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1951-10-26 第12回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十六日(金曜日)    午前十時十九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和二十六年十月二十六日    午前十時開議  第一 緊急質問の件     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、緊急質問の件。  千葉信君から行政整理に関する緊急質問動議が提出されております。千葉君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。千葉信君。    〔千葉信登壇拍手
  5. 千葉信

    千葉信君 私はここに労農党を代表して、近く提出を予定される定員法首切り問題に関する緊急質問を試みるものであります。  一体行政整理首切りなどというものがまじめに取上げられるためには、それをどうしてもやる必要があるという客観的な條件というものがなければならないし、又仕事の仕組が殊更に複雑化しているから、これを簡素化する必要があるとか、或いは仕事割合に人が多過ぎるとか、或いは又国家予算の中における人件費割合が過大であるとか、そういうことが先ず問題の提起されて来る前提でなければならないのであります。それから又こういうことをやるためには、それをやることができるような具体的な善後策なり或いは社会的状態というものが備わつていなければならないのであります。又、直接には、これによつて社会不安を誘発しないための社会保障制度考慮や、或いは公共事業によるこれら失業人口の吸收、失業対策樹立によるその救済方針が先行しなければならないはずであります。然るに、今度政府が強引にやろうとしている定員法による首切りにあつては、この余りにも当然過ぎる常識を踏みにじつて行政機構検討を後廻しにして先ず首切りをやる、人員が多い少いなどということには関係なしに、頭から天引首切り、実際多い多いという人件費国家予算における割合も示そうとしないし、労働大臣のごときは、これから失業対策考えるのだと国会で平然とあぐらをかいた答弁をしております。これでは公務員諸君国民も承服できないのは当然であります。(「その通りと呼ぶ者あり)私はこれまでこの問題に関して政府の釈明して来た理由、やれ国民七・四人に一人の公務員やその家族数という現状では公務員が多過ぎるなどという全然惡意に満ちたごまかしの数字や、それから、やれ二百億の減税をやるためだとか、給與の引上げに必要だからとかなどという弁解の如何にかかわらず、私はこの問題が全然無計画のうちに唐突に取上げられた理由を次のごとく了解いたします。  その第一は、講和條約の発効伴つて当然巻き起る非生産的財政支出犠牲としてこれが狙われたこと。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)第二は、アメリカの緊急物資調達計画、言い換えるならば、それに参画するいわゆる日米経済協力の無謀な推進に欠くべからざる要件として取上げられた低賃金企業合理化消費規正生活水準切下げ等の一環として、その第一歩として官業が狙われ、やがて民間企業への首切り強要第一歩としてこれが取上げられたこと。第三は、失業人口増大が再軍備論の有力な温床になるという計算から狙われたこと。第四は、後述するごとく、実際上減税にならない事実を蔽い隠して、あたかも国民負担を軽減し得るかのごとき媚態を僞装して、政治意識の低い国民層に付け入ろうとした、そういう党利党略に発したものであることは否定できないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)  先ず第一の点、講和安全保障條約の発効が直ちに日本の独立を意味するかのごとき首相答弁の欺瞞はともかくとして(「いい加減なことを言うな」と呼ぶ者あり)若し不幸にしてこれが発効に至れば、当然の結果として軍備負担の問題が起るし、且つ予備隊海上保安隊国警等の準軍事予算増大、それから賠償、外債、外人財産補償援助資金返済などと、少くとも当面二千億円を下らない問題が起つて来るし、(「それとは別だ」と呼ぶ者あり)こういう事態は、再軍備の問題を抜きにしても、政府公約如何にかかわらず、むしろ間接税の増徴に追い込むであろうし、或いは社会保障制度の全面的な棚上げになるし、六三制を六二制に叩き落して約六万人の教員諸君を減らそうとしたり、(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)六三制による学校建築を打切ろうとする教育費大幅削減食糧管理特別会計繰入削減狙つて米麦統制撤廃暴挙を企てるであろうし、或いは地方平衡交付金大幅削減を企てる。而もこういう問題の一つとして、先ず首切りが取上げられた。これが第一の原因。(「その通り」と呼ぶ者あり)  第二の理由は、日本経済再建の支柱として日本資本家諸君が糠喜びしたいわゆる日米経済協力なるものが、日立製作所に現われた一時間四十八セントというようなべらぼうな発注、日本特殊鋼に来た作業の軍管理というような問題にからんで、相当日本資本家諸君はがつかりされたようであるが、それでもその問題からも又ぞろこれらの問題が労働者諸君犠牲に全部しわ寄せされようとしておる。(「そうだ」と呼ぶ者あり)つまり賃金つまり生活水準切下げつまり企業合理化のための首切り昭和二十四年の首切り民間への先鞭のために行われた事実を想起すれば明白でございます。  第三の理由は、読んで字の通り、たくさんの失業人口を街頭に放り出せば、再軍備が容易だということ、食うに困れば失業者は(「そうだ」と呼ぶ者あり)刑務所よりは軍隊を選ぶ。失業者を抱え込んだ社会が侵略と軍国主義温床になりやすいということは、一番自由党の諸君が知つておるはずだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)  それでは第四の減税は可能か。(「一人で喜んでおる」と呼ぶ者あり)果して減税になるか否かという点になると、問題は少しく具体的にならざるを得ない。一体、現在政府並びに政府機関全体を含めて何人の公務員がいるかと言えば、国家公務員九十三万、国鉄專売を含んで百四十七万、今度政府はこのうち十二万三千人とか十二万八千人を減員しようということを言いながら、同時に年間二百四億の人件費節約をやろうというのであります。一体これだけの減員をして、それで仕事がやつて行けるかどうかという問題も当然起るところでありますが、今は一応抜きにして、果してそれだけの節約が可能かどうか、事実かどうかということであるが、私はこれをあえて真赤な僞わりであると言いたい。どうしてかと言えば、一体政府事業は現在果して政府の言うような人員で運行されているかというと、実際は国鉄專売等は別にしても、これらの人員のほかに臨時者という形で五十三万人の実在人員が使役されていることを見逃してはならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)而もこれらの中には多くの單純労務も含まれておるけれどもかくのごとき厖大な人員を要することになつた主な理由は、昭和二十四年度に行われた定員法首切りによつて賄い切れなくなつた結果の所産が大部分であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)人件費捻出の根拠がないために、これらの人員賃金要員という名目で呼称され、主として業務費事業費等から支弁を受けつつある現状であります。若し仮に人件費節約を名として定員削減が行われれば、直ちにこれらの人件費は、業務費事業費のほうに肩替りされ、賃金要員を以てその仕事に振り当てようとする結果を惹起するほかはないのであります。実際問題として仕事に比べて公務員の数が多い場合ならとにかく、現在、電通或いは国鉄のごとき、戰前に比べて一人当りの仕事負担量が三割から五割増大して来ている事実からすれば、これは何の不思議もない当然の成り行きであります。かかる事実を知りながら、かかる事実に直面しておりながら、なお減税を呼号する政府の態度は奇怪至極であります。こういう現象が起らないと果して言い切れるかどうか。この点についての明快な御答弁を承わりたいのであります。更に又、この際、政府定員削減をやらず、むしろ適当に増員すれば、これこそ実際に減税できる事実であります。それは何かと言えば、政府一般職の職員に対して年間九十一億三千万円の超過勤務手当を支給しております。これは年間平均賃金の約一割強に相当いたします。超過勤務手当は百分の百二十五、百分の百五十という割増し支給でありますから、今これを定員化して増員するとすれば、約七万人の増員がこの超過勤務手当で可能でございます。而も割増し支給でありまするから、これの節約額は実際上年間二十四億可能だということがはつきり結論として出て参ります。又かくのごとき九十一億もの超過勤務手当を計上しなければならないという事実は、現在員に比してそれだけ過重な仕事が嚴存するという証左でもございます。政府はこれをどう考えておるか。  更に、最後お尋ねしたいことは、この際、政府は若しもこの問題をまじめに取上げる意思があるとするならば、先ず行政各部機構に対して再検討を加え、事務簡素化計画し、公務員の能力と負担量について愼重なる考慮を加えると共に、一方、社会不安を誘発しないような失業対策樹立後において、初めてこの問題を取上げる意思がないかどうか。言い換えるならば、党利党略のための首切りをやめて(「そうだ」と呼ぶ者あり)かすに時日を以てし、慎重に、根本的にこの問題を処理するために、本国会上程を取りやめるべきであると思うが、これに対する答弁如何。  以上を以て私の緊急質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍伍登壇拍手
  6. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 千葉議員お尋ねに対してお答えをいたします。  むしろ大部分御意見に相当する部分が多かつたと思いまして、お尋ね部分は、結論的に定員法を今臨時国会提案するのをやめたらどうかというお話のようでございました。定員法は是非今国会提案をいたしまして、御賛同を得たいと思つております。ただ端的に御質問お答えをいたしまするほかに、私といたしましては、是非一つ、前から存じ上げておりまするので、千葉議員お尋ねでございまするし、私、是非私の考えておりますところを、政府考えておりまするところを申上げて、御賛同を得たいと思います。  機構改革をなぜ先にやらないかというお話でございましたが、人員整理はむしろ御指摘がありましたように事務整理に関連のある部分が多うございまして、機構には必ずしも関係はございません。私ども政令諮問に関する審議会の答申に基きまして、事務をずつと検討をいたしまして、その結果例えば商船管理委員会仕事でありまするとか、各省の渉外事務とか申しまするように、これはもう明瞭に誰が見てもはつきり減少いたしまするものでありますとか、いろいろな仕事があるわけでありまして、この事務整理に基いて人員整理の案を立てたわけであります。機構改革も成るべく早く成案を得て御審議を願いたいと思つておりまするが、(「逆ですね」と呼ぶ者あり)今日の状況からずつと見ますと、現在提案をいたそうといたしておりまする定員法によりまして、事務整理をずつと織り込んでございますから、あとは原則といたしましては、機構改革によつて人員があちこちに異動することがありましても、総体的に大きく動くことはないつもりでございます。そこで、なぜ人員整理の必要があるかということについては、これはもう私がくどくど申上げまするよりも、むしろ私といたしましては、国民の常識的な要望であると考えておりまするが、例を挙げて申しましても、昭和六年の当時、あれが日本の平和時の最後でありましたが、あの満洲事変の直前に国鉄專売を入れて五十八万の公務員が、今日あの一昨年の行政整理後において、なお百五十二万人もあるといいますることは、これは單に諸般事情の変化ということだけでなしに、いろいろな面でなおなお調節し整理すべきものがあるということをはつきりと示すものでございます。具体的に一々の問題は、むしろ定員法の御審議によつて願いたいと思いまするけれども昭和六年に満洲事変になりましてから以来、爾来行政組織総動員体制にずつと入つて参りまして、戦後になりましてからは、それが本当に平和状態に復元しない間に、占領下におきまするいろいろな要請、なお又民主化要請、いろいろな要素が入つて、二十年後に今日初めて日本が民主的に、平和的に、自主的に見直す機会が来たわけであります。私どもは真に国利民福のために総体的な検討をいたしまして、我々が誠実に民主主義をやつて行く上において、最も経費がかからないで、国民に迷惑がかからないでやる方法を考案いたしますることは、政府義務でもあり、又公務員諸君としても常にそういう点を心がけるほうがむしろ義務であり、責任であると考えておる次第でございます。  賃金予算につきましては、今回の整理によりまして平年度約二百数億円の節約に相成りまする。これにつきましては、お考えによつてはなおこれでは足らぬというお考えもございましよう。他でもなほ節約の余地がないかというお考えもございましようが、私は他でも節約をし、こちらでも節約をして、できるだけ減税及び公務員給與改善に向ける必要が是非あると考えております。今後の日本といたしまして千葉さんの御指摘のようないろいろな経費がかかるでございましよう。その場合において、或いは公共事業費増加であるとか、社会福祉費増加であるとか、或いは又防疫費増加であるとかいうような問題につきましては、私は飽くまでも産業の増強によりまして、租税の自然増収をどんどん拡大して行くという方向で賄つて行くべきものでありまするし、減税待遇改善の問題については、財源は先ず第一にやはり政府部内の節約にできるだけこれを求めて行くのが筋であると考えております。  なお失業対策の問題については、先般労働大臣からお話がありましたから、私からくどく申上げませんが、只今千葉議員から公共事業の準備がないようにお話がございましたが、私どもといたしましては公共事業の点も考えておりまするが、第一には、何といつてもこの官庁事務員整理が主体でございまするので、この失職後の間に困らないように手当を、できるだけ退職手当を出しますることと、それから転業のための職業安定所を通ずる就職斡旋、又役所によりまする就職斡旋をできるだけ親切にやりますることと、なお、それに必要な職業補導をやつて、やはり事務の人は事務の人の職場を見出して行くということを第一に世話をいたしたいと、こう考えております。(「できつこない」と呼ぶ者あり)で、この政府整理し、又民間で薬理をしてというふうなお話がございましたが、労働力調査によりましても、昨年から今年にかけまして、非農林業就業者が殖えて、農林業就業者が減つておりまして、その間の異動が約二百万人に達しております。総体の就業人員の数としては余り変りませんけれども戰後農林業のほうに非常に人が多く行きましたあの異常な状態が、漸次平常な、健全な状態に移りつつあるということを示すものであると考えておりまするが、今後非農林業の方面におきまする、つまり商工業を中心とする産業がどんどんと発展いたして参りまするのを助長するのを根本にいたしまして、無理に公務員で飯を食うという形から、もつともつと健全な民間産業就職するという状態にするほうが、公務員諸君のためにも総体的に仕合せであることを確信いたしております。(拍手
  7. 千葉信

    千葉信君 只今の御答弁の中では、具体的に賃金要員つまり臨時者に切替えられて来た従来の傾向から見て、そういう虞れがないかどうかということをお尋ねしてありまするが、この点について御答弁がございません。  それから第二の点につきましては、これは超過勤務手当の問題に関する質問でございます。超過勤務手当を計上しなければならない事実は、それだけの仕事が厳存するということでございまして、これを定員化する意思がありやなしやということについても御質問申上げておりまするから、この点について御答弁を承わりたいと思います。    〔国務大臣橋本龍伍登壇
  8. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 賃金要員が存在しておりますることは私もよく存じております。この賃金要員の点に関しましては、国として、或いは又政府関係機関として常時必要としないけれども、或る仕事のピークの際に必要とするといつたような意味における極く自然な賃金要員、又そういつたようなものもございまするし、中に……(「ごまかしちやいかん」と呼ぶ者あり)そうでない場合があるようであります。これは行政整理によつて真実行政簡素化能率化をやるべき仕事を妨げておるものと思いまするので、こういう面に逃げ道を見出さないように政府全体として嚴重に行政組織を全体監督するつもりであります。従つて賃金要員を吏に殖やすような意思は毛頭ございません。  なお、超過動務手当の問題に関しましては、超過勤務手当を拂う必要のないほど役人を常時一ぱい抱えて置くということになりましたら大変でありまして、正常な時間で働いてもらい、或る場合に超勤務手当拂つて、なお正規の勤務外に働いてもらうということは、当然必要なことであります。(「九十一億もな」と呼ぶ者あり)今後においても同じような状態であります。超勤務手当を拂う必要のないほど役人をたくさん抱えるつもりは毛頭ございません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)      ——————————    〔岩木哲夫発言の許可を、求む〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩木哲夫君。
  10. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私はこの際、米の統制撤廃に関する緊急質問をいたしたいと存じます。
  11. 溝淵春次

    溝淵春次君 只今岩大君緊急質問動議に賛成いたします。
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。岩木哲夫君。    〔岩木哲夫登壇拍手
  14. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私は政府が近く米の統制撤廃をあえて強行せんとしておることにつきまして緊急質問をいたしたいと思うのでありますが、およそ食糧需給事情を知つておる者はかような暴挙はできないのであります。いやしくも責任と良心を弁えておる政治家は、かかる急激な手段によつて、との国民経済社会治安の根幹となる米の統制撤廃を軽々にかような手段で取り運ぶということは極めて危險なことだと信ずるのであります。元来、政府がこの手段を行わんとする意図が奈辺にあるのか、私はわからない。伝えるところによれば、行政整理、或いは財政負担の軽減、或いは党の公約を果すためにこれらを道通れにいたしておる感が深いのでありまして、従つて政府が唱えておりまする、生産者には一定の価格で買上げて最低価格を保証するとか、或いは消費者には政府所有米或いは歳入食糧需給を調節し、流通機関米穀市場を育成して価格調整を図らんとするとか、或いは事実を曲げて、現在中間経費が一割三分余りしか、かかつておらないのに、三割もかかつておるごとく虚構に宣伝して、自由販売によつてこの三割の中間経費を一割に削減して生産者消費者に還元しようというような間違つたことを唱えて、かような手段に出ようということは、ますます我我をして憂いを深くせしめるところであります。そこで、私は当面の責任者である根本農林大臣及びこの問題を強く主張いたしておる池田大蔵大臣並びに関係大臣最後吉田総理お尋ねいたしたいと存じますが、それより先に、一月一日から麦の統制を撤廃するということは、どういう方法でやるのか知りませんけれども、その後における配給は米一本になる。そうした場合に、生産府県消費者は二十日も二十五日もの配給通帳かもらえるが、東京や大阪の大消費地消費者は五日か十日ぐらいの配給通帳しかもらえないという、とのでこぼこさを如何調整するのか。若し四月一日までこれを続行するといつた場合には、この麦の統制麦自由麦と或いはいろいろの混乱を来たす。外国輸入麦の品質のよいものを特に自由販売に廻し、或いは惡い品を統制麦に廻すといつたような不正が起るというような事態に対し、政府はどうこれらを取締つて処置せんとするのか。先に申上げた状態考えまして深く考慮すべきことと思うのであります。米の二千五百万石を割当てたことは、昨年の六千四百万石の実收に対し二千七百万石割当てたのと同樣の割合で、本年の作況が六千二百万石以下の実收と伝えられておるのに対して二千五百万石の割当をしだならば、政府が意図する残余の自由米、即ち従来の農家の売出米闇米と称しますか、これらの余裕が全くないではないか。いや、殆んど自由組織にしようというほどの余裕がないではないか。而も四月一日現在政府所有と予想される千百八十万石は、ここ両三年、四年の平均から見ますれば、約三割政府手持が少い。こうした時代において米の統制撤廃をするということは、需給上第一極めて技術士困難なことであるのみならず、絶対量の不足による危險が時にどうして起らぬかを誰が保証し得るか。若し二月末までに供出完了ができなかつた場合には、政府強権発動をするのかどうか。お尋ねいたしたい。若し三月の中頃まで供出が完了しないということであるならば、四月一日から統制を撤廃しようという期限が、十日や十五日では、流通機関も、輸送も、金融も、価格調整もできないではないか。そこに重大なる混乱を来たしますると共に、これ又、麦の場合と同じに、統制米自由米との混乱如何よう政府取締ろうというのであるか。およそ專門家でもこの技術は困難なるものと言われておるのに対して、農林大臣法務総裁如何よう対策を持つておられるか、先ず承わりたい。  それから四月一日から自由販売となりましたならば、恐らくや従来の府県ブロツク強化が再燃すると予想できることは明らかであります。去る昭和十四年、五年のあの惨状、あの醜態を知る者にしては、恐らくこの轍を踏むということは嚴に避けなければならないと思いまする。殊に特に注意いたしたいことは、生産府県は、公選知事が当然府県條例を以て県内産米の移出を抑制し、或いは禁止し、自由なる思い思いの価格産地調整をする。消費府県予算を計上して、知事を先頭に産地府県に買出しに廻る、或いは再生産物資を以てメバーターを以て、或いはいろいろ正当な価格によらざる価格を以て強力に買付けをいたそうという、恐らくや各府県ブロツク強化によりまして、食糧治安の観点から公選知事が非常なる措置をとることは明らかであるが、こうしたことは政府が認めるのかどうか、或いはどういう対策を持つのかどうかを承わりたい。  又、需給の問題につきましては、政府は長年の統制配給統制経済による需給面を基礎といたしておるが、恐らくや戰前消費者において八八%の内地米を食べておつたところまで行かなくても、現在五〇乃至五五%しか国民平均内地米を食べておらないのが、自由販売になれば必ずや消費が一割五分や二割は上昇することは明らかである。若し仮に一割五分、即ち十日内地米を食べておつたものを十一日半余計食べるといたしますれば、五千万人消費世帶で四百八十五万石という米が余分に余計食われてしまうではないか。或いは一千万世帶が戰前のように一斗も一斗五升も米櫃に用意しなくても、三升五升の用意をすることは当然であることは、配給体制であるから、今日は米櫃に米がなくても、明日は米の配給があるから、安心して買溜をしないが、自由になつたらこれらの買溜が当然起る。営業用大口消費者はもとより、更に酒類菓子工業等戰前七百万石消費しておつたものが、自由経済になつてから、殊に人ロバ殖えてインフレ将来を気構えする段階においては、半分仮に三百万石、三百五十万石に消費増大するといたせば、現在入、九十万石の酒類菓子工業消費は更に偉大なる飛躍をいたすであろう。更に搗精歩合において百万石の消費流通機関予備手当、こうしたものを累計いたしますれば、一千百万石から一千二三百万石の米が余分に固着し、消費増大するという段階に至れば、内地米需給面におきまする操作は全く行き当つてしまう。政府はいわゆる従来の闇米と称する農家の販売米四五百万石或いは五六百万石を以て市場操作をしようと考えておるがこれらのものが先に消費されてしまえば、政府の四月一日現在の手持千百八十万石は僅かに三、四カ月の余裕しかない、当然、端境、天災時に三四百万石の予備を持つといたしますれば、ここに政府需給操作はどうしてこれか切抜け得られるか。恐らく私は六月、七月以降、この状態では、国民の手に米が入らないという事態が起る虞れは極めて濃厚であります。かような需給方法に、需給の観点に立ちますれば、政府自由販売に至らんとする需給計画はどのような措置を講じようというのか。恐らく輸入食糧増加を図ろうといたす結果であろうと思いますが、私の観点から見ますれば、現在の三百二十万トンに対し、更に百万トン近く、即ち一千万石以上のものが固著、消費増大いたしますから、五—七百万石の輸入食糧の確保は必然と見なければなりません。一体農林大臣は、輸入食糧を更に自由販売制度によつて五百万石も七百万石も、貴重なドル資金、貴重な価格補給金、国民の税金を費して、こうした食糧を更に増加いたそうというのであるかどうか。自由販売は外国食糧を多く入れようという結果を考えての需給計画を立てておるのかどうかを承わりたいのであります。  価格の問題につきましては、恐らく現在配給価格の八十八円から、東京大阪の闇値百七八十円の中間、即ち五割高の一升百三十円ぐらいになるということは、專門家が遠慮しての意見でありまして、昨日農林大臣は衆議院で九十円ぐらい、即ち配給価格と同じくらいの価格に落ちつくであろうと言つておるが、需給関係か見て、どうしてこの配給価格と同じくらいな米の値段が維持されると見られるかどうか。外国食糧で市場操作をし、需給操作をいたそうとしても、現在内地米に執著、嗜好心の強い、自由販売に殊になつて、この消費者が、外国食糧日本米とのはだはだの現在の気持にあるときに、到底市場及び価格は操作はできない。尤も外国食糧の輸入或いは売叩きによつて日本の麦の価格は下るでありましよう。現在、米に対して約九掛の外米の値段は恐らく五掛の外米の値段に下るでありましよう。麦が七七%、米に比しての値段でありますが、これが半値以下に下るでありましようが、それは農家の被害であつて、而もこれによつて高い現在の飼料状態から見て、麦が豚や鶏の餌に廻るという、国民食糧全体の需給は偉大なる異変を生じて来るという段階に対して、農林大臣はどのような考えを持つておるか。又農林大臣は必要に応じて一定価格で買上げて政府所有米を確保しようと言うが、一体どの辺の価格で買入れしようというのか。政府が買入れを発表いたしたならば、少い内地米は、さなきだに需要の増大しておる今日、更に油をかけて暴騰することは火を見るより明らかであります。中間経費が三割もかかつておると言いますが、これは私が前段申上げましたる通り、現在一割三分強しか、かかつておらない。自由時代には二一%三かかつておるという発表は、農林省のお手許の機関から発表しておる書類でも明らかであるのに、何故に三割もかかるという嘘を国民に並べたのであるか。恐らく今後輸送、金融、貯蔵面の不円滑な困難において、自由販売になりますれば中間経費は恐らくや逆に三割かかるであろうことは、これ又專門家の意見の一致するところであります。将来、流通機関米穀市場で、価格需給を育成しようというが、例えば東京においては自由時代に四百、五百の卸仲買人がおつたものが、現在二十二人しかおりません。大阪においても三百人の卸仲買人がおつたのが、たつた三人か四人である。而も大口独占機構でこれらを操作いたしておる場合に、十日や、二十日や、一カ月や二カ月で、産地との連絡を密にし、品質が混乱しておる今日、取引の円滑、市場の構成というものは容易でない。又需給の逼迫した今日、需要者が、直接或いは県その他の公共団体、諸般の買付けが大口に行われる結果、いわゆる強力買付けという場面が現われて、市場操作はおろか、市場に米が流れる、経過するという事態は到底望まれないのでありまして、政府が意図する市場操作によつて価格需給を操作をするということは、全く木によつて魚を求むるに等しいと見なくてはなりません。生産者の悲劇は、現在六五%が出盛期に早く手放してしまう。而も全農家の四割強が零細農である。安いときに売つて高くなつて米を買入れしなくちやならない。二百万の米を買入れする還元農家は、殊に米高による肥料や再生産物資のはれ返りによつて、米は安く売らなければならんが、肥料や再生産資材は高く買わなければならん、又自分の食う米も高く買わなければならんという引き裂きを受ける結果になるのみならず、殊に麦作地帶では、外国食糧の輸入の売叩きによつて、現在、米の七七%の価格を保持しておつたものが、五割以下に下る虞れのある場合に、一層麦作農家の悲劇、困難というものは甚大なるものがありと私は見なくてはならない。殊に早場奬励金或いは追加拂い、将来今までいらなかつた検査料、あらゆる費用を農家がみずから負担しなければならんという、こうしたような事態を勘定に入れますれば、果して、たとえ消費地で米の値段が幾分上りましても、これらから受ける利益は殆んど半減する、場合によつたならば引き裂きを受けるという場合がなきにしもあらずと私は断じ得るのであります。一体政府が一定価格生産者最低価格を保証する意味で買上げるというが、買上げようという場面を出したときには零細農家は売つたあとである。政府が買おうということによつて相場が上つて、吊り上げた価格で又農家は米を食わなくてはならんという場面を誰が保証し得るか。更に私は、こうした政策というものは食糧政策ではない。食糧政策というものは、やはり社会秩序と農村、消費者とのかね合いの上に、而も日本米、内地米というところを、如何に正当な価格で公平に消費者配給し得るか、正しい生産者価格を保証し得るかという観点にあるのでありまして、政府が今回企図する自由販売食糧政策でない、弱肉強食政策であつて、いわば愚民政策であると私は断ぜざるを得ないのである。正しい食糧政策とは、どのような方面から見ましても考え得られないことであります。  そこで、次に私は池田大蔵大臣お尋ねいたしたいと思いますることは、こうした外国食糧の輸入の増大が結果として生れるが、一体百万トン入れるには一億二三千万ドルがかかると思いますが、而も日本自由経済になることを予想してか、外国市場は相場が一割乃至一割五分最近暴騰しておる。恐らく一トン百八十ドルか二百ドルでなければ買えないという事態に際会して、これらのドル資金を用意しておるのかどうか。又価格補給金が一層拡大する。恐らくや四百億或いは四百五十億に及ぶであろうという国家財政負担の激増に対して、これが果して政府考えられておる本当の財政負担の軽減になるという食糧政策、自由販売組織をやつた趣旨であるかどうか。更に大蔵大臣は、農家、生産者機関に一千億の融資を図らんとしておるが、配給機関には何らの融資を図ろうといたしておらないのかどうか。やるのならばどの程度やろうというのかどうか。若しこれを欠くるところあるならば、恐らくや都会に米が廻らない結果、更に予想以上の米の暴騰が予期されるのであります。いずれにいたしましても、こうした消費者米価の暴騰によつて、物価のはね返り、いわゆるインフレが続行いたす結果、さなきだに国際価格により高い日本の物価が、一癖輸出貿易を伸展せしめない結果に陷ることは、果して現在大蔵大臣考えておる能率と発展の政策に合致する問題かどうか。大いなるここに疑問を有するのであるが、大蔵大臣はかような問題に対してどういう見解を持つておるかを承わつておきたいのであります。又こうした結果、いわゆる大衆消費者の不利益というものは極めて甚大なるものがある。若し五割米価が上るとせば一家の標準二千円の米代が増加する。こうした結果、エンゲル系数の膨脹による家庭経済の破綻は火を見るより明らかでありますが、こうした政策に対して果して大蔵大臣はどのような施策を進めんとするのか。又この結果、賃金ベースは来年度の予算に計上いたすつもりであるか。つもりならどういう振り合いを以て考えておるかを承わりたいのであります。  更に橋本行政管理庁長官にお尋ねいたしたいことは、まだ実体法が現われておらないときに行政整理をしておる。自由時代に二割余りの費用がかかり、今日の統制経済によつて一割三分しか、かかつておらないものを、更に行政整理をしてこれを逆にするように、食糧検査、作調、統計等の吏員を、五割、六割の天引で首切らんといたしておることは、若しこの制度が決定せずしてやれなかつたならば、一体定員法はどう考えるのであるのか。而も定員法によつてこうした人間を削減する結果、いわゆる自由経済に持つて行く結果、国民の立場から見れば、役人に拂う費用と米や中間機関に拂う費用とは逆に殖えて来る。行政整理によつて国民負担は逆に殖えて来る結果が、果して行政整理の真髄を発揮し得る問題であるかどうかをお尋ねいたしたい。  最後に私は吉田総理大臣お尋ねいたしたいことは、吉田総理大臣は、安全保障條約を平和條約の批准以前に調印をされ、早くこれらの批准を国会において促進されておることの見解は、国際情勢がいつどういう場面になるかもわからんという観点から、急いで安全保障條約を促進されておるのであります。一体現在の国際情勢は総理のお考え通り急迫せるものであるといたしますれば、現在の日本食糧政策を、こういう弱肉強食、而も無計画にひとしい需給数字を予想され、何らの計画もなき価格調整を以て、そうしてこの食糧政策を野放し的に、或いは政府需給調整法その他を以つてやろうといたしておるかも知れませぬが、これらは全く架空の法律であつて、過去における自治管理法にひとしい結果に陷ることは明らかであります。こうした社会不安、民生安定を欠く極めて憂慮すべき食糧政策を急激に断行しようということは、重大なる私は問題であると考えるのであります。一体食糧政策は前段も申上げましたる通り内地米というこのことによつて、すべての食糧政策の基盤とせなくてはならない。内地米というところは過去において日本精神の淵源であり、日本社会道徳の基調である。こうしたものを一緒に弱肉強食の餓鬼道に追い込んでしまうような政策をとるということが、果して国際情勢を睨み合した日本食糧政策であるかどうか。そうして総理は、こうした食糧事情の根幹をよく心得て、御承知の土、やられておるのかどうかということを承わりたいのが第一点。  第二は、自由党の公約であると言つておるが、一体公約というものは何でもかんでもよいと思われるのかどうか。(「惡い」と呼ぶ者あり)この公約というものは、過ぐる選挙のときに、いわゆる終戰直後の高梁や豆の配給が盛んである、遅配、欠配が盛んである、闇取引は苛烈な取締をする、こうした多数の喘ぎ苦しみの一端をつかまえて、自由販売というあこがれの目標を、或いは政策として自由党が人気を得たテーマかもわかりませんが、このときの公約の、あのときの食糧事情なり国内事情と今日の事情は又違う。又公約自由販売だ、公約と言いながら、先般政府は食確法というものをポ政令で出して、逆に統制強化した場面すらあつて、首尾一貫いたさない。今日の公約を果すということは或いは政党の面目として当然かもわからんが、この公約を果さんとすることは現在輿論が反対しておるではないか。輿論の多数が反対しておるものを、あえていたそうというところは、或いはインフレを喜ぶ産業資本、或いは闇米を以て生活の基盤とする特殊階級、或いはうまく売れた農家の一部、こうした部面が或いは利益するのみであつて、多数の大衆消費者は悲惨なる餓鬼道に追い込まれる悲惨な状態考えますれば、この公約をもつと煎じ詰めて、私は、いつの日か自由販売の日を我々も又待つのであるが、今回政府がとらんとする手段においては時期尚早であるし、他にとるべき措置は幾らもある。この方法を研究せずして、本当の食糧政策それ自体から生れない、かような公約とか、行政整理とか、財政負担の軽減を図らんとした趣旨で食糧政策を行わんとすることは邪道であるし、国家社会の治安を紛乱するも甚だしい結果を恐れるのでありまするから、この際、未だ法案化せられておらない現段階において、私はかような政府の措置の撤回を、或いは延期を求めんとするのでありますが、御所感如何を承わつて、私の質問といたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  15. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  統制撤廃についての御議論でありますが、一体統制は戰中或いは戰後の異常な経済状態に処して、臨機の処置としてとられた政策であります。成るべく早い機会に正常な経済生活に帰ることを必要といたしますから、政府の方針としては統制撤廃を成るべく早目にいたしたいと思います。が、その手段方法については只今政府としては研究中であります。重要な問題でありまするから、とくと研究いたしまして、実施方法については十分な研究協議をいたして実施いたしたいと思つております。(拍手)  次に安全保障條約との関係でございますが、現在の国際情勢の急迫如何にかかわらず、平和條約によつて独立ができた以上は、その独立を確保するために、日本の安全を確保するためには、何かの手段を講じなければならん。政府としましては安全保障條約によつて一応国の独立と安全を保障するがいいと考えて、安全保障條約を調印いたしたわけであります。これは国際情勢如何にかかわらず、国家の独立安全は一日も保障する手段を講じなければならんからであります。     —————————————  この機会に、波多野議員、木村議員、岩間議員の御質問に対して留保した答弁をいたします。  波多野議員の金融政策一本でインフレーシヨンを抑えるつもりであるかというのが第一の御質問であつたようであります。又最近の生計費の膨脹を以てしては、税法上の減税をしても事実上は却つて国民の負担を増加せしめるものではないかという御質問であつたようでありますが、政府としましては、従来とり来たつた政策を堅実に進めて参つて、インフレーシヨンは極力抑えたいという考えであります。又秩序ある経済規模の拡大によつて、これによつて国民生活の向上を期するというのが方針であります。     —————————————  又木村議員に対してお答えいたしますが、今度の條約はイタリア條約に対して経済的に見てどうかという御質問であつたそうでありますが、今度の平和條約は日本の経済活動その他について何らの拘束を加えておらないのであります。この点は最もイタリアの條約との……対イタリア條約の場合と変つております。又賠償その他についても、金銭賠償はいたさないのみならず、日本生活水準、経済水準を落さない程度において賠償をすると、こういうことになつております。この点も又イタリアとの間に差異がございます。又その他細かい点についてはいろいろ申したいことがございますが、これは私の申すほどの必要はないと考えますから略します。     —————————————  又岩間議員は、この予算日本の自由と独立を保障、この予算は保障するか、調印後の予算の自主性は如何。これは主管大臣からお答えいたした通りであります。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇拍手
  16. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。主食の統制撤廃に関する基本の方針は只今総理から御説明があつた通りでございます。いずれ具体的な成案ができ次第御審議を願いたいと思いまするので、従いまして本日の岩木議員の御質問は、その内容がはつきりしたときに出られる問題であろうと思いますから、そのときに十分なる御質疑を受けたいと存じます。ただ本日いろいろ多岐に亘りまして御質問がありましたうち、主要なものについてお答え申上げます。  一つは、本年度産米二千五百万石の割当では、統制撤廃後の自由販売米だけでは操作困難ではないか、こういうことでございまするが、これは年間三百万トン程度の輸入食糧がありまするので、これらも総合して操作いたします需給並びに価格において心配ないと、かように考えております。  それから供出後の自由米が出た場合に、取締上非常に困難ではないかということでございまするが、現在我々が考えておる供出後の流通規正の解除は、一定期目を画しまして全国的にこれを実施するということでありますから、その困難はない、かように考えております。それから統制撤廃後において府県ブロツクができて流通が非常に阻害されやしないかという、こういう御心配のようでありますが、先ず以て万全の措置を講じて、さようなことのないようにいたしたいと思います。  それから恐らく自由販売になりますれば主食に対する需要が非常に増大するであろう、従いまして現在の状況では需給対策が立たないではないか、かような御質問のようでありまするが、若干の消費増はあると存じます。併し従前のように、一番多く使われましたのは酒造米でございまするけれども、これにつきましては、現在酒造につきましては許可制度でありますから、そう急激に殖やす必要はないと認めます。又加工用のものについては、むしろ現在、米以外の、即ち麦類を多く使う傾向がありまするので、米に対する加工用の需要が非常に急激に増すとは考えておりません。従いまして輸入食糧を勘案しますると、ここに需給については心配ない、かように考えております。  それから自由になりますと消費地価格が五割以上高くなるではないか、こういうふうなお考えのようでございまするが、しばしば申上げましたように、我々は野放しの自由ではなく、需給調整を行うという見地に立ち、而もそれには外国食糧を全面的に政府が管理するという観点に立ちまするので、さような急激なる、そうして大幅の消費者価格が上るとは考えておりません。従いまして低額所得者にいわゆるエンゲル系数に対する圧迫はそれほど起らない、かように考えております。なお又農民、生産者に対しては農業手形を改良して存続する、のみならず集荷資金に対しては農協に政府資金をいろいろの方法を以てこれを注ぎ込むということをも研究中でありまするので、共同販売、こういう方法がとられるので、不利なことはないと考えております。それから自由になつた場合、中間経費が却つて高くなりはしないか、こういうお説のようでありますが、自由になりますれば、現在のように固定したマージンというものはなくなることは当然でありまして、お互いに販売業者がサービスをし、競争をするという観点から合理化が行われるものと考えております。  それから自由市場における価格の操作は非常に困難ではないか、そうして又その場合における価格の目安はどう考えておるか、農林大臣は九十円程度に抑えると言つておるがどうか、こういうことでありますが、私が昨日衆議院の農林委員会で申上げたことは、政府がどの程度を目安として操作するかということに対して、現在の実効価格を目安ともて操作をいたしたい。このためにいろいろ目下具体的な研究を進めておる、こう申したのでございます。  その次に輸入食糧の見通しについてでございまするが、これはしばしば本会議並びに委員会で申したことでございまするが、現在世界の食糧事情は好転いたしております。従いまして若干国内の需要が増したために食糧を現在より多く輸入しなければならないというときになりましても、この世界の食糧事情からして輸入が困難であるとは思いません。むしろ明るい見通しを持つておりまするので、御心配ないと存じておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  17. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 岩木君の御質問お答え申上げます。先ず輸入主食の問題でございまするが、御承知の通り昨年度は大体二百五六十万トンの輸入でございましたが、今年度は三百二十万トンの輸入が可能でございます。若し統制を早い機会に撤廃することといたしますと、お話のように百万トンの輸入増加の必要は認めませんが、数十万トンは必要だと思います。従いましてこれが財政上の手配はいつでもできるようにいたしております。  次に、そういうふうに輸入を多くしたならば補給金が非常に要るのではないか。四百億円と申されましたが、これは今補給金は、御審議願いました二百二十五億円以外に、前年度の輸入が三百二十万トンのところ二百六十万トンでございますので、五六十億円の余裕がございました。従つて私は相当の見越輸入ができることと考えております。本年度におきましても、又明年度の当初におきましても、四百億円を新たに要するというようなことはございません。  又、ドルの問題でございまするが、これは三百二十万トンを計画しております。百万トン輸入は必要がないのでございます。二三千万ドル、三四千万ドルの融通はいつでもできる状態であります。  融資の問題につきましては、農林大臣只今答えられたように、生産の面におきましても、配給の面におきましても、而も配給の面につきましては問屋金融その他につきましても万全の措置をとる用意をいたしております。  又、米の統制撤廃をすると五割米があがる、そうすると二千円の一カ月の出費増になる、賃金ベースに影響しないかという話でございまするが、今五人家族で東京都の主食代は三千円でございます。そうして米は十五日分しか行つておりません。お話通りに九十三円の配給が正割と申しますと百三十五円になつたとして、三千円の分がそう二千円もあがりつこございません。半分は麦でございます。だから私は統制撤廃してそう主食があがろうとは思いません。若し米があがるようならば、やはり麦との関係考慮し又補給金を考えて行けば、そう賃金ベースに直接にそう二千円も影響があるということは私は毛頭考えておりません。(拍手)    〔国務大臣橋本龍伍登壇拍手
  18. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 岩木さんの御質問お答えを申上げます。  先ず第一に、統制撤廃の実体法規のほうがすつかりきまつてから定員法の改正を出さないかというお話のようでありまするが、この点につきましては、予算定員法と実体関係とはそれぞれはつきりして進めているわけであります。統制撤廃の方針がきまりまして、それぞれ予算も、定員法も、実体法も手続を進めておりまするが、一番初めに補正予算のほうが固まりましたので、今般の国会にすでに提出をしてございます。御覧を頂けばわかることでありまするが、一月から六月までの間に整理をいたしまするので、補正予算には一月から三月の間にその整理人員の半数がやめるという計算で組んで、国会に提出してあるはずであります。定員法に関しましては、予算に比べまして提出が少しく遅れておりますけれども、同じ方針できめまして、成るべく早く出したいと思つて手続を進めております。実体関係のほうについては農林大臣のほうで手続を進めておられまするが、総体的には結局全体が歩調を揃えてきまるものと考えております。  なお、主食の統制撤廃をやつた場合に、米屋の数が殖えて結局総体の中間経費が殖えるというお話で、あまり統制撤廃をやる考えは意味がないのじやないかという御意見でありましたが、これは先ほど農林大臣のほうから中間経費の問題について答弁がございましたので、私もそれと同じような考え方でございます。実体関係でございますので、私の深く触れるところではございませんけれども、数の問題につきましても、米屋さんの側からは、今日固定的なマージンをもらつて来たからこれでやれるのだけれども、自由ということになれば、もつと米屋は大きな單位で扱わなければ商売が成り立たぬといつたような陳情もかずかず受けておりまするので、岩木さんのお話とそういうものと少し違つた見方の向きも業界自身にもあるのじやないかと存じますが、いずれにいたしましても、総体的な中間経費の動きから見まして、あらゆる面で統制撤廃をやつたほうがよろしいということにつきましては、先ほど農林大臣からお答えを申上げた通りでございます。(拍手)      ——————————
  19. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 総理大臣の私に対する答弁に関連しまして、先般留保しました各大臣に対する再質問を行いたいと思います。お許しを願います。
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 六、七分時間が残つておりますので、波多野君の再質問をお許しいたします。波多野鼎君。    〔波多野鼎君登壇拍手
  21. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 先般私が大蔵大臣質問いたしましたのに対して、特に為替レートの問題に対して質問したのに対しまして、大蔵大臣は私の質問の趣旨を誤解いたしましたか、或いはこれを故意にすり換えてしまつて答弁をいたしております。即ち私は、三百大十円レートを維持するという大蔵大臣の方針はよくわかる、併しながら今日の情勢においてこのレートを維持する方策は何であるか、方法は何であるかということを問うたのでございます。これに対して大蔵大臣はこのレートを切換える意思はない、方針じやないということだけを言つておりまして、如何にしてこれを維持するという方策を示しておりません。そこで改めてこの点を質問したいと思うのであります。  即ち今日の日本の為替レートの実勢、即ち日米購買力平価から見ました実勢は一ドルが五百三十円見当になつておる。この事実は誰も認めておる事実であります。而して今後ガス、電気、その他の公課類の値上りがある。それから更に只今も論議がございましたが、米の統制撤廃をやるその結果として物価はあがる。これは目に見えておる。そうしますと為替レートの実勢は恐らく五百六十円或いは七十円というところに行くにきまつておる。そういう政策をとりながら三百大十円レートを維持するということは理論上全く不可能なことである。理論上不可能なことを如何にしても大蔵大臣はやり遂げようとするのか。その方法があるならば後学のために承わりたいということをお願いした。これに対しては何ら答弁がなかつたのでありますから、改めて御答弁を願いたいと思います。  もう一つ、ソシアル・ダンピングの問題につきまして労働大臣お尋ねしたい。労働大臣は、日本と諸外国の国民生活水準が違うから、だから日本の一般賃金が外国の一般賃金より低いのは当り前だ、だからソシアル・ダンピングにならないということを言われました。私もそれはよくわかる。問題は、例えば米国の生活水準日本生活水準との比較の問題ではないのであります。そうではなくて、日本の経済実体、生活の一般的水準の中において、労務者の賃金がどのような位置を占めておるかということが問題なんで、若しこの一般的生活水準の中において、労務者の賃金が不当に低ければ、ソシアル・ダンピングの不安を避けることはできないと思うのであります。ところで、労務者の賃金が不当に低いか低くないかの判断の基準は一体何であるか。この一つの基準としまして人事院の勧告がある。人事院の勧告、これは一つの基準であります。従つてこの人事院の勧告より低い賃金水準をきめる、或いは公務員給與をきめますならば、外国からソシアル・ダンピングであるという非難を受けても答弁のしようがないであろうと思う。ところが労働大臣政府全体が人事院の勧告より低い公務員給與ベースをきめまして、補正予算に組んでおる。こういうことをやつてつては外国からの非難に答えられないじやないか。総理もソシアル・ダンピングの非難を避けなければならん、飽くまで避けなければならんという方針をとつておられることは、しばしば言明された通り。然るに閣僚諸公がそういう非難を避けられないような政策をとつておるところに私は問題があると思う。その点について労働大臣に明確な御答弁をお願いしたいと思うのであります。私の質問はこれを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  22. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。為替レートの維持方策は財政演説に述べた通りでございます。日本の経済を安定、能率、発展さすよりほかにございません。而うして為替相場の引下げを御心配になつておるようでありまするが、ドルがどんどん殖えて行く場合において為替レートの下るとか何とかいうことは問題にならんと思う。これは実体が示しておるのであります。で、最近世界的にポンドの引下げ、これがイギリスにおきましては六億ドルの減少が急激にあつた。そこで問題が起つて来る。フランスでも問題が起つて来る。併し日本はドルがどんどん殖えて行くのだから問題はない。そうしてドルが殖えて行くということは輸出の振興であります。生産の増強であります。これが行われておりますから、これは実際上問題ありません。荷うしてあなたが、或る銀行屋が、向うの物価と、アメリカの物価と日本の物価と特定の物価を比べて而も向うの公定価格とこつちの実効価格と比べて、五、六割違うということをどこかの委員会で言つたのをお取上げになつておるようでありますが、日本の品物はアメリカへ行きます。而も又その銀行屋の言つた購買力平価説というものは、為替相場を決定する一つ考え方ではあるかもわかりませんが、各国が為替管理をやつておるときに購買力平価説なんかでレートを論ずるということは、理論上、実際上面白くないと考えるのであります。    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  23. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。日本の低賃金が必ずしもソシアル・ダンピングの非難に当るものでないという私どもの見解と波多野さんの御見解とが一致しておることを、私は日本の国の現状から言つて非常に嬉しく思う次第であります。ただこの公務員関係は、成るほど人事院の勧告通りに副い得ていないと思いますけれども、副うことは困難でありますけれども公務員の待遇問題はもとより政府としてはできるだけの行政費を節約して公務員の待遇を厚くするという、既定、基本の方針はとつておりますけれども、一面、国家財政の状態を睨み合せなければ、これは止むを得んじやないか。それが直ちに公務員給與を人事院の勧告通りにやらないからソシアル・ダンピングの非難を受けるということは、私はどうにもこれは理解し得ないわけであります。(拍手)      ——————————    〔小林孝平君発言の許可を求む〕
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小林孝平君。
  25. 小林孝平

    ○小林孝平君 私はこの際、国会審議権尊重に関する緊急質問動議を提出いたします。
  26. 溝淵春次

    溝淵春次君 只今の小林孝平君の緊急質問動議に賛成いたします。
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて小林君の発言を許します。小林孝平君。    〔小林孝平君登壇拍手
  29. 小林孝平

    ○小林孝平君 最近の食糧統制撤廃の問題に関連して、政府のとらんとしている措置が民主政治の基礎である国会審議権を無視し、議会政治に暗影を投ずる虞れがあるので、私はこの際これに関して政府の所信を質したいと存ずるのであります。(「泣くなよ」と呼ぶ者あり)  吉田総理大臣は今国会の施政方針演説の中で、「食糧事情は今や安定した状態なつたのに鑑みて政府は速かに現行の食糧管理統制制度を撤廃する方針を決定した。」と述べ、来麦の統制を撤廃し、自由販売にするということを明らかにされたのであります。且つ最近の新聞、ラジオ等も、あたかも米麦の統制の撤廃が既定の事実のごとき報道をしております。更に根本農林大臣も当院の農林委員会において、米麦の統制撤廃は自由党の基本的な方針であるから、断乎としてこれを実施すると言つておられます。こうした政府の方針に対して、農民団体や消費者団体は、なお現在の段階においては米麦の統制撤廃生産者消費者を苦しめるに過ぎないものであるということから、猛烈な反対運動を続けていることは、すでに御承知の通りであります。即ちこの統制撤廃については、少数の米穀商及び特定の階級を除いては全国民が挙つて反対しているのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)私はこの際、吉田首相は如何なる認識の下に食糧事情が安定した状態にあると考えておられるのか、又かような認識に基く主食統制撤廃の可否等に関する論議は、ここではいたさないことにいたします。特にここで問題にいたしたいことは、米麦の統制撤廃についで、政府及び與党の一部に、現行食糧管理法においては、命令の取扱方によつて、法律の改廃を行わないで管理統制を事実上撤廃することが可能であるとの見解を持つている者があるごとについてであります。現に根本農林大臣も本月十八日の当院の農林委員会において、麦は来年一月から、米は四月から統制を外すと言い、その方法として法律によるか政令によるかは目下研究中であると言つております。一言念のために申上げておきたいのは、ここに言う政令の意味についてであります。これはポツダム政令によつて食糧管理法を失効させるという意味ではないのでありまして、ここに言う政令とは食糧管理法に基く授権命令としての政令で行うかどうかという問題なのであります。(「わかつちよる、わかつちよる」と呼ぶ者あり)併し食糧管理法が現実に嚴然と施行せられている今日において、かような措置は果して憲法に規定するところの法律を誠実に施行すべき内閣の責に副うゆえんのものであるかどうか、甚だ疑問なきを得ないのであります。その適否に関する詳細な論議についても、これを他日に讓りたいと思うのであります。  元来、現行食糧管理法は戰時中の立法にかかるものであつて極めて重要な事柄を大幅に命令に委任しているのであつて、旧帝国憲法下においては或いは前に述べたような見解も行われることはあり得るかとも考えられます。併し新憲法下においてかような見解は全く通用しないし、且つ又到底許すことのできない見解でありましよう。米麦等主要食糧統制撤廃のような重要問題は、当然法律の制定或いは改廃等、法律的手段によつて国会の議決を経て実行せられるべきは論を待たないところであろうと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)されば、政府は先に麦の統制撤廃を企図するや、食糧管理法の改正法律案を第十国会提案してその決定するところに従つたのではないか。而してこれは本院において圧倒的多数を以て葬り去られたことは未だ記憶に新たなところであります。然るに諸般の情勢が何ら変つていないのにもかかわらず、統制撤廃の措置を法律的な手続によらず、行政的手段によつて行わんとするものではないのか。私はこの際、以上の政府の方針に対し、特に重要な政治問題でありますので、あえて次の二点について内閣総理大臣責任ある答弁を求める次第であります。  質問の第一点は、麦の統制撤廃についてであります。前に述べた通り、これに関する法案は否決され、廃案となり、今日に至つているのであります。かような経緯があるにもかかわらず、政府はこの事実を無視して、重ねて国会の議決を求めることなく、政令による非民主的、独裁的措置をあえてせんとする意図があるかどうかについて伺いたいのであります。  第二点は、米の統制撤廃は、当然法律の改廃或いは制定等、法律的方法によつて国会の議決を求めた上においてこれを実行さるべきものと確信するのでありますが、政府の所見を承わりたいのであります。而して世論の動向から考えますと、国会の承認を得ることは甚だ困難と思われるのでありますが、若し万一国会の承認が得られなかつた場合は、命令を以てこれを断行する意図があるかどうか。その意図を国民の前に明確にせられたいのであります。  最後に私は政府に一言申上げたいことは、このたび政府が突如として米麦の統制撤廃を強行するゆえんのものは、内外の諸情勢を無視し、国民生活の実態から遊離した自由党が、過去の公約を盾に、絶対多数を占める面目を貫かんがためのものであるとしか断ぜざるを得ないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)最近民主主義の危機が憂えられているとき、この問題に関連して、政府国会を一無視し、国会審議権を奪い、延いては議会政治を破壞するがごとき暴挙に出るならば、我々は今後の議案審議に当り重大なる決意を持たざるを得ないのであります。(拍手、「どうぞ御自由に」と呼ぶ者あり)    〔「国務大臣吉田茂君登壇拍手
  30. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) 統制撤廃に関しての私の所見はさつきも述べた通りであります。詳細は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇拍手
  31. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。  米麦の統制撤廃に関する手続上の問題について御質問がありましたが、この点はしばしば同樣の質問に対しましてお答えした通りでございまして、この手続につきましては、小林さん御自身が御指摘になつておるように、これは現在の食管法の建前からいたしまして、政令に委ねておる点がたくさん多いのでございます。そういう点からいたしまして、或る部分については政令でなし得るという解釈は当然是認さるべきものと思います。又併しこれに伴いまして、米麦の統制撤廃だけが我々の目的ではなく、統制撤廃後において需給調整により国民生活の安定を期するということが我々の目的でありまするので、そういう観点からして又立法措置の考慮もいたしておるのでありまして、この手続については総合的に検討いたしておりまして、いずれ成案の上は御提案申上げ、そうして御審議頂きたい。かように思つておる次第であります。(拍手)      ——————————    〔松浦清一君発言の許可を求む〕
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松浦清一君。
  33. 松浦清一

    ○松浦清一君 私はこの際、漁業対策に関する緊急質問をすることの動議を提出いたします。
  34. 溝淵春次

    溝淵春次君 只今の松浦清一君の緊急質問動議に賛成いたします。
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松浦君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。松浦清一君。    〔松浦清一君登壇拍手
  37. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は最近伝えられておりまする漁業協定に関する問題、又日本沿岸において行われておりまする連合国海軍の演習地の水産損害に対しまする補償の問題、又東支那海や北洋方面において拿捕されておりまする漁船の返還並びに補償の問題等について質問を行いたいと存じます。  第一点は、漁業協定に関する問題でございますが、今月二十四日、外務省情報部の発表によりますと、日本政府はアメリカ、カナダに対しまして漁業協定を行うことの招請を発しまして、アメリカ、カナダはこれに応ずることの回答を寄せられまして、十一月の五日からこの協定が開始されるということが報道せられております。漁業協定に関する問題は、講和条約の第九條によりまして、日本は希望する国々との間に漁業協定を結ばなければならないということが規定をせられております。それに従いまして先ずアメリカ、カナダと日本との間に早急にこれが協定が結ばれようとしておるようであります。その内容はもとより詳細にわかつてはおりませんが、去る二月七日附のダレス吉田往復書簡及び七月十三日の政府声明によつて明らかでありまするように、過去における日本漁業が世界的な不評を買つておりました原因の中には、その頃の條約や協定を若干無視いたしまして、公海における濫獲を行い、著しく侵略的な性格を帶びた問題が指摘せられておりまして、そのことが今日において自粛を要請されるということはよくわかります。併しながらそのことが、戰勝国としての立場を利用して、敗戰国である日本に不当な漁業に対する制約を加えたり、或いはそういう意図に基いて漁業協定が行われるということは、我が国にとりましては断じて承服のできないことであります。即ち協定は飽くまでも公正平等な立場においてなされることが必要でありまして、それによつてこそ日本の独立も保障されることになり、特に漁業協定等においては、我が国の自立経済に占める水産業の比重の大きいことに鑑みましても、條件を付けられない、制約を加えられない協定が行われることが肝要でございます。併しながら前に申した吉田ダレス書簡によつて考えて見ましても、又、この協定の問題が外電等によつてしばしば報ぜられるに従いまして、だんだんとアメリカ、カナダ方面の日本に対する漁業協定に対する態度が、相当の制約を加えようという意図に基いて、この協定がなされようとしていることが明瞭になりつつあります。先に講和條約の草案作成に当られましたダレス氏は、講和條約の條文の中に、漁業協定に関する問題も、漁業に関する問題も織込んでやろうと最初には考えたようでありますが、関係諸国との談合に基きまして、このことは講和條約の條文の中に盛り込まないで、別に協定すべきであるということの了解が関係国間に得られたようであります。併しながら、その別に行われようとする漁業協定が、飽くまでも内容として、日本に対して相当な制約を加えようとする意図のあることに了承を與えているがごとき感を受けるのであります。若しそういうことがあるならば、講和條約草案の折衝の際に、しばしばダレス氏と会談をしておられます吉田首相、外務大臣としての吉田首相は、そのことに内諾を與えておるのではないかという誤解を国民は持つのであります。そういうことは敗戰国民としての卑屈さが、対等の立場においてこの協定ができないという非常に情ない気持が、漁業協定を行うに当つてつておるとするならば、日本の将来の水産業のために誠に憂うべきことであると考えるのであります。従つて又、世界の国々が将来の平和を目指して平等対等の立場において生きて行こうとするのであるならば、飽くまでも公海自由の原則と公海における漁業の平等自由の原則が確保されなければなりません。領土が分割せられ、更に又、海洋が漁業や航海の面において分割せられるということは、世界の平和を撹乱する、世界の平和維持に憂えを持つ、海洋分割の帝国主義的な考え方であると言わなければなりません。特に我が国のごとく、漁業が、国民の自立経済の上から考えて見ましても、国民生活の安定、国民の栄養確保等の上から考えても、極めて重大な意義を持つている国におきましては、たとえ敗戰国であり、戰争の責を負うべき国ではあるといたしましても、国民が生きて行く上に不当な制約となるような協定が強いられることになつては、たまつたものではないのであります。恐らく日本が黙つて向うの言うことを承服するということになりますと、資源の豊富な世界のあらゆる漁場から日本漁業が完全に締め出されるという懸念がないと保障することはできないのであります。このような不安な、そして困難な情勢の中に立ちまして、政府はどのような所存と態度とを以て、近く始められようとするアメリカ、カナダ、日本三国の漁業協定の締結に臨もうとしておられるのであるか。御所信のほどを伺いたいと思うのであります。  昭和十一年から同十五年までの五年間平均した我が国の漁獲高は実に十四億三千六百万貫、即ち五百三十二万トンであつたのに対しまして、昭和二十四年の漁獲高は七億六千万貫、即ち二百八十万トンであつて戰前の半分にしか達しておりません。これでは経済的な立場から見ましても、国民生活上から見ましても、極めて貧弱なものでありまして、戰争の結果、領土が狹くなつたこと、人口が殖えたこと等から考え合せて、到底満足のできるものではございません。講和條発効と同時に現在のマツカーサー・ラインは消滅するのでありましよう。この時機こそ天然資源の宝庫としての海洋へ自由に進出をいたしまして、平和産業としての漁業を発展せしめることだけが、我が国民生活を確保安定するただ一つの途であると信じます。日本漁業に対する各国の動きに我々は最大の関心を拂つております。同時に幾多の不安も感じ、又困難なることを想像するのでございます。それ故にこそ、この際、政府に対して次の諸点をお聞きいたしたいと思います。第一に、伝えられる各国の動きから見まして日本漁業の前途は極めて悲観的であると思うが、この点に対して政府のお考えはどうであるか。又、各国との漁業協定について何らかの制限を受諾するような了解を、アメリカ、カナダは勿論、その他の国々に対して與えたことがあるかどうか。又、漁業協定を結ぶに当つて飽くまでも公海出漁の自由を主張する御意思がおありになるかどうか。更にもう一つ、漁業問題の協定に処するの態度を業者や船員の立場からその意見を聞く機会を作る御用意があるかどうかということをお伺いいたしたいと思います。  時間が迫りましたから早くやりますが、次に漁船の拿捕問題でございます。漁船が拿捕されるという所は、主として東支那海、北洋方面において拿捕されておるのでございますが、不思議なことには、講和條約調印の直前には暫らく拿捕されることがとまつておりました。東支那海等においては、マツカーサー・ラインの内外にかかわらず見付かり次第中共の船に拿捕されまして、まだ多くの船舶やその船に乘つてつた船員が返還されておりません。曾つてども中共に拿捕されておりました船員が帰つて参りましたときに、水産、外務両常任委員会で証人喚問をして、拿捕されたときの実情を聽・取いたしたのでありますが、その際、証人の語るところによりますと、中共の政府は、マツカーサー・ラインというのは、あれは蒋政権のときにきめたものであつて、現在の中共政府は関知しないラインである。内であろうが、外であろうが、見付かり次第拿捕するのだということを放言しておつたということを証言をいたしております。マツカーサー・ラインは、一面、日本漁業に対する制約のラインであると同時に、又一つの保護ラインであつたことは申すまでもありません。講和條約調印が済みまして、九月八日から最近に至るまでに急激に拿捕問題は拡大をいたして参りまして、東支那海だけでも十四隻の漁船が拿捕せられております。私は、曽つて北海道に国政調査に赴きました際に、根室の北端納沙布燈台に立つて、今まで本会議で問題になりました歯舞群島、国後島を目のあたり見て参りました。僅か納沙布燈台を離るること一マイルのところをマツカーサー・ラインが走つております。この燈台から望遠鏡で見ていると、眼の前のそごからソ連の監視船に日本の漁船が拿捕されて行く。海岸に立つたその拿捕されて行く船に乘つている船員の家族の諸君は、どうなることかと、自分の夫や兄弟が船と共に拿捕されて行く姿を眼の前に見ている。ソ連や中共につかまつた船はなかなか帰つて参りません。中共に拿捕されている船がまだ三十数隻返還されておりません。二百七十名の船員諸君が送還されて参りません。一体このような事柄に対して日本の外務当局は、どのような方法と、どのような考えでこれらの拿捕船や抑留されておる船員の送還についての交渉を行なつておられるのであるか。若しマツカーサー・ラインがなくなるとすれば、更に東支那海、北洋方面における拿捕船は増大されて来るでありましよう。抑留されている船員の数は殖えて来るでありましよう。日本の国の安全保障が日米安全保障協定によつてきめられる、国土の安全保障がどのようにしてきめられるかはまだわかりませんが、国土を離れて、海上を職場として、海上を事業場として仕事をやつておりまする漁業界や、その船に乘つている船員の安全保障というものが、どのようにしてなされるものであるかということについての、吉田外務大臣の御親切な御答弁を頂きたいと存じます。  なお一点、日本の沿岸におきまして米国海軍が演習をしておりますところが三十数カ所ございます。この演習地において今まで漁業を営んでおりました漁民の損害は莫大なものがございます。最近又その演習の度合が頻繁の度を加えまして、殆んどこの三十カ所に近い沿岸で漁業をしておりました漁民は仕事ができない。魚の收獲高は三分の一、四分の一に減つて来る。漁民の損害、生活の不安は言うまでもなく、このことのために日本国民の生活の上に至大なる影響をもたらしつつありまするが、この損害補償についてどのように政府がお考えであるか。又若し演習地が日本の水産業に影響しないような海域において演習を行うように話合いが付かないものであるかどうか。こういう事柄につきましては、百万の日本の沿岸における漁民、小さな船と一本の釣竿にその家族の生命を託して魚を取つておりまする零細漁民の生活が、どのようにして保証せられ、その生活不安がどのようにして除去せられ、又それによつて起る日本の蛋白資源の給源がどの方面とどの方法において確保されて行くのであるかどうかということにつきまして、吉田外務大臣連日御健闘で非常にお疲れであろうと思いまするが、全国二百万の漁民諸君がこの漁業協定や演習地における水産損害に対して非常なる関心を持つておりまするので、安全保障に関する問題については外務大臣、損害補償については大蔵大臣、その他漁業全般については農林大臣の親切な御答弁を要求するものであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  38. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。近来漁獲方法の進歩と共に、魚族の濫獲、水産資源の涵養ということについては、世界的の問題になり、殊に日本船の活動の結果、濫獲が相当米国或いはカナダ方面において問題になつたのであります。又現になつておるのでありますが、今日水産資源を保護する、魚族の濫獲を妨げる、妨げるといいますか、防止する、魚族の保護ということは、列国等も非常な関心を持つておるところであります。故に漁業條約については、この観点から、たとえ公海といえども魚族の濫獲、若しくは水産資源の保護という見地からして国際漁業條約が協定されつつあるのであります。日本に対しても同樣であります。これは日本の漁業を制限するとか圧迫するとかいう観点からではなくて、世界の魚族を保護する、水産資源の保護という観点からして、こういう條約がすでに條約の通念となつて各国の間に行われております。この感覚から、この観念から日本に対しても魚族の保護を考えてもらいたいという要求があり、希望があり、そうして日本もこれに対して又、魚族の保護、水産資源の保護ということは、日本の漁業からいつて見ても大切なことでありますから、共々にこれを保護しようと、こういう観点から漁業協定をいたす考えであり、又いたすことを希望されておるのであります。これは日本の態度が、日本の公正なる態度を示す上からいつて見ても、日本自身の、日本の漁業の保護の上からいつて見ても、魚族の濫獲、魚族の滅絶ということを防ぐためにこれは必要なことと政府考えて、この協定に応ずる考えであります。  そこで、過去においてマツカアーサー・ラインを中心として漁船の捕獲ということはしばしば行われ、又中国ばかりではないのであります。朝鮮方面においても同じ問題が起り、これを問題にいたしております。問題の起つたたびごとに総司令部を通じてこれに対してその返還を求めており、又返還された漁船もありますが、併しながらまだすべてが返還されておらないということは事実でありますが、引続いてこの返還を求める考えであります。将来については、日本の監視船を強力にいたしまして、日本の漁船の保護に当るつもりであります。  又演習その他による損害については、国家補償をなす方針で以てそれぞれ問題の処理に当つておるはずであります。又当つておると承知いたしております。  その他のことは所管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇拍手
  39. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。殆んど総理大臣から御説明がありましたので、重複を避けまして、要点だけについてお答えいたします。  漁業協定に関する日本側の態度と申すことは、只今総理が言われたように、人類共通の資源である海の資源の保護に当りましては、我々も協力すると同時に、併しながら一面におきましては公海の自由という立場に立ちまして、各国間の公正且つ妥当な取極をなされることを希望して、検討しておる次第であります。なお、この問題につきましては、外務省と実務を扱つておる農林省とは緊密に連撃をいたし、調査研究を進めておるのでありまして、近く政府代表及び民間委員を以て作るところの漁業問題打合会を設置いたしたいと存じます。松浦さんが要望されました、民間機関の、民間団体の意見を聞けということは、これによつて満たされることと存じておる次第であります。  次に米海軍による日本沿岸の演習のために起る損害につきましては、すでにこの問題は一昨年以来から問題がございまして、政府は実情を調査の上、非常に損害を受けておる沿岸漁民につきましてはすでに補償をやつておるのみならず、更に今後におきましては、お説のように、でき得るだけ日本漁民が生業の著しく困難にならないような折衝を続けておることも事実でございます。なお、どうしてもそれが聞き入れられないような状態の場合におきましては、漁民につきまして漁業転換等について適当な措置を講じたいと思つて、目下鋭意研究中でございます。  漁船の拿捕の対策につきましては、総理大臣から御説明申した通りでございます。(拍手)    〔政府委員西川甚五郎君登壇
  40. 西川甚五郎

    政府委員(西川甚五郎君) 御質問の漁業制限に伴ないまする補償費の問題でありまするが、これにつきましては昭和二十五年度の予算におきまして一億二千四百万円を計上いたしました。これによりまして二十一年度から二十四年度までの損害に対して補償をいたした次第であります。二十五年度の補償につきましては、経費といたしまして二十六年度に最初五千万円を計上いたしたのでありますが、なお、この演習の地域が殖えます関係上、更に五千四百万円を増加計上いたしまして総額一億四百万円、それによりますと、二十四年度分の損害について補償いたしました額は八千四百万円でありますから、二十五年度の補償は二十四年度よりも二千万円殖えておるというような工合になつております。  それから拿捕抑留の問題でありますが、これにつきましては漁船保險法の一部を本年の四月に改正をいたしまして、そうしてこの特殊危險の保險を引受けることにいたしたのであります。補正予算におきましては、この加入隻数が七分殖えましたものでございますから、漁船再保險特別会計におきまして所要の補正額五千三百六十万円を計上しておる次第でございます。
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後零時二十九分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 緊急質問の件(行政整理に関する緊急質問)  一、主食統制撤廃に関する緊急質問  一、国会審議権尊重に関する緊急質問  一、漁業対策に関する緊急質問