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1951-11-17 第12回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十七日(土曜日)    午前十一時開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            清澤 俊英君            伊藤 保平君    委員            愛知 揆一君            岡崎 真一君            黒田 英雄君            山本 米治君            菊川 孝夫君            野溝  勝君            松永 義雄君            小宮山常吉君            小林 政夫君            田村 文吉君            菊田 七平君            森 八三一君            木村禧八郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    大蔵政務次官  西川甚五郎君    大蔵省管財局長 内田 常雄君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○連合国財産補償法案内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) これより第十五回の大蔵委員会を開催いたします。  本日は先ず連合国財産補償法案を議題として、大蔵大臣に対する質疑を行います。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨日官房長官がお見えになりまして、この法律案は條約発効までに成立すればいいという議運での発言があつてあとでそうじやないと、やはり平和條約と一緒にですね、同時にこれが成立することが望ましいというふうに、かように変つて、この大蔵委員会では最初政府委員説明では、やはりこれは單なる手続法だから、講和発効までにまあ成立すればいいというようなこともあつたのです。そこで我々としては、我々ゆつくりそう急がないのじやないかというつもりで、一応審議しておつたところが、昨日官房長官が、前に講和発効までに成立すればいいと言つたことは間違いであつた、やはり平和條約と一緒にこれは成立をしなければならないという釈明があつたわけです。その釈明をいろいろ聞いて見ますと、この法律は必ずしも一緒でなくてもいいというように我々受取れたのです。ただこの審議上、又債権者に対して安心を与えるという意味で、同時にこれが成立することが望ましいというような釈明であつたわけです。実際にこの法律的に行きまして、これが同時に成立しなければならないものであるかどうか、ただ信義上の問題かどうか。これが今度の国会で仮に成立しなくとも、次の国会で成立すれば差支えないのかどうか、その点がまあはつきりしなかつたわけです。大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 官房長官の言明や、それを取消しされたとか、或いは大蔵事務当局がこれは別個のもので、必ずしも同時でなくともいいと言つたかも知れませんが、私の意見は同時にやつて頂きたい、これはなぜそう申すかと申しますると、大体この問題は平和條約の中に入るべきものなんです。イタリアなんかそうなつておるのでありますが、然るところこういう問題を、この具体的な問題でございまするから、一々この交渉をしておりますと、平和條自体が延びる、平和條約は平和條約で各国と話合う、そしてこの問題は主として英米話合つて、そうして一緒に進んで行こうと、こういう過程があるのであります。そこで実はこの内明け話を申しますると、平和條約の調印の前に、こういう法律を作つたらどうかという話もあつたのですが、それはひどいことだと、そういうわけにはいかん、平和條約の全文ができていないのにこの問題だけを成立させることは我々はできないことだと、こういうので併行して実はそこは進んだのでございます。従いまして平和條約の審議一緒一つして頂きたいという、私は強い希望を持つておるのであります。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 成るほど内田管財局長の御説明もやはりそうだつたのです。実はこれは條約に本当は織り込むべきであつたが、講和の促進をスムースにするために、これを別の形式にしたという意味お話があつたわけです。ところでこの條約のほうを見ますと、日本国内閣が一九五一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件補償されると、なつているわけですが、そこでですね、一九五一年七月十三日に内閣で決定したのですから、それはさつき大蔵大臣本当調印前に、この法律を作るのが至当ではないかという議論もあつたと言われましたが、どうもそういう議論のほうが私は筋が通るんじやないかと思うのは、若しこれが、内閣ではきめましたけれども、この法律が成立しないことになりましたら、そのまま調印に非常に支障を生じるのであつて、本来ならばもう閣議決定できめてそれを條件にして調印されている。これが承認されるか、されないかわからないのですが、これは内閣でもきめたならば、国会に一応諮るのが本当ではないかと思うのですが、そう諮らないできめちやつて、それを前提にして調印される、あとになつてからこれが出て来た、こういう形になつておるのですが、この関係はどうなんでしようか。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは先ほど申上げましたように、これのもとになりまする平和條約というものが、調印も何もしておらずに、十分に成案として発表されていないのでございまするから、その平和條約に基く、或いは一体をなすものでございまするから、私は国会内でそういうものを審議するわけにはいかん、時間的にはいかん、そういう考えを持つてつたのであります。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次にお伺いしたいのですが、これまでの内田管財局長の御説明では、手続法であるというのですけれども、講和條約の中にですね、これを本来なら織り込むべきであると、そういう御意見であるし、而も先ほど申上げましたように、講和條約の中には、この日本内閣が一九五一年七月十三日に決定した條件よりも不利でない條件補償しなければならないことになつておる。そうしますと、これは單なる手続法ではなくて、実質的なものをこれを含んでおるわけじやないですか。その補償條件というものが含まれておるわけですか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 手続法実体法かという御質問でございまするが、これは考えようで、そう嚴格なものじやないと思います。例えば條約で「この財産が千九百四十一年十二月七日に日本国に所在し、且つ、返還することができず、又は戰争の結果として損傷若しくは損害を受けている場合には、日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件補償される。」、この補償されるということが実際的にきまつていて、その補償される内容をきめたのだと言えば、いわゆる手続的なものとも言えましよう。併しその内容が実体的なものをきめているから、原則は條約に載つているけれども、実体的なものをきめているから実体法だということも言えましようが、原則はきまつているのですから、その原則に基いてどういうふうにきめているかという手続的な問題、この解釈が二様になつて来ると思うのですが、この形式実質論で私は議論対象になるのはどうかと思いまするが、見方の問題ですね。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私も嚴密な法律論的な立場で言つているのじやないわけです。と申しますのは、まあ形式上から、実質上というよりもこれはまあ予算との関係があるもので御質問しているわけですが、ここで條件がまあきまるわけですね。條件というのは、例えば百億というような数字も出て来ます。それからこういう條件損害を評価するということも出て来ます。そうすると、これは実体法というような意味言つているのでもない。実質的な価額もこれに含まれているのだ。そんならばこれは先ほども言われましたように、本来ならばこれは條約の中に入るべきものであつたので、それで大蔵委員会がこれを取扱うのは実は変則と思つたのです。これは條約委員会へ併記するのが本当じやなかつたかと思うのです。それが大蔵委員会にかかつてしまつたからまあし方がないのですけれども、そういう意味でそういう形式的なことを言つているのじやなくて、この法律案の中には補償しなければならない條件、それからまあおよその額、こういうものが含まれているとなると單なる手続法でもないので、例えばこの二十五條に「この法律の実施に関し必要な事項は、政令で定める。」となつておりますね、それが通念で言うところの手続であつて、これは中身を規定したものだ、こういうふうに解すべきだ。でありますから非常にこれは重要な法律案だと我々は見ている。そういう意味質問しているのです。そうすると、この法案ですが、まあ承認するとなると、そこのところの補償に対して大体どのくらい我々はこの補償に対して拂わなければならないかということが、大体ここできまつて来る法律案になるべきじやないか、こうまあ解釈している。そういうふうに解釈していいわけですか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体私もそう考えております。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これは大蔵大臣が一番よくまあ御承知のわけなんですが、しばしば言つておられるのですが、この講和関係費という問題ですね、これはまあ賠償規定にもありますけれども、日本経済の自立可能の程度において賠償考える、それは單に賠償だけでは私はないと思うのです。賠償で仮に自立可能な程度というと、外でたくさんの講和関係負担をさせられたら自立不可能でございますが、講和関係費として、平和條約を結んだ後の日本のためにどのくらいの又新たなる負担が生ずるかということは、一本として考えるべきことだと思うのです。その場合にこれだけ切り離して、先へこれだけの大体額ということがきめられますと後の関係に非常に支障を生じて来るのじやないですか、全体としまして、この点どうなんですか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点は、これを先にきめて賠償を後にしたのはどうか、こういう御質問だと存じますが、そういう……。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それで特にあとでいろいろな悪い影響がないかということです。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御議論もあると思います。併しこれは日本国がこういう連合国並びにその国民財産を特別に扱いまして、而もこの程度負担ならば、関係はいたしますけれども、先ずきめて然るべきじやないかという考えでございます。これを下積みにしまして、そうしてこの賠償その他を上積みにして行こう、こういうことで賠償がきまらないとこの分もきまらぬということになりまして、いたちごつこになつて困りますので、特殊のこれは賠償関係でございますので、先にこれをきめてしまつて、そうして一般の賠償上積みして、その上積み賠償をどういうふうにして行こうかということで行つたほうがやりよいと考えたから、この分だけを先ずきめたわけでございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 成るほど、大蔵大臣言われるように、これは賠償との違いは、国家間の問題とそれから外国の個人と日本政府との問題の違いなんですけれども、日本自体にとつては、講和関係負担としてはやはり今後の賠償と見るべきである、その場合に何故、我々一番、大蔵大臣に何回も議論しているのですけれども、そういう経済的な関係が非常に不確定つたということが極めてまあ不安心であるけれども、そこでこれは最低規定であつて最低補償の限度をきめた規定だ、これより不利でない條件補償することになつているのですから、そうするとこれが今後いろいろな争いも出て来ると思うのです。これは争いに対する規定としてあるようですが、これが最低でひよつとするともつと多くなるかも知れない、その異議の申立や何かあつたら……。そうしますと日本負担はこれが最低でもつと多くなる場合、百億よりも多くなつた場合には次の年度には拂う、こういうことにはなつておりますが、この額がきまつていないわけなんです、全体としては……。こういう問題は広義の賠償でありますから、そういう賠償一緒考えるのが私は本当である、これがどうして一緒考えられなかつたか。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは国内における財産で、而もこういうふうなやり方で補償する、これはきまつてしまうものでございますから、私は他の賠償よりも別個に一つこれからきめて行つたらいいのじやないか、こういう考えでやつたのであります。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こればかりじやないのです。全体として今度の経済関係のいろいろな問題は、全部これからの交渉とか折衝に委せるもので、これもまあその一つの例だと思うのですが、そういうふうなことで何故不確定のまま調印しなければならなかつたかということが大きな問題だと思うのです。経済的な点からどの程度講和についてお考えになつたか、私は非常にその点不安で、アメリカ戰略的利益に早く奉仕しようとして、或いは戰略的利益に奉仕することによつて何か向うから援助同情を得たい、こういうことに焦り過ぎたのじやないか。その結果として、條約はできた、併しアメリカに期待した援助同情というものはこれから折衝するのですから不確定であつて、それでまあ取引にたとえては惡いかも知れませんが、非常にまずい、不利な取引になつて来るのじやないか、こう考えるのですが、それもこの一つ法律案を、これでちつとも確定はしていないのであつて、これは最低限を規定しているので、先ずこれは多くなる。これより有利な條件補償しなければならない。不利な條件補償しちやいけない、こういうことになつているのですからこの点、経済全権として行かれた大蔵大臣は、我々は非常に遺憾に思つているのですが、その経済関係が全体不確定のまま調印されたということについてどうお考えになつておりますか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済関係が不確定のままというのは賠償がきまらないから……。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 賠償ばかりでなしに防衛分担金外債処理の問題、これでもこの補償の問題として、全体として講和後における日本の新たなる経済的負担……。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 講和後の経済負担を一応は考えておりまするが、而も賠償その他は相手のあることでございます。それから外債の支拂の問題その他の問題につきましてもこれからの折衝の問題である、そういうことがきまらなければそれは調印はできぬ、こういうことが国全体としていいか惡いかという問題を考えなければならんのであります。従いましてきめるものはきめて、そうして早く平和條約を結ぶべきである。今後の問題は各国共存共栄相互扶助考え方できめて行くほうがいいと考えたからであります。
  21. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私第一点にお尋ねしたいのは、平和條約の第十五條によりますと「強迫又は詐欺によることなく自由にこれらを処分した場合は、この限りでない。」として、従いましてここで「強迫又は詐欺」によつたものは返還するというふうに反対の解釈も私は成立つと思うのでありますが、その條項から考えますと……。そうするとこの平和條約におきまして、日本民族はあの戰争中に「強迫又は詐欺」を行なつたということを国際的に承認したということになつて来ると私は思うのでありますが、この平和條約は長くこれは世界の歴史の上に外交文献として保存されるものと思うわけでありますが、その中に日本人が「強迫又は詐欺」を行なつたということを歴史の上に残して置くということは、私は極めて外交技術上から言つても拙劣なことだと思うわけでありますが、それは強迫詐欺という字句が直接本法案に関連して来ますのでここでお尋ねするわけでありますけれども、まあヤルタ協定の場合にいたしましても、アメリカ外交史を汚したくないというので、ソヴイエトの要請にもかかわらずアメリカは対日戰参加の覚書を拒否したということを裏面史として伝えられておるわけでありますが、外交の場合はそうした細心の注意を拂わねばならんと思うのでありますが、特にこの説明に当りました事務当局の御説明によりますると、この「強迫又は詐欺」というのは、單なる言葉の綾だ、こういう御説明があつたのでありますが、言葉の綾とするならば、そういう実効のない綾とするならば、こういうような字句をこの條約に入れることを承認して、而もその上に立つてこの連合国財産補償しなければならんというようなことを持つて来るということは、私は重大な問題だと思うわけでありますが、その点について折衝過程において交渉をされたかどうか、その点についてお尋ねいたしたいと思います。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは所有者が「強迫又は詐欺によることなく自由にこれらを処分した場合は」と、こういうので、自由にこれを処分した場合はということの前に、枕詞としてよくこういうことが入れてあるのでございます。これは菊川君のようにそう強くお考えになる必要はないと思います。この文句について向うと折衝したかどうかという第二段の御質問に対しましては、私はそう強く考えておりませんので意にとめていなかつたのでございます。
  23. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 あなたはやはりこれは言葉の綾というふうにとつておるようでありますけれども、「自由にこれらを処分した場合」ということだけでいいのである。自由に処分したらとしたらよいのであります。併し「返還する」とあつて、「但し」と言つて強迫又は詐欺」と言つているのでありまするから、それでは「返還する」というものはすべて詐欺強迫によつたものだということになる。文章の解釈から言つて当然そういうふうに解釈してよろしうございますかどうか。「返還する。但し」、これは「この限りでない」と、「場合は、この限りでない」とあるから、返還するものはすべて強迫詐欺によつたものだと、こういうふうに解釈してよろしいか。その返還したのは補償対象になるわけでありますかどうか、大蔵大臣一つ……。
  24. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 私が代りましてもう一度御説明申上げますが、返還し又は補償いたします條件は、今回のこの連合国財産補償法に書いてありまして、すでにお読み下さつておりますように、第三條及び四條に該当する場合、及びその範囲の連合国人にのみ補償いたします。この中には我が国詐欺行なつたことはございませんのでさようなことを考えておりません。従いましてこの條約十五條にありまするところの強迫詐欺ということは、今大臣からも御説明がありましたように、「自由にこれを処分」したという字句を修飾する言葉でありまして、これについては我が国の他の法律における、民法九十六條等におきましても「詐欺ハ強迫因ル意思表示ハヲ取消スコトヲ得」、こういうように、法律上の慣用語彙でございますので、字句を修飾する意味としてここでは考えられるのであります。
  25. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そんなことでは安心できないので、日本国内法を、民法を私は今聞いているのではなくて、この「返還する。」と書いてある、「但し、所有者強迫又は詐欺によることなく自由にこれらを処分した場合は、この限りでない。」、だからしてこの法案対象になる返還するものは、「強迫又は詐欺」によつたということになるわけでありまして、それなら自由に処分した場合というように單に書いて置けばいいと思いますが、こういう字句を使われるということは、私は外交関係としては極めて拙劣なことであると言わざるを得ないのでありますが、それはさておきまして、次にこの補償法案が仮に否決されるというような場合を仮定したようなときには、やつぱりこの平和條約の批准ということは実際問題としてできなくなる、こういう結果になるのではないかと思うわけでありますが、その点仮にこの補償法案が不利でない條件補償されると申して、少しでも不利だというふうに国会が修正するということになりますと、この平和條そのもの批准政府はできないと、こういうふうな結果論になると思うのでありますが、これは今の場合を私は申上げるわけでは、ございませんが、将来どういう情勢下におきまして国際協定或いは諸條約で結ばれて、仮にその條約の中に内閣がきめた法案をより下らないと、こういうふうなことを條約の中に語つておきますると、これをややもすると政争の具に供しまして、で、この條約そのものは一応承認するとしても、その中にあるところの政府作つた法案、それを一部或いはちよつと修正して、そうして政争の具に供するというようなことをよく言われたのでありますが、こういう形式を今後一つ前例として整えるということになりますると、将来これはすべて外交を、国際的な信義を無視して政争の具に供する、これは昔のような政友会民政党と対立して、すれすれの対立を示しておるようなときによく問題になつたことでありますが、将来そういうことは起り得ると思うのでありますが、こういう形式政府としては、今後或いは安全保障條約による行政協定、又は賠償協定に基くところの法的処置等をも、すべて相当細かい問題は国内のこういう立法によつて処理するという方法を考えておられるかどうか。その点から将来の問題も、この問題だけを言うのではありませんけれども、これは一つ大きな前例となりますので、その点を配慮されたかどうか。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のような点がありますので、先ほど申上げましたような経過を辿り、やはり国会の承認を経るというふうにしたほうがよいので、一体こういう今回のような場合は極く稀なので、他にそういう例が今までなかつたと記憶いたしております。早く平和條約を結び、又平和條約の條文もできるだけ簡單にしよう、これを早く結ぶという意味であります。こういうわけで異例な措置をとつたのであります。今後こういうようなことは私は想像いたしておりません。
  27. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすると例えば、一例を挙げて申上げますと、安全保障條約が発効いたしますと仮定して、その下において行政協定が結ばれると思うのでありますが、それに関連いたしまして、駐留費負担或いは国民権利義務等関係しまするところの国内立法が必要になるのではないかと考えるのでありますが、行政協定の中に、政府であらかじめ政府アメリカとの間に、或いは日米合同委員会におきまして、こういう法律を作るからという約束をする、そうして協定の中にいつ何日の閣議決定のこういう法案によつて、これは処理するのだというような協定が仮に結ばれるといたしますると、これと同じようなことになりまして、国際信義にもすぐ関連して来ると思うのでありますが、将来こういうことは絶対にないのですか、この点…。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その問題とこれは私は少し違うと思うのです、性質上一いついつの閣議決定に基いたものを土台にしてこういう條約を作る、こういう例は将来はございますまい。それからお話行政協定によつてこれから国民権利義務、或いは負担に関する問題がありまするが、これは立法事項であればそれを立法化する、それから予算事項であれば予算化するのでございます。これとは性質が違うと思います。
  29. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますると、この連合国財産補償法案は、不利でない條件補償されるということをまあ代表して約束したわけでありますが、そこで條約審議ということを離れまして、一つ補償法案だけを、じやこれを国会において不利にも有利にも、不利になつてしまつたらこれは無効だと思うのでありますが、不利に一時でも、ちよつとでも、例えば一銭一厘でも不利に修正したら無効になる。従つて不利に修正するという国会審議権はなくなると、こういうふうに解釈してもよろしうございますか。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 審議権がなくなるという意味じやございません。国会審議の結果が不利になつた場合にはどうなるか、こういう問題でございます。そこでそういう場合があつては困りますので、先ほど来言つておるように、條約と一緒に進んで行かなければならん問題だと考えております。
  31. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 で、仮にそれは一緒に進んで行かなければならん問題であるが、そうするとこれは一旦條約が国会を通過したということになつたならば、もう連合国財産補償法案というものは、少くとも不利でない條件に必ずしなければならん。国会連合国が有利なようには可決でき得るけれども、不利に可決するということは絶対にできないものであると、そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは平和條約と一体をなすと考えておりますので、国会審議も一体ににきまると私は想像いたしております。
  33. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうしますると、連合国補償法案なるものは一応内閣がきめた、七月の十三日に決定したことになつておりまするが、その決定に当りましては、前以てこれは関係国との間に折衝を重ねた、いわばこれは一つの條約に等しいような性質を以て立案決定さたれたものであると、こういうふうに解釈してよろしうございますか。而もそうしますると、関係各国に、この連合国とのどのくらいな範囲において交渉されたものであるか。或いはそれの招請国であるアメリカとイギリスの間だけで折衝されたものであるか、この点について伺いたい。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは先ほど申上げましたように、普通ならば平和條約の條項となるべきものなのであります。従いましてそれを入れるという説もあつたのでありまするが、そうなりまするとなかなか條約も長くなります。又時間的にも延びるということがありましたので、先ずアメリカ合衆国と話をし、そうしてアメリカ合衆国が又イギリスとも相談をせられて、そうして結論に相成つたわけでございます。で、アメリカ合衆国及び英国だけかということになりますると、私はアメリカとイギリスがどの程度にほかの国と相談せられたかは存じませんが、少くとも我々の相手として交渉したのはアメリカを主とし、これにイギリスの意見が加わりまして、三者で一致したのでございます。
  35. 清澤俊英

    清澤俊英君 委員長ちよつと関連で。大分面倒になつておりますが、今のやつですが、そうしますと、この連合国財産補償法案というものと、平和條項の中にある十五條の「千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産法案」というものは、これは同じなものでございますか。同一なものでございますか。
  36. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 実質的に一体をなすものと考えております。
  37. 清澤俊英

    清澤俊英君 一字一句違つておらんものでありますか。一つも違つておりませんか。
  38. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) その点はこの委員会において私からもたびたび御説明申上げましたように、趣旨においては全く閣議決定したものと同一であります。だだ私は一、二例を挙げて御説明しましたが、第二條における「連合国」の表現の仕方、或いは第三條における「開戰時」というようなものにつきましては、当初閣議決定案ではただ「開戰時」と使つたのを、條約が調印された後に、この「開戰時」という字が「千九百四十一年十二月七日」、こういうことに確定的にきまりましたので、そのように文字を直し、又「連合国」の範囲も、平和條約における第二十五條の範囲における「連合国そのものであるというふうに、こういうふうに直したのでありますが、併し実質的には同一でございます。
  39. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうしますとさつきから大分問題になつておるが、これを提案せられるとき、やはり木村さんが言われるように、條約と共に承諾を求められればいいことになるので、この法案として出されて私らに審議しろということは、どういうことなんですか、どういうことを審議せよというのですか。
  40. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 條約は政府調印いたしまして、憲法七十三條によりまして、国会の承認を求めるわけであります。法律案は、これは内閣又は国会が起案いたしまして国会がこれを制定いたすものであります。従つて條約におきましては全権代表が調印をいたし、承認の手続をとつておりますし、法律案になつておりますから、実際的には、條約に規定すべきことを規定をいたしたものでありますけれども、法律案の形に従いまして政府が起案して国会の賛成を求めて、国会立法権によつて、これを法律化せんとするものであります。両方に対しまして国会が承認し、制定されるのでありますが、そこで今回條約と共に国会に提出いたしまして賛成を求めるわけであります。
  41. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこがおかしいのじやないかと思うのですが、ちやんとこれには内閣法案としてきちんと出ておる。それを修正することもできない、どうすることもできない状態のものを持つて来て審議せよというから、こういう形になり、これはおかしい話になるのだ、もつとあつさりした形で取上げられたら、こういう紛糾をしないで済むのじやないかと思います。
  42. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 国内的には、国会関係におきましては條約の一部として十五條何項かに分ちまして、長々と規定いたしまして、国会の承認を受ければこれはお説のように簡單でありますが、先ほど大臣からもお話がございましたように、日本の條約の締結相手国が五十数ヵ国、現実には四十八ヵ国等を相手といたしまして、條約をできるだけ早くまとめるというふうな主張がございましたために、連合国と打合せの結果、條約を早く成立させるために一番日本側に有利な形としてこれらの形をとつたのであります。
  43. 清澤俊英

    清澤俊英君 これはただそういうお話になると、何かどうしても一応形式的な審議をしなければならない、こういう順序ができておる。ですから承認してくれと言つて来られたのでは……、やはり手続的な形で出されるものを作つたほうが問題が解決して、幾分でも国民がこの法案自身を我々が参加して作つたのじやないのだという、こういうこともはつきりするのじやないかと思いますが、それを何かちやんと内閣で作つた條約に入れるべきものを、ほかに法案にして、国民の代表が参加してこの法案を作つたという形にものを持つて行こうとするところに非常に面倒さができて来ると思う。もう少し簡單にそれをはつきりさせる方法はないのですか。そうすればこんな紛糾は要りませんよ、何日も何日もかかつてもたもたしておることは……。
  44. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 御質問のお心はよくわかるのでありますが、国会の意思は、或る場合には條約の承認という形で現われ、或る場合には国内法立法という形で、いずれも国会の意思がこれに加わるのでありまして、従いましてこの法律規定いたしました事項は、本来から言えば條約の中に規定すべき事項でありましたものを、先ほど申しましたように、便宜上形を二つに分けましたために、一つは條約の承認という国会の意思を御決定願い、他方は法律の制定という国会の意思の御決定を願うわけでありまして、ただこの際その両方の意思は両方別々に働いて来るのでありますが、この法律案が條約第十五條に謳われております事項を決定するものでありますがために、国会が條約を御承認になればその條約を承認する意思と同じ意思を以てこの法律に御賛成下さるべきものと存じております。
  45. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 これはちよつとむずかしくなる問題だと思うのでありますが、これは将来にもあるし、世界のやはりこういう慣例ということも考えなきやならんと思うのでありますが、條約は成るほど政府調印する権限を持つておりますが、政府が條約を調印したことによりまして、国会連合国財産補償法案條件よりも不利でない條件でこれを立法しなければならんという一つの義務を負わされたという恰好になると思う、立法義務を。そういたしますると、憲法四十一條によつて立法はすべて政府がやるのではなしに、国会でやらなければならんのであつて、だんだんそういうような傾向になつておりますが、そういたしますると、この補償法案なる法案立法することを、国会一つの義務を国際的に負わされた恰好になるわけでありまして、條約を調印するという面においてやつて来るやつは政府の権限でありますが、それを承認するかしないかはこれは国会の自由であります。この條約の調印によりまして、立法義務を国会が負うということは一つの大きなこれは前例になるわけでありますから、憲法四十一條との関連において私は重大な問題があると思うわけでありますが、そうなつて来ますと、世界のこういう條約の慣例というものを考えなきやならんと思うのですが、一体独立国におきまして、そういう條約の調印によつて国会立法義務を国際的に負わされたというような恰好になつているような條件が果してあるかどうか、こういう文献を調べられたかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。起案者であるところの大蔵大臣一つお聞きしたいと思います。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) こういう例は稀でございまするが、今あなたのおつしやいます憲法論から言つて、国際條約によつて国会立法義務を負う、こういうお言葉でございまするが、立法義務を負うとは私は考えていない。政府が條約と実質上一体をなすものを立法府に審議を願つて制定して頂こうとするのでございますから、国会が提案義務を持つとは私は考えておりません。政府が提案いたしまして、そうして法律として制定を願う、こういうのでございます。
  47. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 併しながら不利でない條件補償されるということをもう調印して言つてある以上は、こういう既定事実を作つておいて、そうして国際信義の問題もあるからというわけで国会にそういうものを出して来るということになつたら、これは国際信義の点から国会としては考えなければならんと思うのであります。そういう意味からいたしまして、條約そのもの批准を承認するという立場に立つのならば別問題といたしましても、これは今の問題を私は言つているのじやない、将来にこういう形式をどんどんとるということになると問題だから申上げるわけでありまして、そういたしますると、條約はいいだろうけれども、この立法義務が、それによつていわゆる不利でない條件という以外には、これは有利なふうに修正することはできるけれども、不利に修正することは絶対にもうできない、こう一つの枠がはまつて来まして、自由なる審議というとはできないと思うわけでありますが、その点について、これは国会審議権との問題に大きな問題が起きて来ると思うわけでありますが、大蔵大臣はそうはお考えにならんですか。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そこで、條約とこれとは実質上一体をなすものでありまして、国会で両方を御審議願う、そういう手続をとつておるのであります。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは実質的には平和條約の中に入るべきものである、それならばこの條項講和会議の場合に各国審議を得たのでありますか。各国審議を得ているのですか。各国はこれに賛成しているのですか。
  50. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 七月十三日閣議決定をいたしましたものは、直ちに米国を通じまして米国の招請国に送付いたしております。それと同時に、日米及び各連合国から発表をいたしております。我が国ではたしか八月二十八日にこの法律案の全文及びその要綱を発表いたしました。但し新聞の大部分は法律案の全文を発表しないで、要綱だけを掲載いたしております。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 要綱は発表せられておるが、各国はそれでよろしいと言つているのですか。條約は一応調印する、併し條約から除外されていて、あとでその補いのためにアメリカと相談し又各国にこれを通達した。これは本来ならば講和調印する前に各国がこれを練つて、そうしてこれでよろしいとなつて調印ということになるべきもので、これだけは除外された、そこであとの補いの手続をとられたけれども、発表しただけで各国が承認していないとすれば、今後に紛争が予想される、こういうことを私は懸念して質問しておるわけです。
  52. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 私の只今のお答えが木村さんの御満足の行くように御説明を申上げたつもりでありますが、調印前に合衆国を通じて各国にこの七月十三日の閣議決定案なるものを送付いたしまして、その賛成を得ております。そこで各国は只今日本国会がそのときの約束通りの法律案を條約の承認と同時に制定するかどうかを監視いたしておるような状態でありまして、現実には外務省等を通じまして毎日状況を聞きに参つております。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじやおかしいと思う。それならば講和促進をスムースにやるために除外したというのですから、各国が大体承認しているというならなぜ入れなかつたのですか。入つてもいいわけじやないですか。事前に大体了解がついているならなぜ講和條約にはつきり入れなかつたのですか。そうすればすつきりする。
  54. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) その点をなお御説明申上げたいと存じますがこの法律案は、お読み下すつておられるように、非常にこまごまとしたことを規定しております。実を申しますと各国の例によりましても、條約の中に同種の規定を挿入いたします場合にも、イタリアとか、ハンガリア、ブルガリア、フインランド等の例を見ましても、これほど詳しい規定は條約の中には入つておりません。イタリアでは七十八條、ハンガリア、ブルガリア等においてはそれぞれ條約の二十四條、二十三條等に書いてあるのでありますが、その結果イタリアの例を見ましても、例えば戰争の結果の損害とはどこまで入るのか、補償から差つ引く金額があるのかどうかというような細かいことが問題になりまして、かなり詳しく條約の中に入つておりましても、行政的にも非常に困難を来たしまして、イタリア等かなり苦しい目に会つているような状態であります。そこでそれらの問題を解決いたしますために、細かいところを法律規定に讓りまして、趣旨としては関係連合国も賛成せざるを得ないような形をとつたのであります。このことにつきましては私もたびたび御説明申上げましたが、各連合国は條約から分けて法律を作る方法のほうがよろしい。然らば條約の調印前に先に日本法律を作つて公布しろということで、條約の草案が何たびか改正されまして、最後に固まつたのは御承知のように八月十五日でありますが、八月の十五日に至る前の七月十三日の草案、七月二十日の草案として日本側に送られて来たり、又世界にも発表されました草案におきましては、十五條がこういうふうに書いてあります。前のほうを略して申しますと、これらの連合国財産が戰争の結果損傷若しくは損害を受けている場合には、一九五一年〇月〇日に日本国国会が制定した法律第〇〇号に従つて補償される、こういうことに十五條をしたい、従つて日本国会が先に法律を公布しろと、こういうことでございました。これについきましては、條約の調印が済まないで補償原則さえも国会としては正式には関与しない前においてかような法律の御審議を願うということは、日本国内の運営としても極めて適当でないという趣旨の下に、最後まで粘つて、八月十五日の改正案では今日の條約案のように形を変えまして、閣議決定を引用し、それと同じ、つまり不利でない法律措置を講ずると、こういうことにいたしまして話がついたわけであります。この経過につきましては、第十一臨時国会講和全権に関連する国会におまして、総理の演説の中にもその趣旨をお述べになつておられます。御記憶のことと存じます。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その件については、平和條委員会における岡田宗司君の質問に対して内田さんが答えておられるのを私速記を読みまして了承しております。イタリアの場合に比べて成るべく戰争損害というものの範囲を縮めて負担を軽くしようとしてくれるように努力を拂われたことは、條約委員会における内田政府委員の御説明でよくわかるのです。併し必ずしもイタリアの場合に比べて有利であつたかどうかは、イタリアの場合は、岡田君も質問していましたが、こうむつた損失を償うために必要な額の三分の二の限度まで拂うということで、三分の二になつていますね、併し日本は評価がきまれば一〇〇%ですから、必ずしも有利とは言えません。その変りにだんだん範囲を狭くしようとして、又控除なんかも考えていると思われるのですが、それほど意見が、大体今承わつたようによそで意見がまとまつており、そうしてこれがあとで紛争が予想されないということがきまつているのならば、その條約のただ文字が長いというだけなんですか、入れてまずいのは。どうもそこがおかしいのですね。
  56. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) このことは国際関係もありまして申しにくいような気もいたしますが、この條約なり、殊にこの條約に基くこの法律案條項をこの通りきめますにつきましては、アメリカ合衆国が相当の楯になりまして各連合国を抑えてくれておる。いつもお尋ねになるのでありますが、和解と信頼的な見地をアメリカ合衆国は大変とつてくれまして、みずからの責任において相当他の連合国を抑えてくれております。従いまして私どもは合衆国を中心として話を進めまして、それ以上これらの細かい問題を條約の中に持込みまして紛糾を起さないほうがこの場合我が国としては利益と見て処置いたしたものであります。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しそうはおつしやいますけれども、この十五條は、きめたよりも不利でない條件補償されるとなつているのですから、必ずしもそうなるかどうかわからないわけです。それは希望論です。希望論と考えます。これは最低限度をきめたのだと思うのです。そうじやないですか。
  58. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) そこが合衆国の面子でありまして、少くとも閣議で決定した條件内容とする法律案をきめてもらえばあとは合衆国が引受けるという態度のようでございます。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう点が今度の平和條約全体を通じて問題になると思うのですよ。例えばフィリピンの賠償にしても、今度の選挙でロムロ氏のあれが引繰返つたらどうなるんですか。いろいろな国除情勢によつていろいろな変化があるのでありますから、そこは條約にはつきり規定するのが本当なんです。それによつて初めて和解と信頼で、日本補償限度というのははつきりわかる。仮に多少負担が多くても、はつきりすれば日本の心がまえははつきりするわけですね。全体として最近パチンコがはやつたり、競馬といい、博打みたいなものがはやつて、何となく日本全体が、こんな嚴粛な講和を結んだのに、みんなの気持がちつともぴんとしていないという点は、経済的な條項においてちつともぴんとしていないからなんです。何だかアメリカが何かしてくれるのじやないか、何かしてくれるのじやないかと言つてアメリカ戰略的利益に奉仕したという結果として何か期待しているようなところがある。そういう点をなぜはつきりしなかつたか。はつきりしないために、いいについても惡いについても非常にそれが障害になつていると思うのです。今政府委員はそう期待すると言うが、国際情勢も変化して来るのですから、そう思つてもそうでなくなつたらどうするのですか。それじや條約というものはなぜ結ぶのか。それを成るべく具体的にはつきりきめるのが本当であつて、それに努力していないで、あと全部成行きに任すという形になつているのじやないですか。それだから非常に不安がある。今の御説明によると、入れられないことはないと思うのです。どうもそれだけの御説明では納得行きませんよ。
  60. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 只今の木村さんの説は御意見でありましようが、先ほど私がお答えし、又木村さんの御質問にお答えが足りなかつた点でありますが、この法律案内容は、最低限度であると同時に、最高限をきめるものでありまして、法律が一旦制定されますと、十五條関係におきましてもこれは最高限でありまして、各国批准をせられこの條約が成立する場合におきましては、これ以上の補償の要求は出ないものと解しております。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは十五條と矛盾しないですか。十五條はこれより不利でないというのですから、有利でもいいわけでしよう。有利でもいいということになつておるのにそういう解釈になると、これは重大な問題ですし、それからそれならばなぜここにいろいろな紛争が起つた場合に異議を申立てるとか何とか、こういう條件があつて、それで又そのときどう裁くかということについての規定があるのですか。そんなにはつきり言明してよろしいのですか。
  62. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 異議の処理等については、個々の査定の問題といたしまして、しばしば御説明申しましたように、請求する側の連合国人が挙証責任を持つて請求して参るのに対しまして、その査定は日本の行政府できめるのであります。従いまして日本側の査定に服し得ない場合には、十八條の規定によりまして異議の申立をするということでありまして、これは別に補償最低限度、最高限度という原則の問題にかかわりないと存じます。十五條から出て参るこの法律は、十五條規定よりも甘い内容補償措置を講ずるか、或いは十五條規定せられる閣議決定ぎりぎり一ぱいの補償措置を講ずるかを全く日本側に委せておるのでありまして、合衆国の了解におきましても閣議案と同一のものを日本側が作るなら、それで日本側の條約の義務及び従来の約束は果されたるのと解する、かように理解しております。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点非常に重要ですから、なお念のためにお聞きしますが、国内法に対して條約とどつちが優先的に効力があるのですか。條約できめられたものを日本国内法でこれを制約できますか。その点私は非常に重要だと思う。若しできるならどういう根拠でこれが最高限であつて、これ以上の補償を要求できないという根拠がどこにあるか、これをお示し願いたい。
  64. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 勿論この国内法関係におきましては條約が優先いたします。その條約におきましては七月十三日の閣議決定よりも不利でない條件内容を含んだ法律措置を講ずれば、それでよろしいというふうに條約自身が規定いたしておりますから、日本側の諸般の立場上、更に日本側が飜つて考え直しまして七月十三日の閣議決定より有利な條件を含む補償法を作ることは、これは国会立法権の措置として勿論可能なことでありまするが、この條約できめられておる閣議決定のぎりぎりの法律案を作ればそれが最高限度の補償の額として各国で承認するものと存じます。
  65. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 只今の点に関連して問題になりますのは、先ず百億を越えない限度ということになつて来るだろうと思いますが、従いまして百三十億或いは百四十億ぐらいの申出があつた場合に、大蔵大臣はそれをどういうふうにした順序でこれを査定をするか、この査定順位その他はどう考えておるか、どういうふうにこれを削るか、その年度内においては百億を越えないと言つているから、従つて百億だけはどうしてもやらなければならんということになるだろうと思いますが、そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  66. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 昨日……
  67. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 ちよつとこれは昨日あなたにお聞きしたので、一臣にこの点だけは聞いておかなければならん、予算の問題に関連しますから……。
  68. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 事務的なことでありまするから、事務当局から答えさしてもいいのでありまするが、特に御要求でありまするから、これは大体私のほうでは二百六、七十億になるのではないかと思つております。然るところ百億に切りましたのは、財政上の都合であります。それならばまあ全体が二百六、七十億の半分の百三、四十億になつたらどれから拂つて行くかという、こういう問題は、これは細かい問題は施行令か何かできめたいと思います。按分で行くか、順位で行くか財産の種類で行くか、又外貨で拂うものもありますから、そういうものが具体的に要求がありまして、そうして施行令でその順序、時期等をきめるべき問題と考えております。
  69. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますると、百億だけはとにかく限度として二百六、七十億ということなると、三年間かかつて補償しなければならんということになりますが、百億という予算額を出して来た場合には、政府のほうで出して来た場合においては、予算審議におきまして、昔の丁度皇室費に相当するようなものであつて、一体百億ということについては、もう審議をしてこれを修正したり動すことができない、こういうことになるわけと私は思うのでありまするが、そう解釈してよろしうございますか。
  70. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは厄介な問題でございますが、ここで予算審議権珍拘束するかという問題でございますが、これは予算審議権というものは、これは全体として考える場合、全体として、一体として考えなければならんと思いまするが、ここで一応百億円と意思決定があれば、これに従うべきだと思います。従つて予算審議権におきまして、この百億円として法律には一応拘束されると思います。
  71. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういたしますと、まあ三年くらいのうちに日本経済情勢も、財政状態も相当変つて来る。こういう時代でありますからどういうふうに変るかもわからんと思いますが、そうすると百億だけは如何なる情勢が来ようともとにかく来年、再来年ぐらいはこれは予算上においては動かすことのできないものである。昔の皇室予算的なものにこれはどうしてもならざるを得ない、そう考えてよろしうございますか。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体そう考えております。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではこれが最高限度と決定された、こういうわけですが、補償のいろいろな條件ですね、例えばこういう場合に、戰争によつて被害を受けたのはこういうふうに補償する。そういう條件としては最高かも知れませんが、それからまあ生じて来る金額ですね、補償金額の問題です。これはこれから実際はわからないわけです。ですからこれを、最高限度をきめてその補償金額とか補償の大きさというものについては最高限をきめたということは言えないでしよう。
  74. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) その通りでございます。大臣からはお話のありました二百六、七十億という金額もこれは連合国と全く打合せた金額でないのでありまして、條約の第十四條の関係で、賠償額等についてきめられる單位を異にするのであります。これより若干多いかも知れませんが、私どものつもりではこれより少くしたいと考えております。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さつき御質問したのは、異議の申立というのは、十六條二項に、日本政府がきめたのと異なる金額を請求権者が要求した場合は再審査しなければならん、これは非常に重要なところと思います。ですからそういう意味で、最高限をきめるということは言えないのであつて、私はそういう意味質問した。ところがさつきから最高限、最高限とおつしやいますから、じやそこの最高限という意味をもう少し、私は法律が専門家でないものですからはつきり説明して頂きたい。
  76. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 私が最高限をきめたと申しましたのは、この補償條件等について一九五一年の七月十三日の閣議決定を限度として、ここでそれを最高限としてこの法律案を出しておるということを申しておるのであります。個々の金額等につきましては最高限もきまりませんし、最低限もきまらないわけであります。これは余計なことかも知れませんが、二百六、七十億円よりも多いかも知れません、或いは少いかも知れません。これは昨日も他の委員から御質問がございました点でありますが、会社に対する補償額の関係におきましては第十二條の関係によつていろいろ考慮する点がございます。それらにつきまして具体的に現在計算はできませんので、当然この二百六、七十億円の計算の場合におきましては、連合国人関係のある会社につきまして、会社の損害額というものを概数彈いておるのであります。それから順序を逐つて嚴密な計算をする場合には、小さくなる部分もあろうと存じます。更にこの請求期限も御承知のように二段階になつておりまして、返還の期限が第十五條において十八カ月ときまつております。それまでに請求書の提出されないものは請求権放棄として計算しますから、そういうようなものが出ますと、それだけ減つて来ます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは第二十條で、補償審査会の組織及び運営に関し必要な事項は政令できめるとありますが、それはどういうようなものですか、まだできていないのですか。
  78. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) まだできておりません。これも昨日申しましたように、二十條で大蔵省の附属機関として連合国財産補償審査会を置くということをきめただけでありまして、大蔵省設置法における別表等にこの審査会の規定を掲げまして、それに基く審査会の組織、運営につきましては、或いは單独の政令できめますか、或いは大蔵省設置法に基く総合的の組織規程を政令の中に織込むか、その辺研究中でございます。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから第二十五條の実施規定ですが、これはまだきまつていないのですか。
  80. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) さようでございます。二十五條は補完的に設けた規定でありまして、今の私どもの考えでは、成るべく具体的に必要の起るまではきちんときめないほうがいい場合もあろうかと思います。必要の起る都度折衝過程においてきめて参りたいと考えております。従つて現在は総合的なものを用意いたしておりません。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 問題は、この法案国内法として制定の趣旨は、講和の促進をスムースにするために條約から除かれたということにあるのですが、若しも條約に入れてこれを審議しておるといろいろ争いその他があつて長引くので、こういうふうにしたのでしようが、併しそれで具体的な、補償審査会とか、その他具体的ないろいろの手続は今後制定する、併しそれはまだ予定されてはつきりきまつていない、こういうことになつておるのですが、そういうことがはつきりしていなくて、今後いろいろの紛争ということは予想されないのですか。事前に争いがあつて講和調印の前にいろいろ折衝してまとめて、意見が、違つた考えがなくて、一致して條約の中に入れて判を押せばそれが一番いいわけなんですけれども、その紛争というものを最後に残しておるのではないか、こういうように我々は考えるのですが、如何がですか。
  82. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) お尋ねの通りでありますが、ただこの十八條の異議の申立、或いは二十五條の政令関係等におきまして問題になることは、主義、主張或いは條件等につきましての問題ではなしに、個々の金額査定についての問題が主たる対象であろうと存じます。で適当な例ではありませんが、個々の課税、所得等の通知に対しまする審査請求のような形で異議の申立がなされる、さようなものであろうと存じますので、あらかじめ諸般の原則をきめてかからなければならないものでもないと存じます。勿論万事法律の形だけでは補償金額の査定等はできませんので、これは先般来委員会でしばしば申上げておるのでありますが、動産等の損失請求に対しまして、動産の中に一体ミケランジエロがあつたか、ミレーがあつたかということは、これは証拠物件も出せないのでありますから、不動産との率において動産の損失額というようなものを算出し出すような、便宜上の行政上の算定方法を用意しなければならないかと思つております。(「併しむずかしいですよ。」と呼ぶ者あり)
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十五條自体については、先ほど最高限と言われましたが、十五條による紛争ということはないのですか。その中に根拠をはつきりしておけばいいのですが……。
  84. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 十五條には争いは予想されません。先ほども申上げましたように、この法律案内容は、七月十三日の閣議案の内容と全く同じでございまして、その閣議案につきましては、アメリカ合衆国を主とする連合国の承認を得たことになつておりまするし、又この法律案自身につきましても、国会に出すと同時に英文にいたしましてアメリカ側その他と打合せを遂げております。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今十五條と言いましたのは、十五條に基いて、今度廻つて来たこの法律自体において、これをもつと有利に、さつて言われたいろいろの條件をもつと有利にしたいという各国からの要求がないかどうか。それがさつきないというお話なんですが、どういうわけでないのか。それから又、今後この補償を支拂う場合、これは実際問題として賠償等がその他と競合して来ると思うのです。日本の財政自体において……。来年度それは百億拂うことになつてつても、いろいろなほかのほうに関係して来るのではないか、これは百億必ず拂わなければならないということではないでしようが、競合の問題ということが起つて来ないのですか。賠償や何かいろいろな問題とからんで来るということは予想されないのかどうか。
  86. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 條約十五條に基きまして出しましたこの法律案に定めた條件そのものにつきましては、先ほどから申上げておりますように、各国も了解しておられますので、別段苦情の申出はございません。なお又個個の補償の請求に対しまして、我が国の他の財政との関連でありますが、これは先般もお話に出ましたように、仮に計算の結果一会計年度に補償すべきものが百億を超えるものがありましても、一会計年度百億にとどめるのでありますから、この百億の範囲における補償をする。他の財政との関係におきましては、この百億を基礎として他の方面の負担を調整して参る。なお日本の財政全体から見ましても、この條約を日本が承認いたまする以上は、この点に関しまして百億程度の措置はとつて参らなければならないものと考えております。なおこの百億につきましては、例えば三十億とか五十億とかいうものを一会計年度の負担にいたしまして、できる限り調整をとることに成功いたしまするとよかつたのでありますが、私どもの努力が足りませんで、百億ということになつたわけであります。この点は申訳ないと存じております。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、賠償なんかについて今後そういう国内法的の立法措置を必要をしませんか。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は今のところ国内法的な立法措置を必要とすることはないと思います。まだ十四條の原則がきまつただけで、個々の問題を折衝いたしておりますが、私はそういうことはないと只今は考えております。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ないことを我々は予想するのですけれども、ここにも一つのこういう例が出て来ておるのです。出て来ることを我々は恐れる。そうしてそうなると、これも実質的に予算審議権を制約することになるのです。賠償も、例えば来年度恐らくそういうことがきまつて来れば、始終日本国会賠償に要する金額が多過ぎるといつて否決されたり或いは修正されたりするということが考えらるのですが、そういうことできれば非常に伸縮性があるのですが、これは一種の広義の賠償なのです。ただ個人の要求か、国家の要求かの違いがあるだけである。個人の要求に対してさえこういう法的措置をとつておる。国の要求に対しても恐らく私はこういうことが出て来ないとは考えられない。ですから、そういうことを一つ明確にしてもらわないと困難な問題が起ります。重ねて大蔵大臣は、そういうような問題が起つたときには、そういうことをしないように努力されるるかどうか伺います。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申上げましたように、私の考えではそういうことは起り得ない。起つた場合におきましては、勿論そういう立法措置はやりたくないと思います。
  91. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その点に関連して。この前の委員会でもその点御説明があつたのですが、今大蔵大臣ははつきり賠償においてはそういう立法措置は作らないであろうということを言われましたけれども、私はむしろ起つて来るんじやないか。具体的に一つ我々が心配しておる点を申上げまして大蔵大臣に御説明を受けたいと思いますが、役務の賠償ということになつておりますが、さて役務賠償ということになりますると、相当或いはフイリピンなりインドネシアあたりへ行つて、例えば鉄橋の架け替えをしなければならん、或いは沈船の引揚げ等をやらなければならん、そうなつて来まして、日本の個人がそれぞれ自由の意思によつて、募集をしてそこへ差向けなければならんことになつて来ると思うが、応募者は全然ないという場合、又こちらへ一つ紡績会社で原綿を送るからこれを糸に紡めと言つて来る場合に、幸いにして入札制度なんかで応募者があればいいけれども、ない場合等におきましては、私は政府はやはり強権でも何でも、一旦約束して来た以上は、これを履行するように命令を出すような権利をどうしても持たなければならない。これは今のような状態において、アメリカの言うことであつたら、或いは外国のものであつたら飛びつく時代ならよろしゆうございますが、そうじやない場合、予算の或る程度の範囲内においてこれをやらなければならんという場合においては、私はときと場合によつてはこれは強権発動をしなければならない。東洋紡績へ持つてつても鐘紡へ持つてつてもやつてくれないということになつた場合に、どつちかにこれを引受けさせるということを、場合によつてはやはり法的の措置によつて、そんなことは想像するだけやぼだとおつしやれば別ですけれども、経済情勢というものはときどき変つて参りますものですから、特にまあ国民の思想も、或いは政治的な意識というものも変つて参りまするから、そんな馬鹿なことを引受けるなというようなことにならんとも限りません。ドイツのようにヴエルサイユ條約を結んだときとその後の情勢とヒツトラーの指導によつてああいうふうになるのでありますから、それはどういうふうに変るかわからんが、その場合にはやはり国際信義ということを考える上においてその措置は必要だと思うわけでありますが、その点全然そういうことはやらんつもりでありますか。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど木村さんが言われたように、そういう徴用令だとかいろいろなことは私はやりたくない、そういうふうなことをやらなければならないような賠償では日本の存立を危くするものだと考えております。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 広義の賠償意味において御質問するのですが、今後日本経済存立に重大な影響があるのですが、個々に折衝して行きますと、例えばフイリピンにこれだけやつたとき、今度はよそでこれだけよこせとかいうことになると、総括的に、何かこれは総理が賠償会議みたいなものを開くことを望むというようなことを語つたと新聞にちよつと出ていましたが、何かそういう構想はないのでございますか。ここだけでなく全体として何か日本に対する賠償要求国が集つて日本の存立可能な條件ではこのくらいしか拂えないんじやないかというのを何かきめるとか、そういうものを何かアメリカで斡旋をするとか、何かしなければ寛大にならないと思うのですが、何かそういうような構想はないのですか。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんがお考えになつておるように、なかなかむずかしい問題でございます。従つてあなたが今言つておられるように、金銭できめるか何かして早く限度をきめたらいいじやないか、この限度をきめるためには一年や二年平和條約が延びるかも知れない。我々が平和條約をいつまでも延して占領治下に置くわけにいかんから、早く一人前になつて、そうして一つの独立国家としての力を持つて交渉したほうが得策だというのでやつたわけなんです。この点はあなたと見解が違うのですが、早く独立国家にして、そうして対等の地位で賠償折衝をしたい、こう考えておるのであります。そこで今後どうやつて行くかという問題で、総理はどう言われたか存じませんが、私としてはAという国と先にきめて、Bが又どんなものを持つて来るかわかりません。Cがどんなものを持つて来るかわかりません。こういうことから考えまして全体の金額というものは一応頭に置いてなければきめられんと思います。若し全体の金額が、スケールがまとまるまでは一つもやらんということになりますと、これは又相手国がきかんでしよう。だから何と申しまするか、全体を考えながら個々に折衝をする、こういうことにならざるを得ないと思います。そこで賠償会議を開いたらどうかという考え方もありましよう。併しそれが日本のためにいいか惡いかはわかりません。やはり今後の賠償請求国の状況を見て愼重に考えて行かなければならないと思います。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣非常に重要な根本の問題について御答弁になつたんですが、成るほど大蔵大臣は非常に、私は財政演説を見ますと、手放しではありませんけれども、今後相当財政負担の、講和後における財政負担を覚悟しなければならんと言つておりますが、結論としては非常に楽観的なような結論になり、只今承わりますと、これは相当賠償は大変なんだ、これは本当のことだと思うのですが、ただそこで非常に重大なことは、こんなに重大な賠償の、大変である賠償の問題がきまらないうちに、なぜ調印を急いだか、それは大蔵大臣日本が早く独立するからと言われるけれども、その結果として非常に国際的にも日本の安全が危険になるということも、最近ではこの講和調印前と後においては、日本の人心はどつちが安定したかと言えば、講和調印できた後のほうがむしろ安定してないと思うのです。いろいろ例えば立川において防空演習をやるとか、こういうふうになると人心は不安です。わざわざ不安になるような條約をなぜ早く急いだか。そこが又経済的にも今後大変なんです。ですから大変だからこそ一年、二年遅れてもなぜ惡いのですか。日本の安全と日本経済自立のためにこんな重要な問題を一年、二年をどうして争つてやるか。私たちはこの講和條約がいわゆる日米安全保障條約と不可分の関係にあるアメリカ戰略的利益のためにこれが急がれたというふうに我々は解しておるわけです。又海外の評論も言つておるのです。それに対してなぜもつと愼重に、私は講和條約ができることを、各国ともできることを望むのでありますけれども、わざわざそういう経済的困難、それから日本の安全というものが保障されない状態の下でこれを急がれたか、私はその点がどうしても急ぐべきじやないという見解から、意見からそのことは根本的に大蔵大臣とも違つておるわけです。そんな、もうこうなつて我々が反対して見たところで仕方がない。そこで、どうするかと言えば、この賠償の問題を何とかしてコンクリートに早くしてもらいたいということです。そうじやないとイタリアの場合、大蔵大臣議論しましたけれども、額については違うかも知れませんが、きまつておるのです、はつきり……。そうすれば経済政策の目標の立て方も、これはやり方は又あります。一年耐乏すればいいんだ、二年耐乏すればあとは完済されて我々は今度楽になるという政策が出て来るのです。ところがこれは不安定のために、これは財界だつてそうだと思うし、勤労者も同じだと思う。経済政策の立てようが非常に困難になつて来るのです。ぐらついて来ると思う。今後大蔵大臣はこの点について、日本の財政金融或いはその他経済政策を立てる場合に自信があるかどうか。こういう意味において非常に大変である、而も今のお話を聞くと、全然見通しがわからないのです。結局これがぼやぼやしていつまででもやつていれば拂わなくてもいいというふうに甘く私は見られないのです。この前のドイツの例のように、これは真劍にやはり賠償を拂わなければならない段階が来ると思うのですが、この将来の賠償日本経済自立についての大蔵大臣のお見通し、特に大蔵大臣はこういうことを財政演説で言われておる、若し日本が自立不可能のような條件が課せられたならば、和解と信頼の精神に反するんだ、こういうふうに大蔵大臣は言われておる。それだけなんです、大蔵大臣が言われておるのは。反するという、大蔵大臣幾ら言われてもそれは條約でこれだけ取つちやいけないということがきまらなかつたのですから、あとで幾ら不平を言つても仕方がない。そこで條約で賠償の問題をはつきりしなかつたかが問題になるのでありまして、ただ和解と信頼で、若しか苛酷な賠償をして来たら、要求して来たら和解と信頼の精神に反するという、こういう反対論だけでこれが解決されるものかどうか、その点大蔵大臣にお伺いしたい。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんは私が楽観しているということを結論されるのですが、何も財政演説で楽観して言つたことはございません。私は事実を事実として申述べ、そして国民の努力を要請してこの難関を切り抜けよう、こう言うので、以も楽観したことはございません。第二の占領治下であれば、早く賠償がきまると思いますが、独立国家になつた賠償額がきまらん、こういう前提は別といたしますが、私は占領治下にあつて賠償の問題をきめるよりは、独立国家に早くなつて、そうして賠償の問題をきめたほうがいいと考えたのであります。占領治下であれば賠償の額が少くなつて、独立国家になつた賠償額が多くなる、こういう断定はできますまい。然らば国民が早く平和條約を結ぼうという気持を反映して、できるだけ多数の国家と平和條約を結ぶのが私は国民の願望だと思う、願いだと考えて、そういう説をとつたのであります。そこでこの点は木村さんと見解が違うのでありまするが、いつまでも占領治下におつてどれだけの賠償を拂わなければならんかと、不安でいるよりも、こういう和解と信頼の平和條約で、日本の存立可能の経済を営む上におきましては、十四條のあの役務賠償より以上にはできないのだ、こういう一つの枠をきめてもらつて、存立可能の経済を営むということを前提にしておるのでありまするから、おのずからそこに枠があるのであります。これは広い枠であります。その枠をどういうふうにきめようかというのがこれからの問題であります。私は占領治下でこの問題をするよりも、先ず日本本当意味の、賠償の能力がないのだ、こういう平和條約というものは和解と信頼に満ちたものであると考えておるのであります。で、如何なる要求がありましようともあの十四條の精神は動かすことはできません。だから十四條の範囲内におきまして、共存共栄、お互いに誠意を盡しながら折衝して行けば、そこに解決点は見出し得る、こう考えておるのであります。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は私と立場が違いますけれども、大蔵大臣の真意はわかります。どうして日本の民族の生活を安定させよう、そして講和後において起るところのいろいろな日本の新たなる負担をどうしてこれを軽めて行こうかというその精神は我々それを疑うものでもございません。努力しておることは我々了承しております。而も我々もそうなのです、立場は……。どうしたら、どうしたら日本の戰争に負けた以後における日本民族の生活を安定させるか、特に対外的負担が多くなることを我々はどうして少くするかという、その根本においては日本民族の一人としてこれは私は変らないと思う。ただその方法、そのやり方について非常にまあ考えが分れているのであつて、特に大蔵大臣は楽観しておらないという点が、大蔵大臣は自分は楽観しておらないのだというその点が我々と違うのです。大蔵大臣は財政演説ではつきり言われているのです。今後例えば友好国と締結することに、或いは事南アジア開発、日本の前途は相当発展して行く可能性がある、こういうことを言われているのです。そうしてこれを例えば安定と能率と発展と、この三つの基本原則に基いて政策をやつて行けば心配ないということを言われているのです。ところがそれに対して具体策は何もない。どういう安定、どういう能率、どういう発展政策をとつているかについては何ら具体策がないから、ちつとも安心できないわけです。むしろ現実は不安定になり、非能率的になり、非発展的になり、後退して行つておるのです。こういう現実になつているから我々は心配する。そういうふうに賠償というものがこれが何もわからない、わからない形で出て来るので一層我々は混乱するわけです。大蔵大臣日本人の一人としての誠意は我々わかるのですけれども、そうして常に大蔵大臣と我々と見解、立場を異にして激論を闘わせますけれども、その闘わすことは惡くするために闘わすわけではありませんから、この点は了承願いたいのです。何とかして、我々も立場が違いますけれども、よくしようとしているのですから、この点感情的にならずに大蔵大臣は御答弁願いたい。総理はよく感情的になりますけれども、(「どつちが感情的だ」と呼ぶ者あり、笑声)本当に我々は真劍になつて考えているのです。そこで大蔵大臣は楽観しているですよ。やつぱり財政演説では、これはまあ新聞ですからどこまで当てになるか知りませんが、九月一日の東京新聞、大蔵大臣はサンフランシスコ会議に出発するに当つて新聞記者に語つているのです。「講和後の日本経済考えると命の縮まる思いをする」ということが新聞に出ている。これは間違いかどうか知りません。大蔵大臣本当の財政経済をよく知つておられるのですから、又講和後の日本の財政負担というものを非常に知つておられるのですから、それが本当考えじやないかと思うのですが、財政演説には楽観的に出ておる。ところが他方では悲観的である。恐らく私は惡く想像するかも知れませんが、講和條約の批准が済むまでは楽観的に構想していて、講和條約の批准が済むとすぐ日本国民に対して大変だ、耐乏生活をせよ、こういうふうにやつて来るのじやないか。総理はすでに予算委員会で耐乏生活を説き始めている。こういうことが我々心配になるんです。本当講和後の経済を少しも日本国民に知らしてない。楽観的構想をしておいて知らしておらない。そうして講和後の事態が非常に重大になつて来たら却つて非常に惡い影響を持つ。その点について大蔵大臣は楽観しておらないというのでありますけれども、その実証されるあれがないのですが、財政演説において。
  98. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 楽観も悲観もいたしません。なかなかやりにくいところですから、これを力一ぱい国民と共に切り抜けよう、こういうことを言つておるのであります。あなたは非合理化、非能率と、こう言いますが、前からあなたと議論しておるように、昭和二十四年から今までの歩みを御覧になれば私は日本経済その他はよほどよくなつた考えております。それは今電気が足りなくて一時的にでこぼこはありましよう、ありましようが全体として我々はこの政策を続けて行くならば日本は日に日にいい、自立経済を営み得る確信を持つて言つているのであります。政治家というものは、一つの確信を持つてそれに国民と共に行くことを考えなければいかんので、私はこういうふうな方法でやつてつたらよくなる、こういうことを言つておるので、何も楽観じやない。我々の希望を言い、そうして努力目標を申上げておるのであります。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 條約審議ちよつとずれましたが、非常に重大な問題ですからちよつとお許し願いたいのです。大蔵大臣はこれまでのような政策をずつと続けて行つたならばますますよくなる、能率的になり、安定し、発展して行くと言われますが、それが私は問題だと思う。今電力問題というものは、自由経済政策の失敗があそこにしわ寄せして来ていることを私は物語つていると思う。成るほど表面は自由経済にして行つた、従つてパチンコ屋ができたり、或いはなんかして表面は自由になつてよさそうに見えるのですが、だんだん日本経済は破綻に向つて来ていると私は思うのです。例えば金融の問題にしても、或は石炭の問題にしても、自由経済でどんどん枠を無統制に外して行つた、そのしわがこの電力危機になつて来ておると思うのです。今度の電力危機の根本の原因は、自由経済の不均衡、特に需要が特需の関係で著しく殖えて来たのを調整しないで、石炭についてもこれは無計画で、用意すべきものを用意しなかつた。又水についても、冬にとつておくべきものを特需関係で無計画に使つてしまつた、こういういわゆる自由経済の無計画経済からしわが寄つて来ておるのです。今後私は冬にかけて更にひどくなつて来ると思うのです。決して今後も自由経済政策をどんどんとつてつたならば能率的になり、経済が発展、安定して行くとは言えないし、むしろ逆に不安定になつて行く。最近経済同友会で、総合インフレ対策の要望というものを政府に出されているが、あれを見ましても金融統制なんかでも、政府が調整してやらないから二重投資が非常に盛んになり、設備資金と運転資金との比率の調整がとれてない。非常に経済政策がつぎはぎで、私はその欠陥が出て来ておると思う。又米の統制問題でも、米の統制撤廃をすれば米の値段が上る、石油の統制を撤廃すれば石油の価格は著しく上る、非常に日本経済は非能率的になると思う。そういう自由経済政策的な考えはこれからどうしても是正して行かなければ私はその安定と能率、発展はできないと思う。これは根本の問題ですから、この点大蔵大臣は自信がございますかどうか。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自信のないことは申上げません。私は過去二、三年の生産の伸び、その他から申しましても、日本は今後ますます発展させ得る。それには勿論努力が要るのであります。そこであなたがたは計画経済、統制経済を謳歌されるようでありますが、日本のような国で統制経済なんかやつたつてこれは縮小再生産、私はそういうことはとらないのであります。我々は政策が惡くて国民の支持を受けなければいつでもやめます。何も鞭々としておるのではない。併し我々は選挙で国民の支持を受けたのでありますから、自分の考え方をどしどし進めて行く。又進めて行つて日本経済はよくなつて行きつつあるのであります。これを続けて行こうと思つております。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その統制的計画経済、総合的計画経済をやつて行くと縮小再生産になる、こういうお話ですが、日本はこういう状態だからこそそういうことをやらなければいけないのであつて、それは今に出て来ます。これは実証されますから、議論しても仕方がない。この自由経済政策の破綻というものは出て来ているのです。電力問題、或いは米の統制問題で行き当つている、石油だつて行き当つて来ると思う。そして大蔵大臣は生産が上つたと言いますが、国民の生活水準は下つておるんじやないか、なんのために生産が上つたか、これは朝鮮動乱以後の特需景気、そうして軍需生産にあつた。今後日本の生産は殖えるでしよう。船も殖えるでしよう、生産も上るでしよう、併し国民の生活水準が上るということとは違う。それは臨時的に生産が上り、そうして外貨の獲得ができるでしよう、特需で。又外国で軍需生産をやるためにその下請の設備の擴充をやつたらいつまでたつて国民の生活水準は上らない。前にも周東安本長官は民需と特需と輸出の調整をすると言いながらちつともやつていない。電力を見れば一番よくわかる。だから最近になつて電力危機に現われた。これは議論になりますから、條約審議委員会でこういう議論はやるべきで、ほかの同僚諸君にも恐縮ですから打切りますが、まあ今後は、大蔵大臣が言われましたごとくこれは選挙を通じて国民が批判するべきで、私は講和後において今後日本経済は相当苦しくなつて、再来年の一月選挙では恐らく国民がはつきりした批判をされる、そのときに必ず判断を下すでしようから、私はこれで打切ります。
  102. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 昨日も事務当局からいろいろ御説明を聞きましたが、まだはつきりしない点につきまして大蔵大臣御出席でございますから御質問申上げます。政治的の面から御質問申上げます。一つにはこれを連合国財産補償法案の中で、「この法律において「本邦」とは、本州、北海道、四国、九州その他平和條約により日本国の主権が回復される地域をいう。」、この主権の回復の問題について、これは本法律案の適用される地域と、主権の回復というものは切り離して考えることはできないと思いますが、そこで問題になつておる小笠原、南西諸島についてでありますが、これは主権は日本にあるのだという御説明もあつたようでありますが、そういたしますると、この法律はやはり小笠原、沖繩等に適用するというふうに大蔵大臣考えておるか、それともこれは適用しないとするか、どちらに……。
  103. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖縄或いは小笠原、南西諸島に主権があるかないかという問題、これは総理は今後きまる問題だが、信託統治ということになれば主権はこつちに、日本にあるものと心得ておる、こういうふうな答弁をなさつたようであります。これは答弁ははつきりしておりますけれども、まだ実体ははつきりしておりません。而して私は只今のところこの「本邦」は、沖縄、小笠原には適用にならないと考えております。主権の問題がはつきりすれば、そのときにこれは定むべき問題であると思います。
  104. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 むしろ、そういたしますると、総理はああいう見解をとつていたのだつたら、この間御説明を聞きますると小笠原や沖縄あたりには少しアメリカ人の財産があるのじやないかと思いますが、調査したところ大したものはないというお話ですから、この際政府は沖縄や小笠原のほうには適用するのだと言明されたほうが、むしろ日本の主権回復という面から言いましても、南西諸島の主権回復という面から言つてもいいのじやないかと思いますが、その点もう一遍……、はつきり適用するのだという解釈で進んで、向うから補償の請求がなければそのままにしておけばいいと思いますが、どうですか。
  105. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことは希望いたしましても、政府の見解として、今あそこに主権があるということをはつきり政府の見解として言うわけには今の事態ではいかんと思います。そういうことは総理が言われているように、我々は期待するということは言える。期待しているからといつて、この法律が今直ちにそこにも適用になるとは私は考えておりません。
  106. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 今は適用されないが、それでは例えば二百六十億か七十億という大臣の御説明でしたが、三年くらいたつたらこれは一応完済してしまうことになります。そうしてもこの法律は生かして置いて、信託統治がはつきりして三年後、五年後になつてあの辺から申出るという場合になつたら、この処置をどういうふうに考えますか。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのときはそのときの考えをいたしたいと思います。
  108. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それならわかりました。次に第四條の第一項第一号の「戰闘行為に基因するこの損害」についてでありますが、特に我々問題にしなければならないのは、原爆攻撃による被害についてでありますが、原子爆弾につきましては、これは全人類の課題になつておりまするし、又アメリカもこの原子爆弾を使用したということについては、非常に何と言いますか、よくこの原子爆彈の被害といことには同情的に考えておるということは、あちらに行つた者の帰朝報告を見ましてもよくわかるのでありますが、そういたしますと、この戰闘行為について、やはり原爆被害については、これは日本人としては不可抗力だといつても差支えないと思いますが、折衝過程におきまして原爆被害について言及されたかどうか。それから原爆被害について補償の免責について折衝されたかどうか。これは日本人から見れば不可抗力だといつても差支えないようなものでありますが、これの折衝大臣どういうふうになさつたかどうか、原爆の問題については、これは特にほかの戰闘行為とはちよつと切離して考えても差支えないと思うのだが、折衝過程を少し御説明願いたいと思います。
  109. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) 私が折衝しましたのでお答え申上げますが、原爆のみならず、第四條の戰闘行為による被害は、事実の問題として日本軍の戰闘行為よりも連合軍の空襲等による損害のほうが多いのでありますから、その意味から敵方の戰闘行為による損害日本側で補償するということにつきましては、これもお尋ねがしばしばあるのでありますが、私どもとしても割り切れない気持がありますので、そこでこの法律の建前といたしまして、日本側が補償の義務を負うのは、日本側の公権力の行為として、その者の身体を逮捕監禁したり、或いは財産を不当に処分したものだけに限る、こういうことに狭めることに了解が付いたのであります。
  110. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次にお尋ねしたいのは、これは昨日も管財局長から御説明願いましたけれども相当の注意を怠つたことに基因する、特にこの連合国占領軍が相当の注意を怠つたという判定を日本政府がするのだという、まあ管財局長の昨日の説明でございましたが、連合国占領軍が相当の注意を怠つたかどうかという判定を、一体日本政府、管財局長の説明通り、大蔵大臣政府の責任者としてこれを判定する決意を持つておるかどうか、この際明言願いたいと思います。
  111. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 内田管財局長がどういうふうに説明したか私聞いておりませんが、私の気持は内田君と同じでございますから、内田君の答弁は私の答弁と御了承願いたいと思います。
  112. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) なおこの機会に補足して答弁をいたしておきますが、この「相当の注意」というのは、まあ日本で申しますと、善良なる管理者の注意、或いは自己のためにする注意ということで私法上は拘束しておるのでありますが、連合国側にどうもそういう法律上の使い方がないために、むしろ連合国側の用語に従つて「相当の注意」という文字を入れたと思います。今直接お尋ねの第四條第一項の第五号の「占領軍が相当の注意」というのを入れましたのは、これは私どもは入れました気持は、相当の注意をどちらに判定するという問題よりも、向う側の考え方は、連合国軍の行為による損害はすべて日本側が補償すべきである、こういう主張があつたのであります。それは條約の第十九條等によりまする規定と相関連するのでありますが、併しながら無條件連合国占領軍によつて与えられた損害補償することにつきましても、先ほどの広島の原爆等にも似た話でありますが、これも余りにも広過ぎるということで、一つ條件といたしまして、何らかの手懸りといたしまして、「相当の注意」という文字を入れたのでありまして、向うが重過失、或いは故意等で損害を起した場合には、補償の範囲から除く、こういうむしろ趣旨を第一に考えまして入れたのでございます。
  113. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この点については、むしろ私のほうは歓迎するほうでありまして、果して申請書が出て来たときに、連合国占領軍のこれは相当の注意を怠つたやつだとぴんとはね返すだけの自主性をあなたのほうで持てるかどうかということを私は大臣に聞いたわけなんだ。
  114. 内田常雄

    政府委員内田常雄君) これも昨日お答え申上げましたが、一旦この補償措置を国内法形式に委されました以上は、この審査に当りましても日本側の査定に服することに話合いがついております。但しそれにつきましては、異議の申立を日本側が受付ける場合もあり得ると存じます。
  115. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 次に第十一條のこの株式の補償についてでありますが、昨日も大分お尋ねしたのでございますが、大体株式というものは、その株主は、その持株についてばその会社と運命を共にするということで、まあそういうちやんとあらかじめ承知の上で、この株式を持つことになると思います。それから外国人で日本人の会社の株を持つということは、その日本国が主権の発動によつて行なつた行為によつて生ずる危険も、これは株主の責任において負担する、こういうのが私は当然国際的は経済通念だと思うわけでありますが、にもかかわらずその会社が日本国の主権によつて行動したことによつて生じた損害を、外国人であるが故に、連合国人であるが故にそれを補償しなきやならんというのは、これはどうも株式の通念からちよつとこれは行き過ぎ、余りにも苛酷過ぎるではないかと思うわけでありますが、この点について一つ大蔵大臣の御見解を承わりたいと思うのでありますが、これは例えばアメリカ人が日本の株を持つてつても、アメリカ人ですか、主権の発動によつて生ずる危険というものは、これは株主として当然負担するというのは、初めからその覚悟で以て株式を持つのだと私は思うのでありますが、これは国際通念上から言つても、そういう義務を負わされたということは苛酷すぎる。どう考えても苛酷だと思うのでありますが、国際通念というか、経済通念をこれは少し逸脱していると思うのですが、これはどうですか。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 菊川さんの考えとは違うので、株式であろうが、不動産であろうが、動産であろうが、財産権に変りはございません。そこで一体として取扱うことになつたのであります。
  117. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 いや、そこで大蔵大臣ちよつと見解が違うのですが、株主が日本の会社の株を持つということは、それはもうこれは普通の財産を持つというのとはちよつと異にしまして、その会社と運命を共にするという覚悟でその所有の株の範囲内においてするというのが、これはもう一般的に通念になつているのじやないかと思うわけでありますが、これは財産を持つというのとおのずからそこに区別して差支えないのじやないかと私は思うのでありますが、大蔵大臣、そういうふうに考えるわけに行かんのですか。
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 財産権という立場からすれば同じであります。不動産であろうと、動産であろうと、而して今回の補償につきましても、その株式を持つている会社が戰闘行為によつて不動産或いは動産その他の被害を受けた場合を言つておるのでありまして、同じように取扱うのが理論的だと思います。
  119. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それからもう一つお尋ねしたいのは、第十條の商標を日本が戰時特別措置によつて消滅したような場合、それから損害を招致させた場合というようなことになりますと、これは申請するほうでは相当過大にこれは評価するでありましようし、又これを審査する立場になつた場合には、どうしてもこれは成るべく限定したいということになると思うのでありますが、従いましてこの対立は極めて……必ず生じやすい問題である。而も又その商標権の侵害によつて起きた損害額判定ということになると、甚だむつかしいと思うのでありますが、まあ大蔵大臣が広汎な経済知識から簡單に反対されるかも知れませんが、こいつについての判定は、まあ昨日の事務当局の答弁でもはつきりしてないのだが、構想としては、経験者を呼んで一つ相談して見て、大体判定して行こうと思つているのだと、こういうお話ですが、大蔵大臣は一体、大臣一ついい頭で判定されるつもりか、それともこういうふうに一般民間知識人、或いは時と場合によつては外国商社の代表者等も呼びまして、そして判定するつもりであるかという点について一つお伺いしたいと思います。
  120. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りに、商標権なんかの損害の判定は困難であります。今どういうふうにやるか、商標権につきましても過去の実績、将来の見通し、いろいろな点がございますので、できるだけ適正な査定をできるような方法を講じて行きたいと思つております。
  121. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  122. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 速記を始めて。それでは本法案については午後も引続き審議することにしまして休憩いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) では休憩いたします。    午後一時二分休憩    —————・—————    午後二時四十二分開会
  124. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは午前に引続きまして大蔵委員会を再会いたします。  ついては先ず理事会の結果を御報告いたします。午後は本案について政府委員に対する質問を続行の上、質疑を一時終了しまして一旦休憩に入りまして、そうして討論採決は講和條約の特別委員会の討論採決と同時に開始するということに理事会で決定いたしました。御報告申上げます。なお條約の特別委員会は三時に討論に入り、五時に採決を行うというふうな大体の方針のように承わつております。ちよつと御報告申上げて置きます。  それでは質疑をお願いいたします。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質疑は僕だけのようですが、私も大体質疑は終りました。ですからほかのかたに御異議がなければそれまで休憩でもして頂いて……。
  126. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 質疑おありになりませんか。まだお見えにならないかたもありますが、質疑はどなたかしたいというおかたがおありなんでしようかね。よろしゆうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは質疑は打切り、暫時休憩……。
  128. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 そうすると今委員長から理事会の報告があつたんですが、両條約が三時に討論を始めれば、この大蔵委員会においても大体三時から討論を始めて頂いて、採決できるようにお取計らい願いたいと思います。
  129. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 理事会でそういうふうにおきめ頂いてありますことは今御報告申上げて御了承と思います。そういうふうにお願いいたしたいと思います。差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 條約のほうは三時に討論採決を終つて……三時に終るんですか。
  131. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 三時に討論に入つて五時に採決をしたいというふうに大体きまつたそうでございます。ですからそれに調子を合せるようにこちらも再開をするということに理事会でも大体きまつたことを御報告申上げましてそう御了承願いたいと思います。  それでは暫時休憩いたします。    午後二時四十六分休憩    —————・—————    午後三時六分開会
  132. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 休憩前に引続きまして委員会を開会いたします。  これより連合国財産補償法案について討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べ願います。
  133. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は社会党の第二控室を代表いたしまして、連合国財産補償法案に反対の意見を表明するものであります。私たちは先ずこの連合国財産補償法案がよつて来たるところのその根本である平和條そのものに対しまして反対の立場を堅持しておる関係上、その平和條約に基いて制定されようとする本法案にも反対するものであります。平和條約の反対理由につきましては、平和條約特別委員会において同僚議員から述べますので、ここで申上げることを省略いたしますが、ただ本法案と関連のある條項についてだけは申上げなければならないと思います。その第一点は、審査の過程におきましても問題になりました強迫詐欺によつて連合国並びに連合国人財産の自由を奪つたものは返還されなければならないということは、当然あの條約の條文の十五條解釈から成立つわけであります。そこでこの平和條約は永く世界の歴史的文献として伝えられるものでありまして、今急遽この講和條約を、どういう文章でもいい、どういう姿でもいいから早く結んだほうがよいという立場をとつておる現政府外交政策に対しまして、私たちは重大な反省を促したいと思うのであります。いやしくも今後永久に世界の文献として残すような外交文書の中に、たとえそれが戰争に敗れて何を言われても抗弁の余地がないといたしましても、強迫詐欺行なつた、而も国際公法を蹂躙して強迫詐欺行なつたということを文章の上で承認する平和條約を結んだということにつきましては、私たちは余りにも屈辱外交であり、卑屈な外交であつたと言わなければならないと思う次第であります。(「異議なし」と呼ぶ者あり)これを私たちは歴史の上に一度考えて見なければならん。例えば私たちにとつては極めて不愉快な国際協定でありますところのあのヤルタ協定の締結に当りましても、時のソヴイエトからアメリカ政府に対しまして、不可侵條約の規定を蹂躙して対日戰に参加するということは国際的にも極めてまずいからして、アメリカからソヴイエトに対してそれを蹂躙して対日戰に参加するように覚書を出すように要求されたそうでありますが、併し時のアメリカの国務省は、そういう文書をアメリカ外交史上に残しておくということは、今仮に戰争に勝つて問題はないとしても、永くアメリカ外交史を汚すことになるからという理由を以て、断乎ソヴイエトの要求を拒否したと伝えられております。このようにして外交はすべて人類の歴史を創造するという誇を持つて私は当らなければならないと思うのであります。明治時代に我々の先輩が不平等條約改正のために闘つたのも、その歴史を見ましても、決してこういう国際的な文献の上に日本人が強迫詐欺行なつたというような文章を承認した事例がないのであります。而も政府説明によりますると、これは單に言葉の綾であると言つておるわけでありまして、言葉の綾であるとすれば、もつとほかの用語を使用されるように折衝すべきであつたと思うのであります。これがこの本法案の一番よつて来たる原因となるのでありまするから、私たちはこの点からいたしまして、先ず第一に強迫詐欺という用語を平和條約の中に捜入した政府の拙速外交と申しますか、秘密外交に対しまして、先ず重大なる反省を求めなければならんと思います。  第二の理由は、平和條約の第十五條の(a)項末尾に、一九五一年の七月の十三日に日本政府閣議決定を行つたところの連合国財産補償法案より不利益でない補償をすると書いてありまするけれども、そういたしますると、成るほど政府には條約に調印をするところの権限がございまするけれども、立法はすべて憲法の定むるところに従いまして国会にこの権限があるわけでありまするが、このように政府が国際的に約束をいたしてしまいました以上、この国際信義というものは国会においても守らなければならん。でき得る限り守らなければならん。そういたしますると、この法案審議するに当りましても、国会に対して無限の重圧を加える結果になることはいなめない事実だと思うのであります。従いまして外交権と立法権の問題にまで発展して、憲法違反という点にまで考慮されなければならんと思うのであります。特に世界の條約をいろいろ研究いたしましても、このようにして国内立法を、実際的には條約によつて強要されているというような形式をとつた條約はないわけであります。特に私たちはこの際にこの問題を強調しなければならない理由は、今後賠償、或いは日米安全保障條約に基くところに行政協定等、諸般の條約並びに協定が締結されまして、それによつて敗戰国民として国民の権利利益がいろいろの面から制約し、その制約することを国内立法的処置によつて行わなければならないことが生じて来ることを憂うるのでありますが、そういう際に、政府はあらかじめ国会の承認を得ないままに政府の立案にかかるところの法案を相手国に提示いたしまして、その條件より不利でない條件で以て実行するということを約束いたして参りましたと仮定しました場合に、国会においてその国内立法審議するに当りましても、私たちはやはり無力なる日本の国力から考えまして、国際信義又は国際的圧力というものをどうしてもこれを否定するということは極めて困難なことになります。従いまして、憲法に定められたところの国会審議権というものは重大なる制約を受ける結果になると思うのであります。かかる観点から立ちましても、今回の連合国財産補償法案は、極めて日本の主権に、特に憲法の條章に重大なる瑕瑾を残すものであると言わなければならないと思うのであります。  第三点には、同法案によりますると毎年百億に限りましてどうしても予算的な処置をしなければならないことは申すまでもございません。そうして国の財政経済状態がどうなりましようと、ここ数年間は毎年百億だけは確保しなければなりません。丁度旧憲法当時に皇室費に対しまして、帝国議会がこれを実際的には手を付けることができなかつた。これと同じような姿で、而も国際的な圧力で以て百億円だけは予算審議権を奪われる、こういう結果になることを私たちは忘れてはいけないと思うのであります。その意味におきまして、百億円の予算審議権、金額の問題を云々するよりも、国会予算審議権という立場からも、私たちはこれに対して反対しなければならんと思います。  第四に、戰争による被害でありまするが、これは日本国といたしまして不可抗力であつた。B二九の爆撃によるところの戰争被害、なかんずく最も我々として関心を示さなければならないのは、原子爆彈によるところの被害をも補償しなければならないのであります。今や原子爆彈の問題は、單に日本民族の問題というよりも、更に大きな世界全人類の重大なる課題となつているわけであります。原子爆彈を、今後全人類がどういうふうに扱つて行くかということは大きな課題になつて、世界の最も大きな課題であり、世界人類の、全人類の注視の的になつているわけでありますが、その原子爆弾による被害を、ここに国民が血と汗の結晶で以て納めました税金によつて補償しなければならないという前例を、我々はここに初めて打立てるということに対しましては、世界歴史の上の私は大きな問題であろうと思います。従いましてこういう法案を用意して関係国と交渉するに当りましては、政府はもつと原爆の問題について折衝をし、且つその折衝の経過を国民の前に明らかにすべきでなかつたかと思うのであります。これは原子爆彈使用の問題については、アメリカにおいてもいろいろ問題があるようでありまして、広島、長崎等の出身者が渡米いたしました場合に、アメリカの宗教団体、婦人団体等に、原子爆彈を使用したという事実の上に立ちまして、長崎、広島等の出身者たちに対する態度というものは、ほかの出身者より以上変つた扱い方を、鄭重なる扱い方を受けている。この事実からいたしましても、外交折衝に当りましても、原爆被害の補償につきましては、もつと言うべきを……正しい主張は主張すべきでなかつたかと思うのでありますが、それには何ら免除規定がないということに対しましては、私たちとしては極めて不満であると言わなければなりません。  第五に、この平和條約は極めて寛大であるということを常々聞かされて参りましたが、平和條約の締結に伴いまして、だんだんと国内的な処置をしなければならん。或いは予算措置その他が明らかになるに従いまして、決して寛大ではないということがだんだんと我々の身に応え出して来たわけであります。特に和解の條約だと言われておりまするけれども、和解の條約にいたしましても、戰勝国が戰敗国に臨んだ原則、近代国家間の戰争において、戰勝国が敗戰国に臨んだ原則というものは何ら変えられておらないのでありまして、賠償、領土の割讓という二つの原則はそのまま守られており、その上に連合国人に対する補償ということも課せられていることになるわけであります。従つてどこが寛大であるかということについて、私たちは極めて疑問を持ち出した次第なのであります。成るほどヴエルサイユ條約によつてドイツ国に課せられた條件と比べました場合には寛大であるということは言えましようけれども、恐らく吉田さんをして言わしめるならば、或いはミズーリ艦上を忘れるなと言われるかも知れないけれども、我々をして言わしめるならば、先ず大きな国際情勢の変化並びに時の経過というものを忘れてはならない。それを日本人みずからが国際情勢の変化、それから時の動きというものをむしろ言うべきであつて日本人みずから常にミズーリ艦上を忘れるなというがごときに至りては、私は国の指導者として、或いは日本国を背負つて立つ外交官として、極めて卑屈な態度であるし、我々としては決して信頼し得ないと思うのでありますが、これはさて措きましても、今回の補償法案に見ましても、ただ一例を挙げて見ますると、株式の條件のごときは、大体株式を保有する場合には、株主といたしまして、当該会社の危険は保有株数の限度において株主の負担であり、且つアメリカ人が、或いはイギリス人が日本において日本の会社の株を保有する場合には、当然日本国の主権の発動によつて生ずる危険は考慮して保有されたものであると考えなければなりません。而もその会社は日本国内法の定むるところによつて最大の努力をして、その財産の保全を図つて来たはずでありまして、決してどの会社にいたしましても、仮に戰争中であろうと、戰後であろうと、やはり善良なる管理者の注意を怠つたことはないはずであります。従いまして、その会社が善良なる管理者の注意を拂いながらも、なおその会社が受けたところの被割に対しまして、日本国において、日本国民の責任において連合国人補償をしなければならないというがごときに至つては、私は決して寛大なる條件とは言い得ないのであります。こうした條件が各所に見出されるわけでありまして、寛大である、寛大であると言つて聞かされたところが、中を開いて見ると、だんだんと寛大でない條件が現われて来るわけであります。こういう観点からいたしましても、私はこの際に断乎としてこの連合国財産補償法案に反対をいたしまして、そうして時の経過、世界情勢の変化等を我々は静かに見詰めまして、武器を棄てた日本人が、もつと勇敢に諸外国に対しまして日本民族の生活権を要求するという大きな外交国民外交を展開すべきであろう。それを為し得ない現在の政府であるとするならば、我が国会において、なかんずく我が参議院におきまして、そのことを決然とその態度を示しまして、そうして諸外国に訴えるという態度を示してこそ、初めて参議院の存在価値があり、国民の信頼も集まることを私は疑わないのであります。なおそういたしますると、アメリカ人もイギリス人も、その他の連合各国人も、やはり何といつても武装を解除されたとは言いながら、八千万の国民を持つておるところの日本民族一つの世界の一大勢力であります。この勢力の気慨というものを認めまして、そうして我々は本当に独立して、世界の列国に伍して世界平和に寄与し得るという確信を持つ次第なんであります。  かかる観点から、この際に極めて困難ではありまするけれども、本法案に反対いたしまして、そうしてアメリカ人の、イギリス人の、その他連合国国民日本に対する感じ、日本人に対する見方といつたものを変えてもらいまして、そうして仲よく我々は世界平和に寄与し得る日を迎えるために、この際この法案に対しまして私は反対するものであります。
  134. 松永義雄

    ○松永義雄君 私は平和條約に賛成する建前からしまして、連合国財産補償法案に対しては賛成の意を表するものであります。  ただ憂えるところは、只今議題になつております法律案並びに平和條約から来るいろいろな日本に課せられるところの義務から、日本人の国民生活が脅かされるのではないかという点であります。私がここに申上げるまでもなく、世界の平和、並びに一国の平和というものは、その国の国民生活が安定しなければならんと思うのであけます。(「その通り」と呼ぶ者あり)英国においてすらも、朝鮮問題の解決は朝鮮人の生活の安定こそ、真に平和をもたらし、平和を実現し得るものである、こういうことを申しておるのであります。後進国開発の主義というものは、後進国の生活の水準を引上げて、そうして生活を安定せしめるのが目的である、こういうことをはつきり言つておるのであります。生活が脅かされれば、たとえお前に自由を与えると言つても、後進国の諸君は生活に脅かされておつたのでは如何なる自由も一文の価値もない、こういうことをこれ又英米の諸君は言うておるのであります。これらの言葉がただ單に羊頭を掲げ狗肉を売るということになるようなことがあつたら私は極めて憂慮すべきことであると考えておるのであります。政府はこの法案説明に当りまして、いろいろの点から努力すればその負担が軽くなるごとく言つておるのであります。併し我々はただこの法律のみならず、平和條約から来る法律、或いはいろいろの現象から見まして、日本の物と紙幣との関係からして、日本の生活状態は非常に苦しくなつて行くということを心配しておるのであります。若しこうした状態が英国にしても、或いはアメリカにしても、常日頃世界各国において唱えておりまする後進国開発、その考え方、後進国の国民の生活を安定せしめるものであるという精神に反するようなことが若し万一あるとすると、我々は大いな決意をしなければならんということを考えておるのであります。如何なる主義、或いは共産主義も、生活の安定するところには決して入つて来る道はない。けれども繰返し申すのでありますが、生活の安定しない所には自由の目的は猫に小判を与えたようなものであつて、猫にとつては何らの価値がないものと見られておるということをはつきり彼らは、英米は言うておるのであります。私はこうした法律並びに平和條約から来るところのいろいろの法律から来る関係が幸いにして日本の生活を脅かすことがなければと考えておるのでありますが、我々はこれは終始見守つて行く決意であるということをここに申上げまして、本案に賛成するものであります。
  135. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は三つの点から本案に反対するものであります。  その第一の理由は、この法律案は、本質的には平和條約の中に規定さるべきものであつたわけでありまして、政府委員説明によれば、いわゆる手続法であるという説明でありますけれども、そうではないのでありまして、実際的に、実質的には講和條約の一環であります。従つてこれは本来ならば両條約委員会審議するのが本来当り前なんでありますけれども、大蔵委員会に付託されたのは変則的であります。なぜこんな変則的な審議の仕方をいたしたのか、私はその点予解に苦しむのでありますけれども、一応大蔵委員会に付託されましたから、我々審議しておるわけであります。従いましてこれは言うまでもなく平和條約及びこれと不可分の関係にある日米安全保障條約の一環として考えなければならん法律案であると思うのであります。にもかかわらず大蔵委員会に付託され、又政府説明によれば、いわゆる手続法としてこれが別の法律の形をとつて、その理由を政府委員説明を求めたところ、政府委員は、これは講和の促進をできるだけスムースに特つて参りたいというアメリア側及び日本側の希望に合致いたしまして、手続規定等につままして長々と條約の文章の中に入れますことが、各国の足並みを急速に揃えにくいかも知れないということのために、手続的の部分を別の形にして外した次第であります、こういうふうに答弁しておるわけであります。要するにこの講和條約を早く進めたい、その便宜のためにこれをこういう別の法律の形にして出したのである、こういう答弁であります。その便宜のため、講和を促進する便宜のためというのは何であるか。これは申すまでもなく私は幾度も指摘して来ましたが、アメリカの対ソ戰略的な利益のためであります。この講和條約が非常に促進されたのは、朝鮮動乱が契機となつてからでありまして、アメリカの対ソ戰路上、この平和條約、それを不可分の関係にある日米安全保障條約の促進をしなければならん、これがこの真意である。講和條約の本当の狙いは、日米安全保障條約にあり、極めて戰略的なものである、極めて軍事的なものである、これは蔽うことのできない事実であります。そういう條約の一環としての法律案である。而も政府の答弁では早くこの講和條約を結べば日本が独立国になる、自由になるためにこれを急いだのだ、急ぐためにこういう手続については講和條約草案に入れないで、別の法律案にしたのだ、こう言うのであります。講和條約における自由は何であるか。誰のための自由であるか。誰のための独立であるか。すでに講和條約も成立を見込んで、独占禁止法の改変が考えられ、事業者団体法の廃止が考えられた。労働基準法の改惡が考えられておる。誰がための自由であるか。抽象的に自由々々と書けれども、講和後におけるところの自由は労働階級を彈圧し、圧迫するための自由である。大きな資本家が昔のように搾取することのできる自由を回復するということが講和後において訪ずれるところの自由であると思う。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)こういう意味での自由を確保しようとして、この講和條約を早く促進しよう、その促進の便宜手段としてこの法律案講和草案の中に本来入れるべきを、これを外して別の形にしたということについては、どうしても我々はこれに賛成することができない。堂々と本来ならば講和草案に入れるべきである。  それからの第二の反対理由は、先ほど菊川委員も申されましたが、この講和條約締結後に訪ずれるところの日本の新たなる負担が非常に大きいのでありますが、この講和後における新たなる経済負担というものは、日本経済が自立できる可能の限度においてこの負担をするというのが建前であるべきはずであります。これがそうでないならば、寛大なる講和、和解と信頼の講和と言うことはできない。大蔵大臣は、若し苛酷な経済負担が課せられるならば、これは和解と信頼の條約の精神に反するものであるということを財政演説で言つておりますが、大蔵大臣がそういうことを仮に言われても、それは條約の中にそういうことを課してはいけないということが規定されておらないのですから、これは單なる空論に過ぎない。成るほど平和條約の十四條には、賠償規定として、日本の自立可能な限度において賠償を取るとなつておりますけれども、日本の自立可能ということは一体どういう生活水準の自立可能を示しておるのか。同じ自立可能と言つても、要するに日本の自立可能ということは、国際收支のバランスを合せるということで、或る一定の生活水準を確保するということ、併しながら国際収支のバランスを合せても生活水準が低くなつたのでは日本国民には不利である。併しそれだけの水準で国際収支のバランスの合う経済を許すかどうかということは規定していないのです。この法律案においてもこれは関係があるわけです。一応これだけの賠償であれば存立可能である、こういうふうに規定すべきである。これは広義の意味における賠償でありまして、国家間における損害要求は賠償であります。これは個人が日本政府に対して要求する損害でありますから、形は違います。手続も多少違うこともありますけれども、これは広義の賠償であります。これは従つて賠償一般として考うべきものである。これだけを切り離して考えるのは、少くとも日本経済自立を考える場合においてそれは当らない。それは不当であると思うのです。なぜ賠償一般としてこの問題を取扱うように政府は努力しなかつたか。更に又防衛分担金という問題もあります。これなどもわからない。これからの行政取極によつてきめると言つておりますけれども、幾らになるかもわからない。賠償の額もわからない。この損害賠償の額もわからないのです。実は大体政府は二百六十億乃至七十億になるかも知れないと言つておりますけれども、それはそうならば條約になぜはつきりと書かなかつたか。ただ一会計年度において百億の限度において出すということだけであります。このように、日本経済が今後どうなるかということに対して重大な影響のある経済規定を今度の平和條約においては全部これを講和條約以後にこれを委してしまう、今後恐らく賠償問題をめぐつて国際的に非常に困難な状態も出て来る。大蔵大臣もこれは大変であると言つておりました。こういう重大な問題をどうして具体的に今度の平和條約の中に取入れなかつたか。而もこれは賠償一般としてこの問題は取扱うべきものであります。講和関係費一般としてこれは取扱うべきだ。これはこれだけを切離してこういう法律案を出すことは、日本経済、自立のために決して好ましいものではないと思います。又これだけを切離してここでこういう法律案の形で審議するということは無意味である、本来無意味です。これは講和條約全体として、又講和後における日本の新たなる経済負担全体としての、その一環として考えるのが本当であります。そういう意味で私はこの法案に賛成できない。  それから第三の反対の論拠は、これも菊川委員が先ほど触れたところでありますが、予算審議権に対して私はどうしても制約を加えると思うのです。この平和條約の第十五條に、菊川委員も先ほど申されましたが、「日本国内閣が千九百五十一年七月十三日に決定した連合国財産補償法案の定める條件よりも不利でない條件補償される。」ということになつておりますが、日本国内閣は、今ここで審議されている法律案をこの一九五一年七月十三日の閣議で決定したのです。こういう重大な内容のものを決定しておいて、どうしてこれを国民に、又これを国会法律案の形でなくてもいい、これをどうして相談しなかつたか。周知のごとく條約の締結は国会の承認を得なければならない、條約の締結は批准を経なければならない、これは條約というものは調印から、国会の承認から、天皇の認証までこれを含めたものです。従つて調印についても、事前に国会に諮るのは当然であります、何も法律案として出さなくても、これを諮るのが当然です。條約の締結というものは、調印国会の承認と、国会の議決と、天皇の認証というものを含むとすれば、当然にこれは調印前にその内容について国会に諮らなければならぬ。相談しなければならぬ。而も昨日岡崎官房長官がここに見えまして、実はまだ日本は占領されているのだから、対等の形においてこういうことについて連合国と諮ることはできなかつたのだ、こういうことを言つているのです。従つて国会に諮るという形式をとれなかつた。それならどうしてこの條約が対等の條約であり、寛大な條約と言えるか。こんな重大な講和後に日本経済に、日本国民に負担をかけるところの法律案を七月十三日の閣議で決定しておきながら、今日までこれを放つて置いた。こういうものを国民に明らかにして、国会でも明らかにして、こういうことになるぞ、こういうことになるが、それでも日本国民は講和を結んでいいのかどうか、こういう形において講和に対する賛否を問うべきです。ひとりこの問題ばかりでなく、講和後の日本経済のことについては、政府はちつとも国民に明らかにしていない、隠蔽している。そうして先ほど申しましたように、アメリカ戰略的利益のために、これはむしろ細かく具体的に日本国の利益のために規定しなければならなかつたことをきめないで、そうしでそういうものをオミツトしている。こういうことは私は憲法論になりますから、私は専門外でありますから、これは細かく触れることを避けますけれども、明らかにこれは憲法違反、この條約の締結について国会の承認を得なければならない点については明らかにこれは憲法違反、殊に七月十三日の閣議でこんなことをきめておきながら、今頃になつてこの法律案を出して来るということは、これは国会を無視しており、而もこれから生ずる今後の財政負担については、菊川委員がさつき言われましたように、どうしても予算審議上制約を受けることになつて、これは財政の民主化にも違反しますし、従つて経済の全体的の民主化に違反するものである。  私は以上申上げました三つの点からこの條約に反対するのであります。私はこの平和條約の実質的には一環としてのこの法律案に賛成することによつて生ずる影響に対して責任を持つことができない。この條約によつて日本の安全が脅かされ、日本経済が不安定となる、そういう條約であるのです。そうしてこれは軍事的、戰略的意義を持つているのであつて、先ほど松永氏が、希望としては日本経済の安定に役立つことが望ましいということを言われましたが、この條約の本質というものがはつきりわかつていない、こういうはつきりしていないものを承認することによつて起るところの経済的或いは政治的、軍事的、こういう不安に対して責任を持つことができるでありましようか。我々は本当日本の民族、日本国を愛するが故に、こういう平和條約並びにそれと不可分の日米安全保障條約、こういうものに対しては我々は賛成することはできない。従つてその実質的な一環としてのこの法律案に賛成することはできないわけであります。以上を以て私の討論を終ります。
  136. 小林政夫

    ○小林政夫君 私は平和條約を承認する建前上、本法律案にも賛成をいたします。  併し賛成をするに当つて敗戰のもたらした冷嚴な事実を再認識し、昭和二十年八月十五日に無條件降伏の通報を受けたときの悲痛な感じを想い起して、涙を呑んでこの法案に賛成するものであります。平和條約の中には、連合国並びに中立国にある日本国並びに日本国民の財産についての規定以外は、我々の経済負担を伴う問題についてはすべて今後の交渉に委すように、平和條約の内容からは外されております。ただ僅かに十五條によつて、本法案が今日の審議になつているわけでありますが、この法案の苛酷な條件を思いますときに、公正寛大な條約であるという宣伝にもかかわらず、著しく形式的にはともかくとして、実質的には平和條約は相当苛酷なものであるということを痛感するのであります。今後賠償の問題、或いは旧日本国領土であつた所にある日本国民並びに日本国民の財産、或いはそれに伴うところの請求権の処理の問題等、いろいろ我々の経済負担を伴う折衝各国との間に行われるでありましようが、そのときにこのような本法案のごとき考え方を以て押して来られるということは予測するに難くないのであります。政府当局が今後の賠償交渉その他の折衝において十分肚を締めて、少しでも日本負担を軽からしめるように遺憾なく善処されることを要望するものであります。又菊川、木村委員も触れられましたが、今後締結されるべき條約その他協定において、国会審議権を事実上拘束するようなことのないように、そういう問題についてはあらかじめ我々の意見を十分に聽取するという措置を講じられることを要望いたしまして、賛成をいたします。
  137. 菊田七平

    ○菊田七平君 私は国民民主党を代表しまして、賛成するものであります。  その理由は、国民の大多数が早く講和を結んで、一日も早く独立したいという気特におきまして、従つて今度の平和條約にも賛成するものでありますので、本法案はこれに賛成することにやぶさかでないものと思うのであります。  以上の理由を以て賛成いたします。
  138. 森八三一

    ○森八三一君 私は以下申述べまする二、三の希望も附しまして、本法案に賛成をいたします。  その第一は、すでに小林委員からも御指摘がありましたし、木村、菊川委員からもお話があつた通りでありまして、この法律平和條約の十五條に基礎をおいて制定をせられるということに相成つておるのでありまするが、審議過程におきまして、政府当局も十分明らかにいたしました通り、すでに十五條におきましては国民負担すべき経済的な限度について約束がなされておるのでありまして、政府委員もこのことに関する限りは明確に国会審議を無視するような結果に相成るということを認めておるのであります。他面国会審議については十分尊重するという矛盾をした答弁もあるのでありまして、飽くまで国会審議というものは絶対のものでなければならんと思います。そこで今後いろいろの法律、條約等に基礎をおきまして、国民経済的な負担に相成るような約束がなされる場合がしばしば生じて来ようと存ずるのでありますが、さような場合におきまして、基本的な国会審議というものが対毫も阻害をされない、制約をされないというような態度でなければならんと思います。当然のことであると思いますので、今後とらるべき諸般の協定なり、協約なりということにつきましては、飽くまでも国会審議というものが十分に守られるという形でなければならん、このことを第一に強く期待をいたしたいと思います。  その次には十八條に基きまして、利害関係者から請求が出されるのでありまするが、この請求権はかなり内容的に厄介な、困難なものであろうと想像いたすのであります。これをさばいて行きますために、法律二十條によりまして、審査会の設定をいたし、更にその審査会の運炭につきましては、政令においてその細目を定めるというようになつておるのでありますが、この審査会の構成なり、その運営に必要な政令の定め方如何によつては、更に国民負担が非常に苛酷であるという結果に相成るかと思いまするのでありまして、飽くまでも卑屈な考えを捨てまして、堂々と正当なる主張をなし得る姿にこの審査会と、その運営に関する政令は定められなければならんと存じまするし、政府委員説明におきましても、さような心状は十分述べられておつたのでありまするが、これに関しまして国の利益が十分に正しく確保せられて行くという姿において、審議会の構成とその運営に必要な政令の定めがなされたという希望を附加えまして、本法律案に賛意を表するものであります。
  139. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 他に御発言がなければ、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決を行います。連合国財産補償法案を原案通り可決することに賛成の方の御挙手をお願いいたします。    〔賛成者挙手〕
  141. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 多数であります。よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條により、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することにして、あらかじめ御承認を願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 御異議ないものと認めます。それでは本院規則第七十二條により、多数意見者の御署名をお願いいたします。  多数意見者署名     山本 米治  小林 政夫     菊田 七平  森 八三一     小宮山常吉  松永 義雄     黒田 英雄  岡崎 真一     田村 文吉  愛知 揆一     大矢半次郎  伊藤 保平
  143. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは委員会はこれで散会いたします。    午後三時五十七分散会