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1951-10-29 第12回国会 参議院 郵政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聴会 ———————————————— 昭和二十六年十月二十九日(月曜日)    午後一時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩崎正三郎君    理事      柏木 庫治君    委員            石坂 豊一君            城  義臣君            瀧井治三郎君            三木 治朗君           池田七郎兵衞君   政府委員    郵政政務次官  山本 猛夫君    郵政省郵務局長 松井 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       生田 武夫君    常任委員会専門    員       勝矢 和三君   公述人    日本放送協会解   説担当商学博士  齊藤栄三郎君    元通信院総裁  小松  茂君    日本商工会議所    理事      八坂 雅二君    日本新聞協会編    集部部長    江尻  進君    日本労政協会顧    問       白石 源吉君    生命保険協会常    務理事     野口 正造君    共立タイプ教育    部総務     塚本国三郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○郵便法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) それでは只今から郵便法の一部を改正する法律案に対して郵政委員会公聴会を開きます。  わざわざ公述人かたがたにはお忙しいところ誠にありがとうございました。この郵便法の一部を改正する法律案につきましては、只今専門員が説明になつたごとく、衆議院においては一部の修正があつたわけであります。この点もお含みの上御発言を願いたいと思います。又公述人かたがたに申上げたいことは、大体発言時間を一人約二十分くらいとしたいと思つております。そして委員諸君から御質問もあると思いますが、さよう御承知を願いたいと思います。更に又発言者は御意見を述べられるに当りまして、先ず大体この法案に対して賛否意見を述べて、修正を附して賛成するといつたことも結構でありますが、さような意味賛否を明らかにして御公述を願えれば甚だ結構であると思います。  それでは直ちに公述人公述をお願いしたいと思います。先ず日本放送協会解説担当商学博士であるところの齊藤栄三郎君にお願いいたします。
  3. 齊藤栄三郎

    公述人齊藤栄三郎君) 齊藤栄三郎であります。結論から先に申上げますと条件附賛成をいたします。  この提案理由の中に「郵便事業特別会計独立採算を確保するため」と改正法の目的を謳つてありますが、私は郵便事業のような公共的性格の強い事業は、ただ単に特別会計独立採算制という観点のみで考えていいかどうかということに非常な大きな疑問を持つのであります。郵便事業だけを見て赤字である、その赤字を埋めるために値段を上げるということでは私は非常に大きな疑問を持たざるを得ないのであります。従つて昔のことに帰るかわかりませんけれども、郵政事業全般としての機構をもつと総合化して、或る部門では儲かつても損したほうはややこれを償うというような機構確立が根本的に必要ではなかろうか。独立採算制を厳重に励行するために赤字を全部埋めるための値上げということについては絶対に反対せざるを得ない。要するに機構総合化を行うということが私は第一に必要ではなかろうかということを思います。  それから第二には、今アメリカを初め世界インフレ傾向にあるときに、郵政事業だけがいつまでももとの水準に保つということは非常に困難であります。でありますからこの提案理由並びに郵政当局から御配付になつた「郵便現状」などを見てみると、値上げは私は止むを得ないと思いまするけれども、今我々国民感情を率直に申上げるならば、あらゆる政府認許可事項になつておる料金政府が率先して上げるのじやなかろうかという印象を持つのであります。ほかのものが上つてしまつてから上るのではなしに、みずかち上げておるのではなかろうかということを国民感情として持つのであつて、その点はよほど心理的な影響というものを考えなければいけないのではないかと考えます。値上げ理由としましては、他の物価より水準が低いからとか何とかおつしやるけれども、私はそれだけでは国民感情を満足させることは非常に困難ではないかと思います。私が今極めて簡単に計算したところによりますと、今度原案によると、書状のようなものは十二円ということになつております。昭和六年は十五グラムが三銭ということになつております。今度の値上げの率というものは戦前に比べますと四百倍ということになる。そうしますと若しもこの数字を基礎にして考えるならば、ほかの物価は安本の統計によつても二百五十倍、日本銀行の統計によつても大体三百四十倍であるときにこの四百倍に値上げすることはどうかということを国民が非常に疑問に思うであろうと思うのであります。でありますから私は国民政府みずからがインフレの要因を作つているのだという心証を持たせないためにも、その辺は特に十分なる考慮を払うことが必要ではなかろうかと思います。  第三に、私は今度の値上げを行なつて果して利用度がどうなるかということを非常に懸念いたすのであります。戦前では一人一年間に、この統計によりますと六十七通通常郵便物を出しておるといわれております。昭和十年が……。ところが最近になつて昭和二十五年の統計によると三十六通でございます。大体これは戦前の半分の程度しか利用していない。このときに若しも又このような大幅な値上げをして利用度が減つてしまえば、折角値上げをしても何もならなくなるのじやないかということを懸念いたしますから、私は値上げをするときには国民が最も利用しやすい程度値上げが必要ではないかということを懸念いたすのであります。折角値上げをしたけれども、国民利用しなければ何にもなりませんから、利用度というものをよくお考えになつて上げになることが必要ではなかろうかと、こういうことをおもいます。  これを要するに私は世界物価騰貴の代である、日本物価騰貴の段階に入つている以上、郵便料金値上げというものはこれは止むを得ないと思いまするけれども、飽くまでも政府みずからがインフレの先駆をなしているのだということは慎しまなければならんと思うと同時に、値上げの率についてもほかの物価水準より高い水準まで上げることはどうかということに疑問を持つ。そうして根本的に言うならば、独立採算制よりもむしろ国民の利便ということを考えるべきだろうと思うが故に、今度の料金値上げのうち得た収益では、できるだけ郵便局の増設の方向に御努力を願うことが望しいこと思うのであります。まだまだ地方へ行つてみますると、郵便局のない村が相当あるのでありまして、私はそういう国民生活便益を図る方向利用すべきであつて、この配られた資料によりますると、どうも予算の五割九分、大体六割近くのものが人件費に食われてしまうということでは、甚だ心もとないという気がいたすのであります。それでは郵政事業の真の確立はあり得ないのであつて、私は郵政事業の真の将来の発展のためには、飽くまでもできるだけ企業合理化に一段のメスを振われることが必要ではないかと思います。ここに配られた資料だけでは、合理化余地がないという結論だけを出しておるのであつて、我々が意見を述べるに当つてはもつと詳細なるデータがなければ、合理化余地があるかないかということはわからないのであります。合理化余地がないとしての六割の人件費ということでは、非常に私はここに大きな疑問が残るのではなかろうかと思います。合理化といいましても、直ぐ何も首を切れとか何とかいうことではありませんけれども、とにかく今の日本輸出産業を見ておりますると、国際的に競争する産業人件費が大体四割前後どまりであります。この人件費が全体の六割も占めるような産業では、これは到底その企業それ自身としての存在の価値さえ疑われるようになるのではないかということを懸念するのであつて、私はできるだけその合理化の面を強く推し進めることを要望いたすのであります。  これだけの条件と申しましようか希望を附加えて、私は今回の原案修正することはそれぞれのお立場もありましようけれども、私は修正するかしないかということは、大勢によつてきまるべきものであると思いますけれども、私は修正されても結構である。要するに国民利用度ということを中心に考えて、最も利用しやすい程度料金修正なさるならなさつて、そうしてこれを上げることに賛成いたすのであります。
  4. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 御質問はありませんか……。私から御質問したいと思います。今独立採算制お話がありましたが、あなたのおつしやるように国民利用便益を図る、即ちサービスとして郵政事業というものは考えるべきだという観点から、一体今この独立採算制ということが、日本の今日の郵政機構の下に独立採算制は私は無理であると思いますが、何かいい方法はありませんか。
  5. 齊藤栄三郎

    公述人齊藤栄三郎君) 独立採算制が無理であるかどうか、独立採算制をやらずにやる方法があるかという御質問ですか……。私はこの本論から離れるかもわかりませんけれども、郵政電通というものは一本になるべきだとの主張を持つものであります。
  6. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) そうすれば独立採算制ができるであろうという……。
  7. 齊藤栄三郎

    公述人齊藤栄三郎君) 総合的に見て私はできると思います。郵便事業だけで黒字にするということは、その場合でも私は困難であろうと思います。又それまでその場合にも黒字にする必要はないのであります。全体の予算が、今の政府予算が今年の補正予算まで合せて七千九百億円という大きな数字の中で、郵便の比率は極めて小さいのでありますから、私は飽くまでも経済の神経としての郵便並びに国民生活の血液としての郵便事業というものは独立採算制をそう貫く必要はないのではないか。併しそれを郵政事業だけで貫く必要はないからといつて郵政省だけでできないものはどんどん赤字であれば一般会計から繰入れるのだという考え方では私はまだ不十分であつて、これをやはり電通事業との関連において考えて見て、全体として電通郵政と合せたものの、その中で有無相通ずるならば、国民負担というものはもつと軽減されるのではないか、こういうことを感ずるのであります。
  8. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 御質問はありませんか……。  では次に元通信院総裁小松茂君にお願いします。
  9. 小松茂

    公述人小松茂君) 私は衆議院修正送付されました修正案に大体において賛成でございます。ただ第三種の、二十三条の第四項の但書にある日刊新聞等料金でありますが、これについては後ほど意見を申述べたいと思います。その他の点については衆議院修正意見に大体賛成であります。  今回の料金改正主要点赤字てんということが先ず第一に挙げられているのでありますが、この年額約八十億円に達する赤字を補てんするにつきまして料金をどういうふうに改正して均衡を保たせるかということは、独立採算制立場から相当合理的な基準を求めなければならないと思うのであります。そこで簡単に申しますると、第一種、現在八円のものが政府原案では十二円なつておりますが、衆議院において十円に修正されたわけですが、この第一種の大体において原価、コストと申しますか、それが約六円五十銭、六円四十七銭というのが今日調査の上出ておるのであります。それから第二種は五円二十七銭、それから第三種日刊新聞等は六円三十四銭、こういう原価計算になつておるんです。然るに政府原案によりますると、この原価の約倍に近く十二円、それから第二種は原価を割つた四円、而もそれに第三種日刊新聞等原価を遥かに割つて僅かに一円ということになるのであります。如何に独立採算制をとらんとしましても、余りにも負担権衡を失するのではないかと思う。そこでこの負担権衡を幾分でも緩和する意味において、一種の十二円を十円に修正し、又二種の四円を五円に修正したということについて賛成いたすのであります。この利用率その他の予定等によりますと、一種利用は大体一通当りが十二円五十四銭、二種が四円八銭、総計におきまして一種の総予定収入が年間で三十七億、二種が十七億の赤字一種のほうは三十七億の黒字でありまして、二種が十七億の赤字になつております。こういう結果になつております。且つ又第三種のほうは三十億の赤字を出すことになるのであります。こういう不権衡を来すということは、一種の犠牲において二種、三種を賄つて行くということでありまするから、これを是正する意味において、少しでも修正を加えられたということは大変結構なことだと思います。  それから或る方面では葉書の現在の二円を五円にするということは一挙に十五割の値上げになる、それは甚だけしからん大衆性を失う、大衆の最も利用する葉書をそういうふうに十五割の値上げけしからんじやないか、こういう議論があるようでありますけれども、そのことにつきましては、先ず第一に葉書大衆性のものであるからという意味でありますが、この郵政省で出しました郵便現状の中にもありますように、大衆通信利用率は非常に低いのであります。それで第二種の葉書を最も多く利用するのは決して大衆ではないのでありまして、大衆利益を害するから二種の値上げはいかんというような意味議論でありましたら、それは全く事実を無視しておることでありまして、大衆云々を口実にして、その最も多い利用者たち負担を免れようとする結果になるのであります。それから又十五割の値上げけしからんという議論もあるようでありますけれども、これは前回、即ち昭和二十四年の五月に行われました料金の改訂のときに葉書はそのまま据置きになつているのであります。そのことを考え合せますると、今回の修正案の二円を五円にするということは決して不当ではないと考えるわけであります。  次に第三種郵便の八十銭を一円というのが原案でありまするが、これは先ほど申しましたように、この原価計算から行きますると六円三十四銭になつているのであります。これをそれが日刊新聞その他文化向上に非常に必要であるという意味からして特に安く定めてあるわけでありますが、片一方に独立採算制をとつて、少しでも合理化しようとする際でありまするから、余りにも甚だしいこの原価を割つた計算はどうかと思うのであります。従つて私は個人としまして、第三種日刊新聞等で百グラムごとに八十銭の現行のを一円にするという改正原案をせめて二円ぐらいにいたすのが至当ではないかと思うのであります。その他の改正案につきましては衆議院改正案賛成であります。
  10. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 質問のかたは、今齊藤君は所用があつて帰りましたが、ほかの公述人かたがたはあとまで残つておるそうですから、皆さんの公述を聞いてからまとめて御質問をしたいと思いますから御承知置きを願います。  次に日本商工会議所理事をしておられるところの八坂雅二君にお願いいたします。
  11. 八坂雅二

    公述人八坂雅二君) 商工会議所に所属しております業種は、ほかの業態に比べまして最も多く郵便物利用するわけであります。郵便物値上げは直ちに経費の増加となりまして、それだけ生産物並びに取扱品値上げを来すというようなことになりますので、郵便物値上げ会議所としては賛成しかねる状態に、立場に立つておるのであります。併しただ経費負担を軽減するというような単純な事柄ではなくて、郵便物値上げによりまして大きな影響があると思う点を申上げてみたいと思います。  日本物価世界平均物価に比べて一五%ぐらい高いと称されておりますが、今後期待されるところの日米経済協力、東南アジアの後進国開発、又朝鮮の復興等に対するところの輸出貿易に対しまして、政府は現在低物価政策をおとりになつておるようでございます。然るに政府に最も関係の多い、又国営もあるところの鉄道郵便電信というような、それから電気というようなものの値上げがされることは、先刻齊藤さんからもお話がありましたように高物価の示唆を一般国民に與えるというようなことになりはしないか。大体地方の人なども言つておるのは、政府関係事業が上るのだから物価は決して下りはしない、将来必ず上つて来るのだというような観念を持つておるようであります。それで政府が率先して物価上げ政府関係の或るものを率先して値上げをされるということは、政府の低物価政策と矛盾するところがないかと考えるのであります。併し今後の講和後の日本財政から見られて、政府財政にできるだけの余裕をとつておくというお考えは成るほどわかりますけれども、この独立採算制ということは外国の例から見ましても、大体電信は民間の経営に委ねられておりましても、郵便は殆んどすべての国が国家の経営になつておるようでございます。それは郵便事業が非常に重大であるということと共に、郵便物国民の全部が関係するところでありまして、郵便物利用者に成るべく負担を軽くするという観点から出て来ておるのじやないかと考えます。そこで諸外国におきましても殆んど独立採算制をとつておるところは、私の承わつたところでは余りないようであります。一般会計の繰入れによるものが多いようであります。そういう点で完全なる独立採算制をとられることは少し無理があるのじやないかと考えます。  それから郵政省経費のうちには、銀行に類似する貯金事務保険に類似するところの簡易保険というようなものを取扱つておられますが、その募集費といいますか、預金の吸収の経費というものを郵政省がお持ちになつておるにもかかわらず、その吸収された資金は大蔵省の預金部に廻されておりまして、その資金運用による利益というものは郵政省には還元しておらんように思います。そこで完全なる独立採算制をおとりになるならば、預金部資金運用によるところの利益というものは全くよそのものでありまして、郵便物利用者がそれを負担するという結果になるので、その点において独立採算制は非常に無理があると考えるのでございます。勿論足りない分を全部一般会計の繰入れによることは困難でありましようが、今までに述べましたような理由に基きまして、或る程度一般会計からの繰入れがお願いしたいと考える次第であります。  それから電通省のほうの従業員待遇郵政省従業員待遇が非常に違うということであります。又施設等においても同じような仕事でありながら等差があるということは余り感心したことじやありません。これは先刻お話になりました、この二つ一つの省に集められるとすれば別問題でありますが、同じ政府事業で、事務費事業費で、従業員待遇とかすべての施設が惡いということは従業員の不平を起させまして、その結果、戦後にありましたように労力を省くために郵便物をまとめて放置するようなことでも起りましたならば由々しい問題だと考える次第であります。そういうためにはこの原案にも或る程度改善をするようになつておるようでございますけれども、それに要するような費用及び原価を成るべく私どもは安くして頂きたいと思います。その間二つ不足額一般会計から繰入れたらどうかと考える次第であります。  各種類の問題につきましては、第一種郵便物十二円と原案はなつておりますけれども、これは原価計算の上からも甚だしく高くなつております。それからこれを売捌く技術上の問題についても非常な手数がかかるという点から考えまして、衆議院改正されました十円が適当と考える次第であります。葉書のほうはこれも安いほうが我々としては望しいことでありますけれども、他の釣合から見ましても又原価計算の点から見ましても、或いは釣銭等技術上の問題から行きましても五円にすることが至当ではないかと考えます。それから年賀郵便原案では三円、本年に限り二円ということになつておるのでございますが、年賀郵便が普通の葉書よりも、通信ということよりも非常に重要とは私は考えられないと思います。年賀郵便の中には或る程度虚礼というようなものが含まれるように考えますが、今日の日本状態として虚礼を奨励するというようなことは余り当を得ておるものとは考えませんので、これは衆議院において三円を四円というように修正されておるのでありますが、私は普通葉書の五円と同じにしても差支えないと考えます。  第三種郵便につきましては、これは新聞等の非常な公共関係があることでありますから、この程度修正で私は賛成であります。第五種その他の種類につきましては原案に対して異議はございません。大体これだけであります。
  12. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 次には日本新聞協会編集部長江尻進君にお願いいたします。
  13. 江尻進

    公述人江尻進君) 極く簡単に申上げます。  本日の参考意見を述べるにつきまして日本新聞協会に参加しております全国の日刊新聞論説を調査いたしましたけれども、郵便法改正によつて郵便料金全面的値上げを支持するという論説を掲げておるものは遺憾ながら一つも発見することができなかつた次第でございます。先ほどからいろいろと述べられておりますように一般世論も大体これを支持しておるのではないかと考えられるのであります。従つて一般的な世論乃至は新聞界意見を代表するという者といたしましては、遺憾ながら値上は結構であるというふうに賛成は申しかねる次第でございます。若しこの値上げ郵便料金だけにとどまつておるものでしたら問題は違つた結論になるかとも存じますが、鉄道電信、電話、電気、ガス、米というふうに国民生活に欠くことのできないもので、而も官業乃至は独占企業によつて経営されるものが軒並に大幅な引上げを行うということは、インフレを煽り国民生活を圧迫することになるわけでございます。そういう点については先ほど齊藤さんが指摘されましたので触れるのをやめます。この点についての各社の論説を要約いたしますと、いろんな意見を要約して見ますと、次のような工合になつておりますが、私としてもこの意見賛成いたす次第でございます。  それは即ち日常の国民生活と絶対に切離せられないこれらの料金価格引上げはいろいろなものにはね返り、すべての物価便乘的値上げを誘発してインフレ的傾向を生む、値上げ理由はいずれも赤字解消というに尽きる。又官業料金値上げ戦前に対する物価の倍率と比較して引上げをすることは過去の公定価格時代の遺物たる統制思想のいたすところである、こんな方式をいつまでも続けていれば物価高騰への刺戟はやまず、国民経済合理化能率向上は望めない。今回又来朝したドツジ氏も指摘しているように、一般物価国際価格に釣合せるために値下げの努力が要請されておるときに公共性を持つ企業が軒並みに値上げを行うのは大いに問題とすべきである。要するに能率サービス改善を怠つていて、物価上つたからというて直ちに給与や料金上げるという安易な政策をとるべきではないというのが大体の趣旨でございます。  次に新聞に直接影響のございます第三種郵便について申上げます。今回の改正案新聞公共的使命という点を深く認識されて、他の郵便の最高の値上率である一〇〇%に比べまして値上率を二五%にとどめられたということに対しては、新聞界といたしましては深甚の敬意を表するものでございます。新聞配達日本では主として新聞店の手で行われておりますが、外国では郵便の発達しているために他方への配達は殆んどこの郵便利用している次第でございます。従つて新聞の普及上にも経営上にもこの新聞郵便制度は重大な影響のある問題でございます。米国には米国新聞協会或いは米国新聞発行者協会という有力な団体がありまして、すでに六十余年の歴史を持つておりますが、その協会の毎年の最も大きな仕事一つになつていることは、この新聞郵便料金の公正なる決定に参画するという問題でございます。我が国では郵送部数が米国ほど多くはありませんが、それでも全国を通じますと毎日約百五十万部が送られております。この新聞の郵送される地域は地方の辺鄙な農山漁村が多く、電気もラジオもないというような所でございまして、新聞がその地方では内外の情勢を伝える殆んど唯一の手がかりというべきものでございます。従つてこうしたものに対して新聞を普及するということは社会全体の結合を図るという上に重大な影響を持つものでございます。若しもこれを受益者だけに負担させるということで値上げを行なつて行きますれば、こういう人たちは新聞の購読をやめる結果になりますので、国の文化政策上から見ても非常に重大なことでございまして、こうした地域に対して極力低い郵送料金を以て新聞の普及を図るということは国家的に見ても必要なことと存ずる次第でございます。終戦以来我が国の新聞の発行部数は相当に殖えておりますけれども、世界的に見ますると、国際連合の統計などでは、人口千人についてイギリスでは六百出ておりますが、日本では二百六十七部というような数字になつておりまして、まだまだ文化国の中では低いところでございます。又その東京とかその他の大都会地では平均いたしますと、一世帯当り三部というような普及になつておりますが、九州とか四国などの地方に参りますると、一世帯で一部にも達しておりません。一国文化の向上のためにも我が国の新聞外国並みに普及するということが必要なわけでありますが、特に以上述べましたような僻陬の地への普及というものは重大な問題なのでございます。これを単に新聞経営上から見ますると、我が国の日刊新聞の総発行部数は二千七百万部という数字になつておりまするので、郵送のものはその五%程度にも達しないという状態でありますから、新聞全体の経営の点から見ますとそれほど重大視する必要のない問題かと思いまするけれども、先ほどから申しまするように文化政策というような面で国家結合を図る、社会の団結を図るという意味におきまして、こういう地域へ新聞を普及するということが国家全体として必要ではないかと存ずる次第であります。そういう意味において日刊紙の第三種扱いに特別の考慮を払われておるということに対しては敬意を表する次第でありまして、なお慾を申しますれば、今回の改訂においてもできれば現行の料金を維持されるならばなお結構であるというふうに希望する次第でございます。
  14. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 次に日本労政協会顧問白石源吉君にお願いいたします。
  15. 白石源吉

    公述人(白石源吉君) 私は今度の衆議院修正しました書状十二円を十円にし、葉書を二円を五円にするという案に賛成であります。すべて通信とか交通とかいうものは、若し国家の財政が許すならば只でもやつてつたほうがいいし、安ければ安いほうがいいことは勿論でありますが、何かこの前聞くところによりますと、二十六年度半ばにしてすでに相当の三十数億というものを一般会計から繰入れなければならんということであれば、結局それは同じことだというような、そういう気持にもなるのであります。私はそういう意味で先ず賛成するということを申上げましよう。  それから先ほどもちよつとお話があつたようでありますが、現在の二円というものを五円にするということは非常な値上げだというのでそれに不賛成を表明しておる人もあるようでありますが、私もずつと前に、戦争中でありましたか、すべての国民生活でまあできるだけ一つ或るものについてはひどい負担にならないようにしようというので取上げられたのがたばこのバツトと葉書ということでありました。勿論そのほかにもありましたけれども、それが一つの問題でした。つまりたばこを上げるにしてもバツトだけは上げても非常に少なくしよう。それから葉書だけはともかく少なくしようというので、それが二円だつたということであります。そうすれば今それを五円にしたところが大したことでもない、そう思うのであります。で私はこのほかにここに修正が出ておりますが、これについても大体賛成であります。ただ問題はこれは第三種であります。  先ほど新聞協会のかたもお話になりましたけれども、アメリカあたりではまあすべての新聞郵便で行くということでありますが、今のお話の通り郵便になるのは僅かに五%というお話で、その五%というのが重大なんであります。若しも新聞をアメリカのようにことごとく郵政省に託して下さるならば、随分安くてもいいんじやないかと、こう考えるのであります。郵便というものは、これは数でこなすより仕方がない、部会の人口の稠密な所は自分で配達しておつて、遠い所だけ新聞郵便に出すということは、早く言えばこれは集配人諸君が、この集配手諸君が僅かなもので遠い所まで運ばなければならない、第三種でも大きな雑誌なんかになりますと、あれを十ばかり持つというと、うんうん言つて行くと、なかなか山道を、その僅かな郵税のものを担いで、そうしてひどいときになるというと二、三里も歩かなければならないと、そういうことであつては非常に困る。これは私は労働する人に余り文化の名を以てそういう人を苦しめて行く、文化々々と言つて、それは非常に結構だけれども、その文化がそういう労働者のために支えられている、そういうひどい労働するために支えられているというのだつたら、昔のギリシャの文化と少しも変らない、労働者に犠牲を払わした文化の維持ということになつてしまう。若しもすべてのものが、この雑誌社でも売捌所なんかに配達をしないで、どこでもみんなそれを郵政省でやつて下さるなら、郵政省は今の一円という料金もいいと思う。私は一円に実は不賛成だ、これを一つ修正して頂きたいと思う。どういう根拠によつてそういうことを申すかというと、これは日本でもそうでありますが、アメリカでもそうでありますけれども、この書状、つまり第一種の二分の一が葉書になつておる、葉書の三分の一というものが第三種に大体なつておる、これは四セント、二セント、一セント半といつても、これを一セント半といつても、アメリカのほうは量が非常に多いのでありますから、これくらいにやつても別に……勿論この全体の目方の差はありますけれども、日本で言えば百グラム、二十グラムのそういう差はありますが、とにかくそういう逆に、いわば一三六という比率は、これは前に第三種新聞が五厘であつて、そうして葉書が一銭五厘、書状が三銭、こういうのは明治何年でしたか、明治二十五、六年でしたか知りませんが、それから二十数年も続いた、我々の頭からするとそれが何かしらんそういう錯覚に陥る。葉書を出して来いといえば一銭五厘出せばいいように思つて。手紙を出せば三銭でもいいように考えている。この比率は国際的でもあり、これが又いいあれなんです。今度の五円、十円というのは非常にいい比率だ、つまり二分の一になつておる、書状のニ分の一が葉書になつておる、だからこの葉書の三分の一にする、そういうことになりますというと、ここで計算したのでありますけれども、一円六十六銭五厘になる、併しこれはまとめて第三種のごときはやるのですが、お釣り問題はないのでありますが、一円五十銭くらいが適当じやないか、これは国際的な比率である。そうしてこれは二十数年我々の頭を支配した一つの比率でもあるし、そういう意味で私は参議院で衆議院修正を更に修正するということは、葉書と書状についてはあつてはいけないけれども、第三種については一つ修正して頂きたい、そう思うのであります。私は曾つて新聞にも関係しておりましたし、新聞の値は成るべく読者に転嫁しないよう、郵税のごときもできるだけ低くすることは賛成でありますけれども、併し新聞自身がすでに随分値上げをしておる。これは曾つて我々夕刊一銭、夕刊一銭というちりんりんと我々の耳に響いておるが、今日夕刊が四円五十銭、四百五十倍になつておる。そういうことから考えましても、新聞の広告のごときも、これは関係筋から聞いたのでありますが、昭和七年頃に一ページ全ページの広告というものが二千五百円或いは三千円のところを往き来しておつた。然るに今日はどうかというと百八十四万八千円、二百二万一千円に上つておる。即ち一方は七百三十八倍であり一方は八百八倍、これを平均しましても相当な値上りであります。そういうこともあるのでありますから、これは止むを得ない、ことごとくがこれは仕方がないものじやないか、そう私は思うのであります。でありますから私はその十円、五円に賛成をいたし、第三種に一円五十銭に修正して頂きたい、こう思うわけであります。  それからもう一つ、私お願いしたいと思うのは、十一月一日から値上げをするという、そういうのでありますが、これは非常に近い、参議院でどれだけあと審議に日数を要するか知りませんけれども、余りにそれを早くやつて、そうして皆に徹底しない、国民に徹底しないうちに二円の葉書がどんどん出されたり何かして、やれ不足だとか何とかいつて煩わしさが多く、ごたごたすることは私は不賛成だ、それが全国民に徹底するまで余裕を置いて頂きたい。それでなければ徹底する方法を講じて頂きたい、そういうことを私はお願いしたいのであります。  そんなところでありますが、要はいつも始終赤字に苦んで待遇すべきところも待遇できない、そうして一般会計からもじもじしながら繰入れを要求しておるようであつては、これは事業というものはいいことにならない。同時にサービスもできない。私は値上げすると同時にサービスを要求する。成るべく郵便というものを楽しくやる、前の原案として出された四円とか十二円というものがどれほどばかばかしいことであるかということであります。どうしてもお釣を必要とする、郵便局の窓口に行つて葉書を買う場合にお釣を出さなければならん、今現に都電で十円のところ二円のお釣をやつておるが、あの煩しさは我々見ておつても気の毒である。運転手になくなると車掌からもらつて来てやつてる。而も全体から見て毎日銀行を飛び歩いて都電の当局が両替えする手数だけでも大変であります。郵便も窓口でお釣がなくて売らなかつたとか何とかいうことがありましたらば、又その手数をかけることによつて公衆を行列させるようになるとサービスでも何でもないから、私はその意味においても五円、十円ということそれ自身がすでに無理でないのでありますから、そういうことで私は是非五円、十円と、今言つたその第三種の発行人がやる場合に一円を一円五十銭にする、決して無理でない、国際的な比率だ、そう私は申上げておきたいと思います。
  16. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 次は生命保険協会常務理事の野口正造君にお願いいたします。
  17. 野口正造

    公述人(野口正造君) 本日のこの公聴会におきまして意見を申述べさして頂く機会を得ましたことは、私の衷心から感謝に堪えない次第でありまするが、私はこの機会に先ず国民大衆の一人としての立場から、及び現在私が所属しておりまする生命保険業者の立場から、この双方の立場からの意見を申述べさして頂きたいと存ずるものでございます。  終戦以来すでに六カ年を経過いたしまして、今や講和条約の調印もすでに成りまして、いよいよ我が祖国日本の自立、独立国家としての発展に向わんとしておりまする今日、殊に終戦直後のあの経済、政治、文化、思想の混乱、虚脱状態も漸く安定の域に達せんといたしております。殊に我が国民の最も深憂に堪えなかつたインフレーシヨンの危機も幸いにして政府及び国民全体の協力によりまして、ここにこれを切り開くことができましたことは誠に御同慶の至りであると存じます。而もこの国民経済生活も漸次非常事態を通り抜けまして、今や常態、即ちノーマルな事態に向つておりまするが、昨年の朝鮮事変の勃発と同時に、一部におきましては特需景気等が起つて参りまして、物価の局部的な変動を見ることになつたことは皆様の御承知の通りであります。而もこれも漸次鎮静に向いまして、本年の三月あたりを頂上といたしまして漸次低下の方向に向いましたが、併し最近に至りましては再びこの物価奔騰の傾向に向いつつあることも皆様の御承知のことと思うのであります。で而もこのときに当りまして、例えば本年の八月におきましてすでに電力料金値上げとか主食と塩の値上げとか、或いは十月に至りましてはガスの値上げ、又十一月の一日からは鉄道の運賃とか、更にこの郵便料金電信電話の料金等の値上げ政府において御計画になつているのでございまするが、いずれもこの政府事業におきまして、又公益事業値上げ、これが今日これら物価値上げの最尖端になつているという実情でありまして、このことが先刻も数人の参考人のかたがお話になりましたように、今日の物価騰貴に対するその先駆を政府が行なつておられるというような実情であるのでございます。でこの点につきまして我々は国民の一人といたしまして、この値上げが今日の国民生活に如何なる影響を及ぼしつつあるかということを静かに眺めて見なければならないと思うのでございます。殊に政府事業は国家的な独占事業でありまして、消費者が経済手段によつてこれに対抗し得ないことは民間一般産業と非常に違つている点であります。従いまして政府事業経営には最も厳正の上にも厳正を期してこれが経営が行われるべきであるかと思うのでありまして、かかる点から考えまして政府事業物価値上げということについては最も慎重に、又国民大衆の声も十分にお聞きになつてこれを御実行になるということが、私どもは国民として望ましいことであると存ずるのであります。で価格引上げによりまして国民大衆の生計費はおのずから上つて参りまするし、これと同時に労働組合等におきましても賃上げの共同闘争を計画される一つの原因にもなりまするし、又現にそうなりつつあるのであります。又社会不安を醸成するに至るということも、これは考えられることであります。なかんずくこの郵便料金電信電話料金等の値上げにつきましては、一部にはこれは直ちに国民生活に脅威を及ぼすがごときことはない。その影響は他の物の値上げに比較して非常に少いというような考え方を持つ人があるかも知れませんけれども、これは又一つの大きな錯覚であると私は感ぜざるを得ないのであります。郵便電気通信等が国際的に国内的に事業発展のために、又文化交流の上に重要な役割を有するということは言うまでもないことでありまして、これも先刻のどなたか参考人の御一人からこの点についての御指摘もあつたのでございます。これを他の事業と同じように値上げするということは、これらの事業の運営を阻害し、又文化交流を制約するものであります。何となれば、郵便電気通信等に依存いたしておりまするいろいろの事業或いは文化事業等は、他の営利事業等は、他の営利事業と異りまして、その値上げを直ちに消費者又は利害関係者に転嫁するということが非常に困難であるからであります。従いましてこれは専業の制約を来し、大きく言えば日本の文化国家としての再生に暗影を投ずる一つの因子となるということも、これは言い得ると思うのであります。要するに政府事業物価政策上重要な地位にあるものでありまするから、一層合理化を図つて頂きまして、極力値上げを避けるということと共に、止むを得ない場合におきましては予算の全体から見まして不急な支出はこれをでき得る限り削減する、そうしてその削減せられた余剰をこれに補給しても、成るべく値上げをしないように、価格を維持するということに努力して頂きたいというのが、これが国民一つの声であると私は感ずるのであります。 然るに今ここに郵便料金値上げの問題が今御諮問に与つておるのでございますが、私は原則的に申述べるとすれば、今申上げましたような方針によつて政府が対処せられんことを希望する次第であります。併しながらこれは一つの現実の問題といたしまして、若し政府におかれましても今私が総論的に申上げましたようなことについて、これこの方策についても真実に考究し、或いは検討せられても、なおどうしても値上げをせざるを得ないということでありまするならば、私は次のように述べたいと存ずるのでございます。なお特にこの点につきましては先刻も申上げましたように、私が現在所属いたしております生命保険業者の一人としての考え方もこれに織り込んで申述べさして頂きたいのでございます。  今度政府郵便料金値上げを実施せられることになつたのでございますが、物価の騰貴、通信特別会計独立採算制立場からどうしてもこれが必要だということで御提案になつておりまするが、これらにつきましては一応は止むを得ないことであると私も感ずるのでございます。併しながら先刻も申上げましたように、通貨も物価もやや安定して、将来にはなお明るい希望を持ち、又持たなければならない今日におきまして、今回政府において企画せられましたような大幅の値上げということは、これはインフレの高進に拍車を加えるばかりもなく、漸く安定の軌道に乘りかかつておりまする国民生活を骨かす一つの要因となるのではないかと考えるのであります。これに加えるに、更に今日いろいろの事業の中には必ずしもすべてが非常に繁栄の方向に向つておるものばかりではないのでありまして、戦後の回復等においてなおその間に遅速あるを免れないのでございます。これら経営不振に悩んでおりまする企業体にとりまして今回の大幅な郵便料金値上げということは相当の影響を與えることはいなむことができないのでございます。例えば今我が国の民営生命保険事業を見てみまするときに、現在民営保険会社におきましては、国民全体の人口の約二割五分に達する契約者を擁しております。そうして会社と契約者との連絡はすべて通信によらなければならない。事業の性質上本邦におきまする最も大きな通信事業利用者であると言うことができると存ずるのでございます。而も生命保険会社の、今二十社ありまするが、この二十社の一年間の郵側料金の総額は、例えば昨年度を見ましても二億円を超えております。でこれに電信電話料等を加えますると、その通信料の全額は正に二億五千万円を超えておるという状態でございまして、この会社経営に関しましての事業費のうち、物件費の二割強というものを占めておるのであります。実に郵便料金通信料金だけが、全事業費の中の物件費の二割を占めておるという、そういう非常に多額の料金をいたしておるような実情でございます。而も今回政府において御計画になつておりまする郵便料金値上の平均率は六割八分と仄聞いたしておるのでありますが、若しもこれが事実といたしまするならば、これによつて生命保険会社全体にとつてはおよそ最低に見積りましても一億三千六百万円の増加を来すということになるのでございまして、このことが生命保険会社の現在の経営に非常に大きな影響を及ぼすということは、これは火を見るよりも明らかであるのであります。で生命保険会社の使用する今日の郵便種類の中で最も大部分を占めておるものは開封もございまして、これは全体の約八〇%を占めております。これは丁度法案第五種に相当するものであります。それからその次は葉書でございまして、丁度法案第二種として挙げられておりまするこの葉書がこれに次ぐのでございまして、これらの種類のものに関しましては、次に述べまするような理由によりまして、政府におかれましても特に御考慮をお願い申上げたいと存ずる次第でございます。  でその理由として先ず第一にお聞き取りを願いたいことは、我が国の生命保険会社の保有いたしております生命保険契約は、本年の二十六年七月の未現在におきまして二十会社の合計は約二十万件余りでございまして、保険金額は六千六十五億円に上つております。而してこれら契約者に対する保険料の払込案内や督促状の送付その他の通信で、契約一件に対しまして最低一年に二回乃至四回の開封並びに葉書による通信を必要といたしております。この点につきましては終戦直後におきましては、御承知の通り会社も非常に困難な状態でありましたので、契約者に対するサーヴイスのごときも、誠に申訳ないことではありまするが、非常に低下いたしております。従つて保険会社から保険料の払込の案内もよこさない、督促状もよこさないと言つて、契約者のかたがたから随分お小言を頂戴したことがあるのでございまするが、その後経済の安定と同時に、又会社の経営状態向上と相待ちまして、現在では戦前と同様に成るべくしております。契約者に対するサーヴイスとしての、例えば保険料払込に対する予告とか或いは督促状等も成るべく出すように心掛けておる次第でございます。こういう点からもこの開封或いは葉書等によつて契約者等に差出す通信のヴオリユームというものはますます今までよりも大きな率を以て増大して行く傾向に今日あるのでございます。第二の理由は以上の契約者と会社相互間の通信だけで最低仮に一年二回、一回を開封とし一回を葉書とすると仮定いたしましても、各会社が現在一年間に支払つておりまする通信費は二十社で約一億六千万円となります。それで例えば最高保険の契約を保有しておりまする会社のごときは、一つの会社で一社だけの会社の負担額を見ましても、昨年度におきまして開封だけで二千万円を超えております。これに葉書……而も、これは本店だけの通信量でございまして、これに支社とか、支部とか代理店相互間の一般郵便物等を加えますならば、実に三千万円以上の通信料を出しておるということに相成るのでございます。更にこれに電信、電話等の料金を加えますと、実に一社で以て昨年度において五千万円近くの通信料を払つておるという実情でございます。第三の理由といたしましては、今回の値上率が平均六割八分でございますが、これが実施いたされますと、現行料金に比較いたしまして、前にも申上げましたように、二十社で約最低に見積りましても一億三千六百万円の負担増加ということに相成る次第でございます。第四に諸物価の高騰に伴う人件費、物件費等が著しく高まつて、これを切下げるために今日民間の保険会社は極力経営合理化を図らんとして努力いたしております。一方生命保険事業は他の事業が、例えば物価が上りますならば、商品とか労銀等の値段を引上げることができまするけれども、生命保険事業はこれに反しまして、事業本来の性質から、保険料にはおのずから一つの限度があります。現在以上に引上げるということは全く不可能でございます。殊に御承知の通り生命保険会社は、今回の戦争によつて戦争保険金も約款と違いまして無条件に二十七億からの戦争保険金の支払いをするとか、或いは在外資産が殆んどゼロになるとか……、かくして国家から三十八億以上の補償を頂いて、やつと一万円以下の契約の保証ができるという状態になつて、殊更に非常に戦争による影響が大きかつたのでございます。併しこれを今回復せんとして生命保険会社は真に努力をいたしておるのでございまするが、この際に又この予期せざる大きな支出の増加ということは、この会社の経営に非常に大きな影響を与えるということに相成る次第でございます。戦前において生命保険事業世界第三位として世界に認められておりましたものが、現在では国際的統計を見ますと十位に劣つております。併し我々は我々の努力によつて国民と共に戦前の地位に回復せんことを希つて今や努力しつつあるのでございます。と同時に今日の我が国の経済再建のために最も必要な資本蓄積、殊に長期資金の必要な点を考えまするときに、どういたしましても生命保険事業の発展ということは国民経済の発達のために、殊に戦後経済の再建のために必要欠くべからざるものと思うのでございまして、こういう面から考えましても事業の健全なる発達を図る意味におきましても、今回のこの料金引上げ等については政府におかれましても十分なる御配慮をいたして頂きたいと考える次第でございます。第五の点は、生命保険会社の使用する郵便物も、会社と契約者相互間のものと、会社の支社、支部、代理店、社員等相互間のものその他いろいろありまするが、そのうちに大部分を占めておりまするものは契約者に対する保険料払込の案内、失効防止のためにする払込督促等、これらは主として法案の第二種の葉書、第五種の開封を使用しております。従いまして生命保険会社が大量に使用するこれら第二種及び第五種郵便物に対しては特別の御配慮を仰ぎたいと存ずるのでございます。なおそれと同時にもう一つお願い申して置きたいことは、特別の大口使用者に対しましては更に何らかの優遇の方法を講ぜられたいということでございます。これは単に生命保険会社だけの問題ではないと思うのでございます。これらの点から、今申述べましたような点から結論といたしまして私どもは次のようなことをお願い申上げたいと存ずるのでございます。  その第一は法案の第二種、即ち通常葉書の予定額は原案によりますると四円ということになつておりまするが、これを三円として頂きたいということ。第三は、法案第五種の業務用書類は百グラムごとに十円ということになつておりますが、これを八円にして頂きたい。  それからその次に第三といたしまして、大口使用者に対して特別の取扱いを講じて頂きたいということでございます。この点につきましては今回の法案の中にも、例えば市内においての特別郵便については特別の御考慮が払われておるようでございますが、生命保険会社のごときは必ずしも同一市内だけに限らないのでございまして、非常に大量のものではありまするけれども、全国的にこれが配付されるようなものでありまするので、この別納郵便の一発送品一日について五百通以上の場合におきましては次のような便法を講じて頂きたいと思うのでございます。即ち葉書につきましては二円五十銭、開封につきましては七円という程度で大口取扱者に対する一つの御考慮をお願い申上げたいと存ずる次第でございます。  以上誠に杜撰ではございますけれども意見を申上げさして頂いた次第でございます。
  18. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) 次に共立タイプ教育部総務塚本国三郎さんにお願いいたします。成るべく時間の二十分以内に御発言願います。
  19. 塚本国三郎

    公述人塚本国三郎君) 大分時間が経過いたしましたようで、私は極く簡単に申上げたいと思いますが、私は衆議院から回付されました原案に全面的に賛成いたします。但しその中に一つ御注文があるのでございますが、この第二種の葉書の点でございますが、実はこれは私がお願いしようと思いますことは、郵便規則のほうに専らなりますので、郵便法改正からは或いは逸脱するというそしりがあるかも知れませんけれども、併しながら郵便法の二十三条に非常な関係がございますので、その意味でどうかお聞き取りを願いたいと思います。郵便法二十二条のたしか第四項になると思いますのですが、その中に私製葉書のことが書いてあるのであります。更にそれから郵便規則のほうになりますと、それから敷衍されまして郵便規則の第十六条第五号にこういうことが書かれてあるのでございます。私製葉書の裏面に装飾又は愛玩のため写真、紙片、織物、樹皮等で薄いものを私製葉書の重量規定、普通葉書にあつては二グラム以上四グラム以内、往復葉書にあつては四グラム以上八グラム以内のその重量規定に触れずに、且つ容易にはげないように全面的に附着さしてあるものであればそういうものを着けてもよろしい、こういう条項がございます。これは一口に申上げますと、装飾又は愛玩のためと、こういうふうに極限されておりますことは、ちよつと旅行に行きまして、旅行先でいろいろお土産の葉書とか或いは写真があるという場合にこれを利用する、こういうふうなためにこの条項が設けられてあると私は信ずるのでありますが、実は私は私製葉書の今の条項を改めてもらいたい。いわゆるそういつたようなふうな利用の幅をもつと拡めて欲しいというふうな考えを持つているのであります。これもちよつと一口に……これを読んでみますと、私の私案といたしまして、勿論私法律は扱つたこともありませんし、それから又そういう文章も下手でありますので、随分冗長なところもありましようし、いろいろな贅文もあると思いますが、先ず私案として申上げたいのは、今の五号の私製葉書の裏面に装飾又は愛玩のためというところをもつと拡めまして、私製葉書をとつてもらいまして、郵便葉書の裏面に年賀、時候挨拶、慶弔の通信、それから答礼、選挙、宣伝広告又は装飾愛玩のためというふうにそこを拡げてもらいたいと思うのであります。それからその次に写真、紙片、美術、印刷物というものを附加えてもらいたい。こういうふうなことを考えております。どうして私こんなことを申上げるかと申上げますと、これはいろいろ理窟をつけて申上げましたらいろいろな理窟がつきますが、この年賀郵便にいたしましても、そこにその人の現在の健康の状態を示すために小さな写真でも貼つて上げるということになれば、普通の葉書をもらつたよりも更に一層の親睦感を持つことになる。それから又慶弔のいろいろな通信の場合にそういうものを、写真でも貼つてやりますれば、それは記念にもなることと私は信じているのであります。それから更にもつと重大に私ども考えていることは、これはくだくだしく私が申上げなくても皆さんすでに十二分に経験なすつていらつしやることと思うのでありますが、例えば選挙の場合にたくさんの候補者のかたから何通かの葉書が飛び込んで参ります。勿論そのうちに特に知合いの人がございまして、あの人こそ政見においても或いは人格においても信頼できる人だから、あの人に入れるのだと、こういうふうにきまつている人は一向差支えありません。併しながら一般の家庭、殊にやつと選挙権を得たところの婦女子などになりますというと、皆目わからない者もあるように私は存じております。率直に私白状いたしますが、私は政党政派に関係がございませんものですから、いろいろなつまり葉書通信を頂戴しますが、誰に入れていいかさつぱりわからないというので、どうだというようなことをいろいろ話がございますが、誰に入れても同じだよというようなことを言われる場合も随分あるのであります。そのときに私ども考えるのには、それじやこれはこの立派な写真が載つているしというようなことで入れる。そういつたようなことが、恥かしい話でありますけれども、そういつたようなことはこれはひとり私ばかりでなく随分多く行われていることだと思うのであります。かくのごとく選挙思想が低いということは非常に嘆わしいことでありますけれども、それは随分多くの国民の選挙に対する判断の実情だと、そういうふうに考えます。そのときに当りまして、せめてその葉書にその人の人柄や何かを書くと同時に立派な写真といつたようなものも載つておりますというと、何となくそこに信頼感も人によりましては起ります。又親睦感も起ると思うのであります。勿論これまで使つておりますような石版刷の俗惡なさつぱりはつきりしないようなものですと、却つて工合が惡いのじやないかと思いますけれども、そこに写真とか、或いは特にそういうふうなものを利用すれば、そういうふうな点が幾分でも力になる。だんだんそういうことが選挙思想、或いは政治思想を育てて行くのに力になるというふうなことも考える次第でありますが、ところが現在は今の郵便法二十二条によつて葉書にはほかのものを附けてはならんと、こういうことになつておるのに対しまして、郵便規則の第十六条が僅かにそういうものを貼つてもよろしいと、併しそれは愛玩用に、或いは旅行に行つたときの記念のためというようなことだけに許されております。勿論そのほかに一、二、三を読んでみますというと、或いは葉書に領収書の代りに収入印紙を貼る、そういうことは差支えないと、それから又何か記念スタンプができたときにその日附を加えても差支えない、そういうことも出ておりますが、それはもう従来あり来たりのことでございまして、私はそういう一、二、三の問題でなく、第五の今申上げましたことをどうか間口を拡げてもらいたい、かくすれば私は一五〇%の値上げも決して無理じやないと、こういうふうなことも考えておる次第であります。  なお申上げたいことがあるのですが、大分時間がたつておりますので私の申上げることは大体それだけにとどめておきます。
  20. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) それではもう一人全逓従業員の永岡君が見えるはずでございますが、まだ見えませんから、一応この辺で委員諸君の御質問を承わりたいと思います。御質問のかたは各公述人に御質問を願います。
  21. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 永岡君はお見えにならんからもうこの公聴会はこれでおしまいですね。
  22. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) そうしましようか。
  23. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 そうですね。その意味質問を出します。  私八坂さんへお尋ねしますが、あなたのお説を承わりまして、内容になつて参りますと、この修正案に大体賛成ということでございますね。
  24. 八坂雅二

    公述人八坂雅二君) さようでございます。
  25. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 わかりました。
  26. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) ほかに御質問はございませんか。
  27. 城義臣

    ○城義臣君 私のほうはございませんが……。
  28. 岩崎正三郎

    委員長岩崎正三郎君) それでは別段御質問もないようでありまするから、公聴会はこれで閉じることにいたします。    午後二時五十五分散会