるかということは、国際価格との関係において、日本のような経済の底の浅い、そうして国際貿易で以て食つて行かなければならないという必然的環境に追い込まれておりますれば、これはもうおつしやる通り考えなくちやならん。併し大蔵大臣もたびたび言われますように、最近の物価の上昇は国際価格を遙かに上廻つておる。そうして各国の入札においても非常に価格が高いために輸出が伸び悩んでいる。そういうふうな状況はお認めにならなければならんと思うのでありますが、その点について我々として考えられますことは、今後日本の国の再生産に廻らないところのものが出て参ります。これはもう私が挙げるまでもなしに、役務賠償でありましようともやはり賠償問題は出て参る。それからすでに今国会の三百億円に及びますところの外国人の資産の補償もある。それから外債の支払もある。そうして又講和関係において、最近伝うるところによれば警察予備隊経費でありますとか、その他防衛分担金でありますとか、やはり物価騰貴せしめるところの原因がある。こういうふうに考えるのでありますが、そういうふうな問題について、基本的に大体物価を上げないというふうなお考えならば、それについても政府全体が行かなければ、大蔵大臣だけ如何に一生懸命におなりになつて財政面からの緊縮を大幅になすつても、これは防ぎ切れないということだけはお認めにならなければならん、こう思うのでありますが、如何でありましようか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その通り私の力を以てしては、私の力だけではとてもそれは行かない、政府全体とし又国民全体がそういう気持になつて行かなければ非常にむずかしい問題だと思います。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それでは先ず大蔵大臣としてはおやりになる三つの問題のほかに今後どういう方面に……、無論国民の問題も私は是認するにやぶさかでないのですが、全体として今までやつて來られた施策にもつと……、今までの施策だけでは十分でないということだけはお認めになつたのですが、今後それについてどういうことを希望し、おやりになろう、殊に大体大蔵大臣中心になつて考え方計画としてはいろいろなものがありましようが、現実的には大蔵大臣がやはり中心になつて財政を預つておられる。そこを中心として財政金融貿易全体に考えを及ぼして行かなければならないと思うのですが、その点についての具体的なお考え方をお示しを願いたい。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどの御質問に又帰つて來ましたが、大体財政面におきましてはそうして今までやつて來たのであります。併し為替関係におきましては占領治下の問題もあり、外貨予算というものがかなりうまく行つていない。こういう点が日本物価騰貴に拍車をかけておることも事実でございます。外貨予算の使い方につきまして相当注意を払つて参る。それから金融面におきましてもいろいろ指導して参りましたが、今までの指導では駄目でございますので、先ほど申上げました不要不急事業には金融を成るべくつけないと同時に、殊に積極的に重点産業以外のものについては設備資金はもう出さない。こういうふうな原則を立てまして、外為資金とかそういうものの抑制を図るこういうことを考えております。なお又物資面におきましても我々は自由に手放しというあれではないのであります。最近も閣議で一定以上の建物につきましては成るべくやめてもらうようないわゆる勧告する、こういう申合せをいたしまして、今強いて要らないビルデイングとか或いは娯楽施設のほうはできるだけ矯めて行こう、こういうふうなことを考えております。
  13. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 非常に廻りくどい道を歩きましたが、これは当委員会におきましても小林委員からもお触れになつた問題もございますが、私は大蔵大臣直接のお考えのほかに、今実はこの三つ項目を挙げられまして、今、物の統制面を加えているというお話があつたのでありまするが、物の統制事業計画化、全体、国家としての事業や物についての計画化というものがどうしても加わつて参らないと、大蔵大臣のお扱いになる面だけではやつてつてできないだろうということはよくわかるのでありますが、そういう面について統制化統制と申しますか、計画化……この間の安本長官の御計画は全く前提が覆つて参りまして、自立経済審議会計画というものは前提が覆つて参つた、そうして実質的に違つて來たことを非常に私としては明らかにしたつもりであります。又その点は安本長官もお認めになると、こう考えるのでありますが、そういう点について、從來方策だけではやつて参ることができない状態なんです。殊に平和回復後の状態ではできない状態である。こういう点が明らかになつて参つたと思いますが、大蔵大臣もその点は率直にお認になると思う。そうすると今までのお考えだけで金融については自主的な統制を主にして、そうして何と申しますか、全体の総合的な計画が出て來なければならない。自主的統制というものもいいのですが、自主的統制だけでは間に合い切れなくなつて來ておるのではないか。それで大蔵大臣としては金融面だけでもやはり一つ資金の質的な計画化ということをお考えにならなければならないし、それに伴つての監督的な権限も殖やして行こう。こうなさつておる傾向は明らかなんですが、そうなりますと金の面だけでそれをお考えになつても、到底できないことではなかろうかと私は考えるのですが、どうお考えになりますか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私の考えでは先ほど申しました三つ方針を強行して行けば相当あなたの言われる計画化と申しまするか、私の申しまする能率化と申しまするか、そういうことを遂げ得ると考えておるのであります。從いまして財政面での直接統制は極力避ける、間接的にやつて行く、こういう考えで進んで行く。これで私はできると思うのであります。
  15. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 第一点は金融面からの計画化を主にする。その金融面計画化だけでは実情は足りないから銀行法も改正する、そうして総合的な計画が立つように質的な統制、量的な統制というものが行われて行くようになさろうとするということが考えられておるのであります。その点でもう少し具体的に、今のインフレ信用インフレだというようなことが言われております。即ち大蔵大臣としては財政収支均衡を極力お図りになるそうして一般の歳入の中で政府資金としてリザーブしてそれを重点的に産業資金のほうに廻そう。確かに私が本会議で申上げたように、日本金融というものは大蔵大臣日本銀行の両建になつて來ておる。そうして国家的な資金の重点的なものは財政資金で主にやつて行こう、そうして折角税金から吸い上げられましてもに地銀の貸出がどんどん殖えて参る。御承知のように朝鮮動乱以來生産は五割少し上を廻つて参りましたが、日銀の貸出乙種ユーザンスを混ぜれば三倍になつて來る。こういうような点ができて参るのでありますが、この点について今おつしやつたような感覚だけでは、而も來年度は今までよりもつと遙かに強いインフレ的な要因が出て参る。そういうようなことで、今までおつしやつたようなことでは到底できて行かないのではないか。ですからやはり内容的に実際統制して行くという点が、先ほど申上げましたような方向に相当強く出て参らなければできない問題だと、こう思うのでありますが、如何でございましよう。この間小林君に対するお話程度ではまだ本当に具体的にどこまで行こうとしておられるのかはつきりいたしませんので、重ねてお聞きする次第であります。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本銀行貸出増加お話通りユーザンスの面から來ておるのであります。ユーザンス問題が起りまするゆえんのものは、外国貿易日本政府の手に帰つて参りまして、そうして早急に物資を入れようとして昨年の暮から今年の春にかけて非常な物資の入れかたがあつたために、そのあとくされと申しまするか、その尻が今來ておるのであります。こういうことから考えまして、私は為替管理をもつと適正に能率化したい、こういう点をこの前もお答えしたと思うのであります。それからユーザンスの問題以外におきましても、日本銀行貸出は相当殖えております。この貸出の殖える原因はいろいろございましようが、私はいわゆるオーバーローンとして言われておる、各会社が自分の利益の留保或いは自己資金の調達ということでなしに、銀行貸出に頼るということが強かつた。で、銀行はこれに応じ得るだけの貯蓄増加があればよいのでありますが、それだけの貯蓄増加がないために日本銀行へ行く。而も日本銀行行つた場合には安い金利払つて高く貸付けることができる。こういうところに制度欠陷がある。日本銀行貸出増加が、今の状態インフレであるかないかは別問題といたしまして、オーバーローンとして、健全なやり方でないと言われておる。その原因は結局為替管理の方法がうまく行つていなかつたということと、金利或いは金融制度問題等につきまして是正すべき点がある。こういうことから考えまして為替管理適正化することを申しておるのであります。片一方ではやはり貯蓄増加ということ、資本の蓄積ということが必要でございますので、これに対しましてまだ結論は得ておりませんが、郵便貯金利子の引上げとか或いは貯蓄債券発行とか、いろいろな手で政府民間資金の吸収を図るようにいたしますと同時に、銀行におきましてもできるだけたくさんの預金が集め得られるような方途を講じて行きたいと考えておるのであります。
  17. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私のお聞きしているのは、率直に申しますと、今おつしやつた程度では今後やつて行けなくなるんじやないか。どうしても基本的には総合の計画ができて、それに伴つて事業物資の面がその計画に從つて流れる。そうしてそれを金融的にその計画從つた裏付けがなくては、金というものは一辺出てしまいますと、目的を持つていても、幾ら紐付きであつたつて、どつちにだつて行き得る可能性を持つているわけであります。そういう点でどうしたつて今おつしやつた程度じやできて行かないじやないかと、だからそれについて大蔵大臣としては何か具体的な構想がなくてはならない。そういうふうなことを実はお聞きしているのですが、一体今までおつしやつているようなことは、大体從來程度のことなんだが、來年度もそれで行き得るとお考えになりましようか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今申上げたようなことを來年度やるつもりであります。そういう考えで進みたいと思います。
  19. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 では方向を変えまして、もう一つ違つた観点からお聞きいたしますが、來年度の大体国民所得はどれくらいの推定の下にお考えになつておりましようか。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今安本において検討しておるようであります。今日よりも私は殖えるだろうということを期待しております。
  21. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 念のために注意しておきますが、あなたの持ち時間は十分です。
  22. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 來年、二十六年度よりやや殖えるだろうとお考えなのは、ほかの大臣ならいいのですが、数字に明るい大蔵大臣として、而ももう二十七年度予算に直接おかかりになろうとしている大蔵大臣ですから、どの程度にお考えになるか、一応の見通しをお聞きしたいと思います。
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民所得のことは所管は私でございませんが、最も関心を持つておるのは私でございます。從いましていろんなことから一応の計算はしておりまするが、今大蔵大臣として來年度国民所得幾ら幾らになるということを申上げるのは少し早いのじやないかと思います。
  24. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私はそれがなくちやあなたのところの來年度予算規模を大体どれくらいにするというお話もできて來ないわけなんで、無論正確な御計算は、これははつきりきまつてから出るでしようが、大体この程度だと、こういうような考え方でなければ、国民所得財政規模の問題をお言いになる大蔵大臣としてはこれは困るわけなんで、どうしても大体の見当はどれくらいかということのお見通しを伺いたいと、こう思うのであります。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 見通しは今年よりも殖えるだろう、こう申上げてあるのであります。それじや何割殖えるか、なんぼ殖えるかという問題につきましては、生産増強はどのくらい行われておるか、雇用率はどうなるだろうか、物価がどうなるだろうか、こういういろいろなフアクターを持つておりますので、今ここで申上げますと、又次の国会でお前はこう言つたのに違うじやないかというふうに言われるので、私は申上げんほうが議論が少くなるんじやないかと思つて申上げないのであります。
  26. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は大体の推計お話なつたときに、その言質を取つて、それで以てあなたを責めたようなことは一遍もない。だからそれは御安心なすつていいと思う。だからそれは見込なんですから、生産状況で事実今後の情勢も変つて参る。現にあなたが二十六年度の予算をお作りになつたときに、我々は違うだろうと言つたわけであります。ところが事実違つて來ることは明らかであります。それでお変えになつたことも事実であります。そうするとお変えになつたその事自体については私は何も言つていない。ただお変えになつ予算編成の仕方について文句を言つておるわけです。ですから私は絶対そういうことを言いませんからお見込お話になつていい。  ではそれと第二段に申上げますのは、大体大蔵大臣來年度予算八千億乃至八千五百億というふうなまあお考えである、そうして私の考え方から言えば、だから來年度に尾を引くようなものは成るたけお削りになつて、そうして、本年度始末のできるような財政、リザーブを持つてそうしてお行きになろうとしておる。でそういうようなことはよくわかるのでありますが、ともかくも国民所得推計から考えられて、財政規模は大体從來通りの比率を国民所得推計でとつて、この点で行こうというふうなお考えになつているんだと思いますが、この点は如何ですか。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 堀木さんお聞きにならなくても、ほかにお聞きになるかたがたくさんあつて問題を起しますので、それで私は今申上げられない。私の所管租税収入幾らになるかということも再三責められましたが、申上げていないのであります。併しできるだけ早い機会に申上げるように努力はいたしております。  第二の問題で、国民所得に対しまする財政規模の割合、こういう問題も方針といたしましては、できるだけ国民所得に対しまして下げたいということで今までやつておるのであります。今回も補正予算千三百六十億ばかりを加えましても、大体当初の国民所得に対する一般会計の歳出の規模は、一七・六程度でとどめておつたのであります。併し何分にも來年度平和関係経費が相当嵩んで参ります。來年度も一七・六を維持できるかどうかということは疑問でありまするが、若し一七・六程度でできたら一つお褒めを頂きたいと思います。
  28. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今おつしやられたのは……私はもう一つ、もう時間がありませんので、聞く時間を与えられませんから、又別の機会がありましたら委員長のお許しを得たいと思うのですが、今までの財政規模縮小というのは、これは大蔵大臣もお認めにならなくちやならないと思うのでありますが、大体価格調整費の減なんです。価格調整費の減が大体主なるものとして財政規模縮小して來た。これは大蔵大臣もお認めになると思う。数字をあえて挙げるまでもない。でありまするから価格調整費の減から來る財政規模縮小ということはちよつと考えられない。そうすると今おつしやつたもう一つの点、それは何だというと、独立後の日本のいろいろな諸経費講和條約の成立に伴う諸経費というものが多くなつて來て、そうしてなかなかはまらないのである。だから国民所得に対して財政規模というものがどうしても今までのように納まれば非常にいいんだと、このときは褒めてもらうとおつしやるのですが、それは大体褒める程度に納められることはよくわかる。併しその点だけではお褒めするわけには行かないのです。その点だけができ上つても褒めるわけに行かないのですが、そうなりますと財政規模縮小の主な点が価格調整費の減でできて來たものができなくなる。而も講和善後処理伴つて非常に大きな経費が計上される。而もそれが再生産に向わない経費が多くなる、そうなりますと、見かけは違つた財政政策が出て参らなければいけない、こういうことは明らかだと思うのでありますが、如何でございますか。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その通りでございます。そこで私が財政演説で申上げましたように安定、能率、発展を図る、そして而も今の貸出状況が多くなれば、又為替管理のほうで十分でなかつた、或いは金融政策のほうでまだ十分の措置を講じていなかつた、こういうことが主たる原因になります。その方面財政緊縮をやりながら、その方面に力を注いで行く、こういうのであります。
  30. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 時間がございませんから最後に一点申上げたいと思うのでありますが、結局その点になつて参りまして、一番国民の層としてその影響を受けて参るのはどこか、こういう問題になつて参る。で、池田財政は、池田大蔵大臣は二十六年度の予算に、もう二度と申上げませんが、民生の安定ですね、文教、科学の振興等まで織り込まれて相当の費用を計上することができた、こういうことをいろいろな項目のうちに、五つばかりの項目のうちに挙げておられるのであります。私はこれは池田財政としては相当飛躍的にこういう方面にも十分考慮なさつたと、こう思つておりました途端に今度の補正予算の上ではこういうような経費は非常に少い。で池田財政は御承知の通りに自然物価騰貴に乘つかつた、まあそう言つては失礼ですが、乘つかつた財政です。自然増収の千五百億も物価騰貴に乘つかつた、それだから非常に楽、そう申上げては惡いのですが、楽な予算を二十六年度としては組むことができた。而もそのうちで、政府リザーブ資金のほうで、相当恐らく初めお考えなつた項にはたくさん持つておられたにもかかわりませず、この社会政策的な経費、そしてあなたは……一例を挙げますと税制で、税金は幾分お下げになつた、そうしてその点のあなたは公約を果しておる。併し実際は税金も納められない者、又大体勤労者の半分以上六〇%近く占むるという月収一万五千円の世帯以下の者、こういう者は実際において物価騰貴影響を非常に受けておる。そういう点から言えば、あなたとしては補正予算をそういうふうな面に、社会政策的な経費を御計上にならなければならん。それからあなた自身もお認めになつておる官公吏の分だつて人事院の勧告に即応しただけの経費はお盛りにならない、そういうようなことで参つておる。又社会保障制度についても第二次勧告といえども満足させようとする御意図がない。そうなるとあなたのいわゆる財政のうちで、政府資金をたくさん持つ、リザーブ資金として税金の形で吸い上げる、そうしてそれが重点的には産業投費の部面に向けて行こうとされる方針は立つておるが、併しながら実際の結果としてそういう方面の御施策は非常に貧困だ。全然ないとは申しませんけれども、国民金融金庫に対しても住宅資金に対しましても幾分の配慮があります。これは私も認めます。併し実際は住宅金融公庫にお出しになるものも、大体物価騰貴を合せますと年初の計画通りであります。少しあなたのお示しになつておる数字を上廻つておるのでありますが、大体実績としてはその程度、全体としてそういう方面経費は圧縮されて参る。來年度予算においては先ほどあなたも言われましたように講和善後の処理費において防衛分担金といい警察予備隊といい、或いは條約上の義務の履行といい、それらの経費が廻つて参りまして、資金の、この財政の配分から見ますると、そういうような方面が非常に犠牲になつて來る。これは確かに池田財政一つの特徴じやないかと思うのですが、そういう点について來年度財政規模においても、從來より増して資金の配分ができ得るお見込でしようか。來年度財政規模の問題とそういう点の調和というものは非常に困難になつて参るのじやないか、こういうふうに考えるのでありますが、如何でございますか。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の予算は名の示すごとく補正予算でございまして、緊要止むを得ざるもののみを計上することにいたしておるのであります。お話通りに当初予算におきましては相当社会保障的の経費を出しておるのでありますが、補正予算ではほかに相当要りますので組むことができなかつたのであります。而して來年度予算におきましては私は平和関係の費用が嵩みますが、どうしても今御審議を願つておる減税は続けて行かなければならない、併しほかの待遇、その他の善後処理費、いろいろな点がありますが、お話のような民生安定の費用もこれはないがしろにするわけに行きませんので、平和関係或いは公共事業費、民生安定、こういうような点はできるだけ調和的なものにして、皆さんのお気に入る予算を作ろうとしておるので今努力いたしておるのであります。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は補正予算に関して大蔵大臣に初めて質問するわけですが、この講和後の日本経済が安定して行くかどうか、或いは又これが楽観すべきか悲しむべきかという、そういう問題について一番中心になる問題は国民の生活水準がどうなるか、生活がどうなるかということだ。現在これに対してこれまで予算委員会において各委員から熱心に討議された。ところが政府のこれに対する答弁は全くまちまちであります。吉田総理は国民の生活水準は行過ぎであるから、イギリスに倣つてもつと耐乏生活をせよ、こういうことを言われております。そうかと思うと周東安本長官は徐々に国民生活水準を上げて行くのだ。又池田大蔵大臣は、講和関係費によつて国民生活が困難になるというようなことが起れば、それは和解と信頼の條約の精神に反するからそういうことはしないであろう、こういうような希望的な意見を述べておる。そういうことに対して国民は楽観的だ楽観的だと言う。ところが総理自身は現在の国民生活は行過ぎたと言つておる。そこで大蔵大臣にお伺いしたいのは、国民が今一番真劍に心配しておる点でありますが、一体国民生活水準は講和後において本当に周東安本長官池田大蔵大臣が言うよう徐々にでもいいから上つて行くのか、それとも下つて行くのか、この点を大蔵大臣にはつきりとここで私は御答弁を願いたいと思います。余りにこれまでの政府の答弁は私は無責任だと思う。国民が一番関心を持つておる問題について逆なことを言つておる。総理その他の経済閣僚は……。この点ここではつきり承わつておきたいと思います。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 表現の仕方が違つてるので、総理のお話は直接に聞いておりませんが、それは行過ぎた点もないことはないでしよう。併し我我は全体として国民生活水準を上げて行くことを理想といたしておるのでありまして、それに向つて努力しておるのであります。上るか上らんかというのは政府施策国民の協力によることであります。政府が何ぼ上ると言つて国民が上げるように協力して下さらなければ上りません。それはみんな国民政府が一致合体し、努力した結果によるほかはありません。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国民生活が今後どうなるかは政府の、或いは国民の努力と、もう一つ講和関係の費用がどうなるかという、この二つだと思うのです。如何に政府国民が努力しても、講和関係費が多くなつて來たらこれはどうにもならん。客観的に低下せざるを得ない。そこで私は国民生活が今後徐々にでも上つて行くのか、或いは下つて行くのかという問題の、その基準になる今この二つの点、政府施策、或いは又もう一つ講和関係費の問題について具体的にお伺いしたいのです。大蔵大臣財政方針演説で、その講和関係費によつて国民生活水準が下るようなことはないと、こう言つておるのですが、そういう保証がどこにあるのか。一般的には例えば賠償などについては、日本が存立可能な経済を維持し得る程度において賠償をするということになつておる。その存立可能という問題を大蔵大臣はどういうように解釈しておられるか。あの條文にはいわゆるヴアイアブル・エコノミーとなつておる。このヴアイアブル・エコノミーというものを大蔵大臣はどう解釈しておられるか、その解釈しようによつては生活水準は低下しても存立可能な場合もあるわけです。そこでこの存立可能という場合に、国民生活水準というものを大蔵大臣はどう頭の中に入れて折衝せられたのか、或いは又この講和條約に調印するに当つて、少くとも現在の国民生活水準よりも下げないという、こういう意味において、そのヴアイアブル・エコノミーという内容をお考えになつているのかどうか。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは他の機会にたびてたびお答えした通りでございまして、我々は国民生活水準を維持し、或いは徐々に上げて行くという心がまえでやつておるのであります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その希望論、心がまえだけで問題が済むなら簡單であります。我々はたびたびこれが問題になるにかかわらず、なお、しつこく大蔵大臣に聞くのは、希望してもそれが実現しないような客観的な情勢になつたらどうするのでありましようか。又そういうものは見通されるのであります。ですから我々はこの條約において経済的な條項について、なぜはつきりとこれを国民が安心するように規定できなかつたか、規定してから講和調印しても遅くはないのです。そこで努力目標について伺いますが、総理は行過ぎと言つているのですが、国民生活水準を考えるとき、これは常識として大体安本で出しております、何かしよつちゆう使われるいわゆる消費水準のことを大体言うのだと思うのでありますが、それを若し本当に政府がこの消費水準を下げまいとすれば、そういう方策はとり得るわけです。朝鮮動乱が起つてから国民生活水準が下るかも知れないから、下らないように政府施策すべきだということに対して、周東安本長官は下げないように努力する。そうして特需と輸出と民需を調整する。こう言いながら結果においては特需と民需を調整することができなくて、例えば電力なんかについても、特需のほうに無計画にどんどんこれを供給してしまつて電力危機を起している。從つて本当に政府が少くとも現在よりも国民生活水準を下げない、そういう政策をおとりになるとすれば、それはどういうふうにして下げないようにされるか、その点をお伺いいたしだいのです。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは財政演説で言つておりますように、安定と能率と発展であります。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは原則であつて、具体的な政策のとり方によつては下つてしまえば、あとから文句を言つても仕方がないわけです。ですから事前に我々は質問するわけですが、それは私は大蔵大臣は余り無責任であると思う。安定と能率と発展によつて国民生活水準を低下させない。その安定と能率と発展をどういう施策によつて行うかということが問題なのです。それを具体的にどうしたら国民生活水準が下らないか、例えばどういう場合に物価上つたらば、給与ベースを又上げるようにするのか、物価騰貴とのバランスを考える、或いは又減税というものをするのか、又殊に先ほど堀木委員も触れましたが、社会保障関係の費用については補正をちやんとするのかどうか、こういうような形で社会政策費をうんと出すか、そういう点が非常に危ぶまれるのであります。そういう点については大蔵大臣どうお考えになりますか。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど堀木委員にお答えした通り、平和関係の費用も要ります。或いは又国土の保全再建、開発の金も要ります。社会保障制度にも要ります。又一方では減税その他もいたさなければなりませんので、今それを考慮いたしておる。こういう行き方でございます。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 本当でございますか、社会保障的なものの財政を殖やすといいますが、補正予算においてさえ社会保障関係補正をしておらないのであります。本年度のいわゆる社会政策費というものは約五百六億計上されております、このうちでどれだけ補正されたか、お伺いいたしたいのであります。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げましたように、補正予算は緊急止むを得ざるもののみを上げることにいたしましてやつたのであります。財源が十分に見付からなかつたということと、補正予算の性質から言つて、止むを得ないものだけやつたのであります。ただ当初予算に組んだ範囲におきまして生活保護費と物価上つたことにつきましては、予算の枠内で或る程度の支給の方法はやつております。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 生活保護費ではどの程度殖えたか、当初予算には二百十二億であります。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのうちで主食の上つた分は支給額を殖やすことにいたしております。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 予算として、どのくらい補正に出ておりますか。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 予算の枠内で賄つております。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで一体済むかどうか、大蔵大臣今緊急止むを得ないと言いましたけれども、大体物件費については、物の値上りについては補正しない原則を立てられたようであります。一体生活保護費、社会保險費、結核対策費、失業対策費、こういうものは一体物件費と見ているのではないか、生活保護を要するような人間は、物と、大蔵大臣見ているのかどうか、或いは又結核患者は物と見ているのか、社会保險を必要とする人を物と見ているのかどうか、失業者を物として見ているのかどうか、それでなければ当然社会政策費として、ここに補正をしなければならんにもかかわらず、五百六億については何ら補正が出ていないのであります。これを物件費として見て補正をしなかつたのかどうか。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 人件費、物件費と、こういうような分け方で議論はできないと思います。御承知の通り失業保險にいたしましても、相当の枠を見込んでおるのであります。而して今の失業者の状況から申しますると、既定の予算で賄い得るのであります。特に殖やす必要はないと認めましたから、殖やしていないのであります。それから生活保護費の分は主計局長から説明させますが、主食が上つた分は支給額を殖やしていると、私は記憶しております。
  48. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 八月から主食の価格が上りましたので、大体四%程度生活保護費を増加いたしております。併し予算の面におきましては、生活保護費の支給状況、つまり被保護人員が大分減つております。当初は二百万人程度を以て予算を組んだのでありますが、現在百八十万から百九十万の間になつております。そういつた関係で、既定の予算において十分支弁できますので、補正をいたさなかつたのでございます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは運賃が値上りしたり、電気料金が値上りしたり、そういうものについては補正しないのでございますか。
  50. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 生活保護費につきましては、主として主食の値上りが主なものでありますが、その他の事情も勿論入れております。まあ代表的なものとして主食を申上げたのであります。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体どうも物として見ているようですね、生活保護を受ける人も、電車にも乘りましようし、電気も使いましようし……、私はあとで厚生省にこの内訳を要求してありますが、大体自由党の政策はそういう人たちを物と見ておるような政策の仕方と思うのです。今度の補正においても、物件費については補正しないことは一応わかりますが、一番重要なこの社会保障政策費については補正してない。失業対策費にしても、大蔵大臣はこれで十分だと言いますけれども、公共事業費のほうの物件費の値上りの補正をしなければ、その事業は非常に減つて來るのです。公共事業関係で我々のほうに物価値上りというものを一応デフレートした実質的な公共事業費予算計算してくれたのをくれましたが、仕事によつては三割くらい減るのがある。もう全面的に公共事業関係が減つて來ておる。これは政府の直轄事業でもそうです。恐らく直轄事業以外の府県の独立事業つて、單独事業のほうでも減つて來るに違いないのです、平衡交付金は殖やしませんから……。それで失業対策費は補正しないで済むということは言えるでありましようか。これで十分とお考えかどうか。而も労働大臣はこの間の御答弁では、失業が又だんだん殖え始めて楽観を許さないというお話です。これで十分とお考えかどうか。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今のような財政のやりくりでございますから、仕事も十分とは考えておりません。国民生活の水準を維持し、日本の自立経済達成のためには、これは不十分ながら皆で我慢して行くのが建前であるのであります。不十分の間におきましても、できるだけそれをうまく分け合うというのが、私の仕事であるのであります。公共事業費なんかは減つたから、すぐ予算を計上して既定の計画だけやれ、こういうような御意見かもわかりませんが、そういうことをしたら、片一方で減税はできません。又政府が予定通り仕事をするのだということになりますと、物資その他の関係で又必要以上の、我々の予期していた以上の物価騰貴を招來しないとも限らないのであります。緊縮財政の建前から、物件費が上つたからというので、すぐ公共事業費の増額はやらなかつたのであります。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はそういうことを言つておるのじやないのです。大蔵大臣はもうそこで逃げてしまつて、失業対策のことを言つておる。公共事業費の物件費が上つたから、すぐ補正しないから、補正しないからいけないということを私は言つておるのじやない。失業対策事業費が減るのです。ですから失業救済費が減つて來る。実質的には公共事業費関係も一応失業対策費になつておる。それにもかかわらず、応急事業としては七十八億であります。併しながらそういうものは一般的に失業対策費の中に入つておる。ですから失業対策というものをどう考えるか。それから皆がこういう経済であるから、皆が生きて行くように施策しなければいかんというけれども、生活の保護を受けるような人は殆んどこれは生活水準というか、生存水準に近い人だ、それが物価騰貴で非常に困つて來るのに、これに対して補正しないということは、さつきの主食だけであります、話を聞きますと……。それではみんなで乏しいものを分け合つて生活するという態勢ではありません。自由党の政策の根本の欠陷はここにあると思うのです。まるで物件費として見ているのです、そういう人たちを……。私はこういうような政策の立て方については根本的に賛同できない。併しこの厚生関係及び失業対策関係については、私は厚生大臣にもつと徹底的に、具体的にお伺いしますから、大蔵大臣には遺憾の意を表して、次の質問に移りたいと思うのです。
  54. 山下義信

    ○山下義信君 ちよつと生活保護関係に関連して質問したいと思います。今木村委員質問に対しまして、主食の値上りの四%の基準の引上げを認めた。それでは金が足りなくなるであろうという質問に対して、被保護者が減つて來た、こういう御答弁でありましたが、それに間違いありませんか。
  55. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 私、パーセンテージを申上げましたのは、生活保護費の單価について申上げたのでありまして、主食については一八%幾ら八月から上つておりますから、その通りつております。それから人員が最近においては減つて來ております。予算に組んだときの人員に比較しては減つております。從つて追加をいたさなかつた。食糧関係の追加を要するものはほかにもたくさんございまして、例えば刑務所なんかは追加いたしておりますが、生活保護費については必要がなかつたのであります。
  56. 山下義信

    ○山下義信君 細かいことは私も小委員会で承わりたいと思いますが、当初被保護者の人員は、大体幾らに見積つてつたのでございましようか。
  57. 河野一之

    政府委員(河野一之君) これは二十六年度予算を組みますときに、從來のものに対しまして二・五%ずつ毎月殖えておつたのでございます。從つてその趨勢を以て組んでおります。ところがそれに対して大体増加率が一・五くらいになつておる。ですから毎月動いておりますが、大体最近の数字では百九十万程度だろう、こういうふうに申上げたのであります。
  58. 山下義信

    ○山下義信君 それは先ほど申上げましたように、小委員会で又伺いたいと思いますが、主計局長もなおお調べ願いたいと思いますが、私の持つております統計の数字では、だんだん逐月保護人員が増加しておる、而も二百万を超過しております。今主計局長は百八十万くらいということでありましたが、本年の一月において百九十五万ありました被保護者の実数が、五月には二百三万となり、六月には二百四万となり、二百万を超過しております。ですから大体二百万見当で組んであつたものが百八十万に減つておるということは、少し数字が大雑把のように思うのでありますが、こういうふうに保護人員が増加しておつて、主食の騰貴による保護費の基準を引上げて行けば、当然これは保護者の数を減らすかどうかしなければ、金が足りんことになるわけであります。最近の趨勢は、生活保護法の申請者が非常に増加しておりまして、対象者が減少しておるという傾向ではないと思うのでありますが、主計局長はどういうふうに数字を見ておられましようか。
  59. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 私は從來増加率よりは減つておると思います。これはまあ各月いろいろ違いますので、何でありますが、生活保護としては割合に減つておる、医療扶助として相当殖えておる、こういうふうに私は考えております。
  60. 山下義信

    ○山下義信君 この問題は小委員会で又数字を検討することにいたします。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは大蔵大臣でなくてもいいのですけれども、社会保障費は二十六年度において、総予算に対して占める比率はどのくらいになりましたか。二十四、五、六年度について大体わかりますか。
  62. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この社会保障費と申しましても、科目を限定して頂かないとちよつと計算がしにくいと思います。私の考えております狹い意味の社会保障費、結核対策費を入れて、二十五年度が三百四十億円、それが二十六年度は四百四十一億円、百一億円殖えたと考えております。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは狹義と広義と二つあるわけですが、大体よその国と比べて日本の社会保障費が著しく低いということは、これは御承知の通りだと思います。例えば広義の社会保障費について言えば、二十五年度は日本予算に占める比率は七・五%、イギリスが二一・九%、アメリカが二二・四%、ソ連が二・二%、こういう日本では七・五%のうち政府がこれを負担する比率は、二十四年度が〇・九%、広義においては一・三%、それから二十五年度が一・五%、これで一体社会保障をやつているといえるかどうか、而も、そういう乏しい予算で社会保障をやりながら、而も物価補正をやらない、そうしてそういう対象になる人を物とみておるような政策をやることは、非常に遺憾と思うのです。次に大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、今朝の日本経済新聞、その他の新聞にも載つたかと思いますが、自由党の明年度予算編成の案が出ております。大体大蔵大臣の明年度の予算編成方針というのは、この自由党の方針に基いてお立てになるわけでございますか。
  64. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 失業対策費とか、失業保險費につきまして、物と見てやつておるというようなお話でございまするが、そういう気持はございません。予算の額が殖えていなかつたから、而して公共事業はいろいろな建前から殖やさなかつたから、殖やさんということを土台にして失業対策費や或いは失業保險費というものを物と考えておる、こういうことは私は全然ないのでございまして、そういうことはおつしやつて頂きたくないと思います。緊急失業対策費につきましても、これは七十八億円でありましたが、これはその当時の計算では失業者がどんどん殖えるというのでやつておるのであります。私は昨年の今頃の記憶を辿りますると、大体一四半期が十五億から十六億になる、それがだんだんカーヴが殖えて行くから六十数億円要る、こういう計算をしたのを覚えておりますが、その後に至つて緊急失業対策費の人員が減つて來たのであります。從來は緊急失業対策で去年の今頃、或いはそれよりも前頃は月十五、六日から十六、七日しか出しておりません。而も最近では月に二十日から二十一日ぐらい出しておると私は報告を受けておるのであります。從いまして緊急失業対策費は相当殖えて行くことを予定しておりましたのが、殖えて行かずに、或る程度中だるみをして來た、最近一、二カ月は殖えて來そうだというお話でありますが、これも既定の予算でできますので、月の割当を二十日、二十一日にしたり、実質的には相当殖しておるのであります。それから失業保險のほうも、これは失業保險金の収入等が非常に順調に参りまして、私は相当黒字があると思います。予算のほうでもそういう意味で既定の予算が余るくらいに私は考えておるのであります。決して物とみたり、そういうような考え方は、あなたは御覧になるかもわかりませんが、私はそういうふうに考えておりません。どうぞその点を一つはつきりして頂かないと、大蔵大臣がこういう物と見ていると、あなたが独断的におつしやることは、私は心外千万だと思います。  次に自由党の政策につきましては、私も党員ですから一応は聞いております。併し吉田内閣の編成方針としてまだきめておりません。而して載つておりまする事項のうちでも、ここで問題になりました間接税を上げるか下げるかという問題について、自由党の意見としてはああいうふうにしておりまするが、この通り政府がやるわけでもございませんので、政府政府考えます。そうして最後には自由党と相談で結論をつけたいと存じます。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今失業しておる人或いは生活保護を受ける人、そういう人たちを大蔵大臣は物として見ておるのじやない、そういうことを言われるのは心外だ、こういう御答弁がありました。それは当然であります。そういう御答弁がなかつたら大変であります。又麦飯問答が起るわけであります。私はそれほど大蔵大臣が今弁明されるならば、何故実際に具体的に示されないか。街頭へ行つてお聞きになるがいい、職安に行つて、お廻りになつて見ればいい、そういうところは見ておられないと思います。一日職安を御覽になれば、如何に困つた人が多いかということがはつきりわかります。失業保險につても実情を考えればそうであります。そうでなければあの社会保障審議会あたりで又ああいうような答申をするはずがないのです。実情をちつとも認識されていないと思う。若しそれだけ御答弁なさるのでしたら、具体的に少くとも明年度予算でも結構です。これを予算の裏付を以て立証されることが私は当然だと思う。そういうことをなさらないで、そういうことの御答弁をなすつてもこれは空論であります。私はそう断定せざるを得ないのです。独断でも何でもないのです。輿論調査をやつて御覽になればわかると思います。今のこの失業対策費で十分かどうか、今の生活保護費で十分かどうか、結核対策は十分かどうか、輿論調査されて見ればおわかりになると思います。明年度の予算につきましては、大体自由党のきめられた方針で行くというお話ですが、そこでこれはこれからドツジさんとの交渉もあるのでしようから、この通り行かないといたしまして、私は、明年度の予算編成について二つの点をお尋ねしたいのです。その一つは、平衡交付金のことなんです。これについては岡野国務相が、來年度は平衡交付金は絶対に減さないと、こう言つておる。ところが地方自治庁の次長の鈴木さんは、來年度はこれは減額するであろう、こう言つておる。又自由党の政策によりますと、地方財政平衡交付金及び国庫指定補助の根本的整理として、平衡交付金が根本的にどうも削減され、我々の想像では、恐らく半分くらいに減るのじやないか。そうしてその代りにたばことか酒とか、そういう間接税をこれに充てるのじやないか、こういうふうに思われるのです。これは極めて重大な問題でございますので、この点について一点お伺いしたいのです。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣がいろいろな事情を調べますのに、一々参るわけに参りません。災害復旧に、災害があつたからといつて鹿児島から山口まで全部見て廻るわけには行かないのであります。併し私としては、できるだけ各省大臣或いは所管の事務当局から聞いて、施策の参考にいたしておる考えであります。  次に平衡交付金の、來年度の平衡交付金が減るか減らんかという問題が議論になつておるようでありまするが、平衡交付金というものはどういうものであるか。予算に今度挙げました当初予算の千百億円と今度加えた千二百億円、この千二百億円が減るか減らないかという問題だと非常に疑問があると思います。それは平衡交付金制度につきまして検討を加えて、例えば自由党で言つておりますように、酒、たばこの収入を一定割合地方に還付するということになれば、それを千二百億円にプラスして出すわけには行きますまい。何ぼ木村さんでも賛成なさらんでしよう。千二百億円の平衡交付金が減るか減らんかということ、そういうことを考えるのは意味をなさない。私はそう思つております。たばこや酒を出すか出さんかということをきめて、地方財政をどう持つて行くか、地方の行政整理をどうやるか、事業分量をどうきめるかによつて平衡交付金は動くわけです。減つたり殖えたりするものであります。それを今ここで議論するということは私はどうかと思うのです。私はその意味で岡野さんの言う減らんというのも真理かもわかりません。減るというのも一つ考え方かもわかりません。大蔵大臣としては何ともそこは前提がきまつておりませんので申上げられません。
  67. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御注意申上げますが、もうあと十分ですから。それから農林大臣が來ましたから。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、時間がありませんので簡單に伺いますが、インベントリー・フアイナンスについて自由党の政策では何らこれは触れていませんが、この間大蔵大臣はやはりインベントリー・フアイナンスはやると言われましたが、これは額は本年度はわかつておるのですが、やるとして額が減るかどうか、そうして又仮に減るとしたらこれを使えば大蔵大臣が常に御説明されるように他に対策を講じない限り、これはインフレ要因になると思うのです。そこでその関係をどうせられるか、この点をお伺いしたいのです。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) インベントリー・フアイナンスは吉田内閣の財政金融政策一つの大きい柱でございます。從いまして自由党が問題にしていないごとく我々今までの既定方針を続けて参ります。而してそれじやインベントリー・フアイナンスという問題、言つておられまする外為会計或いは食管会計についてどうなるかということは、來年度貿易計画、或いは貿易外の収支その他を考えてきめなきやなりませんので、今何とも申上げられません。それから食管のほうのインベントリー・フアイナンスは統制撤廃をいたしまして、而も米麦の値段がどうなるか、或いは輸入食糧をどれだけやるか、統制撤廃後におきましても政府が買上げる米麦の分量はどうかという問題によつてきまる問題で、今殖えるとも減るとも申上げられませんが、私は見通しといたしましては統制撤廃をした場合におきまする來年度予算では食管会計インベントリー・フアイナンスというものは多分ないという見通しを持つております。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それからお伺いしたいのですが、昨日佐多委員質問に対しまして大蔵大臣は国内経費は減らさない、成るべく減らさないように努力するというお話ですが、国内経費というものの範囲をどういうふうにお考えになつているか。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国内経費で減るものもございますよ。もう事業が済んで要らない金は減らさなけりやいけません。それから行政整理によりまする人件費も減ります。又中には今年度限りの経費もありましようが、そういうものは減ります。併し大体において社会保障費とか、公共事業費とか、こういう経済自立、民生安定の費用は、これは減らんように努力する。平和関係の費用が要りましても、そういう大事な費目は極力減らさないようにしようと、こういうことを申上げておるのであります。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんので……、さつきの関連質問の時間が入つておるのですが……。
  73. 和田博雄

    委員長和田博雄君) まだ八分ばかりありますから。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 厚生大臣見えておりますか。
  75. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 厚生大臣はまだ來ておりません。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 では農林大臣に一点だけお伺いしたいのです。今度の米価の算定の基礎についてお伺いしたいのです。七千三十円というこの本年度の米価の算定の基礎ですね、これは何を基礎にして算定されたか、これをお伺いしたい。それが一点と、それから今度の米の統制撤廃打切で、奨励金を出すとか、或いは集荷奨励金を出すとか言われておりますが、それは奨励金という形で出されるのか、集荷委託金という形で出されるのか、或いは両方出されるのか、この二点についてお伺いしたいのです。
  77. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。第一点の本年の米価算定の基礎でございますが、これは九月末パリテイを二五〇と想定し、それに対して五%加算する、こういうことで予算は組んでおるわけであります。それからもう一つの点は集荷委託費並びに特別奨励金を出すかということでありますが、知事側の強い要請がありましたので、これは集荷委託費については増額すべく今大蔵省と折衝中でございます。もう一つの報奨金の問題は現行の建前においては出せない建前でありますけれども、これも又検討いたしまして今後の善処をいたしたいと考えておる次第であります。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これはいわゆる価格。パリテイによつて算定されたのですか、この米価は。
  79. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) さようでございます。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで七千三十円になりますか。
  81. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 先ほど御説明いたしましたように九月末パリテイを二五〇と想定し、それに五%加算することにいたしますれば七千三十円という額になるわけであります。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、今後パリテイがはつきりした場合にそれは上るか下るかわからないのですね。
  83. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) パリテイの指数が変動しますれば、実質上変動する建前になるのでありますが、米価審議会の意見をも十分に忖度しましてこの点は決定したいと存じます。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この米価審議会ではこの算定の方法は三つあるわけです。御承知のように議論になつたところだと思うのです。意見も一致しないままになつたと思うのですが、米価審議会の今度は委員が代るとか言われておるのですが、そうでございますか。
  85. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 米価審議会の構成員については若干変動を來たすものと思つております。現在生産者側の代表のほうから要請しておるので、まだ意見がまとまらない点がありますので、少し時間を待つておるのでありますけれども、できるだけ早く推薦して頂いてきめたいと思つております。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はまだ厚生大臣にも質問しなければなりませんので、時間を少し残して置かなければなりませんから、この程度で私の質問は終えます。
  87. 小林孝平

    小林孝平君 私はこの際農林大臣にお尋ねいたしたいのであります。それは積雪寒冷單作地帯の予算二十億円の問題に関連いたしまして、この予算は非常に関係地方の農家が期待を持つてつたのでありまして、当初六十億円どうしても必要である、融資のほうを四十億円、こういうことで要望しておつたのが、結局二十億円という非常に少額にきまつたのでありますが、この二十億円の用途、使い方に関連しまして、只今のところこの金は灌漑排水、区画整理、客土並びに暗渠排水の四つの仕事に限定され、而もそれは原則として五十町歩以上、例外として特殊の山間地におきましては二十町歩、こういうふうな方針で交付になるというようなことを聞いておるのでありまするけれども、農林大臣も御承知の通りこの雪の降る積雪地方は山間部に余計降るのでありまして、こういうように原則五十町歩、特殊の場合二十町歩というような基準ではこの恩典をこうむる地帶が非常に限定されるのであります。山間地帶においては二十町歩もまとまつて仕事をやるということは非常に困難でありますので、このままやりますれば、平坦地の雪の少いところだけこの事業がやられる、こういうことになりまして、非常に期待をいたしておりまして、これによつて一つ今後新らしくこの地帶の農家が立ち上ろうと、いう希望を持つておるにもかかわらず、こういうことでは非常に失望を与えると、こういうことになつておるのであります。特に只今のところでは農道につきましては補助金を出さないと、こういうことになつておるそうでございまするけれども、而も農道は区画整理と事業とを関連してならやると、こういうことでございまするけれども、そんなことでは駄目であつて、こういう積雪地帯における農道の必要性は極めて大きいのでありまして、是非農道についてもこれを認めなければならない。こういうふうに我々は考えておるのでありますが、農林大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  88. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 單作地帯の予算は、当初農林省が要望しておつた点まで行かないという点は国家財政全体の関係からやむなく二十億程度、而も本年は御承知のようにこの予算が通過いたしましても、十一月頃ということになりますれば、相当量の事業量でございまするので、この程度で本年の補正予算は我慢しなければならんと、かように考えております。なお算出根拠につきまして、平坦地の灌漑排水を実施する面積を五十町歩以上とし、山間地においては特に二十町歩以上と、こういうふうにいたしているのでございまして、この点については大蔵省との話合いが付いておる次第でございます。一面におきましては、この山間地については五町歩以上というような要請が出たのでありまするが、これは非常にたくさんの地域に分散するので、事業執行の面から言いましても、或る程度までの單位はきめて置かなければならない。これは考えて補助することが必要でありまするが、地方自治体においても、これと相関連してやつておりまするので、地方自治体で相当程度考えられることと思います。それから土地改良におきましては、暗渠排水と客土について、これで二十町歩以上にいたしております。それから区画整理、これにつきましても五十町歩以上とし、山間地帶において二十町歩以上、それから農道においても、これは大蔵省と話合いが付きましたが、ただ我々のほうは一キロ以上ということにしておりまするけれども、もう少し單位を上げたほうがいいのではないかという大蔵省の意見もございまするから、これも話合いの上やがてきまるものと考えておるのであります。大蔵省の主計当局からも説明があると思いますから、御心配の点はいろいろと折衝いたし、又実情も認識されましたので、只今のところ了解点に達しておるのでございます。
  89. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣は大蔵省と折衝の結果きまつたと、こうおつしやいましたけれども、私はこれは大蔵省に押付けられてこういうふうにきまつたのだと考えております。農林大臣はこの程度ではやれないということですが、農林大臣も秋田県の御出身でございますから、よくこの積雪寒冷單帶作地帯の実情はおわかりでございましようから、こういうように五十町歩を原則とし、二十町歩を例外にすると、こういうようなことでは山間部の農村では殆んどこの事業ができないということになると思うのでございまして、いろいろ事業の監督の点とかおつしやいますけれども、昔の開墾助成法におきましても單位は五町歩以上、こういうふうになつておるのでありまするから、私は只今の御説明では納得できない。どうして五十町歩、二十町歩にしたか。それから農道の点は一本建にしないで、区画整理と併せてやるのだけ認めるという点について、もう少し明確に御説明をお願いしたいと思います。
  90. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 大蔵省の最初の考え方は、実は現在公共事業費の国庫補助の対象の限度、從いまして三百町歩以上のところであつたらいいじやないか、單作地帯の特別措置も、これは国家の補助事業であるということならば、同じように公共事業費におけるところの單位をとるべきだということでありましたけれども、小林さんの御指摘のように、單作地帶も特別助成の方法であると、これは我々のほうの主張が強く貫きまして、その結果三百町歩以上のところは五十町歩以上、まあ山間地については二十町歩、こういうふうになつたのでありまして、大蔵省のほうが我々に押付けたのではなくて、大蔵省も非常にこの点は好意を以て、大蔵省の意見を通したのではなく、我々の意見を強く主張したものと考えます。
  91. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣はいつもそういうような御答弁をなさつておりまするけれども、食糧統制の問題についても、或いは定員法の問題につきましても、大蔵大臣にすつかりやられて、定員法の問題については一人で心痛している、或いは忍びがたきを忍んでこうした、こういうことをおつしやつている。あなたはすつかり大蔵省にやられている。そういうようなことで、只今の御説明は如何にもいいけれども、そういうことでは本当に仕事はできないということは、農林大臣もよくおわかりだろうと思う。特に私はこの二十億を決定した基礎は、これは初めから予算を査定して、下から積み上げてこういうことになつたのではなくして、政治的にまあ六十億は困難だろうから、まあ二十億で我慢すべえ、こういうことできまつたのでありまするから、これは本当にこの事業をやろうとする農家の希望を入れて、実情に合うように、何も二十町歩を五町歩に下げたからどうだということはないであろうと思うのでありまして、これはほかの事業と違つて、あの法律で、みずからこの地帶の農家は立上ろうという熱意に燃えて下から積上げた計画でありまするから、それに水を注ぐようなことでは甚だ困ると思うのでありまして、私は農林大臣にお聞きしても明確なる御答弁を得られないと思いますので、大蔵省からはつきりと、なぜこういうふうにしたかということを御説明願いたいと思います。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農林大臣と私は常に意見が一致しているのであります。ただこの單作地帯の問題につきましては、私は三百町歩を主張したのでありまするが、専門家の農林大臣の意見を聞きまして、私の三百町歩というのは誤まりである、こういうので農林大臣の説に從つたのであります。それから私が三百町歩とか、或いは普通の公共事業費と同じような建前で行くと申しますのは、御承知の通り昭和二十三年まではお話のようなことでやつていたのであります。併しそれが二十四年から、緊縮財政になりましてから今のような恰好になつて來たのであります。今のような恰好にいたしますると、なかなかやはり小さい事業のほうがうまく行かないというので、農林漁業資金融通特別会計を作りまして、金融の面でそういう不十分のところを補つて行こうという考え方をとつているのであります。それで私の建前としては、飽くまで三百町歩というつもりでおつたのでありまするが、この山間地帯については今お話のように折れました。問題は來年度どれだけ出すかという問題でございます。おつしやるように、五町歩からずつとやることにすれば、來年度は金は出ないということになるので非常にお困りだと思います。そこで私は財政状況考えて、よほど愼重にやらなければいかん、尻切れとんぼになつてはいかん、こういう考えで三百町歩を主張したのでありますが、農林大臣の御意見は尤もでありますので、五十町歩と、又例外的には二十町歩ということにしたのであります。
  93. 小林孝平

    小林孝平君 さつぱり……それはなぜ二十町歩にしたかという説明にはならんのであります。五町歩、少くとも十町歩くらいのところをやらなければ、この金の大部分が平坦地に行つてしまう。こういうことでは何にも法律の目的に合わない、こういうふうに私たちは主張しているのであります。又大蔵省がそういうふうに單位を小さくすれば、いろいろの目がとどかないで不正が起きるとか、何とかいうので、そういうことを制限を設けられておるのだろうと思うのでありますけれども、そういうことをやるから予算の流用が起きたり、或いは却つてどうしてもやりたいのに、そういう規則があるから目をくぐつてやるということになる、本当にやりたいところはやらせるようにしてもらつたらどうか、どうして五町歩なり、十町歩にすることができないか、それをやつて更に三十億にしてくれというのじやない、二十億でうまくやるからやらして下さいということを言つておるので、その点はつきりして下さい。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体二十億という金と見合つて、その程度の大きいところからやるのが至当だと考えたのであります。細かい点は主計局長或いは農林の事務当局からお話を申上げます。
  95. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この問題は農林当局と大体お話合いが付いておるのであります。もう少し小さいところをやつてはどうかという御議論も尤もでもございますが、これはやはり余り小さなものまでやるということは、国家財政の都合も勿論ございますし、これは組合が団結と言いますか、組合の事業としてやる規模のものとしては、これくらいが適当であろう、二十町歩ということになりますと、大体山間部の相当の規模のものは入るのじやないかというので、大体農林省と御意見が一致した次第であります。それから農道の問題につきましては、これはほかのほうのバランスの問題がございます。現に府県道につきましては、指定府県道のみしか助成しておりません、国のほうでは市町村道は助成しておらないのであります。農道というと、市町村道と実際上区別が付きかねる、そのアンバランスの点から申しまして、農道をどの程度やるべきかということで問題がございます。非常に小規模のものでありますと、これは市町村道に補助するのと同じようになる、そういつたけじめのことで問題があるのでありますが、この点につきましては、農林省と原則的に話が付いておるのであります。
  96. 小林孝平

    小林孝平君 結局これは先ほど申上げたように、農林省が大蔵省に屈服して、まあ仕方がない、この程度にやろうということを主張された結果、こういうことになつたので、先ほども申上げたように、農林大臣は食糧統制の問題についても、定員法の問題についても皆やられてしもう、もう少し農林大臣は、それこそ農林省の主体性を確立しなければ駄目だ、今後いろいろの農林政策が、この調子で大蔵省の、余り事情のわからない大蔵省に予算の査定をやられ、そうしてその使い方のごときは、大蔵省ではそう細かいことまでおわかりになるかたはおらないはずですから、もつとはつきり農林省は主張すべきである、こういうふうに私は思うのですが、これ以上申上げても仕方がありませんから、この希望を申述べて私の質問を終ります。
  97. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 ちよつと冷飯ですけれども、今、木村さんと大蔵大臣との質疑応答に関連して質問いたしたい。大蔵大臣は第二補正予算を組まれるお見込みですか、見通しを承わりたい。
  98. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 本国会に組んで提出する考えはございません。來国会につきましては、只今検討中でございます。
  99. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 大蔵大臣は、先般当院議で決定した平衡交付金の増額決議に対して、院議を尊重し善処する旨の回答がありましたが、どういう善処を現在やつておられますか、承わりたいと思います。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 本会議で答弁いたしましたごとく、中央、地方の財政事情を検討勘案し善処したい、こうお答え申上げたのであります。検討は今後も続けて行きまして、善処いたしたいと思います。
  101. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 大蔵大臣は平衡交付金百億増額の決議は妥当なものと思われまするか、これに対する御所見を承わりたい。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう院議を尊重たしまするが、中央、地方の事情を検討勘案しなければ結論はまだ出ません。
  103. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 中央、地方の財政を勘案と言われますが、地方財政については、この予算案編成以前からの問題であつて、地財委から相当詳細に亘つて必要欠くべからざる要素を列挙して内閣に要求し、或いは議会に要請をしておる、こういうものについていつまで検討をする予定ですか。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 地方財政委員会の勧告につきましては、從來も検討した上補正予算の御審議を願う段取りになつたのであります。その後院議がありましたので、その趣旨を尊重いたしまして、将來再検討を重ねることにいたしております。
  105. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 将來再検討するというようなことでは、甚だ現在の窮乏した地方財政の実態から見ましても、国民感情としても割切れんと思うのですが、何らかこれは意思表示をし、これらに対して努力の方法を示すべきだと思いますが、如何でしようか。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 努力することは申上げておりますが、結論はまだ出ません。
  107. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 衆議院においても自由党を含めて院議が決定され、参議院においても自由党が率先して賛成演説までしてこれの必要性を説いておるが、大蔵大臣がまだ中央、地方の財政を検討してじやないとわからんということは、ちよつと言い方においては大臣は如何ような言い方もありましようが、事実問題としてそれは許されんと私は思う、もう少し責任的な態度において御答弁は得られませんか。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 責任の地位におりますので、結論を出しますまでには十分の検討をさして頂かなければならんと思います。
  109. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それは検討は特に支出面を言われておるのか、これの身代り財政措置に対しての研究でありますか、どちらか承わりたい。
  110. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 両者ともでございます。
  111. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 大蔵大臣はこれに対して態度なり、意思の表示を極力避けるべく御答弁がありまするが、併しかようなことは答弁としては成立つか知れませんけれども、実際問題としては、かような答弁は事実上成立たない態度であろうと私は思う、現在この地方財政が極端に窮乏して第二補正予算でも組むか組まんかわからん、又現在のこういう院議に対しても未だに検討中というようなことは、事実上到底かような態度は許されるべきじやないと私は思うのですが、もう少し大蔵大臣はまじめにこの問題に対して、どういう方法が問題で、どういう方法がいいとかいつたような、やや少し具体化した御意見が開陳されるべきだと思うのですが、もう一度承わつておきたい。
  112. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 検討に検討を重ねまして予算案を御審議願つておるのであります。而して院議は地方財政平衡交付金の増額の院議でございます。金額も言つておりません。そうして片一方では財源を見付けるにつきましても、適当な財源が只今ないので、從いまして大蔵大臣として十分再検討して努力するということが、私は最も誠意ある答弁だと思います。確信のないのにこうやりたい、ああやりたいというのは、私は国会人として、政治家としてとるべきでないと思います。
  113. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 院議は金額を表示しなかつたのはお説の通りであります。併し地財委から内閣及び議会に要望しておるのは、もうずつと前から明確にその数字が指摘されておるわけであります。今私がここで喋々を要しない、そこで大蔵大臣はこれに見合う財源がないと言われましたが、財源がありましたら、これはあつたらという解釈はいろいろありますが、あれば出そうという意思があるのですか、どうですか、この辺をお伺いいたしたい。
  114. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今財源があれば私の判断の助けにはなりますが、財源ばかりの問題ではなしに、片一方の歳出のほうも検討しなければならん、両者を検討しなければならん。必要があるからと言つても、財源がなければ駄目だし、財源があるからと言つても、歳出の状況を見なければ出せるわけのものではない。一番の問題は、財源の問題と将來の地方財政がどうなるかという見通しも、今年度だけではなしに、見通しも付けなければならないので、相当厄介な問題として再検討したいと思つております。
  115. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 二十五年度の一般会計の剰余金はどれほどあるかお伺いいたします。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 二百数十億円と考えております。
  117. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 二百数十億円あるなら、およそその半分の百二、三十億の見当のものについては相当こうした方面に見合のできるものがあるのではないですか。
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前年度剰余金を使うのは、その翌年度と申しますか、二十五年度の剰余金を二十六年度に使うということは、例のないことはございませんが、異例でございます。而して私の見積りといたしましては、來年度相当歳出が重みますし、又來年度国債償還もありますので、今二十五年度の剰余金を今年度に使うという考えは持つておりません。
  119. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 只今小林君から積雪寒冷地帶の振興方策として、二十億の経費予算を計上したことについては政府の苦心、努力に対しては多とするが、併し実際問題といたしましては、五十町歩乃至特別の場合は二十町歩という農林大臣の答弁がございましたが、政府が実際これらの地帶において振興を期するということであつたならば、北陸とか東北というような、殊に山岳重疊たる地域においては、やはり二十町歩以下においてその研究の結果増産に適し、農業経営の実を挙げるという十分なる見通しがあるものに対しては、相当助成してこれらを達成するのが時宜に適した方法であろうと、かように信ずるのであります。この見解に立ちまして、これらの地方に対しまして十分に研究調査をいたしまして、これらの目的を達せるものに対しては、二十町歩以下でも地方庁から特に申請したものに対しては善処するお考えがあるかどうかということを、念のために農林大臣並びに大蔵大臣から一言でいいから、はつきりこの際お聞かせ願つておきます。
  120. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 先ほどもお答え申上げましたように、本年までは実は三百町歩以下のものについては全部これは補助の対象になつていなかつた。それが今回五十町歩乃至二十町歩になりましたので、相当程度救済されることになるのであります。なお又それ以上の非常に小規模のものについては農林漁業資金融通特別会計において、これが取扱うことになつておりますので、その点の措置もとつております。なお又地方自治体、県自体におきましても、こういうものについてはやり得るのでありますので、両者を勘案いたしまして、現状においてはこの程度で私は満足しなければならんものと考えております。
  121. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農林大臣のお答えの通りであります。
  122. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 只今大蔵大臣は農林大臣の答弁の通りだと、こういうところにちよつと何か疑義が残るのでありまして、これは大蔵大臣として、この際農林大臣所管事務であるから、農林大臣の答弁の通りであるが、大蔵省としても農村の振興、増産その他灌漑、排水、区画整理、客土、暗渠、排水、農道等の農村の経営には特別の熱意を持つて十分に検討して見る、これくらいな答弁があつて欲しいと思います。どうか一つ十分に大蔵大臣の脳裏に滲透するようにお考え置きを願いたいと思います。以上を希望して大臣の今一度の御言明を熱望いたします。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お説誠に御尤もでございます。善処いたしたいと思います。
  124. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 厚生大臣に対する木村君の質疑が残つておりますので、木村君の発言を許します。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が余りございませんので、簡單に御質問を申上げますが、第一の御質問は、未復員者給与法の適用を受けて療養所に入つている人が、この未復員者給与法の期限は本年一ぱいで切れることになつておるわけです。これが期限が切れたのちにどういうことになるか、我々のところに非常にたくさんの陳情が來ておる。それで期限が切れたまま街頭に放り出されたのでは大変だと思いますが、政府はこの問題についてどう考えているか。
  126. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 未復員者給与法の問題につきましては、政府としてもこれは当然延ばさなければならない。実は未復員者給与法で療養中の患者が全国で約五千五百名ばかりおりますが、これがまだまだ直ちにこの十二月一ぱいで出るということは困ると思いまして、延期を考えておりました。大蔵省のほうとの話合を進めておつたのであります。たまたま参議の側におきまして、厚生委員会予算の下準備もできているなら自分のほうで出したいというお話がありまして、議員提出の法案として十月二日に参議院を通過して衆議院に参つております。これによりまして、当初厚生省も考えておりましたものを更に三カ年延長をいたすということになりまして、予算は少し今年度の予算の中で余りがございますので、支障なく行けるつもりでございます。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは善処して頂きたいと思います。それから第二にお伺いしたいのは、最近健康保險医がやめるという問題が起つていることについて厚生大臣はどういうふうに善処されるつもりであるか。
  128. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 健康保險の診療費の單価引上げの問題にからみまして、少しごたごたいたしておりますのは誠に私も遺憾だと思います。ただこの問題につきましては、多分御承知であろうと思いますが、極く簡單に問題を今対処いたしております方策を御報告申上げたいと思います。今日の社会保險の診療單価は昭和二十二年の十一月にその基準をきめましたもので、一点單価十円というのが基本になつております。田舎と都会とは多少の違いはございますが……。それでそれがずつとその後物価の変動はございましたが、医師会の側もいろいろ協力をされて今日まで我慢をして参つたのであります。その後物価もずつと変つて参り、医師会としても、医者のほうとしても、そうそうなかなかやり切れない、是非上げてくれという要望がございました。これは社会保險の医療審議会において審議をいたしまして、厚生大臣に答申がある、その答申案を見てから厚生大臣が処理をする仕組になつているわけであります。そこで社会保險医療審議会では夏以來審議をいたしておりましたが、いろいろな問題がございまして、医師会の側から一点單価を十八円十四銭に引上げてもらいたいという要望が、はつきり計算的に出て参りましたのが、約一カ月半ばかり前でございます。で、ただこの一点單を一円引上げますると、組合の健康保險と、政府管掌の健康保險と、それから国民健康保險、政府職員共済組合、それから生活保護法の医療扶助、これが全部基準を一にしておりますので、一点一円を増加することによつて、この保險給付費が五十四億円増加をいたすわけでございます。で、この診療給付費の増加いたしますことによつて保險経済への響き方でございますとか、その負担能力等それぞれいろいろに違つておりますが、とにかく相当大きな影響であります。そこで医療審議会の社会保險の側におきましては、そうそう上げる必要はないのだ、据置でいいという主張をいたしました。で、なかなか話がまとまりません。その間において或る程度の国庫負担というようなことも考えられないでもございませんが、これも相当大きな金額であります。そこでそういつたような点を絡み合わせまして、この一カ月ほどの間は医師会からも原案が出ましたし、社会保險の側でも原案を出しまして、医療審議会で練つているわけであります。たまたまその間に到底待ち切れんということで、医師会の側で辞退するといつたような運動も出ておりますのは誠に私も困つたことだと存じまして、早く解決をいたしたいと存じております。本日も医療審議会を開いておりまするが、厚生大臣といたしましては、一応やはり医療審議会の答申を待つて処置する、で、どうしてもその答申が出ないというときには、又何か考えなければなりませんけれども、やはり一応は社会保險の側も、医師会の側も誠意を盡して話合つておりますので、厚生省も中をとりもちながら、もう少し医療審議会の議が熟して答申の出るのを待ちたいと存じております。いずれかの答申が出ましたならば、その上で措置をいたさなければなりませんが、私の考え方といたしましては、とにかく今日の一点單価というものはこれは安過ぎる、で、こういう答申案が検討されました内容に從いまして、或る程度の一点單価の引上げは必要であると思つております。それに伴いまして保險料の増額ということは、これは極力避けなければなりません。保險経済の内容も各種のものによつていろいろ違つて参りますので、その程度如何によりまして、或いは国庫負担の増額によつて処置をするものというふうなものをさばいて行こうと思つております。今日の医師会で診療辞退ということは出ておりますが、これは法律に從いまして辞退をすることができるけれども、その申出をしてから、一カ月間はなお診療を続けるということになつております。そこで山梨県が一等先に診療辞退をいたしましたが、これも十二月一日附の辞退ということで、あと一カ月余裕がありますので、その間には何とか解決をいたすつもりであります。
  129. 和田博雄

    委員長和田博雄君) お諮りいたしますが、実は人事委員長から、当委員会に対しまして申入れが前からありましたが、委員諸君の質疑応答の関係で今まで延ばしておつたのですが、この際ちよつと発言を許したいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 吉田君。
  131. 吉田法晴

    委員外議員(吉田法晴君) 審議の途中で御発言を頂いて恐縮でありますが、お手許に印刷で差上げましたように、人事委員会から当委員会への申入れを決定したのでございます。私どもの人事委員会一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案その他給与、それから退職金等に関しまする法案の審議をいたしておるのでありますが、その中で何と申しましても、ベース・アツプに関連いたします給与法の改正案その他人事院勧告にあります問題が一番大きな問題でございますが、このたび提出せられております政府の給与法案、それから予算の中には人事院勧告が極めて不十分にしか取入れられておりませんので、この決定をいたした次第であります。申入の全文はお手許にございますが、一応読みますと  争議権も団体協約締結権もない国家公務員に対しては、国は率先してその生活を保障し、その福祉と利益とを保護しなければならない。人事院が公平な第三者の立場に立つて、公務員の給与を決定する生計費、民間給与その他の経済的諸條件の変化を、常時専門的に調査研究し、国会及び内閣に対してその結果を報告し、合せて適当と認める給与の改訂を勧告するのはこの重大な職責を行うものであつて、從つて政府もまた誠実にその勧告に基いた法律案と予算とを国会に提出しなければならない。  然るに政府は、今次の給与改訂に当り、ただ財政上の理由を以て勧告の実現を極めて困難とし、例えば給与ベース、標準生計費を内輪に見積り、本年度に限り年末手当を多少増額するにとどまつて、特別手当、奨励手当の制度化を認めず、休職給の支給期間、支給額を削り、適用の期日を十月に繰り下げる等、その要点において單に人事院の意見を参考とするにとどまつているのみならず人事院の勧告以後の物価の変動等に関して殆んど考慮を払つていない。  かくのごとく勧告程度の給与改訂すら実現を見ないようでは、公務員の生活は危殆に瀕し、国民に対して公務の民主的且つ能率的な運営を保障することができない。  よつて人事委員会は、人事院勧告通りの給与改訂が行われるため、今次補正予算に対して、別紙の通りの増額修正がなされるよう、特に貴委員会の御配慮をお願いする。  これが主文でありますが、別紙に百七十八億円という政府提出の資料に基きます所要経費を附加いたしたわけであります。  私が申すまでもなく公務員は本文にもございますように、争議権も団体協約締結権等も奪われておりまして、人事院の勧告が唯一の或いは最後の保護手段になつておりますが、それが從來においても十分考慮尊重せられたということもございませんでしたが、特に今回のように大幅にそれが取入れられないということになりますというと、人事院の勧告制度の価値そのものが疑われてしまう。從いまして公務員の諸君の中にも、政府或いは国会等においてこの民主的手続が尊重されないならば、自分たちの法を守る限度というものも問題になつて來るという主張がございますことは、皆さんも御承知のところであろうと思います。又私ども開催いたしました公聴会等においても学識経験者からそうした強い、人事院の勧告を尊重すべきだという公述、主張をなされておるわけであります。或いは政府においてさえも、人事院の存在について考慮がなされているかのようでありますが、これらはこの公務員法の制定或いは改正、その後の人事院を創設いたしました目的それ自身をも、これは根本から冒涜しているものだと思うのであります。当委員会におきましても、この人事院勧告の実施の点について格段の御配慮をお願いしたいと考える次第であります。委員会の決定を以ちまして御配慮をお願いするためにここに出て参りました次第であります。慎重な御審議と、それから人事院勧告の尊重のために御処置を頂くようにお願いいたします。
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がありませんので、厚生大臣に対する質問項目別に亘りますので、御答弁願いたいと思います。  次に御質問いたしたいのは、先ほど大蔵大臣にも質問いたしたのでありますが、いわゆる厚生関係の費用が今年の予算には何ら補正されていない。生活保護費、社会保險費等、特に生活保護費につきましては、八月一日から主食の値上げ分についてだけ予算の枠内で操作したというお話なんです。その原因としては、理由としては、予算の範囲内で処理した理由としては、要保護者の数が予想より減つたということ、ところが先ほど山下委員お話では、実際はそうではないと、こういう御意見もあるわけです。それでなぜそういう物価騰貴による厚生費の補正というものをやらなかつたか。政府物価補正はやらないと言いますけれども、厚生費においては物件費と違うのでありますから、同じものでも厚生関係としては物と考えるべきではないと思います。そこでなぜ主食だけについて、而も予算の範囲内だけについてしかこれを調整しなかつたか。この点私は自由党はとかくこういう社会政策関係、厚生関係についての政策が極めて貧弱であり、十分認識されていないと思いますが、この点をお聞きしたいと思うのであります。  それから第二に、行政機構の改革に関連するのですが、厚生省を廃止するやに伝えられている。伝えられるところによると、有力関係から厚生省を廃止してはいけない、こういうような書簡があつたので、その書簡を早く発表したので官房課長が左遷されたとかいうことも、噂ですから確かなことではありませんが、厚生という問題はますます重要になるのですが、その厚生省を廃止するのかどうか。又廃止しないということについて発表した官房課長を左遷させたというのですけれども、そういう噂がありますが、これが事実かどうか。そういうことがあつたら私は非常におかしいと思うのですけれども、第二にこの点をお聞きしたい。  第三は、国立病院の地方委讓の問題がいろいろ伝えられているのですが、これは国立病院は、まあ特別会計にすることによつてその医療の成績が低下するのではないか。いわゆる患者に対して非常に不利になるのではないかということが憂えられた。それが地方に委讓されたら一層国立病院の内容は貧弱になり、地方によつて財政負担に堪えない所が出て來るのではないかと思います。第三に、国立病院地方委讓の問題はどういうふうにお考えになつておるか。  それから最後に今度の行政整理で、厚生省関係の行政整理についてどうしても私たちに納得のできないのは、こういう癩とか精神科のほうの、或いは脊髄、こういう方面の療養所の整理はお考えになつていないようですが、その整理は結核療養所、それから国立病院ですかこれに集中されているようですが、而もそのうち医療技術者、現業員五%、事務関係職員一割、これだけの整理をされるのでありますが、私はときどきこういう国立病院に行つて参りました、方々へ……。今の実情から言つてむしろ増員しなければならないような実情にあるのに、どうしてこれを私は整理するのか、天引整理じやないと言いますけれども、実際実情にちつとも即していない。特に厚生関係においては即していないと思うのですが、時間がありませんので、この点については詳細に御質問申上げたいのですが、恐らく厚生委員会でもこの点を十分質問していらつしやると思いますから、私はただこの厚生関係の国立病院、療養所について、どうして結核方面の人を整理するのか、而も癩、精神、脊髄の療養所はむしろ増員しなければならないのに、増員が行われていない、この点についてお伺いしたいのです。
  133. 山下義信

    ○山下義信君 ちよつと私より委員長にお許しを願いたいと思いますのは、木村君いろいろ質疑がありましたが、項目が多数あるので、さつき保險医一点單価の御質疑等がありましたが、あれについて簡單に関連質問をしたいのでありますが、今ちよつとここでやらして頂くほうが都合がよいと思いますが、如何でしようか。
  134. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 佐多君のまだ代表質問が済んでおりませんで、大蔵大臣も御都合もありますし、佐多君の質問も続けたいと思つておりますので、いずれ今の問題につきましては、まだ厚生大臣もこの席に出席してもらえるし、機会もあると思いますので、そのときに一つつて頂きたい。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今委員長のそういう御発言もありましたが、実は私関連質問が二、三で済んですぐかかれるつもりでおりましたが、非常にそれが延びてこういうことになつているのですが、併し今問題はたくさん出されておりまするし、私の質問は、実は安本、それから通産大臣等々との関連の問題があつて、それで大蔵大臣に質疑を、その関連において交互に質疑をいたしたいという予定をしておりますので、それらのかたがたもお見えになつていないので、或いは明日時間が頂ければ私の問題は明日に廻して頂いて、今日は御要求のような案、あれの審議に廻して頂いても結構というふうに考えております。
  136. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは今佐多君の発言もありましたので、山下君の関連質問認めます。
  137. 山下義信

    ○山下義信君 一点單価の引上げ問題は非常に重大でありますが、厚生大臣は今善処するというお言葉があつたのですが、今全国の医師が、いわゆる保險医がこの單価引上げが認められなければ総辞退をするというようなことを申しておりますが、これは私は非常に由々しき問題であると思う。單価の引上げということも非常に重大でありますが、この全国何万、約七万の医師の殆んど全部が保險診療の担当医師でありますが、場合によつては診療をやめると、辞退するというような態勢を示すということは、私は非常に重大であり、この態度が一般社会に、被保險者に及ぼします不安、動揺と言いますか、影響というものは非常に私は恐るべきものがあると考えるのであります。これに対しまして、この保險医が総辞退するというような態勢を示して、一点單価の引上げを迫つております。こういう態度につきまして、厚生大臣はどうお考えになりますか。保險医がこういう態度をとるということになりますというと、保健上私は非常に将來とも憂慮せられる問題があると思うのでありますが、先ず保險医が総辞退をしようとする態度に対しまする厚生大臣の所感を承わりたいと思います。
  138. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 木村君の御質問に対する御答弁がまだ済んでおりませんから同時にお願いいたします。
  139. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 只今の御質問にお答えを申上げます。私も今日一点單価引上げ問題にからみまして、社会保險の保險医が保險診療を辞退するというような話が出ておりまするのは誠に遺憾に存じます。ただこの問題に関しましては、医師といたしましても、今までのところ、昭和二十二年十一月にきまりました診療報酬では、なかなか骨が折れるということを我慢をしてもらつたという経緯もございまして、医師のほうの診療辞退というようなことはこれは穏やかでないと思いますけれども、併し医師のほうでの要望にも理由のあることであります。そこでこの問題に関しては、医師会の側の要望、又社会保險の運営者のほうの要望等をからみ合せまして、私は少し感情的になり過ぎておる面もあると思いますので、今まで社会保險医療協議会という民主的な機関で審議をして、それから答申を得て、厚生省もこういう仕組に折角なつておりますのを、途中で割込んで、その答申自体を左右するというふうなことをしたくないと思つて、私どもはまとまることを要望しつつ参りましたけれども、今日の事態ではこれは誠に遺憾だと思いますので、とにかくこれをまとめますように骨を折つておる次第であります。今日も医療協議会の小委員会を開いております。ただ折角ここでまとめようと思つております段階でありますので、私は社会保險診療の辞退というようなことがあつてはならんことと存じておりますので、今日の私の立場といたしましては、できるだけこれを円満に、そうして要は国民に対するサービスという面も両方協調してまとめるように努力をいたしております。これ以上この態度についてどう思うというふうなことは私として立入つて申上げたくないことであります。今日私のひたすら考えておりますことは、何としてでもやはり利害を超越して歩みをまとめて、社会保險というものがより一層円滑に運営されるようにしなければならんということです。問題は單なる政治問題というふうなことよりも、極めて冷静な計算を必要とする問題でありますので、余り感情的にならないように、そうして十分相互の利害を考えながら常に片手に算盤を外さないということで、被保險者の利益、それから保險経済の立て方、国庫の負担、診療内容の充実といつたような面をからみ合せながら成るべく早い機会に解決いたしたいと思つております。  それから木村委員の御質問にお答えを申上げます。先ず生活扶助費の問題でございまするが、これは昭和二十六年度の予算ができましてから、生活扶助費の基準額を六大都市五人世帯五千八百二十六円、全国平均五人世帯五千二百十七円として実施をいたして参つております。この予算の問題につきましては、御承知だと思いますが、この生活保護法に規定されました扶助というものは、これは国として当然やらなければならんものでありますので、いつでもその見積りは前年の実績によつて見積りをいたしておるわけであります。從いましてその基準の金額は、年度当初におきまする生活扶助の基準額をきめまして、約一年間の自然増加の趨勢も織り込んでおります。二十五年におきまする増加は比較的著しいのでございまして、毎月平均二・四%ということになつておりまするので、これはいささか今年に比べて多くはないかと思いましたが、從來機械的実績で推算することにいたしております。これで二百二十億という予算を組んだわけであります。ところがその後年度に入つてからの自然増加率は一・五%であります。人員の点につきましては、年度の初め頃は前に比べまして、今日人員が殖えておりますけれども、最近の状態は横ばい状態に相成つております。積極的に人員が減るというところまでは参つておらないはずだと思います。大体百九十六万ぐらいだと思います。そこで見込んだ自然増加率が二十五年に比べて低うございますので、大体この米価改訂がないとするならば、この二百二十億ばかりの予算の中で、九億五、六千万円ゆとりがありはしないかということが大体明らかになつて参りました。そこで八月の米価改訂に伴いまして、基準額を六大都市五人世帯六千三百二十一円、全国平均五人世帯五千六百二十一円と約八%程度上げましたけれども、これに要しまする所要金額が五億五、六千万円であるのでありますので、なお四億円ばかり残る勘定になつております。その後自然増加の趨勢も格別前年のように殖えるというような傾向は見えませんので、大体このぐらい残ると思います。今後も電燈料、通信費の値上り等で若干上ると思いますので、今計算して基準額の改訂を考えておりますが、恐らくこれによりまする所要金額は三億足らずぐらいになると思いますので、今日補正予算で特別組む必要はないと実は考えておるわけであります。厚生省の予算について私も国民の福祉を預ります関係から行きまして、予算内容に支障のないようには十二分に検討をいたしまして、先ほどの未復員者給与法の問題も、これも大体前年度の基準等を見合いながらやつております。厚生省につきましても、必要な部分については私も責任上十分検討いたした結果、こういう措置をいたしておるものであります。  なお機構改革の問題に関しましては、これは今日なお検討中でございまして、できるだけ早い機会に結論を得まして、通常国会の再開明け劈頭ぐらいには出したいと考えております。厚生行政というものが、独立後日本が自前で行く上において、国民生活が安定、民主化の安定ということが一番大事でありますので、いずれにいたしましても、厚生行政というものをより以上能率を発揮し、ウエイトを発揮し得るように考えたいと思つております。  それから国立病院の地方委讓の問題でありますが、これは戰後陸海軍の病院をずつと全面的に引受けました頃から、一応これを全部引受けはするけれども、どうしたものだろうかということを検討いたしまして、河合厚生大臣の頃からきめた一つ方針がございますが、私も大体そういうラインで考えてみたいと思つて、なお検討いたします。その筋はあれはまあ陸海軍の病院をそのまま引受けましたが、国立病院として経営して行く上から言いますと必ずしも適当と考えられない部面があるので、一般病院といたしましては、この結核療養所等に転換してやる必要のあるものについてはすでに転換をいたしましたが、残りの一般病院の分については、国として経営する特定のモデル病院と申しますか、こういうものを或る程度残しまして、後はむしろその土地で、その住民のために経営したほうが或いは却つて身が入るのじやないかということで、地方委讓というのも必ずしも反対の問題ではないと考えておるわけであります。ところがこれについては地方の側でそのほうが結構だ、引受けるということであり、且つ又そのためには国の今日まで行なつておりまするところの国立病院に対する一般会計の補助というものを更にどれだけ続けるとか続けないとかいういろいろな條件があります。私は少くとも地方委讓というものを根から反対して研究しないというふうなことじやいけないと思いますので、是非必要なモデル病院のほかについては地方委讓をやつたらどうだろうかということで、或いはやるとするならどういう條件でやるかということについて事務当局にも検討を命じておりますし、相談も若干地方側にもいたして見ました。今日の場合といたしましては、総体的に見て地方財政の現状等から見て、地方の側は委讓を希望しないものが大体圧倒的に多いようである。從いまして今日では仮に国立病院の地方委讓というようなものを形式的に決定いたして見ましても、これは受取り手もなかなかないという状態でありますので、なおこの点を検討いたしてみたいと思つております。  それから厚生省関係の行政整理の問題についてでありますが、これは内閣委員会におきのしても只今いろいろ御審議を願つておる問題であります。一般的に今お話がございましたが、厚生省といたしましても、或いは人事、会計、庶務といつたふうな面の問題はそれぞれ人事、会計等の仕事の簡素化等にからみまして、これはなお簡素化する余地はないではありませんし、国全体の行き方に倣つて簡素化、能率化を実行いたしたいと考えております。ただ病院、療養所等に関しましては十分支障のないように配慮いたします。極く簡單に要点だけ申上げますれば、病院の看護婦については全然手を付けてございません。これも今日看護婦も定員を埋めるのが非常に困難でありまして、この定員は是非埋めたいと思つて努力をいたしております。それから医者等につきましても、もともとが国立病院は陸海軍の病院を引受けましたので、かなり辺鄙な所等にも、或いはそう人数の多くない所にも病院がございまして、これに対して陸海軍の時代には陸軍海軍の軍医さんたちが任命されて行つておりました。一般病院となつて見ますと、なかなか行き手がないわけであります。それで何年かに亘つて欠員があり、今でも国立病院の医者関係の欠員が千何百何名かあります。何年かに亘つて埋まりませんので、大蔵省のほうからは予算の編成のたびに、厚生省がこれだけ努力しても埋まらないような欠員なら落したらどうかと言われているのであります。これは埋めるつもりだということで頑張つて來ているわけであります。今日医師の中で余り長いこと連続的に欠員がありますので、その一部分は極く僅か定員を落しますが、その残つた部分については何とかしてこれをむしろ埋めたいと思つて努力をいたしているような現状でございます。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはまだ御答弁願つていない問題ですが、官房課長を左遷したという問題ですね、これは細かい問題のようですけれども、私は厚生省の存廃に関連してそういう問題が起つたということは非常に遺憾だと思うのですが、この問題についてもう少しお伺いしたい。  それから時間がございませんが、先ほどの保護費の補正の仕方などについても、ただ主食の値上りだけを補正したのでは足りない。今後又運賃とか郵便料金を値上げするについては又考慮されて行くことでしようが、私が腑に落ちないのは、この要保護者が予定より減つて行くという点ですね、これはまあどういう実情で減つて行くのか、適用を辛くしたためにそうなるのかどうか、その点には関係がなくて要保護者が減つて行くのかどうか、この実情です。  あともう一つ簡單に……。医療法が実施されてから地方にいてしよつちゆう問題になるのは、医療法を厳格に実施すると、今後地方の病院ではその適用にならないそれに合格しない病院は二十四時間以上病人を置けないということになるので、地方では病院を建てなければならないので、政府に地方起債を要求しているようですが、これはなかなか許されない。こういうのでこの前参議院から地方財政を調査に行つたとき各方面でこれを聞かされたのです。この点については厚生大臣としてどういうふうに対処されますか、医療法が国会を通過したときにはこういう問題が起るとは恐らく予想されなかつたのじやないか。医療法の実施と関連しまして地方では相当大きな問題である。第二の六三制じやないか、こういうようなことまで言われているぐらいです。この点についても御答弁願いたい。
  141. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 厚生省の総務課長の問題についてでありますが、これは今年の夏に総司令部のほうから或る種の文書を私宛によこしました、これは私宛ての親書でありまして、機構に関するこういつたふうな問題については、これは私のみならずほかの閣僚についてもセクシヨンから來たものがあるようであります。こういうものについては当然閣僚の勘で、向うのセクシヨン・チーフから來たものを自分が見るだけにとどめておるわけです。私宛に参りましたものも当然機構の改革については日本政府として今日責任を持つて検討中でありまするが、これに関する意見というものは承わつておくというだけで置いてあるわけであります。これに関しまして、官房の課長の扱いについて軽率な点がございましたので、内容がどうかという問題でなしに、そういつたふうな大臣当ての親書といつたような問題を勝手に発表するというふうなことは慎まなければならんことであると考えておるわけであります。それから今お話のありました要保護者が減つておるという話でありますが、要保護者は積極的には減つてはおりません。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや増加率です。増加率が予想よりは……
  143. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これは年々かなり違いますが、それを予算の組み方としては一つの義務費でありまするが、あとでどうせ必要があれば補正しなければなりません。組み方としては基準の單価にいたしましても、増加率にしても機械的に前年実績をそのままとつているわけであります。二十五年はその二十五年の当初等に比しまして、その間において要保護者がかなり増加をいたしまして、本年はその実績と比べてみますと、それほど増加もいたしておりませんので、こういうふうに予算が余つてつておるわけでありまして、特別に支給を抑えておるということはいたしておりません。これはご承知であろうと思いますが、今日では生活保護法は権利であるということになつておりまするので、そのやるとかやらんとかいうことを勝手にきめられないわけであります。從來は民生委員、今日では社会福祉事務所でありますが、これが保護の必要なしといつて蹴りますと、権利でありまするからこれに対して訴願を提起して参りまして、これは不当だということで保護が必要だという争いがときどき出て参ります。私もそれを裁いておるわけでありますが、勿論総体的に見まして濫出の防止ということは考えなくてはなりません。これは全体をよく見るようにいたしております。と申しますのは、從來民生委員制度でやつておりますと、かなりそこに人情にからまつて、まあ頼まれたからやつたというふうなことはないでもない。人口千人あたりの要保護者の率を見ましても低いところが十六人、高いところになると三十六、七人、まあ非常な開きがあるので、常識的に見ましてもその土地々々の人口の中におりまする要保護者の率というものはそれほど大きな開きがあるとは思えないような、非常にまあかなりな開きがあるというふうな点が今回社会福祉事業法によつてケース・ワーカーを要請して、そうして真に生活保護法をうまく適用して行くという理由の一つになるので、少くとも全国的な不平等を避けて、内容が平均にとれるようにいたしてはおりまするけれども、積極的に抑えるというようなことはいたしておりません。  それから最後にありました病院の問題でありますが、これは医療法によりまして御説のように十九べツド以下のこれも病院と言つておるのでありますが、それは病院と言えない、從つてたかだか四十八時間しか病院に置けないという規定を置きました。これは総司令部の側でそれくらいの規模にせいということを言われまして、日本の実情からいいますと、かなり無理だと思いながら、当時の事情から止むを得ず作つた規定であります。今日といたしましては、單に個人病院といわず、或いは国民健康保險の附属の病院にいたしましても、むしろその二十で制限をいたしますと、山奥の村なんぞ是非必要な所に病院を作ることができないということになつてしまう。非常に支障がございますので、十一月の十八日か十六日かに三年という期限が來るのであります。厚生省としてもこれを是非延長する必要があると思いましたし、それから又各医療衛生に関係のある方面でも是非必要であるということは考えられておりましたので、これも議員提出で法案が出されました。実際は一緒に御相談いたしましたけれども、すでに両院を通過いたしまして、それは十九べツド以下の所は四十八時間しか患者は置けないという規定を三年間延期をいたしまして、そうして三年後においてもいきなりもう十九べツド以下だつたら四十八時間以上は嚴禁だと、それ以上置いたら罰金だということにしないで、成るべくそれを守る、病人を置く範囲というのは二十以上にするというように努力するという趣旨を規定いたしまして、両院を通過いたしたのであります。從いまして、今お話のありましたように、地方にたくさんありますが、小規模の病院というものが駄目にならんので非常に金が要るといつたような問題はなくなりました。ただ総体的に見まして、今日日本のべツドはこれで十分であるとは思いませんので、結核のべツドの増加中心にいたしまして、公的、私的の診療機関のことは考えております。国の経費によりまする国立の関係のもの、それから国費の補助のあります公立、それから社会保險関係のもののほかに私立の診療機関につきましても、何かこれに対して金融の途を講じて、できるだけ私的の方面でもべツドの拡充のできるような方策をやりたいと考えております。
  144. 山下義信

    ○山下義信君 先ほど一点單価の引上の問題を途中で、厚生大臣の答弁一つだけ承わつたのでありますが、この問題はもう早くから問題になつておりましたので、今日こういう事態に至るまで厚生省の当局が適切な解決策をおとりにならなかつたということは非常に遺憾とするのでありますが、大臣は先ほどの御答弁で善処すると、円満に解決するつもりだということでありましたが、これはいうまでもなく荏苒いつまでも待つておることはできませんので、非常に不安な状態が漲つておるわけでありますが、近く解決ができるというお見込でございましようか。且つ又新聞はすでに厚生省の幹事案というものを出して十二円、十一円、十円といろいろな案が出ておりますが、ともかくも或る程度の一点單価の引上げをするということだけは間違いがないのでありますか。そのていどはいろいろこれから御裁断が下るのでありましようが、ともかくも單価の引上をすることによつてこの問題を解決する、又解決ができるというお見込みでありますかどうか、その点承わつておきたいと思います。
  145. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これはもう山下委員事情よく御承知だから私も申上げるのでありますが、只今お話のありました今日の事態になるまでに厚生省が放置をしたことは誠に遺憾だという御説であります、これは私議論を避けまして、十分将來の考え方の材料といたしまして承わつておきます。ただ御承知のように社会保險の診療費をきめる場合には、厚生省が天降りできめるということはよくないという建前になつて、社会保險医療協議会があつて、保險者の側とそれから医師会の側とそれから学識経験者が集まりまして、御承知のようにあそこで協議をいたす、そうして答申案を出す、その答申案に從つて厚生省はきめるということに相成つておるのであります。で、今の山下委員お話は、どうせこの問題はなかなかまとまる見通しがつきつこないのだから、だから医療協議会で話の熟するのを余り待たないで、むしろ厚生省が早くから案を出してしまつたほうがよかつたのではないかという御意見だとも思いますが。
  146. 山下義信

    ○山下義信君 いやそうじやありません。
  147. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) そうですが。これにつきましては国といたしまして何とかして、やはり医療協議会の本來の建前からできるだけとにかく歩み寄れるものなら歩み寄らせたいということを考えまして、今日も厚生省が今幹事案というお話がございましたが、まあ厚生省がいろいろ事実上お手伝いをして計算をいたしておりまするし、なお又答申が出た場合の措置の材料として私のほうも研究をいたしておるのでありますが、今日の幹事案は厚生省というよりも飽くまでも医療協議会の中立の立場の案として出ておるはずだと存じます。で、何とかしてこれを数日中にまとめたいと私が申しましたのは、歩み寄りができてそうしてみんなの一致した見解として厚生大臣宛の答申案を出して頂ければ非常に結構でありまするし、それが若し非常にむずかしいようであるのならば十分材料が出盡して討論をなさつた上で、或る時期にやはり医療協議会で私は決を採つて頂きたいと考えております。その場合にはその決をとつた結果とその間に現われましたその審議内容を十分検討いたしました結果、各保險経済等に及ぼしまする財政負担に対するいろいろな考慮等を廻らした上で決定をいたさなければならんと考えております。ただ二十二年の十一月にきめました一点單価をそのまま据置くということが妥当であるとは思われませんので、これが何十銭上げるか何円上げるかということを別問題といたしまして、やはり据置を強行するということは、無理であろうと思つております。
  148. 山下義信

    ○山下義信君 厚生大臣はいろいろおつしやるのでありますが、非常にまあ丁寧な御答弁でありますけれども、要領をなかなか得ないように御答弁になるのでありますが、協議会、審議会の答申をお待ちになりますということはそれはその通りでございまするが、併し法律は厚生大臣が決定するとあるのでありますから、過程はその通りでありまするが、では審議会が答申をしなければいつまでもこれはできないのだ、審議会に荏苒今日に至つた責任を……そういう組み方になつておるということで御答弁になりますのはどうかと実は存ずるのであります。併し一応御答弁でありまするがとにかく歩みよりを見てそうして解決を早くするということは、要するところまあともかく率直に單価の引上げをこれはせなければならんだろうということをおつしやると思うのでありまするが、結局大臣の言われますようにこの單価の引上げをいたしますと、言うまでもなく、幾らになさいますかどういうことで落着きますか知りませんが相当大きな数字になつて参りまして、保險経済影響を及ぼしますのでそれだけのものが出ましたその尻はどういうふうにしてお納めになるというお考えでございますか、これは被保險者の保險料の引上げによつてその収支のバランスをおとりになる考えでありますか。或いは国家の負担によつてこれをバランスをとるというお考えでございましようか、その單価を引上げましたのちの保險経済のバランスについてはどういうお考えを持つておいでになるかということを簡單でよろしうございますからお答え願いたいと思います。
  149. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これは各種の保險及び保險に類する制度経済の内容が違いまするので、個々に検討をいたしまして善処いたしたいと思つております。ただ基本の方針といたして考えまするのは、保險料の引上げを成るべくしたくないということが一点。それからもう一つ、保險経済への影響としては、恐らく国民健康保險が一番骨が折れる。これについては今日社会保障制度審議会の答申案を採択するという趣旨をも含めて、国民健康保險の医療費の一部負担を実現したいと思つておりますが、特にこの際この問題の結末としてもそれは是非実現に努力する必要があると考えております。
  150. 山下義信

    ○山下義信君 お足の惡い厚生大臣にしばしばお立ちを願うのは恐縮なんですが、この際保險医の総辞退問題ということが起きました。これを更に、單価の引上げということでなくこの問題を契機といたしまして、一つには診療報酬制度に対して、一つには保險医制度に対しまして、根本的に御検討に相成るという御意思がありますかどうか承わつておきたいと思います。
  151. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) この問題を契機としてというと少し感じが強過ぎると思いますが、社会保障制度審議会の答申の趣旨に副いまして、社会保險の内容の改善充実化という方向、この一番の基本は社会保障制度の改善拡充という方向でありまするが、そういう面での改善の努力というものは今後ますます続けて行きたいと思つております。
  152. 山下義信

    ○山下義信君 最後に又小委員会ができますからそのほうで伺いたいと思いますが、私はこの際厚生大臣に伺いたいと思う。それは戰争遺家族の援護の問題でありますが、補正予算にも一応調査費が出ておる。本委員会でもその調査費につきまして若干の質疑が行われたと思つておりますが、すでに本日あたりは政府にお持ちになつておられます、政府と言いますか厚生省の中に持つておられます。戰争遺族対策の協議会、関係の各部局長が委員になつておられるようでありますが、あなたのほうで大変御心配になつておられまするこの戰争遺家族のこのやり方というものを、根本的にどうするかという大体の結論が出ましたでしようか、どうでありましようか。即ち問題は言うまでもなく、遺族の援護に対しまして国家補償という考え方で戰死者に対しまする一律平等の国家補償をして行くか、或いはその遺族に対しての社会保障的見地で、生活保障的考えを以て遺族の生活を保障して行くという考え方で行くか。この大きな二つの考え方、関連いたしましては、その戰争遺家族の対象の範囲をどうするか、ただ軍人軍属に限るか、或いは学徒動員、或いは義勇隊、或いは徴用というようなものまでも真に公務に、或いは公務に準じてその当時戰争直接の被害を受けた、戰病死同様に扱うべきそういう人たちにも、この戰争遺家族の問題についてと同様にできるだけの援護の手を差延べるという方針で進んでおいでになりますか。この二つの根本問題につきまして厚生大臣はどういうふうにお考えを進めておいでになるかという点を承わりたいと存じます。
  153. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 只今お話のありました遺族、傷痍軍人等戰争犠牲者の援護の問題につきましては、この際是非解決をいたしたい。できるだけ手厚く解決をいたしたいと思つて努力をいたしておる次第でございます。結論を得たかというお話でございますが、研究を相当進めて行きましたが相当大きな数字で異論のある問題でございまして、一本の結論という形になかなかなつて参りません。やはり今もお話がございましたように異論のございまする点は援護の対象の範囲をどういうふうにするかという問題が一点。それからもう一つは、要するに旧恩給法に似せた方向をとるか、似せないほうがいいかということが異論の一番大きな点であります。これは事務当局のみで検討をいたしておつてもならん問題でありますので、一応幾つかの或いは二つなり三つ考え方にまとめて、その間に中間的な閣議を開いてみたらどうかと考えておるわけでございます。ただ私が所管大臣として考えておりますことは、今回の戰争犠牲者の援護につきまして、何と言いましてもやはり一番主になるものは軍人軍属の傷演者及びその死亡者の遺族というものが中心になると思います。併しこの過去の大戰争のいたましい犠牲という点ではいろいろなニユアンスの差はありますが、同じような被害者がありますので、私はまあ対象の範囲はこの取扱等につきまして若干の相違はございましてもできるだけ十分手を盡したいと思つております。今御指摘になりました徴用工でありますとか動員学徒というような人たちに対しましても、これは亡くなられたかたに対する何らかの措置というものは、これを含めて解決しなければならんと思います。  それから援護の立て方の問題でございますが、これにもいろいろ考え方がございます。若し何ら財政負担をかまわずに何千億かかつてもかまわんということになりまするならば、やはり戰争犠牲者に対して国が報いるという観点からいつて、誰も彼も一律に平等に而も十分手厚くということが趣旨であろうかと思いますが、実際問題といたしましてなかなかれだけの千五百億とか二千億とかいう金を取るわけにも参りますまいが、やはり戰争犠牲者に対して国が報いるという考え方、それから実際に困つておる人たち、特に子供をかかえておる未亡人といつたような人たち、それからいろいろ労働に支障があつたり、或いは又一般家庭生活を営むに支障のある傷痍者の人たちといつたような人たちに対しては、まあ国が戰争犠牲者に報いるという以外に、実際的に今後の生活の途を手厚くする方法を噛み合せて参りたいと思いまして、先般両院の厚生委員会においていろいろ御検討相成つて御報告をお出しになりました向きも十分参照いたしつつやつておる次第であります。
  154. 山下義信

    ○山下義信君 厚生大臣の只今の御答弁は私は非常に満足するものであります。と申しますのは、從來戰争犠牲者のつまり遺家族援護の問題になりますと、常に軍人軍属にのみ局限されておるかのごとき印象を与えておつたのでありますが、戰争犠牲者という範疇の中に広く公務に殉じて、強制的に当時の軍の命令といいますか、そういうものによりまして或いは学徒動員隊となり、或いは義勇軍的な組織によつて市民が狩り出され、或いは徴用工というがごとき立場に置かれまして、そうして強制的に軍のために駆使せられた者が、直接空襲等の損害によりまして生命を落しましたその犠牲者に対して、やはり戰死者と同じような形で以て国家が何らかの考えをそれに対してするということについて、できるだけの努力をするという大臣のお考えに対しましては、是非そういう方向に向つて御努力を願いたいと思うのであります。つきましては、今回の補正予算に一億という遺家族の実態調査の費目が計上されてあるのでありますが、この遺家族の実態調査は從來厚生省のほうでも御心配になつて、しばしば一部調査等もなされたこともあるわけでありますが、先般の国勢調査に際しましても、遺家族の実態調査を是非その中の調査項目にしてもらいたいという一部の要求があつたのでありますが、遂に実現を見なかつたのでありまして、今日といたしましては実に残念に存ずる次第であります。併し今回の一億の調査費をお使いになりましてその調査をなさるに際しまして、調査項目の中に十分それらの将來考慮せられるであろう対象者につきまして調査項目をお入れに相成りませんというと、又同様に後日後悔のほぞを噛むというようなことが起きるのではないかと考えられるのであります。一億という金額は、極めて広範な対象者而も多数の対象者の実態を調査するということになりましては、十分ではございません。併し從來基本的な調査をお持ちでございまするから、この金額で御調査が或る程度できるであろうと思いますが、その調査を如何にするか。又如何なる調査項目、即ち調査の対象をどう選ぶかということは至大な関係があろうかと考えまするので、あとで二度も三度も調査はできないのですから、この際遺家族の実態調査をなされまするに際しましては、できるだけ広範な落ちのない調査を十分にしておくということが必要であろうと考えられまするが、この調査の局に当られまする厚生大臣としてのお考えはどういうお考えでありますか承わりたいと思います。
  155. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これは今日練つておりまする案がまあもう少しで或る程度形をとつて参るかと思いますが、それに関連して考えたいと思つております。今山下さんのお話にもございましたように、基礎資料というものは何遍にもやらないで、やはりできるだけこの際調べておくべきだという御意見は私も考えておりますので、十分そういうような点も含んで決定をいたしたいと思つております。
  156. 山下義信

    ○山下義信君 なお一、二厚生大臣にお聞きしたいと思いますが、委員長よろしうございますか。
  157. 和田博雄

    委員長和田博雄君) どうぞ結構です。
  158. 山下義信

    ○山下義信君 今回の風水害の対策に際しまして問題となり、又考えられております問題でありますが、それは風水害に際しまして罹災民に対して応急救助をいたしますることは、災害救助法によりまして規定されてあるわけでございますが、或いは緊急避難の処置をいたし、或いは衣食住に対しまするところの緊急援護をする、そういうような都道府県が、罹災県が使いました費用が、その県の基準歳入の百分の一以上の費用が要つた場合でなければ国が補助をいたさない、こういうような規定に災害救助法がなつております。そういたしますと、例えば山口県でありますとが、福岡県或いは熊本、長崎等々又然りでございますが、そういう握り飯の炊出しでありますとか、或いは臨時の小屋がけをしたとか、或いは毛布一枚被らせたとかいうような緊急の処置費を都道府県が使いました費用が、およそ二千万円も、三千万円も炊出しの費用を使つた場合でないというと、国の費用が一文も、これに補助が出て來ないというような規定になつておりまして、今回のルース台風の被害の各県におきましては、この災害救助法のなかなか適用というものにつきまして、いろいろ要望があるるわけでございますが、政府におきましては、できるだけそういつたような災害の場合におきまする応急救助の処置費につきまして、できるだけ国が、そういう補助のできまするような考えをお持ちになつて災害救助法のそういうような補助率等の点につきましても、今後お考えになりまする御意思がありますかどうか、即ち災害救助法の必要な部分に対しまして、改正をなさいますお考えがありますかどうか、又災害救助法の改正が行われると、できるだけ風水害の罹災者に要しました費用についての都道府県の補助等につきましても、これを適用するという観点から、今回のルース台風の被害等にもこれを適用するというお考えがありますかどうかという点を承わつておきたいと思います。
  159. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 災害救助法第三十六條の規定が少し辛過ぎるという点につきましては、実は厚生省としても痛感をいたしておりまして、この本年度中の災害に関連いたしましても、改訂したいと思いまして、いろいろ交渉をいたしておつたのであります。ところが今丁度地方税法の改正の問題が絡んでおりますので、これに絡みまして検討をいたしたいという意見が出て参りましてその後厚生省といたしましても、いろいろ検討いたしました結果、今日直ちにこれを改訂するということはなかなか困難でございまするので、今度の地方税法の改正と絡みまして、是非第三十六條の規定をもう少し緩和する方向で改訂をいたしたいと考えております。で、今度のルース台風の処理につきましては、間に合いかねると思います。
  160. 山下義信

    ○山下義信君 最後に一つつておきますが、政府來年度に、今日厚生省がいろいろ持つておりまする公衆衛生関係の仕事、いろいろ食品検査でありますとか、或いは公衆浴場の取締りでありますとか、あんま、はりでありますとか、宿屋でありますとか、そういつたような公衆衛生関係の行政をお持ちになつている、そういうような法規もありますが、この公衆衛生関係の取締法と申しますか、そういう規定というようなものをすべて廃止して、そうしてその仕事を地方へ委讓してしまつて、そういう取締り的なような行政は皆やめてしまうというような考えをお持ちになつているのではないかと考えられる節がありますが、公衆衛生行政面に対しまする将來の厚生省のお考えはどういうお考えでありますか、承わつておきたいと思います。
  161. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 只今山下委員からお話のありましたような極端なことを考えておりません。実はこの夏政令改正諮問に関する委員会が答申案を出しました中には、公衆衛生関係の問題については、この基本法をやめて、そうして大体この地方の條例等に任せておいたらいいじやないかという意見が出ましたけれども、厚生省といたしましては、やはり国できめておくほうがいいと考えております。仕事の実体に関しましては、今日公衆衛生関係の仕事については基本法規を国で定めまして、仕事は殆んど全部地方公務員の手によつて行われておるのが現状であります。從いまして地方に任すと申しましても、要するにもう基本法をやめてしまうというところまでやるかどうかということが、今日厚生行政については地方関係について残つている唯一の点であります。これはやはり基本的な問題は国の法律できめておく必要があると考えております。勿論仕事の内容等につきましては、これは若干今まで要らざることがあつたと思います。例えば食品衛生法に基きまして、料理屋の調理場を検査することはいいことでありますが、秀とか、優とか、良とかというようなので、点数をとつて貼紙をしておく、これにとかくいろいろの話がありまして、おじぎの仕方がよかつたから優をもらつたとかというようなことはないはずなんですが、やはりデマの種になる。で、いらんことでありますので、こういうものはやめたほうがいいと思つて、すでにやめてしまいました。今後においても仕事の簡素化は図つて行くつもりでおりまするが、基本法についてはやめる意思はございません。
  162. 山下義信

    ○山下義信君 それでは旅館業法、クリーニング業法、理容師法等の、これら公衆衛生関係法律を廃止するというお考えはないと承わつてよろしうございますか。
  163. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 只今申上げました通り、廃止する意思を持つておりません。
  164. 山下義信

    ○山下義信君 厚生大臣に対します質疑はなおあるのでございますけれども、いろいろ内村君がなされる質疑があるようでありまするから、私の問題は留保しておきたいと思います。
  165. 内村清次

    ○内村清次君 私はこの木村委員から、先ほど未復員者の問題の質問がありましたが、それに関連いたしまして、二、三質問したいと思います。厚生大臣も、先般未復員者の留守家族のかたがたが千鳥ヵ淵であのような祈りをなされた。これには総理の代理として、御関係になりましたからしてよく家族の気持もお知つてであろうと思いますが、先般私も吉田総理に、今後の未復員者の引揚について総理の今日までの外交の方針、とつて來られた経緯、これによつては今抑留されておりまするところのかたがたの地区の国が、これが感情的に日本に対して余り古くない状態であるからして、この未復員者が近い将來において、こういう留守家族の切ない希望に副うことができるであろうかということを私は質問したのでありますが、総理は国連その他に訴えて、そうしてやつて行こうというようなことでありますが、問題はこの條約の條文に入れてもらいたいということも切なる希望の一つであつたはずです。併しながら根本はやはり内地に帰つて頂かないといけない。これは留守家族の心からの希望であろうと思うのですが、その衝に当つておられます、又援護のほうにも当つておられるところの厚生大臣としては、その見通しについてどのようなお考えを持つておられるか、それが第一点。
  166. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これは外務省設置法と、厚生省設置法を御覧頂けばわかることなのでありますが、実は引揚げそのものは外務大臣所管でございまして、專任外務大臣がおりませんのですから、私が実は舞鶴からこつち側の仕事に食つつけて、向う側の問題についても何かと関係せざるを得ないような立場になりまして、千鳥ヵ淵の問題につきましても、むしろ留守家族のかたがたの問題にされたのは援護関係の問題ではなく、引揚げそのものの問題でありました。私は総理兼外務大臣のむしろ代理という資格で家族のかたに対したわけであります。今日今の問題でありますが、これに関しましての見通しということの点につきましては、私が申上げるのは如何かと思います。ただそれについては、ソ連と中共の関係は別々であります。ソヴイエト・ロシアのほうは、御承知のように昨年以來八名を残して、そうしてあとは全部帰したという通知がありました。その後その八名は病院へ入つているということでありましたが、七名をこの間送還して参りました。たしか残り一名しか残つておらんというふうになつておりましたが、その一名が死んだかどうか、どつちかわかりませんが、いずれにいたしましても、最後の一名の問題ははつきりした記憶がありませんけれども、ソヴイエト・ロシアとしては、もう公的に表明したところではいないのだ、從つて引揚関係の問題はないということを申しております。これは当面ソヴイエト・ロシアが政府としてはつきり言つておられますることなので、正面切つての話として引揚再開ということはいろいろむずかしい問題がありますことは、私は所管でありませんからわかりませんので、想像いたすのであります。ただ事実は非常に今日なお生きてソ連領におる人があると思いますので、世界の輿論の力と相待ちまして、何らかの形で引揚げが直接ソ連を通じてなり、或いは又中共領を通じてなり実現することを私は切望いたしております。中共地区の邦人につきましては、これはときどき手紙等もあるようでありまして、或いは軍に從軍させられていろいろ動いている人たちとか、或いは流浪している人たちがあるようでありますが、それも今後の問題といたしまして、どういう形になりまするか、外交関係所管しておりませんのでよくわかりませんが、何とかして事実上とにかく一人でも多く帰してもらう方策を講じたいと思つている次第であります。
  167. 内村清次

    ○内村清次君 これは当時の留守家族のかたがそういうお気持を、あなたを通じて発表しておつたようでありますが、特に今回の講和條約の調印後におきましては、先ほど大臣も言われましたように、中共地区に対しましても相当の残留者、抑留者がおるからして、この方面にこの要請をいたしました団体の代表者がみずから行つて調査をしたいという希望を述べておつたことも御承知でありますが、このようなことに対しまして御努力なさる気持があるかどうか、具体的な、又政府として別な方法でも、調査団を派遣するというような御処置をとられるかどうか。
  168. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) これは私も実は援護関係を担当いたしておりまする関係から、抑留者の家族のかたがたともよくお目にかかりますし、誠に切実な、お気の毒なお気持も実によくわかりますし、いろいろ経済的にも、或いは又物価関係等でもいろいろ痛ましい問題がございますので、今日私が政府の代表として申上げるというようなほど当面の責任者として所管いたしているわけではありません。そういう意味でなしに、私も閣僚の一人として感じますことは、表向きの問題のほかにもとにかく盡すべき手があるならば、あらゆる手を露して、できるだけの手配はすべきものだと考えております。
  169. 内村清次

    ○内村清次君 これは二十六年度の当初予算の引揚関係は三十六億九千九百万円組んでありまして、今回七千五百万円の予算を又追加されておりますが、これは從來国会におきましても、援護対策がどうも手ぬるい、而も又引揚の通知があつても配船の準備がない、或いは又差当つての収容所もないというような、こういう熾烈な国会の要望もありまして、これは先年あたりから、こういう引揚関係の費用が増加されて來ましたことは結構なわけでありますが、問題は今年は残念ながら大した引揚はなかつたように思いますが、どのくらい引揚があつて、そうしてそれに対して予算関係はどのくらいまだ残りがあるのか、この費用関係のですね。その点について内容を説明して頂きたい。
  170. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 年度当初からの引揚げが二百何名かあつたと思いますが、細かい数字は存じておりませんので説明員に答弁させたいと思います。
  171. 田島俊康

    説明員(田島俊康君) この年度が始まりまして、帰りましたものの最も主なものは約二百名が英軍の治下におりました戰犯者でございます。その他は例えば先般のソ連からスモールニー号で帰りました八名でありますとか、グアムでありますとか、アナタハンでありますとかというふうな具合でありまして、全部で二百五十名少々になつております。予算のことは只今扶養額その他を検討されておりますので御報告いたすまでに参つておりません。
  172. 内村清次

    ○内村清次君 厚生大臣はどうですか、その予算関係の概算の報告もございませんか。
  173. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 三十二億の中で大体不用になりそうな見込の分が十数億であつたかと思います。その中で御承知のように五億は引揚住宅の関係に流用が認めてあるわけでございまして、それだけのものは多少の不用額が別に流用されて、すでに用途がきまりましたものがあるのであります。
  174. 内村清次

    ○内村清次君 これは只今十億の間に引揚住宅のほうにも出したというようなお話でありますが、二百五十名の引揚者にそうたくさんの費用は要らなかつたと思うのでありますが、この点は一つお調べ頂きまして別途お知らせをお願いしたいのですが、私は從來こうやつた準備をされておつた引揚関係の援護対策が、年末になつて來まするとこれがそこから引かれて行くのですね。結局それが大蔵大臣のほうで目を光らかして、そうしてこういう引揚げて來られた後の引揚者に対するところの援護対策ならばよろしいのでありますけれども、そのほかにこの予算の流用というものがなされて行く。これは一つ厚生大臣は責任を以て、私たちはこの引揚のための予算として承認をいたしておるのでありまするからして、この点は一つ責任を以て、若しも引揚者が少かつた場合においては、これは是非引揚者の定着の問題に対して、これを一つ十分費用を出してやるというようなお考えをして頂きたい。特にこの未復員者の給与法が、御承知のごとく先々国会でありましたかやはり年末にこの三百円から千円というような極く僅かな給与法の改正をしたのです。そこでまあこの年末におきましても、これは恐らく留守家族のかたがたは当時も年末手当を一つ出してもらいたいというような旺盛な希望もあつたのでございますが、厚生大臣はこの未復員者の給与法の改正に対してどのような御態度であるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  175. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 先ほどの三十二億の金額の内容、不用額の見通しについては後日御報告申上げます。この金額の中には御指摘のように未復員者給与法の適用のために必要な経費、その地引揚関係の問題が一切入つておるわけでございます。不用ができました場合にはできるだけやはり抑留者の関係、或いは引揚者の住宅関係、その他こちらのほうに使いたいと思つておるのでありまして、今後もそういう方向で努力いたして参りたいと存じます。  それから未復員者給与法の基本の金額の問題については、これは政府としましても、実は先ほど木村委員からお話のありました療養期間の延長問題とからんで改訂をいたしたいと思つてつたのでございます。たまたま遺族、傷痍軍人等、戰争犠牲者の援護対策の問題が出て参りましたために、この未復員者給与法の問題もこれとからんで解決をいたしたいと思つておりますために、この基本金額の問題は援護対策のほうの内容に移りまして、そうして取りあえず延長の分だけを片付けて行きたいと思つております。十分考えてみたいと思つております。
  176. 内村清次

    ○内村清次君 これも未復員者の給与法の改正は從來参議院の特別委員会でやつておりますが、問題はやはり財源関係で、折角法律を作るにいたしましても成るたけ一つ円滑に行きたいという気持で今日まで進んで來たのでありますが、先ほどの大臣の御答弁でまあ改正も了承のような御答弁でもありますし、とにかくあの給与法は、埋葬料にいたしましても或いは又旅費の点にいたしましても、或いは又給与額にいたしましても非常に比較にならないように低いのであります。これでは適用を受けますところの留守家族のかたがたが到底忍び得ないというようなことで、年末手当というような要求がなされて來るような情勢もあるのでありまするからして、これは是非一つ参議院の特別委員会でも熱心に取上げておる問題でありまするから政府も協力して頂きたい。  それから先ほど木村委員から言われました未復員者給与法改正は、これは大臣も三年間は延長になつたのだと、勿論これは私たちの委員会で法律は延長いたしました。問題はこの療養費が非常に問題になつておりまして、五億一千六百三万円だけがこの十月、十一月、十二月の三カ月間で、何とか一つ今の余裕金を持つて行くから財源のほうは心配ないのだというようなお話でありましたが、そういうような本当に心配がないかどうか、これは切実な問題でありまして、やはり国立病院に入院しておられる傷痍者のかたがたは、非常に療養の完全な手当、又は療養費の国家に対するところの希望、こういう希望が旺盛なのでありますから、具体的にその内容の点についてお話が願えれば結構だと思いますが、患者はひとえにもう少し額を余計にして頂きたいという希望があるようであります。
  177. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 未復員者給与法に基きまする所要の費用は、二十六年度当初の予算で、今お話のございました通り五億一千六百三万円でございます。ただ誠に不幸なことに当初予定いたした引揚がまるでございませんで、戰人などを中心にした僅か二百五十名というだけでありました。引揚を予定いたしまして考えました所要額はまるで要らなくなつて参つたわけであります。そこで二十六年の十二月までの所要の見込は、これはもう今日も十一月の半ばでありまするので、かなり正確につけられますが、大体三億六千二百万円でありまして残りがかなりあるわけでありまして、一億五千万円ばかりなおあるわけであります。ところが、今日未復員者給与法に出ております約五千数百名か六千名ばかりの人たちの手当の関係を考慮いたしますると、二十七年の一月から三月までの所要見込額は一億三百万円、かなりの余裕が出て参るのであります。從いまして予算の面からは十分心配はないように、又これはできることと考えております。
  178. 高良とみ

    高良とみ君 関連して。まだほかの援護の問題がたくさんありますけれども橋本大臣にお伺いしたいのは、先ほどのお言葉で中支方面に残つております同胞の救出のためには、あらゆる手を、公の手を通じ、又民間、或いは形式的でも非形式的でも盡したいということを承わつて大変力強く思つたのでございますが、この講和を契機としてアジア各地におります同胞は切に内地からの援護の救出の手を待つておることは、万々御承知のはずだと思います。つきましてはそれだけ予算もございますし、東南諸国の好意が日本に対してあります今日、もう少し間接的な方法を通してでも、同胞のために手をお差延べになる方法があり、又それをなさる御意思があるかどうかということを伺いたいのです。それは外務省関係でございましようが、インドを通して中共へ同胞の帰還に対して懇請があつたやにも伺いますが、これについては、御発表がないわけであります。それは香港或いは中共関係では次第に日本に対する感情はよいほうには向いておらないことは御承知の通りでありまして、中におります同胞たちはその将來を案じておるわけであります。そんな点から日本の東南アジア諸国に対する関係がもつと惡化しません間に、賠償その他のことに対していろいろ困難が起るだろうということが予想されますので、日本に対して好意を持つておりまする国々を通しまして、殊にインド、ビルマを通しまして、或いはラングーンからもニユーデリー等からも、同胞の帰還のために途を開いて行けば行ける方法があると、私個人的に信ずる確証を持つておるのでありますが、そういうことについてその残つた予算等をお使いになる御意思があるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  179. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 予算を使う、使わんという問題はこれは別問題でありまして、必要なる予算であるとすればどこからでも捻出をいたさなければなりませんが、今日なお未引揚の人に対する手を盡す途があれば、これはもう手をできるだけ盡してもらいたいと思います。その場合に考えられますることは赤十字社の手を通ずる方法が一つございましようし、それから今御指摘のありましたような第三国と申しますか、日本と正規の外交関係に入つておる国々を通ずる方法もございましようし、或いはその他もう少し民間的な方法があるかと思いますが、今日私はその方面の責任者でございませんので、どういうふうな手が打たれつつあるか、或いは又どういうような手を打つ可能性があるかということは私存じておりませんので、突込んでのお話は外務省のほうにお尋ねを願いたいのであります。ただ私は先にも申上げました通り引揚援護関係を担当いたしておりまする関係で、実にこの引揚を何とかして解決したいということを真に痛感いたしますので、私が政府部内におきまする一つのポストを占める者といたしましても、これはできるだけもう手がありさえすればやる努力をするということを御答弁申上げて、本日の私のお答えといたしたいと思います。
  180. 高良とみ

    高良とみ君 了承いたしました。
  181. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から開会いたします。    午後五時十五分散会