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1951-11-13 第12回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十三日(火曜日)    午前十時八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            小林 政夫君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            小野 義夫君            加納 金助君            古池 信三君            白波瀬米吉君            深水 六郎君            溝淵 春次君            荒木正三郎君            内村 清次君            小酒井義男君            波多野 鼎君            松浦 清一君            山下 義信君            山田 節男君            高良 とみ君            西郷吉之助君            前田  穰君            岩木 哲夫君            西田 隆男君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    労 働 大 臣 保利  茂君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正巳君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       東条 猛猪君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    水産庁次長   山本  豐君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○理事補欠選任の件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) これより予算委員会を開きます。  先ず理事補欠選任の件をお諮りいたします。先般理事伊達源一郎君が委員を辞任されました。よつてこの補欠互選方法は先例によりまして成規手続を省略して委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御異議ないものと認め、私より小林政夫君を理事に指名いたします。   —————————————
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 次に昭和二十六年度補正予算につきまして総理大臣に対する質疑を行います。質疑は昨日の委員長理事打合会で決定いたしました通りに行います。時間は質疑応答を含めまして一人三十七分でございます。
  5. 内村清次

    内村清次君 吉田総理外交方針についてお聞きしたいのであります。日本国憲法公布記念式典に賜わつた勅語の一節に「即ち、日本国民は、みづから進んで戦争を放棄し、全世界に、正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたのである」。と述べられております。この憲法の理念は、日本国の一貫した国是として、国民政府も協力してこの憲法を貫き通さねばならないという政治外交基調であるものと確信するものでありますが、然るに吉田総理の今回の講和条約安全保障条約調印式にあられました経緯につきましても、しばしば外交の秘密を説かれ、総理独自の個性で強く支配され、更にサンフランシスコ会議におきましては、共産軍の北方よりの侵略の脅威を説かれ、一方の陣営にみずから日本国を投じ、安全を図ろうとなさいましたことは、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」憲法の精神に相反すると思うのでありまするが、総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 平和条約は平和を目的とし、又安全保障条約も又日本安全独立を保障するものであつて戦争を徴発するために作つたのではないのでありますから、私は憲法に違反しないと思います。
  7. 内村清次

    内村清次君 不幸今回の講和調印参加いたしませんでしたインドビルマ国、その他アジア諸国ソ連圏及び中共との国交調整をどのようにお考えでありまするか。その点をお伺いしたいのであります。  なおアメリカ外交方針は力の外交を推進することを報じられておるのであります。力の外交曾つて我が国でも体験済みでありまして、今日のような悲惨な運命に逢着いたしましたことは御承知通りであります。又世界の歴史におきましても、戦争誘発の原因を作つた事例は歴然であります。この両条約によりまして、将来の戦争誘発の動機が多分に含まれておりはしないかということを憂慮するのでありますが、只今では総理戦争誘発はないとおつしやつておりますが、即ち日ソ同盟条約の点から考えてみましてもこの点が気遣われるのでありますが、将来日本が両陣営対立の激化によつてみずから戦争に巻き込まれるというような憂はないかどうか。この点について御答弁をお願いしたいのであります。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) インドその他極東の諸国との間の講和条約調印参加しない国々との間の関係をどう調整するかということでありますが、インドについては、すでに日本に対して講和条約をする、或いは戦争状態を終了させるという意思表示をしております。ビルマについても、又日本に対して平和関係に入る意思表示をいたしております。その他中共については、中共はいろいろな宣伝もあつて新聞にはいろいろ伝わつておりますが、直接には何らの交渉も持つておりません。今日はまだ独立しておらず、外交は停止の状態にありまするから、我が国から積極的にどういう行動をとるということは、ここにお話しかねます。併しながら主義としては、成るべく善隣関係各国との間の平和関係に入るということに進むつもりであります。ただその方法はどうかとお尋ねになつても、これは只今のところはこういたしたいということを意思表示するだけの地位になつておらんことを御承知を願いたいと思います。  それからアメリカ外交は力の外交なりと言つて御説明がありましたが、これは私としてはアメリカ外交に対して批評する地位におりませんからお答えを差控えます。それから……。
  9. 内村清次

    内村清次君 戦争誘発に巻き込まれるようなことはないかどうか。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはないと思います。又ありたくないと思います。というのは、アメリカにいたしても、日本は勿論のことでありますが、戦争を避けるために極力いたしているので、戦争誘発するという意思で以てすべての行動を、外交をいたしているとは考えられません。が、将来どうなるか。これは将来のことでありまするからして、憶測を逞しうすることはできませんが、主義としては列国ともに今日戦争をしたいということを公然言つてる国は一国もないのでありまして、ソヴイエトといえどもないと思う。又若しここで私の所信を率直に披瀝すれば、サンフランシスコにおいてとにかく五十一ヵ国の国が集まつて、そのうち三国だけが調印しなかつたということで、即ち四十八ヵ国が平和条約に調印したということによつても、世界世論は平和を欲することにあることは明瞭であり、又この気持は当然共産主義国にも伝わるであろうと思いますから、この条約のサンフンシスコにおける会議の模様だけでも相当の影響を及ぼしているのではないか。その結果であるかどうか知れませんが、近くと言いますか、或いは来年になれば三巨頭会談というような話も伝わつているので、列国ともにどうかして、戦争は防止したい、平和を増進せしめたいという気持になつているので、この気持は当然共産主義国にも伝わるでありましようし、又共産主義国の主としていたしていることは宣伝とか、或いは又各国世論傾向について十分の注意を払つている国々でありますから、世界世論が平和を欲している、戦争はしたくないという空気のうちに、あえて、戦争をしかけるという気持にはならないであろうと、これは私の想像でありますが、サンフランシスコにおける会議戦争誘発するという危険は私はないものと確信いたします。
  11. 内村清次

    内村清次君 インドネール首相は、只今総理の言われましたように、講和発効の直後に戦争終結の宣言をするという、好意ある意思を通告をせられたようでありますが、ただ遺憾ながら今回の講和条約に対しましては不満の意を表しておられます。その理由は、沖縄、琉球、小笠原の日本への返還、又台湾の中国への返還中共講和条約参加占領軍駐留反対という態度を示しておられるのであります。我が国アジアに占めまする地位から、又独立自衛立場から判断いたしましたときにおきましては、極めて我が国に有利な好意ある態度のようにも認められるのであります。総理は、我が国立場から、このような有利な条件で将来条約締結しようというような国に対しましては、どのような努力をされるのでありますか、その点をお伺いいたしたい。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ネール首相の発表せられた意見なるものは、私は新聞以外に承知いたさないのでありますから、これに対して批評はいたしたくないと思います。併しながら条約にもある通り現在、この間サンフランシスコにおいて調印された条約以上に有利な条約締結しては相成らん。三年間でありましたか、相成らんということになつております。でありますから、少なくとも三年間は日本としては考慮の余地がないものと考えます。
  13. 内村清次

    内村清次君 独立後の日本国際連合加入希望は今更申上げるまでもないことでございますが、パリ在外事務所長政府筋への情報によりますると、日本加入は極めて悲観的であるということでありました。その加入が認められるということは、米英ソ連との対立が全面的に解決を認められたあとであると言われておりまするが、これも単独講和及び安保条約の結果から生れて来た必然的な結果ではなかろうかと思うのでありますが、総理はこれらの困難な問題を如何にして解決しようとされておるのでありましようか。その点をお伺いしたいと思います。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連加入については手続の上におきましても、又その他加入条件等から申しても、日本が直ちにこれに加入するということは困難であるということは御承知通りであります。然らばこれに対してどうするか。先ず第一これは連合国の間の或いは国連側日本に対する意向と申すか、客観情勢に関する事項、或いは客観情勢の変化によつて態度も違うでありましようが、今後の客観情勢発展変化を待つよりいたし方ないと思います。
  15. 内村清次

    内村清次君 日米安全保障条約の前文には明らかに将来日本が再軍備して、外国軍隊駐留に代り得るような意味のものが書かれておりまして、現に事実上は警察予備隊には旧軍人、特に大佐、中佐以下の追放解除者を採用して、訓練も装備も全く旧軍隊酷似であります。国家予算も今回の補正予算にも増大せられておりますし、又将来の予算にも増大の傾向が見受けられるのであります。このことは内外におきまして日本は再軍備の第一歩を築いておるものであると評価されているのでありまするが、日本の再軍備はすでに時日の問題であろうと思うのであります。現に全国の小学校の教職員の方々は昔に還る、この現実の事態平和憲法との矛盾につきまして深刻な悩みに陥つておるのであります。これは教育上の重大問題であろうかと思うのでありまして、南原東大総長の退任の辞は総理は何とお聞きになつたのであるか。学問の真理を求め、過失の再現を恐れ、真に平和を愛好する救国の叫びというものは、最高学府学徒は勿論でありまするが、将来の日本を担うところの幾千万の青少年の胸奥に深く刻み込んだことであろうと思うのであります。総理はこの青少年学徒の指導をどう考えておられるか。なぜ憲法に疑義の生ずるがごとき条約に対しましては、みずから進んで国民の総意を聞いて、即ち憲法改正措置を前以ておとりにならないのであるか、その点につきましてお伺いいたします。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、警察予備隊軍人を採用いたしておることは、法務総裁等からしてお答えがあると思いますが、警察予備隊は飽くまでも警察予備隊であります。これは軍隊に代るものとして設置いたしたのではないのであつて、たとえその幹部が軍人であろうが、或いはその装備がどうであろうが、とにかく目的は設置の当時その趣旨政府が明らかにいたした通り、これは警察予備隊であつて軍備でない。又軍隊に代らしむる目的を以て組織いたしているのではないのでありまして、政府といたしては再軍備は差当りできない、国力がこれを許さないということをはつきり申しているのであります。にもかかわらず、只今お説のような、教育家その他迷う者ありとすれば、申す人の勝手であつていたし方ないのでありますが、政府としては断然再軍備は当分いたさない、しないがいい。又日本国民としては飽くまで世界の平和に貢献する、世界文明繁栄に貢献する、戦争は反対するのだ、戦争は避くべきものだという趣意は、私は文部省において青少年学徒に始終注入しているものと考えております。
  17. 内村清次

    内村清次君 そういたしますと、総理憲法改正の問題にお触れになつておりませんが、憲法改正は二、三年中にはないということを確信できますか。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは政治でありますから始終動いておりますからして、(笑声)汽車と違つて発車時間、到着時間は予定いたすことはできません。併しながら私は再軍備は現在のところいたさんがいい。いたせば国力がこれに耐えないのみならず、不完全な軍備を持つということは、却つて他国侵略を誘致するゆえんであると思いますから、私は再軍備は当分考えないがいい、政府は少くとも考えません。
  19. 内村清次

    内村清次君 未復員者返還条約条項に記入になつているということは、留守家族方々も非常に喜んでおることでありますが、併し吉田総理の今回の講和にとられました外交を以ていたしましたならば、ソ連中共感情を害しまして、折角のこの条約条文というものが死文になりはしないかと憂慮している者もあるのであります。総理はこの問題につきまして、積極的に、どのような御処置をとつてこの国民お答えになろうとしているのか。又留守家族代表たちは、みずから現地へ調査団を派遣したいというような希望もあるのでありまするが、留守家族は勿論国民が最も関心を寄せていることでありまするからして、その点には御親切に一つ御答弁をお願いしたい。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば答弁いたしておりますが、今日抑留軍人の問題は、単に日本だけではないのであります。フランスにも同じ問題があり又ドイツにも同じ問題がある。ここにおいて国連がこの問題をとり上げ、又赤十字社がとり上げて、国際的にこの問題の処置を熱心に今研究といいますか、処置をとつております。この処置がどうなるか、先ず我々はその処置に依頼するよりほかにないと思いますが、さてソヴイエト或いは中共等態度は、御承知のような態度であります。これをどう和解するかということは、これは将来における国際間の協議、若しくは国際間の外交上の処置によつて解決を計る、又計つてもらう以外に、日本として直ちにソヴイエトと或いは共産主義国との間に交渉機関を持つておりませんから、国際連合その他の、或いは赤十字社とか、或いは列国の間の国際協議とかというような方法によつてこの問題の解決を計る以外に方法がない。又それによつて解決の速かならんことを進めるつもりであります。
  21. 内村清次

    内村清次君 政府講和後新経済政策におきまして、東南アジア貿易相当の期待を寄せられた政策を支柱とせられておるようでありまするが、東南アジア諸国の対日感情というものは、このたびの条約及び日米安全保障条約締結によりまして、却つて悪化しているという客観情勢の事実があります。例えば賠償問題を棚上げにいたしまして、本格的な東南アジア貿易を行なつてもそれは無理ではなかろうかと思われます。日本輸出品賠償の代品となるがごとき事態があるかも知れないのであります。賠償問題の円滑なる解決を抜きにいたしまして、本格的な東南アジア貿易の振興は非常な困難を伴うものと思うのでありまするが、総理はどう考えておられるか。賠償問題の成立の時期、又特に明二十七年度の予算に対しまして賠償の一部が予算に計上されるかどうか、この点についてお伺いしたい。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 東南アジア開発の問題については、これは関係国といいますか、英米等において深く関心を払つて研究しているところであり、又その方針、その措置等についてはまだはつきりした計画が立つておらないようであります。計画が立ち次第又我が国にも話があると思いますが、只今のところは東南アジア開発等については列国方法研究中であるというのが現状であります。この方針がきまれば、今申したように日本参加を求めるといいますか、協力を求めるということになるであろうと思います。そうすると自然その方面から東南アジアとの間の貿易も開けられるであろうし、又東南アジア、殊にフイリピンとか或いは仏印とか、その他の国との間において対日感情が悪いものがあるということも事実でありましよう。故に賠償問題等日本が誠実に取上げて、これらの国との関係をよくするというために賠償問題の解決が必要であると思うのであります。その賠償問題はどう解決するか、一応条約には原則だけはきまつておりますが、それの実行については、今後のその原則を具体化するについては今後の交渉に待つよりほか仕方がないので、交渉はまだ開始されておりませんが、速かに開始するつもりでおります。その結果において自然予算措置をも講ずるようになるかも知れませんが、本件がきまつておりませんから、今予算の中に計上するとかしないとかいうことの言明はできませんが、自然予算措置を講じなければならんことになると思います。
  23. 内村清次

    内村清次君 中国貿易の点につきましては、これは日本独立後の日本経済自立に対しましては、吉田内閣に対して国民が非常な注目をいたしておることは申すまでもないことでありまして、不幸にして今回の両条約締結によりまして、日本中国とは仮想敵国状態にあるようなことになつたのでありまするが、今後の中国貿易本格化というものが非常に困難になつた、特に又総理関西方面におきますところの財界、産業界希望を、而も旺盛な意欲というものを総理はよく御承知でありますが、総理はどうも中国貿易に対しては熱意がない、而も中国貿易、に対しては過大に余り評価し過ぎはしないかということを常に言つておられますが、その真意の点につきましてお伺いいたしたいのであります。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 人によりますというと、中国との貿易が開かれなければ日本生存ができない、こういうような極端なことを言うのに対して私は申すものであります。日本中国との貿易が開けなくても、すでに過去六年の間、終戦後六年の間生存して来たのであるから、中国との間の貿易が存立しなければ日本が亡びる、生存ができないというようなことは過大評価であるということを矯めるために、過大評価してはいけないと申すのであります。又戦前においても中国との間の貿易が非常に多いようでありますが、これは満州を加えての貿易であり、北支那を加えての貿易であつたのであります。北支那は、又満州には日本が巨大な投資があつたから、自然満州との間の貿易が大きく、それが中国貿易になつて現われたために、日本があたかも中国がなければ生存ができないように信ずる者もあつたということは、これは過大に評価しておるということが私の趣旨であります。
  25. 内村清次

    内村清次君 今の御答弁ではなかなか私も安心なりませんが、問題を変えまして、終戦以来の対日援助費はすでに約二十億ドルになつておりまして、邦貨に換算いたしまして約七千二百億になつておりますが、大蔵大臣はこれは借りた金だから戻さなくてはならないと言つております。これは国民の中にはやはり終戦処理費と棒引きにしてもらえないかというような希望もあるようでありますが、総理は先ず日米防衛分担金外債というものと共に賠償に優先して支払う義務があるかどうか、この点につきまして、これは昨日も問題になつておりますが、総理大臣からお答え願いたいと思います。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣から代つて答弁いたします。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 対日援助費は、私はこの席したびたび申上げております通りに、債務と心得ておるのであります。従いまして終戦処理費とは性質が違うもので、これを差引計算するというわけには参りません。対日援助費賠償より優先するかという問題につきましては、各国の間においても議論のあるところでございまして、アメリカにおきましては賠償より優先するという説が多いようでございます。なお我々といたしましては、外債或いは対日援助賠償、こういう一連の関係を総合的に考えて返済、弁償を計画をいたしておるのであります。
  28. 内村清次

    内村清次君 大蔵大臣の御答弁は、これは条約委員会でも条約委員人たちが聞いたことでありまして、問題は総括質問に残そう、総理答弁を聞きたい。こういうのが皆の気持であります。併し総理がどうしても応じられませんならば問題を変えますが、今回の統制撤廃に対します政府態度というものは、これはもう皆さん方よく御承知通り総理もよく御承知通りでありまして、このように生産農家は勿論、国民の多大の不安と動揺を惹起いたしましたことは、吉田内閣の最近の一大失政であると私たちは思うのであります。国民の食生活の最大重要なこの主食の問題というものがこのような無準備と無計画のままに、ただ党利党略のために広く内外に悪影響を及ぼしましたことは、単なる関係閣僚責任問題ではないのでありまして、勿論これは責任もありますが、その政治上の責任というものは当然吉田総理の負うべきものであると私は思うのであります。この総理の今回の施政方針演説の冒頭におきましても、撤廃を声明されておるのであります。この総理言明によりましても、真意国民の前に明らかにせなくてはならない。これこそ私たち民主政治であり、責任政治の根源であろうと思うのでありますが、総理責任ある答弁をお聞きしたいと思うのであります。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 代つてお答え申上げます。米の統制主食統制撤廃につきましては、総理大臣施政演説において申されましたように、速かに撤廃をするということは何ら変つていないのであります。先般政府の声明におきましても、各般の事情考えて、そうして統制撤廃するという方針を再確認したのでございます。その間いろいろ研究を続けて行きました上において、いろいろなこと漏れておりますが、これは何も最後的に決定したものではないのであります。
  30. 内村清次

    内村清次君 これは総理に一つ答弁して頂きたいのであります。殊に又私たちは、それは供出の問題とくるめて総理からお願いしたいのです。これは非常に大きな問題であります。今回の二千五百五十万石の供出をさせるというのは、このような状態におきましては、これは私が事情を申上げるまでもないことでありまして、非常な困難が予想せられるのであります。ここに又国民大衆が本当に不安を寄せているところであります。この不安に対しましては、総理は率直に政治上において責任を負うて、そうしてこれを解決するところの義務がなくてはなりません。そこでいろいろのこの困難のために生産農家というものが苦しんでいる、この農家に対しまして、総理は強権発動してまでもこの供米をやらすのであるかどうか、同時に又今全国の知事会議のこの要求事項というものを、これを総理はどのような態度でお呑み込みになつて解決しようとするのであるか、この点は重要でありまするから答弁して頂きたい。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は主管大臣のほうが答弁が正確になると思いますから、政治上の責任は無論私が負いますが、説明は主管大臣からいたします。(「政治上の責任総理答弁しろ」その他発言する者多し)
  32. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 総理に申上げますが、実は予算委員会はできるだけ総理に御答弁を願つてやろうというので開いておりますので、どうか総理からお答えのできる限度でやはりお答えつたほうが私もよろしいと思いますので、できるだけ一つ総理からお答え願うようにお願いいたします。
  33. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 今の御質問は少し数学的に細かくなりますから私から答弁をいたします。従来までは二千五百五十万石……。
  34. 内村清次

    内村清次君 説明もわかつています、経過も全部聞いておりますから、政治責任を一つ……。
  35. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 現在の二千五百五十万石の案にいろいろ議論がありますが、従来私どもが出したものはいずれも四月一日から食糧の配給をやめることを前提といたしておりますが、今度は十月末日までは配給を続けることになつておりますので、当然に従来の現行法によつて仕事を続けて参ることになつたわけです。現在の生産量から農家の保有米を差引いた残りを出して頂くという原則に立つもので決定されておるのでありますが、これは当然の措置だと思います。実際問題は最近に起つたルース台風で現実に生産数量というものが減収になつているような数字については、よく懇談の上どれだけこれが減収されたかということが問題になつて来るだろうと思います。従つて又現在の知事会議におけるいろいろの要求についてはよく相談いたしておりまして、これに対してできるだけ努力はいたすつもりでおります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど委員長が申されたように、本日は総理も非常に時間がないので、みんなで三十七分しかないのです。従つて総理に御答弁願わなければ、代つて経済閣僚が数字につきましてながなが答弁されたら、答弁を含めて三十七分ですから、内村氏の質問も非常に要約して簡潔にされておるのです。ですからそういうわけで進めて行かないと、我々も今後経済閣僚が代つてながながと答弁されたら総理に対して質問する時間の余裕がなくなるのであります。この点十分お含みになつてお進め願いたい。
  37. 山下義信

    ○山下義信君 先ほどの質疑応答を聞いておりますと、質問者は総理の施政方針が、これが齟齬いたしておる事態に対して政府責任を問うておるにもかかわらず、所管大臣をしてこれを答弁させることは驚き入つた次第でございます。総理責任を他の所管大臣がこれを答弁することはこれは何と申しますか、実に驚き入つたる奇怪事と私は考えます。こういう答弁委員長は議事進行上御差止めを願いたい、総理責任総理がみずから御答弁になつていいことでありますから、総理の御説明を願いたいと思います。
  38. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今総理の御答弁の中に政治的な責任は自分が負いますと、併し細かいことは閣僚のほうがよく知つておるから閣僚に説明させるということを御答弁なつたと私は聞きましたので、今日の委員会の進行の仕方は、総理に御答弁を願う関係で時間も切りつめてあるわけだということを御注意申上げたのでありますから、今後かように取り計らつて参りますので、御質問を続けて頂きたいと思います。
  39. 岩間正男

    ○岩間正男君 木村君の今出された問題非常に重要だと思いますので、これについて総理の見解を質しておいてもらいたい、先に行つて経済閣僚にやられたのでは仕方がない。それを確かめて、今日の進行について確認しておいてもらいたい。
  40. 内村清次

    内村清次君 私は、先ほど政治責任は自分がとりますということを言つておられましようが、具体的な問題を言つておるのですよ。やはり強権供出をやられるかどうか。或いは又は施政方針演説に対するところの統制撤廃をやると言つたのが今回やらないということになつたならば、その公約の不履行、公約をどうやつて履行されるか、何故国民に信をお問いにならないのであるか、こういうことを私は具体的な問題で言つておるのです。而も又知事会議の要求事項はどのような総理はお考えで取上げて頂けますかということを、具体的な問題を言つておりますから、これは一つ総理から答弁をして頂きたいと思います。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 総理大臣答弁はこれまでも主管大臣が代りをして正確を期するために答弁をせしめることになつておりますから、正確を期するために私に代つて主管大臣が答弁することは、私は違法ではないと思います。主管大臣の答弁は私の答弁と御承知を願いたい。
  42. 内村清次

    内村清次君 あなたの政治責任はどうしますかということに対しての御答弁はどうですか、これは総理大臣のお考えでないとわからないのです。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 総理大臣として責任負うということをしばしば申しておる通りであります。(「どうとるのだと」呼ぶ者あり)
  44. 内村清次

    内村清次君 この問題は時間の関係もありますので、(「ひつ込めちや駄目だよ」と呼ぶ者あり)他の委員のかたがたにも御迷惑をかけたくないと最初から私は考えておるのですが、こういう大きな問題でありますから、一つ総理が親切に責任をとつて頂きたいと思います。  次に平衡交付金の増額の問題でありまするが、これはすでに毎回のことで、毎回こういう政治問題になつて参りまするのは、これは政府態度が悪い。特に又池田大蔵大臣態度が傲岸だということの評判が専らであります。こういうような地方自治確立のためにも、財政の確立のためにも重要な問題を何故政府は地方財政委員会の勧告をそのまま尊重してお聞き入れにならないのであるか。これは両院におきましても院議を以て決議をしておる問題であります。そこでこの増額を総理はどうお考えになるかということが一点と、それから独立後の地方政治に対しましては、総理はどういうふうなお考えを持つて対しておられるか、これは実際でありまするが、すべて経済にも中央集権であるが、地方政治も中央集権である、中央に来なくては解決しないというような状態になつておりますが、これでは私は民主主義の基盤は壊れてしまいはせんかと思いますが、この点につきましての御答弁をお願いしたい。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 平衡交付金についての計算については、これまでいろいろな弊害があつて、その計算において誤まりであるか不正であるか、とにかく政府の見るところと違つておるのでありますから、政府は国家の金を使用するのについて慎重な態度をとるので、たとえ知事からして、或いは地方官からこれだけの土木費を増してもらいたいと言つたところが、そのまま受取ることはできないのであります。政府として政府方針、又計算に従い、又見るところによつて処置することは当然であつて、今後といえども平衡交付金の増額等については必要があれば許しますが、必要なしと認め、若しくは不用額であるという額に対して同意を与えることはできません。
  46. 内村清次

    内村清次君 民主的労働組合の四百五十万の結集体でありまする日本労働組合総評議会が今月の六日に非常事態宣言を発しまして、労働法規の改悪及びゼネスト禁止法に反対をして実力行使の態度を決定したのであります。このことは過去二年間に亘るところの吉田内閣の労働政策が反動化されまして、誠にこれは労働者の基本的人権を擁護する立場から、日本独立を前にいたしまして、このように政府が次から次に法律を以て労働者の生活権を破壊して行こうというような考え方に対しまして止むなくとつた防衛手段であろうと解するのでありまするが、この平和産業の担い手でありますところの労働者の、而も内部的には合法的に、そうして平和的に事を処しようとして非常な努力を傾倒いたしておりまするところの民主的な労働組合に対しまして、世界にも類例のないようなこの辛辣な、基本権を奪おうとする政府態度というものに対して、総理はどのように考えておられるか。独立後の生産が減つてもいいというような考え方で対処しておられるのかどうか、その点について。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 生産が減つてもいいなどとは政府は無論考えておりませんが、併し現在の労働法規は行き過ぎであるということを政府としては考えているのであります。その行き過ぎな点は研究して、そうして改正をする、若し行き過ぎがあれば改正をするのは当り前のことだと思います。政府のやり方を以て直ちに中央集権とか何とかお考えになるのは、それはあなたの御意見であるが、政府としては最も公正な労働法規を作りたいという考えで労働法規の再検討をいたしております。
  48. 内村清次

    内村清次君 現行の労働法規が行き過ぎというその行き過ぎの点はどこでありますか、その点を明確にして頂きたい。これは重大問題でございますよ。その点を一つ、どこが行き過ぎか。
  49. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行き過ぎの点は正確にお話するために労働大臣からお答えをする。
  50. 内村清次

    内村清次君 総理から行き過ぎの点を話して下さい。
  51. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 行き過ぎの点もございましようと思います。従つて只今慎重に検討をいたしております。
  52. 内村清次

    内村清次君 私はもう三問ばかり捨ててしまつているのですから、この点は総理から、行き過ぎの点を知らずして、労働大臣は行き過ぎでありましようというようなあいまいな御答弁ですが、これは実際大きな問題ですよ。一つ明確にしたいのです。総理大臣が、行き過ぎのその点、総理大臣は労働法規を知つておりますか。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行き過ぎの点について研究して、只今……。
  54. 内村清次

    内村清次君 行き過ぎがあると今おつしやつた
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行き過ぎであるのは研究をして答えをするということだ。(笑声、「おかしいよ」と呼ぶ者あり)
  56. 内村清次

    内村清次君 それでは次に行きますが、最近の電力危機を総理はどう見ておられるか。この電力問題というのは、九分断後の電力会社というものは、相互に電力を供給し合つて協力体制をとつて一元的に考え、そうしてこれは国民に対しても、産業におきましても、すべてに迷惑のかからないようにするということが九分断を強力に政府考えられたところの方策であつたと思いますが、併しながらその後の状態というものは、御承知通り、公益事業委員会というものは、これは私益事業委員会というようなことで今世間から評判されているようでありますが、この社会福祉のために一番重要でありまするような、この問題を取扱つておりまする公益事業委員会というものに対しては、総理はもうこれは廃止したがいいのじやないかということも言われておりますが、総理のお考えをお聞きしたい。それから電源開発の問題は、もうしばしば政府はこういう問題が起つて来ると電源開発の問題を出されます。ところがこの何回も出されたところの電源開発というものは、これはもう国民は又か又かと言つて、見ないのですよ。本気になつてかかつておらない。最近は自由党のほうでは、電力会社というような民営会社か何かわからないような会社を作つて、法案を出すというようなお考えでありまするが、総理はこの法案に対しましてどういうお考えを持つておられるか、電力問題についての親切な御答弁を一つお願いしたい。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は余り知らないから親切な答弁はできませんが、(笑声)併し電力の何といいますか、不足というのは、今日日本ばかりではないのであります。再軍備の結果であるか、とにかく産業が復興した結果であるか、一時に電力の需用が殖え、或いは又住宅の殖えたというような原因からして不足していることは実際である。この不足を永久に除去するためには電源の開発は勿論のことでありまするが、外資も入れて、日本の資力だけでは到底電源開発のごとき巨大な事業は起し得ないのであるから、外資導入等を考えて電源開発政府は極力努めるつもりであります。
  58. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう質問は五分超過しておりますが、あとがありますから一つ御遠慮願つて……。
  59. 内村清次

    内村清次君 最後にもう一つだけ。
  60. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 五分過ぎておりますから。
  61. 内村清次

    内村清次君 それは無茶ですよ、それじやビジネスだ。
  62. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 大分途中において何がありましたので、五分超過しても委員長は伺つてつたのでありますが。
  63. 内村清次

    内村清次君 まだ三問ありますから最後に一問だけ。
  64. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 次へ一つ行きたいと思いますが。
  65. 内村清次

    内村清次君 最後の一問だけ、ほんのちよつとですから。(「やれやれ」と呼ぶ者あり)
  66. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは極く簡単に一つお願いいたします。
  67. 内村清次

    内村清次君 ドツジ氏がこのたび来朝せられまして、補正予算及び金融、又は物価政策から主食統制問題に至るまで、日本経済の細目に亘つて一々指しておられるのでありますが、国民新聞発表のたびごとに減税も駄目になつたとか、或いは又金詰りがひどくなりはしなか言つていらいらしているのであります。一国の重大な問題でありまするところの財政金融の問題全体が一外国使節によつて左右せられるということにはもう国民は堪え切れないようであります。私たち講和がまだ行われておらないところの西ドイツにおいて、政府が強く国内政策の自主性を主張されて、そうして国民も又これを強く支持した、そのために減税問題その他の国内問題は、米英各国の高等弁務官はこれに強い干渉ができなかつたというような事例を目前に見ておりまするからして、一国の政治を扱うところの総理大臣はどのように今後独立後におきまして考えられるのであるかどうか。それから二十七年度の予算というものは批准発効後におきましても政治経済の方面に現われて来る予算です。この予算に対しましても、やはりこのドツジさんの命令によつてこの予算というものは作られるものであるかどうか。これでも完全な独立というものがなされたと言われるかどうか。この点を一つ総理から伺いたい。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ドツジ氏は日本政府に対して今日こうしろああしろという命令はしておられはしません。日本政府としてはドツジさんのごとき経験もあり、学識もある専門家の意見を聞くということは差支えないことと思います。まあ意見を聞いて参考にはいたしますが、ドツジ氏がこうしろああしろといつて命令をせられておるという事実はありません。又内容については詳しくお話することはできません。
  69. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 講和条約締結を機に、我が国もいよいよ独立国家として進むべきときを迎えるというようになつたのでありますが、条約締結に当りまして吉田総理大臣が老躯を提げて遠く米国飛び、いろいろと努力せられて参りましたことは、その労を多とするものであります。併しながら、賠償外債、防衛分担金等いろいろの重荷を負つて参りまして、一人立ちして行かなければならん我が国の前途は誠に多難を予想されるのであります。従つて吉田内閣責任も又重且つ大であると申さねばならないのであります。国民といたしましても、講和後の負担がどのように具体化して参るかということを憂慮するとともに、これらに対する財政経済政策において、政府の善処を強く要望しているところであります。そこで私は講和後の負担のうち、最も大きいところの要素であります賠償問題についてお尋ねしたいと思うのであります。賠償問題は今後の日本経済に重大影響を及ぼす問題でありますが、これについて平和条約調印国の間にも、重大なる見解の食い違いがあるように思われるのであります。元来米国は無賠償、無割譲の方針であつたのが、フイリピン等の強い要求によりまして、原則的には賠償を認めねばならないような立場に追い込まれました結果、平和条約の第十四条に、我が国賠償を支払うべき義務あることが明記せられるに至つたのであります。併し完全賠償のためには、現在のところ日本の資産は十分でないと附記されているのであります。而してこれが実施に当つては四つの原則、即ち日本の存在可能な経済、他の連合国に追加負担をかけない、原材料は求償国が供給する、日本に外国為替上の負担をかけないというようなことが附加されているのであります。政府は、外務省を中心として大蔵、安本、通産の各省幹部によつて賠償問題打合会を設置して打合せられた結果、第十四条の意味を厳格に解釈することとなつて、これに基いて各般の構想を立案せられているようであるのであります。然るにフイリピン代表のロムロ氏はサンフランシスコ会議において、条約の如何にかかわらず、フイリピン政府賠償の種類、形式、支払の方法に関し日本交渉、協定する権利を保留すると明言し、フイリピンの欲するままに条約を運用しようとする強硬な態度を示しているのであります。又その後同氏は、第十四条に保障されている賠償の権利を、原則的に加工、沈没船の引揚げ、並びにその他のサービスに限定しようとする我が国の見解は受入れがたいとの重大な声明をいたしているのであります。賠償問題については、我が国の解釈とフイリピンの解釈と以上のように非常に著しい懸隔があるのでありますが、総理大臣はこの開きをどういうふうに調整しようとお考えであられるのであるかお伺いしたいのであります。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 戦争の結果フイリピン等は非常な損害を受けており、そして現状はこうこうかくかくという説明は始終聞いておりますが、然らばその全額を日本が負担するということは到底できないことと思つております、日本の今日の財力から申して。ここにおいてかダレス氏も日本の経済の基礎を動かさない程度という原則をおいておられるのでありますから、フイリピン政府としては、要求する額は相当なものがありましようが、それを政府がことごとく呑むということはこれは到底できないことであります。併し同時に日本政府としては、又日本国としては、戦争の損害に対して十分同情を表して、そうしてできるだけこれに対して補償を与えるなり、又フイリピン国民の満足の行くような処置を講ずる、これは善隣関係から申しても、又将来日本貿易発展その他のことから考えて見ても、十分の満足を与えるように誠意を尽す、いたすと考えるそういう処置だけは講じないというとよろしくないと考えますから、私もあの条項に調印したわけであります。そこで計算が違うことになりましようが、それは両国政府の間において妥当な処置をとり、研究をし考慮をして、そして相互に満足の行くような結果に持ち来たしたいと考えております。
  71. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 我が国の現在の資源では一部賠償しかできないとしても、将来は完全又は完全に近い賠償をする可能性があるといたしまして、フイリピンは将来完全賠償我が国に要求しておるのであります。この完全賠償を要求しておるのに対して、総理大臣はどういうふうにすれば完全賠償をすることができるかというお考えであるか、更に重ねてお尋ねしたいと思うのであります。
  72. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) フイリピン政府からまだ賠償交渉を受けておりません。又賠償の額等についての数字も示されておらず、又その基礎となる期日についても示されておりません。従つてこれは全然将来に属することでありますから、今日こうする、ああするという具体的のお答えはできません。
  73. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 ドツジ氏の今回の来朝は、講和関係の経費を検討せられるためにおいでなさつたという話であるのでありますが、この点について政府はどういうふうなお話を進めておられるのであるか、その大要を承わることができたなら承わりたいと思うのであります。
  74. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ドツジ氏は日本政府に従来もいろいろ財政経済等について忠告を与えられたのであつて、特に……賠償というお尋ねでしたか。特に賠償について日本政府に話をする、こういうことを主として見えたのではありません。
  75. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は遺家族の問題についてお尋ねしたいと思うのであります。第二次大戦のため一家の支柱を失つた二百万の遺族と、生活能力の乏しい十五万の戦傷病者に対する特別援護は戦後一切停止せられました結果、深刻なる社会問題として強力な援護処置を要求せられて来たのであります。そこで第十国会で私は総理大臣にこれが対策をお尋ねいたしましたところ、講和締結に際しては何どか対策を講ずる考えであるというような同情的な御答弁を得たのでありますから、今回の補正予算には必ず相当の金額が計上せられて、遺族も戦傷病者もやや安堵することができるだろうと確信しておつたのであります。然るに今回の補正予算には、戦歿遺家族及び戦傷病者等の援護を行うための準備調査に必要な経費として一億円を計上せられておるのみであるのであります。戦歿遺家族及び戦傷病者等の状況は、すでに過去六カ年間の間に調査済みであると思うのでありますが、今日まで調査はできなかつたのであるかどうか。調査ができないといたしましたならば、なぜ今日まで調査ができなかつたのであるか、どんなことが調査不十分でなお調査をしなくちやできないのであるか、又いつまですれば調査が終了する予定であるか、お尋ねしたいと思うのであります。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 終戦連合国方針として、日本において戦争主義者、若しくは軍国主義者等に対して、その主義が結局個人に対する利益にならない。戦争というものは結局国にもどこにも利益を与えないものであるので、そういう趣旨を徹底せしめるという意味で、軍人の遺家族等に対して普通の貧困者に対する救済の一般の原則以外に、特に軍人であるから特殊の救済をするという主義は一切よせ、又禁ずるという方針でずつと来たものでありますから、その問題が取上げられなかつたのであります。併しお話の通り戦争によつて犠牲に会つた傷病兵その他に対して、国家として相当な救済方法を講ずべきものと考えますから、それであなたの御質問に対しても、私は適当な方法を講じたいとお答えしたわけであります。その結果本年度の予算において一億の調査費を計上しておりますが、詳細は大蔵大臣からお答えします。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今までは今総理お答えなつたような事情でありまして、或る程度の調査はあるのでございまするが、やはり万全を期したいと存じまして、早急に補正予算通過後手配をしまして、来年度からはできるだけ早い機会に実施に移したいと考えております。
  78. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 これらの戦争犠牲者に対する援護の構想といたしましてはいろいろあろうと思いますが、大別いたしましたならば、恩給法による方法と、援護法による方法とに分れると思うのであります。恩給法による場合は、従来の戦時加算であるとか、外地加算であるとかというようなものをやめて、一般公務員と同じようにしてはどうかと思うのであります。併し恩給法によるといたしましたならば、これに該当しないところの者も相当あるのでありますから、これらの人々のためには特別な援護法を設けるべきであると思うのであります。こういうふうな点について総理大臣はどういうふうにお考えであるか、又これに要する経費は大体どのくらいの金額に達するお考えであるか、総理大臣のお考えをお伺いしたいと思うのであります。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のようにこの問題につきましては、援護法の問題と恩給法の問題とがあると思います。私は先ず援護法の問題から入つて行きたいと思います。どの程度の、遺家族その他の援護費を出すかということは、只今実態をよく調査して、そうして財政事情と睨み合せながら考えたいと思います。又恩給法の問題につきましても、これは今までの恩給法そのままで行きますと、七、八百億円を要するのではないかという一応の調査がございまするが、こういう問題につきましては、今後十分検討いたしまして、どういうふうなことにしようか。これもやはり財政上の状況から考えて見なければいけませんので、研究をいたしているような状況でございます。
  80. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次に現下の最大の問題である食糧問題についてお伺いしたいと思うのであります。この問題については同僚内村さんからいろいろお尋ねになつたのでありますが、私もこの点についてお尋ねしたいと思うのであります。需要量の約二割を外国より輸入せなくちやならない我が国といたしましては、国内食糧の増産確保と、それによる自給度の向上が国立経済達成の前提であり、産業貿易振興と民生安定の基盤であると考えるのであります。特に米国よりの援助の杜絶いたしました今日では、外貨の節約の点からも、他の重要物資の確保の点からも、貿易の伸長の点からも、或いは国際情勢の推移の点からも、不利益且つ不安定な外国食糧依存を極力圧縮いたしまして、国内食糧の自給度向上に努力を集中すべきであると考えるのであります。而うして政府も又、昨年来頻りに食糧増産と自給度の向上を口にされながら、而もこれに対する施策の見るべきものがなく、いたずらに公約に囚われて、統制撤廃という流通施策の実現にのみ焦つて、ために無用の混乱と摩擦を惹起するに至りましたのであります。一体政府はどういうふうなお考えであるかという点について疑問なきを得ないのであります。そこで政府の食糧政策は国内食糧自給度の向上を目標としておられるのであるか、或いは外国食糧依存によろうとしておられるのであるか。先ずその根本方針総理大臣に承わりたいと思うのであります。
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本のような国土の狭い国においてたくさんな八千余万の人口を養うのでありますから、どうしても食糧は不足になり、外国から供給を受けるということはいたし方ないのでありますが、同時にできるだけ国内の食糧自給度を高めるというために当局者はいろいろ苦心しておます。詳細のことは主管大臣からお答えします。
  82. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 食糧問題について先ず国内の自給度を高めることが第一義であるということは、只今総理大臣の御答弁通りでございます。これにつきましては御承知通り二十六年度も土地改良、或いは害虫駆除、予防というような方法相当金を出しておりますが、この補正予算におきましても地盤沈下等に対する復旧の金を八億近く、又単作地帯における土地改良に対して二十億近くのものを出しております。これでもまだ私どもは十分満足とは思いませんが、二十七年度等におきましても、続いて財政の許す限り自給度向上のために必要な施策を続けて行きたいと思います。
  83. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 総理大臣は、さつき内村さんもお話の通り、速かに統制撤廃すると施政演説をせられたのであります。又明年の四月から統制撤廃すると閣議決定をしておられながら、ドツジ氏の今回の来朝によつてこれを延期するというようなことになつたのでありますが、六日の政府の声明にも、条件の整い次第統制撤廃に進むと、極めてあいまいな表現をしておられるのであります。一体いつからこれをやられるのであるか、政府方針が不明確なために関係者の不安動揺はなお去らない状況であるのであります。統制撤廃に対する批判の多くがその時期と方法に関してであります。撤廃そのものに対する反対は比較的少い実情から考えてみましても、これら国民全体の不安を除去し、又供出を促進するためにも、政府は一日も早くその基本方針を明示すべきであると信ずるのであります。根本農林大臣は供出知事会議におきまして、来年の十月まで配給を継続、供出期間中は自由販売をやらないと、こういうふうな言明をしておられるのでありますが、果してこれは政府としての正式に決定されて、来年の十月までは統制を継続するというようなことに決定されたのであるかどうか。総理大臣からはつきりした責任あるところの御答弁をお願いしたいと思うのであります。又自由販売については、いつから自由販売をやられるのであるか。来年の十一月から統制を外すことについてはドツジ氏の了解も得られなくちゆやできないのであるかどうか。或いは又得られたのであるかどうか。  次に麦の播付けはすでに始まつておるのであります。然るに麦についてもなお且つ現在までどういうふうな方針でやられるのであるか、政府方針が明らかでないのでありますが、政令を以てしても来年の一月から自由にするところの方針であるかどうか。この点についてお尋ねしたいと思うのであります。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米麦の統制撤廃政府方針としては成るべく早く撤廃したいと考えております。その時期方法については政府としては慎重に考慮いたしております。仔細は主管大臣からお答えいたします。
  85. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 只今総理答弁通りでありますが、大体米については声明にも書いてありますように、十月末日までは配給を続けるつもりでありますし、供出後の自由販売については只今のところ考えておりません。  それから麦については声明書にあります通り、これは区別して考えております。大体前に、一応麦についての統制を外すことについては関係方面との了解を得ております。いろいろ準備の都合もありましたので、延びておりましたが、これはできるだけ早い機会に外したいと考えて、慎重に諸般の準備を考えております。
  86. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 主食のように一日も欠くことができないところの重要物資の統制を外す際においては、十分なる準備の善後措置を必要とするのでありますことは繰返して申上げるまでもないのであります。又一面生産者といたしましては、植付前にこのことがわからなかつたならば、十分なる植付の対策を講ずることができないのであります。そこで具体的の善後措置をできるだけ速かに決定してもらわなくちやならないのでありますが、米麦の統制撤廃をいつ頃にやるというようなことを決定して頂かなくては、麦の播付にも稲の植付にも非常に支障があるのじやなかろうか。その結果食糧の収量に対しても影響を及ぼし、若し減収であるというようなことだつたならば、外国食糧を余計に入れなければいけないというようなことに陥るのではないかと心配するのでありますが、いつ頃になつたなば主食のいろいろな問題について決定をされる予定であるか、それをお伺いしたいと思うのであります。
  87. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 麦についての播付時期を控えての御心配は御尤もであると思います。私どもも統制撤廃は一月以降においてできるだけ早く撤廃したいと準備を進めておりますが、たとえそのことが実現いたしました場合におきましても、生産農家の麦から得る収入等については影響の起らんように、実行いたす場合には施策を併せ考えて行くつもりでございます。
  88. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 この問題についても内村さんから一応お尋ねがあつたのでありますが、農民として、その他の者として非常に重大なところであるから、本年度の供出対策についてお尋ねしたいと思うのであります。そこで端的にお尋ねしたいと思うのでありますが、本年の米価は最低七千三十円を確保せられる見当であるかどうか。又追加払というものをされる考えであるかどうか。又当初割当であつた二千三百五十万石を超えるところの分に対しては特別奨励金を出される考えであるかどうか。供出の委託費の問題については知事会議では増額を要望しておられるが、このものについては増額されるかどうか。又これも内村さんからお尋ねになつたのでありますが、供出が思うように進まなかつたならば強権発動を最後にはされるかどうかお尋ねしたいと思うのであります。
  89. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 供出価格の問題でありますが、これはパリテイ計算等もありますので、今慎重に考究いたしておりますが、大体当初七千三十円をきめたときのパリテイの殆んど近似した数のパリテイであります。従つて大体私ども考えておりますのは、七千三十円の線は維持できるかと考えております。若し買上げた後に将来上つたときにバツク・ペイするかどうかということは、これは従来通りそういうことは考えております。事前に買上げてしまうのですから、将来パリテイが上つた場合には、バツク・ペイということは当然考えられるのであります。  それから知事会議等において当初決定した二千三百五十万石以上の数量については何か奨励金を出すかというお尋ねであります。この点は藤野さんも御承知通り大体現行の食管法によつて供出をお願いするのであります。理論的に申上げれば少しこれは無理ではないかと思います。配給を十月末まで続けるところの一年間の必要数量において供出を願つておるのでありまして、それには飽くまで今年の生産数量の中から農家保有米を完全に引いて、残りを出してもらうという、こういうふうになつておる。補正予算考え方のまま進めておりますので、理論的に申しまして今お話のありましたようなことは少し無理ではないかと思います。いろいろごたごたしたあとでございますので、知事は何とかしてというような意見も御尤もですが、只今理論的には無理ではないかと思いますので、慎重に研究いたしております。その次の集荷委託金の問題でありますが、これは予算がある限り理論が通れば支出することにして、この点については深く研究しております。強権発動というようなことは政府はやりたくないのでありまして、こういう場合におきまして、できるだけ話合いをつけて現在の事態を了解して頂いたら、私は農民諸君に供出をして頂けるものと確信しております。
  90. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次は漁業協定についてお尋ねしたいと思うのであります。目下東京で開催中の日米加三国協定は、独立締結を予想される諸協定のモデルとなるので、その推移は各方面から注目されておるのであります。そこで講和条約発効後に各国と対等の立場で協定すべきものであるのにもかかわらず、占領下において米加両国と漁業協定を交渉せなければならないところの理由はどこにあるか、平和条約発効後までこの協議会を延期することができなかつたのであるかどうか刀平和条約発効前の交渉ということは、我が国に不利益をもたらすのではないかと考えるのでありますが、この点について総理大臣の御意見を承わりたいと思うのであります。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えしますが、この漁業問題については、これは御承知通り長い間の問題であつて、而も日本に対して相当誤解というか、或いは不快というか、日本の従来の濫獲、国際条約を侵しておるのであるかどうか知りませんが、とにかく日本の漁船の濫獲の仕方は相当激しいものがあつたようです。のみならず或いは農林省の船であるという話でありますが、農林省であるかどうか承知いたしません。とにかく日本の船が何とかいう湾内に出入して、そうして堂々と漁獲したような事実があつて日本の漁船の活動については、魚族の保護の上から、濫獲に対してアメリカ、カナダその他の国の神経を相当刺戟しております。主義として日本は魚族の保護、若しくは濫獲に対して国際的に共同動作をとることについては異議がない観点から考えて、その日本に対する不快、若しくは誤解を、解くためにも、条約の協定に喜んで応ずるということにしたほうが、アメリカに対し、若しくはカナダに対する善隣といいますか、外交上有利なりと、こう考え協議を早速にも如めたわけであります。併し独立しないために、独立しない前に協議をすれば、自然いろいろな圧力を加えられるだろうというような御懸念のようでありますが、これは今日まで何らその形跡はないのみならず、そういう考えで両国が日本参加を求めたわけではないのであります。一に魚族の保護、濫獲を防ぐという観点から、日本に協力してもらいたいというので協議を始めるということになつたのであります。事実はそういうような事実であります。
  92. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 公海漁業の自由の原則を確保すべきものであるのでありますが、今回の米加両国の提案から考えてみまするというと、公海においていろいろの制限を行われようとしている模様であるのであります。日本の漁業の重要性は、国の産業といたしましても、国民経済生活上からも、数量的にも、価格的にも米国、カナダの比ではないのであります。たとえ平等に制限いたすといたしましてでも、その受けるところの実害は、米加のそれに比較にならないように日本は大きい影響を受けるのであります。又今後ソ連中国、韓国、フイリピン、濠州等と同様の漁業協定を締結しなければならないと思われるのでありますが、これらの各国も公海において日本の漁業をいろいろと制限しようとしている傾向があるのであります。そこで政府は今回の協定において公海自由の原則を具体的問題としてどの程度実現するところの方針であるか、又如何なる決意を持つておられるのであるか。総理大臣の遠大なる理想を承わりたいと思うのであります。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申したように、この協定の趣意は魚族の保護及び濫獲の防止であるのであつて、いわゆる日本の魚船の公海における活動を制限するようなお話でありますが、併しながら公海における自由ということは昔の話で、今日は国際条約でいろいろな点で以て制約を受けておるのであります。目的は魚族の保護であり、又濫獲を防ぐというので、これはやがて日本の漁業においてもその恩恵をこうむるわけであつて、ただ単に漁獲高の制限というようなことのみを目的といたしておるのではないのであります。従つてこの条約の結果、日本の漁業家が又恩恵をこうむるはずであると思います。併し今日話が進行中でありますからして、これ以上のことはお答えすることができません。
  94. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 藤野君もう時間が参つたのでありますが……。
  95. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 ちよつと一つ。
  96. 和田博雄

    委員長和田博雄君) じや簡単に一つ。
  97. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 マツカーサー・ラインは我が国の主権恢復後は撤廃されるのであると思うのでありますが、その際に当つて、北洋、支那東海、黄海等において、日本漁船が安全に操業するためには、海上における自衛その他の安全保障の措置が講ぜられなくちやできないのでありますが、総理大臣はこれについてどうお考えであるか。  又安全保障条約において行政協定のうちに、領土のみならず、海上における我が国の漁船の保護規定も設くべきであると思うのでありますが、総理大臣はこれについてどういうふうなお考えであるか、お尋ねしたいと思うのであります。
  98. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) マツカサー・ラインは条約実施後は当然廃止せられるものであると思います。又漁船保護ということは、結局日本が保護する実力を備えることが必要であるので、従つて海上における漁船の保護のために、監視船その他は充実させたい、財力の許す限り充実させたいと思います。又これが行政協定の中に入るか入らないか。これは行政協定についてはまだ話を始めておりませんから、確かに入るとも申せませんが、併し日本の漁船保護のために監視に相当り力を、財力の許す限り備えたいとすでに準備をいたしております。
  99. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 最初に念のためにお尋ねいたしますが、私の持時間は三十七分ありますが、総理は十二時に御退場になられますのでしようか。十三、四分まではおつて頂けましようか。
  100. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 総理のほうの申出では十二時にやめて頂きたいということでありましたが、二十分やつて、午後から十七分ということになると思いますが……。
  101. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 承知いたしました。最初にお尋ねしたいことは、平和条約の中の疑問事項についてでございます。すでに衆議院におきましても、又参議院におきましても、いろいろ質疑が行われたのでございますが、次の点につきまして、速記録等からは十分私の疑問とするところが了解できませんので、お尋ねしたいのであります。それは信託統治に内定しておりますところの琉球や小笠原等の問題でございます。なぜ信託統治の必要があるのかというこの質疑につきましては、総理大臣は二、三回に亘りまして、軍事上必要のために米国がこの琉球等を占領しておるのであつて、そうしてその必要から信託統治も起るのであるというような御答弁をなさつておられます。平和条約と並行いたしまして、安全保障条約が結ばれておるのでございまして、日本の軍事上の必要のためからといたしますならば、安全保障条約のその趣意からいたしまして、別段信託統治にいたさなくとも必要がないのじやないか、かように考えられるのでございます。特に御答弁にもあります通り、信託統治という問題は今後の問題でございますので、日本政府考え方によりましては、日本の完全なる主権の下に琉球や、小笠原を確保することができるのではないかと、かように考えておるのでございます。というのはカイロ宣言の中で明瞭にされておるのでございますが、この戦争の結果、領土拡張の何らの考えも持つておらない、或いは自国のために何らの利得をも得ないのであるということは、これは明瞭でございます。ポツダム宣言の第八条が我が国の領土を規制するものであろうと思うのでございまするが、その八条には、カイロ宣言の条項は履行せらるべくということが前提に謳われておるのでございます。こういうことから考えて参りますならば、政府交渉の次第によりまして、非常に熱望しておりますところの小笠原と琉球とを始めといたしまして、信託統治下に置かれると予想せらるる諸島の住民の一人々々の要望に応えられるのではないかと、かように考えるのでございますが、総理大臣はどういう御見解をお持ちでございましようか。
  102. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ポツダム宣言、或いはカイロ宣言条約ですか、宣言、その他にしばしば引用せられますが、これはトルーマン大統領がはつきりと言つて、公言せられておる通り、ポツダム宣言その他において声明したことは、連合国の間の関係であつて日本国、若しくは戦敗国がこれに基いて要求することは許さないのであるということをはつきり言つておらるるのであります。又日本として今日引用し得る条約は、結局終戦のときの降伏条約、若しくはポツダム宣言受諾の声明であります。これによれば、結局日本の領土なるものは四つの島、及びそれに附随した島ということになるので、その他の領土の処分については、日本政府が容言、干渉の許されないところであります。が琉球その他については軍事上の必要から、米国政府はこれを委任統治にするということにしましたが、これはアメリカ政府が今後するかも知れないという、国連との関係においてするという意思表示をしただけの話であります。併しこれをなぜしたかといえば、日本国として琉球島は日本と歴史的に、歴史上、又従来多年の間日本の領土だつたのだ、故に日本国民関心を顧慮して、他の領土の処分と異にして権限、若しくは主権の放棄等を殊に規定しておらずに、委任統治にするというふうに規定して、書き方を違えておられるのは、日本国民感情を尊敬しての話であるのであります。併し日本政府からしてこれはとつてもらいたい、その委任統治にせられるのは困るといつて苦情を言う権限はないのであります。法律関係はそういうふうになつております。
  103. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 只今総理大臣の御答弁は了承するものでございますが、なおこの問題につきましては将来に残されておることでございますので、格段の御努力を煩わしたいと存ずるものでございます。  次にお尋ねしたいことは、平和条約賠償の点につきまして、サンフランシスコ会議においてフイリピンが留保しておる条項がございます。このフイリピンの留保条項、或いはオーストラリアも捕虜に対する補償の問題を留保されておるのであります。これらの留保条項と、第二十六条にございます有利なる条件を与えないというその点の関係は将来どうなつて行くのかという疑問を持つておるものでございます。同時に第二十六条につきまして、先ほど内村委員の質問に対して総理お答えをされておるのでございますが、インドであるとか、或いはビルマであるとかいう国が日本に対して有利なる意見を持つておる、或いは有利なる条件を以て条約を結ぼうとしておるという場合に、第二十六条のために三年間はどうしても条約を結べないのであるというような事態も想像せられるのであります。併しながら二十六条をよく読んでみますと、相手方に有利な条件を与えないというのが主眼のように思われるのであります。恐らくこれは連合国諸国が、未だ調印をしないところのソヴイエト、或いは中共等との間に有利なる条件を以て条約が結ばれないようにと考えたものではないかとかように想像するものでございますが、日本にとつて有利なる点は、この条文の上からは余り明瞭に看取できないのでございます。只今申上げましたこの二点は、一つはフイリピンやオーストラリアに有利な条件を与えることであり、一つはインドビルマによつて日本が有利な条件が得られそうだと、そういう二つの矛盾した問題をここに持つておるのでございますが、この間に伍しまして政府としてはどういう考え方をお持ちであるのか、その点をお聞きしたいのでございます。
  104. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) フイリピン等はお話の通り留保いたしておりますが、日本との間に今後交渉した結果、満足が行けば、フイリピン政府が満足すればそれで留保条件は自然消滅するわけであろうと思います。又フイリピンとしても日本との間に平和条約関係に入りたいということを希望いたしておるのでありますから、日本政府との間に、又濠州も同じことであるが、留保条件が満足されないような交渉は、双方において……、満足な交渉は将来遂げられるものと私は想像いたしております。それからもう一つの何でありますが、日本日本として日本によく、現在の講和条約以上に、いい条件を与えられたならば、日本はこれを承諾するかというお尋ねのようでありますが、これは条約に明らかに許されないことになつておるのであります。特に日本に対して有利な、有利と見えるような条件を以て仮に誘われたとしたところが、これは日本の、他の国際関係もありますし、日本国際関係の全局から考えて判断しなければならないのでありますから、仮に或る国が日本に誘うのに特殊な利益、条件を持つて来たとしたところが、それを受諾するのには条約を離れても、日本としては日本国際環境から申して考えなければならんことがたくさんあるであろうと思いますから、その故に直ちに受諾するということはこれは決定ができないことと思います。
  105. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 次に安全保障条約に関連いたしまして疑問点をお聞きしたいのでございます。安全保障条約の前文におきまして申上げるまでもない日本の自衛についての明文がございます。「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」ということがここにはつきりしておるのでございます。ところで総理大臣日本軍備は行なわないと、それから軍備を行なわない一番大きな理由は、日本国力がそれに伴わないということを常に明らかにせられておりまして、更にはその総理大臣のお考え方が今回の国会の答弁の中で変りましたのは、自衛権についてはそれははつきり日本にあるのだということを先般の本会議でも明瞭に御答弁されておるのでございます。この場合に考えさせられますことは、それではこの安全保障条約の漸増的に自衛をして行くということはどういうふうにしてやつて行くのかということなのでございます。現在の警察予備隊を拡充して行かれるのであるか、或いは安全保障条約に基いて日本の国内にいろいろな軍事施設が行なわれて行くというようなことが、将来のための漸増的な自衛なのであるかというようなことがいろいろと考えさせられるのでございますが、日本の財政上から行きましても、この漸増的に自衛するということにつきましては政府が明瞭なお考えをお持ちになる必要があるのではないかと、かように考えるのでございます。この点につきまして総理の御見解を承わりたいと思います。
  106. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 曾つて憲法審議のときに自衛権による戦争は許すべきではないかというような質問に答えた答弁であつたろうと思いますが、これらの戦争は多く自衛権の名において戦われたのであるから、自衛権の戦争は許すということを書けばとんだことになるというお答えをしたのが、私の答えの本旨であつたろうと思います。併し独立した以上自衛権がないというようなことは常識的に言うはずがないと私は思います。若しあつたとすれば、今のような話、応答からして出て来たことと思います。それから漸増的に日本が自衛すると言いますか、他国の、安全保障条約等によらずに自衛するに至ることは我々も希望するところであつて日本国力が将来発展して、そしてすべての点において独立する、経済的にも又政治的にも軍事的にも独立するときのあることは私も期待するのであります。併しながら今日は直ちに自衛或いは自衛のためにする再軍備ということはできない。こういう趣意であります。
  107. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 次にお尋ねしたいことは、外債であるとか、或いは先ほど大蔵大臣が御答弁なさいました対日援助資金の返済、これは外債は本年の三月末現在で四億四千八百万ドル余あると思うのでございます。援助資金のほうは二十億ドル余ある。これは現にはつきりしたものでございます。これらのはつきりしたものにつきまして未だ政府といたしましてはどういうふうにしてこれを返されて行かれるかどいうその意思表示をお見受けしないのであります。これは今後の予算の編成の上におきましてこれらの支出というものは非常に重要な問題であろうと思うのであります。又同時に外債の処理或いは対日援助資金というものを返済するという建前になつておる以上におきましては、みずからの意思によりましてはつきりした方針をお持ちになるのが当然ではないかと、かように思うのでございますが、これらの点についてはどういうお考えでございましようか。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りなかなか財政上重大な問題でございます。外債の支払につきましてもこれは相手のあることでありまするから、私のほうでこういうふうな支払方法をすると言つたところが意味はなさないのでございます。いろいろな支払方法がありますので、それを検討いたしております。  それから又対日援助費も我々は債務と心得ておりまするが、イタリアの例におきましては全額アメリカは放棄した場合もありますし、又ドイツに対しましてはこの請求権を強く主張しておるようであります。これもやはり今後の払い方につきまして折衝をしなければならん問題でございます。でどういう方針でやる、ああいう方針でやると申しましてもやはり相手があり、これも将来の日本の信用を確保しながら話をして行かなければならん問題であるのであります。従いまして心組みを以つて或る程度の検討はいたしておりまするが、どういうふうな方法でやるということを発表する段階に至つておりません。
  109. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 この平和条約安全保障条約の効力発生後におきまして日本の経済の上において一番大きな問題はこの外債、又対日援助資金の返済の問題と共に賠償の問題があり、又連合国財産の補償問題があると思うのでございます。又国内的に見ますと在外資産への補償の問題が起きて来る、或いは戦争犠牲者への援護資金と申しましようか或いは救済資金と申しましようか、これも現に問題が起きておるのでございます。これらのいわゆる裏付のない支出というものは相当巨額になるものであろうと考えさせられます。一方におきまして防衛分担金或いは予備隊費、或いは海上保安庁の拡充等の問題もございましよう。これらの問題を財政的に検討して参りますと、現在終戦処理費とそれから予備隊、海上保安庁費としては千百五十億円ほど組まれておるわけでございます。これらが終戦処理費がそのまま防衛分担金に振替えられるといたしまして、これは今まで通りの財政上の重荷であると、かように解釈いたしましても、外債賠償、対日援助資金の返済、連合国の財産補償等はどう見ましても年間一千億円程度のものの支出が要るのではないか。或いは国内問題であるところの在外資産の補償或いは戦争犠牲者への援護資金、こういうものも二、三百億円は要るのではないかと、かように考えさせられるのでございます。そうなりますと非常なる国民の負担の増加でございます。ドツジ氏は日本の財政状況を批判して曾つて竹馬経済と言われたのでございますが、日本独立後におきます経済の状況は、これは例が面白くないかも知れませんが、さながら今度はいざり経済のようであります。外も内も足を切つてしまう、いざりで動かなければならんというようなそういう経済の実態にあると思うのでございますが、この場合におきまして果して今まで政府がおとりになりました減税の方針、或いは生活水準の向上を考えるという方針、こういう方針は誠に望ましいことであつて、でき得るならばそういう方向に持つて行きたい。併しながら財政の実情から行きますならば、今の段階においてはなかなかそうたやすく考えられないのであります。若し考えられないとするならば、政府としては国民に対してはつきり決心をしてもらうようなそういう機会をつかむべきではないかと思うのでございます。徒らに安易に流れながら日本の経済自立を、日本の再建を試みることは不可能ではないか。速かに只今申上げたような大きな今後支払うべき問題については明瞭にされまして、そうして政府方針というものが転換されるべきではないかと、かようなふうに見られるのでございますけれども、総理大臣といたされましてこういう大きな御方針については従来通りのお考えで、是であると思われておられるかどうかということをお聞きしたいのでございます。
  110. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今……。
  111. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 総理大臣が発言を求められたじやないですか。総理大臣が発言を求められましたよ。
  112. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣からお答えをいたします。
  113. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通り平和回復後の日本の経済財政の運営は相当厄介であるのであります。併し私はあなたのお使いになつたいざり経済とは考えません。世界各国日本の経済の復興振りに相当信頼をしておるのであります。我々八千数百万の国民が一致協力復興に向えば私はこの難局を切り抜け得ると思います。安易に勿論考えてはいません。今まで以上の努力がやはり必要であると考えるのであります。従いまして私が財政演説で申上げましたように、日本の今後の問題を処理して行くことを考えまして、大体私は八千億円台でやつて行けるのではないか。又やつて行きたい。而も今の重税の状況を考えまして、今回御審議願つておりまする減税案は来年度も続けて行く、そういう規模の中でいろいろの問題を処理して行きたいと考えます。一方では在外財産の補償の問題もありますし、又生活保障制度の拡充もありますし、公共事業費の増額の要求もありますし、いろいろな要求がございまするが、日本の経済力と国民負担の状況を考えますると、私は八千億円台、今年の予算と大差のないところでとどめ存濃いろいろな問題が議決して行かんということを考えておるのであります。
  114. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午後は一時から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後一時十分開会
  115. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続き委員会を再開いたします。
  116. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 日米安全保障条約は暫定的な取極であるということはその前文で明らかでございますが、その安全保障条約の前に結ばれました米比相互防衛条約、或いはアメリカ、濠州、ニユージーランドの三国防衛条約、又アメリカインドシナ、タイ防衛条約というような三つの同じような性格を持つ条約がございますが、これらのものと安全保障条約との間には何ら関連性がないものでしようか。又関連性があつたものであるかということをお尋ねしたいのであります。又白米安全保障条約を加えましてのこの四条約は、将来北大西洋条約と同様な条約に移行する可能性があるように見受けられるのでございますが、この辺の総理の御見解をお聞きしたいのでございます。
  117. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御指摘の三つの条約日米安全保障条約の間には、日本政府の関する限りにおいては何らの関係はありません。それから将来北大西洋条約のようなものに移行するかしないかは、これは今後の発展によるところでありまして、今日まで何らのその間に話合いはありません。
  118. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 平和条約の効力発生後におきましては、集団的安全保障の取極を自発的に締結することができるという平和条約の中の明文がございますが、この点からいたしますと、自由に日本独自の見解によりまして、アメリカとフイリピンの相互防衛条約なり、或いはアメリカ、濠州、ニユージーランド三国防衛条約参加することができ得るのか、これは如何でありましようか。
  119. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはその新らしく申出された条約の性質にもよることでありますが、併し安全保障条約は日米の間に互いに協定した協約でありますから、日本が一方的に、もう廃止の時期至れりと言つて、一方的に破棄するわけには行きますまい。併し破棄する場合、新らしい条約に代る場合に、日米の間に十分協議して、然る後に新らしい条約に入るということになるであろうと思います。
  120. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 現在アメリカ、イギリス、フランスが戦力増強に向つており、又北大西洋条約下にある自由諸国家がオタワ宣言によりまして、政治、経済面にもその分野を拡大して行つておることは現実でございます。特にアメリカにおきましては、国防生産計画を拡充いたしまして、或いは重要物資の国際物資割当会議を行いつつある状況下にあるのでございます。こういう状況を考えて参りますと、日本の国内施策もこれに並行して変つて行かなければならないのじやないか、集団保障の精神から見ますならば、或いは国際連合の憲章の精神から行きますと、日本各国に対して協力をして行かなければならない、そういう立場にあると思うのであります。そうなりますと、日本の許されておる範囲において戦力の増強というようなことも又考えられるのではないかと思うのでございます。かような場合に、どうしても現在の政府の施策も相当計画性を附与する必要が起きては来ないか。或いは少くとも輸入しております重要物資に対する使用規制をしなければならないというような、そういう政策的な転換を必要とするように思われるのでございますが、その辺の御見解は如何でございましようか。
  121. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御質問のような場合が起るかも知れませんが、併し今日のところでは何らの話合いはありません。のみならず、申入れもありません。
  122. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 午前中藤野委員から漁業問題につきまして総理に御質問申上げておつたようでございますが、只今開催せられておりますアメリカ、カナダ及び日本の三国会談に関連いたしまして、総理も十分御承知であられますように、平和会議に際しまして、ノールウエー、オランダ、インドネシア或いはカナダから、この日本の漁業についての幾多の見解の披瀝があつたのでございます。ところが現在三国の間にのみこの会談が進行しておりまして、最も関心を持つておりますオランダ、インドネシア、ノールウエー、これらの諸国との関係についていろいろ考えられてはおると思うのでございますが、私ども表面的に見ておるものからいたしますと、こういう関心のある国をほかにして、これらの会談が行われて行くということについて非常に不安感を持つておるものでございますが、その辺は如何でありましようか。
  123. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今漁業協定の申入れのあつたのは、御指摘のカナダ及びアメリカだけであつて、その他の国からはまだ日本に対して何らの申入れもありません。併しお話の通り、これらの国は漁業問題については相当利害関係を持つておりますから、やがて希望その他の申入れがあるかも知れませんが、只今のところは何にもありません。
  124. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 七月十二日であつたかと思いますが、吉田首相より、ダレス氏に送られました書簡を更に声明として出されておるのでございます。この声明によりますと、日本国民又は日本登録船舶が昭和十五年に操業していなかつた漁場では、自発的に漁業の操業を禁止するという一方的な、自発的な声明を発せられたのであります。これは午前中に総理から海岸漁場の保存及び濫獲防止を自発的に公約したものであるというふうな御見解を承わつたのでありまするが、現在我々恐れておりますものは、戦争前に重要な漁場でございましたマリアナ、マーシヤル、カロリンの水域における漁場基地設置、又は漁区巡回の問題でございますが、この点につきましては、アメリカの太平洋諸島信託統治の当事者であるかたから、引続き禁止するような意向の表明が出ておるのでございます。これはどうも納得の行かない点でございますが、総理はこの点を御承知であるかどうか、伺いたいと思います。
  125. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) マリアナ群島方面の漁業問題については、政府として全然公然何らの申入れを受けておりません。
  126. 櫻内義雄

    ○櫻内義雄君 独立後の日本といたしましては、今回締結せられます平和条約安全保障条約、それに憲法と、この三つの基礎の上に立つて将来を考えて行かなければならないと思うのであります。経済自立の面につきましては、午前中御指摘申上げましたような種々なる困難性がございます。ところでもう一つ突込んで考えて行かなければならない問題は、総理はしばしば文教の振興をお説きになり、道徳の昂揚について御関心を払われておることは十分承知をしておるのでございますけれども、現在中央、地方を通じての官庁の疑獄事件というものは非常に目立つておると思うのであります。又資本蓄積をいたさねばならん会社が宴会費に浪費をいたしまして、いわゆる社用族のような言葉までできておる。又一般的な風潮にいたしましても、とてつもない大きなカフエーが大阪にできたり、東京の真ん中に温泉ができて丹前姿の客を銀座の真ん中で見かける。こういうふうな風潮でございましては、独立日本の将来も非常に考えさせられるのであります。でありますので、こういう具体的な面に対する金融的な規制であるとか、或いは厳罰主義で臨むとかいうような必要性も起きて来ておるのではないかと、かように考えるのでありますが、これらの点につきまして御見解を質したいと思います。
  127. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣旨は御尤もであります。政府関係においてのそういう事件については厳重に取締ることは勿論でありますが、問題が起つたときには猶予なく厳重に処置をいたしております。それから今お話のような必要以上の贅沢と言いますか、遊蕩に耽けるような施設については、現に問題になつておりますからして、政府措置考えたいと思つております。
  128. 東隆

    ○東隆君 私は日本が次第に警察国家になりはしないかと心配でなりません。それは言論の自由ということがどうも妨げられているようでならんのであります。私は総理大臣が折角の新生日本を警察国家にするという考えはないと思いますが、日本は警察的封建時代を経て明治維新になつたのでありますが、戦争前の日本では共産主義者はもとより穏健な社会主義思想家も、自由主義者すらもが断圧の手を免れませんでした。当時の協同組合である産業組合ですら断圧を加えられたのであります。このような経験を持つておる日本は、一つの政治革命を経たのではありすが、なかなか頭の切替えができませんので、ややともすると反対の方向に突き進もうとしておるのであります。このような際に総理大臣はこの警察国家になろうとする危険をどういうふうにして避けられようとされますか。お考えをお聞きするのであります。
  129. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は今警察国家になろうとしつつあるという傾向を認めないのみならず、若しそういうことがあつたらば、政府としては断然処置いたします。
  130. 東隆

    ○東隆君 私は戦争前の日本軍隊については余り好感を持つことができませんでした。従つて今多額の国費で以て出発をしております警察予備隊が、たとえ国内の治安にのみ任ずるといたしましても、ただ単に兵隊の訓練の真似事のようなことをやるようでは好感が持てないのであります。治安の必要であることは十分に知つておりますが、併し今のような姿で進んで行きますと、どうやら背広の隊長さんに指揮される軍隊になる。その背広服を着た人は七万五千人の中の百人でありますから、私はこの勢いで参りますると、どうも警察予備隊軍隊化するのではないか、こういうふうに心配をいたしております。先ほど総理大臣警察予備隊警察予備隊であるという、こういうふうなお話がありましたが、私は今申上げたような心配がありますので、警察予備隊をして本当に民主主義の国の護り手にする方向に進めて行かんければならんと思いますが、総理大臣はその方法について如何ようにお考えになりますか。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 警察予備隊の訓練の上からして、元軍人であつた若い将校等を入れておりますが、これはその選考の場合に非常に注意をして、過去における経歴とか、或いは軍隊に余り長くおせなかつたとか、いろいろの点を考え警察予備隊自身が軍隊化されないために相当の注意をいたしております。又警察学校において指導者の教育に当つて、これが民主国の警察隊長たる資格を備えるように、その指導者の教育については又格別の注意を払つていたしております。これらによつて警察予備隊軍隊になるということは断じてない。されないのみならず、又ならないように政府としては相当の注意をいたしております。
  132. 東隆

    ○東隆君 私は警察予備隊は警官諸君が民衆の中に融け込まなければならない。民衆の中に融け込むようにしなければ本当に治安の目的は達し得ないと思います。民衆と関連を持つようにするためには、私は完全に分化した警察予備隊というよりも、丁度日本のあの昔の兵農がまだ分離をしないときのような、ああいう姿で進むほうがいいのではないか、こういうふうにすら考えるのでありますが、その意味において北海道のような所では昔の屯田兵制度というようなものも或る意味において考えなければならんと思います。治安の完璧を期する、こういうようなことを考えますと、どうせ私は道路も整備をしなければなりませんし、通信網も私は確立をしなければ、少い予備隊の数では本当の意味における治安を確保することができないと思います。そういうような意味で私はどうしても警察予備隊は今のような形でなくつて、民衆の中に融け込んで、そうして場合によつてアメリカの陸軍の技術部隊のような形で以て道路を作つたり、或いはダムを作つたり、或いは橋梁を建設したり、通信網を確立したりするような仕事にまで、私は当然そつちの方面にまで出て行く必要があろうと、こう考えるんでありますが、これは日本の治安を確立する上においてこのために仮に多くの経費が必要だといたしましても、これは立派に予備隊を軍隊化させないで、そうして治安の目的を達し、そうして将来において非常にいい功績を挙げるのだと、こう考えるのでありますが、その点如何ようにお考えになりますか、お聞きをする次第であります。
  133. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 通信とか、或いは工兵隊みたいな作業も警察予備隊の一部で以て現に習得いたしておると思います。例えばこの間山口に風水害があつた場合に忽ち救援に赴いたというような場合にも、橋を作つたり、道路を直したり救援に応じたのであります。御議論の点は御意見として伺つて置きます。
  134. 東隆

    ○東隆君 私は警察予備隊を眺めたときに、あのナチス・ドイツのやり方については感心はしないのでありますけれども、あの奇蹟であるとか、或いは魔術であると言われたトツドの道路の建設であるとか、或いはアルバイト・デイーンストであるとか、或いはヒトラー・ユーゲント、こんなようなものは私は非常に研究をして、そうしてこれを十分に消化をして行かなければならんと、こう考えておるのでありますが、その方面について首相はどういう、ナチス・ドイツだから、その真似はしないのだ、こういうふうにお考えになるか、そういう点についてお伺いをしたいのであります。というのは、この予備隊の中に入つてつたところの若い青年が予備隊を出て後におけるところの生活というものは非常に陰惨なものではないか、こういうふうに考えるのであります。というのは、あの教育ざかりのときに教育らしい教育を受けない、又職業教育を受けない、こういうような点が非常にある、こう考えます。そういうような点で私はあの予備隊の門をくぐることによつて、出るときには相当の職業教育としてのいろいろな技能をあそこで以て修練をする必要があるのだ、それによつて将来において大きく国のためにも、国民のためにも仕事ができる、こういうようなことを考えますので、そういう方面からも私は予備隊というものをもう少し違つた角度で似て強力に進めると同時に、却つて今のような状態でなくつて、もつと積極的に技術部隊、建設部隊或いは通信部隊、そういうようなものを立派に作り上げて行くことこそが本当の途であると、こういうふうに考えるのですが、これは先ほどお答えがありましたが、もう少し強くお考えにならないか、重ねてお聞きをする次第であります。
  135. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見として伺つて置きます。
  136. 東隆

    ○東隆君 警察予備隊の問題を中心にしてまだお伺いをいたしたいのでありますが、切れておるようでありますから、次に私は食糧政策について伺おうといたしますが、詳細なことは私は農林大臣に別の機会に質問をすることといたしまして、首相にお答えを願うのにふさわしい質問をしようと思うのであります。(笑声)それで現在の日本の食糧政策が私は間違つていないかと、こういうふうに考えるのであります。なぜかと申しますと、元来食糧が不足をしているときには主食の量というものが非常にたくさん要求されるのであります。我々は普通でも御馳走をたくさんとつたときには米は要らない、御飯を食べないのであります。即ち蛋白質を動物蛋白をたくさんとつたときには含水炭素の主食はあまり多く要求をしないのであります。そういう考え方から考えて来たときに食糧が比較的充実をした、こういうようなときに三百万トンの輸入をする、それが三百二十万トンになる、今後は三百八十万トンになる、こういうようなことが言われておるのでありますが、これは私は統制撤廃を前提に置いて、こういうようなお考えになつたのだろうと思いますが、私はこれが端的にまだ食糧が不足しておると、こういうことを表現しておることであると、こういうふうに考えます。従つて統制撤廃の理由には私はならんと思うのでありますが、こういうような状態のときに、私は見返資金がこれから打切られて、そうして日本ではドルが当然不足をして参ります。その不足をしておるときにドルで以てたくさん食糧を輸入しなきやならん、こういう考え方は私はこれは大分間違つた考え方でないかと思うのであります。英国の蔵相が先日輸入を減す、それは主として食糧を減すのだと、こういうようなことを言つておるのでありますが、私は日本のチヤーチルの立場にある総理大臣は、英国のように考えられるのが私は本当だと思うのですが、それは主食をたくさん輸入をしないでやつて行く、国内の自給度を高めて行く、こういう考え方に立つのが、これが本当の食糧政策でないかと考えるのであります。この点について私は今の行き方が多少……、でなくて非常に反対のやり方をやつていると、こういうふうに考えるのですが、如何お考えになりますか。
  137. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この点は先ほども答弁をいたしましたが、日本のような狭い国においてたくさんな人口を養つておる以上は、イギリスにおいてもそうでありますが、結局食糧の輸入ということは免れがたい併しながら日本自身の食糧の生産を余計にして、そうして輸入を成るべく少くするという考え政府はやつております。
  138. 東隆

    ○東隆君 私は食糧の輸入ということについて次第に増加して行く、こういう点で非常に疑問を持つのであります。国内における食糧の増加にもかかわらず輸入の量が殖えて行く、こういう点に非常に先ほども申しまするように疑問を持つておるのでありますが、私はこういうような矛盾が起きて参りますのは、私は国内におけるところの食糧のはつきりした科学的な調査、そういうようなものに欠けるところがあつて、そうしてただ単に政策的に食糧の輸入をすることによつて数字が殖える、こんなようなことで安定感を起させるのじやないか、こういうふうに考えられてならんのであります。従つて私はその逆を行つて、周到なる調査、綿密なる検討を加えつつ、その意味において統制関係方面とは離れて、統計の調査であるとか、そういうような面は大分整理をするようでありますけれども、減ずるようなことをしないで、もつと力強く仕事ができるような形で立派な調査を作り上げて、その上に科学的な政策を立てるべきでないか、そうすれば私は食糧の輸入を次第に殖やして行くような、そういうようなことにはならんと、こういうふうに考えるのでありますが、この点をお伺いをする次第であります。
  139. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府方針は今申した通りでありますが、詳細は大蔵大臣からお答えいたします。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りに、国内の自給度を高めるべく我々は努力をいたしておるのであります。ただ統制撤廃いたします場合におきましては、十分な食糧を国内に置いておく必要がありますのと、本年はルース台風その他で、昨年、一昨年に比べて収穫が少いと言われておりますので、一応輸入は三百七、八十万トンを予定いたしておるのであります。これも一に十分な食糧を国内に貯えて置くと、こういう考え方でございます。従いまして将来の問題といたしましては、只今総理大臣お答えになりましたように、国内の自給度を高めるに十分な措置をとる考えでございます。なお又統計の職員を減らしたと、こういうあれでございますが、これは私は今までの供出制度を改めるという方針をきめておりますので、一応人員は落しておるのであります。
  141. 東隆

    ○東隆君 食糧の輸入の増加という問題について、私はなお日本の食糧政策についての政府のやり方について疑問を持つのでありますが、それは第一次欧州戦争後にエーアボーですかが、ドイツの戦時中の食糧のことについていろいろ論じたときに、食糧を豊富にするためには飼料を豊富にしなければならない、飼料を豊富にするためには肥料を豊富にしなければならない、こういうことを言つておるのであります。私はこれは日本にも十分に当てはまることだと考えるのでありますが、それでなぜそういうようなことを言うかと申しますと、飼料が豊富になれば決して農家は大麦を馬には食わせない。飼料が下足して参りますと米まで馬に食わす、こういうのが過去における事情であつたわけでございます。我々は高い金で以て、ドル下足がもう目に見えているときに外国からたくさん食糧を輸入するよりも、私は食糧を輸入する金があるのなら、食糧よりも安いところの飼料を豊富に輸入をする、こういうことが本当の意味における日本の食糧政策を確立することになるという考えであります。この考え方に立たなければ私は本当の食糧政策は確立しないと思う。そういう意味でこれからの食糧政策というものは、そこの微妙な点を考えて行くべきであると考えるのでありますが、このことについて総理大臣は、私は食糧よりも飼料を輸入する、そうして動物蛋白を豊富にすることによつて含水炭素の主食を減す、こういう考え方が本当の食糧政策の根本にならなければならんという考えなんでありますが、これについて如何ようにお考えになりますか、お伺いをしたいのであります。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体私もそういうふうな考えで行くべきだと思つております。
  143. 東隆

    ○東隆君 私は大蔵大臣から食糧政策の問題をお聞きしたのでありますが、(笑声)兼務をされておるとは存じませんでした。(笑声)併しこの問題は現実の日本の食糧政策の基本的な行き方において反対の考え方なんです。大蔵大臣は私の考え方を承認されたのでありますが、この方向に一つ十分予算の編成その他においてもお考えを願いたいと、こう思うのであります。(「農林大臣はしらないつて」と呼ぶ者あり)そこで私はその次に、米の統制撤廃は十月にやる、こういうことで準備その他を十分に整えて行つて統制撤廃をする、こういうようなお話でありますが、私は統制撤廃後においても食糧検査員なんというものは、これは却つて人数を多く必要とするのではないか。なぜかと申しますと、銘柄であるとか、或いは格付というようなことは、これは非常に細かくなつて参りますし、それから現在三百万トン或いは三百八十万トンの輸入をする、こういうような問題でありますが、こういうようなものについても、これは単なる利潤追求を目的にしておるような業者にそういうような方面を任せる、こんなようなことがあつたのでは私は非常に国民は迷惑をすると思います。殊に南方から或いはその他の地域から米なんかも大分輸入しているようですけれども、聞きますと決していいものではなくて、それが主食のほうに廻らないで却つてお菓子のほうに廻つたりしておる、こんなようなことを聞かされるのであります。そういうようなことを考えますと、私はもつと食糧関係の者が強力な力で以て買収その他のことについてもやらなければ本当にものにならん、こういうようなことから、検査の問題を中心にして食糧関係の人員というものは私は相当別な方面においても人数を殖やして行かなければならん、強化して行かなければならん、こういう考えでございますが、これは総理大臣は或いはお答えにならんで、(笑声)農林大臣兼務になられた大蔵大臣お答えになるか知りませんが、(「こちらから任命するか」と呼ぶ者あり)承わりたいと思います。
  144. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 米の検査でございまするが、今までの検査員は米ばかりはやつておりません。而して又供出制度を前提としてやつておるのであります。従いまして私は事務の分量その他を考えて検査員も減らし得ると考えておるのであります。ただ米の供出が臨時的な仕事がございますので、若し不足すれば、そのときに臨時に雇入れてやつて行きたい、こういう考えでございます。
  145. 東隆

    ○東隆君 私は食糧政策に関連しての質問はこれで終りますが、その次に税の問題でお伺いをしようと思うのでありますが、大蔵大臣は歳入を上げるのに、ほかに税源を求めるのは反対のような言い分でありますので、この際私は首相からお伺いをいたしたいのであります。それは私は国民の生活の安定をさせるためには、これは中央公論の十一月号に書いてありましたが、日本の国においては積極的に電源の開発をやらんきやならん。消極的には社会保障の確立をやらんきやならんと、こういうふうに私は考えるのでありますが、この場合に財源の問題、大蔵大臣は減税をやつても金はこの方面には余り使わないようでありますが、そこで私はあの高田保の「ぶらりひようたん」にヒントを得たわけではありませんけれども、税をとるのには、水戸光圀が臣下を戒めて女色の心得を以てせよと、(笑声)こういうことを言つておるそうでありますが、私は税金をとるのに、無いところからとろうとしたつて、これは無理だと思います。それで所得税その他の方面のものは減税をされるのは結構でありますが、新たに財源を求める必要があると思う。その財源を求める場合に購買力のある所からとり立てる。税金は私は金の出し入れのあるときにかけるのが、これが一番賢明なやり方だと、こう考えますが、そういうような場合に、私はアメリカなんかからお帰りになつた人が、よく金ぴかの時計だの、腕環のようなものを持つておりますが、そういうものは非常に税金がかかつておるそうであります。そういうような意味で購買力のある者から奢侈品について奢侈税というようなもの、贅沢品についての税金をとる、こういうようなことを考えられて、そうして或る程度の税源を確保して、そしてこれを社会保障の方面に大きく動かす。こういうことによつて国民の生活を安定という方面に大きく動かして頂きたい、こう考えるのであります。この点で大蔵大臣は新らしく税収については考えないと、こういうことを言われておるように私は承知をいたしておりますので、総理大臣からそうじやない、新たにいい財源があるのならばそういうようなことも考えると、こういうような若しお考えがあるとするならばお聞きをいたしたいと思います。
  146. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 問題は大分専門的でありますから大蔵大臣からお答えさせることにいたします。大蔵大臣の意見即ち私の意見と御承知を願いたいと思います。
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どういう方面から税を徴収するかという問題は、これは国民生活或いは国民経済に重大な関係にあるのであります。従いまして、あなたのように消費の面から税をとるということも一つの方法でありまするが、この徴税の点につきましては、今文明国はやはり所得のある所から税をとる、直接税中心主義で行つておるのであります。而してそれを補うために消費方面で補つて行こう、これが間接税でございます。而して又流通税も或る程度加えて全体としての調整を計るのが今の先進国のやり方であるのであります。私はこの意味におきまして、直接税中心でありまするが、それを間接税で十分補つて行こう、こういう方針で行つております。勿論税源のある所には、こういう国家財政でありまするから、考えないことはございませんが、今のような状態で徴税につきましても高いし、或いは所得税におきましても高い場合に新たに税源を見付けるといつてなかなか困難であります。お話の通りに消費税につきましては、いわゆる贅沢課税、物品税等でやつております。原則として只今の租税制度で今のところ進んで行きたい、こう思うのであります。将来増税もしないとか或いは減税もしないとかいうものではございません。
  148. 東隆

    ○東隆君 私は税源を見付け出して、そうして積極的にやる部面が非常に今後大切だと、こう考えますので、今の問題はこれは十分にお考えを願いたいと、こう思うのであります。  その次に私は今回の人員整理の問題を中心にしてお伺いをいたしたいのでありますが、私は、本会議の席上で総理大臣が、人員の整理が二割できれば人事院の勧告通りにベースアップもするのだ、こういうようなお話もされておつたのを聞いております。併し私はその人員整理をやる場合には、当然行政改革を前提に置かなければ人員整理はむずかしい、とう考えているのでありまするが、政府の説明では今回は行政改革はやらんのだ、そうして単に事務上の整理をやるのだ、事務の上の整理をやつてそうして人員の整理をやるのだ、こういうふうに考えておられるようであります。総理大臣は恐らく先ほどのようなことを言われたときに、行政改革を前提において、そうして且つ、強力な行政機構を確立する、こういうことを前提に置いて言われたのである、こういうふうに私は確信をしているのでありますが、それが単なる事務面における人員整理、こういう形になつて来たのではないかと、こう考えるのであります。行政整理を総理大臣は行政機構の改革を通してやる考え方であつたのか。それとも単に今糊塗的にやつているところのようなやりかたで以て済まそうとするのか。お茶をにごすつもりであられるのか。私はこの点をはつきりして頂いて、行政機構の改革を断々固としてやるのだ、こういう考え方の実はお答えを頂戴いたしたいのでございますが、その辺をお伺いいたします。
  149. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 人員整理も行政機構の改革も、政府としては断然整理をするつもりであります。詳細は安本長官からお答えいたさせます。
  150. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 今度の行政整理が今まで行われたような意味において、ただ天引的の整理であつてはならないのでありまして、講和条約成立後における日本の国に即応した形において事務の整理をし、行政機構の改革をするということを前提として行政整理が行われているのでありまして、差当つて行政機構の改革となるべき一つの前提たる事務の整理に当つて只今の行政整理を予定しておるわけであります。
  151. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は先ず四月一日から米の統制撤廃を行うはずであつたのを、これを打切りになつたこのいきさつについて伺いたい。実は本日この問題を総理大臣に質問する予定ではなかつたわけでありますが、先ほど来各委員から非常に重大な問題について政府にそのいきさつについて御答弁を煩わしましたけれども、その御答弁は我々納得できないわけです。池田大蔵大臣統制撤廃原則は認められたのだ、こういうふうに言われておりますが、私は政府立場としては、又自由党としては米の統制撤廃を行いたいという気持はわかります。それは自由経済主義で行こうとしているのでありますから我々と立場は違いますけれども、政府立場に立てばこの米の統制撤廃によつて最後の自由経済政策の仕上げを行おう、こういう気持はわかるのでありますが、今度統制撤廃打切りになつたいきさつが、国民には十分に納得は行つてないと思うのです。十月までは統制を続ける、自由販売は許さない、併し十月以後においてはどうなるのであるか。政府が総司令部と、具体的な案を以て折衝されたはずであります。そうしてドツジ氏とも折衝されたはずであります。どの点が政府の案と司令部の考えと違つて、そうして四月一日からの統制撤廃打切りをせざるを得なくなつたか、撤廃はできないということになつたか。例えば新聞に伝えるところによれば、総司令部は二千七百万石を確保しなければいけない、政府は二千五百五十万石、その差は百五十万石、この百五十万石だけの差で、それだけで大政党である自由党のこの公約が実現できなくなつたのかどうか。或いは又輸入の問題についてもいろいろ問題があつたはずであります。このいきさつを具体的に政府はこういうふうに考えた、米の統制撤廃するにはこういう準備が必要で、こういう用意が必要で、こういう具体案を以て総司令部と折衝したけれども、この点については総司令部がこういうふうに言われて、そうして四月一日から統制撤廃ができなかつたのであると、このいきさつを国民に十分に納得行くように説明して下さいませんと、又十月以後において統制撤廃するといつてもその条件が整わなければ又できないわけです。そうしますと、徒らに民心の不安をつのらせるばかりでありまして、従つて具体的にどういうわけで四月一日からの統制撤廃ができなくなつたのか、そのいきさつをできましたら総理からお伺いしたいのであります。
  152. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私よりは大蔵大臣のほうが一層詳細に知つておられますから、代つて答えます。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 主食統制撤廃につきましては我々は前から考えておつたのであります。而して予算上の問題がありますので私が司令部のほうと折衝をいたしたのであります。二回に亘りまして折衝をいたしました。そのときは二千五百五十万石の供出割当で、そうして配給の面につきましては四月一日から配給をどうするかという問題、自由党のほうでは一合は今まで通りに配給しよう、或いはその配給の仕方も委託配給にするか、今までのようなやり方にするか、これはきまつておりません。それから又金融的措置並びに統制撤廃後の米、麦の需給調整の方法、いろいろを持つてつたのであります。然るところ二千五百五十万石という供出は早急にきめなければなりません。併し統制撤廃の問題につきましては十分考慮する必要があるのではないかというお話もありました。そこで私はこの問題をうやむやにしておくということはよくございません。殊にドツジ氏が横浜に着かれたときに、如何にも主食統制撤廃世界の情勢に逆行するというふうに感じられるような談話がありましたので、これをこのままにしておくということはよくない、従つて早くきめなければならん、二千五百五十万石をきめて主食統制撤廃原則を認めてもらうように話を進めたのであります。そこで司令部との関係におきまして、先般政府声明に出ました通りに、主食統制撤廃原則は私は認められたと確信しております。ただ事情を十分検討して善後措置を講じてやるということに相成つたのであります。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その原則を認められたということについては、例えば経済は原則として自由でなければならない、そういうようなものとも我々は解されるのです。この原則は認められたがこれを実行に移す場合にどういう条件が必要かということが、司令部との折衝の対象であつたはずであります。この点をやはり国民に十分に説明されたい。この公約がとにかく時間的にも一応破棄されたわけです、公約が廃されたわけです。ですからそれは率直に政府は、こういう条件が整わなければ統制撤廃はできないのだ、併しながら政府統制撤廃については条件を甘く見ておつたのだ、司令部のほうでは二千七百万石確保できなければ困難だ、そういう意見が出て来たように新聞に出ておりまして、政府の二千五百五十万石との間に百五十万石の差も出て来た。輸入の問題についても差が出て来たと思う。そこで政府が非常に甘く見ておつた統制撤廃する場合の条件を、又今後の国際情勢の変化も考えなければならない、いろいろな諸般の情勢の認識、判断が非常にルーズであつた、こう我々は考えざるを得ない。そこで政府がそうでないと言うならば、総司令部の意見と政府の意見はこういうところが違うのだ、ですからこういう条件が整つたらば統制撤廃するのだ、そんなら統制撤廃しても決して一般国民に食糧問題について心配かける必要がないのだと、この点を説明して頂きたいというのです。そうでなければ、ただ原則として統制撤廃を認められたのだ、そういうふうに大蔵大臣が大見得をきりましても、それでは何らの説明にならないと思うのです。そうしてその公約に背かれた理由の説明にならないと思う。そこで具体的にどういう点が違う、今後どういう条件が整えば統制撤廃の現実性が出て来るのだ、こういう点を御説明願いたい。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 二千七百万石の供米があつたならば統制撤廃ができる、こういうふうな話ではないのであります。昨年二千七百三十万石の供出がございましたが、まだあのときは農林統計がはつきりしておりません。併し六千二百数十万石の分が少し減るだろう、こういう話をいたしましたところが、これくらいにはならないだろうから、去年くらいには供出はとてもできないという話がありましたが、それは私の所管じやございませんというので触れません。だから私の考えといたしましては、農林、安本、大蔵とで、大体の供出二千五百五十万石というその一連の施策を持つてつたのであります。それで先ほど申上げましたように、早く二千五百五十万石もきめなければいけませんので、それだけ出しておいてほかの問題は今後十分我々はこの上とも検討を加え、そうして情勢が許せば統制撤廃をやろうというのであります。今後の問題といたしまして、我々のほうでも研究を重ね、向うのほうも研究されると思います。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこが重要な問題だと思うのです。今後統制撤廃する条件が実現できるかどうかは問題でして、こういう点が充たされれば統制撤廃できるのだということが明らかになれば、国民は成るほど米の供出もこのくらいできそうだからこれは統制撤廃になる、或いは又食糧の輸入もこういうふうに順調に行くようであるから統制撤廃もできるようになるだろう、その判断の基準になるわけです。そこが重要問題でして、司令部と政府との食い違いといいますか、これはどこにあるか。とにかく四月一日から政府統制撤廃を予定して進めて来られ、又司令部とも折衝されたのです、日本政府が……。それで我々も講和調印されましたし、まだその効力は実際には発効しませんけれども、発しませんけれども、大体日本政府の自主というものは大幅に認められるのじやないか。従つてそういう意味でドツジさんの意見は拘束力を持つているということを新聞で発表しておりますが、じかにドツジさんから私が聞いたわけではありませんからその点はわかりませんけれども、国民一般はそう思つているのです。又政府もそう考えて折衝されたんじやないかと思うのです。ところが難関にぶつかつた。その難関はどこにあつたか。数字的根拠があればそういうものを国民にはつきり納得させて、今回はできなかつたのだ。ただあの一片の声明では大政党たる自由党が公約されたことを、これを反古にされた理由としては納得できないのです。今の大蔵大臣の御説明では今後どういう条件が充されれば統制撤廃ができるかということについて国民が納得できない。重ねてこの点どういう条件が充されれば統制撤廃ができるのか。国内供出のほうについてはどうであるか。或いは又輸入の問題についてはどうであるか。撤廃後の金融の問題についてはどうであるかという条件があるはずだと思う。その点をここで御説明願いたい。これを詳細に説明することによつて政府は公約を時間的にも違反されたことの釈明になるはずであります。むしろ政府に対して我々は応援しているようなものです、逆に……。併しこういう問題は重要問題でありますから、政府を助けるとか助けないとかいう立場を離れて問題を明確にしてもらいたい。そういう意味で私は真剣に御質問しているわけなのです。
  157. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 我々の出した案におきましては、四月一日から統制撤廃する、こういう案であつたのであります。併し先ほど申上げましたように、四月後も配給を続けようと言う一部の主張もあつたのであります。そういう点がまだはつきりいたしません。それから前提条件としてどういうふうなものがあるか、こうおつしやるが、これは二千五百五十万石の供出が終り、そうして我々といたしましては十分主食を確保する建前から三百七、八十万トンの輸入を確保する見通しが付けば……。これが二大前提であります。而うしてその後におきまして、米の非常な暴騰或いは買溜め等に対する措置を尽しておけば、私は統制撤廃ができると考えております。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実は総理大臣に御質問するはずなのが、大蔵大臣の質問に大分時間を費やしてしまいました。次の問題に移りたいと思います。  総理大臣には私大体質問する事項を通告してあるはずでございます。従いましてその順序によつて御質問いたしたいと思います。その第一は、今度の平和条約並びに安全保障条約は寛大なる条約である。又これは和解と信頼の条約であるということを総理はしばしば言われておるわけであります。我々もそういう点もあると思う、全然寛大でない、或いは和解と信頼の条約ではないとは言いません。例えばイタリアの場合と違つて日本の場合は国会の承認というものを条件にしておる。日本が批准しなければこの条約は成立しないという点などはこれは私は実に寛大であると思う。併しながら少くとも経済的に見て私はどうも寛大でないと思われる。それは本会議において私は総理大臣に質問したのでございますが、御答弁がないので、その経済的な面から見ましてどうして寛大と言われるか、その点を二、三具体的に御指摘願えれば幸いと思います。
  159. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) こういう点が寛大でないという点をあなたのほうから先にお話を願いたいと思います。(笑声)
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは総理大臣がうまくお逃げになりましたが、じや私は、こちらから質問したのですから具体的に例を出します。その第一は対日援助費であります。対日援助費については、しばしばこの国会で大蔵大臣平和条約を結ぶ際にこれは明らかになるものであるということを言われたが、平和条約の項を見てもこれがどうなるのか明らかでありません。而もこれは二十億ドルという大きな金額でありまして、これは債務であるということになつておる。ところが先ほどこの対日援助費終戦処理費は別であるということを言われましたけれども、最初においてはこれは大体見合うということになつてつたと思うのであります。ドツジさんもアメリカの国会における証言において、これは大体見合つておるという証言をしております。而も終戦処理費は今日まで幾らになつておるか。邦貨にして今年度の補正を含めまして五千三百九十三億円、これを軍票レートにして四十九億七千二百万ドル、約五十億ドル納めて来ておる。終戦処理費は対日援助費より三十億ドル余計納めておる。而もこれを我々が返さなければならないということは我我は寛大であるとは言えない。見方によれば、その点においては一種の経済的なペナルテイのようなものというような感じがします。その点総理は寛大であるとお考えになりますか。
  161. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今の金の計算は大蔵大臣のほうが正確でありますから、大蔵大臣からお答えいたします。(「金の計算ではない。」と呼ぶ者あり)
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは小学生でもわかるのです。五十億ドルマイナス二十億ドルはイコール三十億ドル、これだけ余計払つておる。而も二十億ドルも又返さなければならん。イタリアの場合に比べて、イタリヤの場合はこの債権は放棄されております。寛大であるというなら、この点をなぜ寛大にできなかつたのか、この点どうして折衝できなかつたのか、この点がはつきりするまでどうして条約を調印されるに対して慎重にされなかつたか。こういうような重大な案がまだはつきりしないでどうして調印を急がれたか、この点は小学生といえどもこの計算はできるのですから、総理から寛大であるかどうか、お答え願いたい。
  163. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 重大なことですから大蔵大臣から説明します。 (「重大なことなら総理からいえ」と呼ぶ者あり)
  164. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 前提として申上げておかなければなりませんが、木村君と私とはたびたびここでお話申上げておるのであります。終戦処理費と対日援助費というものは関係のないものであるということはたびたび言つております。而も又対日援助費は我々は債務と心得えておるということは、従来からたびたび二年前から木村さんには国会の都度申上げておるところでありあなたは速記録をよくお出しになりますから、お出しになればおわかりになると思います。ボーヒーズ氏やドツジ氏がどういう気持で向うの国会で言われたかわかりませんが、そのときたまたま終戦処理費の金額と対日援助費の金額がちよつと合つただけで、性質は違うのである。我々が終戦処理費を負担しておるのは降伏条項によつて負担しておるのであります。対日援助費アメリカの好意によつてつておるのであります。従いまして、我々は終戦処理費を負担しておるから対日援助費は棒引になるとは言えません。そういうことは前からあなたに詳しく説明しておるわけであります。而して講和条約が成立したならばこの問題は討議せられるだろう、で、イタリーにおきましても、アメリカはイタリー援助資金に対しての請求権はあつたのであります。それを平和条約成立後アメリカが一方的にその請求権を放棄したのであります。今後アメリカが放棄するか放棄しないか、或いはどれだけ放棄するかという問題がありましようが、我々といたしましては従来通り債務と心得ておるのであります。これは二、三年前にマツカーサー元帥の声明にもあるということはたびたび申上げておる通りであります。イタリーにおきましては、平和条約成立後、効力発生後一方的に請求権を放棄いたしましたが、西ドイツに対しましてはアメリカは請求権を放棄しておりません、債務はあるのだぞということを言つております、請求権を持つております。日本も大体今のところはそういうことで、我々の心がまえといたしましては只今のところ債務と心得ております。
  165. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣は対日援助終戦処理費とは別だと言われますがそれは丁度池田大蔵大臣が実質的減税と税法上減税とはこれは又違うのだというのと似ているのです。それは形式的には別であります。併し例えばドツジさんの証言の内容を読んで見ますと、ドツジさんはこう言つています。歳出要求と関連して更に重要なことは、本年度に日本に与えられる援助は、日本占領軍に与える費用のドル換算よりも少いということは率直な事実である、本年度の日本に対するガリオア援助資金要求額は二億七千百万ドルであるのに対し、占領軍のための日本政府のドル換算額は約二億九千七百万ドルになろう、日本占領のアメリカ軍のため日本政府による支出は、若しそれがなかつたら国防省の軍事予算から約三億四千五百万ドルを必要とするであろう。即ちアメリカは軍事費をこれで節約できているのである。こういう証言をしておられるのです。従つて実質的にはこれは関連しないとは言えない、従つてこれをイタリーの場合のように放棄してくれればこれは寛大と言えます。併しながらそれでも三十億ドル我々は余計払つているのですが、そうでないと、三十億ドル余計払つて更にこれを返すということになると、経済的にはこれは一種のペナルテイという感じが我々はどうしてもするのです。これについては大蔵大臣も本会議で答えられたのですし、総理考えを伺つたのですが。総理はこれについて算街計算は簡単であるのに、非常に総理はずるく逃げられてしまつた。そこで私は総理に重ねてお伺いしたいのですが、こういう問題も明らかになつておらないし、今後これは放棄されるか、或いは又請求されるかわからない、賠償の問題もよくわからない、今後の折衝である、防衛分担金も今後行政取極等でこれを折衝してきめなければわからない、こういう講和に関連する重大な経済的条項がみなはずされているのです、今後の折衝に任されておる。こういう条約の結び方というものはこれは寛大なる結び方であると解してよろしいでしようか、総理大臣にお伺いいたします。
  166. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは払うと決定したわけではないのでありますから、払うと決定した条約よりは寛大に違いない、又今後に交渉が残されるところに寛大というべきものがあると私は考えております。(笑声)
  167. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 外国では今度の日本平和条約を見る場合、又外国ばかりでなく、我々も今度の平和条約及び日米安全保障条約は、そこに書かれているものよりもそこから除外されているもののほうが日本にとつて重要である、条約の中に書かれているものよりもそこから除外され、そこに書かれてないもののほうが日本の運命にとつて重要なのであると言われております。従つてこの講和条約の条文自体を幾ら検討して見たつて、或いは又安全保障条約の条文を幾ら検討してみたつて、そこに書かれているものより除外されているもののほうが重要なのだ、日本の運命にとつて……。その一つに、いろいろありますが、その一つには私は経済の問題があると思うのです。ところが書かれてないだけに、これは小さくなるかも知れないけれども、大きくなるかも知れない、それは非常に不安の種になるわけなんです。どうしてこれは平和条約に具体的に規定されなかつたのか、前の大蔵省財務官の渡辺武君は大蔵委員会に参りまして、率直に証言しております。自分たちは例えば大蔵省としてはこの平和条約の中に経済的条項が具体的に規定されるものと予想しておつたところが、全部経済的に重要な条項に関するものは今後の折衝に任されてしまつた、非常に予想がはずれた、こういうことを言つております。その除外されているもののほうが重大なのであります。それに対してどうして……これがそんなに寛大であるのならばはつきりと規定されるのが然るべきだ。イタリーの場合でも三億六千万ドルを七カ年間に返す、勿論池田大蔵大臣の御答弁のように、日本の与えた損害は大きいから額は大きいかも知れない、併し賠償の額がきまり、何年間で償還せよと言えば、日本の経済の復興計画もはつきり立つて来る、こうしたらいい、ああしたらいいと……併し今後払うのか払わないのかわかりませんので、方針が立たないでおるのです。そういうような形でどうして講和条約調印を急がれたか、私はその点どうしても腑に落ちないのです。これでも総理大臣はやはり寛大とお認めになつておりますかどうか、重ねてお伺いしたい。
  168. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 寛大と考えております。(笑声)
  169. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、今度の講和条約を結ぶに際して、全権として池田大蔵大臣、一万田総裁が行かれましたが、講和後の日本の経済を自立する上において大体東南アジア開発とか、或いは国内の電源開発とか、そういうことについてアメリカの援助を相当期待したのではないか、伝えられるところによれば、二億八千五百万ドル電源開発アメリカの資金借款を前提として、そうして自立経済計画というものを考えられた。ところがあちらに行きまして、大蔵大臣はワシントンに行くつもりであつたけれども、ワシントンに来る必要がない。この間雑誌改造に書いてあるところによりますと、一万田や池田サンフランシスコから更にワシントンに乗込んで財務長官あたりと取極をするつもりであつた。ところがサンフランシスコで彼らは顔を洗つて出直せという事態に遭遇してすごすごと引返さなければならなくなつたと、東京日日新聞にもこういうように報道されております。これで講和後の日本の経済の自立がうまく行くと思うか、こういうアメリカ相当な援助を期待していたのである。それであるから寛大であると思つたのであるが、ところが期待がはずれた、そういうことに実情がなつておるのではないか、従つて電源開発でも一千億円の電源会社を作つて国内資本で電源開発をやらざるを得なくなつて来ておる。そうすると国内の資材を相当使う、国内の資材を使えば輸出用に振向ける資材が減ります。輸出が減れば輸入が困難になる、日本の経済の自立は非常に困難になつて来る。この困難を救うためにアメリカからの援助というものを求めたはずであります。これでもやはり寛大であると考えるか、吉田総理大臣は寛大と考えると言われますので、この点について又質問しても無駄でありますから、私はこの点は避けますが、時間がございませんので、最後に講和後における日本の特に又吉田総理大臣及び外務大臣の外交政策について伺いたいのですが、講和後の日本の経済にはたくさんのインフレ要因があることは周知の通りでありますが、そのうちで今後一番大きくなるインフレ要因と考えられるものは準軍事的といいますか、そういうものが多くなるということが一番大きなインフレ要因と思うのです。それは対外的な、例えば米ソの対立を刺激するようなことを行うことによつてますますその負担は殖えて来ると思うのです。米ソの対立が激しくなればなるほど負担が殖える。ですからイギリスのチヤーチル氏は、そういう軍事的な負担を軽減する意味において、やはりソ連に対しても平和的な外交をやつて行こうと、こうしておる。ところが日本国内においては、何だかソ連とか中共というものを敵国視したような形において非常に刺激するようないろいろな言論、宣伝、そういうものが行われています。外交方針としては、これはどこの国とも善隣関係を結んで行かなければ、日本の経済的にも非常に損なのである。ただ一国だけに一辺倒になつてつたのでは国家の利益が守れないのです。これについて何らか日本の最近の状態は、その後いわゆる対米一辺倒というのですか、その一辺倒もいいのですが、又他方の対立する方面については何か敵対視して行くような、むしろそういうことの対立深めるような方向にいろいろな言論とか何かが向いているように思う。我我が一番心配するのは、講和後における日本外交が、特に一国を敵に故意にするような方向に行つたらば、これは大変なことになると思うのです。又そのために準軍事的な負担というものはますます殖えて行く、これを心配いたしますので、講和後における、そういうアメリカ対立しているソ連とか中国とかに対する外交政策をどういうふうにお考えか、総理大臣にお伺いしたいのです。
  170. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば私が申す通り日本政府外交方針は善隣外交であります。特に中共とか或いはソ連に対して刺激するような外交はいたしません。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後にお尋ねしたいのですが、講和後における日本の民主化の問題、特に経済の民主化の問題と、これが逆転する危険が非常にあるということを憂慮されるのでありますが、最近USニユーズ・アンド・ワールド・リポートという雑誌に、こういうことが載つております。そのUSニユーズ・アンド・ワールド・リポートのフロム記者に対して編集部が質問しているのです。「条約が調印されて独立したとき、日本の民主化は逆行するだろうか」。それに対してフロム記者は、「日本は占領当時より民主化の度が少くなる、だろうと思う。占領当局は日本で民主的改革を行い、それを擁護して来たという意味で、民主主義の防壁だつた。」、更に問として、「警察は軍隊組織になつているのではないか。」、それに対する答弁として、「そのとおり、正式には四ヵ師団、七万五千だ。軍国主義の復活という問題については、もし旧軍人をまた採用したら、彼らが政府と代議政体にあきたらなくなつて、これに取つて代る心配があるのだ。」、こういうことを言つております。警察予備隊強化はどんどんされている。旧軍人がこれに参加する、そうして若しこれが強化された場合、政治が例えば衆議院で自由党が絶対多数を取つていい政治をやればいいのですけれども、悪い政治を行い、民衆の意に合わないような政治を行なつたときにどうなると思います。二・二六事件というものが過去にあつたわけです。それが代議政体を否定し飽き足らなくなり、政府が飽き足らなくなつたら、これはフアツシヨ化する危険があります。特に旧軍人をここに入れれば、そういうことを外国でも心配している。我々も心配します。こういう点で講和調印後において、日本の民主化は逆転する危険はないか、或いは団体等規正法案とか、或いはこういうものを作り、或いは独占禁止法、これを緩和する、事業者団体法を廃止しようとしておる、労働基準法を改悪しようとしておる、こういうようなこと、一連の改革は、これは民主化を逆転する以外の何ものでもないと思うのです。この点一番日本国民は心配しているし、世界の人も心配していると思うのです。この点について総理大臣の御見解を伺つておきたいと思います。
  172. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はしばしば日本の民主化の確立ということを申上げております。今後も日本の民主化は断じて後退せしめませんから御安心を願いたい。又外国の新聞記者が何と申しましても、私はこれは責任をとらない。警察は軍隊にはいたしません。
  173. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 池田君が、「改造」の記事について一言弁明したいそうですから、発言を許します。
  174. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 「改造」にどういうことが載つてつたか、今木村さんのようなお話でございますると事実と反しますから、ちよつと釈明いたしたいと思います。私はサンフランシスコに折角参りました機会に、できればワシントンのほうに行つてスナイダー或いはドツジ氏、或いは又国務省の人にも話をして見たいくらいな気を持つておりました。然るところ平和会議終了後におきましていろいろな国際会議がございました。殊に経済的な国際会議がございまして、スナイダー氏が忙がしいということと、もう一つは、国務省の代表のかた、或いはドツジ氏が国務省を代表してわざわざサンフランシスコへ来てくれましていろいろな話ができましたので、向うへ行く必要をなくしたのであります。外資の導入なんというものは、一人や二人が行つてすぐ話をして、こういうものはできることじやない。そういうことを考えるのは、日本人が少し甘過ぎると思います。そういう事情であつて、決して向うの人が顔を洗つて出て来いというようなことは言つておりませんから、そういうことは誤解のないように……。
  175. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう時間が来ましたから簡単に。
  176. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に最後に一つ、これは政府及び自由党の非常に重要な政策についてでありますから、質問は簡単でございますが、十分御答弁願いたいと思うのであります。それは最近の事態は、自由党の一番重要な政策として掲げられているところの自由経済政策というものは限界に到達して、ここらで政策転換をやらざるを得ない段階に来た。こういうふうにはつきり思うのであります。殊に講和後のインフレの問題を考えますると、これまでのようないわゆる自由経済政策ではとてもやつて行けない。総理大臣もこの間、九日の日であります、衆議院の定員法の合同審査委員会で出席要求されましたのを無理に拒否いたしまして、そうして経済同友会の第四回全国大会に出席された、そこで総合インフレ対策の要望というものを出しております。あの大会で採択された。総理大臣も御出席になりましたからあれを御存じと思うのであります。この総合インフレ対策を見ましても、中堅的な財界人を以て組織されている経済同友会の総合インフレ対策を見ましても、これまでのただ金融中心の統制とか、そういうものじや駄目である、やはり物資面における直接統制、例えば物資の使用制限、輸出の制限、そういうものもやつて、そうして総合的なインフレ対策をやらなければ、日本講和後の経済は乗切れないということを要望しているのであります。最近日本銀行あたりでも、金融統制だけでは駄目だ、直接の物資統制をやらなければ駄目だという意見に傾いていると言われております。ドツジさんもそういう意見を要望していると言われております。この経済同友会の「インフレ要因と我が経済現状の分析」というものが附録に出されておりますが、非常によく分析されておると思うのであります。これを御覧になつても、政府考えているような、講和後の日本経済は楽観すべきものではない、財界人でさへ、相当真剣な大変なものであるということを警告しております。従つて政府は、これまでのような自由経済政策ではとてもやつて行けない、ここではつきりと政策転換をする御意思があるか、物資の直接統制を今後考える御意思があるかどうか、この点最後に伺つておきたい。これはこの前も総理大臣に質問したのですが、自由党の一番重要な経済政策の基本であります、これをほかの経済閣僚に私は答弁させられたのでは困るのです。総理大臣から御答弁願いたい。
  177. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 重大な政策でありますから、安定本部長官から説明いたさせます。
  178. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 木村さんの御意見は、一年前頃からたびたび自由経済ではやれぬだろう、やれぬだろうという御質問でございますが、過去一年の状況を御覧になりますると、よほど統制撤廃をしましても、而も今日ような経済の復興、安定を来たし、生産指数の上昇を来たしていることは事実であります。而も今後の問題につきましては、私どももたびたび申しておりますように、国際的に非常に貴重な物資等につきましては、物によつて使用制限することあるべしということは、前の国会においても申上げておる通りであります。それは挙げて根本的自由主義経済の政策の転換とも考えます。経済というものは殊に固定しているものではないのであります。その時、その時の状態において最も適正な方策をとることが必要であります。自由党としては飽くまでも、政府としては飽くまでも自由主義経済を原則とし、必要な限度において使用制限をすることは勿論であります。すでにコバルト或いはニツケルについては実行いたしております。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 午前中にも木村委員から議事進行についてお話があつたのでありますが、私たち総理に質さなければならない非常に多くのものを持つているのです。ところが総理のほうでは時間を限定されておりまして、今日は僅かに一人当て三十七分というような実に心細い形になつております。従いまして先ほど申されましたように、できるだけ総理が答えられることを切望するものであります。経済閣僚につきましては、これは今から予算の審議の過程におきまして時間があるのでありますから、十分にこれは聞くことができますので、そういう点をはつきり確認して欲しいと思うのであります。  まず第一に私のお聞きしたいのは、政治責任の問題、いわゆる民主的な責任政治の問題であります。現在の日本政治がこれと関連して果して自主的であるかどうか。こういう点が今いよいよ講和に臨むというような体制の中で非常に重要であります。今後の日本政治にとつてもこれは非常に重要であります。こういう問題が、少くとも寛大の講和だと言われて、総理が自慢にされているような講和が調印された後でありますから、相当これは打開されなければならない。こういう点から先ず伺うのでありますが、第一に私のその点に関して伺いたい問題は、予算編成の自主権の問題であります。これは本会議におきましても私は財政質問演説の中でやつたのでございまするが、総理からは何らこれは御答弁がなかつたのであります。大体今度の予算の規模を見ますというと、吉田首席全権並びに全権団がサンフランシスコに参ります前に、大蔵省の構想としては大体歳出においては四百五十億程度、そうして歳入においては、これはサンフランシスコから帰つてからきめる、こういうようなことで、さてサンフランシスコ会議に臨んだはずであります。ところが帰つて参りますというと、その予算規模が、驚くなかれ千三百六十何億というような厖大な、約三倍の規模のこれは厖大なものに膨れ上つているのであります。この原因は一体どこにあるのであるか。最初に大蔵省が立てた原案、こういうようなものから比べましたときにこれは厖大な膨脹であります。こういう点につきまして、果して日本政府はこの予算の自主権というものがどの程度今日において確立されているのであるか、こういう問題が非常に重要であります。この問題につきまして私は本会議において池田蔵相に質問したのであります。ドツジ氏の来朝が、十月の二十八日にドツジ氏が来ることになつているが、これと関連して果して今度の補正予算において変更を見るというようなことはないかというような、いろいろな政策の面において変更を見ることがなかろうかということを質したのであります。この問題はこれだけでなくて、来年度の、二十七年度の本予算において、これはどういうような一体今後の変動があるのであるか、こういうことは非常に今後の予算審議の内容において重要である。その関連するところは日本政治の全体の自生性に深く繋つている、こういうふうに思うのであります。そういう点から総理に伺いたいのでありますが、予算編成の自主権、こういうものがどの程度あるのか、これと関連して、当然これは政府としてはこれに対するところの責任というものをどの点まで一体考えておられるのであるか、この点を先ず伺いたい。
  180. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 予算の編成の全責任政府にあるのであります。併しながら今日占領下においてGHQと相談をし、協議をするということは条約上の義務であります。
  181. 岩間正男

    ○岩間正男君 調印後相当いろいろな今までの占領下の事項が日本政府に委譲された、こういうふう言われており、そういうことを政府が発表されておるだろうと思う、そういう関連の中で、これは自生性を少くとも推し進めるという態度が非常に我々は重要じやないか。条約を批准して効果が発生したそのとたんにいろいろな問題が変るものじやない。やはり事前に、そういう問題については刻々とやはりそういうものが改善された基礎の上に立たなければ、真の自主性というものは回復されないのでありまして、そういう点から考えますと、今度のこの予算規模の変更というものは非常に大きなやはり私はシヨツクを与えていると思う。殆んど自主性がないと言つてもいいというような形で以て、二倍もの予算が大きく膨脹しているというような問題については、これは今後の予算の問題としまして非常に重要な問題であると思うのでありますが、来年度予算の編成につきまして、池田蔵相は大体八千億程度、こういう点でこの予算規模は賄えるのじやないかということを発表されておるのでありますが、これは講和後のいろいろな財政需要、こういうものと睨み合せて、果してこういう線が堅持されるのであるか。その後ドツジ氏が参られましていろいろ折衝が始まつておると思うのでありますが、その折衝を通じてもなお且つそういう線が堅持されるのであるか。堅持したいという、堅持したいというような希望にさつき表現をされたように思うのでありますが、そうすると本会議あたりで蔵相が堅持するといような、殆んどそういうような確言に近いような話をされたのと先ほどからのとは違つているのではないかと考えるのでありますが、そういう点についてはどうでありますか。
  182. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私がサンフランシスコに行く前に、自然増収が七、八百億、八百億あるというようなことは、一応の目算を立てたのでありますが、何も予算編成に対しまして省議で決定したわけでもございませんし、閣議で決定したわけでもないのであります。丁度そのときにまだ九月の決算の状況等がわからないので、一応今のところにこのくらいな自然増収の見込であるということは言つたことがあるのであります。それは立つまでに日本言つているのであります。従いまして帰つて来て、九月の決算の状況のめどを立てますと相当自然増収がありますので、平和態勢への建前を考え、そうして十八カ月予算でああいうふうな予算にしたのであります。決してこの予算関係方面からこの枠にしろというような申入れをしたのではないのでありまして、私が自分の考えで作つて、そうして向うの承認を得たのであります。従いまして補正予算につきましては、ドツジ氏が来られましてからもこれを変える意思はありません。変えることはないと確信いたしております。来年度の予算につきましては、一応十八カ月予算のときにはこういう目標で行つておる、こういうことを申上げておるのであります。その後の事情によつて或る程度の移動はあると思います。従いまして今年度の予算と大差ない八千億台ということは一応の見通しであるのであります。今後の情勢によつたらそれは変るかも知れませんが、今日までの状態では八千億円台がそう動くとは考えておりません。
  183. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも今日までの状態というような一つの限定をされたのでありますが、そういうことでいつまでも日本政府ぐらぐら変つておる、間際になると……、こういうことは私は今までに余りに例を見て来ておるのであります。だからこういう点についてどうも八千億の枠の問題について、今後これはやはりもつと検討しなくちやならない問題と思うのでありますが、先ほど大体四百五十億というのは、そういう話合いで閣議決定じやない、こういう話でありますが、成るほどそうであつたと思います。併し大体私が先ほど申しましたように、三倍にも予算というものが殖えておるということは、これはただごとではないのであります。而もその殖え方を見ますというと、殆んどこれは外為の例えば三百億のインベントリーである、或いは食管の百億のインベントリーである、或いは又国際通貨基金、開発銀行、こういうような政府投資の面に非常に多くて、それがベース・アップとか、それから文教とか厚生とか、こういうような民生安定の方面には殆んどこれは費されていない。こういう点から考えまして、日本の現在置かれている、更に日米経済協力という形で進められておるこの政策と関連して、そういう方面にだけ大きな支出がなされておる。こういう形では、これは日本政府によつてまあきめられたのか、或いは又これはうしろの示唆があつたのか、こういうことについてはここで論ずる限りではないと思うのでありますけれども、なかなか国民が納得しかねる問題だと思うのです。  時間の関係がありますので、その次の第二の自主性の問題としまして、先ほどから問題になつておりました対日援助資金の問題であります。これは債務で返さなければならない、こういうことが言われたのでありますが、これにつきましては、これは又別な論議をしますが、私のお聞きしたいことは、これと見返資金の関係であります。この委員会におきまして、我々はしばしばこの問題を今までこれは政府に対して質して来たと思うのであります。つまり対日援助資金は果してもらつたものであるかどうか、もらつたものであるか、或いは借金であるか。借金であるならば見返資金は、日本のこれは国民がなしたところの食糧買上金である、更に又これは食糧の補給金、こういうものを積立てたのであるから、当然これは日本人の自主性に任されて……これはGHQの紐付であることは了承できない。こういう点について我々は論議したのであります。当時池田蔵相は、これに対しましてどういうふうに答弁されたかは、あなたが十分これは御存じだと思う。これについては今のところはつきりしない。或いはこれはどうも匂わして、これはまあいろいろそのとき寛大に考えられるであろう。こういうことであるから、見返資金についてもこれはやはり日本の自主性でなくて、やはり制限があるのだ、こういうことを言われた。そうしますというと、今日我々が曾つて指摘いたしましたように、いわゆるマツカーサー元帥の米国の国会宛に送つた覚書にも、書簡にもありますように、あらゆるこれは債務に優先して払うところの債務である。そういうことがはつきりこういう形で出ている。先ほどの吉田首相の答弁によりますというと、これは現在交渉中である、こういうことを言われますけれども、又昨日の日本経済新聞の伝えるところによりますというと、これについては債務として払うという原則を承認さえすれば、これについて今年から取るかどうかということは、これは又相談するというような事項が、これはドツジ氏によつて表明されたことが新聞に出ておる。こういう点から見まして当然これは払わなければならないと、これは政府考えておられるのだと思うのであります。そうしますと当然見返資金というものは、今まで長い間、例えば融資条件のようなものは紐付によりまして非常にこれはこれを借りる側から見ますというと、多くの制限を加えられて来たのでありますが、これは今後どういうふうになるのでありますか。殊にこれは講和と関連しまして、この見返資金というものはどういうように日本の自主性によつてこれが運用されるようになるのでありますが、どうですか。この点をこれははつきり承わつておきたいと思います。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 対日援助費は我々の債務であるということは、たびたび申上げた通りでございます。而して対日援助見返資金の使用の仕方につきましては、只今占領治下でございますので、今までと同じことでやつて行きます。
  185. 岩間正男

    ○岩間正男君 見返資金については……。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 見返資金の使用は、今のところ今までと同じでございます。
  187. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこういうことは了承できないだろうと思う。融資条件を検討すればいい。いろいろなこれについては制限があつて日本の産業を拘束し、或いは又うしろで以て大きくこれは枠をきめられるというような形で使用されている。見返資金、援助資金の厖大な八千億もの負債を払つて後においても、そういう形であるということは、断じてこれは国民は了承できない。こういう形で大体政治が遂行され、今後の財政経済が遂行されるところに、やはり吉田内閣の現在の政治の自主性という問題について、我々は今後追及しなければならない問題だと考えるのであります。  時間がありませんので、その次に進みますが、第三に政府責任政治の問題、第三としましてお聞きしたいのは、今度のドツジ氏の来朝によりまして駄目になりました米の統制撤廃の問題であります。これについてもうしばしばほかの同僚諸君からも追及された問題でありますから、くどいことは申上げないのでありますが、先ほど内村君の質問に対しまして総理責任を負うと、こういうことを言われたのでありますが、この責任というのはどういうような責任でありますか、単に責任を負うということはこれはやさしいのでありますが、併し今度の米の統制撤廃によつてつておるこの現象というものは、非常に大変なものだと思う。思惑買も進んだでありましようし、それから政府のあれだけの、総理施政方針演説で堂々とあの議場を通じまして公表をした問題でありますから、これに対していろいろな態勢がすでに暗々裡にとられておる、それがここで統制撤廃をしないとなると、いろいろな摩擦や或いはいろいろな混乱が出ると思う。こういう問題に対しまして、これは総理として、吉田内閣としまして、どういうような責任を負われるのでありますか、その責任の内容について承わつておきたいと思います。
  188. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 責任を負うというのは、読んで字のごとく責任を負うのでございます。(笑声)
  189. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは我々はこれを自由に解釈する権利を持つわけですか。
  190. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 解釈は御自由であります。(笑声)
  191. 岩間正男

    ○岩間正男君 この責任の内客、これをまあ詮索することは日が短いからやめますが、(笑声)我々はこれは十分に政治的な、いわゆる今までの責任政治日本の憲政が華やかなりし時代には今日のような政治はとらなかつたと思う、責任がない政治は……。実際地方公務員法案が参議院によつて否決されて政府はどれだけの責任を負つたか、食管法が参議院によつて否決されると、ポ政令で以てすぐに次の日これをやるような、こういうような責任のない、だらしのない政治をとつてつて、これは済むものではない。従つてそういうものよりも前進されたこの責任、はつきり政治家としての責任を負われたのだということを我々は確認して、そうしてこれは進んで行きたいと思うのでありますが、とにかく頬被り政治で、そうしてどこかに、まあ昔でしたら袞龍の袖に隠れるという言葉があつたが、このことは堀端の陰に隠れるような政治だから困る、もう少ししつかりしてもらいたい。日本政治の自主性のために私はそう考える。  その次に伺いたいのでありますが、昨日参議院におきまして平衡交付金の増額の決議案が満場一致で可決された、無論我々も賛成したのであります。それで一昨々日見ますというと、衆議院においてもこれは可決を見たのであります。地方財政の現状から申しますというと、これでは焼石に水に過ぎないだろうと思います。こういう点で少くとも日本の国会の両院が満場一致で、殊にあなたの属しておりますところの大政党の自由党も満場一致両院においてこれを可決した。それは当然これだけの決議が若し実現されないとすれば、そこにこそ日本政治の暗黒面が私はあるのだと思う。こういうものは奴隷国会だと思う。若しこれが実現されたとすれば……当然これは私は実現されるものだと期待し、確信しておるのでありますが、総理はどうでありますか、こういう両院の決議に対しましてどういうような考えを持つておられますか。これは吉田総理責任ある答弁を願いたい。やはりこれは総理に願いたい。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは……。
  193. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理に、総理に……。
  194. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは吉田総理大臣。(「委員長、ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)
  195. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは昨日私が政府を代表して答弁いたしました通りであります。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ副総理とも言われる池田蔵相がここで声明されたんでありますから、まあ間違いないだろうと思います。吉田総理もそれを委託されたような形でありますが、併し私はやはり総理の声を通じて、国民は聞きたがつているだろうと思います。その点はもつと考えて頂きたい。  私は以上で、まあいろいろな例を挙げまして、民主的な責任政治の問題について質したのでありますが、次にお伺いしたいのは、人員整理の問題であります。この人員整理が進められておるのでありますが、ここで問題になるのは、一般の職員につきましては、人員は非常に減らされておるのでありますが、一方これと関連しまして、国警であるとか特審局であるとかへ警察予備隊とか、或いは海上保安庁とかそれから税務署、こういうような方面、いわゆる一つの弾圧機関或いは収奪機関、こういうような面では非常に人員が殖やされている。この両者を我々は関連して見ないときに、ばらばらに切り離して考えたときには、これは問題の本質はつかめないと思う。例えばここに例を挙げますというと、昭和二十四年度に大体国警、税務署、こういうような人たちの数は二十六万四千人でありました。その時その他の一般職員というような数を見ますと、十五万五千人、二十六年で見ますというと、これが、国警とか予備隊、そういうようなものは三十五万四千人、これに対しまして一般職員はむしろ減りまして十四万九千人というふうに減つておる。合計しますと、二十四年は全体を総計して見ますと、四十二万四千人に対しまして、五十万三千人と殖えておる。ところが更にこの事態を一般の職員、而もそれが殆んど人民の生活に必要な農林とか厚生とか、そういうような面で、非常にこれは削減され、そうしてこれと並行して一方では警察予備隊とか、それから先ほどの国警とか、そういうものが増員されようとしている。いや、国警やそれから特審局はまさにこれは人員を殖やそうと、そういうようにしているのです。そうしますと何ですか、政府のこの行政整理、それから人員整理というものは、一方のそういうような機関、我々から見ますというと弾圧機関或いは収奪機関、こういうものを殖やすために、民生安定とか文化とか、そういうものに必要な方面の人員は、これを縮減したのでありますか。こういうことについて、これは私は政府のとられておる態度というものは非常に危ない方向に進んでおられるのじやないか。先ほどの木村委員の質問にあつたのでありますが、どのようにして日本民主主義を確立するか、こういう問題と関連しまして、確立しますと総理は答えられておるのでありますけれども、問題は財政的な裏付けにある、政策にある、政策を裏付けるところの財政にある。この財政の面から今いささか挙げました数字を以てしても、この計画を窺うことができると思うのであります。これでもなお警察国家というそういうような一つの恐怖政治への方向をとらないということを、断言おできになりますか。この点お聞きしたい。
  197. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の行政整理は、各官庁の事務の状況を見ましていたしたのであります。国家警察におきましても、或る程度の人員の整理をいたしております。又総体で殖えましたのは、自治警察から国家警察に変つて来たのが主たるものでございまして、全体的には警察のほうも減つておるのであります。又税務署のほうにおきましても、国税庁関係で一万人余りを整理いたすことにいたしておるので、税務署を殖やしておりません。特審局の問題は今検討中でございまして、まだそう殖えてはいないと思います。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 今度のこの行政整理にからんだ人員整理の問題について、非常に日本の公務員は多い。そこでこれをダブついておるのを減らすのだ、それによつて国民の負担を軽減するのだということが、大きく宣伝されておるようであります。併しこれは非常にこの数字については我々は問題があると思う。大体現在国民が七・五人に一人というふうに公務員がいるんだと、こういうふうにこれは言われると思いますが、これは併し昭和六年の公務員数、例えば五十九万、こういうものをとつて見ますと、その中には満州国の軍人であるとか文官であるとか、それから更に当時傭人という形で常雇いになつていたもの、こういうものは定員でない形で雇われたものが非常に多かつたと思うのでありますが、こういうものは除かれている、こういうものを除いて考えますというと、これは七・五人なんぞというものでなく、もつともつとこれは減つて来ると思う。それから更にこの今の公務員というものの中に、国鉄とか専売とか郵政、こういうような直接国民の税負担でないものが入れられておると思うのでありますが、こういうものを除きますというと、非常にこの公務員の数は減る。むしろ国民の人数に対する公務員の数というものは減ると思う。こういうふうに我々は考えるのでありますが、こういう点はどうなんでありますか。七・五人というこの数字の根拠はどうなんですか。
  199. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 七・五人という数字はあなたがおつしやるのでございまして、私には根拠はわかりませんが、その公務員というもののとり方につきましても、一般会計、特別会計即ち郵政、電通の特別会計、それから政府関係機関職員即ち国鉄、専売、こういうものを合せますると、大体国家公務員が百五十万人程度に相成ると思うのであります。而して地方の公務員即ち学校の教員とか或いは自治警察その他各府県、市町村の職員、こう入れますと、これも百二、三十万人になると考えます。合計いたしますると二百七、八十万と私は考えておるのであります。で人口八千三百数十万でお割り下すつたならば、これはおのずから数字が出ると思います。ただ問題は昭和六年頃の職員と今の職員の数と申しますると、相当殖えております。国鉄にいたしましても郵政、専売にいたしましても、或いは又一般会計のほうにおきましても、相当殖えておることは確かでございます。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 この国警それから予備隊それから特審とか、そういうような人数についてさつき発表があつたんでありますが、これについては、これは資料を検討してもつと仔細にやりたいと思うのでありますが、非常に最近こういうものが殖やされている。そうしてそれが何か国民気持の上に非常に大きな一つの圧迫を与えているんじやないかと思う。これは現に例えば吉田総理がここに来られる時、廊下を歩いて来られる、そういう時、非常に多くの幕僚を連れて来られる、ああいう形はですね、これは私は総理に直言したいと思う、恐らくあなたの側近のかたでは直言されないだろうと思う。だから私は、この際直言したいと思うのでありますが、非常に多くの私服それからそういうような警備の者をたくさん連れたあの姿というものは、私は民主国会にはふさわしくないものだと思う。こういう形、総理は一体なぜあんな警備の必要があるのであるか、もつとこれは国民を信頼し、国会を信頼して欲しいと思う。又国会あたりを見ましても、労働者の示威運動がある、そうしますというと、鉄兜がいつの間にか……我々も見てびつくりしたのでありますが、鉄兜が夕暮の闇の中に蠢動しておる。こういう数が、挙げてみたら大変な数だろうと思う。一千人ぐらいの出動じやないかと思う。併しあれは一体誰が一体賄つておるかというと全部これは国民の血税から生まれて来ておる。近頃行つて驚くのは、あの総理官邸であります。総理官邸へ行きますと、三年前あたりとは非常に空気がいらいらしく、何か栗のいがでも突き刺されるような感じがする。ああいう感じは私は日本民主政治のために憂えるのでありますが、総理はどういうふうな考えを持つておられるか、私は非常にこれはいやなことでありますが、やはり苦言を呈さなければならんと思います。日本の将来のために……。総理のことをよくワン・マンと言う、ワン・マンという言葉を総理はどう考えておられますか。どうも今の様子では内心ワン・マンになり切つていられるんではないか。側近というものはよくそういうことをだんだん仕立て上げて行く。そうしてこれの何か権力的な背景を作つて、そうしてものものしい、そういうような態勢の中に置くことによつて何か権力というものを以て国民に臨む。こういう態勢に私はなるだろうと思う。併しこういうようなことをすることによつてむしろ我々から見ますというと、総理のような確信のある人がああいうような一つのものものしい雰囲気の中にいるということは非常に総理のために私は惜しむものです。むしろもつと堂々と人民を信頼した形で以てああいうものを排除される、こういうことが必要だと思いますが、これは総理の問題ですが、総理はどういうふうにお考えになりますか。一つの現在の、今申上げました人員整理並びに弾圧機関の強化、こういう問題と非常に深い関係がありますから、この点一つ総理の心境を承わつておきたい。
  201. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私自分のことは弁明いたしませんが、併し岩間君に直言いたしますが、共産党の脅威のために政府は非常に私の身辺を心配してくれるのであります。国民の不安を除くために共産党自身自粛してもらいたい。
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理はそう言われましたが、まさかそうではなかろうと思います。共産党が総理を脅かしているとすれば、非常にこれは不徳のいたすところであります。(笑声)併し逆に例えば労働組合が出動する、示威運動にやつて来るとき一千人の鉄兜を出動させる。こういうことによつて実はこれはいろいろ人民に恐怖を与える、こういうほうが大きな狙いになつておるんではないか、こういうふうに考えられます。  なお、もう一つ直言しついでに申上げたいのは、例えば新宿の観菊の問題、あの観菊のときによく総理は出される癖でありますけれども、写真の取材を拒否された。これは私もあつておる、この前の国会のときに私の質問の途中で総理は退席されまして平塚の何か展覧会、名士の展覧会に行かれた。そこでやはりそういうことがあつたんですが、ここで我々はサンフランシスコ総理が行かれたときは、どういう態度をとられるかと国民ひとしく見ておつた。ところがサンフランシスコでは非常に友好的になされた。こういうことから考えましてどうもやはり国民の腑に落ちないものがあるんではないか。何も我々は反対にやつてくれということは言いませんが、日本国民には愛想よくして、向うでは武張つたことをやれ、こういうことではありませんが、我々はやはり総理は公僕だと思つておる。国民の公僕、こういう意味からああいうふうな形をとられるということは、非常に総理のために歎かわしいと思うのですが、これはどうですか、こういう点も今の問題と関連なしとは思われないのですが、どうですか。(「関係ない、やめろ」と呼ぶ者あり)いや関係はある。
  203. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私個人のことはどうぞ御心配下さらんように願う。
  204. 岩間正男

    ○岩間正男君 単にこれは吉田総理の個人的問題として話しているんではない、一つのやはり公式機関による、而も最高権力の立場にある人として、その影響は非常に大きい。予算関係がないというようなお話をされておる人もありますけれども、ものを有機的に御覧になることができない。(笑声)皆さんはもつとよく御覧になつて下さい。どういう形で現われるか、それを端的につかんで解明して行くのが我々の任務である。(「貴重な時間だから中止して……」と呼ぶ者あり)貴重な時間だから私は言つている。  次にお伺いしますが、追放の問題ですが、共産党の追放の問題があつたんですが、細川嘉六初め五人、両院の五人の議員が追放された。併しこの追放の過程を見ますと、これは容疑で以て逮捕している。而もその容疑が明らかにならないうちに追放している。こういうことは私は日本の国会の自主性のために、民主国会のために悲しむべきことと思う。こういうことは東条も余りやらなかつたと思います。若しこういうことが許されるとすれば、どんどん自由な発言をする者がこういうような政治的意図によつてどんどん弾圧されるということもあり得るのでありまして、こういう問題についてこれは単に一つの共産党追放の問題だけでなくて影響が非常に大きいと思うのでありますが、総理はこれに対してどういうふうにお考えになるか。この責任をおとりになるのが総理だと思うのですが、どういうふうにお考えになりますか、このことをお伺いしたい。
  205. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は事実を知りませんから法務総裁からお答えさせます。
  206. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務総裁も見えていないのでありますが、これはまあよく検討して頂きたい。政府の最高責任者として総理がおられるのでありますから、この問題は知らないでお済ましになるには余りに大きな問題であると思う、やはり二重煙突事件で容疑を持つておる大橋法務総裁を逮捕してこれは追放することができるわけである。こういうようなことを私は現在の民主国会においてなされる。そうして多数から選ばれたところの議員が追放され、而もその追放によつて議席を奪われる。こういうようなことは今後のやはり政治の動向、先ほどから問題にされておりますところの一つのフアツシズム化の方向と関連しましてこれは非常に重大な問題だと思う。単にこれは共産党に影響するのじやなくて、この影響するところは更に多くの自由主義者、言論の自由を確立しようとするところに大きな影響があると思いますので、この点これに対してこれは総理答弁を求めたいと思うのであります。  時間がありませんので、最後にお聞きしたいのは、何と言いましてもいろいろな問題が日本の現在の政治の中に私がその一部分を挙げたのでありますが、起つております。例えば不正問題のごとき、これも本会議総理に質したのでありますが、これについて御答弁がなかつた。現在の海上保安庁及び警察予備隊、或いは文部省にさえ起つておるところの不正の犯罪、これは決して軽々しく看過するところの問題じやないと思う。又文教に起つておりますところのいろいろな問題、こういう問題についてもこれは十分に総理の意見を質したかつたのでありますが、こういう原因というものは、先ほどから問題になつていますように日本を一つの態勢、いわゆるこれは何といいますか反共鎖国の方向に持つて行く。そういう態勢の中に日本の経済を編成して行く、こういうところに大きく私は現われていると考えるのであります。そこで私は最後に伺いたいのでありますけれども、いよいよここれは講和というような段階になる、そうしますときに今後大きな問題としてやはり何といつても今度の講和参加していないところの中国ソ連、或いはインド、こういうところと国交をどのようにこれは今後一体打開しようとするのであるか。又貿易についてどういうような一体打開の方法考えられるのか。これが非常に私は重要な問題だと思うのであります。総理は全面講和が望ましいが現実的でないということを言われておりますけれども、中国ソ連を、而も自分の隣りの国であり、古い歴史的な結び付きを持つておるところの、又経済的な深い基盤の上に立つておりますところの、こういうような眼の前に控えた隣国を除外する、こういうような形に日本を追込むということは、これこそ最も現実的でないところの態勢だと思う。こういう点から考えましてどうしても日本の置かれておる現状におきましては、これらの国と少くとも今後経済的な結び付において十分に打開の方策というものを、これはとられることが必要だと思うのでありますが、この点については、いわゆるアジアの経綸については総理は深い長い間の経験をお持ちだと思うので、今後どういうような方向をおとりになりますか、この点伺つておきたいと思います。
  207. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題はしばしば聞かれる通りでありますが、これは相手のある話で、ソ連中共の意見もありまして、日本だけでは如何ともできない問題であります。
  208. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 山下君の時間は二十二分であります。
  209. 山下義信

    ○山下義信君 私は先ず国民思想に関連して伺いたいと思うのでありますが、具体的に申しますと、天皇に対する国民考え方でございます。時間がございませんから詳細な理由は省略をいたしますが、例えば今後日本が如何なる自衛方式をとるといたしましても、天皇中心でなくては国民に本当の自衛意識が昂揚して来ない。又現に警察予備隊におきましても、精神的中心がないので隊紀の維持にも困り、義務完遂の積極性がないと伝えられております。又最近御承知のごとく天野文相は、今後国民道徳の中心は、天皇であるという考えを述べておられるのであります。又最近関西行幸に際しまして、京都大学で起きました天皇に対するデモ事件につきましても、文部大臣は痛くその責任を痛感しておられるということが伝えられておるのであります。こういう考え方というものと一連いたしまして、国民の中にはなんとなくこの天皇中心主義というものの復活が考えられているかのように印象づけられておるのでございます。従いまして皇居の造営費の増額でありますとか、或いは伝えられるごとく、国民的寄附を以て宮城の修理を拡張いたすというような計画等も、皆こういう一連の考え方と見られておるのでございます。総理はこういう国民の一部にありまする天皇中心主義の思想というものにつきまして、或いは天皇中心主義の復活とでも申しましようか、そういう考え方につきまして、どういうふうな御所見をお持ちでございましようか、この際承わつておきたいと思うのでございます。
  210. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題は重大な問題であります。軽々しく断定はできないことでありますが、私の理想を述べれば、今日天皇の地位憲法できまつております。いわゆる法律的の地位において、我々は天皇の御地位に対しては、憲法の精神に従つて了承をするということが第一、そのほか国民の間に歴史或いは長年の国民精神から、自然天皇はこれまでも中心となり、将来も中心となられるものであろうと信じますが、これは国民の盛上る心から、自然に形成せらるべきものであつて政府がとやかく、何と申しますか、指示すべきものではないのであります。国民の間に自然起る国民的精神によつて陛下の御地位が時と共に必らず定まるものと考えます。
  211. 山下義信

    ○山下義信君 総理は新日本の出発に当りまして、条約の批准を待つて皇太子殿下の登極を希い、輝やかしき国民奮起の中心とすべきであるという有力なる説があると伝えられておりますが、こういうことに関しまして、何かお考えがございますか、承わりたいと思うのでございます。
  212. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 立太子式といいますか、皇太子殿下に関しては今日、皇太后陛下の崩御せられた今日におかれて、宮内庁においても目下打合せ中といいますか、取調べ中であろうと思います。いずれ宮内庁において方針が決定せられるであろうと思いますが、その決定を待つて政府考えます。
  213. 山下義信

    ○山下義信君 次に先ほど木村委員がお触れになりました質疑でございますが、私も承わつておきたいと思うのであります。外資導入に関しまする総理のお見通しでございます。総理は再軍備に反対しておいでになりますが、この考え方の中には、日米が一体となつて防衛をするという建前の下に外資を導入したいというお考えがあるのではないかと考えるのでございますが、又総理は外資導入に対しまして非常な御努力をなさつておられるようで、各方面に対しては懇請書をお送りになり、いろいろ御努力の模様でございますが、果して今後の外資導入につきましての可能性のお見通しはどういうふうに考えておいでになりますか、承わりたいと存ずるのでございます。且つ又これがために最近特別の使節でも関係方面にお遣わしになりまする考えがありますかどうか承わりたいと存じます。
  214. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外資導入は只今大蔵大臣から説明されたように、簡単に取り運ぶわけには行かないので、こちらからもいろいろな資料を出し、又向うの希望する資料を取り揃えておくということで相当時間がかかる問題でありますが、やがてはできるであろうと思います。何故かと申せば、今日日本の復興状態相当なものであり、又米国兵の駐在というようなことは、自然アメリカの資本家に安心を与えるでありましようし、それから日本の資本に対する利潤といいますか、これなどもアメリカに比べれば高いのでありますからして、自然利益の高いところに資本が流れるのは普通でありますから、常識から申せば来ると思います。併しながらさてこういう問題が、今話が進みつつあるとか或いはこういう問題ができかかつておるとかいうようなことは、ここで発表しにくいのみならず、発表するだけの程度にまでまだ進んでおりませんが、併し常識から考えてみて、アメリカの資本が流入するということは自然であろうと思います。ただそれがいつになるかは今申上げられませんけれども、政府としては外資の導入を歓迎したいと考えております。
  215. 山下義信

    ○山下義信君 次は内政の問題でございますが、先ほどの質疑応答の中にも、我が国の行政組織の構想につきまして、若干の質疑応答がなされたのでありますが、政府我が国の行政機構を国力相応にこれを整理するというお考えのようでありますが、今回、臨時国会に提案されました定員法並びに政府考えられておりまする行政整理というものは、一応のこれは当面の御処理と申しますか、御構想であろうと思いますが、根本的には我が国国力に相応する行政規模というものの大体の御構想というものはどのくらいのものであるか、どのくらいの程度であるか、或いはどこまでこれを縮小、整理しなくちやならんというお考えをお持ちになつておりますか。この点を承わりたいと思うのであります。且つ又関連いたしまして、これらの行政整理というものの結果は、その生み出されましたる財源の余裕というものは、当然これは民力の休養に振り向けるという考え方でなくてはならんと思うのでありまして、これらの整理によつて生み出された財源が我が国軍備に振り向けられるというようなことがあつてはならんと思うのでありますが、行政整理の考え方について大体の御構想を承わりたいと思うのであります。
  216. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 敗戦後の日本では国力を養うということが第一であり、従つて国費の倹約、節減、行政の簡素化、よつて以て民力休養のほうに向けたいと考えて、お話のように節約し得たものを直ちに軍備に用いて再軍備をするという考えは毛頭ありません。それで戦前に比べて見て今日日本の公務員或いは地方の公務員等の数が非常に殖えておることは、先ほど大蔵大臣の御説明の通りであります。又行政が複雑なために国民が迷惑をこうむつており、経済活動が阻害せられるということも、これは何よりも明らかなところでありますから、先ず政府が合理化といいますか、行政の簡素化を図るようにする、そうして国民の便宜になるように考える。それで一応この現在の許される範囲において剰員と認められる者を、取つて、然る後に行政機構に及ぼうと考えております。行政機構の改革については現に研究中であります。ここで以てこれだけのことにしたいというまだ成案が、発表するだけの成案がありませんから申しませんが、政府は頻りに考えております。いずれ成案を得て御相談をするつもりであります。
  217. 山下義信

    ○山下義信君 私は行政整理をいたしまする一面には、これは行政整理というもののよし悪しは別といたしまして、整理をいたしまするに関連してやはり公務員の待遇というものがうんと考えられるということがなくてはならんと思うのであります。最前から綱紀の粛正等々の問題が出ておるのでございますが、期するところは私はやはり公務員の待遇というものを向上させなければ、能率の改善のみではありません、この綱紀の粛正は百年待ちましてもこれの解決は不可能と考えるのでありますが、総理は一面には行政整理を断行すると同時に一面には公務員のこの綱紀の粛正、綱紀の維持、或いは能率の向上等に関しまして相当思い切つた民主主義政府にふさわしい公務員の待遇改善につきましてお考えがありますかどうかということを承わつておきたいと思います。
  218. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府も御同感であります。公務員の待遇改善については極力財政の許す範囲においていたしたいと思います。
  219. 山下義信

    ○山下義信君 私は内政と最も重大な関係のありまするのは、言うまでもなく国会のあり方であり且つ又その根本は選挙制度にあると考えるのでございますが、伝えられるところによりますと、総理は小選挙区制につきまして相当の熱意を持つておられるということでございまするが、果して総理は小選挙区制を御賛成になつておられるのでありますかどうか、この機会に承わつておきたいと思います。
  220. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は持論としては、私見としては小選挙区制がいいと思います。併しこれを実行するかしないかは、只今党においても研究中であります。
  221. 山下義信

    ○山下義信君 いいと思いましたらば御実行にならなければならんはずのものであると考えますが。  次に国民生活のあり方につきまして伺いたいと思うのでございます。今回の条約の前文にも十分その点が指摘せられたのでありまして、第二項でございましたか明記せられてあるわけでございますが、いろいろと将来の我が国の財政等を考えるというと、多分にこの民生安定方面が圧迫を受けるのじやないかということが憂慮せられてあるのでございます。即ち国民福祉の面でありますとか、或いは国民の保健衛生の面でありますとか、こういう面が財政上も或いは政治の面からも相当圧縮を受けるのではないかという杞憂を持つておるのであります。特に大蔵大臣は今離席されかけたようでございますが、こういう面に対しましてはどつちかと申しますというと、余り熱意がないのでございまして、特に憂慮されているのでございます。先般結核対策の問題につきましても、或いは総理からそういう面については、何と申しますか、殆んど消極的な御意見が漏れたというようなことでありまして、あとにそれが誤解であるということが判明いたしたのでございますが、ややもいたしますと現内閣の御方針の上には、こういう面が極めて消極的にあるように見受けられると思うのでございますが、将来こういう面に対しまして十分積極的におやりになるお考えがありますかどうか、財政計画の中におきましてもこういう面につきまして十分積極的に御努力相成りまするお考えがあるかどうか承わつておきたいと思うのであります。
  222. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府希望としては厚生施設その他について十分な力をいたしたいと思いますが、一つは国力、財力との関係もありますから、財政と見合つてできる限りいたしたいと思います。
  223. 山下義信

    ○山下義信君 総理のお考えは確かにあると思うのであります。あると思うのでありますが、実際はお考えが十分何と申しますか、閣僚の間にも又下僚の間にも総理のその御意思が徹底していないのではないかと思うのであります。例えば社会保障制度に関しまする第一次の勧告が出ました。ところがそれの取扱い方は一カ年経過いたしますが、内閣とされては何の御研究、御調査もできていないのでございます。ただ形式的に閣僚懇談連絡室というものをお設けになつたようでございまするが、それの連絡室に誰もいないのであります。又一回もそれをお聞きになつたり御調査を積極的にお進めになつていないのでございます。昨日我が党の堂森議員が緊急質問いたしましたが、総理はお席においでになりませんでしたけれども、官房長官が、内閣は頻りにその研究調査をやつているとおつしやいましたけれども、更にその事実はないのでございます。つきましてはこの我が国に対しまする社会保障制度の実施につきまして総理は十分に意をお用いになりますお考えがありますかどうか、関係者が非常にこれを心配いたしておりますので、この機会に御意思を承わつて置きたいと思うのでございます。
  224. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これも先ほどのお答えと同じように政府としてはいたしたいと考えますが、全体の財政の均衡から考えまして施策いたさなければならんのであります。併し今お話の点は厚生大臣からよく説明をいたすことになつております。
  225. 山下義信

    ○山下義信君 今後の国民生活の水準のことでございますが、国民生活の水準の何と申しますか、維持、向上ということは非常に今後至難であろうといろいろまあ考えられて論議されておるのでございます。総理は根本的に今後の我が国民の生活水準につきましてはどうお考えになりまするか、端的に申しますというと、相当耐乏生活をしなければいけないものであるとお考えになりますか、或いは政府の御方針によると漸次その水準は向上し得る、又向上させるというお考えでございましようか、国民の生活水準に対しまする政府の根本的の御方針はどういう御方針でありますか承わりたいと思うのであります。
  226. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の現在の状態から申して、殊に敗戦後の日本状態から申して、そうして客観情勢からも考えますると、日本相当耐乏的な精神で以て耐乏生活を続けなければいけないと思います。そうでなければインフレーシヨンはだんだん昂進するでありましようし、又各国ともその考えで、イギリスのごときは殊にその考えで耐乏的精神を国民に奨励しております。日本も同じような、イギリスと同じような状態におるので、耐乏的精神を国民が持つて、そうして善処することがやがて将来日本の生活状態を向上するゆえんであろうと思います。実は今日少し行過ぎていやしないかと思つて私は憂えておるのでありますが、これをこのままにいたして置くというとインフレーシヨンはますます進み、やがてこれが生活水準の低下になるので、向上にならずに終りはしないかということをひそかに私は憂えておるのであります。
  227. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 山下君もう時間がありませんから簡単に一つ。
  228. 山下義信

    ○山下義信君 私はこの国民生活の水準を、これは総理はむしろ只今お答えで端的に申しますというと、相当下げなければならんのではないか、今の現状の国民生活のあり方は少し行き過ぎになつておるということの、もつと耐乏的な生活をしなくちやならんのではないかというお答えのようでありましたが、ともかくも国民の生活の水準を維持する、或いは総理のお考えのように相当耐乏生活をやつて行くということになりましても、御指摘のように今のような放漫な国民の勝手々々な生活をやらしておつたのでは、これは到底水準の向上も或いは耐乏生活というようなことも、総理のお考えの実は上らない。或る程度は今後の国民生活のあり方というもの、衣食住というものについて講和後の日本の再建の上に国民生活どういう生活のあり方であるべきかというもつと反省を取入れ、或いはもつと国策に合つた国民生活のあり方というものがなくてはならんと考えるのでございます。そういう国民生活のあり方につきまして、今後の国民生活のあり方につきまして、政府は何かお考えがあるのでございましようか、このままの国民生活の今のあり方そのまま放任しておられるお考えでございましようか、何か政府にお考えがありますかどうかという点を承わつて置きたいと思うのであります。
  229. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはだんだん予算書その他に現れた政府の施策についてお考えを願いたいと思います。即ち政府としては今のような状態で置かずに、国民の反省を促すためには相当のことをいたしたいと思いますが、これは結局予算面に現れることでありますから、各省の予算の緊縮その他において政府方針はどこにあるかということをお考え願いたいと思います。
  230. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 小酒井君は十五分の持ち時間であります。
  231. 小酒井義男

    小酒井義男君 非常に短い時間よりありませんので、本日は政府責任者である吉田総理から基本的な考え方について御答弁を承わつて置きたいと思います。  私は事あるごとに総理我が国の民へ甲主義は、これは守らなければならないという発言をしておられますので、非常に総理の信念に対して敬意を払つておるものであります。先ほども答弁の際に、日本民主主義を後退させるようなことは絶対にやらないという断言がありましたので、そこで私は一、二の問題について御質問をいたしたわけでありますが、国民の多数の者は現在の内閣が果して日本民主主義を守り得るであろうかということに対して非常に危惧を持つておると思います。が、たびたびそういうことが信念として吐露されております。民主主義でありますから私はそうした心配はないかと思いますが、ただ信念だけで以て民主主義が実現されるわけでありませんので、やはり実行の裏付があつて初めて民主主義政治が推し進められて行くものと考えます。総理は口先だけじやなしに実際民主主義政治を実現さして行く御決意をお持ちになつているかということを先ず最初にお尋ねいたします。
  232. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 決意を持つております。
  233. 小酒井義男

    小酒井義男君 それでは具体的な問題について一、二お尋ねをいたします。問題はたくさんありますから一、二の例を取つて申上げたいと思います例えば今政府が団体等規正法とかゼネスト禁止法というようなものを最近の国会に上程せられようとする意図がある。それに対して我が国の最も大きい民生的な団体でありますところの労働組合総評議会が或る種の意思表示をしていることは御承知通りと思います。このことに対して世論はこれが政治闘争であると何とかといろいろ議論をいたしておりますが、私はそうしたこの表面に現われて来た一つの現象を捉えて論議するのでなしに、我々はこういう事態の起つて来る根本的な問題をやはり考えて見る必要があると思います。このたびの問題についてもこうした国民の納得の、理解の得られないまま、これを強力に実現させようというようなことが行なわれることは、私は決して民主主義的な政治のあり方ではない。総理が実際に民主主義政治をやろうとせられるのであれば、こうした問題についてももう少し慎重に取上げられる必要があろうと、そうでなければ我が国のこの講和後の立ち上りに対して非常に大きなマイナスが現われる面が出て来るということを私は指摘をしたいと思います。総理はこの問題に対して今までのやり方が万全であつたとお考えになつているか、或いはこれに対して取扱いの問題を再考するということをお考えにならないか、この点について質問をいたします。
  234. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話の政府が団体等規正令その他について改正する考えがあるというお話でありますが、これはこういうところから出て来たのであろうと思います。占領六年の間にいろいろな法令が出た。この法令を一応検査して、一応再検討して、行き過ぎであれば是正すべし、現在日本の状況に即応せざるような法令があればこれを改めるがいい、改めたいというので、政令改正委員会ですか、こしらえて研究さしております。その研究のことが出たのであつて、それの話であろうと思いますが、その政令委員会の答申或いはその他の委員会の答申によつて現在まで占領中に発布せられた政令、法制について政府は検討いたしているのであります。その結論はまだ出ませんが、結論の結果、或いはお話のようなことになるかも知れませんが、これは政府の信ずるところがあつて日本の実際に適応した法制に改めたいという考えから出るのであつて民主主義政治を後退せしめる考えから出るのでは全然ないのであります。この点ははつきりいたしておきます。
  235. 小酒井義男

    小酒井義男君 次にもう一つこれに順似した問題でお尋ねをいたしたいと思いますが、予算委員会において審議している問題の中の一つに国鉄或いは専売の裁定の実施という問題があります。これは政府が作られましたところの公共企業体労働関係法の裁定の実施を要求しているわけです。この法律は無論御承知通り国鉄や専売公社の職員から労働組合活動の制限をいたしまして、この制限をカバーするために、仲裁委員会の裁定は、これは両者が最後的なものとして受諾をしなければいけないという責任、義務を課せられておる法律であるわけです。国鉄にしても、専売にいたしましても、これは両公社の理事者側でなくやはり大蔵大臣及び政府の連帯的な責任のある問題であろうと考えております。併しこの法律ができまして以来、これらの労働者からは労働組合活動の自由は取上げましたが、そうした仲裁裁定を政府が実行したことを未だ私は見たことがないわけです。政府は一方にそうした制約を加えるだけで、これらの機関が決定したことに対する責任のある実行をしたということがない。こういうことは、やはり労働者から民主的なあらゆる権利を次々と取上げておいて、そうして、一方的にその自由の拘束だけをして政府責任はこれは実行しないという極めて非民主的なやり方ではないかと思うわけです。今度の専売の裁定を見ましても、補正予算におけるところの益金の一割足らずを充てれば裁定の完全なる実施ができ得るにもかかわらず、法の十六条によるところの予算上、資金上という字句に理由をつけて、これを実施をしようといたしておらないわけでありますが、例えばその公社が赤字の場合に、それを政府の貸付金なり或いはその他の資金を以てそうした裁定を実施する場合には、予算上、資金上の必要が生れて来ると思いますが、専売公社の場合には、これは公社自体において十分そうしたことのでき得る予算上の力を持つておる。それを政府の全体の予算のためにこれをやらせないというようなことは、私は非常にこうした民主的な法律を政府が蹂躙をして行く一つの例ではないかというふうに思うのです。こういう実例について総理はどうお考えになつておるか、お答えを願いたい。
  236. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣からお答えいたします。
  237. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 仲裁裁定の制度はお話の通りに我々も認めておるのであります。然るところ、第一回の仲裁裁定のありました国鉄の問題につきましては、十六条二項によりまする予算上、資金上可能なりや否やにつきまして問題があつたのであります。あの当時は予算上、資金上私は不可能なりというので国会の御審議を願つたわけでございます。然るところ、今回の専売公社の問題は、御承知通りに昨年四月から予算総則で縛られることになつておるのであります。大体そういうことになつておりますのであの総則に従いまして、国会の審議を願うことにいたしておるのであります。お話の通りに専売公社というものは御承知通り非常な大きい実質的な徴税機関であります。これは益金と申しましても税に相当するものでございます。従いまして、専売公社の従来の待遇状況、今の待遇状況、そうして又国鉄その他とも権衡をとりまして、私は当時一万四百なんぼの俸給に加うるに一・八カ月の賞与ではほかと不権衡になるというので、御審議を願つておる状態であるのであります。
  238. 小酒井義男

    小酒井義男君 今の問題については、又日を改めて当委員会で具体的な御質問を申上げたいと思います。  最後に一つ、先ほどから各委員が御質問になつておりますが、総理研究中であるという御答弁でありますので、私はその研究される態度としては基本的にどうあるかということについてお伺いをしたいわけです。つまり行政整理の問題でありますが、私どもの受けておる印象では、政府のこのたび行わんといたしておりまするところの行政整理なるものは、非常に機械的で天引的な人員整理という印象をどうしても逃れることができない。併し各省或いは各機関の実態を私どもが見た場合には、現在の人員においてもむしろ下足しておる部面も非常に多いわけです。こういうところを一律に天引整理をやろうというようなことが政府の基本的な考え方なのか。そうでなしにこの実態に応じて無理のないところの人員を押えて行くという基本的な考え方で今後進まれるのか。その二つのどちらを基本的な態度としてお選びになるかということについて御回答を頂きたいと思います。
  239. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大蔵大臣からお答えいたします。
  240. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申上げておりますように、今回の行政整理は事務の整理ということを基本にいたしておるのでございます。決して天引にどうこうという考えはございません。各省の事務の状況を見まして、これは減らし得るところだ、例えばだんだん統制撤廃して行つておりますところの状態とか、或いはいろいろな事務の動きを考えまして各別にやつておるのであります。大蔵省におきましても財務局の整理と国税庁の整理とよほど割合が変つておるのであります。本省内におきましても各局率が違つておる状況であります。事務の状況によりまして整理割合を違えておるのでございます。
  241. 小酒井義男

    小酒井義男君 少し話が変りますが、実は最近も九州地方が台風で非常な損害を受けております。この年々我が国を襲いますところの台風による被害というものは非常に大きいと思う。これの対策として私は気象業務の充実を図ることが必要であろうと思うわけです。この気象業務の充実だけで全部私は排除するわけにはいかんと思います。併し船舶の被害等は、これはそれの充実によつて相当排除することのでき得る内客だと思うのです。丁度今のやり方は賽の河原に石を積んだ頃にそれが崩されて行くというような恰好で、国の損失として私は非常に大きいものがあると思うわけです。政府はこの気象業務を充実させるということに対して今後真剣に予算の中に取入れられて行くということを考えるべきであると私は思うわけですが、それに対して大蔵大臣の御所見を伺いたい。
  242. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りでございまして、災害予防に対しまして気象事務の拡充、適正を期するということは当然のことだと思います。而して平和条約後は昔のような台湾とか或いは樺太、千島のほうがなくなつて参りますので、別に今終戦処理費でやつております完点観測、こういうようなものもやはり継続して行きまして、気象の観測に万全を期したいと考えております。
  243. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 池田宇右衞門君が質疑を棄権されましたので、二十六年度補正予算についての総理大臣に関する質疑はこれで終了いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会