運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-11-02 第12回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十六年十一月二日(金曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            藤野 繁雄君            東   隆君            木村禧八郎君    委員            泉山 三六君            石原幹市郎君            小野 義夫君            加納 金助君            溝淵 春次君            白波瀬米吉君            伊藤  修君            内村 清次君            上條 愛一君            高良 とみ君            小林 政夫君            西郷吉之助君            結城 安次君            西田 隆男君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   公述人    武蔵大学経済学    部長      鈴木 武雄君    日本労働組合総   評議会常任幹事  塩谷 信雄君    全国指導農業協    同組合連合会專    務理事     武正総一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣送付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは予算委員会を開会いたします。  本日は先ず武蔵大学経済学部長鈴木武雄君の公述をお願いいたします。
  3. 鈴木武雄

    ○公述人(鈴木武雄君) 鈴木でございます。私はこの前二十六年度本予算案が国会で審議されておりました際、この参議院予算委員会の公聴会で補正必至の予算であるということを公述したのでありますが、本日その補正予算案につきまして、再び意見の公述を求められて罷出た次第でございます。私は個々の経費の補正につきましては、余り立入つた意見を申述べないことにいたしたいと思います。そうした問題につきましては、業界でありますとか、労働界でありますとか、そのほかそれぞれの経費と密接な関係のある方面のかたがたから御意見が出ることと思いますので、私はそうした個々の経費が多過ぎるとか、少な過ぎるとかいつたような問題、延いてそういう個々の経費を規定しております個々の具体的な政策の問題には立入りませんで、全体としての財政及び財政政策の問題につきまして、私見を申述べさせて頂きたいと思います。又租税の問題につきましては、来る七日の大蔵委員会の公聴会に呼ばれておりますので、詳しいことはその席で述べさせて頂くことにいたしまして、本日は租税問題につきましては、極く最小限度に一般論的なことだけを申述べることにいたしたいと思います。その点もあらかじめ御了承を頂きたいと思います。  昭和二十六年度補正予算につきまして、私は次の四つの点を取上げまして、これに関する私見を申上げてみたいと思います。その四つの点と申しますのは、第一に財政規模の問題であります。第二に減税の問題、延いて自然増收の問題、第三に地方財政との関連、第四に財政と金融との関係、この四点でございます。そうしてこの四つの問題点を貫きまして、そのいずれにつきましても重要な考慮の要件となりますものは、申すまでもなく講和條約発効後の、即ち先ず大体におきまして明年度、昭和二十七年度の財政がどうなるか、又どうすべきであるかという問題でございます。  第一の問題点としまして、財政規模の問題から申述べたいと思います。補正予算案によりますと、すでに御承知のごとく、一般会計歳出追加千五百九十二億円、修正減額二百二十九億円でありまして、差引補正増百三十六億円であります。この結果当初予算と合せまして、補正後の一般会計歳出総額は七千九百三十七億円、約八千億円の巨額となつたのでございます。私が先ず問題にいたしたいのは、この一般会計八千億円という規模でございます。私はこの規模は過大であると思うのであります。成るほど国民所得は、本年度当初予算編成当時の昨年秋から暮頃の推定からは増大したでありましよう。併しそれだからといつて財政の規模は当然に増大してよろしいということにはならないと思います。而も国民所得の増大は今後も予想されるといたしましても、昨年の秋における今年の国民所得の予想と、今年になつてからの実績に基く推定との開きほど大きな開きが今後の、特に来年度の国民所得に現われ、来年度の国民所得がそれほどすばらしく増大するとは限らないと考えられるのであります。電力不足によります生産の減退はすでに顯著となつて参りました。安定本部の産業局の見通しによりますと、昭和二十六年度鉱工業生産指数の当初年間見通し、これは昭和七—十一年基準で一四三という当初の年間見通しでございましたが、これに対しまして、現在は一三六という年間見通しになつておるようでございます。その上来年度になりまして、賠償、外債処理連合国財産補償援助資金の返済、防衞分担金の支払などが始まりますと、それらはいずれも国内経済の再生産には寄與しないばかりでなく、事の次第によりましては、例えば賠償などのように、加工賠償によりまして、電力その他の副資材が国内生産のための利用から割かれるといつたようなこともないとは言えないと思うのであります。輸出の見通しも必ずしも楽観を許しませんし、特需、新特需にいたしましても、安定性と持続性につきましては、よほど愼重な見通しを立てておかなければならないと考えられます。そうだといたしますと、現在国民所得が思つたよりも増加し、租税その他歳入の自然増收が激増したからと申しまして、気を許して財政規模を増大するということは、極めて危險であると言わなければならないのであります。最初八月二十四日の閣議で一応内定いたしました補正予算案の歳出純増加額は、国家地方警察の経費と平衡交付金を未定として、これを除きまして四百五十六億円であつたのであります。でありますから、僅かそれから一カ月半余りの間に九百億円以上も歳出追加計上額が増加したわけでございます。このうち平衡交付金の百億円、国家地方警察費の三十六億円を抜きまして、七百六十億円以上の急増加が僅か一カ月半余りの間に計上されるということになつたわけでございますが、これはどうしても私どもといたしましては理解しがたいのでございます。尤もその間にサンフランシスコ平和会議というようなことがございましたから、この関係で若干の変化があることは止むを得ないと思いますが、それも今度の補正予算案に載つております平和回復善後処理費百億円、国際通貨基金及び国際復興開発銀行に対する出資二百億円の合計三百億円程度でありまして、残り四百六十億円余りというものは八月二十四日の閣議内定案には計上されていない。それから僅か一カ月半の間に急に追加計上されることになつたものであります。これは全く無定見な予算編成態度と言わざるを得ないと思うのであります。なお八月末の閣議内定案では既定旅費、物件費の節約八十一億円となつていたのでありますが、この国会提出案では僅か十三億円となつております。これはほんの一例でございますが、経費節約を強調し、そのために行政整理を断行する政府といたしましては、不思議な変り方であると思うのであります。要するに八月頃よりもずつと節約への意気込みというものが減退しまして、自然増收に気をよくして、心の緩みが出たとしか考えられないのであります。池田蔵相講和関係経費の増加を見込みましても、明年度予算は本年度の八千億円程度に食止め得ると財政演説で言つておられるのでありますが、本年度補正予算のこの調子では、果して食止め得るかどうかは疑問であると言わなければならないのであります。私は本年度予算の補正増を少くとも八月閣議内定案の四百五十六億円に、まあ前に申しました平和回復善後処理費及び国際通貨基金への出資合せて三百億円、それからそれ以後にきまりました平衡交付金国家地方警察の百三十六億円を加えました九百億円弱に食止めて欲しかつたと思うのであります。これでも私はまだ多いと思うのでありますが、せめて最大限度この程度で食止めるべきであつて、それが千三百六十二億円と五百億円弱も殖えたのでございますから、明年度予算本年度予算の規模に食止め得るという蔵相の言はにわかに信ずることができないのでございます。それが若しできる、こういうならば本年度補正予算も、前に申しました九百億円程度で食止め得たはずだからでございます。仮に明年度予算を八千億円程度で編成し得たといたしましても、その場合には間もなく補正予算追加経費を計上せざるを得なくなるに相違ないだろうと思います。私は講和條約が発効いたします明年度予算の規模を最大七千億円で食い止めるべきであり、これが国民負担のぎりぎりの線であると考えるものでありまして、そのための計算をして見たこともあるのでございますが、今年の補正予算ですでに八千億円の線が出てしまつた以上は、仮に明年度予算を今年度の規模で食止め得るといたしましても、もはや万事休すという感が深いのでございま而も只今申しましたように、来年度予算本年度予算の規模で食止め得るということは先ず不可能のことなのでございます。個々の政策の立場に立てば、そのための経費は多いに越したことはないのは勿論であります。又その個々の政策の対象となるそれぞれの国民にとりましては、まだまだ経費の計上が不足であると感じておるに相違ないと思います。併しそれは講和條約発効後の我が国の財政が如何に容易ならん難局に立つかということをまだ十分に自覚していない甘い呑気な考え方であると私は思うのであります。以上が第一の財政の規模についての私見でございます。  次に第二の減税の問題について申述べたいと思います。補正予算案によりますと、所得税を中心といたしまして、四百五億円の減税が行われるのであります。歳出の補正純増額が千三百六十二億円もの巨額であるにかかわらず、なお且つ四百五億円の減税が可能となりましたのは、申すまでもなく、租税において千五百八十四億円、官業及び官有財産收入において百四十六億円、雑收入において九十四億円の巨額の自然増收が見込まれたからでございます。国民所得が増加したのでありますから、自然増收が生ずるのは当然のことでございますが、併しかくも巨額自然増收が見込まれるということにつきましては、これ又国民にとりまして何か割切れないものがあるのでございます。第一に七月三十一日の主税局推定では、租税及び印紙收入自然増收見積額は千二百八十六億円であつたのであります。それが三カ月ほどの間に又三百億円ほども殖えたのでございます。この殖えた三百億円の大部分は法人税の見積増加でありまして、主税局長は代表的な法人百四十社について実体調査を行なつた結果、その收益増加見込から推定したと衆議院で答弁しておられるようでありますが、経済界の動きが如何に激しいといたしましても、又当初予算に幾らか收入を内輪に見積るのが堅実な予算編成のやり方であるといたしましても、こう税の見積りが不安定では、全く予算案をまじめに審議するのがばかくさくなるのではないかと思うのであります。我々は政府の主税局でありますとか、国税庁といつたような厖大なスタツフを持つておりませんから、租税その他の收入見積りにつきましては、或る程度政府の数字を信頼するよりほかはない立場にあるのでございます。それが半年も経たないうちに千二百億円も殖え、更に三カ月くらいで又三百億円もそれ以上に殖えるというようでは、実際のところ我々はただ引きずり廻されているに過ぎないような感じがいたすのでございます。必要があれば自然増收という財源が飛び出して来るのでございます。これほどまあ政府にとりまして都合のよい武器はないとも言えると思います。それも自然増收の全部を減税に充てますとか、乃至は決算上の剰余金として次年度に繰越すのでありますならば、まだ話はわかるのでございますが、年度途中に追加経費の財源に充当するというのでは、当初予算が如何にも杜撰であつたということを表明する以外の何ものでもなくて、国民はまるで狐につままれたようなものでありまして、予算の民主化ということは実はここに非常に大きな穴があいていると言つてよろしいのではないかと思うのであります。自然増收がこんなに多額に見積られます以上は、減税は当然のことでございます。当然であると申しますのは、手柄でも何でもないということであります。当り前の話だということでございます。むしろ租税の自然増收の三分の一にも足りない減税では、実質的には増税だという議論も或る意味では成立つのであります。併し国際的に減税がかなりやりにくい問題であつたということを思いますと、とにかく四百億円程度にしろ、減税を実現し得たということは、これは私は池田蔵相の努力に感謝してもよいと思います。国民は今切実に減税を要望しているのでありますから、一円でも税金が安くなるに越したことはございません。それに主食、電気料金を八月に値上げし、十一月から鉄道運賃通信料金を値上げする政府といたしましては、減税によつて幾らかでも家計費の圧迫を緩和するということは、その責任であると言わなければならないと思うのであります。勿論この程度の減税では、最近の物価騰貴によります実質賃金の低下というものを十分にカバーし得ないと思われますから、実質的にはやはり減税にはならないとも言うことができると思います。この減税問題につきまして、ドツジ氏は大いに異論があるようでございますが、私はドツジ氏の減税反対論に関する限りは必ずしも賛成ではないのでございます。ドツジ氏は、第一に減税よりも徴税強化が必要だといつておりますが、これは減税と徴税強化ということは、必ずしもオルターネーテイヴな二者択一なものではないと思います。徴税強化は九原則にも謳われておりまして、必要なことでございますが、減税が却つて徴税強化を促進するということもあり得るのでありまして、そのことはシヤウプ勧告も強調しているところでございます。ドツジ氏は第二に賠償、外債処理など対外支払との関係を問題にしているのでありますが、この場合直接問題になるのは外貨支払能力、つまり対外支払力でありまして、仮に財政上は負担し得ましても、対外支払能力がなかつたり、或いは国際收支経済自立と両立しなかつたりするようなことでは何にもならないのであります。勿論賠償支払などのために財政が赤字になつたのでは、第一次大戰後のドイツのようにインフレーシヨンとなるのは当然でございますから、こうした対外支払が、財政としては租税等の経営収入で賄わねばならないことは、これは申すまでもありません。そのためには増税も止むを得ないであろうと思いますが、そうであるとすれば、ますますその前に減税をして、税負担の不均衡をできるだけ調整し、そうした基礎の上に増税するのでなければ、国民はたまつたものではないと思うのであります。その上この対外支払には何ら迷惑をかけないで国内経費の節約をして、その分を減税するということは、これは純然たる国内問題でありまして、国際的に遠慮する必要もございませんし、又外から文句を言われる筋合でもないと思うのであります。  第三に、ドツジ氏は例のごとく減税による消費インフレの懸念を強調しているのでありますが、財政消費を節約して減税する分には、国民経済全体としての消費には変りはないはずであります。尤もいわゆる消費性向の関係で、低額所得者層の減税は、消費を増大するという理論も成立ち得るのでありますが、この場合の問題は、より多く個人的消費と、それからシヤウプ勧告で申しておりますところの集団的消費というものと、いずれが国民生活水準の向上に役立つかということにあると考えられるのであります。併しまともな生活ができないほど税金をとつて、そうして集団的消費に廻しましても、国民生活水準は向上するとは言えないと思います。先ずまともな生活ができる程度に税金の圧迫を緩和するということが先決であろうと存じます。このようにドツジ氏の減税反対論には、私は理論的に必ずしも賛成ではないのでございますが、併し今回の減税が全く自然増収によるものであつて、経費の積極的な節約による減税ではないということ、経費は却つて膨脹し、而も減税をしているということ、この点ではドツジ氏を余り反駁できないと思うのであります。先に申述べました来年度予算の規模その他から申しまして、明年度の本格的減税、八百億円と言われておりますが、これは怪しいと思われます。なお本日の公述では省略いたしますが、法人税の二割増税、現行三五%から四二%に引上げる、このことは私は賛成ではございません。以上が減税問題についての私見でございます。  その次に第三の地方財政との関連について申上げたいと思います。平衡交付金をめぐりまして、政府と知事会が対立をするというふうに問題が重大化いたしましたが、又地方財政委員会地方財政委員会設置法第十三條に基きます意見書を衆参両院に提出しまして、今回の補正予算案に計上せられました平衡交付金の増額百億円、地方起債の枠の増額百億円を以てしても地方財政はなお二百三十八億三千七百万円の不足であるといたしまして、更に平衡交付金百億円、地方債五十億円の増額を要求しているのでございます。この地方財政委員会の計算が正確であるかどうかということは、我々の個人的能力では何とも申せないのでございますが、地方財政平衡交付金法第三條の国はこの地方団体財政需要額財政収入額を超える場合における当該超過額を補填するために、必要且つ十分な額を地方財政平衡交付金として国の予算に計上しなければならないという規定は、今や死文となつたことは明らかでございます。すでに本年度当初予算の際に地方財政平衡交付金法第六條第二項の規定に基きまして、地方財政委員会の要求いたしました平衡交付金総額千二百九億七千五百万円というものが千百億円に決定せられましたときから、すでにそうだと言つてよろしいと思います。地方財政も大いに節約に努めなければならんことは言うまでもございませんが、国からの義務的経費が非常に多い現状におきましては、節約の弾力性、経費の弾力性というものが国に比べまして、地方団体においては極めて乏しいのでございまして、平衡交付金が十分でないときにはその機能が阻害せられるか、或いは地方税の増税をしなければならないのでございます。必要にして十分な平衡交付金を国の予算に計上しないということは、国の財政を均衡させるために地方財政を不均衡、赤字財政に放任するか、さもなければ増税をする、増税をさせるということでありまして総合予算の真の均衡でもなければ、又減税政策にも背馳するのでございます。政府は早急に国と地方の財政制度に関する根本的改善を行うべきでありまして、幸いに地方行政調査委員会議の国と地方の行政事務の再配分に関する勧告、いわゆる神戸勧告と言われているものもすでに提出されているのでありますから、平衡交付金国庫補助金の問題で、国と地方が紛争を惹起すというような余地を速かになくすようにすべきであると思うのであります。  次に財政と金融との関係について申述べたいと思います。補正予算における一般会計の出資及び投資の増額は六百億円、このほかに国際通貨基金への出資二百億円というものがございますが、それを除きまして六百億円でありまして、補正増の総額千三百六十二億円の約半額近くをこの出資及び投資というものが占めておるのでございます。このうち外国為替特別会計への三百億円、それから食糧管理特別会計への百億円、つまりインベントリー・フアイナンスが四百億円も占めておるのでございます。で、当初予算の出資及び投資七百七十八億円でございますから、補正後の一般会計からの出資及び投資は千三百七十八億円、国際通貨基金への出資を加えますと千五百七十八億円、一般会計予算総額のこれは約二割を占めるのでございます。そのほか資金運用部資金の運用が当初予算に伴う計画より百三十億円を増しまして千二百五十億円、見返資金が同じく翌年度繰越分を除きまして、約百億円増の千二百九十二億円、合計財政投資は五千百二十億円でございます。このうち民間への融資となりますものは、例えば鉄道とか、通信とかいうようなところへの投資、地方債への投資、そういうものを除きましたつまり開発銀行とか、輸出銀行とか、そういうところへ出資いたしますものは、結局そういう銀行からの貸出を通じて民間への投資になりますし、それから金融債の引受けというようなのも結局民間への融資ということになります。そういうこの民間への融資となりますものは、このうち二千七十五億円でございます。で、日本経済の現段階におきましては、民間資本蓄積のためには財政資金の投資が必要でありまして、この意味におきまして、私は必ずしも最近盛んに言われております資本蓄積促進のための減税論というものには必ずしも賛成しないのでございますが、財政投資は成るべく資本蓄積促進のための投資或いは実物資本形成を促進する投資と申しますか、まあ大体において長期投資のほうに活用すべきでありまして、運転資金、流通資金的な投資はあえて財政投資に待つ必要はないと思うのであります。その意味におきましてインベントリー・フアイナンスが外為と食管だけで補正後九百億円にも上るということは考えものだと思うのであります。同じ意味におきまして、資金運用部資金の余裕金、翌年度へ繰越の分、これが二十五年度実績におきまして六百四十三億円、同じく見返資金が九百八十二億円に上つておるということ、補正後の本年度運用計画におきましても、それぞれ資金運用部のほうが五百三十二億円、見返資金のほうが三百十三億円に上つておるということは、これも問題だと思うのであります。これらの資金は決して遊休化して、いわゆるアイドル・マネー化しておるということではなくて、短期証券など、短期資金に運用されているのが大部分でありましようが、そうして見返資金のごとく先細するものにつきましては、或る程度資金源をこうした運用の形でリザーヴしておくということは必要であろうと思いますが、短期資金はむしろ市中銀行にやらせ、財政資金はできるだけ長期資金に活用いたしまして、市中銀行長期資金融資の荷をそれだけ軽くして行くということが必要ではないかと思うのであります。これが財政と金融との関係をすつきりさせる一つの方向であろうと思います。但しこれを徹底的にやつて行きます場合におきましては、市中銀行の收益性というものと、市中銀行と巨大企業との因念というものをどう解きほぐして行くかというところに大きな問題があろうかと思います。  それから次に財政投資はこのように相当巨額を占めているのでございますが、依然としまして財政のいわゆるしわが金融に寄せられているのであります。財政ひとり超均衡を誇りましても、金融が依然オーバー・ローンを続けざるを得ない現状は、国民経済全体としての資金勘定は赤字と言わざるを得ないのであります。極端な言い方をいたしますと、金融機関は別に納税資金の融資というようなことをやつているわけではありませんが、法人その他は金融機関から融資を受けたものの中から税金を支払いまして、それで財政の均衡が実現されているとも言うことができると思うのであります。これでは赤字公債が日銀の民間貸出に変形しているというだけのことでありまして、実質的には赤字財政と異なるところはないといつてもよろしいと思います。財政消費がもつと節約されて減税がもつと行われるか、財政投資がもつと活用されてオーバーローン解消に財政の上からも積極的に努力するということが必要であろうと思います。金融機関の自粛も勿論必要でありますが、財政の上からも積極的に努力する要があろうかと思います。ドツジ氏は二十四年度予算編成以来、どうも財政だけをすつきりさせるという意味におきまして、財政政策に偏重し過ぎておるように感じさせられるのでありますが、幸い今度又来日せられましたにつきまして、今度こそは財政と金融とを合せまして、如何に均衡経済を確立するかというこの困難な問題について、私どもはドツジ氏から適切な教示を今度こそは得たいと願つている次第でございます。  以上四つの問題点を取上げまして、簡單に私見を申述べさせて頂いたのでございますが、結論といたしまして、この補正予算におきまして、八千億円の財政規模の線がすでに出てしまつたということは、明年度以降の講和発効後の財政ということを考えます場合におきまして、よほど容易ならんことではないかと思われるのであります。財政が仮に均衡いたしましても、講和後の日本経済のあり方ということを考えました場合に、インフレーシヨンに陥る危険性というものは非常に大きいのでありまして、従いまして、少くとも財政の面においてはよほど気を付けて考えないと大変なことになりはしないかという懸念が私としては非常に強いのであります。返す返すも私といたしましては、補正予算案が遂に八千億円の線を出てしまつたということを遺憾とするということを申上げまして、この公述を終らせて頂きたいと思います。
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 何か御質問ございますか。
  5. 内村清次

    ○内村清次君 私二、三点実は御質問申上げたいと思います。朝鮮動乱以来の特需收入を考え、又やはり一応の生産増強の点を考えて見ますると、先ほどお説のように、国民所得が増大しておるというその数字の明確さは別問題といたしましても、増大はこれを肯定しなくてはならないと思うのでありますが、この国民所得の増大というものが、現在の政府政策によりまして、いわゆる国民の富の偏重でございますね、この差というものがどのような傾向になつておるかというようなことにつきまして、御意見がありますれば、一つお聞かせ願いたいと思います。
  6. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 今正確な数字を持つておりませんのですけれども、従いまして漠然としたお答えしかできませんが、今おつしやいました点でも、国民所得は確かに全体として殖えた。併し先ほども申上げましたように、こういう速度で今後も殖えるかどうかということは、私は非常に疑問だと思います。少くとも昨年の秋頃の予測と比べまして、実績は最近非常に殖えたということは言えると思います。併しそれは全体として殖えたのでありまして、而もその殖えたというのは、一部分は確かに生産が殖えたということによる部分もございますが、他の部分はやはり物価が騰貴いたしまして、つまりインフレ的に名目所得が増額したという点も非常にあろうかと思います。それから全体としては殖えましたけれども、今おつしやいましたように、その殖え方が非常に不均衡な殖え方をしておるということ、特需とか、そういつた方面に関連した企業の利潤というようなものが非常に増大いたしまして、勤労者の收入というものが必ずしも殖えたとは言えない。むしろ物価騰貴の結果といたしまして、実質賃金は却つて低下して来た。生活水準も一時上つて来ておりましたが、動乱以後却つて低下して来たというようなことで、その国民所得増加をその内容において見ました場合に、一様に国民全体の所得が殖えたというのではなくして、非常に不均衡な殖え方をしておるということは、数字的にはつきり申せませんが、大体言えるのではないかと思つております。
  7. 内村清次

    ○内村清次君 八月四日の閣議決定の、これは大蔵大臣の要望を申されたのでありますが、八十一億円の物件費、旅費その他の節約を要求いたしておつたのが、今回の補正予算では十三億円になつておる。この数字はやはり物件費、即ち物価の値上りを肯定をして、そうしてその経費を十三億にしたということは、政府がその物件費の値上りをそのまま許容した態度ではなかろうかというようなお説でありまするが、これはまあいろいろ国鉄の運賃値上げにも、この物件費の増大のための赤字というような点が、或いは又通信費、電信料金、こういうような問題に直接現われて来ておるようであります。そこでこの物価というものが朝鮮動乱以来、特に又この予算が決定されました以来におきまして、百倍乃至大きいものは二百倍にも上つておるという品物があるわけでありますが、特にこれは基礎資材の問題にそれがあるようであります。こういうような値上りというものは、今後もこの財政規模から、或いは又政策面からして相当値上りは、いわゆるこれは貿易面からも考えまして、総合的にこれはあるものであるかどうかということについての御所見を一つ……。
  8. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 先ほど坐つたままお答えしまして恐縮でした。今の御質問につきまして、八月二十四日の閣議内定案では、物件費、旅費の節約八十一億円、それが今度の最終決定になつ補正予算案は十三億円になつておるということを先ほど申しましたが、これは今御質問のお言葉の中にありましたように、政府物価騰貴を認めて、そこで最初八十一億円節約の予定であつたものを十三億円程度に減らしたのだとは私は考えないのでございまして、この物価騰貴との関係におきましての物件費予算補正の仕方というものは、私は今度の補正予算は非常に杜撰であると思うのであります。殆んど補正予算におきましては、物件費物件費單価の値上りに基く予算補正というものをやつていないと言つてよろしいと思うのです。例えば公共事業費について見ましても、大体この本予算が編成せられましたときと、それから現在とでは平均いたしまして今お話のように、ものによつては非常に高く値上りしたものもあるでございましようが、平均いたしますと、大体三割くらいの値上りは見られるんじやないかと思いますが、その程度物件費補正ということは今度の予算案は一つもやつていないように私には思われるのでございます。勿論私はこの予算説明のこの資料だけしか見ておりませんので、政府のほうにも聞いておりませんからわかりませんが、この資料を拝見した限りにおきましては、そういう物件費單価の値上りに基く補正というものを殆んどやつていない。而もこの物件費節約ということは、ただ天引的に経費を減額するということではなくして、例えば或る事業はやめるとか、或る事務は打切るとか、そういうようなことをはつきり、そういう措置をはつきりとらないで、そのまま大体本予算のままの数字を計上しておる。で、僅かに十三億円、全体として十三億円程度の、旅費も含めましてですが、物件費節約をやつておる。これでは、この本予算で予定せられた以上の事業量というものは今度の補正予算ではできない。補正予算の範囲では本予算で予定しただけの事業量というものは物件費單価の値上りのために実行できない、こういうことになろうかと思います。むしろはつきりと物件費單価の値上りを補正の中に見込んで行くか、そうすれば相当この公共事業費にいたしましても、もつと増額しなければ本予算で予定した事業量を維持するということはできないと思います。そういうことはやつておりません。公共事業費を増加しておりますが、これは林道開発でありますとか、單作地帶に対する措置でありますとか、新たな事業のために補正増計上されているのでありまして、本予算で予定せられております事業について物件費單価の値上りを十分に見込んであるかと言えば、それは見込んでないといつてよろしいと思います。
  9. 内村清次

    ○内村清次君 今一点。公述人はこの補正予算は七千億くらいでまとめるべきであつたという結論を出していらつしやるのでありますが、八千億の今回の予算というものは、来年度の本格的な條約発効後の諸経費を勘案して見ると、まあ結論にインフレ的危險性が相当あるからというような警告的なことも言つておられるわけです。そこで講和條発効後におきまして、国内治安の問題もあるでありましようが、或いは又は賠償の問題、或いは又はこの駐屯兵の費用の分担の問題、そういうような條約と密接な関係を持つております諸経費を、これを除きまして、そうして今年度政府の立てました補正予算財政規模から考えて見て、公述人は来年度がこのままの状態で行くとして、大体どれくらいの数字が出るものであるかという予想の下に、このインフレの警告をされているのであるか。額はまあ大体どれくらいをお考えになつているか、その点を一つ……。
  10. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 今の御質問にぴつたり副うお答えをする数字的な準備をまだいたしておりませんですが、多少今の御質問とズレるかと思いますけれども、私先ほどちよつと公述の際に申しましたように、明年度予算をどういうふうに賄うべきであるかということについて計算して見たことがあるのでございます。多少今の御質問とぴつたり合いませんけれども、相当関連がございますので、その数字を簡單にちよつと申さして頂きたいと思います。私は先ほど七千億円の程度に食止めるべきであるということを申しましたが、私の計算はもつと辛いのでありまして、講和関係経費を含めまして、昭和二十七年度一般会計予算は六千七百億円程度に食止めるべきである、そういう計算をしているのでございます。今お話の出ました賠償関係経費でありますとか、或いは外債処理費、連合国財産補償費、防衞分担金、それから国内治安の関係も平和條約、安全保障條約、そういうものと密接な関連があるという意味におきまして、警察予備隊費、それから海上保安庁費、これだけのものを講和関係経費といたしまして、私は一般会計の中に別建にすべきである、こういう主張を持つておるのでございます。これを特別勘定とでも名付けまして、必ずしも特別会計にまでする必要はないと思いますが、一般会計の中で、曾つて経営部、臨時部というような区分がございましたが、あのくらいの意味で臨時、特別の勘定という形で、そのほかの経費から分離すべきである。そうしてこの部分につきましては、できるだけ十分にこれを賄つて行く、支払つて行く、場合によつて増税をしても、これはちやんと義務を果して行く、その部分であるということをはつきりさして行く、そしてそれ以外のいわゆる一般経費は一般勘定としてこれと分離いたしまして、この一般勘定においては勇猛心を奮つて節約を徹底的にやつて頂く、そうしてこの一般勘定を賄う。税金としてはできるだけ大幅の減税を実行してもらう、こういう考えを持つているのでありまして、私は八月初め頃の政府の事務当局の試算いたした経費を二十六年度予算額から比べまして、二十七年度に予想される経費増加分、それから減少分、そういう数字をそのまま前提いたしまして、それで計算いたしすまというと、昭和二十六年度当初予算から今の終戰処理費、それから国家警察予備隊費、海上保安庁費、こういうものを除きました残り、私の名付ける一般勘定となるべき部分、それに政府の事務当局が推算いたしました八月の初め頃の推算でございますが、それによる経費増加分、それから減少分、そういうものを差引きますということ、五千七百六十三億円ということになるのでございます。私はこの五千七百六十三億円をこの際勇猛心を奮つて五千億円に切るべきである。そうしますと、七百六十三億円ほどの節約でありまして、これは非常に困難なことのように考えられますけれども、先ほど申しましたように、八月二十四日の閣議内定案では八十一億円の物件費、それから旅費の節約ということが一応考えられた。そうしますと、これは半年分の節約でありますから、一年分には百六十二億円という節約が可能なはずだ。それを差引きすと、あとが四、五百億円ということになる。それに先ほど申しました神戸勧告によります国と地方行政事務の再配分というものを若し本気で政府がやりますならば、国の行政事務というものは大幅に減少することになりますので、それに伴つて経費も当然減少する。だから七百億円余り節約をするということは、若し本気でやるつもりならば決して不可能なことを言うわけではない、こう考えまして、五千七百六十三億円と計算されるのでありますが、これをまあ五千億円に切つてもらう。そうしてこれを賄います歳入といたしましては、租税につきましては、所得税を私は二十七年度予算におきまして、二十六年度当初予算と同額の所得税計上する。二十六年度当初予算におきましては、所得税は二千二百二十九億円でありますが、これの半額を計上する、千百十四億円というものを計上する。そういたしますと、先ほど申しました七月三十日の主税局見込みの自然増收額、これを二十七年度もこれだけの自然増收がある。これ以上あると考えるのが普通でありますが、先ほど申しましたように国民所得は今後非常に増大するとは考えられませんので、二十六年度自然増收額だけを二十七年度に見込みますと、所得税は池田さんのお得意の税法上の減税ということで計算いたしますと、六割の減税ということになります。それから法人税はやはり二十六年度当初予算額と同額をこれは計上する、二十七年度予算において同額を、六百三十六億円というものを計上する。そうすると、これはやはり自然増收を見込みますと税法上減税率は四九%、約五割ということになります。従つて税率は現行三五%は二〇%ぐらいに引下げて差支えないということになります。こういうふうに所得税法人税減税をいたしまして、そのほかの租税及び煙草專売益金というものは自然増收は勿論あると思いますが、一応堅実に見積つて二十六年度当初予算計上額と同額を二十七年度計上する、合計いたしますと、その一般勘定を賄う租税、これを一応一般経営税と名付けて置きたいと思います。一般経営税の收入は四千四百七十億円、專売益金を含めまして收入は四千四百七十億円、こういうことになるのであります。このほかに官業收入官有財産收入雑收入、こういうもののやはり政府事務当局が計算いたしました数字に増減を見込みまして、五千二百四十六億円という一般勘定の歳入が計算されれのであります。そうしますと、五千億円に一般勘定の歳出をカツトいたしますと、歳入剩余が二百四十六億円見込まれることになります。このうち私は二百億円を戰死者遺家族、戰傷者対策費というものに振向けたらどうか。そうしますと、四十六億円まだ歳入剩余が生じますが、これは一応保留いたしまして、講和関係特別勘定費、これを私が計算いたしましたときは、一応二十七年度計上額は千五百億円、こう見積つたのであります。最近ではどうもこれは二千億円ぐらいまで行きそうな形勢でございますが、この計算をいたしましたときは千五百億円、これは連合国人財産補償費百億円、外債処理費百五十億円、賠償関係費二百五十億円、防衞費分担金三百五十億円、警察予備隊費五百億円、海上保安庁費百五十億円、これだけを合せますと千五百億円、こういうことになります。この千五百億円を賄う歳入といたしましては、先に減税措置を行いました一般経営税に対して酒税と専売益金については三割の特別加算税、そのほかの租税につきましては、三割五分の特別加算税を課するということにいたしますと、千四百五十四億円の收入が得られます。そこで千五百億円と、歳出を千五百億円といたしますと、四十六億円の不足になりますが、先に一般勘定のほうで四十六億円の歳入剰余が出ておりますので、これを特別勘定のほうに繰入れますと、ここでバランスが合うのであります。この特別加算税ということで結局租税全体がどういうことになるかと申しますと、二十六年度当初予算に比べまして、一般経営税と特別加算税を加へまして、二十六年度当初予算を一〇〇といたしますというと、一〇六ということになるのであります。でありますから、租税收入全体としては、まあ六%増税と申しますか、そういうことになりますが、自然増收というものを見込みますというと、八六%ということになりまして、一四%減ることになるのであります。それから特にこの所得税につきましては、そういう特別加算税が課せられましても、なおこの二十六年度当初予算を一〇〇といたしまして、所得税全体の負担が六八、それから自然増收を見込みました場合には五四というふうに、これは絶対的に大幅に減少するのであります。而もこの所得税の一般経営税におきまして、税法上約六割の減税をやるのでありますから、その又減税は大部分において基礎控除引上げ、扶養控除の引上げ、そうして又第二義的に若干の税率軽減をやる、こういう方法で所得税の大幅減税をやりますというと、いわゆる低額所得者層というものは殆んどこの所得税納税義務者から脱落してしまうことになりまして、そうしてその残つた高額所得者層に特別加算税というものがかかる勘定になりますから、いわゆる低額所得者層というものは、殆んどこの特別加算税というものには直接税としてはかかつて来ない。ただ酒税が上り、煙草価格が上るというようなことで若干の負担は免れないことになりますが、直接税においては殆んどこの特別課税はかかつて来ない。こういうことになるのでありまして、こういう計算をいたしまして、私が若し大蔵大臣であつたならば、こういうことを実行して見たいと夢に描いていたのでありますが、補正予算ですでに八千億円という線が出てしまいましたので、先ほど申しましたように非常に残念に感じておる次第であります。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間も余りございませんので、三つばかりお伺いしたいのですが、只今のいろいろまあ詳しい講和後の一応まあ財政の構想について非常に有益な御意見を伺つておりますが、併しこれはかかつて今後の物価ですね、その物価がどうなるかということにまあ非常に重大な関係があると思うのです。そこで鈴木先生は一応今後の物価についてどの考えるか、その点を一つ。それから第二には財政規模について、政府はこの財政規模が決して大きくないという証拠として、政府が唯一の、只今鈴木先生が言われた過大であるという反駁論拠として、政府は決して過大でない、財政規模というものは国民の経済と共に変化する、而も外国と比べて決して過大でない、例えば米国は今度の追加を入れまして、五十一、五十二会計年度には国民所得に対して三〇・二%、それからイギリスはやはり今度の追加を入れまして三四%、日本は今度の補正の場合、一七・六四%と極めて少いじやないか、これがまあ池田蔵相の唯一の財政規模は大きくないのだという論拠なんでありますが、これについての御意見を伺いたい。最後にもう一つインベントリイ・フアイナンスの問題ですが、鈴木先生は丁度私が考えておりますのと同じ御意見を述べられたのですが、財政均衡がとれていても、金融面から丁度との赤字財政をやつているのと同じような工合になつて、その面からインフレを起していると言われますが、これはオーバーローンに非常に関係があるのですね。そういう下でインベントリイ・フアイナンスを一般会計からやることをやめたら、これはインフレ的になるのじやないか。現に二十七年度予算編成では、外為及び食糧特別会計のインベントリイ・フアイナンスはやめさすことになつているようです。これはゼロになつているようです。この八月の最後になつて……、来年度は殆んどやめるらしいのですね。で、その来年度やめるのを講和関係費ですね、或いは警察予備隊費、そういうものに入れると思うのです。そこですぐにこのオーバーローンの状態をこのままにしておいて、インフレ対策のほうを放つておいて、このインベントリイをやめてしまう。そうすると、今度は短期運用をやめると、勢い日銀から貸出を仰がなければならないということになると思うのですね。まあ食糧統制撤廃も、それは如何にもよるでしようが、外為会計において常にそのことが起ると思います。そこでそのインベントリイ・フアイナンスをやめる場合の、インフレが起ると思うのですが、このままでは現に来年度はもうやめるつもりですが、それとインフレ対策との関連をどういうふうに考えたらいいか、この三点について……。
  12. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 第一の物価の見通しでございますが、これは私は先ず大体において物価は上ることになるだろうと思うのであります。ただこの国際情勢とか、そういうような方面の動きの如何によりましては、今年の春体験いたしましたように、騰勢一遂にあつた国際物価が反落し、又中だるみに転ずるというような、そういうこともありまして、そういう国際情勢から来る影響につきましては、何とも予測しがたいものがあるのでございますが、一応今の状態が続き、そうして国内におきまして財政金融その他の政策が今のようなままで行きますならば、物価は騰貴せざるを得ないのじやないか、こういうふうに考えているのであります。第二点は何でございましたか。
  13. 木村禧八郎

  14. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 政府が正確な計算をされて、イギリスやアメリカのほうが補正後の日本の財政規模よりも大きいという数字を出したそうでございますが、だからまあそれが正しいといたしまして、正しいと思いますが、だからと言つて日本の財政規模がアメリカや、イギリスの財政規模に近いところまでもつと膨れてもいいのじやないか。それよりもずつと小さい現状にあることは何も過大とは言えないじやないかという、この議論を余り強く蔵相がなさいますというと、今度は減税問題において非常な自家撞着に陥る、こういうことになりはしないかと思うのでありまして、それならばイギリスなんか日本よりもずつと税金の負担率が多いわけですから、大きいわけですから、そんならもつと日本も国際並みに税金の負担率を上げたらいいのじやないかという議論に逆襲されて来る虞れがあると思うのでありまして、アメリカや、イギリスの財政規模と、その国民所得の比率というようなものだけから、日本の現在の財政規模が大き過ぎるとか、何とかという議論をするのは、非常に簡單過ぎはしないかというふうに考えられるのでございます。やはり国民税負担とか、そういうような税の圧迫とか、そういうような点から考えて、財政規模というものが一応評価されなければいけないのじやないかと思います。それからインベントリイ・フアイナンスの問題でございますが、今木村さんがおつしやいましたように、インベントリイ・フアイナンスをやめますと、ただそれをやめてしまいますと、インフレを助長するということはおつしやる通りであろうと思います。で、まあインフレを防止すという意味がインベントリイ・フアイナンスには大いにあるわけでございますが、先ほど私が申しましたのは、そういうインベントリイ・フアイナンスを相当巨額にやるだけの財政資金があるならば、この財政資金はむしろ長期投資のほうに振向けて、そうしてそれだけ市中銀行長期投資への負担を開放して、そうしてその部分をインベントリイ・フアイナンスのような短期資金はむしろ市中銀行のほうにやらせると、このほうがずつとすつきりするのじやないか、財政資金短期資金まで賄うという必要はないのじやないかというふうに考えているのでございます。
  15. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 補正予算財政規模が八千億円に膨張したから、これはインフレ的な経費を包蔵しているからいかんというようなふうにおつしやつたかと思いますが、成るほど帳簿の上では八千億でございますけれども、政府のほうでは七百億円もの財政上の貯金と申しますか、インベントリイのようなことに対してできるだけ凍結しようといたしておりますし、この預金部の資金とか、運用部の資金もあんなに出ししぶるような状態で、それ故にこそ先生もおつしやつたように、ひどい金融難に陥りまして、オーバーローンのような状態を呈しておつて財政赤字金融で補う一種の赤字財政だとさえおつしやつておいでになられますような性質の補正予算でありますのに、どうしてもそれをインフレ的な要素を包蔵しているとおつしやるのでしようか。あのインベントリイの支出以外のものが生産的な支出は少くて、消費的な支出が余り多いとでもおつしやるのでしようか。
  16. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 今の御質問の御趣旨を或いは十分に理解できなかつたかも知れませんが、そういうこの財政赤字をむしろ金融でカバーしているというような状態であるのに、そういう財政を以て何が故にインフレの危険を蔵する予算であると言うかと、こういう御質かと思うのですが、それでよろしいでしようか。
  17. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 それはよくわかりませんでしたかしら……。とにかく帳簿の上では大変支出しておるような形でございますけれども、実際使わないのでございましよう。その出した支出の金を凍結するのでございましよう。インベントリイのような形で、七百億円もの金を凍結しようとするのだのに、なぜインフレとおつしやるのでしようかというのです。
  18. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 例えば外為のインベントリイについて申しますと、一般会計から外為にインベントリイいたしまして、これでつまり外為がドルを買う資金にするわけでございますのですから、それがドルに変わるわけでございますが、外為のドルの手持ちに変るわけです。食管にインベントリイとして出します金は、食管が供出米或いは輸入食糧を買取る資金の一部に使うわけでありますから、食管への食糧の手持ちというものにその金が変るわけでございます。それから金融のほうがオーバーローンになつておる、ならざるを得ないようなことになつておる、だから財政のほうが均衡予算であつて金融のほうでいわば尻が割れておるのでございますから、そういう意味で仮に財政面においては赤字が一つも出ていないというような状態であつても、それはインフレーシヨンの危険を非常に含んでおるものだということは十分言えるのじやないかと思つております。
  19. 和田博雄

    委員長和田博雄君) よろしうございますか……。
  20. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 時間もありませんので、簡單に一つだけ……。先ほどから財政規模が過大になつておるというようなお話がたびたびあるのですが、それで或いは明年度は七千億ぐらいが適正だという細かい勘定も出して頂いたのでありますが、その場合に、適正規模というのは大体どういうものとの対比において、どういう感じから適正ということをお考えになつておるのですか。
  21. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 国民所得との比率とか、まあいろいろございましようけれども、私はまあ必ずしも適正という言葉は用いなかつたのでありまして、ただまあ二十六年度予算までの財政規模というものは一応適正であるかないかは別として、そこまではもうきまつてしまつた財政規模であるから、一応止むを得ないと、こういう前提でありまして、そうしてこれから殖える経費というものをどの程度に食止めるべきであるか、まあぎりぎりの先ほど申しましたような数字でなら決して無理な注文ではないのじやないか、そのくらいの意味でございまして、何か絶対的な基準から、この七千億円というのは適正な規模であるというほどの自信はまあないわけであります。
  22. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 所得税の改正に反対だとおつしやつたようでございましたが。
  23. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 法人税でございます。
  24. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 それならわかつております。
  25. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかにございませんか……。では有難うございました。  それでは暫時休憩しまして、午後は一時から始めます。    午後零時七分休憩    —————・—————    午後一時三十六分開会
  26. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に続いて委員会を再開いたします。  先ず日本労働組合総評議会常任幹事塩谷信雄君の公述を願います。
  27. 塩谷信雄

    公述人(塩谷信雄君) 只今御紹介を頂きました日本労働組合総評議会の塩谷信雄であります。本日は働くものを代表いたしまして、本補正予算算案に関する公述をいたしたいと存じます。なお主として官公労を代表する公述人が別途おりまするので、これらの諸君に関係いたしまする部分は成るべく省略いたしまして申上げたいと存じます。  本補正予算案は、いわゆる来年度予算案とその性格或いは内容規模を大体一体として本来考えられるべき性格のものであります。事実上一応切離した関係にございまするが、そういうものであるという立場に立つ限り、これはまさしくいわゆる講和予算と称せらるべき性格を持つものである。そういう考え方に立つて我々が問題を見るときに、甚だ我々にとつては特に重要な内容を含んでおる、かように考えるのであります。池田大蔵大臣はその説明において、いわゆる経済運営の基本策といたしまして、安定と能率及び発展という三つの基本的なる方針を示されております。このことは我々としてもあえて異議を差狹むものではございませんが、このような基本的な方針が今日まで吉田内閣によつてどのような方向で推進され、具体化されたかという問題も、今後においてこれが具体化されんとしておるかというところに問題があろうかと思うのであります。昭和二十三年十月、第二次吉田内閣が登場いたしましてから、今日までの政策を見まして、私どもは現内閣の経済政策に対しては多大の不満を持たざるを得ないのであります。この予算の編成は十月という時期に行われたように書かれてございますが、今日は御承知の通り雨が降らないために、石炭が出ないために、非常な産業界においても変化を起しており、いわゆる危機的な様相が出つつあると言われるのであります。最近安本が推定いたしました数字によりましても、こうした事情から七—十一年の一〇〇という数字に対して、本年度は一四三という想定から一二四くらいまで低下して行くのではないかということが一応想定をされておる。更に来年度に又従つて一四五前後にとどまる可能性が非常に強いということを指摘しておるのであります。今日はこうした生産の減退、或いは鉄道やガス、電気、米、郵便料金の引上、こういう非常に諸物価がどんどんと高騰しており、更に又国際的な物価も非常な上昇の傾向にあるときに、講和に伴つて支出せられます財政支出も非常な厖大な数字に上ろうといたしておるわけであります。治安関係費を初めといたしまして、非常な多額の賠償或いは我が国の債務といつたような問題を考えてみまする場合に、国内物価の上昇ということは今日は避け得られない傾向にあるのではないか、このような方向から強く国民生活圧迫される状態にあると考えるのであります。従つて各目的な国民所得は物価の上昇にもかかわらず、鉱工業の生産の減退からいたしまして、当初の予想に反してかなり大幅な縮小が避けられない状況にある、こういうふうに考えられて参るわけであります。一方経済活動のこうした停滯気味な問題に加えまして、いわゆる米麦の統制撤廃の問題が出ておりまするが、この方向から強く米麦の国内需要増大を惹起して参りまして、食糧輸入の増大を必要として参る傾向にあるのであります。従つて我が国の鉱工業生産のために欠くことのできない重要な原材料、こういう方面の輸入にかなりの支障を来たす方向が出るるのではないか、この方向からいわゆる輸出規模の狹小といつたような方向が招来されて来るのではないかということが非常に強く懸念されるわけであります。こうしたいわばインフレ的な懸念が強い、又同時にこの意味において国民生活の低下が非常に心配せられる、こういう点について、この予算案は特に親切なる指導というというものの実態を赤裸々に国民に告げた上に立つて政治を指導して行くという方向が欠けておるのではないかと考えられるのでありまして、いわば講和に伴うこの苛烈な種々の條件を成るべくあとに繰越して行こう、持越して行こうという性格が出ておるのではないか、私は最近における政府の諸種の政策において、そうした傾向がかなりに強く出ておるということを指摘せざるを得ないのであります。我々がこういうふうに見て参りますると、現在の政府の指導方針はいわゆる自由経済主義を基本として、この苛烈な條件の下において推進をされて参つておるのでありまするが、このようないわば安定を能率、発展というような方向が、こういう自由放任の形においてよくこれを期待し得るかどうかということは我々の非常に疑念を持たざるを得ないところであります。特に池田氏は金融の面についてはかなり詳細な構想を示しておるようであります。インフレ対策に特段の意を用いながら、産業の発展に必要なる資金を確保して経済の健全なる発展と国民生活水準の維持向上を期することが主眼である、従つて貯蓄の増強、資本の蓄積、更に重点産業に資金の供給を確保し、不急不要な方面への融資は抑制するという表現をとられておるようであります。併しながらすでに過去において、この融資を中心として構想せられました安定と能率発展の考え方は、我我は非常な苦難にすでに逢着いたしまして、つぶさにその実態を労働者といたしましては承知いたしておるのであります。金融面においては、一口に言つて中小工業はのびても仕方がないという方向を通じ、更に貧しき者は麦を食わざるを得ない、今日は麦も食えなひような状況に追い込んで行くのではないかと考えられるのでありますが、今日のような情勢の下で金融統制、一種の金融の操作によりましてのみ問題を処理し得るものであるかどうかという点については多くの疑問を持たざるを得ない。物価の面に対して、より親切な総合的な指導が欠けておるのではないか。我々は今日金融面からして個個の、例えば労働する、生況する労働者にとつて金融の面からするこのインフレ対策ということに対して、どれだけ直感的な、もつと密接な感覚を以てこれを感じとることができるか。これは私は非常に問題があろうと思うのでありまして、個々の而も労働者の生活にとつてはこのような方向からのみでは十分な対策は期待することができないのではないか、価格対策についてもう少し親切な指導があつて然るべきではないかと考えておるのでありまして、單に所得税を若干軽減するという措置がとられておるようであります。後ほど申上げたいと思いますが、このような内容は実は我々といたしましては、朝鮮事変の勃発前に期待いたした程度の数字でありまして、朝鮮事変以来今日は五〇%余すでに物価が上昇しておるという状態の下にあつては甚だ不十分な施策であると言わざるを得ないのでありまするが、労働者の差迫つた苦しい生活がこのような單なる金融操作によつて切抜けて行くことができるかどうか、非常に我々といたしましては、施策が不親切であると言わざるを得ないのであります。  皆さんは去る十月二十八日の放送「時の動き」で、四国の八幡浜の街頭録音をお聞きになられたであろうと思う。そういうお聞取をなすつたかたもこの中に或いはおいでのことと思うのでありますが、「明るい街を築くには」という題名の下で、小学校の教官が警察がボスと結託をしておる。そうしてこういう結託の下に行われる不当な取締りについて発言をしたところが、そこに丁度私服の警官がおりまして、この私服の警官から遂にその八幡浜市における警察が、この教官を告訴するという嚇かしを以て事件を惹き起してしまつたということが伝えられておつたのであります。これは警察に対して取締りの公平を要望するという国民の当然なる批判でありますが、警察は本来その要望或いは注意に対して十分に感謝を以て耳を傾くべきであるにもかかわらず、逆に告訴するという、こういう嚇かしを以て事件を惹き起しておるというところに、今日のすでに警察の行き方が出ておるのではないかということを心配いたすのであります。そのあとの録音に引続いて、滅多なことは言えないという声も我々の耳を打つておるのでありますが、このような方向が最近強く出つつあるのではないか。これは自治体警察が起した事件であろうと思うのでありますが、我々は本年の春において、いわゆる警察法の廃止の問題に関連いたしまして、自治体警察が若し自主的に廃止の制度が布かれた場合には、どういう方向を迫るであろうかということについて、恐らく日本の民主化の実情又財政負担の実情よりいたしますならば、殆んど大部分の自治警察が廃止をされるであろうということを強く主張をいたしたのでありましたが、私は今日ここにありまするこの予算の説明書の中において、すでに一千十四の警察署が廃止をされておるという計算を見るのであります。これは一千七百四十五の自治体警察がある、私は同じ当時の資料の中から数字を拾つたのでありますが、そのうちすでに一千十四が廃止の運命に会つておる。この人員は一万三千百八十名と出されておるようでありますが、今日はこういう方向からいたしまして、すでに国警定員は四万五千前後になつておるのではないかというふうに考えられます。最近における警察機構の強化拡大、又国警を中心とする警察権の中央集権化、こういう方向と共に最近、一昨日の朝日かに出ておつたようでありますが、曾つて世界に類例のないうと言われた治安維持法にも匹敵するような団体等規正法の内容が案として発表されておるのを見ますると、誠に容易ならざるものがある。こういうものが近く上程されようとしておるのではないか。更に労働者にとつては殆んどその生命とも言うべきストライキ権が一つの産業にあつても、その一つの産業の中の更に一部の労働組合がストライキをやつた場合でも、例えば石炭或いは電力の非常に困難な時期には、これをゼネラルストライキと解して禁止をするというような法律が近く制定をされようとしておる。更に労働三法関係、労働法関係の改悪が今日目論まれておるという一連の動きを見て参りますと、誠にこうした方向の強化拡大を通じて、再び警察国家的な軍国主義的なフアツヨ主義的な方向が強く推進されつつあるのはないかということに多大の危惧を持たざるを得ない。特に今日はいわゆる集中生産の方向が強く再び出されて参つておるようであります。曾つて戦争に非常に協力をされたかたがたが再び職場に戻り得る体制になり、富の集中が可能になり、これに労働者を駆り立てて、その労働力を思う存分に使いこなし得るという体制を築き上げるための労働三法、その他の改悪が著々として企図されておる。正に資本と物と人との関係が一体となつて拡大集中生産の方向を通じて、一体行く着く先は何であるかということを非常に危惧せざるを得ない状況に入りつつある。我々はこの点に非常な心配を持つものであります。今日警察の問題が治安関係の項目の中においても大きくクローズ・アツプをされておるという点において私どもは非常な心配を持つ。十月十一日付の夕刊朝日の報じておるところでは、増原警察予備隊本部長官は、部隊の装備はこれまでカービン銃と重機関銃だけであつたのを、このほど新たに迫撃砲と小型ロケット砲を全国の各部隊に配付をし、すでにこれに対する訓練も始めておるということを発表せられておるようであります。更に極く最近我々が知り得たところによりますと、米国の陸軍省から相当大量の武器が日本に貸與せられると日本に対して申入れがあつたのを、日本政府は、これを保管する場所がないというところから、これを断わつておるという事実を聞いておるのであります。勿論これは伝え聞きでありますが、かなりの信憑性があるように判断せられるのでありまして、一体この警察予備隊というものの性格に対して我々はこれを何と解釈すべきかに迷わざるを得ないのであります。曾つて警察予備隊は軍隊ではないということを非常に強調して参りました。勿論そうした意向も代弁である新聞その他の報道機関においても、これを強く一般に印象付けるために努力は払つて参りました。併しながら最近の新聞紙の報道するところによりますと、警察予備隊はまさに軍隊だという表現の下に、国民に対して軍隊であるという印象を濃厚に押付け、国民を知らず知らずのうちに軍隊化の方向に誘導しつつあるという事実を見落すわけに行かないのであります。我々はこの警察予備隊が果して軍隊であるのか、或いは警察であるのかという考えで明確にならない限り、この下に支出されるこの予算というものの検討はできないのではないかということを言わざるを得ない。その性格が真に明瞭になつて、そのための装備は、そのための支出はどうであるべきかということが本当に審議されなければならんと考えるのでありまして、私どもは最近の情報からいたしまして、警察予備隊費百五十億の支出というものの内容に多大の疑感を感ぜざるを得ないのであります。勿論装備の充実費として百四億五千九百万円ばかりのものを計上しているようであります。衣料、機具或いは通信機械というふうになつておりまするが、この通信機械の内容は果してどういうものであるか、我々は十分に承知し得ないのでありますが、これに対しても本来質問のしたいところであります。施設改修は建築であるというふうに書かれておりまするが、これは果していわゆる武器を收容するところの施設であるのであるかどうかという点についても明瞭にすべきであろうと思うのであります。警察予備隊の強化は明年度において更に大規模に進展すると言われておりまするが、毎日新聞紙の報道するところによりますと、六百五十億くらいに上るであろうと言われている。先般吉田首相が当委員会において発言しました朝鮮に警察予備隊を出兵させるかどうかという質問に対して、それはしないという発言が、私どもの聞く範囲においては米国において非常な問題を起しているということを聞くのであります。一体それはどうしてそういう問題を惹き起すのであるか、少くとも吉田首相の指導し、又は言明した限りにおいては、何ら問題を惹き起したりする性格のものでないにかかわらず、何故そうした問題が起るのであるかというところに国民の甚だしい納得の行かないものを感ぜざるを得ないのであります。国警の費用といたしまして三十六億四千万円の補正をいたしておりまするが、合計して本年度は百五十八億という費用になります。今日国警の定員を仮に四万と抑えて参りますると、おおむねこれは一人当り四十万に当るように計算せられるのであります。先の警察予備隊費も今日まではおおむね一人二十万円くらいでありましたが、本年度の総予算においては、これ又一人当り約四十一万円強くらいになるようであります。このいわゆる警察予備隊、国警更に自治警、こういうものを全部総合いたしますると、実に相当の数字になつて来る。私は実に二十万名に近い数字が出て来るのではないかということを心配いたすのでありますが、今日歳出総額七千九百三十七億に対して、治安関係費が約千四百七十二億、こういう数字が出て来るようでありまして、これは総予算の一八%に当るようであります。外国のいわゆる軍事費からみますると、正にこれは立派な軍事費であると見ざるを得ないようであります。今日は見返資金の中の経済再建費或いは外国為替特別会計の繰入費、こういうものは当然軍事費として必要ある場合には動員し得るフアンドであるというふうに了解いたして参りますると、今日のいわゆる潜在的な、又顯在的な軍事費というものは莫大な数字に上るのではないか、これに対して一体この本予算並びに本年度予算全体を通じての社会保障関係費、社会政策関係費は非常に微々たるものである。今度の補正予算においても、少し概数ではありまするが、おおむね六百二十億前後にしか当らんのではないかというふうに判断せられます。こういうふうに見て参りますと、吉田内閣のいわゆる治安対策というものは一方においては遺憾ながら相当の勤労階級に対する收奪が行われておる。そうして他面では苦しいためにかなり社会的な不安が増大して来る。この社会不安に対しては警察権を強化して抑え付けて行く。こういう方向が端的に出されて来るように考えられるのであります。我々はこういう行き方こそ今日共産党諸君の狙つておる方向であると考えておるのであります。ここに今日の問題があるのではないか、八千四百万の国民のうち、六千五百万の諸君が額に汗をして働かなければならない諸君の生活に対して、真に面倒をみるという、そういう政策が貫かれておらないところに今日の治安の問題が大きくクローズ・アップされて来るのではないか、単に治安関係費の増大のみによつてこの問題は決して解決できないというところに本質的な問題があろうかと思うのであります。  国家公務員の給與は、先に人事院は八月の二十日に一万一千二百六十三円の、これは税込みベースでありますが、勧告をいたしまして、八月一日から実施するように言われておりまするが、この補正予算案におきましては殆んどこれが無視されておる。こういう実態になつておろうかと思います。これを完全に実施したしましたとしても大した費用はかからない、これは一つの計算でありますが、百二、三十億くらいの増加にしかならんのではないかというふうに判断をせられます。更に今回の行政整理の問題でありますが、約十二万一千人くらいの諸君を首にしよう、整理によつて直接の節約額は橋本行政管理庁長官の説明によると百数十億円である。これを減税と給與の引上げに織込んで初めてこれができるのだというふうな説明をされているようでありますが、官庁の諸君の言い分は、恐らく官庁方面の代表者によつて詳細の説明をされると思いますが、これこそ又少数精鋭主義で、節約した金は恐らく再軍備や警察に廻して行くのではないかというふうに心配せられるのでありまして、一体最近においても昭和二十四年における人員整理、あの後に警察予備隊或いは警察の増強という問題で出ている。その点日本が今まで経験した経験の中からも、そうした不景気、人員の整理、国民が非常に「いも」の子を洗うような苦しい生活の中からは、恐らくそうした方向や、或いは師団の増設、或いは軍隊の大陸への進出、こういう方向が強く押し出されて来たように考えられるのでありまして、私は今回のこのような措置も、後に一体治安関係方面の人員に相当盛込んで行く方向が出て来るのではないか、こういうことを考えざるを得ないのであります。少なくとも本年度一般会計では退職金その他で二十一億余の支出が増大するという計算になつております。この本年度会計では今の減税や、或いは給與の引上げということには直ちに役立つておらない。勿論来年度予算も想定してのお話でありましようけれども、来たるべき来年度予算こそ、実は厖大な予算になつて行く傾向が強い、そういう方向からこの問題を考えて参りますと、恐らく再軍備若しくは警察関係の費用に引用されて来るのではないかというふうに判断せられるのであります。  更に食糧統制撤廃の問題は、実に最近由々しい社会問題に発展をしつつあるようであります。ドツジ氏がこちらに参られまして、開口一番、統制撤廃の問題についてはかなりの疑念を持つているということを表明せられているのでありますが、こういう食糧統制撤廃によつて一体犠牲を強要せられるのは、言うまでもなくこれは勤労階級であります。労働階級でありまして、最近のラジオの録音が私は皆さんに率直にその人々の声を伝えておろうと思うのであります。遺憾ながら統制撤廃の声がむしろ多いのではないか。今日のごとく言論の統制が非常に強い中にも、そういう声が出ざるを得ないという実態を一体どういうふうに了解していいのか、私はここに非常に問題が底に伏在していると考えるのであります。今どうしても強いて米の統制撤廃をせねば、国民が明日からでも食糧の問題でもう行詰つてしまう、食うに困つてしまうという、こういう事実は実はないわけでございまして、私どもの判断する限りにおいては、いわゆる自由党の公約であるという立場に立つてのみの無理押しであるというふうに考えられるのであります。こうした政策は恐らく非常な勤労階級の忿懣の種になるであろうということが予見せられるわけでありまして、こうした政策を強力に推進する。この中には農林関係行政整理を織込んであるようであります。農林関係の官吏諸君の行政整理がこの中に強く織込められて、こうした首切をするという方向から、この統制撤廃の問題を強行しようという傾向が多分に看取されるのでありまして、これは由々しい問題であろうかと思うのであります。中間経費の問題がかなり問題になつておりましたが、これは本委員会においてすでに明瞭に解明をされておるところでありまして、私どもは中間経費によつては、この統制問題はなかなか割切れない、むしろ今日の統制こそ安く付くという実態をどういうふうに判断すべきであるかと言いたいのであります。  昨年の十月に社会保障関係においては第一次の勧告案が出されまして、本年の十月二十二日に第二次勧告案が出されておりますが、この社会保障関係に対しては、政府は何らの誠意も示されておらない。特に社会保險費の問題が社会保障費の中で問題になつて参りまするのは、医療費の国庫負担の問題であります。医療費の問題は、特に我々は今日焦眉の問題として、国庫負担は二割、結核対策費の五割を是非国庫によつて負担をして欲しい、こういう当面焦眉の問題については補正予算にでも一つ是非面倒をみて欲しいということを強く要望をいたしたいのであります。  税金につきましては、先ほど若干申上げましたように、勤労控除の点、この点については今回は何ら触れておりませんが、基礎控除、扶養控除、こういう問題は、私どもが朝鮮事変の勃発前におおむね現在の線を強く要望しておつたのでありまして、今日は朝鮮事変からおおむね五〇%前後の物価高の中にあつて、我々はこれを更に強く上廻る線で要求をせざるを得ない。勤労控除は現行一五%最高三万円を最高五万円二五%くらいに是非是正をして織込んで欲しい。更に今日はいわゆる一般生命保險は所得控除の対象になつておるようでありまするが、強制加入であつて、且つ営利的な立場ではない社会保險の掛金が控除の対象にならないという点は非常に予盾をしておると考えておるのでありまして、社会保險の掛金が少くとも控除の対象に入れられるべきであるということを強く要望したいのであります。更に一次恩給或いは退職給與等は、おおむね少くとも五十万円前後までは非課税として欲しいというふうに考えておるわけであります。なお労働組合、生活協同組合といつたようなこうした組織は低所得階級の自助的組織でございまして、福利増進のための施設であるという見地に立つて、国税、地方税共にこれは非課税を建前として考えてほしいということを強く要望いたしたいと考えるのであります。  これを総じて見ますると、民生安定の関係や社会保障関係経費というものは誠に申訳的ですらないように考えられまして、今日は三百万人もの人間が生活保護を受けざるを得ないというこうした日本の国情に果して適切に措置せられた財政であるとは考えられない。これはまさに約八百億に上る財政投資が中心であるように考えられるのでありまして、如何にも不釣合な予算であるというふうに考えざるを得ないのであります。我々はそうした意味において、この性格を強く指摘すると同時に、今日の状態から言うならば、この予算を編成した当時の状況と今の状況は非常に違つているのではないか、このような現在の状況を前提として予算は改めて考慮さるべきではないか、組替えを必要とするのではないか。今日のような危機的な要素を前提とした予算の編成方針ではないように判断をせられるのでありまして、今日の情勢に即応する予算に組替えを要請いたしたいと考えるのであります。  以上を以て私の公述を終ります。
  28. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御質問ございませんか……。御質問がなければ、次に全国指導農業協同組合連合会専務理事武正総一郎君に公述を願います。
  29. 武正総一郎

    公述人武正総一郎君) 私は国の財政については専門家でもありませんので、その意を十分に表明することはできないかも知れません。併しながら農民といたしまして、更に農村の経済に最も重要な立場を占める協同組合の組合員として、二十六年度補正予算につきまして公述をさせて頂きたいと思います。  今回の補正予算一般会計予算は、当初予算に比較いたしまして約三割に達する千八百二十五億円の財源増加しております。そうしてそれがために歳出の面において極めて余裕のある編成がなされておるように窺われるのであります。政府はこの予算を公約実現予算と表現し、我々国民に対しまして、日本経済の前途に曙光を與うべく努力されておるようであります。確かにその点は了承いたすのでありますが、併しながら我々農業者の立場から、詳細に亘りましてこの予算を拜見いたしますと、極めて農業方面に対する歳出予算額が少いようであります。従つてこの点から申上げると、実は失望いたしておるわけであります。特に歳出の追加予算額の半額を占めておりますところの出資及び投資約八百億円の中におきまして、直接国内農業の振興に関しまする必要予算額は極めて僅少であるようであります。僅かに農林漁業資金融通の三十億である。更に生糸の価格安定のための会計に三十億、それから別に主食の購入資金に使われますための食糧管理特別会計の百億円が計上されておりますが、農業の生産過程に対する生産投資は極めて零細であると言つても過言ではないと思うのであります。このことは政府最大の努力を払われまして、この予算を編成されたと思うのでありますが、明らかに農業に対しましては、出資又は投資が極めて困難である、そういうことを如実に物語つておると思うのであります。どなたがやられましても、今の日本農業に対する投資は極めて困難という答がこの予算にはつきり表明されておるのではないかと思うのであります。私が申述べるまでもなく、出資及び投資といたしまして、八百億の予算を組みますに、恐らくこの金額は余り長い年月のうちではなく、且つ赤字を生ませないように、逆にその果実を期待するというのは当然でありましよう。そうなりますと、今の日本農業は遺憾ながらその投資並びに出資の対象とならないのは明々白々だと思うのであります。それは申すまでもなく、毎年天災地変に見舞われております。本年におきましても、ルース台風の被害は九州の農業に対しまして、この数年間回復できないような傷手を與えておるわれであります。殊に鹿兒島地方におきましては、その惨状は目に余るものがあるというのでありますが、遺憾ながらそういう状況は新聞に余り報告されておらん。そういう被害が各地において年々惹起しております。更にこれも私が喋々するまでもなく、人口が年々百万乃至百三十万増加しておりまして、而も耕地は殆んどその生産性を高めることなしに、停滯しながら、そして依然として拡張されておらないのでありまして、その中に三千七百万の農民が六百九万の農家に收容されておりまして、二十五年におきましては、その農家に收容されておる殆んど全部の農民が、男女、老若を問わず、毎日働き通して、而も月平均一万四千四百円の低收入生活をし続けておる状況でありまして、こういう独立自営農民であるけれども、脆弱な性格を持つておる農業である限り、これは投資の対象にならないと思うのであります。更にコンマーシヤル・ベースで現在の日本農業を取上げることは、これ又到底できないわけであります。従つてこの農業に対する例えば金融をとりましても、コンマーシヤル・クレジツトというものは成立いたしませんで、いわゆるソフト・クレジツトと申しますか、ソシアル・クレジツトと申しまするか、そういうことで考えて行かなければ、今の農業は成立しないということをよくお含みおき願いたいと思うのであります。  そこで、どういたしましても日本農業の生産性を高めるためには、暫らくの間国の助成なり、補助の手段によつて財政支出をして頂かなければならないと思うのであります。即ち本予算において最も大胆にその線を出して頂きたかつたのでありますが、先ほど申上げましたように、この予算にはそういう補助であるとか、助成という線は少しも出ておらないのであります。更に公共事業費の点から、そいう点を取上げてみるのでありますが、これ又極めて微弱であるようであります。積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法に基く土地改良等に対する補助が二十億ばかり見積られておる。更に奥地の林道開発費補助追加分といたしまして、四億七千五百万円ほど計上してありますが、極めてこの金額は微少なものと言わざるを得ないのであります。この点につきましては、あとで又申上げたいと思うのであります。更に災害復旧事業費といたしましても、僅かに十一億円ほどしか計上されておらない。よく申されますように、東京の一、二のビルデイングの建築費ぐらいで以て、而も数府県の土地改良事業に充てようというような、こういうことでは日本の農業の再建ということはなかなかおぼつかないのではないかと思うのであります。実は我々農協運動に携わつておる者が、十月の三十一日の約一千名参集いたしまして全国大会を開催いたしたのであります。その大会でも、日本経済の自立のためには、何をおいても食糧自給体制を確立して頂かなければならない、食糧自給体制を確立するためには農家経済の安定を先ず図らなければならない、農家経済の安定を図るためには国の農業政策が他の政策に優先確立し、実践されなければならないということが決議されたわけであります。曾つて生産條件の極めてよいアメリカにおいてさえ、国家産業復興法と農業調整法を骨子といたしましたニユー・デイール政策で工業と農業の調和をとりつつ重点政策を行なつたことを我々は想起するものであります。日本においては、特に遅れた且つアジア的農業の性格からいたしまして、日本においては更に更に農業への財政が支出が必要であるということは、どなたでもわかりきつていることであります。本予算の特徴といたしまして、二十七年度予算案に相当多額に盛られる非生産消費への支出といたしまして、よく内容がわからないのでありますが、平和回復善後処理費百億円、更に予備隊等の百八十八億円等、約三百億円近い予算が組まれておるようであります。我々農業者は、このような非生産消費への支出が増大すればするほど、一方においては国の財政は農業のような生産的支出を増加することが、日本経済の自立のためには絶対必要であると確信するわけであります。どうぞそのような点から、この予算案を更に十分御檢討頂きたいと思うのであります。  次に歳入の点につきましては昭和二十六年度租税及び印紙收入等の自然増加一千五百六十八億が見込まれた結果、所得税減税が約四百億円を織込まれておる点は結構と存ずるわけでありますが、併しながら協同組合、農業協同組合のような特殊法人及び公益法人に対しての法人税については、僅かに現行通り据え置かれまして、その時殊性を極めて僅かでありますが、認められたに過ぎないわけであります。我我から見ますと、特に農協に対するこの種の税は撤廃して頂きたいということをふだんにお願いして参つておるのであります。戰前においては所得税法人税、営業税等は課税されておらなかつたのはよく御存じだと思うのであります。組合が農協のための最大奉仕をすることを目的として、営利を目的とするものでないことは戰前も現在も法律に明記されておるわけであります。そこで自然増が多大に見込まれた本年予算においては、この問題を解決して頂くためには一番いい時機であつたわけであります。アメリカにおいて先ほど申上げましたように、農業條件の極めてよいアメリカにおいてさえ、協同組合は非営利事業であることを收税官が認識しないで、組合から收益税を取立てるようなことをするので、一九二六年の歳入法では、農業協同組合の收益税の免税規定を行なつたわけであります。更に一九三四年の歳入法では、資本税及び超過利得税等の免除措置を取上げているのであります。繰返して申上げますが、日本の脆弱な農業者によつて作られております組合、而もこの農業に対して現在政府は再建整備法を施行して助成措置を講じておられる現状からするならば、更に更に所得税或いは法人税或いは営業税等の一連の課税を撤廃して頂きたくお願いいたしたいのであります。農業に対する法人税は現行の三五%に据え置かれているわけでありまして、一方においては一般法人が四二%に引上げられるにもかかわらず、農業のほうは現行法通りに据え置かれたということは結構ではありますが、併しながらこれは極めて微温的であつて、只今お話し申上げましたように、全部撤廃して頂きたいと考える次第であります。現在農業協同組合において納税組合といたしましての資格を持ちますのは一万二千二百五十二組合であります。これが三五%の法人税を課せられた場合においては約四億七千万円であります。單協一組合にいたしますれば三万円でありますが、併し現在の協同組合というものは、その多くが赤字組合でありまするので、一組合三万円の税でありましても、極めてこれは重大な影響をこうむるわけであります。この点については十分御考慮を願いたいのであります。  本予算に対しまして一応概略意見を述べさして頂いて、更に二、三の点について附言させて頂きたいのであります。本予算は只今申上げましたように、全体といたしますと、一つのコンマーシヤル・ベースによらない脆弱なる零細なる日本農業は、助成、補助等の財政支出を暫らくの間続けてもらわなければならないにもかかわらず、本予算は極めて多くの農業関係財政投資はあるけれども、農業に対する財政支出なり投資は極めて貧困だ。二といたしましては、公共事業費に若干の補助費が含まれておりますけれども、一番農民の要望しております例えば小圃地の土地改良事業等に対する補助費は見受けられない、これはどうしても考えて頂かなければならいと思うのであります。第三といたしまして、食糧自給確立と営農安定のための農業政策が少しも本予算全体を通じて現われていないということであります。更に四といたしまして、農協に対してはその社会的、非営利的な性格を十分認められまして、非課税の原則を採用されたいのであります。更に若干時間がありますので、先ほど申上げましたことについて二、三敷衍さして頂きたいのであります。例えば公共事業費の問題でありますが、この公共事業費の中に農林関係について見ますというと、非常に少いということはおわかりの通りであります。公共事業費は、例えば二十一年度予算におきましては、全体の公共事業費の中に農林関係の公共事業費は三九%の割合を占めておるのであります。同様に二十二年においては三五%、二十三年におきましては二四%、二十四年度におきましては二〇%、二十五年度におきましては一八%と、このように激減の方向に来ておるわけであります。二十六年度予算においては一六%でありましたが、今度の補正予算案の分を含めてやつと昨年と同じ一八%に盛り上つたに過ぎないわけであります。更に土地改良、開拓事業、農業施設災害復旧事業等に対して、これ又極めて少いということは先ほど申上げた通りであります。是非この点につきましては、大幅の予算増額をお願いしたいのであります。更に單作地帶振興対策に対して、先ほど申上げました通りに、單作地帶は極めて惡條件の下において農業経営をやつておりますので、農業経営の振興を図るためには二毛作の普及でありますとか、有畜農業の推進でありまするとか、畑作改善、養蚕の振興、農業林野の改良等の農業施設改善等に対しても予算措置を十分講じて頂きたいのであります。更に先ほど申上げましたように、団体営等の特に小規模灌漑排水事業等に対しまして、十分に補助をお出しを願いたいと思うのであります。更に最近どうしてもこの点についてお願いしなければならんことは、農地担保金融についての対策なり、それについての予算措置であります。農林省は農地改革の成果と、並びにその成果の維持方策といたしまして、たしか三億円だと思うのでありますが、三億円計上して、自作農維持特別会計を創設されようとしたにもかかわらず、補正予算案には全然計上されておりません。現行の農業金融にとりまして、農地の担保力喪失は一大障害であります。農林省農地局の調査によりましても、農地担保金融の需要額は実に三百三億円に達しております。このうち土地購入資金としては四十億円に近いのであります。又折角の農地改革の成果たる自作農が、借金のために土地を手放さざるを得なかつたものが二十六年四月までの一カ年において、実に三千八百戸に達すると言われております。その該当しております面積は七千六百町歩ということを聞いておるのであります。これは誠に憂慮に堪えない状況でありまして、十分この点に対する予算的な措置を御考慮願いたいのであります。  次に農業協同組合の再建整備法に伴います予算措置についてお願いいたしたいのであります。農林漁業組合再建整備法に基いて、経営不振の農協及び同連合会に対しまして、組合再建のために必要な増資奨励或いは固定化資金利子補給金といたしまして、四億八千七百万円が計上されたのでありますが、その後更に九千万円の増額が実現できたわけであります。併しながら現在我我が調査いたしました数字によりますと、その協同組合の早期増資分を含めてもなお六億九千万円が必要であるのであります。私は農林政策の根本は、農業団体の正常な発展によつて培われるものと確信いたしますものでありますので、特に本予算増額をお願いいたしたいと思うのであります。その他いろいろ郵便料金でありますとか、国鉄運賃の値上りとか、そういうもので高物価を招来し、そのはね返りが農村に與える影響は見逃しがたいと思うのであります。更にもう一つ、最近主食統制撤廃等の問題にからみまして、協同組合といたしましては、統制が撤廃されようとされまいと、十分整備しなければならない問題があるわけであります。これは申上げるまでもなく、主食を保管するところの農業倉庫の整備であろうと思うのであります。これは私の村でありますけれども、どこの村でも大体さようだと思いますが、昔は地主倉庫がありまして、相当の数量が保管できたのでありますが、現在は殆んどその地主倉庫は売却され、或いは又取壞されておるわけであります。私の村におきましても大地主が三人おりましたが、その倉庫は殆んどすべてが売り払われておるわけであります。現在例えば私の組合に例をとりますならば、倉庫は全部で三棟ありまして、百七坪の坪数を持つておるわけでありますが、それに約五千俵の米を積み込むわけであります。二十五年度におきまして、倉庫の收入は九万五千円であつたわけであります。人件費、経費等が大体二万七千円でありましたので、結局これによつて六万八千円の收益を上げたわけでありますが、併しこれは非非に現在の倉庫が完全な機能を持つておらないのでありまして、近い将来においてこれを改築するということになりますと、非常に莫大な経費がかかるわけであります。恐らく坪当り二万数千円はかかると思うのでありまして、そういうことになりますと、農業倉庫はいわゆる協同組合自体ではなかなか建設がおぼつかないと思うのであります。そういう点から我々は農業倉庫の整備のためには、政府が果敢に助成をして頂かなければならないと考えております。二十六年度予算を編成するときにおきましても、我々といたしましては、約五億の予算を編成して頂くようにお願いしておつたのでありますが、すでにその必要性は現在来ておる。ところがそういう問題におかまいなく主食の統制撤廃等が行われて参りますので、協同組合といたしましても、誠にこの点については不安を感ぜざるを得ないのであります。そういう点から農業倉庫等に対する融資なり、更にできれば助成等を果敢にやつて頂きたいことが私たちのお願いであります。大正六年から昭和十二年までに、農業倉庫に対しまして、政府は八百八十五万円の助成をしておるのであります。現在の貨幣価値に換算いたしますならば、これ又極めて厖大な助成であつたわけであります。こういう点を十分御考慮下さいまして、今後の日本の農業の確立、そのためにこの予算を更に御検討下さいまして、農業の確立は申すまでもなく、日本経済の基盤であることを十分お含みおき願いたいと考える次第であります。  甚だまずいことを申上げましたが、一応農業者並びに協同組合の立場から、本予算に対しまして公述をさせて頂いたわけであります。
  30. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御質問はございませんか……。御質問もないようでございますので、これにて本日は散会いたします。    午後二時四十七分散会