運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-11-20 第12回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十日(火曜日)    午前十時四十四分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り    委員長     小野 義夫君    理事            鬼丸 義齊君    委員            長谷山行毅君            岡部  常君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    刑 政 長 官 草鹿浅之助君    法制意見参事官 位野木益雄君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川 宏君    常任委員会專門    員       西村 高兄君   説明員    法務検務局長 岡原 昌男君    法務矯正保護    局長      古橋浦四郎君    中央更生保護委    員会事務局長  斎藤 三郎君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局次    長)      石田 和外君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件裁判所職員臨時措置法案内閣提  出) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○裁判所職員定員法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件(法務総裁に対する質疑の件)   ―――――――――――――
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは只今より委員会を開きます。  只今政府委員として出席されておるかたは位野木法制意見参事官、それから古橋矯正保護局長斎藤中央更生保護委員会事務局長の三氏でございますが、裁判所職員臨時措置法案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案の四案を全部一括して議題に供します。御質問のおありのかたは順次御発言を願います。
  3. 一松定吉

    一松定吉君 私は裁判官検察官報酬等に関する法律の一部を改正する政府提出原案には全然同感の意を表したい。一体国家公務員の中で、どの職が非常に高く、どの職が非常に低いとかいうようなことは、これは問題とすべきものではありませんが、国家秩序を維持し、そうして国民権利義務を完全に擁護する必要上、裁判検察これらの職に従事しておる人を待遇をよくして、そうしてそれらの人がその地位に安んじて終身その職務ために精魂を打込むというような考えを起さしめ、又そういう考えを以て職務に携わらしめなければならんということは言うまでもございません。そういう意味におきまして、裁判官検察官には成るたけ有為の入にたくさん集まつてもらつて、それらの崇高なる仕事に従事してもらわなければなりません。それをやるのには、それらの人の生活の安定ということが最も必要である。又生活その他のために他から誘惑されるような虞れなきに至らしめなければならないことは言うまでもございません。自分我が国公務員の中でも最高地位にあるのだ、その地位を徴しては国民に相済まんのである、自分職務は最も神聖な職務であるのだ、こういうような一つ誇り、即ち矜持を持たせますことは、これはそれらの裁判官検察官地位を極く強固ならしめ、地位に対して自分からおれはこの地位に在るということの誇りを持たせなければならない。それをさせるのには十分に待遇をよくしなければならない。こういう意味で丁度私どもこれは片山内閣当時であつたと思いますが、裁判官検察官報酬給與というようなものを、他の公務員に比較してこれを引上げなければならんということが、この給與水準の変更による増額状況対照表というこの表の第二国会にきめられたる基準がここに現われておる。即ち最高長官が二万五千円、最高判事が二万円、東京高等裁判所長官が一万九千円、その他の高等裁判所長官が一万八千円、以下これに準じて定めたのはその時であつたのであります。その時に私今申上げましたような意見を述べまして、閣議でも尤もだということで、それを原案をきめて国会に提出して、国会議員諸君も尤もな要求であるということでこれが認められたのであります。爾来物価騰貴等によりましてこの比率はこのままではいけない、他の給與ースを上げなければならないということに準じて、だんだんこれが上りまして、而もそれが第九回の国会で二万五千円が六万円になり、二万円が四万八千円になり、一万九千円が四万五千円になり、一万八千円が四万三千円になり、以下これに準じて引上げられたことは皆さんの御承知の通りであります。又皆さんにおかれましてもそういう考えを以て裁判官検察官待遇をよくしなければならないということになつて、これが現出したのはこれ又申すまでもございません。それを今回はなおそれでも他の公務員給與ース引上げに伴うて第九国会引上げのままにおくことはできなやということが今回の提案の理由だろうと思うのであります。そういたしますと、最高裁判所長官を八万円にし、最高裁判所判事を六万四千円にし、東京高等裁判所長官を六万円にし、その他の高等裁判所長官を五万七千円に引上げる、これは私は当然のことだと思うのであります。私ども裁判官は各公務員のうちでも最もその他位を高め、最も待遇をよくして、裁判官だけは如何なる圧迫をも受けない、如何なる誘惑にも乗ぜられないというような地位を與えるのにはこれだけの待遇をしなければならない。私はこれでもなお少いと思う。英国の大法官などは総理大臣以上の待遇を受けているということによつて裁判威信を高め、国民もその裁判官裁判には心から服するというようなことはその結果であると私は思うのであります。こういう意味におきまして是非これを高めることに努力しなければならんと考えているのであります。と同時に、私はこの際特に附加えて申上げておかなければならないのは、今申上げまするような地位におるその裁判官が、世間からいろいろな疑惑を受けている。どうもあの人の裁判は不公平である、或る政党の公判に対しては誤まれる輿論に動かされて有罪が無罪になつた、成る被告事件被告人は現政府反対党であるが故に、或る黒い手が伸びて予期せざる重き裁判を受けた、これはどうも或る方面の威力が神聖なる裁判に加えられたのであろうというような疑惑が、近時だんだん神聖なる裁判に向つて非難を加えられているというようなことがある。そういうようなことは真実にこれを取調べて見るならばそういう事実のないことを私は確信する。又あつてはいけません。又そういうことが世間に流布されるということはやはり煙の立つ所に必ず火がある。その疑惑を一掃するには、裁判官がいわゆる富貴に淫せず、権勢に屈せず、自己の所信に邁進するというような考えでやれば、自然にそういう疑惑も解消されるのでありますから、裁判官はそういう考えを常に持つていなければならない。そういうことをするのには、ただ国会でそういう意見を発表したとか、新聞がそういうことを書いたということにとどまらず、いわゆる司法当局にいる人が誰も彼もがそういう考えを持つてやらなければならん。これにはそのほうの監督地位にいる人は常にそういう考えを持つて部下を訓練し、部下精神修養に努めるということをやらなければならんと私は思うのであります。然るに長官がそういう認識を持たずして、自分世間からいろいろな非難を受けるということでは、部下世間から非難をされたときに、おれはおれであるが、おれの長官はこうであるというようなことでその世間非難に応ずるというような態度があつては、私が今申上げましたような希望は達成しないのでございまするから、そういうふうにおいて一つ大いに私ども綱紀粛正をやつてもらいたい、そうして裁判官に対する国民信頼が層一層高まるようにしなければならん。ただ俸給上つたわ、待遇はよくなつたわ、裁判官の心得は相変らず旧態依然であり、世間から非難を受けるようなことについて少しも是正されることにならないというようなことではよくありません。そういうようなふうに一つつて頂きたいことについて、我々は非常な熱意を持つているので、こういう点に対しまして一つ政府当局の御意見を承わつて見ることが必要であろうと思います。
  4. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 只今お話誠に御尤もに拝聽いたしました。殊にこの俸給というものについて、一般の者とは又別途の考慮を必要とするということについては、誠にその通りでございまして御同感申上げるわけであります。政府も又その趣旨でやつているわけであります。それから裁判官の実際のあり方についてお気付がございましたが、今日あいにく最高裁判所のほうの人が出ておりませんので、よく承わりまして、そのお話のありましたことをお伝えしたいと思つております。
  5. 一松定吉

    一松定吉君 最高裁判所長官、その他監督官方面において本日出席がないがために、伝えて、そういう実現に努力するという法制意見長官意見は尤もであると思います。どうか一つそのことを十分に伝えて、それが功績を挙げるように一つ努力せられんことを強く希望いたします。のみならず私はこういう委員会において最高裁判所長官ぐらいは出て、そうして平素考えていることを我々に話し、私の思うていることも十分に聞いて頂き、そうしてこれが実現に努力するということのほうがいいと思いますから、本日に限りませんが、いずれ明日か明後日に最高裁判所長官あたりが出て、今国民を代表している我々の声を聞き、それを実際の上に運用して行くというように一つお取計らい願いたいことを一つお願いいたします。  それからその次は検察官に対する私の希望ですが、実は私は同じ司法官といつても、検察官裁判官とはこれは違う。裁判官は本当にこの裁判ということに向つて崇高なる職務の遂行に当る人である。検察官は一部の検挙官ではあるけれども一つ行政官である。これを同一階級にするということはいけないということが私の平素の持論であります。このことが第一回国会裁判官及び検察官俸給をきめるときに私ども意見が用いられまして、裁判官は先刻述べたようなことでは最高俸給を與えなければならんが、検察官にはその必要がない。但し検事総長だけは最高裁判所判事と同じ待遇にするということがこれがよかろう。そうして国務大臣同一待遇ということに検事総長だけはするがいいが、その他の検事長とか、検事正というかたは、最高裁判所長官とか、或いは地方裁判所長というものよりも一級下げるということで私どもはこれを一級下げた、そういうようなことで今現にそれが行われているようでありますが、やはりこれはそういう方針において進むほうがいいと私は思う。それと同時にこの検察官犯罪を検挙するやり方です。これが、裁判官に対しての非難というのは、余りたくさんもないようですが、検察事務に従事するところの検事という人も事件取扱についてはどうも非難が多い。これは犯罪は必罰主義だ、必ず犯罪は罰しなければならんということが行われている。それはいわゆる適当に、これは国家公共ために処罰しなければいけない。これは厳重に処罰しなければいけない。これは併しながら大いに寛容の態度を以て臨まなければならん。これは起訴しなければならん、これは起訴してはいけないというようなことについて、非常な高邁なる裁量の権力を持つておることについては、我々は少しも異論はありません。併しながらそれは公平でなければならん。或る一部の政党ためには非常に寛であり、或る一部の人のためには嚴である、一部の階級には嚴であり、或る一部の階級ためには寛であるというようなことではいけない。誰が見ても、成るほどこれは、これを起訴したのは止むを得なかつた、これを不起訴にしたのは止むを得なかつたということで、国民がその検察取扱方について公平な措置であるということを信頼せしむるような態度でなければいけない。それがどうも近頃いろんな非難があることを私どもは聞いておりますが、こういう点についても、本当に私情をまじえるとか、或いは私利私慾をまじえるだとか、或いは一方の話だけ聞いて他の方を聞かずして誤れる処置をするとかいうことのないようにしなければ、やはりこの裁判官に対する国民信頼が非常に高まるか低まるかというのと同じように、検察官に対してもその取扱方法によつて検察官威信が高まり、或いはその取扱方如何によつて検察官に対する非難がごうごうとなるようなことでよくない。だからやはり検察官も他の公務員に比較してその給與を上げて、これを優遇するというからには、やはりそういう一つ矜持を持つて、おれが日本秩序を維持しているのだ、おれの一挙一動が日本政治を常に覚醒しているのだという考えを以てやり、おれのやることについては何人も非難する余地はないのだというような考え誠心誠意職務に従事すれば、その検察官に対する国民信頼も高まるわけだ。そういうようにして一つ頂いて、ますますその事務の覚醒に向つて努力せられるように、特に私は法務総裁にお願いします。本日の新聞にもありましたように、もうこの官公吏の〇職というようなものが、実に年々歳々殖える一方だというようなことでは、これはもう我が国が本当に一歩々々前進するというのではなくて一歩々々退いて、後には国が滅びてしまうというような過程を迫るのではないかと思いまして、私どもは実に憂慮に堪えません。なぜ一体こんなに公務員賄賂とつたり、或いは政策を入れたりするのだろう、なぜ公平に自分の與えられた任務を途行しようとせんのであるか、こういうことを考えると、本当に検察、警察に対する国民信頼というようなものは地に堕ちてしまう。年々歳々こういうように殖えるということについての原因はまあいろいろありましよう。或いは公務員待遇が稀薄である。生活が困る。それがために、その生活を維持するがために心ならずも不正な利益を改めるのだというようなことも唱えられておりますが、それも成るほど一部にはございましよう。併しながらその多くはいわゆる悪銭身につかずで、大概これが遊里の巷に出入りして、そうして酒色に耽り、それがために家庭は常に平和を撹乱されておるということのほうがむしろ多いわけなんです。これは一体なぜそんなことがあるのだろうというと、政治が正しく行われておらんということ、例えば或る一つ仕事政府に願い出ても、賄賂を持つて来るか、自分宴会にでも招待してくれるまでは、懐なんかに放り込んでおつて取合わない。そうして無頼漢の態度を持している。もうたまりかねて袖の下でも持つて行けば、宴会にでも招待すれば、すぐにそれが解決ができるというようなことでは、もう国民が願書を出して、いつまでもそういうようにじれつたく放置されておくよりも、もう初めから袖の下を持つてつたほうがよろしい、初めから御馳走したほうがよろしいというようなことで、だんだんこれが世間に言い伝えられ、見たり聞いたりしたことがこういう公務員方面一つの慣習となつて、その結果今日のように役人が、下級でなくて上級の人々がこういうことをするようになつたのではなかろうかと思う。で、検事総長なり法務総裁が、そういうことをしてはいかん、徹底的にこれを調査して、その根絶を図らなければならんという決意を持つておられるというようなことを新聞その他において承わりまして、私どもは非常に心強く思つているのであります。とろか一つこれは本当に私心を去つて、これが顯官である、これが高位にいる人である、これは政党有力者である、これは財界の偉物である、そんなことは眼中になく、本当に国家秩序を維持するために厳正にそれらのことを行うて、そうして起訴、不起訴はこれは緩急よろしきを得、国民の納得するような方法において御決定賜わればいいのでありますけれども、とにかく国民をしてなんぞそういうことがあつたのか、その結果については検察庁はこうした、その仕方は実によかつたというふうに、国民から一層尊敬の念の高められるように、こういう涜職等についても爬羅剔抉して、爬羅剔抉したものを必ずしも起訴して罰するとは言わない、場合によつては不起訴にしなければならん場合もありましよう、場合によつては保釈にしなければならんこともありましよう、場合によつて執行猶予のこともありましようから、それはいわゆる機宜に適するような公正なる考えを持つて……そうすれば国民はこれに対して非難をすることは少なかろうと私は思うのであります。そういうふうにこの機会に大いにやつてもらいたい。そうして、この官紀綱紀の紊乱していることを是正することによつて国民の士気はますます高揚して、日本の再建に寄與するところが多いと私は思います。もう今では、御馳走しなければいかんとか、金を持つて来なければいかんというような考えが、官公吏の頭のうちにあることを徹底的になくしてしまう。この間も熱海のいわゆる四万台の自動車云々ということが新聞に伝えられているが、そういうことは私の役所にありませんとかいうことを答えられたとかいうようなことがあるが、それは徹底的に調べれば明らかになるでしよう。併し若し今後そういうことがあれば何人も仮借なくやるぞというような態度を如実に示せば、役人でも、今度は行くとやられるからというので自粛自戒するようにもなりましよう。そういうようにして、本当に一つ公務員の行動について、正しいやり方をするように一層御盡力を賜わりたい。特に法務総裁に向つて私はそういうことをお願いしておきますが、これらについての御所見があれば承わりたい。併しながら法務総裁の御意見はもう新聞等で十分承知しておりますから、特別に御感想を承わらなくても、本日の新聞を見ると大分決意のほどが現われているようですから、ただ口で言うたり新聞に書かしたりすることがあつて、実際これを行われておらんことになると空念仏に過ぎないから、そういうことについて決意のほどを承わることは必要であろうと思います。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 官紀がややもすれば紊乱しておるというような感じを與えるような新聞報道が毎日のように出ております。これは誠に遺憾に存ずることでございまして、官紀粛正に貢献し得る方法がありまするならば、如何なる方法をも辞する考えはないのでありまして、検察権の発動なり、又司法警察官を督励する等の方法によりまして、かような事態につきましては徹底的に調査をいたし、必要な際には断乎たる処置をとりたいと考えている次第でございまして、この決意につきましては、今後の実行によりまして十分に御覧を頂きたいと思います。
  7. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連して、一松さんのおつしやつたことは実際尤もなことで、私たちも大いに賛成する点なんです。それからこの給與のベースを上げるに関しましても、私たちは根本的には賛成ですが、併しこの方式がいいか悪いかという点で、私たちは問題が残ると思う。ベース・アツプは勿論いいことなんですが、これを見ますると、やはり一松さんのおつしやることがこの表で活かされているかどうかということですね。それに私は疑問を持つものです。それは実際に裁判の実務に携わられる、いわゆる下級裁判官検察庁方たちベース・アツプが比較的に少くて、いわゆる上に厚く下に薄いというような感じがこの表に出ているのじやないかと、そういうように考えます。その立場で、こういうやり方でなしに、もう少し下に厚い方法給料値上げをされたらいいのではないか、そういうふうに考えるのです。それは昨年の六月に比べまして、今年の五月にはもう物価騰貴が六五%もしている、ということ、それに対しまして賃金は二〇%しか上つていない状態ですから、皆さん生活は苦しいことはこれでよくわかると思うのですが、このベース・アツプが、まだ今日のあれだけではむしろ足りないのではないかと思う。ですからむしろ本当に上げなければ物価の上昇に対しまして、給料が追つかけて行けないような状態、ですから私たちはむしろもつと進んでベース・アツプの率をよくして、そうしてそれを下のほうに厚く分配されるような方式をとつて頂きたい、こういうふうに考えます。この点につきまして、給料値上げに対しましては私は非常に賛成するものでありますが、分配の仕方です。ベース・アツプの率をもう少し上げてもらいたいというような点から、今日ここに出ている法案に対しましてはこれは全面的に無條件で賛成することはできない。そういう意見申述ぺておきたい
  8. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今一松委員から貴重な御意見がありました。それに法務総裁の御答弁がございましたが、御答弁というか、御意見があつたのですが、その点についてちよつと納得いたしかねる点があるので一言御意見を伺つておきたいと思います。  今官吏腐敗、或いは不正というものに対して法務総裁はあらゆる手段を以てそれを防ぎたいというふうにおつしやつたのですが、そのあらゆる手段というふうにお考えになるのは、主として検察権の発動とか、そういうことだけをお考えになつているのでしようか。
  9. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) あらゆる手段と申しましたのは、国務大臣としての立場から、政府の一員といたしまして、官吏に対する常時の監督を強化する、そういうことをも含んで申上げたわけでございます。併し最後に断乎たる処置をとると申しましたのは、これは検察の問題について申上げたわけであります。
  10. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点で根本的にお考えを願つておきたいと思うことが一つあるのですが、官吏取締官吏がやるということは、昔からよく笑い話にも言われるくらい効果がない。事実、でまあ余りひどく、例えば、この際引用することを差控えますが、江戸時代の川柳、明治、大正、昭和まで、現在まで随分官吏にとつて耳の痛い、痛烈な民衆の批判がありまして、事実官吏の不正、官吏腐敗官吏取締るという考え方が、私法務総裁としては非常にどうも残念に思うのです。で先頃、今の一松委員の御意見の中にもそういう点もあつたのだと思うのですが、特に法務総裁が、勿論法務総裁国会議員として、或いは閣僚として政党人であられるということに対しては私は満腔の敬意を表するものでありますが、併し法務総裁として党派的な印象を與えるということは甚だ問題じやないか。従つてそれについてはこの法務府なり法務総裁なりのあり方というものについても我々は考えなければならんのじやないか。或いは法務総裁御自身も自由党の政府のときばかりのことをお考えにならないで、或いは反対党政府というものができた場合も十分お考えになつていることと思う。この点について先日も御質問申上げましたが、納得するような御意見を伺うことができなかつたのですが、只今一松委員に対するお答えの中にも私は端的にそれが見られると思うのですが、どうか法務総裁が、政治家として、官僚主義的な立場のをにお立ちになるのではないことを確信せしめられたいのであります。それで官吏の不正、或いはその他あらゆる社会の不正というものを摘発する最も有力なるものは何であるかと言えば、言うまでもなく言論の力です。社会の暗黒を照らし出すのは第一に言論です。言論の自由のあるところ如何なる不正もそのサーチライトに照らされて、そうして社会の注目を引き、従つて又それに対して政府なり、或いは検察なりというものが正しく動くこともできる。ところが言論の自由というものが圧迫されている、或いは制約されている、或いは社会の或る種の言論圧迫されていないが、或る種の言論圧迫されている。そうするとそれは或る種の言論だけの圧迫にとどまらないで、一般言論圧迫されて来る。そうなるとその社会の不正、官吏の不正というものがどうしても第一の言論サーチライトで照らされる。照らされほうが鈍くなつて来る。これは私は現在の第一の問題と思うのです。  それから第二の問題は、官吏なり何なりの場合の、つまり民主的な組織、いわゆる官庁の職員組合というようなものが、みずから自分たち態度を絶えず高潔に保つということに大きな力を果して来たにとは、敗戰後暫らくの間我々見て来たわけです。この官吏自身の自主的な組織というものがやはり圧迫され弱くなつて来ると面従腹背というか、或いはこの封建的な奴隷の根性というか、要するに土の人に従つて文句は言わないほうがいい、こういう空気が蔓延して来ると、官庁の中で、自然不正が防がれなくなつて来る。これが私は第二の点だと思うのです。  そうして第三の点として、初めて、つまり今おつしやつたような、いわゆる職権、或いは検察権というものによる摘発という、これは最も不幸な場合、でき得べくんば第一の方法である言論の自由によつて絶えず不正が明るみに出され、そうしてそれが社会的な批判によつて防遏されるということが最も望ましい方法であるというふうに考えるのですが、法務総裁もこの点については恐らくはやはり高い見解をお持ちのことだろうと思うのです。先ほどはまあただ直接の問題についてお答えになつたので、今私の述べましたような点をお考えになつていないことはないと私は確信するのでありますけれども、併しその点について最近の法務府なり政府なりの政策というものには幾分お考えにならなければならない点があるのじやないかと思うのです。それで一般新聞には、必ずしも政府圧迫を加えておられるという事実はないでしようけれども、併し或る政党なり、或る正常な主義を信ずる者に対して少し行き過ぎているのではないかというような圧迫を與えておちれる。そうしますと、それはその人々のそういう傾向の言論に対する圧迫だけではなくなつて来て、一般的な言論の自由というものに対しても非常に影響を與えて来ることになります。そういう意味でこの言論に対する取扱というものをもう少し不偏不党、そうしてあなたの反対党が政権をとつたときにも、あなたがたの党派が言論の自由を発揮し得るようなそういう高い見地に立つた言論に対する政府態度というものをとつて頂くことが必要ではないかというふうに思うのです。私は官吏が惡いことをしたらそれを捕えるというような政治は随分低級な政治だと思う。こういう官吏が惡いことができないような言論サーチライトによつて絶えず照らしておる、或いは官吏自身の自主的な組織によつで絶えず自己批判が行われている、こういう政治状態が私は高い、我々の望ましい政治状態だというふうに思つておるのであります。官吏がただ検察の手を免かれるということだけを考えておるということじやなく、官吏が絶えず言論の批判の下に自分たち生活を守つて行くというふうなあり方に是非お導きを願いたいと思うのであります。
  11. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 羽仁委員の言われましたことについてはその限りにおいては全く同意見であります。ただ或る党派について、特に言論圧迫するというふうに見受けられるということを仰せられましたが、私どものつもりといたしましては、党派によつて言論圧迫するという考えはないのでございまして、ただ現在の法規を適用いたしまして不法な言論に対しまして適切な処置をとつておるという考えで出ておるだけでございまして、これは嚴格に、法規を公平に執行するというつもりでやつておるに過ぎないわけであります。それから特に監督者によるところの監督ということについて御批判を頂いたのでございまするが、私も政治的経歴に入りまする前、約二十年間官吏をいたしておつたことがあるわけでございまして、若い時には下級官吏として、又後には上級の監督者たる立場から官吏としての生活を経験いたしております。私の考えておりまするところを申上げまするというと、上級の監督者というものが常に下級の、つまり部下に個人的に接触をいたし、そうして單に仕事の面に限らず私生活の面にまで立入つてその状態を知悉するような上下の間に親密な関係を結んで、そうして常時の談笑の間に監督者としての人格的な交りを結んで行くということによりまして、下級官吏はかなり上級者のそういつた影響を受けやすい立場にある、そうしてそのことは私は官僚機構の内部におきまして、こうしたことを本然に防止するに一番いい方法であるという、これは私自身の個人的な経験に基いてそういう考えを持つておるわけであります。即ちできるだけ上官は部下の面倒も見るし、又常時部下の執務しておる所へ実際に行つて、その執務振りを始終見る、それも特に見るということでなく、そういう機会にいろいろ部下の個人的な問題についても話を聞いてやるというようなことで、かなり私はそうした個人的な接触から適切な指導ができるんじやないか、そういうことによりまして官界の能率も上げ得るのでありまするし、又官紀粛正というものもかなり有効に達成し得る、こういうふうに考えておるわけでございまして、そうしたことをも考えて上級者の指導監督ということを申したわけでございます。特にお述べになりました趣旨に対して根本的に対立の考えを持つておるわけでもございませんが、私の申上げました監督というのは單にできたあと叱りつける、或いはそれを摘発する、そういう面ではなく、むしろ日常の業務を通じまして、個人的な接触を保つことによつて人格的にも指導して行くということが必要ではなかろうか、そういうことが実際最近の官界の実情から言いますと、ややともすれば等閑視されておりまするが、こういうことが必要ではないかと考えましたので、そういう意味をも含めて申上げた次第であります。
  12. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私のさつき申上げた点について、御同感であるということを伺つで大変安心をしたのですが、なおその点について十分お考えを願いたいと思うのであります。ただ一言だけ古い言葉を引用しておきますが、熊沢蕃山の言つておる言葉に、江戸時代のことですが、官吏腐敗、或いは僧侶の腐敗、その他の当時の腐敗一般を指して、今の僧侶とか、官吏とかいうものはキリシタンにあらずということだけで世を渡つて行くということを書いています。現在で言えば現在の官吏なり、教育者なり、大学教授なりというものはおれは共産党じやないということだけで世を渡つて行くというような傾向ができて来たら大変です。共産党でなければ何をしてもいいんだ、共産党でなければ無能でもいいんだ、共産党でなければ惡いことをしてもいいんだというふうになつてしまつては実に大変です。ですからそういうような傾向が若干実はあるんじやないか、そうして又惡いことをしたほうも、惡いことを指摘されると、惡いことを指摘した人間があれは共産党だ、あれば赤だというように社会的な批判は、共産党である、赤である、即ち社会的批判をすればこれは自分の身が危いという印象を與えておることは事実であります。これは朝日なり、毎日なり、読売なりの紙面というものが数年前と随分変つておる面もお気付になると思うのですが、これは法務総裁はもとより新聞を所管されるわけではないから、今申上げたような法の公正、憲法の命令ということが厳正に守られているか、いないかということについては、言論が自由な批判を行えておるかどうか、朝日、毎日、読売、これは批判しなければいけないのだ、徹底的に批判すべきだと思うのですけれども、余り官吏に向つて政府に向つて批判すると赤じやないか、赤と言われればおしまいだ、だからやめて置こう、これが今日、最近特に官吏の間に腐敗、不正がますます激化して行く傾向の重大な原因であるという点を特に愼重にお考えを願いたいと思う次第であります。
  13. 岡部常

    ○岡部常君 私は今論ぜられておりますることに関連して質問申上げたいのでありますが、時間が経過いたしましたから、これは他日に留保いたしまして、改めて先般の鬼丸委員の御質疑になりました戦争犯罪に関する件について若干お伺いしたいと思います。委員長よろしうございましようか。
  14. 小野義夫

    委員長小野義夫君) はい、どうぞ。
  15. 岡部常

    ○岡部常君 いわゆる戦争犯罪というものに関しまして、先般鬼丸委員が縷々お述べになりましたことについては私も同感するものであります。この問題は恐らく学界におきましても、又殊に宗教界などにおきましても、これは世界的の大問題であろうと思います。今までは我々は口を閉ざされたような恰好でおりますが、條約が発効せられましたならば、これは相当論議の的になるのではないかと思います。学者は勿論、一般社会事業家、宗教家、皆これに対しては相当の検討論議が行われることと思います。これは国内に限らず、あまねく世界に向つて呼号してもよろしいものであろうと思います。否、大いに世界に向つて訴うるところがあつて然るべきものと存じます。この点につきましては勿論政府においてもよく御考慮になり、又その場合に御盡力になることを私は確信するものであります。先般鬼丸委員の質問に対して、いわゆる戦争犯罪者は普通一般犯罪者とは見ないということを法務総裁がお答えになつでおります。これは勿論然るべきはずでありますが、そういう御発言を聞いたことは私どもとしては非常に心強く感ずるところでありますが、いよいよ條約発効後とられる御準備には十分の力を注がれることと私は信じておるのであります。併しながらこの時期というものが、單に講和発効後に限らず、私は相当な時期というものがやはりあるのではないか、而もその時期は目前に差迫つておるのではないかという感じがいたすのであります。そういう時期を捉えることについても政府の十分なる御努力が期待せらるるわけであります。それはさておきまして、私は今や近く日本の管理に移さるべきこれらの人々に対することについて第一に私がお伺いしたいのは、いわゆる戦争犯罪者という呼び方でございます。この点については従前極く簡單に戦争犯罪者戦争犯罪者というふうに呼ばれておりまするが、これはよほど考えて見なければならない点があると思います。私は常に、これは普通の犯罪者でありますが、普通の犯罪者につきましても犯罪を犯した若、或いは裁判をまだ受けておらない者に対しては犯罪者なる呼称もよろしいと思います。併しながらすでに検察が終り、裁判も受け終つた者に対してまで犯罪というまざまざとした行いを感ぜしめる言葉を使う必要が私はないと実は存じております。又現に我が国における法律などを見ましても、これは恐らく諸外国も同じと私は確信いたしますが、判決が確定して、或る所に収容せられましたならば、これはほかの言葉を以て呼ばれておるのであります。つまり強盗を犯した強盗犯人とか、或いは放火をした放火犯人とか、殺人犯人とか申しませんで、それに代る受刑者という名前を以て呼ばれておるのが例でございます。ましてこのいわゆる戦争犯罪者のごとき場合においては、戦争はとうに終つておる。そのことについては検察を受け、裁判を受け終つておる人間でありますから、普通の犯罪においてもほかの名前を以て呼ばれるものといたしますれば、このいわゆる戦争犯罪者なるものに対して又特別の称呼が行われて然るべきものだと思うのであります。私はそれらの点を考慮いたしまして、不幸にしてたくさん日本国の手によつて扱わなければならないこれらの人々がありといたしますならば、これらの人に対してはいわゆる戦争犯罪者などという憎々しい名前を以て呼ぶのはどうかと私は思うのであります。何らかこれに代る称呼はないものかどうかということを先ずお伺いしたいのであります。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 前回一松委員の御質問に対してお答えいたしましたる際にも申上げました通り、いわゆる戰争犯罪人というものは国内の犯罪とは性格的に違うものであります。従つてその呼び方についても同じような呼び方をしないほうがいいと考えております。現在におきましては巣鴨プリズンにこれらの人々が収容せられておりまするが、ここには先方の要請に応じまして日本側から看守のために人を派遣いたしておりまするが、これらの看守と日本側の官吏は收容されている人々を在所者とこう呼んでおるのが現在の実例でございます。これを将来どういうふうに統一的に呼ぶがいいか、これは一般の受刑者と違つた特別の呼称を考える必要があるとは思つておりまするが、只今どういうふうに実際呼んだらよろしいかという点につきましては研究をいたしておるところでございまして、いずれにいたしましても一般の受刑者とは違いまして、現在呼んでおりまするような在所者というような呼び方か、或いは他の適当な名称を用いたいと思います。
  17. 岡部常

    ○岡部常君 新らしい法律が立法せらるることと考えますが、法律上の呼称も無論大切でありますが、若し法律上の呼称において特段ないいものが行われとられない場合に何とかそのほかの習慣的呼称を作るというようなお考えはないものかどうか。恐らくこれについては内部には考えがありましようし、又新聞などにおいては巧みな呼称も作つてくれるかも知れませんが、それを待つまでもなく、私はやはり官のほうでも相当な御考慮があつて然るべきものだと存ずるのであります。従前監獄の名称が刑務所と変えられました際に、中の受刑者の呼名ということについては相当当局で考えられたことだと思うのでありますが、これは法律的の名称にはなつておらないようでありますが、受刑者と言うのも憚つて收容者と、まあ聞くところによりますと收容者は本当は国家で、入れられておる人は被收容者と言うのが本当のはずでありましようが、いつの間にか收容者、收容者と呼んで囚人とか、或いは受刑者という固い名前を避けて收容者というのが通り言葉になつておりますが、やはりこの画期的な立法に際してはそういうふうな御考慮はないものかどうか。それもちよつと承わつておきたいと思います。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 法律上の名称につきましても十分に考慮を加えたいと存じまするし、又実際上の呼び方につきましても十分に考えたいと思つております。
  19. 岡部常

    ○岡部常君 それに伴いましてそれらの人々を收容、拘禁いたしまするその設備の呼称でございます。現在は巣鴨プリズンと言いまして、これは日本人の頭にはむしろぴんと来ないのが幸いで、非常に惡い感じも持たれていないと私は思います。いよいよ日本の管理に移りましたときに、現在の設備をどういうふうにお呼びになるつもりであるか。その点を承わつておきたい。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これも国民感情等を考慮いたしまして十分研究いたしたいと思つております。
  21. 岡部常

    ○岡部常君   私はその次に……。
  22. 須藤五郎

    須藤五郎君 議事進行についてちよつと発言したいのですが、戰犯問題は戰犯問題の小委員会があるのですから、その小委員会で討論をされるように私は希望するわけなんです。どうでしようか。
  23. 岡部常

    ○岡部常君 私のは討論じやありません。
  24. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 一般討論でなく、質問は今法務総裁に関する限りはどんな質問でもいいのじやありませんかね。そうしたほうがいいと思います。
  25. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですが。
  26. 岡部常

    ○岡部常君 これは言葉は適当でないかも知れませんが、大きい意味の戰争犯罪者を取扱うことに今回なりますが、これは従前には決してなかつた日本国始まつて以来の事柄でありまして、誠に私は重大なことであると考えます。尤もこれが先ほど申しましたいろいろ民間なり、宗教家なり、政府の御努力によりまして或る機会に減刑、赦免等のことがあり、大部分の者が日本の管理に移る前に釈放せられるというようなことがありますならば、それは結構で、私の今まで申上げておることが無駄になることを実は願うものでありますが、若しなおそこに残る人がありますならば、それらの人に対する取扱ということはこれは誠に重大なことでございます。従前は連合国の管理の下に行われておりましたことが全面的に日本官吏の手によつて扱われることとなるのでありまして、これに対して法務総裁の大体の一般的の心がまえをお尋ねしたい。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戰争犯罪につきましては、処遇につきましておのずから国際慣行もあるわけでございまして、現在の巣鴨プリズンの処遇も又国際慣行の一つであるわけでございます。私どもは将来日本政府がこの刑の執行を引受ける場合におきましても、その処遇につきましてはかような国際慣行を十分に尊重いたして参りたいと、かように考えております。
  28. 岡部常

    ○岡部常君 それに関しましていろいろお考えもあることと存じまするが、法的措置と申しましても、国際慣行というものは勿論考慮せられましようが、差当り近いところで申しますると、現在軍の管理で相当の処置が講ぜられておりましようが、その規則によるとか、或いは新たなる構想の下に立法せられるということになりましようが、現在の軍管理の方法に準ずるか、或いは現行日本監獄法を適用するか、いずれか、恐らく方針はどちらかにきめられるものと想像せられますが、その点につきまして伺いたい。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 方針といたしましては現行の国際慣行を尊重いたして参りたい。そして法規につきまして国内法の監獄法をそのまま適用することは当然できなかろうと思います。ただ国際慣行を尊重し、これを履行するにつきまして妨げない限りにおきましては監獄法を準用することはこれは差支えないことと思います。
  30. 岡部常

    ○岡部常君 私は実際を見ませんが、伝聞するところによりますと、現在の軍管理の取扱方につきましては、よほど日本の同種類の施設から見ますると、物的施設につきまして、例えば居房であるとか、修養室、娯楽室とか、居室などがよほど違うもののように聞いております。又衣料品にしましても、衣服にしましても、食糧についてもよほど日本やり方とは違うように思いますが、これが日本の管理に移りまする際にどういうふうにして実際お取扱いになるか。俄かにその日からやり方を変えるか、それが寛になるか、嚴になるか、その点は幾分の懸念なきを得ません。それについての大体のお考えを承わりたい。
  31. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国際慣行を尊重いたしたいのでありまするから、寛になるか、嚴になるかというような点につきましては、現在の国際慣行をできるだけそのまま実施して参りたい。現在以上に寛にもならず、又嚴にもならずというようにいたしたいと思います。ただ現在巣鴨プリズンの経費というものは一般の国内の刑務所に比しまして非常に高くつくわけでございまして、これも国際慣行を尊重するという意味におきましてできるだけ現状を維持いたしたいと思いますが、ただ国の財政との振合いもございまするので、その許す限りにおいてできるだけ努力をいたしたいと考えます。
  32. 岡部常

    ○岡部常君  收容者、收容せられる人々の自治制度ということが従前とられておりまするし、或る程度において日本の刑務所におきましてもとられておる進歩的の制度だと私は思いますが、ましてこういう戰争犠牲者を扱う上につきましては恐らく自治制度が広く行われることと私は確信いたしまするが、その点につきましてどういうお考えがありますか。これも大体のところ、細かいところは、立法措置の点は又あとでお聞きします。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 何分戰争犯罪人として收容されております人は一般刑務所の被收容者に比較いたしまして知識の程度も高く、又常識もある人たちが多いのでございまして、現在においてもそういう点を考慮せられまして所内の規律等につきましては自治的に運営せしめるような工夫が凝らされておるように聞いております。かような慣行は当然尊重いたして参りたいと思います。
  34. 岡部常

    ○岡部常君 それでそれらの人を取扱官吏の問題が今度は取上げられると思いますが、如何なる官吏を以てそれに充当せられますか。それに又的確なる人の御用意があるかどうかということをお伺いいたしたいと思います。
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在も軍当局の要請によりまして所内の管理事務に協力せしめるため法務府の事務官を相当数派遣いたしておるわけでございますが、いよいよ所内の全部の管理が日本側に移る場合におきましては法務府の事務官のうち同種の業務に経験の深い矯正保護司等を以てこれに充てたいとこう考えております。勿論特殊の業務につきまして適任者がない場合におきましては広く適任者を選んで登用するということは無論必要なことであろうと思います。
  36. 岡部常

    ○岡部常君 十分それは御考慮になつておる点とは存じまするが、これは全く対象者が或る部分は違うのであります。従前の受刑者処遇の考え方、心がまえ等では間に合わないことはこれは勿論のことであります。そのためには今の総裁のお言葉から考えますると適当な人を外部から入れるという場合も想像せられるのでありまするが、それよりも先に相当な人もこの方面におることと思いますので、それに対して何らか、この頃一般に行われております研修制度というようなことは勿論この方面にもありまするが、その研修制度の特別な機関でもお作りになるというようなお考えがおありでございましようか。その点について伺いたい。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今まだこの問題はそこまで具体的に運んでおりませんので、特に研修制度という問題を取上げてどうするかということを考える段階に至つておりません。将来必要があれば無論そういうことも十分考慮の中に入れなければならんかと思います。
  38. 岡部常

    ○岡部常君 これはやはり早くお手当にならなければならないものと思います。條約が発効してこちらの管理に移つたから明日からやるというのではいわゆる泥繩のそしりを免かれないと思いまするから、成るべく早くお手当を願いたいと希望しておきます。それらの官吏待遇につきましてこれはどういうふうにお考えになつておりまするか。具体的に申しますれば住居の問題とか、或いは被服の問題であるとか、或いは特別にそのために修養する、殊に渉外的の仕事も若干起ることと私は想像するのであります。それら渉外的にも恥かしくないような日常生活、或いは修養を積むとかいうことに対しての御配慮があるかどうか、その点についても承わりたい。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まだそこまで具体的に考えておりませんのでございますが、漸く講和條約の批准も昨日終つたような次第で、今後急速にいろいろな準備を進めたいと思います。
  40. 岡部常

    ○岡部常君 最後に私は先ほど総裁が国際慣行等によつて処遇する、それらに対する費用の点も考慮をしておられるように承わりましたが、これは全般を通じまして、先ほどから申上げておりまする全般を通じて私は相当の予算措置というものが必要だと思いますが、それに対するお心がまえを承わつておきたいと思います。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 講和條約の発効の期日がまだ予定せられておりませんが、少くとも明年度は必要だろうと思います。それから本年度中に幸いに講和条約が発効をいたしますればその際の費用も必要となるわけでございます。これらの費用につきましてはできるだけ現在の待遇の水準というものを維持できるように苦心をいたして折衝を続けておるような次第でございます。
  42. 須藤五郎

    須藤五郎君 最初お伺いしたいと思いますが、法務総裁は今日何時までいらつしやるのでございましようか。
  43. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 十二時半くらいまではおられると思います。
  44. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうですか。私は今日それだけでは質問が終らないと思いますが、私も二、三今岡部さんの御質問になつた戰犯に関連したところから少し聞いておきたいと思います。私たちもこの今日巣鴨に捕われておる人たち、戰犯者が果して戰犯者であるかどうかという問題にも疑念を持つのでありますし、いろいろ入つておるかたたちに同情する点も十分あるのでありまするが、戰犯は国際的な問題であつて国内法では問題にならない問題だというその考え方に対しましていささか意見があるわけなんです。皆さんも御覧になりましたか、最近封切られました[風雪二十年」という映画が今上映されておりますが、私は一昨日それを見ましてやはり、その映画の中からでも私はそういう感じを強く受けたわけなんです。この不幸な戰争にどんな力が加わつてこういう戰争を招来したかというところ、そこに非常に問題があるわけで、これは誰も責任なしでああいうことが行われたというふうには考えられないわけなんです。美濃部さんの天皇機関説に端を発して二・二六事件を経て今度の戰争に至つたあの経過、私はやはりそこに何か一つの力があつてああいうふうに行つた、その力の根源は何かということ、そうしてその戰争に引張つてつた指導力をなしたものはやはり外国の法律において処罰されるむしろ必要はないけれども、国内的な問題であるのではないか。たまたまそれを処罰するような国内法がないために、国内法で問題にならんという言がなされるのだと思いますが、むしろそういう人たち国民に対して謝罪するという気持が強くなければならないと、そういうふうに私は考えるのです。ところが果して今戰犯者と言われておる人たちにそういう気持があるかどうか。やはり勝てば官軍負ければ賊軍、そういう安易なものの考え方があつて国民に対する謝罪の念がないのではないだろうかと、そういうふうに私は考えるのであります。そういう点からいろいろ今度の問題が起つて来る原因があるのではないかと思う。それが一点。  それから果して今日巣鴨に捕われておる人たちが本当の戰犯者であるかどうかという点です。本当に私の立場から言う国民立場に立つた戰犯者というものは今巣鴨にいる人たちでなくて、外にいる人、即ち戰犯として処罰されていない人、その人たちが本当の戰犯者であつて、その人たちは巧みに逃れて何ら罪に問われることなしにおる、そして純真な、又單純と言つては失礼かも知れませんが、純真な青年たち、軍人さんたちがお先棒になつて国家の至上命令だというようなことでやつたたちがむしろ戰犯者として捕われておるので、本物は後に隠れているということが私たち考えられると思うのです。そういう人たちに対してまでも戰犯者として、隠れておる人たちを戰犯として追及する気持が皆さんにおありなのか、ないのか。法務総裁の御意見を、先ずその二点を伺つておきたいと思います。
  45. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ず現在戰犯者として收容されておられる人々が国民に対する謝罪の気持があるかないかという点でございますが、これは只今日本政府は戰犯の管理についてはタツチいたしておりませんので、その点について責任あるお答えはいたしかねるところであります。併し恐らく連合国におきましても受刑者の処遇というものについては十分そういう気持を起させるという方向において、恐らくこれらの刑の執行に当つても処遇がなされておるのではないかと想像いたすわけであります。それから現在巣鴨に收容されておる以外の人々の中に真の戰犯者があるのではないか、それは政府として追及する考えかどうか、こういうことでございまするが、戰犯の処罰ということは、これはポツダム宣言を受諾いたしましたことによりまして、連合国の権限として行われておることでありまして、日本政府といたしましてはその裁判を講和條約によりまして受諾をいたすわけでございまして、日本政府が積極的に今後訴追をするということは考えられないわけであります。
  46. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が総裁に伺いたい点が外れておると思うのですが、私は戰犯者というものが総裁の頭で全然ないというふうに考えられるのか。国内法があるなしにかかわらず、今度の戰争に関しまして戰争犯罪者というものは国内的には全然考えられないのか。今日戰犯者といわれておるものはあれは国際的な問題で、国内的なものじやないというふうに総裁はお考えになつておるように思えるのですが、恐らく国内法にはそういう法律はないが、今度の戰争を通じて実際に国民に対する犯罪者というものは全然ないというふうに考えていらつしやるのかどうかという点をお伺いしたいわけなのです。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戰争犯罪者は国民に対する犯罪者という意味がよくわかりませんですが…。
  48. 須藤五郎

    須藤五郎君 いわゆるこの不当な戰争に持つてつた、何かあるはずです。それを私はあの「風雪二十年」を見ましてやはりその感を新たにしたわけなのですが、そういう原動力になつておるものが日本人の中に全然なかつたというようなお考えでしようか、どうであろうかとそういう点なのです。そしてあるならば、そういう原動力になつた者が本当に処罰されてなくて、いわゆるその下で手足になつて動いた人たちだけが処罰されている。そういうふうに考えるわけですが、そういうものは全然日本にはなかつた、要するに戰争の責任者というものはないのだというふうにお考えになるのであるか、そういうことなのです。
  49. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戰争が起りましたについて日本国内に責任者があつたかなかつたかという点につきましては、私はやはり責任者はあつたろうと思います。責任者と認むべき人々はあつたに違いないと思います。又あつたが故にポツダム宣言の戰争犯罪人の処罰ということを当時の日本政府が受諾したものと思います。
  50. 須藤五郎

    須藤五郎君 するとその責任者はどういうふうな状態になつておるのでしようか。総裁は誰が責任者だというふうにお考えになつていらつしやいましようか。
  51. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 責任者として連合国によりまして訴追をされ、裁判せられた者はすでに只今つておるわけでございまして、このほかにも責任者があるのじやないかという御質問の御趣意かと思いまするが、これだけの大戰争が起りました以上は、日本国民がいろいろな形において戰争の発生、或いは遂行に協力しておるという人はたくさんあるだろうと思います。そしてそれはみずから進んでやつた人もありましようし、又心ならずもやつた人もありましよう。併しそれは今日の日本状態が起つたということについてそれぞれ自分の心の中で、或いは国民の気持の中で、それぞれ自分のしたことを顧みて反省すべきものであろうと思うのでありまして、現在戰争犯罪人として連合国法廷によりまして刑を受けた人々以外の人々につきましては、これは国内において犯罪として訴追するというような性質のものではないだろうと思います。併し無論それ以外にもこの戰争に関係のあつた、直接間接に責任のあつたということを否定できない人はこれはあろうと思います。そういう人々は無論そのことについて反省をするということが当然必要なことであろうと存じます。
  52. 須藤五郎

    須藤五郎君 するとまあ戰争の責任者はあるというような御確認だろうと思いますが、それでは果して今日巣鴨にいらつしやる人たちが国内的に見ても要するに戰争犯罪者でないという意見はやはり成立たないので、やはり今度の戰争に対する責任があるというかうに考えられるわけなのですが、何も私は今巣鴨にいる人たちの責任を追及しようという気持から言つておるわけではありませんけれども、要するにこうなつたら国内的に見て戰争責任者がないのだというふうなものの考え方が若しあるとすれば、それは私は間違いだと思う。やはり戰争責任者というものはあるのだという、そしてそういう考えから出発して、そうして現在巣鴨にいる人たちが果してその戰争責任者であるかないか。そういう点からものを考えて行かなければ非常な間違いが起るのではないかという心配のために私はこういうことを言つておるのです。それで総裁も戰争責任者というものはあるのだということを確認されたのですから、それでは誰が責任者だという点をもつとよく追及して、そして巣鴨にいらつしやる人が果して責任者でないということになれば、その人たちを釈放することは私はやぶさかでない、そういうふうに私は考えておるのです。それからもう一点申上げたいのは、不幸にして今度の講和には中国もソ連も参加していない。ところがソ連も中国も戰争責任者というものの引渡しを要求しておるような状態でありますが、今これからの問題になる、この戰争責任者の解除というのですか、大赦とか、いろいろな問題に中国、ソ連の要求というものも非常に大きな影響を将来残すのではないであろうか。特に今巣鴨に捕われている人たちはアメリカとの戰争の責任者が主になつていて、中国との戰争の責任者というものが何だか非常に稀薄になつておるような感じがするわけなんです。ところが今度の戰争の発端は中国との戰争が発端であつて日本の最も大きな戰争責任者というものは中国に対しての問題だと思うわけなのです。その点総裁はどういうふうにお考えになりますか。中国に対する戰犯者というものをどういうふうに考えていらつしやるか伺つておきたいと思います。
  53. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 中国関係の戰犯者というものも百数十名菓鴨に現在おるわけです。
  54. 須藤五郎

    須藤五郎君 併しこれはまだ中国の要求というものは殖える虞れがあると思うのです。現在まだ、中国に対する戰犯者は、十分に中国側から見れば処断されていないというふうな見解だろうと思うのですが、将来へこれは残る問題だと思うのです。その場合のことを総裁はどういうふうに処理して行こうというふうに考えていらつしやるのか伺いたいと思います。
  55. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在中国から、戰犯者として引渡しを要求しておるということは聞いておりませんです。将来そういうことがあつたら、その際にどうするかという御質問かと存じますが…。
  56. 須藤五郎

    須藤五郎君 ずつと前に私は聞いたことがあるが、岡村寧次大将などを中国が戰犯者として引渡しを要求したように聞いておるわけですが、そういうものが今後いろいろ起つて来ると思いますが、それに対してどういうふうに処理をなさるのですか。
  57. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今までの考え方といたしましては、恐らく連合各国が引渡しを最高司令部に対して要求されたのではないでしようか、そうして日本政府最高司令部の要求によつて最高司令官に引渡、最高司令官がそれぞれの関係国へお渡しになる、こういう法律関係になつてつたのじやないかと思うのであります。
  58. 須藤五郎

    須藤五郎君 ところが今度こういう講和状態になりますと、今度は日本へ直接要求が来るかもわからないと思うのですがね。その場合にその処置をどういうふうにとられるか。
  59. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは要求の内容を見なければわかりませんが、そう簡單に引渡すということはないと思います。
  60. 須藤五郎

    須藤五郎君 戰犯の問題に関しましては小委員会がありますから、私はその程度にします。  それから別のことでお尋ねしたいと思いますことは、私はこの前の委員会で中途半端になつておりました東大の問題をもう少しお聞きしたい。
  61. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今の問題に関連しまして一言。  先ほど岡部委員から戰争犯罪に関係するかたがたの受刑の状態についての御要望なり、御質問なりがなつたのですが、それらの御趣旨に私いずれも賛成なんですが、同時にこの際に一般の受刑者のかたがた、或いは拘置所におられるかたがた、こういうかたがたについての御配慮、政府の配慮というものについても伺つておきたいと思うのですが、私先日法務委員会、参議院から派遣せられまして九州地方を見て参りました。その際の拘置所或いは刑務所の状態というものはどうも甚だ裁判及び検察の目的を果す上に適当でないような状態が多いように思う。これはまあ最も甚だしいのは東北にもあり、全国各地にあるわけですが、予算との関係もあるという御説明であつたのですが、あの現在の拘置所及び刑務所の中の状態で、そごに收容されているかたがたが先ず第一に道徳的な意味において自己の犯罪を反省する、次に人間的な意味において更生する、そういうことは殆んど望めないのではないかという感じがするのであります。これは根本問題でありますけれども、具体的な問題として第一に拘置所及び刑務所内における收容されているかたがたを拘置所の職員及び刑務所の職員が取扱われる態度が人間的でもなければ対等でもない。そうして裁判及び検察の効果を阻害すること甚だしい。つまり人は人間として扱われなければ決して人間として行動するものではない。動物として扱えば動物のようになつてしまうということは言うまでもないことですが、依然として旧時代の考え方が強く残つている。例えば食事なんかでも、その食事を運ぶ場合に、自分たちの食事は決して地面なんかに置かないが、併し收容されている人たちの食事は平気で地面の上に置くということを至る所でやつております。これは法務総裁でも、地面の上に置かれた食事をおとりになるということは恐らく愉快にはお考えにならないだろうと思います。でこれは一つの例ですが、こういう意味で、やはり人間的に待遇していない。これはどうも根本的に、この拘置所及び刑務所の職員のかたがたの教育に関係することでありますが、これについては、やはり或る程度の待遇を與えなければ、これらの人々の教養を高めるということはできない。然るにこの裁判行刑の効果を挙げるということは国の国務の中でも非常に重要なことでありますから、どうかこれらの点において個人的に、個人の俸給を上げて行くということについてはいろいろな問題もありましようが、この刑務所及び拘置所の職員のかたがたの教養を高めるための共同の設備というのであれば比較的費用を要しないで効果を挙げるということも随分できるのではないか。そういう点で、或いは図書室の設置だとか、或いはそれらの人々が勤務中に講習を受ける機会をできるだけ多くする、或いはラジオその他の設備をよくするとかという方法がもつと活用されて然るべきだ。現在私どもが見て来たこの二、三年間の視察の実情から見ますと、それらの点について殆んど何ら見るべきものがなされていない。これが第一であります。私の質問の第一は、一般に拘置所や刑務所の職員の教養の向上のために、個人的な俸給その他待遇の改善のほかに、そういう共同の教養を高めるための設備をもつとおやりになるお考えはないか。又予算の上にもどの程度御努力になつているのかというのが第一。  次に申上げます。第二に、私どもが非常に痛感をいたしましたことは、先ず端的に言いまして、食事のひどいことです。私は拘置所長、刑務所長に常にお願いしてここで御一緒に、收容されている人の食事を、お晝を御馳走になるなら、あれを一緒に頂きましようというふうに申上げるのですが、なかなかそれは賛成されるかたはない。併し私どもは、少くとも我々が食べても食べられる程度のものでなければ人間の食事ということはできないのではないか。法務総裁もどうか一つそういう点、あの食事を、人間の食べられる食事であるかどうか、これは予算の関係なんという問題ではないですよ。あの人たちは人間として扱わなければ決して人間として更生することはできないのですから、だから予算の上においても極めてウエイトの大きい点であろうと思う。若し必要ならば法務総裁は池田蔵相をお連れになつて、それで刑務所へ行つて、あれを一緒に食べてもらつて、これが予算の許す限りの食事であるかどうか。現在例えば副食費については、拘置所は十三円――日に十三円五十銭、刑務所においては副食費が一日十五円五十銭、要するに一日十五円前後の副食費です。仮に十五円として一食に五円、一食に五円の副食費というもので人間の食い得るような食物があるかどうかということは、私は言わずして明らかであろうと思う。でこれに比較して国立療養所の一人当りの副食費というものは、少くとも四十一円くらいの支出がなされている。療養所の目的は刑務所の目的とは目的は違いますけれども、併し療養所は栄養を支給し、刑務所は併しやはり栄養を無視していいということではないので、これらは予算を要することであると言われるけれども、併し裁判及び検察の目的を果し、特に法務委員会の主たる目的である法務が適正に行われるためには人間的な扱いをしなければならん。その食事においても、少くともその普通の人間が食い得る、食べることのできる程度のものをやはり給與しなければならん。この点は一つ非常な御努力を願いたい。  それから第三の点は、受刑をされているかたが、これは先ほど岡部委員から特にありましたように、戰争犯罪に関係するかたがたなどの場合は特にそうですが、併し一般のかたがたの場合にも、受刑者の知識的な要求というものをもつと考慮されなければならないと思うのであります。それで受刑者に対する受刑目的というものについて理論上いろいろの考え方もありましようが、併しそれにしても差支えない程度の知識的な要求というものを禁ずるということは憲法の趣旨に反することであろうと思う。ところがずつと見て参りますと、殆んどこういう点において昔の時代と変つていない。甚だしきに至つては、先日これは週刊朝日で問題になつたことですが、仙台の刑務所では週刊朝日を読むことさえ禁じているというようなことがあつて、週刊朝日自身がこれを取上げております。こういう一般の拘置所なり刑務所なりにおいて、法の許す限り新聞なり雑誌なり、或いはその他読書の自由ということをまで奪うべきではない。又そういうものを奪うことによつてその人が人間的に更生することを妨げている。妨げているとすれば、裁判所及び検察に対する国の費用というものは全く無駄に使われていることになるのであります。金を惜まれる結果、却つてその金が又無駄に使われるということよりも、成る程度の予算を以て、その金が無駄にならないように十分お考えを願いたい。いわんや差支えない程度の新聞、雑誌、図書というものを読むことができるという努力をもう少しなさるお考えはないか。それでラヂオなんかの場合でもそうですが、もう少しああいうものを自由に聞くというふうにするほうが、人間として收容されているかたがたが更生するのじやないかと思うのです。例えばこれは私この間気が付いた。十一月三日の広島の新聞を見ますと、山口刑務所の下関支所では、刑務所から高等学校の通信教育によつて高等教育を受けることができるように努力されされたということが、これが非常に珍らしく親切な場合として新聞に報道されている。これは一般に行われて差支えない。これは山口刑務所の名誉ではあるけれども、併し全国一般の刑務所にとつては甚だ不名誉なことじやないか。こういう点はもつと御努力になるお考えはないだろうか。  以上三点につきまして、これは特に戰争犯罪に関係するかたがたに対するあれとの関係において、一般のかたがたの待遇が余りひどいということになると、これは又問題が生ずるということもありますので、一般的な点においてどういうお考えをお持ちか、又どういう努力を現在なさつており、特に食事の点などは今の状態をいつまでお続けになつて行くつもりか、これでよろしいか、それとも最近の機会において御努力なさるか。是非これは大蔵大臣をお連れ下さつて、その食事を一遍食べて下さればおわかりになると思います。
  62. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) いろいろ御注文がありましたが、第一の点は行刑職員の教養、従つてこれに対する研修制度の問題でございますが、現在におきましては中央に一つと、又地方に八つの研修機関を置きまして、年間千名近くの職員を教養するようにいたしております。併し何分にも刑務所の職員の総数が多いものでございまするから……今後ともその数を増し、又内容を向上せしむるように努力いたしたいと思います。それから第二は…。
  63. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 第一の下級のかたがたの、もう少し職場で以て雑誌や図書を借りるようなことはお考えになつていないでしようか、共同でその人たちが見られるような教養を高める……。
  64. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その点は一つ十分に研究いたしまして……御趣旨は同感でございますから……。
  65. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 どうぞお願いします。
  66. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それから第二は食事の点でございまするが、食事の点につきましては、第一に取扱が極めて鄭重さを欠くじやないか、食事というものに対する通常要求される鄭重さを欠いているじやないか。この点は十分に食事は食事らしく扱うということは当然のことでございますから、注意をさしたいと思います。それから内容の問題でございまするが、これは申すまでもなく経費に関係する問題でございます。この点につきましては明年度予算においても大蔵省に対しましては増額の要求をいたしております。できるだけ実現をいたすように努力したいと存じます。  それから第三には、收容者に対しまする智的な要求に応ずるように、読物なり或いはラジオなど考えてはどうかという点でございます。これは現在の監獄法施行規則には非常に厳重な制限が規定してあるのでございますが、これは今日の実情に適合しないと存じまして、実際上相当緩和をいたしておるのでありますが、なおこの点も最近の機会に十分に研究いたし、必要ならば規則の改正をも考慮いたしたいと存じます。
  67. 須藤五郎

    須藤五郎君 この前の京大の問題で質問申上げましたときに総裁のお返事では、捜査の状況と結果は平穏に終つた、右執行中関係職員工学部長が立会つたというような御報告がなされたと思うのでありますが、ところが私のほうで調べましたところ、この関係職員というのは実は小使であつて、二階は阿部という小使、三階は中村という小使、小使二人が立会になつて、何も責任ある職員が立会つたものではないということがわかりました。それから工学部長も立会つたというような報告をなされておりますが、実は工学部長はこの捜査が終る頃に来られまして、どうぞ荒立てないで頂きたいというようなことを言つて帰られた。こういうことを伺つたのですが、こういう状態で捜査をすることが果して妥当であるかどうか、お聞きしたいと思います。
  68. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 刑事訴訟法によりまするというと、管理者の立会ということになつておるわけでございます。丁度これが捜査に着手いたしましたのが午前七時半でございます。まだ教員その他が登校しておられません。そこで管理者としては、御指摘のような人物がおりましたので、その立会の下に実施したわけでございます。着手後工学部長が見えまして、その後又丁度八時に建築学科の主任の松下教授も登校されました。これに対しまして十分なる了解を與えられている事実があります。
  69. 須藤五郎

    須藤五郎君 小使さんが管理者であるかどうかということは非常に問題だと思うのでありますし、なおそうしてその捜査に当つて、小使に鍵で室を開けさして、而も小使を中へ入れないで、廊下で待たして置いて捜査したというのが事実なんですが、これは不当な捜査だと考えますが、どうですか。
  70. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 捜索は室数にいたしまして十幾つもあります。それで五人行つておりますが、管理者は一人しかおらない。どこかの室におつたと思います。決して管理者の立会なくしてやつた事実はないと思います。
  71. 須藤五郎

    須藤五郎君 管理者が確かに立会つてつたという御意見ですか。私たちは小使二人、二階と三階の小使二人に室を開けさして、廊下の外に立たして捜査をやつたということを聞いたのですが、私たちが聞いているのは間違いで、総裁の言われたのが事実だとおつしやるのですか。
  72. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私どもは立会があつたという報告を受けております。
  73. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一度その点御調査つて、それが確かであるかどうか、報告して頂きたいと思います。そうして若しも総裁が今報告していらつしやるような状態でなかつた場合、私が申上げましたような状態であつた場合に、総裁はどういうふうにこれが正当なる捜査だというふうに考えられましようか、どうでしようか。
  74. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 検務局長からもう少し詳細に当時の実情を御説明申上げます。
  75. 岡原昌男

    説明員(岡原昌男君) 報告によりますと、少し長くなりますが、初め午前七時頃警視庁の捜査二課の田島という警部補が部下四名を連れて現場の東大工学部建築学科に臨んだ。玄関から内部に入つたところが、土木科の廊下で女の小使さんが掃除をしていたので、同人に事務室はどこかと尋ね、その案内で建築学科の建物のすぐ傍にある工学部の事務室に行つた。そこに宿直員がおりまして、起きて間もないような様子であつた。同人に来意を告げてその案内で再び建築学科の建物に入つてつた。一階の事務室において捜索令状を示して捜索の立会を求めた。これは刑事訴訟法上公務所内で押收又は捜索を執行するに当つては、公務所の長又はこれに代るべき者に通知して、その処分に立会わせなければならない。こういうふうになつておりますので、その手続をとつたのであります。ところがこれは単なる宿直員であつて、建物全般について何から何まで知つておるというふうにも受取れなかつたので、更に責任者の登校を待つのがよかろうというので、大事をとつたということになつております。そこで一旦工学部の事務室に引揚げて待つていると、間もなく午前七時半頃になつて、建築学科の担当の婦人の小使さんが登校して来ましたので、前記宿直員と小使さんとを伴つて、再び建築学科に行つて捜索の準備のために、前記小使さんなどの話を聞いて建物の全体に亘つて部屋数を捜査した。捜索の準備をしたけれども大分予定時刻から時間が経過したので前記宿直員を立会人にして捜索に着手しようとしたところが午前七時五十分頃であつたが、建築学科の事務官の狩野俊という人が現場に来られたので、田島警部補より同人に対して令状を提示して同人を公務所の長に代るべき立会人として改めて捜索に従事した。何分にも捜索個所、部屋数がたくさんあつて、と申しますのは、捜索令状には捜索すべき場所として「建築学科建物及び附属一切」とございます。なお令状には差押えるものとしては「被疑者に関係ありと思料せられる文書物件その他一切、」かように記載してございます。そこでそれらの多くの部屋を僅かに五名の捜索員を以て愼重に行うことは到底不可能であるというふうに思つたので前記立会人によく事情を聞いて重点的に且つ愼重に行うことにした。着手後、七時五十分頃に着手したようでありますが、午前八時頃、即ち着手間もなく工学部長大山松次郎氏が登校になつたので田島警部補は来意を告げ了解を得た。又間もなく建築学科主任松下教授も登校されたので同教授にも十分の了解を得た。捜索令状記載のごとく東大工学部建築学科の建物及び附属物一切とされてあるが、事前に十分の調査を遂げ捜索の目的を達するため捜索に必要な最小限度の範囲にとどめることとした。なお捜索の終了後田島警部補が工学部長の部屋に大山部長を訪ね、改めて挨拶をして帰つて来た。かように報告されております。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 その報告を承わつておりますと、相当愼重にやつたということは考えられるのですが、併し非常に急いで、本当の管理者でない管理者を立会わして、もうそれを三十分待つて全部の人が揃われてからやられればその問題も起らなかつだのだろうと思いますが、そういう点が遺憾な点だと私は考えるのですが、最近そういう無謀な、無理な捜索方法で非常にたくさんされておるということを私たち耳にしておるわけです。今日は時間がないので余りできないと思うのですが、たくさん例があるわけなんです。私たちのほうの代議士の留守宅を、而も国会の開会中にその留守宅をとんでもない令状を持つてつて捜査したというような例も二、三挙つておりますし、いろいろ伺いたい点がありますが、それは後廻しにいたしまして、私はこの前京大の問題がここに出ていたと思うのです。それであなたがたのほうで捜査団を出されたということを伺つておりますが、実はその報告を伺いたいと思います。
  77. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 京大事件につきましては、検務局公安課の検事長谷君を十一月十四、十五日両日に亘りまして調査ため京都に派遣いたしております。その報告を簡単に申上げます。  第一に結論といたしまして、本件は無許可集団示威運動の京都市公安條例の違反が成立する疑いが強い。その違反者、即ち主催者、指導者及び煽動者を確定いたしますことは、現場写真を根拠にして、大学職員及び警備、警察職員の記憶と対照する方法が有力視され、差当りそのほかに方法がないが、その確定捜査が終了いたしますのは十一月二十日頃、即ち今日頃捜査が終るということになつております。それでこれにつきましては、いずれ京都の地方検察庁から法務府に打合せに出て来るその際に十分に事情を聞きたいと思つております。それからデモの状況といたしましては、陛下のお着きになりまする前に、大学の玄関に一度学生が入つてきた。これは職員が退去させた。その後陛下がお着きになりました後に自動車の廻りに数百名の学生が押寄せて、これらはいろいろプラカード等を持つてつたそうでございます。それを警察が退去させまして、そうして陛下をお見送りをした。こういう状況でございます。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 衆議院のほうで、総裁は、学生が撒いたのか持つていたのか存じませんが、陛下に対する公開質問状というのを御発表になつたと伺つておるのですが、当委員会にもそれを発表して頂きたい。
  79. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて……。    〔速記中止〕
  80. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始りて……それではこれで散会いたします。    午後零時四十五分散会