○大屋晋三君 私は吉田内閣総理大臣に対し、
国家将来の問題について
質問申上げたいと思うのであります。
質問に入るに先立ちまして、総理大臣が老躯を提げて、みずから対日講話
会議の全権といたしまして、
我が国には曽て見ない積極的な前例を作られましたことに対し、感謝と敬意を表するものであります。(「八百長」と呼ぶ者あり、
拍手)
先にサンフランシスコで
調印されました対日
平和條約は、
我が国が平和を愛好する
世界の自由
国家群の理解と協力によりまして
国際社会に復帰して、
独立国として再び
世界の大道を行く資格を與えられたことを意味するものでありまして、御同慶に堪えない次第であります。(
拍手)又
平和條約に続いて
調印されました
日米安全保障條約は、やがて
日本が
国際連合に加入いたしまして、
国際連合による集団安全の
保障等の有効な措置ができるまでの間不当にして不正なる
侵略から祖国を守るためのいわゆる
真空状態に対応する臨時措置といたしまして、感謝の念と共に、進んでこれを承認せんとするものであります。(
拍手、「そんな
質問があるか」と呼ぶ者あり)然るに政党の一部にもそうでありまするが、
国民の一部には、との條約は
戦争を挑発するものであるなど宣伝いたしまして、
国民を混迷に陷れんとしておる事実のあることは、誠に遺憾に堪えないところであります。この議論がいわゆる平和攻勢を以て人を欺瞞せんとする
共産陣営又はその同調者によ
つて政略的に放送されるばかりでなく、いわゆる自由主義
陣営と称せられる一部知識階級にまで伝染いたしまして、(「
世界に笑われないようにしろよ」と呼ぶ者あり)以上
二つの條約を否定しようとするがごとき傾向が現われて参りましたことは、由々しい
国家の大事として深く憂いとするところであります。(
拍手)例えば最近或る総合雑誌は、大学教授、評論家、美術家、文芸家等、知識階級の代表と目されまする七十余名の人々に向いまして、
講和に対する意見、批判、
希望等を聞いているのでありますが、前慶応義塾総長小泉信三、評論家の長谷川如是閑、仏教学者の鈴木大拙氏ら十数名の諸君が(「
議長、それが
質問か」と呼ぶ者あり)両條約を肯定しておるのに対しまして、その大部分はむしろ否定的な態度を示しているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
国民の中核体であるべき知識階級の代表者を以てみずから任ずる人々の中にかような態度をと
つている者が存在いたしますることは、
国民大衆に対し、特に将来
日本を背負
つて立つべき青年に対しましてこれが指導を誤まる一大事であると私は思うのであります。併しながら(「意見はやめて
質問をやれ」と呼ぶ者あり)彼らの言説を検討いたしますると、惡意に発する
共産主義者又その同調者の宣伝が先ず第一、(「同調者とは何んだ」と呼ぶ者あり)その次は現実認識に欠けておりまするために起る誤解に発しておるということがわかるのであります。(「青年が泣くよ」と呼ぶ者あり)併しながら
政府としては
国家再建の邪魔立てをいたすがごとき言論を傍観しているべきではありません。両條約の意義を
国民の納得の行くように積極的に且つ詳細に説明いたしまして、敷衍をして、過まちを未然に防ぐ方途を講ずべきは勿論、(「フアツシヨだ」と呼ぶ者あり)全
国民が心から理解して賛成するように
政府が一大努力を盡すべきであると信ずるのであります。私
どもは平和を愛好するものであります。誰か悲惨な
戦争の勃発を望むものがありましようか。総理大臣が両條約に
調印せられましたゆえんも、全く平和を愛し、平和を
希望するからでありまして、このことが即ち
侵略者を防ぎ
戦争を防ぐただ
一つの途であるからにほかならないと信ずるのであります。昨年の六月、アメリカの
軍隊が引揚げて、全く
真空状態にな
つてしまいました南
朝鮮に向
つて、三十八度線を突破
侵略を行いました
共産軍のあの仕打ちが、
我が国に再現せずと、誰が保証し得る者がございましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
共産主義者は別といたしまして、(「総理大臣への
質問に入れ」と呼ぶ者あり)
安全保障條約に
反対せんとする者は、進んで
我が国を無
防備状態に置き、
共産主義の蹂躙に任せようとするのでありましようか。(「馬鹿言うな」と呼ぶ者あり)我々はこの点に対して深い慮りがなければなりません。(「討論じやない」「
質問々々」と呼ぶ者あり)
日本外交の根本
方針は、先ず
日本みずからを守り、而して(「誰の力で」と呼ぶ者あり)
世界の平和と繁栄と安全とに寄與するにあると信ずるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そしてこれが
方針といたしましては、
観念的な中立政策のごときは、
ソ連帝国主義が虎視眈々としておる状況にあえて目を覆うがごとき謬論でありまして(「こわいこわい」)と呼ぶ者あり)自由
主義国家群との協力親善こそは
日本を再建いたしまするための基本政策であるということをはつきりと断定してかからなければ、不測の混乱を起すのであります。(「吉田は断定していないのか」「総理が恥かしいよ」と呼ぶ者あり)
平和條約と
日米安全保障條約のこの
二つの條約は、あたかも一枚の紙の裏と表でございまして、法律論といたしましてはともかくとして、政策論的には不可分のものと信ずるのであります。(
拍手)然るに
政府は、態度の慎重なることを期するためであろうかと思うのでありますが、四方八方に気兼ねをして、そのためにややもすれば(「
質問々々」と呼ぶ者あり)
日本の
立場を不明確にいたし、味方とすべき者の疑惑を招くことなきにしもあらず、私はその点、甚だ微温的で不十分であると思うのであります。即ち
政府は、(「総理の
演説のようだ」と呼ぶ者あり)
我が国の
方針は前に申上げました通り、
世界の民主的自由
国家群と相提携協力いたしまして、
世界の平和と安全とに寄與せんとするものであ
つて、
侵略的
共産主義者は断乎排撃する旨を、進んで積極的に言明すべきであると思うのであります。(
拍手)この点について
吉田総理は
如何にお
考えになられましようか。お伺いいたしたいのであります。(「恐る恐る伺うわけだ」「猿芝居だよ」と呼ぶ者あり)
質問の第二点は
安全保障條約と再
軍備の問題であります。(「聞いちやいられない」と呼ぶ者あり)
安全保障條約は先にも申述べましたごとく暫定的ないわば臨時措置でありまして、現在の
国際情勢の下において、
如何なる政党が政権の
地位にありましても、(「守れというんだ」と呼ぶ者あり)自由
国家群と手を携えて共に
世界の平和を守ろうとする政党及び
政府でありまする以上、少くともこれ以上に安全を確保いたしまする
方法は発見できないと
確信いたすものであります。(「ノー」と呼ぶ者あり)ただ
国民がやや不安の念を持
つておりまする点は、具体的な内容、
国民生活と直接
関係の深い部分が行政取極によるということにな
つております。而もその行政取極の具体的
交渉が将来に残されておるという点でございます。(「その通りだ」「もういい」と呼ぶ者あり)
我が国の
負担が、果して現下の
国民の担税能力に堪え得るものでありましようか。又第二次大戦以来、英国等に駐兵いたしました
米国軍隊がその国の
主権を侵すことは絶対にないと同じく、
我が国の
主権も侵されるということは絶対にないということは
確信いたすところでありますが、駐屯
米軍の治外法権的な特権等についても、故意に或いは誇大に、
日本が
米国の属国になるがごとき言説を流布する向きもありまして、
国民の関心は極めて深いのであります。
政府は
如何なる
方針の下で今後の行政取極を行わんとせられるのか。成るべく詳細に御説明を煩わしたいと存ずるのであります。(
拍手)又
吉田総理はしばしば「現在の国力では再
軍備をする
考えはない」と(「その通り」と呼ぶ者あり)言明しておられるのでありますが、外に向
つて軍を進めるがごとき積極的
軍備ではなく、防衛のための消極的な意味における
軍備は、
独立国家の体面からするも権利であり且つ
義務でもあると信ずるものであります。(「その通り」「本当か」と呼ぶ者あり)天はみずから助くる者を助くと申しますが、
日本がみずからを防衛する手段を講ずることなくして他国の防衛に全部を任せるということは、頗る虫のいい、而も卑屈な話でありまして、
米国及び
国際連合が……(「いつそ断わ
つてしまえ」と呼ぶ者あり)
米国及び
国際連合といえ
ども、いつまでも
日本防衛の
責任を負うことは望み得ないと
考えるのであります。(「なぜでしよう」と呼ぶ者あり)然りとすれば、
我が国は他日必ずや
軍備を整えなければならないのでありますが、この点に関しまして、従来御発表に相成りました
吉田総理の御
見解は、先ず以て国内の
自衛力を強化し、国力の充実を待ちつつ、
国民の世論の動向を見極めて、逐次防衛力の増強を図ろうとするお
考えのように信じられているのでありまするが、(「
憲法はどこにあるんだ」と呼ぶ者あり)
日米安全保障條約の
調印が済みました今日、何か従来の御意見と違つた新規の事実なり又は新規の構想なりがおありでしまうか。若しおありならば承わりたい。(「ありません」「東條の道だ」と呼ぶ者あり)なお又
安全保障の期限、これは條約に明記してないのでありますが、従いまして
国民の間には、いつまでもいつまでもこの條約に依存しなければならないのか、果していつ頃に
なつたら防衛の
軍備ができるような国力に
回復いたすであろうかという、
我が国のいわゆる再
軍備の時期、経済力
回復の
見通しなど、これら一連の関連事項について
国民の関心は極めて深刻であります。これらの点について御意見を承わりたいと思うのであります。(「架空の問題は答えられません」と呼ぶ者あり)
第三に
領土の問題についてでありまするが、奄美大島、琉球諸島、小笠原群島、その他二十九度以南の諸島の
領土権が
我が国に残されているという
米国全権及び英国全権の言明は、その島々の住民はもとより、全
日本国民を非常に喜ばせておるのでありまするが、これら諸島が
我が国の行政下に完全に帰属するのは一体いつ頃になるでございましよう。(「再
軍備完了後」と呼ぶ者あり)私はその住民諸君と共に一日も早い機会を待望いたすのでありまするが、これに対しまして、
政府としても一日も速かに実現のできますように努力をいたさなければならないと存ずるのであります。
政府の
見通しを伺いたいのであります。
第四に承わりたいのは、今度の
講和條約を貫く平和的和解精神から
考えまして、私
どもが理解できなかつたただ一点の瑕瑾は、千島列島並びに
南樺太の割譲でございます。千島列島並びに
南樺太は、民族的にも、又歴史的にも、又
講和條約の精神から申しましても、当然
我が国に返還せられる性質のものでありまして、殊に
色丹島や歯舞諸島のごときは、終戦当時たまたま
日本の兵営があつたというだけで
ソ連に占領されたのでありまするが、聞くところによれば、
ソ連はこれら諸島に恒久的な
軍事施設を施しているとさえ伝えられているのであります。
我が国は
世界第一に人口稠密なる国でありまして、寸土といえ
ども我が国民にとりましては死活に関する重大な問題でございます。
ソ連のごとく広大な未開発地域を有している国とは全くその
事情を異にいたしておるのであります。
我が国は一平方キロ二百二十四名も住んでいるのに、
ソ連の人口密度は一平方キロ僅かに八名であります。(「ベルギーはどうですか」と呼ぶ者あり)かように人口密度の稀薄な
ソ連が、
如何なる
理由によ
つてこれらの諸島をあえて
日本から割譲せしめるのでありましようか。これらの事実に対する
ソ連の主張は、ただ
日本が
侵略によ
つて奪取したものだから、
ソ連はこれを返還せしめるのだとしか私
どもは承知していないのであります。
ソ連は我々とは主義を異にする
国家ではあるけれ
ども、少くとも
世界の
主権国家であります。又
世界の世論もかような一方的な主張を承服するはずはないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者ある)
ソ連の主張が果してかような子供だましのようなものであるかどうか。ほかにもつと、少くとも多少の根拠のある主張があるのであるかどうか。若しもかかる
ソ連の主張が基礎となりまして両島の帰属が
決定されたのであつたとするならば、我々は承服できないのであります。(
拍手)
政府としては今後において
如何なる措置をとられんとするお
考えでありまするか。この点についてお伺いたしたいのであります。(「小笠原、琉球は……これは黙
つている」「黙れ」と呼ぶ者あり)
第五に
賠償の問題であります。
戦争で迷惑をかけた国に対しましては、誠意を以て損害
賠償支拂の
原則を承認すると同時に、
我が国現在の資源を以てその経済を
維持し得る限度において
負担をするという取極に対しましては、私はこれに賛成の意を表するものであります。殊に
我が国の苦境を察しまして、金銭
賠償でなく役務
賠償を認められた
関係各国に対しましては、深く感謝いたすのであります。(「労働者の賃金はどうするんだい」と呼ぶ者あり)曽
つて第一次
世界大戦のドイツに対し天文学的数字の要求をいたしまして、支拂不能に陷れ、デモクラシー実現の要望とはまさに逆にヒツトラー政権を生みましたところの
世界第一次大戦の
賠償のことを思い出しまして、今回の措置は誠に妥当な方策であると同感の意を表するものであります。
国民といたしましては、
関係各国のこの好意に対しましては、単に物価
賠償のみでなくして、精神
賠償を以て酬ゆるくらいの心がまえを必要とするとさえ
考えるのであります。併しながらこの役務
賠償げ
負担力につきましても、
我が国の経済の現状では大いなる限度があります。
賠償という卵を生むところの鶏を殺してしま
つては卵を生まなくなりましよう。卵は生かして置いてよい餌を與えて、(笑声)そうして卵を生ませるとが賢明な策であります。(「読み違いのようですな」と呼ぶ者あり)條約
締結の
責任者でありまする現内閣は、
如何なる
方針を以ちまして
賠償問題の処理に臨まれようとするのでございまするか。総理大臣のお
考えを伺いたいのであります。(「答えられないだろう」と呼ぶ者あり)
第六番目にお伺いいたしたいのは、
講和條約の
効力が
発生いたしました後における
我が国の財政経済の
見通しと
国際関係の関連性についてであります。(「お先まつくらですよ」と呼ぶ者あり)本
国会に上程されまする補正予算の
講和会議前におきまする構想は八九百億円程度と伝えられてお
つたのでありまするが、いよいよ提出される段取りとなりますると、これが千三百億円程度に膨脹を余儀なくされておるのであります。(「なぜだ」と呼ぶ者あり)而もこの予算の中にはいささかの冗費もなく、真に必要欠くべからざる経費ばかりが計上されているのであります。併しながらこの調子で参りますると、
昭和二十七年度の予算は更に相当の膨脹の危機をはらむのではないかと予想されるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
政府が今回の補正予算で四百五億円の主として少額所得者の
負担軽減のための減税を組み込まれましたことは、機宜を得た処置といたしまして
国民各層から支持を受けているのでありまするが、来年度予算におきましては、遺家族の援護費だとか治安拡充費等の国内的支出に加えまして、
駐屯軍の
負担金、役務
賠償金、その他
講和に伴う緊急欠くべからざる諸経費が計上されるのでありまするが、
政府といたしましては、増税をすることなしに、
如何なる対策を以ちましてこの財政の調節をなされる
方針で、ございましようか、これをお伺いいたしたいのであります。(「あともう
答弁だけでたくさんだ」と呼ぶ者あり)
財政経済政策の指導
方針の
如何が
国民精神の動向に重大な
関係を及ぼすことは言うまでもないのでありまするが、特に
敗戦国において顕著なのであります。今後
日本人が
国際場裡に堂々と闊歩いたしまして、戦後
日本の経営に堪え得るような健全な
国民精神を作興できるか、又は
共産主義者とその同調者の思う壼にはま
つて、その辛辣にして而して手段を選ばざる惡宣伝によ
つて(「ははあ」と呼ぶ者あり)虚脱
状態に陷れられるか否かは、一にかか
つて講和後における
日本経済のあり方にかか
つていると思うのであります。(
拍手)今後
日本民族興亡の鍵は
日本経済運営の
如何にありと言うもあえて過言でないのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)
政府も
国民もこの点に対しまして深い認識の上に立
つて、来たるべき将来、長い間堅忍不抜の精神を以て、祖国のため、又我らの次代
国民のために働かなくてはなりません。(「不言実行」と呼ぶ者あり)
併しながらその
講和後の
国民経済生活を思うとき、決して楽観を許されません。
独立はいたしましたけれ
ども一人歩きはできないという皮肉な窮乏
状態を現出する虞れなしとはしないのであります。又
領土を約半分に減らされ、人口は逆に急増して八千四百万人が小さい四つの島に閉じ込められます結果、この不均衡が曽
つての植民地再分配論のごときものを誘致して、列国が現に警戒するような古き帝国主義が再び頭々持ち上げないという保証をどうして付けるか。更に又、かくのごとき
国家の盲点に乘じまして、
共産主義的帝国主義者の餌食としての
日本が大写しに写し出されるということはないか。私はそれを憂えるのであります。彼らは常に真空の個所を狙
つております。外より
侵略の毒牙を磨くことはもとより、内に潜む毒素が勢力を増しまして
国民独立自主の気魄を去勢いたし、健全な精神を蝕む虞れはないでございましようか。この
二つの面の危険を除去いたしまするために、
日本国民は
如何なる道を進むべきでございましようか。今こそ政治家の本当に奮起すべきときではないか。(
拍手)今こそ
政府は本当に強い決意を以て進むべきときではないか。私が
考えまするには、政治は経済に先行いたします。そこで先ず
日本の政治を安定いたしまして
共産主義者に隙を與えないようにいたしますると共に、自由
国家群の(「隙だらけだ」と呼ぶ者あり)民主主義的政治と共通の脈搏を通わせることに努めまして、層一層盟邦の
信頼と
援助を増すようにいたしまして、我が経済を自立の方向に導き、
国民生活を安定いたし、いわゆる衣食足
つて礼節を知るという境地に到達せしめる以外に途はないと信ずるのでありまするが、総理大臣はこの点に対しまして
如何なる具体的なお
考えをお持ちにな
つておられましようか。お伺いいたします。又対日
講和調印諸国との間にこれらの点に関しまして何らかの了解点に達しておられるというような事柄がございましようかどうでしようか。それも承わりたいと思うのであります。
更にもう一点お尋ねいたしたいことはアジアの問題でございます。そもそも不幸なる太平洋
戦争の渕源は
日本と
中国との間に起りました。由来
日本と
中国とは同種同文の国で、古来から政治、経済、文化等の面におきまして密接な友好
関係があ
つたのであります。それが俗にいう兄弟喧嘩をいたしましたのが即ち先般の
戦争の発端でありました。然るにその
中国はサンフランシスコの
会議に列席しておりません。又
我が国と経済上密接な
関係にありまする
インド及び
ビルマも
調印の席を外しているのであります。これは誠に不幸な現象でございます。私はこの際
批准に伴
つて大いに
アジア諸国と善隣友好の
関係を確立いたしたいと思うのであります。我が
日本は悲しむべき戦敗国ではありまするけれ
ども、而も我が
日本民族が優秀な点で
世界有数の民族であるということは私の信じて疑わないところであります。敗れたりとは申せ、我々はアジアの中堅たるべき素質を喪失はしていないのでございます。このことは、
中国の
国民政府におきましても、又
インド、
ビルマその他アジア民族におきましても負託と
信頼を
拂つておると
確信いたすのでありまするが、
日本といたしましては、西欧
諸国と
アジア諸国との仲立ちとなりまして、平和と自由の確保並びにこれら地域の繁栄を念願することが大切であると思うのであります。総理大臣は
如何にお
考えになりますか。又
政府におきましてはアジアの盟邦と固く結ぶ方策につきまして
如何なる抱負と具体案をお持ちでございましようか。これも承わりたいと思うのであります。(「吉田内閣がやめる以外に
方法はございません」「黙れ」と呼ぶ者あり、笑声)
さて私は最後に、私のすでに申上げました
考えの一部を再びここに繰返して
質問を終りたいと思うのであります。今回の両條約に関しましては国内に種々の不安が存しているのであります。その
一つはこれによりまして
戦争に一歩前進するのではないかということでありますが、先に申上げましたように、両條約は
戦争防止のためのものであると解するのでございます。次にこれによ
つて日本は半永久的にアメリカの属国化するのではないかという不安でありまするが、
政府は、これらは無用の疑惑であることが納得でき
国民一部の疑惑が十分に氷解できまするように説明を願いたいのであります。(「説明は無理ですよ」「それはできないよ」と呼ぶ者あり)もう
一つは、
講和によ
つて経済生活が困難になり、生活の水準が低下し、又折角の
日本民主化が反動化する虞れはないかという不安でありまするが、(「もう相当に反動化しているじやないか」と呼ぶ者あり)
政府は、民主主義の堅持は新生
日本の根本精神であ
つて、
国際関係上も絶対必要である。
日本はこれをますます促進すべきであるということを確約せられたいのであります。
これを以て私の
質問演説を終ります。
〔
拍手、「八百長も過ぎれば総理苦笑いか」「今の
演説そのものが反動化しているんだよ」「
答弁無用」「
答弁不能」と呼ぶ者あり〕
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕