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1951-11-19 第12回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十九日(月曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————   委員の異動 十一月十六日委員岡田宗司君辞任につ き、その補欠として、小林孝平君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            小林 政夫君            藤野 繁雄君            佐多 忠隆君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君            石原幹市郎君            白波瀬米吉君            一松 政二君            高良 とみ君            内村 清次君            小林 孝平君            小酒井義男君            山下 義信君            山田 節男君            岩木 哲夫君            西田 隆男君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       東條 猛猪君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員会設置の件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開きます。  先ずお諮りいたしたいことは、十七日の委員長及び理事打合会で協議決定いたしました補正予算審査日程及び小委員会設置の件でございます。只今手許に配付いたしております審査日程表によりまして、審査を続けて行きたいと思いますので御了承願います。  次に、只今審査いたしております昭和二十六年度補正予算内容は、物価賃金食糧減税地方財政イソベントリー・フアイナンス等各般に亘つて重要な項目を含んでおりますので、委員会における総括的質疑だけでは審議を十分盡すことができないと思いますので、一、政府出資及び投資に関する小委員会。二、農林に関する小委員会。三、地方財政平衡交付金に関する小委員会。四、物価給与引上げ及び減税等に関する小委員会。以上四つの小委員会を設け愼重審査することになりました。委員長理事打合会で決定した通り四つの小委員会を設けることに御異議ありませんか。
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 第四の小委員会物価給与行政整理等々、生活に直接関連のある問題でございますので、それに是非社会保障に関するテーマを入れた特別委員会をお願いいたしたいと思います。
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今佐多君の御意見で、第四の委員会社会保障に関する問題も入れた委員会に、この第四委員会をすることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御異議ないと認めます。
  6. 内村清次

    内村清次君 ただこの質疑日程が二十二日まででありまして、今日を除外いたしますと、あと三日間ですね、これで全体の質疑が終つてしまうかどうかという問題です。これは一応委員長のほうでは理事会におきましても、質疑通告者を勘案されまして、そうして日程が作成されたと思いますが、これは完全にそういうような質疑通告者を勘案した日程であるかどうか。
  7. 和田博雄

    委員長和田博雄君) お答えいたします。そうでございます。質疑通告者も勘案をいたしまして、そうして今までの審議状態も勘案いたしまして、委員長理事打合会で決定いたしました。ただこれはやはり大臣出席如何によつて審査が進行するかしないかも決定して来るだろうと思います。そういう点も我々のほうといたしましては、委員長のほうにおいて大臣出席を促進いたす。そういうことも考えた上でやつておりますので、一応この前の理事打合会では、只今手許に配りましたような日程がきまつたわけであります。そこは今後の進行如何によつて多少の何があることは、これは否定できないだろうと思います。一応そういうふうにきめたのであります。
  8. 内村清次

    内村清次君 ただ先ほど委員長のちよつと言われましたように、大臣出席或いは時間嚴守、これが從来におきまして、そういう経緯のため或いは二十二日の最終質疑においては、まあ十二時頃まで無理してやるというようなことを、それでもまだ通告者が止むを得ず通告を取消さなければならんというようなことも、今までとつて来た経緯の中からもそういう事態がありますからして、そういうことのないように、一つやはり円滑に行きますような状態で、この日程が終るように私は注意いたしておきます。同時に又これが行きませんならば、私たちも又そう無理して質疑をしたい人が取消すというようなことが、これはいやしくも参議院の予算委員会ではないように、その点は一つ嚴格に守つて行かれますように、私は特に希望しておきます。
  9. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 承知いたしました。殊に小委員会がありますので、委員のかたは各小委員に分割されますが、併し小委員会を二日とつておりますので、そこでも十分な御質疑等ができると思います。それでは御異議ないものと認めまして、そのように決定いたします。なおこの小委員の構成でありますが、これは予算委員全部を四つの小委員に分けまして、各小委員の数は不均衡にならんように、委員各位の御希望を斟酌いたしまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御異議ないものと認めまして、そのように決定いたします。  それでは前回に引続きまして質疑を続行いたします。堀木鎌三君。  この際御注意申上げておきますが、代表質問のかたの持時間は二時間でございます。他の委員かたは関連質問を許されておりまするから、その点を御了承願います。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は先ず安本長官にお聞きいたしたいと思います。周東安本長官は二十六年度の予算の編成に当りまして、我々に自立経済審議会報告を堂々と本会議の席上で、相当の時間かかつておやりになつたわけであります。そのときの安本長官の御説明をここで繰返す煩を避けたいと思うのでありますが、ともかくもその他の委員会におきましても、日本経済のその後の進捗というものを国民所得の面から見ましても、或いは生産指数の面から見ましても、輸出輸入規模から申しましても、朝鮮動乱によりまして、相当当初の予想を上廻つておりますのをいつも御説明になつておるのであります。たしかに自立経済審議会計画によりますると、その達成年度、二十八年度の目標というものに非常にほぼ近い指数、或いは場合によりますと、それより上廻つた指数が出て参つております。そういう点から見ますと、如何にも日本経済というものが、朝鮮動乱によつて規模を拡大したということが言えるのでありますが、その点だけを常に抽出して、取出して御説明になる。併しあのときのお約束では、大体二十八年度にあの生産規模なつた場合には、国民生活は大体九〇%、戰前の九〇%になるということを目標として自立経済計画をお立てなつた。そうしますと、今実際その点はどうなつて参るか、この点についてお聞きしたいのであります。これは安本でお出しになつておる数字でありますが、十一月の統計を見ますと、実質家計指数というのは大体八月六五及び六七、実は朝鮮動乱以来、動乱前に八〇%近くまで一応の国民生活水準上つたということは、これは御承知の通りであります。ところが生産規模が拡大し、輸出入が殖え、そうして国民所得が殖えて来ておるという数字をお出しになりながら、実際実質家計指数は落ちておる、国民消費水準は落ちて来ておる。どこの国も世界各国軍需工業と軍備に対しますところの態勢と、国民生活の問題との調和というところに一番苦労がある。周東安本長官としては、敗戰日本経済を復興して参るということと、国民消費水準生活水準を維持して行く、低下せしめないように、否、幾分でも毎年上昇しながら、そうして経済自立を図ろう、こういうところにこの自立経済目標があつたことは確かなんでありますが、どうして他の消費指数上つて参りましたのに、国民生活水準だけは実は逆に低下しておるという点について、どういうところに理由があるのか、それに対しての先ず御所見を伺いたいと思うのであります。
  12. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お答えします。今御指摘のように、経済自立三カ年計画というものに現われました一つ計画数字は御指摘のように、二十八年度頃から八九%くらいまで生活水準を持つて行きたい、而も生産については鉱工業生産は一三〇という工合に考えておつたのでありますが、大体においてその後の状況は、生産指数はもつと上廻る形になりました。名目賃金増加も非常に殖えておるわけでありますから、価格の上昇ということも、これは特に日本の置かれた地位から考えまして、止むを得ざるところではあると言え、原材料を遠く海外に仰いでおるということ等のために、価格騰貴影響を受けることがやや大きかつたために、実質賃金増加率というものは非常に低かつたということが、今の生活水準に及ぼして来ておる点であると思います。一時は七七・八、朝鮮事変前までは上りましたが、その後における価格上り方のために七〇前後になつておることは、主としてそういうところに原因があるわけであります。
  13. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は事実がどうなつたかということを安本長官から聞かなくても、数字手許に持つておるわけであります。殊にあなたのところで、お作りになつ数字を以て、それを基礎にして御質問しておるのですから、それに対する対策はどこにあるか、今原因とみなされる主な点は率直にお認めになつたので、私は非常に喜びます。或いはいろいろとお言いになつて、どこに原因があるかわからないような御答弁を頂戴するのじやないか、こう思つてつたのですが、この自立経済計画の「計画期間中には第三次世界大戰は勃発しない。」、「しかし米ソ勢力間の緊張は今後も継続し、世界的な軍拡傾向は益々発展する。」。これは大体前提としてまだ戰争は起つておりません。そうしてこの勢力緊張はやや継続しておる、これはわかつておるが、その前提になつておる二つの問題はわかるのですが、その次にある「(ハ)、国内インフレーシヨン政策は回避し、一ドル三百六十円の為替相場は変更しない。」、この下のほうの一ドル三百六十円の為替相場は変えないと言われることは、これはお隣りにお出でになる大蔵大臣が、おれは六億ドルを持つているのだ、心配しなくていい、三百六十円の引下げは絶対ないのだから……、下のほうは合つているのですが、この「インフレーシヨン政策は回避し、」という諸政策、今おつしやいましたような物価が非常に予定より上廻つた、これは確かだと私は思います。この物価の上廻つたことに対して、そうして物価上つたことが国民生活水準低下を来たした。そうすればその水準低下を来たさないようにされるのが、私はあなたがたの、安本長官としての御責任じやなかろうか。つまり言葉を換えて言えば、物価を先ず上げないこと、物価が上る場合には全体の国民所得の配分というものが適正化しなくちやならない、こういうふうになるのでありますが、そういう点についてどういうふうなお考えを持つておられますか。
  14. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お答えしますが、政府といたしましては、お話のように一時朝鮮事変が起つてから以後、今年の一月、二月頃はずつと消費物資等についての値上りが続いておりましたが、それ以後においてはやや足踏み状況になつておるのでありまして、殊に生活必需物資であるところの食糧なり、或いは繊維製品なり、或いは油脂、ゴム、皮革等については、逆に今年の五、六月は去年の五、六月の程度にまで価格は下つて参りました。これは一つは量的に必需物資輸入確保されたということから出ておると思います。同時に世界的の関係におきましても、やや物価足踏み状況なつたということにありますが、いずれにせよ、政府といたしましては御指摘のように、価格の上らないということにつきまして施策を用いなければならんことは当然であります。私どもは一方において国民生活に必要な物資についての量的な確保と、それに対する必要な場合において特殊な、食糧等については輸入価格補給金等によつて価格引下げ考えておるわけであります。幸いにして量的には今申上げたようなものについては確保されました。今後鉱工業生産等については、一面においては輸出関係もありますが、やはり国内における生産設備合理化ということが大きな眼目になつて、コストの引下げによる価格引下げということに入つて来なければならんと考えております。
  15. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 生産財指数が七〇何%を示しておる。消費財価格騰貴が大体三〇%足らずということは私も知つております。と同時に、朝鮮事変以来騰貴を続けて来ました物価指数が、大体今年の春頃から横這い傾向を示したことも事実であります。併しともかくも一年の間に五割以上の、全体卸売物価指数が五割以上も上つて参るということを放つておおきになる手はない。それから消費財のほうは如何にも上らんように言われるのですが、これは生産財と比較して上りが少いということでありまして、現にあなたのほうの御統計によつても、又消費用物価の高騰を示しておる。どういう経済新聞でありましようと、どういう経済雑誌でありましようと最近の情勢から見まして、又やや今までの横這い上つて来つつある、こういうことを心配しておるのであります。現に消費財物価指数も二二二まで落ちましたものが二四〇にすでになつておることは、あなたのほうの安本統計も示しておる。でありまするから、ここで物価について一つ対策をお立てにならなければ、どうしても私は、実は朝鮮事変以来の物価騰貴がそのままの姿において上つて参つたということを非常に全体の経済構造から見まして心配いたしますので、その点についてやはり確固たる政策がなくてはならん。それについて今安本長官お話なつたことは、ただ消費財物資生産をよくして行こうということだけに問題の目途をお考えになつておるように見えるのでありまするが、果してそれだけで物価騰貴が収まり、特にこの際に私申上げたいことは、朝鮮特需がありましたから、日本経済というものが一見いいように見えておるのだが、そうして大蔵大臣の言われましたような六億ドルのお金をお持ちになつたのも、実際の貿易の形から来るよりは、やはり朝鮮動乱による特需及びその他の貿易外の収入というものが三億ドル以上を占めておるというふうな点から考えましても、総合的に考え物価対策をお立てにならないと、又なつて来るのじやないか。又今までのような状態が続くのでなかろうかというふうに考える。三、四月頃からやや横這いを示したことをあたかも何か自分の政策からなつたようにお言いになりますが、率直に言いますと、アメリカが一月の末からいわゆる統制に入つて、要するに国際物価影響を受けて、どうしても国内としては物価横這いせざるを得ないように追込まれておる、これは確かなんです。だからそれで又物価があの程度横這い止つたということも事実だと思うのでありますが、そういう点についてどういうふうな総合対策をお立てになつておるか、それを承わりたい。殊にその点が今後の日本経済というものを何らか持つて参ります上において、私は一番大切な点ではなかろうかと、こう思うのであります。
  16. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 御尤もなお話でありますが、物価に対する対策としては先ほど申しましたように、何といたしましても国内における必需物資というものの数量確保が大事であると考えます。從つて生産財にしろ、消費財にしろ、そのもの数量確保を第一に私は考えております。而してそのもの確保されたといたしましても、その原材料等価格の高いことによつて、或いは輸入原材料等が遠隔の地から来るために、運賃その他の関係で割高になるということに対しては、これについてはやはり自国船に依存するということの関係上、船の増加ということも考えておりますけれども、要はそれらのものを以て生産さるべき生産設備内にある非能率の合理化の点を第二点と考えます。第三の点は、どうしても必要な食糧のごときものについての輸入物資については、これは現在もやつておりますように、或る程度やはり輸入補給金等によつて国内における対策考えて行くことが一つ行き方であると考えております。第四の点につきましては、やはり世界的に稀少な物資、重要な物資等につきましては、そのもの有効需要確保するために、必要がある場合においては臨時使用制限というようなことを行なつて参りまするし、又場合によつて国内における必要量確保するために、輸出等について或る種の許可制度をとつておる現状を、やはりものによつて必要があれば考えて行くということが必要な行き方であろうと考えております。要はどこまでも先ず必要量確保するということであり、一例を挙げれば私ども繊維製品等についてやつておるがごとく、先ほど自然に外国影響で下つたとおつしやいますが、今年の三、四月頃以後について、綿製品の値下りというものは国内に必要な数量確保すると共に、更に輸出数量見合つて国内民需品としての綿製品数量増加し、確保したことにあると思うのでありまして、そういう点は今後も続けて行くつもりであります。
  17. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 繊維製品は確かにあなたの言われるように、一時非常に高くなりまして、又下つておる。殊にその一部は国際価格の面から見ましても、何と申しますか、幾分今後も輸出が引合うような状態になつております。これは認めますが、全体としてならしますと、国際価格を上廻つておることは事実であります。その根本的な原因はもう私があえて専門家に申上げなくてもわかつておる。それはもう第一中共貿易というものがなくなつて、その原材料確保、石炭にいたしましても、鉄鉱にいたしましても、船でこれを遠くから確保しなくちやならない。而もその主なものをドル圏内から確保しなくちやならない。それで運賃は、実は運賃のほうがものの値段よりもかかる。そうしてそれをやつて行けば、どうしたつて原料高になつて参る、併し一方それを再輸出、今度は製品として輸出しますれば、これは国際価格で抑えられて参る。それで輸出幾分伸びない。これはもう確かにその点が一つの大きな影響であるということは言い得ると私は思うのであります。そこへ以て来て、朝鮮動乱特需が出て参つて、当時非常なストツクを抱えておつたというので、そのはけることだけに目を付けて、それの補充的な輸入を忘れておる。そうして世界物価上つてから、即ち昨年の暮あたりから急に原材料を買付けられる。そうして上つたところで、一番不利益のところで日本が買付ける、これも一つ大きな原因である。そういう点で私どもは少くとも国際的な価格が上廻る点についての或る程度の問題は考えなければならん。併し中共貿易をやめたときに、それに代るだけの事柄が他の圏内からできなくちやならない。それを何らの用意なしにそうなつている。又国内の需給の関係輸出入関係を睨んで、外国経済事情を常に注意深く見て行かなければならない。そうして外貨が有効に出て、そうして時期に間に合つてやらなければならない。それが時期を失つておる、失つてから輸出銀行もできるし、緊急輸入物資特別会計も四月になつてできて来る。こういうふうになつて参りますると、私どもはあなたがたが今おつしやつた対策というものを、具体的に口で言つた報告書に書くことはできるのでありますが、内閣として総合的の計画をお立てにならないと、結論的にしわ寄せが国民生活水準低下となつて来、あなたの折角努力された自立経済の、いわゆる国民生活水準を維持できない、これを幾分でも向上するということと反した結果になつて参ることを私は恐れる。殊にここで特に安本長官にお聞きしたいのは、私はそう思うのでありますが、そこのお隣りにいらしつている池田大蔵大臣は、非常に財政収支均衡をお計りになる、否、リザーヴ資金をたくさんお持ちになるということは、実に技術的に上手なかたであります。ざつと本年度予算だけを見ましても、私は池田大蔵大臣如何にそういうふうなことがお上手であるかという一例をここに挙げますと、いつも言われますドルのお手持のほかに、二十六年度の補正予算というものを見てみますと、資金運用部資金運用計画におきまして、五百三十二億円の翌年度繰越を示しておられる。そうして見返資金収支見込みにおきまして、三百十三億の翌年度繰越を見ておられる、翌年度繰越はそこに出ておるのでありますが、この五百三十二億と三百十三億を合して八百億くらい持つておるんだといつも言われますが、そのほかに見返資金特別会計内容を見て参りますと、国債償還はやめたんだとおつしやつているんでありますが、今度は吸い上げて余裕ができておりますから、四百九十四億の国債買資金を持つておられる、そのほかに恐らくもつとたくさん持つておられるだろう。そうすると、合せてざつと千四百億くらいのものを持つておられる、いわゆる国家のリザーヴ資金を持つておられる。併し大蔵大臣インフレを非常に恐れられておることはしばしば言われておる。そうして財政規模なり、財政から来るインフレというものを抑止しようということを非常に努力しておられる。併し一方においては実は大蔵大臣がお締めになるが、日銀のほうの貸出の増加というものを尻拭いしておることは、この前本会議で申上げました通りでありますが、ともかくもあなたのほうの経済政策というか、総合経済政策、これが計画性を持つて動いて行かなければ、大蔵大臣、幾ら一人財政面で苦労して貯め込みになつつて、これはもうしようがない、やはり全体の経済についてお立てになつて、そうして国民生活水準を落さないようにと、こういうふうなことで、しつかり全体の産業構造がそう動いて参らなければ、結局しわ寄せして来るのはここへ参る。こう私は思うのでありますが、至急にそういう点についてお考え直しになるお考えはございませんでしようか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来生活水準低下或いは物価高に対する対策安本長官にお聞きになつたようでございまするが、堀木君はなかなか数字のほうは詳しいのでお聞きしますが。生活水準低下ということは、いつに比べてのお話でございましようか。私は長い目で見て行けば、生活水準は決して低下していないと、こう思つておるのであります。それは月々は例には上りまするが、全体としてはやはり低下せずに、徐々に上昇しつつある、昨年の十月と今年の十月と、こういうふうに見るべきでなしに、一昨年とどうか、昨年とどうか、或いは一昨々年とどうかということで御議論を願いたい。そういたしますと、私は終戰後徐々に生活水準上りつつあると考えておるのであります。あなたのおとりになりまする生活水準は、多分安本出しておられまする消費水準を言つておられると思います。併し又ほかのほうで実質賃金、いわゆる名目賃金から税を引いた実質賃金の上昇等は、これは一昨年よりも昨年、昨年よりも今年、こう徐々に上つておるのであります。どういう消費水準をとるか、税引の実質賃金状況を見るかという問題があるのでありまするが、両方見ましても、私は生活水準は年と共に大体よくなつて行くと、こう考えておるのであります。又御質問以外かもわかりませんが、物価の問題もこれは朝鮮事変という特殊な事情がございまして、而も世界的の物価高という影響を蒙りまして、脆弱な日本経済では国際的に見て日本上り過ぎている点があると思います。併し長い目で見てもらおう。我々は為替相場をきめました昭和二十四年の四月、即ち私が初めて予算を組みましたあの為替相場を決定した時と今を比べて見ますると、今消費者物価指数、C・P・Iは皆イギリスもアメリカも日本も大体同じ程度に行つているのであります。卸売物価の問題につきますると、これは日本昭和二十四年の為替相場をきめた時に比べまして相当上つております。六割以上上つております。アメリカは一割五、六分、それからイギリスは三割九分上つている。併し昭和二十四年の四月におきましては、この公定価格を一〇〇として六割六分上つておりまするが、実効価格、闇価格を入れた実効物価指数から申しますと、私はイギリスの三九に対して日本は二六、七ぐらいしか上つていない、こういう計算をいたしているのであります。だから長い目で見ると、私は物価の動きは各国に比べてそう惡い状況だとは考えません。ただ朝鮮事変の特殊の事情によりまして、この脆弱な日本経済が非常に影響を受けたということは確かであります。そこであなたの御心配になつているのと同様に私も日本物価をできるだけ各国の上りようよりも少なくしようと、関係当局としてあらゆる施策を講じているのであります。  それではどんな施策があるかと申しますと、私は何と申しても、日本経済をやつて行く上におきましては、政府並びに地方機関は絶対緊縮主義を、赤字財政は組まん、健全財政で行くのが第一であります。第二には、これは今もやつておりますように、貿易管理、為替管理でございます。日本の必要な物は入れます。又一方必要のうちでも先ず第一に輸出に行く原料を入れるとか、或いは国民の消費になるまあ贅沢品は、我慢できるものはできるだけ入れない、輸出本位で行こう、これを一として為替管理が第二であります。そのほか今お話がありましたように、金融の適正化、正常化を期することが第三であります。先般来設備資金に或る程度の規制を加えるように各銀行に私が要望いたしたのもこの点でありまして、この三つで行けば物価はほかの国よりもできるだけ上らないでやつて行けると思います。で、統制をしたらいいじやないかという議論もありますが、私はこの三つで行けばやつて行けるのじやないか。又行きたいと、こういうふうなことでやつているのであります。大蔵大臣のポケツトにどれだけ隠しているかと言うが、私は隠しておりません。皆このように印刷してもらつて皆あなたがたに見てもらつております。この預金部の五百億も、これは前年度五百億繰越したから今年度から来年度にも五百億を、今まで溜まつた金を特に使うということはよそう、これはやはり緊縮政策であります。それから見返資金の分もお話のように国債を償還するつもりでおつたのでありますが、いつ金が要るかもわかりませんから、国債の償還をせずに持つている。そうして必要な時期にはその金を使うということで溜めているのであります。その代り日本銀行の貸出が殖えたということはお話通りであります。で、日本銀行の貸出を締めて政府の金を使うのがいい、或いは政府が溜めて持つていて不時の場合に使う、そうして普通の場合には日本銀行から貸出せばいい、これは議論のあるところだと思いますが、何分にも今の金融制度はこれは十分でない、だからだんだん改めて行かなければならない、そういう過渡期でありまするので、政府で相当な金を持つて、そうして日本銀行が健全金融を営むような方法で行くべきだと考えているのであります。不必要な金を持つているわけじやございません。いつ何時金が要るかわかりませんから、大蔵大臣は持つているのであります。普通の産業資金日本銀行から出さすようにしております。併しこれはだんだん是正して行きまして、日本銀行の貸出その他も少くなるように、政府も必要なところには金を出して行くようにしたいと思いますが、今の経済の実情から申しまして、政府がこれを持つているから直ぐ使うというわけには行きません。
  19. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大蔵大臣は二時半からどこかへおいでになると……今のはまだ緒論なんですから、私は大蔵大臣安本から入つて行くつもりで、今聞いた説明は大体わかつておる、それを今度は今おつしやつた財政収支均衡と為替管理と、そうして金融の規制の問題、この三つをこれから聞こうと思うのに逃げては困るのです。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 明日願います。
  21. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 二時半から大蔵大臣はGHQのほうに行きますので、大蔵大臣に対する御質問は、明日大蔵大臣に出て来てもらつてそうしてゆつくりやつてもらいます。今日は前からの申出でありましたので、……明日大蔵大臣に、それでよろしうございますね。
  22. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 安本長官に伺いますが、安本長官は、今大蔵大臣が言いました三つだけで果して日本物価が今後上らないと保証されますか。
  23. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お答えしますが、今大蔵大臣の言つた財政の引き緊め、金融の調整の措置ということは当然考えられることと思います。これだけでなくて、私先ほど申上げましたように、問題はやはり生産増強というものを、必要なものの生産確保というものかなくちやならんということ、先ほど申したことに加えて金融財政の問題が一緒になつて行くと思います。それから先ほどの御質問のなかで、輸入物資等の確保が非常に遅れて、朝鮮事変等にストツクを使い盡して、あとの材料がなくなつたことが物価高の一つ原因じやないかという御指摘であります。それに対しては実際は政府としては形の上は成るほど少し去年の下半期ぐらいから着手して輸入が遅れたようでありますが、これは私は堀木さんに認めてもらわなければならんと思います。それまでの輸入計画それ自体が非常に窮屈な姿であつて、これはやろうにもやれなかつたという事態であつたということは御承知願いたい。むしろ十月——十二月以降というものは、昨年の第三、第四四半期以後というものはむしろ輸入に関しまして今までのあらゆる制限というものを撤廃して、そうして大きく輸入ができるようになつたということは日本必需物資確保の上に大きな力があつた。たまたまそれは朝鮮動乱の勃発後における世界における軍拡競争が熾烈を極めそうになつて来てからであつたということのために価格上つたということも事実であります。併しそれにしても一時は御承知のように入り過ぎたというので、とにかく金融を付けなければ下るとまで言われたほど、実は物によつてはでありますが、入つて来たことは国民経済の上には私は非常に利益があつたと、かように考えております。
  24. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 安本長官が私の表現が過大だとおつしやれば、大体こういう経済の問題というものは何といいますか、プロポーシヨンの問題なんですね、だから本当の適正な在庫がどのくらいがいいかという前提に立つて、その在庫が実際には入らないで、或る一つ一つ、たまには在庫の多いものもありましようし、たまには減つてるもの、その一つ一つを捉まえ言うのではなく、全体として日本の実際の需要というものから割り出したものから考えるので、むろんあの時分にいろいろな制約があつたことは私認めます。併しともかく在庫がだんだん少くなつて、私ここで指摘したように少くなつて来てから急にお買いになつたことはこれはもう確かなんであります。それでそのときに国際価格上つた。それはともかくといたしまして、結局問題になつて参りますのは、安本長官としてこの点についてお考え願わなければならんのは、この物価高の犠牲になつたのは一体誰なんだ、一番大きな犠牲者は誰なんだ。これはやつぱりなんでございましよう、池田大蔵大臣は税金を下げた、税金の下つたので大体物価高は吸収される。これについては議論をしたいと思いますが、税金も納められない階層というものは物価高を丸丸自分の身体に受けただけでございます。これは確かであります。それから税金を今度かすかす納められるようになつた者でも、又なつておる者でも国民の大部分というものは一万五千円以下の月収ですよ。これはもうあなたのところの統計も示しておる。これはやはり今度の税金で実は二万円以上のほうがよくなつて来ておる。そうするとやはり実際は負担ができにくい階層の人間がやはり一番大きな影響を受けておる。産業で言つても時局産業に乘つかつたものはいい。併しその差は非常に甚だしくなつて、あなたの需給計画から見ますと、産業別に見ると非常に跛行性を示して来ておる。これもお認めにならなければならない。今度は中小企業のほうに特にその影響がひどくなつてつたということもお認めにならなければならない。そして更に八月に物価をみずから上げる政策をおとりになつて、米価にしても電力料金にしても上げた。今度の予算運賃上つて来るし、郵便料金も上つて来る。そうして而も米も自由の野放しにして、大体幾らおつしやつても、政府自身の御推計で以つてどうしたつて百十円、百二十円に上ること自身を前提としてお認めになつた上の統制撤廃ということをお考えになつておる。こういうものの影響を受けるものは少くも一番国民の今挙げた階層である。私はそう思う。そういうふうになつて参るような考え方で行かれますと、先ほど大蔵大臣、これは安本長官でも大蔵大臣でも一緒だと思うのですが、実質賃金上つたということをよく言うのです。これは統計の取り方も変つたことはあなた御承知の通りなんです。C・P・I、これは木村委員からも細かく指摘されたことがありますから私やめます。と同時に実は実質賃金もやや低下の傾向に入つてつたのであります。それを例にとりますと、あなたのほうの御統計では実質賃金指数が六月、七月一〇〇以上になつておるものだから喜んでおられる。併し七月というものはいつだつてよくなる、ボーナスが入つたりいろいろするのですから……。余り細かいことは私申しません。併し全体の趨勢として実質賃金も決して……大蔵大臣は去年あたりの統計を以てそして頭に入れて三百六十円のスタートのときの経済指標の比較は私は改めて大蔵大臣とやり合うつもりでおりますが、とにかく全体としてそういう兆候を見せておる。これはあなたがたがどうしたつてこれだから吉田内閣の……あなたも吉田内閣の屋台骨の一人かどうか知りませんが、(笑声)ともかくもこの点がいわゆる自立経済計画をとつておるならば、自立経済計画を建てられる以上は国民生活水準を上げて行くということが根本でなくちやならん、私はそう思う。そうしてそういう点から言つてあなたがもう少しここで熱意を示さないと、大蔵大臣逃げちやつたので困りますが、お隣りにいた大蔵大臣国民生活水準についてよりも自分の財政資金のリザーブのほうがかわいいのだ。だからあなたのところで全体の総合経済指標を見て、そうしてお考えにならなければ同じことが起つて来る。どうしてもこの点はお考えにならなければならんと思うのですが、如何ですか。
  25. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 私が今年一月の二十日に試算した経済自立三カ年計画においても、單に国際収入のバランス、辻褄が合うということだけの自立経済でなくて、国民生活水準の徐々にでもいいが上ることを一つ目途にしなければならんということは申上げておるのであります。併しだからといつて今の堀木さんのように、まあここで講和でもできたら一遍に国民生活が戰前の七—十一年を一〇〇として、それと同じ一〇〇になるということは、望むことはそれは事実できないと思う。それだけ一足飛びにそういうことをお望みになることは堀木君がお考えになつておるとも思いませんが、併し私は徐々にでも上げたという気持は持つております。而も先ほど大蔵大臣が言つたことを御引例になりましたが、名目賃金においてはやはり最近までずつと各全産業を通じての平均の指数は大体二三%くらい上つていると思う。併し価格等の関係からしまして実質賃金は全産業平均がやはり二%ほど上つているということは事実でありますから、そういう関係から見た一つの見方としては私は徐々によくなつている、これは断定していい。ただ上り方の幅というものを見れば、それはお前が二十八年度を目指して八九まで持つて行きたいと言つたが、そうなつておらんじやないかと言われればその通りですが、それは一つの物の見方だと私は思います。明らかに今日における全産業の指数増加鉱工業生産指数増加、而して鉱工業生産の中における産業別水準を見ましても、よく指摘される国民生活に必要な食品工業とか、或いは水産業というような場合におきましても、実は非常に増加の率は少いですけれども、とにかく年々上つているという実態、從つてそういうことから来る実質或いは名目賃金指数増加傾向を見ますれば、これは一つもよくなつていない、こういうような議論には私はならんと思う。そこは幅に対する見方の相違だと思うのです。
  26. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 安本長官、もうそう言われると私は今日は数字で戰うつもりで持つて来ておるのですから、そう言われると、二十四年度乃至二十六年度の分配国民所得の推計、経済安定本部というので本委員会に出ておる数字を御覧になればわかるのです。つまり勤労所得だとか、個人業種所得だとかいうものの増加した割合と、法人の所得割合が殖えて来た割合と遙かに違うのですよ。そうしてこの点についてはこれをもう御覧になれば直ぐわかるのでこういうふうな何といいますか健全でない国民所得の分配ができて参りましたのは、これはやはり計画性がないからですよ。これは統制というのはお嫌いだから、もう自由党においでになるかたは統制ということはお嫌いだから言いませんが、計画性のないことだけは明らかだ。そうしてこれを今度分配して行きますと、細かい数字に入ると幾らでもそういう証明が立ち得る。ですから実質賃金幾分上つたじやないかと言われたつて、ほかのほうはずつと上つたのですよ、たとえその統計を承認しても……。私は統計の基礎についてもいろいろ指摘すればきりがありませんが、たとえその統計をとつてもほかの所得割合から見ますれば遥かに低位にある。そうして先ほど言つた階層がその影響を一番受けておる。これはお認めにならなければならん。そこにやはりあなたのほうの内閣政策自身、折角自立経済を建てようとして国民生活水準を徐々に毎年度わざわざ……これはもう私はあの安本の嫌いな吉田総理の下で自立経済がともかくも紙の上にしましてもできたことは、これは私は周東君の功績だと思うのです。併し折角そこに二十六年度は八三、二十七年度は八六、二十八年度は八九というふうにお挙げになつたのは、この目標があるためにお挙げになつた。この目標のために、自立経済、これはもう吉田さんに言わせると、自立経済というと軍国主義とまで言う人だからこれは別問題ですが、折角自立経済という以上は、これが基なんです。これが低下して来ると言われたら、自立経済をお立てなつた理由がなくなつて来る。そうして今周東さんのお言葉で、講和ができたら一〇〇%生活水準が上るなんと、私は絶対考えない。むしろ逆を心配しているからこういう問題を提供している、逆を……。ともかくも如何に和解と信頼の講和條約でも、ともかくも外国人の資産については三百億を補償しなければならない。法案は昨日通つたばかしであります。役務賠償、役務賠償と言われるが、これも細かくは言いませんが、ともかくも大きな国民の負担になつて来る。見返資金特別会計もそうでしよう。外債の支払もそうでしよう。で、場合によれば見返資金も、最後的処理は別として、大蔵大臣はともかくも債務であるから返して行くのだと、こう言つておられる。これが国民の再生産に廻らない形で行くときには、物価高にもつともつと拍車をかける要因は十分にある。今から備えなければどうして物価高があなた抑制できると思いますか。これには生やさしいことでは私はないと思う。池田君が、お隣りにいる池田君も是非おいで願いたい。というのは、あの自由主義経済を誇らかに言う池田君が、金融についちや質的統制に入る、入ろうか、現に設備資金は抑制なんだ、どうもビルデイングは建つて来る、待合は建つて来る、料理屋は建つて行く、そういう所に行つちや困ると池田君自身が言つているときに、あなた自身が総合の産業経済計画をお立てにならなければ、講和に伴う今後の善後処置費は国民負担の犠牲において払われるとみんなが心配されるのは極めて無理のないことです。だから私はここで是非来年の、この講和発効後の日本経済を持つて行きますについて、新らしい構想……もう今まではまあアメリカがいて日本経済を切り盛りしているから、まあ何と言いますか、お責任は軽かつた。そしてここでともかくもいろいろ数字の遊戯をしておればよかつたかも知れませんが、今後我々があの講和の善後処理に伴うところの多額の経費、而もそれは国民の再生産に廻わらない経費というものを以てやつたら、今からお考えにならなければ間に合わん。何か新らしい構想をお持ちにならなければならんはずだという、今日はそれで来て頂いたのです。最後に参りましたが、それで周東さんはどうお考えになりますか。物価問題だけについて最後にお聞きしたい。
  27. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 堀木さんは日本の産業計画について自由放任で行つちやならんと、こういうふうな御意思のようでありますが、私は先ほどもお答えしたように、経済というものはその国の或る時期における状態によつて適切な手を打たるべきものであるのでありまして、抽象論的に、自由主義がいいとか、統制主義がいいとかいうことは私はとらない。原則として、今日まで過去六年、殊に最近三カ年間における日本経済の復興の足取りを見て、そのやり方というものが相当に自由主義経済に委しておつたためにあれだけ伸びたということも私は認めなければならん。併し今後の問題についてどうするかということについては、先ほど物価の面についてお話したように、必要な物資、又世界的に必要な物資世界的な割当協議会によつてやられるというようなものについても、当然に必要な場合においてこれに対して使用制限は起り得るということは、先ほどお答えした通りであります。而も政府としては、国としては、今後の日本経済を持つて行くについて貿易規模をどのくらいにするか。その規模について必要なる原材料確保をどうするか。製鉄関係はどのくらいの幅に、石炭はどのくらいに、電気はどのくらいの幅に、こういうことの計画というものははつきり握つて行くつもりであります。そのことを施行するに当つて、おのずから物資について優先的に確保しなければならんものが起つて来ると思いますので、それと関連した形においては、必要があれば使用制限、割当というようなことをやらなければならんとは考えております。併しただ抽象論的に何もかも今こうやるのだというところまでは行かない。私どもは必要に応じて、必要な物資について全体的な計画に相応し、それを実行に移す上において必要な処置はとるつもりであります。
  28. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 まあいつでもそう言つてお逃げになるのですが、実は吉田さんは経済はわからんから一本取つているのですから、あなたの仕事のしやすいようにしてあるのです。それは平和條約の委員会で、吉田さんに今後講和発効後我々が先ほど挙げたようなものを負担して行かなければならんのでは日本経済は大変だ。あなたは大変でないと思うのか。大蔵大臣安本長官とは言いませんでしたが、楽観論が多いのだ、あなたも楽観している一人なのかと言つたところが、楽観してない。それじや今後経済の総合的な一つつた構想で物を考えて行かなくちやいけないじやないか、これはこう言つたら、それはそうだと言つている。だからあなたも安心して私にもう少しお答えになつていい。(笑声)この点からもう一つ申上げますと、おつしやる通りなんです。口で言うのはやすいのです。だからあなたは、基礎産業は非常に大切だと、こうおつしやる。私もこれは言うのはよそうかと思つて、時間が来たのでよそうかと思つていたのですが、あなたが言われるから一つ言いますが、それは電力の不足ですね、石炭の不足、それから輸送力の不足、こういう基礎産業的なものが駄目になるだろう、ここから日本経済が破綻して来るだろう、日本経済の発展性の制約が起つて来るだろうということは、これはあなたをつかまえて言つちや申訳ないのだが、安本に一日でも籍を置いた者は何人もそういう点を心配して来たのであります。今ドツジ氏が来てからよくなつたようなことを言われるけれども、あのときはドツジ氏は、日本の三百六十円の為替レートをきめちやつて、それで日本物価国際物価のきちつとした上らないような堰を作つちやつて国内の補給金は削つちやつて財政規模を縮小し、その代り国内物価は、まだ物価の上昇を入れておきながら、三百六十円で堰を作つた。そうしてもう一つは、対日援助をすぽつと別会計にして、これはもう財政収支均衡を図り、そこでぐつと締めている、この三本立で彼は料理した。今度料理するのは一点どこだということになつて来ると、ここですよ。今言つて物価ですよ。而も財政資金は持つてるのですよ、池田君は……。ずつと過去三年、そうして電力と石炭と、そういうものが、朝鮮事変が起つて特需が来たから、そこで制約されるということは初めからわかつている。それが今頃になつて急に泡くつて石炭の、水力発電は何千億……それは口で放送するのはいいのですよ、自由党として。併しね、我々としちや国民経済を、その犠牲が我々に来るのだから、我々としちや、間に合つてつて頂くだけの見識をお持ちなのが安本長官です。大蔵大臣は締めるにきまつている。安本長官がしつかりして頂かなければ、これはどうにもならん。今ごろ電力開発をやつて何千億をお出しなつつて、まあやらんよりやるほうがいいのですが、三カ年先のことになつて来る、事実は……。そうして石炭の増産だつてそうでしよう。石炭だつて今年の模様では重点産業のほかは随分危険の多い状態になる。そうならないようにされるのがあなたのお役目である。ここへ国民生活のしわ寄せが来ないようされるのもあなたの御責任だと、こう私は考えるので、而も講和後のことを考えまして、私は長い間の友人として、切にあなたがここで新らしい構想を持つて、そうしてこの自立経済審議会と違つた状態が入つて来たのですから、そこで以て計画性のある、そうして先の見える、そうして適切なときに手が打てる、それは何の面からも、生産の面からも、物価の面からも、そうして国民所得の面からもお考えなつたものができ上らなくちやならない。これなしには……安本長官は今おいでになるが、だから吉田氏は経費を削減して安本をなくなすほうがいいと思つておられる。よほど逆の方向に私は行つていると思いますが、あなたもそれに同意されるのだから、あなたも御同感かも知れないが、併し、ともかくもよほど違つた方向に物をお考えにならなければならない。そこで官、民を問わず、自立経済審議会がやられたのと同じような、官、民の、本当にこの経済財政、金融、労働、そういうものをすべて含んでおる、無論農業を落しては申訳ない。又統制撤廃されると困りますから、又農業も余計入れて、そうして本当の今後の対策をお立てになるお気持はございませんでしようか。その点をお聞きしたい。
  29. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) いろいろと御親切な御忠告有難く承わります。併し私どものほうは今無計画ではやつておらんのでありまして、講和後において新らしく出て来るところの負担の増加というようなことを頭に置きつつ、それに応ずるために、日本の産業をどつちに持つてつたらいいかということについての計画を進めておるわけです。何としても貿易規模の拡大ということが必要でありまするが。それに対しては、原材料確保ということと、電力の問題と、価格の問題が大きな影響を持つわけであります。原材料確保等につきましては、計画的にどの地方から何を、日本の産業をどつちに持つて行くためにどのくらいの数量が必要だということで案を立てておるわけであります。これについては、私どもは決して手放しの楽観はしていないが、そう悲観もしないのであります。これは手の着け方によつては入つて来るのでありまして、よく尋ねられまする東南アジア開発ということは、單に日米経済協力とか、或いは経済上の事情においてのみこれが問題になるにあらずして、将来とも世界人類のために、今開発されている資源だけでは足らないのでありますから、そういう意味におきましても、あらゆる地域の資源を開発して、それを全人類のために商品化する、日本は確かに未稼働の設備を持ち、余剩の労力を持つているのですから、これが一番適当だと考えて推進して行く考えであります。これによつて、講和後の日本経済復興と共に東南アジア地域における民族、国家の福祉の増進に資することが肝要であると私は考えます。こうすることが結局日本経済をよくし、日本国民生活水準を上げることにもなると思います。ただその際に計画として考えられることは、御指摘通り動力の問題であります。実はえらい今年電力の危機等があつて、無計画でなかつたかというお叱りのようでありますが、成るほど今年は少しくごたごたしましたが、併しこれも六十年と言いますか、以来ない異常渇水であつたために、水力電気の供給源が二〇%減つたということであります。若し平水であるならばこの危機は突破し得たでありましようし、最近までにおける自立経済三カ年計画に盛られた鉱工業生産以上に出て来た七月の一四〇の線と共に、現在まで平水なりせば、水力電気並びに火力発電による電力の供給力がかつかつ間に合つてつたのであります。たまたま今年異常渇水による減が二〇%、生産が異常に伸びたための減が九%ほど、合計二九%ほど足らないということが起つたのであります。この点に鑑みまして、とにかく早く発電をさせ、電源を開発することの必要性はよくわかつておるのでありまするので、只今のところ、これは急速に、突貫工事ででも、本年度内に予想しておつたものをもう少し早く繰上げてやらなければならん、又自力発電、自家発電等についてできるものは許したらよかろう、從来の電力会社の発電のみならず許すことがよろしい、その間に処するいろいろな細かい手続上のことは、これを皆認めたらどうかというようなことにもなり、大規模発電についても、從来はもう少しあとに着手することになつておりますが、現在の計画としては、二十七年、二十八年両年に着手するように考えて施策を整えておるのであります。この点については思い切つた資金の操作をいたして、このほうに資金を向けるつもりでありまするし、先ほど一部触れましたが、これを推進するに必要な銅線、セメント等の資材の確保についても、電力の開発については優先的に考えなくちやならんと今考えておるのであります。なお石炭等についての計画は持つておるのでありますが、今年も実は重要産業の減つたというお話でありますが、これはもう実は去年三千九百二十三万トンの出炭量を挙げましたが、これは実績であります。それの一割三分増の四千五百万トン計画が、今年は見事これが完成できる八月、九月までの状況にあつたわけであります。たまたま水力電気における異常渇水のために、そのほうの補いのために炭を片寄せなければならんことから起つた産業への影響であります。石炭の生産についての目標は、大体二十六年度は四千五百万トン計画が実現の途上にあつたわけであります。現在炭鉱のかたがたには異常渇水による電力不足というものを少しでも取返させるために、それ以上の増産を皆要求し、足らんところを外国輸入炭に仰ごうとする計画を進めておるわけであります。私どもは、以上申上げた点は、要するに堀木君のお話のように、基礎産業については急速に計画的に進めて行くつもりであります。
  30. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 何と言いますか、私はねえ、石炭四千五百万トンの生産目標通り達成した、これはようございます。それは認めます。併し、ほかの産業を合せた石炭の需要は不足するにきまつておる。そのバランスの問題、それをお考えになるのがあなたのところだ。それが考えられていないのは困る。それから電力だつて、これは電力と言つたら、必ず常に天災地変になつちやうです。これは天候、降雨量だけに問題をお出しになるけれども安本自立経済のときから電力はあなた御自身御心配になつておる。電力だけ、この点は成るほど電力はネツクになるだろうということは、ここにも書いてあるだろうし、ここでも御心配になつて、そうしてほかの産業が起つて来れば電力の消費が上つて来る。それで渇水が幾分でもあれば参つちやう。而も電力の問題も、細かいことを言いますと、この計画自体が初めからちぐはぐだ、これは明らかだ。これは収拾しがたい。だからそれを私はね、あなたの間違つたことを指摘するのは、決してあなたの責任をとつてくれ、自立経済審議会計画が惡かつたから安本長官をやめてくれというのはちよつと申訳ないですから、そんなことは言いません。御心配にならないで。だから二度と繰返さないように。これは日本の産業復興を推進する上に共通の使命を持つておる。ここで立つて話しているのも、とにかくよくして行く……、併しそれに反した、さつき言つたような、それに反したようなことでは困る。だからそういうふうな問題を是非お立てになる積極的意欲、ここで御答弁はいつでもいいですが、実際においてもつと積極的な意欲をお示しになることが必要だ。そうしてそういうものが国民の前にここで経済の実態を明らかにして、石炭の問題だといつて去年のストライキ以後、貯炭はずつと食込まれて来たので、当時三百万トン以上ある貯炭が百万トンに減つて来た、この日本の国の工場の回転としては二百万トンを切つちやいかんことは誰もわかる。そういうことをはつきり言つて下さらなければこれは困る、是非そういう点に将来積極的に惡意を持つていないので、(笑声)そうしてあなたとの友情の上に立つて質問しておる私に対して、あなたはもつと積極的にお考えになつて、この際立直すと、自分としてはそれについて責任をとつて行くというだけのことは、内閣を挙げて、ほかの委員会で答弁なさつた程度の、或いは新聞記事程度のことでなしに、お考えになることが本当なんじやないでしようか、それだけを押してもう一遍あえて友情の上に立つて御質問いたします。
  31. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 計画については先ほどから申上げておりますように、戰後の負担増加ということを考えつつこれを押し除けてなお且つ日本国民生活水準が徐々にでも上るような方向に持つて行くために、総合的な計画立てつつあるということは先ほど申上げた通りであります。殊に先ほど石炭でおつしやいましたが、押問答はいたしませんが、四千五百万トンというものはほかの産業との睨み合せで、全体の産業の総合計画の上に立つて、それでよろしいという程度であります。併しそれが小さいから一つ大きくもつとやれという堀木君のお考えだと思います。これは有難く頂戴しておきます。私どもは動力の関係についてはでき得る限り、今の考え方としては電力の開発をやつて動力に使う、石炭は、国内生産には節約して行くべきだと考えておるのであります。この上に立つて動力対策考えて行くつもりであります。すべての生産、産業別の計画について又然りであります。
  32. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 一応安本長官に対する御質問をこれで終りたいと思います。御答弁のうちには、私今日もつとお話したいことがたくさんありますが、まあ一応何と言いますか、もう少し本当にまじめに経済のことをお考えにならんと、どうしたつて国民生活にしわ寄せが参るということは明らかなんです。そうしてそれが御計画と実除と狂つて参る、やはり依然として、心配した通りだということは事実ですから、是非お直しを願いたいと思います。而も日本経済としては先見込はそういう基礎産業的なものも欠陥を暴露して、今後独立後は更に甚だしき傾向を示すであろう。こう考えますので、それだけを特にお願いして私の質問は、次に、通産大臣が来ておられますから、通産大臣に移りたいと思います。  通産大臣は私と安本長官とのやり取りをお聞き願つておりましたと思うのでありますが、今申上げましたように、物価高自身が、ここで例を挙げなくてもいいと思いますが、通産大臣よく御承知のように、国際物価を上廻つて参りましたために東南アジア開発計画であるとか、或いはスターリング地域への輸出の振興だとかいうお話になつて、もう国際的な競争入札では明らかに負けておるのであります。最近の貿易が縮小して参つておる、実は十月になると認証額が殖えたからとすぐおつしやるけれども、これは私知つております。認証額が一月や二月殖えたのをつかまえておつしやつても、それこそ先ほど大蔵大臣がおつしやいましたように並行線を見なければならない、又必然性を見なくちやならないのですから、そういうふうな意味におきまして、物価問題についてどういうふうにして御所管のうちからこの物価を調節して行かれるか、この問題について、併せて最近の貿易についての御施策をどうなさつて参るかということについての御答弁をお願いしたいと思います。
  33. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) 実際日本物価国際価格を上廻つておる、或いは輸入資材などが一カ年の間に三割ぐらい高くなつておるのであろうかと思うのですが、プラントであるとか何とか、輸出価格より実際それ以上に上つておる事実は私非常に憂慮しております。それが輸出貿易にも非常に阻害する、そこで今の日本物価のそういう情勢を、対策をどういうふうに考えるかという今の御質問のようですが、私の所管としては金融面だとかいろいろな、先刻池田君も何か意見を述べておられたのですが、私の所管としては増産ということで対処して行くのが根本であるように、私は考えております。
  34. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 増産によりまして單位コストをお下げになるということが一つの方策であるということは、これはまあいいと私は思うのであります。併し一体増産をして行く基盤的なものについて、やはり国際的な価格はいろいろな御所管のうちで、どういうふうな方法を特に取上げて行かれるか、その点について何かお考えがございましたら。
  35. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) 先刻、あなたの安本長官への御質問のうちにも、日本の海外から輸入しなくちやいかん資材が現在ではわざわざ、わざわざということは不適当でしようけれども、遠方から輸入をするとかそういうようなことで原価が高くなつておるという、これはもう我々の非常に問題としておるところでありますが、それらに対しても通産省としてはできるだけ近いところから輸入する、例えば鉄鉱石にしましても、ゴアの開発をするとか、そういうことが物価を下げる一面に無論違いない。又日本の工場施設の合理化ですね、日本の工場施設が非常に遅れておる。これはどうしても合理化しなくちやいけない、私の考えではどうしてもせめて二カ年間ぐらいの間に相当の合理化をしなければ、将来とも貿易で競争をして行くことはできない。ところがこの合理化という問題が実際遅々として進んでおりません。昨年の今頃、私は民間人として朝鮮事変が始つて特需品が、予想していなかつたそういうものが起つて来て、日本の産業界は、一部の産業界は恵まれたのですが、その時分に私はこれは大変産業界に喜ばしいことであるが、これが却つて日本の産業の合理化を邪魔するものでないか。日本の産業界が当面の事業の好転に満足して、合理化を怠ることに実際なるのでないかということを憂えておつたんですが、事実はそうであつたのです。非常に遺憾に思うのですが、これはやはり事業家が本気にそうなつてくれなければ、私どもの役所の力だけではできないのでありますが、こういう問題を、今度何か合理化促進法案なんというものが或いはこの臨時国会に提出せられることになりますか、間に合いませんか。そういうような施策はどんな小さなものでも取上げて行かなければいかんと考えております。
  36. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 産業の合理化の法案をお出しになるという御予定で、そうして産業の合理化を促進して参りたい、こういうようなお考えでありますが、私は実はその点について前から心配して、実はあなたが大臣になる前からその点についてお聞きしておつたんです。一時通産省で約七十億くらいの予算を使つて合理化を促進しよう、設備の老朽を回復して参ろうという、こういうふうなお考えがあつたんですが、大蔵大臣の例の緊縮政策の犠牲になつてつたわけです。当然そういうことは前からやればもつと能率的であつたろうと思われるのですが、その内容はどういうふうな御構想でいられるのですか、具体的な方策を伺いたいと思います。
  37. 永山時雄

    政府委員(永山時雄君) 只今合理化促進法案は大臣が御答弁申上げましたように、目下研究中でございまして、まだ確定はいたしておりません。特にこれは政府のほうが連絡を受けておる立場で、主としては自由党のほうで案を練つておるのでございますが、現在までに我々の聞いておりまする合理化促進法案の内容といたしましては……。
  38. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 自由党の政策なら聞かなくてようございます。政府でお考えになつて……自由党の政策ならお聞きしなくていいです。
  39. 永山時雄

    政府委員(永山時雄君) 合理化促進法案につきましては、只今申上げましたように、党のほうで主として考えておるんですが、ただ政府のほうといたしましてもこの法案に盛り込んで頂きたい。この法案によつて我々のほうでその実現を所期しておりまする問題は、主として設備関係でございますが、設備関係につきまして從来から税の軽減の措置が一部講ぜられておりますが、更にそれを短期償却の途を更に拡大をするというような問題、それから輸入税免除の範囲の拡大、或いは在来から一部実施しているのでございますが、原單位の向上の問題乃至は工業の各種設備の近代化或いは合理化の奨励の制度、そういうようなものをこの法案によりまして恒久的な制度にして今後引続きこれを経常的に実現をして行くということを、この法案の実現によつて期待をいたしているのでございます。
  40. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) ちよつと今私数字的に説明ができませんですが、今この予期されます合理化促進法案は自由党の議員提出になる模様でございます。併しこの法案につきましては、通産省が細かに相談に乘つてできましたので、その内容を私数字的に説明ができませんが、要するに主として減税措置などです。合理化の設備の費用を二カ年くらいに償却することを認める。通産省としては或いは補助金を出すとか、或いはその設備改善のために予定せられている資金の積立金ですね、そういうものに対しても減税或いは免税を期待したのでありますが、そういうことは関係方面の同意を得ることができないので、私は今度の法案はまだ不満な点がたくさんありますけれども、併しないより遥かにいいわけである。是非これが皆さんの御賛同を得ることを期待するのですが、ただ残念なことにはまだスキャップのほうの用意を得ていないんです。ちよつと二、三の点についてあちらで異論があります。私明後日マーカツト少将に会つて私の意見なり、希望なりを開陳したいということにしておりますのですが。大体の構想はそういう構想です。
  41. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 何といいますか。本年度のこの補正予算に出て参りませんので、この点について、まあ通産大臣としては現在の法案にも不満があるとおつしやつているようですから精々御自信のあるものをお出し願いたいと思うのであります。又与党と御折衝なすつてそういうものができ上ることを期待しますが、それでももう遅い、これはやはり計画性のない一つの現われだと思いますが、設備資金の統制と申しますか、そういう段階に入つて参りましたが、この企業の合理化に伴うものについては何らかの特別な考慮がされるでありましようか。その点は如何でございますか。
  42. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) これは私としては是非金融の措置が図れるように努力したいと存じております。
  43. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私通産大臣にはこれでやめます。有難うございました。大蔵大臣の分は今見えないので後に保留さして頂きたいと思います。
  44. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 三十分まだあなたの持ち時間は残つております。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は大蔵大臣がお見えになりませんから大蔵大臣に対する質問は保留いたしまして、安本長官及び通産大臣に質問したいと思います。只今堀木委員から物価対策を中心に相当組織立つた御質問がありました。私もたまたまこの物価問題に関連して、講和後の日本自立経済の問題について御質問申上げたいと思つてつたわけであります。そこで堀木委員の御質問も相当ありましたから秋はダブらないように御質問申上げたいと思います。堀木委員の御質問に対する答弁のうちから、その結論として非常に重要視されました点に関して御質問いたしたいと思います。結論として物価を余り上げないようにするためには、或いはインフレ対策のためには増産が重要である、安本長官も言われました、通産大臣も言われました。併し増産をやるためには設備を増加しなければならないと思いますが、如何でございますか。
  46. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) それはお話通り設備が必要でありますが、これについてはものによつて新らしく起し、又未稼動工場として残つておるものの修復でもでき得るものがあると思います。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、片方で増産をやつて片方での資金面では設備資金の融資の抑制をする、こういうことになつているのです。これは大蔵大臣が言つているのです。そこで何を増産し何を抑制して行くのか、この点お伺いいたしたいのです。
  48. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 大蔵大臣は何もかも設備の抑制をするということは言つてつたとは思いません。必要な設備についての増設或いは修復については勿論それに対して必要な資金を出すはずであります。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その必要というのはどういう意味ですか、具体的に何を以て必要とし、どういう……。
  50. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 生産に必要な設備であつて生産関係のない設備等は先ず考慮をせられるべきであろうと考えます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 生産と言いましても、どういう方面の生産、じやあ生産に必要ならばどういう設備でも許す腹ですか、生産に必要ならば。
  52. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) その点は只今どういうものについてどれをということについては研究中でありますが、物の生産増加に役立つものは先ず頭に入れ、その中にもおのずから順序があると考えます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私はおかしいと思うのです。物の生産増加と言いますがパチンコを生産してもこれは生産なんです。ですから私はおのずからこの融資規制をお考えになる場合にも生産の抑制というのは、講和後の関係も特にあると思う。大体日米経済協力に必要な方面における生産或いはそういう軍事的生産に必要な基礎工業、鉄鋼、石炭、電力、造船、そういう方面に重点的に資材を向けるために、それと関係のない方面における生産を抑制しその融資を規制して行く、こういうことではないのでありますか。
  54. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 今のお話の点、軍需とかというようなお言葉があつたと思いますが、日本経済の振興のために必要な部門、その中に勿論日米経済協力という部面が起つて来るかも知れませんが、その中には必ずしも軍需品の生産に限らず、結局民需というものとどちらにも行き得るものが結局増産の対策になると思います。その関係におきまして今お話のような電気とか石炭とか造船というものは、おのずからよく考えて行くべきだと私は考えております。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう電力、石炭、造船、鉄鋼、そういうものを必ずしも日米経済協力ではないと言いますが、特需、新特需、こういうほうに又朝鮮動乱に伴いアメリカ軍が朝鮮で作戰をするに必要ないろいろな資材の生産、こういう方面に対する供給を増加する。そうしますと、いわゆる問題は特需とか新特需そういうものの生産と、民需と輸出との調整が必要であると言われていたのですが、特に安本長官は、朝鮮動乱が起つてから直ぐ我々国会で、この朝鮮動乱が起つた以後は日本経済は質的に変つて来るのだ、軍に量的変化でなく軍需的経済にだんだんと変る。だから必ず国民生活水準は下がる、そういうときにそういう特需輸出と民需との調整をよくやつて国民生活水準が下がらないように努力を我々は要望した。ところが周東安本長官はそれをやる、そうして特需等については緊急物資輸入特別会計というものができました。ああいうところでアメリカからその物資輸入してそうして国民生活水準を下げないようにすると言われたのです。言われたのですが結局調整できなかつたじやありませんか。そうして国民生活水準は下がつた。これは電力についても先ほど堀木委員も言われましたが、特需とかそういう方面の電力需要が急激に殖えたから電力の問題が非常に深刻化したと思うのです。今後生産増強、生産増強と言われますが一体何の生産を殖やして、そうして何の融資を抑制するのか。この点をはつきりして頂きませんと、今のお聞きしたところでは国民生活水準は上げる、上げると言いながら、どうしても生産増強には投資が必要です。そつちのほうに投資すればそれはインフレ要因になるのです。固定設備になるのですから、物価は上がります、国民生活水準は下がります。この矛盾をどうして解決するか。増産増産と言いますけれども、増産によつて物価引下げを図ると言いながら、何の方面に増産するかと聞きますと、民需品生産増強よりもむしろ非常に設備に固定する方面、電力、石炭、造船、鉄鋼、少くともそれが再生産に廻つて来るまでは、これは固定投資になりその間物価は上るわけです。それで物価対策になりますか。そういう意味の生産増強で物価対策になりますか、これをお伺いしたい。
  56. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 船舶とか石炭とか製鉄というものについての生産増強をするということは、即軍需生産になると木村さんは断定されるところに私は誤りがあると思います。石炭は全産業に必要なる数量を増産するのでありましてこれは言うまでもない。船を余計持ちたいということは、日本貿易関係においても自国船によつて輸出入関係に働かしたい。そのことが或る程度原材料輸入運賃等にも影響してよい効果が出るのじやないかと考えております。而して鉄鋼の生産におきましても過去の実例を見まして、日本の内地にできる四百万トン前後の鉄がどういう形に使われているかということを御覧になればいいのであります。全部の生産が軍需品を造つているものでないということは、はつきりしておると私は思います。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は全部が軍需品、そういう極端なことを言つているわけじやない。朝鮮動乱が起つて以後特需、新特需そういうものが出て来て、軍需生産というものが出て来たのです。そういう方面の電力の需要が殖えた、石炭の需要が殖えた、そういう軍需関係が殖えたのであつて民需品生産が殖えるのじやない。そうして今後も恐らくそういう日米経済協力を通ずる特需、新特需生産増強のために電力の生産が必要になつて来、増強が必要になつて来る、こう思うのです。それで必ずしも軍需品みたいのものを造らなくても一応ここで長期的支出をすれば、電力でも石炭でも造船でも、今すぐに軍需品を造らなくて民需品を全部造るにしても、それが再生産に廻つて来るまでには二年、三年、或いは四年ぐらいかかると思う。ここで電力増産のためにセメント、鋼材、木材、その他を政府計画などで非常にたくさん投入したと思いますが、それが電力になるまでに相當期間があるわけです。そういう形で増産というものをやりますとそれで物価騰貴が起らないというふうに考えられますか。
  58. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) それこそ私はもう少し極端でなくお考えを願いたいと思います。今年の電力危機というものはいろいろ非難がありますけれども政府も少し反省しなければならんと思いますが、併し少くとも今年の電力危機というものは異常渇水によつて水力発電の分二〇%減が大きな原因をなしておる。今後といえども日本生産を復興して行く上において、殊に講和後負担の殖える国力に対応するためにはやはり生産の増強が必要である。これはわかつておるわけです。そのときにこれ以上火力を増加して行くことは必要であり、たとえ今後水力を増加しても異常渇水に備えるために、火力発電をこれに並行して或る程度準備しておく必要があると、これは私は大きな立場で絶対必要だと思う。これに対してあなたは、そういうことをすることが軍需品を造ることであつて、而もそれに対して投下資本は暫く寝る、金を出すから物価が上る、それは生産にならないじやないかという、そういう点は認めます。すぐ消費生産にならんと、いうことは認めます。それは電力に投下される金をどういうふうに発電にこれを投入するかということであります。例えばそれらの金が十分に運転されるように銀行の小切手で支払わせるという方法も一つの方法じやないかという研究もされて、これはまだきまつておらない。そういう場合に、消費生産に使われないで固定施設に使われるもので、賃金的に大きく動くものを終始インフレ要因になるという御質問は私は尤もだと思います。併しこれをだからと言つて電源を暫く捨ておくというわけには私は行かんと思います。私はどうしてもその前に電力等において重点的に資金を廻すということは、将来のために、日本生産増強のために絶対に必要である。物の生産なくして、物の増加なくしてインフレを捨ておくということはこれはいかんと思う、金だけあつて物がなくては。これは戰後における極端なインフレの進行状況から見て私は当然だと思う。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは安本長官お認めになつたわけですね。それで国民生活水準を徐々に上げて行こうとおつしやるから我々はわからないのです。物価上つて国民生活水準の下るのは明らかで、電力とか資材とかそういうものは大幅に上つて行く、それだけならまだいいのです。いいのですが講和関係費というものが大きなインフレ要因として出て来るんです。私は国民生活水準は徐々に上る、徐々に上るということは、私はそういうことを聞くと実に無責任だと思う。上るどころじやない、むしろ下るということを私は言うべきであると思う。そうして長期計画立てる場合には、これは下ります、どうしても下ります。併しその下つたのは一時二年なり三年なりすれば計画がこういうふうに実行されて、その後において国民生活上つて行くというふうに計画をはつきり立てるべきだ。又それを国民生活水準を下げないように今のような長期計画をお立てになるならば、こういうような形の講和を結ぶべきじやない。こういうような講和を結ぶことによつて、その上に更に電源開発という長期設備に投資するからなおそういうふうに国民生活水準が下らざるを得ない。私はその国民生活水準が長期の日本経済安定のために上ることを必ずしも私は考えぬというわけじやないのです。本当に二年、三年、四年、五年後において計画的に日本経済が復興安定して来るならば、あえて私は日本の勤労大衆だつてそれは文句を言わないと思う。ところが今のやり方は非常に無計画であつて国民生活水準が上るようなことを見せかけて言いながら上つてないのです。朝鮮動乱後下つているのです、現実に。只今電力のことについて私は安本長官が言われましたが、具体的にこれは一つインフレになりますから具体的にお伺いいたしたい。電力の危機の原因は異常渇水、異常渇水と言われますけれども、成るほどそれもあります。ありますが一番大きな原因は公益事業委員会の作成しました二十六年度電力需給計画によれば、今年度の需給増加は対前年度の実績に比して七%増加と仮定しまして、そうして必要な火力用炭六百三十万トンと見た、こういう計画つた。ところが実績は今年四—六月すでに七%どころの増加ではなく、一三・四%増加の予想を遥かに上廻つておる。なぜ上廻つたかと言えば、これはこの内容を見れば特需及び輸出の伸長による電力需用増加、これは前年度に比して一六%殖えておる。このために電燈需用のほうの計画はむしろ五%下がつて来ている。これが根本の原因なんだ。これをどうして調整されなかつたか。安本長官は民需、特需輸出の調整をする、こう言つてつた。どこに調整されたか。口で言うのはやさしいことですが、朝鮮動乱が起つてから安本長官は民需と特需と、それから輸出を調整する、国民生活水準は下がらないようにする、こういうことを公言したのであります。それなのにこの電力需給計画において、特需のほうに廻したのでは電燈のほうに廻すのは少くなるから、特需はこの程度に制限すべきである、或いは輸出においてはこの程度に調整すべきであるという努力を一つも払つていないじやないですか。電力の危機の一番大きな原因は、最初の計画よりも特需及び輸出の消費が非常に上廻つた。これは具体的にはつきり数字がここにあるのじやないですが、勿論異常渇水もあります、その調査も我々見て知つております。知つておりますが、この異常渇水でもこれはすでに予想されておつたのであります。今年度の渇水はすでに年初から予想されていたにもかかわらず、この今言つた特需の需用増加をそのまま放置しておいて、火力用炭の融資にその計画を変えた。そのために異常渇水と需用増加に対して貯炭と貯水池を無計画にこれを使用した、ここに問題があるわけです。そうじやありませんか、この原因についてお尋ねしたいのであります。
  60. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) これも先ほど申しておるように異常渇水と生産増加が九%ということを申しております。そこまでは同じだ。併し生産増加九%というものが常に朝鮮関係における特需だけの増加があつたとは私は思わない。殊にあなたがたはすぐにそういう方面に引つけられてお考えになるが、生産増強と輸出増加ということが結びついて外貨を獲得し、而して民需生産に必要な綿或いは油脂その他のものが輸入されたことはお認めにならなくちやならん、一方的にものを考えちやいかん。食糧輸入にしても三百二十万トンを上廻りかけている。この国民生活に必要なものを輸入するに必要な外貨はどこから出て来るか、何も特需という朝鮮関係だけでなく、物の増加していることはこれは統計に現われている通りそのものが廻り廻つて民需品輸入に還元して来ている。私は何を民需について優先的にしたかということをはつきり申上げますと、食糧増加輸入について効果があつたこと、或いは綿布等については、從来三万七千梱しか毎月与えられなかつたのを五万梱確保しております。味噌、醤油の原料である大豆、この確保如何いたした。あなたがこの前入らんから困ると何か御指摘なつた、いわゆるこの前の議会であなたがそれを大騒ぎした。非常に入り過ぎて困ると言つて問題になつた、そういつた現実は一体何とお考えになるか。これなんかは結局輸入等において民需のものを確保しなければならんということから出て来た施策の結果である。そういう面は御覧にならずに電力の危機があつたということを捉えて、あなたがたは全部特需生産のためであるというように一方的に引付けて御議論になることは私は如何かと思う。関連的に、全体的にお考えになることが私は必要だと思う。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その食糧の問題、衣料の問題、これもやはり安本長官輸入したことを自慢しておりますけれども、あれも決して賢明な輸入の仕方ではなかつたのです。そのために一時にあんなに輸入したために、混乱が起きたことは御承知の通りです。いわゆる輸入引取金ということで非常に混乱して、やはりあれが無計画一つの見本であろう。いわゆる底の浅い日本経済において、ただ貧乏人が二枚しか買えないところを三枚も四枚も一度に買つて、それが賢明であつたということは言えないでしよう。全体的に総合的に問題を考えるとき、輸入についてもやはり長期的に計画的に考えるのが本当でしよう。あれが成功したと思われたことから……つまりもつと今後のことも十分に考えながら御説明すべきです。あれは決して成功したとは誰も言つていません。更に又電力について言われましたが、この電力は今の政府政策の無計画性がこれは集約的に現われて来た証拠なんです。單なる今の食糧とか衣料の問題とはやや性質を異にします。安本長官は自由経済になつてからだんだん物も殖えた、或いはまた安定したと、こう言われております。自由経済の結果だと言われる。成るほど一時はそのような錯覚が与えられたかも知れませんが、自由経済にした結果、この今日の電力危機が来たのです。これがもう総合的、集約的にこの自由経済の結果がここに現われたと見なければならないのです。それはもう仔細に点検して行けば、もうみんなそうです。ここにもう集約的に出て来ておるのです。一時は成るほど統制撤廃したから気持がいいように見えたかも知れません。或いはパチンコ屋が非常に殖えたり、それから或いは賭博的な競馬、自転車競争なんかいろいろ殖えて、それは何もかも自由になつていいかも知れない、そういうしわが結局こういう所に寄つて来るのです。この点はどういうふうに御覧になつておりますか。
  62. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 私はもう一つあなたに訂正しておきたいことがあります。今去年からの下半期以後における輸入は成功でなかつたとおつしやる、無計画であつたとおつしやいます。あなたがこの席上で私に質問されて、なぜ從来の輸入計画というものは、長期先物、或る程度の見込を立ててやらんかということの御質問が出た、私は覚えております。ところがそれまでの輸入計画というのは、毎四半期ごとに日本輸出して受取勘定の見込の範囲内しか輸入さしてくれなかつた、そういうことはいかんじやないかということをあなたは御指摘なつたことがあります。その通りなんであります。一体物を輸入するのに今必要だからと言つて今すぐ輸入申込は取れない。およそ食糧とか衣料とかいうものについては、相当半年先を見て、その頃の先を或る程度計画的に買つて置かなければいかんということだろうと私は思います。そのことが実現されたのです。そうして或る程度あなたがたが主張された自動許可制度というものができた。或る国から或る品目を一定の金額で制限されるような輸入じや駄目だ、これは確かにそうなんであります。そこで相当先物の計画目標というものを以て、計画的総合的に輸入許可をして行くという外貨割当ができた。これは成功だつたと私は思います。たまたまこれはいろいろな点において欠陷があります。一万トンの輸入をしたいとき、自動許可制にした結果は三万トンにも輸入がなつて外貨が出て行くというところに欠がある、こういう点は直さなければいかんと思います。それは認めます。併し從来のように四半期ごとの範囲内で輸入計画をさせることじや私は計画が立たんと思う。むしろ総合的に長期の資金計画立てたという意味から言えば、もつと先を考えて必要な数量を契約し、輸入することが必要であろうということでそれができた。これは成功だつたと思う。ただその間にそれが余り思惑的に利用され、必要以上に買いに行つたことは遺憾であつて、これはすぐ直さなければいかんと私は思います。併しそういう一面ばかりを見て議論しちやいかんと私は思う。輸入のごときは相当先のことを考えて、全体的にどのくらい必要だということを私は考えて買わなければいかんと思う。何かパチンコ屋が自由になつてけしからんというのでありますが、妙な例ですが、パチンコ屋の営業許可なんということを考えることはむしろおかしいのじやないかと考えます。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは余り議論していますと時間を費しますから次に移りたいと思いますが、その前に今安本長官は前にたくさん輸入したから成功だつたとおつしやるが、私はもつと長期的に考え朝鮮動乱のときのことを言つたのです。外貨を損したという意味を言つたのです。あのときに吉田総理は、御承知の通りマツカーサー元帥が仁川に飛んで行つたから、これで朝鮮動乱が終つて慶賀に堪えないということを言つたのです。そういう考え日本経済貿易のことを考えた。それが朝鮮動乱が起つて中共軍が介入してからがらつと変つた。あのときのことを言つているのです。そういうときにこの間の見込の輸入の、無計画輸入というものと又私は別だと思う。これは議論になりますから次に移りますが、この自立経済計画については先ほど堀木委員から自立経済審議会の答申についても御質問があつたのですが、すでにもう安本では講和後における日本自立経済計画を作業されておるはずであります。それでこれは二十九年度ですか、目標とする計画が新聞にすでにもう相当発表されておるのでありますが、その御計画を示して頂くことはできませんですか、その作業の……。
  64. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 新聞に出したことはまだございません。併し昨年の一月作つた経済自立三カ年計画というものは、案を作つたときは、むしろこれはこのまま実行するのにはもつと下廻りやせんかというような状況で心配しておつたのですが、逆にともかくもいい面で推進増加して来たことは御承知の通りであります。そこでこれ以上に講和後の問題についていろいろな負担をなしつつ国民経済生活水準を維持し、向上させて行くということについては、或る種の計画が必要であるということで、今着々計画を進めております。まだ今日申上げる運びに至らんことを遺憾に存じます。適当なとき申上げます。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は非常におかしいと思うのですが、政府が今度の案を考えるときに、講和後における日本経済が大体どうなるであろうか、これに対してどういう施策をすべきであるかということはお考えになつていなければならないはずだと思うのです。サンフランシスコの調印に行く際に、大体大蔵大臣はその案を持つて行かれておるはずだと思うのです。それでなければ、アメリカの資金を借りるなんと、そういう話は出て来ないはずであります。大体の構想でもよろしいのです。一応作業は新聞によればできているようで、一応発表されました。或いはその後又例えばアメリカから借金ができないというので作業の作り直しをやつているかも知れない。併し一応、これは安本は発表したと思われちや困るから、新聞社の調査として発表されたと思うのです。ああいう大体の計画が示されているはずであります。ですから若し直ちに……條件が非常に変りましたから、変つたということは講和調印に臨む前に、こういうことが期待されるだろうと思つて作成したところの自立経済計画が、その後においてアメリカから、例えば電力の開発についても、伝えられるところによれば、二億八千五百万ドルの外貨をアメリカに借金する前提の下に電力需給計画を作つた。ところが大体それが困難になつたので、今度はアメリカの援助を受けないと言い、駄目であるということを前提として又電力需給計画考えなければならなくなつたから、ここで又作業をし直さなければならなくなつたわけで、そういう意味で発表できないということは了承できます。できますが、これだけの重大な講和を、又経済的に重大な影響のある講和を結ぶに当つて、今後講和後において、日本経済がどういう形で自立して行くのかという構想さえもわかつてなければ、余りに無謀と言わなければいけないと思う。東南アジア開発、東南アジア開発ということを安本長官は言われております。東南アジア開発をどういうふうに具体化して、今後何カ年計画でどういうふうに日本経済に織り込んで行くか。又電力はどういう電力計画立てて、何年ぐらいのうちに生産をどれだけに殖やし、国民生活水準をどういうふうにして上げて行くか。或いは更に貿易収支の問題国際収支はどういうふうにしてバランスをとるか。特にその中でドル収支です、最近に問題になつて来ていますスターリングのほうとドルのほうで非常に問題がありますけれどもドル収支をどういうふうに立てて行くか。この三つが私は非常に重要な問題だと思う。從つてここで全部細かく計数をお伺いするのは無理でありますから、少くともこの三つの点です。電力開発計画はどういうふうにしてお立てになつているか。それから東南アジア開発計画というものはどういうふうにこの自立経済計画に織り込んで行かれるのか。或いは又この国際収支の問題のうち、特にドルのバランスをどういうふうにしてこれを合わして行かれようとしているのか。この三つについて大体の構想でもよろしいのです。それであと細かい作業ができましてから細い計数その他はお伺いしてよろしいのです。前の自立経済審議会の時のあの情勢とまるつきり情勢が変つて来ている。あれを基礎にしてお伺いしても私は意味がないと思いますから、そういう講和後における日本経済自立に関する構想を、今の三点についてお伺いしたいのです。
  66. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 先ほど申しましたように、まだ未確定の分がたくさんありますし、只今ここで詳しく申上げることは差控えたいと思います。ただお話の電力開発の点その他二点について抽象的に申上げますれば、電力については、第一期、第二期に分つて開発を推進する。第一期は大体来年、再来年に着手し三十一年頃までに完成される地区と、同じく同時期に着手しますが、完成が三十三年ぐらいになるものと二つあると思います。大体の構想としては地区別に今個所を捉えて、その地区においては如何なる企業主体がこれを実行するがよいかどうかということを今検討中であります。同時に大きな所については特殊の法人が必要ではないか。そこに政府の出資をなす一つの法人を認めて、信用力を高め急速に推進する。同時に自家発電に適しておる地区については、水力発電をなす他の企業主体に影響にならない分については自家発電を許す。公営事業について又然り。地区によつては、勿論今の九つの会社が開発をするものもある。資金についてはまだ確定しておりませんが、大体一期約四千億くらいというふうに考えておりますが、具体的の計画はまだきまつておりません。大体政府資金と民間の資金とが約半々くらいになる考えでおります。  貿易のバランスでありますが、お話のように現在このまま進むとすれば、ドル圏は支払超過、それからスターリング圏は受取超過になる見込であります。両方合せれば収支はだんだんよくなつて、二十七年度においてはプラスと考えておりますが、併し何と申しましても、御承知のようにドル地域からの輸入が多いものでありますから、でき得る限りドルをセーヴするために、ドル圏から買つておるものをポンド圏に置き換える。そうしてできる限りドル圏に輸出増加する計画の下に産業別に計画を進めております。  東南アジア地区の開発についてはまだ詳しく申上げる時期に至りませんが、品目別に或る種の話合いが進められております。その場合にその地区に対する資金は、或いはアメリカのほうの特殊な銀行等からの援助もあるやに聞いておりまするし、又ECA等の支出も考えられます。同時に日本がその地区について技術なり、労務なり、機械を提供するということがいいのではないかと思います。いずれにいたしましても開発の物によつて形が違つて来ると思いますが、根本の考え方としては、昔のように日本がその地域を支配するという考えを捨てて、はつきりと開発そのものがその地域における民族、国家の産業の復興のためになるようなことを主眼としつつ、日本が協力して、その地域から開発した物を日本に持つて来て、日本の工場で製品化して、これを輸出するような形に行くことがよろしかろうと思います。具体的に何をどこからということは申上げる時期に至つておりません。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この貿易バランスの問題ですが、通産大臣がお見えになつておりますから、今現実の問題としてお伺いいたしたいのですが、このスターリング地域に対しての輸出、これはどんどん殖えております。スターリングはどんどん殖えて行くのですが、この傾向に対してこういうふうな貿易対策でよいとお考えになつておるか、或いは何かここに調整をとつて、とにかくドルのバランスのほうを何とかして調整しなければならないと思うのですけれども、これはどういうふうに、今後こうやつてどんどんスターリング地域への輸出が殖えることは結構です。併しそつちからの輸入が伴いませんと、全体として日本は底が浅いのですから、そういう輸入が伴わない外貨をたくさん持つておるということは不経済ですし、この方針についてはどういうふうにお考えになりますか。
  68. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) 非常にこの問題で私ども苦慮しております。現在の傾向は、申すまでもなくポンドが非常に受取超過になつて殖えて行きつつあるのです。対策をどうするかと言えば、簡單に誰でも考えることは、ドル地域の輸出をスターリング地域へ移すということですが、実際にこれは余りまとまつた輸入品がスターリング地域にないのですね。まあ我々が一番望ましいのは、食糧はアジアに相当にできるのですから、そういうものの輸入が望ましいのですが、本年などはもう限度に達して大して余裕がないのです。そのほかゴムとか、生ゴムとか、錫とか、これも日本の需要に限度がある。もう一つはアメリカから参りまする綿花を、一部分パキスタンとかインドなどにできますれば、これは相当の金額になるんですが、これは御承知の通りエジプトの綿は相当品質がいいのですが、インドだとかパキスタンなどのものは品質が惡くて高いのです、それで業者がなかなか飛び付かないわけなんです。来年度の日本の紡績業者の要求しております数量はちよつと忘れましたが、これは米綿を要求しておるのですが、現在のところでは要求額より二割くらい下の数量しか同意しておりませんので、まあ私はその一部分は高くてもそれで我慢をして輸入をしてくれなくちやいかんじやないかというような慫慂をするつもりでおりますが、どうなりますか。スターリングが余つて来て或いは現在ではまだまだ殖えましよう。これをこの春頃はスターリングが欠乏して困つたようなことがつい六、七月前にあつたのですが、そう現在のなんで、余り極端に悲観することもどうかと思います。国際情勢のいろいろ、激しい変化のときですから、併し極端にこれがもう一層惡化すれば、私は遺憾ながらこのスターリング地方への輸出も或る品物によつては抑えて行くような処置をとる必要が、遺憾ながらそういう必要が起るかも知れんと、まあ心配をいたしております。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今通産大臣から非常に率直な御答弁を伺いまして、我々そういう率直な御答弁を、それがいいか惡いかは別問題として、そういう事実に即しての御答弁をして頂くことを非常に我々希望するわけです。(「その通り」と呼ぶ者あり)それによつて我々は今後の日本経済を判断して行く場合の貴重な資料になるのでありまして、何か都合の惡いことは成るべく弁解して避けようというような御答弁は私は有難くないのです。通産大臣お話によりましても、これは大きな問題だと思うのです。重大な問題です。そこで現状としては成るほどこの通産大臣御心配のようにすぐこれをどうするという智慧はなかなか浮ばないと思うのですが、自立経済計画として我々が一番心配するのはいわゆる中国の経済とだんだん講和後において交流が稀薄になつて来る、或いは又積極的に昔のように交易ができなくなつたあとに、或いは東南アジアの交易によつてカバーすると、これが講和後における日本経済自立の構想の大きな一つになつておるのです。そこで今安本長官から東南アジア開発についての多少の御意見がありましたが、一体東南アジア開発といつて、それによつて中国経済とはつきりは切断されなくても、昔のように交易できない日本経済が今後自立できるような錯覚を一般に起さしているのではないかと、こういうように考えるのです。この点は相当具体的にお聞きしたいと思うのです。東南アジア開発によつて一体そういう講和に基くところの日本経済のマイナスをカバーできるかどうか、ダレスさんがこれはこの前に私お話申上げたことがあるのですが、ユーエス・アンド・ワールド・リポートのフロム記者とのインターヴユーの中ではつきり言つているのです。一九三〇年代の貿易の型は、成るほど日本はいわゆる東南アジア、インドあたりから銑鉄や何かを輸入してやつてつたのだから、原料面において決して心配ないのだと、こう言つているのです。從つて講和後において、日本は東南アジア開発によつて日本経済自立がうまく行くであろう、であるからそれを推進しなければならないと言つているのです。併しながら、それには日本には呼び水が必要であると言つているのです。ところがその呼び水はアメリカ自身がいわゆる一時的な鉄鉱とか原材料というものを供給するはずであつたけれども、アメリカ自身の軍備拡張のためにそれが必要になつて、そうして日本にそれを十分に供給することが困難になつた、こういうふうにダレスさんは言われているんです。そういう状況の下で東南アジア開発というものがうまく行くかどうか。プラント輸出とか何とか言つておりますけれども、うまく行くかどうかと、こういう点です。  それから東南アジア開発と言いますけれども、最近或いはアメリカのポイント・フオアーとか或いはコロンボ・プランに御追随のような形でありますが、最近のアメリカのポイント・フオアー計画の構想ですね、これは経済安定本部で出されている経済月報の十月号を見ましても、これが非常に構想が変つて来ておるようですね。経済的援助から軍事的援助に変つて来て、そうしてこれは相互安全保障局というものを作りまして、そこでこれを担当する、そうしてこれは結局安全保障と独立、並びにアメリカの国家的利益に役立つ方面に使うということになつて来ておるんです。從来の経済援助的な考えと変つて来て軍事援助的性格が強くなつて来ておるのですが、そういう状態の下で、こういう援助、或いは前のポイント・フオアー計画におんぶして、それでうまく行くかどうか、私はコロンボ・プランでもやはり相当軍事的な援助になつて来ていると思うのです。そういう状態で東南アジア開発というのが非常に大きくクローズ・アツプされているのですが、これをできるだけ具体的にお伺いしたいのです。
  70. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お話の点は承わつておきますが、東南アジア地区の開発については、相当に私は期待が持てると考える。いろいろ今お話がありましたが、先方と話合つたところによつて、物によつて話が進みつつあるものもあります。これに対して先ほど申しましたように、アメリカのECA等の資金の援助ということは非常に期待しております。又中国の貿易ということもたびたびこの前聞いております。これは私は決して望ましくないことではない。これが回復されれば非常に結構だと思いますが、併しこのほうの関係がたとえ回復されたとしても、新らしい今後の情勢、状態においてやはり埋蔵されておる、死蔵されておる東南アジア地区の資源の開発ということは、当然私は興つて来なければならんし、又それは是非日本としてやらなければならん、その方面に協力しつつやることが必要である。軍に中国地方における輸入杜絶といいますか、交易が今杜絶しておる時にだけ関係が大きいというふうに考えて、この東南アジア開発を考えてはならんのではないかと思う。もつとほかの観点から言つて、よしんば中国の貿易が回復されたとしても、もつと大きな東南アジア地区における資源、原料の開発ということは必要であるし、日本の大きく協力して行く余地が残つておると私は考えております。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間はどうですか。
  72. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 今日は午後五時までになつておりますから、あなたの都合によつて……。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではもう少し安本長官にまだ残つておりますから、伺いたいと思います。  東南アジア開発についていろいろお話がございましたが、これは先ほどの講和後における日本経済自立計画において具体的に予算をやるようでありますから、それができましたら成るべく早くそういう資料を御提出願いたいと思うのであります。東南アジア開発計画をどのように織込んでやりますか、それは近くできますか。
  74. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 自立経済計画という関係を織込んだ計画についてはできるだけ早く出したいと思います。その際に東南アジア開発という関係は地区別、物資別にということはちよつとまだその期に至らんかも知れませんが、できるだけできたものは持つて来ます。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 東南アジア開発については具体的にいろいろな問題があるわけでありますが、余りにそれをクローズアツプされて、そうして何か東南アジア開発によつて、講和後における日本経済の困難さが非常に大きく救われるように一般に一言われているのは、私はそれは間違いじやないかという意味で、もつと正確なところをお話願いたいと思つて質問したわけであります。例えばマレーなんかでも調査員が行つた日本人は入れなかつた、それほど向うの対日感情はまだよくないということを聞くわけです。成るべくその実情を過大評価しないで、又過小評価しないでその実際のことを我々はお伺いしたいのですが、機会があつたらそういう実情をよくお聞かせ願いたいと思うのであります。  それから次に安本長官に伺いたいのは、この日米経済協力の問題なんでありますが、これは財界でも非常にこの問題については相当まあ意見があるようでございます。この間の経済同友会の第四回全国大会で採択された総合インフレーシヨン対策の要望の中にも非常に重要な点が指摘されていると思うのであります。その第一として、日米経済協力、特需を含めた広義の輸出に対し、それに見合う附加輸入が充足されない虞れがある、こういうことがある。これがやはりこれまでも問題になつておりました民需を圧迫するというようなこともそこからも出て来るわけです。この点について安本長官はどうお考えであるか。それから前に緊要物資輸入状況です、あれは確か特需なんかの場合ですね。日本の民需を圧迫しないためにああいうものを輸入するという構想ではなかつたかと思います。緊要物資輸入状況がどうなつているか、これがまあ第一ですね。  それから第二はいわゆるコンマーシヤル・ベースが堅持される場合にはいろいろな点で逆に物価上昇の原因になる、このいわゆるコンマーシヤル・ベースという問題について安本長官はどう考えておられるか。この日米経済協力はいろいろな面から非常に重大な問題が起つて来る、労働者階級の低賃金の問題、そういう問題も起つて来るわけです。又全体の再生産の上からいつても、時期的に或いは量的にいろいろ日本経済のマイナス面があるわけですね。これに対してこれまでの経過に鑑み、これまでの実績に考えてどういう点が欠陷があつたかということは明らかになつているはずであります。安本長官は今後これに対してどういうお考えをお持ちになり、どういうふうに対処されて行くかお伺いしたいと思います。
  76. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 今お話のような点についてはまだ具体的になつておりませんが、日米経済協力という線に基いての物資別の生産輸出関係が具体化して来るような場合におきましては、今お話のような全部日本に物を持つて来て全部向うへ持つてつてしまうというような関係のないように、私どもは努力をいたしたいと思つております。この点については大体そう世間で伝えられているごとく、原料をやるとそれを加工して全部取上げてしまうというような形にはむしろならないで、必要な原料について相当価格等も考え輸入をして、その一部分が再輸出されるということになるのではなかろうかと考えております。具体的に品目別にまだ注文は来ておりません。併し将来の問題としては何とかして向うも一つの窓口で、日本政府に対しても一つの窓口で相談するというような恰好にしてもらいたいということを要求はいたしているのであります。  それから緊要物資輸入特別会計にどういう品物が入つているかということですね、それは通産省のほうからお答え申上げます。
  77. 永山時雄

    政府委員(永山時雄君) 緊要物資輸入基金の運営につきましては、本年の四月実施をされましてから最近までにニツケルを約二百トンぐらい買上げました。それでなお今後買上げる予定の物といたしましては、そのほかにニツケルを更に百トンほど、それからなお合成ゴム、或いはコツトン・リンター、パルプ、それから石綿、そういうような物を現在予定をし、或いは引合をしておるという現状でございます。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 安本長官に伺いたいのですが、この制度は朝鮮動乱の結果いわゆる特需が出て来て、それにまあアメリカ軍が朝鮮で作戰するのに必要ないろいろな物資を供給する。その場合民需を圧迫するといけないから、統制する方法としてそこでそういうものを輸入するということからこの特別会計が作られたのじやないのでございましようか。
  79. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 大体そういう趣旨でありますると同時に、必要な物資を民間だけで輸入さしておるのが無理のあるというような場合に、政府において輸入してやろうということが目的であつたと思います。殊に今のニツケルのごときは、從来非常に少い物資が入つて来て、数人のブローカーで売られておることから来る値上りとか、或いは有効需要を阻んでおるということがありますので、むしろ政府でこれを輸入して、直接最終消費者に渡して有効需要を阻害しないようにするということも目的になつております。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、この目的が今安本長官がお答えになつたようであると、実際の活動は殆んどニツケルが中心で、二百トン、今後百トン、あと石綿なんかで、特別会計を設けられた趣旨が十分に活かされていないのじやないかと思うのです。どうもその点名前は非常に大きかつたですが、我々非常に期待はずれなんですが、それは今後又どういうふうにこれを運用されて行くか。
  81. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 今までにおいては余りまだそれを活用するほど必要な物資が少なかつた。まだ金も從つてつております。今後これが活用の時期に入ると思います。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金が余つてそれで特需が民需を圧迫するからしないように、こういう特別会計を作つて調整しようと、こういうようになつてつたその趣旨と私は大分違うと思うのですが、これは又意見の違いになりますから、何しまして、安本長官にもう一つお伺いしたい。この際ですね、本日の安本長官の最後の問題にして質問したいのですが、さつきも堀木委員から問題があつたのですが、生活水準の問題です。これは抽象論みたいな問題になりますけれども、今後これはどういうふうにお考えになつておるか、重要ですから、この際一応明確にお聞きしておきたいと思います。生活水準、総理大臣日本生活水準はまだ行き過ぎているからもつとこれは耐乏生活をやらせなければならんようなお話つたんです。それをイギリスに例をとられまして、イギリスは四十七億ポンドの軍拡を三カ年間でやるので、ここで相当生活水準が下つて来ておると聞いておる。日本はそんな大軍備計画をやるのではないのですから……。而も現在の生活水準をこれを行き過ぎとお考えであるかどうか。総理大臣の言つておるように、まだこれは引下げるべきである、耐乏生活をもつとさせるべき必要があるというお考えでありますが、この点非常に重要だと思いますので、どういうふうなお考えでありますか。
  83. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 総理のお答えは私は横におつて聞いておつたんでありますが、現在よりも国民生活水準引下げて耐乏生活をさせるという意味ではなかつたと私は思います。今日までの状況における国民生活水準は戰争中、戰後、直後の二、三年に比べて、たしかによくなつておることは事実であります。これを急速に引上げることができるかというような御質問に対して、それは急速にはいかんが、そのことは余り贅沢を言わんようにという御趣旨であつたと私は思います。総理のお話を忖度して考えるに、さように考えます。そこで私どもも、先ほども申しましたように、これは望むべきことは何とかして早く戰前の水準一〇〇%に回復することが一番いいのですけれども、少くとも戰争中、戰後二、三年に比べて上つておる。殊に先ほど申上げましたように、朝鮮動乱勃発前まではだんだん七八までになり、それが六九に落ち、それが今七〇を前後してやつておりますが、こういう状況を私は余り引下げることなく、徐々にでも上げたいということが私の考えであります。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 安本長官生活水準生活水準と言つておりますが、一体何を元に生活水準をお考えですか。それを引上げるとか、よくなつたとか言われておりますけれども生活水準は何を根本にしてよくなつたとか、上るとか下ると言いますか。生活水準の基準はどこに求められておりますか。
  85. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) CPIの占める消費基準を目安にしておりますが、同時に先ほど言つたようにあらゆる面がこれに関係して来ると思う。国富の増進ということがなければ国民生活水準上りません。国富の増進は生産の上昇に待たなければなりませんし、その生産の上昇によつて物価が安定すれば一番いいのですが、而して日本の置かれている地位によつて止むを得ない事情によつては、生産増加による国民所得の増、そのことを実質的な収入と言いますか、実質賃金増加というものを目安に考えて行つたほうがよかろうと思います。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 生活水準の場合一番問題になるのは、あなたはそう言いますけれども、いわゆる専門的に言えばエンゲル係数です。生活費のうちに占める食費の割合、これがどの程度なつたかということが国民生活が向上したかしないかという基準になると思うのです。そこで安本長官は、現在の日本生活水準というものは、いわゆる私はまだポバテイー・ラインと言われますけれども、まだ貧乏水準と思う。從つてこれ以上安本長官は今後下げる政策をとらないつもりであるか。とにかく下る公算が大きいのですから、これ以上はもう下げない、こういうおつもりでありますか。
  87. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 現在の状態を維持して行く、それよりも少しでも上げて行きたいということを考えます。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に通産大臣にお伺いしたい。石油の統制ですね、あれは四月一日から撤廃することに大体政局ではきめておられるのですか。
  89. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) 四月一日から石油の統制は撤廃したいと考えておるのであります。それから今も考えておるのですが、需給関係が、つまり石油をどうしても輸入しなければならんので、輸入関係がその見通しがまだ付かないのですね。その問題は安本長官が頻りに盡力してくれておりますが、その見通しが付けば四月一日から撤廃する方針であります。率直に私の意見を申しますが、なかなか困難でしよう。(笑声)こういうふうに私は考えております。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今は本当に率直の御答弁ですが、安本長官、この需給の見通しはどういうふうにお考えですか。
  91. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 石油の需給についてまあ今日までのところ、大体戰前の七九%しかないけれども、ずつとこの両三年輸入を維持しておるようです。大体四月と申しましたが、大体十月一日に撤廃したいという気持でありましたが、十—十二月の外貨予算関係からみる輸入数量が、一—三月に入つて参りますが、一—三月の間における実際の確保状況は、これは從来通りつておりますから、大体見込通りと思いますが、それをもう少し見たかつたのと、一—三月における外貨予算で出て参るものが四月以降に現実に入つて参ります。そういう数量を見て、從来通りならば大体差支えなしと、こういうよな見通しで四月一日からやられたらどうかということであります。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この從来通りに、仮に從来通りとした場合、統制撤廃したら石油の価格はどういうふうになるお見通しですか、石油の価格は……。
  93. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) これは四月一日以降のことですから、ちよつと今から申すのはどうかと思います。今非常に中途半端な統制になつておる、価格問題について、殊に……。御承知かと思いますけれども日本国内における使用されておる油の約六〇%強は原油を輸入して精製したものです。あとの四〇%弱は製品輸入です。その中で非常にいろいろ努力しておりますけれども、困つたことはガソリンだけは製品輸入を認めない、重油と軽油は製品輸入しておるというわけで、国内価格は精製業者の価格によつていろいろ現実に動いておるという恰好でありまして、こういう点はむしろ外すことによつて、全部製品輸入をどれもこれも認めさす、自由にすることになれば、却つてガソリンは製品輸入をいたしたほうが安いそうですから、そこに原油から精製した国内産のガソリンが調整され、その結果が重油にも相当に影響を及ぼして、双方調節されて現在のCIFの価格もそういうような観点によつてきまるのではないか、かように考えております。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは御承知のように電力不足からやはり重油を使わなければならないというような状態に出て来ております。それから機帆船における需要の問題、この需給関係を一歩誤まると大変なことになると思います。それで若しか自由にしたならば、高級車を使う人なんかどんどん買える、ところが非常に必要なバスですな、ああいうバスなんかは、例えば公共企業体で経営しておる場合なんかは十分な予算がないから買えない。それでは今度はバスのガソリンが確保できない。これは非常に影響するところが大きい。需給のバランスを失い、そうして価格が非常に上るというような場合、私はこれは軽々にすべきものではないと思います。それから今後の国際情勢を見ましてもそうです。国際情勢を見ましても、むしろ石油のごときは稀少物資の中に入つて行くと思うのです。そういうものはむしろ統制、殊に使用制限などはますます強化して行く必要こそあれ、これを撤廃するというのは、全く、ドツジさんじやありませんが、国際情勢に逆行するものではないか、この点は十分案本長官もお考えになりまして、私はもうここで撤廃するのは、米の統制撤廃は政府が間違つたと同様に、やはりこの石油の統制撤廃も間違いだ、これはもう十分お考えになつて、幸い通産大臣は非常に慎重な考えを持つておられます。從つて通産大臣におきましては、この問題についてはいろいろ影響も広汎であります。私は一応調査してもらつたものがございますが、時間がございませんから、詳しいことをここで申述べませんけれども、十分愼重に、むしろこれは統制を撤廃すべきじやなく、逆にこれから強めて行かなければならない、こういうふうに思うのですが、これをまあ要望いたしまして、私の質問をこれで終ります。
  95. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 電力問題についてお尋ねしたいと思います。現在聞くところによれば自家発電の電力は余つておるところがあるし、その他の電力は不足をしておるところが多いのであります。そういうふうな場合において、現在の組織では自家発電を不足しておるところの方面に廻すことができるという説と、できないという説があるのでありますが、或る地方はやつておるし、或る地方は中止しておるのであります。これができるか、できないかということをお尋ねしたいと思います。
  96. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 御尤もなお尋ねですが、これは今自家発電は設備能力を持つてつてフルに使つてないところは、至急にそれをやらせるように慫慂しております。そこで起る問題は自家発電、大体火力発電が自家発は多いのでありますが、その場合に自分の工場で使う以上のものをそこで起させることによつて価格が上るのであります。これをむしろ電力会社等が委託発電の形と申しますか、買電の形で買つてつて、その分は少し水力の電気と同じように安く考えてやるということにすれば、国民経済の上に持つておる設備を十分使わせることができるので、その点を慫慂し、公益事業委員会で大体趣旨を了承して、その方向に進んで行くように参つております。なお進んで言えば、希望しておることは、これは何か法規上の問題はありますけれども、問題は直接自家発電の場所から需用者に送ることができれば非常によいのですが、今日法律で電気を売るものは会社に限るということで、遠いところへ送つてからまた送ると、こういうところを何か改正して、直接隣り近所に渡せばそれを安く使えるというようなこともあります。そういうふうに、それを併せて公益事業委員会考えてもらうようにきつく話をいたしました。
  97. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 法律上の問題があるというようなことで、噂に聞けば或るところは実行しておるが、或るところは実行しておるのを止めたというような話も聞くのでありますが、いろいろ生産上に非常に重大な関係を持つ電力のことでありますから、速かに政府のほうで方針を決定いたしまして、不足のところには余つておるところの電力があるといたしましたならば、直ちにその方面に廻すことができるように御配慮を願いたいと思うのであります。
  98. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本日はこれにて散会いたしますが、政府のほうに申上げて置きますが、予算委員会審議は各問題が関連しておりますので、要求された時間を厳守して出席することをお願いいたします。  それでは本日はこれで散会いたします。    午後四時三十六分散会