○
参考人(天日光一君) 冒頭にちよつとお詑びを申上げて置きます。本日
日本石炭協会会長がいらつしやるのでありましたが、どうしても都合差繰り相つきませんので代
つて参りました。本日御
審議にあずかりました、この
鉄道運賃の
値上げ問題につきまして、
石炭界の希望と申しますか、
お願いいたしまするところを先ずかいつまんで申上げたいと思います。結論を先に申上げるようで恐縮でございますが、
お願いいたしたいという点といたしましては、第一点といたしまして今回提案に
なつておりまする
貨物運賃の値上禁を相成るべくは更に御圧縮を願いたい、三割よりも更に低いところにおきめを願いたいというのが第一点であります。それから第二点といたしましては、車扱いの
最低運賃の適用限界距離が、
只今三十キロに
なつておりますのでありますが、これが戦前は十キロでありましたので、その戦前の姿までお持ち行きを願いたいのでございますけれ
ども、物事に段階もあると存じますので、少くとも差
当りましては二十キロ
程度に御調整を願いたいというのが第二点であります。第三点といたしましては、
只今特に適用されておるのでありますけれ
ども石炭中無煙炭につきましては
運賃割引制度を今後とも御継続を願わなければ相成るまい。この三点であります。これは後ほどちよつと申し触れますが、単に
石炭のためばかりでなくて、
一般家庭生活のための見地から出ておる御
措置でありまするので、事情変りありませんのですからして、引続いてこの御
措置を
お願いしたいということであります。それから第四点といたしましては、いろいろ御工夫もございますわけでありますが、
鉄道の
輸送力を一層増強願う。これは或いは貨車の面におきましても、或いは
荷役設備の面などにおきましても、
輸送力の御増強を願いまして、それによりまして又自然
増収も伴うわけでございまするので、かような御
措置、御工夫を一段と御推進を願いたいという、かいつまんで四点に要約して、他の点は省略いたしておるわけであります。結論を先に申上げまして、ほぼ
お願いいたしたい点はお聞きとりを願つたわけでありますが、極く簡単に
理由といたしますところ、或いは趣旨といたしますところを申上げることを許して頂たいと思うのであります。
以上申上げましたこの
鉄道運賃の
値上げを、できる限り低いところにおとめ願いたいと申上げましたのは、
石炭というものの性質、御
承知の
通り産業でありましようとも、或いは運輸でありましようとも、又
一般国民の生活の上におきましても、その一番基礎的な物資でもありまするので、又特に最近は国内におきましてインフレの高進を防遏し、外には輸出の振興を図ることを最も強く要請されておる
状況でもありまするので、これらに対しまして
物価の高騰をできる限り抑制されまするために、基礎物資である
石炭、又
一般物価の非常に広い範囲におきまして基礎をなしまする
鉄道運賃というものの
値上げにつきましては、十分慎重な御
考慮を頂きたいという点にあるわけであります。
石炭は、もとより御
承知と思うのでありますけれ
ども、年産額の近年の統計を見ますというと、約九〇%以上が
鉄道輸送にかかるわけであります。それだけに、たとえ
石炭の現在の
価格に占めまする、或いは
価格に対しまする
運賃の比率と申しまするものは他により高いものもままあるようでありますけれ
ども、何にいたせ、今申上げたように、
産業なり
輸送なり、或いは
一般国民生活の基礎物資でもありまするし、又
運賃が
物価の一番広い面に
関係するものでありますので、両々相待ちまして、
石炭運賃の
値上りということは、
一般物価の非常に広い範囲に
影響があると思うのであります。かような見地からいたしまして、
石炭に対する
運賃の
値上りは努めて
程度の低いところにおとどめ願いたい。これが現在の
経済界、
産業界の要請に
石炭が順応できる
一つの大きな
方法であろうかと考えるわけであります。なお
運賃値上げ問題につきましては、いろいろ御当局、或いは
国鉄御当局で御苦心される点があることを十分
承知いたすのでありますが、長い間
日本といたしましては、
輸送原価を償うという趣旨が必ずしも厳格にとられずに参
つて来たことは御
承知の
通りであります。これは外国とも多少事情を異にするようでありますが、それが即ち
日本の従来の
経済界、或いは国民の富の
程度、
産業の
状況というような点からいたしまして、いわゆる政策
運賃という制度が長い間慣行としてとられて来た
理由であると思うのであります。最近
独立採算制という要請からいたしまして、
輸送原価を相償うということが要請されているのでありますけれ
ども、何にいたせ長い間、国の実際上の事情、
情勢からしまして、採用されて来た
貨物運賃につきましては、一種の政策
運賃であつたのでありまして、これを一挙に独立採算、又
輸送原価を償うという線まで持
つて行かれますることは、急激に
産業各
方面なり、
一般民生に大きな
影響を与えますので、十分その間に御調整を
お願いいたしたい。
貨物、
旅客おののおのの
運賃の原価を相償うということは望ましいことではありまするが、これがために、
日本の国情として長い間必要とされて来ておつた面を一挙に失うことのないように御配慮を
お願いいたしたい、かように考えるわけであります。なお
運賃値上りの
石炭価格面に対する
影響等につきましては、
国鉄御当局の詳細な御調査もございまするし、又
只今拝見いたしまするというと、通商
産業省におきましても
一つの試算を御提出に
なつているようであります。恐らくはこの
程度の
影響かと思うのでありまするけれ
ども、実はかような三%乃至は四%の
程度の数字を示すのでありますが、これを具体的に、九州の炭の
運賃が幾ら上る、又北海道の炭が幾ら上るというような点は、お
手許に差上げた刷物——これも
国鉄でお調べになりました数字を拝借いたしたのでありますが、一例として、九州の炭につきまして、伊田、若松炭で現在百五十六円のものが二百四円になり、
値上りが四十八円。或いは北海道炭につきましては夕張、室蘭炭が三百四十円のものが四百四十六円となり百六円上り、又坑所直送炭につきましては、少し大きな数字の
値上りがあることは当然なのでありますが、数字の朗読は省略させて頂きたいと思うのであります。なお
石炭の
運賃の
値上りにつきましては、
石炭自体の
運賃の
値上りのほかに、御
承知の
通り石炭というものは、
鉄道輸送貨物のうちでも
石炭が第一でありますけれ
ども、それに少しく間を置いております大量
貨物であります坑木、これは現在でも
年間に千数百万石の量でありますが、こういう坑木というようなものを初めといたしまして、多くの
資材を使いますので、
石炭自体の
運賃値上りのほかに、所要
資材の
運賃の
値上りから来る
影響というものも大きいのでありますからして、かような点も十分お含みを願いたいのであります。
又
鉄道運賃の
値上りは、自然に他の
輸送機関の、例えば船でありますとか、機帆船でありますとか、かようなものの
方面の
運賃なり或いは荷役料なり、これらのものが
値上りを来たすことを誘発するのが従来の実例でありますので、又今次の
鉄道運賃の
値上げも自然従来辿つたと同じ現象をやはり呈するかと懸念いたすのであります。これら他の
輸送機関の
賃率の
値上げなり、荷役料の
値上り等は、最近殊に顕著なものがあるのでありまして、十分これらの点も併せて御考究を
お願いいたしたい、まあかように考えるわけであります。それからなおいろいろ御考究のようでございまするが、
貨物運賃の
値上り、又船
運賃の
関係等が十分に調整されませんというと、必ずしも御企図のごとくに、
貨物の陸送、海送の偏在が
是正されないのみならず、ただ海陸共に
運賃が上るという結果だけに終ることを恐れるのでありまして、具体的に、或いは阪神でありままとか、京浜地区でありますとか、かような個々具体的の場所についての
運賃につきましては、
鉄道運賃と船
運賃との間に十分の調整がありませんというと、或いは
石炭生
産業者の中にも、勢い
石炭の自力
輸送というようなことな
ども考えねばならないというような事態も或いは起きるかと思うのであります。いずれにいたしましても、
石炭価格の高騰を努めて抑制したいというのが
一般の要請でもあり、又
業界自体の意向でもありますので、最近或いは電力といい、或いは鉄材等の
関係といい、
石炭価格が上る要素が次第に累積することが甚だ遺憾に思われるのでありまして、
鉄道運賃もこれに余り多くの拍車がかからんことを希望するわけであります。なお先刻申上げました中で、少しく細目の点でありまするが、
輸送力の増強によりまして
増収を図
つて頂くということを申上げましたのは、御
承知の
通り、最近
石炭の需給
関係の逼迫が訴えられておるのでありまして、生
産業者としましては、本
年度年度途中におきまして、四千五百万トンに出炭目標を
引上げ、更に
関係官庁におきましては、明
年度四千七百五十万トン、明後
年度五千万トンというような
生産目標を指示されておるのでありますが、これらの目標達成のためには、やはり十分の
輸送力と
荷役設備を
設備して頂きませんというと、この
生産目標の達成すらも阻れるというのが
石炭の特殊事情でありまして、山元が詰まりますというと、
如何に
生産意欲と
生産設備を持
つておりましても、
生産がかなわないということになるのでありまして、この貨車、
石炭車の増強など、又小樽でありますとか、或いは九州にもございまするが、積出港の
荷役設備を十分整備をして頂きたい、かように思うのであります。これが増産されました
石炭が需要者に最も早く適切に届く手段、
方法でございまするので、この点十分にお考えおきを願いたいのであります。
以上概略のことを申し上げたのでありまするが、冒頭に申上げました点を少しく申上げますというと、第一点につきましては、
運賃値上率を更に圧縮願いたいということで尽きるのでありますが、第二点も、先刻申上げました
通り、車扱いの
最低運賃の適用限界距離を戦前の十キロの
程度に持
つて行
つて頂たいのでございます。一挙に参りませんければ二十キロ
程度に相成るように
賃率の
値上げを御調整を願いたい。これは案によりまするというと、二四%ほどの
値上げになるようでありまするが、これを一〇%
程度におとどめ願えれば、距離としましては二十キロすれすれのところにきめましたと同じ効果を生むのであります。九州炭の大
部分がこれに
関係がございますので、特にこの点を申上げるわけであります。それから、第三点で、無煙炭の
運賃割引でありまするが、これは、申上げるまでもなく、家庭生活の保護という
意味から採用されておるのであります。今冬電力事情なり或いは薪炭その他家庭燃料の需要が御
承知のごとき段階でありますから、無煙炭が家庭燃料として持
つておる使命を十分に果させ、又家庭生活の
負担を軽減する、今以上加重しないという見地からいたしましても、従来三百一キロから五百キロ未満までは一五%
割引、五百一キロ以上は二〇%
割引の制度が行われておるのでありまするが、これを今後も御継続を願うようにいたしたいというわけであります。
なお最後に
お願いいたしたいと思いますのは、昨年の一月
運賃改正の際にも、特に立法府におきまして、附帯決議が行われたように承わ
つておるのでありまするが、
運賃の
等級改正という問題がいろいろ事変の勃発に伴いまして、
物価がなお安定を見ざるものがあるというような点からいたしまして、
等級改正が行われておらないのでありますけれ
ども、或いは
物価を安定せしめるために、むしろ
等級改正を勇断を以て行われることも
一つの方策かとも思われるのでありまして、十分、今回の
値上げに関連いたしまして、
一般貨物運賃の
等級改正に速かに御着手相成るように
お願いいたし、又
等級改正で必ずしも十分に実情に適合いたしかねる点なり、
部分なりにつきましては、
割引制度を十分御活用願いまして、痒いところに手の届くような御親切を頂きたい、かように考えるのであります。以上甚だ概略だけを申上げたのでありますが、特に
石炭界として希望し
お願いしたいところを率直に申上げた次第であります。