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公述人(原田與作君) それでは私ここに公述を申上げますことは、今度の
補正予算と地方
財政との関連する事柄につきまして、結論的には次の三点を申上げたいのであります。その第一点は、
政府の地方
財政の見通しには非常に無理がありまするので、今度の
補正予算の臨時
措置といたしまして、更に平衡交付金と起債の枠を増額すべきである。第二の点は、平衡交付金の配分、特に府県と市町村の配分が均衡化されておらない。それから第三の点は、
政府の
減税方針と
地方税制改革の問題に関連する若干の事項、この三点について公述をいたしたいと存じます。
私の申上げたいことはその主要な点でおわかりとは存じますが、結局地方
財政は窮乏しておるということを前提として申上げたいのにもかかわりませず、現在地方
財政には相当
余裕があるのだというようなことが世間に
考えられ、或いは今度の大蔵省の
補正予算の発表におきましても、相当
余裕があるということが示されておりますので、その点について前提として若干申上げたいと存じます。
大蔵省がこのような
数字を以て発表されましたことは、私の承知する範囲では三回でございます。第一回は昨年の九月頃と承知いたしておりますが、第二回は本年の七月頃、第三回目は今度の
補正予算に関連する
説明書において発表されております。それでこの第一回と第二回の発表におきまして、地方
財政に非常に
余裕があるということの非常な
計算上の誤りがあるということにつきましてはお手許に参考書「
地方税制改革案に対する批判と
意見」この中に述べてございます。第三章の第一節、ここに詳しく述べてございまするので、この印刷物によ
つて御了承を願いたいと思います。第三回目は、つまり今回の
補正予算に関連いたしまして発表いたされました
数字はお手許に参考のガリ版刷のものを差上げておきましたが、第一表のようにな
つております。その第一表は、一番初めの欄には、
昭和二十四
年度の決算を掲げてございます。その次には、
昭和二十五
年度の推定の
財政計画、その次には
昭和二十六
年度の当初の
計画、その次は今回の
補正予算に伴うところの地方
財政計画の見通し、その次の欄は、前回の推定との差額、そしてその次の欄には、
公述人の
意見のあらましを書いてございます。
そこでこの一応計数上の見方について私の
意見を申述べますと、第一点は、
地方税の
収入の見方であります。これは
昭和二十五
年度の千九百億円に対して約三二%の
増加を見込んでおりますが、これは国税の
説明書のように源泉
所得なり或いは法人税の
増加の
状況から見まするとこの
程度は無理もないと一応
考えられるわけであります。ところが
地方税におきましては、このような国税の影響が直ちに
地方税には反映して参らないのであります。その理由は、府県税における事業税のうち
個人の納める事業税というのが約七〇%を占めておりますが、それらは前
年度の実績に対して課税する。
従つて残りの三〇%の法人に対する分は相当の不利を来たしますけれども、
個人の分についてはそのような影響は余りないというような点が
一つ、それから市町村におきまするところの住民税のうち、大
部分を占める
個人の
所得割というものは、やはり前
年度の実績に基いて課税する、つまり二十六
年度の
収入というものは、二十五
年度の課税実績に基いて賦課をする、こういうようなことにな
つております。
従つて一年ずつズレがあるわけであります。そういうことを
考慮し、一面において現在の景気というものを直ちに反映するであろうところの遊興飲食税、或いは入場税その他の
増加を見込み、更に
電気、ガス税等におきましても三割の増収を見込みましても、前
年度の二十五
年度に比べて二〇%以上の増収を見るということはなかなか困難ではないか。そういたしますとこの見方に対して酒税
収入において約二百億を減じて見なければならないのではないかと、こう思うわけであります。それから仮に法人税等の影響によりまして事業税なり、或いは市民税が膨れたといたしましても、この税の性質は、御承知のように大体大きな都市に偏在する、こういうような
関係もございまして、全国の集計におきまして仮にこのように殖えたといたしましても、大多数の市町村、或いは府県にはさほどの
余裕を生ずるものではございます。
従つて全国集計の
数字のみを以て地方
財政全体が
余裕があるというような見方は必ずしも私は妥当でない、かように思うのであります。
その次は国庫
支出金の問題であります。この第一表によりますと、この国庫
支出金は平衡交付金を除きまして大体三十六億円ほど増しておりますが、これは全体の三%にしか過ぎないのであります。これは後ほど若干申上げたいと存じますが、要するに
物価や労銀が騰貴しております今日、この
程度の
予算の増額では到底当初の
計画は遂行し得ないことは明らかであります。
政府の
予算は、こうい
つたような補助金は
予算の限度で打切るということは可能でありますけれども、第一線の行政に当
つておる市町村といたしましては住民との
関係もあり、仕事の遂行上の
関係もありましてそう簡単には打切れないというような
関係にな
つております。結局そのしわ寄せの不足額というのは市町村が
負担をしなければならない、そういうようなことが一面最近非常に増大して参りました歳入の欠陥の
増加ということにな
つて現われて参るわけであります。
その次はこの歳出の面でございますが、歳出の面は
政府の
計画では五千五百三十一億、こういうことにな
つておりますが、これは御承知のように
物価或いは労銀等が総平均いたしましても二六%私上
つておると存じます。従いまして二〇%、せめて二〇%
程度を増額と見なければならない、そういたしまして
考えて見ますと、歳出総額というのは六千億にならなければならないと思うのであります。
政府の
予算の
内容を拝見いたしましても、実質的には約二割の
増加を見込んでおられるやに見受けられるのであります。地方
財政におきましてもやはり
物価或いは労銀等の騰貴によりましては増額をいたさなければならない、そういたして
考えて見ますと六千億といたしますと、ここでなお四百七十億ほどの不足が見込んである、こういうような
関係にな
つておりまするので、
政府の
考えで二百七十七億の残余が生ずると言いましても、そういう点を修正して
考えて見ますれば逆に四百億ほどの不足を生ずるこういうようなことになろうと思うのであります。
次に府県の
財政は非常に窮乏しておるけれども、市町村の
財政は豊かだと、こういうような説をよく聞きます。これは一体何を根拠にしておるのか、私にはよくわかりませんけれども、私はこれは非常な誤りだと存じます。この点につきましても後ほど若干申上げたい点もございますが、お手許に差上げましたこの活版印刷物の二十五頁以下に記載してございまするので、ここにはその要点のみを申上げたいと存じます。この二十五頁、二十六頁の所に表がございますが、この税と平衡交付金とを合せたところの府県の総額と市町村の総額、それを最も
物価の安定してお
つた、而も戦前の
昭和八年から十一年までの割合と、それから戦時中の割合、それから二十四、二十五と、こういうふうに
年度を分けて
考えて見ますと、戦前四カ年の平均というのは府県税が二億五千万円、それから町村税が三億六千四百万円、合計して六億一千四百万円で、この比率というのは四〇・七、市町村のほうが五九・三、結局四対六の比であ
つたわけであります。それでそれが戦時中にはだんだん割合が市町村のほうが減じて参
つて、そして今度のシヤウプ勧告によ
つてそれが殖やされた。併しながら二十五
年度の計数の割合で見ましても市町村のほうが五三%、まだ戦前にも追付いておらない、こういうような
状況にな
つております。尤もこういうような計数を挙げますと、こういう議論が出ると思います。
昭和二十五
年度におきましては府県のほうには従来国庫
負担であ
つたところの小学校及び中学校の教員給が平衡交付金の中に肩替りをしておるのだから単純なこういう比較ではいけない、こういう見方も成り立つわけであります。ところが一面におきましては従来府県の重荷にな
つておりました警察費及び災害復旧費というものは、二十五
年度におきましては大
部分が市町村、或いは国庫のほうに肩替りをいたしておりまして、この額は私正確には
計算いたしておりませんけれども、少くとも小、中学校の教員給として組替えられた二百五十億
程度、それ以上のものが府県としては減じておる、そういうような
関係を
考慮いたしますれば、府県と市町村との間の、つまり府県のほうが苦しくて市町村が楽だと、こういう見方は成り立たないと、こう思うのであります。尤も私こう申しましても府県が楽だと決して申すわけではございませんで、府県も市町村も共に困
つておるというのが実情だと存じます。
さて以上のようにこの市町村と府県と困
つておるということを前提として申上げたわけでありますが、一体市町村
財政というものはどうしてそれならこのように困
つたのかという原因について
考えて見ますと、市町村
財政が困
つた場合において端的に表現されるものは標準超過課税、つまり制限外課税とよく申しておりますが、標準を超過して課税する、それからもう
一つは法定外の税目を設定して課税する、それから国庫
支出金、或いは
公債等の
予算を見積りますときに水増しをして見積る、或いは決算において歳入欠陥とな
つて現われる、そうして繰上充用をするというようなことが端的に表現されるのであります。そこで右のうち標準超過課税というのはどんな
状況にな
つておるかということを調べて見ますと、これは全国の市から回答を得ませんで五十二市しか回答がございませんで、その集計を申上げますと、第二表にありますように、市民税におきまして標準超過課税をや
つておるのは五十二のうち二十三市ございます。それから固定資産税のほうにおきましては五十二市のうち十三市が標準超過課税をしておる。つまりそうしなければ
財政が持たない、こういうようなことにな
つておるわけであります。それからもう
一つは歳入欠陥の問題でありまするが、地方
財政委員会の調べによりますと全国二百五十二市のうち、
昭和二十四
年度に歳入欠陥を起して繰上充用という手段をと
つたものが二十六市、つまり全国の一〇%がそういうような歳入欠陥を起しております。それが二十五
年度になりますと急に殖えまして、二百五十二市のうち七十九市が繰上充用をしておる、その比率三三%、こうい
つたような非常手段によ
つて決算をつけておる、こういう
状況なんでありますが、ここで歳入欠陥と申上げますのは、真実の意味の歳入欠陥というよりは、むしろその年の
年度の現金の決算で帳尻が合わなか
つたものを指すのでありまして、このほかに分析いたして見ますと、
支出予算を繰越したけれども、財源がないとそうい
つたものが非常に多いのであります。若しそれを歳入欠陥として
計算いたして見まするならば、恐らく市の大
部分というものは歳入欠陥にな
つておると
考えられるのでございます。それならば何故そうい
つたような歳入欠陥に
なつたかという点でありますが、前にも申上げましたように、
地方税制度の
関係上、経済の膨脹とか、或いは
物価の変動、こうい
つた現象が起りますと、歳出面には直ちにそれが影響いたして参るのであります。ところが歳入のほうではこれが一カ年ぐらいずれてから膨れて参る、こういうことが
一つの原因であろうと思います。もう
一つは朝鮮動乱の景気とい
つたような特殊の業界の影響というものは地方的に非常に差がありまして、併し
支出面のほうは全国一律の影響を受けたとしても
収入面ではその影響がない。非常にむらがある、こういうことだと思います。それから終戦後の復興、復旧或いは災害復旧とい
つたような事柄につきまして、公共団体に対するところの地方民の
要求というものは非常に熾烈なものがございますので、勢い不確定な財源でも施設してしまわなければならないというような事情、それから国庫補助金とか或いは起債の割当というものが非常に実情に合
つておらない、そのしわ寄せの
負担を市町村が全部かぶらなければならないとい
つたようなことが原因にな
つておると思うのであります。この国庫補助金や起債の割当が実情に副わないという点でありますが、今回の
補正予算を見ますると、前に申上げました
通り地方公共団体に対するところの国庫
負担金や補助金は極めて僅かしか増額されておりませんし、失業対策費のごときは全然増額されておりません。そうい
つた場合にそれならば
政府は一体末端のほうに行
つてどんな手を打つのかということを、私の経験によりまして二、三の例を挙げて
説明いたしたいと存じます。それは法律上の
政府の義務に属するところの国庫補助金というものは多くの場合精算補助でありまして、精算書を出します、そういたしますと
内容を仔細に検討いたしまして、これも基本にならない、あれも基本にならない
といつて結局基本額というものを引下げてしまう、そうして
予算に合せてしまう、こういうことなんであります。それで又失業救済の労力費に対しては三分の二の補助ということに
説明されております。
資材費については二分の一を補助すると、こういうことにな
つておりますが、これは実際の実情とは全く違うのであります。この失業
労働者の標準賃金というものは、労働大臣の定めた基準に
従つて地方ではそれぞれ
支出するのでありますが、労働の種類によりまして三百円、或いは三百五十円という賃金を支払いましても国庫補助の基準になるところの単価というものは二百四十六円、それ以上には殖やされません。
従つて実際支払
つたものとの差額というものは、これは全部市町村の
負担にな
つてしまうわけであります。学校の建築にいたしましても、現実に千五百坪のものが必要だと言いましても、そのうち認承になるのは五百坪だ、而も鉄筋で建てました場合に八万円実際かか
つても三万八千円が補助単価だ、こういうふうにして押付ける。即ち基本でも下げ、単価でも切下げ、そうして補助金を打切る、こういうことをや
つておるのでございます。昨年の災害復旧にいたしましても、
政府の
予算がないからこれは二十六、七
年度で払うからそれまでは市町村が立替えろ、こういうような
措置をとられておる
部分もあるわけであります。このようにいたしまして市町村の
負担が
増加しても起債の割当というのは、その差額を埋めてくれるかと言いますと、そうはいたしてくれません。それですから実際の補助金というものは二分の一若しくは三分の二と言
つても、結果から見ると三分の一にも足りないと、こういうような
状況にな
つております。それで私そういうような点から札幌市の場合を具体的に調べて見ましたところが、二十六
年度では札幌市の場合、補助の対象となる事業の総額というのは一億五千二百万円あります。実際それだけになります。ところが補助の基本として認定されたものはどれだけかと申しますと、一億五百万円、すでにもうここで四千七百万円というものは切り落されておる。それによ
つて補助金がきまり、そうして而もその差額というものは起債が認められませんで、やはり一般財源の
負担になる。そうしますと一億五千万円の補助事業であ
つても、半額は一般財源で
負担しなければならないと、こうい
つたような実情にな
つておるわけであります。それでこういうような
関係にありますので、今回の
補正予算で地方団体に対するところの補助金を
物価、労銀に照応して増額しないならば、結局事業全体の
計画の遂行が不可能になるか、或いは地方
財政がその不足分、差額というものを、しわ寄せを
負担いたしまして歳入欠陥がますます増大されるのではないかと
考えておるわけであります。むしろ地方団体は今回の
補正予算に非常に期待を持
つておりまして、恐らくこういうものは増額されるだろうということの
考えを強く抱いて事業を現に遂行しつつある
関係から参りまするならば、二十六
年度の歳入欠陥というものはますます増大すると、こういう公算が非常に多いわけであります。
そこでこのような地方
財政の窮乏下にありまするので、これを打開する方針といたしまして、私は平
年度でありまするならば、むしろ
地方税を増額しても平衡交付金等には頼りたくないとこう思いまするけれども、今時期的に見ましてどうしても平衡交付金と起債の枠の
拡大に頼らなければ収支の
バランスがとれないと、こういう現状にあります
関係から、今回の
補正予算で増額されておりまするほかに、なお起債と平衡交付金において四百億
程度の増額を必要とするのではないか、これは
最小限度でありまして、単に
数字の
計算から申しますれば五百五億というような
数字も出ます。併しながらそんな厖大な金も如何かと
考えまするので、ぎりぎりのところ更に四百億は必要ではないか。そうしてこの四百億を増額することが
政府として可能かどうかという点につきましては、私は可能じやないかと
考えております。
それからその次は平衡交付金の配分の合理化という点でありますが、平衡交付金制度は昨年から実施されたのでありまして、その合理的な運用につきましては今後の研究に待たなければならない点が多々あると
考えられまするけれども、時間の
関係上細部の点は省略いたしまして、ここに府県と市町村との配分の
関係について申上げたいと存じます。
昭和二十四
年度以前の配付税というものは、大体府県と市町村において半々に配分されておる。それが
昭和二十五
年度の平衡交付金千八十五億円は府県に七百十億、それから市町村には三百七十五億、こういうふうに配分されております。この分け方は、どう
計算いたして見ましても私の
計算では百億ほど余計に府県のほうに行
つておるのではないかと
考えられます。従来
政府筋は伝統的に府県
財政を重視いたしまして、市町村
財政というものを軽視いたしておりまして、これはまあ従来の中央集権的な
国家組織の観念から来る必然の結果であります。ところがシヤウプ勧告によりまして
日本の民主化のために府県よりも市町村を優先的に
財政を強化しなければならないという
建前から
地方税法ができまして、
昭和二十五
年度の
地方税におきましては、増収となるべき四百億円というのは全部市町村にやる、割当てらるべきだと、こういうことになりました結果、二十五
年度の府県税は七百十億円、市町村税は千百九十億円と見積られたのであります。そこでこの府県
財政を重視してお
つたという観念が府県に対する同情となりまして、平衡交付金の操作によ
つて府県へ余計に財源が配分されるように
なつたのではないかと
考えるわけであります。
昭和二十六年の仮決定による府県と市町村の
財政需要額の算定の
状況は、お手許に差上げました表の二枚目に付いておりますが、この表で御覧になりますればわかりますように、非常にむらがございます。若干の例をと
つて見ますと
道路費、これは面積に対して割当てるのでありますが、市町村のほうの単価というものは一平方メートル当り三円五十八銭、府県のほうは九円八十三銭と割当てております。それから小学校の費用にいたしましても、いろいろ細かい
計算はありまするけれども、結果から見ますと、
財政需要額、市町村全体で以て百三十四億、こういうふうに見ておるに対しまして、府県のほうは四百二十五億と、こういうふうに見ております。つまり三倍以上に見ておるのであります。ところが実際はどうな
つておるかということを調べて見ますと、現在学校をどんどん建築しなければならんとい
つたような
関係もありまして、府県と市町村との割合は半々にな
つております。御承知のように府県のほうは教員の給料を支払い、市町村のほうは学校を建設してそれを
維持し或いは管理するという費用でありますが、大抵の市をとりましても半々にな
つておる。その半々にな
つておる基準
財政需要としては一対三、或いは一対二・五とい
つたような見方にな
つておる。それから
産業経済費を見ましても、
産業経済費というのは市町村が四十億ばかりございまして、府県のほうはそれが約九十八億ございますから、二倍以上になる。その
産業行政をや
つて行く上に府県のほうが余計要
つて市町村のほうが少くていいという理由は
一つもないのであります。こういうようなふうにいたしまして、この平衡交付金の分け方が非常に私は府県のほうへ優先的に見られているのじやないか、こういうふうに感ずるわけであります。この結果、現在
政府予算の千百億の平衡交付金の配分は府県は七百二十五億、市町村は三百七十五億と、こう推定されておりまするけれども、今回の
補正予算によりまするところの平衡交付金の
増加分、これを若し府県に割当てるといたしますると、非常に府県のほうに財源が余計に行く、
数字で申しますとこの
政府が示しております
地方税収入というものを基礎にして
考えております。そういたしますと府県税のほうは税のほうで千百十二億、平衡交付金で八百二十五億、合計で千九百三十五億ということになります。市町村のほうは税のほうで千三百九十八億、平衡交付金では三百七十五億、合計で千七百七十三億でありまして全く戦前の
状況よりも悪い。こういう
状況になるわけであります。若しこのような結果になりますと、
財政の面から見まして、地方自治に対して一体どういう
考えを持
つておるのかというようなことについて、私は非常に、いわゆる中央集権的な方向に進むのではないかと、こういうことが憂慮されるものであります。
その次に、
政府の
減税方針と
地方税制改革の問題について申上げたいと存じます。
政府が
減税方針をと
つておることはすでに御承知の
通りでありますが、今回の
所得税の
軽減が果して真に本当の意味の
減税であるかどうかということについてはいろいろ議論もございます。併し
内容の吟味の問題はとにかくといたしまして、
国民一般は形式上の
減税だけでも非常に歡迎しておるような現状であります。併しながら地方
財政の窮状は前にも申上げました
通りでありまして、到底
地方税では
減税の余地はございません。むしろ個別の団体、それぞれについて
考えますれば、或いは
減税し得る町村もあるかも知れませんけれども、総体的に見まして到底
減税という余地はないのであります。ところが最近地方
財政に
余裕があるとか、或いは市町村に
余裕があ
つて、府県のほうは窮乏しておるとい
つたことを前提といたしまして、現在の
地方税制を根本的に改正しようというようなことを聞いておるわけでありますが、私の
意見といたしましては、原則的には現在の
地方税法を改正せずに、そのまま実行すべきであるという強い
意見を持
つておるものであります。詳細につきましてはお手許に印刷物を差上げてございまするので、それによ
つて御了承を願うことにいたしまして、ここでは主なる点だけを申上げたいと存じます。第一の点は附加価値税の実施を延期し、或いは廃止する、これは現在の税制を、御承知のように国税、
地方税を通じまして税制の合理化或いは
負担の公平、恒久的の税制という一環した方針によ
つて統一されておるのでありまして、
所得税と附加価値税、固定資産税は、これが三本の柱であります。而もこの三つの税というものはそれぞれ密接な関連を持
つております。ところが附加価値税というものをやめて事業税を存置するというようなことになりますると、
国民の
負担というものが
所得一本に片寄り過ぎまして非常な苦痛を
感じます。現在事業者が事業税の
負担に耐えておるというのは、いわゆる泣寝入りをしておるか、或いは課税上の含みがあるからでありまして、若しこれを徹底的に課税標準というものをつかまれましたならば、恐らく事業者もその重税に耐えられないだろうと思うのであります。そこでこの附加価値税を実施いたしまして、それを流通税として実行いたしますならば、中小企業の
負担額は比較的減
つて、そうして而も担税しやすいようになる。将来
増税というような必要のありました場合でも、この
所得税のみに頼らず全体として公平な
増税もできる。又
減税にいたしましても現在の税制そのままで行
つたほうが公平な
減税ができる、こう思うわけであります。その次に、市民税中の法人
所得割の
税率を引下げるという問題でございますが、これは私はこういうことが条件であるならばいいのではないか。それは法人
所得割というものは、大体において大都市に集中する
傾向を持
つております。それでその
税率を
地方税で引下げて、その分を国税のほうで増徴して、引下げたものを平衡交付金の増額に充てる、こういうことであればかなり合理化されるという
関係になりますので、そのほうがよろしいのではないかと思います。その次は、固定資産税のうち発電施設或いは地方鉄道、軌道、船舶、これらを固定資産税の対象から外して、別の税目によ
つて固定資産税よりも低額な課税をして行こうという
考えもあるようであります。これはいわゆる総合された財産税というものの体系を覆すところの重要な問題でありますので、これらについては現在のままにしておくほうがいいと
考えております。なお酒、たばこの消費税に関連いたしまして還付税制度ということが
考えられておりますけれども、この還付税制度は過去において実施されました実例から
考えて見ますと、この還付税制度というものを通じて中央が地方の行政に相当の法制的の掣肘を加えるという弊害のほうが大きいと思いますので、還付税制度は実施すべきでない、こういう
意見を持
つておる次第であります。
大体概略以上の点で私の公述を終ることにいたします。