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1951-11-13 第12回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十三日(火曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————   委員の異動 十月十一日委員山田佐一辞任につ き、その補欠として左藤義詮君を議長 において指名した。 十月二十九日委員北村一男辞任につ き、その補欠として團伊能君を議長に おいて指名した。 十一月九日委員團伊能辞任につき、 その補欠として小串清一君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            伊藤  修君            鬼丸 義齊君    委員            棚橋 小虎君            岡部  常君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            須藤 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (法務総裁に対する質疑の件)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは、これより委員会を開会いたします。  実は、これまでしばしば開催しなければならんのであつたかも知れないんですが、いろいろ委員各位におかれましても諸般の事情がおありでありますし、特に法務総裁は、いろいろ講和条約その他に関連しまして、各方面の御答弁の衝に当られた結果、その時間がないために、荏苒今日に至りましたのですが、今日もいろいろの事情から午前中、但し一時までくらいは継続してもいいかとも存じまするが、これは午後一時以後は大体において委員各位の中にも御都合もありますし、そのくらいで今日は委員会を終りたいと思いますが、差支えないでしようか。如何でしようか。
  3. 須藤五郎

    須藤五郎君 今日だけじやなしにまだ続けて法務総裁は出て頂けるものだと思いますので、今日はそれで止むを得ないとして、又明日でも、明後日でも続けて総裁の御出席をお願いできるならそれでいいと思います。
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 適当な時期に次回を続いて開くことにしまして、総裁の御出席を願いたいと思います。
  5. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私は平和条約の第十一条の前段にありまする、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷裁判受諾し、それから且つ又日本国で拘禁をされておりまする日本国民にこれらの法廷が課した刑の執行をすることに関して、条約をここに締結をすることに当りまして、政府見解を明らかにしておく必要があると思うのでありますから、この点について総裁の御所見を承わりたいと思います。或いは事条約に関することでありまするから、本院における特別委員会において質問をすることが適当かとも思いまするが、併し私の承わりたいと思いますることは、条約もさることでありまするけれども法務関係から見ていかにも不自然でありまするから、この点をこの委員会において伺うわけであります。即ち一九四五年の九月二日の東京湾頭におきまする条約締結いたしましたポツダム宣言受諾によりまする同宣言の第十項にありまするいわゆる「俘虜ヲ虐待セル者含ム一切ノ戦争犯罪人二対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルベシ」ということを受諾いたしておるのでございます。そこで先ず私は政府は同宣言にありまするいわゆる「戦争犯罪人」というものはどんなものを一体指すことに解しておられるかということを先ず伺いたいのであります。いわゆる同宣言中にありまする戦争犯罪人といい、又今回まさに締結せんといたしまする平和条約第十一条による戦争犯罪人のいわゆる意義並びにその範囲、これを一つ伺いたいと思います。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 戦争犯罪人と申しますのは、戦争犯罪人処罰の際におきまして、連合国法廷ができまして、ここでいろいろな事案を覆つておられまして、先ず今次の戦争を誘発するについて影響力を持つたという戦争誘発についての責任者、それから戦争の進行中におきまして正義人道に反する行為によつて相手国国民を虐待した、こういつたいろいろな分類があつたと存じまするが、併し現在におきまして講和条約第十一条によつて戦争犯罪人として日本受諾いたしまするのは、これはすでに国際法廷並びに連合国軍事法廷におきまして有罪として刑の言渡しを受けた入々を考えておるわけであります。特に十一条の中におきましては、そのうちで日本において拘禁せられておる人々のみを指しておりまするので、これらに対しまして講和条約発効後において日本政府がその裁判趣旨従つて引続き刑の執行責任に当る、こういう意味理解をいたしております。
  7. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 只今総裁お答えは、あたかもポツダム宣言中にありまする文字、並びに本条約中にありまする文字をそのままお答えなつただけでありまして、私の聞かんとするところは、我々の立場から見て、戦争犯罪人というものは如何なるものであるかということを、先ずその定義をきめなければならんじやないかということについて伺うのでありまするが、それについて大体私は戦争犯罪人実体というものは、これは私は今なお実は理解しがたいのであります。犯罪として処罰をいたしますることは、これはあらかじめ明確なる実体的規定があつて、それに背いた場合のみに処罰をせらるべきものであるという我々は観念を持つております。いわゆる知らしめずしてよらしめるというようなことのごときは、むしろ昔の一つの今は物語りになつておるようなわけであります。今日それはひとり日本ばかりでなく、世界いずれの国におきましてもさようであると思います。いわゆる刑罰法規によつて処罰せんとするには、先ず似て知らしめて後に初めて犯則してこれが犯罪者として処罰するということが、これが原則であると思います。而してそれは不動の原則であると思います。然るに太平洋戦争終了のときにはまだ私はその明文というものの規定の存在を知らない。若しそれ強いてこれを存在するということでありまするならば、その処罰は必ずこの処罰する条件のある者のみに限らなければならんと思います。それのみならず更に又一つ行為があるといたしましても、その行為が実に止むを得ずに出でたる行為のごときにおきましては、犯罪の形態を備えたといえども、なお成立を阻却する場合がある、かように実は私ども理解いたしております。現にこの戦争犯罪人の問題につきましては、やはり西欧あたりにおきましても、一つのフアース、いわゆる一つの喜劇であるというふうなことすら極端な批評を受けておりますのであります。現に一つの大きな問題として課せられておるという一例からいたしまするならば、曾つて山下大将がフィリピンの軍事裁判において死刑判決を受けた。ところがこれに対して合衆国の最高裁判所に上訴いたしました。そうして非常な罪の有無についての議論がありまして、結局たしか七人の判事中三対四、いわゆる一名の有罪意見者によつて、遂に不幸なる最終的死刑が確定をいたしたように記憶いたしております。それのみならずこれは私の或いは記憶違いかも存じませんけれども、いわゆる戦争犯罪に対しまする連合国裁判というもみについての処罰の対象となる実体法の存否につきましては、かなり当時専門家の間におきましても大きな一つの課題として議せられた。又多分マッカーサーみずからもウェーキ島あたりですかの談話の一節として、この裁判というものは甚だ悪い裁判、悪いことであるというようなことを当時マッカーサーも言われておつたように私は記憶いたしております。更に又一つ刑罰ということになりまするならば、かくのごときことをなしたならばどういう刑に処せというようなことの、刑罰のやはりすべというものもあらかじめなければならん。成るほど日本明文を以て実体法の定めをなしておりまするし、而もよるべきところは極めて明確になつておりまするが、例えばアメリカのごとく一つ慣習法を以ていわゆる不文法を以てなお且つ処分されまするような国柄におきましても、私はその立場から立つて見ましても、むしろこの太平洋戦争における国際裁判というものは、私は曾つて慣習がないのじやないかということの疑いを持つております。成るほどこの一つ先例といたしましては、かの欧洲第一次戦争におきまする例のドイツのカイゼル戦犯者として処分ようというようなことのときに問題が起りまして、当時多分カイゼルオランダに亡命いたしておりますときに、戦犯者として処分するためにその召喚を求めたけれども、到頭オランダのほうから、それは政治犯であるからという理由を以てその召喚に応ぜしめなかつた。これがために遂にカイゼル戦犯裁判というものはなくて終つたのです。庭に又その当時おいて、残りの他の戦犯嫌疑を持つておりまする者につきましても、国際裁判としてこれを処分することは、法律上において多大なる疑義があるというようなことから、結局結論においてはやはり国内法で以てそれぞれ処分をいたしまして、あれは解決したように思います。そういうことから考えて見まするというと、慣習法、いわゆる先例というものは今まで曾つてないのじやないか。五千年前のエジプトの戦争以後の歴史から見ましても、殆んどそういう戦犯なんというようなことについての歴史がない。そうすれば即ち今度の太平洋戦争におけるところの今度の国際裁判というものは、むしろ一つテスト裁判になるのじやないかと、かように思います。私の卑見を以ていたしますれば……。さよう意味から考えますると、なお以てこのいわゆる裁判というものに対しましては、理解が今なお私はできない。然るにポツダム宣言受諾当時におきまする立場におきましては、殆んど、私は無条件降伏とは言いません。やはり条件付降伏、当時双方の条約による休戦条約だと解しておりまするが、仮にこれを百歩譲つて無条件降伏であるといたしましても、とにかくその当時の事情からいたしますれば、これは止むを得なかつたと思いまするが、今日より考えますれば、ただ戦争犯罪人などと言つてそうしてただ頬かむりで以てむやみにそれを受諾して、一体我々が正義人道意味においていいのであるか、こういうことに対しまする一つの私は疑いを以て至つておるのであります。御承知のように一九四八年の世界人権宣言中におきましても、個人たる人権に対しましては、それぞれやはりその国の憲法或いはその他の法律によりまして、個人たる自由人権というものは第一義的に取上げてこれを尊重しなければならん。  そこで私はその意味から考えて見まするというと、明文もなく慣習もなく、而も今判決を受けましたる戦犯者というものは国内的には少くともこれは犯罪とは思えない。一方においては、当時陸軍刑法というものがありまして、上官命令に対してはその事の如何を問わず服従をしなければならんという規定があつた。絶対にそれに対しては背反することができない立場に置かれておる。若し仮に背反したといたしましたならば、その者は陸海軍刑法において重き処分を受ける。従つて上官命令に従いまする一切の行動はその是非の如何にかかわらずその命に従つて行かなければならないということになつておりますことは、これは明文が物語つておるそのいわゆる行為が而も明文もなく慣習の事実もなきににかかわらず、一つ犯罪となつて而も中には死刑になり、或いは無期になり、いわゆる長期重労働というようなふうな重大な刑罪を負わされたる我が日本国民があるといたしますれば、当時戦争は国を挙げて勝たねばならんということに対しまして国民を挙げて燃えておつた。この間にありました行動なり、日本国立場からいたしまするならば、少しも犯罪ということには私どもは考え得られない。それにもかかわらず、これを犯罪者として処分を受けた。そのいわゆる刑罰執行犯罪者と思わない日本国政府執行するというに至つては、何を一体以てそういうようなことができるだろうか。世界人権宣言にありまする個人たる人権は、基本人権というものは、尊重しなければならんことは世界共通の大原則である。それでその大原則たる基本人権戦争という特殊な事情の生じたことによりましてでき上つた一つ裁判には相違ありませんけれども、ここに最終的にその裁判を我々は受諾をして、而もそれに対する国内的に見ても犯罪でないという者に対して、国がそれにいわゆる鞭を以て刑の執行に当るというようなことは、どう考えましても私はその理解ができないのであります。されば冒頭に私が総裁の御意見を伺いましたのは、いわゆる戦争犯罪とは何ぞ、我々の理解する戦争犯罪、いわゆる犯罪というものの理解が先ず先決でなければならん。而もこれまで受けられた裁判というものが、内容的にはさよう意味において実体的犯罪でないというもんじやないかという疑いを持ちますが、そこで受諾に当つては、各国裁判というものを政府のほうでは、検討を加えて我々が見ても、裁判の結果そのものは、ことごとく本当にいわゆる犯罪であるということを検討を加えたかということも併せてこの際承わりたいと思います。  私の最終的にここに質問をいたしますゆえんのものは、国情今日の場合でありまするから、あえて反動的な質問をするものでもなんでもありません。これを我々が法律生活に対処するものとしてどうして一体この塩梅を調節して行くのか。又而もこういうような不自然なことで以てこれを受諾して執行ができるだろうか、一方においては殺人、強盗、いわゆる私利私慾によるところの犯罪として口にすることすらいまわしき犯罪、これと一体国の殆んど犠牲となつておる立場にありまするものと同一視していいのだろうかということ等を私は考えて見ますると、非常にこれは大きな問題である。若しそれ、それが私どもの主張が本当に根拠があるものといたしましたならばこの条約締結に当つては、政府は全努力を挙げて世界に向つて私はこの正義人道を説いて、何らかのいわゆる解決点を見なければならないんじやないだろうか。かように実は思いますることによつて、本問題を取上げて総裁意見を伺うわけであります。御意見を承わりたい。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今鬼丸委員のお述べになりました点につきましては、私も今日の近代的な刑罰制度というものの本質から見まして、殊に各国憲法において罰刑法定主義という原則をとつております。これらの点から考えまして、この戦争犯罪処罰ということについては疑問があるという点はこれは決して否定できないということと存ずるのであります。すでに併しこの問題は戦争裁判法廷におきまして弁護人側よりも強く主張せられたところでありまするが、それにもかかわりませず戦争裁判法廷におきましては、戦争犯罪人としての判決の言い渡しがあつたわけでございまして、我が国といたしましてはポツダム宣言受諾いたしました結果、これらの判決に対しましてはその権威を認めざるを得ないと存ずるのでございます。もとよりこの裁判は、又この裁判によつて執行せられまする刑罰執行というものが国内におきまする普通の犯罪並びに刑罰観念とは根本的に違つておる点があると存ずるのでありまして、これを当然我が国内において刑罰執行すべきものであるというふうに考えるべきものではないと思うのでありまするが、併しながら平和条約におきましては、第十一条におきまして日本国が特にこれらの裁判受諾し、且つ日本国で拘禁されておる国民に対しまするこれらの刑を執行するという責任条約によつて引受けておる、こういうことに相成るわけでございまして、このことはポツダム宣言受諾いたしました結果止むを得ないことであろうとこう考えておるわけであります。従いまして十一条の義務を政府が履行いたしまするには、当然現在の国内訴訟法、或いは刑罰執行の行刑の法規、こういうものによつて当然なすものではないのでありまして、これは十一条を執行するために日本国で新らしく作り出される一つ制度でございまするからして、これに対しましては、当然新たなる法律を必要とし、それによつて適当なる刑の執行をいたす、こういうことに相成ると考えるわけでございます。
  9. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 総裁お答えは、どうも私の問わんとするところの核心に触れないので甚だ遺憾に思いまするが、私は手続のこともさることでありまするけれども、これをこのいわゆる裁判というものが本当の意味における一つ戦争犯罪ということで以て罪になるやならんかということについての見解はどういうふうに御覧になつておりますか。先ずはしようて一遍伺つておきたいと思います。これまで国際裁判において有罪判決を受けた、そのいわゆる裁判というものを我々が、国が受諾する。受諾するにはその裁判内容というものはどういうふうになつておるかということを検討を加えて見なければ受諾ができない。果していわゆる各裁判に対して政府検討を加えた上のことであるかどうかということを一つはしよつて承わりたい。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 第十一条の趣旨は、各個人に対して行われましたる裁判につきまして日本政府が自主的な立場から検討を加えた上で受諾するという意味ではなく、正当なる手続によつて確定いたしましたる裁判日本国においては当然にこれは有効な裁判として受諾をするとこういう意味であると考えるわけでございます。
  11. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは一体そのあなたのお答えがどうも私はわからない。裁判という形のあつたことは違いありません。併しながらその裁判をいわゆる受諾をして、而もその刑の執行までも自分のほうでしようかすまいかということがここに条約にあるのですから、従つて各個のところまで、各個裁判はやはり一つ裁判です。その裁判というものについては、それを受諾する限りにおいては執行するには各個裁判基本となつて、その裁判受諾して初めて刑の執行になる、そういう包括的な意味のものじやないと思うのです。政府は恐らくそういうようなお考えの下に頬冠りで以て結局受諾するのじやなかろうかという私は疑いを持つておるのです。その意味においてそういうことについて検討を加えておるのかどうか、今の総裁のお話によりますると、結局それは各個事件検討を加える必要はないのだ、俺のほうで包括的に、結局裁判があつたという事実に基いて、それを受諾して、言うがごとくにこれを執行するのである。これじや一体話にならんことになるのじやないかと思うのです。やはりそれは道理従つて私は行動するということは世界いずれの国におきましても、その道理は聞いてくれるものであるというふうに考えます。そこで一応内容検討を加え、甚だ理解しがたいものがあるならば、それを一つの種として私はこの講和条約締結のときを期して政府の一段の努力をお願いをして、これらを種にして、私はそれをしもなお且つ刑を執行しろということは無理ではないかということを言うのは、世界に向つて正々堂々私は言えるのではなかろうか、さように思いまして今伺つたのであります。で包括的のそういう形だけを理解をして、これを承諾し執行するといいましても、一方においては、憲法にはもうすつかり、日本憲法の上から行きましては憲法の十一条におきましても、十八条においても、三十四条においても、三十九条においてもこれらの関係等を睨み合わせて見ますならば、政府が国と国との間において如何なる条約締結いたしましても、個人たる基本人権に対しましては世界共通の私は動かすべからざる一つの権利、これと睨み合わせて勘案いたしまするならば、さよう包括的見解を以てこれを承認をし、これを執行するという約束を政府がするとは非常な私は矛盾したことではなかろうかとかように思います。そのいわゆる理解をどういうふうに政府はお持ちになつておるかということも合せて伺いたい。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 元来のローといたしまして、戦争犯罪なるものは、これは国内法上におきまする犯罪観念すべきものでは私はなかろうと思います。これは国内法におきましては、飽くまで犯罪者ではない。従いて国内法の適用におきまして、これを犯罪者と扱うということは、如何なる意味においても適当でないと思うのであります。ただポツダム宣言という一つ国際的な事実を基礎といたしまして、これを国際一つ犯罪というふうな観念を持つて取扱うべきものである。これが将来十一条の結果に上りまして、日本政府がその刑罰執行する場合におきましても、これを国内法上の犯罪者と同一視いたし、又同一の制度によつて行うということは、これは到底考えられないことでございます。これにつきましては、十一条によりまして、その裁判受諾いたした政府といたしましてその裁判内容となつておりまする刑罰執行に当るというわけでございます。もとより各国法廷におきまして、それぞれ法廷手続によりまして慎重に裁判をせられたものであることは、これは疑いを容れませんが、併しながら何分にも長い年月に亘りまして、各地に亘つて行なわれましたる判決のとらえておりまするいわゆる犯罪事実と目すべき事柄が、果して如何なるものであつたかということは、これは個々の裁判になりまするならば、いろいろ批判の余地もあり得ると思うので、ございまして日本政府といたしましては、これらの裁判につきましては、全般的にこれを受諾いたし、これの執行に当るわけでございまするが、併しながら今後日本政府として十分な調査、その他によりまして、減刑、赦免等或いは仮出獄、こういうような措置を勧告する権能を日本政府としては持つておるわけでございますが、各個の人につきまして、これらの権限を十分に行使することによりまして、できる限り適正な結果を得るよう努力すべきものである。こういうよう政府の今後の立場としては考えておるわけでございます。
  13. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうしますと政府としても、今国際裁判において裁判を受けて有罪判決を受けておるものは、日本政府見解としては、日本国立場から行くならば、それは犯罪ではないのだ、いわゆる犯罪者じやないのだということは、只今総裁の明言せられたところによつて明白になつたのでありますが、そこで政府みずから犯罪者でないことを認めておつて、而もその犯罪者でないものを犯罪者として裁判をしたことを受諾して、そうして而もそれに対しては刑の執行に当るということについて、そこで私の只今指摘いたしました日本国憲法中において犯罪者でないものが、いわゆる刑の執行を受けるはずはございません。そういう点についての基本人権との関連はどういうふうに政府としてはお取扱いになられるか。先ほどお答え一節にありました、このいわゆる刑の執行については、新らしき立法を以てされるということでありますが、それは一体どういうことで以てその関係を調節するかということを承わりたい。
  14. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 十一条におきまする国際軍事法廷、或いは連合国戦争犯罪法廷におきまする刑の言渡しということは、これは日本国政府立場から言いまするならば、国内法上の犯罪者に対する裁判というものではないのでありまして、いわば外国裁判所裁判というわけでございまして、これは本来ならば裁判をいたしましたる国におきましてその刑の執行に当るのが当然だと思うのでございまする。併しながらこれら実際刑の執行を受けまするかたがたの立場から見まするというと、同じ刑の執行を受けまするならば、日本帰つて日本国内において刑の執行を受けるということが望ましいのではないか。そういうことを可能にいたしまするものが、この第十一条の条約規定である、こういうふうに考えるわけでございます。これは従いまして国内法上の犯罪に対する刑の執行とは全然違いまして、外国裁判所判決を特別の条約上の規定によりまして日本が代つてこれを執行するというよう立場にあるものと思うわけでございます。
  15. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 今日本連合国との関係は、私今更ここで申上げるまでもなく、実質的には不対等的の立場にありますから、私は不能なことを強いる意味ではございませんけれども、若し日本国民日本国の納得の行かざることによつて他国の手続或いは他国の権力によつてその権利を侵され、そうして一つ刑罰的制裁を受けたというふうなことがありとするならば、その日本政府は、その個人のいわゆる権利を擁護するために全努力を傾けて本人を救い出してやらなければならん。ところがこの際私は大きなそこに一つの矛盾があると思いますることは、日本国立場で行くならば、今の戦犯者となつておるものは、罪も何も犯したものでない、戦争の結果、他国からそういう判決を受けたのだ、判決を受けて納得が行かないけれども、彼等はその裁判を受けておるのだから、その裁判の前には執行を受けるのだ、放つておけば他国で執行を受ける。それよりも日本執行を受けたほうがよかろうということから日本で代つてやるようなつたのだということで片付けてしまつたのでは、本人がたまらない、総裁見解のごとく、罪なくして罪に服しておるものならば、いわゆる本人の基本人権を国が代つて救い出すことに対して全努力を傾けなければならんと思う折から、その問題を最終的に処理せんとする条約締結に今ならんとするときでありますから、この際こういう矛盾がある。こうしたいわゆる不自然、こうした人道問題をひつ下げて政府連合国なり、或いは世界に向つてもこれは叫び、而も基本人権を尊重して行くことは、正義の上から言つても、人道の上から言つても当然なことだ。私は従来の戦争におきまする講和条約におきましては、戦争責任者の処置につきましては、講和条約締結によりまして一切の責任が解除せられる。然るに今回の講和条約におきましては、この条約の十一条によつてすでになしたる裁判はこれを受諾し、而もそれを執行して行かなければならん、こういうふうに一つ残されております。只今総裁のお説のごとくに、ただその場合に、いわゆる戦争犯罪者に対しまする赦免、減刑、仮出獄等の手続規定がございます。裁判をなしたる国の意思若くは日本国の助言によつてそれらのいわゆる赦免・仮出獄、或いは減刑等の処置ができることになつておるのであります。で私はここに追放解除者の処置と来せ考えて見ますると、余りにも相違のある、措置について寛厳の度がひどすぎると思います。それぞれ追放をされた人も、やはり一つの広義の意味における戦争責任者であります。その戦争責任者講和条約の最終的批准もなき前に、すでに大部分解除されておる。而も解除された者は恩給をそのまま復活するというようなことすらあります。非常に寛大なるにかかわらず、戦争犯罪者に対しまする方面におきましては極めて峻厳である。而も先ほど来総裁の言われましたごとくに、そのいわゆる処罰を受けました人は、国内的にはむしろ国の犠牲者です。そのいわゆる犠牲者が極めて従順に、私の聞き知つておりまするところによりますると、巣鴨における戦犯者の服役ぶりというものは、実に世界に例のないような従順な成績を挙げておると聞いております。未だ曾て一人の逃走者等も出ず、或いは処罰等も受けたことなく、もともとこれらの人というのは、本人を懲戒するというのが目的でなくして、むしろ今後の戦争の防止のいわゆる一つの犠牲となつておる、それが目的に過ぎないにもかかわりませず、極めて従順に服役して未だ一回も反則等もなさなくして、殆んど先例のない程度に従順に服役しておると聞いております。而もその間五年或いは六年になんなんといたしております。こういうような実情下にありまする場合におきましては、政府は甚だ心苦しさを感ずるのでありますけれども、私はむしろこの講和条約、最終講和条約においては、追放解除と同様に一切の責任は本当は全部水に流してもらいたい実は希望を持つておりまするけれども、これはできん。できんといたしましても、これだけの大きな理由を持つておるならば、世界人権宣言をいたしておりまする世界に向つて、正しき主張を政府が本当に熱意を持つてつたならば、必らずやこのいわゆる主張は通るのじやないか、かように実は考えます。実はこれまで裁判を受けましたる各個事件につきましても、内容を解剖して、かくのごとき事情下にあつて実に気の毒な事情である、どの方面から見てもこれは憎むべきものでなくして、むしろ憐れむべきものである。いわゆる国の愛国者である。その愛国者に対して鞭を与えるということは無理ではないかということの主張を持つて行くならば、これは世界いずれの国でも通用する私は主張でないかと思います。で私が先ほど来から総裁にお尋ねいたしておりまする言言句々は、若し私の申上げますることにして誤りありとするなら、これを訂正することに少しもやぶさかでございません。若し実行し得られるものであるといたしましたならば、私は総裁としてはもう少し政府を代表する立場から熱意を持ち、そうして誠心誠意これに対して何とか善後の処置について考慮をめぐらしてもらわなければならんのじやなかろうかと思います。いわゆるこれだけの大きな実績と、これだけの事由とを持つております限りにおいては、ここで私は政府が本当に強い熱意を以て当られるならば、私は大部分釈放してもらうことの了解を得るものである。かように実は思いますることによつて、この大きな矛盾をその点において、その面において解決することが一番良策じやないかと思います。故にここで実は強く政府の熱意をお願いをするわけであります。そこで政府としてこれについて、更に連合国に対してどういうような態度を以てお向いになるかということについて、重ねて一度御意見を承わつておきたいと思います。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 鬼丸委員の言われることは誠に御尤もでございまするが、日本政府立場といたしましては、すでにポツダム宣言受諾いたしておるので、この問題につきまして白紙の立場から議論をするということは事実上困難なのでございます。その結果十一条におきましては、すでにポツダム宣言によつて日本政府が容認いたしましたところのこれらの法廷裁判というものの結果に対しましては、これを受諾をする、そうしてその執行に当る、こういうことをきめる以外に途はなかつた。こういう次第でありまして、この点は十分に御了察を願いたいと存ずるのでございます。
  17. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それではちよつと速記をやめて……。    〔速記中止〕
  18. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて……。
  19. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほど来御質問になりましたこの立法措置でございますが、立法措置につきましては、法務府で只今一案を得まして、司令部と折衝いたしておる段階でございます。
  20. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その一案の内容は、この際私どもに知らして頂くことができますか。
  21. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは次回に御説明させて頂きます。
  22. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 この講和条約がいよいよ締結されるということになりますれば、いわゆる日本は完全な独立国となるのでありますし、画期的の大いに意を強くすべきときでありますから、これを機会に国家的にも勿論広範囲なる恩赦のお考えはあると思います。私はそういうことになりますれば、先ほど総裁が言われましたように、むしろ講和条約を契機として恩赦を行うとするならば、若しその犯罪の種類から行きましたならば、第一義的にこれは大赦の対象となる時期であると私は思います。そこで私は、後で伊藤君の質問があるようでありますから、大体打切りたいと思いますが、実は恐らく今当面いたしました法務関係の重要事といたしましては、これほど大きな課題はないと思います。そういう意味において、若しも我々が政府としての立場からは、そう積極的に行かないという場合も、外交上のことでありましようから、ありますので、法務委員会としてこれほど重要なことはないと思います。そこで法務委員の手によりまして、各個裁判についてどういう裁判内容が一体行われたのであるか。ということは、私どもは今黒蓋でおる。そうしてその執行はどういうふうに行われておるかということすら全然知らない。こういうことのために私は同僚各位の御賛成があるのであるならば、この際当参議院の法務委員会においてこれを小委員会を作つて調査して見たいという希望を持つておるわけでありますが、政府のほうでは各裁判裁判書というものは入手されておるのでありますか。又入手していて、我々が資料を得たいと思いまする場合には、それを提供して頂けるようなことができるかどうか、これをもう一つ伺いたいと思います。同時に我々の立場から調査一つ進めて見たい希望を持ちまするが、それは政府としては差支えないものだと思いますか、或いは無用のものだと思いまするか。これをも併せてお伺いします。
  23. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 軍事法廷におきまする裁判書の内容につきましては、私ども未だ入手いたしておりません。それから刑の執行についてお取調べになるという問題でございますが、これはむしろ委員会御自体で御決定になる問題でございますが、私どもとして気付きを申上げますならば、現在巣鴨プリズンというものが、これが日本国政府の管理でなく、全く司令部の管理であるわけであります。ただ法務府からは周辺の警戒のために若干の用具を提供いたしておる程度という次第でございまして、政府といたしましては、政府の官吏自体も自己の権限によつて内部へ入るということができない状況であります。
  24. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 大変意外なことを私は承わりましたが、軍事裁判判決書など、私ども個人としても入手しておることもありますから、政府としてはどういう裁判が行われたかという裁判判決書は今なお全然黒蓋であるというのは非常に無責任千万と言わなければならないが、これはやはりできんことはないと思いますが、そういうようなことが私は政府のほうでは熱意が足らんのじやないか。やはり一国の国民がどういう裁判を受け、そうして又どういう運命にあるかということを、政府立場として私は知ることは、何も分けに、公然と言渡された判決書のことですから、政府が今なお全然興り知らず黒蓋だということは、私は甚だ意外なことだと思います。政府の力を私ども借りて、そうしていわゆる判決書を成るべくならばまとめて我々は見せてもらいたい。そうして政府のそうした助言その他の行動に入りますることを私どもの手からお助けして、そうしていわゆる目的貫徹のために挙げて努力をするということが然るべきではないか、かように私どもつております。政府のなさんとすることに対して妨げをする気持はいささかもないのであります。如何にすれば政府が目的を貫く上において便利であるか。これを私どもは主として助けて行きたいということから、私は先ほど御質問したよう調査会でも作つて行きたい。そういう意味なんでありまして、誤解のないようにお願いします。
  25. 伊藤修

    ○伊藤修君 法務総裁のお身体を借りるのに非常に難儀をしておる際、鬼丸氏から相当重要な点について時間をお使いになつたのでありますが、私は成るべく意見は差控えて、簡単に要領だけをお伺いしたいと思います。只今鬼丸氏から戦犯についての御質問がありまして、それに対して政府は鋭意努力されておる状態をつぶさに伺つて、御配慮の点に対しましては敬意を表する次第です。併し一面に国内犯罪人に対するところの考慮が払われておるかどうか。本会議その他において総裁の御意見を伺つておりますれば、始めておるがごとく感じられる。只今御答弁中にも恩赦のことも考えておるがごときお言葉も洩れておるのでありまするが、我々の聞かんとするところは、恩赦の時期及び恩赦の種類、いわゆる大赦、特赦、減刑、免除という範囲をどこまでにするかということと、それからそれに対して私は大赦の範囲について特にお構いしておきたいのは、従来の大赦の実例から申しますれば、政治犯に対しては勿論大赦があり得べきこことは思います。この度の大赦において特に考慮を払われたいことは、戦時中において、いわゆる先ほどからも戦犯に対するところの基本的理念を鬼丸氏から詳細にお話があつたごとく、国民本来の意思から戦争というものは醸し出されたものでないことは、今日明らかな事実であります。政府に止むを得ずかり出されて国民はこれに追随しておつたというような形である。その場合に国家が戦争遂行に必要ないろいろの戦時立法というものを制定し、これによつて国民の多くが処罰されておることは、これは御承知の通りであります。例えば総動員法に対するところの犯罪人というものは、相当数に上るのであります。これらは、その戦争遂行によつての違反事件であれば、今日その時代は変つて、これらが非とされておる以上、それによつてつたところの犯罪人に対するところの大赦というものは、当然考えられなくちやならんと思うのです。それから従来の大赦とはその内容において相当趣きを異にすると思う。この点は私は特に一つ法務総裁が考慮されておるかどうか。考慮するなら、その点はどうするか、大赦に含むか、或いは特赦に含むかという点も、明らかにして頂きたいと思うのです。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 講和条約の効力の発生は来年春と存じまするが、講和に関連いたしまする恩赦の時期といたしましては、最終的に講和条約が効力を生じまするところの発効の時期が適当ではなかろうか、こう存じております。従いまして明春三月になりますか、四月になりますか、その頃にいたしたいと、こういう考えで準備をいたしております。それからその際におきまする恩赦の種類といたしましては、大赦、減刑、復権等広く行いたい。又恩赦にかかりまするところの犯罪の種類につきましても、従来戦争の終結の際におきまして恩赦を行なつたという前例は、我が国といたしましては明治以来ございませんが、併し今回の平和克服ということは、我が国といたしましては一旦被占領地になつてつた、それが真に独立を回復するという意味におきまして、誠に国家的には有意義な時期であるとこう考えまするので、できるだけ、広い範囲に亘つて恩典に浴し得るようにいたしたい、こう考えておるわけでございます。特に只今伊藤委員からは、戦時中の、特に戦時のための必要な立法、こういうものの罰則に触れたものの措置をどう考えておるかという御質疑がございましたが、戦時中なるが故に処罰され、而もその法律というものはすでに平和克服によつて必要がなくなつたというような、そうした罰則につきましては、できるだけ広く赦免の途を開くようにいたしたい。こういう趣旨で準備を進めておるような次第でございます。
  27. 伊藤修

    ○伊藤修君 恩赦に浴するということはよくわかりましたが、その恩赦に浴する範疇ですが、大赦に含むか特赦にするか、私の考えといたしましては、当然それは大赦に含ましむべきものではないかと思います。又政治犯に対するものも、これも従来の先例から見ますれば、大赦に当然含むべきものではないかと思います。この二つを明らかにして置いて頂きたいと思います。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 今なお法務府といたしましては研究中でございまして、大赦にするか特赦にするか或いはその他にするかというはつきりした限界をここでお約束いたすわけには参りませんが、心持ちといたしましては、戦時中の立法等によつて処罰され、すでにそうした処罰は今後必要がなくなるというようなものにつきましては、できるだけ大赦をすべきものであろう、こういう方向で研究をいたしております。
  29. 伊藤修

    ○伊藤修君 先ほども法務総裁からのお話がありましたごとく、このたびの画期的なこの時期を期して、恩典に浴させるということは、これは当然の私はことだと思うのです。殊にまあ日本国民感情から申しますれば、先の貞明皇后の御崩御によりまして、当然恩赦があり得べきこととこう期待しておるような次第であつて、いわば先の恩赦と、今度の独立というこの大きな有意義なこの二つを重ねての大赦、恩赦である以上は、やはりその範囲というものは相当拡大して然るべしだと思うのです。殊に今の戦時立法の犠牲者に対しましては、本来ならば罪となるべき事案ではない。ただ戦争遂行のために止むを得ずその犠牲となつた次第ですから、これに対しては私は当然大赦の範疇に属さすべきものと元から考えております。又こういう独立国家として新らしく我々国民は発足するこの時期に際しまして、政治的の犯罪に不幸にして触れたものに対しましては、当然これ又大赦に浴せしむる、こういうお考えに一つ御決定を願いたいと思う。特にこれは希望を申上げて置きます。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御趣旨に副うようにいたしたいと存じます。
  31. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 書関連してこれ一点だけ。恩赦の問題について只今伊藤君から質問がございましたが、御承知の通り理由はいろいろありましようが、とにかく私はこれを行刑の方面からいつても一応お考え願いたい。まあ御承知の通りに監獄は設備が不十分のために殆んど行刑は崩壊状態であります。入れる場所は四万しかないのに、犯罪人は十万もあるということで、どこもかしこも過剰拘禁のために、行刑は完全に崩潰状態であります。私は只今伊藤君のお説の如くに、戦争という特殊な事情のありますることのために、その大部分がやはり戦争に原因している若しくは原因をなして今刑余の者となつておるのが多いのでありますから、この際一つ大量的に断行して頂きたい。こうしてこの行刑を本筋に持つてつて頂くのには絶好の機会だと思います。それからなお従来恩赦について非常に私は不十分だと思いまする点は、特赦の場合です。これは刑が確定しておる者に限つて特赦を行うと、こういうことになつておるのです。それはもう特赦の本質からいつたら然るべきことだと思いまするけれども、ために審理途上においてこの恩赦が行われる、それがために従来の不本意なる裁判であつても、若しもこれは恩赦に浴するということができないというとつまらぬ目にあうから、それで一つこの際服罪しようと、こういうことであるために、心ならずもその裁判に服するという場合が多い。それはまあ非常な実は矛盾した話で、いやしくも私は恩赦該当の者は、当時確定囚たると否とにかかわらず、当時そういうような恩赦が行われたならば、その刑が、最終の審理において罪が確定したならば、遡つてその恩赦もやはり恵沢に均霑せしむるように私は考えて頂きたいと思う。例えば来年四月なら四月に、講和条約が発効と共に、当時刑が確定しておる者に限つて恩赦が行われるということになると、四月には慌てて不本意な裁判に服さなければならん。例えばまあ刑に服することによつていろいろな権利関係が起つて来ますけれども、それをも犠牲にして服さなければならん。それは非常に不自然なことになりますから、当時審理中の事件であつても、後にその刑が確定したときには、遡つて恩赦に均霑せしむるというふうに、私はあの恩赦の扱いをしてもらいたいことを、この際希望申上げておきます。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今恩赦法によりまして恩赦は或る時期ばかりではなく、常時できることに相成つておりまするので、たまたま恩赦の時期におきまして恩赦に浴さなかつた者も、その後におきまして、判決の都度特赦をするというような措置もできるようになつておりますから、なお御趣旨は誠に同感でございますから、どういうふうにすれば実効を挙げ得るか、その辺を十分に研究いたしまして、できるだけそういうふうにいたしたいと存じます。
  33. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは、実際はそういうふうなことになつておりましても、実際はない、今までやつたことの例がない。であるから、今度はそれを、法的に欠けるところがあれは、法的に一つ整備をして頂いて、そうしてやはり仰せのように、当時その恩赦に浴せしめ得る有資格者であるならば遡つてその刑の確定後に、それは当然やるものだというふうに、一つ若し法制上に支障があれば、それを一つ整備して頂いてからそういうことをして頂きませんと、不自然な裁判に服するようなことになりますから、御了承願いたいと思います。
  34. 伊藤修

    ○伊藤修君 恩赦の問題は細かく入りますと相当希望もあります。例えま恩赦の種類を人によつてきめるか、刑によつてきめるか、或いはその他従来の例もありますのですが、まちまちでありますから、そういう点に対しましては、従来の例にとらわれることなく、画期的な恩赦を行うと、こういう一つ基本的な考え方を以て、今鬼丸さんが言われたごとく、相当広範囲に、有意義に、国民に再出発の機会を与えると、こういうお考えの下に一つ大恩赦令を出して頂きたいと、こう思うわけであります。  次にお伺いしたいのは、今度条約に基きましてアメリカ軍隊が駐屯することになることと存じます。その場合に当然軍に対する軍事裁判というものが行われると思うのですが、この駐屯軍と日本国民の間に生じたところの、いわゆる駐屯に違反する行為、或いはそれと関連した行為につきまして、日本国民がその軍事裁判を受けるような事案を犯すことがあり得ると考えますが、その場合にアメリカの軍事裁判に服するのか、日本国民日本国国内法によつてこれを裁判するか、いわゆる治外法権と関連いたしまして、どの程度の治外法権をここで認めることになるのか、或いは全然認めないという考え方か。私の考え方といたしましては、この際少くとも我々の先輩が明治初年以来苦心して治外法権を撤廃し、今日世界で治外法権に服している国民は恐らくないと私は考えております。にもかかわらず、日本をこうした治外法権の制度の下に再び服するような不面目な状態に至らしめたくないと考えております。ですからその扱いにおいて少くともそういうような端を開くよう制度は、私は好ましてないと考えますが、法務総裁はどういうふうなお考えを持つていらつしやいますか。
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 安全保障条約の細目につきましては、なお行政協定に入つておりませんので、これは全く予想或いは想像と申しますか、その程度のことでございまするが、併し私は考え方といたたしましては、国際法上当然に認められておりまするところの軍隊の治外法権、これは当然外国軍隊が駐在いたしまする以上は、当然止むを得ないことであろうと思いまするそのほかに日本国民外国軍事法廷裁判権に服するというよう意味における治外法権は、今のところ全然考えておらんわけでございます。恐らくそういうことはないと確信をいたしております。
  36. 伊藤修

    ○伊藤修君 法務総裁のお考えを伺つて安心いたしますが、少くともそういうような臭いのある場合、若しくは要求のある場合は、断呼として身を似て拒否して頂きたいと、それだけを希望しておきます。  次に最近法務総裁が非常な御努力によつて、いわゆる団体等規正法を立案中のようであります。すでに自由党の党内においては御発表になつておりますが、肝心の法務委員会にはその案すらまだ頂けないような状態で、その点は非常に法務総裁とも似合わしからぬところの御態度だと思うのです。先ず以て我々のほうへお知らせ願うことが本筋じやないかと思うのですが、秘密にして御発表にならんのは、誠に遺憾と思うのですが、併し団体等規正令によつて企画されておる内容について、今ここに批判はいたしませんが、その法律を一体今国会にお出しになるのかならんのか。まあ我々法務委員会としては非常な重要な法案でありますから、それに対する心がまえも必要でありますし、又研究もしなくちやならんのです。この点に対する先ず御意見を伺つておきます。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は団体等規正令の立法化につきましては、法務府といたしましては、成案を急いでおるのでございまするが、なお二、三研究しなければならぬ点がございまするので、まだ成案を得るに至つておらないわけでございまして、只今自由党のほうに見せておるとおつしやいましたが、確かに一案を見せてございまするが、これも最終の案というところまでまだ固まつておりませんので、特にその中の就職制限という点につきましては、なお私自身ももう少し考えてみたいと思つておるような次第でございます。併し未確定の案でも是非御覧を頂けるということならば特に隠しているわけではございませんので、お目にかけることは一向差支えないことでございます。ただまだ確定の案ではなく、特に私自身といたしまして、まだ二、三の点について自信を持つに至つておりません。そういう次第で、特に公表するというような段階になつておりません。又法務委員会にもお目にかけてない次第であります。で、いつ提案になるかという点でございまするが、この点もまあ会期も非常に迫つてつておりまするので、到底今国会に提案をいたしましても、今国会において御審議を完了して頂くということはむずかしいのではないか。かたがた二、三の点でなお研究すべき点もございまするので、私の只今の考えといたしましては、もう少し研究をいたしまして、次期国会になるべく早く提案するようにいたしてはどうだろうかという気持を持つております。
  38. 伊藤修

    ○伊藤修君 お差支えなければ立法経過においていろいろお集めになつた資料、或いは案というようなものは、法務委員会のほうへ一つ分けて頂くか、出して頂くかして、そうして我々自身に研究の余地を与えて頂きたい。法案の内容は頗る重大なものであると考えておる次第でありますから。  ただここで一言申添えておきたいことは、この法務総裁のお考え方について、法案が出て参りますれば、そのときに我々の意見も申上げることですが、概念的に、新聞紙上で伝えられるごときものといたしますれば、お考え方が余りかたよつていやしないかと、こういうことです。一体今日の日本のありかたといたしまして、左翼思想に対する危惧というものと、右翼思想に対する危惧というものを両天秤にかけた場合に、どちらのほうに危惧の念を懐くかというと、最近とみに顕著になつてつたことは、右翼の擡頭であるのです。往々にして公然にこれはどんどん主張されておる。従来ならば逼塞して容易に述べ得られないようなことをも述べ、右翼的に強い思想というものが現れて来ておる。或いは制度の上においてもそれがたまたま知らず識らずのうちにとり入れられておる。立法の上においてもそういう傾向がある、これは日本の従来のあり方から考えまして、今日日本が右翼化するか、左翼化するかを考えた場合において、私は先ず右翼化することのほうが容易である。共産党のかたも御存じでありますが、日本を共産化するということはなかなか至難な問題であると思うのです。これは国民の本質から考えても、二千数百年の間に右翼的に訓練を受けたものが、ここに偉大な指導者が出て一朝号令をかけるならば直ちに日本国民は右翼になり得ることは火を睹るよりも明らかである、今徳田球一氏が号令をかけたところが、日本国民が直ちに左翼化するとは考えられない。恐らく連合国といたしましてもこの点を、日本国民の本質から考えてむしろ右翼化することのほうを危険視しておると思うのです。この傾向があらゆる面に現われて来る形があると思うのです。してみれば今度団体等規正令を作る場合におきましてもこの点は十分取入れまして、これに対する手当というものを考えておかなくてはならんと私は思うのです。余りにも左翼におびえ、左翼のみに没頭いたしますると、却つて前門の虎より後門の狼のほうを我々は恐れるのです。折角民主国家に建直つた日本が再び全体主義、国家主義、右翼、極端な国家にかたよるような虞れがある、この点は立案の際に十分御考慮を私は賜りたいとこう思う次第であります。  もう一点は、立案の立て方が特審局を中心にいたしまして、いわゆる従来の特高警察の復活のごとき感を、内容は見なければわかりませんが、そういう感を与えるのですが、これは今少し何とか考えるべきものじやないかと思うのです。恐らく新聞紙上に伝えられるがごとき構想でありますと、日本曾つての特高警察というものが特審という名前に変つて私は再現するのではないか。或いは治安維持法のあの悪法を再び具現するのじやないかと、こういう私は虞れを抱いておるものであります。この点も十分法務総裁としては御立案の際にお考えを煩わしたいと思うのであります。殊に労働法と今度切離しましてゼネスト禁止というようなものをお出しになるようですが、この法律に対しても我々としては相当考慮を払わなくちやならんと思うのです。折角憲法において権利を与えておきながら、一面においてこれを大部分剥奪してしまうというようなやり方はどうか。産業の興隆を望むならば、もつと考え方も私はあり得ると思うのです。これらに対しても立案の際に相当一つ御考慮を煩わしたいと思うのです。この際ゼネスト禁止法も今国会にはお出しになるかお出しにならんか、併せて一つお伺いしたいと思う。
  39. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ゼネスト禁止法におきまして今苦慮いたしておりまする点は、如何にすればこれが真に必要な際にのみ発動されて濫用されることがないかという点でございましてこの点を考えて参りまするというと、ゼネストに対する禁止ということだけでは不十分であつて、かねて公益的な事業に対する労働争議の予防、解決ということについての一般的な方式とこれは関連して来る問題ではないかというふうに考えております。即ち争議に対する調停手続というものと関連させなければ、単にゼネスト禁止だけでものを解決しようということになりますと、自然かよう制度の濫用を招くことになります。このことが畢竟憲法上の権利を不当に制限を加えて行くという結果になるわけでございましてこの点について特に労働省と緊密な連絡を保つて研究をいたしております。従いましてこの法案につきましても本国会において提案することは困難ではないかと考えております。
  40. 伊藤修

    ○伊藤修君 もう一つお尋ねしますが、講和条約締結されますれば勿論司令部は帰つてしまう。従来日本に対するところのいろいろなあり方に対する基本的な考え方といつたものは司令部に一本で出て参りまして、この線に沿つて政府及び国会というものが動いておつたのであります。日本の歩むべき道、進むべき道というものはおのずから一元化されておつたと思うのです。立法の上においてもその傾向は非常に強く現われておつた。然るに一朝司令部が必然的に撤去されますれば、国内におけるところのもののあり方といたしまして、日本制度並びに立法形式というものが現在のような形においては区々まちまちに必然的に動いてしまつて、その間に統一が保たれないと思うのです。少くとも法務府設置法の趣旨から申しましても、政府がその中心となるべきものは法務府であると考えておりますが、法務府において法律一つの一元化を図つて将来行くところの一つの権限を持つか、或いはそういう機構に改めるか、何とかしないというと、今後におけるところの日本国内法というものの統制が、法律の統制というものが保たれないことになる。この点に対して法務総裁としては講和条約締結後はどういうような御構想を持つていらつしやるか、お伺いしたいと思う。
  41. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現行の内閣制度によりますと、法務府というものは内閣にありまして、そうして法務総裁というものが内閣の法律顧問という地位にあり、各種の法制につまきして法律的な立場からこれを審議いた上、政府の提案すべきものは法務総裁の審議を経て提案する。又各種の政令につきましても同様法務府において審査をするという建前になつております。法制の点につきましては法務府によつて内閣部内の統一というものが現在においても相当可能であると考えております。特に講和条約締結により司令部というものがなくなつたということを理由にいたしまして、法務府の立場を、或いは法務府と内閣との関係において再検討を加えなければならん必要はないのではないかと考えております。
  42. 伊藤修

    ○伊藤修君 法務総裁はそういうようにお考えになつておるか知りませんが、現在の法務府の立場というものはただ立法に対して意見を述べるという程度であつて、それは強いものじやないように考えられるのですが、そういたしますと、例えば通産省にしろ、運輸省にしろ、その他治安関係の他の部面にしろ、自分自身の欲するところの法律を、制度をどんどん作つて行く。それに対して一応法務府は通るでしよう。併しそれは意見を述べるにとどまつて、それに対する統制というものが少しもとられていない。現在国会に現われて来る各種の法案を見ましても、全然統制がとれていない。最近出んとするところの、例えば消防法の中にいわゆる失火、若しくは放火に対する刑事犯の捜査権を取入れようと、こういうことを企図しておるがごとく承知しておるのですが、これはまあ一例に過ぎない、その他、他の法律にもそういう例は多々あるのです。一元的に一つの国家の進むべき制度というものがあるのです。途がある、それは他の省において皆欲するということによつて法律制度がどんどん変えられて行くということになれば、基本的な法律というものがその例外の上においてどんどん崩されて行くという傾向にある。現在司令部が少し力が弱まつたものだからそういうことになる、従来強い時代にはそういうことはあり得なかつたのです。して見ますれば、撤去されたならばその弊害というものは到底救済することのできない状態になり、法律制度の混乱を生じはしないかと相愛しておるのです。これは法務府において昔あつたような法制局とかというように強いものを置くとか、或いはそういう権限にするかという立場をとらないと、救済ができないのじやないかと、こう考えるのですが、この点は法務総裁のお考えは少し甘いのじやないかと思うのですが如何ですか。
  43. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在の政府部内におきまする法制についての法務総裁の権限というものは、旧内閣制度における法制局長官の比ではないと思います。現に法務総裁は閣僚でなければならない、法務総裁が承知をしなければ如何なる法案というものも閣議決定になることはできない建前になつております。統制力としては現在の制度で十分ではないかと思います。  御指摘になりました消防関係の捜査権の問題でございまするが、これは現在におきましては政府において法律に対する立案、提案権がありまするほかに国会自体に提案権があるのでございます。国会の提案される法規まで法務府において統制するということは、これは性質上不可能でございまするので、その面に対する統制ということは、これは国会の御審議によつてその過程を通じて実現を見る以外にないと思いますが、政府部内におきまする法制上の統制ということは現在において効果的になし得る仕組にすでになつておる。こう考える次第でございます。
  44. 伊藤修

    ○伊藤修君 政府部内の統制はできるとおつしやるのだが、事実上はどうもできてないように思うのですが、これについては将来なお研究を煩わしたい。我々も研究いたしますが、国会内の問題に対しましては、当然司令部がなくなりますれば、制度の上において両院法規委員会というものが設けられておりますから、この委員会の活用によりましてアメリカ式の国会内の立法形式は統一されることと存ずる次第であります。これは今日の両院法規委員会というものが殆んど有名無実、失礼でございますけれども。そういう形になつておるのであります。この運用と機構のよろしきを得ますならば国会内の制度というのは保たれるとかように私は考えておる次第でございます。  なお、もう一点お伺いしておきたいことは、御承知の通りアメリカの占領後日本の民主化のために日本法律制度が非常に改廃されておるのです一その改廃されたことに対しましては、今日我々は民主国家として再建する上において当然基本的には是認できる立法である。併し個々の法律内容におきましては、必ずしもアメリカ式に、西欧式に急にして日本の国情、民情、経済、社会というものを無視した傾きの内容の多々あるということは法務総裁も御了承のことと思います。そういうものに対しましては、当時の日本立場といたしましてはあちらさんのおつしやる通りこれを呑まざるを得なかつたのでありますが、独立国家となつた以上は、こういう行過ぎの点に対しまして、我々は少くとも国民生活にふさわしいよう法律に多少とも改廃して参らなくちやならん点が多々あると考えるのです。例えば民法の中の家の制度の問題では、勿論家長権を持つ、いわゆる独裁権を持つ家というものの復活を望んでおるわけではありませんが、家そのもののあり方というものは、現在のこの親族共同体というああいう不明確な形じやなくて、家という一つの共同体という形は私は存在しても差支えないと思う。これはGHQにおいてもこのあり方というものは非常にいいものであるということは賛成しておる。ただ、従来の家を廃止したゆえんは、結局は独裁権を持つ、家長権を持つ、非民主的な家というものは好ましくないと言つただけであつて、家そのものの共同体というものを否定するものじやないと思う。これは一例でありますけれども、そうういものでも国民感情にこうした国民生活のあり方と符合するよう制度に改めるという必要が私はあると思う。又刑法の上におきましてもいろいろ改廃を試みたが、併し今後独立国家としてはなくてはならない法律が多々必要と思うのです。例えば今後団体等規正令の中に国家の秘密に関する従来の国防に関するよう法律を団体等規正令に取入れるように承知しておる。こういうものはむしろ刑法の中に組入れるべきものではないか。当時刑法改正或いは民法改正その他の憲法附属法規の改正の際には、早晩日本が独立した場合においては日本国民生活にふさわしいようにこれを改廃するということはあらかじめ国民に述べてあるはずですから、今度独立国家となつた場合において、これらに対して政府は順次日本国民にふさわしい法律に改廃するお気持があるかどうか、又着手するかどうかということをお伺いいいたします。
  45. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府といたしましては、すでに講和条約調印以前におきまして、占領中の現在の法規日本の国情に照して必ずしも適切でないものは、できるだけ講和前におきましても、講和後におきましても、改正をいたしたいという考慮を持つてつたわけでございまして、特に吉田総理大臣が政令諮問委員会と呼ばれておりまする特別な機関を設けまして、この問題を取上げておるのは、その趣旨に出たものであります。この委員会において取扱つております問題は、今日まで極めてまだ限られておるのです。いろいろ広汎な法規について同様な問題があろうと存じますが、政府といたしましては、これらの法規を真に日本の実情に適合し、日本の民主国家の再建のために適切な法規に改めたいということのためには、できる限りの機会を捉えたいとこう考えております。
  46. 伊藤修

    ○伊藤修君 政令審議会において審査されておることは承知しておりますが、併とそれは今日私たちが承知しておる限りにおきましては、いわゆる占領政策に基くところの各種政令の改廃ということが当面問題とされておるようでありますが、私の申上げるのは、それは当然のことである。そうでなくして日本国民生活の基本的な法律、即ち憲法附属の法律、刑法、民法、その他の重要法規についてそういうお考えを持つておられるかどうかという点をお伺いいたしておるのです。
  47. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 刑法、民法等につきましても法務府といたしましてはこれが改正ということにつきまして慎重に考慮いたしておる次第でございます。
  48. 伊藤修

    ○伊藤修君 私はまだ相当ありますから、ほかに質問もありましようと思いますから、この程度にとどめ次回に譲ります。
  49. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつとそれではまだあとに岡部、須藤、一松諸君の質問があるのでありますが、今日は十二時半で切上げたいと思いますので、今緊急質問として一松委員より申出がありますので、一松委員君に五分間の程度の質問を許可いたします。
  50. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は法務総裁に極く簡単に緊急にお尋ねしたいことは、昨日の午前十一時頃京都府における京都大学学生が、天皇陛下の自動車を取囲んで、革命歌を歌い、そうして大山君来る、大山君を迎えるというようなことを言うて、騒いだという今朝の毎日等の記事によつてこれを知りまして驚いたのです。近来学生が共産主義にかぶれていろいろな行動に出て、学生の父兄は勿論国民をして顰蹙せしめるような行いのあることは、私ども実に遺憾に思うのでありますが、丁度数日前にもありましたように、水谷長三郎君の門前に学生が迫つてこれを破壊したとか、又昨日のああいうようなやり方とか、こういうようなことは学生として誠にあるまじきことである。而もそれが計画的であつたというようなことが窺われるのでありますが、こういう点に対しまして総裁は何かお取締りについて御考慮を持つておることだろうと思いますが、この際一つお考えをここに披瀝して頂いて、我々の将来学生に対するとるべき処置についての研究の資料を与えられんことを希望いたします。
  51. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 昨日京都大学におきまする不祥事件につきましては、私も趣く概略の報告を聞いただけでございます。六体新聞紙の奪度以上のものはございません。  即ち、陛下の歯簿が正門から表玄関にお着きになりまして陛下が中へお入りになりましたその後に、玄関前に御料車が置いてある。そこへ百名乃至二百名くらいの一団がプラカードなどを持つて参りまして、その御料の自動車を取囲んでデモ的な行為に出た。これに対しましては、かねてから京都市警察におきましては、一度警察力を以て校内を警戒するという話になつてつたそうでございますが、前日になりまして大学当局から、学内は一応学校の責任で警戒をしたいから、特別な請求をするまでは警察官を入れないようにという要求がありまして、そういうふうに話が変りましたので、警察官を入れてなかつたのでございます。併しそういう事態になりましたので、大学当局から請求に応じて警察官が入りまして、そうしてこれらの学生諸君を追払つて、そうして陛下のお帰りの際には警察官が護衛しました。従つてこれらの争議は幸いにして陛下のお目にとまらなかつたそうであります。又陛下のお立ちが十三分でありましたが、予定時刻よりも遅れたそうでございますが、それは特にこの事件関係があつて遅れたものではないというふうに聞いてります。  で、この学内におきまするかような行動についての取締りということにつきましては、各都市の警察ども、一応学校内のことは原則として学校当局に任せる。そうしてこれらの事柄について警察力が学内に入る場合においては、原則的に学校当局の請求を待つて入るというふうな取りきめをいたし、又そうしたやり方をしておるのが、各大学とも普通に行われておるわけでございまして、私はまあ警察の考え方としてこういう考え方は原則的には正しいことである、こう思うわけであります。ただ、大学当局におきましてもよくその学内における秩序というものにつきまして責任を持つて予想を立てて、そうしてそれぞれ必要な際に、警察力を必要とする場合におきましては、これを遅滞なく請求される、そういう運びがうまく行きさえすれば、原則としては、学内の秩序は学校当局が扱う、これは当然のことでありまして、この考え方でいいのではないかと思つております。但し、特に学内だけでなく、陛下のお出でになるとか、或いは外部から人が入いつて来る。そううような場合においては、おのずから学内の治安ということは、一般にも関係のあることでございまするから、警察として始終注意をし、必要があればいつでも入り得る状態を準備しておく。これも又当然なことであり、要はそのときどきに従つてうまく物事を処置してもらえばいいのではないか、こう思つております。  ところで今回の京都の事案につきましては、先ほど申上げました通り、今なお詳細なる報告を受けておりませんので、これ以上事実をどうであつたか、或いはどうすべきであつたかというような事柄についての意見を申上げる程度になつておりません。なお、いずれ近く報告も参ると思いますから、それによつて御報告いたすべき事柄がございますならば、御報告を申上げたいと存じます。
  52. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は法務総裁とこれ母上質疑応答を重ねたいと考えておりませんが、ただ私の希望だけを申上げておきます。どうも近頃学生、なかんづく大学の生徒にこういうような赤の思想を持つているものが非常に多い。これはよつて来るところは、私の考えでは、大学の教授の中にこういう赤の、いわゆる共産主義の思想を持つて、そうして研究しているということは、これは学問の立場上私非難すべきことじやないと思いますが、その研究を生徒の頭に打込んで、そうしてこれを行動に移して、生徒を煽動するような気風が各大学にあるように思われる。こういう点はいわゆる文部大臣の責任ということより、もつと大きくして、そのときそのときの政府責任と私は思う。でありますから一天野文部大臣にその責任を追及するとか、又一天野文部大臣の取締り云々ということではなくて、政府は本当にどういうようにしてこの将来日本を背負つて立たなければならない学生の思想を善導するかという点についているいろいろと一つ御考慮を願いたいのであります。私はこの大学の教授の中に赤の思想を持つてつて、そうして教壇に立つて赤の思想を生徒に吹聽し、場合によると実際面において、これを蔭から紐を引いているというようなものがあるということを聞いて、非常に憂慮に堪えない。刑法の天皇に対する不敬罪とかいうような条文は、廃止せられましたけれども、天皇は我が国における即ち象徴であり、国民統合の象徴である。それでどこまでも日本国民としては、天皇を尊敬しなければならない立場に置かれているから、不敬罪という犯罪の廃止されたからというて、我々の象徴である、日本国民の一番尊敬すべき、一番大切にすべきそのお方に対してですね。こういう無礼な、而も大山郁夫君来ると、天皇の代りに大山郁夫君を以てするがごときは、これは全く面白からん思想であると思うんです。ですからこういう点に十分一つ政府は注意をせられまして、そういう赤の思想を持つて、赤の思想を教え、生徒をしてこれを実際行動に至らしめるというような、不当の教授などというようなものは、どしどしこの際首を切るがいい。そういうようにしてやらなければ、今でさえも共産党の人がたくさん地下に潜つて、未だに日本全国の十数万の警察隊がこれを逮捕できないというようなことでは、日本の将来は実に思いやられる。だからして一つこれらの点は、特に法務総裁は赤の思想の取締りについては、特別に御関心を持つていらつしやるかたであると私は思うのであります。閣議におきましても十分にこの点に一つ御考慮を払われまして、善処せられんことを特にお願いいたして置きまして私の質問はこれで終ります。
  53. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 今日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会