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1951-11-15 第12回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十五日(木曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            伊藤  修君            鬼丸 義齊君    委員            鈴木 安孝君            棚橋 小虎君            岡部  常君            中山 福藏君            須藤 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員会設置の件 ○連合委員会開会の件 ○裁判所職員臨時措置法案内閣提  出) ○裁判所職員定員法等の一部を改正す  る法律案内閣送付) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣送付) ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (法務総裁に対する質疑の件)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それではこれより委員会を開きます。  本日は先ず小委員会設置に関してお諮りいたします。昨日委員長及び理事打合会におきまして、戦争犯罪人に対する法的処置に関する調査検察及び裁判運営等に関する調査の一部として行うことと決定いたしました。念のため本調査趣旨について專門員より説明いたさせます。
  3. 長谷川宏

    專門員長谷川宏君) この趣旨は、平和條約の発効後、我が国は同條約第十一條規定によりまして、国内にあるいわゆる戦争犯罪人に対して軍事裁判に基く刑の執行をなすことになつております。又、これらの戦争犯罪人赦免、減刑及び仮出獄に関しては、我が国勧告を行い得ることとなつております。今回政府において、これらに対処するため、この戦争犯罪人の刑の執行及び赦免等につき勧告するための法案を立案中と承知しております。この戦争犯罪人に対する刑の執行の問題は、国際的にも国内的にも極めて重要な問題であつて、当委員会といたしましても多大の関心を持たざるを得ないところであります。而もその刑の執行が種々の点において一般行刑と異る特殊性を有することから、当委員会においても戦争犯罪人に対する刑の執行等に関する小委員設置して戦争犯罪人行刑措置等に関する国内法審議に備えてその資料を收集し、又政府に対して適当な勧告を行うことを目的としよう、こういう目的でございます。
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今説明いたしました通り戦争犯罪人に対する法的処置に関する調査検察及び裁判運営等に関する調査の一部として本委員会において調査いたすことに御異議は、ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議ないと認めます。つきましては本件調査のために小委員を設けたいと思いますが、小委員設置についても昨日の委員長及び理事の打合せにおきまして協議いたしましたところ、その数は七名とし、委員各位の御希望を参酌し、委員長及び理事会において協議の上委員長において指名いたすことと決定いたしましたが、さよう当委員会においても決定いたして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議ないと認めます。從つてさよう決定いたします。後刻小委員の指名をいたします。   —————————————
  7. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次にお諮りいたしますことは、連合委員会の件につきお諮りをいたします。目下地方行政委員会におきまして八幡浜市における街頭録音の問題について調査を行なつておりますが、当委員会といたしましても本件に関しては調査の必要があると考えますので、連合委員会を開くよう申入れたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議ないと認めましてさよう取計らいます。   —————————————
  9. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に公報を以て申上げました裁判所職員臨時措置法案裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、後の三者は予備審査でございますが、前の裁判所職員臨時措置法案は本院の先議としてこれから審議をいたしたいと思うのであります。先ず提案理由法務総裁より御説明を願いたいと思います。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今議題となりました裁判所職員臨時措置法案提案理由を御説明申上げます。  御承知のように、裁判所職員裁判官及び裁判官の秘書官は、国家公務員法上初めから特別職となつておるのでありますが、その他の裁判所職員は、一般職に属する職員としての取扱を受けて来ておるのであります。併しながら元来これらの裁判所職員は、国会職員と同様に、行政府に属する職員とはその系統を異にするものでありまして、国家公務員法その他一般職に属する職員に適用されるべき法律規定をそのまま裁判所職員に適用することは適当ではなかつたのであります。そこで昭和二十三年法律第二百二十二号、によつて国家公務員法の一部が改正せられました際に、その改正法律附則第十一條で、裁判所職員昭和二十六年末までを限つて国家公務員法に定める一般職に属する職員とする旨を規定いたしますと共に、去る第十回国会において成立いたしました裁判所法等の一部を改正する法律第三條において、昭和二十七年一月言以降はこれを特別職に属する職員として取扱う旨を明確にいたしたのであります。  そこで政府は、最高裁判所事務当局の協力の下に、裁判所職員に適用すべき人事行政上の根本基準を定めるための法律の制定について研究及び準備を進めて参つたのでありますが、たまたま国家公務員法その他の人事関係法令について再検討の議もございますので、裁判所職員に関する法案は、これらの法令に関する検討の結果とも睨み合せてなお慎重に研究の上提案いたしたいと存ずるのであります。  併しながら、只今も申上げましたように、裁判所職員は、来年一月言からは、すべて特別職となりますので、この際何らかの暫定的措置を講ずる必要があるわけでございます。そこで一般職たる国家公務員に適用される法律規定中、人事院の国会内閣又は関係庁の長に対する勧告権に関する規定等その性質上不適当と思われるものを除き、その他の必要な規定を、当分の間裁判所職員について準用すべきものとして、この法律案を提出いたした次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。  次に只今予備審査として提案に相成つております裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  政府は、行政費を節約すると共に、行政事務能率化を図るため、各省庁の事務簡素化し、その人員を相当数縮減することといたしたのでありますが、この法律案は、これに対応いたしまして裁判所につき、事務簡素化により、裁判官以外の裁判所職員定員を縮減するため、裁判所職員定員法の一部を改正すると共にこれに関連して裁判所法の一部を改正することを目的とするものであります。  先ず、裁判所職員定員法に関する改正について申上げます。裁判所に提起される各種事件は全般的に依然増加傾向にあり、而も訴訟の促進が叫ばれておりますこと等を考慮いたしますと裁判所職員の現在の定員は決して多きに失するものではないと考えられるのでありますが、この際極力事務簡易化能率化を促進することにより、人員整理を行うことといたし、司法研修所教官裁判所事務官その他の職員について合計八百九十九人の定員を減少することといたしたのであります。なお、従来雇員及び傭人たる裁判所職員については、裁判所法規定との関連において予算上その定員が定められているに過ぎず、又裁判官以外の裁判所職員定員については、職種別にその定員が定められておりましたところ、この点は、むしろ行政機関職員定員法の場合と同様に、雇員及び傭人たる裁判所職員をも含めて裁判官以外の裁判所職員定員については、その総員数を一括して規定するのが適当であると考えましたので、今回の定員改正関連いたしまして、この趣旨に基く規定改正を加えることといたしました。  次に裁判所法に関する改正について申上げますと、この改正は右に申上げました通り裁判官以外の裁判所職員定員についてこれを総括的に定めることに裁判所職員定員法規定改正するのに伴い、裁判所法規定に所要の整理を行うためのものであります。  最後に、この法律案附則でありますが、このたびの裁判所職員人員整理につきましても一般公務員に対する行政整理の場合と同様、六カ月の猶予期間を設け、その間は、新定員を超える員数の裁判所職員定員の外に置くことができるものともると共に、今回の定員の減少に伴い整理される者については、いわゆる審査請求の制度を適用しないことにいたしたのであります。  以上、この法律案の内容の概略について説明いたしました。何とぞよろしく御審議の程お願いいたします。  次に同じ予備審査として付託せられ、只今議題と相成つておりまする裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由を、便宜一括して御説明申上げたいと思います。  政府は、最近における生計費及び民間の賃金の変動その他の事情に鑑みまして、国家公務員給与を改善する必要を認め、今国会に「一般職員給与に関する法律の一部を改正する法律案」を提出し、現に御審議を仰いでおりますことは御承知通りであります。  そこで、裁判官及び検察官についても、一般職職員等の例に倣い、その給与を改善する必要がありますので、この両法律案を提出した次第であります。  この両法律案は、右の趣旨に従い、裁判官及び検察官報酬又は俸給の額を増加するために、両法律の各別表改正すると共に、裁判官報酬等に関する法律第十五條と検察官俸給等に関する法律第九條に定める報酬又は俸給の各月額改正しようとするものであります。この両法律案による改正後の別表及び右各條に定める報酬又は俸給の各月額を、現行のそれに比較しますと、その増加比率は、大体一般官吏俸給月額増加比率と同様でありますが、判事補、三号以下の報酬を受ける簡易裁判所判事、五号以下の俸給を受ける検事及び副検事については、人事行政上の便宜を考慮してその号俸の数を約二倍に増加することといたしました。  次に附則におきましては、一般官吏の例に倣い、この法律は本年十月一日に遡つて適用することといたしたほか、只今申上げました報酬又は俸給号数増加に伴い、前述の裁判官及び検察官について、その受ける報酬又は俸給の号を調整する必要がありますので、そのための必要な経過規定を設けました。  以上がこの両法律案提案理由であります。  何とぞよろしくお願い申上げます。
  11. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは只今説明のありました四つの法案に対する説明理由、その他につきまして、詳細なる質問審議等は次回にいたすことにいたします。   —————————————
  12. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に前回からの繰越しになつておりますところの法務総裁に対する質問を継続いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは伊藤君。
  14. 伊藤修

    伊藤修君 私の今日御質問しようと思いました事項につきましては、あとで御質問申上げることにいたしまして、関連上先回の質問のうち、一松委員から質問がありました事項について、この際質問しようと考えております。当時一松委員質問の全趣旨を伺つておりまして、それに対する法務総裁の御答弁がはつきりしていないように思うのです。或いは国民に対して疑惑を抱かしむる虞れがあると思いますから、この際法務総裁の御意見をはつきりさしておきたいと思います。  第一は一体今日の憲法の上におきまして天皇に対する感覚をどう我々は持つべきかという問題であります。質問の全趣旨から申しまするというと、我我の受取れる感じは、いわゆる神聖にして侵すべからずというような考え方の下に質問をされているように伺われるのです。あたかも法務総裁の御答弁はこれを肯定しておるがごとく感ぜられる。速記録を精細に調べてはおりませんが、当時受けたところの感じはそう私は感じておるのです。最近ともするというと、この天皇に対する国民感情というものが、いわゆる久しい間我我を支配して来たところの感情がともすると現われ勝ちであります。新憲法精神はここで私がくどくど申上げるまでもなく、すでに我々は十分把握していなくてはならんと思う。又天皇といたしましても政治上に禍いされるとか、或いは国内的の政策の問題に対しまして、これに組入れられる、取入れられるというようなことは、非常に御迷惑な話だと思うのです。天皇国家象徴として毅然としてあらせられることが望ましいと思うのです。又新憲法精神もそうなくてはならんと思う。然るにこのたびの京大事件に対しまして、世間はごうごうとしてこれに対して非難をしております。勿論共産党の、若しくは共産主義者の行われたことに対しましては、我々としても肯定できないのです。この点は前提的に私は否定いたしたい。併し対天皇に対しまして、一体この問題がどういうふうに取扱われるのか。殊に本日の新聞をお伺いいたしますと、法務府はこれを調査する、吉田首相の命令によつて調査するというように伺つておりますが、事は法的にこれを考えますれば、公安條例違反に過ぎない。又騒がれたところの実体は、本日の新聞によつても野球の応援団の崩れの一態様ぐらいのものと聞いておるのであります。実際はどうか存じません。少くとも天皇に危害を与えるとかいうようなことはあり得なかつた。これに対しまして何を一体目標にして法務府が調査するのか。天皇に対しまして特別な措置を講じようとか、今日の法令の下に、憲法の下において如何ような考え方を以てこれに処するのか。私はその点で理解しがたいものがあります。少くとも今日我々は天皇に対しましては国家象徴として飽くまで尊敬の中心としておかなくてはならんことは、これは申すまでもないので、それ以外に何者もないはずです。ただ学校教育のよろしきを得ないために、天皇が依然として政治中心であらせられるがごとく、或いは政治的に何らかのそれが反映力を持つがごとく感じて、天皇に対していわゆる講和條反対意思を表明すべく要求したというがごときは、学生の無知識から来ることであつて教育のよろしきを得ないことは当然のことであります。かような誤まつたところの行動に対しまして、何を目標にしてこれを取締ろうとするのか、又調査しようとするのか、政府は重大な関心を以てこれに処しようとするのか、この点に対して私は御意見を伺つておきたいと思うのですが、最近天野文相は、道徳の中心天皇に置くというようなことを聞き及んでおるのですが、ともすると日本政治を行う中心かたがたは、天皇をいつも利用しようとする考え方がある。こういう考え方はともすると復古的になり、いわゆる右翼化し、天皇中心にいろいろなことを画策するという旧時代の体制に逆戻りする傾向があるのじやないかと思うのです。又それを助長するところの一つあり方じやないかと思うのです。先般私が質問申上げました、いわゆる極左にならずして、極右に行く傾向を、これによつてより以上拍車をかけるような虞れがあるのじやないか。或いは最近皇居に対しまして国民の基金によつて皇居を作るというような運動も起されておる。勿論国民感情から申上げますれば、これに対しまして否やは私はありますまいと思います。併しそういうような考え方根柢に流れる思想というものは、少くとも旧憲法時代天皇という主のに憧れているというところの考え方の送りではないかと思います。若し皇居の荒廃を歎くならば、我々は国会において堂々と幾多の、幾らの高額の予算でもこれを組むべきであるし、零細なる国民の醵金によつてやるべきではないと思います。そういう一つの現われ方というものが、何とか、何らかこの際国民の間に残つておる。その残つておる天皇に対する感情を利用して、今後におけるところの国民思想一つ中心に持つて行こうとする右翼的な考え方に、私は利用される虞れが多々あると思うのです。それに対して政府がみずからそういう考え方の中に立つて動くということは、私は好ましくないと思います。これは天皇に対して非常に御迷惑であり、日本国憲法の今後のあり方としても重大な問題であると思うのです。この点に対するところの一つ考え方を先ず第一にお伺いしておきたい。  それから次に一松委員の御質問中にもありましたいわゆるさような学生思想的運動をするような学生を作る、若しくはこれを指導する教授は、いわゆる赤い思想を持つ教授は追放すべし、こういう御発言がありました。これに対しまして法務総裁はあたかもこれを肯定するがごとくに見受けられ、何らそれに対して反対の御意思もなかつたようであります。私は共産主義には理念としては相当見るべきものがあると思うのです。併しその理念を実現するために、又それを実現するに急にして、ともすると暴力に訴え、行為の上の暴力言論の上の暴力、手段を誤まつておるのです。曾つて昨年ベルリンに参りました際にも、あの東ドイツ西ドイツとの境に、西ドイツから東ドイツに入る入口には真の民主国家入口という掲示がしてあります。東ドイツから西ドイツのほうへ来るところの掲示板には真の民主国家の終りと書いてある。口に共産主義の国は民主主義を唱えておりますが、民主主義の最も拒否すべき暴力というものに対しましては少しもこれを否定しない、むしろ暴力を以て彼らの思想の貫徹を図ろうとしておる。私は共産主義かたがた考え方というものは非常な誤まりがある、又彼らの実際の政策あり方というものは彼らの理想とするところのものではない、いわゆる労働者独裁を目指し、企図し、真の自由もなければ平和もないというのが私の見て参つたところの感じであります。東ドイツにおるところの国民全体と申しても差支えない、何らそこに国民の幸福もなければ喜びも認められなかつた、暗い感じを持つおる、とぼとぼと道を歩くというような態度である。かような国家が我々は望ましいことはない。我我はかような主義の下に行われておる国家というものは日本国民の生活にはふさわしくないと考えておるものであります。併し共産主義というものを研究するとか、或いはこれを学ぶとかいうことは今日の日本憲法の下において否定するのかどうか。いわゆる思想良心というものは憲法の十九條によつてそれを認められておる以上は学校教育においてこれらの研究もし、教授もする、学ぶということを否定するという考え方がどうか。私はこの思想良心に対しましては飽くまで自由を与うべきではないかと考えるのです。ただ現在日本共産主義かたがた及び世界の共産主義かたがたが、この思想言論という一つ過程を経て外部に発表する場合において、この言論がともすると暴力に亘る、又行為の面に現われて来て、その行為暴力に亘る。これは飽くまで否定すべきもので、今日の日本憲法の上から申しましても否定してあえて差支えないと思うのです。又否定すべきものであると思うのです。併し思想良心だけは飽くまで私は尊重すべきものではないかと思うのです。現在法務総裁の抱かれておるところの考え方というものがこの思想及び良心まで否定しようとするのかどうか。この点を先ずはつきりして頂きたいと思うのです。この二点を先ずお伺いいたします。
  15. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ず第一に天皇というものにつきましての感覚はどうか。こういう御質問でございますが、この点はすでに新憲法によりまして天皇は国の象徴である。在来のごとく神格化して考えるべきものではない。従つて天皇に対しまする国民行動の規律というものにつきましてもその趣旨を以て考うべきものであると存じます。  第二に法務府が京大事件につきまして調査員を派遣した理由はどうかという点でございます。この京大事件におきましては多数の人の集団的な行動があり、且つこれが制止のために警察力が動員されておるという事実があるわけでございまして、このことの真相につきましては法務府といたしましても将来のために十分にその真相を明らかにいたしておく必要があると考えまして調査員を派遣しておる次第であります。  それから赤い教授の追放について一松委員が追放すべきであると、こういうことを言われたことにつきまして私が賛成のごとき口吻であつたと、こういうことでございますが、私はその問題は私の所管でございませんので特に賛成反対のことも申上げてないわけでございまして、別にそれについて賛成をしたというわけでもございません。それからその次に共産主義思想或いは研究というものについてはどういう考えか。このことは私は思想は当然自由であり、又その研究も許さるべきであると思います。併しながら学校におきましてかよう役研究ということは、これは自由であろうと思いますが、御承知のように教育基本法におきましても、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治活動をしてはならない。」こういう趣旨もあるわけでございまして、この範囲を逸脱するということは学校としては望ましくないことである、こう存ずるわけでございます。
  16. 伊藤修

    伊藤修君 私は先ほど、まあ言葉は足りませんでしたか知りませんが、いわゆる行動に出るところに対しましては飽くまでそれは取締つても差支えないと思うのです。勿論今明示されましたごとく学生はその本分を忘れまして社会運動及び政治運動に携わるということは最も禁止すべきことである。学生は飽くまで学問研究に没頭すれば足るのである。彼らが蘊奥を極めた後社会に出て自己の持つところの能力を十分発揮する養いを学校において求むべきである、これは当然のことと思うのです。でありますから、教育を受ける過程において実際運動に携わるということは我々は是認できないのです。併しこの研究は飽くまで許されるべきものであると思うのです。そこまで仮に制約いたしますれば、曾つて日本あり方と同じような結果になる。若し今日曾つて日本あり方と同じような結果をもたらすべく、法務総裁共産主義研究共産主義に対するいろいろな学問研究を拒否するというならこれは別であります。法務総裁は、文部当局としての御意見でなくして、法務総裁としての立場において、共産主義研究に対しまして、いわゆる俗に言う弾圧を加えるとか、取締をするとか、そういう御意思があるかどうかということをお伺いするわけです。
  17. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 研究につきましては、共産主義であろうと、或いは又反動右翼主義であろうと、これは研究としては自由である、こう考えております。ただ、これが実際行動に出る場合においては、その行動について、法規によるところの取締ということは当然なのでありますが、併し、個人の研究としては完全なる自由が許さるべきであると、こう考えまする。
  18. 伊藤修

    伊藤修君 それからいま一点、御答弁中の、法務府が京大事件について調査せられたということは、との種の騒擾について、将来のために或いは調査しておく必要がある。こういう仰せでありまするが、これ以上の騒擾というのは、日本全国に毎日の新聞に出ております。然るに、この問題に限り、僅か学生が騒いだということに関して、特に法務総裁法務府が関心を持つて調査に行かなくてはならんというその根柢に流れる考え方というものが、先ほど私が申したごとき考え方に出でておるのではないか、こういう点をお尋ねしているわけです。その点に対する……。
  19. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 法務府が国内におきまする重要なる事件につきまして調査に参りますというのは始終のことでございまして、これは今回の京大事件に限つたことではございません。ただ、その事実がその都度必らずしも新聞に報道はされておりません。併し、今回のことは、何も特別に今回に限り異例の措置として調査員を派遣したわけではないのでございまして、重要であると認められる事件につきましては始終調査員を派遣いたしております。今回のことについて、特に重要であると認めました点は、学校内におきまする警察力の運用という問題は、これは東京におきましても始終問題になる事柄でありまして、こうした点につきまして将来のためにこの際研究をしておく必要がある、こう認めたわけでございます。
  20. 伊藤修

    伊藤修君 学校内におけるところの警察力の使用ということがそれほど重要であるでしようかどうか。特に首相のお声掛りで、若しくは促がされてか、或いは自発的にお考えになつておるところへ首相がそういうお声があつたかは存じませんが、いずれにいたしましても、首相がこの問題に対して関心を持たれるということは、それ自体、首相の考え方が、そこに先ほど申した、ようなところにあるのではないでしようか。今法務総裁が派遣したところの重要性ということは、学校内におけるところの警察力の使用という点に重点を置かれたとおつしやるが、学校内において警察力を使用する云々ということは、何も京大ばかりではないと思うし、曾つてのいろいろの問題においても私は見受けたことと思います。特にこのたびの問題に限つてこの点を重要視せられるということは、法務総裁のごとき賢明な頭脳のおかたとしてはちよつと受取れない。もつと何かそこに考えの根柢があるのではないか。その点をもう少し明確にして頂きたい。
  21. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 勿論単なる学校内における警察力の使用というだけの問題ではなく、とにかく一国の象徴であられまする陛下が京都大学を訪問せられて、その際に警察力の使用が行われたいということは、これは通常の出来事ではない。こういう考えで十分調査する必要を認めたわけであります。
  22. 伊藤修

    伊藤修君 聞くところによれば、学校当局が警察力の使用を求めたということであります。でありますから、これは当局が、学校当局がみずから求めて警察力の使用を促したわけですが、私はこの点に対しましては当然のことではないかと思う。特にその点に対しまして、そのあり方が、警察官のあり方がいいか悪いかという問題は、今日は起つていないと思う。むしろ重点は、そうした学究の徒であるところの学生が、さような実際政治運動的な行動に出たということ自体が問題ではないかと思う。そこに重点があるじやないかと思う。何も警察が求めざるにかかわらず、校内に闖入いたしまして、そうして学生と衝突した、こういう問題ではない。して見ますれば、これは私は合法的に当然な行われ方だと思う。むしろ問題は、私が申した学生のさような行動にあるのではないか、それは而も秘密裡に企画されてなされた、計画されてなされた。それが天皇に対してなされたというところに重点を持つておるじやないかと思うのですが、その点を御調査になるじやないでしようか。なるとすれば、それが却つて必要じやないでしようか。
  23. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 勿論御指摘になつたような全体的な調査をいたすためのものでございます。
  24. 伊藤修

    伊藤修君 調査のなされた、現在なされつつある、なされた結果、前回一松委員が仰せになつておることでありますが、こういう陛下に対するところの曾つての不敬罪というものが刊法上あつた。今度はそれに代るべき何らかの措置をとろうとするお考え方があるのかどうか。いわゆる象徴としての尊厳を維持するところの法的措置をとるというお考があるのかどうか。この点を伺つておきたい。
  25. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この調査はさような目的を以て行われたものではございません。
  26. 伊藤修

    伊藤修君 この問題は他の人がまだお尋ねになるでしようから、その程度にしておきまして、次にお尋ねいたしたいのは、島根県の安来町共産党の人人が地方自治警察と合体して、いわゆる地方自治警察反対運動をされたということです。それがけしからんというので、選挙の投票の前日、地方自治警察全員を召喚したとか、或いは逮捕したとかいたしまして、その運動を阻止するがごとき警察力の発動がなされたということであります。従つてその選挙の公正というものはそれ自体においてすでに破られておる。然るにその後それを調査した結果、いわゆる共産党と自治警察との連絡というものは根拠が薄弱だということになりまして、今度はその自治警察職員十一名を全部逮捕いたしまして、いろいろ調べたところが、何もない遂には警察の出納簿を引上げ、そうしてその中にあるところの僅かなことを取上げてこれを摘発し、又それをも摘発することが不可能だというのか、今度は何かの事件によつて、その被害者が自分の嬉しさの余り酒を一升とか二升を警察に届けた。それを収賄であるとかというふうにして調べたといようなことをいたしまして、自治警察職員全部を刑事被告人のごとく逮捕しているように聞き及ぶのですが、かような事案に対しまして、私がお伺いしたいことは、一体現在の日本警察力の中に職員全部が共産主義化しているところの署があるのかどうか。あるといたしますればさような警察力に対しまして法務総裁は現在及び将来どうお取締りになるのかということと、又さような警察が選挙運動を大政党の力を借りて選挙をなさらなくてはならんというあり方、これに対するところの法務総裁の監督及び指示の今後のお考え、態度をお伺いしておきたいと思います。又検察庁が最初企図した事案が摘発できない、ものにならないという場合には、第二、第三というものを取上げて、而も本来ならば事案となり得ないものを面子にかけて、そういう微罪を掘り出して、国民の治安を維持するところの警察力の全滅を企図するようなあり方というものは、誠に好ましからざるところの態度ではないかと思います。この三点について法務総裁のお考えをお伺いしておきます。
  27. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御質問の、警察の全部が共産党になつているのがあるのかどうかという点でございますが、警察で全員共産党員になつているというものはないと確信いたしております。それから警察が選挙運動をやる際に、党の力を借りてやるということがあるかないか、これはないことを希望いたしております。若し警察が或る党派と一緒になりまして、選挙運動をやる、これは党と一緒になろうがなるまいが、警察官が選挙運動をやるということは違法行為であると考えます。  それから第三の点は、検察庁において当初企図した事案が事件にならない場合に、第二、第三の微罪的なものを起訴することが適当かどうかという点でございます。これは当初企図いたしました以外に、他の犯罪が発覚いたしました場合において、それに対して措置をするということは一応当然なことであると思います。ただ併しそれがために殊更に面子に囚われまして、微罪として問題にすべき価値のないようなものを強いて起訴するというようなことは、これは当然警察のあり方として不穏当だと言わなければならんと思います。
  28. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁は事の内容をよく報告を受けていらつしやるかどうか、わからないのですが、私のお聞きしているのは、抽象的な問題ではなくして、安来町において取り行われたところのその自治警察のあり方です。それがどうであつたかということをお伺いしているのです。
  29. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 安来町におきましては、安来町の自治警察を廃止するかどうかということにつきまして町民の一般投票があつたはずであります。これに関連いたしまして一部の新聞紙においては警察官が自治警察の存続を図るために共産党の援助を受けているのではないかというふうな報道が行われたことも事実であります。この件につきまして検察庁として情報によつて或る程度の取調をなしたということは聞いておりまするが、併し選挙運動を警察官がしたという点につきましては現在までの段階において起訴したことは聞いておりません。併しながら警察署長並びに幹部署員一名が他の犯罪によつて起訴されているということはこれは報告を受けております。なお、この検挙につきまして、選挙の前日に検挙に着手したというふうに先ほど伊藤委員からお述べになりましたが、事実は投票終了後に着手したというふうに私どもは報告を受けております。    〔委員長退席、理事鬼丸義齊委員長席に着く〕
  30. 伊藤修

    伊藤修君 検挙の問題はたしか投票の前日と私は承知しているのですが、前日にいわゆる自治警察が共産党と組んで反対運動をやつた。それがために検察庁はこれに対して手を焼いたのだというふうに聞いているのです。従つて、その結果は選挙の結果に大きな影響を及ぼしたことは勿論であります。而もそれが的確であつたというならばこれは是認もされましようが、それが不的確であつて、今日に至つても何らその結果は明白になつていない。むしろ否定するというような形になつている。然るにそうなつた暁には検察庁の面子というものに囚われまして、警察に帳簿を出させ、これを洗いざらい洗つて、本来ならば問題にならんようなことを取上げ、或いは酒の一升と、肴を寄附をしたのを収賄と考えて事案を立てて送致するというようなあり方は、町民といたしまして、又県民といたしまして治安維持の衝に当るところの警察署員全部が被疑者扱いをされる、これを検挙されるということになりますと、住民の生活状況というものに非常な暗影を投げがける、この住民の不安というものは到底我々の想像も及ばないところのものがあると思います。こういう検察あり方というものは我々としては是認できないのです。勿論一つの事案が潰れて、他の事案を摘発する場合は往々あるのであります。併し本件の場合はそうでなくして、最初から政治的意図を持つて検察庁が行動をとつているとしか見受けられない。かような検察方針というものは我々としてこの一地方町村の事案ではありますけれども、こういうあり方が若し全国の各種の選挙において行われるということになりますれば、由々しい問題となると思うのです。これは厳にして、法務総裁が十分この点に対して監督すべき筋合いのものではなかろうかと思うのですが、地方の警察の存廃問題と限つた問題ではないと思います。その点から私は法務総裁の強い関心を促すゆえんであります。
  31. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 伊藤委員のお述べになりました投票日の前日において起訴した、或いは検挙に着手した。これは全然誤まりであります。この点は明白にいたしておきたいと思います。実は投票のございましたのは九月二十二日でございまするが、関係者を逮捕いたしましたのは九月の二十八日でございます。従いまして、この点は全然誤まりでございまして、投票日の終りまするまでの間は全然着手をしなかつたということを私は報告を受けております。この点は島根県の国警隊長が上京いたしました際に国警隊長からも私、報告を受けておりまするし、又検察庁からも報告を受けておりまするが、この点は何らか誤解があつたのではないかと推察いたします、この点は一つ投票後に着手いたしたという点だけを一つ明確にいたしておきたいと思います。  それからもう一つ、この安来署長についての公訴事実について酒を一升もらつたという、罪にならんような事柄を、強いて罪にして起訴をしたというふうな御発言に受取れまするので、ここに私は起訴状を一応朗読いたします。勿論起訴状でございまして、この事実が裁判によつて明確にざれるかどうかは別でございまするが、一応起訴の理由だけはこれによつて承知を願いたいと思います。   第一、昭和二十三年中に於て同署から安来町写真業者角久明に依頼して撮影した高田芳広に対する殺人被疑事件の現場等八件の刑事々件に関する写真代金を安来町役場に請求し、更に右の内四件に対する写真代については所轄松江地方検察庁に対しても重複して請求し、角久明に於て同年十二月二十三日同町役場から右八件の代金六千七百二十円の支払を受けたものであるが、同二十四年三月上旬頃に至つて検察庁からも右四件の代金として角久明宛に二重に送金して来た金額五千三百円の国庫送金通知書一通を入手したのを奇貨とし、角久明名義の領収書を偽造して右写真代金を騙取しようと企て同署会計係仲佐秀子及び庶務係田中和江を使用し、同年三月九日頃同署事務室においで行便の目的を以て前記国庫送金通知書左欄の領収書欄に擅に角久明の氏名を書しその名下に「角」なる偽印を押捺して同人名義金額五千三百円の領収書一通を偽造し、同月十一日同町山陰合同銀行安来支店に之を提出行使して係員渡部寅三郎等を欺罔したる上即時同支店に於て現金五千三百円の交付を受けて騙取し、   第二、同町菓子商持田芳雄、同原久作等数名が菓子類の取締を緩和せられることの謝礼として供与するものである情を知りながら   (一)同二十四年五月頃同警察署において原久作より硯箱一個(価格七百円相当)   (二)同年十一月頃持田芳雄より同町被告人方に於いて清酒一級酒一升入り三本(価格二千五百六十五円九十三銭)の各供与を受けて各其の職務に関して収賄し、   第三、同二十五年二月頃同町呉服商松本波三郎方及び鎌田傳三郎方に同年十一月頃更に鎌田博三郎方に相次いで盗難発生しその捜査をなしたのであるが、孰れも右盗難事件を捜査した謝礼として供与せらるるものである情を知りながら同警察署に於て   (一)同年二月頃松本波三郎より清酒二級酒一升入り二本(価格千二一百十九円六銭)及び大鯛一枚(価格二百円)   (二)同月頃鎌田博三郎より清酒二級酒一升入り一本(価格六百九円五十三銭)   (三)同年十一月頃鎌田博三郎より清酒二級酒一升入り二本(価格千二百九十円)及び価格百円相当の一鮮魚かつをの各供与を受けて各其の職務に関して収賄し   第四、同年二月頃同町呉服商松本一清市等八名方に相次いで盗難発生しその捜査をなしたのであるが、その頃右盗難事件を捜査した謝礼として供与せらるるものである情を知りながら、同警察署に於い同人等より清酒三升の商品券(価格千八百二十八円五十九銭)の供与を受けて、その職務に関し収賄し   第五、同二十六年四月頃同町飲食店足立菊枝方に盗難発生し、その捜査をなしたのであるが、その頃右盗難事件を捜査した謝礼として供与せらるるものである情を知りながら、同警察署に於て同人より清酒二級酒一升入り一本(価格四百八十五円)の供与を受けて其の職務に関し収賄し   第六、業務上保管中の安来町役場所有に係る同署備付の自動車用の燃料用ガソリンを法定の除外事由なく   (一)同二十六年三月上旬頃同町永瀬石油店安来出張所に於て安来ハイやし株式会社に対し、同会社より同署に雇上げた自動車運転者の料金の代償として十八立一罐   (二)同月下旬同出張所に於て同会社に対し前回趣旨にて十八立一罐   (三)同年八月二十七日頃同出張所に於て同会社に対し、自己が使用の為雇上げた自動車賃の代償として十八立一罐   (四)同月下旬同会社に於て同会社に対し、前回趣旨にて十八立一罐を各譲渡して横領し   第七、業務上保管中の安来町役場所有に係る同警察署備付の木炭を同署に於て擅に   (一)同年九月二十五日頃同署巡査部長祝部政清、同巡査山崎鋳造、同巡査成合正義、同警察主事田中和江に各三俵を無償譲渡し   (二)同月二十六日頃同署巡査市川助夫、同村井重雄、同警察主事補細田和己、同小使長島永之助に各三俵を無償譲渡し   (三)同月二十九日頃同署巡査谷口武慶、同警察主事仲佐秀子に各三俵を無償譲渡し   (四)同月三十日頃同署巡査秀衡勝雄に三俵を無償譲渡し   (五)同月二十六日頃三俵を自己に着服して夫々横領し   第八、同警察署配賦予算の旅費を騙取して自己の交際費に充当せんことを企て別表記載の如く同署警部補奥村朔等十三名の署員が一〇二回に亘り真実出張していないのに恰も出張したもののように夫々その名義を使用して虚偽の出張旅費請求書を作成し、之を安来町長に提出し、同人を欺罔した上、同二十四年八月より同二十六年八月までの間二一回に亘つて同町役場より合計金四万九千七百八十円の交付を受けて騙取し   第九、同二十六年九月二十七日松江地方検察検事岸幸一より同署備付の出張命令簿等経理関係帳簿の差押えを受くるや会計上の不正事実を摘発されるものと推断し、右命令簿と対照するに於ては容易に不正事実の発覚する虞れのある署員の動静に関する諸帳簿等を焼却して証憑を湮滅せんことを図り署員に命じ、同夜同署の用に供する勤務繰出簿(同二十三年度乃至二十六年度)四冊、勤務日誌(同二十三年度乃至二十六年度)十六冊、宿直簿(同二十三年度乃至二十五年度)三冊、警察日誌(同二十三年度乃至二十五年度)三冊を同署風呂釜焚口にて焼毀せしめ以て公務所の用に供する文書を毀棄し   第十、同二十四年二月頃菓子類の一斉取締を施行し、同菓子商福島萬一等十六名を物価統制令違反として検挙立件し一括記録を作成して松江地方検察庁に送致一旦受理せられたが、係官より被疑者毎に記録を分冊して送致するよう指示され該記録を借り受けたのであるが、その後同庁より催促を受けながら分冊送置せず且つ検察庁の承認を得ずに証拠金を被疑者に還付して証拠を失わしめ、特に同二十六年六月の催促に対し該記録は既に当時分冊送致したりと主張して同年九月二十七日に至るも送致を為さず検察官をしてこれが起訴の機会を失うに至らしめ、以て福島萬一等十六名に対する右刑事事件の証拠を隠滅し   第十一、同二十六年九月二十九日同警察署警部補奥村朔の捜査した松島清吉に係る食糧管理法違反被疑事件の未送致記録に添附すべき換価金八百八十一円が存在せざることを知り、同警部補に於てこれを費消したるに非ずやと察知し、同署員を使用して秘かに被疑者の私有金八百八十円を封入右記録に添附して換価金が存在するものの如く仕做して松島清吉に対する右刑事事件の証拠を偽造し  これらにつきまして私文書偽造行使詐欺、収賄、業務上横領、臨時物資需給調整法違反、こういう條項で起訴をいたしておるわけでございます。御指摘のごとく単に一升酒をもらつたのをほじくり出して、それで起訴をいたしておるというようなわけのものではないのでございまして、私といたしましても若しさような無理に起訴されましたならば、これは当然そういうことを避けなければならないことは平素から感じておるところでございますが、これらの起訴は私の報告を受けておりまする範囲におきましては止むを得ないものと考えております。
  32. 伊藤修

    伊藤修君 今起訴状をお読みになつて、あなたは曾つて弁護士をおやりになつていらつしやるのですから、事案の内容に対して私は一々ここで裁判書として手にとつたわけではありません。併し概略の事実を概念的に今考えても、如何に寄せ集めのものを組立てて、いわゆるつつかえ棒式に事案の起訴をせられたということは、容易にこの起訴状だけでも認識されるのです。一つの事案で足らない場合には、その事案によつて洗いざらい、ごみのような事案を寄せ集めたということが、今御朗読になつた起訴状だけでも認識できるのです。若し一つ一つつて覧て見た場合において、果してそれを起訴すべき事案かどうかということは、十分我々として常識的にも考えられる、殊にいろいろ名目を付けおりますが、それだけの一体事案が仮にあるといたしまして、今あるかどうかわかりません、あるとは私は断定いたしませんが、あつたといたしましても、若しそういうふうな自治警察を一体国家が認めておつた、いわゆる地方自治団体が認めておつて、それを国家が使用しておつた、検察庁が使用しておつたというのは、検察庁の怠慢も甚だしいわけです。さような警察を手足に使つて国民の治安を保持しておつたということなら、由々しい大事なんです。そうでなくして最初の政治的な意図が外れたために、洗いざらい引つくり返して、家宅捜索までもし、そうして例えば手続出張の名義を、他の名義を貸りたとかいうことはよく官庁ではあることなんです。そういうことまでも取上げて全部を報復的にやられておるということは、十分私は考えられると思います。いずれにいたしましても、最初の意図において私は検察庁のとつた態度というものは好ましくない態度ではないかと思うのです。又現在そういう事案があるならば、なぜそれをさようなものを検察庁は使つておつたか一それに至るまでに知らずにおるということはあり得ないと思うのです。署長以下全員の家宅捜索をしてやるというようなことは、要するに国警と地警の反感と、そうして今の政治的意図というところからなされて来たのじやないか、いわゆる検察庁の態度として私は好ましくないと思います。その事案に対しまして若しあつたといたしますならば、これは罰を受くべきは当然のことでしよう。そういう点に対して私はお伺いしておるわけであります。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今伊藤委員のお述べになりましたごとく、この十一の起訴事実の中には、私といたしましても中にはかくのごときものまで起訴する必要があるかないかという点については、疑問を持つものも相当あります。併しながら起訴事実の第一にありまする他への印章を偽造いたしまして、公文書に提出してそうして写真代金を二重取りしておる、この一事だけを見ましてもこれは到底検察庁として許さるべきものではない。こう考えるのでありまして、事の真偽は今後の裁判によつて明らかにされると存じますが、私はこれを起訴した検察庁の態度というものは、これは当然であると考えます。ただこれにくつ付けてありまするいろいろな細かい事案が、殊にまあ酒を一升もらつたとか、商品券をもらつたという、御指摘のよう一箇條もございますが、これらの点につきましてはこれはいろいろ考え方もあろうと思います。又私自身といたしましても、仮に私が検事であつたらば起訴するかどうかという点になりますと、これは私としても考え方があるのでございますが、併し少くともこの第一の点につきましては、これが事実であるといたしまするならば、これは当然起訴すべきものである。こう私は考えておるわけであります。
  34. 伊藤修

    伊藤修君 この問題に関しましては、目下公判中でありますから、これ以上に入ることは裁判に影響しますから遠慮しておきます。
  35. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題に関連して質問したいと思います。    〔理事鬼丸義齊君退席、委員長着席〕
  36. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 質問する順序がありますが、極く簡単ならば……。後にあなたに時間の割当がありますが、割当のときどうですか。順序が立つておりますので、岡部さんが先ですから……。
  37. 岡部常

    ○岡部常君 私はやはり関連した問題はこの際一緒に片付けて頂きたいと思います。須藤さんにお許し願えませんか。(「それよりも前にこちらで重大事件についてお話があるのです」と呼ぶ者あり)
  38. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題の起つた原因は私たちどうも政治的な含みがあつたように理解せざるを得ない。それは投票に先立つて共産党と如何にもこの自治警との間に関係があつたごとく新聞紙上にも窺われ、又吉橋部長もそういう意味のことを漏らしていらつしやる。そこに私は問題がある。又自治警廃止、国警に自治警を吸収するというあの警察法改正の起つた当初にもいろいろ遡つて考えなければいけないのじやないかと思うのです。自治警を地方交付金で金縛りにすることによつて、自治警を廃止せざるを得ないような状態に地方自治団体を追込んでしまつた、そこに問題があり、そうしてすべての自治警を国警に吸収しようという意図がその裏にあつたということが第一の問題であり、そうして島根県において特に安来町において共産党と自治警が関係があるごとく人民に思い込まして、そうして自治警廃止を有利にしたという意図がどうもあるように私たちは思うのです。そうしてそこに私は我我のほうに入つた情報をまとめて見たのですが、それを参考に各委員に聞いて頂きたいと思う。それは自治警廃止云々の問題が島根県安来町の町会で問題になつた当時におきましては、町会では自治警廃止反対のほうが実は多かつたのです。十二対十三で自治警廃止反対という採決がなされた。而も住民投票が九月二十二日に行われたということ、それから安来町の署長が自治警廃止反対の態度を示した、これに対しまして山根国警署長が、立石松江地検検事正等が上から示された廃止の線に沿つてつておることがあるのです。山根署長のごときは七月中旬に開かれた国警部課長会議で自分の管内の自警は県内で最も先に廃止して見せるということを発言していらつしやる。これも一つの問題だつた。ところがそういう発言があるにもかかわらず実情は山根国警署長の意思反対傾向を示して同町町会議長、公安委員は自警廃止反対の意向を強く示したということも事実であります。そこで国警の署長は自警廃止反対意見者に対していろいろな圧迫干渉を事前に加えているということが言われているのです。その一は公聴会におきまして民主化の逆行だと反対した国鉄の渡辺という人の自宅にみずから乗込んで行つて、あなたは公務員でありながら政治活動をするとは何事だ、そういうことをしてはためになりませんぞ、というようなことを警察署長みずからが言つている。その二は町会協議会で存置論を述べた某町会議員に電話をかけまして——あなたは国警を誹謗したそうですが、本当ですか、本当ならば国警で声明を出さねばならんが、というようなことも電話で申込んでおる。それから町会議員の宅を個別的に訪問しまして、余り運動をするとためにならんから云々というような意味のことを言つてつている。その四は自警廃止反対の立場をとつた田邊公安委員に対しまして尾行を付けておる。そして同時にあなたは公安委員でありながら一日四、五軒も歩いているのはけしからん、そういうようなことを言つておるのです。同氏の場合は高橋圓三郎という人が町へ来て座談会を開くための純粋に個人的な用向で歩いておつたと言われておりますが、自分に尾行が付いておるということをあとで聞いて非常に憤慨したというような事実もある。それから五番目は住民投票日二日前の二十日には、遥か以前九月四日附で発行停止となつておるところの共産党の活動指針に対するガリ版刷の令状を持つて松江地検立石検事正、特審森田某等の指揮する国警警官二十名が町民宅、共産党員宅を一齊に捜査し、同町内を非常な恐怖の状態に陥れ、あたかもこういう古いものを持出して自警住民投票の前にその町に非常に恐怖的な観念を巻起したということが言われております。こういう状態で住民投票がなされた。こういうことが安来の町民に言われております。それで却つて非常な町民の反感を受けて、町民大会で問題の所在を明らかにするか、参議院に申請して実情を見てもらうかというような意見まで出たということを聞いておるのであります。それから第三の点は池田安来署長、奥村次席逮捕事件の概要でありますが、今いろいろ大橋法務総裁からその実情を伺つたのでありますが、私たちの聞いていまする点も申述べたいと思うのであります。池田署長逮捕は十月一日任意出頭の形で松江地検で取調べられた。そうして逮捕されたその理由は立石検事正談としまして十月三日島根新聞に登載されております。その要旨はこういうことであります。公文書毀棄罪、毀損罪及び証拠湮滅ということになつているようであります。奥村次席の件は二十年八月主食取締事件八件、価額金一万三千円を取調べ記録を作りながら、これを送付せずに着服横領した。更に同検事正はこういうことを言つております。池田署長が数次に亘り、この事件を人権蹂躙だとか、臨時刑事訴訟法に訴えるとか、検察を誹謗するがごとき行動新聞紙上に発表したが検察庁は新聞紙上で論争することは、却つて威信を傷けるものと認めるから相手にしない。今回の捜査活動によつて彼の抗議に答えたものであるというような、そういうことを言つているそうであります。それから第二点はその公文書毀棄罪と言われておるその原因の内容は何かと申しますと、二十八日附池田署長談としまして発表されたものによりますと、九月二十七日地検より岸検事が町警察署を訪れ、立石検事正の命令で来たと申しまして昭和二十四年、五年、六年と三カ年に亘る当署の出張命令簿の借用を申入れた。その理由はわからないが、使いに来たと、押問答の末、提出せんと疑われてために悪いぞと言つた。その日の朝に某地区署長より電話で署長さん今度はあなたのあら捜しを始めたから気を付けなければいけませんよというような注意があつたということも言われております。記事の前後の事情から見ますと、この出張命令簿に絡ることが直接の理由となつて遂に逮捕の結果となつたと見られるのであります。又国警の余りのやり方に自警の存廃の両側から町民の非難の声が威嚇に動員された国警警官に向けられたというような状態になつた。このような町民の声に対して警官は次のように答えておるのであります。警官の或る者は、私たちはこんなことで追廻されるのは本当にいやですが、上司の命令のままに動かねばならん自分が情けなくなりますというようなことを言つておる。又私たちはこれで二重の監視を受けているのですからとも言い、中には松喰虫事件のような大きな不正に手を着けずに三年前の鼻くそほどのことを洗い立てているのは理解できない。そういうことを言つているのであります。先ほども大橋総裁はいろいろな起訴状の内容を申されましたが、伊藤さんが申されたようにその一つ一つを挙げて見ると大したことは何もない。それが本当の犯罪、起訴までされるようなことであつたかどうか、と、いうことは非常に小さいものがたくさん集まつていると思うのですが、私が今まで我々の知るところを申しました点でも随分小さいことばかりだと思うのです。然るにその松喰虫事件のような大きな問題をそのままに隠しておいて、殊更にそういうちつぽけな取るに足らないような事件を取上げて来て起訴したという点に問題があるのだと思うのです。ここ、私は松喰虫事件を皆さんに聞いて頂きたいと思うのです。松喰虫事件というのはどんなことかと申しますと、昨年の六月能義村長高橋氏は山本郵便局長の持ち山に松喰虫が発生したとの理由で県から約二百万円の補助金を取り、病気にかかつた木を焼いたというのでありますが、事実は能義村中学校校舎建築材にそれを充てておるわけであります。地方の遅れた考え方を巧みに利用いたしましてごまかしたと言われておる事件であります。即ち焼いてしまつたと言つておきながら、その木を切つて学校の校舎建築にそれを充てている。即ち二百万円の補助金をうまく着服しているというような事件であります。高橋は本年四月には県会の選挙に出馬して運動費を湯水のように使つたが落選したと言われ、家屋も新築しておる。この事件に対して自警奥村、松井、櫻内の五名が調査に当つていたと申されておりますが、この松喰虫事件調査いたした三名は首を切られているのであります。こういうことがその裏にあるということをよく考えて頂きたいそうして而もこういうことを伏せておきながら、あたかも自警と共産党と関係があつたことくその事前に流布して住民を威嚇してそうして住民投票をやられた。その結果今日のような状態になつておるわけでありますが、私は共産党のために言うのではありませんが、むしろ自警のために申述べたいと思うのでありますが、決して共産党が自警を抱込んだというようなことは絶対ないわけであります。最初共産党のこの島根県の方針は、安来町の共産党細胞のとつた態度というものがこつちへ来ておりますが、それは自警廃止に賛成の態度をとつたそうであります。最初はそれはどういう立場かといいますと、安来町の自警そのものも町の非常に負担になるし、そこへ又人民の弾圧の機関になつていたという点で、そういう人民を苦しめるような警察なら廃止すべしという考えで自警廃止の態度をとつた。ところがその後いろいろ考えて見ると、自警を廃止して次に国警になつた場合国民の負担がなお大きくなる、自警のままであるほうが国民の経済的な負担も非常に軽いのだと、そういうことがわかり、又国警になつた場合果して自警よりいい警察ができるかどうかというような問題も考えられまして、あとで自警廃止に反対の態度をとつた。ですから何も最初から自治警察を共産党がうまく抱込んで、共産党の意のごとく動かすというような、そういう計画の下にやられたことでもありませんし、又池田署長初め自治警察も決して安来町の共産党の思うままに動いたのではないということは、決して我々としてもそんな自惚も持ちませんし、又そういうことは考えられないことなんです。それがこういうふうに喧伝されたというところに私は非常な政治的な何か暗さを感じるわけです。そして私は自分たちのほうに挙りました情報を参考までに皆さんに申しましたのですが、こういう状態でやられたことが決してどうも正しい明るい検察当局の行動のように私は考えられないのです。何か暗いものを感じる。その点で今伊藤さんがいろいろ御質問なさつたことに対しまして私も同感の意を表しておるのですが、総裁も私が申述べましたようなことを耳にしていらつしやるのでしようか。若しもこういうことがあつた場合総裁はどういうように考えられるのか、御意見を伺つておきたいと思います。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政治的な動機によりまして検察権を発動するということは私としては絶対に許すべきでない、こう考えておるわけであります。勿論この警察署の廃止問題なんというものは事柄の性質上政治問題化することはあるわけであります。現に安来町の自治警の廃止の問題につきましても、地元においてはいろいろな党派がそれぞれの立場からそれぞれの主張をいたしておつたように思われます。又共産党と警察とが打合せをしておつたかおらないか、それはわかりません。只今まで打合せをしておつたということの確証は挙げるに至つておらないと思いますが、併し共産党が事実自治警察の存続に相当強い運動を展開しておつたということは、これはまあ事実であつたろうと思うのです。その事実を捉えまして新聞或いは世間で、これは共産党と警察に何か関係があるのではないかという推測をした者もあつたということも事実であつたのではないかと思うのであります。勿論併しそういう事柄はそれ自体検察の問題ではないわけでありまして、ただ検察といたしましては、警察官自体がこの運動に入つて行くということになりますると、これは国警であろうが自治警であろうが、公職選挙法の建前から禁止しておることでありまして、この点については恐らく検察としても或る程度の注意を払つておつたことはあろうかと思うのであります。で、この事案の検察の動き方でございまするが、先ほど明確にいたしました通り、事前において検察が発動したという事実はないのでございまして、これは先ほども申上げましたるごとく、投票後において調査に乗出した、こういうわけであります。そうしてその結果は、先ほど申しましたごとく署長並びに次席警部の不法行為が発覚いたしましたのでこれに対して起訴をしておる。この起訴事実全部について私は当然かくのごときものは検察として起訴すべきものであるかどうかという点につきましては、私は個々の事実につきましては相当私個人としても意見はあるわけでございまするが、併し事件としては必ずしも不問に付すべきものでないと思います。殊に取締の立場にあるべき警察官が出入りの業者の印章を偽造するというようなことは、これは普通にある小さな事件というものではないのでありまして、私は性質としてこの事件について少くともその一点について起訴をしたということはこれは当然であると思う。又起訴をする以上はそれに附け足りにいろいろなものを出す、これはむしろ附随的なものでさして重要な問題でないと思います。併し若しさような主要な点がなく、ただ酒を二、三升もらつた、或いは炭を署員に分けたというような事柄だけであつた場合においてそれを事件として起訴するということになりまするというと、これは私は検察として或る程度行き過ぎだという批評は免かれないのではないかと思いますが、具体的の事件につきましては少くともこの写真代を騙取するに当りまして印鑑の偽造までしておるというような点なんかを考えますと、これは微罪として見逃すには警察署長、或いは検察官という立場からいつてかなり重大な問題ではないかと、こう思うのであります。併しいずれにいたしましてもかような事柄ばかりでなく、すべて検察政治的な動機によつて動くということについては私としては厳に戒しめておるところでございまして、この点は将来とも十分に注意をいたしたいと存じます。
  40. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 もう一点伺つておきたいと思いますのは、今私が申しました松喰虫事件の件ですが、この松喰虫事件を総裁は御存じになつていらつしやるのか、若しも私が聞いたごときことが事実あるとしますならば、これはどういうふうに処置なさるお考えか。それと、もう一つは事前に国警のかたたちが国鉄の渡邊君などの自宅へ行つて、ためにならんぞ、というようなことを言つたことが国警として問題にならないのかどうか、逆にその人たちにもいろいろ問題があるのではないかと思うのですが、その点承わつておきます。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は私も選挙区が島根県でありますので地方のことはよく知つておるのでありますが、御指摘の松喰虫事件なるものは私初めて聞いたことでございまして承知いたしておりません。と申しますのは、私もこの仕事をやつておりまするので最近殆んど郷里に帰つておりません。それから又郷里から新聞も来ておりますが、なかなか一々詳細に読む時間もございませんので、不敏にして今日までそのことは聞き及んでおりません。併しお話のようなことが果して事実であるといたしますと、これは十分に調査をして見なければならんことであるのであります。それから国警の職員が町会議員に何か警告を発したとか、或いは国鉄の職員に警告を発したその事柄はそれが政治運動と認めらるべきものでありますならば、これはやはり厳に戒しむべき事柄であると思います。この点につきましてもなお国警のほうにそう申しまして、なお一段と調査をいたして見たいと思います。
  42. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まだほかにいろいろ伺いたいことがありますけれども、関連でございますから……。
  43. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 岡部委員質問は……。
  44. 岡部常

    ○岡部常君 私も通告しておりますが、私は少々時間をとりますが、時間が今日は余りありませんようですから、次の中山さんにお譲りしたいと思います。中山さんは先ほど伊藤委員の発言の関連事項でありますから、それをお願いしたほうが適当だろうと思います。それからこの際ついでに申上げておきますが、成るべくその議事進行上関連する事柄はそのときにやつて、又あとになつて蒸し返さないように議事を進行して頂きたいと思います。ついでにその希望を申上げておきます。
  45. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 承知いたしました。今日は十二時三十分でやめたいと思いますから、その意味におきましてどうぞ。それじや中山君。
  46. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は法務総裁にお伺いしたい。現在我が国民のすべては惰力の中を泳いでおる姿であります。一つの見識もなければ、一つ目標もなくて、ただ現在までの惰力のうちを泳いでおる、無意識に泳いでおる。でありますから、政治上の問題、或いは将来の国家の動向に関する指標というものが、何ら政治問題に関する討議のうちに現われていない。これは誠に悲しむべき現象であると私は常に痛歎しておる一人であります。そこで私がこの伊藤さんの質問関連して、お尋ねしたいのでありますが、先だつて、私の道徳の拠点をいずこに求むべきかという参議院の本会議における質問に対する天野文相の言葉が、あちらこちらで問題になつておるのでありますが、成るほど天野さんは人格者であり、学者でありましようけれども、併しそれは聞き覚え、読み覚えの知識しか持たないから、そこに不明確な答えが出るのではないかと思う。その見覚え、聞き覚えのすべての知識を総合して、確固不動の大信念があれば、かくのごときまずい答弁はしないだろうと思う。仮に答弁したとしてももう少し徹底した、掘り下げた批点というものを明らかに国民に示し得ることはできると考えております。勿論今日、憲法は有難い新憲法と言われておりますけれども、これとても載る意味では翻訳憲法であります。従つておのずからなる日本人の姿、おのずからなる日本人の気持というものは、まだ憲法のうちに滲透しておりません。これは私ども議員として非常に慨歎に堪えない次第でありますが、そういうことは一先ず、こういう委員会におきましては棚上げといたしまして、お尋ねするのでありますが、大体この教育基本法の第一條を見てみますと、どういうことが書いてあるかというと、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」ということになつておる。これは私は改めて文部委員会に出て詳細に聞くつもりでありますが、とにもかくにも、こういう目標の下に、教育基本法というものを定められておる。ところが政府かたがたも、こういうことは私と同じように棚上げをしておるのではないかとふだんから考えておる、だからですね、私の考えは、今日教育を受けた人が、例えば小学校や大学で教育を受けた人々の行動が十年後には日本にどういう影響を及ぼすかということを考えなければなりません。今すぐに教育というものが効果を現わすのではない。いわゆるデモ行進をし、プラカードを持つて、陛下の玄関に着くのを遮らなければならないという気持が十年後にはどういうふうに形を現わして来るか、そういう人が教壇に現われて無邪気な小供に教育をした結果がどういうようになるか、それを考える。従つてこれは憲法第十九條の思想の自由というような問題、成るほど思想は自由である。肉体は亡びても思想は永久に生きる。キリストでも釈迦でもその精神は生きておるから、これは何ともすることができない。できないが、これは高邁なる識見を有する指導者のかたがたの頭脳如何によつては動かせるものだ。例えばマルクスの簡単な著書が今日世界中の或る一部の人々の思想的指導者としての権威を持つておる。これは高邁な識見をマルクスが有したから、それに超越した思想を持つものが日本にあつたとすれば、マルクスはその前に影を没しなければならんのである。そういう点を十分政府としてはふだんからお考えになる必要があるのじやないか。これは単に法務総裁法律関係のことばかり取扱つてるのでなく、国務大臣の一人として当然お考えにならなければならん問題だと思う。そこでそういうふうな見識の下に立つて日本のいわゆる刑法上の脅迫とか、暴行とかいろいろなことを私どもは論じておりますが、この京大におけるデモ行進の問題について、政府としては事前にこういう問題が起るだろうという予想をしておられたかどうか。それからこの問題を現在吉田首相調査を命ぜられたというその結果に対して現地から何らかの報告があつたかどうかという点、それから若しこのプラカードを押し立て、インターナシヨナルの歌を高らかに歌つたことにより陛下御自身如何なる恐怖心を抱かれたかという点、或いはこの恐怖に基いて陛下の心持を動かして、質疑応答するという申込をしたかどうか、その質疑応答に対してどういう答えを求めたかつたかという点について、これが計画的になされたということが判明して参りました場合には、政府が卑屈な態度で、それは憲法上の思想の自由というようなことを言わずに、堂々たる態度を以て善処せなければならんと思う。これは文化の進展というものは、絶対的の真理に対する相対的の真理が、人智の啓発によつて階段的に合流して行く現象を言うのであり、この理想実現のために最大の努力を払ふのが人間の義務であります。私どもは飽くまでも人類は文化の進展に飽くまでも寄与しなければならん。そこにおいて卑屈であつてはならない。故に本件の場合は政府はすべからく徹底した事実の調査を遂げると共にその真相を発表して政府の態度を鮮明にしておかれる必要がある。従つてその行動の事前工作が、若し犯罪を構成するというような一点が判明した場合においては、如何なる御処置をとられるか。この点について、政府法務総裁としての御所見を承わつておきたいと思います。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 京都大学に行幸に際しまして何らか学生が騒ぐような虞れがありましたという点につきましては、多少の学生の何かの動きがあるのではなかろうかという予想は、政府としてはいたしておつたわけであります。この点は特審局といたしましても十分予想を立つておつたわけでございます。これを自治警察並びに学校当局にはその予想を申し伝えてあるはずでございます。当初学校当局としましては、京都の自治警察と連絡をとつて、そういう動きに対処するために何らかの方法で警察力を一部学内にあらかじめ入れたいというふうな考えも持つておつたそうでございます。前日になりまして再考せられました結果、警察力を一応お断りして、大学当局が自主的に処置する態勢をとつたのであります。こういうことになつたそうであります。その結果、事件が発生いたしました後に、急速京都大学の要請によつて、警察官が大学内に入つたというのが事実であります。それから調査の結果、どうなつておるかということでございますが、調査員は今朝京都へ着いたところで、ございまして、今、明日くらいに調査をいたしました上で帰つて来ると思いますので、まだ報告を受けておりません。  なおこの学生の歌つた歌に対して陛下がどういう御気持をお持ちになつたか、それについてはどういうふうに拝察をするかという点でございますが、この点につきましても只今調査員が行つておりますので、その結果によつて判断をいたしたいと存じます。それから学生が陛下に対して何か抗議文めいたものを差上げて、それに対して如何なるお答えを期待しておつたのかという点でございますが、この点も調査の結果によつて判断をいたしたいと存じます。
  48. 中山福藏

    ○中山福藏君 できるだけ私は今議会の会期中に法務委員会が開かれる余裕と申しますか、この開かれるまでに十分お取調べ賜わりましてこの委員会に報告をして頂いて、善後処置をとるということをお願いしたいと思うのですが、如何でございましようか。
  49. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 来週になればはつきりしたお答えができると存じます。その機会に法務委員会をお開き願えますればその際に申上げたいと思います。
  50. 中山福藏

    ○中山福藏君 時間がありませんからこの点についてはいろいろまだお尋ねしたいのですけれども、それは一先ずやめまして、第二点、私が英国の議会における、決算委員会が非常な権威を持つたものであるということを常に承わつておるのでありますが、日本の決算委員会の結果に現われました行方不明の金に対して何らの措置が講ぜられていないのがこれまでの例であります。即ち前年度並びに前々年度の何億万という行方不明の金がいつも報告のやりつぱなしになつている。これに対し国家予算の支出面を調査するために、行政管理庁だとか、或いは検事局だとか、決算委員会とかいうものがいろいろありますが、これらの諸官庁に会計検査院から諸種の報告をいたしましても殆んどうやむやに葬られている。故に国費の使途をいろいろと検査をして、そうして何とか国民のために金の行方を明らかにする措置を講ずる必要があるから、会計検査院の職員に対して公訴権を一応与えて見たらどうかと考えるのですが、如何でしようか。勿論決算委員会が相当の権威を発揮して、その効果が現われるというならば結構でありますが、現在ではこれを期待し得ない状態なのであります。ですからこれは会計検査院の職員にそういうふうな検事式の力を持たせるということが時代向きではないかと思うのです。何とぞこの点について御答えを願いたい。
  51. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 従来会計検査院におかれまして、政府機関或いは公共団体その他関係団体の経理の検査をされております。この際におきまして検査の結果によつて犯罪ありと考えましたときには、刑事訴訟法の規定によりまして正式に告発をされまするか、或いは非公式な連絡をとられまするかによりまして、検察権の発動を促がすというふうな連絡をおとりに相成つておるわけでありまして、この会計検査院の検査官或いは事務官に対しまして特に独立して公訴権を与えるという必要はなかろうと考えております。
  52. 中山福藏

    ○中山福藏君 従来私はこの問題につきまして、委員外の議員としていつも決算委員会に出席していろいろ十年間ばかり様子を見て参りましたが、何らの効果を現わしていない。そうして又その当該官憲が議員の立場を考慮すると申しますか、議員の立場の威力に恐れるのか、或いはこれを蔑視するのか何ら手を着けておりません。だからこういう問題を一応総裁に訴えまして、そういう気持を喚起しておいてこれに善処されるということを私は願うのであります。どうかそういう問題がありましたらびしびしやつて頂きたい参朝の毎日新聞を御覧になりましても、吊橋事件だとか、いろいろ事件が起つて、区長がどうしたとか、こうしたとか、或いは中央金庫の連中がどうしたとか、こうしたとかということが記載されております。そういうような事柄も、こういうことが粗略にされておるから起るんだろうと思う。共産党というものを非常に世間では恐れておりますけれども、そのよつて来たるゆえんはかくのごとき問題が粗略にされている結果と信ずる。少くともすべての社会不安のよつて起りまする原因というものは、こういう不満が結局政治問題として人々が一つの団体を作つて、これに反抗的な気持を持つ、それが一つ一の力となつて動いて行くのが、いわゆる共産党なんかというようなものに姿を現わすということは、これは言うまでもないことであります。而も今日知事会議の様子を見ましても、その補給金とか、奨励金とか、何とかかんとか言つて、それが国民の税金に還元して来るということはちつとも考えていない。むちやくちやな行政状態というものが現われて来つつあるのでありますから、どうかそういう、国民をして止むに止まれず佐倉宗五郎式のことをやるということの根源を政府においては十分お突止めになるように、又これを排除するようにお願いしておくのであります。  あと三分ばかりありますから、もう一遍お尋ねしておきます。私は北海道において共産党の人々が共和国を作るという宣伝をあちらこちらから聞かされております。又新聞雑誌なんかにもよく書いておるのでありますが、私自身の調査によりましても、幾分そういうふうな点があちらこちらから材料が入つております。こういう点について法務総裁としては十分お取調べになつたかどうか、或いはそういう懸念があるのかどうかというようなことについて、一言お知らせを願えれば大変結構だと思います。
  53. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 中山委員が前段にお述べになりましたが、この決算或いは会計検査の結果について、検察庁において本星関心を持ち、法の命ずるところによつて黒白をつけろという御趣旨につきましては、全く同感でございます。従来ともさような趣旨でやつて参りましたのでございまするが、今後一層御趣旨に副うように努力をいたしたいと思います。なお御指摘になりました事件の中で、私の気の付いておりますのでは、例の吊橋の問題、あの問題につきましては、すでに国会で問題になる以前に検察庁において調査をいたし、すでに石川県の当時の道路課長まで起訴いたしておるような次第であります。なお他の府県につきましても今後とも十分注意をいたして参りたいと思つております。  それから次に御質問になりました北海道の治安の問題でございますが、共産党が北海道におきまして拠点工作をやつておる、或いはそこに特殊な共産党の勢力範囲を打立てたいというような計画があるということは、情報としてはいろいろ聞いておるのでありまするが、併し今日確認をいたす程度にはなつておりません。併しながらさような情報もありまするような次第でございますから、当局といたしましては特に土地の関係上そういうような点には注意をいたして調査を進めておる次第であります。
  54. 中山福藏

    ○中山福藏君 私はもう結構です。丁度時間になりましたから……。
  55. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  56. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて……。
  57. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 京大の問題が先に出ましたので、それに附随して私伺いたいと思うのですが、先ほど伊藤委員が相当質問なさつたので、私質問するところがないと思うのですが、昨日の一松さんの質問を伺つて見ますと、私は又一つ心配が起つて来るわけです。一松さんの発言を、考えようによりますと、曾つて鳩山文相が京大を弾圧した当時のような、ああいうふうにも理解できるような発言があつたと思うのですが、今度の京大の学生の騒動を余り世間が大きくやかましく取扱い過ぎているのではないかと私は考えるので、今日の新聞を見ますと、京都の市警は、これは犯罪を構成しないということを言つているようです。そういう問題を何故世間がこんなに大きく騒ぐかという点に私は問題があると思うのです。併しもつともつと世の中にはいろいろな問題がたくさんある。非常に重大な問題があるのに、それを余り問題にしないで、陛下の空車を学生が取巻いて、而も労働歌となつておりますが、あの人たちが歌う歌は皆労働歌と言つておりますが、決して労働歌ではなく、平和の歌を歌つたというように或る新聞に出ております。平和を守ろうという歌を歌つたことがどうしていけないのか。あの学生の意図を私は調査をしておりませんから何もわからないのですが、青年たちが、戦争が近付いて来るのではないかというような不安の念に駆られて、陛下の平和に対する御意見を伺いたいというような、そういう純な気持から平和の歌を歌つて陛下に面接を求めたというのだつたら、そんなに騒がなくてもいいことじやないか。それほど陛下の問題を取上げて騒ぐのは、やはり過去の陛下の神格、折角人間になられた陛下をもう一遍神様に閉じ込めよう、奉り直そうという、神棚を作つてこれへ押し込めようとするような、そういう意図の下にやられているのではないかどうか。一松さんはそういう考えではないだろうと思いますが、今そういう気持がやはり国内に相当起つているように思うのです。ですからこの問題は扱い方によつて非常に複雑になると思うのですが、私は何故あのことをあんなに大きく取上げてやつているのか。もつともつとほかに問題にしなければならないたくさんの問題があるのに、それを等閑に付しているということに私は一つの疑念を持つ。それからあの生徒の裏には大学教授が糸を引いているというようなことを発言なさつたと思いますが、大学でマルクス経済学を教授することは、これは自由、それは各委員とも御同感と思うのですが、その教えている教授が糸を引いてやつている節がある、そうしてその教授をそれならば処罰すべきだというような意見があつたように思うのですが、これは私たちとしましても非常に危険なものの考え方ではないか、こうなれば鳩山文相の二の舞になりますし、なお南原総長が単独講和反対、全面講和と、両條約に対して反対意見をこの間学生を集めたお別れの挨拶の中で言つたことに対しまして、衆議院のほうでは、或る自由党の議員がけしからん奴だというような意見を述べ、文相に対しまして罷免すべきだというような強い意見まで出ているように思うのですが、こういうことが今日言われて、口に出て来たということは私は日本の民主化に逆行だと思うのです。この一松さんの御意見に対しまして、又自由党の諸君が南原総長に対するあの発言に対しまして、法務総裁としましてはどういうふうに考えていらつしやるのか、伺つておきたいのです。
  58. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は国会議員のかたが国会においてお述べになりました御意見について、一々批評すべき立場ではないと考えております。なお京都の事件が非常に大きく取扱い過ぎるではないか、こういう点でございますが、これは新聞紙が大きく取扱うのはこれは別問題といたしまして、法務府といたしましては、調査に特に係員を派遣いたしておりますが、この理由は先ほど申上げた通りであります。特にこの事件のみを大きく取扱つておるというつもりはないわけであります。併しまあそうした立場を離れまして、私個人の気持から申しますると、少くとも国の象徴であらせられまする陛下が京都大学にお越しになつた。その際において京都大学の学生質問書をああした形において提出するということは、これは国家象徴としての天皇に対して、先ず第一に国民が普通考えておる礼儀の基準から言うと、礼を失しておるという節があるのではないか、特にそれが最高学府の学生であるという場合におきましては、これは教育界の一つの問題として相当大きく取扱われることも当然ではないかと思います。なお又この行動の背後におきまして、共産党の関係があるのではないだろうかという推測がなされている場合において、この問題が相当大きな問題になつたということは、これは当然なことではないかという気持を個人としては持つているわけです。
  59. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 一昨日の総裁の答弁によりまして、京大に最初から官憲も入れようかという御意見もあつたが、大学には自治があるから官憲は入れないほうがよいという御意見だつたようです。大変それは結構で、大学当局の要望によつて警官を入れたというお話だつたと思うのですが、それはよいと思うのですが、その総裁の御意見にもかかわらず、私たちは最近非常な不祥事件を耳にしているわけです。それは東大の問題です。去る十月十九日に東大の工学部全研究室、それにいなかつた不在の教授や助教授研究室まで不当に検束し捜査がなされたというこの事件ですが、総裁はこの問題をよく御存じでしようか。
  60. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 東大の各部の研究室に不法文書が配付されているということを基礎にいたしまして、その不法文書を捜索いたしまするために、捜索をいたしたという事実はございます。
  61. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつとなんですが、御発言中ですが、あとに理事会がありまして、一時から小委員会が又あることになつておりますが、まだ一つ一つらいはいいですが、大分……。
  62. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大分長くなるのです。
  63. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは次ぐらいにお願いいたしまして、これで委員会を……。
  64. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ちよつと今の、詳細な報告書が参りましたから、只今の須藤委員の御質問の点、報告書が参りましたので御紹介申上げます。  昭和二十六年十月十九日東京大学建築学科の建物を捜索した件について、警視庁は昭和二十六年十月十五日、昭和二十五年政令第三百二十五号被疑者として逮捕した伊藤寧子の件に関連し、昭和二十六年十月十七日東京都内数カ所を捜索し、押収したノート、書類、メモ等により更に三百二十五号違反容疑事実を認められたので、配付先の一つと認められた前記東京大学建築学科を十月十八日警視庁係官が捜索差押許可請求をなし、東京地検を経由し、地裁判事の令状の発付を受け翌十九日午前七時から八時三十分までの間右場所の捜索を実施したものである。捜索の状況及び結果については平穏に執行を終つたのであるが、右執行中関係職員、即ち工学部長も立会い、同人に了承を求めている等慎重に行われた。執行の結果差押えるものを発見するに至らなかつた。こういうわけでございます。
  65. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題に関しましては私たちが入手している情報もありますので、いろいろ伺いたいと思いますが、今委員長がああいうことをおつしやつていますから、今日で終りませんから次の機会に譲りたいと思います。これで終ります。
  66. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは委員会はこれにて閉会いたします。    午後零時四十分散会