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1951-11-21 第12回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十一日(水曜 日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            鬼丸 義齊君    委員            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   国務大臣    法 務 総 裁 大橋 武夫君   政府委員    法制意見参事官 位野木益雄君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  五鬼上堅磐君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局長)     内藤 頼博君    法務検務局長 岡原 昌男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (京都大学事件に関する件) ○裁判官の報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察官の俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○裁判所職員定員法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは只今より委員会を開きます。  昨日に引続きまして法務総裁に対する御質疑を順次お願い申上げます。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 昨日法務総裁がお読みになつた学生公開状は頂けましようか。
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) そのことについてちよつと今私から申上げますと、只今ガリ版か何かに付しておるので、お昼頃になるそうであります。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですか。それでは公開状内容に対しましての質疑あと廻しにいたしたいと思いますが、昨日法務総裁がお読みになつたあの内容から私たちが受けましたものは、決して危険なものでない。むしろ妥当な質問ではないかというふうに私は受けたのですが、その内容はつきり頂きましてから、もつとそれについては質問をいたしたいと思います。  ただ私たちのほうに聞いております状況をこの際皆さんに参考のために聞いて頂きたいと思うのであります。それはかの京大学生たちがやつたことを如何にも不穏なこと、天皇を脅迫したように解釈されておるようでありますが、学生目的とするところは決してそういう目的を以てやられてなかつた天皇が見えた機会をつかまえてあの青年たち考えているところの純真な気持天皇に聞いてもらいたいという気持が主になつて、あの行動となつているように聞いているわけであります。ここに京大学生報告書がありますから皆さんに聞いて頂きたいと思います。最初京大天皇御訪問に対しましての状況でありますが、十一月十二日の京大天皇が行かれる前に、京大では十一月八日に警官百二十名を交えて天皇出迎え予行演習がなされたということを聞いております。この予行演習では警官警戒位置、又数などを定めて、天皇が通行されることを予定されている廊下や学長室の壁の塗り替えが行われたようであります。又京大に対する天皇視察教授の進講時間を含めて三十八分で終えるという筋書を作つていたということを聞いております。その計画に対しまして、学生の主張とその理由がこういうふうに述べられております。学生側でこのような学校当局現実とかけ離れたやり方抗議をして、吉田分校の建物や学内研究施設の荒廃と、教授学生が現在置かれている実際の状況をそのまま見てもらうべきだと主張したそうであります。例えば研究報告のごときは、全学視察三十八分のうち三分の割当時間で、天皇は何と理解することができるだろうとも質しております。これに対しまして顕微鏡を用意して、これを覗いてもらえばそれでよいと学校当局は答えているようであります。外国新聞が評したように「天皇選挙運動」という言葉をそのまま現わしている。そういうふうに彼らたち言つております。又一方予行演習で明らかにされましたようにこのばかばかしい大袈裟なやり方天皇学園視察に対しまして大勢の警察官学内に配置されるということ、又そうして警戒に当らせるというやり方に対しまして学生側は激しく抗議した結果、学内には警官を入れないという学校当局約束をしたのであります。次には当日の模様を申述べたいと思いますが、天皇大学に見えられましたとき、京大では正門から築地を挾んで時計台までの間に天皇出迎えやらで好奇心に燃えた学生たち皆が、職員が二百名、学生が千八百名が築地両側に並んでおりました。そうしてこうした中に天皇の車が到着した。そこで両側にいた学生たちは自然に片側に寄つてしまつた。これは人情の然らしめるところで、当然な自然的な現象だと思うのであります。ところがこれに対しまして外側に待機していた警察官がどつと門の中に入り込んで来た。続いてパトロールカー君が代を放送しながらそれに引続いて入つて来た。この学生の中からも自然に平和の歌が口をついて出るというようなことになつた。こうした中で学生警官の進入は話が違う、現実警官学内に入れないという約束がされておりましたために話が違うという抗議をした。警察官の側はパトロールカーから警察官言分を放送したそうであります。学生はこれは一方的だ、だからこういう事態を収拾するためには我々にも放送させろというので両方が応酬したようであります。このとき雨が降つて来たので学生は軒の下に入り、警官も一応引いて事態治つた、こういう状態であります。ですからあの新聞に報道されている革命歌歌つたとか何とかいうことは全くの嘘だそうであります。平和の歌を歌つた。即ちそれは警官パトロールカー君が代歌つてつて来たことに対して。学生が平和の歌を歌つて応えた、そういうふうに報告されております。それから天皇が帰られたときの状況でありますが、予定の時間から約十分遅れて天皇は、視察を了えて出て来られた。警官は事の周囲を三重に取囲んで天皇を送り出した。続いて服部学長が外に出て来ましたので、学生警察の侵入を話が違うではないかというふうに学長抗議をいたしました。このときに外にいた警官は又どつと入り込んで来まして、学生側警官側の挑発に乗らないで学長と共に室に入つた。このとき警官学生とは何も事を起していないようであります。そうして学長の部屋でいわゆるばかばかしいやり方に対して抗議をしました。つまり根本的には警官を無批判に学内に侵入させるというやり方に今度の問題が起つているのでありまして、一切のやり方学生不平不満の意を持つていたようであります。ここで学生抗議に対しまして、学長学生から処分者を出さないということをはつきり学生諸君に答えているようであります。ですから新聞に伝えられておりますように、法経の第三教室協議をしたというのは、学長室を出た後で、その善後処置のために協議をしたというのであります。以上がその前日及び当日の概略であります。  学生同学会の執行委員の熊谷君は次のように言つておるのであります。あのときの雰囲気と学生気持は、君が代を歌う気持にはなれないものであつた。自然に品をついて出たのは平和の歌であつた。そうしてそれは丁度そのときの情景にふさわしいものである。一体近代的な知性を身につけた、理智に目覚めている最高学府学生が、警官と同じように君が代をいわゆる奉唱することができるでありましようか。つまり天皇支配天皇の治世を祝福して、ただの一言半句も国民を祝福した言葉のない、珍らしい中世的な歌を歌わなかつたことこそ自然的なものであろう。そういうような意見学生の一員が言つておるようでありますが、こういう報告を私たちは受けているのでありますが、この報告によりまして、何らこの間のことが計画的になされたこととも考えられないし、又天皇を脅迫したようなことにも私は何らならないと思うのです。学生の純真な気持天皇学生の、青年たちの不安な気持を訴えて天皇に善処を願いたいという、そういう気持から起つた行動で、何ら危険な行動ではないというふうに私は理解するのでありますが、総裁はこういう一連のことに関しましてどういうふうな御意見を持つていらつしやいますか。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 詳細は調査中でございまするが、これは須藤委員の御説明によりますると、その際に純真に学生が自然発生的に起つた事件である、こういう断定をしておられますが、私ども事前計画なくしてかくのごとき事件が起るはずはないと思つております。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 これは見解の相違になると思うのでありますが、なお昨日総裁が読まれた後の天皇に対する公開状内容を伺いましても、私は決してそういう危険な考えから出たものではないというふうに考えておるのでありますが、商業新聞などでは、いわゆる学生天皇意思を質したことに関しまして、見当違いだというようなことを言つて天皇国民象徴であるから、その象徴である天皇政治問題、又国際的な問題を持ちかけることは無謀だというようなふうに、学生を非常識呼ばわりしておる点が多々見受けられたように思うのでありますが、私は学生たちがなぜああいうことをしなければならなかつたかという一つ原因があると思うのであります。それは天皇政治運動を絶対やらない、単なる国家象徴だと言われておりますが、今回の臨時国会開会式劈頭におきます天皇の勅語を読んでみますと、この中にこういう点があると思うのであります。「戦争が終了してから六年の間、全国民のともに熱望してきた平和条約の調印がようやく終つたことは、諸君とともに、誠に喜びに堪えないところであります。」こういう言葉があるのでありまするが、これは国会の審議を前にして、国家象徴である天皇講和条約を結んだことが「喜びに堪えない」という意見を発表したことは、これは即今私は天皇政治運動だと、そういうふうに解せざるを得ないのであります。国会は全部が賛成しておるのではありません。今度の投票におきしても、参議院ではやはり三分の一は反対しておる。その三分の一の反対のある国会開会式におきまして、天皇みずからが先ず第一に口を開いてこの講和条約を結んだことに「喜びに堪えない」という言葉を以て表現されておる。これは明らかに私は一つ政治運動と解釈せざるを得ないのでありますが、総裁はどういうふうにお考えになりますか。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは天皇国会を召集されたわけでありまするから、その召集に当りまして、天皇開会式に臨まれお言葉を賜わるのは当然のことでございます。
  9. 須藤五郎

    須藤五郎君 国家象徴であるかたが、進んで自己の政治上の意思を発表なさつたという点に私は問題があると思うのです。こういうふうに国家象徴する天皇が、講和条約を頭から、国会劈頭から是認されてそうしてみずからの意思を発表されておる、これは明らかに天皇政治運動だと断ぜざるを得ないと私は思います。こういうふうに今後若しも天皇がどんどんと意見を吐かれるならば、日本が君上も戦争にまき込まれるようなときに、天皇が止むを得ないというような意見を吐かれれば、これは明らかに天皇政治運動だと思うのですが、そういうことがなされる心配がどんどんと起つて来る。ここに京大生徒天皇公開状を出した原因があるのではないかと思うのです。いわゆる天皇が平和の側に立たれるのか、戦争の側に立たれるのか、この点が京大学生としては、青年として非常に心配に堪えなかつたのではないかと思うのです。ですからあの公開状の文面の中にもそういう意味のことが書いてあると思うのです。いわゆる天皇は終戦のときにはつきり戦争を否定して平和を守らなければならん、そういうことをはつきりおつしやつておるし、そうして憲法の中にもそういうことが謳われておる。然るに今回のこの講和条約が、国会において、平和の条約であるか戦争条約であるかということをやかましく論議されておる。而もその国会開会劈頭天皇がこの条約の結ばれたことは大変喜びに堪えないというような意見をおつしやることが、即ち政治運動でないということはできないと思うのです。こういう点から今度の京大生行動が起つたのではない、私はそういうふうに推察するわけです。ですからこの京大生徒の問題は、私はその資料を頂きましてから改めて質問申上げたいと、そういうふうに思います。  それから昨日東大の問題で私は一点質問することを忘れた点があるのです。総裁は、大学警官を入れない方針だということを言つていらつしやいます。これは正しいことだと思うのでありますが、今回の東大の工学部の各教室捜査した件でありますが、ああいうことをやられることが総裁は正しいというふうに解釈していらつしやるんでしようか、行き過ぎだというふうに解釈をしていらつしやるんでしようか、はつきり伺つておきたいと思います。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 刑事訴訟法上の職務を執行いたしますために警察官大学に入るのは、これは当然のことであると考えております。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではあの捜査から総裁は何を得られたのでありましようか。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 何を得られたかと言われますと、ちよつと私も答えに窮するのですが……。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 総裁があるだろうと思つて捜査されたものが得られたのか、それとも何もその犯罪根拠になるようなものがなかつたのか。
  14. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 個々の事件についての捜査につきましては、法務総裁検事総長に対してこういうものを得るように捜査しろとか、そういうふうな指揮はいたしておりません。個個の事件につきましては検事局におきまして独自に捜査をいたしておるわけでございまして、私が特に大学行つてこういうものを押えて来いというような注文を出したことはございません。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 いわゆる捜査対象となつたものが得られたのかどうかという点を私は伺つておるわけであります。この東大捜査に続きまして十月十六日には慶大の医学部の学友会捜査していらつしやるようでありますが、このとき持つて帰られたものは「前衛」と「新しい世界」という雑誌を持つて帰られた。これは二つとも合法的な出刷物でありますが、こういうものを持つて帰られた。何も捜査目標のものはなかつたようでありますが、東大におきましても何もそういう捜査目標のものはなかつたということを私は聞いておるわけなんであります。そうなりますと何を根拠になすつたのか、単なる見込捜査に過ぎなかつたではないか、そういうふうに私は考えるわけです。そうしますと大学研究室といえども単なるそういう見込によつて今後どんどん捜査をされて行くという危険が起つて来ると思うのですが、今後もそういう無謀な捜査をお続けになりますお考えでありますかどうでしようか、伺つておきます。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御質問前提は、この捜査行き過ぎであり、見込違いであつたということを前提にしての御質問のように思いまするが、この事件只今捜査中でございまするからして、私としてはお答えを申上げる立場にないと存じます。
  17. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではもつと材料が揃つてから一つ報告をして頂きたいと思います。  じや次の質問をさせて頂きます。政府はいつもそういう問題が起るたびに政治的な意図はないと言つていらつしするのでありますが、私たちは不幸にして政府のその弁明をそのまま信ずることができないのであります。それはサンフランシスコ会議の前後から非常にこういうことが多くなつて来たということであります。つまり九月に入りましてから全国的に行なつておるところの家宅捜査やその他一連の行いがどうも人間の鑑識を外れたような、あたかも戦争以前のようなことが往々にしてなされておるというふうにしか解釈されないのであります。一例としまして九月四日の国会議員教育委員会を含む共産党党員の多数逮捕及び追放の問題でありますが、それから続いて行われておりますところの全国的な家宅捜査、これは一体何の目的でどのような理由で行われておるか、例えば十月九日には全国八百五十一カ所に亘る捜査新聞紙上に伝えられております。そのあと殆んど毎日のように私は新聞を見るたびに日共アジト急襲とき何とかいういろいろな記事を見るわけでありますが、このために全国国民はいわゆる警察恐怖支配下に引込まれてしまつておるような気がして、毎日戦々競々としておるのではないかと思うのであります。こういう状態ではどうも国民の基本的な人権すらも守られない。何か警察の単なる見込によつて遠慮なしに家宅捜索が行われる。そういうことがどんどんとされて行くのではないだろうか。そういうふうに考えるわけであります。  その一例といたしまして、国会開会中に衆議院の我々の同僚の議員木村榮君と、それから苅田さん二人の自宅捜査されておるのであります。而もその捜査やり方は実に無謀なやり方だと思つておるのでありますが、総裁はこの二つ事件御存じでしようか、どうでしようか。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今は承知いたしておりません。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 総裁御存じないというお話ですから、それじや私から総裁の耳に入れて判断を求めたいと思います。  一つ木村榮君の留任宅捜査でありますが、捜査令状の宛名は木村榮議員一面識もない、又関係もない中尾佐太郎という人に関する令状を持つて木村君の家の捜査に参つておるわけなんであります。それから家宅捜査が行われた日は十月九日で、木村議員国会出席のためにすでに上京をしております。その留守を預つておる妻女のみつ子さんも用事がありまして、親戚に行つておりまして、家には七十歳になるお母さんが一人留守番をしていたわけであります。又木村君の実弟の民雄さんが同じ家に住んでおりまして、会社勤めをしておるのが同居していたわけでありますが、このかたが出勤前で捜査に来た人と応待をしたわけであります。捜査執行者原田という事務官でありまして、木村議員の蔵書を押収して行こうといたしました。これに対しまして弟の民雄さんが抗議をいたしまして、そんな一般市内で売られておるところの書籍を何の理由で持つて行くのかと言つて質問いたしますと、この執行者原田事務官は、自分でもわからないが、とにかくここへ来たという証拠のために持つて行くのだから持つて行かせてくれと言つてその本を持つて行つたと、こういうことが言われております。それから木村議員はこの不法な家宅捜査に驚いて実情調査に帰りまして、地検抗議いたしましたところ、驚くべきことには地検検事正もこのような捜査が行われたことをあとになつて知り驚いたという、こういうことを言つておる。こんな無謀な捜査がなされておるという点であります。こういうことがどんどんなされて来るのでは全くもう人権も何もあつたものではないと思うのですが、而もこういうことがなされておる。国会議員留守宅においてこういうことがなされておる。こういうことに対しまして総裁はどういうお考えを持つていらつしやるでありましようか。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 須藤委員の御説明になりましたようなことが果して事実であつたかないか、これは私どものほうでも調査をしなければ、今お述べになりましたことが事実であつたということを承服することができないわけでありますが、その前提の下に、承服したわけではございませんが、仮に事実今お述べになりましたようなことが行われたといたしますると、これは誠に人権保護立場からいつて遺憾極まりないことである、こう考えざるを得ないわけであります。なおこの点につきましては検務局長から附加えて申上げます。
  21. 岡原昌男

    説明員岡原昌男君) 本件につきましては衆議院法務委員会の梨木さんからも御質問がありまして、丁度委員会の席上に木村さんも見えまして詳細の事情を承わりました。それに基きまして松江のほうに照会いたしましたところが、その回答によりますると、十月九日の詳しい資料は今手許にありませんので、記憶でありますが、十月九日の朝検察庁から四名の事務官が参りまして、木村さんの自宅捜査した、令状に基きまして正式の手続はとつたようでございますが、然るに木村さんがおられなかつたので、お母さんのたしかぜんというかた、それから弟さんの民雄というかたと同居人の何とかいう人と三人が立会つて押収手続をなした。結局差押えました物はたしか八点の文書だつたと思いますが、そのうち五点はそこらの店に売つているものではなくて、日本共産党臨時中央指導部発行名義パンフレットであつたということに相成つております。なおその捜索の際にお話のような言葉のやり取りがあつたかなかつたかという点につきましては、私も報告を受けておりませんしわからないのでございますけれども、その捜索そのもの中尾佐太郎被疑事実に対する合法的な手続きとしてなされたものでございます。なおその押収物件が若干妥当を欠くという意味におきまして後日渉外係検事正をして検討させました上、木村さんがたしか四日ほどあとつたと思いますが、検察庁に参りました際に、直ちに仮還付の手続をとつたことに相成つております。なおこの点に関しまして、私どもは常にかような捜査の際には余計なものは持つて来るなというふうに指導訓令はいたしているつもりでございますが、何分にも全国各地ばらばらにかような事件の発生する最中でございますので、中に一、二かような遺憾な事件ができたのかと存じます。今後かような際の押収手続につきましては十分慎重に取扱うように伝達するつもりでございます。
  22. 須藤五郎

    須藤五郎君 今申されましたようにここに押収品目受取書がありますから、内容は申上げていいと思うのですが、大体私が見まして何でもないもんじやないかと思うのです。表題不明のパンフレットというのも実はありますが、これはどういうものを指しているか私にもわからないのですが、実に非常識な本まで持つて行つているという事実がありますので、その点に関しましては今あなたもそういうふうにおつしやいましたから了承します。ところが私は問題になるのは、要するに中尾佐太郎という人間木村榮という人間が、これは一面識もない、何にもわけのわからない人、そのわけのわからない人の令状を持つてそして木村君の家を捜査したというところに問題がありますので、私の家だつていつ何時捜査を受けるかわからん。何も自分は全然犯罪を犯していないつもりでありますが、そうかといつて得体のわからない人の捜査令状を持つて私の家へ臨時に乗り込んで行つて家を片端から捜査して行くという、そういうことがなされていいものかどうか、そういう単なる見込又は因縁をつけたような捜査令状で以てとにかく我々の自宅捜査対象として侵されていいものか悪いものか、これは人権上私は主張していますので、単なる共産党員の問題として私は考えているわけじやないのです。誰の家でもそういう関係のない人の捜査令状捜査を受けていいものであるかどうか、これは行き過ぎではないかと思うのですが、どうでしようか総裁
  23. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は他人名義捜査令状を以ちまして捜査場所でない場所捜査する、これはつまり令状なくして捜索すると同じことに相成ります。その点果して事実であるといたしますと、これは誠に不都合千万なことであると存じます。いずれ数日中に検察庁会議をやることになつておりますから、その際に検事正も出て来ると思いますから、事前によくその点を調査させまして、その際に詳細報告を聞きたいと思います。
  24. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は総裁もそういうふうにおつしやるのですからこれ以上申上げなくてもいいと思うのですが、これと同じようなことがいわゆる岡山の苅田議員の宅においてもされているという点を私もう一つ報告しておきたいと思うのですが、これは苅田アサノ議員国会出席中に家を捜索されたという別紙のように報告が来ているわけですが、この捜査も椎野悦郎宛の捜査令状らしいのですが、その令状を持つて苅田議員の家を捜査して、苅田さんの家は岡山市上伊福絵図町三百七十五、一軒建の家で、一階が深見民市という人で、二階に苅田アサノ議員が住んでいたのでありますが、この椎野君に対する令状を持つて行つてやはりこの家を捜し廻つて、そうして而も苅田君の物を持つてつておるわけなんです。椎野君に対する捜査苅田君の品物を持つて行くという点がどうも私はわからないと思うわけであります。苅田議員に対する捜査ならいざ知らず、椎野君の捜査令状苅田君の私物を持つて帰る。これは至極非常識なことだと思うのであります。ここに受取がありますから読んで見ますと、領置書、左記物件を領置した。昭和二十六年十月十二日、法務事務官曾根川、判を捺して持つて行つたものはアカハタ一包、このアカハタは合法出版時代のアカハタでして、古いものが一包にしてある。それから「前衛」、「新らしい世界」、これは二、三冊、それから印刷物、プリント、それから「党活動指針」、「ソヴイエト同盟史」、レーニン著「何をなすべきか」、こういう戦争前から出版されていたようなものを持つて行つておる。「平和の戦い」、「共産党労働者党情報局会議報告」三二年度、とにかくこういうものを持つて行つておるわけです。これは苅田君の私物でして、椎野君とは全然関係ないものなんです。そういうものを持つて行く、随分これはおかしいと思うのです。とにかく各地でこういう捜査なんかされておるということを総裁一つよく認識して、こういう馬鹿気たことのないように一つ総裁に処置をとつて頂きたい。そういうふうに私は申述べまして、総裁もそういうふうに考えていらつしやるようですから、この問題はこれで打切ることにいたします。  それから最後に私はもう一つお尋ねしておきたいと思うのですが、これは衆議院のほうの法務委員会でもたびたび論議されていたことでありまして、総裁衆議院の社会党の猪俣さんや何かとの討論も、私は実は傍聽いたしまして大体存じておるわけなんであります。併しどうも総裁の答弁が、私は法律家じやありませんからわからないのですが、どうも我々素人にはわからないわけなんです。それは私が共産党員だからというのではなくして、私は一国民代表者としての、いわゆる法律家でない素人として常識で判断できるような答弁を一つお願いしたいのです。それは細川君の問題です。この間も第一議員クラブの松原さんがそれに関して緊急質問をしていらしたように、緊急質問に対しまして私は何か私に理解できるような答弁が頂けるかと思つたところが、それもやはり理解できない。それは素人だから理解できないのかどうかわかりませんが、日本国民は素人が多い、皆法律家じやないので、私が理解できるということが日本国民が理解できることじやないかと、そういうふうに考えますので、どうぞそういう点から余り法律的なむずかしいお話でなしに、常識的な答弁を一つ頂きたいと思います。そういうふうに考えるわけであります。総裁は細川さんが逮捕されたことと、それから追放になつたことと二つ考えていらつしやるようですが、そういうふうに理解していいでしようか。
  25. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 細川君の逮捕の問題と追放の問題は、これは全然別個の問題であるわけであります。
  26. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうしますと私は逮捕のほうは、それでは逮捕をしたら一応調べたところが何もない。逮捕の理由になるようなものは出なかつたから釈放したと、そういうふうに理解していいでしようか。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 逮捕のほうは拘留状の期限が切れましたから釈放いたしたわけでありまして、逮捕の原因となりました事実については検察庁において捜査を継続中でございます。
  28. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、理由がなかつたというのではなしに、二十三日間の間にはその理由が発見できなかつたから、だから一応釈放したので、今まだ捜査中であるというようなお考えであるわけですね。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 理由はあるわけなんですが、その訴訟上起訴して、公訴を維持するに足る法定の証拠が、法律では証拠をきめて制限をいたしておりますが、その証拠がまだ手に入らないものでありますから、なおそういう証拠がないかというのでその点の捜査を継続いたしておるわけでございます。
  30. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、起訴とも不起訴ともきまらない、そういうことですか。
  31. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 勿論そういうことであります。
  32. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうするとその次に追放の問題ですが、国民全部はこういうように理解しておると思うのです。あの逮捕状が出て逮捕されて、その後数日経つて公職追放の問題が出たのですが、これを、細川議員が刑事上の問題があり逮捕されたために、その問題があるのだ、その問題が理由で公職を追放された。こういうふうに国民一般は理解しておるわけです。ところがそれはあるかないかわからない。即ち刑事上の問題は起訴とも不起訴ともきまつていないということは、果して今後何年か経つて、これは何年間続くのかわがりませんが、とにかくあるかもわからないということはないかもわからんということでありまして、あるかないかわかん、あるかないかわからんということで公職追放がなされたということに対しましては、国民は非常に不審の念を持つておるわけであります。ここで一つ私は総裁に、追放に関しまして明らかに国民が常識的に判断できるような説明をして頂きたいと思います。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 追放は細川君の場合におきましては、細川君の過去における行動全体から帰納いたしまして、追放すべきものという結論になつたわけでありまして、これにつきましては刑事訴訟法に従う証拠の制限というものがございませんので、あらゆる証拠を総合いたしましてそういう結論を出したものではなかろうかと思います。そういう判定の下に総司令部の指令があつたわけであります。
  34. 須藤五郎

    須藤五郎君 その細川君の過去の行動云々ということですが、それを一つたちの参考のために伺つておきたいのですが、どういうことなんですか、
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは日本政府といたしましては直接には総司令官の指令に基いてやつておるわけであります。それ以上は私どものほうから説明を申上げる立場にないわけであります。
  36. 須藤五郎

    須藤五郎君 いつもその問題となるとそこに持つて行かれて、総司令部り書簡だというように出られると国民はわからなくなつてしまう。私もわからない。細川君に実際に追放に値するような行動があつたかということがはつきりすれば、これは国民も納得すると思うし、又私たちも了承することができるのですが売何ら具体的な事実を挙げられなくて、単なる総司令部の書簡だと言われてはこれは困つてしまう。総裁は先ほど細川君の過去における行動云々と言つていらつしやいますが、それならば過去の行動云々をもう少し具体的に説明してもらいたい。それを要求する。総司令部の書簡によると言われると、これは私は昏迷してしまうわけなんです。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 総司令部の指令によりまして追放いたしたわけでございますが、総司令部において追放の指令があつたということは、畢竟細川君の過去における行動について追放の事由があつた、こう想像するわけであります。
  38. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると細川君の過去の行動を総司令部自体が調査をしていて、総司令部の、単なる総司令部だけの考えの下にこれはなされた、こういうふうなことになるのでしようか。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 追放はすべて総司令部の判断によるものであります。
  40. 須藤五郎

    須藤五郎君 併しこれまでの衆議院お話などを聞いていると、総司令部がそういうような判断をする資料というものは日本政府から提供されておるというふうに私は伺つておるのですが、どうでしようか。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 日本政府といたしましては、必要と認める資料は総司令部に提供いたします。
  42. 須藤五郎

    須藤五郎君 それならば日本政府のあなたは、細川君が追放された個々の具体的な例証というものは持つていらつしやると思いますが、私たちの今後の参考のために一つそれを教えて頂きたいのです。
  43. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは私として申上げる立場にないわけです。
  44. 須藤五郎

    須藤五郎君 いや、私は異なことを聞くのですが、あなたは総司令部の大臣ではないでしよう。総司令部に使われている法務総裁でもない。我々国民法務総裁だ、こういうふうに理解しておるのですが、それならば国民のために前以てその津意を与える、こういう行動をしたらどうだということを私だちのためにおつしやつて下さるのが、我々の大臣としての責任ではないかと思うのですが、どうでしようか。
  45. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は日本政府の大臣でございますから、総司令部の判断について説明する立場にないわけであります。
  46. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうなつて来ると常識で判断ができなくなつてしまうので、頭のいい総裁の何と言いますか、非常に廻りくどいものの言い方では、私の頭は昏迷状態に入つて理解できない。結局私が理解できないことは国民大多数が理解できない。従つて政府のやつておること、総司令部のやつておることが理解できない。非常に暗黒的の気持国民全般が持たなければならん。これは私は日本政府としてとるべき手段でない、いやしくも日本法務総裁であるあなたならば、日本国民に対してその理由を明らかにして、こういうことだということを明らかにすべきだと私は思う。あなたは今日本の大臣であると言われたが、全くその通りで、あなたがアメリカの大臣であつてしまつては私たちは非常に不満を申述べなければならん。日本の大臣であるということは私も非常に嬉しいのです。それならば一つ日本国民が納得行くような答弁をこの際思い切つて言つて頂きたい。そうでないとこれはどうもすつきりしないような感じがしますので、素人の私がお願いするのですからつはつきりさせたらどうでしようか。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) どうも私は頭が悪いので、御満足を得るような答弁ができないことは甚だ残念でございますけれども、この点先ほど申上げましたごとく、総司令部の指令に基いて追放が行われたわけであります。その指令が出たことから推察いたしますと、細川君の過去の行動について追放に相当する事由があつたものである、こう判断をする以外にはないわけであります。
  48. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は九月四日直後、参議院の文部委員会か何かで岩間君が質問したことに関しまして総裁でしたか、どなたでしたか、責任のある方が、細川君の追放は二百二十五号によるのだというようなことを答弁していらつしやつたのではないかと思うのです。何かそういう理由に多少触れて答弁していらつしやると思うのですが、あのときの答弁をそのまま私どもは受取つていいでしようか、どうでしようか。
  49. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 当時私といたしましては細川君の過去の行動全体を総合して追放の事由ありとして判断せられたものであるという趣旨を申上げたわけでございます。なおそれを補足いたしまして、当時政府委員からお話のような説明をいたしたように思つておりましたが、その説明あとで適当でないと考えまして、本人には後に注意を与えたような記憶を持つております。
  50. 須藤五郎

    須藤五郎君 その適当でないというのは、そのときに発表したことが適当でないのか、その内容が適当でないという御意見なんでしようか。
  51. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 発表されたる内容も適当でありませんし、発表したことも適当でないように思いまして、後に注意を与えたということは、衆議院法務委員会においてたしか申上げてあると思います。
  52. 須藤五郎

    須藤五郎君 どうも今日は私は、法律家でない私がお尋ねするのだから、総裁は私にわかるように答弁をして下さるものだと私は予期したのですが、結局これは衆議院法務委員会質疑と同じ結果になりまして、どうも私には理解が行かない。非常に残念だと思うのですが、これ以上私は総裁とつちめるような知慧もありませんし、総裁の口を割らすような知慧もなさそうです。これはやはり若しもこの問題に関しまして御不審を持たれる点がありましたら、各専門家の委員たちの力を借りてこの点を明らかにして頂ければ幸いだと思うのです。私にはもうこれ以上ないと思うのです。  ただ一つ私はお願いして置きたいと思いますのは、このことに関しまして、いわゆる検察の衝に当られた方ですね、検察庁のその方及び細川本人を一つこの委員会に呼びまして、そうして本人の口からも、又検察の衝に当られた方からもじきじきに私はいろいろなことを伺いたいと思うのですが、この二人をこの委員会へ呼んで頂くことを、これは委員長にお願いいたしまして、この細川に対する質疑を私は終りたいと存じます。一応私の質問は打ち切ります。
  53. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 捜査中の事件でございますから、検事をお呼び下さることについては異存ございません。
  54. 小野義夫

    委員長小野義夫君) なお委員長はよく考慮の上、今即答をすることは、私もやはりあなたと同じ素人でありますから、よく専門家の意見を徴してお答えしたいと思います。保留いたします。   —————————————
  55. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に裁判官の酬報等に関する法律の一部を敏正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所職員定員法等の一部を改正する一法律案、以上三案を一括議題に供します。
  56. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは総裁一つお伺いいたします。これは裁判所、検察庁共通の問題ですが、今度この人員を減少する。それは予算を減縮するためだということは承知しておりますが、人員を減らすことによつて事務に担当の支障を来たすように思うのですが、この辺はどうでしようか。
  57. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 勿論人員が減りますと、今までのようなやり方で今まで通りやるということはこれは不可能だと思います。ただできるだけ事務の簡素化を図りまして、事務能率を向上させることによりまして支障なからしめたい。又或る程度の人員の縮減ならば、さような工夫によつて十分従前以上の能率を挙げ得るという考えの下に人員の縮少を計画いたした次第であります。
  58. 一松定吉

    ○一松定吉君 与えられた法務総裁からの資料によりますと、昭和十九年以前に比べ昭和二十一年以後、即ち終戦後は事件が非常に増加しております。終戦前は検事一人当りの未済が一カ月に二十八件か二十九件か、三十一件かというようなことになつておるのが、終戦後にわかにこれが九十になり九十八になり、百二になつた。殊に二十六年は一月から六月までに百二というような非常な増加を示しておりますが、これはどういうわけでしようか。
  59. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 検務局長からお答えいたします。
  60. 岡原昌男

    説明員岡原昌男君) 終戦後事件の激増の仕方は実に想像に余りあるものがありまして、大体従来の未済が御指摘のように一人当り二十件、三十件あれば多いように我々考えておつたのであります。最近は一人当りの未済が百件、二百件はおろか五百、六百件というのを見るに至つた次第であります。その増加の原因につきましてはいろいろ考えられるのでございますが、御指摘の本年上半期等は選挙或いはその他細かい事件が割合多うございます。その処理に忙殺された結果、さような未済が残つたのだろうと思いますのが、これは大体今までの例によりますると、毎年上半期から八月まで乃至は十月まで増加の傾向を辿りまして、十一月乃至十二月には若しこれが年末の処理で減るという趨勢になつておるわけでございます。本年の上半期につきましても主にさような事情によるものと考えております。
  61. 一松定吉

    ○一松定吉君 私の伺いたいのは具体的に伺いたい。あなたは表をお持ちでしよう、表を一つ見て下さい。昭和二十五年度は一カ月の未済が四十八だね。それが今年になつてから一カ月がその丁度三倍ほどになつておる。百二というふうに非常に殖えておるね。それは特別な事情がなければならん。あなたの言われた一般論、抽象的なことではわからん。こういう事件がにわかにこういう増加になつたから止むを得ないというふうに、何か具体的な説明をしてくれないと……。
  62. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今検務局長から申上げたことはちよつとごの統計を作りました二十六年度の時期が六月末現在ということになつております。これは丁度地方選挙の直後でございまして、各検察庁とも、殊に今年の地方選挙は御承知のように未曾有の違反事件が出ましたその関係で一時的に未済が多くなつておるわけでございます。これは逐次その後処理されるつもりでございます。現在といたしましては大分減少しておるだろうと、こう思われるわけでございます。このことを検務局長から申上げた次第であります。
  63. 一松定吉

    ○一松定吉君 地方選挙の場合に選挙違反等が多かつたからというような具体的な事実がございますれば成るほどそうであろうと思います。それからこういうふうに非常に未済が多くなつて来るということについて、今後人員を減らしたら……その人員を減すことと未済とはどういうことにお考えですか。
  64. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 検察庁におきましては特に事件の激増等の事情もございまするので、検事の定員は一名も減少させておりません。ただ検察事務官につきましては、一般行政庁におきまする人員整理の最も低い率であります五%という低率の整理率を適用いたしまして、何と申しまするか、他の一般の行政整理についてのお附合いという程度でございまして、この程度の減員ならば事件の処理にさして支障はなかろう、こう確信を持つておる次第でございます。
  65. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういたしますと何ですか、検事の定員は今は満たされておるんですか、或いはやはり大分人員不足であるというようなことなんですか。
  66. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 検事につきましては現在約百名の欠員がございまするし、副検事につきましては約五十名の欠員があるわけでございまして、これの補充につきましては日夜苦慮いたしておるのでございまするが、何分特別の資格を要する職員でございまするので、この補充には困難をいたしておるような次第でございます。これは幸いに最近におきましては毎年司法官の弁護士を含めました修習生のうちからも最近検事の志願者がありまして、大分多くなつて参りましたので、逐次補充せられると思いますが、併しまだここ二・二年に補充されるというようなことはむずかしいかも知れません。
  67. 一松定吉

    ○一松定吉君 検事の定員とか何とかいう表はありませんか。こちらに資料はないようですが……。
  68. 岡原昌男

    説明員岡原昌男君) 作りまして早速お届けいたします。
  69. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで一体検事が百人も欠員しておるというようなことは、治安の維持の上からしても重大な結果を招来すると思いますが、その原因は人材がないというのですか、応募者がないというのですか、待遇が薄いから応募者がないというのですか、その辺の原因はどうなんですか。
  70. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これはやはり検事の資格のある人はむしろ民間の弁護士となるほうが収入がよろしい。そのためによほど特殊のかたでないと検事を志願して頂けないというような実情にあるわけでございます。その点が主な理由だと思います。
  71. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういたしますと、結局のところ待遇が悪いと、こういうことになると思いますが、それは一つ私もそう思つておるのでありますが、そういうことが今回の待遇改善について給与ペースを上げるというような法案の出たことであろうと思うので、これに私ども全幅の賛成でありますが、それらの点について十分に一つ御尽力を願いまして、成るべくこの欠員を補充することができるというようなことをお願いしておくと同時に、この停年制ですが、最高裁判所の裁判官は七十歳まではよろしいというのが、普通の裁判所の普通の判事・検事は六十三ですか、それから今度は検事総長は六十五か、さような年齢で、その年齢に制限を加える、当時の必要上できたものであるが、その後最高裁判所の判事が七十まで行けるということであれば、今の六十三とか六十五とかいうものを少くとも七十まで延ばすというようなことを研究して見ましたらどうですか、それと同時にその延ばすということによつて事件の処理に影響がありませんでしようか、どうでしようか。そういう点を一つお伺いしたいと思います。
  72. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 成るほど全体の数を殖やすためには退職をする人を少し延ばすということは、これは一応考えることでございますが、やはり検事に優秀な人を集めますためには、先ず普通官の仕事におきましても或る年輩になれば相当の地位になる。それに比しまして特に検事なり又裁判官なりは、現在でもほかの行政官などとは無論比較になりませんが、一般の実業界などから比べましても、俗に言えば出世は遅いという種類の職場だと考えられるのでございまして、停年を延すということになりますると、この点についてなお一段と遅くなるという点もありまするので、このことは逆に又優秀な人が新しく入つて来ることを妨げる原因にもなるわけでございまして、その辺どちらが全体として優秀な人をたくさん集め得ることになるかという点になりますると、なお一段の研究の必要があると、こう存じまして、なお結論に達しておらないような状況でございます。
  73. 一松定吉

    ○一松定吉君 誠に御尤もです。今総裁のおつしやるようなことで停年というものをきめて、事件がてきぱき行けんように少し思慮が老衰の域に達したということであれば引退してしまつて、清新溌剌な者を以て補充するという趣旨からできたものでありますから、今あなたのおつしやるようなことは、普通の考えとしては私も同感ですが、ただこの人が百人も足らんとかいうようなことであれば、そういうようなことも一つ研究して見る必要がありはしないだろうか、それはどういうことをするかというと、停年はこうであるけれども、特別の事情のある場合においてはこの限りにあらずという例外規定でも設ければ、必ずしも停年に達してやめなければならんということはない。現に私などは七十七です。七十七であるが、まだ少しも変つておりませんね。(笑声)だからこれは人による、もう六十になつてぼけてしまつておるような人もある、或いは私どもみたように、或いはもう少し頭の、例えば若槻さんみたようなかたは死ぬるまで頭が明晰であつたというのですから、原則的に例外なしにああいう規定をしなくても、例外をこしらえて置いて、こういうようないわゆる人員の不足というようなときにこれを補うということは私は政府としても考えるべきことじやないか。ただ私の考えを御参考のために申上げて置きたいと、こういうつもりであります。  それからいま一つ私はこれらの人のいわゆる事務の取扱方が、どうも私ども考えて見ると、そんなへまなことをしなくても、こうすれば迅速に処理ができると思うようなことは幾らもある。そういうことを一つもう少し本当に修習に力を入れるということが私は必要じやないかと思います。ただその修習をただ専門家の判事とか検事とかいうかただけでそういう人を指導しても、判事、検事の社会を見る見方と、そういう人以外の人の見る社会の見方とにおいて大分隔りのあることは、これは私が申上げるまでもない。人事百般のことを処理するに当つてただ大学を出て試験を受けて及第して司法部内に閉じ籠つて事務を執つておる人だけが、又そういうような自分考えによつて修習しただけでは実際の実社会に応じられないようなことがありますが、大木司法大臣が裁判官や検事は化石したと言つたような時代もあつたのですが、そういうようなことを考えて見ると、もう少してきぱき事件を処理するについて先輩やそういう経験者がこういう人を指導するということが私は必要だと思う。聞けば司法修習生だとか、それから或いは研修だとか、或いは判検事を三カ月東京に集めて修習をやらせるということを聞いておりますが、もう少し本当にやつて、この実社会に合うように事件をてきぱき処理するというようなことをお考えになるほうがいいと私は思うのですが、そういうことについてのお考え一つ承わつてみたい。
  74. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今一松先生の仰せられましたのは私も全く同感でございまして、この点は一つ十分に研究をいたしまして、単に修習ばかりではなく、実際検察庁の現在やつております事務の運び方について、なお能率的にこれを促進する方法がないかというようなことについて、単なる検察官ばかりでなく、能率的な事務の処理についての専門家をも含めました何か研究的な施策を講じてみたいと思います。
  75. 一松定吉

    ○一松定吉君 大変よいお考えを承わりまして私ども喜んでおります。今須藤委員から御質問のありましたように検察官が非常識的な法律の運用をやつて世間から非難をされることが多い。今須藤君は共産党関係あるような方面から論じられましたが、それ以外の場合においてもいろいろ検察官のやり方について世間から非難を受けることがあります。この間の地方行政並びに法務委員会の合同審査の席に現われました例の愛媛県の八幡浜の事件、つまり少し気を付ければそういう非難を受けんですむにかかわらず、つまらないことをして非常に問題を大きくするというようなことが、これは今須藤君の挙げました例で、八浜幡事件ばかりではない、全国にたくさんある。そういうことは何から来るかというと、結局検察官が非常識である、法律的の非常識、普通常識的の非常識、こういうようなところから来るんでありましようが、結局その原因は修練が足りない、こういうところに帰すると思うのでありますからして、これらのことについても十分指導して、場合によれば再教育するというくらいにやれば、私はそういう非難はだんだんに少くなろうと思うのですが、そういうことについて一つ御決意のほどを承わりたい。これは裁判官に限りません。検察官に限りません。あと事務総長にも伺つてみたいのですが、結局は解決は同じでありますから、一応法務総裁から承わりたいと思います。
  76. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 従来とも司法官につきましては試補として修習させてから司法官に任用するということになつておりましたが、終戦後最近数年特に刑事訴訟法、民事訴訟法その他の法令も非常に変つて参りましたし、又それに伴いまして今までのドイツ式の訴訟から英米式の訴訟にも変つて来ました。これらの事情に鑑みまして、法務府といたしましては検察官、検察事務官等につきましては特に再教育の施設を持つておりますわけで、定期的に現場から再教育のために東京に集めまして、短いものは半月、長いものは数カ月に亘つて再教育をいたしておるというような状況でございます。これは相当成績を挙げておると思います。ひとり若い者ばかりでなく、検事正ども現在検事正全部その再教育を一廻り終つたような状況でございます。これは検察官ばかりでなく、法務府におきましては行刑関係職員についてもこういう措置を講ずることにいたしております。又警察におきましては、従来の警察の教育施設と申しますると、巡査を採用するときに数カ月の新任教育をする。又その後に警部補、警部ぐらいの時代に、将来の警視、警部となるような人のための教育を中央においていたしておつた。これは内務省時代の教育状況でございます。現在は採用の際の新任教育というものはやはり各警察ともやつております。これは小さな自治体警察においては自分でそういう施設を持つことができませんので、各府県ごとに国家地方警察がそういう仕事を受持つことにいたしております。大きな自治体警察警視庁、或いは大阪府のごときは自分でそういう施設を持つております。それから幹部につきましては、従来のやり方は警部、警視になるための教育をいたしたのでありますが、今日は警部なり警視なりになつたたちも更に教育する必要がある。これは従来の警察制度が新らしい警察制度に切替りましたために、新らしい知識を教える必要がある。そういう実際的な必要からも出たことでございますが、国家地方警察におきまして警察大学というものを設けまして、ここにすでに任用されておりまする幹部を含めまして定期的に教育をいたす、これも一カ月乃至二カ月ぐらいの教育をする、こういうようになつておりまして、私の感じといたしましては再教育の施設というものは法務府、警察を通じまして、従来から見ますと画期的な進歩を現在いたしておるように思われるわけでございます。もとよりかように教育をいたしておりましてもときどき非常識な者がありまして御心配を煩わすような事件も起ることは非常に遺憾であります。今後もこの再教育に十分に力を注ぎまして、できるだけ民主的な警察、又能率的な検察というものを作り上げるように努力をしなければならない。政府といたしましてはこれがために、必要な経費の増額をできるだけ図りまして、その収容力の拡大をいたしますると共に教育内容をも改善いたしたい、こう考えております。
  77. 一松定吉

    ○一松定吉君 大変いいお考えでありまして、我々も賛成をいたしますが、私が特に近頃副検事という者が捜査事務等をとつて、ときどき行つて話して見ると、まるで途轍もない捜査やり方をやつてみたり、或いは法律解釈を間違つてみたり、事実の認定の仕方を誤まつてみたりしているようなことが往々にしてあつた。実はもう噴き出すようなことがあつた。これは勿論法律の研究が十分でない、又修習が適正でなかつたためそういうこともあつたであろうと思いまするから、こういう点に一つ十分御留意を賜わりまして、この際人を殖やすだけで事件の処理ができないことは言うまでもない。要は優秀な人であり経験に積んだ人であり、てきぱき仕事を片付ける人ということに重きを置かなければ、この事件の渋滞ということは払拭することはできないと思いまするから、今総裁の仰せになつたようなことは、よく成るたけ本当に有効適切に御実施にならんことを特に希望いたしておきます。  それから私、これは言うていいかどうかわからんが、総長とか検事正とかいうような人は大概長官室に引籠つて、実務をとる人が少い。これは行政事務が多いから止むを得ないかも知れませんが、できる限りやはり第一線に立つて法廷にも現われ、ときどきには事件の処理に当るようなことをするということは、ひとり事件を処理するという効果が挙るばかりでなく、裁判の仕方や捜査の仕方について後輩の模範となり或いは公判を指導する一つ資料となるというようなことを私は考えるのでありますからして、どうか長官になつたから、おれは行政事務だけで長官室に引込んでいいというような考えはこれは改めさして頂いたほうがいいと思う。その代り待遇はよくする。待遇をよくしてそうして働いてもらう。生活は安定だということであれば誰も不平不満はないのですから、待遇が悪くて働けと言つても皆働きませんから、今回の職員の待遇改善ということで俸給を上げるというようなことと同時に、そういうような心がけを新たにして頂いて、何おれは若いから若い人と一緒にまじつて君がたにお手本を示そうというような意気を持つように、これをお仕向けになるほうがいいと思いますから、これは御参考までに申上げておきます。そのぐらいで検事総長に対するのはよしといたしましてそれから一つ裁判所側に……。
  78. 岡部常

    ○岡部常君 先ほど判検事の停年に触れて一松委員からもお話がありましたので、私は同じ検察関係ではありませんが、法務府に関係しております矯正保護関係職員につきまして同じような停年が実施されておるのでありますが、これは法律にはきめてありませんが、同じ部内にあるためにいつの間にやら停年という慣行ができておるように思います。私はまあ判事、横車は別といたしましても、矯正保護関係職員は検事などと違いまして、体力という問題よりは、もつとほかの経験とか人格を積むとかというような方面のほうが重要なことではないかと思います。特にその首長となる人間はそういう点がむしろ大切なのでありまして、年をとつたから、身体がきかないからいけないというものでないと私は確信をいたします。この点について従前の慣行をお改めになるお考えがありますか。又私は希望といたしましては、これは是非とも検事とは違つた建前にいたすべきものだと思います。少くとも判事と同じような関係に立たせるのが本当ではないかと考えますから、ちよつとその点を……。
  79. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 行刑の職員につきましても実際上停年制度と同じような慣行があるのでございますが、これにつきましても、勿論人によつて例外ということもあるわけでございますが、併し事実は相当厳格にやつておるようであります。これも先ほど検察官について申上げたと同じような事情もございまするので、停年制に伴う弊害ということは、これは御指摘になつた点十分わかりまするが、同時に又かような制度をとることに伴う利益というものも考えねばならないわけでございまして、この利害を勘考いたしますると、なかなかこの問題は軽々に結論できない問題じやないかと存じまして、只今のところでは直ちに行刑職員について停年の慣行を廃止するという考えは持つておりません。
  80. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと法務総裁二つだけ……、検事の事務処理が非常に事件輻湊で仕事がてきぱき行かないということについては、こういうことがある。非常に検事の受理した事件の中に難件がある。難件があるとそれは未済箱の中へ抛り込んで、容易な事件ばかり片付ける。ですから難件が幾つも幾つも溜ると、それが一年、二年或いは長いやつは三年、五年も入れておいて時効にかかるというふうなのが往々にしてある。そういうやつを処理するために一つ特別に難件処理係の検事をこしらえて、そればかりやれば早く片付くということになりますから、これは一つ私が申上げなくても御経験に富んだかたがたがおりますからおわかりでしようけれども、そういうことにすると事件処理がてきぱき行きますので御参考までに申上げたいというのが一つと、いま一つは、私ども弁護士として刑事訴訟法の運用についてですが、警察署に面会に行く、そうすると面会の場合は殊に警察署などは警部などが調べておる場所で被疑者と弁護人が面会をする。新刑事訴訟法の精神に反してお互いが思うことを話合うことができない。これは殆んど至るところの警察ではそういう特別の接見所が設けられておることが少い。これは経費の問題でありましようが、殊に都下の警視庁の接見所などに行つても殆んど特別の設備はない。なぜないかというと部屋が狭い。なぜ狭いかというと予算がない。どうかそちらのほうでと言うので廊下に出て話をしたり、どつか調べている所で、隅のほうで蚊の鳴くような声でひそひそ話をするというようなことでは十分にいけませんので、これは一つ接見室の改善とか新設とかいうことにつきまして特にお考えを願いまして、刑事訴訟法の運用について支障なからしめるようにお願いいたしまして私の質問を終ります。
  81. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 事務総長、内藤総務局長、鈴本人事局長承おいででございますから……。
  82. 一松定吉

    ○一松定吉君 私昨日田中長官に一度くらいはということを申上げましたが、それは長官の職責上からも、或いはその他の特別の事情からもわざわざおいで下さらなくとも事務総長その他関係のおかたがおいで下されば私の質問せんとするところは目的を達しますから、そういう意味において田中長官の御出席云々ということは取消しておきたい。さよう御了承願いたい。  この裁判官一人当り事件負担量というのを配付されました表によつて見ますると、民事事件が一人の負担が一番多いのは二百六十一件、少い月でも二百五十何件というように随分これは負担が多く、刑事事件においても一人当り多いときは二百五十一件、少くとも百九十五件で随分多い。こういうように一体多いにかかわらず、人員の整理で大分事務官などを減らすようですが、この減らすということがこの判事一人当り負担の処理について影響はございませんか。それを一つ伺いたい。
  83. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 今度の行政整理に関しまして、もとよりこれは予算との関係で止むを得ない次第なのでありますが、仰せのように事件は非常に増加して参りました。相当一人当りの負担件数はだんだん殖えて来るような事態でありますが、ために今回の行政整理の人員も主として事務系統のほうを整理いたすことにいたしました。裁判官については行政整理の対象にいたしておりません。それからなおその補佐機関である書記官等についても殆んど整理をしないという、大体員数を減らさないという方針で、主として事務系統のほうにおいて賄つて行こう、こういうような考えでやつております。従つて事務系統のほうをこれだけ減らせば、今でも足らんところにいろいろな支障が生ずることを考えましで、いろいろ機構の改革とかその他従来の事務のとり方について改善をすべきところをいろいろ考究いたしまして、とにかくまあ能率増加によつてつて行きたい、こういう考えで現在やつております。
  84. 一松定吉

    ○一松定吉君 成るほど裁判官の定員は余り減ずるというようなことになつていないようです。それは大変結構ですが、事務のほうに関する者をお示しのようにたくさんやめさせる、減員するということになると、それが自然裁判そのものに影響して来るように思うのですが、そういたしますとこれをやめさした結果、どういうような方法でやめた人の能力を残された人の仕事によつて補充するという、何か方法は考えられておりますか。例えば労働基準法で何時間よりいけないとかいうものを少し二時ぐらい殖やして、その代りにその殖えたものに対しては特別手当とか賞与とかいうようなことをして喜ばせて、労働基準法の制限時間でも働かなければならんというようなことを考えないと、ただ首を切つただけで、それは予算は減るだけは減つても、事務が渋滞するというようなことであつては、これは国家のために余り利益でないように考えるんですが、その辺の考えはどうですか。
  85. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 現在でも裁判所のほうでは相当普通の勤務時間以外に仕事をしておるのが相当あるんでありまして、その上整理すれば余負担量が殖えるということは勿論でありますが、ただいろいろ考究いたしまして、例えば統計事のごときものは、大体統計の機械化によつて員数も相当省けるのではないかというような点もございます。それからなお一定の勤務時間だけでは事務を処理し切れないような場合においては居残りとかいろいろな方法によつて処理して行く考えでございます。
  86. 一松定吉

    ○一松定吉君 そのいろいろな方法を聞くんだよ、いろいろな方法を。
  87. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 方法と今申上げましたのは、例えば統計機械によつて、今まで統計に携つた人員を減らすとか、或いは従来のタイピストのやり方についていろいろタイプの設備をすると同時に能率を増進させるというような点で大体賄つて行けるんではないかと、こういう考えでございます。なお申上げますが、大きい裁判所は相当人員整理がありますけれども、田舎の小さいほうの裁判所においては成るべく整理の対象を少くしたいというような考えでおつて、そう事務に支障させないような方法も考えております。
  88. 一松定吉

    ○一松定吉君 その具体的なことを聞きたいのだけれども、今ここで突然お答えもできないでしようから、十分研究して、又そういう支障を来さないような方法の考えようだつていろいろあるだろうと思う。朝早く起きて早く出動して、先ずお茶を飲んで官報を読んで雑談をして、新聞を見てそれから仕事をしたらもう十二時が廻つて、十二時になると直ぐ出かけて行つてテニスコートに行く、ベース・ボールをやつたりして、一時になつても帰つて来ない、午後五時になる前に用意して、五時になるとばたばたと出て行くというようなことについて、多少何かこれを是正すべく、それらの職員の喜ぶような方法をすれば能率が挙ると思う。そういう具体的なことは今私ここで申上げませんが、あなたがた実務にお携わりになるかたが十分御研究の上で、この欠陥を補つて行くというようにお願いをいたしておきます。  それから裁判官の現在表を見ると、最高裁判所は丁度定員になつておりますが、高等裁判所が二百四人、殊に地方裁判所は九百五十二人の現在員で、欠員は高等裁判所は三人、地方裁判所は六十六人、家庭裁判所が六十四人、簡易裁判所が六十五人、合計百九十八人という者が欠員であるようですが、補充はなかなか容易にできないのですか。できないならばそのできない理由一つ話して頂きたい。
  89. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) これはもう一松委員御承知のはずで、一定の資格を要するがために裁判官の補充というのはなかなか困難であります。殊に大体地検は司法研究所修習生を了えた者、それからとる場合、その他に在野法曹から任官を希望しておられる者をとるというような二つの方法でやつて参つおるのでありますが、いろいろな事情からどうも在野から優秀な人をお迎えしようと思つてはなかなかこれが実現ができない。まあ一つには待遇の問題もあるのですが、その他いろいろの点から相当困難、併しながらこの百九十八名という全体の欠員の中で約六十二名は本年に増員が計画されたものであります。これが大体六十二名を差引くと約百三十六名程度の欠員であります。で、まあ我々としてはだんだんこの欠員が補充されて来るという希望は持つております。毎年三月、四月になりますと修習生から出て来る分が相当ありますので、漸次充員はできて来るものと確信いたしております。
  90. 一松定吉

    ○一松定吉君 欠員の理由は待遇の問題、それから資格が制限されておるから容易に人を入れることはできない、御尤もであります。待遇は今回大分この法案が通ればよくなる。そうすれば今までよりも志望者が在野の弁護士会の方面からもあろうかと思いますが、修習生、司法官試補、こういうような者もやはり相当多数採用して、定員を超過するような予備とかいうようなものを置くようにすれば、時に応じ機に応じてこれを採用することができるというようなことも一つ考えられようかと思うのでありますが、先刻法務総裁からございましたように、この停年制を、私は最高裁判所が七十歳までならば地方裁判所でも高等裁判所でも少くとも、七十歳まで行けんでも、これを六十五歳までとか、もう少し上げるというようなことは考えられるのじやないかと思う。最高裁判所の判事諸公があの難問題を処理するために頭脳の明断で、健全なる頭を持つておる人が必要であるということで七十歳までその任に耐えるということで、それが前提でやつたということならば、地方裁判所、高等裁判所の判事もそれに準ずることができやしないか、その点について裁判所は何かお考えがあるかどうか、その点を一つつてみたい。
  91. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) この停年制の問題でありますが、成るほど最高裁判所の判事は七十歳であります。これはまあ各方面から優秀な人々がお入りになることを前提といたしておりますので、一つは立法当時考えられたことは、自律主義、法律主義というものから幾らか停年制に差を設けてもいいじやないかというようなことから、最高裁判所の判事が七十歳、それから一般の判事のほうは六十五歳の停年になつております。なおその後簡易裁判所の判事につきましてはいろいろ考究した結果、例えば六十五歳の停年でおやめになつてつても、なお相当事件数の少い裁判所では働いて頂けるような人人を迎えるために、簡易裁判所の判事の停年を七十歳に引上げて現在は七十歳になつております。いろいろ仰せられることについては、十分この問題については今後も考究して適当な処置をして行きたいと考えております。
  92. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は人員を整理するという点について、最高裁判所の判事諸公にはお気の毒か知りませんけれども国務大臣同一待遇という建前から秘書官という者がありますね。これは国務大臣同一待遇というところから問題が起つたのです。秘書官という者、護衛という者、併し護衛はむしろあると困るほうが多いからこれはやめようというので今まで実現しないようですが、私はこの最高裁判所の判事の秘書官は要らんのじやないかということをその当時から考えておつたのです。併し国務大臣と同じ待遇ならば国務大臣に秘書官があるから秘書官をつけたらいいじやないかというようなことから来たように思うのです。それが今減らすとか何とか言うのじやありませんよ、これは一つ研究の価値がありませんか。最高裁判所の秘書官はなくてもそこには特別の事務官というのがおるのだから、それをお使いになればようございませんか。これは併し私どもが片山内閣のときにこの制度に賛成をしておる一人ですから、それをかれこれは申しませんけれども、これは一つこういう非常時には考える価値がありはせんかということだけ参考に申上げておきたい。お答え下さらんでよろしい、これは。この裁判所職員定員法を改正することで、五十五条、五十六条、五十七条、五十八条等に列挙してあるもののうちに、「別に法律で定める員数の」ということを皆取除くことに御提案になりましたね。「別に法律で定める員数の」ということになると、法律で員数をきめておる。その員数はいつも置かなければならんとか、員数を制限されるとかいうようなことのために、これは困るからむしろこれを除いたほうがいいという意味でお除きになつたのかも知れませんが、この除くということによつてどういう利益があるのですか、又なぜにこれを除かなければならんのか、これを一つ話して下さい。
  93. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) この問題は、この点に対するお答えは、立法された政府のほうからお答え願つたほうがはつきりいたすと思います。
  94. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) 従前のこの裁判所職員定員法の立て方は、裁判所の職員について独得のやり方をやつてつたのでありまして、行政機関の職員定員法におきましては、御承知のように役所別にこの総数を一括して規定いたしておるのであります。でこの行き方はどちらがいいかという問題があるわけでございますが、裁判所の職員のほうにおきましては、特にここに掲げたこの官職のみを対象といたして人数を規定いたしておりますが、その以外の人数、例えば雇用人なんかは従前この法律によつて定員が規定されていなかつたのであります。併しながら考えてみますと、そういう者も当然法律の規定の中に入れて然るべきじやないかということが言えると同時に、この各官職別のものはこれは行政機関のほうでも特に掲げていないのでありまして、これは特に一々掲げなくても予算上の制約もございますし、総数を掲げればそれで足りるのじやなかろうかということで、行政機関の職員定員法のやり方に倣つてこういうふうになつたのでございます。
  95. 一松定吉

    ○一松定吉君 もう私は質問を終りますが、特に私はこの裁判所並びに検察庁方面にお願いして置きたいことは、私どもは常にこの他の行政官庁の役人の諸君よりも司法事務に携わつておる人々の非常に待遇を改善して立派な人を集めて、そうして我々のいわゆる権利義務を厳正公平に処理して頂きたい。それについては待遇をよほどよくして人材が集まるようにしなければならんという方針は、私どもは常に堅持しておりたいのでありますから、そういう意味においてこの給与ベース等については他の官庁に先んじて、常に優秀な人を集めるという方法の目的を完成することのできるように、この予算については積極的にやつてもらいたいということを私はお願いして置きまして質問を終ります。
  96. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 只今の御趣旨十分に体しまして、将来もその方針を堅持して行きたいと思います。
  97. 岡部常

    ○岡部常君 私のは簡単で関連する質問ですが……。
  98. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それじや岡部さん。
  99. 岡部常

    ○岡部常君 これは裁判所判事の報酬の問題でございます。これは判事だけでなく検事の問題も同じでございますが、裁判所のほうに伺つておきたいと思います。私は日本の裁判官という者は非常な高い誇りを持つて立派に従前からやつておられると信じております。殊に新らしい制度になつてから司法権というものの尊重されることがあらゆる点に現われまして、その点についてはなお一層誇りを持つて行動せられておることを確信しておるのであります。それがこれは一つの現われに過ぎないのでありますが、この報酬のごときものも相当ほかの官吏に比して尊重せられ、高いところに持つて行かれたことと私は思います。殊にその俸給の定め方が他の官吏と異なる方式をとられ、他の官吏が十何級とかというようなもので普通規律されておるのが、五級とか極く高く待遇されると同時に、簡素化されておるのであります。これは一見して非常なきれいな感じがいたしておるのでありますが、これは一つの裁判官尊重ということの現われであるかのように私は承わつてつたのでありまして、私らも幾分かそういう感じを持つてつたのであります。然るに今回判事でなく、判事補の報酬の改正案を見ますと、約それが倍にも殖えておるのであります。まあ普通の官吏と余り違わないような恰好になつて来ておるのであります。若しこの俸給の立て方が一種特別なもので、それに対して相当な考慮が払われて規定せられておつたものといたしますれば、今回の改正案とは矛盾しておるように私は考えられますが、その点で何か一片の人事行政上の人事というようなことで考えられるほど軽いものであつたか、ああいう形に変えた結果、今まで持つてつた裁判官の矜持の一角が崩れることがありはしないか、こういうふうな考えを抱くのであります。この点について明確なる答弁を頂ければ結構であります。
  100. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 今回のこのべース・アツプにつきまして、仰せのように判事補の線は従来のランクよりも少し段階が多くなつて約倍になつております。これは案は従来の通りのランクで、裁判所のほうではもとよりそうあるべきだという考えでおつたのでりますが、この大蔵省方面とのいろいろの交渉の経過において、いろいろ大学を出てからの行政官との開きが余りにこの若いところが違い過ぎるというような点が相当大蔵当局あたりから強く指摘されまして、いろいろ折衝した結果、まあ判事の線においては、裁判官の線においては判事補を十年やり検事を十年やり、弁護士を十年やつて来た判事の線においては、これはどうしても従来の方針を堅持しなければならんが、判事補の線においては多少このクランを多くして、まだ若い学校を出て修習を二年して、そうしてすぐ任官したようなところは幾らか下でもいいのじやないかというような、まあ一つの妥協案といつた形でこういう案が現われて来たのであります。
  101. 中山福藏

    ○中山福藏君 私ども戦後この日本に誇り得るものは裁判制度だという普段からの考えを持つておるのですが、俸給が相当に上つて、安んじてその職をとつて頂くということについては、何ら反対するものではございませんが、ここで一つお尋ねしておきたいことは、この簡易裁判所の判事の俸給一号給というものは三万七千三百円というふうに上つて来るのですが、判事補の一号というのは二万六千二百円ということにこれはなつておりますね、そうするとこの前説明を承わりまするというと、その判事になる人もあるのじやないですか、一種の……そういうような場合には簡易裁判所の判事とこう平均が保てるような給与にここはバランスをとらしておくということがいいのじやないですか、これはどういうことでしよう、こういうふうになつているのは…。
  102. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) この簡易裁判所の俸給につきましては、これは別段判事補と同じようには考えてなかつたのでありまして、これは前の給与体系にベース・アツプをしたというのに過ぎないのでありますが、この判事補の線においては成るほどおつしやるように修習生を了えましてから十年間しないと判事に任官できない、今のところではいろいろ欠員もありまして、十年した者は大体において判事に任官されるように向いでおるのですが、将来だんだんして行くうちに十年経つても判事に、直ちに十年経つたからといつて任官されないような定員の状態が予想されるのじやないか、そういうような場合に、判事にならなければ給与が上らんというようなことで二年なり三年なり据置かれる人を救済するために判事補の線に三万九百円と二万八千二百円の特号を設けたようなわけなのでありまして、簡易裁判所の判事と同じようにこうするという考えは持つていないのであります。
  103. 中山福藏

    ○中山福藏君 これは簡易裁判所の判事のほうが多いでしよう、一号給というのは……。
  104. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 無論簡易裁判所の判事のほうは一号給、特号給多いのですが、これは簡易裁判所の判事は別に必ずしも司法修習生をしなくても簡易裁判所の判事になれる途が開けてあります。多年司法事務に携つておるような者は簡易裁判所の判事になれる。併し判事補には修習をしなければならないというような点、その関係が異つておるのであります。従つて非常に幅が広くて、上のほうが高いわけですが、これは先ほどちよつと一松委員質問にお答えしたように、例えば六十五歳で所長を停年でやめて、その人がいわゆるまだ十分働けるような人、そういうような人が簡易裁判所判事に任官したような場合は相当高いものが必要なのではないか、こういうふうなことを考えて相当上のほうに……、判事補等よりも高くした。例えば現在でも所長をしていられた或いは検事長をしておられた、検事正をしていられたような人が相当多数簡易裁判所に入つて停年後働いておられるかたがいる。又弁護士を二十年も三十年もして、功なり名遂げた人、そういう人をお迎えするのにはやはり簡易裁判所の判事、そういうところへお迎えしよう。併しそれには簡易裁判所の俸給も相当幅を広くと前から考えられておつたので、それに対してベース・アツプをした、こういう関係でございます。
  105. 中山福藏

    ○中山福藏君 それは私もよく実情を知つておるのです。検事長、検事正、或いは相当弁護士をやつていた人で相当な経歴を持つてつた方が簡易裁判所の判事になつておるので、そういう人を冷遇せざる意味においてこれは肯けるのですが、併しこの前の法務委員会において、判事補は判事になれないような立場である場合においてはこの判事補にずつと長く勤められるような方が時には勿論あるのではないかということも考えたので一応お尋ねをして置いたのです。  それはそれくらいの点で大体わかりましたから申上げませんが、この前私はお尋ねして置いて明確な答弁を得られなかつた問題について、今日事務総長からお答えを願いたいと思うのでございますが、この前は私はこういう御質問を申上げて置いたのです。裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案の附則第三項ですね、いわゆる国家公務員法の八十九条から九十二条というものを準用しないということをこれに附加えてありますが、私の問は、普通の行政官庁の整理の場合においてはそれは首肯できることは首肯できるのでありまするが、裁判所というものがこういうふうな改正をおやりになる場合に、ただ便宜に従つて異議の申立、審査の請求というものをすることができないような、或る意味において人権を蹂躪するかのごとき感じを受ける、なぜそういう法文をお作りになるのか、私はこれは解せないのですが、法律は裁判所が守るということを最高裁判所の玄関の左側にちやんと掲げてある。その裁判所が行政官庁に同じ歩調を取るということは、これはどうもおかしいんじやないかというような気がするのですが、これは如何ですか。
  106. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) この附則の立法した理由は、むしろ政府から御説明つたほうがいいかと思いますが、ただ裁判所の職員も一般職員が、裁判官以外の一般職員が公務員法の適用を現在では受けておる。そういう関係からこの法案が多分ほかの他の整理の法案と同じようなものが入つて来た、こういう考えであります。なおその細かい点については……。
  107. 中山福藏

    ○中山福藏君 私の質問がわかりますか。
  108. 位野木益雄

    政府委員(位野木益雄君) 御質問は大体この前佐藤長官からお答え申上げた点と同様のことになると思いますが、今回の整理の場合には、定員の減少によつて止むなく整理をするものであり、而もその定員の減少という以外の事情は、これは大してほかの免職の事由等と比較いたしますと、特にこういうふうな公務員法の第八十九条以下に掲げてあるような処分を認める、処分と言いますか、処置を認めることは必ずしも適当でない、むしろ必ずしもそれほど必要性がないんじやないかということからこういうふうな措置にいたしたのであります。これにつきましては勿論裁判所に行政訴訟の途は、これはたとえ許されなくても認められるというわけでありますから、それほど必要はないじやないかというふうに一応考えております。
  109. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はこの法務委員会における質疑応答は、これはいわば技葉末節というような感じを持つておるんですが、この問題は法律を守る裁判所り使命に関する問題だから私これはお尋ねするのです。只今のお答えでは到底私は満足することはできません。なぜかというと、人事院というものがあつて国家公務員法というものが制定されておつて、首を切られた場合においては首を切るという説明書を一応渡すということになつて、この切られた人が三十日以内にこれに異議のあるこきは異議を申立てれば審判を受けるといろ規定なんです。国家公務員はこれによつて安んじてその職をとるということができるという建前からこれは設けられたものだと私は思います。この国家公務員法というものはですね、この立派な法律というものを作つて置きながら、そのときの財政の状態、行政整理の観点から割出されて、こういう場合には文句は言わせちや困る、ばつさりやつて切り捨て御免で放つて置く、成るほど行政訴訟の方法がないかあるかということは別問題と存じますが、この前お尋ねしたときは、何万人か切られる、だからそれが一々そういう異議の申立てをするものをそれを一々調査するのは非常に煩雑で困るというお話つたのでありました。私はこの問題は煩瑣とか非常に面倒だとかいう問題じやなくて、如何に法治国の国民並びに官庁というものは法を重んじなければならないかというその根本の理念というものにこれは抵触して来る大きな問題であつて、将来に非常な悪影響を残すと思う。首をやたらに切ることはできない、異議のある者は、例えば京都の蜷川知事のごときは人事院に審判を求めて、その地位を回復するようにという指令があつたように私は記憶しておりますが、こういうことがあつて安んじて、自分は辞職しても満足なんだ、正しいことかどうか、この場合は何万人あろうとも、これは印刷処理で事は済むんである。国家はこういう窮況立つておる、だから仕方がないからこういうことにするんだ。説明書を渡してちつとも差支えない、だから人権というものはどうなろうとも、手続がうるさいから首を切り放しだと言つたら、これはもう全くの封建独裁の思想というものがこの法律に現われておる。これは私は当然逆戻りだと思う。こういう法文の立て方は、これは他のほかの行政官庁の行政整理の問題にしたら、それにちなんで出て来た法律案でしたらこういうことは申上げません。併しながら国民の権利を護るというその重責を帯びた裁判所が関与した法律案がこういうふうな建前でいいでしようか。私はその根本の考え方を一つ承わつておきたい。これは将来すべての日本の問題、首切りの問題に大きな影響を持つし、法律を遵法するかしないかという、官庁自身が遵法するかしないかということに触れて来ると思うんです。こういうことではこれは本当に裁判所が人権を護るということにならんでしよう。この明確な一つ御答弁を私はこの点について承わつておきたいと思います。
  110. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) この定員法の改正については立案者であります政府のほうから御答弁を願つたらと思いますが、なお裁判所のほうで所管局長から、総務局長から御答弁申上げます。
  111. 内藤頼博

    説明員(内藤頼博君) 政府のほうの今回の法律の立案につきまして事務的に最高裁判所の事務総局の私どものほうへ御連絡がございましたので、それにつきまして私どものほうの意見も申上げまして、その点についてお答え申上げたいと思います。  中山委員の御意見誠に御尤もでございまして、その点につきまして十分佐藤法制意見長官がお答え申上げましたことも誠に私どもといたしまして同感でございます。今回のこの減員のための定員法の改正につきましては、実は裁判所職員について特にそういつた考慮をすべきであるという中山委員の御意見でございますが、実は現在の法制の下におきましては、裁判所の裁判官以外の職員につきましては実は一般公務員と法制上の地位を何ら異にしておらないのであります。従いましてまあ私どもといたしまして誠に御尤もなことだとは存じますが、今日の法制の下におきまして裁判所職員だけを特に他の一般政府職員とは別個の扱いにするいうことは今日の法制の下においては無理なことだと存ずるわけでございまして、そういつた意味におきまして裁判所職員に特別な考慮を払うということは却つて法制上不合理な結果を生ずることになると存ずるのであります。根本的に中山委員の御指摘になりました問題もございますが、今回の法案につきましては、従いまして政府のほうで立案されました法案で、裁判所といたしましても別に異議を唱える点はないというのが私ども意見であつたのでございます。
  112. 中山福藏

    ○中山福藏君 現在の法制の下においてということでございますけれども、むしろ他の誤れるものを匡すという高い見識を裁判所が持つていなければならんと思う。ほかの素人の、素人と申しますか、いわゆる普通一般の行政官庁である行政の役人でしたらそれはそのあなたの御説明は通るでしようけれども、少なくとも裁判所というものが関与した以上は、裁判所というものは高い見識を以てこういうことは一応一つ他の官庁に勧告するとか、立案者のほうに勧告して、これは人権というものを蹂躙するということになるのだからといつてなぜお教えにならんか。現在の法制の建前ではこういうふうにならざるを得ないということは通り一遍の私は御答弁だと思うのです。別に責めようとは思いません。責めようとは思いませんが、裁判所といういやしくも神聖な職に携つているならこれくらいのことはわからないはずはないと思う。なぜお進めにならん。ほかの素人の普通の行政官庁に引きずられるということでは、法を以て立つておるところの最高裁判所の関与する問題としては非常に軽率じやないかと思う。又そういうふうなことでは将来の日本国民の地位というのは案ぜられるのではないかと思うのですが、こういう点についてどういうふうにお考えになつておりますか、一つ挙わつておきます。
  113. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 中山委員のお説御尤もでありますが、御承知の通り裁判所が独立いたしまして、司法行政の一部面を裁判所のほうでやつてはおりますけれども、併しながら裁判所に関する法律の立案とかというようなものは政府又は国会のほうでお作りを願うという以外に途はないのでありまして、今度のこの定員法の改正につきましても一般職員が、もとより裁判官は除外して特別職になつておりまするけれども、一般行政といいますか、一般職員についてはやはり公務員法の適用を受け、その公務員法の適用を受ける下における職員の定員の法案で、他の一般より特殊に特別に扱わなければならないということは、これは政府が提案する以上は裁判所としては止むを得ないのじやないか、こういう考えでおるのであります。で、もとより裁判所はそういうものでなく、事件の審査に当つての裁判所でありますれば、行政府とも何ら関係がございませんけれども、かような法案の提出とか作成というような点においてはやはり行政府と歩調を一にして行かなければ、現在の状態では止むを得ないのじやないか、こういう考えをしております。
  114. 中山福藏

    ○中山福藏君 法律政府国会で作るということは、これはもう御説明承わるまでもないのであります。私は併しこういうことを考えるのです。裁判所の職員関係のあることだから一応裁判所に御相談があつたに違いないと思う。御相談なくしてこういう法律が出て来るはずはない。なぜ相談のあつたときに私が只今申上げたようなことを織り込んでお話を頂けなかつたか、これは相談があつたに違いないと思う。相談がなければあなたのおつしやることは通るのです。相談があつたらこれは通らんのじやないかと思うのです。どうでしようか。
  115. 内藤頼博

    説明員(内藤頼博君) 先ほど申上げましたように事務的に政府のほうから御連絡がございまして、何と申しますか、私どものほうの意見政府のほうへ申上げてあるのでございます。そういう点におきまして誠に中山委員のおつしやること御尤もであると思うわけでありますが、先ほど申上げましたような趣旨で、今回の立案につきましては私ども事務当局といたしましては、この政府の法案に御同意申上げておるわけでございまして、今後裁判所職員の地位を法制上どうするかということにつきましては、又更に十分な研究をいたしたいというつもりでおります。
  116. 中山福藏

    ○中山福藏君 もう時間がありませんから、私はもうこれ以上お尋ねしませんが、私は人権を尊重するという徹底した信念があり、又その覚悟があり、又そうしなければならぬという、国民全体に対する奉仕の気分がありまするならばこういう問題も起つていないだろうと思う。ただ単に法律を守るとか何とかいう、国民全体に奉仕するという気分が欠けた場合においてはこういう法律が出で来ると思う。奉仕の信念がまだ今の官吏のかたがたに徹底してないからこういう結果になるのではないかということを恐れる。この奉仕の観念というものが一般に滲透して来た場合に、こういう法律は影を没するものだという私は見方をいたしておる。今回の問題は、幾ら質疑応答を重ねましても埓があきませんから私は申上げまあんがこれは最初に御相談があつた問題でありまするから、若し万一こういう問題が将来起きましたといたしましたらば、どうか一つ裁判所はこういう点については政府に忠告をするというような意味合いで、真の人権尊重の府と裁判所がなられまするように私は幾重にも御希望申上げまして、私の質問を切打りたいと思います。
  117. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは今日はこれにて…。
  118. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 先ほどの須藤委員の御発言の中に、先般の逮捕と追放の問題について細川議員とそれからその担当の検事を当委員会で呼んで意見を聴取したいという御意見がありましたが、これは先ほど法務総裁からのお答えもありましたように、只今事件捜査中であり、又追放の問題は総司令部でなされたことであつて、一旦さように決定したことを更に弁明を聞くとか何とかいうことは、そういう決定を批判することにもなりますので、当委員会ではさような措置をとるべきではないというふうに考えますので、私の意見を申上げておく次第であります。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  119. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 私もわからないながら追放に関するいろいろの処置なりその問題については、追放に関して別個の取扱いが政府でやられておるのだし、それから今まだ係属中であるような刑事事件の被告とも言うべきような人をこういう所に呼び出すということも、私はどうかというような疑念がありましたから、実はお答えを留保しておりましたのですが、長谷山委員の御説は御尤ものように存じます。なお理事会等に必要あればお諮りしてお答えしたいと思います。  それでは今日はこれで散会いたします。    午後零時五十八分散会