○伊藤修君 お差支えなければ立法経過においていろいろお集めに
なつた資料、或いは案という
ようなものは、
法務委員会のほうへ
一つ分けて頂くか、出して頂くかして、そうして我々自身に研究の余地を与えて頂きたい。法案の
内容は頗る重大なものであると考えておる次第でありますから。
ただここで一言申添えておきたいことは、この
法務総裁のお考え方について、法案が出て参りますれば、そのときに我々の
意見も申上げることですが、概念的に、新聞紙上で伝えられるごときものといたしますれば、お考え方が余りかたよ
つていやしないかと、こういうことです。一体今日の
日本のありかたといたしまして、左翼思想に対する危惧というものと、右翼思想に対する危惧というものを両天秤にかけた場合に、どちらのほうに危惧の念を懐くかというと、最近とみに顕著にな
つて参
つたことは、右翼の擡頭であるのです。往々にして公然にこれはどんどん主張されておる。従来ならば逼塞して容易に述べ得られない
ようなことをも述べ、右翼的に強い思想というものが現れて来ておる。或いは
制度の上においてもそれがたまたま知らず識らずのうちにとり入れられておる。立法の上においてもそういう傾向がある、これは
日本の従来のあり方から考えまして、今日
日本が右翼化するか、左翼化するかを考えた場合において、私は先ず右翼化することのほうが容易である。共産党のかたも御存じでありますが、
日本を共産化するということはなかなか至難な問題であると思うのです。これは
国民の本質から考えても、二千数百年の間に右翼的に訓練を受けたものが、ここに偉大な指導者が出て一朝号令をかけるならば直ちに
日本の
国民は右翼になり得ることは火を睹るよりも明らかである、今徳田球一氏が号令をかけたところが、
日本の
国民が直ちに左翼化するとは考えられない。恐らく
連合国といたしましてもこの点を、
日本国民の本質から考えてむしろ右翼化することのほうを危険視しておると思うのです。この傾向があらゆる面に現われて来る形があると思うのです。してみれば今度団体等規正令を作る場合におきましてもこの点は十分取入れまして、これに対する手当というものを考えておかなくてはならんと私は思うのです。余りにも左翼におびえ、左翼のみに没頭いたしますると、却
つて前門の虎より後門の狼のほうを我々は恐れるのです。折角民主国家に建直
つた日本が再び全体主義、国家主義、右翼、極端な国家にかたよる
ような虞れがある、この点は立案の際に十分御考慮を私は賜りたいとこう思う次第であります。
もう一点は、立案の立て方が特審局を中心にいたしまして、いわゆる従来の特高警察の復活のごとき感を、
内容は見なければわかりませんが、そういう感を与えるのですが、これは今少し何とか考えるべきものじやないかと思うのです。恐らく新聞紙上に伝えられるがごとき構想でありますと、
日本の
曾つての特高警察というものが特審という名前に変
つて私は再現するのではないか。或いは治安維持法のあの悪法を再び具現するのじやないかと、こういう私は虞れを抱いておるものであります。この点も十分
法務総裁としては御立案の際にお考えを煩わしたいと思うのであります。殊に労働法と今度切離しましてゼネスト禁止という
ようなものをお出しになる
ようですが、この
法律に対しても我々としては相当考慮を払わなくちやならんと思うのです。折角
憲法において権利を与えておきながら、一面においてこれを大部分剥奪してしまうという
ようなやり方はどうか。産業の興隆を望むならば、もつと考え方も私はあり得ると思うのです。これらに対しても立案の際に相当
一つ御考慮を煩わしたいと思うのです。この際ゼネスト禁止法も今国会にはお出しになるかお出しにならんか、併せて
一つお伺いしたいと思う。