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政府委員(
富安謙次君)
テレビジヨンのことにつきまして、先ほどの御質疑に対しまして大体のところを
お答えを申上げたいと存じます。
テレビジヨンの
申請の
状況がどんなふうに
なつているかということと、それから又
テレビジヨン放送の
実施に対して、この
電波監理委員会は大体どういうような
考え方をしているのかというようなことを
お答え申上げたいと存ずるものであります。この
申請の
内容の極く細かいことは、一々ここで申上げるの煩を避けまするけれども、極く大体
輪郭のことを申上げさして頂き、細かいことにつきましては更に
お尋ねを待つということにいたしたいと思うのでございます。
申請の
状況がどんなふうに
なつているかと、こういうことであります。
先ず
テレビジヨン放送局の
申請は、現在のところで申しまするというと、イ、ロ、ハと三件であります。それは本年一月の
申請によりまする
坂本弘道氏の
株式会社日本テレビジヨン放送協会というのと、
河端作兵衛氏の
全日本放送株式会社というのと、それから本月になりまして、先ほどもちよつと申しました
正力松太郎氏の
日本テレビジヨン放送網株式会社というのと、この三件であります。これらの
申請はいずれも
テレビジヨン放送事業を商業的に
経営しようとするものでありまして、その
計画の
概要を簡単にここで御紹介いたしまするというと、先ず第一に
株式会社日本テレビジヨン放送協会であります。これほ
資本金二億円を以ちまして、
映像用五キロワット、
音声・サウンドニ・五キロワットの
放送局を
東京都内に設置して、将来は
全国的に
放送局を設けようとする
計画でありまして、
東京には
放送局を中心とする半径三十キロメーターの
区域、即ち
東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県をカバーすることになります。そういう
区域を以ちまして、これを
放送区域として、最初は劇場、
公共団体、学校、商店、デパート、
飲食店、プレイ・ガイドなどを対象として発足いたしまして、半年後になりますと、
受信見込者の数が六千五十を
見込んでおるのであります。毎日八時間の
放送を行
なつて、逐次
テレビジヨン受像機が
普及するに
従つて、家庭に向けて
放送を行う、こういう
計画のようであります。
工事費は二億円で、
経営は
広告放送料と
受信料と、その他で賄うという
仕組でございます。それから第二の
全日本放送株式会社であります。これは
資本金二億円、
借入金一億円であります。それで十五キロと二十キロの電力を以ちまして、
放送局は
東京都内に一カ所、
大阪市内に一カ所という
計画であります。
工事費といたしましては五億余りを
予定をいたしております。二年目になりますと
京都、
名古屋、
福岡に、三年目になりますと
広島、
仙台、
札幌にそれぞれ設置しようと、こういう
見込みに
なつております。それで
東京放送局区内、それから
大阪放送局区内から一日に延べで千人の
入場者がある三百五十の
映画館を選定いたしまして、
映画と交互に
テレビジヨンの放写を行いまして、
入場者一名につきまして
入場料として十円の
観覧料を取るという
仕組でございます。そのほかに
広告放送料も含んでおるのであります。尤もこの
申請につきましては、現に今日でありますが、
相当部厚な
申請が袋のままにあるのを、私まだ見ませんでしたが、置いてあるのを出がけに見た次第でありまして、多分この
申請の
内容を
補正するとか、改めるとかいうものが出て参
つたのであろうと想像いたしたのでありますが、その
内容をまだ拝見をいたす暇を待ちませんでした。どうせこういうような
申請につきましては、いろいろと
審議の最中におきまして、補足をする材料、資料というものがたくさん出て来なければならんものであろうと存じておる次第であります。それから
日本テレビジヨン放送網株式会社、これは
正力松太郎氏の
申請によるものであります。この
会社は
東京都内に
映像十キロワット、
音声五キロワツトの
放送局を設置いたしまして、
京浜地区一円を
放送区域といたし、一日に六時間の
定時放送を行おうというものであります。
工事費は総額約二億七千万円でありまして、この
費用は
資本金二億五千万円と
借入金約二千五百万円によ
つて賄うという
計画に
なつておるようであります。
事業の
経営は
商業放送の建前をとりまして、
受信料を徴収しない、
広告放送料によ
つて賄おうという
計画でありました。なお、この
会社は
東京の
中央放送局の
建設をされました後、
大阪、
名古屋等、国内において十六
カ都市に逐次
中継放送所を設け、将来
全国的に
定時放送網を形成しよう、こういう
計画内容に
なつておるのであります。この三つが、只今出ておりまする
申請の極く大
ざつぱな輪郭でありまするが、もう
一つここに附け加えて
NHKの
テレビに関する
計画を持
つておるようでありまして、そのことを附け加えて申上げて置きたいと存じます。これはまだ
申請は出ておりませんです。併し
計画は着々と進めておるようであります。
NHKは、御
承知の
通り十数年来もう
テレビ放送に関しまして、
実験研究をいたして参
つたのでありまするが、この夏頃からこの
実施につきましての
検討を始めまして、近く
申請書を
提出するというように聞いております。その
計画の
内容につきましては、まだ
申請が出ておりませんので、詳細なことは勿論わからないのでありまするが、大体その
概要は次のようなものだということを聞いております。即ち先ず
NHKでは
テレビジヨン放送についても
周波放送の場合と同じように、あまねく
日本全国に
普及させるということを目標といたしておるのであります。
全国の
主要都市に
テレビジヨン放送局を設置する五カ年
計画を持
つておる
模様でありまするが、その
支局の
計画の
内容といたしましては、先ず初
年度において
東京、
大阪にそれぞれ十キロワット、それから
名古屋に五キロワットの、この三局を設置いたしまして、
テレビジヨン放送を
実施すると共に、これを連絡する
番組中継回線を
建設する。それで次
年度になりますと
福岡に五キロ、
仙台、
広島、
札幌にそれぞれ三キロということで、この
支局を開設して、
中継回線を編成するという
計画、かようにいたしまして、三年四年と、逐次
全国の
主要都市に
放送網を張りめぐらしまして、五カ年後になりますというと、十キロワットの
放送局を二局、五キロワットの
放送局を六局、三キロワットのものを十五局、一キロワットのものを九局、合計三十二局を設置すると共に、これらを結び付けまする
中継回線をも完成いたしまして、これによ
つて全国の
世帯数の過半数をその
放送網の中に包含するという
計画のように聞いております。これらの
建設に要しまする
経費の総計は二十六億円を
長期借入金を以て当てるという
予定のようであります。
テレビジヨンの
実施につきましては、やはり
受信契約によることとしまして、この場合の
受信料といたしましては一応月額二百円
程度を
考えているようであります。併しこれは何分にもまだ正式に
申請も出ておりませんしすることで、しかと、ここで申上げるには少し早いのではないかと存ずるのでありまするが、折角の
お尋ねでありましたし、関連してどうしてもそれだけのことは申上げておいたほうがよろしいかと存じまして、付け加えた次第であります。
それからこの
テレビジヨン放送実施に対しまする
電波監理委員会の何と言いまするか、
方針、
考えの向け方というようなことであります。これは極めて大きな問題でありまして、
委員会といたしましても、今ここでその
方針というようなものを具体的にしかと、はつきりと
お答えを申上げる
段階には実はまだ到達していないというのがありのままであると存ずるのであります。併しながら大体の方向であるとか、今の
段階がどういう
程度にあるのかというようなことを、多少ともお
考え下さる御参考にしかならないかも知れませんが、そんな
程度においてお聞き取り願いたいという意味において、若干のことを申上げたいと存ずるのであります。申すまでもなく、この
テレビジヨンが社会に及ぼしまする
影響は、諸外国の例に徹しましても、
ラジオに比べると格段の
重要性を持
つているように
考えられまするので、又高度の
技術も必要といたしまするために、
送信面におきましても、又
受信面におきましても多額の
費用、大きな
技術上の体験を必要といたします。これはもう申上げるまでもないことでございますが、さようなわけでありまするので、我々が
テレビジヨンの
実施を
考えまする場合におきましても、その前提といたしまして解決を必要とする幾多の問題が提起されるわけでございます。例えば
受像機生産及び
普及上の問題とか、
標準方式の問題とか、
送信側におきます
運用の
要員、及び
経営上の問題とか、或いは
全国的なネット・ワークの問題であるとか、これらの点につきまして或る
程度の見通しを立てなければならないと存ずるのであります。それで
受像機の
生産、
普及上の問題といたしましては、
日本の
工業界がいつ
受像機生産について
技術的な或いは
経営上の
準備ができるか、又
生産可能と
なつた場合どの範囲まで価格を下げることができるか。国民の所得の
現状、将来の予想などから見まして、
テレビジヨンの
普及の見通しはどうかというような基本的な問題があるわけでありまして、これらの点につきまして、あらゆる資料を収集をいたしまして、正しき判断を得なければならないと存ずるのであります。又その
標準方式につきましては、仮に
テレビに移行する場合にどういう
方式のほうがよいであろうか、どのほうがややむずかしいであろうかという難易の問題、それから我が国の特殊事情でありますが、御
承知のように
日本を東南と西南と分けますると、電力のサイクルが五十と六十とに違
つております。そういうような特殊の事情等を
考え合せなければならない。それと
考え合せて、この
方式の
決定を如何ようなところに落ち着けるのが
日本として最もよろしいのであるかというような問題、そういうような重要な問題がありまするために、
テレビジヨンの
実施の時期を
考え合せましで、しつかりした見通しをこの際において立てなければならないものと存じているのであります。又
運用の
要員、補修の
要員につきましても、
テレビジヨンが極く高い
程度の
技術的
生産品であると
考えまするというと、我が国の
技術の
現状におきましては、相当の訓練の期間を必要とするのではないかということも推測をされるのでございます。更に又
テレビジヨンが、標準
放送に比べまして、送信受信両面におきまして数倍の
費用を要するものと
考えられまするので、国民経済の上から見た
テレビジヨンの
実施の時期と併せて
考えまして、我が国における
経営の
方式、
経営形態というものが問題と
なつて参るわけであります。又この
経営方式の問題は、
全国的なネット・ワークという問題とも直接に関連をいたして参るわけでありまして、これらいろいろな重要な問題が錯綜をしまして、いよいよ複雑性を加えて、解決についても慎重な考慮を要するということに
なつて参るわけであります。私どもといたしましては、これらの諸問題につきまして、できるだけ速かに権威ある見通しを立てまして、
実施の方策を
決定いたしたいと
考えまして、鋭意
調査を進めているというのが
現状であります。当
委員会におかれましても、そういう点をお含み願いまして、私どものために何かといろいろと御注文を頂き、御指示を頂きまして、私どもの歩みまする道が正しきほうに参りまするように、何かと御援助を願いたい。又いろいろ御援助を仰ぐ機会もあることと存じている次第でございます。結局結論としてどういう
考えを持
つているかということを、端的率直に、具体的に申上げることができないというのが、ありのままの今日の
現状でありまして、無論それがそういうような状態でいつまでもあ
つてはならないということは、万々
承知をいたしておりまして、専らその解決に向
つて、夜を日に継いで
委員会全部がその点に集中、力を集めているという
現状であります。そのことを御了承願いたいのであります。甚だ
お尋ねに対しましては御不満かとも存じますが、今日私がこの席において申上げることのできまする
程度のことはその範囲、その
程度なんでございます。御了承を願いたいと存じます。