運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-11-17 第12回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十七日(土曜日)    午前十時三十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            伊藤  修君    委員            鈴木 安孝君            長谷山行毅君            齋  武雄君            棚橋 小虎君            岡部  常君            中山 福藏君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    法制意見参事官 位野木益雄君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川 宏君    常任委員会專門    員       西村 高兄君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局長)     内藤 頼博君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局民事    局長)     関根 小郷君   —————————————   本日の会議に付した事件裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○裁判所職員定員法等の一部を改正す  る法律案内閣送付) ○裁判所職員臨時措置法案内閣提  出)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会開きます。  本日は先ず裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、以上三案につきまして、政府より詳細なる説明を聽取いたします。
  3. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) それでは裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について、概略説明をいたします。  先ず十五條でございます。十五條におきましては新たに判事補につきまして、ここに掲げる三万九百円及び三万八千二百円の二つの特別の報酬月額を定めたものであります。その理由は御承知のように、判事判事補とは任用資格が異つておりまして、判事補は十年以上も在職しておつた人でも必ずしもその上判事にすぐなれるというものではございません。で、いろいろな事情判事補で長くその地位にとどまるという場合がありますので、特にここに新らしく二つの特別の号俸を定めたこの報酬月額を定めたわけであります。  それから簡易裁判所判事でございますが、これはすでに現在十五條におきまして特別のものが定められておるわけであります。その金額増加したものであります。で、その比率一般公務員俸給増加比率と同様になつております。  次に別表でございます。別表のうち最高裁判所長官最高裁判所判事東京高等裁判所長官、その他の高等裁判所長官及び判事、この号俸はこれはいずれも現在の報酬月額を、これに対応する一般職並び特別職公務員俸給月額増加率と同様の増加率によつて増加したものであります。  それから判事補でございますが、これは従前は御承知のように一号から六号までに分れておつたのでございますが、それをこのたびは十一号に号の数を増加したものであります。その理由はこの号俸の幅が一般公務員の場合に比しましても非常に少いわけであります。国の行政上仮に長年と申しますか、長い間同一号俸にとどまるというふうなことにまあならざるを得ないというような不便もございまして、むしろ増加したほうが至当ではないかというので、この程度で大体約二倍に増加したのであります。これでもなお一般職公務員に比しますと、号俸が少いということが言えると思います。  それから簡易裁判所判事、これは現在は一号から八号までに分れておるわけであります。これを十五号に増加した。増加理由は大体判事補と同様であります。増加比率は、これはこれに対応する一般職職員俸給増加率と大体同様であります。これは判事補についても同様であります。  次に附則であります。この適用期日を十月一日といたしましたのは、これは一般職職員の場合に倣つたものであります。それから二項でございまするが、これは判事補及び三号以上の簡易裁判所判事号俸の数が増加いたしました結果、現在の各号俸を受けておる人は施行後どの号俸にされるかという点を規定したものであります。これは号俸増加いたしました結果、どういうふうに分けるか、新らしい号俸の中のどういう号俸に割振るかという問題がございまするのでありますが、これは一応お配りいたしました資料の中の表について御覧頂ければ比較的おわかりやすいと思いまするが、ここに掲げておりますような号俸に一応切替えるというふうな建前にいたしておるわけであります。  それから三項はこれは別に申上げるまでもないと思いますが、前に支拂つた分を内拂とみなすということであります。  次に検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案に移ります。先ず第九條でございますが、これは従前の九條にありました検事、副検事の特別の俸給金額増加したものであります。その比率は先ほど申しましたように、一般官吏の場合と同様なのでございます。それから検事総長次長検事東京高等検察庁検事長、その他の検事長、それから検事の四号まで、これは号俸もその間においては増加いたしておりませんし、金額比率一般官吏のこれに対応する職員俸給増加率と同様であります。検事の五号以下の号俸増加いたしまして、従前十二号までありました号俸を十八号に増加いたしたわけであります。この増加理由判事補について申上げましたのと同様でございます。副検事はこれは従前一号から八号までありましたのをこれも十四号までに号俸増加いたしました。増加理由はこれも検事判事補等と同様であります。増加比率一般官吏増加比率と同様なのであります。  附則裁判官の場合と同様になつておりますので、これは説明を省略いたします。  次に、裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案の大体の御説明をいたします。  先ず第一條でありまするが、これは従前の第二條裁判所職員の中の特定の官職を掲げまして、その官職別人数を掲げておるという分け方になつておりましたのを、それ以外の裁判所職員も包括させまして、而も職種別を除いて包括的にここに二條として規定することにいたしたのであります。その理由は、これは提案理由においても出ていたと思いますが、一般行政機関定員法律建前に倣つたものでありまして、このほうが包括的に職員人数を押えるという意味で効果的である。のみならず目的はこれで十分達し得るだろうということを考えたのであります。裁判所職員の中で「執行吏非常勤職員、二箇月以内の期間を定めて雇用される者及び休職者を除く。」と規定いたしております。執行吏は御承知のようにこれは手数料でその報酬を受けておるというもので特殊のものでありますから、これは特にここに掲げることを適当としないものと考えたわけであります。それ以外の職員はこれは行政機関の場合と同様でありまして、いずれもこれを特にここに掲げることを適当としないので除けたのであります。この員数の減少した数、これはお配りしました資料にございますが、資料法律の次に表がございますが、この表を御覧頂きますと、減員の合計が八百九十九名になつております。減員の対象となつたものは裁判系統職員は除いて事務系統職員であります。その減員の率はここに掲げてありますように六%ということになつております。  次に第二條でございます、これは第一條において裁判所職員定員法規定の仕方を変更いたしました結果、裁判所法規定をそれに即応して訂正するものであります。今まで各職種別に、「別に法律で定める員数の」或いは「通じて別に法律で定める員数の」というふうな字句が掲げられていたのでありますが、これを削ることにいたしたのであります。  次に附則でございます、第一項の施行期日につきましては特に御説明申上げるまでもありません。これも併し行政機関職員整理期日は同日になつております。それから第二項は整理に必要な期間における剰員といいますか、定員外職員の存置を臨時的に認めるごとにしたものでありまして、これは整理の必要上設けたのであります。  それから第三項は今回の整理の場合には個々別々に職員整理するというものでないという関係から、いわゆる審査請求というものを認めないということにいたしたのであります。二項、三項の取扱い、これはいずれも行政職員の場合においても同様の取扱になつています。  以上で概略説明を終ります。
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今説明がありました三案と昨日審査いたしました裁判所職員臨時措置法案、以上を一括して議題に供します。右四案について御質問がありますかたは順次御発言を願います。  その前に昨日伊藤委員から御質問のあつたことについて御報告を願います。
  5. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 昨日伊藤委員から御質問のありました寒冷地手当がどういうように具体的に配付されておるかという御質問でございますが、取調べの結果七月二日と、それから八月三十日に支出負担行為の計画の示達をしております。そして事実上これに対して支拂われたのは八月と九月中に支拂われております。それで総理庁令の三十一号によりますと、寒冷地手当及び石炭手当支給は八月末日及び十月末日とする、こうなつてつたのが今年の八月十七日に十月末日を削るということになつたのだそうです。従つて七月二日に示達をした当時は二分の一の示達をしたのであります。ですから従つて九月になつて示達したものを配付するということになつたものもありますけれども実際上三千五百何十万といううち二千六百十万以上が八月中に配付をされ、九百二十八万というのが九月中に配付をされております。
  6. 伊藤修

    伊藤修君 今の御報告によりましても、いわゆる九月に配付しておるんです。法律はどうあろうと実際に適用しない支給方法は役立たないのですから、もらうものでもそれがそれだけの金額だけの効果を挙げないということを認識しなくちやいかんと思うのです。
  7. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 法令規定があるためにこういうことになつたのでありますけれども伊藤委員からの御発言通り実際に合わない法令というものは実効が薄いわけなんですから、それで恐らくそこに気付いて、現地からの要望もあつて、この十月末日支給するというようなのを総理府において廃止したのだろうと思います。こう存じております。
  8. 伊藤修

    伊藤修君 十月末日を削られたことは結構なことですが、実際いわゆる北海道あたり現地事情をお伺いいたしますと、冬の支度というものはすでに七月中になさらなくちやあならないのです。例えば岐阜県の場合においても、飛騨地方冬支度というものは大体九月とか十月までに終つてしまうのです。雪が降る頃には一切外の用事というものとか冬の支度については何ら考慮をしなくともよいという状態に置かなければ生活ができないのです。殊に北海道あたり状態はいろいろな特殊の事情がありまして、燃料のごときは七月中にこれを手当をせられなかつたならば、それは厖大な費用を費さなければ所要燃料というものは購えないのです。それをただ金をやればいいんだというあり方では折角頂いた金でいわゆる所要の薪炭の半額くらいより購入できないという結果をもたらすのです。それでは折角政府が考えられた寒冷地手当というのは実効を得られないことになるのです。そういう点は何らかの措置行政措置によつて考慮があつて寒冷地手当支給する本来の目的を十分に達成し得るような支給方法を講じて頂きたい。こういうことを特にお願いしておきたい。
  9. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 御発言趣旨は帰りまして、経理関係の者によく伝達しておきたいと思います。
  10. 伊藤修

    伊藤修君 では来年度からは、今年はもう駄目ですから来年度はよく実行してもらいたい。そうせんというと、現地の人はただでさえ寒いところに島流しされるということはいやがるのですから、そういうことに対しては特に御考慮を拂つて頂かなくちや北海道に行き手がなくなつちやうのです。  それから今御提案になりました裁判官報酬に関する法律案中の御説明にありましたごとく、いわゆる判事補簡易裁判所判事、又検事及び副検事号俸を非常に増加した。判事についても少しダブつていないのですか。これもやはり御説明のような御趣旨によつて、同じ号俸に久しくとどまるということは能率の増進の上から言つても、御本人に刺戟を與える上から言つても好ましくないと思いますが、同様な趣旨はやはり判事にも考え及ぶべきじやないでしようか。現に判事のかたかたのあり方というものは、幾ら努力しても……、そういうことを考えて判事をやる人は少いのですけれども、同率にしてしまつてちつとも号俸昇給というものはあり得ないのですが、これもやはり同様に考えて増加したらいいのじやないでしようか。
  11. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 御趣旨理由があることと思いますが、裁判官の高給のものはこれは職務性質から申しましても、やはり余り号俸を多くするというのは適当でないということも考えられると思うのであります。で判事の職にある者、これはむしろ昇給とかということを人事行政の上に活用して、この何らかの工夫をするというようことは必ずしも好ましくない、アメリカとかイギリスというふうな所では判事報酬というものはこれは固定しておつていつも変らないというふうな制度になつておるように聞いております。  それからこれに対応する一般行政関係につきましても、判事程度のもの或いはそれ以上のものにつきましても、これは号俸はそれほど多くなつていないのであります。
  12. 伊藤修

    伊藤修君 この資料の表を拝見いたしますと、上のほうは大体三〇%以上ですね。下のほうは一六%以下というような標準になつておるのですが、いわゆる下に薄くて上に厚いのですが、この比率の根拠はどういう理由から来ているのですか。
  13. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) これは一般職公務員に対しましての給與改正についても大体同様の原則が窮われるのであります。この原則は恐らくこの前の改正あたりから除々に現われて来たように私記憶いたしておりますが、最初戦争後にできました給與制度というものが御承知のようにその当時の経済状態国家財政上の條件、その他の枠からいたしまして、最低生活費を保証するということで職務性質にかかわらずその間のでこぼこというものが、言い換えますならば山の高さというものがむしろ高低が少なつたということであつたろうと思うのであります。ところがこの国家公務員原則から申しまするというと、公務員法におきましては六十二條でありましたか、その俸給というものはその官職職務責任においてきめなければならないという原則が調つてあるわけであります。それで行きますならば、ずつと昔の制度のように、重要な職務を負い、重要なる責任を負つておる官職にある者はもつとずつと高い俸給を受けなければならんというまあ理窟になると思うのでありますが、公務員法自身におきましてもこういう理想を掲げておきまして、第二項において確かこの目的が「できるだけすみやかに達成されなければならない。」というようなことで建前を作つておるわけであります。そういう点から申しますというと、今まで当然高かるべかりし山が低くなつたということは、事情の変化に応じてだんだん公務員法の今の大原則に合せて行かなければならんという考え方が当然出て来るのであつて、そういう点の是正が極めて微々たる形ではありますけれども、最近の改正において現われておるのじやないかというふうに私は見ておるわけであります。
  14. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと今の御説明によりますと、本来高かるべき山が低くなつたというので、それを是正しつつあるとおつしやるのですが、今度の改正によつてそれは是正されたのですか、或いはまだ中途にあるのですか。
  15. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そのほうの專門家ではございませんけれども、例えば私の記憶で昔の制度ですね。昔の官吏制度においては俸給あり方というものを考えて見ますと、例えば昭和二年頃で言いますと、大学総長というのが年俸七千円であつた。そして判任官の一番下が月給四十円でしたから、年にして四百八十円ですか、というようなことで、そこで一応の山が見えるが、今度の一般職給與法案から見ると、御承知のように公務員制度変つて判任官ももつと下の雇員、傭人までのものまで全部入つておるわけでありますが、それを考えて今申上げました昭和二年の山を考えて見ると、昭和二年の時を仮に基準にして見ると、これはその山まではまだ行つていないと、客観的に申上げるよりほかにないが、今朝、実は私昔の制度を見て来たわけですが、そういうような感じを抱きました。
  16. 伊藤修

    伊藤修君 私の結局お伺いしようとするのは、こういうような昇給の場合においては、上も下もなく例えば一〇%は昇給するというように一律に行くべきものではないか。その基本的な俸給が違うのであるからやはり同じ程度に行くべきものではないか。パーセンテージの差額を設けて増加して行くということがいつまで続くか、来年で終れば、来年からは一〇%下が上れば上も一〇%行くか、こういうことの見通しを伺つたわけです。
  17. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の観測ではいつまでということよりも、まだもう少し是正余地があるのではないかというような観測をいたしております。その程度しか申上げるちよつと能力を持合せておりませんのですが。
  18. 伊藤修

    伊藤修君 これは判事報酬及び検事報酬に関する法律を最初制定する当時、一般職との比較ですね、これはどうだか今ちよつとここに資料がないので記憶はありませんが、そのときの比率と、今度の改正によつて一般職との比率はどういうようになるのですか。
  19. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 大体の比率裁判所裁判官報酬等に関する法律の第十條の規定によりますと、一般官吏増加比率に準じまして、大体同様の比率増加しておることになつておる、但し中途におきまして、技術的な理由金額一般公務員の額に合せる或いは増加比率に合せるというようなことがありまして、やや比率の違つている部面もございます。併し大体においてその比率は同様と言つたつて差支えないと思います。
  20. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、最初制定された当時の一般職との開きと、今日の改正によつて開きとは同様だとおつしやるのですか。
  21. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 大体において同様と存じます。
  22. 伊藤修

    伊藤修君 どんな比率になるか、一遍調べて御説明願いたいと思うのでありますが、本法制定当時と、今日の改正の結果の比率を今できなければのちでもよろしうございます。
  23. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) お配りいたしました裁判官報酬等に関する法律の一部改正法律案に関する資料の中で、給與水準の変更による増額状況対照表というのがございます。これの右の端に裁判官一般職員増加比率が出ております。
  24. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、本法制定当時とこの比率は変らないということになるのですね。
  25. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) さようでございます。
  26. 伊藤修

    伊藤修君 今日いわゆる裁判官の不足で以て、地方では実務の上において非常に困つているのですが、或いは検察官のほうでもそういう傾きがあると思うのでありますが、本法制定当時においてはいわゆる最高裁判所事務局法務事務局というものには全国の優秀なかたがたみな集つていた、この人たち事務系統であるという関係一般職俸給より與えられず非常に不合理であるというので、何らかの手当をしなくてはならんというので、検事及び判事の兼務というものを或る一部国会としては了承しておつたわけでありますが、最近伺つて見ますというと、それが非常に多くなつて法務府では検事を兼ねておられる人が八十名ほどあるらしいですね、それから最高裁判所のほうでは九十四名あるのですね、だんだん與えられた途を濫用されているような傾きがあるのじやないですか。
  27. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 裁判所関係についてのみお答えいたします。只今の御発言の九十何名というのは、これは研修所教官等を入れ、調査官を入れた結果がそうなんだろうと思いますが、実際においては最高裁判所においてやつている人数は五十七名、六十人足らずだと思います。実際の行政事務に関與している者は。併しこれは御発言通り決して私どもは正道なやり方ではないと思います。と申しますのは、裁判官が非常に困難な裁判事務に携わつている、裁判官報酬は特に一般公務員より上廻つて優遇するというのが裁判官報酬を上げている理由なんでございますから、その裁判官職務に携わらないで而も裁判官報酬を食んでいるということは、理論から申せば確かに私ども理窟に合わないと思います。ただ何と申しましても、まだ発足以来満五年程度過渡期のことではありますし、職務の内容から申しましても、裁判事務密接不可分関係のある仕事なものですから、普通の職員を持つて来ては実際においてなかなか円滑に事務の運行ができない面が生ずるので、止むを得ない措置としてやつているのでございますけれども、これは将来裁判所職員法というようなものが、昨日御審議を願いました職員法というようなものができる場合にその面の調和、と申しますのはつまり判事の兼任ということをしなくても、判事資格のあるものがそのポストに来れるような俸給の面からも考慮をして頂けるならば、今のような一種の実質上から申せば脱法とか言われても弁解の余地のないような処置をしなくても済むのじやないかと思います。将来はそういう方面に持つて行かなければならないと思います。なお差当つては、最高裁判所事務局の中では第一線強化ということも考えなければなりませんので、この暮ぐらいから裁判官人数をできるだけ減少して一線へ送り返そうということで、実際のその人員の選定に着手いたしております。
  28. 位野木益雄

    政府委員位野木益雄君) 法務関係のことについてお答えいたします。法務関係につきましては、法務設置法第十七條によりまして、法律で以て、この法務府の職員のうち、判事を以て充てることのできる人数が限定しているわけであります。現在は九十今ということに法定されているわけであります。実際はこの全員が埋められているというわけではなくて、もつと少く八十数人だというふうに聞いております。これは無制限に増加するということは法務府としてはできないわけであります。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 優秀なかたがた中央に求められるということはこれは止むを得ない、その場合、中央に求めた場合に減俸というような結果を招来することは好ましくないことは我々として十分了承しているのであります。それに対しましては、只今御指摘のあつた通ら、当初から我々といたしましては別な俸給制度を設けて、そうして優秀なかたを中央に求めるというようなやり方にしたい。そうしないというと、折角第一線強化のためになされたところの俸給、いろいろな諸制度というものが崩れて参りますし、たださへ第一線は今日少いのですから、その人員中央で取り上げるという二とは、その面においては非常に好ましくないと思うのであります。そういう点は至急何とか制度の確立をお願いいたしたいと思うのであります。  次に最近判事かたがた出張が非常に多いのですね、いわゆる一遍で済むようなことを何回でも出張を繰返す。それでこの従来の裁判の実例から言えば外へ出るということは少いのです。ところが最近非常に出張が多いのです。これらの費用は相当な額に達していると思うのですがその点どうですか。
  30. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 裁判官出張が多いというような声はときどき私どもは伺つておるのでありますが、これは実は外部からは概括的に申しますと、少し多過ぎるのではないかというように思われましても、当該裁判官がその事件について必要があると認め、そうして或いは当事者の申請があり、申請がなくとも刑事の場合で出張でやるというような場合に、必要の有無ということになりますと、どうしてもその裁判官責任で決定をし、必要の有無について制限を支出官なり、所長、監督の地位にあるものが加えるというようなことがある場合には、裁判干渉というようなことにもなるので、その面からも出張を制限するということを余り厳格にするということもどうかと実際は思われておるわけであります。併し裁判官として不必要に出張をすることもないだろうと思います。一回で済むところをわざわざ二回に分けて行くというようなそういうばかげたことも先ず原則としてあるまじきことでありますけれども、事実裁判官出張が多いという声を聞いております。これは私どもの知つておる限りはまあ検証というような実際の必要は別としまして、訊問をする証人が多数に上るというような場合には、一々裁判所にその大勢の者を喚んで置くということは審理の時間にも関係をいたします。最近、去年からずつと行われております審理の促進というような面から言つても、一挙に証人訊問を終るというような方向にも審理のやり方が行つてつたわけですが、訴訟促進という面とも関連して、この出張ということも多くなつている面もあるのでございます。併しいずれにしましても、余り出張が多いような非難をされるのは裁判所としてもいろいろの面で好ましくないことでありますから、最近会合等の機会あるごとに最高の側からは無用の出張ということはないと思うけれども、よく緩急をわきまえて出張をしてもらいたいということは再々注意をいたしております。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 それはむやみに出張をした実例を指摘しろと言われるならば、指摘して差支えありません。それでは優秀な判事を毒するということになりますから、私は控えておきます。実例は幾らでもありますから、今の裁判の促進の上から行けばむしろ出張をしないほうが促進して行ける、多くの日数、余分の日数をとられるというあり方は、実際そうでないとおつしやつても余分な日数をとられる。一日で済むものでも出張ともなれば、やはり一週間とか十日とかかかることになる。その間は裁判所に出て来ない。他の事件はそれによつて結局出張のためにそこだけは空白状態を生ずる。殆んど裁判者がいないというような例もあるのです。出張のためにむしろ裁判というものは促進しないのです。裁判の促進の趣旨から申しますれば阻害していることが事実であります。だから本来ならば、法廷へ喚んで証人を調べたほうが促進できるにもかかわらず、検証なんかというものが付いておるときは別でありますが、單に訊問だけの場合に個々に行かれるということは、折角裁判所の機能を、その法廷であればほかの事件も兼ねてやれるのに、その一人や二人の証人を調べるだけで行かなければならん、病気であるとか何とかいうことでどうしてもそこで現地訊問しなければならない事情があればともかくとしてそうでない場合にも今日普通として行われておる。昔ならば出張訊問する場合においては相当理由がないとしなかつた、最近ではもう他庁県の証人が申請しますと、喜んで裁判所は出かける実情です。申請がないか知らと言つてこちらから促がされるところの実情です。このあり方はよくないと思うんです。裁判がそのために非常に進行を阻害されておると思うんですよ。それから日を延して延期するような場合は結構ですけれども、そうばかりではない、早く促進してもらいたいというのが国民の意見なんですから、これは嚴にしてやらないというと、その弊害は最近顯著に現われておると思うんです。裁判所の予算の中には出張費はどのくらいあるのですか。随分使われると思うんですが。
  32. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) お話のような面が生じて来ると思いますけれども、新刑事訴訟法の下におきましては、旧法の場合と違つて、予審制度が廃止されておりまする関係から、公判の審理というのが直接中心となる点から申しましてもやはりおのずからこの出張ということも多くならざるを得ないんです。殊に検証などの面から申しますと、出張しておれば成るほど法廷等の審理はできませんけれども、結局出張をして一気に証人を固めて調べることによつて、ちびちび長くやるという面が短縮されるわけなんですから、必ずしも出張しておれば審理が遅くなるのではないかと言われるのは全面的には承服ができないのでございますけれども、ところがまあ良識に訴え、裁判所の実際の事件数その他のこと等も考えて、出張によつて他の事件ができるだけ延びないように心がけるということも、これももとより現に我々裁判所におつたときに、そういうふうに日曜を潰してやるというようにやつてつたわけなんですが、この点についてはいろいろほかからも御注文がありますから、よく検討いたしまして、なお今後機会あるごとに御趣旨は実行したいと思います。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 これは結局裁判所の現在の制度裁判官会議というものに重点が置かれて、所長に権限がないということから裁判官会議でどんどんどんどん進行するものですから、そういう点に私はあるのじやないかと思うんですが、裁判官がやることに対しては所長は余り容喙もできない、事務局長は容喙もできないというのが実情なんですから、今のお説のように出張して調べる場合に、法廷で調べれば五人なら五人できるのを、出張すれば二人でも二日なり三日なり費さなければならん、一人でもそういうことになると思います。勿論検証とかそういうような現地を見る必要のある場合はこれは当然出張しなければならんわけです。そうでない単純な法廷でも調べ得るような証人を毎回毎回出かけて行くということは、裁判所はそれでいいかも知れませんが、訴訟関係人は迷惑です。依頼者はそう金持ばかりとは限りません。殊に刑事被告人のごときは大体金持はないのですから……。又検察庁は最近費用がないということで行こうともしないのが往々ある、これは実例を調べたら検察庁が行かない事件は相当ありますよ。費用がないために裁判所のみひとり悠然として出かけて、訴訟関係人はそれに追従できないというのが現状なんです。これは刑事関係一般国民としても非常に迷惑なんですから、そういう点は一つ考慮して、でき得る限りそういう不必要な出張をせずに、法廷で調べられるということが好ましいと思うんです。国家経済から言つてもそうですよ。訴訟関係人から言いましても非常に迷惑だと思います。私の関係した事件でも検事の人がよう附いて行かない、費用がないために附いて行かないというのが二、三回あります。検察官が附いて行かれないのですから、況んや訴訟関係人がそう厖大な費用を以てお伴して附いて行かれないことになる、止むを得ずそれに対しては抗弁防禦がよく盡されていないということになるのです。こういう点は裁判所は独善になつて自分が思う通りどんどんやるということは考えものだと思うのです。今少しく実情に即したやり方を願いたいと思うのです。それからいま一点名古屋において、鈴木判事はいわゆる訴訟進行中に退席したというのですが、いわゆる新聞では判事の職場放棄とか言われておるのですが、日本の裁判制度では前代未聞の事件だと思うのですが、事は單なる事ですけれども、その人心に及ぼす影響というものが非常に重大なものだと思うのです。国民は裁判所に対する信頼というものは非常に厚いのです、その裁判官たるものが、この時流に乘つて職場を放棄するというようなあり方は非常に好ましくないと思うのですが、一つこの実情の結果等をお聞かせ願いたいと思うのです。
  34. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) どうも今日はお叱りを受けることばかりで大変恐縮でございますが、鈴木判事のいわゆる今おつしやられた退廷の事件なんですが、これはちよつと概要を申上げますと、本年の七月十二日に岡崎の支部で、名古屋の高裁から出張をして、その岡崎支部の調停室で裁判長が高城裁判長、それに陪席判事として鈴木正路判事と赤間鎭雄判事の会議体として証人三人を訊問すべく出張したのであります。そして最初の三宅という証人を訊問をして、併しまだ調書が作成されませんから、証人に一応訊問したところを確めながら調書を作ろうとしたところが、陪席の鈴木判事から、調書はあとで作ればよいではないか。これは公判廷外の調書でありますから、読み聞けをして証人の署名捺印までその場で取らなければいけないことに訴訟規則ではなつておるのです。それを鈴木判事は証人の署名捺印をした書類を取つて置いてあとで作成すればいいのではないかというような意を述べたものでありますが、それを高城裁判長が採用しなかつた。その前にも若干感情の行違いがあつたらしいのでございますが、きつかけは今言つたこの証人調書をその場で完成をするかしないかというのがきつかけです。暫くしますと、鈴木判事ちよつと失敬すると言つて退廷をしたのでありますが、再びドアからちよつと顔を出して、それじや僕は失敬しますと言つて自宅へ帰つてしまつた。そのあと裁判長と陪席一人は、まさか家に帰つてしまつたとは思わないものですから、ずるずるべつたりにあとの証人も調べて帰つてしまつたわけなんです。それが新聞記事等になりましたものですから、鈴木、赤間判事からも事件の内容を高等裁判所報告をしまして、その結果名古屋の高等裁判所の処置としては、七月の三十一に……その前に事実の調査の委員を任命してその事実の調査をした後に、七月の三十一日に裁判官会議を開いて、その結果、鈴木判事を下級裁判所事務処理規則の二十一條によつて名古屋の長官と、名古屋の地方裁判所所長から注意を與えるということに決議をしたわけですが、事務処理規則の二十一條の注意というのは、別に懲戒でも何でもない事実上の注意ということになるわけです。それから高城裁判長と赤間判事、これは鈴木判事が退席をしたのにかかわらず、その後会議体としてあとでそのまま証人訊問をしたというのも手続法上は面白くはない。併しこれも懲戒には値しないからといつて、これはやはり処理規則の二十一條によつて長官から注意を與えたのであります。そういう報告が名古屋から裁判官会議でこういう処置をしたという報告最高裁判所にありましたものですから、最前御発言になりました通り会議体の裁判官が審理の途中で勝手に退席してしまうということは、これは会議体そのものを否定をし、会議体の活動を麻痺させるような行為で、確かに裁判所始まつて以来の出来事なんですから、最高としては單に事務処理規則の二十一條で注意をするという程度の軽い事件ではないのではないか、そういう軽い処置をとることは何かしら合理的な理由がなければそういう軽い処置はどれないではないかというような疑いを持ちましたものですから、裁判官会議から命ぜられまして私が名古屋に赴いて事実の調査をいたしまして関係人等にもいろいろ事実を聞きました、本人からも聞きましたけれども、まあ感情の行違いは多少高城裁判長と赤間、鈴木判事との間にあつたらしいことを伺いますけれども、今申したような、中途で退席をして而も家に帰つてしまつたということを正当付けるような理由は発見できないように存じたのであります。そのことを裁判官会議に報告をいたしましたので、裁判官会議ではいろいろ議論もありましたのですが、書類その他のものから判断をいたしまして、鈴木判事に対しては分限の申立てをすべきではないか分限の申立をするのが正当だ、ところが鈴木判事は身分はこれは本来名古屋の地方裁判所判事であります。名古屋の地方裁判所判事が、名古屋の高等裁判所の代行判事として高等で働いておつたわけなんです。従つて懲戒の申立てをする裁判所は名古屋の地方裁判所もやれますし、高等裁判所もやれますし、それから全国の裁判官に対して行政監督を持つておる最高裁判所もやれるわけであります。併し今申したように名古屋の地方裁判所は懲戒はしないで注意をするという決議をしております、それだのにかかわらず名古屋の地方裁判所が、いや懲戒すべきだといつて分限の申立てをするというのもこれも形としては面白くなかろうと思いましたので、最高裁判所としてはみずからこの懲戒の申立てを名古屋の高等裁判所に対してしたわけであります。それが九月の一日、その結果九月の十八日に名古屋の高等裁判所は本人を訊問し、証人をも調べまして、そして十月の十六日に裁判官の分限の法規に基いて鈴木判事を戒告ということにいたしたわけなのであります。戒告の決定をしたことは、最高裁判所のほうにも勿論通知がありましたので、最高裁判所として不服ならば、これに対して最高裁判所に抗告ができるわけなんですけれども、その抗告はいたしませんものでしたから、戒告という裁判が確定をいたしたのであります。一方訴追委員会でもこの事件を重大視いたしまして、訴追委員が名古屋に出張なすつて事件を調べ、そして更に本人を訴追委員会に呼び、裁判長及び陪席の赤間判事をも呼んで調べられた。その結果十月の十日に訴追委員会裁判官の彈劾に価いする事件だけれども、本人が非常にその後悔悟しておるし、訴訟の促進というような面でも非常に働いたというような点も認められて、起訴猶予ということに決定をなすつたのであります。事件の概要は今申上げた通りであります。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 その鈴木判事は、いわゆる判事の再教育というあれには出ておられるのですか、いないのですか。
  36. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 鈴木判事は司法研修所で行われる判事の研究に出ております。この事件以前に出ております。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、司法研修所の一体教授のあり方というものは、いわゆる新らしい裁判制度に対して、又日本の裁判制度に対してもそういう面の教育はしていないのですか。
  38. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 裁判官が單独で活動する場合は、これはだから何も制約は受けないわけなんですけれども、会議体として活動をするときにはお互いが意見を出し合い、お互いの意見をそれぞれ修正をし合い、そうして適当な正しい結論を得る、その間には議論も闘わせなければなりませんし、意見の違つておる場合には、間違つた意見は指摘もされましようし、みずからも指摘をすることができるわけです。それが会議であります。で、そういうのが会議でありますから裁判官が会議体の一員としての自分の意見が違うからと言つて退席をする、自分の意見が違うからと言つて会議に応じないというようなことは、裁判官としては考えられないことなので、そういう点についてはもう裁判官たる以上教育の必要がない程度の、極めて根本的な初歩的なことなのであります。ですから司法研修所においても新らしい法律でありますとか、裁判官あり方であるとかというようなことは勿論研修のテーマにしておるわけですけれども、又会議のやり方というようなこともテーマにして議論をしたこともあると思いますけれども、意見が違つた場合に退席をしてはならないぞというような、こんな知れ切つたことを教育するようなことは、これはないだろうと思います。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 私のお尋ねするのは、そういう形のことではなく、社会党あたりの連中なら、それは意見が違つたから退席するということはこれは往々にしてあり得るでしようが、いやしくも裁判官が会議体を構成しておつて、意見が違つたからと言つて席を蹴つて退席するなんということはあり得べからざることであり、そこに何らか現在の裁判官の頭に間違つたところがあるのじやないか、基本的な裁判官の理念に対して教育が施されていないのじやないかと、こう言うのです。いわゆる新らしいということで、行き過ぎておるのじやないか。
  40. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) これはたまたまこういう事件が起りましたから、伊藤委員のように御疑念を差挾まれて御質問受けるようなことにもなつたわけでありますけれども、私どもとしては、これは裁判所始まつて以来の例外中の例外のことだと観念しておりますから、この一事件を以て裁判官の頭がどうだ、認識がどうだというようなことを言われるのは、どうもこれは困るのでございますが……。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 困ると言われるけれども、司法研修所に引上げて教えたとおつしやるのだから、して見れば新憲法下におけるところの裁判所制度というものに対して、又精神というものに対して何らかの教育が施されていなくてはならんと思うのです。我々法律に携わる者にはそんなことは常識的にも考えられないことである。にもかかわらず、彼がそういう行動に出たということは、何かそこに欠点があるのじやないか。教育の上において欠点があるのじやないか。そこで私は再教育をしたのかどうかということをお尋ねしたんです。再教育ということが、ただ徒らに形式だけのことを教育しておつたのでは駄目なので、これからの裁判官あり方というものに対して、やはり根本的にもお教え願わなくちやならないと思うのです。又いまの会議体の構成というものは極めて初歩のことであつて、それは一度でも裁判所に出た者はわきまえておるのですから。それをもあえてなし得るという心構えですね、そういう心構えの裁判官に我々の貴重な人権を保護してもらうということでは、最高裁判所が基本人権の擁護の殿堂であるというような誇りは保たれないと思うのですがね。その誇りがその一角から崩れることは、延いては裁判所に対する信頼を崩すということになりはしないかと思うのです。それから裁判官の再教育ということについて、あり方について一段と工夫をお願いいたしたいと思うのであります。
  42. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) おつしやられることよくわかりますが、これはただ最前も申上げましたように、例外中の例外で、恐らくこういうことはもう二度とないことだろうと思います。なお裁判官の研修というようなこと、あり方というようなことについては、我々としても今後十分努力をいたしたいと思います。
  43. 伊藤修

    伊藤修君 もう一点だけ、他にも御質問あるでしようが……。最近裁判官の奥さんが何かパンパン宿をやつていらつしやるというようなことを新聞で伺つたのですが、それはまあ職業は自由ですから、奥さんがパンパン宿をやろうが、女郎屋をやろうが、それは自由だと思いますが、併しそういうことのあり方がいいでしようか、惡いでしようか。
  44. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) これは申すまでもなく、あの事件はもうすでに離婚をいたしておるのでありますから、離婚をされた細君がどうあろうと、これは本人は責任がないのでありますけれども、本人はああいう事件があつたので、とにかく元自分の細君であつた者からああいう新聞記事になつて、いわゆるとばつちりを受けたような関係にあるだけのことなんですけれども裁判所の名誉のためにみずからやめられたんですが、裁判官といたしましては、家族の職業の自由とか、私的な行為の自由とかいうことは理窟でありましてやはり自分の妻であるとか、自分の子供であるとかいうような者に世間の指彈を受けるような行為をさせては、裁判官としての鼎の軽重を問われても止むを得ない。一家を治める者はやはり自分の細君であるとか、子供であるとかというような者までも世の爪彈きを受けないようにすべきことはもとより当然のことだと思います。
  45. 伊藤修

    伊藤修君 そのあり方は私も至極同感であります。いま一つ、籍がないということはやはり理由にならんと思うのですが、籍の有無にかかわらず実質上その婦人のかたと交流しておれば、それは私は籍の有無で問題は解決できないと思いますね、やはり子供でも妻でも、事実上の妻でも又事実上の妻でなくても、その間に何らかの関係があればやはり好ましくないというような今の御趣旨なら私は同感です。籍がないからいいという理窟は私は是認できないです。
  46. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 今のはちよつと説明が足りなかつたかと思いますが、具体的な事件については、つまり元は法律上夫婦関係があつたけれども法律上も事実上も夫婦関係があつたけれども、離婚してその後は事実上の交流関係はなかつたというのが事実です。
  47. 小野義夫

    委員長小野義夫君) では中山委員からの質問に対して関根民事局長から御答弁を願います。
  48. 関根小郷

    説明員(関根小郷君) 昨日中山委員から執行吏関係等につきまして御質問があつたそうでございまして、それについて簡単にお答え申上げたいと思います。  現在日本全国の執行吏総数は二百二十六名おりますが、二の人たちに対しまする監督機関といたしましては、この執行吏を任命いたしましたところの地方裁判所、それからその上の高等裁判所、更に最高裁判所、こういうことになつておりますが、現実の面では御承知のように執行吏の仕事が好まれざる仕事、まあ経済的に申上げますれば、経済的の死刑を執行をするような役人と言われるくらいに嫌われる仕事、そういう関係から優秀な人がどうしてもその地位に就きたがらないという結果、なかなかその質が向上しない、これは正直のところ確かにその点があるかと思いますが、従つて一旦執行吏に任命されました人たちに対しまして質を成るべく向上する、この点は先ほど申上げました監督機関として十分監督を盡すべきこと、これも御承知通りでございまして、実はこの監督方法を如何にすべきかという点につきましては、各地方裁判所におきまして、裁判官会議から更に執行專門の判事に委嘱しまして、その監督をやつておりますが、なお具体的な執行事件につきましていろいろ非難を受けますが、この非難をなさるかたが多く弁護士のかたでございまして、そういうかたがたにどういう事件について、どういう債権者のことについてどんなことがあつたかということを具体的にお知らせ頂きたいということを申上げますと、それはあと又まずいということになるから言えないということがしばしばあります。そうして執行吏のかたにそのことを申しますと、具体的な事件がわからなければどうも直しようがないのだ、これも又一理あるわけでございまして、そういうことから我々のほうといたしましては、でき得れば弁護士のかた、債権者のかた、或いは債務者の代理人のかたが腹臓ない意見を言つて頂いて、その具体的の事件の穴を突つ込んで行く、そういう方法でやつたらどうかということに着眼いたしまして、現在日本弁護士連合会、それから執行吏、それから在京の判事かたがたに集まつて頂きまして、抽象的な委員としての立場から腹臓なく意見の交換をして頂く、そういつた協議会を設けまして、そこから現在の欠点を直して行こうということに進んでおります。そういたしまして、そういつた協議会からこれは監督だけにとどまらず、執行吏の地位、法律上の地位に関しまして、立法上考慮すべきことが出て来るのじやないか、こういうことが考えられますので、そうなりました曉には法務府のほう、或いは国会のほうにお願いいたしまして、立法的な改革に進みたい、こういう考えで今進んでいるわけでございます。
  49. 中山福藏

    ○中山福藏君 只今説明一応承わつておきますが、大体我々はこの差押、競売のない社会を望んでおりますけれども、併し現実の問題としてこれは止むを得ざる事柄でありまして、その執行の事態というものが現われて来ました場合においては、やはりこれは遂行できるような措置をとらなければならん。従つて只今抑せの通りに執行史というものは嫌がられる商売であるし、商売じやございませんが、仕事であるし、なかなかこれは恩給までも私どもはこの議会できめて給與するということになりておるのですが、而も一方において俸給というものを勿論とつておるでしよう。併しそれと同時に私どもは裏面工作というものが執行吏に対して行われて、相当のまいないをやらなければ事実上執行しないという具体的な事実をまま見聞しておるのです。併し只今仰せの通りそういうことを一々取上げてかれこれ申して参りますというと、あとの崇りが変なことになるというようなことになるので、只今仰せの通りのいわゆる機関と申しますか、協議会と申しますか、そういうものをこしらえて、これを監視するということは私も結構でおると思いますが、どうか一つそういう点につきまして早急にこれはやつて頂かないと、非常な弊害が只今生じつつあるのであります。只今おつしやつた通りに二百何人というような全国的に僅かな執行吏が債権の取立てを完全にやるということは、殆んど不可能に近いことじやないかと思いますので、どうか一つそういう点についても善処して頂きたいということを一つお願いしておきたいと思います。それにちなんで私は一言御参考に申上げておきたいことがあります。それは先般和歌山地方裁判所で起つた事柄でありましたが、担当判事か私の担任した事件について約六寸ぐらいの大きな調書を一通り読んで、そうしていよいよ裁判が開けるということになりましたところが、十二名ぐらいの証人を一先ず申請して見ました、ところがそれについて弁護士は三名付いておる。私は大阪でありまするし、ほかの二名というのは和歌山であつたのであります。ところがどうもこの事件はもう全部呑込んでしまつておりますという判事さんの口振りなんです。証人を採用する必要はない、裁判所に同調して下さい、こういうわけなんです。事件がもう複雑になつてしようがないから裁判所に同調して証人なんか申請しないようにしてくれというような非公式の判事室でのお話がありましたけれども、併し要するに権利を擁護しなければならんというので、私どもは結局証人を申請しました。ところがいよいよ公判になりますというと、私は忌避しようということを他の二人の弁護士に申出たところが、只今伊藤氏の言われまするように、あとの崇りが大変だというのです。地元の弁護士は非常に困る、だから忌避だけは一つやめてくれというので思いとどまつたのです。ところが裁判が済んでから弁論を弁護士がやつて、三十分ほど休憩して即時に判決を言い渡す。その六寸ぐらいの大きな嵩の調書なんです。こういうふうな簡單に自己本位の立場から、事務が煩雑だから人権はどうなつてもいいというような感じを受ける処置をとられるような裁判の方式では、この俸給とか何とかいう問題も私どもは一応考えて見なければならんというふうになつて来るわけなんです。ですから成るほど俸給は時勢の進展に鑑み、客観情勢の変遷に伴い、私ども考慮する必要があると思つておるのでありますけれども俸給というものは増額されると同時に、どうか一つこういう面にも一応御注意を拂つて頂いて最高裁判所においては無住所大使式の無住所判事というものを一つ置いて、そうしてその地方の状況、裁判の取扱等について一つ善処されることを私はお願いするのですが、こういう点についての何か御構想があるでしようか、一つ承わつておきたいと思います。
  50. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 只今中山委員から御発言がありましたが、具体的の事件でございますから、それについての裁判所事務当局としての批判は差控えたほうがいいかと思いますが、その点はお許しを願いたいと思います。ただ抽象的に申上げまして、全国の数の多い裁判官のことでありますから、それが全部皆優秀な裁判官で、当事者を全部満足せしめておるというようにはやはり行かんだろうと思います。当事者から見て困る、或いはああいう審理振りでは困るというように疑われるような場合もないのではなかろうと思いますが、そういう面は最高裁判所といたしても、ふだんに注意をして改善をして行きたいと考えております。なお全国の裁判官の手持の事件数が非常に多いために、当事者側に満足するような審理振りができないという面も事実上或いは生じておるかとも思いますが、そういう面も全国の裁判所に、特に忙がしい場合には他の若干手の空いている裁判所が代行の判事を応援せしめる制度もございますし、現にそういう制度を活用をして、特に忙しい裁判所には他から代行を派遣するということも実際上行われておりますから、そういう面の活用とも相待つてできるだけ一つ不都合のないような結果にいたしたいと存じております。
  51. 中山福藏

    ○中山福藏君 勿論人間は感情の動物でありまするし、如何に裁判官が神のような心を持たれておつても、やはり人間という姿形を備えでおるのですから、これは誠に止むを得ないと思いますけれども、憲法の上において国民というものは全部裁判を受ける権利を有しておる。而もその裁判たるや、公平無私にして本当に神の裁きを受けるというような気持を持ちたい、私どもは持たせたいとこう祈願しておる。どうか、そういうふうな半面におきまして、裁判所におきましても一つこういう点は十分に御注意を賜わりまして、いわゆる一事は万事というような感じを国民に持たせないように一つお願いしたいと思います。殊に執行吏事務の取扱につきましても、そういう感じが全国的に只今国民の頭に、何と申しますか先入的な感じとなつて入り込みつつあるのでありますが、何とか自分の事務を処理してもらうには、こういう手を打たなければならないというようなことをみんな考えておる、どうか一つそういう点についてお考え置きを願いたいのであります。  時間がありませんから、二、三の点をお伺いしておきますが、この裁判所職員一般職から特別職に切替えるこの問題なんですが、これは何でございますか、一般職というのは、この官吏の任命権というものは内閣とか、各省大臣とか、人事院総裁とか、いろいろなものにあるということは国家公務員法できまつておりますがね、これは大体人事院総裁がこれまできめておつたのですか、どつちがきめておられたのですか。
  52. 内藤頼博

    説明員(内藤頼博君) 任命権者につきましては、お話のように公務員法に五十五條という條文がございまして、この法律で別段の定めのない限りは内閣所属のものについては内閣、それから各省所属のものについては各省大臣、或いは人事院所属のものについては人事院総裁というふうに法律ではつきりと……。
  53. 中山福藏

    ○中山福藏君 きまつておりますか。で、誰が今まで任命しておりましたかということです。この一般職裁判所職員ですな。
  54. 内藤頼博

    説明員(内藤頼博君) 裁判所職員ですか、裁判所職員裁判所法のほうできまつておりますがね。裁判所法の何條でしたか、裁判所法できまつてつたと思います。人事局長から……。
  55. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 裁判所法に基きまして、裁判官以外の一般職は、或る場合には、下級の裁判所職員の中で下級の場合には各下級裁判所で、或いは上級のものになりますと最高裁判所で任命するというようになつております。
  56. 中山福藏

    ○中山福藏君 一般職から特別職に切替える場合においては、その任命権ということはどういうふうなことになるわけですか、それをお尋ねしたい。結局裁判官、秘書官にあらざる職員一般職から特別職に切替えるとおつしやるのですが、その任命権は前後を通じて同一の人がやるかどうかということをお尋ねしたい。
  57. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 任命権者については従来通り変らないわけです。つまり裁判所職員はやはり裁判所の任命ということになります。
  58. 中山福藏

    ○中山福藏君 それからもう一つお伺いしておきたいのですが、この裁判所職員定員法案の一部を改正する法律案附則の第三項ですね、この三項の末尾に「裁判所職員臨時措置法(昭和二十六年法律第  号)の規定にかかわらず、国家公務員法」——「の規定は、準用しない。」こういうことになつておりますね。いわゆる国家公務法の第八十九條から第九十二條までは適用しない、こういうことになつておるわけなんですが、これは八十九條を見てみますると、降給、降任、休職、免職、その他顯著なる不当処分に対しては、説明書を首を切ると同時に交付するというような規定があるわけなんです。これに対して調査を請求する権利を被処分者に與えられておるわけでありますが、この点に関してですね、如何にも継子扱いな嫌いがあるわけですが、これは簡単に首を切る場合においては、こういう人々に対してはこういうふうな処置をとつていいものでしようか、その点を…。
  59. 内藤頼博

    説明員(内藤頼博君) この点は、今回の政府一般公務員定員改正につきましてやはり同様の規定を設けておるわけでございます。で、今回行政整理に伴います定員減員につきましては、公務員法の八十九條から九十二條までを適用しておりませんので、裁判所職員につきましても、やはりその規定の準用をいたさないわけでございます。
  60. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はこれは非常に重要な問題だと思うのですが、首切りの場合のみではありません。法律の適用を排斥される、又、阻止されるということは、首切られる者に対しては非常に残酷な処置だと思うのです。なぜこれに対して説明書を交付することができないのか。いわゆる国家の立場、財政の状態、それから事務の簡捷、能率の向上というようなことをすべて掲げて、これこれの簡單な問題でありまするから、一々この理由を示してそうして満足さして処理するということにならなければ、憲法が民主主義になつた民主主義になつたと言いましても、その人間に対する取扱というものは、こういうふうな簡單な処置で十把一からげにばつさりやられるというようなことでは、憲法の精神というものは死んで来るのじやないかと思うのです。仮にほかのほうの行政官庁におきましてこういう措置をとつたとしても、いやしくも法律を魂としておりまするところの裁判制度に関する職員に関しては相当の考慮があつて然るべきじやないかと思うのですが、如何なものでしようか。ほかの行政官庁に傚つたからこういうふうに簡單にやるのだ。これでは私は裁判所の使命としての、裁判所の魂というものは死んで来るのじやないかと思うのですが、如何なものでしようか。
  61. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私から一応一般的なことを申上げたいと思いますが、今内藤総務局長が申しましたように、この特例というものは今回の一般職職員整理につきましても附いておりますし、やはり前回一般職を通じまして行われました曾つて整理の際の法律案にも附いていて、それが成立して一応先例となつているわけでございます。この趣旨というものは全面的に広く申上げますならば、公務員法では今御指摘のような規定を設けておりますけれども、これは普通の場合における罷免というようなことを予想してできているのであつて、こういう形において一つの基本の政策の下に大量に整理が行われるということを本来予想した條文ではなかつた、これは浅井人事院総裁も曾つて議会で説明しているのでありますが、そういうことでありまして、而してこの場合の説明書について先ずお話がありますが、この説明書というものはここでは結局人事院に提訴する一つの手がかりとしての説明書ということでこの制度ができているのでありますが、この今回の整理の場合におきましても、何のために首切られたか全然本人にはわからないで整理されるということは、これは事柄の性質上当然あり得ないことと存ずるのでありまして、御承知のように今回の整理については又別途退職金等においても特例を設けまして多額の退職金を給するというようなことにもなつておりまするからして、おのずからこの方式を備えた説明書ということではありませんでしようけれども、この整理のためにやめてもらいたいということの趣旨は本人には十分到達するというふうに考えているわけであります。で元へ戻りますが、行政整理というものについての場合のこの罷免については、一応先ほどこういう大量の整理の場合についての予想は公務員法はしておらんのだということを申上げましたが、普通の場合のこの定員超過の場合の整理については実は公務員法の七十八條にございます。七十八條にございますけれども、この七十八條の中に四つその意に反する罷免の根拠が設けてあります。第一は勤務実績がよくない場合、それから第二が心身の故障のため職務の遂行に支障があり、文はこれに堪えない場合、第三、その他その官職に必要な適格性を欠く場合、それから第四として今申しました、官制とか、或いは定員の改廃又は予算の減少によつて定員に過剰の原因を生じた場合、こういう理由が四つ挙つております。そのうち、今申しました第三までは勤務実績がよくないとか、或いは官職に必要な適格性を欠くというようなことの理由になつておりますから、今の説明書の場合にこれを引きつめて考えますならば、説明書においてもお前はこれこれの適格性を欠いているから云々ということはおのずから説明書の中に出なければならない。ところが第四の場合におきましては、公務員法自身におきましても、過員を生じた場合、過員を生じたという原因だけを示せば形式論をしてはいいような書き方になつておるわけであります。公務員法そのものの扱いによつても過員を生じた場合の扱い方というものと、本人が適格性を欠くとか、或いは誠実でない、勤務実績がよくないという理由によつて罷免する場合と根拠を書きわけております関係上、これも又この間の整理の際に浅井人事院総裁が言つてつたところでありますが、今この行政整理のための仮に説明書を交付し、且つその説明書に対応して人事院に提訴をして来るということを仮に考えても、数千人、数万人の人が提訴して来られてもその判定が、実際上今申しましたように勤務実績がよくないという理由で、これで行くのであれば、割合にその本属長官とかその他によつてはつきりした理由を聞いて、その処分の適否というものが機械的と申しますか、割合に明らかな理由によつて処理ができるけれども公務員法自身において今の四項から持つて来るものは判定も簡単に行かない。殊に例えば勤務実績の評定制度というものが確立しており、或いは又職階制度というものが確立しておれば、まだこれは何とか手がかりがあるけれども、それのできておらない今日では、むしろ公務員法の保障する條文というものが適用になつたとしても、それほど大きな実益といいますか、保障という役割を務めるものかどうか、その点については疑いがあるということを言つているのであります。そういうような観点から私どもといたしましては、こういう大量の整理の場合においては整理を円滑にすまし、そうしてその整理者に対しては経済的に適当なる措置を講ずるということを以てその結末を付けることが大局的に見て一番いいのではないかということで、これは確かに形式論としてはこういう保障を外すということでありますから、心苦しい気持は確かにございますけれども、大局的に見通して行きますれば、さしたる害もなく、整理を順調に行なうという上においては止むを得ないことであるということから、こういう形が今のようにできて来ているのであります。
  62. 中山福藏

    ○中山福藏君 私どもは不幸にしてそういうふうな価値のない法律がこの日本にあるということを知つて実は驚く。そのときの便宜によつて法律の精神というものが蹂躙されるということになりますれば、幾ら法律を作つても駄目だ、公務員法があつて、第四項の事柄が起つたとしても、勿論政治家の立場からいたしますれば、すべて鳥瞰的な、総合的な最も時勢に適応した法律の運用というものをやつて行くということは、これは私どもは十も百も知つているのであります、それくらいのことは……。併しながら国家公務員法という厳然として存在している法律があるときに、それはどうもそういう規定があつても、何万人、何千人というものを一々調査しなければならんということだから、これは煩瑣に堪えないいうようなことから、法律はどうでもこうでもなるというようなことになりましては、これは議会があつてもなくても、そのときの定めた法律というものは、後の時間的な経過によつて、時勢の変遷につれて、どうでも便宜的に取扱つてもいいという先例というものを一つ示すことになるのじやないか。こういう先例というものを打ち立てられると、将来の国家に対して非常に不幸だと思いますが、どうお考えになつているか、如何ですか、そういう点は。私はすでに第四項についても仮に何万人あつたところで、これは法律が存在しているのだから止むを得ない。当然国民の権利というものをそういうところに認めるということが、いわゆる検察庁でお出しになつた人権というのは永遠に侵害することのできない基本的な権利であります。それにこういうことをなさることは非常に違うのじやないかと思います。そういう点を御説明つておきたいと思います。非常にこれは惡い先例になりますよ。
  63. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることは実によくわかるのであります。御同感のところも多々あります。でありますが、強いて口を極めて申しますれば、結局先ほども触れましたように、根本は公務員法の七十八條の第四項というものが不備ではないかということに私は落付くと思います。さような点がございますから、先般来申しましたように、公務員法の改善ということについて我々としては先ほどお話しになりましたような試験制度、採用の制度等を合せて、こういう身分の保障の点につきましても一応考えておるわけであります。これは今のお尋ねには直接関係はありませんが、そういう含みで考えておりますけれども、この場合大量の整理という場合について、これを円滑に処理するということについてどういう方法が一番よいかということは、これは私はその点と併せてもとより考えなければならんこととは思いますけれども、先例を新らしく作るというお話もございましたが、実は先ほども触れましたように、これは前回の整理以来やつておるところでありまして、その改善については或いはいろいろ考えがございましようけれども、私の先ほど申上げましたようなところにおきまして、今日の段階におきましての考えようとしてはこれは止むを得ない方法である。これ以外には満足すべき方法が考えられないというふうに存ずる次第であります。
  64. 中山福藏

    ○中山福藏君 私どもは素人でありますれば、あなたの言われることを鵜呑みにすることができると思う。併しいやしくも法律に生きておる人間としては、法律の拠点を抜きにして便宜に従うというわけにはいかない。国家のためにそういうような立場にある。だからこれをお尋ねするのです。それならば、国家公務員法の改正というものをなぜ同時にお出しにならなかつたか、そういうことを一応承わつておきます。
  65. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 国家公務員法の改正及び裁判所職員の特別の身分法というものも早く作りたいという気持はたびたび申上げた通りに我々抱いております。又その趣旨によつて勉強いたしております。ただ遺憾ながら時期が今日間に合いませんので、次の通常国会あたりには是非提案いたしたいという意気込みでおることを御了承願いたいと思います。
  66. 中山福藏

    ○中山福藏君 誠におとりになる処置が前後矛盾しておると私はこの点については考えます。どうかその点は重ねて非難攻撃してみたところで無駄なことでありますから申上げませんが、どうかそういうような法理を以て生命とする裁判所かたがた並びに法制意見局のかたがたがこういうふうな矛盾撞着した、前後を誤つた処置をおとりになるということは、非常にこれは遺憾に堪えないと思います。将来どうかこういうふうな誤まりのないようにお願いしたいと思うのです。  それからもう一つ、最後にお尋ねしておきたいのですが、この裁判所職員並びに検察庁職員のかたの俸給というものは一応大体拝見いたしましたが、これについてはこれまで一切問題にならなかつた官舎、自動車、電気、ガスというようなものの評価というものは、大体最高裁判所長官において幾ら、普通の最高裁の判事が幾ら、地方検事正の官舎の評価が幾らというような大体のお見通しは付いておるのでしようか。これは俸給以外に相当の俸給を取つておると言えると思うのです。そういうことについて大体の評価をふだんしておられるのでしようか。どうでしようか。それを聞いておきたい。
  67. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お尋ねの一部のみをお答えすることになると思いますが、今官舎のお話がありましたが、官舎につきましては、国家公務員の国設宿舎に関する法律というものがございまして、例えば最高裁判所長官、その他官職を指定いたしまして、これこれの職務のものについては必ず官舎を與えるというような基準が法律規定いたしてあります。その他の自動車、燃料、ガスなどについては、私の承知いたしております範囲では法制上のさような根拠はありません。これは実際の運用において調整がこられておるというふうに了解をしております。
  68. 中山福藏

    ○中山福藏君 大体私のお尋ねしたいところは、官舎、自動車、ガス、電気というようなものを月給に換算したら幾らに換算されるか。総額幾らになるかということを実はお尋ねしておるので、現在月給は生活給ということに原則づけられておるようでありますが、ただ表向きから数字の上で判断するだけではいかんと思う。事実これが若し借用したら幾らかかるか。借用せずに住めるのなら一つの月給なんです。だからそういう点を考えますと、官舎を提供される人とされない人とでは数字の上では余り違いはないのですけれども、実質上の俸給というものは非常に違つて来ると思う。こういう点は将来御質問になるかたも出て来ると思いますから、一応評価して、金に換算しておいて御説明のできるような立場を作つて頂きたいということをお願いしたいと思います。  時間でありますから、これくらいでやめたいと思います。
  69. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは、以上の四つの法案に対する質疑は次回に継続することとしまして、本日はこれで散会いたします。    午後零時二十五分散会