運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-10-22 第12回国会 参議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十二日(月曜日)    午前十時十一分開議     —————————————  議事日程 第七号   昭和二十六年十月二十二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     —————————————
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第二日)  去る十九日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。波多野鼎君。    〔波多野鼎登壇拍手
  4. 波多野鼎

    波多野鼎君 私は社会党を代表いたしまして、過般の大蔵大臣財政演説に対する質問を行おうとするのであります。大蔵大臣はしばしば十八カ月予算を組むということを公言いたしておりましたけれども、今度提出された補正予算につきして、ただ今年度補正だけを考えまして、財政演説におきましても十八カ月予算構想については一言も触れなかつたのであります。この十八カ月予算を組まなければならんと大蔵大臣曾つてしばしば公言いたしましたその趣旨を我々が考えますと、講話後における日本経済に非常に重大な問題がたくさんあるということを大蔵大臣も自覚しております。その重大問題に対しまして、一応政府方針を明らかにする機会を得たいという意味において、十八カ月予算を組むということを言つてつたと思います。然るに今回はその点に触れなかつた。これは甚だ我々の遺憾とするところであります。なお政府は、一方においては口を開けば講和後の日本経済の容易ならざることを説いております。然るに補正予算の説明を聞いておりますと、正にエデンの園にあるかのごとく、非常な楽観的な演説大蔵大臣はやつております。そういう、一方においては苦難の途であると言いながら、他方においては非常に楽観的であるということを言われますために、国民がこのことから受ける印象は甚だ複雑なものがあります。そして結局において、今後の日本経済はどうなるであろうかという不安の念をますます深刻にするばかりであります。私はこの国民の不安の念を代表いたしまして、政府に若干の質問をし、明確な答弁を得まして、国民不安心理を拭い去るように努力いたしたいと思うのであります。私の質問時間は制限されております。併し政府答弁時間は制限されておらない。でありますから、政府は十分私の質問に答え、国民に対して答える意味においてお答えを願いたいと思う。  御承知よう我が国経済は甚だ貧弱であります。国民各自が手から口ヘのその日暮しの生活をしておると同じように、国民経済自体も底が浅い、奥行かないということがしばしば言われておるように、やつと危い綱を渡りながら国民経済が維持されておる状態なのであります。従つて僅かの風波でも大きな波が立つ。世界情勢に起る僅かな変化でも、日本経済に対しては大きな波紋を描くのであります。雨が少し降らなかつたからというて、すぐ電力不足する、生産が二、三割もがた落ちすると、そういつたような非常に基礎の弱い経済であります。従いまして、今後起る世界情勢、こういうものを一方において考えますと、日本経済はこの影響を受けてインフレーシヨン的な傾向を示すのではないかという声が非常に強い。先ずこの問題から大蔵大臣質問をいたします。  明年度以降におきまして不生産的な支出が厖大な額に達するということは当然予想されております。警察予備隊費国家地方警察費、或いは海上保安庁といつたよう経費が本年から継続いたしまして、更に増大するらしい傾向が見えておる。その上に、日米共同防衛分担金だとか、外債の元利の支拂であるとか、連合国財産の返還だとか、対日援助費の返済であるとか、或いは在外資産に対する国内補償の問題だとか、その上に又賠償の問題だとか、すべて不生産的な経費が増大する見通しが立てられておる。ところが、他方国内生産はどうだ。これは国内における生産的資金の蓄積が少く、これを補うて生産を増強し、インフレーシヨンを抑制する方法といたしまして、政府はしばしば外資導入ということを論じて参りました。併し今日に至るまで、小規模の外資は入つておるようでありますけれども、日本経済基礎を培うような大きな外資導入は行われておりません。サンフランシスコ会議に出席いたしました大蔵大臣みやげとして国民が期待しておつたものは、この外賓の問題であつたと思う。このみやげがなかつた。で、私はこの外資導入見通しについて大蔵大臣に伺いたい。同時に外資導入の障害となつておる理由は一体何であるかということについてもお伺いしたいのであります。  次に国際政治情勢、国際的な物価情勢、こういうものは著しく不安定な樣相を呈しておることは御承知通りである。世界的な軍備拡張運動が精力的に推し進められておる。物価に及ぼす影響は甚大なものがあります。抵抗力の弱い日本経済が受ける影響は更に激しいものがあるのです。現に国際物価値上りよりも国内物価値上りが非常に大きく上廻つておるという事実がこれを示しておる。そこで私が聞きたいのは、この国際経済から受ける影響をできるだけ緩和して国内物価の安定を図る何らかの方策を考えておるかという点であります。大蔵大臣は三百六十円レートを堅持した上で、国際物価に鞘寄せして行くと、国際物価の波動に身を任せるというだけで能事了れりと考えておるかどうか。これを承わりたい。  又インフレ抑制策といたしまして政府がとつて来た政策は、金融政策一本であつたのであります。物価を直接統制することをやめ、商品流通を規正することをやめ、金融統制一本に頼つて物価を安定させようとして参つた。併しながらこの政策も今や限界点に来ておると思う。インフレ抑制のためには、御承知ように、生産流通貿易価格金融、全面に亘つての計画的な施策がなされなければならないことは明白なのである。他の部面を無計画に、自由に放任しておいて、金融一本で引締めて行くということは不可能であります。このことはすでに現われておる。例えば日銀ユーザンスの問題を見て御覧なさい。何度もこれを延長延長を重ねて来たではないか。即ち信用インフレーシヨンの道を歩かざるを得なかつた。而も、今年の年末の日銀通貨発行高は五千億を突破すると予想されておる。金融政策一本でインフレーシヨン的な傾向を抑えようとする政策は、このように明白に破綻を来たして、そうしてインフレーシヨンを現出させることになつておるのであります。で、私は、政府が果して今後も金融政策だけで以てインフレ抑制効果を挙げ得ると信じておるのか、この点をはつきりと承わつておきたいと思います。  なお、特需の問題についてこの際一言したい。特需、これを以て日本経済の救いの神であるかのごとく信じて、これを無條件に歓迎する風があることは、私としては非常に警戒すべきことであると信ずるのであります。特需日本経済にとつてプラスとなるのは、原料輸入が円滑に行われ、動力が豊富であるということが前提になる。この前提が欠けておるときには特需は一種の飢餓輸出であります。そうしてインフレーシヨンに拍車をかける要因となるのであります。で、特需に応ずるためには、貿易、殊に原料輸入、それから国内の需要とのバランスを考えて行かなければならない。政府は果して如何なる方針において、又如何なる機構によつて特需を受ける業界を指導しておるのか。通産大臣の明確な答弁を要求いたします。  次に生計費の問題であります。朝鮮動乱以来本年八月までの物価値上りは五〇%に達しております。即ち日銀卸売物価指数を見ますと、昭和二十五年六月を一〇〇といたしまして、二十六年八月までは五一%の騰貴であります。これが五〇%見当騰貴にとどまつたのはいろいろな理由がある。一つはこの間の値上りの中心は生産財であつた消費財値上りは少かつた。第二は、特に主食が僅かに上つたに過ぎないということ。第三には、電気ガス運賃郵便等価格が固定されておつた。この価格を上げなかつたということが大きな理由であります。かように、即ち消費財値上りが抑えられておつたから一般物価水準は五〇%の値上りにとどまり得た。然るに、今政府主食統制を外して、その値上りを引き起そうとしております。政府自由販売にしたほうが、統制のときよりも中間経費が安くなるから、主食値上りせぬと強弁いたしておりますけれども、主食の絶対量の不足は嚴たる事実であります、流通過程却つて混乱をします。そのためから生ずる流通費用、これの減少ということは大きく期待はできないと思います。それ故に、現に主食統制撤廃の声があがつてから消費者の不安は非常に深刻なものがあることは、政府といえども知つておるはずだと思う。それに更に電気料金その他の公課を軒並みに引上げようといたしております。生計費の膨脹は如何にしても蔽うことはできない。  飜つて勤労者の収入のほうを見てみましよう朝鮮動乱以来僅かに一八%の増加に過ぎません、一般物価は五〇%上つたのに、收入は僅かに一八%上つただけであります。生活水準の低下は必至の結果であります。而も従業員五百人以下の中小企業を見てみますと、これは金融苦難に喘ぎ、大企業圧迫の下に苦しんでおる関係上、中小企業賃金平均賃金に達しておりません。ただ特需産業賃金のみが平均賃金を超えておるに過ぎないのであります。即ち低賃金の事実は明白であります。更にそれに加えて、政府が低賃金政策を今後も途行して行こうという意図は明白に現われておる。それは官公吏給與引上げ問題に対する態度を見ればわかる。官公吏給與引上げをすると補正予算に出しておりますけれども、その金額は人事院勧告の線にすら達していない状態なんである。かかる政策をとりながら、一方においてはソシアル・ダンピング非難を如何にして防ぐことができるでありましようか。総理大臣は、ソシアル・ダンピング非難を受けぬように万全の策を講じなきやならんということをサンフランシスコでも語つており、本会議でも語つておりました。而も、このよう政策をとりながら、どうしてソシアル・ダンピング非難を回避することができるでありましようか。そういう方法があるならば、私は、ここではつきりと示して頂きたいと思うのであります。  更に、大蔵大臣補正予算で四百億円の減税を説いております。減税という声を聞きますと、これは生活上の負担が軽くなると想像するのは常識であります。併し、生活上の負担は四百億円の減税を以てしては軽くならない。負担が軽くなるような幻想を與えておるだけであります。(拍手)なぜならば電気ガス運賃その他を一齊に引上げる、値上げをする。これから来る圧迫減税による負担減を覆して余りがある。我々の調査したところの一端を申述べましよう。一例を挙げて見ますと、月収一万五千円、四人家族を取つて見ますと、減税による負担の減は四七%であります。他方電気ガス等公課引上げによる負担増加も同じく四・七%であります。何ら事実上の減税にはなりません。その上に、主食値上りがありますれば事実上の増税となるのであります。(拍手)更に減税効果を受け得ない広汎な貧民階級がある。この人たちにとつては、公課類引上げだけが負担増となつて、そのまま現われて来る。かくて高額所得者にとりましては減税意味があるかも知れませんけれども、少額所得者貧困者失業者にとつては、減税どころか、事実上の増税であります。かくても大蔵大臣は、なお、減税を誇る勇気がありましようか。安定の予算であるということを自画自讃するだけの大胆さを持つておるのでありましようか。  次に国民の大半を占めておる農家経済のことをとつて考えてみましよう農家経済の安定の見通しが立つておりましようか。農家租税公課負担は、今日におきましては農地改革前の小作料とほぼ匹敵する高さにまで上つております。他方において化学肥料価格、これは独占的に定められておる。農産物価格よりも早い速度で高騰し続けております。農家は安く売り高く買うという境地から、いつまでも脱却し得ない袋小路に追い詰められておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)試みに農村物価総合指数の推移を見てみましよう昭和二十五年八月を一〇〇といたしまして、本年四月は農産物指数は一〇六・二%、農業用品指数は一四〇・六%となつております。即ち朝鮮動乱以来、農家が売るものは六・二%上つたに過ぎないのに、農家が買わなきやならない肥料その他の生産財価格は四〇・六%も上つておる。これで農家経済が安定するということは絶対にあり得ない。而も輸入食糧価格変動常ない現状であります。輸入食糧価格が上ればこれを抑えて行く。世界価格が下つて参りますれば農産物過剰恐慌の恐怖に農家は襲われておる。脅かされておる。どちらに転んでも農家の不安は絶えないのであります。この不安を取除くためには、むしろ統制合理化して、二重価格制度により、一方においては農家生産費を償う価格を維持すると共に、他方においては消費者に安い食糧を供給する方途を講ずべきであると思う。勿論このためには相当の財政資金が必要であることは言うまでもない。併しながら国民経済の基本を安定せしめるものでありますから、財政資金は惜しみなく支出するのが当然である。而もこれこそは日本国憲法精神に合致する政策であると信ずる。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)徒らに財政の緊縮を唱え、安い政治を唱えて、国民の過半を占める農村消費者大衆生活不安を顧みないというがごときことは、まさに一文惜しみの百失いの政治と言わなくちやならん。(拍手)然るに政府は今主食統制合理化を考えないで、一挙にしてこれを廃止せんとしておる。廃止せねばならん積極的な理由が一体どこにあるか。(「至るところにある」と呼ぶ者あり)ただ行政費の節約だとか、役人の首切りぐらいのことだけじやないか。主食統制廃止農村安定、国民生活安定のためによいと言う、そのほうがいいと言う理由曾つて聞いたことがない。中間経費が安くなると言う。併しこれは統制方式の不合理な点があるから高いかも知れないから、これは安くできる、合理化によつて……。(「その通り」と呼ぶ者あり)自由経済時代中間経費はただ一割であつたと言いますけれども、今日、人件費が高くなつておる。運賃を又引上げようとしておる。自由な商人に任してみたところで、中間経費はそれほど安くなる見通しは全然立たない。(「あるある」「ないない」と呼ぶ者あり)私は農林大臣に対して、廃止しなければならん積極的な理由はどこにあるかを聞きたい。更に又なぜ急いで突如としてこういうことをやらなくちやならんのか、その理由、この二つを明確にして頂きたいと思う。  主食統制を廃止すれば、恐らく生産流通も混乱するのでありましよう。これによつて利益を受ける者は、闇米のみを食べておつた人間か、富める農家か、趣く僅かの富農か、更に又肥料商米屋、そういう商業資本家か、これ以外に利益を受ける者は一人もない。(拍手)これによつて不利益を受ける者は貧農であります。一般消費者であり、労務者である。不利益を受ける者はこういうふうにはつきりしておる。利益を受ける者ははつきりしておる。賛成か反対かの、どちらの態度をとるかもはつきり出て来ると思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)その結果するところは、かように明白であります。而も統制撤廃基礎準備として政府がやつていることは片端から覆えされている。事実上覆えされつつある。例えば年間三百万トンの輸入計画を立てておると言つておるが、ドル不足が深刻になりつつあるこの現状において、年に三億五千万ドルの外貨を食糧輸入にそのまま振り向けることが可能であるかどうか。非常な大きな疑問となつて来ておる。又第二にアメリカの海運統制が強化されつつあることは政府諸公も知つておるだろうと思う。運んで来ようがなくなるのである。又東南アジアから百万トンの米を輸入するということが前提として考えられておつたようだが、これも失敗に終つたことは、はつきりわかつておるじやないか。主食統制撤廃基礎的な條件片端から困難になりつつある、こわれつつある。急いでやることは絶対にできない。然るにかかわらずなお急ぐ理由を我々は明確にして頂かなければならんと思うのであります。  なお、この点に関連してもう一つ聞きたいのは、主食統制廃止生活不安を起す、生産者消費者双方商業資本の餌食にしてしまう政策であるということから、反対の声が高いのに対して、国会でこれが否決されるようなことがあれば、ポツダム政令ででもやるというようなことを政府の一部の者が言つております。(「とんでもない」と呼ぶ者あり)誠に奇態な威嚇であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)ポツダム政令は今整理段階に入つておるじやないか。政府自身ポツダム政令整理の機関を設けてやつておるじやないか。ポツダム政令中存続すべきものは法律として国会の議決を経たいと準備しておるじやないか。そのときに新たにポツダム政令を出すなんというようなことは、これは非常識極まることであります。(「フアツシヨだ」と呼ぶ者あり)政治的な感覚の全然ないことを示すものである。(「その通り」「ノーノー」と呼ぶ者あり)更に又吉田首相は、サンフランシスコ会議において何をして来たか。すでに日本独立国となつているかのごとくに行動して来た。即ち日米安全保障條約に調印して帰つたということは、日本独立国であることを実証して来たんじやないか。独立国でなかつたら、あの調印はできなかつたはずだ。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)ところがその吉田首相が率いる内閣が、今になつてポツダム政令によつてやりますと、一体どういうことなんだ、これは……。(「精神分裂」「御都合主義だ」「しつかりやつてくれよ」と呼ぶ者あり)私はポツダム政令によつて主食統制廃止をやることはないという、明確な明言を政府側から要求するものであります。(「当然だ」「ノーノー」と呼ぶ者あり)  次に工業生産の問題。  工業生産はすでに頭打ちの状態に入つた昭和四——九年を一〇〇とする生産指数を見ますと、二十六年、今年の六月一四一・八、今年の七月一四一・九と、すでに足踏み状態に入つてつたのが、今年の八月には一三八に下降しておる。主要な原因は何度も言う電力不足であります。而も本格的な渇水期を目前に控え、電力供給増加見通しが立ちがたいといたしますれば、而も加うるに原料生産財輸入も次第に困難な状況になつておることを考えますれば、工業生産増加は期待しがたい。大蔵大臣の言うよう日本経済の発展の見通しがあるというようなことは、どこを押せば出て来るのか。私はその根拠を示して頂きたいと思う。又日本商品価格世界価格に比較して割高であるということは、これは明白な事実なんだ。どなたも御承知通りなんだ。で、このコスト引下げをやるために、それならば設備近代化をやるというような道を歩いておるかというと、それは歩かないと言う。設備近代化資金は抑えてしまうと言う。それならどうしてこのコストの割高を訂正して行こうとするのか。自由党が窮余の策として考えておることは、労働強化であります。労働強化であると考えるほかない。現に労働三法改惡企図がなされておる。これは世界市場におけるコスト高労働強化によつて引下げて行く。設備近代化という進歩的な方法をとらないで、労働三法改惡という反動的な方法によつてコスト高引下げようという、この企図であるとしか考えられない。労働大臣に対してその点の明確な答弁を求めます。  外国貿易の問題。国内生産がすでに頭打の状態にあることは、先ほど明白にいたしました。然るに我が国国際收支は非常に改善されたと申しまして、大蔵大臣は誇つておりますけれども、これは改善の意味ではない。実は手持ポンドが使い切れないのです。日英通商協定を結んだときの政府内の不統一、その不手際のためにドル條項が廃止されて、そしてボンドをうんと抱えさせられてしまつた。そのポンドドルに替らない。而もボンドでは原料は手に入らないのです。で、原料輸入もできない非常に困難な状態に落ちております。そこで外国貿易は、この点から見ると萎縮傾向を迫るというふうにしか考えられない。で、私は大蔵大臣に対して次の点を明確にして頂きたいと思う。即ち一つは、手持ボンドドルに切替えるためのいわゆる行政的振替については如何なる措置を講じつつあるのか。それから第二は、手持ボンドを以て原料輸入見通しが立つておるかどうかということ。この二点を明らかにして頂かなければ、外国貿易が今後萎縮段階に入つて行くという我々の結論を覆えすことはできないと私は思う。  更に次に三百六十円の為替レートの問題であります。三百六十円を堅持して行くという固い決意大蔵大臣は本議場でも声明された。その決意はよくわかる。よくわかりますが、決意だけでは維持はできない。維持するためには維持し得るよう措置を講じなければならない。それが政治であります。ところが現状を見てみますと、現に日米購買力平価から見ました円の実勢は一ドル五百円を超えております。恐らく五百二十円見当ではないかと思います。三百六十円じやない。これを三百六十円の実勢に引戻すためには円の購買力を高めなければならない。即ちこれは物価引下げなければならんということなんです。然るに政府は何をやつておるか。物価引上げ政策ばかりやつている。(「社会党ほどではない」と呼ぶ者あり)かような三百六十円のレートを維持するために必要な物価引下げ政策をとらないで、物価引上げ政策をやりながら、三百六十円を堅持するという決意を表明したつて、誰も信用はしない。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)かような矛盾した政策をとつて而も三百六十円が維持できる方法を後学のために承わつておきたいと思う。(拍手)  又国際通貨基金に入るための出資金予算に計上しておられます。国際通貨基金にいつ入れるか。これも私どもは聞きたい点なんだが、ここではつきりして頂きたいのは、三百六十円レートを以て国際通貨基金に入ることが可能かどうかということ、その見通しを聞きたい。恐らく世界の具眼の士は日米購買力平価からいう為替レートが五百円を超えているという事実を知つております。その事実を知つておりながら三百六十円レート国際通貨基金に加入することを承知するはずはなやと私は思う。若し三百六十円レートで加入することを承知するならば、その條件として日本物価引下げ政策をとれということを言うたに違いないと思う。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私はこの点についても大蔵大臣見通しはつきり聞いておきたいと思うのであります。  私の質問は以上を以て終ります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。(「できるか」と呼ぶ者あり)従来十五カ月予算というので、昨年も一昨年も補正予算を編成いたしました。而して補正予算の場合におきましては、やはりその翌年度見通し言つてつたのであります。今回の予算につきまして、十五カ月予算でなしに十八カ月予算になつたが、来年度構想はどうかという御質問があらと思いましたので、私は財政演説におきまして、今年七千九百三十六億円でございまするが、来年度は、平和條約に伴いまするいろんな出費を予想いたしましても、今年度補正後の予算と大差のない予算が作り得る見通しがあるのであります。従つて十八カ月予算を考えてやつているのであります。然らば来年度の正確な予算総額は幾つになるかということになりますると、私は八千億台、而も八千億を余り超えないつもりでいるのであります。じやその内容を示せと言われるでございましよう。(「できんぞ」と呼ぶ者あり)併し内容は、これは経費の、安全保障……(「嘘ばかり」と呼ぶ者あり)経費分担幾らになるか、或いは警察予備隊幾らになるか。(発言する者多し、「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)それから外債の支拂、賠償等、非常な不確定のものがございまするから、全体を合せて総額は申上げ得まするが、個々の分について、賠償をどれだけ拂うとか、分担金がどれだけかということは言えない。(発言する者多し)それは今後の情勢によつてきまるのであります。(「根拠がないじやないか」と呼ぶ者あり)国民の知りたいところは、国民の知りたいところは、今年度予算は八千億円で止まつたが、来年度は平和その他によつて非常な金額が殖えるのではないかという御心配がありますので、八千億円をそう上廻らない。(「根拠は」と呼ぶ者あり)而してその内容につきましては、未確定のものがあるから、個々の費目について申上げられません。然らば新聞にもありましたように、公共事業費はどうなるか、社会保障的の費用はどうなるかという問題になりますと、こういう既定のものにつきましては、私は殖やすとも減らさぬ予定で行つているのであります。ただ内容はつきり申上げられないのは、分担金の問題、警察予備隊の問題、外債の支拂の問題、賠償の問題があるから、個々の問題は申上げませんが、大体私の想像では八千億円程度で行けると思う。次に問題は、八千億円余りの問題を出しますときに、今年は四百五億の減税ができたが、来年はどうか、こういうお話がありますので、これ又財政演説で、四百五億円の今年度減税をそのまま来年度も行うつもりであります。そうすると所得税において千億円の減税になる。法人税その他の引上げがありますので、差引八百億円の国民負担が軽くなる。こういうことを言つておるのであります。(「殖える」と呼ぶ者あり)而して非常に楽観的だと言われておりまするが、楽観的ではございません。事実を事実として言つているのであります。(「だますな」「でたらめだ」「默つて聞け」と呼ぶ者あり)  次に外資導入見通しについての御質問でございます。これは丁度国内的にも、金を借りようと言つたつて信用がなければ金は借りられない。(「吉田内閣不信任だよ」と呼ぶ者あり)波多野さんでもそれはよくおわかりと思います。殊に国際的に見まして、自分が借りたいからと言つても、こちらの信用がなければならん。又その点につきましては、国際通貨基金への加入等の問題があります。従つてそのときを考える。そうして又一方から、それなら金を貸そうと言つても、今ドルをアメリカから借りて来て、そのドルをどういたしますか。(「そんなことはわかつている」と呼ぶ者あり)そこで国内生産を殖やしながら、国内生産を殖やしながら、それによつて輸出の落ちたところを補うための外資導入が先決であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)今水力電気を起そうと言つても、二億ドル得ましても、セメントがない、鉄がない。そこで、こちらの力でセメントや鉄を増産し、銅をこしらえて、そのことによつて外国への輸出が不足になつてドルが少くなつたところを外資導入で補う。私はその意味において安定と能率と生産拡大を言つているのであります。これが外資導入の先決の問題であります。(「何を言つているか」と呼ぶ者あり)従つて外資導入見通しについては、これらの生産がだんだん殖えて行き、信用をますます強め、そうして国際基金への加入ができましたら、相当期待し得ると思うのであります。(「そうなつたら要らないじやないか」「要らん」「やかましいな」「黙れ」と呼ぶ者あり)  次に国際物価との関連で、いろんな説がございましたが、私は今の日本状態で、生産財が一時五割の上り方をしておりますが、消費財のほうはそう上つておりません。二割五分程度であります。而して国際物価との関係で、問題は日本の輸出ができるかできないかという問題、日本の輸出の状況を申しますと、非常に伸びております。財政演説で申上げましたように、日本の輸出貿易は相当伸びて行つておる。もうガリオアの援助がなくとも日本はやつて行ける程度に相成つたのであります。そこで数字に亘りますが申上げますと、昭和二十一年度におきましては、(「読み違えるな」と呼ぶ者あり)昭和二十一年度におきましては、ガリオアを含めますと一億八千六百万ドル輸入超過、二十二年度においては四億九千七百万ドル輸入超過、二十三年度においては三億八千六百万ドルの支拂超過であります。二十四年度は三億四千万ドル、二十五年度にはそれが六千七百万ドルに減り、今年度は(「物価がどうなつているんだ」と呼ぶ者あり)一億二百万ドルの受取超過になるのであります。(「でたらめを言うな」と呼ぶ者あり)逆転して参ります。これは輸出入ともに殖えて来ているのであります。昨年度の輸出に比べまして、昨年度は輸出が十億ございましたが、今年度は十六億になる見込であります。これに貿易外の收入を入れますというと、外貨の受取は二十一億四千万ドル輸入も昨年度より非常に殖えて参りました。輸入につきましても、昨年度は十一億ドルであつた輸入が、今年は十八億一千万ドル輸入を予定しております。これで支拂が十九億七千万ドルになりまして、初めて一億七千四百万ドルの外貨の受取超過、ドル不足とおつしやつておりますが、そうドルは今のところ不足していないのであります。この点はよく新聞には、ドル不足ドル不足、こう言つておりますが、それはお金が多いに越したことはございませんが、こういうふうに殖えて行つておる。貿易量が絶対額が殖えるからドルは多いに越したことはありません。併し不足で困るという状態でないということを前提としてお考え願いたいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  金融政策はでたらめでインフレの防止ができない、こういうお話でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)而もそれについてユーザンスの問題をお出しになつておる。我々はこのユーザンスにつきましても、乙種ユーザンスは貿易手形に切替えまして、そうして金融統制と申しますか、調整をやつて行こうとしておる。そのユーザンスも一時は二千七八百億円であつたのが、只今千三百億円ぐらいに減つております。で、我々は、財政は均衡を保ち、金融もできるだけ実情に副うようにして、要らないところには金を使わないように、有効のところに使おうとしておるのであります。決して金融政策はでたらめではございません。(拍手)  次に国民負担は少くなつたか。減税によつて少くなつたか。——数字を言つておられるようでございましたが、これは御検討を願います。委員会で私からも出しますが、例としてお挙げになりました一万五千の月給取りの、今まで一方五千円の俸給所得者で、夫婦に子供二人、即ち四人家族の所では一月に千四百十七円の負担であつたのが、今度は七百一円減つて参りまして七百十六円になるのであります。半分になります。従いまして主食が二・五%、或いは電気料金が〇・四%、これは電気料金は三割一分五厘上りましても、その生計費に及ぼすのは〇・四%でございます。ガス料金、水道料金、交通費、通信費、食塩の値上げ等を見ましても、これに要する一月の出費は五百二十七円でございまして、月に百七十四円のいわゆる減税によりまして支出が激つて来るのであります。(拍手)この数字は後ほど御覧に入れることにいたします。  又農民の負担をとやかく言つておられますが、税に関する限りは、一昨年度農家の納めました所得税は四百数十億円であつたのが、私は今年度は百三十億円ぐらいで済むのじやないかと思います。(「納められぬ」と呼ぶ者あり)三分の一ぐらいになつておる。而も農家は今回の減税によりまして十五万円の所得者は半分以下に税金がなります。これは計算なすつたらおわかりになると思いますが、農民のかたがたの租税負担は最近二カ年間は非常な減を示しておるのであります。而して米を安くするから安い政策、安い政治をやつておる、こう言われますが、米もバリテイによりまして、算出に或る程度の加算を認めておるのであります。あなた方のように米をどんどん上げろと言つたら、これは物価がインフレになるから、引上げ方を適度に考えなければならんのであります。  次に為替の問題について言つておられましたが、ボンドが殖えましたが、これは季節的関係もあるのであります。十二月ごろから来年の三月ごろまでに濠州の羊毛をどんどん買い入れたならば相当減つて来ると思います。併しお話のように、今度は割に殖える傾向があります。そこで、我々は日英協定にありますように、できるだけ行政振替をして原材料を輸入いたそうとしておるのであります。殊にお話のポンドでの輸入見込はどうか。——極力ボンド地域から原材料を輸入して、そうして二、三年先に起るドル不足の緩和に充てたいと、こう考えておるのであります。  為替相場の問題につきまして議論がございましたが、要は、日本経済が伸びて、而も国際貸借から言つて黒字になつておる時に、円を引下げようなんということは、これこそ経済の理論にも実際にも合わないのであります。(「できるかということだよ」「明快」「明快じやない」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣高橋龍太郎君登壇拍手
  6. 高橋龍太郎

    国務大臣(高橋龍太郎君) お答えいたします。只今波多野君の、特需が却つて飢餓輸出になつて日本経済にマイナスになる腐れがないかという御質問でありまして、私も傾聴いたしました。私自身もそういうことになる慮れがあると思います。これは、そういうことになつては大変でありますので、只今波多野君のお言葉のうちにもありましたように、動力源の開発もありますが、第一に、必要な原材料が十分に輸入されることが第一條件だと思うのでありますが、そのほうはこの緊急物資特別会計などで極力努めております。只今の現状では大体そう憂慮すべき状態ではないと考えております。(「米の輸入はどうした」「外米の輸入はどうした」と呼ぶ者あり)(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇拍手
  7. 根本龍太郎

    国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。先ず第一に、最近の農家租税公課負担は、農地改革前の小作料に等しい状況になつておるのではないか、こういうお尋ねでありますが、これにつきましては、只今大蔵大臣から御説明になりましたごとくに、事実に相違しておるのであります。試みに、戰前における小作料農家所得に対する割台は、農林統計の示すところによりますと一九・八%でございます。然るに、最近における農家所得に対する租税公課の比率は、二十四年度におきまして一五・九%、更に二十五年度になりますというと一〇・九%に減り、二十六年度におきましては一〇・四%になつておるのであります。而もこのうち国税である所得税につきまして見まするというと、二十四年度におきましては全所得に対して八・六%、二十五年度においては三・五%、二十六年度においては二・四%と減つているのでありまして、従前の小作料に比しまして現在すべての公課負担を合せましても著しく少くなつておる。これが事実でございます。  その次に、化学肥料が最近非常に値上りしつつあるということでありますが、これは事実でございます。これは最近における電力事情が著しく惡化したために生産量が低下したということと、更に国内需要、特に最近アジア各地方から日本に対する肥料輸入の要請が強いのでありまするが、これらのものが相からみまして、現在肥料が漸次高くなつて、いわば国際価格に鞘寄せされつつあることは事実であります。これに関連しまして波多野さんは、一方においてはバリテイ計算において農産物の価格が押えられておる。他方におきましては農村における生活並びに生産資材が漸次国際価格に鞘寄せされるから、いわゆる鋏状価格差が大きくなる。こういうような状況においては、農家の経営は不安定である。このような不安定をなくするためには、むしろ統制を若干合理化して、そうしてこれに対しましては二重価格制度を作るべきである。こういうお考えのようであります。ところが我々はこれに対しまして、二重価格制度は、いわゆる竹馬経済への逆行でございます。而もその二重価格制度によつて要する財政資金は、究極において国民の税金負担において賄わなければならない。こういう政策は我々はとりません。この意味におきましては、我々はむしろ農産物の価格が市場において正当なる価格を以て購われることにより、他の生産物資が自由市場において価格が規正されると同樣にするという立場が正しいと考えておるのであります。  その次に、主食統制を撤廃する何ら積極的理由がないのではないか。こういうことでありまするが、これにつきましては、我々は次のよう理由によりまして、統制の廃止は、農業生産増加し、消費者に対しては合理的な食生活を保障し、国民経済発展の基礎となるという考えを持つておるのであります。先ずここで前提として申上げたいことは、我々が主食統制を廃止すると申しましても、決して野放しの自由放任を意味するわけではございません。主食に関しましては、需給調整の措置を講じまして、生産者に対しましては、最低価格の保証によつて万一価格が暴落するような虞れがないようにいたしまして、生産の安定を保障しておるということが一つ前提である。又消費者につきましては、日本の絶対量の足らない今日、どうしても輸入食糧に待たなければなりません。而もこの輸入食糧の総量と、それの放出ということが、価格に及ぼすと共に、消費者に対して大きな影響を及ぼしまするので、この輸入食糧については現行通り政府が管理するという建前であります。そういたしまして国民が必要とする絶対量は輸入量と国内産を合せて十分確保する。そうして、これらの政府で持つておるところのものを適当なる時期に適当なる価格で放出することによつて、需給並びに価格を調整する。こういう前提に立つておるのであります。  この前提の下に、然らば生産者に如何なる利益が與えられるかと申しますと、先ほど波多野さんが御指摘のごとくに、完全なる統制下におきましては、常に米麦は低い価格に抑えられる傾向にあることは当然であります。併しこれが自由になりますと、この農村生産物の一番大宗をなす米麦が自由市場において需要供給の関係において正常に価格が裏付けされるのであります。この結果、農民所得が増大するということは当然考えられるのであります。農民の所得が殖えるということは農民の増産意欲を増すことであります。これによりまして、更に限界生産地が拡大されまして、農地造成の部面が殖えて参ります。この意味におきまして、統制解除によりまして増産を促進し、政府の増産政策と相待ちまして国内主食の自給度を高めるという利益は確かにあるのであります。その次には、我々はこの統制廃止と共に、現状におけるところの農業手形並びに農協に対する集荷資金を財政資金からこれを確保してやる、こういう前提になつておるのであります。これによりまして、従来農民は、自分の生産したところの生産物を市場において若し価格が決定される場合においても、非常にたくさんの人間が非常に弱体のままこれが生産されておるために、価格決定に対して何らの発言権がなかつたのでありますが、このように農業手形と協同組合による共同出荷並びに共販制度を確保するということができ得るようになりまするので、これによりまして価格決定に対し大きな発言権が與えられるということになるのであります。又同時にこれによりまして、社会党の諸君が曾つて唱えたような究極におきまして食糧の農民の組織体による民主的管理という形に移行し得ると我々は考えております。(「社会党に転向するか」と呼ぶ者あり)それと、農民は、現在の統制下におきましては、いわゆる自由なる処分権が認められておりません。非常な制約が加えられておるのであります。民主的社会におけるところの企業者というものは、自分の生産物について自由であるということがそもそもの原則であらねばなりません。この食管法は、いわば戦時中における総動員法の残滓を未だに残しておるのであります。これを廃止することによりまして、日本が民主的な自由国家として国際社会に復帰する場合、明るい農村に立ち帰らしめるという政治効果は十分にあるものと考えております。(拍手)更に統制を廃止するということになりますれば、究極において主食の売買はいわゆる銘柄取引になることは当然であります。銘柄取引になるということは必然的によい品物をたくさん作るという形になりまするので、品質の改善並びに増産の刺激になり、従つて農家の所得を増大するという利益はあると我々は考えております。  次に消費者について申上げますと、これは必要なとき必要な品質のものを自由に買い得るということは、国民消費者に対して明るい(「冗談言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)生活を保障するということになります。それから銘柄取引により品質の向上がなされまするので、質の確保とかそういう方面において非常な合理化がなされる、又自由な選択がなされるということも、これ又食生活合理化をもたらす、かように考えるわけであります。その次に、これは誰人も言うことでありまするが、現在においてやはり二合三勺の配給で足らないという観点から、事実、闇が行われております。従つて国民の大部分が常に違法行為をしておる。これは非常に暗い生活であります。これがなくなるということは、国民が常に遵法精神をそのまま実際にやりまして、生活に何らの支障を来たさないということは一つの明るい面であると考えるものであります。(拍手)  それから統制撤廃をすれば商業資本によつて農民と消費者が食われると、こういうようなお考えであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ちこれは一つ前提における誤まりがあると存じます。昔におきましては確かにこの商業資本というものがこの市場を荒らしておつたのでありまするが、このうち農村におきましては、厖大な土地を所有したところの地主が小作米をたくさん取つておりました。これと、自分の持つ不動産を担保とするところの金融によつて、出盛期において買い集めてこれを操作した。こういう事実。それから肥料商が大きな青田売買をやつたということも事実でありまするが、これは專門の波多野さんが御承知ように、農地改革の結果、大地主のこうしたところの操作ができなくなりました。又協同組合の整備された今日、肥料需給の面におきましていわゆる肥料商農村に対するところの影響は非常に少いのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)殆んど農業協同組合がこの肥料の販売の八割近くを占めておる。而もそういう農業協同組合は農民の団体である。こういう点から見まして肥料商並びに地主によるところの操作はございません。なお又商業資本と申しましても従来のように大きな米商人が存在しておりません。長年に亘るところの統制配給の結果、これらの人々は政府の配給米を実は若干の手数料を得て操作配給の任に当つておるに過ぎません。従いまして、先ほど申しましたように、農業協同組合に対する(「答弁くどいぞ」と呼ぶ者あり)集荷資金、これらのものを確保することによつて、現在統制を廃止することによつて商業資本による大きな投機は行われない。かように考えるものであります。従いまして、これによるところの貧農並びに消費者が非常に大きな搾取をされるということは考えていないのであります。  次に、然らば何故に統制廃止を急ぐかということでありまするが、先ほども大蔵大臣から申されたごとくに外貨の状況は心配ございません。国際食糧事情も好転しております。なお国内におきましても漸次経済が安定を見ておる今日、これを速かに実行することにより、我々は独立と共に国際社会に経済的にも融合いたしまして、ここに日本が戰時中におけるところの総動員法的残滓をすべて拂拭し、自由なる経済を確立したい。これがそもそもの理由であります。  最後に、政府はこの統制廃止に関するところの措置をポツ勅で実行するということを考えてるかということでありまするが、私はポツ勅を以てこの食管法を廃止するという考えは持つておりません。(拍手、「農林大臣落第だ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣保利茂君登壇拍手
  8. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 先ず賃金問題でございますが、成るほど朝鮮事変以来相当物価の上昇がございましたが、主として消費財物価は比較的その騰勢が緩く、この間におきまする賃金指数の動向を見ますると、製造工業において、昨年の朝鮮動乱の六月に比べまして、最近の数字は持ち合わせませんけれども、七月は一四三という数字を示しております。これは二十二年の平均賃金指数に比べますならば約七百前後の指数に相成つておるわけであります。消費財値上りが比較的緩かでありましたために、実質賃金の割合が昨年の六月に比べまして七月の状態では一一九という数字を示しておるわけでございまして、勤労大衆の生活の実際が動乱以来低下しつつあるということはどういう面からも出て参らないわけでありまして、堅実な足取りを以て極く最近までは実質賃金の向上をもたらして来ておつたわけであります。それにもかかわりませず日本賃金が先進諸国に比して低い、いわゆる低賃金であるということは、これは波多野さんよく御承知ように、先日も申上げましたように、日本経済の脆弱と申しますか、或いは人口の過大、或いは産業構造の後進性、労働生産性の低位というようなことによつて、誠に止むを得ないことでございますけれども、賃金が低いことは事実でございます。これは国民全体の生活民度が先進諸国に比し低いという事実と全く合致するのでございます。ただ併しながら国民全体に比べて勤労大衆の地位がどうなつておるかということによつてソシアル・ダンピングの若し批判が起るならば起るのじやないか。これに対しましては、これも的確なことは無論わからないと思いますが、一つ傾向として申上げられますことは、昭和十年の国民所得に対する勤労者の所得、それの占めております割合は三七・八%である。それが昨年昭和二十五年度には四二・四%という数字を示しまして、勤労所得の国民総所得に対する割合は非常な改善を示しておるのでございます。従いまして、いわゆる労働賃金が全体のバランスから低い所にあるかどうかということは私は問題であろうと思いますが、その点におきましては、戦後著しく改善をせられておる。特にソシアル・ダンピングが戰前非常な非難を受けておりました繊維工業等について見まするに、繊維工業の賃金が機械工業等に対する割合は戦前は約五〇%であつた。それが今回におきましては八〇%という非常な上昇を示しまして、特に日本貿易上に非難がありますソシアル・ダンピングという問題に対するこの繊維工業の関係というものは著しく改善せられておりまして、私は日本の今日の実情がよく世界の人々に正しく理解せられるならば、そのよう状態において決してソシアル・ダンピング非難が起つて来るとは考えませんのであります。なお、そういう状態にあります中におきまして、最近の電力不足による生産の頭打ち、これによりまして、事実この一、二カ月来、特に関西方面の電力制限が著しいために、賃金の収入が低下して参つておりますことは、誠にこれは心痛に堪えないところでございます。併しこのことは電力政策において措置をして頂かなければならないことでございまして、労働強化であるとか或いは低賃金政策を推進することによつてこの難局を切抜けて行こうということは、これは政府の思わざるところでございまして、この要因については、その要因に対して適当な強力なる措置をとつて頂くということを強く私どもは心配をいたしておるところでございます。従いまして、労働強化、低賃金を推進するために、労働各法の改正を図ろうというようなことは断じてございませんことは、しばしば申上げておる通りであります。(拍手
  9. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣答弁は留保せられました。
  10. 波多野鼎

    波多野鼎君 各大臣の答弁につきましては私は満足いたしません。併しながら明日総理大臣が出席される予定であると聞きますので、総理大臣に対する質問答弁を伺うまで再質疑の時間を留保しておきたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  11. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) よろしうございます。赤澤與仁君。     —————————————    〔赤澤與仁君登壇拍手
  12. 赤澤與仁

    ○赤澤與仁君 大蔵大臣財政演説に関連して、私は以下若干の質疑を試みんとするものでございます。  吉田総理は過日の施政方針演説におきまして、独立回復後の我が国が如何にして自立経済を維持して行くかは重大な問題である。戰勝国でさえ耐乏生活に甘んじておる。新日本基礎確立のためには国民はこの際認識と決意を新たにしなければならんと強調されたのであります。これは、講和後における賠償、外債支拂、安保條約分担金などの新たなる財政負担を考え、又我が国産業復興に必要なる今後の財政支出などを考え合せますときに、経済自立は決して坦々たる道ではなくして、誠に茨の道と言われるゆえんであると思われるのであります。これに対しまする大蔵大臣財政演説は極めて希望的な楽観的な御意見が多かつたと思われるのであります。即ちその演説の中には、講和後においては賠償などの新らしく財政上の負担となるべき金額は相当多額に上るものと予想せられるが、今回の補正予算明年度以降におけるこれらの事情を考慮に入れて編成したと言われる。そして明年度においては、平和條約に基く新たな財政負担を考慮しても、財政の規模は本年度と大差ない程度にとどめ得る見込であると述べられておるのであります。その点に関連いたしまして先ずお伺いいたしたいのでありますが、言うまでもなく今回の補正予算は、單に本年度補正予算にとどまらず、大蔵大臣の言わるるがごとく講和後の我が国財政経済方針のいわば前触れというべきでありまして、従つてそれだけに極めて重要なものでありますから、この際その大綱に関しまして、先ず次の三項目について大蔵大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。  一つは、賠償、外債支拂、対日援助費の処理、安保條約に基きます経費分担金、その他講和に伴う新たな財政負担の総額は如何ほどと予測せられ、且つ明年度においてその総額の予定のうち如何ほどを計上せられんとするのであるか。勿論、賠償或いは経費分担金などその具体的金額につきましては、今後の交渉経過によつて逐次きまるものとは思われますが、ここで私の聞きたいことは、今後の我が国財政計画の規模などから勘案いたしまして、即ち国の財政計画の見通しから勘案いたしまして、どの程度を以て最高限度とするかということであります。このことは、総理大臣も施政方針演説において、これらの費用については政府として誠心誠意その処理に当るが、一方、我が国経済力の現状から見るならば、これら負担国民生活水準に重大な圧迫を加えることなきよう万全の努力を拂うと言つておられることにも関連いたしまして、今後の財政見通しの上から明らかにしておきたいのであります。  次には、大蔵大臣の言われるがごとく、明年度予算も大体本年度予算にとどめ得るといたしますならば、右に述べましたような新たなる財政負担が多くなれば多くなるほど、国内的には産業経済或いは国民生活安定上必要な財政支出はそれだけ圧縮せられるのではないかという点についてお伺いをいたしたいのであります。即ち諸原材料費の値上りとか、電気料金運賃その他の値上りは、それだけ逆比例的に圧縮せられるところとなりまして、勢いの赴くところは、公共事業の実質的縮減や文教予算の縮減、農業その他の原始産業への必要な財政支出の減少を招来することを憂うるのでありまするが、果してかかる心配があるかどうかをお伺いいたしたいのであります。  次に、明年度において直接税又は間接税において増徴又は新設することがないかどうかという点であります。総理の耐乏生活論や、大蔵大臣の、予算総額国民所得に対する割合は米英仏に比べるとむしろ我が国は低位にとどまつておると述べておる点、無論この点に関しましては、国民所得の規模が著しく異なつておる国と国の間においての單なる割合の比較を以て論ずることは、実質的には問題があるわけでありますが、いずれにしましても、これらの点から見ますならば、将来再び税負担の増嵩せられることなきやを危惧せられるのでありますが、大蔵大臣の所見をお伺いいたしたいのであります。  第二の問題といたしましては、対日援助費の処理についてであります。大蔵大臣は過般渡米せられました際に、対日援助費の弁済については進んでみずから声明せられたと伝えられておるのであります。このことの真僞を私は疑つておりましたところ、過日の演説では、その真実を裏付けせられるがごとく、今後の対日援助費の処理については新たなる財政上の負担が生ずると述べられておるのであります。いわゆるガリオア資金は、その名の示すように、占領軍の占領地行政を円滑ならしむるための費用であります。この資金の援助に対しては全く感謝のほかないわけではありまするが、この援助項目として、例えば海外旅行費、食糧輸入費などいろいろのものが含まれておりまするが、大蔵大臣はこの資金による援助の各項目の中で如何なる項目を対象としておられるのか伺いたいのであります。又ヨーロツパにおきまする先例は如何ようになつておるか。明らかにせられたいのであります。  第三の問題として治安関係費についてでありますが、治安関係については、総理も自立後の国内治安体制に遺憾なからしむるためには、治安関係機構の整備拡充を図ると言われ、大蔵大臣も又今後の治安の維持確保を図るために、警察予備隊の装備充実等のための経費として百五十億円、国警の増員及び給與改善のため三十六億円を補正予算に計上したと言われておるのであります。先ず伺いたいことは、国内治安上、如何なる問題について不安が起る心配があるかということであります。具体的にどの方面にどういう不安を感じ、それを防止せんとしておられるかという点であります。我々から見まするならば、電力問題といい、主食統制撤廃といい、社会不安は政府みずからの怠慢乃至は施策によつて釀し出されるとすら思われるのでありまするが、この点に関しましては別の機会に讓るといたしまして、政府が不安を感じておられる治安確保上の事情は如何なる点にあるかを知りたいのであります。次に警察予備隊の充実についてでありまするが、百五十億円の補正予算の計上は、全体の構想、如何ほどの総額の中の百五十億であるかお伺いいたしたいのであります。又安保條約によりまする米軍の国内駐留は、国内治安撹乱の場合にも備えておるわけでありまするが、この関係におきましては、警察予備隊設置の本来の目的とも重複することとなるのでありまして、従つて財政負担面におきましては、仮に将来警察予備隊が再軍備に切替えられるといたしましても、時期的には相当重複することとなるわけでありまして、窮乏せる国家財政の観点からいたしまするならば堪えがたきことと思うのでありまするが、この間の関係を明らかにせられたいと思うのであります。次に国家地方警察の増員等による経費増三十六億円を計上したといわれておりまするが、一方、今回政府企図せられておりまする人員整理案によりまするならば、国家警察は四千三百七十九名整理すると言われておるのであります。先に第十回国会においては国警を五千名増員し、今定員法においては四千三百余名を整理し、更に又この補正予算において増員に要する経費を見積つておるということは、如何にも定見のないような印象を受けるのであります。これらの関係を具体的に明らかにせられたいと思います。  第四の問題といたしましては地方財政に関してでありますが、地方財政、特に府県財政の窮乏はかねて問題となつたところであり、政府も従来の強硬方針を改めまして、今回の補正予算におきましては、地方平衡交付金百億円の増額及び起債の限度を百億増加する等の処置をとられることとなつたのでありまするが、この金額で十分であるかどうかの検討につきましては別の機会に讓ることといたしまして、この際特にお伺いいたしたいことは、府県財政窮乏の根本原因が主として地方税制の現状にあることは周知の通りであります。政府はこの点に関しまして、明年度以降におきまする地方税制の根本的な改革を図る御意図があるかどうかということであります。若しありとするならば、その具体的な構想をお伺いいたしたいのであります。  第五の問題といたしまして、行政整理についてお伺いいたしたいのであります。総理も施政方針演説で、退職者について、財源の許す範囲内で退職金等の増加支給に考慮を加えると共に、その失業対策とじてはでき得る限りの手段を盡すと言つておるのであります。かねて我々の望むところもこの失業政策、而もでき得れば整理方針の発表と同時に、失業対策の構想を明らかにせられんことであつたのであります。往時においても行政整理はなかなか困難な問題でありましたが、それでも今日の経済事情なり財政事情に比べまするならば、楽でもありましたし、被整理者も何とか凌げたのでありますが、今日は往時とは全く事情を異にいたしておるのでありまして、それだけに十分な配慮が講ぜらるべきであると思います。然るに総理の万全の失業対策は何らの片鱗すら窺い知ることができないのでありまして、甚だ遺憾であります。この点につきましての大蔵大臣及び所管大臣の具体的構想をお伺いいたしたいと存じます。  又行政整理に関連いたしまして伺いたいことは、主食統制撤廃の問題であります。この点につきましては、先ほど同僚波多野議員への御答弁にありましたわけでありますが、このお話につきましては、政府及び與党のひとりよがりの説明であつたような気がいたします。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しこの詳細の論議につきましては別の機会にゆつくりと讓ることといたしまして、ただ一点ここで伺いたいことは、主食統制撤廃に関するいわゆる実体的立法の国会付議に先だちまして定員削減のみを先行せしむることの可否についてであります。我々はこの重大問題については、国会で先ず以て実体法の審議を盡し、その結果に応じて、それに即応した定員法の改正を行うことが、民主国家における国会尊重のあり方だと考えるのであります。このことなくして、或いは国会無視の政令による措置等が伝えられることは、甚だ遺憾でもありまするし、本末顛倒のそしりを免れないと思います。政府は一体主食統制撤廃については、法律でやるのか。政令でやるのか。若し法律でやるとするならば、その提出時期はいつ頃に考えておるかを明らかにせられたいのであります。この点につきましては農林大臣の明確なる答弁を望むものであります。  以上述べ来たりました各項目につきましてはそれぞれ明確なる御答弁を期待いたしまして、私の質疑を終ることにいたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 明年度財政規模につきましては、先ほどお答え申上げた程度以上には私にもまだはつきりいたさないのであります。即ち本年度の一般会計の歳出が八千億円程度に相成つておるのでありまするが、来年度におきましても、これより低いことはないと思いまするが、これよりも大差のない程度にとどめたいと思つております。    〔議長退席、副議長着席〕  我が国の今の状態から申しまして、九千億円とか或いは一兆億円という歳出は、なかなか国民生活水準を維持向上する建前から申しますと困難でございます。八千億円台でやつて行きたいと考えておるのであります。而して若し八千億円台で持つて行くということになると、講和に関する費用が相当要るであろうから、いろいろな今までの経費を圧縮するのではないかという御懸念のようでございます。併し私は、これらの公共事業費にいたしましても、民生安定費用にいたしましても、これは是非とも要ることであるのでございまして、こういうものを減らして、そうして講和に関する費用のほうへ持つて行くというのは、策の得たものじやないと思います。そういうことをすれば、それは七千億円台にもなりましようが、私の考えとしては、国土保全、或いは何と申しますか、文教、民生の方面の費用もできれば殖やす、こういう頭でやつておるのであります。然らばどこから出るかということになりますと、更に終戦処理費もなくなりましようし、又外為へも本年度は八百億円も繰入れておりますが、来年度はそうまで繰入れずに済むのではないかというふうな気もいたしておるのであります。大体八千億円ちよつと上くらいのところで済ましたい。大体済まし得る見通しで進んでいるのであります。  次に、来年度は直接税とか或いは間接税で増税する考えがあるかというお話でございますが、これは増税はまつぴらでございます。全体として八百億円くらいの減税にいたしたい。その内訳につきましては、所得税で千億円、法人税の引上げと砂糖の引上げで大体二百億円余りの増、所得税の減税と合せまして八百億円程度に考えておるのであります。新らしい税を設けるということは考えておりません。それよりも今ある税をもつと簡單にいたしたい。例えば富裕税なんかはやめてしまいたい。或いは山林所得とか或いは讓渡所得、こういう変動所得につきましても、できれば軽減するか、やめるかという方向で進んでおるのでありまして、増税はまつびらでございますし、又新税も絶対にやらない考えでおるのでございます。  それから対日援助費は支拂うつもりか、こういうお話でございまするが、これは先の国会又その先でも申上げましたように、我々は債務と心得ております。できればこれを支拂いたい。その支拂う方法につきましてはまだ検討を加えておりません。これはアメリカのほうとも話をしなければならんのでありますが、債務ということだけは確認いたしたいと考えております。而して欧米の例はどうなつておるかというお話でございますが、これはイタリーの場合においては御承知通り賠償を一定金額、これだけの金額で賠償を規定しておる條約でありますが、その條約の締結後アメリカは援助資金の債権を放棄いたしました。それから、今、西独に対してはアメリカの援助債権を確認させております。而も又援助いたします場合におきましては、ドイツの一定のいわゆる輸出物資をアメリカのほうへ送らしております。前は援助資金の五%に相当する物資をアメリカに引上げておりましたが、最近はその五%がもう一五%殖えて二〇%の西独の輸出物資を取上げておるようであります。我が国におきましては、今後この対日援助支拂の問題、賠償の問題、在外債務の問題、こう一連の問題がありますので、これなんかを統一的に考えて行きたいと思つております。  次に、警察予備隊の費用百五十億円を見込んでおるが、これはどういうことをするつもりかというお話であります。これは警察予備隊は七万五千人の人は殖やしません。ただ、今でも七万五千人の警察予備隊の宿舎、装備、通信関係、こういうものが非常に不備でありますので、そういう点を補うための予算であるのであります。  それから警察官吏の行政整理については、これは自治警察から国警へ入つて参ります人員が一万三千人ほどあるのでございます。こういう問題と、お話の先般五千人増員いたしましたことを勘案いたしまして、警察官が二千四百人、又事務職員が千九百何十人整理することにいたしておりまして、自治警察が国警に入つて来ますのを考えまして適当にこういう措置をすることを考えたのでございます。  その他につきましては所管大臣から御答弁いたさせます。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登場〕
  14. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国内治安の施策といたしましては、如何なる破壞的企図に対しましても国内の法律秩序を嚴然として守り続けるということが目標でなければならないと思つております。現在におきましては国内においては特に治安上心配すべき点はないと思つておりますが、政府といたしましては、民主主義及び憲法政治に対しまする破壞活動、特に国外勢力と関係のありまする暴力的な破壞活動に対しましては不断に注意をする必要がある。こういうふうに考えております。而してこれがためには特に関係機関との密接なる協力を図る、この点に重点を置いておる次第であります。なお、警察の人員整理の問題、又予備隊等の問題につきましては、大蔵大臣よりお答え申上げた通りでございます。(拍手)    〔国務大臣橋本龍伍君登壇
  15. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 今回の行政整理の場合の退職者の手当につきましては、通常の行政整理の場合に行われまする退職者の手当に対しまして、一月から三月までの間はこれを八割増、四月から六月までの間はこれを四割増することにつきまして、只今御質問の御趣旨にもありますようななかなか困難ないろいろな問題に対しまして、できるだけ手厚い手当をすることにいたしたわけであります。差等を設けましたゆえんは、一月から三月までの間に特に高い八割増をいたしまして、成るべく自発的に退職する人を募りたいという考え方で差等を設けたものでございます。なお失業対策の問題に関しましては所管大臣のほうからお答えがあると思います。(拍手)    〔国務大臣保利茂君登壇
  16. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答えいたします。  行政整理によりまする退職者のかたがたに対してどうするか。——当初行政改革を進めるという方針をきめました際に、先ず退職者に対する処置をどうするかということを先ず似てきめてから行政改革の実際に入るという政府は基本的な考えを持ちまして、先ず第一には、只今橋本大臣が言われましたように退職金に対して相当考慮をする、離職直後において直ちに生活不安を来たすことのないように、再就職の機会を見るまでその生活を保障するということが先ず第一番でなければならん。そのためには退職金の増額で退職金にかかつてつた高率の課税を今回の行政整理からとにかく大幅に緩和するということによつて、実質上の退職金が確保せられるようにするということが先ず第一番である。この実際整理を、退職をせられる数にもよりますけれども、爾後の、退職後における措置につきましては、何と申しましても、再就職を希望せられる向きに対しては、これはもう関係者が全力を挙げて再就職の機会を発見するように、先ず第一には私ども公共職業安定所の全機能をここに注ぎ、それでもなお足りないようであれば、反問のかたがたの協力を得る体制をも整えなければならん。もう一つは、非常に地味でありますけれども、今日、就職、傭用情勢を見てみますというと、比較的技術を修得しておられるかたがたは、さほど就職に困難がないというよう状態でございまするから、できるだけ簡易でありましても技術を修得されるということが再就職への最も堅実な途であり、又就職後における生活の不安をなからしめる上から行きましても、技術修得の上、産業戰線に立たれるということが私は最も堅実な行き万であろう。そういう上から行きまして、今日までやつております簡易職業補導を、来年度は、来年度限りこの整理の退職者を対象としてのみの臨時応急の職業補導の増設をやつて、そして再就職への途を図るようにいたそうというようなことで、大体行けるのではないかというように考えて、全力を盡すつもりでおります。(拍手)    〔国務大臣根本龍太郎君登壇拍手
  17. 根本龍太郎

    国務大臣(根本龍太郎君) お答えいたします。  主食統制撤廃をどういう手段においてやるかということでありまするが、これは行政措置でなし得る部分と、又立法措置を要する部分とがあるだろうと思います。従いまして、これについては目下検討中でございまして、明確に申上げることはできません。但し、先ほど波多野さんの御質問に答えたごとくに、これをポツダム勅令を以て、いわゆる立法措置に代えて全面的にポツ勅でやるという考えは持つておりません。それからいつ提案するかということでありまするが、只今申上げたような関係から、準備のでき次第、速かに上程申上げたいと思つております。(拍手)     —————————————
  18. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 境野清雄君。    〔境野清雄君登壇拍手
  19. 境野清雄

    ○境野清雄君 去る十九日の池田大蔵大臣財政演説に対しまして、私は国民民主党を代表いたしまして質問をいたしたいと思うのであります。  大蔵大臣補正予算及び明年度予算方針に現われました財政金融方策は、極めてお座なりで、楽観的に過ぎるというような感があるのでありまして、計画性を甚だしく欠いておると思われるのであります。占領下にありまして、米国の援助の下に運営されて参りましたところの丸抱え的な財政金融から、講和締結による自立自前の財政経済を確立せんといたしまするところの第一歩の施策といたしましては、深い考慮と十分な研究が欠けておるということは、どうしてもそういうように考えられるのであります。各項に関しまするところの細目の質問は委員会に讓りまして、私は財政方針の根本問題となるべき次の諸点に関しましてお尋ねしたいと思うのであります。  第一に、丸抱えの経済から自立自前の経済へ移行する必要な如何なる施策をとらんとしておられるのか。即ち私は、中央の財政、地方の財政及び会社その他個人の財政を引つくるめまして国民村政と呼んでよいと思うのでありますが、この国民財政においては、ひとしく、中央、地方及び各個人の財政、いずれもが、その所に従つて調和を保ち、均衡を得るようにするのが、真の意味における均衡財政の名に値するものと思うのであります。然るに補正予算等に現われましたところを見ますと、過去においてもそうであつたのでありまするが、中央即ち国家財政に重点を置き過ぎている嫌いがあるのであります。即ち中央財政の均衡を得るに努め過ぎました結果、地方財政が均衡を失い、各個人の財政は均衡を失して顧みられておらないのであります。地方財政におきまして平衡交付金を百億円増額し、年度総額千二百億とし、別に新規地方債百億が資金運用部資金によりまして引受けられると言われるのであります。併し、地方側の主張では交付金の補正増三百七十億を必要としている状態でありまして、百億の決定ではやがて地方税の増額が必至となる。このことは、まさしく地方財政の不均衡を示すものでありまして、この点につき数字を挙げて説明して頂きたいと思うのであります。  日本経済が自立するには、日本の産業、殊に貿易部門を増進させねばならないことは申すまでもないのであります。然るに我が国物価国際物価水準と比較いたしまして一五乃至二〇%くらいの割高となつておるのでありまして、これが輸出を阻害しておりますることは、最近のプラント輸出その他の輸出不振の原因より見ましても明らかなところであるのであります。政府は、貿易振興につきましてその筋の指令を受け、大本も決定しているのでありますが、その遂行のためには、日本物価国際物価水準にまで引下げることが根本であると思われるのであります。一方、国防の分担金警察予備隊費、国家警察費、賠償、外債、外国人財産補償費、対日援助返済費等、非生産的支出が現実の問題となつておりまするときに、政府は近く鉄道、郵便、電信電話等の料金の値上げを民間企業に先がけまして実施せんとしておるのでありますが、これは物価の騰勢を招来し、インフレを助長することは必至の情勢と考えられるのであります。この間の矛盾を政府は如何に考えておるりでありますか。先に私が大臣の演説を楽観的だと指摘したのも、こういう点にあるのであります。基礎産業に関しましては補給金を出せというような要望もありますが、大蔵大臣は、これに対して反対しておられるやに聞いておるのでありまして、二重価格制の採用の意図があるかないかをお伺いしたいのであります。  又、日本物価を国際水準にまで鞘寄せせしむるところの最も重要な要素に産業設備近代化の問題があることは申すまでもないのであります。昨年度通産省よりの、この点に関しましての予算要求は、大蔵省によつて一蹴されておるのであります。二十七年度予算におきましても十億の要求を提出しておるということでありまするが、産業設備近代化に対しまして大蔵大臣並びに通産大臣の所見を伺いたいと思うのであります。即ち政府は法人税の引上げ企図しておるのであります。これは先般の大蔵大臣財政演説によつて明らかなのでありまするが、この税金の法人税の引上げ、従来の法人税はいわゆる事業税、住民税を合しまして総体が五二・二五であつたのでありまするが、今度のものにつきましては、法人税におきまして七%の引上げをし、併せてこれに附帯するところの住民税が六・三%に引上げられておりますので、総計六〇・三%というようなものに相成つておるのであります。即ち法人の担税率は八・〇五%加重されているのでありまして、つい最近におきます五割突破が騒がれておつたのでありまするが、ほとぼりのさめないうちに今度は実に六割突破になることになつているのであります。今日企業収益が向上していると言われておるのでありますが、これは過小資本による表面上の高収益でありまして、換言すれば償却を犠牲にした見せかけの高收益であるのであります。又産業基盤の極めて脆弱な我が国にありましては、景気、不景気の波が激しく、僅かの期間の高収益を基準にするがごときは当を得たものと言いがたいのであります。かかる方策を以ちまして、政府は果して資本の蓄積が可能であり、産業意欲の増進がなされると考えておられるのかどうかということを伺いたいのであります。又投資信託が順調に行われていると申されるのでありますが、その取扱額の増勢も、仔細に検討いたしますると、今日の通貨発行額より見ますと遅々たるものがあるのであります。決してこれを以て満足すべきものと言い得ないのであります。今日の株式会社の資本構成は、或いは持ち合せ或いは拂込資金を貸して拂込みさせる等、真の資本暦の上に立脚したものではないのであります。  次に、政府は外債の利拂いによりますところの国際信用の回復と国際通貨基金及び国際開発復興銀行への加入等により、外資導入が可能と考えているのでありましようか。冷たい戰争の最前線にありまして、貿易の收支のバランスがとれておらない我が国経済の現段階では、民間の資金、而も長期の資金が容易に入つて来るとはどうしても思われないのであります。一部技術導入に伴う株式の取得その他少額のものは考えられるのでありまするが、多くを期待することにつきましては疑いなきを得ないのであります。電力不足が今日我が国産業発展の最大の癌であるにもかかわらず、経済発展を図るという面に、何ら動力源不足による生産に及ぼす影響を考慮に入れておらないように見受けられるのであります。政府は電源開発のために、アメリカ政府を通じまして、アメリカの開発銀行からの融資を懇請する意図を持つているのでありましようか。果して持つておられまするならば、如何なる準備態勢の用意があるかをお伺いいたしたいのであります。又外国に依存するのみでなく、自力で真劍に電源の開発を考慮せねばならないわけでありまするが、先般発表されました電源開発公社案につきましては、政府は真にこれを実行に移す用意があるかどうかということも伺いたいのであります。政府は、開発銀行の出資を七十億増額し、又現行法を改正いたしまして金融の疏通を図り、以て必要諸産業の資金供給を潤沢にせんとしているのでありまするが、民間資金の需要に応ずるために、政府運用部資金を市中銀行に廻しましてそれを貸出さしめる意図ありや否やもお伺いしたいのであります。政府は、一時国民貯蓄を奨励し、金融機関の資金供給を豊富にするために、貯蓄債券の発行を企図しておられるとのことでありまするが、むしろこの際、思い切りまして、無記名預金制度を再開してはどうでありましようか。実質的に見て貯蓄債券も無記名預金も大差はないものであります。国民の間に慣熟しておりまするところの該制度を患い切つて採用し、以て民間資金の還流を迅速ならしめる必要があると思うのであります。(拍手)  次に、池田大蔵大臣は、講和條約に伴う賠償支拂につき、日本経済の許す範囲内で支拂うということを言明されましたが、これは至極当然のことであるのであります。併しこれは、言うは易く、実際問題といたしましては、支拂の増加を来たし、困難を増すものなのであります。殊に政府は、役務賠償ということを以て比較的楽観的に考えておるのでありまして、その現実に国民生活に及ぼす影響につきまして十分な考慮を拂つておらないようでありまするが、この種に類似する過去の経験から推してみましても、役務賠償とて結局相当な政府支拂を必要とするものでありまして、国内的には物資増加の裏付けのない通貨膨脹という結果を招来するに至ると考えられるのであります。この点に関しての思い切つた施策が併せ行われないならば、インフレーシヨン増進の傾向は強められると言わざるを得ないのであります。  政府は、外債に関しましては、これが返還を言明しておられるのでありまするが、私も全く同感なのであります。現在外債といたしましては、米貨債が六千七百万ドル、英国債が六千一百万ポンド、仏国債が五億七千八百万フラン、これをドルに換算いたしまするならば二億五千八百万ドルという厖大なものに相成つておるのであります。なお、償還期限を経過しておりますものが元利におきまして六千三百万ドル、この延滯利子と申しますか、未拂利子が一億四千万ドル、合せて二億三百万ドルというものが現在あるのであります。そういたしまして、外債の換算は、一ドルが当時におきましては二円九厘、ポンドが九円七十六銭三厘、一円が二フラン十五サンチームというような計算になるのでありまして、ドルをとつて見ましても、その為替差損は三百五十八円弱となるのであります。この差を一体誰が負担するのか。結局国家が負担することになるのでありましようが、この負担だけでも大変なものと思うのであります。現在の外貨支拂能力は三千万ドル乃至四千万ドルと推定されているのでありますが、如何なる措置によりまして、これが支拂に当られるお考えか。この点についてお伺いいたしたいのであります。大蔵大臣はイタリア式の借換方式によらず、日本の国力により対々の借換をすると言明しておられるのでありますが、その点、私も至極賛成でありまするが、日本現状において果して相当多額の借換が可能であると思われますか。日本の国情は、自立経済への第一歩を踏み出しはしましたが、これが外債の借換の域に達するまでの経済安定には未だ至つておらないのであります。この段階に到達するためには、種々なる準備、即ち前述のごとき諸施策の実行が要請せられるゆえんなのであります。  次に、條約締結に伴いまして、今日まで米国より得ましたところの二十億ドルの援助資金を返還しなければならないわけでありまするが、これは勿論日本経済力の許す範囲内で忠実にその支拂を実行すべきものであり、たとえ多年に亘る分割拂いの方式によるといたしましても、これが日本の自立経済回復及び健全財政維持への道程をかなり鈍化させるものと考えられるのであります。この点につきまして政府は、前述の外債支拂、役務賠償と睨み合せて、愼重な対策を樹立せねばならぬにもかかわらず、予算案を見まするのに、かような考慮は拂われでおらないように見受けられるのであります。或いは自然増收が今後も長く続くことを軽々に予測し、或いは今年度国際収支一億二百万ドルの黒字を以てその前途を楽観する等、全く安易な態度に終始しておるというように考えられるのであります。これでは日本経済自立の難関を乘り切つて我が国を安泰の安きに置くことは不可能と思われるのでありまするが、如何なものでありましようか。  次に大蔵大臣は銀行法の改正を意図しておられるのであります。それは銀行法を全般的に改正すること、即ち講和後の日本経済の自立に即応する民主的金融制度を確立するという意味であろうと存ずるのであります。日本金融制度はこの際全般的な見直しが要求せられておるのであります。即ち全般的な見地に立つて、日銀、開発銀行、輸出銀行、市中銀行の問題等を一樣に考究せねばならんのであります。従来、政府は、この全般的な見地を等閑に付し、東銀債、貯蓄債券、開発銀行の開設等に手を著けたのでありますが、これは全体を忘れておるために、金融機構の完全なる運営というものに多くの盲点を残しておると考えられるのであります。(拍手)若し銀行法を改正せんとするならば、従来の態度を改められまして、民間の意向を強く取入れ、真に経済復興に資し、(拍手)平和日本金融機構として恥かしくないような民主的機構を作つて欲しいと要望するのでありまするが、この点につき大臣の方針を示して頂きたいと存ずるのであります。  次に、手持外貨及び外貨債券保有高は九月末現在におきまして六億七千百万ドルでありまして、国際収支の好調を誇示せられておるのでありまするが、何故にこの手持外貨を有効に使用するの方途を明示せられないのでありまするか。(拍手)二十五年度の朝鮮事変前において外貨保有高は五億ドル近くあつたのであります。当時廉価な原資材を入手できたにもかかわらず、事変発生後、あわてて輸入促進策をとつたために、二倍程度騰貴した価格で入手せざるを得ない事態に立ち至り、且つ適品の輸入は全く不手際であつたのであります。このような責任は一体誰がとるべきものでありましようか。現在は国際情勢の変化から物価の低落を伴い、近く又徐々に騰勢に向わんとする傾向にあるのでありまして、輸入促進を図る最もよい時期であると存ぜられるのでありますが、このときに当りまして、六億七千百万ドル手持外貨があるとして得々としておられることなく、これが有効な使用につきまして愼重なる御配慮を切望してやまないものであります。  次に中小企業の振興について特に強く一言申上げたいと思うのであります。日本経済自立の中核体は中小企業であることは今更申上げるまでもないことなのであります。生産の六五%を占め、国民企業の九三%を占めておりまする中小企業の比重は極めて大きく、これが振興は最も重要であるにかかわらず、今回の施策において、国民金融公庫への三十億出資増以外、何ら見るべきものがないことは、甚だ遺憾に存ぜられるのであります。中小企業に対する金融措置に関しましては、大蔵省は全く冷淡であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)今日、中小企業に対する金融が再び昔日の問屋金融制度に頼るという惨めな姿に転落しつつあるのであります。本年三月末日におきまするところの中小企業融資残高は総額四千七百三十八億三千八百万円となつておるのであります。これが百分率は、銀行におきまして六九%、即ち三千二百七十二億八千七百万円というものを銀行が受持つておるのであります。続きまして無蓋会社が一八・八%、信用協同組合が六・八%、商工中金が二・五%、国民金融公庫が一・三%、復興金融金庫が一・二%、見返資金の貸付が〇・四%、こういうよう状態に相成つておるのであります。この百分率を見ましても、政府中小企業專門機関と銘を打つておりまするものの比率が全く低位にあることは首肯し得ないのであります。勿論、対策の基本方針といたしまして合理化の促進、組織化、信用保証、信用保険等、中小企業側の金融受入のための諸問題の解決に対しましては、通産省としての一大努力を要望するのであります。と同時に、大蔵省といたしまして、一般市中銀行の融資促進中小企業の專門金融機関の強化拡充、特殊資金源の導入等に対しまして、格段の協力なくいたしましては、到底根本問題は解決しがたいと考えるのであります。このような観点よりいたしまして、大蔵省といたしまして、農林漁業資金融通法と全く同型の中小企業金融通法の制定、或いは商工組合中央金庫への飛躍的政府資金の出資等に関して、如何なる構想を持つておるのか、お伺いしたいのであります。大蔵省は中小企業は大企業に従属すべきものとの観点で金融措置を講ぜられておるのでありまするか。或いは中小企業中小企業として独立的に考えておられるのか。承わりたいと思うのであります。若し中小企業を独立的なものとして考えられるなら、過般の大蔵大臣の安定、能率、発展の三原則は、即不安定、非能率であり、阻害である(拍手)ということが、中小企業の面からはどうしても考えられるのであります。又日米経済協力問題に関しまして、日本経済余力という点を明らかにしておりますることは、中小企業にとつては大きな悩みの種なのであります。大企業経済余力の算定は容易にできるのでありまするが、中小企業のそれは全く困難なのであります。これが盲点となりまして、新特需の恩恵に中小企業はあずかり得ないというような事態惹起の懸念さえあるのでありまして、この点に関しまして通産省は如何なる具体的方針を用意せられておるのでありましようか。詳細なる御意見を通産大臣に承わりたいのであります。又日米経済協力につきまして、カナダにその例を見るごとき、アメリカの動員計画局のカナダ・セクシヨンに対応する委員会設置による協力受入態勢の完備に類する機構整備の用意を日本政府としていたしておるのか、いたしておらないのか。この点に対しましても伺いたいのであります。  以上の各点に対しまして所管大臣の責任ある答弁を要求いたしまして、私の質問を終了いたしたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  政府は中央地方を通じて財政上計画的でなければならないという御質問でございました。勿論計画的にやつております。国家財政におきましても又地方財政につきましても計画的にやつているのであります。ただ地方財政は一万数千の財政団体でございますので、なかなか困難ではございまするが、年年計画的に相成つてつております。今回補正予算で平衡交付金を百億円殖やし起債を百億円殖やしましたのは、地方の財政状況を見まして、相当支出は増加いたしましたが、他方歳入の自然増收もありますので、勘案いたしまして両方とも百億円ずついたしたのであります。それから鉄道運賃引上げ、郵便料金の引上げはインフレになりはしないか、こういうお話でございまするが、これは私は、原材料が上つたために止むを得ないのでありましてそれによつてインフレが起らないようにすることはほかの施策でやるべきだと思います。御承知通りにアメリカにおきましても鉄道運賃は四月に五・六%上げ、又八月に五・六%上げております。葉書の料金も一セントを二セント、七円二十銭にしたよう状態でありまして、或る程度物価が上つて参りますときには、こういう公共企業体は独立採算制の立場から上げざるを得ないのであります。而してこれがインフレの要因にならないようには、ほかの施策でやつているのであります。即ち生計に及ぼしまする影響につきましては減税その他で賄つておるのでございます。  なお、基礎産業に対して補給金を出すか、こういう御質問でございますが、私は今問題になつておりまする鉄鋼補給金につきましては出さない方針で、今までの方針を変える気持はございません。それじや鉄鋼の値がどうかということになります。このイギリス、べルギー、西ドイツにおきましては、大体二重価格で、輸出は相当高く出しております。日本の鉄鍋が百四十ドルぐらいでございまするが、イギリス、ベルギーも百三十数ドルで出しておるのでございます。だから鉄鍋自体の輸出は大体国際的にできておりまするが、国内を考えますると、これはベルギー、西ドイツは非常に安うございます。日本の六割程度になつている。それじや輸出はいいが、国内の鉄鋼価格を補給金を出して下げたらどうかという議論になつて来るのでありまするが、御存じの通り鉄鋼会社の最近の状況は、鉄鋼会社十四社で大体二百億円程度の利益を挙げているのでございます。そこで一部に引下げの議論が起つておるようでございまするが、これは消費者生産者が或る程度そこで話合つたならば……補給金を出すということよりも鉄鋼会社の利益をどうしたらということが先決問題だと思います。  法人税の引上げについてお話がありましたが、最近の法人の状況は非常によろしうございます。昭和二十六年度におきましては、法人は六千億の利益を挙げました。而してそのうちで千億の償却をいたしました。そうすると五千億円残ります。この五千億円のうちで、地方税、国税を合せまして千九百億円を支拂いますと、あと三千億円程度残るのであります。而して、配当、賞與で八九百億円、そうすると二千二三百億円の積立金が増加いたします。この二千二三百億の積立金に前の償却の千億円を入れますと、三千数百億円の資金の蓄積ができたのであります。この三千四五百億円の資金の蓄積は、昭和二十五年度の千五百億円、昭和二十四年度の六百億円に比べますと幾何級数的に殖えておる。で、私はこういう点から見まして、個人の所得税を減税する代りに、こういうところでその埋め合せを或る程度して頂きたいという気持でやつておるのであります。  なお設備近代化予算についてということのお話がございましたが、私は設備近代化のために特別償却を近代化法の中に織り込みまして、今年度におきましても二三十億円、来年度におきまして七八十億円程度の特別償却をやる計画で進んでおるのであります。  次に外資導入の可能性でございます。水力発電に可能性がある。又、自力でやる考えはないか。——私は、外書導入をしようとすれば、先ず自力で仕事を始めることが必要でありまするので、今の九電力会社、又自家発電をやつておる会社より別個の構想で、国で相当の金を出して発電事業に着手したいと考えておるのであります。  それから資金運用部資金を民間に出してはどうかという御質問であります。出しております。今年度から二百七八十億円の金を金融債引受で出しておるのであります。  無記名預金を認めてはどうか、この点につきましてはいろいろな議論がございますので、政府は愼重に検討いたしております。  それから役務賠償は相当の金を必要とする。——勿論そうでございます。役務に対しまする賃金につきましては政府負担することになりますから、相当覚悟しなけりやなりませんし、これは国民から納めてもらいました税金その他で納めることになりまするから、これによつてインフレは起さない考えでおります。  次に外債の支拂方法で、大蔵大臣はイタリー式はとらんと言つておるが、それでは借換にするかという御質問でございます。これは借換にいたしますと、御承知通りアメリカでは百ドルの借換に借換費用が五ドル程度かかります。私はこれもなかなかむずかしいと思うのでありまするが、この外債の支拂につきまして大蔵大臣がとやかく言うことは外債の相場に非常に影響がありますので、私は触れたくないと思うのであります。借換もできればやるかもわかりません。又はかの方法も考えております。イタリーの方法はイタリー自体にはよかつたのですけれども、これを受けましたアメリカの債権者は非常に非難しております。一時はよくても将来日本信用を害するようなことがあつてはいけないというので、私は先のことを考えると、イタリー式方法はなかなかいい方法ではないのだということを考えておるのでありますが、この点につきましては、私は何もきまつたところはないのでありまして、申上げかねると思います。  対日援助の支拂が予算上規定していないじやないか。——対日援助の問題も外債の支拂も、役務賠償も、来年度から起ることでございまして、そうしてこれらは飽くまで関連しております。関連しておりますので、各相手国と相談いたしまして、日本の自立経済が立ち得る限度におきまして負担することを考えておるのであります。  金融制度の問題につきましては全般的に考える必要がある、——御尤もでございます。私は今の金融制度は日本の国情に副わぬ点がございますし、又今後の日本経済の発展から見ましても相当考え直す必要がありますので、金融制度全般に亘つて考慮をめぐらしております。  次に外貨の適正な運用をする必要がある、早く輸入したらどうかというお話でございます。我々は毎四半期ごとに外貨予算を作りまして、本年、即ち四月から来年の三月に向いましては十八億ドル輸入計画をいたしております。これは昨年度、今年の三月までの九億六千万ドルに比べますと大体倍近くの輸入を計画いたしておるのであります。これはやはり商売でございますので、今買おうといつたつて向うが売りません。又買う人が政府でないのでありますから、民間の商社が買うにいたしましても、やはり予算幾らつて見通しを付けて輸入の商談をするわけでございます。昨年の十一月頃から、輸入促進というので、見通しも何も付けずに予算があつたら直ぐにそれを使つてしまつたというような、あの変なやり方は、政府もやめておりますし、民間商社も、外貨予算があるから直ぐこれを入れてしまうということでなしに、コンマーシヤル・ペースに立つてつておるのでございまして、昨年度のとにかく倍額の予算を向けておる次第でありますから、適当なる価格で適当に入つて来ることを期待しております。これに対しますよう日本銀行の外貨貸付の制度もマツチするよう方法で進みたいと考えております。  次に中小企業金融で非常に冷淡なよう言つておられますが、私は金融問題でこれに一番力を入れておる。で、商工中金の問題がございましたが、商工中金も私が大蔵大臣になつたときは十二億円の貸付だつた。今は百六十億円、十数倍になつておる、こんなに貸付の殖える金庫はほかにございません。又国民金融公庫にいたしましても、今八十億円ほど投資をやつておるのであります。これをどんどん殖やして行こうといたしております。商工中金なんかも、私は政府出資をやりたいと思うのでありまするが、これは農林中金もやつておりません。従つて商工中金がほかから信用を得て、債券の発行にしましても興業銀行と同じよう條件で発行し得るような強力態勢に持つて行かなければならん、それが先決だというので、本国会にも商工中金の中金法の改正を出そうといたしておるのであります。又民間銀行の中小企業の特別店舗、いわゆる專門店も、只今係員を出しまして、過去一年間の状況はどうだということを銀行検査によつて検討いたしております。あの手この手で、できるだけの勢力はいたしておるのでありまするが、これは何と申しましても、中小企業のほうは全体として信用を高める方法をとるか何かしないと大企業ようには行かないので、この点につきましては通産省その他、協議の上できるだけの力はいたしておる考えでございます。(拍手)    〔国務大臣高橋龍太郎君登壇拍手
  21. 高橋龍太郎

    国務大臣(高橋龍太郎君) お答えいたします。  第一に企業合理化促進法案でありますが、これは関係省間の事務的な話合いは大体まとまりまして、目下法案の準備中であります。遠からず提出することになると思いますので、その際はよろしく御協賛を願いたいと存じます。  次に日米経済協力と中小企業振興対策との関係というような御質問でありましたが、元来中小企業振興の基本的な狙いは、中小企業の技術の向上、経営の合理化にあることで、実質的にはその結果中小企業の質の向上を見るわけでありまして、日米経済協力と言いましても、無論中小企業は下請の仕事になるのでありますが、そのほうにも、中小企業内容が、或いは技術が改善されれば寄與するわけなのでありまして、中小企業を輸出振興の面に引張つて行きたいと私は考えて努力をしておるのであります。  次に中小企業金融対策でありますが、中小企業金融はこれは私も非常に心配をしておる問題でありますが、大体はやはり普通銀行の金融に待つほかしようがないので、ほかの機関で数千億の需要のある中小企業金融を賄つて行くことは不可能だと私は考えます。ところで、この中小企業のいつも問題になりますのは、商工中金の問題でありますが、事実この面に資金が足りないことは現実の問題でありまして、どういうふうにして資金を廻して行くか、これはあらゆる手を打つて行くほかしようがないのであります。或いはこの金庫の割証を強化して、そういう方面で金を集めて行きますと、それには資金運用部の資金を以て債券を買つてもらい、金融公庫のほうの、今の三十億というお話がありましたが、それは決定しておりますが、又別に中小企業信用保險法の一部を改正しまして、只今は保險金額が最高三百万円になつておりますが、これを五百万円に引上げて、なお、保險金の支拂期間の短縮等を考えております。この面からも相当の改善を期待しておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  22. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 残された御質問にお答えします。  第一に、外貨資金の問題については、大蔵大臣からも申上げましたのですが、只今九月末現在で六億幾らつているというお話でありますが、この有効な活用に関しましては、すでに十—十二月の外貨資金の決定を終りまして、大体五億四千万ドル近くというものを充てて、必要な物の輸入に努めることにいたしております。ついででありますが申しますが、本年度の四月以降九月末日までの輸入の実績というものは、十二億二三千万ドルになつております。これは実績であります。先ほど大蔵大臣から申しました二十六年度輸入計画というものにつきまして、半年でありますが、着々必要なものは入つておりまして、すでに十二億二三千万ドルまでなつておる状況であります。  日米経済協力についてカナダのごとく何か特別の機関を日本が作る意見はないかというお尋ねであります。今日までのところの特別な機関を作るまだ計画はいたしておりませんが、只今のところまでは、経済安定本部が中心となり、各省を動員して、必要な対策についてはそれぞれ手を打ちつつある現状であります。(拍手)     —————————————
  23. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 国務大臣演説に対する質疑はなおございますが、これを明日に讓りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。      —————・—————
  25. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 議員派遣の件についてお諮りいたします。ルース台風の被害状況を調査するため、第一班鹿兒島県、宮崎県、大分県に、長島銀藏君、玉柳實君、溝口三郎君を、鹿兒島県、大分県に、三輪貞治君を、宮崎県、大分県に前之園喜一郎君を、第二班熊本県、福岡県、山口県、島根県に、門田定藏君、岩男仁藏君を、福岡県、山口県、島根県に、深水六郎君、矢嶋三義君を、熊本県、山口県、島根県に、常岡一郎君を、第三班広島県、愛媛県、香川県、徳島県、高知県に、中川幸平君、河崎ナツ君、高良とみ君を、それぞれ十日間の日程を以て派遣いたしたいと存じます。これらの十三名の議員を派遣することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。よつて議員派遣の件は決定いたしました。  次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十一分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  一、議員派遣の件