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1951-10-29 第12回国会 参議院 法務委員会会社更生法案等に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十九日(月曜日)    午前十時三十三分開会   ――――――――――――― 昭和二十六年十月十一日法務委員長に おいて小委員を左の通り指名した。            伊藤  修君            齋  武雄君            岡部  常君            鬼丸 義齊君            一松 定吉君            須藤 五郎君 同日法務委員長は左の者を委員長に指 名した。    委員長     伊藤  修君   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員            岡部  常君            鬼丸 義齊君            須藤 五郎君   政府委員    法制意見参事官 位野木益雄君   事務局側            長谷川 宏君            西村 高兄君   参考人    弁  護  士 毛受 信雄君    早稻田大学教授 大浜 信泉君    朝日信託銀行株    式会社社長   池田 謙藏君    野村証券株式会    社調査部長   竹村幸一郎君    日魯漁業株式会    社株式課長   三戸岡道夫君    関東電気工事株    式会社取締役総    務部長     山本 淳一君    東京地方裁判所   民事第八部判事  小川 善吉君    三菱商事株式会    社顧問     稻脇修一郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○会社更生法案内閣送付)(第十一  回国会継続)   ―――――――――――――
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは会社更生法案等に関する小委員会をこれより開くことにいたします。  本日は本法案に対しまして各界代表者かたがたの御意見をお伺いするために、関東電気工事株式会社取締役総務部長山本淳一君、日本労働組合評議会事務局長高野實君、三菱商事株式会社顧問稻脇修一郎君、日魯漁業株式会社株式課長三戸岡道夫君、野村証券株式会社調査部長竹村幸一郎君、朝日信託銀行株式会社社長池田謙藏君、東京地方裁判所民事八部判事小川善吉君。早稻田大学教授大浜信泉君。弁護士毛受信雄君。以上のかたがたの御意見をこれから伺うことにいたします。  本日御多忙中御出席を願いまして会社更生法案に対しまして各界のおのおのの御立場から忌憚なき御意見をお伺いいたしたいと思う次第であります。御承知通り本法は第十一国会に提案されまして、爾来当院におきましては継続審査いたして、本国会においてこれを審議いたしておる次第でありまするが、本法は先に商法の施行に伴いその一環とも申すべく、ここに会社更生法アメリカのシステムに倣つて立案されたものであります。この法案の持つところの意義というものは、日本経済界に及ぼすところの影響はかなり重大なものと考えられるのですが、本法案は非常に厖大でもありまするし、いろいろ各界において実際上の御意見もあり得ることと存じますから、我々といたしましては、皆様の御意見を十分お伺いいたしまして、本法審議参考の資料に供したいと、かように存じまして皆様の御出席を煩わしたような次第であります。どうかその意味におきまして各参考人かたがたの十分な御意見をお述べ願いたいと存じます。先ず毛受信雄君から御意見一つ御開陳願いたいと思います。
  3. 毛受信雄

    参考人毛受信雄君) これは質問書というのでもないのですが、御通知の中に更生法問題点として拔萃した項が十五項目かあるのですが、これについて一々意見を申上げるのですか。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、それは我我としては大体本法厖大でありますから、問題になり得るような個所を参考に指摘したにとどまつて、その中の一つ二つをお述べ願いましても、その余のことをお述べ願やましても御自由であります。ただ我々の参考としてお手許に差上げた次第であります。
  5. 毛受信雄

    参考人毛受信雄君) 日本弁護士会では一応この法案についても検討いたされまして、一応の意見ができておるようでありますが、私はその調査のほうに関係をいたしておりませんでしたので、連合会意見としてでなしに、お招きを受けました弁護士としての私の意見を申上げるつもりでございますから、さよう御了承願いたいと思います。  この法案を通覧いたしまして一番感じますことは、非常に手続が詳細にきめられておる。そうして裁判所職権が非常に強力に規定されておる。手続が詳細にきめられるということは、この種の法案について公正にして公平な妥当な結論を見出すという点において止むを得ないと思うのでありますが、併しながら相当細かい点まで規定されておりまして、この手続法律規定従つてつて行くということを考えますと、相当な時間がかかる、これは会社更生のようなまだ破産になつてしまつたのではない、整理の段階に来たのでなくて、将来更生の見込のある会社が一時的に閉まつておるというのを更正させるための法案として考えて見ますと、実際の必要に果して応ずるかどうか、期間的に考えましても、調査委員調査、それから債権調査、それから計画案の作成、それの認可決定、そんな手続、最小限度必要な期間考えましても、少くとも半年はかかる、ときには一年、二年を要するかもわからないと思うのです。かようなことで果して必要とする会社更生というものができるかどうか、実際の事情に合うことができるかどうか、そういう点にいささか疑問を持ちますのと、裁判所に非常に強い職権を與えられておりまして、申立によらないで職権発動をする機会が非常に多い、それから必ずしも申立に拘束されなくて独自の見解で処理する場合も重要なことになつているようでありますが、かような強力な職権裁判所に持たせることが果して実情に即するものであるかどうかということについて一応疑問を持つのであります。こんな関係者の複雑な事態を公平に判断して行くという能力について、裁判所能力を疑いませんけれども、会社更生というような実際の社会活動産業活動相当密接な関係があり、産業経済の方面に相当な知識、将来の経済界の動向というようなものについても、やはり相当考えのある人でなければ処理できないような事項まで、裁判所判断に任せるというようなことになつておるということは、現在の裁判官能力考え相当無理な点があるのではないか、こういうように考えられるのでありますが、併しさればとてそれを誰に判断させるかという最後の問題になりますと、やはり適当な者が考え及ばないのでありますから、これは裁判官判断をさせるということの建前は反対するわけには行かんと思いますが、可及的に職権発動制限するということが必要ではないかと思うのであります。それから会社更生のための一番重要なことは、この事業経営しつつ更生を図つて行くという建前から考えますと、この経営の中心におる人を得るということだと思うのでありますが、人を得さえすれば手続にいろいろな詳細なことが規定されなくても、その人を信頼して若し債権者にしても、株主にしても、或いはその他の関係者にしても、その人に対する信頼というものがあれば、相当話合いでうまく解決して行くのに、人を得なかつたら如何に公正妥当な手続でやろうとしても、結局更生というものができ上らないという傾きのあることは申上げるまでもないと思うのでありますが、管財人の選任というような問題についても、法案としては相当な問題があると思います。  それともう一つ、大体概論として申上げるのでありますが、大体我が国の現在の法制の上で、商法中にも会社整理というものがある。それから破産前の手続として和議法というものがありまして、やはり本法案とその目的一つにして会社整理して更生させる目的で作られている制度というものがありますのに、それと全然離れて会社更生法というものを新らしい構想の下で、ここで急遽施行する必要があるかどうか。和議法会社整理などを統合した一つ法案を作つて行くことが、法律制度の上では必要ではないかというようなことを一般論的には考えておるのでありますが、併しこういう更生法の必要であるということについては、私も異存はないのでありまして、こういう更生法を作るというそのこと自体異存はないのでありまして、若し作るとすれば、さてこの法案内容についてどういう点にいけないところがあるか、その点はこれでいいかということになりますと、御質疑の中にあります点で二、三申上げたいこともありますから、そのほうに話を移して参りますが、本法案の中で私が最も反対しなければならない事項一つは、物上担保権がこの法案では多数決原理によつて消滅してしまう。物上担保権担保権によつて保証されておる債券の回収ということにそういう信頼がなくなり、多数決原理によつて消滅せしめられる会社更生建前物上担保権犠牲にされることは止むを得ないという考えの下に立つた規定だと思うのでありますが、これは従来の法制にはないのでありまして、担保権担保権があるからこそ、その物上担保権信頼の上に金融がつけられておつたのに、若し将来こういう更生手続の上で担保権というものも実を失つてしまうのだということになれば、担保権者のために非常な損害をこうむるのみでなしに、将来事業経営という上に金融を得る途が断たれるというようなことができて来るのではないか。従来担保権というものは破産手続にいたしましても、和議にいたしましても、物上権によりまして強力に保護されておつたその伝統を破るということは、それは更生のためであるだけの理由では私はできないものではないかと思うのであります。ただ物上担保権によつて保証されろ債権支払時期を猶予するくらいの態度であるならば止むを得ないかと思いますが、担保権というものが根本からなくなつてしまう、こういう考え方は特に排除しなければならない点ではないかと思うのであります。尤も物上担保権がなくなるというても、物上担保権者の四分の三以上の同意がなければならんということで相当制限はされておるのでありますが、それにしても四分の一の物上担保権者というものが損害を受けることになりますし、殊に私反対しなければならんのは、二百十七條の共益債権は、更生債権更生担保権に先だつて弁済しなければならん、共益債権というのは、更生手続始つた後に金以外に生じたいろいろな債務、殆んどすべてを含むようであります。管財人事業経営した、その事業経営から生じた債務までも共益債権として扱われておりまして、その共益債権弁済更生担保権に先だつて弁済されるということになれば、裁判所の厳重な監督の下で業務を経営しておるとは言いながら、併し事業経営でありますから、相当債務の負担を継続することができるのでありまするが、そういう債務担保権に先だつて弁済されるということになれば、更生手続相当長年に亘つて行われて、事業経営をしておるのに、新らしい債務ができたために古い担保権が全部なくなつてしまうという危険性が生じて来るのではないかと思うのです。それらの点はやはり担保権を存続するということで私はやつて頂かなければならんと思う。更生ができて、そうして会社更生するということは無論いいことには違いありませんけれども、担保権犠牲にしてまで更生をさせなければならないかということは大きな問題であると思います。  それから次の第十二にあるのでありまするが、「会社財産事業継続するものとして評価して清算したものと仮定した場合において債権弁済又は残余財産分配を受けることができない、更生債権者又は株主更生計画から除外することができるとしているがそれでよいか。」、これらを簡單に申上げますけれども、「更生計画から除外する」というのは、決議権もないし、権利も全然否定されてしまう、弁済の途がなくされても止むを得ぬということになるかと思うのでありまするが、これは会社事業なり、財産なりの関係債権者満足を得られないということは、これは止むを得ないかも知れませんが、併し更生計画に対して決議権まで否定してしまう。これが実際に財産が足らないのであるならば、権利関係が何もないのでありますから止むを得ぬのでありますけれども、一応仮定した評価のその仮定の上に立つてのことでありますから、やはり決議権ぐらいは認めておくのが正当ではないかと、こう思います。これに関連いたしまして百二十九條を見ますと、会社破産すべき原因がある場合には、株主議決権は否定されております。破産原因たる事実があるときは、会社財産を以て会社債務弁済することができない、完済することができない場合は、破産原因たる事実がある。併し株主としてそれでは残余財産が全部もらえないかというと、残余財産が半額に当るものがあれば半額は残余財産分配に興り得る。そういう場合にも株主議決権を全然取つてしまつておる。それは只今の更生債権者と同様の決議権を、こういう場合に株主に対して認めるべきではないか、こう思うのであります。  それからもう一つ重要な問題は、御質疑の第十五にあるのでありますが、計画案が、更正債権者、或いは株主の各分類された関係人集会で、或る組が他の組の同意を得られなかつた場合に、その組に属する者の権利を保護する條項を定めて、裁判所計画認可決定をすることができる、これは如何にも法案を見ますと、裁判所がみずからその対案をきめて、そうして認可するということになつておりまして、その対案について更に関係人集会決議を要するかどうかというようなことが全く不明なのでありますが、これは立案者の説明を聞かなければわからんのでありますが、これは法案自体を見ますと、裁判所はみずから変更して計画認可決定をすることができる。その変更した計画について、何か又関係人集会同意を要するというような規定がはつきりいたしておりません。これでは裁判所の独断で計画立案するという結果になつて、この法案が所期しておるみんなの協議で更生を図つて行くということから大分外されておるように思うのでありますが、これは私の思い違いかも知れませんが、或いは関係人集会の更に決議を要するのかも知れませんが、私の見たところでは、法案にはそういう條項がないように思います。これはやはり更に関係人集会決議を要すべきものというふうに改めらるべきものではないかと思うのであります。  それから御質問の中にはなかつたのでありますが、百二十二條に、国税その他の税金については徴收者同意がなければ何ともできないということになつておりますが、現在の各会社の状況から見ると、如何にも税金相当過重であるために会社の運営がうまく行かないという事態がしばしばあるのでありますが、この税金徴收者同意が得られなければ何とも手がつけられないということでは、更生計画立案並びに遂行に非常に障害になるということが予想せられますので、いろいろと税を免除するとか、減額するというようなことは国の財政の上から言つても、無論困難なことでありましようと思いますが、これは少くとも税を徴収して行く或る一定期間、或いは一年とか二年とか、あらかじめ許し得る一定期間内は徴收猶予ができる、更生計画においてこれは徴收者同意を得なくても、特別の同意を得なくても関係人集会でそれぞれの手続に付するわけでありますから、そういう手続を経れば徴収の猶予ぐらいは、而もそれは無制限というわけには行きませんが、或る一定期間を限つて猶予するというくらいの規定はあるべきではないかと考えるのであります。私が気が付きました点は大体以上でございます。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは毛受君に対する質問は一括してお願いすることにいたします。次に大浜信泉君の御意見をお聞きいたします。
  7. 大浜信泉

    参考人大浜信泉君) 目下審議の途上にあります会社更生法案について意見を述べるようにということでありますが、すでに十五ほど具体的な問題が御指摘になつておりますので、それらの点について順次簡單に申上げたいと思います。  第一は、この法案に盛られておるような内容法律の制定をする必要があるかないかということであります。結論を先に申上げますというと、私はその必要性を認めるものであります。およそ会社資産債務とのバランスを失し、或いは当面の債務を完済すること、弁済することができないというような財政資金の行詰り、窮境陷つた場合に、まあ立法考えなければならん点が少くとも三点あるのではないかと、こう考えるのでありますが、第一点は債権者の平等ということで、どうせ現在の資産だけでは全部の債権者満足は得られませんから、これを成行きに任せますと、どうしても早い者勝になつて、寛大な正直な債権者が損をするという不公正が起りますので、そういうことのないように、適当な措置を講ずるという点であります。まあ破産法和議法は大体この点を狙つた法律だと理解いたしますが、第二点は、この会社財産を評価し、買却するに当つても、これを解体してばらばらにして処分するのと、この企業目的に沿つて有機的に組織された全体として処分するのとでは、まあ格段の相違があるわけでありまするが、どうしても会社財産を処分して弁済に充当しなければならんという羽目に陷つた場合でも、できる限りこの企業継続できる態勢のままで処分する、いわゆるゴーイング、コンサーン・ヴアリニーというものを確保し、その担保価値を実現するということが必要のように考えられるのであります。  第三は企業維持の要請でありますけれども、企業はそれに対する投資家並びに債権者利益追求の場であるばかりでなしに、多くの人に職場を與え、生活の資源を供給しておるという点、更に財政的に有用な機能を果しておるという観点から見て、やはりでき上つた企業というものは成るべく潰さぬようにするという社会的の要求があるのではないかと、こう考えられるのでありまして、そこで今申上げましたこの第二、第三の点を考慮しまして、すでにまあ和議法株式会社につきましては会社整理という点が法案化されておるのでありますが、併し和議法にしろ、この会社整理というものにはやはり一定の限界、枠がありまして、本当に行詰つた会社を大きな手術をして建て直しをするという点には、ちよつと不便があるようでありまして、この会社更生法はそういう場合に思い切つた手術をして、建て直しができるという途を開くという意味において、非常にいいところを狙つておる法律だと考えるのであります。これは恐らく英米のリオガニゼーシヨンの制度を模倣したものであり、殊に具体的なものはアメリカの一九三三年の連邦破産法の第十章、第十一章の規定参考にとつて立案されたものではないかと、こう思いますので、非常に適切な立法であろうと考えるのであります。第二点は更生手続開始事由でありますが、本案によりますというと、二つあるわけでありまして、この事業継続に著しい支障を来たすことなしに、当面しておる債務弁済は不可能であるという場合と、破産原因たる事実が生ずる慮れがあもときと、この二つの場合を挙げておるのであります。なかんずく更生手続におきましては、会社窮境陷つた原因、即ち失敗原因というものを調査し、それが更生余地、並びに価値があるかないかということをまあ診断した上で、そうして厚生の策を講ずるというのがその狙いであります。そこでその前提としまして、どういう場合に財政的な行詰りというものがあるのか、それを診断する一つ目安というものが必要になるのでありますが、その目安といたしましては理論上二つあるというふうに論ぜられておるようであります。第一は、今当面しておる債務支払に窮した場合、第二は、計算上資産と負債とがバランスを失しておる、いわゆる債務超過陷つたこの二つの場合であろうと思うのであります。この法案は大体更生手続開始事由として、この二つの点を狙つておるように理解できるのでありますが、それをもつと的確にするために、「事業継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務弁済することができないとき」及び「破産原因たる事実の生ずる虞があるとき」というふうに規定してあるわけで、大体その狙い化しては正確であります。或いは他に表現の工夫があるかと思います。大体においては実質的においてはこれでいいのではないかと思います。それから第三は、この更生手続本案によりますというと、株式会社だけを対象としておるけれども、他の会社にもこれを適用する必要はないであろうかということが提示されておるのでありますが、結論としまして原案通りでいいというふうに考えるのでありますが、先ほど申上げましたようにまあ更生手続失敗した会社について失敗原因を探究し、それの更生の途を講ずる必要なり余地があるかということを確かめた上で更生措置を講ずるわけでありますが、これは相当まあ複雑な手続を経ますので、又そういう手続を経ても更生の途を講じ得る余地があるということでなければやはり実益がないわけであります。その観点から考えますというと、合名会社合資会社のごとき、いわゆる人的会社は元素は社員が極く少数でありますし、又社債発行ということをいたしませんから、債権者というものも大体において取引上の債権者に限定される、利害関係者範囲というものが極めて少数であり、且つ固定的になつて絶えず流動するということとは違うのであります。なお他面考えなければならんことは、更生計画をいよいよ立てるということになりますと、資本の減少だとか、或いは負担しておる債務についてはそれを削減するとか、据置するとか、或いは出資に振り向けをするというような措置を講ずる必要が起ると同時に、更に堅実な基礎の上に建て直して、更に活溌に企業活動ができるという見通しをしなければならんのでありますが、そのためにはどうしても新らしい資金獲得の途というものを講ずる必要があるわけであります。併しそういう観点から見ますというと、どうも合名会社合資会社のようなものは利害関係者というものが極く少数でありますから、更生の案というものは法律で強制しなくても、或いは面倒な型のきまつた手続というものを設けなくても関係者話合いでできると考えられますし、更にそういう会社について新らしい金融の途を講ずるということも、これもなかなか困難なことであるので、どうもそういう会社更生手続には適当でないというような感じがいたします。株式会社でありますと、御承知のように株主の数が非常に多いし、社債発行することが多いのでありますから、関係者が非常に多くて、而も株式社債権というむのが流動性があるものでありますから非常に流動的である。であるからそういう錯綜した複雑な権利関係を調整しようとなると、どうしても法律上或る程度の強制手続が必要になりますし、なお建て直しをするには新らしい資金獲得の面から見ましても、株式会社でありますというと、更生した会社が新らしく株式発行するとか社債発行するとかいうようなふうで、その途が開けるのと、法規的の経理の取締が株式会社は非常に厳重でありますから、金融機関においても比較的金融的に援助をなし得る法律上の途があるので、更生手続というものが適当なものになると考えるのであります。有限会社はまあ組織の技術は大体において株式会社と揆を一にしておるのでありますけれども、これも社員の数というものは五十人に限定されて、小範囲である、而も持ち分の量というものは自由でありますが固定的であるということ、社債発行というものを法律上禁止されておりますから利害関係者範囲は非常に小範囲である、だから実質において合名会社合資会社に近いものでありまするから、こういう大掛り右更生手続というようなものは有限会社についても差当りは必要はないんじやないかというふうに考えるのであります。  それから第四は、更生手続申立権者範囲でありますが、法案によりますというと、大口の債権者とそれから少数株主権者と、この二つが挙げてあるので、これでいいであろうかというのが提起された問題でありました。ただこれにつきましては、この債権者につきましては百万円以上の債権を有するもの若しくは資本の十分の一に当る債権を有するもの、というふうになつておるのでありますが、相当この手続債権者によつて濫用さるる危険が予想されるんではないかと思いますので、債権者申立の要件でありますが、百万円以上というのは、ちよつと債権としては小さ過ぎるんではないか、これをもつと大きくして、小さな債権者によつてこの手続が濫用されぬようにするのが好ましいのではないかというふうに考えておるのであります。一遍この手続申立があれば、その会社にとつては結局致命的になるのでありますから、これはよほど厳重な制限の下に置かないというと、むやみに申立てるということが多いという考えであります。なおこのほかに社債権者申立が問題でありますが、法案によりますと、普通の債権者と同じような扱いをされておるようでありますけれども、やはり社債権者というものは集団的な性質を帶びておるものだから、やはり申立権者規定の中に、担保の付かない社債の場合には社債権者集会代表者申立て得るというふうにし、担保附社債につきましては、必ず受託会社があるのでありますから、受託会社申立がなし得るという規定が必要ではないかと考えるのであります。どつかの部分に、百六十二條でありますか、社債権者更生手続に関する権利が書いてあつて、受託会社が或る種の行為をなし得るという規定があるのでありますけれども、どうもその規定を読んで見ますと、更生手続を開始した後なのです。申立権が受託会社にあるかないかということが明白でないのでありますが、これは入れるべきではないか。アメリカの例を引きますと、インデンチユア・トラステイ、社債発行した場合には受託会社申立をするのが普通でありますので、この点は一考の余地があるのではないかと考えるのであります。  それから第五点は管財人の資格に関してであります。法案を読みますと、当該会社と利害関係のない第三者でなければならんというのを原則にとりまして、但し数人の管財人を置く場合にはそのうちの一人は利害関係者の中から選任することができるということになつております。その点がそれでいいだろうかという問題が指摘されておるのでありますが、この当該会社と利害関係を有しない公平の立場にある者でなければならんということが管財人の職務の性質上、これは当然のことでありますが、併し他面から考えますと、利害関係がないということは公平の保証にはなるけれども、併し他方その会社の実情に通暁しないというやはり憾みが免れんということになるのであります。そういうことを考慮されたと見えまして、この法案では管財人を数人置きまして、そのうちの一人は利害関係者から選ぶということにして、そのギヤツプを埋め合せるという建前になつておるようで、これも恐らくアメリカ連邦破産法によるアデイシヨナル・トラステイの制度を真似たものじやないかと考えますので、大体において原案は大いに妙を得たものだと考えるのであります。なお管財人について今一つの問題は、原則として自然人に限られるわけで、ただ法人の場合には信託会社と銀行を管財人にすることができるということになつておるのであります。先ず私はそれでいいと思いますが、ただ法人の場合に銀行又は信託会社の以外に管財人になり得るものを挙げられるかということが御質問の要点になつておるのじやないかと思うのですが、管財人の職務は二面ありまして、一面は更生手続会社事業経営に当り、且つ財産の管理の衝に当るということと、一面においては更生計画案の立案とその遂行という積極的な面、この両面の任務になるわけであります。どうもそう考えて見ますと信託会社と銀行ならば、成るほど他の会社事業の世話を実際にするということができると同時に、更生計画案なるものの大部分というものは会社の経理面の建て直しが主眼じやないかというので、これはやはり金融機関でないとそういう世話はできないし、又貢献を期待することができないということが考えられますので、信託会社、銀行が挙げられたということが適当であるけれども、それ以外にそういうものが、そういう機能のある法人が挙げられるかというと、ちよつと思いつかないので、原案通りでいいと考えるのであります。  それから第六は管財人の権限に関連したもので、余りに裁判所の許可を要する範囲というものが広過ぎてこれでは管財人が動きがとれないじやないか、もう少しフリー・ハンドを與えるのが適当じやなかろうかという問題でありますが、これはその前にこの法案を読みますと、裁判所の許可を要する行為につきまして管財人が置かれた場合と、管財人を置かずに当該会社みずから、具体的には当該会社の取締役がそのまま居坐つて更生手続を担当する場合と一緒にして規定してあるのであります。そこにちよつと無理があるのじやないかというような感じがするのであります。会社更生手続にかからなければならんという事態を引き起した原因には、これはさまざまあつて、必ずしも会社の現理事者の責任だというふうには、一概には言えぬと思つているのですけれども、併し何と言つても、これはやはり当面の責任者のわけでありまして、極論すれば、会社の経理についてその理事者は一応準禁治産者にでも準じて考えられるべきものて一応その不適格者だと考えなければならん。そういう考えで進みますというと、それが更生手続の衝にみずから居坐つて当るという場合には、これは裁判所の監督というものは相当厳重であることが必要だと考えるのであります。具体的には第五十四條に列挙せられたような行為について、裁判所の許可が必要だということは尤もだと思うのでありますが、併し管財人の場合には、根本的に事情が違うのではなかろうか、管財人は利害関係のない者の中から、特に適任者として選任された者でありまするから、これはもつと活動の自由を認めて、個々に当たらせるほうがむしろ手続を円滑且つ迅速に運ばせるゆえんではないであろうか、こう思うのです。併し何と言つて更生手続全体が、裁判所の監視と庇護の下に推進する建前でありまするから、全く手放しというわけには行かないので、やはり或る程度の裁判所の許可事項がなければならんというふうには考えるのでありますが、それでは、さて五十四條に列挙せられた行為について、どこで限界線を引くかということになりますると、ちよつとここに並べられた行為の間に、甲乙の差をつけるということは相当困難でありまするので、立法技術的にはこういう考え方も一案じやないかと私は考えるのであります。管財人の場合には、五十四條に列挙してあります行為について、裁判所の許可を要するものというふうにすることができるということなんで、つまり五十四條の原則の例外を逆に引つくり返すやり方がむしろ正しいのじやないか。五十四條は、会社みずからが当る場合にはそのままでいいけれども、管財人を置く場合にはむしろ自由を原則にしておいて、五十四條に列挙した行為のあるものを指摘して、これこれについては裁判所の許可が要るのだというふうに、その場合々々に即応させることのほうが弾力性があるということと、管財人の地位ともマツチするのじやないかというふうに考えるのであります。  第七、その次は、更生手続において、管財人を置かなくてもいい場合が認められていることであります。これは会社債務が二千万円以下のときには、管財人を置かなくてもいいということになつているのですが、管財人を置かなければ当該会社みずから、具体的に言えば、現在の取締役が居坐つて更生手続を担当するということになるわけでありますが、果してそういう行き方で事が円滑に運ぶであろうかというのが提起された問題であります。先ほども申上げましたように、会社更生手続によつて改造しなければならんという羽目に陷つたについては、いろいろの原因がありますけれども、やはり理事者というものが何と言つても当面の責任者であるから、その者が更生手続の衝に当るということは、利害関係人の側から見れば、やはり一種の信頼を失つた者がこれに当るということになつて、その面から更生手続が円滑に運ばないという危険が出て来るというふうにも考えられるのであります。そういう考えからすれば、どうしても利害関係のない、公平な第三者、利害関係人信頼し得る、全面的の信頼を受け得る者でなければならんというふうなことが、理論的には一応成り立つのであります。併し具体的に言えば、やはり一口に更生手続と習いましても、いろいろ事情があることでありまするし、又事件の難易なり或いは対象というようなことも入つて来ますし、会社失敗原因は必ずしも理事者の責任にあるのじやない、理事者の不手際から来たのじやないと言われ得る場合もいろいろあるわけでありますが、併しそういう場合も考えられますので、簡單に事を運ぶ途も一つつてもいいというふうに考えるのであります。そうしてそれを管財人を置く場合と置かない場合はどこで分けるのかという、その区別の標準の立て方でありますが、アメリカでは担保債権があるかないかということでやつておるようであります。セキユアル、レフトがない場合に、管財人を置かないで、トラステイを置かないで会社みずから切り廻わされるというふうか建前をとつておりますが、この法案会社の負担しておる債務の額によつて、二千万円以下の場合には置かなくてもいいということになつておるのが一つの独創であろうと思うのであります。なおそういう場合でも裁判所の認定によつて管財人を置いてもいいことになつておりますので、これはやはり原案通りでいいのじやないかというような感じがするのであります。置かないことを原則としておるが、裁判所の認定によつて置いてもいいという途が開けておりますから、これは原案通りでいいと考えられます。  それから第八は、株主、社債権者その他の債権者は、それぞれ集団的に更生手続に参加する建前をとつておるという問題についてであります。株主、社債権者その他の債権者がそれぞれ組に分つて更生手続の或る段階においては集団的の行動が認められておるのであります。或る段階では個別的な行動をしてもいいということになつておるので、これをもう少しグループグループで手続の上において行動をするようにしたらいいだろうかというのが問題の趣旨であろうと思うのでありますが、集団的に参加するということは、それぞれの集団において統一的な意思を形成して、代表者を通じて統一的に行動をするという意味であろうかと、こう思うのです。ところでそういう集団的行動をなし得る手続の段階といえば、関係人集会、それから更生計画案の提出及びその承認の決議というような段階になろうかと、こう思うのでありますが、法案では、計画案の採否の決議についてだけ組別に、集団的な取扱をされて、そのほかは個別的な行動が許されておるようであります。併しそういう建前でありますけれども、自発的に任意にこの関係者が共同の代理人というものを設けて、共同の計画案を提出したり或いは集団的に行動する途が開かれておることでありますから、どうしてもやはり原案通りで差支えないというような考えであります  第九は、労働組合なり、組合がない場合には会社の使用人の意見をどの程度手続の上に反映させるかという問題であります。法案におきましては、具体的に更生計画案について労働組合又は組合がない場合には使用人の過半数の代理者の意見を聞かなければならないとされておるだけで、関係人集会或いは計画案の提出又はその採否の決議等には参加権が認められておらないので、その点が一つの問題だろう。もう少し強力且つ積極的な発言権というものを認めて然るべきじやないかという問題が起つて来ようと思うのであります。およそ企業は資本と経営と労働と三つの要素から成り立つもので、労働の要素というものが非常に重要なものでありますから、その面から労働の提供者である会社の使用人の立場、利益というものを十分尊重し、発言権を重んじなければならないという要求が出て来るわけでありますが、併し他面現在の会社制度が元来が資本の組織であつて、使用人というものが法人としての会社組織の構成員ではないわけで、一応法律的にはそとの人になつておるということと、更生計画も、結局は会社の建て直しが目的であつて、そこに問題になることは主として経理面のことが中心になることなんで、経理面とか事業計画もそうでありますが、そういうふうになつて参りますと、平素会社の経理と経営の上に直接の責任を負わない使用人が、ほかの資本を投入するものと同格に更生計画に参加するということは現在の企業組織の建前から言えば多少筋がずれておるというふうに考えられるので、やはりこの点もこの法案にありますように、更生計画ができ上つたときにそれについて意見を徴するという程度でよかろうと思うのです。これは次に出て参ります労働協約との関連を持つ問題で、会社とその使用人と労働組合との関係はやはり力と力との、力を背景にした話合いによつて、交渉によつてきめるべきもので、どうも法律で右、左にきちんときめるということは困難な問題のように考えるものであります。  それから第十は、労働協約というものが、更生計画を立てる場合にどの程度に尊重されなければならんかという問題でありますが、これは非常に幅の広い且つ非常に抽象的な問題の提起でちよつと簡單には答えにくいのでありますが、やはり二つの関連において一応問題になると思います。第一段は、更生手続中既存の労働協約をどうするかという問題が先ず起つて来ますが、この点につきましては、法案の中の第何條かに解除ができない除外例を設けてありますから、更生手続中は労働協約は手をつけずにそのまま認めるということになつておるのであります。これはそれでよいと思います。それから更地計画がいよいよ効力を生ずる場合に既存の労働協約との関係がどうなるかということでありますが、この場合にはやはり二つの形で問題が出て来るのじやないか。労働協約を全面的に実行させるべきものかどうかという問題、実行させないけれども、部分的に更生計画と合致するように変更権を認めるべきかどうかという問題が出て参ろうかと思うのです。まあ抽象論といたしましては、会社が行詰りを生じて株主債権者も大いに犠牲を払わなければもはや企業としての存続ができないという羽目になつておるのでありますからして、若し更生計画というものが労働協約と矛盾した問題にどつちを活かすべきかということになりますと、労働協約のために会社の建て直しができないということになつたのでは、やはり主客顛倒になるわけでありますが、その意味においてやはり労働協約の変更権を認めてよい。やはり会社の存続と両立する範囲内においてしか労働協約というものの効力を認められぬというような議論が一応は成立つと思うのですが、併し労働協約というものは、労働組合というものが主体になり、バツクにたつて、或る種の争鬪によつて闘い取られたものでありますので、これを裁判所における一遍の決定によつてその効力を失わせる、或いは変更するということは実際問題としては紛糾を来たすことになるので、これはやはり法案の中に触れないで、実際の当事者間の話合いによつて委ねておくほうがよいのじやないかというような気がいたします。大いに尊重すべきものである。今申上げたように或いは全面的に協約の改訂が必要になるかも知れないし、或いは部分的に変更を生ずることがあるかも知れない。これはどうも法律規定に基いて裁判所が簡単に手をつけるべきじやないので、実際の関係当事者との話合いに委ねておくほうが安全だというような感じを持つのであります。  あとは極く簡單に申上げますが、第十一の物上担保権というものが、この法案によりますと、殆んど債権的な取扱をされておつて、物権的性格というものが全然損われてしまつた。そのことが結局担保制度に対する一般の信頼感というものを稀薄にし、延いては会社金融の途を塞いで、事業経営なり、取引の安全を害するということになりはしないかという問題であります。これはまあ理論的には確かにそういう心配があり得ると思うのですが、ですけれども、担保権者を担保の目的物にどこまでも結付けて、そうしてそれだけを優先的に保護するということを余り強調することになりますというと、これはやはり事実上会社の建て直しということができないことになるので、大体更生計画というものが横にバランスをとるという考え方ではないので、縦にバランスをとつて利害関係者を保護するというのに主眼があるわけでありますので、やはり更生手続のような場合には、物上担保というものは或る程度無視されて止むを得ないのじやないかという考えであります。もう少し高い次元で見た場合には、担保制度に対する信頼感を稀薄にすることから生ずる不利益と、更生手続によつて会社更生することから生ずる社会的の利益、これを比較考量、バランスにかけて見て、どつちが大きいだろうかという問題になるだろうかと思うのですが、私はどうもこれは担保権犠牲にしても更生を図ることのほうが社会的な見地から望ましいというふうに考えます。又実際問題として株式会社について、こういう更生手続を設けて、物上担保権を軽んずるような規定を設けたらば、設けたからといつて、果して一般的に株式会社に対する金融というものが非常に萎縮してしまうかということになると、どうも必ずしもそういうことにはならないのじやないかと考えますので、会社更生手続なんか極めて稀な場合があるので、金融界に及ぼす影響がそれほど大きいものであるというふうにも考えないのであります。これは併し事態に対する観測でございまするから、いろいろの見方は成り立つと思うのです。  第十二、第十三、第十四、十五でありますが、これらの点につきましては、この法策について別段違つた意見を持ち合せておりませんので、大体原案通りで結構じやないかと、こう考えておるのであります。全体としましてアメリカ破産法規定、ああいうような破産法の、一九三三年ですけれども、その前に永い歴史があるので、アメリカで永い間経験した集積がああいう精密な立法になつたものでありまして、それを今度日本でも真似てやつているので、法律としましては、先ほど毛受弁護士から御指摘がありましたように、非常に細かなややこしい、余り窮窟過ぎるようなもので、果して裁判所がその面倒に堪えるかというような懸念がなきにしもあらずであります。法律そのものとしては大体において適切であると思います。大体そのくらいであります。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじや次に池田謙藏君の御意見をお伺いします。
  9. 池田謙藏

    参考人池田謙藏君) それじや私から金融機関の者としての意見簡單に申述べさして頂きたいと思います。  金融機関といたしましては、只今の会社更生法問題点の第十一の問題でございまするが、担保権債権同様に扱われるということに対しまして、この法律を成立さすかどうかということにつきまして非常な疑問を持つているわけであります。この更生法案によりまして、会社更生さすということの必要と、それをやるためにこの担保権を、今のように債権同様に扱うことによりまして金融上の梗塞を来たすということも、社会的の利益の甲乙どちらが大きいかという問題が我々として最も関心を持つ次第でございますが、どうも我々金融人として考えますというと、かように従来の担保権というものが殆んどよそから保たれないので、いつの場合でも、破産法の場合でも、和議法の場合でも、優先してやつて来たという考えが根本的に変ることになりまするので、やはりこのために金融の梗塞と申しまするか、要するに物上担保附の貸付について金融機関が消極的になるということは免れないのじやないかと存じます。さようなことによります害と、事業経営に対しまする害と、この更生法案によつて破産に頻しておる会社を助けるということの利害関係の軽垂ということはなかなか簡單考えられないので、私といたしましてはやはり担保権は従来も、すべての場合において確保されて来ましたように、今後もやはり担保権は活かして、そうしてこの更生手続に入ります場合にも、破産法の別除権のようなふうに担保権を活かしておいたほうが、産業全体からいつて有利じやないかしらと、こう考えます。尤も第十三にございます更生担保権者の議決の点で、若し更生担保権者については決議権の総数の四分の三とありますのを、これを更生担保権者の全員の同意ということになりますれば、現在の会社整理の場合も同様でございまして、その弊害はなかろうかと存じます。その点につきまして、担保権はやはりかような場合においては最優先に扱われるのであるということにならなければ、この更生法案の実施ということに対して御賛成をいたしかねると、かように考えておるのであります。  それからもう一つ問題点の中にはないのでございますが、租税との関係でありまする現在の租税の徴收の状況から見まして、国税その他の租税がいつも優先的であるということでは、たとえ担保権者権利制限し、あれをいたしましても、事実会社更生ということが困難な場合が非常に多いのではないかしらと、こう考えますので、若しこの法案を実施されることになりますれば租税の点につきまして、少くとも担保権同程度まで租税の徴収権を制限するということにならなければいけないのじやないかしらと、かように考える次第であります。この二点が訂正されますならば、会社更生につきましてかような法案ができますということも、全体として結構なことと思います。やはりこの二点が入れられません場合には、かような法律を制定いたしますということについては反対であります。かような考えを持つております。簡單でございますが……。
  10. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に竹村幸一郎君。
  11. 竹村幸一郎

    参考人竹村幸一郎君) 全体を通じてこの法案を御立案になりましたおかたの御苦心のあとが窺われるように思います。その点は大いに敬意を表するわけでありますが、私どもは日常余り法律に親しんでおりませんので、いわば素人でございますから、素人からいたしますというと、この法案は非常に何と言いますか、法律技術的な事柄が錯綜しておるという感じでございます。非常に難解でございます。何とかこれはいま少し平明にお願いできんものかと、これは素人の注文でございますからお聞き流し願つても結構でございますが、そういう印象を持つております。  第一、この法案の狙いでございますが、非常に経済的に行詰つておる会社をそのまま潰さないで何とか活かして行く、そうして債権者なり株主なりの満足ができるようにする、こういうことでございますから、狙いは結構でございますが、併し私どもが知つておる範囲内で考えまするというと、今まで債権者なり或いは株主なりというものが、自分の目先だけの利益で会社を潰してしまつたというような例を実は余り知らぬのでございますが、この点は非常によくしたもので、やはり時代によりまして経済観念が違つて来ておるということを私は感じるのでございます。というのは、例えば今日の経済界の状態を見まするというと、戦争前の経済常識ではとても判断ができぬようなことが随分たくさんあるように思います。例えば昔でありますると、資本金の半分とか三分の一とかの損失を来した会社は、もうあの会社は潰れたのだというふうに判断をしたのでありますが、今日ではそうではござうませんで、仮に資本金の三倍、四倍の赤字を実質的に出しておりましても、誰もその会社に対しまして破産の申請をしたというような例を余り聞いたことがないのでございます。要するに株主なり債権者なりがちやんと心得ておりまして、そういう法律の世話になるよりもお互いの話合いでうまくやつて行くということを心得ておるということだと思います。そういう意味におきまして、こうした会社更正法案といつたような法律が、少くとも今日の段階において必要であるかどうかということにつきましては、若干の疑問を実は感じておるのでございまして、今申上げましたように、大きな会社破産をした、或いは破産を申請されたというような例を知らぬのでございますが、若しありとするならば、それは非常に小さな、いわゆる中小企業に多いのではなかろうかというふうに思いまするので、この法案株式会社に限るということになつておりまするが、若しこれをおやりになるならば、株式会社にあえて限定することなくして、中小企業に及ぼす、実際問題として破産の問題があるのは、中小企業に多いという面からいたしまして、株式会社のみならず全企業体にお及ぼしになるのが、実際問題としてぴつたりするのじやなかろうかと、こういうように感じております。この更生手続申立人の資格といたしまして、百万円以上の債権がある者、或いは管財人の選任に当りまして、負債が二千万円以内の場合には管財人は要らないというような單位が出ておりますが、そういう單位を生かして考えるならば、これは近代的な大企業中心の單位ではございませんので、むしろ中小企業の單位でございます。そういつ面からいたしましても、やはりこれは株式会社のみならず合名会社にも、すべての企業に拡張するというほうがいいのじやなかろうかというふうに思います。  第二に、更生手続申立人でございますが、これは資本金の十分の一以上の株主とか、百万円以上の債権者とかということになつておりますが、これはいま少し拡げまして、株主なり債権者なりの集団的な権利をお認めになるのがいいのではなかろうか、こういう感じがいたします。と同時に、株主債権者のみならずその会社の従業員の申立も、これは法律上の議論としてはどうかと思うのでありますが、実際問題として従業員の立場を無視するということは、爾後の更生に非常に支障があるわけでございますから、従業員の申立の権限も認めるということを一つお加え願つたらどうかというふうに思います。  それから次に、これは先ほども何度も話があつたのでありますが、裁判所の権限が強過ぎるという点でございます。どうも経済問題の処理に対しまして、裁判所が余りに直接に介入をするということは、必ずしも結果的にはうまく行かない場合が多いのではなかろうか、法律を運用するという建前でありまするというと、どうしても裁判所ということになるのでありますが、実際問題として考えまするというと、裁判所よりももつと現実の経済界との繋がりの大きい然るべき監督官庁をおきめになつたほうがいいのじやなかろうか、こういうふうに思うのでございます。  それから次に管財人の問題でございまするが、管財人利害関係者の中から一人を選んでもいい、こういうことになつておりますが、その際旧来の経営者をどういうふうに扱うかという点でございますが、旧来の経営者は失敗したのだから爾後の発言権がないというのも一つの議論ではございますけれども、これ又実際問題として考えまして、その企業を飽くまで活かして行く、こういう建前を中心に考えますならば、やはり旧来の経営者もできるだけ活かして使つたほうがいい、こういうふうに思うのでございます。その会社が非常に経済的に行詰つた原因が、経営者の故意の、或いは悪意によるというふうな場合は勿論例外でございますけれども、そうでない場合には、旧来の経営者もできるだけ会社更生のために利用する、こういう考え方を管財人の選任なり、或いはその権限についてお取入れ願つたらどうか、こういうふうに思います。  それから次に物上担保権の問題でございまするが、これは理論的には先ほど来お話がありましたように、物上担保権制限されるということは甚だ不都合でございますが、これを技術的にどういうふうに活かして行くかという点に問題があると思うのでございまするが、実は私どもは法律上の素人でございますから、これを法律上、技術的にどういうふうに活かして行つたらいいかということにつきましては、いい考えが実はないのであります。この点も一つ然るべく專門家の間でお考えを願つたら結構だと思います。  甚だ簡單でございまするが、以上で私の申上げることは終ります。
  12. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 以上四人のかたの御意見に対しまして、何か御質問がこの際ありましたら、質問をお願いいたします。  それではこの程度で午前は終ることにいたして、午後は一時から再開いたしたいと存じます。    午前十一時五十九分休憩    ―――――・―――――    午後一時十三分開会
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では午前に引続きまして委員会を開くことにいたします。  では次に三戸岡道夫君の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  14. 三戸岡道夫

    参考人(三戸岡道夫君) 私はこの更生法案の大体手続のことのほうから見まして、これを株式会社の事務といいますか、そういう立場から考えて見たいと思います。  第一に会社更生法が必要かどうかということにつきましては、こういう目的のために法律ができて経済的に窮境に陥つた会社更生して行くということけ大変結構なことでありますし、又こういう法案も必要なものと考えるのでありますけれども、これに似通つた会社の中に整理とか和議法とかいうふうなものがありますので、おのおのその特徴があることではありますけれども、一つの余り似通つたもののために法律がたくさんあるというようなことは望ましくないのじやないかというふうに考えろのでありまして、その辺、ほかの法律を調整するとかして整備したものにして行つて頂きたいというふうな希望を持つものであります。それからこの会社更生手続につきましては、非常に裁判所の干渉が強くなつておりますが、これは嚴正中立な裁判所の機関を通じなければ効果が期待できないということから出て来ることであると思いますけれども、その権能が、余りに詳細に亘つて強過ぎるのじやないか、却つてその運用が困難になるのじやないかというふうな考えを持つわけであります。殊にその手続につきましては、裁判所が果して実際にそれがやることができろだろうかどうだろうかというふうな凝固を持つわけであります。それからその手続は非常に精密にできておるのでありまして、形式的には整備されておるのでありますけれども、実際問題としましては、これほどの手続は要るだろうかどうだろうかということがやはり疑問に思われるのであります。それでその手続が非常に詳細になつておりますし、複雑になつておりますので、時間的にも又経費からいいましても非常に嵩んで来るのではないかというふうに考えるわけであります。その手続から考えまして第一に関係人集会というものについてでございますが、この第一回の関係人集会というのを、更生開始決定から一カ月以内に開かなければいけないというふうなことと存じますが、殊に株主、これの関係人の中に株主が入つておりますのですが、株主につきましてはそういう集会を開いてここに意見を徴するというような機関としては甚だ現実には不適当じやないかというふうに考えるのであります。それで現在の株主総会につきましても、デイスカツシヨンする機関としましては、余り効果がないのであつて、これは御承知のように、株主の非常な冷淡なことから起因しておるのでありますが、そういう結果になつておりますから、やはりそういうものを含めた第一回の関係人集会とか、それから第二回と言いますか、の関係人集会というようなものは実際に効果が余り期待できないのではないかというふうに思うのであります。そのために裁判所としましては、関係人に送達の手続をしなければなりませんし、そういつた手間が、殊に株主の場合は非常に数が多くなることが予想されるのでありますけれども、そういう手続ができるかどうかという点が非常に疑問に思うわけであります。それでこういうふうな第一回、第二回の関係人集会というふうなものは、債権者代表とか、更生担保権者代表とか、又株主の代表のようなもので構成して手続を運ぶように修正したほうがよいのではないかというふうに実際の運用から見ますといいのじやないかと考えるわけであります。それから株式の届出の問題でございますが、株式につきまして届出た株主だけに議決権決議権というものを與えるというふうな構成になつておるのでありますけれども、株主、届出た株主というものは、実際に株主に届出ろと言つてもその効果は非常に期待が薄いのじやないかという感を持ちますし、又その手続をとることが非常に、実際に裁判所にとつては面倒ではないかというふうに考えるわけであります。それでむしろ株主全部を権利者として、会社株主名簿をここに言う株主表にお使いになつて株主議決権を與えるような方向でおやりになつたらいいのじやないかというふうに考えるわけであります。それからほかの債権とか、更生担保のほうにつきましては、やはり届出がなければ明確にならないことであると思いますが、株主のほうの関係会社株主名簿ではつきりすることであると思うので、届出の手続は却つて重複して来るものじやないかというふうに思うのであります。ただこの場合にそうすると議決権の、決議権のほうの問題で、ここで法律議決権を有する者の半数以上の賛成というふうになつておるようなところを修正しないといけないことになるとも思うのであります。そういうふうな手続につきまして、非常に実際には運用がむずかしいのじやないかというふうな複雑な手続になつておるのじやないかというふうに考えるわけであります。  それから請求権者につきましては先ほどもお話がございましたが、この債権者の資格を資本の十分の一と、それから又は百万円以上となつておりますが、百万円ということは資本が一千万円のときに丁度十分の一が百万円でありまして、一千万円以上の資本の会社でありますと、全部十分の一以下になるわけでありまして、殊に最近は資本が非常に多くなつておりますから二十億、三十億というような会社もできておりますから、この百万円というのが非常に低いのじやないか、むしろ比例的にその権利をきめるのでなければ、金額でこういうふうに債権の額はきめないほうがいいのじやないかというふうにも考えられます。それから管財人につきまして非常にまあ職掌から言いまして制限がついておるのであります。管財人の手腕が一番この会社更生が成功するかどうかということの根本になるのだと思うのでありますし、こういう制限ではその人を得られないのじやないかというふうな心配があるのではないかと思うのであります。それでちよつとこれは直接の例にはならないかも知れませんが、再建整備法のほうの場合の特別管理人の場合のような構成と、事情は違いますが、再建整備のほうの再建整備計画というようなものが作られておつたようなことを勘案しまして、今度の会社更生法案管財人に関する資格の問題は少し神経質に過ぎているのじやないかというふうな感じを持つわけであります。それから裁判所のほうの仕事の問題でございますが、第一番に開始の決定をした場合の送達を必要とするのでございますが、これは関係人に対して、知れたる関係人に対しては全部送達が行くことになると思うのであります。この場合に会社には株主名簿がございますから、株主は大体間違いなく知れておりますし、行かなければならんことになるのであります。ところが株主の多い会社株式の移動の多い会社でございますと、やはり株式確定のためには株主の名簿の閉鎖というような手続を履まなければ、実際上そういう事務をやつて行くことができないのではないかと思います。そこでその場合名義書換の問題をどうするかという商法の二百四十二條の二の規定との関連がこの法案ではきめてないように思うのでありますが、それでは支障が起るのではないかと思うわけであります。それで先ほどその場合に商法規定を使つてやりますと、送達するという関係もすぐ一カ月やそこらではできないのでありまして、第一回の関係人集会をその送達前に開くというようなことも勿論おかしいでありましようから、この第四十六條の第一回の関係人集会の期日は一カ月以内でなければならないというようなことは実際に実施できないケースが出て来るのではないかというふうに考えるわけであります。それから先ほど申上げましたような届出の関係がありまして、届出た株主につきまして裁判所のほうで株主表を作成するというようなことがございますが、この事務も相当困難なのではないか、殊に株主のほうに移動がございますと非常に錯綜した関係が出て来るのではないかというふうに考えるわけであります。それからこれはちよつとしたことでございますが、この送達につきまして、裁判所の書記官の署名、捺印が要るという十四條の四がございますが、この送達を数が多いために非常に簡略なものにしておられるのでありますけれども、その送達に全部書記官の署名捺印が要るというようなことになりますと、その数が多い場合こういうことも支障になつて来るのではないかというふうに考えるわけであります。  次に関係人集会につきまして、この関係集会の期日の呼出ということが百六十五條にございますが、これは第一回の関係人集会でなしに、その前に行われる開始の決定の送達で、そこに期日が書いてあるからそのままになるのか、それとも別にもう一つ呼出のため何らかの手続が必要なのか、ちよつと私にはわからないのです。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 四十何條ですか。
  16. 三戸岡道夫

    参考人(三戸岡道夫君) 四十六條のほうに第一向の関係人集会の期日を明記してあるから、これを送ればそれで送達になるのか、期日の呼出になるのか、それとも期日の呼出というものは、もう一つ手続が要るのかということがよくわからないのであります。若し四十六條の送達がそれに該当するとしましても、先ほど申上げましたようにこれを裁判所が送ることが非常に面倒なことがありますし、もう一つ別に期日呼出の何か手続が要るとすれば、それも非常に実際には困難じやないかというふうに思うわけであります。それから関係人集会につきましては先ほど申上げましたように、第一回と第二回の審議する場合のほうは意見を聞くというふうな実際の効果というものは非常に期待薄じやないか、非常に形式的に流れるのではないかというふうに考えるわけであります。可決の要件につきましては、現在の株主総会におきましても委任状を勧誘しない限りは殆んど出席は百分の一とかというふうな、もつとそれ以下の株式数、株主数になつておるから、ここで可決の要件が届出た株式議決権を有する株式の数の過半数の同意ということになりますと、非常にこれは実際には困難な條件になつて来るのじやないか。株主の場合につきましては殊に同意を得られるということが非常に期待薄になるのじやないかというふうに考えるのであります。それから最後に期間につきましては、これはできるだけ短期間に終了させることが手続のほうから言いますと、短期間に、期間的なものは持つていなければならないのじやないかというふうに考えるわけでありますけれども、先ほども申上げたように第一回の関係人集会を開くとすれば、何かはかに例えば株主確定というようなことについての法律的の措置が考慮されなければ、ちよつとこれは一カ月には無理じやないかというふうに考えるわけであります。その関係でこの期間はきめなければならないのでありますけれども、どうも一カ月ではやはりできない場合が非常に多くなるのじやないかというふうに考えるわけであります。この点はまあ期間を少し延ばさなければならないのじやないかというふうなことになるわけであります。それからそれぞれにつきまして更生債権とか更生担保権者及び株式の届出の期間決定の日から二週間以上四カ月となつているのでありますけれども、これが少し長過ぎるのじやないか。それから又株主につきましては一カ月の追加期間がございますけれども、これも現実の株主に成るべく合わしたいというお考えもわかりますけれども、その事務はとても、実際には株主名簿を閉鎖しつ放しというふうにしなければできないのじやないかというふうに考えるわけであります。それからそのほかに新株、この更生計画案に基きまして新株の発行をするような場合に、その払込期日を三カ月以上経過した先の人でなければならないとしておられるようなお考えでございますが、その点は少し日を長く置き過ぎているのじやないか、これはむしろ一カ月ぐらいにしたほうがいいのじやないかというふうに考えるのであります。逆に新株発行の場合の商法の場合には、その期間が余り先にならないように考えて、三十日以上は置いておりますけれども、余り先にならないように考えていいのじやないかというふうに考えて、この三カ月というのは非常に長過ぎるのじやないかというふうに考えるわけであります。それから管財人の職務でございますけれども、更生開始の決定がありましたら、管財人が業務、財産の管理を全部して、会社のほうに殆んど事務を管理する能力を失わせるような建前になつているというふうに思われるのでございますが、やはりこれは一部むしろ会社整理の場合のように、会社は当然会社財産に対する管理とか、資本の能力を失わないというふうにしたほうがいいのじやないかというふうに思われるのであります。それから管財人の職務につきまして、ここに郵便物とか電報を全部管財人が受取つて見るというふうな百七十六條の規定がございますが、どうも実際から考えまして、そういうのでは余り管財人のほうの仕事が殖え過ぎるのじやないかというふうに考えて、会社のほうの仕事が全部とまつてしまうのじやないかというふうに、実情に副わないのじやないかというふうに考えられるのであります。  それでちよつと最後に、現在東京証券取引所に上場されております六百七十二社の株主数の関係をちよつと調べて見ますると、これはちよつと古い調査でございまして、今年の三月頃になつておりますが、十万以上の株主を有する会社が三社、それから二万以上が五十四社、一万以上が四十八社、五千以上が七十一社、二千以上が百五十五、千以上が百二、それからあとが千以下になつております。それで大体五〇%以上の会社が二千名以上になつておりますし、二千以上株主を有する会社も百七十六社ございますので、まあ全般を通じまして、大きな会社には余りその更生のようなことが始まらないとも思いますけれども、それを対象にしますと、先ほど申上げたように、裁判所の事務ということも非常に困難になつて来るのじやないかというふうに考えるわけであります。これを以て終ります。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に山本淳一君の御意見をお伺いします。
  18. 山本淳一

    参考人山本淳一君) 会社更生法案について私の思いついたところを申上げたいと存じます。  一、任意整理更生規定を設けること。会社更生法案による更生方法は、すべて裁判所の関與の下に行われることになつておりますが、この法案による手続と相待つて整理会社又は利害関係人の申出を取上げてその意見を聞き、同時に整理更生参考となるような示唆を與えて、整理会社と利害関係人との間の関係を調整して、自力更生を側面的に援助するような制度を設けたらどうかと思います。その制度の構想としては、労働関係調整法の委員会に準じたものを置き、整理会社又は利害関係人の申出を取上げて、斡旋調停のような方法で関係者意見を聞いて、その間の利害を調整して、更生方法をまとめ上げてやるようにすることであります。この斡旋調停委員は財界の有力者、学識経験者等を以て組織し、委員会は各地の商工会議所内に置くのが至便かと考えます。会社整理ということも財界に起る一現象でありますから、財界人がこれを処理する能力を最もよく備えているものと思います。この制度裁判所の関與する更生よりも容易で、効果も遥かに多いものと思われます。特に小会社更生に役立つものと考えます。この制度で解決のつかない場合に、会社更生法を適用することとするほうがいいのではないかと思います。二、会社を分割できる規定を設けること。更生法案は合併営業、譲渡等の制度を利用しております。商法会社の合併を定めておりますが、これに対応する会社の分割を認めておりません。事業を分離する場合には、従来現物出資による新会社の設立、営業譲渡等の方法をとつておりますが、この方法によると資本や資産に変調が現われます。合併と相反する意味一つ会社を、二つ以上の会社に分離することのできる方法を規定したら、整理に便利なのではないかと思います。三、更生手続は迅速に運ぶようにすること。危機に瀕した会社は崩れるのも早いものであるから、手続は迅速に運ぶように規定する必要があると思います。例えば第百二十五條以下の処理も裁判所が直接やらずに、裁判所書記官の監督の下に、管財人又は会社にやらせるほうがいいと思います。特別の設備も事務能力も少い裁判所が煩雑な仕事をやることは、結局において時期を遅らせることになり、処置が手遅れとなる虞れがあります。  四、破産和議整理、清算又は特別清算の状態にある会社は、更生法の適用外の会社であるものとすること。破算は問題外として和議整理、清算又は特別清算の状態にある会社会社更生法の対象とすることは、解決点に達しようとする問題を振出しに戻すようなものであつて、徒らに問題を煩雑にするだけであると思います。和議整理、清算等の状態にない会社でなければ、会社更生法の対象とする価値はないと思われます。五、会社の収支状況のわかる資料を提出させるように規定すること。法案第三十二條六号を見ても、「資産、負債その他の財産の状況」とあり、又第百七十九條や第百八十三條等を見ても、財産日銀、貸借対照表とあつて、損益計算書の作成は規定してありません。併し会社内容調査するのには資産負債のほか収支の実況を見なければ完全でありません。会社整理目的資産、負債と収支の均衡を得させることにあるのでありますから、財産目録や貸借対照表の作成を規定する場合は当然損益計算書の作成をも規定すべきであります。六、法案中の用語の定義は総則の中に置くこと。條文を読んで行けばわかりますが、例えば更生手続更生債権更生担保等の用語の定義は、第一章総則の中に置いたほうが法文を読んで行くのに理解しやすいのではないかと思います。  七、各條項について。第十四條一項に、「社債権者又は株主からこの法律規定による住所の届出があるときは、その住所」とあるが、これは株主名簿又は社債原簿上の住所に統一し、手違いや煩雑さを取除くべきであります。なお社債権者の中には、担保附社債信託法上の受託会社社債総額を引受けた者、社債元利の支払代理人等を含ますべきであります。同條第二項の更生担保権者に対する送達も、登記所の住所とすべきであると思います。同條第四項の手続は、裁判所書記官の監督の下に会社にやらせるほうが迅速に運ぶのではないかと思います。第三十條二項の申立をすることができるものの中に、担保附社債の受任会社社債総額を引受けた者、社債元利の支払代理人等を加えるべきだと思います。第三十一條の清算、特別清算、破産宣告後の会社更生手続開始申立をなし得ることから除外せらるべきであると思います。第三十二條第二項二号に、「会社及び営業所の電話番号及び代表者の住所及び電話番号」を記載事項として加えること。同第六号中発行株式の総数の次に、「株式の種類及び数」を加え、「その他の財産の状況」を「その他財産の詳細」とし、その次へ「最近三年間の財産目録、貸借対照表、損益計算書」を加えること。申請書はできるだけ詳細に書き、会社資産、負債、収支状況のよくわかるように書類を揃えて出さすべきだと思います。又第三十五條の監督官庁その他の官庁に対する通知用として、あらかじめ副本をとつておくのが便利かと思われます。第三十四條一項の但書として、「但し事件を受理すべきものと認めたときは会社から納付させて申立人に返却する」を加え、整理に関する費用はすべて会社に出さすべきだと思います。同條第二項の「会社以外の者以下を剃ること」、費用も納められないものは整理価値がないと思います。第百六十二條四項中社債の数を「債権の数」に改め、その次に「社債の額面金額」を加えること。  第百七十六條の管財人会社とを区別するのはおかしいと思います。第五十三條から見ても、管財人会社の機関に代るものであると見るのが至当だと思います。第百七十八條中「会社に属する一切の財産の価額」の次に「及び収支の状況」を加えること。第百七十九條中貸借対照表の次に「及び損益計算書」を加えること。第百八十三條中「貸借対照表」の次に「及び損益計算書」を加えること。第百九十九條に「清算を内容とする計画案」とあるが、これは更生案ではないと思います。第二百二十五條は、條文の意味もはつきりしないし、会社整理の場合に他人の営業を譲受けたり対価を債権者株主分配するようなことはないと思います。第二百二十七條は、どんな意味で書かれたものかはつきりしません。第二百三十條中「あらたに払込又は現物出資をさせないで新株を発行するとき」は、どんな場合か意味がわかりません。その他の條分にも随所にありますが、現在の債権又は株主と引替えに新株式発行する意味ならば、そのように書くことが必要かと思います。第二百三十二條三号に、「合併によつて滑滅する会社更生債権者更生担保権者又は株主に対して発行すべき新株の額面無額面の別、種類及び数並びにその割当に関する事項」とありますが、更生債権者更生担保権者に対して株式を割当てることは合併ではできないと思います。合併は消滅会社株主に対して存続会社株式を割当てること、即ち株主関係から見れば消滅会社株式と存続会社株式とを交換することであります。第二号も、同様合併の通念と合致しません。第四号中の「準備金の額」は合併による引継の計算を終えた後にきまるものであつて、合併成立前にはわからないものであります。ここに置いたのは商法の誤りだと思います。  第二百三十三條四号「新会社の設立のときに定める新会社発行する株式の総数についての株主の新株引受権の有無又は制限に関する事項及び、特定の第三者に與えることを定めたときは、これに関する事項」は、合併契約の規定としては無効でないかと思います。又第五号の更生債権者更生担保権者に対して株式を割当てるのも無効でないかと思います。第二百三十五條に定める解散は、更生案ではないと思います。第二百三十八條の規定は、無駄ではないかと思います。第二百四十九條中「株主権利の上に存した担保権」とは、どんなものか内容がはつきりわかりません。第二百六十八條五項に「これらの者に対し発行すべき株式のうち引受のない株式について」とあるが、株式の引受がないときは更生計画に齟齬を来すのではないと思います。  私の申上げたいことはこれだけであります。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは東京地方裁判所小川善吉君の御意見をお伺いいたします。
  20. 小川善吉

    参考人小川善吉君) 東京地方裁判所小川善吉であります。本法案につきまして私から特別に申上げなければならないようなことも余りないのであります。殊に私どもは御存じのように裁判実務を扱つておるものでありますから、問題が細かいことを扱つておる関係からいたしまして、こういう法案を全体的に與えられましたときには、どこを問題にするかというようなことは、狭い範囲に目が落ち過ぎまして短見に陷る嫌いもないわけではありません。従いまして、成るべく私としましては実務の上で扱つておりまする問題から一般的に申上げて責を塞がして頂きたいと、こういうふうに考えておるわけであります。実務と申しますのは、現行商法の上にありますいわゆる会社整理の事件であります。それとの関係から見まして本法案をどう考えるかというようなことが、本日私がここへお呼出しを受けた主なる目的であろうかと考えておるわけであります。  いろいろ問題を、数日前に頂きました問題点の中にございます。その問題を考えます場合にあるのでありますが、全体的にはこの法律案は非常によくまとまつておりますこと、殊に現在の会社整理が何と申しますか、裁判所の監督の下に裁判所がタツチして行われますものでありますけれども、非常に自由な当事者の活動の範囲を広く認めた制度であり、且つそれに債権者に対する強制的な規定もなし、非常に何と申しますか、裁判所制度としては自由にやれるような制度に現在の制度がなつております。その結果或る面では非常に食い足らないというような感じを持つてつた、それをことごとくこの法案は問題を解消してくれたといつたような感じがするのであります。その第一の点は会社整理という問題が起りましたときに、一番先にとまどいを当事者がするらしく、私どもが感ぜられるのは、税金が最近は非常に会社経営一つの行詰つたときの問題になる、然るに税金商法による整理の場合にはストツプをかける対象にはならない。その点をどう解決するかということが恐らくこの更生法立案される場合には重大な問題として扱われたであつたろうと思うのでありますが、それが立派に解決されたという点は、非常に会社一般に対していい感じを與えるものだと考えるのであります。これらの点についてはもう私どもから申上げるまでもなく、非常に結構なことで、むしろ大蔵当局がここまでよく譲歩して下すつたと思うぐらいであります。併し、ところが実際会社整理の事件を扱つてつて見ますと、この点は一つの法的な根拠を與えて下すつた点ではありますが、当事者が税務当局に交渉いたしましても、今日では税務当局もそれほど強硬には取立を実行していらつしやらなくて、或る程度当事者とのお話合いの上で、裁判所整理をやるのならば、暫らく待とうというような態度に出ておられるようであります。でありますから必ずしもこれほどまでの強硬手段がとられなくてもよかつたかも知れないとは思いますけれども、併し万一そこの話合いがつかなかつたような場合には、こういうことで行くということは、最後の一線のために必要な規定であつたろうと思うのであります。それからその債権の、更生債権、それから更生担保権等、債権者の地位の確定でありますが、この点は現在の整理の面ではやはり非常にルーズに行つているのであります。申立の際に申出られております債権の一覧によりまして、そのまま手続は進行しておる実情でありますが、差当りのところ私どもとしましては、その程度で別に支障を感じていなかつたのでありますけれども、最後に更生手続更生が終局するというようなことに、円満に終局するというようなことにならなかつた場合に、本法債権者更生債権者表、担保権者表に記載された権利者に確定判決と同一の効力を認めることによつて地位を確定した、その結果従来の整理の面では幾ら一生懸命に話合いをつけても、債権者の地位か確定しなくてやはり債務名義を別にとらなければどうにもならなかつたのですが、その点が救済されることになつて、非常にこの点では債権者の地位が安固なものになつたと言い得るのではなかろうかと考えておる次第でございます。それから第三番目は、従来の会社整理におきましても考えられないところではございませんけれども、殆んど使つていないのでありますが、管財人制度でございます。元来会社整理になりますような場合においては、会社の理事者のやり方がまずかつたために、ここまで来たわけでありますから、会社理事者の地位は或る程度ここで一応交代を認めるなり、或いは積極的に交代をして頂くような方向へ持つて行くのが正しいのだろうと思つておるのであります。ところが場合によりますと、必ずしも現在の会社理事者の責任ではなくして、その一代前、或いは二代前の会社理事者のやり方の乱脈さが、現在の整理申出までの段階に至つたというような場合もないことはありません。そうして参りますと、会社理事者をここできれいさつぱりと交代させてしまうということは、甚だ不本意な場合もないことはないのであります。又場合によりますと、この非常に個人的色彩の強い会社におきましては、会社即事者を山家代させるということは、使用人側が非常に不安を感じまして、それを望まない。元来日本株式会社というのは殆んど同族会社言つてもいいようなもので、それが訴訟なり、或いは整理等、裁判所の門をくぐるという場合が多いのでありまして、立派に株式が公開されておるような会社裁判所へ来て整理申立をするとか、或いは訴訟に関係するというようなことは比較的少いのであります。そういうことを考えますと、この理事者を全然交代をせしめないで、差当り理事者に扉の蔭に引籠つてもらつて、暫らくの間を管財人が預かるというような制度も非常に結構なことではないかと私考えた次第でございます。ただこの関係におきまして、ただこの條文から感じましたことは、会社債務が二千万円以下のときは管財人を置かなくてもよろしいということになつております。この二千万円という標準でございますが、これは少し低きに過ぎるのではなかろうかというような感じがいたしておるのであります。現在私の手許で扱つておりますこの会社整理事件、ちよつと調べて見たのでございますが、昭和二十四年度に会社整理を開始しました事件が一件、それから昭和二十五年度は四件ございます。で二十五年度中に開始をしないでそのままになつております事件が五件、このうちには取下げて終局になつておるものもありますし、又ペンデイングになつたままで残つておるものもございます。それから昭和二十六年度におきましては六件の申立に対して五件の開始で一件がペンデイングになつておる。こういう状態でございますが、これらの会社につきまして、債務額が二千万円以下という会社は極かに五件でございまして、まあこういう会社は非常に少いのであります。その余の会社は大きいものは二億二千万円から一億何千万円といつたような債務額に達しておるものもございますが、まあ五、六千万円で以て申立がなされておるということが非常に多いのでございます。そこで私がここでその二千万円という標準に疑問を持ちましたのは、この費用が今度の更生法によります更生手続は非常に費用がたくさんかかるのじやないかということを考えるのでございますが、そのことから見ますと、もう少し管財人を置かないでも自由にやれる標準は下げて頂いてもいいのじやなかろうか。こういう強硬ながつちりした手続で以てやります更生手続は、相当申立がありましても、これは相当十分に更生の見込のある会社でなければ、費用倒れになる慮れがありますから、そこは一つ何かもう少し標準を高くしていいのではなかろうか。で実際から申しますと、私どもが費用を予納さしております現在の会社整理事件におきまして、少いものでは二万円くらいで開始をいたしました例もございますけれども、通常は先ず十五万円か二十五万円くらいの費用を予納させなければならない。多いものになりましては、これは三十万円ということになつておりますが、この二万円の費用の予納で開始いたしました例は、これは非常に資金が少い、で何とか切詰めてやりますからということでありましたので、現在の制度でやれますところの検査役、それから整理委員等の任命もなしに申立代理人の弁護士が、公正にやるということを申しておりまするのと、その弁護士信頼した裁判所の一種の何と申しますか、腹芸と申しますか、少し言葉が俗に落ちますけれども、そういつたような気持の現われで以て、二万円くらいで開始した。これは十分に債権者の側の弁護士もついておられ、両方の話合いがうまく行きそうだということを裁判所が見通上を立てたために、このくらいで開始ができたのでありまして、通常はこのくらいで開始することは、理事者の責任の追及の問題その他いろいろ調査する費用等考えますと、到底期待し得べきことではないのでございます。そういう点から申しますと、どうも債務額が二千万円以下くらいの会社で以てこの手続へ入つて行くということは、少し酷な感じがするような気がいたします。  それから管財人でございますが、管財人の人を得るということが又非常に困難なことだろうと私どもは考えております。私どもの手許で、この八月に開始をいたしました会社におきましては、整理委員、現在は整理委員でございますが、整理委員が先ず中心になつて、大体整理の仕事が動くようになつておりますので、整理委員にどんな人を得るかということを非常に苦慮したのでありますが、幸いに実業界に何と申しますか、後備役とでも申しますか、もう予備を終つて後備というくらいの年輩のかたでございまして、非常に実業界に現在働いておるかたがたは、殆んど後輩というかたで、非常に発言力を持つていらつしやる。それからもう一つ金融面に非常な発言力を持つていらつしやるという経歴のあるかたを、これを整理委員にして頂きたいというお申出がありまして、そのほかいろいろの事情を私どものほうで調べて見ましたところ、清廉潔白な人で且つ実力のあるかただという事情がわかりましたので、お願いいたしたわけでありますが、こういう適当な人が手に入れば結構でありますが、この管財人というものは、御案内の通り一面清廉潔白ということが、そうして公正に仕事を行い得るということが、必要であるのみならず、経営の面で実力のある人でなければならないという面がございますので、実際そういう人に、更生手続が終了いたしました際に、すぐに会社がその軌道の上で進み出せるような基礎を作つて頂きますとしますと、報酬等もこんな三万、五万というような包金で、有難うございましたというわけには行きますまいかと思われます。こういう面については、若しこのままでこの法案を実施して行きます場合には、商工会議所あたりの御援助を得て、そういつた右、左……非常な実力を、持つたおかたを御推薦願うというような、連絡方面について、特別の配慮が必要になつて来るのではないかと考えておる次第でございます。  そのほか私のほうからは特別に申上げるほどのこともございませんが、ただこの手続でこれだけの経費を使います以上は、成るべく私どもはこの更生手続の中で会社更生させたいという非常な必要があるだろうということを念願いたします。現在の整理手続でありますならば、そういう周囲の皆さんには、まあ申しますればせいぜい暫らく債権の回収を待つて頂くという程度で済むことでございますけれども、従つて費用もそんなに使わないで済んでおりますけれども、こういう手続でやります場合には、随分費用もかけておりますから、会社自身が身分の力で立直るという一つの見通しをつけることを目的にしなければならない、こう考えるわけであります。従いましてこの手続を開始いたしますのには、どうしても事業継続に著しい支障を来たすことのない時代に申立てて頂きたい。もう二進も三進も行かなくなつて破産へ追い込むよりほかないのだという時代にたつてからこの申立をされたのでは、実際手続だけに費用を食つて、あとに一体事何が残つたのだというようなことになる虞れもございますので、まあ会社以外のかたから申立がある場合には、成ろほど破産原因たる事実の虚れがあるときといつて、殆んど破産原因と同じような條件で手続の開始をするというようなことになるというのも止むを得ないものかも知れませんけれども、そういう状態にまで至つて、なお且つ私どもは手続の開始をするということは、どうも甚だ不本意と言つてもいいほど管財人そのほか関係人会社を立て直りに引き戻すということが非常に困難になるだろう、さように考える次第でございます。今日の実情を申しますと、つまり休業に立ち至つた会社が、そのままの姿で整理によつて立直るというのは、私の今扱つております十数件の開始している事件では、僅かに二件ぐらいがそのままの姿で立直りができるという見通しを今つけているのでございますが、ほかの事件は差当りのところどういう結末がついて行くかということはまだはつきりしないのでやございます。乃至はほかのものにつきましては、第二会社を作るとか、例の企業再建整備法以外に一般的にとれらて来た方式である、第二会社を作るというような方式がまあ着々当事者間に準備されているようでございますけれども、本当に望みたいことは、その会社そのものをそのままの形態でよりを戻して行くということが、更生としては一番望ましいことであり、又はたにも余り迷惑をかけないで済むことであると思うのであります。それならば、そういう形で行けば債権の取立を暫らく猶予してもらう、せいぜいまけてもらつても利息くらいで済んで行く、利息を放棄してもらうくらいで滅んで行くのでありますが、第二会社方式をとるような場合になりますと、どうしてもこれは第二会社に或る程度の肩替りをして債務を引受けてもらうとか、或いは何%かは切捨てにしてもらうとかいうようなことになつて、これは一見その会社自身のためにはいいようには見えますものの、権利の実現という私どもの立場から行きますと、非常に借りたものも返えさないで済ますような結果になつて望ましくないことになるのでありますから、私どもとしては成るべく早い時期にこういう申立がなされて、本来の会社の姿のままで更生ができる、そういう時代に事柄が運ぶように参りたいものだと、さように考えている次第でございます。従つてこの開始事由といたしましては、むしろ私は更生事業継続に著しい支障を来たすことなく弁済期にある債務弁済することができない、こういつた時代に成るべくやるので、これよりも一歩進んでいるような時代はもう余りやらない、やつてもそういうものをやるときにはまあ商法の現在の整理手続で事を済ませて行くというように運んだらいいのじやないかというような感じがいたしておる次第でございます。それからもう一点非常に細かいことでございますが、本法更生手続の費用の予納の裁判に対しまして、即時抗告を認めておるようでございますが、これもいわゆる本法が全体的に非常に何と申しますか、ゆとりの少い、固い厳格な法律制度をとつた以上止むを得ないことかも存じませんけれども、成るべく手続をスムースに早く進めろというような意味合いにおいて、この費用の予納決定に対する抗告なんというものは認めて頂かなくても、大体裁判所と当事者との間の話合いで行くのではなかろうか。誰しもこういう場合におきましては、手続が一日も早くなつて行くことを望んでおる際でありますから、こういうものはそこまでお認めにならなくてもいいのじやないかというような感じがいたしております。それは現在の整理におきましても、又破産和議におきましても、これを全体として認めていないように思います。ただ本法がこの予納の、つまり費用の額の決定についての或る程度の標準を示しましたので、こういうことになつたのかとも思われますけれども、まあそういう釣合上の制度として一つ認めて置くというくらいのことかと思いますが、必要ないのじやないかという感じを持つております。非常に率爾の、忽卒の間にこちらに参ることを決定いたしましたので余り細かい点を申上げるだけの力を持つておりませんが、大体実務の上から感じました点を二、三かいつまんで申止げました。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か御意見質問ありませんか。御質問は別にないようですが……。小川さんにお尋ねいたしますが、実際問題として裁判所がこの更生法によつてこれだけの仕事ができるでしようか。
  22. 小川善吉

    参考人小川善吉君) それは今実情を申上げますと、今までの整理でも私のほうは随分固く……。固いと申しますか、厳しい扱い方をしておりまして、割合昨年の前半期頃までは開始をしない扱いがなされておつたのですが、最近いわば私はどこに原因があるのかと思つておるのですが、いわゆるドツジ政策がとられてからの不景気と言いますか、あれが多少影響して来てこのように事件が出て来るようになつた、それがまあ非常に多くなつたせいだろうと思うのですが、それ以前は一方は企業再建整備法でやる、それから又他方景気、インフレインフレで来ておりますから、整理まで持つて来なくてもそれで済んだ、それで事件が少い、そこに持つて来て裁判所もそれ以前は殆んどタッチすることが、裁判所申立がなくて済んだものですから、つい割合厳しくやつてつたのですけれども、私は余り厳しくしておつても、これを利用するチヤンスがなくなるのじやないかと思つて、最近は割合その点弛めて来ておるのですが、まあここで実情から申しますと、百人の書記官を充実いたしますれば、まあ破産や何かの問題もやつておることでございますからやれないこともないかと思われますけれども、その陣容を整えるのには相当な準備が必要であろうということは十分考えられることだろうと思います。で余り同時にたくさんの件数を持つことになりますと、判事のほうも手不足を感じますし、殊に書記課の呼出等の手続は大変なことで、私もまだ目算はちよつと立ちかねております。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 問題は事務的においても非常に複雑であつて、先ほど三戸岡さんもおつしやつておられたのですけれども、事実上においても裁判所として株主総会を開くという異常な仕事があり得るかもわからんですが、これはまあ今お説のように事務当局の機構を拡充する必要が当然認められると思いますが、ただ問題は裁判所和議とか破産の場合は死んでおるものを整理しておるのですが、本件の場合においては、整理をするかたわら会社更生せしむること、即ち生かすほうが重大な使命なのですね。又裁判所経済界に余り熟知していない人が実際運営して行くという点において裁判所の乏しい陣容で果してそれが賄えるかどうかという点が非常に我々として心配なわけですが……。
  24. 小川善吉

    参考人小川善吉君) その面は先ほど私が申上げましたように、全くこれは管財人の実力のある人の御援助に待たなければ到底できることじやないのでございまして、裁判所はそれが法的に公正に行われておるかということの後見的な役割を果すだけで、ございまして、恐らく指導的な、私どもが千代田銀行さんへ行つて、或いは帝国銀行へ行つてその金融をお願いする、そうしてそんなことしたからといつて恐らくそう右から左へ事が達せられるわけでもないと思いますし、この点は管財人に人を得るか否かできまることで、非常にこれは管財人というものを重税すべきじやないかと、こう考えております。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まああなたのようなお考えのかたばかりであれば、そこは運用の上において妙を得て行くかもわかりませんが、裁判所がこの規定されておるところを、職権事項が非常に権能が、権限というものが従来の法律に見ないほど規定がたくさんなされて、これをことごとく裁判所において実行するということになると、管財人においてはただ裁判所の手足、小使いというような形になつてしまう。あなたの考えであれば管財人中心、スムースに行われるかもわかりませんが、この法律そのものをただ実行しようというような強いお考えだという裁判所によほどよき人を得ないというと……。
  26. 小川善吉

    参考人小川善吉君) 私は全然そこはこの法律から期待されないので、裁判所はそこまで深入りは到底できないと考えております。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、本法は全般的においてあなたがお考えのように裁判所は後見又は監督、こういう観点に立つて、まあ規定して行くほうが好ましいということになるわけですか。
  28. 小川善吉

    参考人小川善吉君) それは大体これも規定の表だけはそうなつておりましても、大体そういうような運用ができるのじやないかと私は考えております。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 非常に、まあ條文をずつと拾つて管財人が、或ることをなそうとしても一々裁判所へ走つて行かなければならない。これは今日生産資材を仕入れようといゆてもやはり裁判所に行かないと許可を受けられない、これを売ろうと思つても許可を受けなければならん。そのうちに相場は変動して会社の運営は到底円滑にし得ないというようなことになりますから、だから管財人にさような人を得られればこれは別ですが、そうすると裁判所がこれを後見して行くというようなあり方ならば、これは更生法目的は達成できると思いますが、それから御説のように東京あたりは、いわゆる予備、後備の財界人が多数おいでになるから人を求められるが、地方ではそういう人がちよつとない。地方ではなかなか人が求められない。ですからこの管財人の、ちよつと期待するような人が容易に求められるかどうかということが非常に重要なのです。そうすると、どうしてもその後見の責任というものは裁判所にかかつて来る、本法そのままで行くというと……。
  30. 小川善吉

    参考人小川善吉君) 先だつても、今整理を開始しております事件で整理委員のかたが千代田銀行へ行つてこれこれの話を進めている、一つ裁判所から声をかけてくれというお話がありました。裁判所から声をかけるための文面までお作りになつていらつしやつたのですけれども、私そのままそれを申上げるのもどうかと思い、又裁判所がそういうことを山上げることが、銀行に対して申上げることがいいか悪いかということもいろいろ考えられましたが、全く独自の立場から千代田銀行に申上げるということを別途考えまして、いろいろ千代田銀行にお願いしたりしておりますが、そういうような場合には私から申上げることはもう殆んど形式的になりますので、ただ裁判所もひたすらその整理が成立するのを望んでいるという程度のことを申上げるくらいにとどまるので、非常な、下工作はもう管財人が、つまりその事件では整理委員でございますが、整理委員が当たつてつて下さつて、大体整理中の会社に何千万という融資ができる、何億万という、一億以上の融資ができるというまでに行きますのには、もう一つはそのかたが曾つては千代田銀行で飯を食つたことがある、あちらさんに顔がきくというところがあるからこそそこまで進んだのでございまして、裁判所の力で進むものじやないということを私ども十分了承しておりますから、そこまで介入することはもうこれは愼んだほうがいいのみならず、全く整理委員の力だと思つております。まあそういう意味でチエツクしたりなんかというよりも、そう私どももいたしません。更生して行くのには勇敢に或る程度仕事の基礎を作らなくちやなりません。その意味整理事件を扱う裁判所というものは割合腹芸と申しますか、ただ更生ばかりでも参りませんで、或る程度、ここまでは一つやはり許可しておけば、それから先は自然に動くのだろう、動いてくれという希望的観測に……。この最後の署名をするというような場合も出て参りますので、場合によると裁判官としてはちよつと違うかも知れないけれども、結果的責任を問われるような場合もあるかも知れないと思つておるのですが、整理の仕事を扱う以上はそういつた責任も回避できないかとも思うくらいな気持で仕事を運んでおりますが、実はひやひやしながら整理委員うまくころがしてくれればいいがと思いながらやつております。その意味で私どもは毎月事業の報告をとつております。でそれに従つて先月は二百万の売上げが今月は五百万になりました。来月は一千万にしますといつて計画をだんだんお立てになつてお申入を受けております。そうして、でもその会社では割合うまく行つておりまして、十月は約一千万の予定が八百万まででき上つて来ました。だからもう二、三カ月すれば大体ここで完全な整理の基礎ができるというまで来ておるとこういうことになつておりますので、そういうことをみすみす裁判所が許可がなければ、取引もできない、財産も処分ができないということではどうも不本意極まることだと思いますので、或る程度その点を見越しながらやつて行くというようなこと、止むを得ないことだと考えており
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの今の実際のお取扱の考え方ならば私は更生もできると思うのですが、本法によつて非常に制約しているのです、行動についてですね……。このまま條文通りやられたならば更生和議じやない、破産してしまう、破産の三越よりしかあわ得ないというようにも考えられるのです。
  32. 小川善吉

    参考人小川善吉君) その点、私どもは割合この條文を読みましてそんなに窮屈に感じなかつたのは、私どもが現在の整理事件においていわゆる整理を開始したときに、三百八十六條のいろいろな処分の決定をやります場合に、殆んど会社の活動を事実上は縛る裁判の決定をいたしております。にもかかわらず一々やつぱり足を運んで頂いて、そうして相談と言いますか、私ども別に相談に乗つてそれがいいとか悪いとかというわけじやございませんけれども、形式だけ履んで頂くことによつて整理委員、或いは会社理事者が無軌道に仕事をしない、裁判所の監督の下にやつておるのだから乱暴なこともできない、それから債権者を害するようなことはできないと、そういう一つの精神的な制約をお受けになるということで無軌道なことが行われずに済むだろうという期待を持つておるわけでございまして、さような意味でいろいろな今おつしやつたような職権的なことがこの規定にあるにかかわらず私どもその点を障害にはなるまいと思つて受取つておるわけでございます。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども実際は実務に携わる、第一線に携わる人々が、あなたのようなそういうお考えの人々ばつかりだとそれは目的を十分達成されるけれども地方に行くとどうも安心ならぬですね……。それからいま一点あなたが実際にお取扱いになる上において現行の商法整理規定とこれとを併存せしむることがいいのですか、或いは片一方は要らないじやないかというようなお考えですか、どちらですか。
  34. 小川善吉

    参考人小川善吉君) その点ですが、その点は更生法のほうがこんなに関係人集会とかいろいろな二段にも三段にもなりまして数回開かれるというようなことになりますと費用が相当にかかりますから、とこまで至らないために現在のような制度は非常に緩やかなものがあることが望ましいので、これはできるならば更生法の中で現在の整理のようなものを、緩やかなものを置くようにするか、更生法のこういう厳格な規定会社整理の章の中に全部盛るようにするか何かの形で一本になつて然るべきものだと思つております。ああいう制度を残して置くということは日本会社というものが殆んど、或る程度同族会社言つてもいいようなものが整理に出て来るところを見ますと、余り費用のかからない整理法というものを残して置いていいのじやないかという感じを持つております。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では三菱商事株式会社の稻脇修一郎君の御意見をお伺いいたします。今朝お出でになりませんでしたからちよつと御注意申上げておきますが、私のほうから大体問題点をお出ししてありますが、決して問題点に拘泥せられる必要はなくて、その中のたとえ一項目でも構いませんが、又その余の事項についても御自由に一つ意見をお述べ願いたいと思います。ただ私どもは参考問題点を出しておいたに過ぎないのですから……。
  36. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) 便宜、最初こちらで一応お示しの問題点につきまして、多少申上げたほうがよいのではないかと思います。第一点の、この法案が便宜であるかどうかという問題につきましては、今日これは悲観的な見方かも知りませんが、戦後の経済の無秩序というような、或いはいわゆるアプレゲールの風とでも申しましようか、このために経営が非常に放漫になつておる。ところが一方におきまして相当経済が窮屈になつて来て、ために相当窮境に陷つております会社の数が現在あるのではないか、かように考えております。従つてこれらのものがそのまま倒れて行つてしまえば、或いはこれは止むを得ないとするかも知りませんが、できる限りこの更生の方法を講じさせるということは非常に時宜に適した措置であると考えますので、その面から申しましてこの更生法の制定を希望いたしますと同時に、むしろ成るべく早く御実施になるほうがよいのではないかと考えます。それからなおもう一つは、この法案を逐一拝見いたしますると誠に詳細に亘つて従来見られなかつた欠点も補われ、非常に結構な法案ができておると思いますので、全体から見ましての話ですが、その面から見ましても折角のこの法案を葬り去ることは全く残念至極のように考えます。その意味からも制定を希望いたします。次に更生手続開始事由の問題でございますが、これは第一点につきまして相当関連のある問題と存じます。というのは大体よく似たような目的、或いは類似の目的のために相当いろいろな法律ができております。例えば最も顯著なものといたしましては更正手続和議法その他とも或る程度重複するという関係もありますかと存じます。これは余り同種類の法律がたくさん出ております。これは專門家はともあれ、一般にとりましてはかれこれ混同いたします。従つて法律に親しみを持たなくなる。法律に親しみを持たなくなるということはこれは相当重大な問題ではなかろうかと考えます。これは例えばアメリカにおきましては現在は存じませんが、戦前におきましては破産手続などをいたしますと、ワインデイング・アツプの手続をいたしましても、大体六・七〇、%の配分金が、多い場合になりますと八〇%くらいの配分金、そういうような状態でありますが、日本におきましては残念ながら和議の場合におきましても、実情におきましてはせいぜい三〇%の支払ができるかどうか。破産にいたりましては一割内外の支払が不可能な場合が多々見られます実情にあると存じます。こういうことは一面におきましては債務に対する責任観念、或いは整理観念とか信義に関する観念というものが非常に稀薄であるから、そのためにこういう結果が生じているのだという概念的な理由も相当力強い理由と考えられないこともありませんが、又一つはやはり一般に法律に対して或る程度親しむということ、そうして又この法律を利用する、或いはこれは不適当であるという或る程度の一般概念が頭に入つて、通俗的に申せば親しみを持つということがこれは必要なことではなかろうかと存じます。それには行動も同じような目的のためにたくさんの法律が族生するということは、どうも余り望ましいことではなかろうと、こう考えますので、それは或いは稀な場合にとりまして会社整理が異常であります場合もあるかも存じませんけれども、ああいうものは一方に収容をしてしまうとか、或いは削除してしまうというような一つ整理をして頂きたい、こう希望いたします。従つて第二点の問題もそれに対応して更生手続開始事由整理されることになるかと考えるわけであります。次に第三点について申しますれば、これはまあやはり第一点に関連して生ずる問題ではないかと存じまするが、和議法とそれから或いは今回のこの法律との文……これをどういうふうにおくかということも先ほど申上げました同一種類の法律整理関係して参ります問題と思います。まあこの株式会社と他方合名会社合資会社及び有限会社、これと対比して考えますれば、もとよりこれは申上げるまでもなく合名会社合資会社は非常に人的関係が濃厚なのでありまして、若し和議法を個人の和議とか個人財産和議とか、或いは人的関係の濃厚なものについての和議というものに区別することの一つの方法といたしまして、整理をする一つの方法といたしましてそういう方法をとるとするならば、そつちの分野に合名会社を、合資会社を收容すると、これは一つの方法であろうかと思います。併し有限会社はこれは会社の性質上或いは試験的に事業経営する場合、或いは責任は有限であるがために事業の冒険をするということがあり得るのでありまして、その点は株式会社に非常に類似しておる、こういうふうに考えます。従つてむしろ有限会社のほうは株式会社と同等の法律を以て規律したほうがよろしいのではなかろうか。従つて面接的に、第三点について申上げますならば、少くとも有限会社はこの法律を適用されてよろしいのでなかろうかと、こう考えるのであります。それから第四点につきましては、大体この法案でよろしいのではなかろうか、こう考えております。それから第五点、この管財人でございますが、この管財人は更正手続なり、或いは和議手続破産手続にいたしましても一番大きな重要な役割を占めるものであろうかと存じます。従つてこの人選は最も適当な人を必要とするめでありまして、別に特に制限を設けることなく、むしろこれは最も如何にしてその適材を掴み得るかという点に注意を集中されたかと存じますが、従つて或いは法人を適当とする場合がございましよう。その法人は単に信託会社だけにとどまるものじやなかろうと考えます。例えば同業の一つの協会とか組合とかいうようなものがありますとするならば、その中に管財人に適当した人物を選ぶとすることは最もより可能性が多いのじやないか、こういうふうに考えます。要はこの管財人の人選を如何にして適材を求めるかということにありますので、法人でも殊に先ほど申上げましたような同業関係というものを附加する必要がありはしないかとこう考えるのであります。それから第六点でございますが、これは勿論この裁判所の干渉がこの法案では少少強過ぎるのではないかということは同感でございます。ここに挙げられております財産の処分、債務の負担、訴の提起は勿論、それから私が是非更に入れて頂きたいと考えておりますのは、鑑定人の選任のようなものも別に裁判所の許可を得る必要がないのじやないか、管財人が適当であると考えたら鑑定人を選任いたしまして公正な鑑定を得るということはこれは当然のことではなかろうかとこう考えます。別段に裁判所の許可を必要としないのじやないか、こういうふうに考えております。それから第七点はこの更生手続又は和議手続、この種類の手続につきましては、どうも後にも十一点のところで申上げることになると思いますが、どうも例えば手形の不渡が生じた、支払の不能の状態が生じたということになりますと、自分だけはこつそり一ついいことをやるというような債権者が虎視眈々として財産を狙つている、これが先ず例外なしに起る事柄でございますので、従つて会社当事者がそのまま更生手続をやり得るものか、やりおおせるものか、これにつきまして私は非常に危惧を持つております。これは二千万円以下の会社でございましようとも原則といたしましてはどこまでも管財人を置くべきものではなかろうかとこう考えます。但し何か特殊な事情がございましてそのときこそ裁判所の許可を得て例外的な措置をとられることはこれは止むを得ないかと存じますが、それはもうよほど社長なり或いは重役に誠意がありまして、そうして非常に更生の熱意があるというような極く稀の場合にのみこれが管財人なくしてもその熱誠を買つて、それではお前の作つた案を承知しようというようなことになりますのですから、そういうことは比較的例としては稀であろうと思いまして、結局はもう誰それはいいことをしておるではないかというような非難ばかり受けましてなかなかこの手続は円滑に行きにくいかと思います。ですから原則といたしましては二千万円以下の会社でございましようとも管財人を置く。但し非常な何か特殊な事情がありました場合のみ裁判所の許可を得て管財人を置かんでもいい。それが、更生手続が可能であるという見込がこれが第一の要件であるかと思います。裁判所の許可をなさろうという場合におきましてもその標準はどこまでも会社の当事者でやつて行けるというそのお見込が先ず第一の要件ではなかろうかと思います。  それから第八点は、これは株主、社債権者につきましてはこれは集団的に代表者を以て意見を述べることでありまして、個々で意見を述べるような建前は恐らくどういう理由でああいう、こういう法案通りになりましたか、まあ想像いたしますのに、株主総会を開いたり社債権者総会を開いたりするということは費用と手数と時間がかかるのだ、だからこれを避けたいという、こういう趣旨ではなかろうかとも思えるのですが、それならそれで株主総会或いは社債権者集会法律規定通りに開くのでなくて、或る一定数以上の書面上の同意を得たならばそれで代表者がきめられるのだというような簡便な方法を以て補充しましてでも、やはり代表者によつて意見を述べる方法をとるべきではなかろうか、こう考えます。それから使用人につきましては、これは九点、十点とも総合して御回答を申上げたいと存じまするが、使用人は元来、これはまあいろいろの御意見もありますことと存じまするけれども、会社外、特にこの場合は債権者でございますが、債権者に対しましては、或いは又株主株主は第二義的になりましようけれども、主として債権者でございますが、債権者に対しましては、会社の理事者と使用人とが一体となりまして、実は誠に経営がうまく参りませんで、こういうふしだらをいたしましたと謝るべき立場に立つ、この原則はどこまでも忘れられてはならないかと思います。ただ軍に労働協約一本、通常運行しておりまする会社経営上の場合における労働協約の使用人の立場と、更生手続とか或いは破産手続の場合のそういう事態に立至つた場合の労働者と債権者との立場、或いは会社外の第三者との立場というものはおのずから混同さるべきではない。はつきり経営上の責任については或る程度の、その程度はどの程度であるか、それは事実の問題でありましようが、理事者と或る程度の責任の分担はしなければならない。これは一つの大原則ではなかろうか。これを考慮にお入れになりますれば、自然と八、九等の問題は解決つく問題でございまして、従つて更生計画上労働條件は或る程度切下げねばならん。そうしてもうみんな上下一致して、債権者の御迷惑を少々でも少くしようという一体となりましての覚悟がなければいけないものである。従つて労働協約も完全に動いている、健全な経営が行われている場合の労働條件とは或る程度の譲歩は当然のことかと考えます。従つてそういう面についていろいろの考慮を払わなければ更生手続の立てようもない場合もあるかと存じます。そういう面の御考慮が願いたいと考えます。それから十一点、これは担保権者も或る程度の譲歩をしなければならんとうような法案の御趣旨のように考えます。これは恐らく先ほども申上げましたように、狡猾な債権者或いは機を見るに敏なるところの債権者が出し抜いてとつたところの担保権というものが更生計画上非常な邪魔になる。これは従来の和議手続におきましても、破産手続におきましても、非常に顯著な問題でございますが、それが非常に多く考えられましたために、正当であるところの担保権者の利益を或る程度譲歩させようという、それも可能なようにしたいというお考えになられたのではないか。これはまあ偏見かと存じますけれども、そういう嫌いがないではない。ところが今の日本の状態におきまして、一番何と申上げましても大事なことは、いろいろな面もございましようが、信用経済を如何にして基礎を強固にし、確立して行くかということが当面の重大な問題ではなかろうか。手形取引、小切手取引のような信用証券の取引がもつと活發になりますれば、たとい発行されております貨幣の額は少額でありましようとも、その金の働きまする効率は非常に上つて参りまするのでありますから、どうしてもその面の改善が必要であろうかと存じまするが、これが残念ながら今日では相当破壊されておる。漸次回復して参つておることは、これはもう事実であります。けれども、これを例えば事変前の信用状態に比べますれば、これは銀行の取引関係がどうだのこうだのというのではなくて、手形の取引或いは小切手の取引というような安全性がなかなか回復の途上にはあるが、完全に回復はしておらん。その他経済の信用の基礎というものを如何にして確実にして行くか、基礎を固めて行くかということが当面の大問題ではなかろうか。従つて真性な担保権者の利益を適当にこうも制限するというようなことは、信用経済の回復途上にあるのを阻むことになりはしないかというふうに考えます。ただ問題は、先ほど申上げますように、狡猾な債権者のために提供された担保権、これは飽くまで徹底的に掃除のできるように相当この法案につきましても注意を払われまして、否認権につきましてたくさんの條項を割いておられるようでありますが、なお運用の面につきましても更に詐害行為によりまする担保権、これは飽くまで完全に掃除のできますように、運用上の問題と両方が両々相待つて効果をあげるのじやなかろうかと思います。法律の運用に当りましてもその点特に御注意が願いたいと希望いたします。それから第十二点でございますが、これは必ずしも除外しなければならんというのじやなくて、除外することができるというのでありまして、これは大体この法案通りでよろしいのじやなかろうか、こういうふうに考えております。それから十三点につきましては私は意見はございません。十四点、十五点につきましても別に私には意見がございません。  それから問題点以外の点につきまして申上げますならば、取戻権の規定があります。取戻権の規定の中で運送中の売渡物品の取戻権につきまして、運送中の商品がまだ引渡されていない場合には取戻権が行使できることに相成つております。ところが商品取引というものは、小売商以外の、まあ典型的なものはいわゆる問屋でありますが、問屋の取引というものは、幾つもの取引が相関連しております。甲から仕入れたものが乙に渡り、乙に渡つたものが更に丙に渡り、丙に渡つたものが丁に渡る、それから最後に小売商に渡るというように、最初二つ三つの段階は必ず通る。ところがそのうちの一つのものがこの更生手続に入つたといたしまして、他のものがその取戻権を行使いたします。それがずつと運に繋つております関係上、品物の不渡は、その以降の段階にれいて起つて来る。そこでその品物の不渡につきましての混乱が更に起つて参りますので、その波及するところは非常に大きくなる。これは典型的なものは、以前には綿糸の取引なんかによくあつた。そして最後三品取引のような場合は解合というものをやりました。全部取引の関係者が集まつて一定の解合の値段を一作つて、それで全部清算してしまう。併しその一連の関係というものは非常に複雑したものでございます。途中それを中断するということは、これは容易にできないことであります。従つて更生手続に入つております買主に対して、売主から品物が運送される途中にあります場合でも、その買主が更に他に転売しておるという場合には取戻権を行使できない、こういうことにいたしませんと、一つ会社の破綻のために、非常に大きな波瀾を或る一連の関係に波及して行くということが起りますので、その点を改める必要があるじやなかろうかと思います。それから同時に船荷証券、貨物引渡し或いは倉庫証券につきましては、これは特殊の物権的効力を持つております関係上、商品に比しまして割合に波及するところが少いかと存じまするが、やはり同様の関係が起り得る場合があるかと考えております。次に賠償的取戻権の問題につきましては反対給付の請求権を、取戻権者が引渡しを受けることができるようになつておるわけでございますけれども、これが商品売買の場合におきましては、代金債権と手形債権とが併存している場合が非常に多いのであります。そしてその手形債権は別に割引なり……変転されている場合があります。その場合におきましては、反対給付の請求権は取戻しすることができないという場合があるのではないかと思います。それから次にこれはこの法案自体の問題ではございません。これに関連しての問題でございます。併し、この更生計画上必ずや重大な障害を生ずるだろうと考えられますことは、法人税それから所得税、所得税はまあ会社でございますからございませんが、地方税でございますね、これが更生債権につきましては、更生手続が開始された以上は、その債権者資産勘定から外すことができるということにして頂きませんと、これは大体資産勘定に載つておりますと、その会社の利益が出ますればそのまま利益勘定に自然計上されることになります。そうしますと、一カ年に約五三%の現在税金がかかつております、地方税と法人税と。或いは率は多少違つておるかも知れません。大体そういうものがかかつております。そうしますと、二年間で債権額の全額税金で持つて行かれてしまうということになる結果になります。これはどうしても資産勘定から落してもらいませんと、更生債権者更生計画同意するときに、必ずそれを天秤にかけて考える。従つて更生計画の非常な障害になつて参ります。これは一つ税法をこれに関連して改正して頂きたい。それからこれは私も十分確信を持つてはよう申上げませんのですが、従つてまあ最後にちよつと疑問として申上げておくのですが、法案の第四條であつたかと思いますが、更生財産を国内財産に限定するようになつております。これはどういう御趣旨であるか、例えば特別経理会社規定など在外財産と在外債務は除外したのでありますが、ああいう場合を頭に入れてこういうことを言われたのかも存じませんが、例えば外国商社に対する債権、或いは外国商社から仕入れておつて、その現地に商品があるというような場合に、それをも国内財産のうちに包括できるかどうか、若しその中に含まれないとしますると、会社は勝手に現地で転売しまして、転売利益を他の方面に使つてしまいまして、更生財産の中からうまく逃げて行くということができる。それから又外国におきまして不法行為が生じまして、そこで損害賠償の請求債権が外国の商社との間に生じた、そういう場合は国内財産というのに入らない。併しそれはやつぱりどこまでも更生財産の中に入りませんといけないのじやなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。何かこういう国内財産ということに限定された特段の理由がありますのかどうか、この点に一抹の疑問を持つております。大体その程度でございます。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の最後の点につきまして、政府委員からちよつと説明申上げます。
  38. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) 今の第四條の更生手続の効力が日本国内にある財産にのみ及ぶということにいたしました理由でございますが、これは特別経理会社等にも御指摘のようなこともあつたかと思いますが、現在の和議法及び破産法規定にもこれと同様なことになつておるわけであります。で率直に申しますれば、その規定を踏襲したわけでございまするが、その結果不都合が起りはしないかという点を考えて見ますと、これはまあ立法の主義としてここに定めてありますような属地主義をとるものと、それから属人主義と申しますか、一国で開始した手続の効力を外国にも及ぼすというような主義と二り考えられておるようでありまして、各国によつてその主義の採用が異なつておるように承知いたしております。おのおの一長一短があるかと思います。一旦更正手続のような会社財産全体を対象とする手続が開始した以上は、外国に存在する財産もその手続に編入して進めて行くということが好ましいということは考えられるのでございまするが、併しながらそれを強権的にこちらの手続に振込むということになりますと、これはなかなか国内にあるものと違いまして、思うように行かない。いろんな障害が起つて来る。そういう障害を克服して手続を進めることができればこれは一番好ましいことでありまするが、そのために手続が非常に長引く、又管財人の職務も非常に困難性を増すということで、これは又そういうふうな次点があるわけであります。ただこの属地主義のとられた場合でありましても、事実上外国にある財産会社更生手続のほうへ持込んで利用するということは、これは管財人として努むべきことであり、当然そういうふうなことはできる限り努力さるべきものであると思いますが、当然そいつを管財人としても強権的にやらなきやならないという義務まで高めるということは、これは実際上困難じやないかというふうなことが考えられるので、こういうふうな主義を従前の和議法及び破産法においてもとつてつたのではないかと考えるのであります。最後に外国の商社に対する損害賠償請求権かとれないのは不都合じやないかというふうな御指摘がございましたが、これは第三項におきまして、「民事訴訟法により裁判上の請求をすることができる債権は、日本国内にあるものとみなす。」というふうにございまして、この民訴の規定によりまして、日本裁判所で訴訟を起せるものにつきましては、これは国内にあるものとして処理できるというふうなことに考えております。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 その点問題だと思うのですが、これについては又改めて質問申上げたいと思うのですが、三菱商事などのように外国商社との取引を專らやつていらつしやる立場から非常に問題が大きいのじやないかと思います。下手すると悪意的にそねまれてやられれば日本財産を持逃げされる結果が起つて来る。外国商社に一ぱい喰わされるということがたくさん起つて来ると思いますね。この点もつと突つこんだ討論を次の機会にやりたいと思います。それから三菱商事のかたにちよつと伺つておきたいのですが、先ほど裁判所判事さんが二千万円のそれをもつと上げるほうがいいだろうという、あなたとまるで反対の意見が出ておりましたが、費用が非常にかかるから二千万円じや会社事業倒れするだろう、こういうふうな意見があるのですが、それに対するあなたの意見を伺いたいことと、それからもう一つ、労働協約の問題でございますが、私たちは、この法案では労働者の立場というものが非常に弱く扱われておるような感じがするわけですが、更生手続をしなくちやならんという会社陷つた責任がどこにあるのかと申しますと、やはり経営者にあるのではないか、労働者にない。そうすると、その場合担保権が大事になつて労働者の賃金とか、賞與とか、退職手当というものが第二義的なものになりやしないか、こういうことに対しましてもいろいろ労働者の立場で一番問題が起つて来ると思うのですね。それですから私たちは、管財人の中に従業員の代表というものが入つて、そしてやつて行かなくもやならんと私は思うのですが、この法案じやそれが省かれておるわけですが、それに対して何かもつと御意見があつたら伺つておきたいと思います。今日実は総評の高野君が見えることになつてつたのですが、高野君が来ればその点伺いたいと思つていたのですが、高野君がまだお見えになつておらないので……。
  40. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) 労働協約の関係でございますが、必ずしもその責任が、そういう破綻を来たすような事態に立ち至つた責任はどつちにあるかということを今詮議するのではなくて、いずれにしましても、これは労働者と言いましても、この工場労働者と商業使用人とは大変性質も違いまして、私ども商業使用人を主として頭に描いておるのです。そういう場合になりますとこれはどうも相当責任の分担をしなくちやならない、こういうふうに考えるのであります
  41. 須藤五郎

    須藤五郎君 商事会社の……。
  42. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) 勿論工場労働でございますと、現状通り経営に参加されるようになりますと、労働協約によつてその点は随分強化されて行きましたのですから、工場労働につきましては、或いは仰せの通りもつと積極的に関與させるべきじやないか、これも考えられる問題だと思います。併し結果はやはり労働協約に影響がなければよろしいのですが、影響が生ずるのでございます。それから労働協約自体には関係はございませんまでも、少くも大きな面から見ました一つの労働條件、或いは或る程度の人員を整理するとか給與を或る程度切下げなければどうしてもこの更生計画は立てて行かないというようなことは、これは工場労働におきましても同様でございます。そうしますと、その面で私は従来のこの労働協約上の地位をそのまま取入れられてよろしいのじやないか、こういう考え方なんでございます。つまり労働協約を変えないのならば、更生計画はこの法案通りでいいのじやないか。併し必ずそれは、労働協約の関係は生ずるだろう、こういうことを工場労働などにつきまして私は予想しております。従つて労働協約に関係が生ずることになれば、当然これは他の面では……、さつき申しましたのは更生計画だけの面におきまして、その使用人の地位を申上げた、労働協約上の地位は又別問題、その面で十分更生計画に対してはこの更生法以上のもつと積極的な干渉ができるのじやないか。
  43. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が心配しますのは、勿論会社の潰れることは喜ぶべきことじやないと思うのです。従業員の立場でも喜ぶべきことじやないと思うのですが、潰れかかつた会社を興す場合に、従業員の意思を無視して果して潰れかかつた会社……、そういう会社に限つて非常に問題が起りやすいと思うのですね、ですからそういう場合に労働者の意思を無視して、管財人だけで、これまで会社に余り関係のなかつたような人が集まつて一方的なことをやつて、果して潰れかかつた会社を興し得るかどうか、労働者の、そこに働いておる従業員の意思を尊重することなしにその会社更生するかどうか。恐らくその場合はストライキも起るでしようし、いろいろなことが起つて来るだろうと思う。方的な弾圧のみで、労働者の意思を無視して、果してその会社更生し得るかどうか。私たちは会社というものは資本と今の労働者と……、この半分の意思を無視して更生し得るかどうか。だからそういう意味において会社をうまく更生する立場から、従業員の意思を尊重するという面から、管財人の中に従業員の代表を入れて、そうしてやつて行くことがいいのじやないか、そうしなければむずかしいのじやないかと考えるわけなんですが……。
  44. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) その根本的な面につきまして、従業員、労働者との利害関係のあることは、私は同様に考えております。考えておりますが、この更生法上の問題として労働協約には必ずこれは関係を持つておる。すでに仰せのように一体今度、更生後は理事者と労働者が一体となつてよほどそれは一生懸命にならんことにはその更生はできるものじやございません。その点につきまして、必ずやこれはもう相当強い発言権を……現在はこれでも行かれるのじやないか、こういうような私の考え方です。管財人にお出しになるというような、そういうお考えなら、そこまで私は具体的に想像しておりませんでしたが……。
  45. 須藤五郎

    須藤五郎君 この間名古屋のほうに参りましたときにも、どうも経営者側の立場のかたはこれ以上労働者の発言を、自由な発言を強めるようなことにしてもらつちや困る、もつと、むしろ言えば発言を封じるようなことにしてもらわなかつたらやつて行けんというような意見が多いのですよ。これは労働者の意見と対立するものだと思うのですね。労働はこれじや足りないと言うのです。もつと我々に発言の機会を與え、そして会社更生にもつと積極的にタツチさせなかつたら、会社というものは更生しないという意見が労働者の立場に強いわけですね。
  46. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) 私はそういう考え方で申上げたのじやないのですよ。根本的に……。
  47. 須藤五郎

    須藤五郎君 はあ、そうですが。
  48. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) そういう考え方じやなくて、むしろあなたの言われると同じ考え方なんです。一体になつて行かなければ更生はできないのだ、従つてその面で相当労働協約自身に影響が生じて来るのだ、当然来るのだ、その面で。この法案通りの発言権があれば、労働協約によつて更生法によらないで労働協約自身によつて従業員の利益は相当確保できるのじやないかれこういう考え方なんです。方法論の問題です、私の言うのは……。それは御意見は同一でございます。それからもう一点は……。
  49. 須藤五郎

    須藤五郎君 二千万円のあれです。
  50. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) あれは私はやり方自体の問題です。そんなに費用がかかるとは思わない……だから、それは管財人の人選の問題じやございませんか。
  51. 山本淳一

    参考人山本淳一君) 管財人の中に労働組合の代表者を入れましても、組合の代表者というものは單独で意思が決定できませんものでしてね。却つて整理を遅らせるのじやないかと思います。それで労働者の地位というものは、整理の場合にも必ず管財人を相手にして団体交渉できまずから、代表者として入れなくても守れるものだろうと思います。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今須藤さんの御意見は、管財人に入れるという確定的な御意見でもないでしような。要するに労働者の意見を何らかの方法によつて更生手続に面に現わしたいと、こういう御意見のように伺つておりますが、その発言権の範囲は、法的にどの程度まで認めるかという点について御意見があるようですから……。
  53. 山本淳一

    参考人山本淳一君) 認めなくてもよろしいのだろうと思います。必ず団体交渉できますから……。
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ところが結局管財人経営者側ですからな。
  55. 山本淳一

    参考人山本淳一君) 当事者になりますから……。
  56. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから労働者のほうから管財人が出て、経営者側に入つてしまうということはどうかと思いますが、これは労働者の意見として申しますね。
  57. 山本淳一

    参考人山本淳一君) 入つても自分で決定できませんで、中央委員会だとか何とかかんとか言つて、結局遅らせるだけでまとまりというものはないのだろうと思います。
  58. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) 更生手続はこれでよろしいのじやございませんか。別にその労働協約でそれを制限するというようなことはちつともしないのですから、だから労働協約で以てどこまでもその地位を主張されたらよろしいし、それから若しこの更生後の労働條件が悪くなればそこで大いに管財人とおやりになればいいのです。
  59. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は担保権が第一で、それから従業員の退職金とか、そういうものが第二になつておりますですね。そういう面でも非常に問題があると思うのですよ。私たちは従業員の権利が先ず第一に守られて、それから担保権などは第二であつてもらいたいと思うのですね。そうしないとそこで働いている人間が、一緒にそこでやつている、何十年とそこで働いている人があるでしようし、そういう人たちの権利は第二義的にしか認められんというところに問題があるわけですが、これはまあ立場々々で言えば意見が違うだろうと思いますが……。
  60. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) それは破産法から考えて行かなければならんと思いますね。併し更生手続から申しますと、何とか従業員の給料くらいは優先して払えるような状態だから更生手続をやるのじやございませんか。
  61. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですがな……。その程度でいいですよ。
  62. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) それから損害賠償請求の問題でございますが、この法案の第三項でございますがね。これは日本でできるのじやなくて、外国で裁判上の請求ができるという場合でございますね。通じやございませんか……、御承知通り損害賠償の請求権は交易上で起つて来るのじやないか、そうしますと、外国の裁判所でございますか。
  63. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) いろいろあると思うのです、これには。例えば債務の履行……。
  64. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) 殊に被告が外国商社の場合です。
  65. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) 義務の履行地であれば被告が外国商社であつてもこちらでやれると思います。履行地が外国で、住所も向うにあると、民訴の規定から言えば日本裁判所には訴は起せない、向うの裁判所に起さなければいけないというのは、これはやはり非常に手数がかかるからというので三項には入らないのであります。
  66. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の二項、三項点は重要な問題でございまして、十分我々としても考究したいと思います。
  67. 稻脇修一郎

    参考人稻脇修一郎君) これはただ二、三例として申上げただけでございます。ただ今後国際関係は貿易商社の……、貿易は相当広く行われておりますから、ただ二、三の例を申上げただけで、まだたくさんこういう例があると思います。
  68. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この点は我々のほうとしても十分專門的に調査させることにいたします。  大変公私御多忙のところ、貴重な御意見を拜聽いたしまして、我々の審議に資して頂いたことに対して厚く感謝申上げます。長時間いろいろと有難うございました。  では本日はこれを以て散会いたします。    午後三時二十八分散会