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1951-11-14 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十四日(水曜日)    午前十時十二分開会   ―――――――――――――   委員の異動 十一月十四日委員川村松助君辞任につ き、その補欠として高橋進太郎君を議 長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事            楠瀬 常猪君            一松 政二君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            石川 榮一君            泉山 三六君            團  伊能君            高橋進太郎君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            永井純一郎君            波多野 鼎君            吉川末次郎君            片柳 眞吉君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君            兼岩 傳一君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 大橋 武夫君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    法務府法制意見    第一局長    高辻 正巳君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省條局長 西村 熊雄君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆院議送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) では只今から本日の会議を開きます。総理大臣に対する補足質問を開始いたします。
  3. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 総理がすぐ御答弁になりますか。書いて出せということですから私は書いて出したのですが、書いたものの中にプリントの間違いもありますし、それから速記録にその質問の要項が載せて入れられることになつておりますが、若しそうでなければ、あなたのお手許で書記に読まさして頂いてもよいのでありますが、私が読み上げてもよろしうございますが、どういたしましようか。
  4. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  5. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記をつけて下さい。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 曾弥君の御質問は、安保條約、即ち米軍の駐留の許容と、平和條約の締結日本独立の獲得とは、不可分として米国主張したか、何故に政府は切離して取扱わなかつたか――これは米国主張に基いたわけではありません。即ち日本としても、独立は得たが、併しながら安全は保障されないということでは困るから、この條約は政府として不可分考えておるのであり、又米国政府もそう考えたろうと思います。いずれにしても両国の両政府意見が一致してここに至つたのであります。  次の御質問は、平和條約第六條但書において、日米安全保障條約等の結果、日本に駐留する軍隊は平和條約の発効後九十日の猶予期間の拘束がないことに定まつている。これある以上は、日米安全保障條約と平和條約と同時に調印する必要はないではないか。――これはしばしば申しておる通り便宜の問題であつて講和條約が、さつぱり申すと、意外に事なく済んだ、時間の余裕があつて両方政府の当事者がサンフランシスコにおるから、この際やつてしまおうと思う便宜の問題でやつたのであります。  第三の質問は、何故に行政協定を切り離して安保條約を急いで締結しなければならないか。――これはしばしば申す通り、先ず原則をきめて、安全保障原則をきめて、そうしてその行政協定になりますと、いろいろな事務的の問題とか、いろいろあるものでありますから、而も安全保障條約はしばしば申す通り成文ができ上つたこの機会にというのであつて、でき上つたものを早く取り結ぶが、行政協定に至れば細かい事務的のことがあるのでありますから、細かいことはあと廻しにして原則だけをきめるという、急いで締結しなければならなかつたというのではなくして、したほうが便宜であるというだけの話でありました。  質問の第四、行政協定内容に関する構想を示してもらいたいということでありますが、これはこの前大体お話した通り行政協定内容はこれから協定して行く間にいろいろな問題が出るかも知れませんが、その範囲については別段これといつて協定に達しておりません。従つて構想でありますが、構想としては、アメリカ兵隊を置く、どのくらい置くであろうか、或いは兵隊のおる所、兵営等の地域はどこにしようとか、成るべく日本人に迷惑をかけたくない、日本人の町から離れた所に置いてもらいたいというような話をいたしましたが、これは内容は、構想はかくかくといつてここにお話するまでになつておりません。  質問の四の口でありますが、国民権利義務関係ある事項は法律又は予算の形において国会審議に付するというからには、特に行政協定の形において白紙委任を要求する必要はないではないか。――白紙委任を要求いたしておるわけではないのであります。原則をきめるだけの話でありまして、その内容が、或いは国民権利義務に関することがあれば法律の形において国会審議に付さなければならん。予算上の問題があるならばそのとき予算の形において出すというので、決して白紙委任を要求している意味ではないのであります。その点お答え申上げます。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 只今総理から御答弁があつたのでありまするが、まだ私としては十分に納得ができないのでございます。従いまして、若干の再質問を許して頂きたいと思います。  第一は、平和條約と安保條約のいわゆる可分、不可分の問題でありまするが、これは私たちも、平和條約ができまして、日本安全保障が必要である、独立日本安全保障が必要であるという意味では、両者関連性を否定するものではないのであります。私の質問は非常に簡單でありましたので、極めて原則的な御答弁しかなかつたのでありまするが、私の言わんとするところのものは、平和條約は何と言いましても、まだ占領下にある日本独立を回復するための一つのいわば手段でございます。本質的に不対等関係に立つてこれから対等関係にならんがための條約でございます。然るに安保條約というものは、事の性質上、当然に日本独立いたしましたそのステータスの上に立つて、平等の立場から、アメリカその他国連等との話合いによりまして、日本の必要の限度におきまして、国連憲章精神に従い、その枠の中で作られなければならないものであります。若しこれを混同いたしまして、この両方を同時に牽連せしめて成立させまするときは、安保精神が本当に対等なものでなくなり、平和條約で独立させてもらう、いわばその代償としてアメリカ軍事的要請に服するというような形になる。これは日本のためにとらない。かような立場から、私は、両者は成るほど一種関連性はあるけれども、飽くまで日本独立自主建前を立て通すようなやり方をして頂きたかつた。総理が言われたように、果して真にアメリカからの何らのプレツシユア圧力がなかつたということならば、それは結構でありまするが、若しそうならば、更に政府といたしましては、平和條約は作る、然る上に飽くまで独立自主の平等の建前とつた上で改めて安保條約を締結すべきではなかつたか。この点が極めてあいまいになつておるので甚だ遺憾に存ずるのであります。かような見地から言うならば、やはり締結の時期ということも極めて重要になつて来るのであります。日本平和條約を調印いたしましても、効力発生する前は言うまでもなくまだ独立を回復しておらないのであります。その期間においていろいろなアメリカとの間の交渉があることは、これは私も認めております。すでに今年の二月からダレス氏と吉田総理との間に交渉があつた。併しその交渉の結果、いやしくもおごそかなる條約ができるというのは、当然にその條約の締結、即ちその締結の一部分である調印すらも、平和條約の発効後に行うのが正しいのではないか。その点において甚だ遺憾であると存ずるのであります。  更に又この点に関連いたしまして行政協定の問題にも当然に関連して来るのでありまして、何故に行政協定内容もきまらないうちに安保條約を急いで締結しなければならなかつたか。このたびの平和條約の審議に当りましては、政府の御提案によりましても、平和條約のみならず平和條約に伴つて必要となつて来るところの議定書宣言等一括承認を求められておるのであります。又安保條約につきましても、安保條約に関連いたしましたアチソン国務長官との交換公文が同じく一括承認の形において提案されておるのであります。これが本当なのでありまして、安保條約は一応承認を求める、行政協定はまだできておらない、かようなおかしなことは私はあり得ない。当然に行政協定もできて、それと安保條約とが併せて国会承認を求められるというのが当然のやり方ではないか。日米加漁業條約の問題を昨日も伺つたのでありまするが、この問題にいたしましても、先ず技術的の問題から入つてそうして正式の條約を作る。これが本当であつて行政協定内容もきまらないのに急速安保條約だけを審議してしまう。審議を求める。ここに私は、何となく安保條約そのものが如何にも不対等関係日本に押付けられた、かような感じをどうしても持つのであります。従いまして、これらの点に関しまして、更にいま一応政府といたしましては、安保條約は飽くまで対等立場において作るべきではないか。行政協定が当然にできてから、安保條約と共に一括承認を求むべきではなかつたか。この点に関するいま一応の御回答をお願いいたします。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは同じことを繰返すようになりますが、平和條約も安保條約も共にアメリカプレツシユアによつてできたものではないのでありまして、現に平和條約も対等の條約であるということは、しばしばアメリカも申しておるのであります。又今日までの協議の形において、アメリカからして、これをしろというような、いわゆるプレツシユアは加えられたことはないのみならず、むしろ日本が要求したことも多いのであります。これはいわゆる対等地位において、相互の和解と信頼とで、でき上つた條約であつて、若し安保條約がプレツシユアを加えられたというならば、平和條約においてもプレツシユアを加えられたろうという想像は付くのでありましようが、併しながら、これは当局者としてはつきり申しますが、両方とも何らのプレツシユアの下にできたものではないのであります。若し平和條約はよろしいが、安保條約は独立したのちになすべきであるというなら、平和條約も或いは不対等地位においてなされた、一種のブレツシユアの下に、脅迫の下にでき上つた條約ということになるのでありますが、片方プレツシユアはない、片方プレツシユアがあるという議論は、私において承服のできないことを遺憾といたします。  又安全保障條約の中に、行政協定という、ここに白紙委任状を要求するものがあると言われるが、平和條約の中にも、賠償問題のごときは、一種白紙委任状を要求したと言われれば、同じような議論が立つと思います。共に原則だけきまつてつて、そうして、その実施細目至つては、これを将来の協定に待つことになつておるのであります。両者の間においては何ら違つたところはないと思います。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 平和條約が何らの圧力の下にできたものではない、これはダレス氏と交渉されておりました吉田総理としては、さような或いはイソプレツシヨンを得ておられるかも知れませんが、この條約の草案が、四十八カ国或いはそれ以上の国との話合いによつてできる過程におきまして、いろいろなプレツシユアが加わつたことは、例えば賠償問題についての案文が変つたことだけでも、これは明々白々たる事実でありまして、如何に対等関係に立つと言いましても、事の本質上、敗戰国であるから領土賠償等において非常なる日本が苦痛を甞めなければならない、飽くまで平等の立場でないことは、これは明々白々たる事実であります。それは今後主権を回復してやろうという点においては非常に立派なものでありましても、その内容において、敗戰国が償うべき代償という点では、当然これは、私は脅迫とは申しませんが、圧力の下にあつたことだけは当然であります。これと安全保障條約とが同様であるということは全然私は成立たない議論であると存ずるのであります。  更に又賠償問題につきまして御説がありましたが、成るほど賠償細目につきましては残された問題でありますが、然らば本條約において政府は、賠償に関する取極は、一切国会審議権からいわば政府が奪つてしまうというお考えであるかどうか。私はさようなことはお考えになつておらないと思う。成るほどこの條約実施に伴いまして、通商航海條約を結ぶ。通商航海條約を結ぶのに政府白紙委任状を要求しておられるはずはないと思うのでありますが、その意味におきまして、行政協定における白紙委任状の如き事例は、この條約について他に例がないということは、私ははつきりしておると存ずるのであります。  なお又行政協定構想について私たちがいろいろ伺いまするのは、行政協定内容が、大体におきまして、いわゆる米比型の、アメリカフイリピンとの間の軍事協定みたいな形で行くのか、それとも北大西洋同盟條約型の、極めて行政協定余り表に出さない、対等の国の間の約束と申しまするか、かような行政協定みたいなものを殆んど作らないやり方、大体において二つの形があるのであります。政府の御説明ではいずれともわからない。これは極めて大きな政策上の問題であるから、大体の構想米比型で行くのか、或いは北大西洋條約型で行くのか、この二つの或いは中間で行くのか、大体の構想がおきまりになつていないはずはないと私は思うのであります。殊に政府のおつしやることが私にわからない。一方において法律予算等によつて国民権利義務に関連することは国会承認を求めると言つておられるのであります。然らば何故に、行政協定という、つまり條約の形においては国会白紙委任状をとつておる。そうして別に法律なり予算の形においては改めて国会承認を受ける。これは殆んど意味をなさい。法律乃至は予算によつて国会承認を受けるというならば、行政協定による、国際條約の形による白紙委任状をこの安保條約でおとりになる必要がないではないか。その間に、その点に関連いたしまして、基本的なこの重要な国民権利義務に関すること、殊に国家の主権に関する制限を伴うのではないかということ、この重大な問題について何故に行政協定に関する基本的な構想が明らかにできないか。この点がどうしても我々にわからない。でありまするから、少くとも政府が大体どういう程度のことを行政協定で作るお考えであるか。この点だけは、基本的構想国民にお示しになるのか。少くとも第三條については国会からの承認をあらかじめ取つて置くと言われる以上は、それは当然の政府の責務でなければならないと私は考えるのでございます。
  10. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 曾祢委員、時間でございます。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 最後にそれだけ御答弁願います。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 同じことを繰返すようでありますが、平和修約に、領土の問題については、このたびの問題ではなくて、これは終戰当時いわゆるポツダム宣言を受諾したときにきまつた問題であります。今日平和條約ができる場合に、特にアメリカ政府から圧迫を受けてできたものではないということは申すまでもないことであります。白紙委任状白紙委任状と申しますが、白紙委任状内容は、若しいよいよこの行政協定がきまれば、国民権利義務に関することは国会協賛を受ける、予算に関するものは予算の形で、費用に関すること、支出に関することは国会協賛を経なければならんのでありますから、いわゆる白紙委任状というものの観念とは違うと私は思います。  それからフイリピンアメリカとの間の軍事協定若しくは北大西洋條約は、これらのことは問題にいたしておりません。これはお手本にいたしておるわけではない。何でもないのであります。今後どうきまるか、両方中間として行くか行かないかという考えも、従つてないのであります。
  13. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 堀君……、失礼いたしました。総理のほうから先に御答弁があります。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 堀君の御質問は、インド戰争状態終結宣言をし、日本講和條約を結ぶ見通しがあるかというのでありますが、これはあると私は申さざるを得ないのであります。何となれば、すでに講和條約を結ぼうではないかという提案インド政府から参つておりますから、これはやがてその機会が生ずると思います。  第二の御質問は、真空状態になれば共産勢力日本侵略するというが、それは日本真空状態でないためではないか、侵略目的は何か。こう言われておりますが、とにかく日本は兵力がない、そして独立はした、その状態真空状態であるのでありますので、共産勢力ならずといえども侵略しようと思う考えがあれば侵略できるわけであります。又その侵略目的如何、これは共産主義国に代つて私はお答えいたすことはできません。(笑声)  それから「吉田総理の平和に対する……、」
  15. 堀眞琴

    堀眞琴君 平和についてのやつは後で、今日の午後の総括質問のときに出しますから、そのときに。  時間がありませんから第一問だけについてお尋ねいたしたいと思います。  インド戰争終結宣言を行うということは正式に発表いたしておる。又、日本とその関係から講和條約を結びたいと、こういう意向を持つていることも私どもも承知いたしておるのであります。それで、総理只今答弁におきまして、インドとの講和見通しがあるというお答えなのでありますが、併しながら、インドが、米英最終草案の発表直後アメリカに対しまして覚書を渡しておるのであります。その覚書内容によりまするというと、このサンフランシスコにおいて調印された平和條約の内容と相当矛盾するものを持つていることは、これは私から申すまでもないと思うのであります。若しインド日本との間に講和條約を結ぶ見通しがあるとするならば、インドアメリカに対して送りました覚書内容について、これが変更を行うであろうという見通しがなければ、日本との講和條約の見通しがあるということは言えないと思います。その点に関しまして総理の御答弁を重ねてお願いいたしたいと思うのあります。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) インド米国政府に対して、講和條約を結びたいというゆえんの覚書と言いますか、書簡を送つたという、その書簡内容と、将来締結する場合においては矛盾するのではないかという御質問であろうと思いますが、これは米国政府に対してインド政府ネール首相の送られた書簡内容の決定するに至つたいきさつ等については、私は率直に申しますが存じません。が、日本に対する従来の関係から申して、インド政府は絶えず終戰直後から非常に好意的の態度を持つてつたのであります。これは例を申しますが、例えば戰争裁判において、日本戰犯に対する判決等において、最も寛大な主張をして来たのはインドの裁判官であります。又その他一、二の例もありますが、これは公言を憚りますからして申しませんが、絶えずインド日本に対して戰犯その他の問題については、始終好意を示しておるのであります。又現に幾多の貿易上の注文も発せられるとかいうので、アメリカインドとの間の関係は私の言うべきところではありませんけれども、少くともインド日本関係においては、非常に友好的であります。  で、これが今後どういう形になつて日本との間に平和條約が締結せられるか知りませんけれども、インド政府日本に対する好意ある過去の態度から申して、今、現に講和條約を結ぼうじやないか、平和状態に入ろうではないかと言つて提議されておるところから見ても、何らかの形において日本との間には平和状態に入りたいという意思のあることは、これは明瞭であると私はここに断言いたして憚らないのであります。
  17. 堀眞琴

    堀眞琴君 インド日本に対しまして好意を持つているであろうということは私も疑わないのであります。殊に日本インドアジアにおいて同じ立場に置かれておるとさえ申すことができると思うのであります。従つてそのインド日本に対して好意を持つことは当然ではないかと私は思うのであります。ところで今吉田総理のお話を伺つておりますというと、インドアメリカに対して送りました覚書内容については自分は知らない、こういうお答えのようであります。少くとも一国の総理大臣であり、外務大臣であり、而も講和條約については首席全権としての責任を持たれておるところの総理大臣が、インドがどのような立場で、対日講和條約に対してどういう立場でこれに対して臨んでおるかということにつきまして、これを知らんということは甚だ不見識なことではないかと私は思うのであります。少くとも首席全権としての責任において、特にアジアの国々がこの講和條約に対してどういう態度を持つておるか、どういう見解を持つておるかということを十分検討されて、そうして日本アジアの一国でありますからして、アジアの将来の平和のためにも十分検討されてこれに対する態度を持たれるのが至当ではないかと思うのであります。  それから、その対米覚書内容でありまするが、私がこの委員会の一般的な質問のときにそれを述べましたから、ここには繰返すことはいたしませんが、とにかくインドとしては、日本国際社会の一員として平等の立場を持たせるということを前提にして、領土の問題或いはその他の問題について反対の意向を持つておるのであります。従つて総理大臣としては、将来講和見通しがあるというならば、これに対してどういう手を打たれるか、インドが果して対米覚書内容についてこれを変更する見通しが付くかどうかというようなことについての、総理大臣外務大臣としての方針なり御抱負なりがおありのことと私は信ずるのでありまするが、それを率直に御披露をお願いいたしたいと思うのであります。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申したのは、ネール首相米国に送つた文書内容を知らんと申したのではないのであります。ああいう文書を送るに至つた経過紆余曲折については自分は知らない、こう申しただけの話で、ネール首相書簡は発表されておりますのでありますからして、これを私が知らんと申したわけではございません。併しながらそこに至つた経過は知らない、紆余曲折は知らないと申すだけの話であります。又仮に紆余曲折がわかつたとしたところが、私としてネール首相書簡に対して批評する地位にないのであります。又将来如何なる方法を以てインドに対するか――これは抽象的に申す以外に、この手であの手でということは交渉相手国に対して言うべきことでもなければ、私として申すことはできませんから、これは答弁いたしません。
  19. 堀眞琴

    堀眞琴君 インドの対米覚書内容については御存じだ、併しそれを発せられた経過については御存じない。――私は経過をお尋ねしておるのではないのであります。少くとも対米覚書としてネール首相の名前においてトルーマン大統領に提出された覚書であるからには、日本は、それはインドの意思を表明したものだと私どもは解釈すべきだと思うのであります。そうしますると、インドの意思はこうであるということが、あの覚書によつて、はつきり我々も、つかむことができると思う。只今の首相のお考えでは、相手国のことであるからして、今から、とやこう、どういう手を使うというようなことは申上げられないという御返答でありまするが、併し一国の外交の中心に立つておられる首相兼外相が、今後アジアとの友好関係をますます促進して行かなければならない今日の段階において、これに対する外交方針が立たんというのでは、外相兼首相としての責任は果せないのではないか。私はそのように考えますので、首相としてももう一度お考え直しをされて、インドに対してはこういうような方法で、できるだけ友好関係を結んで行きたい。延いては日本との講和修約もこのようにして実現したいのだというような御抱負は必ずお持ちのことと思うのであります。ただ表面だけのお答えではなくて、本当に首相の所信を披瀝される意味において、もう一度御答弁を願いたいと思うのであります。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の外務大臣として甚だ資格の足りないことはみずから認めておりますが、併しながら外務大臣とし、若しくは外交の当局者として、インドに対してはこういう手を用いるなんということは、これは我々の地位におるものが発言すべきでないと思いますから、答弁いたしません。
  21. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 木内委員に対する総理の御答弁をお願いいたします。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、質問の「賠償に当てられる私有財産は補償すべきが当然であると思うが、私の意見に対し法務総裁は、私有財産を賠償に当てることは外国がきめたのであるから関知しないという言が吐かれたが、私有財産補償に対する見解如何、」という御質問でありますが、私有財産の尊重すべきことは当然のことであります。併しながらこの賠償に当てられる私有財産の補償をどうするかということは、予算関係もありまして、希望としては補償はいたしたいと思いますが、併しながら予算関係、或いは国力の関係もありますから、これはどのくらいの金額に達するか、或いは日本の国力がどうであるかというすべての観点からして見なければ、政府態度はきめられないと思います。
  23. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の総理大臣のような御答弁を伺えば私どもまあ大体了承するんです。又この私有財産の補償の問題は、戰補の打切りの問題とか、或いは他の戰争犠性者との関係とか、いろいろ考慮すべき問題は多々あるだろうと思います。それに又一国の財政の能力、又現状等も考えて、そうかろがろしくきめるべきものではないということは私どもよく了解するのですが、それに関連してただ一つ私ども非常に遺憾に思いますのは、先般法務総裁が、在外財産というものは日本の憲法施行区域外の外国にあるのだから、外国がこれを取つて処分するということはこれは向うの自由であつて日本の関知したことではないというような答弁をしておられた。それでは私ども法律上の答弁として法律解釈として到底納得行かない。日本は第十四條において賠償の債務を認めて、而もその二項において私有財産を以て賠償する債務を承認する。「よつて」ということで、十四條の2(1)において、在外財産をすべて留置し、清算し、処分する権利を連合国に認めている。だからして、そういうことを條約上日本が認めておりながら、それは外国にあるのだから日本の関知したことでないというようなことは、私ども到底法律解釈としては納得できないんですね。そこで私は総理に御見解を一応質しておきたいと思つたんです。私有財産のこの規定は憲法二十九條にもありますし、今度の條約においては賠償の一部としてこれを充当したということは非常に明らかなんです。だから、それはできれば、ヴエルサイユ條約或いはイタリア條約のように、この條約にそういう補償の規定を入れておいて頂ければこれは最もいいと思うんです。併し実際上どの程度に補償するとか、或いはどういう方法でやるとか、又これができるかどうかという問題は、これは実際問題として、さつき総理からお話があつたように、いろいろな考慮すべき点があると思う。併し法律構成としてはそのほうが一番いいと思いますが、それは諸般の事情で入れられなかつたというならば、大蔵大臣その他が答弁しているが、総理が今又言われたように、これは国内問題として考慮する、考慮するに当つては、他のいろいろな、さつきお話のあつたようなことを考慮に入れてきめるべき問題であるが、とにかく国内措置としてやるというふうな答弁を大蔵大臣その他もしておられますが、それならばそれで私どもよく了解するのです。ただ併しこれは外国がやつたのだから、これは私どもは知らないのだ。いやしくも国家の合意による協定をしておりながら、そういうことを言われたのでは、私ども納得行かんし、国民も納得しませんし、これは将来の非常に悪い解釈の先例になると思うので、総理の御見解をいま一度伺つておきたい。こう思います。それ以外には別に何もありません。
  24. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今木内委員から先般私の答弁の中で、これは外国がやつたんだから日本政府の関知したことではない、こういう答弁をいたしたようにおつしやいましたが、これは速記録をお調べを願いたいと思います。御質問の御趣意は、これは憲法二十九條と如何なる関係にあるかという御質問でございましたから、憲法二十九條と関係のない事柄である、こう申したわけでございまして、もとよりこれについての一般的な補償の問題というものにつきましては、各種の戰争犠牲者に対する損失の補償の問題等と見合つて政策的に考慮せらるべき問題である、こういう趣旨を確かに申上げてあるはずでございます。この点は速記録をもう一度お調べを願いたいと思います。
  25. 木内四郎

    ○木内四郎君 そう言われると、私は、今あなたが正面から関係ないことだとは言われなかつたと言われますけれども、憲法二十九條と全然関係のない問題だというふうに解釈されるならば、私どもは承服できない。憲法二十九條に関係あるが、国内問題として他日これをやるというならば私どもは了解するのです。併しそれと関係ない、外国がやつたのだから私有財産の尊重の規定に何ら関係ないということでは、恐らく誰も承知できないだろうと思います。別にそれに対して、あなたがそういうことを言われたから、いま一度考え直して答弁されたほうがいいじやないかという私は御忠告をしたのですけれども、重ねてそういうことを言われると、又重ねて聞かなければならない。そういうことになる。
  26. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは御忠告によりましていろいろ考えた結果申上げた次第であります。
  27. 木内四郎

    ○木内四郎君 政府は私有財産に全然関係ない、二十九條と整然関係ないという解釈をされるのですが、若しそれならば、今後補償の問題というようなことを考える必要はないじやないですか。国内的な他の問題があつても。
  28. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私ども申上げておりますのは、二十九條の第三項において規定いたしておりまする補償、この適用として考うべきものではなく、これは戰争犠牲者に対しまする一般的な保護政策として、他の戰争犠牲者と睨み合せて、又財政上の事情等をも考慮した上で決定すべきものである、こういう趣旨のお答えを前回いたしてあるはずでございまして、この点は考え直す余地はないと思います。
  29. 木内四郎

    ○木内四郎君 私はその結論において、政府は政策的に今後どうするかという問題については、何も言いません。併しそれならば、重ねて一言だけ伺つておきますが、あなたの言われるように、外国がやはり処置したんだから、日本講和條約の十四條でああいうことを協定しても、日本政府には何らそれに責任はないということですか。それとも十六條においては明らかに中立国における財産を日本政府は外国に引渡すと書いてある。それでも日本政府はそういうことを何ら関知したことではないと言われるんですか。
  30. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 前回お答えいたしましたのは、連合国にありまする在外財産についてお答えいたしたのでありまして、それにつきましては、二十九條第三項によつて政府に補償の責任が憲法上あるという性質の事柄ではない、併しながら国民の私有財産の問題でありまして、私有財産を尊重するということはこれは当然のことでありまするから、他の戰争犠牲者等に対する政府の対策と睨み合せまして、適当な方策を考えなければならん。もとより政府といたしましては、この戰争に伴いまするところの国民の損失というものにつきましては、でき得る限りの措置を考えるのはこれは国家として当然の責任でありまして、ただその責任の根拠は憲法二十九條第三項から来ておるものではない。こういう趣旨でございます。
  31. 木内四郎

    ○木内四郎君 その結論や対策の問題については、私は別にとやこう言うものでないことは初めから申上げてあるのです。そのことは別に伺わなくてもいいんだけれども、それは條約にはそういう規定は入れなかつた、併し今後国内措置として考慮するということなら、それでいいんですよ。だけれども、とにかく国家の目的に私有財産を充てることに日本政府が同意をしてこの條約を結ぶということには間違いないと思いますが、そこはどうなんですか。外国が勝手にしたんだからというこの間のようなお答えですか。
  32. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 勝手にしたとか何とかいうことでない、これは勝手にしたということではございませんので、無論修約上日本政府の認容するところによつて外国政府がしたわけであります。併しながら憲法二十九條第三項というのは、これは日本政府の行いましたる措置についての規定であつて、外国政府の措置についての規定でありませんから、ここにおいて二十九條第三項に関連した問題は生じない、こういうことを申上げたわけであります。併し、このことは、日本政府においてこの補償について全然考慮しない方針であるとか、或いは考慮すべき筋合いでないという意味を申上げたわけではありませんので、考慮は他の理由によつて考慮する、憲法二十九條第三項という根拠で考慮すべきものではない、こういう法理論を申上げたのであります。
  33. 木内四郎

    ○木内四郎君 その対策の問題をいろいろ言われますけれども、私は対策の問題については何も言わぬということを申上げておるのです。ただ、それは外国がやつたんだが、日本政府が條約に同意しておるから、日本政府が、よつてこれこれの権利を外国が有するということを容認したんだから、日本政府が何ら何ものもやらなかつたという、あなたのこの間の速記録を御覽になればよくわかりますけれども、外国がやつたんだからかまわぬというように聞えるようなことを言われることは、私は穏かでないんじやないか。私は余りこの問題は追及しません。これは、いつまで言つても同じことですから追及しませんが、政府において今後国内法において必要なる措置をできるだけ講ずるということであれば、もうそれで私は結構であります。
  34. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 繰返して誠に恐縮でございますが、この前申上げましたのは、在外財産についてはその処置との関係日本の法制に服しない、従つて日本憲法の適用区域外にある財産であるからして、到底憲法上の問題にはならない、こういう法律論を申上げただけでありまして、政策の問題につきましては、只今総理から、又先般大蔵大臣から申上げた通りであります。
  35. 木内四郎

    ○木内四郎君 日本政府はどういう処理をすることに同意してもかまわぬということですね。
  36. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) かまう、かまわんの問題でない。同意した場合においても憲法二十九條第三項の問題を生ずるべき事柄ではないと、こういうことを申上げたのであります。この点なお速記録を一つ御検討頃いたら仕合せかと存じます。
  37. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は非常に御答弁には不満ですけれども、これ以上は言いません。どこまでいつても同じことですから。併し今回総理大臣の言われたように、諸般の事情を考慮してできるだけのことをするということで、私はそれでいいと思います。それだけ言われただけでいいのです。日本政府は外国でやられたことは二十九條に関係ないと言われたんでは承服できません。これは他日に残る大きな問題だと思いますから。この程度で私はやめて置きます。
  38. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に兼岩委員質問に対する総理大臣の御答弁をお願いいたします。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。  質問の第一は、若しこの両條約を締結すれば、日本国民は宣戰布告なしに、国会承認もなしに、国民の好むと好まざるとにかかわらず、米国の指図と意図によつて大戰争の渦中に捲き込まれることになるのではないか――これはなりませんと思います。
  40. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は、国民の心ある人たちは勿論、国民大衆が一番心配しておる点について質しまして、国民が安心できるようにいたしたいという趣旨でお尋ねをするのであります。只今心配がないとおつしやいましたが、問題は一つでありますけれども、この問題を二、三の点に分解いたしまして、問題を明快にいたしまして、総理お答えをお願いしたいと存じます。従来アメリカ軍の首脳部はしばしばこういうことを言つております。朝鮮問題の解決のためには満洲を爆撃する必要がある、こういうことを言明いたしております。これは決して一片のおどしではない。事実、若し朝鮮の停戰協定が成立しないならば、それは必至であると見なければならない。若しそうなれば、これに対して日本にある米軍基地が報復爆撃を受けることは必至であり、戰火は満洲から全アジアに、そして大戰争に日本も捲き込まれてしまうことは必至であります。これは私の意見でなくて、現にマツカーサー元帥を解任するに際しまして、トルーマン大統領の声明にあつた通りであります。これこそ日本国民のすべてが最も恐れているところではありませんでしようか。而もこの満洲爆撃をやります際に、米国日本国民に相談しないで、日本国会の承認を求めないでやつてしまうであろうということは、朝鮮戰争開始の場合と同じであろう。現にかかる場合に国民の同意を求めるなどという條項は、この二つの條約を初めから終りまで繰返し見ましても、この條約のどこにもないではないでしようか。私は総理にお尋ねしたいのは、そういう場合に必ず日本国民に相談をする、日本国会の承認を求めるのだというような條項が両條約のどこにあるのでございましようか。これをお尋ねいたします。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 仮定の問題に対してはお答えいたしません。
  42. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どうも総理は、事実という言葉と仮定という言葉が、私の字引と総理の字引と違つて、逆になつているらしい。私はすべて事実を申上げた。一つも仮定ではない。マツカーサー元帥の解任に際してのトルーマン大統領の声明にもあるし、現にアメリカ国会においてもアメリカの軍の首脳部が、朝鮮問題の解決のために満洲を爆撃する必要があるということはしはしば声明されておる事実である。私はこの事実に基いて質問をしておるものであつて、決して仮定の問題ではございません。まあ、総理も余り腹を立てないで一つお答えを願いたい。
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 腹は立てませんが、事実は事実として申すので、トルーマン大統領の言われたことについて、私は責任を持ちません。
  44. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事進行について。今、兼岩委員質問に対する吉田首相の御答弁のうちに、仮定の問題については答えませんという御答弁がありましたが、これはしばしば吉田さんがお用いになるところの常套語なのでありますが、私は、総理大臣として、又一国の政治家として極めて不穏当なるところのお言葉であつて、この機会に私はそのお言葉に対して深く反省を促し、又これからの議事の進行についても同様の考慮においてお答えを願いたいと思われるので、あえて兼岩君に賛意を表するわけではないのでありますが、特に議事進行上そういうことを一点申上げておきたいと思うのであります。政治というものは仮定の問題に対して考慮しなければならないことが極めて多いのであります。外交の問題につきましても、こういう問題が起つて来たときにはどういう対策を考えておるかということを、政府当局に対しまして国会議員が立法府において答弁を求めるということは、極めて緊要なことであつて、又答えられる範囲内においてそれに対して答えるということが原則的でなければならないのでありますが、むしろ答えないことを原則としていられるということは、甚だ腑に落ちないのであります。例えば行政の面から申しましても、若し仮定の問題について考慮するところの必要がないというようなことでありますならば、警察も消防も要らないのであります。又軍隊にいたしましても、すでに仮想敵国というようなものを、今、日本にはありませんけれども、考えて、それに対して対策を講じていろいろ軍備の計画をいたすのでありますから、右のような仮定の問題に対しては一切答えないとかいうようなお考えは、政治家として極めて外道的な、何と申しますか、政治家らしからざる不穏当なる私は言辞であると思いますので、この機会に一言、吉田総理大臣の絶えずお用いになりまするお言葉と、それの内容となつておりまするところの見解というものは、政治家として実に不穏当であり、又誤まれるところの見解であるということを申上げて、失礼でありますが、尊敬する吉田さんの御反省をこの機会に促したいと同時に、今後そういうことは一切国会においてお言いにならないように申上げて、今後の議事の進行に資して頂きたいと考えます。
  45. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は第一にお尋ねしておるのは、こういうアメリカの軍部が国会において公然と明言されており、全世界の人が誰知らぬことのないこの事実に対して、この心配に対して、これを憂える日本国民に対して、そうでないという條項がこの二つの條約のどこにございましようかという、この條約のどこにございましようかということをお尋ねしておるのです。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のお答えは前言の通りであります。
  47. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 委員長、何と言われたのですか。
  48. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 前言の通りでありますと言われました。
  49. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 国民のこの重大な心配に対して、それは心配でないのだ、現にこの二つの條約にこういうことがあるではないかということを答えることは、全権並びに総理大臣責任である。委員長総理に対してこれを答えさせないということは、この條約の委員長としてあり得ないではないか。條約のどこにあるかということです。僕はこれに答えられるまでは次の質問をいたしません。(「答えしめなければいかん、国会ですよ」「委員長、権威を持たなければいかん」と呼ぶ者あり)
  50. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 只今兼岩君の御質問に対しまして、総理から仮定の問題、兼岩君は満州爆撃というのは一つの事実の問題としてお取上げになつた。併しこの議論は、御引例になりましたマツカーサ元帥が解任になりましたことにおいてのアメリカ国会での問答においても十分御承知でございましようが、これらの問題によつて解任の問題も論じられたのであります。従いまして、かような議論がありましたことはお話の通りでありまするが、それが起らないような問題のためにマツカーサー元帥の問題も起つたのであります。従いまして、さような問題、話題があつたから満洲爆撃が実現するといるのではない。実現しないような方法で問題を解決された。従いまして、満洲爆撃があつて、その報復手段として日本が、米軍基地がやられるのじやないかというのは、全く今後の想像の問題であり、これらの問題は現在は私どもは考えていないのであります。
  51. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について発言します。僕は今日は、当初全会派が一致して総理の御答弁が十分でない、従つて平和條約の審議を終つて安保條約に入る際に補足的な質問をするということ、そうして時間も十分に限定し、問題も極めて簡單にして、率直な質問をし、且つ総理が答えらるべきものでありますのに、総理が答えられないで次官が答えられたということは、全会派、理事会及び本会の決議に悖るものであると、こう私は信じます。さような議事進行を速かに改められて、私の質問に対して、この両條約にあるか、ないか。私は草葉次官のああいう議論を反駁する必要はないと思う。満洲爆撃は事実である。さような場合に、日本は又報復爆撃を受ける心配はないということを保障した條項が、この二つの條約のどこにあるかということを私はお尋ねしておる。これを総理に対して、あるとか、ないとか、ないけれども、こういう点で心配がないとか、私はその点を全国民に明快にされることが、この両條約についてのこれが最も基本的な核心であると思う。従つて、私、議事進行として、私は委員長が、この問題を総理自身から答えて頂く、そうしなければ私は次の質問に移りません。
  52. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事進行について。共産党の諸君の質問に対して、本会議でも、又委員会等においても、宣伝であるから答えないとか、或いはわざとお答えにならない場合が吉田さんには非常に多いのでありますが、私どもは共産党には反対であります、もとより。(笑声)併しこれは首相として、又外務大臣としても、これ又私は非常に平素吉田さんの御態度について遺憾に思つておることでありますが、成るほど国会内におけるところの日本の共産党の勢力は極めて、失礼でありますけれども、非常に微弱であつて、一握りの勢力であるかも知れませんけれども、併し外務大臣としての見地からお考え下さいまするというと、日本共産党によつて代表せられておりまするところの国際的な勢力というものは、いわゆる二つの世界の一つを代表する、一つの国際的な大きな勢力を代表しているところの政治意見なのでありまするし、又日本国民にはそれの影響を直接間接に受けているところ人も私はないではないと考えるのであります。でありまするから、そういう日本共産党からの、世界的な共産主義の政治意見を代表した質問が起りましたときには、絶好のチヤスなのでありまするから、むしろ外務大臣及び総理大臣として、そのような、君たち考えているところの考えはこのように間違つておるのだということをば、その反対者の立場から、理路整然として、時には、私は、反対の立場にお立ちになるのでありまするから、その激するところ、多少激しいような御表現になつてもいいと思います。丁度サンフランシスコ会議においてソ連及びソ連の衛星国の代表の諸君がいろいろのことを申しました時に、あれはニユージーランドの代表でありましたか、或いはダレス氏も相当激烈な口調を以てこれを反駁いたしましたが、そういるふうに激烈なような感じを與える表現になつても私はいいと思うのであります。でありますから、吉田外務大臣吉田総理大臣が、この機会とばかりに、誤れるとあなたがお考えになつておられる共産党の世界政策の見解が、このように間違つておるのだということをなぜ国民にお示しにならないか。このチヤンスをとつて誤れる国民を説得するという態度に出られることが、私は必要なことであると思うのでありますが、常に先ほどのように、仮定には答えないというような常套語と同じように、共産党の言われることには一切答えない。これは宣伝でありまするから私は答えませんというような態度に出られることは、私は非常に総理大臣としても又外務大臣態度といたしましても遺憾に思つておるのでありますが、どうもそういう点は、これ又甚だ吉田大先輩に対して(笑声)失礼でありますけれども、この機会に御反省を、私、あなたを好意的に尊敬しておるのでありますから、どうぞ惡い気持を持たないで、我々は又同志と袂別してまで(笑声)この講和條約に賛成いたしておるのでありますから、(笑声)どうぞ我々のそういうところのシンセリテイ、シンシアなあなたに対する好意を十分御理解下さいまして、そうした態度を改めて、説得する態度において理路整然たる御答弁を、常に共産党の諸君に対する御答弁を通じて国民に訴え、二つの世界の一方に対して訴えられるという態度に出られることを希望いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。只今誠に御丁寧な(笑声)御忠告を受けて、誠に感激いたすところであります。(笑声)併しながら私は常に申すのでありますが、これは仮定の問題に答えておりましたならば、幾日かかつてもこの議事は進行いたしません。故に私はお答えいたさないのであります。政治にしても外交にしても、事実を土台としての問題であつて、高遠なる理想や百年の後に起るようなことを想像いたしてお答えすることは私にはできません。又共産党を説得するという自信は私にはございませんから、どうぞあなたから篤と説得して頂きたい。(笑声)
  54. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事進行について。只今の共産党を説得するところの力がないから、私からしてくれということでありますが、私は機会あるごとに、共産党は間違つていると思いますから、説得いたしておりますが、(笑声)併し若しあなたが説得するところの力もなく、みずから説得するところの力があるというところの自信も持たないで共産党に対していらつしやるならば、私は今日においては、外務大臣としても、一国の外交家としても、すでに博物館に入れなければならない時代錯誤的な存在であると言わなければならない。あなたは世界の一方を代表するところの共産党の勢力に対して反対であるというところの意思表示をサンフランシスコ会議においてもしていらつしやるではありませんか。然るに、そのしていらつしやるところの重大なる国際的な政府意見というものが、これを説得することができないところの気持において行われておるといたしまするならば、私はそういう外務大臣に対しては不信任の意思表示をしたいということを申上げたい。これは私は重大な事実であると考えます。私は曾つてほかの委員会におきましても、あなたに対しまして、共産党の指導理論は即ちマルクス・レーニン・スターリン主義である、然るにマルクス・レーニン・スターリン主義に対するところの御見解は如何ということをば質問をいたしました時に、あなたは御答弁なかつたのであります。御答弁なかつたということは、今暴露せられました、理解していらつしやらないのであります。マルクス・レーニン・スターリン主義を理解せずに、それから派生して来るところの共産党、ソ連を中心とするところの共産主義的な世界政策というものをどうしてこれを批判することができ、これを理解することができるでありましよう。その意味におきまして、私はその時も言つたのでありますが、あなたは、そのような世界の中の二つの一方を代表するところの勢力の政治理論に対するところの理解のないような者は、これは時代錯誤の外交官であるということを私は申したのでありますが、その言を私は今の御答弁によつてまざまざと如実に感ぜざるを得なかつたのであります。再び私は、そのような不穏当な、そのような言葉が若しそのまま笑いのうちに默認されておりまするならば、それは、そういうようなことを笑殺のうちにあいまいにしてしまうところの政治家それ自身も、又、今日の政治家として私は国際場裡に立つことのできないところの政治家であると断ぜざるを得ない。右に対するところの、もう一度吉田首相の御答弁を、私の申上げることについて促したいと思います。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私、一身の考え方については弁明いたしません。
  56. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そんな馬鹿なことがあるか。やめるやめろ。外務大臣を。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) やめない。(笑声)
  58. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 重ねての御質問でありますから、総理に代りまして私から御答弁申上げます。先ほど申されたような場合に、国民は大変心配しておるが、その心配は両條約の中に心配を解くようなことはどこに出ておるか、こういう具体的なお話、多分兼岩君十分御承知の上での御質問と存じまするが、平和條約におきまして、日本独立したあと、このような国際情勢であるから、さような場合に安心をするために結びまするのが日米安全保障條約、従いましてその心配を解除する根本は日米安全保障條約全部であることを御承知を願いたい。
  59. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩君、草葉次官が総理に代つて答弁になりましたが……。
  60. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 総理答弁を求めます。
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 次官をして答弁せしめます。
  62. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 総理に代つて答弁いたします。答弁只今申上げました通りであります。(笑声)
  63. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 議事進行について。私は何もむずかしいことをお尋ねしているわけでもなければ、特別にひねくつた質問を出しておるのではなくして、むしろ心ある国民というよりは、国民の大多数が心の底で心配しておる問題を私がはつきりさせて、これに対してそういう心配は無用である、なぜならばこの二つの條約のここにこういうことがあるじやないかという答弁があつてこそ、全権であり且つ総理大臣であり、国会に対して責任をとられるものと考える。それ以外の方法を今用いられるならば、次の私が質問を出せば、それは宣伝である、それは仮定であるというふうに、だんだんこんがらかされてしまうのであります。従つて私は、時間をお許し下さるならば、もう一偏繰返してもよろしいですよ。総理が何か腹が立つて頭によく入らなかつたというならば、もう一度私は時間をそれだけ下さるならば、今の質問をもう一辺繰返してもよろしいですよ。私は何ら労を厭いません。とにかくそういう議事進行についての方針を委員長として明確にして下さい。
  64. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 総理が言われましたように、次官をして答弁せしめると言われておりますから、さように御承知頂きたいと思います。
  65. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 あなた、理事会なりこの本委員会の決定をあなたは遵守しなければならんと思います。何のために今日こういう委員会が持たれたのでありますか。何のために今朝九時半から理事会が持たれたのでありますか。何回も何回も理事会が持たれ、委員会が持たれたのは、総理総括質問に対する答弁が不十分であつた、これは全会派が認めておる。従つて今日総理が出られ、総理が答えられる、その代り時間は十分に嚴守しようじやないか、問題も無用な問答は全部省こうじやないか、そういう満場一致の、理事会も本委員会も満場一致の決定に基いて、そうして進められておるのでありますから、やはりこの問題に対しては総理が明快に、ないとか、條約にはあるとか、いや、ないように見えるけれども、こういう意味だと、こういうふうに明快に全国民に、この重要極まりない問題を答えられなければ、次の問題は私は出せないと思う。
  66. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 先ほど総理が言われた通り総理は政務次官をして答弁せしめると言つておられますから、それで差支えないと思います。
  67. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 何のために……議事進行について。反対いたします。そういうことはないでしよう。あなた、総理に答えさせるために、わざと時間も十分に制限し、問題も整理し、質問書も出してするというこの大前提を覆すということは、総理大臣としてし得ないところであり、委員長としてそういう議事進行をされることは、我々として許されることではありません。前提に背くことですから。全会派の決定に背いて、委員長委員会の議事を進行するということは不可能じやありませんか。
  68. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも今朝の理事会のお打合せその他にかなり齟齬しておる点があります。審議も非常にぎこちなくなつたように考えますから、むしろこの際一応休憩して頂いて、更に理事会でお打合せの上で円滑に審議を進めるようにお取計らいを願いたいと思います。
  69. 一松政二

    一松政二君 私は、今休憩の動議が出ましたが、これには反対いたします。なお、総理に対する質問で、さつき兼岩委員総理答弁がないと言われますけれども、総理は一応も二応も答弁なすつております。でありますから、答弁のよし悪しは別問題です。とにかく答弁されております。(「答弁になつていない」と呼ぶ者あり)
  70. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 理事会の話合いが違つている。このままではスムースに行かんじやないか。
  71. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  72. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記を始めて。  兼岩委員に申上げますが、今懇談会でお聞きのように、一つ答えられるような形において御質問を出して頂きます。
  73. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 何か御注文が付くのですか。(笑声)御注文によつて質問をしろとおつしやるのですか。私は国民の注文によつて総理質問するのが正しいと思う。総理の注文によつて質問を変えるということは……。言い現わし方は幾らでも改めます。それで何回でも繰返しの時間を下さるなら……。
  74. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 時間は御約束の時間で、言い現わし方の形を変えて……。
  75. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕は、その原則を明らかにしてもらいたい。つまり総理の注文によつて質問の形や内容を変えるということはできない。私どもは国民の代表として質問しておるので、国民質問に対し総理に求めるので、それは少し逆さまになつておるのではないかと思う。
  76. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) そういう意味ではなく、先ほどの兼岩委員の御質問総理にはよく御了解が得られなかつたのではないかと思うので……。
  77. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それではもう一遍繰返します。従来アメリカの軍首脳部が、朝鮮問題の解決のためには満洲を爆撃する必要があるということを主張しておられる。これはアメリカ国会においてもしばしば問題になつており、すべての外電が伝えておるところであります。併しこれは決してそれが一つの嚇かしというようなことではなくて、若し朝鮮の停戰協定が、これは非常に不幸なことですが、成立しませんとするならば、どうしても満洲の爆撃は必至と見なければならない。そうすると、これに対して日本にあるところの米軍基地が報復爆撃を受けるということもこれは必至である。そうすると、戰火は満洲から全アジア、そうしてこの大きな戰争に日本も巻き込まれざるを得なくなつて来る。現にこれはマツカーサー元帥を解任したとき、トルーマン大統領はそういう意味の声明をしておられる。そうしてこのことが、日本の心ある人たちは勿論のこと、国民大衆が口に出して言うか言わぬか、みんな心配しておる点なんです。而もこれは将来の見通しの問題だとあなたはおつしやるかも知れないが、現に事実として、歴史的な事実として、この朝鮮戰争の始まるときも、決して我々は、国民も又国会も何らこれは関知しなかつた。だから今度この両條約が締結されて……平和條約が締結されていわゆる独立をする。これに続いて安保條約が結ばれる。こういつた場合に、米国日本国民に相談しないで、日本国会承認を求めないで、満洲爆撃をやつてしまう。そうして戰火に巻き込まれるということがありはしないかという、この国民の心の底からの心配に対して、総理はこの條約には、これに対してはそういう心配は無用だということがここに載つているのか、或いは載つていないけれども、こういう根拠で心配するなとか、或いはそういうことを心配することは全く心配することが間違つておるので、この條約には何もないのだ、こういうことがありはしないかと聞くお前の質問が間違つておるのだと、こういうふうに明快にして頂けばいいのです。私はこういう答弁が欲しいと言つておるのではなく、私の質問を明快にして下されば次に進みます。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あなたのおつしやるような事態が起ることが必至という前提において私は不同意であります。そういう事態は起らない、又起らないために安保條約なるものをこしらえたのであります。(「結構」と呼ぶ者あり)
  79. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 だからこの條約にはそういう規定はないというふうに了解してよろしうございますか。ない、だからないと……。
  80. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは、ないからないのであつて、そういう事態が生ずることは我々は絶対ないと考えております。
  81. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう事態が絶対にないから、この條約にも規定していないという総理大臣の明快なる御回答を得ました。従つて次に進みます。(笑声)  ところが、この規定が全然ないのと正反対に、こうした場合に、平和條約第五條によりますと、日本国はあらゆる援助を與えなければならないということになつておる。あらゆる便益、援助、そうして遂には義勇軍までも繰り出さなければならなくなるのではないか。これが第五條に対して国民の非常に心配しておるところでございます。果して、それ以外にどう第五條を考えられるかどうか。お答えが願いたい点であります。あらゆる便益、援助……。
  82. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連といえども、日本の憲法に規定しない、日本憲法に反するようなことは日本国民に対して強いるはずはないのであります。又強いないことが国連の主義としておるところであります。
  83. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私のお尋ねしておるのは、平和條約第五條に、あらゆる援助を與えるとありますから、あらゆる援助を與えなければならないという義務を負うではありませんかという質問です。
  84. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) あらゆる援助というのは、日本の憲法、法律の許すところにおいての援助であります。
  85. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 国際連合憲章に基くところの国際連合にあらゆる援助、従つて国際連合憲章によれば、あらゆる便益、援助、遂には義勇軍まで繰り出さなければならなくなるというふうに理解できるのですが、総理は、そういうふうには理解していない、このあらゆる援助というのには一つの限界があるとお考えでしようか。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その通りであります。
  87. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 併し、そういう憲法に違反しない、つまり條約よりも憲法が優先するというふうにその点を理解してよろしうございますね。
  88. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 前言に申した通り、国連としては日本へ無理な要求をするはずもなし、日本の憲法、日本の制度を前提として、日本に対して援助を求むる場合には日本の国法を前提として援助を求むるのが国連の主義であります。
  89. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 非常に明快になりました。総理は條約よりも憲法が優先するというふうに言われました。まさに法務総裁と反対のことを言つておられるので、それを承認し、無論、総理の言われることが正しいと思いますので、それを承認して、次の質問に進みますが、それにもかかわりませず、あらゆる援助をしなければならない。憲法の範囲内においてあらゆる援助をしなければならないということが明快であります。そういたしますと、私は次に第三の質問といたしまして、即ちこの條約を締結いたしますと、日本は国家主権の最も重大な要素である宣戰布告の権利を無條件にアメリカに呈上し、無條件にあらゆる戰争協力という重大な日本民族死活の義務を引受けるということになるということは、以上私の二点の質問と、二点に対する総理の御答弁によつて明快であります。これでは全く日本が奴隷になつてしまうのではないか。人間の権利、人間としての基本的な権利は認められないで、一切の労働奉仕の義務を強制的に負うべきだとされれば、これは奴隷であります。ところが、この両條約によつて日本国民には国家主権の重大な要素である宣戰布告の権利は認められないが、憲法の範囲内における戰争協力の一切の義務を負わされれば、これはまさに独立国ではなく、隷属国家である、従属国家である、植民地的国家であるというふうに考えなければならないということになるのでありますが、そこは総理はそうではないというふうにお考えでしようか。
  90. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そうではないと考えます。
  91. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 なぜですか。
  92. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 兼岩君の時間は終りました。  次に岡田委員質問に対する総理大臣の御答弁をお願いいたします。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。日本はいつ国際連合への加盟を申請するか。――これは條約ができた後でなければこれに対するお答えはできません。国際連合への加盟が安保理事会の満場一致の承認を得られない、不可能な場合における日本と国際連合との関係はどうか。――これに先ずお答えいたしますが、国際連合への加盟は何かの方法で、できるものと思います。その方法については現在連合国の間、或いは国連の間において研究しているものと考えます。不可能な場合においては考えます。
  94. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は大体明白なようなことをお聞きしたのですが、なぜこういうことをお聞きしたかと申しますと、この平和條約の第五條によりまして、今首相がお答えになりましたような意味でのあらゆる援助の義務を負うことになつて来ます。国連に加盟しない日本があらゆる援助の義務を負う、こういうことを條約の中で約束をし、更に條約の前文におきまして日本が国連に加盟を申請する、こういうことが書かれているのであります。そういたしますならば、何らかの形で国連に入るということがすでにこの條約の成立に当りまして約束されている。それが前提でなければならんと思います。單なる法規的な解釈の問題でなくして、私はこの点については、総理ダレス氏或いは向うに参りましてアチソン長官等とこの国連加盟問題に対しまして何らかのお約束があつたのかどうか。そうして又、安保理事会が国連加入に対しましては十分の権利を持つておりますので、この安保理事会が承認しない場合におきましても、何らかの形で入る方法についてすでに何かお約束があるのかどうか。その点をお伺いしたいのであります。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は、ここに、はつきりこういう約束があつたということを申述べることはできませんが、併し連合国、少くとも米国政府としては、国連に入ることを斡旋する考え方、又加入が可能なりとしての考え方で以て万事処理して来たのであります。故に何かの方法で加入が許されるものと私は想像いたします。
  96. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 アメリカの斡旋によつて、何らかの方法で加入が許されるものであると総理がお考えになることは、これは何か私はそれだけの前提があるものと解しておるのでありますが、御承知のように安保理事会の満場一致の承認という非常な難関があり、これを乗切つて入るという問題は、これは一つはソ連とアメリカとの関係が改善されるということが前提になるか、或いは又ソ連がこの国連から脱退するというような事態が起るか、或いは又第三には、国連の憲章自体が何らかの形で変更されて、そしてその後において日本の加盟が具体的な問題になる、いずれかの場合でなければならんと思うのでありますが、総理大臣は、その国連の加盟問題についてどういうような場合を今日予想しておいでになるか、それを伺いたいのであります。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私が予想いたしても、予想通りに参るかどうかわからないのでありますが、これは国際連合内において種々協議の結果、或いは又妥協の結果というか、適当な方法が講ぜられるものと私は推測いたします。という以上に、私はお答えはできません。
  98. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いいたしますのは、国際連合に対してあらゆる義務を負う、然らば国際連合に対して日本国は如何なる権利を持つことになるのか、それをお伺いしたい。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは国際連合の規定によつて日本が、例えば朝鮮のような場合が起つて、不当に侵攻を受けるというような場合には保護を求める、或いは日本に対して救援の措置を要求するという権別は当然あるのであります。
  100. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 若し国際連合に対しましてそういうふうな権利がある、そして国際連合はそれに基いて日本を援助するということでありますならば、何もアメリカとだけの安全保障條約というものは必要がないのではないか。こういうまあ問題になつて来るのでありますが、その点についての総理の御見解を承わりたい。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはいわゆる仮定の問題でありますが、例しながら、安全保障條約は、日本独立を保護する処置は講じなければならん、独立はした、その間に保護する安全方法がないというのでは、日本独立がいわゆる有名無実になる、いわゆる真空状態が生ずるのでありますが、これによつて国連の救援至る至らないにかかわらず日本独立は一応保障せられる。保障せられた上で国連の救援その他の問題が起りましようが、その万一の場合を予想して、日本独立が、或いは安全が、一刻も支障なく安全な状態に置こうというのが安全保障條約の目的だと思うのであります。
  102. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 国連と日本との関係につきまして、只今吉田総理のお話でありますというと、はつきり日本が入り得る見通しが余りないように思われるのであります。私どもは国連に対しまして義務を負う以上、当然国連への加入ということが前提とされてなければならんのに、どうも今のお答弁では、はつきりしたことがないのでありますが、併し推測の点では、或いは国連が、国連の内部における米ソ関係の改善があつて、そういうふうになるかも知れないというふうなお考えでありますけれども、現在、首相は、米ソの関係が改善せられて、そうして国連において問題が解決されるというお見通しを持つておられるのか。或いは国連内における米ソの対立というものが、これが更に激化して、非常に事態がむずかしくなると、こうお考えになるか。例えばチヤーチルが今日まで老躯を提げまして、そうして米ソの関係の打開に努め、世界平和のために努めておるようでありますが、それらの情勢の見通し、これはここ一年或いは半年の情勢の見通しというものを外相としてお持ちにならなければ、外交政策は立たぬと思うのでありますが、その世界の動き、国連の動きに対する総理の今日のお見通しを伺いたいのであります。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の見通しはとにかくとして、今日、米国にしても、イギリスにしても、平和の維持に専心努力いたしておるのであります。従つてチヤーチル氏のこのたびの巨頭会談等の企てもこれからできるのであつて、世界の大勢は、どうかして平和を維持したい、平和を維持したい、ソ連とアメリカとの対立もこれは戰争に導かないようにといつて各国が努力いたしておるのでありますから、その効果は何かの形で現われるであろうし、又現われんことを希望いたします。
  104. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私はこれで結構であります。
  105. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に堀木委員質問に対する総理の御答弁をお願いいたします。
  106. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。安全保障條約第一條、「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため」に駐留米軍を使用することが予定されるが、内乱の場合、ただの内乱でなく、第三国の教唆又は干渉が前提となつておる。そうすれば、駐留米軍が内乱鎭圧のため使用されるとき、第三国は默つておるはずがない。国内が第三国と米軍との争いに発展する危險性を包蔵するものである。中ソ援助條約を前提とするとき一層その危險を増すものと認めざるを得ない。次に、日本には、ドイツ、朝鮮のごとく二政府の存在はない。国内治安についてこういう事態を起さないこと自身が内閣の責任であり、又不幸にして万が一起つた場合にも、間接侵略に対しては責任を負う体制をとるべきではないか。警察予備隊に多額の予算を認むるもその意味である。国際的にも国内的にもその決心なくしては独立はあり得ない。――この前提は、この趣意は、結局この安全保障條約が日本をして戰さに捲き込ませるのである、その前提をなすものであるというように考えておられるようでありますが、そういう場合を避けるために、この安全保障條約ができたのでありまして、この安全保障條約があるがために戰争を捲き起すということは考えてもおらなければ、又そういうことはあり得ないと私は考えるのであります。又警察予備隊に多額の予算を云々ということがありますが、警察予備隊は、これは軍隊ではないのであります。日本の治安のために、日本国内の治安は、一応日本国民、日本国政府みずからの力によつて維持したいというために、相当な設備施設をなし、又力を添えることを考えておるのであります。これは独立するためにできおるのであつて独立しないために警察予備隊を置いているわけではないのであります。一応お答えいたします。
  107. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 大体お答えの趣旨はわかるのでありますが、今、何と申しますか、いつも警察予備隊は国内治安に対してだとおつしやつておるのであり、又そうであろうと思うのでありますが、そうすると、ここの間接侵略というものは、国内治安の問題でありますが、これは軍隊を何も使う必要はない。だから間接侵略に対しては、やはり責任が負われているのであります。そうすれば、この條項自身が本当に発動されるということは、実際の問題として、日本の国の独立主権というふうなものから考えますと、こういう條項があること自体が私はおかしいのじやなかろうかと、こういうふうに考えるのでありますが、その点についてお答えを願いたいと思います。
  108. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御趣旨がよくわからないですが……。
  109. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 ただ間接侵略だけ言つているのです。
  110. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 間接侵略を……。
  111. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 間接侵略に対しては、少くとも首相としてその治安の責任をおとりになるという体制が必要じやなかろうか。そうすればこういう問題は殆んど用をいたさない問題でなかろうか。
  112. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 用をなさないことを希望するのであります。間接侵略に対しては一応この日本の国力を、警察予備隊まで使つて維持したい。併しながら万一然らざる場合が起つたという万一の場合にす処るだけの規定でありまして、起ることを前提といたしておるのではないのであります。(「仮定だ」と呼ぶ者あり、笑声)
  113. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 いや、万一仮定であつてもいいのでありますが、少くともこの規定がある以上は、何らかの事態を予想されておるということだけは事実であります。  それで、もう一つお聞きしたいのは、十一月十三日の朝日新聞に、「米軍出動の要件、第三国侵略に対抗、」こういうのが題目で出ているのですが、総理大臣は、いつでも、これは又総理大臣はいつもお言いになる言葉ですが、新聞についてはおれは責任は負わぬ……。
  114. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その通りであります。(笑声)
  115. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 これも常套語でありますが、これは小くとも事実か事実でないかは別にいたしまして、又更に新聞の責任を負つてもらおうとは私は思いません。併しながらこういう規定があります以上は、日本国政府米国との間に何らかの、こういう駐留米軍を使う場合のときにはどういうふうな場合だということが、よほど愼重にきめられなくてはならない。「日本国政府の明示の要請により」ということだけでなしに、何らかの基本的な考え方がきめられなければならない。こう私は思つてつたのですが、たまたま十三日の新聞に、  一、第三国が直接に日本侵略するか、または日本においてその手先となつている勢力を使つて社会秩序を乱し、有機的な国家の機能をマヒ破壊させようとする実力行動が起り、それが効果的に発展する見通しであるときに、政府は米駐留軍司令官に対し米軍の出動を要請する。  一、これはいわば日本の危急存亡のときであつて、政治ストが大規模に起つた場合でも、第三国と直接的つながりがなく、純然たる国内的誘因にもとづくものであれば、米軍の出動の要請しない。  一、したがつて政府米軍の出動を要請するときには、既に当然に非常事態宣言が発せられているような緊急時である。  一、政府の公式申入れに応じて、はじめて米駐留軍は出動するが、そのときは事態の重大性にかんがみ、日本の警察、警察予備隊は米駐留軍司令官の指揮下に入る場合もあり得る。このように駐留軍は国家非常の事態に直面した場合にのみ出動するが、政府筋では、国際情勢が現状と、大して変化しない状況の下では、政府米軍の出動を要請する事態は起り得ないだろうと観測している。  こういうふうにまあ書いてあるわけでありますが、この規定が、私は一番心配しておるのは、これが適用されて、軽々に適用されることがある場合には、非常な重大な国内問題が生ずる、こういうふうに考えるのでありますが、今新聞の記事を読みましたので、新聞の記事について御責任はないことは改めて確言いたしますが、政府として大体こういうふうにお考えでありますか、どうでありますか。その点をお聞きしたいと思います。
  116. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今の新聞記事は無論私は責任を負わないのみならず、責任も要求されておりませんから、問題外にいたします。併し政府として如何なる場合に米軍の出動を要求するかというようなことは、これからとくと話合つた上で、万遺漏なきを期するつもりであります。軽々しく無論出動を要求することもなし、又米国軍も軽々しく出動することは軍紀としても許さないことであろうと思います。米国国民も成るほどそういうわけで出動したかと納得が行き、日本国民も日本国政府の要請がこの事態においては止むを得ないという理解のできるような場合に要請することが当然であり、又政府としてもその覚悟でおります。無論軽々に出す考えもなし、無論こちらも米国軍の駐留ということは、かくのごとき事態が起らないようにというのが趣意であつて、出動せしむることが趣意ではないのであります。故に、かかる事態に処する場合に、無論、政府としても、又米国政府としても、愼重な態度をとると考えます。
  117. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 総理には責任をとつてもらわなかつたのですが、実はこの新聞記事には、実は「安保條約調印前に日米両国政府間に基本的な合意がとりつけられているもようで」ということが書いてあるのですが、併しこれについては、別でありますが、今おつしやつたような御趣旨として、何らか事前に両国間に覚書というふうなものが予定されるでありましようか、どうでしようか。その点だけ……。
  118. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 覚書が取交されたというのですか。
  119. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 ええ、これは基本的は合意がとりつけられているようだと、こう書いてあるのですが、それは別であります。
  120. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういうことはありません。
  121. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 併し趣旨として、新聞はもう全然ただ話を引出すだけなんですが、要するに両国間に何かお話合いがされる予定でございましようか。
  122. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 自然ダレス氏でも見えるならば、その問題は取上げられるだろうと思います。
  123. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に高橋委員質問に対して御答弁をお願いいたします。
  124. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。自衛問題のうち、自衛の武備は必要であるが、文備は最も根本的ではないか。国民としての自覚が増したら自衛力はおのずからできて来る。そのために文教施策が大切であるが、今回の補正予算を見ると、文教費に比べて治安費が甚だ過重であるがどうか。――文教問題はこれは御意見通り重大なことであり、これは單に自衛という問題以上に考えなければなんことがたくさんあるのであります。その文教問題については政府は研究いたしております。又研究の結果については更に予算等において自然要求することになるのでありましようが、今日のところは今研究中でありまするからして、文教費の終局的結論まで出るに至つておりません。併し現在の文教でいいか惡いかについては、政府自身が甚だ重大に考えて研究いたしております。  質問の二、「吉田総理がその文教に対する深い理解の上から、再軍備や警察予備隊拡充などは暫く時期を待つ、文教に最重点を置くことが文化国家建設という新憲法の精神を活かす途である、前回には承わりおくと申されたが、本問題に対する総理の真の熱意をお尋ねする。」これは真の熱意はこうだと言つてここに申しましても仕方がありませんが、併し政府の将来の文教に対する政策、施設等について自然御了解を得らるると思う。政府として、少くとも私としては、文教問題は重要視しておるのみならず、いわゆる文化国家の建設が全うすることができない限りは、日本再建についての列国の日本に対する熱意も自然減退するわけでありますから、政府としても又私としても、文教国家建設ということについては十分の注意を拂うつもりでおります。
  125. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に吉川委員の御質問に対し総理の御答弁を願います。
  126. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。  問題一、「過般のサンフランシスコ会議において日本語のイヤホーンの装置を交渉しなかつたがために、日本全権その他の代表者の殆んど全部は相手国全権の主張を十分に理解することを得ず、そのままに応諾の調印を終つて帰国したのが実情である。」これは実情ではございません。併しながらイヤホーンに日本語のなかつたことは確かであります。これは実情を申しますと、日本語の通訳に自信を持つた人が得られなかつたという困難のために取付けられなかつたというように了解いたしております。次に、「イヤホーンを通じて日本語の飜訳を聽取し得ないために、日本の代表者が会議に列して居眠つたり、又会議をしばしば欠席した者があつたことをどう考えるか。」私は居眠りをした人を承知いたしません。又欠席した、私も欠席しましたが、これは各国、その他の国との間の交渉事務等のために欠席いたしたのであつて、怠けるために欠席いたしたのではないと御承知を願いたい。  質問の二、「朝鮮停戰協定交渉は目下進捗中であり、或いは遠からずしてその妥結を見るに至るかと思われるが、共産主義一般の世界戰略戰術よりすれば、それは一時的仮装的のものであつて、十分に信頼し得ず、時至らば随時これを犯して戰争行為に出ることは、中国における過去の国共停戰協定その他の例より十分に考えられる。南鮮は多大の戰禍をこうむり、心理的にも地理的にも今後南鮮のソ連への偏向はこれを阻止することは困難であり、すでに米軍の南鮮引揚げを主張する者も米国内にある。――例えばウエデマイヤー将軍――かかる事態の実現可能性の相当存在することは、日本国民の刻下最も憂慮するところであり、又政府においてあらかじめ考えられなければならないことと思う。よつて次の事項につき答弁を願う。(イ)朝鮮停戰協定に対する外務大臣の見解及びこれが成立についての見通し如何。」この朝鮮停戰協定只今進行中であり、又米国政府としてもこれの成立を最も熱心に考えているところと私は考えます。又、私としてもその成功を、妥結に到達することを真に希望いたしております。政府としてこれに対して見解、見通しなどを申すのは少し時期が早いと思いますから差控えます。質問の二の(ロ)、「停戰協定後における南鮮に対する日本の対策は如何。」これは朝鮮との間には幾多の問題が停戰協定あるなしにかかわらず存在いたしているので、現に朝鮮の代表者等と只今頻りに適当な解決に達したいと思つて努力いたしております。その結果については暫くお待ちを願いたい。質問の二の(ハ)、「停戰協定成立後における共産軍再侵入の憂慮に対する外務大臣の見解如何。」これは私として申しにくいのでありますからお答えをいたしません。(ニ)「米国内における米国軍隊撤退論に対する外務大臣の見解如何。」これは私の承知いたしているところでは、只今米国政府としては少くとも南鮮から撤退する意思はないと承知いたしております。
  127. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 まだその続きがありますよ。まだもう一言ありますから、あとでお答え願いたいと思うのですが、只今お答え下さいました中で、先般総理大臣も御出席になつておつたとも思いますが、その席上で西村條約局長及び外務次官等から、初まりのサンフランシスコ会議の議事手続についてお答え下さいましたことと、只今外務大臣の御答弁とはいささか違うところがありまして、むしろ外務大臣はイヤホーンの取付けがせられなかつたということは非常に遺憾であるというところのお答えがありましたのは、ほかの政府委員とは違う御答弁でありまして、私は外務大臣の御答弁には、比較的にですよ、ほかの政府委員よりはそういうことを御肯定になりましたことをば多小満足いたすものであります。又外務大臣の御答弁の中に、それが取付けられなかつたのは、適当な通訳者がなかつたからだという御答弁でありましたが、これは如何でしようか。政府で、日本語に英語或いはフランス語、英語だけでいいと思うのですが、それを十分に通訳することができるようなインタープレターを外務省その他が持つていらつしやらないというような御答弁は、これは甚だ私は腑に落ちない御答弁であると思うのであります。それから、居眠つていたり欠席していたという者については、欠席していたのは用があつたからとおつしやいましたが、これも前に申上げたことでありますから、くどく時間を費して申上げませんが、居眠つていた、朝から晩まで居眠つていたということをみずから言つている人があつたということは、これは総理の御否定にかかわらず全く事実なのです。私は決して嘘は申しておりませんので、私語の間の言を私は引用いたしますることは、いささか自分も躊躇いたすのでありますが、今、隣りにいらつしやいます團伊能さんも、サンフランシスコ会議に御出席になつておりまして、私のこのプリントを御覽になつて、吉川さん、全くこの通りでしたね、(笑声)そして、こういう取付けに対して政府のほうがしなかつたということは手落ですねとお話になつておられますが、こういう御証人は幾らでもたくさんいらつしやいますから、私の申上げていることは決して間違いないということを申上げておきたいと思うのであります。それから朝鮮の協定の問題については、国民が、外務大臣としてお考えになつていることをば、重大な問題でありますから、この講和條約に関連して是非聞かしてもらいたいと思つておりますことを私は代表して申上げたつもりでありますが、為政者の立場上いろいろ御遠慮になるお気特は十分私もわかります。でありまするから、これにつきましては、それ以上私は御答弁を促しませんが、併しこの(ロ)として書いてありまする停戰協定後における南鮮に対する日本の対策は如何にあるべきかというようなことぐらいは、まあ、そのほかの質問事項に関連いたしましても、お差支えのあるようなことは強いて私は聞こうといたしませんが、差支えのない範囲内において、自分たちは、日本政府はこういうことを希望している、或いは(ロ)のごときことは多少具体的な問題に触れてまでいろいろお考えがあるだろうと思うのですが、如何でしようか。一つまあ一番のほうはよろしうございますが、議事手続のほうはよろしうございますが、二番目の朝鮮停戰協定質問に対しましては、もう少しお答えができる範囲内において、為政者としての日本政府の代表者としての御希望その他で若しお漏らしが願えれば、もう少しお話願えれば大変結構だと思うのであります。
  128. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 停戰協定のいきさつ等については私は承知いたしておりません。又承知しようとして努めることがどうかと考えておりますからして、新聞以外何も知りません。が、その妥結に至ることは我々として希望せざを得ないのみならず、これは誰も希望しておることであろうと思います。北鮮は存じませんが、南鮮としても、米国政府としても、何か妥結の途がないか、それに到達しようとして数カ月に亘つて交渉を重ねておるのであり、そうであります。これがどう将来なるか、これは私も見込が付きませんが、併し両方共に、例えば中共政府においても、一時であるか長くであるかそれは知りませんが少くとも現在これをやめたいという考えのあることは確かなように承知しております。それでありますから、少くとも一時何かの妥結を見るのではないかと、こう私は思うのであります。これは新聞記事による想像であります。又妥結に到達することによつて、朝鮮が一時安定することによつてだけでも人民としては幸福であろうし、又我々としても、一種の圧迫を感ずる、危險を感ずる度が減るわけでありますから、日本としても、その妥結に到達することにできるだけのことの、若し援助をし得るものならしたいと思つております。もつとですか。(笑声)
  129. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 その次にありますから、朝鮮問題はそれでもう結構です。(笑声)第二問が出ておりますが。
  130. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 私からちよつと読みます。御質問の趣旨です。   左の事項につき吉田外務大臣及び大橋法務総裁の答弁を願う。   国連軍その他外国軍の義男兵として日本国民がこれに参加することは憲法上国際法上合法行為であるとの法律的解釈を政府はとつているが、然らば左の事項につきお答えを願う。   (イ) 現に北鮮軍には数十万の中共軍が義勇兵団の名において参加していることについての国際法上の政府の見解を承わりたい。   (ロ) 政府の憲法解釈よりますれば、憲法の非武装規定を改正することなくして、日本国家の意思によらざる外国の意思に基いて今後幾万或いは幾十万の日本人義勇兵団を国連及び外国が募集編成することとなる。   右についての吉田外務大臣及び大橋法務総裁の答弁を願う。こういう趣旨でございます。
  131. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは法律如何にかかわらず、義勇軍の募集については政府考えたくないと考えております。法律上の見解その他については法務総裁からお答えいたします。
  132. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政策論といたしまして只今総理大臣からお答え申上げた通りでございますが、日本国民が義勇兵として外国軍隊に応募することが憲法上の問題でないと申しましたことは、これは日本政府が全然関知せずに個人がその自由意思に基いて外国の義勇軍に加わる場合は憲法上の関係のない事柄であると、こう申した次第でありまして、例にお引きになりましたように幾万或いは幾十万という多数の日本人の義勇兵団を国連及び外国が募集編成するというような場合におきまして、国家がこれを默視するということは、消極的に国が国民に対しまして義勇軍の参加を支援したり或いは奨めたりする。そいうことがなければ到底さようなことは起り得ない、こう思われまするが、そういうことは平和主義を基調とする憲法の條項乃至は趣旨から申しまして不当な事柄である。政府としてはさような消極的な支援を與えるべきではない。こう考えております。
  133. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今御答弁になりましたことにつきましては、この委員会でも私の先の質問或いは昨日永井委員質問等がありまして、政府の御意向は大体それだけでは伺つておるのですが、十分意に満たないものでありますから、更に御質問申上げたいのですが、重複いたしておりまする点はすべて省略いたしまして、只今の大橋法務総裁の御答弁について、政府は義勇兵の募集については消極的な態度であるというようなお考えであつたと拜承いたすのでありますが、仮にですね、いや、すでに義勇兵の問題については、台湾政府或いは韓国軍或いは国連軍等の中に日本人が義勇兵として従軍いたしておるというようなことが、事の真僞は別といたしまして、いろいろと伝えられておるのであります。又衆議院におきましてもそういうような事実を挙げて質問せられている衆議院議員もあつたように速記録で記憶いたしておるのでありますが、更に進んで、今の御答弁からいたしまして、仮に政府案でなくても、政府案の形でも結構でありますが、我々も法律提案するところの権利を持つているのでありますから、議員提出案の形ででも、ここに義勇兵の応募はいけないのだというところの、義勇兵応募を禁ずるところの法律を我々がまあ提案するといたします。そのときに、ほかの法律提案と同じように、一応政府の御意向等をも参考にいたしましてからそういう法律案の立案を私たちもいたすのが慣例でありまするから、今ここに我々が義勇兵の応募を禁ずるところの法律国会において制定したいという意思を以て私たちがそういう法律提案をしようといたしますときに、今そういう場合にあるといたしまして、政府の御意向をそれに対して伺いたいと思うのでありますが、そういう法律を我々が出そうといたしますときに、政府はどういうお考えであるかということをもう一度御答弁願いたいと思います。
  134. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) さような法律は、無論憲法の趣旨から申しまして、国会を通過いたしますれば、当然適法な法律として、成り立ち得るものと思います。御質問の要点は、それに対して政府は賛成か或いは反対するかと、こういう点であろうと存じますが、この点はまだ現実に御提案もございませんので、御提案がございましたならば十分に政府部内においていろいろ愼重に検討いたしたいと思います。これは單なる抽象的な問題でなく、やはり法案となりますると、いろいろ罰則の点でありまするとか、或いは種々の規定の内容でありますとか、いろいろ考えて行かなければならないと思います。
  135. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 細かい規定についてはいろいろ意見が、そのときでないとわからないということは答えられると思うのでありますが、我々が今出そうといたしておるとしまして、或いは出すかも知れない、明日。そのときに、いろんな法律案を議員提出案の形において出すときに、政府はどう思つているかというところの荒筋の趣旨です。細かいことじやないのです。それに対しては政府はイエスかノーかということは御明示にならなければならんと思うのでありますから、もう一度そうぼかさないで、はつきりお答え願いたい。
  136. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 無論そういう問題があれば、はつきりしたお答えをいたさなければならない。
  137. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今あるんです。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)
  138. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今まだ御趣旨のような法案がございませんから、確定的な意見を申上げる段階にはないと思います。併し強いて今賛成か反対かと、こういうことでありまするならば、これは必ずしも賛成はできないと、こうお答えいたします。
  139. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 吉川委員の時間は終りました。次に加藤委員
  140. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 委員長それはいけませんよ。
  141. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 先ほどから皆さんそういうふうにやつておりますから。
  142. 永井純一郎

    永井純一郎君 昨日の僕に対する大橋君の答弁と食い違つております。駄目ですよ。
  143. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 質問を順序によつていたします。加藤委員質問に対する総理の御答弁をお願いいたします。
  144. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 「民主化された現在の日本としては、独禁法、事業者団体法のごときはすべからく改廃すべきであるとの私の意見に対し、首相は全や同感の意を表されたが、かかる重大事は内閣において首相が中心になつてこれに当るべきであるがどうであるか。」これは独禁法、事業者団体法のみならず、占領下でできた法律等において、現在の状態に適合しないものもあり、又現在の状態から見れば行き過ぎで、害あつても益のないような法律が大分あるので、これは政府において総司令部と共に研究中であります。又名前は忘れましたけれども審議会をこしらえて研究いたしております。適当な改廃をいたしたいと思つております。
  145. 加藤正人

    加藤正人君 そのことは前回私が質問をいたしましたときに総理から同様なお答えがありまして、至極、私、又全般の事業界が非常に安心をいたしたと思うのであります。併しながらその後この問題についての取扱の経過を私がそれとなく調べてみますると、意外にも総理のというか内閣のほうでは、これを敬遠して、安本のほうに移し、安本も又その取扱を避けて目下公取の手にそれが移つているということを聞いたのであります。そういう次第でありますと、現在公取というものはこの法律の執行の実情を監視いたしているような機関でありまして、さような機関にその問題を移されましても、これは甚だ不適格者であると私は思うのであります。そういつたような経過を辿つておりましては、いつの日にか、この改廃が実現するかということが目途しがたいのであります。従来私は常に考えているのでありまするが、占領下にありました習性と申しますか、とかくかような先方の余り喜ばぬような問題については、とかく日本政府のほうの態度が消極的でありまして、その点について私は甚だ遺憾と思つているのでありまするが、すでにもう條約の前文におきましての後段におきましても「国際的に承認された公正な慣行に従う」、これは「公私の貿易及び通商において国際的に承認された公正な慣行に従う意思を宣言するので、」こういうふうに書いてあるのでありまするが、現在におきましては国際的に承認された公正な慣行に従うという意思を持つておりましても、かような国内の産業上及び国際の貿易通商上において種々なる制約を受けておつて、かような公正な慣行に従うにも従えないような事実が如何に多くあるかということが明らかである。講和條約の締結の結果、日本といたしましては国土の四割余を喪失し、又賠償の重荷を負わされ、幾多の貿易通商上の権益を放棄しなければならない、賠償の問題も大きいのでありますが、今後その他の條約の権益を喪失するというような、幾多の権益を喪失するということは、将来日本がどうしても貿易で立つて行かなければならんという立場から見ますと、永遠に非常な損害を日本は負わなければならん。かような状態においては、どうしても日本は貿易によつてつて行かなければならんという非常に困難な場合に際会しているのでありますから、貿易上について各国にない制約を日本のみが受けているような状態では、到底自立経済というものを実現しがたいと思うのであります。他の委員が広範多岐に亘つて非常に派手な質問を展開されておりまするにもかかわりませず、私は單にこの問題にのみ終結して熱心に当つておりますゆえんのものは、全く今後日本に課せられた非常な重荷をどうしても貿易によつて解決して行かなければならんという至上命令を持つておりますと同時に、現在においても各国には何らの制約がなくて自由奔放な貿易をしているにもかかわりませず、日本のみが手かせ足かせのような状態であるのでありますから、一時も早くこの惡法の改廃をして頂きたい。然るに今申上げました通り、内閣から安本に移り、安本から甚だ不適格な公取に廻つておるというような状態では、誠に私たちは憂慮に堪えないのであります。どうぞ一日も早く総理直接にじきじきにこの問題を解決して頂きたいと、こう考えまするので、あえて時間がないのにここでさよう総理の御決意を伺いたい、こういうわけで質問いたした次第であります。
  146. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 多少聞き違えておる所があるかと私は思いますが、公取……。
  147. 加藤正人

    加藤正人君 公正仮引。
  148. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そこに委託して、或いは安本は意見を聞いておるかも知れませんが、全体としてこの問題は委員会の答申を待つて、そうして総司令部の関係もありますから、総司令部との間に協議をいたしておるのであります。今の委員会は、多分その委員会意見を徴しておる程度であつて、その委員会に全然問題を託しておるはずはないのであります。はつきりお答えいたします。
  149. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) これにて総理答弁は終了いたしました。二時まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩    ――――◇―――――    午後二時十二分開会
  150. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 休憩前に引続いて会議を開きます。
  151. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 交換公文に関する資料の御要求がございましたが、これは別に特別な資料は差上げるものはございませんから、御了承願います。
  152. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 聞えませんよ。全部言い直して下さい。
  153. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 交換公文に関する資料のお話がありましたが、交換公文に関する資料はないのでありまするから、御了承願います。
  154. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは以てのほかの御答弁です。実に誠意のない御答弁です。私は交換公文の資料をくれということは申上げておりません。もう一遍私は繰返しますが、あなたは了解されておるのでしよう。
  155. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 交換公文に関する……。
  156. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一度申しましようか。
  157. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 交換公文について資料がある場合は、これを提出してもらいたいという兼岩委員の御要求と承知しております。
  158. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう意味ではございません。従来ですね、我々が繰返し繰返し衆議院、参議院両方で、朝鮮の戰局に対して援助をしておられるということが、世界の外電その他で言われておるが、それが事実であるかという質問に対して、常に政府は、そういう援助はしておらない、やつておるとすれば精神的援助、或いはコンマーシヤルベースに基く、純商業行為に基く軍需品の売渡し、特需の売渡しをしてるけれども、精神的援助、コンマーシヤルベース以外の援助はしておらないということを言つておられるのであります。ところが、今回吉田、アチソンの交換公文によれば、従来政府が答えられておりますところは真実に違うものである。真実はこの交換公文で明らかに言つておられるように、日本国は施設及び役務を、国際連合の行動に重要な援助を従来與えて来ましたし、又現に與えています、ということを、交換公文で言つておられる。然りとすれば、我々が従来これに対して質問して、それに対する政府答弁は虚僞であつたということがはつきりする。それが第一点。  それから第二に、この交換公文で言つておられるこの施設並びに役務の援助を、従来何を與えられ、現在何を與えつつありますかを明確に資料として御提出を願いたい。これが私の要求なんであります。
  159. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは兼岩委員からの御要求の只今の問題、並びに中共貿易並びに東南アジア開発に関する質疑を保留いたしまして、平和條約に関する逐條質疑はこれを終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それではそのように決定いたしました。  只今から平和條約に関する総括質問を始めます。加藤委員
  161. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私はこの平和條締結に当りまして、かねてから私ども日本民族にとりまして、非常に重大な問題になつておりますところの人口問題につきまして、総理大臣が如何なる御認識をお持ちになつていらしやるか、そのことをこの際はつきりと御答弁頂きますことは、国民にとりましても、特に又この講和條締結に当りまして、多大の好意日本に示してくれましたところの諸外国の人々にとりましても、これは大きな関心事と存じますので、この際、総理大臣よりその深い御認識のあるところの御説明を承わりたいのでございます。かねて日本の人口問題は、とにかく文化国といたしまして、これほど狹い土地にたくさんの人間がひしめき合つて住んでおり、資源が貧弱であるということは、ひとしく皆が承知いたしておるところでございます。心ある人々は、すでに太平洋戰争の前から、この人口過剩の問題と日本の国土狹隘、資源貧弱の問題が、やがては日本を戰争に引き込む虞れがあるということを承知いたしておりましたのでございますが、その当時の政治家のかたがたの御認識というものは、ひたすらに、人口は膨脹することが、より大きく膨れ上ることが国のためによいことであるというような、誠に非科学的な簡單な御認識が多かつたのでございます。現に終戰後このような事態に立ち至りましても、まだ御認識がなくて、現に私は衆議院におきまして、片山内閣のときには片山総理大臣、芦田内閣のときには芦田総理大臣にと、その都度御質問を申上げておるのでございますけれども、この問題について、全く自分の国の手でなすべきことをなして、そのあとで諸外国の協力を求めたいという、そういう態度にお出にならないで、これはどうにかなるだろうというような御意見が多かつたり、或いは逆に、国土が狹くなつたし、資源はないから、これ以上唯一残された財産は人間の数の多いことであるというような、およそ時代錯誤の御意見さえもこういうような当局のかたがお持ちになつていらしたことは、非常に遺憾なことだと存じます。殊に私などは、選挙のときなどは、自由党のかたを向うに廻しまして、討論に立つたこともたびたびございますけれども、そういうようなときにも、まじめに日本で今この人口対策を立てなければならないというようなことを申すことは非常に消極的なことであるというふうに言われまして、それよりも日本人ほどんどん殖えるだけ殖やして、そうしてこれからはほうぼうに移民してどんどん発展すればよいのだというような、誠に無責任と思われるような御意見をお述べになつていらつしやるかたが少くないのでございます。こういうようなときに当りまして、私は去る九月のサンフランシスコにおける講和條約の締結されますあの歴史的なモメントにおきまして、私もあのオペラ・ハウスの一隅におきまして、我が日本の全権吉田総理大臣の御演説を伺つておりました。そのときに総理大臣の言われましたお言葉の中でも、「日本はこの條約によつて領土の四五%をその資源と共に喪失するものであります。八千四百万に及ぶ日本の人口は残りの地域に閉じこめられ、」云々というお言葉がございました。私はこのお言葉を伺いましたときに、誠に悲壯な感に打たれたのでございます。さだめし総理大臣も、今後国際的な家族の仲間入りをして協調を保ち、そうしてこれらの援助を受け、而も日本人としてなすべきことをしなければならないという御見地に立ちましては、さぞや十分なる御認識をお持ちになつていらつしやるに違いないと私は想像いたしております。御承知のように、人口過剩に苦んでおりますのは日本だけではございません。今日人口が食糧の増産より上廻つているということは、これは日本のみならず世界的の現象であるということは、総理大臣も御承知の通りと存じます。現に十一月十二日においてローマで開催されました第六回の国際食糧農業機構会議におきましても、この問題が取上げられておりまして、現在世界の食糧生産は一九三四年から三八年の平均年産額を九%上廻つているけれども、人口のほうは一二%増大を示している。従つて戰前には、世界の人が一人当りの一日平均カロリーは二千三百八十カロリーであつたのが、現在は二千二百六十カロリーに下つているというような発表を見ております。日本におきましても、戰後このたくさんの人口を扶養するために数々の施策がなされておりますけれども、この施策の成績より上廻つて人口が殖えておりますことに対しましては、よほどこの際に確乎たる御決意の下に対策を請じて頂かなければならない。インドのような、あのように日本と同じように人口の圧力のために悩んでおります国でも、首相ネールは産兒制限の必要を認めて、国民にこの協力を訴えたというようなニユースが出ております。インドのごときは今は凶作のために非常に悩んでおりまして、六百万トンの食糧を外国から輸入しなければならない。而もそのうちの二百万トンはアメリカから援助を受けている。従つて市民は一日たつた一合七勺の配給を受けているに過ぎない。併しインドは土地が広いために農地改良の余地が残されていて、食糧増産計画は一九五三年に完成して自給自足ができるというような計画を持つているそうでございますけれども、そういうような事情の下でも、この際、消費人口を適度のところに抑えて行くということは、どうしても国家としてなされなければならないという立場から、ネール首相は、特に来年の十二月にインドにおきまして、世界中の社会事業大会が開かれますのを契機として、米国からバース・コントロールの権威者たちを招集いたしまして、徹底的にその対策を立てるというようなことも考えておるというようなことを聞いております。私どもは、この問題が非常に重大な関心事でございますし、殊に今日子供を生みますところの母の立場からいたしましては、切実にこの問題に対して国家がどういうような立場をとつてくれるかということを非常に関心を持つております時期でございますから、どうか総理大臣の御抱負のほどを聞かせて頂きたいと存じます。
  162. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  人口問題については、これは今日に始まつた問題ではありませんが、日本としては重大な問題であり、殊に終戰後の日本としては一層重大なことになつたことはお話の通りであります。さて、これに対してどう人口問題を処置するか、これは無論政府一個の力だけでできる話ではなく、国民が挙げてこの問題について重大な関心を沸つて、共に共に協力してこの問題の解決に当るべきであることは勿論のことであります。これについても、お話のような産兒制限とか、或いは食糧増産とか、いろいろな方法もありましようが、併しこれは消極的にこの人口問題を解決するということはむずかしいのではないかと私は思います。そこで、私及び政府として特に力を入れたいということは、日本の産業化ということ、又従つて外国貿易の進展ということを考うべきであり、外国費易の進展ということを考えれば、自然、善隣外交といいますか、少くとも東洋の諸国との間においては、従来より、より一層緊密な或いは親密な関係に立つて、そうして貿易の進展を図り、更にイギリスとかアメリカというような国との間において一層経済関係の増進を期したい。かくて初めて人口が、永遠ではありませんが、差当りの人口問題が解決できはしないか。人口問題については、これは差当りの問題と、将来永きに亘つての問題と二つありますが、政府の今日の施策としては、取りあえずその一部の解決方法を考えるとすれば、いまのようなことをいたして、積極的にこの人口の收容といいますか、過剩人口、増加する人口に対して一応の施策を講ずる、日本国が現在持つておる資源なり力の範囲内において一応の解決を盡す、而もこれは消極的でなくて積極的に盡すことが有効なる解決の方法じやないかと、私は考えております。ともかくそういう線で政府は進みたいと思つております。
  163. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 積極的というお言葉は誠に聞えがよろしうございますけれども、どうも実際の問題といたしましては、現に毎日四千人ずつ新らしい日本人がこの際にも生まれております。そうして一年の末には百五十万人の日本人が新らしくこの日本に殖えて行く。こういう大変な速度で日本の人口が殖えつつございます。こういうような速度で日本の人口が殖えるということは、一つには連合国軍が日本に進駐されましてから、公衆衛生の面で非常な御助力をしてくれましたので、その結果といたしまして、衛生状態の向上のために日本の死亡率が減つて行くということは誠に喜ばしいことだと存じます。併し、今日の日本の死亡率を見ますと、これはいわゆる欧米の文化国家と足並みを揃えた低い死亡率に到達したことは誇るべきことだと存じますけれども、死亡率が一方において非常に低いにもかかわらず、出産率は、やや近年一、二年に下つては参りましたけれども、まだまだこの低い死亡率を持つている諸国と比べますと、非常に高いものであるということは、総理大臣も御承知の通りでございます。従いまして、今度は諸外国が日本と将来貿易界において競争する場合に、日本は相変らず大人口政策をとつて従つて、いつも、そこには、だぶついているところの労働人口があつて、而もその労働人口がいつも失業或いは半失業に怯えている労働人口があるために、賃金も低賃金でこれを雇用することができる立場にあるのだというような見方をいたしておりますことは、御承知のことかと存じます。現に今総理大臣も英国のことをちよつと申されましたが、私もこの八月に英国に旅行いたしましたときに、驚きましたことには、実に各方面の人が将来日本の紡績業と英国の紡績業が又非常な競争になるのではないかという大変な不安の感情を示されたのでございます。それで私も、素人ではございますけれども、これは今から誤解の種がここに蒔かれるということがあつてはとんでもないことだと存じまして、マンチエスターまで足を伸ばしまして、マンチエスター・ナシヨナル・コツトン・ボードの役人のかたがたに会い、或いは紡績業を経営していらつしやるかたに会い、或いは労働組合のかたがたに会いまして、どういうところに日本を恐れているかというような問題を実地にいろいろと聞いて参つたのでございます。驚いたことには、私と同僚の戸叶里子代議士と二人がマンチエスターに乘り込んだと聞きますと、マンチエスター中の新聞がみんなそこへ詰め寄りまして、日本の紡績界の状態についていろいろ聞きたいというわけで質問を浴びせかけられましたが、一番最初に言つたことは、とにかく日本みたいにたくさん人口がいて、そうしてまだ一家の生計を支える責任を持たない若い娘たちが大変な能率を挙げて、工場の中をローラー・スケートを穿いて走り廻つて能率を挙げている。こういうような状態を見て、英国のように今日失業者が一人もなくて、従業員が二十年も或いは三十年もここに坐つている。従つてその労働賃金は非常に高いものである。こういうようなところから到底競争をやつて行くということがむつかしくなる。現に自分の工場では今一ヤール木綿の布を七十五セントかけなければコストを割るというのに、お前の国ではもう五十セントで売出したではないかというような苦情まで、そこで持込まれましたので、私は、これがやはり日本の非常にあり余つた人口問題がこんな恐怖感を英国に抱かしているということを痛切に感じているのでございます。従いまして、今総理の申されましたような積極面でこれを解決なさることはもとより或る意味で結構でございますけれども、今申しました低くなつた死亡率に歩調を合せた低い最もモデレートな出産率にまでこれを引下げるということは、どうしても国策として、又連合国と歩調を合せるためにも、これは、やつて行かなければならない問題と考えるのでございますけれども、如何でございましようか。
  164. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のお答えしたのは、日本の人口を無制限に放置する、幾らでも殖えていいというような考えで申しているのではありませんが、私の申すようは、日本の経済生活といいますか、日本の生活の向上ということができれば、これは自然、出産率の減少とは言えませんけれども、調整ということになると思います。或いは産兒制限等の方法もありましようけれども、一番人類的といいますか、無害な方法は生活水準を高める、そうして自然に人口の調節に至るようにするというのが一番穏当な行き方ではないかと考えますから、お答えをいたしたわけであります。
  165. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 時間もなくなりましたので、まだ申上げたいことがございますけれども、それは控えまして、今の総理の御答弁は、問題に対して非常に対策を講じなければならないというお考えをお持ちになつていらつしやることは明確となりましたけれども、もう少し内容的な方法につきましては、総理は御年輩でもございますし、又男のかたでもございますから、十分なる御認識がまだ欠けているように失礼ながら感じましたので、(笑声)近い将来に、こういうような委員会の席でなくて、総理に個人的に私はいろいろ意見を申上げたいと存じますから、そのときにはよく聞いて頂きたいと今からお願いをして質問を終ります。
  166. 一松定吉

    一松定吉君 私は総理大臣と大橋法務総裁とに少しばかり伺つてみたいのでありますが、総理大臣には極く大綱のみをお答え頂けば結構でありまして、詳細は專門家の大橋法務総裁に伺つてみたいのであります。質問をいたしまする前にあらかじめお断わりして置かなければなりませんことは、私のこれから申上げまする質問は、只今審議中でありまする平和條約又は安全保障條約が無効であるとか、或いは一部無効であるとかいうようなことを前提として申上げるのではございません。私は賛否の意見を、態度を明らかにいたしまする場合のことを今申すのは如何かと思いますが、私はこれは批准すべきものであると考えておるのでありまするから、そういう意味において、反政府的若しくは反條約的に意見をまとめるという意味で御質問するのではございません。全くこの世間にいろいろな誤解を持つておるかたもありましようし、又国民として明らかにしておかなければならんと思う條規もありまするので、それを明らかにしておきたいという意味で御質問を申上げるのでございまするから、どうぞ何にも危惧するところなく一つお答えを賜わりたいことをあらかじめ申上げておきます。  先ず私は、憲法の九十八條によりますると、「この憲法は、国の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」この九十八條によりますると、憲法違反の行為は効力を有しない、こういうことに帰着すると思うのであります。そこで問題は、この九十八條の中に列挙してある中には條約という規定がありません。併しながら概括的に「国務に関するその他の行為」とある、「国務に関するその他の行為」の中には、いわゆる條約締結権というものは当然含まれておるものであると、かように私は解釈しておるのでありまするが、この辺は過般の法務総裁の御意見と少し違うようでありますが、これは総理は如何にお考えでいらつしやるのでありましようか。專門のことだから法務総裁ということなら、それでも結構でございますけれども、伺えますれば……。(笑声)
  167. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 專門のことでありますから、法務総裁に願いたいと思いますが、一応素人の意見を申述べます。憲法の規定に反して條約を締結したる場合でありますが、これはする考えは毛頭ないのであります。政府がたとえ條約を結ぶ場合においても、憲法の條章はどうであるかということを考えに置いて結ぶべきであり、又例えば外国から要求されたという場合も、或いは例を国連にとりますが、国連がよその国に或る義務なり行為なりを強いるといたしても、その国の政府の権能にないことを強いるということは全然ないはずであります。これが国際の常識でありますから、如何なる場合においても、無法な国は別として、国連のごとき組織において、日本に、憲法違反の行為を政府に強いるということは万々ないことと思います。又仮にあつたところが、政府はこれに対して受諾はできないと思います。これは私のなんであますが、專門的意見は法務総裁にお聞きを願います。
  168. 一松定吉

    一松定吉君 只今総理お答えによりますと、いわゆる私の局限したお尋ねに対してのお答えでありましたが、そういたしますと、結局この「国務に関するその他の行為」といううちには、やはりこの條約の締結権も含むんだ、それあるが故に、條約を締結したときには常に憲法の規定に従つてつておるのだから、憲法違反というものは起らないんだと、こういうような御趣旨でありますか。
  169. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はそういうふうに憲法の條章に準拠して條約を締結するという精神でおります。従つて憲法に違反するがごとき條約は生ずるはずがない、少くとも私の内閣の間はございませんから、御安心を願います。
  170. 一松定吉

    一松定吉君 憲法に反しないように條約を締結するんだから、自分の在職中はそういうことはないんだという、その御趣旨には私は敬意を表するのであります。ところがですね、この今回の平和條約並びに安全保障條約等に、例えば兵力を持つだとか、或いは全幅の努力を以て連合国に協力を與えなきやならんとかいうようなことが、如何にも憲法の九條の規定に反するかのごとき考えを持つてこれを非難しておるようなかたもあるようであります。そういう点について、それがいわゆる憲法に違反しないのだというようなことになれば、これはもう議論がないのですけれども、それが又憲法の規定に違反するのだと、こういうことになれば、そこにやはり議論が起るのですからお尋ねしたのでありますが、今あなたのお答えのように、憲法には違反しないのだということを前提にしてやるのならば、これは問題がありません。そこでこれ以上のことをあなたにお尋ね申上げても專門外でありますから、これはやめまして、これから先は一つ法務総裁に代つて頂いて御答弁を願つたほうがよかろうかと思いますから、どうか一つさような意味において……お聞き願うことは私は非常に結構だと思いますが……。  法務総裁に伺いますが、法務総裁はこの九十八條の「国務に関するその他の行為」の中には、條約締結というものは含まないというお考えでありましたね。それはお変りありませんか。
  171. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 條約の締結ということは入るというふうに申上げました。
  172. 一松定吉

    一松定吉君 條約の締結ということはこの中に入る……そういたしますと、つまり條約を締結する場合に憲法に違反しておるような場合があれば、それは効力はないと、こういうことになりますか。
  173. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは前回お答え申上げましたる際に、国内法的な問題と、国際法的な問題を区分して申上げたわけでありまして、国内法上の効力につきましては、我が国の憲法が硬性憲法の建前をとつておりますから、條約を以て憲法を改正するということは不可能である。よつて最高法規たる憲法の條章に違反するがごとき條約が万々一締結された場合においても、それは国内法的には何ら効力を持ち得ないものになる。こういう趣旨を申上げたのであります。
  174. 一松定吉

    一松定吉君 よくわかりました。国内的には効力がないのだ、憲法に違反しておるが故に……。よくわかりましたが、そうすると、そういうような條約を、憲法に違反しておるような條約を国会が誤つて批准をしたというような場合には国内的には無効であるが、国際法的にはどうなりますか。
  175. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国際法的の効力にいたしましては、国の権限ある機関によりまして、正当なる手続によつて締結せられました條約というものは一応その国家を拘束する。効力は国際法上否定できない。こう考えます。
  176. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、国際法上有効である、国と国との意思の合致である條約は、国際法上その相手国を拘束する。但しそれは国内法上では憲法違反であるが故に無効である。こういうことですね。
  177. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国内において或る事柄を実施するということは、恐らく政府が引受ける問題でありますから、国内法上憲法違反だという事実が生ずると思います。その場合におきましては、政府といたしましては、憲法の改正を適法に行わない限りにおきましては、その條約の内容といたしました事柄を国内において実現させることは不可能であります。そういう意味において、当初その條約の目的といたしておりまする内容を実現するという意味において効果を認めることはできません。従つて国際法上相手国に対してその條約上の義務は負うてはおりまするが、併しその義務を実現することは国内的には不可能であるという状態になると思います。
  178. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、あなたの御説では、憲法違反の條約を締結した場合には、国内法的では無効であるが、国際法上は有効である、但しその国際法上有効な條約の効力は国内に向つては拘束力がない、そういうことになりますと、一体、国際法上のいわゆる條約というものは憲法の上にあるものだという議論ではなくて、そういう場合には憲法の下位にあるということに解釈するのですか、どうですか。
  179. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御質問の趣旨がよくわかりませんが、憲法の下位にあると申しますか、何と申しますか、相手国に対する関係においては、その国家間の合意は成立をいたしておりまするから、従いまして国内法上不可能であるというだけの理由を以てしては、その條約の効力を相手国に対して無効であるという主張はできない、こう考えます。
  180. 一松定吉

    一松定吉君 そういたしますと、国内法上無効であり、国際法上有効であるとすれば、その国際法上有効である條約に対して、我が国民はこれを遵守する義務はない、こういうことになりますか。国内法上無効である……。
  181. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 憲法に違反をいたしておりまする限りにおきましては、国内に対しては拘束力がないわけでありますから、自然只今お述べになりましたような結果を免がれぬことと存じます。
  182. 一松定吉

    一松定吉君 一例を挙げるのは甚だおかしなものですが、かの俘虜の問題、若しくは戰犯の問題について、日本はジユネーブの條約に加盟していなかつたにかかわらず、東條さんがジユネーブ條約の準用を認めるという意思表示をしたがために、この間の戰犯の問題で非常に問題になつて法廷で論議されました。あれば日本の批准も何も受けていなかつたのですけれども、あれは、やはり国際法上有効だということで押し、付けられたように私は思うのですが、あなたの御議論からすると、国際法上有効であるけれども、日本国としてはこれに拘束されないのだということになると、この間のやり方は間違つておる、こういうことになりますが、御存じでなければ別ですが。
  183. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御指摘になりましたその東條さんの事件というものの内容を私よく存じておりませんので、それと同じかどうか、ちよつと申上げかねます。
  184. 一松定吉

    一松定吉君 よろしうございます。あれは、つまり日本の議会の協賛を経ずに、そうして批准もしていなかつたものが、ジユネーブ條約を準用すると認めるというようなことを言うたために押し付けられたということが、この間の市ケ谷の法廷で非常に論議された問題ですけれども、それは今ここで問題にしませんが、そういたしますと、あなたのおつしやるように、国際法上有効であり国内法上無効であるとすれば、それは結局なんですか。国民はいつまでもその国際法上有効のものを国内法上認めぬということになつて来ますと、この調節はどうもせんでもいいんですか。
  185. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 勿論、かような條約が国家を拘束し、而も国内においては実現が不可能である、こういう條約がそのままに存在するということは不都合なことでございまするから、政府といたしましては、さような條約ができました際においては、これを是正する措置を講じなければならないのであります。その方法として考えられますることは、一つは国内におきまして憲法を改正することによりまして、その條約を国内においても実効あらしめるように努力する、これが一つの方法でございます。もう一つは、関係国と更に話合いをいたしまして、その條約は破棄する、或いは取消すとか改めるとか、こういうことによりまして、憲法と矛盾した條約を改正するように政府として努力をする。このどちらかの方法によつてこの矛盾を解決することが政府として当然考えるべき職責であろうと考えます。
  186. 一松定吉

    一松定吉君 それは、救済の手段として、あなたのおつしやるようにしなければならんことは言うまでもないがね。併し日本国民として、憲法に違反しておるんだからして、我々は憲法に違反してそういう條約を締結されても我々は困る。やはり憲法を遵守しなければならん。現に憲法の九十九條には「天皇又は攝政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重して擁護する義務を負ふ。」とありだからして我々は何も憲法に違反しておるその国際法に従う必要はないし、この憲法はどこまでも我々は遵守するんだ。こういうように、やはりあなたのこの條約と憲法との抵触を如何にして調節するかというその御苦労が実現しないことになる。これは誠に残念なことであるが、あなたはこのような場合にどうすればよいと考えるのですか。
  187. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府関係の公務員、国会議員、裁判官等が憲法を遵守する、これは條約の締結に当りましても又国会における條約の審議に当りましても、当然憲法遵守ということを前提にしてこれらの手続が運ばれるわけであります。従つて、そういうことによりまして、最初に総理大臣から述べられましたごとく、事実上憲法違反の條約ができ上る心配はないということを保障いたしておるわけであります。
  188. 一松定吉

    一松定吉君 それは、その神様のような考えで憲法に間違いないということでやるということは、これも当然であるし、特に又吉田首相におかせられましては、そういうようなお考えでおやりになることを私はよく承知であります。憲法違反のことはやろうと思わんが、それが、自分の知らない、気の付かないうちに憲法違反になつておつたりするようなことはないとも限らん。憲法の解釈にしても、これは自衛権があるんだ、ないんだというようなことで、あの解釈でさえも非常に議論があるわけであります。自衛権の範囲内だと思つて條約を締結したところが、それは自衛権の範囲を逸脱しておつたというようなことが批准の後にわかつたときに、これは憲法に違反しておるんだということがわかりますね。これは安全保障條約がすぐ違反であるということではないということを先ほど申しておりましたが、この條約について、議員の中にも、国民の中にも、これは憲法違反だということを考えておる者もありますから、それで、そこを明らかにしておきたいというので申上げるのでありますが、私はそのあなたの、憲法に違反しておる條約が国際法上は有効だけれども国内法上無効だというその前提が、もう少し研究が足りないのじやないかと思つておるのであります。なぜかと言いますると、つまり例えば今までは国家主権国際條約による大幅の制限ということが学者間に唱えられておることは御存じ通りであります。国家主権国際條約によつて大幅に制限されておるのだというように、そういうように解釈しなければ、例えば集合的国際條約、多くの国を相手にして日本が條約を締結するとか、丁度今回のように或いは英米仏というものを相手に日本が共同防衛の條約を締結したというようなときに、これは憲法に違法しておるのだから、国内法上無効だからと言つて、これをそのまま放りつぱなすことはできんということで、いわゆるそういう場合に国家主権というものは国際條約によつて大幅に制限されてるのだという理論に基いて、これには有効だという議論のほうが普通ではありませんか。そう解釈すれば、あなたのように、国際法上は有効で国内法上は無効だと、だからして国民は国際法上有効であつても国内法上無効であるならば従うことは要らん。従うことは要らんけれども、そのままにして置いてはいかんから、これを調節しなければならん。調節するには、これを国会に出して憲法を改めるようにしなければならん。それができなければ、この国際法の有効とするものを改めるように、その締結した国に向つて努力しなければならんということに、こういうことになるのでありますが、これは国際法上のお考えであり、條約を締結することによつてそう解釈してよろしいですかね。もう少し考えて答えて下さい。
  189. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 研究の上お答えを申上げます。
  190. 一松定吉

    一松定吉君 それなら結構。研究してもらわんと、すぐに今言う国際法上無効である有効である云々というようなことになりますると非常に困るですから、それは一つ研究の上でお答え願いたい。それでは、この問題は研究の上でお答え下さることを前提として質問を続けません。質問ができませんから、これはここで打切ります。まだこの問題についてたくさんありますよ。十分御研究願います。  そこで最後に一つだけお願いしますが、あなたは、この例の信託統治の奄美大島だとか、琉球とか、小笠原とかいう所に対しての憲法問題につき、これらの土地には司法権、行政権、立法権というものは制限をされておる。そうすればこの土地には憲法は行われているかどうかということに対して、潜在主権とか、或いは憲法は行われないのだとかいう御答弁がされたように思うのでありますが、それは間違いありませんか。
  191. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 信託統治下における前回の答弁を訂正する必要はないと考えております。
  192. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、憲法は行われないと、こういうことですね。
  193. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) そういうわけでございます。
  194. 一松定吉

    一松定吉君 そういうような解釈をするからだんだん追及という問題が起るんじやないか。私はこう解釈するのがいいと思うがどうでしよう。信託統治になつたという條約は、日本の憲法によつて信託統治という條約ができた、だから、その信託統治に従うということは憲法に従うのだ、こう解釈すれば憲法に従つておるのだと、こう解釈ができるのでありますが、こう解釈するのが正しいのじやないか。憲法が行われぬということは不都合であつて、憲法は行われておるのだ、どういうように行われておるのだ、憲法によつて條約を締結した、その條約の成立は憲法によつたものだからして、この條約に服従するのは憲法に服従しておるのだ、この條約では憲法は行われておるのだと、こう解釈するのが間違いがないと思いますが、どうでしようか。
  195. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 前回申上げましたところは、この信託統治につきましては、受任国の立法、行政、司法が行われます。その限りにおいては日本のこれらの権能は停止いたすわけであります。従いまして、その停止する限りにおいて日本の憲法も実際上停止するという趣旨を申上げたのであります。
  196. 一松定吉

    一松定吉君 その停止しておることは、憲法がやはり行われておるのであります。憲法が行われている。停止の状態において行われておると、こう解釈を君、せんといかんじやないかね。それを一つ。それは、君、よく考えてもらわんと。
  197. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) それは言葉が非常におわかりにくかつたかも知れませんが、只今一松委員の言われましたような趣旨を以ちまして、私といたしましては、前回、強いて言えば憲法が潜在的に行われておると、こう申すべきものであろうかという意味を申上げたのでございまして、この点は御趣旨と同じではないかと思います。
  198. 一松定吉

    一松定吉君 そういうようにして憲法が行われておるのだと言われるならば、私は何をか言わんやでありますが、憲法が行われておるということをちよつと意見を確かめておるのであります。それでは先刻、憲法違反の條約は、国際法上有効であるが国内法としては無効であるのだということについて、学者の意見とあなたの意見が違うので、研究して頂きたいと言つたら、研究するとおつしやつたから、その研究の効果を拜聽するまで私は質問を保留しておきまして、いずれ、これは本日の総話質問には間に合わぬとなりますれば、安全保障條約のときにこれを継続して質問をして行くと、こういうことを一つお許しを賜わりたい。
  199. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 一松委員は、私の先ほどの言葉の語尾が、或いは、はつきりしなかつたので、誤解があつたかと思います。研究の上お答えを申上げたと私は申したわけであります。
  200. 一松定吉

    一松定吉君 え、そういたしますと、なんですか、(笑声)集合的国際條約や共同防衛條約というようなときに、それが果して不幸にして憲法に違反しておる條約であつたというようなときに、国際法上では有効であるけれども、国内法上無効だと言うならば、国民はそれに従わんでもいいのだと、こういうことに結着するのですか。あなたはこれを改正するとかおつしやるが、改正できない場合はどうするのですか。
  201. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) その点は、国民に対してはその條約は拘束力がないわけでございまするから、現実に憲法の改正が行われまするまでは、国民といたしましてはその憲法の條項に反した條約については従う必要がない。これが解釈でございます。
  202. 一松定吉

    一松定吉君 そうなると、今私の言うような、連合国をたくさん相手にして重要な條約を締結しておつて、たまたまそれが憲法に違反しておつて気が付かなかつたというようなことのために、その重要な條約が行われぬということになると、国家の危急存亡に関することであつて大変なことになるのですが、その解釈はもう御研究の余地はありませんか。これは一つよほどあなたに面子を考えんで研究して頂かんと困るよ。
  203. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この点は面子の問題でなく、正しい理論の問題としてお答えをいたしたりであります。
  204. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、なんですか。憲法を改正することに国会議員が承知せぬとどうなるのですか。或いは條約締結国が條約の締結について、それは改正することはいやだ、この通りにするのだからと押付けられた場合には、国内法上無効だと、俺はお前の言うことはきかんと言つて、じつとしていればいいのですか。それは、君、重大な問題だよ。
  205. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) さような重大な問題の起らないように憲法違反の條約を作らぬことが必要なことでありまして、憲法違反の條約ができた場合においては、これは、やはり憲法上の理論に従つて、如何なる重大なる結果が起つてもその点は止むを得ないと思います。
  206. 一松定吉

    一松定吉君 そうですと、それが起らぬように注意するのは、この安全保障條約にそういう違憲な点があるということが論議があるのですから、それは、そのときに又詳しく申すことにいたしましよう。そうすると、その、なんですか、憲法違反の條約であつても国際法上は有効だとあなたはおつしやつたのですが、全部の條約がそうですか。例えば脅迫されて締結しなければならなかつた條約、或いは履行不能の約束をしなきやならなかつたというようなやつは、やはり有効ですか。国際法上。
  207. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ただ憲法違反の点についてだけ申上げたわけでございます。そのほかの点、例えば脅迫とかそういつた問題は、これは法律行為の一般的の効力の問題として條約についても考え得るだろうと思います。
  208. 一松定吉

    一松定吉君 そうか、成るほど。憲法上だけで実行不能な苛酷な條約を締結した場合はどうなるのですか、
  209. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 全然目的の不能なものについては、そういう條約は、これは法律行為の無効の一般的な理論の適用によりまして無効という場合も考えられると思います。併しながら、現実にさような無効な條約が日本国政府によつて締結されるというようなことは無論想像できないと存じます。
  210. 一松定吉

    一松定吉君 実行不可能な條約を締結したという場合はどうですか。
  211. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 実行不可能ということの意味にもよると思いますが、全く誰が考えても成り立たないような、何か間違つておるという條約があればともかくとして、現実の條約といたしましては、実行不可能によつて当然無効と同じような條約が結ばれるということは考えられないと思います。
  212. 一松定吉

    一松定吉君 これは例を挙げると……すぐにお答えできんなら、例えばドイツに対するこの前の大戰のときの賠償の問題ですね。ドイツ国民としては、そんなものは本当は応じられないけれども、力を以て押え付けたということでヒツトラーはああいう大戰を起した。ああいうふうな條約を有効と、こうおつしやるのですか。これは仮定論だとおつしやれば別ですが。
  213. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) やはりドイツに対して賠償の点について規定をいたしました諸條項というものは、一応国際條約としては有効に成立したものであると思います。ただ不可能であつたために、それが遂に実行されない結果に陥つた。
  214. 一松定吉

    一松定吉君 又、極く簡單にしますが、日本国の憲法には軍備というものは禁止せられておるんだということを相手国がよく認知しておる。承知しておりながら、このあらゆる援助をしなければならんというようなことで、向うが、それは、やはり日本の軍隊というものを使う意思であつたというようなことで、その條約が締結されたものとすれば、それは、やはり有効でしようか。無効でしようか。日本の憲法には軍備というものは第九條において禁止せられておる。だから、そういうことをよく承知しておる。承知しておりながらこの條約を締結した。その條約は日本国会において批准せられた。それは知らずに批准せられたということが後でわかつた。そのときに、條約はどういう効果を持ちますかということです。
  215. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) さような條約が現実において問題となることは少いでありましようし、又国会において、さような條約が知らずに批准せられるということも、ちよつと考えられないのではないかと思います。
  216. 一松定吉

    一松定吉君 いや、それはね、誰だつて、わざと、そういうことはしませんよ。人間には誤まりがあるのですから。これは合法なもの、合憲なものと思つてやつたことが、これが後でいけないというようなことがあり得るのです。人間ですからね。そういうときのことを聞いておるのです。これは仮定だから答えられぬとおつしやるなら、それでいいのですが、併しそういうときには、これはこうするんだということが、あなたの意思によつて明らかになれば、やはり本件の條約を審議するときに、そういうことも頭の中に入れて審議ができるのですから、やはりこれは仮定でなくて答えて頂かなければならないと思うのですがね。  もう一遍、日本の憲法にこれは反しておるが、日本の憲法にはこういうような禁止規定があるということを、相手方が立派に知つておる。知つておることを前提として條約を締結した。国民もそれを支持しておつた。あとで、あれはもういけなかつたのだというようなことには気の付いたときに、そのいわゆる條約は有効か無効か。こういうのです。
  217. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 先ほど来申上げましたるごとく、日本の権限ある機関によりまして正当に締結せられました国際條約というものは、国内において憲法に違反いたします点がありましようとも、それは国際的には有効なものである、こう考えられるわけであります。但しこれも憲法に違反する限りにおいて、その点は国内においては国内法としては直ちに効力を発するものではない。従つてその場合において将来憲法を改正することによつてその條約の違憲性が除去せられまするならば、その場合においては国内においても拘束力を持つということは考えられると思います。併しいずれにいたしましても、そういう重大なる問題につきまして、日本国の憲法に違反したようなことを相手方が知りながら、又それが一松委員のごとき極めて緻密なかたの御審議の目を逃れて成立するというようなことは、ちよつと常識上考えられないと思います。
  218. 一松定吉

    一松定吉君 そうすると、なんですか。あなたの御議論は、国際法上有効であり国内法上無効だから、無効なときには憲法を改正する手続をとる、国会議員がその改正はいかんと言うて改正できなければ、もうそのままに放つたらかして置くということに帰するんですね。政府の力で国会議員を拘束して、国内法上無効だから国内法上有効にしなければならないから憲法を改正してというまあ意見だから、それができないとすれば、そのままになるんだね。
  219. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 只今申上げたのは、そういう国際條約が国会において承認されることはなかろうということを申上げたりで、強いてそれでも何かの間違いで承認された場合にどうかということになりまするならば、これは政府といたしましては、その條約を達成するためには憲法を改正しなければならない。改正ができなければ国内において実現することは不可能であります。従つて又別に相手国と話合いをいたしまして、條約の改正を図るということも一案だとこう思います。
  220. 一松定吉

    一松定吉君 それから、憲法の改正もできない、相手国も條約の改正をせぬということになると、あなたの議論は、意見は行われぬということになる。それは、あなたのように解釈するからそういう穴に陥るんですよ。私のように、そういうようなものは仮に憲法に抵触しておつても、それは今日の国家主権国際條約による大幅の制限というこの学理だね、この学理によつて、今の集合的国際條約或いは共同防衛條約とかいうものは、これは憲法に違反しておつても有効だ、こう解釈できないか。併しその解釈の根拠はいろいろ学説もありましようが、この憲法のいわゆる前文だけの、――これは宮沢博士も引用しているようだが、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。」という、これを引用して、そういうときには、やはりこれは有効と議論するんだ、こう見ることが正しいんだ、こう言うておる。そうすると、この憲法に違反しておることがあつても国際法上有効であり、且つそれはこの憲法の前文も、九十八條とは多少異つてつても、前文がやはりこの覊束力があるんだからというように解釈しておる。そう解釈すれば、あなたのように、国際法上有効で国内法上無効である、国内法上無効であるからしてそれを調整するために憲法を改正する手続をとる、憲法の改正ができなければ條約を改正するように努力する、それもできなければそのままだ、というようにはならんことになるわけだが、もうこれは御研究の上で御答弁なさつたというならばいいのですけれども、これは併し非常に重大な問題でありまするから、いま一度お考えを願いたいと考えております。お考えが若し成るほどお前の言うことも一理あるなということであれば、又安全保障條約のときに一つ御意見を承わる。こういうことにいたしまして、私の質問は打切ります。
  221. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 次に堀木委員
  222. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は私、憲法問題を質問する気はなかつたのでありますが、今一松委員と大橋法務総裁の御議論で、どうしてもこれは明らかにしなければならん、この問題につきましては、過般の委員会におきましても大橋法務総裁が、研究の上、答える、こうおつしやつておるんでありますが、又この問題は実は本会議において、私は吉田総理大臣にお尋ねしたことがあるのであります。條約は憲法に優先するというふうな議論があるんだがということを申上げたんですが、総理大臣は、今一松委員に御答弁になりましたような政治的な、專門的でない政治的な立場から御答弁になりましたので、この問題は総理大臣お答えを願わないで結構だと思いますが、大橋法務総裁はこの條約について国内法的な拘束力と国際法的な拘束力というものを区別してお考えになる。併し條約が国家間の約束であつて、それが平等な自由な意思に立つて国家間に結ばれました以上、これが国際法的に有効であり、法的な拘束力を持つということ自身は、国際法上嚴としてきまつておる問題であつて、憲法に書いてあろうがなかろうが、そういうことは問題にならない。こう私は考える。そうすると、我が国の憲法におきまして、一松委員と私は少し意見が違うのでありますが、今御引用になつた九十八條の第一項、その一項の中に「国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」といううちに、條約が入つておるのか入つていないのか、これは入つておるという今の御答弁です。ところが実は入つているにいたしましても、その第二項で、第二項です、「日本国締結した條約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」英文のほうを見ましてもシヤル・ビーと書いてあるのです。しなければならないのです。憲法は国際法規ではございません。嚴として国内法規であります。国内法規において憲法みづからが條約つまり国家間に約束されたものは遵守しなければならない、それに道を讓つておるわけであります。でありまするから、私はその点につきましては一松委員ともに意見が違いますが、大橋法務総裁とも意見が違うのでありますが、その点は明らかにして頂きたい。で、この問題は実は安保條約のときにお讓りすることにお約束がなつておつたんでありまして、それは守りたいと思いますが、ともかく今の御答弁では私は非常におかしな問題になつて参る。結論的に言えば、それは国際上の條約は国内法的にもこの憲法によりまして遵守されなければならないという義務が負わされておるんだ、そういうふうに解釈しなければ、どうも解釈が、法理的な解釈としては私はそうあらねばならない、そう思うのでありますが、なお、ここで折角総理大臣に出てもらつて総理大臣答弁してもらう機会を失うのは、時間を狹めるのは困りますが、とにかくこの問題は重要でありますから、一点だけお聞きしたいと思います。
  223. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 憲法というものは大体これは如何なる場合においても遵守されるということを前提に規定ができておるわけでございまして、従いまして、国際條約にいたしましても、憲法に違反したような條約が存在するということは、憲法自体が考えていないところじやないかと、こう思うわけでございます。従いまして、憲法に違反した條約が出た場合に、これは憲法の條章によつてどう取扱われるかということを考えること自体おかしい問題となるのではないかと、こう思うのでありまするが、いずれにいたしましても、條約が仮に憲法違反であるという事実が確定いたしました場合の国内的な効果につきましては、私どもは我が国の憲法が硬性憲法の建前をとつており、従つて憲法の改正については特に丁重な手続を必要といたしている。こういう趣旨から見まして、憲法改正の手続をとらずに、條約によつて憲法が改正されたというような結果となることは、憲法解釈としては不可能である。こう考える次第でございます。
  224. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 総理大臣のいらつしやるときに議論しますが、ともかくもそういうことはあり得ないだろうということは、單に條約だけではないのであります。法律についてだつてあり得ないわけです、実際のところ。それは天皇以下すべて憲法を擁護する義務を負つているから、それによつてやらなければならない。それは憲法で示しているわけです。それはひとり條約の問題ではありません。條約だけについて得異なことではない。又そういうことがあり得ないだろうという議論は十分できる。併し、とにかく、あなたはそう言われるけれども、憲法自身が憲法に違反した法律が行われることを予定してこういう規定がある、無効の規定がある以上は、これはそういう仮定については答えられないというふうなお考え方は法律上は許されない議論であります。でありまするから、この点は現に学者の間においても私の意見を支持する論文はたくさん出ている。ですから、実はそう申しては惡いのですが、大橋法務総裁の、ここで思い付きの御議論では、この問題はちよつとむずかしい問題で、是非これは御研究願いたいと思つております。安保條約のその問題が一つ。安保條約について実例を言いますと、行政協定はこれは條約だということに相成る。そうすると、行政協定日本国民の権利義務が制約された場合に如何になるかという問題にも重大にかかつて来る問題であります。決して單純な、実益のない法理論を私は固執しているわけではない。一松先生のように、もう、そういうことはどうお考えになつておりますか知りませんが、私は條約審議に当つては、この問題は、はつきりさせる必要がある。それが、我々自身が、この憲法の命ずるところの責任と義務を果す上において是非必要だと、こう考えますので、是非お考えおき願いたいと思うのであります。その問題がはつきりいたしませんと、初めから安保條約に賛成だとか不賛成だとかというところまで私は入れないはずである。こう考えるのであります。考えないとおつしやるなら別ですが、ともかく私としてはお考え願いたいと思います。  時間が制限されておりますから、これから総理大臣に御質問申上げたいと思うのであります。私はどうも総理大臣は、経済の問題ですとすぐ專門家にお讓りになる癖がありますから、專門家を要しない程度におきまして御質問いたしますから、どうぞ御親切にお答えを願いたいと思います。そうして決してたくさん長く時間は取りません。又今の問題で時間を取られましたので端折つて参ります。  この平和條約の批准に当つて領土問題を含めまして二つの大きな問題がある。一つは、日本の国の安全をどうして保つか、この問題につきましては、いずれ安全保障條約の際に又御質問いたしたいと思いますし、なお、この前からの補足的な御説明でほぼ明らかになつておりますから、この問題は後にいたしますが、もう一つの問題は経済通商に関する問題であります。第四章、第五章に亘りまして個々の條文については申しませんが、全体を通観いたしまして、この問題がどうきまつて参るかということによつて日本の自立経済と申しますか、或いは日本国民の生活水準をどうして参るかという問題と非常に結びついている。これがやはり一つの大きな目標でなかろうか。こういうふうに考えられるのであります。賠償問題につきましてはいろいろの視野から論ぜられておりますので、私から改めてくだくだしく申上げませんが、ともかくも幾らにきまるのだろうか、どれくらいの期限に亘つてなるのだろうかというふうな問題が相当心配の種になつていることは事実であります。将来日本の経済が復興して参るに連れて、どう処理されるだろう、これは私たちは皆やはり心配している。まあ問題が役務賠償或いは加工賠償であり、いろいろな條件が附いているから、その点について相当制約があり、心配することがないと言われておるのでありますが、それだけでは打消し得ないだろう、こういうふうに考えるのであります。或る委員は、これから日本国民の生活水準が釘付けにされて、そうして條約の前文に言うやはり福祉的な仕事が阻まれるのでなかろうかというような心配をしているのもあるのであります。そのほかに見返資金につきましても、先の見込のことについてはいろいろと考えられる問題がありますが、一応二十億ぐらいのものが予定されておる。又戰争の結果として連合国の財産が損傷された分に対してはすでに百億というものが予定されて今国会に出ておつて、それが二百数十億に及んでおる。又外債の問題につきましても千数百億の外債が残つてつて、もう期限の到来したものが相当来ている。総理大臣としては、この間、栗栖氏の質問に答えられまして、国際信用の上からも完全に義務を果したいというお話であります。併し支拂方法はどうなるかということはイタリアの場合のように考えられていない。又、行政協定によつて相当の国防分担金と申しますか、やはり数百億のものが予定されておる。こういうふうな問題だけ考えましても、これは全部今後国民が負担して参らなければならない負担になつて参るわけであります。そのほかに在外資産、日本人の在外資産の問題についても、今朝ほど木内委員からもお話があつたようなわけでありますが、こうなつて参りますと、これらの分を頭に入れましただけでも、国民負担の面、それから国民の生活水準を落さないで何とかして行こうという問題だけでも私は相当の問題が起つて参る。更に国内方面を見ましても、非常に最近においては、やはり電力、石炭等の制約から生産が伸び悩みになつておる。先ほど加藤シヅエ委員に対しまして、人口問題に関しまして、総理が貿易の伸張ということをお説きになりまして、私どもも、日本の現在の情勢から見れば、貿易が伸張するということが一番大切だということは十分考えられます。併し、と同時に、中共貿易は杜絶しておるし、そうして東南アジア開発計画も、未だ緒についたばかりでありまして、なかなかできない。日米経済協力の問題も考えられておるがなかなか緒につかない。條約上から見ましても、まあコンゴー盆地條約自身が効力を失うというふうな情勢でありまして、そうして最近の輸出輸入から見ましても、なかなかイギリス自身が相当、イギリスのみでございませんが、各国とも非常な貿易については競争が激しい。こういうふうな情勢において、日本の国の経済を今後国民生活の維持向上を図りつつ合せて参るということは、これは並大抵のことであるまいと思うのでありますが、それらについて総理大臣の、專門的でなくて、安本長官がそこにおりますが、安本長官はどうせ予算委員会でやりますから、総理大臣から大きな構想をお聞かせを願いたい。こう思います。
  225. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本独立後における海外支沸といいますか、海外債務の償還とかいうような問題で、お話のように日本の負担は決して軽くないことは事実であります。併しながら賠償だけについて申せば、賠償については、賠償が無制限に取られるのでもなければ、又日本の生産力がある限り取上げられるわけでもなければ、日本の生活、経済水準は破壊しないように、日本の経済は破壊しないようにという制限も付いておれば、又日本賠償を支拂うことによつて外国の負担を増さないようにというような制限も付いております。これは日本が無制限な賠償に応ずるというようなことがあつてはならないという懸念からこういう制約ができておるので、賠償を支拂うといつてもおのずから制限があるのであります。でありますから、この点は心配すれば限りないことでありますが、これは常識の命ずるところによつて落ちつくところに落ちつくと思います。又賠償を要求する国、フイリピンインドネシアその他においても、日本から洗いざらい取上げるというような、対独賠償のような精神で以て考えておるのではないのであります。これは私が單にないというだけではなくて、現に予備交渉をいたしておる間において、互いに支沸ができるように、同時に相手方に対して不当な損害を與えたものに対しては、賠償意味で、相手国国民の感情をやわらげるというために、日本国政府が誠意を以てこの問題を研究するという態度で、極く打明けたなごやかな空気で予備交渉はすでに遂げつつあります。というようなことによつて、お話のような無制限に、長年に亘つて日本の経済を痛めるような過大な賠償は取上げないはずであります。  それから又在外債務その他の支沸についても、日本の負担が成るべく苛酷にならないようにということは、債権国においても考えておるようであります。でありますから、これは政府国民も協力して、第一に日本の対外信用を傷つけないように、そうして又日本との間に善隣関係を打立てることによつて、彼我互いに利益をし、互いに助け合つて行く。敵対関係ではなく、仇敵の関係ではなくて、互いに扶助し合うという気持で以て、日本の対外債務については処理して行こう、こういう気持で進んでおりますから、御心配のような、日本の経済を打ち壊して、或いは将来長きに亘つて日本の経済が進むに従つてこれをすべて取上げらるるというようなことにはならないと思います。これは将来のことに属しますから、今直ちにこうとは申しませんが、併し気持はその気持で進んでおりますから、この点は今後の交渉の結果について御覽を願いたいと思います。
  226. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 総理大臣として、国際的な義務は完全に果したいと同時に、その果すことについての列国の大体動向はどうあるというお話は承わりまして、大体そうあろうということを考えるのでありますが、と同時に、これは同僚の委員からも言われたことでありますが、日本の国の、條約の前にあります、これは総理大臣も言つておられるのでありますが、民主主義国として立つために、民主的な方向に、そうして社会福祉的な方向に併せて力を入れるということを言つておられますので、その方向になると思いますが、率直に申して、あなたの閣僚の各意見は非常に楽観的なんです。これはもう私だけが楽観的だというのでなしに、全体としてそのような感じを受ける。本年度の予算にしましても、将来の見通しに対しても楽観をしておられるのでありますが、楽観をするような要素はない。私は幾ら心配してもいい問題であると同時に、国内の生産趨勢を、すぐ朝鮮事変以来一四五の指数を戰前に対して示したとか、そういうふうな貿易の方で六億ドルの金を持つてつて、一億二三千万ドルの今年は受取超過があるんだというふうな楽観論を述べられるのでありますが、すでに来年度の状態においてもドル不足になつて来るということは明らかであります。それから一四五%の指数を示しましたが、実際には従来ともずつと前から計画的にやつて、そうして、電力でありますとか、石炭でありますというふうな、或いは輸送でありますとか、基幹的なものはこれは前から計画的にやつておかなければ、朝鮮事変でほかのものがぐつと急に生産が上昇しますには、不足して参りますのは明らかであります。前から考えておかなければならない。貿易の関係から、輸出入の関係から批判すればいろいろありますが、ともかくこういうふうな状態になつておる。大蔵大臣はもう頻りに、資金については量的な統制のほかに質的な統制もしなくちやならん、こういうふうに言つております。アメリカとの経済の関係も、これはもうアメリカが統制している以上は、いろいろな主要物資については、当然割当制限に入つて来る。国内の需要は抑制しなければならん。現に一部はすでに入つておられる。そうすると、全体の経済自身について、一つ従来とは違つた御構想で何かお考えになる必要がないのだろうか。で、まあ率直に申上げますと、主食の統制撤廃自身だつて、閣僚間はなかなか一致しないといいますより、非常に不用意であるというふうな情勢であります。私ども独立後は、どうしても日本の経済については、従来の考え方より一つここで考え方を変えて、そして対策を立てなければならん問題に入つて来る。で、総理大臣はあのリツジウエイ声明を受けられましたあと、政令諮問委員会を作つて日本のああいうふうな問題についてどう考えたらいいだろうという民間の意見を十分取入れて、有識者の意見を取入れてお考えなつ構想があつたわけでございますが、今後の経済問題についてこういう問題全体を考察して、何かお立てになる御意向はございませんでしようか。その点をお伺いしたいと思います。
  227. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府は楽観楽観と言われますけれども、私の閣僚等の間の話、或いは閣議等の席上において、ことごとく皆楽観をいたしておるわけではないのであります。野放図に楽観をいたしておる者は決してございませんから、この点、御安心を願いたいと思います。  然らばこれでいいか。これでいいとは我々は断言できないのであります。即ち栄観は決していたしておらないのであります。然らばどうするかと、そのためには、経済会議でありますか、委員会を作つたらどうか、これも一つの案であろうと思います。併しいずれにしても、お話のように日本の経済は決して楽観すべき事態ではないのみならず、客観情勢といいますか、海外の情勢も日に日に変化いたしております。又貿易関係においての競争もかなり激甚になるであろうと思います。又原料等の供給についても、現に各国が奪い合いをいたしておるような事態でありますから、客観情勢においては決して楽観すべきことのみはないはずであります。でありますから、これに対して、衆智を集めて考える。これは私は結構なことと思います。併し直ちに然らばどういう方面にということをここで申す用意はありませんが、併し御趣意は結構だと思いますから、政府として考えます。
  228. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう私、大体質問を打切つたわけでありますが、今総理大臣考えるとおつしやいますので、是非今後、これらの情勢を考えて善処して頂くことをお願いしまして、私の質問を終りたいと思います。
  229. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 本日はこの辺で散会いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 御異議ないと認めます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十三分散会