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説明員(兼松武君)
只今の御
質問に対しましてお答えいたします。憲法で條約と申しておりますその範囲が如何なる節囲の
国際約束を指すかは、
只今確定的に何と何ということは、慣行上も又
解釈上も必ずしも確定しておらないと
政府では
解釈いたしております。それから
外務省設置法の
只今御
指摘の第三條第四号におきまする「條約」というその條約の文字は、勿諭憲法で
規定しております條約という字句と同じ
意味に
解釈されるべきであると解しております。その次に「その他の
国際約束」とございますが、その他の
国際約束とは條約とどのように異なるかと申しますと、これは一番初めに申しました條約がどういう範囲のものであるかという
解釈と
関係いたします。先ず第一に條約の範囲が英語で申しますと、コンヴエンシヨン、或いはトリイーテイ、いろいろございます。フランス語で申しましてもいろいろの
名前が付きます。
日本語で申しますと協定、或いは協約、議定書いろいろな
名前がございます。そこでそのうち憲法上の條約と申しますものはどのような
国際約束であるかという問題でございますが、これは今後
平和條約の発効に伴い、且つ
平和條約の締結に伴い、且つそれ以前にすでに
日本が諸々の
国際條約に
規定いたしておりますそういう多数国間への加入の場合には、その條約は勿諭
名前がどうであろうとも憲法上の條約であるという点に疑問はございませんが、その他の條約に関しましては、例えば或る條約に基きまして
政府間で具体的な細目事項を委任で取極めるという場合もございます。その場合の委任の取極が果して憲法で言う條約であるか、或いはそうでないかという問題がございますが、
一つの例で申しますと、国内で
法律を国会で御制定になります。その
法律に基きまして委任をなさいます。その委任に基いて行政
官庁各主務
大臣乃至更にその委任を受けた者に命令制定権をお讓りになれば、
各省大臣乃至
内閣、その他の委任に基く委任立法権というものが生じます。例えばそのようなたとえで御
説明しておわかりになると思いますが、條約によ
つて更に細目の事項を
政府間で取極める、その細目事項を国家間で取極める場合に、その約束は憲法上の改めてその委任なさるのにもう一回国会の御
審議を必要とするか、或いは国会はすでに細目事項を
政府に御委任にな
つた。そこで
政府が他の
政府と條約を結ぶ場合には、改めてその御委任にな
つた限りの細目事項に関する取極については国会にお諮りしなくてもよいという御意思で国会が御承認なさ
つたのだ、そういう
解釈ができますれば、その場合にはそういう委任の取極は、憲法で言ういわゆる国会の承認を要する條約という條約の中には必ずしも入るかどうか不明確で、多分その場合には先ほどの国内の立法の例で申しましたように、改めて承認を要しない。従
つてその場合には実質的な
意味では憲法上の條約というふうに、承認の点では止むを得ない。併しそれを守る
国際的な今度は拘束の面から
解釈いたしますと、
政府がその約束を守るのは国会の御承認を要する基本の條約、それから細目を取極めるような條約の場合でも、その拘束力の点では国家を縛り、且つ
政府機関も国民もそれに拘束される点では同一であろうと
考えるのでございます。従いまして條約そのものが、どういう種類の條約を
はつきり指しているかということは確定的には申上げられませんが、
只今の第三條の第四号に関する限り、その他の
国際約束と申しますれば、
只今御
説明いたしました、国会の御承認を必要とするそういう條約以外の、一例を申しますれば、
只今の或る基本條約によ
つて委任を受けました細目取極のようなもの、或いは正式な
国際法上條約として取扱われておるもの以外の行
政府間の、両国間で
政府が委任を受けた事項に対して行政上の措置のための約束をする。それは場合によりましては、勿論国会にお諮りしなければならないものもございますし、或いは例えば
国際電気通信條約のように、電気通信規則というものは各主管庁、国内の主管庁が主管庁同志の協議によ
つて定めるということが電気通信條約にございます。そのような場合には我が国で申しますれば、電気通信省の電気通信
大臣が主管庁の長ということになりまするが、電気通信省の代表と他の
外国の電気通信
関係の
事務を扱う主管庁の代表とが
会議をする。その場合には基本
関係は
国際電気通信條約で
定められておりますので、そういう委任的な事項に対しては
国際約束を結びましても、当然国会がすでに承認された
国際電気通信條約の実施でございますので、改めて
国際電気通信規則に関してはお諮りしておりませんが、そのような
意味では締結に関して主管庁として電気通信省が当事者となる。併しそれが
国際條約の場合には
外国との
国際條約であることには変りはない。そこで
外務省の代表は
国際條約という面では当事者となる。そして実質的な、技術的な問題に関しては電気通信省の代表が同時に参加する、或いは
外務大臣の條約締結に関する
事務に並びまして、電気通信省の
代表者が同時に署名をする。その場合勿論
政府から署名締結権を委任されるのでございますから、結論におきましては
外務省設置法におけるこの條約締結権は
外務大臣に属する。この
事務的に属する條約締結の権限を委任されて行うわけでございます。従いましてその他の
国際約束にはいろいろのものがございますが、言葉の
意味といたしましては、
国際法上の條約、乃至憲法で申します條約という言葉の中に入らないものを主として指しておりますが、その他この言葉の
規定によりますれば、
日本語の一般の法令の読み方として、條約そのものの
一つも広い
意味での
国際約束であるという
解釈も成り立つのでございまして、
解釈上多少疑義が生ずるかと思いますが、実際の
運営につきましては一般の
国際慣例に習い、且つ憲法の
解釈及び
規定の意義を巖守して実施して参りますので、実際に問題になるということはこの
外務省設置法に関する限りないものと了解しております。