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1951-11-05 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月五日(月曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————   委員の異動 十一月二日委員栗栖赳夫君辞任につき 、その補欠として櫻内辰郎君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事            楠瀬 常猪君            一松 政二君            金子 洋文君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            石川 榮一君            泉山 三六君            大屋 晋三君            川村 松助君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            永井純一郎君            波多野 鼎君            吉川末次郎君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            楠見 義男君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君            兼岩 傳一君   政府委員    人事院総裁   淺井  清君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省條局長 西村 熊雄君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 只今から委員会を開きます。  委員の御出席の都合で第一章のほうに入りまして、又後で前文に戻ることにいたしたいと思います。第一章について御質問のかたどうぞ御発言願います。
  3. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 西村條局長に御質問いたしますが、この間一般質問におきまして、総理大臣質問をしたのですが、その速記録ができて來てそれを読んで見ますと、質問したその要点が外されておるのです。ぴつたり質問合つた答弁がないということが読んで見てよくわかるのであります。答弁かあつたときにはどうも腑に落ちないくらいで済んだのですが、よく読んで見ると、やつぱり腑に落ちないのが当然であつてはつきり、つまり的を得た答弁をしてくれてないのです。それで少し繰返しになりますけれども質問したいと思います。  先ず私がこの前質問をした第一点についていたしますが、私は総理大臣に対しまして、ポツダム宣言というものがこの平和條約によつてなくなつてしまうのかどうかという質問をしたのです。ところが、それはなくなるのだ、但し二、三の調印しない国に対してはそれは多数国の見解を強制し得る法的根拠はない、こういうふうに答弁されておるのです。で、そうすると、この平和條約というものを結んでも、ソヴイエト中国、その他インドという調印しない国に対しては戰争状態は勿論続き、殊にソヴイエトに対しては、ポツダム宣言に拘束されるということになるのではないか。質問を簡單にいたしますから、それを答えて頂きたい。法的根拠がないと、こういう反対のことを言つておられるが、つまりソヴイエトに対してはポツダム宣言というものが残つておるのではないか。それについてお答え願いたい。
  4. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) お答え申上げます。第一條を御覽になりますとわかりますように、「日本国と各連合国との間の戰争状態は、第二十三條の定めるところによりこの条約日本国当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。」とあります。ですから、日本と四十八カ国の間におきましては、当該連合国日本との間に平和條約が効力を発生する日から戰争状態終了して、平和関係に入るわけであります。この関係はこの平和條約に参加しない数カ国との関係におきましては、反対解釈からもはつきりしておりますように、今日存在する戰争状態が継続して行くことになります。では今日存在しておる戰争状態とは何かと言えば、つまり降伏文書によつて始まつた休戰関係でございます。でございますので、結諭から申しますと、平和條約に参加しない国と日本との間には今日の降伏文晝による休戰状態が続いて行くことになります。降伏文書によつてポツダム宣言は受諾されておりますから、從つてポツダム宣言はこれらの国と日本との間を規律する原則であると無論言えると存じます。
  5. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それでその点ははつきりしました。そこで今までソヴイエトとの間に存在した戰争状態よりも、この平和條約並びに安全保障條約を批准し、これが発効して來ることになりますれば、その戰争状態はもつと危險な状態になつて來やしないか、今までの休戰状態ということよりももつと進んで來やしないか、こういうふうに考えるのですが、その点はどうなるのですか。
  6. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は前回明確にお答え申上げたところでございます。今日の関係は、今申しましたように休戰状態にあるのでございます。国際法休戰状態にある場合に、一方の国が相手国に対して新たなる軍事行動、言い換えますれば戰争行為をとるにつきましては、相手国において重大な違反行為、重大な行為がなければならないとされております。現在日本ソ連なり中国に対してさような重大な行為をしておるとは決して考えられないのでございます。この平和條約を締結するということは、日本戰争関係にありました国が、日本はすでに降伏文書によつて受諾した條件を忠実に履行いたしておりまして、日本国との戰争状態終了せしむべき段階にすでに到達しておる、否、到達しておるのでなくて、それは遅過ぎるというくらいであることを認めました結果、大多数の国がこの平和條約に署名しておるわけでございます。で、日本を独立平和の国として、通常の国際社会に復帰させるステツプをとる、日本がこれを受けて大多数の戰争関係にあつた国との戰争状態を終結せしむるということは、決して休戰関係にある国との関係において、相手国に新たなる戰闘行為をとる口実、乃至理由を與えるような性質の行為ではないのでございます。現にサンフランシスコ会議後におきましても、インドはすでにこの平和條効力発生と同時に日印間に存在しまする戰争状態終了するという公式の文書を取交しましたし、ビルマにおきましても、ビルマ政府はすでに議会に対しまして、日本との戰争状態平和條効力発生のときに終結させる措置をとる権限を要請しておると報道されております。ユーゴスラビアも又同様の措置をとるということが報道されております。そういうふうな関係から申しまして、絶対多数の国がこの平和條約の署名という行為を、平和のための行為と見ておりますので、御懸念のようなことは万々ないと考えておる次第でございます。
  7. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 今の御答弁は、この前に御答弁になつたのと同様であります。それは、私は日本が両條約を締結することはポツダム宣言違反ではないかという質問をしたのに対してのお答えでありましたが、今のは主として平和條約を結んだことに対するお答えだと思うのです。私は安全保障條約のほうについてどうであるかということをお尋ねしたいと思います。そうしてこの安全保障條約を結ぶことが、今ソ連関係においては依然存在しておると見られるポツダム宣言、それは六條、七條にいろいろ書かれておりますが、その六條、七條違反するというようなことに見られはしないか、その結果、ソヴイエトとの関係においては、休戰状態交戰状態みたいなことになりはしないかということを質問したいと思います。
  8. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御質問の点は要するにソ連意向でございますから、こうであろう、ああであろうと忖度する立場にはないことを御了承願いたいと思います。私どもといたしましては、日米安全保障條約は平和のための條約でありまして、何もこれを戰争の道具とは、みじんも考えておりません。そうでございますから、御指摘のような懸念を、我々は少しも持たない次第であります。
  9. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 私は何もソ連のほうを忖度して言つておるのではなくて、我々が代表する国民が非常に心配しておるということです。その点を、そういう心配はないんだということをはつきりしてもらうために、この質問をしておるのであります。それは初めから総理大臣質問するときにも、そういう立場はつきりさせたい……国民は何か日本が無理をしてこの安全保障條約を結んで、それがために国際公法上といいますか、そういうものから言つても、ソ連のように、当然日本に対して休戰状態交戰状態のようなことになつて來る虞れはないのかどうかということを国民の一部は心配していますので、それに対してはつきりした御答弁か願いたいのであります。今のような御答弁ではまだ国民は納得できない。私が納得できないのであるから国民は納得できない。私は何も共産主義に共鳴しておるものでも何でもない。ただそういう懸念国民が多数持つておる。それに対して御答弁を願いたい。
  10. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 岡本委員の御縣念の点は、了解に苦しむ次第でございます。御指摘の六項を見ましても、七項を見ましてもそう思います。六項は要するに軍国主義排除とか又は民主国家としての日本将來を見ておるわけでございます。日本民主化軍国主義排除でございます。七項は占領終了でございます。日本としては占領終了の遅かつたことを憂える次第でございまして、御懸念の六項にしろ、七項にしろ、これを以てソ連のほうで日本に対して、新たな措置をとる理由となし得るような問題を含んでいるお考えになる理由が了解できないのでございます。
  11. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 安全保障條約というものが日本の再軍備には関係がないんだと、こういうふうに言われますが、それは安全保障條約に入つてから又質問したいと思いますが、併しそこに前提として再軍備をして、日本自分戰力で以て自分の国を守るというふうにならない限りはアメリカ軍、又はアメリカ軍に代つて国連軍が残らざるを得ないというふうに考えております。こういうふうに行くが、その点はそうでないと総理大臣も言われ、あなたも言われて、そこは水掛論になると私は言つてつたんだが、どうもそうでなければ半永久的にアメリカ、並びに国連軍日本は頼らざるを得ない。それはとても警察予備隊を如何に充実して見たところが、今政府並びに大多数の国民が思つておるような外国からの侵略というようなことに対して対抗はできないのですから、戰力を持たなければならないと考えます。で、その戰力を持たない間はアメリカ国が駐在しておつてくれる。こういうことからどうも早く、軍備を整えなければならないということになつて來る、そういうところから見ると、この六條なんかにやはり触れて來るというような気がするのであります。やはり無責任なとは言えないかも知れないが、又七條にも関係して來るのじやないかと思う。で、強くあなたのほうでそれはそうじやないと、こう言われる、まあそう恐らく言われなければならんだろうと思いますが、これはそういたしますと、ポツダム宣言ソ連に対しては残つているけれども、両條約、殊に安全保障條約の締結によつては、このポツダム宣言のどの項も、断然そういうソ連をして正当に侵略させるような、正当なことにはならない、こういう御見解ですね。
  12. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) さよう確信いたしております。
  13. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それではもう一つお尋ねしておきます。それはまあ休戰状態でも連合国が相談をしまして、モスコー協定ですか、によつて進駐をして來て、今アメリカ軍が主になつて占領をし、日本占領管理をしておる。そこで今度はアメリカのほうが平和條約を結んで、そうして建前は撤兵をして、調印国のほうは撤兵をするということになつております。そうすると今度はそれに対してソヴイエトのほうは、アメリカ占領をやめるならばソヴイエトのほうでそれでは占領しよう、そうして占領管理をしよう、こういう言い分が正しくなりはしないか、その点を御説明して頂きたいと思います。
  14. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) これ又ソ連意向を忖度することになりますので、私としてはソ連意向はこうであろうと御答弁を申上げることはできない立場にございます。ただ太平洋戰争後におきます太平洋地区連合各国による占領区域分配につきましては、連合国間に取極があるように思われますが、今日までその関係は明らかにされておりません。終戰前の取極によりまして各地域を限つて、例えば台湾は中国軍占領する、仏印の北半は中国軍、南半は英国軍、朝鮮は三十八度以北はソ連軍、三十八度以南は合衆国、千島、南樺太ソ連軍占領をする、日本本土アメリカ軍占領をするというふうになりました。そうなりましたについては、連合国間に軍事的な取極があるはずだと私ども考えております。  次に占領管理につきましては、四五年の十二月に連合国間のモスコー協定がある次第でございます。占領地区分配に関する取極、それから占領管理に関する連合国間の取極がありまして、日本占領管理は、連合国間の申合せに從つて行われておる次第でございます。それによりますと、ソ連日本本土占領はしないことになつておるわけでございます。将來ソ連のほうが日本に兵を入れようというようなことはないと私は考えまするが、万一そういう意向を持つたとするならば、それは先ず第一に連合国間の問題となろうと考えております。
  15. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 そういたしますとこのモスコー協定、今挙げられた一九四五年に行われたモスコー協定という協定では、日本に対しては單独占領といいますか、單独占領管理というか、それはしないという申合せになつているのか、つまり三国の協定、その協定では協同で、必ず連合でやつて、そうして單独の関係にしないというはつきりした申合せになつているんですか。
  16. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) モスコー協定は條約集として印刷してございますので、御一読を願いたいと思うのでございます。占領管理につきましては、とにかく連合国間に話合いがあつてきまつておる、将來それと違つた方法によつて日本占領乃至管理しようという国があるとすれば、先ず第一に、現存するモスコー協定関係において連合国間の問題になるはずであると考える次第でございます。
  17. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 もう一つお尋ねしておきますが、この中ソ友好同盟條約といいますか、それによりますと、日本同盟を結んだ国又は日本中国又はソ連に対して敵対行動をとるようなときには、協力してあらゆる措置をとる、こういうことになつています。その関係とこの安全保障條約との関係はどういうふうになるのか、これも質問したのですが、はつきりしなかつたんです。それをもう少しはつきり御説明願いたい。
  18. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この問題も全く中ソ両国政府が如何にこれを判断するやの問題でございまして、日本政府として、平和條署名安全保障條約の署名が中ソ同盟條約との関係において、中ソ両国によつて如何に解釈されるかを解明申すべき立場にないわけでございます。ただ繰返し申しますように、この平和條約の署名といい、日米安全保障條約の署名といい、これは平和の確立のためのものでありまして、これに参加している国は全部、日本におきましても、アメリカにおきましても、これを以て戰争行為乃至戰争誘発行為というような気持は微塵ももたないところでございますので、我々としては御懸念のように先方によつてとられることはないと信じ、それを念願いたしている次第であります。
  19. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 まあこの前も、それは一種の恫 的言辞に過ぎないと思いますが、そういう重要性をおかれないでよかろうと軽く見なされておりますが、併し中ソ友好同盟條約というのは、今度結ばんとする両條約の前に結ばれて、そしてもう世の中に発表され明らかになつたものであつて、そういう條約が前に嚴然としてあるとすると、それに対してむしろあちらは該当する、まあこういうふうに明らかに中共側でも又ソ連側でも言つているようですが、そういうものを結ぶということになつて來ると、そこに何か国際公法上というのか、その点何か関係が出て來やしないか、私素人でわからないけれども、それは全然ないものかどうか、それを伺いたい。
  20. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御答弁申上げます。非常に御心配になつているようでございますが、中ソ同盟條約第一條第二項には、締約国の一方が日本国又はこれと同盟している他の国から攻撃を受けて戰争状態陷つた場合とございます。平和條約に署名をし、日米安全保障條約に署名をする、而も平和のためにする場合に、これを攻撃を受けて戰争状態に入つた場合というような結果になるとは常識上考えられないと存じます。
  21. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 まあ大体そのくらいにして置きましよう。それから第一條の(b)のほうで、「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」で、この領水というのはどういう範囲を言われるのか。国際法上も領海という言葉もございますが、その領海とどういうふうな関係になつておるのか。領海も三哩線とか何哩線とか、いろいろあるようですが、どういうふうになつておるのか、それをお尋ねしたい。
  22. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 領水というのは領海と解釈されていいと思います。国際法領水と申しますが、それは領海のほかに内水、湖沼等を含む意味において領水という字を使うわけであります。領海とお考え下さつて結構でございます。範囲は、日本は三海里説を從來とつております。現在もさようでございます。   —————————————
  23. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 人事院総裁がお見えになつておりますが、順序を変更いたしまして前文羽仁委員質問と続けたいと思います。
  24. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 講和條約の前文に関する私の質疑が残つておりまして、その中で人事院総裁に対する質問について、人事院総裁が御出席下さつたので、その点に関する質問をいたしたいと思います。この講和條約の前文には、「降伏後の日本国法制によつて作られはじめた安定及び福祉条件日本国内に創造するために努力し、」とあり、で、「連合国は、前項に掲げた日本国意思を歓迎するので、」というように述べられているのでありますが、前回にも述べましたように、この講和條約及びその前文は、日本が名誉ある国際関係に復帰する最初歴史的文書であるので、ここにうそ偽りがあるということは絶対に許されないと考えるのでありますが、そういう意味において、この「降伏後の日本国法制によつて作られはじめた安定及び福祉条件」、この中に、言うまでもなく非常に大きい問題として、日本国官僚主義というものを打破して、民主主義的な公務員制度というものを確立するところの法制というものが大きい意義を持つていると考えます。金曜日の質疑におきましては、現在の国家公務員法というものは重大な矛盾を含んでいる、それは言うまでもなく、公務員であるけれども、併し同時に労働者である下級公務員の多数というものから団体交渉権及び争議権というものを剥奪している。これは淺井総裁もよく御承知のように、国家公務員法がこのように改正されました当時に、内外において随分異論があつた問題であります。私は労働大臣に向つて講和條約が締結される機会において、当時国家公務員法が改正されました際に表明されておつたいろいろな理論上又実際上の問題というものを反省して、そして、国家公務員法現行法律を改正する意思はないかどうかというように伺つたのですが、私の得た印象では、殆んどこの問題について研究の上答えられたようではないので、ただ当時の一九四七年二月のマツカーサー書簡に述べられた、公務員公共福祉は奉仕するものであるから從つて団体交渉権争議権というものを回復する、認めるという必要はないという程度の、何ら当時の理論上又実際上国内においても、国際的にも行われた議論を、この際もう一遍再檢討して見るというお考えはなかつたようであります。併しいずれにしても、若しも現在の政府平和條約成立と同時に、国家公務員法に関しては、前文に述べられておるような、「日本国法制によつて作られはじめた安定及び福祉条件日本国内に創造するために努力」するとするならば、ここに現実に二つの問題が生じて來ると思うのでありますが、その点について淺井総裁のお考えを伺いたいと思うのです。  第一は、降伏最初にできました国家公務員法というものは、よく御承知のように、国家公務員であるけれども、併し労働階級であるところの多数の下級公務員に対しては、団体交渉権或いは争議権というものが承認されておつた。ところが一九四七年の二月一日のゼネラル・ストライキに対する連合軍最高司令官禁止命令、その後に発せられた書簡というものの趣旨に基いて、その団体交渉権争議権というものが制限されておる。そして当時の人事委員会というものが拡張せられて今日の人事院というものになり、そしてその人事院が、みずから生活を守ることのできない、つまり団体交渉権及び争議権によつてみずから生活権を擁護することのできない公務員の多数に対して、人事院がこれらの公務員生活を保障するという法律になつているのでありますが、爾來約三年になりますが、その三年の経過に鑑みて、人事院総裁としては現行法というもので満足しておられるか、或いは現行法というものに対して、この「降伏後の日本国法制によつて作られはじめた安定及び福祉條件」としての国家公務員法というものは、現行法では非常に不満足である。もつとこういう点を改めることによつて、その根本原則というものは実現されるべきである、現在の状態ではその根本原則が実現されないというようなお考えがあるのではないか。若しそうであるとすればそれについても伺いたい、これが第一、  第二は、若し現行法というものが民主主義的にして能率的な、近代的な公務員制度というものを創造することに三年の間に成功していないとするならば、そしてこれは成功しておるというふうにお考えになるか、成功していないとお考えになるか、この点も所見を伺いたいと思うのでありますが、最近会計檢査院などの発表によつて見ましても、現在日本の官吏の間の腐敗というものは実に重大な問題になつている。これはあつちこつちでやつておるという程度でなくて、本質的な問題ではないかというふうに考えますが、そしてそういう腐敗が発生するについては、公務員自身が具体的な希望というものを持つことができないためではないかというようにも考えられますが、この点についてはどういうふうにお考えになるか。若し現行国家公務員法というものが、近代的な公務員制度を創造することに失敗しておるとするならば、その原因はどこにあるだろうか。その点で第二に伺いたいのは、淺井総裁もよく御承知のように、私はあの当時述べられた理論上の意見として最も重大なものは、しばしば申述べますが、当時対日理事会において、英連邦を代表してパトリツクシヨウ・オーストラリア代表が、いわゆるゼネストなどに対して、最高司令官がそれを最高司令官の資格において軍事上の必要から命令を以て禁止されるということを批判する地位には我々は置かれていない。併しながら国家公務員に対して、いわゆる司令官書簡に述べられているような公共福祉に奉仕するものであるという理由で以て、国家公務員たる労働者に対して、極東委員会日本労働組合の発達に対して示された原則というものが適用されないということは、自分には理解できないということを、パトリツクシヨー・オーストラリア代表が述べておられる。そうしてあのときパトリツクシヨー英連邦代表が、自分自身国家の公務員であるけれども、同時に労働組合員であるという自覚を持つている、このことは可能であるばかりじやない、望ましいことだというように言つておられる。そうして命令を以て或る争議を軍事上の必要というようなことで司令官が禁止されるということには、その理由があるかも知れないが、法律を以て長い期間に亘つて国家公務員たる勤労者の多数の基本的な権利というものを制限するということには、慎重な警戒を要するということを述べておられる。これは淺井総裁はつきり御記憶になつておることだと思います。この意見に対して淺井人事院総裁はどういうふうにお考えになるか。続いて、御承知のように現行国家公務員法の改正がなされる直前において、当時のGHQの労働課長のキレン君、それから労働課員がことごとく連袂辞職をした、その連袂辞職をした理由は、日本の組織労働者六百万の中の半ばに近い二百五十万の国家事業に從事する労働階級の団体協約というものを奪い、その権利を奪うということにはどうしても賛成できないという理由で辞職をせられた。これは第二に注目すべき議論であつたと思うのであります。それから、その後に御承知でありましたろうが、あれはアメリカから労働次官でしたか、その関係の国務省の重要なかたが日本を訪問されたときの談話に、国家公務員から争議権を取つてしまうことは行き過ぎではないかという談話を発表せられたこともあります。これも淺井総裁が必ず注目しておられたことであろう。そうして第四に、最近司令部の労働課のスタンダー女史がおやめになつてアメリカに帰られるときに、最近の日本政府労働政策の反動化というものは実に重大な問題である、自分アメリカに帰つて労働階級にこのことを訴えたいというように述べておられる。これら一連の議論というものは、日本公務員制度について十分の知識を持つておられるかたの議論であつて、單に日本の事情に通じないところの空論というふうに言うことはできないと思う。私は当時GHQの公務員課長であられました、亡くなられましたフーバーさんと、この問題について討論したときに、二年かそれくらいやつて見て、この公務員制度というものがその機能を発揮することができなかつた場合には、或いは団体交渉権或いは争議権というものを回復するということも考えるべきではないかというように述べ、そうしてあの亡くなられたフーバーさんも、そういうことを考える必要があるかも知れないということを言つておられたのですが、そのことについて総裁はどういうようにお考えになつておるか。理論上又は実際上、今述べたような理論に御賛成でありますか。それとも反対でありますか。反対であるとすれば、どういう理論上の根拠に基いて反対であるか。当時お述べになりましたような、公務員公共福祉に奉仕する者であるからとか、或いは基本的人権も公共福祉によつて制限されねばならない点があるからとか、という御答弁でなくて、もう少し理論的に筋道の立つた御説明を願いたいと思うのであります。そうして若しこれについて実際上、人事院総裁としてこの数年の間に調査せられ、又体験せられたその御調査や体験に基かれた所見を伺うことができれば、非常に仕合せだと思うのであります。
  25. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 羽仁さんに御答弁申上げます。  第一点といたしまして、條約の前文の意義についてお伺いがございましたが、條約の前文につきましては、外務当局から詳細御説明申上げた通りでございまして、日本政府といたしましては、解釈はただ一つしかございませんので、人事院といたしましてこれに対しとやかく言うべき筋合いではないと存じます。  第二点といたしまして、総司令部並びに連合各国関係者の御論議をお引きになりましたが、これらのかたがたの御論説が何を意味し、何を意味しないかは、日本のいわゆる政府委員の私として批判の限りでないように存じております。  次に国家公務員法将來はどうなるか、どういう考えであるかということのお尋ねでございましたが、一体これは国会の御意思できまるべき問題だと存じますので、むしろ私から羽仁さんに対しまして、国家公務員法を條約発効後どうして下さるのかとお聞きいたしたいところでございますが、御高説はだんだんと拜聽いたしましたが、公務員法の将來につきましては、人事院といたしまして十分研究をいたし、御高説も十分尊重して処理したいと存じておりまするが、只今のところ具体的な案はまだここに申上げる段階に至つておりません。
  26. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 曾つては輝ける理論家であつた淺井博士も、国家公務員法の束縛の下に公務員であること数年の間に、全く理論上の立場を失われ、学者としての節操を失われてしまうというようなことが若しありとすれば、この現行国家公務員法というものは如何に有害なものであるかということの、何よりも顯著な例であろうと思います。恐らく淺井さんは人事院総裁になられていなければ、今の御答弁を潔しとなされるかたじやない。それが平気でああいう御答弁をなされたということは、国家公労員法というものが、実に戰争中も近代的な憲法理論を以て、そうして学者として大胆と勇気と節操とを示された淺井清その人にして、現行国家公務員法の束縛の下に置かれれば、このように腰が拔けてしまうのだ。そういう意味現行国家公務員法というものは実に有害なものであるということの、これは何よりも立派な証明であろうと思う。いわんや人事院総裁の下に生活を託し、そうしてその官庁事務の能率を発揮することを託されておるところの日本国家公務員百五十万の人々が、その節操を失い、その能率を失い、そうしてその生活も保障されず、從つてあらゆる不正と腐敗の中に誘惑されて行く。これは今総裁の御答弁によつて何よりも雄弁に立証されたのじやないかと思います。  最後にもう一応人事院総裁に伺つておきたいのは、実際今講和條約の前文に述べられておることは、外務省の管轄であるということを言われるが、外務省はここに述べられた一々の、降伏後の日本国法制によつて作られ始めた安定及び福祉條件日本国内に創造するところの責任を外務省が持つことはできませんよ。この創造する責任は、政府のそれぞれの部門においてでなければ、その責任は持てやしない。それなら人事院もさつさと自由党が言われるように解散せられて、外務省の中にでも人事局をお作りになつたらよろしい。人事院が立派に独立性を持つておられるのだから、この中に書いてあることが嘘か本当か、外務省は本当のつもりで書いたでしようが、日本の昔の習慣で又嘘を書いておるのじやない、本当のつもりで書いたのだ、それは人事行政に関する限りは人事院が本気でこれをやつてくれるということを立証しなければならん。それで私どもが今質問しているのは、この講和條約というものを参議院が審議するその基礎としてここに述べられていることは、これは嘘であるか本当であるかということを知らなくて審議することはできない。そこで私はここに述べられている「降伏後の日本国法制によつて作られはじめた安定及び福祉條件」というものの中のかなり大きなものであるところの近代的な公務員制度というものは、一体どういう現状にあり、そうしてどういう見通しにあるか、そのことを最高の責任者である人事院総裁から伺つて、そうしてこれが誠に本当であると思えば、この前文に対して賛意を表することができるし、そこに嘘があると思えば賛意を表することができない。そこで人事院総裁の御意見を伺つているのであります。これだけ申上げてもまだ御答弁が先ほどのようで結構なのかどうか。もう一遍伺いたい。
  27. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 折角のお尋ねでございまするけれども、私が人事院総裁といたしまして、且つ政府委員といたしましての立場を若し忘れて、ここで学問上の論議をいたすようなことかありましたならば、これは却つて国会を侮辱することに相成りますし、本件の審議にも支障を及ぼすようなことがあろうかと存じまするから、この席上で私が述べられますることは、政府委員として許される範囲だけにとどまるということを、どうぞ御了承を願いたいと存じております。私がかく申しますることは、公務員法の価値というものとは無関係でございます。  次に條約の解釈についてなぜ意見を述べないかと申されまするが、これは外務当局からこの席上で申述べることになつておるのでございまするから、御不審があれば、どうぞ外務当局へお尋ねを願いたいと存じます。
  28. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それじやいま一応問題を具体的に伺いますが、衆目の見るところ、国家公務員の多数である勤労者が、みずからその生活を擁護するための団体交渉権争議権とを奪われた結果、そうして人事院の勧告によつてその給與の状態が合理的に常に是正せられるこの国家公務員法の重要なる部分、この部分はどうもうまく機能を発揮していないのじやないかというように考えられますが、その点については総裁はどういうふうに見ておいでになりますか。
  29. 淺井清

    政府委員(淺井清君) これは車の両輪のようなものだと思つております。一方におきましてはやはり国家公務員は全体の奉仕者としての忠実性を要求されまするし、他方におきましてはやはり人間としての生活権を持たなければなりませんから、この両方の輪のいずれか一方が外れてもなりませんし、羽仁さんの御論議中にいささか一方の輪ばかりを御強調なさるような点もないではないかと存じております。  それから次にどうも人事院の制度では、例えば給與改訂のごときがうまく行かないというようなお説がございましたが、若し人事院が全部財政上のことまで背負いましてさようなことをいたしますれば、これは国会というものは何のためにあるかということにもなりまするので、人事院が勧告をいたしますることにとどまつておるのは、却つて国家の政治組織の上によいように存じております。
  30. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 問題は日本の、殊に平和條約というものが成立して、そうして日本公務員制度というものが、国家公務員法にも前文にも述べられているように、官僚主義を打破して、そうして能率的な、近代的な、そうして良心的な公務員制度ができるかできないかということにある。で、この点を十分絶えず我々の考えの中心に置かなけばならないと思うのですが、事実問題として公務員が団体交渉もできない、争議もできない、人事院勧告も今おつしやるようなもので勧告にとどまる。それで大蔵省は大体まあこういう問題について余り理解がない。すると事実問題として公務員というものは食うや食わずの生活をしなければならない。昨日か一昨日か、労働省の婦人課長が朝日新聞に述べられておつた随筆でか、短文ですかを拜見いたしましても、国鉄從業員ですかの給與は民間の金属工場に勤めておる大体同じような状況にある人の給與の殆んど二分の一、一方は二万円前後であり、一方は一万円前後であるということが述べられておりましたが、あれは恐らくその衝に当られておるかたの書かれたものであるから、事実を現わしたものだと思う。それで実際問題として、この下級公務員の多数の人々は生活が安定していない。そして又、その生活が安定して、そうして能率的な、近代的な官庁業務というものに從事することができなくなつておる結果が、さつきも申上げたような普遍的な腐敗、單にあちこちに例外的に事件があるのではなくて一般的な腐敗が起つておるのではないか。その腐敗に対する一般輿論の攻撃というものがお目に触れていないはずはない。これは人事院の責任所管に属することの一つです。日本公務員が上下とも皆腐敗しておる。それをあなたが凉しい顔をして見ておるわけには行かない。そうしてああいうような何億というような国民の税金を盜み取るような行為が公然と行われる。そういう状態になぜなつておるのか。そうしてその原因たるや勿論人間のいろいろな性質から來るでしようけれども、併しその主なる原因は、生活が安定せず、そして将來の希望というものが持てない。自分自分の身を守る団体交渉権争議権は奪われ、そうしてあなたの手に自分の身を、運命を委せてあるが、これが又頼りになるものやらならんものやらわからない。それじや明日のことは考えないで、今日を愉快に暮らそうじやないかというので、公金を横領し、或いは不正なことをやる。それも場合によつては多少生活を維持するためによんどころなくやつておるというようなことが、次第に重大な問題になつて行く。これは同時に又、国民の納税の意識、意欲にも随分関係して來る。そうすると現在のような国家公務員法で以て或る程度のいわゆるバランス、今おつしやる車の両輪なるものを維持しようとすることの、却つて国に與える損失というものは、実に重大なのじやないか。能率的でなくて、そうして腐敗した公務員というものができてしまう。そうしてこれは日本の民主主義化ということに対する重大な障害になる。で、これは日本公務員というものが官僚主義的でなく、本当に国民の公僕として機嫌よく働いて行くということになるのは、それはなかなか二年や三年ではできないだろうということは、私もよく了承しております。併しどつちへ向つておるか、役所の役人の人たちがだんだんに国民の公僕として能率的に機嫌よくやつて行くような方向に向つておるのか、それとも最近ますます官僚的な方向に向つておるのか。これは直接淺井さんの責任ではないかも知れませんが、新宿の菊を観る会でも新聞記者を入れないというようなことを、どこの役人だかがやつて、そうして輿論の批判を受けておる。そういう事実がだんだん減つて行くようならば、私は人事院総裁に対して祝辞を呈したいのですが、だんだん殖えておるのではないか。そうすればここに国家公務員法及び人事院のあり方ということにつきましても、我々勿論審議をするのですけれども、我々が審議をする上に、人事院総裁は、その衝に当られる最高の責任者として有益な御意見が必ずあるであろうと思うので、それを伺いたいと思うのであります。
  31. 淺井清

    政府委員(淺井清君) だんだんと御高説を拜聽いたしましたが、給與問題につきましては、いずれ近く給與改訂の法律案も提出せられることでございますから、その席上で詳しく我々の立場も申述べたいと思うのであります。
  32. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それじや続いて具体的な点について伺いますが、現在のような状況であるとするならば、そして過去数年に亘り現行国家公務員法の実施の事実に鑑みて見てこういうことをお考えにならないか。本当に公務員生活を保障し、公務員があらゆる不正なる誘惑に乘ぜられることなく、安心してそして希望を以て能率的な民主主義的な官庁業務に從事するようにするには、人事院の機能をこういう点において拡大すべきではないかという点をお考えになつていないか。若しその点をお考えになつていないとするならば、国家公務員法の中で少くとも団体交渉権というものは返したらどうだ。そして争議権の制限ということにつきましても、争議権国家公務員法の上で禁止するのではなくて、争議権はこれを認めて、そして争議権を行使する上に適当の手続、或いは順序、或いはさまざまの、できるだけ争議権が直ちに行使されるのではなく、その間にさまざまの方法が講ぜられるようなことをお考えにならないか。この二点について。即ち現在のような状態日本公務員の多数を置いておいて、国会としても晏然としていることはできない。国民から血の出るような税金を取上げておいて、そしてそれを役人が不正に消費している。或いは役人のレベルが少しも上らぬ。いわんや私どもは最近つくづくそう思うのですが、最近政府がおやりになるように、警察関係だとか或いは特審局とか、そういう関係の人たちをめちやくちやに殖やしている。こういう人のレベルが客観的に見て決して高くない。そうすれば又昔のような人民に向つて君臨するような警察国家というものができる虞れが多分にあります。これは政府もすでに指摘している。こういう人々の教養を高めるということも緊急の必要なんです。そういうように、一方においては不正の誘惑に乘ぜられず、他方においてはレベルを高めるためにはどうしても現在の国家公務員法のあり方又人事院のあり方では不十分である。そこで我々として考えなければならないことは、一方において人事院の機能をもつと充実して、これらの公務員生活を保障し、希望を與え、そしてレベルを高めて行くか、それでなければその人たちみずから自分たちの地位を守り、そうして希望を以て向上して行けるように、少くとも団体交渉権は返す、争議権法律の上では返す、その争議権の行使の上にさつき言われるいわゆる公共福祉に奉仕するという関係から、一般民間の労働階級が持つている争議権とは多少性質の違つた争議権というものを與える。併し争議権は持つている。それを奪つてはしまわないというこの二つの途のいずれかをとらない限り、日本公務員の多数が一方においては不正に誘惑され、他方においては教養もレベルも非常に低い。そうして多大の税金を取立てられながら、国民公務員によつて苦しめられるという状況がますます甚だしくなるのじやないか。その点については人事院総裁はどういうふうに見ておいでになるか、伺いたい。
  33. 淺井清

    政府委員(淺井清君) だんだんと御高説を拜聽いたしましたが、公務員法及び人事院将來の問題に対しましては、私の知る限りでは、政府として何もきまつたようなものはないように思つております。從いまして私としてここに将來こう行くんだという具体案を申上げる段階になつていないように感じております。ただ最後に私に一言申さして頂けるならば、将來といえども公務員法及び人事院の使命というものは決して終るものではない、こういう確信を持つておるということでございます。
  34. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今の問題に関連するのですが、前文によりますと、日本国としては国際連合憲章第五十五條に定められた安定及び福祉條件日本国内に創造するために努力することを宣言するということになつておりまして、国際連合憲章の五十五條には、御承知の通り、国際連合は一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の條件を促進しなければならんというふうにはつきり規定してあるのですが、そこで日本政府としてはそういう問題について具体的にどういうふうにお考えになつており、どういう計画なりプログラムを持つておられるかという点を実は安本長官にお尋ねしたいと思つておるのですが、安本長官の御出席がないので、いずれ他の機会にお尋ねしたいのですが、一つ委員長にお計らい願つて、今国連憲章にあります一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の條件を促進するための具体的なプログラムに関する資料を一つ至急に出して頂くようにお取計らい願いたいと思います。  それから特に淺井総裁がお見えになつておりますから、一層高い生活水準という問題に対して、国家公務員諸君の生活水準の引上ということに対してどういうふうにお考えになつているか。今までの人事院の勧告によれば、ただ物価騰貴をあとから追いかけて行つて、而もそれに時期的なズレがあつたり、十分に物価騰貴にマツチしただけの給與の引上がなされないために、生活水準は高くならないどころか、むしろ低いままにあとからびつこを引いているというような状態であるのであるが、今度の條約の締結によつて少くともこういうことをおごそかに宣言されるならば、それに照応した決意がなければならないと思いますが、その点について淺井総裁はどういうふうにお考えになりますか。
  35. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 條約は遵守して行かなければならんと申すことは、私から申上げてもよろしいように思つております。  それから只今御指摘人事院の勧告があとからあとから追かけて行つて、追いつけないという点でございまするが、これは仮に人事院という制度がないものと仮定いたしましても、国家公務員の給與と申しまするものは、予算と法律とによつて組立てられておりまする以上、国会が開かれて議決を願わなければ、これはどうもならない問題であろうと思つております。若し御論説のようなことを徹底いたしまするならば、いわゆるスライド制を適用するほかはないのでございまするが、これは現行制度上困難であろうと考えております。ただもう一つの問題は、人事院はあとからあとから追つかけて行くと申されまするけれども公務員の給與は又一方におきましては国民全体の負担でございまするから、單に先行きを見越した予測で以て引上の勧告をいたすことはできません。必ず精密なる資料に基いて、從つて過去の資料に基いてこれをやつて参るより仕方がないのでありますから、決してこれは私は現状を満足するものではございませんが、事実さようになる次第でございます。
  36. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 現在の制度上スライドは不可能であるというようなお話でございまするが、これは考え方、決意によつては必ずしも不可能なことではないと思うのであります。殊に若し物価安定に対する措置が十全になされているのならば、スライド等のことを考える必要は勿論ないと思いますし、政府も物価の安定を謳つておる間は、スライドは制度としてできないということは言えるかもしれませんけれども、物価に対する政策を全部放棄してしまつて、事実の問題として物価は安定していないのみならず、非常に高騰しているという事実がある以上は、制度としてスライドが不可能だというようなことは絶対に考えられない。その点はもう少しお考えを願わなければならないのじやないかと思いますし、更にもう一つ正確な資料に基いて算定をしなければならないから、あとからきまることは止むを得ないとおつしやるのですが、その点はそれでいいと思うのです。併しあとから資料によつて、前にすでに給與が切下げられていたために非常な損害を受けているということがあとからはつきりわかつたらば、それに相応してバツクペイ等のことも考えられるのだから、事実が確定することはあとであつても、その補償は前に遡つてやるということもあり得るんだし、米価その他についてはすでにそういうことをやつておることを思えば、もつと大事な公務員諸君の給與の問題、生活水凖の問題を守るためには、この條約の前文では引上げることを努力することを宣言されているのであるが、少くとも守るためにはそういうことも進んでやられなければならないと思うのですが、にもかかわらずスライドは制度として駄目なんだとか、或いは資料があとからきまるから、あとから追かけておるのは止むを得ないとか言つて、今まで受けておるところの損害を便々として顧みないというような御意見なり態度は承服しかねるのですが、その点はどうお考えですか。
  37. 淺井清

    政府委員(淺井清君) スライド制が適用できないと申しましたのは、憲法上国会の予算審議権との関係に議論があるからでそう申しただけでございます。人事院といたしましては、スライド制はやつておりませんけれども、ほぼその精神を酌んだ百分の五以上動いたとき云々の制度は、その精神を酌んだものと考えておりますし、今回の勧告におきましても八月一日に遡及して実施を勧告いたしておりまするのは、ほぼその方針のつもりでやつておるのでございますが、なおこの点も給與法の改正案が出ましたときに詳細申上げます。
  38. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 淺井総裁がわざわざ御出席下すつたので、もう一言だけこれは希望に属することであるかも知れないのですが、先ほど來私がいろいろ質問申上げたのは、この講和條約がこうして審議され、そうして批准されるということになりますと、この日本公務員である多数の勤労者は、やはり占領下における日本公務員状態を脱却して、平和條約ができてからの公務員状態というものに対しては、非常な期待と希望とを感ぜざるを得ないと思うのであります。で何といつてもやはり占領下における日本公務員というものは、或る意味においてやはり占領政策に從属して、そうしていろいろな点においてその固有の権利をも制限されていたのであります。それだからして辛抱し、又默つていたということもあろうと思います。ところが平和條約が成立するならば、日本は独立の、そして自由な国となるのでありますから、公務員も從つてこの占領下における日本公務員状態を解放されて、この平和が成立してからの日本公務員の新しい状態というものに入るに対しては、おのずからそこに非常な大きい希望を持たざるを得ない。これは人事院総裁としても十分洞察せられたいと思うのであります。從いまして先ほどから私の申上げましたことに対して御高見は十分拜聽したという程度のことで勿論ないと思いますので、私の質問はそういう重大な点からなされているのであることを十分御了解下さいまして、さつきから私の述べました点について今までも十分御研究になり又御調査にもなつておることであろうと思いますけれども、一層慎重にそれらの点を御研究になり、御調査になり、そして或る程度の結論に到達せられたならば、それを発表せられたいということを希望するのであります。そして先の国際的な批判にもありましたように、公務員争議権団体交渉権を奪つておるということは、やはり占領軍の治下にある日本であつたから止むを得なかつたという点も多分にあるのじやないか。從つて平和條約ができればそれはノーマルな状態に戻すべきじやないか。少くとも若しも万一先の人事院総裁の最後にお述べになりました御決意のように、人事院はその重大な使命をいよいよ遂行するためには、あらゆる機能を発揮して行くということを確信しておられるという、その確信に私は疑いを差しはさむものではありませんけれども、併し或いは人事院の機構というふうなものが若し縮小されるとするならば、その場合には必ず公務員団体交渉権争議権というものが回復されなければならないということは、これは明らかだろうと思うのです。それから又そういうことが仮にないとしても、人事が現在以上の機能を発揮して行かれるのと並行して、或い団体交渉権というものは公務員に対してこれを保障する。それから争議権というものも妥当なる形式においてこれを保障する。なかんずく私としてはその中でも最初の、つまり今の現行法に改訂される前の元の国家公務員法というような形、即ち多数の民間の勤労階級とその業務において全く異なるところのない人々というものは、特別職として争議権団体交渉権を制限しないという考え方も、これも又十分新たに檢討せられて欲しいと思うのであります。  特に最後に私として希望に堪えないのは、いわゆる教育公務員であります。教育公務員が一般職として他のいわゆる官吏と同じように待遇されておるということは、日本の学問の自由というためにも重大な弊害がある。それで私は先ほど來の御答弁を伺いながらも、淺井総裁御自身にしてからがすでに何でも默つていたほうがいいんだ、何か言うと不利なことが起るのだというような印象を我々にお與えになる。いわんやその人事院の保護の下にあるところの公務員、なかんずく教育公務員、或いはその中でも特に大学教授たちが結局默つていたほうがいいんだ、物を言わないほうがいいんだというように沈默の奴隷になつて行くという状態になつて行くことは、実にこれは講和後の、平和條約後の日本の重大な危險であろうと思われますので、少くともこの教育公務員も或いは大学教授というものに対して、その人々が何でも默つて、そうして屈從して行くんだという状態に対する危險に対しては、それを救済する方法を十分考えて頂きたい。教員公務員や大学教授というものを、或る時期に到達すれば……、この現行国家公務員法というものを実行して、或る時期に到達すれば外すべきものは外して行くということは十分御研究になつておることであろうと思いますが、今後も慎重に御研究を願いたいと思うのであります。
  39. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は先ほどちよつと席を外したことがありますので、或いは重複するかもしれませんけれども、極めて幼稚な質問ですが、我々素人として條約局長から一つ教えておいて頂きたいのは、この條約の前文というものは一体どういう拘束力があるものですか。その点をまず伺つておきたい。
  40. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約の前文は、その條約の締結に至つた事由乃至その條約の目的又はその條約のよつて立つ根本原則を謳うのが通例でございます。内容とは全然区別して考えられます。通常前文に含まれてある事項については、締約国は相互に道徳的責任を負うとこういうふうに考えられておるわけでございます。從つて條約上の権利義務関係ではなくて、締約国間に道徳的義務を生ずる性質のものでございます。道徳的責任を生ずるということは、前文から生まれて來る責任が軽いという意味ではなくて、道徳的に見て高い程度の責任を感ずべきものであるというふうに考えるわけであります。   —————————————
  41. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは第一章へ戻ります。金子委員
  42. 金子洋文

    ○金子洋文君 第一章の(b)の條文ですが、この中に、「日本国民の完全な主権を承認する。」この完全な主権ということは、完全な独立を意味するものかどうかということを、先ずお尋ねしたいと思います。
  43. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 第一條(b)項の趣旨は、御指摘意味合いのものでございます。三月の米国案にありましたが、七月の米英合同案では削除になりました。それを連合国の一部の国が、この條項を残しておいたがよろしいと主張しまして、最終案に又姿を現わした條項でございます。七月の米英合同案で姿を消しました理由は、私のほうで了解いたしておるところでは、米案にこの條項が入りましたのは、平和條約実施と同時に、占領管理が終結するという趣旨を現わす趣意であつたようでございます。それを七月の米英合同案では更に端的に、現在第六條となつておりますが、占領軍は平和條約実施と同時に撤退しなければならないという條項が入りましたので、この條項と重複するということで落ちたようでございます。
  44. 金子洋文

    ○金子洋文君 若しこの完全な主権ということが、完全な独立とまあ解し得るとするならば、條約の第六條の(a)項の「但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」この條約と矛盾すると思うのです。なぜ矛盾するかというと、外国の軍隊が駐留するのですから、これは完全な独立とは私は言えないと思うのです。これは講和会議においても、エジプト全権が、この軍隊が残るということは不完全な独立であるということを指摘して、その他の国の賛同も得ている。從つてこれがこのまま認められる以上は、この完全な主権というものは不完全な独立を意味するから、完全な独立にならないと思いますが、その点如何でありましようか。
  45. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御答弁申上げます。完全独立国と申しましても、その国の主権が何らの制限を受けないという意味では決してないのであります。今日独立国はたくさんございますが、どの国も、例えば国際連合に加盟いたしますれば、憲章による主権の制限を受けますし、特定の国と條約を結べばその條約の範囲内において主権の行使に制限を加えられるわけであります。要はそういつた制限関係に入る場合に、外部の力によつて強制せられないで、独立国として自主独立的にそういう関係に入るか入らないかによつてきまるわけでございます。第六條の但書に言つておりますのは、日本が完全な独立国として他国と安全保障條約、安全保障上の條約を結び、その結果日本に軍隊が残る場合はこの限りではないというわけでありまして、第一條の(b)項と決して矛盾するものではないと考える次第でございます。
  46. 金子洋文

    ○金子洋文君 形式的にそうおつしやいますけれども、実質的に軍隊が残るのですから、これは完全な独立と言えないと思います。從つてあなたの最初の御答弁による完全な主権の承認ということは、完全独立を意味するというあなたのお答えが間違つて來ると思います。そう思いませんですか。
  47. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 具体的に例をとるとおわかりになると思いますが、今日北大西洋條約ができました結果、イギリス、フランス、イタリアその他にアメリカの軍隊が駐屯いたしております。これによりまして、イギリスが不独立国になつたとも、フランスの主権が侵害されたとも、イタリアが不完全独立国になつたとも世界の通念は考えない次第でございます。
  48. 金子洋文

    ○金子洋文君 只今例に挙げられました国々は、そうとられる可能性も考えられます。そう考えてもよろしいでしよう。併し私も具体的な例を申上げますが、戰争前には御承知のように、世界で二十カ国が植民地化されております。それが第二次世界大戰後において十二ヵ国が独立をしております。そうして不完全な独立国としては、エジプトとかインドシナとかオーストラリアその他八つの国が示されております。從つて、エジプトの講和会議における発言というものは、不完全である自国の状態から推して、この講和というものは不完全な独立である。そういうことを立証する自分が非常に適任者であると、こう強く主張しておるのです。從つて先に挙げられた事実と今私が挙げた事実とは非常に相違しておる。日本状態はやはりこの八つの不完全な国に席を列することに私はなるのじやないかと思うのであります。でありますから、あなたのおつしやる完全な主権、完全な独立という以上は、私はこれはおかしい言葉じやないか、そうお思いになりませんか。
  49. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 今御指摘になりましたような東南アジア諸国又はアラブ諸国の一部につきましては、これは金子委員も御承知の通り、西欧文明の東漸時代に、西欧強国が植民地政策をとりまして、これを一旦完全な植民地としたのであります。その後時日の経過と共に、これらの国の文化の向上、第一次戰争から第二次戰争という経過を経て、漸次独立の方向に向つて発展しつつあるわけであります。我々としてはこれらの諸国が一日も早く完全独立の域に達することを冀うわけでございますが、ああいう国々の経た特殊の歴史から見まして、その植民地時代の残滓として、なお今日一部欧洲諸国の軍隊が存在しておる事実からして、これらの諸国が、日本に軍隊が駐在することに対して特殊の感情を持つておることは、否めないところであります。日本におきましては事情は全く違つておりまして、十九世紀中葉、一時国運が危なかつたこともあつたと思いますが、幸い西欧諸国の植民地とまでなることなく、一世紀前から完全な独立国際社会に伍することを得たわけでございます。而して太平洋戰争の結果、敗戰、そうして占領、ということになりまして、今日平和條約ができまして、この占領管理終了しようとしておることを、私どもは非常に喜ばしく感ずるわけであります。ただ独立回復後におきまして国の安全という見地から安全保障條約を結びまして、合衆国軍隊の駐留を承認することになりました。この條約は無論東南アジア諸国、アラブ諸国の一部における外国軍隊の駐留とは全く性質が異なる事柄でございまして、日本が独立国として国の安全を当面如何にして確保するかという見地に立つて合衆国と話合いの結果駐留を承認することになつたのでございます。これあるがために日本が植民地にもなると考えませんし、植民地になるというごとき縣念を日本人は持つてはいけないと思うわけでございます。
  50. 金子洋文

    ○金子洋文君 まだいろいろ意見がありますが、これ以上言うと世界政局に及ぼす政治性を持つておりますから、とても西村さんではお答えできないと思う。であるから外務大臣が來ると思いますから保留しておきます。
  51. 曾禰益

    ○曾祢益君 第一條について伺いたいと思いますが、この(a)項の、「日本国と各連合国との間の戰争伏態は、」「終了する。」かようになつておるのですが、一体戰争状態というものはどういうものであるかということを御説明願いたいと思います。
  52. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国際法の御講義をすることは御勘弁願いたいと思います。要するに宣戰布告によつて国家間に発生する状態でございまして、相互の間に戰争行為をなし得る法律上の状態とでも定義いたしましよう。戰時国際法のどの本にも説明してある通りであります。それによつて考え願いたいと思います。
  53. 曾禰益

    ○曾祢益君 我々は国際公法について若干の知識は持つておるのでありますが、国民は必らずしもそこまでの知識がないのでありまして、從つて国際公法の講義とか講義でないとかでなくて、国民の重大な関心の的は、御承知のように連合国にしてこの條約に加わらない国との間に、この條文によれば反対解釈として戰争状態が継続すると、かように読めるわけで、そこで戰争状態というものはどういうものであるか、即ち今あなたのおつしやつたような、法律上は事実上の交戰関係といいますか、これをし得る状態であるのか、し得る状態から現実にそれが交戰そのものに入るというふうに類推解釈する人が多いわけです。そこでこの戰争状態が残るということの意味はつきりと何人にもわかるように御説明願いたということを申上げておるわけなのです。
  54. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は、先日岡本委員の御質問がありまして、御説明申上げたところでございます。戰争状態といいますのは今申上げたような状態でございますが、これは二つに分けられると思います。いわゆる交戰状態休戰状態との二つございます。戰争の結果一方が先ず他方を倒しまして、交戰状態から休戰関係に入るのが通例であります。即ち一方が和を請い、一方がこれを容れることによつて戰争状態は第二の段階に入るわけでございます。すでに六年前日本連合国との間は降伏文書署名によつて戰争状態の第二段階、休戰状態に入つておるわけでございます。で、ここに戰争状態終了するというのは、今日、日本連合国との間に存在しております。降伏文書によつて設定された休戰の状態終了するという意味でございます。
  55. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の御説明によれば、例えばソヴイエト・ロシアがこの講和に、平和條約に参加しておりませんし、又中国も参加しておらない。この状態におきましてソヴイエト・ロシア或いは中国日本との関係は、法律上の戰争状態は継続するけれども、その状態はあなたが今おつしやいました降伏文晝を調印したことによつて交戰関係は終つている。從つていわゆるミズリー以前の状態、事実上の交戰状態意味するものではない。降伏文書は一種の、変態的であるかも知れないけれども、これは一種の休戰協定みたいなものであつて日本ソヴイエトとの関係日本中国との関係法律上の戰争状態であつても、休戰状態が続くものであつて、交戰関係意味しない。かような点が政府のお考えであるかどうかをはつきり伺いたいのであります。
  56. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御意見の通りであります。
  57. 曾禰益

    ○曾祢益君 次に(b)項について伺いたいのでありまするが、その前に、この我々の手許にありまする日本文というものは條約上の正文ではないと思いまするが、これは訳文ではなくて、日本文というものが一つの、條約の何といいまするか、テキストになつているかどうか、この点を先ず伺いたいと思います。
  58. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 第二十七條に規定してあります通りに條約の正文の一つでございます。いや、正文ではございません。日本語によつて作成したとありますから、何と申しましようか、正文というのは当りませんが、公文とでも申しましようか、公文であつて、訳文ではございません。
  59. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今のお話によりますると、條約上のいわゆる正文ではないけれども日本文もただ單なる訳文でなくて本文であるということでございまするが、そういたしますると、この(b)項にありまする「日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」と、こうあります。この「日本国」というのは英語のジヤパンから訳したのではなくて、当然に日本国というつもりでできているのかどうか、この点をお伺いしたい。
  60. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この條約を通して全部ジヤパンは日本国となつております。
  61. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も大分見たのでありまするが、どこを見てもジヤパンというところに該当するところは日本国となつているようでありまするが、この(b)項に関しまして、一体「日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。」というのは、こういう書き方は一体普通なのでありまするか。それとも日本国ということの意味でありまするか。これは主権の構成要素として領土、つまり日本という地域及び日本領水に対する日本国民の完全な主権を承認するというほうが普通の観念であるかどうかということを伺いたいのであります。
  62. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は国際間の通念で、国家というものは住民と領域と主権とから成ると言われております。そうしてこの主権とは、統治組織の最高権力という観念であるとされているのであります。で、主権という場合に対内面から見ますと、一国の国内における最高の権力であり、これを対外的に見れば、主権というものは本質上他の国家の権力の下に立たないという観念が生れて來るわけであります。それを対外主権という表現で言い現わす場合もあるようであります。この第二條で言うのは対内主権、対外主権両者を合致した国の主権というわけでございます。第二條が言つているのは、主権在民の観念から來まして、日本国民が持つている主権が、日本の領域に対して絶対最高のものであり、他国の権力に服することがないという趣旨を表わすために使われたと考えております。こういう條項が條約に入つた例は今回か初めてでございます。一つの先例になろうかと思つております。
  63. 曾禰益

    ○曾祢益君 その日本国民が主権を持つているという点についてはあとで御質問したいと思つているのですが、どうも今の御説明では僕にはわからないのですが、日本国民か持つている主権の範囲をここできめたのだろうと思うのです、地理的に……。つまりいわば趣旨は、領域をきめるのは第二章でありましようが、日本が主権国である、その主権は、今條約局長の言われたような、国民に完全なる主権があるという点を強調した結果だろうと思うのですが、併しそれならば「日本国及びその領水に対する」というのはおかしいのであつて日本及びその領水に対するとするのが通常の観念ではないかと、かように考えるのに、なぜにこの点が「日本国」となつているかというのが今の御説明ではわからないのです。
  64. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約におきまして、なお又外交文晝におきまして、日本とだけ言う例はないようでありまして、「日本国」というのが從來の慣行でございます。それから(b)項の趣旨は、曾祢委員の言われる面も無論ありますが、主として対外主権、日本国民日本国領域に対する主権は完全にあつて、外部の如何なる国の権力の下にも服しないという趣旨に重点があるのだと考えるわけであります。
  65. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも今までのお話では、ジヤパンというときには必ず日本国となつている、これは飜訳的のお話のようであつて、自主的に考えた場合には、やはり「日本国及びその領水」というふうになつている点から見ても、これは地理的な日本言つているのではないかと私は思うのですが、まあその点は余り固執いたしませんが、どうもこの日本文で作つたというのですけれども、英文から飜訳して、ジヤパンというのは何でも日本国というふうに訳してしまつたからこういうことになつたのではないかという感じを持つております。  次に重大なる点は、「日本国民の完全な主権を承認する。」、この点でありまするが、たしかこれはヤンガー国務相でしたか誰か、講和会議の席上の演説の中にも、この「日本国民の完全な主権」という点に力点をおいて説明してあつたと思うのですが、この点は、日本日本の憲法に対する契約上の、つまり平和條約を作るために日本の憲法に対する一種の保障といいますか、二重的な保障といいますか、国民在主権という点をこの平和條約の「日本国民の完全な主権を承認する。」ということによつて改めて契約的なベイシスの下に確認したという意味であるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  66. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 曾祢委員の御指摘のような意味は特に持つておらないと思うのでございます。第一條(b)項の狙うところは、先刻申したように日本の主権が他の国の関係において、外部の権力の下に服さないものであるということを連合国承認するという点に重点があるわけでございます。ただ日本国民の主権という表現が使われたにつきましては、勿論この條約の前文でも明らかな通り、日本将來とも民主主義国家としてあるということを連合国は期待しておりまするので、主権の表現にもこの民主主義的な表現が使われたものと考えております。
  67. 曾禰益

    ○曾祢益君 この(b)項の趣旨が、日本の主権は俗に言つて日本にあるので、完全なものである。外国の制肘、制約、制限の下にないということを明らかにする趣旨であるということは、私もわかるのでありまするが、私の伺つている点は、その日本にある主権が、対外的に無制約であり、又国内における最高主権としては国民にあるという点が、はつきりここに打ち出されておるのではないか。これは一点の疑いもなくはつきり打出されていると思うのでありますが、從つてこれは一つの副産物であるかも知れないけれども、この條約に調印し、これが効力発生した以上は、日本国憲法の、民主主義といつてもいろいろあるでありましようが、国民在主権の日本国憲法が、改めてここに日本連合国との契約上のベイシスにおいてこれを日本は確認した、連合国も又これを確認したという効果を伴うかいなかということを伺つているのであります。
  68. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本国家におきまして主権が国民にあることは、日本国憲法の前文にも第一條にも明らかに謳われている事柄であります。併し第一條(b)項によつて主権在民の関係が、日本連合国政府との間に契約的関係において確認されるというような結果が同項から生れて來るとは考えておらないのであります。
  69. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますと條約局長は、この(b)項にはつきりと「日本国民の完全な主権を承認する。」と書いてあつても、その効果は、いわゆる日本の主権が外国から制限されないというだけの効果しかなくて、日本国民に、国内における主権の存在が日本国民にあるということについては、こう書いてあつても何も効力がない。從つて何らの契約上の約束にならない、かようにはつきり断定されるかどうか、もう一遍伺います。
  70. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 三月の米案にこの條項が入りましたときの趣旨を考えて下さればわかると思うのであります。三月の米国案にこの條項だけが入りまして、第六條の規定がなかつたのであります。その当時我々が了解しております(b)項の目的は、これあるが故に平和條約の効力発生と同時に、日本に対する連合国占領管理は終止する。言い換えれば、降伏文書の末項にある日本政府及び天皇の権限は最高司令官に隷属するというサブジエクト・ツーの関係が解消いたすことを明かにするにあつたのであります。これから見ましても、第一條(b)項が目的としておるところは、日本領域に対する主権は完全であつて、外国の何らの権力の制限にも服さないことを明かにするのが、主たる目的であると私は了解しております。ただ文字の表現が、日本国民の主権を承認するとなつておりますことにつきましては、日本国憲法の前文及び第一條の主権在民の規定、それからこの平和條約を一貫しております日本民主国家として行くべきであるとの原則を心持に入れて、かような表現が使われたのだと、こう了解しております。
  71. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは非常に重大なことだと思うのですが、そういたしますると、仮に将來非常な不心得者があつて日本の主権在国民の憲法が国民の手によつて変るようなことがあつても、それは平和條約の侵犯にはならないということが外務大臣の御見解であるかどうかを伺いたい。
  72. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは外務省といたしましても、又政府といたしましても、只今條約局長が説明いたしました解釈をとつております。從いましてさようなことはないと存じまするが、この條約によつて日本国憲法を強いるものではない。全くそれとは別である。対外的に日本の完全な主権に対する連合国承認をこの條項において現わしておる、かように解釈いたしております。
  73. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 丁度質問しようと思つていたところなんですが、今のお話で大体明らかになつて來たので、もう一度念を押しますと、そうすると主権がどこにあるかということは、結局国内法の問題であつて、全くその点は国際法上この(b)項は考えるべきでないのだというふうなお説になるのですが、そうなりますと、連合国日本の完全な主権を承認するということだけの意味だと、こういうふうに考えていいのでありましようか。  もう一つ問題として考えられることは、この(b)項の問題は、第二章の領域的な部面も考えつつこういうふうな規定ができたのだ、こう考えていいのでしようか。その二点をお答え願いたいと思います。
  74. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 第二点から先に御答弁申上げます。この(b)項は第二章の領域というものは余り考えないで作成されたものであります。主たる目的は平和條約が発生すれば日本は完全なる主権独立国となる。即ち連合国による占領管理は終止する、降伏文書の末項の関係は終止することとを明にするために設けられた規定でございます。  それから第一点の完全な主権を承認するという規定を設くるに当つて、何故に日本国民の完全な主権、主権在民を表現する文句が使用されたかということにつきましては、占領管理下の下に制定された日本国憲法が、前文においても又第一條においてもはつきり言つておりますように、日本の主権は国民にあるとの大原則の上に立つており、且つ又この平和條約全体が前文にも明らかに出ておりますように、今後日本が平和愛好の民主国として行くべきであるとの大原則に立つておりますので、この気持がこの日本国民の主権という表現に現われていると考えているわけでございます。
  75. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今おつしやつたことよくわかるのですが、わかりますがこの(b)項の法律的効果は先ほど曾祢君にお答えになつたところでは、国際的な関係、つまり日本国憲法の関係は国内法規の関係だ、だから対外的には日本の主権だけだ、対外的の国際法上の日本の主権、いわゆるサブジエクト・ツーの関係排除しただけである、そういう意味法律的効果しかないとお答えになりましたが、それらの沿革を頭に向うが入れておつたであろうということの実質的なお話があつたのですが、法律的な効果は曾祢君に言われただけだ、こういうふうに考えていいか。つまり法律的効果は国内法規はどうなるか問うていない。ただ現在の日本状態日本国の憲法によつて主権在民の国の基がきまつておりますが、それは国内法規的なものであつて、この條項の法律的効果はそれを問うているのではない、こう考えてよいか。
  76. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 大体そういうふうに考えるわけでございます。これは過去における話合いの経緯から見ましてそう思うわけでございまして、三月の米国案にこれがありましたときに、この條項の趣旨は、占領軍、連合国による日本占領管理平和條約実施と同時に完了いたして、日本が完全なる主権国となるという趣旨の規定であると説明を得たわけであります。七月の米英條約案ではこの條項か落ちまして、第六條にありますような、平和條約が実施せられると同時に、日本にある連合国占領軍は撤退しなければならないという條項が新たに入つたのであります。裏からわかり易く具体的に規定してくれたわけであります。それが米英合同案でありまして、これが発表されまして各連合国に回付されましたときに、連合国の一部から、三月の米国案にあつた連合国日本国民の完全な主権を承認するという、その規定があつたほうがよいという議論が出て、八月十三日の最後案には又姿を現わしたわけであります。そういういきさつから見まして、第一條(b)項が主として対外関係日本と対連合国との関係において、日本国は何国の権力の制限にも服しないという趣旨を明らかにするのが目的であると了解いたしております。
  77. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう一度くどいようですが、西村さん、そうすると連合国日本国の完全なる主権を承認するとこう端的に書いたのとどう違いますか、法律的効果としては。
  78. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 全然同じでありますが、ただ違う点は、連合国としてはこの前文にもはつきりしておりますように、将來日本が主権在民の民主国であることを期待いたしております。又占領管理時代に制定されました日本国憲法におきましても、前文にも第一條にも明らかに主権は日本国民に在ると謳つてありますので、この原則将來日本国の性格として守つてつてもらいたいという気持がここに現われていると御説明いたした次第でございます。
  79. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 現われているだろうがそれは法律的効果がない、そうですね。
  80. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) さようでございます。(b)項によつて日本は主権在民でなければいけないという平和條約上の権利義務関係が、日本連合国との間に生れるものでないとお答え申したわけであります。
  81. 高橋道男

    ○高橋道男君 領水と領域とはどういう区別がございますか。
  82. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 領域と言いますのは通念上領土、土地だけを考えられる傾向があるわけでありますが、普通領域と申しますと領土、領水、領空と三つに分けております。この條約では領空に触れておりませんが、勿論当然領空に対しましても完全なる日本の主権が認められたものであると解釈いたしております。
  83. 高橋道男

    ○高橋道男君 私も先ほどの曾祢委員質問に関連しますが、「日本国及びその領水」というふうに出ておる点が解せないのですが、日本国ということが日本の領域とか日本の領土とか、そういうように解釈することはできないのでありますか。
  84. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この日本文につきましては、意見を求められましたから、十分意見を申す機会があつたのであります。從來、経験している範囲内におきまして、條約に日本という字は使わなくて、日本国を使うことになつておりますので、日本国の領土及びその領水、こう言つた次第であります。具体的の意味は御指摘の通り日本の領土及び日本領水という意味でございます。ジヤパンは日本国で、ジヤパニーズは日本の、というのが慣例になつております。ここに若しジヤパンの代りにジヤパニーズという字が使われておるとするならば、その場合には日本言つてもいいかとも考えますが、まだそういう慣例が確立いたしておりません。行く行くそういうふうに持つて行きたいとは考えております。今日までのところはジヤパンは日本国としておりますので、この点についてはこちらから別に意見を提出しなかつたわけであります。
  85. 高橋道男

    ○高橋道男君 もう一言お伺いしたいのは日本国民でありますが、これは英文のほうによると、ここではジヤパニーズ・ピープルとなつております。それから後のところではジヤパニーズ・ナシヨナルという文字になつておりますが、これは先ほど英文の飜訳ではないと言われたのですけれども、ピープルとナシヨナルの間にどういう区別があるか。若しあるとすればそれを一つの日本国民という言葉で現わさずに、別の言葉で現わされるようなことは考えられなかつたのかどうか。
  86. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本国民国民全体として現わすときにピープルを使いますし、個々の場合をとりまして、個人々々を言い現わすときにナシヨナルズを使います。そういう慣例になつております。
  87. 高橋道男

    ○高橋道男君 英文の二つの文字が日本語で一つに現わされているのですね。そこに何か矛盾を起すような嫌いはないか。これはたまたま気がついたピープルとナシヨナルだけの問題でなしに、この條約全部を通じてそういう、英文は二つあるが日本語は一つ、逆に日本語は二つであつて英文だけは一つ、というふうなことがあるために條約の解釈に不便な、或いは誤りを來たすような虞れがあるところはないか。その点断言して頂けるかどうか。
  88. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そういう例は從來多数ございまして、実際適用に当りまして別に不便は感じておりません。むしろ日本語が英語のようないろいろの色彩と申しますか、ニユーアンスと申しますか、そういうものを現わす言葉が足りないので飜訳に当つて困難を感ずる場合がしばしばございます。併し実際適用に当りまして、それがために困難を感じた例は、過去三十年ばかりの間に一度も遭遇したことはございません。
  89. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほど條約局長のお話で、日本文に対する意見を日本側に求められたというようなふうに聞いたのですが、そうしますとこの日本語の條約というのはどこで誰の手でできたのですか。
  90. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) お手許にあります議事録の九月七日の夜の最後の部分を御覽になるとわかると思いますが、ケルチナー事務総長が会議に報告しております。フランス語、スペイン語、ロシア語、日本語は国務省で作成して各関係国、その言葉を使う国の政府又は代表団に提出して意見を求めて承認を求めた。フランス、スペインからは何ら意見の提出がなくて承諾をして來た。ロシア語についてはロシアの代表団から何らの意思表示もなかつた日本語の本文については日本政府の承諾を得た、アプルーヴアルを得たと報告をしておるのであります。
  91. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今の質問に関連して條約局長質問しておきたいのですが、第一章の第一條(b)項に関するお答え質疑応答を伺つていて、こういう感じを抱くのですが、そういうことはあるのかどうか伺つておきたい。  第一に、日本の外務省は、敗前戰しばしば、これは敗戰前の政治形態と関連があつたんでしようが、日本の人民というものを無視した外交をやつておられた。そういう或いは伝統が今日もまだ残つていて、とかく主権在民というような憲法の原則がありながら、外交関係などにおいては主権在民の大原則というものが消え去つて、それでいわゆる官僚主義というか、或いは外務省のドグマチズムというか、そういうふうなものが又復活する余地かあるのじやないかと思いますが、先ほどの御答弁の場合に、例えば(b)項で以て法律的には日本の主権在民というものがこれは全然含まれていないということを答弁される必要が、はつきり断言される必要かあるのかないのか。  それから高橋委員からの御質問に対して、ジヤパニーズ・ピープルに在るという場合に、ピープルというのは人民というふうに訳されておるのが普通でしよう。三十年ほどになるが一遍も問題がないということを平然としておつしやいましたが、重大な問題があつたことがありますよ。いわゆるケロツグ・ブリアン協定の問題があつた。そういう意味で、私はまさかあなたにそういう民主主義以前の伝統が残つているというふうには心配しないのですけれども、そういう印象を国民に外務省がお與えになる御意思は勿論ないだろう。主権在民ということは当然この條約全体を通じて、法律的に且つ又技術的にも尊重されるものだというふうにお答えがあつたほうが、條約局長のみならず、或いは日本外交の将來主流を担当されるかたとしては、そういう面で却つて国民を激励し、啓蒙して行くようなお答えがあつたほうがいいのじやないか。それを消極的にこの(b)にはそういうことはない、(b)になくつたつて全体にあると言えるのだから、そちらのほうを強調して頂くほうがいいのじやないか。そうしてピープルという字を過去の外務省は非常に嫌いだつたのですが、現在の外務省はそういうものを嫌われる必要はないのだから、ナシヨナル、ピープルというような場合には、今度は直せないかも知れませんが、人民というふうな、主権在民の趣旨を一層現わす文字を使われることに躊躇される理由はないのじやないか。これが第一の点です。  第二の点は、先ほど金子委員に対するお答えにもありましたが、先ほど來しばしばあなたも、そうして首相も政務次官もそうかも知れませんが、日本に現在この平和條約の第六條(a)項但書ですか、それによつて外国軍隊が駐在する場合についての、国民の実際率直な不安或いは疑問というものを質問するのに、それにいつもおつかぶせて、イギリスやフランスにもアメリカの軍隊が駐在している。それで英国やフランスの主権が侵害されているとは言えますまいという答えをなさる。これは素人がそういう答弁をするならば結構だと思うのだけれども、あなたのように、他面においては極めてテクニカルな論拠によつて政府立場を擁護されておりながら、今度はそれが若干不利になつて來ると、その技術的な又專門的な判断を乘越えて、素人の暴論みたいなことをなさるのは、私は日本の外務省のためにとらない。そうして特にあとの点について、三つの点を私は重大だと思う。第一は、日本は過去において、例えば外国人に対する個人的なエチケツトということを大変言うのです。あくびしてはいかんとか、楊子で歯をいじくつてはいかんとか。併し国と国との礼節というふうなものは甚だとしかつた。これはあなたも十分反省しておられるだろうと思います。それで個人的な礼節を言いながら、他面外国の政体に対して実に許すべからざる暴言をしばしば吐いている。こういうことがやはりまだ幾分残つているのだとすれば、その点についても十分御戒愼下さつて、みずから戒められて、殊に現在、将來もそうですけれども、現在まだ日本降伏状態にあるのだ、外国のイギリスだつてフランスだつてアメリカの軍隊がいるじやないか。それで主権が侵害されているのか、そういうふうなイギリスなり、フランスの問題でも、イギリスやフランスにもしばしばそういう問題がありますよというような、そういう日本の例に引合いに出されることは、イギリスやフランスにとつて迷惑であるかもわからない。西村さん聞いていて下さるのですか……。私はそういう点も第一には留意して頂くべきではないかと思います。そんな杞憂はいらんとおつしやれば別ですけれども、併し先日も言いましたように、日本はまるで世界各国の審判官のように、日本の国は万国に冠絶したいい国だ、外国はつまらん国だというようなことを昔から言つて來ておる。そういうような習慣を打破するために、第一点に日本の場合を今聞いておるのだから、わざわざイギリスやフランスも主権を侵害されたことになるというような大ざつぱな議論は差控える御意思はないか。第二には、イギリス乃至フランスの場合と日本の場合とは、あなたの言つておられるのとは全く條件が違います。如何に條件が違うかということは、私から釈迦に説法する必要はないだろうと思う。英国なりフランスなりの場合は主権がすでに先に存在しておるのだ。又そこにはその国の軍隊が先に存在しておる。日本の場合にはまだ主権が先に存在していないし、日本には軍隊がない。そういう二点だけとつて條件が全く違う。條件が全く違うものをとるのはいわゆる論理学上から申しますと、惡い意味のアナロギーであつてロジツクではない。だからそういう第二点からもこういうことはおやめになつたほうがいい。又第三には、最も重大なことは、イギリスやフランスにもいろいろな問題が起つておるということは、まさかあなたは御存じないことはあるまいと思う。それがイギリスやフランスでも主権の侵害の虞れがあるということで、英国の人民又フランスの人民が非常に苦しんでおる問題が現にありますよ。それで現にイギリスにアメリカの軍隊が駐在しておる結果、例えば一時は当時のイギリスの閣僚であるストレイチーの進退に関して問題が起つたことすらある。そういうことはあなたもまさか知らんはずはないだろうと思う。だからイギリスやフランスの例だつて主権侵害の問題が生じていないとは言えない。  そういうように第一、国際上の礼節というものから、第二は、條件が違うという点から、第三は、イギリスやフランスの場合でも主権の完全なる保持という点においてさまざまな問題が起つておる。最近はイギリスの飛行機が米国の飛行場に到着するのに、アメリカ軍の許可を受けなければ飛行場に到着できない。こういうことが問題になつておる。そういう問題が多々あるのだから、そういうことはあなたがた専門家でよく知つておるでしよう。この第六條(a)項の但書に対して、イギリスやフランスの例をお引きになるというのは今後おやめになる意思はないかということを伺つて置きます。
  92. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはいろいろ外交関係の御意見又御質問がありましたので、私からもお答え申上げます。現在の外務省といたしましては、御心配のような古い考え方をなお根に持つておるということは全然ございません。從いまして、最も新らしい、又世界の期待を裏切らないという熱意を以て、この新らしい日本の進展のために外交の衝に当つて行くという熱意を以て全部やつておりますから、どうぞこの点は御心配のないようにお願い申上げたいと思います。又たまたま外国の引例を申しますのは、成るべくわかりやすいという意味において実はいたしておる次第であります。從いまして、これらの国々にお話のような、或いは逆に迷惑をかけるというようなことがありますと、むしろ恐縮する次第であります。十分今後は引例等におきましても注意いたしたいと思います。
  93. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは一時半まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩    —————・—————    午後一時四十三分開会
  94. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは午前に引続き会議を開きます。
  95. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 逐條審議に入りまして、皆さんがた大体御質問も、予定された部分についてはお済みのことと思いますが、私余儀ない用事のために大変どうも遅れまして恐縮なんでありますが、一、二点平和條約の問題につきまして、前文の箇條について、お尋ね申上げたいと思います。前文の第二段に、「国際連合への加盟」云々という條項があるのであります。恐らくこの問題も同僚委員のかたがたからそれぞれ御質問があり、又これに対する政府側の答弁もあつたことと想像するのでありますが、我々としても国際連合への加盟ということが、国際平和を促進する意味において、又平和国家として日本が今後立つて行くという建前から申しましても、国際連合の安全保障を全面的に我々としても受入れなければならないという建前から申しましても当然のことだと思うのであります。なお国際連合に加盟の問題は、この條約の第五條にも関連して來る問題でありまするが、併し前文のこの箇條として、私ども果して国際連合への加盟が可能かどうかというようなことについて非常な疑問を持つておるわけなのであります。勿論、連合憲章のたしか第四條の中に、加盟の條件としまして二カ條の規定が挙げられてあるのであります。一つは平和愛好国、もう一つは国連憲章の義務を受諾するという意味のことが述べられております。この條件を具備すれば当然国際連合へ加盟を申請することかできるわけであります。併し加盟の手続といたしましては、御承知のように安全保障理事会の勧告に基いて、国際連合総会がこれを決定するということになつておるのでありまするが、ところが、安全保障理事会の勧告の問題が先ず第一に考えられると思うのであります。一体安全保障理事会の決定は五大国の意見の一致ということを前提といたしておりますので、拒否権はいわばそれの具体的の表現だと、こう申さなければならんのでありますが、ところが日本と同じように戰争後平和條約を結んだイタリアの場合について見ますると、イタリアにおきましてもやはり国際連合への加盟を支持する旨の規定が設けられておる。ところがイタリアの場合、今日まで依然として国際連合への加盟が不可能におかれておる。これは申すまでもなく安全保障理事会における意見の一致が見られないというところに起因するのだ、こう申上げることができるわけであります。尤も安全保障理事会におけるこの勧告を除外して、国際連合への加盟というようなことも現に提案されておらわけでありますけれども、これ又国際司法裁判所においてそういうことは認めることかできないということにもなつておるのでありまして、そうしますと日本の場合やはりイタリアと同じように、安全保障理事会におけるところの一致した意見ということか相当困難であるということを予想しなけれぱならんのであります。アメリカ政府筋の一部には、新たな方式によつて国際連合加盟を何とか考慮しようというようなことを考えておるという面もあるやに聞いておるのであります。この問題につきましては條約局長はどのようにお考えになつておられるか、それをお尋ね申上げたいと思います。
  96. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御指摘の点は全く堀委員のお説の通りでございまして、特に附け加えることはございません。国際連合の加盟は、條約で連合国日本の加盟を歓迎するといつておりますけれども、これらの連合国が、国際連合において新加盟国を決定するに当つて大きな発言権を有する国の全部を包含しておるわけではございませんし、又イタリアの平和條約の場合のように、すべての常任理事国か條約署名国といたしましてイタリアの国連加盟を支持することを前文で明かにしておるにかかわらず、なお且つ同国の加盟が実現いたしていないような現状の下におきましては、この状態が続く限り、日本の国連加盟もむずかしいであろうということは何人にも明かな点だと存じます。我々としましては、この国連加盟のの手続の問題が、国連の当該機関即ち安保理事会及び総会によりまして、憲章の枠内で円満に解決される日が來ますように念願いたすだけでございます。各国がこういう努力を続けて今日に至つておりますので、必ずしも絶望する必要もなかろうと存じます。又今日加盟の障害となつておりますような事態が解消されるまでの間、国連としてもできるだけ広い範囲の国にその事業に参加さしたいという気持でおるようでございますから、正式加盟が実現するまでに何らかの方式によつて、或る種の制限の下ではございましようけれども日本も正式に国連の事業に協力できるようになることを期待いたしております。併し、具体的に言つて、どういう方式が考えられておるかという点につきましては、今日まで関係連合国から何も公式に話を伺つておりません。新聞情報以外に御紹介申上げる材料を持つておりませんのです。
  97. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 具体的に国際連合との何らかの協力が進められるだろうというお話でありまするが、例えばユネスコであるとかその他の機関が国際連合の機関でなくとも、国際的な機関として、或いは国際連合の外郭的な機関として存在するものに日本が参加すると、労働機関についても同様だと思いますが、それによつて日本の国際的な協力が具体化して行くということも、私ども一応認めるわけなんであります。併し根本の問題は、やはり世界の平和機構に参加するということが一番大事な問題なんでありまして、これなくしては、よしんば連合憲章の第二條の第六号によりまして、加盟国でないものについても、国際連合とその加盟しない国との間の平和的な原則が是認されるという規定もありますが、一応は国際連合の憲章に定められた平和的な原則というものも行われることも期待できると思うのでありまするが、併し何と言つても国際連合に参加するということがなくては、本当に日本の安全を保障することができないということも事実だと思うのであります。そこで何らかの方式が考えられるだろうということも予想されるわけでありまするが、その点に関して何かアメリカ政府当局との間に話合いがあつたのではないかというようなこともまあ予想されるわけでありまするが、そういう点はなかつたのでございましようか。それをちよつとお尋ねしたい。
  98. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私が関係いたしております範囲内においては、そういう話は日米両国政府間に一度もございません。
  99. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 前文についてなおお尋ねしたい箇所があるのでございますが、これは政治的な問題でありまするから、又総理大臣が出られた場合にして、その質問を留保することにいたしまして、第一章の第一條の箇條でありますが、第一條の(a)項に関しましては、戰争状態の終結と、それから(b)項におきましては、日本の完全な主権の回復という二つのことがここに規定されております。講和條約であるからにはこれは当然の規定だと思うのでありまするが、ところで戰争状態の終結と申しましても、七カ国が今度の條約には調印をいたしておりません。恐らくこの條約が発効するときにおいても、その状態は恐らく続くだろうと想像されるのであります。そうしまするというと、結局、戰争状態はそれらの国との間には継続するということが考えられなければならんと思うのであります。もつとも條約の二十六條では、三年以内にそれらの国々との間に條約が結ばれることが予定されておりまして、日本はそれに対して応ずる義務を持つております。併しそれにしましてもこの講和條約と同じ内容のもの、実質的に同じ條件のものでなければならんということになりまするというと、到底我々が望んでも、それらの国々がこの日本と單独のそれぞれ個別に條約を結ぶということは期待できないということになつて参るのだろうと思います。そうなりまするというと、戰争状態は一応調印し批准した国との間には回復するが、その他の国との間には回復しないということになりまするというと、日本とその戰争状態の依然として継続している国との間の外交関係というようなものは、相当複雑な様相を呈するのではないかという工合に考えられるのであります。場合によりましては直接的な外交関係は回復しませんのでありまして、却つてそのために從來よりも非常に複雑な関係がそこに発生して來るということも考えられるのであります。  それから又連合国日本の管理機構でありますが、この極東委員会並びに対日理事会は、これは四十五年の十二月の三国外相会議、モスコー外相会議において規定されたところでありまして、最高司令官の地位はアメリカ政府がこれを任命するのでありますが、併し極東委員会と、対日理事会は三国の外相の間の取極によつて設けられたものであり、三国の外相会議の決定に基く以上は、これを終結するためには、どうしてもやはり三国の外相の間の了解がなければ不可能ではないかという工合に考えられるのであります。若し三国外相会議の決定を、米英の二カ国の間で以てこれを終結することを取極めたいといたしますと、ソ連側はこれに賛成しないという場合には、やはりそこに国際的ないろいろの紛糾を起すであろうということも予想されるわけであります。これらに対してどのように外務当局のほうでは考えていられるか、御答弁を承わりたいと思います。
  100. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 堀委員の御指摘になりましたような情勢は誠にお説の通りだと思つておるわけでございます。今度の平和條約が仮に日本署名国との間に完全に効力が発生いたしますと、ほかにまだ七カ国との関係が残るわけであります。この七カ国のうちインドとの間にはすでに公文の交換をやりまして、この平和條約が効力を発生すると同日に日印間の戰争状態終了する措置がとられることになつております。爾後速かに両国間に平和條約を結ぶことになろうかと思います。  ビルマにつきましては、すでに政府からビルマ国会に対しまして、やはりこの平和條約が発効と同時に、日本ビルマとの間に戰争状態終了させる措置をとることを承認するよう要請いたしまして、国会にかかつておる様子でございます。從つて大体の見通しとしてはインドと同様になろうかと存じます。  ユーゴースラビアにつきましても、新聞報道によりますと、やはり対日平和條約が発効前にユーゴースラビア政府としては、対日戰争状態終了措置をとる意向だと言われておりますので、この平和條約が発効する前に同国との関係につきましては、確固とした見通しが立て得るものと考えております。  でございまするから、問題は堀委員の御指摘になりましたように、ソ連、チエコ、ポーランド、中国、この四カ国との関係でございます。この四カ国との関係がこの平和條約が発効後におきましても、今日存在いたしますような休戰状態かつづきましよう。こういう関係のままで行くことは極めて不満足でございます。條約の予定していますように、第二十六條の方式によりまして、これらの四カ国がこの平和條約と同一の、又は実質的に同一の平和條約を結ぶということによつて、平和状態に入ることができますれば、これに越したことはないと存じます。併し、堀委員も御指摘の通り必ずしもそうは参りますまいと存じます。併しながら何と申しましても平和條約が発効いたしますれば、日本も独立を回復し、自由に外交を行うことができることになります。いろいろむずかしい事情もございましようが、飽くまでも日本とこれらの四カ国との関係戰争状態にあることは異常な事態であるので、これを常道に戻すべく相互に努力すべきものと考えておる次第でございます。
  101. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今インドの話が出たのでございますが、インドは確かに戰争状態を終結するであろうという声明を発しております。恐らくこの声明に基いてこの條約の発効の日に戰争状態は終結されると思います。併しながら二十六條に規定したような條項によりまして、果してインド日本との間に個別的にこの條約と同じ條件の下に、同じ内容のものである條約を結ぶ見通しが付くかどうか、これは政治上の問題に関連するでありましようが、條約局長答弁し得る範囲でその見通しを承わりたいと思います。  それからもう一つお尋ねした極東委員会、対日理事会というようなものはどうなるか、これはモスクワ会議の決定を二カ国で以てやめることができるかどうかということの問題をお尋ねしでおるのでありますが、それも政治的な問題は除いて、條約局長答弁し得る範囲において御答弁を願いたいと思うのです。
  102. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御質問の第一点のインドとの関係でございますが、これは第二十六條の方式によりまして、日印両国間の平和関係を回復し得るという見通しを持つております。  第二点の日本占領管理に関しまするモスコー協定のような連合国間の取極の将來効力の点でございます。この点は堀委員すでに御指摘の通り、問題は純粋に連合国間の問題でございまするので、日本政府の公式の見解を申述べる立場にはないと存じます。併し私一個の気持といたしましては、モスコー協定連合四ヵ国間の協定でございますので、四カ国であつたか、三カ国であつたか、その一つの国だけで……
  103. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 四カ国です、フランスが入つておりますから。
  104. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 四カ国間の協定でございますので、そのうちの三カ国だけの合意によつて全面的に解消させることはできないと考えます。これは私だけの考えでございます。
  105. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 インドに対して、二十六條によるところの個別的な條約の見通しか付くというお話でありまするが、八月の米英最終草案が発表された直後、インド政府アメリカ政府に対して覚書を発しているのであります。その覚書に二カ條の前提條件に基いて各條項について、特に領土問題その他につきまして、インドとしての立場はつきり示し、米英草案に対して賛成することができないということを申しているのであります。若し二十六條による個別的な講和の見通しが付くとするならば、インド政府が八月アメリカ政府に送りました覚書に記された條項というものをインドとしてはここで撤回するというお見通しをお持ちの上でのお話なのでありましようか、それを承わりたいと思います。
  106. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は現段階で私から説明する自由を持ちません。とにかく私が二十六條といいましたのは不適当であつたかと思いますので、二十六條という文言を撤回さして項きます。とにかく日印間におきましては、二国間の平和條締結によつて国交を平常化する確固たる見通しを持つておりますということに、私の答弁を変更さして頂きます。
  107. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうしますと、インド政府アメリカ政府に対する覚書の内容について、インド政府としては一応あれを撤回するという意向を持つておられるのかどうかということですね。それから今一つ外国の電報によりますと、インドビルマその他の東南アジア諸国との対日講和についての何らかの今後相談をするというようなことも発表されておるのでありますが、そういうような動きがあるかどうかということについても一応お尋ねいたしたいと思うのであります。
  108. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 第一点につきましては、私、答弁の限りではないのでございますが、私どもが得ている情報の範囲内におきましては、インド政府におきましては、対米通牒でとつた立場を変える意向は表示していないのであります。それからインドビルマその他の国のために動くという趣旨の報道があるが、その点はどうであろうかという点でございますが、その点につきましては、何ら公的にも又私的にも話を聞いておりません。ビルマの動きにつきましては、ラングーンから参りました新聞報道によつて推察しておるだけでございます。
  109. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 委員長、大体政治問題に関するものが多いのですから、このくらいにしておきまして、次の機会に補足的な質問をさして頂きたいと思います。   —————————————
  110. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) では第二章に入りたいと思います。曾祢委員
  111. 曾禰益

    ○曾祢益君 先ず政府委員に伺いたいのは、大西洋憲章及びこれに則りました連合国の共同宣言は、依然として連合国に関する限り有効とお考えであるかどうかという点でございます。
  112. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 連合国に関する限りには有効でございます。
  113. 曾禰益

    ○曾祢益君 我々の承知しているところでは、この大西洋憲章並びに連合国の共同宣言の中には、連合国としてはこのたびの戰争によつて領土の拡張を求めない、それから領土を変更するような場合には住民の自由意思によるといつたような、正確な文句は覚えておりませんが、そういう趣旨が明らかにされておつたと思うのであります。ところで日本としては、政府がたびたび御説明になつておりまするように、降伏文書調印によりまして、又、ポツダム宣言の受諾によりまして、四つの島以外のいわゆるもろもろの小さな島については、連合国がきめるところの地域にのみに主権が限られると、かような制約を受けておるということは、もとより我々も承知しておるのでありまするが、この一般的に連合国がみずからきめる諸小島につきましても、連合国みずからが拘束を受けるところの大西洋憲章の精神、或いは連合国共同宣言の精神が十分に充足されておるか否か、この点については日本国民といたしましても、十分なる期待権といいますか、正式な権利ではないと言われるかも知れませんが、さような一つの期待を持ち得るのではないか。連合国みずからか巖そかに宣言し、而して自分らを拘束すべきこの原則を無視したような領土の処分があつてはならない、かように考えるのでありまするが、その点に関しては政府は今度の平和條約の第二條以下の條文は連合国共同宣言に則つたものと認められるかどうか、この点を先ず伺いたいと存じます。
  114. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) お話の通りと存じます。連合国が領土の拡充を図らないという方針の下に或いはそれぞれの宣言をやり、協定をし、或いは憲章を作つておる、これは併し日本といたしましては、連合国自体の問題でありまするから、その心持によつてなされることは大いに考えられるのでありまするが、日本ポツダム宣言を受諾して、その條項によつて四つの島を明示され、その他の諸小島は連合国の決定するということによつて降伏文書に調印いたして参つたのでありまするから、從つてこの平和條約による領土の條項を承認した次第でございます。
  115. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の御説明のように、すでに日本降伏文書によつてポツダム宣言を受諾した以上は、この四つの島以外の島々が決定されるいわば方式については、連合国に一任したといいましては語弊がありまするが、連合国の決定するところによらざるを得ないということは御指摘の通りでありまするが、併しその連合国が決定するに当つては、やはり連合国ずみから連合国共同宣言に制約されるというのは、私はこれは形式と内容が伴つて行かなければならないと思うのであります。その意味からいたしますると、我々が簡單に言いまして、カイロ宣言に相当する部分とでも申しましようか、例えば朝鮮の独立、台湾及び澎湖島の問題、或いは更に旧南洋委任統治区域等につきまする第二條の規定は、これは我々かどう考えましても、大西洋憲章にもこれを背反しない決定ではないか、国民といたしましても、過去の日本日本国の本來の領土でない所に、日本がいろいろな歴史的関係があつたにせよ、いわばこれを領域にしたのでありまするから、これが放棄に対してはおのずから心持もきまつてつたと思うのでありまするが、具体的に申しまして、この第二條の(c)、千島列島及び南樺太、並びに第三條の北緯二十九度以南の南西諸島及び小笠原群島等につきましては、どうもこれが連合国としての領土の拡大を求めないという原則、或いは第三條については、これは領土として求めてないんだと言われるかも知れませんが、少くともその帰属について住民の意思によらない、一方的にきめられる、この点についてはどうも納得ができない、かように思うのでありまするが、どうしても政府としてはこれらの点については飽くまでポツダム宣言を受諾した以上は、連合国が決定するという方式論に拘束されて、その決定の仕方についての連合国共同宣言の精神をもつと活かして來るというように努力するという点が足りなかつたのではないかと思うのでありまするが、その点についていま一応政府の御見解を伺いたいと存じます。
  116. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) お話にありまするように、殊に具体的に或いは千島、樺太の問題、或いは南西諸島、南方諸島という問題につきましては、或いは共同宣言或いは憲章等によりまする領土不拡大の方針に則つてむしろこれは割讓されるべきものじやないかという御意見でございまするが、御尤もな御意見と存じます。併し只今も申上げましたように、ポツダム宣言によりまする四つの領土とその他の諸小島は連合国がこれを決定するという立場を受諾いたしましたので、從つてこれらの諸小島の決定は連合国に任せるという立場をとつてつたのであります。併しこれらの御指示になりました諸小島につきましては、從來からの歴史及びその民族、文化、経済、あらゆる点からあらゆる資料を揃えまして、十分この領土に住んでおる住民の意向等も斟酌いたしまして、日本としてでき得るだけの方法を講じて参つた次第でございます。
  117. 曾禰益

    ○曾祢益君 政府が十分に説明に努められたにもかかわらずかような結果になつたことは甚だ遺憾とするものでございます。私は続けて第三條の問題について、先般も総理にも御質問申上げたのでありまするが、必ずしも十分な御説明がなかつた。そこで北緯二十九度以南の地域につきましていま一遍伺いたいのでありまするが、第三條の規定によりますると、アメリカ合衆国を唯一の施政権者とする国際連合の信託統治に付すということが一応原則のようになつておりまするが、そのあとにもこのような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は要するにこれらの地域に対して一切の権利を行使すると、かようになつております。そこで第三條は第二條と異なりまして、日本の主権を放棄すると書いてないが故に、国際連合の信託統治に付する場合でも、又後段にありまするような、その以前の場合におきましても、政府日本に領土権が残つておるのだと、かような御説明のようでございまするが、この点に関しまして、第一に信託統治に行く前の状態考えて見たいと思います。ここにも書いてありまするように、只今の地域に対しましては、はつきり合衆国が行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部、これは申すまでもなく全部又は一部ではないのでありまして、英語で言えばオール・アンド・エニイと晝いてあるわけであります。要するに如何なる権力であろうと全部を行使する権利を持つておる、かようにはつきり書いておるのであります。そこで行政上、立法上及び司法上の一切の権力を行使するのが合衆国である場合に、第三條に日本の領土権の放棄ということが書いてないというだけの理由を以て日本に主権が残るということが果して言えるかどうか、殊に我々が一応国際法の知識から申上げまして考えられることは、過去にございました……今でも例がないではないのでありまするが、いわゆり租借地、リースド・テリトリーというような場合におきましては一体主権はどうなつておるか、少くともそのリースの期限中は旧領土権国に対して主権が存在しておらないというふうに考えられておるのではなかろうか、さような場合と対比いたしまして、果して主権が日本に、仮に潜在的という言葉を使つても、或いは凍結された主権というような言葉を使つても、主権が残つておるということを果して言い得るのであるかどうか、この点について御説明願いたいと存じます。
  118. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは北緯二十九度以南の諸島の今後のあり方というのは、大体二段のあり方が予想されるのであります。第一には、国際連合の信託統治に置くための合衆国の提案に同意するが、その提案がなされるかなされぬかは今後の問題でありまするから、それまでは行政、立法、司法の権力の全部及び一部を行使する。全部及び一部を行使する権利を有する。從いまして全部及び一部の権利を行使する権力をここでは持つたわけでございます。そういう次第でありまするから、第一段階におきましては、その行使の仕方によりましては、先般も法務総裁からも御答弁申上げ、或いは総理からも御答弁申上げたように、現実に行使し得る主権の一部も、或る場合においては行使し得ることもあり得る。これがはつきりと第二段階になりまして、若しや信託統治制度に国連のほうへアメリカがいたします場合におきましては、今度はその場合と変つた形になつて來るわけであります。そういうふうに考えますると、ダレス、或いはヤンガー両氏とも言うておりまするように、個々の主権は日本にある、そういう主権のある上においての、或いは第一段階の形、或いは第二段階の形をとつて行く方法を認める、こういう行き方をとつておると存じます。
  119. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の質問に対する直接の御答弁ではないようなんですが、只今御指摘のように、私もこれは二段に分れておると存じます。国際連合の信託統治に附する場合と、その前の場合と、或いは附するということが現実化しない場合もあるかも知れませんが、一応この第三條の規定によれば、さようなことを二段階に分けてある。そこで両方の場合についてダレス氏、或いはヤンガー国務相がそれぞれの国を代表されて、日本に主権が残つているのだと言われたことを私は何ら否定する必要を感じておりません。如何なる手懸りであろうが、日本に主権が残つているのだということを、これは條約上主権の放棄が書いてないということが一つと、更に追かけて、その裏付けとしては非常に薄弱だとは思うけれども、いやしくもこの対日平和條約の講和会議におきまして、代表国、主権国の代表が正式の発言として日本に主権が残つておるのだということを言われたことはです、勿論それは受取つておいてよろしい、それに異存があるのではないのでありまするが、併しその主権たるものが本当のただ單なる名目的なものであつて、殊に通常の国際法の観念と慣例から行つて、全く名のみのものであるのかどうか、こういうことをはつきりさせたい。この意味から御質問申上げておるわけです。從いましてダレス氏やヤンガー氏の言つておることを、外交上からこれを捉えることに異存はございませんが、それを突きつめて、然らばその主権たるものは從來の国際法の観念になかつたものである、新らしいものであるという御見解ならば、それも又その御見解を承わつておくことも必要である。或いはそうでなくて私たちの知識の不十分から、例えば租借地とはどういうふうに違つた主権であるのか。それから第二の場合に、国際連合の憲章並びに国際連合の下にできた信託統治の憲章から見てどういう違いがあるか、新味のある主権存在論になるのか、この点をもう少し積極的に国民にお示しになる必要があると思うから、詳しい御説明を承わりたいと思つておるわけです。從つて二段にお分け願いまして、第一段はいわゆる信託統治にする前の時期におけるもの、潜在的、或いは凍結主権の意義、範囲、或いはこれに関する国際法の先例がありやなしや。第二段は、国際連合信託統治にした場合のこの主権の問題、両方に分けて御説明願いたいと存じます。
  120. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 連合国並びに日本は、この第三條によりますることを、両方この方式によつて北緯二十九度以南に対する態度を決定いたした次第でありまするが、これが実際の実行に当りまして、第一段階の場合においては、行政、立法、司法の権力の全部及び一部を行使するという場合におきましても、いずれはこれはアメリカとの相談の点が種々生じて來ると存じております。從いまして從來からの交渉の結果等から考えますると、或いは国籍の問題にいたしましても、或いは交通の問題にいたしましても、経済の問題にいたしましても、でき得る限り日本の内国民的な取扱を住民にいたされることを希望もし、又大いにアメリカもそういう方面に努力されるということを信じて参つておる次第であります。第二段階になりまする信託統治の場合におきましては、これ又この信託統治のやり方につきましてはいろいろと具体的な問題が生じて参ることと存じまするが、その場合におきましても、第一段階のことが全然無視されて行く形を取られることはないだろうと存じております。
  121. 曾禰益

    ○曾祢益君 第一段の場合に、只今の御説明によりますると、この第三條の規定に基いて、まだ実際上アメリカ合衆国と日本との間に何らかの取極ができる。その取極の際に、例えば国籍の問題、或いは本來の日本国との間の交通、通商等の関係についても、日本側の要請が相当容れられるだろうという期待をお持ちのようであるのでありまするが、さような場合におきまして、国籍の問題は非常に主権に関連した重要な問題だと思いますが、只今の御説明では、例えば租借地の場合というふうに違うのだというような御説明がないのでございまするが、一体私の質問に対して率直にお答え願いたい。さような、この規定にかかわらず、日本にただ口で言うだけでなくて、主権が残るようなことができるとすれば、租借地の場合とはどういうふうな点が違うのであるか。例えば国籍がはつきり日本に残るというのだから、租借地の場合と違つて主権が日本に残つておるということが言えるのであるかどうか。その点はどういうふうにお考えでございましよう。
  122. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御質問は今後の事態の発展を見なければはつきりと御答弁いたしかねます。租借地の場合は、併し租貸国に主権は残りますし、租借地に住んでおります住民は、租貸国の国籍を失うことはないのであります。これは関東州で我々が十分見て來たところでございます。期限が來れば当然これを返還しなければならないのであります。ただ租借地の場合には、租借の目的についての規定もございませんし、租借地に対する行政を行うについての細目的の取極も規定してありません。從つて租借地という制度が国際関係で創設されました当時は、擬裝せられたる領土の割譲であるというような説明をした学者もございますが、これは多分に政治的解釈でございます。その後の事態の発展を見ますれば、擬裝されたる領土の割譲ではなくて、所定の期限が來れば租貸国に返還されております。今度の信託統治の制度乃至は信託統治制度に至りまする前におきます南西諸島の地位につきましては、第三條で相当はつきりと枠がはまつておるわけであります。ただ第三條に言う残存主権という観念が、租借地における租貸国の主権乃至は專管居留地に対する領有国の主権の観念に極めて似ておることを、私は御説明申上げたのでございます。私どもとしては当初から南西諸島が本來の日本の領土でございますので、信託統治などになされないことを希望したわけでございます。信託統治になります場合には、主権の所在については、学説上疑問もありますし、あいまいな点もございます。で、主権の点についての南西諸島のあり方につきましても明確にしておく必要かあると考えた次第であります。南西諸島につきまして、合衆国政府がその條約案におきまして、第二條と違いました規定の仕方をとつてくれたこと、言い換えますれば、イタリア平和條約では信託統治に附せらるべき地域につきましても主権の放棄を規定いたしておりますが、そういうことを規定しないことによりまして、日本国民の要望でありますこれらの島々を日本領土にしておいてほしいという日本人の希望を聞いてくれたことはうれしく思つた次第であります。その次には、無論同地域に対して合衆国が信託統治制度の下において、又は信託統治に至るその前段階におきまして、同地域において行使する権限が、アメリカとして同地域を自已の管理に置く必要がある、先方の説明によれば、極東の平和の維持のためにアメリカが管理する必要があるとのことでございます。この必要から見て最小限度にとどめて欲しいということでございます。第三條の実施については、今後の問題でございますので、アメリカに対して話する時にもそういう気持で行きたいと思います。又今日まで合衆国当局の公式の説明におきましても、第三條の方式の下において、合衆国が日本国民の要請にできうる限り応ずるであろうということに信頼を持つて欲しいと言うておられます。そういう点から見ましても、この第三條におきまして、私どもは領土に対する主権が日本に残ると同時に、從つてこの島々に住んでおる諸君の願望でありました日本人として残りたいという気持が十分遂げられることになりましたことにつきまして非常に有難いと、思つておる次第であります。隴を得て蜀を望むというのではございませんが、合衆国は、この地域を全般的に永久に自分のために管理しようと言うのではないのですから、最小限にとどめてもらい、從來この地域と日本とにありました各般の條件が第三條によつて破壊されないようにしてもらいたいという謙虚な気持でおる次第でございます。
  123. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は法律的な御説明を伺つたのですが、いろいろ交渉に当つての御苦心なんかも伺つたのでありますが、我々が率直に考えるならば、もとより日本の領土から離してもらいたくない、これはもう当然のことであり、このことが極めて消極的な形ではあつたけれども、第二條とは違つた表現がとられ、更にそれに追つかけまして、主権が日本に残つておるという説明があつた。更に政府はこれを根拠とされて今後の信託統治に至る前のアメリカとの取極についてもその実現に努力する。更に又信託統治のいわゆる協定に関しては、恐らく日本関係国としての発言の機会を促えるというお考えと思うのでありますが、併しさような政治論から言うならば、一方におきまして日米安全保障條約がこの條約と殆んど同時にでき、そうして日米安全保障條約によりましてアメリカの軍隊が日本に駐屯する。そうしてその駐屯の目的たるや、日本に対する直接並びに間接の武力攻撃に対して日本を守るために用いられるが、併しアメリカの更に大きな狙いとしては、この安全保障條約によりまして、少くとも極東方面に対する国際平和及び安全に寄與する。かようなことがはつきり謳われておるわけであります。これを要するに日本本土全部に対しまして、これはどこが軍事基地だとかいう問題は別として、事実日本本土全部に対しまして、アメリカの国際平和安全に関する要請を容れておる半面において、日本としてもこれの便益もあるといたしましても、そういう情勢になつておるに鑑みますると、特に領土的の野心はない。從つてこれを日本の領土から分離しないという原則に立つ以上は、決して隴を得て蜀を望むではなくて、元來筋道を立てて言うならば、この北緯二十九度以南の南西諸島並びに小笠原は、イタリアの領土処分の場合とは本質的に違う。飽くまでこれは日本の祖先伝來の土地でありまして、その住民も完全に日本国民であるから、かような場合と多少取扱が違つて領土権が日本から剥奪されていない、剥奪するという積極的の規定がないからと言つて、それで非常に隴を得たと言われるが、蜀を望む前に私は隴をも得ていないという感じがしてならない。その点甚だ私には不可解であるということを申上げたいのでありますが、これはまあ政治論でありまして、元の議論に帰りまして、どうも租借地とも似たような所があるが違う点もある。そして租借地自身の領土権の問題も、いろいろ学説もあり、前例もあつて極めてあいまいなものである、いわば期限附で領土権を売渡したようなものである。かような非常にあいまいな領土権というものを期待して、事実行政、立法及び司法、これの権利の行使について、現実に主権の行使そのものであるところの行政、立法及び司法について全部任してしまうならば、これは決して主権が残つているということにはならない。却つて租借地の場合には一応ははつきりとした期限、これを九十九カ年と言えば永久に領土割譲も同様と言えますかも知れないが、却つてそれには九十九カ年という期限を付けている。片方の日本の場合は、これからのことだからわからないけれども、細目のことは別として第三條の規定においては何ら期限が示されていないという場合において、却つて租借地よりも惡いということが言えるのじやないか、かように私は考えるのであります。殊に話を進めまして、国際連合の信託統治の場合を言うならば、これはイタリーの條約が何と言つても先例であると思います。今一つは、国際連合憲章が予定しましたいわゆる旧敵国からの領土の分離の場合であつて、これは旧委任統治区域をそのまま受継ぐ場合とは全然違う。そういたしますれば、これは敵国から分離した地域ということになる。政府の御答弁は、私、直接伺つたのではありませんが、その分離したという意味は必ずしも領土権とは関係ないのだということをおつしやいますが、領土権に関係ない分離ということは一体どういうことであるか。物理的に分離するという意味じやなくて、これは国際連合憲章ともあろうものがさような物理的の分離のことを言つているのじやなくて、これはやはり領土から取上げる、つまり領土権がなくなるということをはつきり予定している。從つてその雛型がイタリアの場合にはつきり出ている。今度の場合は政府の努力の結果だとは思いますが、併しただ單に領土権放棄の規定がないというだけで、本質的に違つた、全然国際連合憲章に予想しないような新例をここに開いて行こうと言われるのか、それともその点は十分に、信託統治に付する場合においても、国連憲章の建前から見ても、国際法上の先例を見ても、信託統治にはする、併し日本に領土権が残つているのだということを十分に言つてのけられるかどうか、この点を一つ伺いたいのであります。
  124. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御質問の点はよくわかります。第一点の、租借地制度よりも第三條の下における制度は惡いのではなかろうかという御疑問でございます。これは第三條において南西諸島がおかれる制度が、先ず固まりませんと、租借地と比較できないと思うのであります。今暫らく時日をかして頂きたいと思います。第三條の実施につきまして、日米両政府の間に具体的取極と言いましようか、話合いと言いましようか、それの結果、これらの島々のおかれる地位が一応決定いたしました上で、從來ございました租借地制度との優劣というものをお考え願いたいと思います。  第二の、信託統治制度に仮になつた場合には、イタリア平和條約の規定、即ちイタリアが当該領土に対する主権を放棄した行き方が正しい行き方ではなかろうか、と言う点と同時に、信託統治制度になつた場合には、南西諸島に対する日本の主権が残るだろうかどうかという点について多少の御疑問があつたようでございます。第三條の規定から申しますと、信託統治制度になりましても日本の主権は依然として日本に残るのでございます。その趣旨で第三條は、日本によるこれらの島々に対する領土主権の放棄を規定いたしておりません。その趣旨は、この條約の話合いの途上、合衆国政府代表によつて我々に説明されたところであります。サンフランシスコ会議におきましては米英両代表から公式に世界に向つて声明されております。從つて第三條の規定によつて、これらの島々が将來信託統治制度になりました場合にも、日本の主権は残り、これらの島々におりまする住民諸君は依然として日本人でございます。然らばそういうことが国連憲章の上からできるかという問題になるわけでございます。曾祢委員指摘されました七十七條でございますか、信託統治制度に置かれる地域を三つに分けております。第一は委仕統治地域、第二が旧敵国から分離される地域、第三部類が、領有国が自発的に信託統治の下に置く地域でございます。(ろ)の場合には、分離するとありますが、私どもの解釈では、分離するには分離の仕方がいろいろある。旧領有国の主権を放棄させるイタリア條約の方式もございますし、対日平和條約のように、領有国の主権放棄を要請しない方式もあると解釈いたすわけであります。殊に第三部類の、領有国が自国の領域の一部を信託統治に置く場合のことを考えますと、恐らく自国の領有地域に対して、主権を放棄してまで信託統治制度に置く国は余りないでしようと考えます。第三部類の場合は、主権を留保して信託統治制度に置くのが普通でございましよう。とにかく国際連合憲章におきまして明文上主権の放棄を絶対條件にいたしておらない場合に、そして我々の領土の一部が信託統治制度に置かれる場合に、常に主権を放棄しなければ信託統治制度は成り立ち得ないとの立場をとることは、曾祢委員に申しますが、私同感いたしかねるわけであります。
  125. 曾禰益

    ○曾祢益君 大分、学者との論争ではとてもかなわないのですが、併しどうも只今の局長のお話によりますると、いわゆる(ろ)の場合、旧敵国から分離する場合と、(は)の場合の、任意に国際連合の目的のためにいわゆる供出するような場合と、両方ひつかけたようなお答えつたのでありまするが、私はこの点は非常に重要な点だと思います。只今西村局長のお話の中にも、我々の意に反してということを言つておられるのであつて、これはもう異論のないところであります。從つて私たち国民がこの際、日本が独立するという條約に当つて連合国意思の結果として、殊に先ほど來のお話のごとく無條件降伏というポツダム宣言の受諾、この領土処分の一環としてやむを得ず手離す場合は、完全な主権国としての日本が任意に国際連合のために供出するいわゆる(は)の場合でないことだけは、これは私は明白ではないかと思う。そういたしますと、何と申しましても分離する場合に違いない。これだけは私は明白だと思う。分離する場合に分離の仕方があると言われましたが、併しこの分離という言葉の意味は何と申しましても、領有権に関連した分離であつて、決して物理的の問題ではないから、私はやはりその場合は国際連合の予想した信託統治ではない。国際連合の予想した信託統治ならば、やむを得ず領土権の分離が行われる。併しこの際新らしい先例として政府の努力もあるでありましようし、この際、国民意向が無視されることはできないのでありまするから、この際、名は信託統治というけれども、主権ははつきり日本に残したものとしてやつて行くんだ、先例を開くんだという御説明ならば、これは一応私は了承して、そうして今後のお手並を拝見したいのでありますが、分離となつておる第七十七條の(3)のケースではあるけれども、併し主権は残つても差支えないのだというのは、国際連合憲章の趣旨の解釈から言うと、私は無理ではないか、かように考えます。いずれにいたしましても、これ以上論争いたしてもいたし方がございませんので、殊にこの問題は如何に議論をいたしましても、法理だけの問題でもございませんので、外務当局に対する御質問はこの程度にとどめまするが、なお総理に対する質問は私は留保しておきたいと存じます。  続いて、関連しておりますので、第四條に対する質問をお許し願いたいと思います。先日もこの点に関しましては総理にも御質問したのでありまするが、まだ十分な御答弁を得ておらなかつたように思うのであります。私はこの第四條の(a)項の規定が、元のままであつて、即ち(b)項のような後に挿入されました規定によつて、「合衆国軍政府により、又はその指令に從つて行われた……財産の処理の効力承認する。」と、この一項がなかつたならば、私はこれは極めて当然な規定で、而して我我日本国として、又日本国民の財産の問題に関する権益擁護の見地から当然の規定である。もとより当該地方の管治当局との話合いによつてはいろいろ困難が予想されたでありましようが、かような対等の関係が規定されることを強く期待しておつたにかかわらず、最後の段階におきまして(b)項が挿入されたのは、一体これはどういうわけか。特にこれは大韓民国からの強力なる圧力の下に挿入された嫌いはないのか、この点を先ず伺いたいと存じます。
  126. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御指摘の点は、八月十三日の最終案文に挿入された條項でございます。この條項の適用がありますのは、朝鮮と南西諸島と、旧南洋群島でございます。私どもが知つておる範囲内におきましては、旧南洋群島、それから南西諸島におきましては、合衆国軍政府が、今日まで特に日本人の財産について処分をとるような法令を制定いたしていないようでございます。目下実情は調査中でございます。でございますので、御指摘の通り実際問題といたしましては、朝鮮における日本の財産であります。これは、一九四五年の十二月に軍政府命令第三十三号で処分いたしまして、その後米韓條約によつて残余財産を韓国政府に委譲したいきさつになつておるのでございます。事務当局といたしましては、何ら公式の説明を聞く機会を持ちませんでしたが、この(b)項は大韓民国の強い要請の結果、條約案に入つたものだろうと推察しておりますし、同時に第四條につきまして日韓間で話合いをする場合に、日本にとつては、何と言いましようか、話合いの範囲とか、話合いの効果というものが大いに制約される結果になる條項でございまして、面白くないと存じております。ただ八月十三日の案に入つたものでございますので、その点について日本政府として十分意見を開陳する機会がなかつた次第でございます。
  127. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の御事情は、大体想像した通りであつたことは甚だ遺憾でございますが、一体大韓民国は日本と交戰関係のあつた国でございましようか。
  128. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) そういう関係には全然なかつたのでございます。
  129. 曾禰益

    ○曾祢益君 そういたしますると、大韓民国は日本に対する勿論連合国でないことははつきりしているのでありまするが、戰勝国でもないわけでございますね。
  130. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 勿論戰勝国ではありません。
  131. 曾禰益

    ○曾祢益君 いろいろの戰争の歴史から見まして、いわゆる国内の少数民族と言いまするか、異民族が、旧領土権の主権国から分離するような場合があつたと思います。その場合にその分離国と旧領土権国との間の権利義務関係、殊に公的な財産の継承関係、これは消極財産の場合もあると存じまするが、そういうようないろいろな国際法上の例があつたと思います。かかる場合に分離国におきまするところの少数民族が、旧領土権国と戰つて戰勝国として講和を迎えた場合には、重大なる、ただ單にその独立か認められ、領土の割譲と言いますか、分離が行われるのみならず、この領土の割譲に伴つて公私の財産の移転等について非常に有利な戰勝国的な地位が獲得される、こういう例が多々あつたと存じます。併しそうでなくて、今度の日本と朝鮮との関係のごとく、日本は成るほど敗戰国ではございまするが、朝鮮民族との間に戰闘関係があつたわけではなく、戰勝国として大韓民国が日本に主張すべき何ものもなかつた。もとより私はかように申し上げるからと言つて、朝鮮民族の独立そのものに対して毫末も異論があるわけじやありません。これに過去の日本の歴史の清算として、当然に平穏裡に平等な立場で分離して行かれるのは自然であります。併しながらこの第四條の(b)項のごとく如何にも戰勝国扱いみたいな待遇を與えたということは、これは国際法上から言うと、或いは国際通念、国際慣行から言いまして非常に異例ではないか。最後の、言葉は惡いのでありますが、土壇場に挿入されたけれども、この意味たるや実は国際法の研究家としてはちよつと承服しかねる重大な問題であると共に、我が国と将來の大韓民国とのいろいろな正常な友好関係上から言つても、かかる先例を唯々諾々として受諾された政府の御所存は私どもわからん。何故に、八月十三日に急に挿入されたからといつて、然らばその八月十三日以後如何なる、外交折衝という言葉は適当でないかも知れませんが、いわゆる主催国に対し、或いばサンフランシスコの機会を通じて、何故に日本の正当と思われる主張をなさらなかつたのか、この点を御説明願いたいと思います。
  132. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御指摘の点はイタリア平和條約を御覽になりますと、エチオピア、アルバニア両国がイタリア平和條約によつて独立を回復いたすことになつております。その場合にはそれぞれ数カ條のエチオピア又はアルバニアにあるイタリアの公私の財産の処分について規定がございます。又そうあるのが通例だと存じます。御意見の通りでございます。  第四條につきましては、まだ今日日本政府と合衆国政府との間に交された意見の交換について御説明する自由を持たないのを甚だ残念に思います。甚だ残念に思いますが、一言にして申せば曾祢委員がお持ちになるような懸念は、政府としても十分持ちまして、第四條については、その実施に極めて困難な問題を随伴する。從つて理想的に言えば、この特殊の困難な問題を日韓間の直接交渉に委せられるのは諒といたしましても、その交渉に当つて準拠すべき原則の如きは、例えばイタリア平和條約の第十四附属書にあるように規定してもらうことが将來当事国間における話合いを容易ならしめるゆえんであると申し入れて來た次第であります。その関連におきまして、朝鮮の他位も、無論日米の間に話合いに出まして、政府としては、曾祢委員の申されるような立場をとつて参りました次第であります。韓国は要するに連合国ではありません。日本から分離して独立を回復した国であるとの立場をとつて來ておるわけであります。とにかく第四條につきましては、今後両国間の財産の処理を如何にするかは、その根本原則からすべて話合いできめることになりますので、両国間に善意と好意があれば極めて円滑に行きますでしようし、両国間に善意と好意がない場合には、極めて困難な場面が起るであろうと存じます。政府としては平和條約全般を貫く友好、信頼の精神をもつてこの困難な問題の解決のために韓国政府と交渉に当ることは、申すまでもないことでございます。
  133. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体これは非常に素人的質問ですが、この(b)項によりまして主なる公有財産、それから大きな私有財産は全部沒收その他の処分をされてしまつておるのではないかと思うのですが、その点はどうでございますか。殆んど話合の対象になるような公有財産は無論のこと、私有財産でも大きなものは、工場、鉱山等の大きなものは全部これはいわゆる軍政府命令若しくはそれに從つて当該地域当局によつてとられた措置によつて、もう日本国民及び日本国から剥奪されておる、さように考えていいのでございましようか。
  134. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) (b)項について御質問がありましたのに、つい返答いたしませんでしたが、(b)項が入りましたにつきましては、さまで驚くことはなかつたのであります。第十九條の(d)項も最後の段階に入りましたが、その十九條の(d)項を見ましても、要するに、占領管理に当つた国としては、占領管理中にとつた措置について平和條約後その効力を動かされないようにする趣旨の規定でございます。そうしますと朝鮮なり南洋群島なり、西南諸島なりにおきましては、これは連合国占領管理ではございません。合衆国の單独占領ではございますが、占領政府としてその占領期間中にとりました措置効力平和條約のあとで動かさないようにする、過去六カ年にでき上つた法的乃至事実的の秩序を紊さないようにするという立場に立つて、四條の(b)項、十九條の(d)項が入つたのだと考えます。こうなりましたについては、日本にとつて愉快なことではありません。勿論愉快なことではございませんが、先方の立場から見て、そういう規定を置く理由はあつたのであろうと考える次第であります。この(b)項の趣旨は、日本政府として、軍政府のとつた措置効力を動かさない、その効力を認めるということでございます。大体、軍政府のほうで朝鮮にありました公有、私有すべての財産の所有権を取上げたのが一九四五年十二月の措置でございます。併し一方的に自分のものにしたのではなく、日本人から所有権を取上げて管理をする、管理をするために所有権を自己の手に收めるという趣旨が四五年の十二月の軍政府命令三十三号のようでございます。米韓協定は、軍政府措置によつてなお軍政府の手許に残つておる日本人財産を韓国政府に移すということと、この移転が完了すると同時に、韓国政府日本人財産の処理に対する合衆国軍政府の責任を解除するという趣旨のものでございます。從つて日本政府としては、その軍政府措置、米韓協定によつて朝鮮にあつた日本人財産をすでにあなたがたは取られたではありませんか、プラスとして取つておられるではありませんかということは言えるわけなのでございまして、その点は今後の日韓間の話合いにおいて日本側として十分主張できる事柄だと思つております。
  135. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の十九條の(d)項に関連した御説明によりまして私はむしろ非常に明るい感じがしたのであります。と申しまするのは、第四條の(b)項の規定も十九條の(d)項の規定も、いわばこれは敗戰国としては止むを得なかつたことでございましようし、一応占領期間にとられた行為の法的秩序は、一応これは認めて行かなければならない。かような意味考えるならば、この(b)項も大して私は目障りでなくなつて來ると思います。併し実際問題とすると、これでやつてしまつたんだから結局日本国としての一切のクレイム、請求権、日本国民としての請求権も放棄したんだ、それだけはもうもらつたものだ、両国間にいろいろ例えば日本の法的な債務についての分担の問題もあり得るわけです。そういうときに借方、貸方の計算のほうに入れるか入れないかという基準が只今條約局長の言われましたイタリアの場合にはあつたと思うのでありますが、そういうものがないためにどうしてもこれは論争の因になる心配はございまするが、然らばここに占領期間中にとつた処置の法的効果を確認したからといつて、一切両国間の公私の債権債務関係についても、もうこれは日本が全部放棄したのだということには必ずしもならない、(b)の規定は、そういう御趣旨であるかどうか、もう一遍伺いたいと思います。
  136. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 決して御懸念のような結果にはならないと思います。日本側から見れば朝鮮に対してあなたがたはこれらの財産をとつてつているではありませんかと、主張できるのであります。
  137. 曾禰益

    ○曾祢益君 まだその点についても問題がございまするが、今一つこれに関連いたしまして、これは第四條の問題ですが、第二條に返るかも知れませんが、先般も総理に質問して、一応の御答弁は得ておつたのですが、この国籍の問題でございます。これは他の衆議院及び参議院の、特に衆議院の委員会議の記録によつて調べたところによりますると、政府の御答弁は、私がこの間、総理から得た答弁とちよつと違つておるのではないか。と申しまするのは、私の実は質問も非常に法律的には不正確な表現を使いましたので、改めてここで訂正しておきたいのですが、つまり朝鮮にある朝鮮の人々は、これは大韓民国の国籍を当然に取得するのが私は当り前だと思う。併し問題は内地に残留しておりまする、殊に殆んど永続的に残留しておるような、住んでおりまするような、韓国人と申しまするか、この朝鮮民族に対しましてはこれは当然に朝鮮国籍を與えるという規定を以て律すべきではないのではないか。若しさようなことをいたしますると、それこそ分離する地域に住んでいないのですから、それこそ日本本土内に少数民族問題を残す、こういうことを申上げたわけであります。もとより朝鮮本土に住んでおる人々の国籍は、これは選択の余地はなくして当然に朝鮮国籍を取得し、これに何ら異存はないわけです。そこでこの点に関しては、どうも他の場合に、他の諸君に対する、これは特に西村條局長の御答弁が主ではなかつたかと思うのでありますが、全部含めて、日本に住んでいる朝鮮人も、或いは朝鮮本土にある朝鮮人も含めて、これは分離国であるから分離国の国籍を取得するのは当然であるかのような御答弁かあつたような気がするのですが、若しそうだとすれば、これは私の申上げんとする趣旨とは違う。私はそこにはつきりと区別をつけるべきではないか。從つて日本国内に残る朝鮮人に対しましては、これは一定の條件、これは帰化條件にしてもよろしうございましようが、とにかく帰化と選択とは違うかも知れませんが、実質的に帰化の條件を持つておる人には選択権を與えて、日本国民として飽くまで日本国民、一般国民と全然向じ待遇をして上げなければならない。勿論将來外国人が日本に來た場合には、通商航海條約等によりまして、当然に最惠国待遇、或いは内国民待遇をするのが当然であるが、併し数量の多いこの残留朝鮮人諸君に対して、国籍は朝鮮、而して日本に居住はそのままだ、さような行き方をするのは、私はこれは却つて将來の両国間に面白くない関係を残しはしないか。殊に私は先ほど來申上げておるように、さような、日本が不対等的な待遇を強いられる理由はどこにもない。当然に分離して行く人たちに対しまして、それは国籍の選択権は與えるが、併し平穏に人道的取扱の下に退去してもらうのが当然ではないか。これは私の意見を言いまして恐縮でありますが、そういう趣旨で御答弁をお願いしたわけです。從いましてそれらの点に関してもう少し明確な政府のお見解を伺いたいと存じます。
  138. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 曾祢委員指摘の点は、私どももこの條約案を研究し、條約案について話合いをするときに、十分意見を交換いたしたところでございます。又我々の見解も提出したところでございます。簡單に申上げますと、曾祢委員が提起されているような場合は、主として朝鮮に、今現在はおりませんが、朝鮮に残る日本人については、平和條約に規定がおかれるのが慣例であります。これはイタリア平和條約のエテイオピアに関する條項、アルバニアに関する條項を御覽になつても、そうなつております。エテイオピア、アルバニアに残るイタリア国民の国籍はどうなるか、乃至は選択権を認めるかどうかというようなことが規定される訳であります。として独立を回復する場合、曾つて独立国であつたものが合併によつて日本の領土の一部になつた、その朝鮮が今度の平和條約によつて独立を回復するという場合には、朝鮮人であつた者は、独立回復の結果、当然從前持つていた朝鮮の国籍を回復すると考えるのが通念でございます。でございますから、この第二條(a)には国籍関係は全然入つていないわけであります。そうしますると、問題としては、日本に相当数の朝鮮人諸君が住んでおられます。これらの諸君のために、特に日本人としていたい希望を持つておられる諸君のために、特別の條件平和條約に設けることの可否という問題になるわけであります。その点を研究いたしました結果は、今日の国籍法による帰化の方式がございますので、この帰化の方式によつて十分在留朝鮮人諸君の希望を満足できるとの結論に達しまして、特に国籍選択というような條項を設けることを要請しないことにしたわけであります。今日までの平和條約を御覽になりますと、大体割譲地域における敗戰国の国民の国籍の点が條約に規定されております。独立回復の場合、独立回復後の国民がその旧領有国の領土内にある場合に、その国籍はどうなるかを規定した例はないようでございます。これは当然解釈として、独立を回復するから、從つてその国所属の人間は当然旧本国の、国籍を回復するという解釈でございましよう。この先例によつた次第であります。
  139. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は今度平和條約にそういうものの規定があるべきだと私申上げたのではございませんから、その点は誤解ないようにして頂きたいと思います。それから只今の点は、成るほどそういう点もございましようが、同時に又日本が朝鮮との関係においては、別に敗戰国ではないのであつて、これは飽くまで平等な立場で行かなければならない。具体的に言うならば、これは日本国民は朝鮮から事実上退去しておりますし、一方はむしろ殖えたというような実状から見て、国際法の先例は外務省のほうがくわしいでしようが、日韓関係の交渉に今や入つておられるようでありまするから、余り国際法の惡いほうの先例に捉われて、そうして国内に厄介なマイノリテイの問題を残さぬように一つ考えて頂きたい。そこでその問題については、これは政府の方針の問題に関連いたしますから、私はこの程度質問を打切ります。
  140. 永井純一郎

    永井純一郎君 曾祢君の質問がありましたこの第三條に戻るのですが、三條に関連しでお尋ねをしたいと思います。これは私が更に補足して條約局長にお尋ねしたいのですが、この国連憲章の七十七條の(い)、(ろ)、(は)、こうあつて、先ほどのお答えでこの(ろ)号と(は)号とがはつきりしなかつたようにも思いますが、この点が一つと、それからこのいろいろな政治的な意味を含まない、純粋の法律論としてどうなるかというふうに私は條約局長にお尋ねして見たいのですが、(い)号のほうで、南洋群島のほうはこれはもう異存がないとして、小笠原、沖繩というような地域がこの(ろ)号の「敵国から分離される地域」ということにこれを当てはめるように思うのでありますが、併しながらこれは私がこれを読んで、素人でありまするからわからないのですが、この国連憲章にいう「敵国から分離される」という場合は、この国連憲章の精神からいつて、前の委任統治のときと同じように、信託統治下に置く場合は、帝国主義的な植民地を剥奪するということの場合だけしかできないのであつて、国有の領土であつたところをこの(ろ)号によつて分離することは、解釈論としては私はできないのじやないかというふうに純法理論的に私はこれを見るものであります。それが国連憲章の精神を汲んだ正しい解釈でなければならん、こういうふうに私はここを読むのであります。それはポツダム宣言では我が国の領土は四つの島と連合国のきめる諸小島というふうに書いておりまするが、なお、(「カイロ」宣言ノ條項ハ履行セラルベク」というふうにちやんと書いておるのでありますから、この点からいつても、やはりそれは国連憲章の精神に副つてそういうふうに謳つているというふうに考えられます。又ダレス氏やヤンガー氏もサンフランシスコ会議で主権があるというようなふうに説明をしているのは、やはり私はそういう意味だと思う。そこで国連憲章の七十七條の解釈からいつて、純法律的には分離することはできない。だが併し無理矢理に分離しなければならんので、主権があるようなふうに言つているということにしか取れないのであります。で、私はいろいろな政治的な意味の議論でなしに、本当の法律の解釈論からいつて、七十七條の規定からそういうふうにとるべきではないか、その意味でのお答えを願いたいと思います。
  141. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 只今の点にお答え申上げます。曾祢委員に対します答弁から少し疑問を生じたようでございますので、この際はつきり申上げておきます。私も南西諸島に対する信託統治は、第七十七條の旧敵国から分離される地域の分に入ると考えております。ただ私が(は)号を引用いたしましたのは、信託統治制度に置くためには、必ずしも当該地域に対する主権を放棄せしめる必要はないという事例を説明するがために(は)号を引用いたしました。そのために誤解を生じて恐縮だと存じます。私は(ろ)号に該当するものと解釈いたしております。ただ(ろ)号に該当いたしますけれども、憲章にいうのは、「分離される」という表現を使つておるのでありますが、国際法上分離するについてはいろいろな方式が考えられます。領土主権の完全なる放棄を含むイタリア平和條約の方式もありましようし、又対日平和條約のように領土主権の放棄を含まないで、ただ信託統治制度を布くために必要な限度において施政権者が権限を行使する分離の方式もあります。こういうことを御説明申上げた次第でございます。  質問の最後の点の純法律的に見て南西諸島を信託統治制度に置くことには根拠が薄いではなかろうかという点であります。これは永井委員も御指摘になりましたように、永井委員は、信託統治制度の目的の第二を大いに強調されたわけであります。それは当該地域の社会的、政治的、経済的、文化的向上という面でございます。信託統治制度の第一の目的には、国際の平和と安全に寄與することが掲げられております。或る地域を国際の平和と安全の維持の見地から特殊の管理に置く必要がある場合に信託統治制度を用いるという趣旨でございます。この点が從來の委任統治制度と全く異つておる点でございまして、從來の委任統治制度は、これを非武裝としなければならない、住民を軍事教練してはいけない、軍事根拠地を設けてはいけないというふうに、国際の安全の問題とは分離いたしまして、独立又は自治に持つて行くという面だけが強調されたわけであります。合衆国といたしましては南西諸島を信託統治制度に置く理由といたしましては、平和と安全の維持のためにこれらの島々を当分の間合衆国が管理する必要があるからというのでありまして、これらの島々に住んでおる同胞諸君の政治的、経済的乃至文化的水準を向上して自治乃至独立に持つて行く必要があるということは一度も聞いておりません。第二の理由が全然南西諸島についてあり得ないということは、同地域の同胞諸君が言われることであり、勿論私どもとしても全然同感でございます。
  142. 永井純一郎

    永井純一郎君 今のお答えでは、はつきりしないのですが、なお一つ先に進んで、これはあとでお尋ねしたいと思いますが、それでは第七十六條のところに、今局長が言われた国際の信託統治の目的のところに「国際の平和及び安全を増進すること。」こういうことのためにいろいろな形で信託統治が起きるのだから、南西諸島の場合も……というふうな意味のようでしたが、それでは七十六條の(い)号が国際の平和及び安全を増進するかしないか、或いは危險になるかも知れんのですが、平和及び安全を増進するか或いはしないかという裁量は一体誰がするのか、具体的に言いますると、この国連憲章を見て行くと、それは安全保障理事会がすると、こういうようなことになつて來ると思うのでありまするが、先ずその点を伺いたい。
  143. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) これはこの平和條約に署名いたしておりまする連合国が決定いたしまして、第三條の規定をいたしておるわけであります。この平和條約に署名いたしておりまする連合国全部の総意でございます。
  144. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると国連の総会で、これは例えば南西諸島の場合、私が質問するのは、これは戰略地区として信託統治下に置くんだと思いまするが、その場合もやはりあれですか、総会でやるのですか。
  145. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私の答弁が足りなかつたものですから誤解を招いたのであります。第三條に規定しておるように南西諸島を処置することは、この平和條約に署名いたしております連合国の総意でございます。こういう御説明を申上げたのであります。  それからその御質問の、この第三條の規定を実施いたしまして、仮に信託統治制度に付す場合に如何なる形式の信託統治となるかということは、この三條によりますれば合衆国政府が提案する如何なる提案にも日本は同意するということになつておりますので、主として合衆国政府意向によるところでございましよう。今日一般信託統治制度になりまするか、それとも戰略地区になりまするかということは全然忖度の材料を持たない次第であります。
  146. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうすると一般信託統治地区になるか、戰略地区としての信託統治になるかは、これからアメリカが提案して來る信託統治の協定案の内容によるということですか。
  147. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) さようでございます。
  148. 永井純一郎

    永井純一郎君 その案が出て來なければわからないということになるわけですが、從つて質問が仮定に立つかも知れませんが、これは総理は、この南西諸島を信託統治下に置くのは領土の野心があるのではないんだ。從つて主権も認めるようなことになるんだ。が、併し平和或いは安全を保つために戰略的意図でだけこれはやるのだというふうに、総理は明らかにこの委員会でも答弁しておられます。そこで今あなたが、そういうふうにどうもはつきりしないのだと言われますと困るのですが、私はこの全体の條約から見ても、或いはいろいろな情勢から見てもこの七十七條の(ろ)号で、法律的には分離できないという解釈が正しいのだが、わざわざ無理々々に分離したことにして、そうして南西諸島を戰略的に、信託統治の一般ではなしに、戰略地区としての信託統治にするということは、これは大体明らかだろうと思います。これは総理がそういうことを言つておりますから。そこで、なぜそういうふうにするかといえば、まあ私ども考えるのには、戰略地区にすれば施政権者たる米国はこれを軍事基地化することができるし、徹底的に武裝をすることができるわけでありますから、それが目的であることは、これは想像にかたくないのであります。ところが、ここで今までの総理或いは皆さんがたの回答を総合してわからなくなるのは、主権をその際やはり認めておるということであれば、從つて国籍も認めるというようなことであれば、その場合その戰略地区としての信託統治地域におります日本人ということになりますが、その日本人を軍隊として使うことが法律上できるのかどうか。それはまだアメリカとの協定案が出で來ないでは、戰略地区かどうかわからないから答えられんのだと言われるかも知れませんが、これは総理がこの前から戰略地区が唯一のそれが目的だと言つておりますから間違いないと思います。從つて今言うように、私はそういう場合、そこにある日本人を軍隊として使い得るのか、これをお聞きしたい。
  149. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 永井委員は戰略地区と一般信託統治地区とに非常な大きな差があるようにお考えのようでございますが、両制度にはそう大きな差はないのでございます。一番大きな差は、一般信託統治地域の施政は総会の監督の下に行われるが、戰略地区は、国際連合の機関のうち、国際の平和と安全の機関となつております安保理事会の監督の下に立つ、この点が一番大きな点であります。第二の違つておる点は、戰略地区におきましては閉鎖地区が設けられる。ところが一般信託地域におきましては閉鎖地区は設けられない、この二点ぐらいが違つておりまして、あとは大した差はございません。これは国際連合憲章を御覽になればよくおわかりになると思います。一般信託統治地域におきましても、その地域を国際の平和と安全のために使わなければならぬという大きな原則がございます。それから軍事教育もできるし、基地も設けられることになつております。委任統治制度とこの点は根本的に違つている点でございます。将來日本の南西諸島が信託統治になりますると仮定いたしまして、これは一般信託統治か戰略地区になるか、それはわからないのでございます。その点は未決の問題としておいたほうがよろしいと思います。ただ一般に信託統治制度におかれた場合に、この地域に住んでおる日本人に対して合衆国が軍事教練をなし、乃至は軍隊を作るというようなことはなかろうかという御質問つたと思うのですが。
  150. 永井純一郎

    永井純一郎君 できるかということです。
  151. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) アメリカは、この日本国憲法のあり方をどの国よりもよく知つておりますし、この憲法の精神をアメリカが尊重するであろうということは、確言できると思います。いわゆる戰争を放棄し軍備を持たないことを国是といたしております日本国の一部であります南西諸島の同胞に対して軍事教練をなし、又はこれを軍隊化するが如きことはしないものと考えております。
  152. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは更に国連憲章の八十四條に、「信託統治地域の義勇軍」という文字があるのですが、アメリカが信託統治に、我が国の主権があり、我が国の国籍を有する場合に、今おつしやるように我が国の憲法を尊重してアメリカがそういうことをしまいということで、私は法律上できるかという質問をしておるわけでありまして、更に八十四條に、やはり「信託統治地域の義勇軍」というのがあります。「地方的防衛と信託統治地域内における法律及び秩序の維持とのために、信託統治地域の義勇軍、便益及び援助を利用することができる。」とありまするが、こういう意味ではその日本人であるところの、その島の日本人を義勇軍にすることは、この八十四條からできるのですか、それを伺いたい。
  153. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点、今すぐ確定的の御返事をいたす自信を持ちませんので、後刻法務総裁なりその他適当な方から御答弁を願いたいと思います。私は、合衆国はそういうことをしない国であると信じますが、一応法律上できるかどうかという御質問でございますから、よく研究した上にいたしたいと存じまして、答弁を留保さして頂きます。
  154. 永井純一郎

    永井純一郎君 ですから私は初めから法律上の、政治的な意味答弁なら、どんな答弁をされるかということはわかり切つておるのでありまするから、国連憲章を純法理論的に、解釈論として行く場合のことをお願いしておるわけです。そこであとでお調べ願いまして、八十四條のここに書いてある義勇軍ということの解釈を一つして頂きたい。詳しくして頂きたいと思います。それからもう一つお願いしたいのですが、この第三條のおしまいのほうに「このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」、こう書いてありますが、そこで疑問になりますのは、この信託統治の提案がなかなかきまらなかつた場合には、アメリカがそれがきまるまで施政をいたしますが、そのときには私の考えでは、信託統治下にあるこの小笠原や琉球を私は基地化することができないのではないか。そういう場合には、まだ信託統治にはつきりするということがきまらない場合には、いわゆるそこの住民の幸福、福利を増進するためにのみの行政、立法、司法の施政の権限があるのであつて、戰略或いは武裝化することは私はできないのじやないか。はつきりきまつて戰略地区というようなことになればあれですが、一般統治の場合でも、信託統治の場合は委任統治と違つて武裝化されるべきことのようになつておるようでありますが、さつき申しましたように余り変らないようでありますが、併し国連憲章をいろいろ読んでみると、その精神からいつて正式にその提案が決定されるまで、暫定的にこの後段のようなふうな意味で立法或いは行政、司法の権限をアメリカが行使する場合は、武裝だ、戰略だというようなことについては私はしないのが本当であるし、しなくちやならないものと法律上解釈しなければならん、こういうふうに私は思うのでありますが、これも法律上の解釈としてのお答えを願いたい。
  155. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 第三條の後段には、米国が行使し得る権限について何ら制限を設けておりませんので、無論軍事基地を設けるというようなことはできるわけでございます。
  156. 永井純一郎

    永井純一郎君 制限を設けておらないから、国連憲章に則つて私はできないというふうに法律考えることが正しくはないかと思うのですが、あなたは法律上そう解釈すべきだという意見ですか、今のお答えは……。
  157. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約第三條の解釈上そうなるという答弁であります。国際連合憲章を見ましても、どこにも武裝制限をしておりません。
  158. 永井純一郎

    永井純一郎君 武裝制限はしておりませんが、この第三條を素直に読めば、後段の場合にはそういうことが国連で決定されない場合のことでありますから、国連が決定した場合は武裝等について制限がないからできると思いまするが、この後段の場合は決定しないときであるから、できるだけそういうことはしないというのが、これは国連憲章からいつても本筋であろうが、わざわざ後段に書いたのはそう解釈しなければ、法律の解釈論としてはその解釈しなければならないのじやないか、こういう意味なのです。
  159. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御解釈は成り立たぬと思います。第三條の後段は国連憲章の関與するところではございません。この條文だけによつて解釈すべき問題であります。この條文に何ら合衆国がこれらの島に施政を行う目的その他について制限を設けておりませんので、合衆国の判断によつて必要とされる措置がとれるわけでございます。
  160. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは平行線の議論をやつてつても仕方がありません。私が先ほど來言つておるわけですが、こういうふうに私が言うように考えて來ますと、小笠原や琉球は信託統治下に置くべきじやないのであつて、或いはそれは政治的に、或いは軍事的に置くのでありましようが、むしろすなおに読んで、これはむしろ日本の領土にして置いて、はつきりして置いて、先ほど租借地の問題も出ましたが、そのことも一つの考え方かも知れませんが、むしろ安保條約の対象にしたほうが一つの法律の議論としてすつきりするのじやないか。勿論私は安保條約そのものを是認するものではない、これは絶対に不賛成、反対をするものでありまするが、一応その議論は別としてこういうふうに無理やりにできない、條文の上からいつてもできそうにもないことをわざわざしておるように思う。そうでなく、むしろこれは明らかに、日本の主権を明らかにし、国籍を島民に明らかにして、そうして安保條約の対象にするというようなことは相談されなかつたものかどういうことをお伺いしたい。つまりなぜ二十九度線というものを無理やりに引いたのか、これは軍事上それがよかつたというお答えであればそれで結構なんですが、その点一つお伺いいたしたい。
  161. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) お尋ねの点は今日なお御説明できる段階に達しておりませんので、答弁を差控えさして頂きます。
  162. 永井純一郎

    永井純一郎君 それは、そうするとあれですね、この委員会が審議している間にはそういう点が明らかにされるようになりますか。
  163. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 永井委員がおつしやつたような事情を日本政府として取上げたかどうかということになりますが、当分そういう外交交渉の内容は、殊に二国間でございますので、相手国の同意ある場合は別として、一方的に答弁できない場合があることを御了解願いたいと思います。
  164. 永井純一郎

    永井純一郎君 それからもう一つ念のために伺つて置きたいのですが、この両條約が案が作られるに当りまして、これは先ほども説明があつて、大体アメリカで全部作られたように思いますが、特に国防省あたりで作られたようでありますが、それは別として、極く事務的に外務省のかたがたがどの程度いろいろ参與を許されておるのか、ただでき上つたもので、意見を求めて來たときだけに相談にあずかつた程度なのか、或いはもう少し私が聞きたいのは、事務的に立案に当つて相当参與が、参画が許されたものかどうか、その点をちよつと参考までに聞きたいと思います。
  165. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 大変御答弁申しにくい事柄でございます。併し私は関係しておる者の一人として、事務的だけでなかつた、極めて広範囲に意見も開陳し、要請も申述べたと御答弁できると存じます。
  166. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 第三條の問題については、随分あちらこちらから御質問があつたわけですが、なお且つまだはつきりしないような気がするのですが、方向を変えまして、このポツダム宣言の、「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島」と、この諸小島の中に南西諸島は入つておるんですか、どうですか。
  167. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御質問の通り私ども考えております。入ると考えております。
  168. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そうすると、これは日本国の領土でございますが、その点についてもう一点お聞きしたいことは、大体この平和條約で、日本の国は国際連合憲章の七十八條ですが、「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となつた地域には適用しない。」、こういう規定があるのでございますが、大体この平和條約で日本の国が実際いつ実現するか知りませんが、ともかくも調印国間には日本国が国際連合に加盟するということを一つ前提としているわけでございますが、そういう点からみますると、この信託統治はそういう場合が実現したときは消滅する、こういうふうに考えていいのでございましようか。
  169. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点は堀木委員七十八條を読み違えておいでになるのであります。七十八條は、或る特定の地域が独立をいたしまして、国連加盟国となつた場合には、もう国際連合信託統治制度はその地域には行なつてはいけないという趣旨でございます。独立国があつてその領有しておる殖民地の一部を信託統治に付し得ることは、すでに七十八條の(は)によつても予見しております。領域の一部を信託統治制度に置くことは、何ら差支えないのであります。地域全体が独立国となり、国際連合加盟国になつた場合には信託統治はその地域には成り立ち得ないという趣旨でございます。
  170. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 その点は、やや、はつきりしておるんですが、主権平等、日本の国の領土の一部としますと、そうすると、そのうちの一部については主権国間で信託統治が行われてもいい、こういうふうに解釈していいのでございましようか。
  171. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) それは七十七條の(は)等を見ましても、そういう場合を予見しておるわけでございます。国際連合加盟国がその領域の一部を自発的に信託統治制度に置くことを予見いたしておることでございまして、少しもおかしくはありません。
  172. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 (ろ)か(は)かという議論になりますから、それにつきまして、もう一つ、私、根本的意見を聞きたいことは、成るほど第三條では加盟国はこういう権利を持つているかということなんですが、総理大臣は御承知の通りに、南西諸島の処理については国民諸君は冷靜に事業に対処して米国政府の善意に信頼を置かれて、この諸島の地域に関する日米両国間の協定の結果を待れたるよう希望する、こう言つておられるのですが、そういう両国間の非常にデリケートな問題だから、條約局長はなかなか言うことができにくいようですが、少なくとも権利は向うが留保しておるのだから、主権国間の話合いとして條約上は権利を留保しておるが、主権国間の話合いとして今後協定するということは、総理大臣がここでおつしやつている以上は、その点について今後協定の余地がありと、又協定するんだという何らかの了解をはつきり得られておるのでありましようか。
  173. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは私が先にもお答え申上げましたように、ここにありまする條約に基きまして、行政、立法、司法の権力の全部及び一部の権利を持つて、從つてこれが実施に当りましては、両方の、政府で十分相談し合つて、どういうふうにするかという問題が生ずるわけでございます。從いましてそういう場合におきまして、或いは経済の問題、或いは交易協定の問題、そういうすべての問題について、成るべく内国民的な取扱を今後して行つてもらうように十分な交渉を進めて行きたい。又そうでき得るものと強い念願を持ちながら進んでいる、こういうことを申し上げた次第でございます。
  174. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 念願はよくわかつておるのでありますが、少なくともこの三條では、これらが一方的には向うさんに権利を與えてしまつて爼上に乘つているわけなんです。向うさんがどうきめようと向うさんの意見にかかつておる。だから総理大臣も向うの善意に信頼する、こう言つておられるのですが、少なくともこの問題については今後協定するという向うの意思について、はつきり何かあるのかどうか、その点をお聞きしたい。つまり本來、條約は向うさんのお考えに任す、こういう條文なんですから、その点をお聞きしておるのは、自分としちやこうしたいということじやなくて、向うさんとそういう約束があるかどうか、又約束し得るだけの何らかの話合いが進んだかということをお聞きしたいわけです。
  175. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) そういう話合いで今後の相談に待つことにいたしておる次第でございます。
  176. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そうすると、新聞の伝うるところによると、ダレス氏がもう一度來るようですが、そのダレス氏との話合いで、そういうものも日本政府としてはする用意を持つておるわけですか。
  177. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) ダレス氏が來月早々見えるということは情報では承知いたしておりますが、まだ正式には承知いたしておりません。併しこういう問題は、條約上のいろんな問題が、今後両国間にこの問題その他の問題において話合いが進められると存じております。
  178. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 いろんな問題があるだろうとは思うのでありますが、この問題については、それは日本政府としては話合いを決心しておる。それによつて実際上の問題はどこまで行くか、変つて來るものである。すべての條約に書いてあるように、オール・オア・エニー・パワーズという問題が実際にこの條約の案文から受ける感じと違つたものが出て來る。こういうふうに考えていいわけですか。
  179. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 只今お読みになりました、総理が申上げましたように、現地住民の希望が努めて容れられるような相談が今後進められると確信しておる次第であります。
  180. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 非常にくどいようですが、最近日本経済新聞でございましたか、昨日か今日の記事であつたと思いますが、外務当局のいろいろな意向というものが出ているのです。外務当局としては、この程度に是非話合いを付けたい。住民の熱烈なる希望を容れて付けたい。こういう決心と、そうしてそれが多分可能であると見通しを持つておられるでしようか、その点……。
  181. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは交渉、今後の話合いの結果でございますから、今これをここでかれこれ申上げるのは、むしろ差控えるほうがいいと存じますが、併しいわゆる国民並びに住民の熱望は十分達成されるように努力して行きたいということを申上げることができると思います。
  182. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうもその点が前後違つていると思うのです。国民に冷靜にアメリカの善意を信頼して善処しろと、こう政府として言われる以上は、住民に応えるだけの見通しがあつての話であると私は思うのです。その見通しがなければ責任ある政府としてはそういうことをお言いになれるはずがない。それを言われる以上は、そこまでの見通し、從來の交渉の経過その他のことについての見通しを持つておられて言うのであつて、今後の交渉でどうなるかわからんが、善意に信頼しろと言われるなら、これはちよつと逆さまだと私は思うのですが、そういう点で、もう一度念のためにその点について政府の決心を伺いたいと思います。
  183. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これはむしろこれからのいわゆる交渉でありまして、從來から申上げておるように、アメリカは十分この問題については善意を持つておると私どもは信じております。從いましてその打合せの内容について、こういうことに徹底する、又そう行くということをここで申上げるならば、交渉の余地もなくなつて來るのです。むしろいわゆる国民並びに住民の熱望は十分承知いたしており、その熱望は從來ともあらゆる方法で伝えておりますが、具体的な問題につきまして、お話のように今後具体的に進めて行く、話合いでこれを決定して行くという段階に今後進ん参りますから、この段階におきましては、国民並びに住民の熱望が通るように最善の努力をいたしたいと考えております。
  184. 永井純一郎

    永井純一郎君 先ほど堀木君からの御質問、どうも條約局長はつきりしないように思うのですが、これは併し沖繩なり、奄美大島の島民のかたがたが断食までやつて、いろいろやつておられる重要な問題でありますから、更にもう少しはつきり突き進んでおきたいのですが、この憲章の七十八條の信託統治制度は、加盟国となつた地域には適用しないとなつておりますから、お聞きするのは、日本が国連に加盟した曉には、主権が南西諸島にあるものならば、当然信託統治から外れるというふうに解釈するのが穏当だから、その場合加盟した場合には、沖繩と奄美大島等々の島は信託統治制度から解放される、こう解釈できないかということなんです。若しそうでないというのならば、更に進んで、この第七十七條の(は)号で自発的に制度下におかれる、信託統治の制度下におかれる地域として、自発的に日本がそういうことを宣言でもしてやらなければできないじやないか、こうも思うわけです。それをはつきりして頂きたいと、こう思います。
  185. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この原文をお読みになるとよくわかると思いますが、加盟国となつた地域には適用しないとございます。地域全体が独立国となる、加盟国となる場合を言つておるわけでございます。加盟国となつた地域。全然七十八條に誤解の生ずる余裕はないのでございます。永井委員が誤解していらつしやるんでしよう。
  186. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうするとあれですか。この地域となつておりますが、沖繩だの何かの場合には、これは加盟国になることはないんだが、これは解釈論で、日本にくつついているわけです。日本に主権があるわけですから、そこで日本が国連に加入した場合には、その一部である沖繩だの奄美大島という地域は適用しなくなるという解釈をすなおにしたほうが私はいいと思いますが、なぜそれができないのですか。非常におかしいと思うのですがね。
  187. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 私は永井委員の御解釈がおかしいと思うのでございます。仮に或る一つの地域がございます。大体信託統治の場合には自治乃至独立にもつて行くのが通例でございますから、その地的を達して独立国となり、やがて国連の加盟国となりますれば、そんな地域が信託統治地域として存続することは、加盟国の間の主権、平等の原則から言つておかしいので、信託統治はもう成り立ち得ないわけでございます。これは、いろいろ憲章のコンメントの本もございますので、それによつて御理解をお願いしたいと思います。(「おかしいじやないか」と呼ぶ者あり)
  188. 永井純一郎

    永井純一郎君 地域そのものが加盟するということはないと思いますね。そうでしよう。地域が独立した場合は成るほどそうかも知れませんが、併しながら具体的に今の南西諸島に主権がある、存在するんだという建前で行くならば、そうして、それと七十八條とを考えるならば、私が解釈することが当然そうなると思うのですが、すると、あなたの言われる場合はあれですか、信託統治からは一向に逃れられない、ということに私はなると思いますが、なお私がそういう質問をするのは、これは国民考える場合はこういうふうに心配をするのでございます。若しそういう私が言うように解釈すれば、南西諸島の戰略地域としての重要性があるから、あれをいつまでも戰略のために使うわけですが、そのためにはアメリカ自身加盟することに積極的に努力をこの七十八條から言つてもしないのじやないか。そんなことはなかろうと思いまするが、心配が出て來るのもこれは当然だと思うのです。そういうことになると工合が惡いからということで、あなたが無理にそういうふうに解釈されるのじやないか、というふうにもとられるのですが、もう一度これは法律論の解釈として、我が国に適用した場合には七十八條はそうなると思うのですがどうでしよう。
  189. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) これは七十八條の英文を御覽になるとよくわかるのですが、The trusteeship system shall not apply to territories which have become Members of the United Nations.こうあるわけです。御説のような解釈の余地はないわけです。又ここに簡單でございますが横田先生の七十八條に対する註釈がございます。「信託統治制度は連合国となつた領土には適用されない。(七八條)非自治領土のうちには、完全な自治または独立に向つて発展し、ついに連合国となつたものがあり、将來もそうなるものがありうる。このように、連合国となつたものに対しては、もう信託統治制度は適用されない。このことは、委任統治のもとにあつた領土について、とくに起ることであろう。連合国関係は、主権平等の原則に対する尊重を基礎としているから、これは当然なことである。」こうあります通りちつともおかしくないのでございます。どうぞあらゆる御本それから註釈書とか御覽下さいますよう。又若し御必要でしたらユーナイテツド・ネーシヨンズのオフイスにでも御照会下さればと思いますのですが。
  190. 永井純一郎

    永井純一郎君 私ども考えでは、我が国に関して七十八條を考えるときには、私の言つていることが少しもおかしくない。こう思つておりますが、これはこれとして、更にもう一つ関連してお尋ねしたいことは、アメリカが提案するこの信託統治協定案が、戰略地区としての場合には、先ほどのこのお答えが私はつきりしなかつたように思うのですが、そういう場合にはその審議は安保理事会でやるのですか。先ずそれを伺いたい。
  191. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 戰略地区の信託統治協定は安全保障理事会の審議にかかります。一般信託統治制度の協定は国際連合総会にかかります。
  192. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうするとやはりソ連等の拒否権が行使された場合には、いつまでたつてもなかなか信託統治ということにもならない。一般にはなる。ただ戰略地区としてはならない。ところが一般と戰略地区には区別はない。又だから武裝化することができるのだ、ということになると、三條の後段のようなこともまあそういうことになるのですか。どつちでも行けるようになつているという。
  193. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) まあ御推察の通りでございましよう。
  194. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今の点に関連して七十八條の問題ですが、日本に主権が残る、そうして日本が今度国際連合の加盟国となる、その場合に日本の一部に信託統治が行われる、実に奇妙な話なんです。その場合に果して日本が平等の主権を持つた国になるか、こういう点なんですがね。先ずその点からお伺いしたい。つまり日本が国際連合の一員になつたときに日本の一部に信託統治が行われる、而もアメリカを唯一の施政者とする信託統治か行われると、その場合に日本は国際連合の平等なる権利を持つ一員であり得るかどうかという点についての御解釈をお聞きしたい。
  195. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) その点はあり得ると考えるわけであります。と申しますのは、七十七條でございましたか、信託統治制度そのものについて委任統治地域を引受けるものと、旧敵国から離すものと、加盟国が自発的に自己の領域の一部を提供して信託統治制度に置く場合とを考えております。この国際連合憲章におきましては、御指摘のようなことは十分考え得る次第でございます。
  196. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますと、今の第七十七條の問題になつて來るのすが、恐らく(c)の項の問題がこれは問題になる。日本が国際連合の一員になりましたときに、自発的に南西諸島等を国際連合の信託統治の下に置くという宣言をするか何かしなければそういうことにならないのじやないか。こういうふうに考えられるのですが、若しそういう場合が起りました場合には、日本政府としては自発的に、これは今度は国際連合の信託統治下に置くんだという宣言をなさる必要があるか、又そうするつもりであるか、この点をお伺いしたい。
  197. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 別にそういう宣言をなす必要はないと思う次第でございます。南西諸島が信託統治制に置かれるとすれば、無論この国際連合憲章の條章によつて置かれるわけでございますから、改めてさような宣言をする必要はないものと考えます。  又信託統治制度に置かれておる地域を持つておる国が国際連合加盟国になるのは少しおかしいではなかろうかという御質問がございますが、仮に中国などを例に引いて見ましても中国は租借地域を他国に與えておりますが、やはりそれでも国際連合加盟国になるについて何ら支障は來たさなかつたわけであります。大体さようなことが信託統治についても言えると思います。
  198. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今租借地の例を挙げましたが、租借地は、例えば中国の租借地の例ですが、これは過去におきまして中国が他の国と相互的な條約を結んだので、国際連合というような、そういう集会的な條約によつてそれが生れたものではない。從いましてここに規定されておる問題とは違うのでありまして、私はそれは例として拳げるに足らないものだと思うのでありますが、只今條約局長お答えですというと、日本が国際連合の加盟国となつた、而も日本の立権の、まあ潜在主権であれ何であれ及んでおる地域に信託統治か行われておつて、そのままそこへ、加盟国になり得るのだと、こういうようなことになりますが、そのときにはどうもこの第七十七條の(a)、(b)、(c)のその信託統治地域になる原因というものは消滅してしまうのです。でありますから、どうしても若しそのまま続けられて行くとするならば、この(c)による日本側の宣言がなければならんように思うのでありますが、念のためにもう一遍そこのところをはつきりお伺いしたい。
  199. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御議論は承服いたしかねますが、果してそうであるかどうか、将來の問題としてお互いに考えて行きたいと存じます。
  200. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも第三條はもう少し私も教えて頂きたい点もありますから、英文のほうを読みましでからもう一度研究したいと思います。  第二條に入りまして、日本国は千島列島というものに対する権利、権原、請求権を放棄いたすことになつておるわけですが、この千島列島の範囲について食い違いが連合国間にあるというふうに相成つておるわけであります。よく言われます色丹と歯舞に限定いたしましても、この問題について北海道の一部であるというふうに考えられておるわけでありますが、そうなりますと、今あの島々が事実上と申しまするか、ポツダム宣言に基いてと申しますか、ともかくもソヴイエトの軍がいると、占領していると、こういう状態はどういう法律上の解釈をしたらいいでありましようか。これはポツダム宣言に基く保障占領ソヴイエトによつて行われておると、こう解釈していいでありましようか。
  201. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 連合国間の話合いによつて戰時占領が行われておると考えたらよかろうと思います。
  202. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 連合国間の話合いによつてポツダム宣言によつて戰時占領が行われておるということは、結局いつ消滅するかと申しますと、ソヴイエト自身が平和條約に調印するまでは解決しないものである。又それまでは国際的には何ら解決方法がないんだと、こういうふうに解釈していいでありましようか。
  203. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 御意見の通り考えております。
  204. 高橋道男

    ○高橋道男君 二條の(a)でありますが、朝鮮の独立に関しまして、朝鮮の独立は承認するのですが、その次の済州島云々を含む朝鮮と、朝鮮の独立ということと、あとの朝鮮の領土ということと違うように思うのですが、その点は如何でありますか。済州島などは朝鮮に帰属するんだということをどこかで言われておつたように思うのですけれども、この條文をそのまま杓子定規に解釈すれば、独立をする朝鮮と、あとの独立をする朝鮮は済州島、巨文島などは含んでいないように感じられますが、その点。
  205. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 條約は常識を以て解釈するのが常道でございます。無論(a)の前段で独立を承認いたします朝鮮は、済州島、巨文島、鬱陵島を含むこと当然でございます。
  206. 楠見義男

    ○楠見義男君 二條の千島の範囲について先ずお伺いしたいのですが、それは色丹を含む歯舞島は千島に属しない、こういうことがサンフランシスコ会議でも擇われておるのでありますが、この解釈から逆の解釈が生まれはしないか。即ち国後、擇捉を含めた島島は日本の国には属しない。北海道には属しない。千島に属する。こういうような解釈が、そこに余り色丹、歯舞を強調することによつて、こういつた逆の解釈が生じないか。この点であります。一方、先般も参考人のかたから、この委員会でも伺つたところによりますつたところによりますと、国後、擇捉島は未だ曾つて日本外とせられたことはないと、こういうような証言と申しますか、意見の開陳があつたのであります。  そこで一体政府としては、千島の範囲をどういうふうに見ておられるのか、即ち国後、擇捉は千島に属すると見ておられるのか、見ておられないのか、この点を伺いたいと思います。例えば最近のこれはまあ文部大臣にも機会を見て伺いたいと思つておるのでありますが、外務省のほうから御連絡をして頂きたいと思いますが、例えば最近の中等学校の社会科あたりの、まあ昔で言えば地理でありますが、地図を見ますと、澤捉島、国後は日本の領土外のようにしるしを区切つてつておるようであります。古い歴史、或いは同じく社会科の地図の中には、例えば伊能忠敬が調べた地図を見ますと、国後は日本の北海道に属しております。こういうふうに一体現在千島をどの範囲政府は見、又教育の面でもどういうふうにしておられるのか、この点を明らかにしたいのですが、先ず以て外務当局として千島の範囲をどういうふうに見ておられるのかこれを伺いたい。
  207. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 日本政府といたしましては歯舞、丹色は千島とは考えておりません。北海道の一部と考えております。從つて千島の範囲についての問題になつて参りまするが、実はお話のように国後、擇捉は、いわゆる宮部ライン以西と申しますか、一八五五年の安政條約、その前後におきましても、何ら問題になつた所ではないのでございます。いわゆる擇捉、国後は從來から曾つて歴史始まつて以來と申上げていいほど、日本領土であるということにおいての疑念は、国際間に曾つてつたことがないのであります。従つて一八五五年の時には、はつきり擇捉、国後、むしろその上の得撫島が問題になつたほどであります。從つてここまでは全然從來から問題が生じたことは曾つてない。で、安政條約におきましてもこれははつきりと而も素直に日本領土として認められ、その後明治八年の樺太千島交換條約によりまして、いわゆる現在言われております全部の島が日本領になつて來た。こういうまあ歴史的な関係があるのでありまするが、いわゆる千島、いわゆる得撫島という点から申しますると、そういう歴史を持つておりまするけれども、やはり国後、擇捉というのは、全体的に千島と解釈するのが、最もこれは実は妥当じやないかと、こういう解釈をとらざるを得ないのじやないかと考えております。
  208. 楠見義男

    ○楠見義男君 どうも今の政務次官の御説明ではわからないのでありますが、国後、擇捉は從來も日本の領土であるが、得撫島が実は問題になつてつたと、こういうような御説明でありましたが、最後になりますと、国後、擇捉が千島に含まれると、こういうことでどちらを信じていいのかわからないのでありますが、もう一度はつきり国後、擇捉は千島に含まれるのか含まれないのか、この條約の二條に言つておる千島列島というこの千島列島に、これらの島々が入れるのか入らないのか、この点をもう一度明らかにして頂きたいと思います。
  209. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) この千島列島の中には、歯舞、色丹はこれは全然含まれない。併し国後、擇捉という一連のそれから以北の島は、得撫アイランド、クリル・アイランドとして全体を見て行くべきものではないか、かように考えております。
  210. 楠見義男

    ○楠見義男君 この、すべきものではないかという解釈はどういう根拠で出ておるか、その点を伺いたいと思います。
  211. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) それは今申上げましたように、実は領土的な区画におきましては得撫が問題になつて、国後、擇捉というのは全然問題はなかつたのであります。そういう意味から申しますと、いわゆる関係国はこれに対して、全然從來から日本領土としての疑義を挾んだことはない。併し千島というこの一つのクリル・アイランヅという立場から申上げますと、これだけを切離すことは却つて無理なこじつけになつて來るのではないか。千島全体の問題がむしろ中心の問題であると思います。
  212. 楠見義男

    ○楠見義男君 この條約で、特に領域ということをきめる場合には、單なる地域的な名称ではなくて、從來例えば日本の領域に属しておつたところ、或いは属しないところのことが問題になると思うのでありますが、例えば千島列島について今のお話のように從來はつきりと日本の領域としてきまつてつた、そこで、こういうふうに領域問題として、條約上の用語として取扱われる場合に、ときには領域的な言葉として用いられ、或いはときには地理的用語として用いられるというようなことで混同を來たすわけでありますが、ここに言つておる千島列島というのは、もう一度伺いますが、地理的名称としての千島列島と、こういうふうに解釈していいかどうか、その点を伺います。
  213. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) もう一つ、実は歯舞……色丹は余り含まれておりませんが、歯舞、色丹、或いは色丹を含めた歯舞、先にお話のあつたこの点につきましては、はつきりとダレス氏も日本領であるということを表明しながらこの條約の説明をいたしたわけであります。それで千島という言葉の中で指しております條約のクリル・アイランヅという中には、このクリル・アイランヅというのは千島全体についての表示だと、こう考えざるを得ないのであります。ただ日本領土が国後、擇捉まで及ぶかどうかという問題については今申上げたようにこれからずつと北の得撫島までは一応全体の千島として考えておる、そうして進んで行くべきことが、これは一つの地理的な関係におきましても、すべての点から考えても当然な解釈じやないかという解釈をとつておるわけでございます。まあとらざるを得ぬと申しまするか、とることが妥当であると、こう考えております。
  214. 楠見義男

    ○楠見義男君 まだよく了解できませんが、私ほかに三條、四條に対する質問がありまするので、あとで一緒に又もう一遍繰返します。
  215. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 先ほど堀木委員からお尋ねになつたことで、この前、私も総理大臣質問をいたしましてあいまいにいたしておつた点がわかりました。つまりこの平和條約発効後における樺太千島のソ連による占拠は連合国間における協定による戰時占領という政府答弁がありました。それでは今度は台湾や澎湖諸島に対する国民政府占領権はどういう関係になりますか。それを承わつておきたいと思います。
  216. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本に関する限り全然同じことであります。
  217. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 日本に関する限りというよりか、国際公法上と言いますか、それではどうなります。
  218. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 国際法上もさようでございます。
  219. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 この国民政府というものをイギリス側は認めていない、中共のほうを承認しているのである。そういうようなことから考えますと、南樺太並びに千島に対するソ連の戰時占領国民政府による台湾及び澎湖諸島の戰時占領と大変違うように思うのですが、同じでしようか。もう一度念を押します。
  220. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 日本に関する限り全然同じであります。
  221. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 日本に関する限りというのはともかくとして、国際公法上においてはどうであるかということを質問しておきます。
  222. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) 全然同じであります。
  223. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 じや、あまあそのくらいにしておきます。一応そうお聞きしておきます。それからこれは念のためにお尋ねするのですが、すべての権利、権原及び請求権とこういうふうに書いてあります。ライト、タイトルと分けてありますが、それはどういうことでありますか、説明して頂きたい。区別、それから主権との関係……。
  224. 西村熊雄

    政府委員西村熊雄君) この表現は講和條約におきまして一国が領土、主権を放棄する場合に使われる慣用的な表現であります。権利、権原、請求権、殊に請求権という句が入りましたのは、二條で取扱つておるのは純粋の領土権の放棄ではなくて、信託統治制度に基く一種の権利と申しましようか、又西沙群島に対します種の日本立場、それから南極地域に対する先占的主張、こういうものを含めまして放棄させることになつたわけでございますので、(a)から(f)まで通じまして、同じ表現を用いるために、権利、権原、それに請求権という文字が入つたわけでであります。この最後の請求権は、財産的請求権という意味ではなく、領有関係の主張と申しましようか、そういうものを放葉させる趣旨でございます。
  225. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は先ほどの千島の問題に関連してお伺いしたいのですが、いずれ委員から出る問題でありますが、千島問題について一つお伺いしたい。千島はソ連軍によつて占領されましたのは、ヤルタ協定に基く結果であると思う。このヤルタ協定において千島というのがどういうふうに解釈されておるか。先ほどから千島の地理的概念につきまして或いは行政的概念につきましていろいろ御論議があつた。結局草葉次官のお話だと、過去において国後島等は問題にはならなかつたけれども、併し地理的概念としてはこれは千島の一部と見て行くより仕方がない。そこで国後島までを含めて占領されたことは、これは止むを得ない。又今後日本が領土権を放棄することは止むを得ない。併し色丹、歯舞は違う。で、色丹、歯舞が問題になるわけでありますが、このヤルタ協定における千島列島の解釈について條約局長は本條が日本アメリカにいろいろ交渉される場合におきまして、ヤルタ協定に示された千島の概念についてはつきりお確かめになつたことであるか。その際に色丹、歯舞島はヤタル協定における千島の概念から除外されておつたものであるか。或いはそのときには色丹、歯舞は千島の概念に含まれておつたものであるかどうか。この点についてお伺いしたいと思います。
  226. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは恐らくヤルタ協定じやなしに、先に條約局長からも触れられましたようにモスコー協定のちよつと前に、恐らく九月二日の前に三十八度線をきめましたり、或いは南のほう、それぞれの占領軍の占領地区をきめましたときに起つて來た、そうして相談になつた地区だとこう考えております。ただ実際の状態を、当時の状態を見ますると、丁度歯舞、色丹というようなところは從來から北海道の一部として取扱つておりましたが、日本軍が配置されておりました形態が千島と一緒になつておりましたために、ソ連軍が侵入して参つて占領に参りましたときにずつとこれらの島まで來たというような現実的な問題が起つて來ておると存じます。
  227. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ソ連アメリカとの間におきまして、その占領いたす場合に、そういう三十八度線と同じように地域をきめる、この際には今言つたような早々の際であるから、從つて将來に問題が残るというようなことを考えないで、両国の間に早々に取極められた、こういうふうに解釈してよろしいのでありますか。
  228. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 今から考えますると、当時はつきりしたこの線が、三十八度線みたように引かれておりますると、このような問題も或いは起らずに済んだかとも思います。
  229. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ダレス氏が講和会議におきまして歯舞等の問題について言及しておりまして、これは日本領だ、こう言つておるのは両島が、色丹、歯舞島が地理的概念として千島というカテゴリーに入らない、そういう解釈からそうされておるのか。それとも又この両島が北海道に固有する島である、行政的な立場からしてそういうふうに考えられたのであるか。そして若し今日のソ連側が両島を占有しておることがこれがいけない、これはまあ何と言いますが、誤りであるというふうに解釈されておるようでありますが、そうだとすれば何故もつと前からそれが問題にならなかつたかというようなことの事情について日本政府はどういうふうにそれを確かめられたか、その点をお伺いしたいと思います。
  230. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは実は日本政府といたしましては千島全体、或いは歯舞、色丹、国後、擇捉、そういうすべての歴史的、地理的、或いは地質学的、経済的、文化史的と言いますか、あらゆる点から、住民のいろいろな模様から資料を提供いたして参つたのであります。從つて歯舞、色丹の問題につきましてはお話のように行政区画も從來から違つておりますし、或いは地質学的にも違つております、又從來からそれらの住民の北海道本道との状態も違つておりますし、いろいろなそういう状態を現実に知られた上においての判定で、あのような意思はつきりと表明せられたことと思います。
  231. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 只今そういう理由で歯舞、色丹は千島と違うのだということをアメリカ側において認識せられておるといたしました場合、すでにアメリカソ連との話合いでソ連が両島まで占領しておるわけでございます。で、いわばアメリカか默認をした形、若しくは積極的に承認をした形で両島まで占領されたと解釈せざるを得ない。併しそれは明らかに千島でなかつた。そういたしますればこれは当然アメリカ側からソ連に対しましてその両島は占領を解いて日本に返還すべきであるという交渉をしなければならんと思います。アメリカ側はソ連に対しまして両島が千島ではないと言うて、そうしてそれを占領すべきではない、撤退すべきであるというような交渉をしたことがあつたかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  232. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) その点は今私といたしましては、アメリカの從來これにとりました態度についてお答え申上げる資料を持たない次第でございます。
  233. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そういたしますとアメリカ側は歯舞、色丹両島が千島列島でないとされておりながらソ連軍の進駐を許して、そうしてそれが今日アメリカ側によつても問題にされておりながらアメリカ側がこれが解決について何らの措置をとらなかつた、こういうことになつて参りますと随分どうも無責任な話のように思われるのであります。それをその後のソ連に対する交渉について草葉さんが御承知になつておらなければそれは仕方がないのでありますが、ダレス氏が平和会議の際の演説の中において両島の将來の問題につきまして国際司法裁判所に訴えたらどうかというようなことを言つておられるのであります。ところがこれは西村條局長が衆議院で御答弁になつたところを見ますと、どうも提訴するわけにはいかんようであります。そういたしますと又甚だ無責任なことを言われて、まあこの問題については突つ放された、こういうふうにしか考えられないのでありますが、この問題につきましての解決について政府はどういうふうにお考えになつておるか。又それについての具体的措置として今の政府がお考えになつているところは何であるか。これをお伺いしたいと思います。
  234. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) お話のようにダレスさんがサンフランシスコ会議で申されましたときにはまだ実はソ連が調印しない前でございます。從いまして恐らく当時はソ連が調印することも予想されるわけでございますから、するかしないかの前であつたと記憶いたします。從つてソ連が調印をいたしまして、いわゆる條約における当該連合国となりました場合におきましての方法としてあのような方法を言われたことだと考えております。現在におきましてはその状態が実は変つてつた次第でございます。今後におきまする政府の態度といたしましてはこれはいろいろ関係がありまするので、十分日本国民意思を或いは今後の国際外交の回復に伴いましてそういう外交機関を通じたり、或いは又ソ連といろいろな場合における協議等の機会も必ずしもないとは申されないのでありまするから、十分平和的な手段によりまして国民の熱望を伝えながら目的を達成するために努力をして参りたいと存じております。
  235. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 御希望はよくわかるのですが、現在のところは何にも方法がないと、こういうふうに言われたものと解してよろしうございますか。
  236. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 現在は先ずこの條約を各国が批准してくれまして先ず独立をいたしてから、国交回復してあらゆる努力を進めて参りたいと存じております。
  237. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 堀木さんよろしうございますか。
  238. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 よろしうございます。
  239. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは本日はこの程度で打切りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後四時四十九分散会