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1951-11-27 第12回国会 参議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月二十七日(火曜 日)    午前十一時一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            清澤 俊英君            伊藤 保平君    委員            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            山本 米治君            小宮山常吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            岡田 宗司君            菊川 孝夫君            野溝  勝君            松永 義雄君            菊田 七平君            森 八三一君            木村禧八郎君   国務大臣    農 林 大 臣 根本龍太郎君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省主計局法    規課長     佐藤 一郎君    大蔵省主計局給    與課長     岸本  晋君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省主税局税    制課長     泉 美之松君    大蔵省理財局長 石田  正君    農林省蚕糸局長 青柳 確郎君   事務局側    常任委員会專門    員       木村常次郎君    常任委員会專門    員       小田 正義君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○満二十年以上の旧陸軍共済組合甲組  合員年金下附請願(第七一一  号)(第七一二号)(第七二二号)  (第七八一号)(第九四一号) ○中小企業融資対策に関する請願  (第一一〇四号) ○国民金融公庫法中一部改正に関する  請願(第一一二七号) ○生活協同組合に対する法人税免除の  請願(第一二九四号) ○水あめ物品税撤廃に関する請願  (第七九〇号) ○水あめ、ぶどう糖の物品税撤廃に関  する請願(第一〇五八号) ○ルース台風によるり災者国税減免  の請願(第八二八号) ○揮発油税軽減に関する請願(第八四  八号)(第九七〇号)(第九七一  号)(第九八四号)(第九九二号)  (第九九九号)(第一〇〇〇号)  (第一〇三六号)(第一〇九一号)  (第一一一三号)(第一一一四号)  (第一一三一号)(第一一五五号)  (第一二〇八号)(第一二〇九号)  (第一二一六号)(第一二一七号)  (第一二一八号)(第一二四七号)  (第一二五八号)(第一二七一号)  (第一二七六号)(第一二九一号) ○たばこ小売利益率引上げに関する  請願(第八七一号)(第九三五号)  (第九三六号)(第九三七号)(第  九三八号)(第九三九号)(第九四  〇号)(第九四二号)(第九四三  号) ○粗製しよう脳およびしよう脳原油の  收納価格引上げに関する請願(第一  〇二一号) ○火災保険料率低減に関する陳情(第  二六三号) ○社会保険診療收入に対する所得税軽  減の請願(第一一二八号) ○退職金に対する課税撤廃等陳情  (第二五四号) ○ラジオ受信機等物品税免除に関す  る陳情(第一六六号) ○漁業権補償金に対する課税免除の請  願(第三六四号) ○所得税法臨時特例に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○昭和二十六年度における給與の改訂  に伴う国家公務員共済組合法規定  による年金の額の改定に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○旧令による共済組合等からの年金受  給者のための特別措置法規定によ  る年金の額の改定に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○物品税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○糸価安定特別会計法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それではこれより第二十一回の大蔵委員会を開催いたします。先ず請願及び陳情に関する小委員長報告を求めます。
  3. 伊藤保平

    伊藤保平君 請願及び陳情に関する小委員会におきまする審議の経過並びに結果を御報告いたします。  昨二十六日に第二回の小委員会を開きまして、紹介議員からの趣旨説明、各委員意見及び政府見解を十分に聽取し、愼重に審議をいたしたのでありますが、その結果は次の通りであります。先ず請願第七百十一号、第七百十二号、第七百二十二号、第七百八十一号、第九百四十一号はいずれも組合加入後満二十年以上を経過した旧陸軍共済組合甲組合員に対して年金受給資格を附興せられたいとの趣旨であり、請願第千百四号は中小企業金融の極度の窮迫に対して政府は速かに有効適切な対策を講ぜられたいとの趣旨であり、請願第千百二十七号は、近い将来に国民金融公庫法の一部を改正して、五十億の出資を追加せられると共に公庫の役職員待遇開発銀行輸出銀行復金等役職員と同じ待遇に改められたいとの趣旨であり、請願第千二百九十四号は、非営利法人である生活協同組合に対しては法人税を免除せられたいとの趣旨であり、請願第七百九十号は、水飴物品税を、第千五十八号は水飴、葡萄糖の物品税をそれぞれ撤廃せられたいとの趣旨であり、請願第八百二十八号は、ルース台風による罹災者国税を、減免せられたいとの趣旨であり、請願第八百四十八号、第九百七十号、第九百七十一号、第九百八十四号、第九百九十二号、第九百九十九号、第千号、第千三十六号、第千九十一号、第千百十三号、第千百十四号、第千百三十一号、第千百五十五号、第千二百八号、第千二百九号、第千二百十六号、第千二百十七号、第千二百十八号、第千二百四十七号、第千二百五十八号、第千二百七十一号、第千二百七十六号、第千二百九十一号の二十三件は、いずれも揮発油税軽減せられたいとの趣旨であり、請願第八百七十一号、第九百三十五号、第九百三十六号、第九百三十七号、第九百三十八号、第九百三十九号、第九百四十号、第九百四十二号、第九百四十三号の九件は、いずれも煙草小売利益率引上げられたいとの趣旨であり、請願第千二十一号は粗製しよう脳及びしよう脳油收納価格引上げられたいとの趣旨であり、以上の各件はその願意が適当と認められますので、採択すべきものと決定いたしました。  次に陳情第二百六十三号は、相互救済社会政策である火災保険を発展せしめると共に、民生を安定せしめるためにも、火災保険料率を低減せられたいとの趣旨であり、これに関しましては今後漸次低減せしむる方向に持つて行く方針をとるという意味で採択いたし、請願第千百二十八号は、昨今の物価上昇の結果、社会保険診療收入のうち、経費の占める割合が増大したのであるから、現行の所得標準率を適正に改めて、所得税負担軽減せられたいとの趣旨でありますが、收入から経費を適正に差引くのは、極めて当然のことでありますので、その意味において採択いたし、陳情第二百五十四号は、退職金に対する課税を撤廃せられたいなどの趣旨でありますが、軽減方向に持つて行くのが適当と思われますので、その趣旨で採択いたすことに決し、陳情第百六十六号は、ラジオ受信機に対する物品税を免除せられたいとの趣旨であり、これにつきましては、大衆用のものに対して、でき得る限り免税にするのが適当と思われますので、採択すべきものと決定いたしました。  なお、先に採択いたしました請願第三百六十四号の漁業権補償金に対する課税免除請願につきましては、第十回国会より継続審議になつておりました租税特別措置法の一部を改正する法律案が先般原案通り可決せられましたことにより、その必要がなくなりましたので、保留にいたすことといたしました。  右御報告申し上げます。
  4. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 只今報告のありました請願及び陳情につきましては、小委員長報告通り決定することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないようでありますからさよう決定いたします。    —————————————
  6. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に所得税法臨時特例に関する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案の一案を議題といたします。本案につきましては、すでに昨日委員会におきまして質疑を終了しておりまするので、これより討論に入ります。  先ず所得税法臨時特例に関する法律案議題に供します。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べ願います。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は本法律案反対するものであります。  理由の第一点は、この税制改革案は、申すまでもなく二十六年度補正予算の裏付けとなつておるものでありまして、従つて二十六年度補正予算との関連、特に補正予算歳出との関連においても考えられなければならないと思うのであります。で私たちとしては、補正予算歳出において賛成しがたい多くの点があるのであります。物価補正をなんらしないで、警察予備隊支出増加等新たなる非生産的な支出税收を使用しておりますし、我々としてこのような支出を削減して給與所得者に対する実質的な減税をもつと図るべきである、そうして又生活物資騰貴減税によつてカバーできない人たちに対する社会政策的な支出を行うべきである、例えば主食配給価格の引下げを行うとか、そういうような財源に振向けるべきであると思うのであります。こうした補正歳出との関連においてもこの所得税法考えられなければならないのでありまして、先ず私たちはそういう点からこの税制改革案に賛成できない。  第二の反対理由は、今回の税制改正法案狙いは、政府提案理由によれば、最近における所得及び物価の動向に鑑み約千五百六十八億円に上る自然増收を見込んだこと、所得税負担軽減合理化を行うこと、法人税負担の適正を図るために法人税を三五%から四二%に引上げるということになつているわけであります。ところ自然増收に対して政府考え方と我々の考え方とは根本的に異り、対立しているのであります。政府はこの自然増收生産増加による実質的所得増加によつて部分生じたものであると説明しております。この点については予算委員会大蔵委員会大蔵大臣との間に議論が闘わせられたのでありましたが、私は大蔵大臣とは反対に、この自然増收の大部分物価騰貴による名目的所得増加に基くものであり、従つてこの増收自然増收というよりむしろ自然増税で或いは物価騰貴に基く自動的増税と見るべきであると思うのであります。その証拠として私は二十六年度の名目的分配国民所得CPI或いは生産財実効物価でデフレートした実質的分配国民所得数字を示すことができるのであります。これは一応安本によつて試算してもらつたものでありますが、例えば勤労所得について見ますと、二十六年度は名目所得においては二割九分殖えておりますけれども、CPIでこれを割つた実質所得においては僅か六・九%しか殖えておらない。又個人業所得名目所得としては二割三分八厘殖えておりますが、実質所得としてはむしろ減つておるのであります。一%減つておる。又個人賃貸利子所得については、名目所得としては三割三分七厘殖えておりますが、実質所得としては一割七厘しか殖えておらない。法人所得については名目所得としては四割二分殖えておりますが、実質所得としては七・七%しか殖えてない。従つてこれを以て見てもこの自然増收名目的な国民所得増加によるところ増收であつて従つてこれは言い換えれば自然増税であるとみなさなければならん。この具体的な数字を私は示して、大蔵大臣が今度の自然増收生産増加による実質的国民所得増加に基いて起つたところとこう言われておりますが、間違つておることを指摘いたしました。これに対して大蔵大臣は何ら具体的な反対論拠を、反証を示さない、或いは示すことができない。従つて大蔵大臣はこれを認めたと我々はみなすよりほかない。従つてこうした名目的な自然増收というものを非常にたくさん見込んでいる、こういう点について私は根本的に見解が違うのでありまして、この点からもこの税制改革に私は賛成することはできない。  それから第三の反対論拠は、この税制改革所得税負担軽減合理化狙いとしていると、こういうふうに提案理由では言われておりますが、併しながらこれを実際に実質的に見ますと、決して、少くとも勤労所得者に対しては負担軽減にもなつておりませんし、又負担均衡をこれを是正するということにもなつておりません。逆でありまして、むしろこれは実質的には勤労者に対して増税になつております。又負担の不均衡は拡大しております。勤労所得者に対しては、例えば自然増收として五百七十九億の自然増收を見積つております。併しそれに対して三百六億の減税をするのでありますが、その間二百七十三億ですか、それだけのものはこれは私は実質的な増税と見る。これは全部が増税とは見ません。見ませんけれどもこの大部分は、差引いたものは増税であります。なぜならばその自然増収の生じた原因の大部分名目的な勤労所得増加によつて生じたのでありますから、本来ならば全部もう大部分、五百七十九億の大部分をこれは減税に……、勤労所得者減税に廻すのが本当なんです。それを廻さないで五百七十九億に対する三百六億しか減税していない。その残りの大部分自然的増税という形で、いわゆるインフレ錯覚物価変動錯覚を利用して、これを他に、ほかの支出に向けようとしております。而もそれは生産的に向けるのでなくして、警察予備隊等々の不生産的支出にこれを振向ける、こういうような実情になつております。これは明らかに政府インフレ錯覚を利用して、減税と言いながら実質的に増税して、国民を欺瞞していると我々は考えざるを得ない。  更に又税の負担の不均衡は、特に勤労所得者源泉徴收者とそれから申告納税者との間に著しく拡大されている。この点については、泉税制課長大蔵委員会ではつきり認めているところであります。泉税制課長はこういうふうに言つております。私の勤労控除引上げろという意見に対しまして、泉税制課長は「仮に木村さんのおつしやるように二五%でなしに、二〇%、最高五万円という勤労控除改正したならばどの程度税收が減るかということを計算して見ますと、約二百億円減るのでございます。それではその程度のことにして市町村民税権衡がとれるかということを検討して参りますと、現在の状態ではまだそれでは、勿論差が幾分かなくなることは申上げるまでもないのでございますが、それではまだ権衡がとれないのでございまして、実際におきましては控除を三〇%或いは四〇%にも引上げなければ権衡はとれない程度」だとこういうことをはつきり言つておるのであります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)一番の專門税制課長がこう言われている。こんなに今の一五%を三割乃至四割に引上げなければ、勤労所得税とそれからそれを基礎にした地方住民税を合した勤労者負担というものは、申告納税者との間に権衡はとれないのです。これほど不均衡になつている。この点について、この税制改革は何ら触れていない。むしろこれは不合理化です。不合理化を認めている。これに対して私は何回も主税局長大蔵大臣にいろいろこの不均衡を直すについて要求したんですけれども、具体的に答弁されておりません。申告納税者捕捉をきつくすることによつて権衡をとるんだという答弁ですが、但し申告所得者捕捉は実際問題として困難で、現に今度の税收においても申告納税者税收というものは著しく当初よりも減つておるのでありますから、それはただ政府の言うのは言いわけだけに過ぎない。こんな不均衡を拡大されているのを何ら手を触れないで、そうしてこれを均衡図つたと言う、或いは税を合理化したと言うが、一つも合理化していない、むしろ不合理化を拡大している。又実質的に勤労者負担軽減されていない。  時間がございませんから、私はここで政府は今度の減税によつて食糧値上り、或いは電気料金運賃等々の値上りをカバーできるという数字を出されましたが、あの数字運賃値上り負担増を見込んでおりませんし、地方税増加も見込んでおりませんし、あれは極めて杜撰なものである。更に又名目的な国民所得増加等の睨み合いにおいて税負担軽減考えなければならん、軽減されたかどうかを見なければならん。即ち前の一万円と物価が二割上つたときの一万二千円との税負担負担率を比べなければならないのに、政府は依然として一万円と一万円の税負担との負担率を比べている。こんなような形式的なことによつて税負担軽減したということを言つているのでありますが、これは欺瞞でありますが、私は時間がございませんので、まだ政府の今度の税制改革についての非常な欠陷については指摘することができますが、時間がございませんので、以上の大体三点を挙げましてこの税制改革案のうち特に所得税臨時的税制改革に対して反対するものであります。
  8. 松永義雄

    松永義雄君 私は遺憾ながら、遺憾の気持を強く持ちつつ本案に賛成するものであります。それは只今木村委員が述べられておることでありますが、物の量が一体に殖えて、我々の国民生活が果して維持されているかという点でありますが、税金は物であることは聞いておるのでありますが、昨日の新聞にインドネシアからスクラツプを持つて来て、それで日本でこれを鋼に直してそして日本から鋼にして又インドネシアに入れる、鋼を輸出するこういうことを書いてあつたのであります。物は殖えましても、仮に殖えても、輸出並びに或いは警察予備隊とか海上保安庁とかいつたようなこの方面に物が使用されて行つて、そうして物が、民需が不足して参る。だから物の値段が非常に高くなる、そうして物が我々に対して十分な供給を與えてくれない。例えば欲しい数の子を見ましても、最近、去年の値段に比較すると約五割以上高い。勤労階級唯一のお正月の楽しみとして待つている、その数の子すらも暴騰いたしております。一々この例を申上げても限りがありませんが、今度の減税はガス、電気その他の料金の値上げと見合うものである、こういうまあ説明になつておりますけれども、併しその他の物資値上りというものは、決して減税と相殺されているものでなくして、勤労大衆生活はますます苦しくなつているということは、これは見逃しがたい事実なのであります。  第二の点は、これはもうしばしば言われているように、今までの税制は大体終戦後まあ財閥も一応倒れた。そして平均に国民に対して税金がかけられた、そしてその結果法人だけが非常に金を儲け、そうして一般民衆は依然として生活が苦しいし、減税されたところで決して生活の向上を見ておらない。而も俗に消費税或いは直接税という比較をとつてみましても、この勤労所得税というものを、これを仮に消費税の側の勤労者負担に加えますというと、六、七割が先ず税收入負担勤労階級にかかつて来る。日本の再建というものは明らかに勤労階級の努力と犠牲によつて行われておるのであります。こうしたことが即ち先ほど木村委員泉課長の言葉を引かれた資料に、又鈴木教授基礎控除に関する意見を聞いて参りますれば、少くともこの基礎控除は八万円に上げる必要はあるとこういうことの結論になつておる。ところがここに五万円ということは我々としては非常に少いということを考えるのでありまして、ただ我々としてはこれは一応下げてもらつたのでありますから、それはそれとして我々としてはなおこの法案以上に、来るべき通常国会において基礎控除引上げて頂きたいというのが私の考えでありましてこの考えを以て遺憾でありますが、賛成いたすものであります。    〔委員長退席理事大矢半次郎委員長席に着く〕
  9. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は社会党の第二控室を代表いたしまして、所得税法臨時特例に関する法律案に極めて不満足ではございますが賛成する意見を申述べます。  特に元来税は、負担力に応じまして公平に分担されると共に、できる限り全般的に低率であり且つその体系も簡単で、国民が容易に理解できるものが望ましいものであります。ところが我が国の現状は、やはり敗戰の宿命とは申しながら、公平の原則は確保されず、且つ極めて過酷なものであり、而もその体系複雑多岐に亘つておりまして、これを国民が理解することは極めて困難なるものであります。而も戦時中の戦時課税がそのまま引継がれておるところが多いのであります。なかんずく所得税源泉徴收はこれは戦時中から引継がれて来たものでありますので、この際に根本的に改革しなければならんと思います。従いまして私たちはこういう観点に立ちまして、根本的な税制改革を一日も早く実現すべきであるという主張を持つておるものであり、大蔵大臣の当委員会における言明を聞きましても、減税方向をとつて税制改革をいたしたいと言つておりますが、仮に政府が若しこれを引延ばすようなことがあつたならば、我々は独自の見解に立ちまして、税制改革議院立法として提案する用意のあることを言明し、且つその態度を保留いたしまして本案に賛成いたしたいと思うのであります。  併しながら本案の不満な点だけを特に強調いたしまして、この点だけでも速かに是正するようにしてもらわなければならんと思うのでありますが、第一の公平な負担につきまして、源泉徴收を受ける給與所得者の担税は殆んど捕捉率が一〇〇%近くまで捕捉されておるにもかかわらず、その他の税は必ずしもそうは参つておらないのであります。その間には多くの開きがあるということは、当委員会における政府当局説明によつても明かであるわけであります。従いましてその捕捉率一〇〇%に近く達しておるところ源泉徴收を受ける給與所得につきましては、もつと減税処置を講ずべきが至当だと思うのであります。基礎控除引上げ、並びに扶養親族に対するところ控除引上げ等につきまして、もつと大巾にされるべきであろうと思います。  次に退職所得につきましては、退職理由如何によつて大きな違いがあると思います。二、三年会社等に勤めておりまして、重役の退職所得として数百万円受けるような退職所得は別としまして、三十年以上も勤めまして、そしてその退職所得唯一の老後の生活基礎となるような退職所得に対する課税が、政府の原案によりましてもまだまだ苛酷であろうと思うのであります。特に退職所得を受けるものの中には、結核によつて結核その他の病気によつて退職する人もあるわけであります。この人たちはすべてその退職所得によつて病気の療養までもして行かなければならないのであります。従いまして、こういう人たちに対するところ免税処置等についても適当なる処置を講じなければならないと思うのであります。  第三には、勤労学生、未亡人並びに不具者控除でありますが、今回税額から四千円を控除されることになりました。改正されるわけでありまするけれども、併しこういうような税負担力の最も乏しい階級から税金を取るということは、極力これは避けるのが社会保障の建前から申しましても当然なことでありまするけれども、併しその人たちにも税金をかけなければならないという国家現状から考えましても、もつとこの税控除額を四千円以上に引上げて、そして殆んどこの人たちの得た勤労所得生活にそのまま充てられるというふうに、成るべく引上げなければならないと思うのであります。  特に最近社会問題にまで発展しておりまするところ社用族の跋扈について、我々は絶対に見逃すことができないのであります。一部におきましては、このように零細なる所得から苛酷と思われるような税金を納める人たちがある半面におきまして、今特需景気に潤つておるところ会社におきましては、連日連夜豪華な宴会を行なつて、そして資本蓄積という名目の下に保護されて殷盛を極めておる産業におきまして、資本蓄積をするどころか資本を消費しているということについては見逃すわけには行かないと思うのであります。こういう面についてはまだまだ担税力があるということを言つて過言ではないと思います。相当担税力のある分に対してはもつと課税をして、高率なる課税を行なつて、そして担税力の乏しい面に対するところ軽減処置を講ずべきが正しい行政のあり方でなければならないと思うのでありますが、社会に一部の極めて賛沢に生活をする人と、不満を持つ多数の人があるということは、これは共産党に対して一番の温床をこれは提供することになるわけでありまして、特審局を殖やしたり、或いは警察予備隊を殖やしたり、或いは総理大臣が議場におきまして共産党の議席を睨みつけ、老いの一徹から憤然と共産党に反駁するようなことでは、実は共産党対策にはならないのでありまして、不満のない、本当に公平に、すべての義務や或いは税金負担されるような政治を行なつてこそ、この乏しいものは分ち合い、苦しいときにはお互にその苦しみを分ち合うというような社会を実現してこそ、本当の共産党対策になると思うのであります。そういう点から言つて、今の税金が零細なものには余りにも苛酷に過ぎ、又担税力のある面におきまして相当見逃されておる。特に捕捉率の面において見逃されている。私たちがここでどうしても一言申上げなければならないのは、今兜町の東京株式取引所におきまして、連日二百五十万株の株の売買が行われているのであります。これには譲渡所得税が課せられることになつているのでありますが、実際に調べてみましても、我々が素人眼にこれを換算いたしましても、到底これだけくらいの譲渡所得税ではあり得ないと思われるくらいな譲渡所得税より上つておらないのであります。これに対しましては、国民の疑惑が相当向けられているということを私たちは忘れてはならないと思う。そういうふうなところを逃がしておいて、そうして一〇〇%に近い捕捉率を挙げているところ給與所得に対する課税が、まだまだ苛酷に過ぎるということは、どうしても善政とは言い得ないと思います。従いましてこういう一〇〇%近い捕捉率を挙げているところ給與所得に対する減税をもつとやつて、そうして……そうすると勢いどこかで税の元を求めなければならん。その税の減泉を求めるのは、あくまでもこうした捕捉率の悪い面に向つて正しい法律の運用がなされることによつてはじめて公平なる分担が実現できると思います。従いましてこういう観点から、今回の所得税法臨時特例に関する法律案は極めて微温的であり且つは申訳的であり、大蔵大臣がたびたび申す税法上の減税に過ぎないと言わざるを得ないのであります。  併しながら、だからと申しましても、すでに八月に遡りまして減税をされるというので待ちこがれている。これだけの減税でも年末調整によつて少しの潤いがあるからといつて、待ちこがれている人たちがたくさんあることも又見逃すことはできないのであります。従いまして、時期はここまで切迫いたしておりますので、この際にはこの所得税法臨時特例に関する法律案を通して、速かにこの待ちこがれている人たちの年末調整を行なつて、そうして少しでも負担軽減を行い、速かに根本的な、私が只今申上げましたような観点に立つて税制改革を行われんことを強く要望し、若しも政府がこれを逡巡するならば、我々は議員提出立法として速かに国会に提出して、そうして議院の審議を煩わすという態度を保留いたしまして、    〔理事大矢半次郎君退席、委員長着席〕  ここに賛成する意見といたします。
  10. 小林政夫

    ○小林政夫君 私は本案に賛成をいたします。賛成するに当つて二、三の希望を申述べたいと思います。  政府は公約にとらわれたといいます。か、減税であるということを非常に強調されるわけでありますが、賠償要求国等に対する反影をも考えて、この点については愼重な検討が必要である。特に今回の税法上の減税物価の上昇に伴うものであつて、いわゆる公的な物価の上昇を税法上の減税によつて吸收する、それも完全に吸收し切つておらない。いわゆる物価の上昇に対する税制の追随であつて、そういつた意味における税の調整に過ぎないのであります。決して減税でないということを、十分実質的において減税でないという点を、特に関係方面に対する反響等から考えて強調……強調ということはありませんが、明かにする必要があるのではないか。徒に公約に忠実、公約を履行するということを宣伝するために減税々々と言われることが、却つてそういつた賠償要求国等に対して悪い反響を及ぼすという点を考えて、税の広い意味における調整であるというふうに宣伝を変えて頂きたいというふうに希望するものであります。  次に第二点といたしまして、先ほどの討論にもありましたように、給與所得者申告納税者等に比べて実質上実際問題として税が過重であるという点を私も考えるのであります。政府課税を正確にする、捕捉を正確にしてその不均衡を是正するという方針のようでありますが、実際の捕捉の実況から考え、実情から考えて依然として、政府の意のあるところは諒といたしますけれども、実行がなかなか伴わないという点から考えて、給與所得者に対する勤労控除引上げについては考慮されるべきであると私も主張するものであります。  第三点に、配当所得に対する源泉課税を今回復活されることになるわけでありますが、さきに一応それをとりやめて、又今日ならずしてこういう制度を復帰するということはまさしく朝令暮改であります。税法が頗る難解であつて一般大衆に親しみにくい、而も猫の目の変るようにしよつちゆう税法が変つてつて一般大衆は税法を見ることすらも面倒がつておるように思われますので、これは納税意欲の減退を来す虞れもありますし、そういつたことについては十分愼重に考えて、一度始めた制度については多少不十分な点があつても、十分今度の源泉課税の復活については申告では捕捉が十分でないという点にあるようでありますが、これは一応きめた制度によつて十分手を盡し、もつと実施の状況を愼重に考えらるべきものである、余り短期間に猫の目の変るごとく、ぐるぐる税法を変えられるということは適当でない。特に一応こういうふうに源泉課税をされることになるわけでありますが、その際において、欠損法人等についてこの税額の返還不能の分については、現金還付等についても考慮されるべきである、されることを希望して本案に賛成いたします。
  11. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより採決に入ります。所得税法臨時特例に関する法律案を原案通り可決することに御賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  13. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 多数でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條により本委員会における質疑、討論、表決の要旨を報告することにしてあらかじめ御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それから本院規則第七十二條により委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     岡田 宗司  清澤 俊英     森 八三一  菊田 七平     山本 米治  愛知 揆一     岡崎 真一  黒田 英雄     田村 文吉  小林 政夫     小宮山常吉  菊川 孝夫     松永 義雄  伊藤 保平     大矢半次郎
  15. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御署名洩れはございませんか。御署名洩れはないと認めます。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  16. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは速記を始めて、午前の会議はこれを以て休憩いたします。    午前十一時四十七分休憩    —————・—————    午後一時五十七分開会
  17. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは午前に引続きまして委員会を再開いたします。  昭和二十六年度における給與の改訂に伴う国家公務員共済組合法規定による年金の額の改定に関する法律案、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法規定による年金の額の改定に関する法律案」、右二案を一括して質疑に入ります。
  18. 小林政夫

    ○小林政夫君 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法規定による年金の額の改定に関する法律案の第三項ですが、旧陸軍共済組合、同法第一條に規定する共済協会又は同法第二條に規定する外地関係共済組合が支給した年金の算定の例によりそれぞれ算定した額にするというふうになつておりますが、これはそれぞれどのように違つておるのか。非常に面倒だと思うのですが、第二項にも「大蔵大臣の定めるところにより、これを共済組合法の規定によるこれらの年金のうち当該條件又は基準の最も類似するものとみなして、同法の規定を適用する。」ともなつてあるし、あなたのほうでおやりになるときにも一本化したほうがいいと思いますが、どうしてできないのか、どのように違うのか一応説明を伺いたい。
  19. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) 旧令の共済組合によりまする年金を現行の共済組合法に引直して支給する場合に、どういう條件で引直すかという御質問であつたと存じますが、一般の場合について最初に御指摘になりました第三項は公務傷病による場合でございますが、それ以外の一般の場合について先ず御説明申上げますと、旧令共済組合の中には、例えば勤続十五年、年令四十五歳以上で俸給の三カ月分の年金を支給するというような規定が中にございます。そういうものをどういうふうに引直しておるかと申しますと、現行の国家公務員共済組合法によりますると、年金は勤続期間が最低二十年でございますので、その十五年のものは二十年に引直しまして、又現行は二十年の場合は最終俸給の四カ月分でございますので、その旧令の三月分を現行法の四月というふうに換算いたして処理いたしております。これはやり方としてはそういうやり方でございますので、別に複雑ではないのでございまして非常に簡單に参つております。  それからもう一つ、公務傷病のものでございますが、これはやり方は、廃疾の、その公務傷病に起因するものの中にも傷害年金でありますとか、殉職年金でありますとか、傷害遺族年金とか、いろいろ年金の種別がございますが、そのこともいろいろその種別ごとに大体給付の標準というものを決定して、仮定俸給何カ月分という給付の標準を決定いたしました。それに伴いまして旧令の共済組合で何カ月分支給するかという規定がありましてその何カ月分というのを乗じて算出いたしているわけであります。これもさほど問題は生じておりません。
  20. 小林政夫

    ○小林政夫君 事務的にやればやれるのでしようが、今の旧陸軍の共済組合、それから海軍関係の共済組合、それから外地関係の共済組合等それぞれ條件が違うわけです。それをいちいちおやりになるということが面倒じやないか。一方のほうで、第二項のほうでこういつた類似の條件の下に統轄できるなら、こちらの第三項のほうで一本化することができるのじやないか、一本化したほうがあなたがたの事務が簡單に行く、面倒くさくない、どうしてやらんのかということです。計算のできることはきまつている。
  21. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) これは公務傷病のほうにつきましては、ちよつと御説明申上げ足りなかつたと存じますが、例えば傷害年金について申上げますと、廃疾の程度によりまして一級から六級まで廃疾の程度を分けております。これに対しましてそれに対する年金は一級の場合は仮定俸給の十二月分、二級でありますと仮定俸給の十月分というふうに段階をきめて、大蔵省の通牒で段階をきめてやつているわけであります。これにありまする三項で「年金の算定の例」とございますが、これは先ほど御説明を混同しましたので恐縮でございますが、主として只今申上げましたような客観的な基準をきめてやつているわけでございます。第三項の分は先ほどの御説明はちよつと取消さして頂きたいと存じます。
  22. 小林政夫

    ○小林政夫君 念のため言いますが、私の言つたようにこれはもう一本化してやつておられるわけですね。
  23. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) 公傷のほうは一本化しております。
  24. 小林政夫

    ○小林政夫君 それでは次に特別措置法の第七條第一項によつて日本製鉄八幡共済組合への交付金について責任準備金の増額分、今度のこの改正によつて増額しなければならん、これを国家がまあ負担するわけですが、この予算措置はどういうふうにできているのですか。
  25. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) 今回の旧令共済組合法による年金改正と並行いたしまして八幡の分につきましても年金は改訂するという規定改正法に盛り込んでおります。ただその予算措置につきましては現行法の附則におきまして、昭和二十五年度分及び昭和二十六年度分としてすでに交付した金額があるわけでございますが、その金額は二十六年度中のすべての費用をカバーするという規定になつておりますので、本年度分としては特に措置はいたしておりません。
  26. 小林政夫

    ○小林政夫君 その措置をしなくてもその通りできるのですね。
  27. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) これは法律規定上、もうすでに本予算に計上してあります金額で本年度中はカバーするという規定法律に明記してございますので、本年度は特別の措置をいたしておりません。
  28. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  29. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。それでは他に御発言もないようでありますが質疑は書きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べ願います。  別に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決を行います。昭和二十六年度における給與の改訂に伴う国家公務員共済組合法規定による年金の額の改定に関する法律案、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法規定による年金の額の改定に関する法律案の二案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  32. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続きは先例により委員長に御一任願いたいと思います。  それから多数意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     岡崎 真一  黒田 英雄     小宮山常吉  小林 政夫     田村 文吉  伊藤 保平     大矢半次郎  松永 義雄     清澤 俊英  菊田 七平     山本 米治  木村禧八郎     森 八三一   —————————————
  33. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 次に、物品税法の一部を改正する法律案議題として、質疑を行います。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この改訂が実質的にどういう意味を持つておるかよくわからないのですが、非常にややこしいので、アメリカあたりでは、関税をかけるときにこつちの物品税を加算して向うではかけるというのですね。国内では、国内価格というのは物品税を除いたものが国内のマーケット・プライスである、こういうふうな規定だということなんですが、そうらしいですね。そういうことをやつて実際の効果ですね。結局マーケット・プライスというと、物品税は消費者が負担するということになれば、実際にはマーケット・プライスは、物品税がかかつたものが国内における価格ということになるのです。そういうことを法律できめて、それで物品税はこれだけ、それから値段はこれだけと、こういうふうに表示して、実際アメリカあたりで関税をかけるときに物品税を除いてかけるかどうか。実際の効力があるならいいと思うのですが、それだけの効果はあるものなんですか。
  35. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今お話の通り、アメリカの関税法では輸出国の市場価格と申しますか、それを基準にすることになつておるわけでありますが、その価格の中に物品税が入つたもので見るか或いは除いたもので見るか、問題がございまして、向うでもいろいろ意見があるようでございます。而しまして今度改正いたしましたように、物品税というものは、飽くまでも消費者が負担すべき税であり、価格の中にも物品税というものが本来の価格のほかに入つておると申しますか、別にございまして、それがくつついて取引されるのであります。従いまして本来の市場価格の中から物品税というものは別建てのものであるということを法律ではつきりいたしますれば、今度の関税法の解釈上、物品税を除いた価格を関税の課税標準として解釈もできるということでございますが、大体この法案が実行になりますれば、アメリカにおきまして今申上げましたような解釈が確定する、こういうふうに了解いたしておる次第であります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大体向うとも折衝で了解がついておるかどうかということと、アメリカ以外の国の場合はどうなんですか、よくわかりませんけれども……。
  37. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お話のように、大体向うの内意を聞いてもらいまして、話はついております。それからほかの国におきましてはアメリカのような関税法の建て方をとつておる国はどちらかと申しますと比較的少いのであります。実際問題といたしまして、輸出国の市場価格を課税標準とするというものはアメリカ以外には目ぼしいものはないのであります。現在まで余り問題になつた例はございません。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 他の国ではどういうふうに……。
  39. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 他の国では無論輸入の際の国内における価格で……。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国内における価格……。
  41. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) はあ、輸入国の……。日本の関税法もそうでございます。そういう建前をとつておるのが一般であります。
  42. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは御発言もないようでありますから質疑は盡きたものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  44. 森八三一

    ○森八三一君 私は提案されておりますこの法案には原案通り賛成をいたすのでありますが、ただ物品税全体を通しましてこの委員会でしばしば各委員から質問もあり当局からもそれぞれ御答弁があつたのでありますが、物品税の内容におきましては勿論当然我々首肯し得るものもありますが、中には大衆課税というような形においてこれを軽減すべき必要のあるものも多分にあるわけでありまして、当局におきましてもいろいろ御考慮願つておる答弁があつたのでありますが、当委員会におきましても請願陳情等につきましては、愼重に審査をいたしまして、それぞれ政府意見を具申いたしておるのでありますが、これらの決定につきましては然るべく早急に当委員会趣旨が十分に具体的に法律或いは規定に現われて参りますような措置を講じて頂きたいということを要望いたしまして賛成をいたします。
  45. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めてよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 異議ないと認めます。  それではこれより採決を行います。物品税法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  47. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致により原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続は前例により委員長に御一任願いたいと存じます。それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     清澤 俊英  森 八三一     菊田 七平  山本 米治     木村禧八郎  松永 義雄     大矢半次郎  伊藤 保平     田村 文吉  小宮山常吉     黒田 英雄  岡崎 真一   —————————————
  48. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 糸価安定特別会計法案について質疑を行います。
  49. 森八三一

    ○森八三一君 本委員会に付託されております糸価安定特別会計法の基礎をなします繭糸価格安定につきましては、本日の本会議でもすでに修正議決されておるのでありますが、特別会計を審査いたしまするにつきまして二、三お伺いをいたしたいと思います。  第一は、勿論これは農林委員会で十分御審査になつたかと存じまするが、国際的な見通しに立ちまして羊毛なり綿糸なり、或いは新興の化学繊維というものに伍しまして我が国の天然絹糸の将来がどういうふうに展開をされて行くか、非常に明るい前途を期待し得るような見通しが立ちまするのか、今日までは農林生産物の中で生糸とお茶が輸出の大宗をなしておるということで非常に国民経済にも寄與して参つたのであり、経済自立の急を要する今日、輸出振興の観点からも特に強く考えて行かなければならん立場にあると思いますが、そういうような観点からいたしまして第一に見通しについて一つお伺いをいたしたいと思います。
  50. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 生糸の今後の消費の見通しはどうかというような御質問のように考えられまするのですが、大体国内と国外に分けて申しますると、とにかく戦争中全く国外におきましては生糸の供給が杜絶しておつたというような関係からいたしまして海外の輸出も終戰後におきましては、なかなかはかばかしくなかつたのでございます。従いまして国内におきまする生糸の需給の面から見まするというと、非常にアンバランスの状態でございまして、最悪の事態におきましては一カ年間分の生産数量が殆んど国内で滞貨しておつたというような事態さえも起きたのでございます。併しその後海外におきまする消費が回復して参りまして、海外におきまする輸出の件数を見ますると逐年増加して参つておるのでございます。最近幾分生糸の海外に対する輸出というものは、昨年から見ますると今年は幾分減退しておるのでございまするが、海外の需要者の大体の意向といたしましては、昨年及び今年度の海外の絹業者の国際絹業会議というものがありまして、その面におきまする海外の需要者としての生糸に対する要望といたしましては、とにかく価格の安定を図つてもらいたい。そうすれば消費は我々としてはでき得るのだということを言つておるのであります。而も最近におきまする海外の情勢を見まするというと、何と申しましても繊維類におきましては、生糸が一番よろしい特質を相当持つているという面から見まして、海外の経済復興ができまするに連れまして、絹製品に対しまする要望は、高級品高級品と現在行つているような形をとつておるのでございます。従いまして若し購買力が順次増加するにいたしますれば、衣服のいろいろの面に利用して参るということが想像されるのでございまして、我我の考えといたしましては、現在計画しておるものは今後五年後におきまして約現在の生糸の生産数量の倍額、現在十五万俵ばかりの生産をやつておりまするが、その倍額約三十万俵程度のものを作つて海外及び国内に出したい、こういう計画を作つておるわけであります。而も海外に対してはそのうちの半分約十五万俵ぐらいのものを海外に輸出したいという計画を立てていまするが、海外の人たちのお話によりますれば、大体価格の安定さえできるならば、その程度の消費は何ら不安はないというようなことを申しておる次第でございます。中には二十万俵程度ぐらい使えるというように海外は言つているのであります。  又飜つて国内の情勢を見ますというと、現在の生糸の価格と戰前の価格と比較して参りますというと、他繊維との関係を見ますれば、国内におきましても人絹と大体似て参つておるのでございます。バランスはとれて参つておるのであります。併し一方綿製品及び毛の製品から見ますというと、それらの製品は生糸の倍くらいな高さに現在はなつているような状態でございます。そういうような生糸の値段から見まして、なお今日の情勢を見ますというと、織物といたしましてはいろいろの部面の織物に採算が合うというような状態でございまして、相当消費は強い形になつているのでございます。これらの面を考えますれば内外とも、この法案の通過によりますれば相当消費が伸びるのではないかと、こう思つている次第でございます。
  51. 森八三一

    ○森八三一君 只今の局長のお話で、農林生産物としても非常に重要な地位を占めて参つていると申しますか、蚕糸業が平和の回復に伴いまして、全国非常に明るい見通しであるということは、日本の置かれている経済現状からいたしまして非常に好ましいことであつて、ますますその実績を確保することに努力をして行かなければならんと存ずるのであります。そのために海外の要請も、価格の安定がなければ、流通過程において取扱うことが非常に困難である。ために価格の安定を要望せられて参つておるので、ここに絹糸価格の安定策を考えて、これを提案をいたしておるというような御説明であつたのでありまするが、思いまするのに、糸価が幾ら安定をいたしましても、その糸を産みまする繭の生産が順調に進まなければ、糸価の安定ということだけでは、輸出貿易を振興して参りまする基礎を培うわけには行かないと思います。繭の増産が確保せられ、期せられて、その上に立つ海外取引市場における糸価の安定ということがあつて初めて置かれている蚕糸業全体の目的を達するということになろうかと思いまするのに、ここに提案されておりまする法律は、絹糸価格安定法というものを基礎にして、糸価安定特別会計ということでございます。生糸の価格の安定については直接的に操作をしよう、繭については、それを通じて間接的な確保をいたそうと存じられているのでありまするが、私は今申しますような観点からいたしまして、鶏か卵かの議論になるかとも思いますが、おのずからそのときの経済事情に即応しまして、加工製糸の費用というものも、或いは絹糸の販売経費というものも、大体は想定がつごうと思いますので、繭の生産が基調になるということを土台にして、操作が考えられて行くべきではないかと存じますのでありまして、そういう観点から申しますれば、むしろ特別会計は、繭の価格を安定させるという基礎問題を解決しなければいかんのじやないか。その問題が解決いたしまして、その上に想定される製糸費用なり、販売費用というものが積重ねられ、それで海外の要求せられるいわゆる安定糸価価格ということが産出されるということであつて、初めて首尾一貫した目的が達成せられると思うのでありまするが、その末のほうの糸価の安定だけを考えて、基礎をなす繭の価格について直接的に考えておらんということについては非常に遺憾に思いまするのでありまするが、どうお考えになりまするのか。更に申上げましたように、間接的にやるということによつて十分効果を上げ得るという御確信がありまするかどうか、その点を一つお伺いいたしたいと思います。
  52. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 生糸の需要の今後の見通しはどうか、こういうようなお話がございましたので、今のような御説明をいたしたわけでありまするが、先ほど参議院の本会議を通りました繭糸価格安定法の内容をお話申上げて見ますると、その目的は生糸の輸出の増進と、国内蚕糸業の経営の安定、この両目的を果そうという意味合いで繭糸価格の安定法案を出しておるわけでございます。従いましてその場合におきまして生糸の売買操作によつて価格の安定をして参りたい、こう考えておるのであります。それで安定の方法としてなぜ生糸の売買操作によつて安定するか。こう申しますというと、現在の状態におきましては、生糸を安定しなければ繭の価格は安定はでき得ないのでございます。繭の価格が安定いたしましても生糸の価格が安定しなければ、繭の価格が安定できないという面があるのでございます。而も金額は限定されまして、この金額の範囲内で最も経済的に繭の価格も安定し、生糸の価格も安定させようというならば、やはり現在のところ、生糸の売買操作によつてやるのが一番効果的ではないか、こう考えた次第でございます。御承知のように繭は農産物でございまして、殊に春繭の出廻り時期になりますというと、年生産額の半分が六月、七月の短期間に出て参つて来るのでございます。而もその繭は生繭で大部分取引されるという現状でございまして、出廻りますれば、少くも十七、八日間において、これの売買を決了して完成しませんというと、なかなか困難だという厄介な商品でございます。併し生糸のほうは幸いに全国的ではございませんで、生糸が出て参りまするのは、横浜、神戸の地帶でございまして、而も日本に生産されまする生糸の約九割近くまでが横浜、神戸に集中されるというような面から見まして而もその生糸は保管なり、或いは又それらの面から見ますれば繭よりは非常に安全性がある。現在でもとにかく生糸なら七カ年間保管いたしましても、品質にはそれほど影響のないという実績さえも持つておるような次第でございまするので、而も生糸でありますれば、言い換えれば十二分の一ずつだけ月々に横浜、神戸に出荷して参るというような面から見まして、生糸の価格の安定さえすれば、繭の価格は十分安定できるのじやないか、こう私たち考えておるわけであります。過去におきまして、この生糸は何回にも亘りまして民間なり或いは政府なりが価格の安定をしたいという考えからしましていろいろやりましたものの、結局生糸の売買によつてやる方法が最も有効であるという結論に現在なつておるのでございまして、政府といたしましては、この結論に基きまして今のような生糸の売買操作によつてつて参りたい、こう考えておる次第でございます。一方又それなら売買操作によつてやりますれば、その維持しようという価格はどういう価格であるかという面があろうかと思いますが、これは第三條に書いてございますが、我々の原案は糸価並びに繭の生産費及び生糸の加工販売費、つまりコストでございます。これら或いは又主要繊維の価格、物価その他経済事情を斟酌して定めるということになりますが、先ほど参議院の本会議を通りました修正意見では、生糸並びに生糸のコスト、つまり繭の生産費及び生糸の加工販売費を加えました、少くも生糸のコストを基準にして、これらの経済事情を斟酌してきめたらどうかというふうなお考えでございまして、我々といたしましては勿論この趣旨に基いてやつて参りたい、こう考えております。従つて生糸の価格は安定し、これらの観点から最高価格、最低価格ができまするならば、養蚕の面におきましても、安心して或る程度生産に従事できるのではないかと考えるのでございます。而も政府といたしましては、更に第十條に、若し暴落いたしましてなお製糸家の買叩きを受けるというような場合におきましては、繭の価格のこの異常の低落を防止するために必要な処置を講ずるということさえも第十條に加えておるのでございまして、政府といたしましてこの案を出しまする現在の情勢から見ますれば、先ず第十條の発動というようなことはなくとも、生糸の売買操作によつて十分繭の価格も安定し、生糸の価格も安定し得らるるのではないか、こう考えておる次第でございます。
  53. 森八三一

    ○森八三一君 只今お話がありましたように取引の実態が全部ではありませんが、相当大多数のものは生繭で取引をされるような実情から考えまして、糸価を一定の限度に安定せしむるということによつて、必ずしも私は多数の養蚕農家の希望する利益を正当に確保して参りますることは、今までの取引の実情から考えまして非常に困難だろうと思います。むしろこの制度の運用によりまして、製糸業者の経営というものは一応安定はいたしましようけれども、それは多数の養蚕農家の犠牲の上に組立てられて行くという結果が生れる危険を非常に強く考えざるを得ないのでございます。お話のございましたように、最終の糸価が安定すれば、それから割出して繭というものも当然或る一定の限度で価格的に確保せられるから、両々相待つて蚕糸業全体の振興が策せられて行くのだという考え方ですが、私は前段も申し上げましたように糸価が安定いたしましても、繭そのものが増産されなければ、輸出振興究極の狙いを達するわけには参らないわけでありますが、繭の価格を安定するという方法をとることによつて生産が増強せられ、それから割出した糸価というものがおのずから一定限界で確保せられ安定するという結果を招来することもこれは困難な問題でなく、ただ行き方が、表道から行くか、裏道から行くかだけの相違でありまして、局長のお話は最終の糸が安定すれば、それから加工費、販売費を引いたものが繭の値段になるから、そこで安定するのだとおつしやる。私は生繭の値段を安定さして、そういうものを積み重ねて行つたものが糸価になるのだから、一番元である基礎の生産農家の立場を確保して行くということが、将来三十万俵にも伸ばして行く明るい見通しのある今日といたしましては、とるべき対策ではないか。これが増産を図りましても、販路の困難な見通しのものでありますれば、只今御説明なつたような方法も止むを得ないかと思いまするが、非常に明るい、倍額にも生産をいたしましてなお需要には充たされないというような、将来性のある絹糸といたしますれば、その根本である繭の確保ということが先ず思考されなければならない。どつちから行つても結論は同じになるのじやないか。その同じになるなれば、基礎を培う養蚕農家の犠牲が考えられるようなこの制度は如何かと思うのでありまするが、逆にするということと、おつしやるような説明とどういう点が違うのか、この点につきまして更にお伺いいたしたいと思います。
  54. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 先ほどもお話いたしましたように、繭の価格を安定するという方法といたしましては、いろいろあろうかと思います。繭の買入れとか、或いは又それを還元して保管いたしまする場合に、それに対して金融を與えるとか、或いは又金融を與えるだけでは困難だ、それに対して或る程度の損失補償をしなきやならんというようないろいろの問題があろうと思うのでありますが、今お話になりましたように、繭の買入れというようなことをお話になりましたのですか、なかなか繭の買入れということになりまするというと、少くも現在の段階におきましては、予算的の面から見ましても、又実際の技術的な面から見ましても、幾分困難ではないかというような気はいたすわけであります。その理由といたしましては、先ほどもお話いたしましたように、日本全国的に繭は出廻つて参るというようなことから考えますれば、少くも出廻つて参りまする数量のかなりの割合のものを買わなければ、繭の価格が安定せんということになるのではないか、従つて金額は、相当生糸の場合よりも嵩むという面が考えられる。又一面品質は非常に低下しやすい。少くも一カ年間繭を持ちますと、その品質の低下というものが非常に大きいのでございます。実際の売買に当りましても、新繭と古繭との間の差額というものは相当なのでございます。又これらを管理いたしまする場合に、全国的にその管理の職員を要するというような面、これらのいろいろの面から考えまするというと、現在でもなかなかそれらのことをやるということは困難ではないか、経済的に見まして……。その面から見ますれば生糸の売買操作によつて十分我我といたしましては繭価格までも安定できやせんか、而も現在の情勢をお話申上げますというと、大体過去二カ年間ぐらいの情勢をお話申しますと、大体二十万俵ぐらいずつ消費して参つておるのでございます。而も十五万俵しか生産がないというような状態でございまして、供給の面が常に毎年五万俵ばかりずつ、少くなつて参りまして、約一カ年間の先ほどもお話しました滞貨というものは最近全くなくなつておるような状態でございます。而も又一面製糸の工場の状態をお話申上げますというと、現在の製糸の工場設備は、現在できておりまする繭の数量から見ますると、三割乃至四割くらいな過剰な窯数を現在擁しておるような状態でございます。従いまして出廻り時期におきまする態様は、ところによつては違いはあろうとは思いまするが、とにかく製糸家のほうとしましては、原料の買入れに血眼になつておるというのが現在の実勢でございます。従いまして十條の規定は、この法律が恒久的な法律でありまするだけに、将来ともこういう実勢が続くかどうかという面に懸念がございまするので、それで十條の規定を設けまして、そういう場合におきましてなお生糸の価格の中に含まれておる繭の価格がアンバランスになる場合におきましては、政府といたしましてはできるだけのことをやつて、繭の価格を維持して参ろうというように考えておる次第でございます。
  55. 森八三一

    ○森八三一君 只今の御説明でますます私の疑問を深くしたのでありますが、と申上げまするのは、前段の御説明では、糸価を安定させますればそれで繭価というものも安定して、多数の零細養蚕家は安心をして生産ができるのだという御説明であつたのでありますが、只今は繭を買入れるような操作をいたしますれば、損失補償をしなきやならんような事態も発生するというお話があつたのであります。これは私の申上げまする、糸価の安定ということだけでは、繭の価格は保障されないということを政府も確認をきれたと理解せざるを得ないのであります。そういう心配がありまするからこそ、基礎をなしまする多数の生産農家を安定せしめて、繭が十分確保、増産のできるという基礎を培うべきであるということを強く主張せざるを得ないのでありまして、糸価が安定すれば繭価というものも当然安定をして、養蚕農家は安心してやるという状態であれば、繭を操作いたしましてもそこに損失補償ということが懸念される筋合はないはずであります。ところが繭を操作する場合には、損失補償を考えなきやならんということになりますると、やはり糸価を安定しましても、繭というものについては安定をしていないということが裏書されておるのであります。この点はどうしても承服ができないのでありまして、飽くまでも私は基礎をなす繭というものを中心に施策が推進されて行かにやならん。ただそこが非常に多数の農家であつて、生の繭であるということから、操作上の困難性はあろうと思います。その操作上の困難があるからといつて、多数の養蚕農家にその犠牲を強いるがごときことは嚴に愼しむべきものであり、そういうことであつては、政府の企図されまする、将来三十万俵にまでも増産を確保して行こうとする基礎的な狙いというものは崩壊して行かざるを得ない。経済的に引合わない養蚕を無理に強制するわけにも参らないではないかという結論が生まれるのではないかという心配もありまして、ただそこでそういうようなことも考えられるので、法律の第十條におきまして異常な低落があつた場合には、適当な措置を講ずるということに努力をするのだとおつしやるのじやないかと思いますが、ここで言います異常な低落とは一体何を指しておるのか、異常な低落……。糸価につきましては最高、最低をきめて、最低を下廻るという場合には買上げて、市場から生糸を吸收してしまう。それによつて需給の関係からいたしまして、当然政府の企図される標準値段に近寄つて来るであろうという具体的な施策が考えられておりまするけれども、繭については別に最低価格もありませんし、何もありません。ただ法律十條の異常な低落をした場合に措置する、異常な低落とは、何を一体企図されておるのか、具体的にお伺いしたいと思います。
  56. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 先ほどのお話の中に誤解があつたかと思うのでございますが、私は生糸の売買操作は全然やらないで、繭の価格を維持しようという場合に、どうするかということを申上げたわけであります。それで繭の価格を維持するためには、結局繭を買上げるか、それでなければ金融の措置を講ずるか、併し最低価格は或る程度保障するというためには、補償なり何なりつけませんというと、金融機関が金融いたします場合に非常に困難ではないかということを申上げたわけでございまして、生糸の売買操作を全然やらない、糸価の安定政策を全然やらない場合のことを申上げたわけでございます。  それから今一つ最後にお尋ねになりました異常な低落とはどうか、こういうお話でございますが、これは生糸が最低価格を割りました際のことを申上げておるわけでございます。従つてこの最低価格の中に含まれております、いわゆる繭の価格、その価格を割ります場合のことを申上げておるのでございます。
  57. 松永義雄

    松永義雄君 今ちよつと異常な暴落ということについてお話が出ましたから、その点一点お尋ねしておきたいと思います。生糸が異常な暴落ですか、繭が異常な暴落ですが、どちらにしても異常な暴落を生じたときに、初めて買入れするとか、或いは繭の補償をするとかいつたようなお考えのようですが、若しこれが繭の場合だとすればこれは極めて重大であります。昔信州におきまして糸が暴落した。繭が暴落した。繭が一貫目一円、或いは一円五十銭といつたような驚くべき安い値段を呈したときに、養蚕農家のお婆さんが、信州の川の橋の上から、川の中へ投込んで、そうしてはたのものから見ると、このお婆さんの頭は変になつたのじやないかという話があるのでございますが、それが一体どういうふうに発展して行つたか、すぐ私は結論へ行きたいと思うのですが、信州の小諸、上田方面からモラトリアム運動が起きて来た。借金支払猶予の問題が起きた。埼玉県及び茨城県の愛郷塾からも同様な運動が起きた。そうして二・二六、或いは五・一五事件に発展して参つたことは、これは農村の経済史をお読みになればはつきりわかると思います。異常な低落という場合に、初めて発動するということは、これは同時に他の問題を惹起すかも知れんという歴史がすでに存在しているのであります。先ほど来森委員から御質問があつて、繭は一体どうするかというお話がありましたが、この異常な暴落ということは極めて重大な文句なんです。一体そういうことを知つて、過去の歴史を知つてあんたは言われておるのかどうか、一つ農林大臣に御意見を伺つておきたいと思います。
  58. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 御承知のように、繭糸価格安定法につきましては、糸価の算定に当りましては、繭の生産費、更に加工費、それから使用繊維の価格の趨勢を見てきめるという案文になつておりますのを、参議院の修正によりまして、又只今は衆議院においてそれを了承いたしまして、繭糸価格安定法が成立したわけですが、これには修正案によりますれば、繭の生産費、並びに加工費を基準としてこういうふうになつておるのであります。従いまして御指摘のように、糸価の安定のうちに、繭の値段の安定もその中に含まれておる次第でございます。従いまして原則としてこの法律によりますれば、繭価が異常な暴落をすることがないということが建前になるのでございます。併しながらそれにもかかわらず本法律が恒久法でありますが故に、万が一それにもかかわらず暴落した場合においては、この法律規定しておる措置のほかに、適当なる措置を講ずることができるという、極く万一の例外に対する規定でございます。従いまして本法におきましては、異常な暴落ということはないという前提でありますが、併し衆議院、参議院両方面の関係委員のかたがたから、万一という場合における政府の措置ということも入れるべきだということで、第十條が出ている次第でございます。この万一ということが常に起るという印象では解釈が違う。その意味におきまして、我我は本法によつて糸価と同時に繭価の安定ができるというふうに考えておる次第でございます。
  59. 松永義雄

    松永義雄君 生糸の買上価格をきめるときに繭の生産費を考慮しておると、こうおつしやる。ところが、昔生糸の買上によつて非常に政府は儲かつた。ところがその当時、それでは養蚕農家はどうであつたか、事実は今申上げたような状態になつておる。抽象的にこの生産費を、繭の生産費を生糸の評価に算入する、こう言われると、実際問題としては過去の実情は生糸の買入れによつて農村の窮境は決して救われなかつた。だから今繭だけをはつきりきめておいて頂きたい、こう森さんがおつしやるのだろうと想像するのでありますが、一体あなたは抽象的な一片のこの法文の文句によつて保障されるというふうにお考えになるのですか。関連質問ですから、あとで又質問いたします
  60. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 只今も御説明申上げましたように、この標準糸価の算定に当りましては、「生産費を基準として」とここに明確に謳つておるのでございます。この意味におきまして、私たちは糸価の安定という中に完全な繭価の安定がそこに織込まれておる、こう考えたのであります。而もこの糸価の算定に当りましては、従来は役所のほうだけできめておつたのを、関係生産業者並びに製糸業者、こういう民間の審議委員が参画をしておりまするので、その点は従前からすれば非常に改善をなされておる、かように考えておる次第でございます。
  61. 松永義雄

    松永義雄君 問題は製糸家の利潤と養蚕農家の利潤の争いなんです。製糸家の利潤を認めれば、養蚕家の利潤が認められるか、生産費を償うことができるか、こういう点が起るかと思うのです。そういうことか起らないとおつしやればそれまでですが、そういう点はどうですか。
  62. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 只今申上げましたように、これはその繭の生産費並びに製糸の加工費を基準として算定することになつておりまするので、その点は明確に私は繭価安定の挺子入れができておるものと考えておる次第でございます。
  63. 松永義雄

    松永義雄君 意見の相違ですから……。実際はどうなるか、将来又……。
  64. 森八三一

    ○森八三一君 今の大臣のお話でございますが、先刻局長のお話に、糸価の安定をいたしますれば、それで繭価もおのずから第三條に基きまして計算をされておる、生産費を保障されるという結果が生まれるのだ、だからこの法律と特別会計によつて双方の目的を達するのだ、こうおつしやつておるのでありますが、第二條によりまして、生糸につきましては、審議会が決定をいたしまする最低価格を割るというような経済事態が発生いたしました場合には、申込に応じてこれを引上げるということで、具体的に製糸操業者の立場というものは保護をされておる、こう存じます。ところが、繭については、必ずしもそういう措置が講ぜられておらん。それは十條によつて、異常に下つたときには適当な措置を講ずるということだけでございまして、養蚕農家としては、そこに糸に対してとられておるような明確な安全性というものは附與されておらん。私の申上げまするのは、糸の価格が如何に安定いたしましてもそれは駄目なんで、要は繭の増産ということが基調になる、その上に糸価の安定ということか更に盛らるべきである。そこで三條によつて合理的な理論的な一つの計算ができるといたしますれば、その基礎を保障してやれば、上のほうは黙つてつても一定限度にとどまるのではないか。苦しそれ以上に暴騰するということであれば、かの暴利取締の方法もありましようし、今度の制度によつて新らしく修正されました第十條でありますか、等によつても取締もできると存じます。基礎を培わずして上のほうだけを考えておるということは矛盾じやないかという点を申上げておるのであります。而も法律のほうでは、十條に、非常に抽象的ではありますが、そういう規定は挿入されておりますけれども、具体的な予算を伴う特別会計におきましては、何ら繭の問題には触れておらんということは、まるつきり本末顛倒のきらいがあるんじやないかという点を申上げておるのであります。そこでそういうことは招来をしないように、十條を発動するのたとおつしやいますけれども、十條では申上げまするように、異常な低落を来したときに云々とこうおつしやつておる。ここを、ここをです、大臣がおつしやるようでありますなれば、第三條において策定をいたしました正当である生産原価というものを割るというような具体的な現象が起きた場合には云々、こうなつておりますなれば、まだ糸と繭との均衡はとれておりますが、糸のほうは最低価格を謝るという恐れのある場合には、具体的に予算を伴つて買上げるという保護が行われている。繭のほうについてはただ異常な暴落というだけで、それはどうだというと、さつぱり見当がつかん、基礎である繭についてちつとも保護がされておらん。それでは結局三十万俵まで増産をさせて行きたいという国の期待、政府の計画というものは実現をされるという結果にはならんのじやないかという心配が非常に持たれるという点を申上げておるのであります。そこで十條において異常な暴落というのは、私の申上げます三條によつて審議会が策定計算をいたしました当然生産者の受くべき正当な生産原価というものが保障されないという現象の発生した場合、こういうように理解してよろしいのかどうか。その点をお伺いすることと、そういうように理解をしてよろしいという場合におきまして、具体的に政府は一体必要な措置をやるとこうおつしやつておるが、何を一体お考えになつておるのか。私はその場合には、特別会計におきましては繭を買上げるということはここに規定がございませんので、繭を買上げるという措置は、この法律が修正されない限り不可能であると思います。その他の方法でやるとなりますれば、金融の便を與えまして、その際処分することを一応見合せる、繭が市場に出廻つて来なければ又上つて来るであろうという方法が一つあると思うのです。更にそういうことをいたしまするのにつきましても、個々の農家の零細な力ではそういう措置は講ぜられませんので、それぞれの生産農家の組織体に対しまして乾繭保管をする等の施設について特別な資金を供給するとか、或いは助成をするとかというようなことが考えられて行くと思いまするが、ここで今この案をお出しになるにつきまして、必要な措置という点は具体的に何を構想されておるのかということをお伺いをいたしたいのであります。
  65. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 御指摘になりました三條と二條との関係でございますが、先ほども申上げましたように、糸価の安定を図る場合におけるその標準価格の算定に当りましては、生産費を基準としてやつておりますので、従つてこれは糸価の安定は同時に繭価の安定になるというような前提の下に我々考えておるのであります。従いまして両者の関係は完全に関連して考えておるといつて差支えないと思います。  それから第十條における必要なる措置……、その前に異常なる暴落ということが、糸価の算定に当りまして生産費を基準とし、それ以下の場合には、異常の暴落であるかどうかというお問でありますが、その点まではつきり言える段階ではないと思います。大体生産費が基準となりまするが、それが著しく生産費を割るということが大体異常な暴落、こういうふうに考えておるのでありまするが、生産費としてここで算定されたものが少しでも落ちた場合にはそれが直ちに異常の暴落というふうな機械的な解釈は困難であると考えております。  それから第十條における必要なる措置というのは、これはそのときにおける繭の値段の下り方のいろいろの原因があろうと存じます。それは確定して一つの型だけを承提にすることができないと存じまするので、その場合々々における必要な措置が考えられなければならんと思います。具体的に考えられることは、過去におきましては御承知のように委託加工というようなことをやつたこともあるようであります。即ち養蚕者が自分で繭として持つている場合には、保管が困難である、又売りに出すと安い値段で叩かれる、そういう場合においては、自分で製糸業者に繭を委託加工して糸で持つておる。そうして市場の安定の時期まで待つ、こういうようなことをやるのでありますが、そのためには零細農家がそれだけ持ちこたえる資金がない。そういう場合における融資斡旋の措置を講ずるというようなことも一つの方法であろうと存じます。それから又御指摘のように乾繭保管ということも考えられるでございましよう。そうした場合における資金の斡旋、こういうようなことが過去において行われて効果が上つたのでございまするが、こういうことは考えなければならない。その他情勢に応じて諸般の措置が講ぜられなければならないと思いますので、この点は抽象的でありまするけれども、臨機応変の措置を講ずべく立法の基礎をここに置いておるという次第でございます。
  66. 森八三一

    ○森八三一君 私の申上げておりまするのは、三條によつて、今日、本会議を通過いたしました修正の法案によりますれば、繭の生産費、それから糸の加工費、販売に要する経費基礎としてそのときの他の関連繊維の価格なり、或いは一般経済事情を参酌して標準糸価を決定する。その標準糸価を基礎にいたしまして最高最低の価格が案出決定される。それは審議会が恐らくその衝に当ると思うのでありまするが、こでその最低価格を下廻るというような現象の発生いたしました場合には、第二條によつて申込によつて買うということになつておりますので、製糸家については具体的にはつきり保護がここで明示されておる。ところが繭については、お話のようにいろいろのケースがあるので、ここで具体的には言えないのだ、異常に下つた場合に何らかの措置を講ずるというだけのことでございました。糸のほうは具体的に対策が示されておる。これは安心して生糸値というものが進められ、いいと思うのです、標準値というものが基礎になつて……。そうしてここで、又あとで質問いたしますが、明確になつておりませんけれども、或る一定割合下つた所が最低価格で、それを割るという場合には、申込に応じて政府は買つてくれるというのでございますから、私の想像いたしまするところでは、標準糸価というものはお話のございましたように加工費と販売費というものを加えてやられたトータルが基礎になつて策定をされるわけでありますが、そのうちには当然利潤というものが入つておると思いますが、最低価格は或いは利潤を投げ出した、裸の価格の所まで下つて来るという程度ではないか、その程度までは一応保障がされる。繭については具体的に何らの保障がないということはおかしいじやないか。むしろ繭を保障してやれば、それから審議会が考える正当な加工費というものが加えられて糸価というものが安定をして行くという結果が生れて来るので、方法の取り方が逆になつているのではないか。この方法では特に非常な暴落を来しまして、何らの保障がないということによつて養蚕農家は養蚕経営ができないか、或いは多大の出血を、負担をしなければならんという犠牲だけが残されておるということになるのではないか、そういう場合があれば十條によつて金融の措置を講じてやる、過去においては多少の効果を挙げた事例もあるとおつしやるのでありますが、非常に暴落をするというような、価格が安定をしておりませんときにはなかなか現在の金融機関の力では、政府政府資金を出しますれば別でありますが、ただ融資の斡旋という程度だけでは到底私は目標を達するわけには参りかねるのではないか、そこに申上げまするように第三條で策定されました生産費というものが一応基礎になつて、何らかの補償制度でもありますれば、金融機関も安心して金融の便を與えるでありましようけれども、然らざる限り私どもの過去の経験におきましても、なかなか金融ということは実際むずかしいように考えるのでありまするが、その金融措置については、政府資金をお出しになるというところまで腹をおきめになつておるのか、ただ一般市中銀行なり農林中央金庫なりに任してやつてくれという程度の斡旋でとどまるのか、若し斡旋にとどまるという程度であるならば、これは実際問題としてなかなか金が出て来ない。こういう結論になるのではないかと思います。くどいようでありまするが、申上げますと、三條の関係からいたしまして繭の価格を安定させるということから政府狙いというものも達せられるし、それによつて養蚕農家は本当に安心してやれるという結果が生れるので、この表現の方法が逆にならなければいかんのではないかということ、二條によつて製糸家のほうは保障されておりますけれども、養蚕家のほうは抽象的な保障で、具体的な保障のないところに心配がある。こういう点を申上げまして更にお伺いいたすのであります。
  67. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) これはしばしば繰返したように我々の考えといたしましては、糸価の安定によつて間接に繭価が安定する、而も政府原案よりも更に修正案によつて……。この前は御承知のように生産費、加工費、販買に関する費用、それから主要繊維の価格の趨勢、こういうものを並べてこれを参酌するということを、前二者を基準としそうして算定する、こういうことになりまするので、これが一つの繭価保障の制度であると我々は考えておるのであります。而も御承知のように繭価の価格は結局糸価に左右されて来ることは常に当然のことでありまするので、従いましてその繭価の変動の一番の大きな要素である糸価の安定によつて繭価が安定される、こういう解釈をとつておるのであります。それからもう一つは第十條における必要なる措置のうち融資斡旋等を考えておるようだが、非常な異常な暴落の場合においては、更にこれに対して単に斡旋だけじやなく、何らかの補給なり或いは又政府の資金の供給によつて安定を図るということも考えなければいかんということでありますが、異常の場合にはそういうことも考えなければならんと存じます。御承知のように今回もルース台風というようなものも出て参りましたので、普通の場合にはなかなか予算その他についてやつておりませんけれども、これについては政府資金を或いは農林中金その他の関係機関に預託しまして、これによつて資金の確保を図るというようなこともありまするので、そういう場合においては必要なる措置を講ずる必要があると考えております。
  68. 森八三一

    ○森八三一君 まあ多少議論になりますので、その点は私は輸出の非常に重要な農林生産物でもありますので更にお伺いをいたしまする。将来の見通し等からいたしましてますます生産を増強し、飛躍的にこれを発展せしめて行かなければならんという、明るい見通しのありまする際でありますので、飽くまでも繭というものが確保せられるという基礎を狙うべきである。而も計算上それを基礎にして正当な加工費というものが計算をせられて、標準値というものが策定されるということになつておりますから、それによつて糸価の安定ということも十分目的を達し得るはずでありますので、ただ具体的には局長もおつしやいましたように、操作上絹糸を扱つたほうがよろしいか、繭をやつたほうがやりやすいか、やりにくいかということの差はあろうかと思います。ただ操作上の難易があることによつて理論的に筋が崩れて来るということはおかしいじやないか。これはただ政府の便宜上のことでありまして、飽くまでも多数の養蚕農家というものの基礎が培養されて行くという方向を確保されなければいけないと思いまするが、くどくなりまするし、議論にもなりますので、その点は将来の問題として十分一つお考えを頂きたいと思うのであります。そこで、その次にお伺いいたしたいことは……。
  69. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちよつと関連して……。
  70. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 質問中ですから……。
  71. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちよつと、森さんいいところで打切られてしまつたところだが、大体この糸価安定の予算が三十億、それで考えられるのは、繭を買入れるのは、局長がさつき言われる通り大体それは五、六月で繭がきまつて、あとは大体八、九で、大体まあ時期がきまつております。ところが糸価は常に荒れておる、或いは暴騰し或いは暴落する。こういう場合三十億で、局長が農林委員会なんかで説明したところでは二万俵くらいの程度までの買入れを予想せられておる。そういうものを買つてしまつて、あと十三万俵残つておる。それが荒れて金は使つてしまう。ようよう繭の買入時期になつて、糸価を安定するためという問題が出て参りましたとき、実際予算もなければ何もなくて、申入れはしたがこれが買入れできない、こういうような問題が起きた場合にはどう御処置なさつて、いわゆる今森さんが言われておられる繭の値下りの心配をどうカバーせられるか。それを具体的に、大臣から一つ返事してもらいたい……。
  72. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 過去の例を申しますというと、前後数回に亘つてこの糸価の安定をやつておるのでございます。その数回の例を見まするというと、最高で二カ月分買つたのが一番最高でございます。最低では〇・三カ月分、年間生産量の〇・三カ月分買えばほぼ目的を達したわけであります。それでその当時におきまする生糸の需給の面を見ますというと、御承知のように繭並びに生糸の生産は最高潮に達したのでございます。一方又人絹という新しい繊維との競合によりまして、むしろ需要と供給との状態は、現在に比較いたしますというと反対のような状態になつておつたわけであります。供給力に比較して非常に需要力が少くなつたというような状態であつたにもかかわらず、なおその程度の買入れをやりますればとにかく糸価が安定したというようなことでございました。ところが最近横浜、神戸に向つて出ておりまする糸の数量は、昨年は月々平均いたしますというと約一万俵でございました。それから今年はどうかというと、一万一、二千俵程度になつております。こういうような数量であります以上、我々といたしましては三十億の金がありますれば、今お話になりましたような事態は一応防げるのではないか、普通の状態であるならば一応防げるのではないか、こう考えておるのでございます。
  73. 森八三一

    ○森八三一君 そこで継続して一つお伺いいたしたいのでございますが、この特別会計によりますると、一応最低で売り渡しの申込に応じて購入をする、それから最高で売り渡す、こうなつておりますので、まあ常識論といたしましては当然そこに何がしかの剰余ができるということが予想せられると思います。それが故にこの特別会計におきましても剰余金は一般会計へ繰入れるというようなことも述べられているのでありまするが、この一般会計に繰入れられます財源というものは、まあ見方によりましては製糸家の当然受くべかりし利益が積立てられているということも言えましよう。又見方によれば、養蚕家の負担、犠牲において蓄積するというようにも言えると思います。まあいずれにいたしましても、蚕糸関係のかたの負担において積立てられた剰余であるというように理解せられると思うのでありますが、この一般会計に組入れられましたものの使途につきましては、少くとも農林大臣としては、一般蚕糸業の進展のためにこれは特別の枠として使われるものであるというお考えをお持ちになつておると拝察はいたしておりますが、これが若し一般の国費になりまして、一般的な歳出に計上せられるということでありますと、この建前から申しまして、非常に遺憾なことのように思うのでありますが、大臣はこの一般会計に組入れられましたその結論の始末について、私の申上げるようにお考えになつているかどうか、若しそうであるとすれば、少くともそのことにつきましては、前段申上げるように基礎は飽くまでも繭の増産が基底であるわけでありますので、それを中心にこれは使われて行くべき方向のものであるというように私は考えたいと思うのでありますが、それに対して一体どういうようにお考えになつておるか、若しはつきりしたお考えがありますれば、お伺いいたしたいと思います。
  74. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 御指摘の收益の上つた場合におけるその使途と申しますか、普通の特別会計はすべてその剰余金は一般会計に繰入れられて、一般的な歳出になるのでありますけれども、実際上は、森林特別会計における利益は、やはり我々が予算折衝の場合、それが一つの財源として森林行政に使う、又今回のこのような場合においては養蚕の振興、合理化、こういう方面に使うべく我々は主張するのでありますが、御趣旨の線に沿うてこれが費用に当てたいと存じます。但し御承知のようにすべての特別会計が政府の特別会計である限りにおいて、その剰余金が一般会計に繰入れられるという前提になつておりますので、運用の面は十分に御趣旨に副つて実現したいと思つております。
  75. 森八三一

    ○森八三一君 趣旨がそういうふうに理解されるといたしますれば、この特別会計におきまして端的にそういうふうな表現をするということのほうがむしろ近道でありまして、一般会計に組入れて一般歳出予算にこれを計上するというようなクツシヨンを入れた取扱いではなくて、この特別会計で直接にそういう操作ができるという途を開くことのほうが、むしろ簡便でもあり端的でもあると思いますので、大臣の御趣旨がそういう御趣旨であり、大蔵当局においても当然これは確認をして頂けると思いますので、今直ちにこの法律をどうということをここで取上げるわけではございませんが、もう二週間後には通常国会も開かれるわけでありますから、然るべく早い機会にそういうような是非とも新しい構想に立つた体制を企図されるよう希望をここに申上げて置きたいと思います。  それからこれは細かな技術的な問題になりますが、第三條によつて繭の生産費というものが基底になつて、だんだん積上げて糸価というものが決定されるということでありますが、これは審議会が十分審議をすることでありまして、ここでとかくの議論をすることは如何かとも存じますが、得てしてこういうようなことがきまります場合には、今までの実例等が一応重要な参考になりまして決定がなされると思うのであります。そこでお伺いいたしたいことは、大体標準糸価に対して持たれるであろう常識的な正常な繭価格というものは、勿論これは繭の品質等によりまして違うことでありますが、一概には言えませんが、標準のものをとつた場合に何パーセントぐらいが繭の価格に相成りますのか、将来のことは別といたしまして、若し現在の情勢がどうなつておるかということをおわかりでありますれば、一つお示しを願いたいと思います。
  76. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) その割合につきましては、今年度はまだ繭の生産費というものが計上されておりませんので、今すぐさまお答えするということは困難かと思います。
  77. 森八三一

    ○森八三一君 今年度は別にしまして、前年度でも結構でありますが、大体常識的な通念といたしまして、糸価格のうちに占める正常な繭価格というものはおよそ何パーセントぐらいのものであるか、私の承わつておりますところでは、戰前から戰時中にかけましては、大体勿論これはそのときの経済情勢によつて変動があることではございますが、おしなべて糸価格のうちに含まれている繭価格というものは八〇%ぐらいということを承わつておりますし、私の経験した実例でもそういうふうに理解をいたしておるのでありますが、最近の取引実情から考えますると、六〇%から六二・三%程度より計算をされないというように、繭値段というものが漸次低下して来ておるというように見受けるのでありまするが、私の見ておりまするところが間違つておりますれば、お教えを頂きたいと思いまするし、最近における実績がそういうことだからということで、第三條における価格の策定というものが行われるということになりますると、これは又しても生産農家の利益というものが蹂躪をせられて行くということになるわけでありまして、非常に心配をされる重要な点であるのでありまするが、この点につきまして事務的なことでございますが、局長から一つお答えを頂きたいと思います。
  78. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 今の御質問でございまするが、ここに資料を用意しておりませんので、直ぐ調べて御返事を申上げます。
  79. 森八三一

    ○森八三一君 更に価格の問題でお伺いいたしたいと思いますが、今年の四月でありましたか、五月でありましたか、主たる需要家のアメリカの斯界における権威者が来られまして、アメリカの当時における市場から考えますると、二十三、四万円程度であれば十分取引が可能であるということを述べられております。ところがその後英国でありましたか、万国の絹糸に関する国際会議が持たれましたが、その際には大体十八万円程度というようなことが一応の申合せになつた。ところが最近になりまして非常に安い価格でなければ取引は困難であるというようなニユースを送つて来ておるように聞いておるのでありまするが、そういうような事実がございますのかどうか、若しそういうことであるといたしますれば、国内における現在の生産状況からいたしまして、その言われておる価格というものが一応の標準値になつて、それから申上げまするように六〇%とか六二%とかいうような、現在行われておる実情というものが勘案せられて繭価格というものが決定されることになりますれば、これはもう養蚕をやるなという致命的な結果になるのではないかと思うのでありますが、そういうようなことがあるのかないのか、更にそういうような結果が生れて参りましたゆえんは、災害補償の関係等においていろいろ計算をされておる基礎金額が非常に低いところ考えられておるというようなことから出発をしておるということでもあるらしく聞きまするのと、なお更に今回の三十億円という特別会計の基礎をなしておりまする予算総額、それが御説明のございましたように三カ月程度の浜出廻り糸を押えることによつて体系価の安定は期せられるであろう、三カ月程度であり、又数量が御説明にありましたように二万俵程度のものであるといたしますと、算術計算から参りますというと、これは又十五万円前後になるという計算も持たれる。日本政府は大体十五万円見当であれば、というように考えておるのではないか、更に災害補償の関係におきましても、これは掛金の関係もございますので、そういうようなことになつておるわけではありまするが、そういうような資料が基礎になつて四月頃には二十三万円前後ということで話があり、国際会議におきましても十八万とか十九万というような価格であつたのが、極く最近になりますと非常に安い価格ということのニユースが飛んで来ておるということであると承知をいたしておるのでありまするが、若しそういうことでありまするならば、これは急速に是正をしなければならんことと思いますが、政府といたしましてはその事実があるのかないのか、事実があるといたしますれば、それに対してどういう対策を具体的にとり進められておりまするか、これは繭生産農家のために非常に大きな影響を持つて来る問題でもありまするので、お伺いをいたしたいと思います。
  80. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 今お話になりました十八万円ということは、これは実は今年の九月にロンドンにおきまして世界各国の生糸に関係しまする民間の人たちが集まられまして、その際におきまする日本に対しての勧告と、新聞ではこう書いておるのでございまするが、この会議に参列いたしました人たちのお話をお聞きいたしまするというと、実は会議の内容でございまするが、各委員の中にはいろいろ議論があつたのだそうでございます。一つはあの決議の内容を見まするというと、中心の価格が十八万円で、上下一割の幅で安定してもらいたいという決議の内容でございます。併しその際におきましては、値幅の問題につきましては大体意見が一致しておりましたそうでございまするが、価格の問題につきましては、むしろこれはそのときどきの経済情勢によつて違うのが普通ではないか、むしろこれは供給地側の意見によつてきまるべき問題であるというような意見もあつたそうでございます。従いまして新聞でも御承知のように、イタリアはこれには参加はしないということになつております。而もあのことは新聞紙上では勧告となつておりまするが、むしろ希望意見だというくらいに考えていい、こう考えておるのであります。従いまして我々といたしましては、今後の価格の問題につきましては、大臣もお話になりましたように、審議会にかけまして十分愼重審議してきめようというつもりでおりまするので、勿論希望意見としては考えられるという程度でございまして、あれに決定的に左右されるというような点にはなつておらんと思います。
  81. 森八三一

    ○森八三一君 今私の申上げましたのは有難いことでございますが、その審議会の決定というものが一方的には通用せん情勢におかれるのではないかと思います。これは相手方のあることでありますので、これを申上げておるのであります。そこで最近におけるアメリカの需要家と申しますか、取引商社の意同として、非常に安い価格というものが示されておるやに聞いております。それがこの特別会計に出ておる三十億というもので二万俵ということかの等が基礎になつて日本ではこのくらいならば政府も了解しておるのだ、いいはずだ、こういつたようなことから生れて来ておるというふうに聞いておりますが、そういうようなことが事実でないのかどうか、若し事実だとすればこれは由々しき問題でありまして、その是正を求めなければならんはずであり、若しそういうことで決定をされるといたしますれば、現在の一俵当りの加工費或いは販売費等を引きまして考えた場合に、養蚕農家は到底やり切れない繭の価格を押付けられてしまうという結果になるのじやないかという心配が持たれますので、そのことをお伺いをいたしておるのであります。
  82. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 我々が現在までに聞いておりますることは、ロンドン会議の今ほど申しました決議だけしか聞いておりませんので、その後におきまする向うの動きというようなこと、今森委員からお話になりましたようなことは全く我々としては今が初耳でございます。全然聞いておりません。
  83. 森八三一

    ○森八三一君 これは一つ大臣にお伺いしたいと思いますが、今後こういう措置が講ぜられまして、一応第三條によつて正当であるべき養蚕農家の生産費というものが策定をせられまして、何らかの形においてこれが公表をせられるということになろうと思いまするから、一応それが基準になつて取引は円滑に進んで行くということになるかと思います。そうなりますれば政府の企図されておりまするように、糸価ということも安定することになるわけでありまするが、金融機関等の関係からいたしまして、必ずしもそうは参らないという心配がある上に加えまして、製糸家が自由商品であるべき繭の取引につきましていろいろな協定をいたしまして、区域外と申しまするか、他府県と申しまするか、という所へ買付に出るがごときことはこれを禁止をするというような協定があるやに聞くのでありまするが、そういう協定は一体事業者団体法との関係等におきましてどういうことになつておるのか。事実そういうことはないと考えていらつしやいますのか、私どもの聞いておるところではそういう協定が行われておるということでありまするが、協定は適法な協定であるのかないのか。若しないということでありますれば結構でありまするが、私どもが耳に挾んでおるような事実が恐らく政府の耳にも入つておると私は想像しておりますが、若しそうであつたとするならば、こういうような面に対してどういうような取締をされますか。これは重要な問題でありますので一つ大臣から御答弁を拝承したいと思います。
  84. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 只今の問題は若しそういう事実があるとするならば、これは事業者団体法違反であります。公取において当然これは取締るべきものと思います。なお又我々の聞いておるところではさようなことはないというふうに承知をしておるのであります。なぜかならば、御承知のように大手筋の製糸業者のほかに中小の製糸業者が非常に多いのであります。従いましてそういうふうな協定が事実上行われることが困難であると、かように考えておりまするが、若しそういう事実があるとするならば、十分調査の上然るべく措置いたしたいと考えておる次第であります。
  85. 清澤俊英

    清澤俊英君 実際今やつておりますのは製糸家間の協定が行われておるのではなくして、養蚕連の幹部と或る特殊の製糸家とが協定して来て、その値段で養蚕農民に押付けて、そうしてこれで大体この地区はきまつたのだから何何製糸会社に対してこの地区の物は売れと、こういう強制が行われて、まあその場合有力な農民組合等がありますと非常な抗議を言うて来て、その場合二、三カ村でその協定をこわしておる地帯もありますが、大体においてそういうことが、まあよその県は知りませんが、新潟県などでは全県行われておる。
  86. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) これは今の事業者団体法との関係じやなくして、養蚕組合が、製糸業者と売買契約するということでありまするならば、これは何ら事業者団体法とは関係ないと思います。どの農業協同組合におきましても、組合が民主的に行き、而もそれが組合の意思によつて或る会社に売るということについては、これは差支えないことだと承知しております。
  87. 松永義雄

    松永義雄君 ちよつとそれに関連いたしまして一点簡單に御質問いたします。本年の絹織物の値段というものは高級品になると昨年の倍です。それで以て羽が生えたように飛んで売れておるそうです。そこで果してそれは織物屋が儲けておるのか、どこが儲けておるのかわかりませんが、それほど高い値段になつておる。それに対して農林省では繭に対して千七百円というような推定価格を出しておられる。ところが最近或る県でありますが、僅かに百円ではありますけれども、千六百円ちよつとのところで取引されておる。  そのようにすでに今もお話があつたように実際の製糸家と農民の取引というものはくだくだ申上げるまでもなく、生産農民の苦しい金詰りの点からしまして、止むを得ず高く売りたくても安く売らなければならんような状態になつておる。そういうことに対して農林省が親切にこれを警告するなり指導されて、そして今千七百円に大体なるのだから、だからそれは千六百円じや損だというような御警告か御注意があつて然るべきだと思うのでありますが、ところがそういつたような点が非常に欠けておる。そのためにみすみす農民が損をしておるというような実情があるのでありますか、政府の御意見を伺つておきたいと思います。
  88. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 今の御質問はむしろ養蚕家に対して適正繭価を支持してそしてやつたらどうかというようなお話でございまするが、御承知のように現在の経済状態では非常に変動が激しいものでございまするから、その生糸の価格というようなものも随分変動があるという面から、我々としては必ずしもそれが養蚕家のために有利であるかどうかという面が非常に困難なのでございます。従いまして我々といたしまして今養蚕家が繭を有利に売りまするための措置といたしましてどういうことをやつておるかと、こう申しますと、先ず金融面につきまして成るべく製糸家に、金詰りの面から見まして製糸家から無理に繭を買取るというような、買取られるというようなことのないように、先ず生産資金の面から見ますれば農業手形に準じまする養蚕手形というものを出しまして、肥料なり或いは蚕糸なりについての金融措置を現在とつておるのでございます。而もこれは始めましてから、二カ年くらいでございまするが、毎年この利用率が高くなつてつております。これが一つ、更に生産資金が窮屈であるという面から見まして、製糸家から金を借りてそれがために無理やり繭を売らなければならんというような面を或る程度防止する面も多分にあるわけであります。又一方今産繭の商品としての性質から見まするというと、先ほども申しましたように早く売らなければならんという面からいたしまして、我々からいたしまして、是非養蚕家としましては出来秋のうちに売らなければならんというような事態に追込まぬように、養蚕団体で乾繭装置を作ります場合にこれに対しまして農林漁業資金融通法に基きまして長期の資金も現在貸出しておるような状態でございます。一方又その設備に伴いまして若し乾繭をしたいというような場合におきましては、同じく農林系統の金融機関を通じまして短期の資金も流すような制度は作つておるのでございます。併し現在のような状態でございますものですからなかなか養蚕家のほうといたしましても、設備なり資金なりの面でそれだけの便宜を図つておるのでございまするが、いわゆる乾繭取引というものは現在から申しますというと非常に少数なものでございます。それから又これは金融面でございまするが、更に売買方法といたしましては先ほども大臣がお話になりましたように、農業協同組合が独占禁止法の除外例を受けまして団体的に販売のできる権能を利用いたしまして、製糸家各個と団体協約、価格の決定の際に団体協約をやつて行うというようなことを考えておる次第でございます。
  89. 松永義雄

    松永義雄君 只今極めて詳細なる対策を講じられたお話があつたようでありますが、併し事実は製糸家のほうが相場の見通しが早い。ぼやぼやしているのはいつだつて農民であります。そのためにいつも農民はばかな目を見るというのが実情なんです。そこで先ほど森委員が言われたように一体農林省は養蚕農家のほうに親切なのか、それとも製糸家のほうへ親切なのかということを聞きたくなる。だから繭のほうから先に値段をきめてもらいたい。私から言えば一つのひがみかも知れない、ひがみかも知れないが、実情は養蚕農家のほうが軽視されて製糸家のほうが尊重されるという結果になる。これが過去の歴史なんです。今ここに法律が出て條文はこうなつていると文字を並べられたところで、にわかに我々は信用することができない。実際の問題について農林省が農民に対して真にこれを保護してやろうという気持になるかならないかということが中心の問題です。念のためにそういうことを申上げまして私の質問を終ります。
  90. 森八三一

    ○森八三一君 その次にお伺いいたしたいことは、非常に農政には明るい大臣でありますので間違いはないことと期待はいたすのでありますが、審議会の運営でございますが、私はこの審議会の構成如何によりましては、第三條で順々に積み重ねて行つて糸の価格というものがきまるんだという建前は非常にきれいにできておりましても、結局営利的な観点から糸というものの最終価格をきめておいて、そうして逆に繭の値段が尤もらしく理論付けられてしまうということになる危険が多分にあるのではないか、これは勿論審議会は諮問機関でございまして決定機関ではございませんので、農政に明るい大臣に期待するのはそこにあるわけでありまするが、と言いましてもやはり審議会の意見というものは尊重さるべきが当然のことでありますので、審議会の構成は、私のしばしば申上げまするように、基本をなす繭の生産確保という一点が十分に織込まれて行く姿というものがにじみ出て来る構成でなければならんと思いますので、これにつきまして委員数が二十名とかいうことになつておりまするが、若し大体の御構想でもございますればお伺いをいたしたいと思います。各界別の御構想でもありますればお伺いをいたしたいと思います。そういうような心配を私がいたしますることは、これは根本農林大臣ではございませんが、昭和二十六年産米価の問題につきましても昨日大蔵大臣お伺いいたしたんでございますが、当初は二十七円十六銭の基本米価に一九五のパリテイ想定指数を掛けてそれに一割五分の特別加算額を加えて、これは大臣が政務調査会長の頃だと思いますが、そうして更に包装費を加えて六千百六円というものを一応発表され、その内容というものはつぶさに我々に説明をされておつた。ところがその後いろいろな情勢によりまして、知らないでいるうちに農業再生産を確保するために必要な当然の一割五分というものが五分になつちまつて、我々は生産者に対して今まで説明をしておりました説明をどういうように変えて説明をしていいのか、政府当局からも一遍も変つた説明を聞いておりませんので答えようもないといつたような状況であり、先日も食糧長官にお伺いしますと確たるお話は承われなかつた。十五%は生産確保上必要であるということで加えたと、パリテイ指数が変つたのはこれは当り前のことで、一割五分に変更を加えるべき性格はちつとも合点ができんというようなこともありますので、まして只今松永委員からもおつしやつたように過去の我々の体験等を基礎考えまする場合には、結局製糸家の立場というものが基礎になつて、逆に糸の値段というものが合理化されて説明を與えられるに過ぎないという結果になる慮れが多分にある。そこで審議会の働きというものが私は非常な重要な使命を持つて来ると思いますので、審議会の運営、構成等につきましてこういう心配はないように持つて行くんだというお考えであろうと思いますが、構想がありますればお伺いをいたしたいと思います。
  91. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 御指摘のようにこの審議会の委員の構成は最も大事なことでございまするので、公正適正なる結論ができるような構成メンバーにいたしたいと思つております。但し現在のところ法律もまだ通つたばかりでございますので、具体的な人選の方途について触れておりません。御趣旨に副いまして公正なる運営ができるような人選をいたしたいと考えておる次第でございます。
  92. 森八三一

    ○森八三一君 お話のように審議会というものは公正に作つて行かなければならんということは当然のことでありますので十分御考慮を願えたらと思うのでありまするが、そこで審議会が一応の第三條に基きまして生産者の生産価格というものを策定いたしました場合に、先刻私の質問に、現在は製糸家の諸君と生産者の団体とがそこに売買契約を結んでおるから別に団体法等に抵触する協定ではないというように形式的にお話があつたのでありますけれども、私は実際の問題といたしましては、真に生産家の自主的な意思というものが団体契約によつて行われておるということではなくて、実際は官庁の人々や生産農家以外の人々の非常に圧力的な力が強く作用いたしまして、一種の協定に相成つておると私は実情を申上げておるのでありまするが、そこで審議会等が決定いたしましたもの等が基礎になりまして、そういうような強制的な行為が将来行われて行くという危険も多分に考えられる。それが妥当なものであれば、これは問題はありませんが、今申上げまするようなことから逆算的に押付けられた値段というものが策定された場合には非常に危険があると思うのですが、当然これは取締りをおやりになると思いますが、その点はつきりお伺いしておきたいと思ます。
  93. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 第三條によつて算定せられたる糸価というものは、勿論強制力を持つものではありません。これが一つの目安でありまするので、実際の売買は、生産者の団体或いは生産者個人なりと製糸業者との取引になるだろうと存じます。その際生産者としてはできるだけ有利な繭価を確保するために或いは連合会とか更にはもつと大きな單位の下に契約するというようなことになるだろうと存じますが、いずれにいたしましても政府が一応の目安として算定されたもので強制の意思は持つていない次第でございます。
  94. 森八三一

    ○森八三一君 まだいろいろお伺いいたしたいこともありますが、余り私一人で質問をしていましても御迷惑でありますので、この辺で質問を一応終りたいと存じまするのでありまするが、重ねて大臣に要望いたしたいことは、飽くまでも私はしばしば繰返しくどく申上げましたように、置かれておる日本の蚕糸業界の現状と将来の明るい見通しに立つて考えまする場合には、飽くまでも繭生産者というものが基礎をなすという一点をもう一遍一つお考え下さいまして、非常に困難な問題ということは私もよくわかります。糸をやつたほうがいいか繭をやつたほうがいいかと言えば、糸のほうがやりやすいということはよくわかります。わかりますが、といつて何十万という多数の零細農家が今日でも養蚕経営は破局の一歩前に来ておるという状況でありまして、これ以上に経営の不振な状態が持続されるといたしますならば、これは輸出貿易振興に非常に憂慮すべき事態を導く結果になる虞れを多分に感ずるのでありまして、よく御思考を頂きたいし、又法律的にそういうことが取上げられるといたしまするならば、第十條の具体的な発動について、只今は抽象的な御議論だけでございましてお伺いをすることができませんが、ここに本当に肉付けをいたしまして、私どもの心配が杞憂であるという結果の得られますようなお取計らいを頂きたいし、又お話のございましたように利益のありまするものについてはもう一度御折衝願いまして、養蚕農家に還元されることの実を挙げるように最善の御配慮を賜わりたいと存ずるのであります。以上を以ちまして一応私の質問を終了いたします。
  95. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体森さんがいいことを御質問して頂きまして大分了解しましたが、ちよつと細かいことですが局長でよろしうございますが、お伺いしたいと思います。繭糸価格安定法案の二條に、「政府は、前條の目的を達成するため、申込に応じて」というのはこれは誰が申込むことになりますか、簡單に……。
  96. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 誰でも申込めば最高価格で生糸を買うことができるわけであります。
  97. 清澤俊英

    清澤俊英君 誰でもと言いますが、製糸家、養蚕家どちらでもいいのですか。
  98. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 申込に応じて、最高価格でその保有する生糸を売り渡し、又は予算の範囲内において最低価格で生糸を買い入れる。」こういう意味でございます。つまり政府に最低価格で売渡そうという場合には、これは誰も売渡せる。それから政府から最高価格になつて買うという場合には、誰でも政府に申込んで買うことができる、こういう意味でございます。
  99. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうすると生糸でございますから、製糸家ですな。
  100. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) そうでございます。
  101. 清澤俊英

    清澤俊英君 生糸を生産する者は買えない、こう解していいのですか。養蚕家が仮に繭が非常に下つた、その場合でも駄目なんだ、生糸と書いてあるから、私は意地の悪いような聞き方をするけれども、製糸家が申込んだ場合に買える、こういうことになるのでございますか、結論は。
  102. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 養蚕家が、今大臣がお話になりましたように、委託製糸でもして、そして委託加工をして、生糸にしてくれば養蚕家のものも買うという形になつております。
  103. 清澤俊英

    清澤俊英君 委託したものであれば買う、こういうことでございますか。
  104. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) さようでございます。
  105. 清澤俊英

    清澤俊英君 それからその次に第三條にあります、大体重要な点だと思いますが、安定しようとする価格を大体幾らぐらいに見ておられるか、それからこれがまあどうせ審議会等で定められるのでありましようが、政府としては最低の価格というものを如何ほどに見ておられるのか、最高の価格で売ろうと考えられる場合を如何ほどに見ておられるのか、これらの価格を大体政府としての御予定もあることでありましようから、この価格の標準を大体お聞かせ頂きたい。
  106. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 最高価格、最低価格は一体どのくらいに現在きめるかというようなお話ございますが、これは非常に今後の日本の蚕糸業の全体のためにとりましても重大な大きな問題でございまするが、先ほども大臣からお話になりましたように、繭糸価格定価審議会にかけて、そして十分皆さんの関係業者の意見を十分忖度して、そうして誤りのないようなことできめて参りたいという考えを持つておるのでございます。
  107. 清澤俊英

    清澤俊英君 どうもおかしいじやありませんか、この法案を出すときは、とにかくこの法案で或る糸価を定めて、そうして輸出を盛んにして、現在十五万俵とおつしやいましたやつを将来においては三十万俵ぐらいにまで輸出を増大して行きたい、輸出というものを中心にして商売ができるという一つの目安をお持ちにならなければ、こういう法案は出ないわけだと思う。大体さつきも森さんがちよつと言われております通り、アメリカでは二十三、四万円と言つておるが、イギリスにおけるところの国際糸価協定においては十八万円ぐらいを希望せられておるというのです。そういう中に立つて政府はどれくらいならば大体将来において糸価を安定させて、ここで輸出を増進させて、そうしてそれを基本にして今現在十五万俵のやつを将来或いは二十万俵、三十万俵と殖やして行こう、こういう建前から考えられるのでなければ、この法案を出す私は何ら価値がないと思うのです。ただ行き当りばつたりで、きまつているからきめろというならば、糸価安定法でなくて製糸家救済法、結局こう受取れるような気もいたしますが、本当の安定法ならば、糸価を安定するお考えがなければ……。大体あなたがたはどのくらいに安定して、輸出を増進せしめられる価格とお考えになるか、これは審議会と別にお考えになつている点をお伺いしておきたい。
  108. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 価格の決定方法は第三條に明示してございまするが、これらの一番中心になりまする繭の生産費及び生糸の製麺並びに販売に要する費用というようなものの計数もまだはつきりしておりませんのでございます。又これを基準にして主要繊維の価格並びに物価、その他経済事情というようなこともまだはつきりして参りませんので、大体どのくらいかというようなことは、今の段階ではまだ言い得ないような状態でございます。
  109. 清澤俊英

    清澤俊英君 どうもそこがおかしいのですね。あなた方は蚕糸行政を取扱つておられて、日本の蚕糸業の少くとも隆盛を考えておられる立場にあるかたが、今現在ならば現在として、輸出を対象としてどれくらいの糸価が安定しておつたらよろしいか、糸価の安定ということが認めないならば、今現在どのくらいの糸価であれば目的の生産ができる、これによつて輸出の増大を図り得るというくらいのお考えがないとは考えられません。大臣はどう考えておられますか、それがなくて何が元になつてできるのか。
  110. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) これは清澤さんの御意見もさることながら、政府が現在の段階においてこれこれだということを言うことは、むしろこの立法において今後自由に審議会が客観的な資料に基いて検討するのを、あらかじめ政府が政治的にきめたということになりますと、却つてこれはまずいことだと存じます。なお又見通しにつきましても、御承知のように糸価というものは過去において非常に変動が激しいのです。而もそれは生産費とか何かの以外に、海外並びに国内における需給関係に影響することが非常に多いのでありますので、従いましてこういうようなことについては、やはり客観的の資料に基いて、そうして一応この法律に基くところの算定の基礎がはつきりしたときに申上げるのが妥当であると思いますので、現在同長から申上げるように、いろいろのこれは見通しがございますけれども、現在の段階においてこれを申上げることは適当でないと、かように考えますので、その点御了承をお願いしたいと思います。
  111. 清澤俊英

    清澤俊英君 それならば糸の安定価格をお聞きしようとは思いません。さつきから一番問題になつておりますのは、繭の価格の問題だろうと思いますが、大体今の場合で繭の価格が大体どれくらいであれば生産費を賄うかと考えておられるか、糸のことは聞きませんが、繭では……。
  112. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 昨年の繭の生産費は、これは農林統計調査部の発表でございますが、千百円くらいの計数が載つておるのでございます。
  113. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこで繭の生産費が大体千百円くらいと見ておられますが、そうしますと最近の全国平均の一反当りの桑園から取れます繭の生産費はどのくらいとお考えになつておりますか。
  114. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 農林統計調査の時分におきまする調査農家の生産数量は、たしか一反当り十三貫くらいになつておるかと思つております。併し全国平均で農林統計に示されておりますところでは十一貫くらいでございます。
  115. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうしますと、大体一反当りの収穫で行きますと、最近比較的繭の価格もよく売れたと、こう見ましても千五、六百円を最高として千百円くらいの間で落著いておる、こういうことになりますと、結局総収入というものが一反歩で一万五千円乃至一万一千円くらいの総收入しかない。そこで一貫目当り千百円の生産費を差引きますれば殆ど利益というものは持たない。だから最近におきまするところの養蚕業自体というものは、一番率の悪いもので、そうしてこれを行います人は、農家労働のうちの主力が行うのではなくて、爺さんか婆さんか、子供か、余剰労働者で、殆ど養蚕労働に当るのはしわくちやな労働者が当つておる。こういう実情を放置しておいて、それで私は果して政府が企図せられるような養蚕の増産などは到底私は考えられんと思うことが一つと、それからいま一つは、そういう情勢で生産をしておりますから、従つて価格等には、米の問題やその他の農業諸生産品のような激しい要求を養蚕農家は持たない。従つていろいろな工作が行われて、非常に不利な建前に追い込まれておる。こういうとき今問題になつておりますのは、そういう農家を放置しておいて、それで糸の値段だけをこれから、きめるのだということで考えられたら、これは問題だということは森さんなども指摘せられ、或いは松永さんが言われる通りだと思います。そういう建前で考えられるとき、大体繭の値段というものを一体繭価協定なりいわゆる掛目でおきめになる、その掛目できめられるときは、糸の相場を中心にしてそれから繭の値段を引出そうとする考え方が多いのでありまして、結局すればあの掛目協定というものを先ず改めるには、生産費を確保した一つの協定方式が法律ででもきちんと定められなければ、私はこの法律を以て、繭価協定によつて繭の養蚕農家を助けるという具体的な問題は到底できないと思う。この点どうお思いになりますか、これでは……。
  116. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 先ほどからお話し申上げておりまするように、繭価並びに糸価を維持して行きますためには、結局糸価の維持を図れば繭価の維持ができるということになる。今清澤さんのお話になりましたように、糸価が或る程度維持できますれば、従つて繭もその糸価に均衡のとれた値で売買されるのではないかと思われるのであります。従いまして我々としては糸価を或る程度維持して、そうして養蚕農家として、その糸価の中に含まれている繭の値で売買されるようになり、若し万一その均衡が破れて、繭が更に買叩かれるというような事態が若し万一あります場合におきましては、この第十條でこれを何とかして参りたい、こう考えておる次第であります。
  117. 清澤俊英

    清澤俊英君 私はまだ質問申上げたいことはたくさんありますが、野溝君の御質問にもありますのでこれで打切りますが、私はこの法案で養蚕農家の安定を図り得ることは絶対に考えておりません。このことは先ほども申上げましたように、繭の値段をきめることそれ自身が、すでに掛目協定なるものを中心にして、糸の相場から生産費を引いたものを繭の値段にするという、非常に逆算的なものが基本になつておる。それを放置しておいて、而も買上げ等は糸を持つた者の要求によつて買上げ等を行うということになつておりますのでありますから、これは安い繭を買えば儲る者が、そこでいろいろな操作が行われて、松永さんが言われる通り実際の問題としては、たしか過去の歴史においては養蚕農民がひどい目に遭つておる。これだけは言える。今現在でもいろいろ知識のある製糸家は法律をよく存じておりまするから、やり方においてはいろいろ養蚕家などとの闇取引があるだろうと思う。そうして地域的な協定を行わしめて、法律の一面をごまかして、現実においては或る協定価格で押付けられて、而もそれが銀行が金を貸してくれないというので、八掛とか七掛というような金を支払わせて、それで我慢しなければならん。そこでいよいよやつてみますと、七掛も八掛もない、十掛の協定以上の価格さへ払う力を持つていてもそういうことをやる。非常に今金利が高いのでありまするから、三割なり二割なりを養蚕農家に支払うことを半年くらいも延期することによつて、これは莫大な金利を稼いでいるのじやないかとも我我は考えられることが現に行われておる。こういう者に対して一体蚕糸局などではそういう者に対して警告ぐらい発せられたか、そういう事実があることを御存じなのかないのか、そんなことは一つよくお調べ願いまして、こういう横暴が蔭で行われないように常に一つ御指導と御鞭撻をお願いすることにして私の質問は打切ります。
  118. 野溝勝

    ○野溝勝君 二、三点お伺いいたします。先ほど来糸価安定特別会計法案に関係いたしまして、繭糸価格安定法案に対する種々な質問が同僚でありまする森さん、清澤さんから行われたのでありますが、私この際政府に変つた角度から二、三点お伺いします。  糸価安定ということはたびたび聞かされるのでございます。前にも糸価安定施設法があつたのでございますが、それと今回の糸価安定策とはどういう所が違うのでございますか。
  119. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 今回の前に出されましたのは糸価安定施設法というのが出ておるのでございます。この分とこれとの違います大きなことは、政府がやはり生糸の売買操作によつてやることは同じでございまするが、政府が生糸の売買をいたします前に糸価安定施設組合というものを製糸家に作らせまして、そうしてその糸価安定施設組合で買つたり売つたりしまするものを政府の特別会計が更に又買つたり売つたりする、これは海外に対する一つの考えから、政府が直接やるよりも或る程度民間側に一つの緩衝地帶を設けようということで糸価安定施設組合を作つておつたのでございます。それ以外は大きな違いはないのでございます。ただ第三條の面でございまするが、この面が今度の改正によりまして繭の生産費並びに生糸の製造及び販売に要する費用を基準としたという部分が違うくらいなものでございまして、大部分は前のものと大体同じでございます。そのほか前と違いまするのは第十條の規定を設けたという面が前より又変つております。
  120. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうすると大体において糸価を安定するという基本的考え方については一致している、こういうふうに御答弁をされているようでありますが、糸価を安定するというこの基本的考え方が一致しておるならば、大体前にやつて来た経緯並びに結果を明らかにして、今日までの結論をよく蚕糸業者に徹底せしめなければならんのでございますが、この経過事情につきまして関係業者が非常な不満を持つております。聞くところによると当時の利益に対しましても、この利益処分に対して明瞭になつていないのでございます。こう申しては失礼でございますが、一体この蚕糸関係業者が低い価格で繭糸価の不安を補うため得た利益を関係業者が処分するのでなくて、勝手に政府が差益金の処分をされたらしいのでございますが、これは一体大蔵省がさような指図をしたのですか、農林省がさような意図で処分したのですか、その差益金処分に対してどういう処理方針をとつたか、この際説明を願いたいと思います。
  121. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 実はこれは何回も事例があるのでございまして、一番初めに清算会社で以てやりました利益金は、これは政府が保障するという形でやつて参りましたのでありまして、その場合におきましての利益は、御承知のように現在横浜生糸検査所がございます。又帝国蚕糸倉庫株式会社がございます。これは利益金で以てあれを買いまして、そうして業者から政府に寄付するという形をとつているわけでございます。それからその次には第三次の清算かと思いますが、その利益金がありました際にやりましたことは、勿論これは紐という観念ではございませんが、中野の蚕糸試験所、あれなどはその面から出ているのじやないかと思われるのであります。それから現在例の、これは戦後におきまする蚕糸業会というものを作りまして、それによつて糸の売買操作をやるということになりましたものですから、この面におきまする利益金は、利益金のうちの、今年の三月から出まするいわゆる価格差益金というようなもの、これらのものは三月から計算いたしますと二十四億ぐらいになろうかと思うのでございます。それは紐付というわけでもございませんが、大蔵省側におきまして今度三十億のこの会計を作りまする際の大きな目安になつたように私たちは聞いているのであります。
  122. 野溝勝

    ○野溝勝君 私は今回の予算を見まして、租税收入の大宗をなしておるのは農村であるから、農林施策に近い額をその方面の施策に使うという予算が編成されると思つておりましたところ、農林関係については取ることは取りますけれども、その施策に関する予算の計上され方が少い。ところが本法は目新らしい施策であり、又予算でありまするので、私は成るほど政府もいよいよ農村側に少し目を開いたかと、こう思つたのです。今政府の答弁を聞いて見ますと、この差益金は農民が犠牲になつて積立ておいたものがその内容でございますから、全く私はこれを農民に返すべきであつて、欺瞞の予算であると断定せざるを得ないのでございます。併しさようなことはこれは大蔵当局に申上げるといたしまして、一体系価安定をしようという際に、今の蚕糸事情から見ますると、局長も御承知のように釜数が多くて、原料が少くて、この調節がとれないで安定計画というものが立つのでございますか。これを一つお伺いしたいのでございます。操糸能力は、原料以上相当あることは御承知だと思う。原料が少い。この間の調節ができん、これでは経済の無政府性ではないか、こういう点からも私はこの安定という言葉は誠に結構でございますが、先の糸価安定施設組合の問題にいたしましても、今回の安定という銘を打つて出されました糸価安定法並びにその裏付けである特別会計にいたしましても、原料と加工乃至は製造設備とを調節できないでおつて、結果生産の無計画性が崇つて価格の不安性が出て来ると思うのです。この点は私が申上げなくてもすでに青柳局長経験されておるわけです。これに対してあなたはこの安定関係法を立案するに当りまして調節ができると信じておられるのですか、又でき得る確信を持つておるのか、その点を一つ聞いておきたいと思うのです。
  123. 青柳確郎

    政府委員(青柳確郎君) 現在は御説の通り非常に需給の面、繭及び生糸ともアン・バランスでございまするが、併し或る程度無理のない価格の範囲内において安定をしようということは可能であると思うのでございます。それで実は最低価格の面につきましては約三十億という金を用意しておりまするので、最低価格は或る程度維持は可能だろうと思うのです。又最高価格の面につきましても、実は今度新たに参議院で御修正になりましたが、特に思惑によつて暴騰するというような場合におきましては、取引禁止のいわゆる禁止価格というようなものも設けて値を抑えたらどうかというような御説もありましたので、私は或る程度の価格の中における安定は可能ではないかと考えるのでございます。
  124. 野溝勝

    ○野溝勝君 この構想につきましては私は賛成でございます。ただその内容に非常に拙劣性があり、且つ又生産者に対するウエイトが少いという点を私は質疑を交わしておるのであります。その構想については勿論賛成でございます。併しここで考えてもらわなければならんのは、私は日本蚕糸政策に異論のあるのは算定の点です。一体逆算計算という算定の方式です。逆算式を採用しておる。これは封建的ですよ。これは養蚕家が望んでいる生産費を正しく出して、それから糸価をどうきめるかというのが一番いいのです。それが困難にいたしましても、ずつと昔から伝統的に来たような、紀元二千六百年前から来たような方式をこれを依然として採用することは、これは新らしい感覚を持つておる根本君でも、あなたがたもこれを考えなければならん。この点は自由党の政務調査会長を根本君はやつておられたのですから、今度は農林大臣になつてから時間も短いが、この誤つた算出方式々改革した方式を直ぐ打出さなければならない。そういう点について清澤、森さん、お話になつ通り先ず糸値をきめて、それから製糸家の加工費を引いて、それから一俵の十六貫で割つて掛目を出して、そこで以て又その年の糸値を掛けて生繭一貫目幾ら、こういうやり方は、これは実際と余りにも離れた非現実的でございまして、米もパリテイ計算、これは完全のものではないが、この逆算計算よりも少し増しです。ですから少くともそういうふうに農民生産者の納得する方向に計算の様式を今後研究して持込む意思があるかないかということを一つお聞きして置きたいと思う。これは大臣から一つ。
  125. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 従来の商取引の慣習上、掛目の計算を逆算しておつたことは事実だと思います。そこで今回はこの糸価の安定に当りまして、御修正になりましたように生産費並びに加工費、販売費というものが基準となりまして、それに主要繊維品の値の趨勢或いはその他の経済情勢を勘案して算定をする、こういうことになります。一歩進歩いたしておるのであります。その結果今度は逆にそれを表示する場合において、従来の慣習に従えば掛目となつて現われるというわけでありますが、それは従来の掛目の表現の方法とは表現は似ておるけれども、算定の基礎が違つて来ておる、かように考えておる次第であります。従いましてこの三條における標準値段を算定するに当りましては、従来と違つた生産費というものが強く取上げられるという点において、野溝さんが御指摘になつた点に近ずいておると考えておる次第でございます。
  126. 野溝勝

    ○野溝勝君 大臣にもう一遍お聞きするのですが、この第三條の内容を見ますると、標準生糸(政令で定める種類、繊度及び品位の生糸をいう。)そこで結局この繊度は誰が一体判定するのですか。それからなお品位の点などは誰が一体規定するのですか。そういうところをだんだん検討して行くと、ただ上滑りや形式であなたが言われましても、実質上製糸家がオペレーシヨンするわけでして、なかなか本質は、伝統的な方針から形式的には一歩脱却したように見えますが、一歩も脱却しておらん。そういう点は根本さんより私のほうが專門家でございますから、こういう点を抜け目なく十分御監督を願いたい。  それからいま一点これに関連を持つておりますからお聞きしますが、審議会制度を高く評価しておられるようでございますが、この審議会というものは、これはいつも政府でやる審議会の内容は、ただ気休めに作つておるだけでありまして、審議会において決定すると言つておりますが、米価の審議会でもつんぼ座敷に置いておいて、政府が予算を先にきめたのです。審議会の意見を徴したのですか。先にドツジさんか何か知らんけれども話合いをして、大蔵大臣と農林大臣との間に案を立て、農林大臣が第二次的にきめたかどうか知りませんが、とにかく審議会にはあとで予算がこれ切りないからこれを呑めという枠をはめたようなものだ、これが審議会の委員の諮問なんです。こういうふうでは幾ら私は審議会を作つてもこれは気休めだと思う。だからこの審議会は生糸の価格安定に関する重要事項を審議するというのですから、価格算定についてもこの意見を尊重して行くというのでございますか、先に政府が案をきめてそうして審議会に諮つてきめるというのですか、この点をはつきりしておきたいと思うのです。
  127. 根本龍太郎

    ○国務大臣(根本龍太郎君) 政府があらかじめ見当をつけておいて、それを向うに呑ませるというような考えは持つておりません。審議会においていろいろ客観的な資料に基いて答申された、その案を参酌いたして政府が決定する、こういうふうにいたして行きたいと思つております。
  128. 野溝勝

    ○野溝勝君 審議会の運営方法につきましては賛成であります。先ほど森委員からもこの点について強調されました通り委員会の人選に当りましては、生産者のウエイトを十分にお考え願いまして善処されんことを希望いたしておきます。
  129. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、質疑は盡きたものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べ願います。
  131. 森八三一

    ○森八三一君 私は只今付議されております糸価安定特別会計法案に対して賛成をいたすものでありますが、質疑応答でも十分に開陳いたしましたように、政府の企図されておりまする糸価の安定を確保いたしまして輸出貿易の振興を図り、それが及んで日本経済の自立に多大の貢献をもたらすという窮極の目的を達成いたしまするためには、何といたしましても基礎をなしまする繭の飛躍的な増産確保がなされなけばれならんと確信をいたします。それに関連いたしまして、糸値を基礎にして逆算的に繭価格が策定をされるというようなことでありましては、その狙いを達するわけには参りませんので、修正せられました繭糸価格安定法案によりますれば、下から積上げて行くようなことも考えられてはおるのでありますが、この運営につきましては飽くまでも繭糸価格安定法修正の趣旨を十分に取入れて、基本たるべき繭の生産の増強が確保せられまする一線を強く打出すようにして頂きたいと存じますると同時に、その目的を達成いたしまするためには、基礎法が繭糸価格の安定法でありまするので、それを受けて立ちまする特別会計法、それも又繭糸価格の安定特別会計であることが好ましいと思うのでありまして、十分検討せられまして、近き将来に繭につきましても糸と同じような具体的な経済的利益が確保せられまして、生産、流通の円滑が期せられるがごとき方向へ考慮を払われたいと希望をいたすのであります。  更にこの運営によりまして一般会計に組入れられることのありまする利益金につきましては、明確な御答弁もございましたのでこれ以上申上げる必要もないとは存ずるのでありまするが、蚕糸関係業者の負担において生み出されました、生ずるであろう利益につきましては、これは蚕糸業界の進展、特に繭の増産確保に使用せられる方向を打出して頂きたいことを強く要請いたしたいと存じます。それに関連いたしまして、修正法第十一條にございます異常な繭価格の低落を来した場合における具体的な措置につきましてはいろいろ考慮さるべき多方面の問題があるのでありまするが、十分御検討になりまして、これらの具体的な措置について速かに決定されると同時に、それを広く生産養蚕家にもお示しを願いますと同時に、その具体的な効果を挙げまするために必要とする予算的措置につきましては、明年度予算に十分それが具体化されまするような措置を期待をいたすのであります。更に審議会の運営につきましては、質疑で十分盡きたのでありまして、この法律趣旨を十分に達成し得まするがごとき姿において構成せられることは勿論、その運営につきましても遺憾なく民主的な実を挙げます運営を強く期待をいたしたいと存ずるのであります。  以上申上げました数点は、ただ單にお座なりの希望ということではなくて、これが形の上に具体的に速かに現われまするように、政府当局の善処を強く要望いたしまして、賛成をいたす次第であります。
  132. 清澤俊英

    清澤俊英君 日本社会党の第二控室を代表しまして、只今森さんが要望事項を詳しく申されましたから、改めてこの点は申上げませんが、私どもも森さんと同じくこの要望だけは深く政府当局において重要視して頂きたいと重ねて御希望申上げておきます。  それで附加えて申上げますると、第三條の取扱でありますが、糸価安定をお考えになるとき、輸出を対象として諸般の経済情勢というものが考えられた場合に、それと国内生産における養蚕農家の生産費の問題が大きく、仮にギヤツプを来たすようなことがありました場合には、これは非常な重要な問題だと考えられまするので、従つて輸出という一つの目標を持つた糸価安定を持つ限りにおいては、この危険が非常に重要視せられなければならないと思います。そういう場合には、逆算的に先ほどから申しまする通り今の繭価協定の形でありますれば、その犠牲は自然の間に養蚕農家に加えられると思います。その生産状況の思いやりがこの法案には非常に欠けた一つの欠陷となつておるのでありまするから、この点を非常に重要視せられてそうして何らかの、将来この法案を運用せられる際には間違いのないように特に御留意を願いたい、こういうことをなお附加えまして私は甚だ不満足でありますが、本案に賛成いたします。
  133. 松永義雄

    松永義雄君 私も森さんの御意見に賛成して、本案に賛成いたすものであります。  申上げるまでもなく農林省はお百姓のお役所でありますので、お百姓のことを親切に考えて頂きたいということを強く希望いたす次第であります。
  134. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決をいたします。  糸価安定特別会計法案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手をお願いします。    〔賛成者挙手〕
  136. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 全会一致でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお諸般の手続は、前例により委員長に御一任を願いたいと思います。  それから多数意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     清澤 俊英  菊田 七平     山本 米治  木村禧八郎     森八三一   岡崎 真一     黒田 英雄  小宮山常吉     田村 文吉  伊藤 保平     大矢半次郎  松永 義雄     菊川 孝夫
  137. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて。    午後四時五十二分速記中止    —————・—————    午後五時十四分速記開始
  138. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて下さい。  では次に法人税法の一部を改正する法律案について討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  139. 森八三一

    ○森八三一君 私は非常に遺憾ではありまするが、本法に賛成をいたとたいと思います。併しながら十数回に亘る委員会におきましてしばしば各委員からお話がありましたが、第二控室関係におきましては強く修正をいたしたいということで、その筋との折衝もあつたのでありまして、私も一律に法人税を上げるということにつきましては疑義を持つのでありまするが、段階を区分いたしまして、担税能力十分にあると首肯せられまするようなランクにあります者については更に相当額の増徴を図りましても適当なことではないかというふうに思われまするのと、更に質疑にございました大臣の答弁にも、中小企業家の組織いたしておりまするような弱小法人につきましては、現在の三五%でありましても非常にその負担が重いという現状等を考えまする場合に、他面軽減すべき必要に置かれておる法人もあると思いまするのであります。つきましては速かな機会におきましてこれらの是正をされまするように強く当局の善処を要望いたしまして、希望を添えて賛成をいたすものであります。
  140. 清澤俊英

    清澤俊英君 社会党の第二控室を代表しまして、甚だ不満足でありますが、折角の修正案もOKが取れませんので、賛成をしたいと思います。併し今の森さんの言われている、ただ一律に四二%の引上げ、こういうふうなことを申してみましても、大体主税局長等の説明によります通りに、大きな利益を上げておりますのは一部の特殊産業が、朝鮮動乱や或いは俗に言われる特需景気によりまして非常な利益を上げているのであります。これらの者は五〇%以上の私どもは増税が見込まれることが適当だろうと思います。だからできまするならば次の本会議等におきましては臨時所得税の方式を考えて、そうしてこれらの者からは特に高額な税額を取つても差支ないと思います。それはなぜかと申しますれば、或いは外為資金の問題、輸出銀行の問題、開発銀行と、いろいろ国家的施策を講じてこれらの措置を図つておられるのでありますから、従つてその利益は九〇%国家が吸い上げて行くことが正当じやないかと、こう思います。そういう建前から臨時所得税を以てこれらを措置せられ、そうして一方一律に高額に引上げますることは、森さんが言われる通り中小企業等にはまだ基礎薄弱であり、なお日本の産業が確立しておりません現段階においては、下請等の関係で非常に弱つている基礎の弱い者がありますから、これらの点は十分考慮せられるのが正当じやないか、こうも考えますが、又半面税金を免れるために、改正前の三二%という低額な税率を目標として作られた多くの会社もできておるのでありまするから、これらの点を考えまするときは、一応そういう基礎の弱い者を十分考える必要はありますが、併しそれらの者は所得の見積りにおいて十分御考慮して頂けば、これらの者は何とか実質上の税額において問題は生じないと思うので、結局税金免れのために、安い法人税であつたために法人に移した、こういうような者が相当ありますので、私は何ら一律に税率を引上げますることは不当でない、こう考えまするので、もつと法人税引上げてそして行かれる方法を考えて頂きたい。我々は破れましたが、OKを取るわけに行きませんでしたが、それらの者にもやはり五〇%、約半分くらいの税額をかけることを至当だと考えておるのでありまするから、そういう点を十分御考慮に入れて、将来本会議におきましては、二十七年度の本会議におきましては政府において考慮願いたい、こういう意見を附けまして、賛成いたしておきます。
  141. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの法律案に賛成いたします。賛成の理由は、原則として法人税引上げに私は賛成するものでありますが、それは前の税制改革のときにおいて、個人と法人との税の負担の不均衡、即ち個人よりも法人のほうが軽くなつてしまつて、個人業体が法人に非常に変つたという面があると思うのです。今度の個人の申告納税の税收が少くなつ理由の一つは、個人業種が法人組織に変つた。それは一つは個人の税負担法人税負担が不均衡になつているという点があると思うのです。従つて今度の法人税引上げにおいてこの権衡を回復するという意味も一つあると思うのです。そういう意味においては確かにこれは合理的な面を含んでおりまして理論的に見ても実際的に見ても、法人税をここで引上げるということについては私は正しいと思うのです。  それから第二には、法人は時局的な景気によつて非常に儲つているわけでして、恐らく政府、安本あたりが推定しているより更に私は大きく利益を上げていると思うのです。その一例としましては、卸売物価が上つたのに対して、能率賃金が非常に下つているわけです。まあ仮に数字について見ますと、例えば卸売物価は四月ぐらいまでの数字しかありませんが、昭和二十四年度においては二一二、二十五年が二三三、二十六年が三五六、こういうふうに物価は上つておるのに、能率賃金のほうは二十四年の二二七から二十五年は二四三、二十六年は二二〇、こういうふうに能率賃金が著しく下つておる。それは雇用を殖やさないで生産を殖やしたから、製品一單位当りの賃金というものは著しく下つておるのです。雇刑指数を見ましても、雇用指数は殆んど殖えていないのです。ところが生産指数はうんと上つておる。従つて製品単位当りの賃金、即ち能率賃金は著しく下つておるのであります。即ち大蔵大臣がよく言うところの利潤インフレというものをここで現出しておるのであります。非常にたくさん法人に……、特に大法人に利益が偏在しておる。こういう意味で私は法人税をむしろ上げるべきである。又上げ方が私は少いと思う。尤も上げ方については小法人と大法人の間に区別を設けるのが本当と思います。それと又超過利得税的なものも考慮するというのが本当と思うのでありますが、本案においてそれが考慮されておらないことは遺憾と思うのでありますが、原則として法人税を上げることは正しい。又ここで法人税を上げませんと、大蔵大臣から実情を伺いましたが、二十七年度におきましてこれは勤労所得税減税に影響して来るということが明らかになつたわけです。大体二百億、ネツト二百億増收を予定しておる、これができなくなると……、実質的には、今度の勤労所得税負担は実質的には私は増税になつておると思う。その上に来年度減税が、いわゆる税法上の減税ができなくなると、これは重大な問題であります。そういう点からも法人税引上げは賛成であります。併しながら特に大法人についてはいろいろな特別な減価償却を認めますし、更に又この合理化法案が出て参りまして、特にこの近代設備をするような方面については減免措置が非常に講じられるわけです。そういう法人、大法人は日米経済協力による特需或いは新特需というもので注文を受けて、相当儲かる面です。そういう方面を減価償却を非常に有利にすれば、今度の税率を引上げても、大法人においては余り負担増加にならないという面もあると思うのです。従つて小さい法人については、そういう減価償却とか或いは合理化法案による減免の恩典を浴さないほうは、これは実質的に相当な負担になると思います。併しながら個人と法人との税の不権衡を是正する、こういう意味においてはどうしてもこの法人税引上げなければならない。この点は原則として我々は反対する理由はありませんし、反対できないわけです。従つてそういう不権衡を、臨時立法を本法に直す場合には十分政府において考慮される必要があると思うのです。減価償却において非常に得して、法人税が上つても実質的には余り上らない、ところが減価償却の恩典に余り浴さない所には実質的に本当に今度は増税になつて来る、こういう点も本当に不均衡が出て来ると思う。そういうのは十分均衡という面から、税の合理化という点から十分政府は善処されることを要望しておきます。  私はこれまでどうしても勤労控除引上げる必要があるということを主張して来たのですが、それとの関連法人税をもう少し引上げて、その法人税増收によつて五%勤労控除引上げたいという主張を持つておつたのですけれども、それでその修正案をここで出したかつたのでありますが、遺憾ながら時間もございませんし、又所得税法についてはもうすでに今度の改正法案が通つてしまいましたので、こういう点については次の国会で又提案したいと思うのであります。大体まあ以上の点から今度の法人税改正については非常に不備、欠陷もありますが、原則として法人税引上げるべきである、この点から我々は非常に不満の点がありますけれども、賛成する次第であります。
  142. 松永義雄

    松永義雄君 私も遺憾ではありますけれども、本案に対して賛成するものであります。  ともかく法人税の税率を引上げてそしてこの議題になつておるのでありますが、ところが減価償却の問題につきまして、合理化の点から新らしい機械に対して償却をし、更に又別の法案において価格変動準備金制度を設けて、そうしてあちらこちらの点から法人負担軽減している。そうしてここに現われている法人の税率の引上げを緩和しているといつたような感じを受けるのでありまして、我々としては木村委員の言われているように少くとも五〇%くらいにしたらいいのではないかというふうに考えているのであります。これに対して臨時利得税或いは超過所得税というような話がありますが、或いは累進課税であるとか……逆に法人だからといつてすべて儲るのではない、利益の少い法人に対しては考慮しなければならんという御意見もありましたが、免税点といつたような考え方もここに入れる必要があるのではないかというふうに考えているのでありまして、来たるべき通常国会においては十分この点について考慮して行きたいと思うのであります。併しとにかく一応法人税引上げが不満足ながらここに提案されて、そうして基礎控除引上げられたという形になつておるのでありますが、只今勤労控除を殖やしたらいいじやないかというお話がありましたが、その精神についても私は同様賛成いたすものであります。ともかく一応ここで再分配が行われた、不満足ながら行われたものとして本案に対して賛成するものであります。社会党第三控え室を代表して賛成いたします。
  143. 菊田七平

    ○菊田七平君 私は国民民主党を代表しまして、不満足ではありますが賛成する一人でございます。  ただ先ほど森先生が言われましたように、この法人税において一率に上げましたことは、弱小会社の非常に負担力のない者まで上つておると思います。この点に関しては資本基礎が確立して、それが累進課税に持つて行つてその均衡がとれるようなときになつたら、直ちにそういうふうに直してもらうことを條件といたしたいと思うのであります。ただ所得税法の特例によりまして、棚卸しにおいて一割を減税し、又退職金手当において所得から引きますから、そういう意味において不満ではありまするが、賛成するものでございます。
  144. 田村文吉

    ○田村文吉君 自由党を合せまして殆んど全部のかたがたがこの法案に御賛成になつております中に、私一人、而も私としては前閣僚の一員でありました私が、政府の提案に対して反対の意思表示をいたしますことは非常に遺憾に存ずるところであります。なおこれは緑風会を代表する意味ではありませんで、委員の一人として私は所見を開陳いたしたいのであります。  元来この法人税と申しますと、これに対しては直接の被害と申しますか、税が上るために非常に困るという人は経営者でもないし又勤労者でもない、こういうふうに一応とられますので、法人であるから、法人税が殖えたから勝に役員の報酬が減るとか或いは又従業員の所得を減らすとかいうようなことはないのでありまするので、法人というものは実は叫ぶ声が非常に薄いのであります。薄いのでありまするから、ややもすると昨今のように、その法人が非常に景気がいいというような、二十万もある法人のうちの極めて小部分の者がちよつと景気がいいというようなことで、直ぐ税を殖やしたらどうか、こういうような御議論が出て来るのではないかと思うのでありますが、そういう意味からいたしまして、私は二十万の法人全部の声なき声に応えて皆様に御納得を頂きたい、こういう意味反対申上げる次第であります。  大体法人税は個人所得税と必ずしも対蹠的に対立的に比較して論ずべきものではないと存ずるのであります。又これを個人所得と比較してかつきりと比率を出すということのできる性質のものではないのでありまして、シヤウプ博士の勧告の中にも書いてございまするが、この比較はなかなか面倒な問題であるのであります。ただ小さな個人企業の人が法人に移つた場合の例をシヤウプ博士は挙げて論じておるのでありまするが、一般の法人におきましては、個人の所得が又二重にかかる場合もかなり多いのでありまするから、必ずしもさように対蹠的に個人が高いから法人はもつと上げてもいいという、こういう議論にはならないと私は思うのであります。私はシヤウプ博士の勧告というものに対しては多大の見解があり、又終戦後において是正すべき問題もあると思うのでありまするが、一応は一つの機構を作りまして、構想を考えてそしてでき上つて参りました税が、個人所得に対してはこれこれと、法人所得に対してはこれこれとして、三割五分とい、税が提示されましたのであつて、私はこれあつて初めて均衡を或る程度得た税率であつたと、こういうふうに考えておつたのであります。勿論私は今日の直接税というものが、皆さんも御承知でございましようが、実は今年度の歳入歳出昭和十年の数字に比べますると、昭和十年の二十二億円に対しまして七千九百三十七億になつておりまするから、歳入歳出一般会計では三百六十倍になつております。又專売益金は六百二十二倍、酒の税は五百五十六倍でありまするが、直接税でありまするところ所得税法人税と合せましたもので比較いたして見ますと一千六百九十一倍になつておるのであります。即ち千七百倍というような直接税になつておるのでありまするので、私は個人所得も正に高いと、これは何とかして下げるように私ども努力したいと考えておりまするが、又、努力して参つておりますが、同時に法人所得というものも決してこんな状態下において上げべきものではないと、決してこれは上げてはならないと、かように私どもは考えておるのであります。併しこれは講和條約も成立いたしました後で、根本的に税の構成を考えて、その上で又いわゆる講和関係の費用というようなものが莫大に殖えるというような場合に止むを得ずしてやるならば、もつと合理的な法人税というようなものを考えられても止むを得ないけれども、今日補正予算として僅か二億六千二百万円、これは来年度において二百億円を徴收する準備行為であるという御説明でありまするが、いずれにいたしましてもさような大きな構想が立たないうちに唐突に法人税を上げるということに対しては賛成いたしかねるのであります。  第二に私は政府は徹頭徹尾機会さえありまするというと民間の資金を捲き上げまして、そうしていわゆるインフレ防止という点から資金の統制をやつておられるのでありまするが、これは或いは社会主義政策の上から御賛成なさるかたがあるかも知れませんが、民間の人が非常な、何とかして努力してこの終戦後を切り拔けたい、又節約をして資金を余したい、こういうふうに考えております。資金を全部政府がこれを捲き上げてしまう、そうしてこれを政府が使われるということであります。これは無論正しく使われるということは、私どもはそう申上げたいのでありまするけれども、ややもすると昨今起つておりますようないろいろな政府の資金から廻つたものが不当に使われる場合が非常に多いのであります。でありまするから願わくは各人の努力に寄つた資金、資本金はできるだけ残して置いて、各人の創意工夫というものを十分に活かしてやることが今日の大事な税の仕方ではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。  それからややもすると考え違いをされますのは、大きな法人、非常に儲けのある法人が非常にうまくやつておるんじやないか、こういうふうのお考えでありまするが、これは私は個人の高額所得と低額所得と、こういうものに差別のあることは私は認めるし、当然あり得ることであると考えるのでありまするのが、個人の高額所得法人所得とを一緒にお考えになつているんじやないか、こういうふうに考えられるのでありまするが、仮に法人所得が多くて留保ができるとか或いは配当ができるとか、又これによつて勤労者給與も上げることができる、こういうことになりますることは、みんなが喜ぶことであつて、決して資本家だけが喜ぶことではなく、勤労者もこれがために均窮し得るのであります。然るに私は社会党の皆さんがたがこれに御賛成なさいますことが非常に矛盾したお考えでないか。この所得というものによつて勤労者給與を上げることができる、又資本というものが非常に貨幣価値の変動によりまして不当に虐待されておりますものを若干は修正することができるのだ、こういうふうに考える点が第三であります。  それから第四番目に、私は法人税をお上げになりますると、税というものは妙なものでありまして、決してその階級だけが負担するものではありません。必ずそれはどつかへ参ります。必ずどつかへ転嫁されるのであります。その結果はどうなるかと申しますると、これは我々の今日最も嫌つておりまするところ物価の値上げを誘致する原因になるのであります。この点が私は賛成できないのであります。  次に改正の税法によりますると、法人は形が大きかろうが小さかろうが、又利益が多かろうが少なかろうが、これを地方税と合せまして最低五割二分九厘が徴收されるのでありまして、今日一割五分以上の配当ができないような会社では株の値段は額面以上持つていないのでありまするから、今日非常に税金には困つておる。勘定あつて銭足らずという言葉がありまするが、皆どこの事業会社もこの税金を收めるときになると皆銀行へ金を貸してくれ貸してくれで殺到しておるのが事実であります。これは殆んどあらゆる会社かそういうような状況になつておるのであります。又事業によりましては、例えば石炭事業であるとかガスとかいうような事業では辛うじて七分とか八分とか配当しておる会社があるのでありまするが、こういうものが若し今度五割二分九厘の税率になりまするというと、或いは配当を一部減らさなければならない。額面の価格を維持するところの騒ぎじやない、非常に困難な会社が大多数であるのであります。僅かの数の、一考にも当らないような会社の例を以てすべてを律して、この際法人税を上げるということは、非常に国の将来の経済のために心配すべきことであると考えます。講和條約ができ上りまして、日本の経済自立ということが盛んに叫ばれておるのでありまするが、このようにすべての金を、民間に資金を持つことを許さないような形になつて参りまするというと、勢いこれは事業というものは日本の国内で自立するということはできない。結局外国の援助を仰がなければならんことになるのでありまするので、私はできるだけ日本の国力に相応して皆勤倹節約によりまして資力を余す。その資力は民間に蓄えさせて、そうして余り御厄介にならないで、自立して事業の経営ができて行くということこそ初めて日本の再建ができるのであるのでありまするのに、今のようにすべてが政府に吸收されてしまつて、いわゆる政府は金持になりまするが、民間と府県というものはだんだん貧乏する。資本というものは数字の上から言えば大きくなつておりまするけれども、実質的には非常な減小を来しておるのではないかということを私どもは考えておるのであります。よく又主税局長の御説明にもございまして、アメリカの法人税というものは相当に取られておる、日本法人税は今度上げても決して高くないということを言われまするが、これは個人所得の場合でも同じであります。食うや食わずにいる人が二割の税金を取られるのと、相当の、十分の余裕を持つておる人が二割の税金を払うのとは根本的に考え方が違うのであります。でありまするからアメリカの法人税が高いから日本法人税は決して四割二分に上つても高くないということは言えないと私は考えるのであります。  一番今日日本の産業経済の上からいつて適切必要になつておりまするのは電力の開発であります。この電力の開発もただ単に政府の資金でこれを賄われるということでなしに、やはり民間が協力し或いは民間で自家発電を作るというようなことをしてこそ初めて生産も増大し、日本の経済も自立して参るのでありまするが、ただ今まで伺つておりました御意見ですと、何もかも税は、法人税は取つてもいいじやないか、もつと上げてもいいじやないか、こういうような御意見でございまするというと、百年河清を待ちましてもこの日本の経済自立は絶対にできないということを私は申上げなければならんと考えております。  以上甚だ冗漫に亘ることを申上げて恐縮であつたのでありまするが、まだ講和会議も今後どういう費用が出て来るか、そういうことも今日わからない、又どうなるかわからない場合に、税の根本的の構想をここで変える、補正予算においてこれを変えるということは、時期の上から考えても私は早い、こういうふうに考えまする上からいたしまして本案反対をいたす次第であります。
  145. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言はないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。法人税法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のお方の御挙手をお願いいたします。    〔賛成者挙手〕
  147. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 多数でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお諸般の手続は前例に倣い委員長に御一任願いたいと存じます。  それから多数意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     岡崎 真一  黒田 英雄     小宮山常吉  伊藤 保平     愛知 揆一  大矢半次郎     森 八三一  清澤 俊英     岡田 宗司  菊田 七平     山本 米治  木村禧八郎     菊川 孝夫  松永 義雄
  148. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 本日は長時間に亘り有難うございました。  これを以て委員会を散会いたします。    午後五時五十一分散会