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1951-10-23 第12回国会 参議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十三日(火曜日)    午前十時十九分開議     —————————————  議事日程 第八号   昭和二十六年十月二十三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     —————————————
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗 読を省略いたします。      —————————— 会議を開きます。  派遣議員の変更についてお諮りいたします。昨日決定いたしましたルース台風被害状況調査のための派遣議員中、長島銀藏君を島津忠彦君に変更し、宮崎県、大分県に派遭いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤尚武

    ○機長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  4. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。(第三日)  昨日に引続き、これより順次質疑を許します。堀木鎌三君。    〔堀木鎌三君登壇拍手
  5. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は第一クラブの一員といたしまして、過般池田蔵相がこの場所でいたしました財政演説に対し質問をいたしたいと思うのであります。  池田財政と申しますか、或いはドツジ財政と申しますかは、ともかくといたしまして、その財政特徴は、財政規模縮小を図りつつ收支均衡を得た予算を編成することであります。従つて二十六年度当初予算におきまして、池田大蔵大臣は、本年度予算は前年度に比し財政規模縮小を図りつつ減税をし、併せて資本蓄積社会政策的経費を計上することができたのである。自分としては従来の予算に比して最も上出来な予算であると、こう自画自讃されましたのは、私どもの記憶に新たなところであります。然るに今回の補正予算によりまして、歳出は千三百六十二億円を追加計上されまして、本年度歳出総額は実に七千九百三十七億円、約八千億円となつて、戦後最高の予算総額となつたのであります。その原因は、歳入において千七百六十七億円の増加見込んで歳入総額が八千三百四十二億円となつたからであります。そしてこの歳入増加の主なものは何でありますかと申しますと、国民負担税収であります。即ち千七百億円のうちから千五百六十七億円は租税收入増加であります。朝鮮事変以来、いわゆる特需その他の影響によりまして、鉱工業生産指数上つて参りましたのでありまするから、国民所得もそれにつれて上つたには相違ないのであります。併しそれは年初予算と今回の改訂予算との間におきましては僅かに二割程度と推定されるのでありまして、大部分は物価高による名目上の国民所得増加によつて自然増収が得られたのであります。この自然増收は当初税収入の二五%に及んでおりまして、そのうち法人税は実に八百五十四億円、当初予算に対しまして一三五%の増であります。源泉所得税は五百八十四億円、当初予算に対して五五%の増に当つておるのであります。これに対しまして本年度減税額は四百五億円に過ぎないのでありまして、いわゆる自然増加額に対しまして二割六分、現行法による税收予定額に対しまして僅か六%に過ぎないのであります。平年度において大蔵大臣は約千億の減税を図ることになつたと言つて自慢しておられるのでありますが、実はこの公約実施は千五百億に及ぶところのいわゆる自然増収の上に立つものであります。物価が騰貴いたしませんで、財政規模縮小があつて、そして初めて実質的な減税が成り立つのであります。今回のは財政規模縮小いたしません。物価は騰貴しました。それによつて作り出されましたところの自然増収に対し、僅かに二割六分程度減税して、なお且つ減税大蔵大臣は言われるのでありましようか。(拍手)これが質問の第一点であります。  併しながらこの自然増收減税の関連におきましても三つの質疑があるわけであります。その一つは、今後の経済状況において果して予定自然増収が得られるのであろうかどうか。その二は、今回の所得税の軽減が物価高を吸収して果して実質的国民生活の水準を維持し得るかどうかということであります。その三は、法人税の増徴と資本蓄積の問題でありますが、これらにつきましては、すでに昨日波多野議員及び境野議員両氏より質疑が交わされたのでありますが、両氏が触れられませんでした一点についてだけお聞きし、なお昨日の両氏に対する大蔵大臣の御答弁のうちには、にわかに私どもとして首肯いたしがたいものがあるのでありますが、これは委員会に譲りたいと思います。  即ち第一点でございますが、御承知のように最近の電力危機石炭不足によつて生産は減退して参りました。輸出輸入は減少して参つた。漸く吉田内閣の貧困な経済政策の破綻がここに露呈して参つたのであります。この下半期は到底従来のごとき生産活動は期待し得ないと考えられるのでありますが、自然増収は果して予定通り得られるのでありましようか。安本ですら下半期鉱工業生産指数が最初の予定の一四七%が一一〇%か又は一〇二兎に減ずる見込を立てておるのでありますが、これで以てしても、なお且つこの自然増収が得られるとお考えになるのでありましようか。歳出面について見ますと、一層池田財政の特質を示しておるのであります。本年度補正予算特徴とも言うべきものは、第一に外為特別会計及び食管特別会計へのいわゆるイソペソトリー・フアイナンスとも言うべきものが四百億円計上されておるのでありますが、当初予算と合せますと実に九百億円に上つて、これが国民経済面より全く吸收されてしまうのであります。本来これらの資金資金運用上の問題でありまして、特に財政資金、即ち国民租税収入を以て補填すべきや否や頗る疑いのあるものであります。ただインフレ抑制財政面から特にいたしたいというので、その機能を持たせたものであります。外為特別会計年度当初五百億円についても問題があつたところであります。それが今回更に三百億円を増加されまして、実に八百億になつたわけでありますが、この内訳を見ますると、そこに百十六億円が予備費として計上されておるのであります。これについて大蔵大臣は何故に予備費を御計上なすつたのでありましようか。以上のほか、事実上これと同じ効果を持つ支出に、新たに国際通貨基金及び国際開発銀行出資金二百億円、特別調達資金として七十五億円の繰入れをなされておるのであります。歳出総額千三百億円中、実にその半額に相当いたしますところの六百七十五億円がこれらの金を占めておるのであります。これらはいずれも自然増収という形で国民経済面から吸い上げられ、財政上のリザーヴ資金として残る勘定になるのであります。而もこのうち国際通貨基金及び国際開発銀行加入のための出資金二百億円は全く未確定の債務でありまして、一体これが本年中に加入が許されるのかどうか、その額の計算はどうなつているかという点について、大蔵大臣にお見込を聞かして頂きたいのであります。  更にここで問題になりますことは、実は池田大蔵大臣歳出追加総額の千三百億円の今申し上げました半額をふところの中にお入れになつておるのでありますが、実は池田大蔵大臣ふところの中には、このほかに資金関係といたしましては資金運用部資金、見返資金特別会計に約千億に近い金額を持つておられるのであります。で、これらの余裕金池田大蔵大臣自分ふところの中に持つておる、統制下に持つておるのであります。各省大臣はかくのごとき財政状態を知りながら、国民経済上、より重要な、差迫つた経済政策がないのでありましようか。ただ、本年度追加予算として計上されましたあの程度のものしかないのでありましようか。各省大臣追加要求としてお出しになつた額はもつともつと厖大なものがあるはずなのであります。  で第一に、その点で指摘申上げたいことは、本年度当初予算は昨年の七月に編成されまして、十月頃の物価によつて一部やや修正されたのであります。然るに、その後物価は四月まで上昇して参りまして、四月以降やや横ばい又は下落の傾向を示したのでありますが、それでも昨年十月の予算編成時に比して、今年七月までに、生産財で四割、東京卸売物価で二割七分も上昇しております。八月に至つては更に上昇を続け、九月に至つては同じような傾向を続けておるのであります。で、この点は実は各特別会計を御覧になるとすぐわかる。各特別会計におきましては、既定経費を節減しても、なお且つ運賃料金値上げしなければならんということに実証されておるのであります。物価高による経費は如何になされたのでありましようか。この物価高経費はどこへ行つてしまつたか。少くとも既定仕事はこの物価高の下においては各省大臣はできないはずであります。これらに関連いたしまして、昨日の本会議に触れられなかつた諸問題について極く簡單に各大臣に御質問いたしたいと思うのであります。  建設大臣予定の工事を遂行できるのでありましようか。建設大臣は今日お見えになつておりませんから、あとで御答弁願つてもようございます。農林大臣は頻りに主食の統制撤廃に力を入れておられるが、廣川農林大臣時代から継承された一番重要な一割増産の問題はどうなつておるのでありましようか。岡野国務大臣は、百億の地方財政平衡交付金増加によつて大蔵大臣の言う経費徹底的節減税収確保をすれば、この百億円の増加で十分と考えておられるのでありましようか。人事院総裁は、勧告が実施されなくて、千五百円の引上げにとどまつておるので、これで国家公務員生活が保障されるとお考えになるのでありましようか。(拍手労働大臣は、專売裁定国鉄調停が事実上施行されなくてもよいとお考えになつておるのでありましようか。通産大臣産業合理化は十分できるとお考えになつておるのでありましようか。厚生大臣は、以上のような財政状態においても、整理のための整理行政機構改正に先だつてしなければならないと思われるのでありましようか。いずれこれらの諸問題は詳細に予算委員会において検討するつもりでありますが、一応の御答弁を願いたいと存ずるのであります。  次に財政投資金融について御質問します。時間がございません。だんだん迫つてつておるようでありますので、極く簡單に申上げたいと思います。日本金融は、実は日本銀行大蔵大臣と両建によつてつておられる、元締めをしておられるということが考えられるのであります。大蔵大臣はその財政演説において、追加計上されました財政支出だけについてお述べになりましたわけでありますが、実は金融全般についての相関関係についてお話願わなければ私はならないと思うのであります。一方におきましては大蔵大臣は、自由主義経済の下においても厖大国家資金自分で非常に厳格な統制の下に置かれておるのでありますが、この尻拭いを誰がしておるかというと、日本銀行がしておる。日本銀行貸出増加は八月において二千四百億円でありまして、朝鮮動乱前の二倍、乙種ユーザンスを加えた実質貸出は三千六百億円で、三倍となつております。一方、生産動乱前に比して約五割の増になつておるのでありますのに、日銀貸出がかくのごとく殖えておるのは、如何に大蔵大臣が一方においてお締めになつても、一方において明らかに信用インフレ日銀貸出となつて現われておるかということを立証いたすものであります。このために一方においては中小企業は非常に金詰りをする。併し他方においては不要不急資金となつていろいろな施設がされるということになるのであつて、最近大蔵大臣金融問題について統制にお入りにならんとする傾向を示しておるのであります。そこで大蔵大臣に御質問いたしたいことは、見返資金特別会計資金運用部資金全般に亘る運用状況を御説明願いたいと思うのであります。第二は、設備資金融資抑制について如何なる方途を講ぜられようとするのか。設備資金以外の資金量的規正をもせんとするのであるか。銀行法改正をも意図してやろうとするのか。三といたしまして、資金効率的運用は、結局、資金面による統制だけでは所期効果を挙げ得ないのであります。基本的には経済再建計画があり、それに従つて産業活動が行われるということが根本でないでありましようか。少くとも、物資、事業面において制限が行われる、不要不急資金が流れないようにすることが前提であり、不可欠でないのでありましようか。  最後に一言申上げたいことがあるのであります。それは日本経済の現況であります。成るほど日本経済朝鮮動乱以来その影響を受けて、生産指数は高まつて参りました。貿易規模も拡大して参りました。併し、他方物価事変前に比して、本年八月において卸売物価は、生産財において実に七四・二%、消費財において二九・九%を上廻つておるのであります。四月以降やや下向き横ばい傾向があつたのでありますが、八月、米価、電力料金値上げを契機といたしまして反転上昇いたすようになり、更に今回の運賃郵便料金値上げは他の物価高を促して、現在ですら国際物価を上廻つておる状況でありますにかかわらず、なおジリ高の傾向を見せておるのであります。鉱工業生産指数も漸く伸び悩みの傾向を示しておりますのみならず、電力不足は先ほど申上げましたように、下期において頗る生産が憂慮すべき状況を示しております。石炭につきましても九月末貯炭は百七万トンという状態を示しておる。常時貯炭の二百万トンの約半数に下廻つておるのであります。出炭量需要量を下廻ること二百七十万トンであつて重点産業に応じようとすれば他は三割一分程度を減じなければならないと言われておるのであります。貿易につきましても輸出輸入とも漸く伸び悩みの状況を示しまして、九月においては輸出は八千六百万ドル、一億ドル台を割りまして、本年度の最低を示しております。要するに、非常に日本経済の前途は憂慮すべきものがありまして、大蔵大臣の言われる安定でありますとか、或いは能率化でありますとか、発展化というものとは、ほど遠いと思うのであります。独立を前にしまして、明年度は各位も指摘されますように諸種なる経費が予想されるのであります。私は到底従来の自由主義経済一本槍を以て今後の日本経済を乘り切ることは困難である。大蔵大臣もすでに金融統制に一歩を進められておるのであります。併し金融間接統制だけを以てして所期効果は得られるでありましようか。私は得られないと思うのでありますが、大蔵大臣は如何お考えになりましようか。  以上、基礎産業について本年度下期の応急対策並びに長期に亘る基本的対策につきまして、安本大蔵通産、各大臣答弁を促して、私の質問を終りたいと思います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  財政規模の問題についての御質問でございまするが、私は就任以来財政規模を極力縮小するように努めておるのであります。で、二十四年度よりは二十五年度、二十五年度よりは二十六年度縮小して参りました。併しこの財政規模も相対的な問題でございまして、日本国民経済が発展拡大すれば、これに伴つて成る程度財政規模も殖えて行くのであります。従いまして、国民所得に対しまする歳出予算の割合は当初予算と何ら変つておりません。私は平和を迎へるに当つて予算といたしまして、ここまでにとどめ得るには相当の努力をいたしておるのであります。  次に、千五百億円の自然増収があつて、そのうち四百億円の減税では減税にならないのではないか。——これ又財政規模の問題と同じでございまするが、国民所得が殖えまして自然増収が出て来るのであります。そうして自然増收が出た場合において、税率を引下げたり基礎控除を上げたりして、一人一人の負担を軽くするのが減税であるのであります。数字に亘りますから又委員会お話申上げまするが、私は減税に違いはございません。減税法案を出して御審議願つておるのであります。  それから最近の状態からいつて自然増収千五百七十八億円が見込まれるかという問題でございます。御承知通り法人税につきまして八百数十億円の増収見込んでおりまするが、この三月におきましても相当の、決算をいたしまして七月にはかなり入つて参りました。又九月の決算が如何であろうか。即ち七、八月頃からの状態によりまして、貿易業者或いは繊維業者の不振が考えられたのでありまするが、この九月の決算期におきましては、鉄とか、船舶造船、窯業、セメント等、非常に好景気でございまして、紡績関係の不振をカバーして余りあるとは申しませんがカバーし得るだけの決算を出しておるのであります。で、私はそういう状態でありましても三月の決算の大体九割ぐらいに見ております。而もこの九月の決算は済んだのであります。だから、これが今年の十二月の初めに納まる。今の電力不足によりまする一時的の生産の行き悩みがございましても(「行き悩みじやない」と呼ぶ者あり)今年度租税収入には何ら心配はございません。私は就任以来水膨れとかいろいろなことを言われましたが、昭和二十四年度も二十五年度も、租税収入見込に穴が出るようなことはいたしていないのであります。どうぞ御安心願いたいと思います。(拍手)  次に歳出の問題につきまして、外為会計或いは食管会計に三百億、百億を入れるということは、財政資金でやることは適当じやないじやないか、こういうお話でございまするが、これは前から議論のあるところでございまして、財政資金でやらずに何でおやりになるつもりでありますか。お話のように日本銀行貸出は三千六百億円に上つておるのであります、乙種信用供與を加えて。こういう状態でありますので、私はこういうインペントリー・フアイナンスの問題は、私が就任以来の方針を堅持いたしまして、財政資金でやるべきだと考えます。これが最も強いインフレ対策であるのであります。而してそのうち百十六億円の予備費を持つておる根拠如何というのでありまするが、外為資金不足堀木君も御承知通りであります。今非常に不足をいたしております。これは当初予算におきまして大体七十億円の予備費を持つてつたということは御承知通りであります。而して外国貿易が発達すれば、当初の七十億円、百十六億円の予備費は当然のこと、これは大蔵大臣として持つておらなければなりません。  次に、国際通貨基金にいつ入れるかという問題は、昨日お答えしたように八月に申込んでおります。多分十一月には日本出資割当の研究に来てくれると思います。そうすれば私は今年度中に入り得ることを期待しております。遅くとも来年度当初には入れることと思いまして二百億円を準備いたしておるのであります。併し今年中に入れなくて、四月、五月になりました場合を考えまして、繰越使用を明記いたしております。而してこの二百億円の根拠につきましてはいずれ詳しく申上げまするが、日本国民所得、人口、輸出貿易等考えまして、そうしてその分の二五%、父片一方では日本の保有しておりまする金或いはドルの一〇%、そのいずれか低きほうということになるのであります。而して日本の所有の金の一〇%のほうが低うございますから、それによるのでありまするが、日本の保有しておる金並びに外国為替ドル計算を如何にするかという問題があるのであります。こういう問題から考えまして、私は大体割当額が三億ドル乃至三億五千万、そうして金の保有高を四億五六千万ドル、これにいたしまして計算をいたしておるのであります。  それから見返資金或いは運用部資金大蔵大臣は千億円持つておるじやないか。——つております。持つておりまするが、この千億円の中で国債にもしておりまするし、或いは又食糧証券にも投資いたしておるのであります。こういうことをいたしますことは、あなたが貸出が多くて心配しておられる日本銀行貸出と見合つてつておるのであります。遊ばしてはおりません。国債食糧証券に使つております。これを私が一般産業資金に出さないのはインフレを恐れるからであります。丁度イソペントリー・フアイナンスと同じような気持で、政府資金をここに置いて、そうして国債運用し、要るときには出します。従いまして、預金部のほうにおきましても、今年当初よりも郵便貯金が当初の四百億円が四百六十億円になり、又簡易保険もいろんな議論がありましたが予定よりもうんと殖えております。厚生年金も殖えておる。この殖えた金は、地方債の百億円を殖やしたり或いは農林漁業特別会計に三十億円出したり、その他、電気、通信のほうの公債を持つたりして、去年から引継いだ資産を来年度増減なしに引継いで、そうして五百億円程度のものは常に持つている。こういう考えであるのであります。特に今年に限つて溜めたのではございません。又見返資金につきましても国債を五百億近く持つております。そうして食糧証券を三百億持つております。併しこれは三百億円のうちから、当初計画したよりも、今回財政演説で申上げましたように百億円の電力開発、三十五億円の船舶の七次後期造船に当てようといたしているのであります。そういうようにいたしまして、来年度においては五百億余りの金が見返資金で使い得ると思います。それから物価高のためにいろいろな仕事ができないのじやないか。——まあ公共事業費のことをおつしやつていると思いますが、これは事業会計、即ち鉄道、通信等におきましては、物価高によりまする経営の不如意をカバーいたしますために料金値上げ等をいたします。そうして一般会計においては、一般会計によつて物価が高くなつたが、公共事業をそのまま予定通りつて行く、そうすることは、仕事はしたいのですが、政府みずから物価高沿つて行つて仕事を減らさずに同じようにやつて行つたならば、物価高に拍車をかける。政府は先ず財政を緊縮しなければならないのであります。従いまして、これは原則として公共事業費は殖やさないという建前を閣議決定いたしたのであります。ただ公共事業費につきましても、単作地帯の問題とか或いは奥地林道の問題は、御審議願いました法律の関係上、どうしても補正予算で組まなければならないので組みましたし、又六三制の問題につきましては、これは特殊の事情がありますので、物価高によります関係を考慮して九億五千万円、その他は原則として殖やしておりません。ただ、今年度災害予定いたしまして八十億円の経費盛つてつたのでありまするが、幸いに災害が一回しかなかつたので五十五億円ほど余りました。この金は、本年度災害あと始末の問題或いは過年度災害のほうに向けるようにいたしたのであります。これがルース台風が起りました一週間前にきめましたので、これは使うことにいたしましたから、仕方がないのでありますが、ルース台風につきましては今後の災害状況見込んで予算考えようといたしておりますが、原則としては、物価上つて来たから、政府がそれに乘つかつて仕事予定通りやるということは考えず、できるだけ政府が先ず使うものを既定予算でできるように努力するのがインフレ対策の最たるものと思うのであります。  次に金融財政関係についてお話がありましたが、お話通りに、これは日本銀行貸出を見ながら、信用供與を見ながら財政運用をやつております。日本銀行財政運用を見ながら貸出考えております。常に連絡をとつているのであります。日本銀行貸出の三千六百億円を御心配でございますが、これは昨年の秋から司令部が管理しておつた貿易日本政府でやるようになりましたために、ユーザンスその他の問題でこういうような貸出に相成つたのであります。貸出は二千四百億、そうしてユーザンスのほうが千三百億でございます。このユーザンスもこの四月頃は二千八百億円に上つてつたのが千二百億円、それが日本銀行貸出に変つて参りました。今度はこの貸出の二千四百億円が千三百億円のユーザンスと一緒になりまして、即ち乙種のほうを貿手に変えました関係上、この貸出か三千四五百億になりましようが、これは政府が片一方で預金部その他インペントリー・フアイナンスをやつておりますので、この程度出ても心配はないと思うのであります。ただ、これからの資金需要が非常に増大して参りますので、できるだけ不要不急仕事に使わないように、又有効であつて設備資金には使わないようにという指導をいたしまして、金融界もこれに同調し、自主的に設備資金のほうを締めて行こうということになつております。併し設備資金にいたしましても、水力とか造船とか、或いは石炭、電力、鉄鋼等の資金、或いは農林漁業、中小企業のほうには、余り締めないつもりで指導いたしているのであります。なお、経済の前途誠に心配だ。——これは心配する向きもありましよう。併し心配したつて仕方がない。我々は心配事の起らないようにいろいろな施策をやつて行かなければならんのであります。一時的の現象に捉われて取越し苦労することは我々のとらざるところであります、今、電気が惡ければ、これにどんどん金を注ぎ込んで行つたらいい。だから一時的の現象に捉われて財政経済政策を誤まつてはいけません。我々は何も安心しておりません。楽観はしておりませんが、こういう事態をつかまえて、経済を安定し、そうして能率を挙げて発展しようというのが私の政策であるのであります。別に楽観し過ぎてはいないのであります。努力をして行こうというのであります。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇拍手〕、
  7. 根本龍太郎

    国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。前年度の一割増産はどうなつているかということでありまするが、これは農業政策の基本は、どうしても増産による国内自給度を高めるということでございまして、そのために諸般の政策を実施しております。試みに今回の補正予算におきましては、一般会計において二百七億七千七百万円、公共事業費において三十一億円を出しているのであります。これを当初予算と合併いたしますれば、一般会計において四百七十五億七千四百万円、公共事業において三百三十四億二千百万円でございまして、前年度と比較しますれば、一般会計において二百四十四億三千五百万円、公共事業費において八十四億六千三百万円の増となつておるのであります。これは先ほど大蔵大臣が申されましたごとくに、一方におきまして、特に増産の大きな余地を持つているけれども資金難で困つているところの単作地帯に対する特別なる措置を講じ、更に又北海道方面における開拓或いは各地方における開拓に重点を指向したのみならず、本年度におきましては特に病虫害の防除のために農薬の備蓄を実施いたしました。これが相当効果を挙げているのであります。なお又、品種改良、農業技術普及、各般の施策を実施いたしまして、増産運動をますます積極的に実施している次第でございます。(拍手、「三百万石減収だ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  8. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 專売公社及び国鉄に対する仲裁委員会の裁定につきましては、公共企業体の労使調停のための特別法律があり、この法律の手続によつて行われる裁定でございますから、政府としてはもとより法律の示すところにより、これを極力尊重して参らなければならんことはもう当然のことでございます。專売公社につきましては過般裁定が行われましたわけでございますが、政府はそのうち六億七千余万円については今回の補正措置によつて尊重の意示を示しておりますけれども、残余の分につきましては国会の御審議を公労法の示すところによつて御審議願わなければならないと思いまして、所要の手続をいたしているわけでございます。国鉄につきましては先般の調停が、できるだけ調停で成功いたすように努力をいたしたのでございますけれども、これ又只今仲裁委員会の仲裁審議中でございまして、多分は月末頃に裁定があるのではないかと予想いたしております。裁定の暁におきましては、政府としてもとより尊重すべきことは申すまでもないことと存じておる次第であります(拍手)    〔国務大臣高橋龍太郎君登壇拍手
  9. 高橋龍太郎

    国務大臣(高橋龍太郎君) お答えをいたします。最初の企業合理化の問題でありますが、これは民間でだんだん計画がありまして、これからずんずん実行に移るだろうと思いますが、併し総体において私の期待するように進んでいないことは私も甚だ遺憾に存じておるのであります。企業合理化通産省の産業施策としては非常に重要視しておりますので、これには十分力を注ぎたいと思います。又これに関係する法案などもできるだけ早く提出いたしまして御審議をお願いしたいと考えております。次に最近の電力危機のために鉱工業の生産は遺憾ながら減つております。殊に電気をたくさん使いまする、或いは電気銅であるとか、電気亜鉛であるとか、そういうようなものが減つておりますことは、甚だ遺憾に存じそおりますが、石炭のほうは極力増産を図り、電力用に確保することに努力しておりますので、この下平期に大体二千四百五十万トンくらいは内地炭が供給できるであろうかと考えております。むろん貯炭は御指摘のように減つておりますが、現在私どもは山元の貯炭をできるだけ減らして消費者の庭先に移しておりまするような状態なのであります。一番問題になつておりまする関西電力などの貯炭もだんだん殖えております。ちよつと今小康の状況であります。なお、重油その他の燃料の輸入増加に極力努めておりますので、下半期の燃料事情は大体需給バランスがとれるかと思つております。減産のほうはまだ現在の輸出計画に影響があるほどの程度では私はないと思います。輸出にはいろいろ困難な問題がありますが、只今御指摘になつた九月の数字は非常に減つておりますが、私ども実際心配しておりましたのは八月であつて、九月には相当ぼつぼつ海外の引合いなどが回復しておつたのでありますが、数字ではズレがありまして、九月が最も惡くなつております。十月に入りまして引合いその他輸出の実績が相当活溌化しておりますので、大体十三億幾らという予定のなには行くのであろうと、ほつとしておるような次第であります。(拍手)    〔国務大臣橋本龍伍君登壇拍手
  10. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 機構改革を先にしないで人員整理をやるのは何故かとの御質問であつたように思います。政府全般的に行政改革を行うつもりでございまするが、人員の整理は機構の改革に関係があるよりも、むしろ原則として事務の整理のほうに関係が深いのでありまして、事務の整理に関連して人員整理の成案を得ましたので、近く国会に提出する運びといたしたものであります。講和後の独立国家にふさわしい機構の改革も行うつもりでございまするが、なお研究中でありまして、これも成るベく早く成果を得たいと思つております。(拍手)    〔国務大臣岡野清豪君登壇拍手
  11. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。  地方税を根本的に画期的に昨年改正をいたしまして、その当時は地方の財政もほぼこれで安定を得たと、こう考えておりましたのでございますが、その後、社会福祉その他民生安定の諸施設が次々に行われまして、同時に思わぬ災害なんかが出て参りまして、財政需要額が非常に増加した、そのために地方公共団体は只今財政に非常に苦しい立場に置かれておるということは、皆樣御承知通りでございます。そこで一面考えましても、地方税にいたせ、国税を財源とするところの平衡交付金にいたせ、共に納税者の負担でございまして、只今の情勢から申しまして増税をするということは無論できませんし、むしろ我々といたしましては減税をするという方向に進んでいまして、今回の補正予算におきましても四百五億円の減税をいたしておるような次第でございます。そういうわけでございますから、中央、地方を通じまして、国家財政の立場かも平衡交付金は百億円とにかく出すことにしまして、これも非常に国家財政としては辛い点でございますけれども、地方の情勢に鑑みましてこれだけの支出をするということになりました。無論、私といたしましては地方公共団体の財政の基礎から行きまして十分とは申せません。けれども只今申上げましたような情勢上、これで一つ地方財政を何とかしてやつて行きたいと、こう考えております。つきましては、今後の地方財政につきまして如何にすべきやという御質問が出るだろうと思いますが、私どもといたしましては、與えられた條件においてできるだけ税の徴収を確保するということ、又歳入を効率的に使用して行く、又第三といたしましては、できるだけ経費の節減を図つて行こう。私は極端に申上げますれば、経費の節減をするのみならず、ときによつては急を要しないところの事業の繰延べも或いはしなければならんかと、こう考えております。こういうような情勢でございまして、今後地方財政運営については相当の苦難を味わわなければならんと思いますけれども、現状いたし方ないと、こう考えまして、なお只今我々といたしましては地方行政簡素化によりまして、できるだけ地方の行政を簡素化いたしまして、そうして経費の節減、又財政需要の節減ということに努力して、鋭意目下研究中でございます。御了承を願いたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  12. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 講和後における我が国の経済について非常に御心配の御議論でありました。御尤もな話でありますが、私どもは結論といたしましてそう悲観はいたしておりません。決して手放し楽観はいたしませんが、先ほど大蔵大臣も言いましたように、施策そのものがよろしきを得れば決して悲観すべきでないと、かように考えます。と申しますのは、先ほど御指摘のように、成るほど鉱工業生産に一例を取りましても、最近ちよつと落ちております。七月末は一四一まで行きましたが、八月には二二八に落ちた。この原因は主として電力の問題にありまするが、それも、これはちよつと恐縮ですが事実を申上げますと、電力  の当初の計画においては十分の計画が立つてつたわけで、而も電力に対しては、火力用石炭の供給分量も下期四百七万トン、而うして二十六年度石炭生産計画なるものは異常なる増産でありまして、各炭鉱業者の協力によつて、去年は約四千万トン賜の生産でありましたのを、今年は四千五百万十トンに引上げた。この生産が、八月までの状況によりますと、月別を寄せますと、恐らく今後の推移は、そのまま行きましても四千玉百万を超えるという実際の状況である。その中から電気に対する四百七万の下期の供給計画は進めておつた。そこに齟齬はなかつた。ところが異常渇水で二〇%の水力の齟齬が起きましたために起つた現象であります。これに対しましては、先ほどちよつと通産大臣から述べましたが、応急の処置といたしましては、石炭の大手及びすべての中小炭鉱業者の協力を得まして、必要量の確保、石炭の電力業者への優先供給ということの話合いを付け、現に大阪地方に関係官が出張いたしまして話合いの上、どんどんと電力会社のほうに石炭を廻しておる処置をとり、なお、それでも実際上の補いを付けるために、不足量が相当ございますので、これは先ほどのように内地の炭鉱の増産というものは、よほど大きく上つております。これ以上の要求に対しましても相当量は期待できますが、何といたしましてもこれは外表に依存するほか応急の措置はございません。従つて外表輸入に関し、且つ又石炭の重油への転換ということ、これについてはすでに許可を受けている数量が電力用重油として十万五千キロリツター輸入を認められた。そして、この十月——十二月までの輸入が七万キロリツターというような形で、応急の処置は付けておりますので、多少、全体的の電力供給が落ちることがありましても、そう、むちやくちやの下落はないと私は考えます。従つて今後生産増強、輸出増進ということの根本は、やはり原材料の獲得、電力の事情、石炭価格というような問題が大きな問題に知ると思いますが、原材料の獲得につきましては、これは今日までの状況を見まして、将来相当期待ができると私は考えまするし、なお、できるならばこの価格の問題等を考えまして……、遠いアメリカ等へ期待する物資を東南アジア地区に切替えるということ、これを目的とする東南アジア開発についても積極的に案が進みつつあるわけであります。全体とは申しませんが、ものによつて大きく転換ができるわけであります。而も価格問題について、国際価格というものに、相当それに近寄らなければ、高ければ出ません。そこに今後生産の増強、輸出の伸張の問題があります。これにつきましては、通産大臣も先ほど申上げましたように、基本は何と申しましても合理化にあると思う。運賃の差ということもいろいろ問題がありますけれども、鉄鋼業に一例を取りましても、その価格に占むる割合が、運賃高というものによつて示していることよりも、もつと大きな点は、産業内部に包蔵している不合理的な点である。これに対しては、どうしたつて積極的に診断いたしまして、直すならば直さなければなりませんけれども、直すならば国際的な競争に十分にやつて行けるという見込もあるようであります。こういう面につきましては十分手を打ちたい。根本の問題として、何としても今度の実績が示しましたように、根本には、電力というものを大きく、この際、積極的に政府は開発について主力を注ぐつもりである。細かいことは委員会等でお話申上げたいと思います。(拍手)    〔政府委員山下興家君登壇拍手
  13. 山下興家

    政府委員(山下興家君) 堀木さんからの御質問によりまして、人事院から発表いたしました給與ベースの改訂についての勧告と、政府の給與ベースの上昇の割合は非常に下廻つておるではないか。政府のほうが下廻つておる。それについてどう思うかという御質問であつたのであります。それで、この際、人事院が勧告をしましたのは、どういう基礎の下に立つてあの数字を出したかということを、一応御了解願うほうがいいと思うのであります。御承知のように、新憲法下では、公務員は国民全体の奉仕岩でありますからして、それで公務員の給與をきめます場合に、それは納税者である国民にも十分に了解をしてもらう数字でなくてはならないし、又公務員全体も、それによつて満足をする数字を我々出さなけりやならんと思つております。それでどうしたかと申しますと、公務員の平均給額をきめるのに、公務員の生活水準を国民全体の生活の水準に合わすということであるならば、これは納税者である国民にも満足してもらえることでありましようし、公務員も満足してもらうだろうと思うのであります。それによりまして我々は七百の事業者について詳細に給與がどういう状態にあるかということを調べました。又非常に若い人たち、十八歳くらいの者が独立して生活ができるようにするために、理論生計費その他から結局消費カロリーが日本国民の平均の水準に合わすようにして、計算をして出したものが、先頃勧告いたしました一万一千二百六十三円という数字に相成つたのであります。それで、私どもはこういう立場に立つからして、これは国民全体に賛成をしてもらえるものであろう。ついては国会はその代表者であるから、国会でも全部賛成してもらえるはずのものであろう、こう思いましてきめたのであります。(「よく聞いておけよ」と呼ぶ者あり)これは公務員が御承知のように団体交渉権を持ちませんし、ストライキをすることの権利も持ちませんから、(「その通り」と呼ぶ者ある)我々は十分、政府は十分に、この公務員に対して保護の立場に立つて考える必要があると思うのであります。併しそう申しましても、それは公務員という立場から今のような理論の下で考えました数字でありまして、国家全体の経済というものから考えますとですね、必ずしもそれをすぐ採用することができない場合もありましよう。(「おかしいじやないか」と呼ぶ者あり)なぜかというと、ほかに非常な緊急の仕事があつて、そのベースまで持つて来られないという場合もあるかも知れません。そういうことについては、この国会で十分御審議願つて、そうしてどちらが重いか、重点をどこに置くべきかということを御審議願うことが私は大切だろうと思うのであります。私どもの出しました数字につきましては、これは誰が計算をしてもはつきりいたしますように、これは国会、内閣、それから新聞全部に発表いたしました。その数字の基礎をきれいに全部発表してありますからして、これは誰が計算しても間違いのないことがありますから、この国民全体の前にさらけ出したこの事実に基きまして国会で十分御審議願うことを希望してやまない次第でございます。(拍手
  14. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 建設大臣答弁は留保をいたされております。     —————————————
  15. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手
  16. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして質問いたします。  池田大蔵大臣財政演説の中で、今回の補正予算明年度以降における講和條約並びに安全保障條約関係費を考慮に入れて編成したのでありますと、こういうように述べておるわけです。成るほど今度の補正予算を見ますと、今度の補正予算の中に含まれておるいわゆるインベントリーの金額及び終戦処理費を、来年度においては他の講和関係費に振り向けるという形において、来年度、二十七年度財政規模は、予算規模は大体二十六年度補正を入れた財政規模と同じである、こういうように思われるわけであります。従つて今度のいわゆる千三百六十二億に達するところの補正予算は講和條約及び安全保障條約を経済的に反映しておる、その経済的意義及び特質を現わしておるものであると、こういう観点から、私は非常にこの補正予算を重大現しておるわけであります。(拍手)こういう観点から御質問するわけであります。  先ず第一に、時間がございませんから簡潔に質問いたしますが、総理大臣に御質問したいのですが、おられませんから、この点については後で答弁して頂くとしまして、池田大蔵大臣経済全権として調印会議に行かれましたから、この点について池田大蔵大臣にも御答弁願いたいと思います。その点は、しばしば総理も或いはほかの閣僚も、今度の講和條約及び安全保障條約は極めて寛大なるものである、又これが日本にとつて有利であるから、これを締結したということを述べておられますが、少くとも経済的な側面から見て、どの点が寛大であり、どの点が有利であるかを具体的に示して頂きたい。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)私は、イタリーは平和條約を批准する権利がありませんでしたが、日本は講和條約を批准する権利が與えられておるという意味でイタリーよりも有利であると言われておりましたが、経済的側面からイタリーの平和條約と比較しまして、先ず第一に賠償の点について、イタリーは三億六千万ドルというふうに、はつきりきまつておる。これを七カ年問に償還というようにきまつておる。この賠償の條項がなぜ平和條約の中ではつきりとこれが締結されなかつたか。賠償の金額は要求されているだけでも二百億ドルに達すると言われておる。これでどうして寛大と言われましようか。(拍手)イタリーの場合に比較して寛大と言われましようか。  第二に「アメリカから受けた援助費であります。イタリーの場合は、池田大蔵大臣も御答弁になつておるように、これは援助費はアメリカは放棄しております。この債権については、日本の場合はこの二十億ドルに達する対日援助費は債務として償還されなけりやならん。而もこの対日援助は、御承知のように大体において終戦処理費との見合いにおいて與えられておると言われて来たんであります。終戰処理費、今日まで我々拂つたのは五千三百九十三億円の終戰処理費を拂つて来ております。大蔵省でこれを軍票レートで換算してもらいましたらば、この金額は四十九億七千二百万ドルであります。四十九億七千二百万ドル、これに対してアメリカの援助は約二十億ドルであります。この終戰処理費とアメリカの援助を差引いても約三十億ドルは我々のほうが支拂超過であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり。)その上にこの二十億ドルは償還しなければならんということになりましたら、イタリーの場合は、これは放棄したのであります、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)イタリーの場合とこれでどこが寛大であり、どこが有利であるのか。この点は私は詳細に伺いたい。而も対日援助は、アメリカの第八十一議会でドツジ氏も証言しているごとく、これはアメリカの過剩物資、綿花とか小麦の過剩物資を日本に送つたのであるということをドツジさんは言つております。而もアメリカ軍隊を日本に置くことによつてアメリカは軍事費の節約をしているのである。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうことをドツジ氏は第八十一議会の下院の対日援助を要求する委員会の公聽会において証言されております。こういう形の対日援助、而も終戰処理費はそれより三十億余計我々は拂つている。これを償還しなけりやならん。返さなけりやならない。これで寛大であるか。而も大蔵大臣予算委員会において、しばしばこれは平和條約を結ぶときに條約の中ではつきりされるだろうということを言つて来たんです。(「その通り」と呼ぶ者あり)條約のどこを見てもこの点については何にも書いてない。一体これはどうしたんでありますか。  更に第三に聞きたいのは外債処理の問題。イタリーの場合は、大蔵大臣も御説明になつておるように確かにイタリー国家に対して有利に借換えてきた。日本の場合はイタリーよりも有利に借換えできる公算はないと思います。このように、今度の平和條約の中で一番重要なる経済問題、賠償の問題、対日援助の処理の問題、公債、外債の処理の問題が一番重大なんです。その他にもまだありますけれども、こういうものを平和條約において何らこれが規定されなかつた。これが全部今後の折衝に任される。こういうことになつたことは、これは実に政府の重大なる怠慢だ。重大な責任が私はあると思う。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)この間、大蔵委員会に前の財務官、渡辺武君を呼んで聞きましたが、渡辺武君も言つております。率直に言つて、今度の平和條約の中で経済的の関係のものが、これが明らかに規定されると予想したところが、これが規定されなかつたことは予想外だ。予想外れだ。政府は本当は明確に示されることを期待したんだ。ところが予想に反した。ドツジさんとの最初の交渉においては賠償も拂わないでいいような形になつて来た。そこで政府もこれは寛大であるかのごとく錯覚を持つた。当時は本当に思つたでしよう。併し結果はそうでない。(「ごまかされた」と呼ぶ者あり)結局ダレス氏の非常に優れた外交的手腕によつて吉田首相は敗北したわけです。私はそう思います。最初は経済面において相当寛大であるごとく見えた。何故それを押さなかつたか。(拍手)こういう結果になつたのは、こういうように大失敗、大黒星をとつて非常に国民に重大な損失を経済的に與えたことは、これは秘密外交の結果であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手国民の輿論、大衆の輿論をよく聞いてこれを反映して折衝しなかつたから。(「秘密外交の敗北だ」と呼ぶ者あり)そこでダレスさんと吉田さんとではまるで外交的手腕が違います。敗戰国という立場もありますから、なお更比較すら……、問題にならないほど懸隔が違う。従つて吉田さんは国民の輿論というものを背景にして折衝すべきだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)それを怠つたから、こういうふうな非常な経済的に見て重大な、不寛大な、不利な條約になつたと私は思うのです。この点について私は吉田首相の御答弁を煩わしたいんでありますが、これはあとで御答弁して頂くとしまして、池田大蔵大臣にも御答弁願いたいと思います。  それから次に池田大蔵大臣に御質問したのでありますが、先ず今度の補正予算は、今後の日本経済の一つの見通しと、それから今後の政府の基本的な財政運営計画と、この二つの点に立つて編成されております。そこで先ず日本経済の現状及び見通しについてお伺いしたいのであります。しばしば大蔵大臣も、その他の人々も、今後日本経済にはインフレの要因があると言つておりますが、インフレの要因があるのではなくて、すでにインフレであると私はこう思いますが、大蔵大臣はどう思うか。一萬田日銀総裁も、最近はインフレの要因があるというんでなく、もうすでに日本インフレの中に入つておるのだということを言つております。先ほども大蔵大臣が示されたように、日本銀行貸出乙種ユーザンスを入れまして本年八月には三千六百六十七億、昨年五月の一千二百六十八億に比べまして三倍であります。生産が五割三分しか殖えないのに乙種ユーザンスを入れて日銀貸出が三倍にも殖えておるということは、明らかにこれは信用インフレです。このインフレが起つたからこそ、インフレなつたからこそ、池田大蔵大臣は千五百億もの自然増税、私は自然増收と言いません、自然増税を行なつて、そうして今度の補正予算簡單に編成できた。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)こんな方法はないのです。私は二十七年度予算の編成も簡單と思います。インフレを起せば簡單に編成できます。名目的国民所得を殖やして名目的な自然増收を殖やすことは簡單に編成できます。(「大蔵大臣なんか要らないよ」と呼ぶ者あり)私は、現在すでにインフレである。(「ごまかしに要るんだよ」と呼ぶ者あり)この点について大蔵大臣はどう思うか。  それから第二に、今度の講和後における日本経済の見通しについては、大蔵大臣は極めて楽観されております。悲観するのが能ではないと言いますが、我々は具体的な根拠に基いて、若し日本経済が今後、講和後において非常なインフレになるならば、これはもう重大なことになります。そこで講和後において非常に重要なインフレ要因がたくさんありますが、それで私は、そのために、もうインフレは不可避である、少くとも財政面から見て不可避であると思いますが、大蔵大臣はどう思いますか、その第一の理由として、恐らく二十七年度予算には二千億近い講和関係費が出て来ると思いますが、これは大部分不生産支出であります。不生産支出は、均衡財政を、仮に形の上で均衡財政をとつてインフレ的になります。昨日境野さんの質問に対して大蔵大臣は、例えば労務賠償を支拂う場合、我々は税金で支拂うのだからインフレにはならないということをおつしやいましたが、これは余りに無責任極まる御答弁です。労務賠償の場合です。原材料を向うから持つて来て加工する場合、電力も要りましようし、不可避的に日本の物資が要る。そういうものが外国に行つてしまつて、更に追加購買力が出る。或いは追加購買力でなくて税金でやるとしても物資のアンバランスが出る。ドツジ氏も現にそういうものはインフレ要因になると言つております。ドツジさんを待たないでもそうであります。二千億に上る或いは警察予備隊費、或いは賠償支拂、外人財産補償或いは外債支拂、皆これは不生産支出でありまして、これをやれば財政バランスをとつたところでインフレ的になることはもう明白であります。而も二十六年度補正予算の中に例えば九百億も今度はインベントリーがあるわけです。更にこれに終戦処理費分を合せて約二千億、これを来年度は講和関係に振向けるという形で、財政規模は大体本年度補正予算を加えたものと同じくらいにするというお考えのようですが、これはインベントリー或いは終戦処理費を使うということはインフレになることなんです。蓄積した資金をこれから使うということはインフレになる。終戰処理費はこれまで約一千億納めて来たから、今後も終戰処理費を納めても何ら負担には変らないということをよく言われます。これは再軍備費に使つても変らないと言われますが、これまで終戦処理費はこれを我々は税金で拂う半面、アメリカの対日援助というものがあつたのです。これからは対日援助がない。対日援助がなくなつて、これまでと同じように終戰処理費を約千億を拂つたら、これは我々の経済的な負担になり、これはインフレ的要因になることは明瞭であります。そこで、こういう財政面からいつて決定的にもうインフレにならざるを得ないのであるから、これをどうして大蔵大臣は防止して行かれんとするか。これに対して大蔵大臣演説を見ますと、金融面から、金融統制によつてつて行こう——ところが最近金融統制に関する法律を本国会に出さうとしましたが、金融界或いは産業界から反対に会つて出すことができない。金融統制も困難であります、そうなれば私はインフレ不可避と考えますが、大蔵大臣はどうでありますか、お考えを伺いたい。それから更にこの補正予算歳入歳出について御質問したいのでありますが、堀木さんから詳細な御質問がありましたから、私は極く要点について二点お伺いしたい。先ほど堀太さんの御質問に対して、この自然増收……私は自然増收の中に名目的な所得増加による増收が非常に多くあると思うのでありますが、決してそれが名目的な所得増加でない、自然増收というものはこれは名目的な自然増収ではないというような大蔵大臣答弁であります。勤労所得税に関して五百七十九億も自然増收見込んで、これに対して三百六億しか減税してないのであります。ところが勤労所得税増加の原因を見ますと、物価上つたから、大体二割上つたから、賃金が名目的に二割上つたために勤労所得税が殖えたのであります。これが五百七十九億殖えた。従つてこれは自然増收ではない。自然増税であります。それに対して三百六億しか減税しない。二百七十三億はこれは増税であります。大蔵大臣はいつでも物価と税との関係を無視しておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それでいわゆる税法上の減税と言つておりますが、明らかにこれは自然増税であります。(「しらじらしいぞ」と呼ぶ者あり)而も歳出面におきましては物価補正をしておらない。当初予算六千五百七十四億のうち物件費は約二千億であります。物価が二割六分も上つたとして、約五百二十億は物価の補益をしなければならない。やらないから地方財政も犠牲になる。公共事業費のうち一般公共事業、或いは災害復旧、文教施設、こういうものの公共事業がみんな犠牲になる。大蔵大臣は補正をしないと簡單に言つておりますが、これは犠牲になる。そういう民生的な施設というものは荒廃するのであります。そういう政策は当初計画ができない。この犠牲によつて大蔵大臣は警察予備隊の費用とか或いはインベントリー・フアイナンス・インベントリーに行く金、これは翌年は講和関係費に変る。こういうものを賄われる。人件費も補正しない。給與ベースもさつき人事官の御説明があつたように政府はこれも補正してない。人件費においても物価補正してない。その犠牲において組んでる予算、これはインベントリー・フアイナンスを利用した錯覚予算である。私は錯覚予算であると言う。いわゆる貨幣の錯覚を利用したところの予算である。(「亡国予算」と呼ぶ者あり)これで健全なるところの予算であるということがどうして言えますか。(「亡国予算」と呼ぶ者あり)重大なることは、こういう予算の編成の仕方を二十七年度にもやるということであります。そういうことを大蔵大臣は、はつきり述べている。二十七年度の講和関係費を含んだ予算をこのような形でやるということを財政演説で言われておる。そこでこの予算編成の仕方が非常に重大なわけであります。この点について明決な御答弁をお願いいたします。最後に周東安本長官に、時間がございませんので、たつた一点伺いたい。それは講和後の日本経済自立と国民生活水準の問題であります我々は前に周東安本長官にだまされたことがある。(笑声)朝鮮動乱が起つてから、必ず特需というものができ、生活水準が下るのだから、この生活水準の低下と特需と輸出の調整をどうするかということを御質問したのです。そのときに周東長官は、国民生活水準が下らないように特需と輸出を調整すると言明された。我々は信頼しておつた。ところがどうであるか。生産朝鮮動乱で五割三分殖えました。貿易規模は拡大しました。併しながら国民生活水準は八%下つた。八月は七月に対して一一%下つています。勤労者の、国民生活水準は戰前の六割五分になつております。これでどうして国民生活水準が講和後において安定、或いは上がるということが言えるでありましようか。殊に安本が最近お作りになつ昭和二十九年度を目標とするところの自立経済計画によれば、あれは電源開発資金として二億八千五百万ドルのアメリカの金を借りるということが第一、東南アジア開発が順調に行くということが第二、貿易の短期資金をアメリカから借りられるということが第三、この三つの條件の下に、国民生活水準は昭和二十九年度に戦前の九割一分まで上げるという作業である。これも講和会議に行く直前に一夜漬けで急いで作つたと言われますから、正確は期し得られませんでしようが、その前提がみんな崩れている。電源開発の資金の一億八千五百万ドルはアメリカから借りられなくなつた。そこで今度は国内で電源開発公社とかいう会社を作つて、国内で電源開発をやろう。これは国内の資材、鋼材、セメント、そういうものが国内向けに使われて、そのために輸出が減る。輸出分の鋼材或いは木材が減ります。輸出が減れば輸入が減つて国民生活水準が下ります。この下るのを防ぐために二億八千五百万ドルをアメリカから借りるはずだつた。それが借りられない。(「時間々々」と呼ぶ者あり)池田大蔵大臣も昨日その点に触られましたが、これは確かに大蔵大臣の言う通り、セメント、木材は国内で使う。それだけ輸出分が減るわけです。その減る分をアメリカの借款でカバーして輸入を補おうという意味であります。これができなくなつた。どうして国民生活水準が維持向上できましようか。この自立経済計画と国民生活水準についてお伺いしたい。  それから、もう時間がございませんから、東南アジア開発について高橋通産大臣に具体的に、例えばゴアの開発、或いはカルカツタのそばのオリツサ、オリツサの開発、こういうものは具体的にどの程度……。中国貿易をこれからできない、中国との貿易経済交易をこれから切断された場合、東南アジアでどの程度に具体的にカバーできるのか。通産大臣にお尋ねして。私の質問を終りといたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  木村君とは大臣就任以来、常に議論しておるのでありまするが、(笑声)それが今日も大分私と考え方が違つていることがたまたまはつきり現われました。今回の講和條約が寛大であるということについて、寛大ではない、イタリーと比べてどうか、こういうお話でございまするが、賠償というものは他に與えた損害ということから考えなければなりません。イタリーが他に與えた損害と日本が連合国に與えた損害とは同じですか。その点が先ず第一点。(拍手)第二は、当初は賠償を支拂わなくてもいいと、こうあつたのを、平和條約で支拂わなければならんということになつた。——これもあなたの認識が違います。(「勉強が足りん」と呼ぶ者あり)これは現在としては、日本の資源は完全な賠償をするには不十分である。ただ沈船の引揚げその他加工賠償というのは前からあつたのであります。だから前提が違うのであります。又第三点には、あなたは要求の二百億ドルをお拂いになるつもりですか。こんな、戦争によつて與えた損害も考えずに、又條文の経過も検討せずに、そうして要求があつたらそれを皆拂うということを前提にすれば、これは、ひどいあれかもわかりません。こういうふうに何も前提が違うところでとやこう言われたつて(「ごまかし」と呼ぶ者あり)地にそいません。あなたは條約に金銭賠償を規定したほうがいいとおつしやるのですか。我々は、金銭賠償を指定しない今回の條約は今までにない條約であります。これを以て寛大と言うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而して日本経済の自立を妨げないような程度の賠償に限られているのであります。これを以て寛大と申すのであります。前提が違います。前提をはつきりおつしやつて下さい。(「抽象論でごまかすな」と呼ぶ者あり)  次に対日援助費の問題。援助費の問題は、イタリーでも、講和條約の批准が済んで、折衝に入つてアメリカは放棄したのであります。アメリカの一方的放棄であります。併し我々は戰争中向うの過剰物資であろうと何であろうと、あの援助によつて餓死する者もなくてやつて来たのであります。我々は平和を愛し、日本人の自負心を損しない程度において拂えるだけ拂うというのが、大国民としての襟度であろうと思います。  次に外債処理の問題であります。外債の処理の問題、講和條約の問題とは直接関係はございません。ただ十四條に他の連合国に追加負担を加えてはいかんという、この追加負担の問題があるだけで、直接の関係はございません。而してイタリーとか……イタリーが今までの外債を支拂う上において利子を軽減したり期限を長くしてやつたために——これはアメリカとの間だけであります——その後のアメリカにおけるイタリーの信用はどうですか。金を拂うときに非常に負けさして、その当時はよかつたけれども、今後の信用のことを考えますると、我々日本人は借りたものはきれいに拂います。併し拂うのには我々の拂えるような條件で拂うというのが一番有利な考えだと思うのであります。而してこの問題は、イタリーのほうがいいか、よほどよくお考えにならないと、誤まつた前提でとやこう言つて地にそわない議論だと思います。  次にインフレの問題について、日本銀行貸出が多い。——それは先ほど来、申上げた通りであります。併し通貨が殖えるのは……生産は五割とおつしやいましたが、三、四割でございます。通貨もこの程度で適正だと思います。インフレというものはどういうふうにお考えになるか。惡性インフレの場合のインフレという言葉もありますが、併し又経済が発展し、物価が徐々に上つて来て、生産が殖えて行く場合のインフレという言葉もあるのであります。そこで、そういうことをはつきりなさらないと、聞く人が間違います。(「信用インフレ」と呼ぶ者あり)聞く人が間違います。信用インフレ……日本銀行貸出が殖えたということは、これは司令部貿易日本政府日本国民貿易に変つて来て、一時に貿易制度の変事があつたからであります。従つてこういうことがありますから、インベントリー・フアイナンスその他であなたは反対なさるけれども、惡性インフレを起さないようにやつているわけであります。財政経済全体を御覧になつてくれたらいい。私はインフレが一番嫌いで、あのインフレを二年前からとめて来た。決してインフレにはいたしません。御心配がありまするから、あらゆる財政経済施策をとる。そうして平和後におきましも不可避の、生産に直接関係のない支出があることを予定いたしておりまするから、私はこの経済安定を持続し、能率を挙げて発展させて行こうというのが基本方針であるのであります。(拍手)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  18. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えをします。国民経済生活水準が下つているじやないかというお話に関連して、だまされたというようなお話ですが、私にだまされるようなあなたではない(笑声)ということはよくおわかりだと思います。(拍手)ただ、あなたの観察の場所が私は違うと思うのです。それは成るほど朝鮮事変まで、均衡財政効果の現われから、二十四年の暮から二十五年の六月頃までにおける国民生活の水準は七八%まで回復して来た。その後の状況からいたしまして、価格の上つた程度において生計費等に響いた結果、一時六九%まで下りました。併し最近再びひた上りに上つております。こういう点はよく私は見て頂かなければならん。のみならず、あなたがよく御指摘になります生産指数の問題ですが、これは本年度当初に出しました経済自立計画においてよりも遥かに上廻つていることは事実です。これも私は事実を率直にお認めにならなければいかんと思う。あなたは今年の一月に私ども政府考えたテイミツドな一つの計画に対して、これでもなお且つできんだろうと言つて御指摘になつた。楽観に過ぎるとおつしやいました。併しこれは昭和二十八年度において、大体生産指数一三〇の鉱工業生産に持つて行くつもりだつたところが、いろいろの原因が影響いたしましたけれども、とにかくも二十八年を待たずに今年すでに一四〇に近付いた。最近電源の関係で少し落ちております。こういうことを私は率直にお認めにならなければならないと思います。こういう結果からいたしまして、全国における生産総指数というものの上昇は、必然的に国民所得の増を来たしている。そのことと、結局物価との関係において、今度は生計費、個人的な関係においてどう影響するかということは、これは私も認める。併し今日私どもが正月頃に考えておつた計画よりももつと下廻つて国民所得が減つているとは思いません。私はそういう点においてはあなたの議論も傾聽しておりますが、率直に事実は事実としてお認めになつた上で御議論願いたいと思います。詳しくは委員会お話しいたします。(拍手)    〔国務大臣高橋龍太郎君登壇拍手
  19. 高橋龍太郎

    国務大臣(高橋龍太郎君) お答えをいたします。先刻お尋ねのゴアの鉄鉱の問題でありますが、これは契約が漸く成立いたしまして、すでにこの問題は機械設備を輸出いたしまして、年間五十万トンの鉄鉱石を輸入する契約であります。承わりますと、もうすでにこの機械の注文などが済んで、着々準備が進められているように承わつております。現在北米から輸入しておりまする鉄鉱石と、ゴアから輸入するといたしますと、価格が半分にはならんでしようが、大体一トンに七、八ドル違いになるであろうか、節約ができるであろうかと思います。で、現在もゴアから、数字は忘れましたが、少しは輸入されておりますのですが、採鉱の設備その他が非常に小規模でありますので、こういう大きい数量を出すのには相当の設備をしなくちやいけな、恐らく来年の九月頃からはこの鉄鉱が入つて来ることになるかと思います。で、恐らく将来は、契約は五十万トンでありますが相当殖えるのではないかと考えております。こういう種類の契約が成立したものはほかにはまだありません。話合いのものはあります。御答弁申上げます。(拍手
  20. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 総理大臣答弁は他日に留保されました。     —————————————
  21. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  22. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本国民は曾つて日本帝国主義によつて歩まされた暗い谷間を再び歩こうとしておる。━━━━━━━━━、悲惨と貧困の谷あいを国民はただ一筋のあかりを求めて今日まで堪えて来たのであります。(「共産党だけだ」と呼ぶ者あり)一筋のあかり、これこそはポツダム宣言の保障する真の独立と自由と平和をかち取るために世界のすべての国々と講和を結ぶことであつたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)税金が重い。金は借りられない。米は捨て値で取上げられる。給料は上らない。それどころか首が切られるこの苦しさに堪えかねて立ち上れば直ぐ背後の——によつて押え付けられる。こうした憲法をふみにじつた一切の出来事は、講和さえ結ばれれば消え去るものと国民はひとしくその日を待ち望んでおつたのであります。ところでサンフランシスコから帰つた吉田総理と全権団の一行は、あたかもこれら国民の要望に応えるかのように、今度の講和は和解と信頼の講和であり、日本に独立と自由を保障するものであると宣伝これ努めている。果してそうであろうか。その事実を解く鍵は政府財政経済政策である。そこで私は日本共産党を代表して、政府財政経済政策の一端について関係閣僚に質したい。  先ず私の第一に聞かんとすることは、朝鮮戰争とこの補正予算関係である。戰争で儲ける一握りの大商人どもは別として、国民は今一人残らず朝鮮戰争の平和的解決を望んでいるのである。だからこそ国民は今の講和及び朝鮮戰争とこの補正予算との関係を知りたがつているのであります。そもそもこの予算は、朝鮮及びアジアに真の平和をもたらし、日本から外国の軍隊を引揚げさせ、自由と独立を民族に保障するために組まれたものであるか。それとも又アジアに戦火を拡大し、日本の国土と民族を永久に外国軍隊のきずなに繋ぐために組まれたものであるか。池田大蔵大臣答弁を求める。  第二に、私は講和條約調印後の予算の規模並びにこれに関連して予算編成権の自主性について質したい。池田蔵相は出発直前、歳出は四百五十億程度歳入は今きめられないと言つてサンフランシスコ会議にたしか臨んだはずである。然るに調印して帰るや否や、歳出は千三百億、歳入は千七百億にはね上つた。これは誠に驚くべきことと言わなければならない。講和財政の正体がまさにこれである。僅か半カ月の間に三倍以上も予算を膨脹させねばならなかつた理由はそも何であるか。一体、誰の指図で何のためにこのような予算が組まれたのであるか承わりたいものである。これらのことは、先ほどしばしば論議されたように、又来年度予算規模とも関連して、決して、見逃すことのできない問題であります。この点につきましては、いろいろ論議されたので省略するのであるけれども、このような予算の規模の拡大は、当然に非生産的な支出の増大と軍拡インフレの激化によつて国民生活に堪えがたい負担をもたらすことは、今までの論議を通じて明らかであります。これに対する政府の対策が伺いたいのであります。又、予算の規模の拡大の問題と関連しまして、予算編成の自主権についても伺いたいのであります。近くドツジ氏が来訪されるということが伝えられておるのでありますが、これによつて、今度の予算並びに来年度予算について、蔵相が曾つて演説の中で言明したものが覆えされるようなことが起らないかどうか。この点、はつきりさせてもらいたいものである。又この予算の扱い方について、新聞に伝えられるところによると、蔵相は、この補正予算案を国会に提出するに先だつて天皇に説明をしておるが、これは従来に例のなかつたことである。どういう必要があつてこういう異例の措置をとられたか。併せてこの点も池田蔵相に伺いたいところであります。  私の第三に聞かんとする問題は補正予算の軍事的性格についてである。昭和二十六年度予算の審議に当りまして、我が党は、直接間接の軍事費が予算の六割以上を占め、その傾向が今後ますます増大するであろうことを指摘したのであります。然るに、この補正予算を見るに、我が党の予見が如何に正しかつたかを証明している。即ち本年度予算歳出総額は今次の補正を加えて七千九百三十七億円、まさに終戰以来、未曾有の厖大予算である。当初予算施行後まだ半カ年を出でずしてこのような膨脹を示した原因は、言うまでもなく軍事費の増大である。その証拠として挙げられる第一は警察予備隊費である。当初予算は百六十億円であつたのでありますが、又してもほぼ同額をこれに追加している。これでは、如何に吉田総理が再軍備を否認し続け、今は国民負担がこれを許さないと言明しても、国民承知できないのである。何故ならば、天下周知のごとく、警察予備隊はすでにロケツト砲、迫撃砲を持ち、更に火焔放射機や戰車を持たされようとしている。こうして、許さないはずの軍事的負担が刻々国民の肩に重くのしかかつて来つつあるのであります。日本海軍への萌芽とも言われる海上保安庁費一億五千万円、国防分担金の走りとも見られる特別調達回転基金七十五億円も、すべて直接的な軍事支出であることは明らかである。それだけではない。政府はいつ何どきでも軍事的目的に振向けることのできる厖大予備費を新たにこの予算の中に準備しておる。即ち、外為特別会計食管特別会計等への繰入金、国際通貨基金及び国際開発銀行への出資金、更に平和回復善後処理費等、これらのものを合計して七百億円を超えておるのである。これらは表面如何なる名前を付けようとも、曾つて債務償還費が突如として警察予備隊の創設費に振向けられたと同じように、一朝事あれば直ちに使用できるところの軍事費であろうと思うがどうか。これら間接直接の軍事費は厖大な額に達し、今次補正予算一般会計の約七割を占めておるのである。こうした事実こそ、吉田全権団一行がサンフランシスコ会議において日本をアジア侵略の尖兵として再武装することを内諾した何よりの証拠ではないか。吉田総理並びに池田蔵相の明確なる答弁を求めるものであります。  私の第四に聞かんとするのは、政府産業貿易金融政策と補正予算との関係であります。政府は、開発銀行、輸出銀行への増資をする一方、貯蓄債券の発行その他あらゆる方法を以て資金を掻き集め、これを戰争経済遂行の重点産業に投入しようとしているのである。子供銀行さえこの例外ではないのである。これは吉田政府の日頃宣伝する日米経済協力体制をいよいよ強化しようとするものにほかならないのである。然らば果して日米経済協力は我々に何をもたらしたかということである。言うまでもなく朝鮮戰争開始以来、日本経済は急速にアメリカ戰時経済の一環として編入され、その結果は恐るべき破壞と窮乏の一路を辿つておるのである。  先ず第一に挙げなければならないのは貿易の破綻である。貿易政策については、その要めとも言うべき外貨予算の編成権と為替の管理権とがウオール街の貧慾な戰争屋どもによつて握られ、日本国民は彼らの操る国際物価の変動のまにまに飽くなき大収奪をほしいままにされているのであります。例えば今年の春、油脂、皮革、ゴム等の輸入に当つては、最高価格でこれらの物が押売りされ、買つた途端の大暴落で厖大なストツクを抱え込まされた。そうして、その月々の損害は百八十億にも達していると言われておるのである。併しこれはほんの一例に過ぎない。このような馬鹿げた輸入政策により、商社の破産が続出し、手持外貨は底を突き、遂に新たな輸入にさえ事欠くに至つておるのである。輸出も又そうである。綿布も、鉄鋼も、二割から五割方原価を切下げなければならないほど買い叩かれ、それでもなおキヤンセルが激増しておる。この自主性を全く喪失した貿易によつて国民に莫大な損害を與えて顧みない責任を政府はどう考えているのであるか。第二に指摘したいのは産業の崩壊である。即ち、戰争協力政策のため一切の資源と資金は挙げてこれを軍需産業に注ぎ込まれ、そのため平和産業は無視され、踏みにじられているのである。電力危機の実相が何よりもよくこれを物語つているではないか。元来、水が足りない、雨が降らないというようなことは、これは危機の本質を覆い隠すものである。(「その通り」と呼ぶ者あり)電力設備は荒れるがままに放任されておるにもかかわらず、工業用電力の割当は、アルミ、鉄鋼等の軍事的な大口需要にその七割も集中され、原価を割つた低廉な価格で供給されている。又軍事基地の建設に伴う電力の間断ない使用も危機を深めている原因である。これに対して、中小企業、平和産業への割当は僅か三割に過ぎず、週三日の休電日は全く生産の停滯を来たし、賃金の遅配欠配が至る所に続出しておるのであります。これは無論電力だけのことではない。石炭、鉄鋼等、基幹産業並びにその関連産業におきましても、過度的集中はいよいよ強化され、その結果、平和産業中小企業は不当に圧迫され、崩壊の速度を早めておるのである。  第三の問題は市場の行詰りの問題である。言うまでもなく、平和産業の崩壊と国民生活の破綻とは国内市場をますます狹隘にし、国際市場は又堪えがたい飢餓輸出によつてさえ打開困難の現状である。中共輸出禁止によつて根本的に狂いを生じた鉄鉱石、粘結炭等の原料確保も、アメリカがこれを保障してくれると太鼓判を押した政府の宣伝は、全く今日では計画倒れに終つておるのである。これにあわてた政府とワシントンの主人公は、目下ひたすらに東南アジアの開発に血路を求めようとしている。併しながら、価格、船腹等から元来無理な計画が、まだその緒にも着かない先に、マライ、ヴエトナム、フイリピンを初めとする東南アジア諸国の民族解放闘争は燃え拡がり、日本による開発は曾つての大東亜共栄圏の再現であるとのごうごうたる非難は、政府派遣の当局者をすら政情不安を歎かせているのが現状であります。その上、香港を中心とする日貨排斥運動が現在拡がつている。こうして東南アジア開発に一縷の望みを抱いた日本産業資本家も、今や全くその夢が破られ、唯一の安定した市場として中日貿易を望む声が目下急速に高まつておるのであります。吉田総理は今次国会の答弁において、中日貿易を過大に評価すべきでないということを再三繰返して述べておる。又それはこうしたどうにもならぬ現状を蔽い隠そうとする下心ではないのか。中国は、解放後二カ年にして、広汎な土地改革の成功は、食糧において二七%、綿花二五%の増産を示し、満洲の石炭は戰前の約二倍、重工業の生産指数はこれと共に急速な上昇線を辿つているのである。貿易もつい最近に至つて七十年来初めて輸出超過に転じたことが伝えられている。これに反して、物価は朝鮮戰争の影響によつても僅か三%程度の騰貴を示しているに過ぎない。これはアメリカの一七%、イギリスの二〇%、我が日本においては実に六〇%というような馬鹿に厖大な騰貴率を遙かに下廻つていることは言うまでもないことであります。  こうして中国経済の飛躍的な発展を直視すればこそ、最近日本経済新聞はその社説で、吉田内閣の向米一辺倒を戒め、戰後の我が国は二大勢力の間にあつて苦難の道を歩まねばならぬ運命にある。我々は飽くまで自由主義国と共産主義国の並存の可能を信じ、それに伴つて進まねばならぬと警告している。池田蔵相の手放し楽観論が、こうした財界の苦言を何と聞くか、併せてその所信を伺いたいわけであります。なお、以上の問題について、周東安本長官並びに高橋通産大臣答弁を併せて要求するのであります。  私の質問の第五は、税並びに賃金と生活水準の問題である。  今まで述べたように、吉田内閣の戰争準備の財政経済政策国民生活に及ぼす影響が極めて深刻であることはしばしば述べられた。その一つは、重税、低賃金、低米価による収奪をますます深め、他は厚生、文教、労働、地方財政政策等への物凄いしわ寄せとなつて現われているのである。池田蔵相は、四百億のいわゆる税法上の減税政府公約実施なりと呼号宣伝これ努めておりますが、その本音は、サンフランシスコから帰つて、帰朝第一声が何よりもよくこれを示していると思うがどうか。すでに明らかなように、減税四百億は、自然増、水増所得を前提としてのことであり、実質的には差引千百六十億の増税である。これに地方税の増収分四百二十三億を加えるときは、補正予算において約千六百億の大増税となることは明らかである。これまでもしばしば論ぜられて来たように、税法上の減税という政府のこの発明は、この大増税の実体を国民の目からくらますためにとられておるところの煙幕であり、愚民政策の現われである以外の何ものでもないじやないか。  一方又政府は公務員のベースアツプを千五百円程度見込んでおり、これによつて一万円ベースを予定している。併しこれは人事院勧告を距たること千二百円の開きがある。而もこの人事院勧告すら、米価、電力料金等の値上げを考慮しておらず、まして汽車賃、通信料金、ガス、水道料の独占物価並びにこれに伴う一般物価の値上りを全然見込んでいないのである。従つて人事院勧告よりも遥かに劣る政府案がこのまま実施されれば、実質賃金の低下は勢い大衆の生活をこれ以上に窮乏に追い込むことは必至であります。而も焼石に水に等しいベース・アツプも地方公務員の場合は始んど何ら財政的措置が講ぜられず、すべては目下窮乏の極を辿つておる地方財政に任されておるのである。  このようにしてたとえ名目的な減税とベース・アツプが行われたとしても、水増し所得による増税とこれに伴う物価の上昇は、相対的に国民生活水準を著しく低下させざるを得ないのである。従つて労働者の賃上げ闘争は絶対にやむときがないのであります。殊に講話條約調印後の戰争経済からの押し付けが強化されればされるほど、労、農の抵抗と反撃は激化せざるを得ないのである。今やそのよつて来たるところを身を以て知つた日本の労働階級は、生活権の擁護と平和、民族の独立のため戰い抜くことでありましよう。これを予想すればこそ、政府は多くの予算を割いて、警察予備隊、特審局、国警、税務署等の彈圧並びに牧奪機関を急速に増強し、一方、労働法規の改惡、ゼネスト禁止法、団体等規正法等の反動法案の立法化を目下企らんでおるのであります。警察国家による恐怖政治の再現が今や日程に上りつつある。吉田総理と池田蔵相は、これらの事態を直視し、飽くまでも国民生活水準を守り拔く考えがあるかどうか伺いたいものであります。  最後に私の質したいことは、官公職員の不正問題であります。鉱工品公団の早船の話はもう古い。それほど官公庁の不正事件が矢継ぎ早に明るみにさらされつつある。曰く海上保安庁の汚職事件、曰く警察予備隊涜職事件、曰く何々公団、通産省、大蔵省、更に最近国民実践要領を叫んでおるその文部省の足下にさえ、かような不正が起つておるということは、実に歎かわしいことではないか。会計検査院の報告によれば、昭和二十四年度における各省、公団の公金不正使用は十数億円に上り、件数にして七百五十件に達しており、而もそのうち最も多いのが大蔵省であると言われている。池田蔵相は過般の閣議で、この点に関し警告を発したと伝えられておるが、それは如何なる事実に基いてのことであるか。その内容をここで明らかにされたいものである。これらの不正は、レツド・パージ後急速に目立つて来たところの現象であります。殊に最近はその規模と構想が極めて大きく、金額も数千万円、ときには数億円を以て数えておる。又背後には思いもかけぬ大物が控え、ときには外国人との繋がりがあつて摘発を鈍らされておる。又これらの犯行者の責任観念が極めて乏しいことなどを挙げることができるのであります。誠に世は澆季であり、あたかも蒋介石政権の末期的樣相を呈しておると言わねばならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  一体これらの不正官僚によつて横領されたところの金はどんな性質のものであるか。言うまでもなくそれは国民の血と汗の結晶であり、差押え、競売はおろか、親子心中、首つりまでして搾り取られたところの血税であります。このような飽くことのない収奪をほしいままにする政府なればこそ、外国の手先となつて国際協定を軽々と破り、憲法を全く無視して国民を戰争に駆り立てることができるのである。こうした不道義な政府が不正のすべての根源であるということができます。いわば官公吏の不正は、道義的に腐敗しきつた、植民地的、フアシズム的権力政治機構の中に咲いた惡の花であると思うかどうか。不正が職場で常に陰蔽され、公正な指彈にさらされないのも当然であると言わなければならない。私は吉田総理並びに大橋法務総裁、池田蔵相に質したい。これらの不正は今後どのように処置し、裁くのであるか。裁くとしても果して政府にその資格があるかどうか。(拍手)むしろこの際、潔く内閣を投げ出して、国民にその罪を謝すべきであろうと思うが、その勇気があるかどうか伺いた、国民の眼は今ひとしくこの問題に向けられておるのである。返答次第では、納税に大きな影響があると思うがどうか。  以上で質問を終りますが、要するにこの補正予算は、日本を急角度にアジア大陸から切り離し、一国の財政経済を挙げて反共侵略の戰争準備に投入せんとするところの亡国的予算であります。併し前にも述べたように、いわゆる自由主義国と共産主義国との共存の可能につきましては、日本の心ある良識が、大衆がこれを信じて疑わないところである。然るに吉田内閣は反共鎖国のイデオロギーを固持して飽くまでこれと心中せんとしておる。心中するのは勝手であろうけれども、そのために国民大衆を道連れにすることは真つぴら御免であります。(「議長、時間時間」と呼ぶ者あり)我々は歴史の歯車を逆に廻そうとする、このような老ドン・キホーテに殉死せねばならぬ義理は少しもない。まして、そのために組まれたこのような予算については、国を愛するすべての国民と共に我々は徹底的に鬪わなければならないのであります。(拍手、「つまらないこと言うなよ」「答弁の要なし、答弁の要なし」「答弁無用」「何言うか、ふざけるな」「答弁するような話じやない」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな問題が挙げられましたが、特にお答えしなければならぬものは、一番おしまいの不正事件のようでございますので、これを先ずお答えいたします。  政府資金の使用につきましては、大蔵省といたしましては極力注意をいたしておるのであります。先般公共事業費その他の使い方につきまして、閣議で私はその不正の事項を挙げて反省を求めたのであります。而して最近に至りまして、今度は公共事業以外の各省の経費の使用につきまして調査を進めましたところ、先般或る新聞に載つてつたような状況でございます。これは誠にお話通りに遺憾なことでございまして、大蔵省といたしましては、会計検査院と連絡し、とにかく各省にも話をいたしまして極力これが防止に努めておるのであります。ここで言いわけをしては誠に恐縮でございますが、大蔵大臣の所が、一番たくさん不正があるのじやないかという御質問でありますが、一番少い。ただ何故ああいう件数が出ますかというと、予算上、大蔵省はほかの省の分を大蔵省はたくさん引受けておるのであります。あの件数は予算による分の件数でございまして、他の会計の分が皆大蔵省に来ているから多くなつている。これは言いわけでございますが、とにかくいずれにいたしましても、政府資金の使用につきましては従来も注意をいたしておりますし、今後も極力注意をいたしたいと思います。併し或る不心得者がそういうことをしたからといつて、内閣が投げ出さなければならんというふうには考えておりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)  それから逆になつて参りまするが、減税をしても生活水準はよくならんじやないか。こういう話でございますが、これは木村さんの御質問もありましたが、いつも言つておることで強いて答えなかつたのでありますが、物価上つたが、賃金も上つたことを認めますでしよう。こういうことを考えて今度の減税で相当負担は軽くなるのであります。疑わしくは数字であとから説明いたします。併し私がアメリカから帰つて千何億の増税だというようなことを言つたことはございません。よく岩間君は、ああいう事実のないことを前提となさいますが、今後はそのようなことのないように願いたいと思います。(「事実だ」と呼ぶ者あり)  なお、今回の予算朝鮮事変関係があるかということでありますが、今回の予算を作ります場合には、朝鮮事変日本経済界がよくなつて来まして自然増収が出ましたから、そういう実質的には関係がございますが、朝鮮事変に突入するような予算は一つもございません。若しあつたら指摘して頂きたい。  日本経済の現状は先ほど申上げた通りでありますが、私が天皇にお会いして財政経済の話を言上申上げることは大蔵大臣の責任であります。数回やつております。当然のことだと思います。  なお、再軍備の七万五千人を非常に心配されておるようでございますが、これは再軍備ではございませんで、七万五千は、これは警察予備隊でございまして、我が国の治安を確保するためには、まだまだこれだけの経費じや足らん。みんな国民大多数が警察予備隊の強化を願つておるのであります。これに反対するものは共産党とその一部のものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)中共貿易につきましてはたびたび答えておりますので、速記録を御覧願います。(拍手)    〔国務大臣高橋龍太郎君登壇拍手
  24. 高橋龍太郎

    国務大臣(高橋龍太郎君) 中共貿易は、この間の本会議でもお答えいたしましたが、日本政府は国連協力を基本方針としておるのでありますから、その範囲内で行われることでなければいけないわけであります。(「具体的に言つて下さい」「それでいいよ」と呼ぶ者あり)私はそういう範囲内で(「やるのですか、やらんのですか」と呼ぶ者あり)やつておるんです。(笑声、「勝手にさせるのですか」と呼ぶ者あり)今発言中であります。(「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)この実際に、以前に行われておりましたような鉄鉱石、粘結炭、塩等とのバーターで日本から戰略物資以外のものが行くことは、私は歓迎しておるのでありますが、事実は一向進んでおりません。それには一つ障害があるのは、昨年まではですね、日本のほうが輸入先行式をとつてつたのです。バーターでも、日本に品物が入つて、それから日本から送る。併し最近夏頃からは、中共のほうから輸入先行式を主張しておるそうであります、民間で聞きますのに……。そういうことでは余り発展の見込はないと思います。(「それで日本が持てますか」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  25. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 大体先ほど大蔵大臣が御答弁を申上げたところで盡きております。私は附加えることはございません。(拍手、「答弁するようなことはないよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  26. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 官房におきまして不正事件の起りますることは誠に遺憾でございまするが、検察当局といたしましては、官紀の一段の粛正を図りますために、この種の事件については仮借なく徹底的に検挙を行いつつある次第でありまして、その効果は見るべきものがあると思つております。(「もとを正せ」と呼ぶ者あり)  次に、政府は警察国家の再現を企らんでおるのではないかという御質問がございましたが、民主主義及び憲法政治に対する暴力主義的な破壞活動に対しまして、政府として必要なる防禦方法を講じますることは、破壞者とその手先どもが如何に反対をせられましようとも、法治国として当然の措置であると考えております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)併しながらこの破壞に対する防禦方法は、単なる国家権力の強大化であつてはならないというのが私の考えであります。即ちこれらの措置は、当然、集会、結社、表現の自由等、憲法上の基本的権利の制限を伴うことを免かれないのでありまするが、これらの基本的権利は憲法の基本原理でありまする民主主義の基礎をなすものでありまするから、これを尊重いたしますることは民主主義の最大の要請でありまして、公共の福祉を守るための制限は常に厳格に必要なる最小限度にとどめるべきであり、このことは、法規の内容においても、行政機関の組織の上からも、保障されるようにしなければならないと存じております。鉄のカーテンの彼方におきましては、個人の権利と自由とを無視いたしました警察国家が支配いたし、国民を重苦しく彈圧いたしておるのでありまするが、かくのごとき暗黒政治は、この国においては断じて許さるべきではないと考えております。(「その通り」「民主主義が赤面しているよ」「どうした、手先」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  27. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 総理大臣もしばしば言つておられますように、民主主義の後退逆転を来たすことのないように万全を期すると言われるその線に沿うて、労働法をあなた方の言われるように反動的に改正しようという意思は毛頭ございません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手
  28. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣答弁は他日に留保せられました。  これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣演説に対する質疑は終了いたしたものと認めます。  次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、派遣議員変更の件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)