○田村文吉君 自由党を合せまして殆んど全部のかたがたがこの
法案に御賛成にな
つております中に、私一人、而も私としては前閣僚の一員でありました私が、
政府の提案に対して
反対の意思表示をいたしますことは非常に遺憾に存ずる
ところであります。なおこれは緑風会を代表する
意味ではありませんで、
委員の一人として私は所見を開陳いたしたいのであります。
元来この
法人税と申しますと、これに対しては直接の被害と申しますか、税が上るために非常に困るという人は経営者でもないし又
勤労者でもない、こういうふうに一応とられますので、
法人であるから、
法人税が殖えたから勝に役員の報酬が減るとか或いは又従業員の
所得を減らすとかいうようなことはないのでありまするので、
法人というものは実は叫ぶ声が非常に薄いのであります。薄いのでありまするから、ややもすると昨今のように、その
法人が非常に景気がいいというような、二十万もある
法人のうちの極めて小
部分の者がちよつと景気がいいというようなことで、直ぐ税を殖やしたらどうか、こういうような御議論が出て来るのではないかと思うのでありますが、そういう
意味からいたしまして、私は二十万の
法人全部の声なき声に応えて皆様に御納得を頂きたい、こういう
意味で
反対申上げる次第であります。
大体
法人税は個人
所得税と必ずしも対蹠的に対立的に比較して論ずべきものではないと存ずるのであります。又これを個人
所得と比較してかつきりと比率を出すということのできる性質のものではないのでありまして、シヤウプ博士の勧告の中にも書いてございまするが、この比較はなかなか面倒な問題であるのであります。ただ小さな個人企業の人が
法人に移つた場合の例をシヤウプ博士は挙げて論じておるのでありまするが、一般の
法人におきましては、個人の
所得が又二重にかかる場合もかなり多いのでありまするから、必ずしもさように対蹠的に個人が高いから
法人はもつと上げてもいいという、こういう議論にはならないと私は思うのであります。私はシヤウプ博士の勧告というものに対しては多大の
見解があり、又終戦後において是正すべき問題もあると思うのでありまするが、一応は一つの機構を作りまして、構想を
考えてそしてでき上
つて参りました税が、個人
所得に対してはこれこれと、
法人所得に対してはこれこれとして、三割五分とい、税が提示されましたのであ
つて、私はこれあ
つて初めて
均衡を或る
程度得た税率であつたと、こういうふうに
考えておつたのであります。勿論私は今日の直接税というものが、皆さんも御承知でございましようが、実は今年度の歳入
歳出は
昭和十年の
数字に比べますると、
昭和十年の二十二億円に対しまして七千九百三十七億にな
つておりまするから、歳入
歳出一般会計では三百六十倍にな
つております。又專売益金は六百二十二倍、酒の税は五百五十六倍でありまするが、直接税でありまする
ところの
所得税と
法人税と合せましたもので比較いたして見ますと一千六百九十一倍にな
つておるのであります。即ち千七百倍というような直接税にな
つておるのでありまするので、私は個人
所得も正に高いと、これは何とかして下げるように私ども努力したいと
考えておりまするが、又、努力して参
つておりますが、同時に
法人所得というものも決してこんな状態下において上げべきものではないと、決してこれは上げてはならないと、かように私どもは
考えておるのであります。併しこれは講和條約も成立いたしました後で、根本的に税の構成を
考えて、その上で又いわゆる講和関係の費用というようなものが莫大に殖えるというような場合に止むを得ずしてやるならば、もつと合理的な
法人税というようなものを
考えられても止むを得ないけれども、今日
補正予算として僅か二億六千二百万円、これは来年度において二百億円を徴收する準備行為であるという御
説明でありまするが、いずれにいたしましてもさような大きな構想が立たないうちに唐突に
法人税を上げるということに対しては賛成いたしかねるのであります。
第二に私は
政府は徹頭徹尾機会さえありまするというと民間の資金を捲き上げまして、そうしていわゆる
インフレ防止という点から資金の統制をや
つておられるのでありまするが、これは或いは社会主義政策の上から御賛成なさるかたがあるかも知れませんが、民間の人が非常な、何とかして努力してこの終戦後を切り拔けたい、又節約をして資金を余したい、こういうふうに
考えております。資金を全部
政府がこれを捲き上げてしまう、そうしてこれを
政府が使われるということであります。これは無論正しく使われるということは、私どもはそう申上げたいのでありまするけれども、ややもすると昨今起
つておりますようないろいろな
政府の資金から廻つたものが不当に使われる場合が非常に多いのであります。でありまするから願わくは各人の努力に寄つた資金、
資本金はできるだけ残して置いて、各人の創意工夫というものを十分に活かしてやることが今日の大事な税の仕方ではなかろうか、こういうふうに
考えるのであります。
それからややもすると
考え違いをされますのは、大きな
法人、非常に儲けのある
法人が非常にうまくや
つておるんじやないか、こういうふうのお
考えでありまするが、これは私は個人の高額
所得と低額
所得と、こういうものに差別のあることは私は認めるし、当然あり得ることであると
考えるのでありまするのが、個人の高額
所得と
法人の
所得とを一緒にお
考えにな
つているんじやないか、こういうふうに
考えられるのでありまするが、仮に
法人の
所得が多くて留保ができるとか或いは配当ができるとか、又これによ
つて勤労者の
給與も上げることができる、こういうことになりますることは、みんなが喜ぶことであ
つて、決して
資本家だけが喜ぶことではなく、
勤労者もこれがために均窮し得るのであります。然るに私は社会党の皆さんがたがこれに御賛成なさいますことが非常に矛盾したお
考えでないか。この
所得というものによ
つて勤労者の
給與を上げることができる、又
資本というものが非常に貨幣価値の変動によりまして不当に虐待されておりますものを若干は修正することができるのだ、こういうふうに
考える点が第三であります。
それから第四番目に、私は
法人税をお上げになりますると、税というものは妙なものでありまして、決してその
階級だけが
負担するものではありません。必ずそれはどつかへ参ります。必ずどつかへ転嫁されるのであります。その結果はどうなるかと申しますると、これは我々の今日最も嫌
つておりまする
ところの
物価の値上げを誘致する原因になるのであります。この点が私は賛成できないのであります。
次に
改正の税法によりますると、
法人は形が大きかろうが小さかろうが、又利益が多かろうが少なかろうが、これを
地方税と合せまして最低五割二分九厘が徴收されるのでありまして、今日一割五分以上の配当ができないような
会社では株の
値段は額面以上持
つていないのでありまするから、今日非常に
税金には困
つておる。勘定あ
つて銭足らずという言葉がありまするが、皆どこの事業
会社もこの
税金を收めるときになると皆銀行へ金を貸してくれ貸してくれで殺到しておるのが事実であります。これは殆んどあらゆる
会社かそういうような状況にな
つておるのであります。又事業によりましては、例えば石炭事業であるとかガスとかいうような事業では辛うじて七分とか八分とか配当しておる
会社があるのでありまするが、こういうものが若し今度五割二分九厘の税率になりまするというと、或いは配当を一部減らさなければならない。額面の価格を維持する
ところの騒ぎじやない、非常に困難な
会社が大多数であるのであります。僅かの数の、一考にも当らないような
会社の例を以てすべてを律して、この際
法人税を上げるということは、非常に国の将来の経済のために心配すべきことであると
考えます。講和條約ができ上りまして、
日本の経済自立ということが盛んに叫ばれておるのでありまするが、このようにすべての金を、民間に資金を持つことを許さないような形にな
つて参りまするというと、勢いこれは事業というものは
日本の国内で自立するということはできない。結局外国の援助を仰がなければならんことになるのでありまするので、私はできるだけ
日本の国力に相応して皆勤倹節約によりまして資力を余す。その資力は民間に蓄えさせて、そうして余り御厄介にならないで、自立して事業の経営ができて行くということこそ初めて
日本の再建ができるのであるのでありまするのに、今のようにすべてが
政府に吸收されてしま
つて、いわゆる
政府は金持になりまするが、民間と府県というものはだんだん貧乏する。
資本というものは
数字の上から言えば大きくな
つておりまするけれども、実質的には非常な減小を来しておるのではないかということを私どもは
考えておるのであります。よく又
主税局長の御
説明にもございまして、アメリカの
法人税というものは相当に取られておる、
日本の
法人税は今度上げても決して高くないということを言われまするが、これは個人
所得の場合でも同じであります。食うや食わずにいる人が二割の
税金を取られるのと、相当の、十分の余裕を持
つておる人が二割の
税金を払うのとは根本的に
考え方が違うのであります。でありまするからアメリカの
法人税が高いから
日本の
法人税は決して四割二分に上
つても高くないということは言えないと私は
考えるのであります。
一番今日
日本の産業経済の上からい
つて適切必要にな
つておりまするのは電力の開発であります。この電力の開発もただ単に
政府の資金でこれを賄われるということでなしに、やはり民間が協力し或いは民間で自家発電を作るというようなことをしてこそ初めて生産も増大し、
日本の経済も自立して参るのでありまするが、ただ今まで伺
つておりました御
意見ですと、何もかも税は、
法人税は取
つてもいいじやないか、もつと上げてもいいじやないか、こういうような御
意見でございまするというと、百年河清を待ちましてもこの
日本の経済自立は絶対にできないということを私は申上げなければならんと
考えております。
以上甚だ冗漫に亘ることを申上げて恐縮であつたのでありまするが、まだ講和会議も今後どういう費用が出て来るか、そういうことも今日わからない、又どうなるかわからない場合に、税の根本的の構想をここで変える、
補正予算においてこれを変えるということは、時期の上から
考えても私は早い、こういうふうに
考えまする上からいたしまして
本案に
反対をいたす次第であります。