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参考人(
難波勝二君) 私は
銀行協会の
難波でございます。大変遅くなりまして申訳ございません。
会社更生法案に関しまして若干
意見を申上げたいと存じます。この
法律案は
裁判所の高邁な見識の下に、人格、手腕、
力量ともに優れた
管財人の
指導によりまして、それから
会社の
債権者、
会社の株主、これらの互譲の精神によりまして行われるものでありますが、現在の我が国の
経済事情から申しますというと、この
法律案の
趣旨には首肯し得られるのでありますけれ
ども、これを今直ちに
実施するということには時期尚早であると言わざるを得ないのであります。例えばこの
手続は
更生債権者、特に
担保権者の譲歩によりまして
会社の
更生を図るものでございまして、これを
金融機関の
立場から見ますというと、
資金の
貸出に当りましてはどうしても
愼重にならざるを得ないのであります。特に
経済情勢の移り変りの激しい
現状におきましては一層
愼重を期することとなるものと
考えられまするし、そのことは
たださえ
資金のとかく不円滑である
現状におきまして一層円滑を害する慮れがあると言わなければならないと思うのでございます。
それから
更生手続は
裁判所の監督の下に行われるものでありますが、その判断には
法律的な
知識ばかりでなく、
企業の将来性など広い
経済的な
知識を要するものでありまして、その上に
只今も申上げましたような
経済変動の激しい時でございますから、その
経済変動に即応ずる迅速な処理が望まれるのでございまして、それには
裁判所の
機能の強化ということがなくては円滑なる
運営を期し
がたいと思うのでございます。
それから
更生手続の
実施は事実上
管財人の手腕なり、
力量によるものでありまして、
管財人に
適任者を得ることはむずかしいと思われるのであります。この
適任者が得られなければ円滑なる
運営が望まれないのでありまして、
現状におきましてはかような
適任者を得るということは相当困難があると言わなければならないと思うのでございます。以上申上げましたような理由から、
冒頭に申上げました
通り、本
法案の
実施は、これらのいろいろな
事情が改善されました後にされることが望ましいのでございます。
以上がまあ大体総括的な本
法案を
実施するのはまだ時期が早いと思われるということを申上げたのでございますが、それではこの
会社更生法案を改正するとしたならば、我々の
考えるところではどういうところであるか、どういうところを改正したらいいかということにつきまして、
意見を申上げたいと思います。この点はなお我々の
研究は十分でございませんので、取りあえず気の付いた点を申上げる
程度でございますので、あらかじめ御了承を願いたいと思います。
一つは
裁判所の
機能を強化しまして、そうして
事務の
迅速化を図るということでございます。
更生手続が
開始されました後、九ヵ月以内に
更生計画の
認可が
決定されないというときには、
租税債権者が
滞納処分を執行いたしまして、
更生計画の立案が困難になるという虞がありますから、九か月以内に
更生計画の
認可が
決定されるように措置することが望ましいのであります。それから
更生計画案を作成する組の
分類の点でございますが、組の
分類に当りまして
更生担保権者につきましては、これを法文上
分類を明確化すると同時に、
先順位担保権者の地位を保護するということであります。第三は
更生手続の
開始後に発生した
債権が保護されることを明確化するということであります。それから第四には
租税には優先する
担保権者につきましては、
国税徴収法第三條の
趣旨を明記するということであります。それから第五には
租税債権者が
更生計画の
認可決定前に
質権又は
抵当権の設定せられたる
財産を差押えますときは、
収税官吏は
滞納処分費それから
税金額その他必要と認める事項を
管財人に通知するものとすることであります。第六には
更生計画の遂行中に
手続廃止の
決定がありましたときは、一旦消滅した
担保権等を第三者の
権利を害しない範囲におきまして復活せしめること。
以上のような点が我々
金融機関といたしましては本
法案の改正すべき点だというふうに
考えている諸点でございます。私の申述べることは以上の
通りでございます。