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1951-11-28 第12回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十八日(水曜 日)    午前十時五十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            鬼丸 義齊君    委員            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            齋  武雄君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    法務政務次官  高木 松吉君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法制意見参事官 位野木益雄君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局長)     内藤 頼博君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君    最高裁判官長    代理者    (事務総局給与    課長)     守田  直君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (京都大学事件に関する件) ○戦犯者釈放に関する請願(第五三八  号)(第八四三号)(第九一八号)  (第九五一号) ○戦犯者減刑に関する請願(第九七  七号) ○北海道千歳町に簡易裁判所設置の請  願(第九一七号) ○戦犯関係者恩赦等に関する陳情  (第七七号) ○戦犯者釈放等に関する陳情(第一〇  五号) ○全戦犯者恩赦に関する陳情(第一八  八号) ○裁判所職員定員法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を開きます。  本日は先ず昨日に引続きまして京都大学事件議題にいたします。御質問のおありのかたは順次御発言を願います。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は昨日の文部大臣質問が途中で切れてしまいましたので、非常に不本意な終り方をしておりますと思いますので、あと文部大臣がお見えになれば続けて昨日の質問あとをさして頂きたいと存じますが、今法務総裁がお見えになりましたから、法務総裁に二、三の点を御質問申上げたいと存じます。  法務総裁はこの前京大問題を、あの学生が出した質問書内容は取上げているのではなしに、当日の行動無届デモになつている、その点が公安條例に触れるのではないかという点を問題にしているんだという御発言があつたと思うのでありますが、あれを無届デモというふうに見る根拠はどこにあるのか、お尋ねいたします。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは検察庁報告でございます。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は二十四日に調査に参りまして、京都の市役所へ参りまして或る市議員に私は伺つたのですが、京都市の警察委員会におきまして、十一月二十二日にやはりこの問題が取上げられまして、質問がなされたそうであります。そのときに田中警選部長はこういう発言をしていらつしやるということを伺いました。これは引つかけようとすれば引つかける節もある。併しそれは歩道を歩いておつて、そうして天皇見えたからといつて万歳を叫んだ、それでも引つかけようと思えば引つかけることができる。ですから学生行動無届デモとするならば、ほかの人たち万歳を叫んだのも同じく無届デモというふうに言い得るということができる。それからあの行動が計画的になされたというふうには認めがたいという発言田中警邏部長が市の警察委員会でなすつたということを私は市の議員から伺つて参つたのですが、この点総裁はどういうふうにお考えになりますか。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 田中警邏部長発言については責任を持ちません。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 実際のその衝に当つておる京都市の警邏部長がこういう発言をしておるという点を総裁はどういうふうに御認識なさるのか、こういうふうなものはもうとるに足らない、問題にするに足らないんだというふうにお考えになるのかどうかという点です。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警邏部長発言はどういう発言があつたか存じませんが、警邏部長の所属いたしておりまするところの京都公安委員会におきましては、これは無届デモの疑いありということで只今検察庁に協力をいたして捜査をいたしておる次第でございます。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 あの当日は学長が学生言つて、そうして学生もその指示に従つて私は校内に整列をして集まつて天皇を迎えていたものだと思います。昨日も申しましたが、松の木に登つたり、車庫の屋根の上に登つたりして、初めて天皇の顔を見るというので、非常な好奇心を持つて学生がいたそうでありますが、そのどこからどこまでを無届デモとなさるのか、そういう状態デモでなかつたというのですが、それではどこからどの辺までを無届デモ総裁は御認定になるのですか。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 当日の実情をなお捜査中でございまするが、いずれ捜査の結果が明らかになればお答えできると思います。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 私がずつと前の委員会で、デモに対する定義をお伺いいたしましたとき、総裁はたしかこういうふうにお答えになつたと思うのです。デモは大衆の力を以て相手を威嚇する行動だ、そういうふうな意味の御発言があつたと思うのですが、当日の学生行動が果して天皇に対して恐怖心を与え、又天皇を威嚇したような行動であつたかどうかということをどういうふうに御認定なさつていらつしやるのでしようか。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 天皇に対してどうこうということでなく、天皇デモ実情御覧になつておらないので、天皇行幸になられます前、並びに学校の建物の中において御視察中に、玄関にありました空車を取り囲んでデモが行われた、こう見ております。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると今のお言葉で、天皇は全然デモ御覧にならなかつたし、何も感じていらつしやらなかつたということがはつきりいたしましたのですが、そうしますと、そのデモは誰に恐怖心を与え、誰に対してなされたということになるのですか。
  14. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そこの辺を今調べておりまするが、恐らくは大学当局に対してデモをなしたのであろうという点は明らかではないかと思つております。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうするとあのデモ天皇に対してなされたのではなく、大学当局に対してなされたということに理解して差支えないわけですね、今の言葉で……。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 大学当局に対してデモがなされたということはすでに大体推察いたしておりまするが、それ以上に亘りまして、天皇に対するデモが事実どの程度までなされたのかどうか、或いはなされなかつたかというその点はなお捜査中でございます。
  17. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はこれまでの衆議院などの質問によりますと、天皇に向つてなされたデモというふうにたくさん発言がなされていたように思いましたので、この点をお伺いしたわけですが、本日の総裁の御答弁によつて、あのデモ天皇に向つてなされたのではなしに、大学当局に対してなされたというふうに私は理解いたします。そうしますと、私はもうそのことに関して質問する必要がないのですが、若しも天皇に対してなされたデモとするならば、天皇がそのデモによつて如何に恐怖心を受け、どういうシヨックを受けられたかということが問題になると思われますので、若し天皇に向つてなされたデモというふうに御決定になるならば、私は天皇の御意見を伺つて見ないと、これははつきりしないと思つたために、私は今そういう質問を申上げたのであります。  それから私はもう一点伺つておきたいと思いますが、この前私は法務総裁に対しまして、天皇政治運動をやつていらつしやる節がありはしないか。即ちその一例といたしまして、今度の国会開会式に、国会でまだ審議の始まらない前に、平和條約、安保條約に対しまして天皇が、この両條約が結ばれたということは喜びに堪えないという発言をしていらつしやるが、これは一国の象徴である天皇が、国会審議の前に天皇意見を先ずお述べになるということは、国会審議妨害になる、これは明らかに私は政治運動だと思うという質問をいたしましたところが、総裁は決してこれは政治運動でないという御意見であつたと思います。それならば私はお伺いしたいのですが、若しもああいう意見を述べることが政治運動でないとするならば、これまで公職追放を受けておる人たちが、そういう意見を分けに席上で述べても、それは政治運動でないというふうにお認めになるのか、その点を伺つておきたい。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは場合によつていろいろでございます。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 その場合というのはどなたが認定なさるのでしようか。議会が認定するのでしようか、法務総裁個人認定なさるのでしようか。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 公職追放令違反事件につきましては、最終的には裁判所認定をいたします。
  21. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではその公職追放の問題も裁判所に訴えて、裁判所認定を仰ぐという余地があるのでしようか、どうでしようか。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 公職追放令違反事件はすべて検事が起訴いたしまして、裁判によらなければ判決を受けられません。これに対する処分は終局的には裁判所によつて行われるのであります。
  23. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると天皇がああいう発言をなすつたことが政治運動でないという御認定だから、公職追放を受けている人たちがあれに似た発言をしてもすぐそれを政治運動だというふうに認定しない、そういうふうなお考えでしようか。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は政治運動であるかないかということよりも、天皇国会開会式にお出ましになりまして、お言葉のあるのは当然のことであると思いますので、それが政治運動であるかないかということは御回答いたしたくございません。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は昨日法務総裁がいらつしやらんときに文部大臣にやはりこれに似た御質問を申上げたので、もう法務総裁にもその御答弁を頂きたいと思いますけれども、重複いたしますから、皆さん御迷惑と思いますから、総裁に対する質問はこれで打切りまして、そうして文部大臣に昨日に引続きまして質問さして頂きたい。
  26. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 法務総裁に何か御質問がありますか。
  27. 中山福藏

    中山福藏君 犯罪捜査面科学的分析ということが、非常に犯罪捜査方面に外国では盛んにやつているようでありますが、この近頃平和という文字の内容につきまして大分従来使用されておりまする平和という言葉内容とは差異が生じたように私どもは感ずるのであります。例えば今日のソ連を中心とした平和の考え方と、それから自由主義国中心とした平和の考え方と、その平和の実現方法に対する過程をどういうふうにして築き上げて行くかということに対する、いわゆる階段的な闘争というものに対する平和の内容というものは、非常に違つて来ているように思いますが、こういうことについて特審局、或いは捜査当局において平和の言葉内容分析というようなことについて相当関心を持つておりましようか、如何なものでありましようか。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 平和運動という名前の下に行われまする左翼運動の動向につきましては調査をいたしておりまするが、特に言葉分析という点については研究をいたしておりません。その名前の下に行われる運動の実体というものについてはできるだけ調査をいたしたいと思います。
  29. 中山福藏

    中山福藏君 私はこれは相当まだ今無意識に国民が看過している問題でありますけれども、この問題は思想対立の場合においては、当然これは科学的に或る範疇をちやんと第一、第二、第三というふうにお作りになつて、そうしてそれを分類して、今からこれをちやんと準備工作というものをその点において進めておいて頂きたいということをお願いしたい。これは今日まではさほど顕著な犯罪史の上にそういう事柄が現われておりませんけれども、将来は大きな、一つの力となつて現われて来るものと私は思つております。而してこの平和という問題について国民はただ平和という言葉に囚われておつて、その内容というものを鑑別する力を、現在の知識の程度では持ちませんが、平和という言葉に引きずられて、そうしてそれに合流する危険がここに生ずる。平和と申しますれば誰もその和やかな鳩のような気持で、国民が安易な生活ができるという社会の実現方法であると考えて合流するわけでありまするから、これには内容ちやんと分析をなすつて、今平和という二字のうちにはこの思想対立の上からこういうふうな行き方があるのだということを国民の前にお示しになるということが必要じやないかと思うのでございます。平和実現のための闘争という言葉、或いは実行の方法が今行われているように私どもは見ておるのでございますが、どうか一つこういうふうな点についても御関心を持つて頂きたいと思います。  それから只今須藤委員の御質問に関連してちよつとお伺いしておきたいのですが、今朝のこれは毎日新聞の記事でありましたか、日共からの強い指令が、行幸妨害闘争を盛り上げたということが、これは大きく出ておりますが、今日これを見ますると、この政治的な目的、いわゆる反動陣営による京都民族解放民主戦線妨害するために天皇行幸されたということが大体おかつたようなこれは書き振りでございますが、こういう点についてはまだお調べは進んでいないのでしようか。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今次陛下の行幸先でありまする各地におきまして、共産党の名前の入りました天皇行幸反対、或いは天皇制反対、そういつたビラ等が多数撒布せられた事実はございます。これらにつきましてはいずれも調査中に属しております。
  31. 中山福藏

    中山福藏君 私はこれで結構です。
  32. 小野義夫

    委員長小野義夫君) その他法務総裁よろしうございますか。……いいようですからどうぞ御退席……。
  33. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は昨日天野文部大臣に対しまして、文部大臣天皇道徳中心だという御発言が前にあつたことに対しまして、金森さんが天皇愛情中心であるという意見を持つていらつしやる。私たちの党としましては天皇制に対しましては又別の変つた意見を持つておりますが、若しも象徴としての天皇に対しての解釈の上からならば、道徳中心というよりも、愛情中心と言つたほうがまだ妥当ではないかという意見を昨日申述べました。それに対して天野文部大臣は、自分の言葉の足りないためにそういう誤解を受けたのだという御発言がありまして、私も了承したわけでありますが、そのとき文相は、天皇親愛中心だというふうな御意見を述べられたと思います。それじや天皇を一応親愛中心考えた場合に、その場合に今日天皇に対してなされているいろいろな警備の問題や、取扱の問題で、果して国民親愛中心になり得るような方向に向いているかどうか、文相の御意見を伺いたいと思います。
  34. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) これは私は実際問題とすると、非常にむずかしいと思います。こういうことも考えられますが、もつと本当に簡単にして、例えばイギリスの王様のように労働者のおかみさんとでも冗談を言い合うというようなことが私は望ましいことでございましよう。ただ一時にそこへ持つて行くということが非常にむずかしいのではないか。だから私は今のやり方が、これがもういつまでもこうあるべきものとは思つておりませんが、だんだんに事を進めないと、やはりうまく行かないのではないかという点に当局のかたがたの御苦心考えておるわけでございます。
  35. 須藤五郎

    須藤五郎君 ところが最近のやり方を見ますと、終戦直後は天皇が工場へ視察に行かれても、工員に親しく言葉をかけられて、或いはいろいろ話合われたということがその当時の新聞記事に出ました。ところが最近はそれが、そういう態度がだんだん後戻りをして行く。そうして天皇に対する警備方針として、すべてが曾つて天皇制時代軍国主義時代のような形にだんだん後戻りして行くというふうに私たち認めておりますが、天野文相はそうでない、だんだん今おつしやつたような方向取扱方が進んで来ているというふうな御認識でしようか、どうでしようか。
  36. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は宮内庁の御方針としてはそういう方針でやつておられると思つております。けれども実際地方では今須藤さんのおつしやつたような過ぎた点もややもすれば起りがちではないか。そういう点は適当に指導することが必要だと思つております。
  37. 須藤五郎

    須藤五郎君 私はもう少し現われているだけじやなしに、もう非常な反動、いわゆる以前の、昔の形に還りつつある。こういう状態では、幾らたつて天野さんが御希望なさるような、天皇親愛中心になるというようなことは、これは夢物語で全然不可能だ。むしろ天皇国民から離れてしまつて、又再び神棚の中に納められなくちやならん、そういう不幸な状態天皇の御一身の上にも来るように私は思うのです。その証拠に京都大学見えたときでも、学生天皇に、私は或る種の親愛の念を持つている学生がたくさんおつたのじやないかと思うのです、それを官憲が垣で妨害し、あの純真な学生たち天皇に対する質問書もすげなく拒否せられて、そうして何だかそこに鉄の扉が下されてしまつた、而もその学生気持を煽動するごとく君ヶ代を放送して、その前奏曲がなされたという、そこに今度の問題が私は起つて来たので、これは天野文相の志と違つた方向にすべてが向いて行つていると、私はそういうふうに考えるのです。こういうことをやめなければ、決して天皇国民親愛中心にはなり得ない。英国の王様のような形には日本天皇は絶対なり得ないと、私はそういうふうに考えるのです。天野さんは多少行過ぎの点をお認めになつていらつしやるようですが、その行過ぎの結果からこういうことが起つたので、結果のみを考えて、そして結果のみの責任を問うて、その結果から大学教授が赤の教育をしているからいけない、そんな者は首を切れ、又は学生が赤だから学生をおつぽり出せ、そうして学内に自由なですね……、この自由があるためにこういうことになるのだから、どれからだんだんに学内警察官を入れて弾圧しろ、警察の力でそういうものを全部力で押えてやつちまえ、そういう議論衆議院においても、又この委員会においてもなされていると思うのですが、こういうことをしてどうして天皇親愛中心になり得るのですか。こういうことをやつて天皇があなたのおつしやる親愛中心になり得るというふうにお考えでしようか、どうでしようか。
  38. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は今の日本はそういう過渡期にあつて非常にむずかしいときにある。それなら須藤さんのおつしやるようにやつてそれでうまく行くかというと、私はそれも非常にむずかしいのではないか。ここが当局の非常な苦心があるところであると私は思つております。で一部に行過ぎた点もあるということは私もこれは認めるにやぶさかではございません。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは私はもう希望……。私は今のようなやり方でなしに、いわゆる天野さんが理想としていらつしやるやり方をもう即刻お始めになつたほうが、あなたの目的を達する方法だと私はそういうふうに思つていますが、天野さんとそこの点で少し見解が違うようですからこの以上議論は闘わしませんが今現在なされている論議というものは、学生の、あの青年たち気持を理解しようとする努力が少しもなされていない。委員会におきましても……。ただその現われた結果を処罰するような内容にのみ論議がなされているということに対して、私は非常に不満を持つものである。私はむしろ学生がどうしてああいう行動をとつたか、その原因を追究して、若しもああいうことが好ましくないならば、その好ましくない行動の出て来ないような方法をとる、即ちそれは若い者に対する本当の理解を持つという以外にないと思うのです。それを力で押えたつてどうしたつてそういうことは防ぐことのできない問題です。ですからこの点文相として大いに考えて頂きたいということを、私は希望條項として申述べて、私は質問を終ります。
  40. 小野義夫

    委員長小野義夫君) どなたか文部大臣に対する御質問ございますか。……別に御発言もないようでございますから、それじや有難うございました。  それでは委員会としては、残つておる問題が裁判所定員法の問題と、それから請願が小委員会でお願いするのでありましたが、本委員会でやつてくれというお言葉のようでありますが、都合によつて午後一時から三時までの間開くことにいたします。  それではこれを以て休憩いたします。    午前十一時二十二分休憩    ——————————    午後四時二分開会
  41. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 開会いたします。  請願第一千百七十七号を除きましたあとの八件につきまして政府説明を願います。
  42. 高木松吉

    政府委員高木松吉君) 只今お話戦犯者釈放等に関する件について申述べます。仮釈放有資格者の仮出所については、現在は連合国司令部において行われておりますが、最近は相当多数の在所者に仮出所が許されている実情でありますので、平和條発効までにはかなり多数の仮出所者が出ることになるだろうと思つております。平和條発効後におきましては、仮出所者我が国関係国との意思の一致によつて行われることになりますので、関係国政府と緊密な連絡の下に適正な運営図つて国民各位の期待に副いたいと考えておる次第であります。講和成立に際しての大幅の特赦減刑については、平和條発効前においては我が国権限外事項に属しますので、お答えできませんが、條約発効後の特赦減刑については関係諸国政府と緊密な連絡の下に最善を尽したいと考えております。外地服役者内地帰還については国民各位の熱誠なる声を反映することによつてこれを促進するようにいたしたいと考えております。又平和條発効後においてなお外地服役者がある場合には、関係各国政府連絡協調して、速かに内地帰還目的を達成し得るよう努力いたしたいと考えておる次第であります。
  43. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今の御説明につきまして御質問のあるかたは順次御発言願います。……別に御質疑もなければ只今より採決に入りたいと存じます。  只今審査いたしました八件のうちには、個人減刑釈放をその趣旨といたしておるものもありますが、当委員会といたしましてはすべてを一般的な減刑釈放趣旨といたしまして採択、内閣に送付するものと決定し、なお委員会よりの審査報告書に付して出しまする意見書案にも、具体的事項については政府において調査の上善処されたい旨を明示いたしたいと思いますが、さよう決定いたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 別に御異議がなければさよう取計らいます。
  45. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案議題に供します。御質疑のおありのかたは順次御発言を願います。
  46. 伊藤修

    伊藤修君 最高裁判所にお尋ねいたしますが、最高裁判所においても、つとに御承知のことと存じますが、現在の裁判所職員勤務状態は大よそ定時時間に退庁はできないとかいう状態であるように見受けられます。いわゆる時間外勤務を余儀なくされておることが実情であると考えられるのです。なお他の一般職の場合と異なつて裁判所事務の性質からいたしましても、いわゆる人事院規則によつて一般職に与えられるところの休憩時間とか、そういうものも十分にかち得てない。又職員のうちには本来一事務であるべきものが、数個の事務を兼務しておる。又他面におきましては病気によるところの長期欠勤者が相当数あるように聞いておるのですが、こういうようないろいろな事情によつて、今日の裁判所事務の遂行というものは、我々の日常体験するところによつても相当渋滞しておるように考えられるのです。にもかかわらず、ここに政府原案によつてですね、減員するということに対しまして、我々は納得の行かないものがあるのです。それによつて現在賄われているところの日本裁判所事務というものが完全に遂行できるかどうかということは疑いなきを得ないのです。最高裁判所においてこの減員によつても十分賄える、将来においては決して増員を求めないというお考えならば我我は納得します。又今日の情勢から申しますれば、他の定員法においては、この前も申上げた通りに、いわゆる首切りをしないという数字を相当数復活させるという情勢にあるのですから、裁判所においてもそれに倣うて復活を考えられておるのかどうか、改めてお尋ねいたします。
  47. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) この法案によつて八百九十九名の定員を減らすことになりますが、それによつて裁判所事務の渋滞を来たさないかという第一の御質問でありますが、これは私どもの見通しとしては、現在の事務量のままで将来新規の事務、新規の事業というものが起らない限りは、優良な職員の配置転換、優良な職員を新たに、今度の整理をしてそれに代つて新たなものを入れるというようなふうにして賄えるのじやないかと思つておるわけであります。と申しますのは、裁判所も、他の官庁も同様と思いますけれども、終戦後人手が足りなかつた関係上、必ずしも全部が全部優秀な職員であるということも言えませんので、中には勤務成績上好ましくない職員もございますから、そういうものに対しては早晩国家公務員法に基いて免職等の処置をとつて然るべき職員、或いはそれに準ずべき職員も若干あると思います。そういう職員をこの際定員の減員の処置によつて整理をし、そして一部は欠員を以て整理をする。それによつてなお欠員を優良な職員を以て補充をし、それ以外に部内において配置転換を行い、なお来年の一月頃から施行になる予定になつておりますが、刑事訴訟規則の改正等によりまして調書その他の手続をでき得る限り合理的な範囲において簡素化をするというような実際上の事務の簡素化というような手も打ち、それこれ併せて実行をすれば、この減員によつて苦しいには相違ないけれども裁判所事務の渋滞を来たすというようなことは先ずあるまい、ということを考えておるわけであります。  それから第二に、一般の行政官庁の減員の率が減ろうとしておる情勢であるから、これに連れて裁判所の減員の率の減少ということも考慮いたしたかということが第二の御質問でございますが、これは一昨日以来この委員会においても御質問を受け、御注意を受けておるところでありますので、その後裁判所といたしましても、一般の行政官庁の職員の定員の減員と、どういうように違つて減少をしておるかということも一応見ましたのですが、併しその率が必ずしも一律にはなつておらないようであります。もともと裁判所の二万名以上の職員に対して八百九十九名というのは必ずしも他官庁に比べれば大きな整理率ではないように思います。それから殊に今まで衆議院のほうで減らされておるのは現業官庁が主となつておるような関係になつております。それから法務府のほうにも実は状況を連絡しましたところが、法務府は自分のほうは減員率を減らすことはあれしないというようなことでありましたので、かたがた衆議院の法務委員会では事務総長が出て、伊藤委員から只今質問を受けたような御質問委員から受けて、とにかく苦しくとも賄つてつて行けるというような説明で原案が通つたような関係なんです。そしてその原案になるまでには先日来私からも申上げたように、大蔵省といろいろと折衝の末ああなつたものでありまして、殊に大蔵省に対しましては、この八百九十九を減少はしても、これは一般の行政庁と歩調を合せるために、いわば政府方針裁判所も一応敬意を表するためにやる措置であつて、最小限度にとどめて置く。而も裁判所が新規に事務の必要上増員を要求する場合には、この減員をしたことによつて何ら拘束されないからということは大蔵省に了解をさせてあります。そういう関係で裁判所としては決して原案を固執するのが本意ではないわけであります。減れば減るだけ裁判所としては嬉しいのでありますけれども、いろいろな事情の関係で事情が変更したら、それにすぐに便乗をして、それでは自分のほうも零にしてくれ、こういうことも申上げかねるのじやないかと私どもは思つております。そういう観点からして数を示せと言われるならば、大体あの八百九十九という数字が出て来る内訳をいろいろ大蔵省とは折衝しておつて、ああいう数字になつたわけですが、その内訳の中に家庭裁判所職員が百三十八という内訳があります。御承知のように家庭裁判所は新らしい裁判所でありますし、将来伸びて行かなければならない裁判所、伸ばさなければならない裁判所でありますから、これを整理の対象にされるということは最高裁判所としては一番苦痛なわけなんです。ですからできるならば裁判所としてはこの百三十八を減らして頂いたならばどうかというように考えておるわけであります。
  48. 伊藤修

    伊藤修君 今の点について他の現業の所はしておるけれども、然らざる場合はしていないというお答えのようであります。それはちよつと違うと思います。これは又あとで申上げますが、ほかの部分も全部しておるように見えます。それからいま一つは、いわゆる他は復活しておるが、こちらもそれに同一にしなくてもいいような趣旨の御答弁ですが、それは私は納得できんと思う。できるならばやはり同一にすべきものであると思う。その点はあなたが強いて要らないと言うならば、別にあなたに押付ける意味じやないのですから、いずれでもよろしい。次に伺つておきたいことは、然らば八百九十九名のうち現実に出血するものはどれだけあるか。いわゆる私のお尋ねしたいことは、定員のうちにまだ補充されていない欠員の部分があるはずですから、欠員で八百九十九名を賄うのか、そうでなくしてそのうち現実に出血するものがあるかどうか。その点をお伺いしたい。
  49. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 欠員で整理人員を整理しようと思えば整理はできるわけです。そうしますと、退職手当の問題は出て来ないわけであります。それから欠員を以て全部整理をするということになりますと、最前申上げました成績のよくない職員を整理したいということができなくなるわけです。従つて実際の最高裁判所考えておる方針としては、八百九十九名からいわゆる長期欠勤者、これが約百七十名ございます。ですからこの長期欠勤者はこれは一先ず整理以外に置くわけです。これは長期欠勤者の待遇について別に国家公務員の一般の給与法で改正があるわけですから、その改正を待つて長期欠勤者については処置をしたい考えで、八百九十九名から百七十名を引いた残りについては、一般の希望退職者、退職を希望する者、それから及び国家公務員法によつて、成績が悪いという理由で処分しなければならないような者乃至はこれに近似しておるような者、そういう者には努めて勧誘をして、この際やめてもらう。そういう者の中には、普通ならば公務員法によつて処分をし得るような者も含まれましようし、処分をし得るというほどの者でなくとも、それに近い者もできる限り勧誘をして、この際勇退をしてもらう、整理者として勇退をしてもらう、こういう考えなんです。従つて現在の状況の下においては、実質においてはいやいやながら退職するのであつても、それはやはり勧誘に基いて任意退職をするという形になるわけですけれども、首を実際に切つて、さあ提訴をするなら提訴をしろというような結果にはならない、又それはしないつもりでおります。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると要するに勧誘してやめて頂く。いわゆる形は任意退職という形をおとりになるとおつしやるのですが、そうするとそういう形式をとる部分が何ほどと、それからいわゆる欠員を以て補填するところは何ほどということをお伺いしたい。
  51. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) これは実際やつて見なければ最後の結論は出ないと思いますが、結局実員で、大まかに申せば実員で退職者を得られなかつた場合には、期限が切れれば、期限までにはと申しますのは、来年の六月一日までは結局欠員で、最後は欠員で締括りをつけなければならないと思います。併し大体のこちらの肚としては、八百九十九人から百七十名を引いた残りの大部分は任意退職者になるのじやないかと思います。で、勧誘をして退職をしてもらう、実質上勧誘をして退職をしてもらうという、そういういわゆる勤務成績の極く悪いためにそういう手段をとるというものは、百名を超えるかどうかという程度じやないか、こういうようにこれは予想でございますけれども、大体そういうように考えております。
  52. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると只今の御答弁の全趣旨を勘案いたしますと、いずれも任意退職若しくは欠員を以て補充するのでありますから、いわゆる生首を切るというようなことは絶対しない、強制的に切るということは絶対しない、こういうことはお誓い願えますね。
  53. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 今御質問の通りになるつもりであります。
  54. 伊藤修

    伊藤修君 この際私はちよつと御注意申しておきたい、委員長に……。先に資料として頂いた、いわゆる他官庁の、今度の復活人員数、その比例を資料として出してもらいたいと、こう申上げた。で、我々の手許に配付されたこの資料によつて検討しておつたのですが、今最高裁判所の御答弁にもありましたごとく、現業官庁のみだという御説明であつた。いわゆる文部省、厚生省、農林省、通産省、運輸省、郵政省、労働省、経済安定本部、これだけだと、それ以外は、委員会は要求していないという御説明であつたわけですが、最高裁判所もかような趣旨のことを今言つておられた。然るに実際を調べて見ますと、各委員会いずれも請求しておる、いわゆる二万二千八百五十六名案で参りますれば、要求額は相当ありますが、それを認める数において、いわゆる復活人員において、総理府において八百九十八名、大蔵省において二千二百六十三名、文部省千五百十名、厚生省が九百九十六名、農林省は一番多いですから……、運輸省は七百四十五名、郵政省は二千三百十七名、電通が千百九十八名、労働省が百九十三名、建設省が五名、経済安定本部が九百四十三名、これだけ復活して来る。でありますから、この資料に挙げた以外の各官庁においてもいずれも復活しておる。でありますから私は質問しておるのです。資料として出したら殊更に現業官庁だけだといつて、その他は要求していないのだという御説明つたが、若しこれに基いて委員長が本会議で御報告になると、法務委員会は非常に疎漏であつたということになります。これは専門員室において今少しよく調査をして出して頂かないと困ると思いますが、これは委員長において特に御注意願いたいと思います。
  55. 小野義夫

    委員長小野義夫君) よく今の復活要求というものは、大分、或るところは四万とか、或いは二万とかというような、いろいろな数字が出ておるということは知つておりますけれども、それは一つ希望案であつて内閣委員会に最終的に申入れておるものであるかどうかよく調べまして、今伊藤委員のお説のように残りもなく、どれもこれも要求しておるものであるということでありますならば、その意味を加味して報告申上げます。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 私の言うことをあなた聞き違いしております。私の言うのは、この前現業だけだという御意見もあつた、そうじやない、各省がいずれも復活要求しておるのじやないか、その資料を専門員室に出せと、こう申上げた、それでその結果出されたこの資料によれば、いわゆる現業だけでその他は要求していないという報告つた。若しそういう報告に基いて委員長報告されたならば、委員長はほかのあれを少しも調査していないように思われて、当法務委員会の鼎の軽重を問われるから、私は注意申上げるのです。いわゆる現業以外でもいずれも復活要求しておる。復活したかどうかという決定じやないですよ。要求しておるかどうかということを調査せよと申したのに、していないと言うから、これは調査してないのじやないか、若しそういうことが資料として大切に……、これは基礎的に考えて、これを参考にしていろいろ討議するわけですから、若し委員長がこれによつて現業のほか復活要求していないから裁判所も法務府も遠慮したのだ、こういうような御報告になると、非常に失態を演ずるから、専門員室でもう少し心がけてやつて頂かないといけないということを委員長において御注意願います。
  57. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 了承しました。
  58. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今伊藤委員からの最高裁判所に対する御質問を伺つていてどうも腑に落ちないのですが、裁判所の任務は他のいわゆる行政の各部門の任務とは非常に違う性質を持つておるのじやないか。それでまあこういうふうなところからも裁判所と行政整理というようなものと何やら同一的のように考えて行く習慣が又起つて来るというのじや、司法省時代とさつぱり変らない、何のために最高裁判所という新らしい民主的な制度ができたのだか、こういうはじのほうから少しずつ少しずつ崩れて行くのじやないかという感じ、虞れを抱かざるを得ない。行政整理は行政整理、裁判所裁判所で独自の方針をお立てになるというほうがいいのじやないか、この際、どうでしよう。
  59. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 裁判所はその職責上行政官庁と組織も職能も違うことは羽仁委員から仰せられた通りであります。裁判所の私ども希望といたしましてもいわゆる裁判の独立、そういうものの裏付となるためには職員裁判官のみならず一般の職員の位置、そういうものの安定を希望していることは勿論であります。併しながら形式的に申しますと、目下のところは裁判官を除いた裁判所職員も一般の行政庁の職員と同様に、いわゆる公務員法の適用を受ける一般職にあるわけであります、形式的に申しますと。それからこの行政整理は従つて裁判官を含めておらない裁判所職員のみ行政整理でありますが、そういう関係で国家の行政機関が全体として整理をするから、裁判所のほうとしてもこれに是非とも協力をしてくれということを内閣から要請されますと、裁判所も、裁判をする際には独立でありますけれども、官庁といたしましてはやはり国家の機関であるのには相違ないのであります、そういうことも考えられます。それから結局これは予算との関係でありまして、頑張つたところで大蔵省に予算を握られておるわけですから、そういう方面からしても結局一般の行政官庁に若干お付き合いをしなければならないということを、実質上からいつても予算面で抑えられるから止むを得ないじやないかというので、大蔵省とは随分折衝をした結果、やつとこの数字に落ちついたわけでございます。ですから理想といたしましてはまさに今おつしやられたように、私どもしたいわけなんです。この減員率を更に縮小するということは勿論私どもとしては好ましいことなんですけれども、以上申したような経過を経てこの案というものはできましたし、衆議院のほうではとにもかくにも通つているものですから、それで大つぴらに、私どものほうからそれじやあの案は不在だからこれこれの数字にしてくれということも言いかねるというのが、実際の私ども気持なんでございます。
  60. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いろいろ御説明下さつたのですが、日本裁判所の独立という長い動かすべからざる伝統がある。こういうのならば今お話のようなことで、職員は一般公務員法による公務員であるから、行整政理の場合に同調するということも、余り有害じやないかと思うのでありますが、今日のように日本裁判を独立するという伝統の非常にない、むしろ裁判の権威が地に落ちていたような場合さえもある、そういう意味でこの行政権の下に司法権があるというような悪い習慣が随分長く続いておりましたし、今後も裁判所の独立ということを達成するにはよほどの社会の理解、それから又裁判所御自身の自覚、又国会のこれに対する態度というものを、まあ油断なくやつて行かなければ到底日本でこの際裁判を独立するということがなかなかむずかしいのじやないかと思うのであります。ですから今の御説明日本の過去の伝統ということから考えて見ますと、どうも若し過去に日本裁判所の独立という立派な伝統があるならば、只今のようなことも或いは納得できるかと思うのですけれども、そうでないので、どうも殊に大蔵省に対する苦しい立場ということをおつしやいますけれども、その点で先ず第一にもう一度お考え直しを願うほうがいいのじやないか。一体最高裁判所は真実裁判所の独立ということに積極的に努力し、それを熱意を以て遂行しようという決意を持つておられるのかどうか。まあ勿論そうおつしやるでしようけれども、併し事実ですね、一歩々々一つ一つの又小さい問題の際にも常にそういう態度をおとりになつているかどうか、少くともこの場合にはそうは拝見できないのです、非常に残念ですけれども。  第二に伺つておきたいのですが、今日裁判所が機能を果して行く上には、勿論裁判官ばかりでなく職員の質と量とが充実していることが必要だと思うのですが、我々が各裁判所を拝見しております場合に、幸いにしてこの裁判所の機能が非常に優秀に発揮されている、というような印象を受けないのであります。むしろ非常に悲しむべき印象を受けます。その一つの例は、例えば裁判所侮辱法案というふうなものを政府が、或いは最高裁判所がお出しになる。最高裁判所、或いは裁判所がみずから自分の権威を侮辱するような法案を国会に向つて御要求になる。これはやはり裁判所自体がその機能を立派に果していないということの何よりの証拠じやないか。私どもがこの法案に関係して各裁判所、及びその所長、或いはその他のかたがたの御意見を伺つた際にも、こういう裁判所侮辱罪法というものさえできれば、裁判所は侮辱されなくなるのじやないかというふうな、実に情ない考えを到る所で伺つて、私は実に心が寒くなつたのであります。法律さえ作ればそれができる。成文法の背後に慣習法がなければならん、その慣習法の背後に事実がなければならん、その事実を作り、慣習法を作り、然る後に成文法ができて来れば法律はよく守られますが、そういうものが一つも実力を持つてできていないで、ただ法律ができて、これで以て裁判をやつて行こう、そういうお考えがまま見られる。私は非常に裁判所全体の機能が優秀であるというふうな感じを受けることができないことを非常に残念に思つているのです。これは現在のような非常にいろいろな問題が紛糾して、殊に講和前後ということになつて一体日本に民主主義的な本当の裁判所の独立、そうしてこのさまざまな経済的、或いは国際的なむずかしい問題が起つて来表そして随分厄介な事件がもう裁判によつて立派に解決されなければならないという際に、この職員なり何なり、裁判所の機能号低くされるということに御同意になる、それを止むを得ないというふうにお考えになつているならば、私はさつき伊藤委員からは近い将来において増員の要求というふうなことをしないおつもりかどうかということで、それに対する明確なお答えがなかつたのですが、裁判所の機能が優秀でないために、それがそういう何か新らしい法律の助けなどによつて辛うじて裁判所の権威を守るというような必要も、それじやお感じにならないかどうか、現在の裁判所の質、機能をこれ以上下げるということは随分危険なことじやないか、そしてそういう法律を作るということによつて、却つて裁判所の独立、或いは裁判所の公平、或いは裁判所国民に与える説得力というようなものは決して高まるのじやなくて、むしろ低まる、そういう七つ道具みたいなもので守られなければ裁判所が機能を果すことができないというのは、根本的には裁判所自身の機能が不十分だからじやないかと思うのですが、その点についてもお考えを頂いてもいいのじやないか。  最後に第三に、特にこういう行政整理に同調されるというような場合に伺つておきたいと思うのは、裁判所は言うまでもなく基本的人権を守る最高の場所である、従つてそこで一人でも基本的人権を守られないというようなことが裁判所自身の学識を以てなすところの行動から起るということは、これほど甚だしい矛盾はないと思う。併し現在この日本裁判の現状を見てみますと、裁判所が十分な機能を挙げ、その間に不当に人権を制限されているというようなことが少くともだんだん減りつつあるかどうかというと、必ずしも私は、我々が期待しなければならないような割合において減少していないと思う。それでこれは我々は各地の拘置所なりなんなりを見て歩きましても、なかなか問題が片付いていない。それで不当に人権を制限されているという場合を到る所に見ます。こういうのでは、一般の行政整理と特に違つて、基本的人権を守らなければならないその中心である裁判所の機能をこの際低くして、それで基本的人権を守る、これもやはり日本に今まで長い間の伝統というものはない、そこで新らしいそういう伝統を作らなければならない、そういう問題をも十分お考えの上でこういう整理案というものをお考えになつているのかどうか、この点も伺つておかなければならないのじやないか、或いはお考え直しを願つたほうがいいのじやないか。私の願うところは、どうかして日本裁判所がいろいろな立場に立つ人の、どういう立場の人たちに対しても説得力を持ち、納得を与えるような、そうして本当に公平な、本当に高い立場に立つて、そうして立派に機能を果すものになつて頂きたい。そうでないと、国会なり裁判所なりというようなものは頼るに足りない、実力行使するより仕方がないというような危険な、フアツシヨ的な状態になつて行くことが非常に恐ろしい。少しばかりのはした金を倹約して、そうして失うところは実に大きい。民主主義の裁判というものに対する信頼を失うということがあつては、本当に一文惜しみの何とか知らずというようなもので、この際私は最高裁判所がその点を十分御自覚になつておられると思うのですけれども、併しこういうものを拝見しますと、何だからちよつとばかりの倹約をして、実に致命的なものを失つて行くのじやないかというように思いますので、これらの三点についてもう一度お考えを伺い、或いはお考え直しを願つておいたほうがいいのじやないかと思うのです。それで殊にこの第二の点で、やはり裁判官のかたがたがもつと勉強されることが随分必要じやないかという感じがするのですが、それにはやはり職員のかたがたの協力がなければなかなかそういうことができないのじやないか、事実上裁判官のかたがたが職員のかたのなされる仕事まで或いはしなければならないというようなことになつてしまうと、ますます裁判官自身が、判事のかたくが勉強されるということは少くなる。そうすると社会問題はいよいよ複雑になり、それを極く単純な、素朴にして原始的な考え方で処理しても、到底納得しない。納得しなければ裁判所侮辱罪法というものを作ればいいということになればいよいよ納得しないというふうになつてしまつて裁判所なんかは問題にならないということになつてしまうのではないか。その点……。第三の基本的人権を特に守らなければならないという点について、なかんずく私は繰返して申上げますけれども、基本的人権ということはまだ日本では要するに言葉に過ぎない。相当酒落た言葉に過ぎない。理想に近いもののようになつて、現実のものとして実感されていないのであります。それを現実的なものとして実感して行くというように努力をする。そのためには現在今申上げたような、少しばかりの財政上の節約ということによつて、失うところのものは遥かに多いのじやないか。これらの点についてお考えを伺いたいと思います。
  61. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) いろいろ御質問を受けまして、或いは答弁が的を外れるかも知れないのでありますが、裁判所が新らしい、殊に近代的ないわゆる裁判所が制度として日本に始まつたのは明治維新以後で、それから数えれば、本当の意味の裁判所というものは割合に年齢が若いと私は思うわけです。御承知のように欧米、殊に欧洲においての裁判所というものはずつと長い歴史を持つておるわけでありますが、日本の近代の姿における裁判所というものは、明治維新からです。そういう点で我々の裁判所というものは制度の上からも、乃至外国の裁判所に比べると、必ずしも完備しているとは言えません。国民も、それから裁判に携わる者も、必ずしも理想的な形において裁判所を守り、裁判所の職務をとるということになつてはいないかも知れません。併しこれにはやはり私は国民一般の水準というものが上らなければ、裁判所職員裁判官というものも、国民の水準を飛び離れた裁判官ができ、水準を飛び離れた職員ができるということはやはりむずかしいのじやないか。ですから裁判所職員自身が、裁判官を含めて努力をしなければならないことは仰せの通りであります。現に努力をいたしておるのでありまして、一方飜つて日本の現在の水準というものを度外視して、裁判所のみに高い要求をされるということも、やはり一方において考えて頂かなければならないことではないか。新憲法によりまして、裁判所も地位が確かに憲法上上に上りました。そういう点からいつて従来の司法省が司法行政をとつていた時代に比べれば、行政の覊絆を脱して、かなり自由な裁判所になつておると私は思います。それから予算面においても裁判所の会計を、或る場合には議会に裁判所の予算をそのまま出して審査を願うというような制度も認められておりまして、予算面の地位も上つておるとは思います。けれども裁判所としてこれでいいとは現在我々はちつとも思つておらないのであります。裁判所侮辱罪法案にも言及なさいましたけれども、仰せの通り、ああいう法案がなくても、裁判所国民の納得と尊敬とをかち得るような、そうして裁判所へ出ても、裁判所の規律を重んじて、法廷においても喧噪しないような、そういう実力を持つ裁判所になることは、これはもとよりそれを標準にしなければならないことは申上げるまでもないのであります。併し一方において考えますと、最前も申上げましたように、裁判所というものはその発足において必ずしも発足当時から年限を経ていない、従つてこの制度をできるだけよく、高くさせようということは、裁判官の努力に待つのみでなく、やはり国家としてもそれを助長するような傾向に私は行つて頂きたいのであります。裁判官は一人でそういう信用のある裁判のできるような修養、工夫を積むべきだとおつやられるのは、その通りでありますけれども、同時にもう少し裁判所に対しても、私は一般から裁判所の能力を発揮させるような方面に助長を願つたらどうかというように、これは甚だ勝手なお願いですけれども、そういうように考えております。それから今度の行政整理について、いわゆる一文惜しみの百損をするような結果はないかというように念を押されておりますが、これは最前も申上げましたように、職員の配置の転換も行い、同時にこの整理をいたしましても、欠員がまだあるわけでありますから、その欠員によつて優良な職員を迎えて、そして陣容をできるだけ充実をさせて、国民の期待に副うような裁判所をできるだけ実現をしたいというように考えております。
  62. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今のお話だと、その裁判所が機能を発揮し得るようにもつと国家が考えろ、それだからこそ我々今減員をされることについて、お考え直しを願つたほうがいいのじやないか。なお附加えておきますが、その一文惜しみの百知らずというような、特に基本的人権を尊重するというような点において非常に、量的な問題ではない質的に、非常に質の高い者を失うのじやないか、質の低い者において多少節約をするけれども、非常に質の高い者について大いに失うところがあるのじやないか。それで殊に現在はこの少年法なり何なり、少年や或いは家庭の問題というふうな問題を処理して行くその場合には、かなり教育的な意味において、いわゆる刑罰、権力というものによらないで理性によつて、或いは理性的な感情によつて問題を解決して行くというような点においては、急速に素質が向上して行く必要があるのじやないか。私は裁判官人が何でも勉強せよというのではない。裁判官が勉強して質の向上ができるように、職員の協力がなければならないのじやないか、だから裁判官は減らしやしない、職員だけだということだつたけれども職員を減らすというと、裁判官一人で勉強しろと言つても無理になりやしないか。殊に裁判官の基本的人権の点、或いは少年或いは家庭の問題を処理して行くのに、たびたびこの委員会でも問題になりましたけれども、どうも特にそういう方面で優秀な判事のかたがたを得るということは、かなりむずかしいというようなこともある、相当の問題になつて来ておる。又その間に少年をああいう監獄と異ならないような所へ入れておいて、見に行つても、とてもこれで少年が善良なる市民になるのに少くとも必要にして十分な設備だというふうには思えない。ああいうところへ長く置いておけばおくほど悪くなる一方だというふうにしか考えられない。そういう状態であるのに、なお整理をされるというのがどうも納得できない。なお念のためにもう一つつておきたいのですが、大体この警察官の数、或いは検察官の数一それに対する裁判官の数、又裁判所職員の数というものは、いろいろな時代の変遷なり又その制度の差異によつてそれぞれ違うだろうとは思うのですけれども、併し大体私はどうも行政整理というものを何かこう短いものの端を切るような素朴なことばかりをなされておるという印象を受けるのですが、常に人口何人当りに対して警察官がどれくらい、検察官がどれくらい、裁判官がどれくらい、又裁判所職員がどれくらい、これ以下に下れば危険だというような線があると思う。そういうバランスというか、そういう全体の見通しが、現在の日本の国情等も勿論併せて考えてですが、併し民主主義の裁判というものを守つて行くのには、これくらいのパーセンテージというものが必要だというお考えが、きつと最高裁判所でも御研究になつているのだと思うのですが、そういうものがあるなら一つ見せて頂きたいと思うのです。
  63. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 只今羽仁委員から御質問のありました点について、正確にお答えすることはできませんけれども、昭和七年頃に比べますと、大体現在において裁判官の数は一・五倍くらいになつております。そして一人当りの事件の分担量は大体その時代に比べますと、七年時代に比べますと、三倍くらいになつておると思います。三倍くらいになつております。それで一人当りの裁判官の一年間における処理件数と申しますか、これはその分事件によつて、例えば民事事件と刑事事件、それから更に家庭の事件、いろいろ事件がありますから、その事件を専門専門にやつておる場合には、各分野において率が違うわけです。併し私どもの経験からいたしますと、民事の事件、普通の第一審の民事事件を一年間にどのくらい処理し得るかと言いますと、大体判決、それから和解、そういうものを加えまして、東京などで私の経験から言いますと、三百件にはならないだろうと思います。民事の通常の事件、これは和解も入れ、それから自分で判決したのも入れ、月三十件平均にはならないのじやないかと思います。刑事になれば、更にその件数が減るのではないかと考えます。只今のところ、大体一人の判事が東京あたりでは二百件から三百件の事件を常にしよつておるのであります。これは地方へ行けば、その数が減ると思いますけれども、東京、大阪あたりが一番最高であると思いますけれども、二百件台、三百件ぐらいまでしよつて、年中それに追い廻されておるというような状態であります。裁判官の実際の経験からしますと、大体において事件に追われて、事件に現われた法律問題を研究するのがやつとのところである。自分の修養とか自分の法律知識を更に伸ばそうというようなためには、眠りを節約してやらなければとても間に合わないというような状態なのが現在であります。これは地方と都会地とでは勿論若干違うと思いますけれども、大都会、殊に東京あたりの裁判官の生活はそういう状態であります。
  64. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の伺いたいと思つたのは、法務府のほうは人員を整理するというよりも、人員を殖やされるとい勢いがなかなか強いですね。警察を倍にするとか何とか。随分景気のいいことを法務総裁なり何なりがおつしやる。それとバランスを失つてしまうと、つかまえるほうは盛んにつかまえて来る、併し裁判するほうは、職員の数は減つて、そうしてなかなか公平な裁判が迅速にはできないということになると、これは実際民主主義裁判に対する国民の信頼ということに随分関係して来るのじやないかと思うのです。そこで私はあらゆる官庁において、全体にそうだと思うのですけれども、殊に裁判所が外国の例などもお調べになつて、民主的な裁判というものが守られて行く上に、他の、なかんずく警察なり、検察なりの人員と裁判官、判事なり、その職員なりの人員というもののパーセンテージの大体のバランスというものがあるのじやないかと思う。そういうバランスをちやんと守つて、その範囲内において、向上して行くことは結構でありましようが、それより下ると非常に危険な状態になる。民主主義の裁判に対する国民の信頼というのを失うようなことになつて来る。そういうミニマムの、限界といろものがあるだろうと思う。それを最高裁判所のようなところでは勿論御研究になつているでしようから、それを我々にもお示し下すつて、成るほどこれならば法務府があんなにつかまえるほらをお殖やしになつても、ちやんとこれは裁判して下さる立派な裁判官が、又その職員が相当におられるという安心感を与えますけれども、だけれども現在の政府になつてから、法務府関係のほうはむやみと人を殖やしておる、そうしてほかのほうは人がだんだん減つてしまう、しまいには日本には取締る人ばかり多くて、ほかに人がいなくなつてしまうのではないかというような不安に襲おれる。昔福沢先生がこういうことを書いておられます。人間を監察する、そうしてその監察官に又監察官を付ける、これは監々察官、又それに監察を付ければ監々々察官と、こういうふうにして幾つも監察官が付けば、日本国民は互いに監察官同士になつて国民というものは一人もいなくなつてしまう。これは明治時代の話だけれども、併し今もお話にあつたように、日本の民主主義の年齢は極めて若いけれども、同時に日本に今迫つておる問題は、極めて高度な、又急激な問題が迫つておる。ヨーロッパで数百年に亘つて築いて来たものを、日本は数百年に亘つて築いて行く不合理はありません。その際に、つかまえるほうのお役人は殖えるが、ちやんとそれを裁判して下さるほうの裁判官が減つておるということは不安です。その点をどういう、バランスをイギリスなり、アメリカなり、或いはどこなりがどういうふうな、バランスになつている、必ずしもそのいずれに従わなければ、ならないということはない。日本の場合は昔こういうふうであつた、又新憲法以後はこういうふうである、それらを勘案して見ないと、どうも我々は国会として、つかまえるほうばかり数を殖やして、裁判するかたの数は減つて行くということでは、国民に対して相済まないのじやないか。そういう点の資料をお示し願いたい。今勿論無理でしようから、次回にでも教えて頂きたいと思います。
  65. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ほかに御発言がなければ、質疑はこの程度で打切るということはどろでしようか。
  66. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは困る。少くとも今のことくらいは伺つておかなければ……。
  67. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 資料は出すにしても欧米の例ですか。
  68. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 欧米の例というよりも、法務府のほうはうんと人員を殖やして、裁判所のほうは人員を減らして行くというのじや、そうもそこにバランスが破れて危険じやないか。
  69. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 警察の整備というものは、つまり犯罪の防止が主なる目的で、犯罪をつかまえるというのはむしろ後手になるので、警察を整備して犯罪を防止しよう、ですからこれは非常に私はそれと裁判とマッチするというようなこと、これは私ただ……。
  70. 伊藤修

    伊藤修君 委員長が御答弁なさらずとも、最高裁判所から然るべく答弁して御了承願うということにして……。
  71. 小野義夫

    委員長小野義夫君) そういうように今伺つてつたのですけれども……。
  72. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 今の点でございますが、警察官が殖えても、必ずしも裁判事件が殖えるとは限らないのであります。
  73. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そんなことを僕は言つていません。
  74. 鈴木忠一

    説明員(鈴木忠一君) 結局、ですから羽仁委員からの御質問は、裁判所事件の数が、起訴の数が、受理の件数がどのような一体変化を示しておるか、こういう点と、それからそれに対応する裁判官の人数というものはどういうふうになつておるか、更に裁判官に附随して働くところの裁判所書記官の人数がどういうようなふうに附随して変化しておるか、そういう点の大体資料を提出すればいいのではないかと思います。どうでしようか。
  75. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点も是非お示し願いたいと思うのでありますが、併し日本警察というのは、実際犯罪を予防する、親切にやるというような伝統が、甚だイギリスなんかと比べて少い。イギリスであれば、その場で話をしてそれで返すものも、日本では一々少くとも本署ぐらいまで引つ張つて行く。これは世界的に有名な日本警察、お巡りさんが現場で軽微な事件を処理する能力がないのじやないか。一々本署へ持つて来る。上海の工部局に日本警察官が入つたときに、イギリスの新聞が随分叩いた。我々実に残念だつた。そういう伝統が日本では強い。だから今委員長のおつしやつたことも御尤もで、その警察の数と裁判所職員の数とが直接にバランスを持つというのじやないけれども、現在の政府考え方には、警察は殖えても、或いは社会保障、或いは厚生、教育とかというほうはどんどん減らして、それで、佐藤さんの前で甚だ気の毒だけれども、法務府のほうはぐんぐん殖えて、この前の行政整理だつて、法務府は行政整理をやらない、他のほうは実際ひどい出血をしたということは御承知の通りであります。そういう方針を余り続けて行くと、これは如何に政府といえど、も、危険な社会状態というものを招くのじやないか。我々国会はそれを黙つて見ておるわけには行かないと思う。今の御意見もありましたけれども、少くとも今の点ぐらいは、明日でも多少の材料を示して頂くというふうにお願いしたいと思います。
  76. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それじやどうしますか、今日はこれで散会しますか。続行するとしても、資料がなければ……。  速記をとめて。    午後五時十分速記中止    ——————————    午後五時二十二分速記開始
  77. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは速記を始めて下さい。他に御発言もなければ質疑は終了いたしたものと認めましてこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  78. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は先ほど質問しました趣旨従つてこの原案に反対であります。第一は日本の新らしい民主主義の裁判の独立というものを我々は一歩も譲らず、これを一歩でも先に前進して行かなければならないということを当面最大の任務と考えております。従つていわゆる行政整理というものが理論上又実際上非難の打ちどころのないものであるとしても裁判所がこれに同調されるということについての最高裁判所側の御説明は私をして納得せしめません。第二には現在の裁判官がその優秀な機能を発揮するために現在の職員が十分であるというふうには考えられない。従つてこれを減員する結果は裁判官が優秀な機能を発揮することができない。その結果裁判所侮辱罪法案というふうなものを以て、その七つ道具で以て自分を守ろう、裁判官自身の実力によつて国民の信頼を受けようとすることができないというような状態にあるということは明らかなことでありますから、だから最高裁判所が二度と再び裁判所侮辱罪法案というようなものは出さないという決意をしておられることとは思うが、併しそれに加えてこの職員の減員ということ本納得できない。最後に最重大な問題は基本的人権という、日本においては全く新らしいこれから伝統を作つて行かなければならないその主たる任務を負うておるところの裁判所、それが僅かばかりの財政上の節約をして、そうしてこの基本的人権を守つて国民と共にこの重大な新らしい使命というものを果さなければならない、こういう広大な高い使命において失うところが多い、これも一文惜しみの百失いであるということがそのままこれに当てはまる問題である。以上三点から私はこれに反対をいたします。
  79. 伊藤修

    伊藤修君 私が反対すると、これは否決になつてしまいますから……。併し漫然賛成するわけには行きませんから趣旨だけは明らかにしておきます。今羽仁委員から御説明になりました趣旨には全面的に私も賛成です。又今日の裁判運営の上から申しましても最高裁判所の御説明はありましたけれども実情は今日下級職員事務分担というものが非常に高率な負担を強いられておる。いわゆる超過勤務がふだんに行われておる。仕事の面においても数個の職務を兼任しなければならない。一般職に比較いたしますれば相当の負担量を負うておる現状の職員諸子に対しましてこの際減員することはより以上の負担率を課するということになりまして、我々としては非常に好ましくないと思います。若しそういうような結果から考えますれば今日ですら事務渋滞が国民の非難の的となつておるより以上に私は非難をこうむることは必然の結果だと思うのです。併し最高裁判所においてはこの減員によつても十分国民の期待に副うべく努力する、賄つて行くという御言葉と、又先ほどこの減員によつて出血は絶対しない。任意退職及び欠員を以てこれに充てるというお言葉を信じまして結果的には本案に対して賛成の意を表します。
  80. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 別に御発言もなければ討論は終結したものと認めまして直ちに採決に入ります。本案を可とする諸君の御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  81. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告内容は本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとし御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議がないものと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の署名を附することになつておりますから本案を可とされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     伊藤  修  岡部  常     長谷山行毅  齋  武雄     中山 福藏  棚橋 小虎
  83. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これにて委員会を閉じます。    午後五時二十八分散会