○羽仁五郎君 これは又
政府において十分に御研究下す
つて、そうして我々がこう條約を審議しております間に、今少しく明確な御
答弁を願いたいというふうにお願いいたします。
で、中国の正式の
政府というものは、現在イギリスが北京
政府というものを
承認しています。そうして
アメリカも恐らくは将来において、この英国の北京
政府承認に関する国際的な信義というものを覆す
ような行動をとり得るはずはありません。そういうことは考えられない。
従つてこの
講和條約、
日本に関する
平和條約のこの(b)項において、これは他の場合にもそうでありますけれ
ども、特に(b)項の場合、そうして又
現実に台湾が現在置かれている事実上の問題、こういう問題について、これを将来の問題だからそれについての
責任というものを今感じないという程度にお考えにな
つていいかどうかということをもう少し御研究下す
つて、そうしてこの審議中に明確な
答弁を願いたいと思います。少くともこの(b)頃についての
政府の所見としては、この台湾及び澎湖島に対するすべての
権利、権原及び請求権は中国の正式の
政府に向
つて放棄せられるものであるという
ように、
はつきりされて置かなければならない。現在はまだそのいずれの政権が正式の
政府であるかということについて、イギリスと
アメリカとの
見解が一致していないという
ようなことであるかも知れないのですが、併し現在においても必ずしもそうではないので、すでに台湾というものが中国のいずれかの
関係における中国の
主権の下からだんだん逸脱してしま
つて、そうして何らの合
法的根拠なくして、
アメリカの占領の下に陥りつつあるという事実が重大な問題にな
つておる。これは決して
日本として
責任がないというふうに簡単に考えることはできないので、
連合国の間でも、なかんずくイギリスの
立場は極めてデリケートな重要な問題になりつつある。それを
日本が単に将来の問題については全く
責任を感じないという
ようにして、この(b)項がそのまま批准されてよいかどうかということは十分問題だと思います。すでに
草葉政務次官もこういう形で
平和條約が決定されることは極めて遺憾だということをさつきおつしやいました。その極めて遺憾であるということは私も全く同感で、この
平和條約第二章第二條というものが極めて遺憾な形において提出されているということは、我々もこれを極めて遺憾と認めることを記録にとどめて置かなければならないと思うのでありますが、その遺憾ということについて、単にこれは極めて遺憾というだけでなく、それが少しでも遺憾でない方向に解決される
ような態度を我々としてとらなければならないのじやないか。その点について重ねて御
質問の機会を得たいと考えておりますので、どうかその場合にはもう少し明確な
答弁をして頂きたいと考えます。
続いてこの三條なんでありますが、この第三條につきまして特にでありますが、一般にこの
平和條約についての
政府の所見、
政府の
解釈見解というものとも関連をするのでありますが、先日来各
委員に対する御
答弁の中に、
政府委員の、例えばこの租借地であるとか、或いは旧国際連盟の委任統治であるとか、それからこの第三條に
規定されておる場合であるとかという
ような場合に、
西村條約
局長が先日どなたかに対してお答えに
なつたのですが、理論上これらのものについて変装された侵略であるという
意見がある、デイスガイズド・アグレツシヨンという
意見がある。併し
西村條約
局長はそれは極めて政治的な
見解であ
つて、
日本の
政府は従来そういう
見解はと
つていない、又現在もそういう
見解をとらないというふうに御
答弁になりました。ここで私は
政府に向
つて、又特に
西村條約
局長に向
つて伺いたいのでありますが、これは極めてデリケートな問題でありますが、併し実際問題として非常に重大な問題をここに含んでおる。と言いますのは、すでによく御承知の
ように、敗戦までは
日本は客観的に考えて
一つの帝国主義
国家である。
従つてこの国際法上の概念或いは
規定というものを理論的に客観的に考えるのですけれ
ども、その際に帝国主義的な見地に立
つて解釈して来たことは当然です。又事実であります。
従つてこの租借地なり或いは委任統治なりに関して、例えば
日本が国際連盟規約に伴
つて委任統治の管理者とな
つておつた南洋諸島などにおいて、飛行場を建設したりした事実を、国際連盟規約に何ら違反するものではないというふうに絶えず
言つておりました。これらはいずれも
西村條約
局長の言葉を借りれば政治的な
解釈であ
つて、その政治的な
解釈というのは、つまりここに
はつきり申上げれば二様あるわけです。つまり帝国主義的な支配
国家としての
解釈と、それから帝国主義的な支配を受けるところの側からの考えと、この二つが明らかにここにどうしても事実上出て来ます。それで
日本は従来敗戦までは帝国主義的な支配をする支配
国家としての考え方というものを長年や
つて来て、そうしてこれは実に根深いものがあるだろう。それが今日まだ残
つておるのじやないか。ところが事実上において敗戦後、そうして又
平和條約ができる結果、
日本の置かれる
立場というのは、もはやそういう
外国の領土に対してこれを占領し、或いはこれを自己の支配下に置くという
ような帝国主義的な支配国の
立場になるのじやなくて、反対にいずれかの、まあ必ずしも直接帝国主義的というふうに言うことはできないかも知れませんが、いずれにせよ、帝国主義的支配をも含むさまざまの形の支配の下に
日本の本来の領土が置かれるという
立場に立
つておるのであります。この点について、この
はつきりした変化、敗戦並びにこの
平和條約が成立するに際して生じて来る明瞭な変化を、
政府は
はつきり自覚しておられるのかどうかということを伺
つておきたいのであります。
私はなぜこういうことを伺うかというと、全くこれはアカデミツクな問題ではないので、
日本の国及び
日本の国民というものがこの
平和條約
締結を中心にして置かれておる状況が、やわらかい言葉を使えば、極めて弱い
状態に常に置かれる。弱い
状態に置かれておるのに、強い
状態に置かれたときの
ように條約を
解釈したり、或いはその他そういう
見解の上に立
つて今後進んで行くということは、
政府の所期せられる、
日本国政府として当然に期待しなければならない結果とは逆の結果が発生して来る。これは
日本の国及び国民に対する
政府の
責任に背き、これを裏切ることになるので、この点についてどうか
はつきりしたお考えを伺
つておきたいというふうに思うのであります。これが第一点です。もう一遍申上げれば、
日本国は曾
つては敗戦までは強い国の
立場に立
つて国際
関係というものを
解釈して来た。勿論国際
関係の
解釈というものには学問的に客観的な
一つの
解釈しかないが、併し事実上においては、さつきも例を申上げた
ように、この二つの、強い
立場に立つ国がこれを
解釈するのと、弱い
立場に立つ国がこれを
解釈するのと、二つの
解釈の
方法がある。
方法が
はつきり違
つております。そうして先日来の
答弁を承わ
つていると、
西村條約
局長は依然として過去の帝国主義的な観念の上に立
つて解釈をされているのじやないか。今日の
日本の置かれている非常に弱い
立場の上に立
つて解釈をされているのでないというふうに窺われるところがあるので、それは我が国及び我が国民に対する
政府の
責任を裏切られる虞れがあると思うので伺うのであります。