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1951-10-29 第12回国会 参議院 平和条約及び日米安全保障条約特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十月二十九日(月曜日)    午前十時十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大隈 信幸君    理事            楠瀬 常猪君            一松 政二君            金子 洋文君            曾祢  益君            加藤 正人君            野田 俊作君            堀木 鎌三君    委員            秋山俊一郎君            石川 榮一君            泉山 三六君            大屋 晋三君            川村 松助君            北村 一男君            杉原 荒太君            徳川 頼貞君            平林 太一君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            永井純一郎君            波多野 鼎君            吉川末次郎君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            楠見 義男君            杉山 昌作君            高橋 道男君            伊達源一郎君            木内 四郎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            堀  眞琴君            兼岩 傳一君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 大橋 武夫君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    労 働 大 臣 保利  茂君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    法務府法制意見    第一局長    高辻 正巳君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省條局長 西村 熊雄君    大蔵省理財局長 石田  正君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○平和条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 只今から委員会を開会いたします。
  3. 平林太一

    平林太一君 質疑に先立ちまして、本條約に関連をいたします事柄といたしまして、一言申述べておきたいと存じます。  今次大戰において祖国のためにみずからの身命を捧げられた人々、即ち戰争犠牲者処置についてであります。終戰以来六年を経過いたしまして、今や我が国主権を回復し、世界平和を念願する国際社会の一員として返り咲く日を目前にいたしまして、我々国民のすべての胸中を去来いたしますものは、これら痛ましき同胞への限りなき感慨であります。私はこの際戰争犠牲者及びその遺族に対する援護について強力万全の措置を講ずるため、政府に対し格段の努力を切望するものであります。願くは今日只今吉田総理みずから仁愛溢るる救助の花束をこれら無名戰士の墓前に捧ぐることこそ、誠に時宜を得たるの一事と信じ、あえて一言を述べまして総理の御所懐を承わりたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申上げます。戰争犠牲者に対しては、従来軍国主義とか、或いは国家主義に対して国民に十分の反省を促すというような意味合もあつたでありましよう、総司令部のと言いますか、連合国の方針として、戰争犠牲者に対する取扱は我々から考えて見て甚だ苛酷と考えられた点が少くなかつたのであります。当時いろいろ話もいたしたのでありますが、空気が今までのような空気で、余りこれを庇護いたすと、日本においてまだ軍国主義擁護という空気があるような感じを與えて、全局から考えて余りいい結果を生じない。その影響は甚だ面白くないという感じがいたしたので、甚だ不本意でありましたが、戰争犠牲者に対する手当、取扱等については、我々から考えて見て甚だ遺憾な点が少くなかつたのであります。併しこれは国家のために犠牲になつたその人及びその家族に対して、国家が十分な取扱をするということは、愛国心、公に奉ずるという気持を養成する上から言つて見ても大事なことでありますから、財政の許す限り適当な処置を講じたい、たしか本年度でありますか、補正予算等調査費を幾らか組んだはずであります。この点は大蔵大臣にお聞きを願いたいと思いますが、適当な措置をいたしたい、こう考えております。
  5. 平林太一

    平林太一君 只今総理より極めて慎重なる御答弁を伺いまして、私自身ひとり胸を打たるるのみにとどまりませず、全国民その胸中を同じういたしておるものと存ずる次第であります。何とぞ只今の御趣旨を深く、我々はその具体処理につきましても、今後このことに対しまして、愼重なる政府の御処置を通じまして、私の申述べました衷情が生きて参るように相成りますことを、ひたすら念願してやまない次第であります。  これより質疑の内容に入りたいと思います。すでに両院の本会議における本條約に関する一般質問並び衆議院條特別委員会における質疑応答におきまして縷々述べられておるのでありまするが、この際私は今なお盡し得ざる重要と認むる数点につきまして、総理お尋ねをいたすのであります。顧みますれば、過去の多くの講和條約を顧みますると、その殆んど全部が束の間の休戰的性格のものでしかなかつたことを発見するものであります。これは申すまでもなく、戰いに敗れて一時抵抗力失つた相手国の弱味につけこみ、奪うべからざる領土を奪い、取立ててならない賠償を取立て、加えてならない主権の制限を加えた結果であります。いやしくも人類が過去の経験から学び得る能力を持つておるとするならば、かような失敗を繰返してはならないはずであります。歴史教訓を無視するものは歴史処罰を受くることを覚悟せねばならない。そこで私は今回の講和條約がどこまで歴史教訓を学び、どこまで国際正義に立脚しているかという問題について専らお尋ねをして見たいと思います。八千万国民が納得の行くように御答弁を願うものであります。  先ず第一に賠償の問題であります。本年三月発表のアメリカ案によりますると、賠償が打切りとなつておりました。それ故に我々国民は、実はその心組みで希望を以て復興に邁進しておりました。然るにその後残念ながらこのアメリカ原案が修正を加えられ、我々の前に只今出されておりまする條約には、新たに二種類賠償を負担せなければならなくなりましたことは、全国民と共に私の最も失望したところであります。第一種の賠償は、第十四條に掲げた役務賠償でありまして、第二種は第十六條に掲げられた捕虜であつた者及びその家族のためにする賠償、これであります。第一種の賠償に対してお尋ねいたしたいことは、條約には明らかに役務賠償と書いてあるにかかわらず、フイリピン代表からサンフランシスコ会議において、條約に何と書いてあろうと、フイリピン政府賠償種類、形式その支拂方法に関し、日本政府と交渉、協定する権利留保するという声明に関してであります。私のお尋ねしたいのは、会議留保を認めたのかどうか。又そういう留保が許されるものであるかどうか。総理が欣然この條約を受諾するとおつしやつたことは、第十四條に書いてあるままの條約を受諾されたのであつて、かかる留保の付いたものを受諾されたものではないと信じますが、その点総理の御意見を伺いたいのであります。それよりも更に重大な問題は、フイリピン代表が第十四條を役務賠償に限定するという解釈を、フイリピン政府は承諾し得ないという声明をされておる点であります。そのわけは、役務賠償のみに限定することになれば、日本の資源は十分でないといつている規定を全然無意義にするという主張であります。言葉を換えて申しますれば、将来日本が復興した曉には、完全な賠償をする能力があるという主張であります。ロムロ外相の熱意ある口吻から考えますと、将来この解釈を提げて国際司法裁判所に訴えるのではないかとさえ思われる筋さえ考えられるのであります。この解釈は、條約の共同提案者であるアメリカイギリス代表の演説に照らしましても根拠のないものと信ずるのでありまするが、総理の御意見は如何でございましようか。  第二種の賠償即ち捕虜の虐待に関しましては、その責任者はすでにそれぞれA級B級C級の戰犯者として、或いは死刑、或いは無期その他重罰を科せられておるのにかかわらず、今回更に莫大なる、私の承知しておる限りにおきましても、五百万ポンドの賠償支拂わなければならないということに相成つたことは、同一の行為に対して二重の処罰を受けることであつて国際間の先例にもないことではないかと存ずるのでありますが、総理のお考えは如何でございましようか。而も賠償に充当せられる金は、これ又先例にない中立国にある私有財産を以て充当するということで、和解の講和を聞かされておりまする我々といたしましては、如何にも腑に落ちない点であります。総理のお考えが伺えますれば、私と同様の感想を持つておる多くの国民が納得することであると思うのであります。特に中立国における私有財産処分に関する前例があれば国民に知らして頂きたいのであります。一先ず御答弁を煩わしたいと存じます。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。この賠償の問題は、ちよつと速記……。
  7. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  8. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記を始めて……。
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) フイリピンロムロ代表発言中に賠償條項留保する、これはロムロ代表としてフイリピン本国政府に対する関係もあつて、こういう発言をしたのでありましようが、この日本賠償協定フイリピンにおいてこれをどう受けるか、成るべく多額の要求をする、希望するでありましようが、それでは日本の経済が危い。その間の中間をとつて、どこに落着くか、それはわかりませんが、政府としては今申すような次第で、成るべく誠意を持つて考えたい、ころ考えております。その誠意フイリピンが満足するかしないかは、これは向うのフイリピン政府がきめるわけでありますが、とにかく日本政府としては誠意を持つてやると、交渉するという考えでおります。その結果、不満足であつたらどうするかということになりますが、併しそのときにならないと、今日から何とも言えませんが、成るべく満足を與えるような協定に到達することが、我々としてなすべきことではないかと、こう考えておるのであります。国際司法裁判所に提訴するかしないかは、これは将来のことに属します。つまり協定の結果によることと思います。成るべくこういうことはないように円満にいたしたいと思つております。
  10. 平林太一

    平林太一君 極めて複雑困難と見られまする賠償の問題に対しまして、総理が並々ならぬ労苦をいたされておりますることを、只今の御答弁によりまして深く了承いたしました次第であります。これ以上申上げますことは、いずれ逐條審議等に譲るのでありまするが、要は極めて我が国といたしましては、現実に迫る重大なる問題でありまするが故に、この上は国際的正義人道の上に高き基盤を求めまして、妥当な結果に結果付けられることを望んで止まない次第であります。  ただこの際これらのことを申すにつきましても、一言私は国際的な環境に対しまして申述べておきたいと思いますことは、当時会議におきまして、イギリスヤンガー代表が述べられておりまする言葉であります。かようなことを言つております。「何ものかが出て来るであろうという希望の下に、賠償支拂日本に要求することは容易であつたかも知れないが、併しそれは我々にとつて短見者流の政策であり、必ずや将来において我々と日本との間の憤激を作る基礎となるであろう」、かように述べられていることを、この際私は大きなるこの問題に対する国際的な批判の上におきまして、これを考え、又深くこのことを胸に私は了承いたしているということをこの際申上げておきたいと思います。  これより領土の問題に関するのでありますが、由来、領土は将棋の駒のごとく、国際間の具に供することは、やがて復讐戰争を誘発する大きな原因になつていることを歴史上の偉大なる教訓として私は知るのであります。私は断じて復讐戰争を夢みておるものではありませんが、今回も又戰勝国が大西洋憲章における誓約を反古にして、又しても領土慾の誘惑に勝ち得ず、狹小なる日本からその半ばを奪い去つたことは、国民として無限の寂莫を感ずるものであります。例えばソ連のごとき、現に地球表面の六分の一という広大なる領土を持ちながら、面積において世界第二十七位であり、而も人口においては世界で第五位という鮨詰的小国日本から領土を奪つて行くことが、果して国際正義にかなつておるか否かということは切に識者を待つて知るべきことでありましよう。併し私がここでお尋ねいたしたいことは、琉球小笠原に関する問題であります。これらの諸島に関して日本主権を放棄したものでないことになつておることに対しましては、決して偶然のことでなくて、吉田総理を初め、政府の並々ならん努力の結果であることは我々国民の感謝するところであります。併しながらただ若し将来アメリカ施政権者とする信託統治制度の下に置くことになりますれば、この主権の問題が極めて複雑になることを憂えるものであります。何となれば、信託統治の性格に顧みまして、それは必ず国際連合を中心としたものでなければならなくなります。我々が財産信託会社信託する場合、それは所有権者信託会社との契約であります。この理窟を推して見ますれば、所有権者に該当するものは国際連合ということになります。主権を持つたものでなければ信託をすることができないはずであります。日本主権が残つておれば、国際連合にはさような権限がないはずであります。むしろ日本アメリカとの協定によつて主権者たる日本アメリカ信託するというのなら筋は通ります。そこで私の希望は、先日シーボルド大使声明されたように、当分アメリカ信託統治に対する提案国際連合に持ち出さずして、現状のまま日本主権を保持し、アメリカがその主権を行使するという関係を続けるのが最も妥当な解決策ではないかと存じますが、総理の御意見は如何でありましよう。私の信ずるところでは、信託統治制度というものは、琉球小笠原島のような高度の文化を持ち、且つ強度の民族意識を持つた土地に施行されるものでなくて、更に遥かに未開にして、民度の低い土地に適用せらるべきものであると思います。そんな観方からしても、これらの島々を信託統治に付することは妥当でないと信じます。それにつけても、シーボルド大使の御意見もかかる観点から立てられたものと想像いたしますが、この際総理の御意見を承わることができますれば、私自身幸いと存ずる次第であります。
  11. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 信託制度については、これは御承知の通り、第一次世界戰争の後において、戰争によつて領土の併合を行わないという原則から信託制をとるという、悪く申せば換骨奪胎の制度が打ち立てられて、そうして日本南洋諸島を委任統治し続けたようなわけであります。さてその信託統治がいいか悪いか、或いは又琉球小笠原信託統治にすべきでないという御議論でありますが、日本として言うことは、四つの島及びそれに属した小さな島を日本領土にするという領土條項を向うでも承諾いたした以上は、さて四つの島以外のものが如何にせられるかということについては、法律的には異議を挾む地位にないのでありますが、これが信託統治がいいか悪いかという議論は別の問題とし、若しくはそのほかの国際法の問題として残りますが、日本政府として現在これにとやかく挾むことはできないのみならず、條約にも書いてありますが、信託統治に付するには国際連合に申出をするということになつて、今後の処分については、まだ未決定な問題に残されておるのであります。故にアメリカ政府我が国との間に如何なる協議が成立ちますか、成つた上で批判若しくはこれに対する日本政府意見を述べる機会もあるでありましようけれども、今日のところでは、條約文面だけでは決定的処分になつておらないのでありますから、政府としてこの問題を取上げてとやかく言うのは時期尚早と言いますか、差控えたほうがいいと考えますので、お尋ねに対しては適切な答弁はいたしがたいと思います。
  12. 平林太一

    平林太一君 只今総理の御答弁を伺いまして、私自身ひそかに肯くものがありますことをこの際申述べておきます。併しそれと相反しまして、御意見に対しましては、必ずしもその通りでないことも考えられる節々があるのでありますが、いずれこれは後の機会にいたしたいと思います。  最後に申述べたいと存じますことは、日米安全保障條約に対することであります。この際私はすでにこの問題におきましては、衆議院の條約委員会におきまして、行政協定等の重大なることにつきましては論議は盡されておるのでありますることを思うにつけましても、この際私は国民的な大きな問題といたしまして、私の所見を述べておくことを極めて妥当と考えまするが故に、むしろ今日この條約に対する幾多の反対論に関することについて、この際私の考えを明らかにいたしまして、総理の御所見を承わりたいと思うのであります。反対論を総合いたしますと、大体次の五つに私は分類するのであります。  第一の反対論は、日本アメリカ国防を委託することは、ソ連や中共を刺戟し、我々の希望する平和が却つて害せられるのではないかという反対論であります。併し私はそうとは思いません。アメリカ軍駐屯を許し、基地を提供するゆえんは、日本の国土を外部の侵略から守らんとするものでありまして、日本侵略せんとするものにとつては非常に不便なことでありますが、日本に対してそんな野心を持たないものにとつては何らの痛痒もないはずであります。米軍駐屯以つて日本アメリカ軍事同盟を結んで侵略を企てるなどと喧伝をするはばかばかしき限りであります。併し日本アメリカ国防をお願いして、日本共産勢力側国防をお願いしなかつたことは事実であります。併しそれによつて日本世界の平和を促進する上において大きな貢献をしたものと信ずるのであります。  第二の反対論は、日本を無防禦のまま放置しても、どこからも侵略して来るものはないという反対論であります。この点は日本に対してなお恨みの解けていない濠洲フイリピンを含む自由世界全部の認識と、社会党のかたがた認識と食い違つておる点でありまして、我々にとつては誠に奇異に感ぜられる点であります。総理がしばしば述べられた通り、南朝鮮の例を見れば、為にするものを除いては、何人もその反対論の非現実的であることを悟らないものはありますまい。  第三の反対論は、不面目であり、恥辱であるという意見でありますが、何人国防を他国にお願いすることを以て名誉と心得るものは日本人中一人もありますまい。併しそんな屈辱を忍ばなければならないのは、無條件降伏という更に遥かに不名誉な敗戰の結果であります。不名誉と称して丸裸でおりたいと主張するかたがたは、より大なる亡国という不名誉を待ち望む者以外はないと信ずるのであります。  第四の反対論は、日本アメリカ協定して、アメリカ軍日本国防に当ることは、取りも直さず日本軍隊を持つことになる、それは憲法違反ではないかという反対論であります。この議論アメリカ軍日本のサービスに入り、日本の傭兵ということを意味するものであつて、理論的にも事実上にも許しがたい議論であると信ずるのであります。日本駐屯するアメリカ兵は飽くまでアメリカの機関であります。アメリカ軍隊であつて日本軍隊になつたのではないのであります。  最後に第五の反対論でありまするが、ネール首相によつて唱えられ、サンフランシスコ会議において、エジプト代表を初め、アラブ諸国代表者から交交発せられた説でありまして、條約第五條において、日本が自発的に集団的安全保障取極を結ぶ権利があると規定してあるけれども、占領治下にある時代に、日本がそんな條約を結んでも自発的と言い得ないから、一旦アメリカ軍は完全に撤退して、その上で結ばねばならんという議論でありますが、不幸にして現在の日本はそんな悠長な手続をとることは許されない状態にあることは、識者を待たずしてこれを肯き得られるのであります。お客様玄関先に何どき土足で侵入するかというので、お客様玄関先に待ちかまえている、いつ土足で侵入するかというのが我々の今日の見通しであります。ただ残念なことは、ネール首相ほか折角の御好意が、その真意を解しない一部の日本政治家にとつて、あたかもインドに学んで、日本中立的態度をとり得るかのごとく誤解され、却つてこれが国論の分裂に役立つた結果になりましたことには、返す返すも残念であります。  以上は本議場を通じまして、安全保障條約に対しまする国民の関心極めて大でありまするが故に、このことを私の所信を明らかにいたしておく必要を痛感いたしたので、あえて申述べた次第でありますが、なお総理におかれましても、全国民に対しまして、本議場を通じて、これに関連して述べられんとするお考えがありまするならば、この際これを明らかにいたして頂きたいと思う次第であります。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 安全保障條約の趣意は、日本独立をした、その独立をして、その独立安全を如何にして守るかという問題に対する一つの回答であるのであります。即ち私は安全保障條約によつて日本の得た独立を守る、或いは中立條約とか、或いは国際連合に入るとか、いろいろな案がありますが、私は日本の得た独立安全は、一応安全保障條約によつて守るので、これが不名誉であるとか、或いはこれが却つて平和を破壊する、若しくは日本侵略を招くようなことになる、即ちこういう議論があるとの只今のお話でありますが、希望を言えば、日本みずから再軍備でもして、そうしてここに日本独立を守るということができれば結構であるでありましようが、又国民も満足することであると思いますが、私は今日再軍備はしておらないのみならず、又再軍備は当分日本の国力の回復する間はすべきものではないと考えておるので、安全保障條約以外に独立を守る方法がない、これが一番安全を守るゆえんであると確信を持つて、この條約の調印に当つたのであります。で、この條約は、安全保障は自国の安全を守るのであつて、進撃、侵略を目標としておるのではなくて、全く一つ自衛手段であります。又この自衛のために外国の軍隊を招くことは不名誉である、こういう議論はこれは率直に申せば古い議論である。今日は集団防衛の非常に激しい場合で、各国共集団防衛手段を講じておるので、その集団防衛手段を講じたからといつて不名誉だということは、私の首肯できないところであります。又占領下に結んでは不都合だ、こういうネール首相主張であるとしましても、これは一つ意見でありましようが、事実において、米国から強いられて、是非ともこの安全保障條約を締結しろという強いられていたしたのではなくて、何らの脅迫も、又或いは圧迫も受けたわけではなくて、互いに話合つた結果ここに到着をいたしたのであつてネール首相議論はこれは事実に違うものであると思います。要するに日本独立を守る手段として、現在において私は安全保障條約がいいと考えるのであります。その他の手段については議論はとにかくとして、私の一々承服できない点もありまするので、安全保障條約を以て一番正しい考え方であると今なお確信しておるわけであります。
  14. 平林太一

    平林太一君 只今総理より私の希望並びに意見に対しまして御開陳がありました。私も誠に同感の意を表する次第であります。今後本日の総理の御開陳によりまして、全国民安全保障條約に対しまする心構えを十分にすることができると深く信ずる次第であります。誠に我が国のこの條約に対する態度の上に幸慶をもたらしたと信じて疑わざる次第であります。爾余の問題はいずれ逐條審議に譲りまして、本日はこの程度にとどめたいと思います。  最後委員長大隈信幸君が私の発言を許可せられまして、私の意思をここに述べさせて頂いたことを深く感謝いたしまして、私の質問を打切る次第であります。   —————————————
  15. 曾禰益

    ○曾祢益君 本日は若干の重要点につきまして、吉田総理大臣に御質問申上げたいと存ずるのであります。細目の点につきましては、逐條審議の際に政府委員のかたに伺うつもりでございますから、今日は吉田総理に御質問を申上げます。どうぞ時間も短時間でございますから、総理の御答弁も懇切且つ簡単にして頂きまして、御協力のほどをお願いしたいと存じます。  第一に、先般の総理の本会におきまする両條約に対する御説明を伺つたのでありまするが、我々は国民と共に独立を迎えまする日本の現政府の外交の基本方針、或いは方向というような大きなる点について何らこれというものを伺つておらないのでございます。その点はまことに重大な欠陷ではないかと存ずるのであります。その後、私は総理に対する質問、本会議及び衆議院特別委員会における質疑応答を通じまして、いろいろ調べたのでございまするが、私の承知する範囲におきましては、総理の外交方針の基調というものは、恐らく衆議院の本会議におきまする鈴木正文君に対する答弁の中にややその形が現われておると思うのであります。それは結局政府の外交方針は、自由国家群に身を投じまして、そうして自由国家群の一員といたしまして、独立と自由と平和とを確保するにある、かようなことになるのではないかと思うのであります。このことはその基本方針として私も異存はないのでありますが、ただ総理の御答弁では、実は方針というよりも四十八カ国その全部が自由国家群に属するのでありますが、四十八カ国との間に講和ができた、即ちそれは客観状態がそうであると言つているのに過ぎないのであつて、それは何ら方針そのものではないのではないか、私はかように考えるのであります。而も総理のその後におきまするいろいろな質疑応答を通じまして、これは決して揚げ足をとらんとする意味ではございませんが、確実なる証拠といたしまして、例えばです、自由国家群に属する日本の立場について、更にかようなことを申されておるのであります。同じく鈴木正文君に対する御答弁の中に、いずれの陣営にも付かない中立の態度はあり得ない。更に進んで、自由国家群に対して共産群を排撃する、共産国家群という意味だと思いますが、共産群を排撃するという態度に出ずべきものだと確信する。かようなことを言つておられます。又柳橋小虎君に対する御答弁の中で、共産主義国と外交を調整することはできない。更に又、日本において共産主義の宣伝の中心を招き入れることはできない。かような御答弁があるのでございます。このことは、その意味からいたしまするならば、国の外交方針を決定するに当りまして、イデオロギー的な、思想的な立場からこの外交をきめて行くという態度を意味するのではないかという危惧を持つものでございます。元来イデオロギーが外交を支配するということが如何に不幸であるかということは、吉田総理も長い御経験の間におきまして、曾つて日本におきましても、日独伊枢軸外交論というものが非常にはやつたことがあります。かようなイデオロギーによつて国の外交を支配するということは、私は非常に危験なことではないか。現にアメリカにおきましても、アメリカがいわゆる民主主義自由国家のチヤンピオンであることは当然でありますが、このアメリカの外交におきましても、元来全体主義、独裁主義に非常に反感を持つておるアメリカにおきましても、スペイン、ユーゴー等の、これは何といいましても独裁主義の形体の国であります。その左右いずれを問わずこれらの国との国交調整も現にやつておるのではないか。又中立という観念は実は極めてあいまいであり、極めて多種多様に使われておるのでございます。日本が自由国家群の中にあるという客観的な事実を以てして、直ちに外交上或いは国際法上の中立はあり得ない、こういう結論は私は出るとは考えないのでございます。例えて申しまするならば、自由国家群の中にも、或いはヨーロツパで申すならば、スエーデン或いはスイス、或いはユーゴーも政治的、軍事的の中立ではないかと思いまするが、更に広いアジア・アラブ地域におきまして、多くの政治的、軍事的の中立国はあると思うのでございます。そこで独立日本の外交の基本というものは、世界平和機構である国際連合を支持し、その下に世界平和を確保し、殊に当面の国際平和の脅威であるところの国際共産陣営の軍事侵略に対しては先ず自由国家群の提携によつてこれを防止する。一方西欧陣営からかりそめにも予防戰争のごとき措置に出でんとするものあらば、これ又我々として抑止して行く。同時に自由アジアの政治的、経済的解放とその地位の向上に向つて西欧陣営の反省を促して行く、以て自由世界内部におきまする真の正義と平和とを樹立して行く必要があると存ずるのであります。更に又一層具体的な問題といたしましては、我々は隣邦であるところのソ連、中共に対しましては、一方におきまして我が国独立と安全に関する基本條件についてはこれを断固ととして譲らない。而もその外交は飽くまでイデオロギーに拘泥しない、進んで正常な、ノーマルな国交の回復に努むべきではないか。以上の意味から、日本の外交は、自由国家群の中に身を置きつつ、而もアメリカ一辺倒に陷らぬような自主的な外交方針を樹立して行くべきではないか、かように考えるのでございますが、先ずこの点に関しまして、総理の御所見を伺いたいと存じます。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の外交の基本方針がないとおつしやつたようでありますが、あるないは別としまして、只今曾祢君のお話になつた外交方針は結構であります。決してこれに対して異存は申しません。又イデオロギーを以て日本の外交の基調とするような考えは毛頭持つておりません。外交は実際問題でありますからして、実際的に考えて、イデオロギーのために云々というようなことは断じていたさないつもりであります。  それから私が中立云々と申しましたのは、これは私の答弁の一部であつて、一部をお捉えになつてとやこう言われては甚だ迷惑千万で、全体の議論を御覧になつて私の意のあるところを御想像願いたいと思います。私が中立はあり得ないと言うのは、中立によつて日本独立を守るということはできないという意味合であつたのであります。即ち仮に共産、自由両陣営が対立いたしておるとして、その間に中立で行く、これは中立條約はしばしばこちらにおいて一方的に破られたことは外交史上明らかなところであつて中立條約があつたからといつてこれで以て安心はできない。とすれば、これは結局安全保障條約のごときもので以て一応の日本の中立の安定を守る、こういう考え安全保障條約を今後調印したことは曾称さん御承知の通りであります。一応お答えいたします。
  17. 曾禰益

    ○曾祢益君 中立不可侵條約に安全保障を託するわけに行かないという意味の点につきましては、私も同感であります。安全保障條約につきましては後刻伺いたいのでありますが、次に外交の問題といたしまして、中国の問題について御質問申上げたいのであります。  申すまでもなく平和條約の第二十六條の解釈からいたしまして、我が国は中国政府から希望があつたならば、本條約と実貿的に同一の條件で平和條約を結ぶ用意が向う三年間なければならないことになつているのであります。併しその中国政府国民政府であるか、或いは中共政府であるか、この点につきましては、これは明らかに日本の自主的な独自の判断に待つべきものと存ずるのであります。若し新聞等に伝えられるごとく、国民政府締結しなければアメリカが平和條約の批准を肯じない。或いは今後の日本との協力に対して支障を来たすというような事情があるのか、或いはさような圧力が加わつているかどうか、この点を先ず伺いたいと存じます。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今御質問のような圧力とか或いは圧迫とかそういうことは事実は何もございません。ただこれは過日も申したように、中国のうちいずれを……中国政府を招請するか、或いは中共を招請するかということについては連合国の間に一致を欠くために一時ああいう日本に選択権を與えるような條項ができたのであろうと想像いたします。併しこれは今後の問題であつて、どちらのほうに接近しなければ、どちらのほうを選ばなければならんかというような関係は毛頭ないのであります。
  19. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の御答弁で、日本に独自の態度が当然残されているというふうに了承するものでありまするが、そこで政府といたしましては、朝鮮動乱が終結しない。従つてまだ中共と国連との関係も緊張緩和に至らない。かようなことが講和條約効力発生後も不幸にして予想されるような状況におきましては、現在からこの中国政府問題につきましては、最も自主的ではあるが、極めて愼重な態度が日本のためになるのではないか。もつとはつきり申上げるならば、いずれの中国政府承認するといつたような意思表示は、或いは意思表示ととられるような外交措置はこれを避くべきではなかろうか、私はかように考えるのであります。この点と併せまして、現に台湾におきまする台北の在外事務所を開設することに目下国会において審議中でございまするが、これが通過いたしましていよいよ在外事務所を開く、更に又、それより先に連合軍総司令部から参りました覚書によりまして、その国との話合いによりましては、この在外事務所が更に在外公館になり得るということがあるのでございます。従いまして、この在外事務所を開くまではまだよろしいといたしまして、この在外事務所が正式の公館になる際に総領事館或いは領事館のステータスにするとか、或いはこれを大公使館のステータスにするとかいう点は、その国の政府日本から見た承認の意思と関連するものでありますので、この点は如何に処理される御方針であるかを伺いたいと存ずるのであります。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これまで在外事務所を設置する趣意は、多くは商業上、若しくは日本在留民の保護というようなことを主眼にしているので、これまで開設いたした在外事務所に赴任する者には、主として通商貿易の関係を重視して、貿易会社或いは通商会社の出先になつたくらいなつもりで以てやるがいい。今日は貿易発展が日本としては最も重要な問題であるのですから、外交とか政治とかいうようなことは暫くおいて、主として貿易、経済の面に主力を注いで、幾らか日本の貿易発展に資するという形ならば満足だろうと、こう思うということをくれぐれも申しておるのであります。従つて在外事務所、台湾における在外事務所にも、目的は通商、或いは日本人が、在留民があればその保護と通商関係であります。政治的関係ではないのであります。故に若し中共が上海に在外事務所を置いてくれないかということがあれば置いて差支えないと思つておるのであります。そのイデオロギー如何にかかわらず、或いは政治組織如何にかかわらず、通商関係のある所或いは在留民のある所、その保護のためには如何なる国にも置きたいと思います。但し置いたがために、その国も又日本に公使館とか、何と申しますか、事務所を置くと、それが例えば今日或る国のようにこれが宣伝事務所であつたり、或いは又日本におけるいろいろな紛争の指令の中心になつたりされては困りますけれども、そういう治安に関係しない場合には、相手国といえども若し通商の関係で以て置くというなら、これは許すべきであろうと思います。いずれにしても在外事務所は通商貿易及び在留民の保護のために今後置くつもりで、政治的意味合いは含ませないつもりでおります。
  21. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう少し突込んで申上げたくもあるのですが、余りかような機微な問題につきましては、総理の確言を求めるより、私の希望を申上げておきたいと思います。どうぞこの国民政府、中共政府の問題につきましては、飽くまで圧力に屈することなく、日本の独自な冷靜な立場からやつて頂きたい、愼重にやつて頂きたい、この点を、申上げまして次の問題に移りたいと存じます。  朝鮮問題でございまするが、無論国民政府、中共政府の問題とは本質的に違つておりまして、これは国連が承認いたしました韓国政府日本が和親の状態を結ばなければならないことは当然でございます。併し如何なる條件を以て国交を回復するかということは、この点はよほどしつかりして頂きたいのであります。韓国は、朝鮮は日本と戰つて、そうして戰勝国として日本から分離したものではないのでございまするから、従つて日本がこの分離国との和親の條件につきましては、勝敗ということは当然になく、従つて財産請求権の処理につきましても、本来ならば第四條(a)項のように、この当該地域の現地当局との間に飽くまで平等な立場から協定すべきであつたと思うのであります。然るにこれが最後に至りまして、(b)項が挿入され、アメリカ軍政当局がやりましたところの処分、或いはこれに基いて現地当局がやつた処分を認めるということになつてしまいました。これは私は非常に大きな結果を日本の公私有財産その他の請求権に與えるものと思いまして、甚だこれは政府の失態ではないかと実は思うのでございます。  併しながらそれはそれとしまして、現に朝鮮側の代表政府との間にいろいろな予備的な折衝が行われておるやに聞いておるのであります。そこで財産の問題もございまするが、いま一つ大きな問題は、何と申しましても分離される地域の住民の国籍の帰属でございます。で、私は、この問題は日本に将来少数民族問題を残したくない。更に又現在の状況からいいましても、治安上から言つてもいろいろな問題が生ずるのであります。従いましてこの問題につきましては、私は従来の国際法の原則と言つては語弊があるかも知れませんが、先例等に徴しまして、やはり国籍の選択権を與え、そうして若し……、勿論一定の條件がございましようが、一定の條件の人に国籍の選択権を與えるが、その結果、外国籍を選択した者については、人道的な合理的な條件の下にこれは守られなければなりませんが、究極においてはこれは退去してもらう。この原則を打立てて、この原則の上に交渉すべきではないかと思いまするが、これに関する政府の御所見を伺いたいと存じます。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。  朝鮮問題について、或いは国籍問題その他については、これから交渉に入るので、近日交渉を開始することになるのでありまして、従つて又交渉に入る前に当つて私からして細かい具体策についてここに言明をすることは憚りますが、併しながら一応現在朝鮮問題として我々が考えているところだけを申述べますが、従来朝鮮と日本とは非常に親密以上の間であつたので、或いは日本化といいますか、日本と同一な、日本国民と同一な待遇を以て同一の国民のうちに收容するような、收容といいますか、包含するような、日韓……、名前までも改めさして、日本化をさせるということに非常に従来の政府が力を入れておつた結果、朝鮮人にして日本に長く土著した人もあれば、或いは又日本人になり切つた人もある。一概に言えないのでありますが、同時に又何か騒動が起きると必ずその手先になつて、そうして地方の騒擾その他に参加するという者も少くない。いいのと悪いのと両方あるので、その選択には非常に……、選択して国籍を與えるわけではありませんけれども、朝鮮人に禍いを受ける半面もあり又いい半面もある。そこでこの問題は感單に行かないので、政府としては朝鮮の将来の関係もありますが、特に朝鮮人に日本の国籍を與えるについてもよほど考えなければならんことは、あなたの言われるような少数民族という問題などが起つて、随分他国で以て困難をいたしている例は少くないのでありますから、この問題については愼重に考えたいと思いますが。現在いろいろ密貿易であるとか密造であるとか、或いは泥棒であるとか、いろいろな問題が朝鮮人に関して紛糾した状態で起つているので、この始未には政府当局としてはかなり困るのでありますから、そこで将来どうするかということになると、愼重にこの問題を取上げて、そうして考えて参りたいと思います。
  23. 曾禰益

    ○曾祢益君 講和條約にはいろいろな不満があるのでありまするが、特に領土問題につきまして若干御質問申上げたいと存じます。  政府領土條項に関しまする御説明は、一言にして言うならば、ポツダム宣言を降伏文書によつて受諾した以上は、ポツダム宣言に書いてありますように日本主権は四大島及び四大国が決するところのもろもろの小島に限る、こういうことをすでに日本は受諾している。従つて條約第二條、第三條の規定はもうすでに予約済みであるから、これに対しては文句が言えないのではないか、かような御説明だと思うのであります。従つてかような原則に立つ限り、総理がサンフランシスコの会議の席上で折角発言されたのでありまするが、その発言の内容は、我々から見るならば甚だ微温的であつて国民の意思を反映しておらないと存ずるのであります。  私は成るほどポツダム宣言の受諾、この通りでございまするが、同時に、ポツダム宣言を受諾して、この四つの島以外のもろもろの小島をきめるに当りましては、その四大国みずからは、やはり大西洋憲章或いは連合国共同宣言の、領土は拡張を求めない、領土の変更の場合には住民の自由意思を尊重すると、この原則に彼らみずからが拘束されるのが当然ではないか。勿論日本が当事者でない協定ではありまするが、日本国民はその点を信頼して、又その信頼が裏切られざるようにこれを要請する立場にある、私はかように考えるのでございます。そこで特に小笠原、沖繩につきましては、日本主権があるかないか、或いは日本国籍が残るかどうかということにつきまする政府の御説明はいろいろ承わつたのでありまするが、私はどうも納得ができないのであります。  第一に、この小笠原、沖繩等の地位は私は二段階に分れると思う。で、国連の信託統治協定ができまして、正式に国連の信託統治になる前の状態が一つであります。その状態が現に今からそうでありまするが、この状態におきまして、いわゆる第三條に言うところのアメリカ当局が行政、立法及び司法上の全部及び一部、これはしばしば指摘されておりますように、訳語もちよつとおかしくないかと思うのでありますが、オール・アンド・エニーを行使すると、このことは、はつきりと一切の領土権、主権の全部及びあらゆるものをアメリカ当局が行使するのでありまして、即ちこの状態におきまする限り、主権が残るということはこれは到底考えられないのであります。で、余り專門的のことは申上げませんが、例えば国際法上のいわゆる租借地、リース・オブ・テリトリイなどを比べましても、常識的に考えましても、主権が残つておるということは非常に無理があるのではないか。  それから第二には、今度は国際連合信託統治に付せられた場合のことを考えて見ましよう。この場合に、これらの地域がいわゆる国際信託統治のいろいろな主権の中で唯一の当てはまるカテゴリーというものは、憲章の第七十七條の一の(ろ)の言うところの「第二次世界戰争の結果として、敵国から分離される地域」と、これ以外には私は断じてないと思う。で、この分離されたという以上は主権がなくなる、領土権も外すというのが、これが常識的な考えではないか。更に又勿論これは全然同じでありませんが、同様な問題としての曾ての国際連盟時代の委任統治の地域の主権の存在の問題についてはくどくどしく申上げませんが、殊に領土権国に主権が残るという解釈は、これは多くの学者がさような解釈をとつておらない。かような点から考えましても、如何に政府は、アメリカ代表或いはイギリス代表の言明で、会議の席上における発言、これは重要なものとは思いまするが、これだけを以てして主権が残る、従つて住民の国籍も日本に残る、かようなことは、どうしても私は無理がある。むしろ正直に言うならば主権はない。ただ第二條と違つて主権を放葉した規定はないだけである。実際の取扱は、アメリカとの話により、或いは信託統治協定の内容によつてきまつて行くであろうが、併し主権があるというようなことは、これはおよしになつたほうがいいのではないか。或いは国際信託統治協定に期限を附して、期限が切れれば主権が還つて来るといつたような説明のほうが素直であつて国民に対して親切ではないか、かように考えるのでありまするが、この点に関するいま一応政府の御見解を伺いたいと思います。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたしますが、領土関係は、又この問題は、将来アメリカと国連との間の話合いになるものでありまするから……、速記をとめて頂きたい。
  25. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  26. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 速記を付けて下さい。
  27. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今の御答弁では、まだ私は日米安全保障條約を作られた政府として、特別にこの北緯二十九度以南の地域を特別地域にまでしなければならないかという事情についてはまだ納得できないのでありまするが、時間がございませんので、賠償問題に移りたいと存じます。  もう今更申すまでもないのでありまするが、第十四條(a)の規定は、連合国、これは全部だと存じまするが、連合国賠償支拂う義務を認めております、一方、日本が存立可能な経済を維特するためには、他の債務と合せて完全な賠償をするには、その能力は現在十分でない、完全な賠償をするためには現在十分でない、この原則の下に、具体的にはいわゆる十四條の(a)の第一号によりまして、日本が占領し損害を與えた国から請求があつたならばいわゆる役務賠償をやる、こういうことになつておるのであります。そこで、この役務賠償は非常に私はいろいろな点で心配があるのでございます。例えば賠償の総額について何ら日本に保証がない。どのくらい要求されるかわからない。勿論一面外国為替の負担を伴わない。それから生産賠償の場合には原料は当診国から出す。更に又他の連合国に対して追加負担をかけない。かような制限が伴つておることは事実でございますし、更に十四條(a)項の大原則に振り返つて見ましても、日本のいわゆる生存可能なる、存立可能なるということが大原則になつておることも事実でございます。併しかような程度の制約の下におきましては、やはり相手国に対しましては、非常に厖大な希望を與えるのではないか、結局現在は完全にはできないけれども、将来日本の力が回復するに連れまして、期限的にも非常に長い間に亘つて日本の生活水準は釘付けになつてしまう。低下ということは許さないにしても、日本国民は働けど働けど……いわゆる蓄積部分というものは、長年に亘つて、従つて非常に巨額な総額になるような賠償を取られるような余地を残しておりはせんか、少くともさような錯覚を相手国に與えることは、それらの国との賠償問題の解決には、主として東南アジア諸国との善隣友好と、東南アジア貿易に重点を指向しなければならない日本としては、非常に国交上却つてつたために難点を生じておるのではないか。私はこの点が心配なのであります。  併せて第二の点の心配なことは、成るほど役務賠償支拂うべき相手国は一応搾つてございます。即ち全連合国ではない、日本が占領して損害を與えた国であつて、これを欲する国、併しその中で私が心配するのは、しばしば中国問題はどうなるか、そこで中国と東南アジア諸国とは私は事情が違うと思います。非常に長い間多大の損害を與えたことは誠に中国に対して申訳ないのでありまするが、同時に今度の講和條約によりまして、中国に対しましてはいろいろな政治特権を日本は放棄した。更に領土問題、これはまだ最終的解決でないといいまするが、これはいずれの政府代表であるかという問題が解決していないだけであつて、少くとも国民の常識といたしましては、台湾、澎湖島を放棄するのは誰のためであるか。中国のために違いない。こういう領土を放棄しております。更に又在満資産というものは非常な厖大なものである。この在満資産をソヴイエト連邦が戰利品として持つてつてしまつたかどうかということについては、これは日本の責任ではございません。従つて領土、政治特権、重大なる在外資産を残したこの中国と東南アジア、これは破壞しただけであつて日本が與えるものは何ものもない。かかる何らの差別を設けてないようなこの役務賠償の規定は、今後日本が中国どの問題を処理するに当つて非常に私は問題を残すのではないか。この二つの点、言い換えますれば、第一に金額的に、又時間的に何らの制約がない。従つて永久に国民生活水準が釘付けになるような心配がないのか。又さような誤解、或いは向うに対する取らぬ狸の皮算用的な醋覚を與えることはまずいではないか。第二点、は東南アジア諸国と中国との間に区別がないのは、これは私は非常に失敗ではないか。この二点に関しまする政府の御見解を総理から伺いたいと思います。
  28. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 新聞記者諸君にお願いいたしますが、速記を中止いたしました部分につきましては記事に掲載しないようにお願いいたします。又今後とも同様のお取扱を願います。
  29. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 賠償の問題につきましてお話がございましたが、私は、善隣友好関係を保ち、共存共栄の立場から行けば、おのずからそこに適当な額が出て来ると確信いたしております。日本の経済を存立可能ならしめ、又東南アジア諸国の開発その他に貢献する気特で行けば話はまとまると信じます。  第二の東南アジア諸国と中国との関係でございますが、お話の点は御尤もであります。我々はそういうことを考え役務賠償その他のことを折衝いたしたいと思います。
  30. 曾禰益

    ○曾祢益君 政府の御答弁は甚だ不満足でありまするが、これは別の機会に譲りまして、次に平和條約と安全保障條約との関係につきまして御質問申上げたいと存じます。  第一に、申すまでもなく平和條約は、敗戰国として、殊に連合国の連合軍の占領下日本が、いわゆるこの平和條約によりまして初めて独立し、対等の立場になる。これはいわゆる主人の下にあるところの僕が主人と結ぶような本質的には不対等の関係にあると存じます。ところが安全保障條約のほうは、これは日本独立いたしまして、日本の必要と、又これと同意見の国との間にその相互の必要が合致しました点におきまして飽くまで対等の立場から結ぶべきものだと、私は確信するわけでございます。従つてさような意味から言いますると、両條約は本質的にはこれは可分である。この平和條約と安保條約との間にはもとより前後の関係がございます。又現在独立はしたけれども自衛力がない日本におきまして安全保障措置が必要である。この点におきましては関連性のあることはこれは認めます。併しながら当然に不可分であるという立場は私にはわからないのであります。殊に国内におきましてはしばしば議論がありまするように、この安全保障條約を欲しいから、言い換えたならばアメリカの軍事的体制を強化することが目的であるので、そのために講和條約をくれてやるのだ、かような意味から両者の不可分を唱え、従つて双方に対して反対すべしという議論があるのであります。私はこの議論に賛成しないのであります。然るに政府は、結論こそ異なれ、結論の根拠において同じような不可分を唱えておられるのではないか。この点は一体どういうことであるか、私はこの点を非常に不可解に存ずるのであります。なぜ然らば政府がかような不可分論的な立場をとらなければならなかつたか、ここに非常に問題があると私は思います。先ほど総理の御説明にあつたかと存じまするが、安全保障條約は決して圧力や何かによつてつたものではない、かようなことでございます。私はダレス氏が今年の二月日本に来られて以来……一月でありましたか、吉田総理大臣との間にいろいろ話合いがあつたことは大体伺つておりまするが、併し今度サンフランシスコにおきまして平和條約を結び、直ちに翌日に而もあの内容の安全保障條約ができるということは私たちは知らなかつた国民も知らなかつたし……果して政府は初めからそういう意図でおられたかどうか。そうなつて参りますると、突然あの内容の條約を作つたことについては、或る種の私は圧力があつたのではないかということをこれは想像するのであります。かようなことであつては私はならないのではないか。安全保障條約は、日本の必要の限界からその内容によつてきめるべきである。当然にこのことは独立後にやるべきことであるが、仮に独立前に話合いをするにしても、講和條約を結ぶ、途端に安全保障條約を結ばなければならなかつたということになりますると、いわゆる左の諸君の言つておられるように、安保條約をアメリカがとるために、講和條約にサインしたのだと、かような外見を呈していることは、これは疑いのないところであります。そこで、かようなことになりますると、いわゆる安保條約そのものが日満議定書的である、或いは日韓保護條約的であるというような議論が出て来るのではないか。現にこのことは決して日本人だけの感覚だけではないのでありまして、昨日二十六日附の読売新聞に出ておりまするUS・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌記者のジヨセフ・フロム氏がかようなことを言つております。初めに、エジプト諸国のナシヨナリズムの問題が如何に厄介であるかということを挙げた後に、「日米両国は目下日本の防衛のために日本米軍駐屯させる協定締結しようとしている。この種の取極は常にデリケートなものだが、日本の場合はその倍もデリケートである。なぜならば、日本はまだ被占領国であり、米国は依然として占領国だからである。若しこの安保條約を永続すべきであるとするならば、それは日米両国により平等の精神に基いて締結されねばならない。米軍当局者は、若し自己の仕事を促進させるために日本政府から極めて大幅な譲歩を得なかつたならば職務怠慢のそしりを受けるであろう。日本政府当局も、若し将来刺激を起したり、恐らくもつと重大な困難を起したりするような條件に反対の意見を強く述べなかつたならば、同様に怠慢だということになるであろう。これら日本の当局者は、如何なる米人よりもよく現在行われる決定の長期に亘る政治的反響を予想することができ、将来確かに米国及び日本を困らせることになると思う措置に挑戰することができる。更に又日米間の現在の交渉の途は落し穴で一ぱいになつている。それは危險な落し穴であり、若し避けられないとすると日米間に間断のない刺激、果ては遥かに重大な困難を生む結果になりかねないのである。」かようなことを言つておるのであります。総理は先般棚橋君に対する御答弁の中で「相手国の希望するときに、日本に有利なる條約を結ぶことは、翌日であろうが、前日であろうが差支えないと思つているのであります。」かように言つておられますが、私はこの現在の世界政局というものが、さように根本的に数カ月の間に変るものとは考えません。従つてサン・フランシスコに行つて講和條約を結んだそのときの條件でなければ、非常に條件が悪くなるから早く結んだのだということは、これは到底受取れないと思うのでありまするが、以上の諸点に関しまする総理の御見解を伺いたいと思います。
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 平和條約は、独立をしない前において、その圧迫の下にでき得べき性質だというようなお話のように承知しましたが、併しながら平和條約については、しばしば米国全権が言つておられる通りに、これは対等の條約であり、対等の意味を持つてできた、こしらえたものであるということをしばしば申しております。その演説は別として、主権の制限があるという場合には、これは不対等と言えるかも知れませんが、何らの主権において制限を受けない、又制限をしない、殊に米国全権は、政府は盡力してくれたのであります。従つて何らかの圧迫を受けてこの條約ができたものでもなければ、安全保障條約を附属條約として、この條約がなければ平和を結ばないぞという話は毛頭なかつたのであります。この点においては可分であります。可分でありますが、併し思想として、考え方として、独立はできた、その独立を如何にして守るか。日本には軍隊を持つておらない、又憲法の規定その他において再軍備はしないと、こう決心しておる以上は、何か條約というような方法で日本の安全なり独立を保護しなければならない、この考えにおいては不可分であります。独立した、併しながら独立を守る方法はないということであれば、これは独立が有名無実になるのでありますから、平和條約を一方に結んで独立ができた、然らばこの独立をどうして守るかということは、思想の上においても当然考えなければならんことでありますから、この意味において不可分と言わざるを得ない。  それからこの安全保障條約が翌日できたとかいうので、何かその間にからくりがあろうというようなお考えでありますが、全然からくりはないのであります。これはしばしば申した通り便宜の問題であります。締結いたすのに都合のいいときに締結するのは当然の話でありまして、而もその條約が日本に不利であるというなら別でありますが、日本独立を守る條約であるとするならば、それが翌日であろうが、前日であろうが一向差支えない。又平和條約といえども独立前に結んだのでありますからして、結んだというより承認したのであるから、この点においては安全保障條約も同じことであるのであります。併し要は、その間におかしなことがあるのじやないか、圧迫を受けたのじやないか、これは全然ないのみならず、アメリカとしても日本独立を與えた、その独立を保障することが東洋の平和なり又世界の平和を守るゆえんであるということをしばしば申しておる通り日本独立よりも、太平洋の安全というよりも、世界の安全のためにこういう條約を結んで、そうして平和を保護する、この観点から出たのであります。それから、突然出たような話でありますが、この安全保障條約の考えはダレス氏が二月に来たときの話合いであつて、而もこの話合いのあることは政党の主なる人は承知いたしておつたと確信いたします。なぜかと言えば、安全保障條約の調印のほうは御免こうむりたい、党議もまとまらないからと言つて(笑声)前以てお断わりを受けた筋もあるのでありますから、全然政党間においてこの問題を知らなかつたというはずはないのであります。交渉はして必ずわかつてつたと思います。以上お答えいたします。
  32. 曾禰益

    ○曾祢益君 私も独立国の日本には、中立不可侵條約や無防衛無抵抗主義ではやつて行けない。従つて国連憲章に基いた安全保障が必要である。恐らくは第五十一條に基いたような地域的集団保障が暫定的には必要ではないか。かように考えるのでありますが、併し今述べられた圧力がなかつたといたしましても、どうも今度の條約は、内容的に見て、これは條約を多少知つている者の常識から言つて、いろいろ恰好が不平等とか、まずい点がたくさんあり過ぎると考えるのであります。先ず不平等の建前に私は立つている。これは平等の建前ではございません。総理は憲法の建前を守り、且つ日本の民心、或いは経済復興と程度、更にまた海外の思感等を考えられて、再軍備の約束をしなかつたこの点は諒とします。併し又そのことがアメリカから見るならば、継続的且つ効果的な自肋及び相互援助といいまするか、ヴアンデンバーグ決議の基本條件がない。だからアメリカから見ると、かような立場、片務的な安全保障はむずかしいという條件もあつたかとも思います。併しそれにいたしましても、今度の日米安全保障條約という、できたものを見ますると、非常に不対等の原則が貫かれておるのではないか。  先ず前文であります。プレアンブルでありますが、日本の懇請に対してアメリカは差当り駐兵をしてやる、かような建前になつております。私は條約の專門家ではございません、何故例えば非常に素人的意見で恐縮ですが、日本の安全と極東の平和と安全は両国共通の関心事である。日本自衛力がないから両国は次の通り協定する、というぐらいの前文で、堂々と平等の立場からやれなかつたかどうか、この点私は先ずわからないのであります。  続けて第一條の駐兵の目的でございまするが、総理が如何に御説明になりましても、これでは駐兵を認めるだけであつて、つまり日本は駐兵を認める。アメリカは駐兵を引受ける。このことが第一條の根本であります。成るほど駐兵の目的が書いてはございます。併しこれだけではアメリカが集団安全保障條約に副うた義務として日本を保障するという條項にはなつておらない。この点は釈迦に説法でありまするから申上げません。例えば北大西洋同盟條約の第五條のごとき、明確なる義務規定はどこにもないではないか。これは駐兵協定であつて、或いは駐兵條項であるが、安全保障條項には通常の観念から言つてならないではないか。  時間がございませんので、続けて申上げます。更に又大規模な内乱騒擾の場合の規定でございます。これは私も国際共産陣営の侵略というものは、直接侵略、間接侵略いろいろな手がございます。いわゆる間接侵略が、多く、いわゆる直接侵略と合わさつて、からみ合つてやられるということがあるし、かような場合に、果して日本が当分の間十分なる自衛力を発揮し得るやということについての懸念は持つものであります。北大西洋同盟條約につきましては、明文は設けなかつたが、解釈においてかような趣旨の内乱騒擾に対しては、やはり武力が発動することを声明しておるのであります。併し何故にかようにわかり切つたことをはつきりとした明文で設けたか。これは一体どちらの立場から述べられたか。日本政府からお頼みになつたのか、或いはアメリカからそれは押付けられたのか、この点はやはり独立国の建前として、非常に重大な点と思うのでありますので、伺いたいと思うのであります。  更に又駐屯の目的が日本安全保障にだけに限つておるならば、これは日本の自主的な立場ということが明らかとなるでございましよう。併しそうではない。極東における国際の平和と安全の維特に寄與するためにという條項があります。これは一応尤もなようでございまするが、併し日本から見れば、日本みずからが守られることそれ自身が、消極的ではあるけれども、最も大きな極東の平和と安全に対するこれは貢献なんだ。それ以上のことは日本から要求するのは、日本自身自衛力がないのでありまするから、そのようなことまで書く必要はない。して見ればこれはアメリカ側の要請であるということが明らかになるのではないかと思うのであります。政府は説明書等によりまして、このアメリカ軍日本を基地として国際平和、日本の安全のために外国に出動するということは非常に当然のようにこう考えておられるのでありますが、私は、又アメリカ側といえども、勝手に、みずからの認定で外国に出動するために日本を基地化するという意図はなかろう。これは国際連合憲章から見まして、いわゆる国際平和と安全のために出動する場合には、安全保障理事会の決定若しくは総会の勧告のあつたときに初めて出得るのだ、私はかように考える。併しよく調べて見ると、それ以外にもあるような気がするのであります。即ち五十一條に基くところの集団的自衛権の発動として、必ずしも国際連合の機関の決定なり勧告なしに出動する場合も出て来るのではないか。それはどういう場合かと申しますと、現実にはフイリピンとの防衛同盟條約の発動として、或いはオーストラリア、ニユージーランドとの防衛同盟の條約の発動として出て行く場合、かような場合も予想されるといたしますれば、結局日本は必ずしも必要でないのみならず、見方によつて日本に対する一つのこれは牽制としての駐兵ということに事実上なるのではないか。私はかようなものは、日本自衛力を持つていない現状で、従つて相互防衛的な太平洋同盟條約になつておらない今日、かようなものを押付けられる理由はないと感ずるのであります。  次に第二條の規定のごときは、極めて明瞭なる不平等関係を私ははつきり示しておると思います。  更に最後に第四條の規定でございまするが、この四條の規定は複雑難解でございます。複雑難解でありまして、要するに、国際連合が完全にその自身の治安、安全保障能力を持つというようなことは、いつかわかりません。して見ますると、日本自衛力を持つとき、或いは日本自衛力を持つて、完全なる相互主義に立つた、いわゆる集団安全保障條約ができるとき、いずれもこれは日本自衛力ができることを当然の前提にしております。而して吉田総理はしばしば言われたように、この日本自衛力建設ということが先の先であるとすれば、この第四條に具体的にはつきりとした期限を設けてないということは、第四條の規定は事実上において半永久的駐屯を意味することになるのではないか。この点が更にいわゆる不対等関係から見て非常に大きな問題と存ずるのであります。  更に又この安全保障條約に関連する吉田、アチソン交換公文を拜見いたしましたが、私は何故にかような交換公文を安全保障條約と一緒に作らなければならなかつたかわからない。日本講和條約に基き、且つ国連に参加を希望する日本といたしましては、朝鮮動乱が続いておるか続いてないかは、続かないことを希望するのでありますが、続いておるような場合に、講和後も続いておるような場合に、日本が国連軍に援助することは当然である。そのときになつたら、そのときに日本アメリカとではなくて国連当局との間に如何なる軍事的便宜を與うべきかを具体問題をきめればいい。それにもかかわらずアメリカのアチソン国務長官と日米安全保障條約を作つたときにこの講和後の国連の援助問題を話したいということは、これ又私は不対等の原則からなされた事象ではないかと思うのであります。  最後に憲法に反する問題でありまするが、いろいろ政府のお考えを伺つたのでありまするが、私はどうしても納得できない。若しこの行政協定も、これは七十三條による條約である。併しこの安全保障條約によつて事前に、あらかじめ承認を與えているのだから、それは一向憲法に違反しないのだ、かような御議論のようでありまするが、若しそういう議論をして行きまするならば、国会が一切の法律、條約、或いは予算の審議はしなくてもいいからと言つて政府に白紙委任をしても、これが合憲法的であり、民主主義に反しないのであるか。かような議論にすら発展しかねまじき、私は非常に無理な論法をしておられると思うのであります。  で、殊にこの実際の判定の基準というものは、形式ばかりではなくて、内容が非常に重要だと存じます。この内容たるや如何に重要であるか。如何に国連に関連する問題であるか、如何に国民権利義務に重大な関係があるかということについては、すでに皆様が、或いは米比間の條約におきまして、協定におきまして、内容はほぼ想像がつくのであります。かような重要な内容のものを政府は一方におきまして白紙委任状を取り、他方におきまして必要なものは法律或いは予算で国会の審議に附する。これは全く私に言わせれば矛盾ではないか、かように考えるのであります。従つて私はこの行政協定に対する白紙委任状も、いろいろ考えますると、実は行政協定の内容ができてから、それと相待つて安全保障條約を締結して、そうして併せて国会の審議に持つて来るというのが、政府の予定ではなかつたか。これは想像でありまするが、それが常識的にそうである。然るに急遽安全保障條約の行政協定の内容に関する話合いが付かざるにかかわらず、安全保障條約の調印を余儀なくされた跡がそこにも私は歴然としているではないか、かような感覚を持つのであります。  今度の安全保障條約及び平和條約につきまする正式の政府の議案といたしましては、両條約限りでございまするが、この比較的軽徴ともいうべき平和條約に関連する二つの議定書と宣言、安全保障條約に関する交換公文は、政府の御説明によれば、併せて一括御審議御承認を願います、こう言つておられる。これが本当であつて安全保障條約を急遽やつて、行政協定は実はまだできておらない。だから白紙委任状をくれ、これは非常に無理である。そこに国際関係から来た無理というか、歪みがそこに現われているのではないか。どうしても納得できないのであります。  最後に私は、この行政協定の如何に重要かということについては、政府も十分御承知とは存じまするが、今行政協定すらできておらない、まだ占領下であるこの過渡期におきまして、いろいろ日米国交上忽せにできないような事件が起つておることを御注意申上げたいのであります。例えば、元の軍工場が民需に転換しております。これは横須賀市の例でありまするが、その民需に振替えました工場が、又軍事施設として強烈にこれの接收の問題が起つておる。更に又或る特需工場におきましては、事実において日本の労働基凖法その他労働関係法規が全然励行されておらない。かような状態を政府は放任して置くならば、日本が折角安全保障を依頼しようというこの日米関係から見て、先ほどのロムロ氏の所説のごとく、これは非に重大なことではないか。どうぞこの点につきましても政府が確固たる、この過渡期から行政協定に至る間に十分なる御注意があつて、真劍に国民権利義務を守り、日米間に累を及ぼさないような措置を講じて頂きたいと存ずるわけであります。  以上一括いたしまして重要点につきまして総理の御答弁を願いたいと思います。
  33. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 問題が專門的でありますからして、條約局長から一つ答弁をさせます。
  34. 曾禰益

    ○曾祢益君 條約局長なら逐條審議のときで結構です。
  35. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 質問の点につきましては、逐條審議の節、いずれ詳細に私どもの考えを御説明申上げるときがあると思いますから、今日は頭に残つております点だけを御答弁申上げます。  第一に、御質問の点は、この日米安全保障條約が対等的でないのではなかろうかという点でございます。勿論私どもといたしましても両国間の安全保障体制を考える場合には、完全に相互対等の立場をとりまして條約を作成することが一番いいと考えておりました。そういう考えで終始話をいたした次第でございます。併しながら、何と申しましても、條約は国家間の話合いでございまして、相手国にも又越すに越されぬ一つの枠というものがございます。曾祢委員が言及なされました、いわゆるヴアンデンバーグの決議、この決議によれば、日本は未だ合衆国と対等の恒久的な安全保障体制に入り得ないという嚴たる粋がある以上は、でき上る文書が我々から見ますれば、幾分不対等的な感触を受ける点があることは、正直に認めるほかはないと思います。併しながら可能な限度においては対等という筋で作成されておるのでございます。むしろ私どもから申しますと、不平等という声は、合衆国内部から起る懸念さえありはしないか。合衆国としては、日本を守る義務だけ負つて日本から合衆国を助けるという保障がないというような、そういつた意味での不対等論が合衆国内で起るかも知れないと考えるらしいでございます。  それから第二点は、合衆国の日本に対する防衛の保障というものが不十分ではないかとの点でございます。理想論としては北大西洋條約のような本格的な安全保障体制にある相互防衛義務を明文化して置くのがよろしいという御意見でございます。その点に対しては、第一問に対する答で答えて置きましたのですけれども、この前文と第一條、第四條を総合して考えまして、外部からの日本に対する武力攻撃を防止するために軍隊を置いて欲しいとの希望を述べ、その希望を合衆国は応諾して米軍日本国内に置くことを承諾する、いわゆる申入れと承諾、この関係の中には、日本希望を表示しましたような事態が発生しました場合には、日本を防衛してやるという約束が当然含まれておるのでございます。その点は、この暫定協定が、第四條にあるように曾祢委員の理想とされる本格的な安全保障体制によつてつて代るまで、日本地区の平和と安全を確保するのが目的でありますので、当然そう考えてよろしいと思うのでございます。  又曾祢委員が引用なさいました北大西洋條約の第五條の文句を取りましても、それには「兵力の使用を含み各締約国が必要と認める措置をとつてお互いに助ける」ということになつておりまして、必ずしも武力を行使して守つてやるという條約義務が直接には出ていない、非常にゆとりのある表現になつておるのであります。この第五條の規定すらもが、合衆国上院で審議なさいましたときに、合衆国としては行過ぎておるという議論が出て、非常な紛糾を来たしたことは、曾祢委員御承知の通りでございます。自然その後合衆国政府安全保障條約における援助義務の規定の仕方に対しては非常に愼重になつて来ております。八月にできました濠州、ニュージーランドの條約、フイリピンとの條約を御覽になりましてもわかりますように、各国は憲法上の手続に従つて、何とありましたか、共通の危險に対処するように行動することを宣言するとなつておりまして、條約上の義務とはなつておりません。憲法上の手続にして所要の措置をとることを宣言する。こういうふうに極めて緩和された表現になつて来ております。それから又今引用しました二つの條約には、太平洋における合衆国軍隊に対する武力攻撃は、自国に対する武力攻撃とみなすという條文もございます。それから見ましても、日本にいる米国軍隊に対する外部からの武力攻撃は即ち合衆国に対する武力攻撃であるということで、この第三国との條約関係におきましても、日本としましては、日本にいる合衆国軍隊に対する武力攻撃という事態が発生した場合には、必ず防止する措置をとつてくれるとの確信を持つていいと、こう思うのであります。  第三の点は、この條約の第二條、日本が第三国に対しても軍事的な権益を合衆国の同意を得ないで與えることをしないという條項が日米間において不対等だという印象を與えるという御意見でございます。大体二国間の安全保障協定にはこの趣旨の規定が通例置かれております。併し我々としては国連憲章第百三條の規定があることを忘れてはならないと思います。同條によりますと、国連憲章があらゆる加盟国の締結する條約に優先することになつておりますので、この第二條も無論国連憲章の第百三條の枠内で考えるべきでございます。第二條から不当なる結果が日本に対して生れることはないと確信いたしておるわけでございます。  第四点は、交換公文をこの際取交わした意味がわからないという御意見であつたと思います。この交換公文の話はサンフランシスコで突然起つたものではございません。すでにこの二月の総理とダレス特使との会談のときから起つた問題でございます。その当時の経緯を申上げればすぐ御了解行くと思います。この話が出ましたのはこういう次第でございます。当時すでに朝鮮動乱が起つておりました。従つて日本が朝鮮動乱における軍事行動に参加しておる各連合加盟国に援助を與えておる。併しその援助は何ら法的根拠がないものでありまして、主として国連最高司令官であるスキヤツプの日本政府に対する要請を日本が応諾してやつておる事柄であります。従つて平和條約ができまして占領管理が終了いたしますと、スキヤツプもなくなります。で、今日スキヤツプからの依頼に応じて国連協力の精神から日本が提供しておる援助が、爾後法的根拠をなくすから、この法的根拠を明らかにして置く意味において平和條約発効後日本の朝鮮動乱における行動に参加しておる各連合国に対する援助の関係を明らかにする文書を作つて置くことになつたのであります。それからもう一つは、その援助を日本が與えるについて、大体当時は、現在もそうでありますが、全部国際連合各国がドルを持つて来まして、そのドルによつて日本の市場でいろんな物資を買取つて朝鮮に送つております。ですから、そういうやり方、いわゆる国連がドル資金を持つて来て日本国内で物資、資材を購入して朝鮮に送るというふうな財的方面での協力の方法も現在通りにして行きたい。乃至は将来各加盟国政府日本政府との話合いができれば、それによることにしたいという趣旨も明らかにして置きたい。こういう意味でできたものでございます。決して突然できたものでもありません。この交換公文がないと、やはり今度は曾祢委員から必ず反対に平和條約発効後における朝鮮動乱に参加している国連加盟国政府に対して日本が現在與えている協力は如何なる根拠に基くものでありましようかというような御質問が出るかと思います。(笑声)その意味で用心よく当然の事柄を念のために文書で明らかにすると同時に、経費の面におきまして、当時は不明暸であつた点を日本政府と各連合加盟国との間で話合いできめることができるというふうに明白にした次第でございます。  なお、その他いろいろ問題がございましたが、それらの点につきましては、逐條審議の節に御答弁申上げることにしたいと思います。
  36. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それではこれで一時半まで休憩いたします。    午後零時二十六分休憩    —————・—————    午後一時五十五分開会
  37. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは午前に引続き会議を開きます。
  38. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 吉田総理大臣は、平和條約は和解と信頼の寛大な條約であつて、欣然これを受諾するものであると言われておる。又安全保障條約は、共産勢力が予告なく南朝鮮に侵入した事実があるとき、日本独立と安全を守るためにはこれを考えざるを得なかつたと言われております。私は両條約の細部に亘つてはともかく、総理大臣の基本方針には同感でありまして、日本が今にわかに全面講和を結ぶことができない以上は、差当り日本と友好を回復したいと考える列国との間に平和條約を結ぶよりほかはないと考えております。又日本が憲法で軍備を放棄しておる、そうして警察予備隊だけで国内の治安をやらなければならない現状におきましては、外国からの万一の侵略に対しまして、国際連合、又は憲法の前文に言うごとく、平和を愛する諸国民に信頼して我が国の安全と生存を保持しなければならないと考えるものでありまして、この意味におきまして安全保障條約の締結も差当りは止むを得ないと考えるのであります。吉田総理大臣が両條約の締結に当りまして努力されました御労苦に対しましては深く敬意を表します。併しこの両條約の締結は、総理大臣の言を以てすれば、自由主義国家群に投じて世界の平和を守り共産主義の崩壞を助けるていものでありますから、日本国民が中立的立場をかなぐり拾てて、共産主義圏を敵に廻す一大決心をするのでありまして、国民の多数が両條約の締結に際し多大の不安と憂慮を持つのも当然であります。吉田総理大臣が、この両條約のために戰争の危險を釀すとは考えられない、第三次世界戰争を避けるためにこの両條約を作つたのだと言われる考え方を、国民の多数は一方には肯定しつつも、一方には、政府は憲法の解釈等に無理をしてこの條約を結んだのではないかというような危惧を持つている者もあります。又この條約の締結によつて、第三次大戰の到来が必至となるのではないかというふうに憂慮している者もあります。又第三次大戰は避けられないとしても、この條約によつてその時期が早まりはしないかというふうに憂慮している者があるのであります。それで私はこれから総理大臣に対しまする質問を通じまして、総理大臣が両條約締結のために戰争の危險を増すものではないと言われるゆえんを具体的に御説明を願いたいと思うのであります。又憲法に違反しやしないかというような憂いのある点は、質問によりまして懇切に論理的に一つ明らかにして頂きたい。そうして私の質問を通じて国民の懸念を少しでも少くしたいと思うのであります。そのおつもりで御答弁を願いたいと思うのであります。  先ず最初に、吉田総理大臣は衆議院委員会で、日本ソ連との間には、依然交戰権、交戰状態又は戰争状態が継続しておる、こういうふうに言われております。ところが政府委員の條約局長のほうは、降伏文書により休戰状態が存続するので、戰争状態ではないと、こういうふうに言われております。ここに矛盾が起つておりますが、いずれが正しいのか、総理大臣の御所信をお尋ねいたします。  次いで政府は又、ソ連戰争状態に還すためには、日本側に重大な軍事的違反行為があつた場合に限る、こういうふうに説明をしておるようであります。ところがサンフランシスコの会議でも、すでにグロムイコ全権が、アメリカ日本に押し付けたこの両條約は、平和の條約ではない、極東に新戰争を準備したものである、戰火を焚きつける條約であると言つております。又中共のほうでは周恩来外交部長が、安全保障條約は中国その他のアジア諸国に対し重大な新らしい侵略戰争を準備したものであると言つております。従つて日本が両條約を締結することは、ポツダム宣言の違反であつてソ連側としては、日本に対し実力行使をし、占領する当然な権利がある、こういうふうに思つておるようでありますが、この点を総理大臣はどういうふうにお考えになりますか。その当否を一つ御説明を願いたいのであります。  なお吉田総理大臣は、講和條約はポツダム宣言に代るものであるから、従つてポツダム宣言は消滅すると言われておりますようでありますが、何故消滅するのか。英国、米国に対してはともかく、ソ連、中国に対してはそうは言えないのではないかと私は思うのでありますが、その点を御説明願いたい。先ずこれだけ御質問いたします。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私と條約局長と説明が違つておるといたしましたならば、專門家の條約局長の説をとつて頂きたいと思います。なおいろいろ詳細に亘つて專門的な御質問が出ましたから、條約局長から答弁させます。
  40. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 総理の御答弁と私の答えとが食い違つておるというふうな御質問だと思いますが、さようなことはないと思います。この平和條約の第一條を御覽になりましても規定してありますように、日本国と各連合国との間に存在しております戰争状態は、この條約が各連合国日本との間に効力が発生したときに終了するという規定がございまして、その通り、平和條約が日本連合国との間に効力が発生する日において現在ございます戰争状態は終了いたすわけであります。総理戰争状態にあると申されたのは正確でございます。ただ私が申しましたのは、戰争状態というものに段階がありまして、日本が降伏條件を受諾いたしまして、いわゆる現実の戰鬪行為を終了いたすまではいわば戰鬪状態にある段階でございます。降伏後におきましては、降伏條件によつて日本連合国間にあるのは休戦状態でございます。この両者を合して法律上戰争状態と、こう申しておりますので、二つの答弁の間に矛盾はないと思います。で、私が申上げましたのは、今日、日本連合国との間にある状態は戰争状態のうちのいわゆる休戰状態にある段階であります。この休戰状態というものは、交戰国間の合意の結果設定されている状態でございますので、日本側、いわゆる敗戰国側で体戰條件の重大なる違反行為、現実的の軍事行動をとるというような重大なる違反行為がない限り、戰勝国といえども更に戰闘行為を開始することができないというのが国際法上の通念でございます。連合国日本と交戰関係にありまする五十五カ国のうち、四十八カ国は、日本がすでに降伏條件を完全に遂行いたしまして平和関係に入る資格あり、否、それはすでに遅過ぎるという段階に達しておると認定して、四十八カ国と日本との間に平和條約が結ばれました。そのことそれ自身を口実として、その多数国間の見解に同調しない一二の国が更に戰闘行為を再開するというようなことはあり得ないことであります。こういう御答弁を申上げた次第であります
  41. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理大臣からお取消しがありましたからいいようなものでありますが、政府委員からそういうことを言うはずはないと言われますが、速記録に現われておるのでありますから、交戰状態は成立する、そういうふうに言われておるのでありますから、そういうことを言つちやいけないと思います。(笑声)なお、どうも今答弁が足りませんが、講和條約はポツダム宣言に代るものであるから、ポツダム宣言は講和條約によつて消滅すると言われるのは、なぜ消滅するか。ソ連や中国に対してはそうは言えないのじやないかという質問をしておきます。それに対してお答え願いたい。  なおもう一遍條約局長についでだから質問いたしますが、占領管理は連合国による合同的なもので、單独占領は連合国の申合せに反する、こういうふうに言つておりますが、如何なる申合せがあつたか。ソ連から言えば、他の連合国講和によつて占領を放棄したから、ソ連だけが進駐して占領するのだというような理由は成立するかしないか、この点をお答え願います。
  42. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御質問の後段に御答弁申上げるのを忘れましたので、再び御質問を受けましたから御答弁申上げます。降伏文というものは、戰勝国と敗戰国の間の永久的関係を設立するものではございません。文書の性質上、戰勝国と戰敗国との間の戰争状態を終了いたします平和條約が締結されるまでの過渡的文書でございます。これは国際法上の通念でございます。従つて連合国の絶対多数が、日本がすでにこの降伏條件による義務を忠実に履行して平和状態に入り得る資格を得ているという認定の下に、全連合国が参集いたしまして、平和條約に調印する式を開催いたしました。そのうち四十八カ国はこの條約に署名いたしました。そのことによつて日本と四十八カ国との間にはこの平和條約が降伏文書に取つて代るものであるということについては全然疑問の余地がない点でございます。ただ一二その見解をとらない国に対しましては、この降伏文書はこの平和條約に取つて代られたという多数国間の見解を強制し得る法的根拠はないということ、これは事実でございます。  それから日本における連合国の占領管理が單独管理ではなくて、連合国間の協定による占領管理であるのは如何なる文書に基くかという御質問でございます。これは一九四五年十二月のモスコー協定という長文の連合国間の申合せがあります。それによりまして連合国による対日占領管理の機構が制定いたされております。それによりますと、日本における連合国のただ一つの執行機関としてスキヤツプが設けられ、それから連合国の最高政策の決定機関として極東委員会が設けられ、又スキヤツプの諮問機関として対日理事会が設けられることになつております。要するに連合国による合同行為とでも考えられればよろしかろうかと思います。
  43. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に、吉田総理大臣は、中国については、すでに朝鮮事変で以て連合国との間の戰争状態が成立しておるのだというふうに御説明になつておられます。そうであると、日本アメリカ合衆国との間に安全保障條約を締結することになりますと、中ソ友好同盟條約第一條第二項にこういうことが書いてあります。締結国の一方が、日本国又はこれと同盟しておる他の国から攻撃を受けて戰争状態に陷つた場合には、他の締結国は直ちになし得るすべての手段で、軍事的の、又他の援助を與える。こういうふうに中ソ友好同盟條約が規定をいたしております。そこで、日本アメリカの同盟国というような状態にこの安全保障條約によつてなります。そうすると、中共軍と同盟関係にあるソ連が、すべての手段で一緒になつてこの軍事的援助を中共に與えて、そうしてアメリカ連合国たる日本を爆撃し、その他攻撃をするということが、当然に中ソ友好同盟條約上あちらとしては正当になし得ることになるではないか。この安全保障條約と中ソ友好同盟條約、これとの関連についてお尋ねいたします。
  44. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 日米安全保障條約は極東におきます平和と安全の維持のために締結されたものでございまして、何ら共産陣営の言うように戰争の道具ではないのであります。事実合衆国という国は国際連合加盟国でございまして、国際連合規約上戰争というものは否認いたしておりますし、仮に合終国が極東において行動をいたす場合がありといたしましても、それは国際連合加盟国としての行動でございますので、御懸念のような、日米安全保障條約が米国又は日本による戰争行為、戰争誘発行為というようにとられる懸念は、少くとも共産陣営的見解をとらない限りあり得ないことでございます。御指摘になります通り、事実、中共の外務大臣は、サンフランシスコ会議前におきまして、日本が平和條約に、又は日米安全保障條約に署名すればこれを宣戰とみなすという言辞を弄されておることは我々も知つております。署名を終つてすでに一カ月半に及びますが、何ら事態は変化を見ておりません。一種の恫喝的言辞に過ぎないと思います。そういう重要性をおかれないでよろしかろうかと思います。
  45. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 詳細に亘つては逐條のときに又お伺いをすることにして、與えられた時間がありますから、次に移りたいと思います。  今度は総理大臣にお答えを願いたいのですが、この平和條約に軍備の制限條項を設けておりません。これはなぜ設けなかつたか、日本の再軍備を前提として、この平和條約というものが作られておるのじやなかろうかという気がするのであります。この点を伺つておきたいことが第一点であります。  それから第二点は、安全保障條約の前文を率直に読んでみますと、大体こういうことであろうと私にはとれるのであります。それは、日本は、平和條約の効力発生のときにおいて、固有の自衛権を行使するのに有効な手段を持たないから、危險がある。それで日本は、国連憲章と平和條約とによつて承認された自衛のための集団的安全保障取極として、暫定的にアメリカとの安全保障條約を結び、日本国内及びその附近にアメリカ合衆国が軍隊を維特することを希望する。又、アメリカ合衆国は、日本を含めた極東における国際の平和と安全のために、現在若干の軍隊日本国及びその附近に維持する意思がある。併しそれは永久では困るので、日本が攻撃的な脅威とならない範囲内において、又国連憲章の目的とする平和と安全を増進するに必要な範囲内において、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うに足る防衛力、即ち自衛に必要なる軍備を備えるに至るよう期待をアメリカ側ではするのだというふうに諦めるのです。則ち、要約しますと、日本がみずから防衛力、即ち自衛に必要な軍備を持つまでの暫定措置として、日本アメリカ軍を維持することを規定しておるのではないか、こういうふうに思えるのでありますが、この点は総理大臣はどうお考えになつておられますか。総理大臣は安全保障條約は再軍備とは何ら関係ないと言われておりますが、私が今考えるところでは関係があるのじやないかと思うのであります。現に芦田氏に対する総理大臣の御答弁の中にも、国力が許すならば早く自衛力を持ちたい、いつまでも外国の力で独立を守つてもらうことは国民の自主性が許さない。国力が許すならば成るべく早く軍隊を持ちたいと思うと、はつきり言つておられます。又今日の午前の御答弁にも、それははつきり出ておるのでありまして、即ちこの平和條約及び安全保障條約というものは再軍備を前提にしておりはしないか、こういうふうに思うのであります。その点を御答弁願いたいと思います。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 平和條約、安全保障條約、共に再軍備については何ら制限もしなければ、禁止もしなければ、要望もしておりません。軍備を持つか持たないかということは、これは米国の全権の代理の言葉でありましたか、忘れましたが、いずれにしてもこれは日本国民の自由に決定するところである、こう言われておるのであつて、再軍備を前提として安全保障條約を作つたのでもございません。又、講和條約に再軍備の制限のないということも、予定して規定しておらないのではないのであります。何らの関係はありません。
  47. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 何らの関係はないとおつしやるのですが、前文には確かに関係があるように書いてあるのでありまして、まあ水掛諭になるかも知れませんが、どうもそう読めます。それで、再軍備とは関係ないとこういたしますと、この安全保障條約では、日本のみずからの防衛力、則ち自衛に必要な軍備が完成するまでの間は、米国軍又は第四條の国連軍の駐屯を許さなければならんようになる。つまり軍備が完成をすれば、アメリカ軍や又は国連軍はいなくてもいいのでありますが、軍備ができなければ、どうも外国軍の駐屯を永久化するようにこの四條の規定はなつておると思うのであります。そう長くおつてもらうことは、日本国として独立国の看板に僞りがありますし、それから又保護国的の存在に堕してしまう。そういうふうに考えて来ると、どうしてもこれは早く軍備しなければならないという結論に私は導いて行くと思うのであります。総理大臣は、今再軍備するかしないかは何ら條約上拘束されていない、日本人が自由にやれるのだと、こう言われますが、併し日本としては、こういう條約を結んで、向うが、いつまでもこの状態では困るとアメリカのほうでも言つておるのでありますから、再軍備を早くして、そうして、アメリカ軍も去つてもらわなければならん、こういうふうにどうも考えるのであります。この点についてもう一度伺いたい。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) アメリカ軍はどう考えるか知りませんが、日本としては、日本の国力の許すとき如何なる防衛の方法を講ずるかということは、日本国民の自由に決定し得るところで、條約に何らの制限はないのであります。
  49. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 どうもこれは平行線みたいになりましたが、(笑声)私ども條文を読みますと、早く完全な独立国になりますには軍備をしなければならんというふうに、第四條からはどうして出て来る、こういうふうに考えます。  次に、それでは憲法第九條との関係お尋ねをいたします。憲法第九條第二項には、御承知の通り「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」、こういうふうに書いてあります。で、外国の軍隊駐屯さすことは、この憲法の大精神と矛盾をしはしないかという点であります。今日自由党のほうからの御質問で、それは矛盾するというのは間違つておるというふうにお話がありました。併しそう簡單に言えないのじやないかと思うのであります。それで総理大臣は、憲法第九條第一項のほうを引用されまして、この第九條は国際戰争を兵力によつて解決しない、即ち侵略的武力を用いないことを規定したもので、安全保障條約は固有の自衛権発動によつて結ぶもので、憲法違反ではないと、この第一項のほうで片付けられておるのでありますが、第二項には「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。国の交戰権は、これを認めない。」、こうあるのであります。そのことは自衛権のためのものならば戰争をしてもいいかどうか、戰力を持つことも支障がないとするのであるか、これを明白にして頂きたいのであります。総理大臣のお考えを先ず最初に伺いたいと思います。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 法務総裁からお答えいたします。
  51. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御指摘のごとくに、憲法第九條第二項におきましては、前項の目的を達するため戰力は保持しない。こういうことに規定をいたしてあります。これによりまして、日本国がみずから軍備を持つということは明らかに憲法によつて禁止をせられておることは疑いがございません。併し、このことは、第九條の沿革から考えまして、日本政府或いは日本国軍備を禁止したものでありまして、第九條第二項におきまして交戰権という権利は否認をいたしておりまするが、併しこのことは、決して日本の一切の自衛権をも否認したという趣旨ではございませんので、自衛のために外国軍隊の力を借りるという必要がありまする場合に、このことについて第九條第二項が制限をいたしたという趣旨のものではないと考えております。
  52. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 自分の軍力、自分の戰力を持たなければいいのであつて、外国からどんな大規模な軍隊を引つ張つて来てもいいのだ、そうはなかなか言えないのじやないかと思うのです。で、陸海空軍その他の戰力はこれを保持しない、外国の戰力も保持をしない、こういうふうに当然解釈すべきではないかと思います。この点をもう一度念を押します。
  53. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) この規定は、曾つて日本軍備を持ち、その日本軍備というものの行使を誤まつた。それが日本の今日の実情を招いたゆえんのものでありまして、かような意味におきまして、日本みずからの軍備は暫く持たないということが、日本としては適当である、こういう考えで立案せられたものと承知をいたしております。従いまして、この点は、飽くまでも日本みずからの軍備についての制限である、こう解釈をいたすわけであります。
  54. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういたしますと「国の交戰権は、これを認めない。」これはどういうふうになるのでありますか。自衛権との関係において、自衛戰争はどうなるのであるか。その点を明白にして頂きたい。
  55. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国の交戰権は認めないということは、これは日本国が主体となつて戰争をすることは認めな、という趣旨でございまして、これもやはり日本国みずからの交戰権を否認するという意味であると思います。(「わからないな」と呼ぶ者あり、笑声)
  56. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 どうも納得ができませんが、自衛戰争関係はどうなります。
  57. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 自衛のために、国が自衛権に基きまして必要な行動に出るということは、これは何ら憲法において制限はいたしてないのでございまして、それがために国内におきまして国に許されておりまするあらゆる実力を使いまして、事実上自衛のために必要な行動に出るということは十分に考え得るところでございます。併しその場合におきましても、国がみずから交戰の主体となつて交戰権を行使するということはしない、こういう趣旨の規定と解しております。
  58. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それでは大橋法務総裁の御意見では、自衛権による戰争というべきものに発展してもそれは仕方がない、こういう御解釈でありますか。又総理大臣は、やはり国会で、自衛権による戰争は禁ぜられてあるというふうな御答弁があつたように思いますが、これも速記録に載つております。それは取消されたのであるかどうか、この点を伺いたい。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは常識で以て言うべきことでありますが、国が独立してそうして自衛権を放棄するということは考えられないので、私の答弁がどういう答弁であつたか、この間、芦田君は何とか言つていましたけれども、(笑声)自衛の名において戰争がしばしば行われたということは、当時言つた記憶がありますが、自衛のために戰争はしないと、自衛権による戰争も放棄しないということは、私は言つた覚えはないように思います。併しこれは速記録を調べた上で御答弁いたします。
  60. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 憲法第九條の関係におきましてまで納得が行くところまでは行つておりません。併し次に移りたいと思います。日本駐屯する国連軍にあらゆる援助を與えることは、講和條約の第五條に規定しておりますが、そのあらゆる援助というのも限界があるだろうと思います。その援助の限界をどういうふうにお考えになつておるか、それを伺つておきます。
  61. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 代つて答弁申上げます。平和條約第五條に言う国際連合がとる行動に対する援助の措置であります。国際連合が行動をとる場合には、第二條によつて直接とるわけではございませんので、国連憲章の條章に従いまして、当該機関、言い換えれば国際連合総会なり、安全保障理事会なりが、具体的問題が起りましたときに、勧告なり決議なりの方式によつて加盟各国政府に要請する協力の内容を決定いたす次第でございます。ですから第一段におきましては、日本の提供する協力の範囲というものは、総会なり安全保障理事会なりが、具体的問題の発生したときにとる勧告なり、決議の内容によつてきまる、それが第一の條件でございます。その次は、そういつたふうな援助の要請を受けました場合に、日本としてどの程度の援助を供與すべきかという問題があるわけでございます。その場合には日本といたしましては、国の憲法上許されたる範囲内において、而も事実上可能なる範囲内においてこれを提供すればよろしい、こういうことになるのであります。日本といたしましては、軍備を持たない、交戰者にはならないということになつておりますので、武力の提供なり、交戰者の資格を得なければならないような援助は国家として提供するというわけには参りません。又例えば日本と外交関係がない国、又は実際通信関係がない国との間において、外交関係の断絶又は通信関係の断絶を要請したという場合にも、そういう関係は事実ないのですから、従つてこれに対して応ずるわけには行かない。要するに法律的に可能であつて、且つ事実上可能である範囲内において、日本としては援助をすればよろしい。こういうことになると考えております。
  62. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理大臣は、やはり衆議院におきまして義勇隊は許す考えはないと言つておられます。大橋法務総裁のほうは、如何なる原因にもせよ、政府の意思に関係なく軍事的の組織ができることは取締る、こういうふうに言つておられます。そういう意味でなくて私はお尋ねしたいのでありますが、この国連軍に日本人が個人的に志願兵又は義勇兵として入ることは差支えあるのかないのか。この点を伺いたいと思います。
  63. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) これは政策の問題を離れまして、純然たる憲法の解釈という法理的な立場からお答えするということを、あらかじめお断わり申上げておきます。憲法におきましては我が国民が義勇兵といたしまして外国軍隊に応募することについて、それが国民の個人の自由意思に基きまして行われまする場合には、これは何ら憲法上の問題も生ずる余地はない。こう考えております。但し政府といたしましては、現在の我が国民の段階といたしましては、さような、国連軍であろうが、或いは又米軍でありましようとも、義勇兵として募集が行われるというようなことは、只今全然考えておらないわけであります。
  64. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 政府は援助につきまして、これは外交事務の範囲だから国会の承認を経なくてもいいのだというふうに考えておられるようですが、果してそうであるかどうか。予算が伴つたり法律が伴つたりすれば当然国会に諮らなければなりませんが、援助について国会との関係をどう考えておられますか。
  65. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 援肋と申しまするのは、国連の行動に対する援助という意味であるかと存じまするが、これにつきましてはもとより国内法上法律或いは予算を必要といたしまする場合におきましては、これは当然国会の御審議を得てそれぞれ予算或いは法律を成立せしめなければできないということは、これは申すまでもないと考えております。
  66. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に大橋法務総裁にお尋ねしますが、戰力というものはそれでは何であろうか、どういうふうにお考えになつておるのであるか、そうして自衛権の行使に基きまして警察予備隊の武器の裝備は如何なる範囲まで差支えないか、如何なる程度まで差支えないか、それを伺つておきたいと思います。
  67. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 憲法第九條にいわゆる戰分と申しまするのは、陸海空軍力に匹敵するような戰争遂行手段としての力を意味すると考えております。如何なる程度に達すればその力になるかという判定でございまするが、これは結局今日の国際社会の通念に照しまして、現代戰争におきます有効な戰争遂行手段たる力を持つかどうかということによつてきめられるべきものであろうと、こういうふうに考えておるわけであります。この点から見まして、今日の警察予備隊の持つておりまする実力が戰力であるかどうであるかという点が問題となり得ると思いまするが、警察予備隊程度の裝備を以つていたしましては、到底現代の戰争を遂行するに十分なる力ありとは考えておりません。又戰力にならない範囲において如何なる程度までの力が警察予備隊に許されるべきであるかということにつきましては、丁度先ほど申上げましたところによつて御承知を願いたいと思います。
  68. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 自衛権の発動によりまして現実の外国軍の侵入に対して警察予備隊が抵抗するという場合を想像しまして、そういう場合には、どんな武器でもとつて戰わなければならないのでありまして、あらゆる方法で抵抗するのは当然であると思うのであります。そのときにこれは戰力の範囲の武器であるからとるとか、そういうことを言つておるいとまはないと思いまするが、その点はどうですか。
  69. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 自衛権を国として行使しなければならんという事態が仮にあつたといたしまするならば、その場合におきまして我が国といたしましては、あらゆる実力を使いまして有効なる行使を図ることになるわけでありまして、その際におきまして若し警察予備隊がその役に立てられるという場合でありましたならば、当然国内法の警察予備隊の使命とするところに従いまして、これが自衛のために行動するということはあり得ることと考えております。併し、その場合におきましても、警察予備隊の持つておりまする実力というものは、現代戰争を遂行するに必要ないわゆる戰力というものを持つておるわけではございませんので、その活動が戰争になるということはあり得ないことと考えております。
  70. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 戰争になると言えない……、事実上の戰争が起つておると見なければならないのですが、その御答弁では少しおかしいと思うのですが……。  次に平和條約の効力を発生しました後、九十日を経過すれば、極東委員会や総司令部や対日理事会はどうなるのであるか。総理大臣はこの点当然対日理事会等はなくなるであろうと、こう言つておられますが、その根拠を一つ説明しておいて頂きたいと思うのであります。その根拠について、調印国側の了解は十分ついておるのかどうか。これも承わつておきたいと思います。
  71. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御指摘の機関は九十日を待たないで、平和條約効力発生と同時に消滅いたします。その趣旨は第一條の(b)項でございます。「連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権承認する」。これでございます。
  72. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そういたしますと、各国代表部の中で、ソ連代表部は総司令部に対して派遣されたのではなくして、対日理事会に対して派遣されたのであると、こういうふうに承知しておりますが、その関係はどうなりますか。
  73. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 現在東京におりますソ連代表部は、御指摘の通り対日理事会に対して派遣されたものでございます。対日理事会も勿論平和條約の効力発生と同時に解消いたしますので、同代表が東京に派遣されておる目的を失うということになりますので、存在の目的が同時に解消する、こういうふうに考えております。
  74. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その御解釈は、調印国側の了解が十分ついておるのかどうか、又ソ連はそういうふうに同意をしておるのであるかどうか、一方的にこれを廃止するのだと言つても、そこになかなか厄介なことが出て来やしないか。その点について伺つて置きたいと思います。
  75. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 平和條約に署名いたしました連合国四十八カ国に関する限りは、第一條(b)項の規定がございますので、当然私どものほうの解釈と同じ解釈をとつておると考えます。ただこの解釈はこの條約に署名しない国に強制するわけに行かないことは、御諒察を願いたいと思います。
  76. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に領土の問題についてお尋ねをいたします。この平和條約で南樺太と千島列島の権利を決定的に放棄することになるのでありますが、放棄した権利は誰が取得するのであるか。で、総理大臣は、日本としては権利を放棄するだけで十分である、こういうふうに言われております。又これは連合国意見がまだ一致してないからである、将来世界の情勢又は連合国の協議によつて決定すると言われておるのでありますが、ヤルタ協定ソ連への南樺太の返還及び千島の引渡しを規定しておるのであります。そのヤルタ協定との関係はどうなるのであるか。ヤルタ協定に基いて有効にソ連に帰属しないと、こういう御解釈であれば結局日本戰争状態にあるソ連がそれを、南樺太や千島を、不当に占領しておる、こういうことになるのでありましようか。この点を伺つて置きたいと思います。
  77. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御答弁申上げます。第二條の領土條項の規定は、日本に対して当該地域に対する領土主権を放棄することを要求いたしております。放棄された地域がどの国に属するかは、條約によつては規定いたされておりません。その理由は、これらの地域の最終的帰属について、連合国間に意見の一致が、現在見出し得ない問題であるから、この解決方式をとる以外になかつたと米英全権によつて解明されておるのでございます。従つて問題は、日本といたしましては、この地に対する主権を放棄することになりますが、その最終的帰属は、今後連合国間の問題として残る、こう解釈すればいいと思います。御指摘のヤルタ協定、これは米英ソ三国間の協定でございまして、日本としては何らあずかり知るところがございません。要は、日本領土主権を放棄した地域の最終的帰属というものは、日本戰争関係にあります全連合国間の問題でございますので、米国の言う通り、三国間の取極だけでは最終的決定はできないのであります。要するに連合国全般の問題であるのであります。その連合国全般の意思の合致が現在はできないから、この第二條の方式をとる以外になかつたということになるのであります。こういう事態は無論関係当事国にとつて必ずしも満足なものではございませんが、第一次大戰なり第二次大戰のような大きな戰争のあとの領土処分については、こういうことはあり勝ちであると思つて、我々気を長くして事態の解決を待つべきであろうかと思つております。
  78. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 総理お尋ねいたしますが、千島列島の中には、色丹島及び歯舞群島を含まないという調印国の公式解釈が明らかになつておるかどうか。ダレス氏はサンフランシスコ会議における演説では、米国は千島列島の中に歯舞群島は合まないというだけでありまして、色丹島は言及してないようでありますが、その点はどうなつておりますか。
  79. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 私どもの了解いたしております範囲におきましては、色丹島及び歯舞島が北海道の一部である事実は、連合国の絶対多数の承認を得ておるところでございます。
  80. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 色丹島と歯舞島がですか。
  81. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) はあ、そうです。
  82. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 次に行政協定についてお尋ねをします。行政協定については、もうすでにいろいろ御質問が出ております。で、私は端的にお伺いするのでありますが、この行政協定は、吉田総理大臣とアチソン国務長官との間に交換された公文にも言うごとく、安全保障條約の実施細目を定めるものでありまして、條約の内容を具体的に全般的に定めるものであります。それで、合衆国に供與される施設及び役務の使用、そういうことも明記してあります。そうして結局駐屯兵及び駐屯の場所の取極、その治外法権の範囲をどうするか、又治外法権は認めないか、まあそういうことをきめたり、それから国内治安維持のために米国の出動するその基準はどうであるか、それから又行政協定実施の期間等はどうするかというふうな、国家主権に関するような重大事項がやはりきめられるでありましようし、又国民権利義務に関する基本的な問題もその内容とするだろうと思うのであります。日本の司法権や行政権の及ばないものも出て来やしないか、従いまして憲法の條規や既存の法律の例外に亘るものなしとしないのではないかと、こういうふうに思うのであります。それで、まあ重大ではないと、こういうふうに簡單には片付けられないのでありまして、非常に重大であると思うのであります。この安全保障條約によりますと、その行政協定は国会からもう包括的に政府に委任をするというふうな規定になつておるのでありますが、万一この行政協定の内容が、憲法の精神に触れたり又は既存の法律に抵触する虞れがあるときには、政府はどう処理をせられるのであるか。総理大臣は、政府が憲法に違反するような條項は作り得ないであろうというふうに衆議院答弁なすつております。併しそうも簡單に言えないのじやないかと思います。それで、大橋法務総裁は、行政協定の結果によつて法律、予算を必要とするものは、それらの形で国会の審議を認める、こういうふうに言つておられますが、私どもは事後の承認ではいけないと思うのであります。必ずそういうものが出て来れば、事前にその改正を国会に提案をなさらなければいけない、こういうふうに思うのでありますが、その点についてお答えを願いたい。
  83. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 行政協定の内容におきまして、憲法に抵触するがごときことは、実際問題としてあり得ないものと私ども確信をいたしております。  それから、併しながらこの行政協定を実施いたしまするために、予算を必要とし、或いは法律を必要とする事柄は、これは十分にあり得ると思うのでございます。その場合におきましては、行政協定の内容となるべき事柄について、あらかじめ国会を通じて予算、法律を成立せしめ、その後に行政協定締結するということも或いは一つの方法でございまする。併し必ずしもそうしなければならんものではない。場合によつては事後に法律案なり予算案なりを国会の御審議を頂くという場合もあり得るものと存ずるのであります。
  84. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 只今の大橋法務総裁の御意見によりますと、恐らく條約は、法律はもとより憲法に優先するものであるというその学説をおとりになつておるからだと思います。併し憲法に抵触するようなものは決して作らないと、こういうふうに政府がここで確言をなされるということであるならば、憲法の問題はそのままでよろしい。併し法律はともかく全国民代表する国会の議決に持たなきやならんのが当然でありまして、政府がそれを條約によつて一方的に改正をする、又新たにほかの法律を作る、法律に代るものを作るということは、それが軽易なものであればよろしいが、重大なものでは甚だ困るのであります。  それで先ほど申上げましたように、行政協定の包括的委任は甚だ躊躇するのでありまして、そういう重大な法律ならば必ず事前に臨時国会でも何でもお開きになつて、そうして国会にお諮りにならなければならないと、こういうふうに思うのであります。その点、総理大臣から御答弁を承わつておきたいと思います。
  85. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えはしますが、憲法に違反するがごときことは決して含ませません。それから法律若しくは予算に関係することは、事前はとにかくとして、いずれにしても国会の承認を前提としてでなければ協定はできないはずであります。
  86. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 最後にもう一点総理大臣に伺つておきたいと思います。イギリスにおきましては労働内閣に代つて保守党新内閣が成立をしたのであります。そこでこの保守党内閣の成立によりまして、この平和條約に関する批准の問題、こういうことに影響を及ぼすようなことは万ありませんと思いますが、この点に関する吉田総理大臣の御所見を伺いたい。
  87. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 保守党内閣は講和会議以後にできましたものでありますからして、ここで確言するという何らの基礎は持つておりませんが、想像いたしますのに、保守党と日本政府と従来の関係から申してみても、従来よりも一層日本に対して苛酷の條件、或いは苛酷な問題を持ち出すことも想像し得ないのでありますから、この條約は新内閣によつても必ず滞りなく批准に持つて行くようになるであろうと考えます。   —————————————
  88. 木内四郎

    ○木内四郎君 私はかねて本会議でも申上げましたように、この外交の問題、殊に今回の條約のような問題は政争の具に供すべきでなく、全く超党派的に扱うべきものであるという意見をかねがね持つておるのであります。今日もそういう見地に立ちまして、時間の制限もありまするので成るべく重複を避けて、そうして法律的の問題その他はできるだけ逐條審議の際に讓つて国民の非常に心配しておるような点に対して、二、三お伺いして、総理大臣から国民が納得してよくわかるように御説明をお伺いいたしたいと思うのです。  こういうふうな條約はとにかく我々に速かに自主権を回復さしてくれますので、その点において国民は非常に喜んでおると思うのでありますが、同時に一面におきまして、一部においてはこの條約が非常に大きな問題をあとに残しておる。殊に賠償の問題につきましても、又領土の問題などにつきましても、大きな点についてなお吉田総理が言つておられるように、今後の解決に待つべきものがあるのです。と同時に、この條約の相手国も、全部の交戰国がこれに加わつて来なかつた。この関係は一体どうなるのかということを国民は非常に心配しておると思うのです。先般我々の同僚がニユーヨーク・タイムスのレストン氏の説を引用したり、或いはロンドン・タイムスとかオブザーヴアーなどを引用してこの事態を説明いたしましたに対しまして、総理大臣は、ほかの人は、よその人は何と言つても自分の知つたことではない、自分は責任持てぬというお話でありました。日本総理大臣として、そのくらいな見識と自信をお持ちになつてつて結構だと思います。併し事実はやはり動かすことはできないのでありまして、インドもビルマも来ませんでした。中共も、中国のほうも参りませんでしたし、ソヴイエトも調印しなかつた、又フイリピン或いはインドネシアのほうでは、賠償などについて大きな希望の條件も附けておるような状態であります。が併し、総理はこの際、そういうふうになつてつても、インドとは近く戰争状態が終結になる、或いはフイリピン、インドネシアに対してはこういうふうにして自分は解決するつもりだ、或いは中国についてもこういうふうになつて行くだろう、或いはこういうふうにするつもりである、或いは又ソヴイエトなどにつきましてもこういうふうにというようなことを、積極的に総理は、この際、こういうことがあつても、この際この條約を結んだほうがいいのだ、現実の外交としてこれが或いは極端に言えば最善のものであるという、その自信のあるところを、そうして、それによつて国民の一部におけるところの心配を解消させるというような、一つ御説明をお願いいたしたいと思います。
  89. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは納得の行きたくない人に、いくら説明しても納得はできないのでありますから、すべての国民が納得の行くようにというのは甚だ無理な註文であろうと思います。併しとにかく四十八カ国は日本と平和関係に入るということを承知して調印したのであります。それからインドにしても、ビルマにしても、その他の国も、成るべく日本と早く講和関係に入りたいということは声明しておるのであります。それから中共、ソヴイエトといえども日本と永久に交際したくないということは、はつきり申しておらないのみならず、早く、早期講和会議ということを申しておるのでありますから、何かの機会に、何かの方法で、これらの国と日本との間に従来の友好関係が成立することを信じます。  併しながら然らばどうしてやるかというお尋ねでありますが、未だ独立もしない今日、日本が早速中共に向つて話をしかけるとか、国際使節を出すというわけにも行かないのでありますから、この問題は、結局日本独立を回復して、且つ多くの国と議和ができ、独立承認せられた後でなければ、外交的活動は今日において許されないのであります。受身に行つて希望を抱きつつ相手方の態度を待つよりほかにいたし方がない状態でありますから、こういうふうにしてとか、ただああいうふうにしてとかいう積極的の行動に出る自由は未だにないことと私は考えます。
  90. 木内四郎

    ○木内四郎君 次に人口の問題についてお伺いしたいと思うのですが、曾つて会議において伺いましたけれども御答弁がありませんでしたので、この際お伺いしておきたいと思うのですが、いろいろな細かなことを言い出せば限りがありませんけれども、とにかくこの四つの島に八千万人の人間が押し込められたといいますか、八千万人の人間がここで生活をして行かなければならん。而も條約におきましては、これは当然のことであり、又止むを得ないことでありますけれども、国連憲章第五十五條、第五十六條の規定に従い、又は占領下の法制によつて始められたところの安定と福祉の條件を更に進めて行かなければならん。又通商貿易におきましても、公正な道を歩んで行かなければならんということになつております。そういうことは止むを得ないにしましても、とにかくこういう情勢の下に、四つの島にこれだけの人間が生活して行き、日本の経済をますます発展させて行くということは、実際問題として非常に多くの困難に直面するだろうと思うのです。そこで、この前、本会議でも伺いましたのですが、そういうことを考慮に入れられて、何か交渉の過程において、日本の通商貿易その他について関係国と話し合われたことがあつたかどうか。或いは若しなかつたとしても、総理日本のこの状態、而も資源の貧弱な、今のこの状態から発展させて行く根本の対策についてどういうふうに考えておられるか、伺つてみたいと思います。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のお話のことを具体的に申せば、移民問題について何か話をしたかというようなお話でありますか。
  92. 木内四郎

    ○木内四郎君 それも一部あり得ると思うのです。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 包括的な問題で、お答えするためには時間を要しますが、いずれにしてもまだ移民問題等を話す時期になつておらないと思います。何となれば、まだ戰争の記憶が近国の国民からして忘れられないのでありますから、ややもすれば再び攻めに来やしないか、移民を強制されやしないかというような空気がないでもないのであります。移民問題のごときは、これは愼重に取扱われないというと、できる移民ができなくなる憂いがあります。現にそういう憂いが差し迫つているようにも考えられるのであります。そうすると人口問題は結局、日本が産業的になり、貿易が伸張して行くというよりほか方法がないと思いますが、そのためにも善隣関係が大事であり、貿易の進展が大事であり、その貿易の進展等のために政府は飽くまでも善処したいと思つております。
  94. 木内四郎

    ○木内四郎君 次に安全保障の條約について二、三伺いたいと思うのですが、行政協定につきましては、いずれ逐條審議の際に更に細かく伺いたいと思うのですが、安全保障條約につきまして、国民が心配し、且つ関心を持つておりますことは、先ほども質疑応答がありましたが、極東の平和に寄與するというような書き方で、一体義務付けるというところまで行けるのかというようなことについて疑問を持つておると思うのでありますが、これは先刻ありましたので省略いたしまして、この條約は直ちに戰争まで持つて行くところの條約ではないということは、これは私どもも認めるのでありますが、ただ国民が心配しますのは、この結果としてその運用如何になつては戰禍をこうむることがありはしないか、そこに巻き込まれることがありはしないかというような点が一つの心配であろうと思うのであります。それと同時に、駐兵が半永久的といいますか、いつまでも続いて行くのじやないかというような点に非常な心配をしておるのじやないかと思うのであります。これに関連しまして、このアメリカ駐屯軍が他に出動する場合、或いは国際連合その他の決定によつて日本から出動する場合、日本を基地として出動する場合、日本から仮に飛行機が飛んで行くとしますれば、日本の基地がやはり爆撃を受ける危險が非常にある。その際に日本に相談なしにそういうことをきめられる場合があるのではないかという点を一つつておきたいと思うのです。国内の治安の場合は、この間、吉田総理の御説明によりまして日本政府の要請のあつた場合のみ出動するということであります。国外に行く場合に、日本政府の知らない間にそういうことが起ることがありはしないか、その結果として戰禍をこうむる危險がありはしないか、そういう点が第一点であります。  それから第二点といたしましては、これが日本の再軍備ができた場合において、或いは日本がもう駐屯をやめてもらいたいという考えを持つた場合には、日本のその希望に従つて直ちにそれが終止されるものであるかどうか。若しそうでないとしまするならば、これはそのときの情勢にもよりまするけれども、これこそ半永久的の駐屯ということになるのじやないかという心配があるのです。そういうことになりますというと、いつまでも外国の軍隊が国内に駐屯しておるというのでは、真の独立国と言うことはできないと思うのです。そういう意味において、独立をいつまでも失つて行くじやないか、独立を阻害されるのじやないかという心配があるのでありまするが、そういう点について御説明をお願いいたしたいと思います。
  95. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御質問は二つの点でございました。第一点は、日本駐屯する合衆国軍隊は、極東の平和と安全の維持に寄與するためでもあるからして、この目的を達成するために、日本外に出動する場合には、日本に相談があるべきものであるのではかなろうかという点でございました。これは御尤もだと思います。この文句が入りました理由は、日本に対する外部からの武力攻撃のために、合衆国は日本国及び日本国附近に兵隊を置くという規定だけにしておくと、日本国にいる米国軍隊日本に釘付けになるのではないかという非常に不合理な誤解を招く。ところが今日よく言われますように、一国の平和は国際の平和と不可分の問題であります。いわゆる平和は不可分であります。従つて日本にいるアメリカ軍隊日本に釘付けにならないことが、これ又日本の安全のために必要であるということで追加された文句であります。このいきさつから見まして我我といたしましては、万一合衆国が極東における平和と安全の維持のために、日本国内にいる軍隊を出動させるるような必要が生じました場合には、この軍隊はもともと日本に対する外部からの武力攻撃を阻止するためにここに置くものであることが前文に明白にされておる通りでございますので、当然我々に相談があるものと考えております。  第二の、この條約は、日本自衛の方途を持つようになつたならば、合衆国に要請していつでも終止させ得るものではなかろうかという御質問でございました。そのお考え方にはちよつと疑問を持つわけでありまして、四條にはつきりしておりますように、この條約の終止は日米両国政府意見が合致した時に終止することになつております。日米間の安全保障條約でございますから、両国対等の関係を徹底させまして、開始も終止も両国政府の合意が必要であることになつております。従つて第四條の考え方は、大体この條約が必要とするような国際情勢が緩和された場合には、むろんこういう安全保障條約は必要でなくなりましよう。その時には、條約の廃止について両政府間の合意が成り立ち得ると思つております。又第四條に言つておりますように、国際連合によつてとられる措置によつて極東における平和と安全が維持できるということを、日米両国政府が共に認めた時は、これ又終了が可能でございます。又第三の場合といたしましては、この暫定的な安全保障体制に代る恒久的な安全保障体制ができたと両国政府が認めたときには終止することになります。こういうふうに三つの場合が考えられる次第でございます。
  96. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の御答弁のことは第四條に大体書いてあるのでありますが、この前文におきましては、日本から懇請して、そうして日本安全保障のためにいてもらいたいということになつて、そうしてアメリカがこれを受諾して日本におるとすると、第四條の合意によらなければこれが終止できないということとはちよつと矛盾するように思うのですが、日本がもう要らなくなつたのだと思う時に合意がなければと、これはちよつと條文には書いてありますけれども、矛盾しているように思うのですが、如何でしようか。
  97. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 日米両国間にこの安全保障條約ができましたことは、結局極東において日本の安全が維持されることが、極東の平和と安全のために必要である、言い換えれば米国の安全と平和とを含む太平洋全般の平和と安全のために必要であるというところから、両国間にこの安全保障條約ができたのであります。従つてこの條約は、日本にとつて緊急不可欠であると同時に、合衆国にとつても緊急不可欠なものであると考えておるのでありまして、この條約の必要性については、日米両国政府が同等の必要性を感じ締結されたものであります。従いまして、この條約全般を貫く精神は相互平等の安全保障條約でございます。
  98. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の点につきましては、私はいろいろ問題があると思うのです。その意味ならば、初めに日本が、懇請して云々ということもおかしなことになると思うのでありますが、この点はいずれ逐條審議の際に伺うことにいたしたいと思います。  次に賠償の問題について関連して伺いたいのでありますが、我が国の今日の経済情勢を見ますと、どうしても資本の蓄積に力を注がなければならんと思うのであります。今日の我が国の税制は大蔵大臣努力によりまして相当軽減はされて来ましたけれども、なお且つ非常に重い税金だと思う。資本の蓄積を阻害すること、甚だしいものがあると思うのであります。同時に又、我が国国民生活の水準から見ましても、物価は非常に騰貴しておるけれどもその割合に收入はないという実情から見まして、他の国であればそれほどに感じない税率の、税制の負担も現在の我が国においては非常に私は重いと思うのです。我が国の経済再建のためにも是非相当の軽減をし、或いは調整を図らなければならんと思うのでありますが、ややもすれば大蔵大臣が、米英両国に比べて税率も低いように言つたように我々は誤まり伝えられておるのでありますが、そういうことも伝えられておりますので、この点について大蔵大臣のお考えを伺つておきたいと思うのであります。これは賠償問題その他に今後重大な関係がありまするので、私の今申しました税率は非常に、税金は重いということをお認めになるかどうか。大蔵大臣に、甚だ抽象的でありますけれども、若し誤解があるといけませんから、そういうことを一掃しておきたいと思います。
  99. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げまするが、税金の重い、軽いはなかなか厄介な問題でございまして、私は非常に重いと思います。従いまして二度に亘つて減税を行い、又今回も三回目の減税の措置をとつておるのであります。決して税金が軽いとは思つておりません。ただ、いつか国民所得に対しまして、一般会計の歳出の割合が、日本軍備を持たぬ関係上、その他又非常に節約いたしております関係上、国民所得に対しまする歳出の割合が、他国に比してパーセンテージが低いということは言えますけれども、そうだといつて今の物価その他の状況からいつて、税金が軽いとは全然考えておりません。まだ重いと思つておりますので、今後もできれば減税して行きたいという考えでございます。
  100. 木内四郎

    ○木内四郎君 私の考えておるところと全く同じ御答弁でありまするので、これ以上この点について質問はいたしません。今申しましたように、非常に重い税金の負担の下において、明年度から或いは安全保障條約に伴うところの分担金、或いは戰前からの外債支拂日本におけるところの連合国財産に対するところの補償、その他いろいろの歳出を計上されなければならんのでありますので、今後におきましては、賠償はすでに認めておりまして、できるならば拂わなければならんけれども、当分の間はそういう余力は到底あるまいと思うのですが、大蔵大臣にはその見通しをどう付けておられますか。
  101. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 平和條約第十四條におきましては、日本の金銭賠障を支拂うには不十分、それだけの能力がないということを規定されておるのであります。我々もそれを是認して調印して帰つたわけであります。ただ、そうだからといつて日本にあり余る、と申しますか、相当あります労働力、並びに老朽はいたしておりますがその施設を使つて戰争中に與えました連合国の損害を償つて行くということも、これは善隣関係から行きまして、我々といたしましては考えなければならない問題ですから、日本の経済を壞さない限度に、隣邦と共友共栄の立場から、できるだけ賠償はして行かなければならないと思います。
  102. 木内四郎

    ○木内四郎君 只今大蔵大臣の言われたことはよくわかるのでありますが私の伺つたのは、條約上の義務もすでにある、まあできるだけ役務賠償もして行かなければならんということはわかるのでありますが、その余裕があるかどうか、伺いたいと思うのであります。私は労力も余つておるかも知れんが、結局は財政によつてこれを支拂わなければならない、財政上の余力は当分はあるまいという私の見解を申上げたのですが、その点について大蔵大臣から伺つておきたいと思うのであります。
  103. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは額にもよることでありまして、これはできるだけ支出の合理化、縮小を計りまして役務賠償程度のものはいたすべく最善を盡したいと思つております。
  104. 木内四郎

    ○木内四郎君 なお、賠償に関連しまして一つ伺いたいのでありますが、従来の條約によりますというと、私的財産賠償に引当てたという場合にはこれを補償するという規定がヴエルサイユ條約を見ましてもありましたし、イタリーの平和條約にもありました。この條約の前文にもそれが人権尊重云々ということが書いてあります。勿論これは私有財産も尊重する意味でありますし、又、日本の憲法におきましても私有財産を尊重するということになつております。大蔵大臣は先般、この在外財産留保し、且つ清算するというこの十四條の規定は、当然これは賠償に充当するものであるということを言つておられる。この條約の條文の体系から言つてもそうなると思うが、この私有財産国家賠償に当てた場合に、これに対して補償の規定を置くのは、さつき申しましたように従来の條約の例であるのに、これを規定されなかつたのはどういうわけでありますか。
  105. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話の通りヴエルサイユ條約にも、又最近のイタリーの平和條約にも載つているのであります。今回載つていないのは日本の政状態がそれを補償し得るはつきりした見通しが付きませんので、載つていないのでございます。これは賠償支拂わなければなりませんし、今までの借金その他平和に伴いますいろんな出費を考えますと、在外財産の補償は相当困灘である。こういう気持を持つておりまするが、いろんな調査をいたしまして、拂えるか、拂えぬか、いま少しく検討してみたいと思つております。
  106. 木内四郎

    ○木内四郎君 別に大蔵大臣の説によると拂わぬということは言つておられるのではないようでありますが、とにかく私有財産でありまするので、この條約の前文、或いは憲法の規定その他から言つて、当然これに対しては財政の許す限り補償を考えるべきものであると思うのでありますが、條約に規定してあると否とにかかわらず、今後財政の状態を見て考えるという考えであるかどうか。
  107. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) さようでございます。
  108. 木内四郎

    ○木内四郎君 ちよつとわからなかつたのですが。
  109. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは條約に載つておりませんので、国内問題として考えたいと思います。
  110. 木内四郎

    ○木内四郎君 更にこれに関連してでありまするけれども、純然たる国内財産でありまして、たまたま終戰の当時向うにおつたというような、いわゆる日本の船舶、十九万余トンに上つているのでありますが、そういうものもこの條約の十四條の規定のうちに入るものでありましようか。どうでありましようか。
  111. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 條約第十四條(a)の2の規定によりまして、船舶は入ることになります。條文にあります通り、この平和條約の実施の日に連合国の管轄内にある日本財産となつておりますので、終戰後スキヤツプの指令によりまして連合国に引渡された日本船舶も含まれることになります。そういう結果になりましたことは、我々非常に遺憾に存じておりますが、先方の説明によりますれば連合軍最高司令官が日本進駐当初に発しました第一号か二号かの指令でございますが、それによりまして、終戰当時連合国の各海域にあつた船舶はそこにとどまるよう指令を受けております。そこで日本の船舶は当時各海域にとどまつてつたわけであります。その船舶を、日本政府の要請に基きまして、在留邦人や軍人、軍属の本国帰還のために動かすことを許容されて、終戰後動かしておつた次第であります。それが昨年あたりから更に最高司令官の指令によりまして終戰当時いた各海域に引渡を命ぜられて、それぞれ引渡を了したという関係になります。実は、この平和條約につきまして意見を要請され、開陳する機会を得ましたときには、在外資産の処分に関連しましてそういう船舶が留置、清算の目的とならないように要請いたしましたけれども、結局その目的を達しないで、イタリー平和條約と同様、平和條約が効力を発生したときに連合国の管轄内にある日本財産と清算し得るということになりましたのであります。
  112. 木内四郎

    ○木内四郎君 私は今回の條約の中に、中立国にあつた日本財産、これも又止むを得ない点もあつたかと思いますが、これを留置、清算するということも、敵国にあつた財産を留置、清算されて、而もそれに対して補償の規定がないという点を非常に遺憾に思つておりますが、そのうちに而も船舶が入つてつた日本はどうしても海軍を発展さしてもらわなければならんのでありますし、又船舶は従来の條約より見ましても特別の取扱を受けておつたと思うのです。ヴエルサイユ條約の際などは食糧を運んだ場合にその使用料さえも拂つてつた。而もそれはあとで棒引にされないで特別な扱いを受けて使用料を受けたというような例もありますのに、今回の條約によりましては、今、條約局長の御説明によりますと、これも国内財産であるにかかわらず在外財産と同様に処理されるということでありますが、これは今後賠償の折衝等の際にこれについてカウンター・クレイムを出される考えがあるかどうかということを伺つておきたいと思います。
  113. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 平和條約第十九條によつて日本政府はカウンター・クレイムを出すことを全部放棄しておりますので、カウンター・クレイムというようなことでは、これは動かせない問題だと考えております。
  114. 木内四郎

    ○木内四郎君 この点は常識上できないということであればいたし方ありませんが、併しこの特殊の事情に鑑みまして、私有財産についての補償の問題、又殊に船舶のことにつきましては、補償或いはその他の問題について今後政府において特別の考慮を拂われることが必要であると思うのでありますが、先ほど大蔵大臣からのお話にありましたように、国内問題として考えようということでありまするから、若しそういうことでありますれば、これはこれ以上質問を続けることをやめたいと思います。  船舶について大蔵大臣は勿論同様と考えてよいのですね。
  115. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 在外財産の問題といたしまして同様に考え、又中立国財産についても考えたいと思いますが、考えるということは補償するという意味ではございません、研究するという意味でございます。
  116. 木内四郎

    ○木内四郎君 そうすると憲法の私有財産尊重の規定に反してもかまわないということですか。
  117. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 憲法の條章に違反しないような考え方をいたします。
  118. 木内四郎

    ○木内四郎君 なお一つだけ小さい問題ですが、條約局長に伺いたいのですが、この間の御説明がありましたが、コンゴー盆地に対する通商上の機会均等とか、権利を放棄する問題は、非常に小さいようでありますけれども、信頼と和解の條約で均等の待遇まで放棄しなければならないというのは、如何なものでありましようか。そういうことは和解と信頼の精神にちよつと反しておるように思うのですが……。
  119. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御指摘の点は、本年三月の米国案にはなかつた條項でございます。六月のロンドン会談の結果、七月公表いたされました米英合同案によつて挿入された條項でございます。そのとき米国代表日本政府に対する説明によりますれば、コンゴー盆地條約によつて日本が享有いたしております通商航海の自由待遇並びに無差別待遇の地位を喪失することは、成るほどこの平和條約全般を通じて長い目で見て、日本にとつて一番痛いものであると考えられます。併しながら、この條項日本政府が受諾することが結局対日講和條約の締結を実現するに絶対に必要と思うから是非呑んでもらいたいと懇請され、我々としても非常に苦痛でありましたが、挿入を受諾した次第であります。同時に、この條項が相当日本の経済の将来にとつて痛手であることは米国政府においても了解されたところであります。結局平和條約を成立させるためには、日本として負わざるを得なかつた犠牲であろうかと考えます。併しながら我々の考えといたしましては、将来コンゴー盆地地域の領有諸国政府との二国間の通商貿易交渉をいたすに際しまして、できるだけ最惠国待逼を確保いたすよう努力することによつて、この不利なる事態を救済するため努力すべきものであろうと考えておる次第であります。   —————————————
  120. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 この平和條約と安全保障條約につきましては、国民の間に非常な不安を持つているということは、同僚委員もしばしば繰返し述べておるところでありますが、只今の木内委員に対する総理大臣の答弁を承りまするというと、国民の全部に満足の行くような條約はできないじやないかというようなお話なのであります。民主政治家であるからには、国民の大半の……、勿論一部には反対があるとしましても、国民の大半の支持を受けるような講和條約を日本側としても十分主張すべきではなかつたかと思うのでありまするが、それよりも大事なことは、更に国際的な世論であります。これは木内委員も指摘されたのでありまするが、私はこの間の本会議の質問におきまして、イギリスアメリカやその他の国々の新聞論調を挙げまして、総理大臣のいわゆる和解の講和、信頼の講和というその講和に対しまして、痛烈な批判を與えているということを申したのでありまするが、総理大臣はこれに対しまして、自分は外国の新聞がどのような批評を與えておろうと関知するところではないという御意見であつたのであります。私は世論に聞くということが民主政治の要諦であり而も海外論調につきましては、この間の戰争によつて日本世界の諸民族に対して非常に悪い感じを與えておるのでありまして、平和ともなれば、この国際的な悪感情というものを日本としては飽くまでも拂拭して行かなければならん。そういう意味におきまして、総理としましては、海外の論調、世論に対しましては十分耳を傾けておかなければならんと思うのであります。あのとき申しましたように、例えばオブザーバーのごときは、日本をアジアから絶縁し、西ヨーロツパに結びつけようとするのが今度の講和條約である、日本の政治指導者……これは恐らく吉田さんを指すのであろうと思いますが、日本の政治指導者はこれに対して賛成しておるのだということを述べておるのであります。私はこのブオザーバー紙がどういう意図でこれを書いたかというようなことは、勿論ここには別問題といたしますが、併しオブザーバーというような新聞は極めて保守的な新聞であります。私は何もここで非常に左翼的な新聞の論調を申上げておるのではなくて、むしろ右の新聞と思われるような新聞の論調を私は申上げておるのでありまして、こういうような新聞の論調すら吉田総理が無視されるというようなことになりますと、今後の日本の海外に與えますところの影響というもの、或いは拂拭しなければならん日本に対する悪感情というようなものも、なかなかこれは拂拭ができないのではないか。又、レストン記者は、これも私がこの前お話申上げたのでありますが、アジアでは八割以上の人口がこの條約には反対であるというようなことを指摘しておるのであります。而もレストンは、九月九日のニユーヨーク・タイムスでは、サンフランシスコは我々に條約を與えた、併しながら平和ではないというような題を掲げまして、今度の講和條約について今後の国際的な紛糾を指摘いたしておるのであります。こういうように、国際的にこの條約に対しましては、各方面からそれぞれの批判なり、或いは反対の意向なりが挙げられておるのでありまするが、総理としましては、これらの問題に対して、なお、これは外国の新聞の言うことであつて、自分は関知しないという態度をおとりになるのかどうか、この点を先ず第一にお尋ねいたしたい。  それからアジアの友好関係であります。日本は申すまでもなくアジアの一国であります。アジアの国々と我々は手をつないで行つてこそ、初めて日本の経済的な再建も、それから又東洋の平和も安定も得られるのでありましよう。ところが不幸にしてアジアの八割以上の人口がこれに反対しておる。而もその中でも隣りの中国とは逐に今度の條約は結ばれなかつた。こういうような事態が……、或いはインド、ビルマも今度の條約には代表者を出しておらなかつた。こういうことは非常に重大な問題だと考えなければならんのであります。特に中国の問題につきましては、私は第十一回の国会の一般質問の中におきまして、モリソン、ダレスの会談によつて中国政権のいずれを選択するかは日本に任されたと、これはロンドン・タイムスの報ずるところでありまして、そのときのいろいろの條件も報道してあるのであります。私、当時それを質問いたしましたところが、首相は、日本の選択を任されたのではない、連合国の決定するところに従つて日本はそれと講和を結ぶのである、こういう答弁であつたのであります。ところがその後ニユーヨーク・タイムスを見まするというと、この首相の答弁が端なくもアメリカの国務省内において問題を起しておるようでありまして、アチソン長官が新聞記者との会見においてこのことに触れておるのでありまするが、今もなお首相は、中国の選択はこれは日本が任されたのではなく、連合国の決定するところに従つてこれを行うのであるという態度をとつておられるのかどうかということを第二点としてお尋ねしたい。  それから更に、中国に関連しての問題でありまするが、一体政府は蒋介石政権というものをどのように考えられているか。亡命政権であるということを恐らく蒋介石政権自身主張するかも知れません。成るほど亡命政権は第一次大戰当時にも、第二次大戰当時にも存在いたしました。例えばべルギー、オランダ、或いはフランスの解放委員会というものが一応亡命政権としてロンドンに亡命し、そうして交戰上の、国際法上の主体としての活動を認められておつた。併しそれらの亡命政権は、第一次大戰のときに声明されましたように、その本国において国民の多数によつて支持されておるということが條件になつておりまして、亡命政権というものが取扱われたのである。ところで、蒋介石政権が果して亡命政権としての主張をなすことができるかどうか、中国の四億数千万の人口の大半によつて支持されておるかどうかということを考えまするというと、私どもとしましては、これに対して否定的な回答を與えざるを得ないのであります。この点に関しまして、総理大臣の御意向を承わりたいのであります。この三点を先ずお尋ねいたしまして、あとで又御質問申上げます。
  121. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は個々の新聞について一々報道の責任をとりませんということを申したのであります。  又、この條約は多数の国が反対したと言つていろいろな数を言われましたが、先ほども申した通り、インド、ビルマ等はやがて日本講和條約に入りたいということを言つておるのであります。いわゆるあなたの言われるような八割というものが内容がどうであるか、これは私にはわかりませんが、すでに五十一カ国が集まつたうち四十八カ国は、この点は対日平和條約を安当なりと考えて調印しておるのでありますから、世論は対日講和條約を反対なりという断定は付かないと思います。  中国政府の選択権でありますが、これは言い方でありますが、私の気持としては、このいずれをとるかということは、連合国の間の議論が定まつた場合に、その結果を参考として選択する、こういう意味であります。  蒋政権についての考え如何ということでありますが、これは外国政府のことでありますから、外国政府の地位を私として批評するわけに行きませんから、お答えは差し控えます。
  122. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今の御答弁の中に、多数の国々がということをおつしやいますた。確かに多数の国々であります。サンフランシスコに代表者を送つた国国の六年、四十八カ国がこれに署名いたしております。そのことを私は否定しておるのではありません。ただアジアにおいて八割の人口がこれに反対しておる。具体的に申しますと、中国の四億七、八千万、或いはインドの三億数千万、こういう人口がアジアにおいて反対しておるということを申上げたのであります。  なお蒋政権のことについては外国のことであるから自分は関知しないという御答弁でありまするが、少くとも日本の外交の衝に当つていられるところの外務大臣が、中国問題に対して自分は関知しないという態度で果して通せるものかどうかということは、もう一度お尋ねしたいと思うのであります。  それからインドの問題であります。インドは講和條約発効の日に戰争状態の終結を宣言するという公文書を我が政府に対して渡したそうであります。従つてインドは講和條約発効の日に恐らくは戰争状態終結を宣言いたすでありましよう。そうして又インドは対日講和を促進したいという意向も漏らしておることを私ども新聞によつて承知いたしておるのであります。併しながらインドは八月の米英草案の最終草案が発表されましたときに、アメリカに対して覚書を送付いたしておるのであります。その覚書によりまするというと、二つの條件が先ずきめられておりました。その條件の一つというのは、日本に対して、自由国家の共同社会におけるところの名誉あり、平等な、且つ満足すべきところの地位を與えなければならんということが一つの條件であり、それからもう一つの條件は、極東の安定と平和の維持に関心を持つすべての国々をしていずれは條約に署名させることができるように筋が立つていなければならないという意味の、この二つの條件を先ず設定いたしました。そうして領土問題、或いは安全保障の問題につきまして、インドとしての考えを述べておるのであります。それによりまするというと、サンフランシスコ講和條約の内容とはかなりに違つたものを持つておるように見られるのであります。講和條約の條文によりまして、三年以内に調印しない国は、これに、日本と單独に講和條約を結んで調印する、併しながらその講和條約の内容は、この講和條約と同一の條件又はそれに似通つた條件でなければならんということが規定されておるのでありまして、若しインドの主張するような講和條件であるとするならば、このサンフランシスコの講和條約とはそこにおのずから大きな開きが出て参ると思うのであります。これに対しまして、首相としてはどのような見通しを持つておられるか。先ほどの木内委員の質問に対しましては、まだ独立日本は得ておらんのだから、独立を得た後に考えようというような意味のことを話されたようであります。これは総理大臣外務大臣として極めて不見識な御答弁であろうと思う。少くともここ半年後にはサンフランシスコ会議講和條約が恐らく発効するかと思われまするが、そのときまで考えておられるか。そのときになつて考えようというのでは、いわゆる行き当りばつたりの会議になるだろう。少くとも近い将来日本はこのように持つて行かなければならんというような大きな抱負の下に、総理大臣兼外務大臣としての吉田さんは考えておられるのじやないか。その点について重ねて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  123. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が蒋政権に対してどう考えるかということに対しては、これは当局者として、この蒋政権の性質といいますか、地位をかれこれ論議するということは避けたいと申しておるので、関與しないとは申しておるのではありません。  それからインド政府アメリカ政府にどういう覚書を出したか、私の知らないところでありますが、併しながら日本政府に対しては成るべく講和條約を早くしたいという意思表示はあつたのでありますから、私は今申したように、インド政府としては平和関係を早く回復したい意思があるのだ、こう申すゆえんであります。
  124. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 次に領土問題についてお尋ねいたしたいと思いますけれども、これも同僚の委員によつて若干触れられておりますので、私はできるだけそれとかち合わないような形でお尋ねいたしたいと思いますが、領土の最終帰属の問題でありますが、講和七原則によりまするというと、講和條約発効後一年以内に米、英、ソ、中の四大国の会議によつてこれを決定する、若しこれがその期間内に決定しない場合においては、国連の総会に移してこれを決定するということが講和七原則に規定されておつたのであります。ところが今度の條約におきましては、最終の帰属について何ら決定しておらない。先ほどの御答弁によりまするというと、連合国間に意見の一致を見ないためであるという御返答でありますが、確かに例えば中国の問題にいたしましても、いずれを日本講和條約の対象国として考えるかということについて、イギリスアメリカとの間に従ずしも意見の一致がないわけで、従つてこれをいずれの政権に帰属せしめるかということにつきましても、決定しがたい面はあると思います。併しながら一応こういう問題について、吉田首相とアチソン長官との間に何らかの話合があつたのではないかというようなことが、想像されるのであります。その点につきまして、先ず第一にお尋ねいたしたい。  それから第二には、中国、ソ連との講和が三年以内にできないという場合、この台湾、或いはその他の日本領土主権を放棄する島嶼については、どのようなことになるか、而もソ連は南樺太、或いは千島に対しまして、それぞれ今日駐兵をいたしております。ポツダム宣言並びに降伏文書に基いて、駐兵をいたしております。この駐兵の権利はどうなるか、講和発効後同時にその権利がなくなるか、それとも三年間は依然として駐兵が認められ、三年経つた後においては、これは自働的に国際法上無効になるのかどうか、ということも問題になると思うのです。その点が第二点。  それから第三点であります。ヤルタ協定の問題であります。首相は、ヤルタ協定日本には拘束力はないということを申されました。確かに日本のあずかり知らぬ協定であります。併しながら日本連合国によつて領土が決定されるのであります。四大島並びにそれに附属する島は連合国が決定するということになつておるのです。ヤルタ協定連合国間の協定でありまして、従つて連合国としてはヤルタ協定の拘束力を尊重しなければならんと思います。従つて連合国の決定するところは、我々もこれを尊重しなければならんという法理になるだろうと思うのです。この点につきましてどのように吉田総理はお考えになつておるか、その三点を先ずお尋ねいたしたいと思うのであります。
  125. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 御質問の三点につきましてお答え申上げます。  第一点は、総理とアチソン長官との間には御質問のような問題については何ら論議されたことはございません。  第二点は、平和條約二十六條の関係であつたと思うのであります。二十六條によると、日本はこの平和條約の効力発生後三カ年間は、例えば中ソ両国のような国から平和條約を締結したいという申込があつたならば、この平和條約と同一又は実質的に同一の平和條約を結ばなければならんということになつておるのであります。三年間経つたあとは日本と中ソのような国との関係はどうなるかと申しますと、その点は現状が持続する。ただ三カ年間は、日本といたしましては、この平和條約と同一の平和條約、又は実質的に同一の條件を規定した平和條約でないと締結ができないことに相成りますが、三年間経過したあとはこの制限がなくなりますので、日本とこれらの国との間には今回の平和條約の條件には捉われることなく平和解決ができることになるわけでございます。  第三のヤルタ協定の問題、ヤルタ協定はたびたび御説明申上げましたように、米英ソ三国間の協定でございます。従つてこの法律上の効果如何は三国政府にお任せしておけばいいいと思うのでございます。戰争における戰敗国の領土処分の問題は、戰敗国と交戰関係にあつた全部の戦勝国との間の関係でございます。この関係は我々が戰勝国でありました第一次大戰のときの一例をお考え下さればおわかりになると思います。第一次大戰中、日本は旧ドイツ植民地の帰属につきましてフランス、イギリス、イタリア、ロシアの四国と條約を持つておりましたが、いざ平和会議ということになりますると、合衆国が加わるし、その他の連合国も加わります。そうしますとやはり五カ国、ロシアはその当時平和会議におりませんから四カ国でありますが、四カ国の條約は、ドイツの領土処分を決定する平和会議においては多数その反対をうけたという経緯があつて、結局委任統治ということになつたのであります。ヤルタ協定は、要するに、日本領土の一部の処分の問題に関する少数国間の政治的、約束であつて、それが最終的に平和條約に如何に具現されるかということは、平和條約ができるまでの連合国間の交捗によつてきまらざるを得ない、こういう関係であります。従つて日本政府としては、ヤルタ協定には何ら拘束を受けないという託来の立揚に間違いはないと思います。
  126. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 信託統治の問題でありますが、太平洋諸島が一九四七年の国連の安全保障理事会の決定によりまして、これが信託統治下におかれることになつたことにつきましては、これは国連憲章によるまでもない問題であると思います。併しながら琉球小笠原諸島につきましては、もともと日本が帝国主義的な侵略によつてこれを領有したものではないということは、はつきりいたしておるのであります。住民も又この信託統治に対しましては反対運動を展開しておりますることは、先般の奄美大島の島民たちのあの運動に徴しましても明らかだと申上げることができると思うのであります。ダレス代表がサンフランシスコの会議において述べておるところによりますというと、アメリカはこれらの島々をアメリカ信託統治下に置くが、併しながら日本にはレジデユアル・ソヴアレンテイというものを認める。即ち日本は残りの主権というものを保有するということを述べておるのであります。このレジデユアル・ソヴアレンテイということはどういう性質のものであり、国際法上はどのように規定すべきものかということが、先ず第一に問題になると思うのであります。その点についての総理の御見解を伺い、それから先に申しました島民も反対しており、又帝国主義的な占領によつて日本が領有したものではないという所に、果して信託統治協定を認めるということが正しいかどうか、ということもおのずから問題になる、この点。  それから第三点といたしまして、信統治には戰略地区の設定が国際連合能憲章の規定によつて認められておる。戰略地区としてこれが設定されるという場合においては、御承知のように安全保障理事会の承認を求めなければならん。そうでない場合には国際連合総会の承認を求めるということになつておるのでありますが、信託統治を戰略地区として設定するという場合に、これには勿論抵否権が伴いますからして、アメリカ考え通りに戰略地区として信託統治協定が結ばれるということは恐らく想像されないと思うんです。そこで国連の総会の承認を求める、戰略地区でないところの信託統治協定が結ばれる、こういう工合に予想されるわけでありますが、これは具体的には、実際の問題としては、恐らく通過するかも知れません。併しながら若し国連の総会において、三分の二の多数でこれが決定されないという場合にはどうなるか。それからその場合の日本領土主権というものはどうなるか。こういうような論点についてお伺いいたしたいのであります。
  127. 西村熊雄

    政府委員(西村熊雄君) 代つて答弁申上げます。  レジデユアル・ソヴアレンテイというものは潜在主権又は残存主権と解すればいいと思います。何も珍らしい観念ではございませんので、私は大正九年に東大に入りましたが、入りました当時に美濃部先生の憲法の講義ですでにそれを伺いました。要するに主権があれば、その主権の結果として派生的に立法、司法、行政の各種の権能が生れる。あたかも所有権があれば、その所有権の対象となつておるものに対して所有権者に占有、使用、処分の権従が生れると同じであります。その観念からいうと、国際関係において、一国が自国の領土に対する主権を保持しつつ、立法、司法、行政の三権の全部、又は一部を他国家に行使させる趣旨の條約関係に入る場合があります。その場合残されるものが潜在主権であるのであります。その際説明を伺つたのは租惜地の関係でございました。で、言葉を換えて言いますれば、租借地におきまして、関東州を御想像になればおわかりになる通り、関東州に対する中国の主権は依然として残つておりまして、この土地に住んでおりました中国人は未だ曾つて日本国籍を取得したことはございません。そして旧来の文化その他を維持して来ました。期限が来れば無論復帰する。こういうことになつていたわけであります。従つてレジデユアル・ソヴアレンテイというのはその珍らしい観念ではないのであります。  第二点は、合衆国としては南西諸島信託統治にする理由は十分ないのではなかろうか、こういうことでありました。大体今度の国際連合憲章の下において信託統治制度が生れましたが、これは直直我々は国際連盟時代の委任統治と同一のものと考えられます。又考えてもいいと思いますが、ここに注意しなければならん点は、この信託統治制度が考慮された一つの大きな理由は、国際の平和と安全の維持のために寄與するということであります。これは国際連盟時代には絶対になかつた精神でございます。これが、国際信託統治制度の第一の目的となつているのであります。その次に、委任統治制度にありましたように、当該地域の住民の自治又は独立への政治的、社会的、文化的、経済的地位の向上、こういうものが目的とされておるわけであります。合衆国といたしましては、今朝ほど総理が御説明になりましたように、南西諸島が若し武力のない日本の手にある場合には、これは却つて極東の平和のために危險な事態が生ずる懸念がある。従つて極東の平和、安定が確実になるまで合衆国が信託統治制度の下に置いて管理したほうがよろしいという趣旨から信託統治制度に置くという方案が生まれて来たのであります。併したびたび申します通り、平和條約は必ずこの地域を信託統治にするという規定にはなつておらないで、合衆国が信託統治制度に付することを国際連合提案したときには日本はこれに同意する、こういう形になつておるのであります。  第三は、信託統治制度なつた場合に、戰略地域とすべきではなかろうか。そうすると安全保障理事会の承認を必要とする。この場合には拒否権があるから成立しないのではなかろうか。そうすると実際問題としては一般信託統治制度となる。従つて国際連合総会の三分の二の多数決でよい。多分三分の二の多数決を得るでありましよう。こういう御意見でございました。合衆国としては、堀委員が御指摘になりますような事態乃至可能性というものは十分考慮に入れておると思います。すべては、将来の問題でありますので、我々として推察いたしまして、ああなればこうなる、こうなればああなる、というようなことを議論いたしましても何ら興味のない点でございます。仮に一般信託統治制度国際連合総会によつて三分の二の多数決を得なかつた場合にはどうなるか。こういうような御質問が最後にありましたが、その場合には信託統治が成立いたしませんから、第三條の後段によつて、依然として合衆国は立法、司法、行政の三権を継続行使することができる事態が続くことになるわけでございましよう。第三の御質問は将来の問題でございますので、いずれそういう場合になりましたときに考えればよかろうかと考えております。
  128. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) 堀委員に申上げますが、総理は退席されまして、今高橋通産大臣もおられますし、今池田大蔵大臣も要求いたしておりますので、若しこの二人の大臣に対する御質問をお続け下さるならば、総理に対しては明日に讓つて頂いたらどうかと思いますが……。
  129. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私の質問は総理に対するものが大部分で、通産大臣や大蔵大臣は質問しなくともよいのです。書いてはおきましたが。
  130. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) それでは明日に讓つて、今日はよろしうございますか。
  131. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 はい。
  132. 大隈信幸

    委員長大隈信幸君) では本日はこれにて散会いたします。    午後四時六分散会