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1951-10-12 第12回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月十二日(金曜日)    午後三時七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二号   昭和二十六年十月十二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━議長 (佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。海外旅行のため、木下辰雄君から二十日間、高瀬荘太郎君から三十五日間、新谷寅三郎君から九日間、堂森芳夫君から九日間、山田節男君から九日間、堀越儀郎君から九日間、それぞれ請暇の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつていずれも許可することに決しました。      ——————————
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。  吉田内閣総理大臣から発言を求められております。これより発言を許可いたします。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先般サンフランシスコにおいて、平和條約が三共産主義国以外の参加国との間に調印を終つたのであります。誠に御同慶の至りに堪えません。  その條約の前文において、日本は国際連合に加入し、国際連合憲章の原則を遵守し、人権を尊重し、公正な国際商慣習を尊重する意思を表明し、連合国はこれを歓迎することを明白にいたしております。日本国民自発的宣言を記録し、喜んでこれを迎えるの形をとつたことは、連合国において、日本国民の意思を尊重し、これに信頼を置く証左でありまして、この條約のよつて立つ精神を明らかにするものであります。  第一章は、戦争状態を終了し、日本の領域に対する日本国民の完全なる主権を認める旨を明らかにいたしております。  第二章は、日本の主権が四つの大きな島及び連合国の決定すべきその他のもろもろの小島に限らるべきことを定めた降伏文書第八項の原則に従つて領土の処分を規定しております。日本は朝鮮の独立を承認し、その他特定地域に対する権利権原を放棄する。これら地域の帰属が規定されておらないのは、現在、連合国の間に意見の一致をまだ見ないからであります。  第三條に規定する北緯三十八度以南の南西諸島については、合衆国を施政権者とする信託統治の制度の下に置く可能性を規定し、同條は、第二條のごとく、日本の権利権原の放棄を明記いたしておりません。これらの諸島に対する主権が、即ち日本に残るのであつて、サンフランシスコにおいても米英代表が明言したところであります。  第三章は安全保障に関する規定であります。日本は、国際連合憲章第二條の原則に従つて行動すべきことを約束し、同時に、連合国においても日本との関係において同樣の原則の下に行動すべきことを明らかにいたしております。日本が直ちに国際連合の一員となることができるならば、この規定の必要はないのでありますが、大国による拒否権の行使のため資格ある諸国の国連加入が妨害されておる事情から、日本が安全保障の面において連合諸国とこのような関係に立つことを明記する必要があつたのであります。同時に、日本が主権国として国連憲章第五十一條にいう個別的又は集団的の自衛権を有すること及び日本が集団的安全保障取極を自発的に結び得ることが明らかになつております。なお、ポツダム宣言の第九項で約束された帰還未了日本軍人引揚実施の事務を更に確認明記いたしております。  第四章、貿易及び通商の規定は永久的な差別待遇を排除し、日本の経済は何らの制限を受けない旨を明らかにいたしております。通商航海條約締結前、四年の暫定期間中、連合国民は、互恵的基礎において関税に関して最恵国待遇経済的活動について内国民待遇を受けるのであります。  第五章、賠償及び財産に関する規定において、日本が連合国に対し損害賠償支拂の原則を承認すると同時に、日本の現在の資源を以てその経済を維持し得る限度において負担する、即ち賠償の限度を規定いたしておるのであります。日本軍隊の占領によつて損害を受けた連合国に対し、日本人の役務を提供することによつて賠償をなすべきことを原則といたしておるのであります。ダレス代表は、この規定を以て、「正しい請求権に対しては、精神的満足を與え、太平洋地域における健全なる政治及び経済と両立し得る物質的満足を最大限に與える解決策と申してよい」と言い、又、「日本は現在遊休労働力遊休工業力とを有しておるが、原料の不足のためこれを活用できないでいる。従つて、戦争で荒廃したこれらの東洋の国々が、豊富に持つている原料を日本に送るならば、日本人は、原料供給国のため加工することができ、その上、日本人の役務が提供されれば、相当の賠償を支拂うことになるであろう。取極には、消費財のみならず、機械及び資本財も含まれ得るであろうし、これによつて未開発国はその工業化の速度を早め、外国への工業上の依存度を軽くし得るであろう」と述べているのであります。  第六章は紛争解決についての規定であります。  第七章は、批准、條約効力発生等の規定でありまするが、第二十六條はこの條約に署名しなかつた国と日本との間に後日締結せらるべき二カ国間の平和條約の締結についての規定であります。中国については、連合国間にその代表政府に関して意見の一致が見られなかつたために、さりとて連合国間の意見が一致するまで対日平和條約を延期して日本の自主独立回復を遷延せしむることができないため、後日、日本と中国の間にこの條約と同樣の平和條約を締結する途を開いておるのであります。  トルーマン大統領は、歓迎の辞において「この平和條約は、過去を振り返るものでなく、将来を望むものである」と言い、又、我々は、新日本が豊かな文化と平和に対する熱情とを以て国際社会にもたらすべき貢献に期待する。この貢献は年と共に増大するであろう」と述べられております。ダレス代表も又、「この條約が、戦争から勝利、勝利から平和、平和から戦争へと歴史上繰り返された惡循環を断ち切らんとするものであり、復讐の平和ではなく、正義の平和である」と言つております。又ヤンガー英国代表は、「英国は伝統的に日本と利害を共通にし、日本国民に友情を持つておつた。この伝統は不幸過失二十年間の出来事によつて破られたが、今や日本との従前の友好関係を取り戻し得べき時期に達したのである。英連邦日本軍残虐暴行を決して忘却するものではないが、この條約によつて連合国は、敵国に未だ曽て與えられたことのない寛大な條約を日本に與え、日本が自由と平和を愛好する諸国家の社会において、正当なる地位へ復帰するよう日本を援助するものである。日本のために多幸を祈る」と言われておるのであります。これらの論調は、サンフランシスコ会議において、対日友好的感情を最もよく表明せられたものと存じまするから、ここに諸君に御報告いたします。  若干のアジア諸国は、日本の戦時中の残虐行為戦災等によつて生じた損害に対する賠償の履行を要求し、又米国、カナダ、濠洲その他の諸国は、日本の漁船による濫穫等の既往の事跡に顧み、魚族保護のために漁業協定の迅速なる締結を希望し、更に、或るものは、日本の将来について、再侵略、軍国主義の復興乃至通商上の不当競争に対する危惧を表明いたしております。  私は、各国代表意見陳述の後、所見を開陳する機会を與えられました。私は、日本が先ず以て欣然この平和條約を受諾するものであることを明らかにし、領土、経済、未引揚者等平和條約について、日本国民として陳述すべき所論を率直に述べると共に、今日の日本政府はすでに昨日の日本にあらず、国際連合憲章の精神と人権尊重の上に立つて、列国と共に、世界の宇和と繁栄のため相協力して、その恵沢を共にせんとするものなることを演説いたしました。けだしこれは国民諸君の意を体するものであると、みずから信じたからであります。(拍手)  戦争による損害賠償の義務は当然のことといたしましても、近代戰における敗戦国が、かような義務を完全に途行する能力のないことは明白であります。故にダレス代表は、全関係者を裨益する経済的仕組の中に正義の理想に奉仕する方式を主張せられ、日本はこれを受諾いたしたのであります。然る以上、日本は誠意を以てこれが履行に当るべきであります。この趣意は、私の受諾演説においても明らかにして置きました。これに伴う国民諸君の負担が重かるべきことは否定いたしませんが、我が日本国民の愛国心と信義に徹する我が国民的性格は、この條約の義務を負うに異存なしと私は信ずるものであります。漁業問題についても同樣であります。  一部の代表が表明した平和克復後における日本の通商上の競争に対する危惧の念は、私の意外に感じ、又容易に納得し得ないところでありました。受諾演説においても言及いたしました通り、領土の喪失、資源の不足、戦争によ国土の荒廃、船腹の喪失、機械設備の損耗、更に今後誠意を以て履行せんとする賠償の負担など、経済的にあらゆる不利な條件を担つている敗戦日本に対し、他国が今なお経済的脅威を感ずるというがごときは、私の全く了解のできないところであります。反我が国労働條件につきましても、トルーマン大統領及びダレス代表が、その演説で強調せられた通り、占領下に断行せられた改革により、世界の最高水準を行く労働法制を整備しておるのであります。余りに理想に過ぎて、我が国情に適せずとまで考えらるる、前例にも少きほどの高度の労働基準を設定しておるのであります。而も平和條約において、日本は公正な国際商慣行を遵奉すべきことを誓約いたしておるのであります。然るになお我が貿易の海外進出を恐れ、我が自由活動を制限せんと欲するの色あるは、ますます私の了解し得ざるところであります。  グロムイコ・ソ連代表は、日本の軍国主義の復活の防止が平和條約の締結に当つでの主要な仕事でなければならないにもかかわらず、この條約には如、何なる保障も含まれていないと評し、十三項に亘る修正案を提出いたしました。これに対してダレス代表は、「ソ連代表は日本における民主的傾向を阻害すべからずと言うが、ソ連のいわゆる民主的傾向とは共産党のことであり、従つて日本における共産党の破壞的活動を阻止すべからず、即ち内部から日本を無防禦にする狙いである。(「ノーノーノー」と呼ぶ者あり」)ソ連の日一本に許す軍備は名目に過ぎないのである。ソ連は軍備を認めて、集団安全保障の利益を拒否しておるのである。日本をめぐる四つの海峡が、日本海に面する国の海軍、現実にはソ連の海軍にだけ通航を許されるというがごときは、対内的にも対外的にも、日本を無防禦のままにして置き、近隣の強い力の犠牲にしようとする意図が露呈暴露せられておるのである」と反駁せられたのであります。條約は、我が主権に何らの拘束も加えておりません。従つて日本がみずから軍備を待つ途が平和條約で閉されていないのでありますが、現実に日本としては、近代的軍備に必要な基礎資源を欠いており、再軍備のためにこの上の増税は、国民のよく堪え得るところではないのであります。更に、今日の日本は未だ戦争の傷手から癒えず、軍国主義国家主義の再現への警戒は、今なお決して怠つておりません。かかる事実を前にしてソヴイエト全権我が国における軍国主義復活云々と言うがごときは、全く根拠なき宣伝であります。  日米安全保障條約は平和條約と同日に署名されました。これによつて独立回復後の日本の安全について一応の保障を得るに至つたのであります。国内の治安は無論自力を以て当るべきは当然でありますが、外部からの侵略に対しては集団的防衛の手段をとることが、今日国際間の通念であります。無責任なる侵略主義が跳梁する国際の現状において、独立と自由を回復した曉、軍備なき日本が、他の自由国家と共に集団的防衛の方法を講ずるのほかなきことは当然であります。日本が侵略主義の圏外に確保せらるることは、取りも直さず、極東の平和、延いては世界一の平和と繁栄の一前提であるのであります。これが日米安全保障條約を締結するに至つた理由であります。  今日なお中立條約を以て我が独立を守らんと唱道する者がありますが、日本をめぐる国際情勢上、日本の中立について関係列国の間に合意ができるとも考えられず、又仮に中立尊重の約束をなしても、その約束に信をおき得ない性格の国があることをも忘れてはなりません。他方、国際連合による一般保障に活路を求めんとする者がありますが、国際連合世界最大の、又最高の安全保障機構でありますが、欧米列国といえども、国際連合の保障に加うるに、補足的安全保障体制を現に整備しつつある現状であります。平和條約後における日本の安全保障の途として、平和愛好国との集団安全保障、即ちこの際は日米條約による以外に方法なしと私は存ずるのであります。(拍手)  安全保障條約の実施のために必要な細目は、今後両政府間に交渉して取り結ばれることになつております。その内容は将来決定さるるところであつて、国会に対しては、交渉が成立し、所要の予算又は法案の審議を求める機会において、その内容は十分説明いたしたいと存じます。この條約による安全保障は、條約自身が規定しておるように暫定的な措置であります。日本の永久的な安全保障の途をどうするかは、独立回復後において政府及び国民が独自の見地に立ちて愼重に考慮の上決定すべきものであります。  南西諸島の処理について、今なお国民諸君の一部に不満の声を聞くのでありまするが、日本は昭和二十年八月十四日に無條件降伏をし、領土の処分を連合国の手に委ねたのであります。勿論連合国がその最後の決定をなすに当つては我が国民の感情に副うよう最善の努力がなされた結果到達されたものであります。国民の一部が今なお釈然たらざるがごとき言動をなすことは、その心情は諒といたしますが、外、連合国の好意と理解に応えるゆえんでもなく又ポツダム宣言を敢然受諾した我が国として、当時の態度から考えまして、我が威信にも関係いたすと存ずるのであります。又日米両国親善関係の樹立を妨げんとする惡意の策動に乘ぜられるゆえんともなるのであります。国民諸君が冷静に事態に対処して、米国政府の善意に信頼を置かれ、これら諸島の地位に関する日米両国間の協定の結果を待たれるよう希望いたします。  平和條約の内容について、国民としては種種望むことが、なお、あるでありましようが、歴史上前例のない公正な平和條約を得たことは、既往六年間敢然として降伏條項を履行して来た日本国民への信頼と期待がもととなつておるのであります。この條約に宜明せられた日本の意思及び條約義務の完全な遵守履行に今後最善の努力を傾けつつ、国民全体が協力一致して祖国の再建に邁進せられんことを切望いたすのであります。(拍手)  アチソン議長は、その閉会の辞におきまして、「日本の友人に」として「世界における平等と名誉と友好への大道に横たわる障害は、連合国の手で取り除き得る限りのものは、すべて取り除かれた。残りの障害は日本国民諸君のみが取り除き得るのである。諸君が理解と寛大と懇情とを以て他の諸国と行動せらるるならば、それは可能である。これらの性質は日本国民の本性のうちにある。」と述べられたのであります。日本が世界において平等と名誉と友好の大道を邁進するや否やは、一に国民諸君の自覚と奮起とにかかるものであるのであります。  私は、関係各国が進んで平和條約と日米安全保障條約の批准を了し、日本の完全なる独立が一日も速かに実現するために、我が国会においてこの両條約の迅速なる審議と承認を希望いたしてやまないのであります。(拍手)  財政について述べますが、平和条約に基いて今後我が国財政経済上の負担となるべき事項として、賠償、外貨債の支拂、連合国財産損失補償等のほか、対日援助費の処理、防衛費分担等、今後の経済に重大な影響を及ぼす問題は少くありません。これら條約に基く諸問題については、政府として誠心誠意その処理に当るは勿論、一方我が国経済力の現況から見て、これらの負担が国民の生活水準に重大な圧迫を加えることのないように万全の努力をいたす考えであります。  補正予算について。今後、今国会に提出する昭和二十六年度補正予算において、従来の健全財政根本方針を堅持すると共に、最近における主食等の値上げに基く生計費の増加に応じて、所得税の負担の適正化を図り、更に公務員の給與の改善を図る考えでおります。産業の回復促進のため必要な資金の確保についても配慮を加うる考えであります。  行政簡素化について。すでに一昨年相当規模行政整理を断行いたしましたが、未だ行政機構及び人員が、戰前に比較いたしますると、昭和七年の公務員が五十九万人であつたのに対し、現在百五十二万人であるというように顕著な増加になつております。よつて、この際、我が国の国力に適合すると共に、近代文化国家の運営に真に必要な簡素強力な行政内容を基礎として、これを能率的に運営するにふさわしい機構と人員にいたしたいと考えておるのであります。これがため先ず事務の簡素化を図り、且つ人員についても現定員に対し十二万人程度を来年の一月一日より六カ月間の期間に整理することとし、これが実施のため必要な法律案を本国会に提案すると共に、政府関係機関については所要の予算上の措置を提案する所存であります。なお、本整理による退職者については財源の許す範囲内で退職資金の支給に考慮を加える考えでおります。その失業対策としては、でき得る限りの又手段を盡す考えであります。なお、政府としては、国会、裁判所、会計検査院等独立機関についても、他の一般行政官庁に準じて人員の整理を断行するよう希望いたします。  地方財政について。政府は地方行政の改革について、中央の行政改革に対応し、只今具体案を検討中であります。  食糧問題及び農林、水産について。食糧事情は今や安定した状態となつたのに顧みて、政府は速かに現行の主食の管理統制制度を撤廃する方針を決定いたしました。よつて今後農林水産業生産力の増強を図りたいと存ずるのであります。(拍手)
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今国務大臣演説に対し質疑の通告がございますが、この質疑次会に譲り、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会議事日程決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、日程第一 国務大臣演説に関する件