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1951-11-01 第12回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十六年十一月一日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   委員の異動 十月三十一日委員山下義信君辞任につ き、その補欠として下條恭兵君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            小野 義夫君            加納 金助君            古池 信三君            郡  祐一君            溝淵 春次君            白波瀬米吉君            深水 六郎君            山本 米治君            荒木正三郎君            伊藤  修君            内村 清次君            上條 愛一君            楠見 義男君            小林 政夫君            西田 隆男君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君   公述人    朝日新聞論説委    員       藤田 武雄君    国民経済研究協    会理事長    稲葉 秀三君    経済団体連合会    事務局長    福島 正雄君    札幌市助役   原田 與作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣送付) ○昭和二十六年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは委員会を開会いたします。  今日は公聴会でございまして、最初に朝日新聞論説委員であります藤田武雄君にお願いをいたします。
  3. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) 藤田でございます。只今委員長から御紹介に与りましたごとく、朝日新聞論説委員というお言葉がありましたが、論説委員室意見を代表するものではございませんから、その点念のため申上げます。  このたびの補正予算案を一覧いたしまして感ずることはいろいろございますが、その一つとして、補正予算の拠つてつて経済政策と申しますか、現在政府のとつております自由主義を根幹とする経済政策、そういうものと予算との関係、こういうものが先ず第一に感じるのでありますが、私はそういう問題があるということだけを指摘しておきまして、もつと具体的な一、二の点について感じたことを申上げてみたいと思います。  第一は、このたびの補正予算一つ傾向と申しますか、政府資金をかなり活用しているという点がございます。見返資金の百三十五億を初めとして、開発銀行輸出銀行、合わせて三百七十五億というものを計上しております。この政府努力に対しては一応賛意を表したのでありますが、併し現在の日本経済状態、或いは財政状態などを考えましたときに、果してこのような不徹底なやり方で我々の国民生活というものが本格的に維持向上できるものであるかどうかという疑いを持つのであります。と申しますのは、三百七十五億の政府資金投出資増加計上されてはおりますが、当初予算は約千六十六億であります。これに比べ増加率は約三割程度のものに過ぎないのであります。その間において物価の騰貴などを考えて見ますと、名目的には三割でありますが、当初予算計画いたしました実質的な計画量、或いは政策の目標というものを考えますと、実際に効果をあらしめる、いわゆる政策として計画量が具体的に増加するという点になりますと、果してどれだけの歩止りかという疑いが十分あるのであります。  それからもう一つは、各種の方面資金を投入はしておりますが、もう少し国民生活の基幹に関係を将来及ぼすような、何と申しますか、基本的な産業、特に動力エネルギー拡大増加、そういう方面に、もう少し思い切つた資金を投入できないか。いや、むしろ投入すべきである。かように考えるのであります。申すまでもなく、一国経済規模発展、或いは国民経済拡大国民生活水準の向上ということが、すべて動力エネルギーの量によつて判断できる。そういう大切な動力エネルギーについて、もう少しこの際政府は積極的に、むしろ一部のものは差控えてもこういう方面に集中的に政府資金を活用すべきではないか、かように考えるのであります。特に最近我々が身を以て体験しております電力事業の非常な低調、いわゆる電力の危機、こういうことを考えますと、なぜ政府はもう少しこういう方面に徹底的な対策を立てないのであろうか、こう考えるのであります。勿論政府においても、或いは第二の追加予算考慮しているかも知れませんが、一日も早く電源開発のために、もう少し国家的の資金を投入して頂きたい、こう考えるのであります。最近伝えられているところを見ますと、東京、神戸間に非常な大きな産業道路を作るという計画政府の内部にあると言われておりますが、我々国民からいたしますと、この約数カ年に一千億の財政資金を投入して、それが我々の国民生活の上にはね返つて来るプラス、そういうものと、当面の例えば電源開発、そういうものにこの一千億を追加して、計画以上に更に大規模のものをやるということと比較考慮してみますと、この道路政策などはもう暫く見送つて、当面の問題であり、而も国民経済の基本となる動力エネルギーの増産に、もう少し予算措置を講ずべきである、かように考えるのであります。  それからもう一つの点は、この度政府は約補正予算の上で四百五億、平年度に直しますと約八百億程度減税考慮しておるのでありまするが、そうして池田大蔵大臣財政説明補正予算説明においても述べておるのでありますが、国民生活の安定或いは税金負担軽減する、それがために今度の減税措置をとると、かように申しておるのでありますが、私はこの点を考えまして一つの疑問を持つものであります。と申しますのは、この減税恩恵に浴する、恩恵にあずかる国民の数というものが八千三百万人の国民のうち、果して何人おるであろうかという点であります。仮に所得税だけについて推算して見ますと、個人所得税を納税する納税人の数というものは、源泉徴収関係で約二千九百万人、申告納税関係で二千四百万人、勿論この中には納税者及びその扶養家族を加えての話であります。だから納税者並びにその扶養家族言葉を換えて言いますと、減税によつて或いは生活負担軽減され、或いは租税負担軽減されるということに直接関係のある国民というものは約五千三百万人、或いはもう少し端数が出るかも知れませんが、五千三百八十万人くらいになろうと思いますが、そのうち申告納税源泉納税との二重にやつておられる納税者もありますから、そういうものを調整しますと、更に五千三百万人か五千三百八十万人の数が更に減るわけであります。そういたしますと、残る約三千万人、これらの人々は今度の減税とは縁もゆかりもない実に気の毒な人ばかりであります。従つて政府は今度の減税によつて負担軽減を図る或いは国民生活の安定に資すると、こう申しておりますが、それは飽くまでも八千三百万人のうち、約五千三百万人、或いはそれ以下の人々相手にしての考え方であつて、八千三百万人、全国民相手の問題ではないのであります。勿論税金を納めていない、或いは納めていない人々扶養家族、そういうような人々租税政策減税政策負担軽減することはできないのでありますから、それには或いは社会保障制度、或いは主食の特別な低米価政策による生活の安定、他の方面生活保障政策を併用して始めてそこに均衡がとれ、同時にいわゆる所得税による国民所得の再分配という問題も完全に実施できるのじやないかと思うのであります。ところが今度の補正予算を見ますと、そういつた減税をいたしますが、残りの三千万人の国民に対しては何一つ手を打つていないのであります。  そういう点につきまして、私は今度の補正予算一つの大きな政策としては弱点が中に潜んでいるのではないか、こういうことを感ずるのであります。従いましてこの減税を勿論私はやることは賛成であります。或いはもつと以上に、より以上に減税を希望するものでありますが、同時に減税によつて生活の安定或いは負担軽減を実行する余地のない、そういうことで実行できないグループ三千万人の人々のためにも一段の財政措置或いは何らかの方法による救済措置そういうものを合せて考慮すべきである、こう考えます。今度の補正予算を見ましても社会及び労働施設費保健衛生費、そういうものは殆んど増額されていないのであります。むしろ労働者の失業の減少による保険給付の金額の減少等によつてむしろ減少しておるという傾向さえあるのであります。保健衛生費は多少殖えておりますが、これも国立病院等の職員の給与、或いは物件費増加そういうものが大部分でありまして、いわゆる政策を意味した増加ではないのであります。  従つて財政政策といたしましては、減税も勿論必要でありますが、同時にそれと相並んで減税によつて救済できない部類の人々のための施策が絶対に必要である、こう考えるわけであります。といつても、それでは所得税を非常に減税をやめて、或いは増徴して他の気の毒な人々のためにそれを廻すというところまでは私は考えないのであります。  勿論現在の所得税負担は決して軽くない。勿論これは更に明年度においても引続き減税を続行すべきである。こういう建前でおります。現在の租税負担から見ましても、政府計算によりますと、月一万五千円の勤労所得家族六人……、総数六人の家庭で而も税金を取るというように甚だしく負担が重いのであります。一万五千円の収入勤労者家族六人で生活して行くという、その生活内容考えますれば、どんなものであるかということは想像に余りあるのであります。こういうものさえ税金を納めている。そういうものさえ税金をかけているというのでありまするから、減税はもつと低額所得者のために、大幅に更に断行すべきである、こう考えるのであります。  そういたしますと、結局減税もし一方では社会保障費を大幅に増額する、ちよつと要求が無理な感じもいたしますのですが、それが今後における日本財政の乗り越えなければならない一つの大きな仕事ではないかと思うのであります。一方では減税をやり一方では社会保障制度を拡充して行く、或いは低額所得者生活を確保するという、二つの相反したような要求を、而も共に実現して行く、そういうためには財政政策も今のような、ただ自然増収があるから非常にラフな予算を組むとか、或いは余り先のことを考えないで、当面の情勢に楽々と応ずるというようなことではむずかしいのではないかと思うのであります。と申しますのは、結局こういう二つの相反したような要求を共に実現するためには、期するところ財政内容が非常に健康な姿で編成すること、それ以外にはないのであります。不生産的な支出最小限度に食いとめる、そうして一方には生産の増強を徹底して国民の一人当りの生産を増大して行く、これ以外に手はないのであります。本年度においても、すでに予備隊費がかなり当初予算に比べると倍近い増額を示しておりますが、こういう不生産的なものが、財政の構成として非常に大きな割合を占めて参りますと、とても今申上げましたような二つの要請は実現できないのであります。予算内容をなるべく生産性の高いものに持つて行く、こういう覚悟が必要であろうと思います。  最近ドツジ氏は、日本減税などは余り考え方が甘すぎる、こういうことを申しておりますが、或いは税率だけから考えると、アメリカイギリスと比べますと、日本は或いは甘いかも知れない、或いはアメリカ増税して、イギリス増税する、日本だけが減税するのは、形の上では何だかちぐはぐな感じがないでもないのでありますが、国民生活水準というものを、アメリカ日本と比較して参つた場合、とてもそのドツジさんの言われるような考え方で、若し予算を編成するといたしますれば、これはとても生活水準維持は勿論、非常な低下を覚悟の前でやらざるを得ないのであります。我々の生活は先ほども申しましたように、税金も納められないような、納められないでなくて、取ることのできないような階級が全国民の三割五分程度もある。この生活内容からいいまして、この上増税をするなんということは、とても私は想像もつかないことであります。こういう点から申しまして、減税は更に来年度も引続いて低額所得者の階層のために続行して行く、そうして一方の三千万人の生活保障のためには、予算の編成の内容生産的なものに極力編成して行き、不生産的なものを成るべく抑制して行く、これ以外にないと思つております。若し今のような情勢が引続いて続くようなことを想像いたしますと、恐らく幾ら予備隊作つても、予備隊自身生活が不安定になる、予備隊個人の、隊員個人生活さえも不安定になつて来るというようなことに相成つたのでは、国の治安維持というものは非常に危殆に瀕するのではないかと、こう考えるのであります。そういう意味におきまして今度の補正予算、或いは、それは政治のあり方にも通ずるものではありますが、もう一度考え直してみて、全体のバランスのとれた内容にすることが最も必要ではないか、こう考えます。  これで終ります。
  4. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 何か御質問はございませんか。
  5. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 電力の問題でございますけれども、先生のお説と全く同じような考えを持つておりますけれども、丁度朝鮮の動乱以来、特需の景気で賑わつておりますし、丁度アメリカイギリスが軍備のために余り輸出ができにくいような状態でございますので、そのあと国際市場日本が進出いたしますに丁度絶好のチヤンスだと存じますけれども、先生のおつしやる通りここ二、三年以来の動力源と申しますか、電力とか石炭とか、そういつたものの手薄のためにそのチヤンスを据えにくいような情勢ですけれども、政府も遅ればせながら、昨日も聞いてみますと、何でも五ヵ年計画で七千六百億円とかの電力資本金を出すそうでございますけれども、私たち考えますのに、五年後の月日を待つというのはどうも待ち遠しうございます。これはできるだけ早く成功するほど、日本発展が早いと思いますので、その労力もございますし、資材もありますけれども、資本金が足りないと政府は言いますが、丁度今回の予算を見ましても、大体七百億円に近いインベントリーに類する余裕金があるように思いますし、政府の手許でも、資金部とか運用部資金が千百億円くらいありますので、大体千八百億、来年度もまだ講和に伴う支出はそう十分出さなくていいので、二千五百億くらいありますので、あとの五千億、これくらいが足りないと思うのですけれども、国民運動を起しまして公債にでも期待するか、そのほか先生のお考えになります方面で何とかもつと上手に資金を捻出する方法ございませんでしようか、もつと早くということなんですが……。
  6. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) 私もお説には全く同感でありますが、一時電源開発のためには外資導入という点に非常に大きな期待をかけておつたようでありますが、現在のところでは、それも早急に間に合わないというような情勢がかなりはつきりして参つた今日、勿論そういうような外資導入努力も引続いて続けなければ相成りませんが、やはり自分たちの力で、多少の苦しい思いはしても資金を調達して行き、特に電源開発の場合は、所要資材が主として国内生産で間に合うというような、非常な便利な点もありますので、国内資金を調達する、併しその資金の調達は或いは日本銀行等から金を出す、或いは日本銀行公債を引受けさすというようなことは、私はやはり通貨膨脹の危険がますます深くなつて参りますので、やはり財政投資でやつて行くべきだ、国家資金を投入して、そうして大規模平和記念道路でなくして、平和記念のダムを作るべきだ、それは国家資金でやるべきだ、その技術的な点においては、経営形態にはいろいろ問題がありましようが、建前としては民間に任すべきでなく、国家資金でやつて行く、そういうために仮に我々の税金が多少減るべきものが減らなくても、それなら国民は納得し我慢する、こういうように考えられるのであります。
  7. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 もう一つ警察予備隊支出が多くて、社会保障制度のほうにたくさん廻せないとおつしやいましたけれども、私どもやはりアメリカさんが日本に長くとどまつてくれるということは有難いようでございますけれども、やはり独立国の体面といたしまして、できるだけ強く防衛態勢を整えるほうがいいと思うのでありますが、警察予備隊を基準といたしまして、先生国内防衛をどういうふうにお考えでありましようか。
  8. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) 非常にむずかしい問題でございます。むしろ政治の問題でありまするが、その考え方として予備隊さえあれば治安は大丈夫だ、こういうように考えるが、先ず国民生活の安定がなければ、百万の予備隊を持つて治安は確保できない、こう考える。そこに考え方がいろいろあると思うのでありまするが、私はときどき例えば或る群衆警官あたりの揉み合つている状況を見たときに感じるのでありますが、実に群衆の何といいますか、群衆心理というものは非常に我々の想像もつかない常軌を逸した方向に動く、こう考えるのであります。大正七年の例の米騒動にいたしましても、元は福井かどこかの寒村が始めたことが全国的にああいうようになつて来ると、或るそこに社会的な不安定な、特にそれが生活に結び付いた問題が弥漫して参りますると、あの当時のように強力なる大日本帝国軍人があり、警察制度があつても手が付けられないというような状況に相成つたことを考えますと、やはり予備隊は勿論必要でありますけれども、警察官も勿論必要でありますが、同時に生活の安定という点に相当考慮をいたさないと、なかなか問題は目先に片付いたように見えても、ぶつぶつと煙が立つているというのでは今日のような非常な国際的にも困難な立場に立つておる日本、特に思想的にはますます陰にこもるというような気配がある今日、予備隊さえあればこれで抑えて行けるというようにも割切つて考えることは無理じやないか、こう考えるのであります。
  9. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかに御質問はありませんか。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 ちよつとお伺いしたいのでありますが、只今減税の問題ですが、これは減税はしばしば当院でも論議になつたよう税法上の減税じやないか、実質的には地方税を合せて約千五百億の実際徴収が多くなる。こういう点が非常にドツジ氏の来朝なんかを通じて論議の的になつておると思うのであります。それでこれについて飽くまで減税だということが池田蔵相なんかに主張されているのでありますが、併しこれに対して最近又自由党の政調会長あたりでは、これは国際的なそういう関連もあると見えまして、これは減税というよりも税の調整だ、こういうようなことで、そこに非常にデリケートの問題があると思うのでありますけれども、どういうふうにこれは御覧になつているか。つまり税法上の減税というような形で、実質的にはむしろ増税になつていると我々は考えておるわけなんですが、これについてどういうような見解を持つておられますか、ちよつとこの際お伺いしておきたいと思います。
  11. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) 減税の問題は、建前としてはこれは税法上という角度からも一応見るのが理論的ではないかと思うのですが、今度の場合は政府計算しておりますいわゆる勤労者あたり生計費増加、それと減税による負担軽減というものは、大体バランスがとれているように計算が出ておりますが、併しそれも去年の八月以来主食電気、塩、食塩、それから十一月から実施されました電信電話交通費を通じ、そういうものだけであれば一応税金を払つておる階級は、これに伴う生計費増加減税でカバーする、それ以上に多少その所得税税金にかける場合に、税率の段階がきざんでありますから、その人の所得によつて多少の計算の不一致のジグザグがあると思いますが、一応形式上では先ず調整がやはり主である。少くともそういう趣旨の上から見ると、減税部分は非常に実質的に負担の減となつたものは非常に少くて、大部分生計費の上昇でいわゆる相殺されている、こういうふうに見るべきじやないかと思います。而も去年の今頃二十六年度予算が編成された当時からの生計費、或いは一般物価、こういうものを考えますと、今申しましたような八月からでもやつと相殺する程度でありますから、やはり実質上の減税でなくて調整だということのほうが当つているのじやないか、こう考えます。
  12. 岩間正男

    岩間正男君 この委員会物価庁並びに安本からちよつと聞いたのでありますが、そのときの資料によりますと、今度のベース・アップ並びに減税によつて、それから今の諸物価値上り、こういうものを相殺してみるというと、大体夫婦で扶養家族が二人で一万五千円、そういう場合に大体百七十四円くらいの黒字になる、こういうような資料が出されたのであります。併しこの中で一番やはり大きな問題は、すでに今日から実施されておるのでありますが、交通費電信電話それからこの前の主食電気、こういうものの値上りによる直接の負担、こういうものだけで計算されておつて、それが一般物価に大きく生産コストの面からはね返つて行く面について、これは何ら調査がなされていない。併しそういうものを吸収しますと、今度の減税並びにベース・アツプでは、とても今までのそういうバランスをとることはできないのじやないかというふうに考えられるのでありますが、この一般物価の撥返りというものを考慮に入れると、それでもそういうことを含めてもなお大体バランスがとれそうなのだ、こういう御意見なのでしようか。
  13. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) その点は私も確実なる数字を持つていないのでありますが、政府なんかの試算によりますと、大体八月からの計算を出している。従つて一カ月前に遡つて我々の生活の実態を考えると、私の実感から言いますと、なかなかこれだけの減税で、或いはその人の収入程度によつてはカバーし切れない人もありましようし、或いはお金持で二等で通勤しているがそれを三等の料金計算して行けば黒字になるというような階級もあるかも知れない。生計費も非常に高い水準の人から見れば……、要するに響くのは、月八千円勤労者通勤費も、月十万円の高給者通勤費計算の上では三等の料金計算されております。そういう点から行くと余裕のある人は多少黒字になるかも知れない。そういう感じがありますが、ただ確実な数字が私のほうでははつきりいたしません。
  14. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかに御質問ございませんか。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほどのお話課税対象にならないもつと少額な人たちに対する生活安定の手を打たなければならない。それが今度の補正予算ではちつとも考えられていないというようなお話つたと思うのですが、誠にその点は私も同感なんですが、そこでお尋ねしたいことは、そういうふうな非課税対象の諸君の生活安定に資するために打たなければならないと考えられる経済的な諸政策、特に財政的な措置とは、具体的にはどういうものをお考えになつているのか、その点をもう少し詳しくお聞かせ願いたい。
  16. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) 先ず一番頭にぴんと来ますのは、主食を安く配給するということが第一だと思うのです。政府は統制を撤廃して自由販売で行くというような方針でものを考えているようでありますが、仮に生産者と消費者の立場がどうしても一致しなければ、その調整のためには食糧補給金を計上いたしましても、主食だけは折角ここまで、これは発足の動機は何らそこに理論はなくして止むを得ず発足したのでありますが、ここまででき上つている、この或る意味における食糧の社会化というような方向に現実は参つておるのでありますから、これを更に後退さすという理由は少しもない。制度の上でもそう思います。それから実際問題としてもやはり成るべく低米価制度を実行して行く。それには補給金もあえて辞せない、こういう考えであります。そのほか今日生活保護法のお世話になつている人々が或いは三百万人近くありますが、勿論この中には一方で生活保護をもらい、一方で医療補助をもらい、或いは子供は勉学補助をもらつているというダブッている方面もありますが、延べにすると三百万人近いものがあります。こういうものを、要するに生計費の上昇は等しく受け、而も受ける感じは一番強いのであります。こういう階級のいわゆる生活保護法をもう少し活用する、こう考えるのであります。それからそれに関連しまして、今年の秋からいろいろ議論になつておりました学校の給食制度のほうもああいう形で行わないで、あれを生活保護のほうに切替えて行く、こういうことにすれば筋も立ち而も効果がある、こういうふうに考えております。医療の国営若しくは或いはもう少し医療を社会化して医療保護を徹底するということも必要だと思います。まあそんなところが当面の問題じやないかと思います。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 財政内容を健全にしなければならないし、従つて非常に生産的なものにしなければならない。そうして生産支出を削るべきだというお話で、その一例として予備隊の費用が出たんですが、更に予備隊の費用以外に、今度の補正予算を通じて生産的であり、従つてそうした大幅に削るべきだというふうにお考えになつておるような気持はどういうのですか。
  18. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) ほかには今度の予算を見ますと殖えた原因が、いろいろ事情があつて殖えたものがあるのですが、やはり一番大きなのは、先にどなたかお話のあつたように、外国為替特別会計への一般会計からの繰入れでありますが、これが当初予算で五百億、補正予算で三百億、合計八百億の繰入れを行なつておるのであります。而も今度の三百億の繰入れを行う場合に、政府は外為会計の借入限度を、従来あつたのをむしろ減して、その一部を一般会計からの繰入で振替えて行くというような、何と申しますか、やらなくてもいい措置をやつてまでインベントリーの威力を発揮させようというのかも知れませんが、そういうような措置までして、財源を何といいますか、リザーヴをとろうという、こういう措置、或いはこれは池田さんの来年度財政規模を現在の程度殖えても僅かしか殖やさんということの裏返しかも知れませんが、来年はそういう巾著の袋を開けて、入れてあるのを引張り出して、講和後の財政需要に応ずるという意味かも知れませんが、私の感じでは勿論そういうようなことも必要だと思います。或る程度の、来年の財政の需要を考慮した場合に本年から何がしかの準備をする、そういう心がまえは必要だと思いますが、でき得ればぎりぎりのところまで財政支出を決定しておいて、できればそういう、含みを残さないで、若し来年の分担金が非常に殖える、賠償が非常に殖えるということになれば、その際改めて考える。そうしてどうしても増税が必要であれば国会の審議にかける。そうして国民考え、且つ判断する機会を十分与えて、若し自衛力を拡充するならば財政措置を講ずる、ただ国民としては余り直接に感じさせないで、いつの間にやら気が付いたときに非常に大きなものが隠れておつたというようなことにならないほうが、むしろ民主的であり、合理的である。成るべく国民にそういう問題については真剣に考える機会を与えるためには、今日財源があれば減税もよろしい、或いは財政投資もうんとやつておいて、来年若し分担金が殖えれば、賠償が殖えれば、それは改めて国会にかける、そうして、どうしても止むを得なければ、増税もやるし、そういう意味で本年度に減らしてあれば、来年増税してもよろしい、これを本年度にろくろく減税もいい加減のことをやつておいて、更に来年増税ということは私はいけない、こう考えるのであります。
  19. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかに……。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほど減税お話が出ましたが、特に低額所得者のためには更に大幅な減税をすべきだというようなお話がありましたが、あなたのお感じでは、更にどの程度くらいをやればもつと耐え得る税負担額かというふうに、具体的に申上げれば、例えば基礎控除、扶養控除、その辺を今後どのくらいにしたらいいというお感じを持つておられますか。
  21. 藤田武雄

    公述人藤田武雄君) 先にもお話したように、月額一万五千円で本人とも六人の家族でも税金を何がしかかけるという現在の課税は、まあ私たちが一万五千円で五人の扶養家族を抱えて自分で生活して行くことを考えた場合、なかなか大変だろうと思います。全国の消費者家計支出の調査を見ましても、一人当り二千九百円から三千円近い実数になつておりますが、これはまあ平均で、それより低いものも高いものもありますから、そのまま当てはまりませんけれども、この程度階級税金を取るということは、これは非常に負担が実際問題として重い、そのくせ例えば独身者の月額八千円の給与に対しては、今度で月に五百二十六円ですか、税金を取つておりますが、そうすると残るところが約七千四、五百円、独身者と家族持ちとそのまま人数で倍にするわけにも行きませんけれども、ここらにもやはり独身者と家族持ちのバランスが少し逸しているのではないかという感じがするのであります。  基礎控除と扶養控除の問題ですが、アメリカあたりは扶養控除も基礎控除も同額になつておるようであります。併しそれは素人に言わせれば、アメリカのほうは何といいますか、むしろアメリカのほうでは、日本のほうが基礎控除が多過ぎるのだと言うかも知れませんが、我々の気持から、日本の場合、基礎控除と扶養控除とを、基礎控除五万円、扶養控除も一人当り五万円にすれば、これは大変な減税になる。併し財務当局としてはそこらが非常に減収になるので痛し痒し、実情を恐らく主税当局も認めておるのでありましようが、一番税収に響くものでありますから、この辺でとつておるのだと思いますが、何といつても一万五千円で六人家族税金を取るというのはひどいと思います。もう少しその点を切上げる必要があると思います。  それから勤労所得と申告所得との比例がどうもとれていないという感じがするのでありますが、この点でまだもう少し徴税的に考慮を加えるならば、私は相当の税収を上げ得るのじやないかと思うのです。と申しますのは、今年度国民所得の構成を見ますと、勤労所得が一兆九千億程度になつております。それに対して勤労所得税を納めておる人の所得ですね、税額じやありません、税金じやない、勤労所得税を納めておる人の所得の総額が約一兆三千億、そうすると六七%ぐらいに当つておりますが、そうしてその部分は殆んど九五%ぐらいまで、五%程度勤労所得の脱税を見るといたしますれば、かなり押えられておる。これに比べて個人業種の所得を見ますと、国民所得では二兆を超えております。それが個人業種のかたで所得税を納めておる人の総所得について税務署で押えておるのは約七千億、そうしますと四割少々しか押えていないのであります。そうして四割少々のうち、税務署が課税の対象として本当に把握しておるのは約六〇%見当だと言われておるのであります。そういたしますと、勿論この中には個人業種の人は家族勤労所得者の倍くらいの扶養家族を持つておりますから、勤労所得者の平均は二人でありますが、個人業種は四人という関係から見ますと、そこに勤労所得者よりも個人業種のほうが家族持ちが非常に多い。それがために国民所得計算の上で二兆出ておるが、実際には納税者所得で押えるのは、七千億しか押えられないということも響いておるのでありますが、主たる原因は、これは実証するわけには参りませんが、やはり徴税をもう少し合理的に、もう少し厳しくやれば、少くとも今の捕捉の六〇%を八〇%程度まで引上げることが成功いたしますならば、この点にも財源もまだあるのじやないか、こう考えるのであります。だから不均衡は所得個人勤労者相互の間にもありますが、申告所得と源泉徴段階級との間にもあるのじやないか。特にまあ最近多少徴税方式を改めては参つておりますが、個人業種の人の申告をそのまま尊重して、これは非常に結構なことでありますが、少くとも現在の国民の道義の水準から考えて、又戦後続いた何と言いますか、脱税の滲み込んでおる風潮から考えまして、申告を持つて来い、判を押して、よろしいというような、今年の……前年度の暮ですか、今年の初めですかから一時あつたような甘い方法でやつたのでは、個人業種同士の間にも不均衡があります。正直な者は損をするし、勤労者との間の不均衡はますます拡大して来る。甚だ遺憾ではありますが、やはり更生決定も相当厳重にやるという徴税方式をとらない限り、何もかにも申告そのままを尊重するというような極く最近まで行われた、最近少しは強化しておりますが、このような徴税方式は脱税がますます殖えるばかりで、財源はますます逃げるばかり、そうして負担は不均衡、こういう感じがいたすわけであります。
  22. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかに御質問はございませんか……。どうも有難うございました。  次の公述人の岡君が急に用事ができまして、午前参れないそうでありますので、一時休憩いたします。午後は一時から再開いたします。    午前十一時四十一分休憩    —————・—————    午後一時二十三分開会
  23. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に続きまして公聴会を再開いたします。  国民経済研究協会の理事長稲葉秀三君のお話を承わります。
  24. 稲葉秀三

    公述人(稲葉秀三君) 私稲葉秀三であります。補正予算に対しまする意見を述べさして頂きたいと思います。  今回の補正予算の構成を見ますると、先ず歳入面におきまして当初予算の歳入計画を確保いたしますると、所得税で五百二十五億、二五%、法人税で八百五十五億、約三五%、再評価税で三十億、二五%、酒税で九十億、約八%、揮発油税で三十二億、三〇%その他を併せまして千五百六十八億、約三五%の税収の増加が期待できる。それを所得税部面で源泉において四百七億の減税に、法人税におきまして二億六千万円の増徴になりまして、そうして四百五億円の収入増加を見込む。而して千百六十三億円の歳入増加を確保し、更に官業収入と雑収入増加を計上いたしまして、総計千三百六十二億円の税収を確保する。  今度は支出面におきまして、これは予算の組替を若干行なつたのでございますが、先ず第一に講和関係の費用といたしまして、平和改善善後処理費に百億円、国際開発銀行の加盟に備えまして二百億円、合計約三百億円それから治安関係経費といたしまして、国警予備隊に百五十億円、国家地方警察に三十六億円計百八十六億円、公共事業費の増加に四十一億円、地方平衡交付金に百億、出資と投資に六百億円、以上合計で千二百二十七億円、その他の支出増加支出減少見込、これを併せまして結局前述いたしました千三百六十二億円の歳出増加が計上できると、こういつたような構成になつていると思うのであります。  そうして私はこれだけ増税が期待でき、そうしてこれだけ支出ができる。この意味におきまして、私はこの予算の組み方は一見非常に合理的であると思います。前年度並びに前々年度におきまして、大蔵省でいろいろお組みになりました財政計画につきましても、そういつたようなことを我々は感じておりましたが、やはりそういつたような部面におきまして、今度の予算におきましてもそういつたよう感じを受けるのであります。そこで池田蔵相財政方針演説によりますると、次のような点が強調せられております。即ち経済運営の基本方針を安定と能率と発展の三点に置いて、そうして特に健全財政を中心にいたしまして、先ず第一に租税負担の合理的調整によつて勤労意欲の向上を図るようにこの予算は組まれている。第二点は、直接的な経済統制を廃して、資金面から調整を図つて行く。そうして資金計画化の要素を現状に比べて今後増加をして行く。そうして為替レート不変の下において、今後の態勢を整備して行く。こういつたよう考え方のようであります。私は方針といたしまして別にこれには異議はございません。ただ問題はこの予算を通じて今闡明せられた具体的な基本方針が現実的に果して解決できるかどうか。今後の私どもが見通しておりますところの経済の諸条件、こういつたものと関連をいたしまして、それがうまく運営できるだけの基礎がこの予算に確保されているかどうか。この点を先ず問題として取上げてみたいと思うのであります。  そこで私は時間の関係もございますので、先ず三つの点を一つ論じてみたいと思います。その第一は、方針の第一項に言われておりますように、国民生活或いは勤労意欲が、これによつて十分刺戟されるだけの予算面或いは経済政策面の裏付けが、この予算によつてなされているかどうか。第二点は企業活動が今後上昇して行くようにこの予算面で裏付けが行われているかどうか。それから第三点がこの中央財政と地方財政と結び付けて考えました場合において、果してこれによつて中央と地方との均衡が確保できるかどうか。この三点であります。以下簡単に私の予想を申上げたいと思います。  先ず第一に、この予算を通じまして国民生活は確保せられ、勤労者生活保障は行われて生産向上に大いに役に立つ。こういつたような基礎が確保せられているかどうかということであります。統計数字を引用いたしまして恐縮でございますが、日本銀行の発表いたしておりまするところの東京小売物価は本年一月におきまして昭和九—十一年の二百九十五倍であります。それがこの八月には三百四十八倍であり、一八%の騰貴を示しております。それから同じく東京都の消費者価格指数を見て参りますと、一月と八月と比べまして約九%のいわゆる値上りを示しております。経済安定本部で発表いたしまするところの消費者価格指数を基にいたしました都市消費水準はこの八月には昭和九—十一年平均の六五・一%というところに低下をいたしました。昭和二十四年におきましては六八・二でありました。昨年の昭和二十五年におきましては七三・〇、それが今日六五・一と下つておるわけであります。私どもの研究所でやつておりまする今後の生計費の推算、これは将来のことでございますから非常にむずかしいと思います。併しながら最近の物価傾向、これを基にして将来の推算をいたしますると、大体現水準に比べまして来年の三月までに約一〇%見当のいわゆる消費者物価、即ち生計費の上昇、これが記録できるのではないか、こういうふうに考えるのであります。ところがそういつたような現状に照しまして今回源泉所得税減税を見ましたということは誠に結構なことであると思うのであります。併しながらその実態は一般都市勤労者に対しまして今後実質賃金を維持して行くか、或いは更に実質賃金の向上を実現して行くかどうかということになりますると、私はやはり問題があると思うのであります。現に源泉所得税につきましては当初の千五十億円の収入計画が五百七十九億円自然増収が見込まれる。それに対しまして三百六億円の減税ということが計上せられておるわけでありまするから、やはり当初に比べまして給料生活者、或いは勤労者税金は二百七十三億円以上の増徴ということになつております。この点は申告納税者の負担が実際に比べまして百五十億円減らされておるという結果と対比をいたしました場合におきまして非常に私は不均衡が招来して行くのではないか。こういうふうに感じるのであります。  第二に、私は企業活動はこの税制によつてどういつたようなことになるだろうか、こういつたような点を申上げて見たいと思います。法人税は実に予定の倍以上の増徴というふうなことになるのであります。これは実に朝鮮動乱に基くところの事業活動の活溌化と企業利潤の増大、これによるものであると思います。併しながら私どもの測定によりますると、実際のいわゆる事業活動力の増加は約二五%見当ではないかと思うのであります。そういたしますると結局法人税が自然増収が期待できると言われた基礎はやはり名目的な基礎によるのではないか。こういうふうに感じられるのであります。私は最近民間の企業のかたがたに非常に接触が多いのであります。そうして最近の企業経理の実態ということにつきましていろいろ見聞する機会を多く持つておるのであります。ところが私どもの推察では企業経営は健全化、自立化、こういつたような方向に必ずしも進んでおる、こういうふうには感じられないのであります。もう少し突込んで申上げますれば、企業は成るほど勘定面ではプラスになつたという要素はございますけれども、実際面におきましては企業活動の旺盛と物価騰貴とこういつたよう傾向に悩みまして、運転資金の需要、こういつたものに対して狂奔しておるわけであります。そしてそういつたようなことがいわゆる財政面におきましては健全化が行われておりまする半面におきまして、最近の日銀貸出しにも現われておりまするように、企業の金融依存度がだんだんと高くなつて行く、こういつたよう傾向を示しておるのであります。納税引当金を差引きまして企業の運転資金が十分確保せられておるかと申しますると、決してそういつたような実情にはなつていないと思うのであります。つまり最近の状況を申上げまするならば、財政の健全化のしわがやはり企業に寄りつつある。そして若しもこの予算がやはり文字通り施行されるといたしますると、私は今後におきましてもやはりそういつたよう傾向が生じて来るのではないかと思うのであります。そうしてそのことが結局インフレ再燃といつたようなことにつきまして、それほど急激ではございませんでしようけれども、だんだんと火がつく傾向、こういつたものを招来して行くのではないかと思うのであります。私は企業の実態の活動がだんだんと高まつて行く。こういつたようなことになりますると、必然的にやはり資金需要といつたものは増加せざるを得ないと思うのであります。そうして財政面におきまして資金需要が賄わられないといたしますと、金融面においてそれを賄つて行かなければならない。こういつたよう傾向が生じて来ると思うのであります。今回の法人税額の改訂は税率の引上げにもかかわらず増収といつたことを計上いたしていないのでございまして、全般的に企業活動に対しましてそう大きなマイナスを与えるというふうなものではないと思うのであります。併しながら現状に照しまして今後自主的に企業が設備資金を調達できるか、或いはより高度な合理化を遂行できるかと申しますると、この点につきましては私どもは確実にこれで裏付けがされておる、こういうふうには考えられないのであります。  第三に、中央と地方との財政の均衡がこれによつて確保せられるかどうかという点を問題にして見たいと思います。地方財政につきましては最近非常に不均衡が生じておる。特にいわゆる地方の農業県におきましてその傾向が強いということは周知の通りであります。私は最近自分の仕事の面におきまして各地方の府県に出張をいたしまして、経済の検討をやりましたり、或いは計画を樹立をすると、こういつたような機会に恵まれております。私はシヤウプ勧告は非常に合理的な財政計画であると、こういつたようなことを考えております。ところが実際に地方の財政の実情といつたものを見ますると、現実面におきましては、私はこの考えておりました認識を改めなければならないと、こういつたような現状に変りつつあるわけであります。各府県ごとの財政の間に非常にアンバランスがあるような気がいたします。更に各府県内部におきましても、市町村ごとに非常にでこぼこがある。そして現在の平衡交付金制度は、決してこれに対しまして完全な調整を行なつていない、こういつたような結論に最近到達をしているのであります。特に最近私が強く感じまする点は、どの府県に参りましても、知事さん或いは事務当局は中央に準ずるところの給与ベースの引上げを行うということ、上げてどういつたよう財政調整をすべきかと、こういつたようなことにつきまして非常に苦慮をされておると思うのであります。私は今後この地方財政のあり方につきましては、もつと徹底的な検討が必要だろうと思います。併しながら当面のことについて申上げまするならば、今回の百億円の交付金の増加だけでは、私は中央と地方との権衡はなかなか得られないのではないかと、こういうふうに思うのであります。時間の関係で余り立入つた説明はできかねるのでございますが、以上の私が感じておりました実情に照らしまして、今回の補正予算、これを見ました場合において、私は若干いわゆる改訂をして頂きたいと、こういつた意見を具申申上げたいと思うのでございます。池田さんの財政演説に現われましたように、従来、或いは今後もだんだんと日本の経済は繁栄の途を図つて行くと、この見通しが正しいというのでありますれば、又来年度におきましても、国民所得は現状に比べまして少くとも一〇%は増加して行であろう、この認識が妥当でありといたしまするならば、更に明年度財政規模は、今年度とほぼ同様に八千億円プラス、アルフアーと、こういつたことで十分組み得ると、こういつたようなことであるといたすならば、私はこの認識が合理的であるという裏打ちの条件を、現状と比較してこの補正予算考えて見ますると、私はこの補正予算の組み方はやはり相当シビヤーであり過ぎるのではないかと、こういうふうに感じるのであります。と申しますのは、先ず第一にこの予算面をずつと総観いたしました場合におきまして、恐らく支出には計上いたされておりまするけれども、実際支出はせられないであろう、こういつたような項目が相当あるような気がいたすのであります。例えば平和回復善後処理費でありますとか、或いは国際通貨基金、こういつたようなものであります。それから更に外国為替並びに食管に対するところの補填資金、こういつたものにつきまして、これを全額一般会計で埋めて行かなければならない、こういつたようなことにつきましても問題があると思います。更に又いわゆる歳入もですね、私は若しも経済の発展が順調である、これが間違いがないといたしまするならば、この補正予算面よりは若干増加が期待できるのではないか、こういうふうに感ずるのであります。つまりこの予算の中には相当のクツシヨンが隠されておる、こういうふうに感ずるのであります。そうして若しもそれがクツシヨンとして使われまして、実際に支出せられないといたしますると、結局におきまして、私は一般民間産業資金或いは国民の消費資金をそれだけ圧迫する、こういつた結果を招来するのではないかと思うのであります。そこで若し来年も大丈夫である、十分それに対して大鼓判を押せるということでございまするならば、経済の車を全体としてうまく動かす、こういつたような方針の下におきましては、私は歳出面におきまして、地方財政に対しましてもう百億円、これは来年度以降もつと地方財政のあり方を基本的に考え直すといつたようなことを考慮しております。即ち臨時であります。  第二点といたしまして、公共事業費にもう百億円、それから日本開発銀行の出資にもう百億円、それから更にプラント輸出の振興と関連いたしまして鉄鋼補給金に三十億円乃至五十億円、これだけの支出増加をお願いいたしたいと思うのであります。その半面におきまして平和回復善後処理費、或いは講和関係費用三百億円を百億或いは百五十億に減少せしめる。外為資金三百億円を日銀勘定に振替え、或いは百億円ぐらいに計上する。更に食管特別会計の補填につきましても、ほぼ同様の措置をとる、こういつたようなことをいたしますると、私はまだお釣が来ると思うのでありますが、そのお釣の部分もですね、私は源泉所得税減税に振向ける、こういつたようなことが望ましいのではないかと思うのであります。尤も私のこの私見は、来年は大丈夫だという池田さん並びに日本政府の言い分を信用しての上のことであります。ところで公平に輿論を私どもが参照いたして見ますと、必ずしも日本経済の前途に対しまして、そう楽観的な見方ばかりが横行しておると、こういうふうには思わないのであります。例えば産業界の大部分人々は来年度以降に対する経済問題を相当シビヤーに考えられております。講和後の経済負担が非常に増加することであろう、又日本生産上昇、即ち工業生産の上昇も大体今がほぼ限界点に近いのであつて、今後相当大幅に工業生産を上昇する、こういつたようなことになるともつと多角形的に投資をして行かなければならない、こういつたような観点に立つておる、又国民の中におきましても今後の生活向上、こういつたようなことにつきまして、やはり相当悲観的な空気がある、こういつたことも事実ではないかと思うのであります。現に今度は政府の中におきましても、新聞紙上で伝えられるニユースが正しいのであるということになりますれば、例えば経済安定本部の今後の生産力の測定作業、或いは電力計画、こういつたものを見ました場合において、単に民間だけではなくて、政府の中におきましてもですね、今後の日本生産力の伸長、こういつたようなことにつきましてやはり相当重大な困難があると、こういつたような認識を持つておられる人が多いのではないかと、こういうふうに思うのであります。私はこの際ドツジさんがおいでになつたことと関連をいたしまして、補正予算の検討、更に来年度予算の検討と、こういつたことが経済認識と結付いてもう一遍全面的になさるべきだと、こういうふうに思うのであります。併し私は必ずしもいわゆるドツジさんがおつしやる方向で予算を、今後の予算作つて行かなければならない、こういうふうには考えていないのであります。そこでやはりもう一遍経済の前途の予測といつたことを確実にして頂きまして、もう一遍この補正予算、或いは来年度予算に対しましてここで再検討を加えられる、こういつたようなことが望ましいと思うのであります。そういつたような観点に立ちました場合におきましては、私はこの補正予算のあり方といつたものを見ました場合において、この予算は楽観と悲観の丁度真中辺にあるのではないかと思うのであります。即ち若しも経済の前途が楽観的であるといたしまするならば、この予算はシビヤーである、若しも来年度以降に相当困難な事態があつてそれに処して行かなければならない、そうして国民生活生産との調整をして行かなければならないと、こういつたことが事実であるといたしますると、私はこの予算面は若干楽観的であり過ぎると、こういうふうに感ずるのであります。でき得るならば皆さんがたのお力によりましてもう一遍この予算が全面的に再検討せられる、こういつたようなことをお願いいたしたいと思います。   —————————————
  25. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 何か御質問はございませんか。ありませんか。有難うございました。  それでは次に経済団体連合会事務局長であります福島正雄君にお願いいたします。
  26. 福島正雄

    公述人(福島正雄君) 御紹介に預りました福島でございます。今度の補正予算の原案について、産業界の立場から二、三の意見を端的に申上げて見たいと思います。  頂いておりまするこの補正予算政府当局の説明を拝見いたしますと、その基本方針といいますか、基本的の施策につきましては非常に結構な題目が並んでおります。インフレーシヨンの抑制とか、財政金融面からする経済の運営の調整とか、生産拡大、貿易の伸張、或いは健全財政維持、資本の蓄積、金融の適正化、国際収支の改善、為替レートの維持というふうな問題がこの補正予算の骨組になつておるように拝見するのでありますが、ただその骨組を実際に肉付けておりまする予算の配分、或いはおのおのの費目に対する額の問題というふうなことにつきましていささか腑に落ちない点があるのであります。財政金融面からする経済の運営調整及び金融の適正化ということは、長期資金開発銀行とか或いは見返資金によりまして、短期資金、即ち運転資金は市中銀行というふうな正常の建前に戻す、現在は比較的市中金融が長期資金に流れておりまするその形を今のような正常な形に戻す、且つ不急不要の面に資金、殊に設備資金が流れることを抑えるという御方針のように思うのでありまするが、これは大変結構なことであります。がこの立場、この考えからしますると、外為特別会計に三百億、食管特別会計に百億一般会計から繰入れておるのでありますが、これはいずれも短期資金、運転資金に属するものでありまして、殊に食管会計のごとき、伺うところによりますると、本年の供出目標が大体二千五百万石に置かれておるやに聞いておりまするし、又農林当局のお話によりますると、来年の四月一日の端境期の手持米は千百万石ぐらいであろうという予想をされておりまするが、そうすれば、この新規の供出米が三月三十一日までに約千四百万石放出されることになる。でこれの買入基準価格を七千三十円といたしましても九百八十億になりまして、この繰入の百億というものは百四十三万石繰出せばそれで直ぐ戻つて来る、一応二千五百万石の買入れに際して資金の膨脹はありまするが、直ちにこれは放出されて回収される金なのでありまして、百億ぐらいの金が今日食管会計において非常な必要な金とも思われませんし、放出速度からしまして毎月平均といたしますれば、平均三百五十万石三月までに放出されるとすれば、直ちに回収されて食管会計からこの百億が出てしまう、こういう性質の金と思われるのであります。従つてこれを一般会計から繰入れるということは策の得たものでないと思われる。むしろかような短期資金は日銀貸出によるべきもので、回収の早いものはさようにいたすべしということが、政府財政金融面からする経済の運営の大きな骨であろう、この辺は一般会計から入れるということが私には理解できないことなのであります。予算案は、別に産業資金としまして、農林関係と輸出信用保険の二つの特別会計の繰入のほか、開発銀行に七十億、輸出銀行に三十億の出資を計上しておりますが、今申上げました二つの短期資金、短期に回収せられるであろうというこの四百億、こういうものはむしろ開発銀行或いは輸出銀行とかというふうな貿易の伸長、生産拡大、雇用の増大に非常な影響のある長期資金に廻すべきでありまして、両方合せて僅かに百億より出ておらない一面、さような短期資金に四百億も出ておるということは非常に平仄の合わない。冒頭を申上げましたこの予算案に流れておる大きな方針に対して、看板に偽りありと言わざるを得ないと思うのであります。よろしくこの四百億は開発銀行輸出銀行の出資に振り向けるべきであろうと存ずるのであります。ただともすると、かような資金放出がインフレーシヨンを誘発するということの声がよく出るのでありまするが、資金、金融の面だけでインフレーシヨンが操作されるというのは逆でありまして、生産の増大、貿易の伸長を図らなくて何でインフレーシヨンが抑えられるか、これは本末転倒であろうと思うのでございます。  次に地方財政は近年膨脹の一途を辿つておることを痛感されていることが説明に見えまするが、全くこれは同感でございまして、お説の通り徹底的経費の節約を図る一面、税収に努力するということに重点が置かれておりますが、まさにさように存ずるのでありますが、これを更に徹底する意味で、すでに成立しておりまする平衡交付金の僅かに一割程度の今回の補正予算に盛られておりまする平衡交付金百億、これは今の徹底的経費の節約、税収の努力ということを以ていたしますれば、一割ぐらいのものは当然出て来る。補正予算を以て百億を附加えるということは余りに甘過ぎる、親が甘やかし過ぎる、かように考えるのでありまして、これは他の用途に当然向けらるべき性質のものであろうと存ずるのであります。  ついでにここで本筋と多少離れまするが、地方税、特に固定資産税が地方の町村の財政を非常に歪めておるということを、私どもは事実を多く知つておるのでございまして、是非とも地方、殊に市町村の財政において、この固定資産税なるものが非常な不均衡を来たしておる大きな原因になつておるということを更に御認識下さいまして、適当な調整、或いは抜本的の措置をして頂きたいと存ずるのであります。  次に公共事業費について申上げますると、今回の補正予算におきまする公共事業費は、単作地帯の対策として、積雪寒冷単作地帯への灌漑排水、開拓或いは耕地整理等のため、或いは土地改良というふうなことのため二十億支出されております。これらの事業、或いはこれらの目的というものは、何も目新らしいものではなく、又急に最近に積雪寒冷地帯が殖えたわけでもなく、従来から苦心、鋭意このほうの事業が施行され、又予算も相当につけられておるのであります。ただ、財政上の余裕があるから、今まで足りなかつたものをこの際殖やすという意味でありまするならば、公共事業費として更に緊急なものが別にあると存ずるのであります。それはむしろこの森林法の施行によりまして、当然供給が減少されるであろうと思う森林対策、林業対策のほうにこの金額は向けて、焦眉の急を救うべきものであろう、それが補正予算の本来の使命であると存ずるのであります。その対策として、この補正予算にも奥地林道開発のために七億五千万円計上されておりますることは、まさにその目的であろうと思うのでありますが、今の単作地帯の対策の二十億は、まさに奥地林道開発のほうへ附加えて然るべきであると思うのであります。私どもの団体において森林対策の特別委員会を持つておりまして、奥地林道開発については非常な懸命の努力を払つております。又それが今日非常な逼迫を極めておりまする坑木とパルプ材、或いは薪炭林料というふうなものも、森林法施行の暁、需給の非常な逼迫を見るのではないかという心配のものとから始つておりますので、殊に寒冷地帯の対策というものは、これから冬期に入りまするときにやるべきものか、或いは暖気の高いときから始めるべきものであるか、この辺の非常に細かい農地政策につきましては、遺憾ながら十分なわきまえを持ちませんが、又、他面、森林、林業事業の施行は、夏山よりも冬山のほうがやりいいような地方もありますので、特にこの奥地林道開発につきましては補正予算の決議がなされ、そうして資金の放出されまするのに一番時期を得ておるときでありまするので、重点的にこの公共事業費は奥地林道に振向けられて然るべきものと存ずるのであります。  次に行政整理の問題でありますが、二十六年度においでの経費の支出、節約額等の御説明によりますると、退職手当支出が四十七億七千万円、経費節約額が二十六年度において四億でありますことは、本質上実行すべき行政整理であるといたしましても、二十六年度補正予算に計上すべきであるか、或いは二十七年度から実施するとしたほうが策を得ておるか、この辺の均衡を一つ考えて頂きたいと思うのであります。若しも二十六年度の整理を二十七年度にかためていたしますとすれば、退職手当が合計で八十三億、経費節約が百九十三億、頗る無理をしない権衡のとれた行政整理の措置であろうと思うのであります。無理に二十六年度補正予算におきまして、四十七億七千万円の支出をして経費節約四億であるよりも、二十七年かためて退職手当八十三億、経費節約百九十三億という均衡のとれた形にいたすべきであろうと思うのであります。  以上は大体歳出の面おきまする私ども産業界からしました気付いた問題でありまするが、次に歳入の面を見ますると、特に法人税の問題が私どもの注意を引くのであります。朝鮮事変後企業の収益が増大いたしましたことはその通りであります。そのために法人税の自然増収が八百五十五億という非常に大きな金額で出たのであります。併し更にその景気が続くであろうという推測から、税率を増して更に二百億税金徴収しようということが、この補正予算に盛られておりまする段取りでありますが、このことにつきましては、二、三の論拠から反対をいたすのであります。第一に、資本の蓄積ということが本予算説明の中に非常にはつきり唱えられております。そのために退職手当を損金にいたしましたり、又資産償却の限度を引上げたりして、その趣旨の貫徹に努めておられる一方、自然増収があつたからといつて、更に増率してまでも増税を強うるということは、甚だ矛盾であろうと思うのであります。第二に、最近の法人の収益がなお好調だから増徴しようということは、現実について少しく離れておる御見解と思うのであります。最近の輸出の鈍つて参りましたこと、又輸出利益が低下して来たこと、更に昨年の秋から今年の春或いはその調子が継続しておりますいわゆる見越輸入によりまする損失、更に最近の電力事情の悪化によりまする減収損失等から見まして、収益状況の連続性には甚だ疑問を持つておるのでありまして、かような不合理な無理な増徴は当然控えるべきであろうと思うのであります。そういうふうな増徴をなさるという一面に四百億の減税を計上されておりますることは一面理解しにくいところで、減税はもとより所得税の面からの減税でありまするので、当然所得税減税ということはいたさねばならないことでありまするけれども、一面国民所得予算額との対比が英米仏に比してなお低位にあるということを説明されておることは、却つて増税の論拠になりまするが、減税の論拠ということに果してこれが向きますかどうですか、この辺に良識を加えて頂きたいということであります。一面無理な増税をして、他面今しなくてもよい増税をするということは前後撞着の感があるのでありまして、減税をいたしまするならば、法人税の増徴はやめたほうが筋が通る、かように思います。ここに減税について一つ意見を申上げたいのでありまするが、所得税減税は勿論いたさねばなりませんが、この減税をいたしまして直ちに八千万の購買力を増すということと、この減税額をもう一度廻転させまして、更にこの金額を大きくしてから戻すということ、今日の経済状態、今日の財政金融状態からいたしましてどちらをとるべきかということを御考慮願いたいと思います。即ちこの意味は、この四百億の減税財源を以て産業投資に廻わして行きまするならば、生産の増強、貿易の拡大、雇用の増加を見ますることは明らかであります。それらから得ました利益を徴税いたしまして、例えて申しまするならば四百億を六百億にし、八百億にして、更にそうした上で減税をして国民の購買力を強力にするということが最も今日の時宜に適した策ではないかと思うのであります。折角今日集めた金を細かく戻してすぐ消費してしまうよりも、産業資金として用いまして太らせてから戻すということが、産業界の立場からすれば当然考えられることなんでありまして、産業資金の乏しい今日、国民の誰もが必ず納得してもらえる方法だろうと存ずるのであります。  最後に金利引上げのことについてこの説明が触れておりますが、金利引上げについての問題も一考を煩らわしたいのであります。この説明によりますると、金利引上げは貯蓄奨励の誘引となるということが謳われておりまするが、まさにこのことは異存がないのであります。但し今日の金融状態におきまして、金利引上げによつて如何ほどの資金が吸収し得るか、併しこの反対にこの金利引上げが一般の市場金利引上げを結果いたしまして、産業資金のコストを高め、物価を高めるということはやはり当然考えねばならんことでありまして、殊に東南アジア開発等急いでやらなければならない問題があり、又電源開発の大きな問題がありますときに、かような市場金利を高める措置というものは産業原価の増加を来たして、東南アジア開発或いは輸出或いは国内の重要資源であります電力量の低下を来たすことの障害となるということが当然考えられますので、特に金利引上げにつきましては、十分前後の利害損失を御考慮願いたいと思うのであります。  以上甚だ簡単でありますが、産業界の立場からいたしました意見を申述べましたのであります。
  27. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 只今の福島さんのお話について御質問がありませんか。
  28. 内村清次

    ○内村清次君 只今の公述につきまして、一つその内容の点について御質問申上げますが、公述人の公述の中に、地方行政は徹底的な合理化による節減とそれから徴税に努力して、固定資産税等の再検討をして百億の補正予算は甘過ぎるのではないか、むしろ出さぬほうがいいのじやないか、こういうような御説明があつたようであります。これは現在の府県及び又市町村の今回の平衡交付金の増額についての熾烈なる要求に対しましてと全然意見が対立的な、公述であります。勿論現在政府のほうでも固定資産税の再検討はなされつつある状態であります。この固定資産税の増徴を以ちまして、一部市町村におきましては、或いは増額の点につきましても、一部何と申しますか、それが必要がなくなる、全然なくなるということじやないのですが、一部なくなるというようなこともあり得るとは見通しがつくのでありますが、併しながらこの固定資産税関係が相当枯渇をしておるという市町村は、これは全国至る所にあるように見受られるわけであります。そこでこの問題はそういう内容もありますし、お説の中には行政整理を徹底的にやつたほうがいいじやないか、こういうふうなことも言われておりますが、この行政整理に対しまして、公述人はどのような具体的な方法を持つておられるか、どのような方法でこの整理をやつたならば、百億の財源を与えぬでもいいじやないかという論拠の具体策がありますれば、申して頂きたいと思います。
  29. 福島正雄

    公述人(福島正雄君) 今の御質問でありますが、他方財政の問題及び地方産業といいますか、地方の産業力といいますか、地方の経済調査ということが、非常に面倒であります。これはいずれの方面におきましてもいろいろ御苦心があるように思います。この補正予算説明書の中に、今私が申述べた地方財政経理の徹底的な緊縮という問題と、更に地方税の収税について努力すべしということが非常に強く書いてあります。又世上地方財政経理ということについてのいろいろな御意見を承わつております。併しこれらは断片的なことでありまして、数字を以て系統的に私どもが十分に説明を受けておりませんので、私の申上げることは観測に過ぎませんが、大体の数字から言いまして、全体の平衡交付金の大体一割、本予算が一千百数十億、こう記憶しておりますが、その一割は百億であります。大体普通我々民間の経理におきましても、さような一割くらいの天引き経理は、そう面倒でない。又行政整理或いは行政費の節約の場合でも、よく天引きということが用いられます。平衡交付金の各府県の御要求が如何に熾烈であるかも多少心得ておりますが、この際経理の合理化によりまして、百億ぐらいは我慢して頂きたい、かような見解、意見でございます。数字的の根拠は遺憾ながら持つておりません。
  30. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 稲葉さんがまだそこにおられるようでありますから、先ほど地方財政の問題について、府県と市町村の点に触れられたのでありますが、地方財政の窮乏については、府県側からも市町村側からも、非常に両方が訴えて来ております。今回の平衡交付金の増額についても、両方からまあそれぞれの立場から訴えて、府県側に偏してもらつちや困るとか、又府県のほうでは市町村側に偏してもらつちや困る、こういう要望が出ておるのでありますが、あなたの見られましたところでは、府県財政と市町村財政というものは、果してどちらにまだ余力と言つてはないでありましようが、どちらが弾力性を持つておるものであるか、そういう点について御感想がありましたらばお伺いしたい。
  31. 稲葉秀三

    公述人(稲葉秀三君) 今の御質問に私は的確に答えるだけ十分資料を持つておりませんが、私まあ最近地方の経済を見せて頂く機会が非常に多いので、端的に私の意見を申上げますと、今の石原さんの御質問に対しましては、地方によつていろいろ違いまするけれども、大観いたしましてやはり県のほうが苦しいだろうと思います。ただ私が今申上げました点は、中央がこれだけ財政が健全になるならば、地方はもう少し、福島さんの御意見と反対に、もう百億ぐらい交付金を出すべきではないか、但しこれは臨時の支出にして、来年度以降はやはり工業化された府県、或いは大都市の府県からはもつと金を取つて、それを均霑に地方に廻わして上げると、こういつたやり方のほうが合理的ではないかと、こう思うのであります。
  32. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ほかに御質問ございませんか。なければ、どうも有難うございました。  それでは次に札幌市の助役をしておられまする原田與作君の公述をお願いいたします。只今資料を配布いたしますから……。
  33. 原田與作

    公述人(原田與作君) それでは私ここに公述を申上げますことは、今度の補正予算と地方財政との関連する事柄につきまして、結論的には次の三点を申上げたいのであります。その第一点は、政府の地方財政の見通しには非常に無理がありまするので、今度の補正予算の臨時措置といたしまして、更に平衡交付金と起債の枠を増額すべきである。第二の点は、平衡交付金の配分、特に府県と市町村の配分が均衡化されておらない。それから第三の点は、政府減税方針と地方税制改革の問題に関連する若干の事項、この三点について公述をいたしたいと存じます。  私の申上げたいことはその主要な点でおわかりとは存じますが、結局地方財政は窮乏しておるということを前提として申上げたいのにもかかわりませず、現在地方財政には相当余裕があるのだというようなことが世間に考えられ、或いは今度の大蔵省の補正予算の発表におきましても、相当余裕があるということが示されておりますので、その点について前提として若干申上げたいと存じます。  大蔵省がこのような数字を以て発表されましたことは、私の承知する範囲では三回でございます。第一回は昨年の九月頃と承知いたしておりますが、第二回は本年の七月頃、第三回目は今度の補正予算に関連する説明書において発表されております。それでこの第一回と第二回の発表におきまして、地方財政に非常に余裕があるということの非常な計算上の誤りがあるということにつきましてはお手許に参考書「地方税制改革案に対する批判と意見」この中に述べてございます。第三章の第一節、ここに詳しく述べてございまするので、この印刷物によつて御了承を願いたいと思います。第三回目は、つまり今回の補正予算に関連いたしまして発表いたされました数字はお手許に参考のガリ版刷のものを差上げておきましたが、第一表のようになつております。その第一表は、一番初めの欄には、昭和二十四年度の決算を掲げてございます。その次には、昭和二十五年度の推定の財政計画、その次には昭和二十六年度の当初の計画、その次は今回の補正予算に伴うところの地方財政計画の見通し、その次の欄は、前回の推定との差額、そしてその次の欄には、公述人意見のあらましを書いてございます。  そこでこの一応計数上の見方について私の意見を申述べますと、第一点は、地方税収入の見方であります。これは昭和二十五年度の千九百億円に対して約三二%の増加を見込んでおりますが、これは国税の説明書のように源泉所得なり或いは法人税の増加状況から見まするとこの程度は無理もないと一応考えられるわけであります。ところが地方税におきましては、このような国税の影響が直ちに地方税には反映して参らないのであります。その理由は、府県税における事業税のうち個人の納める事業税というのが約七〇%を占めておりますが、それらは前年度の実績に対して課税する。従つて残りの三〇%の法人に対する分は相当の不利を来たしますけれども、個人の分についてはそのような影響は余りないというような点が一つ、それから市町村におきまするところの住民税のうち、大部分を占める個人所得割というものは、やはり前年度の実績に基いて課税する、つまり二十六年度収入というものは、二十五年度の課税実績に基いて賦課をする、こういうようなことになつております。従つて一年ずつズレがあるわけであります。そういうことを考慮し、一面において現在の景気というものを直ちに反映するであろうところの遊興飲食税、或いは入場税その他の増加を見込み、更に電気、ガス税等におきましても三割の増収を見込みましても、前年度の二十五年度に比べて二〇%以上の増収を見るということはなかなか困難ではないか。そういたしますとこの見方に対して酒税収入において約二百億を減じて見なければならないのではないかと、こう思うわけであります。それから仮に法人税等の影響によりまして事業税なり、或いは市民税が膨れたといたしましても、この税の性質は、御承知のように大体大きな都市に偏在する、こういうような関係もございまして、全国の集計におきまして仮にこのように殖えたといたしましても、大多数の市町村、或いは府県にはさほどの余裕を生ずるものではございます。従つて全国集計の数字のみを以て地方財政全体が余裕があるというような見方は必ずしも私は妥当でない、かように思うのであります。  その次は国庫支出金の問題であります。この第一表によりますと、この国庫支出金は平衡交付金を除きまして大体三十六億円ほど増しておりますが、これは全体の三%にしか過ぎないのであります。これは後ほど若干申上げたいと存じますが、要するに物価や労銀が騰貴しております今日、この程度予算の増額では到底当初の計画は遂行し得ないことは明らかであります。政府予算は、こういつたような補助金は予算の限度で打切るということは可能でありますけれども、第一線の行政に当つておる市町村といたしましては住民との関係もあり、仕事の遂行上の関係もありましてそう簡単には打切れないというような関係になつております。結局そのしわ寄せの不足額というのは市町村が負担をしなければならない、そういうようなことが一面最近非常に増大して参りました歳入の欠陥の増加ということになつて現われて参るわけであります。  その次はこの歳出の面でございますが、歳出の面は政府計画では五千五百三十一億、こういうことになつておりますが、これは御承知のように物価或いは労銀等が総平均いたしましても二六%私上つておると存じます。従いまして二〇%、せめて二〇%程度を増額と見なければならない、そういたしまして考えて見ますと、歳出総額というのは六千億にならなければならないと思うのであります。政府予算内容を拝見いたしましても、実質的には約二割の増加を見込んでおられるやに見受けられるのであります。地方財政におきましてもやはり物価或いは労銀等の騰貴によりましては増額をいたさなければならない、そういたして考えて見ますと六千億といたしますと、ここでなお四百七十億ほどの不足が見込んである、こういうような関係になつておりまするので、政府考えで二百七十七億の残余が生ずると言いましても、そういう点を修正して考えて見ますれば逆に四百億ほどの不足を生ずるこういうようなことになろうと思うのであります。  次に府県の財政は非常に窮乏しておるけれども、市町村の財政は豊かだと、こういうような説をよく聞きます。これは一体何を根拠にしておるのか、私にはよくわかりませんけれども、私はこれは非常な誤りだと存じます。この点につきましても後ほど若干申上げたい点もございますが、お手許に差上げましたこの活版印刷物の二十五頁以下に記載してございまするので、ここにはその要点のみを申上げたいと存じます。この二十五頁、二十六頁の所に表がございますが、この税と平衡交付金とを合せたところの府県の総額と市町村の総額、それを最も物価の安定しておつた、而も戦前の昭和八年から十一年までの割合と、それから戦時中の割合、それから二十四、二十五と、こういうふうに年度を分けて考えて見ますと、戦前四カ年の平均というのは府県税が二億五千万円、それから町村税が三億六千四百万円、合計して六億一千四百万円で、この比率というのは四〇・七、市町村のほうが五九・三、結局四対六の比であつたわけであります。それでそれが戦時中にはだんだん割合が市町村のほうが減じて参つて、そして今度のシヤウプ勧告によつてそれが殖やされた。併しながら二十五年度の計数の割合で見ましても市町村のほうが五三%、まだ戦前にも追付いておらない、こういうような状況になつております。尤もこういうような計数を挙げますと、こういう議論が出ると思います。昭和二十五年度におきましては府県のほうには従来国庫負担であつたところの小学校及び中学校の教員給が平衡交付金の中に肩替りをしておるのだから単純なこういう比較ではいけない、こういう見方も成り立つわけであります。ところが一面におきましては従来府県の重荷になつておりました警察費及び災害復旧費というものは、二十五年度におきましては大部分が市町村、或いは国庫のほうに肩替りをいたしておりまして、この額は私正確には計算いたしておりませんけれども、少くとも小、中学校の教員給として組替えられた二百五十億程度、それ以上のものが府県としては減じておる、そういうような関係考慮いたしますれば、府県と市町村との間の、つまり府県のほうが苦しくて市町村が楽だと、こういう見方は成り立たないと、こう思うのであります。尤も私こう申しましても府県が楽だと決して申すわけではございませんで、府県も市町村も共に困つておるというのが実情だと存じます。  さて以上のようにこの市町村と府県と困つておるということを前提として申上げたわけでありますが、一体市町村財政というものはどうしてそれならこのように困つたのかという原因について考えて見ますと、市町村財政が困つた場合において端的に表現されるものは標準超過課税、つまり制限外課税とよく申しておりますが、標準を超過して課税する、それからもう一つは法定外の税目を設定して課税する、それから国庫支出金、或いは公債等の予算を見積りますときに水増しをして見積る、或いは決算において歳入欠陥となつて現われる、そうして繰上充用をするというようなことが端的に表現されるのであります。そこで右のうち標準超過課税というのはどんな状況になつておるかということを調べて見ますと、これは全国の市から回答を得ませんで五十二市しか回答がございませんで、その集計を申上げますと、第二表にありますように、市民税におきまして標準超過課税をやつておるのは五十二のうち二十三市ございます。それから固定資産税のほうにおきましては五十二市のうち十三市が標準超過課税をしておる。つまりそうしなければ財政が持たない、こういうようなことになつておるわけであります。それからもう一つは歳入欠陥の問題でありまするが、地方財政委員会の調べによりますと全国二百五十二市のうち、昭和二十四年度に歳入欠陥を起して繰上充用という手段をとつたものが二十六市、つまり全国の一〇%がそういうような歳入欠陥を起しております。それが二十五年度になりますと急に殖えまして、二百五十二市のうち七十九市が繰上充用をしておる、その比率三三%、こういつたような非常手段によつて決算をつけておる、こういう状況なんでありますが、ここで歳入欠陥と申上げますのは、真実の意味の歳入欠陥というよりは、むしろその年の年度の現金の決算で帳尻が合わなかつたものを指すのでありまして、このほかに分析いたして見ますと、支出予算を繰越したけれども、財源がないとそういつたものが非常に多いのであります。若しそれを歳入欠陥として計算いたして見まするならば、恐らく市の大部分というものは歳入欠陥になつておると考えられるのでございます。それならば何故そういつたような歳入欠陥になつたかという点でありますが、前にも申上げましたように、地方税制度の関係上、経済の膨脹とか、或いは物価の変動、こういつた現象が起りますと、歳出面には直ちにそれが影響いたして参るのであります。ところが歳入のほうではこれが一カ年ぐらいずれてから膨れて参る、こういうことが一つの原因であろうと思います。もう一つは朝鮮動乱の景気といつたような特殊の業界の影響というものは地方的に非常に差がありまして、併し支出面のほうは全国一律の影響を受けたとしても収入面ではその影響がない。非常にむらがある、こういうことだと思います。それから終戦後の復興、復旧或いは災害復旧といつたような事柄につきまして、公共団体に対するところの地方民の要求というものは非常に熾烈なものがございますので、勢い不確定な財源でも施設してしまわなければならないというような事情、それから国庫補助金とか或いは起債の割当というものが非常に実情に合つておらない、そのしわ寄せの負担を市町村が全部かぶらなければならないといつたようなことが原因になつておると思うのであります。この国庫補助金や起債の割当が実情に副わないという点でありますが、今回の補正予算を見ますると、前に申上げました通り地方公共団体に対するところの国庫負担金や補助金は極めて僅かしか増額されておりませんし、失業対策費のごときは全然増額されておりません。そういつた場合にそれならば政府は一体末端のほうに行つてどんな手を打つのかということを、私の経験によりまして二、三の例を挙げて説明いたしたいと存じます。それは法律上の政府の義務に属するところの国庫補助金というものは多くの場合精算補助でありまして、精算書を出します、そういたしますと内容を仔細に検討いたしまして、これも基本にならない、あれも基本にならないといつて結局基本額というものを引下げてしまう、そうして予算に合せてしまう、こういうことなんであります。それで又失業救済の労力費に対しては三分の二の補助ということに説明されております。資材費については二分の一を補助すると、こういうことになつておりますが、これは実際の実情とは全く違うのであります。この失業労働者の標準賃金というものは、労働大臣の定めた基準に従つて地方ではそれぞれ支出するのでありますが、労働の種類によりまして三百円、或いは三百五十円という賃金を支払いましても国庫補助の基準になるところの単価というものは二百四十六円、それ以上には殖やされません。従つて実際支払つたものとの差額というものは、これは全部市町村の負担になつてしまうわけであります。学校の建築にいたしましても、現実に千五百坪のものが必要だと言いましても、そのうち認承になるのは五百坪だ、而も鉄筋で建てました場合に八万円実際かかつても三万八千円が補助単価だ、こういうふうにして押付ける。即ち基本でも下げ、単価でも切下げ、そうして補助金を打切る、こういうことをやつておるのでございます。昨年の災害復旧にいたしましても、政府予算がないからこれは二十六、七年度で払うからそれまでは市町村が立替えろ、こういうような措置をとられておる部分もあるわけであります。このようにいたしまして市町村の負担増加しても起債の割当というのは、その差額を埋めてくれるかと言いますと、そうはいたしてくれません。それですから実際の補助金というものは二分の一若しくは三分の二と言つても、結果から見ると三分の一にも足りないと、こういうような状況になつております。それで私そういうような点から札幌市の場合を具体的に調べて見ましたところが、二十六年度では札幌市の場合、補助の対象となる事業の総額というのは一億五千二百万円あります。実際それだけになります。ところが補助の基本として認定されたものはどれだけかと申しますと、一億五百万円、すでにもうここで四千七百万円というものは切り落されておる。それによつて補助金がきまり、そうして而もその差額というものは起債が認められませんで、やはり一般財源の負担になる。そうしますと一億五千万円の補助事業であつても、半額は一般財源で負担しなければならないと、こういつたような実情になつておるわけであります。それでこういうような関係にありますので、今回の補正予算で地方団体に対するところの補助金を物価、労銀に照応して増額しないならば、結局事業全体の計画の遂行が不可能になるか、或いは地方財政がその不足分、差額というものを、しわ寄せを負担いたしまして歳入欠陥がますます増大されるのではないかと考えておるわけであります。むしろ地方団体は今回の補正予算に非常に期待を持つておりまして、恐らくこういうものは増額されるだろうということの考えを強く抱いて事業を現に遂行しつつある関係から参りまするならば、二十六年度の歳入欠陥というものはますます増大すると、こういう公算が非常に多いわけであります。  そこでこのような地方財政の窮乏下にありまするので、これを打開する方針といたしまして、私は平年度でありまするならば、むしろ地方税を増額しても平衡交付金等には頼りたくないとこう思いまするけれども、今時期的に見ましてどうしても平衡交付金と起債の枠の拡大に頼らなければ収支のバランスがとれないと、こういう現状にあります関係から、今回の補正予算で増額されておりまするほかに、なお起債と平衡交付金において四百億程度の増額を必要とするのではないか、これは最小限度でありまして、単に数字計算から申しますれば五百五億というような数字も出ます。併しながらそんな厖大な金も如何かと考えまするので、ぎりぎりのところ更に四百億は必要ではないか。そうしてこの四百億を増額することが政府として可能かどうかという点につきましては、私は可能じやないかと考えております。  それからその次は平衡交付金の配分の合理化という点でありますが、平衡交付金制度は昨年から実施されたのでありまして、その合理的な運用につきましては今後の研究に待たなければならない点が多々あると考えられまするけれども、時間の関係上細部の点は省略いたしまして、ここに府県と市町村との配分の関係について申上げたいと存じます。昭和二十四年度以前の配付税というものは、大体府県と市町村において半々に配分されておる。それが昭和二十五年度の平衡交付金千八十五億円は府県に七百十億、それから市町村には三百七十五億、こういうふうに配分されております。この分け方は、どう計算いたして見ましても私の計算では百億ほど余計に府県のほうに行つておるのではないかと考えられます。従来政府筋は伝統的に府県財政を重視いたしまして、市町村財政というものを軽視いたしておりまして、これはまあ従来の中央集権的な国家組織の観念から来る必然の結果であります。ところがシヤウプ勧告によりまして日本の民主化のために府県よりも市町村を優先的に財政を強化しなければならないという建前から地方税法ができまして、昭和二十五年度地方税におきましては、増収となるべき四百億円というのは全部市町村にやる、割当てらるべきだと、こういうことになりました結果、二十五年度の府県税は七百十億円、市町村税は千百九十億円と見積られたのであります。そこでこの府県財政を重視しておつたという観念が府県に対する同情となりまして、平衡交付金の操作によつて府県へ余計に財源が配分されるようになつたのではないかと考えるわけであります。昭和二十六年の仮決定による府県と市町村の財政需要額の算定の状況は、お手許に差上げました表の二枚目に付いておりますが、この表で御覧になりますればわかりますように、非常にむらがございます。若干の例をとつて見ますと道路費、これは面積に対して割当てるのでありますが、市町村のほうの単価というものは一平方メートル当り三円五十八銭、府県のほうは九円八十三銭と割当てております。それから小学校の費用にいたしましても、いろいろ細かい計算はありまするけれども、結果から見ますと、財政需要額、市町村全体で以て百三十四億、こういうふうに見ておるに対しまして、府県のほうは四百二十五億と、こういうふうに見ております。つまり三倍以上に見ておるのであります。ところが実際はどうなつておるかということを調べて見ますと、現在学校をどんどん建築しなければならんといつたよう関係もありまして、府県と市町村との割合は半々になつております。御承知のように府県のほうは教員の給料を支払い、市町村のほうは学校を建設してそれを維持し或いは管理するという費用でありますが、大抵の市をとりましても半々になつておる。その半々になつておる基準財政需要としては一対三、或いは一対二・五といつたような見方になつておる。それから産業経済費を見ましても、産業経済費というのは市町村が四十億ばかりございまして、府県のほうはそれが約九十八億ございますから、二倍以上になる。その産業行政をやつて行く上に府県のほうが余計要つて市町村のほうが少くていいという理由は一つもないのであります。こういうようなふうにいたしまして、この平衡交付金の分け方が非常に私は府県のほうへ優先的に見られているのじやないか、こういうふうに感ずるわけであります。この結果、現在政府予算の千百億の平衡交付金の配分は府県は七百二十五億、市町村は三百七十五億と、こう推定されておりまするけれども、今回の補正予算によりまするところの平衡交付金の増加分、これを若し府県に割当てるといたしますると、非常に府県のほうに財源が余計に行く、数字で申しますとこの政府が示しております地方税収入というものを基礎にして考えております。そういたしますと府県税のほうは税のほうで千百十二億、平衡交付金で八百二十五億、合計で千九百三十五億ということになります。市町村のほうは税のほうで千三百九十八億、平衡交付金では三百七十五億、合計で千七百七十三億でありまして全く戦前の状況よりも悪い。こういう状況になるわけであります。若しこのような結果になりますと、財政の面から見まして、地方自治に対して一体どういう考えを持つておるのかというようなことについて、私は非常に、いわゆる中央集権的な方向に進むのではないかと、こういうことが憂慮されるものであります。  その次に、政府減税方針と地方税制改革の問題について申上げたいと存じます。政府減税方針をとつておることはすでに御承知の通りでありますが、今回の所得税軽減が果して真に本当の意味の減税であるかどうかということについてはいろいろ議論もございます。併し内容の吟味の問題はとにかくといたしまして、国民一般は形式上の減税だけでも非常に歡迎しておるような現状であります。併しながら地方財政の窮状は前にも申上げました通りでありまして、到底地方税では減税の余地はございません。むしろ個別の団体、それぞれについて考えますれば、或いは減税し得る町村もあるかも知れませんけれども、総体的に見まして到底減税という余地はないのであります。ところが最近地方財政余裕があるとか、或いは市町村に余裕があつて、府県のほうは窮乏しておるといつたことを前提といたしまして、現在の地方税制を根本的に改正しようというようなことを聞いておるわけでありますが、私の意見といたしましては、原則的には現在の地方税法を改正せずに、そのまま実行すべきであるという強い意見を持つておるものであります。詳細につきましてはお手許に印刷物を差上げてございまするので、それによつて御了承を願うことにいたしまして、ここでは主なる点だけを申上げたいと存じます。第一の点は附加価値税の実施を延期し、或いは廃止する、これは現在の税制を、御承知のように国税、地方税を通じまして税制の合理化或いは負担の公平、恒久的の税制という一環した方針によつて統一されておるのでありまして、所得税と附加価値税、固定資産税は、これが三本の柱であります。而もこの三つの税というものはそれぞれ密接な関連を持つております。ところが附加価値税というものをやめて事業税を存置するというようなことになりますると、国民負担というものが所得一本に片寄り過ぎまして非常な苦痛を感じます。現在事業者が事業税の負担に耐えておるというのは、いわゆる泣寝入りをしておるか、或いは課税上の含みがあるからでありまして、若しこれを徹底的に課税標準というものをつかまれましたならば、恐らく事業者もその重税に耐えられないだろうと思うのであります。そこでこの附加価値税を実施いたしまして、それを流通税として実行いたしますならば、中小企業の負担額は比較的減つて、そうして而も担税しやすいようになる。将来増税というような必要のありました場合でも、この所得税のみに頼らず全体として公平な増税もできる。又減税にいたしましても現在の税制そのままで行つたほうが公平な減税ができる、こう思うわけであります。その次に、市民税中の法人所得割の税率を引下げるという問題でございますが、これは私はこういうことが条件であるならばいいのではないか。それは法人所得割というものは、大体において大都市に集中する傾向を持つております。それでその税率地方税で引下げて、その分を国税のほうで増徴して、引下げたものを平衡交付金の増額に充てる、こういうことであればかなり合理化されるという関係になりますので、そのほうがよろしいのではないかと思います。その次は、固定資産税のうち発電施設或いは地方鉄道、軌道、船舶、これらを固定資産税の対象から外して、別の税目によつて固定資産税よりも低額な課税をして行こうという考えもあるようであります。これはいわゆる総合された財産税というものの体系を覆すところの重要な問題でありますので、これらについては現在のままにしておくほうがいいと考えております。なお酒、たばこの消費税に関連いたしまして還付税制度ということが考えられておりますけれども、この還付税制度は過去において実施されました実例から考えて見ますと、この還付税制度というものを通じて中央が地方の行政に相当の法制的の掣肘を加えるという弊害のほうが大きいと思いますので、還付税制度は実施すべきでない、こういう意見を持つておる次第であります。  大体概略以上の点で私の公述を終ることにいたします。
  34. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 何か御質問はございませんか。……では有難うございました。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時一分散会