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1951-11-07 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月七日(水曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事            楠瀬 常猪君            一松 政二君            金子 洋文君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            石川 榮一君            泉山 三六君            川村 松助君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            永井純一郎君            吉川末次郎君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            楠見 義男君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君            兼岩 傳一君   政府委員    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省條局長 西村 熊雄君   事務局側    常任委員会専門    員       坂西 志保君    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) では只今から委員会を開きます。第三章を問題に供します。
  3. 曾禰益

    曾祢益君 第六條の規定につきまして、その但書規定がなぜ挿入されたかということにつきましては、従来政府からいろいろの御説明がなされておるのでありまするが、特にダレス氏の会議における発言等を引用されまして、若しこの規定がなかつたならば、一旦連合国軍隊として、つまり占領軍としては一旦帰られる。そうして改めて日本と他の国、現実の場合には日米安全保障條約ができてしまつたからでありまするが、他の国との協定に基いて日本駐屯する軍隊というものは全然性格違つた軍隊であるから、いわゆる連合軍軍隊が居残るというのではなくて、一旦引上げる。そうして改めて協定に基く駐屯が行われる。物理的に軍隊が変るというよう誤解と言いまするか、さよう解釈余地を残してはいかんという念のための規定である。かよう説明されておると思うのでありまするが、果して政府は同様な見解をお持ちであるか。ただダレスさんがそう言つておるからというのでなく、この條約の締結国日本として、それを代表して締結する政府見解がやはり同様なものであるかどうか。その但書規定必要性についての見解を伺いたいと存じます。
  4. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御質問ように、この第六條の(a)項によりまして、如何なる場合においてもその後九十日以内に撤退しなければならないとなつておりまするから、第五條の(c)項によりまする権利は当然持つてはおりまするが、一応この文面からいたしますると、撤退をするということが原則的になりまするので、その後第五條の(c)による自衛権方法による集団方法をとりましても、そこで一応撤退をするという前提の下になされることになりまするから、ダレスさんのサンフランシスコの演説にありました趣旨通り日本解釈いたしております。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 この規定は、何と申しましても、日米安全保障條約と非常に関係が深いわけでありまして、若し日米安全保障條約というようなものがまだできておらない、できるかできないかわからない、かよう状態を予想すれば、或いはこの九十日だけのゆとりをとつておいたのでは、そこに軍隊性質が変るから、何らかの困つた事態が起るといけないというよう懸念から、かよう但書を置いたというのならば、一応そのよしあしは別として、その懸念がわからないではないと思うのでありまするが、一方におきまして、この但書規定を作る。而も他方におきましては、日米安全保障條約というものがこの講和條約、平和條約の調印の翌日に現実調印されておるのであります。而も日米安全保障條約を見ますると、はつきり平和條約の効力発生と同時に日本アメリカ軍隊駐屯を許与する、アメリカはこれを受諾すると、かようなことが第一條はつきり書いてあるわけであります。そういたしますると、この日米安全保障條約というものができて、講和條効力発生と同時にさよう協定に基く軍隊日本におられるということが、別の條約、即ち日米安全保障條約においてはつきりできてしまつた今日から見れば、まあ両條約が効力を発生するという前提に勿論立つておるわけでありますが、さよう前提から見るならば、初めにダレス氏が恐らく心配されただろうと思うこの但書規定は全然これは不要になるのではないか。つまり日米安全保障條がさように速かに講和條約と同時に効力が発生するごとくできる、これがためには、而も最も確実にさような時期に効力が発生するごとく、平和條約と殆んど同時に間髪を入れずに調印されておる。かよう事態が別途進行しておる場合に何故に第六條にこのよう但書を作る必要があるか。これは全く必要がないのであります。若し日米安全保障條約がいつできるかわからない、どのような時期にどのよう内容でできるかわからないという不測の事態を考慮に入れれば、この第六條の但書規定を置いた理由というものが先ほど言つたようにわからないではないが、一方において第六條によつて但書によつて、かような、言わば日本アメリカとの間に政府言つておらるるよう信頼関係に立たざる、信頼欠除というようなことを前提としたような念のための規定を入れ、他方においてはそれを又追つかけて日米安全保障條約を平和條約と同時に作つて、そうして効力発生平和條約の効力発生と共に、この日米安全保障條約という別の條約によつてはつきりと、今までの占領軍隊でなく、国連憲章五十一條に基く一種の集団保障の観念から出たところの外国軍隊を置くということがはつきり現われている。さように二重に、何もさように手のこんだ、日本から何と言いますか、保障を取付けておくと言いますか、さような必要が一体どこにあるのか、両者の関連をなしに考えたならば、成るほど第六條但書規定もわかるけれども、これを入れるのならば日米安全保障條約をあのように早く作る必要はなかつたじやないか。若し日米安全保障條約をあのように早く作るのならば、この第六條の但書規定は要らなかつた。両方置くということは、私から言うならば、いわゆる信頼関係に立つた條約という建前からかというと、そうじやなくて、信頼欠除関係に立つたから、かような念のための規定を入れたのである。私はどうもかように見えてしようがない。それに関する政府の御見解一つ承わりたいと思います。
  6. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話ように、現在から考えますると、そういう感も起らぬでもないかとも思うのであります。併しこの効力が発生しましたあとのいわゆる空白状態に対する安全保障の問題は、ダレスさんが初めて、本年になりましても、二月からもずつと話があつておりました。そして又原則的な意見は一致はいたしておりましたが、具体的な條文としての取極は、漸く九月の七日の晩くらいであつたと思いまするが、八日に準備をし調印をするという段取りに進んで参つたのであります。従いまして、一方そういう点もありまするし、又一方におきましては、ここに少くとも、如何なる場合でも九十日以内には日本から撤退しなければならない、従つてこの條約といたしましては、当然この船待ちとしての九十日以内において占領軍は一応撤退しなければならない、こういう一つ書き方になつており、表現の仕方になつている次第であります。併しながら一方においては今申上げましたような時間的な関係の、次の日米安全保障條約の締結の時間的の関係の問題もありまするし、この條文といたしましては、当然一方にはこういう但書を置いておきませんと、撤退しなければならないという一つの原則の下に一応撤退をするという形をとられて来る次第でございます。幸いに八日の、同日午後に日米安全保障條約を締結する運びになりましたから、現在ではお話ようなことも一応は考えられぬではないと存じまするが、この條項は決して無駄な條項ではないと申しましたダレス氏の意見を、私どももさように存じている次第でございます。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 私はやはりこの但書がないほうが、はつきりと今度の駐屯軍性格というものが、連合軍としてもどうも占領軍でないということがはつきりするだけに、あるほうがいいんだ。これも置きますると、政府但書規定は全く占領軍でない性格軍隊である。即ち但書規定によつて残るのは、但書規定があるから、これを根拠として、外国軍隊占領軍の資格を持つて残るのではないのだ。そうして、それは国連憲章五十一條に基いたこの平和條約の條項に照して言うならば、第五條の(c)項に基いた、いわゆる日本が対等の立場に立つた日本集団自衛権行使としての外国との取極に基く軍隊なのだというふうに言われておりまするが、それならば、ますます以て第六條のこの占領軍というのは、絶対に九十日以内に撤退すべきだということの断定にしておいて、別に日米安全保障條約等によつて、全然性格新たな軍隊が、殊に政府が今度作られたような、講和條効力発生と同時にアメリカ軍隊が残るというふうに規定しておいたほうがこの占領軍性格従つて日本主権に対する制限でないという政府の主張が、よりくつきりするのではないか。ダレス氏の言われることは私は全然賛成できません。あの説明は納得できないのであります。そこで私は今さよう解釈するのでありまするが、政府の御見解をもう一応念のために伺いますが、第六條の但書によつて置かれる駐屯軍というのは、ここに書いてありますこの規定は、「一又は二以上の連合国を一方とし、日本国他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、」この駐屯というものは、確実に日本側から見るならば、この第五條の(c)項に基く国連憲章五十一條に基いた日本固有集団自衛権行使としての協定に基くものであるとはつきり断定できるか。どうもこの書き方から言えば、例えばエジプトあたり日本のために心配してくれておるように、独立せんとする日本主権制限するよう外国駐屯軍というものを入れたのは、そういつたような不対等的な外国駐屯軍を許すというよう協定を確実に排除し得るか。この規定からいつて……。第六條の但書規定から言つて……。その点を伺いたいと思います。
  8. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お説のように、原則的な立場から言つたらこの第六條の(a)項の但書によつて駐留をするのじやないのでありまするから、いわゆる五條の(c)項による固有権利に基いて日本安全保障條約を締結するというのでありますから、必ずしもこれがなかつたら駐留はできないという問題じや勿論ない次第であります。ただこの駐留をいたすについての、便宜上最も誤解を生じないという程度の立場においての但書というものは作られて来ると、こう考えております。従いまして、原則的にはこれはなくても、駐留は第五條の(c)項によりまして、当然日米安全保障條約の締結はでき、且つ又米軍日本駐留というものはでき得ると存じます。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 私は第五條(c)項の運用の一つとしてできた日米安全保障條約には賛成しかねる点が非常に多いのですが、何らかの集団安全保障体系日本が入り得る。その結果或いは外国軍隊を暫定的に日本に置くというようなことが、日本主権行使としてあり得るということは認めるのです。従つてむしろ第六條の但書は要らないということになるわけですが、私の伺つておるのはそうではなくて、第六條の但書規定の仕方は、さよう性質の、いわば友好国軍隊日本主権集団安全保障権行使として置いたんだという以外に、もつと不対等的な関係の、例えば軍事占領的な軍隊も置き得るよう書き振りをしておる。かような点が、日米安全保障條約は或いは主権行使であるかも知れないが、仮に他の国との間にそういうことを、日本がこの第六條の但書があるために強要されるよう余地を残しておりはせぬか。少くともその余地が仮に実際にないといたしましても、日本国の体面からいうならば、さよう誤解を与えるよう但書規定は残して置かないほうがいいのではないか。但書規定文理解釈から言うならば、この文理解釈は必ず集団安全保障の場合の駐屯に限るんだということにはどう考えてもならない。ただ日本国他方とし、一又は二以上の連合国を一方とする協定に基く駐屯と書いてあるのでありますから、その協定性格は第五條(c)項に基く協定というようなことは一つもここには書いてない。而もその前のほうを見れば占領軍としての連合軍撤退すると書いてある。それに対する但書でありまするから、占領軍としてのものが協定如何によつては残るのではないか、かよう誤解を与えることはこの書き方から言えば当然なんであります。而もこの書き方にかかわらず、政府の見方では、この書き方にかかわらず、絶対にさような不対等的な駐屯を許す余地は、この但書文理解釈から見てもないということがはつきり断言できるかどうかということを伺つておるのであります。
  10. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは、安全保障條約ができません限り、この但書がありましても、駐留することはできない。従つてこれによつて外国軍隊駐留をするという意味ではないことは勿論でありまするから、お話ように必ずしも必要な條項ではないのでありましよう。併しそうありましても、私どもはそれによつて誤解を受け害を生ずるというものではないと存じます。むしろ逆にこれがあるために、占領軍は一旦徹退しなければならない、その上又進駐して来なければならんとの解釈を生むのを防げると思います。原則的には駐留というのは第五條の(c)項による問題であり、又この但書によつて安全保障條約ができません場合においては、これによつて駐留することができるという意味では全然ないのであります。従つてこの但書があるから誤解を生ずるとは考えておりません。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 私の質問に対する直接の御答弁を伺いたいのですが、この規定が必要であるというような御解釈ですが、私はこの必要はないと思いますが、殊に日米安全保障條約ができて、日米安全保障條約による、平和條約の効力発生と同時に、アメリカ軍隊日本に残り得る法的根拠日米安全保障條約で与えておるのですから、九十日云々の制限を受けないことは明白なんです。ただ私がその点は先ほど意見が合わないことがわかつたのですが、解釈問題として、この但書規定は、さような第五條(c)項に基くところの集団安全保障條約を作つた場合に初めて駐留ができるのである。それ以外の趣旨の、例えば日本が依然として特定期間軍事占領の継続を認めるということを、平和條約と同時に、或いは平和條約の後に締結をするというよう余地が全然ない、例えば申すまでもなくヴエルサイユ條約によりまして、平和條約はドイツと当時の連合国との間に締結されたけれども一定期間軍事占領を許諾せざるを得なかつたという事例がある。今度の場合は日米安全保障條約ができたから、そのほかのものはできない。ほかのものはできないから、日米安全保障條約は第五條(c)項に基いたものだからいいじやないかと言われますけれども平和條約というものは、これは一遍作つたらその効果というものは永久的なものです。従つてこの第六條の但書がある限りは今後できる場合もある。「この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国他方として双方の間に締結された若しくは締結される」というんですから、永久にそういうことはできるわけですね。そういう場合、日本がそういうような不対等的な外国軍駐屯をこの第六條の但書規定解釈としてやる余地がないし、又連合国がそれを要求する根拠はつきりないんだということが断言できるかどうかということを伺いたいのです。
  12. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) ヴエルサイユ條約におきまする第一次大戦後のドイツ軍事保障占領、或いはイタリアの監視というよう立場とは、これは全然違つたものでありますることは十分御了承の通りであります。たださつきから申上げまするように、但書というものは本質的なものでない。本質的な立場から申しますると或いは必要がないという意見も十分成り立ち得る余地もあると存じます。ただこの但書があるために、これによつて駐屯ができるというものでは全然ないこともお説の通りだと思います。併し但書があるために、日本から一応全部占領軍撤退しなければならない、従つてここまでありますると、当然少くとも効力発生の当日、翌日と申しまするかから九十日以内に全部一応撤退しなければならない。こういうことになりまするので、但書によつてあとに一応註釈を加えたと言いまするか、念のためにはつきりその点を書いたという問題、こういう点だと思います。従いまして決してこれによつて占領軍的な色彩を持たせるというような考え方も勿論ありませんし、さような疑念を懐くべき問題ではないと解釈いたしております。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 どうも私の質問に対する直接なお答えになつていないように思いますが、それではもう一遍こういうふうに伺つたらどうかと思うのですが、第六條但書に書いてあるところの、ここに書いてある協定ですね、「二国間若しくは多数国間の協定」というものは飽くまで第五條(c)項に基いた協定を指すものであつて、それ以外の趣旨協定意味しないんだということをはつきり政府としては断言できるかどうか。現実の場合には、政府は即ち現在すでに締結された日米安全保障條約を指しておる。今後日米安全保障條約は、それ自身が謳つておるように、暫定的なものでありまするから、これは将来又何らかの集団安全保障條約に変られることがあると思いまするが、そういつたよう性質のもの以外の協定、全然それ以外の協定を絶対に意味しないのだということをはつきり断言できるかどうかということを伺つておるわけです。
  14. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 勿論断言できると思います。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 わかりました。  第六條の(b)項についてちよつと伺いたいのですが、この規定によりまして連合国といたしましてはどういう義務を負担することになるでしようか。つまり「ポツダム宣言の第九項の規定は、まだ実施完了されていない限り、実行されるものとする。」これはこの連合国、即ちこの條約に調印し、そうして批准する連合国に対する何らかの義務を課することになるのか、ならないのか。この点を伺いたい。
  16. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御質問趣旨は、この條約の署名していない国、即ちこの平和條約によつて連合国でない国に対して義務を課するのかという御質問だと思いますが。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 そうじやない。逆ですよ。この條約に署名し、そうして批准する連合国について……。これに入らない国については義務を負わせることはできないでしよう。これは当然のことですが、これに加わる国に対して義務を負わせるか。負わせるとすればどういう義務になるか。
  18. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 未引揚者がある場合には、引揚を履行すべき義務を課するものであります。
  19. 曾禰益

    曾祢益君 そういう国が引揚完了しておる場合には、何にも義務を課さないことになりますか。
  20. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 義務は(b)項からは生れて参りません。
  21. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、政府の今までの説明によると、ソ連中共以外の地区においては国の政策としての引揚は完了しておる。個人で或いは逃亡兵ような恰好で残つておる人がこれはあるかも知れない。引揚を阻止しておる国はない。かように承知しておるのですが、そうすると、この規定が加わつてソ連中共がこの條約に加わらない限りは、或いは実質的に同様の條約を別個に結んでくれない限りは、この規定は実質的にはいわゆる国民が待望しておるところの引揚促進に対しては実効がない、かよう解釈してよろしうございますか。
  22. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この(b)項は、二十六條によりまして、この平和條約と同一條件平和條約が、御指摘ような国と締結せられる場合に、意義を持つて来る次第でございます。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 それ以外には全然効力がないのか。それとも、この規定を挿入することによつて、例えば少くとも連合国全体の道義的な責任というようなものを日本としては喚起いたしまして、ポツダム宣言それ自体が、いわば四大国の共同の責任に立つたようなものであるから、少くともポツダム宣言関係のあるイギリス或いはフランス、アメリカ等の国におきましては、この引揚促進に関する何らかの義務なり責任を負うことには全然この効力はありませんか、第六條(b)項の規定は。
  24. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御指摘ような国が(b)項の結果直接義務を負うような結果にはならないと存じます。ただこの平和條約に言う連合国が未帰還者帰還について大きな関心を持つておることを明らかにする道義的又政治的な意味は持つております。
  25. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 第五條に関連してお尋ねいたします。條約局長にお尋ねいたしますが、憲法と條約との効力強弱と言いますか、それは国際公法上又国際慣行上、どういうふうになつておるか。又法律と條約の効力強弱はどうなつておるか。この二点からお尋ねいたします。
  26. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御答弁申上げます。答弁内容は私の見解ということになりますので、その点は御了承願いたいと思います。政府としての見解は別に法務総裁その他適当なかたがあると思います。憲法と條約との関係でございますが、私の了解するところでは、国家が條約を締結する場合には、その国家憲法によつて締結する次第でございます。日本にとつてみますれば、憲法規定によつて締結権者政府ということになつております。立法機関はこれに承認を与えるという行為によつて関与して来ることになつております。要するに憲法によつて国家対外行為として條約は締結されるものでございますので、如何なる場合にも條約は憲法の下にあると考えております。條約によつて直接憲法修正又は変更を加えらるべきでないと信じております。條約を締結するに当りまして、政府はその国家根本組織である憲法と対照して、憲法と両立し得ないよう條項を含む條約を結ぶことは断じてすべきものでもないし、又憲法の擁護に当るべき立法機関がそういう内容を含む條約の締結承認を与えるようなこともあつてはならないと信じております。従つて簡単に申しますと、條約は憲法の下にあると存じます。  第二の点、條約と法律の問題でございます。條約の締結権者は、行政機関政府であり、法律は主として立法機関たる国会によつて制定されるものであるのでありますが、條約の締結に当る政府といたしましては、既存法律との関係を詳細考慮した上で條約案を確定いたすものでございます。そうして條約と既存法律との間に矛盾がある場合には、これは各国の憲法的制度によつて違つております。或る国においては條約によつて当然法律は改正されるとの慣行をとつておるものもございます。或る国におきましては、條約を最終的に成立させる前に法律修正して、その後で條約を確定することを慣行にしておるのでございます。日本の場合には、純理論的には條約によつて当然法律修正を受けるとの考えに立ちつつも、実際問題としては、できる限り、事前に法律修正した上で、條約を最終的に成立させることに、明治以来、して来ております。併し理論的には條約は法律に優先するとの考えに立つております。これは條約の性質上、国家間におきまして完全にそれが成立いたしますれば、当然対内的にも効力を生ずることにしなければ、国家の対外責任を果すことにならないわけであるからであります。万一條約と法律との間に矛盾がある場合には、條約のほうが優先することが国家として国際責任を果すゆえんであるからであります。大体列国もこの観念に立つておるようであります。これは明治憲法下においても同様でありましたが、日本国憲法になりましては、特に最高法規という條章が設けられまして、條約はこれを誠実に履行しなければならないという規定が入りましたので、憲法上も理論的根拠を得たことになつたと、私は考えております。
  27. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 縷々御説明がありまして、あなたのお考えはわかりました。條約は憲法の下にある、法律は條約より又下にある、こういう御意見ように拝聴しました。そこで、先日一般質問のときに総理大臣に対して私が質問しまして、そうしてあなたが代つてお答えになつたのですが、それはその第五條の(a)項の第(iii)項といいますか、それに「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、」こういう義務をこの條章によりまして、日本国は受諾しなければならないことになるのであります。そういたしますと、そのあらゆる援助を与えるその範囲はどうなるかという質問をいたしたところが、あなたは、日本といたしましては、国の憲法上許される範囲内において、而も事実上可能なる範囲においてこれを提供すればよろしい、こうお答えになつたのであります。それから最後に、要するに法律的に可能であつて、且つ事実上可能である範囲において日本としては援助をすればよろしい、こういうふうに、初めは憲法言つておきながら後では法律上と、こう言われておるのです。そこが矛盾がありやしないかということ、この義務を受諾すれば、この條約のほうが法律に優先するのでありますから、日本既存法律に如何なることが書いてあつても、国際連合が要求をすればそれを拒むわけには行かないと思うのであります。憲法規定に違反しておることは、それはあなたのお説として、この條項によつて憲法のほうが上であるからそれはできないけれども既存法律ではこうきめてあるからというのでそれを拒むわけには行かないであろうと、私はそういう結論に導くと思うのですが、その点についてもう一度伺いたい。
  28. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 無論法律的にというのは、法律以上の憲法も含めて私は申したつもりでございます。憲法をも含めて法律的に可能であるという意味であります。
  29. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それも不正確じやありませんか。憲法上可能であつてと言わなければならないのであつて法律的に可能でも憲法では不可能だ。憲法の範囲内において、既存法律ではそういうことは規定してないそういう援助を国際連合は要求して来るということがあるとすれば、それは法律修正して、そうしてその義務を受諾する義務をこの章によつて負う、こういうことになると思うのですが、間違つておりましようか。
  30. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) あらゆる援助と申しましても、それは当該国の法制上非合法的なことまでも加盟国にしろという趣旨ではないのでございます。憲法法律を含めて合法的な措置をとればよろしいのでございます。
  31. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 どうもあなたの表現の仕方が私に納得が行かないのですが、私の言うのは、日本国憲法、これに違反するようなことを国際連合が要求をして来てもそれは拒む。何故ならば、憲法のほうがこの條約よりも上にあるからそれを拒み得るのだ。併しその憲法の範囲内におきまして、そうして向うが或ることを要求をして来る、或る援助を要求して来る、そうしたときは、日本法律ではそれはできないことになつてつても、憲法上はそれは違反じやない、憲法の範囲内だということがあると思うのです。その援助は拒み得ないのじやないか。そういう法律はやはり作つてというか、応諾しなければならんのじやないかと、こういうふうに思うのです、この條約がある以上は……。つまり憲法の範囲内において、既存法律の如何にかかわらずこの援助義務を負わなければならんのじやないかと思うのですが、その点はどうですか。
  32. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約の規定とその実施方法とを混淆しておられるように思うのであります。国際連合といたしましては、加盟国に対しまして、加盟国の法制が違法としておる、不法としておることをしてくれと要求して来るはずがありません。来ても加盟国としては自国の法制上不法なこと、禁止されておることをすることはできないのでありますと御答弁申上げます。
  33. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 まだ私はわからない。憲法には違反しないけれども法律では禁じてあるということがある。又法律には何も規定してないということがあるだろうと思います。そうすると、そのことを要求をして来ることがあり得ると思うのです。そのときはこの條文があれば、あらゆる援助を与えることによつて受諾しておるのだから、憲法上違反のことは困るけれども、そうでない憲法の範囲内ならば、どんなことでもしなければならんということになりはしませんか。
  34. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 頑固のようでございますけれども、国際連合がその決議なり勧告なりによつて、加盟国に対しまして、加盟国の法制上不法乃至禁止されておる事柄をしてくれと要請して来るとは思わないのであります。仮に具体的な事実について要請して来て、その事実が当該国の法制上不法乃至禁止されておることならば、これは拒絶することができるわけであります。仮に例をとつて見ましよう。警察予備隊の目的は、予備隊令に明定いたしております。これを国外の軍事行動に使うようなことは断じてできない事柄であります。仮に国際連合から出してくれという要請が来るとは全然考えられませんが、仮に来たとした場合に、日本として法制の立場から断じてできませんと言つて断わることはできるわけであります。條約の規定と、その実施に当つての具体的問題と混淆していらつしやると私は考えます。
  35. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 実はそこへ持つて行くつもりだつたのですけれども、(笑声)先手を打たれて言われたのですが、そういうことがあり得はしないかというのです。なぜならば、(c)項によりまして、国際連合憲章第五十一條に掲げる集団的自衛の国有権を有するということになつて来るのです。そうすると、アメリカの基地ですか、駐屯している所が爆撃を受けたりすれば、日本もその集団的自衛の権利というものが生じて来る。そうすれば今アメリカは国際連合軍として朝鮮に出ているのだから、その自衛の必要上警察予備隊をそこへ出してくれというような要求が来たときにどうなるかという質問が実は眼目であつたのでありますが、先手を打たれたのであります。もう一遍その点について御答弁願いたい。
  36. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御懸念は全然ございません。私の考えるところでは、警察予備隊令なるものは国際連合憲章に違反するところはないものでございます。国際連合はそういう御懸念ようなことを要請するものではございません。御懸念は全然ないと存じます。
  37. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 あなたが御保証なさつても、これは困るのでありまして、そういう国際憲章の條章に違反しないということは、この條約の條項の受諾によつて、そういう要求をせられてもそれに応じなければならない義務が生ずるのではないかということを、私は、法律立場法律解釈として質問しているのであつて、それはあなたがそんなことは国際連合として断じてしないと、こう保証されてもそれは困るのであります。ただこういう條約の條文を作ると、そういうことが起つて来るのじやないかということを私は法律解釈としてあなたに聞いておるのであります。それで、この(c)項との関係でもう一遍説明して頂きたいのですが、個別的又は集団的自衛の固有権利を有することになる。そうしますと、つまり安全保障條約によりまして、アメリカ日本とは同盟国みたいになるのでありますから、アメリカ日本における基地が爆撃されたときに、それは日本に対する侵略というよう意味において、集団的自衛の立場からお前も行つて朝鮮の戦線を守つてくれ、これは自衛権なんだ、それで警察予備隊も出てくれというようなことにこの條文によつて導きはしないか、あらゆる援助という中に含まれる危険がないか、こういうことを伺つているのであります。
  38. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本といたしましては、憲法第九條によつて儼として軍備を持たない、又交戦権を行使しないという国家性格を明らかにいたしております。如何なる要請が国連乃至アメリカ政府から出ましても、日本といたしましては、この憲法を崩すことは断じて許されません。御懸念ような結果を招来するような措置は日本政府としてはとり得ないし、又とる意思もないことをはつきり申上げます。(「総理大臣みたいだ」「西村総理大臣」と呼ぶ者あり)
  39. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういたしますと、その解決は、つまり警察予備隊がこの第五條前提として朝鮮へ自衛権の発動として出て行くことは憲法の條章に違反すると、こういうことになりますか。
  40. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 憲法の條章に明白に違反いたします。憲法の條章に明白に違反するようなことを日本政府がとるとお考えになることに、私は非常に疑問を持つわけであります。我我はこの憲法を堅持しなくちやならないのでございますまいか。先刻総理大臣と言われましたが、私は、そう思うのであります。御質問よう質問が出るのがおかしい、そう考えるのでございます。
  41. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 私の言つていることが、ちよつとおわかりにならないと思いますが、(c)項によつて集団的自衛の固有権利というものが出て来るのですね。そうすると、今言つたよう安全保障條約によつて同盟的な立場に立つのであつて、そうなれば今アメリカの基地が爆撃されるというようなことになつて来ると、日本も同盟の立場において集団的自衛の固有権利としてそこまで出て行けるのだという解釈はできはしないかというのです。それがもうできなければいいのです。
  42. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 今御指摘ように、日本は独立国でございますから、集団自衛権も個別的自衛権も完全に持つわけでございます、持つております。併し憲法第九條によりまして、日本は自発的にその自衛権行使する最も有効な手段でありまする軍備は一切持たないということにしております。又交戦者の立場にも一切立たないということにしております。ですから、我々はこの憲法を堅持する限りは御懸念ようなことは断じてやつてはいけないし、又他国が日本に対してこれを要請することもあり得ないと信ずる次第でございます。
  43. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういうことはやつちやいけないと私も思つております。それは実際問題としてはやつてはいけないし、よくわかつておりますが、この條約の條章によつて法律的にはそういうことが可能になるような危険はないかと、こういうことを質問しているのです。法律的な危険が……その点いいのですか。
  44. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 法律的の危険は全然ございません。
  45. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 どういうわけで……。
  46. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私はもつと信念を持つていいと思います。
  47. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 信念だけでは困るので、法律説明をして欲しいと思います。
  48. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約は憲法修正するものではないからでございます。
  49. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 併し自衛権がある、この自衛権の発動として警察予備隊というものがある、こうなつて来れば、警察予備隊としての自衛権立場でそこまで行けることになりはしないか。それは軍隊が行くのじやありません。警察予備隊が行くのであります。そういうことになりはしないかというのです。
  50. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国連憲章の第二條を御覧になりましても、国際連合の第一の原則は加盟国間における主権平等の大原則でございます。日本は独立国として憲法を持ち、その憲法によつて岡本委員が御指摘ようなことは一切やらない性格国家になつております。これに矛盾するような要請を国連乃至国連加盟国がしようとお考えになるところに私は或る弱さがあると思うのでございまして、私は総理大臣ではございませんけれども、もう少し御信念を持つていいじやございますまいかと、申上げたいと思います。
  51. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 もうこれ以上聞きませんけれども、私の信念の問題ではなくて、今は條約の案文を審議しておるのだから、こういう條約の書き方をしておれば、そういう危険が法律的に起りはしないか、そういう弱点がこの條章の書き方ではできて来はしないかということを危惧しておるのです。信念はあなたと変りないと思うのですが、信念の問題でなくて法律書き方のよしあしの問題であります。ではこの点もうよろしうございます。
  52. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 議事進行について。昨日前文についての政府当局の御答弁を願いますに先だちまして、その前の委員会で木内委員から御質問がありました前文の法律的な性質の問題についてちよつと触れて申上げたんでありますが、そのときに私は木内委員に対する政府当局の御答弁として、前文というものは法的な拘束力を持たないところの、條約全体の目的であるか、或いは性質であるか、そういうようなことをきめた道徳律的なものであるというような御答弁があつたのでありますが、私は昨日、憲法の前文は即ち憲法の一部であつて、これは憲法である同様な解釈においてこの條約の前文は、憲法の前文が憲法の一部であるのと同様なる性質を持つものであつて、先に政府当局がせられた法律的拘束力はないものであるという見解は誤つておる、自分はそのように思う。それで、私はそういう立場から質問を展開するのであるが、そうしたこの條約の前文の拘束力が法的拘束力がないものであるという政府答弁は誤つておると考えておるが、若し政府当局において私の解釈に御異存があるならば、この機会において言つておいてもらいたい。私の質問が済んだあと言つてもらいたいということを申上げたのでありますが、時間もなかつた関係上、私は駄目を押すことをそのままにして帰つたのでありますが、私の解釈が私は正しいと思つておるのでありますが、正しいという態度をおとりになりまするならば、先の木内委員に対する政府の御答弁は、それの反対で誤つておるということになるのであります。昨日そういうことを申上げて、私の解釈が正しいという政府の御見解ならば御答弁は要りませんが、併し私の解釈が誤つておるというならば御答弁願いたいと言つておいたのでありますが、御答弁なかつたのでありますから、私の今申上げましたような、又昨日申上げましたよう解釈が正しいと政府は御肯定になつておるのだと私は信じたいのですが、そのよう解釈してよろしうございますかということを、もう一度駄目を押したいと思うのですが、私はこれは一つ西村條約局長でなしに、西村條約局長は総理大臣気取りでいろいろなことを言つておられますが、草葉政務次官から一つ答えて頂きたい。私の解釈が正しいと思われるかどうか。それでよろしうございますか。
  53. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは実は従来からの條約関係におきましても、外務省といたしましては、このような前文に対する法律的な立場におきましては、義務という立場よりも道徳的な立場解釈をとつてつております。
  54. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そうすると拘束力はないのですか。
  55. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 拘束力は、道徳的立場における拘束はある。
  56. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 道徳的というとおかしい。これは道徳律じやない。法律憲法の前文はどうなんですか。あれは道徳律で法律でないのですか。法律であるならば、法律と道徳との相違というものは、権力的な関係がそこに生ずる。即ち国家の本質であるところの権力というものを国家が持つておるということが国家の本質であり、その国家の権力が発動する権力関係がある。即ちそれが法律的権力、或いは法律関係というものがここに考えられると思うのですが、そういう法律が持つている権力関係というものは、権利義務関係ですね。当然それから派生して来るものは、それはないのですか。憲法の前文と対照して一つお答えを願いたい。憲法の前文は、然らばあれは法律ではないのですか。権力関係は伴わない、法律義務はないのですから、国民に対しては……。
  57. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 憲法解釈法務総裁一つ譲らして頂きます。ここでの解釈は、日本国はこれこれを宣言するという立場をとつております。従いましてその宣言に対しては、勿論宣言いたしました以上は、十分なる責任を持たねばならないが、その宣言の内容については、具体的にこの條文で現わして参つております。従いまして前文におきましては、総括的な今申上げたよう立場をとつておる。
  58. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 総括的な……。
  59. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 吉川委員に申上げますが、あとで総括質問のときに廻して頂きたいと思いますから。
  60. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そうですか。
  61. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 第三章の安全の條項に入つて、第二章の問題についてもう一度繰返すことは大変恐縮なんでありますが、私の都合で御了承を願いたいと思います。併し私はほんの一、二の点だけを第二章の中で質問いたしたいと思うのであります。  先ず第一に、第二條の(a)項の問題でありますが、朝鮮の独立を承認する、これは私は朝鮮の独立を承認することについては問題はないと思うのでありますが、朝鮮の独立を承認するについて起つて来る問題を一つお尋ねいたしたいのであります。つまり独立の承認ということは、恐らくはこの條約が発効する時期に独立の承認がなされるのだろうと思いますが、併し独立の承認がなされるという以上は、その朝鮮の政府に関しまして、どの政府が朝鮮を代表する政府かということが当然起つて来る問題だと思うのであります。御承知のように現在朝鮮には二つの政府ができております。南の韓国政府につきましては、国際連合においてもこれは合法と認める宣言があり、又韓国政府におきましては、こちらの総司令部に代表団を派遣していることであり、又サンフランシスコ会議にはオブザーバーも派遣いたしております。そういう関係から申しまするというと、当然韓国政府ということになると思うのです。併しながらこの二つの朝鮮の境になつております三十八度線乃至は今度の休戦会談で引かれるであろうところの一定の線というものは一応存在しますが、併しこれは単に軍事的な線でありまして、将来は朝鮮を統一するということが予想されているわけなんであります。従つて朝鮮が統一されたという場合に、そこに統一政府が出て来るということも予想しなければならんと思うのです。而も統一政府の選択はこれは日本がやるのではなくて、又連合国がやるのでもなくて、朝鮮の国民がこれを行うものだという工合に考えられて来ると思う。そこで、それらの問題を考慮いたしまして、差詰めこの條約が発効するときに朝鮮が独立を承認され、その時の政府を果してどの政府として、例えば韓国政府であるとか、或いは北鮮政府であるとか、そうでなくして、将来統一された場合の政府だ、この三つの考え方が出て来ると思うのですが、その点について先ず第一にお伺いいたしたいと思います。これは條約局長で結構です。
  62. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は昨日岡田委員からその問題について詳しく御質問がありまして、実は詳しく御答弁申上げたはずであります。簡単に申しますと、大韓民国を、ここの承認の次に起つて来る今の段階では大韓民国を相手にすべきものだと、こう申上げたのであります。
  63. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それは只今申上げましたように、三十八度線か、乃至はその他の境界線かが便宜上引かれておる範囲においての朝鮮を代表する政府ではないかという工合に考えられるのですが、朝鮮の統一という問題も早晩起つて来る問題ではないかと思うのですが、そうなつた場合に大韓民国政府を独立の政府として承認するということになりますと、その後の政府の取扱につきまして問題が起つて来るのではないかと思いますが、その点もう一度重ねて政務次官にお聞きします。
  64. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) その点もお答え申上げましたが、当然統一政府ができましたら勿論統一政府を相手とし承認して行くべきものだと考えております。
  65. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 岡田委員から詳細に御質問があつたのならそのくらいにとどめまして、それから極く二、三点お尋ねするわけですが、次にお尋ねしたいのは、この第二條において、日本が台湾或いはその他の諸島嶼について領土主権を放棄することになつております。併しこの領土主権の放棄後の帰属を明白には規定しておらんのであります。これは総括的な質問のときには、政府側の答弁といたしまして、連合国間の意見が一致しないという結果、こういうよう規定なつたという御答弁であつたかに記憶するのでありますが、併しいつまでもそういうような不確定の状態において、これらの地域を放棄するということは許されないのでありまして、いずれの日にかは、それらの最後の帰属がきまるだろうと思います。そのきまる、つまり連合国間の意見が一致する見通しについて、並びに帰属するまでの間のその住民の関係、例えば国籍であるとか、その他の地位或いは関係等についてどういう工合になるのか、その辺を簡単でよろしうございますからお答えを願いたいと思います。
  66. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 見通しは実はなかなか困難だと存じます。併し我我としては速かに、成るべく早くこのよう連合国意見がまとまらない結果起つておりまする、帰属をはつきりいたしておりませんので、成るべく早くはつきりすることを念願いたしまする次第でありまするが、それだと、いつ頃ということは見通しが持ち得ないと存じます。従つてそれまでの間いろいろな問題が生じまするが、それはこの條約にありまするように、その当局と、現在ある当局と話を進めて行く、その現在ある当局は承認しておつて承認しておらなくとも別な問題だと思います。
  67. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 これも恐らくは、この問題については同僚委員の中から質問が出たと思うのでありまして、重ねて質問することもどうかと思うのでありまするが、これらの地域の帰属すべき国国との間に講和條約、これと同じような條件の講和條約が結ばれなければ、到底その問題は解決しないと思うのでありますが、それらの問題についても、これはあとで首相のほうに質問することにしまして、それから第三條に移りまして、これも恐らくは同僚委員から詳しく質問されたと思いますので、余り質問を申上げることもどうかと思いますから、これも一点だけお尋ねいたしたいと思うのでありますが、この残存する主権の問題であります。これもたしか曾祢委員のほうから詳しく質問されたことを聞いておりますので、私から重ねて申上げる必要もないと思いますが、ただ私に対する政府側の答弁としまして、総括的の質問のときに、結局残存する主権というのは、租借地における主権とほぼ似たよう性格のものであるというよう答弁があつたのであります。私は必ずしも租借地における主権と似たものだとは解釈いたさぬのであります。第一に、残存する主権性格が極めて不明確でありまして、租借地の場合はそれが極めて明確に規定されておる。殊に主権制限される期間についても、租借地の場合には明確に規定があるわけでありますが、第三條によりまする信託統治下に置かれる残存する地域については、そういう明確な規定が何もないのでありまして、この点についてなお若干疑問が残つておる。それからこれらの地域の住民の関係でありまするが、主権が残存するということになりますると、当然この地域の住民は日本人であるということになるだろうと思うのであります。ところが日本人として四大島におる本来の日本人、それからそういう信託統治下に置かれる地域の日本人というものが、恐らくは違つた取扱を受けて来るのではないか。施政権者によつて相当いわゆる四大島におる日本人とは違つた取扱を受けて来るのではないかと思うのでありますが、そうなるとこれ又いろいろ憲法上の問題と関連して来ると思うのであります。具体的に申上げることは遠慮しますが、そういうような問題をどのように考えておられるか。これをお尋ねいたしたい。
  68. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これも実は昨日詳しく御質問にお答え申上げたのでありますが、お話通りに租借地の問題は一つの例に引いたに過ぎませんのであります。又主権が残るという点につきまして、主権は残りまするが、その施政を預かるアメリカにおいて行政、立法、司法上の権力の全部及び一部を行使する。併しこれは今後の取極によりまして、その行政、立法、司法の権力の全部及び一部を行使する権利は持つておりまするが、その執行に当つて協定において、努めて国内住民の待遇を最大限度に持ち得るような方向に進んで行くということを念願いたしておるばかりでなく、さように見通しを持つておると申上げていいと存じます。そういう方向で今後協定を進めて行きたい、かようにお答えを申上げておいたのであります。従いまして住民につきましても、勿論日本国籍を持つて、そうして東洋の平和と安全に必要なる程度以外においては最大の権利日本の内地と同じように進めて行くような話合いを進めて参りたいと存じております。
  69. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 できるだけ再質問をしないような形で質問をしようと思つたのでありますが、ただ一点今の点だけについて再質問を許して頂きたいと思います。今のお話でありますというと、行政、立法、司法の権力の全部乃至は一部を行使する権利を施政権者が持つ、併しあれは日本との取極において最大限こちらの有利に展開するように努力される、その努力は一応諒としますが、併し例えば租借地の場合でありますね、年限もきまつており、そこに行使される施政権者の権力の内容もほぼきまつておる租借地の場合ですら、政治的に見まするというと、殆んど主権がないと同じような形において、つまり施政権者の権力というものが第一次的な権力として有効に働き、その本来の領土主権を保有するところの国の権力というものは、少くとも世界政治の場面においては殆んどないに等しいということになつておると思う。中国が御承知のような形で、そのためにいわば帝国主義的な先進国によつて領有されて、いわゆる半植民地的の状態におかれたということは、しばしば国際政治の上において言われて来たことであります。信託統治の下におかれる地域は、それ以上に本来の領土主権国の権力というものが制限される、而もその権力の、施政権者の行う権力の期間などについても明白な規定がないということになりますと、殆んど例の国際連盟時代の委任統治の問題に関して起つたあのときの論争を通じて出て来ましたような、いわゆるそれを委任を受けて支配する国の権力というものが圧倒的に強くなつて従つて残存する主権というものは殆んどないに等しい。勿論委任統治のC式の委任統治地域は、そういう形において行われたのでありますが、事実上B式の委任統治領においても同じような形において行われたということは、これは明白なことであります。そうなりますというと、信託統治地域に残存する主権というものは、単に言葉だけの問題であつて、実質的には何ら主権がないと、こう申してもいいのではないかという工合に考えられるわけであります。その点についてもう一度政務次官の御答弁を煩わしたいと思います。
  70. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話通りに現在信託統治に付されております大体十一カ所の地区では、ソマリランドの十カ年以外は殆んど年限をきめていないように記憶いたします。従つて主権の問題につきましても、たびたびお話申上げたように、従来明瞭を欠いている状態でありまするが、今回は施政を行う立場においての代表が、主権は当然日本にあるということを言い、又この草案を立案いたしました責任者の一人としてのイギリスのヤンガー国務相も同様の解釈をとつております。従いまして、これが実際のやり方につきまして主権があるということが、どういうふうに現われて来るかということは、今後の両方の協定によつて、その最大なものを現わして来るよう協定を進めて参ることによつて明瞭になつて来ると存じます。従いまして私ども政府といたしましては、いずれ住民の熱望を十分酌んで、この主権の現われて来る、顕現して参りますように努力して参ります。そこの現われようはつきり今後わかつて来ると存じます。
  71. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今の御答弁も不十分なんでありますが、蒸し返すことを大変恐縮に存じますが、第四條に移りたいと思うのであります。第四條の(a)項は、日本国及びその国民の第二條に掲げられた地域にあるところの在外資産並びに請求権、或いは又、これらの地域の施政を行なつている当局及びそこの住民の日本国内において有するところの財産なり、或いは請求権なりの処理の規定でありますが、これは日本国政府と、これらの当局との間の特別取極によつてきめられるということになつているのが(a)項であります。ところで、これらの地域の施政を行なつているところの当局の問題が、かなりこれ又今後複雑な重要な問題を喚起して来るのではないかということが想像されるのであります。勿論その施政を行なつている当局となりますと、例えば朝鮮の場合ならば韓国政府或いは北鮮政府、或いは台湾の場合なら台湾において現に施政を行なつている当局だということになるのでありまするが、併しその帰属はそれぞれ中国政府であるとか、或いはその他の政府になるだろうと思いますが、その間、これらの当局という形でここに現わされているところのその当局と、それから今後最終的に帰属がきめられた国の政府というものとの関係、これはどういう工合になるものか、この條文だけでは明確になつておらんと申さなければならんと思う。どういう工合にこれはなるものであるか、財産の処産乃至は請求権の処理についての問題をお尋ねいたしたいと思います。
  72. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 誠に御尤もな点だと考えます。第四條の適用についてはやはり第二十一條と勘案して考えるべきものと考えております。二十一條によりますと、朝鮮については四條の受益の規定がございますので、朝鮮については四條を適用することになります。で、どの政府を相手として話をするかということがこの平和條約発効後に問題になつて来ると思いますが、その点は先刻政務次官から答弁されたどちらの政府を正当な代表として認めるかの問題とからんで来ると思います。中国については第二十一條を見ましても四條を中国に受益させる規定がないわけであります。でありますので、二十六條との関連におきまして、日本と中国との間に平和條約が締結される段階になつて参りませんと、台湾についての四條を適用する問題は起り得ないと、一応考えております。
  73. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それに関連して朝鮮の場合でありますが、四條の(b)項のことであります。恐らく処理の相手方としては韓国政府ということに政務次官の御答弁から推察されるのであります。ところが北鮮に存在する日本国及びその国民の財産の処理の問題、これはどのようになつておるのか。どのようになつておるのかと言うよりは、これらの財産の処理について、日本は相手方をどちらにきめて、これと交渉するのかという問題がなお(b)項に残つておる問題でありますが、これらについて御答弁を願いたい。
  74. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 先刻政務次官が答弁されましたように、北鮮にある日本の財産の問題も大韓民国政府相手の交渉の内容をなす結果になると考えております。
  75. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうしますと、なんでございますか。北鮮にある財産の処理の仕方についても、日本は大韓民国政府を通じてこれと交渉して取極める、こういうことになるのでございますか。
  76. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) どういたしても、そういう結果になつて参るのであります。
  77. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ちよつとおかしいですね。大韓民国政府を北鮮側においては承認しておらん。三十八度線乃至は新らしい線において、一応現段階においては両者の施政範囲というものはきめておるわけですね。そうしますと、大韓民国を通じて北鮮にある日本国乃至日本国民の財産の処理というものはどういう形で行われるのか。それをもう一度お尋ねいたしたいと思います。
  78. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 事実上非常に困つた事態になることは、御指摘通りでございます。日本政府といたしましては、北鮮に莫大な日本人の財産があるということを念願に置いて、大韓民国政府と話合いをすることになろうと思います。まだ第四條の実施段階に入つておりませんので、確たる御答弁はできない次第でございます。
  79. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 今の問題は非常に重大な問題なんです。現在戦争をやつておる二つの政府を相手にしまして、一方の政府を通じて、これと戦争をしておる政府の施政地域内にあるところの財産の処理についてこれと交渉するということは、私どもとして受取れないのであります。これは政治上の問題でありましようから、又あとで総理大臣にお尋ねすることにしまして、第二章の領域の問題はそのくらいにしまして、安全保障について一、二の点をお尋ねしたいと思います。  先ほど岡本委員から第五條の(a)項の第(iii)号並びに(c)項についての質問があつたのでございます。私もお尋ねしようと思つておつた問題を岡本委員から質問されておりますので、私はそれを繰返すことをいたしません。ただ(c)項の問題につきまして「個別的又は集団的自衛の固有権利を有する」、固有権利を有することについては何も問題はないのであります。ただ固有権利の形態がどういうものかということが、そこで問題になると思うのであります。恐らくは先ほど西村條約局長の御答弁では、国家警察予備隊は使わぬのだというお話でございました。そうしますと、ここで個別的自衛の固有権利ということは、当然軍備を予想しておるのではないかという工合に考えるのでございますが、その点簡単でよろしうございますから、御答弁を願いたいと思います。
  80. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この項は、堀委員の御指摘なつよう意味は持たないと考えております。単に(c)項は日本平和條約発効によつて独立を回復いたしますれば、独立国として当然有する自衛権、それから安全保障のために取極を締結する権能を持つておるという当然の事実を注意的に明らかにした條項であると解釈いたしております。
  81. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私の申したような問題には関連なしに、ただ法律上自衛の権利を持つということを明確にしただけだという御答弁でありまするが、併しそれでは無意味ではないかと思うのです。少くとも一つ権利を有することを明言した以上は、その権利に伴う内容というものが、おのずからそこに規定されて参らなければならぬと思う。単に法律固有権利があるということをここに規定しただけだと、こう言いますが、従つて私の考えから申しまするというと、その権利を裏付ける内容というものがおのずからそこに出て参るという工合に考えられるのであります。その点についてもう一度お尋ねをいたしたいと思います。
  82. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この(c)項によつて出て来ます法律上の結果といたしましては、(c)項は連合国としては、日本国連憲章五十一條に言う自衛権を持つておることを認めるというのでありますから、この点は一種の法律的効果を持つわけであります。堀委員御承知の通り、独立国として持つておる自衛権は相当範囲の広いものでございますが、国連憲章五十一條に言う自衛権は極めて制限されております。国連憲章の五十一條の結果、国連加盟国は相互の間において通常国際法で持つている、自衛権を相互の間において制限いたしております。その関係が(c)項の結果日本連合国との間には発生する次第でございます。端的に申しますと、現実に武力攻撃が発生したときだけに自衛権行使が認められております。それから又、国連の当該機関が措置をとつたときには、直ちに停止すべしとの條件が付いております。この二点において五十一條に言う自衛権は狭いものでございまして、この狭い自衛権日本連合国との関係において認められておることになります。これは法律上の結果が出て来るわけであります。後段の、日本が独立国として安全保障の取極を締結し得る権利を持つことは、この規定を待たないでも当然のことでございます。この條項によつて日本の持つておる、本来独立国として持つ安全保障上の措置をとる権能は拡張もされませんし、制限もされません。注意規定とも申せましよう
  83. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 国連憲章五十一條に掲げているところの固有権利を、ここにはつきり示しただけであるというお答えである。而も五十一條に言うその固有権利というものは、極めて制限されたものである。国際連合憲章の精神から申しまして当然おつしやる通りだと思う。私はそれを否定するのではない。ただ武力的な侵略があつた場合、又安全保障理事会が適当の措置をとるまでの間自衛の権利を認めるということになつていると思うのです。そうしまするというと、武力的な侵略があつた場合に、これに対して自国を護るというその手段ですね、具体的な手段というものは、恐らく軍事力によるものではないか。勿論先ほどお話がなければ、警察予備隊というようなことも問題にならぬと思いますが、併し警察予備隊はそういう場合には使わぬというお話ようでありまするから、そうしまするというと、軍事力以外に具体的に日本を防衛する手段としてどういうものが考えられるかということになりますると、まあいろいろありましよう。国民の団結であるとか何とか、或いは愛国心であるというような、先ほど草葉さんの言う倫理的な力もあると思います。併し具体的にはやはり軍事力が中心になるのではないかというふうに考えられるわけです。その点についてもう一度御答弁を願いたい。
  84. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 軍事力の問題は(c)項から生れて来ないと考えられるわけでございます。これは(c)項とは離れまして、日本が自己の安全保障のために如何なる措置をとるべきかとい観点に立ちまして、独自の見地から解決すべき問題であると考える次第でございます。
  85. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうしますると、日本が軍事力を持つか持たぬかということは、この平和條約には関係なしにきめることができると、こういうお考えですか。
  86. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この平和條約を流れている大きな精神と申しますか、原則の一つは、日本国家の将来のあり方についてはできる限り日本の自主的措置に任して、條約上の制限を設けないことにされておるわけであります。国の大きな行き方については日本の自発的意思として前文に宣言されておるところがあると存じております。
  87. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 平和條約においては軍事力の問題は何ら触れるところがないというお話でありますが、御承知の通りにオーストラリア、或いはフイリピンであるとか、ニュージーランドというような東南アジアの諸国においては、日本の軍国主義の復活ということに対して非常な危惧の念を持つているのでありまして、これはサンフランシスコの会議の席上においても、それらの国々の全権によつて縷々説明されていると思うのであります。日本としても軍国主義を払拭するということが一番当面の問題だと思うのでありますが、ところがそれらの国々はこのやはり第五條の(c)項が軍事上の制限を何ら加えていないということについて非常な危惧を持つているのでありまして、従来の平和條約について見ますれば、例えば第一次大戦後の対独平和條約についても、或いは今度の第二次のイタリア平和條約について見ましても、軍事的な條約についてはそれぞれ制限を設けて、軍国主義の復活なり、その他武力的侵略の危険を阻止するという方法をとつていると見てよいのであります。ここにイタリアの平和條約の條文もありますが、これによりましても第四十六條、四十七條その他においてこれに制限を加えておる。尤もイタリアの場合については国際連合安全保障理事会がこれを変更することができるということになつており、又サンフランシスコ会議に続いた三国外相会議や、オツタワの北大西洋條約理事会等におきましても、たしか文章は忘れましたが、とにかくイタリアとの平和條約の変更については好意を持つておるという意味の宣言をやつているのであります。又、従つて事実上イタリアの平和條約の軍事條項について或る程度の制限の緩和が行われるかも知れないと思いますが、併し従来の平和條約の行き方から申しまして、この軍事條項に何ら制限を設けていないということは、一つの特徴といえば特徴かも知らぬが、それだけに又アジア諸国に対する影響も極めて重大であるという工合に考えられます。今の條約局長お話によりますというと、この平和條約は何ら軍事條項には関係がないのだということになるのでありますが、なぜそのような考え方が今度の平和條約においてとられるようなつたかということについて、これは草葉政務次官から一言お答え願いたいと思います。
  88. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 第一條の(b)項にもありますように、日本の完全な主権を回復する。従つてその完全な主権には、制限のない主権というのがいわゆる完全な主権だと存じます。従いまして先ほど説明がありましたが、(c)項におきまして、固有権利というものが完全なる主権の上には当然あり得るものと思います。それで更にここに一項を謳つておる次第であります。條約上といたしまして、すべての点からでき得る限り制限のない條文、條約というものが、最も日本としては望むところであることは当然であります。従つて今回の日本平和條約におきましては、最終的に制限のあるような問題は除かれて、いわゆる完全な主権の回復というふうに努力をしてくれましたことは、日本民族に対する強い信頼感の現われであると存じております。又同時に、このような情勢になりましたことも、この六年間の占領下におきます日本民族の営々とした努力を連合国が十分信頼した結果であると存じております。
  89. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 完全な主権日本に与える以上は、何ら制限を設くべきではない。その趣旨は私ども諒としますが、但しこの軍事條項については制限を認めないが、その他の條項においては主権に対する制限が相当加えられているということは、私一般質問においても質問したのでありまするが、極めてその点の政府側の答弁というものが明瞭を欠いておつたと思うのであります。この問題はこれくらいにしまして、第六條の問題、これは曾祢委員先ほど質問いたしておりましたので、私はそれに重複する面は除きまして、第六條(a)項の但書の、これは法理論はやつたのですか……、そうですか。それではそれは除きまして、ただ一点だけお尋ねしたいのですが、サンフランシスコの会議においてダレス代表の説明によりまするというと、つまり駐留軍は占領軍とは本質的に性格が違う。ところがこれらの軍隊性質は違うのだが、日本において日本が自発的に与える地位だけを持つものであるということをダレス代表は述べているのであります。この問題は日米安全保障條約の中の、特に行政協定の問題に関連して来る問題だと思うのでありまするが、日本としては一体、日本が自発的に与える地位だけを駐留軍が持つということになりまするというと、日本が与えることになる。向う側に対しまして、日本側が強く主張することができる内容になつておると思うのであります。両者の取極と申しましても……。従つて日本側の要求によつて向う側がその要求を受入れなければならんというような形になつておると思うのでありますが、果して日本としてどれだけの地位を与えるようなお考えであるか。これはあとで、日米安全保障條約のほうに関連しておりますので、詳しいことはそちらのほうに譲るとしまして、ここにダレス代表が言うところの自発的に日本が与えるところの地位というものについての、大体の構想だけをお伺いいたしたいと思います。
  90. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本が与えまする地位を受ける、ダレスさんは只今お話になりましたようにサンフランシスコで申しております。従いまして日米安全保障條約におきましてのアメリカ軍の駐留は、いわゆる日本安全保障に必要なる点において日本アメリカとが相談しましたその結果に基いた地位が与えられる。これは対等の立場で結ぶのでありまするから、従来の占領軍というのとは全然違つた、全く独立国家日本に対する安全保障のための立場の地位という点であります。
  91. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 これらの問題はいずれも政治的な意味を含んでおる問題だと思うのであります。総理大臣がいずれ最近にお見えになると思いますから、そのときまで質問を留保いたしまして、一応これで終ることにいたします。
  92. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩    —————・—————    午後一時十九分開会
  93. 一松政二

    ○理事(一松政二君) それでは午前に引続き会議を開きます。羽仁君。
  94. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私は前回の質疑に引続いて第二章第二條から質疑が残つておりますので、そこから始めることを許されたいと思うのであります。  政府に向つて伺いたいのでありますが、この第二條の(a)項につきましてすでに各委員からいろいろな角度から質疑が行われたのでありますが、この「朝鮮の独立を承認して、」という、その朝鮮の政府は、南朝鮮を指すのだという政府の御答弁は差控えられたほうがよろしいのではないかと私は考えるのでありますが、その点について政府はどうお考えになつているか。  その理由を申上げますが、御承知のように現在朝鮮の休戦会談が進行中であります。そしてその朝鮮の休戦の会談のアジエンダ——議事日程の最後には、御承知のように、極東における平和の状態を確立するために関係諸国に向つて勧告を行うということが議事日程としてすでに承認されております。従つて間もなく近い機会においてこの朝鮮会談の成立、そしてその議事日程に伴う最後の第五條でしたか、第六條でしたかの項目に従いまして、関係諸国政府に対する勧告というものが行われるものだろうと思う。この朝鮮休戦会談の成功の結果の、関係各国への勧告の趣旨従つて決定するというように御答弁あるべきだと考えますが、政府はどういうふうにお考えになるか、今までの答弁をお改めになるほうが私はよろしいのではないかというように考えます。これが第一点であります。
  95. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この第二條の(a)項にあります問題といたしましては、お話通りに、ここでは朝鮮の独立を承認するだけでございます。そして朝鮮にはこれこれの領域を含んでおると、その領域に対しては権利、権原、請求権を放棄するというのであります。そういう御答弁を申上げて、更に突込んで、そんなら独立後の朝鮮は一体どこと話合いを進めて行き、又進める状態にしておるかというお話でありまするが、実は、現実としましては大韓民国を相手に話を進めざるを得ない現状でありますということをお答えを申上げたのであります。條文といたしましては、ここでは朝鮮の独立を承認することが、この平和條約における日本義務である次第であります。
  96. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一応の御説明としては伺つておいてもいいのですが、併し参議院の本委員会における政府の所見の表明ということは、條約の解釈の上にも何らかの意義を具体的に持つて来ることでありますから、重ねてもう一遍伺つておきたいのですが、この平和條約が現在のままの形で効力を発生する時期は恐らく来年になるだろう。そして来年になるまでの間に、誰でも希望しているように、朝鮮休戦会談というものは恐らく成功する、終結に到達するのじやないか。従つて現在、この将来の問題について質問があつた場合の政府のほうの御答弁としても、南鮮を相手とするのだ、それでさつきお話がありましたように、堀議員の御質問の御答弁にもありましたように、いろいろな……、大変條約局長が困つておられたわけですが、北鮮にある日本国及びその国民の財産の処理の効力に関する問題について南鮮の政府と交渉するという甚だ困つたことになるという御答弁がありましたが、併しそういうことを困つておられる必要はないので、そして又そういうことはそれだけの程度の困ることには恐らくとどまらないで、もう少し惡い影響もあるのじやないか、こういう点からこの際、政府としては、今政務次官が御答弁なつように、條約の正文については朝鮮の独立を承認するということだけを述べておるのであり、従つて将来において如何なる政府と交渉が行なわれるかということについては、現在進行中の朝鮮休戦会談の結果、その議事日程によつて関係各国の政府への勧告の趣旨従つてその交渉が……、その勧告の趣旨従つて確定されるところの政府と交渉するのであると、この際はつきり訂正してお答えを願つておいたほうがよろしいのではないかと思いますが、もう一度伺います。
  97. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実はお話通り現在休戦会談がとり行われておりまするし、又第六回国際連合総会が昨日からパリで開かれている次第であります。かれこれそれぞれの立場において問題が円満に解決することを連合国も望んでいる次第であります。その後に休戦会談か成立しまして、更に統一政権ができますることを私どもも望んでいる次第であります。ただこの條約に即応いたしまして朝鮮の関係は大変従来から密接な関係がありまするので、いろいろと話合いを進めている段階であります。従つて現在におきましては、実は御承知の通りに大韓民国政府と話合いを一部進めている段階であります。今後におきまして幸い休戦会談の後、統一政権ができまするなら、当然統一政権と話を進められることとなつて行くはずであります。
  98. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 多少御訂正になつようですが、休戦会談の成立の結果、関係各国の政府への勧告の場合に、統一政権ができるか、或いは暫く二つの政権がそのまま暫定的に在在するかということは、今日においてはわからないことじやないかと思うのであります。でありますから今のようなお答えの御趣旨をもう少しはつきりされて、現在止むを得ない、実際問題として止むを得ない、交渉がいわゆる南鮮の政府というものを通じて行われているということは事実でありますから、それは別に御訂正を私も要求をしないのでありますが、併し先日総理大臣兼外務大臣に向つて私がお尋ねをいたしました質問に対して、総理大臣もその点においては賛意を表されて、朝鮮休戦会談の一刻も早く成立することを希望するということを述べられましたし、それから又朝日新聞の社説その他日本の国の中の現在の世論というものも、どうかして一刻も早く朝鮮休戦会談が成立して、日本が平和の環境の中に置かれたいということを熱望しているのでありますから、第二條の解釈についての政府の御答弁については、現在いわゆる南朝鮮の政府と交渉が進行をしているというものはあるけれども、併し平和條約が成立した場合の日本が交渉の対象とするところの政府は、この朝鮮休戦会談の成立に伴う関係各国政府への勧告の趣旨に副うて交渉が行われるものであると期待するというように、はつきり言われて置くほうがよいのではないかというふうに……くどいのですが、重ねて伺います。
  99. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 講和條約の効力発生時におきまして、朝鮮の政情が国際連合の認めまする状態においては当然日本もその状態における政府と交渉をいたして参ることは当然でありまして、従つて只今お話になりました点は、従来から私ども答弁いたしておりまする点も実はそこを申しておつたのでございます。従つて仮にお話ように、或いは国際連合が北は朝鮮人民共和国政府、南は大韓民国、更にその次の段階に或いは統一政権、こういうふうに仮に承認いたして参りましたら、その情勢に応じて当然日本も進んで話を進めて参るということでございます。
  100. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の問題と関連して次に伺つて置きたいのですが、これは平和條約及び日米安全保障條約全体を通じてのことでありますが、特にこの場合にも関連しまして、これらの條約の最高の目的とするところは、極東における平和ということにあると私は了承いたしますが、政府もそういうお考えでしようか。
  101. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本の完全主権の回復することが東亜の平和を来すゆえんであるという立場から平和條約の締結と心得ております。
  102. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういたしますと、次の(b)項でありますが、台湾及び澎湖島に対する問題でありますが、この問題は今平和條約に述べられているような、それらの地域の最終的な領土的帰属というものが決定されないで、誰のために日本がこれらの権利、権原及び請求権を放棄するのであるかということが明らかでないよう平和條約は、極東において平和ではなくして紛擾を持ち来たらすというように客観的には考えられると思うのであります。で、この点について、この條約は非常な矛盾を含んでいやしないか。その理由は、御承知のように現在も台湾の問題について種々の紛糾を生じております。それで、すでに日本政府でも御承知になつておりまするように、イギリス側の提案として伝えられているところのものには、或いはこの台湾を国際連合の信託に付してという……そして或いはアメリカが必要があるならば、それの主たる責任者として管理するというような考え方が伝えられている。それに対してアメリカ側からは、そういうふうにすると蒋介石の行くところがなくなる。蒋介石の行くところがなくなるのは非常に困るから、やはりそういうような提案には応ぜられないというよう状態を生じている。これはやはり現在議題となつております平和條約というものが成立する際のその状況と考え合せて見て、(b)項は非常な問題を惹起するのじやないか。少くとも現在、先日来條約局長なり政府のほうから御答弁になつておりまするような問題のない状態にあるのじやないので、いかにも、日本が敗戦をしたその後の暫くの状態は、政府説明されたよう状態でありますけれども、併し現在の状態についての政府の御説明は事実と相違している。事実においては台湾というものは現在、それは多少の意味において敗戦当時の連合国の軍事的な行動に伴なつて置かれていたような状況も多少は残存しているかも知れませんが、    〔理事一松政二君退席、委員長着席〕 併し現在においては、これはいわゆる蒋介石政権というふうなものの下にあるのだということも極めて稀薄になりつつある。御承知のように、アメリカなりワシントンなりにおいて、蒋介石に対する援助というものはやめて、そしていわゆる国民党或いは国民党軍、台湾における国民党軍に対する援助を要請している李宗仁一派の運動というふうなものもあり、そして先に申上げましたように、イギリス側からは、これをもはや今日の状態にいつまでも置いておくということは非常にいろいろの問題を惹起するから、国際連合に信託すべきじやないか、ところがそうなると先にも申上げたように蒋介石の行くところがなくなる。これらの関係は、このままこの條約が成立しますと、どういう意味で非常に恐るべき紛擾の原因となるかと言えば、これが敗戦当時における連合国軍の行動というものによつて中国がここに入つていたという状態とは全く違つてしまつて、台湾がいつの間にか、何らの合法的な根拠のない、いずれかの国の下に事実上において占領されるという状態になる。そういう状態になりますると、それを日本がこの平和條約で承認するということになると、なぜそういうことになるかと言えば、誰のためにこれらの権利及び権原並びに請求権を放棄するかわからないという形で放棄するのですから、従つてそれがいずれかの、何らの合法上の根拠のない特定の国、即ちアメリカがその台湾を占領するという状態に事実上においてなります。そうしますと、これは中国に成立しておる正式の政府から見れば、日本がこの平和條約によつて中国の領土に対する特定の国の侵略というものを承認し、且つ支持しておるのだというよう解釈されることが事実上においてできます。これはこの平和條約というものが、先にも政府側からの見解としても述べられたように、日本の独立、それによつて極東における平和というものを確立するという趣旨と正反対の結果をもたらすということになります。これらについては政府はどういうふうに考え、どういうふうに責任をとられるおつもりでありますか。
  103. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この條約で領土の分離をいたしましたいわゆる割譲地区の帰属が決定いたしておりませんのは、誠にお話通りに遺憾であります。併しこの遺憾な点は日本の力ではどうすることもできない国際情勢、連合国間の問題であると存じます。従つて日本としましてはこの條約においてはカイロ宣言や、いわゆるポツダム宣言承認によつて台湾及び澎湖島のその権利、権原、請求権を放棄するという形をとつて参つた次第でございます。その結果においてさまざまな問題、或いは台湾の現状というようなことは、これは日本といたしましてはこれに対する責任は全然ないものだと考えております。
  104. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今のよう見解だとしますと、この平和條約というものは、この平和條約に先行した日本に関する連合国間のあらゆる取極というものに完全に従うのだという御見解でしようか。
  105. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) この(b)項にありまする台湾の問題について、台湾にはいろいろな問題がある。ただこれの帰属をはつきりしておらないから、むしろこれだけ書いておくと将来紛争が起つて来て、只今お話にありましたよう内容の紛争が起つて来る。その責任日本もとらにやならんのじやないか。こういうお説であつたと思います。この場合にこの帰属が決定していないのは、これは日本の力では如何ともすることができない現実問題であるから、而もサンフランシスコの会議でもダレス或いはヤンガー両氏から言われておりますように、その解決を待つためには日本の独立はだんだんと遅れる状態になるから、その遅れるのを待つて結ぶということは堪え得ないことであるからというので、帰属の未解決のものはあと廻しにして、取りあえず日本としての問題といたしましての直接の関係は、これらの権利、権原、請求権の放棄をする、こういうことになりました次第でありますから、その後におきまする、又現状におきまする台湾、澎湖島についての日本責任は、いわゆる日本が負うべき筋合じやない。かように申上げた次第であります。
  106. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ついでながら伺つておきたいと思うのですが、この平和條約と、それからこの平和條約に先行する日本関係する国際的な取極というものとの関係はどういうふうになつておりますか。これは平和條約のどこに明記されておるのですか。それを念のために伺つておきたいと思います。
  107. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この平和條約には明記されておりませんが、通念といたしまして、従来存在しておつた連合国間の諸種の協定は、平和條約が成立するまでの過渡的文書でございますので、この平和條約に参加しておる連合国日本との関係におきましてはこの平和條約によつて、とつて代られると考えております。
  108. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そのとつて代られたという御答弁ですが、それは、これに先行する国際的な取極というものを無視するのだというよう意味を含むのですか。それとも今前段の御説明にあつたように、ここに至るまでの国際的な取極というものなのであるから、ここに至るまでの国際的取極というものは、この平和條約において尊重されているのだという御見解ですか、どちらでしようか。
  109. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 無視する趣旨は一向ございません。日本とこの平和條約に参加いたしております連合国との間におきましては、従前の文書は使命を完了いたしまして、この平和條約が将来の関係を規律することになります。この平和條約に参加していない国と日本との関係におきましては、従前通り関係にあります。又この平和條約に参加しておる連合国と、この平和條約に参加しないけれども日本と交戦関係にある国との間におきまする、従前の文書の効力がどうなるかは、連合国間の問題であると考えております。
  110. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それじや元へ戻りまして、平和條約のこの(b)項が成立することについて、特に台湾の問題について政務次官は、日本はその放棄した結果については何らの責任を負うものじやないというふうに先ほど答弁になりましたが、併し事実問題としてですね、先にも述べましたように、誰がためにこの台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄するのかということが明らかに明記されていない結果は、先にすでに申上げましたように、この台湾において事実上において、日本が降伏した当時の状態とは全く性質の違つた、従つて何らの合法的な根拠を持たない事実が発生しつつあるのではないかという疑いが多分にある。その際に日本が誰のために放棄するのか、これを明らかにしないで放棄するということは、すでに申述べましたように、事実上において、例えばこれがアメリカ軍によつて占領されるということになつた場合、日本アメリカ軍をして台湾を合法的な根拠なくして占領させるという状況が成立するような状況において平和條約を締結し、特にこの(b)項というものを締結したというよう解釈される。或いはそういうふうに判断される。これを判断するのは日本政府が判断するのじやない、先日来しばしば申上げておりますように、台湾において主権を侵害されたと考える中国の正式の政府がそう判断するのであります。そうしてその判断に基いて行動をとるかも知れない。そのことの責任は現在の日本政府が負わなければならないと思うのですが、それについての現在の日本政府はどういうお考えでしようか。
  111. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 国際情勢の批判につきましては、それぞれの立場における批判があり、判断があり得ると存じます。これはその立場々々によりましておのおの違つた判断も起り得ることは止むを得ぬと思います。併しその判断を如何ようにされましてもその判断に対して日本政府責任を持ち得ない。
  112. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 国際情勢についての評論家の判断じやないので、その中国の正式の政府が、その中国の領土に対して侵害が行われるような形で日本が條約を結んだというふうに判断する場合ですね。そうしてその判断されるような事実上の根拠は現在存在してします。その場合日本政府責任を負わなければならない。現在の日本政府はその責任を自覚しておられるのだろうかどうか。
  113. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本政府はその責任を持ち得ない。又持つ必要がないと思います。殊に只今のお話の中国の正式な政権というお話でありましたが、この正式な政権をいずれにするやというのが、今回御承知のようにイギリスとアメリカとの見解の相違であるのであります。又現在国際間におきましては、いわゆる中華人民共和国政府、台湾におる国民政府とおのおのの承認状態から考えましても、これらの問題に対して今この條約における立場において、日本が台湾及び澎湖島を放棄する、その結果から今後予想される問題について、日本政府はこれに批判を加え、且つ又その責任をとる立場にはないし、又責任をとる必要もないと考えております。
  114. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは又政府において十分に御研究下すつて、そうして我々がこう條約を審議しております間に、今少しく明確な御答弁を願いたいというふうにお願いいたします。  で、中国の正式の政府というものは、現在イギリスが北京政府というものを承認しています。そうしてアメリカも恐らくは将来において、この英国の北京政府承認に関する国際的な信義というものを覆すような行動をとり得るはずはありません。そういうことは考えられない。従つてこの講和條約、日本に関する平和條約のこの(b)項において、これは他の場合にもそうでありますけれども、特に(b)項の場合、そうして又現実に台湾が現在置かれている事実上の問題、こういう問題について、これを将来の問題だからそれについての責任というものを今感じないという程度にお考えになつていいかどうかということをもう少し御研究下すつて、そうしてこの審議中に明確な答弁を願いたいと思います。少くともこの(b)頃についての政府の所見としては、この台湾及び澎湖島に対するすべての権利、権原及び請求権は中国の正式の政府に向つて放棄せられるものであるというように、はつきりされて置かなければならない。現在はまだそのいずれの政権が正式の政府であるかということについて、イギリスとアメリカとの見解が一致していないというようなことであるかも知れないのですが、併し現在においても必ずしもそうではないので、すでに台湾というものが中国のいずれかの関係における中国の主権の下からだんだん逸脱してしまつて、そうして何らの合法的根拠なくして、アメリカの占領の下に陥りつつあるという事実が重大な問題になつておる。これは決して日本として責任がないというふうに簡単に考えることはできないので、連合国の間でも、なかんずくイギリスの立場は極めてデリケートな重要な問題になりつつある。それを日本が単に将来の問題については全く責任を感じないというようにして、この(b)項がそのまま批准されてよいかどうかということは十分問題だと思います。すでに草葉政務次官もこういう形で平和條約が決定されることは極めて遺憾だということをさつきおつしやいました。その極めて遺憾であるということは私も全く同感で、この平和條約第二章第二條というものが極めて遺憾な形において提出されているということは、我々もこれを極めて遺憾と認めることを記録にとどめて置かなければならないと思うのでありますが、その遺憾ということについて、単にこれは極めて遺憾というだけでなく、それが少しでも遺憾でない方向に解決されるような態度を我々としてとらなければならないのじやないか。その点について重ねて御質問の機会を得たいと考えておりますので、どうかその場合にはもう少し明確な答弁をして頂きたいと考えます。  続いてこの三條なんでありますが、この第三條につきまして特にでありますが、一般にこの平和條約についての政府の所見、政府解釈見解というものとも関連をするのでありますが、先日来各委員に対する御答弁の中に、政府委員の、例えばこの租借地であるとか、或いは旧国際連盟の委任統治であるとか、それからこの第三條に規定されておる場合であるとかというような場合に、西村條約局長が先日どなたかに対してお答えになつたのですが、理論上これらのものについて変装された侵略であるという意見がある、デイスガイズド・アグレツシヨンという意見がある。併し西村條約局長はそれは極めて政治的な見解であつて日本政府は従来そういう見解はとつていない、又現在もそういう見解をとらないというふうに御答弁になりました。ここで私は政府に向つて、又特に西村條約局長に向つて伺いたいのでありますが、これは極めてデリケートな問題でありますが、併し実際問題として非常に重大な問題をここに含んでおる。と言いますのは、すでによく御承知のように、敗戦までは日本は客観的に考えて一つの帝国主義国家である。従つてこの国際法上の概念或いは規定というものを理論的に客観的に考えるのですけれども、その際に帝国主義的な見地に立つて解釈して来たことは当然です。又事実であります。従つてこの租借地なり或いは委任統治なりに関して、例えば日本が国際連盟規約に伴つて委任統治の管理者となつておつた南洋諸島などにおいて、飛行場を建設したりした事実を、国際連盟規約に何ら違反するものではないというふうに絶えず言つておりました。これらはいずれも西村條約局長の言葉を借りれば政治的な解釈であつて、その政治的な解釈というのは、つまりここにはつきり申上げれば二様あるわけです。つまり帝国主義的な支配国家としての解釈と、それから帝国主義的な支配を受けるところの側からの考えと、この二つが明らかにここにどうしても事実上出て来ます。それで日本は従来敗戦までは帝国主義的な支配をする支配国家としての考え方というものを長年やつて来て、そうしてこれは実に根深いものがあるだろう。それが今日まだ残つておるのじやないか。ところが事実上において敗戦後、そうして又平和條約ができる結果、日本の置かれる立場というのは、もはやそういう外国の領土に対してこれを占領し、或いはこれを自己の支配下に置くというような帝国主義的な支配国の立場になるのじやなくて、反対にいずれかの、まあ必ずしも直接帝国主義的というふうに言うことはできないかも知れませんが、いずれにせよ、帝国主義的支配をも含むさまざまの形の支配の下に日本の本来の領土が置かれるという立場に立つておるのであります。この点について、このはつきりした変化、敗戦並びにこの平和條約が成立するに際して生じて来る明瞭な変化を、政府はつきり自覚しておられるのかどうかということを伺つておきたいのであります。  私はなぜこういうことを伺うかというと、全くこれはアカデミツクな問題ではないので、日本の国及び日本の国民というものがこの平和條締結を中心にして置かれておる状況が、やわらかい言葉を使えば、極めて弱い状態に常に置かれる。弱い状態に置かれておるのに、強い状態に置かれたときのように條約を解釈したり、或いはその他そういう見解の上に立つて今後進んで行くということは、政府の所期せられる、日本国政府として当然に期待しなければならない結果とは逆の結果が発生して来る。これは日本の国及び国民に対する政府責任に背き、これを裏切ることになるので、この点についてどうかはつきりしたお考えを伺つておきたいというふうに思うのであります。これが第一点です。もう一遍申上げれば、日本国は曾つては敗戦までは強い国の立場に立つて国際関係というものを解釈して来た。勿論国際関係解釈というものには学問的に客観的な一つ解釈しかないが、併し事実上においては、さつきも例を申上げたように、この二つの、強い立場に立つ国がこれを解釈するのと、弱い立場に立つ国がこれを解釈するのと、二つの解釈方法がある。方法はつきりつております。そうして先日来の答弁を承わつていると、西村條約局長は依然として過去の帝国主義的な観念の上に立つて解釈をされているのじやないか。今日の日本の置かれている非常に弱い立場の上に立つて解釈をされているのでないというふうに窺われるところがあるので、それは我が国及び我が国民に対する政府責任を裏切られる虞れがあると思うので伺うのであります。
  115. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 羽仁委員が御引用になつようなことを私は一言も申しておりません。同委員が申されたような思想の持主と、とられることは、私にとつて極めて心外でございます。私が申上げましたのは、租借地の場合についていろいろ議論があつて、古い国際法学者は、租借地を説明して偽装されたる領土の割譲であると説かれた方もあります。併しこの議論はその後の国際法学者によつて捨てられておるということを説明したのであります。羽仁委員、どうか速記録を御覧下さいましてお確かめ願いたいと思います。私は羽仁委員のおつしやるように、帝国主義的な思想を持つているとは自覚いたしておりません。平和條約の解釈の問題でありますが、條約解釈の原則といたしまして、義務を課する條約の解釈について疑いがあつた場合には、義務を負う側に軽い意味にとるべきであるというのが原則であります。平和條約は戦敗国に対して最も多種多様の、又重い義務を課するものでございます。従つてどもとしましては、この平和條約から負う日本義務解釈について疑いがある場合には、義務者にとつて軽い意味にとるべきであるとの国際法の原則を守りたいと考えます。  なお又最後に羽仁委員がおつしやいましたように、戦前の日本と今日の日本とは非常に違つて、国際的立場が弱くなつていることはお説の通りでございます。国際的地位が弱い場合に一番よりどころになるものは、何と申しましても国際法の原則であろうと思います。でありますから、今後日本として、又国際関係事務に携わる者としまして、弱者の最も強い武器とも言うべき国際法の上に立つて、あらゆる問題を理解し、処理して行くべきものであるとの御意見には全然同感でございます。
  116. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大変率直な御答弁を頂戴して満足に感じておるのでありますが、只今の最後の御答弁に附け加えて、これはもう一遍伺うことはいたしませんけれども、弱い立場にある国であることが十分に自覚されて、そうしてその最も強いよりどころとなる国際法上の原則というものに依頼されると同時に、現実に発生して来るところの事実というものについての、これは今おつしやいましたように、原則的にはこの国際法上の原則というものが最も強く我々を守りますけれども、併し原則的に国際法上の原則というものに最も強くよりながら、事実において、発生して来るその事実についての解釈は、今お述べになつたのとは今度は逆に、いわゆる善意、惡意というふうに言うことは語弊があると思いますけれども、併し日本国及び日本国民の権利或いは幸福というものをできるだけ擁護するという立場に立たなければならない。それに対して安易な形でそれらが守られるものだというように考えることは非常に危険であろう。この点は只今の御答弁政府も同じお考えに立つておるものというよう解釈します。  それで、次に第三條について伺いたいのは、第三條に、いわゆる北緯二十九度以南の南西諸島に対するこの平和條約の規定というもの、そしていわゆる信託統治制度の下に置く、又は信託統治制度の下に置かれるまでは、合衆国がそこに「行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する」、この規定は率直に言つて何の目的のためにこういうことがなされるのであるか。これに対する政府の御答弁は、今まで、極東における平和及び安全のためである、それが目的であるというように言われるのですが、併しこの極東における平和と安全の目的ということならば、この條約と並んで提案されている日米安全保障條約によつて置かれる日本の一般的状況と特にこの南西諸島が異なつた状况の下に置かれる理由はないだろうと思う。そこで一般に極東における平和と安全の目的の中には、これは客観的に何人が見てもわかる二つの違いがあります。その一つは、これも政府はそういう言葉を必ずしも使つておられませんけれども、いわゆる大陸から来るところの侵略というものに対して日本の安全及び平和が確保される。これが恐らく日米安全保障條約の持つている目的の具体的な内容であろうというように客観的に判断されます。ところがこの第三條において考えられるところの平和と安全の具体的内容は何であるかと言えば、これは客観的に日本における旧軍国主義或いは侵略主義或いは非民主主義的なる勢力、そういうものの復活に対する監視を含むものであるというように客観的に判断されておる事実を政府はお認めになりますか。
  117. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) そういう論を承わることもありまするが、併しそういう事実を政府は容認しておる次第ではありません。
  118. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうように判断されておるのに対して、そういうような判断を肯定しないとするならば、その肯定なされない根拠がおありだろうと思うが、それを伺いたいと思います。
  119. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) これは全く極東の平和と安全を大目的とするものであつて日本を監視する意味からではないと存じます。
  120. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは、なぜ日米安全保障條約の下において、一般に極東における平和と安全が保障されておるのに、特にこの第三條にはおいて、北緯二十九度以南の南西諸島について、極めて特殊な、又その特殊な状況が発生するまでの過渡的な規定についてまで追つかけて行くところの一部の隙もないよう規定がなされなければならない理由があるでしようか。それを伺いたい。
  121. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは御承知のように、いわゆる休戦、降伏文書調印後、占領下におきまする形態からずつと流れて参りまして、北緯二十九度以南がこの日本の行政地区から離れて参つたのであります。従つて日本の本土となりました地区とは従来からの形態も変つて参りますることは御承知の通りであります。その後、平和條約の構想のまとまると同時に、これと並行して日本安全保障というものが起つて参りまして、それによつてできましたのが日米安全保障條約であります。おのずからそこには違いがあると存じます。
  122. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、只今の御答弁政府の正式にして唯一の御見解であるとして伺うならば、我々はこの第三條は、客観的に日本における軍国主義、侵略主義或いは非民主主義的なる力というものの残存、或いは復活に対する監視を目的とする規定であるという、そういう判断に対する何らの反証も挙げられていないというふうに認めます。それから第二に、只今の政務次官の御答弁政府の正式にして唯一の御見解であるならば、この第三條は占領の継続であるというように判断するよりほかないと思いますが、今御説明になりましたように、占領下においていろいろな処理がとられて現在まで来たこと、それがこの第三條と日米安全保障條約との間の唯一の違いだとするならば、即ちこれは日本において平和條約成立後も占領を継続するものであるというよう解釈するほかないと思いますが、この二点についてはそのように判断してよろしいでありましようか。
  123. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御判断は、これは私がかれこれ申上げられませんが、その判断に政府は同意なりやという点につきましては、同意ではないのであります。実はこのカイロ宣言を基にいたしましたポツダム宣言におきましての諸小島の決定は、日本連合国の処置に一任いたしておる次第であります。従つてこの点から生まれました第三條の問題だと心得ております。又これによつて日本の内地を監視するというのは、全然さよう解釈はどこからも出て来ない、一方的な一つの批判にしか過ぎないのではないかと思います。
  124. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の考えに賛成しないとおつしやるのですが、賛成できないという理由をお述べにならないので、そういう判断が成立するということはお認めにならざるを得ないのじやないかと思うのです。  次に伺いたいのは、この第三條の政府説明の間に、西村條約局長が述べられた次の点は、政府の正式にして唯一の見解であるかどうか。それはどういう点であるかと申しますと、この第三條の前段において、これらの島々を「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」、ところが「国際連合に対する合衆国のいかなる提案」というものが、国際連合において成立するかしないか、その点については問題がある。そこで後段において、「このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」というこの後段が必要とされるところの理由、そして又この後段のような事実が発生するところの合法的な根拠、これらについては参議院の本委員会において説明することのできない祕密の問題があるということを説明されたと思うのでありますが、そういうふうに我々は判断して正しいのでありますか。その点を伺いたいと思います。
  125. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私の答弁に関しますから、私から御答弁申上げたいと思います。私か申上げました趣旨は、第三條の規定によりまして南西諸島が信託統治制度の下に置かれることになりましたにつきましては、日本国民として誠に遺憾に思うところであります。政府といたしましては、そうならないように全力を尽して参りましたけれども、結局、第三條のよう規定になりました。この第三條の規定が確定されるまでの間、日本政府と合衆国の政府との間の話合いの内容は、二国間の話合いでございまして、相手国の同意がない限り、この席上で御説明する自由を持ちませんと申上げました次第であります。それだけのことでございました。
  126. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今御説明下さつたようなことが事実であるといたしますならば、これは最初の総括的の質問の際に私は総理大臣に向つて、私は必ずしも現在の政府が祕密外交をやつておるとか何とかという区々たる点を批判しようとは思わない、併し国民のすべて、或いは国民の一部の幸福に深く関係して来る問題については、その事実を国民の前にできるだけ明らかにして、そうしてその日本国民の熱望というものの上に外交関係というものを成立さして行くことが、真実の平和を招来する唯一の方法ではないかというよう質問をいたしまして、そうして首相兼外相もそれについて特に反対をせられなかつたので、大体同じ見解をとつておられるのじやないかと思うのですが、この問題についても、この平和條約の審議の過程において、これは只今ここですぐと申上げるのじやないのですが、先日来の各委員からの御質問、又それらの政府並びに議員の背後において表明せられておりますこれらの地域における日本国民の非常な憂慮と苦悩というものは十分御承知なのでありますから、だからこの程度のことでここを切り抜けて行かれるほうが正しいのか、それともそれらについてはもう少し慎重、慎重というか、深刻な問題があることを十分に只今以上に自覚せられまして、これらについては更に日本国民の全部又は一部の熱烈なる願望というものを反映されるよう方法をとられることが正しいのじやないか、この点を御研究を頂いて、そうしてこの條約文の審議の過程においてもつと国民の真実の願望、自由に表明されるところの意思というものの上に基くべきだという判断に到達せられたならば、只今述べられましたよう関係について、先日も首相に向つてはイランのモサデグ或いはエジプトのナハス・パシヤ、そういう人々の態度というものにも学ぶべき点が多々あるのじやないかと思うので、この第三條について最初に申上げましたような、日本が過去において置かれておつた立場と今日において置かれている立場とは、強い者の立場と弱い者の立場と全く違うのだから、従つてこの外交関係の平和的な解決の上においても、今とられているような態度でなく、この日本国民の深刻な願望というものの上にこの問題を解決して行かれるように切望する次第であります。で、これについては次の機会にもう一度伺います。  そこで続いてお伺いしたいのは、第三に、今申上げたような点について、この南西諸島に居住しておられる我が日本国民が、只今西村條約局長も率直に述べられましたように、甚だ困難な状况の下に立たされるということは、我々の痛感するところでありますが、これらの地域に生活をするところの日本の国民が、そうして置かれるところの状況に対してその苦痛、又その苦痛に対するいろいろな処理の方法、それらの苦悩が表明せられる方法はどういう手続によつてそれらが受付けられるものでしようか。その点について御説明を願いたいと思うのであります。つまりこれらの地域に生活されるところの日本国民のあらゆる苦痛というものは、どこへも訴えて行くことができないのか、それとも、どこへ訴えて行つたならばそれが受付けられるのであるかということを御説明願いたいと思うのであります。
  127. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 現在では実際の問題といたしまして私どものほうで、外務省のほうで十分いろいろな意見も陳情も拝承いたしております。又、従つてこれらの土地に住んでおられるかたがたのいろいろな考え、又持つておいでになります具体的な問題等も実は十分その都度連絡をし、措置をいたしておるつもりで進んでおります。
  128. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私が特に問題として感じましたのは、現在も勿論そうでありますが、この平和條約が成立しまして、この第三條の規定が実行されました後におきましては、それらの日本国民の苦痛というものはどういうふうにして表現され、どういうふうにして受理され、どういうふうにして解決されるものであるか、その点をお答え願いたい。
  129. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは改まつて申しますると、現在でもおのおの自治制を布きまして、四つに区画してそれぞれの方法で行政なり、いろいろな方法がとられておりますから、これは御承知の通りでありますので、別にお答えを申上げなんだ次第であります。実際上の問題としましては、先に申上げましたように私ども十分承わつております。今後におきましてもこの行政、司法、立法というようなものの行われる施政の形によりましていろいろ変つて来ると存じますが、併しそれらの点につきましても当然日本主権であり、日本の領土であり、日本の国籍でありますので、十分今後も連絡して参つて行きたいと存じます。
  130. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今の点についてもう少しはつきりつておきたいと思うのであります。どういうふうにしてそれらの苦情が受理せられて、そうして処理せられるものであるかということ、只今草葉政務次官は我々が承知しておるであろうからと思つてというふうに言われましたが、我々詳しく承知しておりませんから、詳しく御説明願いたいと思います。
  131. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 現在は大体御承知と存じますが、これらの地区におきましてはそれぞれ内地と違つた、行政地域と違つた立場におきます占領行政が行われておつて、そうしてそこは天体四つの地区に分れた民主的な選挙による知事が出されておる。そうして一つの行政形態をとられておる。併しながらこれはいわゆるその立場における行き方であろうと存じます。むしろお尋ねの根本は、いろいろな本質的な問題、先ほど来御意見ような本質的な問題のある場合に、日本内地と同様な行き方の願望が強いという点におけるいろいろな熱望をどういうふうに今後取扱うかという御趣旨が中心だと存じております。従つて一般的な行政形態と申しますか、そういう立場でなしに、その本質的な問題が恐らく御質問の中心であつたと存じますので、今後におきましても、これは先日来詳しく申上げて参つたのでありますが、恐らく先ほど来申上げました極東の平和及び安全に差支えない程度の最大限の、日本国民としての、内地に匹敵するような待遇が与えられることを、今後の話合いの上で十分進めて行きたいと考えておりまするので、従つてこれらの点も十分現住しておられますかたがたの御意見等も拝承して進めて行きたいと存じております。従つてそういう点において今後それらの苦痛等は十分私どもも、政府も承わつて行きたいと存じております。
  132. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 日本政府がそういう点について誠意を尽されることを期待するのでありますけれども、これは西村條約局長に伺いたいと思いますが、仮に合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におかれた場合、それから、このような提案が行われ且つ可決されるまで合衆国が三権の全部を行使する権利を有するという状態におかれた場合、この両方に分けまして、この両方においてそれぞれ今まで申上げましたようなこの地域に生活される日本国民の苦情ですね。その苦しい状態に陥つて、それに対する救済を求める方法は国際法上はどういう方法があるのでございましようか。それを伺つておきたいと思うのであります。
  133. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 三條の実施につきましては、最近合衆国政府の当路のかたが、日米両国の相互的平和と安全を図ると共に、日本国民の最大の利益を図つて行動するであろうと公式に述べておられます。でございますから、私どもとしては御指摘ような住民の苦情が全然感じられないような制度の下におかれるように努力しなければならんと考えておるわけでございます。
  134. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 両国政府のそういう点における誠意と義務については、私は少しも疑うものじやないのですが、近代の法の考え方から言えば、そうした誠意を尽すということは前提として、而もそこに苦情が発生した場合に、その苦情を処理する方法というものが、必ずあらゆる場合において要請されていると思うのでありますが、この場合にはどういう苦情処理の方法がございますか、それを伺いたい。若しも全然ないのであるならばない、あるならばある、あるとすればどういう方法があるかということをお答え願いたい。
  135. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本政府としては日本領域内の日本国民の苦痛の問題でありますから、この苦痛を軽減するためあらゆる手段をとるのは当然政府の責務でございます。信託統治制度を布き、又はそれに至る前に三権を行使する合衆国といたしましても、その施政が円満に行くためには住民に苦痛がないことが絶対に必要でございまするから、合衆国としても住民の苦情の処理の途は考えてくれるでございましよう。いずれにいたしましても第三條の実施につきまして今後両国政府で話合い等をいたす場合には、両国政府によつて、これらの苦痛がないようなシステムを先ず見出すことが第一番でございますし、そういうシステムが発見されたといたしましても、将来或いは苦痛を感ずるよう事態が起るかも知れませんから、そういう場合について如何に処理するかということも、自然談合の間に触れて来ることになる次第だろうと思います。いずれにしろ、日本としては、こういう苦情が出ないようにしなければならないし、出たらこれを救済する途を講ずるのが、政府の責務であろうと考えております。
  136. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それじや、その点についてもう一度伺つておきますが、いろいろの苦情の中の、或いはそれに先立つ、最も上の苦情と言いますか、不満である……、こういう信託統治制度の下におかれたということに対する島民の反対というものは、どういう方法によつて表明せられることができるのであるか。その点について伺いたいと思うのであります。
  137. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私どもとしては、三條は遺憾に思うところでございますけれども、一旦これを承諾した以上は、もう不服は言わないのが我々の能度であるべきだと考えております。併しながら第三條は、合衆国政府も公式に説明いたしておりまするように、決して永久の目的のためのものではなくて、一に極東の平和と安全の維持のためでありますから、吉田全権もサンフランシスコで言われた通り、一日も早く極東の情勢が安定しまして、第三條のような措置が不必要になる日が来まして、本然の姿にこの地域が帰るよう絶えず努力して行くべきことであろうと考えております。
  138. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういたしますと、この本院の本委員会における従来の各委員政府との質疑応答、又本日の私の質問に対する政府のお答えというものを通じて、全体として我々は、この第三條に対しては日本又は日本国民としては忍ぶことのできない、極めてこれを受諾することのできがたい内容を含んでいるということを政府は認められたものだというふうに判断をいたします。  それで最後にこの第三條について伺いたいのは、やはり各委員からの質疑とそれに対する応答の中に出ておりました問題でありますが、結論だけを伺いますが、この信託統治の下におかれた地域が独立をして、そうして国際連合に加入した場合には、その地域に対する信託統治というものは廃止しなければならない。この規定従つて若しもこの南西諸島における日本国民が独立運動を起して、そうしてこれらの島島が完全に独立する、独立した結果、現在の日本国と如何なる関係に入るかということは別問題としまして、少くともここに完全に独立革命を起して独立する、そうしてそれが国際連合によつて承認されるということになれば、信託統治というものは廃止されるということになるのですか。その点について伺つておきたいと思います。
  139. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御指摘の信託統治に付せられた地域だけで仮にお話通りの発展を遂げた場合には、それは信託統治制度は廃止になるし、信託統治地域が独立国として日本から離れることになりましよう。全く架空の場合だと存じますが……。
  140. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の点が、恐らくはこの南西諸島が信託統治におかれることに反対する或いは唯一の方法であるかも知れない、こういうことを政府は認められたというふうに判断をします。(笑声)  続いて第三章に移らして頂きます。第三章の第五條の(a)、「日本国は、国際連合憲章第二條に掲げる義務」……、委員長にちよつと伺いますが、若し議事進行のためにそのほうがよろしいのであれば、私はここで一応質問を打切りまして、質疑の順序に従つて、この第五條からの質問あとに廻さして頂いても結構です。
  141. 永井純一郎

    永井純一郎君 委員長……。
  142. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 議事進行ですか。
  143. 永井純一郎

    永井純一郎君 議事進行です。今の羽仁さんの質問に関連するのですが、私も昨日であつたか、一昨日であつたか、第三條の信託統治については縷縷條約局長から回答を得ましたが、羽仁さんと同じように非常にわからないわけであります。そこで私どもはこの第三條が判然としない限り、実は先に進めないと思つておるのであります。そこで衆議院では多数の横暴というか、そのまま押し切られて来ておりますが、参議院はその特性にも鑑みて、慎重に審議をしなければ、衆議院のようなああいう状態のままで、何が何だかわからないままで、この両條約を上げてしまうわけには行かぬ。特に三條の後段についても羽仁さんと同じよう質問を、私も当然疑問が起るので、しておりまするが、非常にわからない答弁が多いのであります。又私は政府に、行政協定内容を果して我々がこの審議をしておる間に示すのかどうか。それから信託統治の第三條の問題につきましても、私が質問したときにも、條約局長はなぜこれを二十九度線というものをわざわざ引張つて、これを特別に信託統治にしなければならないのか。或いは憲章の七十六條等の解釈から、法律的に解釈をして行けば、信託統治に私はやはりできないのが法律上の解釈としては正しいと思う。併し、二十九度線をわざわざ引張つて信託統治にしておる。その間、日本政府アメリカとの間における交渉で、或いは租借地にしたほうがよかろう、或いは主権を完全に、完全というか、主権を認めるのであるから、認めておいて、領土にしておいて安全保障條約の対象にしたほうがよかろうというようなことが当然論議されたと思われる。ところがそういうことは、アメリカ立場を考えてか、まあこの委員会で明らかにしないという態度を政府がとつております。これを信託統治にしたのはいろいろ想像ができます。例えば完全にこの地域を武装化するために軍事基地化するためには、やはり信託統治のほうがいいということも考えられます。そういうことであれば、作戦上そのように重要なものであるかどうかということも、我々がやはり理解しなければ、日本の安全を本当に保障するために必要なことであるかどうかという判断が付かないわけでありますから、この三條について委員会が完全に理解するまでは、私どもは先をやつてみても意味がないと思うのであります。そういう意味から行政協定につきましても、その項目さえ総理は私どものほうに……岡田君の質問に対して示しもしないし、答えもしないという態度を総理も示しております。そこで委員長初め皆さんに私はお諮りしたいのでありまするが、祕密会議というか、何か開いてもらつて、そういう点を明らかにして、完全に我々は理解をすべきである。特に参議院におきましては、その特性に鑑みて、特に條約案については、私は重い任務を参議院は持つておる。こう思いますので、これらの点をこの公開の席上で工合が惡いという考えを持つのであるならば、祕密会議か何か開いて、総理も出席をして十分に審議をするということでなければ、私は参議院としてはできない、いけない、このように思う。いずれ総理大臣が出席したならば、私はこのことについて、今のよう内容のことを発言しようと思つておつたのでありますが、羽仁さんに対する第三條の説明が依然としてわけのわからない答えでありまするので、そういうことを皆さんに御相談をして、諮つて頂きたい。できれば一応休んで理事会を開いて頂きたい。こういうことを提案するわけであります。
  144. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 今の永井委員の御発言でありますが、今日、あとで理事会を予定しておりますので、そこでこの問題をやつては如何ですか。
  145. 永井純一郎

    永井純一郎君 何時から。
  146. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) この委員会散会後……。
  147. 永井純一郎

    永井純一郎君 これが済んでから。
  148. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それで御了承頂きたいと思います。如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それではさようにいたします。
  150. 金子洋文

    ○金子洋文君 私の質問もやはり第三條が一番問題になるのです。
  151. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 三章じやないのですか。
  152. 金子洋文

    ○金子洋文君 三章もありますが、三條も簡単に申上げますが、大抵羽仁委員から申されましたので、簡単に不明瞭な点をお尋ねいたします。結局、この三條というものは、いろいろ政府委員のかたがたが弁明なさいますけれども、これは非常に屈辱的なものです。でありますから、前文で如何に立派に対等な権利とか、何であるとか謳つてつても、こういう條約が出て来たのでは、前文はまるで自殺をしておると思います。さつき羽仁君も申しましたように、若しも総理大臣がおつしやるように、この三條の信託統治は、中共から或いは侵入されるような心配がある、であるからそのことについてアメリカ当局と今話合つておるという答弁でございました。併し、そういうふうなアジアの平和と安全ということになれば、先ほど羽仁君が言つたように、日米安全保障條約で軍隊が残るのですから、それだけで十分可能だと思う。わざわざ信託統治制度にするということは甚だ不可解な問題だ。そうしてむしろこのやり方では日米の友好が阻害される。折角の考え方、折角の日米の友好を保とうとする考え方が阻害される。そうして私は、今後日本アメリカ軍隊駐留する場合に、先のことを考えると非常に憂慮すべき事態の起るということも考えられる。でありますから、こういう不明瞭な、合理的でない條約に対しては、我々はわかるまで、明瞭になるまでやはり追及せざるを得ない。そこでさつきお話の両国間にいろいろ話合いがあつた、併しその話合いは向うとの話合いだから発表できないと、これは私は非常に疑問を持つのです。発表できないこともわかりますけれども、発表できないということは国民に知らしてはよくないことだから発表しないのじやないかと思うのです。国民に知らせないでそういう條約を結ぶということは、果してそういう権限が外務大臣に与えられておるかどうか、これは非常に問題だと思うのです。何か隠れておる、この條約には確かに隠れておる、こう見ざるを得ない。その話合いの中には隠れたるものがございますか。西村さん一つお答え願います。
  153. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は先刻来第三條のことについて、交渉の具体的なことについて、それは普通の交渉の話でございますからというのが、誠にこの発表のできない祕密の或る大きなものがあるよう誤解を生じましたことは恐縮でございます。これは決してこの話の中に一つの祕密があつて、そうしてそれを発表を差し控えておるというようなことは全然ございません。ただ、今申上げたような話の中で、いろいろとこつちも意見を言い、向うも意見を言うたようなただ単なることをそのまま申上げても大した問題にもならないし、それをそのまま申上げることはむしろ妥当ではないという意味のことを申上げたのでありまして、何か一つのものがこの中に隠れておつて、この通りこれは一つの祕密のものにするぞ、従つてそこを信託統治にして、そしてそれにはさわらせぬようにするぞというような両国間の祕密協定があつて、それが言いにくいというようなものでは全然ございません。若しやさような御印象を与えましたら、私ども誠に恐縮に存じます。決してそういうものではございませんから、この点は一つ御了承を願いたいと思います。
  154. 金子洋文

    ○金子洋文君 今草葉次官の言われたことは、私はその通りだと了承いたします。併し祕密の協定がなくても話合つたことが言えないということでは、この事態が発展して行くと憲法に背反するとか何かの工合の惡い問題が起つて来ると思うのです。それが話合いを言えない問題になつておると私は思うのです。併しこれはこれ以上追及してもあなたのほうで答えもしないだろうし、問答無益となりまするから、これ以上追及いたしません。  そこでこの條文によりますと、「合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力」とこうあつて、軍事上のことが謳われていないのはどういうわけなのか、これをお尋ねいたします。更に言えば、具体的に申しますならば、必然的にここに、沖繩あたりには飛行場があるのですからね、これは軍事上のいろいろな権力を持つと思うのです。それを軍事上という言葉をここに抜いておるのはどういうわけかということです。(笑声)それを一つお尋ねしたい。
  155. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 普通、国家行使する権能は立法、司法、行政の三権に分れますから、この中には軍事上の事項も含まれるわけでございます。
  156. 金子洋文

    ○金子洋文君 含まれるのですな。
  157. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 含まれます。
  158. 金子洋文

    ○金子洋文君 それでは六條のほうへ、これも簡単な質問ですが、この六條の後段でありますが、後段によると、一応日米安全保障協定が予想されておるのでありますが、外務大臣の御見解では、この講和條約と日米安全保障協定とは不可分のものである、こういう御見解ようでありましたが、改めて政府の御所見を伺いたいのです。
  159. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは実はこの平和條約と日米安全保障條約とが可分なりや不可分なりやということは、ただその可分なりや不可分なりやという言葉だけでは御返事はできないと存じます。で、はつきりと皆さんのお手許にはこれは別な形で出しておりますが、日米安全保障條約並びに日本国との平和條約というのは、純然と形を変えて二つともおのおのの立場において御審議が願いたい。そういう点から申しますと、当然これは違つたものです。併しこの日本国との平和條約というのをだんだんと取扱つて参りますと、これによつて独立しましたあと日本は、このような国際情勢間にいわゆる力の真空状態になつて自衛権は持つが、それは中身のない鞘のようなものであるから、従つてそれの本当の裏付としては、日米安全保障條約がなかつたら独立が真の独立にならないのじやないかという意味におきましては、これは全く密接な関係、こう申上げておるのであります。
  160. 金子洋文

    ○金子洋文君 そうすると要するにあれですね、民主党のおつしやつている手続上の手落があるとか、行政協定内容がわからないとか、駐兵費の分担がどうとか、高すぎるとか、こういうふうな観点からは分離を考えられるが、本質的には一体のものと理解してよろしいのですか。
  161. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは今申上げたように、一体という言葉の持つ内容の問題でございますが、従いまして、ただ可分、不可分と一口に申しますると、却つて議論がこんがらがつて参ると思うのです。形式上は、はつきりと分れております。併し内容は、私はむしろ、それで不可分という言葉よりも密接なという言葉を今まで使つてつておるのであります。
  162. 金子洋文

    ○金子洋文君 では、総理大臣が不可分と声明したのは、あれは間違つておるのですか。
  163. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは総理大臣は可分、不可分という言葉も使つておられます。使つておられまするが、これははつきりと不可分なものであるという意味における前後の言葉をよく御覧になりますると、御了解が行けると思います。
  164. 金子洋文

    ○金子洋文君 もう一点、これは第六條に関連して来るのですが、この後段の文章によると、すでに日米安全保障協定が予想されて、この後段の條文ができて来ておると思うのです。そうでなかつたら、これはおかしいと思うのです、そういう点どうでございますか。
  165. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは日米安全保障條約は、この審議でさつきから何遍も、又総理も従来から申上げましたように、二月の時からあの話は出ております。出ておりますことは事実でございます。事実でございまするが、併しこの條文のこの但書によつて日米安全保障條約が生まれて来たのじやないのであります。又日米安全保障條約はこの同じ日に、或いは直ちに作るからというだけの問題ではないので、従つて日米安全保障條約は、一方先刻も申上げました第五條の(c)項によつて結び、この但書の場合においては「締結された」、この「締結された」とありまするけれども、これは九月八日までは締結されておらないのであります。この署名までは……。従つて「若しくは締結される」というほうに当るといえば当るかも知れません。
  166. 金子洋文

    ○金子洋文君 私はこの條文から生れたと思わないのです。考え方が逆なんですよ、草葉さん。日米安全保障を構想したからこの條文は生れて来ている、こういうわけなんです。その点誤解なさらないように。以上で私の質問は終ります。
  167. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつきの問題に関連して、第三條の点について、先ほど、又従来の各委員からの質疑応答の中に、要するに第三條というものは、一言で言えば、日本が背後にピストルを突きつけられながら前に向つて進んで行けということをこの第三條は言つているのじやないか。そう解釈するのが一番素直で、そうして一番客観的な解釈じやないか。併しそんなことが事実上できるかというのです。日本を安全にしてもらうためにアメリカ軍隊にいて頂く。日本の背後にはアメリカ軍がこの南西諸島においでになる。即ちこれをわかりやすい言葉で表現すれば、背後にピストルを突きつけられて前に向つて防ぐということじやないか。これはこの第三條の端的な意味じやないかというふうに判断されているのです。だから、そうじやないということをはつきり言われない限り、そういう判断が成立してしまうのじやないか。そこで、もう一遍念のために伺つておきたいのは、さつき西村條約局長が、この第三條については日米間の話合いというものがあり、その話合いの内容については相手国があることであるから、相手国の承諾がなければこれをここで述べることができないというふうに言われましたが、その問題についてこの参議院でこのように皆さんが、日本国民を代表する参議院の議員がこの問題についての的確な説明を要求しておられるのでありますが、政府はこれらについて日米両国間において話合われた内容について、ここに発表せられるようなことができるように、相手方の国と努力をしておられるかどうか。又相手方の承諾を得なければ発表できないと言われるのだから、その相手方とその点についてそれらの話合いの内容を発表する努力をしておられるのかどうか。それを伺つておきたいと思います。
  168. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは実はこの條約文全体について、今までこの二月からずつと話して参りました話の程度でございます。従いまして、これは総理も曾つて皆さんに御了解を頂いたのでございまして、それ以上何かあるのじやないかというお話のときに、いや実はこれ以上はありません、ただ條文の中で外交的にべちやべちや話合うことをそのままお話申上げても却つて十分でないので、結局お話申上げると、これ以外には何も祕密外交というものはあるものじやないと申上げた、その意味の話合いでございます。これは全く私の申上げることを御信用頂いて結構だと思います。従いまして相手方に何か特に隠した大きい問題があつて、それを御報告するために向うと十分連絡して発表しないと工合が惡いという意味のものではございませんから、従つて従来申上げております平和條約全体としての交渉の問題でございます。
  169. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  170. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記を始めて下さい。
  171. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 総括質問のときもその点について申上げましたのですが、首席全権が非常な努力をされたということに対しては敬意を表するのですが、併しその努力の仕方が若し誤つておれば、その努力の甲斐がないのじやないか。その点において単に首席全権だけが努力されないで、なぜ国民と一緒に努力をされないのか。今のお説の趣旨はよくわかるのですが、併しそれは要するに一言で言えば、この第三條というものは置かないでもらいたいというふうに首席全権も飽くまで努力された、その努力は非常に敬意を表するけれども、その努力は成功しないで、はつきり言えば失敗して、そうしてこの第三條というものができている。首席全権は飽くまでこの南西諸島を信託統治制度の下に置かないという意思を以て交渉せられたのだが、それが成功しなかつたとすれば、その努力をなさるものは、首席全権の努力のあとに続いて、直接的には我々参議院がその努力を続けるものだと思う。でありますから、さつきから申上げてるように端的に言えば、これはたとえですけれども、それが現実においてそうだと言つているのではないのですから、誤解しないで頂きたいのですが、たとえて言えば、うしろにピストルを突きつけられて前に向つて進んで行けというようなことはできないのだから、それがそうでないということを証明して頂きたいというふうにお願いしているのであります。
  172. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  173. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記を始めて……。
  174. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 繰返して申上げますが、この第三條を我々が審議するのに政府説明が不十分であつた。問題の要点は極めて明瞭でありまして、この平和條約と並んで政府が審議を要求せられた日米安全保障條約というものがあるのに、特に平和條約の中にこの第三條というものを設けて、日本全体にアメリカ軍の駐在というものを認める日米安全保障條約というものがあるのに、特にこの第三條において南西諸島におけるアメリカによる信託統治というものを置くことの理由がわからない。それでその理由がわからないからして、あらゆる場合が想像されて来る。又いろいろな判断がそこに成立する。その中の最も問題となる判断は、日本国内に軍国主義、侵略主義或いは非民主主義的な力というものが残存することに対する監視を必要とする考え方がここに現われているのではないか。それは只今西村條約局長の御説明によつても裏付けられている面があるのでありますが、そうだとするならば、その日本国内に軍国主義や侵略主義、非民主主義的な勢力が残存するということを除去するならば、そういう一切の誤解を一掃するような、そうした事実を除去するならば、例えば警察予備隊を増強したり、それから或いは先日来質問しているような右翼の活動を默認したりしているような、日本国内における或いは軍国主義、侵略主義、非民主主義的な勢力というものの復活残存という事実を根絶することによつて、第三條は必要がなくなつて来るのではないか。言葉を換えて言えば、今日の日本の民主化が不十分であるために、南西諸島における日本国民が非常な苦痛を嘗めなければならないのではないか。そういうことが事実あるとするならば、現在の日本政府の非常な責任であります。これらの点についての十分な御説明というものを伺わなければ、この第三條の審議というものが進行しないのでありますから、従つてさつき永井委員から御希望のありましたような点を委員長及びこの委員会において十分慎重に御考慮下さいまして、政府がこの第三條についてさつきから申しておるような判断が成立しないという、そういう判断をするに足る、その判断をするということの十分な根拠を示す機会をできるだけ早く持たれたいと希望するのであります。
  175. 高橋道男

    ○高橋道男君 五條(a)の(ii)に「武力」という言葉が出ておりますが、これは憲法にも武力という言葉が出ておりますし、同時に憲法におきましては戦力という言葉が出ております。それから国連憲章を見ますと、これは飜訳ではないかも知れませんが、同義語として考えらるべき一つに兵力という言葉が使つてございますが、この兵方、武力或いは戦力というようなものの内容はそれぞれ言葉が違つているように違つているものでございましようか。それから特にこの條約の中におきましても、自衛乃至自衛力或いは軍備、再軍備というような言葉が使われておりますが、こういうような言葉の内容はそれぞれの違いがあるのかどうかを伺います。
  176. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 武力、兵力、軍力は大体同じ観念であると考えております。
  177. 高橋道男

    ○高橋道男君 先だつて法務総裁からは、戦力というものは近代戦を遂行するための軍備というか、そういう意味の御説明があつたと思つております。近代戦ということの細かなことについてはお話がなかつたように思いますが、これは近代戦というものは、或いは原子力を使い、或いは飛行機を使うというようなことも含まれると思うのであります。ところが自衛力というようなことに関連して、自衛は侵略じやない、ただ一時的に防ぐ防備の力があればいいというよう意味合の上から、近代戦の遂行には必要である飛行機とか、原子力とか、そういうものは要らないけれども、それ以外のつまりこれを除いたものは近代戦には適当でないと思われるようなものを一切含むのだという解釈が若しできるとするならば、自衛力という意味において相定されております、又行われていると考えられます警察予備隊の装備というようなものが、そういう近代戦という軍備の一歩手前の限界までは進めてもよいというよう解釈が生まれはしないかということを考えるのでありますが、若しそういうよう解釈が行われるとするならば、或いは行政協定と関連し、自衛力の内容において、我々が簡単に防衛力というように考えているものと大分違つて来るのじやないかと思いますから、そういう点において、こういう武力とか、或いは自衛力というようなものの内容はつきりした定義がほしいと思うのでありますが、そういうことについてのお考えを伺いたいと思います。
  178. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 対外防衛力を構成します兵力又は武力と、国内治安維持を目的といたします警察力、即ち治安力との間に具体的に一線を画すことは極めて困難な問題と思うのであります。と申しますのは、戦争も時代の変遷と共に進化いたしますし、又国内治安の擾乱の仕方も態様も又時代の進展と共に変つて参りまして、対外防衛力にしろ、国内治安力にいたしましても、対象となるものそれ自体の変転に伴いまして、その力の度合、言い換えれば装備の性質とか力とかいうものが変つて参ります。それで、具体的に両者の間に一線を画すことは困難であつて、むしろ、その対象となるものに差違があると思うわけでございます。
  179. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 私は第六條の(b)項についてちよつとお伺いしたいと思うのですが、この(b)項、即ち「日本国軍隊の各自の家庭への復帰に関する」條項は、これは我々国民、殊に留守家族の切なる念願から最後になつて挿入して頂いた規定でありまして、非常にその点は感謝をいたしておるのでありますが、我々その時分或いは現在でもそうですが、まだ復帰していない人々の多くはソ連の地区にある、或いは中共地区にあるというふうに聞いております。又留守家族の者は皆そう考えております。ところが甚だ不幸なことに、この條約にはソ連からは調印を得ておりませんし、中国はこれに参加していないということになりますと、将来ソ連なり、中国がこの條約に参加するまでは、結局この條文は空文にとどまることになるかどうか。その他の地区はまだ未帰還の者が残つている所があれば、それは無論なんですが、それは仮にあるとしても数は少く、大部分はソ連地区、或いは中共地区ということが言われておる以上は、ソ連中共調印しない條約の條文が甚だ何と言いますか、残念な気がいたしまするが、さように空文に暫らくとどまるのだ、かよう政府はお考えになつておりますか、如何でしようか。
  180. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話ように、第六條の(b)項に対しましては、ソ連は署名をいたさなんだのでありますから、ソ連或いは中国関係におきましては、この條約全体が将来効力を発生する状態に現在の段階ではないのであります。従いましてこの條項は直ちにこれらの国々に関しては、或いは空文に等しい状態であろうと存じます。併しこれによりまして署名国の四十八カ国の間におきましては、これらの事実に対して、この條項によりまして十分協力する態度をとり得る状態になつて来ると存じます。従つて他の面から申しますると、中国或いはソ連は、ポツダム宣言関係におきましては、あの條項の第九項によつてその問題は更に続いて、ポツダム宣言が有効性を持つて来て、これらの国々はポツダム宣言が拘束することと考えます。
  181. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 いろいろ御質問のあつたあとですから、私がお聞きしようと思いましたことも遠慮したいと思うのでありますが、と同時に、ほかの委員会に参つておりましたので、場合によると重複いたしまする場合もあると思いますが、その点は御注意願いたいと思います。先ず第五條で一番問題となりますことは、平和條約だけでは非常に真空状態になるということをダレスが頻りに言つたために総理大臣も年中それを言われるわけなんです。それだから安全保障條約が是非必要なんだ、端的に言えばそういう御説明なんですが、ここで改めてこの第三章安全、第五條によつて日本国が国際連合憲章の義務を負うと同時に、連合国も又国際連合憲章第二條の原則を指針とすることを確認しておるのでありますが、それによつてどの程度の安全というものを期待しておられるか。この点を政府としてはつきりさして頂きたいと思うのであります。
  182. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 第五條の(a)におきまして、国際連合憲章の第二條の義務、なかんずく七つの義務の中で三つの義務を特に日本は負う。この三つの義務を中心とした国際連合憲章の第二條、これに対しまして、連合国も全体でありますと、当然連合国はここに書かんでも義務を負つておる次第でございますが、併し連合国の、ここの條文で言います連合国、国際連合ではなしに、ここで言います連合国の中には、国際連合に加盟いたしておりませんセイロン並びにヴイエトナム三国が入つておるのでありまするから、これらの国々を考えて指針とする、こういう点から考えて一つの平和という状態が打ち立てられて来る。武力の行使もしない。問題があつたら平和的手段でやる。その場合に何か更に問題があつたら防止行動或いは強制行動をとつて来る。こういうことを考えられまするから、一応は平和的体制というものはとられる。併しその国際連合に対する平和的な体制をとられるまでにおきましても、その国の自衛独立の立場において急迫した状態なつた場合は、その国が或いは固有或いは集団的に固有権利を発動し得る。こういう状態になつて来ると存じます。
  183. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実はお聞きしようと思つたのは、総理大臣の御説明ようなことをお聞きしようとは思わなかつたのであります。法律的に見まして、政府としてどれだけの安全がこの二條によつて保障されておるかということの考え方をはつきりさしておきたい、こういうことであります。それで国際連合の機構に入つておる、今おつしやつたように国際連合に入つてない所、加盟国でない所は別であります。国際連合の加盟国は、その加盟国間相互についてはこの二條の義務を発生する。併しながら非加盟国であるところの日本に対しても発生するのである。それからもう一つは、非加盟国と日本という非加盟国の関係においてもどの程度の安全が保障されるか。これをこの條約上はつきり具体的事項について説明して頂きたい。それが私の希望であります。
  184. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 一応私が申上げて、細かい條約上の條文的なことは又條約局長から申上げることにいたします。この国際連合憲章第二條、日本はまだ加盟いたしておりませんが、併し前にもありましたように、国際連合憲章のそれぞれの精神、條項というものは日本承認する立場をとつて参つたのであります。殊にこの安全におきましての第五條の国際連合憲章の第二條の中で、特にその中で、七つのうちでこの三つは日本義務を負う。義務を受諾する。義務を受諾するから当然この義務は忠実に実行して参らにやならない。それから(b)項におきましては、この第二條は、日本国と署名をした国際連合に加盟しておりまする国は、日本と條約上そういうことをしないでも当然この義務を負うと存じますが、加盟いたしておりません、只今申上げましたセイロン、カンボデイア、ラオス、ヴイエトナムという四カ国が国際連合に加盟をいたしておらんのであります。従いましてこれらの国々もこの日本との平和條約に署名をする以上は、当然この條項義務を持つ、指針として行くべきものだと、かように私は解釈いたします。
  185. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それじや私の聞きますことを條約局長からで結構でございますから、私の意見を加えて申上げますから、それで以て更に政府としての考え方をはつきりさして頂きたいと思います。  国連憲章第二條の義務は、加盟国である連合国は、たとえ本條約の調印国でなくても、例を挙げますとソ連であります。ソ連は当然非加盟国たる日本に対して守るべきものとこう解釈しなければならない。こういうことを私は考えておる。それから非加盟国である相手国が、例えば中共でございます。中共に対してもこの原則に従つて行動するように、加盟国としては、つまり非加盟国の中共日本に対してこの條約を守つてつて行くように、加盟国は確保する義務がある。だから、私の申上げ、お聞きしたいと思うことは、本條約の調印国でないソ連も非加盟国たる日本に対しては守るべきだ、又非加盟国の、例を挙げますと中共、この中共に対して、この原則に従つて行動するように、加盟国としては他の非加盟国たる日本に対しても確保すべき義務、第五條の(b)でありますが、そういうものがありと考えられますかどうでありますか。で、若し非調印国がこの義務に違反し、又非加盟国が非加盟国たる日本に対して国際の平和と安全の維持に反する行動をしたときは、そういうときに我々はやはりこの條文によつて相当の安全保障が得られるものである、こう考えるのですが、その安全保障が与えられるかどうか。そういう点をはつきり説明願いたい。こう思うのであります。
  186. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この点は、憲章の第二條を御覧になりますと、第六項がありまして、それは国際連合の加盟国は非加盟国をして憲章の原則に従つて行動させるようにしなければならんことになつております。加盟国が非加盟国に対する関係において第二條の原則を守らなければならないことは、直接には規定がございません。併し二條の各條項規定の仕方を見ますと、例えば四項を挙げて見ますと、すべての加盟国は如何なる国に対しても云々という表現でございますので、この憲章の全体を流れる精神から見まして、加盟国は非加盟国に対して二條の原則に違反して武力行動をとつてよろしい。非加盟国との紛争を平和的手段によらないで解決してよろしいという不当な解釈は下されないと考えます。
  187. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 でありまするから、先ほど私が申上げたことは全部政府としてもそう御解釈になつているのだと思うのであります。それで私が今、中共、つまり国際連合の非加盟国である中共が、この原則に従つて行動するように加盟国が確保する責任がある、日本に対して責任があるのだと、こう申上げたことは、今條約局長が四項を指して言われたことを、私はこの前御質問したのであります。そういたしますと、率直に言つて安全保障條約がなくつちや全部ヴアキユウム状態になる、真空状態になるということは決して言えないのじやないか。ソ連のほうから、ソ連がたとえ調印国でなくても、彼は国際連合の加盟国である。で、非加盟国に対して守るべきものである。これも明らかである。それから招請されておりません中国、これはいずれを指しますかは別としましても、中共をまあ一例にとりましても、中共日本に対して国際の平和と安全に違反するような行動をとつた場合には、国際連合の加盟国は連合して、又この條約の調印国は連合して、そうして日本の安全を保障する義務がある。こう私は考えますが、それを肯定なさいますると、少くともその点に関しては、日本平和條約に調印した場合に真空状態になるということは非常に行き過ぎじやないかと、こういうふうに私は考えるのであります。政府のほうはどうお考えになりますか。
  188. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話通りにこの国際連合憲章の目的、原則、それらがずつと忠実に世界の、国際間においてなされておりまする状態でありますると、お話通り状態が続け得るのでございます。又それを理想としておるのでございます。併しただこの日米安全保障條約の前分にも申しておりまするような、無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないというよう現実の情勢において……、これはこの国際連合憲章のそのままの姿が国際間の状態なつたときには、恐らく今お話通りだと思います。ただ現実の問題においてさような情勢が肯定されない国際情勢間の現在でございまするから、そこで国際間の状態を考えますると、一方におきましては軍備拡充というような動きが強くとられて、そうして、そのために却つて平和を破ろうとしておる状態になつているのじやないかと考えます。この点から考えますると、そういう国際情勢下に丸裸かのままで出るような大きな危険を緩和する。これが日米安全保障條約を締結する根本の行き方であると考えます。
  189. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 すぐそういうふうに真空状態だとか、丸裸かだとかいう表現をお使いになるのですが、丸裸かじやない、完全な真空状態でも決してないと私は考えるのです。だから安全保障條約がないときに、日本が全くの真空状態であり、そうして丸裸かだとお考えの表現が非常に国民を誤らしてやしないかということを憂うるので、くどく御質問するわけなんです。そういう点について政府が正確に国際連合の保障が、ここで日本の安全が第一段的には保障されている。併しそれだけでは今おつしやつたように無責任な軍国主義というものが差迫つた真空の状態……、何と申しますか、差迫つてそういう脅威を感じるのだ、だから、それだけでは不十分だということで安全保障條約を結ぶのだ。その認識がなくて、ただ丸裸かだ、真空状態だというのでは、私は説明が足りないのだと思う。少くともはつきりした平和條約による安全、国際連合による保障というものは、全く空なもののごとき考えに立つことは非常におかしな現象である、こう私は考えるので、くどく御質問申上げた次第であります。併しこの問題は、その点で御肯定なさつておられますが、その御肯定の上に立つて、今後私は安全保障條約がここで審議されるときに、実はその上に立つていろいろ御質問したいと思いますから、その点は政府がお約束になつた以上は、お忘れのないように願いたい。こう考えております。  それから先ほどどなたでございましたか、六條の(b)項についてお聞きになりまして、政務次官から御答弁なつたわけでありますが、ポツダム宣言で依然として非調印国といえども拘束を受けているのだから、連合国の一員として拘束を受けているのだから、それについて事実この條文調印国でない国及び招請されなかつた国というふうなものに実益がない。併しそれにもかかわらずそれらの国は連合国としての拘束を受けて、ポツダム宣言による拘束を受けているべきはずだ。こういう点については全く御同感で、了承いたしますが、併しそれにつれてもう一つお聞きしたいと思いますことは、軍隊或いは軍籍になかつた人で、なおその意思に反して抑留されているような人、或いは強制労働に服している人で国に帰られない人があるのじやなかろうか。その点についてですね、そういう軍隊にあらざるもの、これは「日本国軍隊の」とこう書いてありますが、軍隊にあらざりしもの、そういうものがあるのじやなかろうか。そういうものが抑留又は強制労働をさせられているのは、国際公法上どうお考えになつているのか。それに対してどう御処置をなさるつもりなのか、その点を一つお聞きしたい。
  190. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) これは軍人でない、いわゆる文民の人たちと申しまするか、そういう人たちが軍人と同じ捕虜の状態において抑留されているということは、軍人以上にこれは国際的な考え方からいたしましても、又戦時立法捕虜の待遇に関する條約その他から申しましても不合理なことだと思つております。従つてそういう文民であります場合を捕虜にいたしますときには、軍人以上の待遇をすべきことは、これは国際的にどの国も認めているところだと思います。
  191. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 だから率直に、もう少しはつきり言いますと、明らかに国際法上違反行為が行われている。そして日本としてはそれを默つているわけには行かないのだということは、はつきりしていると思いますが、念のために。
  192. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 御所見の通りに明瞭だと思います。
  193. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 この二カ條のうちに、ほかの委員のかたがいろいろお聞きになりましたので私これ以上御質問しません。ただ委員長一つお願いしておきたいと思いますことは、この條約を審議するに当つて、午前中に岡本委員が言われました憲法と條約の関係は、條約局長から御説明なつたわけなんですが、この点は全部を審議する面においてどうしてもはつきりしなければならない。この点については政府として責任のある国務大臣がはつきりここで御答弁なさらないと困る。條約局長の一応の御説明はわかつたのですが、その手段、方法等は是非おとりを願いたい。
  194. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 只今の御要求、私もしようと思つておつたのですが、それを先ほどから同僚の高橋委員が武力又は戦力について御質問いたしました。ところがそれを自衛力の関係におきまして、具体的に一線を画することはなかなか困難だ、対象によつて違うというような御答弁が今日あつたのであります。そういたしますと、先に総理大臣に質問をいたしまして法務総裁等から答弁がありましたのとどうも食い違つて来はしないかと思うのです。速記録を読んで見ますとどうも食い違つて来るように思うのです。そういうふうにその場によつてこんな大事なことが違つて来ては甚だ困る。それで、よく御相談になつて、武力又は戦力とは何をいうか。第二、武力又は戦力と自衛力とは如何なる点で一線を画し得るか。又は今御答弁なつように具体的には一線を画し得ないのか。第三として、自衛権発動による戦争ということを憲法第九條で認めているかどうか。それを認めているとすれば、その憲法第九條第二項のほうの国の交戦権とはどうなるかという諸項について、責任ある、総理大臣又は法務総裁からはつきりした、もう変らない答弁をしてもらいたいと思います。今堀木委員の要求せられました條約と憲法並びに法律効力の問題、それと併せて要求をいたしておきます。これは責任のあるはつきりした変らない御答弁を願いたいと思います。
  195. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 明日法務総裁出席の予定でありますから、そのときに伺うことにいたします。  羽仁委員先ほどあとをお続け下さい。
  196. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第五條と第六條について政府の所見を伺いたいと思つております。  第一に伺いたいのは、第五條の(a)、「日本国は、国際連合憲章第二條に掲げる義務、特に次の義務を受諾する。」というのは、日本国が国際連合に加盟を許された後においてでありますか。それとも加盟を許される以前においてもこれらの義務を受諾するのでありますか。その点を伺いたい。
  197. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 加盟の如何を問わず、この條約によつて義務を負担するわけであります。
  198. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 しかとさようですね。(笑声)そういたしますと、この平和條約第五條というのは、国際連合が、まだ国際連合に加入していない日本に対して、従つて日本に対して何らあらかじめ意見を聞くことなくさまざまの義務を課することができるようになると判断をすることが客観的に正しいと思いますが、政府もそのようにお考えになりますか。
  199. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本国は、この平和條約の前文におきまして、はつきりと国際連合への加盟を申請することを宣言いたした次第であります。
  200. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の質問に対する答弁になつていないのですが、その点について今のような御答弁をなさると、又先日の質疑応答を繰り返さなければならなくなつてしまうのです。先日の質疑応答の結果、私の下しましたる判断は、前文において「日本国としては、国際連合への加盟を申請し」ということは、真実の基礎に基いていないという判断に立つております。それに対して政府は反証を挙げられなかつたので、私の判断はそのまま妥当しているのでありますが、これについて再び質疑応答を繰り返さないで、只今申上げました第二点、即ち第三章第五條規定から、国際連合は日本がそれに加盟する以前において、従つて又或いは日本に対して何らの相談なく、日本に相談することなくしてさまざまの義務日本に対して要求するということができるというように判断することが客観的に判断されています。その根拠一つ挙げますが、本年九月一日のマンチエスター・ガーデイアン及びル・モンドの特派員ロベール・ギランが、日本から通信を送つて、この平和條約は日本に独立を与えるものではない。ブシウド・インデぺンデンス、仮想された独立を与えるものにすぎない。その根拠の第一は軍事上、第二は経済上、第三は政治上というふうに並んで理由を挙げまして、その第三の政治上日本は完全な独立を承認されていないという論拠の一つとして、この平和條約の第五條を挙げまして、そして今申上げた判断、即ち国際連合は日本がこれに加盟を許される以前において、そして日本の意向を打診することなく、日本に相談することなくして、日本に対してさまざまの義務を要求することができるようにこの平和條約はなつているというように判断しております。このように国際的にも判断されておりますのですから、私はそういうように客観的に判断が成立すると思いますが、政府は成立するとお考えになるか、成立しないとお考えになるか。成立しないとお考えになるのでしたら、その根拠をお示し願いたいと思います。
  201. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 日本は、先ほど申上げましたが、この国際連合に加盟を申請すると同時に、それは連合国の支持を得ている次第であります。殊に第五條の(a)におきましては、国際連合憲章の第二條に掲げますこれらの義務を受諾いたしたのであります。従いましてこれは相談の結果受諾いたしたのであります。
  202. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それじや根拠をお示しにならないので、今後国際連合は日本に相談することなく各種の義務を要求せられるものと判断されなければなりませんが、そこで第三に伺いたいのは、本日午前以来各委員質問に対する政府答弁の中に、この平和條締結によつて、又その際に、又その後において、この国際連合或いはこの平和條約というものは、日本国憲法というものを尊重せられるというように御答弁になつています。それは只今岡本委員、堀木委員からもその点について、日本国憲法とこの平和條約の関係については更に政府説明を要求しておられますが、ここに日本国憲法は必ずしも尊重されないという事実がこの條約の中にすでにあります。これはすでにさつきも議論になりました第三條であります。で、南西諸島には日本国憲法は制約されます。これは具体的の問題として今後も実際問題としてそういうことが起り得るということを、すでにこの平和條約が立証しているのであります。ですから私どもは、本日政府説明せられましたように、又恐らくは岡本委員その他の各委員からの御請求に対する政府説明も、憲法は尊重されるのだというお答えをなさるのだと思いますが、それは現在の日本政府のいわゆる希望的観測に過ぎないのじやないか。事実においてこの平和條約の第三條で日本国憲法制限されている。部分的の制限でありましようけれども、部分的にまさしく制限されておる。従つて、これによつてこれを判断すれば、他の場合においても日本国憲法が部分的に制限される場合はあるものというふうに、この第三條を可決するならば、我々はそれを認めなければならないと思いますが、この点について政府はどう見ておられますか。
  203. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 第三條の問題と憲法の問題とは、過日法務総裁から縷々御答弁申上げましたが、或いはまだ御了解にならない点もある御模様でございますから、この点は明日法務総裁が御出席申上げて、これらの点につきまして御答弁申上げるほうが最も適当であろうと思います。
  204. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 然らばその点は保留いたします。  第四に移りますが、第四に伺いたいのは、政府はいわゆる個別的又は集団的自衛の固有権利というものについて、個別的又は集団的自衛の固有権利というものは、国際連合憲章第五十一條規定せられておるもののみが国際法上に妥当するのであるという見解の上に立つておられるか。それ以外にも何らかの個別的又は集団的自衛の固有権利というものがあるがごとくに考えておいでになりますか。その点を伺いたい。
  205. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国家自衛権はただ一つあるとの見解をとるものであります。ただこれらの国家が国際連合に加盟いたしますと、五十一條の結果、同條に規定しておる制約を受ける結果になると考えます。
  206. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 なかなか巧妙の御答弁ですが、具体的な事実として、これは西村條約局長の巧妙なる御答弁の名誉ということにはなりますが、国民の間には非常な疑義を生ずる。それで、これは国会における討議の間にも今いろいろな一般に議論されております場合にも、日本国国家というものに何か個別的又は集団的自衛の固有権利というものがある。それからもう一つ、国際連合憲章第五十一條規定されておる厳密なる意味における個別的又は集団的自衛の固有権利というものがある。そういうのですが、今問題になる即ち平和條約を審議する場合、つまり国際法上の自衛権とは何ぞやというと、それは国際連合憲章第五十一條における規定に従うものであるというふうに判断するのが正しいのじやないか。それについては横田喜三郎君が最近著わされました自衛権という書物においてそういう見解をとつておられるということを、先日参考人のかたから述べられた意見の中にもありましたが、かよう解釈すべきではないでしようか、どうでしようか。
  207. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 横田先生の書物は、まだ頂戴しただけで拝読していませんので、先生の御所論に対して批判するわけには行きません。併し私一個の考えといたしましては、国家自衛権は、国際法によつて規律せられるものであつて、その国家が国連に加入すれば、五十一條によつて加盟国との関係において制限される結果になると信じます。これが大体今日の国際連合憲章の註釈を試みておる諸学者の通説と了解しております。ですから、国家には自衛権が数種あるわけではなくて、一種だけあると思います。
  208. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、再び伺いますが、日本国としての自衛権というのは、国際連合憲章第五十一條に掲げる個別的又は集団的自衛の固有権利、即ち紛争が生じた場合には、安全保障理事会にこれを提訴する、それで安全保障理事会が妥当なる国際の平和及び安全の措置をとるまでの間に、相手方の武力攻撃が発生した場合において、この場合においてのみ個別的又は集団的自衛の固有権利というものが認められる、このよう解釈してよろしいかどうか。
  209. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この平和條約に署名いたしております連合国日本国との関係においては、さように相成るわけであります。
  210. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それではその次の問題に移りますが、第五に伺つておきたいのは、この平和條約の調印を終つて日本国に帰つて来られました首席全権が参議院においてこの平和條約の審議を求められた。その際の提案理由の説明の際に、日本がいわゆる日米安全保障條約というものによつて個別的な集団安全保障取極をなすということは、国際連合憲章というものと何ら矛盾しない、それを補うものであるという説明をされた。それに対して直ちに国際連合当局において、この日本の吉田首相の説明は甚だまずいときに甚だまずいことを言つたものだということを言明されたということが伝えられております。それは国際連合が最近の機会において……、この資料を私はまだ入手いたしておりませんけれども、この最近取り結ばれるところのいわゆる個別的又は集団安全保障というものは、国際連合憲章の原則を破壊するようなものが多々ある、これと矛盾するものが多多あるということを国際連合が最近において声明されたばかりである。ところが今、日本の首相が言われておるものは、この最近における国際連合の声明の趣旨と一致しない。そういう意味で最もまずいときに最もまずいことを言つたものだというふうに言われたものだと了解するのでありますが、この事実については政府はどういうふうに見ておいでになりますか。
  211. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 初めて聞く事実でございます。いずれ入手いたしましてからよく考えてみたいと思います。
  212. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 驚き入つたる御答弁で、この平和條約が調印され、又は批准され、或いはこの国会で審議されているということについては、国際的な注目を浴びているということは、政府も十分自覚しておられることだろうと思います。今私の申述べたことは、多分共同通信のサンフランシスコですか、ワシントンですかの特派員の報道であつて日本ではラジオでも放送されましたし、新聞紙にも載つております。それらについて全く御承知がないというのは、これはいささか職務怠慢の虞れがあるのじやないかと思うのですが、どうですか。
  213. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話通りに、ここでの審議は国際間で相当関心を持たれておりまするので、これに対していろいろ批判があると存じます。併しこれは批判でありまするから、これに対して一々政府立場を弁明することはむしろ差控えるほうがいいと存じます。
  214. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今その事実を十分御承知ないということだつたので、その事実を御承知なくちや困る、押問答してもしようがありませんから、それについては十分御研究下すつて次の機会に所見を明らかにして頂きたい。  第六に伺いたいのは、行政取極、いわゆる日米安全保障條約に伴う行政取極については、まだその内容が全然きまつていないというあり得べからざる理由を以て、政府は国会にその内容を示されていないのですが、これはまあ別問題としまして、然るに国際的に報道されておりますところに従えば、この行政取極の中に、或いはその最後にといいますか、これはやはり根拠を挙げますと、これは本年九月十日のマンチエスター・ガーデイアンに報道されておるところによりますと、この行政取極の最後にこういう規定があるというふうになつております。それは日本の警察制度、それは半ば軍隊的な警察、パラミリタリイ・ポリスと書いておりますが、予備隊を指すものと思う。これと共に必要の場合にはアメリカ軍の指揮の下に置かれるという規定が行政取極の中にあるというふうに伝えられております。これは政府の御説明を信用すれば、政府はこの行政取極についてまだ何らの事実を知つておられないというのですから、こういうことがあるかないかも御承知がないだろうと思う。そこで伺いたいのは、若しこういう行政取極の中にこういう規定がある場合に、日本政府はそれに賛成されますか反対されますか、それを先ず伺つておきたい。
  215. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 実は、行政取極めの内容についてのいろいろな、何と申しまするか、報道と申しまするか、情報と申しまするか、只今お話のありました方面におきましても、或いはマンチエスター・ガーデイアンなり或いは中国方面におきまして、その他におきまして、又内地におきましてもいろいろ伝わつております。伝わつておりますることは承知いたしておりまするが、むしろこれらは推測ではないかと考えております。現実には先般来総理もくれぐれも申上げましたように、現実において行政取極はまだいたしておりませんのであります。恐らく推側記事と存じます。従つて今後におきまする場合におきまして十分これらの点は考えて行くべきものだと存じます。
  216. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは只今すぐ御答弁願うことは御無理かと思うので、次の機会にはつきりしたお答えを願いたいと思うのでありますが、これらは単なる推測に伴うとは言いながら、例えばマンチエスター・ガーデイアンのごときは国際的にも第一流の新聞として信頼されておるものでありますから、そう根拠のない風説に基いてこういう報道をされるはずはないと思う。何らかの根拠があるかと思います。従つて日本政府としては、これに対する態度を十分御研究になつておるものだろうと思う。若しこういうことが行政取極め中に出て来た場合には、これを賛成するか反対するかということは、そのときになつてみて、出たとこ勝負で考えることだというような態度をまさかおとりになるのじやないと思う。ですから、今日こういうことに対して政府としては御研究になつておると思いますから、只今申上げましたように、これはいわゆる危機的な状況、危機的な時期においては、日本の警察及び警察予備隊は、それはアメリカ軍の指揮の下に置かれるという取極が考えられた場合に、政府はこれに対して賛成するのか反対するのか。次の機会にお答えを願いたい。これは将来の問題で、仮定の問題だから答えないというふうな御答弁でなく、どうかこれは非常に重大な問題でありますから、そういうことは日本政府としては賛成しがたいというお考えであるならば、はつきり答えて頂きたいと思います。と申しますのは、こういうことがこの行政取極で行われますと、先に本日午前以来各委員に対する政府当局の御答弁殊に西村條約局長の御答弁が事実の根拠の上に立つていないということになるのであります。と申しますのは、警察予備隊は日本法律によつて外国に出かけて行くということは許されない。併しこの行政取極で以て警察予備隊がアメリカ軍の指揮の下に入るという状況に立てば、このアメリカ軍の指揮によつて行動するということになるわけなんです。これが私は実はさつき第三に伺いました、この平和條約及びそれと並んで審議を要求しておられる日米安全保障條約というものが、日本国憲法及び法律というものを尊重されるということが、単に政府の希望的観側であつては何らの意味をなさない。事実上においてこれらの憲法及び法律が尊重されない場合があるのじやないか。その現実の場合としては、只今申上げておりますように、警察予備隊がアメリカ軍の指揮下に入るということが予想せられますと、その日本国憲法及び法律というものがこの点において制限を受ける、制約を受けるということであるので、この点について政府は今お答えを願つても御無理と思いますけれども、慎重にお考え下すつて次の機会に答えられたいと思う。  最後にもう一点伺つて置きたいのは、今の問題と関連しまして、政府は先頃から、この平和條約と安全保障條約というものは、日本国憲法と少しも背反するものではない。これを制限するものでもなければ、これを踏みにじるものでもないというふうに答えておられるのですか、それでこの第五條の(c)項に、本日も他の委員から質問がせられましたように、いわゆる日本の軍備というものに対する制限というものは、この第五條(c)項にも、その他のどこにもこの平和條約の中に見当らない。見当らないということは、現在の日本国憲法というものとの相関関係において、それがないのだと考えることが、客観的に妥当だと思うのです。つまり日本は、日本国自身が軍隊というものを持たない。従つてこの平和條約においてもそれを制限するという必要がない。そういうふうに理解することが客観的に妥当だと思う。ところが、若しも警察予備隊なりその他の関係において、日本国憲法解釈、或いは日本法律解釈、或いは日本国憲法乃至日本法律の制約によつて日本現実軍隊が生じた場合には、この平和條約というものはその効力を持つのか持たないのか。或いはその平和條約というものは変更される必要があるのか。これらの点については政府はどういうふうに見ておいでになりますか。
  217. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) お話ように、平和條約におきましては、軍備制限條項というものには何ら触れておらないのであります。従いまして、触れておりませんから、将来如何ような情勢になりまするか将来のことは別でございまするが、軍備について制限を設けておらないということは、この平和條約に関する限り国民の意思によつてなし得るものと考えます。
  218. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その御答弁全く私も了解に苦しむところなんですが、日本国憲法というものがあつて、それで日本国民の意思を明らかにそれに表明されておるので、日本国民は当然戦力というものを持たない、軍隊というものを持たないということは明らかになつている。それを前提として平和條約というものができている。だからこの平和條約には軍隊に対する制限、軍備に対する制限というものは述べられていない。ところが、その憲法なり或いは法律なりに対して何らかの制約が行われ、事実上においても行われる。それで日本に事実上において戦力というものが発生して存在するということになれば、この平和條約というものは効果を失つてしまうのではないか。或いは少くともこれを改めなければならないのではないか。そうしてそれに対する制約、制限というものが規定されなければならないのではないか。又この問題はいろいろな問題と関連をしておりまして、例えばさつきの第三條とも関連して来るでしよう。或いは賠償などの問題とも関連して来るのだと思うのですが、そこで、もう一遍政府に伺つておきたいのは、この平和條約に対して何ら軍備の制約がないのは、日本国憲法において、日本国民は軍備というものは全然持たないということが明らかになつておる、それを前提として、それとの相互の必然的な関係の上に立つて平和條約の中には軍備についての制限がないというふうに解釈すべきではないかと考えますが、政府はどうお考えになりますか。
  219. 草葉隆圓

    政府委員草葉隆圓君) 第一章平和の第一條の(b)項に関する完全な主権という立場から来ておると存じます。
  220. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 議事進行についてでありますが、続いて第六條について質疑を続けることを許されますか。
  221. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) あとどれほど時間を要しますか。
  222. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 少し時間を要するかと思います。
  223. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) これから理事会もありますので、明日にして頂きます。  それでは本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から開きます。    午後四時五分散会