運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-11-17 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十七日(土曜日)    午前十時十六分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事            楠瀬 常猪君            一松 政二君            金子 洋文君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            石川 榮一君            泉山 三六君            團  伊能君            高橋進太郎君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            永井純一郎君            波多野 鼎君            吉川末次郎君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            楠見 義男君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            櫻内 辰郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君            兼岩 傳一君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    文 部 大 臣 天野 貞祐君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    農 林 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    特別調達庁財務    部長      川田 三郎君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省條局長 西村 熊雄君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省理財局長 石田  正君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 只今から委員会を開きます。日米安全保障條約に関する総括質問を続けます。岡田委員
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は日米安全保障條約につきまして、首相に三、四の点をお伺いしたいと思うのであります。この條約は條約前文に記されております通り、これは日本側希望によつてできたものであります。併しながらこの條約は單に日本側希望が盛られておるだけではないのでありまして、アメリカ合衆国側日本に対しますところの希望と申しますか、期待というものも含まれておるのであります。即ち前文最後のところにおきまして、「アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊日本国内及びその附近に維持する意思がある。但し、アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章目的及び原則に従つて平和と安全を増進すること以外に用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接侵略に対する自国防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こう書いてあります。この点で見ますというと、この條約にはアメリカ側期待若しくは希望ということが織込まれておることは明瞭でございますが、この條約に調印されました以上、日本側アメリカ側のこの希望又は期待に対しまして副うことになると考えられるのでありますが、首相はこれに調印せられまして、この期待を実現するということをお約束されたと思うが、その点は如何でございますか。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申します。これはつねづね申す通り日本独立は、日本国みずからの手によつて守るということが、本来期待すべき……本来みずから守る責任をとるということは、これは当然のことであります。従つて期待される以上は、期待に反することは、お話の通り日本としてのなすべきことではないことも当然であります。併しこれは日本に対して期待を望むのでありますが、裏から申すと、これは私の想像でありますが、日本駐兵はする、日本独立を助ける義務は負うけれども、その義務は無限に負うのではない。即ち日本はいつかみずから守るだけの力を特ち、又アメリカ駐兵をしてまでも、アメリカ国民納税者の負担において、日本独立を守る責任を分つというようなことは、これは無限じやないのである。やがてみずから自国防衛のために責任を負うのであるというようなときは必ず来る、それまでのことであるということを納税者に納得せしめるために、この文字が入つたとも解せられるのであります。お答えをします。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今首相お答えによりまして、アメリカ側日本に対する期待に対しまして、日本側がこの期待に応ずるというのは、当然のことであるというふうに解されるのであります。そこでこの前提に立ちまして、私は「自国防衛のため漸増的に自ら責任を負う」という点について、やや内容亘つてお伺いしたいのであります。  過日委員会におきまして大橋法務総裁或いは草葉政務次官等と、他の委員との御討議の際におきまして、この「自国防衛のため漸増的に自ら責任を負う」ということのうちには、軍備等を含めてあらゆる手段が入るということを仰せられたように記憶しておるのであります。そういたしますというと、この全体に対しまして期待を裏切らない、期待に応えるということは、結局におきましては、やはり軍備をも含む防衛力を作つて行くということについての期待に応えることになるのではないか。即ち軍備日本に置くということを、将来日本としてやるということを予想しておるものではないか、こう考えられるのであります。又首相みずからサンフランシスコ会議におきまして、トルーマン大統領演説をお聞きになつたと思うのでありますが、この演説のうちにおきましても、トルーマン大統領日本が将来軍隊を持つことを、即ち再軍備することを望んでおることが明らかになつておるのであります。そういたしますと、当然この前文によりまして、日本政府はこの期待に応えるために再軍備をするという問題が必ず起つて来るかと思うのであります。伝えられるところによりますというと、ダレス氏がこのたび来られてその問題を論議されるやに聞いておるのでありますが、これは私は今のところ別に首相にそういうことをお伺いするわけではございませんが、この「自国防衛のため漸増的に自ら責任を負う」という、この責任を負うことをアメリカ側期待しておるのに、日本側が応えるということは、やがて再軍備をもしなければならないであろうということを含むものかどうか、その点を改めて首相にお伺いしたいのであります。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。期待という文字に対する解釈は自由でありますが、併しながら同時にトルーマンその他が明らかに言つておらるるように、軍備を持つか持たないかということは全然国民自由意思によるものであつて、何らの制限もなければ又何ら義務付けられてもおらないのであります。故にこの「期待」を直ちに再軍備解釈せらるるのは御自由でありますが、私と米国当局者との間には再軍備約束はいたしておりません。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 再軍備のお約束をしておられないということは、首相の言明を私は信じたいと思うのであります。併しこういうようなことが條約のうちに織込まれております以上、これらは又アメリカ側から日本の再軍備に対しまして、これを行えという要求があつても不思議はないのであります。そういう場合に対しまして、首相は原則的に、又具体的に如何なる態度を以てその要求に応えられるか、これをお伺いしたいのであります。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 率直に申せば、かかるような仮に提議があり、又希望が述べられても、私は現在日本において国力がこれを許さないと拒絶いたします。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今首相のお言葉によりますれば、アメリカ側がそういうことを要求され、或いはそういうことを期待されても、現在の日本の力においてはそれができない、こういうふうにはつきりした態度をとつておられるものと、こう確認してよろしうございましようか。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見通りであります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 大変御明快なる御答弁を頂きまして、私としては満足に存じます。  次に第一條でございます。第一條アメリカ軍日本に配備せらるる問題でございますが、この第一條後段におきまして、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄與し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎭圧するため日本国政府明示要請に応じて與えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄與するために使用することができる。」この点であります。過日この点につきましては首相からの御答弁もあり、又昨日私は大橋法務総裁、或いは草葉政務次官等との間に質疑を行なつたのでございますが、私はこれに対しましてなお幾多の疑義があるのであります。この点につきまして明らかになりましたことは、かかる明白なる規定が設けられましたことは、国際條約の先例にないことであり、これが初めてであるということであつたのであります。併しこれに似たものは前にもあつたように言われております。そして全くこの條約に似たようなものが発見されるのであります。即ち明治三十七年に、日本国韓国との間に結びましたところの日韓議定書を見ますというと、これに非常に似ておる條約の文面がある。即ち日本軍韓国軍隊を駐屯するということにつきまして、その日韓議定書の第一條には「日韓兩帝國間ニ恒久不易ノ親交ヲ保特シ東洋ノ平和ヲ確立スル爲メ云々とある。これはこの條約における「極東における国際の平和と安全の維持に寄與し」と極めて類似しておるのであります。更にこれの第三條になりますというと、「大日本帝國政府ハ大韓帝國獨立及領土保全確實ニ保障スルコト」とあります。これはこの條約における米国日本安全保障よりももつと深く義務を負うておるように思われるのでありますが、特に第四條におきましては、「第三國ノ侵害ニヨリハ内亂爲メ大韓帝國ノ皇室ノ安寧或ハ領土保全ニ危檢アル場合ハ大日本帝國政府ハ速ニ臨機必要ノ措置ヲ取ル可シ而シテ大韓帝國政府ハ右日本帝國政府ノ行動ヲ容易ナラシムルタメ十分便宜ヲ與フルコト、大日本帝國政府ハ前項目的ヲ達スルタメ軍略上必要ノ地點臨機收用スルコトヲ得ルコト」とあります。これはこの條約以上に日本国民は大きな権利を與えられることになつておるのでありますが、この「内乱爲メ云々ということは、本條約におきましてはいろいろモデイフイケーシヨンはあるのでありますが、極めて類似をしておるのであります。更にこの日韓議定書の第六條によりますというと、「本協約ニ關聯スル未悉ノ細條ハ日本帝國代表者ト大韓帝國外部大臣トノ間ニ臨機協定スルコト」とありまして、全くこの行政協定と相ひとしいようなことが明らかにされているのであります。更に日満議定書におきましても、国内治安維持のために日本軍隊が駐屯するということが書かれておりまして、極めて類似しておるのであります。私どもは当時の日韓間或いは当時の日本及び満洲国との関係から見まして、これが独立国間の対等の條約であるというふうには考えられないのであります。今度の日米安全保障條約がその点において極めて類似をし、而もこういう條項が極めて明白に置かれておるということは甚だ遺憾だと思うのでございますが、私はこの点につきまして首相にこれは日本従属的地位に置かれるということになることを示すものでないかということについてお伺いしたいのであります。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 解釈は御自由でありますが、我々のこの問題を取上げたこの條項について考えた当時は、日韓議定書とか、或いは今お引きになつ議定書、條約等は考えのうちに入れておりませんでした。考えのうちに入れておつたことは、朝鮮における状態考えに入れて、そうしてこの規定作つたのであります。従つてこの條約と今引用せられた條約、議定書とは何らの関係がございません。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 私が只今引用したものとの間に何らの関係はないことは勿論その通りでありましよう。併しながらこの私が挙げました二つ議定書内容、意味するところと、この一條後段に記されているところと余りに類似点があることによりまして、私は非常に驚いたのであります。そうしてこの問題は極めてデリケートな問題を今後に残すものではないかと思うのであります。サンフランシスコ会議におきましてエジプト代表演説をいたしました際に、外国軍隊国内に駐屯することは、その独立を損うものであるということを縷々力説されたようであります。この点は非常に重大なことであります。今日或いはイギリスアメリカの空軍が駐屯しているというような例を引かれまして、これは軍隊の駐屯ということだけでは決してその国の独立を損う、主権を害するということはないと言われたように過日お聞きしたのでございます。併しこれはイギリスと或いはアメリカとの国の立場の関係の問題であります。敗戰いたしまして、そうしてすでにすべての武裝を解除され、そうして戰争前の強大国の位置からいたしまして今日のような悲惨な状態にある日本国におきましては、外国軍隊が駐留し、そうして白紙委任状的な行政協定によりまして、幾多軍事施設或いはその他の施設国内に置かれました場合、今後国際関係或いは国内のいろいろな関係からいたしまして、これが非常な大きな問題になるであろうということは、今日予想されるのであります。従いましてかかる條項がここに加えられましたことは、私どもとしては極めて遺憾に堪えないのであります。昨日條約局長にお伺いいたしまして、北大西洋條約におきましては、いわゆる武力攻撃のうちに間接侵略の問題は入るということは明らかにされたのであります。併しながらこの北大西洋同盟條約のうちに、武力攻撃を受けました場合、たとえそれが間接的な侵略でありましても、同盟加盟国間の協議をいたしましてからそれを処置することになつておるのでありまして、常駐いたしますところの外国軍隊出動するというようなことは、何ら取極められておらんのであります。私はこういうふうな点につきまして、政府はもつと他の方法を選べたのではないかと思うのでありますが、その点につきましてすでに締結されましたものでありますからこれは止むを得ないといたしましても、これが実際の効果を発動するということは、私どもとしては堪えられないところである。こういうふうに考えますし、今後この條項につきましてはこれが削除になると申しますか、訂正されることが望ましいと考えておるのでありますが、首相はその点について如何にお考えでありますか。
  14. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この点につきましては一又は二以上の外部からの教唆干渉の場合に、これに対する駐兵が或いは出動をする場合、これは全く日本政府意思による明示要請があつた場合に限るのでありますから、日本政府明示要請をいたさない場合におきましては、如何ようなる場合においても一方的に出動するということはあり得ないのであります。従いまして今後日本政府要請が基本でありますので、この日本政府要請の場合におきましては、十分注意をいたして要請すべきものだと考えます。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はその発動等の問題につきましては、昨日法務総裁以下にお伺いしたのでありますが、この條項が私どもにとりましては極めて目障りなように感ぜられるのであります。そうしてこの問題は将来いろいろな問題を惹起することになるのではないかというふうに考えられますので、この点について首相は将来これが実際に死文になる、或いは削除せられるというようなふうに、この條約を何とか改訂するというふうにお考えになるかどうかということをお伺いしたのであります。
  16. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) かような場合には、日本政府要請いたすときに初めて出動いたしまするから、従つてその要請は愼重を要しまするが、この文によりまして、このような事態を成るべく起さない一つの国際の平和、日本の平和と安全の維持に寄與するゆえんだと存じまして、これを取り結んだ次第でございます。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 この点については、はつきりした私の質問に対する御答弁にはならんと思います。御答弁ないと存じますから、従つてこれはこれ以上お伺いいたしません。  最後に私がお伺いいたしたいのは、平和條約並びに安全保障條約を通じまして、いろいろと不備な点が多い。又批判すべき点も多い。そうしてこれが今後の日本の国の将来にいろいろな影響を及ぼすということも考えられておるのであります。恐らく領土の問題にいたしましても、日本国民はこれに満足するはずはないのであります。すでに琉球におきまして或いは奄美大島におきまして、島民諸君は熱烈に日本に復帰することを希望しておるわけであります。こういうようなことは、私どもこれを見捨てるわけには行かない。何とかして手を差し伸べたい。そうしてそれには早く領土の問題につきまして、これらの地方に主権を回復しなければならん、こういうような運動国内に起ることは必定でありましよう。又千島、歯舞等の諸島を日本に戻したいという運動もすでに起つておるのでありますが、これ又更に強まることも今後予想されるのであります。或いは賠償の問題から来ますところの国民生活圧迫等に対しまして、いろいろな問題が生ずることは過去の幾多の例から見ても明らかでありますが、そういうような場合に、この締結されましたるところの平和條約に対する改訂運動というようなことが起ることも必然であります。すでにイタリア平和條約に不調でありまして、イタリアにおいてはイタリア平和條約に対する改訂運動が起り、イタリアのド・ガスぺリ首相みずからワシントンに参りまして條約改訂運動をされておるのであります。安全保障條約等によりまして日本アメリカ車が駐留する、而もこれは一定の期限を限らないで駐留する、どのくらいこれが駐留するかわからないというような状態におきまして、又行政協定によりまして、いろいろ日本主権なり或いは日本国民権利義務なり関係するような重大な問題も起るかと思うのでありまするが、そういうような場合に、エジプトにおいて見られますような問題にも発展しないとも言えないのであります。又過去の例を見ましても、外国軍隊がその国に駐留いたしました場合に起るいろいろなナシヨナリズムの運動というようなものが、今後日本にも起らないとは言えないのであります。かようにこの條約の改訂或いは日米安全保障條約に対するいろいろな反対運動というようなものが起ることが、今後予想されるのでありますが、こういう運動が起るといたしました場合に、首相はこれらの運動に対しまして、これをどういうふうにお取扱になるか、これを抑える、こういうようなおつもりであるか。或いはこれが憲法範囲内において堂々と行われる場合におきましては、これに何ら干渉しないかどうか。その点について首相の御答弁を承わりたいのであります。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国内治安日本国力で以て、日本の力を以てみずから守るのであります。そうして外国の、つまり米国軍出動要請する場合は、即ちここに書いてあります通り「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉」ということに限られておるので、この場合に限るのであります。日本国内における純然たる内乱とか擾乱等日本の力を以てみずから始末するという考えであります。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 私がお伺いしたことをお聞きになつておらないで、別なことをお答えになつておるように思うのでありますが、私は今後日本国内に、この平和條なり或いは日米安全保障條なりのそれぞれの條項に対しまして反対運動が起りはしないか、又これらの二つの條約が施行されます結果起るいろいろな国内における反応、そうしてそれが反対運動になつて参りました場合に、首相はそれに対して如何なる態度をおとりになるか、これを抑えられるのであるか、或いはこれが憲法の許す範囲内において堂々と行われる場合には、これに対しましては政府は何ら干渉がましいことをしないのかどうかという点についての首相の御答弁を承わりたいのであります。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申しました通り国内における例えばいろいろな運動、これは憲法法律の許したところによつて行われたものに対しては、政府憲法及び法律の許すところによつて取締をいたしますが、それ以上のことは、これは民主政治でありますからして議論は自由であります。如何なる議論があつてもそれが講和に反せざる限りは、これは取締るということはよくないと考えますから、その自由に委せるつもりであります。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の質問はこれを以ちまして終ります。
  22. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に一松定吉君。
  23. 一松定吉

    一松定吉君 総理にはどうも御無理なような質問がありましたら御遠慮なく総裁からお答え下さつて結構です。今まで問題になりました條約そのものと憲法とが違反しておるというようなことが頻りに論議されたのでありますが、これは憲法に違反しておるんだという認定は誰がするんでしようか。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ず第一に政府締結する際に内容を審査いたしております。それから国会におきまして審議の際におきましても、これは国会自身が十分に御審議になることと思います。その後におきまして何か裁判上において問題を生ずるという場合におきましては、当然裁判所において認定する、こう考えます。
  25. 一松定吉

    一松定吉君 そうするとなんですか、違憲違憲でないかということは国会できめるんですか。国会できまらんときには裁判所できめる、こうおつしやるのですか。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 国会においても又政府においても又裁判所においても、それぞれの関係の事項についてきめると存じます。
  27. 一松定吉

    一松定吉君 その法律上の根拠如何
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) すべて国家機関というものは、法令につきまして、その権限を行使するに当つては、一応法令解釈権能を持つておるわけでありまして、この権能につきましては更に上級の国家機関によつて修正されるということはそれぞれの場合においてはあると思いますが、さもない限りは権限を行使する機関において当然それに関連する解釈権を持つと、こう考えるのが国家機関の一般的な考え方だと思います。
  29. 一松定吉

    一松定吉君 その根拠を伺つているのです。あなたのその根拠、どこから来るか、それを伺つているのです。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは特に明文を以て憲法にあるとか或いは法律にあるというものではございません。国家機関権限を行使することの性質から来たものであると思います。
  31. 一松定吉

    一松定吉君 それは世間一般解釈ですか、あなたの解釈ですか。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 世間一般解釈と私は心得ております。
  33. 一松定吉

    一松定吉君 諸外国法律には、そういう時分には最高裁判所が決定するということが法文に規定されておる国がありますが、我が国にはさような規定がありません。今あなたがおつしやるように解することが間違いがないならば、憲法の八十一條は要らぬということになるではありませんか。即ち八十一條には「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」という規定は要らないわけではありませんか。然るに八十一條規定を設けてあるのは、あなたの主張するような解釈でなく、法定主義をとつておるからではありませんか。若し又あなたの解釈が正しいとするならば、九十八條第一項は規定する必要がないではありませんか。然るにこの九十八條を規定してあるのはどういうわけですか。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは法令解釈におきましては最高裁判所が最高の権限を持つと、こういう趣旨を謳つたのでございまして、従いまして裁判所においてさような判定が下された場合においては、国家のあらゆる機関はそれに異つた解釈を立てることは許されないわけであります。併しながらすべてのことがことごとく裁判所の裁判にかかるものばかりではないわけでございまして、裁判所の裁判にかからない事柄につきましては、それぞれの機関において一応違憲なりや否やということを判定するのは、これは当然のことと存じます。
  35. 一松定吉

    一松定吉君 その違憲なりや合憲なりやを決定する機関を尋ねているのですよ。我が憲法にこれを制定する規定がないときの機関はどの機関ですかと質しておるのであります。
  36. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 機関は、事柄を処理する国家機関が一応その権限によつて違憲なりや否やということを判断をするわけであります。そしてそれについてなおその問題が裁判所に参りました場合において、裁判所において終極の判断が與えられるのでありまして、その裁判所の終極の判断に対しましては、これは一切の機関が拘束される、こういうわけであります。裁判所の裁判があるまでは、すべての機関は一応自己の権限において違憲なりや否やを判断する機能を持つていると考えます。
  37. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、あなたの解釈は、憲法に違反しておるかどうかということは最高裁判所の判断を待つことがあるというのですか、あるというならばその根拠を伺つておるのですよ。八十一條規定から見れば、最高裁判所は條約が憲法に違反しているかいないかということを決定することができるとの規定にはなつておりません。それが問題なんです。あなたは條約が憲法違反であるかどうかということは、八十一條によつて最高裁判所の判定を受ける場合があるとおつしやるから、あるとおつしやるならその根拠如何ということを伺つておるのです。
  38. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 八十一條におきまして、裁判所法律、命令、処分等を判断することに相成つております。従つてその判断は、これは訴訟において行われるわけでございまして、その訴訟においてそれらの事項を判断する際において、その前提として條約がありまする場合においては、條約の違憲性というものも又判断する場合があるわけであります。従つてすべての條約が如何なる場合においても裁判所において判断されるということは言い得ませんが、併し少くとも訴訟上問題となる限りにおいては、條約も又裁判所において違憲なりや否やを判断される機会がある、こう存じます。
  39. 一松定吉

    一松定吉君 この條約が最高裁判所の判定を受けることができるかできんかという根拠ですよ。あなたのは、それを裁判所に持つて来たときに裁判所が判断するというのであるが、それは裁判所権限のあるときに裁判所が判断するのです。権限がなかつたときには俺は権限がないからと言つて違憲であるか違憲でないかという実質には触れずして、権限なしとしてその請求を却下するのであります。何となれば八十一條によつてはさようの判定を取扱うということが規定にないからであります。換言すれば、最高裁判所はさようなことは判定権がない、即ちこれを判定する権限がないのだから、さようなことを俺の所へ持つて来ても駄目だと言つて、はねてしまうのであります。それでは困る。そこでこれが違憲であるか違憲でないかということを誰が判定するのかと聞くのであります。あなたのように、何でもかでも最高裁判所に持つて行くことはできるとおつしやるが、私のお尋ねすることは適法に持つて行くことができるかということです。適法であろうがあるまいが持つて行くことは勝手です。併しそれは合憲の持つて行き方ではなく、法律上適法でない持つて行き方です。さような場合には最高裁判所においては、こんなものは裁判所権限に属しないというて却下するのです。私の言うのは、八十一條には最高裁判所に持つて行くことのできる事項は列挙主義になつておる、そしてその列挙の事項は法律、命令、規則又は処分となつておるが、この処分といううちに條約の入つていたことは明らかであると思うが、政府はどう思うか。言い換えれば條約に関することは、この八十一條に入つていないと考えるがどうかというのであります。私は憲法違反の條約であるかどうかの判定権は我が国の最高裁判所にはないと思うのであります。要するに、このような場合には判定機関は我が憲法上には規定がないと率直に認めてもらいたいのであります。
  40. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御質問の御趣旨よくわかりましてございます。私の申上げましたのは、違憲の條約が仮にあつて、それに基いて何らか国内において措置がとられる、その措置が裁判所において問題となつた場合において、それについてその措置が違憲であるということを裁判所が判断する、これは当然のことだと存じます。併しそれ以上に亘りまして條約そのものが違憲なりや否やということは、これは裁判所にも判断の機能は憲法規定してないと思います。ただその違憲内容を持つ條約を国内において実施をいたしまする際におきましては、当然その実施の仕方が法律なり処分なりの形において行われる、そのこと自体は違憲として判断される。こういう趣旨で申上げたので、條約が直接に裁判所において合憲なり違憲なりやを判断するということ、又それに対して裁判所が有権的な判断をするということはあり得ないと思います。
  41. 一松定吉

    一松定吉君 そこです。我が国の憲法には違反かどうかということを判定する機関はないのです。今あなたのおつしやるように。そこで、私の言うのは、この八十一條規定を改正する必要がありはせんかと、実はこう思つておる。学者のうちには、処分のうちに條約に関することが入つておるという解釈をしておる人もあるけれども、これは我々專門家側から言えば、それは曲解だ、どうもそれを判定すべき機関がないのだ。そこでやはり判定することのできる機関を設けておいたほうがいいのじやなかろうか。だから、これらの点について政府としての御考慮を賜わりたいという点にとどめて、もうこれ以上は追及いたしません。  そこで、今度はその次に、安保條約の締結についての規定は国連憲章の第五十一條規定がありますね。即ち「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置を執るまで、個別的又は集団的な固有の自衛権を害するものではない。」これでこの安保條約はできたのでしようね。
  42. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 国連憲章第五十一條の趣旨に副うて作成されたものでございます。
  43. 一松定吉

    一松定吉君 趣旨に副うじやない。それはちやんとあなた明文があるじやありませんか。この安保條約の四條に、「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じた」云々とあるが、これはやはり国際憲章第五十一條規定によつて、いわゆる「国際の平和及び安全の維持に必要な措置を執るまで、個別的又は集団的な個有の自衛権を害するものではない。」こういう、執るまではこれができるのでしよう。それでできたのではないですか。
  44. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) この「まで」という意味は、この日米安全保障條約それ自体が暫定的措置として締結せられた條約であつて、同條に予定しておりますような本格的な安全保障條約ができるならば、それに取つて代えられる……。
  45. 一松定吉

    一松定吉君 もつと大きな声で言つて下さい。
  46. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) それから第五十一條で言いますのは、加盟国武力攻撃を受けたときには自衛権を行使することができるが、その自衛権の行使は、安全保障理事会が憲章の規定によつて適当な措置を執るまで認められるという意味でございまして、條約第四條に言う「まで」の時間的制限と憲章第五十一條の「まで」の時間的制限とは、ちよつと性質が違つたものであると考えるのでございます。恐らく一松先生のお考えは、日米安全保障條約によりまして、日本又は合衆国、いや合衆国だと思うのですが、合衆国が自衛権を行使して武力措置に出た場合に、それは安全保障理事会が具体的措置を執るに至つた場合には、それまでで終了しなければならない趣旨ではないかというお考えであろうかと思います。その点は、私どももさように考えておるのであります。
  47. 一松定吉

    一松定吉君 そこで、この国際連合憲章は、これは我が国も條約が成立すると同時に従わなければならないわけですね。そうするとその五十一條の理事会がこれに対する措置を執るまで各国は自衛権の行使ができるという、そのことに矛盾せざる意味においてこの安全保障條約が締結されたのでしよう。こう聞いているのです。
  48. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) その通り考えております。
  49. 一松定吉

    一松定吉君 そこで私の伺うのは、この四條の、国際連合の措置又はこれに代るべき効力が生じたと、日本国アメリカ国が認めたときに効力を失うのですね。そこで問題になるのは、日本は認めておるけれどもアメリカが認めない、まだそれは効力を失う時期でないと、双方の間に争いがあつた場合には誰がきめるのですか。その判定は誰が……。
  50. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) この條約の四條の規定の趣旨は、その認定は飽くまでも日米両国政府が合意によつてなすべきものであるとの趣旨であります。その点は、十分意見を交換いたしまして、一方政府の認定に待つことは相互にとつて不満足の結果となりますから、飽くまでも両国政府間の合意の上の認定があつた場合にこの條約は効力を失うとの規定なつた次第であります。
  51. 一松定吉

    一松定吉君 あなたの言うように、日米の意思が合致して、よろしうございますとなれば問題は起らない、私の質問も起らない。そこで、日本はもう今引揚げる時期だ、あなたのほうはこの効力がこの四條でなくなつたと言うにかかわらず、アメリカは、いや、あるのだと言う、こういうふうに双方の意思が合致しない、あなたの言うように双方が合致しよう合致しようとしても合致しないというときがあり得るのだ。そのときの話なんだ。合致すれば問題はない。合致しない場合はどうするか、そこなんです、それを聞くのだよ。
  52. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) これは客観的事実の認定に関する事柄でございますので、一松先生の御懸念のように、両国政府の認定がいつまでも食い違つて意思の合致を見ないという事態はあり得ないと考える次第でございます。併し仮定の問題としてそういう場合になつたときに、如何なる方法によつてこの問題を解決するかということになりますれば、国際法上許されております各般の方法、即ち両国間の合意で第三者の認定によるという方法もございましようし、又日米両国の合意の上に仲裁裁判にかけるという方法をとることもできましようし、又両国の合意の上ヘーグの国際裁判所にかけるという方法もございましよう。あらゆる国際法上許された措置を日米両国の合意の上とる途があると存ずる次第であります。
  53. 一松定吉

    一松定吉君 そう解釈すればそれでいいのです。そう初めから解釈しないからさつきのような問題が起る。そこでそれはそれでいいので、第三條のいわゆる両国政府行政協定は、これを批准、承認すればこれで行政協定はよろしいということになるのだが、その行政協定の枠内に盛られるところの予算若しくは法律は、これは法務総裁の言うように、国会にかけるべきものはかけなければならんということは結構であります。そこで問題は、国会にかけて国会がこれを承認しないときもあるから、やはりこういうことも予期して研究しておかなければならん。そこで研究するのだが、そのときはどうするのですか。行政協定内容法律若しくは予算を国会承認しないとき……。
  54. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういうふうな場合は、実際問題として政府米国政府に対して義務を負いながら実施できないという苦境に立たなければならなくなるわけであります。そういうことを事前に避けますために、あらかじめ予算或いは法律案を成立せしめた上で行政協定を結びます。或いは又行政協定を結ぶ際におきまして、予算又は法律案が成立するということを條件として結ぶのであります。そこは政治的な考慮によりまして、支障なく、又国会の自由なる審議を防げることのないように注意しなければならんと考えております。
  55. 一松定吉

    一松定吉君 我が意を得たりで、あなたの答弁に賛成します。それである故に行政協定を結ぶ前に、政府はかくかくの考え方で行政協定を結ぶつもりだということを国会に提案すれば今のような支障が生じないわけです。若しも国会承認しないとすると、その間はこの行政協定の活動ができないからして、つまり安全というものが保持されないことになります。それで私の言うのは、行政協定内容を早く国会にお出しなさい。政府はただ行政協定国会が認めたから内容はどうでもいい、後廻わしでいいということはよくない。こういうことになると、今あなたの言うように政府責任をとらなければならん。責任をとるということはどういうことかというと、或いは解散して更にやり直すか、或いは辞職するか、そういうことになります。それでは困る、安全保障の保持ができないから。それで今あなたのおつしやるように、国会承認を経て、そういう支障なからしめるということは非常にいいことでありますから、成るたけ一つ早く、この條約が承認されればすぐに批准もできるでしよう。その間に次の通常国会にでもそういう内容を予定してお出しになつて国会の協賛を経ておく必要がある。こう私は考えますが、それは如何ですか。
  56. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 行政協定内容におきまして、当然国会の御審議を願わなければならんということの予想される事柄につきましては、できるだけ早く国会に御審議を願うということは、誠にその通りにすべきものと存じております。
  57. 一松定吉

    一松定吉君 いやそれで結構です。  そこで問題は、次に少しく変えまして、この安保條約によつて、いまのこの四條によつてアメリカ日本に向つて日本の安全を維持するために陸海空軍を日本に駐留せしめることができる、それはわかつておりますが、それはあなたの御説明では、どこまでも日本を安全に保障するために置くんだ、置くんだとおつしやる。それは結構です。ところが、俺は日本を安全にするために駐屯するんだ、駐屯するんだはよいが、第三国が来て日本を攻撃するような時分には止むを得ずこれは戰さができるね、戰争が。あなたはそれができんと考えられるが、止むを得ず結果はできる。できたときに日本はどうするか、そのときに日本はもうアメリカ安全保障條約でやつて呉れておるから、それに任せつ切りにしておけばよいということで手を拱いておるということがよいのか、そこを伺いたい。
  58. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 日本は、安全のために米軍が活動を開始いたしました以上は、日本といたしましては、もとより行政協定の定めるところに従いまして、米軍に対してできるだけ援助をするのは、これは当然なことであります。
  59. 一松定吉

    一松定吉君 そのできるだけの援助というのが問題です。そこで憲法第九條との関係はどうなりますか。
  60. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法法律の許す限りにおいての援助をすべきものだと思います。それは超過した援助は、これは今日の憲法の建前から見まして、日本としては不可能であります。
  61. 一松定吉

    一松定吉君 そこで憲法が許す限りという解釈、どの程度に憲法が許すのか。
  62. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法日本みずからが戰力を持つこと、それから日本が戰争の主体となることを禁止いたしております。これは許されないことであります。
  63. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、結局アメリカがいま非常に負けそうになつておる。けれども日本は負けそうになつても、あなたは憲法第九條の制限があるから、じつと手を拱いて負けるのを待たなければならんということになるのですか。
  64. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法の許す限りのことをすべきでありまして、憲法以上のことは如何なる場合においてもしてはならない。こう考えております。
  65. 一松定吉

    一松定吉君 憲法日本を存続させるために必要な憲法であつて日本は、今アメリカがやられてしまつてもう滅びそうなときも、憲法があるからじつと手を拱いて見ておるのですか。そのときに政府としては、日本国としてはとるべき処置はないか、そこなんです。
  66. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 勿論その場合に国民の総意に基いて、憲法を改正して……現在の憲法で禁止されておりましても、日本を存続するために必要な処置ができるような憲法に改正するということは、これは考えられるでありましよう。併しながら非常の際であるという理由によつて憲法を無視した行動を政府がとり、国民がとるということは、これは憲法を認めまする法治国の建前として絶対に避けるべきであると思います。
  67. 一松定吉

    一松定吉君 今アメリカ軍が負けつつある。日本はもう敵軍から包囲されて滅亡の状況にあるというときに、あなたのおつしやる憲法を改正して、それから国会を招集しておやりになる。そのときには日本は滅亡してしまうのだ。そういうことはよいのですか。どうですか。本当に日本のことを憂慮してどう解釈するか、そのときには自衛権というものをそこまで認めてやるということにするのか、あらかじめそういうことを予期して憲法を改正しておくというのがよいのか、そういうことが政治じやありませんか。それを……。(「しつかり答弁しろ」と呼ぶ者あり)
  68. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法というものは、これは国家の根本法でありまして、如何なる場合においても憲法を無視するということは憲法上許されないと思うのであります。憲法範囲を超越いたしました事実上の問題、そういうことになりますと、これは法務総裁として申上げる限りでないと思います。
  69. 一松定吉

    一松定吉君 私は憲法を無視しろと言うのじやありませんよ。憲法に自衛権というものが認められておるということであれば、日本がいわゆる滅亡に瀕するようなアメリカ軍の敗戰を見ることは国民としてはできないから、その時分にも自衛権というものがそこまで範囲が及ぶのだというふうに憲法解釈すれば、憲法違反じやないのだ、併しその解釈政府としてはできないのだということであれば、そういう非常の際に対応することのできるように、あらかじめ憲法を改正しておく必要はないかと、これなんですよ、お尋ねすることは……。
  70. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほど申上げました通り、米軍が日本のために起ち上るという際において、日本としてはできるだけの努力をすべきものであります。日本憲法日本がみずから戰争の主体となる、そうして日本が戰力を持つことを禁止いたしております。みずからが戰争に直接参加するということはこれは不可能な憲法の建前になつております。併しそれ以外におきまして、現在日本の持つておりまするあらゆる警察力なり、又国の総力を挙げてこの戰争に従事いたしておりまする米軍に協力するということは、これは当然考えるべきことであると考えます。又憲法はそれを禁じてておらないのであります。自衛権の行使として当然できる。併しながらそれを超越いたしまして、自衛権のために日本がみずから戰争の主体として参加することはできるのだというところまで進みますると、これは現在の憲法以上の問題になりまして、そのことは国際法上は無論許されることでありますが、併し憲法上はその場合日本が戰争に参加するということはこれは許されない。従つて憲法といたしましては、たとえ自衛権の行使といたしましても、日本が戰争することは禁止をされております。こういうふうに解釈いたしております。
  71. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、憲法日本とどつちが重いとおつしやるのですか。
  72. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 日本が重いが故に憲法があるのだと思います。
  73. 一松定吉

    一松定吉君 その憲法が、あなたのような解釈をすると、日本を滅亡せしめる結果になる。だからこの憲法解釈によつて日本が救われる。日本が滅亡するというようなときには、それは憲法を活かして解釈して、日本をどこまでも存続せしめなければならんということは、これは当然なことである。憲法より以上の問題で、それはいかんというならば、あらかじめ第九條を改正して、そういうような弊害をなからしめるようにしておくということがよいではないかと、こう言うのです。
  74. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お説については誠に同感でございますが、只今政府といたしましては、憲法を改正してまでそういうことをあらかじめ準備しておく実際的な必要はないと確信いたしております。
  75. 一松定吉

    一松定吉君 それは大変じやありませんか。この前文にこういうことが書いてあるね。「無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危險がある。」この危險というのは、日本に危險を及ぼすというその危險の範囲はどうなんですか。そういうことがあるから平和條約が必要じやないか。そういうことがあるから安保條約が必要だ、あなたのおつしやるような前文のなにを無視しての議論ならあなたの議論でよい。日本はそういうようないわゆる日本の国を戰争から逃れしめて、日本を安全にさせるために必要である、今日本国ではそういうような危險が襲いかかつておる。それだからこの安保條約が必要だというのに、危險がないのだからということはどうですかね。私はこの安保條約に反対とか何とかというのじやありませんよ。日本の国はこれから成るべくあとで臍をかまないというような処置をとつておくのがよろしい。こう言うのですよ。
  76. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お説の通り、現在日本は軍国主義による生存を危うくするような危險は確かにあるわけであります。そこで政府のこれに対する考え方といたしましては、日米安全保障條約によつて米軍に駐留をしてもらう、そうしてこの危險を米軍の存在ということによつて予防できるものである、こう考えておるわけであります。従いまして先ほどお述べになりましたような、現実に戰争が起る、而もアメリカ軍が非常に不利に陷る、そうして日本がみずから戰力を持ち、備え、戰争に介入するという必要は起らない、又起らないために安全保障條約を締結する、こういう考え方に立つておるわけでございます。
  77. 一松定吉

    一松定吉君 起らないということを前提にするとあなたのようになるが、起る虞れがあるということにすると、いわゆる泥棒の入らん前にちやんと戸締りをしておかなければならんという私は議論です。あなたは泥棒は入らんのだから戸締りはいい加減にすればいい、そこが違うのですから、これ以上は議論しません。そこでこの点については一つ政府のほうでも、国民としても大いに研究しておく必要がある。あなたがたがそういうことを御心配の上でこの安保條約を締結せられたということについては、私は全幅の賛意を表するわけです。併しあなたの言うようなことになると、危險はやはりあるのだから、それは一つ国民として考慮しなければならんということを申上げて私の質問は終りますが、その終る前に、こういうことを一つ政府意見だけ聞いておきたい。この講和條約において千島、歯舞、色丹諸島並びに北緯二十九度以南の南西諸島の日本復帰について、吉田総理のお考えでは、大いに協力するということを何回も承わりましたが、その点は相変らず一つ努力して、この條約が成立しましても、機会あるごとにこれを主張して、それが実現するように御盡力を願いたいと考えておるのですが、そのことは総理間違いございますまいね。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 間違いございません。
  79. 一松定吉

    一松定吉君 有難うございました。それから次は、賠償のために自由国家群の一員となる日本国が、その経済力を弱化せしむるような、自由国家群の防衛に惡影響を及ぼすような賠債の負担は絶対にさせないということは、総理の御意見でもあり、池田大蔵大臣の御意見でもあつたようですが、併しこれは日本の一方的考えだけでありまして、アメリカは非常に好意を持つて下さつておりますけれども、例えばフイリピンだとか或いはその他の国で、どこまでも賠償を取るというように意気込んでおるのでありますることは我々が新聞その他によつて承知しておりますが、これらのことについても、熱意ある総理において引続いて十分に御努力賜わるというその御熱意をいま一度伺いたい。
  80. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣意に副うようにいたします。
  81. 一松定吉

    一松定吉君 有難うございました。それから安保條約に関することはもうよろしうございますが、行政協定の対等の原則ということについて、行政協定を結びまするときには、定めし政府には委員会というようなものでもお作りになるでありましようが、その委員会は、日本が五人なら向うも五人、対等の頭数において、そうして相当の権威を以てこれをお作りになつて日本のために不利益な結果を招来しないように御努力を願いたい。これは希望だけにしておきます。  それから日本に駐留するところの米軍の法律的地位につきましては、いわゆる治外法権は国際法上の一般の原則に従つてつて頂きたい。特にアメリカ軍であるが故に特別の特権を持つというようなことは與えられないように一つ御考慮を賜わりたい、こういうふうに私は考えておりますが、これは法務総裁のお考えで結構です。
  82. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その趣旨に副うように努力いたしたいと思います。
  83. 一松定吉

    一松定吉君 有難うございます。それからそのことについての分担金は成るだけ少くして、そうしてその少く削減することのできるものは、日本のいわゆる自衛軍の創設に振向けるというようなお考えを承わりたいのですが、これはどなたでもよろしうございます。
  84. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 政府は今自衛軍の創設ということは考えておりませんが、併し国内治安のための最も強力な施設といたしまして、警察予備隊があるわけでございまして、この警察予備隊につきましては、この上とも強化いたしまして、国民期待に副わなければならんと考えておりますが、御趣旨に副うようにいたしたいと考えます。
  85. 一松定吉

    一松定吉君 私の質問はこれで終ります。
  86. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 日本の運命を決定する平和條約並びに安全保障條約について、私から首相に御意見を伺う機会は恐らくこれが最後になるかと思います。従いまして私自身日本の将来にとつて最も重要な点について、首相の永久に変らないお答えを頂いておきたいと思うのであります。  先ず第一に伺いたいのは、最初の総括質問のときに、首相は現在の日本国憲法は飽くまで守るというお答えを下さいました。私は現在日本国民の深い憂慮のために、この首相の固い御決意は深く感謝しております。最近日本国憲法というものを我々国民が、そうして又世界が飽くまでこれを守り、積極的にこれを実現するという立場に立つておるのか、それとも日本国憲法及びその背後にある理想というものは、もはや紙屑のようになつておるのか、そういう我々の、特に若い人間にとつての深い憂慮がございます。我々後輩として、吉田首相最後の帝国議会において現在の日本国憲法を提案せられ、そうして委員会及び読会の討議を通じ、この成立に至られましたときのその御決意というものを、ここで改めて伺うという必要は実はないはずなんであります。ないはずなんでありますけれども、最近の事情に鑑みて、これらの点について二、三の点をもう一遍お尋ねすることを許されたいと思うのであります。第一は、現在の首相は、当時の首相として日本国憲法というものはあらゆる戰争を否定するものであるという精神の上にこの憲法を提案せられ、又説明せられ、そうして又これを成立せられたものと信じておりますが、さようでございましようか。
  87. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そうでございます。
  88. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有難うございました。第二に伺いたいのは、この日本国憲法国際間の紛争を解決するためにあらゆる戰力を否定する、戰争的手段によつて解決することを否定するという理想の上に立つて制定せられたものであり、今日もそういう理想の上にこの憲法が立つておるものであると首相は断言せられることができると思いますが、如何でございましようか。
  89. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見通りであります。
  90. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有難うございました。第三に伺いたいのは、日本が自衛権を持ちながら而も戰力を持たないのは、如何にも、どうしてこの自衛権を守るのか、そして又そこに成立するところの一種の真空状態というものは何によつて守られるのかということは、現在の日本国憲法が提案せられ、討議せられ、そして成立いたします間に、首相は決してその問題についてお気付がなかつたのではないと思いますが、如何がでございましようか。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国際の情勢でありますからして、始終、常に変化いたしますが、その変化に際しても憲法は飽くまで守る、守るためにこの安全保障條約を作つたのであります。これによつて一応の国家の安全を守る、憲法に反せざる範囲において守るという考えから安保條約を作つたのであります。
  92. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は最初に申上げましたように、首相のような長い、而も苦難に満ちた経歴を持つて今日の日本の難局に立つておられる政治家は、決して目前の問題に拘泥して長い期間に亘る国の運命というものを誤まられるかたではないと固く信じております。いわんや日本国憲法を制定する際に、日本国憲法の原則というものは数年の間に変化する、その変化によつて直ちに変えられなければならないような原則の上に立つてこの日本国憲法を提案せられ、そして日本国民及び世界に深い希望を與えられ、そしてこれを成立せられたものではないというふうに固く信じます。当時この日本が自衛権を持ちながら、軍備を持たないというために危險があるのではないかということは、衆議院におきましての委員会及び読会における速記録を拜見いたしまして、しばしば首相に向つて各議員からその問題が提起せられて質問せられております。それに対して首相は固い信念を以て、日本は自衛権による戰争というものをも否定しているのだ、戰争を二つに分けて、自衛権による戰争、侵略のための戰争というふうに二つに分けることが、如何に過去において悲惨な歴史を招いたか、又日本にとつてもそのために如何になすべからざる戰争がなされたか、そのことを首相は縷縷説明せられて、戰争を、自衛権による戰争と侵略のための戰争と分けることが甚だ有害である、自分はそういう分けるという立場の上に立たない、従つて自衛権のための戰争というものをも否定するということを述べておられることは、今日記録に明らかでございます。その意味から私はこの第一の問題について、首相が現在の平和條約並びに特にこの安全保障條約というものに署名をされたということは、この日本国憲法が大原則において活かされ、そうしてこれが発展させられ、従つて世界の各国が戰争によつて国際間の問題を解決するという方法を捨てて欲しい、世界に平和機構が確立することを切望するという御希望から考えまして、現在のこの日米安全保障條約というものが憲法の理想を実現するものではない、極めて違憾なものであるとお考えになつておると思いますが、如何でございましようか。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はこの安全保障條約によつてのみ日本独立、安全が守られるので、独立はできたが、併しながら自衛権もある、その自衛権を行使する方法がない、独立が危うくなるということであれば、独立したということが無意味になりまするから、独立したこの独立をどうして守るか、安全保障條約において守るということはしばしば申した通りであります。これによつて一応の憲法の趣意も立てば、又日本の自衛も、独立のほうもできると、こう私は確信いたしますから、この條約は是非とも国会承認を得たいと思います。
  94. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 日本国憲法が提案せられ、討議せられました間に首相がしばしば述べられております理想は、日本国際間の問題を戰争という手段によつて解決するということを放棄する、あらゆる戰争を放棄する、あらゆる戰力というものを放葉する、それによつて世界があらゆる問題を平和的手段によつて解決するという方向に立つことに対しても日本国民の深い希望を表明するものだと言つておられます。そうして只今その御趣旨を放擲せられたのではないというように考えますが、今私に與えられましたお答えというものと、それから当時のこの我が帝国議会の最後の本会議においてお述べになりましたお言葉との間には、日本国民に対する大きな希望、或いは世界に対する高邁な希望というものの点において、多少の変化があるということは私も認めざるを得ません。併しこれは首相においても決して喜んでおられることではないだろうと私は思うのであります。その点について、およそ二つの点について特に首相の深いお考えを伺いたいと思うのでありますが、仮にこの日米安全保障條約というものが憲法によつて禁ぜられているものではないといたしましても、この日米安全保障條約というものによつて日本に置かれますところの戰力、その戰力の実際における動き、或いは日米安全保障條約全体の動き、或いは平和條約全体が実際に動く、行われて参りますそこには、日本国憲法が我々に向つて嚴格に命令しておるところの平和主義、我々のただただの目的は平和であり、我々のとるべき唯一の手段は平和的手段であるという大目的にすれすれになつて行く場合があることを首相もお認めになると思うのであります。例えば警察予備隊にいたしましても、憲法は明らかに警察力というものを認めております。併しながらそれが状況の変化によつて、そして又しばしば首相は、警察予備隊は飽くまで警察であつて、絶対に自分はこれを軍隊にはしない深い決意をしておるということをしばしば言明せられる、これに対しては私どもは深く感謝しています。同時にその首相の深い決意というものは、この日米安全保障條約が成立し、そしてそれが実行されて行く上に極めてデリケートな問題が起つて来る。そうして日本国憲法が我々、従つて首相、あなたに向つて嚴格に命令しているところの平和主義というものを危くするような場合が、決して杞憂とばかりは言えないそこにすれすれの問題が起つて来るということを首相は今日において決してお考えになつていないことでないと思うのであります。そこでそういうすれすれの問題というものを防いで、国際情勢の変化、或いはさまざまの現実の変化というものによつて日本国憲法が禁じてはいないけれども、理想とはしていない状態が発生して行く、その過程において日本国憲法が明らかに禁ずる状態が発生しようとする際に、首相は飽くまでそれに抵抗せられる御決意であると私はひそかに信じておりますが、私に対してではなく、どうか国民に向つてその点をお答えを願いたいと思うのであります。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣意がちよつとよく私には了解しにくい点もありますが、駐兵によつて憲法の平和主義が危くならんかということになりますか、アメリカ駐兵によつてつて外国の侵入を招くようなことになりはせんか、こういうような御趣意ですか。
  96. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いいえ、私はそういう細かい問題を伺つておるのではないのです。憲法は我々に唯一の目的として平和を與えておりますし、唯一の手段として平和的解決ということを言つておるのであります。で今日止むを得ない事情で日本にその外国軍隊が駐留するということになるのでありますが、それに伴つて、そのこと自体が憲法違反であるとか、どうお考えになるかとか伺つておるのではないので、日本外国軍隊が駐留し、そして日本独立を守るためにさまざまの行動がとられて行くことになると思いますが、その際に憲法が我々に向つて許しておるところと、憲法が我々に向つて禁じているところとのその限界のすれすれの問題が起つて来るということは、我々が、責任ある国会議員としても考えなければならんことである。そこで現首相に向つてつておかなければならないと思うのは、そのすれすれの線を飽くまでも守るということの責任は我々国会議員は勿論今日において十分感じております。首相においてもお感じになつておられることと思う。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そのすれすれの線なるものが私にはちよつとよくわかりませんが、併しながら趣意とするところは、いずれにしてもすれすれの線になるような事態の起らないようにというのが趣意であります。その両條約を通して考え期待するところは、世界の平和、その平和に日本が貢献する、貢献したい、みずから進んで平和を破るというようなことは勿論なく、又国際間の係争の問題を武力によつて解決するという考えは毛頭せざるのみならず、世界においてそういう武力によつて問題を解決しよう、或いは国の政策を遂行しようというようなものが仮にあつても、これは世界の輿論の力と言いますか、いわゆる国際連合とかその他の方法で、世界が今日企図しておるような戰争はこれは避け、そして国際間の係争の問題は成るべく平和機関によつて処理したい、その趣意に飽くまでも副うて私は参りたいと思います。
  98. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 首相のその御決意はよく私は了解しておるのであります。併しながらこの日米安全保障條約が締結される際に、日本の一般に與える印象は、繰返しては恐れ入りますが、日本国憲法が我々に命じておるように、如何なる国際間の紛争もあらゆる平和の手段を盡してこれを防ぐのだということが日本国憲法の趣旨でもあり、そうして又首相はこの日米安全保障條約をそういう意味において我々に向つてお出しになつておるのだと思うのであります。併し世間においては、世間或いはこの国会の中においてもそういう空気があると思うのでありますが、日米安全保障條約が締結され、米軍が日本におる、それによつて、米軍の戰力によつてあらゆる国際問題を解決して行くんだということを中心に考えて行く考え方が生じておるということについて、首相の深い関心をお願いするのであります。日本国憲法があるのですから、米軍が日本に駐在しても、日本国際間の紛争をこの米軍によつて解決するのじやない。日本国憲法の主張しておる、又我々に命じておるあらゆる平和的手段によつて解決するのである。この日本に駐在する米軍というものの戰力によつて解決するということが、我々の第一に考えるべきことではないというふうに首相はお考えになつておられるが、然るにこの日本の指導者の間に、そうして又国民の間に、この米軍によつて日本に駐在する米軍によつてあらゆる国際間の紛争を解決して行くんだという考え方が高まつて行くならば、そこに日本国憲法が危くされる虞れがあると思うのであります。そうしてそういう事態に対して、首相は今日におきましても深い決意を持つておられることだと思うのであります。そうしてその点について特に首相にお願いしておきたいことは、この行政協定によつて必要とお考えなります法律案と予算案とは国会に御提出になるというふうに繰返しおつしやつております。私はこれらの法律案と予算案とが国会において自由に審議せられることを勿論信じております。併し、首相もよく御承知のように、過去の日本においては軍事予算に対する自由なる審議ということは極めて困灘な状態に陷つたことを我々も忘れることができません。そうして又これらの法律案にせよ、予算案にせよ、越ゆるべからざる一線を越えるならば、もはや我々は日本国憲法が命じておるような日本に還つて来ることはできなくなるのであります。そういう際における国会の自由なる審議権というものを、首相は今日においてやはり飽くまで尊重せられる御決意の上に立つておられると信じますが、その点を伺つておきたいと思うのであります。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと私が誤解いたしておりましたが、只今のお話によつて了解いたしたように思いますが、米国軍の駐在によつて、米兵の戰力によつて問題が解決すると言いますか、或いは日本独立を守るというようなお考え、これは我々の期待しないところであります。米国の、米兵の駐屯ということは、即ち平和を守るための駐屯であり、又平和が維持されるためかくのごとき、若しこの米兵がおるにもかかわらず、或る国が日本に対して進撃をする、自然米兵に対しての戰争を開始する、というようなことのないように、そうすれば直ちにそれが第三次戰争になるか、アメリカを相手にして大戰争を引き起すということの危險になる、日本だけが相手ではないのだ。その場合には連合国と言いますか、或いは国連軍隊全体の問題としてこれが取扱われる。あたかも今日朝鮮におけるごとき事態が生じて、国連が相手になつて、朝鮮だけが相手ではないという危險を引き起してまでも日本の国を侵略するというようなことは、一応、相手国というのはおかしいですけれども、侵入国において考えるでありましようから、無謀な侵入は愼しむ。即ち平和が、戰争は予防ができると言いますか、平和が破壊せられることがないように駐兵をする、駐兵を許す。趣意は、これによつて日本の安全を守るのではなくて、日本の平和、或いは日本独立を害するような事態が起らないように、若し日本に対して進撃を加えるものがあるならば、それが直ちに第三次戰争になるとか、或いは国連、世界の多くの国の多数を相手として戰わなければならんというような危險が生ずる、その危險を考えるならば、むやみに日本に対して進撃を加える、無謀に、或いは何と言いますか、朝鮮におけるような無益な戰争が起るというようなことを避けるために、安全保障條約によつて日本独立を守る。駐兵によつて戰争をするという、駐兵の戰力によつて国を守るというのではなくて、進撃をあらかじめ予防する。即ち平和を維持するがためにこの駐兵も許し、安全保障條約も同意することになつたのでありまして、戰力によつて、米兵の戰力によつて国を守るというような考えは毛頭ないのであります。
  100. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 縷々御説明下すつて感謝に堪えないのですが、これらの問題について、例えば米軍の出動というようなものについては、日本政府の明らかに示されたる要請というものによつてのみ出動せられるということが、本條約に書いてございますが、日本政府が米軍の出動を明らかに示されたる要請を以て希望されるという場合に、この日本政府明示要請を以て、米軍の出動期待されるということについては、これは極めて愼重にせられる、そういうことのないことを期待せられるということをしばしば御答弁なつたわけでありますが、その点について、特に日本政府明示要請をするという際に、この明示要請をなすか、なすべからざるかということについての国会権能権限というものは十分に尊重せられるものと了承いたしますが、如何でございましよう。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 要請するような事態は無論起らんと思います。又起すべきではないと思いますが、いわゆる起るような場合があれば非常事態であります。これは勿論国を挙げて当面の問題に、危險に対応しなければならないところでありますから、政府限りで以て処置をするのでなく、政府の力の及ばざる事態が起るのでありますから、自然、国会は勿論、国民にも諮つて、そうして国民の輿論の向うところに従つて決定すべき大国策であろうと思いますから、その点は御心配が要らないと思います。
  102. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有難うございました。それでは第二の問題について伺いますが、第二の問題は、率直に申せば、いわゆる日本が中立を守るという問題でございます。これについて総理大臣はすぐさま、中立ということは空論である、今日の状態においてはできないと最近お答えになつておりますが、この点について、特に我々が首相に向つてこういうことを伺うのは、繰返すようですが、実際心苦しいのであります。心苦しいのでありますが、現在、日本は暫らくおきまして、世界において、政治上の見地というものと、それから戰略上の見地というものと二つございまして、そうして、この戰略上の見地が政治上の見地よりも上に立つておる事態を我々は幾多眼前にしておるのであります。例えば、この平和條約の第六條(a)項但書、従いましてこの日米安全保障條約というものについては、これは勿論我々はただ新聞を通じて知識を得るだけですから、全然根拠のない報道であるかもわかりませんけれども、例えば首相のよく御存じのごとく、イギリスのマンチエスター・ガーデイアンは、この点についてはステーツ・デパートメント、アフリカの国務省は非常に愼重であつた、できればもう少し先へ延ばしたいということを考えていた。それからダレスさん御自身は、この平和條約の第六條(a)項但書、即ち占領軍が撤退した後に、日本が独自の意思を以て希望する外国軍隊が駐留することを妨げないというこの規定従つて日米安全保障條約というものに対して、ダレスさんは、これをマンチエスター・ガーデイアンの言葉では、リトル・テイスト、余り好ましいと思つていなかつた、けれども最後にペンタゴン・ウオンテツド・イツト、アメリカの国防省がこれを希望した、それでこの国務省又はダレス氏の非常に愼重な態度というものが、最後に今日の形をとつて決定されるのについては、ペンタゴンの判断というものが決定的な意味を持つたということを報道しております。これは、私は或いは事実無根であるかも知れないと思います。この事実だけを指すわけではありませんけれども、併し、首相もよく御存知になつておりますように、過去の日本におきましても、高い政治上の立場というものが、戰略上、軍人の立場というものによつて抑えられてしまつた例が多々ございます。その結果今日の日本の悲痛な状態を招いたことも首相のよく御自覚になつておるところでございます。こういう問題は、決して最後になつて初めて発生するものではなくて、あらゆる政策、個々の政策、例えは治安の政策においても、或いは経済の政策におきましても、その他常に戰略上の見地に立つ人は、即ち軍人は戦争というものがこれは職業ですから、戰争というものが不可避である、その不可避の戰争を準備する、これを、用意するということで万事法律も作れば、政策も立てます。併し、ステーツマンとしての吉田首相のような政治家は、戰争を不可避と考えて、そうしてそれによつて万事法律を作り、政策を立てて行くというのでは決してあり得ないと私は思うのであります。その意味で、例えばこの中立の問題にしても、首相もよく御承知の通りに、一昨年の春、マツカーサー、当時の最高司令官は、日本に向つてアメリカは決して同盟国となることを希望していない、これはイギリスの新聞デーリー・メールの首脳者であるかたに向つてマツカーサーが語られた。日本の新聞にもこれは載せられましたが、米国は決して日本同盟国として要求していない、日本が中立国となることを希望しておる。これはスイスの例を引かれた。スイスの例に対しては、首相も、そのスイスも今日は中立を守つていないという答弁をなさいましたが、私が伺いたいと思いますのは、このマツカーサーが一昨年の春、日本に向つて中立を希望され、又昨年の夏にも重ねて、夏の前でありましたか、昨年の四月でしたか、三月でしたかにも、重ねてこれはリーダース・ダイジエストのマツキヴオイ君に向つて日本は中立を守るのが理想なんだということを語られております。これはその後の情勢によつて、今日日本は中立を守ることは非常に困難になつておるというように首相お答えなりましようけれども、この間に、マツカーサーのような軍人のかたで、決して一年先、二年先の極東情勢が変るということを全く予測されないということはないと私は思います。マツカーサーのようなかたでも、ステーツマンとしては、日本が中立の上に立つのが一番幸福である、理想であるというふうにお考えになつておるのだと思う。今日首相の御判断によつて日本は中立的な立場ではなくなつて来ますけれども首相はどうかこの点について、戰略的な立場に立てば常に中立はございません。戰争をするということにきめるならば中立はあり得ない。併しながら、もつと高い、高邁な政治的見地の上に立てば、日本にとつてはやはり中立が理想であるという考え方を当時、一昨年、昨年においてマツカーサーが述べられ、そうして総理御自身もこれに御賛成になつたのです。これは、一、二年の間にお考えがすつかり変つたというのではなくして、戰略の問題、そうして政略の問題と言いますか、政治上の高い見地から、この問題については愼重にお考えになつておることと確信いたしますが、如何でございましようか。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本が戰争に介入しないのみならず、巻き込まれないようにするのにはどうしたらいいか、若し又中立ができて、戰争の圈外に始終おることができるということならば、これは結構なことと私も思います。併しながら、今日世界の客観情勢は始終変化いたしておるのみならず、現に朝鮮のような事態が起つておる以上は、この場合も考えなければならんと思います。併しながら同時に日本みずから戰争に入るとか、戰争を起すとか、憲法の精神に違つた行動をするということは成るべく避けたいと思いますから、すべての場合を考えざるを得ないと思います。中立は結構でありますけれども、今日中立を守れないという以上は、中立だけに頼るということはできないでありましよう。又マツカーサー元帥の考えがどうであつたか、この考えも、或いはマツカーサー元帥自身の考えも、多少朝鮮事変によつて変化いたしたかも知れないと私は考え得られます。いずれにしてもそのときどきの客観情勢に処して、政治家は処置いたさなければならんと思いますが、ところで今戰略云々の話にありましたが、米国においても現在、曾つて日本にあつたがごとくに戰略的の必要のみを重視して、そのためにアメリカ政府が動かされるとか、或いは犠牲になるとか、犠牲になるということは悪いことでありますが、それに反してそうして政策を立てるということは米国においては万々ないことと私は思います。現状はよく知りません。如何なる現状であるかそれは知りませんが、アメリカの建前からいつて見て、即ち大統領が大元帥であり、海陸軍の大元帥であり、日本の昔の構成とは違つております。而して憲法の趣意とするところは、飽くまでも政治が主になつて、そうして戰略によつて左右せられるとか、或いは又戰略によつて、戰略上の必要から一国の政府が、政策なり外交なりが圧迫を受けるという建前にはなつておらんはずであると私は思います。現在においてもそうであるでありましよう。即ち結論においては、結局政府の政策の命ずるところによつて軍略上の必要も左右せらるるところであろうと思います。又イギリスにおいても、特にイギリスにおいては最近の傾向から申して、軍略、兵力を用いるということは避けたい気持であるとチヤーチル氏その他の英国の首脳者は考えておるであろうと思います。即ち英米の間において、平和の維持ということに対しては今後も一層力が用いられるものであろうと思います。故に、私の話は前に戻りますけれども日本独立なり安全なりというものは、憲法に反するような事態を余り重く考えて見る必要はないのではないかと、こう私は思います。
  104. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に一言だけ……。
  105. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間がありませんから極く簡單にお願いいたします。
  106. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一言だけ首相に伺つておきます。これは首相御自身が過去の御体験から十分御承知のように、日本においても、そして又アメリカにおいても、世界においても、この戰略第一主義というものが支配するところに平和もなければ幸福もございません。人権もなければ、人間の尊嚴ということもないことは、総理御自身よく御承知でございます。この戰略第一主義ということについては、日本においても、又アメリカに対しても、総理は必ず鬪われる決意を持つておられると信じます。如何でございましようか。最近ダレス氏が見える、或いはアリソン氏が見える、或いは行政協定締結せられる、或いはそれが調印が行われる、その場合におきましても首相は、少くとも日米安全保障條約或いはこの行政協定においては、日本はすでに独立の立場を以て交渉するのでございますから、日本にとつても戰略第一主義が支配するような事態を決して招来しない、又アメリカにおいても万一戰略第一主義の政略が今日支配しているならば、これは日本によつて幸福でないことでありますから、そうして又世界にとつても幸福でないのでありますから、首相はそれに対して非常な御苦労を以てお鬪い下さるように確信いたしますが、如何でございましようか。
  107. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) アメリカの戰略を主とした政策に鬪うというようなことは、言葉が荒くなりますが、第一私はアメリカ政府として、只今申したように、結局政策が勝つのであつて、政策が結論になるのであつて、曾つて日本のように、戰略上の必要、戰略論が政策を左右することはないと思います。従つて仮にダレス氏がどういう問題で来るか知りませんが、併し結局私の想像するところでは、平和條約等の跡始末に見えるのだと思います。その場合にダレス氏からして、お話のような、御懸念のような問題が出るはずは毛頭ないと私は確信いたします。鬪うということは語弊がありますが、結論においては戰略的の必要、戰略を主にした結論を以て日本に臨まれるとか、或いは戰略を主としたような、話が日米の間に行われるというようなことは決してないと私は確信いたします。
  108. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 條約審議以来しばしば総理から答弁を頂きましたが、いよいよ今日が総括質問として最後の機会でございますので、他の政府委員お答え願うような質問は何一ついたさないつもりでございますので、どうか総理にじきじきお答え願いたいのであります。私もむつかしい学問上のお答えは何一つ求めません。国民はこの講和が済めば、景気もよくなり、暮らしも楽になろう、金詰りも幾らか緩和をされよう、税金も軽くなるであろうと考えております。この勤労国民大衆に率直なお答えが頂ければ結構でございます。  第一にお尋ねしたいことは、あなたがサンフランシスコで御調印になつて参りました安保條約は、何年くらい続くお見通しで御調印になつてつたものでございましようか。
  109. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) こういう問題は時間を限るわけに参りませんからお答えいたしません。(笑声)
  110. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 併し政府代表し、国民の運命にかかわる問題にあなた一人が、あなたが調印せられて来られました以上は、多少のお覚悟のほどもつたのではございませんでしようか。
  111. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のお答えは前の通りであります。
  112. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではいたし方がございませんから、條文自身についてお伺いいたしますからお答えを願いたいと存じますが、御調印の安保條約の前文には、これは日本国希望するからやるんだと書いてございます。ところが、一條、二條、三條と読んで参りまして四條に参りますと、いつこの効力を失うか、それは日本国及びアメリカ合衆国政府が認めたときに効力を失うと書いてある。これは少し変ではないでしようか。日本が安全と認めたときに効力を失うのか、或いはそうではないのでしようか、如何でしようか。
  113. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 條約は一方的廃棄はできないのであつて、條約は合意によらなければ廃棄ができないのが通則であります。
  114. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この場合、前文で、日本国は安保條約を希望すると、日本希望するから成立すると、その日本国希望するから、それによつてアメリカ合衆国駐兵してやるぞよという、この條約、これは平和條約によつて、すでに日本独立を全ういたしました以上、日本の安全……これでもう日本は安全であるかどうかということを判断するのは、独立日本権利ではございませんでしようか、如何がなものでございましよう。
  115. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のお答えは前言の通りであります。
  116. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は独立日本が自分自身の安全をアメリカに相談しなければ廃棄できない……この條約に調印して来られた総理のお考えを十分拜聽することができないので極めて遺憾であると申上げて、この條約のよつて来たるもう一つの角度から外交の権威者である総理にお尋ねいたしたい。それはエジプトの例でございます。今エジプトはただならない風雲が漂つておりますが、これはあなたにはいささか釈迦に説法の感がございますが、イギリスエジプトとの條約は一九三六年、昭和十一年、その当時日の出の勢いのイタリアのムソリーニがエチオピアを侵略したその翌年、イタリアが敗北いたしましてからはこれは不必要でございましたが、そのムソリーニのエチオピア侵略、このフアシスト軍隊を守るためにエジプトが暫くイギリスの御駐在が願いたいと言つてきめましたこのエジプトとの條約、幾星霜を経まして今日これが大きな問題になつておる。その後エジプトはしばしばイギリス軍隊の撤退を要求いたしましたが、イギリスは頑として條約を楯に撤退しない、この出来事を、日本のまさに締結されようとするこの安保條約との国連において、どういうふうにお考えでございましようか。
  117. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) エジプトの問題はお話の通りであります。併しエジプト状態日本状態とは全然違うことも兼岩委員御承知の通りであります。従いましてエジプトの問題が日本の問題と直ちに関連をすることは考えておりません。
  118. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どこが違いますか、ちよつと御教示願いたいと思うのです。
  119. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) エジプト日本とは、その環境におきましても、地理的な状態におきましても、又年代におきましても、すべて違つておると存じます。
  120. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 歴史的な條件が違うことはよくわかりましたが、條約の具体的な條文について御説明願いたい。
  121. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本のこの日米安全保障條約とエジプトイギリスとの條約とは、これは根本的に建前を異にしております。従いまして條文上も同様であります。
  122. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 條文のうち、ほかの点は結構でございますから、この條約をやめるための、効力を失うための、第四條に相当するものに対応する英エ條約の條文をお示し願つて一つ了解したいと存じます。
  123. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) イギリスエジプトとの條約文は、只今手許には持つておりません。持つておりませんが、御質問の中心は多分第四條にあるいわゆる有効期間の点において、両方の国が合意の場合に初めてこれが解消するではないかという点であろうと存じます。これは併し普通の場合において、先ほど総理から御答弁通りであります。
  124. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 総理じきじきの御答弁ならそれで僕は納得しますが、あなたは外務次官で、後ろに條約局長がいるでしよう。條文そのもののお示しを願います。来るまで待つています。
  125. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 條文の対比は後刻申上げます。
  126. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について……。
  127. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 今資料が参りまして、ちよつとお答えできるようになりましたから申上げます。期間は二十年、但し十年後は條約改正の商議を開始することができることになつておりまして、私の了解するところでは、もう十年も経過しており、一九四七年以後は條約改正の商議を開始し得ることになつておると存じます。それがためにエジプトイギリスとの間に商議が開始されまして、ほぼ満足な解決に達する段階に至つておりましたが、エジプトの内政に関連いたしまして商議が中絶の状況にあつた次第でございます。
  128. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今の説明初めのほうは声が小さくてよくわかりませんでしたが、それは具体的な條文そのものはまだおありにならないのですか。
  129. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 條文は今本省から取寄せますから、今暫くお待ちを願います。私は今英エの同盟條約の要旨を持つておりますので、それによつて答弁いたしました。大体間違いないと存じます。
  130. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると議事進行についてですが、進捗上先へ進みましようか。
  131. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) どうぞ。
  132. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうして資料の着いた頃に又お答え頂きましようか。
  133. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) どうぞそう願います。
  134. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではエジプトイギリスの條約の問題は留保いたしまして、次に総理に対して行政協定の問題について二、三点お尋ねしたいのであります。去る十月二十五日衆議院で三木武夫委員がこれについて極めて真摯な質問を展開しておられ、これに対して総理じきじきこれ又鄭重なる御答弁があつた。併し私はそれを何回も読み返しましたけれども、この答弁国民を納得させるだけの答弁になつていない。そこで私はこの三木武夫委員の質疑による総理お答えを基礎といたしまして、以下三点についてお尋ねしたいと存じます。  第一点は、駐留軍が国外に出動をいたします場合に、日本政府及び日本国民日本国会に対してどういうような相談があるかということを尋ねておられます。これに対してあなたは、如何なる場合に日本以外に出動するか、それはそのときの状況によるのであつて、これは日米の間の話合いの結果出動すると、こう答えておられますが、政府に対して出動の場合に通知でも来るというのでしようか、総理如何でしようか。
  135. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 総理答弁されましたように、両方の政府が話合いの結果、出動のときには話合いの結果によつてなされると承知いたしております。
  136. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 話合いの結果は国会に御相談になりますか。
  137. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 話合いでございまするから、必ずしもそうではない場合も勿論あります。
  138. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 国会に諮られますか。
  139. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 両国政府の話合いによります。
  140. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 諮られますか。正確に答弁しろ。
  141. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 必ずしもさような必要のないときには、勿論国会に諮る必要がないと存じます。
  142. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると諮るかも知れんが、諮らんかも知れんということですか。
  143. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは駐留軍が国外に出動する場合には両国の政府によつて話合いする場合であります。併し普通の場合におきましては、具体的なそのときの状態にならないと、お答えはできないと存じます。
  144. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そんな重要なことがどうして今答えられませんか。答えて下さい、総理じきじき答えて下さい、国会に諮るんですか諮らないんですか。
  145. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) そのときの状況によります。
  146. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 いけません。そんな答弁国民は納得しません。そんな馬鹿なことはしないならしないでいいじやないですか。委員長、如何ですか、注意して下さい、政府委員に。
  147. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 質問をお続け願います。
  148. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういうふうに了解して続けるんですか。するとかしないとか明快にして下さい。そうしないと、僕は次の質問が出ないんです。しないと了解していいんですか。……それではしないと了解しますよ。
  149. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) そのときの状態によります。これ以上はあなたの答弁に対する御理解は御自由でありまするが、政府といたしましてはそのときの状態によつて決定いたします。
  150. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 しないことがあり得るというふうに了解することは差支えございませんね。
  151. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御了解は御自由でございます。
  152. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これは極めて重大な問題であります。アメリカ軍外部、例えば満洲を爆撃すればこれは大戰争になります。日本国会に何ら諮られることなく、国民は何ら相談を受けることなく戰争の中に巻き込まれます。宣戰布告の権利国家主権の最も重大な要素であり、世界各国の憲法によつても明らかであります。国際法から言つても疑う余地はない。日本国憲法によれば主権国民にある。従つて憲法の中に宜戰布告の権利規定され明記されていなかろうとも、宜戰布告のごとき国民の重大な権利が一個の政府に任されるわけはない。従つて戰争の開始、即ち駐留米軍が外国出動する場合、これはその可否を国民に問う以外には方法がないと考えなければならんと思います。これに対する総理の明快なる答弁を求めます。
  153. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) さような場合には国民が納得の行くように善処いたしまするから、御心配は要らないと存じます。
  154. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ここは国会であります。憲法上の質問に対しては憲法的にお答えなさい。
  155. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法上の問題でございますから、便宜私からお答え申上げたいと思います。憲法上は日本国が宣戰を布告するということは、如何なる場合においても許されておりません。
  156. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう詭弁でなしに、まじめな答弁をしなさい。そうすると法務総裁は、日本国憲法から言えば宣戰布告なしに日本が戰争の状態に入つてしまう。宣戰布告の権限アメリカ軍意思に全部白紙委任するということが、日本国憲法の精神に一致するという意味に解釈して差支えないですね。
  157. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 宣戰の布告は憲法規定してないばかりでなく、日本が戰争に巻き込まれるということは憲法上あり得ないことになつております。
  158. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 憲法上戰争に巻き込まれることのないことは明瞭でございますが、私の質問はよく落ち着いて聞いて頂かなければならんのです。駐留軍が外国日本を護るために出掛けて行つた場合ですよ、どうですか。
  159. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) それは日本憲法関係のない事柄であります。
  160. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そんな重大な、日本国が戰争に巻き込まれる宣戰布告の問題を、そういうふうに劇画化してはいけません。あなたはこの問題を総理の代理として、法務総裁として答える以上は、宣戰布告の権限国民にあるのかアメリカ軍にあるのか、はつきり答弁しなさい。
  161. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 日本が宣戰を布告することの権限国民にもなければ、政府にもなければ、アメリカ軍にもありません。
  162. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 言葉のやり取りでなくて、先ほど一松委員からも、憲法は国のためにあるのだ、憲法のために日本があるんじやないということは、よくもうあなたはあの教訓によつて了解しておられる。(笑声)これ以上答えられなければ……、私は結局駐留軍が出動すれば戰争になる。戰争になれば日本は何ら宣戰布告することなく戰争の渦中に入る、報復爆撃を受ける。従つて宣戰布告という基本的な権限日本国民の手から外国軍隊の手に移つた、こういうふうに私は了解しなければならんことになりますが、法務総裁はそれで差支えないですね。
  163. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 米軍駐留の目的日本の平和と安全のためでありまして、戰争のためではございません。
  164. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 勿論それはよくわかつております。併しながらそのために外国へ出なければならん場合、この場合もあるということは総理みずからが衆議院のこの議事録でちやんと認めておられるんですよ。日本以外への出動はそのときの状況によるのであつて、明らかに総理自身が出動することを認めておられるのに、あなたはその閣僚として総理のをひつくり返してはいかんですね。(笑声)
  165. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ひつくり返しておるのではありませんので、総理の認められました米軍が日本国外に出動をする、そういう場合には戰争のために出動するのではなく、日本の平和と安全のためである、(笑声)日本を戰争に巻き込むために出動するのではない、こう説明いたしただけであります。
  166. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと笑い声が出て聞えなかつたですね、もう一遍一つ……。
  167. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 総理がそういう場合があり得ると言われましたことを私は否定をいたしたわけではございません。そういう場合においてアメリカ軍出動目的日本を戰争に巻き込むために出動をするのではなく、それは日本の安全と平和を守るために出動をするのでございまするから、それによつて日本が戰争に巻き込まれるというようなことは考えられないという補足的な説明をいたしたわけであります。
  168. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 明快な答弁であります。私もその点は認めます。駐留軍が出たからといつて必ず戰争になるとは……つまり戰争になり得る可能性がある、この可能性の問題であります。私はその可能性……ない場合もあります。出たけれど、突如として出撃したけれども彼らは全部全滅してしまつたということもあるでしよう、そういう奇蹟もあるでしよう。併しそうでない場合はやはり大戰争になる可能性もある。それは法務総裁認めるでしよう。その可能性のあつた場合を聞いているんです。
  169. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) そういう可能性のないために出動するものであると考えております。
  170. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではこれ以上あなたが答弁されると皆が笑うだけだと思いますから次に進みます。軍事基地の問題であります。同じ衆議院の速記録を見ますと、三木委員が、第二條に「アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能」というように、明確に基地ということを規定しておるのではないかという質問をしておられます。総理は昨日も一昨日も、何回も日本に軍事基地はないのだとおつしやるけれども、ちやんと載つているじやありませんか。あなたが調印して来られたこの第二條にちやんと基地というものがあるのじやないですか。それでもなお基地を否定するのはどういう根拠があるのですか。
  171. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 第二條におきましては、これは日本アメリカにも軍事基地を許さない。従つてその他の国に対してアメリカの事前の同意なくして許すことはしない、基地がないということを、又あり得ないということを規定したわけであります。
  172. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういうわけですか。書いてあるではないか、現に今いるじやないですか。
  173. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 基地という字は、字はありますが、これは軍事基地を許與しないということを規定しておるのでありまして、軍事基地を許與しないということは、これは基地がないということなのでございます。
  174. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それを詭弁という。どこの條文に基地がないということが規定してありますか。他に基地を貸してはならん、これは自分が使うから、自分のための基地はよろしいが、ほかに貸してはいけないという意味で、基地がないということがどこに証明してありますか。
  175. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 基地がないということは、基地があるということは書いていないから基地がないということであります。これはあなたは、この第二條を以て、アメリカは自分が基地を持つからほかの国に基地を持たしてはいけない、こういうふうに理解しておられるようでありますが、それは誤りでありまして、この第二條は、アメリカが自分も基地を持たないから、ほかの国にも基地を持たしては困る、こういうことを第二條に書いてあるわけです。
  176. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この條文から基地が日本に設けられるということがわからないのは、総理の言葉とあなたの解釈だけでありまして、こんなのは日本人の間に通用しませんよ、あなたのこういう答弁はですね。そうして現に西村條約局長が、こういう基地というものは九十九年とかいう租借地とは違いますというような答弁をしておられる。何です、何という答弁でしよう。一つこの際、條約局長に聞いておきますが、常設的且つ永続的なこの一定の土地と建物、これに而もアメリカ軍隊……これを軍事基地といわないで、一体あなたの字引にはどういう軍事基地というのがあるのでしよう、一体……。
  177. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 兼岩委員が引用された私の答弁は正確でないようでございます。引用の仕方が不正確のようでございます。私の申上げましたのは、軍事基地と申すのは、一定の地域を限りまして、九十九カ年とか、三十カ年とか年限を限りまして、その範囲内の地域に対する管轄権を相手国に委讓するものであります。さような性質の軍事基地を合衆国政府なり日本国政府なり要請し、又は與えるというがごときは、日米安全保障條約について交捗をいたしました間一回も問題にならなかつたということを御答弁申上げてあります。議事録をよく御調査を願いたいと思います。
  178. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたは、アメリカ軍隊が起居のために必要な建物とその所要の土地を使用する、使用する間はアメリカ軍がこれを管理する、九十九カ年ということに触れないということが悪いのです、無期限でないですか。先ほど総理なり総理の代理者が無期限……、いつまでも、九十九カ年以上続くかも知れない。それから全部管理とあなたは言つておられますが、全部、管理に間違いないじやありませんか。だから同じじやありませんか。
  179. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 軍事基地は一定範囲内の土地に対するいわゆるジユリスデイクシヨンを相手方に委讓する場合でございます。私が申上げましたのは、そういう基地を許與することは両国政府間に一回も話題に上つたことがないということを申上げました。そのあと、併し日本国内アメリカ軍がおりますから、軍隊がその起居のために一定の建物や場所を使うことが必要になります。米軍が使う土地や建物は、使う以上は米軍が管理するのは当然であります。こう申上げております。よくお読み返しを願いたいと思います。
  180. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると、局長は基地は飽くまでない、決してあり得ないと、ここで明言できるわけですね。
  181. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) その通りでございます。繰返し明言いたします。
  182. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 時間の関係でもう一つ行政協定について総理に、これはほかのかたではちよつと答えられんと思うのです。三木委員が、この行政協定の中に、公表された行政協定以外に秘密協定はないものと解釈いたしますが、念のためにお尋ねいたします。――これに対して総理は、行政協定ができ上つた上で相談いたします。何という答弁です。何にもわからないじやありませんか。ところが三木委員は、もうこれですつかりわかつて、次にと、こうやつておられる。私はちつともわからない。一つこの点総理、明快にして頂きたい。
  183. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) ありません。
  184. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 総理、答えて頂きたい。そんなこと代理者で答えられるわけはないじやないか。
  185. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 大臣に代りまして申上げます。ありません。
  186. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 答えられませんよ、総理、答えなさいよ。議事進行ですよ。時間が損ですよ。もうこれは最後総括質問でしよう、だからちやんと理事会その他によつて、時間まで切つて、もう僕のところにも終了五分前ですというような、こういうあれが来ているんですよ。だからこういう重要な秘密協定がないかということについては、秘密協定がないと言つていないですよ。行政協定ができ上つた上で相談いたします。誰に相談するのです。どなたに相談されますか。
  187. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ないからないと申すのであります。重ねて申します、全然ありません。
  188. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 衆議院では、でき上つた上で相談いたしますと言つておられたやつを、今度ないというふうに明快に御答弁なりましたので、国民は非常に満足いたしております。  最後にお尋ねをいたします。これが私、両條約の最後だから、両條約に多少跨るかも知れませんけれどもお許しを願いたい。あなたは非常に寛大な條約だと言われますが、どこが寛大でしようか。
  189. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 全文をよく御覧になりますと、すべて寛大な協定でございます。(笑声)
  190. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう答弁答弁にならんです。まじめに答弁をしろ。
  191. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 真劍な答弁をいたしております。
  192. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 具体的に答えなさい。
  193. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 具体的に全文を御覧になりますれば御了解頂けると思います。
  194. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 前文のどこです。見ましよう。
  195. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) ぜん文というのは前の文ではなくて、全体の文章であります。
  196. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう国会を侮辱し、議院を侮辱するような答弁答弁なりません。何だ君は。
  197. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員質問をお続け願います。
  198. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それでは具体的に四つ聞きましよう、覚大でない点を……。第一に在外財産ですよ。中立国にある日本の在外財産は日本がひどいことをして侵略したものではない、この中立国にある日本の在外財産さえ没收されます。これはイタリアではそうでなかつた。どういうわけで日本のこの中立国にある財産まで没收されることが寛大なのですか。
  199. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 再三御答弁申上げた通りであります。
  200. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 答弁でない、答弁せよ。
  201. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この條約は、イタリアの條約と比較してお話になりましたが、イタリアの條約と比較して御覽になりますると、今のような中立国の場合、或いは旧枢軸国の場合、その他違つた場合があります。これは当時よく説明をいたし、又質疑応答の際にも答えております。併し全体としては、イタリアの條約と全文を比べて御覽になりますると、比較にならない寛大な條約だと考えております。
  202. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 具体的な質問を抽象的なもので解消する詭弁はやめなさい。私は中立国にある財産まで没收されるという点が、どういうわけで寛大であるか、こういう具体的な質問なんです。
  203. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 寛大であるというのは全体の問題であります。一つ一つの中には……。今申されたような中立国にある財産の没收は、今回初めて現われた條項であるということも、当時詳しく説明をいたしておるはずでございます。
  204. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 イタリアでは中立国にある在外財産まで没收されておりません。これはこんなに過酷じやありませんか。なぜこれが寛大ですか。
  205. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) すでに十分に答弁をいたしておるはずであります。
  206. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 では併せて答えて下さい。次に、朝鮮、琉球、小笠原のアメリカ接收財産は全部アメリカに没收されることになつております。イタリア條約の場合には返しております。これはどうして寛大ですか。
  207. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 没收というものではありません。その処置を承認するのであります。
  208. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 還つて参りますか、それは……。
  209. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 今後の行政機関の話合いであります。
  210. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 まだこれからそれが還つて来る可能性があるのですね。
  211. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) それは話合いの結果であります。
  212. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 第三に、無差別爆撃或いは原爆による爆撃の損害補償がイタリアでは三分の二となつておりますが、日本では全部、而も内訳も示さないで国会の通過をさせようとしておられますが、これは寛大ですか。
  213. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これもその條項において詳細御質問に対してお答えを申上げたはずであります。十分御了承願つておることと存じます。
  214. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員の時間は参りました。終りです。
  215. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 委員長、それはいけませんよ。答弁が誠意がない。僕はほんの一つだけ聞いてやめましよう。一つだけで……。
  216. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間はございません、もう……。(「時間嚴守」と呼ぶ者あり)
  217. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 安保條約について政府質問する機会はもう最後の機会だと思うのであります。いろいろお聞きしたい問題はあるのでありますが、私はこの安保條約の性格について吉田首相から御答弁を煩わしたいと思うのであります。申すまでもなく安全保障條約といいますものは、継続的且つ効果的な自助並びに相互的な援助を行うことを以て安全保障條約の基本といたしておるのであります。ところが、この日米安全保障條約の中には、そういう継続的で且つ効果的な自助並びに相互援助の規定を欠いておるのであります。従つてその点から申しまするというと、この日米安全保障條約は、いわゆる安全保障條約ではないということを結論しなければならんと思う。尤もこの安全保障條約は暫定的な措置である。前文にありますように、「その防衛のための暫定措置として」という言葉が掲げてありまするからして、暫定的な措置として結ばれる條約には違いがありません。併しながらそれかと言つて、果してこれが安全保障條約であるかどうかということになりまするというと、私としてはそうではないという結論を出さざるを得ないのであります。この点に関しまして、先ず首相の御答弁を煩わしたいと思うのであります。
  218. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。これは私から考えれば、又当時の趣意から申して相互的であります。互いに、日本の安全が侵された場合には、日本の安全のために適当な措置をとることを日本としては要求し得るものであります。又アメリカとしてはこれにもその要精によつて行動しなければならないのでありますから、これは相互的であると私は判断いたします。又相互的な考えで以て結んだのであります。
  219. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 相互的な援助の関係に置かれるところの安全保障條約だという御答弁でありまするが、前文を見ましても、それから又第四條の規定を見ましても、これが安全保障條約でないということは、少くともこの條約文を読んだ人ならば誰でもが理解するところではないかと思うのであります。どこに相互援助的な規定を含んでおりましようか、その点をお示し願いたいと思うのであります。
  220. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 多分堀委員は、北大西洋條約、或いは今度できましたオーストラリア、ニユージーランド、アメリカ、これらのいわゆる地域的集団安全保障條約についてお考えなり、同時に今度の日米安全保障條約をこれと対比して、只今のような御疑念を強められたことと存じまするが、これらの両條約と比較いたしますると、おのずからその性格が異なつていると思います。これらの両條約は、或いは数十カ国、或いは三カ国というものの地域的な集団的安全保障條約である。今回の場合におきましては、中心が日本安全保障というものに置かれておるのであります。従いましてこれは日本安全保障という意味において、両方平等な対等の立場における安全保障というふうに理解をいたしております。
  221. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 外務政務次官からの只今のお話でありますが、私は何もオーストラリア、アメリカ、ニユジーランドの三国間の相互援助條約、北大西洋條約というものを引用しているものではありません。ヴアンデンバーグ決議によりまして、アメリカにおいては相互援助も安全保障を約する場合の一応の基準がきまつておるのであります。あなたのお話によりますと、日本安全保障をするのだから安全保障条約だ、こういうお話であります。確かに日本安全保障をするのかも知れません。併しながら安全保障條約、日米間の安全保障というからには、そこに継続的且つ効果的な自助並びに相互援助の精神が貫かれておらなければ、これは安全保障條約という名前に価しないのではないかということをお尋ねしているのであります。もう一度御答弁を願いたいと思います。
  222. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御指摘のようにヴアンデンバーグの決議におきましては第三項でありましたか、相互援助というものが基本精神になつておる。併し日本におきましてはこの安全保障條約を結びましていわゆる独立後の武力のない日本極東の危險な状態に処する態度をとつて来た次第でありまするから、従つてこの各條文にありまする形になつて現われたと存じます。
  223. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうしますと、外務政務次官の見解としては、とにかくヴアンデンバーグの決議の趣旨には副わないものであつても、日本安全保障をするからして、これは一般の安全保障條約のカテゴリーの中に入れることができるものだ、こういう御見解ですか。
  224. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お言葉の通りであります。
  225. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 安全保障條約と一般に言われているところの條約のカテゴリーの中にこれを入れようとするということは、極めて私は不当ではないか。現に前文の中に「防衛のための暫定措置」ということをはつきり謳つておるではありませんか。この暫定措置というものはどういう意味でありましようか、私ども解釈では、将来継続的且つ効果的な自助並びに相互援助の形がとられるまでの暫定措置としてこの條約を結ぶのだ、乃至は日本がそういう完全に自分の力によつて自国を守ることができるようになるまでの間の暫定措置として結ぶ、或いは国際連合が日本に対して集団的な安全保障を行うことができる、そのときまでの暫定措置としてこれを結ぶのだ。こう解釈すべきではありませんか。ところが、あなたのお話によると、これは暫定措置ではない、安全保障條約なんだ、完全な安全保障條約なんだ。こういうことになるのでありますが、そう解釈して間違いないのですか。
  226. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) ここにありまするように暫定措置であります。併し暫定措置としての安全保障條約として、暫定措置としての安定保障條約は安全保障体系の一部分として当然認められるべきものであります。
  227. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 おかしいですね、安全保障條約ができるまでの暫定措置としてこの條約を結んでおる。これは暫定措置なんです。安全保障條約ではないのです。いわゆる安全保障條約ではないわけであります。その点はお認めにならないのですか。
  228. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 堀委員は、安全保障條約というものは、一つの理想的な、いわゆるヴアンデンバーグの決議による相互的な安全保障條約というもの、これがいわゆる根本的な安全保障條約である。日本の場合において、片務的で、そうではない場合であるから、これは安全保障條約じやないじやないか、こういう御質問のように承わりました。併しこの條約はどこまでも安全保障條約であつて、而もその安全保障の形式、形態においては、ヴアンデンバーグ決議によるアメリカの主張もありましよう。併しこれはアメリカの主張であり、ヴアンデンバーグの決議でありまして、全体として安全保障を守り得る二国間或いは多数国間の條約は、当然これは安全保障條約として取上げられて行くべきものだと考えます。
  229. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 これは安全保障條約として取上げるべきだ、じや、先ほどの外務次官の申された北大西洋條約、或いはニユージーランド、それからオーストラリア、アメリカの三国の相互援助條約、或いは又アメリカ、フイリピンの最近取り結ばれました相互援助條約ですか、安全保障條約、こういうものと比べて見て、そこに差異があるということをお認めになるのですか。而も暫定的な措置として結ばれたということをお認めになるのでありますが、そうするならば、どうして安全保障條約と言えるか、あなたの議論を以てするならば、とにかく安全保障條約というものは、非常に幅の広いものであり、よしんば双務的なものでなく、相互援助的なものでなくとも、一国の安全保障をするからには、安全保障條約だ、こういうお考えのようであります。併し国際法上、或いは国際政治上一定の通念として、安全保障條約というからには、一定の條件を持つたものがそこに考えられておるわけであります。あなたの言うように、非常に幅を広めて考えますると、安全保障條約というものの性格がさつぱりそこでつかめなくなる。私はその点からもう一度御答弁願いたいと思います。
  230. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話の北大西洋條約乃至はフイリピンとアメリカ、或いは最近のオーストラリア、ニュージーランド、アメリカ三国條約というような形におきまするいわゆる集団的、地域的の安全保障処置、それと今回の日米安全保障條約とは、おのずから性質が異なつておると思います。日本におきまする場合には、先ほども申上げたように、日本は武力を持たないのでありまするから、各国の、西ヨーロツパ乃至は西南太平洋等におけるこれらの條約とは、純然とその性格を異にしておる安全保障だと存じます。
  231. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 性格を異にするということを今おつしやつたわけでありますが、性格が違えば当然安全保障條約ではないという結論が出るはずであります。性格の違つたものが同じカテゴリーの中に、同じ名前で呼ばれるということは、不当ではありませんか。もう一度……。
  232. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) それは先ほど申上げたように、ちつとも差支えない問題であり、又同時に世界がこれを認めておる問題だと思います。
  233. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私が言うのは、安全保障條約には欠くことのできない條件があるということを申上げて、その條件を欠く以上、その性格は違うのだという工合に言明しておる。その点から申しまして、その一定の條件を欠いた條約が、果して安全保障條約と呼べるかということになるのであります。もう一度重ねてその点を御答弁願いたい。
  234. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは全く見解の相違だと思います。
  235. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 結局において見解の相違ということになりますと、喧嘩のしようがないのであります。議論のしようがないのであります。そういうようなことでなく、一般に国際法上乃至は国際政治の上において通つておりますところの理論に基いて御回答を願いたいと思います。  その問題はそのくらいにしまして、次いで私はこの條約は軍事的な條約ではないか、安全保障條約ではなくても一種の軍事的な條約ではないか、こういう工合に考えるのであります。何となればこの條約によりまして、アメリカ軍隊日本に駐留するのであります。そうして日本のために防衛の任務を果す、こういうことになつておるのであります。そうするというと、結論として結局軍事條約ではないかということが考えられるのでありますが、この点に関して御答弁を願いたいと思います。
  236. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 軍事條項を多く含んでおりますことは、しばしば御説明申上げた通りであります。併し決して軍事條約ではないのであります。
  237. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 アメリカ軍隊が駐留いたしまして、日本の国の防衛の任務を果す、それはそういう條項は含んでおるが、決して軍事條約ではない、こうおつしやる、ではどういう性質の條約でありますか。その点を伺いたい。
  238. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 平和と安全の確保のために結ぶ條約であります。
  239. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 どんな條約でも、平和と安全ということがいわば常套語として必ずその冒頭に掲げられる言葉であります。その掲げられた言葉の故に、この條約は平和と安全の條約ということになりまするならば、どの條約だつてそうだ、こういうことになると思うのであります。軍事條約でないという具体的な説明を願いたいと思います。
  240. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本独立後における平和と安全、延いては極東の平和と安全に寄與するための條約でありまするから、安全保障條約と銘を打つて、軍事條約ではないことをはつきりいたしておる次第であります。
  241. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 どうもおかしいですね。どんな條約だつて今言つたように、條約の冒頭には極東の安全と平和を守るとか、或いは北大西洋におけるところの安全と平和を守るとか、すべて條約には安全と平和という言葉がいわばきまり文句のように附けられておるのであります。どの條約を見たつて、それを省いておる條約は一つもありません。だからしてこのすべての條約はそうすると安全と平和のための條約だ、こういう結論になるのであります。私が聞いておるのは、一体これは経済的な問題を中心としての條約か、或いは政治的な問題を中心としての條約か、或いは軍事的な目的を持つ條約か、こういうことを聞いているのです。具体的な御答弁を願いたいと思います。
  242. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本全体の独立に最も必要なる條約として、その独立は、安全と平和のための独立として結んだ條約であります。
  243. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 どうも外務次官、もう少し国際政治の通念に従つて、或いは国際法上の通念に従つてお答えを願います。日本独立と平和のための條約だ、こういう工合にお答えになつたのですが、それは政治上、経済上、或いは軍事上から言つて、どういう範疇に入るか、もう一度、その点をお答え願いたいと思います。
  244. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) それは只今お答え申上げた通りであります。
  245. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 委員長、こういう答弁では、私満足することができないのです。私は何も議場を混乱をさせるためとか、或いはですね、議事を遷延させるためにあなたに食い下つているのではないのです。私はどうしてもこの條約を読んで見て、軍事的な性格を最も多分に持つておる。だから軍事條約の範疇に入るのではないかということをお尋ねしているのです。率直にお答え願いたいと思います。そうではないと、次に質問ができないのです。もう一度御答弁願います。
  246. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは併し何度御質問願いましても、軍事條約としての範疇には私は入れておらない。いわゆる安全保障という大局からの條約と考えております。全然軍事條約の範疇には入れてはおらない條約であります。
  247. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 何度お尋ねしても前の問題と同じように、結局又お尋ねすれば見解の相違ということにならざるを得ないようなことを感ずるのでありますが、それでは本当にこの條約についての審議を盡したということには私はならんと思うのです。もつと率直にお答えを願いたい。  第三に私がお尋ねしたいのは、この條約は不平等な條約ではないかということをお尋ねしたいのであります。勿論形式的には日本アメリカが対等の立場において結ばれた條約のようであります。併しながらアメリカ日本という国の持つ力です。軍事的な力です。この力を比較しますと、その対等という言葉は、必ずしも実質的に、本当の意味の対等を意味してないと思うのです。つまり非常に力の強い人と非常に力の弱い人、大人と子供との間に結ばれた條約だと、こういう感じがするわけであります。大人と子供との間に結ばれたよしんば対等の條約であつても、それが果して本当に対等の條約として通用するものかどうかということを先ずお尋ねいたしたいと思います。
  248. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) そういう意味において不平等であるということになりますと、殆んど多くの平等條約は、今の国際的な條約はすべて不平等と言わなければならないと思います。そういう意味でなしに、国際的に平等と申しますのは、一般通念的な平等であります。
  249. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 外務次官は形式的な平等ということを主張されているわけです。確かにおつしやる通り対等の立場において形式上は結ばれた條約であります。併しながら実質的な観点から見て、つまり政治上から見ますというと、大人と子供との間の條約であります。よしんば形式的な対等であつても、果してそれが実質的に対等と言えるかどうか。あなたはいや対等の條約であると言つて頑張られるかもわからん。併し政治上の観点から考えますと、決してそうではない。又只今この條約を結ぶについて両者の間の対等性を主張された。そうして何ですかちよつと度忘れしましたが、答えられておるわけです。私は国際政治の一般の考え方に従つて、実質的に平等な條約であるか、対等の條約であるかということをお尋ねしているわけです。それを少し具体的にお答え願いたいと思います。
  250. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御質問のようにいたしますと、今後日本独立後に結びます條約は全部不平等の條約と、こういうふうに解釈せざるを得ないのです。日本の力は独立後にきまるわけです。今後日本がどの国と結んでも、日本よりもいわゆる力の強い国と結ぶ條約はすべて不平等條約という議論にならざるを得ない。これは国際通念から申しまして、さような問題ではないと思います。
  251. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今後日本が結ぶすべての條約は、私のような考え方で言えばすべて不平等である、私はそうだと思うのです。政治的に考えまするというと、日本が若しアメリカと結ぶ、イギリスと取り結ぶ條約は、これはすべて不平等條約になると思う。だからこそ私はお尋ねしているのです。この條約が日本の今後にどういう役割を果すかということを考えますと、私どもとしては非常に寒心を、いわば肌えに粟を生ずるような感じを持つのです。我々としてはそういうような不平等條約はできるだけ避けなければならん。殊に政治上、或いは軍事上の條約については不平等條約は避けるべきだ、こういう考え方の上に立つて私はお尋ねしておるわけです。経済的な問題についても勿論不平等な関係が條約の上において結ばれることがあるでありましよう。併し我々国民としては、日本独立と平和とを念願する観点からして、できるだけそういう條約は避けるべきだ、こういう考え方から今お尋ねしておるわけです。あなたはすべての條約はそういう観点から言えば不平等條約だ、こういうようなことを言つておられるが、そうではなくて、我々はこれを不平等條約、不平等條約という要素が多分にある。そういうような條約は結ばないようにする、或いは結ぶ場合においては、十分愼重に考慮しなければならんというようなことを考えるのは、私は当然ではないかと思います。その点についてもう一度御答弁を願いたいと思います。
  252. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 私ども独立後の日本が力が弱くても、結びまする條約は不平等ではないように、又不平等條約であつてはならないという確信と決心とを以て今後結びたいと存じます。従来と同様であります。
  253. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 先ほど兼岩君はイギリスエジプトとの條約を引例されたのでありますが、あの條約は私は不平等條約だと思いますが、政府当局はどのようにお考えですか。
  254. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) エジプトイギリスとの條約の問題を日本政府が批判することは差控えたいと思います。
  255. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 批判せよと言つておるんじやない。一体国際政治の通念において、あの條約を見て、主権対等の條約だ、平等の條約だという工合に考える人が果してあるでありましようか。私は恐らくないと思います。或いは又イランの石油問題を中心にして、イギリスとの間に結ばれた経済的な條約、これも不平等條約だ。こういう不平等條約をアジアの諸民族が今やこれを撤去して、そうしてそれぞれ本当の意味での民族の独立を図ろうとする運動に入つておるわけであります。エジプトやイランが不平等條約を廃棄して、自分の独立をかち取ろうというこの今日の段階において、日本はあべこべにアメリカとの間に不平等條約を結ぶ、軍事協定を結ぶ、こういうようなことになつておるのじやないか。日本民族としてこれは非常に歴史上恥ずべき問題なんです。こういう工合に考えるのです。この点に関しまして政府は批判を避けるというようなことでありますが、率直に国際政治の通念に従つて答弁をもう一度煩わしたいと思います。
  256. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) イギリスエジプト、或いはアングロ・イラニアン石油会社とイランとの関係のことは承知をいたしません。又批判する限りではないと思います。併し日本アメリカとの條約は平等対等の條約、この日米安全保障條約は決してこれらの問題と引例して説明するまでもなく、平等な條約として御了承をお願いいたしたいと思います。
  257. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今の御答弁の中に、非常に私どもとしては遺憾に存ずるお言葉があつたイギリスエジプト間の條約については承知しておらん。又批判をしないことは、これは認めるとしましても、外交の衝にある外務次官ともあろうものが、イギリスエジプト間の條約について承知をしない、そのいきさつを知らんというようなことは、私は重大な問題だと思います。イギリスエジプト間の條約と、日本の條約とを私どもは対比して不平等條約でないか、こういう工合に思つておるのでありますが、あなたとしてはあくまでも前言を繰返されるだけで、私としては、大変残念であります。でその承知しないという点についてもう一度お伺いしたいと思うのです。
  258. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 條約なり或いは締結なりは承知しております。併しこれによつて起りましたその問題等におきましては承知しておられないと申上げたのであります。
  259. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 問題を承知しておらんというのは、私は非常に迂闊なことじやないかと思うのです。あなたは日本の新聞を御覽になつておるでありましよう。イギリスアメリカの新聞も御覽になつておるでありましよう。新聞は併し信ずるわけに行かんとおつしやれば、これは別であります。併し公に認められた報道機関としての役割を果しているのであります。例えばあなたは勿論御覽になつていると思いますが、ロンドンタイムス、ニユーヨークタイムス、マンチエスターガーデイアン、ああいう新聞を御覽になれば、エジプト問題がどのように今なつているかということは承知しておらなければならん。又それを承知していなければ、到底外交の方針も立たんのではないかと考えるのですが、如何お考えになつているか伺いたい。
  260. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 勿論現状は報道によつて承知をいたしております。併し両国政府、或いは会社と政府との間の交渉等は承知をしておらないという意味であります。
  261. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今までの私の質問に対しては結局十分な回答を與えられなかつたのであります。私は時間も制限されておりまするので、最後にもう一問お尋ねいたしたいのでありまするが、それは行政協定に関する問題であります。この行政協定内容につきましては、只今向う側との折衝中である、従つて公表する段階に至つておらんという御答弁のように伺つておるのでありまするが、若し行政協定が成立いたしましたならば、政府としては行政協定内容国会に公表される意思があるかどうか。その点を先ずお尋ねいたしたいと思うのであります。
  262. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) できるだけ公表する予定でございます。
  263. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 できるだけというお言葉でありまするが、先ほど兼岩君の質問に対する御答弁の中では、秘密協定はないということをお話になつております。秘密協定がなければ全文発表されるものと私たちは考えておるのでありまするが、その点は如何ですか。
  264. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 全然秘密協定はございません。
  265. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 秘密協定がないとすれば、当然国会にも公表されるものと期待してよろしうございますか。
  266. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お見込みの通りであります。
  267. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それから今朝ほどの一松委員質問に関連してお尋ねいたしたいのでありまするが、アメリカ軍隊日本防衛のために駐留して下さることは大変有難いのでありまするが、ところが果してアメリカ軍隊日本侵略から守るだけの十分の軍隊なり、或いは飛行機とか軍艦とかいうものが日本に駐留することが期待されるでありましようか。その点をお尋ねしたいと思います。
  268. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 期待されると存じます。
  269. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 U・S・ニユーズ・アンド・ワールド・レポートの記事によりますと、これはU・S・ニユーズ・アンド・ワールド・レポートの東京特派員がアメリカの本社へ帰りまして、そして問答体の形式で書かれたものでありまするが、それによりますると、現在日本では二個師団を北方の方面に駐留さしておる。それで今後日本に差向けることのできる軍隊は僅か二個師団乃至は三個師団ぐらいである。せいぜい四個師団か五個師団が陸兵としての限界ではないか。海軍基地としては横須賀ともう一カ所ぐらい考えておるというような記事が載つておるのであります。吉田首相に言わせまするというと、新聞記事の内容には責任を持たんということがしばしば言われておるのでありまするが、併しながらこのU・S・ニューズ・アンド・ワールド・レポートの記事がアメリカ側の意向を或る程度反映したものと私ども解釈する。この通りではないと思いますけれどもアメリカ政府の意向をここに反映しておる、こう解釈することができると思う。そうしまするというと、それぐらいの僅かな軍隊でおつしやるような日本への侵略を食い止める、日本防衛するということに果して役立つかどうかということが問題になると思う。その点についての政府の御所見ですね。まだ行政協定はできておらんからわからんというような御答弁でなく、これぐらいな軍隊ならば、日本を守り得るのだ、而もそれぐらいの軍隊アメリカにおいて十分駐屯してくれるのだというようなお見込を一応政府の側としての立場においてお答えを願いたいと思うのであります。
  270. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 十分日本を平和と安全に守り得る方法によつてアメリカ駐兵することを期待いたしております。(「答弁にならん」と呼ぶ者あり)
  271. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 十分ということで以て抽象的にお話になつております。私はそれではもう少し具体的な言葉を二、三附加えまして、もう一度御答弁を願いたいと思う。御承知の通りヨーロツパにおいては西ヨーロツパを守るための統一防衛軍が組織されることになつて、アイゼンハウアー元帥がその司令官に任命された。ところでアメリカが果して西ヨーロッパに送り得る軍隊というものはどれぐらいかと申しますると、これは新聞でしばしば報道されておるところでありまして、これは外務次官も御承知であろうと思います。或いは総理大臣も條約局長も御承知だろうと思う。このようにアメリカにとりましては、極東よりも西ヨーロツパのほうがより重要な意味を持つておるのであります。ウオルター・リツプマンが今年の五月でありますが、ニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンの中に論説を書いておりますが、それらを見ましても、極東防衛よりも先ずアメリカとして考えなければならんのは西ヨーロツパであるということをはつきり申しておる。その西ヨーロツパに対しましてアメリカが現在送り得る軍隊というのはせいぜい五、六個師団であるということを申しております。その重要な西ヨーロツパに対して五、六個師団しか送れないアメリカが、日本に果してそれ以上の軍隊を送ることができるかどうかということが、私は具体的に問題になつて来ると思う。政府としてはどのくらいの軍隊があつたならば、外国侵略に対して日本を守り得るかということを考えられておるだろうと思う。これは朝鮮の問題や、或いは又その他の極東の諸情勢に鑑みまして、政府としての考えはまとまつているものだろうと思う。その点を先ず、正確にお話下さらんでも、大ざつぱでもよろしうございますから、具体的にお示しを願いたいと思う。
  272. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 具体的の問題は、今後の話合いの結果によるのであります。併し全体としては日本の安全と平和とを維持することを十分期待し得ると存じます。
  273. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ただ十分に期待し得るということだけではやはり抽象的なんである。近代戰争というものが、どんなに精鋭な武器を必要とするか、どんなに兵力の数並びに質について関連を持つておるかということについては、私から申上げるまでもなく御承知だろうと思う。こういう近代の戰争、こういう今日の戰争を予想しての日本防衛でありますからして、相当の武力がそこに必要とされるということは言うまでもない。果して四個師団や五個師団で以て日本防衛することができるか。日本を十分に防衛するだけの軍隊アメリカに駐屯してもらう。こういうお話のようでありますが、アメリカにそれだけの力があるか、力より余力です。西ヨーロツパにも派遣しなければならない、日本にも派遣しなければならない。こういう場合に果してそれだけの余力があるかということをお尋ねいたしておるのであります。これだけ最後質問として御答弁を願います。
  274. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは将来の交渉の内容に関することでございますから、御答弁の限りではないと思います。
  275. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 先ほどから安全保障條約の審議に当りまして、この委員会の席上に幾たびか日本の平和と安全という言葉が委員の中からも、又政府御当局の間からも交わされたのでございますが、私はこの審議最後に当りまして、婦人としてこの政府の御答弁を伺つておりますと、どうもこの條約というものは、私たちの生活と誠にかけ離れておる高い遊離したところで論議されているというようなことで誠に遺憾に感ずるものでございます。日本の安全と平和を守るのは、外国から借りて来た軍隊でもなく、日本の警察予備隊でもなく、日本全部の国民が本当に自分の国を愛するというその精神に燃えましたときに、初めて日本の平和と安全が守られるのであろうと私は信じております。この点につきまして私は以下二、三の点につきまして具体的にお伺い申上げたいのでございますが、総理大臣も大分長い間で、御老体でお疲れのようにお見受けいたしますけれども、(笑声)この点はどうか次官に代弁をお勤めさせにならないで、(笑声)総理自身から簡單で結構でございますからお答えを願いたいのでございます。  私は警察予備隊の青年たちがひそひそと語り合つておりますのを偶然にも汽車の中で乗り合せましてその会話を聞き取りました。その時にこの若者たちは何を言つているかと申しますと、自分たちが予備隊に来て、この勤務をしているのも、要するにほかに就職の口がないからだ、ここに働かしてもらつていれば、月給も悪くはないし、何年か勤めると四万円とか、六万円とかお金がもらえるという約束だからここで働いているのだ。ところが朝鮮の戰線が甚だ連合国側にとりまして不利になつて参りました時に、若しも自分たちが間違つてでも朝鮮の第一線にお手伝いとして呼び出されるようなことがあつたら自分たちは命を捨てるのは真つ平御免だから、その時には辞表を出したい。こういうことをお互いに相談し合つているのでございます。私はこの言葉は、国会議員としても又政府の当局のかたがたとしても深く噛みしめて頂きたい会話であつたと存じます。これに引き替えまして私は又偶然にもそれと殆んど同じ時に、アメリカの一人の若い飛行将校が暇をとつて日本に参りました時に、アメリカ流に、口を開けば祖国に置いて来たお母さんと花嫁に会いたいということをさんざん申しましたので、私がそんなに家に帰りたいのならば、さつさと兵隊をやめて家へ帰つたらいい。何であなたは軍人なんかになつているのですかと聞きました。その時にその青年将校は真劍になつて、とにかく自分の国は大義名分に即して建国以来今日までやつて来ている、或いはたくさんのミステークをしたことは認めざるを得ないけれども、それでもこの国は働いている者に生活を保障し、失業している者も路頭に迷うようなことがない。だから自分の国はよい国である、この大義名分に即して立つているところのこの自分の国に対しては、自分の愛する家族をおいても戰線で自分は勇敢に働き、必要なときには命を捧げる覚悟である、こういうことを私に申したのでございます。私はアメリカだけが道義的に、或いは大義名分に即した国で、日本がそうでないとは決して申しませんけれども、今日の私どもの生活の実情を見ますときに、果して私どもが本当にこの国がよい国だと思い込むことができますためには、まだまだたくさんのことがなされなくてはならない。それには国民の生活がもつと保障されなくてはいけない。そのために社会保障制度に対して政府はこの際特にもつと具体的に、今後どういうようなことをするかというようなことについて、はつきりこのことを国民に答えて頂きたいと思います。この点を先ず御答弁をお願いいたします。
  276. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 社会保障制度は、社会保障制度審議会で研究をいたし、又答申も出ております。この答申の線に沿つて政府は今日法律、予算その他について研究いたしております。
  277. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 政府の御答弁は、大かたその程度だろうと私も期待いたしたのでございますが、(笑声)もう少し伺いたいのは、生活保護法ができました時に、私も衆議院におりまして、あの生活保護法の性質が非常な救貧制度的性格をもつておるということが、甚だ今日の私ども国民感情からこれが正しい精神でないということをたびたび表示申上げましたが、今日依然といたしまして、この生活保護法が全く救貧制度的な性格を持つて運営されておるということは甚だ遺憾でございます。而もこの生活保護法によつて救助されますところの過半数の家族は、女世帶であり、母子世帶でございます。従つて母子世帶というものが如何に生活戰線において弱いかということは、これを以てもよく証明されておるのでございます。然るに今日この母子に対しまして一向具体的な、母子家庭が安心できるような保護対策というものが講じられておりませんので、これはやはり将来私どもが生活して行く上に、大きな日本の安全という上に、一つのここが大きなひびになるということを考えまして、母子対策に対してどういうような御見解をお持ちになつていらつしやいますか、聞かして頂きたいと思います。
  278. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これも社会保障制度全体の問題として政府が研究もし、調査もし、いずれそのうちにその対案を示すことになると思います。
  279. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今国家の安全ということをたびたび私どもが言葉に出しておりますときに、つい先だつて行われましたあの太平洋戰争、太平洋戰争は日本が大いに責任のあるところではございますけれども、その責任において行われた戰争に参加をして、自分の肉体に再び起ち上ることのできないような被害を受けて今日不幸な立場に置かれておるところの傷痍軍人というもの、この人たちに対して何もこの人たちに責任はないと私ども考えます。然るに今日今まで連合国に対しての気兼ねからか、これらの軍人に対して甚だ保護が不徹底であり、或いは何らとるべき保護がなかつたということは、日本が如何に連合国に対して卑屈であつたかという大きな証拠であると存じまして誠に残念でございます。従つて今日日本独立を回復するに当りましては、今後はつきりとこれらの傷痍軍人に対して、将来不幸ながらも希望を持つて生活のできるような具体的な道を講じて頂かなくてはならないと思います。それに対しましていろいろ政府も御用意があると考えますけれども、特に私が伺いたいのは、もう大分年月が経ちまして、病気或いは怪我その他が回復して、そろそろ社会に一人前な人間となつて立帰える準備ができておる人々がたくさんあるのでございます。こういう人々も、さて一人前に就職をいたそうと思いましても、すでに年をとつておるとか、長い間何もしていなかつたとか、経歴が足りないとか、いろいろの事情によりまして就職が甚だできないような状態になつております。又就職を申込みましても、今日は労働組合がいろいろこの就職につきまして発言権も持つておりますので、なかなか労働組合に入つていない一人の軍人がぽつんと訪ねて行つても就職ができないのが実情でございます。今日欧米の国々におきましてはこれらの軍人は優先的に職にありつけるというような、そういうような優遇方法さえも講じられておる所がございます。日本が将来本当に国の安全を保障するためには、こういうような具体策もこの際はつきりと政府において御用意のあるところを示して頂くことが必要と考えますので、この点の御答弁をお願いいたします。
  280. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 戰傷痍軍人の保護については政府考えております。本年度の補正予算と思いますが、その調査費を含めております。一体戰傷痍軍人であるが故に特別の保護をするということは、進駐軍の命令として禁じられておつたのであります。併しこの禁止も最近ゆるやかになりまして、政府のこれに対する保護については、進駐軍も不同意でないのでありますから、調査をして、適当な保護をするというために現に調査費を予算に組んでおります。
  281. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今生活の安定、保障のほうについて伺いましたのでございますが、もう一つ国の安全と平和を守るためには、どうしても国民一般の道義感の向上ということが必要でございます。これは私の私見といたしましては、政府の高いところに立ちまして、国民に向つてかれこれと説教がましいことを申すよりも、先ず政府自身が、或いは国会議員自身が、時に総理大臣御自身において一番よい模範を示して下さることが有効なのでございます。国民はこの自分の国に社会正義というものが存立すると考えますときには、その国民の力は非常に強くなり、この国においては社会正義というものがないということを考えましたときには、道義は非常に紊れて参るのでございます。こういうようなときに、今日毎日朝晩の新聞に公務員の汚職事件というようなものが報道されることは誠に国が脆弱であるということを世界に表明しているように考えますので、この点につきまして総理大臣はどういうような御決意をお持ちになつていらつしやいますでしようか。
  282. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 不祥事件があつた、かくのごとき事件が起つた場合には、政府は法の命ずるところに従つてそれぞれ措置いたします。
  283. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 起つたあとから法の命ずるところによつて御処置を下さいましても、これはとても追いつかないというのが今日の実情でございます。それで私は特に婦人といたしまして考えますことは、どうかこんな国家が非常な重大な時期に立つておるときに、もう少し精神的にみんな緊張することができないだろうか。それには先ず宴会というようなものをこの際やめるというようなことは、(笑声)どうしてもこれは私は声を大きくして叫ばなければならない問題だと思います。これは政治的な宴会にいたしましても、或いはいろいろの業務関係の宴会にいたしましても、ただ清潔な場所において歓談するということはもとより結構でありますけれども、何の必要があつて今日私どもこの敗戰国で、たくさんの人々が生活におびえておりますときに、たくさんの御馳走を並べて一晩に一万円の宴会とか、而も芸者というものを侍らせなければならない宴会というものを持たなければならないか。私は本当に日本の婦人としてこういうことは納得ができないのでございます。只今、今日の朝日新聞にも出ておりますけれども、今日一年に三十六億円というようなお金がこの宴会で芸者のために支拂われているというような、こういうことは誠に遺憾だと存じます。私はこの際総理がこういうような……、
  284. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 加藤君、時間が参りました。
  285. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 宴会というようなものについて、今後どんなふうに御自身がこれからお考えなさるかということを伺わして頂いて私の質問を終りたいと思います。
  286. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は一切の宴会に、殆んどお話のような宴会には臨んでおりません。又国民の自粛に待つべきものであつて法律で以てきめるわけに行かん。(笑声)
  287. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員に申上げますが、先ほど保留しました安保條約については三分間に限つて質問を許します。
  288. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 條約局長から一つ、私が先ほど出した、どうも今度の安保條約はエジプトの條約よりも心配が多いという、この心配に対して專門のお立場から、而も各委員は勿論、調査も全部行われるように一つ御説明願います。
  289. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御質問の意味がわかりかねます。
  290. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 第四條によりますとですね、このアメリカ日本を両方が同意しなければこの條約は廃棄できない。アメリカ軍はそれまで駐在する。イギリスエジプトの條約によれば二十年という期間が切つてある。そしていずれか一国の要求によつてこの條約が改訂できる。これに対しても堀委員は平等でないと言つておられるが、然らば日本のものはもつとずつとひどいじやないですか。その点一つ法文に即して明快な答弁を求めます。
  291. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 日米両国政府にありまする友好信頼の精神を以ていたしますれば、第四條の実施に当つて何ら御懸念のような問題は起らないと確信しております。
  292. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 何という答弁ですかね、あなたの……。この十六條を法文に基いて説明して下さい。
  293. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 十六條には成るほど二十年の期限を限り、十年が経つたあとは改正のために商議をすることができる。それがまとまらないときには国際連盟理事会乃至は両政府において合意する機関に付託してよろしいというような規定がございます。條約に如何なる規定を置きましても、両当事国の間に友好信頼の精神があるやなしやによりまして、如何なる立派な規定も動いたり動かなかつたりするわけであります。第四條のみならず日米安全保障條約の精神は、実に日米両国の友好信頼の精神の上に立つていると思いますので、この精神がある以上、第四條については必ず円満な結果が出ると確信いたしている次第でございます。
  294. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 精神論でなくて條約論を聞かして頂きたい。
  295. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 條約理論の根本に触れております。
  296. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 根本に触れていないです。
  297. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 見解の相違でございます。
  298. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それじやお尋ねしますが、四條にどこに具体的に改訂を行う手続と條件がありますか。今度の安保條約は、いつその効果を失うかということについて一つも具体的な手続條件はないではありませんか。
  299. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) その点につきましては、たびたび総理、政務次官から御答弁がありました。この日米安全保障條約は暫定的な安全保障條約でございます。然らば如何なるときまでの暫定的措置かと申しますれば、前文にこの安全保障條約を必要とするがごとき事態が解消したる場合、具体的に申しますれば、無責任な軍国主義がこの世界からなくなつたときには、日米安全保障條約が要らなくなります。又四條に言つてありますように、国際連合によりまして平和と安全が確保される事態になりますればこの條約は不要になります。又国際連合に代る措置、具体的に申しますれば、本格的な安全保障條約ができまして、日本地区の平和と安全が確保されまするときには、この條約は本格的な安全保障條約によつて以て代えられるものであります。この條約は暫定的なものでありまして、永久的なものではございません。
  300. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 暫定的であるならば、この暫定的であるということの手続の條件がなければ暫定的と言えないのです。暫定的と言葉だけ書いてあつたつて日本アメリカが、両方が同意しなければ、効力をいつまでも続けるのです。そしてあなたの言ういわゆる軍国主義は何十年かかるか何百年かかるかわからないじやありませんか。だから具体的な改訂の手続と條件が、一方のエジプトのほうにあつてさえ今日の状態である。こちらの安保條約には全然ないじやありませんか。だから手続も條件も全然ないというのに、なぜ手続も條件もない條約に総理が調印して来られたか、じきじき総理に聞きましよう。
  301. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 第四條に両政府が認めた時と、こうはつきりと時期を現わしております。
  302. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間が参りました。二時半まで休憩いたします。    午後一時四十一分休憩    ――――◇―――――    午後二時四十五分開会
  303. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 休憩前に引続き会議を開きます。  岡田委員及び兼岩委員の保留されております質問について質疑を許します。但し質疑応答の時間を入れて三十分に限定いたします。
  304. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は過日この席におきまして米加日漁業條約の問題についてお伺いした。これは平和條約に基いて行われるものと関連がございますからお尋ねいたしたのであります。それで、その際にはアメリカ案について御説明を願つて、更に質疑を重ねたのでありますが、その際に草葉次官から、いずれ近く日本案が提出されるだろう、そのときにはそれを配布してそれについての御説明があるというお約束を頂いたのであります。そこで私は只今それの條文を受取つたのでありますが、会議がずつと続いておりまして休んでおりませんので、私といたしましてはこれについての内容をまだお読みしておらない。そこで農林大臣がおいでになりましたので、農林大臣に、今度の日本案の大要、それから、その日本案がアメリカの出されました案とどこが違うか、單にそれの文面上の問題だけでなく、それらが現わす実際の効果がどういう点にあるかということを御説明願いたいのであります。  これは日本が今後独立を回復いたしました後に各国といろいろな條約を結ぶ際におきまして、日本の位置というものが非常にむずかしいものがあろうと思うのでありますが、これはとにかく條約の問題でございますので、それに対する政府態度をお伺いしたい。こう思いまして質問をいたす次第でございます。
  305. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 日米加漁業協定につきましては、先般内閣委員会で申上げた通りでありまするが、基本的な認識の一致は、公海の自由という原則については日米加共に同様であります。なお又資源の維持という点についても同様でございますが、資源維持の立場における方法論において若干の相違があるのでございます。即ち各国の沿岸に近いところの公海については、おのおのその資源が満限に来ているところまで漁獲をしている所においては、自発的に権益を放棄するというような表現を以て、アメリカ側はカナダ、アメリカの沿岸についての主張をいたしておりまするが、日本側といたしましては、資源維持については同様であり、又一定の区域を限定し、そうして、それに対して平等に漁獲を制限することには賛成であるけれども、実質的に一方的な制限になることについては反対である、これが一番の今の見解の相違の点になつている次第でございます。
  306. 岡田宗司

    岡田宗司君 原則的には公海の自由ということに意見が一致しておる。併しアメリカ案におきましては條約上にどこそこで漁業をやるということを放棄するということがはつきりきめられており、日本案においてはそうでない、こういうことでございますが、その実質的な効果は、若し日本案がどの程度まで入りますかわかりませんが、大体日本案の趣旨が取入れられたといたした場合に、一体、日本の漁業は今問題になつておりますところのアメリカ沿岸まで行けるような工合になり得るのかどうか、或いはまた原則だけは貫くがこれは日本の自制に待つて、事実上は向うへ行けなくなつてしまうような結果になるのじやないか。そうすれば名だけ取つて実を捨てることになつて日本には何ら益するところはないと思うのでありますが、そういうような点についての農林大臣のお考えを承わりたいのであります。
  307. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) この結果については今交渉中でありますから何とも申上げられませんけれども日本側の主張をどこまでも主張しておる次第でございます。これはいま暫らくの時間を見なければ見通しについては今軽々に申上げる段階ではないと存じます。
  308. 岡田宗司

    岡田宗司君 勿論今日会議があるのでありますから、そういうふうなことは私は当然と思いますけれども、併しながら日本案とそれから向う側の案とが結果においてどうしても相容れないような場合の生ずることも考えられるのではないか、そういうこともあり得ると考えておられますか。つまり決裂というようなことにも或いはなる場合もあるかどうか。そういう場合にはどういうふうなことになるのか。その辺のことをお伺いします。
  309. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 我々は三国で誠意を以て話合いできれば必ず一致するものと期待しておるのでありまして、今から決裂の場合の状況は考えておりません。
  310. 岡田宗司

    岡田宗司君 政府側、根本さんの御答弁はいつでもそういうようなことでありまして、そういうようなことが今度の米穀統制の問題の失敗になつたのでありますから、一つそういうようなことで、ただ議会の答弁を糊塗するというようなことでなく、真に日本が公海における漁業権を放棄するということのないように、一つ農林大臣は特に不退転の決意を以て臨まれることを切にお願いしいたいと思うのであります。それができなければ日本といたしましては今後経済上非常に困る問題でありまして、又他国との漁業條約その他の條約等について常に不平等な立場におかれるという結果になりますので、この平和條締結後に起りましたところの第一の條約の問題でございますから、その点は当事者として十分に御奮鬪をお願いいたしたい。私はこれを以ちまして質問を終ります。
  311. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は先ず第一に、農林大臣に対して、昨晩お願いいたしておきました、文書でも結構ですが、講和に至るまでの間のアメリカ軍の演習地の漁業の補償はどういうふうにされて来たのか、二十五年度はどうなるか、及び講和後は如何なる方針で補償されるのか、この三点について、文書で、わざわざおいで願わなくてもいいからお願いしておきましたが、その御答弁如何でございますか。
  312. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 文書を今作成して委員長の許に届けるべく今印刷しておるのでございます。
  313. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 いつ出して頂けますか。もう直きですか。
  314. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) もう直きに参ります。原文は私は承知しております。
  315. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 結構です。私は農林大臣に対して昨晩のお願いはそれで結構であります。  次に大蔵大臣にお願いいたしておきましたが、   朝鮮戰争勃発以来日本政府は国連協力の方針で施設及び役務を国連軍に提供して来たし、現にしつつあることを確認した。よつて朝鮮戰争以来現在までに提供した施設及び役務の種類及び価格を左記の形において明示する資料を全委員に配付し、その内容を明らかにされたし。      記  (一) 土地、建物、役務その他の援助の有償、無償の区別とその価格、人員  (二) 有償のうち幾ら返済されているか  (三) 役務及び施設内容  これをお願いいたしましたが、これがどうなつておるか。それから一般的に非常に困難ならばという意味で、この資料全体が困難であるならば、飛行場は三沢飛行場でよろしい。それから、これは先ほどの農林大臣のと混線いたしましたですね……、それではこれで一応答弁を願いましよう。
  316. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 兼岩委員より先般来御要求なりました資料を作成すべく鋭意努めましたが、今に至りましてなお御覽に入れるような十分な資料が集りませんので、遺憾ながら提出ができません。
  317. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは提出の義務があると思います。いつ提出されるでしようか。
  318. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 折角資料を收集中であります。
  319. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 資料を收集していつ頃出せるかの期限を明快にして下さい。
  320. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 調査が非常に広汎でありますので、只今いついつと期限を申上げるわけには参りません。
  321. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう杜撰な、国会に対しても出せないような事実を基礎としてどうして総理はサンフランシスコでああいう交換公文を天下に発表しておられますか。
  322. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 詳細な資料がなければ言えないことはないのであります。あすこは気持を言つておられるのであります。
  323. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう気持でやる、気持で言つておられるなどという、そういう無責任答弁を聞くことは心外であります。と同時に、大蔵大臣は僕が幾ら要求してもその資料は出せないでしよう。出すことができないでしよう。そうはつきりおつしやつたほうがいいでしよう。どうですか。
  324. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 出せる資料もありますし、出せぬ資料もあるということは、昨夜申上げたわけであります。
  325. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それなら出せる資料は何々で、いつ頃出せますか。
  326. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そこで、昨夜申入れられましたのは、三沢の問題と伊東の問題でございます。伊東におきましては海軍の、或いは陸軍の演習地はございません。補償の問題はないということが今朝になつてわかりました。
  327. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 三沢ですか。
  328. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 伊東です。それから三沢の問題は、事がこれは特別調達庁の所管でありますので、特別調達庁のほうと連絡いたしまして、出先の管轄の仙台に電話をかけて調べましても、今その資料がまだ集らないのであります。この問題は簡單でございますので、そのうち集まると思いまするが、御覽に入れます場合におきましては私は正確な資料を出したい、こう思うので、昨夜から努力いたしたのでありますが、まだ集りません。
  329. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 両條約の審議に間に合うようには出して下さるでしようね。
  330. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) できるだけ早く出したいと思います。
  331. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではもう一つ聞いておきますが、これは、きつとあなたは出せないでしよう。臑に傷があつて出せないだろうと僕は思う。併しあなたも出すと言つた以上はこれはお出しになること、そうして、それも審議に間に合うように出されることを要求いたします。  いま一つ大蔵大臣に尋ねたいのは、対日援助費なんですが、これの七千二百億円につきまして前にも一度尋ねましたけれども、それに対して明快なる御答弁が得られませんでしたが、この七千二百億円に亘りますところの対日援助費、援助のつもりであつたら利子を附けて拂わなければならんと、あなたがたは取きめて来られたらしいのだが、それは、いつからどういう方法で拂われるのでしようか。
  332. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) はつきり申上げられません。
  333. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういうわけではつきり言えないでしようか。その理由。
  334. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 相手方のあることでありまして、相手方と話をつけてでないと申上げられないのであります。
  335. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 拂われることは確かなんですね。
  336. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 債務と心得ております。
  337. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それでは、時間の関係もございまして、差しとめを食うと肝腎の質問ができなくなつてしまいますから、安本長官に一つお尋ねいたしたいと思います。通産大臣は御高齢ですからあとで簡單なことにして、この間から繰返し繰返しここで問題にしておる点、つまり、この講和條約の経済的な基礎であるところの、その講和後の日本の再建の経済的基礎についてお伺いしたいのであります。つまり一方においては日米経済協力という形、他方において東南アジアという形、そうして中国との貿易の禁止というこの形、この三本の足に立つておりますところの、つまりいわゆる国連協力というその方針で果して日本国民が、労働者、農民、中小企業家は申すまでもなく、平和産業に携わる大資本家といえども、私はこの三本の足では困難だろうと思いますが、安本長官はこれに対してその心配は全く無用であるということを一つ明快にして頂きたい。
  338. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御心配でありますが、今日までの過去六カ年の足取りを見ての日本の経済の復興状況から見まして、私どもはさように悲観をいたしておりません。
  339. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 一本ずつの足を説明して頂きたい。先ず第一の足は日米経済協力、これはあなたは僕以上の專門家なんですが、この日米協力というのは、為替の管理と貿易の管理を通して外国の商人が大儲けをするだけで、これに携わる一部の人が儲けたものの、為替その他でその利益を全部吐き出してしまうとか、或いはキヤンセルという形でひどい目に会う。要するに日本の富が外国の独占資本によつて食われるというこの日米経済協力というこの足は如何な足でしようか。
  340. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私どもは、真の意味においての日米経済協力ということについては、決して外国の商人だけが儲けて日本が痛めつけられているとは考えておりません。むしろ、日本も、真劍に協力することによつて、必要な原材料物資の確保を容易にし、それによつて国内の産業が興りつつある過去の実情は将来においても同様であると考えます。
  341. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕はあなたの説を反駁すべき詳細な資料を特つて来ておりますけれども、時間の関係で第二本目の足を聞きましよう、第二の足ですね。この東南アジアの開発というものは、日本の鉄鋼価格の高価であるため、或いはその他の、つまり今言つた日米経済協力による日本の疲弊、そういうもののために、如何に労働者に低賃金を押しつけて見ても押しつけて見ても、東南アジアにおいて他国の、アメリカとかイギリスその他のヨーロツパ諸国の機械製品に対して太刀打ちができなくて、続々枕を並べて入札において敗北を喫しておるという、この関係をどう見られますか。
  342. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 東南アジア地区の開発並びに経済の提携ということは、これは現在、将来を通じて、日本の復興と同時に、これら各関係地方の民族、国家の繁栄を来たすことでありますから、私どもは将来とも東南アジア開発及びアメリカとの商業的連繋、その他、経済、産業における連繋については、これは実行して行くことが日本の繁栄を来たすゆえんと思います。ただ御指摘のように、えらく東南アジア地区では最近輸出も駄目でというような口吻が見えますが、むしろ最近における状況は、東南アジアは少し輸出が出過ぎるようであります。ポンド地域への輸出が余計であるというような恰好であることを申上げておきます。
  343. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたの考えでは、この鉄鋼価格を下げて国際的な競争に耐え得るような形において東南アジアに十分進出できるという根拠は如何なものでありますか。
  344. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 成るほど鉄鋼の生産に必要な鉄鋼なり粘結炭の問題については、アメリカ等からこれを持つて来るについては運賃等の関係でコスト高になつておりまするが、こういう点は、一に東南アジア地区における鉄鉱石なり、いわゆる石炭の開発と、これを日本へ結びつけることによつて、幾分でもコストの値下げができましようし、根本においては、製鉄業そのものの内部に持つところの産業の合理化ということを進めることによつて国際的に競争をなし得ると、かように考えます。
  345. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 労賃の切下げで行こうというわけですね。
  346. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私どもは労働者を犠牲にして値を安くすることを考えるのでなくて、むしろ機械設備そのものにあるところの非能率的なものを改善し、合理化するということが眼目であります。
  347. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 吉田内閣の閣僚は、全部概念的でなくて、言葉を弄ばれることについてのチヤンピオンである。あなたもそれに劣らないから、(笑声)第三の足について伺います。今の日本の足は栄養失調で、人間の足であるけれども義足である。そこで三本目の義足ですが、この義足、即ち中国との貿易とのストツプによつて、粘結炭が中日貿易の禁止によつて一躍十一ドルが三十一ドルになり、全部の化学工業の基礎になる塩が八ドルが二十ドル、鉄鉱が七ドルが十八ドル、これがつまり中国から持つて来ないので、アメリカ及びアフリカから持つて来る。こういうやり方で、この三番目の足と一本目の足と二本目の足と睨み合せて、あなたは、これからの講和後の日本を十分に繁栄させて八千四百万の国民を養つて行くという自信があるでしようか。あるとすればその根拠如何
  348. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 中国の貿易というものも、これは望ましいことでありますけれども、今日いろいろな事情でこれが杜絶しておることを遺憾に存じます。併し杜絶しておると申しましても、今月までの中日の貿易関係というものは、最高であつた戰後の二十五年でありましても、全輸出入額の輸出については約二%、輸入については約四%くらいずつしか占めておりません。にもかかわらず今日までの国内産業の復興状況は御承知の通りの状況で今日は伸びて来ております。私どもは、だからといつて中日貿易はいかんとは申しません。望むべきことでありますけれども、それはいろいろな事情でとまつておるが、併しこれが全部とまつておる関係日本の産業は参つてしまうかということになりますと、それは参らない。こういうふうに思います。
  349. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたは参らないと言われますから数字を挙げますがね。戰後の貿易、第二次大戰が済みましてからの各国の貿易……ここに私はアメリカイギリスとフランス、西ドイツ、日本を比較してみるとこの戰争に勝利したアメリカイギリスとフランスが、その輸出においてはいずれも戰前の一五五%から一八七%、二倍近くに伸びております。輸入につきましてもそれぞれ戰前に復帰し、それを乗り越えております。のみならず敗戰イタリアがもうすでに輸入において戰前に復帰し、輸出においては九六、輸入については一三六、西ドイツが輸出はもはや九五、輸入は一二八、然るに日本は、戰前に比べて、輸出においては二九%、輸入においては僅かに三二%と戰前の三分の一しか貿易が達していない。この事実をあなたはこれを何と説明されますか。
  350. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたしますが、日本は特殊な地位に置かれておりまして、英国、フランス等のごとき連合国に属する戰勝国とは違つておるのであります。その輸出貿易、輸入貿易の伸び方に差のあることは止むを得ませんが、併し二十一年における輸出が一億、輸入が三億くらいでありましたのが、昨年二十五年度におきまして輸出が九億ドル強、輸入が十二億何千万ドルということになつておる状況は非常に私は伸びておると考えます。
  351. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 伸びていないじやないですか。二九と三二という数字しかなつていないじやありませんか。これは日本だけが著しく西ドイツ、イタリアに比べまして実に惨憺たる状態にありますけれども、これはこの講和後にこれが急速に復興して回復して来るという根拠がございますか、あなたの先ほどの三本足で……。
  352. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 先ほどお答え申しましたように私は数字を以てお答えしておるのでありまして、二十一年に輸出一億、輸入が三億ドルくらいでありましたが、二十五年におきまして輸出は九億ドル強、輸入が十二億何千万ドル、約十三億ドル近く、これは相当伸びておるということの実証ではないかと考えます。今後におきましては、同様に日本の未稼働工場というものと余剩の労力というものを持つております。これに対して原材料の獲得ができれば、相当に生産が伸び、輸出が伸びると考えておりますが、これに対しては、アメリカその他の国連国家間との協力並びに東南アジア地区における国々との協力によつて、生産が伸び、輸出が伸びるものと確信いたします。
  353. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員あと三分であります。
  354. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 えらく値切りますね。それは困りますね。それじや通産大臣に一つお願いいたします。通産大臣にお尋ねいたしたいと思います。あなたは私が今安本長官にお尋ねいたしました趣旨を、もつと具体的に、何回かお尋ねしたのでございますが、あなたは国連協力の範囲内でということで、みんな逃げてしまつておられますが、あなたは本当に技術者出身の実業家として、長い自分の自己の実業を通されまして、こういうように北洋漁業は解決できず、沿海州からパルプの材料は買えず、中国から大豆は買えず、粘結炭は買えず、鉄鉱石は買えず、塩は買えず、そうしてはるばる地中海から、アフリカから塩を持つて来る、カナダから木材を持つて来る、アメリカから鉄鉱石や石炭を持つて来るというような、あなたの実業家としてのそろばんを彈じかれて、一体講和後の日本は八千四百万の人を養つて行けるんでしようか。一つ率直な御答弁を願います。
  355. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) 率直に私の考えを申上げると、今あなたがお挙げになつたような点は、日本の将来に取つてもマイナスであるということを私、考えます。併しそれは止むを得ないので、そういうマイナスはありますけれども、我々が努力すれば自立経済は達成されるという望み、確信を持つております。
  356. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 努力というお言葉で全部をお片付けになりましたが、それでは余りひどいように思いますが、如何でございましよう。もう少し御抱負の御一端をお漏らしを願いたいと思います。
  357. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) お叱りを受けて甚だ恐縮しますが、只今周東君が述べましたように、過去六カ年の経過を見ましても、我が国はマイナスの面もありますけれども、相当発展して行くいろいろな條件を持つておると私は考えるのでございます。
  358. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間が参りました。
  359. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一つだけ……。簡單に二点だけ……。
  360. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 一つならよろしうございます。
  361. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今のは連続で、もう一つ……。発展とおつしやいますが、それは国民の生活が豊かに発展するのでなくて、貧乏という形、一家心中という形に発展して行く、そうして遂にはよその国に雇われて、食えぬから傭兵にでもなろうという貧乏な形に発展して行くんじやございませんか。これ一つで第一のほうは終ります。せいぜい親切な御答弁が頂きたい。
  362. 高橋龍太郎

    国務大臣高橋龍太郎君) 私は今日本の実情として国民がまだ耐乏生活を続けなくちやいかんと考えますが、私の先刻述べましたのは、現在以上、現在の国民生活というものは落さずに、それを前提として考えを申述べたのであります。
  363. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一つ……。
  364. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間がございません。  平和條約及び安保條約に関する質疑は終了したものと認めます。討論に入ることに御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  365. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 異議ないものと認めます。只今から討論に入ります。岡田委員
  366. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はこの平和條約並びに日米安全保障條約の両方に対しまして反対をいたすものであります。  先ず平和條約についてでございますが、今回調印されました平和條約は、その起草者でありますところのダレス氏の言葉を借りて言えば、和解と信頼の條約である、そして、これは史上稀に見る寛大なる條約であると言われているのであります。そしてサンフランシスコ会議におきまして吉田首相は喜んでこの平和條約に調印されて参つたのであります。本條約を審議いたしておりました場合に、私どもは、この條約が果して和解と信頼の條約であるか、又寛大な條約であるかどうかということについて、仔細に検討を加えて見たのでありますが、遺憾ながらそういう点は見られなかつたのであります。戰争が終りまして平和が回復されるためにピース、トリーテイーが結ばれるその際に、この條約の一番主たる問題は領土の問題であり賠償の問題であります。そして又その国の将来の国際的地位、運命を定めるような問題でございます。  先ず領土の問題について見ますれば、この條約によりまして日本は戰争前に持つておりましたところの領土の四割を失つたのであります。そうして四つの狹い資源の貧弱な国に八千四百万の人口が追い込められておるのでありますが、戰争によつて打ちひしがれ、而もこの資源の少い狹い領土に追い込まれました日本民族というものは、今後果してどういう生活水準を維持して行くか、又日本は今後立派な国として発展して行けるかどうか、この点を考えて見ますならば、私ども前途につきまして暗い影を見ざるを得ないのであります。具体的に領土の問題について申しますというと、まあ朝鮮、台湾が日本から失われましたことは、これは止むを得ざることでありましよう。併し私どもは、ヤルタ協定に基きまして、南樺太並びに千島を失つております。又この條約によりまして、我々は二十九度以南の南西諸島、小笠原諸島等を日本から引き離されることになるのであります。千島、南樺太につきましては、これはヤルタ協定によつてそういうことになつてつたと思うのでございますが、このヤルタ協定は、戰争の末期におきまして、アメリカイギリス並びにソ連の間に協定せられ、これによりまして、ソ連は対日参戰をすることになつたのでありますが、その代償の一部に充てられておるものと私どもは見ておるのであります。即ちこれは帝国主義的な領土割讓のやり方と何ら変りはない。こういうようなやり方に基きまして、千島並びに南樺太等が日本から分離されて行くということに対しまして、私どもは先ずこれを承服することができないのであります。第二に、私どもは南西諸島並びに小笠原の問題でございますが、これは本條約によりますならば、信託統治に移される、こういうことになつておる。国連憲章によりまして、第二次世界大戰の結果、敵国の領域でありましたものは、それから分離されて移される、その信託統治に置かれることに、そうして、この條約によつてアメリカが唯一の施政権者として残ることに相成るものと思われるのであります。今までの質疑におきまして、日本主権が残るんだ、こういうことが言われる。残存主権である、或いは潜在主権だということが言われておるのです。併しながら一切の行政、立法、司法の権力が、これがよそに移つて参りまして、そこに残りますところの残存主権とか、潜在主権というものは、一体何ものであるか。これはゼロである。名だけのものである。今日奄美大島におきましても、或いは沖縄におきましても、多くの人々がこの條項反対し、そうして信託統治に反対して猛烈な運動を続けられておることは、私が申上げるまでもないが、過日のこの委員会におきまして、奄美大島代表のかた或いは沖縄のかたがたからその百十万の島民の悲願が縷々述べられたのであります。一体こういうようなことになつて参りました場合に、我々は一体この日本民族の一翼をなすものが切り離されて行く、この事実に対して、黙つてこれを見逃して行くことができましようか。この百十万の両島の島民諸君日本に復帰することを切願しておる、そうして今後もその運動が続けられて行くであろうということを私どもは承知しておるのであります。領土の問題、或いは民族が本国からこういうような條約で引き離されるということに相成りますというと、それは今後いろいろな形でそれらの地域における民族連動が勃興して参る。これが又本国に影響を及ぼさずにおかないのであります。我々も又これらの地域が一日も早く日本に戻ることを念願せざるを得ないのでありますが、この南西諸島、沖縄等の処置につきまして、取られましたこの條約上の点は、私どもは承服できない。大西洋憲章におきまして、米英は、第二次世界大戰後の処理の問題といたしまして、領土を取らない、こういうことを言つておる。又カイロ宣言におきましては、何らこれらの島々を処理することは示されておらないのであります。併しながら事実上アメリカによつてこれが占領され、今日、條的の問題におきましては事実上日本から分離せしめられることになつておるのであります。勿論條約の文面におきましては、信託統治に付せられる、或いはサンフランシスコ会議において残存主権云々と言われておりますけれども、実際上におきましては、これが日本から切離されるものであることは疑いを入れないのであります。私どもはこの処置にやはり承服しがたい、これらの島々に住む諸君のことを考えますときに、これを喜んで受諾するということは、私どもにはどうしても考えられないことと言わなければならんのであります。  平和條約の他の條項、もう一つの重要な條項でございます賠償の問題でございます。十四條の規定によりますならば、日本に存立可能な経済を営ましむる、そして日本からは現金賠償或いは生産物賠償を取上げない代りに役務賠償を課すといることがきまつておるのでございます。併しながら一体どのくらいの賠償を支拂うのかという額はきまつておりません。第一次世界大戰の後におきまして、連合国はドイツに対して莫大な賠償を課したのであります。これが一体どういう影響を持つたか、当のドイツが経済的に混乱をしたばかりではない。欧洲の経済全体が混乱に陥り、そうしてこの賠償問題がヒツトラーの抬頭の一つの原因を作つたことは明らかだ、そこで第二次大戰後においては、御承知のように、この賠償問題につきましては、戰勝国側は極めて慎重な態度をとり、例えばイタリア平和條約について見ますならば、総額三億六千万ドル、そうしてこれが七年間に拂われ、而もそれは敵国にありました財産等を以て充てることもできる、そのために実際は比較的軽いものであるということは私が申上げるまでもない。この條約におきましては、成るほど存立可能なる日本の経済を営ましめるために、多額の賠償は課すことはできないということになつておるが、一体幾ら日本政府がそれでは支拂能力を持つかということもきめてなければ、又総額もきめておらん。ただ役務賠償ということがきめてあるだけである。そうしてあとは、この貧弱なる日本が、お前ら勝手にその賠償要求国と折衝しろ、こういうことを言つて突放しておるだけなのであります。不親切極まりない処置であると言わなければなりません。そうして今日賠償要求が出て参つておることを見ますというと、フイリピンの八十億ドルを初めといたしまして、インドネシアの七十五億ドルと、全部合せましたならば大変な額になる。その上に中国が入つて来ましたならば、これは大変な額でありまして、第一次世界大戰のときにドイツに要求されました賠償額どころの騒ぎではない。これを今後折衝いたしまして、日本の存立可能なる経済の許す範囲内ということに折衝いたしますとするならば、非常にこれはむずかしい問題で、長くかかる問題でありまして、日本はそのために非常な不安な時代を経なければならんかと私どもは思うのであります。賠償額がきまつていない、役務賠償の形であるということを以て、賠償が寛大であるなどと考えたならば、飛んでもない間違いだと言わざるを得ないのであります。なお、この條約におきましては、日本の中立国における財産の補償というような、今までに、国際法上、例を見ないようなものも含まれておるのであります。そういうようなわけでこれらをずつと見て参りましても、私どもといたしましては、今度の平和條約がそのまま承服し得るのであるというわけには参らないのでありますが、併しこの平和條約はただ一つ切り離されて存在しておるものではない。ダレス氏も言つておりますように、この平和條約は、その翌日調印されましたところの安全保障條約と一つになつておるものであります。不可分の関係に置かれておるのであります。  安全保障條約につきましては、論議の過程におきましていろいろなことが明らかにされ、又行政協定のごときは何ら明らかにされていなかつたのでありますが、とにかくこの條約におきまして、日本側希望ではあれ、アメリカ軍日本に駐留する。而もその期限は付いておらん。こういうような状態であり、又同時に、この軍隊は、單に日本に対する武力攻撃がありました場合に、これに対抗するため、そして日本安全保障するためというのではなくて、事実はアメリカの対ソ戰略の見地から結ばれたものであることは隠れもないことであります。かような点から見て参りまして、これは不完全な形ではあるけれども軍事協定であることは明白であります。そして、ここに駐留いたしますところのアメリカ軍は、日本根拠地といたしまして、アメリカの作戦に基いてどこへでも自由に行動し得るのであります。若し日本関係のない問題におきまして、米ソが不幸にして戰争を開始するような場合におきましては、やはりアメリカ軍はその全体の戦略の上からいたしまして、日本を基地として行動を開始するに違いない。そのときに日本は恐らく事実上戰禍を受ける危険に捲き込まれることになるのでありまして、こういうことがこのアメリカ軍の駐留、今日の世界情勢からして予想されるのであります。而もこのアメリカ軍日本に駐留いたしましておるのに、第一條後段によりますれば、日本政府要請があれば他国によつて教唆されましたところの日本国内における内乱或いは騒擾の鎮圧に用いられるということになつておる。これはいろいろと政府筋の御答弁もございましたけれども、明らかに国内の政治的主権に対する関與であります。内政干渉と言われても止むを得ないものであろうと思うのでありますが、こういうことは、この條約がはつきりと定めておるのを以て條約史上嚆矢とするようでございます。私どもはこれによりまして、事実上日本は従属国の地位に落ちる途を開いたものと感ぜざるを得ないのでありまして、この点も私は安保條約に対する反対の重大なる理由の一つと考えておるのであります。  又安保條約におきましては、行政協定の問題があります。政府に幾らこの行政協定について御説明を願いましても、その片鱗さえも示して頂けないのであります。そうして、この條的が議会の承認を得、批准されるということになりますれば、それに基いて我々が何ら関知しないものが、政府アメリカ政府の間によつてどんどんときめられて行くという結果になる。こういうようなことになりまして、全く日本主権に関する、主権を制限するようなものや、或いは国民権利義務に関するものが白紙委任的にどんどんきめられて行くことになつて参るといたしますならば、これは重大なる問題であろうかと思うのであります。そうして、この行政協定内容につきましては、政府の御説明はないが、米比軍事協定等その他から類推いたしますならば、これは日本全体に相当大きな影響を及ぼすもの、そうして又将来の日本の地位にも非常に関係を持つものであろうと思われるのであります。外国軍隊が駐留するという問題は国際上非常にむずかしい問題でありまして、従来のいろいろな例を見ておりますというと、これは対等国家において行われることではない。そうしてこれが常にいろいろな紛争の種になつている。その紛争の一番著しい近い例は、御承知のように今日エジプトイギリスの間に行われているあの紛争であります。私どもはこういうことが起ることを予想するわけではございませんけれども、これがそういう問題の種を今日起しているということだけは間違いのないことと思うのであります。  こういう点からいたしまして、この安保條約に対して私は反対するものでありますが、とにかくこの両條約を結びましたことによりまして、私どもは、アメリカとの特殊関係、即ち一種の軍事同盟を結ぶことになりまして、日本は一方の陣営に入る、そうして直接非常な危機にさらされるようなことになつているのであります。私はこの両條約によりまして、日本がそういう位置に置かれて、却つて今後の危險を増すというような観点からいたしまして、この両條約に反対せざるを得ないのでありまして、これを以ちまして、時間も参りましたから、私の両條約の反対に対する意見といたす次第でございます。
  367. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 楠瀬委員
  368. 楠瀬常猪

    ○楠瀬常猪君 私は自由党を代表して両條約の締結承認に対し賛成の態度を明らかにいたします。  国際社会におきます重要な一員でありました日本として、その引き起しました戰争状態を終了せしめ、戰争の跡始末をし、新たに世界の秩序を実現せしめ、そうして自主独立の平和国家として一日も速かに再起することが終戰以来国民の切なる念願でありました。この念願に燃えまする我が国が、幾多の苦節の山河を経まして参りましたが、占領軍の主体であります米国の非常なる苦心努力によりまして、我が国は去る九月の八日平和条約及び日米安全保障條約に署名するに至りました。  このたびの平和條約は、和解と信頼、寛大なる講和條約と、連合国から言われております。私は、今日の国際情勢によるものとは言いながら、敗者を遇するに、かような條約を以てせられた連合国の見識と態度に敬意を表しますると共に、それですら敗戰ということが如何に冷嚴な現実を敗者に與えるかを知るのであります。平和條約につきまして、我が国の苦悩とし、憂慮といたしまするところは、サンフランシスコにおきまする我が吉田全権の受諾演説によつて述べられたところであつて私はこにこれらの問題を縷々繰返す要を認めません。ただ領土問題については、ソ通の襟度と我が方に対する公正妥当なる処遇を切望し、又新らしく信託統治下に入る諸島については、我が同胞の合理的な要望が実現するよう、これ又切望いたします。賠償関係として各国が條約に規定せらるるところにより、我が国及び国民の存立に対し深甚なる理解を持たれんことを希望いたします。而してこれらの諸問題について政府の格別の善処努力を期待いたす次第であります。在外資産の問題でありますが、中立国における我が方の財産までが接收されることは国際法上前例がなく、遺憾とするところであります。国内問題でありますが、在外資産の補償について政府は私有財産を擁護する建前を汲み、でき得る限りの考慮を拂われたいのであります。  全面講和は私どもの欲するところでありますが、今日の世界情勢に処しましては、それができないことは明らかでありまして、従つて多数講和を締結し、一日も早く我が国として自主独立の域に達せんとするのが今回の平和條約であります。今日、平和條約に反対する者があります。それが共産側に付くという考えに出るものならば別でありますが、然らざれば現在のまま推移せよという考えに立つのであります。二つの世界を満足させる方法がなく、全面講和の絶対不可能なる今日、いつ果しべしともわからざる占領の継続は屈辱であり、我が国民の感情気魄を無視したもので、とることができません。のみならず、その主眼なり考えは、勝者たる占領軍の講和への考えを全く無視した、ひとりよがりに過ぎず、滑稽であります。  次に、日米安全保障條約についてでありますが、平和條約により講和を締結いたしますが、自衛の実力なき我が国が、自主独立を如何にして全うするかが根本的な問題であります。平和條約は国連原則を取入れておりますから、平和條約そのものが国連原則に基く一般的保障の性格を持つておりますけれども、併し日本及び極東の実情に即して見ると、この一般的保障も、国連原則の枠内で安全保障を確保する必要からして結んだのが今回の安保條約であります。なお本條約の施行細則とも言うべき行政協定が取きめられる場合に、国会において述べられた意見や質疑のうち、安保の趣旨に悖らず、公正妥当なものが生かさるるよう、政府において考えられたいのであります。このたびの安保條約に対する反対として、日本は、講和條約が発効し、独立国になつたのちにおいて安保條約を締結すべきであるという考え方がありますが、これは国連の安全保障が不完全であつて、我が国が一日も早く自衛体制を確立するの必要にあえて眼を閉じるものであると共に、平和條約にある通り平和條約を受諾して我が国が主権国として安全保障の取極を締結する権利をみずから放棄するものでありまして、賛成ができません。更に安保條約については、米国側に日本防衛する義務規定がないというのでありますが、政府の説明によりますと、米国は国連原則に基いて行動するものであつて、自分一個の考えで簡單に日本を放棄することができない、又米国国際的信用からみても、一方的に日本を見捨てるようなことはないというのであつて、私はこの点を了解いたします。又我が国が財政窮乏の折柄、安全保障に関する費用を分担する必要を認めないという考えがありますが、この條約が誰がためのものであるかを考えず、又自分のためにみずから一銭も投ぜざることを言う真に恥ずべきものであります。  次に、安保條約は日本の中立性を侵害するというのであります。殊に、日本が中立を放棄するためには、自由主義国家群が我が国防を保障してくれ、我が国に対する海外の食糧供給地と、それからの海上輸送を確約してくれ、我が国の工業用原材料の輸入を確保してくれるという三点を挙げて、これらの確約がなければ中立性を放棄するなと言つております。併し、これらの三点を何とか確保したいからこそ、結局みずからの力か、他人の力かで、自衛と安全の途を講ぜざるを得ないのであります。又中立性といつた言葉で、インドのごときいわゆる第三勢力的存在を夢みているとすればどうでしようか。共産側は、このインドのごとき存在を、一時的、過渡的なもので帝国主義陣営の分解の一徴候であるといつております。日本はインドのごとき立場をとるための條件が揃つておりません。のみならず、共産陣営がいつ手を出すかわからぬような第三の道を歩むことはできません。更に中立々々と口先の空念仏では、現実に中立というものが招来できません。平和国の典型と言われるスイスは、国際連合にも入らず、永世中立を標榜しております。併し同国はその平和の根底において、徴兵制度こそ布いておりませんが、極めて高度の軍備即ち自衛力を持つており、これに裏付けられた中立であり、而も第三次世界大戰が勃発した場合、果して中立が守れるかどうかを非常に憂慮しておるのが実情であります。このような中立が今の日本にできないことはおわかりと思います。  今回の平和條約については、無條件降伏下なるにかかわらず、寛大公正なる見識を寄せて、大多数の国々が調印したという、世界的輿論の産物であり、又安保條約については、民主主義陣営と共産主義陣営という二つの苛烈な対立に処して、安価な中立論に醉うことなく、民主主義の側において、みずからの立場を保持するものであります。而して両者は形式的に別でありまするが、実質的には一つのものであります。そこで我が国民国会の一部においてですが、両條約の双方或いは又安保條約に反対する者がありまして、それらの人々から、占領軍たる米軍が早く引揚げるべしとするかのごとき声を往々聞くのであります。併し考えますると、米軍あつての我が国でありまして、米軍あつてこそ敗戰後我が国の治安が確保され、復興を見るに至りましたことは、何人も否定ができないところであります。(笑声)而も平和條的発効後において、今回のごとき安全保障條約が我が国になければ、今日の世界において日本の自主独立が全うできないことも一般の常識であります。これらの反対政府反対せんがための反対と言わざるを得ないと思うのであります。共産党諸君の反対は論外といたしまして、(笑声)その他の諸君で両條約に反対の諸君、又は平和條約に賛成であるが安保に反対するという諸君はどうでしようか。実は、内外の大勢は両條約に賛成であるから、心中は賛成しながら表面は反対態度によつて、自己の抵抗精神を満足せしめ、愛国者であるかのごとく国民に印象付けるつもりでしようか。又一派の学者と手を取り合つて、観念抽象の世界に閉じこもつて、実際と離れがちな習癖に生きるつもりでしようか。更に私の申したいのは、両條約が発効したといたしまして、我が国は積極的に戰争の準備をし、事を構えるということではなく、自衛の体制を用意しておることであります。従つて中国のごとき隣邦国との関係におきまして、彼の政治体制は断じてとらないとしても、双方の存立のためにも、経済的の善隣関係の生じますることは欲するところでありまして、アジアに国をなすものとして、アジアの諸国と緊密な友好関係を開きたいと熱望するものであります。而して我々日本として将来に通ずる途としては、世界の各国が相協力提携して一つの世界を営むという真の平和へ繋がるものでありたいと思います。  思いますに、祖国日本今後の歩みは文字通り困難なものであります。併しこのたびの平和條約が憂慮と苦悩の諸点を持つにいたしましても、我が国に対し総じて寛大で、永久的制限を持つていないのでありまして、国民が世界の情勢を絶えず念頭に置き、みずからを信じ、相協力し、勇猛心を振つて政治に刷新改革を加え、経済や生活に忍耐工夫を盡して国難を打開して行くならば、民主平和国家として勃興繁栄し、世界の進運に貢献し得ることは必定であります。  以上よりして、私は、両條約が今日我が国民の最も冀求して止まない平和と安全並びに独立への條約であると信ずるものであります。ここに私は自由党を代表いたしまして、米国その他諸国の我が国に対しまする好意に衷心感謝いたしますると共に、吉田総理大臣初め、全権各位の労を多としつつ、両條約に賛成をするものであります。
  369. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 羽仁委員
  370. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は平和條約並びに日米安全保障條約に反対をいたすものであります。  反対の理由は、平和條約と日米安全保障條約とは、その名称とは全く反対の意義を持つているからであります。日本は過去において東洋平和という名目の下に東洋に侵略戰争を行いました。又憲法を守るという名前の下に憲法を蹂躙いたしました。我々は、少くとも私は、国会議員として、再び国民を欺き、世界を欺くということには忍びません。この平和條約並びに日米安全保障條約が、その名の示すような平和とそうして日本独立とをもたらすものでないことは、世界の良心がこれを指摘しています。この條約がサンフランシスコにおいてどういう形で署名されたかを諸君が冷靜にお考えになるならば、そこに実に重大な問題があることにお気付きになるでしよう。アジアの主な国はこれに署名していません。ヨーロツパの主な国々はいわゆる消極的な態度を以て止むなくこれに調印しているのであります。これは過般の北京政権に対する侵略者、これを侵略者となせという、国連における表決が行われたときの事情とよく似ています。日本の問題に最も重大な関係を持つている国々は、この平和條約には調印していないのであります。そうしてヨーロツパの国々は、これに対して多大の批判と反対との意向を持ちながら、止むなくこれに調印をしているのであります。その最大のものが言うまでもなくヨーロツパにおいてはイギリスでありましよう。イギリスが如何に只今の形の平和條約というものに最後まで反対を続けたかは、皆様は御承知のことであろうと思います。日本アメリカとソ連との対立の場所にするということには英国は最後まで反対をしている。而も今日の英国とアメリカとの関係から、遂にアメリカの主張に屈して、そしてこの條約に調印をしているのであります。インドはこの平和條約に再三再四條理を盡して反対をされておる。その論拠は皆さんもよく御承知の通りであります。この日本の問題に直接関係しておるアジアの主な国々が反対し、そしてヨーロツパの英国を初め多くの国々が多大の反対を持しつつ止むなくこれに調印している。これらの反対の主なるものは何であるかと言えば、第一には、この日本に関する平和條約並びにこれに連なつておるところの日米安全保障條約というものができることによつて、現在の世界にそれでなくてもすでに存在しておるところの国際的な対立が激化されるというのが、第一の理由であります。私は、国民国家との運命に関する問題が、過去の帝国議会においては、或いは今日我々が問題にしておるような形では取上げられなかつたかも知れない。併し今日我々がこの国家国民の運命に関係する問題を議して行く場合には、我我自身或いは来るべき国際裁判に立つ決意を以てなさねばならんと思います。我々は今日世界に存在する国際的な対立を激化する側に立つということは将来決して許されることではないと思います。我々の持つ力は弱いものかも知れない。併し我々の持つあらゆる力を、国際対立を激化する側にではなく、国際対立を緩和する側に投ずるのが、我々の良心の命ずるところであると信じます。そして、これが或いはイギリスによつて、或いはインドによつて、切々と日本国民に向つて従つて又我々に向つて訴えられて来たところであると、私は考えます。  第二の理由は、この平和條約並びにこれに連なる日米安全保障條約というものは、日本の民主化を覆えすということであります。日本の民主化がこれによつて確立するという確信をお持ちになつているかたは、私は一人もおられないと思う。日本憲法が、殊に日本の過去の歴史に鑑みて、日本が戰争に関係するならば、日本の過去のあらゆる伝統が、再び日本を言うに忍びない悲惨な方向に導いて行くであろうということを、敗戰の直後に日本国民が最も真劍に考えたときに、この問題について日本は絶対に戰争及び軍事に関係すべきでないという立場を我々に命じたのであります。然るに、今日すでにこの平和條約と日米安全保障條約とをめぐつて日本の再軍備或いは国際的な問題の軍事的手段による解決ということが、公然と唱えられています。私はこの日本国憲法が制定せられた当時のこの議会の記録を、諸君が今紙屑のようなものにするのか、それともこれを生かそうとしているのか、これを諸君の良心に訴えたいと思うのであります。我々は国会議員として、なかんずく考えなければならないことは、我々がその地点まで行けば、もはや戻つて来ることのできないような所に行くべきでないということであります。日本の過去の歴史を考えて見ましても、その当時の一つ一つの問題は、必ずしもそれだけで、事実、日本侵略戰争に捲き込み、日本人を今日の悲惨に陥れるものではなかつのです。例えば大正の末年、治安維持法が帝国議会を通過したときに、この治安維持法がやがては太平洋戰争へ導くものであろうということを必ずしも証明することはできなかつたでしよう。議論二つに分れ得たでしよう。そういう議論もあり得る。併しこれは治安を守るためのものなのだという議論も成り立ち得たでしよう。そのとき、この治安維持法は、言論、集会、結社、憲法の保障する自由というものを覆えしてしまうものだという議論に対して、冷笑されたかたも多々ありました。又その後、昭和初年の事件、或いは昭和年間を通じて次々と起つて来た一つ一つの事件は、必ずしも、そのときに、このことが即ち日本憲法を覆し、日本侵略戰争に捲き込むものだということについては、議論は十分二つに分れていたろうと思います。そして、いわゆる時局の趨勢、或いは客観情勢というようなものは、日本がその当時飽くまで戰争に反対し、満洲事変なり、上海事変なり、そういうものに反対して行く人は少数であつた。それらは空想であつて、空論であつて、理想論に過ぎない、或いは共産党の宣伝に乗ぜられているものに過ぎない、日本は満洲に進出し、中国に進出し、極東の平和を守るのだという議論が一世を風靡していたことは、皆様がよもやお忘れになつていることではないと思います。今日この平和條約と日米安全保障條約と、この二つを前にして、先ずこの二つの点を皆さんがお考え下さるだけでも、この二つの條約が世界の何人も悲しんでおるところの大きな対立というものを融和するのに役立つのか、それともこれを甚だしくするのに役立つのか。そして、この二つの條約ができることによつて、平和を唯一の目的とし、平和的手段を唯一の手段とするその日本国憲法というものが、その掲げた理想に少しでも接近することができるとお考えになるか。それとも我々が国民に向つて、そして又世界に向つて誓約したこの平和主義憲法というものの理想が一つでも崩されるというようにお考えになるか。私はこの二つの分れ道が、やがて日本を、それよりあとは、もはや一歩も帰ることのできない恐るべき状態に引戻して行く分れ道であると思います。私は、過去の日本の悲劇の分れ道は昭和三年の普通選挙前後にあつたと思うのです。あの当時に確かに日本二つ考え方があつた。一つは、飽くまで平和に、そして民主主義的な方向に行こうとするものであり、いま一つは、止むを得なければ戰争に訴える、そうして場合によつては民主主義というものを制限してでも行くべきであるという、二つの道があつた。私は特に歴史家でありますから、この歴史的事実を調べて見て、つくづくそう思うのであります。併し昭和二十二年当時には、必ずしも多くの人は、この二つの道がそのように先へ行つて分れてしまう道だとは信じられなかつた。今、皆様はどの平和條約と日米安全保障條約というものに賛成するか反対するかが、世界に戰争を惹き起すことになるか、日本憲法を踏みにじることになるか、必ずしも直ちにそうならないとお考えになるでしよう。併しながらそのいずれかに我々は今一つの石を投げ入れるのであるが、世界対立を緩和する方向に我々の一つの票を投ずるのであるか、それとも世界対立を激化する方向に我々の一つの票を投ずるか。この日本国民に向つても世界に向つても最も嚴粛に誓約した憲法、その理想に一歩でも近づくための一票を入れるのか、その理想の一端をも覆えすために一票を入れるのか、これは後に至つて明らかに諸君の一票は如何なる意味において行使せられたかを歴史が必ず証明いたします。  第三に、この両條約に私が反対する理由は、この両條約は日本独立を與える、戰争を終了させる、そして占領を終結させるという形をとつておりながら、事実はこれに反するからであります。国民も、私も、この占領下にあるということについては、もはや一刻もこれを堪えがたいというふうに考えます。さればこそ国民平和條約を望むのであります。我々もこれを望むのであります。国民も望み、我々も望んでおるものはパンであります。然るにここに與えられるものは石であります。パンを求める者に向つて石を投げるということに、私はどうしても賛成することはできません。我々が切望しておるのは占領の完結であります。然るにここにその内容として実現されるものは占領の継続であります。言葉は如何ように使うこともできます。有名なシエークスピアの言つたように、「ばら」はどういう名前で呼んでも美わしい香りがするのです。反対に、この占領の継続、事実上における占領の継続というものは、平和と呼び安全保障と呼んでも、それは平和でもなければ安全保障でもありません。日本独立がこの平和條約によつて確保されないということは、インドがしばしば我々に向つて忠告を與えているところであります。インドの日本に與えておる忠告は、決して單に日本に対する親切だけではありません。インド自身の立場、即ちアジアの立場というものから、このアジアにおける独立というものが、現在世界に刻々に増大しつつある対立の不安というものを防ぐ唯一の方法だ、いわゆる第三勢力がみずからその第三勢力の組織と独立を守ることが世界の平和を守る唯一の方法だ、だから日本もどうかその立場に立つて欲しい、それは日本の幸福のみならずアジアの幸福である、その意味を以てして初めてインドは繰返し繰返し、重ねて、遂には講和会議に参加しないという極端な態度をとることをも辞せずして、この平和條約が日本独立を與えるものでないということの判断を我々に忠告をしておるのであります。私は、占領が終つて日本が本当に独立して、そうして日本に本当の平和をもたらされることを切望するが故に、日本独立をもたらさず、日本に平和をもたらさず、日本に占領を終結せしめないそのような條約に、反対せざるを得ないのであります。  そうして私が最後にこの両條約に反対をいたします理由は、この両條約は、日本に、本当の独立と、本当の平和と、本当の占領の終結をもたらす真実の平和條約を妨げる最大のものであるからであります。国民希望しておるのは真実の平和條約であります。世界が希望しておるのも本当の平和條約であります。然るに、この平和條約とこの日米安全保障條約というものが締結されるならば、日本は真実の平和の方向にではなくして、今申上げたような対立の激化の方向へ、そうして日本の民主化が一層確立される方向へではなくして、日本の民主化が一つ一つ掘り崩されて行く方向に、その方向に立つが故に、日本の真実の平和條約を、この道を、この両條約ほど妨げているものはないのであります。両條約によつて、いわゆる多数講和によつて次第に全面講和に近づいて行くという考えほど誤まつた考えはございません。真実の平和條約を妨げているものが何んであるかは、諸君がすでに御承知のように、この平和條約と日米安全保障條約とに現われておる。日本が特にアメリカの側にのみ立ち、そうしてアメリカ反対の側に対して対立する立場に立つということであります。私は先に、本日、首相に向つてもお尋ねしたように、戰争を前提とし、戰略的な立場の上に立つならば、中立というもはあり得ません。そうして日本は過去において政治が軍事によつて支配された悲惨な経験を持つております。そうして我々は、現在、世界において、或いはアメリカにおいて、政治が軍事によつて支配されつつある事実を日々見ております。いわゆるアメリカにおいて国務省がペンタゴンの意思従つているのではないかという報道がイギリスにおいて心配されている。こういう事実が今日世界に憂えられているのであります。私はこの平和條約と日米安全保障條約とは、いわゆるステーツマンシツプ、真実の、高い、政治的な判断によつて成立したというよりも、むしろ戰略的な見地によつて在立しているところが多々あると判断をいたします。そのために、世界平和を建設するという、最も困難な、併しそれがためにこそ我々の全力を捧げるに値する真実の平和を、この両條約ほど妨げるものはない。  以上申上げました四つの反対の論拠を諸君が十分にお考えを頂きたいと思うのであります。そして、諸君の投票が、後に、数年の後に、或いは十数年の後に、諸君の満足せられるところであることを、私は堅くお願いして、本件即ちこの両條約に対して反対をいたすものでございます。
  371. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 岡本委員
  372. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私は緑風会を代表いたしまして、平和條約及び日米安全保障條約に対し賛成の意見を表明いたしたいと存じます。  我が国はポツダム宣言を受諾して以来、同宣言を忠実に履行して来たのであります。終戰以来長く平和條約の締結を見るに至らなかつたことは、その原因が主として日本側にあるのではなく、複雑な国際関係にあるのでありまして、日本国民が頗る遺憾としたところであります。而うして、今や我が国が完全な独立国家として平和世界に復帰し、国際平和と発展のために協力する資格あることを、アメリカ合衆国を初め大多数の連合国によりまして認められ、民主主義国家四十八カ国との間に平和條約を締結し、併せて、軍備のない我が国の安全を確保するために、米国との間に安全保障條約を締結することとなりましたことは、私の欣幸とするところであります。これらの條約は主としてアメリカ合衆国の我が国に対する和解と信頼のたまものでありまして、トルーマン大統領、アチソン国務長官、ダレス顧問、マツカーサー元帥、その他関係各位の御盡力に対し深く感謝の意を表するものであります。併し私は、この両條約に対して必ずしも全幅の満足の意を表することのできないのを遺憾とするのでありますが、それは、アメリカ合衆国初め調印各国の我が国に対する善意を信頼して、必ずや遠くない将来におきまして、これらの諸点が解決せられるものであることを信ずるのであります。  先ず平和條約に対しまして申して見ますと、私は大体において平和條約が和解と信頼の條約であるとする吉田総理大臣の言明に同感であります。日本が今にわかに全面講和を結ぶことができない以上は、差当り日本と友好を回復したいと考える列国との間に比較的寛大な平和條約を結んで、一時も早く完全な独立国たる地位に復帰すべきであります、日本国は速かに独立国として国際連合に加盟し、国際連合の趣旨に従い、世界の平和と発展に寄與しなければならないのであります。  而して平和條約につき、私の不満足とする諸点は、第一に千島列島の帰属問題であります。本條約におきましては、千島列島に対するすべての権利、権原を日本国は放棄するのでありますが、千島列島は歴史の明らかに示すがごとく、古来我が国の領土であります。戰争によつて我が国が獲得したものではありません。然るに、敗戰の結果とはいえ、その所有権を放棄しなければならないのは全国民の痛恨極まりないところであります。  殊に色丹島及び歯舞島が千島列島の一部として所有権を放棄するに至るべきことは断じて承服し得ないところでありまして、ダレス顧問の言明に信頼し、速かに我が国への返還を要望してやみません。次に北緯二十九度以南の西南諸島等がアメリカ合衆国の信託統治制度の下に置かれることについても遺憾の意を表します。何故に米国がこれらの諸島を信託統治の下に置く必要があるか、その真意を了解するのに苦しむのでありまして、アメリカ合衆国及び連合国が速かにこれらの諸島に対する信託統治制度をやめにして、日本の完全なる主権の下に復帰せしめられるよう切望いたします。  次に、平和條約第五條は、日本国に対し、国際連合が憲章に従つてとる如何なる行動についても国際連合にあらゆる援助を與える義務を課しておるのでありますが、その義務は我が国が法律上及び実際上可能な範囲に限定さるべきでありまして、例えば警察予備隊に対し、集団自衛を名として国外に出動せしむるがごとき義務を課することなきよう強く要望いたします。  次に、第九條の公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展に関する連合国との間の協定締結については、この平和條約が和解と信頼の條約である趣旨に鑑みまして、公海自由の原則を確立することができるよう強く要望するものであります。  次に、第十四條以下賠償の問題であります。日本国の生活水準は現在未だ戰前の七〇%に過ぎません。今、にわかに多額の賠償を要求せられることは、それが役務賠償であつても負担に堪えないのであります。我が国において直ちに経済の破綻を来たし、社会不安を惹起するのであります。従つて連合国側の賠償請求も、アメリカ合衆国の債権償還も、同情ある考慮を拂われ、いわゆる彼此共存共栄して、極東における、否、世界における平和の確立に協力されんことを切望いたします。  又、日本国民の私有財産で海外にあつて不幸連合国の管轄下にあるものを、本條によつて最終的にその所在連合国の処分に任せることに同意するのでありますが、政府は私有財産尊重の憲法第二十九條の趣旨に則り、これに対して相当の補償をなすべきであります。  最後に、政府平和條約第二十六條によりまして、この條約に調印し、或いは参加しなかつた諸国、殊にインド、ビルマ、中国、ソ連との間に同様の平和條約を締結することに努力し、完全な全面講和をできれば実現すべきであります。かくてこそ日本が世界平和の仲介役となり、国連憲章の趣旨実現を期待し得るのであります。  なお、特に政府に対して強く要望したいことは、我が国の人口問題の解決であります。今や我が国の領土アメリカのカリフオルニア州一州よりも狹い四つの島に限定されております。その四つの島にカリフオルニア人口の十数倍に上る八千四百万という大人口を抱いておるのであります。これが生活安定を得ますることは実に容易ならざることであります。日本国民が生活水準を高め、各人が繁栄に赴きますためには、この人口問題の解決こそ、その鍵であります。産兒制限の施策や、余剩人口の生産化に努力いたすと共に、移民問題の解決促進に特に全力を盡すべきであると思います。  次に、日米安全保障條約に対しまして態度を明らかにいたします。  日本憲法を以て軍備を放棄し、警察予備隊だけで国内治安維持を図らなければならない現状におきましては、我が国の独立回復後において、外国が万一侵略をいたしますそれに備えまして、国際連合に依存しなければならないのであります。併し今にわかに国際連合の集団自衛措置に期待することは不可能事でありますから、憲法前文に言うごとく、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼いたしまして、我が国の安全と生存を保持しなければならないのであります。この意味において、日米安全保障條約の締結も差当りは止むを得ないと考えるのであります。吉田総理大臣が、安全保障條約は、共産勢力が予告なく南朝鮮に侵入した事実があるとき、日本独立と安全を守るためにこれを考えざるを得なかつたという考え方には同感であります。併しこの條約の締結は、吉田総理大臣の言を以てすれば、自由主義国家群に投じて世界の平和を守るのであります。日本国民は中立的立場をかなぐり捨てて共産主義国家群に相対峙する一大決心をすると言つても過言でないのであります。国民の一部が多大の不安と憂慮を持つことも又当然であります。吉田総理大臣が、この條約は第三次世界大戰を避けるために作つたもので、戰争の危險をかもすものとは考えられないと言われる考え方を、国民の多数は、一方には肯定しつつも、一方にはこの條約によつて第三次戰争の時期が早まるのではないかと憂慮する者もあるのであります。政府は細心の注意を拂つてこれらの不安の除却に努め、中共、ソ連、その他とも友好関係の回復を図るべきであります。而して日米安全保障條約は、その前文に示すごとく、我が国にとつて日本防衛のための暫定措置に過ぎないのであります。日本の固有の自衛力が完全でないため、他国の軍隊に駐留してもらうのであります。独立国として決して名誉なものではありません。吉田総理大臣は、イギリス等における米国軍駐留の例を引用されまして、近代的国家自衛措置として決して不名誉なものではないと強調されるのでありますが、日本における本條約による米国軍が長い期間駐留いたしますことは、日本固有の自衛力を持たない日本がこれのみに依存して国家の安全を図るのでありますから、決して名誉なものではないことは明らかであります。又これがため、ソ連、中共等の隣国に強い刺戟を與え、極東における国際の平和を積極的に確保することが困難となる虞れがあるのであります。我が国は、国際情勢と財政状態と賠償等、国際債務の履行とを睨み合せまして、且つ全国民意見に聞きまして固有の自衛力の充実を図り、アメリカを初め連合国側の期待に応えて、自力を以て直接及び間接侵略に対する自国防衛にみずから責任を負い、併せて国際連合憲章目的及び原則に従つて国際の平和と安全を増進し、みずからもそれに寄與しなければならないと存ずるのであります。併しこの安全保障條約についても不備の点があります。本文各條の條文の不出来なことがその一つであります。又米国軍日本国内に駐留する配備を規律する條件を、挙げて両政府間の行政協定に白紙委任している点がそれであります。それらの点につきましては、私はこの委員会における政府側の答弁に信頼いたします。行政協定を以て憲法に牴触するがごとき取極をしないこと、又取極に法律又は予算的措置を要するものは必ず事前に国会に諮るか、又は停止條件附の協定をすることを政府当局はしばしば言明しましたが、それを嚴守せられんことを要望するものであります。  以上の希望意見を開陳いたしまして、両條約に対しまして、賛成の意を表明いたします。
  373. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 堀委員
  374. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、この二つの條約に反対を表明するものであります。  先ず第一の反対の理由といたしましては、この二つの條約が日本をアジアから孤立させるということであります。中国はこの條約の調印の会議に招集を受けておりません。成るほど今日中国が二つの政権に分れて対立しておることは事実であります。併し国際政治に少しでも知識のある人ならば、今日中国の本当の主権者が誰であるかということは当然明らかであろうと思います。ところが、この條約の創案者たちが正当な主権者を正当な主権者として認めず、僅かに一孤島に亡命した政権を以てその主権者たらしめようと考えているのであります。インドやビルマがこのサンフランシスコ会議に参加しなかつた理由の一番大きなものは、中国が招請されなかつたということにあると思います。而も中国は、日本との関係におきましては、歴史的にも、経済的にも、地理的にも、最も緊密な関係を持つてつた国であり、今後も又、日本の将来を考えまするに当りまして、中国を除いて日本ということを考えることはできないのであります。日本の経済の再建また然り。日本の文化の向上また然り。日本は中国と緊密なる関係を持ち、これと友好関係を保つことによりまして、日本の再建ができるのであります。而もこの中国を通じまして、日本とアジアとの関係を更に緊密にして行かなければなりません。残念ながら、中国、インド、ビルマ、それぞれ人口から申しますならばアジアの総人口の八割を占めておる、これらの国々が今度の講和條約には参加しておらないのであります。而もインドにしろ、中国にしろ、この講和條約に規定しておりまするところの三年以内に日本との單独講和を結ぶ可能性があるかと申しますと、全然それはありません。この講和條約を結んだことによりまして、日本は、アジアにおけるこれらの国々をむしろ日本の敵として見なければならんという不幸な事態に当面するに至つているのであります。ロンドン・タイムスが今度のサンフランシスコ條約について批評しております。アジアの諸国との提携の機会が失われるならば、たとえ五十カ国がサンフランシスコ條約に調印しようとも、それは失敗であるということを申しております。日本の民族が中国並びにアジアの諸国と善隣友好の関係を結ばなければならんのに、これと離れて果して日本の経済的な再建が可能でありましようか。果して日本の政治的な独立が可能でありましようか。これが第一の理由であります。  第二の理由は、この二つの條約が日本を新たな国際的な従属関係に置くということであります。講和條約に規定してありますところの信託統治の制度、或いは日米安全保障條約によつてもたらされるところの米軍の駐留、成るほど形式的には対等の主権国家の條約のようではありまするが、実質的に見まするならば、軍事條約であり、不平等條約であり、決して対等の主権者の間の條約と申すことはできないのであります。そういうような條約がこの二つの條約によつて将来の日本を律しようとしているのであります。而も一方には、第二次世界大戰後、中国の完全な独立、ビルマ、インドの独立、インドネシアの独立、更にイラン、ヨルダン、エジプト、これらのアジア、アラブ諸国が帝国主義的な支配を脱却いたしまして、民族独立運動を強力に展開しているのであります。ところが、日本は、このアジア、アラブの民族運動の勃興している今日におきまして、あべこべにみずから自分を従属的な地位に置こうとする立場を選ぼうとしているのであります。私はこれは日本民族が子孫に対して何の顔向けができることであろうかということを恐れる。むしろ日本民族の恥辱として我々はこの條約を見なければならんと思うのであります。  第三に、この二つの條約はますます国際対立を激化し、更に日本を戰争に捲き込む危險を持つものであるということを申上げなければなりません。今日二つの世界の対立は極めて憂慮すべきものがあります。不幸にして、終戰後六年、この対立がいつ果つべきかもわからぬというような状態にあります。勿論、一方にはこれを緩和しようとする努力も行われております。併しながらアメリカのとつておりまするところの外交方針が、他方の世界に優越した武力を持つことによつて、いわゆる武装平和を方針としようとしているのであります。従つてそれによつて生ずるところの結果は軍備拡張であります。軍備拡張がどのような更に結果を生むであろうかということは、第一次大戰乃至は第二次大戰の経験に徴して明らかであろうと思うのであります。このような二つの世界の対立しておりまする真只中におきまして、日本がみずから進んでアメリカの陣営に投ずるということは、これは更にその対立を激化することであり、而も軍事條約を通して日本アメリカ軍隊の駐留地となり日本根拠地として極東のいずれかの地域に軍隊が派遣される。飛行機が飛ぶかも知れません。そうなつた場合に、果してそれらの地域の主権者が、或いはその国民が、日本を敵性国家として、アメリカの協力者として認めないとは、私は保証することができないと思うのです。従つて、この二つの條約によりまして、日本国際対立を更に激化し、延いては日本を戰争に捲き込む危險が極めて重大であると申さなければなりません。戰争に対しまして、これをやめよう、飽くまでも戰争は今後日本はやらぬということは、過去の数十年に亘る帝国主義戰争に対する日本民族の心からの悲願であろうと思います。そのためにこそ、我々は終戰後戰争放棄の憲法を制定したのだろうと思います。決してこれは、單に外国が、或いは占領国が、日本に非武装を強要したからというだけの理由で、できたとは思いません。過去の侵略戰争に対する我々の反省、又戰争をやめようとする民族の心からの悲願こそが、この戰争放棄の憲法規定したものと私は信ずるのであります。従つて若しこの二つの條約が実現するならば、恐らく我々は戰争直後に我々が行なつたところのあの反省、或いは民族としての悲願を踏みにじる結果になると思います。これ又我々は我々の子孫に向つて何の面目を保ち得るでありましよう。私はこの点から反対するものであります。  次に挙げなければならぬ反対の理由というのは、この二つの條約は日本の民主憲法を踏みにじり、日本の再軍備約束しておるということであります。只今申上げましたように、我々の憲法は我々の戰争に対する反省、又民族としての悲願から生れて参つておるものであります。ところが、今度の條約、特に平和條約の第五條並びに安全保障條約の前文を見まするというと、いずれは日本が漸増的に自衛の力即ち再軍備をすることを期待いたしておるのであります。吉田首相はしばしば再軍備はしない、こう申しております。併し再軍備期待しておりますることは、もはや否定し得ない事実であり、而も我々の恐れるのは、昨年来設けられましたところの警察予備隊がすでに軍隊化しておるということであります。私は先ほどの総理大臣に対する総括質問の中でも述べたのでありまするが、警察予備隊がすでに軍隊化しておる。而もアメリカ安全保障條約によつて日本の安全を保障するその軍隊の力というものは、客観的な事実から見まして、到底十分なものとは考えることができない。そうなりまするというと、結局において警察予備隊の増強ということが当然に起つて来るのであります。私はこの点に関しまして、すでに日本においては再軍備がされている。日本の民主憲法を踏みにじつている。更に民主憲法を踏みにじつている幾つかの例を挙げることはできると思いますが、この一点だけにおいて十分に私はその理由を見ることができると思います。而も日本の警察予備隊につきましては、アジア諸国において非常な警戒心を持つております。日本は再び軍国主義化するのではないか、日本は再び帝国主義的な侵略をやるのではないかというような警戒心を持つております。このような情勢の中で果して日本独立を平和というものがかち得られましようか。日本の民主化ということが促進されるでありましようか。むしろ逆転すると見るのが至当ではないかと思うのであります。  次に、反対の理由といたしまして、この二つの條約によりまして、日本経済の自立が何ら約束されておらぬばかりか、更に日本の経済が困難にさせられるということであります。中国を初めとするアジアの諸国との日本の友好関係は、極めて困難な状態にあることは、先ほど申上げた通りであります。而もこの條約によりまして、苛酷な賠償が日本に課せられるのであります。日本国並びに日本国民の在外資産は全部連合国によつて処分されるのであります。而も他方、連合国が日本に持つておりまするところの財産は、日本がこれを補償しなければなりません。その連合国の財産の損失の原因はと申しまするならば、無差別爆撃であります。乃至は原子爆弾によるところの損失であります。そういうものをも我々は補償しなければなりません。このような平和條約によつて我々の経済的に課せられたところの條件は極めて苛酷であり、東南アジア諸国との友好関係も果して十分に期待し得るかという点から考えまするというと、我々の国の今後の経済状態は極めて悲観すべきものではないかと考えるのであります。  以上の理由によりまして、私はこの両條約に反対を表明するものであります。
  375. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 木内委員
  376. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は国民民主党を代表いたしまして、只今議題になつておりまする両條約案に対しまして、数個の要望を付しまして賛成の意を表したいと思います。  国民はこの過去六年間講和を待望して参りました。我々も又この国会におきまして、現に自主性のない政治というものの悲哀を身を以て体験して参つたのであります。今日ここに講和條約の締結を見ましたことは、私どもは喜びに堪えません。国民の大多数も恐らく喜んでおることだろうと私は思います。併しながら、今回の條約を見ますというと、多くの大きな問題の決定を将来に残しておる点、殊に全面講和でなかつた点、即ち非調印国が多数ある、大きな国が非調印国であるという点が一つの確かに欠点であると思うのです。国民はこのために、これらの諸国との関係はどうなるだろうか、或いは又一方にくみしたような形になりまするので、対立を激化するようなことになりはしないか、非調印国との関係を却つて悪化させるようなことはありはしないか、或いは又こういう状態において、我が国の経済自立が可能であるか、或いは経済の回復と発展を阻害しはしないかというような点について、国民は非常に心配をしておるということは私どももわかるのであります。勿論全面講和は我々もこれを理想として唱えて参りました。併し現実の客観情勢がこれを許さないといたしますならば、いつまでも、この可能な国との多数講和を妨げまして、そうして我が国の独立をいつまでも遷延するということは、到底私どもは許されないと思うのであります。併し、さればと言つて、今申しましたような、この非調印国との平和を妨げ、或いは善隣友好の関係を妨げるというようなことは、これは、いつまでも許されるべきことではありません。この非調印国との関係につきまして、現在の情勢において、政府から積極的に、その施策と、その対策と、所信を聞きたかつたのでありますけれども、それを聞くことができなかつたのは私ども遺憾に思いますが、この多数講和を基礎といたしまして、漸次非調印国との関係を、平和を打開し、且つ促進して参らなければならんと思うのであります。そのためには勿論政府にも大いに期待いたしまするが、国民もこのために努力する、即ち朝野を拳げてこれに力を注がなければならんと思うのであります。  さて、今回の平和條約は和解と信頼の條約だと言われております。確かに、戰争責任等には言及もいたしておりません。或いはいろいろな制限も設けておりませんし、又監督の規定ども置いておりません。確かに或る意味において和解と信頼の條約であるということはできるだろうと思うのでありますが、各條文を見ますというと、その間にやはり避くべからざるこの敗戰国としての立場と重い負担というものは滲み出ておることを、私どもは否定することができないと思うのであります。  先ずこの領土條項につきまして、先ほど来、たびたび繰返されましたが、私どもは確かにポツダム宣言を受諾いたしました。併しながら同時に、カイロ宣言と大西洋憲章の精神によつて、我々に歴史的、民族的に帰属しておつた領土はこれを保持し得るものと私どもは思つてつた、又我々がそう思うのも当然であつたろうと思うのであります。然るに今回の條約によりますると、主権は放棄させられました。けれども、私どもはこのヤルタの秘密協定というようなものは絶対にこれを承認することはできません。政府委員のかたから伺えば、御説明では、すでに放棄したのだから、我々は法律上の権原はないということを言われております。それも確かに一つの解釈であると私は思う。正当な解釈であるかも知れません。併し新聞の伝えるところによりますれば、ダレス特使の書簡として発表されたところによりますというと、日本主権を放棄したのだけれども、ソ連に帰属さしたいと書いてないし、ソ連はそれに対して発言権はないと言つておる。我々は、すでに放棄したのだけれども、これを取上げる人がないのだというならば、元の所有者がこれに対して当然先ず第一に法律上の権利を私は主張し得ると思う。我々飽くまで、千島、南樺太の主権の回復、失地の回復を叫んで、その実現を朝野を挙げて期さなければならんと思うのであります。歯舞、色丹が北海道の一部であるということは申すまでもありません。又領土の問題につきましては、北緯二十九度以南の地域、それにつきましては或いは憲法が施行されないというようなお話もあつたり、眠つておる主権だと言われたり、潜在の主権だと言われたり、まあいろいろなことを言われております。これは何でも言葉はいろいろ言い現わすことは自由でしようが我々はすでにして安全保障條約を締結いたしました以上は、平和條的にあるところの信託統治の制度というものは必要がないのじやないか。これは先ほど岡本委員などからも言われましたが、私どもはかねてそういう主張を唱えておつたのであります。今現に平和條約を締結した、そのあとにおいて安全保障條約が締結されて、そこに米軍が駐留することができるということになれば、眠れる主権とか、そういうややこしいことにしないで、安全保障條約によつて十分その目的を達するのであるから、信託統治制度は必要はないのじやないかと私どもも思いますし、アメリカ政府もすでに今日考えておるでのはないかとさえ我々も想像するのでありますが、アメリカ代表日本主権があるということを言われておつたということでありまするから、これを基礎として、政府において飽くまで主権保持存続に努力されることを強く要望いたしたいと思うのであります。  なお、この安全に関する條項につきましては、我々は夙に国連加入ということと、集団的安全保障條締結、又その基底をなすところの自衛力の強化ということについて、常に強化、確立ということについて主張いたして参りました。今回この趣旨が平和條約の或いは第五條と第六條に挿入されておるのでありまするからして、これを、この基礎に基きまして、能う限りみずから祖国を守る態勢を整えるべきであると思うのであります。  この憲法解釈につきましては、いろいろ説明がありましたが、併しながら我々の満足すべきものではありません。併し徒らにこの憲法解釈を狹隘にし、或いは曲つた解釈をしまして、自縄自縛に陥ることのないように、自縄自縛に陥り、従つてこの祖国を危殆に陥れることのないように、十分戒慎すべきものであると思うのであります。  更にこの未帰還者の帰還促進の問題につきましては、御承知のように前の草案に入つておりませんでしたが、国民的の祈願が容れられまして、規定に挿入されたことは、誠に喜ぶべきことでありまするが、併し施策、交渉、対策よろしきを得ませんければ、これが一片の空文に終るだろうと思うのであります。どうか、この点につきましては、特に政府当局において一段の努力をせられて、速やかに未帰還者が祖国に一日も早く帰還できるようにされることを要望して止みません。  更にこの政治経済の條項でありますが、これらの條項に関しましては、過去の諸條約によるところのいろいろな権利、利益を放棄しと書いてあります。これは又一、二の場合におきましては、通商上の均等待遇というようなことを放棄しておるというようなこと等、遺憾なことがありますけれども原則的に見ますれば、国内的の政治的、経済的の、問題、対外的経済活動の自主性と平等の原則を認めて、明らかに規定いたしております。又相互主義によるところの内国民待遇の許興、最惠国待遇の許興というようなことが、通商関係の処理の基本原則として明らかにここに規定されまして、今後我が国はこの基礎の下に我が国の経済的発展を図つて参らなければなりません、又図つて行くことができるのでありまするが、併し一面におきましては、又この四つの島に八千余万人の人口を擁し、而も條約の前文にありまするように、社会福祉と安定の條件の創造推進に努めなければならない。生活水準の向上、或いは完全雇用ということに努めなければならない。この両方を考えて参りますというと、実際問題として非常に多くの困難を私は伴うだろうと思う。そこで、この点につきましては政府の施策よろしきを得ると共に、国民の一段の奮起と努力を私は強く要望せなければならんと思うのであります。  更に、次には請求権と財産の條項でありますが、我々は当初、実は賠償はないだろうという期待を持つてつたのでありますが、それは役務賠償でありましても、今回その條項が入つたことは、誠に私どもこれを遺憾に思うのであります。而もこの程度と方法等につきましては、今後の協定に残されておる。我々は非常な失望と不安とを禁じ得ないのであります。この厖大な在外財産が留置されて、我が国の国力が非常にそれによつて減耗するのみならず、この中立国にあつたところの財産もこれを引渡さなければならん。これは先ほども御指摘がありましたように、国際的にも先例のないようなこういうことを課さられておる。私どもは誠に遺憾に堪えません。而もこの條約におきましては、私有財産尊重の趣旨を現わすところの字句が挿入してありません。勿論これに対する補償の問題は、他の戰争犠牲者或いは戰補の打切りというようなこと、又一方においてはこの国家の財政状態等を考慮して、慎重に処理すべきものでありまするけれども、とにかく私有財産尊重の趣旨が條約に現われておらんという点は、私ども誠に遺憾に思うのであります。又この條項の結果といたまして、厖大なこの在外財産を、先ほど申しましたようにこれを失う。それから賠償の負担を課せられる。又対日援助資金を逃さなければならん。或いは我が国にあつたところの連合国の財産に対して補償しなければならん。或いは外債を拂わなければならん。非常に大きなこの国家的の負担があるのでありまして、一たびこの措置を誤まりまするならば、我が国の経済回復を阻害するは勿論、国民経済を破綻に陥れるところの私は危險さえもありはしないかと思う。そこで、これらの点につきましては、飽くまで政府の善処を、要望してやみません。  更に安全保障條約について簡單に申述べたいと思うのでありまするが、私ども安全保障條約のこの目的につきましては、これを承認いたします。今日の段階におきまして、この考え方と、この構想に対しましては、私どもは賛成するものであります。併しながらその結果といたしまして、対立しておる二大勢力の一方にくみして、それによつてこの対立を激化しはしないだろうか、或いは又我が国が戰禍をこうむることがないだろうか、我々の知らないでおる間に戰禍に捲き込れることはないだろうか、或いはこの規定の仕方で安全が十分に保障されるだろうか、或いは負担が依然として重く、これが続いて行きはしないだろうか、或いはこの駐兵というものは半永久的に続いて行くのじやないだろうか、或いは又この白紙委任状を渡して何をされるのかわからんじやないかとさえ思われるような心配をする人も一部にはあります。これらの諸点に対して、政府の説明は必ずしもすべて満足すべきものばかりではありません。政府は、少くも国民権利義務に関するものと、予算に関するものは、国会承認を求めると言われる。国会承認がなければこれは実施することはできません。私はこれらの諸点は政府の言われることは当然であると思うのでありまするが、併し同時に、このアメリカ駐兵によつて安全保障目的を達するためには深い理解と協力がなければならんと思う。そこで、政府は先ほど申しましたいろいろな国民の不安に対して、これを解消するために最善を盡し、而もこの国民の理解と協力を待て、円満にこの駐兵目的を達するように努力すべきであると思うのであります。我我は、併し、いつまでもこの外国軍隊に依存しておるわけには参りません。みずからを守り、みずからの力によつて自衛の責任を果すという態勢を一刻も速かに達成するために、政府も最善の努力をし、国民も一段と奮起することを要望いたしまして、私の賛成の討論といたします。
  377. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員
  378. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表いたしまして、両條約に反対いたすものであります。  第一に、この両條約は彈圧の條件において通過させられようとしておるということであります。国会、特に衆議院では審議は十分に盡されておりません。参議院におきましては相当に愼重審議されましたけれども、併し吉田総理以下政府の大臣並びに政府委員答弁は、無誠意、独断、こじつけ、何ものも国民に説明し得ないのであります。のみならず、我々の言論はプレスコード違反という形において国民大衆との連絡を断たれているという、こういう條件であります。国会の外ではどうか。講和の論議については彈圧を以て臨まれて来ておる。先ほど窓の外から聞えて参りました歌声は、平和な労働者が、平和なる形において日本独立を求める声である。真実日本独立と平和を守るであろう者は、労働者階級においてほかにはない、これを武装警官が弾圧をしておる。こういう條件において、まさに参議院において、この二條約の、條約特別委員会最後の討論が行われておるということは、この二條約が、如何なる角度から見ても、彈圧の條件下において、不当なる條件下において審議され、且つ国会を通過せんとするものであることを、何人もこれを反対するわけには行かない嚴然たる事実である。  第二の反対の論拠は中ソを除外し、敵対するための、これを除外するのみならず、これを仮想敵国とするところの條約であつて、而も国際協定に違反する、国際憲章に違反する、日本国憲法に違反するところの無法且つ非合法なものであるということである。  第三は、この二條約は━━━━━━━━━━のための條約であるということ、そして共産主義の侵略だとか或いは軍国主義の侵略だなぞというお伽話を以てこれを合理化しようとしておる。この両條約によつてアメリカ軍隊が駐屯する結果、日本は自己の意思によることなく、戰争に巻き込まれることは明瞭である。而も日本国民は、国民の、国家の、我が民族の最大な権限であるところの戰線布告の権利さえない。昨晩吉田総理は、同僚岡本委員の、この條約を結ぶにつきましては原彈の危險も考えて準備すべきであるかという質問に対して、吉田総理は、「我我もこれに対して不安なきあたわざるものでありますが、原子爆弾に対する防禦の方法も講じたいと考えております。他日国力に余裕が、或いは国際環境が急変いたします場合、そういう必要も起ると思います。」こういう驚くべき答弁をしておられる。総理は再軍備はしないしないと言つている。併しそういう言葉の裏から、衣の下から鎧が出ている。吉田総理及び閣僚、これを中心とする一握りの諸君は、日本国を再軍備しないと言つて体裁よくだましながら再軍備への橋渡しの地ならしをする以外の何ものでもない。  第四、この両條約は、アジアから孤立し、アジアを敵とするものである。従つて日本の産業と貿易が根本から破壊されて行くことは明瞭である。この明々白々たる事実がわからないのは、吉田総理閣僚を中心とする一握りの諸君である。  第五、沖縄その他の信託統治、これは私があらゆる角度から繰返し繰返し質問いたしました。ところが答えられない。日本国民でなくてウオール街の主人公に仕えておられるところの総理、閣僚諸君に答えられるわけはない。これは、沖縄その他の信託統治の真の意味は、若し日本の労働者階級を先頭とし、農民と労働者の同盟の下に、中小企業者は勿論、大資本家といえども真に民族産業を維持せんとする、これらの真に日本独立と平和を求める、この力が盛り上つたときに、これを武力によつて彈圧せんとするところの軍事的な基地である。  これが私のこの二條約に対する反対の論拠であります。  然らばこの二條的は如何なるこれから運命を辿つて行くであろうか。成るほど諸君は、今晩、白々或いは斑などという立場まで持つてやられるようです。併しこの條約がどういう最後を遂げるか。アジアの殆んど大部分の人が調印しなかつただけではない。調印したインドネシアのスジョノ駐日首席代表が、これでは、賠償の満足すべき協定及び漁業協定の締結を入れなければ批准はしないぞと言つている。フイリピンでは、條約の批准権を持つ上院の選挙で、━━キリノの自由党の諸君は惨敗をし、サンフランシスコ絶対反対の野党が着々の大勝利を收めつつある。オーストラリアなどにおいても事態は決して甘いものではない。  そこで、私はむしろ、こういう事実のほかに、私は非常に皆様に興味あろうと思うところの一つの文書を私は御紹介申上げたい。これは去る八月十四日、アメリカのルツク・レポートという新聞に載つているところの一文でございます。これは表題は、「われわれはアジアを愚劣に失いつつある」という表題であります。これには七項目の要点が書かれております。  第一の項目は、「軍人による指導が如何なるものであるかということ。第二次大戰が勝利に終つたときに、米国は当然その輝かしき成果に対して軍指導者に感謝の念を抱いた」という所から書き出しまして、「その結果、軍人がのさばり始めた」ということを書いている。「アジアにおいてはそれが軍事的攻撃と防禦プラス宣伝活動という形、ヨーロツパにおいてはそれが軍事的防禦プラス数十億ドルの援助という形で、軍人を指導者とするところの政治がヨーロツパとアジアにおいて進行した」ということを第一に書いている。  第二にマツカーサー元帥についてこういうことを書いている。「日本降伏以来数年間、我々の大部分の者は、少くも一回は「ジエネラル・マツカーサーはアジアを知つている、それ故に我々は彼自身に任せておけばいい」と考えたと思う。私も一度はそれを信じた。併しアジアに来てみて私は、それを、こういう見解を持つていた自分自身及び市民の迂闊さに胸をつかれた。アジアにおいては、人民は、マツカーサー元帥が彼らの問題を知つているとも理解があるとも思つてはいない、又我々はそれをマツカーサーに期待すべきでもない。政治的諸決定を遂行するのが将軍の役割であり、決定は彼らの役割ではない……彼らは政治的潮流に関しては無智であり、社会経済的條件を向上させる技術は持つていない。」  それから第三に「沸騰する革命」というサブタイトルで、「アジアは革命の真只中にある。強大な力が根底から沸き上つている。人民は貧困と疾病の悲惨な状態からの脱出を決意している。如何に多くの原爆、軍隊を以てしても、この革命の潮流を覆すことはできない。アジアを覆つている独立の新精神たる溌剌たる力強さ国家主義……」と、こういうふうに書いている。  そうして次に四として、「有色民族の連帶感」として、「皮膚の色がアジア人民の統一に有力なる要素となつている。白人は皮膚の色を劣等の印とみなして来たが、有色という意識は、インド人、中国人、朝鮮人に同胞感及び共通の利害を有するという意識を與えた」と書いて、そうして、この外国支配に対する根の深い反抗から生れた激しい国家主義、地主制度を除去せんとする農民の断固たる決意、有色人種に対する平等感の要求というような点を叙述されて、こういうことを言つておられる。「このスローガンは、まさにアメリカの民主主義のスローガンである、アメリカの革命以来我々の伝統となつているスローガンである。然らば我々は何をなしているのであろうか。我々は現状維持の側に立つている、このことは我々が腐敗せる反動的勢力の協力者になつていることを意味する。我々は温情と理解を以てアジアに接することに失敗した」と、ずつと書いている。  それから第五に、「我々は不正な要素を支持している。」として、インドシナにおける問題を論じ、「フランス国民はインドシナにおいて史上最悪の植民地政策を行なつた。若しこのような圧迫が我々に課せられたのであるならば、我々は前代未聞の輝かしい革命を惹き起したりであろう」と。  第六に三十八度線突破についてこういうことを言つておられる。「我々が犯した誤りは、北鮮軍に反抗したことではなかつた。我々の誤りは三十八度線を突破したことであつた。現在こそ、我々は朝鮮における休戰をみずから提案し、中国と政治的解決を行い、我々の軍隊を本国に召還するときである。如何に多額なドルも兵器もアジア大陸を覆つている革命をとめることはできない」。  そうして最後に第七として、「鍵はインドにある。アジアへの鍵は現在インドにある。若しもインドが共産陣営に走るならば全アジアは失われる。現在我々が考えている以上にアメリカは悲劇に接近しているということは恐るべき事実である。我々は災難の背の上に立つている。我々の危險はロシアの武力ではない。我々の危險はアジアの運命に対処する政治的失敗にある。」  この一文を書いたのはウイリアム・ダグラスという人であります。諸君はこの人を社会主義者か共産主義者かと思われるかも知れないが、このウイリアム・ダグラス氏こそはアメリカ最高裁判所の判事であります。私はこれ以上多くの駄弁を費す必要はないと思う。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)この二條約がどんな失敗を遂げるであろうかということは、このアメリカの何ら社会主義者でもない共産主義者でもない、ブルジヨア民主主義者のウイリアム・ダグラス氏が、十分にこの問題を論及しておられる。  然らば我々は如何にして日本の平和と独立を守ることができるか。これはただ一つの道しかない。飽くまでも五大国が、世界の五つの大きな国が国連憲章に従つて真に手を握る、これ以外に日本の平和と独立維持する道は絶対にあり得ない。(「ソ連はどうした」と呼ぶ者あり)資本主義体制と社会主義体制は、それはおのおのの国がおのおのの民族が選べばいいと思う。よその国のことに口を容れる必要はない。(笑声)社会主義を望む者は社会主義体制へ。資本主義を望む者は資本主義体制へ。そうして、それはその国の民族が、その国の国民がきめるべき問題である。若しもこのような原則を忘れて、どちらかがどちらかの社会構造を直そうなどという大それた考えを持つならば、第三次大戰は絶対に避けることはできない。(「その通り」と呼ぶ者あり)この両條約の陥るべきみじめなる失敗を最も雄弁に説明するものであろうものは朝鮮の現実である。(「その通り」と呼ぶ者あり)朝鮮について、日本政府は国連の決定と言つているが、北鮮の南鮮への侵略が原因だとも言つているが、併し朝鮮が朝鮮に侵略するということがあり得るであろうか。(笑声)若しそういうことを言えば、南北戰争はアメリカ人自身がアメリカ侵略したことになる。(笑声)これほどの真理は三歳の童子でなくてもわかる真理である。若しも朝鮮人、朝鮮の社会体制、経済体制を、朝鮮人民、朝鮮国民が決定するならば、こういうことにはならなかつた。(笑声)而も朝鮮の状態は真空ではなかつた。強力なアメリカ軍隊が朝鮮のそばの日本の島々に蟠踞していた。従つて真空状態ではなかつた。而も戰争が始まるや、国連の決定がなされる以前に、アメリカの海空軍が出動し、そうして大きな戰争になつて来た。これで朝鮮の安全が保障されたか。過去一年、一年半の実績によつて、数十万の青年諸君が、アメリカ、朝鮮、中国その他の青年諸君が死んだり傷いたりしたということ、そうして数百万の朝鮮の国民諸君が死んで行つた、これが收獲である。そうして戰局は再び振り出しの三十八度線に戻つておる。何のためにこのような大きな殺戮が行われたか。これは、二つの体制、社会主義体制と資本主義体制が、平和的に、貿易を通し、経済的、技術的及び文化的提携を通して、相異なる二つの体制の国々が合意と協調の上に立たなければ、おのおのの国の幸福もなければ、おのおのの国の繁栄もなければ、従つてアジアの平和も世界の平和も保たれないということを、朝鮮の現実ほど明確に我々に教訓を與えておるものはない。従つて日本にこの二條約によつてアメリカの陸海空軍が駐在して、それでこの真空状態が埋められるなどと考えることは、吉田総理及び閣僚諸君を中心とする一握りの諸君の脳味噌以外にはあり得ない。(笑声)日本の安全を保障する唯一の途は、一方には米英を先頭とする資本主義国家、一方には中ソ先頭とする社会主義国家、人民民主義国家、その他の国々との話合いの上で、納得の上で、世界の平和を守ること、そうして日本の資本主義を維持するか、これを社会主義に持つて行くか、如何なる段階を経てこの資本主義を社会主義に持つて行くかの問題を決定するものは、アメリカ人でもイギリス人でも中国人でも、ソヴイエト人でもなくて、日本人である。これが私が二つの條約がみじめなる失敗を遂げるであろうとするところの論拠であります。
  379. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間が参りました。加藤委員
  380. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一言だけ。私は、以上、日本共産党を代表いたしまして、この條約が戰争と亡国の條約であることを説明したつもりであります。そうして私たちは国会議員であるが故に、この二條約こそが日本を戰争と亡国に導く條約であり、そうして、この條約は、日本人の力、全アジアの人たちの力によつて失敗するであろうということを根拠として、これに対して断固反対するところのこの反対討論に、日本共産党を代表して反対討論をし得たことを、私の生涯の最も幸福且つ光栄なる(笑声)出来事の一つであると思う次第であります。(拍手、笑声)
  381. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は日本社会党第三控室を代表いたしまして(笑声)日本国との平和條約に賛成し、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約に反対いたすものでございます。  日本国との平和條約は信頼と和解による條約と申されておりますけれども、これは、この條約に賛成署名されましたところの諸国の立場に立つて信頼であり和解であると感じられたであろうことは了解できますし、殊に私自身サンフランシスコ講和会議会場にございまして、親しく主催国アメリカ国民のホスピタリテイを見ましたし、又各国全権の演説を聽きまして、署名国四十八の代表演説はそれをよく物語るものであることを承知いたしました。又、太平洋戰争によつて、直接人命に、又その国土財産に多大の被害をこうむつた国々の多数が、太平洋地域に真の平和をもたらすためには、その平和條締結の意義を強く認められたとの発言のあつたことを承知いたしました以上は、国際的協調を念願し、戰争責任者としての地位に立たされている日本国民としては、この條約締結に賛成することが自尊心ある国民のとるべき態度考えます。よつて我々はこの平和條約に賛成の立場をとることに決定いたしました。併しこれは、この條約に提示されましたところの各條項を全面的に支持するものではございません。  先ず第一に領土の問題でございます。ポツダム宣言によつて四つの大きい島とそれに附属する小さい島々以外には日本主権は及ばないということになつておりますが、又同時に、日本国民を奴隷にしないで民主的国家としての存在を認める、又日本の軍人は全部復員させる等々を示しております。併し八千四百万の日本国民が生活するためにこの狹隘な国土では十分ではございません。然るに領土の問題だけはポツダム宣言が忠実に守られまして、国民生活安定については考慮されない。例えば千島及び南樺太のごときは何故に日本主権を失うのか納得できる理由が示されておらないのでございます。恐らくこれはヤルタ秘密協定によつて定められたことかと思われますが、これは日本が無條件降伏後数ヵ月を経て初めて非公式に知つた程度のものでございます。又北緯二十九度というごとき人為的境界線を設けて、奄美大島を含む西南諸島を国連の信託統治に移し、実際的にはアメリカを信託統治権者とするようなこういう措置についても、我々は納得することができないのでございます。  第二に賠償問題につきましては、第十四條の前文において、完全な損害賠償を行い、同時に他の債務を履行するためには、現在日本の経済力は充分でないことが承認されると規定しておるにもかかわらず、役務賠償の方法を以てする義務をこのうちに規定し、当該国との直接交渉に任しておることは、日本国の甚だしき不利を招来する危險があると考えられますので、この点も納得ができないのでございます。  第三に安全保障の点につきまして第五條(a)項の(iii)に示されておりますところの「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を與え、」云々という項がございますが、日本が実際に負担し得る能力の限度を越えて援助義務を課するものではないかという疑義がございます。これらの点から我々は條約の内容につきまして不満を持ち、将来当然これらについての改正が連合国側において考慮されるよう改正連動をなすべきであるという考え方を持つものでございます。  それにもかかわらず我々が平和條約に賛成いたしますのは、六年という長い間占領下に自由を奪われ、屈辱的生活を余儀なくされて来た国民が一日も早くこの不名誉な生活から脱し、国家独立自由を確保し世界の平和に向つて独立国家としての発言権を得たいという切なる国民感情を尊重いたし、国家の政治的、経済的自立権の回復を要望するが故にほかならないのでございます。政府国民が無條件で賛成すると考えたり、又できたものは仕方がないというような安易な諦めから盲従すると思われるならば、これは大きな誤りと申さざるを得ないのです。(拍手)  第二に、日米安全保障條約につきまして(「反対しろ」と呼ぶ者あり)我々は反対するものでございます。一部の反対論者の中には、平和條約と本條約とを不可分一体のものとして、平和條約に賛成する以上は、本條約にも同じ態度をとるのでなければ筋が通らないという考え方もございます。(「不可分だよ」と呼ぶ者あり)両條約の不可分論は本條約を締結した吉田内閣が最も熱心にこれを主張し……(「わからないのか、そんなことが」と呼ぶ者あり)
  382. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) お靜かに願います。
  383. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君(続) あらゆる宣伝機関を利用して、不可分論、一つの錯覚を起さしめるような催眠術的な戰術をとつたのでございますが、我々は、両條約は法律的に見て嚴として別個のものである、政治的観点からも又現在の国際情勢を勘案いたしましても、この両條約を別個のものとして取扱うことこそ、最も(「別個じやない」と呼ぶ者あり)合理的(「合理的じやない」と呼ぶ者あり)であると信ずるものであります。
  384. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) お靜かに願います。
  385. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君(続) かかる見解に基きまして、平和條約とは切離して反対いたすものでございます。  我々の反対理由は、我が社会党が原則的に国連の集団安全保障を求めるという点を明らかにしておりますから、国連の憲章に基く安全保障そのものに反対するものではございませんけれども、本條約は日米單独の條約である点から国際的危機に捲き込まれんとする危險を感ずること、又講和後のいわゆる真空状態に乗ぜしめないためとは言いながら、まだ日本独立国として條約を締結する資格がないにもかかわらず急いで両條約を締結したことは、アジア諸国が不満と疑義を表明しておるごとく、アメリカから押付けられた條約であるという印象を持たざるを得ないのでございます。かかる條約は飽くまでも相互に対等に人格を尊重した上で結ばるべきでございます。然るにこのように一方的に押付けられたごとき印象を與える條約は、今後独立国の権威を保持する上からも了承することができません。即ち平和條約の効力発効後、独立国として権威を以て締結されなければならないと考えるものでございます。  更に重要なことは、本條約の内容はすべてがいわゆる行政協定に委せられ、国民はその内容について全然知ることができないのでございます。国家主権を制約し、憲法の條章に明らかに反すると思われるような條約内容が、国民全体にも国民代表する国会にも知らされないで、政府の行政権のみで決定されるごときは、国民主権の侵害でございます。かくのごときは国家の最高機関としての国会政府に白紙委任状を提示すると同様に、著しく民主的精神に反するものであり、独裁化への危險を包蔵するものと言わなければなりません。かかる諸点から我々はこの條約に断固反対の立場をとるものでございます。
  386. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 以上にて討論の通告は全部終りました。討論は総局したものと認め、採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  387. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 御異議ないものと認めます。これより採決に入ります。  先ず平和条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件を可とせられる委員の御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  388. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 多数でございます。  なお念のため本件を否とする諸君の起立を願います。    〔反対者起立〕
  389. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 少数でございます。  よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。   ―――――――――――――
  390. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件を可とせられる委員の御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  391. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 多数でございます。  なお念のため本件を否とせられる委員の御起立を願います。    〔反対者起立〕
  392. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 少数でございます。  よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。  なお本会議におきまする委員長の口頭報告は委員長に御一任頂きたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  393. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 御異議ないものと認めます。  次に、本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を附することになつておりますから、只今のそれぞれの件について賛成の諸君は順次御署名を願います。    多数意見者署名    〔平和条約締結について承認を求めるの件〕     楠瀬 常猪  一松 政二     曾祢  益  加藤 正人     野田 俊作  堀木 鎌三     秋山俊一郎  石川 榮一     泉山 三六  團  伊能     高橋進太郎  北村 一男     杉原 荒太  徳川 頼貞     平林 太一  加藤シヅエ     波多野 鼎  吉川末次郎     岡本 愛祐  片柳 眞吉     楠見 義男  杉山 昌作     高橋 道男  伊達源一郎     木内 四郎  櫻内 辰郎     一松 定吉      (註 永井純一郎君棄権)    〔日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約の締結について承認を求めるの件〕     楠瀬 常猪  一松 政二     加藤 正人  野田 俊作     堀木 鎌三  秋山俊一郎     石川 榮一  泉山 三六     團  伊能  高橋進太郎     北村 一男  杉原 荒太     徳川 頼貞  平林 太一     岡本 愛祐  片柳 眞吉     楠見 義男  杉山 昌作     高橋 道男  伊達源一郎     木内 四郎  櫻内 辰郎     一松 定吉
  394. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 御署名漏れございませんか……。御署名漏れないと認めます。  この際、一言御挨拶をさして頂きます。(拍手)大変長い間、二十日にも亘る長い間、皆さん御熱心に御出席下さいまして、御熱心に御審議下さいましたことを、先ず深く厚く御礼を申上げます。甚だ委員長が未熟でございましたけれども、皆様の御協力のたまもので、先ず大過なく円満にこの委員会を終えることができまして、誠に感謝に堪えないのでございます。私といたしましては、できるだけ公平にこの議事を運営いたしたつもりでございますし、又一方において、衆議院が一週間という短期間にこの大きな問題を処理せられたのでございますけれども、参議院の特殊性に鑑みまして、十分とは申しませんけれども、できるだけ愼重審議をするように努力をしたということは、あえて言えると私は信ずるのでございます。併しながら甚だ不慣れのために、皆様にいろいろと御迷惑をかけた点も多かつたと思いますが、この点はどうぞ御容赦を頂きたいと思います。  なお、最後にこの際、外務委員会の專門員室の諸君、それから参議院の関係事務当局の諸君及び外務省の皆様の連日非常な御協力を頂きましたことを、厚く御礼を申上げたいのでございます。一言御挨拶を申上げます。  これにて歴史的な特別委員会は終了いたしました。本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会