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1951-11-17 第12回国会 参議院 通商産業委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十七日(土曜日)    午後二時十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事            古池 信三君            栗山 良夫君    委員            入交 太藏君            中川 以良君            松本  昇君            片岡 文重君            小松 正雄君            島   清君            山内 卓郎君            境野 清雄君            油井賢太郎君   政府委員    資源庁長官   始関 伊平君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    通商産業省通商    振興局長    井上 尚一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○通商及び産業一般に関する調査の件  (石油開発に関する件) ○輸出信用保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) これより委員会を開催いたします。  先ず初めに石油開発に関する件を議題といたしたいと思います。本問題につきましては、かねてより島委員より質問通告がありましたが、都合によりまして延期されていたのであります。石油開発に関しては首藤政務次官から説明のあつたように、政府におきましては石油及び可燃性天然ガス資源開発法案設定準備を進めておることはすでに御承知通りでありますが、政府は先般国産石油の九割以上を産出しておる帝国石油株式会社に対して、合理的採掘を行うよう一種の行政勧告を行いました。本日の議題はこの勧告を中心といたしまして、我が石油開発のあり方について検討を加えて行きたいと思うのであります。  それでは質問通告者島委員に発言をお許しします。
  3. 島清

    島清君 只今委員長から御説明がございました通り政府は二回に亘りまして帝石のほうに勧告をなされたようでございまするが、その勧告は如何なる効力を持つものであるか、その効力と又法律的関係における効力ですか、そういうものが如何なる関係を持つておるかということについて一応伺いたいと思います。
  4. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 本年の九月二十六日附と、それから十月の二十九日附と、前後二回に亘りまして資源庁から帝国石油株式会社社長に宛てまして、帝国石油株式会社八橋油田採油技術管理についてという勧告を出しました。その効力がどういうことであるかというお尋ねでございますが、これは行政上の勧告でございまして、法律的な拘束力はございません。ただ実際問題といたしましては、帝石におきましては、前後二回の勧告に基きまして、直ちにこれを実施に移すということを書面を以ちまして正式に私どものほうに申出て参つております。第一回の分につきましては、完全に実施せられておりまするし、第二回の分につきましても、大体勧告趣旨に従いまして只今実施に移され、又実施に移されつつあるのであります。なおこの問題は非常に重要でございますので、今後こういつたような問題についての指導法律的な効果を持たせたいという考え方の下に、只今委員長からお話のございましたような趣旨法案の凖備をいたしておる次第でございまして、できる限り早い機会に国会に御審議を願うような運びにいたしたいと存じておる次第でございます。
  5. 島清

    島清君 只今資源庁長官の御答弁のうちに、帝石のほうがそれを受取りまして、これを実施しておるというような御答弁があるようでございましたが、私の得たところの情報によりますると、会社側のほうは勧告をサボつておりまして、その現場に発しましたところの本社の指令によりますると、坑底圧測定は、二十四時間機械をかけておかなければならないのにかかわらず、それを十二時間でやれというような指令すら発しておるというふうに、現実においてこの勧告をサボつておる気がありまするが、資源庁長官はこれを承知でおられるかどうか。
  6. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 第一回の分は、これは御承知のように石油の出ます口をシヤツトしろ、閉めてしまえということでありまして、これはその通り実行せられております。それから二回、後の分につきましても、坑口を小さくいたしまして、合理的な採油の限度にとどめろという趣旨勧告でございますが、これが実行されておるかどうかという点につきましては、元来この勧告が出ました前の状況で申しますれば、一日大体千二百キロ程度の量が出るわけでございまして、この採油管理実施いたしました結果、現在八百五十前後の生産にとどまつておる次第でございまして、なおこの採油管理実施いたしました結果によりまして、だんだん基準に合つて参りました井戸の数も全体の七割程度あるというような報告も参つております。井戸の数が相当たくさんにございますので、順序を逐つてつて参らなければならんという点はあると思いますが、これは意識的にサボつておるというような事実はないというふうに承知をしております。なお二十四時間と十二時間の関係でございますが、この点につきましては、従来の測定時間の平均は大体十二時間程度でやつておるのでございまして、十二時間では不適当であるというふうには考えておらない次第でございます。
  7. 島清

    島清君 会社側の二十六年度の四月末におきまする計画を私たちが見てみますると、日産一千キロ、年間三十六万でございましたか、三十三万でございましたか、こういうような計画のようでございまするが、この勧告に基いて、成るほど七月からは少し、今資源庁長官がおつしやつたように、採油量は減つておりまするが、四月、五月、六月は二百五十キロ以上も上廻つて採油しておる実績の報告に私たちは接しておるのです。併しながらこの勧告に基きまして採油の量は減りましたけれども帝石のほうの配当といいますか、何といいますか、そういうものの、利益配当というものについてはちつとも減らないように思うし、更に試掘などにつきましても、その勧告に基いて採油量減つて収入減つたからという理由によりまして、上半期のそれは試掘が半減しておると伝えられておりまするが、その事実を資源庁長官承知しておられるかどうかを……。
  8. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 試掘計画は大体三十六坑でございましたが、実施上九坑減らすというふうな状況に相成つておるように承知いたしております。
  9. 島清

    島清君 何だか僕、ちよつと資源庁長官の今の御答弁了解しにくかつたのですが、もう一遍一つおつしやつて頂けませんか。
  10. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 石油試掘計画が半分になつておるのじやないか、にもかかわらず高率配当をする計画があるのはけしからんじやないかというふうなお尋ねかと思いまするが、試掘計画につきましては、当初の計画三十六坑に対しまして九坑を減少した計画に相成つておるというふうに承知をいたしております。なお配当の問題でございますが、只今のところでは、帝石配当その他につきましては、政府といたしましては何らの監督権限もございませんが、いろいろの状況からいたしまして、余り高率配当をするのはよくないのではないかというふうに私ども考えまして、余り高率配当は差控えたほうがよかろうということを、これ又勧告でございますが、帝石に対しましては勧告をいたしておるような次第でございます。
  11. 島清

    島清君 それはまあ只今国策会社であつたものから、去年の三月でございましたかしら、民間会社に切換えられておりまするので、政府勧告というものがただ単に行政的な勧告であると、それは会社側のほうで自由に受取つてよろしいということが言えるかも知れませんが、併しながらあの集排法ですか、独禁法ですか、それから適用を除外いたします場合の理由といたましては、濫掘を防止する、それから地下資源を国家的に高度に活用するというようなことが理由になりまして、而も政府年間一億という助成金を出しておられる。それから国策会社でございました帝石民間会社に切換えられまするときに、政府委員会におけるところの御答弁を思い起して見ますると、民間会社になりましても国家的な性格を持つておりまするところの石油資源開発上からして、政府は更に一段の指導をして行きたいと、監督を深めて行きたいと、こういうようなことを言つておられまするが、帝石と一億の助成金を出しておりまするところの政府関係、又帝石持株の二六%も持つておりまするところの大蔵省、政府当局との関係等から見まするならば、何か資源庁長官只今の御答弁はただ単にお座なりの御答弁のように聞えてしようがないのですが、もう一段と、あの委員会から答申案が出て新たな勧告をお出しになりましたことの性質上の重大性に鑑みまして、もう少し突つ込んで一つ答弁を煩わしたいと思うのですが……。
  12. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 帝石を普通の私的な会社に改組したことがよかつたかどうかといぅ点は別問題として、只今御指摘のように、国家的な性格を非常に多分に具えておると思います。従いましてそういうような見地からこの監督上の権限等につきまして不備な点がございますので、一番の問題でございます石油の合理的な採掘を確保するという点からいたしまして、只今申上げましたように、新たな立法を一つお願い申上げたいというふうに存じておる次第でございます。なおその法律はできませんけれども、まだ実施制定されるに至つておりませんけれども只今お話がございましたように、事柄の重大性に鑑みまして、帝石といたしましては三百キロ或いは三百五十キロの減産になるわけでございますが、合理的採油のほうは勧告趣旨に従いましてやつて参りたいというふうに申しておる次第でございます。配当の問題につきましては、これは行政上の勧告をいたして反省を促した次第でございまして、それ以上の手は、甚だ遺憾でございますが、私どもといたしましては持つておらないのであります。
  13. 島清

    島清君 只今資源庁長官がそういうふうにおつしやれば、まあ大体それきりでございましようけれども、私の申上げたいのは、政府が一億の助成金を出し、そうして国家資源であるというような重要性に鑑みまして、そうしてこの国策会社から民間会社に切換えまする場合にも、とくと政府当局は一段と指導監督をやつて行きたいということを言つておられながら、それから原油の確保なども政府が決定して、そうして輸入油よりは五百円も高いということを私たち承知しておるのであります。原油の価格の決定、更に一億の助成金、更に三六%の持株、更に帝石株価が七十七、八円乃至八十円前後しておる株価を吊り上げて、そうして四割の利益配当を確保して、そうして只今資源庁長官がおつしやつておられた二次の勧告を受けなければならないというところに、帝石の現経営面にタツチしておられるかたがたが、果してこういつたような石油資源に対する愛護感を持つておるかどうか、そうして国家的な大きな仕事を負託されておるのだというような責任感を持つておられるかどうかということを疑いたいし、そうして民間会社首脳部がそういう考え方を持つておられるといたしますれば、不幸にして持つておられるといたしますならば、それに対して政府は一体如何なる考えを持つておられるかということを、もう少しざつくばらんに伺いたかつたのであります。形式的じやなくて……。
  14. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 帝石に出しております補助金は、予算の総額一億一千万円ばかりのうちの七千万円程度でございます。帝石の現在の幹部のやり方なり態度なりにつきまして、どういうふうな見解を持つておるかというお尋ねでございますが、今後の問題といたしましては、合理的採油勧告の線に沿いまして誠実にやつて参りたいと申しておりますし、これはそういうふうにやつて参るだろうというふうに考えております。この合理的採油の問題が一番重要な問題でございますが、この問題につきまして多少時期的に遅れたというような点につきましては、今日から考えまして遺憾の点があつたと存じておりますが、帝石という会社性質その他から申しまして、それ以上のことはちよつと申上げかねると存じております。
  15. 島清

    島清君 お答えのできないものを御答弁を要求するのは無理でございまするから、これは会社関係のほうに又属する問題でございまするならば、問題の性質上からして、会社をお呼びになつてお聞きしても結構でございますが、それはそれといたしまして、少しばかり技術的な面に入りまするので、大変恐縮でございまするが、私は資源庁長官に更に技術的な面で、二回に亘りまするコンサーベーシヨン委員会答申に基きまして、それから資源庁長官勧告をお発しになつたのでございますが、先ほどその効果、それから法律的な問題については御答弁があつた通りでございまするが、この権威の問題について資源庁長官はどういうふうの見解を持つておられるかどうかをちよつとお聞きしたいと思います。何ら権威のないものかどうか、私は更にそれから答申を含めて、コンサーベーシヨン委員会のいわゆる答申に基きまして勧告をされましたそのコンサーベーシヨン専門委員会、その権威というものを如何に思つておられるかということです。
  16. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 実はこの勧告の出ます前に、帝石自体の案が出て参つたわけでございますが、国家的な重要事項であるという建前からいたしまして、帝石とは何ら利害関係のない独立の、而も最高レベル委員会審議をしたらよかろうという趣旨に基きまして、東大の上床教授委員長といたしまして、大体日本における最高の抜術的なレベルにあられるかたがた合計六人に委員になつて頂きまして審査をいたしたのでございまして、技術的にはこれ以上の結諭を出すことは、差当り困難ではないかと存じておるのでございまして、さような意味合いにおきまして、委員会答申並びにそれに基く資源庁当局勧告というものは、相当権威を持つべきはずだと、こういうように考えております。
  17. 島清

    島清君 今資源庁長官の御答弁にございまする通り、まあ言葉は違うかも知れませんが、我が国におきましては、その問題に関する限り最高権威あるものとして了解してよろしいような御返事に接しましたが、コンサーベーシヨン委員会答申を見ると、現在八橋油田は、瓦斯油比において四十六カ月後の比率を示しているとあるが、これはガスの放出によつて油層エネルギーを浪費し、実際的には同油田の寿命を三年十カ月間も縮めたと解されるというようなことがあるのです。この問題についてどういうふうに思つておられるか。
  18. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) この合理的な採油をもう少し早くからやつておりますれば問題はないわけでございますが、多少遅れた、その間に一体どの程度損失があつたかという問題でございますが、これを具体的に一つ検討してもらいたい、例えばそのために地下に、折角採れるのにもかかわらず、採り残さなければならない数量が幾らであるかというような点の検討をも実際委員会にお願いしたのでございますが、それにつきましては、具体的な数字は出て参りません。で、結局先ほど申上げました、例えば第一回の勧告にございます井戸を締めましたR四十四という井戸がございますが、これを締めた結果油層状況はだんだんよくなりまして、只今ではほぼ平常の状態に近いような状態まで帰つて来ておるというふうに承知をいたしております。なおそれから二十六坑の今後採油管理を改善いたすべき井戸のうちで、大体七割のものにつきましては状態がだんだん改善いたしまして標準的な瓦斯油比、又差圧状況に近付きつつございますので、過去の若干の時間的な遅延のために、この八橋油田油層に対しましてそれほどひどい打撃を与えたということは申されないのではないかというふうに存じております。  なおもう一つ申上げたいことは、今後採出しましたガスをもう一遍油層の中に入れまして、いわゆる二次回収をやるというようなことによりまして、油層エネルギーの補強、回復に努めて参りたいと存じておる次第でございます。
  19. 島清

    島清君 先ほどの資源庁長官の御答弁のうちと、それから只今の御答弁などを照し合せまして大体まあ見当がついたような気がするのですが、このコンサーベーシヨン委員会答申を見ると、コンサーベーシヨン見地から見て好ましくない生産を行なつて来たことは遺憾なことであると指摘しているのですね。その遺憾なことが帝石において行われていたということは、帝石にはこれに対して十分な知識がなかつたようにも受取れるのですが、併し資源庁長官の先刻の御答弁からすると、十分な知識があつたようにも思えるしするのですが、ここらの点はどうなつておるのですか。
  20. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) コンサーベーシヨンの問題につきましては、勿論この認識なり或いは知識なりはあつたわけでございまして、本年の七月以前といえども、完全な野放し採油ということをいたしておつたわけではございません。或る程度採油管理はやつてはおつた。併しながらそのうちの或る程度採油管理をいたしまして自噴を調節いたしておつたわけでありますが、そのうちの或る井戸につきましては、瓶の口径が大き過ぎまして不適当であつたというような点があつたと思うのであります。これを適当に改善しなければいかんということにつきましては、私どもといたしましても、又帝石といたしましても関心を持つてつたと思うのでありますが、その合理的な採油基準瓦斯油比なり、或いは差圧をどうするかといつたような点が非常に機微な問題でございまして、適当な結論を求めるのにも、まあいろいろ問題があるということは、この委員会におきましてもこれだけの権威が集まりまして、一体どこが必要かということを見出すまでには一カ月もかかつておるというような点でもおわかりになりますように、問題の性質上、だんだん遅れて参つたということに存じておるのでございまして、先ほど申しましたように、これが遅れたという点につきましては、まあ遺憾であつたというふうに存じておる次第でございます。
  21. 島清

    島清君 話は元に戻りまするが、最初の御答弁の中で、長官は合理的な開発法というものを構想されまして、法律で制約して行きたいというようなことを言つておられたようでございまするが、併し私が考えて見まするに、帝石民営になるときは独禁法でしたか、集排法でございましたか、関係もあつて、分割される運命にあつたのです。ところがそれが分割されなかつたということは、只今申上げた通り我が国油田合理的開発のためには、分割によつては不適当であるというようなことから、それがそのまま民営に切換えられた。併しながら只今資源庁長官お話もございました通り民間に切換えられたからというて、会社経営首脳部の諸君がこういつたような勧告などをサボるということになりますると、如何に法律的なことの制約をお設けになりましても、国家的な資源合理的開発ということについては非常に困難を来たすのではないかと思えるのですが、今の首脳部のようなかたがたにおいて法律をお作りになれば、これが国家的な面から合理的な開発ができるとお思いになりますかどうか、この点も併せてお聞きしたいと思います。
  22. 始関伊平

    政府委員始関伊平君) 法律ができます前といえども、この勧告趣旨帝石は実行するだろうというふうに私は考えております。なお法律ができました暁におきましては、この基準に違反するような場合におきましては罰則等もございますし、一層その履行が確保されるということになるというふうに考えております。
  23. 島清

    島清君 どうも私の考え方によりますると、こういうふうな私の質問の要旨からも、委員各位がお酌み取り願つたと思いまするが、利益配当ばかりの保持に懸命になり、私利の追及にのみ汲々として国家的資源合理的開発というものを忘れておられまするところの現首脳部かたがたにおいては、この国家的使命を達成することは困難ではないかというような感を持ちまして資源庁長官お尋ねをしたのでございまするが、併しながら資源庁長官からは十二分な満足な答弁を得られなかつたので、あと会社関係でございまするからして、会社首脳部のかたに又会社に関する問題はお尋ねすることにいたしまして、大変に技術的な面に亙つて質問をするのは恐縮でございまするからして、次に又質問を申上げることのなにを保留いたしまして、今日はこの程度で打切ります。あと審議もございましようから……。   —————————————
  24. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) では次に輸出信用保険法の一部を改正する法律案、これは衆議院のほうから上つて参りまして本審査になりましたので、質疑を続行いたしたいと思います。御質問願います。
  25. 中川以良

    中川以良君 先般私はお尋ねが途中でございましたので、引続いて御質問を申上げたいと思いまするが、先ず第一に、これは最初、この法案が出た時にも問題になつていろいろ私ども審議をし、御質問申上げたんですが、どうも我々の思つておるように法律はできて来なかつたのでありますが、この損害に対する範囲でありまするが、バイヤーによる契約の一方的破棄というものが最近相当にあるのであります。これがやはり対象に今回もなつていない。それからもう一つは、いわゆるマーケツト・クレームをつけられる、これもしばしばそれによつて輸出業者は相当な損害を受けておる。又航路変更による損失、これは最近のように船腹が十分にとれませんと、無理をいたしまするために、しばしば一方的に航路変更されるというようなことがございます。これの損失も、殆んど輸出業者がこれを負うておるというような実情でありますので、この三点に関しても、今回この法律を改正するについて、当局としては十分に御審議になつたのかどうか。どういうわけでこれはやはり取上げられなかつたか、こういう点について承わりたいと思います。
  26. 井上尚一

    説明員井上尚一君) お答えを申上げます。第五條の二におきまして、輸出信用保険保険事故と申しますか、その事由が列挙してありますが、これ以外にバイヤーの一方的キヤンセルによつて以て生ずる損失カバーについて考えたらどうか、或いはマーケツト・クレームについてはどう考えておるか、或いは航路変更によつて以て生ずる損失についてはどうかという御質問でありますが、先ず第一のキヤンセルの問題でございまするが、この点につきましては、私どもも、かなり研究を加えましたつもりでございまするが、言うまでもなく、我が国貿易業の健全な発展を来たして参るという点から申しまする場合には、エツキスポーター、輸出者みずからにおきまして、海外の事情について十分な調査を加え、或いは殊にバイヤー信用状態についても、十分慎重に調査を期するということが当然必要なわけであることは、これは申すまでもないのでありますが、そういう点から申しまして、キヤンセルについて、即ち契約成立当該輸送品の船積みまでにおいて生ずべきキヤンセルに伴う損失につきましては、むしろこれを今般の保険制度カバーすることは、却つて輸出業者が相手方の選択について安易に流れる傾向がないであろうかと、言い換えれば、この制度について却つて濫用の弊害が生ずるという点をも考えました結果、今回の法律改正の中にはキヤンセルにつきましての保険は一応除外して考えましたわけであります。なお次に、マーケツト・クレームにつきましては、これは保険方法で以てこの危険のカバーを考えませずに、別の方法としましてクレームの適当なる解決を考えて行きたいというつもりでおります。即ち契約條項等につきましても、現在の実情としましては、クレーム解決について必ずしも適当なる條項挿入がないような契約も実はかなり少くないのでありますが、今後はそういう面につきましても十分指導等を加えて参りますると同時に、いわゆる救済條項と申しまするか、そういうような條項挿入乃至は国際商事救済委員会制度の活用、そういうような方法で以て、別途このクレームの適当なる解決を考えて参りたいと思つております。それから第三点の航路変更の問題につきましては、実は通産省の事務当局等としましては、輸出信用保険制度の改正について、もう少し大幅な根本的全面的な改正につきまして今鋭意研究中でございまするが、プラント輸出を対象とするバイヤーの信用危険の担保につきましては、これは緊急を要するという理由で以て、今般の改正の部分のみを切離しまして、この臨時国会に実は提案し、わざわざ御審議を願いましたようなわけでございまするが、これ以外に事務当局の案、現在の研究の内容等も、例えば輸出金融保険と言いまするか、金融機関が輸出業者に対して融資をする、そしてその融資が決済期に回収がないという場合に、金融機関に政府のほうからよつて生じた損失保険金として払うという輸出金融保険というような構想でございますとか、或いは輸出促進費用の保険、即ち一定の商品、一定のマーケツトにつきまして宣伝、広告、調査費等を投ずるが、実際現実に或る商品を当該マーケツトに出しました場合に、その出しました経費の回収が十分できないというような場合のそういう経費についての保険を考えるというようないろんなことを考えつつあるのでございまして、御指摘の航路変更の問題につきましても、できればこの次の通常国会に、この輸出信用保険制度の一層大幅な改正の内容にこれを盛込みまして、国会に提案御審議を願いたいと、かように考えておるようなわけでございます。
  27. 中川以良

    中川以良君 今の御説明で、まあ今回は急を要するために当局でいろいろ御検討になつていることが十分に織込まれていなかつたということはよくわかつたのでありまするが、近く更にこれの改正を意図されているようでございますので、そういう際には一つこういう問題は十分に掘下げて御研究を頂いて、是非一つ御改正を願いたいと思います。なお今お話のございました輸出金融保険制度とか、或いは輸出促進費用に関する保険制度とかいうようなことは、これは非常に私はやはり必要であると思いまするので、今後輸出を奨励し、これを促進いたしまするためにも、こういう制度に対する今後の法律等に対しましても、今後一層御研究を願いたいと私はお願いを申上げる次第であります。それから今回の保険契約の相手方といたしましては、輸出のメーカーというものは全然考えられていないように存ずるのでありますが、これに対してはどういうことでございましようか。
  28. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 第五條の二の規定に、契約者としましては、一応輸出者が今回のこの保険におきましては、この制度の結局被保険者は輸出者でありまするが、メーカーとか或いは金融機関というように、エツキスポーターに直接間接非常に関係の深い業者も、エツキスポーターの承諾を得まして第三者のための契約を締結し得るということは、これは保険上当然の問題でありまするが、こういう意味でこの契約者としましてメーカーも第三者のためにする契約をなし得ると、かように考えておるわけでございます。
  29. 中川以良

    中川以良君 その点は今の御説明で大体了承いたしました。次は乙種保険と甲種保険とを比較をいたしまして見ますると、例えば乙種にございまする第五條の二の第四号の相手方の破産、それから同じく第五号の相手方の六カ月以上の債務の履行の遅滞というようなものは乙にはございまするが、かくのごときものは当然甲にあつても私は然るべぎだと思うのでありまするが、このたびの改正等において甲のほうにもこういうものを包含をされるというようなことはお考えにならなかつたのでございましようか。
  30. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 甲種保険の場合につきましては、現行の規定に列挙してありまする通りに、いわゆる相手国の輸入制限でございまするとか、或いは戦争とか、内乱とか、暴動とか、或いは我が国のほうからのエツキスポートの制限、禁止というような政治的乃至は行政的の非常危険のみをその保険理由といたしているというのが、従来のいわゆる甲種保険制度の内容であります。今般は第五條の二によりまして、相手方の破産、相手方の六カ月以上の債務の履行遅滞というような、言い換えれば相手方の信用についての危険の担保をしようというわけであります。この相手方の信用の危険につきましては、一応第五條の二の規定に基きまして政令で定める貨物を輸出した場合というふうに限つておるわけであります。この政令できめる貨物と申しますのは、船舶、車両等も包含いたしました意味での設備機械、即ちプラント類に一応限定しようというのが今回の本制度の骨子でありまするが、通常の商品の輸出についても、相手方の破産とか、相手方の債務履行遅滞だとかそういうような、いわゆる信用危険の担保をやるのがいいのではないかという御質問であろうかと存じまするが、十分御承知通りに、普通の商品の輸出の場合には、従来の方法としましてはいわゆる取消不能の信用状開設方式のみによつておりまする関係上、信用状の開設と同時に当該商品の輸出の結果生ずる代金請求権につきましての危険というものは、殆んど、そのカバーが可能でございまするが、このプラント類につきましては、そういう在来の信用状方式により得ない場合が多い、言い換えれば非常に長期に跨つて代金の決済をやるとか、或いは現物で、最もいい例がゴアの鉄鉱石の場合でありまするが、当方から鉄鉱山の開発用の機械を出す、そうしてその鉄鉱山の開発をやる、そうして鉄鉱石を生産して、この鉄鉱石を日本が輸入します場合に、一トンについて何ドルという割引をやつて、そういう方法で以て鉱山開発用の機械の代金の決済をやろうというような特殊の決済方式による場合が非常に多いわけでございます。そういう関係でプラント類の輸出につきましては、代金請求権についての危険が通常の場合と比べて遥かに大きいという意味で、一応今般はプラント類を対象としましてバイヤーの信用を、言い換えれば相手方の破産とか、債務の履行の遅滞というような事項をこの保険の対象としまして考えたようなわけであります。
  31. 中川以良

    中川以良君 今回の場合は、今の御説明でわかるのでありまするが、先ほどお話のあつた通りに、近く更に改正を意図されておるのでありまするが、その場合にはそういう面にまでお考えございましようかどうか、どうでしようか。
  32. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 今後の情勢の変化に応じまして、今日とつておりまする取消不能の信用状方式というものを、今後も続けて、普通の貿易にこれを利用し得るかどうかというような、そういう事情の今後の稚移によつても異なつて参りましようが、プラント類以外のものでありまして、そういう従来の取消不能信用状方式により得ない場合には、こういう保険制度の途を設けたほうがいいかと存じまするが、一方そういうふうに普通の商品につきまして相手方の信用危険と申しますか、破産、債務履行遅滞、そういうようなものの危険を事由に、これを追加するということになりますれば、勢い保険金の支払額が大きくなるという関係で、本保険制度の資本金の増額、そういうように国庫の面に響いて来る面もかなり多かろうと存じますが、そういう両々の点を考慮に加えまして、大蔵当局との協議も十分尽しまして今後なお研究を加えて見たいと、かように考えております。
  33. 中川以良

    中川以良君 今の点は御指摘の通りに、国家財政との、まあかね合いもございますので、相当困灘かと存じまするが、少くとも通産当局といたされては一つ十分御措置を願いたいと思うのであります。  それから続いて御質問申上げますが、甲種保険と乙種保険とを兼ねてこれを契約することができるかどうかという問題でありますが、例えば船積みまでは甲種保険にいたし、船積み後は乙種保険にすると、こういうようなことは可能でございましようか、どうでございましようか。
  34. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 御意見通りに可能であると考えております。
  35. 中川以良

    中川以良君 それからこの法律が施行されましたときに、すでに船積みされておりまするところの輸出については、これをその際に契約をいたすことができるかどうか、この点を明らかにして頂きたいと思います。
  36. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 契約締結は可能であると考えております。
  37. 中川以良

    中川以良君 それから政令の委任事項について伺いたいのでありまするが、先ず第五條の二の第一項の政令で定める貨物、これは先ほどプラント機械類というお話がございましたが、これの政令の案というものがもうでき上つておりますか。あつたらそれをお示し願いたい。なかつたらば大体どういう範囲をきめようとしておられるか、その点を明らかにして頂きたいと存じます。
  38. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 政令案の内容としましては、この第五條の二の規定によりまする貨物の範囲のほかに、例えば保険料率問題でありまするとか、或いは第五條の三、第二項の、即ち「百分の八十の範囲内において政令できめる割合」というような規定が第五條の三の第二項にございまするが、そういうようないろいろな事項を政令できめることに相成つておりまするが、今御質問の第五條の二の第一項の本文に関する限り、政令としましては、現在考えております案文は次の通りでございます。簡単でございまするから申しますると、設備としまして、括弧しまして船舶及び車両を含む、並びにその部分品及び附属品というのがこの第五條の二の政令できめる貨物の範囲でございます。設備(船舶及び車両を含む)並びにその部分品及び附属品、以上です。
  39. 中川以良

    中川以良君 それから第五條の六の第一項に、保険料率、これも政令で定めるとなつておりまするが、この保険料率についてはどうでございましようか。
  40. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これは大蔵省のほうとの協議を要する事項でございまして、まだこれは協議を了えていないのでございまするが、通産当局としましては、大体年二分くらいの料率を考えております。
  41. 中川以良

    中川以良君 それから第五條二の第三項、政府の乙種保険保険引受限度、これは国会の議決を要することになつておりまするが、大体政府の腹案としてはどの限度を考えられておられますか。
  42. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 今年度十六億程度でございます。
  43. 中川以良

    中川以良君 これは国会の議決をいつ頃お求めになるお考えでございますか。
  44. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 補正予算の総則の中に、この十六億という規定が設けられておりまして、今別途予算委員会のほうで御審議を願つておるわけであります。
  45. 中川以良

    中川以良君 それから第五條の二の第一項第五号でございまするが、これに「輸出者の責に帰することができないものに限る。」という括弧の項目がございまして、これは先般やはり本委員会において、一応疑問視されて局長は御答弁をしておられるようでございますが、どうもまだ私ども明確に了承し得ないのでありまして、この点についてお伺いを申上げたいのでありまするが、「輸出者の責に帰することができないものに限る。」とございまするけれども、債務の不履行の際には、輸出者に何の落度もない場合には当然これは保険の対象となるものでございまして、問題ではないと思うのであります。それから輸出者の責に帰し得るような場合が、即ち輸出者の側に何らかの落度がございまして、その債権そのものにきずがあるのであつたならば、これは債務の不履行にはならないのではないかと思うのであります。従つて債務の履行遅滞と言いまするならば、そこでは必ず輸出者のほうに責任はないのであつて、従つて括弧の中に、かような字句を入れることは蛇足ではないかと思うので、むしろこういうことは要らないのじやないかというふうに考えますが、この点一つ明らかにして頂きたいと思うのであります。殊に先般局長は、同時履行の抗弁権がある場合というような御説明があつたのでありますが、この点どうも私どもには明確に了解できないのでありまして、これらの場合、時にこういう字句を必要とする場合の事例を挙げて御説明を願いたいと思います。
  46. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 中川委員の御意見の通りに、厳格な意味におきまして債務の履行遅滞と申します場合は、民法上の法理論から言いますれば、債権者のほうに義務の履行遅滞、即ちこれは大体エツクスポーターが同一契約乃至は別個の契約で以て、相手方に対して別の債務を負つておるというような場合に、同時履行の抗弁の関係にある、その場合において輸出者がその債務を履行しない、よつて相手方が同時に債務の履行遅滞の状態にある、こういう場合を想定して第五号を設けたわけでありまするが、普通の民法上の法理論のほうから申しますと、債務の履行遅滞という場合には、当然債務者のほうにそういう債務の履行遅滞乃至は不履行の状態がない、言い換えれば逆に債権者のほうにそういう債務の不履行の事由がありますれば、これは債務の相手方が、債務の履行遅滯の状態にはなつていないというのは、民法上の従来の厳格な債務履行遅滞の理論であると存じまするが、この第五條の二の五号において債務の履行遅滞と申しましたのは、そのような民法上の法理論で申しまするような、厳格な意味でここに債務の履行遅滞と申したのではないのでございまして、これは六カ月以上経過後になつて、なお且つ代金の弁済がないという、債務の履行が事実上ないという、その事実上ない状態、その状態のこの債務の履行遅滞とここには申したわけでございまするので、これは括孤の中は債務の履行遅滯というものを、中川委員のように法理論に詳しいかたでございますれば、何も括弧の中をつける必要はないのでございますが、通常の問題としまして、普通保険契約者はそう債務の履行遅滞という法理的な概念について必ずしも正確な知識を持つていない場合が多いというのを考えまして、まあ申さば誤解のないようにと親切に、契約者のほうに誤解がないようにという意味で、この括孤をわざわざつけましたようなわけであります。この御指摘の点は、我々事務当局としまして従来法務府のほうとのこの法文の作成の経過にそういう同様の実は論議もあつたようなわけでありまするが、一般大衆と申しまするか、貿易業者一般、本制度の利用者の一般のこの法律上の知識程度というものを前提としまして、却つてこういうふうに書いて置いたほうがむしろ親切であろうという考慮で、こういう規定を設けましたわけでございます。
  47. 中川以良

    中川以良君 今の御説明を聞きますとよくわかるので、却つて親切な意味においてこういう項目をお入れになつたのでございましようが、紛争の起きた場合にはいろいろ物議をかもすもとになるのではないかという点を私どもも心配いたすので、これはそういう懸念はございませんでしようか。
  48. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これは実際上は、この法律以外に普通保険約款を設けるつもりでありますし、その約款上にもこの点につきましては明確を期して、そういう紛争の生じないような、十分防止の方法は講じたいと考えております。
  49. 中川以良

    中川以良君 その点一つ十分に御考慮を頂きたいと思うのでございます。それから第六條の不服の申立の事項でございまするが、この原案を拝見をいたしますると、不服申立権を乙種保険の被保険者及び保険金を受取るべき者に限つて認められておりまするが、これは保険契約者が除外をされております。この点は私ども考えますると第五條の五によりまして保険契約者の違反行為を理由として行われたところの処分に対する場合には、やはりこれを認めておくべきではないかと思うのでございますが、この点はどういうふうに御解釈でございましようか。
  50. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 仰せの点一応御尤もかと存じまするが、実際問題としまして現実に当該保険金につきましての利益を有する利害関係者は、この被保険者又は保険金を受取るべき者のいずれかでありまして、保険契約者は当該保険金の受領につきまして、実質的な、経済的な利害関係にない。そういう理由と、それからもう一つはこういうふうに保険契約者と被保険者と保険金の受領人という三者は別々になるというのは、これは通常生命保険の場合にはそういう三つの関係を生じて参りますが、こういう損害保険の場合には保険契約者は同時に被保険者であるか、保険金の受領人であるか、いずれかで、両方をダブつてその地位を有するというのが通常の場合であろうかとも存じまするので、そういう理由で以て契約者に異議申立の途を設けることは必ずしもその実益がない、かような理由で以て一応ここから除外しましたようなわけでございます。実際上は今申しましたような理由で以て弊害と申しまするか、少くとも被保険者、保険金受領人のいずれかにその異議申立の途を設けるということによつて、必要且つ十分ではないかと考えます。
  51. 中川以良

    中川以良君 今の点は次の改正のときに更に御研究を願うべきじやないかと存じますので、十分今後とも一つもう少し御研究を願いたいと思います。  それからこの法律と中小企業信用保険法とを比べてみたのでございまするが、中小企業信用保険法の第八條には、政府が一切に対しまして保険金の全額を支払つた場合におきまする政府の代位に関する規定がきめられておるのであります。ところがこの乙種保険につきましては設けられておりません。これはやはり第三者の権利にも関係することでございまするので、法定をする必要があるのではないかというふうに考えられるのでございまするが、この点はどうでございましよう。
  52. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 御指摘の点、誠に御尤もかと存じまするが、我々の一応の考えとしましては、中小企業信用保険の場合と異なりまして、仰せのように政府保険金を払う、そうして政府輸出業者が有する債権の代位をやるという場合を考えますと、これは輸出契約でございまする関係上、国際取引で以ていろいろ日本の法令に必ずしもよらない場合が多いし、或いは又実際上政府が輸出当事者と同様の地位になりまして、相手方のインポーター、即ち先方のバイヤーに対してその請求権の行使をやるということは、実際上は極めて複雑且つ不便な関係を生じて参るのであろうということを考えまして、一応我々としましては保険金を払いまして、以後において、その輸出者が相手方のバイヤーのほうから代金の回収をやりました場合には、その保険金の返還を命ずる、そういう輸出者を飽くまでも介在をして、このエクスポーターを通じましてその当初払いました保険金について当該エクスポーター、輸出者損失の軽減の事態、そういう事情が生じました場合には、当該部分について政府に金額の返還を命じて行く、そういうような関係を通じて、この保険金の回収を考えたほうが却つて政府にとつては便宜であろう、そういうつもりで債権の代位の規定を特に設けなかつたようなわけでございまするが、この点につきましては、いろいろ今後法律的な問題、殊に相手方に対する関係等から申しまして、この点について私は明確な規定を仰せのように設けたほうがいいのではないかという議論も確かにございまするので、次の法律改正の場合には、なお十分に研究を加えたいと考えております。
  53. 中川以良

    中川以良君 保険金の返還を命ずるということは、これは当然やりませんので、これにはやはり根拠がなければならんと思いますので、今のような解釈が不十分でございますので、やはりいろいろな物議をかもすと思いますので、これは次の改正のときには特別御考慮を願いたいと思います。  それから最後にお尋ね申上げたいのは第五条の二でございまするが、これが「(輸出貨物について生じた損失を除く。)」とございまするが、生じた損失とはどういう場合を言うのでございますか。
  54. 井上尚一

    説明員井上尚一君) この輸出信用保険法の第一條にも明示の規定がございまする通りに、この保険は通常の保険によつて救済し得ない危険を対象とするということに相成つておるのであります。この第五條の二におきまして、輸出貨物について生じた損失と申しまするのは、通常の海上保険等によりまして危険、言い換えれば当該貨物の減失でございまするとか、或いは毀損でありまするとか、或いは拿捕でありまするとかいうような、通常の海上保険によつて保険事故として入つているような、そういう危険によつて生じた損失は、一般の海上保険契約のほうでやるべきであつて、この保険制度のほうには、これは対象としない、そういう意味でございます。
  55. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 二、三点お尋ねいたしますが、第五條の二には、いわゆる損失を補填する場合の條件が載せられておりますが、この一号から五号までに分けまして、既往のこういうような事故の起きました実績の件数並びに契約額がわかつておるならば御発表を願いたいと思います。
  56. 井上尚一

    説明員井上尚一君) この従来の輸出信用保険制度の実績としましては、前回にも申したかと存じまするが、収入保険料全部で一億、うち民間保険会社の収入が二千万円で、政府の再保険収入が八千万円でありますが、これに対しまして政府のほうから払いました保険金が約三億七千万円ということに相成つております。結局政府の合計としましては、約三億円近い赤字を生じた。この政府保険の支払の事由の殆んど大部分は、いわゆる中共香港に対する当方からの輸出の禁止の問題、あれが保険事由の大部分であります。
  57. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、この第五條の二におきましては、只今申された三億円の赤字の内容は、第二号に相当するものと一応了解してよろしうございますか。
  58. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これは今申上げましたのは、従来の輸出信用保険法の第三條、甲種保険制度の第三條の第五号に、「外国為替及び外国貿易管理法による輸出の承認の取消又は輸出契約の成立後新たに実施される輸出の制限若しくは禁止」、この第五号の最後に該当するわけでございまして、今度の乙種保険について申しますれば、第五條の二の一号、二号、三号と並んで入つておりまするが……これの三号に……これは今申しましたように、従来の損失はこの第三條第五号によつて払いました保険金であります。
  59. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今度乙種保険に代る場合には、只今申された中共、香港の輸出禁止によつて生じたような、そういう損害というものは、この新らしい第五條の二の中のどれに大体相当するようになるのですか。
  60. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 第五條の二の中には、これに該当する事由はございません。
  61. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、今までのところでは、今設けられようとする第五條の二によるところの実績、一号から五号までの実績の件数並びに額というものはないということでございますか。
  62. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 只今申しました通り、従来の経験によりましては、従来の第三條の第五号による事由でございまして、第五條の二の今度の一号乃至三号に該当する事由による保険金をこれまで払つた実例はございません。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは保険金の支払でなくて、実際にこの乙種保険の一号から五号まで、この保険が今までにすでに成立していたとするならば、保険金が支払われたであろう、こういう工合に一応予想せられるような損害というものが実際においてどれくらいあつたか。
  64. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 言うまでもなく、従来はこの甲種保険のみでございまして、これは輸出契約成立と同時に被保険利益が生ずる、これに対しまして乙種の保険につきましては、当該貨物の船積後においてこれの代金請求権を担保にしよう、そういうふうに時期的にこの内容は違つたものに相成つておるわけでありまするが、若しこれまでにこの五條の二の規定があつた場合には、どういうこの第五條の二の一から三までに該当するような事由が如何ほどあつたであろうかという想定の御質問でございますが、これはちよつと今度新規に改めてこれは実施をする問題でもございまするから、ちよつとこの点につきましてはお答えを申上げかねると思います。
  65. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今までもプラント輸出というものは相当あつたわけなんで、今おつしやつたような工合に、甲種保険においてまあそういうことが一応行われたわけでしようけれども、それで不便があつたから、実状に合わないから乙種保険の新らしい制度を創設しよう、こういうお考えであろうと私は了承するわけです。従つてそういうような不都合なことが全然なかつた。今後は予想されるかも知れないけれども、今までにはなかつた。こういう工合におつしやられているものと理解してよろしうございますか。
  66. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 今のお話によりますと、プラント類の輸出につきまして当面我々のほうで最も保険事由としてケースが多いであろうと考えておりまするのは、第四号と第五号の危険でございまするが、これ以外にも一号乃至三号という場合でも、今後の問題としましては、例えばイランのような情勢でございますとか、或いは第三号の問題としましては、先方での荷揚港の港湾の罷業、ストライキでありますとか、そういうような事態が十分予想し得るかと存じます。
  67. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 どうも私は保険の内容に亙つて質問を申上げておるわけでないので、いわば常識論を申上げてるわけであります。例えば提案理由説明には、「このような資本財の輸出後その代金を回収するまでの間における買手の破産、支払義務遅滞のごとき信用危険を保険制度によつて救済しようとするのが本改正法案趣旨とするところであります。」こういう工合になつておりますから、救済しようとするという意味においては、私はやはり今までに何らかそういうような救済をしなければならなくて、法律がないためにできなかつた、そういう実績がなければおかしいと思いますが、如何でしようか。
  68. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これは最近の傾向としまして、東南アジア或いは南米等、そういう方面に対しましてプラント類の輸出がだんだん殖えて参る。そういう場合にプラント類につきまては、先ほど申しましたように従来の決済方式と違つた決済方式である。その結果信用危険が非常に大きいというので、第五條の二の四号、五号というような、バイヤーにつきましての破産とか債務の履行遅滞というようなことが主なる事由として考えられるわけでありまするが、これと同時に例えばイランの方面に大きなプラント類の輸出が出るというような場合に船積みをする、そうして先方に戦争とか、或いは内乱が起るというような場合、これは第五條の二の第二号に該当するわけでありまするし、或いは又ベルギー、そういう或る外国に、プラント類の輸出をするという場合に、英国のロンドンがその決済の市場であるという場合に、そのロンドンにおきまして、為替の制限をやるというような場合が第五條の二の第一号に該当するわけでございまするし、或いは又第三号の例として申しますと、プラント類の輸出をする、そうして先方の相手国のほうで急に輸入制限の方法を講ぜられるというような場合が第三号に該当するかと考えます。
  69. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 将来の見通しの問題はあとで私お聞きしようと思つておるわけなので、今日までの状態がそういうことがあつたのかなかつたのか、今までの現行の法律ではどうしても業者を保護するに、輸出貿易を振興するのに工合が悪い、そういう事態が現実にあつたのかなかつたのか、この点をはつきり一つ聞かして頂きたいと思う。
  70. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 逆に申しますと、最近はプラント類の輸出につきましては、長期間の延払いの支払状況がだんだん多くなつてつた。が、その延払いの長期間に互つて代金決済をやる條項がある、そういう契約の場合にこういう危険担保の途がございませんと、輸出契約をどうしても躊躇する、契約の締結ができないという結果に相成ります。従来はこのような乙種保険に該当しますような途がございませんでした関係上、その意味で従来はそういう長期間の代金決済方式によりまするような輸出の契約は相当むしろ制限されておつたということ。言い換えればこの一号乃至三号に該当するような現実の事例というものは従来はなかつたと考えております。
  71. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 わかりました。現実の事例は事実なかつた。だけれども長期決済の契約では業者が好まないのでいわゆる輸出振興に対して相当の阻害があつたことが認められる、こういうことだと思いますが、そうしますとそういうような阻害のあつた内容は、一体大体的確なものがわかつておるわけでありますか。長期決済方式であつたために折角輸出の契約ができるものが不能に終つた。そういうものがどの程度つたのか。
  72. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 契約の一々につきましては、業者のほうから政府のほうにこの内容を報告するような建前にはなつていません関係上、広くその契約の実例について申上げることはできないわけでありまするが、従来例えば一例としまして、インドネシアに対しましての車両の輸出というような問題がありましたが、こういう乙種保険のような途がこれまでなかつた関係上、これは契約の締結を見ないで済んだというような実例が今日までございます。
  73. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私又あとでこの問題は伺いますが、そうするとこの乙種保を設けたいといつた意向が強く出て来ましたのは、通産省当局がみずからこれに気付き善処をすべく努力をせられたのか、業者のほうからはそういう意見というものは全然出なかつたわけですか。
  74. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これは政府のほうとしましてもこれまで考えておりましたし、或いは輸出銀行乃至は貿易関係の当事者のほうからも、こういう点についての危険の保障の要望はあつた、又どちらか一つというのではなくして、例えば最近のゴアの鉄鉱石地の開発用のプラント類の輸出等の問題を契機としまして、政府の側におきましても、輸出銀行の側におきましても、或いは民間の側におきましても、こういうような制度についての要望が大きくなつた、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  75. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、日本の貿易業者というものが、現実にそういうふうにぶつかつて、事態がはつきりして体験をするというような勇気がなくて、やはり貿易をやるためには、国家の相当保護がなければ踏切りがつかない。こういうような態度で一応あるように私は了承せざるを得ないのですが、そういう状態ですか。
  76. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 長期間に跨がりまして、二年とか三年とかいうような長期に跨がりまして相手方に信用の供与を行うという場合には、当然金融業者側におきましても或いは輸出業者みずからにおきましても、こういう契約の締結につきましては相当危惧の念と、不安の気持を持つということは当然であろうかと存じます。なお政府のほうでは従来こういう輸出信用保険制度につきましては英国、フランス、西独、そういうような西欧各国のほうでもこういう方法については長年の経験を積んで参つておりますが、そういうような外国での輸出信用保険制度の内容につきましても我々のほうとしては研究を加えました結果、今日の輸出振興に大きく寄与する方法であると信じました結果、こういう制度をこの際作つたわけでございます。
  77. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 輸出振興に寄与できることは、これは明々白々だと私は思いまして、異議ございません。ただその何でもかんでも寄与できるから法律を作つたらいいという理窟にはまあならないと私は思うので、いろいろな諸般の事情をお聞きをいたしておるわけなんです。そこで先ほどインドネシアの車両の例をとつてお話になりましたが、只今のプラント輸出というものは私の理解しておる限りにおいてはこういう貿易上の手続、或いは代金決済の将来の方法というよりも、輸出が若し振興が阻害されているとするならば、それはやはり日本の製品が国際価格に競争に堪えない、日本の製品のほうが割高であるというのが大きな原因になつているように私は承知をいたしておるのでございますが、そうじやございませんか。
  78. 井上尚一

    説明員井上尚一君) その点は御質問通りに、最近の国際入札におきまして、不幸にして我が国の機械類は入札に入る、落札につきまして非常な困難を感じているということは事実であります。この根本的な原因はいろいろあろうかと存じまするが、やはりどうしても今後の方向としましては、原材料、特に鉄鋼類、その他の非鉄金属類、そういう原材料の価格の切り下げを考えて参りますと同時に、機械工業としましても企業の合理化を一層推進しまして、これのコストの切り下げということについて万全を尽して参る。そういう方法と今度のような輸出信用保険制度の改正という問題、或いは金融面の円滑化というような問題がすべて両両相待つてこのプラント類の貿易、輸出の振興という結果を招来するものである、かように考えております。
  79. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今プラント輸出が昨年あたりよりも若干頭打ちをいたしまして、低調になつている主なる原因は、例の代金決済等の方法に欠くるところがあつて、例えば只今審議をいたしておりまする乙種保険制度のようなことがないために伸びないのか、或いは日本の製品が国際価格と競争に堪えないためにできないのか、そのいずれのほうが大きいとお考えになりますか。
  80. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これはその場合場合によつて異なるかと存じますが、当面の問題としましてゴアの鉄鉱石開発用の機械の輸出という問題につきましては、これはコストとか、日本の機械のコストがどうこうであるというような問題ではなくして、これは専らこういう長期に亙つての信用供与に伴う危険のカバーという要請が強く表面に出ておるわけでありますが、或いはこのほかの場合で国際競争入札に入ることがどうしてもできなかつたというようなことが、こういう制度の適用を、勿論見るまでもなくして日本の機械の見積りが一般の競争各国と比べて非常に高い、高価であつた。言い換えれば機械乃至はその原材料の原価、生産の原価のほうが却つてその輸出を期し得なかつた原因であろうというふうに、そのケースケースによつて問題が違つて来るかと思いますが、全般的に申しますと両方の原因がそこに生じておると考えております。
  81. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 両方の原因とおつしやるけれども、私は奇妙に感ずるのですが、国際価格よりも日本の価格のほうが高いということは、これは数字ではつきり出ておりますですよ。私ども数字を役所から配られたものだけでもはつきりわかつている。ところがそれと同じようなウエイトに輸出信用のほうの問題が取上げられておりますけれども、そちらのほうは具体的な数字はない。ただ業者は何だかそういうような気持でおり、政府もそういうように考えておる、そういうような御答弁のようであります。さようですか。私どうもここのところちよつと理解いたしかねる。
  82. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 具体的な例について申上げましたほうがいいかと存じまするが、只今申しましたインドネシアに対する鉄道車両なんかの場合について申しますと、単価、これは車両の数はかなり多いわけでありますが、単価千二百万ドル、これの支払條件としまして、競争各国、即ち外国が五年とか六年とかいうような年賦の條件をここに提出して来るわけであります。或いは又アルゼンチンに対しましてのヂーゼル・バス、トロリー・バスなんかの引合の問題でありますが、これは単価二千百万ドルくらいであれば、十分契約の締結は可能である。が、外国がこれに対しまして三カ年の年賦という條件を提出中であります。こういうような例はほかのブラジル、パナマ、インド、ビルマ、タイというような各国のほうからの引合につきまして、こういうふうに、その金額の面では、その単価の面では競争可能である。が、その條件が、五年とか六年とかの年賦になつておるというような條件を外国が提出するような場合に、我が国としてはこういうような長期の信用供与に関しましての危険をカバーする途がなければ、これは企業者としましても金融機関としても、これの契約締結にはなかなか応じ得ない、こういうような実例から徴しましても、仰せの通りにこれは並行しまして、勿論別途一層のコストの引下げの努力というものは勿論必要ではございまするが、同時にコストの面で競争し得ても、支払條件がこういう長期の信用供与という條件があります場合には、何らかの形でこの点をカバーし得る途をここに講ずる必要があると、かように考えております。
  83. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 よくわかりました。そうすると更に伺いますが、日本と競争入札をいたしております世界の各国にも、今設けられようとしているこの種の保険制度と同様或いはこれ以上に、業者を保護するような制度が設けられておりますか、若し設けられているといたしましたならば、その国等を一つ承わりたいと思います。
  84. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 英国及びフランス、西独、それからスウエーデンというような各国では、これと同様な輸出信用保険制度方法を講じております。
  85. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで大体プラント輸出の仕向先というのは、私はポンド地域が殆んど中心だと思いますが、さように理解してよろしうございますか。
  86. 井上尚一

    説明員井上尚一君) お手許に資料がすでにお配りしてあるはずでございますが、昭和二十一年以降プラント類の輸出契約状況という資料によつて御覧願いましてもおわかりのように、これはポンド地域以外にも相当ダラー地域乃至オープンアカウントの地域、これらを包含しているわけであります。国で申しますればパキスタン、インド、フイリピン、タイ、中国、朝鮮、ノルウエー、デンマーク、ブラジル、アルゼンチン、パナマ、インドネシアというような各国であります。
  87. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私ちよつと今統計を細かく見ていないのですが、極く大ざつぱで結構ですけれども、ポンド地域と、それからドル地域、それからオープン・アカウントの地域と分けまして、今までのところの実績ではそのパーセンテージはどういう程度になつておりますか。
  88. 井上尚一

    説明員井上尚一君) いろいろ総計としましてのとり方もございますが、仮に日本輸出銀行の従来の融資の実績によりまして、あれは御承知通りに、プラント輸出を対象としている銀行でありますが、輸出銀行の実績によりますと、その融資をいたしました輸出契約について申しますと、ドル地域が六十一億七千万円、これは輸出契約金額について申します、四六%、それからポンド地域が五十二億八千一百万円、これは三九%、オープン・アカウントが十九億二千万円、一五%、合計しまして百三十三億七千一百万円というのが輸出銀行の創業以来最近までのこれはトータルに相成つております。
  89. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今後の見通しは、この三地域のうちでどの方面へ伸びるとお考えでしようか。
  90. 井上尚一

    説明員井上尚一君) これは現在及び今後の見通しとしましては、東南アジア及び南米というふうに考えております。
  91. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が今心配しておりますのは、ポンドとドルの交換ができないことはまあ御承知通りですが、その場合に、ポンドへの輸出が割合に殖えましても、日本の産業の振興には大して役立たないと思いますけれども、そういう考え方は、若し間違つているといたしますならば、間違つている点を一つ教えて頂きたいと思いますが、如何でございますか。
  92. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 当面の問題としましては、ドルの手持量も然るこながら、ポンドの手持の累増は顕著であるという現象、これは十分すでに御承知通りであります。当面の問題について申しますれば、ポンド地域への輸出の増加ということは、必ずしもこれは好ましくないとも或いは言えようかと存じますが、併しこの問題についても考え方がポンドの手持ちが殖えれば、これで以てポンド地域からの輸入を大幅にこの際推進をするということによつて、ドル地域からの輸入をポンド地域からの輸入へこれを切替えて行く、そういうことが適当であるかと存じます。で、そういうふうにドル地域からポンド地域への輸入市場の転換ということを考えます場合には、やはりこれの財源という意味でポンど地域への輸出というものがやはりますます伸びるほうが結構である、こういう考えも成り立ち得るかと存じます。なお又、例ばかり申して恐縮ですが、ゴアに対するプラント輸出ということの結果、ゴアの鉄鉱石というものの輸入が可能になるというような意味で、長い眼で見ますれば、これはポンド地域に対する輸出、プラント類の輸出の増加によつて東亜地域からの重要原料の確保が可能になるという問題、それからなお、これはもう少し大きな意味で東南アジア経済計画の推進ということに関連しまして、今後は米国のワシントン輸出入銀行なり、或いはECAの資金なり、或いは国際復興開発銀行というような方面の資金がこれに投入になるということになりますれば、そういうルートを通じましてのダラーの獲得ということにも或いはなるのじやないか、かように考えております。
  93. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体明らかになつて来ましたが、要するにポンド地域向けに相当輸出が伸びておりますけれども、ポンドだけ持つても、日本の経済の復興には余りならない、やはりその地域に輸出をするならば、見返に相当な原材料を入れなければ意味がないということが、私は明らかになつたと思うのです。そこで日本は非常に疲弊した経済力の国なので、プラント輸出というのは、これは一種の資本投資、海外への資本投資に当るわけですね。非常に経済的に弱い国が海外の開発をやつてあげるということは非常に結構でしようけれども、国の中すら治まらんのに、よそへどんどん資本投資をするというようなことは、これは私は余り好ましくないと思うのです。従つて今局長のおつしやつたようにポンド地域から輸入を推進したいということが、これが最も重要なポイントになると思う。ゴアを盛んに力説せられておつて、私はこの法律はゴア法律かと思つてさつきから聞いているのですが、そのほかにそういう所から近々どうしても輸入を促進しなければならぬ、そういう見通しでお考えになつている品物があれば、相当公算の高い品物があれば、一つお教えを願いたいと思います。
  94. 井上尚一

    説明員井上尚一君) 東南アジア地域の問題につきましては、先般当委員会でモロー調査団の報告についても御要求がございまして、モロー調査団の報告に対しましての資料もお配り申してありまするが、この内容によりまして東南アジア地方のいろいろ資源については御理解願えることと存じます。今後の問題としまして、まあ今の御質問中に、日本としまして今資本投資をやることが適当かどうかというようなことについての御懸念がありましたようですが、例えば紡織機械等につきましては、これは内地の繊維工業の能力というものは、すでにまあ十分と申しますか、飽和点になつている。紡織機械、繊維機械の生産能力というものは非常に余つておる。或いは又電気機械だとか、或いは車両でございますとかいうような、そういう重機械類の輸出ということは、日本内地を差しおいて外国へ云々というような今の御質問のような懸念の点はないのではないかと私は考えております。なおプラント類の輸出の結果、やはり重要原料の輸入が必要である。ついてはプラント類の輸出の対象としても重要原料の入手の可能性のある例としてはどういう例があるかというのが今の御質問のポイントであつたかと存じまするが、鉄鉱石について申しますれば、フイリピンにララツプという会社とサマールという大きな有名な会社がありまするが、こういうようなフイリピン地方の鉄鉱石のマイニングの会社について申しますと、現在露天掘の状態でありまして、これを一層能率的に、抗道を今後ますます掘つて参るという場合には、これに必要な開発用の機械ということがここでも問題になつて来るわけであります。或いは又香港に馬鞍山鉱山というようなものがございまして、こういうような開発に協力するということによりまして、当該原料の入手が可能であろうと考えておりますし、或いは又、今は鉄鋼の例を申したのでありまするが、ニツケル鉱石について申しますれば、ニユーカレドニア地方への現在の開発の能力を一層大きくするという意味で、かなり鉱山開発用の機械投入が必要になるのでありますが、その結果、そういう原料の入手の途ができる。或いはクローム鉱石とか鉄鉱石、或いはマンガン鉱石、或いはボーキサイト、或いはアスベストとか、そういうようないろいろな例について、今のプラント類の輸出によつて向うから原料の入手の期待し得るような場合というものは、決して少くはないと考えております。
  95. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 まあものの考え方なんですけれども、例えばニユーカレドニアのニツケル鉱石などは、これは日本に輸入して見たところで、恐らく単価の高いもので、これはまあ経済引合いにはされないようなものなんですね。向うで精錬してしまえば別ですけれども、内地へ運んだんではこれは問題にならないことは、この委員会でも審議をした通りなんです。そこでまあ最後に結論的なことを一つお聞きしたいのは、要するに私は先ほど日本の国内の経済が非常に弱いのに海外投資をするというのは、私は行き過ぎではないかということを申上げた意味は、ポンド地域から、はつきりした輸入原材料というものを確保せられて、そうして交換ができれば私はさほどに申上げないのですけれども、何しろ長期の鉱山開発用のプラント輸出をやるということになれば、相当長期に亘るわけです。これは富んだ国が植民地開発をやつたときのようにやるということになれば別ですけれども、国内で生活のできないような状態において、そういうことをするのはどうか。これに対して局長はそうじやないのだ、例えば繊維機械のごときは国内で飽和状態に達しておるので、繊維機械を支えるためには海外に出さなければならないということを言われた。そういうことになりますと、一つ私は疑念を持つているのは、賠償関係でインドネシアにしても、その他フイリピン或いはその他の国々においても日本に対して相当強い要求をされておるわけです。従つてそういう国々が、日本の輸出貿易の状況を見ておると、相当余裕のある状態において貿易を始めておる。政府も相当業者に対して便利のいいような保険をつけてどんどんこれを進行させている。それほど経済力の余裕があるならば賠償はもつと出すべきではないか。こういう意見が私は飛び出して来はしないかということを心配するわけですが、そういうようなことについてはちつともお考えになつたことはございませんか。
  96. 井上尚一

    説明員井上尚一君) プラント類の輸出と一概に申しますが、これは言うまでもなく或いは船舶或いは車両、或いは電気機械、或いは紡織機械、或いは繊維機械、いろいろたくさんの種類がございまするが、大体全般を通じましてこういうようなプラント類の輸出というものが、今後の当該機械のメインテイナンスなり、或いはいろいろなパーツなり、或いはいろいろな関連しましたこれの附属品の供給という意味で、普通の一回きりの商品のものとは違いまして相当あとを引く、恒久性のある、永続性のある輸出であるという意味におきまして、これはプラント類の輸出につきましては、政府のほうとしてもなお一層の振興を期したいというわけでございますし、なお又後進国の工業発展の段階と我が国の工業発展の段階との、この相対的な関係から申しまして、戦前のような繊維、雜貨のみを輸出の重点というのではなくして、やはり機械工業、発展しました機械等の能力というものを十分使つて行くということが我が国の輸出の向上の点から申しましても、貿易構造の点から申しましても、そういう方向がむしろ必至の方向である、かように我々は考えておるわけでございますが、なおこの問題に関連しまして只今質問の賠償の問題について考えたことがあるかどうかということでありますが、これは勿論政府の中におきましても賠償問題に応ずる我が国の基本方針についての協議会等が設けられまして、いろいろそういう方面につきましての考えと申しますか、方針をいろいろ練つておるわけでありまするが、賠償は言うまでもなく事柄の性質上、先方の要求がどういうふうなことになるのか、これはまあ各国々々によつて我が国に対する要求の内容、方法が異なつて来ようかと存じまするが、その問題はやはり一応と言いまするか、我が国の今後の産業上勿論重要な関係を持つ問題ではございますが、今日の段階におきましては、まだどこの国からどういう賠償の要求が来るかということも、十分正確なる見当は付かないという段階になつている現状としましては、やはり既定の方向と申しますか、こういうプラント類の貿易の振興についてでき得る限りの手を尽して行くということを、我々事務当局としては考えて参るよりほかない、こういうふうに存じております。
  97. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、私のお聞きいたしましたのは、賠償の関係は日本人として我々の気持は出したくないということに勿論一致するだろうと思います。それはこちらの気持であつて、向うのほうの気持はたくさんもらいたいわけで、そこの間を規定しておるのは、講和條約において日本の経済的な支払能力の範囲内において行うということになつて来る。そうすると経済的な支払能力の範囲というものを判定するときに、日本は非常に経済的に乏しいというけれども、併し現実に海外に向つて資本投資のような形でプラント輸出をやつているじやないか、これについては国も大いに馬力をかけて声援しているのではないか、そういうような点が向うのほうで、相手国のほうで考えられやしないか、そういう虞れはないか、こういうことを私はお聞きをいたしておるわけなんです。
  98. 井上尚一

    説明員井上尚一君) そういう懸念は確かにあり得ると思います。
  99. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私はまあこの点が非常に重要だと思いますので、一つ通産省としてもよくお考えを願いたいと、こう思います。それから第二にそこまでまあ輸出のほうに対してあらゆる手を打つて振興させようという気持ならば、只今のパウンド地域からの輸入に対しても、これはやはり相当な私は措置をしなければいかん、例えば輸入保険等でも設けて、大いに輸入の促進を図らなければならんと思うのでありますが、そういうお考えはございませんか。
  100. 井上尚一

    説明員井上尚一君) パウンド地域からの輸入の促進については、これを従来の自動承認制品目のほかに、大幅にこれを自動承認制の品目に追加を考えるとか、或いは又輸入々々と申しますが、何と申しましても一番肝腎なのは、その裏付となる国内金融をこれに付けるということでございまするが、そういう輸入金融について十分な方法を講ずるとか、まあそういうような問題につきましては、今通産省内部でもいろいろ目下事務的には研究中でございまするが、方法としまして輸入保険を考えたらどうであろうかという点につきましては、これは我々の今日の段階ではまだそこまでの考えは持つておりません。
  101. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 昨日も委員会で発言があつたのでありますが、商工中金の、新聞紙に伝えられるごとき汚職事件に関しましては、本委員会としても重要な関心を持たなければならんと思うのであります。それは商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案すら今国会には上程せられておるような状況でありまするので、尚更私どもといたしましては慎重を期さなければならないと思うのであります。そこで中小企業庁の今日までの本問題に対する調査の概要、或いは御所信等を伺つたのでありますが、漠としてまだ要領を得ない段階にあります。従いましてこの委員会は本問題についてその真相を今日の段階で知り得る限りにおいては調査をし、そして糾明をしなければならないのではないかと考えるのであります。従いまして私はさような動議をここに提出をいたしたいと思うのであります。で、若しその動議が取上げられましたならば、緊急に、以下申上げるような内容に亙つて調査資料を、政府当局に向つて要請せられたい。提出方を要請せられたいと思うのであります。第一は過去一カ年間に亙りまして、四半期ごとの商工中金の貸付状況の概況を是非とも知りたいと思います。例えば業種別、貸付金額別、貸付期間別の貸付統計というようなものを承知いたしたいと思います。それから第二番目には三千万円以上、古いのになりますると一千万円以上も必要かと思いますが、そういうものに対する貸出の明細を是非とも頂きたい。特に過去三年くらいに遡りまして、融資額の焦げつきになつておりまするものにつきまして、組合別の一覧表を頂きたいと思います。この焦げつきになつておる理由等も、これは明白にされたいと思います。それから第三には当面問題になつておりまする東京用紙協同組合、それから東京製材協同組合の両者に対しまして、貸出返済の明細等を詳しく頂きたい。特に本問題に関係せられました中金側、並びに組合側、更に役所が関係しておりましたならば、役所側の関係者の氏名を承知をいたしたいと思います。又両協同組合の事業報告書も提出をせられたいと思います。まあ以上のような資料を一先ず提出を願いまして、そして調査をいたしたい、かように考えます。
  102. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今栗山委員からの御提案に対しまして、皆さん、意見ありませんか。
  103. 境野清雄

    ○境野清雄君 私も栗山委員の提案に対しては全く同感でありまして、むしろ只今聞きましたら、商工中金の法律の改正案を衆議院が通したというような話ですが、私はむしろこの法案を通すのなら、その前提として今のようなものはできるだけ我々がよく納得するような説明を聞きたい。又今後そういう轍を履まないというようなことをはつきりしないことには、私はむしろこの法案もなかなか難航するのじやないかというようなふうに考えておりますが、今栗山委員からお話になりましたような資料を至急提出して頂いて、そうして一日なり二日なりは猶予期間をおいて、これの関係者に当委員会に出て来て頂いて、飽くまでこの問題を追究して、然る後に私はこの法案を通すというようなことは、一般国民に対しましても非常な責任を持つた参議院の通産委員会であると思いますので、全面的に今の栗山委員の提案に賛成するものであります。
  104. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今の栗山委員の提案並びに境野委員の補足に対しまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないと認めまして、さよう取計らいます。  それでは先ほど御質問になりましたところの輸出信用保険法の一部を改正する法律案は、残りの質疑があればそれを続行いたした後、討論、採決にまで次回におきまして運びたいと思います。さようなふうに取扱いましても差支えありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないものと認めまして、次回はさように取扱いたいと思います。本日はこれを以ちまして散会いたしたいと思いますが、如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 御異議ないものと認めまして、散会いたします。    午後四時十六分散会