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1951-11-08 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月八日(木曜日)    午前十時十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事            楠瀬 常猪君            一松 政二君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            泉山 三六君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            永井純一郎君            吉川末次郎君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君   政府委員    法務法制意見    第一局長    高辻 正巳君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省條局長 西村 熊雄君    水産庁次長   山本  豐君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは委員会を開きます。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 第三章につきましては、すでに多くのかたがたが質問なされましたので、或いは重複する点があるかと思いますが、二、三の点についてお伺いしたいのであります。  先ず第一にお聞きしたいのは、第六條でありますが、第六條の但書のほうであります。勿論この但書に基く條約として安保條約が締結されるわけでありまして、その安保條約につきましては、後にいろいろお聞きしたいと思いますが、この第六條の後段のうちにおきまして、「外国軍隊日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」そうして駐屯がステーシヨニング、駐留はリテンシヨンとなつておりますが、この駐屯駐留とはどういう違いがあるのか、これを先ずお伺いしたいと思います。
  4. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 駐屯は新らく入つて来る場合を考え駐留の場合は占領軍としてすでにあるものが條約発効後も残る場合を予想したものでございます。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから(b)項でございますが、(b)項に引揚の問題がございます。そうしてこれは「ポツダム宣言の第九項の規定は、まだその実施が完了されていない限り、実行されるものとする。」となつております。本條約が成立いたしました場合に、一体ポツダム宣言日本に対する効力或いは連合国間におけるポツダム宣言効力というものがどういうことになるのか。その点先ず條約局長にお伺いしたい。
  6. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この條約に参加しない国と日本との間には、ポツダム宣言は現在同様の効力を持続すると考えております。第二点のこの條約に署名した国と署名しない国との間におけるポツダム宣言効力はどうであろうかという点でございますが、これは連合国相互の間の問題でございますので、意見はございますけれども、従来から答弁を差控えさせてもらつておる点でございます。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは日本努力によりまして、あとから挿入された條項でございます。この條約にソ連又は中国調印をいたしておりません。そうしてソ連及び中国には多くの人々がまだ残留しておると推定せられておるのであります。ところでこのポツダム宣言規定の実行されるかされないかということは、引揚の問題に対しまして重大な関係を持つのでございます。ポツダム宣言が実行されるものとすると書いてあるのは、この條約にそう書いてあるのでありますから、この條約にソ連なり中国調印しないとすれば、この條約に規定されておるこの項目というもの、即ちポツダム宣言は実行されるものとするというのは、單に道義的にそう規定しただけであつて、何ら拘束力を持つものでない、こういうふうなことになるのではないかというふうに考えられるのですが、その点に対して條約局長の御答弁を伺つておきたい。
  8. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) (b)項は、この條約全体がそうでありますように、ソ連その他の国も全部調印してくれる建前で作成されております。それでございまするから、(b)項が入つたについては、当然我々の一番関心を持つソ連などについても(b)項が適用ができるような状態になることが一番よかつたと思うわけでございます。併し調印の日になりまして、ソ連調印しないことが明白になりましたので、この(b)項はソ連なり、又会議に招請されておりません中国につきましては、何ら法律的の効果は持ち得ない結果になつた次第でございます。併し何と申しましても、この(b)項が入つたということは、この條約に署名しました連合国全部が未引揚者の問題についてはポツダム條項の第九項が履行されることを期待しておるという意思が明白になつて来ておりますので、その意味におきまして、政治的意義あると考えております。もう一点は、二十六條によりまして、中国なりソ連邦なりとの間に、他日二国間の平和條約が締結されるような場合になりますと、この(b)項が意義を持つて来ることになると考えておるのであります。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の御答弁で明白になりましたことは、(b)項なるものは法律的には何ら効力を持つておらん、こういうことであつたようであります。実際これは折角この條項が挿入されましても、これが何ら法律的効力を持たないということは誠に遺憾なことであると思います。只今條局長お話によりますというと、今後ソ連なり、中国なり日本平和條約を結ぶに際しましては、これが生きる、こういうことを言われております。併し今の情勢から申しまして、ソ連なり、或いは中国なりとの国交はまあ回復が非常にむずかしいと思うのですが、これが回復されるといたしましても、私どもの考えといたしましては、恐らくこの條約に基いた條約の締結はしないと思うのであります。恐らくソ連なり、或いは中国との平和の回復の際には別個の條約が結ばれると、そういうことになりますと、やはりこの條項は生きないのではないか、こういうふうに考えられるのでありますが、この別個の條約が結ばれる場合においても、この條約の効力というものはソ連なり、中国なりを拘束し得るものであるか、その点をお伺いしたいのであります。
  10. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 将来の問題でございますので、何とも御答弁いたしかねる次第でございます。併し日本政府といたしましては、ソ連なり、中国との條約が締結される場合には、未引揚者につきましても、できるだけ我我の要望が通るように努力して行きたいと考えております。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 ソ連なり、中国なりとの平和條約が結ばれる場合に引揚問題解決を図りたいというのは、これは当然のことであるのでありますが、その際にこの條項が生きるかどうか、効力を持つかどうかという問題についてお伺いしているので、その点について持たないならば持たないとお答えをはつきりして頂きたいと思います。
  12. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この(b)項があることは、両国に対しましてこの(b)項を存置したいという日本主張をなすことについて有力な根拠を得ることになります。何と申しましても、この(b)項の存在は政治的にも非常に意義があると考えている次第でございます。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、これは、やはり、そういう政治的な意味を持つているというのであつて、何らこれは今後ソ連なり、中国なりとの平和條約において、これが実際上のつまり法律的な力を発揮しない、こういうふうに私は今の條約局長の御答弁からとれるのでありますが、そうでありますか。
  14. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この平和條約につきましても、最後の瞬間まで未引揚者の問題について條項が挿入されるように努力いたしました結果、この(b)項は入りました。やはり同じ努力日本は将来とも継続して行くべきものであると考えている次第であります。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもはつきりした御答弁がないので、これはそのくらいにいたしておきます。  次にこれは草葉次官にお伺いしておきたいと思いますが、只今国連総会が開かれております。新聞の伝えるところによりますと、西独側国連総会オブザーバーを出すということを国連総会事務局に対して申請したように伝えられているのでありますが、日本も又そういうふうな手続をとるのであるか、或いは又国連事務局のほうから……。    〔委員長退席理事加藤正人委員長席に着く〕  日本に対してオブザーバー派遣しろというようなことが言われて来ているかどうか、その点について次官にお伺いしたい。
  16. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話のように去る六日から第六回国連総会パリで開かれておりますので、日本といたしましても、これらの世界の関係におきまして、或いはオブザーバー、或いは他の適当な方法によつて出席を希望いたしている次第でございます。従いまして関係方面十分折衝をいたしている段階でございます。許可があり、又国連総会からの手続ができまするならば是非出席をいたしたいと考えております。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今関係方面との折衝中ということは、具体的にこれは司令部を通じて国連事務局折衝しているという意味なんですか。それとも單に司令部とだけの折衝であるということでしようか。
  18. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 司令部了解を経まして、ここ一両日前に手続事務総長宛にとつた次第であります。従つていずれ近く何かの意思表示、多分許可されるのではないかと期待しております。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 多分許可があるであろう、こういう次第でありますが、その場合にオブザーバーという形であろうと思うのでありますが、誰を派遣することになるのですか。本国から派遣するか、或いはすでに欧洲にある者を派遣するということになるのですか。
  20. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 差当つてパリ在外事務所長をいたしております萩原君を派遣をいたしたいという意思を以て具体的に申出ている次第であります。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 パリ在外事務所長派遣をされるといたしまして、このオブザーバーにもいろいろあるだろうと思いますが、そのオブザーバーの資格及び権限と言いますかは、どの程度のものとなるのか。
  22. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この国連総会に対しまする非加盟国オブザーバーの招請は憲章にも規定はございませんし、総会議事規則にも規定されてはおりません。実際上従来から行われていることでございまして、非加盟国政府から事務総長宛正式に誰々をオブザーバーとして派遣したいから御容認を願いたいと申出をいたしまして、それに対してよろしいと返事が参るわけであります。そういたしますと、そのオブザーバー総会の会期中あらゆる会場に、傍聽するについて便宜を與えられ、且つ又総会関係書類の殆んど全部の送付を受ける便宜が與えられております。発言その他の特典を認められるというような性格のものではございません。簡單に申しますと、総会議事をフオローいたしますにつきまして、最大限度の公の便宜を供與されるという性質のものでございます。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の質問はこれで終ります。
  24. 加藤正人

    理事加藤正人君) 次は平林委員の御質問を……。
  25. 平林太一

    平林太一君 大分條項あとになりまして恐縮いたしております。第二條の(b)項、(c)項、(b)項の「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利権原及び請求権を放棄する。」、(c)項の「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス條約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利権原及び請求権を放棄する。」、これは前者の場合と後者の場合とは頗る性格の違いますことを発見せざるを得ないのでありますが、これに対しまして、政務次官、條約局長にお尋ねをいたしたいと思います。私はこれを申すにつけても、本日たまたまこの六日付のワシントン電報によりまして、我が領土の問題に対しまして、只今米国の輿論或いは米国態度といたしまして伝えて来た情報があるのでありますが、私のたまたま昨日からお尋ねいたしたいと思つておりました折から、非常にこれは重要なる参考に相なりまするので、これを一応申上げたいと思います。六日発のワシントン電報であります。「当地の権威筋歯舞色丹両島に対する日本領有権主張に深く同情し、それが論議余地なしに日本領土であることを認めている。同じ筋は、また琉球及び小笠原については、将来どんな形式信託統治が行われようとも主権日本に帰属すると説明した。その見解大要次通りである。  一、一八五五年の神奈川條約などの外交文書歯舞及び色丹千島列島から除外しており、又一八七五年の千島樺太交換條約は尊重すべきものと考える、併しこれらの島は現在ソヴイエト占領下にあるから、日本主張は理論的、法的、道義的に妥当であつても実際的な解決は極めて困難である。日本両島に対する要求を提出できるようになるまでには、日米両国が互いに忍耐し協力することが必要である。日本千島の地位が決定される前に自己の立場を説明する十分な機会を持つている。問題の大半は平和條約が如何に実施されるかということ、又日米両国間の相互の信頼ということにかかつている。日本が條約発効発言権を得たときは、問題を国際司法裁判所に提起するか、それとも国連に加入した際に然るべき措置をとるかは日本の自由である。  二、琉球及ば小笠原信託統治については、米国はそれを戰略的信託統治下に置くことは実現不能と考えている。それは安全保障理事会承認を必要として、理事会ではソヴイエト拒否権を持つているからである、それは又一般的な信託統治下に置くことも困難である。なぜなら元来の目的が戰略的なものだからである。かくて将来の信託統治形式及び信託統治の期限は未決定のままとなつている。平和條約にはこれらの両島主権日本が放棄するという規定はないから、主権日本にあり、住民日本の国籍を保持することになる。将来は本土との間の自由な貿易と航海を可能とするために一切の制限が除かれることになるであろう。  なお右の筋以外の方面では、一部の議員などはもつと強い、もつと極端な調子で日本主張に同情を寄せている。」  これであります。極めて領土問題に対しまする本委員会におきまする既往の論議質疑応答を顧みまするにつきまして、非常に大きな参考をもたらしたものと信じておる次第でありますが、これらのことを見ましても、昨日来質疑応答の中に小笠原及び琉球に対しまする主権の問題に対しましては、政府のこれに対しまする最終的結論としての主権問題に対しましては、潜在主権というような言葉をお使いになられておりますが、これは又質疑に対するそういう結果に自然相成つたことも深く窺えるのでありますが、この相手方でありまする米国事情が、すでに極めて明確に、この主権の問題を質疑いたしておりますこの際におきまして、我がほうが何かみずから苦しんで潜在主権であるとか主権でないとかいうようなことは、このようなことに拘泥するものではないと思います。主権がすでに明らかにあると先方が言つておるのでありますから、我がほうは潜在主権であるとか、或いは正式主権であるとかいうようなことを考える私は余地はないと思います。はつきりいたしまして、主権は我がほうにありということを明らかに、心を広ういたしまして、内外に宣言することが、極めて私はこのとるべき態度ではないかと、かように思うのでありますが、政務次官、この点に対しましてのお考えがありまするならば、強いてこれを申し上げるわけでありませんが、極めてこのことは政府当局といたしましては、このいわゆる所信或いは又一度きめました事柄が、中途からいろいろな意見が出ましたことに対しまして、それを何か緩和するというようなことのない強い決定をいたしたことについて、一路邁進するということを明らかにせられることは極めて必要であると思いますから、お考えがありますならば、この際、承わることも極めて必要と思います。そのようなことにつきましても、これを申上げて置きたいのでありますが、御承知通り、この台湾、澎湖島の場合とは違いまして、千島及び樺太の問題は全然お考えが違つておる。いわゆるこの二つの領土は我がほうは一応主権も放棄させられたのでありますが、併しこれが今日受取人のない幽霊領土となつておる、前者の場合は将来朝鮮事変のこの終熄或いはこれが行き方、将来朝鮮事変の進行に連れて、それぞれ相並行して、国際連合によつてこれらの対象になることが窺えるのでありますが、    〔理事加藤正人退席委員長着席〕 この千島樺太の場合はそういうことのできない性格を持つておることを我々は考えざるを得ない。又発見せざるを得ないのであります。それで、当時の事情といたしましては、いわゆるヤルタ秘密協定によりまして、ルーズベルトは当時口頭を以て、千島樺太ロシアにやるということの程度であつたことを我々はこれを忘れてはならないのであります。併しそのようであつたが、スターリンはその口頭でこれを出したという軽いなにを利用いたしまして、利用と申しますか、これを非常に一つのチヤンスといたしまして、一つ文書でということで、これが両島ロシアへやるということが文書なつた。その文書なつたという性格がすでにそのようである。このためには、ついにルーズベルトは一日出発を延期した。その文書にするというような向うの申入れに対して、そういうような性格が当時の事情であつたのであります。ヤルタ秘密協定によりまして、そういうふうにソ連にやるということになつたのでありますが、アメリカといたしましては、御承知通りこのウイルソンの時代から、公開外交というものを大旆を掲げて一貫しております。これが国際連盟規約の中にも公開外交の本質を明らかに規約の中にも登録し、或いは公表しておる。従いまして今回の国連憲章の中にもこのことが受継がれておる次第であります。アメリカの憲法は、たとえ大統領が判を捺しましても、アメリカの国家を拘束するところの力はない。上院の三分の二の賛成を得て大統領が批准したものでなければアメリカを拘束するところの條約にはならない。この事実はスターリンも十分承知しておるはずであるのであります。ヤルタ協定の履行といたしまして、樺太千島ソ連に引渡すということは、アメリカ国民の良心がこれを許さないことである。と同じに、今日は、全米アメリカ国民の感情の上からいたしましても、このことを欲しておらないということが明らかであるのであります。でありますから、樺太千島の問題は、たまたま本日の、只今私が申上げました六日付ワシントン電報によりましてもこのことに触れておる。このことは、将来日本アメリカが深い友好関係を続けることによつて、これらのこともその時を得て必ずその解決をすることになるであろう、こういうようなことを明らかにいたしておるのでありますから、この点に対しまして、政務次官、條約局長に、非常に重大なこのことの取扱方に対する再認識を一つ私は要望せざるを得ないのであります。先方も言つております通り、すでにいわゆる理論的、法的、道徳的に妥当であるということを認めておるのであります。アメリカがこのようにまで明らかに千島樺太に対してこのような見解を下して参つたのであります。これらのことに対しましては、ひそかに思うにつけましても、昨日の秘密会におきまして、條約局長の切々たる首席全権の当時の領土に対する苦衷を拜察いたしまして、私自身も非常に胸を打たれるものがあつたのでありますが、そのような事柄が漸くその効を奏して来たのではないかと思われます。又同時に、恐らくかようなことになりましたことは、このたびの国会におきましては、国会はこの領土問題等に対しまして、非常に事実を事実としてこれは論議いたしておることは恐らく先方にも相当な影響を與えておると思います。私は本参議院における特別委員会における先日来の委員会各位の御意見に対しまして、改めて非常な敬意を表する次第であります。このようなことを思うにつけましても、本委員会の使命は今後ますます重大であると考えざるを得ません。従いまして政府におかれましても、この委員会に臨みますところの態度に対しましては、真にこの際、如何にしてこの国の興廃存亡をここで防ぐかという、政府国会というようなありふれた見解を一擲いたしまして、十分なる一つ真意を以てこの委員会に当られたいということを要望いたすのであります。昨日英国から参りました電報によると、チヤーチル新首相は英国下院に対しまして、求められずしてみずから秘密会英国下院に求めて、そうして英国の今日置かれておる非常な危局の現状を下院に知らしめ訴えて、政府及び国会相共に力を協せて英国の危機を打開せなくてはならんということを昨日言つたということが電報で伝えられて来ておりますが、誠にそういうことを思うにつけましても、この政府態度、いわゆる真に腹を割つて、又語ることが差支えのあります場合は進んで秘密会をみずから政府自体が求められて、いわゆる委員会から求められずに、政府みずから秘密会を求めて真意委員に訴えるという態度に出られたいということを、併せてこの機会政府に対して要望いたす次第であります。以上であります。
  26. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御質問の御要点は、結局第二條の(c)項、第三條の問題だろうと思います。第二條の(c)項、千島樺太に関する問題でありますが、これは実はダレスさんもサンフランシスコ会議で申しておりますように、連合国間には若干の私的了解がありましたがという言葉を使つておるのであります。これは実際に私的了解があつたようでありまするが、併し千島樺太に関する限りにおきましては、日本は全然侵略というような言葉を以て表現することは決して適当ではない。正当な方法によつて主権領有権を従来から持つてつたのであります。殊にお話の一八五五年の下田條約におきまして択捉得撫の境が境になつて、国後、択捉というものは従来から全然日本領土ということに対する疑義を国際間にさしはさんだことはないのであります。ただそれ以北においてロシア人日本人が一緒におりました状態で、ここではつきり境目をいたしたのでありますが、一八七五年のいわゆる千島樺太交換條約によりまして全千島日本領土になり、樺太ロシア讓つたのであります。併しここにおきましても当時日本人がすでに樺太相当住民として仕事をしておりました関係から、或いは税金なり、或いはその他あらゆる点においてロシアは十分に日本の従来の立場了解しておるのであります。かような関係でございまするから、この千島樺太に関する限りにおきましては、日本は全然いわゆる不正当なる方法によつて領有したということは妥当でない、該当しないのでありますから、吉田総理サンフランシスコ会議におきましてその点は日本人の心持をはつきり申述べておるのでございます。殊に只今御引例の歯舞色丹両島は、これは領有権とか、主権とかいう問題ではなくて、日本の従来から、ずつと以前から、最初からと申上げるほうがいいでしようが、いわゆる北海道の一部で、何らこれに対する疑いは従来からなかつたのであります。勿論それは国際的に疑いがなかつたのでありますから、我々は北海道の一部であり、日本領土である、かように主張いたして参つておるのであります。  第三條の南西諸島並びに南方諸島の問題につきましては、いわゆる沖繩、奄美大島その他の問題につきましては、これは主権があるということは私どもは主張するばかりではなく、サンフランシスコの会議におきまして、アメリカのダレス、英国のヤンガー両氏から、日本主権がはつきりあるということを主張しながらこの條約の説明をいたされたのであります。従いまして只今電報等にもありまするごとく、これは、はつきりこの條約の中心の起草者になりました両国が、主権日本にあるという解釈をいたしておりますし、又日本も当然主権日本にあるという解釈を嚴然としてとつております点は御了承頂きたいと存じます。
  27. 平林太一

    平林太一君 只今政務次官の御答弁極めて当を得ておりまして、私も誠に意を強ういたした次第であります。改めて申すまでもなく歯舞色丹両島は明らかに日本領であります。第二は、琉球、沖繩の信託統治とされて問題となつておりますることでありますが、主権は我が方にあるということを明らかに米国におきまして、国会開会のこの際に米国朝野の特に輿論として発表したということに対しましては、我が方は今後この琉球小笠原両島に対する、関係諸島に対する主権ということに対しまして疑義をさしはさむべきものでないと思います。派生的な問題につきましては、おのずからそれぞれこれを検討して行くこともあり得るのであります。この点をはつきりいたしましたことは誠に御同慶に堪えないことであります。同時に千島樺太の問題につきましては、只今お話があつたのでありますが、今後いわゆる我が日本外交のこの手腕或いは裁量、熱意ある主張ということを常にこれは忘れては相成らないということを、当局は深く一つこれを把握してもらいたいということを、私は本委員会委員の一人といたしまして、この際強くこれを申上げて、私の質疑をこの程度にいたしたいと思います。
  28. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 第四章に移りたいと思います。
  29. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 第九條に、「日本国は公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために希望する連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。」こういうふうになつております。この公海における漁業の問題は、従来からいろいろ難問題のありますところで、現にアメリカ並びにカナダと、この條約の批准発効に先立つて日本会議が行われておるような状況でありますが、日本政府としてはどういう方針を以てこの問題を解決されるつもりか。この九條を審議するに当つてそれを聞いておきたいと思います。
  30. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は漁業の問題につきましては、御承知のようにこの條約の相談途中におきまして、或いはダレス・吉田書簡となつて現われ、その後いろいろ十分に愼重な態度を以て進んで参つて来たのであります。殊に日本が将来このような領土になりまして、而も厖大な人口を擁して参りまする場合には、公海における漁業というものは最も大切なる資源となつて来るのであります。公海漁業における漁獲ということによつて将来日本の進展が強く左右される問題になつて来ると思うのであります。従いましてこれは公海の漁業というものは、いわゆる公正なる漁業によりまして何人もこれを独占し得るものでなく、公海における漁業は公海の自由の原則に基いて、今後の漁猟は適正に関係国間に調整されて行くことが日本漁業の本質でなければならん、こういう観念を持つて進んで行く考えであります。
  31. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 水産庁の人は来ておりませんか。
  32. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 今もう間もなく参るはずであります。
  33. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 今極く抽象的な御答弁なんでありますが、もつと詳しく聞きたいと思います。  それからこのマツカーサー・ラインと呼ばれておるあの線の関係はどうなるのか、それについて御説明を願いたい。
  34. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この條約の効力が発生いたしますと、マツカーサー・ラインは当然この條約の連合国に対しましては効力を失うものと解釈いたしております。ただ連合国にあらざる国の間におきましては、このマツカーサー・ラインがなお存続するという問題は残つておると存じます。
  35. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 この調印国、批准国との間にマツカーサー・ラインが消滅をするということは、どこではつきりして来るのか。今後の協定に待つのか、或いは当然であるのか、それはどういうところから出て来ておりますか。
  36. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) マツカーサー・ラインは占領下の暫定的措置であります。占領が終了いたしますと、当然その占領政策によるマツカーサー・ラインは解消するという解釈をとつております。
  37. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それは勿論他の調印国も認めておるところかどうか、それを念を押しておきます。
  38. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 当然認めておるところだと考えております。
  39. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それでは水産庁から来るのを待ちまして外の問題に移りたいと思います。  第七條におきまして、中ほどに「こうして通告された條約又は協約は、この條約に適合することを確保するための必要な修正を受けるだけで、引き続いて有効とされ、」とありますが、これはどういう意味であるか、どういうような実際問題が起り得るか又どういうふうにして修正を受けるか、これではあいまいなんですが、どういうつもりか、それを伺いたい。
  40. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) これは念のための規定でありまして、この平和條約の條項と既存の二国間の條約との規定の間に矛盾がある場合には、この平和條約の規定が優先するという趣旨でございます。特に新たに協定をするような問題は起らないと存じております。実際問題といたしましては、既存の條約の効力復活の通告があります場合には、私どもとしては、技術的にこの平和條約との條項と対照して見まして、果して修正されると考えらるべき條項があるかどうかを、その都度判定して行きたいという考えでおります。
  41. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そうすると、両国間の利害関係が違う場合は起きませんか。当然その取極もしないでお互いの解釈というものが違つて来るというようなことはありませんか。
  42. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そういう問題はないと思います。万一ありました場合には、外交手続で話合い、どうしてもまとまらないときには二十二條規定で行くことになりましよう。併しそういうような重大な問題は起らないものと解釈しております。
  43. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 では七條についてもう一遍念のために伺います。(b)項におきまして「この條の(a)に基いて行う通告においては、條約又は協約の実施又は復活に関し、国際関係について通告国が責任をもつ地域を除外することができる。」この意味です。起り得る場合というものを説明して下さい。
  44. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国がその国際関係について責任を持つておる地域という表現は、第二次世界戰争後の條約に入つてきた文句でございます。これは従来は植民地、属地、委任統治というような長い表現で現わされておりましたのを、簡單に表現するために使われる新らしい文句でございます。従来とも二国間の條約を結びます場合に、その條約が植民地を持つている国につきまして、植民地にも適用あるかどうかということについて條項が入ることになつております。その規定の仕方は、適用したいと思う地域について通告すれば適用されるという方式のものもございますし、逆に適用を除外したい地域について通告すればその地域が除外される。通告がなければ当然適用されるという方式をとる場合もございます。そういうふうな従前の慣行がございましたので、今後二国間の條約の効力を復活せしめるに当りまして、やはりその條、約が植民地にも適用あるかどうかを当初から明確にして置くことが便宜でありますので、この言葉が入つたのであります。
  45. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 じや実際問題として、今の場合は西南諸島は除くというようなことになるであろうと思いますが、そうでありますか。
  46. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そういう意味よりも、むしろ通告する国が、自国の植民地について適用するか、除外するか通告して来る趣旨でございます。
  47. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そうすると、今申した南西諸島をこちらから通告をするということじやないのですね。
  48. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 通告の権能は連合国だけにあります。日本国は受身でございます。
  49. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 一応このくらいにしておきます。
  50. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 羽仁委員、昨日の残りの御質問を願います。
  51. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は昨日の質疑の残りの第六條について政府の所見を伺いたいと思うのであります。この第六條についてもすでに各委員から質疑がなされたのでありますが、私の伺いたい第一点は、やはりこの第六條の(a)項のいわゆる但書、これについてすでに各委員からも述べられましたように、そうして特にサンフランシスコの会議においてエジプトの代表が、エジプト自身が現在まで置かれておる状況から、その体験から判断してみて、日本がまだ占領軍によつて占領されている状態の下において、従つて自由にして独立な立場を獲得しない前に、このようないずれかの国と協定を行なつて、そうして外国軍隊日本国の領域における駐屯又は駐留を認めるということは、日本主権、即ちこの平和條約によつて確立するという主権を著しく妨げるものである、そういう判断をエジプトがなすところの最も適当な資格を持つているという、このエジプト代表の発言について、やはり今まで日本政府から或いはその他の場合において説明されておる説明では、そのエジプト代表から発言されておる疑義について、エジプト代表はそれについて必ずしも答弁を求めているわけではないのですけれども、併し我々がこの條約を審議している際に、そのエジプト代表の発言に現われているような有力な意見というものについて、どういう論拠を政府が持つておられるのか、今一応そのことについて先ず伺つておきたいと思うのであります。即ち日本連合国軍隊が占領を行なつておるそういう状態で、日本が自由の意思、独立の意思というものを表明できないということは明らかである。そういう自由の意思又は独立の意思というものを表明できない状況の下において、いずれかの国家と協定を結び、その結果として外国軍隊駐屯というものを認めるということは、主権の侵害を意味するものであり、この平和條約の目的とする日本国主権の確立というものを妨げるものである。この点について政府は公式に、そうして明確に、どういう、そういうことはないという論拠をお持ちになつているのか、それを改めて伺つておきたいと思います。
  52. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話のようにエジプト代表はサンフランシスコの会議において、あのような内容の演説をいたしたのであります。その他各国それぞれの立場におきましての対日平和條約に対するその国の意見発表があつつた点に対しましては、日本は謹んでこれを拜聽いたした次第であります。併しエジプトの意見発表は、エジプトの従来からの経験から割り出された意見発表でありますことは当然でありますが、その意見発表後におきましても、併しエジプトはこの平和條約に賛成をしてくれました。従いましてエジプトはあの主張をしながらも、この平和條約は妥当なりと認めたものと考えます。
  53. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それが政府のお持ちになつている唯一の見解ですか。
  54. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) そういう見解を持つております。
  55. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 甚だ貧弱な御見解で、それじや到底我々には納得するることができないのです。この第六條(a)項但書については、国際的に、例えば先にも引用されましたが、マンチエスター・ガーデイアンというような比較的公平な立場に立つている新聞も、この條約の倫理的に最も弁護されにくい部分である、モーラリー・ザ・リースト・デフエンシブル・パート・オブ・ジス・トリーテイー、この平和條約の中で第六條(a)項というものは、倫理的に最も擁護されがたい部分であるというように指摘されております。そうしてエジプト代表は、日本じやないのですから、だから意見を述べて、そうして、あとはこの当事者である日本自身の態度決定するものは日本で、問題はエジプトの問題じやない。従つてエジプトとしてはこの平和條約全体に対しては署名をした。併してこの問題を解決するものは日本自身でなければならないということですから、今の御答弁ではこれに対する、つまり、この問題になつておりますこの点についてのそういう事実はない。日本が両手を縛られたままで外国軍隊の駐在というもを認めているということになるのだということに対して、そうでないということにはならないと思うのであります。そうして、言うまでもなくこれは第二には、インドがこの平和條約に署名しない主たる理由であります。今お答えになりましたようなことが、政府の唯一の見解であるとするならば、エジプトはこれに署名した、だからこの問題は解決したとお考えになるならば、第二に、インドがこれに署名しないということに対しては、どういうふうにお考えになつておられるか。恐らく政府はすでにたびたびお答えになつたよう、インドはこの平和條約には署名しなかつたけれども、併し日本と間もなく平和條約を締結するという状態になつておるというふうにお答えになるだろうと思うのですが、併しそれはこの平和條約の、そうしてこの條項が客観的に認容されることになるのだということにはならない。この條項がその他の條項と関連し、又は日米安全保障條約と関連して非常に重大なる意味を持つているのですから、さつき伺つた占領下に置かれている日本が外国と協定を結んで、それで外国軍隊駐屯を認めるということは、日本主権の侵害にならないという政府の御見解の根拠をもう少しはつきり示して頂きたいと思うのであります。
  56. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この第六條の(a)項は、占領軍はこの條約の効力発生の後は占領軍の性質を全然失つてしまいますから、従つてつてしまつてから引揚げるまでにはいろいろ準備もありましよう、船待ちのさまざまな用意もいたさなきやならないが、それにしても九十日以内には最大限度日本を撤退しなければならん。併しこう書いておるが、但しこの規定では、現在協定した、或いはすることのある外国軍隊日本国内における領域における駐屯又は駐留を妨げるものではない。これはこの両国間の、或いは日本と一又は二以上の多数国間の協定、それに基いてなされた場合におきまして妨げるものではない。従いまして、それによつて日本の自主権がこの但書によつて制限を受ける、そうして占領下における制限されたる立場においての状態が今後もこの但書によつて続くという解釈はとつておらないのであります。
  57. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この條項については、先に引用しましたマンチエスター・ガーデイアンなども、アメリカの国務省はこういう條項を入れるということに多大の躊躇を持つていた、ダレス氏自身もこの條項に対して余り積極的な意向は持つていなかつた。リトル・テイスト、余りこれは面白いものではないと考えていたけれども、ペンタゴンがこれを主張して、そうしてこれが入るようになつたのだと書いておる。このようにアメリカの外交の主たる責任者である国務省の意思というものが、或る意味においてアメリカのペンタゴンによつてオーバーライドされている。乘越えられている。そういう状況は、勿論私はアメリカの政治を批評をするつもりでありませんけれども、日本に関する限り将来に対しても決して幸福なものじやない。これは最近英国もそういう点をアメリカにおいて、国の外交政策、或いは政府意思というものが軍部によつて乘越えられている。その結果英国がこうむるところのさまざまの害惡というものに対しては嚴重に警戒しなければならないと考えられておる。日本の場合にもやはり同様でありまして、今マンチエスター・ガーデイアンが指摘しておるようなことは、恐らくは客観的にいろいろな点からそう判断されることが正しいというふうに見られるのじやないかと思うのであります。そういう意味では非常に重大な問題であります。アメリカ自身としても、かように外交の主たる責任者の意思が、いわゆるペンタゴンによつて乘り越えられる、これは大きく言えば国際正義の問題を政治的に又は外交的に解決するという正確な方法を捨てて、万事、軍事的に、戰略的解決する、これは例えばニユー・ステイツマンのような新聞も、軍人は戰争を予定し、そうして万事戰争を予定するという條件の下にいろいろな手段をとるということはこれは当り前だ、併し政治家なり或いは外交家というものは、そういう軍人が軍人の性質から考えるような手段にそのまま賛成するということは許さるべきことでない、これは一般的に妥当することだと思うのであります。従つて只今御説明のような、單に便宜上、つまり一遍占領軍が撤退して、そうして又やつて来るというのは、時間や労力そう他において無駄であり、つまり便宜上の理由、そういう第二義的な理由によつてこの平和條約が目的とする、而も最高の目的とする日本主権を確立するという第一義的な目的を阻害するということは許されないものだと考えます。占領軍が一遍撤退して、若し必要があるならば本当に独立した日本と協定を結んで、再び軍隊が来るということに伴う無駄とか、或いは時間の浪費とかというような程度便宜上の問題で、本質的なこの平和條約の最高の目的である日本国の独立の主権を確立するということが妨げられるということは、利害得失いずれが大であり、いずれが根本であるかということは、おのずから明らかだと思う。  なお続いて第三に伺いたいのは、この但書というものは排他的な規定を含んでおるのじやないか。つまり世界の或る部分との密接な関係を結ぶことによつて、その他の部分を排斥するという規定を含んでおるのじやないか。で、その規定がこの文面の上に必ずしも現われていないかも知れないのですが、この第六條(a)項但書に直接に関連して来る日米安全保障條約にはそれがはつきり現われておる。そうすると日本は、この日本国際関係に復帰する名誉ある歴史的な文章において、すでに世界において国際的に平和を維持する、あらゆる国々と平和的関係を結んで行くという関係に立たないで、世界の一方とだけ友好関係を結び他方を排斥するという排他的関係に立つと判断される理由がありますが、政府はそうでないとお考えになつておるのでしたらば、その理由を示して頂きたいのであります。
  58. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この但書は、これは先日来いろいろと各角度からの御意見に対しまして御答弁申上げておる通りでありまするが、只今の御質問のありましたように、実は率直に申上げますると、無理に、なかつたら、ないでもいいと言えば言えると思う。その本質的なものは第五條の(C)項によつてなされまするから、従つてこの但書というものは念のために置いた規定、まあダレスさんは有益であると思われる、はつきりすることが有益であると思われるからこの規定を置いた、こういう説明をしておりますが、従つて本質的な立場から申上げますると、先のお言葉にありましたような点は首肯し得ると存じます。決してこれがなかつたならば、今後日本は自主的にやれないという問題ではないのでございます。念のために但書を附けて、その疑念のある場合の釈明をするという程度のものであると解釈するならば、解釈し得ると存じます。併しこれは決して排他的という意味じやないと考えます。それは日本の自主的な立場において日本がなし得る立場でございますから、これによつて日本は排他的な意思を表明したというものじやない。むしろ本質的な問題は第五條の(C)が本質的と考えます。
  59. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 政府はこの條項が必要でなかつたということを認められておるのですが、必要でなかつた條項を設けて、そうしてアジアの十一億の民衆を代表するインドその他の国々がこの平和條約に調印することを妨げるという方法をとられたものだというふうに判断せざるを得ませんが、次に伺いたいのは、ここで締結されるところの一つ又は二つ以上の連合国との協定というものは、いわゆる個別的又は集団的の安全保障取極というものになると思うのですが、この六條(a)項但書で言われているところの個別的又は集団的安全保障取極というものは、客観的に見て、国際連合憲章の精神と、なかんずくその国際連合憲章第五十一條に規定されておるような精神をも含めて、それと客観的に一致するものだというふうに政府はお考えになつておるでしようか。
  60. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 先の但書は、あることにおいて有害であるとは考えておりません。あることにおいて有利である、疑いを除く意味において有益である。これは有益であるという言葉をダレスさんが使つておりまするが、むしろ妥当であるかも存じません。従つて置いたために却つて疑念を起して、そうしてそれによつて連合国の署名というものが、不参加というものが起つて来たということも、そういう意味における有害というお言葉が使われておりましたが、私どもはこの点につきましては、むしろ本質的なものは第五條であるけれども、実際上の方法としてこの但書によつてそれを説明している。こう存ずるのでございます。以上お答えいたします。
  61. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ダレスさんは有益だというふうに言われたかも知れないけれども、私の申すのは、事実上においてこの但書があるために、インドはこの平和條約に調印しない。それで、いわゆるアジア十一億の民衆と日本が全く反対の方向を向いて行くということになる、いわゆる日本がアジアの孤兒となる、或いは事によるとアジアの敵になるというような有害な事実を発生して行く。而もそれほどの有害な事実を発生するのに、これは必要にして不可欠のものであつたかというと、今の政府の御答弁のように必ずしも必要ではなかつた。必ずしも必要でない條項を置いて、それで日本がアジアの敵となる、或いは少くともアジアの友ではなくなつてしまう、アジアの孤兒となるという結果を導いて行くことの全責任は、現在日本政府にあると判断せざるを得ないというふうに申上げたのですが、次に伺つておきたいのは、ここで行われるところの協定というものが国際連合憲章の精神と、そして、その規定というものと一致するというふうにお考えになつておりますか。お考えであるとすればどういう意味において一致するのであるか。それで、なお昨日も伺つておきましたように、こういうような個別的の取極というものが、国際連合による国際平和機構というものを補足するものだという吉田首相の言明は、直ちに国際連合当局によつて否定されておりますが、それについても併せてお答えを願いたいと思います。
  62. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) ここにあります「多数国間の協定に基く」というのは、この但書によつて協定をするというのではなく、多数国間の協定に基いた方法においてこれこれの方法を妨げないというのであります。而もその多数国間の協定というのは、五條の国際連合憲章の五十一條及び国際連合憲章の精神に基く固有の自衛権、固有の権利に基きまする立場において協定をする、その協定に基く方法として、但書でこれこれのものを妨げないとございますから、従つて国際連合の精神には背反しないものだと考えます。
  63. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうしますと、昨日も質問しておきましたが、それは恐らく研究をして下さつたことだと思うのですが、これが国際連合の精神に反するものじやない、むしろそれを補うものだという日本の首相の言明に対して、国際連合当局から直ちに、そうじやない、特にこれを指したわけじやありませんが、最近行われる個別的又は集団的安全保障取極は、国際連合の根本精神を崩すものがあるということについての警告を国連当局が行なつて、そのあとで、日本の首相からそういう主張がなされるということは、非常にまずいときに非常にまずいことを言つたものだという判断が国連当局からなされているというのでありますが、非常にまずいときに非常にまずいことを言つたものでないんだという論拠はすでに政府は持つておられるのか。持つておられなければ又次の機会に伺いたいと思います。  それから続いて伺つておきますが、この(a)項の但書と関連しまして(b)項ですが、(b)項の規定というものは、私としても、現在戰争の犠牲として各地に動員されたかたがたが未だその家庭に復帰せられる幸福を持たれないということに対しては、満腔の同情と、そうして憤懣とを感ずるものでありますけれども、それとは全く別に、日本政府がこの問題を取上げておる取上げ方には甚だ挑発的なものがある。その背後には政治的意図があるのじやないか、ということは、この前に国連日本側からこの問題について訴えがなされました席上において、インドその他の国々から、それに賛成をされない、反対される理由として、引揚問題日本政府は政治的に利用しておるという甚だ問題としなければならない点があるのじやないか、そのことはまだ日本に復帰することのできない人々の復帰を決して容易にするものではなくして、却つて困難にするものではないか、従つて本当に日本政府日本国軍隊の各自の家庭への復帰ということを真実念願するならば、それを政治的に利用したり、或いはそれを挑発的に利用したりするべきではない。却つて政治的に利用し、挑発的に利用するために、その問題の円満な解決というものが著しく困難にされるのじやないか。特にその点が昨年でしたかの国連でこの問題が取上げられたときに、その日本の訴えを直ちにアメリカその他が支持して取上げようとする取上げ方に対して、インドその他の国々から、日本政府の取上げ方、又アメリカがそれを取上げる取上げ方というものには、政治的な意図がその背後にはあり、却つてこの問題の円満な解決に有害だというふうに述べられた。そういう批判があつたにもかかわらず、この平和條約の中にこの條項を入れた理由、その理由というのは、それは日本国軍隊の各自の家庭への復帰の一刻も早いことを念願するということではないのであります。その点においては私何びとにも劣らずそのことを念願するのですが、それが却つて全く別の政治的意図や或いは挑発的の意図があるために困難にされるのではないかという点については、政府はどういうふうにお答えになるのですか。
  64. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は前々から申上げておりまするように、この(b)項は最初は入つておらなんだのでありますが、入つておりませんと、殊に懸念を深くいたしまするのは、いわゆる連合国ソ連を含めた意味の相手国、これらの国々がこの平和條約を承認した場合、それで捕虜の問題は基本的な立場を失うのじやないか、というのが、日本国民並びに政府の全般的な心配であつたと思います。殊に留守家族等におきましてはその心配が大きかつたと思います。従つてそれらの国々が今度承認いたしまする場合に、当然ポツダム宣言というものが効力を失する、いわゆる拘束力を失うだろうから、それに代わつてこの日本との平和條約というのが有効になつて来る。有効になつて来る場合にはそれに基礎を置くものが全然なくなつて来る。従つてどうしてもこれには一項を入れて行くというのが日本国民の熱望であり、又政府も熱望いたしておつた点であります。従いまして只今お話のような政治的な意図は全然ないのであります。むしろ嚴格に申しまするならば、法律的な根拠を持ちたい、こういうことでこの一項の挿入を要請いたした次第であります。
  65. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に、この第六條について私の明らかにして置かなければならないと思う最後の点ですが、今のような御答弁ですけれども、昨日高橋委員からの御質問の中にもあつたように、事実上こういうものを入れても空文に帰するのではないか。又現に空文に帰しつつあります。又何らの効果がない。従つて一刻も早く家庭に帰りたいと考えるかたがた御自身の熱望、それから又それを実現したいと考える我々の熱望というものも、事実上においてこの(b)項を入れたことによつて何らの効果がない。空文である。或いは單なる言い逃れに過ぎない。事実上においては却つてこういうことが入れられるために、或いはこれもソ連がこの平和條約に調印しないということの一つの理由になつたかもわからない。そうしますと、この(a)項但書と相待つて、第六條というものは必要でないもの、場合によつては空文になつてしまうような條項を挿入することによつて、前の必要でないというのは、この第五條の(c)項によつて保障されておる安全の状態というものに不必要な第六條(a)項但書を付したために、アジアの国々及びソ連と対立し、従つてそれらの国々がこの平和條約に署名することを不可能ならしめ、又加えて(b)項によつて更にその事情を一層惡くしておるということが現在の事実であるというふうに見られざるを得ない。その現在の事実に対しては政府はどういうふうに御弁解せられるのか。
  66. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 只今申上げましたように、この(b)項は、現在いわゆる署名後の現在から考えますると、中国は最初からこれは招請を受けませんでしたから別でございますが、ソ連が署名をいたしませんでしたから、その点においての、連合国の中にソ連が入らない意味においてのソ連に対する拘束力を失つた次第でございます。併しながらもともとこのポツダム宣言によつて速かに家庭に帰るということを私どもは信じ、それが現実においては只今お話のような状態で帰り得ない状態である。そうすると、ソ連は当然出席して参りましたので、署名をいたしまするといたしましたら、ポツダム宣言効力は失効する、なくなるのであります。それに代つてこの條約が効力を発生する場合に、基本的な主張し得る根拠を失うのじやないか。従つて当然一項を入れるということが必要になつて参るのであります。現在入りません状態におきましてこれを論ずると、只今お話になりましたように、ソ連自身についてはこの條約全体が拘束力を持たぬのでありますから、これは当然でございます。もう一つの問題はポツダム宣言効力を持つておる現在におきまして、いわゆる第九項がソ連に対しましても拘束力を持つている現在におきましても、引揚の問題は御承知通りであります。従いまして、その点から申上げますると現在も同様であります。むしろソ連はないと言つておるし、日本では多くの留守家族も、国民はあるという主張をいたしておりまするところに根本的な立場はありまするけれども、この議論は別といたしまして、ポツダム宣言の現段階と、それから効力を発生しました日本の独立後の段階と、これを両方考えますると、この(b)項は当然日本としては要請すべきものであつた考えるのであります。
  67. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 日本国民の少からざる人々は外地に動員せられて、そうして今日までその家庭に復帰することができないということの第一の原因は、過去の日本政府にあつたということは、まさか現在の日本政府が否定されるわけはないと思うのです。戰争に引張り出さなければそういうことは起らなかつた。ですから第一の原因は、言うまでもなく過去の日本政府にあつたのです。ところが最近のいろいろな議論では、そういうことは殆んど忘れられたようになつてしまつて、ただ復帰されないことだけが問題になつているわけですが、そういう点においても、第一には、日本の過去の軍国主義的な政府がこれらの人々を動員して、そうして外地に送つたということの責任が先ず第一であつて、この平和條約の場合にも考えられなければならない第一の点はそこにあるわけです。第二の点は、如何にして事実上においてまだ復帰せらるべきかたがたが復帰せられるように一刻も早く円滑に行うかということが具体的な問題だと思うのです。具体的な問題を解決するものとして、この第六條の(b)項というものは決して賢明なものではなかつたし、又有効でもなかつたということは、事実がこれを証明しておると思うのであります。それで、この(b)項を含み、従つてこの(a)項の但書というもの、この二つのものによつて、その他の点とも相待つて、この平和條約の発効に伴つて日本国際的な平和関係に入るということを却つて妨げた、或いはインドの反対、或いは中国及びソ連の反対というものを引き起しているという事実は、これは政府も否定されることはできないと思うのです。その事実はまさか政府も否定はされまいと思いますが、以上でこの第六條までについての私の質問を打切ります。
  68. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 水産庁のかたがなかなか来られないので止むを得ませんから、法律問題について政務次官並びに外務当局のほうにお尋ねして置きたいのです。先ほどの御答弁では、マツカーサー・ラインというものは、この條約締結により、又占領管理が終了して当然消滅をする、それは万国の認めるところだと、こういうお話でありました。ところが一方には、調印しない国においてはともかくという御答弁があつたのであります。併し私が考えますのに、この條約の発効によつて極東委員会もなくなり、それから総司令部もなくなり、対日理事会もなくなつてしまう。これは第一條の(b)項の「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権承認する。」というので、当然だという答弁をこの間、私の総理大臣に対する質問に対して政府委員より御答弁になつておる。そういたしますと、占領管理に必要なマツカーサー・ラインというものもそれと同時に消滅するのじやないか。それで公海というものは何もソ連や中共の領海じやないのでありますから、それは当然消滅をして、そのほうにも日本は自由に出漁ができるということになるのじやないかと思いますが、その点を御説明願いたい。
  69. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話のように当然なくなると存じます。但しその署名をしなんだ国におきまして、署名をしなんだ国はなおいわゆる一種の戰争状態が続いております。そのほうがマツカーサー・ラインをおれたちはまだ撤廃していないのだというようなことが言われる場合においての、現実の問題としての問題が必ず起らないということは考えられない、こういう点を申上げたのであります。
  70. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういう意味ならば私も了解できます。ただ、さきがたの御答弁では、この調印国のほうに対する公海においてはマツカーサー・ラインが消滅するが、その調印国でない方面の公海においてはマツカーサー・ラインは消滅しないというような御答弁のように聞えたから確めたのでありまして、公海である以上はマツカーサー・ラインはこの平和條約の発効と同時に消滅をすると、こういうふうに政府のほうは確信を持つておられるものと、こう解釈してよろしうございますか。
  71. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) さように存じます。
  72. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういたしますと、ソ連や中共が今政務次官からお話のように、それは自分のほうにとつてはマツカーサー・ラインは消滅をしないのだという、まあ向うの言い分で、そこに日本の漁船を拿捕するとかいうことが公海においてできて来ると、こういうふうにしたときには、政府はどういうふうにして処置をなさるつもりか、その点を伺つておきます。
  73. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) それはソ連と中共の実際の場合とは実は少し違つておるようであります。いずれ水産庁の專門のほうからもお話があると思うのですが、私ども外務省の立場でいろいろ研究いたして見ましても、中共のほうはマツカーサー・ラインをもともと承認していないのじやないか。むしろあの海は全部おれの領海だという主張があるように受取れるところが多い。ソ連の場合におきましては只今の問題が起つて参る。従つて東支那海におきまする拿捕の問題等におきましては、只今申上げたようなことによつてもこのトラブルが相当従来起つたのであります。併しお話のように公海における漁業は、これは完全に主権回復いたしました日本といたしましては、これは国際法的にすべての国々が当然認めておるところであります。従つてそこにさような問題が起りまするならば、当然国際連合やその他の機関によつてこれは円満に解決しなければならないし、さような状態が、無謀な状態が起ることは世界の平和に最も危險な状態考えております。
  74. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 この中共方面の公海においては、この公海の区域まで中共の領海と同様に心得ておるということは国際公法上そういうことは言えないと思うのですが、それはどういうわけですか。
  75. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話通りに言えないと存じます。言えないのがそういう状態になつて現われるところに無謀なる状態がなおこの極東において行われておるのではないかと考えております。
  76. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういう無謀な状態はこれは国際公法上許されないのであつて、これは速かにその誤りを是正をさせなければならないのですが、占領管理の間は仕方がないが、若しそういうことがあれば堂々と争うべきであることは当然のことであると思うのですが、そういうときの日本の漁船の保護とか、そういう点についてお答えができますか。
  77. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは結局今後におきましては紛争の問題が起りますると、それぞれ国際機関による処置は勿論でありまするから、外交的なあらゆる方法を以てさような状態が起らないような方法を講じて行かなければならないと存じております。具体的の問題といたしましてはいろいろな方法があり得ると存じます。そういう方法をとつて、殊に公海における日本の漁業の保護というのは最も大事な問題でございまするから、処置をいたして参りたいと存じております。
  78. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 この問題は日本の漁業家の死活の問題であると思うのです。それで日本の自衛力としては海上保安庁の貧弱な船舶がある。それで以て日本だけの自衛としてはやつて行かなければならん実情でありますが、そのほかにまあ安全保障條約によつてアメリカのほうが力を貸してくれるということになるのだろうと思つております。安全保障條約のときに、又そのとき聞きたいと思いますが、聞く機会を失するかも知れませんから今ついでに聞いておくのですが、そういうようなことはよく取極がこれからできるのであるか、もうしてあるのでありますか。
  79. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) いや、まだ別にそういう点についての話合いをしておるわけではございません。御意見の点は十分尊重いたしたいと存じます。
  80. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 私も只今岡本委員から御質問のあつたマツカーサー・ラインの点でまだ実は、はつきりしないのでありますが、いずれにしましても、はつきりしませんと、日本の漁業としては依然として非常に困るわけでありまして、私の解釈では、こういう意味で現在のマツカーサー・ラインは、中国ソヴイエトに対しても消滅をすると実は考えておりますが、それは現在の連合国全部が相談をしてきめたラインであつて、その大部分について平和関係回復すれば、公海のラインも当然これは消滅をすると、ただ中ソ等が依然として戰争関係と言いまするか、これが継続をしておりまするから、この前も御質問いたしましたように、新らしく中国なりソヴイエトが今度は独自の立場でラインを設定するということはあり得ると思いまするが、現在のラインは私は平和條約が発効すれば中ソに対してもなくなるという解釈ができるのではないだろうかというふうに考えまするが、その辺は如何でありましようか。
  81. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本政府としてはお説の通り考えるわけであります。ただ、ここに留保いたしたいのは、相手国がこの見解をとらない場合には、これを強制する方法がないということでございます。従つて北方及び西方の海域に出漁する漁業者は愼重に行動して欲しいということを絶えず当業者のかたがたに申上げております。
  82. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 それではその次にこの第九條の規定でありまするが、これはこの間の会議の或いはインドネシア、オランダ、カナダ等の代表の演説を拜聽しますると、やはりこの規定日本が希望する連合国と速かに交渉を開始する義務を負つておるわけでありまして、特にこの規定がおかれましたゆえんは、やはり或る程度日本の公海における漁業を制約をするという意図がなければ特にこの規定をおく必要はないと思うのでありまするが、この規定をおきました理由につきまして御説明頂きたいと思います。
  83. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本の公海におきまする漁業活動につきまして、平和條約に制限規定を設くべきであるという主張が強く連合国の一部からあつたわけであります。それに対しまして合衆国政府は、平和條約によつて将来における日本の活動に永久的な制限を設けることは、この平和條約の根本精神に反するから同意いたしかねるとの立場をとつて、最後までこれを固執されたわけであります。併しながら合衆国自身といたしましても、公海におきまする漁業を、従前の通り公海における漁業の自由という、何ら制限のない自由の状態に置くことは、現在の公海における漁獲方法の発達、或る種漁業資源の消滅の危險、又数多の国家によつてとられております公海における漁業資源保存のための措置などから考えまして、不適当でありまして、今後は関係国間の協定によつて適当な措置をとることによりまして、最大限の漁獲を確保すると同時に、漁業資源を永久に確保する目的を実現しなければならないで、そういう立場に立つて日本関係連合国と協定することによつてこの問題を解決すべきであるとの趣旨で、この條項を入れることになりました。そうして平和條約の中には直接日本の公海における漁業活動を制限する規定をおかないことにしてくれた次第であります。
  84. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 そこで私は少し実際的に御質問して見たいと思いますが、要するに従来日本の漁場として非常に出ておりましたところの、例えば北洋漁業等が先ほどのマツカーサー・ラインの関係で殆んどその方面には出て行けない。その他東支那海、黄海方面からそういう制約を受けている関係で、日本の漁業者は止むを得ずはるばるアメリカなり或いはカナダの領海の近くまで出漁いたしまして、相当これはコストも高くなると思いまするが、一番近い優秀な漁場が、そこに入つて行けないという関係で止むを得ずああいう遠い所まで行つて漁業をしているという関係から、実はアメリカなりカナダの漁業者を刺激いたした結果、或いはこういうような條項が出て来たとも思われまするし、又現にアメリカ、カナダとの実際上の漁業交渉も始まつているようでありますが、そこで先ほど来のマツカーサー・ラインと関係をするわけでありますが、成るべく早い機会に北洋なり或いは東支那海、黄海等に対する漁場に日本の漁業者が安心して十分に活動ができるという保障ができて来ますれば、私はあえてはるばる太平洋の先まで出漁する必要はないと思うのでありますが、どうもその辺が、この前の一般質問でも西村さんからは、それはソヴイエトなり中国が、向うがきめることであるから、答弁の限りではないというような答えがあつたわけでありまするが、どうも漁業としては、やはり平和関係が正式には回復をしませんでも、御答弁にあつたような、第三国を介してなり、或いは実際上は直接にも交渉ができるということでありまするが、或いはかようなアメリカなりカナダとの漁業條約を始める前に、むしろ私は旧来の最も優秀な漁場であつた近くの漁場に対して堂々と出漁ができるということを私は先ずやるべきではないかと思うのでありますが、近い所に入れぬ関係で近くへ出て行つて相手国を刺激をする。こういう止むを得ざる状況で、かような規定をせざるを得なかつたと思うのです。ですから私はやはり漁業関係では遺憾ながら中国ソヴイエトとは平和関係はすぐさま見込はないと思いまするが、早急にこの方面に対して日本の漁船が安心して出漁のできるような具体的な交渉をこれはさるべきではないかと思うのでありますが、その辺に対するお答を頂きたいと思います。
  85. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実はアメリカ、カナダの漁業協定の会談と申しまするのは、只今の御趣旨とは少し違うのであります。これはもともと御承知のように昭和十一、二、三年の頃に、農林省の試漁船が参りまして、それが一つの問題を起した。その後アメリカにおきましてはいろいろ上下両院においてこの漁業保護法案が上程され、昭和二十五年の九月には、トルーマン声明が出されたというような状態で参つてつた次第であります。従つてこの平和條約の発効前に、これらのトラブルなり、問題なり、昭和十三年には当時外務省から声明と申しますか、覚書を送つておるというような状態で来ておりましたので、従つて今後の漁業の、先に條約局長から申上げましたような内容の漁業協定というものを結んで行くということが、最もアメリカ、カナダと日本との関係においては必要な問題である。この点から出発して参り、これは戰後にこれらの、お話のような北洋漁業なり或いは東支那海の漁場が多く封鎖状態なつたから、その後起つた問題というものとは又違つておると考えております。従つてこれはどうしても従来日本の漁業に対しまして、先に申上げました農林省の試漁船が参りましたことも、決して濫獲とか、そういうものじやなかつたのでありますけれども、たまたまそういう印象を與えたという問題になつて来ておるのであります。そうして御承知のように従来からの日本態度が公海漁業その他の国際漁業條約協定に対する、まあどう申しますか、これに加入し、守るという意思表示が少なかつたために受ける誤解も多かつたと存じますが、こういう点から来ておるのでありまするが、従つてこの機会アメリカ、カナダ、日本、その他の希望しておる国々と、率直に意見を交換して、正しい條約及び協定の下に、公然たる、そうして堂々たる漁業を進めて行くというのが日本の漁業の将来を明るくすると同時に、国際的において、決して濫獲をしておつたものではないが、さような印象を與えておつた点についての不利な立場回復いたしまして、将来日本の漁業の発展を期するゆえんである。この問題とお話の第二の問題の、東支那海或いは北洋漁業という問題は、日本にとりましては、いわゆる本当に身近な、そうして最も大事な所であります。併しこれは何とか早くすべきものであるということは考えるのでありまするが、なかなか簡單に行かない問題であるのではないか。特に北洋漁業の問題等は、私どもは従来から相手国との交渉におきましては長い歴史があるわけでありますが、私どもといたしましては、この間総理も答弁いたしておりましたが、外交が正式に開始されぬでも、いろいろな方法において、今後相談の機会もあるだろうからという言葉を以てお答えを申しておられた通りに、今後できるだけの方法は勿論盡すことは、これは当然進んで行かなければならんと存じております。併し簡單に行きにくい問題であるということだけは御了承を頂きたいと思います。
  86. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 お答えでわかりましたが、私の表現がちよつと惡かつたのでありまするが、勿論終戰後マツカーサー・ラインもありまするから、具体的にアメリカなりカナダの沿岸近くまで行つたのではないと思いまするが、ただ恐らく向うの心配は、近間の漁場が抑えられておる関係で、やはりあの方面に相当足を伸ばして来るということに懸念を持つておることは、これは私は事実と思います。そういう意味で私は北洋なり或いは東海、黄海方面の従来やつてつた漁場で安心して操業ができれば、そういう不安は相手国に対しても相当これは解消されるのではないだろうか、という意味で先ほど申上げたわけであります。  それからもう一つ関連いたしましてお聞きしたいのは、すでにアメリカ、カナダの代表が来られまして、交渉を開始しておるようでありますが、まだ講和條約が勿論発効しておらないのでありますが、非常に早目に交渉を開始した何か特段の理由がありまするかどうか。
  87. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは二月の吉田、ダレス書簡のやり取り等にも申しておりましたように、又その後日本政府も一、二度たしか声明を発しましたと存じますが、殊に只今申上げましたように、公海漁業その他の漁業に対する国際條約、国際間の取極等に対しては、従来とも余り加盟をいたしておらなんだ状態でありましたので、殊に今回の平和條約によつて新らしく日本が出発するときには、何と言つても世界の信用というものが第一である。従いまして日本の漁業というものは、日本には、若し許されるならば、唯一の絶対に必要なものだと考えるくらい日本にとつては大きいものでございます。従つて国際的にも十分な信用の下に、成るべく速かにこの懸案の問題を解決し、そうして進んで行くということが一番大事な問題である。こういう意味におきまして、先ず取りあえず従来から問題のありまするアメリカ、カナダ、日本との問題を成るべく速かに解決したいという意味において、この三国の会談を急いで進めている次第であります。
  88. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 もう一つ、従来の問題で、南方のインドネシア、あの附近の漁業が相当問題がありましたが、この方面から何か交渉の申込が最近あるお見込でありますか。
  89. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) インドネシア方面はまだ正式には申込がございませんが、インドネシア方面の漁場に対する希望は少し違つておるのではないか、むしろ日本の漁業の進歩した技術というものが考えられて来る点が多いのではないかと考えております。まだお話のような正式の申込は現在では参つておりません。
  90. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私も、この第九條の漁業の問題について農林大臣にお尋ねをいたしたいと思つておりましたが、水産当局がまだお見えにならないようでありますので、外務当局においてお答えのできる限りをお伺いいたしたいと思います。先ほど来、公海漁業につきましては、いろいろと質疑が交されたのでありますが、只今日米加三国の漁業協定の話合いが進んでおる最中であります。更に只今の御質問に対しましてその他の国からは今のところ協定の申込はないということでありますが、この二月に吉田首相からダレス特使に送りました書面のうちにも、この漁業協定というものは、日本が完全なる主権回復した後において、十分に、速かに締結する用意があるというようなことを申されておるのでありますが、その前においても、すでにこの協定の話は進んでおりますが、若し他の国からそういうふうな申出があつた場合には、まだ主権回復しない前においてもその交渉をなさる御意思であるかどうか。現在日本占領下におかれまして、その占領下にある日本が占領国の一方と交渉をするということは、私どもの考えとしては必ずしもフリーな立場でなく、何となく日本に不利を感ずるような気がしてならないのであります。現在アメリカ、カナダとの問題は随分隔たつておることでもありますし、さほど切実な問題には日本としては思つていないと思いますけれども、この両国との交渉の結果、協定の結果が、今後他の国との協約に及ぼす影響は極めて大きいものがあると考えるのであります。これも、その方針がきまり、協定がきまつた場合には、今日、日本の水産業というものが、日本の国の実態から考えましても、又経済の面におきましても、極めて重大な産業である意味からいたしまして、非常に愼重を期してやらなければ、百年の悔を残すことになりはしないかと考えます。従いまして、先ず完全なる主権回復前においても他の国との協約をするお考えでありますかどうか、お伺いしたい。
  91. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は今度のアメリカ、カナダとの協議は、純然たる対等の地位において、一口に申しますると完全主権回復後の状態という立場において、この問題に関する限りは何ら司令部等の許可或いは指示ということは必要ないことになつておりまして、完全な独立国の立場においてこれを結ぶという方法で参つておる次第であります。従いましてお話通りに、今度の日、米、カナダの関係の漁業協定の成行きは、将来大変大きい影響を来たすものでありまするから、日本漁業に対しましても、又その他の関係国に対しましての先例としても、大きい影響を来たすのでありまするから、十分に愼重な態度で進むべきものとして、そういう態度をとつておるのであります。従いまして、今後ほかの国々から申込がありましたら、当然同様にこれは進まなければならない問題でありまするから、独立前におきましても協議を進めて行くべき問題だと存じます。ただこの二月七日の吉田・ダレス書簡によりますると、條約発効後、そのままの状態におきますると、当然委員会等を作つて、そうして相当の制約された状態になつて参りますし、又漁場は、一九四〇年の操業状態に釘付けになるというような状態にあるのでありまするので、従つてでき得る限りこれは発効前においても、準備をしながら、十分、関係国との間におきましての協定を正しく結んで行くということが妥当であると考えております。
  92. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 次に例のマツカーサー・ラインというものが設定されまして以来、日本の漁業は非常な苛酷な制約を受けまして、食糧不足の場合にも、供給面の仕事をいたしております漁業者は非常な苦しみを持つて今日までやつて参りました。このマツカーサー・ラインの撤廃乃至は緩和ということにつきましては、昭和二十一年以来いろいろな方法を以て、又いろいろな機会に、あらゆる努力を拂いまして、その筋にこれが緩和乃至は撤廃を懇請したのでありますが、遂に今日までその機なくして参つたのであります。従いまして漁業者といたしましては、このマツカーサー・ラインの解除ということが実に重大な関係にありますので、今回の講和が成立することによつて、これが解除されるということは、非常な待望が達せられることであつて、期待を大きく持つているわけでありますが、先ほど来の質疑の中にもございましたように、一部の国との間には、まだこのマツカーサー・ラインの関係が釈然とせずに残るのではないかといつたような関係から、これに対する業者の不安も又非常に大きいのであります。併しながら連合国が設定したラインが、講和によつて多数の国々が講和を結んだとなれば、当然これは撤廃、消滅するものであるという我々は解釈をとつておりますし、又政府御当局においてもさような御解釈のようでありまするが、そうした場合にこのダレス氏に送りました吉田首相の書簡にもございますように、その間のいわゆる真空と申しますか、講和が締結され、このラインが撤廃になつた、消滅した。その際に、公海自由の原則によつて日本の漁船は公海に出漁し得る状態になるのでありますが、一九四〇年の日本の漁船の行動範囲は相当広かつたのでございます。北はべーリング海の奧まで参りますし、アラスカの附近までも出て行つておりますし、更に東はメキシコ湾、或いはアルゼンチンの東の海までも出ております。西はべンガル湾方面、南は濠洲の北部から南氷洋まで行つております。相当広範囲な活動をいたしておるのでありますが、その後それに従事しました漁業者もだんだんと変化変遷をいたしておりまして、個個に申しますと、一九四〇年に日本の漁船がどこまで行つていたかという限界がはつきりしないのではないか。従つてこの公海自由の原則ということに則りまして、日本の漁船が一齊に出漁したといたしまするならば、若しそこに何らかの指針と申しますか、はつきりした線を画して置きませんと、この吉田首相が表明した趣旨と非常に違つたことができて来る虞れがないとも限らないのでございます。従いまして吉田首相は、この一九四〇年に日本の漁業の船舶が行つていなかつた所には操業を禁止する。そうしてその禁止した條項を嚴守せしめるために、政府及び当業者の組織するところの委員会を設けて、そうして嚴重にこれを監視して行く。又これに違反する者は嚴重な処罰をするということを言つておられるのであります。そこで、この日・米・加三国が漁業協定を結んだといたしまするならばその点は解消するのでありましようが、それにいたしましても他の国々とはなお未解決に残つておるのでありまして、それらの限界を如何なる方法によつて国民に示されるのか。これは法律を以て制定されて、ここから先は行つてはいけない、この区域まではよろしいといつたような制限を、国民にどういう方法でお知らせになるのかということが一点。若しこれを法律で制定されるとするならば、これは、いつ、その法律案を提出なさるお考えであるかということであります。それから第二の政府と当業者との間で組織される委員会というものが、これはどういう性格のものであるか。これも法律を以て定められるものであるか。若し法律を以て定められるとするならば、その法律案はいつお出しになるか、これをお伺いしたいと思います。
  93. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 吉田・ダレス書簡を平和條約の効力発生後実施する具体的措置の問題でございますが、この点は目下水産庁のほうで考究中でございます。そのほうから御説明申上げる機会があろうかと思います。ただ法律を制定するというようなことは、考えられていないように思う次第でございます。と申しますのは、水産庁におきましては、一九四〇年時代に、日本の漁船がどの範囲に出漁していたかということについては確実な資料を持つておりますし、又、遠洋漁業につきしまては現在すでに法律によりまして許可制になつておりますので、それによつて十分取締り乃至は当業者に指示を與える根拠もあろうかと思う次第であります。
  94. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 委員会の問題は……。
  95. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 委員会もその書簡を交換いたしましたときに、何も法律を以て設置するような委員会考えたのではなくて、吉田・ダレス書簡が実際当業者によつて遵守せられるように監察いたすといいましようか、注意して見ると申しましようか、そういつた目的を持つた事実上の委員会を設けるという考えでございました。
  96. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 なお、もう少し具体的に伺いたいんですが、水産当局が出たときにお伺いしたいと思います。それから先ほども問題になりましたが、この公海における漁業について従来しばしば行われております不法な暴挙に対する今後の措置でございます。これは次の安全保障條約の際にお伺いいたしたいと思います。一応私の質問は終ります。
  97. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 時間もございませんようですから、極く簡單にお伺いいたします。よく和解と信頼の講和である、こう言われるのですが、先ほど羽仁委員が言われましたように、軍隊の駐留の問題といい、又今公海におけるところの漁猟の問題といい、どうもそういう点では漁区の上の問題としては、それ自身主権を特に制限するというふうな形は出ていないんですが、そういうものを結ばれるところの国家間の実際の立場というものから見ますると、非常に疑いを挾まなければならないような問題が出ておると思うのでありますが、それは別といたしまして、私はもう極く問題を限定いたしまして、いわゆるコンゴー盆地條約というものに対する権原、利益を捨てる、こういう問題は国際連合憲章の建前から見ましても、何の必要があつてこれを放棄しなくちやならないか。通商航海の自由ということが国際の平和と不可分の関係にあることは、これはもう私が言うまでもない。その点については、一番この條約の最初の逐條のときに、西村條約局長からちよつとお触れになりましたのですが、もう一度この章を審議するに当つてその理由を御説明願いたい。それから第二としては実際にこれによつて受ける日本の経済上の不利益というものを少しく詳細に御説明願いたい。これも最初のときに触れられました問題でありますが、この問題を先ずお聞きしたいと思います。
  98. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 第九條を見ましても、公海における漁業について日本が将来独立国として関係国と條約を結んで、それによつて公海の漁業を規定するという原則を認めてくれたことは、これは何と申しましても連合国日本に対する和解と信頼の現われだと存ずる次第でございます。若しそういうような精神がなかつたならば連合国平和條約の一條項として戰敗国に対してその権能の制限とか、乃至は資格の剥奪とか申すような規定を設けることもあえてしようとすれば、し得たところでございます。そういうことがこの平和條約においては回避されておるところに、和解と信頼の事実が現われていると考えて頂きたいと思うのであります。コンゴー盆地條約について持つていた日本権利は、これは何と申しましても日本が第一次世界大戰におきまして五大強国としてヴエルサイユ平和條約に臨みましたことによりまして、十九世紀の中葉、ビスマルク時代にベルリン会議でアフリカの植民地国間に結ばれた條約に基く利益を享有することになつた次第でございます。コンゴー盆地條約に関係している国は十二カ国でございますが、この十二カ国が絶対の自由、絶対の無差別待遇の條約上の特権を持つておるわけであります。この特権を第二次世界大戰によつて負けたが故に放棄させられることは、無論日本人としては喜ばしいことではございません。又経済的に、従前享有をいたしておりました利益を享有し得ないのでございますから痛いことでございます。この点は米国政府もよく了解いたしております。併し連合国の一部に強い要求があつて、要するにこの條項を受諾することがこの平和條約成立のために絶対に必要だと考えられるから、同意されたい、了承されたいということでございました。実際的の影響はどれくらいであろうかということでございますが、戰前では、日本のこの地域に対しまする輸出は日本の総輸出額の大体一%でございました。戰後の情勢を見ますと、輸入は一%内外であります。輸出は四十七年が五百五十万ドル、四十八年が九百万ドル、四十九年が千七百万ドルで、総輸出額の三%乃至三・五%になつております。一九五〇年は千四百万ドルでございまして、一・七%に低下いたしました。これが戰前並びに戰後における実情でございます。日本政府といたしましては平和條発効後におきましては、この地域の領有国政府と通商協定乃至は貿易協定を締結することによりまして、できるだけ最惠国待遇を享受できるように努力することによつて、この條項から生れて来る実害を軽減するように努力しなければならないと考えております。
  99. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも私が言つた和解と信頼のところを非常に気にされるようですが、何だか西村さんの話を聞いておりますと、戰争に勝つた者はどんなに国際公法上約束されたものでも戰勝国は勝手にやれるような、戰敗国は制限されるというようなことが前提にあるように思えるお言葉なのですが、私は九條の問題については、先にお聞きになりました二人の委員から只今お聞きしましたからお聞きするつもりはございませんが、要するに日本国政府がみずから主権回復して、完全な、自他共に主権があるという姿において交渉されるべきものであるし、又新しい日本は旧日本と違つて国際慣行は十分尊重するというふうな考え方に立つておる以上、本来言わば殊に吉田、ダレス両氏の書簡の往復がある以上、平和條約と申しますか、降伏條約に特にいろいろ入れること自身にすでに何らかの意味を含めてあるというように考えるのでありますが、この第九條の問題はいろいろ御質疑が他の委員からありますので、私からはやめます。  それから第十一條なんでありますが、この戰争犯罪人、今国外で刑の言渡しを受け、拘禁されておりますところの戰争犯罪人というものが、どれくらいあるのかということを十一條に関連してお聞きしたいのであります。と同時に、これらの者に対しましてはこの裁判に関係いたしました、事件に関係いたしました政府意思と、それから日本国の勧告と、この二つが合わさつて今後いわゆる赦免、減刑、仮出獄等がされる規定になつておるわけでありますが、それらに対しまして日本政府としてはどういうふうなお考えでありますか。その二点を十一條に関連してお伺いいたします。
  100. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 現に国外で服役中の同胞戰犯はフイリピンと濠洲だけでございまして、合計三百五十七名ございます。それから十一條の規定によりまして、日本政府の勧告と判決を下した連合国政府によつて行われることになつておりまする減刑、恩赦その他の特典に関する條項の実施方法につきましては、目下政府で所要の法案を起案中でございまして、遠からずこの国会又は通常国会に提出いたしまして、平和條約の効力の発生前に、立法措置を完了する方針でございます。
  101. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 国内的に立法的な御処置をおとりになることは、平和條約の発効前に国内的に立法措置をとられることは今お話になつたのでありますが、国際的にこの問題についてどういうふうな処置をされておるか、こういう点についてお伺いしたい。
  102. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 国際的と申しますと、結局関係国との間に実は話合いを進めて来なければならない問題だと存じております。従いまして戰犯の問題は、普通から申しますと平和條約によつて解消すべき問題だと存じまするが、併しこの一項がありまするのでこれは参らない状態でございますから、国民感情を率直に一つ訴えまして、最善の方法がとられるように今後関係国と相談して参るという予定を持つております。
  103. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今、政務次官の言われましたように、平和條発効と同時にこういう問題は解消さるべき問題だと、こう言われるのでありますが、この十一條が入りました以上は、日本政府としてはこれに対してどういうふうに考えておるかということが、この平和條約批准に当つてのお考えとして具体的でなくちやならんと、こう私は考えるので、今のような最善の処置という一言では困るので、もう少し御意思を明らかにして頂きたい。
  104. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は従来までもこの減刑或は赦免と申しまするか、いろいろの方法がとられることを要請し、又とられて参つたのであります。併しこの平和條約の発効に当りましては、関係しておりまする現在二カ国、只今條局長が申しましたフイリピンのモンテインルバ、それから濠洲のマヌス島、外地におきましてはこの二カ所でございます。内地におきましては巣鴨の千五十四人でございます。これは国際軍事裁判等で関係国が数カ国に及んでおる次第であります。従つて現在すでに刑の決定いたしておりまする者、フイリピン等におきましては、なお、再審等の方法もとられておるようでありますが、これらに対しましては最大の赦免と申しまするか、方法がとられるように具体的に進んで参りたいと存じております。
  105. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 余り内容的には今目下のところお話になることができないのだと思いますが、ついでに、それでは国内でこの條項に当つて、抑留と申しまするか、或いは拘留されておると申しますか、そういうふうな人間はどれくらいあるのか、その点についても数字的にお示しを願いたいと思います。
  106. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 内地服役が千五百三名でございまして、ほかに仮出獄が二百二十二名ありますが、これはこの調査が今月の初めの調査でございますので、その後一、二すでに刑を執行し、更に仮出獄されるという状態にありましたので、今日では少し一、二違つていることとも存じます。
  107. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 今の十一條に関連してお尋ねしますが、この條文でカバーするのは、日本の国で拘禁されておる日本国民だけだと読めるのですが、果してそうであるかどうか。それから「一又は二以上の政府決定及び日本国の勧告、」こういう二つの要素がなければいけないようになつておりますが、日本国が勧告をして、それに基いて一又は二以上の政府決定をする、こういう手続が要素になつているのはどういうわけであるか。又日本国外で拘禁されておる、今三百何名と言われましたが、それらに対してこういう減刑、仮出獄、赦免、そういうものは政府が極力やると言われましたが、どういうふうにしてやられるのか。成るべくそれじや早く日本国内に移してもらうということが必要になつて来るというように今の応答では思えるのでありますが、そういう努力を今後大いになさるのであるかどうか。その点を一つ答弁願いたいと思います。
  108. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは実は今申上げました外地におきましては二カ所でございますが、それらの国々はそれらの憲法と申しまするか、法規によつてそれぞれ処置をとられる。従いまして日本政府が正式に向うの政府に対しまして、その刑に対してかれこれの容喙的な立場をとるということはなかなか困難であろうと存じます。従つてこの点は十分そういう点を考えながら進んで来なければならないと存じますが、幸い従来からも国民の中に、或いは国会の皆さんがたでこういう点につきましていろいろ国民運動等においても強い線を持つてお進み願つておりまする点は、私も大変感謝をいたしております。政府立場におきしては、今申上げましたような線を十分考えて、そうしてこの国民感情を率直に受け入れてもらうような方法の、最大の方法をとつて参ることが必要と存じまして、従来ともそういう方法をとつておりましたが、今後も更にこれは十分その方法をとつて参りたいと存じます。
  109. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それと同時に、今私が申しましたように国内に移してもらう、国内に拘禁をしてもらうように、外国から移してもらうということが必要になつて来るのだろうと思いますが、そういう努力はせられるつもりであるかどうか。これまでも多少は日本の国内の拘禁に移されておると思いますが、その点はどうですか。
  110. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 恐らく私ども国民の願望の多くは、実は国内に服役を移してもらうというのが先ず第一じやないかと存じます。従いましてこの点は相手国の多くが十分了承してくれておると存じますので、今後の努力も必要でございまするし、国民全体の努力も必要でございますが、政府は先に申上げましたような立場で十分努力をいたします。今の見通しとしては、相当明るい見通しを持ち得るのではないかと考えております。
  111. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 もう一点、この外国政府決定日本の国の勧告との関係、その点を西村局長から御答弁願いたい。
  112. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国外に服役中の同胞戰犯に対しまして恩赦的措置をとるかとらぬかは、一にその裁判を下した当該連合国政府決定に待つほかはないと思います。内地服役の者につきましては、第十一條によりまして刑の執行を日本が受諾しました関係上、受刑者に対して恩赦的行為をとることについて、日本政府と判決を下した連合国政府との間の共同行為によつてこれを行うということになつた次第でございます。
  113. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それでは、いわゆる日本の国が勧告を必らずして、それによつてやると、こういうことになりますか。勧告を待たないで向うが勝手にやることはできない。こういうわけですか。
  114. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 刑の執行をやります日本政府が勧告を出すことが必要になるわけであります。恩赦等の措置は、共同してやるという建前でございます。
  115. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは一時四十分まで休憩いたします。    午後零時三十七分休憩    —————・—————    午後一時四十九分開会
  116. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) では休憩前に引続き会議を開きます。
  117. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は他の委員会関係でちよつと席を外しておりましたので、若し重複しておるようでしたらその旨をお示し願えば直ちに引下ります。  ちよつと前へ戻りまして五條の関係ですけれども、自衛権の行使の手段というものについて何か法律上、事実上制限があるでしようか。
  118. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国際法上積極的の制限は全然ないわけであります。各場合によつて妥当なる措置ということになつておるわけであります。そのとる措置が、平常であるならば不法となる場合も、自衛権の行使としてとられた場合には、違法性が阻却されるのでございまして、具体的にその手段はこうあるべきであるというふうに、前もつて確定しておるものではありません。
  119. 木内四郎

    ○木内四郎君 国際法上の原則の御説明はわかりましたが、国内法的には如何なものでしよう。
  120. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国内法的には、憲法九條がありまして、軍備を持たないということになつておりまする結果、自衛権行使の場合の最も有効な手段である軍備を行使することができない結果になつて来るのであります。
  121. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうしますと、この軍備がないために有効な手段がないから安全保障條約を締結するという、これはよくわかります。只今の御説明によつて軍備がないのだから軍備が使えないということはわかりますが、然らば軍備以外のものはすべてのものを使つても差支えないと了解してようございますか。
  122. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) それらのものにつきましても、それぞれ法制がありまして、目的が限定いたされております場合には、現存の法制を破ることはこれ又できないことであると考えております。
  123. 木内四郎

    ○木内四郎君 さつき伺いまして、国際法上は普通の場合ではいけないことも、自衛権の発動の際には違法性が阻却されるというお話でございましたが、国内法上で何か自衛権に使つて惡いという場合があるでございましようか。
  124. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国内法上の問題でございますので、不案内でございますので、お答えを差控えたいと思います。
  125. 木内四郎

    ○木内四郎君 例えてみれば極端な場合、問題になつてつたかも知れませんが、警察予備隊というようなものは当然これは自衛権の際には使つて差支えないと思うのですが、国内法の御專門でありませんけれども、常識的に如何なものでございましよう。
  126. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) あと法務総裁が参りますから、主管大臣からのほうが間違いがなくて結構だと思います。
  127. 木内四郎

    ○木内四郎君 もう一つこの五條に関係して伺つておきますが、安全保障條約というものは、自衛権の一種の発動と言いますか、自衛権に基いて締結されるものと、それを基礎として締結されるものと了解していいのですか。
  128. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そうは考えませんので、日米安全保障條約は、日本が独立国として有する国家の安全保障上適当と認める措置をとり得る権能に基いて締結されておると考えております。端的に申しますと、五條の(C)の後段から出ております。
  129. 木内四郎

    ○木内四郎君 勿論、安全保障條約というものは、この侵略的或いは攻撃的なもの、目的はなくして、他から侵略を受けた場合に、日本がまだ自衛権を有効に行使する手段がないから、それに代るべきものとしてあるものと了解するのですが、如何でしようか。
  130. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私どももさように考えます。
  131. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうしますと、安全保障條約に基いて日本の安全が保障されるという、この具体的の事態になつて来た場合には、それは自衛権の発動の範囲と一致するものでしようか。
  132. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) これは安全保障條約が明確に言つております通り、外部からの攻撃に対して日本の安全を維持するためにと規定されております。憲章の解釈から言いましても、自衛権の行使が認められるのは、加盟国関係におきましては武力攻撃が発生した場合となつております。両者は、よく符合いたすわけでございます。
  133. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の私の質問の仕方がちよつと惡かつたかも知れませんが、国内騒擾等の場合には、これは自衛権と言つていいかどうかわかりませんが、まあ保留いたしまして、とにかく外部からの攻撃の場合にはすべて自衛権の発動と完全に一致するというふうに了解していいのですか。
  134. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 大体そのように考えます。
  135. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうすると、自衛権の範囲は出ないものということですね。
  136. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) さようでございます。
  137. 木内四郎

    ○木内四郎君 結構です。それから、なお、ちよつと、この次の第十條に「北京で署名された最終議定書並びにこれを補足するすべての」云々の「権利及び利益を放棄し」というように書いてあるが、戰争前において日本は相当放棄しておると思うのですが、これによつて具体的に放棄する大きなものというと、どういうことになりますか。細かなことは結構でございますけれども、常識的で結構ですから……。
  138. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は平和條約の説明書に具体的に列挙してございますので、それによつて承知願いたいと思います。
  139. 木内四郎

    ○木内四郎君 それから最惠国待遇によつて相互主義は云々とあるが、イギリスは最惠国待遇を與えないというようなことを言われておるが、この各国との見通しについて大きな点をお知らせ願えれば非常に仕合せだと思います。
  140. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 大体の見通しといたしましては、最惠国待遇の許與について一番難関がありますのはイギリスであります。その他の国につきましては、現在までのところ、公式に意見を発表いたしておりませんので確たる見通しが付きかねております。
  141. 木内四郎

    ○木内四郎君 イギリスは最惠国待遇を日本に與えないというようなことを新聞で伝えられておつたんですが、私もその情報は正確かどうかわかりませんが、どんなことですか。
  142. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 法律上日本に対して最惠国待遇を與えることはいたしかねる。但し事実上の最惠国待遇は與える。こういう趣旨であつた了解いたしております。
  143. 木内四郎

    ○木内四郎君 後の点は次にいたしまして、これで結構です。
  144. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 水産庁の山本次長が出席されておりますので、次長に対する御質問がありましたならば……。
  145. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第九條について政府の所見を質さなければならないと思うのでありますが、この日本にとつて漁業が重要な産業である、漁業の日本における重要な意義ということは、これは改めて申上げるまでもないのでありますが、この第九條について第一に伺いたいことは、これは他の條項とも関係して来るものであり、特に午前中にも質問いたしました、この第六條に、日本が占領の状態の下に置かれながら外国の軍隊の駐留を許すというようなことと同様に、この第九條は日本がまだ占領の下に置かれて独立の状態にないのに、平等にして独立の立場がないのに、さまざまの国と漁業上の協定を締結するということが行われるようでありますが、これは事実午前中の政府のほうからの御答弁にもあつたように、まだ日本占領下にあるのに、独立にして平等の待遇を與えられて、そうして協定を締結するということであるというように解釈を政府はされているようですが、併し実際上においては現実に独立平等の立場にないのですから、これは、やはり飽くまでも日本平和條発効に伴なつて現実に平等独立の立場に立つてから締結すべきものではないかと判断されますが、その点について伺いたいと思うのが第一点であります。
  146. 山本豐

    政府委員(山本豐君) お答えいたします。この漁業協定につきましては、只今お話がございましたように第九條に明記されているのであります。まあ講和條約が発効いたしますれば、御承知のようにマ・ラインが撤廃されるということは、これは大体明瞭でありまするが、併しこの第九條にも申しておりますように、まあ可能な限り速かに準備を進めるということは、我が国の現在の国際立場からいたしまして、これはまあ適当であると考えられるのであります。なお、対等にできないじやないかという御説でございまするが、この点につきましては、この條約交渉に入りまする前に、予備交渉ではございまするが、特に連合軍の司令部外交局長から、この協定の交渉に当つては米加と平等の立場で交渉して協定締結に関する権限が日本政府に與えられたということになつておるわけであります。そこで、そういう根拠に基いて予備的折衝に入るという段階に相成つたものと考えておるわけであります。
  147. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の伺つた質問に対するお答えとして承わることはできなかつたのですが、よく御承知のように、現在もうカナダ及びアメリカとの間に話合いが進行しているという事実があるのですが、そうして、そういう事実に伴つて午前中の質疑応答を伺つている間にも、対等にして平等な状況の下でない、占領の下に置かれている結果から来るさまざまの問題が発生しているのじやないか。だから日本政府としては、これは他の條項においても同様なんですが、これらの問題を完全な独立を得た後において、平等の立場で本格的に解決して行くという態度をとられないのかということを伺つているのであります。
  148. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 只今お話のように我々といたしましても、できればそういうふうに持つて行くのが筋合だろうと思うのであります。併しまあ向うとのいろいろ交渉の結果、こういう事態に相成りました以上、勿論この交渉の内容如何によるとは思うのでありまするが、恐らくまあ調印というふうなことは講和條約の発効後になるだろうとは思うのでありまするが、現在まだ準備の段階でありますので、従いまして又できるだけ愼重にこの予備折衝はやらなければならん、こういうふうに考えているわけであります。
  149. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次の第二の点について伺いたいと思うのですが、午前中の質疑応答の中に、政府側の御答弁の中に、あたかも日本は過去におけるいわゆる濫獲といいますか、非合法な漁業、或いは国際漁業協定に対して参加の誠意を持たなかつた、或いは参加した国際漁業協定を明らかに違反したという事実があつたと思うのでありまするが、午前中の政府側の御答弁には、あたかもそういうことを否定せられて、それらが事実無根のことであり、誤解に基くかのような御答弁がありましたが、政府は過去の日本がそういうような意味においての不法な漁獲、或いは国際漁業協定に対する参加の不誠意、或いは参加した国際漁業協定の違反というような事実があつたことをお認めになるのですか、ならないのですか。それをはつきり伺つておきたいと思うのであります。
  150. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 午前中私が申上げましたのは、国際連合、国際間の漁業に関する條約協定に十分に加盟をしている体制をとつておらなんだ。又殊にアメリカとの関係におきまする場合におきまして、御案内のブリストル湾の漁業の問題について昭和十一、十二、十三年頃の試漁に基いた問題についてのことで、これが一時濫獲と言われたけれども、決してこれは濫獲じやなしに試漁であつたということを申上げたのであります。従いまして、この点についてさような印象を関係国に與えたので、さようなことのないように、今後速かに、できるだけ早い機会に、希望する連合国と漁業協定その他の方法を以て話を進めて行きたい、こういうように申上げたのであります。
  151. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、一般的に日本が過去において不法な漁業を行い、或いは国際漁業協定に参加するということに十分な誠意を示さず、或いは参加した国際漁業協定を違反したという事実があつたというふうにお認めになつているのですか。ないというふうにお認めになつているのですか。
  152. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは関係しております漁業にもよることでもあります。全体として必ずしも全部が全部日本が常に違反をしておつたとは考えておりません。
  153. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一九三〇年前後あたりから、特にいろいろな意味において、と言いますのは、中には軍事的な意味を以て、国際的な、新聞なり何なり、そういうものを通じて国際的な世論によつて日本が不法な漁獲を行い、或いは国際漁業協定に参加せず、或いはこれに違反したという事実は枚挙に遑がなく指摘せられておつたところであります。我々国民としてそういう批判を読んだときに、勿論誤解に基くものもありましようけれども、併し一般的にそういう至るところに批判が現われるということは、実に誠に恥かしい感じに堪えなかつたのであります。これは公平に見て、全部が全部そういう不法なことをやつたのじやないでしようけれども、併しかなり国際的にこの問題があつたということは率直にお認めになるべきじやないか。又それをお認めにならないために、却つて今後の問題の解決に、それこそ今度は将来に向つて重大な誤解を與えるのじやないか。日本は依然としていわゆる国際的の基準というものを破つた漁業をやるという可能性が多分にあるのじやないか。そんならばこそ現在の問題として起つているカナダ或いはアメリカとの話合いの場合でも、或いはその他の場合でも種々の問題が生じて来るのじやないか。そういう意味では、私は政府は過去の日本の漁業においてそういう誤りがあつたということを率直に認めて、今後そういう誤まりの原因となるものを根絶されるという態度を明らかに示されることが、今後のさまざまな問題を有利に、有益に解決して行く最も最善な方法だというふうに私は思うのですが、そこで第二に伺いたいのは、過去においてそうした不法な漁業が行われたことの原因ですね、その主たる原因は一体どういう点にあるというふうにお考えになつておられるか。
  154. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 只今お話のように、これは総理からもこの点に触れまして、過去における濫獲等の関係を述べられたのでありますが、只今お話にもありましたが、全部がそうではないが、少くとも事実と違つた場合においても、さような印象を與えたということは多くあつたと思います。これは現実だつたと思います。従いまして、このような状態が起つたのは、結局国際間における或いは協定、條約等に加盟をいたしまして、十分な信用を得ておくということが何よりも必要であつたが、さようなことが割に多くとられなんだことにも原因する部面が多いので、従つて今後におきましては、十分関係国と或いは協定、條約を結んで、国際間の信義の上に立つた漁業というものが必要であるというふうに考えております。
  155. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう抽象的なことじやなくて、具体的な理由があるのじやないか。その具体的な理由をしつかり認識しないと、将来においても、ただ国際的な信用を高めるというふうに幾ら努力をなさつて、やさしそうな顔をして見ても、事実がそれに伴わないと、やはり国際的な信頼を高めることはできないのじやないか。で、その主なる原因として、先ず現在考えられますことの第一は、やはりこの平和條約の前文にも誓約されておることと関係して来るのですが、なかんずくこの第九條に関係して来る限りは、日本の漁業における労働水準の低いということ、そのためにその低い労働基準で以て漁業が行われる結果は、どうしても非常な大量な收獲がなければ、それらの漁業労働者の生活が維持できない。或いは遠隔の土地まで行かなければならないとかいうさまざま無理が起つて来る。そういう無理が起つて来ることの根本的な原因の一つとして、日本の漁業における労働基準の低さということが、先ず第一に重要な問題としてあるのじやないか。この点についての反省が不十分でありますならば、やはり将来においてもそういうことが起つて来るのじやないか。これは従つて講和條約の前文における「降伏後の日本国の法制によつて作られはじめた安定及び福祉の條件を日本国内に創造する」という誠意がなければ、如何に国際的な信頼を得ようというふうに美辞麗句を連ねても、現実において国際的な信頼を得ることはできない。そこで特にその点について現在政府は漁業における労働基準の向上ということについてどれくらいの反省をしておられ、又措置をとつておられるのでありますか。それを伺つておきたいと思うのです。
  156. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 漁業のいわゆる労働條件でありますが、水準が低いという点は、我々といたしまてしも率直に認めなければならんと思うのであります。ただ御承知のように、日本はまあ戰争に敗けまして非常な四苦八苦の中から今浮び上がつてつたのでありまして、日本の他の産業におけるいろいろな場合と比べると非常にむずかしい問題があると思うのであります。最近アメリカにおきまして、「まぐろ」の輸入関税の問題等も、今御指摘のありましたような、漁業水準と言いますか、漁撈水準と言いますか、これらの問題がやはり根底に関係していると思うのであります。我々としましては、やはりこういう問題も今後国際場裡に列するためには、よく意を用いてこの上昇を図らなければならんというふうに考えておるわけですが、ただそれがアメリカ日本とは国情も非常に違います。従いまして一拳に国際的水準にというふうなことは、これはなかなか望んでもやれないと思うのであります。併し徐々にでも、漸進的にでもこの漁撈の関係を改善して参るということは非常に大切であろうと思うのであります。例えば一例を申しますと、船内におきまする労務者のいわゆる寢室の問題とか、或いは賃金條件もありますとか、そういうふうな厚生施設的なものにつきましても、なお改善すべき点が相当にあろうと思うのであります。そういう点につきましては、捕鯨船等におきましては、かなりよくなつては来ておりまするが、最近問題を起しております「まぐろ」、「かつお」等の船につきましては、なお十分な域に達していないのであります。これらは一挙には参りませんが、漸進的に上昇を図りまして、国際関係におきましても、十分に他の国々と同調のできまするように努力いたしたいと考えておるわけであります。
  157. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 非常に率直な御答弁であるのですが、勿論今お話のように、日本の漁業労働者の労働基準というものを、今日の直ちにアメリカ乃至国際的水準において優秀な程度まで引上げて行くということはできることじやない。併し過去における日本の漁業に対する国際的な不信というものは、日本が現実において漁業労働水準というものを向上するところの一つの誠意もないということから来ている。これは小林多喜二の「蟹工船」とか、そういう文学とか何とかいう上においても指摘されておるところで、世界的に有名である。日本の漁業労働者が悲惨な生活をして、そうして酷使せられ、従つて又その結果、国際漁業取極というふうなものを片端から違反している、こういうことを又平和條発効後も繰返すようであつては、さつき戰争に負けたとおつしやいましたけれども、戰争に負けたことが無駄になつてしまう。せめて戰争に負けた結果、もはや、そういう日本の漁業における国際的な不信頼というものを繰返さないということについては、特にその責任を持たれる当局においては、重大な決意がなければならないと思うのでありますが、現在非常に低いということは、必らずしもここですぐさま問題にするわけではございませんけれども、併しそれを少しずつ可能な限りでも、徐々にでも向上して行く、そうして誠意を持つて日本の漁業労働水準というものが、絶えず向上しつつあるということがあれば、国際的な信頼をかち得ることができるし、口でそういうことを言うだけで、実際においては少しの措置をとることも惜んでいるというのでは、到底国際的な信頼を向復することはできない。現に今お話の「まぐろ」の罐詰のアメリカに対する輸出というようなものでも、現に向うで四五%というような輸入関税をかけられてしまうのですから、だから、そういう四五%の関税をかけられるのであれば、日本が何もそう安いものを持つて行くというよりも、或いは二五%ぐらいは現在より高くなつても、それは国際的には信頼され、且つ又その市場を拡張して行くということもできるのだから、この労働を切下げ、そうして至る所へ行つてシヤツト・アウトされるということになれば、結局最後のところは、この前の戰争を導いたと同じような状況ができるのじまないか。現在のところでは同じような状況をこさえようとしているのじやないかという感じが非常に強いのであります。これは首相が日本のチープ・レーバーに対する国際的な批判について深い反省の実を示さないというようなことからも来ることでありますけれども、併し直接こういう問題を担当しておられる当局においては、今少し具体的に、少しずつでもいいから、この日本の漁業の労働水準を向上させて行くという事実を示されたいと思うのですが、今ここで明瞭にそれぞれの問題について、こういう対策をしているということを御説明願うことがおできになるならば、是非して頂きたいと思うのですが、どうですか。先ほどの御答弁程度でありましようか。
  158. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 先ほど私が申しました程度で、具体的に特別の事例というふうなものはないのでありますが、これは御指摘のように、今後十分誠心誠意考えなければならん問題であろうと、かように考えておるのであります。
  159. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 非常に残念で、この條項を審議して行く際には、結局私の得た印象としては、従来の日本の漁業における国際的な不信を回復するための具体的な措置はとられていないと判断するよりはか仕方がないと思うのです。その次にやはり従来の日本漁業において生じて来た問題で、そうして又現在第九條に関係して起つて来る問題は、午前中、他の委員のかたからも御質問がありましたが、日本の漁業が先ず第一に考えなければならないのは、近海の漁業であつて中国辺或いはソ連、そういうような所の漁業の状況が改善されるということが第一の問題であります。ところが、これができないために、他の遠隔の土地に行き、従つてコストを要し、従つてかなり乱暴な漁業をやらざるを得ないということになつて来る。この点については政府は全面講和ということは空論であるとか、或いは何らの現実を伴わないと言われますけれども、併し現実には中国なりソ連なりとの講和、平和状態というものが回復されないために、現に第九條に関係して来ても、日本中国の沿岸やソ連との間において正常なる漁業の上における関係回復することはできない。そのために無理な漁業を遠海においてなさなければならないという状況ができて来るのであると思うのですが、こういう点からも、現在この平和條約が行われて調印されたような形で以て、この日本の漁業にとつて第一の問題である中国なりソ連なりとの漁業関係というものを改善して行く恐らく政府は何らの具体的な策をお持ちにならないだろうと思うのです。そのために、而も若しこの平和條約が締結されたことによつて生じて来るような状況が長く続くとすれば、実に日本の漁業にとつて重大な打撃を與えることになる。従つて又これは日本の漁業の労働基準を上げて行くということにも非常な困難を生じて来るし、いよいよ他の方面においては再び日本の漁業に対する国際的不信というものを招くというふうに判断せざるを得ないのですが、これらの点について政府はどういうふうにお考えになつているのか、その所見を伺いたいと思います。
  160. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 中国及びソ連は、只今お話のように日本と海を接しておりまする関係で、漁業問題につきましては、殊に最も直接に関係の深い次第であります。従つてこれらの国国と国交を回復いたしません結果、漁業問題につきましても、未解決のままで残つて来る状態は誠に遺憾に堪えない次第でありますから、これらの問題につきましても、できるだけの方法を以て、少くとも漁業の問題が何とか打開をするような方法をとつて来なければならないと考えております。ただ、これは実際上の問題としては、なかなか簡單に参りにくい点が多々あろうと存じます。併し先般も総理からも、あらゆる機会方法を以て十分話合いを進めることも決して不可能ではないから、そういう点についても努力をいたして参りたいと申しております通りに、政府は極力この方面についての方策を進めて参りたいと存じております。
  161. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あらゆる方法を盡し、べストを盡されるということだけでなくて、具体的にこの漁業の関係においては、中国或いはソ連との関係を改善して行くことを妨げておるようなものがあれば、その障碍を除いて行くということをお考えにならなければならないかと思うのです。例えば平和條約の他の條項において、それを妨げている條項が多々あります。例えば昨日伺いました台湾の問題なんかもその一つです。そういうような障碍をなしておるものをそのままにして、あらゆる手段を盡し、最善を盡されても、その効果はあり得ないんだ。ですから、私の伺うのは、こういう点において政府は根本的に考え直される必要があるのじやないか。従つてこの平和條約の中の條項であつても、例えば中国との関係においては、この台湾に関する問題については根本的に考え直される必要があるのじやないか。そういう根本的な中国との関係、又はソ連との関係の改善を妨げておるようなものをそのままにして如何なる努力を盡されても、これらの問題は解決しない。第九條に関する問題は、日本の漁業にとつて回復すべからざる打撃を受け、その回復すべからざる打撃の中からたまたまこの前の戰争を導いたと同じ種類の原因が発生して来る。これは実に恐るべきことでありますが、そういう点について根本的に考え直すという必要を政府はお感じになりませんか。
  162. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) おのずから中国ソ連との関係は違つておると存じます。中国との関係におきましては、日本の介入することのできない、いわゆる国際間の問題によつて、今度の平和会議におきましても招請をなし得なんだ状態であると考えております。従いまして、この條項の内容の問題にはなかつたはずだと考えております。ソ連の問題に関しましては、今二、三の要項を拳げてお話がありましたが、それよりも、もつと根本的に、ソ連のグロムイコ代表が申しましたように、十三項も、而も基本的な線がソ連考えておる線でございますから、従つてそれが根本的なものであると考えております。
  163. 永井純一郎

    永井純一郎君 最後の総括質問のときに農林大臣に来てもらつてと思つたのですが、丁度水産庁の專門の次長が見えておりますから、関連してお伺いしたいと思いますが、今羽仁さんからいろいろ御質問がありましたが、労働水準のその問題もそうでありまするが、結局マツカーサー・ラインがなくなつても、北洋漁業或いは東支那海のほうの漁業は実際上は十分にできないというようなことになつて来ると同時に、この第九條のほうにおきましても、公海のこの漁業の制限等についての協定が行われるということになつて参ります。ところが一方、現在御承知通り、沖合漁業、それから特に沿岸の漁業は非常に困難を来たしておつて、特に沿岸漁業の漁民のごときは生活保護法の適用か何かを受けなければ、すでに生活ができにくいというような状態まで追い込まれて来ておるのであります。そこで、第九條と、それからこの平和條約の前文の国連憲章の五十五條等から来る、この国内安定と福祉の條件を創造する努力をしなくちやならんというこの問題とは、なかなか矛盾して来る。こういうふうに思うのであります。この安定及び福祉の国内における創造に対する努力、これは農業関係においても同じことが今後具体的に作つて行かれなければならないわけでありますが、特に漁民におきましては、その生活は相当逼迫しておる今日でありますから、直ちにこの第九條と同時に、この條約の前文、こういう漁民の生活の安定と福祉の創造のための具体的な政策というものが、例えば沖合漁業をどうするとか、沿岸漁業をどうするとかいうような差当つての問題を第九條と同時に農林省は取上げて行かなければならない、こう思うのでありまするが、第九條に関係してすでに交渉が始まつておるようでありまするが、同時に今私が申上げるような前文に相当する、或いは国連憲章の五十五條から来る、そういつたような努力に対しての具体的な案を先ほどは示されないようでありましたが、そういう準備は同時に今なされつつあるかどうかということを先ず伺いたいと思います。
  164. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 只今意見にありましたように、いわゆる條約の協定の問題、これはまあ海外に対する発展策でもあるわけでありまするが、同時に国内的に今日の危機に瀕しておりまする漁村の安定策を講じておるか。こういう質問でありましたが、水産庁におきましても、それらの点につきましては、いわゆる国際協定を最も誠実に履行するという建前からいたしましても、この国内的な諸問題、特に沿岸とか沖合漁業の問題等につきましては、やはりこの取扱方が直ちに国際的の漁業の誠実さというものの反映にも相成りまするので、只今見えておりまするへリングトン氏が先般アメリカに帰られる際に例の五ポンド計画というような一つの、非公式ではありまするが勧告があつたわけであります。この中には、大体只今意見にありましたような国内的な問題、特に沿岸の問題、沖合の問題、いろいろな問題を包蔵しておるのであります。大体それに準拠いたしまして、遅蒔きではありまするが、瀬戸内海あたりの小型底曳船の整理の問題でありますとか、或いは沖合の「まき」網その他の問題でありますとか、これらの調整を図るべくいろいろ努力をして参つておるのであります。今年の補正予算におきましても、その一部ではありまするが若干予算の通過を見まして、只今それらの実施方につきましていろいろ努力をいたしておるわけであります。こういうことの実施如何がかかつて国際協定に好影響を與えると思うのであります。併し又半面これがうまく参らないということでは、只今御指摘のように、協定自体につきましても日本に対する信用というものの度合が変つて参るのでありまして、我々としましては、愼重にそういう点を考慮いたしながら努力をいたしておるのであります。
  165. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで、要は、漁業から考えれば、遠洋と沖合と沿岸が一連に考えられないと、私は先ほど申上げたことにならないと思うわけであります。そこで第九條に基くいろいろな協定をなさると同時に、私が申上げたいのは、今あなたが説明をされたことを具体的に、この第九條の協定と同時に並行しながら、必ず具体案を作つて実施して行くように、予算化して行くように農林省はする、又すべきだと思うのであります。必ずそういうふうに進めますということをはつきり一つして頂きたい。こう思うわけであります。
  166. 山本豐

    政府委員(山本豐君) お尋ねのように現にやりつつあるのでありますが、今後も一層そういう点を注意いたしまして実施に移して参りたいと考えております。
  167. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 第九條の問題につきまして、水産御当局にお尋ねいたしたいのでございますが、吉田首相からダレス特使に送りました書面のうちに、関係各国との協約ができるまでは、一九四〇年に日本の漁船が出漁しておつた区域以外には出漁することを禁止するということを申述べておるのであります。この禁止すべき水域をどういう方法で国民に周知せしめるか。その具体的な方法を伺いたいのであります。
  168. 山本豐

    政府委員(山本豐君) ダレス・吉田書簡におきまして、一定の区域、要するに一九四〇年現在に日本が行なつていなかつた区域には日本の漁船の出漁を禁止するということはお説の通りであります。この実際的のやり方の問題を御質問なさつたのだと思うのでありますが、結局これは個々の漁船に対して十分その区域を承知せしめることが必要であると思うのであります。これはその具体的方法といたしましては、今、係りのほうでいろいろ研究はいたしておりまするが、実際的には現在マ・ラインもあることでありまするので、現状におきましてはそういう方面に直ちに出るという事例もないのであるし、このいわゆる協定までの間に一つ具体的に周知せしめる方法をよく検討いたしたいというふうに考えるのであります。
  169. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 勿論只今この占領下にありましては、問題は起つて来ないのであります。日本が完全なる自主権回復いたしまして、そうして関係各国との間に協定ができるまでの間という真空間における問題であります。従つて私はこの点についてお尋ねいたしたのでありますが、外務当局のほうでは、そういう面がはつきりしておらないで、水産当局において研究中というお答えでありました。併し一面、大型漁船による出漁は、勿論、農林大臣乃至は他の都道府県知事の許可によつて行くから、それに制限を加えるということもできるのでありまするが、必ずしも許可を受けないで出る小型の漁船が相当あるのであります。勿論アメリカの沿岸まで行くということは考えられませんけれども、その他の水域においては相当近接した地方もありまして出漁し得る状態にある。従つてマ・ラインが解消するということになりますと、このマ・ラインの撤廃乃至は緩和を六年間待望しておつた漁民は一せいに喜んで出漁するような状態になるのではないか。その際に、あの制限を破つたならば嚴重なる処罰をするということまで言われているその区域がはつきりしなければ、徒らに処罰を受ける者を作ることになる。それを公海における漁業を法律で禁止するのであるか、或いは何らかの方法で禁止し、それを周知せしめるという方法がなければ、この吉田首相の言明は守られないのじやないか。そこに多分の懸念があるのであります。そういう意味において、主権回復して、そういう関係各国との協定ができるまでの間をどうして知らしめるか。  それからもう一つは、若し関係各国がこの漁業協定に応じない場合は、その釘付けは、いつまでも続くのかということなんであります。この二点を伺いたい。
  170. 山本豐

    政府委員(山本豐君) この水域を明瞭にすることが必要であるとは思うのでありますが、このダレス・吉田書簡の当時の考え方としましては、一つ委員会と申しまするか、そういうものを組織することによつて、それが具体的ないわゆる監視役といいますか、そういう役割を果すという構想であつたのであります。併しその後、協定問題が非常に先走るといいますか早くなりましたので、実はその委員会の設置というような問題はそのままに一応相成つているのであります。併し先ほど申しましたように、水産庁といたしましてはこの水域等をいろいろ係りのほうの手許で調べまして、大体の一つの分布図と申しますか、そういうものができておりますが、それらをやはりよく練りまして、若し必要がありますればそういうものを明示するとか何とかいたしまして、もう一つ法律的にこれを取締るという問題もあると思うのでありますが、これは特に特別な法律は必要でないのじやなかろうか。どこまでも暫定的のこれは措置でありまするので、現在の漁業法の運用を十分注意してやればできるのじやなかろうかと、こういうふうにまあ考えておるわけであります。
  171. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 次長のお考えは主として米・加に対する問題を中心にお考えになつておられるようでございますが、私はむしろそれ以外の国との問題を考えておる。米・加の間は御承知のようにそう差迫つた日本とのトラブルの起る懸念はないと思うのでありまするが、その他のむしろ西或いは南のほうにおける水域においては、こういう問題が非常に懸念をされる。その点を私は伺つておる。
  172. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 特にこの西の方面は水域が非常に狹うございますので、実際問題としましてマ・ラインが撤廃になりますると、少し飛ばせばすぐ上海の近くにまで行くということがあると思うのであります。ただ御承知のように、まあ中共、ソ連等との関係は、現国際情勢の下におきましては具体的な折衝には入らないわけでありまするので、実際問題としましては現在いろいろやつておりまする取締船等を、これを保護、指導のものに転換させまして、そして特に線をどうするという問題もありましようけれども、そういう線は一応ないという状況に相成りまするから、漁業の進め方につきましてできるだけ拿捕事件とかそういうものの少くなるように、或いは未然に防止するとか、そういうような方法を講じまして、まあ善処して参るようにいたしたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  173. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 どうも私にはまだしつかり呑み込めないのでありまするが、先ほども申上げますように、このマ・ラインというものによつて制約された苦痛はもう堪え切れないでおるのであります。そういう関係から、これが撤廃になるということになりますと、籠から放された鳥のごとく自由に飛び出して行く懸念が多分にありますので、それがために折角諸外国に対して信頼を得るために吉田首相が言明されたことにそぐわない、むしろそれに悖るような行動があつたとしたならば、今後日本の漁業の進出に非常に惡影響があると思いますので、この点につきましては水産当局が漁業法の運用によつて行けるという御趣旨でありますが、果してそれが行けるかどうか、私は多分の疑問を持つております。併しながらこれについては万全の処置を講ぜられまして、今後日本が自主権回復した後において自由に就撈し得る区域を少しでも狹めないように、農林当局のお話によりますと、西はべンガル湾までも行つた実績があるのでありまして、そういう点につきまして今後いろいろ問題を起すようなことがあつたとしたならば、非常に日本の不仕合せになりますので、その点を懸念してお尋ねをしておるのでありますが、どうか一つそういう方面に万全の措置を講じて誤りなきを期せられるように要望いたしまして質問を終ります。
  174. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 水産庁次長に御質問のかたはございませんでしようか。
  175. 曾禰益

    ○曾祢益君 ちよつと伺いますが、農林大臣は今日は来そうもないのですか。
  176. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 今申上げようと思つたのですが、目下衆議院の本会議に予算案の上程中のために、御要求の農林、法務総裁、通産大臣等それが終了いたしませんと出席が不可能でありまして、大体まあ一時間くらいは見通しがつかない状態でございます。若し外務当局だけに單独で御質問できる部分がございましたらお続け頂きたいと思います。
  177. 曾禰益

    ○曾祢益君 それでは農林大臣が来られましてから、農林大臣に対する質問を続けてやることをお許し願いまして、折角水産庁の次長が来ておられますから、私も取りあえず第九條に関連する事項だけちよつと当局にお尋ねしておきたいと思います。  先ず日本の漁業が戰前と比較いたしまして、現在においてこの沿岸漁業と、それから公海、マツカーサー・ラインの中でありますが、公海漁業との漁獲の割合が一体どういうふうになつておるかという点について伺いたい。戰前と比較いたしましてどういうふうになつておりますか。
  178. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 細かい数字を用意しておりませんが、極く常識的に考えまして大体沿岸関係が八割くらい占めておると思います。
  179. 曾禰益

    ○曾祢益君 それで戰前との比較では大体どういうふうに。
  180. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 戰前におきましては、いわゆる公海、遠洋方面が相当区域も広うございましたので、実際の漁獲の絶対高というものは戰後より多いわけであります。併しながら沿岸と公海との比率というものは、戰前、戰後を通じてそう違いはないと思います。
  181. 曾禰益

    ○曾祢益君 戰前の比率ははつきり伺えなかつたのですが、とにかくこの終戰後今日まで、沿岸漁業が非常なオーバーロードになつておると思うのです。従つてこれを日本の見地から見まするならば、漁業の保存と言いまするか、魚族の保存の見地から言いましても、かような状態においては日本の沿岸における魚族の保存ということは到底不可能である。従つて日本としては当然に公海における自由な漁業に対し重大な関心を持たなけりやならない。かように考えるのでありますが、その点は当局は如何にお考えでありますか。
  182. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 大体において御意見通り考えておるわけであります。沿岸漁業におきましては現在非常に終戰後の濫獲が祟りまして、実際問題としまして獲れる資源よりは船のほうが遙かに多過ぎる、従つて一船当りの漁獲量というものは低下しておる。それが又漁民の生活を困窮に導いておるゆえんになつております。殊に現在まあ国際的にも魚族の資源保護という問題が相当大きく浮び上つておる関係もありますので、水産庁といたしましては沿岸或いは沖合のこれ以上の漁船は抑えて行く、又必要がありますれば或る種の船につきましては減船整理をする、こういう方針をとりまして、現在は、やつておるわけであります。従いましてその半面といたしまして、その沿岸の「のり」とか「あさり」のような浅海増殖の面でありますとか、或いは又海洋養殖におきましては、公海、沖合の増産の方面に非常な関心を持つておるわけであります。
  183. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今答弁に明らかにあたりましてたように、日本といたしましてはこの講和條約によつて独立を回復する、このことによつて、非常にオーバーロードになつてつた沿岸漁業、このことが日本の漁民の生活に対しても非常な圧迫を加えておる実情であるから、日本の食糧の改善から言いまして、又日本の貿易輸出品の見地から申しましても、どうしても公海に対する漁業権の合理的な進出ということが絶体絶命的なこれは至上命令だと考えるのであります。そこでさような講和條約によつて日本が独立を回復して、マツカーサー・ラインが撤廃されるという状況になるわけでありますが、そこに大きく分けまして二つの制約が出て来ておると考えております。第一の制約は、いわゆる公海におけるいわゆる濫獲禁止という形で提起されておりまするところの、日本の漁業の或る種の外国領域に近い公海における出漁に対する禁止乃至は制限的な動きだと思います。第二の重大な障害は、先ほども同僚委員から御指摘がありましたようないま一つの今度の講和そのものの不完全性と共産主義国の日本に対する政治的な反感から来るところの困難性だと思うのであります。そこで第二の問題については、これは漁業の関連からのみ解決されるものでないことは申すまでもないことでありまするが、併しこれらの共産圏諸国との外交上の国交回復に関する日本としてとるべき措置はとつて行くが、必ずしも直ちに満足な状態は出ない。然るに一方におきまして、すでに現在において、占領期間においてマツカーサー・ラインの中に出漁しているところの日本漁船に対してすら、これは必ずしも共産圈国の権力を発動するばかりではなくて、いわゆる台湾の国民政府側の権力の発動もあつたやに聞いておりまするが、いわゆる拿捕問題が起る。必ずしもマツカーサー・ラインを突破したものではないものに対しても、これは特に中共当局だと思いまするが、中共当局の見解によれば、マツカーサー・ラインなんかというものは全然認めない、東支那海というものはそれは中国の領海である、かようなことを少くとも日本の拿捕された船員に対してはつきりと公言しておる。かような状態で、すでに現在におきまして、講和以前においても起つているということは我々がよく承知しておるところであります。而もこのたびの平和條約に対して、中共当局、或いは北鮮当局、或いはソ連邦当局が如何なる政治的態度で迎えておるか、すでに皆さん御承知通り。そういたしますると、甚だ不幸なことではありますが、このマツカーサー・ラインがペーパーの上において如何に撤廃されましても、実は我々から見れば完全な公海、オープン・シーにおきまして、日本の漁船が平常な、正常な漁獲に従事している場合でも、これに対する妨害、或いは拿捕という問題が起らないとは必ずしも断言できない。で、その場合にです、そういう問題をどういうふうに外交上、国際法上お考えになるか。それに対しまして如何なる日本の正当な漁船の活動、海員組合の諸君が常にその点を非常に重視しておるのでありまするが、この日本の漁民の保護、漁船の正常なる活動に対する日本政府の如何なる措置があるか。この点を伺いたいと思います。これは水産庁ばかりの問題でもございませんので、要すれば外務次官からも御見解を伺いたいと思います。
  184. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは誠に重大な問題でございまして、殊に只今御指摘のような事例は、昨年の暮から本年の春以後におきまして、相当頻繁に起つて来た事例でございます。従いまして、当時国会におきましてもあらゆる角度から御検討を願い、これに対する処置等もそれぞれ外務省或いは水産庁でいたして参りつつあるのであります。併し現実の問題といたしまして、マツカーサー・ラインの中にあるなしにかかわらず、さような事態も起つたこともあるようでありまするし、又只今お話のありましたような、捕われました漁民はマツカーサー・ラインを否定しているような現実の事実を聞いて参るというような状態で、平和に漁業をしておる人たちにとりましては、誠に大変な脅威に相成つておる次第であります。そこで、現段階におきましては、司令部等を通じまして、この事態の解消方についていろいろ話を進めて参りましたと同時に、関係しておりまする或いは中国或いは朝鮮等の問題もありましたが、これらの問題につきましてはそれぞれ了解を得まして、還してもらうという方法を具体的にとつてつたのであります。併し今後独立しました後におきましての問題といたしましても、かような問題が全然ない状態に相成りますることを希望いたしまするが、併し現段階における状態から見ますると、必ずしもさような状態ばかりではないということも予想せられまするので、この点につきましては、現在からも十分対策を講じながら進めて行かなければならないと存じております。結局一つ国際的な強い立場によつて解決されて来なければならない問題だと存じます。
  185. 山本豐

    政府委員(山本豐君) 只今お尋ねの拿捕船の問題につきましてでありますが、大体は外務次官からお述べになりました通りでありますが、水産庁といたしましても、現在におきましては大体十二、三隻の船を以ちまして、いわゆる監視船というものを出しまして、いろいろと取締つておるわけであります。マ・ラインがなくなりますると、この船は必要なくなるのじやないかというふうな見方もあるのでありまするが、只今御指摘のように、拿捕の問題が絶無になるというよりは、むしろ現在の線より外に出るという可能性も相当にありまするので、拿捕問題が相変らず起るのではないかというように予測できるのであります。従いまして、これをできるだけ事前に防止するという意味におきまして、マ・ラインがなくなりましても、現在ございまする船を更に増強いたしまして、二十七年度の予算にも若干を提出しておるのでありまするが、それと海上保安庁と十分な密接な連絡をとりまして、こういう拿捕問題の未然防止というようなことに全力を盡して行きたいと、かように考えておるわけであります。
  186. 曾禰益

    ○曾祢益君 先般の拿捕問題のやかましかつた当時の拿捕された船員諸君の公述によりまして、多くの場合においては農林省の監視船なんかそばにおらなかつた、或いは警告すら発してくれなかつたということを聞いておるのであります。これは参議院の水産委員会の記録を御覽になればはつきり書いてあることであります。徒らに過去のことを言いましてもしようがありませんが、この監視船或いは海上保安庁の船によるところの拿捕の未然防止ということについては、これは徒らなる国際紛争を避ける意味と、今一つは正当な漁民の立場、船員の立場を守る意味から言つて、十分なる措置をとつて頂きたいということを申上げておきます。  それから外務次官の御答弁に、何か強い措置ということを言つておられましたが、それはどういう意味であるか。我々はかような国際紛争を避けるべく最善の努力をしなければならないのでありまして、その意味において私は監視船なり海上保安庁の船の活動そのものが国際的な紛争を起さないことを念じつつ、これは拿捕を未然に防止する意味において肯定しておるのですが、而してさようなことがないことを望むのでありますが、若しそれにもかかわらず拿捕等の行為が行われたといたしましたならば、如何なる法律上の基礎において日本が返還の請求或いはその不正行為に対する是正を求める御所存であるか。この点をはつきり伺いたいと存じます。
  187. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 強い措置という言葉を使いましたが、多分妥当なる措置という意味だと存じます。実は朝鮮関係でも再三これが起りましたが、朝鮮関係はだんだん話合いを進めておりまするから、今後はこの問題は大体解決するのではないかと存じます。又台湾方面はこれは在外事務所を設置いたしまするので、これも大体今後は解決するのではないか。中共関係及びソ連関係というものが中心の問題になつて参りまするが、この問題につきましては先ほども申上げましたように、先ほど水産庁からもお話になりましたような防止策、並びに起りました場合の今後の動きにつきましては、国際的に十分輿論も喚起をいたしまして、これを防止すると同時に、それが円満な引渡しが講ぜられ、又さようなことがないような方法をとつて行かねばならないと考えております。
  188. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に、私が先ほど申上げました第一のほうの障害、即ちこの政治関係日本の国交上の不安定から来るのではなくて、いわゆる連合国側との平和條約に署名し、これが批准してくれるであろうところの連合諸国との間における公海における漁獲の問題についての障害について伺いたいのでありまするが、先ほども同僚議員からお話がありました今年の二月ダレス氏が第二回に日本に来られたときに、総理からダレス氏に書簡を出して、この書簡に関連いたしまして私は総理大臣にも質問したのでありますが、公海における漁業というものは、これは自由でなければならん。併し公海における漁業と言いましても、現実には特定の国、例えばアメリカ或いはカナダという国が養殖をしておるような特殊な漁族につきましては、事実養殖する国の権利を侵すような日本漁民の活動というものは不公正な競争と言われてもこれは当然ではないか。従つてさようなものについての自省をすることはわかる。これは一面におきまして、公海におきまして、一種の自分の国の領海の外に、公海におきまして一種の保護地域というようなものを広汎に設定しまして、ここに外国の漁獲の活動を許さないというようなことを外国側から主張して来るという場合に、そのようなことを若し相手国がアメリカであるというような理由で止むを得ないというような観点に立つて、これを許容するならば、そのことは決して日本漁業のアメリカ方面における活動に対する制限たるにとどまらない。同様なことは、南におきましても、ニユージーランド、オーストラリア、或いはフイリピン、或いはインドネシア、これらの国からも同様な保護地域の設定、公海における彼らのみの独占的な漁場の設定というようなことを相互主義の名において日本に押し付けて来る先例を開くことになつて来やせんか。又中国につきましても、或いは韓国につきましても同様な問題が起る。こうなりますと、北洋漁業は見込みはない。東支那海においては只今の御説明もありましたが、非常に政治上の不安定がある。そうして南或いは東、北のほうに対する漁場においてはすべてがシヤツト・アウトを食うということになつたら、日本の漁業は一体どうなるか。かような非常な危險があるから、どうぞそういう点は十分一つ心してやつてもらいたいということを言いましたのに対して、総理は、しつかりやりますという返答をされておる。私はしつかりやることは絶対必要なんだ、かように考えておりますが、一体現在行なわれておりまする日米加漁業会議におきまする……私は新聞の報道しか知らないのでありますが、この日米加三国漁業会議におけるアメリカ乃至はカナダの代表のお考え方と、一体日本政府の基本的な考え方と、どこがどういうふうになつておるか。果して公海における濫獲防止、魚族の保護、これも結構なんです。一概に否定するものではありませんが、先ほども私が申上げ、水産庁の事務当局も言われたように、日本状態から言うならば、この魚族の保存は先ず日本の近海における魚族の保存をやらなければならん。その上に公海においては自由の原則を立てなければならん。自由の原則の上に立つて而も合理的妥当なる魚族の保存にはこれは協力して行かなければならない。併しながらそれを公海における魚族の保存に名をかりたところの特定の保護地域の設定みたいなことに、政府としては、よもや節を屈して賛成するというようなことはないと思うのですが、それらの点に関する政府のお考えを承わりたいと思います。
  189. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 公海における自由の原則は、只今お話にありましたように、これは根本の問題でありまして、殊にこの原則に対してはアメリカが最も強く従来主張しておる点だと存じます。併しアラスカのブリストル湾等の「さけ」の漁場の問題を中心にいたしまして、従来からの動きを見ますと、一時アメリカの上下両院に提出されましたアラスカ「さけ」漁業保護法案等は、これは成立せずに、今公海の自由の原則を最も堅持するアメリカにおいては、これは通過をいたさなかつたのでありますが、領海から百マイル或いはコンチネンタル・セルフというような所まで線を引くというような結果を一時は言われておつたこともあります。又一九四五年のいわゆるトルーマン声明は決してそうではなかつたでしようが、只今お話のありましたような近海の漁場に対する公海にまで及ぶ一つの権限をその国が持つというような観念の宣言がなされ、従つてむしろこれは逆な効果を来たしまして、メキシコなり、中南米は二百マイルが漁業の自由の権利だということを主張して、従つてこの問題もそのままになつておる状態だと存じます。むしろ逆に、公海における漁業の原則は、今までアメリカが努めてこれを堅持して呉れておると存じます。従いまして、私ども只今お話になりました漁業は、殊に公海における漁業は、日本としては最も中心の問題でありますから、公海における漁業の協定の中心は、この九條にありますような或いは規制、制限、漁族の保存或いは発展という、いわゆる国際間の最も妥当なる漁業の将来性を維持するための適正なる方策における協定というものが結ばれる本質的なものになつて来ると見なければならないと存じます。従いまして先般、只今お話になりましたように、総理からもお答え申上げましたように、この公海漁業の正当なる協定という点に向つて今度のアメリカ、カナダの漁業協定も結ばれて来なければならないという強い考え方は、多分アメリカもこれを了承して呉れることだと考えながら進ませておる次第でございます。
  190. 曾禰益

    ○曾祢益君 外務次官のお考えは原則論としては私と一致しておりますし、又第九條の規定そのものには必ずしも反対の意見は持つておりませんが、現実の問題としては、アメリカがすでに、只今外務次官から私よりも詳しく御説明があつたように、アメリカが公海漁業の自由の原則に反するような国内的な圧迫の結果、すでにいろいろな法令、或いはトルーマン宣言という形で出ておる。それから今度のアメリカ代表のへリングトン氏の説がかようなやはり尾を引いておるのではないかという危惧の念を非常に持つておるわであります。これは決して私だけでなくて、すでに皆さん御承知のように、代表的な新聞紙の社説等におきましても、これはただ單に政府に対する反対というような立場でなくて、国民的な視野から非常な重大な危惧を持つている。これが事実だと思うのです。そこで更にその点について御質問したいのですが、その前に非常に細かいことですが、第九條の「公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する」と書いてあるのですが、英語ではフイツシングと書いてあるのですが、これは一体漁業の保存というのは、日本文は訳文じやないという建前でしようけれども、事実、英語から訳したことは万人の見るところ間違いない。果して漁業の保存という言葉がぴつたりした訳語であるか。むしろ漁報の保存というほうが正直な訳語ではないかという感じがするのですが、その点は一体條約局長の御見解はどうなんですか。
  191. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は意見を求められたときに我々部内でも随分議論した点でございます。漁業としたほうがいいか、漁場としたほうがいいかということですが、漁場といたしますと、フイツシング、グラウンドという地域的観念が強く出てしまいますので、ここでいうのは魚族、漁場と両方含めて広い意味での発展保存でございますので、完全ではないでしようが、漁場とするよりも漁業のほうが、より、よろしかろうということで、さようにいたした次第であります。
  192. 曾禰益

    ○曾祢益君 その点は私も、そう御説明を伺えば、私のみならず、同僚委員のかたも、又国民もわかると思うのですけれども、ただその場合、漁業というだけではやはり感じが出ないので、やはり漁場、魚族を両方含んだフイツシングという言葉は必ずしも漁場とは限らない。漁業という意味もあるでしようけれども、現実にはやはりここは漁場的な観念が相当向うの原案の中には入つているのじやないか。それをなんだかちよつと肩すかしを喰わして漁業と訳しておるようなきらいがあつて、強いていえば、国民をたばかるのではないかという感じがしたわけなんです。そこで只今の御説明のように、この「漁業の保存及び発展」と書いてありまするが、もつと通俗的にいえば、やはり漁場に関連した魚族の保存及び発展というような観念が、私はなんといつても中心だと思う。そこで、そうなつて来ると、第九條もなかなかこれはそう簡單にはそういうところを見逃してはならない。そこで公海における一体漁場というものは、どういう所が日本から見て、過去の実績に鑑み、今後の発展のために必要な一体漁場であるかどうか。この点について水産庁の意見を伺いたい。
  193. 山本豐

    政府委員(山本豐君) お答えいたします。詳細なお答えは、ちよつと、しかねるのでありまするが、大体ダレス・吉田書簡にございます一九四〇年の時点におきまして日本が出ておつたという区域が、大体今のお話の区域になるのではなかろうか。なお、それ以外に、やはり全然未開発の漁場も多少はあると思うのでございまするが、現在そういう漁場にいつては資料がありませんし、明瞭になつていないのであります。その先ほど言いましたような区域はちよつと口頭で御説明いたしかねるものでありまするが、北はべーリング海峽、カムチヤツ力に沿いまして、オホーツク海まで、それから東のほうはミツドウエーあたり、東経にしまして百八、九十度ぐらいまでの所であります。南のほうは濠洲に極く接近した所までが大体こういう区域になつておるのであります。その後のいわゆる漁場の事情只今のところ明瞭ではありませんが、そういう方面がほぼ考えられる主なる漁場になるのではないかと考えます。
  194. 曾禰益

    ○曾祢益君 実はもう少し具体的に伺つておいたほうがいいのですが、極めて通俗的に言いまして、やはり魚の種類によつて、大体の魚種というものはあるのだろうと思うのです。そこでアメリカ、カナダの場合に、現実にどういう所が、アメリカ、カナダが心配しているような濫獲状態になつているのか。その点に関して一体日本政府はどういうふうに考えているのか。つまり濫獲状態、濫獲状態と言われるが、現実の濫獲なのか。それともやはり一定漁場といいますか、地域に関しては、まあ率直に言つてこれ以上来てもらいたくないという程度のものであるか。その点を專門的に見て一体どういうふうにお考えになるかを伺いたいのであります。
  195. 山本豐

    政府委員(山本豐君) これは漁場によりまして一概には申されないと思うのであります。恐らく只今アメリカとして問題になつておりますブリストル湾方面の鮭鱒漁業につきましては、これは私も素んでありますが、常識的に考えて、これ以上取られては困るというところではないかと思います。併しこれも日本のほうで調査をした資料はないのでありますが、アメリカには恐らく適当な資料があろうと思います。どこまでも、そういう濫獲であるかどうかということは、一方的でなく、関係国が相互に何かの機会を以ちまして、お互いに資料を出し合うとか、又お互いに調査し合うとかいうことをしまして、数字の上でよく検討した結果でないと、簡單に常識的にこれは濫獲になる漁場であるというふうに結論は導きにくいのではないか。又そういうようなあり方で今後未開発の漁場等についても考えて参るのが正当ではなかろうかというふうに考えております。
  196. 曾禰益

    ○曾祢益君 大変結構な御答弁で、まさしくそうだろうとは思つていたのですが、これは私、全くの素人ですが、魚の種類によつては実際その国が養殖しているのも同然だ、そういうものと、そうでないものと、分けて考えることが先ず第一である。それから第二には、今水産庁の次長が言われたように、決して一国だけの独断的な見地に立つた、濫獲だ、濫獲でないというような判断で行くべきではなくて、政府がしばしば言つておられるように、これは占領期間中に締結する協定ではあるけれども、飽くまで平等な立場に立つて、そうして公平な立場から、日本側が納得する、真に日本側も成るほどこれ以上では、濫獲だという彼等の主張が正しいという客観的事実があつた場合に、それは、そういうところは愼んで行こう。かような措置をとらないと、表面は相互的に立つているようでも、いや、アメリカの漁船は日本の近海には出漁しないのだから相互主義じやないか、こういうことで行くならば、これは事実においては非常な一方的な、公海における日本の漁業権の侵害になる。この点は私から口をすつぱくして申上げることもない事柄ですが、どうもその点については只今水産庁次長の言を私は一つ立派な証言として承わつておきまするが、どうぞ不当なる圧迫に屈しないで、不当なる相互主義の名における不当なる協定に署名することのないように、十分に一つその点は国益を守つて頂きたいと思います。ついでに外務次官からも一つ見解をもう一遍伺つておきたいと思います。
  197. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 只今水産庁次長からお話のありました点、全くその通りだと存じております。結局具体的に申しますると、従来から問題になつておりますブリストル湾を中心にした「かに」の問題は、従来からやつておりますが、全然問題はありません。「さけ」の漁業の問題、これを中心にした問題における世論の刺戟ということになつたのが中心だと思います。従いまして「さけ」漁業につきましては、いろいろとアメリカにおきましても世論が強く響いておるところであります。併し従来からここに対しましては、私ども外務当局として関係しておりまする限りにおきましては濫獲をしたことはないと存じます。ただやつたことが世論を刺戟したことと存じます。従いましてこの点は單なるこのブリストル湾の「さけ」の漁業だけによる問題で公海の漁業権の放棄というようなことになりますると、今後日本の行いまする漁業について大なる制約を受けまするから、十分この点は対等の地位において正当なる協定が結ばれるように努力して参る所存でございます。
  198. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の外務次官の御言明を諒とします。  それから先ほど同僚委員からいろいろ指摘されて、水産庁からの一応のお答えがあつた点ですが、まぐろの問題でありまするが、輸入税の問題でありまするが、先ほどの水産庁の御答弁では、如何にも日本の漁民の労働水準が低い。従つて一種のこれはダンピングといいますか、不公正なる競争である。だから関税を上げたのも止むを得ない、そういうふうに積極的には言われませんでしたけれども、そうもとれるような御言明でありましたけれども、私はその点に関してはさように考えておらないのであります。これは、もとより日本の漁民の労働水準が低いということは当然でありまするが、若しそういう点ですべてが日本の貿易品に対しまして、関税をどんどん上げて行くということを止むを得ないという態度をとれば、これは実際上において非常な不公正なる、日本の産業に対する圧迫になる。殊にまぐろの場合につきましては、初め罐詰をやられ、次に冷凍まぐろをやられ、そうして現在の日米加漁業協定の問題に来ておる。これは両者の関連はないかも知れませんが、如何にもあるがごとき、一種の関税戰争的な圧力みたいになつておるという、この事実があります。そこで国内的に労働水準を上げることは当然やらなければならぬ。やはり同僚委員が言われた通り、それはそれとしてやつて行くが、一方において外国の輸入関税の引上げ、今日この際日本に公正なる平和條約を與えようとするアメリカ側の措置としては、私はこれは政府としては、少くとも外務当局としては、さような如何にも御尤もでございます何もプロテストしないとは言いませんが、その点、外務当局は一体どう考えておられるか伺いたいと思うのであります。
  199. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話の点は多分まぐろの関係におきましては冷凍まぐろと罐詰まぐろの両方の関係におきまして、問題が生じて来ると思います。罐詰まぐろは、先般アメリカにおきまして関税が上りました関係から、昨年の一月から六月までの比例を考えますと、従来は罐詰まぐろがうんと多かつたので、大体五倍くらいが罐詰まぐろ、あとは昨年一月から六月までの冷凍まぐろは二千五百トン程度の輸出をいたしております。ところが罐詰まぐろの税金が上りました関係から、本年の一月から六月までの数を調べますと、罐詰まぐろが三千百トンになつて、冷凍まぐろが九千トン程度に増して参つた従つてそこに一トンについて三セントの引上げをしようというのを、この十月十五日にアメリカ下院にかけられまして、それが来年上院に回る。こういう状態が現在の段階でございます。併しこの状態におきましては、お話のように誠に日本としては望まない点であります。従つてむしろ日本政府におきましては、貿易管理品目の中にこれらの品物を入れまして、指定をいたしまして、そうして、その価格の調整というものを図つて行くという方法をとつて、できるならば関税のかような改訂は一つ是非将来のためにも、お話のような点からも、なくなつて欲しいことを強く希望いたしながらさように話を進めている次第でございます。願くば、アメリカ国会におきましてもさような方法をとられることを強く希望いたしております。
  200. 曾禰益

    ○曾祢益君 第九條に関しましては、農林大臣に対する質問を留保いたしましてこれで終ります。  それから、ちよつとまだ第四章につきましては、通産大臣と外務次官とに同時に御質問申上げたいと思いますので、その点お取計らい願います。
  201. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 先ほど曾祢委員からも御質問になり、午前中に私も質問して水産庁の政府委員の御出席を待つてつたのでありますが、それは、只今カナダ及びアメリカから漁業の使節が参りまして、今会議を開いている。それは公海に関する漁業の問題についての会議である。それでカナダ側の主張はどうであるか。アメリカ側の主張はどうであるか。その主張に対する日本主張はどうであるか。これはこの條文にも関係が深いのでありますから、それを詳細に御説明願いたい。
  202. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実はまだ暫く五日から会議を開きまして、そうして基本的な原則基礎を委員会なり保存委員会というものをこしらへてやつております。この間から挨拶等におきまする内容が新聞に相当詳細に出ております。従いまして漸く出発したばかりでございますから、ここで、その内容を、実は手許にも持つておりませんが、申上げるよりも、もう少し話の進行をこれらの両方の委員に御一任して、この会談における日本国民としての、殊に国会としての御希望等は、先ほど来の御意見等を十分承知しまして、それを反映しながら進んで行くのが妥当ではないか。ここで内容を発表いたしますることは、むしろ却つて将来のために妥当ではないとも存じます。幸い国会からもこの関係におきましては十分御承知おきを願うような方法を実は今度はとつてつておりますので、さように御承知を願いたいと思います。
  203. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 第九條の問題で、更に御質問いたしたいと思いますが、この條約に調印した以上、第九條の運用の大体の方針はすでに政府でもできておると思うのです。勿論これは海域によつて違うと思うのですが、大体主な方針というものは成案ができていると思うのです。そこでどういうふうな方針で今後交渉に当つて参るかという点から、その大体の方針をお洩らし頂きたいと思うのでございます。私の見るところでは、漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展ということになりますると、この目的を達成するためには、幾多の事項があると思うのでありまして、第一には、先ほど曾祢委員からもいろいろお述べになりましたような、公海においても或いは漁場の制限をする、こういう最もまあ致命的な方法もあろうと思うのであります。で、この点については、政務次官からまあそういうことは先方主張しないだろうというような極めて楽観的な御答弁がありましたが、どうも私はやはり曾祢委員と感じを同じくするのでありまして、この條文を置いた趣旨からしても、どうもその辺の危險性がありはせんかと思うのでありますが、これは是非とも公海における漁業の自由を確保する点から、これは断乎として一つ反対をして頂きたいと思いまするが、そうなつて来ると、他の規制又は制限の方法は、或いは漁期を制限する、魚族の繁殖時期には漁をしないという意味の漁期を制限するということが一つの問題とて考え得られまするし、その次には取るべき魚の種類を限定する、或いは「さけ」「ます」に限定するとか、主な魚族に限定するということもありましようし、更には取るべき魚の規格といいまするか、換言しますれば、稚魚は取らない、これから成長するような小さい魚は網にかかつてもこれは放してやるというような、そういう魚族の規格の点で制限をする、まあこういうことが第二の規制事項として考えられると思うのであります。第三には、漁法を制限する、稚魚も成魚も一緒くたに取つてしまうような、一網打盡というような、そういう漁法を制限するという、漁法の制限が第三の事項として予想されますが、更にもう一つの点は、現在の以西底曳等で取つておりますような漁船の数を制限をする、まあこういうような幾多の事項が考えられると思うのでありますが、勿論これは漁場によつて言つた制限のフアクターはいろいろ違つて来ると思うのでありますが、まだ具体的な交渉が全部始まつておりませんから、詳細はわからんにいたしましても、今言つた漁場の制限は困るということになれば、何かしら今私が申上げましたような、他のフアクターにおいて何らかの妥結がなければ、結局交渉は何ら成立をしないことになるわけでありますが、政務次官の言われたような保護区域というような漁場については飽まで反対をすると、これがいかんことになると、この第九條に謳つてありまする「公海における漁猟の規制又は制限」ということは、どういうことで大体お考えになつておりまするか。一般的な方針でも結構でありますが、お洩らしを頂ければ幸いであります。
  204. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 外務省関係の点について御答弁を申上げ、又專門的な水産庁の関係水産庁次長からお答えを願うことにいたします。  殊に、私、先に申上げました点が不十分であつたかとも存じますが、先ほど水産庁の次長からもお話になりましたが、アメリカの漁業関係の輿論におきましては、先ほど曾祢委員からお話になりましたような、相当制限の強い輿論がある。その反映が今までもなされておりました。その尾が相当やはり引いておることは、これは事実であると存じます。併しそれにもかかわらずアメリカ全体の輿論は、公海の公正なる立場から、これを実行に移さずに今まで来ておつたのが、公海の公正なるこの原則を最も忠実に主張して来たアメリカの最もいい点であつたと私どもは存じております。従いまして今回の交渉に当りましても、そのアメリカの一方にありまする強い輿論というのがどう反映いたして来まするかは、今後の問題であると思います。この全体といたしましての第九條の問題につきましては、これは魚族の種類によりまして、従来の国際関係の條約におきましても、或いは鯨の場或いはハリバツトの場、或いは膃肭臍の場、おのおの違つておると思います。この関係しておりまする直接の国と考えられまするのは、朝鮮或いはアメリカ、カナダは現在すでに話が進められておりまするが、インドネシア、フイリピンというこれらの国々で、而もこれらの国々おのおので漁業問題については又違つた立場を持つております。従いまして、インドネシアはフイリピンと又違つた立場にあります。朝鮮は、朝鮮の従来から殆んど日本が近海漁業をいたしておりました関係で又違つて来ると存じますから、これらの立場々々に応じまして公海の漁業として日本が将来最も大事な資源を公正に漁猟できるような方向を中心の方針として進めて行かねばならないと考えております。
  205. 山本豐

    政府委員(山本豐君) この漁猟の制限の問題でありますが、只今片柳委員からいろいろと実例を挙げられたのでありますが、これは例えば一例を申しますると、捕鯨條約等を例にとりましても、これはトン数を抑えたり、或いは漁期を抑えたりしておりまして、又国内的にも只今御指摘になりましたような数種の方法をいろいろと考えて資源のほうの対策を立てつつあるわけでありますが、国際的にまあこういう問題がどの方向が取上げられるかというお尋ねでありますが、政務次官からも申されましたように、向うのはつきりしたまだ意見が実は聽取されておりませんので、全然仮定の下にまあ話をしなければならんのでありますが、併しまあ我々としましては、どこまでもこの公海の自由というものを、原則論を堅持しまして、仮にこれを何らかの意味でこれ以上の漁船の入るのを抑えるというふうな方途に出る場合におきましても、それがやはりその関係国なり、その過去の資料でありますとか、或いはまだ調査がしてなければ今後調査をするなりいたしまして、やはり資源的に、数字的に最高限であるということが基礎になりましての制限でないと困るというふうにまあ考えておるわけであります。具体的な問題になりますと、政務次官からもお話になりましたように、恐らくアメリカの太平洋岸にあります「さけ」「ます」の問題、これに近接した公海の問題、この問題が結局取上げられるだろうと思うのであります。併し我々としましては、できるだけそれも、漁業の種類がいろいろありますが、できるだけその一般的にその区域のすべての魚というふうな式の持つて行き方はとりたくない。真に資源的に見て必要なものの、「さけ」「ます」でありますとか、できるだけ項目別によく検討した上で、まあ双方公正に取極をやつて行くのが至当ではないかというふうにまあ考えておるわけであります。  詳細な点はまだわかりませんので、はつきりしたお答えはできないのでありますが、大体考え方は以上の通りであります。
  206. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 余りはつきりしませんが、これでやめておきますが、その次に、これも今後具体的な交渉に入つて来ないとわからんかも知れませんが、日本の漁船は、まあ、相当、国を離れて遠方へ出漁するわけでありますが、そうなつて来ますと、外国の港、或いは漁港等に、まあ基地といいまするか、そこへ立ち寄つて油の補給を受けるとか、或いは食糧の補給を受けるとか、そういうような外国に基地を設けないと、油が切れると又帰つて来るということは、非常な不経済になるわけであります。殊に南氷洋に行く捕鯨等は、従来は濠洲等でいろいろな補給を受けておつたのが、今日ではさような補給もむずかしいということであります。非常な無理をしておつたようでありまするが、どうしても広い公海で、日本の漁船が十分な活躍をするためには、そういうような適当な基地といいますか、油なり或いは食料品等の補給を受ける、そういう基地を設定をしてもらう、そういうようなお考えが当然出て来ると思いますが、そういうお考えがあるかどうか。これは結局日本の漁業の発展を図るということにもなると思いますが、そういうお考えがありますかどうか。
  207. 山本豐

    政府委員(山本豐君) この基地の問題は、今回の協定に入る以前におきましても、いろいろ国内的要望もあつた点でございまして、今回の漁業協定のまあ予備交渉でありますが、どの範囲のものが出ますかそれはわからないのでありますが、我々といたしましては、お説のように濠洲或いはアメリカ等の問題もありましようが、極く近くの例を言いますと、信託統治になるような地域におきましても、小笠原等においては実際戰前にもあつたので、その必要を政府は痛感いたしておるのであります。協定の範囲と内容にもよると思うのでありますが、話合いの進め工合によりましては、水産庁といたしましては、そういうような点を強く期待はいたしておるわけであります。併しそういう面まで、例えば協定文の本文に載るような仕組になりますか、或いは又それが協定本文以外の交渉というようなことになりますか、それはわからないのでありますが、私たちの希望といたしましてはお説のように考えております。
  208. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 最後にもう一点ですが、先ほど政務次官から、今回のアメリカ、カナダの漁業協定では、相当国会なり或いは民間なりの意見を聞いておる。こういう御答弁であつたわけでありますが、具体的にはどういう方法国会或いは業界の意見をお聞きになつておりますか。
  209. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は今後のいろいろな問題がある次第でありますが、その中で最も緊急に取上げられる問題が現在の漁業問題であります。従つて漁業打合会というものを外務省に作りまして、関係官庁並びに関係の民間団体、国会関係というようなかたがたにお入り願つて、そうして十分意見を拜承する、こういう恰好で進んでいる次第であります。
  210. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 両院の水産委員会には正式にお諮りになつておらんわけですか。
  211. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 水産委員会に出まして、いろいろそういう御希望がありましたから、従つて水産委員会のメンバーのかたも打合会にお出まし願うような方法をとつてつておるわけであります。
  212. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 水産庁の次長に対する御質問はございませんでしようか。  この際、申上げておきたいのですが、もうすでに各派の理事のかたからお話をお聞きになつて承知だと思うのですが、昨日の理事会の結果を念のために申上げて御承諾を得ておきたいと思うのでございます。第一回の理事会、先月の二十日でございましたが、理事会をいたしまして、今後のこの運営方針を相談した際に、逐條審議は十日間でこれをやろうという方針をきめて頂いたわけでありますが、昨日の理事会でその方針について再確認をして頂いて、大体その方針で行こう。併し今までのやり方或いはスピードで行くと、なかなかむずかしそうだから、今後はお互いに協力をして頂いて、一章に関しましては、お一人大体三十分程度質問時間にして協力して頂こうじやないか。なお、安全保障條約が非常にいろいろ重大な問題を含んでおるので、そのほうにやはり重点を置く必要もあるので、できれば今週中に平和條約のほうは一応片を付けて、来週から安全保障條約に入つたらどうか。そういう大体の御意見がまとまりまして、そのことを申し合せたわけでございます。  なお、総理の出席につきましては、更に私から今日も官房長に申入れをしておりまして、近く必ず出るということでございますが、まだ日にちは、はつきりいたしておりません。その点、御報告を申上げまして、御了解を得ておきたいと思います。  それから、なお、衆議院のほうの本会議はまだ終りませんで、なお一時間以上かかる予定のようでありますから、今日はこの程度で散会をしたらどうかと思いますが如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 今の理事会の御報告ですが、一応御趣旨はよくわかりますけれども、やはり重大な両條約のことでありますから、十分審議を盡すということが必要なので、ともかく法律規定によるところの衆議院から送付後三十日以内にやつて、会期の延長なんかも、必要が或いは起るかと思いますが、ただその時期を、早急に進行したいという考えばかりに捉われないように、ここの委員会でそれぞれ各委員が御発言になつていることは、速記録に残しい置いて極めて有用な御言論であつた考えるのであります。殊に衆議院のごときは與党の多数を恃んで、時間的に、そうした考えに少し捉われ過ぎていはしないかと思う。例えて申しますならば、私が数度御要求いたしました資料といたしましてのサンフランシスコ会議議事録の飜訳であります。これなんかは條約文について必ずこの審議に当るべきところの国会委員が一応は目を通して、そうしてその審議に当るのが当然であるにもかかわらず、その我々に御配付になりました時期等より推しまして、衆議院のこの特別委員のかたというものは、この両條約の案文について我々が必ず見なければならんところの会議議事録等も目を通さないで、この両條約を衆議院は通過させていられるというような態度は、これは私はその実相を知るならば、国民の非難するところじやないかと思われるのであります。でありまするから、これを理事会の御決定として御報告になりましたことの御趣旨は十分よくわかりますが、ただ時間を急ぐというようなことの観念に捉われて、衆議院がいたしておりまするようなことはしないように、参議院はその衆議院の欠を補うて極めて愼重なる審議を重ねたという実を挙げ、又その我々の真意を国民に了解してもらうように、この條約の議定或いは批准というようなことに支障を来さない範囲内において、たとえ多少の会期の延長等のことがありましても、右申しましたような実質上の効果を挙げ、審議の実を挙げることができまするように、それを一つ附帶的な條件として、私は只今委員長の報告を承認するようにしたい。
  214. 岡田宗司

    岡田宗司君 私も大体吉川委員と同じような考え方を持つているのでありますが、例えば、條約の審議をなすに当りまして必要な資料を要求したのですが、まだ私がこの審議の最初に要求しました資料さえ出して頂けないような状態なんであります。こういうようなことでは非常に困りますので、一つそういうものも早く出して頂きたいと思います。  それから首相の出席の問題でございますが、委員長が更に交渉をしておられるようでございますけれども、今までのいろいろ事情から見ますと、なかなか首相の出席が得られないような状態であります。私どもといたしましては、できれば今週中に首相の出席を得たいと思うのでございますが、この日も明日の委員会の開催のときまでにはつきり確かめて御報告願いたいと思います。これは一つ委員長においてお骨折を願いたいと思います。  それからなお連合国の財産の補償の問題等について法案も出ております。こういうものについて説明等もお伺いしなければならない問題も生ずるかと思いますので、どうか一つ急ぐばかりでなく、やはり衆議院と違つて十分に審議をするという前建前を一つ委員のかたがた全体においてもよくお考えになつて進めて頂きたいと、こう考えておるのであります。私は吉川委員と同じように、愼重にやはり審議するという建前を第一義としてやつて頂きたいと、こう希望を申上げる次第であります。
  215. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) では本日はこれにて散会いたします。明日は十時から開きます。    午後三時五十二分散会