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1951-11-16 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十六日(金曜日)    午前十時十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事      楠瀬 常猪君            一松 政二君            金子 洋文君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            石川 榮一君            泉山 三六君            團  伊能君            高橋進太郎君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            永井純一郎君            吉川末次郎君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            櫻内 辰郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君            兼岩 傳一君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 根本龍太郎君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    法務法制意見    第一局長    高辻 正巳君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省條局長 西村 熊雄君    大蔵省主計局長 河野 一之君   事務局側    常任委員会専門    員       坂西 志保君    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 只今から委員会を開きます。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 平和條約に関しまして、かなり長い間質疑が行われまして、いろいろ明らかになつた点もあつたのでございますが、併し一方におきまして、この長い質疑を終えましても、何らまだ我々に対して明らかにならない点があるのであります。そこで総括質問におきまして、それらの点を若干私はお伺いして見たいと思うのであります。  先ず第一にお伺いしたいのは、やはり主権の問題と、潜在主権関係の問題でございます。主権の問題につきましては、この條約によりまして、日本主権国として認められることになるわけでございまして、この点は問題ないのでございますが、日本主権…、この信託統治に附せられますところの南西諸島、或いは小笠原諸島等国際信託統治に附せられる、そして一切の行政、立法、司法の権力が唯一の施設権者であるアメリカの手に移されまして、そのあとに実質的には何ら主権の作用すべきものは残らん。併しながら日本はこれらの領土に対して主権が残されておる。残存主権という言葉もあるのでありますけれども、この残存主権なり、或いは潜在主権なりというものが、果して主権であるかどうか。こういう問題がどうしても私どもには解決できないのであります。そしてこの残存主権若しくは潜在主権というものが、一体主権の全体のうちでどういう形で残されて行くのか。そしてそれが回復せられるには如何なる方法なり、或いは如何なる事態が生じた場合に、これが回復せられるのか、これを先ずお伺いしたいのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば説明をいたしますが、日本領土四つの島及びこれに附属する小さな島に限られるということを先ず日本は無條件に降伏したときにおいて受諾いたしておるのであります。従つて四つの島及びそれに附属した小さな島以外はどう処分されようが、これは日本としては異議は言えないところであります。併しながら琉球その他については日本との間に長い間の関係があり、又民族においてもその他の関係においても、日本本島とは切つても切れない関係があるのであるということを極力日本政府から説明をして、そこで信託統治ということになつたのであります。又米国としても、領土擴張の意味で以て、擴張のその目的或いは希望のためにこの領土信託統治の区域をきめたのではないのでありますから、そこで趣意としては日本主権を残したい、或いは日本にいつか回復せしめたい、つまり軍事上の必要がなくなつた場合、又極東の安全が確保された場合には日本に戻すということについては、暗々の間に米国としては異議はないのでありますが、併しながら、そのために信託統治という考え方ができる、その信託統治による国連との間の話がきまつた場合には、日本としてはその話合いの結果を受諾する義務をここに規定されておるのであります。でありますからして、信託統治に対する国連との間にこれから交渉が成立つかは将来のことであつて、ここにお話のように、信託統治というものは如何なるものであるか、日本のこれに対する主権はどうであるかということは、国連との間の話がきまつたときに初めて考えられる問題で、今日ここで以て私がこうである、ああであると言つたところが、これは何らの根拠のない議論であります。信託統治なるものが国連との間に話がきまつたときに十分御研究を願いたい。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今のようなお答えにつきましては、私どもも前々から首相を初めいろいろのかたからお伺いしておるのであります。問題は、私が問題にいたしておりますのは、とにかく信託統治に附せられる、こういうことになりました場合に、何らかの形で潜在主権ということになりますか、残存主権というものがあることになる。それがですね、今後どういう形で統治せられるか。これに対して吉田首相は、回復のために、この潜在主権を事実上の日本主権に回復するために御努力なさらなければならない。これはすぐとは申しません。いろいろな問題が今後あるでしようが、そういうおつもりで行くことは、日本総理大臣立場であろうかと思うのでございますが、私どもはこの潜在主権として残さるるものを、日本の真の主権の及ぶ地帶に引戻すという考えをお持ちになつておるか。これはすぐではありません、勿論細かい具体的なものはきまつておりませんが、総括的に考えまして、そういうふうなつもりをお持ちになつておるか。そうしてそれに対して御努力になる意思をお持ちになつておるか、それをお伺いしたい。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これははつきりお答えをいたしますが、その努力はなお今後も続ける考えでございます。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたい点は、これは過日高橋通産大臣にお伺いいたしまして、なおはつきりしなかつた点でございます。今後日本外国のいろいろな商社等に対して、経済活動に対しまして、内国人と同じ待遇を与えるということが、この條約の規定の上から出て参ることになるのであります。この問題は将来の日本経済にとりましても、又日本の国家の独立の上にとりましても、いろいろな問題が起つて来ることが予想されるのであります。世界の歴史を見まして、アジア各国におきまして、或いは南米の各国におきまして、その他の国々におきまして、外国資本が入つて参りまして、それらの国々経済を自由にいたしまして、そうしてそれがために或いは排外運動が起り、ナショナリズム運動が盛んになる、そうしてそれが国際紛争の因になつてつたということは、非常に例が多いのであります。日本も又満洲に対し、或いは中国に対しまして経済活動の結果、中国におきましては非常な怨嗟の的になつたというような問題があることは私が申上げるまでもない。ところでこの外国資本等国内における活動重要産業に及びまして、内国民と同じ待遇を与えるということから、この外国資本によつて重要産業が抑えられる、実際的にこれに支配されるということになつて参りまするならば、これは日本の事実上の独立経済独立という点に大きな支障を来たすということは明らかなのであります。そこで私は過日こういうような場合を予想いたしまして、国内法といたしまして重要産業等に対する外国資本活動、或いは株式の取得等に対しまして制限をする立法を、これは多くの国々ですでに行われておるところでございますが、それを内閣としておやりになる意思をお持ちになつておるかどうかということをお尋ねしたのでありますけれど、通産大臣からは、これは重大な問題であるということで、満足なる御答弁を得られなかつたのであります。そこで私は首相に対しまして、その面について今後外国資本日本産業を支配するというような問題に対しまして、首相はこれに対する一つ制限的な方法としての立法等をやることをお考えになつておるかどうか、それをお尋ねしたいのであります。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、現在の事態において、未だそういう外国資本日本重要産業を支配するというような現象は起つておらないのみならず、曾つて日本資本に対して独占禁止法などをこしらえて、独占的に或る仕事、或る事業を独占するような場合に対しては、すでに規定があるのであります。同じように外国資本によつて今のお話のような事態が起つた場合には、政府は当然打つちやつて置くはずはないと思います。併しこれは将来のことでありますから、いよいよそういう事態が起つた場合に又御協議をいたします。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の御答弁は、特に今日そういう法律を設けることはないが、併し将来外国資本がそういう形で日本経済を支配しそうな傾向が見えるということが明らかになつた場合には、外国資本活動等に対する制限、或いはこれに対して一種の対抗措置を講ずる、こういうふうに解してよろしうございますか。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その通りであります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にこの條約によりまして日本外国に最惠国待遇を与えなければいかん、そうして同時にそれは相互主義に基いて日本も又最惠国待遇を与えられ得る途が開かれておるのであります。この相互主義は一国対一国の問題でありますが、私は同時にこれは又国際的な経済協定等に対しても擴げらるべき問題ではないかと思うのであります。然るに今、日本国際関税協定への参加の問題につきまして、これは認められ得ないような状態にあるように聞いておるのでございますが、将来或いは近くこの国際関税協定へ入る御努力をなさる、又それが入ることが可能になる見通しがあるかどうかその点についてお伺いしたいのであります。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 関税協定には入ることを努力をして、従来も続けており、今後も続けるつもりでおります。現にオブザーバーの参加は許されておるところであります。詳細は若し必要ならば條約局長から説明いたします。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 條約局長から見通しについてお伺いしたい。
  14. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 見通しの点につきましては、現在のところ確たることを申し上げがたい状況にございます。従前から参加を認められたいという日本側希望に対しましては、合衆国政府その他には理解のある態度をもつてその達成に側面から協力して頂いておる次第でございます。ガツト当事国日本との国交関係も漸次再開されようとしている情勢でございますから、加入実現方向に進めるものと観測いたしておる次第でございます。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いいたしたい点は、漁業條約に対する日本態度の問題でございますが、この條約に基きまして今漁業会議が開かれて、その結果として漁業條約が結ばれるような方向に向つておるのでありますが、過日提出されましたアメリカ案につきましては、私どももお聞きいたしましたので、その後日本案が提出された場合に、この日本案についての御説明と、それからそれに対する日本側態度をお伺いすることを私は要望しておつたのでございますが、これは詳しいことは後に機会がありましたならば農林大臣等からお伺いすることにいたしまして、ただ首相に対しまして私がお伺いしたいことは、この漁業條約は、平和條約が結ばれ調印されました直後における第一の問題になつておるのであります。この会議におきまして日本態度と申しますか、日本立場というものが一歩不利になりますというと、これから次いで起りますところの他の国との漁業條約でも、或いは他の国とのいろいろなほかの條約等にいたしましても、日本立場が非常に不利になるということは明らかでありまして、この第一歩における日本態度というものが非常に重大な影響を持つということを私どもは見ておるのであります。で日本政府案がすでに出されたようでありますが、これはアメリカ案相当対立をしておるのであります。理論的にも実際的にも対立をいたしておるのであります。この会議はそれによりまして相当難航が重ねられると思うのであります。併しこの問題につきましてやはり首相日本政府態度はつきりと、何といいますか確立されて、そうしてこれを押切つて行く。飽くまでも日本態度を押切つて行くという態度でなければ、我々は日本側が正しいとして主張するところも通らず、あとにも非常に差支えて来ると思いますが、この漁業会議に対しましての首相の御決意、この日本案をどの程度まで頑張つて行かれるかということについての首相の御決意を承わりたいのであります。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御承知通り協約のごときはお互いに讓り合つて、そうして妥当なところに折合うのが当然な話であります。故に日本案として出したものを、それを極力飽くまでも一歩も讓らないというようなことであるならば、協定は初めからできないのであります。お互い掛引きもあるでありましよう。主張すべきことを主張して、要するに世界漁業、魚族の保護になり、濫獲にもならず、而もこれに関係している国がおのおの利益国としてその余沢を蒙むるというところに落着くのでなければ、一旦出した日本案は一歩も退かないということであるならば、これは初めから協約協定などはできないものと考えるのであります。お互いに讓り合つてお互い相手方主張を認めて、そうして妥当なところに落着くのが、これが国際協定の常にいたすることでありますから、日本案を出した、これを一歩も讓らないということを私はここに断言いたすことはできません。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今御丁寧なる御講義を承わつたのでありますけれども、私どももそれは国際会議の性質として当然のことと思つているのでありますけれども、この日本側が出しました原則国際法に基く日本側原則が傷つけられるということになりますれば、これは非常な日本にとつても不利であるばかりでなく、今後の日本国際会議に臨む立場の上にも非常に大きな影響を与える、そう考えますので、その点について日本側原則を貫くという点についての首相の御決意のほどを承わりたいのでありますが、その点についてのお答えをお願いしたいのであります。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 無論日本側主張或いは原則、この点まではということは無論あります。ありますが、併しながらここで今交渉中の問題に対して、ここまでは讓るつもりである、ここまでは讓れないということをはつきりここで申すということは、これは交渉の上にも差支えますから、これはお答えができません。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも大変御答弁が巧みでいらつしやるので、うまくはぐらかされてしまうようなことになるのでありますが、それはまあそれといたしまして、最後に賠償の問題についてお伺いしたいのでありますが、ガツトにつきましてはまだ未定であるし、その支拂方法についてもこれからの問題でございますが、一つその方式の問題についてお伺いしておきたいのであります。  この平和條約に定まるところによりますというと、役務賠償でございますが、これらは日本各国との間に個別交渉をして定めるようになつているのであります。現に吉田首相はフイリピンの代表との間に、まだ正式ではないかも知れませんが、非公式にお話なつたように承わつております。又本日の新聞の伝えるところによりますというと、インドネシアから賠償に関する使節団が来る、こういうふうなことが出ておるのであります。勿論この條約に従つて個々個々の国との折衝をされるということは当然でありましようが、併し私は日本支拂能力日本負担能力等の点から見まして、個々折衝して個々にきめるということは非常にむずかしい問題があとに残つて参る、又個々国々との間に比較的軽く額がきまりましても、それが全体として各国の全部合せますというと、相当な額になつて日本としての負担が堪え切れないというような問題も起つて来るのではないかと思うのであります。相手国が幾つもあります場合の賠償問題というものは、大体私は個々個々の国との折衝できめられるということは実際上不可能になる問題ではないかと思います。第一次世界大戦の後におきまして、ドイツの賠償問題につきましても、これは結局国際会議によつてきまり、その後は無論何回も国際会議が開かれて額がきまり、支拂方法がきまつておるのであります。今度のイタリアの平和條約におきましても、やはりこれは條約によつてちやんと定められておるのでございますが、日本の場合におきましては、個々にこれが行われるということは徒らに紛糾を来し長引くだけであろうと思いますが、結局私はこの賠償を要求する国々との集団的な交渉によつて、そうして日本の一定の支拂能力に応じまして、これをそれぞれの国の間できめるという方式でなければ片付かない問題ではないかと思うのでありますが、そういう点に関しまして、首相は今後賠償交渉について如何なる御方針を以て臨まれるか、これは飽くまでも個別に支拂をきめて行くという方法をおとりになるか、或いはそうでなくて、今私が申上げましたような工合に、将来において何らかの形で国際的な会議によつて、そうしてこれを集団的にきめるという方法にお出になるつもりであるか、その点をお伺いしたい。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 條約の規定規定といたしまして、その規定を実行する場合に、お話のような列国会議を開くとか或いは個別的にやるかどうかということは、これはそのときの情勢によつていずれが利益であるかということによつてきまる問題であつて、これは将来のことでありますが、併し日本政府としては、或る国に重くして或る国に軽くするというわけにも行かぬでありましよう。又全体を総計して日本の国力に耐え得ないような賠償は遂に実行することはできないのでありますから、これを内輪から見れば、結局集団と言うのもおかしいですが、総計の上から打算して、そうして個々の国との関係をきめるということに実際はなると思います。併しその結果国際会議でも開いてきめるほうがよければ、或いはきめることによつて日本政府趣意が明瞭になるというようなこと、又相手方趣意が明瞭になるというような利益国際会議によつてあるかも知れません。その場合には国際会議のほうがよいでありましようが、或る程度までは互いに話合つて見て、そうして相手方の要求、こちらの能力等を集計して、そうして問題は、日本側から申せば全体的にきまる問題であろうと思います。ただそのきまつた問題を如何にして実行するか、国際会議のほうが便利であるという場合もありましようし、又個別的に話を進めたほうがよいという場合もありましよう。これは今後の事態によることであろうと私は考えます。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 質問終りました。
  22. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は平和條約との関連において総理大臣の平和に関する御所見を伺いたいと思うのであります。何も私は理想的な問題だけをここでお尋ねするのではなくて、むしろ具体的な問題についてお伺いいたしたいと思いますから、できるだけ総理大臣の御所見を明らかにして頂きたいと思います。そういう観点から申しますと、平和を実現するにつきましては、いろいろの問題はあると思います。例えば宗教家や或いは理想主義者の言うような絶対平和というような問題もありましようが、私はそういう問題はここでは別にいたしまして、最も現実の問題として、総理大臣はどういう態度で平和に臨まれているか、恐らく平和條約を調印されるに当りましても、一番この平和という問題について首相としては苦慮されたと思うのであります。  そこで私は先ず第一に、一体首相はどのような平和を望んでおられるか、今日世界情勢を見まするというと、御承知のように軍備擴張いたしまして、そうして一方の軍備他方軍備に優越することによつて平和を確保しようという考え方と、もう一つは、最近もアメリカや或いはイギリスの、殊にチヤーチル氏あたりによつて主唱されておりまするような大国間の話合いによつて平和を促進しよう、こういう考え方二つ対立していると思うことができると思います。前の、軍備擴張によつて他方に軍事的に優越することによつて平和を確保しようというのは、一九四九年以来アメリカのとつて来た態度ではないかと思われるのでありますが、こういうようないわゆる武裝平和考え方と、そうではなくて大国間の協調話合いによつて平和を維持しよう、この二つ考え方につきまして、総理大臣はどのような平和を望んでいられるかということを先ず最初にお尋ねいたしたいと思うのであります。
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は武装平和のごときことは希望いたしません。
  24. 堀眞琴

    堀眞琴君 武装平和をお望みにならない、つまり大国間の協調話合いによつて平和を進められようとする首相の意向だと解釈することができると思うのであります。そうしまするというと、最近のチヤーチル声明であるとか、或いはインドがこれまでとつて参られました態度であるとか、これは要するにそういう方向においての平和を実現しようとする努力だと思うのであります。インドの場合はともするというと、二つ陣営中間にあつて中立的な態度をとる、それが終局的な平和への寄与であるというように解釈されておりまするが、それは間違いでありまして、インドの目標とするところは、飽くまでも二つ陣営中間にあつてその話合いの筋道を何とか付けようというところに私は持つて行こうとする努力をしているのだと考えるのでありますが、若し首相の言われるように武装平和などということは考えておらん、大国間の協調によつてこれを達成しようということになりまするというと、このサンフランシスコにおいて調印されましたところの平和條約の達成しようとするところの平和と、果してそれが一致するかどうかということが、先ず第一に問題となつて来るのであります。なぜならば、先ず中国やソ連は別といたしましても、インドやビルマその他の国々日本は絶縁される、この前の補足質問の際に総理大臣インドとの話合いが恐らくできるだろうという御答弁であつたわけでありまするが、若しそのようにインドとの話合いができることなら、私は非常にこれに賛成するものでありまするが、そのときも申しましたように、インドとしては対米覚書内容を変更する意思がないということが、これは西村條局長逐條審議の際に述べられておることでありまして、対米覚書内容について何ら変更する意思がないとするならば、インドとの話合いも恐らくは不可能ではないかという工合考えられるのであります。即ちアジアの諸国から絶縁されることによつて、果して日本が望むところの、吉田首相が望むところの話合いによる協調によるところの平和が実現されるかということが第一点。  それからその次に安全保障條約によりまして、日本アメリカとの間に軍事條約を結ぶことになるのであります。二つ世界対立している真只中におきまして、日本が一方の陣営と軍事條約を結ぶということは、取りも直さず他方世界を敵として見るという結果をもたらすものと考えられるのであります。従つてそういう観点から申しまするというと、日本の、或いは吉田首相の望まれるところの大国間の協調による話合いによるところの平和というものとは、むしろ逆の方向であり、この平和條約の達成しようとしているところの平和は武装的な平和であり、軍備を擴充することによつて他方陣営を軍事的圧迫する、そういうことによつて平和を実現しようとするものではないかという工合考えられるのでありますが、この点に関しまして、首相の懇切なる御所見を伺いたいと思うのであります。
  25. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ネール首相米国政府との間の交渉、若しくはネール首相の発表された意見については、私はこれの批評を加えることは差し控えますが、いずれにしても日本の行くべき道は平和條約及び安全保障條約によつて殆んど明示せられておるのであります。この道を我々は進むことが日本のためにいいと考えます。そこでインド、ビルマ等の問題については、関係については、すでにこの間申した通りに、インド政府は、或いはビルマ政府にしても、日本との間に絶縁しようという意思表示はないのであります。逆に日本との間に平和を回復したいという意思表示はすでにあつたのであります。私はお話のような絶縁ということは考えられないのであります。又安全保障條約は平和を保障するのであつて、よその国との対立若しくは攻撃を招来するために結ぶのではないのでありますから、この條約を如何に外国がとるかは外国の自由でありますが、我々の期待するところ、又條約の期待するところ、企図するところは平和にあるのであります。相手国を挑発するために結んだのではないのでありますから、條約の趣意がわかれば御懸念のようなことはないと私は確信いたします。
  26. 堀眞琴

    堀眞琴君 平和條約並びに安全保障條約は日本の平和のためである、従つて我々はこの道を行くだけであるという首相の御決心のほどを伺いまして、私は非常に残念に思うのであります。首相も御存じのように、例えば北大西洋條約が結ばれ、或いはその前にマーシヤル・プランが実施いたされまして、その結果がどういう工合なつたか。冷たい戰争である、或いは鉄のカーテンである、或いはどうのこうのというようなことが世界政治の大きな問題になりましたのは、マーシヤル・プランの実施乃至は北大西洋條約の締結にあつたということは、賢明な首相のすでに御存じのことと思うのであります。私が言うのは、この国際対立の真只中において、果してアメリカとの軍事條約によつて極東の逆和を維持することができるかどうかということに私の質問の重点があるわけであります。首相はこれこそが平和を維持するためだ一つの道である、こう言われるのでありまするが、併し現実問題として日本アメリカと軍事條約を結んでいるのであります。そうすれば当然アメリカ側の陣営に立つて軍事的に協力するということがその結論として生れて来ることはこれは当然のことであります。そうしまするというと、日本意思の如何にかかわらず客観的には日本アメリカ陣営に附いた、而も軍事的に両者が協力するのだという関係が出で参りまするので、勢い他の陣営との対立が激化するということは、これは当然考えられるのではないかと思う。もう一度その点について総理大臣の御所見を伺いたい。
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は御議論としては伺つておきますが、ために私の確信を動かすことはできないのであります。
  28. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は議論をしておるのじやないのであります。事実の問題について、例えば北大西洋條約がどのような世界政治の上に役割を果しておるかということを検討されれば、この間の事情は判明いたす、こう考えるのであります。ところが首相は、これは議論であるから自分の確信を曲げるわけに行かんとおつしやるのでありまするが、併し国際政治の動きに対しまして、首相としては十分な見通しを付けて、又これまでの国際政治の上において、例えば北大西洋條約が果したところの役割というものを十分検討されて、その上に立つて首相の抱負なり理想なりを実現するということをなさるのが私は首相としての態度ではないかと思うのでありますが、自分はこう確信しておる、北大西洋條約がどのような結論を生んだにしろ自分は知らんという態度に私には見られたのであります。このことは大変私は遺憾だと思うのであります。而も私が申上げましたように、日本平和條約の達成しようとする平和というものが、結局は一方の陣営日本が附きまして、そうしてひとしく防衛の一環として日本が立つということなんでありまして、この点につきましては、私どもはこの平和條約、名前は平和條約でありますが、実質的な問題としましては、一層国際対立を深めるものだということに結論せざるを得ないのであります。私が最初の一般質問の際に申上げましたように、レストン記者がニユーヨークタイムスの中で、サンフランシスコは我々に條約を与えた。併し平和ではないというあの題目の中に論ぜられてありますところの内容を、我々としては十分ここで以で権討しなければならんと思うのです。私はこれ以上この問題について首相との間に質疑を重ねることは省きますが、とにかく首相としては、單に自分の確信であるというだけで以てこの問題を片付けるべきではないと、こう考えるのであります。そこで私は更に進んでお尋ねいたすのでありますが、首相はこの平和條約と安全保障條約との二つによつて日本の平和を確保することができる、そういう確信だということでありますが、結局一方の陣営に附いて軍事的にこれと結ぶということは、戰争を将来において予想しなければならんと思うのであります。現に例えばアメリカの軍需生産の問題について見ましても、私どもは戰争必至ということを恐れるのであります。御承知のようにアメリカの予算の中において占めますところの軍事予算というものは非常に厖大なものであります。この軍事予算の膨脹は更に継続されるのであります。サイミントン委員会の報告によりますと、大体一九五三年を以て頂点に達するような見通しの下に軍需生産を続けて参る、尤も最近の新聞によりますと、民需生産を圧迫する面があるというので、若干来年度においては軍事予算を削減するという意見もあるようでありますが、併し五三年乃至四年までのアメリカの軍需生産というものはどんどん進められて参ります。而も軍需生産というものは御承知のように消耗経済であります。決してそれが再生産に役立つというようなものではないのであります。従つて軍需生産がどんどん進められる結果は、戰争は避けられないということが、第一次大戰乃至第二次大戰の経験に徴しても明らかではないかという工合考えられるのであります。而もアメリカが軍需生産に乗り出したのは、一九四九年という年を御覧になればわかります。アメリカ資本主義がすでに危機的な情勢に入り込んでおる。それを回避するという手段として、一応軍需生産に乗り出したわけであります。而も他方においては、国際的な関係が極めて緊張しておる。そのために軍需生産はますます膨脹の一途を辿つて参らざるを得ない。單にアメリカだけではない、イギリス、フランス、その他の西洋諸国に対しまして、いわゆる対外軍事援助費によりまして、軍備擴張いたしておるのであります。その結果は遂に戰争に巻き込まれざるを得ない。つまり第三次大戰の危険がひしひしと迫りつつあるということを私どもは感ずるのであります。そういう段階におきまして、日本アメリカと軍事條約を結ぶということが、果して日本の平和を維持するゆえんになるか、或いは又極東の平和に寄与するゆえんになるかということは、重大な問題でなければならんと思うのです。総理大臣としては、私のこの意見を、これは堀の單なる議論に過ぎないのだ、議論を討わすに過ぎないというお考えでありますならば、私はお間違いだと思う。総理大臣兼外務大臣としては、果してこの軍需生産が進められる結果どうなるか、これは何も十年も十五年も先の話ではない、ここ一、二年の問題であります。現に昨年アメリカの軍事当局者の新聞記者との話では、一九五二年乃至五三年は極めて危機の年であるということすら発表いたしておるのでありまして、私どもはこういうような世界情勢に当面しまして、果して日本の平和を確保することができるかどうか、アメリカとの軍事條約によつて日本がかち得るところのものは、結局において第三次大戰に日本も巻き込まれる、こういう結論に達せざるを得ないと思うのですが、その点について総理大臣所見を伺いたいのであります。
  29. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 米国の軍事予算その他については、私は批評する立場にありませんが、併し米国といえども、戰争をするためというよりは平和を確保するために軍備擴張をいたしておるのであろうと想像いたします。又いずれの国も今日まで僅かな時間の間に、半世紀足らずの間に大戰争が二度も行われた、戰争はこりごりだという気分にあるのでありますから、世界の輿論は平和を確保したいということにあつて、如何なる方法かで世界の平和を維持したいという、これが世界の大多数の国の考えであり、世界の輿論も平和の確保にあると考えるのであります。戰争を起さんと欲するものは、主戰論を唱える国は、お話のように私は結果においてあるかも知れませんが、併し今日はないのであります。故に私は平和のために軍備擴張をいたしておるものであり、その目的は必ず達せらるるだろうと思います。私は確信と申しますのは、結局見通しと申すか、見通しのごときものは当てにならないのでありますが、従来の経過から考えて見て、第三次戰争のごときは容易に起るものではないということをしばしば申しておるのであります。日本の安全もこの二つの條約によつて必ず確保せられると確信いたしたから締結に同意をいたしたのであります。あとは、私は議論と申すのであります。結果においてどうなるかということは、事実によつて証明する以外に方法はないと思います。
  30. 堀眞琴

    堀眞琴君 只今総理大臣の御意見を伺つておりますというと、アメリカ軍備擴張せられるのも、要するに平和を維持するためである、いわゆる武裝平和方向をとつておるということを認められると思います。ところが総理大臣武裝平和は全然考えておらんということになりますと、アメリカの現在とつておりまするところの外交方針と申しますか、外交政策の方向と、総理大臣考えられておるところの外交方針というものは食い違つて来ると思うのであります。而も他方においては、只今の御発言のように、二つの條約は日本の平和を守るものである、こういう工合お話されておるのであります。そうしますというと、総理大臣自身の発言の中にも食い違つた面が出て参つておるのであります。矛盾しておるのであります。即ち一方では武裝平和ということを考えない、大国協調によつて平和を維持するということを念願されながら、他方においてはこの二つの條約、つまりこの條約によつて日本が一方の陣営に附き、武裝平和一つ方向とするところの外交方針をとつておる国と一緒に今後とも国際間に立つて行くということをお話されておるわけでありますから、その点は非常に矛盾して来るのではないかと考えられるのでありますが、その点について重ねて答弁を煩わしたいと思うのであります。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は矛盾を認めないのであります。私の議論は決して矛盾いたしておらないと考えます。これが矛盾なりや否やということが結局議論になるから、私はこれ以上はお答えをいたしません。
  32. 堀眞琴

    堀眞琴君 議論になるからこれ以上はお答えできないということは大変残念であります。この委員会は国民も非常な関心を持つて聞こうといたしておるのでありまして、私はむしろ総理大臣はこの機会にこそ、自分は平和についてこのような抱負を持つておる、このような方針を持つておるんだということを声明されることが、国民を安心させることでもあり、又国際的にも非常な大きな影響を与えることと思うのでありますが、残念ながら総理大臣はその点に関して非常に慎重に、むしろ言葉少なに御答弁になるのでありまして、私どもは残念であります。そこで話を更に進めまして、日本アメリカと軍事條約を結ぶ、この軍事條約を見ますれば、先般来同僚議員が指摘されておりまするように、日本の再武装というものを期待しておるのであります。再武装を期待しておるという面から考えますというと、遅かれ早かれ日本は再軍備をせざるを得ないという段階になつておるのであります。いや、それどころか私をして言わしめるならば、今日すでに再軍備の段階に入つておると申上げてもいいと思います。これは例の警察予備隊であります。昨日の大橋法務総裁の堀木委員に対する回答の中では、警察予備隊はこれは治安維持のための警察予備隊である、決して戰争にこれを使うものではない、戰力でもないという御答弁があつたのであります。この点については、あとで又安保條約の逐條審議のときに大橋法務総裁にお尋ねするといたしまして、今日は総理大臣に伺いたいのは、予備隊はすでに私は戰力の一部として存在するものであるということ、殊に今日の予備隊の持つておりまするところの武器であるとか訓練であるとかいうような点から申しましても、十分にこれは日本の戰力として見なければならないものではないかという工合考えられるのであります。現に読売新聞などを見まするというと、九月二十二日でありまするか、各キヤンプを尋ねての記事が載つているのでありますが、すでに軍隊化しているということをはつきり申しているのであります。この警察予備隊はそういうような観点から申しましても、すでに軍隊としての役割を果している。若し單に警察的な行動のみこれを行うものであるというのでありまするならば、あれだけの訓練、あれだけの装備は必要としないのではないか。而も団体的な訓練を最近は行なつておるのでありまして、国内には非常にその暴力を企てる者がある、或いは治安を紊す者があると申しましても、暴力或いは治安を紊す者といえども警察予備隊が持つているような武装或いは武器というようなものは殆んど持つておらんような現状において、何を好んであれだけの武器を持ち、そして又あのような訓練をしているのであるか。これは取りも直さず警察予備隊が今日は警察予備隊という名前で呼ばれているが、これは早晩軍隊に変るべきものであるというようなことが感ぜられるのであります。このことにつきましては、又新聞を引用しまするというと、総理大臣外国の新聞記事については自分は責任を負うことができないという御答弁を頂くかも知れませんが、すでにアジア諸国の新聞におきましては、この警察予備隊について軍隊化の方向を非常に恐怖して見ているのでありまして、これらの点からも私ども総理大臣のこの点に関する御答弁を煩わしたいと思うのであります。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 警察予備隊の設置の趣意目的等は、警察予備隊設置の当時に声明その他において明白な通り、これは軍隊ではないのであります。軍隊にはいたさないつもりであります。如何なる批評があつても、その実質は政府として考えるところは、これは警察予備隊もあります。
  34. 堀眞琴

    堀眞琴君 時間もないことでありまするから次に中立の問題についてお尋ねいたします。  中立とアジアの民族運動について首相のお考えをお尋ねしたいと思う。最初の一般質問のときに、私は中立問題についてお尋ねいたしたのであります。で、私の意見は、これは堀の議論である、スイスも中立化の方向を捨てておる、ベルギー、オランダもどうかというお話があつたのであります。成るほど永世中立という観念は、今日の国際法においてはもはや旧時代的な観念でありましよう。私は何も日本を永世中立にせいというようなことをここで申上げるのではないのであります。つまり日本がどつちの陣営にも附かないで、そうして大国間の協調によつて平和を推進する方向日本は立つべきであるという意味において中立を維持するのが、日本の平和を維持するただ一つの途である。勿論国連の集団保障によるところの日本の安全保障もありましよう。私は国連参加することを双手を挙げて賛成をしておるのであります。我々の国の安全保障は、日本の国自体としてはそういう方向への中立を維持し、国際的には国連の集団保障によつて日本の安全を保障する以外の途はないという工合考えておるのであります。而も日本の地理的な條件或いは日本の政治的な條件というものを考えまするというと、日本こそ世界平和に寄与するために、この際大国間の協調を推進し、そうしていずれの陣営にもつかず、日本独自の立場で行くということこそが日本の平和を維持するただ一つの途ではないか、この点についてお尋ねいたしたい。それから時間がありませんから、もう一つお尋ねしたいのは、アジアの民族運動についてであります。中国の革命を筆頭といたしまして終戰後アジアの諸国においては民族運動が油然として勃興いたしておるということは、賢明なる首相も私が申上げるまでもなくすでに御承知だと思う。これらの民族運動というものに対しまして、首相はどのような見解を持つておられるか、イランの石油問題或いはヨルダンの国王暗殺問題、或いは又最近のエジプトとイギリスとのあの紛糾、これもいずれも私は民族運動に起因していると思う。朝鮮の問題すらがやはり民族統一運動に発端するものではないかと思うのでありまするが、この点について、この二点をお尋ねいたしまして私の質問を終りたいと思うのであります。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連憲章により日本の安全を守るということは御賛成のようでありますが、私も期待するところは、国連の行動が、国連の総合的運動によつて各国が平和を維持するということにありたいと思いますが、併し御承知通り国連参加するためにはいろいろ條件があり、この條件を充たすためには相当の時間がかかりはしないかという危険があるから安全保障條約を結ぶに至つたのであります。即ち国連に入る前提であり、又補助というか、補充的な條約、そういう性質を持つと言つてもいいでありましようが、趣意国連によつて世界の平和を維持するということにあり、これに参加するがよし、参加すべきであると考えるのであります。  アジアの民族運動については、これは曾つて中国においていろいろな運動が起つて、そうしてこれに日本参加することによつてつて中国の治安といいますか、国内の紛擾を助けたこともあるのであります。目的そのものはいいでありましようが、然らば日本がこれに対してどうするか、或いは今日日本が仮に参加するとしても、これに対して援助をするとか何とかという具体的な方法もなし、又民族運動の真相についても、海外情報はいつでも入手するということはできないような事態にあるのでありますから、政府としてかるがるしくこれに対してどうこうという批評を、或いは言明をするということは差控えたいと思います。
  36. 堀眞琴

    堀眞琴君 国際連合に参加するまでの間に相当の時間がある、手間を取るかして、その間の真空状態を埋める、真空状態という言葉をお使いになりませんでしたが、その間の期間を埋めるために安全保障條約を結ばれたということでありますが、国際連合には参加しなくても、日本が忠実に国際連合憲章の義務條項を履行するならば、これは国際連合としても日本に対しまして保障の手を伸べてくれることは当然であります。而も連合憲章の第二條の第六号には、現に国際連合に参加しない国に対してもこれ保障する規定を設けておるのでありまして、何も国際連合会に参加しないから日本は国際連合から見放されておるのだということには私はならんと思う。その点であります。  それからアジアの民族運動につきましてとやかく言うべきではない、それは私もわかるのであります。何も吉田さんに対して、私はアジアの諸民族運動に対しても日本政府としても何らかの政策を打出すべきだということを申しておりません。ただ私のお尋ねしたい重点は、アジアの民族運動を契機にいたしまして、アメリカの極東政策が非常に歪められた形において発展しつつあるのじやないかということを指摘したいのであります。例えばインドシナであります。朝鮮問題はここでは一応別としましても、インドシナの問題であります。ベトナムの国内におきまして今日二つの勢力が内戰状態を続けておりますことは御承知通りでありまするが、アメリカ乃至は西欧諸国は保守的な勢力に対して援助の手を差伸べておる、こういう形がとられておるのであります。日本としてはアメリカや或いは西欧諸国がこれに対してどういう態度をとるかということについては勧論無関係でありましよう。併しながら日本としてはアジアの諸国の民族運動がどういう性質のものであるか、西欧なり或いはアメリカなりの帝国主義を排除するという意呼での民族運動として発展しているものだと私どもは見ておるのでありますが、総理大臣としては勿論これに直接手を出す必要はありませんが、どのように見ておられるか、その点をもう一度重ねてお尋ねいたしたいと思うのであります。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国際連合の保護、自然の保護が至るということも考えられますが、併しながら安全保障條約は結局国連憲章の目的なり趣意に全く合致するものであつて、国際連合或いは国連憲章に反する趣意ではないことはもとよりであります。故に結果において同じことだというその趣意において、或いはこの両條約を持つということは、決して不都合ではないと思います。  それから只今民族運動の話でありますが、これは国外のことであつて、而も過去において日本の行動がいろいろ疑われて、日本はよその国を、何と言いますか支配するとか、或いは支配せんとするものであるとか、野心があるというようなことを過去において戰争以前から言われておつて日本中国における国内運動に対してとやこうしたということ等が原因となつて遂に列国の反感を買い、大戰争を引き起すようなことになつたのでありますから、アジアの民族運動に対してこの際私がかれこれ申すということは誤解を受けると思いますから言明を避けます。
  38. 永井純一郎

    永井純一郎君 今日まで逐條審議を続けまして質疑を重ねて来まして、外務大臣或いは総理大臣から明らかにして頂かなければ明らかにならなかつた点があるように思いまするので、それらの二、三について質問をいたします。で私は先ず二十九度線がなぜ引かれたのかということについて質疑を次官なり局長なりと重ねて来ておりますが、これはなかなか明らかに我々としてはなつておらない。この第三條では、南西諸島等の信託統治の地治域になる地域は、信託統治の提案がされ、これが戰略地区として考えられる場合には、安全保障理事会等の関係があつてなかなか通らないかも知れない。併しながら一般の信託統治地域として通る場合には、安保理事会を別に通さなくてもできるのだというようなことであると思います。ところがいずれにしましてもそういう提案がきまるまでは、第三條の後段で、合衆国が立法、司法、行政の一切の権限を持つということに、第三條の後段ではなつておるのであります。そこでこれを法理的に詮索して行くと、結局二十九度以南の信託統治地域になつた地域並びに百万に及ぶ同胞の諸君は、恐らくこの前段或いは後段いずれかによつて、いずれの場合にも永久に解放されるときは私はないのじやないかということを、第三條から心配するのであります。ではなぜそういう必要があつて二十九度線は引かれたのかということを総理からこの百万に及ぶ島民の人たちに説明をして頂かなければならないし、又説明をしなければならない私は義務がおありだと、こう思うのであります。多くのこの同胞の諸氏を代表して、この條約委員会が始まる一番初めに陳情があつた次第もありましたが、実に悲痛な訴えがそのときもありました。で私どもが今まで説明を聞いて来たことから判断いたしますと、この信託統治地域になる所と、それから我々のいるこの四つの島、これは実質的には今までの説明を静かに顧ると、何ら違わないということが私は言えると思います。日本の固有の領土がこうして分離され、国連憲章の七十七條の(ろ)号によつて分離されるという説明を事務当局からいたしておりますが、私はこの国連憲章の七十七條の(ろ)号自体の法律上の解釈がすでに無理である。固有のこういう領土を無理々々に分離することは国連憲章の精神ではない。帝国主義的な植民地等であつたような所は、これは話がわかるのでありまするけれども、固有の我が国の領土でありまして、又これはポツダム宣言の中にも、カイロ宣言の條項は履行せらるべきであるということをわざわざ謳つております。そこで信託統治地域につきましては、政府説明では主権はあるのだ、併し結局それは潜在的な主権だというふうに説明をいたしております。勿論信託統治地域は軍事基地化され、それから武裝化されます。従つてその軍事上の必要からいろいろな国民の権利義務なりその他のことがすべて制限を受けます。従つて日本主権はあるのだが、それは潜在的な主権であるというふうに説明をしておると思います。ところが我々のおるこの四つの島も実は実質的には安保條約を結ぶことによつて、幾らか大小の、重い軽いの違いはあるかも知れませんが、これは同じことがやはり言えると思います。安保條約を結びますことによつて、やはりこの本土でも行政権、裁判権或いは軍隊が自由に通過する、そういう内容はよくはまだわからないという説明にはなつておりまするが、やはり非常に顯在的な主権があるというふうには思えないわけであります。むしろ潜在的な主権だと言つたほうが適切ではないかとさえ思えるのであります。而も信託統治地域になる地域は、一般の信託統治の場合も或いは戰略地区の場合も、これはいずれも武裝化できるということになつております。従つて島民が、島におる日本人が軍隊化されることも私はあると思います。ところが四つの島のこの本土のほうでは、その点は憲法の第九條の解釈論で大橋法務総裁といろいろと論議をいたしたのでありますが、これは結局第九條の解釈を、政府は憲法の上からは義勇軍或いは傭兵制度というものが、法律上の議論としては認められるというふうに理解されるのであります。これは実際上総理は併しそういうことはやらない、こうお考えになつておると私は確信いたしますが、法務総裁のような憲法の解釈論をされることは、私どもは非常に迷惑である。諸外国に対しても惡いのではないか、こう考えるのであります。そういう意味から言うと、一応実際上そういうことが行われるか否かは別といたしまして、憲法上そういうことは、義勇軍或いは更に又傭兵制度というものが認められる、法律上の解釈としてそういうことが言えるというふうな感じを受けるのであります。こういう点をこういうふうに総合して考えますと、私は二十九度線を引いた意味はどこにあるのか、それは最近盛んに国民の間で議論されておるのであります。心配をしておるのであります。そこで私ども質疑を重ねて来て考えますのに、こういう実質的に我々の住む四つの島は信託統治地域と殆んど差異がない。ですから私は安保條約そのものに賛成するものではありません。むしろ完全に或が国の領土にしておいて、それを安全保障條約の対象にしたほうがいいのではないか、或いは租借地にしたほうがいいのではないかということは当然考えられます。或いはそういうお話が総理とダレス氏との間にあつたかも知れませんが、それがなぜそれではそうならないで、信託統治地域にしなければならなかつたかということは、外交上の話合いの経過を言うことば恐らくできない、こう総理は言われると思います。そこで、それを無理にその間の事情を話せというふうに私は要求するつもりはありませんが、併し私ども国民はこういうふうに、特に島民の諸君は私は考えておると思います。それは今度の條約では軍備に何ら制限をしておらないのであります。そこでやがて日本が、総理は直ぐにやらないというように答弁しておられますから直ぐにはおやりにならないと思いますが、やがてやはり軍備の問題が我が国に具体化して来る、そうして安全保障條約第四條に言うところの国連の安全のための措置等ができるようになりましたならば、或いはこの本土に関する限りは安全保障條約というものは、これは相当長い期間かかると思いますが、なくなるときが来るかも知れませんが、信託統治地域のほうは永久に恐らくなくならないのではないか、というのはなぜかということを考えて見ますと、これは戰略地区として戰略の上から必要だということよりも、そのこともありましようが、私はむしろ今日まで政府考えており、且つ占領下でさえ非常に反民主的な経済的或いは社会的の政策をすでにとりつつある、そういうことに対する日本の反民主化或いは保守化への監視のために、永久にここに信託統治或いは施政権を米国は持つておることが必要であつて、ここを根拠地として日本を監視するために二十九度線をわざわざ引かれたのではないかというふうに感ずるのであります。総理も御承知通り占領下にすでに、例えば最も重要な占領政策として行われた農地改革等は、占領中にすでにこの農地改革の線から逆行して進められております。又今日労働関係法規の改惡でありまするとか、ゼネストの禁止でありまするとか、こういつたような勤労者の基本的な憲法上の権利に対しても制約がされることが考えられつつあるというようなことがありまするので、又一面再軍備を全然制限しておらないということがあるために、私は恐らく信託統治地域の二十九度線というものが監視のために引かれたように、今までの質疑応答を総合すると考えられます。若しそうであるとするならば、私は第三條ができたことは非常に大きな政府の責任であると考える。これが果して、なぜどういう理由のために二十九度線が引かれておるのかということか総理からもう少し明らかにして頂きたい。かように存ずるのでございます。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、二十九度以南か信託統治にするということは、只今想像せられたような日本監視のためにでないということは、これは私がアメリカとの交渉の上、或いは現実アメリカ政府の声明その他によつて断言し得るところであります。二十九度になぜきめたかということは、これは信託統治を設定する最小範囲の区域として二十九度を指定したことであるのであります。又日本の監視をする……、日本の民主化はトルーマン大統領の演説その他によつても、或いはマツカーサーの演説その他によつても、日本の民主化は進展しつつある、完了しつつある、確立しつつあるということはしばしば言われておるところで、日本においてその逆転すすることを心配して、懸念して二十九度線を置いたということは、如何にしても私は信ぜられないところであります。又そういうことは全然事実無根であります。  又只今国会内の主権が十分でないということを言われますが、併しながらこの條約においても完全なる主権の回復ということを明記しておるのであります。従つてお話のように信託統治と何ら変るところがないということは、これは私においては同意のできないところであります。又国内にはやがて再軍備となり、信託統治は水久になりはせんか。いつ再軍備になるか知らない、これは国民の自由意思によつて決定するところでありますが、私は現在再軍備は全然考えておりません。又信託統治に永久になるとも私は考えておりません。何となれば、成るべく必要が消滅し次第に日本に返したいということはしばしば私は当局者から言明を受けておるところでありますから、信託統治が永久の施設になり組織になるということは断じてないと私はここに確言いたします。
  40. 永井純一郎

    永井純一郎君 時間がないという知らせですから後で更に……。今の点は、最後の答えだけはつはきりしたのでありますが、その理由というのはやはり明らかに私は納得できないように思いますが、一応もう一つお伺いしておきたい次の問題を簡單に私は申したいと思います。  これは大蔵大臣と賠償問題について質疑を重ねましたが、そのうちに私はこういうことを申上げたわけであります。役務賠償でありますが、結局それを拂うのは財政資金から拂われる。ところがその拂うことによつて企業者側はやはり普通の利益をもらつて行くのか、そのことはよくないのじやないか、つまり今日資本家と労働者の間では、盛んに生活が苦しいというので賃上げの要求を各会社でいたしております。今日この状態のままで役務賠償する場合に、財政資金で会社のほうに金が拂われる。その場合に大蔵大臣は経済上の普通の原則に従つてそれは支拂われるというような意味の答弁をいたしましたから、それでは普通の利益を、普通の取引を、普通の取引における利益をそのまま与えるのかと言つたら、やはりそうだというような肯定をいたしておる。私の考えるのは、今日の税法におきましても法人税は今度幾らか上りましたが、資本蓄積その他を考えて相当考慮が拂われております。ですから税金で揚つて来た財政資金を賠償のために拂いながら、一方は利益を得て行くが、労働者側は低い賃金でやりおる。而も今日の不合利な税制を通じてその財政資金というものは取上げられ、拂われるのでありまするから、結局賠償は最も多く労働者が拂うということになりはしないか。そういうことになつてはならないから、ここの間の調整をすることを十分に考える必要がある。又必要なそういう機関を作つてこの間を調整しなければ、賠償は勤労者が拂うというようなことになることは、我々は絶対承認できがたいという意味のことを私はやはり質問いたしましたが、大蔵大臣はどうも経済の一般の原則に従つて支拂いをするのだというようなことで、私はどうもそれでは惡い、で総理大臣の大体のお考えでいいのです。詳しいことはおわかりにならないと思いますから、それはそうであつてはならんと思うというような答弁でもいいと思います。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは勤労者のみの犠牲といいますか、負担になるようなことは無論政府としては避けますが、併し一体申すと、この賠償という問題の趣意の中には貿易の進展ということも考えておるのであります。或いは南洋、東南アジアその他から、賠償の支拂いによつて感情をよくするなり、或いは又事業を興すなり貿易を進展せしむるなりして、一方には戰争によつて被害を受けた国に対して正当な賠償を与えると共に、その国の感情をよくすることによつて日本との関係を、貿易関係或いは又事業関係、原料の確保というようなこともいたしたいという考えでいたしておるので、この賠償の結果は結局日本産業の発達、日本の貿易の発達に裨益することがあろうと確信いたして政府は同意いたしておるのであります。即ちこの賠償の結果、日本国民のみが被害を受け、或いはその犠牲のみを、支拂のみの負担を受けて、何ら益するところはないという考えではなくて、むしろ相手国日本に対する不平不満の感情を融和することによつて貿易の進展となり、やがてそれが日本産業の発達になるということを期待いたして賠償問題に政府は同意いたしたのでありますから、お話のように勤労者のみが犠牲になるということはなく、むしろ国民全体が希望いたせば、この賠償を承諾することによつて国民全体の経済が進むようにありたいものであるということを希望いたしておるのであります。
  42. 金子洋文

    ○金子洋文君 外務大臣は講和会議から帰つて来られて、再軍備はしないということを御発表になりました。併しこの外務大臣の声明の如何にかかわらず、この両條約には再軍備という私は玉手箱が隠されておると思う。それを国民から見破られては困るので、そこでしばしば再軍備はしないということを声明される、いわゆる目つぶしをかけている、かように考えられるのであります。然らばその玉手箱が、再軍備という玉手箱がどこに隠されておるかというと、これは両條約の不可分の関係あろうところの第六條の(a)項であり、即ち日米安全保障條約に私は隠されておると思うのです。講和会議におけるトルーマン大統領の演説もそうでありましたが、アメリカの一般の人々は日本の再軍備は既定の事実と見ております。これに反対する人があります。それは日本に平和憲法を作らせておいて、六年もたつかたたないのに日本に再軍備を強要するということは、アメリカの正義を蹂躪するものであり、アメリカの不信を世界に宣揚するようなものである、であるから再軍備には反対である。こういう考え方もすでにこれは既定の事実として考えられておるのであります。このアメリカ一般の考え方がどこから生れておるかというと、これは言うまでもなくダレス特使の演説や声明であることは言うまでもございません。そこでワシントンとロスアンゼルスにおけるダレス特使の演説をよく調べてみますと、大体次の四つの点に要約されると思います。第一は、日本が講和後の軍事的真空を避けるため日本みずからの選択によつて駐兵を希望するのであつて、強制されたものではない。第二は、安全保障は双務的、相助的でなければならない。日本のみが、只乗りすることは許されない。第三、従つて駐兵協定日本が再軍備するまでの暫定的取極であること。第四、この取極は日本に対して事実上の保護を与えるが、日本自身の機進が明らかになるまで法律的保障は与えない。この演説の内容からいたしますと、アメリカの人々が日本の再軍備を既定の事実として考えるのは当然であると思います。そこで外務大臣にお尋ねしたいことは、ワシントンやロスアンゼルスにおけるダレス特使の演説は、両條約の内容を正しく伝えておるかどうかという点、これが第一点であります。第二点は、日本におけるダレス特使と吉田外務大臣の話合いはもつぱら日本の再軍備の説得にあつたのではないか、第三点は、この結果それまで再軍備に頑強に反対して来られた吉田外務大臣も軟化せざるを得なくなつたのではないか、即ち両條約に再軍備の玉手箱が隠されているという私の考えは間違つておるかどうか、以上三点について外務大臣の御答弁を願いたいと存じます。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この安全保障條約の中に再軍備という玉手箱は断じて隠しておりません。又ダレス氏の演説は私は存じませんが、如何なることを演説せられたか、話は聞いておりますが、私が直接聞いたのでありませんから、これに対しては批評を加えませんが、少くとも私との了解では、日本に対して再軍備を強制する意思はないのみならず、この再軍備するとしないとは日本国の自由である。故に條約においては、何ら軍備について要求もしなければ、又義務付けておりもしないのであります。米国国民が日本の再軍備を期待するしないは、これは米国国民の自由でありますが、とにかく私は従来と同じ態度で、只今日本が再軍備するときではない。国力がこれに堪えないし、この再軍備をするしないは、一に国民の自由である。何ら條約の後に玉手箱として隠されておるのではないのであります。はつきり申上げます。
  44. 金子洋文

    ○金子洋文君 外務大臣は曾つて私の質問に対して、或る特定の国家に軍事基地を与えない、こういうことを第八回の七月二十九日に開かれた外務委員会において明確にされておるのであります。かように申しております。或る特定の国家に軍事基地を与えることは未だ曾つて約束したことはないし、そういう考えを持つておりませんと……ところが第六條の(a)項によりますと、「外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」となつておりまして、先の御答弁とは全く相反していることは、外務大臣も認めざるを得ないと思います。その点外務大臣はどうお考えになつているか、お聞かせ願いたいと存じます。
  45. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) とにかく軍事基地を設ける約束をしたこともなければ、今後も軍事基地を置く考えはありません。これははつきり申上げておきます。
  46. 金子洋文

    ○金子洋文君 これは詭弁です。日米安全保障協定を作つておきながら、軍事基地を与えない、そんなことは何にもありませんよ、外務大臣……。そんな答弁は駄目です。一体そういう先の声明と、この日米安全保障協定によつて軍事基地を与えるということは、明確に総理大臣は国民を欺くものであります。この條約は、結局日本に不完全な独立を私は与えると思います。これは講和会議においてエジプト全権が指摘した通りであります。第二次世界大戰において、御承知のように十二の国が独立しました。八つの国が未だ不完全な独立状態にあります。これに対して西村條局長は、日本の状態は、それらの国とは事情が違うから、そういう不完全な独立ではないこうおつしやいました。確かにそうであります。その点は認めます。併し信託統治は置かれ、講和後に外国の軍隊が駐留するということは、全く日本主権を奪われた不完全な独立の状態であります。日本の歴史に汚点を残すものと私は思います。従つて今の外務大臣がやつしやつた外国に軍事基地を与えるというふうなことは考えてもいないし、そういうことも起らないなどということは、更に輪をかけて国民を惑わす、国民を偽わるお言葉であると思います。よく肝に銘じておいて考えてもらいたい。  第三にお尋ねしたいことは、先に永井委員が尋ねた第三條の問題でありますが、御答弁になつておりません。総理大臣はこの前の委員会においで非常に私に丁寧なお言葉で答えて下すつたのですが、それは目下ダレス氏との間に、講和後日本が真空状態になるので、それが心配だから話合つておると、こういうふうなことであります。即ち日本の安全保障とアジアの安全のために信託統治を布くのである、いわゆる北緯二十九度以南の諸島を信託統治下に置くのであると、こうお答えになりました。併し日本の安全保障とアジアの安定のためでありますならば、日米安全保障協定ができるのでありますから、これは十分期することができると思います。従つてその目的を以て信託統治制下に置くということはあり得ないと思います。でありますから、永井委員の言うように、なぜこういうような屈辱的な條約をお結びになつたのか、その理由をはつきり示してもらいたい、こう永井君も言つておられるのであります。その理由をはつきりお示し願いたいと存じます。
  47. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のここに申すことは、決して国民を欺いておるのではありません。欺くものであると曲解せられることは、甚だ私において迷惑に考える。又完全な独立でないと言うけれども、條約の結果、合意の結果駐兵をすることは、必ずしも日本ばかりではないのであります。始終例を引きますが、英国においてもヨーロツパにおいても、米兵は駐兵しておるのであります。そのために屈辱なりと考えるのは、これは昔の狹い愛国心か主権論であつて、今日は共同防衛という線において、集団的攻撃という事態に対して集団的な防禦を講ずるのは当然であつて、この條約をなしたことを屈辱と言うのはおかしな話だと私は思います。安保條約ができれば信託統治は不必要であると……信託統治が不必要であるかないかということは、今後の事態から生じましようが、併しながら先ほども申した通り日本四つの島以外の処分は、すでにこれは無條件降伏の條約の当時において日本が受諾したところであります。今回受諾いたしたのではないのであります。
  48. 金子洋文

    ○金子洋文君 條約の前文には、対等の主権ということは申しております。こういう表面の言葉からしますと、屈辱でないかも知れません。併し、合衆国の如何なる提案にも同意するという規定がございます。これは右を向けと言うと右を向かなければならないし、左を向けと言えば左を向くということです。これは対等の主権ではございません。主人と奴隷の関係でございます。であるから私は屈辱的な條約であると申すのです。  あと次に移りますが、これは外務大臣ではございません。政府委員にお尋ねいたします。安全保障の問題で、第五條(a)頃の(iii)に、「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え」云々とありますが、そのことについて講和白書は、朝鮮動乱における日本立場考え合せるときその趣旨がよくわかるだろうと、頭脳の明晰振りを誇示しておられます。この言明から判断すると、條文の「いかなる行動」のうちには武力援助も含まれておるように思います。若しそうでないとすると、講和白書の文章は、国民を惑わす惡文と言わなければなりませんが、政府委員の御答弁を願いたいと存じます。
  49. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 武力援助は全然いたしておりません。
  50. 金子洋文

    ○金子洋文君 そうしますと、講和白書の表現は、国民を惑わす惡文であるということになりますな、よくわかりました。私の質問を終ります。
  51. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩    —————・—————    午後一時十四分開会
  52. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 休憩前に引続き会議を開きます。
  53. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は平和條約について大体三つの点をお尋ねしたいと思います。  第一の点は、本国会の最初の代表質問にもいたしましたが、なぜ我々は批准をかくも急がなければならんかということであります。最近新聞報道によりますと、参議院で條約が遅々として進まない、私は遅々として進まないのでなくて、参議院が非常に慎重審議を盡しておられることに敬意を表しておるのでありますが、これを非常に気にせられまして、シーボルト外交局長の名などもちらりちらり新聞に載つておるのでありますが、衆議院の條約審議が、あのような脱兎の状態でやられたということは国民の納得できないところであります。それで我々参議院としては慎重にやつておる。ところが一昨、いや突如審議打切りという動議も出たりいたしましたが、まあこういうことは一つのいろいろ国会内の出来事といたしまして、私の総理にお尋ねしたいことは、そういう議事上の問題でなく、なぜ我々はもう少し落着いて批准をする自由が与えられないだろうか、第二次大戰後に最初の平和條約を結びましたイタリア、これは全面講和でございました。先ず連合国が全部批准いたしました、そうしてイタリアはこれを受諾するために国会の承認を求めました。然るに今回の対日講和は、戰後の日独伊、この三大敗戰国のうちの対日平和條約がなぜこのイタリアのごとく行われないで、連合各国がまだ一つも批准の手続きを進めておらないのに、日本だけがかくも急がされなければならないか。日本国家、日本民族百年の運命をきめ、アジアの戰争か平和かを決定するこの本條的の批准をかくも急がされるということ、或いは総理がお急ぎなのか、急がされておるのか、いずれにその理由があるのか、これをお尋ねしたいのであります。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本は一日も早く独立を回復すべきであるから急ぐのであります。急ぐことを要求されておるのでもなければ、余儀なくされておるのでもないのであります。国家のために独立の一日も早からんことを国民として希望せざるを得ないのであります。
  55. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 イタリアは全連合国が批准いたしましてから、イタリアは批准いたしました。日本はこれと同一のはずでございますのに、日本だけが急がなければならない、急ぐというそういう常習語で申してはいけません、言い直します。日本だけが調印国に先んじて、イタリアと全く正反対に、一番先に批准しなければならないという理由を承わりたいと思います。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) イタリアはイタリアのほうでありますが、日本としては一日も早く独立を獲得したい、そのために先ず日本が批准をして、各国の批准を促すことが、いたすべきことであろうと考えるのであります。
  57. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 イタリアはイタリア、日本日本であるくらいのことはよく承知しておりますが、そういう素人の意見ではなくして、専門家として、あなたの多年の外交官出身の総理大臣、外務大臣として、なぜイタリアだけがそういうふうで、日本だけがこうあらねばならんかという御説明が頂きたい。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 専門家としての意見であります。
  59. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 よろしい。それじやもう少し具体的な事実を挙げましよう。外電によりますと、各国の批准は来年の二、三月といつております。アメリカでは漁業協定を初め安保條約に伴う行政協定が確立したら批准を問題にしようとしております。インドネシアはどうです。インドネシアの駐日首席代表の言葉によりますと、満足すべき賠償漁業協定締結を見た上でないと批准しないと言つておる。フイリピンはどうですか。條約批准に反対でしよう。條約の批准権を持つ上院議員の選挙で、サンフランシスコ條約に反対の野党が着々として勝利を占めておるではありませんか。オーストラリアなどにおいても事情は甘くありません。それだのに……そうして日本においてはどうでしようか。賠償が底らになるか。賠償が幾らになるお見込みでしようか、総理。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは成るべく少くしたいと思つております。
  61. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 駐留軍の軍隊はどのくらいになるでしようか。
  62. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 駐留軍の数等は不明でございます。
  63. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 軍際がどのくらい駐在するやら、費用はどのくらいかかつて、どのくらい分担するのでしようか。
  64. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これも昨日お答え申上げました通りに、その分担もまだ不明でございます。
  65. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 費用がどのくらいかかるかさつぱりわからない。出漁の禁止漁区が解放されるかどうか。大部分の日本の多くの漁民が心配しておる問題。それから港ですね。東京港を初め横浜等の五大港、港がいつ解放されるかもわからない。漁業協定も農林大臣は和解と信頼だとか、総理の真似をして美辞麗句を弄しておる。ところが交渉を見れば、太平洋の「ます」、「さけ」、「まぐろ」、こういうものはどうも追い出されそうな状態になつておる。こういうような重大な問題が確定してからでもいいのではございませんか。なぜこれが確定……又これが確定しなければ責任のある審議を国民に代つて我々はできないじやありませんか。こんな不確定な條件、そうして今申上げましたアメリカインドネシア、フイリピン、オーストラリア等々の動き、それからイタリアの事情、こういうことを考えますと、こんな不確定な條件平和條約を批准してしまうということが日本国民の利益になるのでしようか。総理にお尋ねしたい。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の説明は前言の通り
  67. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 日本人の利益ではございませんですね。(笑声)第二の問題に入りましよう。信託統治の問題、これにつきましては、もう本日も金子委員からも、永井委員からもお尋ねがありましたけたども、私はあえてこの問題はやはり総理の見解をお伺いしておかなければならんと思います。我々がずつとやつて参りました平和條約の逐條審議を通じて、参考証人の喚問を通じて、各委員の御質疑を通じて明らかになつた点は三点ございます。第一点は、これらの島々は文明の発達した立派な自治と独立の機能を備えた日本の地域であつて、決してこれは日本国以外の地域ではない。この日本人の地域を、こういう立派な文明の発達した自治能力の発達した地域を国連憲章によるかのごとき詭弁を弄して、これを信託統治にするということは、明らかに国連憲章七十六條違反である。これは法務総裁といえども認めざるを得ない事実である。これが第一点。それから第二点として、日本主権が完全に失われること。人種としての日本人は残るけれども日本国民ではないということ。これも法務総裁が答弁しておるところ。これは憲法違反である。明確に憲法違反である。もつと明確に言うならば、憲法十四條違反である。第三には、これらの島々の住民百万は挙げて反対しておる、これをなぜ信託統治にするのか、総理にお尋ねいたします。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 法務総裁が代つてお答えいたします。
  69. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 法務総裁の答弁なんかいらない。
  70. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これらの島々の処理につきましては、すでにポツダム宣言におきまして、連合国の決定するところに従うということを日本政府としては受諾をいたしているわけであります。その條項に従つて決定されたところを受諾いたすほかはないわけであります。
  71. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 先に進みましよう。以上の三点は法務総裁が何と言われようと、これはもう同僚議員のかたの御判断及び国民の判断に仰ぎましよう。誰が詭弁を弄しているか。こういう明々白々な事実と法務総裁の詭弁。法務総裁は何と言つているか、日本のこれらの島々に潜在主権が残るということが第三條に潜在しております。何という詭弁です。潜在主権が潜在しているということが第三條に潜在している。これはですね。浅草の寄席なんかでやられたほうが国会の檜舞台でやるよりもふさわしい。茶番的な質問である。(笑声)いや、茶番的な答弁である。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして且つ詭弁を延長して、総理並びに法務総裁は、これは詭弁ではなくして、虚偽だ、住民は納得していると強弁している。総理にお尋ねいたします。住民は納得しているでしようか。
  72. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 住民のかたがたと十分連絡をとり、又その意見を聞きながら進めております。
  73. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 総理の答弁を求めます。同じ日本人じやないですか、総理は日本人じやねえのか。
  74. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 私が申上げた通りであります。
  75. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 総理にお尋ねします。これらの日本人は納得しているのですか。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外務次官の答弁通り
  77. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この委員会の劈頭に出しました元沖繩人連盟東京本部長をしておられた三原君がこういうことを言つておられる。琉球が今度の戰争で一番大きな被害を蒙つた部分である。琉球を最後に守つたときには、これを失えば日本の一角が壊れる。死んで郷土を守れという指令が中央から来た。現地の住民は十五歳から満五十歳までの人間は全部徴発された、小さな十七、八歳の少女が出かけた、そうして爆風と砲彈のために裂かれた手を引張つてあつちこつち三日四日、そうして一週間後のうちには死んでおる。そうして少女がそういうふうにして一人一人死んで行つた。これが姫百合の塔である。そうしてアメリカ軍が琉球に上陸したときには、そのときには小学校の小さな生徒が先生に引率されて手榴彈を持つて真只中に飛込んで全部散華してしまつた。だから今人口統計を見ると満二十歳から五十歳までの男子は全人口の七・二%しか残つていない。つまり二十歳から五十歳までの人間は殆んど死んだ、こういう意味の証言をしておられますが、こういう悲痛なる島々を、この悲痛なる琉球をあなたはアメリカに渡して、それであなたの良心は総理として咎めないのでしようか、御答弁願います。
  78. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) その後におきましても、島民の人たちのいろいろの意見を十分聞きながら進めております。
  79. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について…。特に総理においで願つて、今日は総理に質問をすべきためにこのプログラムが組まれておるならば、どういうものは総理自身が答弁され、どういうものは次官がされるのか、その点明快にして頂きたいと思います。若しあなた一人で計られなければ理事会をお開きになつても結構でございます。(「議事進行について」と呼ぶ者あり)
  80. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) ちよつとお待ち下さい。総理自身お答えになるべきことは総理でお答えになります。他の政府委員をして答えさせることが適当と総理が考えられることは政府委員をして答えさせることであると思います。
  81. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕はそういう委員長の……、そうすると総理が答えるべきことはお答え下さるんですね。じやもうちよつと進めてみましよう。そこで私は次へ進めますが、これはもうどの委員も繰返し繰返しお尋ねになつておる点であり、恐らく全委員及び全国民の聞きたいところでしようが、つまり極東の平和と日本の安全のためには、あえてこういうものは要らんじやないか、これは芦田さんも指摘しておられる。これを特別に信託統治にしたというについては、あなたは、僕は或いは答えにくいかも知れんと思いますが、併し総理は首席全権としてサンフランシスコへ行つて信託統治については調印して来ておられるのでありますから、どういう了解の下に調印して来られたか、これは一つ総理じきじきでなきやお答えできないと思いますが、どう了解して調印をして来られましたか。
  82. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 信託統治にするという点につきましては、只今法務総裁から御答弁なつ通りでございます。
  83. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 答弁になつておらんです。総理はどういうふうに了解して調印して来られたか。総理自身の了解を聞いておるのに草葉君出る必要ない。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはしばしば私が説明しましたから、速記録について御研究になつたらわかると思う。
  85. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 速記録を待つまでもなく、僕らは何回もあなたの答弁を聞いていて、それでは納得できないから、速記をとめても結構です、秘密会でも結構です。一つ日本人のわかるように、一つ日本国民を納得させるだけの答弁をするのがあなたの義務だと思います。だから秘密会でも、速記を止めても結構です。どういう條件でも……だから事柄の真相を聞かしてもらいたい。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 真相はすでに述べております。聞く聞かんはあなたの勝手で、いつまで経つてもわからなければ説明してもわからんと思いますから、これ以上は説明いたしません。
  87. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一回だけ如何でしようか。
  88. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 従来からしばしばお答え申上げている通りであります。重ねて申上げる必要もないと存じております。
  89. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 お考え直しになつたらどうでしよう、総理は……。やはり秘密会でも結構ですし、速記を止めても結構ですから、普通の健全な常識を持つている日本人にわかるようにやはり説明されるのが私義務だと思います。特に参議院の條約審議のこの空気の中で、そういう御答弁では私は会派の如何を問わず私は満足しないだろうと思います。
  90. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 別に速記を止めるまでもなく、秘密会の要もないと存じます。ですから信託統治の問題につきましては、再三再四御答弁申上げている通りであります。よく御了承願つていると存じます。
  91. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 戰略的な……、草葉次官にお尋ねしましよう。戰略的な意味ではございませんか。
  92. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 極東の平和と秩序安寧のためになされたことだと存じます。
  93. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 のための、極東の平和と秩序安寧のための戰略的意義を持つのでしようか、持たないのでしようか。
  94. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 戰略的意義というのはそこから生じて来る場合において考えられることでありましようが、直接の問題といたしましては、この島の、これらを信託統治にする、しないという問題というよりも、北緯二十九度以南の諸島については、ポツダム宣言によつて決定、連合国がなされるということは、先ほど又従来とも総理並びに法務総裁から御答弁申上げたところであります。
  95. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 戰略的意義を持つのですか、持たんのですか。
  96. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) この第三條に書いてあります通りであります。
  97. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 戰略的意義、第三條なるものの理解の基礎の上に立つて戰略的目的で信託統治をされているか、されていないか、イエスかノーでいいんです。
  98. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 第三條によりまして、これらの島々は、北緯二十九度以南の島々は或いは信託統治の下におくこととすることがあるということであります。従いまして戰略的、戰略的じやないという問題はおのずから別だと存じます。
  99. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 イエスか、ノーか答えなさいよ。
  100. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 問題がおのずから別と存じます。
  101. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それじや戰略と全然関係ないのですか。戰略目的と関係ないと言つていいのですか。じや、関係ないのですね。イエスかノーか答えられないならば僕の質問、戰略目的を持つているか否かということは問題の外だ、戰略という問題と関係がないのですか。
  102. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) それはアメリカがする処置でありまするから、日本の関知しないところであります。
  103. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたはどういうふうにそれを考えておられますか。
  104. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 私の私見を申上げる立場ではないと思います。
  105. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうでしよう。あなたは調印して来ないから、調印して来た総理にお尋ねしましよう。総理はこの戰略目的によるかよらんか、どういうふうに理解しておいでになつたでしようか。
  106. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはアメリカ立場でありまして、それを日本が代弁する、又察して申上げる立場にはないと思います。
  107. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたはそれでいいかも知らん、併し我々は国会でこれに対してイエスか、ノーか、批准條項が附けられてこれを審議しておるのだから、審議をするためには当然こういう点が明快にならなければ審議できんではありませんか。あなたも国会議員の一人でしよう、あなたがたも二人とも、総理も次官も、(笑声)あなたがた国会議員であつて、我々の立場に立つたときにそういう説明で可否を決することができますか。そういう説明に基いて国民の代表として責任が果せますか。
  108. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) お話の点は信託統治をなすことあるべき北緯二十九度以南で、これは戰略的に考えられるかどうか、非戰略的か、いずれか、イエスか、ノーか言えとのお話でございまするが、それはむしろアメリカにお聞きになつて日本の我々がかれこれ申上げる立場ではないと考えるのであります。
  109. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 次に進みましよう。それでは最後に第三の問題に入りましよう。いずれ又これは安保條約の審議に際して徹底的にお尋ねすることにして、時間の関係で、それでは第三の最後の問題に入りたいと思います。これは非常に重要な、これも他の委員がもう十分問題にしておられるつまり第五條の「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え」の、この「あらゆる援助」の問題でありますが、これらの質問に対し、又他の角度からの質問に対して、吉田総理は予備隊の出動は国連が要求するはずはない、又再軍備はしない、憲法違反なことはしない。こういうことを繰返しておられますが、予備隊を出動させない、再軍備はしない。予備隊を再軍備の中核体にする、だからこれは二つの問題でなくて一つの問題なんです。予備隊を出動させるかどうか、再軍備はどうかという問題は二つの問題のように見えますが、一つの問題、要するに再軍備をするかしないか、この日本に対して再軍備を求めることができる。この條文によつて当然国際連合憲章に従つてとる如何なる行動についても国際連合にあらゆる援助を与える、再軍備をしろと、しなきやならん。しろという要求に対して、そういう要求があつたときにしないでもいいという保障がこの條項のどこにございましようか。平和條約全体の中にどこにございましようか、これを総理にお尋ねしたしい。
  110. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) しろという要求が起り得る條項はどこにもありません。
  111. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 しろと言われたときに、それを拒絶すべき根拠がどこにございます。この條項に基いて拒絶できんじやありませんか。
  112. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 第一に要求をなし得る根拠がないのであります。この平和條約にいたしましても、安保條約にいたしましても、従つてさような問題が起り得ないと存じます。
  113. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この国際連合憲章に従つてと、ところが現在の国際連合は憲章の違反をたくさんやつておる。アメリカの私有物になつて、そうして国際憲章が踏みにじられており、現にこの安保條約が何カ所か国際連合憲章に違反しておる。そうして現在朝鮮に行われております軍事行動は国連の旗に隠れた内政干渉だと考えなきやならない。そうして現にアメリカがどうも旗色が惡いせいか、他の国の援助が少いと言つて非常にこぼしておるということも、これはもう周知の事実、日本国憲法の違反、つまり再軍備に及ぶ援助までしなければならない強制義務がこの第五條の(a)の(iii)あらゆる援助という條項によつて我々に負わされるということは、これはもう明確だと考えなきやならん。そこで少くとも総理が本当に日本人であり、日本を愛するならば、なぜここで少くも日本において可能なとか、或いは日本国憲法に牴触しない限りとかいうようなふうに限定しないで、何らの限定のないあらゆるというような恐るべきこの無限大の責任を負わなければならないような條項にあえて調印をして来られたか、お尋ねしたいのであります。
  114. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) あらゆる援助ということにつきましても、再三従来から御質問に対して御説明申上げておる通りであります。あらゆる援助は日本国憲法の下における日本国の状態においてなし得る限度のあらゆる援助であります。
  115. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これは例によつて憲法論議の詭弁的な、政府の大橋法務総裁を以て代表されておるところの詭弁的な我がまま勝手な、そういう憲法論議をあなたが受売りしておられるわけですが、そういうことを、この国会のこの場限りのことを言われても、これは日本国民に、大きなこの強制的なあらゆる援助の要求が出て来るということは、この文字の上からも明快であり、これについては、憲法論については、先輩の、特に一松先生のような大家が、もうこれは十分明らかにして下さるので、私はこの問題についてもう少少し先へ進んで、そういう法律論的でなくて、政治的な論議に移りたいと思いますが、我々の耳にいたしておるところでは、吉田総理が両院の国会において、予備隊は朝鮮に出さないということを余り大きな声で言われたので、太平洋の向うまで響いて、急にドツジ氏が来られたなどという噂まで耳にいたしておりますが、如何なものでございましようか。
  116. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) そういう事実は承知いたしておりません。
  117. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今朝鮮では停戰会談が行われ、停戰協定が成立するかに見え、又これが決裂するかに見えて、我我は非常に心配いたしておるのでありますが、数日前、ロイター特電によりますと、英連邦の軍司令官ロバートソン中将が、敵は優れた装備を持つており、国連側の損害は今後更に大きくなるかも知れない、敵の彈薬補給は無盡蔵である、国連軍の立場は一九一六年のフランスの軍隊の状態に似ておる、つまり冬将軍が近づいて来ておる。こういうことをロバートソン中将が心配されておりますが、近い将来に日本が再軍備をせざるを得ないそういう状態に追込まれることは心配がないかどうか、これは一つじきじき総理から心配がないということを、これだけは一つ総理自身から、ないというところを聞かして頂きたいのであります。
  118. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 心配はありません。(笑声)
  119. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 御回答を得て非常に満足でございます。(笑声)万一あなたのここで明言されましたないというそれが、政策転換せざるを得なくなつたとき、あなたはどういう責任をとられるでしようか。
  120. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういう場合がありませんから、責任はここで論じません。
  121. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は仮定の條件には答えられぬとあなたがおつしやるだろうと思つておりましたところ、そういうことはないという観念論哲学でおいでになつたので、(笑声)まあそういう答弁のほうが御都合がいいだろうと思いますが、これは恐らく総理は答えられないと思う。これに答を求めるということは私は必要ないと思う。(笑声)なぜならば、もう数カ月のうちに私は総理の先ほど言われたことについて重大なる問題が起きるというふうに考えざるを得ない見通しを持つておるから、先ほどの、絶対にしない、そして恐らく総理は、そのとき内閣を投げ出せば済むと甘く考えておられるとすれば、私は政治的責任は重大だと思う。現に来月ダレス氏が急遽日本に再軍備の話合のために来られるだろうという意味のことを新聞がたくさん伝えておる。だから私はあえてこれ以上この問題について質問いたしません。あなたは今しないということを言われ、それが破綻するはずがないと答弁されました。併し最近の世界情勢は一月で平素の一年の変化を遂げて参ります。来月一つ又あなたの信念を拜聽することにして、僕の質問を終ることにいたします。(笑声)
  122. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 以上によりまして、平和條約に対する総括質問は終了いたしました。  次に、日米安全保障條約に関する総括質問に移ります。
  123. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私はこの前の質問のとき申上げましたように、総理大臣がこの両條約に調印されたその基本方針については賛成でありまして、共産勢力が予告なく南鮮に侵入した事実がありますときに、日本独立と安全を守るためにこの安全保障條約を結んだ、こういうふうに総理大臣が言つておられることに対しましては同感であります。我々も今までのこの委員会の審議を通しまして、少しでもこの條約の真の姿を広く国民にわかつてもらつて、全国民に一人でも多く喜んでこの條約に賛成をしてもらいたいというので努力をいたして来たのであります。併しすでに衆議院におきまして、社会党ではこの安全保障條約に反対の意思を表明せられております。又東京大学の南原総長等の知識階級も、はつきりこの條約殊に安全保障條約に対して反対の意見を公にしておるのであります。去る十一月の十二日、京都大学の行幸におきまして、一部学生がプラカードに條約反対というようなことまで書きまして、そうして天皇陛下に迫つたというような事実もあるのであります。この両條約締結を前にいたしまして、国内は騒然たる形勢を増しておるのじやないかというふうに心配をいたします。国民は両條約に対して、殊に安全保障條約に対して疑いの念を抱いて来たのではないかというふうに思われるのであります。この際総理大臣は、これらの情勢に対してどういうような御所見を持たれておるか、それを承わりたいのであります。私どもはこの條約が批准をされ、発効を見るに至りますならば、アメリカ側の、又批准してくれた連合国側の好意と申しますか、それに応えまして、円満履行について国民が納得して行くようにいたしたい、こういうふうに考えておるのであります。これらについて総理大臣の御所見を伺いたい。
  124. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。今日一国の平和は結局全体の平和に関連するのでありまして、或る一部において戰争が発生すれば、それが全世界に及ぶような情勢にあるのでありますから、日本の平和、日本の秩序ということも、米国世界の平和を考える以上は、又国連世界の平和を考える以上は、日本の平和が乱れるとか、日本の秩序が破壞されるとかということは、單にこれは日本の一国の問題ではなく、全世界の問題として考えて、遂に安全保障條約を結ぶに至つたのであります。今日事態が乱れておると言われますが、私は或る一部に起つた学生の運動等を以て、日本が今日非常に不安な状態であるということは考えられません。むしろこういう安全保障條約がない場合においては、日本独立した、そうしてみずから守る軍備はない、然らばどうして日本独立を守るか、その当てがない場合において国民は非常な不安を抱くでありましようが、併し一応の安心は安全保障條約で付くであろうと思います。故に安全保障條約は平和條約と不可分な関係において締結いたしたわけであります。
  125. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 一部の者が納得が行かない、その一部が今申したような社会党というような労働階級に基盤を持つた政党であり、又これが反対をせられた理由にもいろいろの理由はございましよう。併しともかく自由党と並んで二大政党の一つが反対をしておる。又最高学府という言葉は当りませんが、日本の最も文化の中心であるべき大学の総長が反対を公言している。こういうことになりますと、やはり国民のこれに対する疑いというものはだんだん深まつて行くのでありまして、これは私は恐らくこの條約は多数で可決になることと信じますけれども、この條約の円満履行について心配があるのであります。そういうことについて、それが円満に履行され、皆国民を納得させられる、その御用意がどういうふうにあるかということを総理大臣にお尋ねしたいのであります。
  126. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この條約に対して種々批判もあるでありましよう、又自由な批判をすることが民主政治でありまするから、各自おのおのその所見に従つて自由なる言論を討わし、自由なる批判をなすことは我々も喜んでこれを承知いたしたいと思うのであります。併し現在の事態について、この両條約の性質については、私がこの国会において数十回に亘つて説明をし、又所信を披瀝いたしているのでありまして、私は国民の多数は納得しているのではないか、従つてこの條約は国会においても円満に通過可決せられるものと確信いたしますが、国民も私はその可決した理由については納得が十分行くであろうと私は想像いたします。又そう希望いたします。
  127. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理大臣が又一面にはこの安全保障條約が平和を確保するためのものである。決して共産主義国家群に対して戰いを挑むものでないということはその通りであろうと思います。併しソ連、中共側におきましては、必ずしもそうとつておらないのでありまして、すでにいろいろあちらでこの條約に対して国連憲章違反であるとか、いろいろ言つているのであります。新らしい戰争をソ連や中共にしかけるものであるということも宣伝をいたしているのであります。それで私は今後ソ連や中共の感情を激化させることなくして、即ちけんか腰でなくて、友好的に進めて行きたい、それが最も必要であると考えているのでありますが、総理大臣は恐らくこれは御同感と思うのでありますが、どういうふうな御感想を持つておられるか、惡くすれば原子爆彈が国民の頭に降つて来るのでありますから、それを防ぐためには、どうしてもソ連や中共とできるだけ仲よくして行かなければならない、仲よくして行く可能性は全然ないといつて捨ててしまつてはいけないのでありますが、その点に対してどういうふうにお考えになつておりますか、又総理大臣が今御覧になつて、ソ連や中共がこの條約を結ぶことによつて、向うから攻撃をしかけて来るというような危險な徴候は全然ないとお考えになつておりますか、それを承わりたいと思います。
  128. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この條約等について、米国内においてどういう議論が現に勢力を得ておるか存じませんが、いわゆる民主政治は甲論乙駁の間に国民が結論を付けるので、国民が健全な以上は健全な結論に帰着するのが民主政治の状態であります。英米その他の民主国においていろいろな議論はありましようが、この議論が即ち健全なる国民の結論に到達する一つの道程でありますから、これは喜ぶべきことであると思います。全体の傾向から申して、この條約はすでに四十四カ国が調印をいたしたというような状態であつて、サンフランシスコの講和会議の空気を見ても、私は平和が支配的の空気であるということを看取し、或いはソヴイエト、共産主義国に対する世論の賛成は私は得られなかつたことによつても、世界の平和はサンフランシスコ会議の結果として一段と進捗せられたと考えます。従つてこの條約によつていわゆる冷い対立が激化するということは信じられないのであります。これは将来のことに属しますが、而して日本としてはいずれの国とも戰争をするのではなくて、平和状態に入りたいという考えで、この條約を締結いたしたのでありますから、若し日本に対して平和状態に入りたい、條約の規定に従つて追加條約の申込がある場合には、日本としては喜んで考えるつもりであります。
  129. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 御答弁の足らないところもありますが、時間が十五分と限られておりますので、先を急ぐことにいたします。安全保障條約を総理大臣が署名をせられるに当りまして、こういう所信を明らかにせられたということが出ております。それは日本は自由と独立を回復した上は、その自由と独立を確保するため十分な責任をとらなければならないというのが私の、即ち吉田総理大臣の信念である。不幸日本は自衛の準備がない。従つて米国日本の安全が太平洋及び世界の安全を意味することを理解して、平和條約成立後暫定的に日本国内及びその附近に米国軍を配置して、共産主義の侵略を阻止することに同意されたことを多とする。日本国民は独立回復後、自信と自尊心と愛国心を取戻し、極東の集団安全保障に対する責務を負担し、又政府と国民はその條約の実施に当つて喜んで米国と協力する。こういうふうにアチソンに対して総理大臣が所信を明らかにせられた。そこでこの自信と自尊心と愛国心を取戻して、極東の集団安全保障に対する責務を負担する。こう所信を御披瀝になつたのはどういう意味であるか、それをお尋ねいたしたいのであります。一九四八年六月十一日のヴアンデンバーグ決議にも明定されておりますが、これは持続的にして効果的な自助及び相互援助を行うものでなければならないとしておる。そういう意味で、北大西洋條約以来のアメリカの集団安全保障体制に入ることを首相が約束をしておるものじやなかろうか、即ち将来軍備を持つことを意味するのじやないだろうか、こういうふうにも思えるのであります。言葉を換えて申しますと、安全保障條約前文の、アメリカ日本に、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に日本がみずから責任を負うことを期待するという期待に、この吉田総理大臣が所信を明らかにせられたことによりまして答えておられるのじやないか、こういうふうにも思えるのでありますが、その点を御説明願いたいと思います。
  130. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この私の所信なるものを率直に申せば、日本が他国の厄介になる、或いは他国の力によつて守らるるとか、他国の援助資金によつて日本経済生活を続けるとか、そういうような他国によつて日本の存立、独立を維持するというような事態を成るべく早く取去りたいと、日本が真に自信と自尊心と愛国心を以て日本の国家を守る、又守り得るという実力を備うるように至らしめたいというのが信念であります。ヴアンデンバーグの決議にも関係なく、又再軍備にも関係なく、一に日本が速かに真の独立、真の安全をみずから自力によつて保障する時代の一日も早く到来せんことの希望を述べたのであります。
  131. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そこでお伺いいたしたいのでありますが、この前文に只今読上げました米国としては「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」これは昨日法務総裁の御答弁によりましても、この漸増的に自国防衛のための軍備を持つことまで入つておるという御答弁がありました。それを「期待する」と、こういうふうに期待をしておるのでありますが、これは向うが勝手に期待しているだけだと、これを約束したわけじやないと、それはわかります。わかりますが、やはり前文にこういう期待が出ております以上は総理は如何なる構想でこの漸増的責任を負うようにされようという構想を持つておられるかどうか、その構想を承わりたいと思います。
  132. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本としては、相手国の期待に背かないように努めるべき義務があるのであります。又その義務を果すがためには国力を養う。又日本の国民のあらゆる方面が世界の平和に貢献する、或いは世界の文明に貢献する考えを持つ、決心を持つということによつて、この期待に副い得ることと思います。私はその日の来たらんことを切望いたします。
  133. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理は本委員会におきましても、しばしば再軍備考えないと言われております。その意味は、恐らくこの安全保障條約によりまして再軍備考えておるのじやない、こういう御意味だろうと私は解釈をするのであります。再軍備じやないのだ、再軍備考えてないと言われることは、この暫定的な安全保障條約を結ばれたこと、それによつて軍備を全然考えておるのじやないということは私はその通りであり、よくわかるのであります。併し日本はいつまでもこういうふうにアメリカ並びに国連に頼つてはおれないのでありまして、やはり成るべく早くこの外国軍の駐屯というようなことは、やめてもらわなければならないのであります。それで総理大臣も、衆議院で笹森順造君でしたかへの答弁で、日本としても成るべく短い期間であることを必要とするという答弁をせられております。これは速記録によつて確認をいたしておるのでありますが、その御意味は裏を返して言いますれば、成るべく早く国際連合の目的に合した再軍備をする必要があると、こういうふうに思つておられるのではないかというふうに思えるのであります。それは決して武裝平和というような意味ではない、固有の自衛権を完全にするために軍備というものを持たなければならん。それは成るべく早く再軍備する必要は首相も恐らく認めておられるのではないかと思うのでありますが、まあそれは今総理大臣がおつしやいましたように、国力と睨み合わせ、財政状態、賠償の問題、そういうものと睨み合わして、国民の意思を聞いて初めて実現に導かれるのではありましようけれども、そういう外国軍の駐屯を、日本としては成るべく短かい期間であることが必要であると言われている意味は、成るべく早く国力を充実し、財政の状態もよくし、賠償の問題も片付けて、そうして軍備をする必要がある、こういうふうにお考えになつているのじやないか、こういうふうに思のであります。その点をお伺いしたいと思います。
  134. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 頻りに私に再軍備の泥を吐かせようと御苦心のようでありますが、今は考えておりません。更に私の意味の、独立と言いますか、日本が自力で立つという日の一日も早からんことを希望する意味の一つには、アメリカの兵隊を日本に置くということは、アメリカ負担において相当なものがあるのであります。日本ばかしが負担するものではありません。従つて外国負担において日本独立を保障するということは有難くない。併し現在はいずれの国においても集団的防衛の方法考えているので、ヨーロツパにおいてもすでに然りでありますから、アメリカの兵隊がいるから日本主権を侵されているとか、屈辱的條約だとかいう、そういう卑屈な考えは私は持つておりません。若し集団的攻撃のあつた場合には集団的防衛の策を講ずるということは当然のことであります。併し成るべく相手国負担も少くしたい。その意味においても、日本経済的にも、又政治的にも独立を全うすることの日の一日も早からんことを希望するのであります。
  135. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それではもう時間が参りましたから次に簡單にお伺いいたしますが、これはよくこの委員会で各委員から問題にされておるのでありますが、安全保障條約の本文を見ますと、どうしてもこの極東における国際の平和と安全とを維持するために、日本アメリカ軍の駐屯を認めるということが主になつているのでありまして、そのアメリカ軍が日本の平和を守つてくれるために駐屯をするというふうに書いてないのであります。これが非常に誤解を起しているのじやないかと思うのでありますが、どういうわけでこういうような書き方になつたのか、きめ方になつたのか。そのいきさつをお話願えれば幸いと思うのであります。
  136. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今のお話によりまするというと、日本だけが権利義務があるのだというように、駐屯権を認めしめたことになるのではないかというお話でありますが、併しながらこれは條約の前文においても、又すべての全條約に通じた精神において、つまり世界の平和、日本の平和、極東の平和、この平和を守ることがアメリカの義務なりと考え日本にも駐屯をさせるというので、平和を守るということの精神から出たのでありますから、若し米国が、平和が危險な場合において日本独立を保護しないという場合には、我々は進んでその保護なり出兵なり、或いはその他のあらゆる手段を要求する権利があるということに解します。
  137. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 最後にもう一つお伺いいたします。総理大臣は、米国といえども平和を確保するために軍需生産を急いでおるのであるというお話がありました。私アメリカへ二ヶ月ほど行つてつたのでありますが、アメリカでは実は原子爆彈に備えまして全国的に民間防衛、シヴイル・デイフエンスという組織を作つておるのであります。その組織を完成するために非常に急いでおります。ニユーヨーク市では二万人の民間防衛隊を作り、ワシントンでは一万人の防衛隊を作り、バツフアロー市は附近のカウンテイーを合せて一万人の防衛隊というふうに、原子爆彈に備えまして、民間に、多くの人命を成るべく救い、又その損害を、火事等でありますか、それを成るべく少くするという組織を全国的にやつております。それでこの條約が批准になり又発効するようになりまして、我が国でも万一の場合を考えまして、こういう民間防衛というような組織が必要になることがありはしないかという気がするのであります。こういう事柄は今申すことではないかも知れません。併しやはりこういう條約を結んだときに当つて万一のことを考えておかなければならないと信ずるのでありまして、この点に関する総理大臣の御所見を伺いたい。
  138. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御質問の御趣旨は御尤もであります。我々もこれに対して不安なき能わざるものがありますが、併し何分国力が未だそこまで手を伸ばすだけの余裕がないものでありますから、適当な防空措置も講ずるなり、原子爆彈に対する防禦の方法も講じたいとは考えておりますけれども、何分国力が、或いは財力がそこに及ばないために差控えておりますが、又考えてもできないことと思いますが、併し他日国力に余力を生ずるか、或いは国際環境が急変いたした場合には、そういう必要も起るだろうと思います。併しなおこの点については政府も研究を進めております。
  139. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 時間がございませんので成るべく急いで申上げたいと思うのでありますが、三、四点総理にお伺いいたしたいのでありますが、先ず始まりにこの安全保障條約の本質には直接には余り接触しない、中へ入らない形式上の問題について一、二点お伺いいたしたいと思うのでありますが、安全保障條約の最後の署名者を見ますると、日本側を代表いたしまして吉田全権一人が御署名になつておるのであります。アメリカ合衆国の所には講和條約に署名いたしましたアチソン、ダレス、ワイリ及びブリツジスの四人の講和條約の署名者が、同様にこの安全保障條約に署名いたしておるのでありますが、講和條約の署名者といたしましては吉田総理大臣以外なお五名の全権が署名いたしておられるのでありますが、なぜ講和條約には六名の署名者があつて、安全保障條約には吉田総理大臣だけ御署名になつたのであるが、そのいきさつにつきまして、この機会に一応御説明が願いたいと思うのであります。
  140. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは全権団が署名することが望ましくあるのでありますが、併し全権団の中には立場を異にしている全権もあり、又党内における議論の合わない、まだ一致に至らなかつた、成立については全権も賛成しているが、国内の事情からして党議がまとまつておらないかたもありますから、それで政府だけが、一応を国を代表して、これは全権委任状にもあります通り、各個に若しくは共同してということになつておりますから、私一人で署名いたしてもあえて米国においては異議がないのでありますから、便宜上私が政府を代表して署名したのであります。
  141. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そのことにつきましてもなおいろいろと御質問申上げたい点があるのでありますが省略いたしまして他日聞くことにしまして、更に形式上の問題についてお伺いしたいのでありますが、この條約の前文にいろいろと文言が述べられておるのであります。講和條約の前文に関しまして、先に政府側のその法律的な性質というような問題につきまして、他の委員からも御質問があり、私も質問いたしましたところが、西村條局長及び外務政務次官から、この條約の前文というのは道徳的なものであつて、條約の理想であるとか目的のようなものを書いたに過ぎないところのものである、そうしてそれは拘束力をば持たないものであるというような御答弁がありまして、私は腑に落ちないものでありますから、いろいろとそのことにつきまして究明をいたしたのでありますが、依然としてその意見は変りりなかつたのであります。それで私も多少その後調べてみたのでありますが、国際法定者のこうした條約の前文についてのことを書いたものは、私の調べました範囲内においてはあまりないのでありますが、たまたま立法考査局のほうで調べてくれましたものの中に、国際連合憲章の註解及び記録、チヤーター・オヴ・ザ・ユナイテツド・ネイシヨンズ・コンメンタリー・アンド・ドキユメンツという本がありまして、それはアメリカのあまり大きくない大学でありますが、一流の大学でありますブラウン大学の政治学の教授をしておりますグツドリツチという人と、国際司法裁判所の職員でありますハンブロウという人が書いておりまするこの国際連合憲章の註訳の本の中に、やはりこれはその目的及び性質の制限内においては、国連憲章の前文についてでありますが、この憲章のほかの部分と同様な法律的価値を持つているものである、ザセーム・リーガル・ヴアリユーを持つているものであるということが書いてあるのでありますが、私は当然そうであると思うのであります。これはやはり一つの條約の一部でありまして、法律的なヴアリユーを持つ、従つてそれは法律的な拘束力を持つているものでありまして、我々がこれを受諾いたしましたときには、政府側が、あなた以外の政府委員の人が私に答えておりまするような、單なるモーラル・オブリゲイシヨンにとどまらないで、リーガル・オブリゲイシヨンを伴うものである。このように私は解釈いたしておるのであります。ところが国連憲章に比べますというと、講和條約の前文は非常に具体的なことを書いております。更にこの安全保障條約の前文というものは極めて具体的な事項が、先ほど来問題になつておりまするように書かれておると思うのでありますが、ほかの政府委員の私に述べました意見にかかわらず、政府の首脳者でありますところの吉田総理大臣は、この重要なる具体的事項がここに規定されておりまするところの本條約の前文というものは、他の政府委員が私に答えましたように、ただ單なる道徳的な義務を伴うだけに過ぎないところの、極端に申しまするならば、どのようなことが書かれてあつたところで、大して拘束力のない効力のないところの空念仏のような道徳律に過ぎないものであると、政府委員が言つておられますが、そのようなお考えをお持ちになるものであつて、私が解釈いたしておりまするのと違つて、法的拘束力を持たないものである、法的義務を持たないものであるというようにお考えになつておるかどうかということをお伺いいたします。
  142. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 専門的御質問でありますから、政府委員をして答弁せしめます。
  143. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは従来とも御答弁申上げましたように、同じ前文におきましても、平和條約の場合と安全保障條約の場合とはいささか違つておりまするが、平和條約の場合は、大体條約の内容の精神を大ずかみにして前文として出しておると一応考えられる。安全保障條約のほうにおきましては、大体は経過を一応述べておるのが前文であります。従いましてこれらの前文につきましては、何にも空念仏ということは考えておりません。併しそれはいわゆる法律的な義務というような立場よりも、むしろ道徳的な義務という立場においての前文と政府は解釈いたしております。
  144. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 なお深くいろいろお尋ねしなければならんのでありますが、時間がございませんからこれは了解いたしかねるということを申上げまして、その次のことをお尋ねいたしたいと思うのであります。  それは、この第三條に規定されておりまするところの、問題になつておりまする行政協定に関連してでありますが、それにつきましての私の質問を展開いたしまする前に、関連性がありますので、過般講和條約に関連いたしまして総理に御質問いたしまして、代つて大橋法務総裁が答えてくれられたのでありますが、あのたびたびこの委員会で問題になりました義勇兵の問題との関連性であります。で、先ずお伺いしたいのは、先般数日前の委員会におきまして私が議員提出案として、義勇兵を外国が、アメリカその他の国が募集するということに対して、日本人は応募してはならないというところの法律を国会において制定するように、そういう法律案を私が出したいと思つているときに、これに対する政府の意向如何ということをお尋ねいたしました。法務総裁はいろいろ言を左右にして明確なる答弁を初め避けられておつたのでありますが、吉田総理からそれには反対しろというところのサゼスシヨンが私の前で法務総裁に与えられまするや、法務総裁は反対であるというような意味の御答弁があつたのでありまするが、時間がないのでそのあとを御質問することができなかつたのでありますが、私は今日なお自分の耳を多少疑つておるような感があるのであります。それで大橋法務総裁は、総理の御指示に従つて私の前でそういう御答弁になつたのでありますが、或いは総理が、外国語、西洋の言葉などで言いますところのイエスかノーかというときには、日本語の表現によらないで、その内容を中心にしてノーとか或いはイエスと言うように、新聞には、私がそういう法律案を出すということには反対であると大橋法務総裁は答弁したということに新聞記事はなつておるのでありますが、私はむしろその反対で吉田総理が大橋法務総裁に御指示になつたところのお考えの肚はその反対であつて、即ち日本人が外国の義勇兵として応募するというようなことはいけない、そういうことはノーであるという意味において、私は法務総裁に御指示になつたのではないかというように伺つておるのでありますが、じきじきこの機会に、この問題につきまして吉田総理から今一度御答弁を明確にお願いしたいと思います。
  145. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の考え方は、現在日本が再軍備をしはしないか、或いは日本において再び軍国主義が興りはしないかというような疑いを以て日本の行動を注視されておる今日に、義勇兵の問題とか再軍備の問題をかろがろしく口にするということは、列国の疑惑を引き起すことであり、又講和條約、平和條約の締結を前にして、徒らに諸外国の疑惑を引き起すことは日本としてよろしくない、故に私としては義勇兵の問題が出ました場合には、反対いたします。政府も反対いたします。自由党も反対いたします。
  146. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そうすると法務総裁が私に答えられました場合と、内容が反対のようになるのでありまして、全く私は吉田さんがおつしやる御答弁の趣旨に副うた考え方をいたしておるので、大橋法務総裁の答弁が誤つてつたというように、今の御答弁ではなると思うのであります。  それで結構でありますが、更にそれをもう一つ明確にしたいという立場から、参議院の議長でありまする佐藤尚武氏が新聞紙上の記事でありますが、朝鮮事変に際して日本人は進んで国連側の、或いは韓国軍側の義勇兵として応募すべきあるというような御議論が出ておるのを拝見いたしたのであります。その新聞記事の正確、或いは不正確ということは第二の問題といたしまして、そういう考えがともかくある。そうして総理大臣と相並んで日本の社会の代表者である参議院議長の言として出ておるのでありますが、右のことにつきましては、私に先ほど御答弁願いました御趣旨に従いましては、佐藤さんのようなことを言うことはよくないという結論になるのだと私は推察いたすのでありますが、それについて明確なる一つ答弁が伺いたい。
  147. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 各自が自己の意見を自由に発表することは、民主政治の下において無論許されることであります。故に佐藤議長がどう言われたか私は存じませんが、佐藤議長個人としての意見は自由に発表せらるるがいいと考えます。
  148. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それでは佐藤さんの御意見には反対であるというお考えを持つていらつしやるものと解釈いたしたいと思うのであります。それでこの問題について最後にお尋ねいたしたいことは、よく対照されておりまするこの行政協定内容につきまして、アメリカとフイリピンの間の軍事基地に関する協定の第二十七條にこういうことが規定されております。「合衆国は、一定期間の合衆国軍隊への自発的入隊のためにフイリピン国市民を徴募し、且つ、これらの市民を訓練し及び合衆国軍隊の他の所属員の場合に行われるのと同一の程度の取締と紀律とをこれらの市民に対して行う権利を有することが、相互に合意された。合衆国軍隊が受け入れるこの入隊の人数は、両国政府間の合意によつて随時制限することができる。」こういう行政協定があるのでありますが、この第三條と行政協定との関連性におきまして、このような規定が行政協定の中へは、先ほどのお話から又その他の点からいたしまして入つて来ないことになると思うのでありますが、一応それにつきましての首相の御意見をこの機会に承わつておきたいと思います。
  149. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御想像の通りであります。
  150. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それでは最後に一つお聞きいたしたいと思いますことは、これは新聞記事でありまして、大変恐縮であります、又新聞記事に責任は持てんと多分お答えになるかと思いますが、今月の十四日の有有力新聞の一つであります東京新聞が、ダレス氏が来月来られるということを書きまして、その日本訪問に関するところの使命というものは、日本の自助態勢を示唆することであつて、安全保障條約のみではいけない、「のみに頼れず」というところの見解の下に、いろいろの示唆を日本政府にしに来られるのであるというところの記事がまあ載つておるが、その中には、特に安全保障については、「一、日米安全保障條約の締結のみで事足れりとせず、速かに自動態勢を確立すること 一、しかし旧式な再軍備方式は役に立たず、原子力時代に適した構想でなければならぬこと  一、米国としては日本に自助と相互援助の基盤が確立されればヴアンデンバーグ決議により安保條約がより有効に活用されるための措置として武器貸与なども考慮されうること  一、さらに集団的攻撃に対しては国民の自覚が第一要件なので政府はこの点に留意して政治を行うべきこと」と、まあこういうことを書きまして、この記事が、新聞の記事によりまするというと、政府筋の意見であるとして報道せられておるのであります。でいつもお言いになりまするように、直接的に新聞記事に対して政府は責任を負わないとおつしやるお気特は十分私にはよくわかりまするが、それから離れまして、ダレス氏はともかく来月来るということは事実だろうと思います。でそのときに安全保障協定のことについてやつて来るのであるということも、まあ大体想像されると思いますが、ダレス氏がどういうことを言うとか何とかいうこと如何にかかわらず、この行政協定内容にこういうことを規定するということを、アメリカ政府からプロポーズして参りましたときに、提案して参りましたときに、政府はどういうお考えに立つてこれに臨まれるかということがお尋ねいたしたいことの第一点。  それから第二点は、日米安全保障條約の締結だけでは足りないという、まあことになつておるのでありますが、日米安全保障條約だけで、この講和條約及び安保條約の目的といたしておりまするところの、アジアにおける平和の確保というようなことができる、これだけで足りるというところのお考えで以て、我々にこれに対する賛成を求めていらつしやるのであるかどうかという点。この二点につきまして御答弁を願いたいと存じます。
  151. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 第一段のダレス氏の日本へ訪問せらるる趣意、用向きについては私はまだはつきり聞いてはおりませんが、正確なことは聞いておりませんが、新聞に書いてあるようなことはないと思います。それはどこかの聞きかじりではないか。然らばアメリカ政府からそういう提議をされた場合に何と答えるか。これはあらかじめ答えをここで発表いたすことはこれは向うに対しても失礼でありますし、私としても慎みたいと思います。第二点……
  152. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 安保條約だけで事足れりとしていないというのですから、事足れりとしておるかどうかということを承わりたい。
  153. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はこれだけで事足りると思います。又足らしめたいと思います。
  154. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 時間がないからこれで終つておきます。
  155. 永井純一郎

    永井純一郎君 議事進行について。理事会で総理が三時までおられるということを我々も了承しておつたのでありますが、先ほどの岡本君の原子爆彈に関する質問に対して総理がお答えになつたのでありますがそれによりますと、原子爆彈の危險がある、そこで財政等の立場から、許せるものならば対策を講じたいという意味の答弁をされたことは、これはもう重大な……。
  156. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 議事進行にとどめて頂きたい。質問に亘らないように願います。
  157. 永井純一郎

    永井純一郎君 これは重大な私は御答弁であつたと思う。従つて三時まででお帰りになるとすれば、あともう十五分ぐらいしかありませんが、若しそういうお考えの下に今日まで平和條約並びに安保條約に対する御答弁をずつとしておられたとするならば、私どもはもつと聞き質して総理から直接御回答を頂きたいことがたくさんあるわけであります。例えば原子爆弾やその他の危險を冒して、その危險を覚悟の上でこの両條約を結ぶという建前をとる場合には、私どもはこの條約によつてどのような実力を、どの程度行使して我が国の安全を保障してくれるのかという軍事的な、或いは数字的な点まで明らかに我々が理解しない限りにおきましては、これに賛成してよいものか反対してよいものかさえわからないという重大な観点に立つて来ると思います。で、我々は本当は、総理がしばしば繰返されるようにこの両條約によつて我が国の安全が確実に保障されるという自信を持つているということを先ほど来言つておられる、従つてそういう危險はない、むしろそういう危險を防ぐためにこの條約が結ばれるというふうに一貫して御説明があれば、これはこれで我々も理解するところがあるのでありますが、先ほどの岡本君へのお答えを聞いた以上は、私どもは御説明によつてのこの程度のものでは了承し難くなつて来ると考える。それを御承知通り、今度この安保條約を結べば、今度は日本の国民はみずからの意思によつて中ソ友好同盟と相対抗する。みずからの意思によつて敵対関係にも入るということに今度はなるわけであります。従つて……
  158. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 永井委員に御注意いたしますが、質問に亘りますからそれはあとにして頂きます。
  159. 永井純一郎

    永井純一郎君 簡單です。従つてそういう心配を国民のすべてがしております。そういう際に持つて来て今のような御説明だと、これは三時でおしまいにしてしまうというわけには私どもは行かんと思う。更に時間を十分頂いてこの点を検討しなければ、私どもは国民に対して、参議院のこの條約委員会の審議を十分にしたということにならないと考える。そういう意味で皆さんに更に今後もう一度来て頂いて、その点を明らかにするということをするかどうかを皆さんに諮つてもらいたい、私はこう思う。
  160. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 只今の永井委員の御発言についてはあとで理事会を開きますから、そのときに御相談をいたしたいと思います。御異議ございませんでしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは加藤委員
  162. 加藤正人

    加藤正人君 だんだん私の時間がなくなりましたが、この條約はいろいろ逐條的に御意見もあるようでありますけれども、大体において私はこういうふうな結果に、こういう條約を結ばなければならなくなつたという結果に到達いたしたことは、これは当然でありまして、我々はこれを了承するものであります。恐らくこれに反対される諸君も、自分たちが反対すればこの條約が駄目になるというような場合であれば、恐らく反対はされないだろうと思う。自分たちが反対してもとにかく何とかなるんだろうという安心の下に反対されているのではないかと私は思うのであります。併しながら和解と信頼の條約と申しましても、個條的に見ますれば必ずしもそうでない点もあるのでありますが、我々は総合的に見て先ずこの程度ならば止むを得んと了承するものであります。排しながらかような條約の締結に当りまして、その條文の解釈から来る将来に対するいろいろな不安の伴うことは、これ止むを得んのでありまして、そこで安保條約の第四條に「この條約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」ということが明記されてあります。これを疑つたのでは頭から條約を結び難いのでありますが、相手国国内の政局の変化、国際情勢の推移から相手国国内の輿論に変調を来たした場合等においては、勢いそこに無理を生ずる虞れが多分にあると想像されるのであります。日米両国の政府が認めたときとあるが、その認める対象がはつきりしたものでない限り、必ずそこに議論の余地があると思うのであります。これが私は心配に堪えないのであります。終戰以来アメリカ日本に対する好意に対しましては、真に感謝すべきものがあつたに違いないのであります。併しその好意も日米が利害を同じくしていることが前提となつて、その好意が期待し得るのでありますが、将来国際情勢にいろいろな変化が起り、日本にばかりかかわつていることができない、そういうことがアメリカ利益を別に伴うものでない、ただ負担のみである、重荷だけであるというような場合に立至つたとき、又は今までも議論のありました西欧第一主義が大勢を支配するという程度アメリカで輿論化されたようなときには、自然條文にある両国政府が認めた時という点に議論が生じて来るのではないかと思うのであります。つまり二つの場合、日本は行政協定内容はどうあろうと、まだ我々はわかりませんが、行政協定によつていろいろな問題がある。であるからもう大体認めるときになつたと解釈するが、もうどいてもらえんかと日本のほうで望んだ場合に、果してアメリカがそれに同意をしてくれるか、又反対のような場合もあり得ると思うのであります。でありますからどうぞかような点におきましては十分将来に問題を残さないように、大体両国政府が認めた時という、これは余り抽象的でありますので、何かこれにはつきりしたよりどころを今日から作つておくことが、両国親善のために将来のためいいのではなかろうかと私は考えるのであります。もう時間もありませんので、私は簡單にこれで終ります。
  163. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。この條約はいわゆる安全保障條約に代る措置ができた、できたことを両方が認めた場合に、つまり安全保障條約が不必要になつた場合において両国の話合いの上でやめることになつているのであります。一方的に廃棄するということはできません。又輿論の傾向が違つたとか、或る一国における国内事情のためにこの條約を廃棄することは條約の観念に違いますが、両方の話合いにおいてそれ自体が認められるならばやめるということが規定せられているので、一方的に廃棄するということは、これはたとえ国内の事情が違つても、條約の性質の上からして一方的に廃棄するということはできません。又話合いが付かない危險があるじやないかということになりますと、すべての條約に同じ問題ができるので、この條約は話合いで以て必ずその終期については話合いが付くはずであります。一応お答えいたします。
  164. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 日米安全保障條約に対する総括質問は明日に讓りまして、昨日の引続きといたしまして、外務省及び法務総裁に対する質問を続行いたします。
  165. 堀眞琴

    堀眞琴君 安全保障條約の逐條審議につきまして、大橋法務総裁にお尋ねいたしたいと思います。  先ず第一に、これは昨日堀木委員の質問があり、これに対して大橋法務総裁から答弁のあつた問題であります。又その前に一松委員から提起された問題でありまするが、條約と憲法の関係であります。大橋法務総裁の御説明によりますると、憲法に違反した條約にそれが正当の手続によつて成立する場合においては、これは国際的には有効である。但し国内的には憲法が優先するが故にこれを無効とするのである。国際的には有効であるが、国内的には無効である、こういう御答弁を繰返されているのであります。この問題は條約と憲法との関係の問題として極めて重要な問題であり、單に国内法或いは国際法の問題としてだけでなく、現実の問題としても我が国の今後の動向、方針なり、或いは條約締結に関する問題と関連して極めて重大な問題ではないかと考えられるのであります。  そこでこの問題につきまして、先ず第一にお尋ねしたいのは、憲法九十八條第一項にあるところの、「国務に関するその他の行為」というこの條項は、七十三條に規定されておりますところの「條約を締結する、」この国務行為を含むかどうかということを先ず第一にお尋ねいたしたいのであります。
  166. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 條約締結の行為は、当然国務に関する行為に含みます。
  167. 堀眞琴

    堀眞琴君 七十三條の條約を締結する国務に関する行為は、当然九十八條の第一項においても同じ意味内容を持つものであるという御答弁であります。そうしますと、九十八條によりまして、最高法規たる憲法の規定するところと、條約を締結する、これは締結するということは調印並びに批准を含むものと解釈することができると思いますが、締結のための調印なり批准なりが当然憲法に規定された條章に従つて、若しこれに違反する場合においては全部又は一部はその効力を失うということにつきまして、大橋法務総裁の御答弁をお願いしたいと思います。
  168. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 締結行為の手続が憲法に違反しておりまする場合においては、これは当然憲法の規定によつて無効となる、こう考えております。
  169. 堀眞琴

    堀眞琴君 締結行為ということは、要するに調印と批准との二つの国務に関する行為を含むと思うのでありまするが、その條約の内容につきましても、やはり締結権者としては、当然憲法に従うべきことを根本の原則としてとつているものと考えなければならんのであります。ところがその締結権者が合法的に、合憲法的に締結権を行使したとしても、その内容が何らかの瑕疵によつて結締権者が過ちを犯したというような、つまり憲法の條章に矛盾したような内容を含む條約については責任を持たなければならんということは当然だと思うのであります。従つて條約の内容についてもやはり合憲法的であるということが要求せられると思うのでありまするが、その点に関しましては如何お考えですか。
  170. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 條約は国内において効力を持つためには合憲法的であることが必要であります。
  171. 堀眞琴

    堀眞琴君 つまり合憲法的であるということは、国内に効力を持つことであるという答弁であります。ところで国際法関係であります。国際法上国家は国家意思を條約の形において表現するわけであります。その表現された現実の国際條約は、従つて国家意思として当然国家意思の最高準則であるところの憲法に従わなければならんと思いますが、その点につきましては如何お考えですか。
  172. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 條約を政府締結し、又は国会が承認する場合におきまして、その内容が憲法に適合しているかどうかということを審査するのは当然であります。その内容が憲法に適合することを必要とするものであることは言うまでもないと思います。
  173. 堀眞琴

    堀眞琴君 国内法親の場合におきまして、憲法に違反して法律が制定される場合があるのであります。その場合においては、立法者がその法律を撤回する、乃至はアメリカ日本のように最高裁判所に法律審査権の認められている所におきましては、最高裁判所が違憲の判決を下すことによつてその法律の無効が認められるということになつている、これは国内法の問題であります。国際法の問題につきまして、その国家意思の表明として締結された條約の内容が若し憲法に違反すれば、憲法は私はその国家の最高の準則、最高の基盤だ、こう申すことができるのでありますが、そのグルント・ノルムたる憲法に対して條約が若しその内容において矛盾するという場合においては、勿論国内法においてはこれは当然のことでありますが、国際的な関係においてもやはりこれは無効と認めらるべきものでないかという工合考えますが、如何ですか。
  174. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そういう学説もありまするが、私としてはその場合においてもその條約を締結したということによつて日本政府としては拘束力を持つというふうに考えます。
  175. 堀眞琴

    堀眞琴君 私はその学説のことをここで申しておるわけじやないのです。学説、フエロドロスがどうしたとか、アンチロツトがどうしたということをここで取上げておるのではなくて、実際の條約の締結に当つて、国家としてとるべき態度はどうかということを中心にお話申上げておるわけであります。ところで一九二八年の汎米会議において條約に関する條約が締結されておるわけであります。それによりますと、第一條は條約の締結に関して、條約は必ず各自の国内法令に従つて締結されなければならんということが規定され、更に第六條には批准の方式規定されております。これ又当該国の法令に従つて文書によつてなされなければならないということが規定されておる。更に第七條に批准の拒否と留保と題する條項がありまして、これ又それぞれの国の主権に固有な行為であつて、留保することもできれば拒否することもできるという規定があるのであります。このハヴアナの條約に関する條約は汎米会議の所産でありまして、国際法上のやはり一つ原則として私は認めらるべきものだと思います。第一條は勿論この締結国内法現に従つて正当に締結されなければならんということを規定したのであつて、それから又第六條の批准の方式につきましても、それぞれの国のそれぞれ定める法令に従わなければならんということを規定しておるのでありまして、こういう観点から申しますというと、国際法上やはりそれぞれの條約を締結する国の憲法に違反した行為は、当然無効とされるというように解釈すべきではないかと思いますが、この点に関する大橋法務総裁の御説明を煩わしたいのであります。
  176. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そこに書いてありますごとく、條約の締結に際して各国の憲法に従わなければならないし、又批准についてもそれぞれ各国国内の憲法によつて批准をすべきである。その方式を欠いたものはこれは当然無効となるであろうと思います。併しながらかような点において国内憲法に則つて締結された條約の内容が、たまたま国内憲法に矛盾するというような場合におきまして、その條約は当然に無効というふうに見るべきものではなく、それはやはりその国の政府を拘束する拘束は持つておる、こう私は解釈すべきものと考えます。
  177. 堀眞琴

    堀眞琴君 私が先に国内法上、憲法と一般の法律との間に、その内容の矛盾するものがある場合においての一つの例を引いたのでありますが、あれと同じような関係が国家を主体として考える場合には考えられるのではないかということをお尋ねしたのであります。ところがそれに対しましては別に御回答がなかつたのであります。もう一度申しますというと、国内法において憲法に違反した法律は、立法者がそれをみずから撤回する、或いは最高裁判所において法令審査権を認められておる国々におきましては、最高裁判所が違憲の判決を下すことによつてその法律は無効とされる。それはどこの国においても一般に認められておるところであります。そこでこれを国際法の場合において考えますというと、国際法を優位にするか、国内法を優位にするかといつたような学説上の論争はここで私はいたすつもりはないのであります。実際の国家意思の発動としての條約、一方は国家のグルント・ノルムとしての憲法であります。 この両者の関係をどのように考えて行くか、どのように調整するかというところに重点があると思うのであります。国家を中心として考えますならば、当然グルント・ノルムとしての憲法を中心に考えて行かなければならん。單に国内法だ、国際法だというような形で以て両者を分離して考えることは間違いではないか。グルシト・ノルムとしての憲法を中心に考えて行くとするならば、当然に條約の内容が憲法に矛盾する場合においては、それを調整する意味において何らかの手段を講じなければならない。大橋法務総裁は国際的には有効である、国内的には無効であるというような形でこの問題を放置したのでは、少くとも單一の国家意思の表明としての條約の効力に非常な欠点を残すのではないかというような工合考えるのであります。そこで国家意思の表明としての一方の條約について、国内法規における憲法とその他の法律との関係のごとく、締結権者がみずからこれを瑕疵であるとして無効とする、乃至は最高裁判所その他の権威ある法的解釈者が、これに対して一定の解答を与えるべきものであるという工合考えるのでありますが、その点について御答弁を願います。
  178. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 批准されました、條約に対しまして、批准をいたしました国が国内憲法に違反しておる、内容が違反しておるという理由を以て、その條約の無効を一方的に宣言するということは認められない、こう私は考えます。
  179. 堀眞琴

    堀眞琴君 一方的に宣言することは認められない、その締約国の一方だけの宣言ではいけないのだ、こう言われるわけですね。国際條約は確かに一又は二以上の相手国間に結ばれる約束でありますから、一方の意思だけによつて無効とされることはできないということも考えられます。併し私が言うのは、憲法の條章に違反した場合、それは果して国際的には有効であるとか、国内的には無効だという、そういう関係だけで以て律することができるか、それならそれとして果してそれをどう調整するか、これはこの前の大橋法務総裁の御意見では、憲法を改正するなり或いは條約を修正するなり、或いは條約を修正することができないとするならばどうとかいうようなお話もあつたのであります。私はそれの調整の問題として、例えば條約によりましては、国会の承認を留保條件として條約を結ぶ場合もあり、それから又憲法の條章にこれが適合するものであるということの一応前提の上に、それをやはり留保條件として條約を結ぶ場合もあるこれは條約を結ぶ一つの形式としてかなり周到な用意の上になされるものと思います。條約と憲法との今のような問題を調整する方法として、單に、前に総裁が言われたような方法だけを考えておるのか、その点についても一つお尋ねしたい。
  180. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 調節の方法が必要であるということは、これは即ちさような條約が條約として存在し、批准した国に対して拘束力があるということを前提にして、初めて考えられると存じますので、この点は結局、国内法の憲法に違反した條約が決して当然無効と認めるべきものでないということを前提にしての御質問だと存じます。こういうことになりますれば、調節の方法として先ず一番必要なことは、さような国内の憲法に違反するような條約を締結し、或いは批准したりしないということが何よりの調節の方法であります。併し誤つてさような條約ができた場合におきましてはどうするかということになりますと、前回申上げましたごとく、国内の憲法を改正することによつて、條約内容国内においても実質的に実行いたすか、或いは又相手国との話合いの上に條約の憲法違反の事柄を修正してもらうか、どちらかをやる以外になかろうと思います。
  181. 堀眞琴

    堀眞琴君 この問題はこのくらいにしておきまして、安保條約の逐條審議に移りたいと思います。安保條約の性格につきましては、明日吉田総理にお尋ねすることといたしまして、この安保條約の目的、それから米軍の発動すべきそれぞれの場合などについてお尋ねいたしたいのであります。この條約によりますと、目的としては、要するに極東における国際の平和と安全のためである、日本をそのために防衛するのだということになつておるのであります。その前提として、無責任な軍国主義が今日なお世界から駆逐されていない、従つて無防備の日本は非常な危險にさらされ、日本平和條約がアメリカとの間に効力を生ずるのと同時に、安全保障條約をこちらのほうから希望する、これが目的だと思う。ところが無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないという御認識は、一体どのような根拠の上に立つて言われておるのか、軍国主義というものはどういうものであるかということについて、大橋法務総裁の御見解をお伺いしたいのであります。
  182. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは私のほうからお答えしたほうが却つて都合がいいと存じますので御答弁申上げます。無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていない、これはいわゆる軍国主義の状態が世界は勿論、極東にもあつて、而もその具体的問題として朝鮮動乱のような姿が現実に現われておる、こういうのでございます。
  183. 堀眞琴

    堀眞琴君 外務次官の解釈では、朝鮮事件も無責任な軍国主義が原因だ、こうおつしやるわけですね。そうすると、その無責任な軍国主義をとつておるのは一体どちらなのか、その点をお尋ねしたい。
  184. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは昨年の六月二十五日に北緯共産軍が三十八度線を越して南下いたしましたことによつての問題は、国際連合においていわゆる侵略と安全保障理事会において決定をし、それによつて国際連合軍が発動するという結果になつたのであります。そのことを指して申すのであります。
  185. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は朝鮮事変の原因などについてとやかく申したくないと思いまするが、ただ一言だけ外務次官に是非お聞き願いたいのは、只今資料を持つて参りませんので詳しい日にちは忘れましたが、たしか六月の初めであります。ニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンをお開きになりますると、第一面に写真が載つているのであります。その写真は南鮮側においてはすでに北鮮に対して十分の備えができている、今直ちにでも三十八度線を突破することができる、こういう意味のことであります。更にそれに附加えまして、私はここに言うことを憚かるような内容までニユーヨーク・ヘラルド・トリビューンに載つているのであります。私はこの記事を見まして、果して侵略者がどつちかということについて非常な疑問を持つたのであります。それはそれといたしまして、又こういう事実もあるのでありまして、無責任な軍国主義というのは、外務次官の御説ですというと、北鮮側が無責任な軍国主義だ、こういうことに結論されると思うのでありまするが、そうしますというと、軍国主義というものはどういうものを指すか、軍国主義の定義、その内容について御説明を伺いたいと思うのであります。
  186. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 軍国主義の定義、内容というとなかなかむずかしくなると存じます。これは各方面から検討して行つて、而もそれが一つの軍国主義なりやどうかということになりますると、いわゆる学問的なことになりまするとなかなかむずかしい議論を生ずると思います。ここで申しておりまするのは、さような問題よりも、むしろ政治的な意味におきまする無責任な軍国主義という立場をとつて申しておると私は解釈いたします。従いましてその無責任な軍国主義というのは、いわゆる一種の暴力、力によつて一つ主張を通そうとするような方法、やり方、こういうものを無責任な軍国主義という意味において現わしておると解釈いたしております。
  187. 堀眞琴

    堀眞琴君 私は何も学問上の定義を外務次官に求めたのではないのであります。政治的に見てどのように軍国主義というものを定義すべきか、その内容はどういうものかということをお尋ねしたのであります。定義はともかくといたしまして、無責任な力によつて自分の目的を達成しようとする、これが軍国主義というお話でありまするが、北鮮側がそういう態度をとつておる、こういうことをお認めになるかどうか、そのことをもう一度重ねてお尋ねいたしたいのであります。
  188. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはさように国際連合が判定をいたしましたことを、私どもも信用いたしている次第でございます。
  189. 堀眞琴

    堀眞琴君 国際連合、或いは安全保障理事会においての決定がそうであるから、自分たちもかように考えているのだ、こういう御答弁のようであります。時間もありませんので、更に私は第一條の問題に入つて参りたいと思うのであります。第一條では、この條約によりアメリカの軍隊が発動すべきその場合を三つ挙げてあるのであります。第一は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与する、こういう場合であります。第二は、大体一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒擾を鎮圧するため、この場合には特に「日本国政府の明示の要請に応じて」と、こういう文章が入りました。これが第二の問題であります。第三には、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用する、こういう工合に三つの場合が挙げてあるのであります。先ず第一の、極東におけるところの国際の平和と安全の維持に寄与する、この問題でありまするが、日本が直接侵略される場合、第三の場合はともかくといたしまして、直接侵略されるのでもない、第二に挙げたいわゆる間接侵略に当る内乱や騒擾の場合でもない、国際の平和と安全の維持に寄与する場合、どういう場合を具体的に我々は想定したらよろしいのであるかということは非常に大きな問題だと思う。先ほどの朝鮮の問題などもその例に或いは政府のほうでは引かれるかと思います。併し極東での平和と安全のためであるということになりますと、あらゆる問題に日本駐屯のアメリカ軍が出動するという場合も考えられて来るのであります。例ふばインドシナなどはその一番いい例ではないかと思う。アジアの民族独立運動、私、総理大臣に先ほどお尋ねしたのでありますが、アジアの民族独立運動を鎮圧する意味において、アメリカの軍隊が極東の平和と安全を維持するのだという目的のために出動をする、民族独立運動の鎮圧のために戰うという結果も生じて来ると考えられるのでありますが、この極東におけるところの国際の平和と安全の維持のためという場合について具体的な御説明をお願いしたいのであります。
  190. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 極東における国際の平和と安全の維持に寄与するということは、アメリカの軍隊が日本に駐兵をするということ、そのことが私は極東における国際の平和と安全の維持に寄与するゆえんのものと思います。これが第一、第二点は、若しも極東における国際の平和と安全の維持を必要とする場合に至つた場合は、国際連合においてさように決定した場合になし得ると思うのであります。第二点であります。
  191. 堀眞琴

    堀眞琴君 そうしますると、極東における安全のためにアメリカ軍が出動する場合は、国際連合なり、或いは安全保障理事会の決定を待つてこれを行う、こういう意味でありますか。
  192. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 嚴密に申しますると、それまでにはいわゆる個別的又は集団的な安全保障という処置が国際連合憲章によつて認められる。従つて国際連合憲章の精神によつてなすということが嚴密な意味から言いますと妥当であると思います。
  193. 堀眞琴

    堀眞琴君 国際連合憲章の精神に則つておられる、こういうことになるのでありますが、ところで国際連合憲章の精神に則るということが、アメリカ自身の考えによつてそれを判定するかどうかという問題が起つて来ておるのである。安全保障理事会なり、国連の総会なりにおいてこれが決定される場合は別であります。アメリカ自身が、この出兵は国際連合憲章の精神に副うものであると、こういう認定をした場合には、どの場合においても出兵することができるという結果になつて来る。そう解釈してよろしいでしようか。
  194. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 国際連合憲章の精神に則りまして、いわゆる国際連合憲章にありまする個別的又は集団的の処置をとつて、そうして処置をとりましたら、これを直ちに安全保障理事会に報告するということは国際連合憲章の明文にありまする通りであります。従いまして取りあえず、若し必要な場合には個別的又は集団的な処置をとり、それを国際連合に報告をし、安全保障理事会に報告し、それから安全保障理事会によつてこれをなして行くと、こういう段取りになつて来るのだと考えます。
  195. 堀眞琴

    堀眞琴君 個別的、集団的安全保障の処処置というのは、具体的にはこの條文に関連して、どういうことを指すのでありますか、それをちよつとお尋ねしたい。
  196. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 平和と安全のために必要なる処置とは、具体的に申しますと、ここにありまする外部からの武力攻撃等がありまする場合に、安全の維持に必要なりと考えられ、とらざるを得ない状態になりましたときの処置と考えます。
  197. 堀眞琴

    堀眞琴君 その個別的及び集団的な処置というものの具体的なものをお尋ねしておる。
  198. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 個別的という場合は、いわゆる一国の場合が個別的でありましようし、集団的な場合は二国以上を申すのでありましよう。
  199. 堀眞琴

    堀眞琴君 どうも私にはよくわからないのですが、極東における国際平和、安全の維持に寄与するというために、アメリカ国連憲章の精神に則つて軍隊を出動するという場合は、政務次官も認めておられるわけです。その場合にとる処置は、個別的、集団的にし安全保障の処置をとる。そうしてこれを行動に移すのだ、こういうのでありますが、そうしますと、極東の安全と平和のためにどうしても出兵をしなければならんという場合には、いわゆる出兵すべき地域乃至はその地域にあるところの政府との間に、個別的な又は集団的な安全保障協定乃至はその他の約束を行う、こういう意味であります。
  200. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 只今の御質問ちよつと私自身がわかりかねましたが、個別的又は集団的処置をとらなければならない場合においては、いわゆる外部からの武力攻撃等に対する脅威を感じた場合、そのときに集団的或いは個別的に処置をとることが最小限の必要であるとなされた場合、従つて相手国と安全保障についての協議という問題ではないと思います。
  201. 堀眞琴

    堀眞琴君 外務次官が述べられておるのは、日本が例えば攻撃の脅威にさらされた場合においては、日本アメリカとの間に個別的乃至は集団的に安全保障の処置が必要だ、こういうことを述べておられるわけです。私がお尋ねするのは、極東の平和維持のために日本に駐留した軍隊が極東の方面において出動するという場合が起り得ると思う。そういう場合にあなたのいわゆる個別的な乃至集団的な安全保障というのはどういう形で実現されるのか、それをお尋ねしておる。
  202. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 従来の例をとりますると、国際連合によつての処置を決定した上になされるという解釈が先ず従来のやり方ではないかと思います。殊に朝鮮等の問題につきましては、国際連合、安全保障理事会においてこれを検討して、その結果に基いてなされた行動でありますから、日本以外の、今御引例になりましたような場合におきまするいわゆる極東の平和と安全という、こういう点から申しますると、さような行き方が昨年とられた行き方でありまするから、従つてこれが最もはつきりした行き方であると存じます。
  203. 堀眞琴

    堀眞琴君 そうしますると、私が先ほどお尋ねしたように、国際連合の総会なり、安全保障理事会なりの決定に従つて行動する、こういうことになるわけですね。
  204. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) その場合には全くそうだと考えます。
  205. 堀眞琴

    堀眞琴君 わかりました。ところで朝鮮の問題にもう一度返つて特にお伺いしたいのでありまするが、安全保障理事会は、交換公文に書いてありますように、昨年の七月七日の決議によつて、国際警察軍としての行動を起しておることを認めておるわけです。ところが朝鮮事変が始まりまして間もなく、六月の末だと記憶しておりまするが、トルーマン大統領は声明を発しております。あの内容は、私はここに申上げることは憚りますが、とにかくアメリカ軍としては極東に事態の起ることに対して非常な関心を持つておる、アメリカとして従つてこれらの現象については軍隊を出動せざるを得ないんだ、こういう声明を発しておる。これは草葉次官は外交の専門家でいられるから多分御存じだろうと思います。アメリカの朝鮮に対してとつた態度は、最初から必ずしも国際連合総会或いは国際安全保障理事会の決定に待つて、これに対して警察的な行動を行うという性質のものではなかつたと思います。この点について外務次官の御説明をお願いしたいと思います。
  206. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはいわゆる俗に言われております朝鮮白書というのによつて、国際連合から発表されておる通りでありまして、時間的にも、日時的にも詳しくこの経緯は朝鮮委員会等からの報告を十分載せておりまするから、これによつて御了承を頂けると存じますが、昨年の六月二十五日及び二十七日の安全保障理事会におきまする決議、これらが中心になつて最初のことが進められたことでございます。
  207. 堀眞琴

    堀眞琴君 アメリカの軍隊の出動する第二の場合は、日本国政府の明示の要請に応じて、外国からの教唆又は干渉によつて引き起された日本国内の大規模の内乱、騒擾、この問題、この場合に問題として考えられるのは、外部の国からの教唆なり干渉によつて引き起された大規模の内乱、騒擾というものと、それから外部の国からの何らの教唆、干渉なしに起された内乱、騒擾というものと、大体二つに分けて考えて見ることができると思います。あとのほうの、つまり外国からの教唆なり干渉によらずに自然発生的に発生したところの内乱騒擾というものに対しましては、この條約の條文によりまするというと、アメリカ軍は出動しない、こういう工合考えられるのでありますが、そのように了承しても差支えないでしようか。
  208. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この第一條におきまして、アメリカの部隊が発動するのは、二つの場合であります。第一の場合は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために使用される、それから第二の場合は、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用される、そうしてその第二の場合の一つの態様といたしまして、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒擾を鎮圧するためにと、そういうことになつておるわけでございます。これは外部からの武力攻撃の一態様と観念して規定をしてあるわけであります。従いまして純粹に国内において外国と無関係に発生いたしましたる内乱、騒擾は、如何に大規模でありましても、この條約によるアメリカ軍の発動はない、こう理解をいたしております。
  209. 堀眞琴

    堀眞琴君 私が外部からの教唆乃至は干渉による内乱の場合と、そうではない直接的な武力攻撃による場合と分けたのは、必ずしもそれを特に強調する意味ではないのです。ただ一番最初にありまするところの、極東における国際平和と安全という場合に出動する場合と、それから日本が直接外国から攻撃を受けた場合、それから外国による教唆乃至は干渉によつて日本に内乱の起きた場合、まあ大体三つ考えられるのではないかというので、問題を出したのです。あなたのおつしやる通り一つの態様だ、日本外国から侵略を受ける場合の一つの態様に過ぎないということであれば、それでも結構なんです。ところで外国の教唆乃至は干渉によつて引き起されない場合の内乱、騒擾は、たとい大規模なものであつてアメリカの軍隊はこれに出動しない、こういう御回答になります。そのことは勿論警察予備隊乃至は日本の国家地方警察なり、或いは自治体警察なりが出動するものと考えられますが、この大規模の内乱及び騒擾であつて外国の干渉によつて引き起されたという場合においては警察予備隊は、これは出動するのかしないのか、これをお尋ねいたしたい。
  210. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊も勿論出動いたしますし、必要があれば国家地方警察、自治体警察もそれぞれの任務のために出動をいたすわけであります。
  211. 堀眞琴

    堀眞琴君 もう一つの、これが外部から直接攻撃を受けた場合、国内の内乱、騒擾の形態ではなくて、直接日本が攻撃を受けた場合には警察予備隊、或いは国家地方警察、自治体警察、こういう警察力は動員されるものでありましようか。
  212. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国家地方警察なり、自治警察、或いは警察予備隊というものはそれぞれ固有の任務があるわけでございますから、その場合において固有の任務を果すために必要があれば、如何なる場合においても国内において出動いたすものと考えます。
  213. 堀眞琴

    堀眞琴君 外国の直接の侵略の場合にこれが出動する、勿論外国の教唆や干渉による内乱、騒擾の場合にはこの警察力が出動する、こういう工合になりますというと、警察予備隊を初めとする警察力というものは、結局戰争に用いられるところの手段であるという結論を我々は得なければならないと思うんですが、その点につきましては如何でございますか。
  214. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察の任務は、戰時であろうと平時であろうと、いつでもあるわけでございまして、仮に戰争のような事態がありました場合におきましても、それは戰争に従事するために出動するのではなく、固有の任務であります警察の使命を来すために出動いたすわけであります。
  215. 堀眞琴

    堀眞琴君 私何も戰争の場合に警察の任務が解消してしまうなんというようなことは考えておりません。戰争の場合といえども、警察力はそれぞれの任務において治安の維持をすべきことは当然なことであります。私がお尋するのは、内乱の場合乃至は直接攻撃の場合に警察予備隊その他の警察力が動員されるか、つまり国内の防衛のために、或いは内乱の鎮圧のために警察力が動員されるか、このことをお伺いしているのであります。
  216. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 当然警察として必要な行動に出るわけであります。
  217. 堀眞琴

    堀眞琴君 必要な行動に出るということは、つまり内乱の場合も、外国からの侵略の場合も戰闘行為に参加する、こういう工合考えてよろしうございますか。
  218. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 鎮圧行為に参加するわけであります。
  219. 堀眞琴

    堀眞琴君 そうしますというと、大橋法務総裁が先ほど来の同僚委員に対する御答弁の中に、警察予備隊その他の警察力は、いわゆる戰力ではないという御答弁をなすつていらつしたわけであります。ところが只今の御答弁では、内乱鎮圧のためにこれを用いる、動員するということになりますというと、やはり戰力としてこれを用いるのだといる結果になるだろうと思う。従つて警察予備隊、或いはもつと広い警察力というものが、陸海空その他の戰力という、あの憲法第九條の第二項の規定に当然相応するところの手段になるのではないか、こういう工合考えられますが、如何でしようか。
  220. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) それは全く誤解であります。
  221. 堀眞琴

    堀眞琴君 誤解だと言われたが、誤解の理由を御説明願いたい。
  222. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 鎮圧のために出るのでございますから、これは鎮圧のための力、即ち鎮圧力であります。(笑声)戰争のための力、即ち戰力ではないのでございます。
  223. 堀眞琴

    堀眞琴君 大変どうも御名答というか、鎮圧のための力、即ち鎮圧力である、(笑声)戰力ではない、こういう非常に詭弁と申しますか、私どもとしては納得しかねるのであります。少くとも外国の教唆、干渉によつて行われる内乱、騒擾でありまするから、形の上においては内乱でありましようが、実質的には戰争の形態をとるものだと思います。朝鮮の場合などもその例ではないかと思います。或いは三十二、三年から四、五年にかけて起りました、或いは六年あたりから更に大規模に起りましたスペインの内乱などもその例ではないかと思います。スペインの内乱は、一応政府軍と、今の政権をとつているところの、ちよつと忘れましたが、当時の叛乱軍との内乱としての形態として起つた。これに対してドイツ、イタリアが叛乱軍を助けた。これに対してイギリス、フランスが政府軍を援助して、形は内乱でありまするが、実質的には戰争であります。誰もスペインの内乱を国内的な單なる内乱とは考えておらない。従つてそこに出動したいわゆる戰力も單に軍隊ばかりではなくて、警察力もあつたわけです。例えばマドリツドの攻防戰を通じて警察力がどのような役割をしたかというようなことは、大橋法務総裁は非常に賢明なかたでありますから、すでに御存じだろうと思う。ああいう場合を考えましても、警察予備隊はやはり鎮圧力なんというものではなくて、戰力の一つではないかという工合考えられますが、その点を御説明願いたいと思います。
  224. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察力は飽くまでも警察力でございまして、戰力ではないということはたびたび申上げた通りでございますが、勿論戰時におきましても警察の使命というものはあるわけでございまして、その限りにおいて警察力も又戰時に出動いたしまするが、併しそのことば警察力をして戰力たらしめるものではないと、こう考えます。
  225. 堀眞琴

    堀眞琴君 どうもこの議論ほどこまで行つても平行線のようであります。大橋法務総裁は、警察力は飽くまで警察力である、警察には独自の任務があるのだということで逃げていらつしやる。併し外国の例を見ますれば、くどく申すようでありまするが、警察力が現に戰力として動員されている場合がしぱしばある。これをしもあなたは戰力ではない、警察力なんだ、叛乱軍と政府軍のあの戰闘の中で、警察軍は單に警察的な行動をやつていたのだ、こういう工合に見られるのでしようか。そうすると大変不思議なことになつて来るのではないかと思います。私は戰力というものは非常に広い範囲のものであつて、少くとも内乱、騒擾を鎮圧する場合の力も、それから外国から侵略された場合に、これに対抗する力も、すべてが戰力、その戰力の中には陸海空の軍隊ばかりでなくて、一切のこれに対抗するところの力を含むものだ、こう解釈すべきだと思うのですが、最初の大橋法務総裁のお話では、武力は動的なものであり、戰力というものは静的なものだというような極めて漠然とした何が何やらわからぬような御説明があつたのでありますが、私はそうではなくて、やはり戰力の中にこれは数えらるべきものである、こういう工合考えるべきであります。ましてや最近の警察予備隊の武装や或いは訓練等を見ますというと、軍隊と少しも変らぬような状態になつて来て参つておるのであります。一方内乱を起す側、外国の教唆によつて内乱の起きる場合は別であります。ところがそうでなくて、恐らく警察予備隊が当然対象としているところの内乱、即ち外国の教唆によらざるところの内乱の場合において、果して警察予備隊が持つているような武装を持つているだろうか。恐らく何らの武裝も持たないものが、例えば騒擾事件というような形で起つて来るわけですが、而もその武装たるや集団的な殺人を目的とするところの武裝である、こう考えられる。そうしますというと、これを戰力ではないというその御説明は、單に警察力なんだということだけでは不十分だと思う。その点をもう少し詳しく御説明願いたいと思う。
  226. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 戰争を遂行いたしまするにはいろいろな力が要ると思います。このうち戰争を遂行できる程度一つの組織的な力を戰力と見るのであります。その戰力だけが戰争を作るのではなく、それに関連いたしましてあらゆる力が動員される場合があると思います。御説明のごとく戰時に敵が侵入して参つたその場合において、警察力がその敵を撃退するために動員されたといたしましても、そのことは警察力が戰力になつたということを意味するのではなく、ただ警察力がそういう戰闘のために利用されたというのに過ぎないのでございます。本質的には飽くまで警察力は警察力であり、戰力は又おのずから別にある、こう思うのであります。
  227. 堀眞琴

    堀眞琴君 大橋法務総裁の御解釈によりますというと、警察予備隊は飽くまでも警察力である、よしんば日本に侵略が起つた場合に、戰争行為にこれが参加しても戰力ではない、單に戰闘にそれが利用されたに過ぎないのだ、こういう御説明のように承わつたのでありますが、私はそれが間違つていると思う。やはり戰力として率直に認めるべきだと思うのです。なぜならば本来は警察力であります。併し戰闘行為に参加したときにおいては、警察力ではあつたが、併し戰闘を行う組織力として動員されて来るわけであります。だからしてそれはやはり戰力の中に入るべきだ、こう考えなければならんと思います。それから裝備の点から考えましても、これはやはり戰力として規定するのが当然ではないかと思います。その点について御説明をお願いしたいと思う。
  228. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 装備につきましても、到底現在の警察予備隊を以ちましては戰争を遂行することは不可能でありますから、これは戰力とみなすべきでない、こう申上げておるわけであります。
  229. 堀眞琴

    堀眞琴君 近代の武器の発達から申しますと、よしんば何とか砲というような相当性能の高い砲をうちましても、原始爆彈がどんどん落されるという今日の段階におきましては、確かに十分な武裝ではないかも知れません。併しながら国家地方警察或いは自治体警察等と比較しまして、その装備が果していわゆる警察的な行為を行うために十分な以上の武裝ではないかという工合考えられるのでありますが、その点は如何お考えでございますか。
  230. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 十分以上とは思つておりません。まだ足りないくらいであると思つております。(笑声)
  231. 堀眞琴

    堀眞琴君 どうもまだ足りないくらいだという非常に強いお言葉なのでありますが、そうしまするというと、大橋法務総裁としては、まだまだこれを強化して参らなければならんほど、現代の日本においては内乱の危險や騒擾の危險がある、こういうお見込なのでしようか、その点をお伺いしたい。
  232. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 内乱や騒擾をなからしむるためには、まだ強化しなければならない、こう考えまして只今国会に対しまして補正予算の御審議も併せてお願いいたしておるような次第でございます。
  233. 堀眞琴

    堀眞琴君 私がお尋ねしたのはそのような装備の強化なり、或いは訓練の強化なりを必要とするような国内情勢であろうかということをお尋ねいたしておるのであります。つまりそういう内乱の危險が現在あるかということをお尋ねいたしておるのでありまして、その点についての御説明を承わりたいと思います。
  234. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在と申しますと、今日只今ということになれば、これはなかろうと思います。併しながらかような警察力は常にこれを訓練いたしまして、あらかじめ準備をして置かなければ、いざというときに急に作り上げるというわけには参りませんので、なお一層訓練を積んで強化を図らなければならないと、こう考えております。
  235. 堀眞琴

    堀眞琴君 警察予備隊のことにつきましては、先ほど総理大臣にもちよつと質問したのでありまするが、あのときも申しましたように、アジアの諸国の中には、この組織を以て日本は再軍備を準備しているものだというような批評が、フイリピンにおきましても、或いはマレーにおきましても、インドネシアにおきましても、インドは勿論でありますが、そういう国々には相当高くなつておるということは、これは大橋法務総裁もすでに御存じだろうと思う。非常にこれらの点は日本の再軍備に対して恐怖の観念を持つておるわけであります。勿論再軍備ではない、こう答弁されるでありましようが、事実相当の武裝を持つて軍隊にも等しいような組織を今日作つておるのでありまするからして、それがやがては再軍備への第一歩となり、そして又々軍国主義の復活を日本において見るのではないかというようなことが恐れられておるのであります。私どもはこのアジア諸国におけるところのこういう輿論を見まして、非常に忸怩たるものを感ぜざるを得ない、我々としては善隣の誼みを飽くまでも深くいたしまして、アジア国々と手を結んで今後行かなければならんと思うのであります。ところが警察予備隊が再軍備への途だということになりますると、この善隣の誼みを阻害する大きな原因になるという工合考えておるのであります。そこでこの警察予備隊のことをこれ以上お尋ねいたしましても、警察力だ戰力だという互いの議論がちつとも一致いたしませんので、これ以上はお尋ねすることをやめますが、最後に交換公文等の問題でありまするが、交換公文、これは要するに朝鮮に対して安全保障理事会、或いは国連総会のとつた態度、或いは決議、それによりまして、日本がこれまで朝鮮の戰乱に対する国際警察軍の行動に対して協力する、今後も又協力するということを約束したものでありますが、この交換公文によりまして、この後段によりまして「将来は定まつておらず、不幸にして、国際連合の行動を支持するための日本国における施設及び役務の必要が継続し、又は再び生ずるかもしれませんので、本長官」云々、こういうことになつておるのであります。そうしてそのあとのほうに、日本は「当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し」云々と、こういう規定になつておるのであります。「将来は定まつておらず」ということは確かにその通り、果して現在この行われようとしているところの休戰協定がうまく行くかどうかということも、恐らくにわかには判断できないと思います。併しこれは先ほどの私の首相に対する質問の中にも述べましたように、国際的に平和を求めようとする努力各国によつてなされている今日であります。恐らくその線に沿うて将来とも平和のための努力が続けられて行くだろう、こう想像できるわけでありますが、交換公文によりまして「将来は定まつておらず」云々ということを、この際特にこういう形式において、両者の間に文書を交換する必要があつただろうかということを私は疑問に思うのであります。むしろこういうような交換公文は、この場合は設けずに、国際連合憲章の義務を受諾するということで以て、国際警察軍に対する日本の協力というものは十分ではないかという工合考えられるのでありますが、その点についてお尋ねいたしたいのであります。
  236. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはお話通りに、平和條約の第五條におきましても、国際連合が防止行動又は強制行動をとる如何なる国に対しても援助の供与を慎しむことを約束した次第でございます。従いまして交換公文がありましてもありませんでも、国際連合に協力するという点はお話通りでありまするが、併しこのあとにありまするように、「費用が現在どおりに又は日本国と」云々とありまするように、これらの点は明瞭になつておりませんので、現在はこのような状態であるが、併しこの現在の状態は成るべく早く休戰会談等によりまして終了することが望ましいが、独立後におきましてなお将来そのような状態が続きまする場合に、その点を一層明瞭にする意味において交換公文を交換いたした次第でございます。
  237. 堀眞琴

    堀眞琴君 最後にもう一言お導ねいたしたいと思います。交換公文によりまして今後とも日本は援助を約束いたしておるわけであります。ところが不幸にして休戰会談が失敗する、そうして朝鮮の問題はいよいよますます紛糾する。而も国連軍の名前において出動するアメリカの飛行機、或いはアメリカの軍隊なりが、日本の基地からそれぞれ出動する、こういうことになつて参ると思います。そうなりますると、従来は日本は被占領国であり、連合国の管理の下に置かれたわけでありまするが、併し若しこの條約が発効するときまでに休戰会談がうまく行かないとするならば、結局独立後に日本はこの交換公文によりまして、今後ともアメリカ軍その他の軍隊に対して便益を供与したり、或いは施設の供与を行わなければならんという壁熊事態が起つて参ると思います。そうなりますと、不幸にしてという私は前提を置いておるのでありますが、不幸にして休戰会談がそのときまでに終らんということになつて独立国家がそういう施設の供与や何かを行うということになれば、当然北鮮側乃至は中共その他のいわゆる北鮮を支持する側から、敵性国家としての認定を受ける危險があるのではないか。而も軍隊が実際日本の基地から出動する、飛行機が日本の基地から飛び出すというようなことになりますと、十分敵性国としての認定を受けざるを得ない。こういう理由があると思うのであります。その場合に果して日本は、基地その他において向う側からの攻撃を受ける危險はないだろうかということを心配する、これは私ばかりの心配ではない、国民全般が心配しております。例えば立川の附近などにおきまして八月の何日かに防空演習が行われている。で、若しや日本も又もう一度戰争になるのではないかということを国民たちが恐れておる。で、そういう点に関連しまして、もう一度最後に御説明を煩わしたいと思います。
  238. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 私どもは現在の段階におきましては、さような心配はないと存じております。国險連合の機関或いは総会、丁度只今パリで開かれておりまするけれども、総会等でも今回の議題になると存じます。従つてこの戰争がだんだんと発展して参つて、如何にも極東全体が一つの渦中に巻き込まれて、従つてより以上な不安と、この秩序が阻害される。そういうような状態になつて来ないように、国際連合はあらゆる努力を注ぐものだと解釈いたしております。
  239. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はこの前法務総裁に質問をいたしましたが、少し残つておりますので、時間がありましたら、その点一つ二つ……。この安保條約の前文の一番おしまいのところのこの前の説明で「自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」この中には再軍備も入るのだというおつもりだと思うのですが、従つて当然あなたと議論をいたしました義勇軍、この義勇軍も当然この「期待」の中に入る、こう考えてよろしいでしようか。
  240. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 日本政府みずから義勇軍を募集するということは、全然政府としては考えておりません。
  241. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですから、これは私どもは義勇軍というものは結局憲法九條の解釈から言つてできないと思うのです。あなたは法律上の問題としてはできる。そこで政府が募るということはないかも知れませんが、あなたが言われたいわゆる外国の軍隊に、純粋に個人的に義勇軍になるという、そういう意味の義勇軍はこれに含むということは言えるわけですね。
  242. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ここの條文の文句は、アメリカ合衆国が日本国に対して期待をいたしておることであろうと、こう思うわけであります。従つて今御指摘の義勇軍というのは、日本国政府が義勇軍を募集するなり、或いは日本国政府が何か自分で安全保障のための努力をすると、こういう意味だろうと思いますが、御質問の問題は、アメリカが仮に日本で義勇軍を募集するということをすれば、それはアメリカ努力でありまして、日本国の責任を負うところの行動ではないのでございまするから、理論上この中に入らないであろうとこう思います。
  243. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこでこの前から議論をしますように、あなたの言う憲法上義勇軍或いは傭兵制度は実際問題としては、或いは政策の問題としては止むを得ないのかも知れませんが、そういうふうに解釈すると、こういうところでも非常に無理な、困難な説明を私はすることになつて来るのだと思うのです。例えばアメリカが積極的にそういう義勇軍を募り、それに純粋に個人的に日本人が応募しているのだから、政府のみずからの責任においてやることではない。ところがこの條約は政府に向つて期待をしておるのであるから……、こういうお話ですが、結局政府に対して期待することは、日本の国民に対して期待することと同じことであるし、又事実上の問題として日本人が義勇軍になり得るということ自体がまずい。それは併しそのときの問題であつて、そういうときにそのことがまずいということであれば、政策的にそれは他の法律で禁止できるのだというようなことをおつしやると思うのですが、どうもいずれの場合に当つて見ても、憲法第九條の問題があなたの御趣旨ではどうも工合が惡い、ただ法理論としては今あなたがおつしやるように、これは日本政府みずからがこういうことの期待に副うことではないのだからということは、それは理窟としてはそれでいいと思う。私はどうもこの前からこの義勇軍はどこにくつ付けてみても工合が惡い。併しこれは総裁としては、恐らくもうそれでずつと今日まで突つ張つて来られたので、お変えになることはなかろうと思つておりますが、そのことをまあ私これを読んで非常に感じましたので、補足してお尋ねするわけです。  それからもう一つお伺いしたいのは、実は公安條例と称せられておるものです。これはこの前でしたか、東京都に母の会というのがあるが、その会合があつて、相当たくさんの主婦の人たちが集つておる会合での話でありましたが、昨今、東京都を初め、各府県ともそのようでありますが、僅かな十人や二十人の集りでも平和問題等を中心にして集る場合には、それがあらかじめ届出……私も公安條例をよく読んでおりませんが、あらかじめ届出を要するとか、或いは府県によつては許可制になつておる所もあるようであります。許可がなかつたということによつて、警察がこの集会を認めず解散をさせておるということを盛んに訴えておりましたが、これはその実情は、法務総裁の管轄だろうと思いますが、そういうことを今やつておるのかどうか。現に行われておるのかどうか、そういうことを警察がやつておるのかどうか。それを先ずお聞きしたい。
  244. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警視総監にお聞き頂いたほうがよろしいかと思います。
  245. 永井純一郎

    永井純一郎君 あなたのほうの国家地方警察等でもあると思いますが、自治体でなく……、そういう御報告は一つも来ておりませんか。
  246. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国家地方警察は国家公安委員会の管轄に属しておりますので、政府といたしましては、そうした事柄について一々報告を受けておらないようであります。御要求とあらば又適当な機会に取調べてもよろしいと存じます。
  247. 永井純一郎

    永井純一郎君 それではそのことを取調べを頂いて報告をして頂くように委員長から要求して下さい。  それから更にこれと関連すると思いますが、京都の地裁でやはりこの公安條例に関係して、学生が騒いだ問題についての裁判があつたということは、これはまあ新聞記事で読んでおります。で、それによると公安條例のこの集会に関する規定が憲法違反だというようなことが書いてあつたのですが、これはあなたのほうのまあ所管になるだろうが、その後あれは一体どういうふうになつておるのか、或いは又、法務総裁としてはどういうふにあれをお考えになつておるのか、伺いたい。
  248. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) その事件は刑事事件として起訴した関係で、私の所管に関係するのであります。それは検察庁といたましては、あの判決に不服でありまして控訴いたしております。
  249. 永井純一郎

    永井純一郎君 法務総裁のほうは私はそのくらいにしておきます。  次には細かい問題で局長か或いは政務次官にお願いしたいのであります。この安全保障條約は極東における国際平和と安全の維持のために軍隊が動くということになつておるわけでありますが、ところがこの駐留軍隊の分担金は、これは日本アメリカだけで負担をするのだろうと思いますが、極東全体のために存在するものならば、その他の極東の諸国も費用を分担してもよさそうに思うのですが、これは何かわけが別にあつて日本だけがまあ分担するということになつておるのか、そこのところを知りたいのです。
  250. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 日本の安全と平和を維持しまする前提として、極東の安全と平和ということが当然考えられて来る。これはまあ昨日来縷々申上げた通りであります。従いまして先ほど総理からも申されましたように、日本の安全と平和は日本だけの問題じやなくて、結局極東という一つの大きい中にある日本の安全と平和、こういうことになつて来ると存じます。
  251. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですから日本のみならず極東の諸国もその安全を保障されるということになるわけですから、今のお話でも、費用の分担は当然そちらのほうにも持つてもらつてもいいということは考えられると思うのですが、そういう相談は別にしておらないわけですか。
  252. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) さようでございます。
  253. 永井純一郎

    永井純一郎君 それからこれは恐らくわかつておらないという御答弁があるかも知れませんが、歯舞、色丹等にはソ連の軍隊がおると言われておりまするが、どのくらいの軍隊がいるのか、或いは又、それはソ連人の軍隊か、わかつてつたらお知らせ願いたい。
  254. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 歯舞、色丹の方面にはソ連の軍隊がおるように情報等では入つておりまするが、併しどのくらいの軍隊か、又国境警察隊等もおるように情報は入つておりまするけれども、これらの実際の具体的なことは承知できないような現状でございます。
  255. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると、南樺太のほうも同じことですか。
  256. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 南樺太も同様でございます。
  257. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はそれだけです。
  258. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 先ず法務総裁にお伺いいたしたいと思います。法務総裁は十一月九日の当委員会におきまして、私の質問即ち憲法と法律との関係、憲法と條約との関係、それから條約と法律との関係、それについて質問をいたしましたときに、詳細な御答弁がありました。簡單に申しますと、法律は條約よりか効力が弱い、又憲法は條約よりか効力が強いという御答弁でした。昨日堀木君の御質問に対して答御弁になつたのも同様だろうと思うのであります。大体私としましては大橋法務総裁の御答弁で結構だと存じておるのであります。これについては一松委員や堀木委員からいろいろ御質問がありましたが、私としては大体納得ができると思つております。そこでそれではなぜ憲法は條約よりも強くて、法律は條約よりも弱いか。これはどういう理由でそうなるかということについて政府の御見解を伺つておきたい。何故に憲法は條約よりも強くて、法律は條約よりも弱いか。
  259. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 先ず国内法といたしましては憲法は最高の法規でございまして、それ自体がそれに矛盾いたしたごとき他の規律の存在いたしますことを否定するという性格を持つておると存じます。これが一つの理由であります。次に我が国の憲法は硬性憲法でございまして、憲法の改正につきましては法律の制定或いは條約の締結等の手続とは全く異なりました特に丁重な手続を規定いたしておるわけでございまして、このことは、憲法がかような手続を経た上でなければ改正されることはないということを示しておるものだと思うのでございます。従いまして仮に法律なり或いは條約なりが憲法以上の効力を持つものであるといたしますると、特に憲法が硬性憲法としてその改正について特段の手続を定めておるという実益が、條約の締結或いは法律の制定ということによつて失われてしまうわけでありまして、このことはこの丁重な手続を定めておること自体から考えてあり得ないことである。この二つの理由から先に申上げました通り主張をいたしておるわけでございます。
  260. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 大体私もそういうふうに考えておるのでありまして、了解ができたのであります。そこでもう一つお尋ねをいたしたいのでありますが、先ほど問題になりました自衛権の問題、戰力の問題であります。私はこういうふうに考えておるのでありますが、自衛権、自衛力というものは警察予備隊的のものだけという日本の現状のごときものもあるだろうと思います。それは極めて弱い自衛権であります。又それにプラスしまして非常な大きい軍備を持つておる所もあり、又小さいフイリピンみたいな所もある。ともかく自衛力というものは警察予備隊的のものだけの所と軍備の所と、いずれにせよ、自衛のためにそれを持つておるということになりますれば、戰力も自衛用である。こういうふうに考えておるのであります。そこでこの前総理にも御質問し、あなたにも御質問をしたのでありますが、警察予備隊が朝鮮へ集団自衛の擁護のためにアメリカ軍の後方勤務のようなことで、補充的の力というようなことで出て行く危險はないかという質問をいたしましたときに、そういうことは絶対ないんだという御答弁があつたと思います。それではなぜそういうことが言えるのか、その点をもう少し明らかにできないでしようか、法規的にももう少し明らかにして頂きたいと思うのであります。
  261. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは警察予備隊令の規定の性質上から来ておるのであります。警察予備隊令におきましては明らかに国家地方警察並びに自治体警察の警察力の補充といたしまして、国内の治安の任に当るのがその使命ということになつております。この性格から考えまして、政府といたしましては、海外にまで出動いたしまして活動をするということは、その本来の性格に反するものである、こう考ております。即ちこれは法律同等の効力のあるところの警察予備隊令の規定からそういう結論を出しておるわけであります。
  262. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その点は、私はそう言えないのじやないかと思うのであります。即ち條約のほうがこの法律、政令なんかよりか強いのでありますから、條約であらゆる協力を国連の要請によつてやるということになりますれば、警察予備隊令も変えまして、そうして集団自衛のためにアメリカ軍の後方部隊として、部隊というのは言過ぎますが、後方にあつて勤務するために朝鮮へ、国外へ出て行く任務を持つてくれという要請を受けたときに、法律でそういうふうに国外に集団自衛のために出得るように警察予備隊令を変えなければならないのじやないか。それは即ち法律、政令は條約より張いからである。まあそう思うのでありますが、私は今申しました前提として申しておりました自衛力というものには警察予備隊だけのときと、それから戰力を含んだときとある。で集団自衛ということの前提として全戰力を持つた自衛力であるならば国外にも出て行けるけれども、警察予備隊だけのような所では出て行けないのだというような前提があるのじやないか、こういうふうに考えておるのであります。強いてそうしなければ問題は解決できないと思うのですが、どうでしよう。
  263. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 朝鮮へ出動するということになりますると、如何なる任務に従事するにいたしましても、結局戰闘部隊でありまする米軍の一翼となつて活動をするのであるという意味におきまして、警察予備隊が戰闘部隊の一部になる虞れは十分にあるわけでございます。このことは畢竟日本が警察予備隊を朝鮮に派遣することによりまして、憲法の禁止しておりまする戰争を開始するという十分な危險があるわけであります。そういう意味におきましても、憲法の戰争否認という精神から申しましても、警察予備隊を朝鮮に派遣するということはできないことである。こう理解することができるかと存じます。
  264. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に、この基地と配備地と申しますか、その違いはどういうところにあるか。この安全保障條約によりまして、アメリカ軍が駐留することは、これは基地じやないのだという御答弁が一貫してあります。それじやこの配備する権利というのと基地の権利というのとどう違うのでありますか。それを明らかにして頂きたい。
  265. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 実は基地と申しますると、従来から基地貸与條約というようなものがすでに数カ国の数カ條の條項があります。これらを見ますると、一定の区域の土地の範囲をきめまして、そうしてそれに或る年限を附け、或いは無償、有償というような方法を講じまして、そうしてそれを軍事目的のために使うということを前提として両方の政府間で結んでおるのであります。従つて、かように区画されました区域におきましては、その管理権、それを相手国に全部委讓する。こういうやり方でいたしておるのが基地の観念だと存じます。併し、今回の日米安全保障條約におきましては、いわゆる従来から国際的に用いられておりまする基地の観念というものは全然持つておらないのであります。かような考えではなく、基地を貸すという意味の條約ではなしに、日米安全のための條約といたしておる次第であります。
  266. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 余りはつきりしませんが、そういたしますと、アメリカ軍が駐留しておるということは、基地の設定ではないのであるから、だからそれによる行政協定では憲法違反になるような協定はすることがないのだ、こういうお考えであろうと思うのですが、そうでしようか。    〔委員長退席、理事楠瀬常猪君委員長席に着く〕
  267. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) そうだと存じて話を進めるべきものだと考えております。
  268. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そうしますと、米軍の駐留しております地区内で日本人が犯罪を犯したとします。そういう場合には、アメリカ側の裁判の管轄権というものに服するようなことは絶対にありませんか。
  269. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) アメリカの部隊に属しておりまする者、つまり軍隊そのものは日本の裁判権に服しないということは、これは国際法上軍隊の治外法権として考えておるのであります。この程度の治外法権は当然認められなければならんと思いますが、それ以上に亘りまして、日本国民がアメリカの裁判権に服するというようなことは政府といたしましては全然只今考えておらないわけでございます。
  270. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 政府は今考えておられないが、そういうことをアメリカ側から要求をしましたら、それは、若し政府がそれを受諾なされば憲法違反になると思いますが、如何でしよう。
  271. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは恐らくアメリカからそういう要求はないものと確信いたしております。又仮にありました場合においても、日本がそれを受諾するということはないと確信いたします。
  272. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 若し誤つて受諾すれば、それは憲法違反になりましようか。
  273. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そのことは結局日本の憲法の行われておる区域内におきまして、日本の国民から日本の裁判所の裁判を受くる権利を奪つたという結果になるのではないかと思います。従つて現在の憲法の趣旨から見まして、穏やかならんことだと思います。
  274. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 これはやはり憲法第三十二條の「何人も、裁判所において」、日本の勿論裁判所でありますが、「裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」というのに牴触するだろうと私は思うのでありまして、そういうことは政府は決して受諾をなすつてはいけないと思うのであります。    〔理事楠瀬常猪君退席、委員長着席〕  次に、私ちよつと座を外しておりました間に、木内委員から大橋法務総裁に対して御質問があつたそうでありまして、その問題をここで又繰返すことは甚だ恐縮でありますが、池田大蔵大臣に御質問をいたしましたら、その問題は大橋法務総裁のほうに聞いてくれというお話でありましたから今聞きたいと思うのであります。それは、例の在外資産を賠償としてその財産のあります連合国に無償で所有権を渡す最後的決定をしたのがこの平和條約の十四條、平和條約のほうにかえつて恐縮でありますが、その十四條によつて最後決定をするのでありますけれども、大橋法務総裁の御答弁では、それは在外資産というものは、日本の憲法の手の届かない所にある、日本の法律の手の届かない所にあるのだから、これは止むを得ない。従つて憲法二十九條の、財産権を公共の用に供したときに、日本政府は補償しなければならん、そういう條文の適用はないのだ、こういう御答弁であつたと思います。併し、私はそうは考えられないと思うのであります。領土主権、言葉は惡いかも知れませんが、領土主権と人民主権というふうに考えまして、この領土内においては、日本人及び外国人も日本の憲法、法律に従わなければならんということが一応原則であります。併し外国におきまして日本人が住んでおりますときに、その日本人に対して保護を与えることはやはり日本憲法並びに日本の法律の義務である。従いましてその財産を保護することも義務であるのであります。その牴触を解決するために法例というものがありまして、これは釈迦に説法でありますが、法例というものがあつて、その法例の第十條によつて、そういうふうに財産権の根拠法はやはりその財産のある外国の法律に従うのだ、こういう規定ができておるわけであります。それで大橋法務総裁は、それに対して在外資産は当然その連合国の法律に従わなければならんのであるから、向うでそれを没収する、自分のほうでそれの所有権を剥奪するのだということになれば、これは仕方がないじやないかという御意見じやないかと思う。相手国がどんな法律を作つても、日本政府としてそれを甘受しなければならないという義務はないのでありまして、そのために在外公館がありまして、日本人及び日本人の財産の保護に当つておるのであります。だからそういう惡法が外国で出るとすれば、極力日本政府交渉によつてそういう法律が出ないことに努力しなければならないのでありまして、当然の責務であります。即ち日本憲法及び日本法律がそこまで及んでおる、その理由からいたしましてそういう在外公館を設けて保護をしておる、これは現実である、その在外資産を向うの法令に従つて、こちらも仕方がない、泣き寝入りをして賠償にして出すという最後決定をこの十四條でいたすのでありますから、やはり日本政府といたしましては憲法の二十九條の三項に帰つて来て、公共のために提供をしたその私有財産、日本人の私有財産については補償をしなければならない、その義務は当然起つて来るのではないかと私はそういうふうに考えるのであります。その点について御所見を承わりたいと思います。
  275. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、私有財産尊重の趣旨から申しまして、外国において失われましたる日本国民の在外財産というものに対しましてでき得る限りの補償を与えることは必要なことであると存じます。ただこのことは併し国内におきまする戰争犠牲者に対する補償等と見合せ、国内の財政の許す限りにおいてやるべきものである、こう考えるわけであります。元来は考え方といたしましては、この在外財産に対する措置というものは、直接日本国政府がそういうふうに措置したわけではなく、所在国の政府の処置に対しまして、日本政府といたしましては、外国における国民の権利を保護しないという消極的な態度を決定しただけであるわけでございます。従いましてこのことは公共のために日本政府が財産権を取上げるということでなく、ただ財産権の保護のため政府の在外国民に対する保護権の行使を停止するというだけのことでございまして、憲法二十九條第三項に該当する場合ではない、こういうように考えておるわけでございます。従いまして政府といたしましては、これは憲法上補償すべき二十九條三項の問題とは考えておりませんが、併し国内におきまする戰争犠牲者の犠牲に対する補償と同様にでき得る限りの補償をすべきであると考えております。
  276. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 平和條約については逐條審議は終了を宣しておりますから、質問をおやめ願いたいと思います。
  277. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 委員長に申上げますが、これは先ほど申上げたように私中座しておつたのですが、大蔵大臣に質問して、大蔵大臣からそれは法務総裁に聞いてくれということであつたから丁度今出したのでありまして、その程度にしておきます。もう少し言いたいことがあります。それでは、これは簡單なことでありますが、アメリカの陸軍、空軍及び海軍が日本国内及びその附近に配備する権利ということがあるのですが、「その附近」というのはどこでしようか、どういう範囲でしようか。
  278. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは「その附近」というのは、一つの、日本国独立国になりまして、その日本国のぐるりにアメリカ軍が駐兵をするという場合には、その隣りの日本に相当な影響力を持つわけでございますから、独立国となつ日本の体面と申しまするか、独立国に対する礼儀と申しまするか、そういう意味からここに「その附近」という字を入れておる次第でありまして、従つて直接にはこれは関係ない。
  279. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういたしますと、これは日本主権を回復して独立国になるのだから、「その附近」と体裁上書いたのであつて、その適用する区域はないと、こういう意味でしようか。
  280. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 適用する区域がないということよりも、その附近に、日本の附近におきまする場合におきましては、日本に一種の独立国としての従来の国際的な礼讓、礼儀という立場からこの字を入れておりまするから、従つてこれはその附近にアメリカがおきますることによつて、直接日本との平和條約並びに日米安全保障條約で左右される問題ではないと存じます。
  281. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 ちよつとわからんのでありますが、国際慣例によつて「その附近」というような字が入れてある、こういうように解釈しまして、それでは国際慣例というのは、「その附近」というのはどういう区域になつておるのか、それを條約局長からでも御説明願いたい。
  282. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 趣旨は政務次官から答弁のあつた通りでございます。嚴格に言えば必ずしも必要ではないことでございます。併し海軍などにつきましては、艦隊が長期間に亘つて近海を遊戈する場合に、現に実例を挙げますればアメリカの艦隊が地中海に遊戈いたしておりますが、そういつた場合にやはりその近接諸国に対して政治的影響を持つものでございますので、こういうふうな條約には国のうち乃至附近と、こういう用語を使われることになつておるわけでございます。
  283. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は多くの諸君が逐條審議でいろいろ聞かれましたので、重複する点もありますからその点は除きまして、第一條のつまり後段ですが、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」この点について少しお伺いしたいのです。これについては他の委員より御質問がありましたので、私はこれと重複を避けまして、ここにある間接侵略の問題につきまして少し條約局長にお伺いしたい、こう思つておるのであります。  この條項がここに入りましたことは、これは従来の国際條約のうちにおきまして稀有なことだろうと思う。或いはこういうふうに明確なる規定がなされたことは国際條約において、少くとも対等の国の、実質的に独立国と見られる国と国との間における條約で初めて規定されたのだろうと、こう思うのでありますが、この点につきまして條約局長は、若しそういう問題につきまして先例があるということでございましたならばお示しを願いたいのであります。
  284. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約の明文にこの形で規定されたのは日米安全保障條約を以て例を開くことになります。ただ武力攻撃という表現で現わされております侵略を定義する場合に、直接侵略のみならず間接侵略を如何に表現すべきかは、第二次大戰勃発前におきます一般軍縮会議におきましてすでに取上げられた問題でございまして、外交文書にはまま、ままというよりむしろ頻繁に出て来るところでございます。北大西洋條約が署名されたあとアチソン長官が、同條約に五條にいう武力攻撃には第三国の教唆又は干渉による内乱の場合が含まれておるという解釈を下しました。これは、新聞記者会見においてでありますが、北大西洋における武力攻撃は間接侵略を包含するということを明らかにいたしております。又現在作成中の国際平和に対する罪の法典案の中には、直接侵略の定義の後に間接侵略の定義を掲げておりますが、大体その趣旨は、この日米安全保障條約第一條に掲げられております場合と実質的には同様の場合を見ているのでございます。
  285. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今西村局長の御答弁は、武力侵略というところに直接及び間接の侵略があるということが最近唱えられておるということの御説明なのであります。これは成るほどアチソン長官が北大西洋同盟條約が結ばれましたあとでも言つております。最近いろいろな文書に現われておりますので、私ども承知しております。問題はこの間接侵略に対抗する措置として外国軍隊が駐留をいたしまして、それが使われるという点にあるのであります。その点について他に何か先例があるかどうかという問題をお伺いしたいのであります。
  286. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私の知つている範囲内におきましては、一国が自国の国内治安の維持のためにも他国の援助を請う意味の規定をふくむ條約が作られた例は一、二ございます。併し日米安全保障條約第一條におきまするように第三国の教唆又は干渉に基く内乱、擾乱、大規模の内乱又は擾乱の場合に、その国の政府の要請に応じて外国の軍隊が出動し得るといる明文の規定を置いたのはこの條約が初めてであることは先刻御答弁申した通りでございます。
  287. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど北大西洋條約に触れられまして、そうして、北大西洋條約におけるその武力侵略の解釈についてのアチソン国務長官のステートメントについてお触れになつたのであります。ところがステートメントにおきましても、決してそれらの国々に他国の軍隊がそのままその内乱を鎮圧するための仕事をやろうということには何ら触れてない。これは外務省のほうから頂きました資料を見ましても、この條約締約国の政治的インテグリテイに対する内部からの脅威に関する問題についてアチソン氏はこう指摘している。即ちこういう場合には第四條に基く当事者間のいずれかによつてコンサルテイシヨンが要求され得るものである、こう言つておる。これは決してこういうふうに明確な規定を持つものではない、あらかじめこういう間接侵略が起るということを予想して他国の軍隊が国内に駐留することにはなつておらんのであります。従いまして單に武力攻撃が間接であるとか直接であるとかというだけの問題ではない、ここに書かれている問題は、やはり内政に対する干渉を前提としておるということを私どもは認めなければならんと思うのであります。こういうような條約が独立国間に私は持たれた例はないと思うのであります。先に條約局長が一、二の例はあるということを言われましたけれども、それは恐らく明治三十七年の日韓議定書並びに日満議定書の問題であろうと思うのでありますが、それに極めて似ている。ただ問題は「一又は二以上の外部の国による教唆」という問題と、それから「日本国政府の明示の要請」という一つのモデイフイケーシヨンはついておりますけれども、本質においては内政干渉のために軍隊の駐留の権利を認めたということになりはしないかということを伺いたいと思うのであります。
  288. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 言うまでもなく第一條におきましては、第三国の教唆又は干渉によるものである大規模であることと、日本国政府の要請があることという三つの條件が附いているわけであります。この三つの條件に適合する場合は、スペイン内乱以来問題になつておりますするいわゆる間接侵略の場合であつて、これに対処する方法を明らかにしたものでございます。決して委員のおつしやるように、内政干渉の途を開くものではなくて、名実共に日本に対する外部からの武力攻撃に対して日本の安全を保障しようとする措置でございます。  なお又一言附加えさして頂きますれば、国際法上干渉というものはいろいろ定義がございますが、独立国家間におきます條約の規定に従い、即ち介入を受ける国の意思に基く場合には介入は干渉とならない。同意ある場合には介入の干渉性を阻却することになつているわけであります。憲章の第二條第七号を御覧になりましても、国際連合自体としては加盟国の内政には干渉してはいけないという原則が掲げられておりますが、同時に第七章による強制措置をとる場合にはこの限りにあらずとされております。加盟国相互間において国際連合憲章によつて国連が或る程度国内事項に介入し得る場合を予見しておりますが、こういう場合の国連の行動は決して国際法上の干渉にならないものであります。以上念のために附加えさして頂きます。
  289. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今これが内政干渉ではないということをいろいろ言われております。或る国が條約を結んで、その国がこの條約を受諾した以上は、これは内政干渉ではないのである、條約上の権利と義務に過ぎないのだ、こういうふうに言われているようであります。併しながら問題は私は法律論的なものと、それから実際的なものとあるのであります。そこでお伺いしたいのでありますが、これは法務総裁にお伺いしてももいいのでありますが、條約局長でもよろしうございますが、一体国内に起りました騒擾が外部から或いは使嗾があつたかも知れませんが、とにかくそういうふうなことがあつたにいたしましても、国内に起りました騒擾とか或いは内乱というようなものは、これは国内の政治的な事変、そういうものではないかどうかということを先ずお伺いしたいのであります。
  290. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは結局国内における大規模の内乱、騒擾ということに駐留軍が出動する場合においては内政干渉ではないかというのが問題の中心ですが、従つてそれは政治的な場合じやないか、こういう御質問でございますが、決して私どもは内乱干渉とは考えておりません。若しやさような場合におきましても、ここにありまするような條件の場合におきましても、日本政府が明示の要請をするしないというのは日本政府の権限においてなし得る。従つて駐兵の出動を必要としない、最後までやらないという日本政府考えを持ちます場合には、出動の明示の要請をしないだけであります。しました場合には出動し得るのであります。従いまして何らそれは干渉にはならない、又その事件の内容につきましてはさまざまな場合があると存じます。
  291. 岡田宗司

    岡田宗司君 私が今御質問申上げたのは、この條文の字句の解釈を棒読みなさつたような御解釈をお伺いしているのではない。私がお伺いしましたのは、使嗾があつたにせよなかつたにせよ、ともかくここにあると書いてあるから、まあある場合を仮定して、国内に騒擾が起つたらこれは国内の政治的事変かどうかということをお伺いしている。それをイエスかノーと言つて頂ければいいのであります。
  292. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 政治的事変が多いと存じますが、併しこれはその起つた状態によつて必ずしもそれ以外にないとは言えないと存じます。
  293. 岡田宗司

    岡田宗司君 国内の政治的事変が多い、こういうことでありますけれども、少くとも国内に起りまして、使嗾がどういう形であれ教唆がどういう形でありましても、国内における殺し合いというようなこと、国内における鉄砲の打ち合いというようなこと、或いは大規模の暴動などはこれは国内の事変ではないのですか。もう一度申上げます。外部から使嗾のあるにせよないにせよ、ともかく国の範囲の中において、例えば東京都におきまして大きな騒擾なり何なりが起つたとしました場合に、これは国内の政治的事変であるかどうかということを伺つているのです。
  294. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 国外からのかような教唆或いは干渉があります場合に引き起された場合であります。従つてこの場合には国際的なさような状況の下に起されたのであります。
  295. 岡田宗司

    岡田宗司君 さような情勢の下において起されたかどうかは知らぬが、それが国内の政治的事変かどうかということをお伺いしているのです。
  296. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 国際的な関連を持つ国内的な事件であります。
  297. 岡田宗司

    岡田宗司君 国際的な関連を持とうが何であろうが、国内の政治的事変だということはお認めになるのですね。
  298. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは国内に起る問題でございます。
  299. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると国内に起る政治的事変なんです。こういうことでございますね、お間違いありませんね。
  300. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはここにあります通りに国際的な影響によつて国内で起つた事件であります。
  301. 岡田宗司

    岡田宗司君 よくわかりました。それはどうも国際的事変ではないようですが、さてそこでこれは国際的な事変ではなくて、ともかく外部に関連があるにせよないにせよ、この事変は国内事件である、こういうことは御認定になつたようであります。そういたしますとここにあります、例えば日本に駐屯しますところのアメリカ軍が日本政府の明示の要請によろうと或いはよるまいと、これはよると書いてありますが、よるとしましても、そこで起されましたところのアメリカ軍の行動というものは明らかに国内の政治事変に対してなされた一つ活動状態であると見て間違いございませんか。
  302. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私からお答え申上げます。それは国外の影響の下に発生いたしました国内の暴動に対するアメリカ軍の行動であります。
  303. 岡田宗司

    岡田宗司君 私はそういう御答弁は苦しまぎれの御答弁だとしか考えられないのでありますが、もう少し率直にお答弁願いたい。今申しましたように、ともかく国際的影響があろうと何だろうと、国内に起つた政治的事変である。そうして日本国内に駐留しておるアメリカの軍隊は、それを日本政府の明示の要請によつて出た場合におきましては、国内における一つの客観的に見て政治行動であろうということは、これは間違いないと思うのですね、如何ですか。
  304. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国際的な性格を持ちました国内に起つた暴動に対してアメリカ軍が活動するわけであります。
  305. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、国際的性格を持つてはおるけれども国内における活動である。こういうことが明らかになつたと思うのでありますが、これは内政には関係のない事柄かどうか、これをお伺いしたい。
  306. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 勿論内政に重大なる関係を持つ事柄であります。
  307. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、内政に重大なる関係のある事柄だといたしますと、これは内政への干渉という言葉がおきらいのようでありますけれども外国の軍隊が関係を持つということは明らかであろうと思うのでありますが、その点は如何でございますか。
  308. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 勿論その通りであります。
  309. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、これは一般に言ういわゆる内政干渉の事実と私どもは認定せざるを得ないのでありますけれども、これは言葉は或いはそうでないと仰せられましようけれども、そう認定する以外にないと思うのですが、如何ですか。
  310. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) それは言葉はそうでないばかりか、事実もそうではありません。何となれば他国の内政に関する一国の干渉というものは、他国の意思に反しまして干渉することを国際的には内政干渉、こう申しておるのでございまして、他国の要請に従い、その要請の範囲におきまして他国の内政に協力するということは、これは国際的には内政干渉とは申しておりません。これは併し健全なる立場からの議論でございまして、何かためにする御議論ならば別でございますが、普通の常識においてはそういうふうに関連をいたすものと心得ております。
  311. 岡田宗司

    岡田宗司君 大分ためにするというところにえらい力を入れられておるようでございますけれども、これはこういう例が幾多ある。そこで私は問題にしておる。勿論外国の軍隊が日本なり或る国の政治事変に干与いたす場合に、その国の内部にいろいろ問題が起つた、それだから突如として外国の軍隊が入つて来るという場合は少いのじやないか、例えば国内に内乱が起つたスペインのような事態が起つた、その際にフランコ側は或いはムソリーニ或いはヒトラーに援助を求める、又当時の人民戰線側は英仏なりソ連なりに援助を求める、そういうような形になつて来た場合に、これらはいずれもその国内二つ政府があります。どつちが正当かはこの場合別といたしまして、いずれもの政府がこれの援助を求めて両方が武力を持つて内部に入つた。これは普通通念からいつて何としても国際的な干渉である、こういうのが普通である。これはためにする考え方でも何でもないと思うのでありますが、そういたしますと一体どうなるんですか、その点を私はお伺いしたい。
  312. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 正当政府の要請に応じまして、その要請の範囲を逸脱しない程度においてその内政に協力することは、これは国除法上干渉と申すべき筋合のものでないわけでありまして、御設例のごとく、成るほどスペインにおいて正当政府の要請に基いて入つたものもありましようし、或いは反乱軍の要請に応じて入つたものもありましよう。併しながらこれを国際法的に見まするならば、正当政府の要請に応じ、而もその要請の範囲を逸脱せざる限りにおいては干渉というがごときことは成立しないというのが、これが国際法的な正しい考え方であります。
  313. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、国際法上の正しい考え方であつて、或る国が或る国との條約を結んで、そこに起る事態にすべてのことを任すということになつた場合に、これは何ら干渉でないと、こういうようなお話だと思うのですが、その政治的な実際の問題といたしまして、これが往々内政干渉として問題になつておることは御存じだろうと思うのであります。例えば中国日本との場合におきましてもそうでありましたし、或いは中国とイギリスその他の国国との間にも問題があつた。例えば国民革命が起りましたときに蒋介石軍隊が北上して来た。南京で大きな事件が起つたことは御承知だと思うのであります。あれは勿論あなたが指摘されたように国際法に基きましてイギリスのガン・ボートが揚子江におる、更に又イギリスの軍隊が上海に駐留しておる、そしてそれが活動をしましてあすこで武力衝突が起つた。この問題は成るほど條約の上から見ますれば、イギリスの砲艦或いはイギリスの軍隊もそこで活動する権限を与えられておつたと思う。併しながらこれが国際的に見て、政治的に見て内政干渉という問題として大きな問題になつたのであります。これは單に法律で以てそこの国の軍隊の駐留を認めた、そこに起つたいろいろな事件にその駐留しておる軍隊が法律を楯に取つて動いたから、だからこれは内政干渉ではないというようなことで片付く問題ではないのであります。私どもはその点で大きな問題が起るだろうと思うのでありますが、例えば今日エジプトにおける事態はどうでありましよう。これはイギリスは明らかに條約によつてあすこに駐屯しておる。恐らくイギリスは條約に反いたような行動をしてはおらんだろう。併しあすこの政治状態は、今日イギリスの内政干渉の問題というようなことも大きくエジプト側から言われておるのであります。こういうようなことになつて参りますというと、單に條約に基いて軍隊が駐留し、條約に基いてそこの国の政治的事変にこの條約の範囲内において動いたからといつて、これは内政干渉でも何でもないなどといつて片付けられる問題ではないのであります。その点について單にこの言葉だけの問題ではなくて、これが持つ実体について一体法務総裁はどうお考えになるか、それをお伺いしたい。
  314. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 勿論或る国に他国の軍隊が駐留するということは、これは通常の場合において通常行われる事柄ではございません。そこには何か特別の事情があつて初めてそういう事態が生じて来ることと思うのであります。そうしてさような場合におきまして、実際上その軍隊の駐留並びにその軍隊を背景にいたしました駐留軍によつて代表されるところの外国が、その駐留いたしておりまする国の内政に干渉をしたというがごときことも、これはあるであろうと思います。併しながら今日この安全保障條約におきましてはさような干渉を招くがごときことの絶対にないような重要なる保障のある方法によつてこの駐留を認めようというわけでございまして、その方法といたしましては、ここの條約にも明らかに規定をいたしてありまするがごとく、米軍の出動いたします場合におきましては「日本政府の明示の要請」によらなければならない。そうして当然要請の範囲においてのみ行動がとられるということを予定してあるわけであります。従つて又米軍の行動というものは、日本政府意思に反して一方的に発動されるというようなことは、條約上当然あり得べからざることに相成つておるわけでございまして、かようにいわゆる干渉というような虞れの絶対に起らないような措置が條約上十分に講じられておるわけでございまして、決して干渉の御心配は要らないと存じます。
  315. 岡田宗司

    岡田宗司君 それではどうもいつまでやつても平行線のようですから、又政府としては内政干渉の條約でございますとは言えませんからお言いにならないものと了察いたしまして、その点はそれでやめまして、私はここで「日本政府の明示の要請」ということが一つ條件になつておるようでありますが、この「日本政府の明示の要請」ということは、どういう手続に基いて如何なる形において発せられるか、これをお伺いしたいのであります。
  316. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは明示の、はつきり現わしたる方法による要講でありまするから、例えて申しますると、文書等による方法その他日本政府意思を具体的に現わす方法によるやり方であります。
  317. 岡田宗司

    岡田宗司君 尋常一年生に対する御教示のようで誠に有難いことと思うのでございますが、「明示の要請」があるまでの手続或いは形式というものがいろいろあるだろう、その実体をお聞きしておるのでありまして、「明示」ということの言葉の御解釈を伺つておるのではないのであります。
  318. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはいずれも具体的に、さような場合に処する政府の具体的な方法を決定いたすべきものだと考えております。
  319. 岡田宗司

    岡田宗司君 一体條約を結ぶ場合に、こういう米軍発動のような重要なことの條件になるものについて、政府が何もきめないで條約を結んで、そうしてここの委員会で聞かれると、いずれそういうことはあとできめます、こういうようなことでございますが、これはどうも私はおかしいと思うのであります。これはやはり行政協定のうちに入るのですから……。
  320. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 行政協定の範囲に入るか入らんかという問題も、これは行政協定内容によつて、相談によつてきまつて参る場合でありまするが、併しかような場合は恐らく行政協定までは行く必要がない場合じやないかと考えております。
  321. 岡田宗司

    岡田宗司君 今大変御明白にされましたことは、こういうことば行政協定に入らない場合が多いと、こういうことになりますというと、日本政府で以ておきめできる問題だと思うのです。そういたしますと政府としてはこれに対する何かの具体的方針を持つておらなければならん。これは法務総裁に御答弁願うのがいいのでありますが、この明示の要請をいたす手続と方法等についてお伺いしたい。
  322. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは、日本政府の行動として條約上規定せられておりまするので、内閣におきまして然るべき決定をいたしまして、そして取運ぶべきものと存じますが、如何なる手続により如何なることをどういうふうに連絡をするかということは、今なお具体的に決定いたしておりませんが、事柄の性質上少くとも閣議において決定した上で要請をするというふうにすべきものではなかろうかと存じます。
  323. 岡田宗司

    岡田宗司君 ではこの点はそれでとどめておきまして、次にもう一つ二つありまするが、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉」と、こうなつております。この教唆とか干渉とかということはどういうことであるかということをお伺いしたいと思います。
  324. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 「教唆」は刑法などで使われておる教唆と同じ意味で、そそのかしという意味と解すればいいと思います。更に具体的に第三国が介入して来る場合が干渉でございます。
  325. 岡田宗司

    岡田宗司君 そそのかしという、これは字引の言葉の解釈でございまして、私が聞いているのは実体的な意味を持つ教唆でございます。一体「外部の国による教唆」という問題がここで挙げられておるのは、恐らく率直に申上げれば、共産主義国若しくはコミンフオルムのごときものが、或いはほかにそういうものがあるかも知れませんが、今のところはそういうものが、国内の或る勢力に対しまして働きかけて、こうしろ、ああしろというようなことを指図をして、その指図に基いて起つたものというふうに解らせれるのでありますが、そういうことでしようか。
  326. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 大体それでよろしいと存じます。
  327. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ及第点を頂いたようでありまするが、(笑声)そこで問題なんです。共産党の問題が直接問題になると思うのであります。共産党は御承知のように世界的な連帶的な組織であります。それぞれの国における共産党は、思想を同じくし行動の方針も同じくしておるのでありますけれども、併しながら直接に或いは外国から武器の援助であるとか、或いは直接に指令を得られないでも、その根本方針を等しくするという点において、それぞれの国の内部におきまして行動を起すとか、そしてその場合においてそういうことから起された行動は、これは外国からの教唆と見るかどうか。この点の御判定を願いたいのであります。
  328. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 共産党の諸君が国内においていろいろな活動をしておられまするが、併しこれらが全部外国の教唆又は干渉によつておられるものとは考えておりません。やはりその内容によりまして具体的な事実をつかんで、干渉又は教唆の事実を押えた場合でなければ、一概に共産党のやつたことは全部外国の教唆又は干渉によるものなりと断定はいたしかねると存じます。
  329. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、逆にどういう場合が直接その外部からの教唆であり又は干渉であるか。これを具体的にお示しを願いたいのであります。
  330. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 外国の教唆又は干渉の具体的事実があり、それに因果関係を持つて国内においてそういう大規模なる騒擾又は内乱が発生したと、こう認められる場合でございます。それ以上具体的に申上げるわけにはいかんと思います。
  331. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも法務総裁にしろ、ほかのかたがたにしろ極めて抽象的でありまして、私どもにはなかなか了解しにくいのであります。そこへ行きますと、あなたがたのやはり先輩でありますアチソン長官はもつとはつきりしておるのであります。(笑声)アチソン長官はギリシヤの場合についてこう言つておるのです。グリーク・ノーザーン・ネイヴアース・ツウ・ザ・グリーク・ゲリラス、こういうふうに問題を取上げておるのであります。これは明らかに当時のユーゴスラビアなり、或いはアルバニアの国々が直接これは関係している。当時ユーゴはコミンフオルムに属しておりました。そういうような国々が直接援助してやる。そういうことを明示しておる。私はやはりこういう問題は極めて重大であり、若しこういう問題の判定を一歩誤るならば、それこそ内政干渉の問題も起るでありましよう。又これによつて、この判定を誤りますならば、純然たる国内的な問題も、これを外部からの教唆として、そして外国軍隊の発動を招来するというような問題が起るのであります。これの明確なる限定について、今どうも御答弁できないようでありますから、この次の国会まででも結構でございます。別にその間に起るようにも思いませんから、一つ十分にこの限界について法律的にはつきりした御解釈を、アメリカ側との御相談の上に、或いはそのほかの関係者との御相談の上に明確にしておいて頂きたい。こう思うのであります。  次にお伺いしたいのは、「大規模の内乱及び騒じよう」となつております。この大規模の内乱でありますが、これは原文はシヴイル・ウオーとはなつていない。普通飜訳する場合には、内乱という場合にはシヴイル・ウオーであり、ライオツツとはなつておりません。ライオツツは普通暴動とか何とか訳されておりますが、この内乱という言葉、それからこのライオツツという言葉、それから普通日本語が逆に向うに訳される場合のシヴイル・ウオーという言葉、特にこのシヴイル・ウオーとライオツツの区別についてはつきりお伺いしたい。
  332. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ここに「内乱」「騒じよう」とありまするのは、相当大規模なる暴動或いは騒じようというような状態になりまして、到底普通の国内の察力だけでは鎮圧することが不可能であると認められる程度に達したものを、かように表現いたしておるものと考えておるのであります。勿論国内におきまして政府対立いたしました第二の仮政府のごときものができる、こういうような場合はこれは当然大規模なる内乱の最も発展したものと存じますが、そこまで参りませんでも、国内の警察力によつて鎮圧することが不可能なところの大規模な暴動、騒擾、こういうような場合におきましては、当然この條項を適用し得るものであるとこう考えております。
  333. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今法務総裁のお話ですというと、大規模な内乱、ここにあるような問題は、日本の警察力では何ともならない問題である。そういうような場合にこの外国軍隊の出動を要請するのである、こういうふうに言われておるのでありますが、そういたしますと、この條項の前提といたしましては、日本の警察力の手に負えないような大規模な内乱なり騒擾が起るということを前提としておる。或いは逆に言えば、こういうような内乱や騒擾が起つた場合に、今日の警察力なり、或いはこれは将来長い間効力を持つ條約でありますから、将来法務総裁の言われるように、警察予備隊なり何なりの力が増強されても間に合わないようなものが起るということを予想しておるように思うのですが、そういうことを予想しておると解釈してよろしいのですか。
  334. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは日米安全保障條約でございまして、つまり安全の保障のためにやるのでございまして、いわば火事のために火災保險をかけるようなものであります。それは火災にかかることを前提として保險金をもらうというために保險をかけるのであるか、それともそういう場合をなからしめるという意味で保險をかけるのか、いろいろこれは考え方があろうと存じまするが、政府考えておりまするところは、かような安全保障條約を結ぶことによりまして、そうした事態の発生をなからしめたいという趣旨でございまして、そういうことが必ず起る、そのときにこれが必要だ、それで今から準備をして置くという、そういう意味において起るということを前提としてはおりません。むしろ起らないためにこの安全保障條約を結びたい、こういう考えでございます。
  335. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ火災保險の例をお引きになつたのでございますが、起らないために外国軍隊にいてもらつて発動するような、こういう條約を結ぶのだということでございます。私どもも起らないということを希望しておる一人なのでありますが、やはりどうもこれを見るというと、起つた場合のポンプをよそから借りて来るので、そのポンプを備えて置くのだというふうに思われるのでありますが、今度はどうも政府は文面通りの解釈よりも、むしろ今比喩に挙げられましたようなひねつた解釈をされておるのであります。  それはさておきまして、こういうようなものが起らないようにアメリカ軍を置くのだということになりますと、つまり日本アメリカ軍にいてもらつて、そうしてこういう騒擾が起らないように睨んでいてもらうのだ、こういうになつて来るのじやないか。つまり睨みを利かしてもらうのだと、こうなつて参りますというと、今度逆に日本の警察力では今のところも、これから増強をいたしましても、睨みが利かないということになつて政府としては非常に何と申しますか自信のない話である。自分たちでやれないからこういうものがいて睨みを利かしてもらうのだということになると、甚だ屈辱的なものではないかと思うのでありますが、如何でしようか。
  336. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これを屈辱的と御覧になるかどうか、これはいろいろ批判の余地があろうと思いますが、要するに真空状態を補充してもらう、そのための安全保障條約であるわけでございます。
  337. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはダレスさんがしばしば言われておるので、真空状態の補充かも知れませんけれども、真空状態の中に起るいろいろな問題も、私らはやはり日本政府の責任を以て片付ける問題であるのじやないか。向うに睨んでもらうというようなことはしなくてもよかつたのじやないか。この点は北大西洋同盟條約のほうが私はもつと恰好をなしておると思うのです。勿論北大西洋同盟條約における武力攻撃の問題が間接侵略の問題を含んでおるといたしまして、その場合にやはりその間接侵略が起りました場合にも、この北大西洋同盟條約が発動いたすわけでありますが、その場合にも締盟国のコンサルテイシヨンによつてやるということが書いてあるのであります。こういうふうな形のものをこの條約に含めしめて置くということは、将来日本にとりましていろいろなる問題が起るのじやないか。例えばエジプトのような問題も起ることが予想されてならない。そういう点について私はもつとほかの形のものをとつたほうがよかつたのではないか、これは政府が喜んでおやりになつたことか、それとも、しばしば大橋法務総裁が他の問題について言われましたように、止むを得ずおやりになつたことか、その点お伺いをしたいのであります。
  338. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 真空状態を補充いたしまするために何らかの安全措置が必要である。そうしてそのために米国の援助を仰がなければならんということは、これは止むを得ないことであると存じます。そうして米国の援助を仰ぐ場合におきまして、その安全保障條約としてはどういう形が適当であるか。これにつきましては政府といたしましては今日のような日米の関係から見まして、この條約が最も適当であろうと考えるわけでございます。
  339. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の御質問に対する答弁答弁になつておらん。私は第一條の後段のようなことをお入れになつたことが、進んでおやりになつたことか、止むを得ずおやりになつたかということをお聞きしているのです。
  340. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 大体安全保障條約を作らなければならないということは、これは止むを得ないことであるということは、先ほど申上げた通りでありまするが、その安全保障條約を作る以上、第一條の後段に入れて含ましめるということは、これは適当なことであると考えております。
  341. 岡田宗司

    岡田宗司君 これをお入れになる場合に、私はこれは條約局長にお伺いしたいのですがこれは向うとの交渉でお入れになつたわけでありますか、この條項をお入れになる場合に、前例等を斟酌されたのか、或いはこれは日本側の発案によつてこうしたほうがいいじやないかということでお入れになつたのか、或いは向う側からこういうものはどうだと言われて、これはよろしうございますと言つてお入れになつたのか、その点をお伺いしたいのであります。
  342. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 法務総裁から御答弁があつた通りでございます。
  343. 岡田宗司

    岡田宗司君 今法務総裁が止むを得ず、適当というのは、これは法務総裁の御見解です。その條約の締結される場合の手続の上において、この條項は日本側から進んで入れたのか、或いは向う側から示されて入れたのか、或いは又これは何か先例があつてこれがいいと思つて入れられたのか、その点お伺いしているのです。
  344. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この條約は前文にもありまする通りに、「日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。」のでありまして、これは日本国希望をいたし、その希望に応じてこの條約全体ができ上つておるわけであります。従つてこの点は第一條につきましてもあらゆる條項について同様の趣旨で御理解を頂きたいと思います。
  345. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほどはこの條約は止むを得ず結んだ、今度は希望して結んだ、これはどうも私ははつきりしないのでありますけれども、まあどうもこれ以上衝くのはやめましよう。  それでは次に交換公文のほうに移りたいと思います。アチソン国務長官から吉田総理大臣宛の交換公文の最後のところに、「合衆国に関する限りは、合衆国と日本国との間の安全保障條約の実施細目を定める行政協定に従つて合衆国に供与されるところをこえる施設及び役務の使用は、現在通りに合衆国の負担においてなされるものであります。」とこう書いてあるのであります。そしてこれを今度は吉田さんからアチソン長官に宛てました書簡において確認しておられるのであります。そういたしますと、行政協定に従つて供与されるところの施設及び役務の使用以上のものがここに規定されている。供与されるところをこえるとあるのですが、このことは行政協定を無効にするものではない、無効とは言いませんが、行政協定を結ばれても、その範囲内にものが限られないで、この公文に基きまして擴張されるということが考えられるのではないかと思うのでありますが、この点についての條約局長の御見解を承わりたい。
  346. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) ここにありまするように、細目を定める行政協定によつてアメリカの提供されるところをこえる施設或いは役務はアメリカの費用でやる、こういうのであります。
  347. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカの費用でやるということは、ここに書いてある通り、こえるということが問題なんです。こえるものがあるのかどうかということです。
  348. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) ある場合におきましてはアメリカの費用でやる。
  349. 岡田宗司

    岡田宗司君 ある場合におきましてはアメリカの費用でやるというのではなくて、この行政協定に従つて合衆国に供与されたところをこえるとあるのでありますから、行政協定によつて供与されたもの以上に施設なり或いは何なり役務なりが使われるということがここに掲げてあるのですが、そういうことは、この公文に基いてあり得ることになると思うのだが、それはどうかとお伺いしているのであります。
  350. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) この交換公文はいわゆる国連、国際連合に対する協力の問題が中心であります。従いまして国際連合の協力の場合にはあり得る次第であります。あり得る場合においてを具体的に示したのであります。
  351. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、行政協定の範囲をこえて使われることがあり得る、こういうふうにはつきりと御解釈になつているわけですね。
  352. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) お見込みの通りであります。
  353. 岡田宗司

    岡田宗司君 而もこの問題は今後相当重要な問題を惹起するだろうと思うのです。それは何かと申しますならば、「将来は定つておらず」、こういうことが書いてある。そうして「不幸にして、国際連合の行動を支持するための」云々ということに繋がつているのであります。そういたしますと、将来に不幸にして行政協定をこえる施設なり役務を使う場合がこの公文によつて明らかにされている。そういたしますと、行政協定がこの場合において限定されたものではなくなる。まあ不幸にして将来いろいろな問題が起りました場合に、行政協定に限られる施設なり役務以上のものがどしどし使われるということを政府はこの交換公文によつて認定されたものと思うのでありますが、その点如何。
  354. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは平和條約の本文に謳つておりまするように、国際連合への協力援助というものは、この五條に書いておる通りでありまするから、今後国際連合の援助に対しましては、いわゆる日本のでき得る範囲のあらゆる援助という意味であります。
  355. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、まあ国際連合がなす場合には、現在アメリカ軍が行政協定によつて与えられた権利以上のものが使われる。而もアメリカ軍がその国連軍の一員としてやる場合には、その費用を負担するといることになるわけでありましようが、この点によりまして明らかに国連軍に対する援助の場合におきましては、行政協定の範囲をこえる。例えば日本国中全部が挙げてアメリカの軍事施設化され、或いは日本人全部が挙げてこの役務に服するということが最大限として考えられるのでありますが、そう解釈してよろしうございますか。
  356. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 実際の問題では、さようなことは考えられないのであります。国際連合憲章の精神は決してそういう精神ではないと思います。
  357. 岡田宗司

    岡田宗司君 国際連合の精神はそうではないかも知れんけれども、そういう場合が予想されるから、この交換公文ができているのではないのですか。
  358. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) この交換公文は、現在いたしておりますることを今後も、まだきまつてはおらないが、不幸にして続く場合においては、日本独立後においてもこれを継続するというのが根本精神であります。
  359. 岡田宗司

    岡田宗司君 ではもうこれ以上草葉次官と御議論してもしようがありませんから、いたしませんが、明らかになつたことは、行政協定にきめられた範囲をこえるところの施設並びに役務が使われる場合が今後生ずるということ、それに対してこの交換公文によつて日本に義務が負わされているという点であることが、私は只今質疑によつてはつきりしたと思いますので、ここで私の質疑を終りたいと思います。
  360. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) この機会にちよつとお許しを頂いて、先ほど岡本委員の原子爆彈に対しまする首相答弁が誤解を生じたようでございますから、次のことが自分の真意であるから、代つてお答えするようにということでございますので、この機会に申上げておきたいと存じます。  「米国における原子戰の攻撃に対する防禦は、万一に処するためのものであつて、原子戰攻撃の必至を前提とするものではないと思う。自分も何ら必至とすべきものにあらずと考える。万一の場合に対しては、国力の許す方法考え得べしと言えるまでで、自分は平和條約及び安全保障條約によつて極東の平和は維持されておるから、さような必要を生じないと信ずる。」どうぞ御了承頂きたいと思います。
  361. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今の問題は、明日ちやんと皆揃つておるところで総理じきじきに釈明をされないと、そういう形で、自分は言うことを言つておいて、あとは又次官がその文章を読上げるという、そういう形でこういう重要な問題を取扱われるということはいけないと思います。
  362. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 了承いたしました。
  363. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私はかねて懸案となつて、大蔵大臣との間にお願いといたしておきまして保留になつております点だけについて二、三お尋ねしたいと思います。  先ずその第一は、今問題になつております交換公文ですが、交換公文につきまして僕のお願いいたしておきました材料が未だに頂けていないようですが、どういう事情ですか。
  364. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員、聞き取れなかつたそうですから、もう一度おつしやつて下さい。
  365. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 交換公文について吉田総理の、あれですね、施設及び役務というあれですね、その内容を詳細、明確に文書を以て明確にされたいとお願いしたのが未だに頂けていないので、これから先のいろいろの質問に差支えますですね。
  366. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは先般條約局長からもお話し申上げた通りでございまして、実は具体的の問題についてはそれぞれの処置をいたしておりますので、今にわかにこれをまとめて提出する運びには立至らないのでございます。御了承を頂きたい。
  367. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 了承できんですね。これはもう数日前から何回となくお願いし、従来施設及び役務は、朝鮮戰争には援助してないということを明言し、且つこの会議に、この両院の今回の委員会においても、西村條局長が同じ趣旨のコマーシヤル・ベーシスで行われておるということを言つておられる。そして現に西村條局長は、若しそうでないならば、自分のこの発言は取消さなきやならんということも保留になつておりますですね。だからやはりここは提出願わなきやいけません。
  368. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 西村條局長答弁につきましては、一昨日でございましたか、條約局長から申上げた通りでございます。すべてというのは、多くという意味であるということであります。
  369. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕はこの問題は大蔵省の所管だと思いますがね。草葉君に御答弁を願うつもりはないです。
  370. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 朝鮮事変以来今まで提供した施設及び役務の種類でありますが、これは御承知のように、いわゆる特需としてドルで支拂われておるのでありまして……、
  371. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 聞えんですがね……。もう少し……文明の施設があるようだから、それを利用して……、速記もとりにくいでしようしね。
  372. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 日本の終戰処理費で負担しておるものはございません。従来その関係で、いわゆる特需としてドルで支拂われておるわけでございます。
  373. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それが大蔵省の答弁ですか。この交換公文についてですね、施設及び役務を従来も供して来たし、現に与えているということを国際的に明らかにされている以上、その内容を国会に対して提示するのは大蔵省の義務でありませんか。大臣がおられるようだ……おられんか。
  374. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私はこの資料につきましては只今聞いたのでございますが、もう一度はつきり御質問願いたいと思います。
  375. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この間から再々申上げておる。じや申上げましようか、従来政府はですね、朝鮮戰争において日本が与えておりまする物質的援助は、すべてコマーシヤル・ベーシスだ、或いは精神的援助だということを言い張つて来られた。で前々国会ですか、我が党の衆議院議員川上貫一がこういう問題に触れたときに、虚構と捏造であると言うて除名になつておる。ところが今回吉田総理は全世界に向つて、虚構と捏造をしていたのは政府であるということを証明されたわけです。即ちやはり施設及び役務を援助して来たと言つておられる。だからですね、これは国内的には経済的、政治的にそういう重要な問題であるし、又国際的に言えば、日本が朝鮮戰争に何ら国会の承認もなく、国際法的な根拠もなくて朝鮮戰争に介入しておられたということの点に関係して来るので、やはり私が今後逐條の審議を進めて行く上において、先ずこの点を明瞭にして頂こうというので、これはもう昨日も一昨日も、もつと前かな、何回もこの趣旨を詳細に申上げて、その資料の提出を要求しておるわけです。
  376. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 特需の関係の資料は私のところにございません。従いまして私からは出しがたいと思います。
  377. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これはそうすると吉田総理の言つておられるのは特需だということですか。
  378. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 吉田総理はどう言われたか私聞いておりません。
  379. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたは吉田内閣の一員として、総理がアチソンと交換された交換公文について何らの義務を感ぜられないですか。
  380. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 交換公文については、国務大臣としてそれを認めます。
  381. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 その交換公文についてあなたの所管に関係する施設及び役務を与えて来たし、現に与えておると言われる以上は、この内容を明らかにされる義務があると思うのですがね。
  382. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それは特別調達庁の所管と思います。
  383. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなたは直接この特別調達庁……私は必ずしも大蔵大臣、大蔵省とは申しませんが、これはあなたを通してお願いしてあつたでしよう、この点明快にして下さい。若し特別調達庁なら明日頂けますかね。今晩でも頂けますかね。
  384. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほど申上げましたように私は一昨日だつたか、あなたの資料の御質問は、今の占領軍がいろいろな漁場その他の、その資料を聞いておりましたから、今日取揃えて持つてつております。施設その他につきましては、特別調達庁、大蔵省との関係もありまして、今直ちに作るわけにはなかなか参りません。私が聞いたのは今でございます。
  385. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういうわけですか。今の大蔵大臣の問題は、これを片付けておいて、これは懸案になつておる事項ですからやります。けれどもどうですか、今の問題は一つ役務及び施設の問題を委員長解決して下さい。あなたから特別調達庁なりに命じて明日はもう御提出願いたいですね。
  386. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 一昨日特別調達庁からこの点を御答弁申上げるために出席いたしておりましたが、その機会がなしに帰つたのであります。これは私が先に御答弁申上げた通り…。
  387. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は資料を要求しておるのです。答弁を要求しておるのでない。資料を委員長を通して、成規の手続を経て委員長を通してお願いしておるのです。
  388. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 委員長から申上げますが、私のところに入つておりますことでは、特調、それから安本、大蔵省、外務省、各省それぞれ御関係はあるそうでありますが、資料としてまとまつたものはないそうであります。作成は困難であるということは聞いております。
  389. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 一つも出してもらえんのですか、資料は。僕のところにさえあるのですよ、一つは。僕のところの調査部さえも一つの正確な責任の持てる資料を持つておるのに、責任のある政府が国会議員の要求に対して資料が出せんのですか。拒否されるのですか。
  390. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 安本のほうでは特需の品目と金額についてなら出せるそうであります。
  391. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 特需の……。
  392. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 特需の品目と金額の合計でございますね。そういうものなら資料があるそうであります。
  393. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕のは、繰返して言つているように、援助、コマーシヤル・ベースのもので私は求めているのではない。コマーシヤル・ベース以外に援助を与えて来たし、今も与えておる。その援助の部分の量的、値段ですね、人間について言えば員数ですね、單価、その点を明瞭にして頂きたい。
  394. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) その他の資料は作成困難です。
  395. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 局限したお願いですね、正確なお願いですね。
  396. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) その他の資料については目下作成が困難であるという御返事であります。
  397. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どうしてですか、どうして。あなたちやんと国際的に総理……、その国際的な交換文書の内容に、そういう政府態度をとられるということはあり得ないことじやありませんか。
  398. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国際公文の全文につきましての資料を今ここでお出しするわけには参りません。
  399. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 なぜです。
  400. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 作成も困難でございますし、出すべきでない資料もありますのでお出しするわけには参りません。
  401. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 国会へ出すべきでないという資料はどういうような資料ですかね。
  402. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 外交関係で出さないほうがいいという資料もありますから。
  403. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは、そういうことは憲法か国会法に規定されていますか。
  404. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 困難であるから出せないというのであります。
  405. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 困難だから、困難のほうはこれから吟味しますがね。今あなた外交上出せんという、その点明快にして下さい。
  406. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 外交上出せない場合もあります。その資料という問題が又問題でございまするが、いろんな点は全部資料として出すといるわけには参りません。
  407. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これを一つ、特別調達庁なり、僕はこれの官庁関係のむずかしい細かなことは存じませんけれども、これは私は政府として委員会の権威のために出して頂くように委員長から要求して頂きたいですね。官房長官でもいいですよ。つまり政府のどこの筋ですか。大蔵大臣の答弁は全く誠意がないと思います。
  408. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) もう一度繰返しますと、大蔵省、経済安定本部、外務省、特別調達庁等関係省方面と目される方面に対しまして、調査資料提出を要求いたしましたところ、本趣旨の資料はありません、且つできないという返事がありました。なお本趣旨とは別に、特需の品目及びその合計金額に関する資料については、安定本部で提出ができるという返事がありました。
  409. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 特需の以外の援助というものはないのですか、あるのですか。
  410. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは交換公文に示す通りであります。
  411. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あるのでしよう。あつたら出されたらどうです。それで僕がこういうことを言うのは、ここにある昭和二十五年度の特別会計のを見ますと、総理府所管の印刷費の中で一億五千四百万円余の金が計上されておつて、これは外国銀行券、南朝鮮の銀行券の印刷のために国費を投じておられる。その内訳も非常に正確に印刷庁特別会計として出ているのです。それで作業費の中で、例えば物件費が七千三百万円であるとか、旅費が幾らであると出ておつて、驚くべきことはその中に超過勤労手当として七千三百万円。この徹夜作業で労働者が非常に苦しんでこれをやつたということで、全費用のうちの半分余が超過勤労手当になつている。これは私どもの政務調査会で調べました一つの資料ですが、やはりこういうように援助の部分は明快に私はやはりされることが、憲法で保証された国会に対する政府の義務だと考えますが、それでは僕の要求している援助の内容は拒絶されるのですね、提出を。
  412. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 出せます資料は出しますし、又資料の要求がなくても重要なことにつきましてはお話のように出して行きます。
  413. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だけれども、この援助という問題は非常に重要ですよ。だからこれを一つどうしても出して頂きたい。
  414. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今の、印刷庁で昨年の夏ですか、急に向うの銀行券を徹夜でやつたことは今お話通りであります。而してこれは相当の收入になりました。援助と言えば援助、儲けと言えば儲け。これは事柄によつて違いますので、援助の資料の提示その他につきましてもなかなか厄介でございます。従いまして資料の作成も相当困難でございますので、御要求に只今のところ応じかねるというのであります。
  415. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと聞きにくいのですがね。よほど儲けられたんですか。(笑声)
  416. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) まあ儲ける儲けんということでなく、相当の收入にはなりました。
  417. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 併し明らかに、これは有償ですか、私は書類から基いて、国費によつて提供された純粹の援助だと思いますが、このうち一部分が援助になつてるくらいですか。
  418. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは私は援助であるか援助でないかわからんが、あなたがたの解釈では援助と言われるかもわかりません。私はこれで相当儲けたのでありまして、ドルが入つて来ております。
  419. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どうして下さいますかね、これ以上この問題を……。次に大蔵大臣に対して保留になつてる懸案の問題もありますが、これは僕は明日でもいいから当然提出される義務があると思うのですがね。こういうことを拒絶されるといるのは、国会に対する政府の重大な侮辱であると考えざるを得ないのですね。こういう先例を……。何か僕がちよつと思いついて言うのじやなくて、全世界に高言しておられる援助、コマーシヤル・ベースの特需でない部分の援助、現にあるのです。ちよつと私どもの不十分な政務調査の手で調べてみても、現に一例を挙げてもあるのですから、こういう点は今晩今ここで直ぐということは困難であるならば、明日の私がこれからの逐條質問の前提としてこれはどうしても頂きたいので、これはもう一度委員長においてお考えつて善処願いたいと思いますが、如何でしようか。
  420. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 委員会として要求をしろとおつしやるのですか。
  421. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうです。
  422. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 委員会として要求する場合には、委員会の決議を要するわけです。それは皆様にお諮りをしなければなりません。
  423. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今討論して、だけれども人が今足りんようですが、こういう恰好で重要な問題をあれされてもあれですから、明日もう一度お諮り願つて、飽くまでこの資料は求めることにして……。
  424. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) これは、それでは先ほど問題になりましたから、理事会でもう一度御相談をした上で進行することにいたしまして、そうして次に移りたいと思います。
  425. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これは交換公文よりもつと前から問題になつている。これは非常に重要な問題で、これは総括質問のときに速記録にも明示になつております。特にこれは御多忙な大蔵大臣であろうけれども、この点は十分御考慮願いたいということを申上げて、そのお蔭で今日やつと紙一枚頂いたわけです。  終戰処理補償額一覧表、これは僕のお願いいたしましたものとちよつと見当が違う。こういうことをお願いしたのじやない。こういう木で鼻を括つたような、まるで総理の演説をガリ刷りにしたような書類を頂こうとは僕は思わなかつたですね。これで果して僕の質問に答えたのか。国会を侮辱しないで。こういう紙一枚の資料しか頂けないのですか。(笑声)
  426. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨日でしたか、一昨日でしたか御要求がありましたので、早急に私から命じてできるだけ正確な数字を出すようにしたのが今回のこれでございます。
  427. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ちよつと係りのかたから御説明願いましよう。どういうわけで私の質問にこういうものを出されたか。作成の衝に当られた責任のかたがあなたのほうの政府委員でおいでになると思いますね。
  428. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 御要求の趣旨は、今まで補償関係でもつてどういうものを出しておるか、その金額はどの程度になつておるか、こういう御要求だと承わりましたので、この資料を提出いたしました次第でございます。
  429. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私はそういう大ざつぱな、あいまいなことをお尋ねした覚えはない、私はつまりこの頂きました書類ですね、この書類の方向は一致しておるのですが、非常に不親切であつて何ら内容を答えていない。僕のお願いしたのは、終戰以来五カ年の間に、土地、農耕地及び漁区の取上げに対してどういう補償を拂つて来られたかという、総理のときの総括質問法務総裁もおられるのですが、この質問は、これは逐條審議で十分法務総裁の意見も、それから総理の意見も質さなきやいかんと思いますが、つまり質問の趣旨は、こういう土地を取上げたり、漁夫から漁区を取上げたりすることを行政協定に、国会の承認なしに、挙げてこの行政協定に讓るということ、その可否を審議するその前提として、終戰後どのような補償をしておられるか、これを聞いたのです。ところが今日下さつた紙一枚のものによると、例えば漁区の補償一億二千四百万円余、こういうふうに出ていて、そういうふうの飛行場に対してどういうふうなことをして来られたか、これの内訳が全然ないのですね。これからその第三條に基いて行政協定でこういうことを……まだ今までの分は我々国会においてこの問題を審議する権利はあるが、これを挙げて讓つてしまわなきやならないという、そういう大きな問題を論議するためには、どうしてもこの問題を明らかにしなきやならない。こういう意味で私は單価をどのくらいにしておられるか、漁区の收獲高に対してどういうふうに出しておられるか、こういうことが知りたくて十分詳細に説明申上げてこの資料を要求したのですが、これでは手の付けようがないですね。
  430. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 非常に数の多いものでございまして、なかなかその一々を集めましてということもなかなか困難でございます。又五カ年の間でございまするので、過去のものについても必ずしも内容はつきりいたさないものもありますので、この程度で御勘弁願うほかないと思います。
  431. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 限定してもいいですよ。僕はこの前全部一つ一つということが困難であるならばというので、私が例を挙げて三沢の飛行場━━━━に対してどういう支拂をしておられるか、それから静岡県の伊東の沖合の地区に対する演習地の立入り禁止に対してどういうふうな補償を支拂われたか、この二つに限定してもよろしいから、これを一つ明日でも、限定しますから、この二つの項目にどういう根拠でどういう支拂をしておられるか。そうしないとこの行政協定についての三條のお尋ねをするのに、どういう拂いぶりを今後されるか、そのことを而も白紙に一任してしまうのですから、農民や漁民に対してはどういう従来支拂いをしておられたかということを見なければ、この問題については確信を持つて審議できんわけですから、一つ限定しましよう、飛行場について三沢関係、それから漁区関係についてはこの伊東の沖合の━━━━━ですが、それの内容説明願えれば、それを前提にしてこの行政協定の問題の質疑に入ることにいたします。
  432. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 二カ所の分を至急取調べまして、御覧に入れるような資料が十分集まりましたら提出いたします。
  433. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 先ほどお願いいたしておきました、今、今日の理事会の申合せの趣旨もあり、あなたの了解得ましたように、夕べも非常に遅くなつて疲労しておりますし、先ほどの理事会の話合いの趣旨に従つて、あの私が成規の手続でお願いいたしておりますこの問題は、明日にさして頂きたいと思います。
  434. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) ちよつと速記をとめて下さい。    午後六時七分速記中止    —————・—————    午後六時三十四分速記開始
  435. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは速記を始めて下さい。
  436. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これも実は本当を言えば先ほどの資料を頂かないといけないのですが、特に大橋法務総裁その他から懇切なる依頼を受けましたし、米の問題で非常にまあはやりつ妓になつて、あちらからこちらからお座敷が余計かかつて来ているのですから、農林大臣につきましての私の質問は、私今これからので終えるようにいたしたいと存じます。  やはり先ほどから大蔵大臣に質問をいたしておりますことに関連するのでありますが、私は今後農地、漁区というような、農民、漁民がこの行政協定によつて收用をされて参ります。これの憲法論その他は全部他に讓りますが、こういうあなたは農民、漁民を保護し、育成し、助長すべき行政の長として、この従来收用され、今後收用されて行くであろう問題についてどういうふうな意見をお持ちであるか、先ずこれをお伺いしたい。
  437. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。でき得るだけ農民、漁民に対して迷惑のかからないように措置をいたしたいと思つております。
  438. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一遍ちよつと……もう少し具体的にお伺いいたしましよう。私は特に水産問題で再々総理にも北洋漁業の問題、東支那海の問題、それから近海漁業、この三つの問題について非常な関心を拂つておりますので、今の質問を分けましよう。過去において漁業の保護、損害補償は出しておられますか。
  439. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答えいたします。過去におきましても出しておるのでありまするが、これの支拂その他につきましては、実地の調査に基き農林省方面から要請し、経費は特別調達庁の予算においてこれが支拂つておる次第でございます。
  440. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 併し、私は非常に問題を限つているのですよ、それじや土地のほうはまあ資料の関係もございますし、これはあなたを煩わさないことにして、二十五年度の演習による漁業の損害の補償の問題ですが、度は再三これは総理にそもそも代表質問以来、国内にある例のマツカーサー・ラインほどうなるのかということを非常にお尋ねしたが、これに対して確たる御答弁はない。それで、併しですね、せめて農林大臣から二十五年度の演習による漁業の損害補償については、これは衆議院のほうでも非常にこの点は論じておられる。各農林委員のかたから非常な問題になつておるのですが、つまりこれをどういうふうに二十五年度の演習による漁業損害の補償は出される考えであるか、これを明らかにして頂ければ、今後の行政協定によるこの漁業問題に関する限りは、私は大体今後質疑して行く前提を得ると思いますが、如何でしよう、この二十五年度の演習による漁業損害の補償についてのあなたのほうの態度、それからその算定の基礎の方針等々及び……まあ先の質問はあとにしましよう。その点ですね。
  441. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申上げます。実情調査の上、査定の上これは予算を要求しておるのでありますけれども、これの支拂は特別調達庁の予算になつておりますので、先ほど大蔵大臣から若干御答弁があつたように、どういうふうなことでやつたかについては明日資料を出すそうでありますから、それによつて承知願いたいと思います。
  442. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 明日の資料によつてくれということですが、ちよつと聞き取りにくかつたのですが、つまり私の質問をもう一遍言い直すと、私どもの心配しているのがこの行政協定によつて、恐らく実際問題として今後その国内のマツカーサー・ライン、いわゆる演習地というものが保存される、そうすると国内沿岸漁業は殆んど壞滅的な打撃を、その演習区域に関する限り受ける。これは国内の蛋白資源の大きな問題になり、又漁区の死活問題である。その国内のマツカーサー・ラインに対して、問題をずつと限つて二十五年度の演習による漁業損害補償額に対する御方針だけを承わりたいのです。つまりあなた大臣として、この幾百万の漁民に対してどういう方針で補償するか、それで、できれば今後行政協定の取極の内容によつて、それがどういう方針で行かれるかどうか、そこが聞きたかつたのです。
  443. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) できるだけ漁民に影響のないように政府としては総司令部方面に要請しておりまして、総司令部方面におきましても、できるだけ日本側の漁民の生業を圧迫しないように考慮するということでありますので、これについて交渉が進められると存じます。なお従来まで補償したのは十区域、現在査定しているのが八地域でございます。この補償のやり方は現地の調査の上実情に即して査定して出しておる次第でございます。支拂は先ほど申したように特調の予算から出ております。
  444. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 補償の予算の支拂の会計の問題じやなくて、あなたは漁民の保護者としてどういう方針で……過去全部が聞きたいのですが、二十五年度についてはどういう方針を持たれ、今後行政協定によつてこういう問題が解決されて行くと思うのですが、その御方針はどういうものか、つまりできるだけ発展させるとか、そういうことじやなくて、現実に与えた漁民に対する損害の補償についてのあなたの態度、これは両院の水産委員会で大問題になつている問題じやありませんか、あなたの所管じやないですか。
  445. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 態度につきましては、実情を調査の上、それに即応して補償を出すということであります。
  446. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 二十五度ですよ、それは二十四年度にも、もう一度遡つて二十四年度でもいいですよ。既往のものをどういう態度で出されたか、或いは出そうとしておられるか。その方針を今後も堅持されるか、これだけ聞けば、行政協定のあなたに関する限りは結構なんです。
  447. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 何回も繰返したように、害情に即して支拂つておるものであります。
  448. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 つまりもうちよつとお尋ねしますが、その農林省の中に入つてないのですか、あなたの所管ではございませんか、魚の問題ですよ。余りにピントが狂つているんじやありませんか。現実に日本に九十九里浜以外十八カ所の演習地でおびただしい何百万という漁民の死活問題で、一歩を誤まれば社会問題を起しそうなことは何回でも経過して来たでしよう。そうして今二十五年度の演習による損害補償の問題として今国会の両院において大きな問題になつている。つまり平均漁獲高その他その損害は、もつと抽象的に言えば、その損害は全部補償して来られたかどうか、及び今後はそれは補償をされるかどうか、抽象的に言えばそういうことが聞きたい。それの具体的な答弁にあずかれば満足です。
  449. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 繰返して申上げますが、損害の状況並びに又これは転換の措置も講じなければなりませんので、そうしたところの諸般の問題を検討いたしまして善処する、こういう態度でございます。
  450. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 生活は必ず……つまり米軍の演習によつて漁民が蒙りました損害は、過去において十分補償して来られ、且つ二十五年度においてもそれは漁民が必ず生活が立つように補償されますか、二十五年度について……。
  451. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) その方針でございまして、補償と同時に他面におきまして、或いは転換をいたさせたり、いろいろの措置を講じまして、生活の安定を期したいと存じております。
  452. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それから今後もそれは農民の蒙つただけの損害は必ず補償するという御方針ですか。
  453. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 先ほど申しましたように、実情に即して補償するようにいたします。
  454. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 お聞きの通り非常にあいまいな答弁で非常に困るのですが、これは如何でしよう、あなたのほうの方針だけをあなたに今要求して、お気の毒ならばもう御出席願わなくてもよろしいが、明日文書でもう少し具体的な原則を、こういう原則によつて従来補償して来たし、それから二十五年度もこういう方法によつて原則によつてやるであろうし、今後もこの平和條締結後もこういう方針でやるという……せいぜい善処するとか、成るべく御趣旨に副うというような抽象的な答弁ではなくて、そうしてあなたお忙しいからわざわざ出て来て頂かなくてもよろしいから、明日その方針をですね、何千何円拂うというようなそういうことは私要求いたしません、併し過去にどういう方針で拂つたか、これが一点。二十五年度はどういう方針で拂われる考えか。それから第三点としては、将来この條約締結後どういう方針であるか、その方針を我々が了解できるように書面でも結構でございますし、どなたか読み上げて下すつても結構でございますから、一つ明日で結構ですが、あなたの御出席を私はわざわざお願いいたしません、これは如何でしようか。大臣お引受け願えましようか。
  455. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 私の申上げたことを文書にするだけでございまして、只今申上げたのが方針でございます。
  456. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは少し農林大臣としてひどくないですか。そういうことは……。(笑声)それでは大臣の職責を盡しておらないじやないですか、どうですか。やはり方針だけはお帰りになりまして次官と御相談願つて、書類で結構ですから、方針だけこれは一つ発表願いたい。そうしないと日本の漁民は安心できませんよ。どういう補償がもらえるか、演習区域において。それともあなたが演習区域をなくするということを総程に代つてここで御言明願つても結構ですよ。
  457. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 何回も繰返したように、私の申上げたのが文書になつて出るだけでありますから、それで結構ならお出しいたします。
  458. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 時間も大分あれのようですから、もう一度要求して……。あなたのそういう今速記に残しており、全国民の聞いておるような態度では、漁民は安心できないですよ。そういう乱暴な形では、演習に引つかかつて一家の生活が維持できなくなる幾百万の漁民に対して農林大臣として誠意ある答弁でないと思うのですが、まあこれ以上の押し問答を避けるために今晩よくお考えになつて、そうしてあなただけでなくて農林省の政府委員のかたもおられるでしようから、この方針だけは明日あなたがおいでにならなくてもいいから、発表して下さることを希望、要求いたしまして、僕の農林大臣に対する質疑を打ち切ります。
  459. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩委員に申上げますが、通産大臣が老躯を押して出ておられます。如何でしようか、御質問はございませんでしようか。
  460. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 これは今紳土條約でちやんと一国の法律の元締である法務総裁と話したのだから、今日は一つ通産大臣の問題は……。資料が今用意してあつて整理しているのです。それは委員長がよく知つている。
  461. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) いま委員長が言われているので、私のせいにされても困ります。(笑声)
  462. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  463. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記を始めて下さい。  本日はこの程度で散会いたします。    午後六時五十七分散会