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政府委員(
賀來才二郎君) 電産の
ストライキの今日までの状況を申上げたいと思いますが、御承知のように電産が、現在電産の組合と東京
電力の組合と二つに分れております。二つとも別別の系統で
ストライキをや
つておるわけであります。先ず電産から申しますと、この十七日に
電源ストをやる、午前八時から午後二時までのうちにやるということに
なつておりましたが、結果はまだ会社側の報告ははつきり出ておりませんが、我々が得た情報では約百カ所の
電源ストをや
つておるのでありますが、うち五十カ所は会社側が直ちに操作をやりましたので、一般には大した影響は与えていないようであります。次いで十一月二十日に同じく八時から午後二時までや
つております。個所数は七十九カ所ということに
なつておりますが、やはり大部分会社側の操作によりまして余り大きな影響は与えておりません。二十四日以降第三波といたしましての
電源ストをやるということに
なつておりまするが、どの個所をどういうふうにやるかという報告はまだ我々得ることが困難でありまして、最近この電産の組合はあらかじめ計画の概要を発表するという態度をと
つておりませんのでこの情報の収集は至難であります。東京
電力のほうの組合は十五、十六日大口工場に対し短時間の送電停止をや
つておりますが、これは実際上の影響を与えていないのであります。二十一日、二十二日に交通
機関のほうに対する送電をとめるという計画をやりましたが、これはその筋の
勧告によりまして組合は自発的に中止をいたしております。同じくこの二十七日以降において野放し送電、或いは停電
ストをやるという計画をいたしておりまするがこれも情報はつかめない状況であります。目下この争議につきましては御承知のように中労委の調停にかかつたものでありまして、中労委におきましては現行一万六百円ベースを一万二千四百円にする、現行の一八、二%増、七月から九月の間の一時金として千八百円を出す、退職金の算定ベースは新基本給の九〇%とする、こういう調停案を出しております。これは組合側の要求は現行から四二%増で一万五千九十円にしてもらいたい、期末賞与は基準賃金の一カ月分をもらいたいというふうな要求であ
つたのであります。組合側はこの調停案を不満とし、会社側は財源その他の見通しがつかないのではつきりした返事ができないという態度で参
つておりまして、この争議行為が行われるようにな
つたのであります。目下中労委におきまして藤林、
中山両
委員の手によりまして再斡旋をしようかという
段階に
なつておりまするが、実は経営者側におきまして二十四日に社長会議が開かれそこで対策を練らなければ如何をもしがたいというような状況でありますために、労使双方の間におきまして具体的な交渉が行われていない状態であります。從いましてこの二十四日以降の
ストライキがどういうふうに行われるかということにつきましては、直ちにこれがその前日あたりに片付くというような見通しは現在我々のほうとしては持
つていないのでありますが、併し中労委といたしましてはできるだけこれを一般社会に大きな影響を与えることなく片付けたいという状況にありますので、その努力に期待し、同時に労使双方共にさような状態が起らないうちに妥結をするように早く具体的な折衝に入
つてもらいたいということを希望しておる次第であります。
只今御
質問の第二点でありまするが、
公共事業令との
関係でございます。争議行為と
公共事業令との
関係について我々が
考えておりますことを申上げたいと思うのであります。先ず御承知のように第一は
公共事業令の第八十五条は、公益事業の從業員が電気の供給を正当な事由なくして取扱わず、又は不当な取扱をすることを禁止いたしておるのでありまして、これに違反いたした者については罰則をかけることに
なつておるのであります。ところで一方労働組合法第一条第二項によりますと、これは御承知のように刑事上の免責
規定でありまするが、ここで労働組合が正当な行為として行
なつた、即ち正当な争議行為につきましては、これは当然
公共事業令第八十五条の「正当な事由というものになる、或いは不当な取扱ではないということになるわけであります。即ちこの
公共事業令の八十五条の正当な事由とは労働組合法第一条第二項の「労働組合の正当な行為」を当然含むことになるものと
考えておるのであります。併し第三番目には不当な争議行為として公益事業の從業員が電気の供給を停止いたしますれば、八十五条のこの「正当な事由」とならずして「不当な取扱」ということになるわけでありまして、不当な争議行為をやりますればこれは八十五条の違反となる、かように
解釈いたすのであります。從いまして電気事業
関係の争議行為は正当か或いは不当かということにつきましては、一般の争議行為と同じように第一に暴力行使でこういう行為をやりましたらこれはいかん。それから生産
管理に該当する行為は不当である。そから労調法三十七条の冷却期間を経ない場合及び労働協約違反の場合等社会通念に
從つて考えておるのでありまするが、特にこの電気事業の特質ということから
考えまして、
公共事業令第八十三条に違反して
工作物を損壊し、或いは物品の接触等によりまする電気の供給、使用を妨害する行為等は明らかに不当な行為であると
考えておるのであります。労調法に
規定いたしまする手続を遵守いたしまして三十日の冷却期間を経た後におきましてなお労働争議が解決しない場合におきまして、今度電産がや
つておりまするのは三十日の冷却期間を経ておりまするが、その場合におきましてたとえそれが電気事業におきまして行われるために停電を結果するという場合でありましても、これが労働組合の正当なる行為といたしまして行われましたる場合におきましては、これは正当な争議行為といたしまして八十五条の適用はないと、かように
考えざるな得ないのであります。併しながらこの労務提供拒否に当然随伴するような行為の範囲を超えまして、例えて言いますならば、特定事業場の狙い打ち送電停止、或いはスイツチを切りましてそうしてやはりスイツチ、ダウンしておる。言い換えますと生産
管理の様式をと
つておるというような場合、或いは機器、器物、施設等の破壊を伴うことが明らかな行為でありますような場合、こういうことになりまするとこれは不当なる争議行為ということになるのでありまして、八十五条の罰則の適用が來るもの、かように
考えておるものであります。